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健康ダイジェスト

2019年7月〜 1月〜6月 2018年7月〜12月 1月〜6月 2017年7月〜12月 1月〜6月 2016年7月〜12月 1月〜6月 2015年7月〜12月 1月〜6月 2014年7月〜12月 1月〜6月 2013年6〜12月 5月 4月 3月 2月 1月 2012年12月 11 10月 9月 7月 6月 5月 4月 3月 2月 1月 2011年12月 11月 10月 9月 8月 7月 6月 5月 4月3月 2月 1月 2010年12月 11月 10月 9月 8月 7月 6月 5月 4月 3月 2月

 

■ハンセン病患者の家族も被害、国に賠償命じる 熊本地裁

 約90年に及んだハンセン病患者の隔離政策により家族も深刻な差別などの被害を受けたとして、元患者の家族で、北海道から九州・沖縄に住む20~90歳代の男女561人が国に1人当たり550万円(総額約30億円)の損害賠償と謝罪を求めた集団訴訟の判決で、熊本地裁は28日、初めて家族への賠償を命じました。

 遠藤浩太郎裁判長は、「隔離政策は家族が差別を受ける社会構造を生み、憲法が保障する人格権や婚姻の自由を侵害した」と指摘。原告541人に総額3億7675万円を支払うよう国に命じました。

 隔離政策を違憲として元患者への賠償責任を認めた2001年の熊本地裁判決(確定)の内容を踏襲しつつ、救済範囲を家族にまで拡大しました。2001年判決については、当時の小泉純一郎首相が控訴を断念して元患者に謝罪しています。国が今回も控訴しなければ、ハンセン病問題の「残された課題」とされた家族の全面救済に大きく近付くことになります。

 2009年施行のハンセン病問題基本法は、元患者の名誉回復を国に義務付けたものの、家族は対象外とされました。裁判では隔離政策が家族にも損害を与えたといえるかどうかが最大の争点でした。

 判決は、2001年判決を踏襲し、世界保健機関(WHO)が隔離を否定した1960年以降も、「らい予防法」に基づいて隔離政策を廃止しなかった厚生相・厚生労働相の義務違反や国会の立法不作為を過失と認定。隔離政策により「ハンセン病は恐ろしい伝染病」との誤った認識を国民に広め「隔離政策以前とは異質の家族への排除意識を生んだ」と指摘し、「国は家族に対しても偏見差別を除去する責任があった」と判断しました。また、2001年判決では言及しなかった法相や文部科学相についても、「差別除去のための啓発活動や教育を実施する義務を怠った」として違法性を認定しました。

 判決はまた、2001年判決まで違法行為は続いたものの、判決とその後の国の施策などで同年末までに家族への偏見差別は一定程度なくなったと判断。2001年末までに本人が患者家族と認識していた541人に共通損害があるとし、患者との関係性などに応じて1人当たり143万~33万円を支払うよう命じました。20人については、2001年末までに本人も周囲も患者家族と認識していなかったとして棄却しました。

 国は時効成立も主張しましたが、判決は鳥取県の元患者の息子が単独で起こした同種訴訟で、2015年9月の鳥取地裁判決が家族に対する国の責任に初言及したことで、原告は「国が加害者だと認識した」と判断。同判決を時効の起算とし、翌2016年に提訴した今回の訴訟について時効の成立を否定しました。

 厚生労働省は、「判決内容を精査するとともに関係省庁と協議し、対応を検討する」とコメントを出しました。

 2019年6月30日(日)

 

■医療ロボットによるオンライン手術を解禁へ 厚労省検討会が了承

 医療ロボットによる手術を遠隔操作で行うことを解禁するオンライン診療指針の改定案を、厚生労働省の検討会が28日了承しました。重篤な患者が移動せずに、遠方にいる高い技術を持った医師の手術を受けられるようになります。関係学会が具体的な手術要件などをガイドラインで定め、数年内の実用化を目指します。

 実施が想定されるのは、アメリカ製の内視鏡下手術用ロボット「ダヴィンチ」によるオンライン手術(遠隔手術)。医師が内視鏡カメラやメスの付いたアームを操縦して、患部を切ったり縫ったりします。胸や腹を切り開く一般の外科手術に比べて出血が少なく、体への負担が少ない一方、習熟した技術が求められます。

 ダヴィンチは国内で300台以上導入され、胃がんや食道がん、直腸がん、肺がん、子宮体がんの切除など14種類の手術で保険適用されています。高速通信の発達で遅延が解消し安定した遠隔操作が可能になったとして、日本外科学会の医師らが解禁を要望していました。

 指針改定案では、遠方にいる医師以外には難しい手術で、体力的に患者の移動が難しい場合に限って実施を認めます。主治医が患者のそばにいて、通信環境を事前に確認してトラブル時に主治医が手術を継続できる体制を作ることなどを条件としました。対象疾患や手術体制などは、各学会のガイドラインで決めます。

 2019年6月30日(日)

 

■透析中止認める指針、終末期以外にも拡大 学会が方針示す

 日本透析医学会は28日、横浜市内で開いた学術集会で、終末期の患者に限って人工透析治療中止を認めているガイドライン(指針)を、終末期以外にも拡大する方針を会員の医師に示しました。理事長の中元秀友・埼玉医大教授は、「現行の指針は現在の医療状況にそぐわない。医療者を守る提言にしたい」と述べました。

 東京都福生(ふっさ)市の公立福生病院で昨年8月に治療を中止して亡くなった女性(当時44歳)のケースのように、終末期でなくても患者本人が治療を拒否した場合などを想定しています。患者の意思確認や治療中止の手続きなどを来年3月までに定めます。

 現行の指針は学会が2014年に策定。治療中止の要件を「患者の全身状態が極めて不良」「透析実施がかえって生命に危険」などの終末期に限っています。

 透析関連の全国1407施設を対象にした徳島県の川島病院の岡田一義副院長(学会理事)の調査(2016~2017年)によると、指針に準拠した治療中止や最初から治療しない非導入は76・6%で、4分の1近くが必ずしも従っていない現状が明らかになりました。

 学術集会で岡田副院長は、「患者には説明を受けて、自らの意思で医療を受ける権利と拒否する権利がある」ことを前提に、「すべての治療の選択肢を示すべきだ」と説明しました。

 学会は5月に発表した声明で、女性は終末期ではなかったものの治療中止を強く望んでいたとして「意思が尊重されてよい」と結論付け、福生病院を支持しています。

 一方で、女性のカルテには最終的な意思確認の記録がなかったことが判明し、福生病院に対する東京都の立ち入り検査では、治療中止や非導入で亡くなった計24人のうち、21人の同意書がなかったことがわかっています。

 日本透析医学会は、新指針で終末期以外の患者でも治療中止を容認する一方、患者に繰り返し説明してカルテに記録を残すことや、患者から同意書を取る要件などを定める見通しです。

 2019年6月30日(日)

 

■群馬大学病院、がん拠点病院に再指定 厚労省が発表

 厚生労働省は、群馬大学附属病院(前橋市)で腹腔鏡(ふくくうきょう)などの手術を受けた患者が相次いで死亡していたことが明らかになったことを受けて、質の高いがん治療を提供する「がん診療連携拠点病院」の指定の更新を見送りましたが、診療体制の見直しなどが進んだとして、4年ぶりに指定することを決めました。

 群馬大学附属病院では、肝臓の腹腔鏡手術を受けた患者8人の死亡が続発したほか、開腹手術でも死亡が相次いでいたことが明らかになり、4年前、厚労省は「医療の安全体制が確保されていない」として、高度ながん治療を提供する「都道府県がん診療連携拠点病院」の指定の更新を見送りました。

 その後、病院の診療体制の見直しなど、再発防止の取り組みが進んだとして、厚労省は26日、7月1日から4年ぶりに「がん診療連携拠点病院」に再指定することを決めました。

 これによって、群馬大学附属病院は、今後、群馬県内8つの「地域がん診療連携拠点病院」に対して医師や看護師の研修や情報提供を行うなど、県内のがん治療の中心的な役割を担うことになります。

 国の指定見送りを受けて、3年前から独自の制度を設けて病院を支援してきた群馬県の大沢正明知事は、今回の決定を受けて「病院の改革への取り組みが評価されたもので、大変喜ばしい。今後は県内のがん治療の中核として、これまで以上に大きな役割を果たすことを期待している」とのコメントを発表しました。

 2019年6月29日(土)

 

■消費者庁、「はぴねすくらぶ」に課徴金 サプリの宣伝内容に根拠なし

 消費者庁は26日、景品表示法に基づく措置命令を受けていた九州の健康食品通販会社に対して課徴金納付命令を出しました。対象となったのは、1月に酵素サプリメントで措置命令を受けた「はぴねすくらぶ」(福岡市)。

 はぴねすくらぶは、2019年1月17日に酵素サプリメント「酵母と酵素deさらスルー』のウェブサイト上の表示について措置命令を受けていました。今回、納付命令が出た課徴金額は1581万円。約5年間に及ぶ違反表示が認定された期間中に、同商品は約5億2500万円(課徴金額から逆算した値)の売り上げだったとみられます。

 同商品は、商品ページで「発酵パワーでダイエット!」「新しいダイエットサプリ」「食べることが大好きなあなたへ!」とするキャッチフレーズを食事の画像と合わせて表示していました。

 消費者庁は、「特段の食事制限をすることなく、成分の作用により、容易に痩身(そうしん)効果が得られるかのように示す表示」と判断し、はぴねすくらぶに表示の合理的根拠を示す資料の提出を求めました。同社は資料を提出したものの、合理的な根拠と認められませんでした。

 2019年6月29日(土)

 

■50大学病院で「無給医」2191人 文部科学省が調査

 大学病院で診療をしながら、給与が支払われない「無給医」について、文部科学省は調査の結果、全国50の大学病院に2191人いたことを公表しました。文科省が無給医の存在を認めたのは、今回が初めてです。

 無給医は、大学病院などで診療をしながら研修中であることなどを理由に給与が支払われない若手の医師や歯科医師のことです。

 文科省は、今年1月から全国108カ所の医学部や歯学部の付属病院で診療に当たっている3万人余りの医師の給与や雇用の状況について調査しました。その結果、全国50の大学病院に2191人の無給医がいることが確認できたと28日公表しました。

 大学病院ごとの無給医の数は、順天堂大学医学部付属順天堂医院で197人、北海道大学病院が146人、東京歯科大学水道橋病院が132人、岩手医科大学付属病院が123人、昭和大学歯科病院が119人、愛知学院大学歯学部付属病院が118人、杏林大学医学部付属病院が95人、東北大学病院と大阪歯科大学付属病院、そして山口大学医学部付属病院が94人などとなっています。

 また、東京大学や慶應義塾大学など7つの大学病院は1304人の医師について、「調査中」と回答しました。

 このほか調査では、理由なく雇用契約が結ばれていなかった医師が1630人、同じく理由なく、労災保険に入っていなかった医師が1705人いたことが明らかになりました。

 今回、無給医の存在を認めた50の大学病院は今後は給与を支払うよう改めるとしています。また、文科省も今後、大学が取り組む改善策が適切に行われているか、確認するとしています。

 医師を目指す学生は医学部で6年間学んだ後、国家試験を受けて医師免許を取得します。「初期研修」と呼ばれる最初の2年間は月給30万円ほどが手当てされますが、その後も大学の医局に所属しながら「大学院生」や「医局員」などの立場で数年間にわたり、若手医師として診療などの経験を積むケースがほとんどです。

 医局は教授を頂点とし、准教授、講師、助教と連なるピラミッドのような構造となっており、最も下に位置する大学院生や医局員などは医師として診療に当たっていても無給だったり、わずかな給与だったりすることがあるということです。

 しかし、医局に所属する若手医師は専門医や医学博士の資格などを取るためや、関連病院に出向する際の人事権などを握られているため、現状の制度に対して医局の上司らに疑問や不満の声を上げづらく、問題が顕在化しなかったとみられます。

 この無給医の問題が長年見すごされてきたことで、医師の過重労働につながったり、診療の質にも影響したりしていると指摘する専門家もいます。

 医師の働き方に詳しい福島通子社会保険労務士は、「医師は聖職と思われてきたが無給医も労働者であると考えるべきだ。患者を診療しながら賃金が支払われないということは労働基準法上も違法である可能性がある」と指摘しました。その上で、「今回無給医の存在が明らかになったことを好機ととらえ、行政が改善に向けて動くべきだ。今までのやり方を変え、これからの医療を背負う若い医師が将来に希望を持てる体制に整える必要がある」と話しています。

 柴山昌彦文部科学大臣は記者団に対し、「実際に給与が支給されていない医師たちの存在が発覚したことは大変遺憾で、支払っていないという現状は改めるのが当然だ。こうしたことが起きないように各大学に指導するとともに、これから解明していかなければいけないと回答した大学についても、対応していく」と述べました。

 今回の調査結果について厚生労働省は、「現在、医師の働き方改革を進めているところであり、大学病院を含む医療機関に対しては医師の労務管理を適正化できるよう支援を行っていきたい」とコメントしています。

 2019年6月29日(土)

 

■「心の病」の労災請求、6年連続最多 女性からの請求が増える

 仕事のストレスでうつ病などの「心の病」になり労災請求した人が、2018年度は1820人で、1983年度の統計開始以降の最多となり、6年連続の増加となりました。働く女性が増えたことに加え、職場でのハラスメントに関心が高まったことで、女性からの労災請求が増えたといいます。

 厚生労働省が28日発表した2018年度の「過労死等の労災補償状況」によると、心の病になって労災請求した人は前年度より88人多い1820人。このうち女性は788人で、前年度から99人増えました。

 労災請求した人のうち、労災と認められた人は465人でした。このうち自殺や自殺未遂をした人は76人で、前年度より22人減りました。

 労災認定されたケースを原因別にみると、パワハラを受けるなどの「嫌がらせ、いじめ、暴行」と、仕事が増えるなどの「仕事内容・仕事量の変化」がそれぞれ69件で最多でした。女性に限ると「セクハラを受けた」が33人で最多でした。

 労災請求が増えた理由について、厚労省は「職場のセクハラ・パワハラへの関心が高まり、仕事が原因で心の病になったと考える人が増えた」と分析しています。

 一方、くも膜下出血や心筋梗塞(こうそく)などの脳・心臓疾患になり労災請求した人は877人で、うち238人が労災認定されました。過労死した人は82人で前年度から10人減り、比較できる2002年度以降で最少でした。労災認定された人の9割が「過労死ライン」とされる月80時間以上の残業をしており、年齢別では40歳以上が9割を占めました。

 労災認定された人を業種別にみると、「運輸・郵便業」が94人と最多で、「宿泊・飲食サービス業」が32人、「製造業」が28人と続きました。人手不足の業種で長時間労働を強いられている実態が浮かびます。

 2019年6月28日(金)

 

■日本人が座っている時間は世界トップクラス 健康を考慮して仕事見直す企業も

 職場では長時間のデスクワーク、自宅ではテレビやスマートフォンに向き合う現代人は1日の約60%を座って過ごすとされ、中でも日本人が座っている時間は世界トップクラスだというデータがあります。近年、そんな「座りすぎ」が健康に悪影響を及ぼす恐れがあるとの研究結果が明らかになりました。

 肥満、糖尿病、脳血管疾患、認知症などに罹患(りかん)するリスクが高まり、寿命が縮まる可能性を指摘する専門家もいます。こうした現状に対し、オフィスワーカーにとって当たり前の「座りながら仕事」を見直す企業も出てきました。

 オーストラリアのシドニー大学などが2012年に発表した調査結果は、1日11時間以上座る人は4時間未満の人と比べ死亡リスクが40%アップするというもので、世界に衝撃を与えました。

 また、明治安田厚生事業団体力医学研究所が2018年に発表した調査結果は、1日9時間以上座っている成人は7時間未満と比べて糖尿病をわずらう可能性が2・5倍高くなるというものでした。

 なぜ「座る」という日常では当たり前の行動が健康へ悪影響を与え、死亡リスクを高めるのか。

 座りすぎが健康に及ぼす影響について研究している同研究所の甲斐裕子主任研究員(人間環境学)は、「座りすぎのライフスタイルは筋肉の代謝や血流の悪化を招く」と指摘し、「人間の体で一番大きい大腿(たい)四頭筋などの下半身の筋肉は、座っている状態だとほとんど稼働せず、筋肉への刺激が少なく、この状態が続くとブドウ糖の吸収を促すインスリンの効きが悪くなるインスリン抵抗性が起こり、血糖値が上昇するため、糖尿病となるリスクがある」と説明しています。

 その上で、こうした生活習慣が長期にわたれば、糖尿病だけではなく、肥満、がん、認知症などの健康リスクを引き起こし、寿命が縮まる可能性にも言及しています。

 メンタルヘルスにも影響するといい、1日12時間以上座っている人は、6時間未満の人と比べて、抑鬱(よくうつ)や心理的ストレスなどを抱える人が3倍近く多いといいます。

 対策について甲斐主任研究員は、「30分以上座っていると代謝が落ちてくるため、定期的に筋肉に刺激を与えることが重要。高さを変えて、立った状態でも仕事ができる昇降式デスクの導入などで座っている時間を短くすることが効果的だが、一定時間ごとに業務を中断し、椅子から立ち上がり、数分でも歩いたり体を動かしたりすることも有効」と話しています。

 企業の取り組みも進み、実験的に「座りすぎ中断プログラム」を導入したのが、企業の事務代行サービスを手掛ける「MYJ」(東京都江東区)。1日に3回、3分間の「健活☆タイム」を設けています。

 席を立って自由に活動できるもので、健康器具の利用やストレッチなど、従業員にプログラムを提供することで、起立プラスアルファの運動を促しています。先行部署での取り組みの結果、「肩凝りが改善された」「眠気がとれた」といった好意的な社員の声が多数あり、今年2月から全社的に導入が開始されました。

 企業の健康づくりなどを支援する明治安田健康開発財団の塙智史課長は、座りすぎ防止取り組みの普及に期待を込め、「健康面以外でも、上下関係を気にせず気軽に話し合えたりするなどのメリットがあり、生産性向上にもつながる」と話しています。

 2019年6月28日(金)

 

■「ゲノム編集」食品、遺伝子情報など届け出へ 違反は公表も

 「ゲノム編集」と呼ばれる最新の遺伝子操作技術を使った食品について、厚生労働省は開発者に対し、遺伝子をどのように改変したかなどの情報を販売前に届け出ることを求め、従わない開発者は場合によって公表する方針を決めました。 

 ゲノム編集は遺伝子を操作する最新の技術で、収穫量が多いイネや、血圧の上昇を抑える成分が多いトマト、肉厚のタイなど、新たな品種を作り出す研究が盛んに行われており、厚労省は、食品として流通させる際のルールを検討してきました。

 その結果、ゲノム編集食品の開発者には、どのような遺伝子の改変を行ったかや、新たな遺伝子が組み込まれていないこと、健康に悪影響を与えるアレルギーの原因物質や毒性がある物質が増えていないかなどの情報を、販売前に厚労省に届け出ることを求める方針を決めました。

 そして、届け出られた情報のうち、開発者の名前や品目などをホームページで公表するほか、専門家で作る国の調査会にも報告するとしています。

 さらに、届け出をしなかったり虚偽の届け出をしたりした場合は、そうした事実を開発者の情報とともに公表する場合があるとしています。

 厚労省は国民から広く意見を募るパブリックコメントを27日から7月26日まで行った上で決定し、関係団体に通知する予定で、それによりゲノム編集食品が販売できるようになります。

 ゲノム編集食品については、消費者庁でどのような表示をするか検討が行われており、ゲノム編集食品の表示を義務化することは難しいとする見解が示されています。

 2019年6月27日(木)

 

■職業関連性胆道がんにオプジーボの治験を開始 国立がん研究センターなど

 国立がん研究センター東病院(千葉県柏市)と大阪市立大学病院(大阪市)は26日、職業関連性胆道がんを対象に、免疫チェックポイント阻害薬「オプジーボ」(一般名:ニボルマブ)の有効性と安全性を調べる医師主導治験を開始した、と発表しました。

 印刷事業などで使用する1、2ジクロロプロパンやジクロロメタンなどの有機溶剤が原因で発生した職業関連性胆道がんは、通常の胆道がんに比べて遺伝子変異が多く、PD‐L1の発現が多くみられることが特徴とされ、免疫チェックポイント阻害薬が効果を発揮しやすい条件に当てはまっています。

 職業関連性胆道がんは、2013年から労働災害として認定されており、通常の胆道がんと比べて、30歳代、40歳代の若年層で発症が多いことが知られています。

 治験の対象は、胆道がんと診断され、職業に関連した業務により労災認定を受けた20歳以上の切除不能または再発胆道がん(肝内胆道がん、肝外胆管がん、胆のうがん、乳頭部がん)の患者。2施設で最大16人を予定しています。

 なお開始された治験には、小野薬品工業が試験費用の一部と治験薬の無償提供を行います。 

 治験参加の問い合わせは、国立がん研究センター東病院サポーティブケアセンター治験問い合わせ担当(04・7130・7130)、大阪市立大学病院外科外来(06・6645・2346)。

 2019年6月27日(木)

 

■サンフランシスコ市、電子たばこの販売禁止へ アメリカ主要都市で初

 アメリカのサンフランシスコ市市議会は25日、電子たばこの販売を禁止する条例案を全会一致で可決しました。2020年にも施行され、販売業者に違反1回につき1000ドル(約11万円)を科すなどの罰則も導入される見込み。

 条例が成立するにはロンドン・ブリード市長が10日以内に署名する必要がありますが、すでに同市長は署名する意向を示しています。署名してから7カ月後に条例として施行されます。

 同市は電子たばこで急成長したスタートアップ企業の本拠地でもありますが、学生など若年層の利用が急増しており対策に乗り出します。電子たばこへの規制はアメリカの主要都市で初めてで、ほかの地域に広がる可能性もあります。

 市の委員会で可決した条例案は、サンフランシスコ市内にある店舗での電子たばこの販売のほか、ネット通販を介して市内の住所に電子たばこを届けることを禁止します。アメリカ・食品医薬品局の認証を得られた電子たばこは規制の対象外となるものの、現時点でそうした認証を受けている電子たばこ製品はありません。

 サンフランシスコ市も含めて、たばこを公共の場で吸う行為を規制しているアメリカの自治体は多く、カリフォルニア州ではビバリーヒルズ市がすでに電子たばこを含む大半のたばこの販売を禁じる条例案を可決しています。ただ、電子たばこに特化して販売活動の禁止に踏み込むサンフランシスコ市のような例はまれです。

 シンガポールで実施されている電子たばこ禁止とは異なり、サンフランシスコでは電子たばこの製造・流通・販売だけが禁止され、電子たばこの使用は禁止されません。

 サンフランシスコ市には、電子たばこで急成長しているスタートアップ企業のジュール・ラブズが本社を構えています。同社は自社製品について、「成人喫煙者に対する従来型たばこの代替手段だ」と主張してきました。ただ、デザイン性に優れて匂いも付きにくいことから、これまでたばこに関心のなかった若年層に利用が広がってしまう側面もありました。

 電子たばこの使用を巡っては、健康への潜在的な影響に対する懸念が増す一方、まだ新しい習慣であることなどから多くの不明点がありまさう。従来型たばこによって世界で年間700万人以上が命を落としていますが、専門家らは、喫煙が本当に危険だと断定されるまでに数十年かかったと指摘しています。

 今回規制対象に浮上した電子たばこはニコチンを含むため、日本への商業輸入は禁止されています。サンフランシスコ市を含むアメリカ・カリフォルニア州は大麻については、嗜好目的での販売・使用を合法化しています。

 2019年6月27日(木)

 

■紙製ストロー、最大手が今秋に販売へ 年間1000万本の生産を目指す

 ストロー製造の日本ストロー(東京都大田区)は、紙製ストローを今秋に商品化して販売します。海洋プラスチック対策で紙製ストローへの需要が高まっていることに対応します。当面、国内シェアの4割に相当する年間1000万本を生産します。

 日本ストローは、三井松島ホールディングスに所属するストロー製造の最大手で、年間60億本の生産能力を有しています。使い捨てストローなどによる廃プラスチック汚染がグローバルな課題になる中で、昨年来、同社の熊本工場に設備投資を行い、プラスチック素材に代わる再生可能なストローの開発を進めてきました。

 すでに市場には紙製ストローが流通していますが、紙製ストローは3枚の紙素材を織り上げ、接着剤でつなぎ合わせる手法のため、コストがプラスチック製に比べて2倍以上するほか、接着剤の匂いが残るなどの課題があります。

 日本ストローでは日本製の紙や独自の脱臭器を使って、製造工程で接着剤の匂いの除去に成功。価格も1本3~4円で、現在市場に流通している他社製品の半額程度に抑えることが可能といいます。国内の紙製ストロー市場は年間2500万本程度と見込まれることから、当面1000万本の生産体制とし、市場の需要と反応を見た上で、将来は3000万本までの増産を視野に入れています。

 今週、大阪で開かれるG20サミットで、海洋プラスチック汚染問題が中心課題になります。そこで日本ストローでは、関西のホテルやレストランなどでプラスチック製ストローからの代替製品への切り替えが広がると予測しており、関西および訪日外国人(インバウンド)需要の高まりを踏まえて、関西を中心に販売するといいます。将来は海外向け需要を取り込む考えです。

 また、同社は同時に、サトウキビなどの生分解性のあるバイオマス資源を配合したプラスチック製ストローも開発しました。さらに、生分解性ストローの開発も進めています。

 2019年6月27日(木)

 

■メタボを「未病」の段階で検出 富山大などが成功

 健康状態から病気状態になる直前に脳波などの「生体信号」が大きく変化すると考える理論をもとに、メタボリックシンドロームを「未病」の段階で検出することに成功したと富山大学と東京大学の研究チームが発表しました。メタボの予防や早期治療につながる可能性があるといいます。

 イギリスの科学誌「サイエンティフィック・リポーツ」(電子版)に掲載されました。

 未病は、健康な状態と病気の状態の間の状態。研究チームは、生体信号の「揺らぎ」に着目した「動的ネットワークバイオマーカー理論(DNB理論)」から、揺らぎが大きくなった時点を未病の状態であると考えました。

 生後8週から10週でメタボを自然発症するマウスで、発症する前の3~7週まで1週間ごとに脂肪組織の遺伝子を解析。DNA(デオキシリボ核酸)の情報を複製したRNA(リボ核酸)が生み出される量を測って、DNB理論に基づくデータ解析を実施しました。すると、遺伝子の一部が生み出すRNAの量の増減幅が5週目だけ通常の3~4倍になることがわかりました。

 メタボは肥満に加え、高血糖・高血圧・脂質代謝異常のうち2つ以上が該当する状態ですが、今回の手法で、これらの症状が出る前に診断がつけられるといいます。

 研究チームの一員でもある富山大の斎藤滋学長は、「予防的、先制的医療ができるようになれば、次世代の医療を目指すには大きな成果だ」と話しました。

 2019年6月25日(火)

 

■強制不妊の救済で一時金認定審査会を設置 厚労省

 旧優生保護法(1948~96年)下で不妊手術を強制されるなどした被害者に支給される一時金320万円について、厚生労働省は25日、明らかな手術記録などが確認できない人から申請があった場合に支給の可否を判断する認定審査会を設置しました。

 厚労省によると、認定審査会は弁護士や大学教授、医師ら計8人で構成されます。第一回目の認定審査会は、7月にも開かれる予定といいます。

 一時金の支給対象は救済法施行日の4月24日に生存している被害者で、手術記録などが確認できれば1人当たり320万円が支払われます。

 厚労省によりますと、6月16日の時点で246人が一時金の申請をしたということですが、不妊手術を受けたことを明確に証明することが難しい人たちがいます。このため、救済法には、不妊手術を受けた記録などが残っていない人たちは、認定審査会での審査を経て、一時金の対象になっているか判断されることになっており、25日、厚労省に認定審査会が設置されました。

 根本匠厚労相は閣議後の記者会見で、「厚労省としては優生手術等に関する当時の記録等が残されていない方についても、認定審査会において円滑な審査が行われるよう事務局としてサポートするとともに、審査結果に基づく速やかな支給に向けて全力で取り組む」と述べました。

 2019年6月25日(火)

 

■手足口病、過去10年の同時期で最多 九州・近畿で警報レベル

 主に幼い子供が感染し、手足や口の中に発疹ができる「手足口病」の患者数が、この時期としては過去10年で最も多くなり、国立感染症研究所は特に幼い子供のいる家庭では、こまめに手を洗うなど予防を徹底してほしいと呼び掛けています。

 手足口病は、手や足、口の中などに発疹ができるウイルス性の感染症で、主に幼い子供が感染します。まれに髄膜炎や脳炎などの重い症状を引き起こすことがあり、例年、夏場に患者数が最も多くなります。

 国立感染症研究所によりますと、6月10〜16日までの1週間に、全国およそ3000の小児科の医療機関から報告された患者数は1万2700人余りと、前の週から3800人余り増えました。

 1医療機関当たりの患者数は4・02人となり、この時期としては過去10年で最も多くなりました。

 1医療機関当たりの患者数を都道府県別にみると、佐賀県で16・91人、福岡県で15・66人、鹿児島県で12・76人、大阪府で10・05人、京都府で6・30人などと警報レベルの5人を超え、九州地方のほか近畿地方の一部で多くなっています。東京都は、前週の1・7倍超の1・65人でした。

 今年は特に「コクサッキーA6」という型のウイルスが多く検出されており、このウイルスが流行すると患者数が多くなる傾向がみられるということです。

 国立感染症研究所の藤本嗣人室長は、「感染しても症状がはっきり出ずにウイルスを排出する例もあり、特に幼い子供がいる家庭などでは、オムツを適切に処理したり、こまめに手洗いをしたりするなどして、予防を徹底してほしい」と呼び掛けています。

 2019年6月25日(火)

 

■「食材宅配でゲノム編集食品を扱わない」と決議 生活クラブ生協が総会で

 約40万人が加盟する生活クラブ事業連合生活協同組合連合会(東京都新宿区)は24日、総会で「食材宅配でゲノム編集食品を取り扱わない」と決議しました。同連合会は、「安全性や環境への影響などにも懸念があり、管理が届く原材料しか使用しない対応をする」と話しています。

 ゲノム編集食品には、外部から遺伝子を導入する手法と、狙った遺伝子を壊して変異を起こす手法があります。後者について、国は「自然界でも起こり得る変化」「従来の品種改良と区別できない」などとして、安全性審査の対象外としました。表示義務も課さない見通しとなっています。開発者には届け出を求めるものの、義務付けはしません。

 国内では、肉厚のマダイや血圧の上昇を抑える成分が多いトマト、芽に含まれる食中毒成分を作らないようにしたジャガイモなどが開発されています。厚生労働省や消費者庁は、こうした運用について8月末をめどに見解を示すことにしており、その後ゲノム編集食品が流通し始める見通しです。

 同連合会の決議は、「経済効果だけを重視した商業化と、それを後押しする行政対応が進められていることに重大な危機感を持たざるを得ない」としています。同連合会は、「表示なく流通すれば消費者は選択することもできない。実質的な安全性の議論もしていない」と批判しています。

 2019年6月24日(月)

 

■子供への体罰を禁止する改正児童福祉法が成立 児童相談所の機能も強化

 児童虐待の防止策を強化するため、子供への体罰を禁止するなどとした改正児童福祉法が、19日の参議院本会議で全会一致で可決され、成立しました。

 児童虐待の防止策を強化するための法案は、野党側の対案の一部を取り入れて修正された上で5月末に衆議院を通過し、18日、参議院厚生労働委員会で全会一致で可決されました。そして、19日の参議院本会議で採決が行われ、全会一致で可決、成立しました。

 成立した法律では、親がしつけに当たって子供に体罰を加えることを禁止しています。

 また、児童相談所の機能を強化するため、専門的な知見を踏まえた対応ができるよう、医師や保健師の配置や、弁護士にも相談できる体制の整備を義務付けているほか、都道府県と政令指定都市だけでなく人口20万人以上の中核市や東京23区にも設置できるよう、法律の施行後5年をめどに、施設の整備などを進めるとしています。

 さらに、衆議院での修正で、虐待をした親に対し専門家の指導に努めることや、自治体の人口や虐待の相談件数などを踏まえて、虐待の対応に当たる児童福祉司を増員することも盛り込まれました。

 親が子を戒める民法の「懲戒権」についても、法律の施行後2年をめどに見直しなどの措置を講ずることが明記されており、法務省は20日、法制審議会に規定の見直しを諮問することにしています。

 法律で体罰の禁止のほか児童相談所の機能強化が明記されたのは、相次ぐ児童虐待事件で一時保護などに踏み切れず、子供の安全が守れなかったケースが相次いだためです。

 このため法律では、児童相談所で、子供の一時保護など「介入」を行う職員と、保護者の「支援」に当たる職員とに担当を分けるといった措置を義務付けました。
保護者との関係を重視するあまり、対応が遅れた事例を踏まえ、ちゅうちょなく迅速に対応できるようにする狙いがあります。

 また、児童相談所で相談に当たる児童福祉司の資質を高めるため、国家資格化することも含め、資格の在り方について、施行後1年をめどに検討することにしています。

 さらに、引っ越しによって支援が途切れることのないよう、転居先の児童相談所と速やかに情報を共有するとしています。

 このほか、児童虐待の早期発見に向け、DV=ドメスティック・バイオレンスに対応する相談センターなどの機関と児童相談所の連携も強化するとしています。

 一方、札幌市で2歳の女の子が衰弱死した事件では、児童相談所が住民から虐待の疑いがあるという通告を受けていましたが、親子が不在だったことなどから面会できていませんでした。

 このため政府は、今回の法律とは別に、虐待の通告を受けてから48時間以内に子供の安全を確認し、確認できない場合には立ち入り調査を行うルールの徹底や、警察との情報共有など連携の強化も求めています。

 2019年6月24日(月)

 

■「着床前スクリーニング」の研究、秋から実施施設を拡大へ 日産婦が方針

 体外受精させた受精卵の染色体を調べ、異常がないものを選んで子宮に戻す「着床前スクリーニング」について、日本産科婦人科学会(日産婦)は22日、流産を減らすなどの効果があるか症例数を大幅に増やして調べるため、今秋をめどに実施する医療機関を増やす方針を公表しました。

 不妊治療で体外受精させた受精卵の中には、染色体の異常が原因で流産するものが含まれており、着床前スクリーニングと呼ばれる受精卵の染色体を検査して異常がないものを選んで子宮に戻す技術で流産を減らすことなどができないか、日産婦が臨床研究を行っています。

 これまで、流産を繰り返す女性や複数回体外受精をしても妊娠しなかった女性などを対象に、名古屋市立大学など4つの医療機関と3つの解析施設が実施して調べてきましたが、大幅に症例数を増やすため、実施する医療機関を増やす方針を決めました。

 日産婦は、新たに参加する施設は、一定の要件を満たした70余りの医療機関から募り、審査して決めるとしています。

 着床前スクリーニングは、「命の選別」につながるとして倫理的な問題が指摘されている上、最終的に出産する確率を上げる効果があるかはわかっておらず、検討に参加した専門家は過大な期待などが生じないよう説明が大切だとしています。

 臨床研究のメンバーの名古屋市立大学の杉浦真弓教授は、「この検査で出産に至る女性が増えるのかははっきりしておらず、臨床研究は、その点を十分に理解してもらって進めたい」としています。

 2019年6月23日(日)

 

■障害者の就職、過去最高の10万人に達する 法定雇用率2・2%以上への引き上げで

 厚生労働省は18日、2018年度に全国のハローワークを通じて就職した障害者が延べ10万2318人に達し、過去最高を更新したと発表しました。前年度から4・6%増えました。

 障害者雇用促進法は民間企業に対し、従業員全体の2・2%以上の障害者を雇うよう義務付けています。以前は2・0%以上でしたが、2018年4月から0・2ポイント引き上げられており、障害者の就職を後押ししたとみられます。

 同年度に新たに就職を希望したのは延べ21万1271人で、実際に就職できた人の割合は48・4%でした。

 産業別では、医療・福祉が34・7%を占め、製造業は14・2%、卸売業・小売業は12・3%でした。

 障害者雇用が義務付けられる対象は、従業員45・5人(短時間労働者は0・5人で計算)以上の民間企業。

 2019年6月23日(日)

 

■新型出生前診断、日産婦が実施施設の拡大見送り 厚労省が検討会設置へ  

 妊婦の血液でダウン症など胎児の染色体異常を調べる「新型出生前診断」について、日本産科婦人科学会(日産婦)は22日、検査の実施施設の拡大を認める新指針の運用を見送ると発表しました。

 複数の他学会から新指針への批判が寄せられたことを受け、厚生労働省から検査の在り方を議論する検討会を設置する方針が示されたことが理由です。運用の開始時期は、国の議論を見極めて判断するとしています。

 現行指針では検査を実施する施設に対し、産婦人科医と小児科医が常勤し、どちらかは遺伝の専門家で十分なカウンセリングが行えるなどの要件を規定。認可施設は現在、大規模な病院を中心に92施設あります。

 一方、指針に強制力はなく、ルールに従わずに検査を提供する営利目的の無認可施設が急増。日産婦は今年3月、研修を受けた産婦人科医がいる施設であれば、開業医や小規模施設でも検査をできるなどとした新たな指針案を公表しました。

 これに対し、日本小児科学会や日本人類遺伝学会が反発。検査は結果次第で妊娠中絶につながるケースもあることから、「命の選別」を招きかねないとして安易な拡大に慎重な意見も出ていました。

 厚労省は今月21日、日産婦に対し、妊婦らに不安が広がりかねないとして、検討会の議論を踏まえた対応を要請。日産婦は日本小児科学会の要望などを踏まえ、一部修正した新指針を22日の理事会で了承したものの、運用については見送ることを決めました。

 同日、新指針策定を主導した日産婦の藤井知行前理事長は記者会見し、「指針は学会で決めたが、運用については検討会の動きを注視していくことにした」と説明。無認可施設で検査を受けた妊婦らが不安を抱えるケースもあるなどとして、検討会での早急な対応も求めました。

 妊婦の血液から胎児の染色体異常を調べる検査について、厚労省が検討会を設置するのは「母体血清マーカー検査」を巡って専門委員会が設置されて以来、約20年ぶりとみられます。検討会では、検査の実施施設に求める要件などが議論される見通しです。

 2019年6月22日(土)

 

■乳幼児の手足口病が感染拡大 京都府内で警報レベルを超す

 京都府は20日、乳幼児を中心に感染する「手足口病」の府内での報告数が、府内全域で国の定める警報レベルを超過したと発表しました。府は、手洗いと排泄(はいせつ)物の適切な処理を呼び掛けています。

 今月10~16日の感染症発生動向調査で、府内77カ所の小児科定点医療機関当たりの患者報告数が平均で6・30と、国で定める警報レベルの5を約2年ぶりに超過しました。地域別では、南丹10・60、中丹東7・40、京都市内7・21、中丹西6・00、乙訓5・25と続きました。

 手足口病は乳幼児を中心に流行するウイルス性感染症で、口の中や手のひら、足の裏などに2~3ミリの水疱(すいほう)性の発疹や軽い発熱などの症状がみられます。まれに脳炎など重症化することもあります。

 せきやくしゃみのつば、便に含まれるウイルスが口や手を介して感染することから、京都府健康対策課は、流水とせっけんによる手洗い、タオルの共用の禁止、おむつの交換時の適切な処理などを呼び掛けています。

 2019年6月22日(土)

 

■大阪府の0歳男児、先天性風疹症候群 全国で今年3例目

 全国的に風疹の患者が増加する中、妊娠中の母親が風疹に感染することで、おなかの赤ちゃんに障害が出る「先天性風疹症候群」の子供が大阪府内で5年ぶりに確認されたことが20日、わかりました。府はワクチンの接種など、注意を呼び掛けています。

 大阪府などによりますと、今月、大阪府内の医療機関で0歳の男児が先天性風疹症候群と診断されたということです。

 先天性風疹症候群は、母親が妊娠初期に風疹に感染することで、生まれてくる赤ちゃんの目や耳、心臓などに障害が出るものです。

 先天性風疹症候群の子供が大阪府内で確認されたのは、前回の大流行に伴う患者以来5年ぶりで、今年に入り、埼玉県、東京都に次いで全国で3例目だということです。

 大阪府内では、6月16日までに報告された風疹の患者数が117人で、すでに昨年1年間の患者数の123人に迫る勢いです。

 府では、女性は妊娠する前にワクチンの接種を行うことや、免疫を持たない30歳代から40歳代の男性を中心に、幅広い世代の人にワクチンを接種してほしいと注意を呼び掛けています。

 先天性風疹症候群の子供が大阪府内で5年ぶりに確認されたことについて、先天性風疹症候群の子供の保護者たちで作る会の大畑茂子さんは、「先天性風疹症候群は、防げる方法も手立てもわかっているのに、患者が出たことに悔しい気持ちでいっぱいです。自分や自分の家族のこととして想像力を働かせて、大人一人一人が今できることを考えてほしい。これ以上患者を増やさないためにもワクチンの接種や抗体検査を行ってほしい」と話しています。

 2019年6月22日(土)

 

■「運動」と「禁煙」で認知症リスク低下 WHOが予防指針を公表

 認知症予防を巡り、世界保健機関(WHO)が5月、初の指針を公表し、運動習慣を持つことや禁煙を強く勧めました。「予防」は、政府が18日にまとめた認知症施策推進大綱でも「共生」とともに2本柱となり、注目が集まっています。

 指針の正式名称は、「認知機能低下と認知症のリスク減少の指針」。日本の認知症高齢者は2018年で約500万人とみられ、WHOによると世界では約5000万人。今後も患者は増え、2030年には世界で8200万人、2050年に1億5200万人と予測され、指針の策定は各国に対策を促す狙いがあります。指針では各国のこれまでの研究結果を分析し、認知症にかかわるとみられる運動や糖尿病など12項目について、推奨する度合いなどを示しました。

 特に推奨する効果的な予防策として、定期的な運動、禁煙を挙げました。65歳以上の高齢者では、1週間に少なくとも150分の中程度の有酸素運動が望ましく、1回に10分以上するとよいとしています。また、バランスの取れた食事や、飲酒制限、社会活動もリスク軽減に有効だとしました。

 食事では、芋類を除く野菜や果物を1日に少なくとも400グラム摂取するよう勧めています。一方、ビタミンBやE、不飽和脂肪酸などのサプリメントを摂取することは、認知症のリスクを下げる効果が確かめられていないため、推奨しないとしました。

 高血圧と糖尿病も認知症のリスクを高めるとして、血圧を適正に維持すること、生活習慣の改善などによる糖尿病治療などを推奨しています。

 2019年6月22日(土)

 

■ゲノム編集食品、表示義務化見送りへ 消費者庁が意向示す

 動植物の遺伝子を改変できる「ゲノム編集」の技術を使った食品を巡り、編集表示の義務化が見送られる見通しになりました。

 消費者庁は20日、内閣府消費者委員会の食品表示部会(部会長=受田浩之・高知大学教授)で、「ゲノム編集で得られた変異と従来の品種改良で得られた変異との違いを科学的に検証できず、義務違反の特定は困難」とする考えを示し、部会の委員から意見を聞きました。任意表示については検討し、8月末をめどに表示の在り方を公表します。

 消費者庁は席上、「義務表示のためには違反食品を特定し、罰則を課さなければ機能しないが、現時点では困難」などと説明。委員からは「消費者のため、任意表示でも情報提供の仕組みが必要」などの要望が出ました。「任意表示によって『ゲノム編集でない』という表示がまん延しないような工夫が要る」という意見もありました。

 厚生労働省に対しては、ゲノム編集食品の届け出徹底を求める声が相次ぎました。厚労省の担当者は、「事前の相談を受ける仕組みを設け、届け出を求めることを事業者に周知する」「届け出なかった事業者を公表することで一定の社会的制裁になる」と説明しました。

 ゲノム編集食品を巡っては、外来遺伝子を入れる方法については遺伝子組み換え食品と同様に安全性審査の対象に含め、もともとある遺伝子を改変するだけの場合は対象外として届け出のみとする方針を、厚労省の審議会がまとめました。アレルギーなどの健康影響や成分変化などを確認して届け出るよう業者に求めます。

 特定の遺伝子を切断したり、他の生物の遺伝子と置き換えたりして生物の性質を変える「ゲノム編集」の技術を使って開発中の農畜産物や魚には、高血圧予防につながるとされる成分を多く含んだトマト、芽に含まれる食中毒成分を作らないようにしたジャガイモ、筋肉の増殖を抑える遺伝子が働かないようにした肉厚なマダイなどがあります。

 2019年6月22日(土)

 

■認知症の不明者1万6927人、6年連続最多更新  行方不明者全体の2割

 2018年に認知症が原因で警察に行方不明届が出された人は前年より1064人多い1万6927人だったことが20日、警察庁のまとめでわかりました。6年連続で過去最多を更新しました。

 統計を取り始めた2012年の1・7倍となり、徘徊(はいかい)中に車にはねられるなどして508人が死亡しました。行方不明者全体に占める割合は19・2%と7年間で最大でした。

 認知症の人は2015年時点で約520万人いると推計され、団塊の世代がすべて75歳以上となる2025年には約730万人に達する見込み。政府は18日に決定した認知症対策の新たな大綱で、地域の見守り体制づくりやICT(情報通信技術)を活用した捜索システムの普及などを打ち出しています。

 認知症が原因で行方不明になった人の年齢は、80歳以上が8857人(52%)で最も多く、70歳代が6577人(39%)、60歳代が1353人(8%)、50歳代が131人、40歳代が9人でした。70歳以上が全体の9割を占めました。男女別の内訳は、男性が9274人(55%)、女性が7653人(45%)でした。

 都道府県別では、大阪府2117人、埼玉県1782人、兵庫県1585人、愛知県1422人、神奈川県1280人、東京都1246人、福岡県527人、京都府523人、千葉県411人の順で多くなりました。

 2017年以前に届け出があった行方不明者を含め、2018年中に所在がわかったり、届け出が取り下げられたりした人は1万6866人。自宅周辺を徘徊し、遠くまで離れなかったケースが多いとみられ、1万1905人(71%)は届け出の受理当日に無事が確認されました。2~7日以内の発見は4205人(25%)で、全体の96%が受理から1週間以内に見付かりました。死亡が確認されたのは、508人でした。

 一方、行方不明者の総数は8万7962人でした。前年より3112人多く、過去10年間ではほぼ横ばい状態です。世代別では、過去5年間で増加傾向にある20歳代が最多の1万8518人で、10歳代(1万6418人)、80歳以上(1万1326人)、30歳代(1万996人)、70歳代(1万人)が続きました。10歳代~30歳代で過半数を占めました。原因・動機は「認知症」の19・2%、「家庭関係」の16・9%、「事業・職業関係」の12・5%が目立ちました。

 厚生労働省は、ホームページに認知症行方不明者の情報を提供する特設サイトを開設し、自治体が保護した身元不明者らの情報を公開しています。各地の警察も、自治体や高齢者施設と徘徊の恐れがある人の情報共有を進めています

 2019年6月20日(木)

 

■向精神薬4200錠を輸入疑い、37歳男を再逮捕 ネット販売か

 インドから向精神薬約4200錠を営利目的で輸入したとして、厚生労働省北海道厚生局麻薬取締部は19日、東京都北区豊島、飲食店従業員の男(37歳)を麻薬及び向精神薬取締法違反(営利目的輸入)容疑で再逮捕したと発表しました。

 発表によると、男はインターネットで医薬品の販売サイトを運営。昨年3~8月、国の許可なしでインドから向精神薬「エチゾラム」約4200錠を輸入した疑い。薬は北海道と静岡県の30~40歳代の男女2人に計約30万円で販売する目的だったといいます。

 エチゾラムは不安を和らげる効果や睡眠作用があり、国内では「デパス」などの製品名で流通していますが、近年、昏睡(こんすい)強盗などへの悪用が相次いでいます。国は2016年に輸入の規制対象としましたが、麻薬取締部では、男が規制後も全国で数百人に計数万錠のエチゾラムを輸入販売したとみています。

 調べに対し男は「営利目的だった」と容疑を認めているといいます。札幌地検が18日、男を同法違反で起訴しました。

 2019年6月20日(木)

 

■がん治療薬「アバスチン」に国内初のバイオ後続品 ファイザーが承認取得

 製薬大手のファイザーは18日、がん治療薬「アバスチン(一般名:ベバシズマブ(遺伝子組換え)、中外製薬)」のバイオ後続品の製造販売承認を取得しました。効能・効果は「治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸がん」のみ。アバスチンのバイオ後続品は国内で初めて。

 製品名は、「ベバシズマブBS点滴静注100mgファイザー」、「同400mgファイザー」。抗VEGFヒト化モノクローナル抗体で、腫瘍の増殖に関与する血管新生を阻害します。

 先発品のアバスチンの効能・効果は、「治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸がん、扁平上皮がんを除く切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん、卵巣がん、進行または再発の子宮頸がん、手術不能または再発乳がん、悪性神経膠腫」。

 バイオ後続品は、バイオ医薬品のジェネリック(後発品)に当たるもので、先発品の特許切れに伴い、先発品よりも安い価格で販売されます。がん治療薬では、「リツキシマブ(先発品リツキサン)」、「トラスツズマブ(同ハーセプチン)」が登場しています。

 アバスチンのバイオ後続品については、ファイザーが2月、ヨーロッパで承認取得。適応症は「転移性結腸・直腸がん、転移性乳がん、切除不能・進行再発非小細胞肺がん、進行または再発の腎細胞がん、再発または転移性子宮頸管がん」。アメリカでは承認申請中です。

 2019年6月20日(木)

■うつ病への磁気刺激治療装置に初の保険適用 帝人ファーマが販売

 難治性のうつ病に対し、頭部に磁気刺激を与えて症状の改善を図る治療装置が6月1日、初めて保険適用されました。

 帝人ファーマ(東京都千代田)が販売する「ニューロスターTMS治療装置」。同社によると、アメリカの医療機器メーカー「ニューロネティクス社」が開発したrTMS(反復経頭蓋磁気刺激)装置で、2008年にアメリカでうつ病の治療機器として承認され、これまで約6万人の治療実績を有しています。

 保険の対象となるのは、既存の抗うつ剤治療で十分な効果が認められない成人のうつ病患者。厚生労働省の患者調査などによると、国内のうつ病患者数は年々増加し、受診者で約73万人、未受診の潜在患者まで含めると250万人以上とされており、そのうち約3割が、通常の抗うつ剤では症状が改善されにくいうつ病といわれています。

 治療は、頭部に当てた磁気コイルから「左背外側前頭前野」に磁気刺激を与え、神経伝達物質の放出を促すことで、脳内を活性化させるといいます。約40分間の治療を週5回、計20~30回行うことで、うつ症状を軽減、消失させる効果が期待できるとしています。

 保険適用は、6週間、計30回が限度で、保険点数は1回1万2000円(自己負担3割だと3600円)。

 保険で治療できる医療機関には、精神科を標榜している病院であることや、常勤の専門医がいることなどの施設基準のほか、日本精神神経学会や帝人ファーマが主催する講習を受講することなどの条件が設けられました。

 同社では、「環境の整備を図りながら、治療を普及させたい」としています。

 2019年6月19日(水)

 

■手足口病が西日本で流行の兆し 1週間で8823人が発症

 子供がかかりやすく、手足や口の中に発疹ができる手足口病が流行の兆しを見せています。国立感染症研究所の18日の発表によると、全国約3000の小児科から報告があった患者数は、6月3~9日の1週間で8823人でした。1医療機関当たり2・79人となりました。

 過去10年の同時期では、最も多くなっています。今のところ、西日本で患者の増加が目立っています。夏場の本格的な流行に備え、専門家が予防を呼び掛けています。

 都道府県別では、鹿児島県(14・02人)が最も多く、福岡県(11・73人)、佐賀県(11・26人)、宮崎県(10・58人)が続きました。このほか、大分、大阪、熊本、岡山、長崎の5府県が、流行の警報を出す基準(5人)を超えています。

 手足口病は、手などに付着した夏風邪のウイルスを口から取り込んでうつります。2~3ミリの水膨れ状の発疹が現れ、数日で治ります。まれに脳炎などの重い合併症を引き起こすこともあります。特効薬はなく、症状が出ている間は安静にして回復を待ちます。

 子供の感染症に詳しい斎藤昭彦・新潟大学教授(小児科)は、「保育園や幼稚園での流行が心配される。大人も子供もこまめに手洗いをして予防を心掛けてほしい」と話しています。

 2019年6月19日(水)

 

■認知症対策の新大綱決定、予防に初めて重点 2025年に700万人と推計

 政府は18日、認知症対策を強化するための新たな大綱を関係閣僚会議で決定しました。認知症の人が暮らしやすい社会の実現を目指す従来の「共生」に加え、発症や進行を遅らせる「予防」に初めて重点を置きました。5月の素案で示した「70歳代での発症を10年間で1歳遅らせる」という初めての数値目標は参考値に格下げし、患者の精神的負担にならないよう配慮しました。

 新しい大綱は2015年に策定された「認知症施策推進総合戦略」(新オレンジプラン)に代わるもので、計画期間は団塊世代全員が75歳以上の後期高齢者となる2025年まで。同年には認知症の高齢者が5人に1人に当たる約700万人になると推計されており、社会保障費を抑制する狙いもあります。

 予防の新たな定義として、「認知症にならないという意味ではなく、なるのを遅らせる、進行を緩やかにする」と明記。認知症は「誰もがなり得る」とした上で、「発症を遅らせ、認知症になっても希望を持って日常生活を過ごせる社会」を目指すことを掲げました。

 素案では「70歳代での発症を10年間で1歳遅らせる」ことにより「70歳代の患者を約1割減らせる」との試算を盛り込みましが、患者側や与党内から「偏見を助長し、自己責任論に結び付く」「科学的根拠が明確ではない」と批判が集まったため最終案では削られました。

 具体策としては、運動や社会参加が孤立を防ぎ、予防につながる可能性を指摘。高齢者が集まり、体操や会食、趣味を楽しむ「通いの場」への参加率を、2017年度の4・9%から8%程度に高めることを重点目標に位置付けました。

 これまでも通いの場を実施する自治体に交付金を出すなどして整備を推進してきましたが、参加率は低迷しています。新しい大綱には、市区町村に向けた活動の手引を国が作成し、普及を促す方針を盛り込みました。

 このほか、「認知症バリアフリー」の推進を掲げ、認知症の人が外出しやすいよう公共交通の事業者に配慮計画の作成を義務付ける、認知症の人本人の発信を支援する、高齢運転者向けの免許制度を創設など、関係省庁の施策もまとめました。

 2019年6月19日(水)

 

■今春の医学部合格率、女子が男子を超える 東京医科大、順天堂大など

 医学部の不正入試問題で、文部科学省から昨年、不適切またはその疑いがあると指摘された10大学のうち、女子差別があったとされる4校の今春入試で女子の平均合格率が13・50%と、男子の12・12%を1・38ポイント上回ったことが明らかになりました。前年に男子9・06%、女子5・52%と3・54ポイントあった差が逆転しました。今春の入試では、不当な差別が排除された結果とみられます。

 全81校(防衛省所管の防衛医科大学を除く)で見ても、前年は男子11・51%、女子9・46%と2・05ポイントの開きがありましたが、今春は男子11・86%、女子10・91%で0・95ポイント差に縮小。昭和大学、日本大学(いずれも東京都)、山梨大学(山梨県)など計26校で女子の合格率が男子を上回りました。

 受験者数が前年から約6000人減ったため、合格率は全体的に上昇しましたが、文部科学省に女子差別を指摘された東京医科大学、順天堂大学、北里大学(いずれも東京都)と、その疑いを指摘された聖マリアンナ医科大学(神奈川県)の4校の合格率は男子12・12%、女子13・50%でした。

 前年まで一般入試の小論文の得点を操作し、女子と3浪以上の男子の合格者を抑えていた東京医科大学では、合格率が前年の男子9・04%、女子2・91%から今年は男子19・84%、女子20・21%となりました。担当者は、「不正を排除した結果ではないか」と語っています。

 1次試験で一定順位以下の浪人生や女子を不利に扱っていた順天堂大学は、前年の男子10・08%、女子5・23%から今年は男子7・72%、女子8・28%と大きく変動し、直近7年間で初めて女子が男子を上回りました。順天堂大学の医学部は募集人員140人に対し、受験者が男子2202人、女子1679人、合格者(繰上合格を含む)が男子170人、女子139人、受験者に対する合格者の割合を示す合格率が男子7・72%、女子8・28%で、男子の合格率は女子の0・93倍でした。

 北里大学は前年の男子9・11%、女子10・63%から今春は男子15・66%、女子20・08%と女子が急伸しました。

 2019年6月18日(火)

 

■1日4400歩程度でも高齢女性の死亡リスク低下 アメリカ・ハーバード大学が研究

 健康のためには1日1万歩は歩くのが望ましいとよくいわれるものの、アメリカのハーバード大学医学大学院の研究チームが行った研究で、平均年齢72歳の高齢女性は1日の歩数が4400歩程度でも、2700歩程度の人と比べて全死亡リスクが41%低いことが明らかになりました。

 1日の歩数が増えるほど全死亡リスクはさらに低下したものの、その効果は1日7500歩前後で最大に達し、歩数をそれ以上増やしてもさらなるリスク低下は得られないこともわかりました。研究の詳細は5月29日、医学誌「JAMA Internal Medicine」(電子版)に掲載されました。

 この研究は、アメリカの大規模コホート研究「Women’s Health Study(WHS)」に参加した、平均年齢72歳の健康な高齢女性1万6741人を対象としたもの。

 2011~2015年の間に、参加者には日中に活動量計を連続7日間装着してもらい、歩数と歩行強度を評価。平均で4・3年間追跡し、1日当たりの歩数および歩行強度と死亡リスクとの関連を調べました。

 追跡期間中に504人の女性が死亡しました。対象女性を1日の平均歩数で4つのグループの分けたところ、1日の歩数の中央値は最も低いグループから順に「2718歩」「4363歩」「5905歩」「8442歩」でした。

 分析の結果、1日の歩数が最も少ないグループと比べて、最も多いグループでは全死亡リスクが58%有意に低かったほか、2番目に多いグループでも46%、3番目に多いグループでも41%それぞれ有意に低いことがわかりました。

 1日の歩数が増えるほど死亡リスクはより低下したものの、そのリスク低下は1日7500歩前後で頭打ちになることも示されました。一方、1日の歩数で調整して解析すると、歩行強度と死亡リスクとの間には有意な関連は認められませんでした。

 研究を率いたハーバード大学医学大学院内科教授のI-Min Lee氏によると、アメリカ成人の1日当たりの平均歩数は4000~5000歩で、「1日1万歩」という目標の根拠は不明だといいます。

  Lee氏は、その起源は1960年代に日本で流行した歩数計の商品名「万歩計」にあるのではないかと説明しています。

 今回の研究結果は、1日の歩数と死亡リスクの低減との関連を示したにすぎないものの、Lee氏は「日常的に身体を動かすと血圧や血糖、コレステロールの値が改善し、思考力や記憶力、生活の質(QOL)の向上も期待できることは明らかだ」としています。

 また、「運動するには必ずしもジムに通う必要はなく、階段を上ったり、ペットの散歩をしたりする程度で十分だ」と助言しています。

 この研究には関与していないアメリカのクイニピアック大学医学部准教授のTraci Marquis-Eydman氏は、「少なくとも今回対象とした高齢女性では、1日1万歩を目標とする必要はないようだ。また、歩く速度に関係なく、少しでも身体を動かすことを心掛けるだけで死亡リスクを減らせる可能性が示された」と述べています。

 さらに、「歩数」はスマホなどで簡単に測定でき、目標として設定しやすいことから、同氏は「今後、身体ガイドラインでは1日の運動時間ではなく、歩数が目安とされるかもしれない」とし、「患者に運動を促す際には歩数で指導するのがよいのではないか」と提案しています。

 2019年6月17日(月)

 

■アメリカから輸入のAED21台、自主回収 作動しない可能性

 東京都は17日、東京都港区の医療機器製造販売会社「旭化成ゾールメディカル」がアメリカから輸入した医療従事者向けの自動体外式除細動器(AED)が作動しない可能性があるとして、同社が国内に出荷した21台を修理を行うために自主回収すると発表しました。

 国内で健康被害の報告はないとしています。

 東京都によると、対象は「ZOLL AED Pro 半自動除細動器」の名称で販売している救命救急医療機器。マニュアルモードがあるタイプ20台と、ないタイプ1台を回収します。アナログ回路の基板が原因でエラーが発生し、電気ショックを与えられずに患者が死亡した事例が、今年4月にアメリカで確認されました。

 出荷されたのは今年3月5日~5月31日までで、全国の消防など16施設に納入されました。

 2019年6月17日(月)

 

■海洋プラごみ削減へ対策共有、初の国際的枠組み合意 G20エネルギー・環境相会合

 長野県軽井沢町で開かれていた主要20カ国・地域(G20)エネルギー・環境関係閣僚会合は16日、世界的な対策が急務の海洋プラスチックごみに関し、海への流出量など基礎データの集積を目指す枠組みの構築などを盛り込んだ共同声明を採択して閉幕しました。海洋プラスチックごみ対策としては初の国際的な枠組みとなり、メカニズムを解明して流出防止を目指します。

 共同声明は、海洋プラスチックごみを「海洋生態系や漁業などに負の影響を与え、人間の健康にも負の影響を及ぼす可能性があることに鑑み、緊急の取り組みが求められる緊急の行動が求められる問題」と指摘しました。その上で、「プラスチックごみの海洋流出の抑制や大幅な削減に向け、各国の適切な取り組みを速やかに実施することを決意する」と表明しました。

 合意された枠組みはプラスチックごみの海洋流出防止を主眼に置き、各国にプラスチックごみ排出量や処理施設の整備状況などがわかる報告書の定期的な提出を求めます。国際会議の場などで年1回程度、集約する見通しで、初回は今秋に日本で開く予定。日本政府は昨年、インドネシアの国際機関に海洋プラスチックごみに関するデータ集約の拠点を設けると表明しています。

 ただし枠組みは、ごみ処理対策が遅れている東南アジアなどの途上国に配慮して、プラスチックごみ削減の具体的な取り組みを各国の自主的な判断に委ねるとしました。今後、G20以外の国にも参加を呼び掛けます。

 今回はG20で初めて環境分野の閣僚会合が行われ、エネルギー分野と合同で開催されました。水素エネルギー技術の推進などイノベーション(技術革新)を中心に据えた環境対策もテーマとなり、各国の協力体制の強化やビジネス環境整備の促進などで合意しました。

 一方、産業革命前からの気温上昇を2度未満に抑える目標を掲げた「パリ協定」の開始が来年に迫る中、会合では温室効果ガス削減に向けた議論の進展が期待されました。しかし、積極的な削減策を求めるヨーロッパ連合とパリ協定離脱を表明したアメリカなどとの溝が埋まらず、具体的な対策の合意には至りませんでした。

 2019年6月16日(日)

 

■重症メニエール病に「中耳加圧治療」の選択肢 自宅で医療機器を用いめまい減

 激しいめまい発作に難聴や耳鳴りも伴うメニエール病で、薬が効かない患者向けの「中耳加圧治療」が、昨年9月に公的医療保険の対象になりました。従来は手術しか方法がありませんでしたが、体に負担をかけずに症状を改善できる可能性が出てきました。

 めまいは突然起こり、しばらくすると治まります。こうした発作を繰り返し、難聴や耳鳴り、耳詰まり感などの症状も、よくなったり悪くなったり変化します。メニエール病の患者は国内に約4万人いるとされます。

 耳の一番奥にある内耳にリンパ液が過剰にたまることで起こる、いわば内耳の水膨れで、平衡感覚の維持や音を脳に伝える働きが鈍ります。ストレスや疲れ、睡眠不足が引き金になります。

 治療は、十分な睡眠や適度な有酸素運動など、生活習慣の見直しから始め、抗めまい薬や利尿薬なども必要に応じて服用します。しかし、患者のうち少なくとも1割は、こうした基本の治療だけでは改善しません。

 これまで、次の一手は手術でした。リンパ液を排出する通路を作ったり、鼓膜に針を刺して中耳に薬を入れ、めまいを感じる神経を壊したりする方法です。いずれも、すぐに効果が期待できる一方、再発や聴力低下の恐れがあります。

 中耳加圧治療は、基本の治療と手術の中間的な位置付けです。患者は耳鼻咽喉科専門医を受診した上で、医療機器を借りて自宅で自分一人で行います。本体につながるイヤホンから、強弱がついた圧力(圧波)が出ます。これが中耳を経由して内耳まで届き、たまったリンパ液を外に押し出します。

 石川県の主婦(53歳)はメニエール病と診断されて5年余り。聴力低下が心配で手術に踏み切れず、1月に中耳加圧治療を始めました。毎日朝夕の2回、3分間ずつ機器を使います。圧波については、「トンネルで耳がキーンとなる感覚に似ている。痛みはない」と説明します。

 月1回、主治医を受診して、めまいの回数や程度を記録した「日誌」を提出。治療を続けるうち、重い発作が減り、めまいを感じない日も出ています。

 この治療は、欧米では2000年ごろから普及し、日本では2012年から独自の機器開発が始まりました。富山大学と岐阜大学で実施した臨床試験(治験)で、この治療を約4カ月間続けた19人は、重いめまい発作の回数が月平均で7・4回から1・4回に減りました。

 難聴になり、しばらくたってからめまい発作が起こる遅発性内リンパ水腫患者も、この治療の対象です。治療が受けられる医療機関も徐々に広がっています。

 富山大学耳鼻咽喉科教授の将積(しょうじゃく)日出夫さんは、「再発予防も踏まえると、1年は続けることが大切。すぐに治したいなら、この治療をせずに手術する選択もある」と指摘します。

 めまい発作を繰り返す患者の中には、「また発作が起きたら」と不安で、医師から運動を勧められても、安静に過ごす人が多くいます。

 東海大学(神奈川県伊勢原市)耳鼻咽喉科准教授の五島史行さんは、「自宅で中耳加圧治療に取り組めば、めまいを自分で治そうという意欲がわき、運動を始めるなど生活全般にもよい影響が期待できる」と話しています。

 2019年6月16日(日)

 

■レジ袋有料化、2020年4月から 経産相が廃プラ対策で明言

 世耕弘成経済産業相は15日、主要20カ国・地域(G20)エネルギー・環境相会合で、小売店などで配られるレジ袋について、2020年4月1日にも有料化を義務付ける方針を明らかにしました。政府として時期を明言したのは初めて。

 G20の主要テーマとなる海洋プラスチックごみ(廃プラ)対策の一環。消費者に身近なレジ袋を有料化することで、使い捨てプラスチックに対する意識の変化を促します。

 有料化するレジ袋の素材や範囲は、今後具体的に検討するとしました。レジ袋有料化を巡っては、政府が5月末にまとめたプラスチックの削減戦略に盛り込んでいたほか、原田義昭環境相が6月3日の記者会見で、レジ袋を使用する事業者を一律に対象とする方針を明らかにしています。

 国内のレジ袋は年間20万トン程度で、廃プラ全体の約2%とされます。世耕経産相は廃プラ対策は官民で取り組む地球規模の課題だと指摘した上で、「2020年東京オリンピック・パラリンピックに間に合う2020年4月にレジ袋有料化をできるようにしたい」と述べました。

 日本が議長を務めるG20エネルギー・環境相会合は15日、長野県軽井沢町で開幕しました。16日までの2日間で、国際的に問題になっている廃プラ対策の合意を目指します。火力発電で出た二酸化炭素を再利用する「カーボンリサイクル」や水素エネルギーなど、脱炭素に向けた技術革新の連携を探ります。

 原田環境相は会合で、「環境対策は企業にとってコストではなく、競争力の源泉だ。環境と成長の好循環を実現することが必要不可欠だ」と訴えました。初日となる15日は、廃プラ問題や水素などが主要議題になります。

 2019年6月15日(土)

 

■人工呼吸器を使う手術向けの鼻用フィルターに不具合 15万個を自主回収

 人工呼吸器を使った手術で使用する鼻用フィルターに不具合が生じ、患者が低酸素脳症になるケースがあったことから、販売会社が約15万7000個の商品を自主回収することになりました。

 自主回収となったのは、東京都新宿区の医療機器販売会社「フジメディカル」が、台湾から輸入して販売した「ベンタエイドF」と呼ばれる鼻用フィルターです。

 この鼻用フィルターは人工呼吸器を使った手術で、患者の体内に異物が入り込むのを防ぐためにチューブに取り付けるもので、厚生労働省によりますと、鼻用フィルターが塞がり、患者に十分な酸素が送れない不具合が生じたということです。

 患者は低酸素脳症となり、フジメディカルでは同様の不具合がほかでも起きる可能性が否定できないとして、自主回収することを決め、医薬品医療機器法に基づいて東京都に報告しました。

 鼻用フィルターは医療機関など98の施設に納入されていて、フジメディカルは2016年8月19日から2019年6月10日に出荷した約15万7000個を回収することにしています。

 2019年6月15日(土)

 

■加齢で減る血液中の酵素の注射で若返り マウスで成功、人にも期待

 加齢で減少する血液中のタンパク質の一種(酵素)を若いマウスからとり、老化したマウスに注射すると、身体活動が活発になり、寿命を延ばすことを日米研究チームが突き止めました。人でも、加齢でこの酵素が減ることを確認しており、健康寿命を延ばす抗老化法の開発につながる可能性があるといいます。

 14日、アメリカの医学誌「セル・メタボリズム」(電子版)に発表しました。加齢でさまざまな臓器の働きが衰え、病気の原因になる一因に、加齢で減る「NAD」という物質があります。NADは、体内の脂肪組織で作られ、血中を巡っているeNAMPTと呼ばれる酵素によって体内で合成されます。

 そこで、アメリカのワシントン大学や国立長寿医療研究センターなどの研究チームは、血液中のこの酵素を分析。6カ月と18カ月のマウスで調べると、オスで3割、メスで7割減ることがわかりました。老齢マウスでは、この酵素の量が多いほど、その時点から長く生存する傾向があることもわかりました。

 酵素の量が保たれるようにマウスを遺伝子操作すると、高齢でも身体活動のレベルが1年若くなりました。人でいえば、50歳代が20歳代に若返るようなものだといいます。睡眠の質、学習・記憶力、網膜の細胞の働きなども高く保たれていました。

 さらに、4~6カ月の若いマウスから、この酵素を含む成分を取り出し、26カ月のメスのマウス12匹に3カ月間与えると寿命が16%延びました。毛並みもよくなり、活発に動きました。健康寿命に相当するような「中間寿命」を延ばすことを確認しました。

 アメリカのワシントン大学教授で神戸医療産業都市推進機構先端医療研究センター客員上席研究員の今井真一郎さん(老化学)は、「この酵素の働きは、抗老化法の手段になる可能性がある。人工合成の技術を確立したい」と話しています。

 2019年6月15日(土)

 

■ウガンダ、エボラ出血熱で2人目の死者 コンゴの死者1400人超に

 アフリカ中部のウガンダで13日、隣国のコンゴ民主共和国(旧ザイール)から飛び火したエボラ出血熱により2人目の死者が出たことが確認されました。一方のコンゴでは、10カ月にわたり続くエボラ出血熱の流行による感染者が疑い例を含めると2000人を超え、死者が1400人を超えたことが、当局により発表されました。

 エボラ出血熱がウガンダに拡大した切っ掛けは、幼い子供たちのいる一家と子守の計6人が、親族の看病をするためコンゴを訪問したことでした。この親族はその後、エボラ出血熱で死亡しました。

 世界保健機関(WHO)によると、6人はコンゴの隔離病棟から「逃げ出し」、抜け穴の多い国境にある非公式の越境地点を通り、9日にウガンダに帰国しました。この翌日、5歳の男児が吐血をし、ウガンダ西部ブウェラの病院で診察を受けました。その後、この男児に加え、その祖母がエボラ出血熱で死亡。3歳の弟も感染が確認されました。

 ウガンダの保健省は、コンゴに残っている「家族の支援と慰め」を受けるため、エボラ出血熱に感染した3歳の男児を含む5人がコンゴに戻ることに同意したと発表。男児は両親と生後3カ月のきょうだい、子守とともに救急車でウガンダからコンゴに移送されました。

 2019年6月14日(金)

 

■照明やテレビをつけて眠る女性に肥満リスク アメリカの研究所が追跡調査

 寝室の照明やテレビをつけたまま眠る女性は太りやすい可能性があるとの最新の研究結果が10日、発表されました。

 アメリカ医師会の医学誌「JAMAインターナル・メディシン」に掲載された今回の研究論文は、アメリカ国内の35~74歳の健康な女性4万4000人近くを対象とする調査に基づいています。調査参加者には5年後に追跡調査を実施しました。

 研究では、参加者の女性を夜間の人工光への暴露の程度に応じてグループに分けました。人工光の光源は、小型の常夜灯や時計付きラジオ、窓から差し込む街灯の光、テレビ、室内用照明などさまざまでした。

 寝室の照明やテレビを消さずに眠る女性は、調査期間内に体重が5キロ以上増加する確率が17%高かったことが、今回の主な研究結果の一つです。睡眠時間、食事、身体活動などの因子について調整を行った後でも、この相関関係は強いままでした。

 研究論文の執筆者らは、結論として因果関係を導き出せたわけではないと注意を促しつつも、暗い部屋で睡眠を取ることを後押しする証拠が増えつつあり、今回の結果もその一つに加えることができると指摘しています。

 アメリカ国立環境衛生科学研究所のデイル・サンドラー氏、ヨンムン・マーク・パク氏と共同執筆者らは、論文で「肥満を減らすための公衆衛生戦略に、睡眠中の人工光への暴露を低減するための介入を含めることも検討したらよいのではないか」と提言しています。

 睡眠を促すホルモンであるメラトニンの分泌が人工光によって抑えられた結果、概日リズム(体内時計)や食事パターンに混乱が生じた可能性があると、論文執筆者らは示唆しています。

 このほか、人工光が、食物摂取量の調節に関与するグルココルチコイドなどストレスホルモンの分泌を妨げる「慢性ストレス因子」として作用している可能性や、代謝に直接影響を与える別のメカニズムが働いている可能性もあります。

 調査データは自己申告によるものであり、光度も不明であることから、今回の研究結果にはいくつかの制約があることを論文執筆者らは認めています。

 さらに、人工光への暴露量が多いことは「社会経済的に不利なことや不健康な生活習慣があることなどさまざまな尺度も反映しており、これらすべてが体重増加や肥満の一因となり得る」といいます。

 イギリスのサリー大学のマルコム・フォン・シャンツ教授(時間生物学)は、今回の研究論文について「同一の個人の調査開始時と5年後以降の体重を比較する長期的調査であることがこの論文の新奇性だ」とコメントしています。

 「今回の最新の研究成果は、良好な睡眠衛生を維持し、寝室での人工光や電子機器などの妨害刺激を回避するようにとの助言を変更するものではなく、この助言の正当性をさらに強化するものだ」と、シャンツ教授は続けました。

 2019年6月14日(金)

 

■水なしで服用できる糖尿病治療薬を発売 キッセイ薬品

 キッセイ薬品工業は糖尿病治療薬「グルベス配合錠」で、水なしで服用できる新しい錠剤「グルベス配合OD錠」を14日に発売しました。口の中ですぐに溶けるため、錠剤での服用が困難な高齢者などの新たな需要を見込みます。

 1日3回食事前に飲み、食後の血糖の上昇を抑えます。薬価は1錠47・70円。

 グルベス配合錠は、2011年7月に発売された2型糖尿病を適応症とする医療用医薬品です。キッセイ薬品が創製した速効型インスリン分泌促進薬ミチグリニド(製品名:グルファスト)と食後過血糖改善薬ボグリボースとの配合剤で、ミチグリニドによる食後の速やかなインスリン分泌促進作用とボグリボースによる糖質の消化・吸収を遅延する作用を併せ持つことで、単剤に比べて食後の血糖の上昇をより抑制し、糖尿病の指標となるヘモグロビンA1Cを低下させます。 

 グルベス配合錠は2019年3月期の売上高が44億円で、キッセイ薬品が販売する医薬品で4番目に多くなっています。

 2019年6月14日(金)

 

■未成熟な卵子を体外で成熟させる計画を公表 大阪市の医療法人、国の初承認施設

 不妊治療専門施設を運営する医療法人オーク会(大阪市西成区)は12日、生殖補助医療の基礎研究のため受精卵を作る計画の詳細を発表しました。受精卵は子宮に移せば人として誕生する可能性がありますが、研究後廃棄します。国の専門委員会は今年3月、2011年の倫理指針施行後初めて研究目的の受精卵作製を了承。文部科学、厚生労働相の確認などがすめば研究を開始できます。

 厚労省はこれまで、知的財産保護のためとして施設名を伏せていました。オーク会は、「予想外の社会的関心があり、社会的責任を果たすため説明することにした」としています。

 研究は、オーク住吉産婦人科(大阪市西成区)で行います。体外受精のため女性の体から採取した卵子のうち、1割程度含まれる未成熟な卵子を有効に成熟させる技術の開発が目的。通常、未成熟卵子は廃棄されますが、40歳代の女性など採取できる卵子が少ない人のため、未成熟卵子を活用する技術が求められています。

 オーク会はすでに、未成熟卵子の約8割を体外で培養液に入れて成熟させる「体外成熟培養(IVM)」という技術を開発しました。しかし、体外受精の成功率や、発育して着床可能になる割合は、体内で成熟した卵子に比べて低くなっています。このため、成熟の際に2種類の抗酸化物質をそれぞれ加え、受精率などが改善するか調べることにしました。動物実験では、効果を確認したといいます。

 未成熟卵子は、廃棄を決めた女性の同意を得た上、計300個を誰の卵子かたどれないようにして使います。夫の精子で受精卵を作製し、受精率などを調べた後、14日以内に廃棄します。

 研究責任者の田口早桐(さぎり)医師は、「採卵は連日の注射や通院など患者の負担が大きく、未成熟だったと伝えられて泣き崩れる人もいる。研究で、採取した卵子を一つも無駄にしないようにしたい」と説明しました。

 2019年6月14日(金)

 

■急性内斜視が子供や若者に多発か スマホの長時間使用の影響を調査へ

 短期間のうちに片方の目の瞳が内側に寄って左右の目の視線がずれる「急性内斜視」が最近、子供や若者の間で多発している恐れがあります。日本小児眼科学会と日本弱視斜視学会が14日、浜松市で開かれた合同学会総会で調査結果を発表しました。スマートフォンなどの長時間使用が影響している可能性があるといいます。

 両学会は今年1~2月、小児眼科医ら1083人を対象にアンケート調査を実施しました。2018年の1年間で5~35歳の急性内斜視の患者を診察した経験があるかを尋ねたところ、回答した371人のうち、4割以上の158人が経験していました。その8割近い122人は、スマートフォンなどのデジタル機器の使用が発症に関係したと考えられる患者がいたと答えました。37人は、デジタル機器の使用をやめたら症状が改善した患者を診ていました。

 日本弱視斜視学会理事長の佐藤美保・浜松医科大学病院教授は、「急性内斜視は眼科医1人が数年に1人診る程度の珍しい病気だった。4割以上が患者を診たことがあったのは驚きだ。現場の医師は急性内斜視の若い患者が増えているとの印象を持っている」と話しています。  

 調査メンバーの1人で、幼い子供の診療に携わっている国立成育医療研究センターの仁科幸子医師は、「スマートフォンなどの使用を中止したら症状が改善した症例も多かったことを考えると、斜視の素因がある人にとってはスマートフォンの影響が強いという印象を持っている。一方、多用しても斜視にならない人もたくさんいるので、スマートフォンが斜視にどの程度関与しているのかをはっきり見極めていきたい」と話しています。

 そして「目の機能がまだ完成していない未就学の子供については、特にスマートフォンなどの過度な使用による影響を受けやすいと思う」などと、幼い子供への影響の大きさも指摘しています。

 スマートフォンのような小さな画面を長時間見続けると急性内斜視が起こることは、韓国の研究チームの論文などで指摘されています。ただ、因果関係はまだ科学的には証明されていません。

 両学会は因果関係を明らかにし、治療法や予防法を確立するため、本格調査を今秋にも始めます。全国約100カ所の病院で、5~35歳の患者にスマートフォンなどのデジタル機器の使用時間や頻度、画面と目との距離などを聞き、一定期間、使用を控えた後の症状の変化を追跡調査します。

 2019年6月14日(金)

 

■コンゴのエボラ出血熱流行、隣国ウガンダに拡大 家族3人が感染し男児が死亡

 エボラ出血熱の流行が続くアフリカ中部のコンゴ民主共和国(旧ザイール)の隣国ウガンダで12日、5歳の男児を含む3人の患者が確認されました。関係者が以前から恐れていた国境を越えた感染拡大が現実となりました。

 世界保健機関(WHO)とウガンダの衛生当局は11日、コンゴから家族と一緒に9日にウガンダに帰国したウガンダ人の男児が、エボラ出血熱の症状を発症したことを明らかにしました。

 ウガンダ保健省によると、エボラ出血熱の感染が確認されたのは、この男児と3歳の弟、50歳の祖母の3人。ウガンダ西部にある病院のエボラ出血熱治療病棟で隔離されていましたが、WHOは12日、5歳の男児が11日夜に死亡したことを明らかにしました。

 ウガンダ衛生省は、この一家と接触した8人の足取りを追っています。ウガンダ人男性と結婚したコンゴ出身の母親が、祖父の看病のために2人の子供と祖母、別の家族1人を連れてコンゴを訪れていたといいます。祖父は後にエボラ出血熱で死亡しました。

 コンゴでは、昨年8月1日から始まった今回の流行によって1300人以上が死亡しました。最も感染者が多い北キブ州とイトゥリ州は、ウガンダ、ルワンダ、南スーダンと国境を接しています。

 患者数はこの数週間で増え続けており、国境を越えた感染の拡大に対する不安が強まっていました。

 イギリスの医療研究慈善団体ウェルカム・トラストは今回の流行について、「真に恐ろしい段階にあり、すぐにも食い止められる兆しはない」と述べ、「死者の数は、2013~2016年の西アフリカでの流行を除けば、歴史上のどの流行よりも多い。今の状況がそうした恐ろしいレベルへとエスカレートし得ることに疑いの余地はない」と指摘しています。

 WHOは緊急委員会の会合を14日に開催し、現状の評価を「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」に引き上げるかどうかを決定すると発表しました。WHOでは、これまでエボラ出血熱の流行がコンゴ国内の一部地域に抑えられていたため、評価の引き上げを見送っていました。

 2019年6月13日(木)

 

■ペルーでギラン・バレー症候群が集団発生 日本大使館が注意喚起

 南米のペルー政府は、手足に力が入らなくなる難病の「ギラン・バレー症候群」が首都リマや北部の観光地などで、集団発生していることを受けて健康上の非常事態の宣言を出しました。現地の日本大使館も、旅行者などに衛生対策を徹底するよう注意を呼び掛けています。  

 ペルー政府によると、首都リマや北部の観光地では、今年に入り、ギラン・バレー症候群が206例確認され、このうち4人が死亡しています。

 ギラン・バレー症候群は年間の発症率が10万人に1人といわれる難病で、発症すると手足に力が入らなくなり、まひが全身に急速に広がって、最悪の場合、死に至ることもあります。

 ペルー政府は、患者の広がりを受けて6月8日に、健康上の非常事態の宣言を出し、筋力の低下などの症状が出た場合には、すぐに病院で診察を受けるよう呼び掛けています。

 また、蚊が媒介するジカ熱との関連も指摘されていることから、専門の医師を現地に派遣して原因の調査を行っています。

 ペルーには世界遺産のマチュピチュなどに多くの日本人観光客が訪れており、現地の日本大使館は、トイレの後の手洗いや食べ物をきれいに洗うなど衛生対策を徹底するよう注意を呼び掛けています。

 ギラン・バレー症候群は、免疫が自分の神経細胞を攻撃するために手足などのまひが起き、まれに重症化すると、呼吸ができなくなって死亡することがある自己免疫疾患と呼ばれる病気です。国内では1年間に10万人当たり1・15人の割合で発症しています。

 発症の原因はよくわかっていませんが、多くは特定の食中毒や一部のウイルスに感染することが切っ掛けになるとされています。最近は、蚊が媒介するウイルス性の感染症のジカに熱に感染することで、発症するケースがある可能性が報告されています。

 治療法としては、血液から異常な抗体を取り除く「血しょう交換」などが行われます。日本人では、いずれも俳優として活躍した安岡力也さんや、大原麗子さんがこの病気だったとされています。

 世界保健機関(WHO)西太平洋事務局に所属して海外の病気の対策に当たったことがある東北大学の押谷仁教授は、「ギラン・バレー症候群の発生が特定の地域で集中して報告されることは珍しい。ギラン・バレー症候群そのものは感染症ではないため、うつることはないが、感染症を切っ掛けに発症することが知られているので、現地に行く人は食中毒に注意するほか、病気を媒介する虫に刺されないために長袖、長ズボンを着用するなどして、発症の切っ掛けとなる感染症にならないようにすることが大切だ。最近は特に、蚊が媒介するジカ熱がギラン・バレー症候群の発症の切っ掛けになっているのではないかという報告もあり、ジカ熱にかからないようにすることも必要だ」と話しています。

 東京オリンピック・パラリンピックなどにも関係があると指摘し、「日本を訪れる外国人が増えれば、感染症のリスクが高まり、同時にこうした病気のリスクも高くなると考えられる。オリンピックに向けてさまざまな病気を早く察知できる検査と治療の体制を整える必要がある」と話しています。

 2019年6月13日(木)

 

■緊急避妊薬の「オンライン処方」容認 受診困難なケースを限定

 性暴力や避妊の失敗で望まない妊娠を避けるために飲む緊急避妊薬(アフターピル)について、パソコンやスマートフォンを利用した「オンライン診療」での処方を限定的に認める指針改正案が10日、厚生労働省の検討会で了承されました。すぐに受診できなかったり、精神的に受診が難しかったりする場合は、対面診療なしに処方箋を郵送で受け取れます。要件を設けたため、薬が必要な人を助ける仕組み作りには課題も残ります。

 緊急避妊薬は、性交から72時間以内に飲むと8割程度の確率で妊娠を防ぐ効果があります。

 2018年度の診療報酬改定で導入されたオンライン診療は、初診は原則禁止で、初めての薬の処方も対面診療が必要としています。だが指針改正案では、緊急避妊薬は例外的に、医療機関を受診できない「地理的要因」がある場合と、女性の健康や性被害などの相談窓口の医師らが「心理的な状態から対面診療が困難」と判断した場合に限り、初診からオンライン診療を認めるとしました。

 薬の処方ができるのは、産婦人科医と、厚労省が指定する研修を受けた医師に限定。不正転売を防ぐために処方は1回1錠とし、薬局の薬剤師の目の前で飲むこととします。また、妊娠の有無を確認するため、服用から3週間後の対面受診を求めます。

 例外的に初診のオンライン診療が認められているのは、他に禁煙外来などがあります。

 厚労省はパブリックコメントを実施し、7月にも指針を改正します。

 2019年6月13日(木)

 

■三大死因に初めて「老衰」が加わる 「脳血管疾患」を抜き3位

 日本人の三大死因の一つに、初めて「老衰」が加わりました。これは、厚生労働省が7日に発表した2018年人口動態統計の月報年計(概数)の結果です。2018年の統計では、死因の1位、2位は、これまでと同様、「悪性新生物(腫瘍)」、「心疾患(高血圧性を除く)」でしたが、「肺炎」の減少に伴って2017年に3位となった「脳血管疾患」を抜いて、「老衰」が初めて3位となりました。

 死因としての老衰は、1947年をピークに減少傾向が続いていたものの、2001年以降、右肩上がりで上昇し続けています。

 死亡統計における死因の変化には、2017年4月に発表された「成人肺炎診療ガイドライン2017」(日本呼吸器学会)の影響が大きそうです。同ガイドラインは「易反復性の誤嚥性(ごえんせい)肺炎のリスクあり、または疾患終末期や老衰の状態」の場合には、「個人の意思やQOL(クオリティー・オブ・ライフ、生活の質)を重視した治療・ケア」を行うこととし、患者背景を考慮した上で積極的な治療を行わないことを初めて推奨しました。

 死亡診断書の死因病名が「肺炎」「誤嚥性肺炎」とされていた症例の多くは、実際には肺炎が直接の死因ではなく、加齢性変化による衰弱などによって死亡しているといわれていましたが、同ガイドラインの発行を契機に、誤嚥性肺炎で死亡した場合にも、死亡診断書の死因病名に「肺炎」ではなく「老衰」と記載する医師が増えてきていると推測されます。

 死亡統計によると、2018年の死亡数は前年比2万2085人増の136万2482人で、悪性新生物(腫瘍)による死亡数は37万3547人、2位の心疾患(高血圧性を除く)は20万8210人、3位の老衰は10万9606人、4位は脳血管疾患で10万8165人、5位は肺炎で9万4654人でした。

 悪性新生物(腫瘍)は1981年以降、死因順位の第1位となっており、2018年には全死亡者のおよそ3・6人に1人が悪性新生物(腫瘍)で死亡した計算になります。

 一方、出生数は前年比2万7668人減の91万8397人で、過去最少を記録。2016年から3年連続で100万人を割り込みました。合計特殊出生率は前年比0・01ポイント減の1・42でした。出生数と死亡数の差である自然増減数はマイナス44万4085人となり、12年連続の減少となりました。

 2019年6月13日(木)

 

■急発進防止装置、東京都が9割補助へ 高齢者の交通事故で対策

 高齢のドライバーによる交通事故が相次ぐ中、東京都は事故防止の緊急対策として、アクセルとブレーキの踏み間違いによる急発進を防ぐ装置など、事故防止に効果的な装置を新たに取り付ける高齢者に補助を行う制度を設け、制度の開始から1年間は、費用の9割程度を補助することになりました。

 東京都の小池百合子知事が11日、都議会の定例会の代表質問で明らかにしました。

 この中で、小池知事は「現在多発している高齢者の交通事故には、高齢社会への対応やインフラの安全、先端技術をいかに活用できるかといった、現代の日本社会が抱えるさまざまな課題が複合的に絡み合っており、こうした問題を多角的に検証して、丁寧に手を打っていくことが求められている」と指摘しました。

 その上で、アクセルとブレーキの踏み間違いによる急発進を防ぐ装置など、事故防止に効果的な装置を新たに取り付ける高齢者に補助を行う制度を設け、対策を早急に行ってもらうため、制度の開始から1年間は、費用の9割程度を補助することを明らかにしました。

 東京都によりますと、事故防止に効果的な装置やこうした装置を搭載した車の購入費用を補助する制度は各地の自治体で設けられていますが、9割程度の補助は異例だということです。

 高齢ドライバーの自己負担額については、3000円から9000円程度を見込んでいるということで、今後、対象年齢や補助を行う装置の選定、それに開始の時期などの詳細を詰めることにしています。

 また小池知事は、今回の補助制度以外にも、高齢者の運転免許証の自主返納を促すため、返納した高齢者に対する特典の拡充に向けて関係機関への働き掛けを強化することや、休日に高齢者の家族を対象にした相談会を新たに実施することも明らかにしました。

 2019年6月12日(水)

 

■高齢ドライバー専用の運転免許創設へ 安全機能付き車種に限定

 政府は高齢ドライバー専用の新しい運転免許をつくる方針で、75歳以上を想定し、自動ブレーキなど安全機能が付いた車種のみ運転できるようにします。高齢者の交通事故の多発が深刻な社会問題になっており、対策を急ぎます。ただ新しい免許は取得の義務付けを見送り、選択制を軸に検討する方針で、実際に事故の削減につなげるには課題も多々あります。

 6月下旬に閣議決定する政府の成長戦略に新しい免許を創設する方針を盛り込みます。警察庁や経済産業省、国土交通省など関係省庁で協議し、2019年度中に規定の詳細を詰めて、2020年以後、早期の実現を目指します。

 免許には「オートマ車限定」などの区分があり、高齢者専用もこうした区分でつくる案が有力。運転免許について定めている道路交通法などの関係法令を改正します。

 限定免許で運転できる車の条件は、関係省庁と自動車メーカーで協議して詳細を詰めます。

 自動車メーカー各社は衝突などの危険を察知した際に警報を鳴らし、自動的にブレーキをかけるシステムを実用化しています。アクセルとブレーキの踏み間違い防止や、道路の白線を検知し対向車線へのはみ出しを防止する機能もあります。新しい免許の対象機能は、新車購入後に取り付けられる製品も含めて検討します。

 自動車保険の保険料は一般的に高齢になると上がるものの、自動安全ブレーキを搭載した車両では保険料を9%安くする仕組みがあります。各社は高齢者専用の免許が導入されれば、新たな保険の仕組みを検討するとみられます。

 福岡市や東京・池袋などで相次ぎ高齢ドライバーによる死亡事故が発生するなど問題は深刻です。75歳以上の高齢ドライバーは2018年末時点で563万人で、2018年の高齢者による死亡事故は全体の約15%を占めました。警察庁などは高齢者に免許の返納を推奨しているものの、生活や仕事の都合で車を手放せない高齢者も多くいます。

 海外では、高齢ドライバーに運転の時間帯や場所を制限している場合があります。国内の新しい免許は、高齢者が移行するかは選択制とすることを軸に検討します。地方などですぐ対応することが難しいケースが考えられるためです。新しい免許は仕事などで車を使うため返納はできないものの、できるだけ安全に乗り続けたいと考える高齢者からの需要を見込んでいます。

 ただ新しい免許の取得に強制力がないと、移行する人を増やすためにどんな支援策を設けるかが課題になります。高齢者の事故の抑制には免許だけでなく、運転者の身体能力の衰えを正確に計測して対策をとったり、自動運転など車の安全機能のさらなる高度化を急いだりすることも重要になります。

 海外では、高齢ドライバーなどに「限定免許」を導入している国があります。警察庁によると、ニュージーランドは75歳以上、アイルランドは70歳以上に医師の診断を義務付け、結果によりエリアや速度などを制限します。アメリカの一部の州やドイツでは、年齢にかかわらず運転技能に問題がある場合に同様の条件を付けています。

 2019年6月11日(火)

 

■膵臓がんの治験費用をクラウドファンディング 関西医科大

 関西医科大学(大阪府枚方市)は10日、膵臓(すいぞう)がんの新治療法の臨床試験(治験)を実施するため、インターネットで寄付を募るクラウドファンディングの利用を始めたと発表しました。1000万円を目標に広く支援を求めます。

 クラウドファンディングで治験の資金を調達する例は珍しく、国の科学研究費補助金に申請しても認められず、製薬会社の支援もないため決断したといいます。

 膵臓がんは早期発見や治療が難しく、5年生存率は1割に満たず、他のがんに比べ極めて低くなっています。特に腹膜への転移は手術が難しい上、腹水がたまると腹部の痛みなど患者の苦しみも大きいといいます。

 計画する治験では、腹膜に転移した膵臓がんの治療に抗がん剤の「S―1」と「パクリタキセル」の併用が有効か調べます。この治療法はすでに胃がんで保険適用され、膵臓がんに対する第1、2相の治験でも生存期間延長や症状緩和などの効果があったといいます。

 第2相は2015年に終わりましたが、全国30施設で大規模に有効性を確かめる第3相は資金不足で実施できずにいました。治験で有効性を確認し、国の審査を通れば、保険が適用されるようになります。

 友田幸一学長は、「医療を取り巻く状況は厳しく、研究の経費は削減の方向にある。国や企業だけに頼るのではなく、一般社会から寄付を集める手段に踏み切った」と説明しています。

 クラウドファンディングでの募集は10日から9月8日まで。目標の1000万円に達しない場合は支援者に全額返金します。寄付は専用サイト(https://readyfor.jp/projects/suigan)から。

 2019年6月10日(月)

 

■100%リサイクル素材のペット容器で緑茶飲料を発売  セブン&アイとコカ・コーラ

 セブン&アイ・ホールディングスと日本コカ・コーラは5日、100%リサイクル素材の再生ペットボトルを使った緑茶飲料を10日から発売すると発表しました。セブン―イレブンなど店頭で回収したペットボトルを粉砕・洗浄し、ペット容器として再生する技術を使います。廃プラスチック問題への関心が高まる中、特定の小売りとメーカーがこうした回収と商品化の仕組みを作るのは初めてといいます。

 商品は2017年に両社が共同企画商品として発売した機能性表示食品「一(はじめ)緑茶 一日一本」で、体脂肪減らす効果をうたいます。店頭想定価格は500ミリリットル税別118円で、容器を変更しても価格は据え置きます。

 セブン&アイは2015年から、家庭で使用した空ペットボトルを圧縮して回収する機器をコンビニなどに設置してきました。現在はセブンーイレブンに300台を置き、今後は年間1000台ペースで増やします。

 回収したペットボトルは従来もリサイクルしてきたものの、最終的にどう活用しているかわかりづらく、消費者が店に持ち込んだ空き容器が再生ペットボトルで店頭に商品として並ぶことで、リサイクルへの意識が高まるとみています。 

 日本はペットボトルのリサイクル率や回収率が欧米などに比べて高いものの、再生ぺットボトルの普及率はまだ1割にとどまります。今後は国内で生産できる設備を増やすほか、回収の際に飲み残しやごみなどの異物混入をなくすなど消費者意識の向上も求められます。

 世界でプラスチック製品への環境規制が強まる中、飲料各社は環境対応に力を入れています。サントリーホールディングスはプラスチックリサイクルの協栄産業(栃木県小山市)と組んで、効率的に再生ボトルを生産できる技術を開発。2020年春には新ラインも稼働させます。

 アサヒ飲料は2030年までにキャップなども含めたペットボトル重量の60%で再生素材、植物由来素材などの使用を目指し、キリングループは2027年までに国内のリサイクル素材使用率を5割に高める目標を掲げます。伊藤園も2030年までに主力商品「お~いお茶」のペットボトルをすべて再生素材にします。

 2019年6月10日(月)

 

■中央省庁が緊急雇用の障害者131人退職 国税庁では79人に上る

 中央省庁による障害者雇用の水増し問題を受け、改正障害者雇用促進法が7日、参院本会議で全会一致で可決、成立しました。省庁が不適切計上をしないよう厚生労働省に調査権限を付与することなどが柱ですが、国会審議では、問題が発覚した昨秋以降に採用された障害者2518人のうち、131人が退職したことも明らかになりました。

 専門家は、「障害者に定着してもらえる職場づくりが最重要だ」と話しています。

 5月に国土交通省の出先機関に採用され、同月中に退職した40歳代の女性は、「数日間にわたって指示を与えられず、用無しだと感じてしまった」と話しています。この精神障害を持つ女性は、薬品製造会社の嘱託社員として働いていましたが、ハローワークの勧めで出先機関に就職しました。

 最初の数日間は資料整理などの指示を受けたものの、その後は上司から「ちょっと待っていて」と繰り返され、国土交通省のホームページを見ながら過ごしたといいます。薬品製造会社では正社員と同じ経理の仕事を任されていたといい、女性は「(出先機関の)上司は私に仕事を任せるのが不安なのだと感じた。与えられた仕事をこなす自信はあるので、また企業の就職先を探すつもり」と話しました。

 水増し問題で法定雇用率に達していないことが判明した省庁は、4月までに計2518人を緊急で雇用したものの、参院の審議では131人(5・2%)がすでに退職していることが明らかになりました。民間企業では雇用から1カ月以内に退職する障害者が約6%いるとの調査結果もありますが、厚労省は配慮が不十分な可能性もあるとみて、131人が退職した原因を分析します。

 819人を採用し、すでに退職者が79人(退職率9・6%)に上っている国税庁では、資料整理やデータ入力などを任せていました。

 退職の理由は「職場や仕事が合わない」「家庭の事情」などさまざまだったといい、担当者は「多数の雇用で、職場側の戸惑いもある。職員向けの研修を重ね、障害者に長く働きたいと思ってもらえる雰囲気を作っていきたい」と話しています。

 一方、環境省は4月に「協働推進室」を設置し、障害者6人の備品購入や文書校閲などの仕事をサポート。視覚障害を持つ40歳代の男性はホームページの音声読み上げ機能の聞き取りやすさをチェックしており、「上司に質問や体調の相談をすぐにできるので安心」と笑顔を見せます。防衛省は社会福祉士2人を新規に採用し、障害を抱えた職員だけでなく上司や同僚からの相談にも対応するといいます。

 大妻女子大学の小川浩教授(障害者福祉)は、「障害者の定着率を上げるために最も重要かつ難しいのは、お金をかければできるハード面の整備ではなく、職場の配慮を広げること。まずは131人の退職理由を障害の種類や業務の内容ごとに丁寧に分析し、各省庁の課題を浮き彫りにして、職員の意識を高めていく必要がある」と話しています。

 中央省庁の緊急雇用により、民間企業から障害者人材が多数「流出」したことも明らかになりました。厚労省によると、各省庁が4月までに緊急に雇用した障害者のうち337人は、民間企業からの転職者でした。企業からは「自社の法定雇用率の達成が困難になった」などの意見が寄せられているといい、厚労省は今年に限り、法定雇用率を下回った企業に対する適正実施勧告や企業名公表を猶予することにしました

 2019年6月10日(月)

 

■東レ、血液1滴から複数のがんを発見 検査キットを年内に承認申請

 東レは血液1滴からさまざまながんを発見する検査キットについて、2019年中に厚生労働省に製造販売の承認を申請します。優先的に審査する対象に選ばれており、2020年にも承認される可能性が。膵臓(すいぞう)がんなどの早期発見も期待できます。

 承認されれば、数万円で複数のがんを一度に調べられる見通し。現在、遺伝子検査でがんを発見する方法はアメリカで実用化されていますが、血液は数十ミリリットル以上必要で発見できる割合も低くなっています。東レの場合は、血液が1滴と利用者の負担が少なく、がんの有無の判定精度も95%以上といいます。

 国立がん研究センターなどと2014年に始めた研究プロジェクトがこのほど終了し、その成果を事業化します。がんができると血液中に増える「マイクロRNA」という物質を検出する手法で、東レはこれを検出する遺伝子解析チップを開発しました。

 この遺伝子解析チップは独自の素材や加工技術を生かし、マイクロRNAなどを従来に比べ100倍の感度で検出できます。血液1滴分、50マイクロ(マイクロは100万分の1)リットル程度あれば検査できます。

 マイクロRNAは遺伝子の働きにかかわる物質で、体内に約2600種類存在します。がんはこのうち特定のマイクロRNAを分泌し、増殖したり転移したりしています。

 研究プロジェクトでは、乳がんで5種類、大腸がんで3種類など、各がんの鍵を握るマイクロRNAを特定することに成功。東レの膵臓や胆道にできるがんを検査する遺伝子解析チップが4月、厚労省の「先駆け審査指定制度」の対象に選ばれました。通常12~14カ月かかる審査が最短6カ月に短縮されます。

 2019年6月9日(日)

 

■iPS細胞使いネズミ体内で人間の膵臓を作製 東京大が研究へ

 人のiPS細胞(人工多能性幹細胞)を使い、ネズミの体内で人間の膵臓(すいぞう)を作製する研究を、東京大学医科学研究所の中内啓光特任教授らが年内にも始めます。正常に臓器が形作られることが確認できれば、将来はブタのような大型動物を使い、現在不足している人間の移植用臓器を作れる可能性があります。

 人間の臓器を動物の体内で作る試みは国内初。これまでは禁止されていましたが、国が指針を3月に改正しました。中内特任教授らは学内の倫理委員会に申請しており、承認後、国に計画を申請します。8日、東京都内で開かれたシンポジウムで意向を示しました。

 計画では、遺伝子を操作して、あらかじめ膵臓をできなくしたラットやマウスの受精卵に、人のiPS細胞を入れて「動物性集合胚(はい)」を作り、メスの子宮に移植。赤ちゃんの体内の膵臓ができる部位で、人のiPS細胞由来の膵臓を育てます。こうした方法は「異種胚盤胞(はいばんほう)補完法」と呼ばれます。

 今回は、赤ちゃんが生まれるまでは育てず、途中の段階で取り出して膵臓がきちんとできているかや、ほかの部分に人間の細胞が交ざっていないかなどを確かめます。

 中内特任教授らと共同で研究してきた明治大学では、ブタを使って同様の計画を別途予定しています。

 動物の体内で移植用の臓器を作製する試みは、難病患者に福音となる可能性がある一方、未知の感染症に侵される恐れも指摘されています。

 2019年6月9日(日)

 

■自閉症スペクトラム障害の症状、運動をすると改善 東京大がマウスで実験

 発達障害の一種の「自閉症スペクトラム障害(自閉スペクトラム症)」に似た症状が出るマウスに運動をさせると症状が改善した、とする研究成果を東京大学の研究チームがまとめ、新たな治療法の開発につなげたいとしています。

 自閉症スペクトラム障害は、脳の神経細胞同士のつなぎ目の不全が一因で起きると考えられており、主な症状として、社会的なコミュニケーションが苦手だったり、同じ行動を何度も繰り返したり、視覚や聴覚など五感が非常に敏感、あるいは鈍感だったりすることが知られています。発症者は人口50~100人に1人の割合に上り、日本では計100万人以上とみられ、男性が女性より数倍多くなっています。

 東京大学大学院の小山隆太准教授らの研究チームは、毛繕いを何度も繰り返すといった自閉症スペクトラム障害に似た症状が出るマウスを1カ月の間、運動器具で自由に運動させました。

 そして、運動をさせていないマウスと比較したところ、毛繕いを繰り返す時間は約半分となっており、症状の改善が確認できたということです。

 脳を調べたところ、「シナプス」と呼ばれる神経細胞のつなぎ目のうち、活動が弱いつなぎ目を脳内の免疫細胞が取り除くメカニズムが正常化していたということです。

 研究チームは、運動によってメカニズムが働くようになり、症状の改善につながった可能性があるとしています。

 小山准教授は、「運動が有効である可能性を示すことができた。将来的に新しい治療法の開発につなげたい」と話しています。

 2019年6月9日(日)

 

■ゲル充填人工乳房でリンパ腫、国内で初報告 厚労省が注意

 がんで切除した乳房の再建や豊胸手術などで使う「ゲル充填人工乳房」が原因とみられる血液がんの一種、リンパ腫が国内で初めて見付かったと、乳房再建術などを専門とする日本乳房オンコプラスティックサージャリー学会など関連4学会が7日、発表しました。

 国内ではアラガン・ジャパン(東京都)の人工乳房2製品が承認されており、厚生労働省は同日、医療機関への情報提供の徹底と、使用前にリンパ腫のリスクについて患者に十分説明することなどを添付文書に記載するよう指示しました。

 学会などによると、患者は17年前に、アラガン・ジャパンの製品と類似した当時未承認だった人工乳房を入れる手術を受けました。現在もリンパ腫の治療中といいます。海外では今年4月以降、フランスやカナダなどで一部の人工乳房の販売が停止されました。

 このリンパ腫は、ブレスト・インプラント関連未分化大細胞型リンパ腫。主にゲルを包む樹脂の表面がざらざらしたタイプの人工乳房でまれに発生し、体液がたまったり、しこりができたりして気付くことが多くなっています。

 入れてからリンパ腫が見付かるまでは平均9年で、早期発見のため、定期的な検査が推奨されています。早期に見付かれば、入れた人工乳房の周囲にできる被膜組織と人工乳房を取り除くことで、治癒が期待できます。

 2019年6月9日(日)

 

■腸内細菌で早期の大腸がんを診断 大阪大など簡易検査に応用へ

 日本人のがんで最も多い大腸がんの発症にかかわる腸内細菌を特定したと、大阪大学などの研究チームがアメリカの専門誌「ネイチャーメディシン」(電子版)で7日、発表しました。患者の便に含まれる腸内細菌の遺伝子を解析しました。患者の負担が軽く、精度の高いがん診断に応用でき、早期治療につながるといいます。

 研究チームは、国立がん研究センター中央病院(東京都)で大腸の内視鏡検査を受診した616人の便を分析。発症から間もない早期がんと診断された140人の腸内では、硫化水素の生成にかかわる細菌などが顕著に増えていることがわかりました。

 これが大腸がんの原因なのか結果なのかは不明ながら、健常者やがんが進行した患者ではみられず、がんの発症と関連があると結論付けました。

 早期がんの腸内は、脂肪吸収を助ける二次胆汁酸の一種や、イソロイシンなど数種類のアミノ酸が多いことも判明。これらの物質や細菌の状態を便で調べれば、早期に治療を開始できるといいます。

 検査は内視鏡より簡単で、患者の負担が軽くなります。症状が進んだ時の出血を調べる便潜血検査と併用すれば、早期がんの見落としが減り、診断の精度が向上します。腸内環境を把握し改善に役立てれば、予防につながる可能性もあるとしています。

 谷内田(やちだ)真一大阪大教授は、「新たながん治療や予防法の開発が期待される。将来は、企業などで行われる健康診断の検便に使えるような、手軽な検査キットを開発したい」と話しています。

 2019年6月8日(土)

 

■受精卵無断移植でも父子関係 最高裁で判決確定

 凍結保存していた夫婦の受精卵を妻が別居中の夫に無断で移植して出産し、夫だった外国籍の男性が子供とは法律上の父子関係がないと訴えた裁判で、最高裁判所は男性の上告を退ける決定をし、父子関係を認めた判決が確定しました。

 確定判決によると、奈良県内の40歳代の男性は2004年に妻と結婚し、2010年に複数の受精卵をクリニックに凍結保存しましたが、その後、夫婦関係が悪化。別居状態中に妻は男性の同意を得ずに受精卵を移植し、2015年に2人目の子供である女児を出産しました。

 男性は、女児について「同意のない出産で、法律上の父子関係はない」と、2016年に離婚した後に訴えました。

 民法には結婚中に妻が妊娠した子供は法律上、夫の子とするとした「嫡出推定」という規定があり、裁判では夫に無断で受精卵を移植したことについて、この規定が及ばない事情といえるかが争われました。

 2審の大阪高等裁判所は、この夫婦について別居していても夫婦の実態が失われていなかったとした上で、「同意がないことは子の身分の安定を保つ必要がなくなる理由にならず、民法の規定が及ばない特段の事情とはいえない」と指摘し、1審の奈良家庭裁判所に続いて法律上の父子関係を認めていました。

 これに対して男性が上告していましたが、最高裁判所第2小法廷の三浦守裁判長は7日までに上告を退ける決定を出し、父子関係を認める判決が確定しました。

 民法の制定時には体外受精による妊娠は想定されておらず、現在も法的な父子関係を認める場合の規定がありません。最高裁判所決定も、どういう場合に認めるべきか、また受精卵の移植に夫の同意が必要かについての言及はありませんでした。

 2019年6月8日(土)

 

■鉄剤注射、全国中学駅伝でも申告書義務付け 日本陸連など

 高校駅伝の一部の強豪校で鉄剤の注射が本来の治療ではなく競技力の向上を目的に使われていた問題で、全国中学校駅伝大会でも出場チームの鉄剤注射の使用状況について書類での申告が義務付けられることになりました。

 貧血の治療などが主な目的の鉄剤注射を巡っては、高校駅伝の一部の強豪校で競技力の向上を目的に使われていたことから、日本陸上競技連盟は今年12月の全国高校駅伝から血液検査の結果の報告を義務付け、問題がある場合は出場停止や順位を剥奪する可能性があるとする指針をまとめました。

 日本陸連と日本中学校体育連盟は、中学生でも鉄剤注射を行っている可能性があるとして、毎年12月に開かれている全国中学校駅伝大会でも今年から鉄剤注射を使っているかや使っている人数、そして使用の理由について書類で申告を義務付けることにしました。

 費用などを理由に血液検査の導入は行わないということですが、日本陸連の尾県貢専務理事は「高校とは異なり中学校への対応は教育が目的で早い時期から悪いことだとわかってもらえるようにしたい」と話し、申告書によって罰則は科さない方針を示しました。

 2019年6月8日(土)

 

■がんゲノム医療、2万個の遺伝子を解析する技術を開発 慶応大など

 患者ごとにがんの遺伝子を検査し有効な薬を探す「がんゲノム医療」について、一般的な遺伝子検査の100倍を超える数の遺伝子を迅速に解析する技術を慶応大学などの研究チームが開発しました。近く全国の病院で検査を提供するということで、有効な治療薬を探す手掛かりが増えると期待されています。

 新しいがん治療の手法であるがんゲノム医療は、患者のがんの遺伝子を調べ最も適した薬を探すもので、今月から標準的な治療では効果が見込めなくなった患者などを対象に、遺伝子検査に公的な医療保険の適用が始まっています。

 慶応大学医学部の西原広史教授や三菱スペース・ソフトウエア社などの研究チームは、ロボットを使ってがん細胞の遺伝子を解析する際の工程を自動化し、スーパーコンピューターなどで解析する技術を開発しました。

 これにより、人のほぼすべての遺伝子に該当する約2万遺伝子(19296遺伝子)を、従来より大幅に短い4週間ほどで解析できるようになったということです。

 がんゲノム医療で使われる一般的な検査では調べる遺伝子の数は100個程度ですが、研究チームではほぼすべての遺伝子を調べる検査を実施できるようになったとして、今月中にも慶応大学と連携する全国の病院で提供を始めるということです。

 保険は適用されないため、100万円程度の費用がかかりますが、研究チームによりますと、ほぼすべての遺伝子を調べるため、有効な治療薬を探す際の手掛かりが増えると期待できるということです。

 西原教授は、「従来の検査よりも精度は圧倒的に高く、自分の病気を深く知りたいという患者に、受診してほしい」と話しています。

 2019年6月8日(土)

 

■ワインを飲む高齢者は認知機能が高い 大阪大が研究

 ワインを飲む高齢者は飲まない人に比べて認知機能が高い可能性があるという研究結果を大阪大学の樺山舞助教(地域看護学)らがまとめました。6日に仙台市で始まった日本老年医学会の学術集会で発表しました。

 2016~2017年、東京都と兵庫県に住む76歳前後と86歳前後の高齢者計1217人を対象に、飲酒習慣と認知機能などを調べました。

 67人がワインを飲み、1150人は飲んでいませんでした。記憶力や注意力をみる検査で認知機能を評価すると、ワインを飲む人の認知機能は有意に高くなりました。一方、ビールや日本酒などワイン以外の6種の酒を飲む人では、認知機能に有意差はみられませんでした。

 これまでの別の研究で、ワインを飲むと認知機能の低下を防ぐ効果があると報告されています。特に赤ワインに含まれるポリフェノールなどによる抗酸化作用が理由として考えられるといいます。

 大阪大学大学院の共同研究者、赤木優也さんは、「ワインを好む人は健康志向が強いという影響も考えられる。ワインに認知症の予防効果があるとわかったわけではなく、さらなる研究が必要。過度な飲酒は認知機能に悪影響なので量はほどほどに」と話しています。

 2019年6月8日(土)

 

■子宮頸がんの前段階、薬で治療する臨床試験 京都大が開始

 子宮頸(けい)がんは主にウイルスが原因で発症しますが、京都大学の研究チームがこのウイルスの増殖を抑える新たな物質を開発し、新薬として国の承認を受けるための臨床試験(治験)を始めたと発表しました。今後、1年余りかけて安全性や効果を検証するというこで、治験が順調に進めば、3年後の製品化を目指します。

 これは京都大学医学部附属病院の濱西潤三講師と、京都大学医学部の萩原正敏教授らの研究チームが会見を開いて明らかにしました。

 子宮頸がんは、主に「ヒトパピローマウイルス」と呼ばれるウイルスに感染して起きるがんで、子宮の摘出手術が必要になるケースも少なくありません。

 今回、治験に使われるのは研究チームが15年前に別の病気の研究のため合成した物質で、これまでの研究からヒトパピローマウイルスの増殖を抑え、子宮頸がんの発症を防ぐ効果が期待できるということです。

 治験はすでに今年4月から始まっており、ウイルスに感染し、子宮頸がんにつながる前段階の「前がん病変」の症状が出ている患者など22人を対象に2週間、膣(ちつ)に入れて使う錠剤を投与した上で、1年余りかけて安全性や効果を検証するということです。

 京都大学医学部の萩原教授は、「子宮頸がんは、がんにつながる症状が見付かっても手術以外に治療法がないのが現状だ。この前段階でも治療できる薬を開発することで、子宮頸がんで亡くなる女性をゼロにしたい」と話しています。

 子宮頸がんは国内では年間約1万人がかかり、3000人が亡くなっている病気で、近年は30歳代から40歳代の女性を中心に患者が急増しているのが現状です。研究チームによると、前がん病変には年間約15万人がなるといいます。

 子宮頸がんの主な原因はヒトパピローマウイルスで、性交渉によってこのウイルスに感染すると一部の人で子宮の入り口に腫瘍(しゅよう)ができ、子宮頸がんにつながります。

 子宮頸がんの予防にはワクチンがありますが、国内では副作用の指摘があったことから5年前から厚生労働省がワクチン接種の積極的な呼び掛けを中止しており、接種率は3年前の統計では0・3%にとどまっています。

 こうしたことから厚生労働省は定期的にがん検診を受けて早期の発見を心掛けてほしいと呼び掛けています。

 子宮頸がんはヒトパピローマウイルスに感染し、ウイルスが体内で増殖する際に作り出される特殊なタンパク質が主な原因とされています。

 今回、開発された物質は、人の細胞に含まれている酵素に働き掛け、ウイルスが増殖し、がんの原因となるタンパク質が作り出されるのを抑制する効果があるということで、治験に先立って行われた動物実験などでは高い効果がみられたということです。

 2019年6月7日(金)

 

■日清食品、冷凍炒飯1万9000個を回収 プラスチック片混入

 日清食品ホールディングスは7日、冷凍炒飯に複数のプラスチック片が混入していたとして、約1万9000個を自主回収すると発表しました。

 回収の対象となるのは、「日清食品冷凍」が、三重県名張市の工場で今年4月25日に製造し、中部や近畿、中国、四国、沖縄地方に出荷された「冷凍 日清チキンラーメン 金の炒飯(チャーハン)」計1万9032個。

 購入客から3日に「異物混入」の指摘を受けて商品の中身を検査したところ、赤いプラスチック片が複数入っていることが判明。復元したところ、直径1・5センチ大の円形で一部が欠けていたといいます。

 現在、混入経路の特定を急ぐとともに、2020年4月25日が賞味期限の商品を回収することにしました。健康への被害は報告されていないといいます。

 手元に商品がある場合、下記宛てに料金着払いの冷凍便で送ると、後日、商品代金に相当するクオカードが送付されます。

 日清食品冷凍「受付センター」宛 フリーコール:0120・917・056 受付時間:平日午前9時〜午後5時半(8日、9日は受付可)

 〒144-0042 東京都大田区羽田旭町11−1 ヤマト運輸南東京法人営業支店内 「日清食品冷凍特設お客様対応窓口」宛

 2019年6月7日(金)

 

■人体に取り込むマイクロプラスチック、年間12万個超 カナダで研究

 人が飲食や呼吸を通じて体内に取り込むマイクロプラスチック(プラスチック微粒子)の量は、最大で年間12万1000個に上るとする研究結果が5日、発表されました。プラスチックごみが人体に直接どのような影響を及ぼし得るのか、改めて懸念される内容です。

 マイクロプラスチックは合成繊維やタイヤ、コンタクトレンズなどの製品が分解された際にも生じる極小プラスチック片で、深海から高山の氷河まで、今や世界で最も普遍的に存在する物質の一つと化しています。

 これまでの研究では、食物連鎖にマイクロプラスチックが侵入する過程が明らかになっており、主要ブランドのボトル入り飲料水のほぼすべてにマイクロプラスチックが混入していることも昨年、判明しました。

 今回、カナダの研究チームはマイクロプラスチック汚染に関する数百件のデータを分析し、アメリカ人の一般的な食生活や消費習慣と比較。成人男性の場合、1年間に1人当たり最大5万2000個のマイクロプラスチックを体内に取り込んでいるとの試算を導き出しました。

 呼吸の際に空気中に漂うマイクロプラスチックを吸い込んでいる点を考慮すると、体内に取り込まれる量は年間12万1000個に上り、1日当たり320個を超えることもわかりました。

 また、ボトル入り飲料水のみを飲んでいる人は、年間で9万個多くマイクロプラスチックを取り込んでいる恐れがあるといいます。

 ただし研究チームは、アメリカの学術誌「エンバイロメンタル・サイエンス・アンド・テクノロジー」に掲載された論文の中で、これらは試算値である点を強調し、個人が取り込むマイクロプラスチック量は居住環境や食生活に大きく左右されると述べています。

 また、取り込んだマイクロプラスチックが人体に及ぼす影響も、まだ理解が十分進んでいない分野だと研究チームは指摘。その上で、直径130ミクロン未満のマイクロプラスチックは「人の組織の内部に入り込み、局地的な免疫反応を引き起こす恐れがある」との見方を示し、「人が体内に取り込むマイクロプラスチック量を減らす最善策は、プラスチックの生産・使用量を減らすことだろう」と結論付けています。

 一方、今回の研究にはかかわっていないイギリスのイーストアングリア大学のアラステア・グラント教授(生態学)は、この研究で特定されたマイクロプラスチックが「人体の健康に著しい危険」をもたらす証拠はないと述べました。特に、空気中のマイクロプラスチックのうち1種は吸い込むには大きすぎるため、実際に肺まで達する量は言及されているよりずっと少ないだろうとしています。

 2019年6月6日(木)

 

■整形外科のロボット支援手術に初の保険適応 日本ストライカー製品

 医療機器メーカーの日本ストライカー(東京都文京区)は6月1日付で、ロボティックアーム手術支援システム「Mako(メイコー)システム」を使った人工股関節手術への保険適用を取得しました。

 Mako(メイコー)システムは、日本で初めて承認された整形外科分野でのロボティックアーム手術支援システムで、2017年10月に人工股関節全置換術で、2019年4月に人工膝関節全置換術で薬事承認を取得しています。Mako(メイコー)システムによる手術は、人工関節の設置精度の向上、術後の脱臼率の低減などのメリットが期待できます。

 現在、年間5万2500例を超える人工股関節全置換術(再置換を除く)が実施されています。世界では、股関節と膝関節を合わせて累計15万例以上の人工関節置換術でMako(メイコー)システムが使われています。

 2019年6月6日(木)

 

■ゲノム編集食品「食べたくない」が4割を超える 東京大が意識調査

 生物の遺伝子を効率よく改変できるゲノム編集技術を使い開発した農作物について、東京大学の研究チームが一般市民を対象に意識調査をしたところ、「食べたくない」と答えた人が4割を超えました。

 畜産物では5割を超え、抵抗感を持つ人が多い現状が浮かびました。東京都内で開催された日本ゲノム編集学会で5日、報告されました。

 調査は、東京大医科学研究所の内山正登客員研究員らが昨年5~6月、20~69歳の男女約3万8000人を対象にインターネット上で実施。約1万700人から回答を得ました。

 ゲノム編集された農作物を「食べたくない」と答えた人は43%で、「食べたい」は9・3%にとどまりました。畜産物では「食べたくない」が53・3%、「食べたい」が6・9%で、畜産物のほうが抵抗感が大きい傾向がみられました。

 一方、「どちらともいえない」が農作物で47・%、畜産物で39・8%と判断を迷っている人が多い様子もうかがえました。

 ゲノム編集技術について「全く知らなかった」と答えた人が全体の57・4%で、「聞いたことがある」(33・4%)、「意味を理解している」(9%)の合計を上回りました。「理解している」と答えた人も、狙った遺伝子を改変できるという技術の特性を問う質問で半数が間違えました。

 厚生労働省は、ゲノム編集で特定の遺伝子を壊して開発した食品については安全性審査を行わず、開発業者に届け出だけ求め今夏にも解禁する方針。消費者庁も、ゲノム編集食品の表示の在り方を検討中です。

 研究チームの武藤香織教授(社会学)は、「ゲノム編集に対する社会の認知度や理解度はまだ低く、このまま拙速に解禁すると市民に受け入れられない可能性がある」と指摘しています。

 2019年6月6日(木)

 

■独身の7割、「結婚相手は非喫煙者」を希望 国立がん研究センター

 国立がん研究センターは、独身者の70%は将来結婚する相手にはたばこを吸わないことを望んでいるというアンケート結果を公表しました。妻や夫、子供がたばこを吸っている場合も、家族の多くが「禁煙してほしい」と思っていると答えました。

 結果を公表した5月31日は。世界保健機関(WHO)が定めた「世界禁煙デー」。がん研究センターの担当者は、「受動喫煙の害が広く知られ、嫌がる人が増えている。たばこを吸うかどうかが結婚において重要な条件になっている」と分析しています。

 アンケートは3月にインターネットで実施し、20~90歳代の成人の喫煙者と非喫煙者2000人が回答しました。

 結果を実際の人口構成や喫煙者の比率に合わせて調整すると、独身の人の半数近くが「結婚する場合、相手は絶対吸わない人がよい」と答え、「できれば吸わない人がよい」と答えた人も合わせると、70%が結婚相手の喫煙を望んでいませんでした。

 うち、「たばこをやめることを結婚の条件とする」が45・2%。「家の中で吸わないことを条件」が18・1%、「自分の前で吸わないことを条件」が5・8%いました。「たばこは条件としない」と回答した人は19・0%でした。

 夫や妻が「毎日吸っている」「時々吸う日がある」と答えた人のうち、「やめてほしい」と思っているのは61%でした。

 喫煙している20歳以上の子供を持つ親の75%は、子供の禁煙を望むと回答。自分も喫煙者だが子供には「やめてほしい」と思っている親もおり、たばこは体に悪いけれどなかなかやめられないとわかっているのが理由とみられます。

 未成年の子供がいる親も、82%が「20歳以上になってもたばこを吸ってほしくない」と回答しました。

 2019年6月6日(木)

 

■「白髪黒くなる」は根拠がない宣伝 サプリ会社に措置命令

 白髪対策に効果があるとの根拠がない宣伝をしたとして、消費者庁は5日、「ブラックサプリEX」を販売するECホールディングス(東京都目黒区)に対し、景品表示法違反(優良誤認)で再発防止策などを求める措置命令を出しました。

 発表によると、ECホールディングスのサイトは2018年10月~今年2月、白髪が目立つ人物のイラストを「Before」、黒髪の人物のイラストを「After」として並べ、「年齢のせい…だけじゃなかった!」「黒々ツヤツヤ成分今すぐ体感しよう」「毎日3粒飲むだけでいい」などと記載。医師の監修があるとも記し、サプリを飲めば白髪が黒くなる効果があるかのように表示していました。

 消費者庁表示対策課は根拠となる資料を求めたものの、会社側は提出しなかったといいます。商品は2012年6月から販売され、今年1月までに70万個以上を売り上げたといいます。

 ECホールディングスは5日、「顧客と関係者にご心配とご迷惑をおかけしたことを深くおわび申し上げる。正確かつお客様にわかりやすい表示を行うよう管理体制の一層の強化に努める」とするコメントをサイト上に出しました。

 2019年6月6日(木)

 

■エボラ出血熱感染者2000人、1300人以上が死亡 コンゴ民主共和国

 アフリカ中部のコンゴ民主共和国(旧ザイール)の保健省は3日深夜、同国東部で昨年8月1日にエボラ出血熱の流行が宣言されて以降のエボラウイルス感染者が、疑い例を含めて2000人を超えたことを明らかにしました。このうち3分の2の患者が死亡したといいます。

 同省によると、全発症者のうち感染が確認された患者は1914人、感染が疑われる患者は94人。死者は1346人で、このうち感染が確認された患者は1252人、感染が疑われる患者は94人でした。一方、回復した患者は539人います。

 同省は、2000人という節目は超えたものの、事態の全容を見失わないことが重要だと表明しました。

 コンゴ民主共和国では、昨年8月1日に北キブ州でエボラ出血熱の流行が最初に宣言された後、隣のイトゥリ州に感染が拡大。その一方、国境を接しているルワンダやウガンダでの感染は報告されていません。

 同国での危機対応の取り組みは、周辺の鉱物資源を収入源とする多数の武装勢力が乱立し、民兵による医療施設への襲撃や、医療チームに対する一部の住民の敵対感情によって妨げられてきました。

 これまでに医療従事者5人が死亡。また、国際NGO「オックスファム」のコリン・ヌドゥ・コンゴ民主共和国担当ディレクターは、「予防接種や死亡した感染者の埋葬といった重要な予防措置に遅れが生じている」と述べました。

 世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長は5月20日に、「(武装勢力の)攻撃で、我々の活動が中断され、現場へ向かうのが一層困難になっている」と警鐘を鳴らしています。

 2019年6月6日(木)

 

■ゲノム編集で誕生した中国の双子、寿命縮まった可能性 アメリカで研究

 中国の研究者がゲノム編集の技術を使って遺伝子改変した双子の女児を誕生させた問題で、同様の遺伝子変異を先天的に持つ人は変異のない人より寿命が短いとする研究結果を、アメリカのカリフォルニア大学バークレー校などの研究チームが4日、科学誌「ネイチャー・メディシン」に発表しました。

 変異があると感染症による死亡率が上がるとの報告もあり、ゲノム編集によって寿命が縮まった恐れがあります。

 昨年11月、中国の研究者、賀建奎氏が、夫がエイズウイルス(HIV)に感染している夫婦の受精卵に、子供への感染を防ぐためとしてゲノム編集を施し、双子の女児が生まれたと発表。改変されたのは「CCR5」という遺伝子で、これに自然の変異がある人はHIVに感染しません。

 研究チームは、イギリスで蓄積された40万人以上の遺伝子型と死亡届の記録を解析。CCR5に変異を持つ人は、持たない人に比べて76歳に達する確率が約20%低いことがわかりました。CCR5に変異があるとインフルエンザなどの死亡率が上がるといった研究結果がすでにあり、研究チームは「HIVに耐性を持たせると、より一般的な他の病気になりやすくなる恐れがある」としています。

 双子の女児は遺伝子を人為的に改変して誕生した初のケースで、安全性や生命倫理の観点から世界中で批判が相次ぎ、中国政府が遺伝子編集実験の中止を命じる事態に発展しました。

 石井哲也・北海道大学教授(生命倫理)は、「ゲノム編集技術の進展に比べ、人の遺伝子の機能はまだ十分解明されていない。今回の研究結果は、人の誕生にかかわる遺伝子改変がいかに困難かを示している」と指摘しています。 

 2019年6月6日(木)

 

■マイナンバーカードが健康保険証に 2022年度中に全国で

 政府は4日、首相官邸でデジタル・ガバメント閣僚会議を開き、マイナンバーカードの普及に向けた総合的な対策を決定しました。2021年3月から健康保険証として使えるようにし、2022年度中に全国のほぼすべての医療機関が対応するようシステムの整備を支援します。2021年分の確定申告からは、マイナンバーカードを使って簡単に医療費控除の手続きもできるようにします。

 マイナンバーカードの交付実績は、5月30日時点で約1702万枚にとどまります。政府が決定した対策には「2022年度にほとんどの住民が保有していると想定する」と明記し、3年後をメドに1億枚以上を普及させる方針。8月をメドに具体的な工程表も公表します。

 普及策の柱の一つが、健康保険証の代わりに医療関連のサービスで利用できるようにすることです。健康保険証は日常的に利用する人が多いため、代用できれば普及が進むとみています。医療機関にはマイナンバーカードの読み取り端末が必要になるため、政府が支援します。オンラインで資格を確認するため、失効した保険証の不正利用などを防ぐ効果もあります。

 医療費控除の手続きも簡単にします。利用者はまず、確定申告する際に国税庁のサイトからマイナンバーカードで個人認証します。「医療費通知」のボタンを押すと、1年分の医療費の合計額がサイト上で一覧できるようにします。合計額が控除の適用基準を超えていた場合は、そのままサイト上で申告もできます。

 政府の運営サイト「マイナポータル」で、さまざまな医療情報も閲覧できます。2021年3月からは特定健康診査(メタボ健診)の情報、同年10月からは過去の投薬履歴を見ることができるようにします。

 2020年度からは、マイナンバーカードに電子マネーを貯めて買い物に使えるようにします。カードを使って買い物をすれば国からポイントの還元が受けられる仕組みも導入します。地方自治体が指定する小売店や通販サイトで利用できます。早期にカードの取得申請をした人には還元率を割り増すことも検討します。

 今はカードを取得するには自治体の窓口に出向く必要がありますが、今後は企業やハローワーク、学校、郵便局、病院、介護施設などに自治体の職員が足を運び、その場で申請を受け付ける取り組みも始めます。

 申請が集中して配布が滞ることがないように、どのように交付するかの実行計画をつくるよう自治体に求めます。普及率を高めるため、国家公務員や地方公務員は2019年度中にマイナンバーカードを取得するよう促す計画です。

 2019年6月5日(水)

 

■がん治療薬「オプジーボ」、結核の副作用 厚労省が注意喚起指示

 厚生労働省は4日、免疫の働きを利用したがん治療薬「オプジーボ」と「キイトルーダ」を使用すると結核の発症率が高まる恐れがあるとして、製造販売元の小野薬品工業(大阪市)とMSD(東京都)に、薬の添付文書の重大な副作用として結核を追記するよう指示しました。

 オプジーボでは、使用との因果関係が否定できない結核関連症例が6例報告されました。死亡例はありません。

 厚労省は、結核患者や結核になったことのある患者には慎重に投与するとともに、使用患者の観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど、適切な処置をするよう求めました。

 オプジーボと似た仕組みでがんを攻撃するキイトルーダも、同様の注意喚起の対象としました。

 2019年6月5日(水)

 

■福島原発事故とがんの関連なし 子供の甲状腺検査で報告案

 福島県が東京電力福島第1原発の事故当時、18歳以下だった子供達を対象に行っている甲状腺検査を巡り、検査の結果を評価している専門家の部会で、2巡目の検査で発見された甲状腺がんと被曝(ひばく)の関連は認められないとする報告案が示されました。一方、部会長は、この報告案を受けて検査をやめるという答えは出せないとしています。

 この報告案は3日、福島市で開かれた専門家による部会で示されました。

 2014、2015年度に実施した2巡目の検査で発見された甲状腺がんと被曝の関連については、国連原子放射線影響科学委員会(UNSCEAR)で公表された年齢別や市町村別の推計の被曝線量を解析に使った上で、「甲状腺がんの発見率との関連の解析においては、線量の増加に応じて発見率が上昇するといった一貫した関係は認められない」とした報告案をまとめました。

 また、県民健康調査の受診率が年々低くなっていることから、調査とは別に自治体が医療機関を通じてがん患者の情報を集める「地域がん登録」などを利用し、甲状腺がんの状況を把握することや、単発の検査だけではなく数回の検査の結果を蓄積して解析する必要があることも盛り込まれています。

 この報告案は今後、県民健康調査検討委員会に提出されることになっています。甲状腺がんと原発事故による被曝の影響を巡り、県の県民健康調査検討委員会は3年前、被曝線量が総じて小さいことなどを理由に「放射線の影響とは考えにくい」とし、検査を大規模に実施したことで、がんが多く見付かっている可能性が高いという見解を示しています。

 甲状腺検査評価部会長の鈴木元・国際医療福祉大クリニック院長は、「放射線の影響を受けやすい事故当時1歳から5歳だった子供達の中で甲状腺がんが増えていない、と結果が出るまでは検査をやめるという答えは出せないと個人的には考えている。今後も検討を続ける必要がある」としています。

 昨年から4巡目に入っている甲状腺検査で、がんやがんの疑いと診断された人は212人となっています。

 2019年6月5日(水)

 

■はしか感染者、566人に上る 早くも昨年1年間の2倍超

 はしか(麻疹=ましん)の感染者の報告数が、今年に入ってから5月26日までに566人となり、昨年1年間(282人=暫定値)の2倍を超えました。国立感染症研究所が4日、発表しました。

 都道府県別では、大阪府が最も多く142人で、東京都96人、三重県54人、神奈川県50人、愛知県37人などとなっています。

 5月26日までの1週間では、新たに26人の報告がありました。神奈川県5人、埼玉県、福岡県、佐賀県各4人など、小規模な発生が続いており、終息の気配はありません。

 感染症に詳しい川崎市健康安全研究所の岡部信彦所長は、「流行地のフィリピンやベトナム、ミャンマー、インドネシアなどと同じタイプの遺伝子が検出されている。渡航者が感染し、免疫のない人がうつり、ウイルスが国内に居座りつつある状況だ」と分析しています。

 一方、風疹の感染者は、5月26日までの1週間で新たに44人が報告されました。今年の累計は1624人で、昨年夏以降、流行が続いています。

 2019年6月5日(水)

 

■熱中症搬送1251人、3県で死者 消防庁集計

 総務省消防庁は4日、熱中症のため5月27日~6月2日の1週間に全国で1251人が救急搬送されたとの速報値を発表しました。

 5月では記録的な猛暑になった前週(5月20~26日)の2053人に比べて802人減ったものの、前年同期の659人と比べると約1・9倍。茨城、群馬、埼玉3県で各1人、計3人が死亡しました。

 集計によると、3週間以上の入院が必要な重症は29人、短期の入院が必要な中等症は423人。搬送者の47・9%を65歳以上の高齢者が占めました。都道府県別では、東京都122人、埼玉県102人、北海道66人などと続きました。

 消防庁は、例年より熱中症による搬送者が多いことから、気温上昇への注意と、こまめな水分補給などの対策を呼び掛けています。

 2019年6月4日(火)

 

■iPS細胞から作ったミニ肝臓で病気を再現 新薬開発へ期待

 iPS細胞(人工多能性幹細胞)を使い、肝炎の状態を再現した「ミニ肝臓」を、東京医科歯科大学の武部貴則教授らが作製しました。iPS細胞から作った「臓器」で病気を再現したのは初めて。体内に近い状態を外部で観察でき、病気の仕組みの解明や治療薬探しに生かせるといいます。

 論文は5月31日、アメリカの科学誌「セル・メタボリズム」に掲載されました。

 研究チームは、人間のiPS細胞をもとに、複数の細胞からなり、臓器特有の働きを持った直径0・2ミリのミニ肝臓を作製しました。炎症などを引き起こす肝星細胞やクッパー細胞という細胞も一緒に作製することで、肝臓に脂肪がたまって炎症を起こす「非アルコール性脂肪肝炎(NASH(ナッシュ))」の状態を再現できます。

 NASHは、飲酒の習慣がなくても発症します。患者は近年増加しており、国内に数百万人いると推定されます。進行すると肝硬変や肝がんにつながる恐れもあるものの、発症の仕組みはわかっていないことが多く、有効な治療法がありません。

 今回作製したミニ肝臓に脂肪酸を加えると、脂肪が蓄積し、肝硬変と同じように硬くなりました。また、ある化合物を加えたところ、脂肪の蓄積が抑えられたことも確認できました。

 武部教授は、「iPS細胞から『ミニ臓器』を作れば、難しい病気も再現できる。将来は肺や腸などにも応用できる可能性がある」と話しています。

 2019年6月3日(月)

 

■休眠状態の卵母細胞、体外作製に成功 不妊原因究明に期待

 マウスのES細胞(胚性幹細胞)から、卵子のもとになる「卵母細胞」を生体内と同じように休眠状態で体外作製することに、九州大学の林克彦教授(生殖生物学)らの研究チームが成功しました。

 不妊の原因究明などに役立つ可能性があるといいます。論文はアメリカの「科学アカデミー紀要」(電子版)に掲載されました。

 哺乳類の卵巣では、卵母細胞が休眠した状態で存在し、周期的に一部の細胞が発育して卵子となります。卵母細胞は原則的に増殖しないため、生殖能力を長く維持するには、残りの細胞が休眠状態を保つことが重要です。

 林教授らは2016年、マウスのiPS細胞(人工多能性幹細胞)から体外で卵子をつくることに世界で初めて成功。ただ、体外作製ではすべての卵母細胞が一度に卵子に発育してしまい、また、その卵子の受精率は低くなりました。

 今回、さまざまな組織に変化する万能細胞の一種のES細胞を作製する際、酸素濃度を大気中の約4分の1(5%)まで低くし、生体内と似た環境にしたところ、3週間で休眠状態の卵母細胞ができた。卵母細胞が卵子になるメカニズムの解明や、早期閉経など不妊の原因究明、治療法開発への貢献が期待できるといいます。

 横浜市立大学の小川毅彦教授(生殖再生医学)は、「生体内の卵子の形成に近い状態を再現した点で画期的だ。卵母細胞の活性化や老化といった、未解明の課題を明らかにする手掛かりになる」と話しました。

 2019年6月3日(月)

 

■視覚障害の原因疾患、緑内障が最多 厚労省が全国調査

 2015年度に新たに障害者手帳の交付を受けた視覚障害者の原因疾患は緑内障が最も多く、原因に占める割合も過去より増加したという全国調査の結果を、白神史雄岡山大学教授(眼科学)を中心とする厚生労働省研究班がまとめました。

 緑内障は中高年に多い疾患で、目と脳をつなぐ視神経の障害によって視力が低下します。調査によると原因の28・6%を占め、人口の高齢化を反映する形で、前回調査(2007~2009年度)の割合(21・0%)を上回りました。

 2位は網膜色素変性(14・0%)、3位は糖尿病網膜症(12・8%)で、前回調査と順位が入れ替わりました。

 4位は網膜中心部に出血や水膨れが生じる黄斑変性(8・0%)で、順位は前回調査と同じでした。

 新規視覚障害者の年齢層は80歳代が29・6%で最多。70歳代(26・3%)、60歳代(17・3%)がそれに続き、大半が高齢者であることがわかりました。

 視覚障害の原因疾患に関する全国調査は今回が4回目。過去はいずれも7県程度の抽出調査でしたが、データが電子化されたことにより、今回初めて全都道府県の計135福祉事務所から18歳以上の新規視覚障害認定者1万2000人余りの記録を集め、集計しました。

 分析を担当した森實祐基岡山大准教授は、「原因の上位を占めた疾患はいずれも早期発見が重要。特に症状がなくても定期的な目の検査を勧める」と話しています。今後は地域別のデータを分析し、各地の福祉行政に役立ててもらいたいといいます。

 2019年6月3日(月)

 

■筋ジス次世代型医薬品、安全性を確認 日本新薬、2019年中に販売へ

 日本新薬は5月28日、デュシェンヌ型筋ジストロフィーの治療薬として開発中の核酸医薬品について、日米での臨床試験で安全性と有効性が確認されたと発表しました。これを受け、同社は計画通り2019年中の日米での販売開始を目指します。

 日米とも研究機関や大学での第2相試験まで終え、アメリカで開催中の医療学会で結果が報告されました。筋肉が徐々に衰える筋ジストロフィーのうち、患者数の多いデュシェンヌ型筋ジストロフィーでは骨格筋の特定のタンパク質が欠損しますが、治療薬の投与で産生が確認されたといいます。

 同治療薬は、疾患の原因となる遺伝子を標的とする次世代型医薬品で、最先端の新薬を優先的に審査する厚生労働省の「先駆け審査指定制度」の対象に選ばれています。

 日本新薬広報部は、「規制当局と相談しながら、本年度中に販売承認申請を行っていきたい」としています。

 2019年6月2日(日)

 

■愛情高めるホルモンで自閉症の症状が改善 浜松医科大が研究

 対人関係を築くことが苦手な「自閉症スペクトラム障害」の患者に、愛情を高めるホルモンとして知られる「オキシトシン」を投与すると症状が改善する傾向を示したと、浜松医科大学などの研究チームが公表し、「薬の開発につながる成果だ」としています。

 自閉症スペクトラム障害はこれまで自閉症やアスペルガー症候群などと呼ばれた発達障害の一種で、コミュニケーションが苦手で、100人に1人以上の割合で患者がいるとされていますが、有効な治療薬はありません。

 静岡県浜松市にある浜松医科大学などの研究チームは、脳の下垂体から分泌されて母子や男女の愛情を高めるホルモンとして知られるオキシトシンを患者に6週間投与してコミュニケーション能力の指標の1つである会話中の喜びや驚きなどの表情の豊かさを画像解析で数値化し、投与していない患者との差を分析しました。

 その結果、オキシトシンを投与した患者は、投与されていない患者よりも表情の豊かさの値が0・41から0・53高く、投与を終えて2週間経過しても1・24高くなったということです。

 研究チームでは、オキシトシンの効果が持続したとみており、製薬会社とともに薬として承認を受けるための臨床試験で安全性と効果を確認したいとしています。

 浜松医科大学の山末英典教授は、「薬の開発につながる成果で、当事者の人達が社会に参加しやすいようにしていきたい」と話しています。

 2019年6月2日(日)

 

■緊急避妊薬、オンライン診療解禁へ 性犯罪被害者らに限定で

 性暴力や避妊の失敗で望まない妊娠を避けるために飲む緊急避妊薬(アフターピル)について、厚生労働省の検討会は5月31日、オンライン診療の解禁を認めるものの、利用できる女性を限定する方針を決めました。

 近くに受診可能な医療機関がない、あるいは性犯罪の被害を受けて対人恐怖がある場合に限る案が出ており、利用が大きく制限される可能性もあります。

 オンライン診療は、初診は医師の対面診療を受けることが義務付けられています。検討会では、例外対象に緊急避妊薬を加える方向で議論をしてきました。だが、「容易に手に入るようになると適切に避妊されなくなる」といった医療者の意見が強く、対象を狭めることとしました。

 緊急避妊薬は、性交から72時間以内に飲む高確率で妊娠を防ぐ効能がありますが、医師の受診への抵抗感で処方を受けられない場合もあります。厚労省がこの日示した案では、都市部に住んでいたり、性犯罪の被害を伝えられなかったりすれば、利用できなくなります。一方、性犯罪被害を含め、受診に心理的、物理的障壁がある女性すべてを対象にするべきだとの意見も出ました。

 検討会では今後さらに案を詰め、厚労省は7月にもオンライン診療の指針を改定する予定です。

 2019年6月1日(土)

 

■膵臓がん治療は手術前の抗がん剤に効果 東北大病院が新手法

 治りにくいがんの一つとされる膵臓(すいぞう)がん。手術でがんを切除できる場合、抗がん剤を手術後だけでなく手術前にも使ったほうが、生存期間が長くなるとする研究結果が1月に示されました。新たな可能性を開く治療法として、注目されています。

 膵臓がんは、国内で年間約4万人が発症します。部位別の死亡数では、肺、大腸、胃に次いで4番目に多くなっています。家族に膵臓がんの人がいることや糖尿病、慢性膵炎、肥満、喫煙などが発症を高める要因とされます。

 膵臓は体の奥にあり、がんの初期には症状が出にくく、早期発見が難しくなっています。病期(ステージ)は、がんの大きさや広がり、転移があるかどうかなどで決まります。

 手術で切除できる「切除可能」は、がんが小さく、膵臓内にとどまる0、1期が中心で、2期の一部も含め、全体の2割程度。2、3期の一部が当てはまる「切除可能境界(ボーダーライン)」は、目で見える範囲のがんは切除できても、取り残す可能性があります。一方、離れた臓器にがんが転移する4期などは、手術できない「切除不能」となります。

 膵臓がんの5年生存率は、手術可能な1期だと43・2%。ただ、手術後に転移・再発するケースも多く、全体だと10・0%になります。

 宮城県気仙沼市の介護福祉士、千葉千恵子さん(54歳)は2014年、みぞおちや背中に痛みを感じて、東北大病院(仙台市)で検査を受け、膵臓がんが見付かりました。医師の勧めで臨床試験に参加し、切除手術を行う前に、抗がん剤の塩酸ゲムシタビンとS―1エスワンを使った治療(術前化学療法)を受けることにしました。

 千葉さんは6週間に及ぶ抗がん剤治療の後、膵臓の右半分を手術で切除。その後の半年間、S―1エスワンを使った治療を受けました。これまで再発はなく、勤務先の老人ホームでは夕方から翌朝までの夜勤もこなします。

 しかし、術前化学療法は専門学会が推奨する標準治療になっていません。東北大病院などの研究チームは2013年から、有効性を確認する臨床試験を行っていました。

 臨床試験には全国57医療機関の患者364人が参加。手術後にS―1エスワンを投与する標準治療のグループと、千葉さんのように術前化学療法を加えたグループに分け、治療成績を比べました。

 その結果、患者の生存期間(中央値)は、術前化学療法グループの36・7カ月に対し、標準治療グループは26・65カ月。2年生存率も前者が63・7%、後者は52・5%と差がつきました。

 結果をとりまとめた東北大病院総合外科長の海野倫明(うんのみちあき)さんによると、手術前は後に比べ、患者の体力があるため、十分な量の抗がん剤を投与できます。周囲のリンパ節への転移や肝臓への再発が減るほか、がんが小さくなって手術がしやすくなる効果もあるといいます。

 一方、すぐに手術しないことでがんが進行し、切除できなくなるとの懸念もありましたが、今回の臨床試験では、標準治療のグループとの違いはありませんでした。関連学会でも、標準治療に位置付けるための議論が始まっています。

 海野さんは、「術前化学療法で使う抗がん剤の種類や投与期間、放射線治療との組み合わせなど、さらに効果的な方法を研究していきたい」と話しています。

 2019年6月1日(土)

 

■スギホールディングスとココカラファイン、経営統合交渉入り 業界首位に

 ドラッグストア大手のスギホールディングスとココカラファインは1日、経営統合に向けた協議を始めることで合意したと発表しました。

 2社で準備委員会を設け、7月31日をメドに基本合意書の締結を目指します。両社を合算した売上高は8890億円と、首位のウエルシアホールディングスを抜いて業界トップになります。

 スギホールディングスは中部圏を中心に1190店、ココカラファインは関西や関東を中心に1354店を展開します。経営統合後の市場シェアは中部と関西でいずれも3割超を占め、競合を引き離します。

 スギホールディングスとココカラファインは、調剤や介護などの領域を拡充してきました。スギホールディングスは薬剤師を約2900人、ココカラファインは約2100人抱えます。経営統合で、調剤や介護、保健指導などのノウハウを持ち寄り、強みを伸ばす考えです。日用品などの物販に力を入れる他社との違いを鮮明にする狙いもあります。

 合併比率など具体的な経営統合の手法は今後、詰めることになります。

 一方、ココカラファインは同日、4月26日に発表したマツモトキヨシホールディングスとの資本業務提携に向けた検討を継続するとも発表しました。ココカラファインはスギホールディングスとマツキヨシホールディングスとの協議を、客観的に検討する特別委員会を設置します。

 2019年6月1日(土)

 

■福生病院の透析患者死亡、「中止の意思尊重は妥当」 日本透析医学会が声明

 東京都福生(ふっさ)市の公立福生病院で人工透析治療を中止した女性(当時44歳)が昨年8月に死亡した問題で、人工透析の専門の医師などでつくる日本透析医学会は5月31日、調査結果を踏まえた見解をまとめ、声明をホームページで公表しました。

 女性が透析治療を続けるのは困難で、中止を強く求める女性の意思は尊重されてよい事案だったとしました。その他の事案は、医療者が患者にどのような説明をしたか具体的にわからない部分があったと指摘しました。

 声明などによると、女性は重篤な心血管系の合併症があり、透析用の管の出入り口をつくることが難しく、血液透析を継続するのは臨床的に困難な状況だったと推測されるといいます。女性は透析治療をやめる意思を示しており、その意思は尊重されてよいとしました。

 ただし、女性は亡くなるまでの間に重篤な呼吸困難になり、いったんは治療再開を求めたとされます。このことから、患者の意思を繰り返し確認すること、その過程を具体的に記録することが大切だとしました。また、透析をやめてから亡くなるまでの緩和ケアの体制づくりの重要性も指摘しました。

 透析治療を初めから受けずに亡くなった19人については、病院の報告では主治医がしないことを持ち掛けたのではなく、本人や家族の意思だったようだとしました。ただし、医療者側から具体的にどのような説明がなされたかはわからず、詳細なやりとりを記載するのが望ましいとしました。

 この問題については、東京都が福生病院に文書で改善を指導し、福生病院は説明文書や記録について改善する報告を提出しています。

 2019年6月1日(土)

 

■非肥満でも肝臓、筋肉の脂肪が影響し糖尿病に 改善は食事、運動から

 生活習慣病である2型糖尿病は「太った人の病気」とのイメージが強いものの、日本人を含むアジア人では、やせた人でも欧米人より発症リスクが高いことが各国の研究で明らかになってきました。

 2型糖尿病は進行はゆっくりですが、神経障害や腎臓病、目の網膜症など合併症が起きやすく、脳梗塞や心筋梗塞のリスクも高まります。

 2型糖尿病の患者では、膵臓(すいぞう)から出て血糖値を下げるホルモン「インスリン」が不足したり、出ているのに血糖値を下げる反応が悪くなる「インスリン抵抗性」が起こったりします。インスリン抵抗性は肥満や遺伝、運動不足などで高まりますが、国立国際医療研究センターの植木浩二郎糖尿病研究センター長は「メカニズムは複雑で詳細はよくわかっていない」といいます。

 ただ、植木さんによると、欧米人とアジア人で糖尿病発症率の違いが知られています。1960年代にアメリカ・ハワイ州で、白人より日系人のほうが発症率が高いことなどが判明。植木さんは「欧米人は皮下脂肪が厚いがインスリンの分泌も多く、多少太ってもインスリン抵抗性が低い人が多い。一方、アジア人は普通の体格や、やせた人でも同程度の体格の欧米人より発症リスクが高いとの見方が有力」と話します。

 順天堂大学代謝内分泌内科・スポートロジーセンターの田村好史准教授らは、体格指数(BMI)が25未満である非肥満の日本人男性94人の協力を得て、全身のインスリンの効きを詳細に調べました。インスリンが正常に働けば、血液中の糖は筋肉に取り込まれて急減しますが、健康と思われた人にもその働きが悪い人が多数いることがわかりました。

 効きの良い人と比べると、悪い人は「体脂肪率が高め」「皮下脂肪や肝臓の脂肪が多め」に加え「中性脂肪が多め」「日常生活の活動量が少なめ」といった特徴が判明しました。

 「運動不足などで血糖の多くを受け入れる筋肉に脂肪がたまると、インスリン抵抗性が起こる。これが続くと膵臓が酷使され、インスリンの分泌自体が悪くなる悪循環に陥りやすい」と話す田村さんは、やせた女性では筋肉が少なく脂肪がたまった人ほど高血糖のリスクが高いといった研究も発表しています。

 植木さんは「親族に糖尿病の人がいるなど遺伝的背景がある人は特に気を付けたい。若いころより10キロ以上体重が増えた人も要注意」とし、予防として、「まず3キロの減量」を推奨します。

 「皮下脂肪は定期預金、肝臓や筋肉の脂肪は普通預金です。皮下脂肪はたまりやすいが、取れやすい」。食事の改善と日常の活動、運動を組み合わせるのが望ましいといいます。

 2019年6月1日(土)

 

■妊娠初期の母親のストレス、男性の精子数低下に関係か 豪の大学が研究

 妊娠初期に離婚や失業など強いストレスを感じる経験をした母親から生まれた男性は、精子の数が少なくその運動率も低い傾向にあるという調査結果が、30日に発表されました。

 西オーストラリア大学で生殖医療を専門とするロジャー・ハート教授らが執筆した論文によると、妊娠18週までに強いストレスを感じる経験が3回以上あった母親から生まれた男性は、同じ年の他の男性に比べて精子数が3分の1少なく、運動率も12%低いことが明らかになりました。

 また、男性ホルモンのテストステロン値も10%ほど低かったといいます。

 ハート教授の研究チームは、母体が受けるストレスがもたらす影響を調べるため、オーストラリア西部で1989~1991年に妊娠18週の女性約3000人を対象にアンケート調査を実施。直前の数カ月にストレスを感じる経験があったかどうかを尋ねました。

 回答者らから計1454人の男児が生まれ、その後20年にわたり追跡調査を行いました。20歳を迎えた643人が精巣の超音波検査を受け、精液と血液のサンプルを提出。これらの分析結果が、今回の論文にまとめられました。

 ハート教授は、「胎児の臓器の発達に影響を与えやすい妊娠初期に、母親が強いストレスを感じる経験をすることは、男性の生殖能力に生涯にわたって重大な悪影響を及ぼす可能性がある」と結論付けています。

 論文は、イギリスの学術誌「ヒューマン・リプロダクション」に掲載されました。

 2019年5月31日(金)

 

■世界の河川から安全基準値を上回る抗生物質を検出 英の大学が発表

 世界各地の河川が、環境安全基準値を最大で300倍上回る抗生物質で汚染されているとの研究結果が、フィンランド・ヘルシンキで今週開催された欧州セタックの年次総会で発表されました。

 イギリス・ヨーク大学などの研究チームが、世界6大陸72カ国の河川から711のサンプルを収集し調べたところ、その3分の2に1種類以上の汎用(はんよう)抗生物質が含まれていたことがわかりました。

 抗生物質は人間や家畜の細菌感染を抑えるために使用される薬剤で、今回は14種類の汎用抗生物質を調べました。この結果、薬剤耐性業界連合会が定める抗生物質濃度の安全基準を、多数の地域の河川で上回っていました。同連合会は、バイオテクノロジー関連企業と製薬会社100社以上で構成される業界団体。

 腸管感染症や尿路感染症の治療薬である抗生物質シプロフロキサシンについては、調査対象地のうち51カ所で基準値を上回っていました。また、広く使用されているもう一つの抗生物質メトロニダゾールについては、バングラデシュのある地域の濃度が基準濃度を300倍上回っていたといいます。

 イギリス・ヨーク環境持続可能性研究所の科学者、アリステア・ボクソール氏は、「これは非常に驚くべき、憂慮すべき結果で、抗生物質化合物による汚染が世界中の水系に広まっていることを実証している」と述べました。

 抗生物質の存在の広がりは野生生物に影響を与えているほか、薬剤耐性問題の一因にもなっている可能性が高くなっています。

 世界保健機関(WHO)は世界中で抗生物質の有効性が失われつつあると警告し、業界や政府に対し新世代の抗生物質を早急に開発するよう呼び掛けています。

 1920年代に発見された抗生物質は肺炎、結核、髄膜炎などの多くの致死性細菌から何万人もの命を救ってきた一方で、抗生物質の過剰使用や誤用は薬剤耐性菌の主な原因となっていると考えられています。

 だが、今回の研究では、自然環境に存在する抗生物質が増えていることも、薬剤耐性菌の主な要因の一つとなっている可能性が示唆されました。

 地域別では、アジアやアフリカの多くの河川で安全基準を上回っていましたが、ヨーロッパやアメリカ大陸で収集したサンプルはこの問題が世界的に広がっていることを示していました。

 抗生物質による河川汚染が最も深刻だった国は、バングラデシュ、ケニア、ガーナ、パキスタン、ナイジェリアでした。ヨーロッパで最も高い濃度が検出されたのは、オーストリアでした。

 調査を行った河川水サンプルは、ドナウ川、メコン川、セーヌ川、テムズ川、チグリス川、チャオプラヤ川やその他数十の河川から収集しました。

 2019年5月31日(金)

 

■不適切な鉄剤注射は根絶、食事・練習量で対処 陸連が指針を発表

 高校駅伝の一部強豪校で貧血治療用の鉄剤注射が不適切に使われていた問題で、日本陸上競技連盟は30日、不適切な鉄剤注射の防止に関する指針(ガイドライン)を発表しました。

 「不適切な鉄剤注射の根絶」を明記し、使用につながりやすい、やせすぎや栄養不足の選手への具体的対処法を示しています。指針は、鉄剤注射根絶へ向けた、陸連のすべての施策の基本に位置付けられます。

 鉄剤注射は、重度の貧血治療に使われる一方、酸素運搬能力が上がって持久力を高める効果があるとして、女子の長距離選手を中心に全国的に広まったとされます。陸連は、一部強豪校での不適切使用が明らかになった昨年12月、「不適切な注射の禁止」を明確にした上で指針の策定を決めました。

 指針では、鉄剤注射が「若い競技者の生涯にわたる身体的・精神的な健康を阻害する」と指摘。繰り返して使用した場合、鉄の過剰摂取状態に陥り、肝機能障害などを引き起こす恐れがあると説明しています。

 鉄剤注射が広がった背景について、体内の鉄分不足を招く「食事制限」と「過度なトレーニング」の2点を挙げ、対策として食事の増量や練習量の抑制を求めました。また、全国高校駅伝大会については今年から、出場選手に血液検査の結果報告を求め、異常値や虚偽申告があったりした場合は、ヒアリングをした上でチームの大会出場停止や順位を剥奪(はくだつ)する可能性もあると明記しました。

 陸連は指針の内容を冊子にまとめ、6月中旬以降、陸上部のある全国の中学、高校、47都道府県の教育委員会、日本学生陸上競技連合、日本実業団陸上競技連合など計約1万カ所に配布します。

 2019年5月31日(金)

 

■造血幹細胞、液体のりの成分を使い大量培養に成功 東京大など

 これまでほとんど増やすことができなかった血液の細胞の元になる「造血幹細胞」を、市販の液体のりの成分を使って培養し、大量に増やすことにマウスでの実験で初めて成功したと東京大学などの研究チームが発表しました。

 人の造血幹細胞でも増やすことができれば、白血病の治療などに応用できる可能性があるとして、関係者の注目を集めています。

 造血幹細胞は、赤血球や白血球、血小板の元になっていて、骨髄にあるため、白血病の治療で行われる骨髄移植には欠かせない細胞ですが、人工的に増やすことはほとんどできませんでした。

 東京大学医科学研究所の山崎聡特任准教授(幹細胞生物学)などの研究チームは、市販の液体のりの成分である高分子化合物のポリビニルアルコールの中で、マウスの造血幹細胞を培養したところ、1カ月余りで200倍から900倍に増やすことに世界で初めて成功したと発表しました。

 ポリビニルアルコールは、通常の培養では必ず使うアルブミンという成分の代わりに使っており、今後、人の造血幹細胞でも培養に成功すれば、白血病の治療などに応用できる可能性があるとして関係者の注目を集めています。

 山崎特任准教授は、「のりの成分は不純物がほとんどなく、粘り気が細胞にとってちょうどよかったのだと思う」と話しています。

 2019年5月31日(金)

 

■藤田医科大、再生医療の研究拠点を開所 細胞採取から投与まで実施

 藤田医科大学(愛知県豊明市)は30日、新たに立ち上げた国際再生医療センターの開所式を開きました。世界で最も厳しい基準でつくられた研究室を設け、人のさまざまな組織のもとになる細胞を使って、最先端の遺伝子治療やがん免疫療法などを開発します。

 本格稼働は9月からで、倫理委員会などを経て実際に患者に薬などを投与する研究を年明けにも始めたい考えです。

 広さは約500平方メートルで、部屋の外からほこりなどが侵入しにくい陽圧室に加え、ウイルスなどの外への漏れを厳重に防ぐ「全排気型」と呼ぶタイプの研究室を備えており、日本の大学では初めてといいます。

 センターではさまざまな組織に変化する人の幹細胞を用いた心筋梗塞や肝硬変の治療法を開発するほか、患者の血液を取り出して遺伝子操作で免疫細胞の働きを強める「CARーT」療法を研究します。同療法は現在、「血液がん」での応用が主ですが、胃がんや大腸がんといった「固形がん」などへの応用を目指します。

 松山晃文センター長は、「薬や手術では救えない患者に、新しい選択肢が広がるよう科学的に一つ一つ進めていきたい」と話しています。

 藤田学園の星長清隆理事長は、「ここで生まれた細胞や薬は世界中で活用してもらえる。海外の研究者も集って、よりよい研究をしていきたい」と話しました。

 同日披露された実演では、防護服に身を包んだ研究員が3人一組となり、細胞を培養するための培地を作りました。約40項目を手順通りに異物の混入がないか何度も確認しながら40分以上かけて行っていました。

 2019年5月30日(木)

 

■危険な病原体の輸入方針を正式表明 厚労省、地元に伝達

 厚生労働省と国立感染症研究所(感染研)は30日、エボラ出血熱など致死率の高い1類感染症の病原体の輸入方針について、保管先となる感染研村山庁舎(東京都武蔵村山市)で開かれた関係者会議で正式に表明しました。早ければ今夏にも国内に持ち込まれる見込みですが、テロ対策などの観点から輸入経路や日時は事前に公表しません。

 輸入対象となっているのは、国外で感染例があるエボラ出血熱、南米出血熱、ラッサ熱、クリミア・コンゴ出血熱、マールブルグ病の5種類の感染症の病原体。2020年東京オリンピック・パラリンピックを控え、国内で発生した場合の検査体制の強化を図ります。

 日本ではこれまで人工的に合成した病原体の一部を使ってきましたが、実際の病原体を使うことで、回復具合を判断する検査法の確立が可能となります。

 保管場所となる感染研村山庁舎の「バイオセーフティーレベル(BSL)4施設」は、高性能フィルターを備えるなど高度な安全性が確保されています。厚労省と感染研は昨年11月、武蔵村山市側に輸入に向けた考えを提示。これまで住民向けの説明会や見学会などを実施しており、一定の理解を得られたとみています。

 関係者会議には、厚労省、感染研のほか、地元住民の代表らが参加。地元側から「引き続き透明性を高めてほしい」などの要望が出たといいます。

 厚労省は今後、実際の輸入に向けた対応に入る意向で、「要望があれば、今後も説明会などを実施していきたい」としています。

 地元の自治会の代表として関係者会議に参加した須藤博さんは、「危険な病原体に対応できるように備えることは大事だと思うが、住民にはまだ不安があり、危険な病原体を保管するならば施設を移転する決定をして、さらにその時期も示してもらわなければ納得はできない。今後も研究所や国に施設の安全性の向上と移転を引き続き求めていきたい」と話していました。

 国立感染症研究所の脇田隆字所長は、「研究所としては一定の理解をいただいていると考えているが、住民の方々の不安が完全に解消できていないことは十分に把握している。今後も可能な限り施設の透明性を高めて、地元に丁寧に説明を尽くしながら、より一層、理解が得られるように努めていきたい」と話しています。

 2019年5月30日(木)

 

■158件の研究で倫理指針に違反 国立循環器病研究センター

 大阪府吹田市にある国立循環器病研究センターで、2件の研究論文で内部審査の経緯について事実と異なる記載をするなど、合わせて158件の研究で国の倫理指針に定められた手続きが取られていなかったことがわかりました。

 国立循環器病研究センターの小川久雄理事長などが30日、会見を開いて明らかにしました。

 それによりますと、2人の研究者が2013年度と2018年度に行った手術の効果などを検証する2件の研究は、内部の倫理審査委員会の審査を受けずに進められた上、成果をまとめた論文には「委員会で承認された」などと事実と異なる記載をしていたということです。

 センターの調査に対して、2人は「先行する別の研究で承認を得ていたため、新たな手続きは必要と思わなかった」などと説明したということですが、センターは、虚偽に当たると判断して、これらの論文を取り下げる手続きを進めているということです。

 ほかにも、患者の診療データを利用する156件の研究で、倫理審査委員会の審査は受けていたものの、患者の同意を得るためにホームページなどに情報を掲載する手続きを取っていなかったということです。

 いずれも国の研究倫理指針に違反していることから、センターは、今後、関係者の処分を検討する方針です。

 小川理事長は、「事態を真摯(しんし)に受け止め、研究倫理の徹底や再発防止策の構築と実施に努めます」と謝罪しました。

 2019年5月30日(木)

 

■最高血圧130未満に目標引き下げ 日本高血圧学会

 高血圧が原因となる脳卒中や心臓病のリスクを下げるため、日本高血圧学会は、治療のガイドラインを改定し、目標の血圧を、75歳未満ではこれまでの最高血圧140未満から130未満にするなど引き下げました。これによって、血圧を目標値に下げる治療が必要な患者は1700万人に上るとみられています。  

 高血圧は、血管や心臓に負担をかけるために脳卒中や心臓病を引き起こす最も大きな要因といわれています。

 日本高血圧学会はガイドラインで、高血圧と診断して治療を開始する基準の値を最高血圧140以上、最低血圧90以上と定めており、治療中の患者は国民のおよそ5人に1人に当たる2400万人いるとされています。

 こうした中、日本高血圧学会は、治療を始めた患者が目標とする血圧の値を引き下げる治療のガイドラインの改定を行いました。

 75歳未満の成人の患者では、目標とする血圧の値を最高血圧130未満、最低血圧80未満と、いずれもこれまでより10ずつ引き下げました。また、75歳以上の患者では、最高血圧を140未満とこれまでよりも10引き下げ、最低血圧はこれまでと変えず90未満としました。

 日本高血圧学会によりますと、これにより脳卒中や心臓病を発症するリスクは10%から20%余り下がるということです。

 これまでのガイドラインでは、治療の目標値を達成していた500万人程度が目標値に達していないことになり、今回の改定で血圧を目標値に下げる治療が必要な患者は合わせておよそ1700万人に上るとみられています。

 高血圧の治療は食事や運動など生活習慣の改善を行いますが、十分に下がらない場合には血圧を下げる薬が処方されています。

 日本高血圧学会の伊藤裕理事長は、「今回の改定は、生死にかかわる重大な病気のリスクを下げることにつながる」と話しています。

 高血圧が原因とみられる脳卒中や心臓病で死亡する人は、年間およそ10万人に上ると推計されており、血圧をどこまで下げれば脳卒中や心臓病を発症するリスクを抑えられるのか研究が進められてきました。

 日本高血圧学会によりますと、国内外で行われた14の臨床研究のデータを解析した結果、高血圧の患者が最高血圧140未満、最低血圧90未満の場合と、それより10ずつ低い最高血圧130未満、最低血圧80未満に下げた場合では、脳卒中の発症リスクが22%、心臓病の発症リスクが14%抑えられることがわかったということです。

 ヨーロッパでは昨年、今回の日本と同じように治療の目標値を引き下げたほか、アメリカでは一昨年、高血圧の診断基準を最高血圧130以上、最低血圧80以上に引き下げています。

 また、日本高血圧学会は高血圧として治療が必要な人は国民のおよそ3人に1人に当たる4300万人いると試算しており、50歳代では男性のおよそ6割、女性のおよそ4割、70歳代では男女ともにおよそ7割に上るということです。

 このうち、1900万人は治療を受けていないとみられており、学会はこうした人達に治療を届けることも課題だとしています。

 血圧を下げる薬には腎臓などに障害が起きる副作用が報告されているほか、薬が効きすぎて血圧が下がりすぎるとふらついて転倒するなどのリスクがあることが指摘されており、専門家は生活習慣の改善で血圧を下げることが重要だと指摘しています。

 高血圧などの生活習慣病と予防医学に詳しい新潟大学名誉教授の岡田正彦医師は、「高血圧の治療は、できるだけ薬に頼らず、減塩や運動といった生活習慣の改善を行うことが重要で、患者さんも自宅で習慣的に血圧を測り、血圧の上がりすぎだけでなく下がりすぎにも注意しながら数値を記録して、医師と薬の量などについて適切か相談しながら治療を行ってほしい」と話しています。

 2019年5月30日(木)

 

■画像診断見落としで、新たにがん患者1人死亡 千葉大病院

 千葉大学医学部附属病院(千葉市中央区)は29日、昨年6月に公表した患者9人の画像診断の見落としに絡み、膵(すい)がんなどで治療中だった60歳代の男性が3月に死亡したと発表しました。また、70歳代男性の肺がんを担当医が見落とすなどし、治療開始が約2年遅れたことが新たにわかりました。治療への影響は5人、うち死亡した患者は3人になりました。

 病院によると、3月に死亡したのは60歳代男性で、死因は膵がん。2017年5月、心臓病手術の前にCT検査を受け、放射線診断専門医が報告書で肝臓のこぶを指摘したものの、手術をした心臓血管外科の担当医も、検査を依頼した循環器内科の担当医も、指摘を十分確認しなかったといいます。男性は2017年10月に消化器内科のCT検査で膵がんが見付かりました。

 一方、新たに見落としがわかったのは、2013年に同病院で舌がん手術を受けた70歳代男性。手術後、耳鼻咽喉(じびいんこう)・頭頸部(とうけいぶ)外科の担当医が年1~3回、CT検査を実施していました。今年1月、別の医療機関で肺がんの疑いを指摘され、千葉大病院を受診。呼吸器内科の医師が過去のCT画像を調べたところ、2017年1月の検査で、転移ではなく肺に元々できた「原発性肺がん」が疑われる状態でした。

 男性については2017年1月以降の計3回のCT検査で、放射線診断専門医の報告書が作られませんでした。病院側は専門医の不足を一因に挙げ、「専門医が画像を見ていれば、気付けた可能性がある」として、治療開始までに2年1カ月の遅れが生じたと認めました。担当医は、舌がんから肺への転移がんに注目していましたが、病院側によれば「原発性肺がんは知識がないとわかりにくい」といいます。

 病院は昨年6月、30~80歳代の男女9人の患者についてCT検査の画像診断報告書の内容を医師が見落とすなどして4人(うち2人は死亡)の治療に影響があると認めていました。

 千葉大病院は、画像診断の専門医が足りず、対応できなかったのが原因として、6月からは問題が発覚した時点よりも5人多い15人の態勢で再発防止を図る方針です。

 山本修一病院長は、「大変、申し訳ありません。患者に不安を与えないよう、しっかりとした態勢を作っていきたい」と話しています。

 2019年5月30日(木)

 

■未成熟な卵子を体外で成熟させる研究承認 大阪府の民間クリニックが実施へ

 厚生労働省の部会は24日、不妊治療の受精率を高めるために、未成熟な卵子を体外で育て、精子と受精させる研究を了承しました。大阪府内の民間クリニックが2017年に申請していました。

 研究目的で受精胚(はい)の作製が認められるのは、2011年の倫理指針施行後、初めて。厚労省は、知的財産保護のため民間クリニック名は非公開としました。

 受精胚は子宮に戻せば、人として生まれる可能性があるため、研究用に作製することを国は原則禁止しています。2004年、不妊治療など生殖補助医療にかかわる研究に限って作製を容認。2011年に、研究ごとに国が審査するなどのルールを定めた倫理指針を作りました。

 今回承認された研究は、未成熟な卵子を体外で培養液に入れて成熟させる「体外成熟培養(IVM)」という技術の向上が目的。さまざまな条件で培養し、体内で成熟した卵子と同程度の受精率になる培養法の開発を目指します。

 期間は4年で、夫婦から同意を得て、生殖補助医療のために採取した後に残った卵子や精子を研究に使います。申請した民間クリニックによると、研究では300個の受精胚を作り、研究後は子宮に戻さず受精後14日以内に廃棄するといいます。

 2019年5月30日(木)

 

■トコジラミの駆除依頼が5倍に急増 衣類や寝具を清潔に

 日本を訪れる外国人旅行者が増える中、海外から持ち込まれる害虫のリスクについて学ぶセミナーが開かれ、専門家は先進国で収まっていた「トコジラミ」の被害が再び出始めているとして、衣類や寝具を清潔に保つなど対策の徹底を呼び掛けました。

 このセミナーは、東京オリンピック・パラリンピックの開催などで日本を訪れる外国人旅行者が増える中、海外から持ち込まれる害虫への注意を呼び掛けようと害虫駆除を手掛ける会社が東京都内で開きました。

 この中で講演した国立環境研究所の五箇公一室長は、先進国でいったん収まっていたトコジラミの被害が世界中で再び出始めていると指摘しました。

 トコジラミは体長が5ミリから8ミリほどの「ナンキンムシ」とも呼ばれる害虫で、血を吸われると強いかゆみを引き起こすのが特徴です。

 五箇室長は、「東京大会を契機としてさらにトコジラミが国内に入ってくるリスクがある」と話し、衣類や寝具を清潔に保つなど対策の徹底を呼び掛けました。

 また、セミナーを開いた会社で害虫駆除を担当する齋藤祐輔さんによりますと、トコジラミの駆除依頼の件数は、昨年までの4年間で約5倍に急増したということです。

 齋藤さんは、「トコジラミの生息場所は例えばカーテンレールの中など目に見えないところが非常に多い。小さなところも見逃さないことが防衛策になる」と話していました。

 2019年5月29日(水)

 

■がんゲノム医療に保険適用を初めて決定 最適な治療薬の選択早く

 厚生労働省は29日、がん患者の遺伝情報から個人に最適な治療薬を選ぶ「がんゲノム医療」への保険適用を初めて決めました。治療薬を選ぶまでの医療費は56万円となります。

 がん治療ではがんの遺伝子変異をもとに薬を選ぶものの、従来は一度の検査で少数の遺伝子しか調べられませんでしたが、がんゲノム医療では多くの遺伝子を調べられます。最適な治療薬が早く見付かる可能性が高くなります。

 29日午前に厚労相の諮問機関である中央社会保険医療協議会(中医協)の総会を開き、了承されました。保険診療の対象になるのは「がん遺伝子パネル検査」。シスメックスと中外製薬がそれぞれ保険適用の希望を申請していました。6月1日から適用になる見通し。

 がんは遺伝子の変異を切っ掛けに発症します。遺伝子の変異を探し、対応する治療薬を投与すれば高い効果が期待できます。がん遺伝子パネル検査はがん組織などの100以上のがんの遺伝子を一度に調べ、専門家が結果を解析して最適な治療薬の選択につなげます。

 検査は保険外診療だったため費用は数十万円と高額でした。保険適用で患者は原則3割負担になります。1カ月の自己負担の上限を定めた高額療養費制度を利用できれば、自己負担はさらに抑えられます。

 ただ対象は固形がんの患者で、最適な治療法である「標準治療」を終えた場合などに限られます。検査をしても治療薬の選択につながるケースは1~2割とされます。

 保険適用に当たり、厚労省は患者から同意を得られる場合、病院に国立がん研究センターへの遺伝情報の提供を義務付けることにしました。データを集積することで精度を高めるための研究や創薬などに生かします。

 2019年5月29日(水)

 

■熱中症で搬送2053人に上る 記録的暑さで4倍に増加

 各地で記録的な暑さとなった先週1週間に熱中症の疑いで病院に搬送された人は全国で2000人余りに上り、前の週の約4倍に増えていたことがわかりました。

 総務省消防庁によりますと、5月20日から26日までの1週間に、熱中症の疑いで病院に搬送された人は2053人に上り、前の週の約4倍に増えました。

 都道府県別では、東京都が185人と最も多く、次いで、愛知県が136人、埼玉県が127人、大阪府が106人、千葉県が102人、北海道が91人などとなっています。

 症状の程度は、死亡した人が4人、入院が必要な人が532人で、軽症が1476人でした。

 年齢別では、65歳以上が898人と4割ほどを占めたほか、18歳から64歳が618人、乳幼児を含む18歳未満が537人でした。

 総務省消防庁では、先週は全国的に季節外れの厳しい暑さが続き、特に北海道では5月26日に39度を超える記録的な暑さとなったことから、搬送された人が急激に増えたとみています。

 気象庁によりますと6月1日から10日にかけては、東北や東海、北陸、それに西日本を中心に、気温が平年に比べてかなり高くなる見込みです。

 総務省消防庁は、この時期はまだ体が暑さに慣れていないことから、適切に冷房を使い、こまめに水分を摂取するほか、屋外ではできるだけ日差しを避けるなど積極的に熱中症対策を行うよう呼び掛けています。

 2019年5月29日(水)

 

■燃え尽き症候群は「職業上の現象」 WHO、疾病に分類せず

 世界保健機関(WHO)は28日、「燃え尽き症候群」を疾病とは分類せず、当事者が治療を求めることもある「職業上の現象」とする方針を示しました。

 WHOはこの前日、国際疾病分類(ICD)で燃え尽き症候群を疾病として初めて分類することが決まったとの発表を誤って行っていました。

 WHOは、スイスのジュネーブで28日まで開かれた世界保健総会で、世界の疾病や傷害を分類して一覧化したICDの最新版を承認。

 燃え尽き症候群はICD最新版で、「職場での慢性的なストレスに起因すると解釈される症候群」と定義されました。その特徴としては、意欲低下と疲労の感覚、仕事に対する心理上の隔絶感、否定的あるいは冷笑的な感情の増大、業務効率の低下が挙げられています。

 ICD最新版ではまた、「ゲーム障害」が賭博やコカインなどの薬物と同じ依存症の一つとして初認定されました。一方、性同一性障害は精神障害の分類から除外され、「性の健康に関連する状態」の項目に移されました。

 2019年5月29日(水)

 

■ハラスメント規制法案が成立 企業に防止対策を義務化

 パワハラやセクハラなど職場におけるハラスメント(嫌がらせ)対策の強化を柱とした女性活躍・ハラスメント規制法案が29日、参院本会議で与党などの賛成多数により可決、成立しました。被害が深刻化しているパワハラに要件を設け、企業に防止対策を取るよう初めて法律で義務付けます。

 職場の上下関係などを背景としたハラスメントを「行ってはならない」と明記。行為自体を罰則で禁止することは見送られたものの、事業主や労働者らに対し、他の労働者の言動に注意を払う責務を規定しました。

 パワハラは、(1)優越的な関係に基づく(2)業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動により(3)就業環境を害する-と定義。相談窓口を整備するなど防止対策の事例は、労働政策審議会(厚生労働相の諮問機関)で今後議論し、指針で定めます。

 セクハラや妊娠・出産に関するマタニティーハラスメントの対策強化として、被害を申告した人に対する解雇などの不利益な取り扱いを禁止することを規定。顧客からの迷惑行為であるカスタマーハラスメントや就活生へのセクハラについても、指針で相談体制などの対策を検討します。

 女性活躍では、これまで大企業に限った女性社員の登用や昇進などに関する数値目標の策定義務を、従業員101~300人の中小企業に拡大します。

 パワハラ対策の義務化は、大企業で来年4月にも開始。中小企業は努力義務で始め、その後2年以内に義務化される見通し。

 2019年5月29日(水)

 

■はしか患者、再び増加 連休中に一時帰国、妻子に感染も

 いったん沈静化したかにみえた、はしか(麻疹=ましん)の患者が再び増えています。東南アジアなど世界的に流行しており、10連休中に海外に渡航したり、一時帰国したりした人が現地で感染したことが一因とみられます。

 専門家は、高熱などはしかを疑う症状が出たら、感染を広げないために医療機関に電話した上で受診するよう呼び掛けています。

 国立感染症研究所が28日に発表した、直近1週間(13~19日)に届け出があった患者数は32人で、3週連続で増加しました。前週より4人多くなりました。はしかは感染後10~12日間の潜伏期間を経て発症するため、連休中に感染した人が受診したとみられます。

 都道府県別では、東京都が最も多く10人。大阪府(5人)、茨城県(4人)が続きました。佐賀県唐津市ではベトナムに単身赴任中の40歳代男性が連休中にはしかに感染したのに気付かずに一時帰国し、妻と2人の子が感染しました。長野県駒ケ根市では30歳代女性が4月29日から3日間インドネシアに滞在して帰国し、5月18日にはしかと診断されました。

 2019年5月28日(火)

 

■赤ちゃんポスト、2018年度の預かりは7人 孤立出産が4人

 親が育てられない子供を匿名で預かる熊本市西区の慈恵病院の「こうのとりのゆりかご」(赤ちゃんポスト)に2018年度、預けられた子供は7人でした。熊本市が27日、公表しました。このうち4人は、母親が医療機関や助産師の助けを借りずに自宅などで産む「孤立出産」でした。2007年5月の開設以来、受け入れた人数は計144人になります。

 熊本市によると、預けられたのは男の子4人、女の子3人で過去2番目に少なくなりました。5人が生後1カ月未満の新生児で、うち3人が生後7日未満でした。ほかの2人は生後1年未満でした。

 親の居住地は近畿と中部が各2人、中国地方が1人、熊本県以外の九州が1人、不明が1人。父母などと事後に接触できたのは4人で、預けた理由(複数回答)は「生活困窮」3件、「育児不安・負担感」2件でした。虐待など刑法上の問題があるとみられるケースはなかったといいます。

 赤ちゃんポストには2008年度に最多の25人が預けられましたが、2011年度以降は年間10人前後で推移。過去最少は2016年度の5人、2017年度は7人でした。

 また、慈恵病院が24時間受け付けている妊娠や出産に関する電話相談の2018年度の件数は6031件で、前年度に比べて1413件減少しています。相談件数の減少について、熊本市は「他にもさまざまな相談機関ができたことが要因と考えられる」としています。

 2019年5月28日(火)

 

■世界で最も高価な薬をアメリカで認可 2億3000万円

 アメリカの食品医薬品局(FDA)は24日、全身の筋力が低下する難病の脊髄性筋委縮症(SMA)について、スイス製薬大手ノバルティスの新たな遺伝子治療薬を認可したと発表しました。ロイター通信によると、1回分の価格は212万5000ドル(約2億3000万円)で、「世界で最も高価な薬」としています。

 SMAは体がまひし、呼吸困難などに陥る病気で、主に小児期に現れます。筋肉を動かす神経細胞にかかわる遺伝子の異常が原因とされます。難病情報センター(東京都)によると、小児期までに10万人に1~2人の割合で発症するといいます。

 承認された治療薬は、この遺伝子に異常があった2歳未満の乳児が対象。ウイルスを使って体内に正常な遺伝子を運び、筋肉を動かせるようにします。FDAは「臨床試験で明らかな症状の改善が見られた」として認可を決めました。

 SMAを巡っては、アメリカ国内で別の治療薬がすでに認可されていますが、継続的な投与が必要となります。一方、今回の新薬は1回の投与で効果が長期間続くとされます。ノバルティスは日本での認可も目指しています。

 2019年5月28日(火)

 

■政府が初の生活満足度調査を発表 趣味や生きがいを持つ人ほど高く

 内閣府は24日、「満足度・生活の質に関する調査」結果を発表しました。趣味や生きがいを持つ人ほど生活の満足度が高いことがわかりました。今回が初めての調査で、政府は国民生活の満足度向上に向けた政策立案に活用する方針。

 調査は今年2月、約1万人を対象にウェブでアンケートを実施しました。現在の生活について「非常に満足している」を10点、「全く満足していない」を0点とするなど10点満点で自己採点し、全体の平均値は5・89点でした。男女別では、男性が5・67点、女性が5・90点でした。

 健康状態が「よい」と答えた人の平均は7・08点で、「よくない」と答えた人の3・12点を大きく上回りました。趣味や生きがいを持つ人は6・18点、「ない」と回答した人は4・37点でした。「頼りになる人」の人数やボランティア活動の回数が増加するほど満足度の傾向は高くなりました。

 年齢別では15~59歳までは世代が上になるほど満足度は低くなりましたが、60~89歳の平均は6・36点と全世代で最も高くなりました。

 政府は昨年の「骨太の方針」で国民生活の向上のため、生活の満足度を示す指標の作成を決めており、内閣府が初めて満足度調査を行いました。調査は3年に一度実施します。

 2019年5月28日(火)

 

■仙台地裁、旧優生保護法は憲法違反 強制不妊手術巡る訴訟で

 旧優生保護法(1948~1996年)下で不妊手術を強制されたとして、宮城県の60歳代と70歳代の女性2人が国に損害賠償を求めた訴訟の判決で、仙台地方裁判所(中島基至裁判長)は28日、「旧法の規定は憲法13条に違反し、無効」との判断を示しました。賠償請求については、すでに請求権が失われているとして棄却しました。

 同種訴訟は札幌や東京など全国の7地裁で起こされており、判決が出たのは初めて。

 中島裁判長は、子供を産み育てるかどうかを意思決定する権利(リプロダクティブ権)は憲法で保障される個人の基本的権利に相当すると指摘しました。「不妊手術は子供を望む者にとっての幸福を一方的に奪うもので、権利侵害は甚大だ」と述べ、幸福追求権を定めた憲法13条に違反するとしました。

 計7150万円の損害賠償請求については、不法行為から20年で損害賠償請求ができなくなるとする民法の除斥期間の規定を適用して退けました。

 原告側は、国が長年にわたって救済の立法措置を怠ったとも主張していました。中島裁判長は、日本ではリプロダクティブ権に関する法的な議論の蓄積が少なく、旧法の規定に関する司法判断もされてこなかった経緯に言及。「立法措置をとることが必要不可欠であることが明白だったとはいえない」として、国の対応は違法とはいえないと結論付けました。

 判決を受け、弁護団の新里宏二団長は、「違憲という憲法判断が下るところまできたという思いだが、救済につながらなければ十分な意味がない。被害者の声を聞いて判断していただけると期待していたので、失望も大きい。当事者と相談の上、基本的には控訴という方向になると思う」と話しました。

 判決の後、原告の70歳代の女性は「20年た闘ってきたのにこんな結果になってしまって言葉が出ない」と話していました。

 60歳代女性の原告の義理の姉は、「裁判は難しくすべて理解はできなかったが、過去に判例がないから訴えを退けるというのは理解できない。言い渡しでは令和の時代がよくなるようにとあったが、令和ではなく今まで苦しめられていた人の声に耳を傾けてほしかった。自分では納得できないので、妹には日をおいて報告する。控訴は弁護団と相談して考えるが機会があればまた頑張りたい」と話していました。

 2019年5月28日(火)

 

■医師の過労死認め1億6700万円支払いを病院に命じる 長崎地裁

 5年前、長崎市の医療機関に勤務していた医師が心臓病で死亡したのは過重な労働が原因だったとして、遺族が損害賠償などを求めた裁判で、長崎地方裁判所は「疲労の蓄積などが原因で死亡した」と認めて、病院側に約1億6700万円を支払うよう命じました。

 長崎市立病院機構が運営する長崎みなとメディカルセンターの心臓血管内科に勤務していた33歳の男性医師は5年前の2014年12月、自宅で倒れているのが見付かり、その後、内因性心臓死で死亡しました。

 家族や両親などは、過重な労働が原因だったとして、約4億1000万円の損害賠償のほか時間外労働の未払い賃金などの支払いを求めていました。

 27日の判決で長崎地方裁判所の武田瑞佳(みか)裁判長は、「医師の時間外労働時間は病気を発症する2カ月間ないし6カ月間、1カ月当たり平均で177・3時間で、相当程度の緊張を伴う業務を日常的に担当していた」などと指摘しました。

 その上で「過重な業務が長時間継続したことによる疲労の蓄積などが原因で死亡したと認められる」として、病院側に約 1億6700万円を支払うよう命じました。

 長崎市立病院機構は、「判決の詳細な内容を確認してから今後の対応を検討します」とコメントしています。

 医師の妻が弁護士を通じてコメントを発表し、「主人の死を100%病院の過失と認めてもらえてうれしく思います。過労死を二度と出さないためにも病院には変わってもらいたい。主人が死ぬまで患者さんの命を守るために働いていたことを忘れないでほしい」と訴えています。

 2019年5月27日(月)

 

■0歳男児と30歳代父親、はしかに感染 埼玉県が注意呼び掛け

 埼玉県富士見市に住む0歳の男の子と30歳代の父親がはしか(麻疹=ましん)と診断され、この親子は症状が出る前日の5月20日に、さいたま市の商業施設を利用していたことから、県が注意を呼び掛けています。

 埼玉県によりますと、はしかと診断されたのは富士見市に住む0歳の男児と30歳代の父親で、5月21日に発熱や発疹などの症状が出て4カ所の医療機関を受診し、25日までに感染が確認されたということです。

 この親子は症状が出る前日の5月20日の正午から午後4時ごろまで、さいたま市大宮区にある大規模商業施設の「コクーンシティ」を訪れていたということで、県は、この時間に施設を利用した人に対し、健康状態に注意するよう呼び掛けています。

 埼玉県内で、今年、はしかの感染が確認されたのはこれで21人となり、過去5年間で最も早いペースで増えています。

 埼玉県は、「はしか患者と接触した場合、最大21日間の経過観察が必要で、感染が疑われる場合は事前に連絡した上で医療機関を受診してほしい。また、感染を防ぐためにワクチンを接種してほしい」としています。

 2019年5月27日(月)

 

■iPS細胞使った心臓病の臨床研究を申請 慶応大

 iPS細胞(人工多能性幹細胞)から作った心臓の筋肉の細胞を重い心臓病の患者に移植して機能を回復させる臨床研究の計画を、慶応大学の研究チームが学内の委員会に申請しました。iPS細胞を使った心臓病の臨床研究は、大阪大学の研究チームがすでに国の了承を受けており、今回の計画はこれに続くものになります。

 慶応大医学部の福田恵一教授(循環器内科)の研究チームは、「拡張型心筋症」と呼ばれる重い心臓病の患者3人を対象に、iPS細胞から作った心臓の筋肉の細胞5000万個をそれぞれ移植し、心臓の機能を回復させることを目指していて27日、この臨床研究の計画を学内の委員会に申請しました。

 拡張型心筋症は、心臓の筋肉が薄くなり、血液を送り出す心臓の力が低下する病気で、国内の患者数は数万人ですが、重症の場合は心臓移植などが行われています。

 この臨床研究の計画は学内の委員会で審査され、さらに、国の審査も受けることになります。

 iPS細胞を使った心臓病の臨床研究は、大阪大の研究チームが別の心臓病を対象にすでに国の了承を受けて1例目の手術の準備を進めており、慶応大の臨床研究は、これに続くものになります。

 福田教授は、「慎重の上にも慎重を期して行い、心不全治療の新しい一歩となるよう全力で取り組みたい」と話しています。

 2019年5月27日(月)

 

■AIを使った個人ごとのがん免疫療法を開発 NECとフランス企業

 がん患者自身の免疫の働きを高めて治療する免疫療法で、人工知能(AI)を使うことで一人一人に合わせた薬を作り治療する新たな手法を、大手電機メーカーのNECとフランスの企業が開発しました。

 NECとフランスのバイオ関連企業「トランスジーン」は27日、東京都内でAIを使ったがんの免疫療法の手法を開発したと発表しました。

 がんの免疫療法は、患者自身の免疫の働きを高めてがんを治療するものですが、新たな手法では、がん細胞とそれに付随したタンパク質などを患者から採取します。

 このタンパク質の性質は患者ごとに異なり多様な種類があることから、AIで個人の膨大な遺伝子情報などを分析し、がん細胞の目印となるタンパク質を特定します。

 さらに、このタンパク質を含んだ一人一人に合ったワクチンを作って患者に投与することで、免疫細胞ががん細胞を攻撃しやすくなるということです。

 臨床試験(治験)は、まずはアメリカで卵巣がんを対象に年内にも始まる予定で、AIを使った個人ごとのがんの免疫療法に向けて臨床試験を行うのは、日本の企業ではNECが初めてだということです。

 NECの藤川修執行役員は、「膨大なデータの分析に強みを持つAIの技術を活かして、安心してがんを治療できる環境を作りたい」と話していました。

 2019年5月27日(月)

 

■摂食障害、食べ吐きで歯が溶けるケースも 連携治療進む

 全国で数十万人の患者がいると指摘されている摂食障害の患者の中には食べ吐きする時の胃酸で歯が溶けて失われるなど、歯の状態に問題があるケースが多いとして、歯科医師と心療内科などが連携して治療に当たっていこうという取り組みが進んでいます。

 取り組みを進めているのは、日本歯科大学附属病院の研究チームです。

 研究チームによりますと摂食障害では、大量に食べてはおう吐を繰り返す患者も多く、吐く時に出る胃酸で歯の表面のエナメル質が溶けるケースが目立ちました。

 摂食障害の患者87人の歯の状態を調べたところ、63人が同じ年代の平均より虫歯が多く、20人がエナメル質が溶けて神経が透けて見える重症の状態でした。

 また、食べ物を受け付けなくなる拒食症でも、カロリーを補おうとガムやアメを一日中口に含んでいたため、虫歯が進行し、歯の根元しか残っていない患者もいました。

 中には、虫歯の痛みから食べ物をかむことができずに丸飲みして窒息し、救急搬送されるなど命にかかわるような事態もあったということです。

 研究チームの歯科医師大津光寛さんは、「摂食障害の症状が治まらない限り、繰り返し虫歯になり重症化するケースが目立つ」としており、歯科医師が摂食障害の正しい知識を持つための研修を進めたり、心療内科や精神科と協力して総合的に治療を進めたりする体制を作っていくことにしています。

  一方、摂食障害の治療にかかわる医師などで作る日本摂食障害協会の鈴木眞理理事は、「摂食障害の患者に対して、歯科の受診を呼び掛けるなど、患者のために心の治療と歯の治療を両立させていく取り組みを今後さらに進めていきたい」と話しています。

 2019年5月26日(日)

 

「性同一性障害」を「精神障害」の分類から除外へ WHO

 スイスのジュネーブで開かれている世界保健機関(WHO)の総会で、心と体の性が一致しない「性同一性障害」について、「精神障害」の分類から除外することで合意しました。性同一性障害の人達がこれまで受けてきた差別が解消され、社会の理解へとつながるのか注目されます。

 世界的な健康や医療などの課題について話し合うWHOの総会は25日、医療機関での診断や治療を必要とするけがや病気などの国際的なリスト「国際疾病分類」を29年ぶりに改訂することで合意しました。

 この中で、心と体の性が一致しない性同一性障害について、これまでの精神障害の分類から除外し、その名称を「性別不合」に変更しました。

 その上で、WHOは、精神障害と分類されなくても、当事者が望めば生殖能力をなくす手術などの医療行為を受ける権利は保障されるべきだとしています。

 デンマークの代表は「精神障害の分類から除外したことは、あらゆる人達が尊厳のある生活を送ることにつながる大きな一歩だ」と述べ、今回の変更を歓迎しました。

 性同一性障害の人達が、「精神障害」とされることによって受けてきた差別が解消され、社会の理解へとつながるのか注目されます。

 性同一性障害を精神障害の分類から除外することで合意したことについて、WHOで「国際疾病分類」を担当するロバート・ヤコブ氏は「性同一性障害は精神的な病気でも身体的な病気でもないとわれわれが考えるようになることは、社会にとって強いサインになるだろう」と述べ、その意義を強調しました。

 そして、「精神障害という項目から外すことによって、これからは『性別不合』と呼ばれる人達がこれまで着せられてきた汚名を返上することにつながる」と述べ、今回の変更によって、これまで性同一性障害の人達が受けてきた差別が解消されることに期待を示しました。

 会議に出席した厚生労働省の池田千絵子総括審議官は、「精神障害から除外されたということは、さまざまな配慮が進んできたということだと思う。各加盟国からは、新しい分類に、スムーズに、きっちりと移行したいという意見が多く出ていた」と話していました。

 心と体の性が一致しないトランスジェンダー、性同一性障害について、WHOなどの医学界では、1950年代ごろから、同性愛と同じ種類の病気として扱ってきましたが、その後、1960年代には同性愛とは別の病気として、区別するようになりました。

 そして、1980年代に入ると、性同一性障害という言葉が使われるようになり、1990年に行われた国際疾病分類の改訂で、この名称が正式に採用され障害として位置付けられることになりました。これを機に日本でも、性同一性障害という名称が定着していきました。

 性同一性障害は、精神障害として分類されてきましたが、2013年、アメリカ精神医学会は、「障害」という言葉を使わない性別違和という名称に変更しました。

 専門家によりますと、世界的に、性的マイノリティの人権の保護を求める声が高まっている状況から、性同一性障害の人を障害という枠組みから除外していこうという考え方が広まっているということです。

 一方、同性愛に分類されるレズビアンやゲイについて、WHOは、1990年の国際疾病分類の改訂で精神障害の分類から除外し、差別的なイメージの払拭(ふっしょく)につながったとしています。

 2019年5月26日(日)

 

■「ゲーム障害」を「国際疾病分類」加える WHO

 スイスのジュネーブで開かれている世界保健機関(WHO)の総会で、日本など各国は生活に支障が出るほどテレビゲームなどに熱中する「ゲーム障害」を障害の一つとして新たに分類することで合意し、実態の把握が世界規模で進むことが期待されています。

 健康や医療の課題について話し合うためスイスのジュネーブで開かれているWHOの総会は25日、医療機関での診断や治療を必要とするけがや病気などの国際的なリストである「国際疾病分類」に、「ゲーム障害」を新たに加えることで合意しました。

 日本の代表は「ゲーム障害に関する科学的な知見を深める切っ掛けになる」と述べたほか、アメリカの代表は、うつ病などを念頭に「他の病気とのかかわりも詳しく調べることができる」と指摘して、各国が合意を評価しました。

 ゲーム障害は、テレビやパソコン、スマートフォンなどでゲームをしたい欲求を抑えられず、飲食ができなくなったり、仕事にゆけなくなったりするなど生活に支障を来している状態のことを指します。

 インターネットやスマートフォンなどの普及に伴い、ゲームのやりすぎで生活や健康に支障が出ている人が世界各国で相次いで報告されています。

 けがや病気などを分類する国際的なリストに、ゲーム障害が新たに加わったことで、実態の把握に向けた研究や調査が世界規模で進み、診断や治療にも役立つことが期待されています。

 WHOは、国際疾病分類に新たに加えられた「ゲーム障害」について診断する基準として、テレビやパソコンなどでゲームをしたい欲求を抑えられない状態だと定義しています。

 具体的には、ゲームをする頻度や長さ、始めたりやめたりするタイミングなどを自らコントロールすることができず、健康を損なうなどの影響が出ているにもかかわらず、ゲームを続けてしまう状態を指しています。

 こうした状態が、原則、少なくとも1年以上続き、家族関係や社会的な生活に影響を及ぼしている状態を「ゲーム障害」として障害の一つに位置付けました。

 会議に出席した厚生労働省の池田千絵子総括審議官は、「今回、ゲーム障害が新たに加えられたことによってデータの蓄積が進み、研究が進むことを期待しています」と述べました。

 2019年5月26日(日)

 

■iPS細胞から免疫細胞を作り、がんを攻撃 来年3月にも国内初の治験

 健康な人のiPS細胞(人工多能性幹細胞)から免疫細胞を作り、頭頸部(けいぶ)がんの患者に移植する臨床試験(治験)を、理化学研究所と千葉大学の研究チームが来年2月にも国に申請する方針であることが24日、明らかになりました。iPS細胞を使って、がんを攻撃する治験は国内初といい、認められれば3月にも始める方針。

 計画しているのは、理研生命医科学研究センターの古関明彦副センター長と千葉大の岡本美孝教授らの研究チーム。鼻や口など、顔や首周りにできるがんの患者で、標準的な治療後に再発したり、効果がなかったりした3人を対象にします。

 研究チームは、「ナチュラルキラーT(NKT)細胞」と呼ばれる免疫細胞に着目。体内に存在するものの数が少なく、がん患者では減っていたりうまく働かなくなっていたりするといいます。

 治験では、健康な人の血液から採取したNKT細胞からiPS細胞を作製。このiPS細胞を大量に増やした後、改めてNKT細胞に変化させてから、2週間ごとに計3回、血管から注入して移植します。移植する細胞数は1回目は3000万個で、2回目以降は副作用と効果をみて増減します。

 移植したNKT細胞や、活発になったほかの免疫細胞が、がんを攻撃することを見込んでおり、2年間かけて安全性や効果を調べます。マウスでの実験では、がんの増殖が抑えられたことを確認したといいます。

 古関さんは、「有害事象が起きないことを確認しつつ、腫瘍(しゅよう)がどのくらい小さくなるのか調べたい」と話しています。

 2019年5月25日(土)

 

■強制不妊被害者に初の一時金を支給 60~80歳代の女性5人に

 厚生労働省は24日、旧優生保護法(1948~1996年)の下で行われた不妊手術の被害者として60~80歳代の女性5人を認定し、一時金320万円の支給を決定したと発表しました。支払いは6月中旬を予定しているといいます。

 被害者に一時金を払う法律が4月24日に施行されてから初めての支給決定となります。

 女性5人の内訳は60歳代3人、70歳代と80歳代が各1人で、北海道3人、宮城県2人。いずれも道県に残る手術記録をもとに被害を認定しました。厚労省によると、19日までの一時金の請求件数は25都道県で計89件、相談件数は47都道府県で延べ664件。

 4月に成立・施行された法律では、被害者本人からの請求に基づいて一時金を支給すると定めます。手術記録などがある場合、厚労相が記録をもとに被害の有無を認定。記録がない場合、厚労省内に設置される第三者機関「認定審査会」で、本人や家族の説明、医師の診断などを踏まえて総合的に判断します。認定審査会は6月下旬に、発足する見通し。

 不妊手術(本人が同意した手術も含む)を受けたのは、約2万5000人に上ります。

 2019年5月24日(金)

 

■ブロック肉だけと誤認させるCMを放送 マクドナルドに課徴金

 消費者庁は25日、日本マクドナルド(東京都新宿区)に対し、景品表示法に基づき2171万円の課徴金納付命令を出し、発表しました。同社が販売していた「東京ローストビーフバーガー」の宣伝が、一般消費者の誤認を招くような内容でした。

 発表によると、日本マクドナルドは2017年8月、テレビコマーシャルで「しっとりリッチな東京ローストビーフバーガー」という音声とともに、ローストされた牛赤身のブロック肉をスライスする映像を放送。店内のポスターなどでも同様の表示をしました。しかし、実際の商品で使っていたのは、ブロック肉を切断加工したものを加熱後に結着させ、形状を整えた成形肉でした。

 消費者庁は、こうした表示が「ブロック肉を使っているかのように示していた」とし、「実際のものより著しく優良であると示すことで不当に顧客を誘引し、合理的な選択を阻害する恐れがあると認められる」と判断。昨年7月、日本マクドナルドに対し、景品表示法違反(優良誤認)で消費者への周知や再発防止策を講じるよう措置命令を出しました。

 不当な表示をした場合は、対象となる商品の売上額の最大3%分の課徴金を課すことができます。課徴金は、消費者に返金措置を実施した場合は減額されるものの、日本マクドナルドは返金を実施しなかったとみられます。

 景品表示法の課徴金制度は2016年4月に導入され、翌2017年1月に燃費不正問題を起こした三菱自動車に対して初めて適用されました。

 日本マクドナルドは、「誤解を招く表現をしていたことをおわびする。よりわかりやすい情報の提供に努める」としています。

 2019年5月24日(金)

 

■愛知の製薬会社、青汁で商標権侵害と提訴 同名商品の販売差し止めを求め

 「大麦若葉」を主原料にした同名の青汁商品を巡り、製薬会社「山本漢方製薬」(愛知県小牧市)が類似した商品パッケージなどで商標権を侵害されたとして、健康食品販売会社「ユーワ」(東京都東大和市)に販売差し止めを求める訴訟を名古屋地裁に起こしたことが24日、明らかになりました。提訴は3月25日付。

 訴状によると、商品は粉末状の青汁で、山本漢方製薬が2016年10月に商標登録しました。ユーワの商品はパッケージの色やコップの画像が類似、価格帯も同程度になっているとしています。その上で山本漢方製薬は、「同種商品は並べて陳列されることが多いため、消費者に混同される可能性があり、営業上の利益が侵害される恐れがある」と主張しています。

 民間の調査会社によると、青汁の国内販売額は2013年の584億円から2018年は804億円と拡大。苦味が少ない大麦若葉を主原料とした商品が人気で、昨年は販売額の8割近くを占めたといいます。

 山本漢方製薬は「進行中の訴訟であり、お話は控えたい」とし、ユーワは「対応を協議中で、コメントできない」としました。

 2019年5月24日(金)

 

■「妊婦加算」、自己負担軽減で再開も検討 厚労省

 現在、凍結されている「妊婦加算」について、厚生労働省は、有識者会議での議論を踏まえ、妊婦の自己負担を軽減する仕組みを取り入れた上で、来年度の診療報酬改定に合わせて再開することも含め、検討を進めることにしています。

 妊婦が医療機関を受診した際に、医療費に上乗せして、一部を自己負担してもらう「妊婦加算」について、厚生労働省は、「妊婦税」といった批判を受けて今年から凍結しており、現在、医師などで作る有識者会議で、今後の在り方が検討されています。

 これまでの有識者会議での議論では、アンケート調査の結果、内科や歯科などを受診した際、断られた経験がある妊婦が一定程度いることが明らかになっています。

 また、妊婦加算が、財政的な負担になっているという意見があるほか、高齢出産などリスクの高い出産の増加で、産婦人科の負担も増していることを踏まえ、他の診療科でも、妊婦を受け入れやすくする仕組みが必要だという指摘も相次いでいます。

 有識者会議は6月上旬にも今後の方向性をとりまとめる予定ですが、こうした議論を踏まえて、厚労省は、自治体による助成など、妊婦の自己負担を軽減する仕組みを取り入れた上で、妊婦加算を来年度の診療報酬改定に合わせて再開することも含め、検討を進めることにしています。

 2019年5月24日(金)

 

■オプジーボ、本庶氏以外に2人を共同発明者と認定 アメリカの裁判所

 ノーベル医学・生理学賞を昨年受賞した本庶佑(ほんじょたすく)京都大学特別教授の研究を切っ掛けに開発された、がんの治療薬「オプジーボ」の特許について、アメリカの裁判所は、アメリカの研究者ら2人も共同発明者として認める判決を出しました。

 オプジーボは、免疫の仕組みを利用してがん細胞を攻撃して治療する薬で、世界各国で皮膚がんや肺がんなどの治療に使われています。

 オプジーボの特許は、本庶氏と日本の小野薬品工業が持っていますが、アメリカのダナ・ファーバーがん研究所は、ゴードン・フリーマン博士ら2人の研究者を共同発明者として認めるよう求める訴えを2015年に起こしていました。

 これについて東部ボストンの連邦地方裁判所は17日、1999年以降、薬の開発で鍵となったタンパク質を研究する際、本庶氏は2人の研究者と実験データを共有して論文を発表しており共同で研究していたのは明らかだとして、2人を共同発明者と認めました。

 フリーマン博士は、「欠かせない貢献をしたと裁判所に認められて喜んでいる」とコメントしています。オプジーボを巡っては、本庶氏が小野薬品工業に対し、特許料が低いとして配分を見直すよう求めており、今回の判決は今後特許収入に影響を与える可能性が出ています

 本庶氏の代理人を務める井垣太介弁護士は、「現在、判決の内容を精査しているところで、特許の使用にかかわっているアメリカ製薬会社、ブリストル・マイヤーズスクイブや小野薬品工業と協議した上で今後の対応方針を決めたい」とコメントしています。

 今回の判決を受けて小野薬品工業は、「判決は不服で、ブリストル・マイヤーズスクイブと協議した上で控訴する予定だ」とコメントしています。

 2019年5月24日(金)

 

■はしかの予防対策強化を国に要望 1都3県の知事など

 肺炎や脳炎を起こして重症化することもある「はしか(麻疹=ましん)」の患者が急増していることを受けて、首都圏の1都3県の知事と政令指定都市の市長は、国に対して、感染の中心となっている世代へのワクチン接種を進めるなど予防対策を強化するよう要望しました。

 要望を行ったのは、東京、神奈川、埼玉、千葉の1都3県の知事と、5つの政令指定都市の市長で作る「九都県市首脳会議」で、23日、代表として千葉市の担当者が厚生労働省に要望書を提出しました。

 国立感染症研究所によりますと、5月12日までのはしかの患者は全国で486人に上り、すでに昨年1年間の1・7倍を超えています。

 要望書では、感染の中心となっている20歳代から40歳代の人達が確実にワクチン接種を受けられるよう対策を検討するよう要請しているほか、海外から帰国した人が発症するケースが多いことから渡航前の予防接種の呼び掛けを強化すること、そしてワクチンの安定供給を図ることなども求めています。

 要望書を提出した千葉市保健福祉局の山口淳一次長は、「東京オリンピック・パラリンピックに向けて、国と協力して対策を進めていきたい」と話していました。

 2019年5月23日(木)

 

■「認知症の恐れがある」判定の高齢者、65%免許返上 警察庁まとめ

 認知機能検査で「認知症の恐れがある」と判定された75歳以上のドライバーのうち、最終的に医師に認知症と診断され運転免許証が取り消し・停止になったのは昨年、5・0%に当たる1932人でした。ほかに、判定後に自主返納したり更新せず失効させたりした人を含めると、65・1%が免許の継続を断念していました。

 警察庁が21日、状況をまとめました。

 認知機能検査では、「認知症の恐れがある」第1分類、「認知機能低下の恐れがある」第2分類、「低下の恐れがない」第3分類のどれかに判定されます。高齢ドライバーによる交通事故の対策として、認知機能検査を強化する改正道路交通法が2017年3月に施行しました。従来、75歳以上の人は免許更新時に検査を受けていましたが、一時不停止や信号無視、逆走など一定の違反をした人にも臨時の検査が義務付けられました。

 2018年は約216万5000人が検査を受け、2・5%の約5万4000人が第1分類と判定されています。

 警察庁は、第1分類と判定された人(2017~2018年)で2018年1年間に免許の扱いが決まった3万9025人の処分結果をまとめました。それによると、1932人が取り消し・停止となったほか、45・5%の1万7775人が自主返納、14・6%の5706人が失効させました。

 2019年5月23日(木)

 

■パリ協定目標達成でも猛暑日1・8倍に 気象研究所などが予測

 気象庁気象研究所などの研究チームは産業革命以降の世界の気温上昇が2度に抑えられたとしても、日本で最高気温が35度以上となる猛暑日が発生する頻度が現在の1・8倍に増えるとの予測結果をまとめました。

 温暖化対策の国際的な枠組み「パリ協定」では気温上昇を2度未満にすることを目指し、1・5度に抑える努力目標も掲げるものの、達成できないと過去に経験したことがないような猛暑の発生に見舞われるとしています。

 研究チームは、温暖化の影響を評価する気候予測データベースを使い、世界の平均気温と国内で1年間に猛暑日を記録したアメダス観測地点数との関係を導き出し、将来の見通しを評価しました。

 平均気温の上昇が2度(現在からは約1度)だと、猛暑日になる地点が1年間で延べ4000地点以上と1・8倍に、1・5度(現在からは約0・5度)でも延べ3000地点以上と1・4倍となりました。

 温暖化が進む実際の地球と、産業革命前を想定した温暖化していない地球を再現し、昨夏のような猛暑が発生する確率も算出しました。温暖化している場合の約20%に対し、温暖化がない場合はほぼゼロとなりました。

 昨夏のように下層の太平洋高気圧とアジア大陸から張り出した上層のチベット高気圧が「2段重ね」になると、猛暑の発生確率は2倍になるといいます。

 記録的猛暑だった昨夏は、延べ6487地点で猛暑日となりました。今田由紀子・気象研究所主任研究官は、「昨年のような猛暑が頻発し、4000地点を超える年が当たり前のようになる可能性がある。このような情報を発信することで異常気象や温暖化に対する国民の理解が深まると期待している」と話しています。

 2019年5月23日(木)

 

■認知症予防には有酸素運動1回10分以上 WHOが初指針

 世界保健機関(WHO)は、世界的に増加している認知症の予防のための初となる指針を公表しました。運動の習慣や健康的な食事、禁煙が重要だとしています。各国が適切な対策を取らない場合、世界の認知症患者が2050年には1億5200万人に達する恐れがあるとしています。

 WHOによると認知症患者は世界に推計5000万人おり、毎年約1000万人が新たに発症しています。

 指針は12項目からなり、特に効果的な予防策として定期的な運動、禁煙を挙げました。65歳以上の高齢者では、1週間に少なくとも150分の中程度の有酸素運動が望ましいとしています。有酸素運動は1回に10分以上するとよいといいます。

 また、バランスの取れた食事や飲酒制限、社会活動もリスク軽減に有効だとしました。食事では、芋類を除く野菜や果物を1日に少なくとも400グラム摂取するよう勧めています。一方、ビタミンBやE、不飽和脂肪酸などのサプリメントをとることは、認知症のリスクを下げる効果が確かめられていないため、推奨しないとしました。

 高血圧と糖尿病も、認知症のリスクを高めるとしています。

 認知症は脳の神経細胞が死んだり働きが悪くなったりすることで、物忘れや妄想などの症状が出て日常生活に支障がある状態。厚生労働省は、日本の認知症患者は2012年に462万人で、2025年には約700万人まで増えると推計しています。

 2019年5月22日(水)

 

■野菜、果物、魚が少なく、塩が多いと死亡リスク3倍 厚労省が調査

 国が勧める食事量より野菜や果物、魚が少なく、食塩が多いと、脳卒中や心臓病の死亡リスクが約3倍になることが、厚生労働省の研究班の調査でわかりました。単一の食品と死亡リスクの関係を調べた研究はこれまでにもありますが、複数の食品の組み合わせで評価したのは初めてといいます。

 研究班(代表者=三浦克之・滋賀医科大学教授)は、1980年の国民栄養調査に参加し、食べた物の重さをはかりで量って、1日当たりの食事量を調べた全国の30~79歳の男女9115人を、2009年まで追跡しました。

 国の健康施策「健康日本21」などが勧める1日当たりの食事量を元に、基準を設定。野菜350グラム、果物200グラム、魚80グラム(いずれもこの量以上)、食塩は男性8グラム未満、女性7グラム未満を基準量にして、過不足の影響を調べました。

 29年間で、脳卒中や心臓病といった循環器病で1070人が死亡。基準をすべて満たした人と比べ、野菜・果物・魚がいずれも基準量の半分未満、食塩が基準量以上の人は、循環器病による死亡リスクが2・87倍になりました。野菜は十分でも果物と魚は半分未満、食塩は基準量以上だと、死亡リスクは2・25倍でした。

 2019年5月22日(水)

 

■小野薬品「本庶氏との契約は妥当」 オプジーボ対価上乗せ要求に応じず

 小野薬品工業は22日、本庶佑(ほんじょたすく)京都大学特別教授ががん免疫薬を巡る特許料率の見直しを求めていることに対して、「両者の合意のもと締結した」とのコメントを発表しました。「今後も契約に基づき対価を支払う」と料率見直しに否定的な姿勢を示しました。

 特許収入の分配に関する争いが長引けば今後、両者の研究開発にも影響を及ぼしかねません。

 本庶氏は昨秋、ノーベル生理学・医学賞の受賞が決まってから、がん免疫薬「オプジーボ」で小野薬品と共有する特許について、「小野薬品から得る対価が少なすぎる」と批判を繰り返してきました。特に「特許契約時の説明内容が不正確」とし、契約の見直しや自身が京都大に創設した若手研究者の支援基金への1000億円規模の資金拠出を求めています。

 オプジーボの臨床試験が始まった当時、小野薬品の連結売上高は1400億円程度と今の半分程度でした。今回のコメントでは新薬開発の成功確率は3万分の1、がん免疫薬の実現可能性が極めて低いとされた中での成果で、同社が利益を得すぎだとする本庶氏の主張に暗に反論しました。

 小野薬品は特許の対価として、契約に基づく約26億円に加え、100億円規模の上乗せを提案。一方、本庶氏側は「常識的な相場なら800億円以上」と主張しています。

 小野薬品は代替案として、若手研究者の育成を目指し京都大への寄付を検討しています。「オプジーボにかかわる第三者への支払い」に備えた引当金を毎年積み立てており、2019年3月期には172億円に上りました。ただ、資金拠出が巨額になれば株主の理解を得られるかどうかは不透明です。

 本庶氏は、「契約締結時の重要な事実関係や同社からの再交渉の提案内容を開示しておらず、不正確な情報と印象を与えている」とコメントしました。

 2019年5月22日(水)

 

■2050年に東京都内のCO2排出を実質ゼロに 独自目標に向けた戦略策定へ

 東京都の小池百合子知事は、地球温暖化対策の一環として、2050年に都内の二酸化炭素の排出量を実質ゼロにする目標を掲げ、今年12月をめどに目標実現に向けた「ゼロエミッション東京戦略」を策定する考えを明らかにしました。

 これは、東京都内で21日から本格的に始まった世界の主要都市のトップなどが共通で抱える課題を議論する「U20メイヤーズ・サミット」で、小池知事が明らかにしました。

 地球温暖化対策の国際的な枠組み「パリ協定」は、世界全体の温室効果ガスの排出量を今世紀後半に実質ゼロにする目標を掲げ、政府は2050年までに国内で80%削減する目標を立てています。

 東京都は、政府の目標に先んじる形で2050年に都内の二酸化炭素の排出量を実質ゼロにすることを、新たな目標にします。

 その上で、実現に向けた具体的な戦略を今年12月をめどに策定し、電気自動車の普及や、家庭や大規模なオフィスビルから排出されるプラスチックごみの焼却量を2030年までに4割削減することなども盛り込む方針です。

 22日まで開かれる「U20メイヤーズ・サミット」では、世界の26の主要な都市が地球温暖化対策や持続可能な経済成長の在り方など共通で抱える課題について議論を交わしています。

 そして、今回の議論を踏まえ、来月のG20大阪サミットに向けた共同声明を、22日発表することにしています。

 2019年5月22日(水)

 

■AI 、CT画像から早期肺がん94%見分ける アメリカの研究チーム

 人工知能(AI)に、CT画像での肺がんの特徴を学習させたところ、90%を超える正確さで早期の肺がんを見分けることができたと、大手IT企業、グーグルなどの研究チームが発表し、将来、医師の診断に生かせる可能性があるとして注目されています。

 グーグルやスタンフォード大学などの研究チームは、AIがCT画像から肺がんを見付けられるか調べた結果を20日、アメリカの医学雑誌「ネイチャー・メディシン」に発表しました。

 研究チームはまず、4万2000枚余りの肺のCT画像を使ってAIに肺がんの特徴を学習させました。その上で6700枚余りのCT画像をAIに解析させた結果、がんを見落とすケースやがんではないものを誤ってがんと判断するケースが少なく、早期の肺がんを94%の正確さで見付けたということです。

 専門の医師と比べると、経過を示す複数の画像を解析した場合では同じ程度の正確さでしたが、経過がわからない1枚の画像からでは、医師よりもやや高い正確さをみせたということです。

 肺がんは日本やアメリカなど各国で最も多くの人が亡くなるがんで、早期に正確に診断することが課題となっており、将来この分野でAIが生かせる可能性があると注目されています。

 2019年5月21日(火)

 

■パーキンソン病の予防薬候補を開発 大阪大チーム

 神経難病「パーキンソン病」で、患者の脳に蓄積するタンパク質の合成を抑制する物質を開発したと、大阪大学などの研究チームが21日、発表しました。パーキンソン病を発症するマウスに投与すると、症状が現れにくくなったといいます。

 今後、創薬に向け、サルなどの実験を通じて安全性を確かめます。論文が同日、イギリスの電子科学誌に掲載されました。

 パーキンソン病は手の震えや体のこわ張りなどの症状を示します。国内では10万人に100~150人が発症し、60歳以上では10万人に1000人と高率となります。

 患者の脳内では、タンパク質「α―シヌクレイン」が異常な構造になって蓄積し、神経がダメージを受けています。情報を伝える脳内物質「ドーパミン」の減少を補う対症療法はあったものの、根治や予防ができる薬はありませんでした。

 研究チームは、α―シヌクレイン合成の途中段階で作られる伝令RNA(mRNA)に結合し、分解を促す物質(核酸)を作製しました。マウスの実験で、α―シヌクレインの量を4~5割程度抑制できたといいます。

 一部の遺伝性のパーキンソン病患者では、α―シヌクレインが健康な人の1・5倍程度に増えることが知られ、今回開発した物質は事前の投与で発症を防げる可能性があります。非遺伝性の患者の脳内でも同様の状況が想定され、効果が期待できるといいます。

 大阪大の望月秀樹教授は、「脳神経が大きくダメージを受けてからの投与では遅い可能性がある。パーキンソン病になるリスクの高い人や、発症早期の人に使うことが想定される」と話しています。

 2019年5月21日(火)

 

■熱中症対策に男性も日傘の活用を 環境省が呼び掛け

 原田義昭環境相は21日の閣議後記者会見で、猛暑が予想される夏の熱中症対策として、日傘を差すよう呼び掛けました。環境省は「男性も活用してほしい」と訴えており、百貨店などと協力してキャンペーンを実施します。

 記録的猛暑だった昨夏は、熱中症による救急搬送人数(5~9月)が前年比で約4万2000人多い約9万5000人となり、統計開始から最大でした。地球温暖化が進み、熱中症対策が喫緊の課題となる中で、環境省は対策に役立つ身近な日常用品として日傘に着目しました。

 環境省によると、日傘を差せば熱中症の危険性を示す「暑さ指数」が最大で3度下がります。また日射を遮る量が多いため、帽子をかぶる場合より汗の量が約17%減る効果があり、夏に街中を歩く際、上着を脱いだ上で日傘も使うと、暑さによるストレスを約20%軽減できるといいます。

 環境省の依頼で全国の百貨店では5月下旬から、日傘の特設コーナーなどで、日傘を差すイラストや熱中症予防に効果があることを掲示します。

 紫外線予防で女性が差すイメージが強く、「男性には日傘の文化が伝わっていない」ともいわれるものの、環境省の担当者は「おしゃれな若者が日傘を差す『日傘男子』という言葉も定着しつつある。男女を問わず、すべての年代への普及を目指したい」と意気込んでいます。

 2019年5月21日(火)

 

■国立大が教職員採用で喫煙者排除 長崎大と大分大が方針

 九州の国立大学の長崎大学と大分大学が4月、教職員の採用で「喫煙者を対象としない」などとする方針を打ち出しました。目的は受動喫煙から学生や教職員の健康を守ること。近年は禁煙を採用の条件とする民間企業もあるものの、国立大学の取り組みとしては異例です。

 「受動喫煙から学生と教職員を守るために、喫煙する方の採用は見送らせていただいております」。4月から募集を開始した教職員の募集要項に、長崎大はこうした一文を記載しました。

 長崎大によると、喫煙者でも就職後の禁煙を約束すれば採用の対象とします。しかし「非喫煙者の方が本学の勤務環境により適していると考える」としており、優劣があることは明確。

 長崎大には約4000人の教職員がいますが、昨年8月時点の喫煙者率は約8%。全員禁煙を達成するため、長崎大は今後、学内での喫煙環境を完全に排除します。

 今年5月には学内に無料の禁煙外来を設置し、喫煙中の教職員と学生の禁煙をサポート。キャンパスにある喫煙所は今年8月以降に全廃します。担当者は、「長崎大はたばこを吸わないとの認識が広がれば、大学としてブランドにもなり得る」と強調しています。

 長崎大の発表から間もなく、大分大も教職員の採用を巡り、非喫煙者を優先すると公表。教員選考の基本方針に「非喫煙者を優先して選考する」との項目を追加しました。

 大分大では、段階的に喫煙対策を進めてきた経緯があり、2011年4月には全3キャンパスの全面禁煙を実施し、2012年4月には「学生のすべてが非喫煙者となるよう努力する」と明記した「大分大学禁煙推進宣言」も制定しました。

 さらに今回は、教職員採用にもその方針を強くにじませ、「公的な研究機関として健全な環境を整え、健康意識の高い学生を育てていきたい」としています。

 社会では「たばこ離れ」が驚異的なペースで進んでいます。日本たばこ産業(JT)の「全国たばこ喫煙者率調査」によると、2018年5月時点の推計喫煙人口は前年比37万人減の1880万人で、喫煙者率は前年比0・3ポイント減の17・9%。1996年のピーク時の49・4%から低下が止まりません。

 2019年5月20日(月)

 

■豊胸や美容サプリに使用の4食品、注意が必要な成分に指定へ 厚労省が方針

 厚生労働省の有識者会議は20日、豊胸や美容の効果をうたう健康食品やサプリメントに使われている4つの食品を「特別の注意を必要とする成分等」に指定する方針案をまとめました。製造販売業者は、適正な製造管理や健康被害情報の報告が義務付けられます。

 4食品は、プエラリア・ミリフィカ(豊胸、美肌など)、ブラックコホシュ(更年期障害)、コレウス・フォルスコリー(体脂肪率減少など)、ドオウレン(鎮痛、解毒)。いずれも植物で、ハーブや漢方などとして使われています。

 2018年6月に食品衛生法が改正され、2020年6月をめどに始まる新制度の一環。指定成分は年内にも決定し、告示します。指定された食品や成分を食べても直ちに健康被害が出るものではありません。

 厚労省によると、プエラリア・ミリフィカはタイなどに分布するマメ科のクズ(葛)と同属の多年生つる植物で、根には女性ホルモンと同様の働きをする成分を含み、「豊胸によい」、「肌によい」、「若返りによい」などの効果が期待できるといわれています。

 しかし、プエラリア・ミリフィカの摂取によって、エストロゲンが常に過剰な状態が続くことにより、女性ホルモンのバランスが乱れて生理不順や不正出血など、5年間で223件の健康被害があったといいます。

 2019年5月20日(月)

 

■沖縄県、運転免許返納が一気に5倍 東京・池袋事故後に

 4月19日、東京都豊島区池袋で87歳の男性が運転する乗用車が暴走し、沖縄県出身の女性と娘が巻き込まれて死亡した事故以降、同県内で運転免許の自主返納が増加傾向にあることが、18日までにわかりました。

 自主返納者の多くは65歳以上の高齢者。沖縄県警によると、事故以前の返納者は1日6人程度でしたが、事故の翌週は多い日で事故以前の5倍に当たる31人が返納申請しました。

 1998年に制定された運転免許の自主返納制度は、加齢による身体機能や認知機能の衰えで運転に不安のある人などが自主的に免許を返す制度。2009年に82人だった自主返納者は2018年に3463人と42倍に増えました。2019年は3月までの返納者は854人(暫定値)で、4月の事故を受け返納者はさらに増える見込みです。

 沖縄県警交通部は、「運転に不安を感じている人は相談を寄せてほしい」と呼び掛けています。高齢ドライバーを巡っては年齢を理由に運転を危険視されることも多く、70歳以上に義務化された高齢者講習の予約が取りづらいなどの指摘もあります。

 全国で事故や逆走などの報道が相次ぎ自主返納制度の認知が高まる中、公共交通が整わない環境で車社会の沖縄県では家族や近親者のサポートがないと返納にはつながらないと県警はみており、公共交通の割引拡充など自主返納につながる環境づくりを検討しています。

 2019年5月19日(日)

 

■世界で最も長寿の夫婦、108歳の夫が亡くなる 高松市

 昨年、世界で最も長寿の夫婦として妻とともにギネス世界記録に認定された高松市の松本政雄さんが17日、108歳で亡くなりました。

 松本政雄さんは明治43年7月9日生まれの108歳で、昨年7月、当時100歳の妻ミヤ子さんの年齢と合わせ208歳となり、ギネス世界記録に世界で最も長寿の夫婦として認定されました。

 高松市によりますと、松本さん夫婦は市内の同じ老人ホームで暮らしていましたが、政雄さんは10日ほど前から体調を崩し、17日午前1時46分、急性心不全のため亡くなったということです。

 政雄さんは、明治、大正、昭和、平成、そして令和と5つの元号にわたる時代を生き、4月1日にはテレビのインタビューに応じ、新しい令和の時代も「二人で仲よく世をわたっていきたい」と話していました。

 高松市などによると、夫婦は大分県出身。1937年に結婚し、5人の娘を育てました。ギネスのホームページでは、孫が13人、ひ孫は25人いると紹介されています。

 政雄さんの娘の佐野博美さんは、「ギネス世界記録に認定された際には非常に喜んでいました。最後まで元気な姿を見せてくれ、十分に頑張って生きたと思います。立派な姿を見せてもらったので、101歳の母も頑張ってくれると思います」と話していました。

 2019年5月19日(日)

 

■京都大、がん免疫療法の研究センター設置へ トップは本庶氏

 京都大学は、ノーベル医学・生理学賞を昨年、受賞した本庶佑(ほんじょたすく)特別教授をトップにしたがん免疫療法の総合的な研究センターを設置する方針を決めました。がん免疫療法の総合的な研究開発拠点ができれば、国内では初めてだということです。

 京都大特別教授の本庶佑さんは、免疫の働きを利用してがんを治療する免疫療法を医療として確立したとして、昨年、ノーベル医学・生理学賞を受賞しました。
 京都大の関係者によりますと、がん免疫療法の開発を加速するため、来年度、医学部に新たに「がん免疫総合研究センター」を設置することを決め、文部科学省に予算を要求する方針です。

 センター長は本庶さんが務め、免疫の仕組みなど基礎的な研究から新薬の開発や臨床での応用まで幅広くがん免疫療法の研究開発を行うほか、治療に当たる医師の育成も行うとしています。

 がん免疫総合研究センターは、当面は既存の施設の中に設ける予定ですが、5年後をめどに医学部の敷地に専用の建物の整備を目指すということです。

 厚生労働省などによりますと、がん免疫療法について基礎研究から臨床応用まで総合的に研究開発を行う拠点はアメリカやヨーロッパにはありますが、国内では初めてだということです。

 2019年5月18日(土)

 

■新生児聴覚検査、費用を助成する自治体が増加 東京都や大阪市など

 新生児の聴覚検査を促すため、費用を助成する自治体が増えています。助成制度のある市区町村は2015年度まで1割に満たなかったものの、今年に入り東京都や大阪市、福岡市が導入するなど、ここ3年ほどで急増し、今年度中に4割以上に達する見通しです。専門家は「全自治体が助成制度の早期導入を」と訴えています。

 聴覚検査には、寝ている新生児にイヤホンで小さい音を聞かせて脳波を調べる方法などがあります。難聴の新生児は1000人に1、2人いるとされ、聴覚検査で発見できれば早期に適切な療育や支援を始められ、言葉の発達などへの悪影響が抑えられます。

 心身に重い症状が出る代謝異常などを調べる新生児検査は原則無料ですが、聴覚検査については、母親が妊娠中に風疹と診断され、難聴を伴う恐れがある新生児らを除いて保険が適用されず、3000~1万円程度とされる検査費は全額自己負担となります。

 以前から費用の全額や一部を助成する自治体はあったものの、厚生労働省が2014年度に初めて調査したところ、こうした市区町村は6・3%にとどまることが判明。新生児の約15%が検査を受けていないことも、日本産婦人科医会の調査で明らかになりました。

 厚労省は2016年3月、全国の自治体に公費助成を積極的に図るよう通知。その後、取り組みが進展し、昨年度までに市区町村の37・5%が導入し、今年度中に43%まで増える見込みといいます。

 2016年度まで助成制度を持つ自治体がなかった大阪府(43市町村)では、大阪市が今年1月から最大4020円を公費負担するなど、計11市町村が導入しました。これまでは「検査費が高い」「上の子が大丈夫だったので必要ない」と検査を受けないケースが目立ったといい、4月に導入された同府松原市にある阪南中央病院の山枡誠一院長は「公費負担があると、検査の必要性を説明しやすい」と明かしています。

 東京都でも、すでに実施していた4市村を除く全58市区町村で4月、一律3000円の助成が始まりました。全市区町村で助成制度のある都道府県も2014年度は岡山、長崎の2県だけでしたが現在は13都県まで拡大しています。

 日本産婦人科医会の松田秀雄・副幹事長は、「助成制度があれば、検査実施率が高くなる傾向がある。どこで生まれても同じように助成を受けられる体制づくりが必要だ」と話しています。

 2019年5月18日(土)

 

■AI医療機器、承認審査短縮も 性能向上に対応、厚労省法改正

 人工知能(AI)を利用して病気の診断を支援する医療機器の性能が、販売開始後に自己学習によって向上した場合、厚生労働省が改めて行う承認審査の期間が短縮される見通しとなりました。政府は、関連する内容を盛り込んだ医薬品医療機器法の改正案を今国会に提出。会期中の成立を目指しています。

 AI医療機器のように学習によって承認後に性能が変わる機器は、頻繁に審査を受けなければならない可能性があり、専門家から素早い審査を求める意見が出ていました。

 法改正案では、AI医療機器は、最初に承認された際に今後のデータの集め方や管理、学習のさせ方など、機器を改良するプロセスの部分を計画としてまとめて医薬品機構にあらかじめ届け出るよう開発企業に求めます。

 これにより、改めて審査する際は、届け出た計画に沿って改良された上で、十分な性能を持っているかどうかをチェックするだけですみます。

 2019年5月18日(土)

 

■長期の糖質制限、老化を促進 マウス実験で判明

 米やパンといった主食をとらず、タンパク質などでカロリーを補う「糖質制限」を長期間続けると、老化が早まる可能性があることが、東北大学の都築毅准教授(食品機能学)らのマウスを使った実験で明らかになりました。静岡市で開かれている日本栄養・食糧学会の大会で19日に発表します。

 糖質制限は、短期間行うと内臓脂肪を減らしたり、血糖値を下げたりする効果が報告されています。

 都築准教授らは寿命が約1年のマウスを20匹ずつの3グループに分け、合計のカロリーは同じで内訳を「標準的」「低糖質・高脂肪」「低糖質・高タンパク」にした飼料をそれぞれ与えました。

 「低糖質・高タンパク」の飼料は、糖質によるカロリーは2割に抑え、残りを乳タンパクで補いました。人間が3食すべて主食を抜いた状態に相当する厳しい糖質制限です。その結果、「低糖質・高タンパク」のマウスは、「標準的」と比べて寿命が約2割(8~9週間)短かくなりました。

 腸内で乳酸をつくる細菌が減っており、腸内環境が悪化してがんなどになりやすかったとみられます。短期の記憶力を測ると、「標準的」のマウスに比べ半分程度でした。また、「標準的」「低糖質・高脂肪」と比べて皮膚や毛髪の状態が非常に悪く、見た目の老化が著しく促進されていました。

 都築准教授は、「人間でも糖質制限を20~30年程度続けると、老化を促進する可能性がある。医師や管理栄養士などの指導で行ってほしい」と話しています。

 2019年5月18日(土)

 

■光を当てて血管を透視し、リアルタイムで映像化 奈良先端大が技術を開発

 人体に光を当てた際の反射の時間差を利用して内部の血管を透視する技術を、奈良先端科学技術大学院大学(奈良県生駒市)の研究チームが開発しました。血管の様子を映像としてリアルタイムで確認でき、血管が細い高齢者や子供の注射や点滴などで活用できそうです。市販のカメラとライトを使い、数万円の費用で製作可能といいます。

 アメリカ・カーネギーメロン大学との共同研究。一つの光源を動かしながら体の表面に当てて映像を撮ると、光の照射と撮影のタイミングが同じなら通常の映像が撮影されます。開発した技術では、撮影を照射のタイミングから1000分の1秒程度遅らせると、体の表面から数ミリ奥に当たって反射した光が捉えられるといいます。体の表面で反射した光はあまり映り込まないことから、体の表面から数ミリ奥にある血管の様子を透視するように撮影できます。

 こうして捉えた映像では、心臓の動きによって起きる血管のわずかな動きも把握でき、体に触れることなく脈拍を計測することもできました。通常の可視光線を使うため、X線などと違って健康への影響も心配なく、安価なシステムのため、発展途上国の医療現場でも導入が容易といいます。

 研究チームのリーダーで、画像情報処理が専門の久保尋之助教は、「医療関係者からは、注射や点滴だけでなく、下肢静脈瘤(りゅう)の検査にも応用できるのでは、との声も受けた。より強い光や体内を透過しやすい近赤外光を使うなどし、より深い部分の透視が可能か研究を進めている」と話しています。

 2019年5月18日(土)

 

■職場で熱中症、死者28人、休業者1000人 建設業が最多

 厚生労働省は17日、2018年に職場で熱中症にかかった人のうち、死者が28人、労災の報告義務がある4日以上の休業者が1150人に上ったと発表しました。昨夏の記録的な猛暑を背景に、いずれも前年から倍増しました。

 4日以上の休業者が1000人を超えるのは、過去10年で初めてで、厚労省の担当者は「恐らく過去最悪の数字」としています。

 業種別で熱中症による死傷者が最も多かったのは、239人の建設業。熱中症で亡くなった人の約4割、10人が建設業でした。一方、屋内作業が比較的多い製造業や運送業も前年からほぼ倍増しました。この2業種は2017年、熱中症による死者はいませんでしたが、2018年は計9人に急増しました。

 発生時間帯は、日差しの強い日中が多いものの、18時台以降も計146人いました。厚労省では「夏場に向けて、身体に負担のかからない作業を心掛けてほしい」としています。

 2019年5月16日(木)

 

■乳がん治療薬の服用後3人死亡 厚労省が注意喚起

 厚生労働省は17日、乳がん治療薬「ベージニオ錠」を服用した14人が重い間質性肺疾患を発症し、うち3人が死亡したとして、医療関係者らに注意喚起しました。14人中4人は副作用の疑いがあり、死亡した3人のうちの1人も含まれるといいます。

 厚労省によると、ベージニオ錠は昨年9月に承認された新薬で、日本イーライリリー(神戸市中央区)が製造販売します。昨年11月の発売から今年5月13日までに、約2000人の患者が使用したと推定されます。

 厚労省は、間質性肺疾患の初期症状の息切れや発熱などの異常があった場合はベージニオ錠の服用を中止し、医師に相談するよう呼び掛けています。

 2019年5月17日(金)

 

■LEDライトは目を損傷する フランス保健機関が警告

 発光ダイオード(LED)照明に含まれるブルーライト(青色光)は目の網膜を痛め、自然な睡眠リズムを乱すと、フランス政府傘下の保健機関が警告しています。

 フランス食品環境労働衛生安全庁はこのほど、400ページに及ぶ報告書を発表。この中で、LED光には毒性があり、強力なLED光にさらされると回復不能な網膜損傷や視力低下につながるとの懸念は正しかったことが、新たな研究結果で確認されたと発表しました。

 報告書は、現行の短時間のLED暴露限界値は、家庭や職場環境ではまず達する可能性のない値であるものの、それでも見直しが必要だと提言しています。

 一方、強度の低いLED光に長時間さらされる慢性暴露について報告書は、危険性は少ないとした上で、「網膜組織の老化を促進し、視力低下や加齢による黄斑変性といった特定の変性疾患の一因となる」と結論付けました。
 
 携帯電話やタブレット、パソコンのバックライトに用いられるLEDライトは光度が非常に低いため、目の損傷リスクは少ないものの、夜間や暗い場所で使用すると生体リズムや睡眠パターンが乱れる恐れがあると、報告書は警告しています。

 フランス食品環境労働衛生安全庁は対策として、家庭用のLED照明には「暖色系の白色」を購入することを勧め、さらに、ブルーライトを多く含むLED光への暴露をなるべく控え、就寝前にはLED画面を見ないようにと助言しています。

 2019年5月17日(金)

 

■相模原市の女性がはしか感染  電車利用者に接触の可能性

 神奈川県相模原市の20歳代の女性がはしか(麻疹=ましん)に感染し、症状が出る前後の5月10日から14日にかけてJR相模線と小田急線の利用者に接触した可能性があることから保健所が注意を呼び掛けています。

 相模原市保健所によりますと、はしかの感染が確認されたのは医療機関に勤務する市内の20歳代の女性です。

 5月11日以降、発熱や発疹などの症状が出て、16日はしかに感染していることがわかったということです。

 はしかは高熱や全身に発疹が出るウイルス性の感染症で、感染力が非常に強く妊婦が感染すると流産や早産の恐れもあります。

 女性は5月10日午前11時ごろ、JR相模線の海老名駅から下溝駅まで、13日は午前9時30分ごろ、小田急線の相武台前駅から相模大野駅までと午後2時30分ごろ、相模大野駅から相武台前駅まで、14日は午前7時30分ごろ、JR相模線の下溝駅から海老名駅までと午後4時30分ごろ、海老名駅から下溝駅までそれぞれ乗車したということです。

 相模原市保健所は、女性が電車の利用者に接触した可能性があることから、はしかが疑われる症状が出た場合は事前に連絡した上で、医療機関を受診するよう注意を呼び掛けています。

 2019年5月17日(金)

 

■インフルエンザ防御機能、空気の乾燥で低下 アメリカ・エール大学が研究

 冬にインフルエンザに感染しやすくなるのは、空気の乾燥によって体の防御機能が低下することが一因だとする研究成果を、アメリカのエール大学などがまとめました。論文が13日、アメリカ科学アカデミー紀要に掲載されました。

 研究チームは、「加湿の重要性を改めて示した成果だ」としています。

 工藤恵理子・エール大研究員らは湿度10%と50%の環境で別々に飼育したマウスについて、呼吸時に空気の通り道となる気道の粘膜を調べました。湿度10%で育てたマウスは、異物を運び出す繊毛と呼ばれる粘膜上の器官の動きが鈍り、ウイルスを外に排出する能力が低くなっていました。

 また、湿度10%で育てたマウスがインフルエンザに感染すると、湿度50%で育てたマウスよりもウイルスに破壊された粘膜細胞の回復が遅くなることが判明。異物をからめ取る粘液の分泌が減るなど、ウイルスへの防御機能が弱まることもわかりました。

 空気が乾燥する冬は、くしゃみなどのしぶきに含まれるウイルスが死滅しにくく、インフルエンザが流行することが知られていました。工藤さんは「湿度が低いと、水分不足が起こり、さまざまなストレスが体内で生じることが原因ではないか」と話しています。

 ウイルスに詳しい押谷仁・東北大教授は、「空気の乾燥が、ウイルス自体ではなく感染する動物に与える影響に着目した新しい視点の研究といえる」と話しています。

 2019年5月17日(金)

 

■マダニ媒介の「日本紅斑熱」を発症 静岡県の2人

 静岡県は16日、県熱海保健所管内の医療機関から今月15、16日にマダニの媒介によるとみられる「日本紅斑熱」に70歳代の男女が発症したとの届け出があったと発表しました。患者2人とも回復に向かっているといいます。

 静岡県や同保健所によると、男性は神奈川県湯河原町内、女性は熱海市内に在住。いずれも日ごろから農作業をしており、男性は11日に皮疹と発熱、女性は6日に皮疹の症状を訴えていました。同保健所では2人は農作業中にマダニに刺されて発症したと推定しています。

 日本紅斑熱は病原体の日本紅斑熱リケッチアを保有するマダニに刺されてから2~8日で発症し、重症化すると臓器不全などを引き起こし、死に至ることがあります。人から人へ感染して広がることはありません。令和に入ってから静岡県内では初めての発症者。

 マダニは春から秋にかけて活動が盛んになるため、静岡県ではレジャーや農作業の際、肌の露出を少なくし、マダニに刺された場合は早めに医療機関を受診するよう呼び掛けています。

 2019年5月16日(木)

 

■70歳代の認知症10年で1割減へ 政府が大綱素案で提示

 政府は16日の有識者会議で、認知症対策の強化に向け、発症を抑制する数値目標を初めて盛り込んだ新たな大綱の素案を示しました。「70歳代での発症を10年間で1歳遅らせる」と明記。実現すれば70歳代患者の約1割減につながるとして、予防策の一層の推進を掲げました。大綱は6月にも関係閣僚会議で決定します。

 厚生労働省の推計によると、認知症の高齢者は2015年時点で約520万人。団塊世代全員が75歳以上の後期高齢者となる2025年には約700万人に達するとされ、政府は現行の認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)に代わる大綱の計画期間を同年までとしました。

 素案では、認知症の「予防」と、患者が暮らしやすい社会を目指す「共生」を柱に据えました。

 認知症の発症率は、70歳代ごろから高くなる傾向があり、この日の有識者会議では、2018年の調査で、高齢者のうち7人に1人が認知症という最新の推計を公表。人口に占める割合は70~74歳で3・6%、75~79歳で10・4%に上りました。

 「予防」で発症を抑制する数値目標の対象も70歳代に設定し、当面は計画期間に当たる今後6年間で、70歳代人口に占める認知症の人の割合を6%低下させることを目指すといいます。

 具体的には、運動や社会参加が孤立を防ぎ、予防につながる可能性を指摘。地域の公園や公民館でのスポーツ教室や教育講座などの活用推進を掲げました。ただ、認知症の予防に関する科学的な根拠が不十分なため、研究も同時に進めます。

 また、発症後も自分らしく暮らせる社会の実現にも取り組みます。患者への理解の推進や相談窓口の強化を図り、優れた取り組みを行う企業などへの表彰制度の創設を検討。バリアフリー商品やサービスの開発も促すとしています。

 2019年5月16日(木)

 

造血幹細胞移植、累計4万件を超える 赤十字社と骨髄バンクが発表

 日本赤十字社と日本骨髄バンクは、公的バンクを通じた非血縁者から血液がん患者らへの造血幹細胞移植が累計4万件を超えたと発表しました。

 1件目は1993年。今年3月12日現在で4万47件となりました。内訳は骨髄移植と末梢(まっしょう)血幹細胞移植が計2万2929件、出産後に胎盤の提供で得られた臍帯(さいたい)血の移植が1万7118件でした。

 造血幹細胞は骨髄でつくられ、赤血球や白血球などに成長します。白血病などでがん化した細胞を薬や放射線で減らし、提供者(ドナー)の健康な細胞を移植して回復を図ります。バンクのドナー登録は競泳女子の池江璃花子選手が白血病を公表後に急増し、総登録者数も50万3883人と初めて50万人を上回りました。

 ただ総登録者では40歳代が21万5982人を占め、最多。骨髄提供ができるのは年齢が18歳以上54歳以下で、体重が男性は45キロ以上、女性は40キロ以上の健康者と決められており、「高齢化」が進んでいます。バンクは来年度、東京都と神奈川県の特に若者が多い献血ルームで登録を呼び掛ける方針です。

 2019年5月16日(木)

 

■医療保険の扶養家族、国内居住者のみ 改正健康保険法成立

 公的医療保険制度の適正化を図る健康保険法などの改正法は、15日午前の参院本会議で可決、成立しました。保険が適用される扶養家族を原則として国内居住者に限定することが柱で、外国人労働者の受け入れ拡大に伴う医療費の増加を抑えます。2020年4月に施行します。  

 採決では自民、公明の与党と立憲民主党、国民民主党、日本維新の会などが賛成しました。共産党などは反対しました。

 改正法では、大企業の健康保険組合や中小企業向けの全国健康保険協会(協会けんぽ)の加入者の扶養家族を認定する際、「日本国内に住所を有する」ことを要件に加えます。

 現行制度では居住地の要件がないため、外国人労働者が海外に残した家族も要件を満たせば扶養家族となります。扶養家族が現地で治療を受けた場合、自己負担分を除く医療費は健保組合や協会けんぽが負担することになるため、財政面への影響が懸念されていました。

 改正法が施行されれば、技能実習生や新たな在留資格「特定技能1号」の外国人が海外に残した家族には保険が適用されなくなります。

 国内居住要件は日本人にも適用されます。ただ、留学生や海外赴任に同行する家族ら一時的に海外に住む人は、例外とします。

 厚生年金に加入する会社員らの配偶者についても、年金の受給資格を得るための要件に一定期間の国内居住を加えました。

 改正法には、マイナンバーカードを健康保険証として利用できる規定も盛り込まれており、政府は2021年3月から開始する予定。

 2019年5月16日(木)

 

■マダニ媒介の感染症、東京都内で初の患者 長崎県を旅行後に発症

 東京都内の50歳代の男性が旅行で長崎県を訪れた後、マダニが媒介する「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)」と呼ばれる感染症を発症したことがわかりました。SFTSは西日本を中心に感染が確認されていますが、東京都内での患者の確認は初めてです。

 SFTSは、主に原因となるウイルスを持つマダニにかまれることで感染し、発熱や下痢などの症状が出て、重症の場合は死亡することもあります。

 東京都によりますと、今月1日から5日間、旅行で長崎県を訪れた東京都内の50歳代の男性が、発熱や下痢などの症状を訴えて都内の医療機関を受診し、14日、SFTSの発症が確認されたということです。

 この男性は、現在も入院中で重症だということです。

 マダニは草むらややぶに多く生息し、活動が春から秋にかけて活発になるということです。

 東京都は草むらなどに入る場合に長袖や長ズボンを着用することや、マダニにかまれた場合は医療機関をすぐに受診することを呼び掛けています。

 SFTSはこれまで西日本を中心に23府県で患者が報告されており、全国では4月末現在、約6年間で計404人の患者が報告されています。致死率は約20%で、全国404人の患者のうち、65人が死亡しました。近年は、SFTSに感染した犬や猫と接触して感染した例も報告されています。

 2019年5月15日(水)

 

■白血病新薬「キムリア」を保険適用 1回当たりの価格は3349万円

 1回の投薬で3349万円もする白血病治療薬が、公的な医療保険でカバーされるようになります。厚生労働省は15日、白血病など血液のがんで高い治療効果が見込まれる「キムリア」の保険適用を決めました。

 厚労省が同日開いた中央社会保険医療協議会(中医協)で、キムリアの公定価格(薬価)を3349万円にする案を示し、承認されました。22日から保険適用します。

 キムリアは、スイス製薬大手ノバルティスが開発しました。CAR-T(カーティー)と呼ばれる新たながん治療法の薬です。がん患者の体内からT細胞と呼ばれる免疫細胞を取り出し、がん細胞に攻撃する力を高める遺伝子を組み込んで体内に戻します。国内では初の保険適用になりますが、海外でアメリカやヨーロッパ、カナダ、スイスなどで製造・販売の承認を得ています。

 治療対象は、白血病の患者で抗がん剤が効かなかった25歳以下の人などに限定し、年間200人余りと見込まれます。市場規模は72億円。

 投与は1回ですみ、ノバルティスの試験では、若年の白血病患者で8割に治療効果がみられました。

 超高額薬でも患者の負担は抑えられそうです。公的医療保険は患者の窓口負担が現役世代で3割で、これに加え医療費の負担が重くなりすぎないよう1カ月当たりの自己負担の上限を定めた高額療養費制度があります。

 例えば、年収が約500万円の人がキムリアを使った場合、40万円程度の負担ですみます。大部分は税金と社会保険料で賄い、患者が加入する健康保険組合の負担は大きくなります。

 キムリアはアメリカでは約5200万円の価格がつき、日本国内の薬価に注目が集まっていました。アメリカでは、効き目に応じて患者から支払いを受ける成功報酬型が採用されています。日本では、効果の有無に関係なく保険適用されるため、薬価を抑えることができたようです。

 医療の進歩に伴い、治療費が高額になるケースは増えています。健康保険組合連合会によると、2017年度に1カ月の医療費が1000万円以上かかった件数は532件で、5年前に比べ2倍に増えました。

 近年、抗がん剤のオプジーボやC型肝炎薬のソバルディやハーボニーなど高額な薬が相次ぎ登場した影響とみられます。高額療養費の支給総額は2016年度で2兆5579億円となっており、保険財政を圧迫するとの懸念も根強くあります。

 ただ、薬価の過度な引き下げは製薬会社の開発意欲をそぐといった問題があります。フランスでは、抗がん剤など代替性のない高額医薬品の自己負担はない一方、薬によって全額自己負担を求めるなど区別しています。日本でも市販品で代替できる医薬品を公的保険から外すなど制度の見直しが必要になりそうです。

 2019年5月15日(水)

 

■寄生虫でダイエット効果、世界初証明 国立感染症研究所と群馬大

 国立感染症研究所と群馬大学の研究チームは、マウスを使った実験で、特定の寄生虫に感染させると脂肪が燃焼されてやせやすい体になることを世界で初めて証明しました。研究チームは「肥満を抑制できる薬などの開発につなげたい」として、詳しいメカニズムの解明を進めていくことにしています。

 研究を行ったのは、国立感染症研究所と群馬大学大学院医学系研究科のチームです。

 実験では、脂肪分が多い餌を与えて太らせたマウスに「腸管寄生蠕虫(ぜんちゅう)」と呼ばれる、体に害がない複数の寄生虫を感染させ、細胞や血液の変化を調べました。

 その結果、寄生虫に感染したマウスは、感染していないマウスと比べて同じ量の餌を食べていても、体重の増加が抑えられた上、血液中の中性脂肪が低下することがわかりました。

 研究チームの分析によりますと、寄生虫は「腸内細菌」を増やし、この細菌が作用してエネルギーの代謝を高める特定のタンパク質を増加させたことがわかり、脂肪を燃焼しやすい体になっていたということです。

 また、寄生虫に感染しても健康に変化はなかったということです。

 研究チームの国立感染症研究所の久枝一部長は、「寄生虫によってやせるという話は昔からあったが、その効果が世界で初めて科学的に証明された。今後は、さらに詳しいメカニズムを解明し、肥満を抑制できる健康食品や薬などの開発につなげていきたい」としています。

 研究成果は9日、アメリカの科学雑誌「インフェクション・アンド・イミュニティー」(電子版)に掲載されました。

 2019年5月15日(水)

 

■はしか患者数、全国で467人に上る すでに昨年1年間の1・7倍

 はしか(麻疹=ましん)の今年の患者数は、5月5日までに467人と、すでに昨年1年間の患者数のおよそ1・7倍に上っており、厚生労働省は、はしかに感染した疑いがある時は事前に電話で相談してから医療機関を受診してほしいと呼び掛けています。

 はしかは発熱や全身に発疹が出るウイルス性の感染症で、感染力が極めて強く、重症になる場合があるほか、妊婦が感染すると流産や早産の恐れもあります。

 国立感染症研究所によりますと、5月5日までの1週間に全国の医療機関から報告されたはしかの患者は、東京都で7人、千葉県で2人、佐賀県と宮崎県で1人ずつの計11人でした。

 このため、今年の全国のはしかの患者数は467人と、すでに昨年1年間の患者数のおよそ1・7倍に上り、今年に入って患者が多い状態が続いています。

 都道府県別では、最も多いのが大阪府で136人、次いで東京都で71人、三重県で54人、愛知県で35人、兵庫県で27人などとなっています。

 厚労省は、10連休の間に感染した場合はこれから発症する可能性もあるので、発疹などの症状が出るなどしてはしかに感染した疑いがある時は、事前に電話で相談してから医療機関を受診してほしいと呼び掛けています。

 2019年5月14日(火)

 

■除草剤でがんを発症、メーカーに約2200億円の賠償命令 米カリフォルニア州の裁判所

 アメリカで大手農薬メーカー「モンサント」の除草剤を使っていて、がんを患ったとする夫婦が賠償を求めていた裁判で、カリフォルニア州の裁判所の陪審は夫婦側の訴えを認め、約2200億円の支払いを命じる評決を出しました。

 この裁判は、カリフォルニア州に住む70歳代の夫婦が、約30年間にわたって「ラウンドアップ」と呼ばれるモンサントの除草剤を繰り返し使っていて、がんを患ったとして賠償を求めていたものです。

 カリフォルニア州の裁判所の陪審は13日、夫婦のがんと除草剤の因果関係を認め、昨年、モンサントを買収したドイツ医薬品大手の「バイエル」に対して、20億5500万ドル(日本円で約2200億円)の支払いを命じる評決を出しました。

 巨額の賠償額のほとんどは、バイエルに対する懲罰的な賠償だということです。

 アメリカのメディア「ブルームバーグ」によりますと、陪審による賠償額としては今年に入って最も多く、商品を巡る賠償では史上8番目に高額だということです。

 一方、バイエルは声明を出し、「今回の評決に失望している。夫婦ががんを患った原因は、ほかにあることは明白だ」として上訴する意向を示しました。

 さらにバイエルは、アメリカ・環境保護局が化学物質グリホサートを主成分とする除草剤ラウンドアップについて最近行った審査結果と、今回の評決が食い違っていると主張。「世界の主要な保健規制当局は、グリホサートを主成分とする製品は安全に使用でき、グリホサートに発がん性はないという認識で一致している」と述べました。

 この除草剤ラウンドアップを巡っては、全米で同様の訴訟が1万3000件以上起こされていて、昨年8月の1件目以降、今回で3件連続で賠償が認められたことになります。

 2019年5月14日(火

 

■温室効果ガス排出量、算定法の新指針公表 国連の気候変動に関する政府間パネル

 世界各国の科学者などでつくる国連の専門機関が、より実態に近い温室効果ガスの排出量を各国が算定するための新たなガイドライン(指針)を公表しました。人工衛星を使って地上の二酸化炭素の排出量を推定することなどが盛り込まれています。

 このガイドラインは、12日まで京都市で開かれていた「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」の第49回総会で、およそ130の国や地域の科学者や政府の担当者などが、地球温暖化を招く温室効果ガスの排出量の算定方法をまとめたもので、13日公表されました。

 ガイドラインは13年ぶりに見直され、最新の科学的な知見を取り入れることで、各国はより実態に近い排出量を算定できるとしています。

 その上で、新たな方法として、日本の温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」など人工衛星で宇宙から観測した地上の二酸化炭素のデータなどをもとに、各国の排出量を推定することが盛り込まれています。

 さらに、新たなエネルギーとして注目される「水素」を作る際に出る二酸化炭素を排出量に加えることなどが示されています。

 地球温暖化対策の国際的な枠組み「パリ協定」を締結したすべての国は、来年以降、温室効果ガスの排出量などを国連に定期的に報告することが義務付けられます。

 新たなガイドラインは、パリ協定の締約国会議で合意されれば、正式に導入されることになっており、各国が報告する排出量が正しいかどうかの検証や、世界全体のより正確な排出量の把握に役立つと期待されています。

 IPCCのイ・フェソン(李会晟)議長は記者会見で、「ガイドラインの目的は、国ごとの排出量報告の透明性を高めることだ。透明性は途上国、先進国を問わず重要で、こういったことを通じてパリ協定を成功に導くことができるだろう」と述べました。

 2019年5月13日(月)

 

■徳島県内の70歳代男性がマダニ感染症 全国では今年13人目

 徳島県は12日、マダニが媒介するウイルス性感染症の重症熱性血小板減少症候群(SFTS)を県内の70歳代男性が発症したと発表しました。県内では今年3人目。3月から毎月1人の発症が確認されており、県は「異例の頻度」として感染予防策の徹底を呼び掛けています。

 徳島県感染症・疾病対策室によると、男性は発熱や下痢などの症状があり、5月上旬に県内の医療機関を受診。数日前に庭の草むしりや登山をしており、右足にマダニにかまれたとみられる傷跡が見付かりました。

 12日に医療機関から徳島保健所に検査依頼があり、県立保健製薬環境センターが感染を確認しました。男性は入院して治療を受けており、命に別状はありません。

 県は同日、市町村などの関係機関にメールで事例報告して注意喚起。「気温が上がってマダニの活動が活発化しているので、草むらや山に入る際は肌の露出を避けてほしい」としています。

 全国では、今年に入って13人(4月28日時点)の感染が報告されています。

 長崎県も10日、マダニが媒介する重症熱性血小板減少症候群(SFTS)に、五島保健所(五島市)管内の男性が感染したと発表しました。県内の感染確認は本年度で初めて。

 長崎県医療政策課によると、男性は発熱、頭痛、食欲不振などの症状を訴え、4日に医療機関を受診。検査の結果、9日に感染が判明しました。現在も入院しています。

 SFTSはウイルスを保有するマダニにかまれることで感染。ワクチンはなく、重症化すると死亡する恐れがあります。昨年は全国で77人、うち長崎県内で4人の感染が確認されました。

 マダニは主に山林や草むらに生息し、気温が高くなる夏場は特に活動的になります。長崎県医療政策課は、「サンダルではなく靴を履くなど肌の露出を抑えるほか、衣服に付いたダニを落としたり、帰宅後は入浴したりしてほしい」と対策を呼び掛けています。

 2019年5月13日(月)

 

■厚労省、70歳以上の厚生年金加入を検討へ 長く払えば受給増へ 

 厚生労働省は会社員らが入る厚生年金について、一定額以上の収入などがある場合、70歳以上も加入して保険料の支払いを義務付ける検討に入ります。現在は70歳未満としている保険料の納付期間が長くなるため、受給できる年金額は増えます。健康寿命は延び続けており、将来に備えて長い期間働く高齢者が増える可能性があります。

 厚労省は今年、公的年金制度の健全性を確認する5年に1度の検証作業を実施します。6月をめどに厚生年金の加入期間を延長した場合の年金額の変化を試算した結果を公表し、その後に本格議論に入ります。保険料を半分負担する企業側からは慎重な意見が予想されるものの、人材確保面ではプラスに働きそうです。

 70歳以上からでも年金を受け取れるようにする制度改正とセットで検討します。保険料の支払期間は「75歳まで」といった具体的な延長幅が焦点になります。2020年にも関連法案を国会に提出する可能性があります。

 現行制度では、月額賃金が8・8万円以上の人が厚生年金への加入が義務付けられています。一度リタイアした後に再び働き始めた場合も、改めて厚生年金に加入して保険料を支払う必要があります。

 厚労省の試算によると、現行制度では会社員の夫と専業主婦のモデル世帯では、夫が65歳まで働いて夫婦2人が65歳から年金を受け取る場合で月22・8万円もらえます。これに対し、夫が70歳まで平均的な賃金で保険料を納付し続けると、70歳以降の年金額は月23・6万円と月額8000円増えます。

 仮に75歳まで加入した場合の年金額は、さらに数千円が上乗せされると見込まれます。年金の受け取り開始を遅らせ、金額を増やす「繰り下げ受給」も活用でき、自身の健康寿命や時間の使い方に応じて選択の幅が広がります。

 ただし、厚生年金の保険料を毎月負担すれば手取り額は減ってしまいます。直近の手取り額を重視し、厚生年金の保険料を負担に感じる人も出てきそうです。

 健康寿命が長くなり、働く高齢者は増えています。総務省の2018年の労働力調査によると、70~74歳の役員を除いた雇用者は129万人おり、75歳以上も53万人います。内閣府の調査では、仕事をしている高齢者の約4割が「働けるうちはいつまでも」と答えています。長生きに備えて、健康のうちは一定時間以上働く高齢者にとっては、加入期間の延長によるメリットは大きくなります。

 2019年5月12日(日)

 

■救急隊による心肺蘇生、不実施導入へ 東京消防庁、年内にも

 高齢者本人が事前に、自宅などで心肺停止状態に陥った時に蘇生(そせい)措置を受けずに最期を迎えたいと希望していたにもかかわらず、救急隊が蘇生措置を実施するケースが後を絶ちません。こうした本人や家族の意思を尊重しようと、東京消防庁は年内にも、かかりつけ医らの指示による「心肺蘇生の不実施(DNAR)」を導入する方針を固めました。出場現場での待機時間の短縮など、救急隊の負担軽減も期待できるといいます。

 救急隊によるDNARは心肺停止状態になった末期がん患者らに対し、本人や家族の意思を受けて蘇生措置や救急搬送を行わない対応です。自宅に駆け付けた救急隊は心肺蘇生の開始後、家族らから事情を聴いて本人の意思を確認。地域のかかりつけ医らの指示を受けて最終的に決定します。

 消防法で定められた消防の救急業務は救命を前提としており、DNARは従来と異なる概念の対応になります。これまでも主治医らによる指示で蘇生措置を中止することはあったものの、現行の運用では、救急隊は蘇生措置の中止後も医師に直接引き継ぐまで現場から撤収できませんでした。

 DNARを希望し、東京都内の自宅で今冬、心肺停止になった末期がんの高齢女性のケースでは、119番通報を受けた救急隊が女性の主治医に連絡を取り、現場での心肺蘇生を中止。だが、未明の時間帯で医師の到着が遅れ、救急隊は約2時間にわたって待機せざるを得ませんでした。

 東京都内の救急隊出場件数は過去10年間で約15万件増え、昨年は80万件を超えました。特に75歳以上の搬送者が急増しているといいます。出場現場での待機時間の短縮は喫緊の課題で、東京消防庁は今年2月、救急隊の活動指針にDNARを導入する方針を決定しました。

 DNARの導入に伴い、蘇生中止の意思確認は重要度を増します。東京消防庁はDNARを家族などから自発的に要望が出た場合に限り、救急隊側が主導することはありません。また、普段から患者の状態を知るかかりつけ医か、その連携医から指示を受けることを前提にするといいます。

 総務省消防庁が昨年実施した実態調査では、DNARへの対応方針そのものを定めていない消防本部が54・4%に上ります。すでに導入している自治体消防では、救急隊員に助言する立場の救急隊指導医の指示でも中止できるとするところもあります。このような状況の中、東京消防庁はより厳密なルールを定めたといえそうです。

 DNARの導入は高齢者本人や家族にとってもメリットが大きく、現状では医療機関に搬送されて死亡した場合には、延命措置など望まない医療行為に伴う心理的・経済的負担があります。

 森住敏光救急部長は、「現場で活動する救急隊も、救命の使命と本人や家族の希望との間で板挟みになっている」とDNAR導入の意義を強調します。

 東京消防庁が導入方針を決めた「心肺蘇生の不実施(DNAR)」は、最期まで自宅で暮らしたいと希望する高齢者とその家族に、事前の意思表示の必要性が浸透するかが制度運用の重要なポイントになります。在宅医療が専門の恵泉クリニック(東京都世田谷区)の太田祥一院長(58歳)は「医療の代理人となるかかりつけ医に対し、自身の最期についての希望を伝えて置く文化を根付かせる必要がある」と指摘しています。

 厚生労働省が2017年度に実施した意識調査では、末期がんで回復の見込みがないと診断された場合について、69・2%の国民が「自宅で最期を迎えたい」と回答。その一方で、DNARを含む終末期の医療について家族と話し合ったことがある国民は約4割(2013年度調査)でした。病状悪化などで意思決定ができなくなる場合に備え、事前指示書を作成していたのは8・1%にとどまりました。

 心肺停止状態になること自体にもリスクがあります。太田氏によると、心肺停止から5分以内に心肺蘇生を開始し、AED(自動体外式除細動器)を使用しても、1カ月後の社会復帰率は4割程度。5分以上経過すれば脳に障害が残る可能性が高まり、家族の負担が増す結果にもつながります。

 太田氏は、「法律のトラブルであれば、弁護士が代理人になるのが当たり前。医療については、かかりつけ医に事前に自分自身の最期についての希望を伝えておくことで、その希望通りの対応が期待できる」と指摘しています。

 2019年5月12日(日)

 

■強制不妊救済法の一時金請求、7道県で12件 厚労省が初発表

 旧優生保護法(1948~1996年)の下で行われた不妊手術の被害者に一時金320万円を支給する救済法の施行を受け、4月24日~5月6日に7道県で計12件の請求がありました。相談件数は全国で延べ193件でした。

 厚生労働省が10日、救済法施行後の状況を初めて発表しました。

 請求は、北海道5件、宮城県2件、秋田、茨城、石川、福岡、鹿児島の5県で1件ずつ。被害が認定されれば、6月末にも一時金が支給されます。

 厚労省は今後、毎週火曜の夕方に直近1週間分と累計の請求・相談件数を都道府県別にホームページで公表。毎月初めに、前月にあった請求件数を都道府県・性別・年齢階層別に公表します。

 旧優生保護法は議員立法で、「不良な子孫の出生を防止する」ことを目的としていました。政府は旧法の下で、障害のある人らへの不妊手術を推し進めました。被害者は約2万5000人に上ります。

 2019年5月11日(土)

 

■プラスチックごみ輸出入に初の国際的法規制 バーゼル条約改正案を採択

 スイス・ジュネーブで開かれた有害な廃棄物の国際的な移動を規制するバーゼル条約の締約国会議は10日、汚れたプラスチックごみを輸出入の規制対象に加える条約改正案を採択しました。日本がノルウェーと共同提出しました。

 国連環境計画(UNEP)によると、プラスチックごみに関する初の国際的な法規制。改正案の文言を巡る調整が続いていました。

 プラスチックごみは世界各地の海を汚染し、生態系への悪影響が懸念されています。条約改正により相手国の同意なしの輸出は禁止となります。日本は国内で処理し切れないプラスチックごみを「リサイクル資源」として途上国などへ輸出していましたが、国内でのリサイクル増加が不可欠となります。

 外交筋によると、締約国会議では改正案に対し「リサイクル体制が整っていない段階では時期尚早だ」などの慎重意見が相次ぎました。輸出入の規制では大筋合意したものの、規制対象とするプラスチックごみの種類や、どの程度の汚れのプラスチックごみを輸出可能とするかなどについて紛糾しました。

 2019年5月11日(土)

 

■脳の神経細胞減少に特定のタンパク質が関係 慶応大などが突き止める

 老化に伴い新たに作られる脳の神経細胞が減る原因として、特定のタンパク質の減少が大きくかかわっていることを突き止めたと、慶応大学などの研究チームが10日、アメリカの科学誌「ステム・セル・リポーツ」電子版に発表しました。このタンパク質の減少を抑えれば、認知症などの原因とされる脳の委縮を抑制できるとみられます。

 研究チームの岡野栄之・慶応大学教授(生理学)は、「新たな治療薬の開発につながる」と期待しています。

 加齢による神経細胞の減少を食い止めるため、これまで神経細胞のもとになる「神経幹細胞」を活性化させる研究が行われてきましたが、継続的に神経細胞を増やすことはできていませんでした。

 そこで研究チームは、神経幹細胞から神経細胞になる途中段階の「神経前駆細胞」に注目。マウスによる実験で、「p38」というタンパク質が神経前駆細胞を増やす役割を果たしていることを発見しました。老化するとp38が減り、それに伴い新たに作られる神経細胞も減少しました。

 研究チームは複数のマウスに、老化してもp38が減らないようにする遺伝子を注入。通常のマウスと比較した結果、老化すると神経細胞の減少で脳が委縮して頭の中に「脳室」と呼ばれる空間が拡大するものの、遺伝子を注入したマウスは脳室の拡大スペースを平均で4割ほど抑えられました。

 また、これまで脳梗塞(こうそく)などで傷付いた脳を再生するために神経幹細胞を活性化させた際、神経幹細胞が分裂を繰り返し枯渇する問題がありました。p38を利用すれば神経幹細胞ではなく神経前駆細胞を活性化させるため、研究チームは「枯渇を招かず長期的な神経再生が可能になる」としています。

 2019年5月10日(金)

 

■抗がん剤に伴う脱毛、冷やして抑える 装置を医療機器に初承認

 抗がん剤治療に伴う脱毛を抑えるのを目的にした装置が、国内で初めて医療機器として承認されました。頭皮を冷やすことで、毛髪をつくる細胞が抗がん剤の影響を受けにくくなるようにします。7月ごろから医療機関で使えるようになる見込みといいます。

 抗がん剤は、薬のタイプによっては脱毛につながりやすく、患者にとって最もつらい副作用の一つとされます。承認されたセンチュリーメディカルの「パックスマン・スカルプ・クーリング・システム」は、病院などで抗がん剤治療を受けるごとに、その開始前から終了後にかけて頭部につけた専用キャップにマイナス4度ほどの冷却液を流し、頭皮を冷やします。血管を縮め、毛包という部位に届く抗がん剤の量を減らします。

 乳がん患者を対象にした国内の治験では、このシステムを使った30人中8人(26・7%)が、「50%未満の脱毛でウィッグを必要としない」と2人の医師に判定されました。使わなかった側の13人で同様に判定された人はおらず、装置の効果が認められました。今回は乳がんを含む固形がん患者に使うことが承認されました。

 機器はすでに頭痛を抑える目的で承認されていたほか、一部の施設で脱毛抑制の臨床研究などで使われていました。

 センチュリーメディカルはこの機器を使うことに公的保険が適用されるよう求めていますが、現時点では患者がいくら払えば使えるかといったことは決まっていません。生産台数があまり多くなく、当面、使えるのは脱毛のケアに熱心に取り組む病院など、限られた施設になりそうです。

 この装置を使った臨床研究に携わった四国がんセンター(松山市)乳腺外科の大住省三部長は、「脱毛がつらいために抗がん剤治療自体を避けてしまう患者さんもいる。効果は十分とはいえないが、機器が承認されたことは非常にありがたい」と話しています。

 2019年5月10日(金)

 

■フリーズドライ技術で保存のマウス精子に受精能力 山梨大学が発表

 インスタント食品の製造にも使われるフリーズドライ技術で凍結乾燥させたマウスの精子は高温などの環境にさらされても子供を誕生させる能力が保たれることがわかったと、山梨大学の研究チームが発表しました。研究チームは希少な動物の遺伝子などを長期間、安全に保存するために重要な知見だとしています。

 山梨大学発生工学研究センターの若山照彦教授らの研究チームは、マウスの精子をインスタント食品の製造にも使われるフリーズドライ技術で凍結乾燥させた上でほぼ真空状態にした容器に入れ、高温の環境に置いたり急激に冷やしたりしても体外受精が可能かどうか実験を行いました。

 その結果、95度のオーブンで1時間加熱した後のフリーズドライ精子から子供のマウスを誕生させることに成功したということです。

 また、氷点下196度まで冷やして常温に戻すという作業を10回繰り返した後でも受精し、精子のDNAには温度変化への強い耐性があることがわかったということです。

 研究チームは、これまでもマウスのフリーズドライ精子をほぼ真空状態にすることで室温で1年間保存し、子供を誕生させるのに成功しており、希少な動物の遺伝子などを長期間、安全に保存するために重要な知見だとしています。

 研究チームの中心メンバーの若山清香助教は、「絶滅の恐れがあるものを含め、さまざまな哺乳類の精子の保存にフリーズドライ技術が活用できる」と話しています。

 研究成果をまとめた論文は、イギリスのオンライン科学雑誌「サイエンティフィックリポーツ」に掲載されています。

 2019年5月10日(金)

 

■「ゾフルーザ」の売上高は予想の2倍 服用1回のインフルエンザ治療薬

 塩野義製薬(大阪市中央区)は9日、インフルエンザ治療薬「ゾフルーザ」の2018年度の国内売上高が予想の約2倍となる263億円に上ったことを発表しました。昨年3月に発売された新薬で、今年1月から2月にかけてインフルエンザが大流行したこともあり、需要を伸ばしました。

 同日の2019年3月期の連結決算発表の会見で明らかにしました。通期予想では130億円を見込んでいましたが、錠剤を1回飲むだけで治療できる利便性などから売り上げを拡大しました。

 今年度の通期予想は6・5%増の280億円としました。昨年度の使用状況などのマーケット調査から設定しました。

 ただ、ゾフルーザに関しては、変異したウイルスが高率で出現することの解釈を巡って、「多用されると薬が効きにくくなる耐性の蔓延(まんえん)が懸念される」などとして、一部の感染症の専門家から慎重な処方を求める声が上がっています。

 これに対して、塩野義製薬の手代木功社長は「昨年度、一冬実際に使っていただいてデータが蓄積された。ゾフルーザの強みと留意する点も改めてわかってきたので、情報は開示していく」と説明。耐性への不安を払拭するためにも、今年度のインフルエンザシーズンを迎える前に、正確な分析結果を示すとしました。

 2019年5月9日(木)

 

■「オプジーボ」、11人に副作用 1人は脳機能障害で死亡

 厚生労働省は9日、免疫の仕組みを利用したがん治療薬「オプジーボ」を投与された患者11人が、副作用とみられる脳下垂体の機能障害を起こし、うち1人が死亡したとして、製造元の小野薬品工業(大阪市中央区)に対し、薬の添付文書に重大な副作用として追記するよう指示しました。

 オプジーボは、2018年のノーベル医学生理学賞を受賞した本庶佑(ほんじょたすく)京都大学特別教授の研究成果を基に開発された薬で、免疫の細胞が、がんを攻撃しやすくする作用があります。

 機能障害が起きたのは脳下垂体で、成長ホルモンや性ホルモンなどの分泌にかかわる部位。薬の添付文書では、「重要な基本的注意」に脳下垂体機能障害を追記し、投与中は定期的に脳下垂体の機能を検査することなどを求めます。

 2019年5月9日(木)

 

■AED、幼い子供にも積極的に使用を 専門家が呼び掛け

 8日、保育園児の列に車が突っ込み、2人が死亡した滋賀県大津市の事故現場には自動体外式除細動器AED)が残されていて、周囲の人が現場に持ち込んで救命処置を行おうとしていたことがわかります。事故の現場や幼い子供へのAEDの使用について、専門家は「倒れた人に反応がなく、呼吸がいつもと違っていたら、大人でも子供でもできるだけ早く心臓マッサージを行い、積極的にAEDを使ってほしい」と話しています。

 心停止となった人の心臓の動きを元に戻す医療機器AEDに詳しい京都大学健康科学センターの石見拓教授によると、AEDは心臓が「心室細動」というけいれんを起こした状態の時に有効で、出血などが原因で心臓が止まっている場合は効果がないことが多いということです。

 しかし、事故の衝撃で心臓が止まったり、心臓発作が原因で事故が起きていたりするケースには有効で、何もしなければ救命の可能性は時間がたつごとに下がることから、「大人でも子供でも原因にかかわらず、倒れた人の反応がなく呼吸がいつもと違ったら、できるだけ早く胸骨圧迫=心臓マッサージを行い、AEDを使ってほしい」と話しています。

 AEDは音声によって操作方法を指示し、電気ショックが必要かどうかも判断して伝えてくれます。

 石見教授は、「心停止になった人にAEDを使うことで、けがや病状を悪化させることはない。命を救うために事故の現場でも、積極的にAEDを使ってほしい」と呼び掛けています。

 日本AED財団によりますと、AEDを乳幼児に使う場合、本体に付いているスイッチや鍵を使って「小児用モード」に切り替えたり、胸に電気ショックを与えるパッドを子供用に張り替えたりする必要があります。

 ただ、機種によって操作方法が異なっており、切り替え機能や専用のパッドがない場合は、大人と同様に対応してほしいということです。

 そして、AEDを起動させた後は、音声の説明やイラストに従って2枚のパッドを右胸の上と左の脇腹に貼り付けます。この際、乳幼児の場合は、パッドを胸と背中に貼るケースもあるということです。

 一方、AEDと合わせて行う胸骨圧迫=心臓マッサージについては、通常、手のひらを重ね、胸の真ん中を強く圧迫しますが、幼児であれば片手で、乳児であれば指を使うくらいに力を和らげ、胸の厚さの3分の1程度まで沈むような強さで圧迫するのが望ましいということです。

 日本AED財団の宮垣雄一さんは、「電流の強さやパッドを貼る位置が違うことがあるだけで、大人でも子供でも基本的にAEDの使い方は同じです。事故がいつ、どこで起きるかわかりません。AEDを1秒でも早く使えば助かる確率は上がるので、ためらわず使ってほしいです」と話しています。

 2019年5月9日(木)

 

■ヨウ素剤の事前配布、40歳未満の住民を対象に 原子力規制委員会

 原子力発電所などの事故の際に服用し、甲状腺の被爆(ひばく)を防ぐ安定ヨウ素剤について、原子力規制委員会は40歳以上には効果がほとんど期待できないとして、事前に配布する対象を原則40歳未満の住民に限り、被爆によるがんのリスクが高い子供などに優先して配布することを決めました。

 ヨウ素剤は原発などで事故が起きた場合に、のどにある甲状腺の被爆を防ぐために服用する薬で、国は原発から5キロ圏内の住民を中心に配布していますが、配布率が伸び悩んでいます。

 こうした中、原子力規制委員会は8日の会合で、事前に配布する対象を原則として40歳未満の住民と、妊婦や授乳中の女性に限るよう指針を見直すことを決めました。

 原子力規制委員会によりますと、世界保健機関(WHO)がヨウ素剤の服用は、被爆によるがんのリスクが高い子供や妊婦を優先すべきで、40歳以上の人には服用効果はほとんど期待できないとしていることを受けたもので、子供などへの配布を重点的に行うことが狙いだとしています。

 一方、不安な気持ちに応えるとして、40歳以上でも希望者には事前に配布するとしています。

 このほか、仕事や学校で医師や薬剤師が立ち会う自治体の説明会に参加できない人のために、地域の薬局などで配布できることも決めました。

 原子力規制委員会は9日から1カ月間、一般から意見を募集し、正式に取りまとめる予定です。

 2019年5月9日(木)

 

■セブン&アイ、プラスチック製レジ袋全廃へ 海洋汚染に対応

 セブン&アイ・ホールディングスは8日、2030年までを目標にプラスチック製レジ袋を全廃する方針を発表しました。プラスチックごみによる海洋汚染問題に対応し、紙袋や生分解性素材の活用などによる代替を目指します。

 セブン&アイは8日、2050年までに取り組むグループ全体の環境施策を公表しました。プラスチック製レジ袋の全廃はその一環で、4月からセブン―イレブンの横浜市内の店舗でプラスチック製の袋と紙袋を客に選択してもらう実験を開始しています。紙袋の使い勝手や来店客の意向も考慮して、代替品の検討を進める予定です。

 イトーヨーカドーとヨークベニマルでは2012年からレジ袋有料化を実施し、削減につながったといいます。

 2019年5月8日(水)

 

■先天性風疹症候群の子供を東京都内で確認 風疹患者が増加する中

 風疹の患者が増加する中、妊娠中の母親が風疹に感染することで、おなかの赤ちゃんに障害が出る「先天性風疹症候群」の子供が、東京都内で5年ぶりに確認されたことがわかり、都が注意を呼び掛けています。

 東京都によりますと、先月、都内の医療機関で男の子1人が先天性風疹症候群と診断されたということです。

 先天性風疹症候群は、母親が妊娠中に風疹に感染することで、生まれてくる赤ちゃんの目や耳、それに心臓などに障害が出るものです。

 先天性風疹症候群の子供が都内で確認されたのは2014年以来、5年ぶりです。

 また、全国では今年に入り、1月に埼玉県で男の子1人が確認されているということです。

 都によりますと、今年1月から4月28日までの都内の風疹患者は454人と、昨年の同じ時期を大幅に上回っています。

 このため、都は、女性は妊娠する前にワクチンの接種を行うことや、男性も積極的にワクチンを接種することなどを呼び掛けています。

 2019年5月8日(水)

 

■昨年の医療事故4565件で最多 医療機能評価機構への報告

 2018年に全国の医療機関が日本医療機能評価機構に報告した医療事故は前年比470件増の4565件だったことが8日、明らかになりました。年単位の集計を始めた2005年以降で最多を更新しています。

 機構によると、法令に基づき報告を義務付けられた大学病院や国立病院機構の病院などからの報告が4030件と9割弱を占めました。

 このうち死亡事例は293件(7・3%)で、障害が残る可能性が高い事例は427件(10・6%)でした。内容別では、転倒や転落を含む「療養上の世話」が最多の1366件(33・9%)、治療や処置に関するものが1113件(27・6%)と続きました。

 地域別では、関東甲信越が1320件で、中国四国は732件、九州沖縄709件、東海北陸568件、近畿413件、東北226件、北海道62件となっています。

 機構は医療行為に関連して患者が死亡したり、当初予期された水準を上回る処置が必要になったりしたケースを医療事故として情報収集し、年間の報告件数をまとめています。機構は「医療事故を報告することが定着してきた」としています。

 2019年5月8日(水)

 

■エボラ出血熱などの病原体、今夏にも初の輸入へ 厚労省が方針

 国外で感染例のあるエボラ出血熱など致死率の高い1類感染症の病原体について、厚生労働省と国立感染症研究所が早ければ今夏にも国内に輸入する方針であることが8日、わかりました。2020年東京オリンピック・パラリンピックを控え、患者が出た場合の診断や治療に生かします。

 国立感染症研究所村山庁舎(東京都武蔵村山市)内にある「バイオセーフティーレベル(BSL)4施設」で保管する意向で、今月中にも改めて地元に説明し理解を求めます。1類感染症の病原体の輸入が決まれば初となります。

 厚労省などによると、輸入が検討されているのは、エボラ出血熱、ラッサ熱、南米出血熱、クリミア・コンゴ出血熱、マールブルグ病の5種類の感染症の病原体。輸入が実現すれば、患者の治療に役立ち、回復具合を判断する検査法が確立できます。変異している病原体に対しても、正確で迅速な診断が可能になるといいます。

 保管場所となるバイオセーフティーレベル(BSL)4施設は、高性能フィルターを備えるなど高度な安全性が確保されています。厚労省は昨年11月、武蔵村山市側に輸入に向けた考えを提示。これまで、住民向けの説明会や見学会なども実施し、受け入れに前向きな意見も出ているといいます。

 病原体の輸入経路や日時については、安全対策の観点から事前に公表しない意向も示しています。

 2019年5月8日(水)

 

■けがで傷付いた脳、幹細胞の移植で再生 バイオベンチャー、治験で確認

 バイオベンチャーのサンバイオ(東京都中央区)は、幹細胞を用いて、けがで傷付いた脳の神経組織の修復を図る再生医療の治験で、体を動かす機能の改善を確認したと明らかにしました。再生医療製品としての製造販売承認を目指し、来年1月までに厚生労働省に申請する予定です。

 アメリカで4月にあったアメリカ・脳神経外科学会で発表しました。健康な人から採取した骨髄液から、骨や血管などになる能力がある「間葉系幹細胞」を取り出して大量に培養し、細胞薬として再生医療製品にします。これを患者の損傷部のそばに注射で移植します。幹細胞が脳内の神経細胞の再生を助け、運動機能の改善につながると、同社は説明しています。

 治験は日本とアメリカの慢性期の外傷性脳損傷の61人で実施し、幹細胞を移植した46人と、移植しなかった15人を比較しました。手足を動かすといった運動機能を評価する指標では、移植したグループは平均で8・7ポイント改善。移植しなかったグループも2・4ポイント改善したものの、同社は「統計学的に有意な差が確認できた」としました。

 移植した全員に頭痛などが起きましたが、90%以上は細胞薬と関連がなかったとみられることから、同社は、安全性の懸念は認められなかったとしました。他人由来でも間葉系幹細胞は基本的に、拒絶反応が起きないといいます。

 外傷性脳損傷の国内の患者数は正確にはわかっていませんが、同社によると約4万人。リハビリ以外に有効な治療法はないといいます。厚労省は先月、画期的な新薬などを本来より短期間で審査する「先駆け審査指定制度」の対象に指定しました。

 再生医療に詳しい藤田医科大学の松山晃文教授は、「抗炎症作用と血管が新たにできることが考えられる。有効な治療法になる可能性がある」と話しています。

 サンバイオの森敬太社長は、「脳は再生しないといわれてきた中、試験で脳の再生を示せた」と意義を語っています。

 一方、この細胞薬を使った慢性期脳梗塞(こうそく)の患者を対象とした治験では、主要な評価項目で一定の有効性を確認できませんでした。

 2019年5月7日(火)

 

■世界の動植物100万種が絶滅の危機 プラスチックごみ40年で10倍

 国連教育科学文化機関(ユネスコ)本部で6日、世界で約100万種の動植物が絶滅の危機にひんしているとする政府間組織の報告書が発表されました。多くは「数十年内」に絶滅の恐れがあるとしています。

 同組織は、日本など約130カ国が参加する「生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学・政策プラットフォーム(IPBES)」。各国の科学者がおよそ3年かけて、地球環境や生物の多様性について予測をまとめました。

 報告書は、16世紀以降の500年間で、少なくとも680種の脊椎動物が絶滅したと指摘。現在は、(1)両生類の40%以上(2)造礁サンゴやサメ類の約33%(3)昆虫の約10%に絶滅の危機があるとしました。

 プラスチックごみの汚染は1980年以降の40年間で、10倍の規模になり、重金属や溶媒など産業に起因する廃棄物3~4億トンが毎年、水系に流れ込んでいると警告。1980年以降、温室効果ガスの排出量は倍増し、地表の温度は平均で少なくとも0・7度上昇したとしています。世界の地表の75%、海域の66%が人間の活動による影響を受けているといいます。

 2020年までの生態系保全への取り組みを示す「愛知目標」について、報告書は「ほとんどが達成できないだろう」と悲観的な予測を示しました。愛知目標は、9年前の2010年に名古屋市で開かれた生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)で定められ、2020年までに少なくとも陸地の17%、海域の10%を生物保護区に指定することや、絶滅危惧種の保護と絶滅防止などを掲げました。

 2019年5月7日(火)

 

■がん患者、10年後生存率は56・3% 緩やかに上昇傾向続く

 がん治療がどれくらい効果があるか判断する指標になっているがん患者の10年後の生存率は、2005年までの4年間に診断された患者全体では56・3%となり、緩やかに上昇傾向が続いていることが、国立がん研究センターなどの分析でわかりました。

 国立がん研究センターなどの研究チームが全国のがん専門病院など20の医療機関の7万人余りのデータを分析したところ、2005年までの4年間にがんと診断された患者全体の10年後の生存率は56・3%だったことがわかりました。

 10年後の生存率はがんの治療効果の指標とされ、今回の調査対象よりも3年前の2002年までの4年間と比べて2・4ポイント高くなるなど、緩やかに上昇する傾向が続いています。

 がんの種類ごとでは、最も高いのは前立腺がんで95・7%、次いで甲状腺がんが84・3%、乳がんが83・9%などとなっており、国内で患者数の多い胃がんや大腸がんも60%を超えています。

 一方、最も低いのは、すい臓がんで5・4%、次いで肝臓がんが14・6%、胆のうがんと胆道がんが16・2%、食道がんが30・3%、肺がんが31%などとなっています。

 調査を行った群馬県衛生環境研究所の猿木信裕所長は、「最近は新しい治療薬が次々と使えるようになり、生存率は今後も上がる傾向が続くと思われる」と話しています。

 2019年5月6日(月)

 

■AEDの女子高校生への使用に抵抗感 京都大が調査

 学校で心停止になった子供に自動体外式除細動器AED)が使われたかどうかを調べたところ、小学生と中学生では男女差がなかったのに対して、高校生では女子生徒に使われる割合が男子生徒より低い傾向にあることが、京都大学などの研究チームの調査でわかりました。

 京都大学などの研究チームは、2008年から2015年にかけて全国の学校の構内で心停止になった子供232人について、救急隊が到着する前にAEDのパッドが装着されたかどうかを調べました。

 その結果、小学生と中学生では、男女の間で有意な差はありませんでしたが、高校生では、男子生徒の83・2%にパッドが装着されたのに対して女子生徒は55・6%と、30ポイント近く低くなっていました。

 AEDは心臓の動きを正常に戻す医療機器で、鎖骨の下などの素肌に直接パッドを貼る必要があり、研究チームでは女子高校生の場合、近くにいた人達が素肌を出すことに一定の抵抗があったのではないかと分析しています。

 心停止の状態で何もしないと、救命率は1分たつごとにおよそ10%ずつ下がるため、救急隊の到着する前にできるだけ早く胸骨圧迫=心臓マッサージをして、AEDを使うことが大切です。

 研究チームのメンバーで京都大学健康科学センターの石見拓教授は、「パッドは服を完全に脱がせなくても貼ることができ、貼った後に服などをかぶせてもよい。命を救うため女性にもAEDを迷わず使ってほしい」と話しています。

 倒れて意識がない女性に救命処置を行う場合、どんな配慮や工夫ができるのか、石見教授によると、声を掛けて意識がなければ、119番に通報して、近くの人にAEDを持ってきてもらうように頼みます。

 呼吸をしていない、またはよくわからなければ、胸骨圧迫=心臓マッサージを始めます。

 AEDが届いたら、電源を入れ、2枚のパッドを素肌に貼りますが、服をすべて脱がす必要はなく、下着をずらして右の鎖骨の下と左の脇腹の辺りに貼ることで対応できます。貼った後は、上から服などをかけても大丈夫です。

 石見教授は、「AEDのパッドは貼るべき位置に貼れれば、服をすべて脱がさなくても問題はない。女性であっても男性と同じだけの救命のチャンスが与えられるべきで、訓練の場などで女性への対応の仕方を広く伝えていきたい」と話しています。

 2019年5月6日(月)

 

■増え続ける梅毒患者、今年も1627人 早期の受診が大切

 性感染症の梅毒患者が増え続けており、昨年の患者数は7000人近くに上りました。妊婦にうつると死産や早産になることもあり、感染が疑われる場合は、すぐに医療機関を受診し、治療を始めることが大切です。

 梅毒は、「梅毒トレポネーマ」という細菌が原因で発症します。性行為によって、性器や口、肛門の粘膜の傷などから、この細菌が体内に入ると感染します。

 戦後間もない1940年代後半、国内に20万人以上の患者がいました。その後、治療薬が普及して患者は減少したものの、国立感染症研究所のまとめによると、2011年ごろから再び増え始めました。2017年には44年ぶりに5000人を超え、2018年は暫定値で6923人。今年も4月7日までに1627人と昨年の同時期を上回っています。

 患者の中心は、男性が20~40歳代、女性は20歳代。10歳代の患者の報告もあります。

 症状の出方は、人によってさまざま。一般的には感染から3週間ほどたつと、性器や口、肛門など、感染した部分にしこりができます。太ももの付け根のリンパ節がはれることもあります。治療をしなくても症状は消え、この時期を「第1期梅毒」といいます。

 治療をしないまま感染から約3カ月が経過すると、「バラ疹」と呼ばれる赤い発疹が体や手のひらなどに現れるようになります。発疹は出たり消えたりを繰り返すこともあり、こうした症状が続く期間が「第2期梅毒」。

 3年以上になると「晩期梅毒」と呼ばれ、ゴムのような腫瘍(ゴム腫)が皮膚などにできます。何年もたってから心臓や血管などに異常が生じ、死亡することもあります。

 梅毒に詳しいプライベートケアクリニック東京(東京都新宿区)院長の尾上泰彦さんは、「発疹などが出ても、痛みやかゆみはほとんど伴わない。症状が出なかったり、第1期と第2期の症状が混在したりする患者もいる」と説明しています。

 治療では、ペニシリン系の抗菌薬を4週間前後、飲み続けます。尾上さんによると、この冬、クリニックを訪れた20歳代の女性は、腹部や胸、手のひら、足の裏に発疹が出ていました。検査で梅毒と診断され、抗菌薬を使うと症状は治まりました。

 パートナーにも検査を受けてもらったところ、梅毒に感染していることがわかりました。こうしたケースは、珍しくないといいます。

 国立感染症研究所細菌第1部長の大西真さんは、「梅毒トレポネーマは感染力が強く、性器や口などの粘膜に触れると、ほぼ感染すると考えておいたほうがよい。特に第1期の時期は感染しやすく注意が必要だ。自分が梅毒にかかっていることがわかったら、必ずパートナーにも検査を受けてもらってほしい」と指摘しています。

 梅毒は、1度かかっても免疫はできません。再び、梅毒トレポネーマを持った人と性交渉を行えば、何度でも感染します。

 大西さんは、「コンドームを使うことで、完全ではないが、感染のリスクを減らすことはできる。不特定多数の人と性交渉を行えば、その分、感染リスクが増えることも理解してほしい」と注意を呼び掛けています。

 2019年5月6日(月)

 

■「10連休」直後の子供の自殺に注意を 専門家が警鐘

 平成から令和への改元に伴い、今年のゴールデンウイークは前例のない10日間の大型連休となりました。懸念されるのが、連休明けに学校に通う子供達の自殺です。長い休みの直後は子供達の自殺が急増する傾向にあり、ゴールデンウイーク明けも例年増えています。専門家は、「今年はいつも以上に休みが長く、注意が必要だ」と警鐘を鳴らしています。

 「連休に入る前から、普段以上に相談が寄せられている」と、自身も不登校の経験を持つNPO法人「全国不登校新聞社」の石井志昂(しこう)編集長は打ち明けています。

 内閣府の自殺対策白書(2015年)によると、18歳以下の自殺者は夏休み明けが最も多く、次いで新年度が始まる春休み明けで、3番目がゴールデンウイーク明け。環境の変化が大きい新年度から約1カ月が経過し、子供達の疲れが出やすい時期であることが理由とみられます。

 特に注意が必要なのが、初めての義務教育で子供が「管理されている」と感じる場面が多い小学1年生と、部活動が始まるなど環境の変化が大きい中学1年生です。中学・高校生になると、苦しんでいることを学校や親に隠そうとする傾向もあるといいます。

 石井さんは、「普段は頑張って登校している子供が、学校と離れることで『苦しさ』に直面する。無理して登校すると、命や健康に危険が及ぶ事態になりかねない。連休中と休み明けを比較し、変化がある場合は無理に登校させず、休ませてほしい」と訴えています。

 重要になるのが親のサポートであり、不登校に悩む親子を支援しているNPO法人「登校拒否・不登校を考える全国ネットワーク」の奥地圭子代表理事は、「親は『学校に通わせなければならない』と考えて子供と接しがち。親子の信頼関係が損なわれるし、親自身も追い詰められる」と指摘しています。

 自身も子供が不登校になった経験を持つ奥地さんは、「昔は(不登校は)親の責任といわれ、周囲に相談できずに孤立しがちだったが、今は(不登校への)寛容度が上がっている。不登校は決して恥ずかしいことではない。家庭や学校以外にも悩みを聞いてくれる場所があることを知ってほしい」と呼び掛けます。

 最悪の事態を防ぐために、親はどんな点に気を付けたらいいのか。不登校に詳しい心療内科医の明橋大二(あけはし・だいじ)さんによると、「学校に行きたくない」とはっきり意思表示をする子供は少なく、腹痛や頭痛などを訴えるケースが多いといいます。

 登校時に玄関から動かなかったり、体調不良を訴えるなどの行動は子供からの「SOS」である可能性が高くなります。明橋さんは、「身体症状だけでなく、子供の表情も観察してほしい。十分休むことができたら、子供は必ず回復する」と話しています。

 若者の悩み相談を巡っては、電話だけでなく会員制交流サイト(SNS)を活用する動きも広がっています。各地のカウンセリング団体などでつくる「全国SNSカウンセリング協議会」(東京都)は、SNSで相談に応じる「SNSカウンセラー」の民間資格を創設。講座や研修などを通じて今後、500~1000人の養成を目指しています。

 ゴールデンウイークに向け、国や自治体も動いています。文部科学省は4月中旬、教育委員会などに対し、連休明けの子供の変化に注意するよう各学校への周知を要請。大阪市は、市立の小中高校生がいじめや学校について話せる「LINE」の相談窓口を、10連休終盤の5月4日から10日まで毎日(午後5時~午後9時)設置します。

 2019年5月5日(日)

 

■パーキンソン病の原因物質を脳脊髄液から検出 大阪大が成功

 パーキンソン病の患者の脳内にたまる物質を「脳脊髄(せきずい)液」から見付ける方法を開発したと、大阪大学などの研究チームが12日、イギリスの科学誌「サイエンティフィック・リポーツ」に発表しました。この物質は発症の10年以上前から患者の脳にたまり始めると考えられており、新たな診断方法に活用できる可能性があるとしています。

 パーキンソン病は脳内の神経細胞が減少し、手の震えや体のこわばり、遅い動きなどの症状が出る神経の難病。患者の脳には「αシヌクレイン」というタンパク質が異常な状態でたまることが知られています。病気が進行するほどタンパク質が増えるものの、脳内にあるため患者が生きている間に直接調べることはできませんでした。

 そこで、研究チームは脳から腰へ伸びている脊髄を囲む「脳脊髄液」という液体に注目し、患者44人の腰に針を刺して液を採取したところ、液にタンパク質が含まれていました。さらに、別の検査結果と照らし合わせると、タンパク質が多いほど病気が進行している可能性が高いこともわかりました。

 パーキンソン病の患者は、国内では約16万人いるとされ、高齢化に伴い増えていると見なされます。

 大阪大の角田渓太医師(神経内科)は、「現在は症状などから、はっきりした段階で判断しているが、より簡単に早く診断できる可能性がある。異常なタンパク質が凝集するのを抑える薬を開発する際にも活用できる」と話しています。

 2019年5月5日(日)

 

■はしかの「輸入感染」の懸念高まる 海外の患者が前年比4倍増

 はしか(麻疹=ましん)の感染拡大が続いており、今年の患者は400人を超え、過去10年で最多のペースで推移しています。海外でも患者が前年の4倍に増え、「非常事態」を宣言する地域も出ています。10連休の終盤に差し掛かり、日本に帰国する人が海外で感染し、国内で発症する「輸入症例」への警戒が高まっています。

 国立感染症研究所によると、今年の累積患者数(4月14日まで)は28都道府県で406人。都道府県別で最も多いのは大阪府の131人で、三重県の53人、東京都の47人、愛知県の32人、神奈川県の23人、兵庫県の18人が続きます。

 日本はワクチン接種の普及により、感染を防ぐ免疫保有率が2歳以上で95%超。世界保健機関(WHO)は2015年、日本を土着のウイルスによる感染がないはしかの「排除状態」と認定しました。厚生労働省は患者が1万人を超えた2008年のような大流行につながることは考えにくいとみていますが、気になるのは国外の動きです。

 WHOによると、今年1~3月の世界のはしかの感染者(暫定)は約11万2000人で、前年同期(約2万8000人)の約4倍。感染報告は170カ国に上り、特にエチオピア、フィリピン、タイ、ウクライナなどで多くなっています。アメリカ・ニューヨーク市は4月、一部地域に公衆衛生上の非常事態を宣言しました。

 日本では今年、東南アジアで流行しているのと同じ遺伝子型のウイルスが相次いで検出されています。東京都では今年、4月21日までに報告された患者53人中8人(15・1%)がベトナムやフィリピン、ミャンマーなどの国外で感染したとみられています。

 厚労省は「はしかが疑われる症状が出たら、まずは医療機関に電話で伝え、受診の要否や注意点を確認して指示に従ってほしい」と呼び掛けています。

 はしかは、麻疹ウイルスで起こる急性の全身感染症。インフルエンザの10倍ともいわれる強い感染力を有し、1人の患者から15~20人にうつるとされます。空気感染でも広がり、マスクでは完全に防げません。感染後、約10日間は鼻水やせきといった風邪のような症状が起き、その後39度以上の高熱と発疹が現れます。妊娠中に感染すると、流産や早産を引き起こす恐れもあります。

 2019年5月4日(土)

 

■脊髄損傷の新治療法、保険適用で今月から開始 札幌医科大

 背骨の中の神経が事故などで傷付いて手足が動かせなくなる脊髄損傷の患者に、患者自身の特殊な細胞を利用して症状を改善させる治療が国に条件付きで承認されたため、札幌医科大学では公的な医療保険を適用した治療を今月から開始することになりました。

 この治療法は、札幌医科大学などが開発したもので、事故などで脊髄が傷付き手や足を動かせなくなった脊髄損傷の患者を対象に、患者の体内から取り出した「間葉系幹細胞」と呼ばれる特殊な細胞を培養して増やし、1億個ほどを血液中に戻して症状の改善を図ります。

 国は昨年、医療製品として、今後7年以内に改めて有効性を検証することなどを条件に承認したことから、札幌医科大学は今月中旬から公的な医療保険を適用して患者の受け入れを始めることになりました。

 対象となる患者は、脊髄を損傷してからおおむね1カ月以内の重症患者に限られ、当面は年間100人程度を対象に行うということです。

 間葉系幹細胞を供給する医療機器会社は、来年度以降、ほかの医療機関でも治療が行えるように体制を整えたいとしています。

 この治療法を開発した札幌医科大学の山下敏彦教授は、「患者の『もう一度歩きたい』という思いに応えられる可能性がある非常に大きい治療だ」と話しています。

 2019年5月4日(土)

 

■エボラ出血熱の死者1000人超す コンゴ民主共和国

 アフリカ中部のコンゴ民主共和国(旧ザイール)東部でエボラ出血熱が流行している問題で、現地の保健省は3日、昨年8月1日に流行宣言が出されてからの死者数が1000人を超えたと発表しました。現地の治安が悪化しており、感染の封じ込めを妨げているといいます。

 イルンガ保健相は同日夜、疑いも含めたエボラ出血熱による死者が1008人(確定例942人、可能性例66人)に上ったと説明。2014~2016年に西アフリカのリベリアなど3カ国で流行し、1万1300人の感染者が亡くなって以来、最多の死者数になっています。

 世界保健機関(WHO)などによると、感染者はコンゴ民主共和国東部の北キブ州と隣のイトゥリ州で拡大。周辺は鉱物資源を収入源とする多数の武装勢力が乱立しており、医療物資などの搬送が滞る地域もあるといいます。

 医療従事者を狙った襲撃事案も今年1月から119件発生し、42件は医療施設が襲撃されました。医療従事者の殺害に至るケースも出ています。襲撃を恐れ、医療施設ではなく、自宅にとどまる感染者もいるといいます。

 国境を接しているルワンダやウガンダも警戒を強めており、すでにワクチンを配布しているといいます。

 WHO健康危機管理プログラムのマイケル・ライアン氏は3日、スイス・ジュネーブで開いた記者会見で、「我々は困難かつ危険な状況に対処している」「流行極期が継続するシナリオを予測している」と述べました。

 2019年5月4日(土)

 

■健康保険組合の保険料、年間約55万円に 高齢化の進展で2020年度に

 大企業の会社員らが加入する健康保険組合の保険料は、高齢化のさらなる進展により3年後の2022年度には、1人当たりの年間の平均で、今年度より5万円余り増えて、およそ55万円に上る見通しです。

 全国およそ1400の健康保険組合で作る健康保険組合連合会(健保連)によりますと、組合全体の財政は、高齢者の医療費を賄うための負担金の増加で圧迫され、2019年度は986億円の赤字となる見通しです。

 そして、労使双方の負担を合わせた1人当たりの年間の平均保険料は、前の年度から9000円余り増えて49万5732円となっています。

 さらに、3年後の2022年度には、いわゆる「団塊の世代」が75歳以上の後期高齢者になり始めることにより、高齢者医療費の負担金が今年度と比べて、およそ5000億円増加する見通しです。

 このため、年間の平均保険料は今年度に比べて、5万2000円余り増えて、54万8620円に上ると推計しています。

 健保連は、「今後も、保険料の引き上げは避けられないが、現役世代が、過重な負担とならないよう後期高齢者の窓口負担の引き上げなどを検討すべきだ」としています。

 2019年5月3日(金)

 

■男性の不妊治療への対策が充実 スマホ検査キットも登場

 スマートフォン(スマホ)や検査キットを使って精子や精液の状態を調べ、男性の不妊治療に生かす試みに注目が集まっています。従来は不妊治療は女性がするものというイメージが強かったものの、世界保健機関(WHO)の報告によると、不妊の原因の半数近くは男性にあるといいます。

 男性側からも不妊の原因を探ることで、不妊治療にかかる費用や時間を抑えられるとの認識が広がっており、治療を助けるための男性向け検査やサービスも充実してきました。

 東京都内に勤める会社員(40歳)は、長年子供ができなかったことから3年前に都内の不妊治療クリニックを夫婦で受診。判明したのは男性側に原因があったという事実で、精子の量が少ないことと、精子の形に異常がありました。

 何度かクリニックに通院し、人工授精に成功。今は長男を授かり、家族3人の生活を楽しんでいます。「自分一人ではクリニックにゆけなかった。男性にとって不妊治療への心理的なハードルは高い」と振り返っています。

 「夫婦とも健康だが子供ができない」と思っても、男性側が自発的に不妊外来を受診するケースは少なく、会社員は「もっと早く受診すればよかった。不妊原因は女性にあると思い込んでいる人は多い」と話しています。

 2017年のWHOの報告によると、不妊のうち男性に原因があるのは24%、男女両方にあるのは24%、合計で48%は男性に原因があるとしています。早期に男性側の原因を特定し治療や改善を進めれば、治療にかかる費用も低減できます。

 「自分のスマートフォンで精子を調べることができます」。リクルートライフスタイル(東京都千代田区)は、スマホのカメラで精子の状況を確認できる検査キット「シーム」を開発しました。専用アプリをダウンロードし、検査キットの付属レンズを装着。レンズの上に精液を1滴程度垂らし、約1~2分間動画を撮影すると、精子の数と運動率が測定できます。

 WHOの公表値と比較し、不妊治療を受けたほうがよいかどうかの判断材料にしてもらいます。インターネットで検査キットを買えるほか、マツモトキヨシホールディングスやココカラファインの店頭でも販売するようになりました。

 さらに踏み込んだ検査キットも登場しました。郵送検査事業を手掛けるスタートアップのダンテ(東京都港区)は精子の数や運動率だけでなく、ホルモン量なども調べるサービスを始めました。

 自宅で精液を採取して郵送すると3週間で分析し、結果はパソコンやスマホの個人ページで確認できます。同社は検査が生活習慣の見直しや医療機関への受診につながると期待しています。

 病院などで使える技術開発も始まりました。オリンパスは3月、顕微鏡で精子を解析する際に人工知能(AI)を活用するプログラムを開発すると発表しました。

 日本は不妊治療の件数が世界で最も多く、日本産科婦人科学会によると、2016年の治療件数は45万件弱と10年前の3・2倍に増えました。ただ、体外受精などの処置には健康保険は適用されません。1回の治療は30万~40万円で、1児当たり約197万円の費用がかかります。費用がかさむ要因の一つは、男性側に原因があると気付かずに女性だけが治療を続けるケース。

 男性不妊を専門とする横浜市立大学の湯村寧准教授は、「女性の不妊治療の件数は横ばいだが、男性の治療は増えている」と話しています。同大学付属市民総合医療センターでは3年前と比べ、男性の受診者は33%増の240人と増える傾向にあります。

 厚生労働省も2019年度から、男性向けの不妊治療の助成金を女性と同じ水準まで拡充するとしています。不妊治療で夫側に原因があり、精子を採取する手術を受けた場合について、治療1回につき15万円の助成を初回に限って30万円に倍増し、女性への経済的支援と同水準にします。

 2019年5月2日(木)

 

■無痛分娩で娘亡くした遺族、被害者の会を結成へ 全国で14人が死亡

 麻酔で出産時の痛みを和らげる「無痛分娩(ぶんべん)」による事故で娘を亡くした遺族が、再発防止を求め、近く「被害者の会」を立ち上げます。無痛分娩では、妊婦が死亡したり、重い障害が残ったりする事故が相次いでおり、対策が急務となっています。

 大阪府富田林市に住む安東雄志(ゆうじ)さん(69歳)は「娘の死を無駄にしたくない」として、ほかの被害者家族とともに、無痛分娩に携わる医師の研修の義務化など、再発防止策を国などに求めていきます。

 安東さんの3女、長村千恵さん(当時31歳)は2017年1月、大阪府和泉市の医院で無痛分娩で出産。麻酔後に呼吸困難になり、別の病院に搬送されたが意識は戻らず、そのまま亡くなりました。子供は帝王切開で生まれ、無事でした。

 大阪府警は、業務上過失致死容疑で男性院長(61歳)を書類送検。医師は容体急変後も適切な処置をとっておらず、府警の調べに「対応が追い付かなかった」と説明しました。しかし、大阪地検は4月、嫌疑不十分で医師を不起訴としました。

 無痛分娩は麻酔で出産時の痛みを和らげる出産方法で、母体への負担やストレスが少ないとされます。産後の回復が早いことなどから多くの場合、妊婦本人の希望で無痛分娩による出産を選択しているといいます。千恵さんも、腰痛を抱えていたことから無痛分娩での出産を選びました。安東さんは、「無痛分娩そのものが危険なのではなく、技量がない医師が何の備えもなく手術をしていることが問題だ」と話しています。

 相次ぐ事故を受け、厚生労働省研究班は昨年3月、無痛分娩を安全に行うために望ましい体制をまとめた提言書を公表。医療機関に対し、診療実績などの情報公開や医師、看護師らに定期的な研修を受けさせることなどを求めました。さらに、麻酔に習熟した常勤医が麻酔管理者として責任を持って診療に当たるなど、無痛分娩を行う医療施設の「望ましい体制」も提示しました。

 提言を受け、昨年7月に日本医師会や日本産科婦人科学会など関係機関が参加する「無痛分娩関係学会・団体連絡協議会」が発足。産婦人科医や麻酔科医の在籍数や、過去の無痛分娩での出産件数などの公表を始めたほか、医師を対象とした研修の方法についても検討を進めています。

 一方で、こうした取り組みに法的な拘束力はなく、安東さんは「義務化しなければ実効性のある再発防止策とはいえない」と指摘。国や関係機関に法改正を含めた抜本的な対策を求めていく考えで、「同じ思いを持っている人達と一緒に行動したい」と、「被害者の会」を立ち上げることを決めました。すでに、ほかの事故の被害者家族も参加の意向を示しているといい、具体的な活動内容の検討に入っています。

 日本産婦人科医会が病院や診療所を対象に行った調査では、無痛分娩での出産が確認されたのは2014年度で2万7719件。2016年度には3万6849件となっており、2年で約9000件増加しました。全体に占める割合は2016年度で6・1%。アメリカやイギリスなど欧米では出産する妊婦の20~30%が無痛分娩を選択しているとする調査結果もあり、潜在的なニーズはさらに高いとみられます。

 麻酔科医を常駐させるなど安全な体制を整備し、無痛分娩を行う医院もある一方で、麻酔や分娩中の処置を適切に行えず、妊婦の死亡や重篤な後遺症などを招くケースも少なくありません。日本産婦人科医会の調査では、2010~2016年に全国で少なくとも妊婦14人が無痛分娩中に死亡しました。

 2019年5月2日(木)

 

■医療費控除の申請手続きを自動化へ マイナンバーカードを活用

 自分や家族の医療費が一定額を超えた場合に税負担を軽くする医療費控除について、政府はすべての申請手続きを自動化することにしました。マイナンバーカードの活用による新しいシステムを作り、1年間の医療費を自動計算して税務署に通知する仕組みで、2021年分の確定申告をめどに始めます。

 確定申告の煩わしさを軽減する効果を実感できるようにして、公的サービスの電子化を一段と加速します。

 政府は行政手続きを簡便にすますことができるデジタル社会作りを目指しています。社会の生産性を向上させ、経済成長につなげる狙いで、マイナンバーカードの普及をその中核と位置付けます。

 現在、マイナンバーカードがあれば政府が運営する「マイナポータル」を通じてネット上で行政サービスの利用などを申請できます。

 普及が進めば将来的に書類や対面での行政手続きを原則、全廃できる可能性があります。民間サービスにも広げれば、例えば引っ越しの際に役所に転出入届を提出するだけで、電気・ガスや郵便物の転送、運転免許証の住所変更などが一括してできるようになります。

 2019年4月時点でマイナンバーカードの交付実績は1666万枚と、人口の13%程度にとどまります。韓国では税務の電子申告の利用率が9割を超え、国税当局のサイトを通じて医療費や保険料、教育費などが確認でき、間違いがなければそれを基にオンラインで控除の申告ができます。エストニアでは個人番号カードでほぼすべての行政サービスが受けられます。

 日本の医療費控除の利用者は年間約755万人。ネットを活用して申告できるものの、医療機関名や支払った医療費、保険で補填される額などを自ら入力して書類を作成する必要があります。

 医療費控除が適用されるのは、1年間の家族の医療費から保険で補填された額を引いた額が10万円を超える場合です。1年間、領収書を残して計算しても基準に達しないこともあります。領収書の保存や申告書作りが面倒で、初めから利用しようとしない人もいます。

 政府は2021年3月から、マイナンバーカードを健康保険証として利用できるようにする方針。新しいシステムでは、保険診療のデータを持つ社会保険診療報酬支払基金と国民健康保険中央会のシステムを「マイナポータル」のシステムとつなぎます。国税庁のシステムとも連携することで、医療費控除の申告を完全に自動化します。

 確定申告する際には、まず国税庁の申告書作成のサイトに入り、マイナンバーカードで個人認証します。「医療費通知」のボタンを押すと、1年分の医療費の合計額が一目でわかるようになります。医療費控除の適用基準を超えていれば、そのままサイト上で申告できます。領収書を保存しておく必要もありません。

 政府は2017年の税制改正で、個人が健康保険組合から1年分の医療費を記した「医療費通知」をネット上で取得し、税務署に提出できるようにしました。ただ、加入する健保組合のシステム対応が必要なため、新しい仕組みは広まっていないのが実情です。

 2019年5月1日(水)

 

■ファストフード店でのプラスチック製ストローの提供禁止へ 台湾がアジアで初めて規制

 環境汚染を食い止めようと、欧米などでプラスチック製ストローの提供をやめる動きが広がる中、台湾でもアジアで初めて、今年7月から、ファストフード店などの店内でプラスチック製ストローを提供することが禁止されることになりました。

 台湾の環境保護当局は1日、利用客が店内で飲食する際に使い捨てのプラスチック製ストローを提供することを今年7月1日から禁止し、違反した場合は日本円で最高2万円余りの罰金を科すと発表しました。

 対象となるのは、ファストフード店、デパートやショッピングセンターにある大手レストランチェーン、それに官公庁や学校にある飲食店で、一般の飲食店は含まれていません。2020年には、対象を全飲食店に拡大する方針といいます。

 海に投棄されたプラスチックごみによる環境汚染が問題となる中、プラスチック製ストローの提供を制限する動きは欧米などで広がっていますが、台湾の環境保護当局によりますと、アジアでは初めてだということです。

 台湾では、地元発祥のタピオカミルクティーなどを販売するテイクアウト専門店が広く普及し、ストローの年間使用量は30億本に上りますが、今回の規制の対象に持ち帰り用のストローは含まれておらず、削減量は1億本にとどまる見込みです。

 台湾の環境保護当局は、持ち帰り用のストローを対象に含めるなど規制の拡大も検討しており、現地では、ストローを使わずにドリンクに入っているタピオカをどうやって食べるのかなど、規制の行方に高い関心が集まっています。

 2019年5月1日(水)

 

■先天性肺疾患を子宮内で遺伝子治療 アメリカ、マウスでゲノム編集

 致死率の高い先天性疾患を持ったマウスの遺伝子を、母親の子宮内でゲノム編集技術によって改変することで治療効果を確認したと、アメリカの研究チームが発表しました。先天性疾患に対する子宮内でのゲノム編集という新たな治療法の可能性を示したもので、人間への応用が可能かどうか注目されます。

 アメリカのペンシルベニア大などの研究チームは、呼吸器不全などで生後の死亡率が高い肺疾患を持つ実験用マウスを使い、「クリスパー・キャス9」というゲノム編集技術で治療する実験を行いました。

 病気の原因となる遺伝子を標的にしたゲノム編集試薬を母親の子宮内の羊水に送り込んだところ、この遺伝子が活性化せず、正常な肺の形成が進むことを確認。遺伝子を編集しなかったマウスは出生後にすべて死亡したのに対し、ゲノム編集したマウスは約2割が生き残りました。

 研究チームは、「人間に応用するにはさらに改善の必要があるが、子宮内の遺伝子編集という概念を実証した重要な成果だ」としています。

 2019年4月30日(火)

 

成田空港勤務の男女2人がはしか感染 10連休前に多数と接触か

 千葉県は30日、同県成田市の成田空港で勤務する従業員2人がはしかに感染していたと発表しました。千葉県と成田国際空港会社は、空港の利用者や従業員に対し、発熱や発疹などの症状が出た場合は感染の恐れがあるとして、医療機関に連絡するよう呼び掛けています。

 千葉県疾病対策課によると、20歳代の男性従業員は4月23日に約39度の発熱があり、27日に発疹が出ました。成田市内の医療機関で受診し、遺伝子検査の結果、はしかと診断されました。

 第2旅客ターミナルビルで働き、感染した状態で22日の午前7時から午後10時半までと、24日の午後2時半から午後10時半まで、それに26日の午前6時から午後6時半まで勤務しており、この間に空港の利用者など不特定多数と接触する機会がありました。一方、この期間に、公共交通機関の利用はなかったということです。

 個人情報に当たることから勤務先や勤務内容は明らかにできないとしています。職場の同僚から症状は出ていないといいます。

 また、10歳代の女性従業員は20日に発症した後に出勤はしておらず、感染した状態で空港で勤務することはありませんでした。2人とも最近の渡航歴はなく、現在、快方に向かっています。

 成田空港は1日平均11万8000人が利用し、4万3000人が勤務しています。千葉県は成田空港の従業員に対し、予防接種を受けるよう注意喚起しています。

 2016年には関西空港ではしかの集団感染が発生し、従業員33人の感染が確認されました。

 2019年4月30日(火)

 

■インフルエンザウイルス、研究用の細胞開発 東京大などが発表

 季節性インフルエンザのウイルスは変異しやすく、毎年流行することが知られています。このインフルエンザウイルスを、変異があまり起こらないようにしながら、効率よく増やすことができる研究用の細胞を新たに開発したと、東京大学医科学研究所などが発表しました。効果的なワクチンの生産などにつながる成果だとしています。

 東京大学医科学研究所感染分野の河岡義裕教授などの研究チームは、研究や実験で使われているイヌの腎臓の細胞に、人のインフルエンザウイルスに感染しやすくなる遺伝子を入れ、「hCK細胞」という新たな細胞を作りました。

 そして、このhCK細胞に、A香港型のインフルエンザウイルスを感染させたところ、変異がほとんど起こらなかった上、これまでよりも効率的に増殖させることができたということです。

 河岡教授は、「これまでは変異が起きてしまったり、あまり増えなかったりすることが問題だったが、この細胞を使えば、薬やワクチンの効果をより正確に早く、調べられるほか、効果的なワクチンを短時間で大量に作ることができるようになると期待される」としています。

 2019年4月30日(火

 

■臨床研究法 、「研究がしづらくなり患者の不利益に」 がん治療専門医の6割が回答

 医療の現場で新しい治療法を確立するための臨床研究について、昨年4月に申請手続きなどを厳格にする法律が施行されたことで、がん治療の専門医の6割が「研究がしづらくなり、患者の不利益につながる」と考えているという調査結果がまとまりました。

 新しい治療法を確立するための臨床研究を巡っては、研究データの改ざんが行われ、製薬会社と医師との癒着が指摘されたことを受けて、国は製薬会社から資金提供を受けて行う研究などについて、申請手続きやデータ管理をより厳格にする臨床研究法を昨年4月に施行しました。

 この法律について、がん治療の研究チームが先月、全国のがんの専門医129人に、どのような影響が出ているかアンケート調査を行い、77人から回答を得ました。

 それによりますと、法律ができたことで事務手続きが「かなり負担」あるいは「非常に負担」になったという医師が全体の87%に上りました。

 また、この法律によって臨床研究が推進されていると思うか聞いたところ、「そう思わない」と答えた医師が31%、「逆効果である」が61%に上りました。

 さらに、患者への影響については、「多少の不利益が生じる」が34%、「大きな不利益が生じる」が29%と、およそ6割の医師が、研究がしづらくなり、患者の不利益にもつながると考えており、「患者の利益につながる」と答えたのは6%でした。

 こうした現状について、日本臨床試験学会の大橋靖雄代表理事は「臨床研究法は不正を防止するために必要な法律だが、その一方で、治療の開発が遅れれば、将来、患者にとっても大きな問題となる。ある程度の法律的な規制は必要だが、運用を見直す必要がある」と指摘しています。

 一方、厚生労働省は「研究がしづらくなったという医師の声が上がっているのは把握していて、今後、対応を検討していきたい」と話しています。

 2019年4月29日(月)

 

■新しいがん治療薬の副作用で皮膚障害 スキンケアで症状軽減へ

 がん細胞を狙い撃ちする「分子標的薬」や、がんに対する免疫の攻撃力を活性化する「免疫チェックポイント阻害薬」。次々と登場するがん治療薬は、効果が高い一方、副作用の皮膚障害に悩む人も多く、治療を続けるための対策が欠かせません。

 2000年代に入って使われ始めた分子標的薬は、がん細胞の増殖などにかかわる特定の分子の働きを妨げます。ところが、同じ分子がある皮膚も薬の攻撃対象となってしまうことなどから、高い確率で皮膚障害が出てしまいます。

 主な症状は、顔や背中、胸などに、にきびのような出来物が広がる「ざそう様皮疹」、爪の周りに炎症が起き、重いと肉の塊(肉芽腫)ができる「 爪囲(そうい)炎」、手のひらや足の裏に水膨れが生じる「手足症候群」などで、薬が効いている人ほど症状が出やすい傾向があるといいます。

 近畿地方に住む80歳代女性は、肺がんの治療で和歌山県立医大病院(和歌山市)に通っています。2013年に分子標的薬「イレッサ」を飲み始めたところ、ざそう様皮疹で両手が真っ赤にはれました。背中や尻などにも同様の症状があり、痛みも強く、主治医で腫瘍センター長の山本信之さんに「薬をやめたい」と訴えました。

 女性はすぐに同病院の皮膚科を紹介され、ステロイドの塗り薬や保湿剤を使ったスキンケアの指導を受けると、症状は軽くなりました。薬を中断することなく、今も皮膚障害を抑えながら、服薬治療を続けています。

 山本さんは、「分子標的薬を使う患者には、事前に皮膚科でスキンケアなどの指導を受けてもらう。薬剤師や看護師らとも連携し、早期からの取り組みが欠かせない」と話しています。

 山本さんは腫瘍内科医や皮膚科医、薬剤師らの有志と症例の研究を重ね、この「イレッサ」による皮膚障害の症状や重症度別の治療法などをまとめた手引きを作っており、日本皮膚科学会のホームページで見ることができます。

 患者が日常生活の中で行うスキンケアも重要です。常に清潔を保ち、過度の刺激を与えないように気を付けます。シャワーや風呂は熱い湯を避け、せっけんは泡立てて優しく体を洗います。入浴や水仕事の後は、保湿剤を欠かさず塗るようにします。

 同大皮膚科准教授の山本有紀さんは、「薬による治療を続けるためにも、スキンケアや生活習慣の改善に取り組むことが大事。皮膚障害が出てもあきらめず、専門医に相談してほしい」と呼び掛けています。

 このほか、2014年以降に登場した「オプジーボ」など、免疫チェックポイント阻害薬と呼ばれる新しいタイプのがん治療薬でも、副作用の問題が浮上しています。

 この免疫チェックポイント阻害薬から別のがん治療薬に変更したり、投与後に抗菌薬や胃薬などを使ったりした時、皮膚に症状が出ることがあります。これまでに、唇や口の中がただれる、全身が真っ赤にはれて熱が出る、輪っか状の出来物があちこちにできるなど、皮膚や粘膜の重い障害が報告されています。

 いずれも、後から使った薬の使用をやめたり、ステロイドを投与したりするなど、対症療法で一定の効果を上げています。免疫チェックポイント阻害薬による皮膚障害についても、手引きの作成が進められています。

 2019年4月29日(月)

 

■はしかを発症し通院に電車利用 川崎市の30歳代女性

 川崎市は29日、市内に住む30歳代の会社員の女性がはしか(麻疹=ましん)を発症したと発表しました。今年に入って川崎市内で感染が確認されたのは4人目だということです。

 川崎市によると、女性は周囲に感染の恐れのある時期に、通院のため電車に乗っており、不特定多数の人に接触した可能性があります。海外渡航歴はなく感染経路は不明ですが、遺伝子検査の結果、ウイルスはフィリピンなどで流行している型と一致しました。

 女性は24日に発熱し、26日に発疹が出ました。26日と27日に、それぞれ市内の別々の医療機関を受診しました。27日の通院の際、午後2時ごろから3時ごろまで片道だけ電車を利用。東急東横線の元住吉駅から武蔵小杉駅に行き、そこでJR南武線に乗り換え、武蔵溝ノ口駅まで移動しました。

 女性はワクチン接種歴があり、快方に向かっています。

 はしかは、高熱や全身に発疹が出るウイルス性の感染症で、感染力が非常に強く、妊婦が感染すると流産や早産の恐れもあります。

 川崎市保健所は、感染が疑われる場合、事前に連絡した上で医療機関を受診するよう呼び掛けています。

 2019年4月29日(月)

 

■ブタの体内で人の膵臓を作製 東大、年度内にも実施へ

 東京大学の中内啓光(ひろみつ)特任教授は、iPS細胞(人工多能性幹細胞)を使って、ブタの体内で人の膵臓(すいぞう)を作製する研究を実施する方針を明らかにしました。

 将来、移植医療用として使うのが目的。学内の倫理委員会と国の専門委員会による2段階審査で認められれば、今年度中にも国内で初めて人の臓器を持つ動物をつくる実験に着手します。

 人の臓器を持つブタは、動物の受精卵(胚)に人の細胞が混じった「動物性集合胚」からつくります。文部科学省は、こうした胚を子宮に戻して動物を誕生させるのを禁じてきましたが、3月に指針が改定され研究が解禁されたのを受けて、東京大のチームが研究に取り組みます。

 計画では、遺伝子を改変し膵臓ができないようにしたブタの受精卵に人のiPS細胞を入れ、親ブタの子宮に戻します。胎児のブタの体内にはiPS細胞由来の人の膵臓ができると期待されます。出産前に胎児を取り出し、機能や中に含まれるiPS由来の細胞の量などを調べます。

 将来的には、この方法で作った膵臓を取り出し、1型糖尿病の治療目的での人への移植も検討しています。人と動物の外見が混じった個体が生まれる可能性は、極めて低いとされます。

 2019年4月28日(日)

 

■介護施設で働く人、半数が勤続5年未満 若い人材の確保が課題に

 介護施設で働く人の勤続年数は半数が5年未満と、職場に定着していない実態が労働団体の調査で明らかになりました。

 これは全国労働組合総連合(全労連)が、特別養護老人ホームなどの介護施設で働く人を対象に、昨年10月から今年1月まで調査したもので、3920人から回答を得ました。

 それによりますと、介護施設で働く人の勤続年数は15年以上が10・1%、10年以上15年未満が16・4%、5年以上10年未満が23・9%、5年未満が49・5%でした。

 5年未満が全体の半数を占めており、職場に定着していない実態が明らかになりました。

 介護施設で働いている人の年齢は平均で44・8歳と、2013年の前回調査を3・3歳上回りました。20歳代以下は全体の約1割にとどまり、若い人材の確保が引き続き課題となっています。

 また、「仕事をやめたいと思うことがある」と答えた人は64・5%で、前回調査より7・2ポイント増えました。理由(複数回答)は「仕事がつらい、忙しすぎる、体力が続かない」が55・9%で最も多く、次いで「賃金が安い」が39・9%でした。

 全労連の岩橋祐治副議長は、「人材が不足する中、労働環境は厳しい。給与の改善など人材確保につながる施策を今すぐ講じないと、若い人に選んでもらえる仕事ではなくなってしまう」と話しています。

 2019年4月28日(日)

 

■がんゲノム医療の拠点病院、30カ所を指定へ 体制を整備

 厚生労働省は26日、がん細胞の遺伝子を網羅的に調べて患者に最適な治療法を探る「がんゲノム医療」で中心的な役割を担う病院として、9月をめどに約30カ所を拠点病院に指定すると決めました。

 がんゲノム医療の遺伝子検査システムは近く保険適用される見込みで、患者数の増加に対応できる体制を整備します。

 がんゲノム医療は、患者のがん細胞の遺伝子情報を解析。そのデータを元に、「エキスパートパネル」と呼ばれる専門家チームで議論し、それぞれの患者に合った治療法を分析します。

 こうした分析ができる施設は現在、国立がん研究センター中央病院(東京都中央)など11カ所の中核拠点病院に限られます。分析できるのは11施設で年間4000~5000人と推計されます。今回の拠点病院の指定により、年間数万人の患者にエキスパートパネルを実施、対応できるようにするといいます。

 厚労省は今後、遺伝子情報の解析結果を分析できる専門家がいるかどうかなど、どんな条件が拠点病院に必要かを決めます。拠点病院は公募し、専門家でつくる検討会で審査をし、選定します。

 2019年4月27日(土)

 

■厚労省、海外渡航者に感染症予防を呼び掛け 風疹やはしか流行国も

 10連休中に海外旅行に出掛ける人に向けて、厚生労働省や各地の自治体が渡航先での感染症予防を呼び掛けています。病気でせっかくの旅行が台なしになるだけでなく、今年1月以降に日本で感染が広がったはしか(麻しん)のように海外から感染症が持ち込まれるケースが多いためです。大阪府の担当者は、「正しい知識と予防法を身に着け、旅行を楽しんでほしい」と呼び掛けています。

 旅行会社JTBによると、国内と海外を合わせた全国の旅行者数は昨年の大型連休より1・2%増え、2467万人と過去最多になる見通し。特に海外は、アジアを中心に同6・9%増の66万2000人を見込んでいます。

 厚労省はホームページ(HP)で、出国前のワクチン接種の重要性や旅行中の注意点、帰国後の体調管理について説明しています。大阪府や神奈川県など多くの自治体もHPで注意を呼び掛けています。

 厚労省検疫所や大阪府のHPによると、海外旅行中の感染症は胃や腸など消化器系が最多。生水や氷、カットフルーツはなるべく避け、十分に火の通った物を食べるよう注意が必要です。

 また、蚊に刺されて感染するデング熱や、犬が原因の狂犬病など動物が媒介する感染症の流行国もあります。大阪府の担当者は、「虫が活発な朝と夕は長袖を着用し、虫よけ剤も必要に応じて使ってほしい。動物にむやみに触るのも避けて」と話しています。

 現在、中国やフィリピン、ベトナム、インド、インドネシアでは風疹が、インドやフィリピン、タイなどでははしかが流行中で、予防にはワクチン接種が有効です。旅行者が海外からウイルスを持ち帰り、国内でさらに感染を広げる恐れもあり、大阪府の担当者は「潜伏期間が1週間以上の感染症もある。帰国後しばらくして体調が悪化した場合も海外で感染した可能性を疑い、医療機関を受診してほしい」と呼び掛けています。

 2019年4月27日(土)

 

■子供間の性的トラブル、年732件 児童養護施設など初調査

 児童養護施設などで子供同士の間で起きた性的トラブルが、2017年度に計732件把握されていたことが26日、厚生労働省の初の実態調査で明らかになりました。同省は同日、トラブルの未然防止や早期把握の徹底を求める通知を都道府県などに出しました。

 施設内で起きた子供間のトラブルは自治体が国に報告したり、公表したりする法律上の規定はなく、実態を把握しにくい問題となっています。

 調査は委託先の民間シンクタンクが2019年1~2月、全国の児童養護施設や児童相談所の一時保護所、里親家庭など約1400施設を対象に実施し、約1000施設が回答しました。裸を撮影したり、体を触ったりするなどの「性的な問題」の件数やかかわった人数について、アンケート形式で集計しました。

 性的な問題は732件確認され、加害者、被害者を含め計1371人の子供がかかわっていました。このうち児童養護施設など社会的養護関係施設が687件、1280人を占めました。

 三重県名張市の児童養護施設では、2011~2012年に入所していた7歳の女児が男子中学生からわいせつ行為を受けていたことが判明。同県は2008~2012年度までの5年間で県内の施設で子供間の性暴力が計51件起きていたことを明らかにし、厚労省が調査に乗り出す切っ掛けとなりました。

 一方、調査に回答した児童養護施設の3割がこうした性的トラブルを防ぐための予防や対応のマニュアルを持っていないことがわかり、厚労省は問題行動を分析した上で、今年度中にマニュアルを作成することにしています。

 厚労省の担当者は、「重く受け止めている。子供が安心して暮らせるように幅広く対策を講じていきたい」と話しました。

 2019年4月26日(金)

 

■性的少数者に「当てはまる」2・7% 大阪市民を調査

 国立社会保障・人口問題研究所の研究チームは25日、協力が得られた大阪市の市民を対象に性的指向や性自認などを尋ねる調査を行ったところ、有効回答のあった4285人中、ゲイ・レズビアン(同性愛)、バイセクシュアル(両性愛)、トランスジェンダー(心と体の性が一致しない)のいずれかに当てはまる人は速報値で2・7%(計115人)だったと発表しました。

 内訳は同性愛が31人(0・7%)、両性愛が62人(1・4%)。トランスジェンダーは32人(0・7%)で、うち10人は同性愛か両性愛でした。出生時性別が「男」で現在の自認が「女」(6人)または「その他」(6人)は12人(0・3%)、出生時性別が「女」で現在の自認が「男」(4人)または「その他」(16人)は20 人(0・5%)でした。

 また、誰に対しても性愛感情を抱かないアセクシュアル(無性愛者)と答えた人は33人(0・8%)でした。

 調査は性的少数者(LGBT)の生活実態を調べることが目的。今年1月、大阪市の18~59歳の男女1万5000人を住民基本台帳から無作為抽出し、アンケートを郵送して行われました。

 2019年4月26日(金)

 

■インフルエンザが全国的に再流行 推計患者数は9万6000人

 インフルエンザの患者が、東日本を中心に再び増えています。厚生労働省は26日、全国約5000カ所の定点医療機関から報告された直近1週間(15~21日)の1医療機関当たりの患者数が2・54人になり、前週の1・5倍に増えたと発表しました。4月上旬には1・46人まで減りましたが、その後、2週連続で増加しました。

 直近1週間の全国の推計患者数は、約9万6000人で、前週より約3万1000人増えました。都道府県別で最も多いのは秋田県で6・28人、次いで山形県(5・50人)、福島県(5・45人)、鳥取県(4・03人)が続きました。東京都(3・27人)や愛知県(2・80人)、大阪府(2・14人)など都市部でも患者が増加。計39都道府県で前週より増えました。高知県(0・48人)を除く46都道府県で、流行の目安となる基準(1人)を超えています。

 休校や学年・学級閉鎖をした保育所や幼稚園、小中高校は301施設に上り、前週の34施設の約9倍になりました。

 検出されたウイルスは、直近の5週間はA香港型が最も多く約6割。B型と2009年に新型として流行した後に季節性となったA09年型が同程度で、約2割ずつとなっています。1週間当たりの患者数が過去最多を記録した1月下旬と比べると、B型の割合が増えています。

 東京都は、定点当たりの患者数が前週より約2・4倍に増えました。患者数自体は例年と比べてそれほど多くないものの、一度減った後、再び増加するのは珍しいといいます。患者は10歳代が多く、学校での集団感染が目立ちます。

 厚労省の担当者は、「これから連休に入る。学校が休みになって患者が減るのか、人の行き来が激しくなって感染が広がるのかはわからないが、とにかく手洗いやせきエチケットを徹底してほしい」と呼び掛けています。

 2019年4月26日(金)

 

■豊胸手術、ジェル状充填剤の使用自粛を 学会などが声明

 非吸収性充填剤を注入する美容医療の豊胸手術で合併症被害が相次いでいるとして、一般社団法人日本美容外科学会(JSAPS)など4団体が4月25日、「安全性が証明されるまで実施するべきではない」と訴える共同声明を発表しました。

 東京・霞が関の厚生労働省記者クラブで会見したJSAPSの大慈弥裕之理事長(福岡大学副学長)は、「合併症の多くは、術後5年以上経過してから発症する。必ず定期的に施術したクリニックで診察を受け、おかしいと思った時にはすぐ治療を受けてほしい」と話しました。

 声明を出したのは、JSAPS、一般社団法人日本形成外科学会、日本美容外科学会(JSAS)、公益社団法人日本美容医療協会の4団体。

 豊胸手術には、シリコンの塊を挿入する「シリコンインプラント」、腹などの脂肪を乳房に注入する「脂肪注入」、ヒアルロン酸や化学物質などジェル状の素材を注入する「充填剤注入」などの方法があります。

 中でも「充填剤注入」は注射器で胸の周りから注入するだけと手軽なため、多くのクリニックで行われており、学会が2017年に行った「全国美容医療実態調査」でも同年の豊胸手術の約46%を占めました。

 大慈弥理事長によると、日本では1940年代後期より充填材注入が導入され、1950年代からはゲル状シリコンが用いられるようになりました。しかし、経過とともに液状のワセリンなどが皮膚に染み出して赤くなるといった合併症が報告され、1960年代後期からはシリコンインプラントを手術で挿入する方法が主流となったといいます。

 世界では、シリコンインプラントと脂肪注入が標準的な治療となっています。しかし、日本では1990年代後期より、再び充填材注入による豊胸術が行われるようになりました。ジェル状の充填材が、胸の真ん中に移動したり、胸の下に下がったり、脇まで侵入したりする事例の報告がありました。

 日本美容医療協会の青木律理事長は、「注射で注入しているタイプで、長期的な安全性が確認されているものはない」と指摘。「医療機関によっては、充填剤の『アクアフィリング』を『ほとんど水だから安全です』とうたっているところもある。定期的にフォローしてくれる医療機関を選び、医師から十分な説明を受けた上で、判断してほしい」と訴えました。

 また、塩谷信幸・北里大学名誉教授は、「日本は自由診療の場合、未承認医薬品や医療機器を個人輸入して使用することが認められている。医師免許を持っていれば、自己責任で何をしてもいいのか。医師の裁量権も考えながら、なるべく承認を取るように行政とも議論したい」と話しました。

 共同声明は各学会の会員に周知し、今後、ジェル状の充填剤の使用中止を促すガイドライン策定を目指しています。 

 2019年4月25日(木)

 

■屋内製品による子供の事故、5年で125件 ウォーターサーバー関連が最多

 6歳以下の子供が被害を受けた屋内製品による事故が、2017年度までの5年間で125件あったことが、独立行政法人・製品評価技術基盤機構(NITE)のまとめでわかりました。このうちけががあったのは99件で、ウォーターサーバーからの温水によるやけどが16件と最多でした。

 5月5日のこどもの日を前に、NITEが25日に集計結果を公表しました。子供の行動が事故の切っ掛けになった事例もあり、製品の設置の工夫や子供から目を離さないことなどを呼び掛けています。

 NITEによると、屋内製品による子供の死亡事故は5年間で9件、重傷事故は31件発生。事故はやけどが46件で一番多く、ウォーターサーバーのほかに加湿器で4件、バッテリーや電池で3件など。続いて多いのが体の挟み込みの15件で、幼児用いすや扉によるものが計8件でした。

 事故発生時の状況別では、保護者が目を離した時が51件だった一方、保護者と一緒の時も32件ありました。子供1人の時にも15件発生していました。

 製品別で最多だったウォーターサーバーの事故では、2016年11月に神奈川県の1歳児が温水が出るつまみにつかまり、ぶら下がるような態勢になったところ、チャイルドロックが偶然解除され、温水が流れ出てやけどを負ったケースがありました。

 このほか、東京都の1歳児が加熱中の炊飯器のふたに手を触れ、そのまま炊飯器を抱えて後ろに転倒。中身がこぼれて腹部から両足にかけてやけどを負った事故が2015年7月にありました。この幼児は普段から、炊飯時に鳴る音に興味を示していたといいます。コイン形のリチウム電池を誤飲し、重傷を負った幼児もいました。

 大型連休中は帰省などで、普段とは違う環境で子供が生活することが多くなります。NITEの担当者は、「普段、子供がいないと製品の使い方についてあまり気にしないかもしれないが、チャイルドロックを確認して利用したり、製品近くに子供を近付けないようにしたりすることがポイントだ」としています。

 2019年4月25日(木)

 

■脳の思考を音声に変換、埋め込み型機器を開発 米の研究チーム

 脳の中の電気信号を読み取り、話し言葉に変換することにアメリカの研究チームが成功し、脳の障害などによって言葉が出ない人とのスムーズな意思の疎通につながる技術として注目されています。

 この成果は、カリフォルニア大学サンフランシスコ校の研究チームが24日、イギリスの科学雑誌「ネイチャー」に発表しました。

 研究チームは、脳内で出される電気信号を検知する脳内埋め込み型機器(インプラント)を人に取り付け、数百の文章を声に出して読んでもらうことで、声に出す際に唇や舌、あごやのどを動かすのにどのような信号がかかわっているかを人工知能(AI)を使って詳しく解析しました。

 そして、この解析を基に脳内の信号を解読して音声に変換するコンピューターのシステムを作って試したところ、脳内の信号を基に100余りの文章を音声にすることができたということです。

 文章によってはほとんどの人が正確に聞き取れたということで、研究チームは、脳の信号を読み取って文章を音声に変換することができたのは初めてだとしています。

 研究チームは、現時点では限られた文章しか音声にできておらず、精度を上げる必要があるとしています。

 ただ将来的には、脳梗塞の後遺症や、全身の筋肉が徐々に動かなくなる難病である筋萎縮性側索硬化症(ALS)などで言葉が出なくなった人とのスムーズな意思の疎通につながる技術として注目されています。

 2019年4月25日(木)

 

■インフルエンザ患者が再び増加 関東地方と山形県

 関東1都6県でインフルエンザの患者の数が再び増加し、1医療機関当たりの患者数はいずれの都県でも、流行開始の目安となる数値を超えています。

 厚生労働省は、1週間に医療機関から報告されたインフルエンザの患者が1医療機関当たり「1人」を超えた場合、流行の開始の目安になるとしています。

 4月14日までの1週間に、関東地方では栃木県が1・83人、埼玉県が1・44人、群馬県が1・43人、東京都が1・35人、茨城県が1・23人、千葉県が1・12人、神奈川県が1・01人といずれの都県でも前の週を上回り、流行の開始の目安を超えています。

 また、山形県によりますと、先週末ごろから山形市の県立中央病院に勤務する医師や看護師などが相次いでインフルエンザに感染し、4月24日正午までに、患者1人を含む51人の感染が確認されたということです。

 4月21日までの1週間に、県内46の医療機関から報告された患者は253人で、前の週から102人増えました。

 1医療機関当たりの患者は、県南部の置賜地域が最も多い13・22人で、前の週から6人余り増えて注意報レベルの10人を超えました。続いて日本海沿岸の庄内地域が4・38人などとなっています。

 これから10連休を控え、厚労省は感染が確認された場合には、拡大を防ぐため人が多く集まる場所に出向くことは避けてほしいと呼び掛けています。

 山形県は「ワクチンの効果は通常5カ月程度で、接種した人の間でも患者が増えている恐れがある」として、注意を呼び掛けています。

 2019年4月25日(木)

 

■潮干狩り、加熱しても消えない貝毒に注意を 10連休前に消費者庁が呼び掛け

 4月27日からの10連休に潮干狩りを楽しむ人が多いとみられる一方、今年もすでに貝毒による食中毒が発生しているため、消費者庁は24日、潮干狩りに出掛ける際は事前に都道府県の貝毒の情報を確認するよう注意を呼び掛けました。

 貝毒はアサリやシジミ、カキなどの二枚貝が有害プランクトンを食べて体内に毒を蓄積することで生じ、加熱しても毒は消えません。下痢性の貝毒は食後30分~4時間で発症し、下痢や腹痛、吐き気などの症状が出るほか、まひ性の貝毒は食後30分程度で顔面や手足がしびれ、重症の場合は呼吸困難で死に至るケースもあります。

 厚生労働省によると、貝毒による食中毒は昨年は9件発生し、患者数は11人でした。今年3月中旬には、大阪府岬町の80歳代の男女2人が、海岸に自生するムール貝(ムラサキイガイ)を採取して自宅でゆでて食べたところ、手や口のしびれやめまいを起こし、まひ性貝毒の食中毒と診断されました。

 食品安全委員会によると、海外では年間約1600人がまひ性貝毒を発症し、約300人が死亡していると推定されているといいます。

 消費者庁によると、特に無料の潮干狩り場は検査が行われていないこともあるため注意が必要といいます。大阪府や兵庫県、徳島県などの一部海域では規制値を超える貝毒が検出されているといい、担当者は「事前に貝毒の情報を都道府県のウェブサイトなどで確認し、食べて異変を感じたら必ず医療機関を受診してほしい」と話しています。

 2019年4月24日(水)

 

■旧優生保護法下の強制不妊手術、救済法成立 一時金320万円を支給

 旧優生保護法(1948~1996年)下で障害者らに不妊手術が繰り返された問題で、参院本会議は24日、与野党が提出した救済法案を全会一致で可決、法案は成立しました。被害者への一時金320万円が柱で、「反省とおわび」を記しました。救済法は速やかに施行されます。

 救済法の前文で、被害者が心身に多大な苦痛を受けたとして、「われわれは、それぞれの立場において、真摯(しんし)に反省し、心から深くおわびする」と明記しました。

 施行日時点で生存する被害者本人に、一時金320万円が支給されます。支給額はスウェーデンが20年前に約200万円を支払っている事例を参考にしました。配偶者や故人は、対象外になります。

 被害者は法施行後、5年以内に都道府県を通じて請求。強制手術だけでなく、本人が同意したとされるケースも対象となります。一時金支給対象となる被害者には、プライバシーを配慮して個別通知はしません。

 厚生労働省によると、知的障害や精神疾患、遺伝性疾患などを理由に、同意も含めて過去に約2万5000人が不妊手術を受けたとされるものの、個人が特定できる記録は約3000人分。記録のない人に対しては、厚労省が夏ごろに設置する「認定審査会」が医師の所見や関係者の証言などを総合して、支給対象になるかを判断します。

 障害者差別を繰り返さないため、「共生社会の実現」に向けて旧優生保護法を巡る問題の経緯を国が調査することも明記しました。

 救済法案は、超党派の議員連盟や与党ワーキングチーム(WT)が作成に当たり、議員立法で提案されました。

 今回の救済法成立で被害者救済へ大きく前進したものの、一時金の額の低さや、「われわれ」とした謝罪の主体を巡り、被害者らからは反発の声が上がっています。原告は各地で提起した法廷闘争を継続する意思を崩しておらず、判決内容次第では法改正の可能性もあるなど波乱含みです。

 2018年1月、宮城県の60歳代女性が仙台地裁に提訴し、各地に拡大。これまで札幌、仙台、東京、静岡、大阪、神戸、熊本の7地裁に男女計20人が国家賠償請求訴訟を起こしています。

 ただ、各地の訴訟では請求額が最大約3000万円にもなり、一時金320万円と大きく隔たりがあります。救済法を主導してきた超党派議員連盟の会長、尾辻秀久元厚生労働相は「これで終わるつもりはない」と強調し、判決次第での法改正も示唆しています。

 2019年4月24日(水)

 

■世界初のマラリアワクチン、マラウイで接種開始 100万人の感染を防げる見通し

 アフリカ南東部のマラウイ共和国で23日、世界で初めて使用が承認されたマラリアワクチンの予防接種が始まりました。マラリアはアフリカ諸国の子供を中心に毎年、数十万人の死者を出しています。

 新ワクチン「モスキリックス」の配布はマラウイの首都リロングウェで始まり、今後数週間でケニア共和国とガーナ共和国でも行われる見通し。ワクチンは30年余りの期間と10億ドル(約1100億円)近くを投じて開発されました。共同開発したのは、イギリスの製薬大手グラクソ・スミスクラインと非営利団体であるPATH・マラリア・ワクチン・イニシアティブで、ビル・アンド・メリンダ・ゲイツ基金も一部出資しています。

 世界保健機関(WHO)のテドロス・アドハノン・ゲブレイェスス事務局長は、「マラリア予防は、ベッドの蚊帳などの対策によりここ15年で大きく前進したが、進展は停滞しており、後退している地域もある」と指摘。「我々にはマラリア対策を再び軌道に乗せる新たな解決策が必要で、新しいワクチンはその達成に向け有望な手段となる」と述べました。

 モスキリックスは長期の臨床試験により安全性が確認され、マラリア感染の確率を40%近く下げられることが示されました。これはこれまで報告された中で最高の予防効果ですが、感染を完全に防げるわけではないため、接種後も蚊帳など従来型の予防手段を組み合わせる必要があります。また、効果が出るには厳格な日程で4度の連続接種を受ける必要があり、これはアフリカ地方部にとっては厄介な段取りとなります。

 3カ国での予防接種計画は2歳以下の乳幼児36万人を対象とするもので、実施によりワクチンの有効性に関し広範囲の知見を得るほか、提供方法の実行可能性を確かめる狙いがあります。

 マラウイ保健省高官は、同国では毎年600万人のマラリア感染が報告されており、ワクチン接種によりうち100万人の感染を防ぎ、4000人の命を救える見通しだと説明しました。

 2019年4月24日(水)

 

■皮膚の細胞から3Dプリンターで人工血管を作製 透析患者への移植を申請

 佐賀大医学部の中山功一教授(臓器再生医工学)らの研究チームが、細胞を使って立体的な組織を作り出す「バイオ3D(3次元)プリンター」を使って作製した人工血管を人工透析の患者に移植する臨床研究計画を蒲郡(がまごおり)市民病院(愛知県)の審査委員会に申請しました。

 中山教授によると、皮膚の細胞だけを使ってバイオ3Dプリンターで作製した生体組織の移植は世界的に珍しいといいます。

 今回の研究では、渋谷工業(金沢市)が開発し、医療ベンチャー「サイフューズ」(東京都文京区)が販売するバイオ3Dプリンターを使用。まず患者の皮膚の細胞を培養し、約1万個の細胞の塊を作製。血管の3次元データに基づいて、この塊を生け花に使う剣山のような土台に串刺しにします。数日間で細胞が互いにくっ付き、長さ約5センチ、直径約5~6ミリの人工血管ができます。

 人工血管は、人工透析の患者が血液浄化のために使う血管の分路(シャント)と置き換えます。既存のシャントは樹脂製で内部が詰まって血流が悪くなるなどの不具合が起こることがありますが、人工血管に替えれば血流が改善されるとみられます。

 研究チームは半年ほどかけて安全性や効果を確かめ、佐賀大医学部で患者3~5人に移植する予定。中山教授は「人間の細胞だけで作られた人工血管は感染症を起こしにくく、透析で繰り返し注射針を刺されても自己再生できる」と話しています。

 2019年4月23日(火)

 

■「全臓器のがんに使える薬」の開発進む 選択肢が増えると期待

 がんの治療薬はこれまで、肺がんや胃がんなど臓器ごとに承認されてきましたが、原因となる遺伝子が共通していれば、どの臓器のがんであっても使える薬を開発するケースが増えており、がん患者の薬の選択肢が増えると期待されています。

 がんの治療薬はこれまで、肺がんや胃がんなど臓器ごとに効果を確認して国の承認を受けてきましたが、原因となる遺伝子が共通していれば、どの臓器のがんであっても効果を発揮するケースがあることがわかってきました。

 そのため製薬会社は、がんの原因遺伝子の働きを抑える薬を開発し、どの臓器であっても使えるよう国の承認を受ける薬が出てきています。

 製薬会社のMSD(東京都千代田区)が販売する「キイトルーダ」という薬は、悪性黒色腫や肺がん、ホジキンリンパ腫、尿路上皮がんのいずれも、一部に対しで承認を受けていましたが、原因遺伝子が同じであれば臓器に関係なく効果が期待できるとして、昨年12月に国内では初めて臓器別ではない承認を受け、血液を除くすべてのがんで使用できるようになりました。

 また、中外製薬が開発を進めるがん治療薬も、遺伝子の特徴が共通していれば幅広く使うことができるよう国に申請し、審査が行われています。

 がんの原因となる遺伝子に詳しい順天堂大学の新井正美先任准教授は、「こうした薬の開発はほかにも進んでいて、今後、がん患者の薬の選択肢が増えると期待される」と話しています。

 国立がん研究センター東病院の吉野孝之医師(消化管内科)は、「臓器別ではないがん治療薬の開発が進んでいる。臓器別に治療方針を立てる時代から、臓器を超えて治療する新しいがん治療の幕開けになる」と話しています。

 2019年4月23日(火)

 

■腹腔鏡手術の執刀医に専門医資格なし 草加市立病院の検証委が報告書

 埼玉県の草加市立病院が、保険適用の基準を満たさない腹腔(ふくくう)鏡手術を開腹手術として診療報酬請求していた問題で、病院が設置した第三者検証委員会は23日、最終報告書を公表し、執刀した男性医師(49歳、退職)が2011年10月以降、専門医の資格を更新していなかったと明らかにしました。「手術による直接の健康被害はない」としています。

 第三者検証委によると、請求に誤りがあったのは2008年以降2017年までの10年間に実施した子宮がんや卵巣がんの腹腔鏡手術95件。1件を除き同じ非常勤の男性医師が担当していました。保険適用には産婦人科専門医の資格や一定の経験が必要でしたが、男性医師は満たしていませんでした。病院も施設基準を満たしていませんでした。

 また、第三者検証委からの依頼を受け手術の動画を検証した専門家は、「手術を担当した医師にはがん手術の基本的知識が不足している」などと指摘したということです。

 男性医師は第三者検証委の聞き取りに、「更新を失念していた」と話しました。

 第三者検証委は、「病院は男性医師への監督が不十分だった」と指摘。事務部門も当事者意識が薄く、請求業務の責任の所在が不明確だったとしました。その上で組織制度の改革を求め、組織全体や各部門をチェックする監査役を置くよう提言しました。

 草加市立病院によると、請求総額は計約1億4000万円で、現在実施されている厚生労働省関東信越厚生局の調査終了後に返還する方針。河野辰幸病院事業管理者は、「診療の質が厳しく問われたと感じている。患者やご家族の皆様におわびし、信頼回復に努めていきたい」と述べました。

 2019年4月23日(火)

 

■CTなどの画像診断誤り、救急医療現場でも 3年間で死亡12件

 救急医療現場で、エックス線やコンピューター断層撮影装置(CT)を使った画像診断をしたものの、治療が必要な症状を見落としたため、患者が死亡した事例が昨秋までの3年間で12件あったことが明らかになりました。

 国の医療事故調査制度に基づき、報告があった851件を日本医療安全調査機構が分析し、22日発表しました。機構は「画像診断の際には、頭部の出血や動脈破裂など、見落とすと死につながる症状の鑑別診断を念頭に置きながら見てほしい」と呼び掛けています。

 2015年10月~2018年10月末までに医療事故調査・支援センターに報告があった院内調査結果が対象。救急医療での画像診断にかかわる死亡は15件あり、このうち12件が画像検査の所見が診断・治療につながらなかったといいます。

 12件のうち7件は、急性硬膜下血腫や大動脈瘤(りゅう)破裂など、すぐに治療を施さないと死につながる症状の画像所見を見逃していました。また、8件は医師1人で画像確認をしていました。画像診断報告書を担当医師が確認せずに、がんで亡くなった事例も2件ありました。

 分析をした坂本哲也・帝京大学教授(救急医学)は、「読影する放射線科医師が業務量に対して、足りていない現状が背景にある。複数医師による画像確認や情報共有など体制整備を進めることが大切だ」と話しています。

 2019年4月23日(火)

 

■死後4時間たったブタの脳、一部細胞が機能回復 米研究チームが成功

 アメリカなどの研究チームが、死んだブタの脳に血液の代わりとなる液体を流したところ、脳の一部の細胞が動き始め、機能が回復しているのが観察されました。意識や感覚など、脳の高度な機能は働いていませんでしたが、死後も脳の一部が機能していたことで、何をもって死とするのか、その定義が変わることにつながる可能性もあるとして注目されています。

 アメリカのイェール大学などの研究チームが17日、イギリスの科学雑誌「ネイチャー」に発表しました。

 それによりますと、食肉処理場から32頭分のブタの脳を採取し、死後4時間後に研究チームが製作した機器に接続しました。この機器を使い、酸素や脳細胞の死を遅延・逆行させる薬剤を脳に送り込むため、合成血液を含んだ特別な液体を、脈動に似せたリズムで脳に送り込みました。脳再生のためのこの調合液は6時間にわたり、ブタの脳に供給されました。

 ブタが死亡してから10時間後の時点で、海馬と呼ばれる部分など脳の一部で細胞が動き、酸素やぶどう糖を消費して神経の信号の伝達にかかわるシナプスが働いていたのが観察されたということです。

 ただ、脳波スキャンでは、意識や感覚を示す脳全体の電気活動は観測されませんでした。

 脳細胞は、血液が流れず酸素や栄養が供給されなくなるとすぐに破壊されると考えられていましたが、イェール大学のネナド・セスタン神経科学教授は、「脳細胞の死は、これまで私達が思っていたよりも長い時間をかけて起こっていることが示された。また、そのプロセスの一部を延期したり、停止させたり、逆行させられることもわかった」と説明しています。

 ほ乳類のブタで死後も脳の一部で機能が回復したのが観察されたことで、将来、脳梗塞(こうそく)などの後に脳の機能を維持する治療への応用が期待される一方、何をもって死とするのか、その定義が変わることにもつながる可能性があるとして注目されています。

 2019年4月22日(月)

 

■人間の受精卵のゲノム編集、遺伝病研究を容認 生命倫理専門調査会

 遺伝子を効率よく改変できる「ゲノム編集技術」で人間の受精卵の遺伝子を操作する基礎研究を巡り、内閣府の生命倫理専門調査会は22日、遺伝病の治療法の開発などを容認する見解をまとめました。現時点では安全面や倫理面から、その受精卵で子供を誕生させることは認めないものの、受精卵の遺伝子改変による遺伝病の予防に道を開くことになります。来春にも研究が認められる見通し。

 生命倫理専門調査会は、遺伝病を防ぐ治療法開発などにつながり得るとして、遺伝病や生まれ付きの病気に関する研究を認めると結論付けました。これまでは受精卵の発達などを調べる研究のみ認めていました。

 ゲノム編集で受精卵の段階で遺伝子の異常を修復すれば、生まれる子の病気を防げると期待されています。原因の遺伝子がわかっている遺伝病は5000以上あるといいます。ただ、今の技術だと狙いと別の遺伝子を書き換えることがあり、健康被害につながる恐れのほか、その影響は子孫に受け継がれます。倫理的にも、人為的に遺伝子を改変することに慎重な意見もあるため、遺伝子を操作した受精卵を子宮に戻すことは認めませんでした。

 受精卵にゲノム編集を応用した研究は、アメリカ、中国などで少なくとも12件行われ、約半数は遺伝子を修復して難病などの予防を目指すものです。アメリカではゲノム編集で人の受精卵を改変し、遺伝性の心臓病を引き起こす遺伝子の異常を高い効率で修復する実験に成功しています。

 生命倫理専門調査会の議論に参加した専門家は、「受精卵のゲノム編集に期待されるのは遺伝病の予防。基礎研究をしないと遺伝子改変の精度も上がらない」と話しています。

 一方、実用化が現実味を帯びれば、どこで規制の線引きをするか難しさもあります。2万以上とされる人間の遺伝子では、生命にかかわらない病気の原因となるものや、筋力を決定付けるものも特定されています。こうした遺伝子まで操作されれば、親が望んだ容姿や知的な能力を持った「デザイナーベビー」の誕生や、障害がある人は生まれないほうがよいとする「優生思想」が広がることを危ぶむ見方もあります。

 生命倫理専門調査会は文部科学省と厚生労働省に対し、個別の研究計画について、その病気を研究する妥当性や、能力を高めるといった目的でないことを審査する仕組みづくりを求めました。両省がこうした仕組みを整え、来春にも研究の審査が始まる見通しです。

 2019年4月22日(月)

 

■自宅近くに食料品店がないと認知症リスク高まる 車を利用しない高齢者2万人を調査

 日本老年学的評価研究機構は18日、自宅近くに食料品店が「全くない」と答えた高齢者は、「たくさんある」と答えた高齢者より認知症リスクが1・7倍高いとする研究成果を発表しました。店を選んだり献立を考えたりするなどの刺激が、認知機能によい影響をもたらしていると推測されるといいます。論文は国際学術誌に掲載されました。 

 東京医科歯科大学の谷友香子助教(公衆衛生学)らの研究チームが2010年から3年間、愛知県や北海道など全国の15市町に住む要介護認定を受けていない65歳以上の高齢者約5万人を追跡調査しました。

 外出時に「自分で車を運転する」もしくは「家族の車に同乗したりする」という場合は「車の利用あり」(約3万人)、どちらも該当しない場合は「車の利用なし」(約2万人)に分類し、その上で、外出時に車の利用がない高齢者に「家から1キロ以内に新鮮な野菜や果物が手に入る商店・施設はどれくらいあるか」と質問し、「たくさんある」「ある程度ある」「あまりない」「全くない」の4つの選択肢を用意しました。3年間で認知症になったのは、「たくさんある」と答えた高齢者が4・8%だった一方、「全くない」と答えた高齢者は9・9%でした。

 年齢や性別などの影響を調整した後の認知症リスクは、「たくさんある」に比べ、「ある程度ある」が1・2倍、「あまりない」が1・4倍、「全くない」は1・7倍となりました。一方、飲食店やコンビニ、公民館についても類似の調査をしましたが、大きなリスク差はみられなかったといいます。

 谷助教は、「買い物にゆく機会を持つことが認知症予防に重要。近くに食料品店が多くあることで外出頻度や歩行時間も増え、運動不足や社会的孤立などのリスク要因が間接的に低下しているのだろう」と推測しています。

 2019年4月21日(日)

 

■エボラ対策の病院が襲撃され、派遣の医師死亡 コンゴ民主共和国

 アフリカ中部のコンゴ民主共和国(旧ザイール)東部のブテンボで19日、大学病院が武装集団の襲撃を受け、同国で流行しているエボラ出血熱の対策に当たっていた医療従事者1人が撃たれて死亡しました。世界保健機関(WHO)が発表しました。

 WHOによると、死亡したのは医師で疫学者のRichard Valery Mouzoko Kiboungさん。エボラ出血熱の流行を抑えるためWHOに派遣されていましたが、派遣先の大学病院が襲撃され犠牲になりました。警察と地元当局によると、Kiboungさんはカメルーン出身。

 ブテンボのシルバン・カニャマンダ市長によると、武装集団マイマイが大学病院を襲撃した際、エボラ出血熱対策チームのメンバーは会議中でした。銃撃されたKiboungさんは緊急治療室に運ばれたものの、その後死亡したといいます。襲撃により他2人が負傷しましたが、容体は安定しているとWHOは明かしています。

 ブデンボでは、3月9日にも武装集団がエボラ治療センターを襲撃し、警察官1人が死亡、医療従事者1人が負傷しました。同センターが襲われたのは3度目でした。

 コンゴ民主共和国では昨年8月1日にエボラ出血熱の流行宣言が出され、死者はこれまでに約850人に達していますが、一部の地域で治療への抵抗もあることから、対策チームへの襲撃が相次いでいます。

 2019年4月20日(土)

 

■世界最小で産まれた男児が無事退院 長野県安曇野市

 リンゴ1個とほぼ同じ重さの体重258グラムで産まれ、長野県の病院に入院していた生後6カ月の男児が20日、無事に退院を迎えました。

 長野県安曇野市の県立こども病院を退院したのは、半年前の昨年10月1日に体重258グラム、身長22センチで産まれた関野竜佑ちゃんです。

 病院によりますと、竜佑ちゃんは元気に退院する男児としては世界で最も小さく産まれた赤ちゃんです。母親が妊娠中に血圧が上がり、このまま体内にいると成長に問題が生じる可能性があったため、妊娠24週5日の時に帝王切開で生まれたということです。その後、新生児集中治療室で温度や湿度を調整できる保育器に入れて栄養を管理するなどして成長を促したところ、現在では体重3374グラム、身長43センチと元気に成長し、大きな病気もないということです。

 20日、両親に抱きかかえられて退院すると、3人の兄弟も代わる代わる抱っこするなどしていました。

 兄の佑平さん(12歳)は、「小ささが世界一の弟は、輝きでも世界一だなと思いました」と話していました。

 また、母親の俊子さんは、「ミルクをあげたり家で寝かせたり、普通の生活に早く慣らしてあげたいです。大きくなったら人の役に立てるような人になってほしいと思います」と話していました。

 竜佑ちゃんは、長野県軽井沢町の自宅で生活することになりますが、今後も定期的に県立こども病院で診察を受けるということです。

 国の人口動態調査によりますと、生まれた時の体重が2500グラム未満の「低出生体重児」の割合は2年前は9・4%で、年間で9万人近くが生まれています。

 中でも、体重が1000グラム未満の赤ちゃんは「超低出生体重児」と呼ばれ、生まれた後も心臓が十分に機能しないなどのリスクがありますが、日本国内では医療技術の進歩などで救命率はおよそ90%といわれています。

 しかし、体重300グラム未満は特に難しいとされていて、救命率は低くなるとされています。

 世界で小さく生まれた赤ちゃんの情報を集めた、アメリカのアイオワ大学のデータベースによりますと、体重300グラム未満で生まれて元気に退院した赤ちゃんはこれまで世界で25人報告され、このうち9人は日本の事例で、アメリカとともに最も多くなっています。

 その背景として、日本では赤ちゃんを治療する態勢を整備してきたことがあるといわれていて、全国の各地域に妊婦や新生児に高度な医療を提供する拠点として総合周産期母子医療センターなどが設置されています。

 今年2月に、268グラムの男児を元気に退院させた慶応大学病院小児科の有光威志助教は、「日本は世界の中でも赤ちゃんや妊婦の医療に力を入れている国といえる。施設の充実とともに医師が高い技術をもって治療や管理を行えていることも、一つの要因だと思う」と話しています。

 2019年4月20日(土)

 

■75歳未満の降圧目標、「最高血圧130未満」に 学会が新指針を発表

 日本高血圧学会は19日、医療者向け「高血圧治療ガイドライン(指針)」の2019年版を発表しました。75歳未満の成人の降圧目標については、最高血圧(収縮期血圧)を「130ミリHg(水銀)未満」とし、前回の指針から10ミリHg引き下げました。

 血圧はより低いほうが総死亡や脳卒中、心筋梗塞(こうそく)の発症率などが低く抑えられるというアメリカなどの臨床試験の結果を反映しました。治療をする1000万人以上の高血圧患者への降圧剤処方が増える可能性があります。

 指針は、医師が高血圧の診断をしたり、患者の容体に応じてどの降圧剤を処方するか判断したりするのに使われます。2000年に初めて策定し、2004年からは5年おきに計3回改定されています。

 新指針では、降圧目標について、75歳未満の最高血圧を前回指針の「140ミリHg未満」から「130ミリHg未満」に、最低血圧(拡張期血圧)も「90ミリHg未満」から「80ミリHg未満」に引き下げました。75歳以上は最高血圧を「150ミリHg未満」から「140ミリHg未満」に引き下げましたが、最低血圧は「90ミリHg未満」のまま維持しました。

 高血圧症は生活習慣病の一種で、国内の患者数は推計約4300万人。治療に減塩や運動、禁煙といった生活習慣の改善が欠かせず、血圧が下がらない場合は降圧剤を服用します。

 心臓が収縮して血液が送り出されている時の最高血圧を「収縮期血圧」、心臓が拡張して血液が心臓へ戻っている時の最低血圧を「拡張期血圧」と呼びます。高血圧は心臓から送り出された血液が血管内で高い圧力を示し、それが病的に続いている状態を指します。放置すると脳や心臓、腎臓など血液の循環の多い臓器の病気を引き起こす危険因子となります。

 2019年4月20日(土)

 

■会社員の介護保険料、年10万円を超える 背景に介護費の大幅増加

 大企業の社員らが入る健康保険組合で、介護保険料の負担が急速に増しています。全国約1400組合の2019年度予算によると、加入者1人当たりの納付額の平均は約6000円(約6%)増え、初めて年10万円を超えました。

 介護費の大幅な増加が背景にあり、気付きにくい形で現役世代に重圧がかかっています。必要性の低い介護サービスを抑える制度改革が急務です。

 健保組合は企業や団体ごとに社員とその家族が入り、約3000万人の加入者がいます。このうち40~64歳の従業員から介護保険料を徴収しています。

 健保組合は介護保険料率を決めて、社員らの所得に応じて同比率を乗じ、保険料を徴収しています。第一三共グループの健保組合は、2019年度の介護保険料率を1・2%とし、2018年度より0・2ポイント引き上げました。東京海上日動火災保険の健保組合も、介護保険料を0・16ポイント上げて1・44%としました。2020年度も引き上げる可能性があるといいます。

 エーザイの健保組合は、介護保険料を0・58ポイント引き上げて1・5%とした一方で、健康保険料は1・8ポイント引き下げて7・0%としました。

 2019年度は約3分の1の健保組合が保険料率を引き上げ、平均の介護保険料率は約1・6%に上昇しました。加入者1人当たりの保険料は2017年度は約8万9000円でしたが、2018年度に約9万5000円、2019年度は約10万1000円となりました。

 介護保険料が急増している要因の一つが、所得の高い会社員に保険料の負担増を求める仕組みにあります。

 政府が2017年度からこのような仕組みを段階的に導入しており、年収の高い会社員が多く集まる健保組合の負担が増しています。完全に移行する2020年度まで負担増が続きます。

 もう一つの要因は、介護サービスの費用が医療費を上回るペースで膨らんでいることです。医療費は2010年度から2018年度の間に約2割増えましたが、介護サービスの費用は同じ期間に約5割増えました。

 会社員らは給与から天引きで、介護保険を含む社会保険料を納めており、実際にどれくらい負担が増えているかわかりにくく、企業が賃上げをしても手取り額がそれほど増えない状況につながっています。高齢者の増加で介護サービスの需要は高まっていますが、給付と負担のバランスが重要になっています。

 2019年4月19日(金)

 

■ピレネー山脈の高高度地域にもマイクロプラスチック 大気によって運ばれ堆積

 プラスチックによる汚染とは無縁と考えられている辺境の山岳地帯が、実際には大気中に浮遊するマイクロプラスチック(プラスチック微粒子)で覆われていると指摘する研究論文が15日、発表されました。「大気中濃度はフランスのパリなどの大都市に匹敵するほどだ」として、研究チームは懸念を示しています。

 イギリスの科学誌「ネイチャー・ジオサイエンス」に掲載された論文によると、2017年~2018年にかけての5カ月間にわたる調査期間中、フランスとスペインにまたがるピレネー山脈の無人の高高度地域では毎日、1平方メートル当たり平均365個のマイクロプラスチックが地上に降下したといいます。

 論文の筆頭執筆者で、イギリスのストラスクライド大学の博士課程学生のスティーブ・アレン氏は、「ピレネー山脈で実地調査を行った範囲でこれほど多くの微粒子が見付かったのは驚くべきと同時に、懸念すべきことだ」と話しています。

 今回の研究では、大半が直径10~150マイクロメートル(1マイクロメートルは1000分の1ミリ)のプラスチックの断片、繊維、シート状の薄い膜などを含むマイクロプラスチックに着目しました。比較のために挙げると、人毛の直径は平均約70マイクロメートル。

 プラスチックごみはこの数年間で、重大な環境問題として浮上してきました。毎年最大で1200万トンに上るプラスチックが世界の海洋に流入し、さらに数百万トンが内陸の水路や埋立地に集積していると考えられています。プラスチックは砕けて細かくなるのに数十年かかる上、その後も環境中に残存し続けます。

 プラスチックが野生生物へ及ぼす害や人の健康への潜在的影響などを評価するための科学的研究はまだ始まったばかり。今年発表された研究では、水深1万メートル以上の深海に生息する生物の消化管内からプラスチック片が発見されました。また、マイクロプラスチックは世界各地の水道水から検出されているほか、南極大陸の最果てでも見付かっています。

 論文の共同執筆者で、フランスの機能生態学・環境研究所のデオニー・アラン氏は、「今回の最も重要な発見は、マイクロプラスチックが大気によって運ばれ、大都市からは遠く離れた辺境の高高度山岳地帯に堆積するということだ。これは、マイクロプラスチックが大気汚染物質であることを意味する」と語りました。

 研究チームは、西ヨーロッパで最も手付かずの自然が残る場所の一つと長年考えられていた地域で、マイクロプラスチック濃度を個別に測定するために2種類の監視装置を使用しました。

 測定場所は最も近い村でも7キロ離れており、最も近くの都市であるフランス南部のトゥールーズからは100キロ以上の距離があります。

 大気の流れのパターンを分析した結果、一部のマイクロプラスチックは少なくとも100キロ以上移動したものだと研究チームは推測しました。

 風、雪、雨などで運ばれたサンプルは、標高1500メートル以上にあるベルナドゥーズの測候所で収集されました。

 分析の結果、マイクロプラスチック汚染物質の濃度がパリや中国南部の工業都市・東莞(とうかん)などの大都市で検出される濃度と同水準であることが明らかになり、研究チームは衝撃を受けました。

 アラン氏は、「今回の測定結果は、パリ首都圏に関して報告されている測定値の範囲内にあり、パリに匹敵すると見なすことができる」と説明し、「マイクロプラスチックの数がこれほど多いとは予想外だった」と語りました。

 2019年4月18日(木)

 

■iPS細胞から作った網膜の移植、1年後の安全性確認 理研など発表

 理化学研究所などは18日、他人のiPS細胞(人工多能性幹細胞)から作った網膜細胞を、失明の恐れがある目の病気「加齢黄斑変性」の患者5人に移植した臨床研究について、移植1年後でも懸念された細胞の腫瘍(しゅよう)化や大きな拒絶反応はなく、安全性を確認したと発表しました。実用化に向け、最大の障壁の一つを越えた形です。

 理研の高橋政代プロジェクトリーダーが、東京都で開かれた日本眼科学会総会で報告しました。さまざまな組織の細胞に変化できる他人のiPS細胞を使う移植で、1年間の安全性を検証した報告は初めて。ヒトのiPS細胞ができて11年余りたち、高橋プロジェクトリーダーは「安全性を確認する目的は達成された。iPS細胞を使った治療の実用化に向けて7合目の位置まできた」と話しています。

 研究チームは2017年3~9月、iPS細胞から変化させた約25万個の網膜細胞を液体に入れ、60~80歳代の男性5人の目に注射で移植。多くの人で拒絶反応が起きにくい型のiPS細胞を使い、それに合う患者が選ばれました。

 研究の主目的は安全性の確認で、移植した細胞は腫瘍化せず定着し、1人で軽い拒絶反応があったものの、薬で治まりました。5人とも視力は維持されているといいます。

 今回の報告について、再生医療に詳しい東京医科歯科大学の森尾友宏教授は、「大きな成果。ランドマーク的な仕事」と評価し、「今後は有効性をどこまで高められるかがポイントだろう」と話しています。

 2019年4月18日(木)

 

■2017年の医薬品生産額、富山県が2位に 静岡県に首位譲る

 厚生労働省が17日に発表した薬事工業生産動態統計によると、2017年の富山県の医薬品生産金額は前年比5・2%増の6540億円でした。全国の伸び率は上回ったものの、2割超増えた静岡県に首位を譲り、都道府県別で2位に転落しました。2016年までは2年連続で1位でした。

 国内の医薬品生産額は、前年比1・5%増の6兆7213億円でした。一部で薬の過剰投与の見直しの動きがあるものの、高齢化の進展のため医薬品の需要は依然として堅調で、前年実績を上回りました。

 富山県のシェアは0・34ポイント高まり、9・73%でした。新薬より価格の安い後発医薬品の生産が盛んな富山県では、医療費削減の流れが追い風となり、全国を上回るペースで生産が増えました。石井隆一知事は、「富山県の医薬品産業がさらに発展するためには、海外市場への進出やバイオ医薬品などの新たな成長分野への参入、技術力のさらなる向上、人材の育成などが重要」とコメントしました。

 ただ静岡県は24・3%増の6820億円と生産額を伸ばしたため、富山県は首位を譲りました。大手製薬会社が工場を構える静岡県では、高額医薬品の生産が好調だったとみられます。

 北陸3県では、福井県が13・6%増の1109億円で19位、石川県が5・8%減の1106億円で20位でした。

 2019年4月17日(水)

 

■国内医薬品市場、平成の30年で1・9倍  抗がん剤市場は3・6倍に拡大

 アメリカの医薬サービス・調査会社のIQVIA日本法人は16日、1989~2018年の国内医療用医薬品市場のデータを公表しました。1989年(平成元年)に5兆5260億円だった市場規模は2018年(平成30年)に10兆3374億円と約30年で1・9倍に拡大しました。抗がん剤が3・6倍に拡大するなど高額な医薬品が普及しました。

 1989年に3280億円だった抗がん剤市場は、2018年には1兆2000億円に拡大しました。「抗体医薬」と呼ばれるバイオ医薬品が登場したことで、平成後期(2009〜2018年)に急拡大しました。製造方法も複雑で大量生産でもコストがかかることから、薬価も高くなる傾向があります。

 特に2014年に世界に先駆けて販売されたがん免疫薬「オプジーボ」は発売当初、100ミリグラム約73万円という価格がつきました。仮に1年使用すると3000万円以上かかるという試算が出て、「財政を破綻させる」などの批判が噴出。特例的に薬価が半額に引き下げられました。

 平成前期(1989~1998年)の売り上げのトップは抗生物質で、胃酸の分泌を抑えるような消化器系薬剤、抗がん剤がトップ3を占めました。ペニシリンの耐性菌が出現したことで、国内製薬各社が第2世代の抗生物質を開発。1989年には、国内市場の17%に当たる9600億円を抗生物質が占めました。

 平成中期(1999~2008年)に入ると、医薬品のトレンドは感染症から生活習慣病に移り、高血圧や高脂血症の治療薬が大きく伸びました。抗がん剤や糖尿病治療薬も大きく売り上げを伸ばしました。

 平成後期には抗がん剤がトップとなり、抗ウイルス剤や関節リウマチなどの自己免疫疾患の治療薬なども売り上げを伸ばしました。

 抗ウイルス剤では、C型肝炎をほぼ完治させる「ソバルディ」と「ハーボニー」が登場。開発・販売企業が年間4000億円以上を売り上げたことから、急きょ価格が引き下げられる特例制度も導入されました。

 2019年4月17日(水)

 

■産後うつ、貧血の女性は発症リスクが6割増 成育医療研究センターが調査

 産後にうつを発症するリスクが、貧血がある女性は貧血がない女性と比べて約6割も増えるとする調査結果を、国立成育医療研究センター(東京都世田谷区)の研究チームがまとめました。貧血になると全身の倦怠(けんたい)感や疲れが取れにくくなり、気力が低下するためとみられます。

 妊産婦死亡のうち、最も多い自殺の原因の1つがうつ病とされており、研究チームは「貧血治療で産後うつの発症を抑えられる可能性がある」と指摘しています。

 調査は2011~2013年に成育医療研究センター内で出産した女性のうち、妊娠の中期と後期、出産後に血液の検査データがあり、産後1カ月時点でうつ病の有無を調べた記録が残る977人(平均36歳)が対象。貧血だったのは、妊娠の中期で193人(19・8%)、後期で435人(44・5%)、産後1カ月で432人(44・2%)。また、産後にうつを発症したのは、196人(20・1%)でした。

 産後に貧血だった女性は、なかった女性と比べ1・63倍も産後にうつを発症するリスクが高くなりました。一方、妊娠の中・後期では、貧血と産後うつとの関係はわかりませんでした。

 産後に貧血が重症だと、うつを発症するリスクは1・92倍。軽症でも1・61倍高く、貧血が進むほど産後うつのリスクが高まる傾向にあることが明らかになりました。

 産後うつは社会的、精神的な要因が影響することも多いものの、調査した成育医療研究センターの小川浩平貧血が進むほど産後うつのリスクが高まる傾向に医師(産科)は、「客観的な指標となる血液検査でリスクを評価できる意義は大きい。軽い貧血でも放置しないことが重要だ」と話しています。

 2019年4月17日(水)

 

■消毒薬「赤チン」、来年末で生産終了 国内唯一のメーカーが表明

 傷口に塗ると赤色になることから「赤チン」の愛称で親しまれた消毒薬「マーキュロクロム液」の国内生産が2020年末で終わることが16日、明らかになりました。日本で唯一のメーカーである三栄製薬(東京都世田谷区)が、生産をやめると表明しました。昭和世代になじみ深い製品が、また姿を消します。

 赤チンは有機水銀剤「マーキュロクロム」の1~2%水溶液で、粘膜・傷口の消毒に使用され、かつて家庭や学校の常備薬の定番でした。

 赤チンが日本薬局方(厚生労働大臣が定めた医薬品の規格基準書)に初めて収められたのは1939年で、明治以降に衛生教育が進んで消毒や殺菌の重要性が認識されるや、家庭や学校の保健室に手軽な消毒薬として常備されるようになり、最盛期には100社ほどが生産していたました。しかし、水銀公害が問題となった1960年代以降は生産過程で水銀を含んだ廃液が発生することから敬遠され、1973年には原料の国内生産が中止されました。

 それでも海外から原料を輸入することは禁止されていなかったため、愛用者に応える形で一部企業は製造販売を続けていました。2015年に厚労省が行った製造事業者2社へのヒアリングによれば、1社の年間製造量は1万6500~3万本程度。薬局や保健室で赤チンを見る機会は激減しましたが、年配者を中心に多くの一般使用者がいたのです。

 しかし、2016年6月に公布された「水銀による環境の汚染の防止に関する法律」で、マーキュロクロム液が2020年12月31日をもって製造禁止になることが決定。さらに2017年12月、厚生労働省は「マーキュロクロム」「マーキュロクロム液」の2つを2019年5月31日をもって日本薬局方から削除することを発表しました。

 日本薬局方から外れた薬は現行の「日本薬局方」を記載したパッケージでは売れなくなり、改めて承認審査を通さなければなりません。それでも2020年末まで、マーキュロクロム液を日本薬局方外医薬品にリニューアルして製造販売し続けることを決めた製薬会社が日本に1社だけ存在し、それが1953年に創業した三栄製薬でした。

 今後、三栄製薬は2020年いっぱいまでは、原料がある限り赤チンを製造し続けるといいます。会社には、根強いファンから「いつまでもつくり続けて」などの声も寄せられているといいます。

 2019年4月16日(火)

 

■世界のはしか感染者、1~3月で11万人に上る WHOが発表

 世界保健機関(WHO)は15日、世界で今年1~3月のはしか(麻疹=ましん)感染者が前年同期比で約4倍に増加したと発表しました。はしかは2017年から各地で流行するなど感染者数が増加、今年になって一層拡大している実態が明らかになりました。

 WHOは、今回の発表は暫定的なもので最終結果ではないとした上で、はしか感染が増加傾向にあることは明らかだとしています。

 今年、これまでにWHOに報告されたはしか感染例は、すでに170カ国の11万2163件に上ります。前年同期は、163カ国の2万8124件でした。しかし、実際に報告されたのは10件に1件程度とみられることから、今回の数字には、はしか大流行の深刻さが反映されていない恐れがあると、WHOは指摘しています。

 日本でもはしか感染者が増えており、過去10年で最多ペースとなっています。

 はしかは感染力の強い疾患ですが、ワクチンを2回接種することでほぼ完全に予防できます。だが、WHOによれば、ワクチン接種率は近年減少傾向にあり、1回目のワクチン接種率は85%、2回目は67%にとどまっています。

 はしか感染者が増加した原因の一つに、アメリカなどで高まる「反ワクチン運動」の影響があるとみられます。この運動の賛同者らは、はしかやおたふく風邪、風疹のワクチン接種と自閉症発症とを関連付けて、ワクチン接種を拒否しています。

 2019年4月16日(火)

 

■男性の更年期障害、ストレスでホルモン減少 専門外来を置く医療機関も増加

 男性の更年期障害を発症し、やる気が出ない、何となくだるいという心身の不調に悩まされる中年男性が少なくありません。かつては女性特有の悩みとされた更年期障害ですが、男性も無縁ではありません。

 男性の更年期障害は、加齢に伴う男性ホルモンの急激な減少によって、発症するとされます。男性ホルモンは精巣で作られるテストステロンというホルモンで、性機能にかかわり、筋肉や骨を強くし、血管をしなやかに保つ働きをします。仕事への意欲、判断力といった脳の機能を高める役割もあります。

 男性ホルモンの量は、20歳代をピークに緩やかに減っていくものの、何らかの原因で急激に減少し、さまざま症状が出ることがあります。これを更年期障害と呼びます。

 女性は50歳前後の閉経期を挟んだ10年ほどに多くみられます。男性は50~60歳代に目立ち、40歳代での発症もあります。代表的な原因はストレスで、強いストレスにさらされると脳の指令が弱まり、ホルモンを作る力が落ちると考えられます。

 主な症状は、知的な活動や意欲の低下など「精神的な変化」、睡眠障害や疲労感、筋力の低下などの「身体的な変化」、性欲の衰えなど「性的な変化」の3つ。こうした変化は従来、「年のせい」「気のせい」とされてきたものです。

 「加齢男性性腺機能低下(LOH)症候群」という診断名も、徐々に広まってきました。日本泌尿器科学会などが2007年、診療の手引を公表して以降、男性の更年期障害の専門外来やメンズヘルス専門外来を置く医療機関も増えています。

 診断に際しては、症状を点数化して病気の重さを調べます。「いらいらする」「行動力が落ちた」など、3つの変化を反映させた17の症状について、それぞれ5段階で自己採点。合計点で、「軽度」「中等度」「重度」を評価します。

 ただ、精神症状の中にはうつ病と重なる部分もあるため、「生きる気力がわかない」など、命にかかわる重い症状と判断すれば、精神科の治療を優先して行います。

 血液検査では、男性ホルモン(遊離型テストステロン)の量を測ります。50歳の場合、1ミリ・リットル当たり11・8ピコ・グラムが基準で、原則8・5ピコ・グラム未満ならホルモンを補充します。2~3週に1回の筋肉注射を半年~1年ほど続けます。8・5~11・8ピコ・グラム未満で補充することもあります。前立腺がんなどがある人は受けられません。

 男性ホルモンの量が基準を満たしていれば、適度な運動や食事で症状の改善を目指します。漢方薬を服用して体調を整える方法もあります。

 いつまでも男性らしくありたい。仕事や趣味に前向きでいたいと考える人は、平均寿命が延びる中、今後ますます増えるとみられます。男性ホルモンを生涯にわたって補充することを勧める指針も海外にはあります。しかし、生活スタイルの見直しやストレスの軽減を図るなど、無理のない治療や体との付き合い方を考えることが大切。

 大阪市立大学医学部講師の鞍作(くらつくり)克之さん(泌尿器科・性機能外来担当)は、「日本では疲れや気分の落ち込みを理由に受診する人が多いが、海外では性機能の衰えを感じて相談にくる人も多い。気になる症状があれば、泌尿器科や男性更年期障害の専門外来を受診してほしい」と話しています。

 2019年4月15日(月)

 

■介護職員の半数以上、ハラスメント被害を経験 厚労省が初めて調査

 特別養護老人ホーム(特養)や訪問介護事業所などの介護職員の半数以上が、サービス利用者から身体的・精神的な暴力や性的な嫌がらせなどのハラスメントを受けた経験があることが、厚生労働省が初めて実施した調査で明らかになりました。厚労省は10日、事業者向けの対応マニュアルをまとめました。

 調査を委託された三菱総合研究所が今年2月、介護事業所を通じ、約1万人の介護職員から回答を得ました。特養職員の70・7%、訪問介護職員の50・1%が「利用者からハラスメントを受けたことがある」と回答。サービス利用者の家族からの被害経験がある人も、2割程度いました。

 昨年1年間に受けた被害の内容(複数回答)は、特養では身体的暴力が最多で90・3%。訪問介護では精神的暴力が81%。被害を受けた特養職員の22・1%、訪問介護職員の9・2%はハラスメントを原因に病気やケガをしたことがありました。

 2019年4月15日(月)

 

■新在留資格、フィリピンで初の試験を実施 介護分野対象

 外国人就労を拡大するため、日本が創設した新在留資格「特定技能」の初の試験が13、14日、フィリピンの首都マニラのアテネオ大学で行われました。介護業が対象で、受験の受け付けが始まった3月20日に定員の125人に達し、関心の高さをうかがわせました。合格者は夏ごろにも来日する見通しです。

 14日も朝から20歳代前半とみられる若い受験者らが受験会場近くに集まり、参考書などに目を通していました。試験はパソコンを使い、介護の基本などを問う全45問、介護に関する日本語能力を測る全15問に答えます。試験時間は計90分。ほかに業種共通の日本語試験も受けます。結果は1カ月後をめどに受験者にメールで通知し、ウェブサイトにも掲載する予定。

 受験者の性別の内訳は男性が43人、女性が82人。受け付け開始日に定員に達したことから、政府は当面の試験日程を急きょ増やしました。5月下旬から6月下旬にかけて試験を3回実施し、定員は計745人程度とする予定です。フィリピンはおよそ1000万人が海外で働く出稼ぎ大国で、新たな行き先として日本の人気が高まりそうです。

 政府は1日、出入国管理法を改正し、人手不足が深刻な14業種で外国人労働者の就労を認める特定技能を導入しました。技能と日本語の試験に合格するなどの条件を満たすことで、通算5年間在留可能なビザを発給します。5年間で最大約34万5000人の受け入れを見込み、外国人材の活用で労働力不足の緩和につなげたい考えです。

 試験はフィリピンを皮切りにネパールやミャンマーなど他の受け入れ対象の8カ国でも実施し、業種も農業や外食などに順次拡大する方針。14日には、日本に滞在する外国人向けに東京都など国内7カ所で宿泊業を対象に試験が行われました。

 ただ、送り出し国の対応が順調に進んでいるとはいい難く、フィリピンでは14日、地場の人材仲介会社の担当者は「受験受け付けが始まったことが周知されず、申し込みすらできなかった人材会社がたくさんある」と話しました。一部の国では悪質な仲介業者をいかに排除するかを巡って日本と結ぶ協定の交渉が進んでおらず、準備に遅れもみられます。

 関心も必ずしも高いとはいえません。インドネシアでは、出稼ぎ労働者の多いシンガポールやマレーシア、香港などと比べ、日本に関する情報が少なく、シンガポールにいるインドネシア人家政婦は「日本には興味があるが遠い」と話しています。ミャンマーでは、今のところ試験の日程が具体化せず、人材会社は対応しあぐねています。

 2019年4月14日(日)

 

■アメリカで死亡事故多発のベビーベッド470万台をリコール 日本でも通販などで流通

 アメリカの大手ベビー用品メーカーが販売し日本でも流通するベビーベッドで、乳幼児の死亡事故が多発していたことがわかり、メーカーはおよそ470万台をリコールし、直ちに使用をやめるよう呼び掛けています。

 これはアメリカの大手ベビー用品メーカーの「フィッシャープライス」が販売する「ロックン・プレイ・スリーパー」という製品で、日本でもインターネット通販などで流通しています。

 この製品についてアメリカの消費者製品安全委員会は12日、乳幼児が寝返りを打って死亡する事故が起きていると明らかにし、死亡者数は2009年の販売開始以降、これまでに30人を超えているということです。

 このベッドは揺りかご状の布製の寝台が、スタンドで支えられてゆらゆら揺れる構造になっていて、メーカーでは使用の際には乳児をベルトで固定し、使用できる時期は「寝返りを打つようになる前まで」としています。

 しかし、死亡したケースではベルトで固定せずに寝かせていたために、乳幼児が寝返りを打っていたということで、消費者団体は死因は窒息死などだったと指摘しています。

 これを受けてメーカーは12日、声明で「安全性を最優先に考えてきたが、この数日、製品に疑義が生じた」としてリコールを発表しました。

 リコールの対象はおよそ470万台で、メーカーではリコールと返金の手続きを急ぐとともに、ベッドを持っている場合は直ちに使用をやめるよう呼び掛けています。

 2019年4月14日(日)

 

■オランダの医師、体外受精に自らの精子を使用 49人出産、本人は2年前に死亡

 オランダで不妊治療クリニックの院長だった男性医師が、治療を受けた女性に無断で体外受精に自分の精子を使い、49人の子供を産ませていたことがわかりました。男性医師はほかにも子供を産ませていた可能性があり、調査が進められています。

 この男性医師は、オランダのロッテルダム近郊にあった不妊治療クリニックの院長だったヤン・カールバート氏で、2年前の2017年に89歳で死亡しました。また、クリニックは不正が報じられた後、2009年に閉鎖されています。

 このクリニックで不妊治療を受け、体外受精で産まれた子供本人やその両親が、子供達と男性医師の容姿が似ていることに気付き、医師の遺族を相手に裁判を起こして関係性を明らかにするよう求めていました。

 その結果、男性医師のDNAの提供を受けて鑑定を進めたところ、49人の子供について血縁上の親子関係が認められたということです。

 クリニックは1980年代から90年代にかけて地域最大の精子バンクとして知られていたということで、このころに産まれた子供達はすでに20歳代から30歳代になっています。

 子供やその両親を支援するNGO「ディフェンス・フォー・チルドレン」では、男性医師が治療を受けた女性に無断で、選ばれた提供者の精子ではなく自分の精子を体外受精に使っていたとしていて、医師がほかにも子供を産ませていた可能性があることから、クリニックを利用した人達に検査を呼び掛けるなど調査が進められています。

 複数のヨーロッパメディアによると、男性医師は生前、クリニックの院長だった時代に約60人の子供をもうけたことを認めていたとされます。ほかにも、さまざまな提供者の精子に自分の精子を混ぜたことや、提供者に関する書類不正を行ったことを認めていたといいます。

 2019年4月14日(日)

 

■パーキンソン病患者の脳にたまる物質検出 大阪大チームが成功

 大阪大学などの研究チームが12日、パーキソン病の患者の脳内にたまる物質を「脳脊髄(せきずい)液」から見付ける方法を開発したと、イギリスの科学誌「サイエンティフィック・リポーツ」に発表しました。この物質は発症の10年以上前から患者の脳にたまり始めると考えられており、新たな診断方法に活用できる可能性があるといいます。

 パーキンソン病は脳内の神経細胞が減少し、手の震えや体のこわばりなどの症状が出る神経の難病。患者の脳には「αシヌクレイン」というタンパク質が異常な状態でたまることが知られています。病気が進行するほどタンパク質が増えるものの、脳内にあるため患者が生きている間に直接調べることはできませんでした。

 そこで、研究チームは脳から腰へ伸びている脊髄を囲む「脳脊髄液」という液体に注目。患者44人の腰に針を刺して液を採取したところ、液にタンパク質が含まれていました。さらに、別の検査結果と照らし合わせると、タンパク質が多いほど病気が進行している可能性が高いこともわかりました。

 パーキンソン病の患者は国内では約16万人いると見なされ、高齢化に伴い、増えているとされます。

 大阪大の角田渓太医師(神経内科)は、「現在は症状などから、はっきりした段階で判断しているが、より簡単に早く診断できる可能性がある。異常なタンパク質が凝集するのを抑える薬を開発する際にも活用できる」と話しています。

 2019年4月13日(土)

 

■エボラ出血熱の死者750人を超える コンゴ民主共和国

 世界保健機関(WHO)は12日、昨年8月1日に流行宣言が出されたアフリカ中部のコンゴ民主共和国(旧ザイール)におけるエボラ出血熱による死者が750人を超えたと発表しました。

 WHOによると、今月9日現在で、同国東部の北キブ州と隣のイトゥリ州で1200人近くの患者が報告され、751人が死亡しました。

 WHO憲章に基づく国際的な健康危機管理の法的枠組み、国際保健規則の緊急委員会は昨年10月、コンゴ民主共和国におけるエボラ出血熱流行を「国際的に懸念される公衆衛生の緊急事態」と宣言することを見合わせましたが、その後に憂慮すべき事態となったため、状況を見直すことを決定していました。

 赤十字社は流行の拡大が加速していると指摘し、国際医療支援団体「国境なき医師団」はエボラ出血熱流行を抑える国際的な対応が遅れていると警告しています。

 コンゴ民主共和国では、武装勢力の活動で治安が悪い上、一部の地域で治療への抵抗もあることから、エボラ出血熱の拡大抑制策が妨げられています。

 2019年4月13日(土)

 

■トリカブトの根から神経障害性疼痛を改善する成分発見 名古屋市立大

 名古屋市立大大学院薬学研究科の牧野利明教授(生薬学)らの研究チームが、神経の損傷で起きる慢性的な激しい痛み「神経障害性疼痛(とうつう)」を抑える化合物を、毒草で知られるトリカブトの根から発見しました。より効果的な治療薬の開発につながることが期待され、国際民族薬物学会が発行する「ジャーナル・オブ・エスノファーマコロジー」の8日付電子速報版に、研究成果が掲載されました。

 神経障害性疼痛は、切り傷や抗がん剤の副作用などで神経が傷付けられると発症し、ドアノブに触っただけ、風に当たっただけ、水に触れただけなどの弱い刺激を痛みとして感じてしまうため、日常生活が困難となります。国内の患者は、600万人以上と推計されます。モルヒネなど既存の鎮痛薬が効きにくく、効果的な治療薬が求められています。

 牧野教授らの研究チームは、鎮痛薬の一つとして知られるトリカブトの根を加熱減毒処理した市販生薬「加工ブシ」に注目。これまでの動物実験で神経障害性疼痛に有効とのデータはあったものの、どの成分が作用しているのか不明でした。

 今回、マウスを用いた実験で加工ブシに含まれる化合物「ネオリン」により、神経障害性疼痛が改善することが判明。抗がん剤の成分を注射して疼痛を起こしたマウスにネオリンを加えると、数日で改善傾向を示したといいます。

 トリカブトは株によってネオリン含有量にばらつきがあり、その要因はわかっていません。牧野教授は、「有効成分がわかったので、含有量の多いトリカブトを見付け、より効果的な治療薬を作りたい」と話しています。

 2019年4月13日(土)

 

■強制不妊救済法案が衆院通過 4月中に成立へ 

 旧優生保護法(1948~1996年)に基づいて不妊手術を受けた被害者の救済法案が、11日の衆院本会議で全会一致で可決され、参院に送付されました。4月内に成立し、大型連休前後に施行される見通しです。

 施行されれば、その時点で生存している被害者に1人当たり320万円の一時金が一律に支給されます。救済法案は、与党のワーキングチームと超党派の議員連盟が議員立法としてまとめ、冨岡勉・衆院厚生労働委員長による提案で提出されました。

 救済法案の前文には、「多くの方々が、生殖を不能にする手術または放射線の照射を強いられ、心身に多大な苦痛を受けてきた。我々は、それぞれの立場において、真摯(しんし)に反省し、心から深くおわびする」と明記しました。冨岡氏は衆院本会議で「我々」の意味について、「旧優生保護法を制定した国会や、執行した政府を特に念頭に置くものだ」と説明しました。

 一時金は、被害者本人が請求し、厚生労働相が認定した際に支給します。手術記録がない場合などは、厚生労働省に置く有識者審査会の審査結果を基に認定の可否を決めます。

 2019年4月13日(土)

 

■15万人分の保存血液、iPS細胞研究に利用へ 東北大と京都大

 東北大学は京都大学と共同で、東北大学が保管しているおよそ15万人分の血液と遺伝情報を活用して、薬の開発などに利用できるiPS細胞(人工多能性幹細胞)を研究者に分配する仕組みを整えることになりました。

 東北大学にある東北メディカル・メガバンク機構は、承諾を得た個人から採取した血液を解析した遺伝情報や病気の履歴などのデータを研究者に提供しており、国内最大となるおよそ15万人分のデータを管理しています。

 京都大学iPS細胞研究所の山中伸弥所長と、東北大学の東北メディカル・メガバンク機構の責任者は11日、東京都内で記者会見を開き、東北メディカル・メガバンクで保管している血液からiPS細胞を作り、研究者に分配する仕組みを整えることを公表しました。

 すでに6人分の血液からiPS細胞を作り出しているということで、今後、さらに増やすほか、研究者の要望に応じて保管している血液から作製することを検討しているということです。

 この仕組みをどのように運営するかは、さらに検討するということですが、病気の原因となる遺伝子を特定する研究や薬の開発などに利用できるとしています。

 京都大の山中伸弥所長は、「iPS細胞を使って何千人規模の研究が培養皿の中でできる可能性がある。患者一人一人の遺伝情報や疾患などに応じた最適な治療の実現につながるよう努力していきたい」と話しています。

 2019年4月12日(金)

 

■お産の事故報告書、半数以上が非公表 運営法人が条件を設定

 お産の事故で赤ちゃんが重い脳性まひになった場合に補償金を支払う「産科医療補償制度」に基づく事故報告書(要約版)の半数以上が非公表になっています。従前はウェブサイトで全件公表していましたが、制度の運営法人が公表の条件を設けたためで、非公表は少なくとも1339件を数えます。

 事故報告書の公表は、事故から得られた知見や教訓を再発防止に生かす意義があり、専門家らから批判が出ています。

 産科医療補償制度は、日本医療機能評価機構が2009年から運営しています。事故の再発防止のため、補償金が支払われた事故を専門家らが分析し、原因や再発防止策などをまとめた報告書を赤ちゃんの保護者と医療機関に郵送後、要約版をウェブサイトで公表していました。親子や医師は匿名で、お産の時期や医療機関名は載せていません。

 要約版は、医療者の研修や研究のほか、事故が適切に分析されたかを患者団体が確認するなどの目的で活用されていました。

 しかし、日本医療機能評価機構は昨年8月から要約版の公表を中止。その後、赤ちゃんの保護者と医療機関の一方でも公表を拒めば、公表しない方針にしました。

 日本医療機能評価機構は、法的には両者の同意がなくても公表できると判断したものの、担当者は「その判断に判例などのお墨付きがあるわけではない。個人情報保護の意識が高まっていることなどから、同意をとったほうがいいと判断した」と説明しています。一方、要約版を公表していたことで起きたトラブルはないといいます。

 日本医療機能評価機構は医療機関と保護者に、公表に同意するかどうかの確認文書を送付。1月末から、同意を得た要約版の公表を始めました。方針変更前なら公表していた事故は少なくとも計2188件あるものの、4月8日までに公表されたのは849件。約6割に当たる1339件は非公表のままです。日本医療機能評価機構は、「同意は得たが作業上まだ公表していない事例はある」としています。

 長女をお産の事故で亡くし、この産科医療補償制度に基づく事故の再発防止策をまとめる委員会メンバーの勝村久司さんは、「1件ごとに脳性まひの子を育てる大変な体験がある。保護者は事故を2度と起こしてほしくないという思いが強い。事故の原因分析の目的が再発防止であることを踏まえれば、1件でも要約版の公表を止めてはいけない」と話しています。

 この産科医療補償制度での原因分析の経験がある加藤高志弁護士は、「法的には報告書の公表に同意はいらないと認めながら、機構が同意を必要としたのは理屈が通らない。公表に消極的な医療機関への配慮ではないか」と指摘しています。

 国の運輸安全委員会による航空、鉄道、船舶の事故調査報告書は、再発防止に役立て、調査の透明性を保つため、公表されています。

 2019年4月12日(金)

 

■遺伝子組み換え表示を厳格化へ 2023年から改定食品表示基準を適用

 内閣府消費者委員会は11日までに、遺伝子組み換え(GM)食品ではないと表示できる条件を厳格化する食品表示基準の改定案をまとめ、政府に答申しました。現行では重量比で5%以下までGMの原材料の混入があってもよいのに対して、改定案では不検出を条件としました。

 消費者庁は年内に食品表示基準を改め、2023年から改定基準を適用する方針。

 食品表示基準は、大豆やトウモロコシなど8つの作物を使った納豆や豆腐、スナック菓子など33の加工食品について、GMの有無の表示を義務付けています。

 現行では、GMの原材料が流通過程で意図せず混入するケースを想定。混入率が5%以下なら「GMでない」「GMでないものを分別」と表示することを認めています。5%超は「GM不分別」と表示する必要があります。

 改定案は、5%以下の表示を2つに分けて「GMでない」と表示できるのは不検出時に限定。5%以下の場合は「GM原材料の混入を防ぐため分別管理された大豆を使用」などとします。5%超は「GMのものと分けて管理していません」といった表示にします。

 消費者庁は業者が対応する期間を考慮し、2023年4月以降に製造、加工、輸入されたものから改定基準を適用する方針です。

 2019年4月12日(金)

 

■病院から1億円相当の薬を盗んで転売した疑い 男性社員を懲戒解雇

 兵庫県内の3つの公立病院から薬品あわせて1億円相当を盗んで転売したとして、大阪市中央区の医薬品卸売会社が男性社員を2018年12月に懲戒解雇していたことがわかりました。

 懲戒解雇されていたのは、医薬品卸売会社「ケーエスケー」の元社員で、加古川市に住む57歳の男性です。

 ケーエスケーによりますと、男性は2004年から2016年まで西神支店に勤務し、兵庫県立リハビリテーション中央病院と神戸市立西神戸医療センター、そして旧三木市民病院に営業担当者として出入りし、薬品倉庫から薬品を盗み、東京都の医薬品業者に転売していたということです。

 旧三木市民病院では2004年から薬品を盗んで転売を始め、2013年9月の閉院までに7230万円分、西神戸医療センターでは2011年から4年間で1210万円分、県立リハビリテーション中央病院でも2012年から4年間で、2651万円分を盗んだとみられます。

 男性が盗んだ薬品を持ち込んでいたとされる医薬品業者に国税局の調査が入り、発覚。ケーエスケーの調査に対し、男性は少なくとも1億1000万円相当の薬品を盗み、転売していたことを認めており、「高級クラブでの飲食や、ブランド品の購入にすべて使った」と話しているということです。

 兵庫県と神戸市は、今年4月からケーエスケーとの薬品の取り引きを停止。兵庫県などは近く、男性を刑事告訴する方針です。

 2019年4月12日(金)

 

■透析中止の福生病院がHPで見解を公表 積極的に透析見合わせの選択肢は示さず

 東京都福生(ふっさ)市の公立福生病院で44歳の女性患者の人工透析が中止され、その後、死亡した問題で、病院は11日、ホームページで「積極的に透析見合わせの選択肢を示したことはない」などとする見解を公表しました。

 この問題は、昨年8月、公立福生病院で、腎臓病を患っていた44歳の女性の人工透析の治療が中止され、女性がおよそ1週間後に死亡したもので、東京都は、女性への説明が十分に行われたかどうか確認できる記録が残されていないなどとして、病院に対し9日、文書で改善を指導しました。

 これを受けて病院は11日、ホームページで松山健院長名の見解を公表しました。

 この中で病院は、「医師が積極的に透析の見合わせの選択肢を示したことはない」とした上で、死亡した女性のケースでは、それまでとは別の方法による透析の継続について説明したところ、透析を受けたくない旨を表明したもので、複数の医療従事者が繰り返し意思確認をした、としています。

 東京都の検査では、この病院で人工透析を行わなかったり、中止したりして、その後、死亡した患者は、2013年4月から先月6日までに44歳の女性を含めて24人いて、この中には患者の意思を確認する書類が残されていないケースや、患者の状態に応じて適切な説明を行ったかどうか、確認できないケースがあったということです。

 公立福生病院は東京都の指導について、「真摯(しんし)に受け止め、診療記録における記録の徹底を図る」としています。

 2019年4月11日(木)

 

■重度の歯周病で慢性閉塞性肺疾患リスク3・5倍に 九州大が追跡調査

 歯周病と慢性閉塞(へいそく)性肺疾患(COPD)の発症は関連があることが、九州大学の研究で明らかになりました。歯周病が重度な人は、慢性閉塞性肺疾患を5年以内に発症する割合が3・5倍に上昇することも明らかになりました。

 慢性閉塞性肺疾患は、慢性気管支炎や肺気腫と呼ばれてきた病気の総称で、世界的に増加していて世界の死因の第3位を占めます。たばこの煙を主とする有害物質を長期間吸入することで、呼吸機能が成人期以降に経年で加速して低下することで、肺に炎症ができて呼吸がしづらくなる慢性閉塞性肺疾患を発症します。

 一方、歯周病対策は、健康日本21(第2次)の目標にも掲げられており、2022年度までに歯周病の罹患率を40歳代で25%(現状は37・3%)、60歳代で45%(同54・7%)にそれぞれ抑えることが目標とされています。

 九州大の竹内研時助教(現・名古屋大准教授、歯科公衆衛生学)らの研究チームは、喫煙以外の要因を調べるため、口の中だけでなく全身の健康を脅かす病気である歯周病に着目。福岡県久山町の60歳以上の成人900人の2012年から5年間にわたる追跡調査データを分析し、慢性閉塞性肺疾患の発症との関連を検討しました。

 その結果、喫煙などの影響を加味した上でも、歯茎が健康な人や歯周病が軽度の人に比べ、歯周病が重度な人は慢性閉塞性肺疾患を5年以内に発症する割合が3・5倍も高く、慢性閉塞性肺疾患の患者の約4人に1人は中等度以上の歯周病が原因であることが示されました。

 このことは、歯周病の予防のために普段から自宅や歯科医院で口内環境を健康に保つことはもちろん、歯周病になっても適切な歯周病治療を受けて重症化を未然に防ぐことで、慢性閉塞性肺疾患の発症のリスクが下がる可能性を示しています。

 竹内さんは、「歯周病は歯磨きや歯医者でのケアを定期的に続けることで予防できる。禁煙だけでなく、口の健康も守ることが慢性閉塞性肺疾患にならないために大事」と呼び掛けています。

 2019年4月11日(木)

 

■民間企業の障害者雇用、最多53万4769人 15年連続で最多を更新

 厚生労働省は9日、民間企業の障害者雇用数が昨年6月1日時点で53万4769人(前年比7・9%増)となり、15年連続で過去最多を更新したと発表しました。

 前年比7・9%(約3万9000人)増と大幅に伸び、対象企業10万586社の従業員に占める割合である雇用率も2・05%と過去最高を更新しました。

 障害者雇用促進法で定める雇用割合(法定雇用率)が昨年4月に2%から2・2%へ引き上げられたことが、影響しました。

 法定雇用率の達成企業は、前年比4・1ポイント減の45・9%。障害の種類別は、身体障害者が前年比3・8%増の約34万6000人、知的障害者が前年比7・9%増の約12万1000人。精神障害者は昨年4月、同法で「雇用に努める対象」と明記されたこともあり、前年比34・7%増の約6万7000人に上りました。

 障害者雇用が義務付けられる対象は、従業員45・5人(短時間労働者は0・5人で計算)以上の企業。

 2019年4月11日(木)

 

■本庶氏、小野薬品を改めて批判 オプジーボ特許の対価巡り

 2018年のノーベル医学・生理学賞を受賞した京都大学の本庶佑(ほんじょ・たすく)特別教授が10日、京都市内で会見を開き、本庶氏の研究を基に小野薬品工業(大阪市中央区)が開発したがん免疫治療薬「オプジーボ」を巡り、特許契約を結んだ同社から支払われた約26億円を、契約に納得できない点があるとして受け取っていないと明らかにしました。全額法務局に供託されているといいます。

 本庶氏は、「若手研究者の育成のためにも、オプジーボの売り上げで得られる(特許料の)対価引き上げを求め、小野薬品と協議したい」と述べました。

 小野薬品は、本庶氏が発見した免疫の働きにブレーキをかけるタンパク質「PD-1」に着目。これを取り除くことで、がん細胞を攻撃するオプジーボを開発し、2014年9月から販売しています。2016年度は国内売上高1039億円を記録。海外の製薬企業からも1000億円単位の特許使用料を得ています。特許権の持ち分は本庶氏と小野薬品が半分ずつ保有していますが、2006年に同社が特許を独占的に使用し、本庶氏は対価を得るという契約を結びました。

 この日の会見に同席した井垣太介弁護士は、2006年に本庶氏個人と小野薬品が特許に関しての契約を結んだ際、同社からの対価の料率に関する説明が不正確だったと説明。当時の本庶氏が特許契約に関する知識が乏しかったと強調し、「本庶先生は研究で忙しく、弁護士に依頼する余裕もなかった。小野薬品ももう少し慎重なプロセス(過程)を踏むべきだった」と指摘しました。

 対価の引き上げを求め、本庶氏らは2011年ごろから小野薬品と交渉を開始しましたが、昨秋以降は実施されていないといいます。

 本庶氏は会見で、「公正な産学連携のモデルを作らないと日本のライフサイエンス(生命科学)分野はダメージを受け、若手研究者もやる気を失う」と語りました。

 本庶氏はノーベル賞の賞金を原資に設立した「本庶佑有志基金」にオプジーボの販売で得られる対価を充てたいとする考えを示しています。

 本庶氏の記者会見を受け、小野薬品は「本庶氏の主張を正確に把握できておらず、現時点で話はできない。特許使用料の引き上げを含めた話し合いは弁護士を介して今も続けている」と話しました。

 2019年4月10日(水)

 

■京都大、骨が伸びる仕組みの一端解明 カルシウムイオンが関係

 京都大学などの研究チームが、骨が伸びる仕組みの一端を解明したと発表しました。今後、骨折の治療薬などへの活用が期待されます。

 京都大学の市村敦彦特定助教らの研究チームによると、大腿骨や上腕骨、指の骨などは胎児や子供のころにまず軟骨細胞が増えることで伸びて、その後硬い骨に置き換わるという変化が起きています。

 研究では、軟骨の成長には細胞の中にあるカルシウムイオンの濃度が常に変化していることが必要だとわかり、それを制御しているTRPM7(トリップエムセブン)という遺伝子を今回初めて特定しました。

 実験で、細胞からその遺伝子を欠損させたマウスを成長させたところ、通常の個体に比べて骨が約25%短くなり、体重も半分程度にとどまったといいます。

 人でも同様の仕組みがあると考えられ、研究チームは折れた骨の治癒を促す薬の開発や移植用軟骨の高品質化などに活用したいとしています。

 2019年4月10日(水)

 

■介護職員の平均月給、初めて30万円を超える 厚労省調べ

 厚生労働省は10日、介護施設で働く常勤介護職員の平均月給が2018年9月時点で30万970円と前の年と比べて1万850円増えたと発表しました。30万円を超えたのは2009年の調査開始以来初めて。

 介護現場での人手不足感が強まる中、待遇の改善で職員の引き留めを図る施設が増えているためですが、産業界の平均水準には届いていません。

 特別養護老人ホームなど全国の1万670事業所を調べ、有効回答率は74・1%でした。平均月給には基本給のほか、諸手当や賞与も含まれます。月給のうち基本給は18万1220円で、前の年と比べて3230円増えました。諸手当は7万1330円で3610円増、賞与も4万8420円と4010円増えました。

 厚労省は介護職員の処遇を改善するため、職員1人当たり最大で月3万7000円に相当する介護報酬を支払っており、これも給与水準を押し上げました。上限まで報酬加算を取得した事業所は69・3%と前の年より4・4ポイント増加しました。

 ただ、厚労省の賃金構造基本統計調査によると、2018年6月時点の全産業の平均給与(賞与は除く)は33万6700円でした。介護職の給与は一般産業界の水準にはなお届いていません。

 介護職員の持続的な賃上げへの環境整備にも、課題はあります。今回の調査で賃金引き上げの実施方法を複数回答で聞いたところ、賃金カーブを底上げするベースアップを実施する予定の事業所は21・1%にとどまり、手当の引き上げや新設が31・3%に上りました。

 2019年4月10日(水)

 

■がん10年生存率56・3%、0・8ポイント上昇 国立がん研究センター発表

 国立がん研究センターは9日、2002~2005年にがんと診断された患者の10年生存率は56・3%で、昨年の調査と比べ0・8ポイント上昇したと発表しました。生存率には進行度によって大きな差があり、早期発見の重要性が改めて示されました。

 10年生存率の公表は2016年から行われ4回目。今回の対象は、がんの専門治療を行う全国20施設で診断、治療を受けた約7万人。過去の結果は1回目53・9%、2回目54・2%、3回目55・5%で、緩やかに上昇。がん治療や診断の技術は近年、着実に進歩しています。

 部位別では、前立腺の95・7%が最も高く、甲状腺84・3%、乳房83・9%と続きました。最も低かったのは早期発見が難しく、有効な治療法も確立されていない膵臓(すいぞう)で5・4%。日本人に多い大腸や胃は初期の1期で見付かった場合、90%前後と高いものの、進行した4期では1割前後にとどまりました。

 一方、2008~2010年にがんと診断された患者の5年後の生存率は67・9%でした。5年生存率は全国32施設、約14万人のデータを使って集計。高かったのは前立腺がん(100%)や乳がん(93・9%)。胆のう胆道がん(28・0%)や膵臓がん(9・2%)は厳しい傾向にありました。

 部位や治療法別の詳しい生存率は、全国がんセンター協議会のウェブサイト(http://www.zengankyo.ncc.go.jp/etc/)で確認できます。

 2019年4月9日(火)

 

■東京都、福生病院に文書で改善指導 透析中止などで24人死亡

 東京都福生(ふっさ)市の公立福生病院で44歳の女性患者の人工透析が中止され、その後、死亡した問題で、東京都はこの女性への説明が十分に行われたかどうかを確認できる記録が残されていないなどとして、9日病院に対し、文書で改善を指導しました。

 この問題は、昨年8月、公立福生病院で、腎臓病を患っていた44歳の女性の人工透析の治療が中止され、女性がおよそ1週間後に死亡したものです。

 東京都は、3月6日に病院に立ち入り検査を行い、人工透析の中止について患者への説明が適切に行われていたかなどについて調べていました。

 東京都の調べで、人工透析の中止を決めた後でも、本人の希望でいつでも撤回できることについて、この女性に説明を行った記録などが確認できなかったということです。

 また、病院では人工透析を行わなかったり中止したりして、その後死亡した患者が、腎臓病総合医療センターを設置した2013年4月から立ち入り検査に入った日までに、44歳の女性を含めて24人いたことがわかりました。

 この中には、患者の意思を確認する書類が残されていないケースや、患者の状態に応じて適切な説明を行ったかどうか、確認できないケースがあったということです。

 このため東京都は、病院に対し、医療法に基づいて患者に適切な説明を行うことや、正確な患者の記録を作成して残すことを文書で指導し、1カ月後をめどに改善に向けた報告を行うよう求めました。

 東京都が公立福生病院に対して、文書で改善を指導したことについて、小池知事は記者団に対し、「医療法に基づき、医療の行為や患者との会話などの記録が欠けていたことから、きちんとするように改善の指導をした」と述べました。

 その上で、「どういうふうに意思決定されたかを残しておくことは、病院や患者、患者の家族にとっても重要なことではないか」と述べました。

 東京都は、公立福生病院の問題を踏まえ、都内にあるすべての病院に対し、患者や家族に説明して同意を得る「インフォームド・コンセント」の適切な実施と正確な診療記録の作成などを徹底するよう、文書で通知しました。

 都の指導を受けたことについて、病院側は「指導の内容を踏まえて対応を検討したい」としています。

 2019年4月9日(火)

 

■B型肝炎ワクチンが不足の恐れ 10月以降、供給停止で

 厚生労働省は8日の有識者部会で、0歳児を対象とした定期接種などに使うB型肝炎ワクチンが10月以降、不足する恐れがあると明らかにしました。2社ある販売会社のうちMSD(東京都千代田区)が一時、供給を見合わせるため。

 厚労省は、もう1社のKMバイオロジクス(熊本市北区)に増産を要請する方針で、「すぐに安定供給に影響するものではない」としました。夏ごろ、改めて有識者部会で対応を議論します。

 MSDのワクチンの供給が止まるのは、原液を作るアメリカの製薬会社メルクの工程に問題があり、製造を止めて原因究明するため。国内での販売再開は来年半ば以降になります。

 B型肝炎ワクチンは国内で年350万~450万回接種されています。これに対し、KMバイオロジクスの2016~2018年度の製造実績は年60万~180万回分。厚労省は今後、増産スケジュールを確認します。

 2019年4月9日(火)

 

■赤色光を使う「光免疫療法」が先駆け審査指定に 早期の実用化へ向け

 厚生労働省は8日、画期的な新薬が早く実用化できるよう優先的に取り扱う「先駆け審査指定制度」の対象に、赤色光を使ってがん細胞を攻撃する「光免疫療法」で使用する「ASP-1929」など11品目を指定しました。

 光免疫療法はがん細胞に結び付きやすい特徴を持つ薬を投与後、赤色光を当てると、薬が光に反応してがん細胞が破壊される治療法で、2011年にアメリカ国立衛生研究所(NIH)の小林久隆主任研究員らが開発しました。舌がん、喉頭がんなど頭頸部(とうけいぶ)がんの患者を対象に、日米欧で実用化に向けた最終段階の治験(臨床試験)が実施されています。

 アメリカで実施された臨床試験では、15人の患者のうち14人で、がんが小さくなったり消えたりする効果が見られ、患者や医療関係者から注目されています。

 先駆け審査指定制度は、最先端の薬や医療機器を日本で早期に患者へ提供するため、厚生労働省が、対象の病気が重く、画期的な治療法であることなど一定の要件を満たす薬などを開発段階から対象製品に指定し、承認に関する相談や審査を優先的に取り扱います。指定を受けると、通常1年以上かかる審査期間を半年程度に短縮できるとされます。

 光免疫療法で使う「ASP-1929」については、楽天メディカルジャパン(楽天アスピリアンジャパンが3月に社名変更)が申請しており、世界に先駆けて日本での承認申請を目指しているといいます。

 2019年4月8日(月)

 

■異性間の性交渉、経験なしが25% 日本の18~39歳男女

 18~39歳の日本人の25%に異性間の性交渉経験がないとする研究結果を、東京大学とスウェーデン・カロリンスカ研究所の研究チームが8日付のイギリスの医学誌「BMCパブリックヘルス」に発表しました。2015年時点の推計で、23年前の20%から増えていました。1万人以上の調査データを分析しました。

 調査では、特に雇用や経済状態が不安定な男性で割合が高い一方、未経験の男女の8割に結婚願望がありました。研究チームは、「性交渉がないのは本意ではない可能性がある」とみています。

 今回の調査には1987~2015年に実施された計7回の「出生動向基本調査」のデータを使用。同調査は、国立社会保障・人口問題研究所が18~39歳の成人(1987年のみ18~34歳)を対象としてほぼ5年ごとに実施しています。

 1992年と2015年を比べると、未経験の割合は男性が20%から25・8%、女性が21・7%から24・6%に増加。割合は上の年代ほど少ないものの、2015年は35~39歳男性の9・5%、女性の8・9%が未経験で、1992年からほぼ倍増しました。

 2010年調査の分析では、25~39歳男性の場合は、無職、非正規・時短雇用および低い収入が未経験と関連することが判明しているといいます。年収300万円を切ると割合は跳ね上がりました。

 研究チームは、「こうした傾向が日本の出生率の低さにどう影響しているか、さらに研究が必要だ」としました。同性間の性交渉はデータがなく分析できなかったといいます。

 2019年4月8日(月)

 

■エボラ出血熱の死者700人を上回る コンゴ民主共和国

 アフリカ中部のコンゴ民主共和国(旧ザイール)の保健省は5日夜、エボラ出血熱によりこの3週間で約100人が死亡し、昨夏からの死者数が700人を上回ったと発表しました。

 それでも住民に対する初の大規模なワクチン接種が進められ、9万5000人余りの住民がアメリカの医薬品大手メルクのエボラワクチン「rVSVーZEBOV」の接種を受けました。同保健省によると、これにより多数の命が救われたといいます。

 コンゴ民主共和国は昨年8月1日、同国で1976年に初めて確認されて以降10回目となるエボラ流行宣言を出しました。同国東部の北キブ州で始まり、隣のイトゥリ州に拡大した今回の流行は、2014年の西アフリカでの流行に次ぐ史上2番目の規模。

 エボラ出血熱は感染した人間の血液や分泌物、嘔吐(おうと)物などに含まれるエボラウイルスが体内に侵入することで感染し、2014年のエボラ出血熱では、ギニアとリベリア、シエラレオネの3カ国を中心に1万人以上が死亡しました。

 4日までのデータに基づく保健省の発表によると、今回の流行開始以降の症例は1117件で、うち確定例は1051件、確実例は66件。死亡例は702件で、うち確定例は636件、確実例は66件でした。一方、339人が回復し、現在、感染疑いのある295人が検査を受けているといいます。

 2019年4月8日(月)

 

■ジェル豊胸剤の使用自粛求め声明発表へ 日本美容外科学会が健康被害受け

 ジェル状充填(じゅうてん)剤を注入する豊胸術を受けた女性の間で、しこりや感染症などの健康被害が出ている問題で、日本美容外科学会(JSAPS)の大慈弥(おおじみ)裕之理事長(福岡大副学長)は6日、非吸収性の注入剤を豊胸に使わないよう自粛を求める声明を月内に発表する方針を明らかにしました。

 ソウルで開かれた韓国の美容外科学会の講演で述べました。日本美容外科学会はこの問題が明らかになった昨年秋、使用自粛を求める見解を示していました。今回、日本形成外科学会などと共同声明を出すことで、使用のリスクをより強く呼び掛けます。

 日本では自由診療の場合、未承認の素材も医師が個人輸入して使うことが法律上認められています。

 美容目的の豊胸で用いるジェル状充塡剤は、ゼリーのような素材で、管状の器具で乳房に注入します。化学物質のポリアクリルアミドと水を混ぜたものや、シリコーン、ヒアルロン酸などの素材が使われます。シリコーン製のバッグと比べ、ジェル状充塡剤は全身麻酔が不要で傷が小さく、全国の美容クリニックで扱っています。

 日本美容外科学会は昨年6~7月、形成外科医約4000人に充塡剤の使用に関するアンケートを実施。回答した132人のうち72人が、計108件の合併症を診察していました。症状別では、しこりなどの固まり44%、感染症22%、皮膚変化8%、変形6%など。ジェル状充塡剤が注入されていたのは計83件で、チェコ製充填剤「アクアフィリング」が24%で最多。ヒアルロン酸系17%、シリコーン系17%、ウクライナ製とされる「アクアリフト」7%が続きました。

 豊胸の合併症を多く診療する野本俊一医師(日本医科大付属病院)によると、充塡剤は大胸筋を覆う筋膜と乳腺側の筋膜の間に入れます。その際に菌が入ったり、充塡剤が乳腺に入ったりすると、炎症などが起きる恐れがあります。充塡剤が乳腺や大胸筋などに散らばると、すべてを取り出すのは難しいといいます。

 豊胸目的の充塡剤を巡っては、アメリカ食品医薬品局は血管を詰まらせる危険があるなどとして使用を禁じており、流通した場合は押収や罰金などの措置を取っています。日本では、豊胸目的で国の承認を受けたものはありません。一方で、使用に対する規制がないため、医師が自由診療の中で使っており、流通量ははっきりしません。

 充塡剤を豊胸に使っている東京都内の医師は、「バッグよりも胸が軟らかく仕上がるので患者の満足度は高い。問題を起こすのは技術のない医師で、いつ誰がどう施術したか登録する仕組みを作るべきだ」と話しています。

 2019年4月7日(日)

 

■新薬「ゾフルーザ」、使用基準作成へ 耐性ウイルス対策で感染症学会

 インフルエンザの新薬「ゾフルーザ」に耐性ウイルスが検出され、日本感染症学会は5日、使用基準を設ける方針を決めました。この薬は1回飲むだけでよいとされ今季多く使われましたが、耐性ウイルスが広がると効きにくくなる恐れがあります。

 ゾフルーザは昨年3月に発売され、昨秋から今春までに約562万人分が医療機関に供給されました。発売前の臨床試験で、季節性のA型インフルエンザの治療にゾフルーザを使うと耐性ウイルスが出やすいことが確認されていました。

 国立感染症研究所によると、2日までにA香港型インフルエンザの患者168人のうち25人から耐性ウイルスが検出され、21人は12歳未満だったといいます。うち3人はゾフルーザを使っておらず、この薬を飲んだ家族からうつったとみられます。

 日本感染症学会はこの日、名古屋市で開かれた学術集会で緊急セミナーを開催。「子供や高齢者が重症化しやすいA香港型で多くの耐性ウイルスが出ている」などと現状を報告しました。今後、どのような使用基準を設けるのが適切か検討し、早ければ来季までに公表します。

 この問題に詳しいけいゆう病院(横浜市)の菅谷憲夫医師は、「耐性ウイルスの問題が十分周知されていない。現時点では、季節性のA型インフルエンザの治療にゾフルーザを使うべきではない」と指摘しました。

 2019年4月6日(土)

 

■野菜、果物の摂取は精神的幸福も後押し イギリスの大学が調査

 ダイエットや健康のために「果物や野菜の摂取量を増やそう」と考える人は多いものですが、このような食生活は肉体の健康によいだけではなく、気分の向上や感情面の幸福も後押しするとの研究結果が報告されています。

 イギリスの国立リーズ大学で行われた研究では、イギリスの世帯を対象に2010年から2017年まで収集された長期調査データを分析しました。調査に参加した人は、1日または1週間にどれくらいの生鮮食品を食べるか、および自らの幸せレベルや自己価値・不安の有無についても含めた健康質問票に記入しました。

 結果として、「果物や野菜の1単位」を「カップ1杯またはこぶし大の生野菜」「カップ半分の調理された野菜またはカットフルーツ」「果物1個」と定義すると、1日に3~4単位の果物・野菜を摂取している人は、摂取しなかった人と比べてよりよい心理的幸福を報告したと発見されました。この幸福状態は一般的な健康状態や人生の満足度ではなく、前後の変化を考慮して「よい影響を与えたか」という観点で測定されています。この「よい影響」が1ポイント高かった日には、0・11単位より多くの果物および0・14単位よりも多くの野菜を消費していると報告されています。

 論文では、「この調査結果は、果物と野菜の消費量を1日当たり約1・05単位増やすことで、失業状態から仕事に就くのと同じ精神的幸福へのプラス効果をもたらすことを示唆しています」とその効果について強調しています。また、1日に1単位の摂取量を増やすだけでも、1カ月当たり8日余分にウオーキングするのと同じ効果があると述べられています。

 しかしながら、この調査では、イギリス政府が推奨する摂取量の「1日5単位」を満たす人すら少なかったため、より高いレベルで果物や野菜の摂取を勧める方法が重要度であることが論文では示されています。

 生鮮食品がなぜ私達の精神的健康を増進させるのかははっきりしていないとのことですが、過去の研究では、豆やオレンジ、ほうれん草が豊富に含むビタミンEとビタミンCの働きが関係していると示唆されています。また、果物や野菜に含まれる複合糖質は、気持ちいい感覚を生むホルモンであるセロトニンのレベルを高める可能性もあると考えられています。

 イギリスの国民保険サービスはこの調査結果について、ここで用いられたのは縦断的コホート研究であるため、果物と野菜の摂取が精神的な幸福につながるという関連性を見付けるのには向いているものの、ある要因が他の要因を直接引き起こすことを証明することはできず、測定されていない他の要因も影響を受ける可能性があると指摘しています。

 国民保険サービスはこの研究には限界があり、果物や野菜の摂取が実際に精神的な健康の向上をもたらすのかどうかを明確に教えてはくれないと慎重な態度をとりつつも、果物と野菜をたくさん摂取することに利点があることは間違いなく、それがもし幸福感、充実感、不安感の軽減につながるのであれば、それはよいことであると前向きに述べています。

 2019年4月6日(土)

 

■ドナー男児の肺移植を「無断で放送」 両親がTBSと病院など提訴へ

 岡山大学病院で行われた肺の移植手術を取材したTBSの番組について、脳死の段階で肺を提供した男児の両親が、放送内容に極めて強い精神的苦痛を受けたなどとして、病院とTBSなどに損害賠償を求める訴えを起こすことになりました。

 この番組は、岡山大学病院で行われた国内では最年少の子供への肺の移植手術を取材したもので、2017年7月にTBSの「スーパードクターズ」という番組で全国放送されました。

 この番組について5日、脳死の段階で肺を提供した広島県の1歳の男児の両親と弁護士が東京都内で記者会見を開きました。

 この中で、番組の担当者や病院から事前に取材や放送について説明がなかった上、男児の肺が映像の加工なしで映し出されたほか、肺の提供を受けた側からの発送前の手紙の内容が放送され、番組を見た男児の母親は髪の毛が大量に抜けるなど極めて強い精神的苦痛を受けたとしています。母親は「夢で息子に会うことだけが慰めだったのに、夢の中の姿さえ肺になってしまい唯一の安らぎを奪われた」と話しました。

 また、男児の名前など臓器提供者(ドナー)だと直接わかる情報は含まれていなかったものの、手術した日などから知人に知られたとし、プライバシーの侵害に当たるとしました。

 国が定めた改正臓器移植法の運用指針で、移植医療の関係者は臓器提供者(ドナー)と、移植手術を受けた側の臓器受給者(レシピエント)の個人情報が互いに伝わらないように注意を払うよう求めています。

 このため、岡山大学病院とTBS、臓器のあっせんをした日本臓器移植ネットワークなどに対し1500万円余りの損害賠償を求め、4月中旬にも広島地方裁判所に提訴することを明らかにしました。

 記者会見で両親は、「悩んだ末に臓器提供を決断しましたが、病院やTBSの説明には納得できず、今後、同じようなことが繰り返されると思い、訴訟を決断しました」と話していました。

 これについて、岡山大学病院は「訴状が届いていないため現時点ではコメントできない」としています。

 また、TBSは「臓器移植法の指針に従って細心の注意を払って制作した。訴状を受け取り次第、内容を精査して対応を検討する」とコメントしています。

 日本臓器移植ネットワークは「会見の具体的な内容がわからないためコメントは差し控える」としています。

 2019年4月5日(金)

 

■6歳未満の女児、脳死判定 国内12例目の臓器提供へ

 日本臓器移植ネットワークは4日、埼玉県立小児医療センターに入院中の6歳未満の女児が改正臓器移植法に基づく脳死と判定され、臓器提供の手続きに入ったと発表しました。脳死と判定された6歳未満の子供からの臓器提供は国内12例目。

 臓器移植ネットワークによると、臓器提供は親族12人の総意といいます。女児は1日に急性脳症のため脳死とみられる状態となり、3日午後5時6分までに2回の脳死判定が終了しました。

 5日に臓器の摘出が行われる予定で、心臓が大阪大病院で10歳未満の男児に、肝臓が自治医大病院で10歳未満の男児に、両方の腎臓が東京女子医大病院で10歳代の男性にそれぞれ移植される予定。

 臓器移植ネットワークによると、脳死判定された女児の両親が臓器提供を考えた切っ掛けは、移植医療を身近に感じることがあったことや家族自身が臓器提供の意思表示をしていることがあったといいます。両親は臓器移植ネットワークを通じて、「娘は誰にでも優しく、誰にでも笑顔を向け、元気を与えられる子でした。娘には最期まで生き抜く強さと命の大切さを学びました。誰かの一部になって病気で苦しんでいるお子さんを助けることに娘はきっと賛同してくれると思っています」などとするコメントを発表しました。

 2019年4月5日(金)

 

■皮膚の「若さ」を保つ上で重要なタンパク質を発見 東京医科歯科大

 皮膚を「若々しく」保つ上で重要な細胞競合を促進するタンパク質があることが、最新の研究結果で明らかになりました。東京医科歯科大学の西村栄美教授らの研究チームによる研究結果は4日付で、イギリスの科学誌「ネイチャー」に発表されました。

 このタンパク質「17型コラーゲン(COL17A1)」は、細胞組織の適応度を維持する重要な過程である細胞競合を促進します。細胞競合により、弱い細胞は駆逐され、強い細胞の複製が促されます。

 17型コラーゲンは、加齢によって減少します。減少により、弱い細胞が自己複製し、皮膚が薄くなり、損傷を受けやすくなるとともに、再生も遅くなります。

 今回の研究は、人間の皮膚と同じ特徴を多く有しているマウスのしっぽを用いて行いました。研究チームは、17型コラーゲンの減少が起きた時点で17型コラーゲンを活性化することが可能か調べ、皮膚の抗加齢を促進させる化合物を探りました。

 「Y27632」と「アポシニン」という2種類の化合物を単離し、皮膚細胞でテストしたところ、肯定的な結果が得られました。論文では、「これらを皮膚全層の損傷に塗布したところ、損傷の再生が著しく促進された」と指摘し、「2つの化合物は皮膚の再生促進と老化抑制につながることが期待される」と続けています。

 論文の査読はネイチャーに依頼され、アメリカのコロラド大学のガンナ・ビルソワ教授とジェームズ・デグレゴリ教授が行いました。両教授は、細胞競合に関する詳細な研究はこれまでハエでしか行われていなかったと指摘しています。

 また、「研究は哺乳類の正常細胞が成体組織を効果的に再配置し、弱い細胞や損傷した細胞を取り換えることができるという証拠を提供している」と記し、「2つの化合物が老化に対抗できることの原理証明が今回の研究で得られた」とも指摘しています。

 さらに、「他の組織における細胞競合のメカニズムを解明し、他の臓器における若返りを可能にする化合物を特定するには、今後さらに研究を重ねる必要がある」と、両教授は記しています。

 2019年4月5日(金)

 

■運転免許証の自主返納、75歳以上は過去最多の29万人余 警察庁まとめ

 高齢ドライバーによる死亡事故が相次ぐ中、運転免許証を自主的に返納した75歳以上の人は、昨年1年間に全国で29万人余りと、これまでで最も多くなったことが3日、警察庁のまとめでわかりました。

 昨年、75歳以上のドライバーが起こした死亡事故は、全国で460件と、死亡事故全体の件数が減少傾向にある中、深刻な状況が続いています。

 このため、全国の警察は、加齢による身体能力の衰えで運転に不安を感じている高齢者などに運転免許証の自主的な返納を勧める取り組みなどを行っています。

 警察庁によりますと、2018年の1年間に運転免許証を自主返納した75歳以上の人は、全国で29万2089人と、2017年を3万8152人上回り、自主返納の制度が始まった1998年以降で最も多くなりました。

 また、免許証を自主返納して運転経歴証明書を交付された75歳以上の人も24万4726人と、これまでで最も多くなりました。

 警察庁は、高齢者本人だけでなく、その家族からの相談にも応じて、身体能力に合わせた運転や免許証の自主的な返納につなげるための全国共通の相談ダイヤルを今年の秋から設置する方向で準備を進めるほか、自動ブレーキ搭載車などに限って運転を認める条件付き免許証の導入なども検討しており、引き続き、高齢ドライバーによる事故防止の対策を進めていくことにしています。

 2019年4月4日(木)

 

■受精卵の「着床前診断」、対象拡大へ 生活に著しい影響が出る遺伝性の病気も

 体外受精させた受精卵の遺伝子などを調べ、異常がないものを子宮に戻す「着床前診断」について、日本産科婦人科学会はこれまで、命に危険が及ぶ遺伝性の病気の子供を出産する可能性がある場合などに限って認めてきましたが、生活に著しい影響が出る遺伝性の病気にも対象を広げる方針を決めました。

 「着床前診断」は不妊治療で体外受精させた複数の受精卵の遺伝子などを調べ、異常がないものを選んで子宮に戻す医療行為です。受精卵の細胞の一部を取り出して病気の原因として明らかになっている遺伝子などを調べます。

 日本産科婦人科学会が医療機関から申請を受けて審査を行い、これまでは成人になるまでに命に危険が及ぶ遺伝性の病気の子供を出産する可能性がある場合や、特定の習慣流産に限って認めてきました。

 しかし、一部の患者団体や医療機関から、目が見えなくなる病気などへの拡大を望む声が寄せられたことから、学会では生活に著しい影響が出る遺伝性の病気にも対象を広げる方針を決めました。

 どのケースを認めるかは個別に判断されることになりますが、「着床前診断」は命の選別につながると指摘する意見があり、今回の変更で実施する病気の範囲の拡大に歯止めがかからなくなるのではないかと懸念する声も出ています。

 学会の小委員会の榊原秀也委員長は、「無制限に拡大するのではなく、患者や家族の置かれた状況を慎重に検討し、患者を支援する選択肢の一つとしていきたい」と話しています。

 日本産科婦人科学会は医療機関から「着床前診断」の実施の申請を受け、1件ごとに承認するかどうかを審査しており、承認するための基準を『重篤な遺伝性の病気の子供を出産する可能性がある場合』と、流産を繰り返す『特定の習慣流産』に限られると規程しています。

 このうち『重篤な遺伝性の病気の子供を出産する可能性がある場合』については、これまで学会は「成人になるまでに命に危険が及ぶ病気の子供を出産する可能性のある場合」と解釈して運用してきました。

 2015年までの18年間に120件が認められ、筋肉の異常で心臓や呼吸器にも影響が及ぶ筋ジストロフィーの一部や、骨の異常で呼吸ができなくなる難病、それに、重い代謝異常でアンモニアが蓄積してこん睡状態になる病気などのケースで認められてきました。

 そのため、これまで、目が見えなくなることにつながる遺伝性の病気が申請された際は、成人になるまでに命が危ぶまれることは少ないという理由で『重篤』とされず、承認されませんでした。

 しかし、一部の患者や医療機関からは患者の生活に大きな影響が出る病気も含めてほしいという声が寄せられたことから、学会は解釈を見直すべきか議論を進めてきました。そして、病気の『重篤さ』は患者の意見も踏まえる必要もあるとして、命の危険は少なくても、日常生活に著しい影響が出る病気を対象に加え、今後、どのようなケースを認めるのか、個別に判断していくことになったということです。

 学会が承認すれば、申請を行った施設で改めて第三者を交えた倫理委員会が開かれ、最終的に各施設で実施を判断することになるということです。

 生命倫理に詳しい明治学院大学の柘植あづみ教授は、「生活に著しい影響が出る病気」では「著しい影響」の範囲が広く、歯止めがかからなくなる可能性があるとしていて、「希望する患者とそれに応えたいと思う医師にこうした議論を任せてしまうのは危険で、応用する範囲が際限なく広がる恐れがある」と話しています。

 その上で、「この医療行為を希望する人の背景には、社会の中に病気に対する無理解や差別、それに就学や就労の支援の不足などの問題があることがかかわっていて、広く議論をして、どのような社会を目指すのかこの医療行為が問い掛けていることを知ってほしい」と話しています。

 2019年4月4日(木)

 

■身元保証人なしでも入院できる体制整備へ 厚生労働省

 高齢者などが「身元保証人」を依頼できる親族がいないため医療機関から入院を拒まれるケースをなくそうと、厚生労働省の研究班は成年後見制度などを活用して保証人がいなくても受け入れができるよう体制を整備すべきだとするガイドラインの案をまとめました。

 多くの医療機関では、緊急時の対応や医療費の滞納などに備えて「身元保証人」を求めていますが、高齢者などが保証人を依頼できる親族がいないため入院を拒まれるケースが出ています。

 このため、専門家などで作る厚生労働省の研究班は医療機関を対象にしたガイドラインの案を今月、初めてまとめました。

 その中では単身世帯の増加などを背景に「身元保証人」がいなくても受け入れができるよう体制を整備すべきだとしています。

 具体的には病状悪化などの緊急時に備えてあらかじめ本人の意向を確認するとともに親族や友人、福祉関係者に本人の意向を伝え対応についても相談すべきだとしています。また、認知症などで本人に判断能力がない場合は成年後見制度を活用して財産を管理する後見人に医療費の支払いを相談できるとしています。

 研究班の代表を務める山梨大大学院の山縣然太朗教授は、「慣習的に『身元保証人』を求める対応は時代にそぐわなくなっている。誰もが安心して医療が受けられる体制を整えてほしい」と話しています。

 研究班では来月にも、ガイドラインを取りまとめることにしています。

 2019年4月4日(木)

 

■群馬大病院、特定機能病院に再承認 手術死問題で4年ぶり

 厚生労働省は3月29日、腹腔(ふくくう)鏡手術を受けた患者らが相次いで死亡した問題が起きた群馬大病院(前橋市)を、4月1日付で高度な医療を提供する特定機能病院に再承認すると発表しました。社会保障審議会の答申を受けて決めました。

 2015年6月に承認を取り消されて以来、約4年ぶりとなります。

 同病院は昨年5月に再承認を申請。院内の死亡事例をすべて安全管理部門に報告するようにし、遺族をメンバーとする委員会を設置するなどの再発防止策を進めていました。

 社会保障審議会はこうした取り組みを評価。再承認に当たり、問題の教訓を生かすための研修を実施することや内部通報窓口の周知徹底を求めました。

 特定機能病院は400床以上のベッド数や原則16以上の診療科を持ち、先進医療や指定難病といった難しい診療を提供できることが要件。現在85病院が承認されています。

 特定機能病院がないのは全国で群馬県だけで、県や地元の医師会などからも再承認を求める要望が出されていました。

 群馬県の大沢正明知事は、「再承認は県内外の多くの方々が待ち望んでいたことであり、決定は誠に喜ばしい。病院には地域医療のさらなる充実のため、医師の養成・確保や高度医療の提供などに大きな役割を果たしていただくことを期待している」というコメントを出しました。

 2019年4月4日(木)

 

■ドナー不足が深刻、人工授精4割減 最多実施の慶応大病院

 慶応大病院(東京都新宿区)で、第三者が匿名で提供した精子を使う人工授精(AID)のドナー(提供者)が不足し、昨年の実施数が約1000件と前年の6割に大きく減りました。海外で出自を知る権利が認められてきた状況を踏まえて、2017年6月、ドナーの同意書の内容を変えた影響です。慶応大病院は、ドナーの不安を減らすため、親子関係を明記した法律の整備が必要だと訴えています。

 AIDは夫が無精子症などで妊娠に至らず、他の選択肢がない夫婦が対象。日本産科婦人科学会によると、昨年7月現在で全国の登録施設は12カ所。2016年はAIDが計3814件行われ、1948年に国内で最初に始めた慶応大病院が半数を占めました。

 慶応大病院は提供を受ける夫婦や生まれた子供にドナーの情報は非公表ですが、2017年6月、生まれた子供が情報開示を求める訴えを起こし、裁判所から開示を命じられると公表の可能性がある旨を同意書に記しました。また、日本はAIDで生まれた子供の父親が、育てた男性かドナーのどちらなのか明確に決めた法律がなく、扶養義務などのトラブルが起こり得ることを丁寧に説明しました。

 すると、2017年11月以降、それまで年10人ほど確保してきた新たなドナーがゼロになり、昨年8月、提供を希望する夫婦の新規受け入れを中止しました。実施数は2016年の1952件から、2017年は1634件、昨年は1001件と2017年より約4割減りました。

 ドナー不足が報道された昨秋以降、数人からドナーの応募があり、治療中の夫婦への精子提供は続けられそうですが、新規の夫婦受け入れ再開のめどは立っていません。

 慶応大の田中守教授(産科)は、「親子関係の法整備が進まなければ、将来、ドナーに法的なトラブルが起こり得るため、私達からドナーになることを勧めにくい」と指摘し、法整備が必要だと訴えています。

 また、提供精子を巡る日本産科婦人科学会のルールは、精子を子宮に注入する人工授精しか想定していません。顕微鏡で見ながら精子を卵子に直接注入する「顕微授精」が認められれば、より高い成功率が期待できるため、「日本産科婦人科学会に相談したい」といいます。

 2019年4月4日(木)

 

「体外受精」は1回50万円以上が43% 不妊治療費の高額化が進む

 不妊治療法の一種である「体外受精」で、1回当たり50万円以上かかった人の割合が約10年間で2・7倍に増え、治療費の高額化が進んでいるとの調査結果を、NPO法人がまとめました。約2割の人が総額で300万円以上を払っており、不妊治療費の負担が増しています。

 不妊に悩む当事者で作るNPO法人「Fine(ファイン)」(東京都江東区)による2010年、2013年に続く調査で、2018年9月~2019年1月にウェブで約1500人が回答しました。

 体外受精は、卵巣から卵子を採取して体外で精子と受精させ、子宮に戻す治療。1回の平均費用は「50万円以上」とした人が43%を占め、前々回の2010年調査の16%から大幅に増えました。「30万円未満」は半減し13%でした。

 不妊治療法の一種で、採取した卵子に1つの精子を顕微鏡を使って直接注入する「顕微授精」は「50万円以上」が60%で、前々回の2010年調査から約2倍近くに増加。不妊治療費の総額は、100万~200万円未満が最多の24%でした。

 治療では、卵巣を刺激する薬の投与や、子宮などの状態を調べる検査も伴います。Fineの松本亜樹子理事長によると、新しい検査や薬剤が登場した影響で、費用がかさんでいる可能性があります。

 厚生労働省が設けている不妊治療の助成金を申請したことがない人は、58%を占めました。理由(複数回答)は、「所得制限を超える」が最多の41%で、夫婦合算で730万円までという条件が壁となっています。

 また、通院治療と仕事との両立の難しさから「働き方を変えた」と答えた人が、約半数いました。内訳(複数選択)は、退職48%、転職19%、休職13%でした。

 松本理事長は、「不妊に悩む人は、よりよい治療を求めて通院先を探す。若い世代で高度な治療をあきらめた人も多い。高額化が進むと、限られた人しか受けられなくなってしまう」と懸念しています。

 2019年4月4日(木)

 

脂質異常症薬のネット販売を解禁 生活習慣病薬で初

 厚生労働省の有識者調査会は2日、生活習慣病の一つ「脂質異常症」の治療薬としてドラッグストアなどで販売されている「エパデールT」を、インターネットを通じて販売することを認めました。生活習慣病薬としては初めてで、15日からネット販売が可能になる。

 一方、日本医師会は「ネット販売が始まれば、服用が適切かどうかの確認が不十分になる」などと反対しています。

 この持田製薬が製造販売元であるエパデールTは、魚の油に含まれる「イコサペント酸(EPA)」が主成分。肝臓での過剰な中性脂肪合成を抑え、血中の余分な中性脂肪の代謝を速くして中性脂肪の高値を改善して動脈硬化などを抑える作用があり、健康診断などで中性脂肪値が高めとされた人に有効といいます。

 ネットでの販売は、購入者が事前に医療機関を受診することが条件で、薬剤師の説明を受ける必要があります。また3カ月に1度、医療機関などで中性脂肪の値を調べ、3~6カ月後も改善しなければ医師らへの相談を求めます。

 2019年4月3日(水)

 

■高齢初出産、緊急帝王切開のリスク要因 40歳以上で約3割に上る

 40歳以上で初めて出産する妊婦は、母子に危険が生じるのを避けるため出産時に緊急帝王切開する割合が約3割に上るとする調査結果を、大阪母子医療センターの研究チームがまとめました。35歳以上の妊婦約1000人を対象にした国内初の大規模調査で、30歳代後半でも約2割に上りました。

 研究チームは。「高齢になるほど、緊急帝王切開を選ばざるを得ないケースが増えてくる。万全の体制でサポートする必要がある」と指摘しています。

 緊急帝王切開は、難産で出産に時間がかかり、母体に脳出血や肝機能障害などの合併症、胎児に発育不全や低酸素などの合併症が起こるリスクが高いと判断される場合に行われます。逆子などで事前に決めている通常の帝王切開とは異なります。帝王切開自体にも大量出血、感染症などのリスクがあるため、通常分娩(ぶんべん)が望ましいとされますが、緊急帝王切開は母子を守るためにやむを得ず行われます。

 高齢出産が母子に与える影響を調べるため、2009~2014年に大阪母子医療センターで第1子を出産した35歳以上の953人を対象に、緊急帝王切開が行われたケースとその理由を分析。その結果、緊急帝王切開は、40歳以上の妊婦では247人のうち70人(28・3%)に上りました。35歳以上40歳未満の妊婦では706人のうち129人(18・3%)。調査結果こそないものの、20歳代~30歳代前半の出産での割合は「1割程度」といい、加齢に伴いリスクが高くなる傾向がみられました。

 また、緊急帝王切開になりやすいリスク要因を調べたところ、体格指数(BMI)が25以上の肥満、妊娠高血圧症候群、胎児が標準より大きい、分娩誘発剤の使用などが判明しました。

 大阪母子医療センター産科主任部長の石井桂介医師(産婦人科)は、「高齢出産ではいろんなリスクを考慮し、対応することが必要だ。ただ、リスクが高まっていても、センターのように麻酔科医が常駐するなど体制が整っていれば安全に出産できるはず」と話しています。

 2019年4月3日(水)

 

■風疹流行で名古屋市がクーポン券発送 40~47歳男性を対象

 風疹のワクチンを接種する機会がなかった40歳から57歳までの男性を対象に、今年度から、免疫の有無を調べる抗体検査や予防接種の費用を補助する事業が始まりますが、名古屋市では2日、検査や予防接種が無料で受けられるクーポン券の発送作業が行われました。

 風疹は、妊娠中の女性が感染すると、赤ちゃんに障害が出る「先天性風疹症候群」になる恐れがあります。

 昨年の夏以降、男性を中心に風疹が広がっていることから、全国の自治体では、子供のころにワクチンを接種する機会がなかった40歳から57歳までの男性を対象に、来年度から3年間、抗体検査や予防接種の費用を補助する事業が始まります。

 名古屋市役所の感染症対策室には、医療機関へ持参すれば検査や予防接種が無料で受けられるクーポン券が届き、対象者に発送する作業が行われました。

 1年目は、まず1972年4月2日から1979年4月1日生まれの男性に送られますが、それ以外の対象者も希望すれば同じクーポン券を発行してもらえるということです。

 名古屋市保健所長の平田宏之さんは、「抗体検査は、医療機関だけでなく、職場によっては健康診断でも受けられるので、男性にはこの事業を利用してもらい、妊婦さんに風疹をうつさないよう、予防してもらいたい」と話しています。

 2019年4月3日(水)

 

■アスクル、大企業に大衆薬を通販へ 4月中にサイト開設

 ネット通販大手のアスクルが、一般用医薬品(大衆薬)の法人向けネット通販に本格参入します。中小事業所向けに試験的に運用してきましたが、4月中に大企業向けのサイトを開設します。社員が急に体調を崩した際に使える風邪薬などの「常備薬」をそろえたい企業の需要を見込みます。文房具や事務用品などとセットで購入できるため、利用頻度が高まるとみられます。

 取り扱うのは大衆薬のうち比較的リスクが低いとされる「第2類医薬品」と「第3類医薬品」で、合計で約2000種類をそろえます。風邪薬の「パブロン」シリーズや解熱鎮痛剤「バファリン」などが該当します。通常のネット通販と同様にサイトで探し、他の商品とまとめて注文できます。

 これまで法人で利用する医薬品は、配置薬会社が提供する「置き薬」のサービスか、従業員がドラッグストアなど近隣の店舗まで買いに行く事例が多くなっていました。他の備品と一緒にネット通販で買えれば請求書をまとめることができ、会計などの事務処理の手間を省ける利点もあります。

 職場で使う風邪薬のほか、土木関係の現場で使う消毒薬や、飲食チェーン向けのやけど薬など幅広い業種での利用を見込んでいます。2018年末に試験提供を始めた中小事業所向けのサービスでは、花粉症の薬などを購入する顧客も多いといいます。

 大衆薬の国内市場規模は約1兆1000億円とされますが、現在ネット通販で買われているのはこのうち数%程度で、アスクルは需要の拡大余地が大きいと判断しました。

 2019年4月2日(火)

 

■風疹の患者数、1000人超える 専門家、流行拡大を懸念

 国立感染症研究所は2日、今年に入って報告された全国の風疹(ふうしん)患者が1000人を超え、1033人になったと発表しました。感染者が1万人を超えた2013年の大流行時期と増加状況が酷似しています。

 政府は東京オリンピック・パラリンピック開催年度までに風疹の排除を目指していますが、流行は複数年にわたって続くこともあり、専門家は「今後流行が拡大する恐れがある」と警戒を呼び掛けています。

 感染症研究所によると、3月18~24日の1週間に新たに報告された患者数は74人。都道府県別では、東京都が26人と最多で、神奈川県9人、埼玉県7人、大阪府と兵庫県5人、千葉県4人と続きました。

 都道府県別の今年の累計患者数は、東京都で309人、神奈川県で140人、千葉県で99人、大阪府で92人、埼玉県で64人などと、首都圏で全体の6割を占め、近畿地方でも多くなっています。全患者数のうち男性が809人、女性が224人。いずれもワクチンの接種歴が「不明」や「なし」が多くなっています。

 風疹はくしゃみやせきで感染し、発熱や発疹などの症状が出ます。妊娠初期の女性が感染すると、赤ちゃんが難聴や心臓病になる恐れがあります。

 昨年は全国で感染が拡大し、2917人の患者が確認されています。

 厚生労働省は、過去に予防接種を受けられなかった40~57歳の男性を対象に、免疫の有無を調べる抗体検査とワクチン接種を2021年度末までの3年間無料にすることを決めています。1年目は47歳までの対象者に、住所地の自治体から医療機関へ持参するクーポン券が順次送られてきます。

 風疹などの感染症に詳しい川崎市健康安全研究所の岡部信彦所長は、「感染が各地で散発的に続いている状態だが、今後、大きく広がる恐れもあり、引き続き注意が必要だ。自分には、ワクチンは必要ないと思う人がいるかもしれないが、職場などで妊娠している女性に感染させてしまうと、おなかの子供に障害が出る恐れがあるなど大きな影響を与える。周りにいる人や次の世代のためにも、ワクチンの接種が必要だという意識を、社会全体で持つことがとても重要だ」と話しています。

 2019年4月2日(火)

 

■アフリカ豚コレラ、感染力のあるウイルスを国内で初確認 中部空港に持ち込みのソーセージから

 感染力が極めて強いブタの伝染病の「アフリカ豚(とん)コレラ」の生きたウイルスが、中国から中部空港に持ち込まれたソーセージから見付かりました。感染力のあるウイルスが確認されたのは初めてで、農林水産省は対策を強化する方針です。

 中国などアジアで拡大しているアフリカ豚コレラは、岐阜県や愛知県などで発生している「豚コレラ」とは全く違うブタの病気で、人には感染しないものの極めて強い感染力があります。

 農水省によりますと、今年1月12日に、上海と青島から中部空港を訪れた中国人とみられる2人がそれぞれ豚肉のソーセージを持ち込み、調べた結果、1月25日に生きたウイルスが確認されたということです。2人に直接の関係はなく、土産用として持ち込んだとみられます。

 アフリカ豚コレラを巡っては、これまで感染力があるかわからないウイルスの遺伝子が見付かったことはありますが、今回のように感染力のある生きたウイルスが確認されたのは初めてです。

 今回は、水際で食い止めましたがウイルスが国内に侵入するのを防ぐため、農水省は違法に肉類を持ち込んだ入国者をデータベース化して警戒するとともに、繰り返し持ち込むなど悪質な場合には警察に告発するなど、対策を強化する方針です。家畜伝染病予防法では、違法な畜産物の持ち込みは100万円以下の罰金か3年以下の懲役となっています。

 吉川農林水産大臣は2日の閣議の後の会見で、「今月からは10連休も始まるので、関係省庁とも連携し体制を強化していきたい」と述べました。

 2019年4月2日(火)

 

■受精卵のゲノム編集研究指針を施行 生殖医療の基礎研究のみを容認

 文部科学省と厚生労働省は1日、狙った遺伝子を効率的に改変できる「ゲノム編集」技術を人の受精卵に使うことを、生殖補助医療目的の基礎研究に限って容認する研究指針を施行しました。人や動物の子宮に戻して妊娠させることは禁止します。

 実施を希望する研究機関は、組織内の倫理審査委員会と国による2段階審査で了承されれば、研究が可能になります。

 ゲノム編集を巡っては、中国の研究者がこの技術を使って、受精卵の段階で遺伝情報を改変した双子の女児を誕生させていたことが、1月に確認されました。安全性や倫理面の問題があるため、国際的に批判が集まっています。今回の指針は、こうした研究に一定の歯止めをかけるのが目的です。ただ、指針は大学や研究機関の研究者が対象で、違反しても罰則はありません。民間クリニックの医師が医療目的で使うことも規制できない課題があります。

 指針で新たに認められたのは、不妊治療などを目的とした基礎研究。受精卵が発達する仕組みは不明な点が多く、ゲノム編集を使った研究で解明できれば、不妊治療の成功率を高められると期待されます。

 指針では、受精卵は不妊治療で余ったものを、夫婦の同意を得て使うよう求めました。研究は、冷凍保存期間を除いて受精後14日以内に終え。使った受精卵は直ちに廃棄するとしています。

 2019年4月2日(火)

 

■障害者手帳、カード型の発行が可能に 厚労省が省令改正へ

 厚生労働省は3月25日までに、障害のある人が持つ障害者手帳について、持ち運びしやすいカード型での交付を可能とすることを決めました。社会保障審議会の障害者部会で提案し、了承されました。今後詳細な制度設計を進め、早期に省令を改正します。

 身体障害者が持つ「身体障害者手帳」と精神障害者が持つ「精神障害者保健福祉手帳」はどちらも紙製で、氏名や住所、障害の程度などが記載されており、公的な証明に使われるほか、公共交通機関などで示せば割引を受けられることがあります。従来の障害者手帳は縦約10センチメートル、横約7センチメートルで、「大きくて財布に入らない」などと改善を求める声が出ていました。

 新しいカードは運転免許証やクレジットカードなどと同じ大きさで、耐久性が高いプラスチック製を想定。実際にカード型で発行するかどうかは、自治体の判断に委ねます。発行にはシステム改修など自治体の準備も必要で、実際に交付が始まるのは早くても数週間先になる見通し。

 障害者手帳は本人の申請により都道府県と政令指定都市、中核市が発行します。2018年3月時点で身体障害者約511万人、精神障害者約99万人が交付を受けました。知的障害者が持つ「療育手帳」は現行制度でもカード型の発行が可能で、一部の自治体が導入しています。 

 2019年4月1日(月)

 

新型出生前診断の要件緩和、人類遺伝学会が憂慮 体制不十分

 妊婦の血液から胎児の染色体異常を調べる新型出生前診断で、実施施設を増やすために要件を大幅に緩和する日本産科婦人科学会の新指針案に対し、日本人類遺伝学会は3月29日、懸念を表明する声明を発表しました。

 声明は「臨床遺伝専門医、小児科医、認定遺伝カウンセラーなど多領域、多職種の関与がなくとも実施可能となり得る」など4項目の問題を挙げ、「不十分な体制の下に安易に行われるべきではない」と指摘しました。

 新指針案では、遺伝の専門家や小児科医の関与が必須ではなくなります。検査前の専門家による遺伝カウンセリングも、特定の研修を受けた産婦人科医だけで可能とし、施設の増加を図ります。これに対し、「遺伝カウンセリングを通じて、さまざまな疑問に正しく答え、家族や胎児を支援する機会が失われないことが重要だ」と訴えました。

 新指針案での要件の緩和は、産科婦人科学会が作ったルールを守らずに検査を提供する民間クリニックが増えていることへの対策が理由の一つ。しかし、臨床遺伝の専門医が集まる人類遺伝学会は、高額な検査費用を下げて、営利目的の民間クリニックを退ける努力が必要だとしました。 

 新指針案に対しては、日本小児科学会や日本遺伝看護学会がすでに懸念を表明したほか、市民団体や障害者団体からも批判の声が上がっています。

 国内では2013年から始まった新型出生前診断は、晩婚化で高齢での出産が増えていることなどを背景に、検査の件数は年間1万件以上あり、昨年9月までに認可を受けた施設で行った検査は累積で6万件以上に上っています。

 2019年4月1日(月)

 

■健康寿命の目標、男性75歳・女性77歳以上に 2040年までの実現を想定

 健康上の問題で日常生活を制限されることなく過ごせる期間を示す「健康寿命」について、厚生労働省は28日、2040年までに2016年と比べて男女とも3年以上延ばす目標を掲げると決めました。男性は75・14歳以上、女性は77・79歳以上を目指します。

 仮にこれまでと同じトレンドで2040年まで推移していった場合、男性は2・23年、女性は2・35年しか健康寿命は延伸しないといいます。そのため今夏までに目標の達成に向けた計画をまとめ、加齢に伴って心身の活力が低下する「フレイル」や、認知症の予防対策を進めます。

 健康寿命は、3年に1度、都道府県ごとに出します。国民生活基礎調査で「健康上の問題で日常生活に影響がない」と答えた人の割合や、年齢別の人口などから算出します。

 厚労省によると、2016年は男性72・14歳、女性74・79歳でした。平均寿命である男性80・98歳、女性87・14歳と比べると、男性は8・84年、女性は12・35年の差がありました。この期間に医療や介護が必要となる可能性があります。

 厚労省によると、2040年ごろに65歳以上の高齢者数がピークを迎えます。今回の目標は、有識者による研究会が現在の健康寿命の延びなどから設定しました。高齢化が進む中、健康寿命を延ばすことで、元気な働き手を増やし、社会保障給付費を抑制する狙いもあります。

 また、厚労省は目標達成のために補完的な指標もつくります。要介護度が2未満の健康状態を「自立している」と定義して算出します。この指標は毎年、地域ごとに出すことになり、来年度からの公表を目指します。

 2019年3月31日(日)

 

■2018年の予期せぬ医療死亡事故、377件 分娩含む手術が最多163件

 患者の予期せぬ死亡を扱う医療事故調査制度で、日本医療安全調査機構は25日までに、2018年に「死亡事故が発生し、院内調査が必要」として届け出があったのは377件(前年比7件増)だったと発表しました。

 このうち163件が「分娩(ぶんべん)を含む手術」によるもので、最多。2015年10月に医療事故調査制度が始まる前は年間1000~2000件の届け出を見込んでいましたが、大きく下回っています。

 日本医療安全調査機構は、「医療機関への研修などで制度を周知したい」としています。

 患者の死亡から届け出まで1カ月以上かかっているケースが多く、医療機関側が「予期せぬ死亡」に該当するかどうかの判断に苦慮している状況もうかがえます。 

 2019年3月31日(日)

 

■「酵素で痩せる」根拠なし 消費者庁、通販会社5社に措置命令

 消費者庁は29日、根拠なくダイエット表示をしていたとして酵素の健康食品を販売する通販会社5社に対して一斉に、再発防止などを求める措置命令を出しました。措置命令を受けたのは、ジェイフロンティア、ビーボ、ユニヴァ・フュージョン、ジプソフィラ、モイストの5社(いずれも東京都)。

 今回措置命令の対象となった商品は、ジェイフロンティア「酵水素328選生サプリメント」、ビーボ「ベルタ酵素ドリンク」、ユニヴァ・フュージョン「コンブチャクレンズ」、ジプソフィラ「生酵素」、モイスト「雑穀麹の生酵素」。 

 各社は2015年 10月以降、自社サイトで、それぞれ商品の酵素を含むサプリメントや飲料について、くびれのある細身の女性の写真などと合わせて「ダイエット」「痩せ」などとする文言を用いた表示をしていました。宣伝に有名な女性タレントを起用しているケースもあったといいます。

 消費者庁は5社の表示を「あたかも本件商品を摂取するだけで、本件商品に含まれる成分の作用により、容易に痩身効果が得られるかのように示す表示」と判断。不実証広告規制に基づき、各社に表示の根拠となる資料の提出を求めました。各社は含有成分に関する資料などを提出しましたが、表示を裏付ける根拠とは認められませんでした。 

 消費者庁によると、ジプソフィラとモイストの2社については、3月29日までに一般紙とホームページ上の社告で一般消費者に対する誤認排除措置を講じていました。

 なお、モイストについては2013年9月にダイエットサプリ「烏龍減肥」のダイエット表示について措置命令を受けており、今回が2回目の違反となります。消費者庁の担当官によると、「社員の入れ替わりも激いこともあり、1度目の措置命令の際の再発防止策の徹底が薄れてしまっていたようだ」としています。 

 ちなみに、近ごろは2回目の景品表示法違反(優良誤認)を受けたことになる通販会社が複数ありますが、措置命令を複数回受けたことによるペナルティは景表法上は存在しません。ただし、措置命令違反をした場合は刑事罰が科されます。

 今回措置命令を受けた5社の中で、過去2年間に全国の消費生活センターに寄せられた相談件数は、ジェイフロンティアは28件、ユニヴァ・フュージョンが13件、モイストが171件だったといいます。

 消費者庁によると、「相談件数は、必ずしも今回の措置命令に関する商品についての相談ではない」としています。また、酵素サプリに関する健康被害情報についても、「把握していない」と消費者庁の担当官は話しています。

 2019年3月30日(土)

 

■外国人の医療費未払い、病院の2割が経験 総額9300万円

 昨年10月の1カ月間に全国約2000病院が外国人患者を受け入れ、うち2割近くの372病院で医療費を回収できていないという調査結果を27日、厚生労働省が公表しました。予期しない受診で全額自己負担となることや意思疎通がうまくいかないことが一因で、厚労省は外国人患者の受け入れ体制を整備していく方針。

 全国の8417病院を対象とし、約半数の3980病院が回答。このうち、1965病院(49%)が2018年10月に外国人患者を診ていました。平均患者数は42人で、10病院は1000人を超えていました。

 請求から1カ月たっても医療費が全額支払われていない未収金は、372病院で約3000件発生していました。1病院当たりの未収金の発生件数は平均8・5件、総額は平均約42万円で、21病院は100万円を超え、最高は1423万円。総額は約9300万円になりました。内訳をみると、在留資格を持ち日本で暮らす人が6割、旅行者が4割。1人当たりの金額は旅行者が5万円で、在留外国人の2・2倍でした。

 また、出産前後の母子に高度な医療を提供する「周産期母子医療センター」への調査では、有効回答の4%に当たる10センター(2017年度)で外国人旅行者の分娩を経験していました。分娩数は1センター当たり1~3件で、中には約130万円の費用が未収金になっているケースもあったといいます。

 外国人旅行者は近年急増し、今秋にラグビー・ワールドカップ日本大会、来年に東京オリンピック・パラリンピックを控え、さらに増える見通し。一方、急病やけがで受診すると言葉の壁もありトラブルが起きやすくなっています。

 このため、厚労省は、入院が必要な重症患者を診る救急病院と、軽症を診る医療機関を全都道府県で選定する作業を進めています。「多言語対応」が要件で、医療通訳者やテレビ電話通訳、翻訳機能のあるタブレット端末の利用で対応してもらいます。また、政府は旅行保険の加入も促します。医療費を払わなかった経歴がある外国人旅行者には、再来日時に入国審査を厳格にする強硬策もとる方針です。

 外国人患者が多く受診する国立国際医療研究センター(東京都新宿区)はパスポートなどで本人確認を徹底したり、クレジットカードを確認したりするなどの対策をとり、未収金は公的保険加入者よりも少なくなったといいます。

 大曲貴夫国際診療部長は、「悪意を持ってお金を払わない人はほとんどいない。各病院が未収金を防ぐ方法を身に着けていく必要がある」と話しています。

 2019年3月30日(土)

 

難病ALS患者に白血病治療薬 京都大で治験実施へ

 京都大iPS細胞研究所の井上治久教授らの研究チームは26日、全身の筋肉が徐々に動かなくなる難病「筋萎縮性側索硬化症(ALS)」について、慢性骨髄性白血病の治療薬「ボスチニブ」を患者に投与する医師主導の治験(臨床試験)を京大病院などで近く始めると発表しました。iPS細胞(人工多能性幹細胞)を用いた基礎研究で有効性を確認しており、今後患者の募集を行います。

 ALSは、脳や脊髄の神経細胞に異常なタンパク質が蓄積し、筋肉を動かす神経が変質する難病で、進行すると呼吸も難しくなります。原因や発症の詳しい仕組みはわかっておらず、国内に約9000人の患者がいます。

 井上教授らは2017年、ALS患者由来のiPS細胞を元に作製した神経細胞が、異常なタンパク質の蓄積により死滅しやすいことを発見。この細胞を使って約1400種類の薬を試した結果、ボスチニブが有効であることを突き止めました。

 治験は、京大病院など4つの医療機関で実施。発症から2年以内で日常生活を送れるなど症状が比較的軽い20~80歳代の24人を選び、12週間薬の経口投与を行った後、経過を観察します。投与量に応じてグループ分けし、肝機能の変化などから安全性を確かめます。

 研究チームは3月1日に治験の計画書を医薬品医療機器総合機構(PMDA)に提出し、受理されています。井上教授は「有効性よりも安全性を確認する。ALS患者特有の副作用なども考えられるので、チーム一丸となってやっていきたい」と話しています。

 研究チームによりますと、iPS細胞を使ったALSの治療薬の開発は国内では慶応大に続いて2例目で、世界では3例目になるということです。

 2019年3月30日(土)

 

■スギ花粉症、抗体医薬で症状を大幅に軽減 ノバルティスが新薬

 今年は6年ぶりにスギ花粉が大量飛散し、多くの人達が花粉症に悩まされそうな中、抗体医薬と呼ぶ新しいタイプの治療薬が登場しました。スイス製薬大手のノバルティスが2月に臨床試験(治験)で有効性を確かめたと発表しました。世界に先駆けて日本で製造販売承認を昨年12月6日に申請しており、2019年秋にも医療現場での使用が可能になりそうです。

 花粉症は植物の花粉が原因で発症し、くしゃみや鼻水、目の充血といった症状が現れます。花粉症は世界各国に患者がいますが、スギ花粉症は日本に多く、欧米ではブタクサが原因の患者が急増しています。

 患者は、国内に2000万人ほどいるとされています。春先のスギ、ヒノキだけでなく、初夏はイネ、秋はヨモギやブタクサなども花粉症の原因です。厚生労働省は花粉症を中心としたアレルギー性鼻炎で病院を訪れた患者を2017年で66万人弱と推計しており、1996年の1・5倍近くになりました。

 花粉は体にとってウイルスや細菌などと同じ異物で、排除するのは自然な免疫反応ですが、ひどくなるとアレルギー反応を引き起こします。

 花粉が鼻の粘膜などにくっ付くと、免疫細胞は「免疫グロブリンE(IgE)」というタンパク質をつくります。IgEは粘膜の下などにある肥満細胞(マスト細胞)の表面にくっ付きます。肥満といっても太ることとは無関係で、IgEが表面に結合した肥満細胞は、再び花粉が侵入した際に素早く免疫反応を起こせる状態で、言い方を換えれば、アレルギーを起こす準備が整ったことになります。

 花粉が再び体内に入ってIgEにくっ付くのを合図に、さまざまな物質を大量に放出します。神経を刺激してくしゃみや鼻水を出させるヒスタミン、花粉の侵入を防ぐため血管を膨らませて鼻詰まりや目の充血を起こすロイコトリエンやトロンボキサンなどです。花粉を繰り返し吸い込むと、鼻の中で炎症が起き、さらに過敏な状態になります。

 現在の治療薬はヒスタミンの働きを邪魔したり、神経や血管への働きを抑えたり、アレルギー反応による炎症を和らげたりするやり方。これに対し、抗体医薬はIgEの働きを邪魔することでアレルギー反応そのものを止め、発症を抑えることを狙っています。従来よりも効果的な治療薬になると期待を集めています。

 ノバルティスの抗体医薬「オマリズマブ(一般名)」は、アレルギー性ぜんそくの治療薬として開発されました。投与すると、IgEが肥満細胞に結合できなくなり、活性化するのを防ぎます。国内の治験では、既存の治療薬が効かない重症または最重症のスギ花粉症患者で症状が大幅に軽くなりました。

 抗体医薬でアレルギーを抑える治験は、フランスの製薬大手サノフィなども進めています。「デュピルマブ(一般名)」も、もともとはアトピー性皮膚炎の治療用に開発されました。免疫細胞にIgEをつくるよう促す物質の働きを邪魔し、植物の花粉が原因のアレルギー性鼻炎の発症を抑えます。

 「花粉症はもちろん、ぜんそくや食物などさまざまなアレルギー症状に対して抗体医薬の治療法は有効だろう」と指摘する順天堂大学専任准教授の北浦次郎さんの研究チームは、肥満細胞に結合したIgEに働き掛け、その機能を押さえ込む物質を発見しました。抗体医薬に応用すれば、オマリズマブを上回る治療効果があるといわれています。

 厚生労働省が1月にまとめた「免疫アレルギー疾患研究10カ年戦略」では、アレルギー疾患を抱える患者は増えており、先制的な治療法の開発の重要性が盛り込まれました。さまざまなアレルギーにかかわるIgEに働き掛ける抗体医薬は、そうした治療の柱になると期待されています。

 2019年3月30日(土)

 

■マルコメ「大豆のお肉」173万点を自主回収へ 小麦成分が混入

 長野市に本社がある食品大手の「マルコメ」は29日、全国で販売している大豆の加工食品に本来、原材料には含まれていないはずの小麦の成分が混入していたとして、対象商品約173万点を自主回収すると発表しました。

 自主回収するのは、マルコメが販売した大豆の加工食品「ダイズラボ大豆のお肉」シリーズで、「ダイズラボタコライス」「ダイズラボ麻婆茄子」など7種類のうち賞味期限が今年3月30日から9月24日までのもの、「大豆のお肉レトルト」「ダイズラボ大豆のお肉乾燥ブロック」など14種類のうち賞味期限が今年5月3日から来年3月22日までのものなど、業務用を含む計30種類約173万点です。

 マルコメによりますと、これらの加工食品に本来、小麦を含む原材料は使っていませんでしたが、商品を販売する小売業者による検査で、食べるとアレルギー症状を引き起こす可能性もある小麦成分の混入が判明しました。大豆はインド産で、混入経路は今後調査しますが、産地の畑では大豆と小麦の二毛作を行っているといいます。

 これまでのところ、健康被害の申し出はないということですが、マルコメは対象商品を店舗などから回収し、調査結果が出るまで販売を見合わせるほか、購入した消費者には、返金に応じるということです。

 問い合わせは「マルコメ大豆のお肉回収係」電話番号0120ー994ー063で受け付けるほか、マルコメのホームページで、対象商品を確認することができます。

 2019年3月29日(金)

 

■中高年の引きこもり61万人、若年層上回る 内閣府が初調査

 内閣府は29日、自宅に半年以上閉じこもっている「引きこもり」の40~64歳が、全国で推計61万3000人いるとの調査結果を発表しました。7割以上が男性で、引きこもりの期間は7年以上が半数を占めました。15~39歳の推計54万1000人を上回り、引きこもりの高齢化、長期化が鮮明になりました。中高年層を対象にした引きこもりの調査は初めて。

 内閣府は引きこもりを、自室や家からほとんど出ない状態に加え、趣味の用事や近所のコンビニ以外に外出しない状態が6カ月以上続く場合と定義。専業主婦・主夫は過去の同種調査では含めませんでしが、今回は家族以外との接触が少ない人は引きこもりに含めました。

 調査は2018年12月、全国で無作為抽出した40~64歳の男女5000人に訪問で実施。3248人から回答を得ました。人口データを掛け合わせて、全体の人数を推計しました。

 引きこもりに該当したのは回答者の1・45%。引きこもりになった年齢は60~64歳が17%で最も多くなりましたが、20~24歳も13%と大きな偏りはみられませんでした。切っ掛けは「退職」が最多で、「人間関係」「病気」「職場になじめなかった」が続きました。

 40~44歳の層では、就職活動の時期に引きこもりが始まった人が目立ちます。内閣府の担当者は、いわゆる就職氷河期だったことが影響した可能性もあるとの見方を示しました。

 引きこもり期間は「3~5年」が21%で最多。7年以上となる人が合計で5割近くを占め、「30年以上」も6%いました。

 子供のころから引きこもりの状態が続く人のほか、定年退職により社会との接点を失うケースがあることがうかがえます。

 暮らし向きを上・中・下の3段階で聞いたところ、3人に1人が下を選択。家の生計を立てているのは父母が34%、自身が30%、配偶者が17%で、生活保護は9%でした。悩み事に関して「誰にも相談しない」という回答が4割を超えました。

 調査時期の違いなどはあるものの、内閣府では15~39歳も合わせた引きこもりの総数は100万人を超えるとみています。

 今回初めて中高年層を調査したことについて内閣府の担当者は、「40歳以上の引きこもりの人もいると国が公認することで、支援が必要なのは若者だけでないという認識を広げたい」と説明。「若者とは違った支援策が必要だ」と話しています。

 2019年3月29日(金)

 

■世界初、HIV感染者同士で生体腎移植 米ジョンズ・ホプキンス大で実施

 アメリカのメリーランド州ボルティモアのジョンズ・ホプキンス大は28日、エイズウイルス(HIV)感染者同士の生体腎移植を25日に実施したと発表しました。腎臓の提供者、患者ともに術後の経過は順調だといいます。どちらも感染者による生体腎移植は「世界初」としており、移植待機者を減らすことができるとしています。

 腎臓を提供したのは、ジョージア州アトランタ在住の医療コンサルタント、ニーナ・マルティネスさん(35歳)。HIV感染者の友人が移植を必要とすることを知り、提供者になることを決意しました。事前の検査を受ける間に友人は亡くなりましたが、別の患者への移植を進めました。マルティネスさんは、エイズ患者が病人で元気がないと見られるのを変えたかったといいます。提供を受けた人(レシピエント)の身元は明らかにされていません。

 生体腎移植は、腎機能が正常な人から、2つある腎臓の1つを取り出して患者に移植します。これまで、HIV感染者が腎臓を提供した場合、ウイルスの影響で残った腎臓が病気になるリスクが高まると考えられ、提供できませんでした。

 だが、ジョンズ・ホプキンス大の外科医チームのドリー・セゲブ教授らが4万人以上の感染者を調べたところ、新しい抗レトロウイルス薬によって腎臓へのリスクは感染していない人と同程度だとわかったといいます。

 マルティネスさんは、「過去の患者が(HIVに関する)研究に参加したお陰で私は生き延びている。今度は私の番だ」と話しました。ジョンズ・ホプキンス大の外科医チームのクリスティン・デュランド准教授によると、移植手術の経過は「申し分ない」といい、「(マルティネスさんとレシピエントは)この贈り物にとても感謝している。今後は長期転帰を観察していく」と述べました。

 死亡したHIV感染者からの腎臓提供は、南アフリカで行われたのが最初。アメリカではセゲブ教授らの研究で安全性が確認され、2013年にエイズ患者同士の臓器移植を可能にする法律ができました。アメリカでは2016年以降、死体からの腎移植は116件行われていますが、安全性の問題はないといいます。

 日本では日本臓器移植ネットワークの基準で、HIVなどの感染者からの臓器提供は行わないことになっています。

 2019年3月29日(金)

 

■アフターピル、オンライン診療での処方解禁へ 望まぬ妊娠回避に期待

 性行為の後に服用して妊娠を防ぐ緊急避妊薬「アフターピル」について、厚生労働省は、オンラインで手に入れやすくする方針を固めました。

 緊急避妊薬アフターピルは、性行為の後72時間以内に服用すれば、比較的高い確率で望まない妊娠などを防ぐことができますが、産婦人科の少ない地方や性犯罪の被害に遭ったケースなどで手に入れにくいことが課題となっています。

 このため、厚生労働省の専門家会議は、スマートフォンなどを使ったオンライン診療で、アフターピルを手に入れやすくする方針を固めました。

 現在のオンライン診療では、原則初診は対面による診療とされていますが、アフターピルの処方については、例外として初診でもオンライン診療を認め、医師の処方を受けられるようにするということです。

 一方で、適切な避妊が行われなくなることや不正な転売などが懸念されるため、薬局の薬剤師の前で服用することや3週間後に産婦人科を直接受診することなど、一定の条件を検討するとしています。

 厚労省は、今年の夏ごろをめどにオンライン診療によるアフターピルの処方を受けやすくする方針です。

 東京都新宿区の診療所で、年間約350件のアフターピルを処方しているという産婦人科医の対馬ルリ子さんは、「このうち1割ほどが性暴力の被害者」と話しています。中には「たった今、レイプされた」「先輩に無理やりされた」などと性暴力の被害に遭ったと打ち明ける女性もいるといいます。

 ただし、女性に交際相手がいて「自分の生活を守りたい」と感じたり、加害者との人間関係の悪化を懸念したりして、被害を公にしたがらない女性がほとんどといいます。

 対馬さんは、「日本では避妊方法の選択肢が少ないにもかかわらず、避妊の失敗や中絶など、女性の健康問題に日本の医療制度は冷たい」と指摘。また、病院について「特に若い女性にとっては、行きづらい所ととらえられがち。相談しやすい場が必要」とし、オンライン診療でのアフターピルの処方に期待感を示しています。

 2019年3月29日(金)

 

■医師の残業上限1860時間で決着 地域勤務・研修医らが対象

 医師の働き方改革を議論する厚生労働省の有識者検討会は28日、地域医療を担う勤務医の残業時間の上限を年1860時間(休日労働含む)とすることを柱とした報告書の最終案を了承しました。月155時間の残業に相当し、いわゆる「過労死ライン」(月80時間)の2倍近くになります。2024年度から適用されます。

 この上限が適用されるのは、勤務医の中でも地域医療を担う特定の病院の医師と、集中的に技能を磨きたい研修医ら。研修医らは本人が希望する場合に限られます。通常の勤務医は年960時間で、休日労働を含めた一般労働者と同じ長さにしました。

 対象となる特定の病院は、国が定めた指標を基に都道府県が選定します。救急車の受け入れが年1000台以上の2次救急病院など、1500カ所程度になる見通し。国が医師不足の解消を見込む2035年度末までの特例として扱われます。

 1860時間の上限が適用される医師について、健康確保のための措置を病院側に義務付けます。当直から日勤など、連続勤務は28時間(研修医は24時間)までに制限。深夜帰宅で早朝出勤といった過重労働を防ぐため、次の勤務まで9時間の休息(勤務間インターバル)を設けるとしました。

 また、長時間労働を是正するため、医師の仕事の一部を他職種に任せる「タスクシフト」や、都市部に医師が集中する「偏在」対策の推進が必要だと指摘。安易な受診が医師の負担になっている現状を踏まえ、電話相談の活用を周知することなどを課題に挙げました。

 正当な理由がなければ診療を拒めない医師法の応召義務が、医師の長時間労働の背景にあるとされる問題にも言及。応召義務は、医師に際限のない長時間労働を求めているわけではないとして、厚労省研究班が今年夏頃までに、法律の具体的な解釈を示すとしました。

 2019年3月28日(木)

 

■「ゾフルーザ」で耐性ウイルス検出 学会が新たな使用基準を作成へ

 インフルエンザの新しい治療薬「ゾフルーザ」を投与されたインフルエンザ患者から、この薬が効きにくい耐性ウイルスが高い割合で検出されたことを受けて、日本感染症学会は来月、名古屋市で開かれる学会で緊急セミナーを行い、ゾフルーザの新たな使用基準をつくる議論を始めることになりました。

 塩野義製薬が「ゾフルーザ」という名称で製品化している「バロキサビル マルボキシル」は、昨年3月から販売が始まった新しいタイプのインフルエンザ治療薬です。1回の投与で効果が期待できるとされ、今年3月上旬までの5カ月余りの出荷量は560万人分余りと、インフルエンザ治療薬として今シーズン最も多く使われたとみられています。

 国立感染症研究所の調査で、ゾフルーザが投与されたA香港型のインフルエンザ患者30人のうち22人から耐性ウイルスが検出され、調査件数は多くないもののその割合は70%余りに上ることが明らかになりました。

 日本感染症学会は耐性ウイルスが広がる恐れがあるとして、名古屋市で来月4日から開かれる学会で、緊急のセミナーを行うことになりました。緊急セミナーでは、国立感染症研究所の調査の担当者とインフルエンザの専門家が現状を報告し、学会としてゾフルーザの新たな使用基準を作成するための議論を始めます。

 名古屋市で開かれる日本感染症学会で会長を務める愛知医科大学の三鴨廣繁教授は、「学会としても重大な事態だと認識していて、適正な使用基準を医師や薬剤師などに示していきたい」と話しています。

 2019年3月28日(木)

 

■ブラジルで「デング熱」が流行の兆し 大使館が旅行者に注意呼び掛け

 南アメリカのブラジルでは、蚊が媒介する感染症の「デング熱」が流行の兆しをみせていることから、現地の日本大使館は、日本からの旅行者などに対して外出の際は虫除けのスプレーをするなど、注意を呼び掛けています。

 デング熱は、ネッタイシマカが媒介する感染症で、発症すると発熱や激しい頭痛などを引き起こし、症状が重くなると死亡することもあります。

 ブラジルの保健省によりますと、ブラジルでは今年1月から3月半ばまでに、22万9064人の感染者が確認され、62人が死亡したということです。

 特に最大都市サンパウロのあるサンパウロ州で感染者が多く、昨年の同じ時期より20倍以上も増えて8万人以上に上っており、全国の死者の半数に当たる31人が死亡したということです。

 保健省によると、今年の感染者数はまだ、2016年の1~3月に記録した85万7344人には程遠く、流行というレベルには及んでいないといいます。

 しかし、現地の日本大使館は、ブラジルを訪れる日本からの観光客や、現地で暮らす日本人に対して、外出の際は虫除けのスプレーをするなど注意を呼び掛けています。

 日本では2014年に、70年ぶりに国内感染が確認されており、現地の日本大使館は、ブラジルから帰国後に発熱や頭痛などの症状が出た場合は、すぐに空港や港の検疫所や医療機関で受診するよう呼び掛けています。

 2019年3月28日(木)

 

■インフル治療薬「ゾフルーザ」、患者の70%から耐性ウイルス 感染症研究所が発表

 インフルエンザの新しい治療薬「ゾフルーザ」を投与されたA香港型のインフルエンザ患者30人を調べたところ、70%余りに当たる22人から、この薬が効きにくい耐性ウイルスが検出されたことが、国立感染症研究所の調査でわかりました。調査件数は多くないものの、専門家は現在のような使用を続けると、耐性ウイルスが広がる恐れがあるとして使用基準を見直すべきだと指摘しています。

 塩野義製薬が「ゾフルーザ」という名称で製品化している「バロキサビル マルボキシル」は、昨年3月から販売が始まった新しいタイプのインフルエンザ治療薬です。

 1回の投与で効果が期待できるとされ、3月上旬までの5カ月余りの出荷量は560万人分余りと、インフルエンザ治療薬として今シーズン最も多く使われたとみられています。

 国立感染症研究所の3月18日までの分析では、ゾフルーザが投与されたA香港型のインフルエンザ患者30人のうち、22人から耐性ウイルスが検出され、その割合は73%に上ることがわかりました。

 また、ゾフルーザを服用していない83人の患者のうち、3人から耐性ウイルスが検出され、国立感染症研究所は耐性ウイルスが人から人に感染した可能性があるとしています。

 日本感染症学会インフルエンザ委員会の委員で、けいゆう病院の菅谷憲夫医師は、現在のような使用を続けると耐性ウイルスが広がる恐れがあると指摘した上で、「ゾフルーザは患者が重症化した時などに効果が高いと考えられ、通常の患者への処方は制限するなど、使用する基準を見直すべきだ」と指摘しています。

 調査結果について塩野義製薬は、「我々が行った調査ではなくコメントする立場にないが、ゾフルーザを使うと薬が効きにくいウイルスが出ることは認識しており、会社としても、そうしたウイルスが出る割合やどれくらい別の人に感染するのかなどデータの収集と解析に取り組んでいる。情報がまとまり次第、速やかに結果を公表していきたい」とコメントしています。

 国内でインフルエンザの治療に使われる薬は、ゾフルーザを含めて主に5種類あります。近年、多く使われてきたタミフルは、1日2回、5日間服用します。リレンザとイナビルは、粉末の薬剤を口から吸入するタイプで、リレンザは1日2回で5日間、イナビルは1回吸い込みます。ラピアクタは点滴薬で、血管に点滴で投与します。これら4種類はいずれも、インフルエンザウイルスが増えた後、細胞の外に放出されるのを妨げることで治します。

 そして、塩野義製薬が新たに開発したゾフルーザは、昨年の秋から今年にかけてのインフルエンザのシーズンで初めて本格的に使用されました。ゾフルーザは、錠剤を1回服用することで効果が出るとされ、ほかの薬とは作用のメカニズムが異なり、ウイルスの増殖を抑えるとされています。

 厚生労働省のまとめでは、今年3月上旬までの約5カ月間に全国の医療機関に供給されたゾフルーザは約562万人分で、タミフルの約466万人分の1・2倍になりました。このためゾフルーザは今シーズン、最も多く使用されたインフルエンザ治療薬だったとみられています。

 ゾフルーザについては、塩野義製薬が販売前に国の承認を得るために臨床試験を行っており、A香港型インフルエンザ患者に投与した場合、耐性ウイルスは12歳以上では約11%、12歳未満の子供では約26%で検出され、耐性ウイルスが比較的、出やすい傾向があることがわかっていました。

 また、この試験で、耐性ウイルスは、耐性のないウイルスよりも増殖能力が低下しているとされ、別の人に感染して流行する可能性は低いと推測していました。

 国立感染症研究所が実際に投与した状況を把握するため今月18日までにウイルスを分析した結果をまとめたところ、ゾフルーザが投与されたA香港型インフルエンザ患者30人のうち22人からゾフルーザの耐性ウイルスが検出され、割合にすると73%になりました。ゾフルーザが投与された「H1N1型」のA型インフルエンザ患者では15人のうち2人から検出され、割合は13%でした。

 また、耐性ウイルスを詳しく分析したところ、増殖能力は低下しておらず、耐性のないウイルスと比べて増える能力はほぼ変わらないことがわかったということです。さらに、ゾフルーザを服用していない83人の患者のウイルスを解析したところ、3人から耐性ウイルスが検出され、国立感染症研究所は、耐性ウイルスが人から人に感染した可能性があるとしています。

 昨年の秋から今年にかけての今シーズンのインフルエンザは、1月下旬に、1医療機関当たりの1週間の患者数が統計を取り始めた1999年以降では、最も多くなるなど大きな流行となりました。3月17日までに病院を受診した患者の累計は1155万人余りと推計されています。

 分析がまとまった最新の5週間の状況では、A香港型の患者が76%、2009年に新型インフルエンザとして流行したH1N1型が22%、B型が2%などと、A香港型が多いことが特徴です。

 2019年3月28日(木)

 

■国産の遺伝子治療薬、厚労省が初承認 脚の血管を再生

 大阪大発ベンチャーの「アンジェス」(大阪府茨木市)は26日、開発を進めていた体内に遺伝子を入れて病気を治す「遺伝子治療薬」が、厚生労働省から製造・販売の承認を受けたと発表しました。対象は重症の動脈硬化に対して脚の血管を再生する薬で、遺伝子治療薬の承認は国内で初めて。

 販売は田辺三菱製薬が担当し、今夏にも医療現場で利用できるようになる見込み。

 承認を受けた治療薬「コラテジェン」は、血管が詰まった脚に新しい血管を作るための遺伝子を注射して治療します。症例が少ないため、十分な知識と経験を持つ医師や施設の使用、販売後の薬効や安全性などの追加調査が承認の条件。今後5年間の追加調査で良好な結果が出れば、この条件をなくしての使用が見込めます。

 遺伝子治療薬は、遺伝子を体内に入れて病気を治す次世代治療薬として国内外の製薬大手やベンチャー企業が開発を進めています。有効な治療方法が確立されていない、遺伝子の異常が原因の難病への治療薬として期待されています。

 一方で、研究開発や治療薬の生産に多額の費用が必要となるため、薬価が高額になる見通し。そのため国の医療保険制度に影響を与えかねないとの懸念もあります。

 アンジェスは大阪大発のベンチャーで、2002年に上場しました。コラテジェンは1999年の会社設立以来、開発に取り組んできました。

 2019年3月27日(水)

 

■新型がん免疫薬「キムリア」、日本で承認 5月にも超高額薬価が決定

 がん患者から取り出した免疫細胞を人工的に強化して、がん細胞を攻撃するキメラ抗原受容体T細胞(CAR―T、カーティー)と呼ばれる新しいがん免疫療法の薬剤が、一部の白血病などの治療薬として国内で初めて製造・販売が承認されました。

 国に承認されたのは、「キムリア」という新型がん免疫薬で、スイス製薬大手ノバルティスの日本法人ノバルティスファーマが申請していました。

 この「キムリア」は、がん患者の体内からT細胞と呼ばれる免疫細胞を取り出し、攻撃する力を高める遺伝子を組み込んで体内に戻すことでがん細胞を攻撃します。

 対象は、標準的な治療法の効果が期待できなくなった白血病などの一部の患者で、国内では年間最大で250人ほどになると見込まれています。

 承認に際しては、副作用に対応できる態勢がある医療機関で行うなどの条件が付けられています。

 「キムリア」はアメリカやヨーロッパなどではすでに承認されていて、これまでの臨床試験では高い効果が報告されているということです。

 一方で、患者1人の治療費はアメリカではおよそ5200万円と高額になっており、今後、日本でほかのがんに適応が広がるなどした場合には、国の医療保険制度に影響を与えかねないと懸念されています。

 厚生労働省は、早ければ5月にも価格を決め、公的な医療保険を使った治療が行えるようになる見込みです。

 2019年3月27日(水)

 

■日本人のたばこへの依存、遺伝子配列と相関 理研が16万人のデータを解析

 理化学研究所の鎌谷洋一郎チームリーダーらの共同研究チームは、日本人約16万人の遺伝情報を解析し、たばこへの依存のしやすさと本人の遺伝的な特徴に相関があることを明らかにしました。欧米の先行研究で報告されていない、日本人特有の遺伝的な特徴がわかりました。依存のしやすさに合わせて禁煙の方法を変えれば、より効果的な禁煙治療が可能になります。  

 人のゲノム(全遺伝情報)の配列はほとんど共通していますが、一人ひとりわずかに違いがあります。共同研究チームは、こうした個人ごとの配列の違いと、喫煙暦の有無や喫煙開始年齢、1日当たりの喫煙本数、現在禁煙中か喫煙中かといった喫煙習慣がどう関連しているかを解析しました。

 その結果、たばこをよく吸う人に共通してみられる配列の違いが、ゲノム全体で9カ所見付かりました。特に関連性が高かったのは、肝臓で働くニコチン分解酵素などの遺伝子のそばにある配列でした。こうした配列の違いの特徴を持つ人は、もともとたばこを吸うと依存しやすい体質だとみられます。

 解析には、東京大医科学研究所などが日本人の遺伝情報を集めたプロジェクト「バイオバンク・ジャパン」のデータを利用しました。見付かった配列の特徴のうち7カ所は、これまで欧米の先行研究では報告されておらず、日本人特有の領域であることが示されました。

 日本人でたばこに依存しやすい体質の人を見付けやすくなれば、個人の体質に合わせた効率的な禁煙治療を国内で実現できるようになります。

 2019年3月27日(水)

 

■東北大、錠剤型の「飲む体温計」を開発 胃酸で発電し睡眠中に測定

 胃酸で発電したエネルギーを使い、腸内の温度を測定する錠剤型の体温計を、東北大の中村力特任教授らの研究チームが開発しました。体調の変化と関係があるとされる基礎体温を知ることができ、病気の早期発見や健康増進に役立つと期待されます。

 開発した体温計は直径9ミリ、厚さ7ミリの円柱形で、電極となるマグネシウムと白金の金属板以外は樹脂で覆われています。

 飲み込むと胃を通過する約30分の間に、理科の実験でレモンに電極を挿すと発電するのと同じ原理で胃酸が電解液となって発電、充電します。充電したエネルギーを使って腸内で体温を測定し、体外の受信機にデータを送ります。

 就寝前に飲み、30分に1回などの頻度で測定し、安静時の基礎体温を調べる使い方を想定しています。イヌによる実験では、翌日に自然に体外に排出されました。

 基礎体温の変化は鬱(うつ)病や睡眠障害、排卵周期の変調などに関連があるとされ、健康状態を把握する上で重要な指標。将来は個人が家庭で使えるように、原価を100円以下に抑えることを目指しています。 

 2019年3月27日(水)

 

■iPS細胞で「網膜色素変性症」を治療 理研チームが臨床研究を申請へ

 iPS細胞(人工多能性幹細胞)を使い、目の難病「網膜色素変性症」の患者を治療する臨床研究について、理化学研究所の高橋政代プロジェクトリーダーは23日、今夏までに大阪大の有識者委員会に審査を申請する方針を明らかにしました。

 高橋さんらは、別の目の難病「加齢黄斑変性」の患者にも同様の治療を施しており、研究チームとしてiPS細胞を用いた2例目の臨床研究となります。

 計画では、光に反応して神経に情報を伝える「視細胞」の元になる細胞を人のiPS細胞から作製。視細胞が減った網膜色素変性症患者数人を対象にして、移植を行います。

 高橋さんはこの日、神戸市内で行った講演で、人のiPS細胞から作った細胞がサルの目の中で成熟して視細胞になり、視野の一部が回復したとの実験結果を報告。2年たっても視細胞が残っていたといいます。

 網膜色素変性症は、目の中で光を感じる組織である網膜に異常がみられる疾患で、難病指定されています。遺伝性、進行性で、夜盲を来す疾患の中でも特に重要なものです。通常、日本人の4000~8000人に1人の割合で、起こるといわれています。比較的多めに見積もるとおよそ5000人に1人、少なめに見積もるとおよそ10000人に1人と考えられます。

 2019年3月26日(火)

 

■「ゲノム編集」食品、直接表示を義務化へ 厚労省と消費者庁が検討

 生物の遺伝子を狙い通りに効率よく改変できる「ゲノム編集」技術を使った食品に、同技術を使ったとする表示の義務を政府が検討していることが23日、明らかになりました。ゲノム編集食品は今夏にも解禁され、市場に流通する見込みで、消費者へ適切な情報を提供し、懸念を払拭する狙いがあります。

 ゲノム編集食品については、厚生労働省の専門家会議が18日に報告書をまとめ、開発者らは同省の調査会に情報を届け出るだけで販売できるようにしました。調査会に報告する内容は、食品の品目・品種名、ゲノム改変などですが、食品への直接表示については「管轄外」として報告書に記載されませんでした。

 しかし、関係者によると、消費者団体などから「発展途上の技術で不安」などの意見が寄せられており、消費者が適切に選択できるように表示を義務化することも含め、厚労省と表示を管轄する消費者庁などが協議しているといいます。

 ゲノム編集技術の一環である従来の「遺伝子組み換え」の食品については、2001年から表示を義務化。対象はダイズ、トウモロコシ、ジャガイモ、ナタネ、ワタ、アルファルファ、テンサイ、パパイヤの8種類の農産物と、これらを原材料とした加工食品に限定されています。

 ただ、遺伝子組み換え以外のゲノム編集は、自然界で起こる突然変異と区別が付かないことから、ゲノム編集食品の表示の義務化には、抵抗する意見もあります。

 遺伝子組み換え食品の場合、ヨーロッパではすべての食品に表示を義務付けているほか、ヨーロッパ司法裁判所が昨年7月、ゲノム編集の品種はすべて遺伝子組み換えとして規制する判断を示しています。  

 一方、アメリカ農務省は昨年3月、「従来の品種改良の時間短縮になり、農家に必要な品種をもたらす」とゲノム編集のメリットを強調し、「規制を行うことはない」と表明しています。

 最新の遺伝子操作技術であるゲノム編集の普及とともに、ゲノム編集食品を作る研究開発は世界各国で行われています。ゲノム編集食品は国内では、収穫量が多いイネや、特定の成分が多く含まれるトマト、体が大きいタイ、食中毒を起こさないジャガイモなどがあるほか、アメリカでは健康にいいとされる成分を多く含むダイズを作り、食用油として販売する計画も進んでいるとされています。日本ではいずれも一般には流通していないとされています。

 2019年3月26日(火)

 

■人工透析中止に新ガイドライン策定へ 福生病院問題で日本透析医学会

 東京都福生(ふっさ)市の公立福生病院で腎臓病患者の女性(当時44歳)が人工透析治療を中止して死亡した問題で、日本透析医学会(理事長=中元秀友・埼玉医科大教授)は25日発表した声明で「終末期でない患者の意思決定プロセスなどを追加して(学会のガイドラインを)改訂する時期にきている」として、透析治療中止に関する新たなガイドラインを年内に策定する方針を明らかにしました。

 同日、作成委員会(委員長=岡田一義・川島病院副院長)を発足させました。2014年に示した現行のガイドラインは、治療中止の条件を「患者の全身状態が極めて不良」「患者の生命を損なう危険性が高い」という場合と規定し、重い合併症などのある終末期の患者に限定しています。日本透析医学会は、終末期ではない患者が自ら治療を拒否した場合、家族や医療従事者らが患者の価値観や人生観を探りながら何度も話し合うことなどを想定しているとみられます。

 これまで福生病院側は「透析を受けている患者は『終末期』だ」と独自に定義。「透析を受けない権利を患者に認めるべきだ」と主張しています。これに対し学会は声明で、透析治療を受けている患者は終末期に含まないことを確認したとして、福生病院側の主張を否定しました。

 15日に立ち入り調査した学会の調査委員会(委員長=土谷健・東京女子医大教授)は、治療中止や最初から治療をしない「非導入」の選択肢を終末期ではない計21人に提示していた外科医(50歳)と腎臓内科医(55歳)から事情を聴きました。腎臓内科医は外科医と同じく、「透析患者は『終末期』だ」と話したといいます。

 調査は、昨年8月に透析治療をやめる選択肢を外科医から示されて死亡した女性の事例が中心で、他の20人については今後、病院に質問状を送るなどの方法で調査を継続するといいます。学会によると、4月中に倫理委員会で結論を出し、5月中に調査委報告と合わせて理事会声明を出す予定です。

 25日に発表した声明は、「現在までの議論で、学会の考えとして『透析を行っている患者は終末期には含まないこと』を確認している」とした上で、「患者の状態は、透析に伴う合併症などを含めて個々に判断していくことが重要」としています。

 2019年3月26日(火

 

■骨髄バンクへの登録が初めて1万人超え 競泳女子の池江選手の白血病公表で急増

 日本骨髄バンクへのドナー登録が2月に急増し、1カ月間の登録者数が1万1662人と初めて1万人を超えたことが25日、バンクの発表で明らかになりました。競泳女子の池江璃花子選手が2月12日にツイッターで白血病と診断されたことを公表したのを切っ掛けに、重要な治療法の骨髄移植などへの関心が高まったためとみられます。

 バンクへの月間登録者数は通常2000~4000人程度。2月の増加で、総登録者数も50万3883人と初めて50万人を上回りました。

 ただ総登録者では40歳代が21万5982人を占め、最多。骨髄提供ができるのは年齢が18歳以上54歳以下で、体重が男性は45キロ以上、女性は40キロ以上の健康者と決められており、「高齢化」が進んでいます。バンクは来年度、東京都と神奈川県の特に若者が多い献血ルームで登録を呼び掛ける方針です。

 また、転居などで登録者の住所が不明になるケースを減らすため、10~30歳代を対象に携帯電話のショートメッセージを利用して住所変更を促します。さらに、登録者を増やすため、医療機関に何度も通う必要があるドナーの特別休暇制度導入を推進します。

 2019年3月25日(月)

 

「ダイエットプーアール茶」に根拠なし 消費者庁、静岡の会社に課徴金命令

 「知らないうちにスタイルアップ、新しいダイエット茶」と科学的根拠なく痩せる効果をうたった表示は景品表示法違反(優良誤認)に当たるとして、消費者庁は22日、健康食品販売会社「ティーライフ」(静岡県島田市)に課徴金1313万円の納付を命じました。

 消費者庁表示対策課によると、同社は2016年5月18日~2017年2月1日、自社のウェブサイトで「ダイエットプーアール茶」(ポット用ティーバッグ35個入り及び4個入り)を、「苦しむことなくダイエットサポート」「いつもの飲み物をおいしいお茶に替える新習慣!」などと、含まれる成分による痩身効果があるように紹介し、販売していました。

 同庁は期間を定めて、痩身効果を合理的に説明できる資料の提出を求めましたが、提出はありませんでした。

 課徴金の対象期間の2016年5月18日~2017年8月1日までで、約4億3000万円の売り上げがありました。ティーライフは今年10月23日までに、1313万円を支払わなければなりません。

 2019年3月24日(日)

 

■脊髄損傷の急性期重症者の半数、薬で改善 慶大チーム

 慶応大などの研究チームは、脊髄を損傷して間もない患者に神経の再生を促す薬を投与して、運動機能を改善させたとする研究結果をまとめ、21日に神戸市で開かれた日本再生医療学会で報告しました。iPS細胞(人工多能性幹細胞)と組み合わせ、脊髄損傷の治療法を確立させたい考えです。

 この薬は、「HGF」(肝細胞増殖因子)というタンパク質の製剤。HGFは炎症を抑え、神経細胞を保護、再生する働きがあります。

 慶応大の中村雅也教授(整形外科)らは2014~2018年、国内企業などと共同で、首の脊髄を損傷して72時間以内の急性期の重症患者26人に、製剤を投与する臨床試験(治験)を実施しました。

 その結果、約半数の運動機能が改善しました。運動機能が完全にまひした患者の筋力が一部回復した例もありました。ただ、改善したのは下半身のみでした。研究チームは治験の結果を踏まえ、早期の実用化を目指しています。

 今回は急性期が対象ですが、中村教授らは脊髄を損傷してから2週間から4週間の亜急性期といわれる段階の患者4人の患部に、人のiPS細胞から作製した神経の元になる細胞約200万個を移植し、細胞を神経に変化させて機能の回復を目指す臨床研究も始めています。

 中村教授は、「製剤に細胞治療、リハビリを融合すれば、もっと回復する可能性がある」と話しています。

 2019年3月24日(日)

 

■2018年のエイズウイルス感染1288人 前年比101人減

 エイズウイルス(HIV)への感染が2018年に国内で新たに確認された人は約1200人で、このうち28%に上る367人がすでにエイズを発症していたことがわかりました。

 厚生労働省によりますと、昨年1年間に、国内の保健所や医療機関などでエイズウイルスへの感染が新たに確認された人は、前年より101人少ない1288人でした。内訳は、すでにエイズを発症していた患者が367人、未発症の感染者は921人でした。

 1991年にエイズで亡くなったイギリスのロックバンド「クイーン」のボーカル、フレディ・マーキュリーを主人公にした映画が日本国内でもヒットしましたが、ウイルスに感染した人の治療は、フレディが亡くなった時代とは大きく変わっています。

 早い段階で感染を発見し治療を受ければ、発症を抑えて健康的に生活できる上、ほかの人に感染を広げるリスクを下げることにもつながるため、厚労省は検査を受けるよう呼び掛けています。

 厚生労働省エイズ動向委員会の白阪琢磨委員長は、「保健所では無料、匿名で検査を受けられるので積極的に利用してほしい」と呼び掛けています。

 2019年3月24日(日)

 

■加圧シャツ広告の「着るだけで筋力アップ」は違反 消費者庁「根拠なし」

 「着るだけでマッチョが目指せる」などと誇大に宣伝して「加圧シャツ」などを販売したのは景品表示法違反(優良誤認)に相当するとして、消費者庁は22日、衣類のネット販売事業などを行う「イッティ」(東京都)など9社に、再発防止などを求める措置命令を出しました。

 措置命令が出されたのは、ほかに「加藤貿易」「GLANd」「ココカラケア」「SEEC」「スリーピース」「BeANCA」「VIDAN」(いずれも東京都)、「トリプルエス」(愛知県)。

 消費者庁によると、9社は2016年11月~今年1月、自社のウェブサイトなどで、男性向け加圧シャツやスパッツ、レギンスなど計15商品を販売する際、着るだけで著しくやせられ、筋肉増強効果が得られるかのように宣伝しました。おなかの写真に「強烈な加圧で、お肉を圧縮」、鍛えられた上半身の男性の画像に「着るだけでこのカラダ」など文言を重ねて掲載していたといいます。

 消費者庁は、9社に表示の裏付けとなる資料を求め、提出のなかった2社を含め、「いずれも合理的な根拠は確認できなかった」と判断しました。関係者によると、2017~2018年の2年間に20億円超を売り上げた会社もあったといいいます。

 近年は「筋肉ブーム」ともいわれ、引き締まった体にあこがれる人たち向けに同種の商品が多く流通し、他社との差別化を図ろうと過激な表示が増えたとみています。    

 2019年3月22日(金)

 

■75歳以上の8割に2つ以上、6割に3つ以上の慢性疾患が併存 東京都内で調査

 東京都内に住む75歳以上の後期高齢者の約8割が2つ以上、約6割は3つ以上の慢性疾患にかかっていることが、東京都健康長寿医療センターの研究で明らかになりました。詳細は、アメリカの疾病対策予防センター(CDC) が出版している国際科学雑誌に発表しました。

 約131万人の診療情報明細書(レセプト)から分析を進め、疾患を特定しました。複数の疾患が存在している状態は多病と呼ばれ、患者の心身機能や生活の質に大きな影響を与えます。高齢化の進行で、多病の人は増加しているとみられています。

 頻度の最も高い3疾患の組み合せは、男性では高血圧・潰瘍性疾患・虚血性心疾患(12・4%)、次いで高血圧・脂質異常症・潰瘍性疾患(11・0%)、女性では高血圧・脂質異常症・潰瘍性疾患(12・8%)、次いで高血圧・潰瘍性疾患・脊椎/関節疾患(11・2%)でした。男性では泌尿器疾患、女性では骨粗鬆(こつそしょう)症も目立ちました。

 また、3疾患の組み合せで頻度が上位15位までの中で、1年間の平均外来医療費が最も高かった組み合せは、男性では高血圧・潰瘍性疾患・悪性新生物(82万7644 円、7 位:7・6%)、次いで高血圧・潰瘍性疾患・脊椎/関節疾患(76万2176 円、10 位:7・4%)、 女性では高血圧・潰瘍性疾患・不眠症(68万2811 円、6位:8・0%)、次いで高血圧・潰瘍性疾患・脊椎/関節疾患(67万4710 円、2位:11・2%)でした。

 そして、多病を抱えやすい高齢者の特徴は、男性、85〜89歳、医療費が1割負担、在宅医療を受けていること、外来受診施設数の多いこと、入院回数の多いことでした。

 複数の病気にかかっている患者には、検査や治療で配慮が必要であるため、こうした調査は、適切な診療ガイドライン作成に役立つとしています。

 2019年3月22日(金)

 

■脳梗塞患者、血栓溶解療法を受けられる対象を拡大 学会が治療指針を変更

 脳の血管が詰まることで起きる脳梗塞について、日本脳卒中学会は、初期の患者には高い効果があるとされる「t-PA」療法(血栓溶解療法)と呼ばれる血栓を溶かす治療をより多くの患者が受けられるよう、治療の指針を変更しました。

 脳梗塞は脳の血管に血液などの塊が詰まることで起きるもので、初期の段階の患者には血の塊を溶かす薬を使う「t-PA」療法という治療が高い効果を発揮しますが、発症から4時間半を超えたら行わないとされてきました。

 そのため、寝ている間に発症するなど、時間の経過が正確にわからない患者には行えなかったとして、日本脳卒中学会は治療の指針を見直し、MRIの検査で脳の血管の状態がよければ医師の判断で「t-PA」療法を行うことができるとしました。

 脳梗塞では年間6万人以上が死亡しているとされ、今回の変更で、この治療が実施できる患者が年間、数千人ほど増えるとみられています。

 一方で、血管の状態が悪いとこの治療法によって脳出血を起こすリスクが上がるため、学会は、検査結果を慎重に見極めて実施することになるとしています。

 日本脳卒中学会の理事長を務める京都大脳神経外科の宮本享教授は、「医師が最適な治療を選択でき、より多くの患者を救えると期待している」と話しています。

 2019年3月22日(金)

 

■「幸福度」ランキング、日本は58位に後退  「自由度」「寛大さ」評価低く

 世界の国や地域の「幸福度」をランキングにした国連の報告書がまとまり、日本は昨年より4つ順位を下げて58位でした。主要7カ国(G7)の中で最も低く、台湾や韓国を下回りました。

 国連は7年前から、1人当たりの国内総生産(GDP)や健康に生きられる年数、社会の自由度などを数値化し、世界の国や地域の「幸福度」をランキングにしています。

 「国際幸福デー」の20日に発表された今年の報告書によりますと、フィンランドが2年連続で1位になったほか、2位にデンマーク、3位にノルウェーが続き、福祉や教育が充実している北欧諸国が上位を占めました。このほかイギリスが15位、アメリカが19位でした。

 日本は昨年より順位を4つ下げて58位でした。長寿国だけあって「健康に生きられる年数」は上位だったものの、「社会の自由度」や「他者への寛大さ」を評価する数値が低く、主要7カ国では最下位でした。

 アジアでは、25位の台湾、34位のシンガポール、54位の韓国などを下回りました。

 このほか中国が93位、政治や経済の混乱が続く南米のベネズエラは108位となり、最下位の156位は、紛争が続き昨年8月に和平協定が結ばれたアフリカの南スーダンでした。

 報告書は、世界全体の幸福度は近年落ち込み傾向にあると警鐘を鳴らしています。一方、幸福度の高い国では軒並み、指標とされた項目のすべてで評価が高かったのに加えて、社会が非常に安定している傾向があり、2005年時と比べても幸福度にほとんど変化がありませんでした。

 2019年3月21日(木)

 

■人工透析中止問題、月内にも文書指導へ 東京都

 東京都福生(ふっさ)市の公立福生病院で腎臓病患者の女性(当時44歳)が人工透析治療を中止して死亡した問題で、東京都は3月内にも、医療法に基づき病院を文書で指導する方針を固めました。女性は死亡前に「透析を再開したい」と話していましたが、再開しないまま亡くなっており、意思の確認や病院内の手続きが不十分だったと判断しました。

 東京都などによると、女性は昨年8月、透析治療を受けていた別の医療機関から紹介され、福生病院を受診。医師から透析とともに透析をやめる選択肢を示され、透析中止を選んだ後、1週間後に死亡しました。

 女性は亡くなる前日に「透析を再開したい」と発言し、カルテにもその旨が記載されていました。病院側は東京都に対し、「その後、透析はしないとの意思を改めて確認した」などと説明していますが、東京都は、患者の意思が状況次第で変わり得ることも重視。透析中止の同意文書を撤回できるとの説明もしていなかったとみられ、東京都は透析を巡る女性の意向の確認が不十分で、意思の尊重を求める医療法に抵触するとみています。

 また東京都は、透析中止の判断に当たって、第三者が入る倫理委員会を開かなかったことも問題視しています。これまでの調査で、女性を含む患者4人が透析を中止した後に亡くなったほか、透析を始めない「非導入」を選択をした17人も死亡したことを確認しており、東京都は女性以外の患者についても説明や意思確認に問題がなかったかを調べています。

 福生病院は8日、「多職種で対応し、家族を含めた話し合いが行われ、その記録も残されている。密室的環境で独断専行した事実はない」などとするコメントを発表。しかし記者会見を開かない状況が続いており、東京都は住民らに丁寧に説明するよう、医療法に基づいて口頭で指導しています。

 2019年3月21日(木)

 

■病院などの23%、ガイドラインに従わず透析中止や「非導入」 学会理事調査

 東京都福生(ふっさ)市の公立福生病院の人工透析治療を巡る問題で、専門医でつくる日本透析医学会の理事が全国の病院などにアンケート調査したところ、学会のガイドライン(2014年)に従った透析治療中止や「非導入」は76・6%で、4分の1近くが従っていませんでした。

 調査した川島病院(徳島市)の岡田一義副院長は、「認知症で本人の意思確認が難しいなど、やむを得ない場合も多い」と話しています。

 調査は2016~2017年に、透析関連の1407施設を対象に実施。ガイドラインについては455施設が回答し、うち240施設が治療中止や非導入の経験があると答えました。詳細が判明した206施設の893例を分析したところ、684例(76・6%)がガイドラインに「準拠していた」と回答しました。

 準拠しなかった症例の詳細は不明ですが、自由記述などから「認知症で本人の意思が確認できない」「本人が受診しなくなった」「がん末期や多臓器不全で十分な話し合いができなかった」など、やむを得ない事例が多かったといいます。

 岡田副院長は、「終末期ではない若い人で(治療中止や非導入の)強い意思があり、家族も同意しているケースについてはガイドラインになく、課題になる」と話しています。

 2019年3月21日(木)

 

■特別養子縁組あっせん事業を19日から開始 「赤ちゃんポスト」運営の慈恵病院

 さまざまな理由で親が育てられない乳幼児を受け入れる「こうのとりのゆりかご」(赤ちゃんポスト)を運営する熊本市の慈恵病院は18日、特別養子縁組を直接あっせんする事業団体としての許可を、熊本市から取得し、19日から事業を開始しました。

 慈恵病院は、望まない妊娠などの事情がありながらも同病院で出産した女性の子と、養親になりたいと望む夫婦らを直接結び付けるため、昨年から熊本市と協議を続けました。病院によると、必要な許可を順次取得し、18日付で手続きがすべて終わりました。

 特別養子縁組は、家庭裁判所での手続きを経て、実父母との法的な親族関係を解消させ、養親の実子と同様に扱う制度。現行では原則として、申し立て時に養子は6歳未満、養親は25歳以上の夫婦でなければなりません。政府は、養子の対象年齢を原則15歳未満に引き上げる民法改正案を、15日に閣議決定しています。

 慈恵病院には以前から、特別養子縁組を希望する相談が多く寄せられており、埼玉県の民間業者に対応を依頼し、約300件の縁組が成立していました。だが昨年4月施行の養子縁組児童保護法は、事業者に求めていた都道府県などへの届け出を許可制へと変更し、規制を強化。これにより埼玉県の民間業者は昨年秋に事業をやめたものの、慈恵病院の新たな活動に助言しながら参画することにしました。

 厚生労働省によると、特別養子縁組あっせん事業者は新法施行直前に全国で29の届け出団体がありましたが、許可団体は昨年12月末時点で慈恵病院を含め18団体と減少しました。

 2019年3月21日(木)

 

■脳卒中の治療が常時可能な病院を認定へ 日本脳卒中学会が新年度から

 脳卒中の治療が常時可能な病院を認定する制度を日本脳卒中学会が新年度からスタートさせます。治療が早いほど救命や後遺症の軽減が期待できるため、認定制度によって治療の水準を引き上げる狙いがあります。

 脳卒中は国内で年間10万人以上が死亡する死因第3位の病気。このうち6~7割を占めるのが、脳の血管に血の塊(血栓)が詰まる脳梗塞(こうそく)。後遺症で介護が必要となる大きな原因でもあります。

 脳梗塞の治療は、血栓を4時間半以内に薬で溶かす「血栓溶解療法」が基本。これを24時間、365日実施できる病院を「1次脳卒中センター」と位置付け、常勤の専門医数や脳卒中治療チームがあることなどを認定の要件としました。

 さらに高度な治療法として、カテーテルという管を使って血栓を取り除く「血栓回収療法」があります。この治療が常時可能な病院を「血栓回収脳卒中センター」、外科治療を含む脳卒中全般に対応できる病院を「包括的脳卒中センター」として認定していく方針です。

 一方で、専門医の不足などから高度な治療が難しい地域もあります。大学病院などに脳の画像診断をしてもらい、遠隔診療で血栓溶解療法ができる病院を増やすことも検討しています。

 脳卒中治療の実態を全国調査した国際医療福祉大の埴岡健一教授は、「脳卒中は地域の医療・救急体制に治療が左右される。対策を急ぐ必要がある」と指摘しています。

 2019年3月21日(木)

 

■インフルエンザの新治療薬「ゾフルーザ」、「出血」を副作用に追記 厚労省が指示

 インフルエンザの新しい治療薬「ゾフルーザ」について、厚生労働省は添付文書の重大な副作用に「出血」の追記を指示しました。これを受けて、製造元の塩野義製薬(大阪市中央区)は文書を改訂しました。

 厚労省によると、この薬を飲んだ後、血便や血尿などの症状が現れた人が25人おり、13人は服薬との因果関係が否定できませんでした。亡くなった人も3人いましたが、明確な因果関係は確認できなかったといいます。

 改訂後の添付文書には、服用から数日後に血便、鼻出血、血尿などの出血症状が現れる場合があることも追記され、薬を処方する前に患者や家族に説明するよう医師に求めています。

 ゾフルーザは塩野義製薬が開発し、昨年3月に発売されました。1回錠剤を飲むだけですみ、使い勝手がいいことから今シーズン多くの医療機関で処方されました。2018年10月~2019年1月に国内の医療機関に供給されたゾフルーザは約550万9000人分。昨シーズンの約40万人分から急増しました。

 2019年3月21日(木)

 

■慢性的な病気多く抱えると介護費も高く 筑波大などが共同研究

 慢性的な病気を多く抱える高齢者ほど、年間の医療費と介護費が高くなるとする研究結果を、筑波大、東京大、東京都健康長寿医療センターの共同研究チームが発表しました。病気の種類が多くなると介護度も上がる傾向にあり、医療費だけでなく介護給付費も増えたとみています。

 千葉県柏市の75歳以上の高齢者のうち、2012年4月~2013年9月に医療機関を1回は受診し、1年以上の追跡ができた約3万人が対象。このうち4分の1が要支援や要介護の状態で、医療、介護それぞれのレセプト(報酬明細書)を突き合わせて分析しました。

 その結果、平均で年間の医療費は約72万円、介護費は約37万円。病気の症状などを踏まえ、腎臓病1ポイント、転移のないがんや認知症は2ポイント、重い肝臓病4ポイントなどと数値化した評価方法を用いると、病気の種類が増えて1ポイント上がるたびに、年間の医療費は約16万円、介護費は12万円増えました。

 研究を中心となって進めた筑波大准教授の森隆浩さん(老年医学)は、「多くの病気にかかる高齢の患者を減らせれば、医療費だけでなく、介護にかかる費用も減らせる可能性がある」と指摘しています。

 東京都健康長寿医療センターの調査によると、高齢者の6割が3疾患以上の慢性疾患を併発しています。

 2019年3月20日(水)

 

■ロッテ、ブルボンなどで商品の自主回収続く 宇部興産の工場トラブルで

 大手化学メーカーの「宇部興産」の工場トラブルが、食卓に影響を及ぼしています。焼き菓子向けの膨張剤「重炭酸アンモニウム」の製造ラインの一部が壊れ、この膨張剤を使った菓子に金属片が混入している可能性があるためです。

 膨張剤は食品用途と工業用途で、食品メーカーや化学メーカーなど合わせて約50社に出荷されており、自社商品の回収を始めたところもあります。今のところ健康被害の報告はないといいます。

 商品を自主回収すると20日発表したのは2社。ロッテが「チョコパイ」「ビックリマンチョコ」「プチブッセ」「ゼロ シュガーフリーケーキ」「和のチョコパイ」など8商品の一部、計約150万個、ブルボンは「アルフォートミニチョコレート」「プチチョコチップ抹茶」など7商品、計約60万袋です。両社はホームページに対象商品の賞味期限や製造ロット番号を記載。該当商品を送れば、引き換えに商品代金相当の金券を返送します。

 ヤマザキビスケットも19日、菓子「ノアール」「ルヴァンプライム」の一部に当たる計約14万8000袋の自主回収を発表しています。

 宇部興産によると、金属片が混入した膨張剤の製造ラインは宇部ケミカル工場(山口県宇部市)にあります。2月21日の出荷前検査で長さ約1ミリのステンレス片が見付かったため詳しく調べたところ、機械が損傷していました。金属片が混入している可能性があるのは1月30日~2月20日に生産・出荷した約200トンで、納入先からの回収を急いでいます。

 宇部興産は、「お客様には多大なご心配とご迷惑をおかけしていることを深くおわびする」としています。

 2019年3月20日(水)

 

■人の細胞を用いたゲノム編集、研究内容を登録する体制必要 WHOの諮問委員会

 遺伝情報を書き換えるゲノム編集について話し合う世界保健機関(WHO)の諮問委員会の初会合が開かれ、人への応用は現時点では行うべきではないとした上で、透明性を確保するため、WHOに研究内容を登録する体制が必要だという見解で一致しました。

 この諮問委員会は、中国の研究者が昨年、人の遺伝情報をゲノム編集で書き換えて双子の女児を誕生させた問題を受けてWHOが新たに設け、初めての会合がスイスのジュネーブで19日までの2日間にわたって開かれました。

 この中で、諮問委員会は、ゲノム編集を現時点で人に用いることは無責任で、行われるべきではないとした上で、研究を進めるためには透明性の確保が重要だという見解で一致しました。

 具体的には、人の細胞を用いたゲノム編集の研究がどこでどのように行われているかがわかるよう研究内容をWHOに登録する新たなシステムを設けて、科学誌や研究機関などは、このシステムへの登録を論文の掲載や資金提供の条件にすべきだとしています。

 諮問委員会は、日本やアメリカを始めとした各国の科学や生命倫理などの専門家18人で構成され、1年半ほどかけて討議を重ね、科学や倫理、社会、法的な問題点を検討し、WHOに対する提言をまとめます。

 諮問委員会の共同議長を務める研究者は、「多様な分野から集まった素晴らしいメンバーで議論をスタートできた。議論の過程で合意に至った提言は速やかに発表してWHOに行動を促していきたい」と話しています。

 2019年3月20日(水)

 

■風疹の流行続く、1週間で新たに患者92人 今年の累計860人に

 国立感染症研究所は19日、「風疹流行に関する緊急情報」(13日現在)を発表しました。

 同研究所は昨年8月、首都圏を中心に風疹の患者が急増していることを受け、当初は首都圏限定情報として、9月以降は全国情報に拡大して風疹流行に関する緊急情報を毎週公表しています。

 最新の2019年第10週(3月4日〜10日)情報によると、今年の風疹患者の累積報告数は860人。前週(2月25日〜3月3日)の768人から92人増加しました。

 都道府県別では、新規の患者が最も多かったのは東京都で22人。神奈川県と大阪府がそれぞれ10人、千葉県7人と続きました。

 人口100万人当たりの患者の累計報告数は、全国の6・8人に対して最多の東京都は18・1人、次いで千葉県13・8人、神奈川県13・6人、佐賀県13・2人、福井県12・7人と続きます。今年に入ってからも依然として首都圏を中心に流行している状況です。

 また、職業記載欄に会社員と記載されている場合を除いた「特に配慮が必要な職種」として医療関係者、保育士、教職員、消防士が挙げられています。

 風疹は、くしゃみなどのしぶきで感染し、2~3週間後に発熱や発疹、リンパ節のはれなどが出ます。

 関西を中心に流行しているはしか(麻疹=ましん)の新規患者は、同じ3月4日〜10日の1週間で14人となっています。今年のはし患者の累積報告数は304人になりました。

 2019年3月20日(水)

 

■メタボ健診、受けたのは5割 厚労省が保険者別に初めて公表

 厚生労働省は18日、メタボリック症候群の予防を目的に腹囲や血圧などを測る特定健診(メタボ健診)について、大企業や自治体など公的医療保険の保険者ごとの実施率を初めて公表しました。未実施から100%まで、大きな開きがありました。

 ジェネリック(後発)医薬品の使用割合は30~90%台。医療費削減に向けて保険者の取り組みを促す狙いがあり、厚労省ホームページに結果一覧を載せています。加入者全体でみると、メタボ健診は5割、後発医薬品は7割でした。

 40~74歳を対象に年1回実施されているメタボ健診については、市町村が運営し自営業者らが加入する国民健康保険(約1700組合)や、大企業の社員らが加入する健康保険組合(約1400組合)、中小企業向けの全国健康保険協会(協会けんぽ)など全3373保険者の2017年度実施率を調べました。メタボ健診を受けたのは加入者全体の53・1%で、前年度比1・7ポイント上昇しました。政府は2023年度までに実施率を70%とする目標を掲げています。

 国民健康保険では、宮崎県西米良村が79・7%でトップ。最も低かったのは北海道三笠市の8・0%でした。

 小泉進次郎・自民党厚労部会長が旗振り役の「国民起点プロジェクトチーム」は、実施率が低かった保険者について、根本匠厚労相から直接取り組みを促すよう求めました。

 後発医薬品の2018年9月分の使用割合は、75歳以上が加入する後期高齢者医療制度の保険者も含めた全3517保険者について調べました。政府目標は2020年9月までに80%以上ですが、全体では72・5%でした。

 2019年3月20日(水)

 

■製薬企業の虚偽・誇大広告による売り上げに課徴金 医薬品医療機器法の改正案

 政府は19日、虚偽・誇大広告で医薬品の販売を拡大した製薬企業に課徴金を支払わせる制度の創設などを盛り込んだ医薬品医療機器法の改正案を閣議決定しました。特定の機能を持つ薬局の認証制度も盛り込んでおり、今国会での成立を目指します。

 医療用医薬品には1兆円を売り上げる商品があるものの、虚偽や誇大広告で販売を拡大した罰金は200万円にすぎず、不当に巨額の利益を得た企業の「逃げ得」を防ぐことが課題でした。新たに導入する課徴金制度は、虚偽・誇大広告で売り上げた期間を対象とし、売り上げの4・5%を企業から没収します。違法な売り上げが1兆円規模に達すれば、没収額は数百億円に上る可能性があります。ただ、売り上げが5000万円未満の場合は対象外とし、行政機関の立ち入り調査前などに自主的に違法行為を申告すれば、課徴金を半額にする規定も設けます。成立から2年以内に施行します。

 また、患者がタブレット端末を使って薬剤師から説明を受ける「服薬指導」を解禁します。オンライン診療はすでに始まっており、患者は診察から服薬まで在宅で受けられるようになります。ただ、初診は対面を原則とし、かかりつけ薬剤師による実施に限定するなど、一定の要件を設けます。施行は成立から1年以内としました。

 薬局のかかりつけ機能を強化するため、在宅訪問などを行う「地域連携薬局」と、がん患者らに専門的な服薬指導をする「専門医療機関連携薬局」といった、特定の機能を持つ薬局を都道府県が認定する制度も創設します。

 さらに、画期的だったり、必要性が高かったりする医薬品を優先的に審査する「先駆け審査指定制度」と「条件付き早期承認制度」を法制化するほか、未承認医薬品の個人輸入の規制を強化します。学習機能のある人工知能(AI)を利用した医療機器を念頭においた承認制度や、医療用医薬品などの添付文書を原則電子化することも盛り込まれました。

 一方、厚生労働省は法令違反を犯した薬局などの薬事担当役員を変更できる命令を新設する方針でしたが、「私企業への介入に当たる」と自民党から反発を受けて見送りました。

 2019年3月20日(水)

 

■がんや脳卒中の死亡リスク、週1回のウオーキングでも減少 中国で研究

 心臓発作、脳卒中、がんの死亡リスクを減らすには1週間に1、2回の軽いウオーキングで十分と唱える論文が19日、イギリスのスポーツ医学誌「ブリティッシュ・ジャーナル・オブ・スポーツ・メディシン」に掲載されました。

 中国・山東大学のボ・シ教授率いる研究チームは1997年から2008年にかけ、アメリカで8万8140人のデータを毎年収集して精査。さらに、2011年までに死亡した人の数も調査しました。

 調査結果によると、週に10分から1時間程度ウオーキングや庭いじりをする人は、全く運動しない人と比べて病気などによる死亡リスクが18%低くなりました。

 また、週に2時間半から5時間の「適度な身体活動」によって死亡リスクは31%減少し、1週間の運動時間が25時間以上の人では死亡リスクはほぼ半減したといいます。

 だが、誰もが余暇に運動できる時間が多くあるわけではありません。

 研究チームによると、サイクリングやランニングなどによって心臓や脈の動きを促すことは「中強度の運動よりも時間効率がよい」といいます。さらに、心血管疾患だけでみると、運動時間が5時間から25時間に増えても得られるメリットはなかったといいます。

 ただ、調査結果は観察に基づいて得られたもので、因果関係については確かな結論を導き出すことはできないといいます。

 2019年3月19日(火)

 

■すかいらーく、全3200店で全面禁煙化へ 外食業界で禁煙化の動きが加速

 ファミリーレストラン最大手の「すかいらーくホールディングス」は、グループの店舗すべてを全面的に禁煙化する方針を固めました。社員にも禁煙を促すため、管理職の人事評価制度を見直すなど、会社を挙げた取り組みを進めることにしています。

 関係者によりますと、「すかいらーくホールディングス」は「ガスト」や「ジョナサン」など、全国に展開している約3200店舗すべてを、今年9月以降、全面的に禁煙とする方針を固めました。

 たばこを吸える「喫煙室」などは一切設けず、現在、喫煙場所のある店は4月から順次改装工事に入り、乳児のおむつ替えスペースや幼児向け遊具を設置するなどして多目的スペースを作ることにしています。

 さらに、社内でも社員の禁煙を促そうと人事制度を改める方針で、各職場でたばこを吸わない社員の割合を目標まで高めた管理職は、ボーナスの査定でプラス評価にするとしています。

 また、たばこを吸う社員向けには、社長がビデオメッセージで禁煙を促すほか、スマートフォンを通じて気軽に禁煙のアドバイスを受けられるサービスも導入するとしています。

 来年の東京オリンピック・パラリンピックに向け、法律や条例により、飲食店で受動喫煙対策の強化が求められる中、ファミリーレストラン最大手が完全禁煙に踏み切ったことで、外食業界で禁煙化の動きが一段と加速しそうです。

 規制強化を受けて、外食各社は対策を急いでおり、ファストフードでは日本マクドナルドや日本ケンタッキー・フライド・チキンがすべての店舗を禁煙にしたほか、モスバーガーも来年3月末までに、すべての店を禁煙化する計画です。

 また、ファミリーレストランでは、サイゼリヤが今年9月から、ココスも今年9月末までに禁煙化しますが、一部の店には喫煙室を設けるということです。

 このほか、たばこを吸う人の利用も多い居酒屋チェーンでも「串カツ田中」が昨年6月に、ほとんどの店で禁煙化に踏み切りました。

 東京オリンピック・パラリンピックに向けて、来年4月1日から「改正健康増進法」が施行され、飲食店では受動喫煙対策の強化が求められます。この法律によって、客席の広さが100平方メートル以上など、規模の大きな飲食店や新たに営業を始める店は、原則として禁煙となります。

 店内でたばこが吸えるのは、外に煙が漏れないよう対策を取った「喫煙専用室」のみとなります。未成年者の受動喫煙を防ぐため、20歳未満の人は従業員であっても入れません。また、違反した場合の罰則も設けられ、灰皿を撤去しないなど対策を怠った管理者には50万円以下の過料が科せられます。

 また、東京都では店の規模にかかわらず、従業員を雇っている飲食店は屋内を原則禁煙にするなど、自治体によっては国の法律より規制が厳しい条例を制定する動きも広がってます。

 2019年3月19日(火)

  

■ヤマザキビスケット、約15万袋を自主回収へ 菓子に金属片混入の恐れ

 化学メーカーの「宇部興産」が、焼き菓子の膨張剤などに使われる原料に金属片が混入している恐れがあると発表したことを受けて、宇部興産から原料を仕入れていた菓子メーカーの「ヤマザキビスケット」は19日、商品の一部に金属片が混入している恐れがあるとして、約15万袋を自主回収することになりました。

 ヤマザキビスケットが自主回収するのは、「ノアール」と「ルヴァンプライム ミニサンドチェダーチーズ味」、「ルヴァンプライム 薄焼きサンドホワイトチェダーチーズクリーム」の3つの商品の一部で、合わせて14万8380袋に上るということです。

 これらは茨城県の工場で3月5日から12日にかけて製造されたもので、賞味期限は、いずれも2020年1月となっています。

 「ノアール(18枚入り)」は製造番号が「C05A107~414」「C06A107~413」「C11A107~415」のもの。「ルヴァンプライム ミニサンドチェダーチーズ味(50グラム)」は「C05A107~715」。「ルヴァンプライム 薄焼きサンドホワイトチェダーチーズクリーム(18枚入り)」は「C11A07~14」が対象。

 菓子を作る際に使う膨張剤が宇部興産の工場でつくられたもので、仕入れた原料から金属片が見付かったことから、自主回収を決めたということです。

 これまでに購入客から金属片が入っていたという連絡や、健康被害の報告はないということです。

 商品は茨城県にある工場に送れば代金を返却することにしており、問い合わせの電話番号はフリーダイヤル0120・945・522で、午前9時から午後5時まで。今月中は土日祝日も受け付けます。

 2019年3月19日(火)

 

■宇部興産、菓子などの原料に金属片 出荷先に使用停止を求め、回収急ぐ

 化学メーカーの「宇部興産」は、焼き菓子の膨張剤などに使われる原料に金属片が混入している恐れがあると発表しました。出荷先は食品メーカーなど約50社に及び、会社は使用停止を求め、回収を進めています。

 宇部興産が回収しているのは、焼き菓子の膨張剤や電子部品の原料として使われる「重炭酸アンモニウム」で、山口県宇部市の工場で今年1月30日から2月20日までに生産、出荷された製品合わせて200トンです。

 これらは「ヤマザキビスケット」など複数の食品メーカーや、化学メーカーなど合わせて約50社に出荷されており、取引先に通知して製品の回収を進めています。

 会社によりますと、2月21日に行った社内の定期検査で、製造した重炭酸アンモニウムの中に1~2ミリ程度の金属片が混入しているのが見付かりました。

 重炭酸アンモニウムは、反応槽と呼ぶ容器の中でアンモニア水と炭酸ガスを混ぜ合わせることで作ります。詳しく槽内を調べたところ、原料の混合に使う撹拌(かくはん)翼と呼ぶステンレス製の部品が破損していました。反応槽は1987年製で、撹拌翼を含む装置全体を毎年1回点検しているといいます。2018年5月の点検では問題はありませんでした。

 これまでに複数の取引先から製品に金属片が混入していたと連絡がありましたが、健康上の被害などは報告されていないということです。

 宇部興産は、「お客様に多大なご心配とご迷惑をおかけし深くおわび申し上げます。今後は設備および品質の管理をより一層徹底し、再発防止に努めます」としています。

 2019年3月19日(火)

 

■死亡事故の75歳以上運転者、半数が認知機能低下の恐れ 警察庁まとめ

 昨2018年に、交通死亡事故を起こした75歳以上の運転者の49・3%が、事故の前の認知機能検査で認知症や認知機能低下の恐れがあると判定されていました。昨年に検査を受けた75歳以上全体でみると、この割合は27・1%で、死亡事故を起こした人のほうがかなり高くなっています。

 警察庁が18日発表しました。2017年とほぼ同じ結果で、警察庁は「認知機能の低下が死亡事故発生に何らかの形で影響している」としています。

 75歳以上の運転者は運転免許更新時に加え、逆走など特定の違反をした時に認知機能検査が義務付けられています。「認知症の恐れがある」第1分類、「認知機能低下の恐れがある」第2分類、「認知機能低下の恐れがない」第3分類のいずれかに判定され、第1分類は医師の診断が必要です。

 昨年に死亡事故を起こした75歳以上の460人のうち、更新時74歳以下だったなどで検査を受けていなかった人を除いた414人の結果は、第1分類が20人(4・8%)、第2分類が184人(44・4%)、第3分類が210人(50・7%)でした。第1分類20人のうち3人は、検査後に免許を自主返納したり失効させたりしたにもかかわらず運転していたといいます。

 これに対し、昨年検査を受けた75歳以上は全体で約216万5000人で、このうち第1分類は2・5%、第2分類は24・5%、第3分類が73・0%でした。

 交通死亡事故を起こした75歳以上は年間400人台で推移。2017年は減ったものの、昨年は42人増えました。

 警察庁は、認知機能だけでなく、身体機能の低下も事故に結び付く可能性があるとして、免許更新時に車を実際に運転する試験の導入の可否など、対策の在り方を検討しています。

 2019年3月19日(火)

 

■医師国家試験の合格者、2年連続で9000人超 厚労省発表

 厚生労働省は18日、第113回医師国家試験と第112回歯科医師国家試験の合格発表を行いました。合格率は、医師が89・0%、歯科医師が63・7%。

 医師国家試験は、2019年2月9日と10日に施行されました。出願者数1万474人、受験者数1万146人、合格者数は9029人で、2年続けて9000人を上回りました。合格率は89・0%で、前年(2018年)の90・1%と比べ1・1ポイント減少。

 このうち、男性の合格者数は6029人、合格率は88・1%で、女性の合格者数は3000人、合格率は90・8%でした。新卒者の合格者数は8478人、合格率は92・4%で、前年の93・3%と比べ0・9ポイント減少しました。

 平均合格率は、国立が90・2%、公立が92・1%、私立が88・9%、認定および予備試験は45・2%でした。

 学校別合格者状況によると、合格率が最も高いのは「自治医科大学」99・2%、次いで「順天堂大学医学部」98・4%、「横浜市立大学医学部」97・7%が続きました。

 新卒者の合格率が100・0%だったのは、「自治医科大学」。また、横浜市立大学医学部と兵庫医科大学は既卒者の合格率が100・0%でした。

 歯科医師国家試験は、2019年2月2日と3日に施行されました。出願者数3723人、受験者数3232人、合格者数2059人、合格率は63・7%で、前年(2018年)の64・5%と比べ0・8ポイント減少。このうち、新卒者の合格者数は1587人、合格率は79・4%で、前年の77・9%と比べ1・5ポイント増加しました。

 平均合格率は、国立が79・9%、公立が75・4%、私立が59・0%、認定および予備試験は16・7%でした。

 学校別合格者状況によると、合格率が最も高いのは「東京歯科大学」96・3%、次いで「東北大学歯学部」89・5%、「北海道大学歯学部」87・9%。

 新卒者の合格率が95・0%を超えたのは、「東北大学歯学部」97・6%と「東京歯科大学」96・1%、「新潟大学歯学部」95・0%。また、東京歯科大学の既卒者の合格率は100%でした。

 2019年3月19日(火)

 

堀ちえみさん公表の舌がん、増加傾向 歯科開業医からの相談も急増

 タレントの堀ちえみさん(52歳)が舌がんを公表してから間もなく1カ月。舌がんに対する関心の高まりで、東京都内の大学が開設したネットの相談窓口には、歯科開業医から患者の口の中の異常について相談が急増しています。舌がんは一般的な口内炎と間違えられ、診断が遅れる恐れがあり、患者の遺族からも「この機会に舌がんのことを知って」との声が上がっています。

 堀さんは2月19日、自身のブログで、進行した舌がんが見付かったことを明らかにしました。当初数カ月は舌がんとの診断がつかず、口内炎として治療を受けていたといいます。2月22日に大学病院で、耳鼻咽喉科・口腔(こうくう)外科・形成外科が連携しての11時間に渡る手術を受けました。頸部(けいぶ)リンパ節を取り、舌の6割を切除。太ももの組織を使い、舌の再建手術を行ったといいます。

 3月17日のブログでは、医師の許可を得て一時自宅に戻った様子を報告しました。「退院まで後少し」などと近況をつづっています。

 「堀さんの公表を切っ掛けに、多くの人に関心を持ってほしい」と呼び掛けるのは、千葉県船橋市の男性(55歳)。2017年6月、父親(当時83歳)を舌がんで亡くしました。

 前年5月、父親は口内炎がなかなか治らず、近くの歯科医院から紹介された病院の口腔外科を受診。入れ歯が合っていないためといわれ、数カ月通院しました。症状は治まらず、別の病院を受診したところ、11月末になって進行した舌がんとわかりました。男性は父親の死後、最初の病院を提訴しました。

 男性は、「『治らない口内炎』とネット検索すればよかったと悔やんでいます。他の人には父のような思いをしてほしくない」と語っています。

 舌がんは、初期症状の口内炎が見分けられずに放置され、診断がつくまでに進行してしまうことが、以前から問題とされてきました。

 診療には耳鼻咽喉科・頭頸部外科のほか、口腔外科など複数の診療科がかかわります。早期発見を目指し、日ごろ患者の口の中を診ている歯科開業医と大学病院などの専門医が連携する取り組みも広がりつつあります。

 東京歯科大口腔外科などは、歯科開業医が口内の異常を見付けた場合、ネットを通じて画像を共有し、助言する仕組み「オーラルナビシステム」を2012年から始めました。今では全国1386の歯科診療所が参加しています。堀さんの病気公表後、1週間に4、5件だった相談は1日10~20件に急増しました。

 柴原孝彦・東京歯科大主任教授は、「口内炎のような症状が2週間以上続いたら要注意だ。早期発見には部分的に白いとか赤いとか色調の変化がないかを見る習慣も大切」と話しています。

 舌がんは、年間約2万人が診断される「口腔・咽頭がん」のうち、口内にできる「口腔がん」の一種。口腔がんでは最も患者が多く、5~6割を占めるとされます。ほかのがんと同様に高齢化で増加傾向にあり、喫煙や飲酒などが原因に挙げられ、男性に多く発症します。舌がんの5年生存率は、ステージ1、2で80~90%、ステージ3で60~80%、ステージ4で30~40%とされます。早期の発見が肝心です。

 2019年3月18日(月)

 

■ゲノム編集食品、夏にも流通が可能に 「届け出」で懸念払拭

 「ゲノム編集」と呼ばれる最新の遺伝子操作技術を使った食品について、厚生労働省の専門家会議は流通させる際のルールの最終報告書をまとめました。この技術で開発が進められているほとんどの農水産物は、早ければ夏にも国への届け出だけで販売できるようになる見通しです。

 ゲノム編集は遺伝子を操作する最新の技術で、収穫量が多いイネや体の大きなタイなど、農林水産業の分野で新しい品種を作り出す研究開発が盛んに行われています。

 18日、厚労省の専門家会議が開かれ、ゲノム編集食品を流通させるためのルールについて議論が行われました。

 この中で、今、開発が進むほとんどの農水産物で行われている、新たな遺伝子は組み込まずに遺伝子の変異を起こさせる方法を使った食品は、毒性や発がん性などを調べる安全性の審査は必要なく、事前に届け出を求めて公表する、とした最終の報告書をまとめました。

 一方、新たに組み込んだ遺伝子が残っている場合には安全性の審査をするとしています。

 今後は消費者庁で食品の表示について検討が始まることになりますが、厚労省は早ければ夏にもこのルールの運用を始め、ゲノム編集食品の販売ができるようになる見通しです。

 専門家会議の部会長で新潟大学の曽根博仁教授は、「ゲノム編集食品の安全性は、方法によってはこれまでの品種改良の技術で作られたものと変わらないと考えられる。食べ物について消費者が心配するのは当然で、国や研究者は引き続き丁寧な説明が必要だ」と話しています。

 国は法律によって、従来の「遺伝子組み換え技術」が使われた食品については、安全性の審査を行ってきました。

 そのため、遺伝子組み換えトウモロコシや遺伝子組み換えダイズなどを食品にする際には、事業者は組み込まれる遺伝子によって、毒性や発がん性、それにアレルギーを起こす危険性が高まっていないかデータを取り、国が審査して安全だと判断された場合に販売できるようになっています。

 一方、ゲノム編集食品について国の専門家会議は、新たな遺伝子を組み込んだものは遺伝子組み換えと同じように安全性の審査を行う必要があるとし、新たな遺伝子は入っておらず遺伝子の変異を起こさせる方法を使ったものについては、安全性の審査は必要とせず事前に届け出を求めて公表する仕組みを作ることが妥当であるとしています。

 届け出では国は開発者などに対して、どのようなゲノム編集をしたのかや、毒性が強まっていないか確認した内容などを求め、概要を公表するとしています。

 現在、開発が進むほとんどの農水産物は遺伝子の変異を起こさせる方法で行われているので、こうしたものは届け出だけで販売できるようになる見通しです。

 安全性の審査を必要としない理由として、遺伝子の変異は自然界でも起きていて、従来の品種改良の技術で作られたものと技術的に区別することができないことなどが挙げられています。

 海外ではアメリカ政府が原則として特別な規制をしない方針を示し、EUでは司法裁判所が遺伝子組み換え技術と同じ規制を適用すべきとしていて、具体的な制度が検討されています。

 専門家会議の中では、届け出の義務化が必要だといった意見や、罰則を設けるべきだなどの意見も出て、厚労省は今後、具体的な方策を検討することにしています。

 また、消費者団体の中にはすべてのゲノム編集食品について安全性の審査を行うべきだという意見もあります。ゲノム編集では、思いもしない遺伝子の変異が起きる可能性があり、毒性が強まったり発がん物質ができたりしている可能性が完全に否定できないと批判しています。

 ゲノム編集という最新の遺伝子操作技術の普及とともに、ゲノム編集食品を作る研究開発は世界各国で行われています。

 ゲノム編集食品は国内では、収穫量が多いイネや、特定の成分が多く含まれるトマト、体が大きいタイ、食中毒を起こさないジャガイモなどがあるほか、アメリカでは健康にいいとされる成分を多く含むダイズを作り、食用油として販売する計画も進んでいるとされています。日本ではいずれも一般には流通していないとされています。

 全国消費者団体連絡会の浦郷由季事務局長は、「ゲノム編集は新しい技術が次々と開発されていて、アレルギーの原因物質ができてしまうなど、わかっていないリスクがでてくる恐れがある。消費者が知らないうちにゲノム編集食品を食べてしまう事態を防ぐため、企業などの良心に任せる届け出では不十分で、確実にゲノム編集食品を把握するために義務化を進めるべきだ」と話しています。

 2019年3月18日(月)

 

■製薬大手のノバルティス、抗体医薬を国内販売へ 早ければ2019年秋にも

 今年もピークを迎えつつある花粉症の治療に、がん治療などで使われる先端技術を応用する動きが広がってきました。中堅製薬の鳥居薬品が免疫療法薬を2018年に投入したのに続き、スイス製薬大手のノバルティスは抗体医薬技術を応用した世界初の治療薬を2019年秋にも日本国内で販売します。気候変動の影響で欧米では患者数がさらに拡大するとみられ、新たな成長市場となっています。

 花粉症はスギやヒノキ、ブタクサなど植物の花粉が原因となって起きるアレルギー症状で、国内の患者数は全国で2000万人程度とされます。アレルギー症状を引き起こす体内物質「ヒスタミン」を抑える薬で症状を緩和する方法が一般的ですが、効果には限度がありくしゃみや鼻水で苦しむ人が多くいます。

 しかし、医療技術の進化で発症自体を抑えられる可能性が出てきました。ノバルティスは、難治疾患に使われる抗体医薬の技術を世界で初めて花粉症治療に応用。がん免疫薬「オプジーボ」に代表されるように、主にがん治療や関節リウマチのような難治性の免疫疾患に使われる技術を応用し、アレルギー症状を引き起こす免疫反応を阻害する仕組みです。

 国内での臨床試験(治験)では、抗ヒスタミン薬などの従来薬に追加することで、鼻や目の症状を大幅に改善する効果を確認。花粉症向けでは世界初となる抗体医薬の承認申請を厚生労働省に提出しました。早ければ2019年秋にも重症患者向け治療薬として使えるようになります。

 鳥居薬品は、花粉症の成分に体を慣れさせて免疫の暴走を抑える薬を開発。2018年6月に錠剤で子供も使用できる新薬「シダキュア」の販売を始めました。3~5年程度服用し続ければ、服用をやめても症状が長期間出なくなるとされます。シダキュアは半年で4億円以上を売り上げ、2019年12月期は前期比6・8倍の27億円を見込みます。

 世界的に花粉症の患者数は増えています。日本では、1996年から2014年までに病院を訪れた患者数が5割増えました。欧州でも1986年以降、ブタクサの花粉の飛散が大幅に拡大しています。花粉症向けの日本国内の医薬品市場は2000億円以上とされます。インドの調査会社マーケット・リサーチ・フューチャーは、花粉症などのアレルギー性鼻炎の世界市場は150億ドル(約1兆6600億円)以上で、患者数の増加に伴い一段と拡大すると予想しています。

 研究開発が特に活発なのが、現在300近くの治験が進んでいるアメリカ。ワシントン大学などが科学誌に発表した論文では、花粉症の原因となるブタクサの生育範囲が気温と降水量の変化により2050年代までにアメリカ全土で大幅に拡大すると予想しています。

 フランスの製薬大手サノフィは抗体医薬「デュピルマブ」を使って、草花粉による季節性アレルギー性鼻炎の治療に向けた治験を進めるほか、鳥居薬品のシダキュアの仕組みを進化させた「皮下注射」タイプの免疫療法を手掛けるオランダのHALアレルギーグループなどが花粉症治療薬の開発を進めています。ヨーロッパでも、ブタクサの花粉症患者が現在の3400万人から7700万人まで増加すると推計する論文もあります。

 ただアレルギー反応には未解明な部分も多く、新薬開発は一筋縄ではいきません。アステラス製薬は今年に入ってスギ花粉症治療「DNAワクチン」の開発を断念しました。各国で薬価引き下げ圧力が高まる中、製薬各社は花粉症などアレルギー分野でどれだけリスクをとるかも問われます。

 2019年3月17日(日)

 

■原子力災害時の中核被曝医療、放射線医学総合研究所に指定 原子力規制委員会

 原子力規制委員会は13日の定例会合で、原子力発電所事故で被曝(ひばく)した人の専門的な治療を担う人材を育成する中核拠点として、放射線医学総合研究所(放医研、千葉市)を指定することを決めました。

 放医研を中心に福島県立医科大などが連携し、専門機関の医師や看護師、技師といった専門家を育成。事故時に被曝医療を担う各地の「原子力災害拠点病院」を支援する体制にします。

 国は東京電力福島第1原発事故を教訓に、被曝医療の体制を刷新。放医研が属する量子科学技術研究開発機構や福島県立医科大、広島大など全国5カ所の専門機関を高度な被曝医療を担う「高度被ばく医療支援センター」に指定しました。

 今回、原子力災害が起きた際に被曝医療の中核的な役割を果たす「基幹高度被ばく医療支援センター」に、量研機構を新たに指定し、各高度被ばく医療支援センターで働く専門家の育成や患者の内部被曝の分析などで先導的な役割を担う施設として明確に位置付けます。指定は4月1日付で、放医研が属する量研機構が初めてとなります。

 2019年3月17日(日)

 

歯の再生医療の安全性と効果を臨床研究へ 順天堂大の研究チーム

 濃縮した血小板を使う歯科の再生医療について、順天堂大の飛田護邦(とびた・もりくに)准教授(口腔(こうくう)外科学)の研究チームは15日、安全性を検証し、効果もみる臨床研究を厚生労働省に届け出ました。同様の再生医療は、再生医療安全性確保法に基づき全国で行われていますが、臨床研究が実施されていないケースがあり、専門家から「安全性や効果が担保されていない」などの指摘がありました。

 血液に含まれる血小板は、傷付いた体の組織を修復するタンパク質を出します。この性質を利用して濃縮した血小板が使われています。保険が適用されない自由診療のため費用が高額で、患者の経済的負担が大きくなっています。歯周病で失った骨の再生を促す場合、保険診療で1本数千円のところ、数万円以上請求されることもあります。

 臨床研究では患者2人ずつで、代表的な5つの治療を検証します。歯周病のほか、抜歯後の傷口の治癒促進、インプラント治療での骨の強化、割れた歯の修復、一度抜いた歯の再移植で、採血した血液20ミリリットルから濃縮した血小板を作り、ゼリー状にして患部に移植します。1カ月安全性を重点に確認し、来年度にも効果を確かめる別の臨床研究も始める予定。

 厚労省によると、血小板など患者自身の体細胞を加工して移植し、再生を促す医療は、再生医療安全性確保法が施行された2014年11月以降、全国で2000件以上実施され、約半数が歯科関連といいます。

 飛田准教授は、「安全性と効果について議論できるだけのデータを集め、検証したい」と話しています。

 2019年3月16日(土)

 

■使い捨てプラスチック、2030年までに大幅削減 国連環境総会が宣言を採択

 ケニアの首都ナイロビで開催されていた第4回国連環境総会は15日夕(日本時間同日夜)、すべての国に対して2030年までに使い捨てプラスチックの大幅削減を求める閣僚宣言を採択し、閉幕しました。厳しい環境規制を嫌うアメリカの賛同が得られず、日本が提案した作業部会の設置も見送られるなど、6月に大阪で開催する主要20カ国・地域首脳会議を前に課題を残しました。

 国連環境総会は国連環境計画の意思決定機関で、プラスチックごみの海洋汚染対策が閣僚宣言に盛り込まれたのは初めて。宣言案ではプラスチックごみ削減の数値目標には触れず、抽象的な表現にとどめたものの、アメリカは採択直前になって「問題の重要性は認識するが、特定のプラスチック製品をターゲットとすることには反対だ」と表明しました。

 このほか、日本とノルウェー、スリランカが共同提案した「海洋プラスチックおよびマイクロプラスチックに関する決議」も採択されました。プラスチックやマイクロプラスチックの悪影響など、早急に研究データを収集するよう国連環境計画に要請した一方、プラスチックごみの削減策などを議論する作業部会を国連に設置する案は削除されました。

 アメリカは昨年の主要7カ国首脳会議で提案されたプラスチックごみ削減の数値目標「海洋プラスチック憲章」に日本とともに賛同せず、対策に消極的だと批判を浴びた経緯があります。各国は閣僚宣言やすべての決議での合意に向けてアメリカとの間で妥協点を探りましたが、またも折り合えませんでした。

 日本は主要20カ国・地域首脳会議の議長国として、先進国と途上国がともにプラスチックごみ対策に取り組むための支援の枠組み策定などを検討しています。環境省幹部はアメリカの姿勢について「国際的な合意を追求する上では残念。アメリカとの対話を深め、主要20カ国・地域首脳会議では実効性ある対策での合意を目指したい」と話しました。

 世界のプラスチックの年間生産量は3億トン以上に上り、少なくとも5兆個のプラスチック片が海洋を漂っていると推計されています。

 2019年3月16日(土)

 

人工透析せず死亡、福生病院への立ち入り調査始まる 専門医らで作る日本透析医学会

 透析の専門医らで作る日本透析医学会(理事長=中元秀友・埼玉医科大教授)の調査委員会は15日、公立福生病院を立ち入り調査しました。人工透析治療の中止の選択肢を提示され、その後死亡した女性患者(当時44歳)への担当医と病院の対応などについて病院側に確認しました。3月内にも見解をまとめる方針です。

 調査はこの日昼すぎに始まり、午後4時ごろまでに終了しました。独自に調査委員会を立ち上げた日本腎臓学会も調査委員を派遣。詰め掛けた報道陣が建物の外から遠巻きに様子をうかがいました。学会、病院とも調査内容については明らかにしませんでした。

 透析医学会が2014年にまとめた提言では、透析の中止などを検討する場合として、がんなどを併発した終末期の患者らを想定。透析を見合わせる際には、患者や家族への十分な説明や、医療チームで検討した上で決めることを求めています。

 透析医学会の調査委員会は今後、聞き取りをもとに病院を受診した腎不全患者の当時の容体が終末期に相当するのかを検討。さらに、担当医の治療の選択、患者や家族への説明がどうだったかについて調べます。提言についての担当医や病院の認識についても検討し、不適切な点がなかったか評価するとみられます。

 調査委員会は、早ければ22日の学会理事会に調査結果を報告。学会は内部の倫理委員会で検討し、3月内にも見解を示す方針です。

 腎不全患者の治療に長年携わってきた、大塚台クリニック(東京都豊島区)院長の高橋公太・新潟大名誉教授は、「速さを優先して部分的な調査にとどまるのではなく、時間をかけてもしっかりと事実を解明するべきだ」と指摘しています。

 2019年3月16日(土)

 

■1日11時間超勤務で心筋梗塞リスクが1・6倍に がん研究センターなどが調査

 国立がん研究センターや大阪大などの研究チームは15日、1日の勤務時間が11時間を超える男性は7~9時間の標準的な勤務時間の男性に比べて、急性心筋梗塞を発症するリスクが1・6倍になるとする調査結果を発表しました。

 労働時間は健康に影響を与える重要な要因の一つ。一般的に労働時間の長い人は標準的な労働時間の人に比べて健康状態が悪いとする報告はこれまでもありましたが、この調査は1993年に茨城、新潟、高知、長崎、沖縄の5県に住む40〜59歳の男性約1万5000人を対象に行われたアンケート結果をもとに、労働時間と急性心筋梗塞・脳卒中発症との関連を以後約20年間追跡したもの。労働時間と発症リスクの関係をこの規模と期間で追った調査は国内初。

 今回の調査では1日の労働時間を、7時間未満、7時間以上9時間未満、9時間以上11時間未満、11時間以上の4つのグループに分類。その後の急性心筋梗塞と脳卒中の発症状況をグループ間で比較しました。

 1日の労働時間が11時間以上のグループは、7時間以上9時間未満のグループと比べて急性心筋梗塞の発症リスクが1・63倍高いことが確認され、その中でも調査開始時の年齢が50〜59歳の男性の場合はそのリスクが2・6倍になっていました。他方、今回の分析では脳卒中の発症リスクとの関連は確認されませんでした。

 この研究チームは、生活習慣病の予防や健康寿命の延伸のため、さまざまな生活習慣と、がん、脳卒中、心筋梗塞などの病気との関係を調査・研究しています。今回の分析は地方の5地域に居住する男性を対象とした限定的な調査に基づくため、都市部を含む日本全体の男性や労働者に対して一般化することには慎重であるべきとしていますが、大規模で長期間の調査結果に基づく労働時間と急性心筋梗塞の発症リスクの関連を初めて示した研究としての意義があります。

 大阪大大学院医学系研究科公衆衛生学の磯博康教授は、「長い期間、長時間労働を続けているとその時は健康でも、定年後に心筋梗塞になるリスクが上がるとみられる。労働時間を見直すなど注意する必要があるのではないか」と話しています。

 2019年3月15日(金)

 

■世界初、iPS細胞から網膜シートを自動培養 日立製作所と理化学研究所

 日立製作所と理化学研究所は14日、iPS細胞(人工多能性幹細胞)から網膜色素上皮細胞シートを作製する自動培養に世界で初めて成功したと発表しました。同シートは目の難病の「加齢黄斑変性」治療の臨床研究で移植手術に使われています。自動培養が実用化されれば、治療法が確立した際にシートの安定供給が見込め、再生医療の普及に役立つと考えられます。

 加齢黄斑変性治療の臨床研究は2014年9月、理研生命機能科学研究センターの高橋政代プロジェクトリーダーらの研究チームが、iPS細胞を使った初めての治療として女性患者にシートを移植しました。移植2年後の経過が良好であると報告されています。

 有効性や安全性が確認されると、一般の医療として認められます。治療の臨床研究が進む一方、移植するシートの製造は、高度な技術を要すること、細胞液を頻繁に交換する必要があること、培養施設が限られていることなどの理由で量産化が難しいという課題がありました。

 日立は今回、外部と完全に遮断し無菌状態で培養できる装置や、網膜組織を培養する専用容器を開発。iPS細胞の培養経験が豊富な理研のノウハウも取り入れ、熟練技術者による手作りとほぼ同じ期間で、同品質のシートを作製することに成功しました。

 開発した装置は研究段階で、実用化は未定といいます。日立と理研は、「医療用細胞の安定的な量産化を可能にし、再生医療を身近な医療に導く一歩となる」としています。

 成果は、13日付のアメリカの科学誌「プロスワン」(電子版)に掲載されました。

 2019年3月15日(金)

 

■食中毒報告数、寄生虫アニサキスが最多 厚労省が公表

 2018年の食中毒の報告件数のうち、海の魚介類に寄生し、激しい胃痛などの原因となる寄生虫アニサキスが、ウイルスや病原菌を抜いてトップになったことがわかりました。厚生労働省が13日に公表しました。

 アニサキスはサバやアジ、サンマ、イカなどの主に内臓に潜み、刺し身などの生食をッま体に入ります。約3週間で排出される間に、胃や腸に激痛を起こすことがあります。内視鏡で除去する治療法が一般的で、死亡例はありません。

 厚労省によると、2018年の食中毒の報告総数は1330件。そのうちアニサキスは468件で、2位の病原菌カンピロバクターの319件、3位のノロウイルスの256件を上回りました。2018年はカツオ由来の食中毒の報告が多くなりました。

 一方、アニサキスは感染が広がらないため、患者数は478人で、ノロウイルスの8475人やカンピロバクターの1995人を大きく下回っています。

 報告件数が増えた背景には、食品衛生法に基づく国への届け出の項目に、2013年からアニサキスが明示されたことが影響しているとみられます。アニサキスは十分な加熱や冷凍処理で感染力を失いますが、しょうゆやワサビ、酢締めでは効きません。

 厚労省は、十分に処理された魚介類を選んで食べるよう注意を呼び掛けています。

 2019年3月15日(金)

 

■児童虐待の被害、過去最多1394人で36人死亡 警察庁が発表

 昨年1年間に全国の警察が摘発した児童虐待事件は1380件で、被害に遭った18歳未満の子供は1394人でした。ともに過去最多で、うち36人が亡くなりました。夜間など緊急の対応が必要として、警察が一時的に保護した数は統計がある2012年から増え続け、4571人に上りました。警察庁が14日発表しました。

 事件として親や養親らを摘発した件数の約8割は身体的虐待で、傷害と暴行容疑が大半を占めました。強制わいせつなど性的虐待は前年比33・7%増の226件。事件化が難しい心理的虐待は摘発数の2・5%にとどまりました。摘発人数は1419人で、最多は実父の622人。実母352人、養父・継父266人、内縁の男127人と続きました。

 被害に遭った子供は前年より19・3%増え、性別では男性717人、女性677人。無理心中など以外で22人が亡くなり、容疑別では殺人12人、傷害致死5人、保護責任者遺棄致死4人、逮捕・監禁致死1人でした。虐待で亡くなった子供は前年より22人減りました。2006年は111人に上りましたが、2013~2017年は50~60人台で推移しています。

 警察庁は事件が増えた理由を「社会の関心が高まり、情報提供が増える中で徹底した捜査を進めているため」とみています。

 また、虐待を受けているとして、全国の警察が昨年に児童相談所(児相)に通告した18歳未満の子供は過去最多の8万252人(確定値)。前年より22・7%多く、統計がある2004年から14年連続で増えました。

 児相に通告した虐待で最も多いのは、言葉による脅しや無視など子供の心を傷付ける心理的虐待で、約7割を占める5万7434人(前年比23・7%増)。うち、子供の前で配偶者らを暴行したり罵倒したりする「面前DV」が約6割の3万5944人に上りました。身体的虐待は1万4836人(20・2%増)、育児放棄(ネグレクト)7722人(20・7%増)、性的虐待260人(3・6%増)でした。

 警察は通告とは別に、通報などで駆け付けた現場で虐待が認められないと判断しても、児相や市町村に取り扱いがないか照会するなどして情報を共有しています。昨年は2万8598件の情報を提供し、前年より25・9%増えました。

 一方で、児相は児童虐待防止法に基づき、子供の安全確認時の警察官の同行など警察に援助を要請しており、昨年は339件で前年を23・7%上回りました。

 東京都目黒区の船戸結愛(ゆあ)ちゃん(当時5歳)が昨年3月に亡くなった事件を受け、児相は通告から48時間以内に安全を確認できない場合、必ず警察と情報を共有することなどがルール化されました。警察庁は児相から援助要請が増えた背景に情報共有の強化があるとみています。

 2019年3月14日(木)

 

■iPS細胞を使い、小児の脳のがんをマウスで再現 東大チーム

 人のiPS細胞(人工多能性幹細胞)を使い、治療が難しい子供の脳のがんの仕組みをマウスで明らかにしたと、東京大の研究チームが発表しました。脳のがんの状態を再現したマウスを使い、治療薬の候補を見付けるとともに、他の小児がんに応用できる可能性も示せたといいます。

 論文は6日、アメリカの科学誌「セルリポーツ」に掲載されました。

 この脳のがんは「非定型奇形腫様/ラブドイド腫瘍(しゅよう、AT/RT)」で、3歳未満の幼児に多くみられます。患者は国内で年に数人で、半数以上が生後1年以内に亡くなるといいます。「SMARC(スマーク)B1」という遺伝子の異常が原因の一つですが、病態はよくわかっておらず、定まった治療法はありません。

 東京大医科学研究所の山田泰広教授(腫瘍病理学)らの研究チームは、この遺伝子が欠損した人のiPS細胞をつくり、マウスの脳に移植。その結果、マウスの脳に腫瘍ができ、調べるとAT/RTの特徴を持っていました。また、この腫瘍ができると増える2種類の遺伝子を特定、遺伝子の増加を抑える薬を使い、がん細胞の増殖を抑えられたといいます。

 山田教授は、「人の細胞を使い、がん化のモデルを初めて再現した」と説明。他の小児がんである神経芽腫や肝芽腫もAT/RTと同じ方法で増殖を抑えられたといい、「他の小児がんの治療に応用できる可能性がある」と話しています。

 2019年3月14日(木)

 

■人工透析中止は5人、うち4人が死亡 公立福生病院

 東京都福生(ふっさ)市の公立福生病院の人工透析治療を巡る問題で、2014年ごろ以降、新たに2人が外科医(50歳)から治療をやめる選択肢を提示され、いずれも死亡していました。昨年8月に亡くなった女性(当時44歳)も含めて計5人が治療の中止を選び、うち4人が亡くなった全容が判明しました。

 これとは別に病院では、腎臓病総合医療センターを開設した2013年4月以降、2017年3月までに、最初から透析治療をしない「非導入」で計20人が死亡したことがわかっています。

 人工透析治療をやめた5人とも終末期ではなく、治療を続ければ「年単位で生きた」と外科医は話しています。外科医と腎臓内科医(55歳)によると、2014年ごろ、腎不全のため意識不明で運ばれた80歳代女性に緊急的な治療を実施。意識が戻った女性が「(透析を)やめてくれ」と申し出たため、外科医が「やめたら死につながる」と説明。本人と家族の承諾を得て翌日に透析を中止し、女性は自宅に戻って死亡しました。

 外科医らは「驚いた。(最初は中止に)積極的ではなかった」と振り返ります。だが、「(患者が治療を)よく理解しないまま(医師側に)お任せ」するのは「正しい医療ではない」と考え、継続か中止かの選択肢を提示することに決めました。

 初めて治療をやめる選択肢を示したのは2015年ごろ。導入後2カ月の男性(55歳)に対して、「継続するも自由、やめるも自由」と提示。男性は「やめる」といって自宅に帰りました。男性は食事制限を受けていましたがステーキを食べて亡くなったといい、家族から感謝されたといいます。

 昨年に入ると、「より具体化し、自信を持って」治療をやめる選択肢を示すようになりました。80歳代女性の透析用血管の分路が不調で持病もあったため、外科医が「どうするかを考える時期だ」と中止を含めた選択肢を提示。家族も同意して治療は中止され、女性は約2週間後に自宅で死亡しましたた。

 さらに、30歳代男性から「後、何年治療したら(体が)よくなるのか」と問われ、外科医は、一生続ける必要があることを説明すると同時に、やめる選択肢を提示。男性は「ようやくわかった。透析をする意味も価値も感じない」と話して紹介元のクリニックに戻りました。生死は不明だといいます。

 外科医は、透析治療をやめると心臓や肺に水がたまり、「苦しくなってミゼラブル(悲惨)で、見ているこちらも大変。透析の離脱(中止)はしてほしくない」と話す一方、「『透析したくない』というのは立派な主張。患者にとってメリットだという信念で、適正な選択肢を示している」と話しています。

 2019年3月14日(木)

 

■先天性CMV感染症、健康保険で検査可能に 早期治療に期待

 年間約3000人の感染児が誕生し、一部は聴覚などに重い障害が起きる恐れがありながら、見逃しの多さや対応の遅れが指摘されてきた「先天性サイトメガロウイルス(CMV)感染症」。新生児の確定診断のための尿検査が昨年から健康保険でできるようになり、治療や療育の可能性が広がると期待されています。

 一方、病気の認知度は低く、誤解に基づく患者差別もあります。専門家や患者会は、「予防にも診断後にも正しい知識が大切」と啓発の重要性を強調しています。

 CMVは、健康な子供や大人には無害な有り触れたウイルスです。感染者の唾液や尿を通じて排出され、多くの人は乳幼児期に感染し免疫を獲得します。

 しかし、妊娠中に初感染したなどのケースの一部で胎児にウイルスが移行します。毎年生まれる先天性CMV感染症児約3000人のうち、1000人程度に難聴や発達の遅れなどの障害が出ると推定されています。症状が目立たない子もおり、確定診断されず適切な対処の機会を逃す例が多いといわれます。

 そうした中、厚生労働省の研究班が新生児の尿での診断法を開発し、生後3週間以内の検査が昨年1月から保険適用になりました。

 茨城県の看護師、藤(ふじ)千恵さん(35歳)は「早く確定診断できるのは朗報」と語っています。2012年生まれの次女(6歳)は先天性CMV感染症で重度の聴覚障害がありますが、診断に半年近くかかりました。誕生直後の聴覚スクリーニングは「要再検」で難聴の疑いはありましたが、「羊水が耳に残っているのでは」との医師の言葉や、妊娠・出産とも順調で「まさか」という思いもあり、検査が遅れました。人工内耳により徐々に「聞こえ」を取り戻している娘の姿は救いですが、「もっと早くわかっていれば」と自分を責める気持ちは消えないといいます。

 先天性CMV感染症に有効な抗ウイルス薬はあるものの、使用は正式に承認されていません。生後30日以内の治療開始で聴覚障害などの進行を抑えられたとの研究報告を基に、海外では新生児の治療に使われています。しかし、免疫低下などの深刻な副作用があり、使用には厳重な注意が求められています。

 厚労省研究班の岡明(おかあきら)東京大教授(小児科)は、「世界で行われている治療を日本でも可能にするのは重要で、早期診断はその大きな一歩。今後は安全で有効な治療薬の使用法を探る研究が必要だ」と話しています。

 また、先天性CMV感染症の認知度は低いのが現実です。厚労省研究班の山田秀人(ひでと)神戸大教授(産科婦人科)らが2014年、全国の妊婦に胎児に影響がある感染症の知識を尋ねたところ、先天性CMV感染症を知っていたのは18%にとどまりました。

 山田教授らは感染リスクを減らすための妊婦向け啓発資料を作り、医師や保健師らに活用を勧めています。上の子の育児など、乳幼児と接したらせっけんで手洗いし、子供と食べ物や食器などを共有しないよう強調しています。

 一方、妊婦以外は特別な注意は不要なのに、誤解に基づき患者が差別される例があります。藤さんも全く根拠のない差別に苦しみ、次女の入園が決まっていた保育園が「感染症」との診断書を見て、入園取り消しを伝えてきました。苦労して探した公立保育園では、食事も遊びもほかの子供たちと別にされました。小児科医に「特別な対応は不要」と説明してもらい、1年余りの交渉の末、やっと対応が改まったといいます。

 先天性CMV感染症などの先天感染児の母親らでつくる患者会「トーチの会」代表の渡辺智美さんは、「残念な対応はまだあるが、現実には乳幼児の多くがCMVに感染しているので保育園などで隔離する意味は全くない。そうした情報も会のホームページで発信しています」と話しています。

 2019年3月14日(木)

 

 

■大気汚染による死者数は喫煙原因を上回る ドイツの研究チーム

 大気汚染が原因の早期死者数は全世界で年間およそ900万人に上るする研究結果をドイツの研究チームが発表し、たばこが原因の死者数を上回るとして、汚染物質を排出する化石燃料の使用を抑える必要性を訴えています。

 ドイツのマックスプランク化学研究所などの研究チームは12日、PM2・5などの大気汚染物質が原因とみられる呼吸器や循環器の病気で死亡した人の数が2015年の1年間で世界でおよそ880万人、ヨーロッパでは79万人に上ったと発表しました。

 今回の研究は、地域ごとにPM2・5などの有害物質にさらされる値を算出した上で、各地域で呼吸器や循環器などに関連する病気で死亡した人の数を当てはめる新たな手法で推計したということです。

 一方、世界保健機関(WHO)によりますと、たばこが原因で死亡する人は年間およそ700万人と推定されていて、今回の研究結果は、大気汚染が喫煙や受動喫煙による死者を上回るとしています。

 今回の研究の結果、群を抜いて最も多かった死因は、PM2・5として知られる直径2・5ミクロン未満の微小粒子状物質であることが判明。ちなみに平均的な人の毛髪の太さは60~90ミクロンです。「PM2・5による健康への有害な影響がこれまで考えられていたよりはるかに大きいことが、最新データでわかった」と、研究に当たったヨス・レリーフェルト研究員は説明しています。

 WHOは、PM2・5などの大気中の微小粒子状物質の濃度について、1立方メートル当たり年平均10マイクログラムを超えないよう勧告しています。ヨーロッパ連合(EU)の基準値はこれよりはるかに緩く、年平均25マイクログラムですが、この水準でさえも、いくつかのヨーロッパ諸国では常態的に上回っています。

 今回の研究によると、大気汚染による死亡者数は、全世界では人口10万人当たり年間120人であるのに対し、ヨーロッパでは、ほかの大半の地域よりも厳しい汚染規制が行われているにもかかわらず、人口10万人当たり年間133人となっています。

 この理由についてレリーフェルト研究員は、「大気の質が低下している地域に人口が密集すると、世界最高レベルの暴露につながることから説明できる」と指摘。「大気汚染の最大の原因は化石燃料の過度な使用にあり、再生可能エネルギーに切り替えることで、ヨーロッパの大気汚染が原因の死亡率を最大55%引き下げることができる」と訴えています。

 2019年3月14日(木)

 

■肝臓病治療薬の横流し、千葉県の病院理事長を逮捕 貯蔵容疑「違法性を認識」

 肝臓病治療薬「ラエンネック」を許可なく販売目的で保管したとして、千葉県警は13日、野田中央病院(千葉県野田市)を運営する医療法人社団「喜晴(きせい)会」理事長で医師の八木禧徳(よしのり)容疑者(73歳)を医薬品医療機器法違反(無許可販売目的貯蔵)容疑で逮捕しました。県警は同病院から医薬品が不正に流出した経緯を調べています。

 逮捕容疑は、浅田一弘容疑者(72歳)ら日本人3人と共謀し、1月9日~2月26日ごろ、医薬品販売業の許可がないのに、同病院でラエンネック15箱(1箱2000本、取引価格1本当たり186円)を販売目的で保管したとしています。「(浅田容疑者らが)取りに来るまで院内で保管していた。違法性はわかっていた」と容疑を認めているといいます。

 ラエンネックはさらに日本人3人から、自称・埼玉県川口市の会社役員、胡晃央=本名・祝銘思(しゅくめいし)=容疑者(39歳)ら中国籍の2人に販売されたとみられます。

 県警は、八木容疑者が日本人3人から代金を受け取っていたとみています。少なくとも昨年10月以降、ラエンネック以外の複数の医薬品を横流ししていた可能性もあり、5人はこれらの医薬品を国内外の業者に転売していたとみられます。また、他人の保険証を不正に使って医薬品を入手していた可能性もあり、県警が捜査を進めます。

 ラエンネックの製造元によりますと、肝機能の改善のために医師が処方するほか、含まれる成分が美容に効果が見込まれるとして美容外科などで使われる場合があるということです。

 野田中央病院のホームページによると、同病院は地域の中核的な病院。内科や循環器内科、外科などがあり、病床数は34床。人工透析センターも設けられています。

 2019年3月14日(木)

 

■インフル治療薬ゾフルーザ、未使用患者から耐性ウイルス 感染症研究所が発表

 国立感染症研究所は12日、新しいインフルエンザの治療薬「ゾフルーザ」に耐性を持つウイルスが、治療薬を服用していない患者から検出されたと発表しました。治療薬を使った患者の体内で増殖した耐性変異ウイルスが、ほかの人に感染した可能性があります。耐性変異ウイルスが広がると、ゾフルーザが効かない可能性もあります。

 感染症研究所などが2018年11月~2019年2月に採取されたA香港型のウイルスを解析したところ、ゾフルーザを使っていない生後8カ月~12歳の3人から、治療薬に耐性を持つ変異ウイルスが見付かったといいます。

 ゾフルーザは塩野義製薬(大阪市中央区)が開発し、昨年3月に発売されました。1回錠剤を飲むだけですみ、使い勝手がいいことから今シーズン多くの医療機関で処方されました。2018年10月~2019年1月に国内の医療機関に供給されたゾフルーザは約550万9000人分。昨シーズンの約40万人分から急増しました。

 しかし、ゾフルーザは臨床試験の段階から、特に12歳未満で従来のインフリエンザ治療薬より耐性変異ウイルスが生まれやすいと指摘されていました。耐性変異ウイルスが検出された患者は、発熱などの症状が出る期間が長引くことも知られています。

 アメリカでは2018年12月に12歳以上への使用が承認され、12歳未満への使用も臨床試験が進んでいます。感染症研究所は「国内のみならず世界的にも極めて重要な公衆衛生上の課題」として、引き続き耐性ウイルスの監視と情報提供をしていくといいます。

 2019年3月13日(水)

 

■乳児用液体ミルク、明治も4月下旬から発売へ 災害備蓄向けに缶入り

 明治は13日、乳児用液体ミルク「明治ほほえみ らくらくミルク」を4月下旬に発売すると発表しました。国内での製造販売が昨年解禁され、3月11日に販売を開始した江崎グリコに続く商品化となります。

 江崎グリコは紙パック容器入りですが、明治は災害備蓄用としての活用も考え、丈夫なスチール缶入りにしました。容量は240ミリリットルで、希望小売価格は税抜き215円。お湯で溶かすことや70℃以上に温めるといった粉ミルクの調乳作業が不要で、缶をよく振ってふたを開け、ミルクを哺乳瓶などに移せばそのまま乳児に与えられます。

 商品発表会で明治の松田克也社長は、「粉ミルクのリーディングカンパニーとして、使い勝手や容量、種類の展開などの研究を重ねて、消費者がさらに満足できるようにしていきたい」と話しました。

 開封前の賞味期限は1年間。ドラッグストアや食品スーパー、赤ちゃん用品専門店での販売のほか通販もします。3月下旬から一部のドラッグストアで先行販売します。

 江崎グリコの乳児用液体ミルク「アイクレオ赤ちゃんミルク」は、賞味期限6カ月で、希望小売価格は税抜き200円(125ミリリットル入り)。

 2019年3月13日(水)

 

■富士フィルム、バイオ医薬品製造会社を買収 1000億円弱、製造能力増加へ

 富士フイルムホールディングス(HD)は、世界的な成長が見込めるバイオ医薬品の事業を強化するため、アメリカの大手メーカーの子会社を約1000億円で買収することになりました。

 富士フイルムHDは、アメリカのバイオ医薬品大手の「バイオジェン」(マサチューセッツ州)から、デンマークに大規模な製造拠点を持つ子会社を買収することで合意しました。

 買収額は約8億9000万ドル、日本円にして約990億円に上ります。

 バイオ医薬品は、微生物などの遺伝子を組み換えた細胞から作られ、副作用が少ないとされており、今後、世界的に大きな成長が見込まれる分野とされています。

 富士フイルムHDは、この分野ですでに研究開発への投資を加速させており、今回の買収によって、バイオ医薬品の製造能力を一気に今の3倍に増やせ、大型新薬や後発品の生産も可能になるといいます。

 富士フイルムHDの古森重隆会長は12日の記者会見で、「世界のバイオ医薬品の市場は年8%の成長率があり、今後もこの成長は継続するとみている。買収によって、大量生産も可能になるので、ニーズに対応できるようになる」と述べました。

 2019年3月13日(水)

 

■白血病を発症する新たな仕組みを発見 大阪大の研究チーム

 血液のがん「白血病」の発症にかかわる新たな仕組みを、大阪大微生物病研究所の高倉伸幸教授(幹細胞医学)らの研究チームが発見し、12日発表しました。研究成果は、イギリス科学誌「ネイチャー」に掲載されました。

 白血病はがん化した血液細胞が一気に増える「急性」とゆっくり増える「慢性」に、さらに細胞の種類によって「骨髄性」と「リンパ性」に分けられます。白血病と診断される人は年間約1万2000人(2014年)で、年々増えています。

 研究チームは、「レグネース1」という遺伝子に着目。この遺伝子をなくしたマウスでは、脾臓(ひぞう)やリンパ節が肥大化し、異常な造血幹細胞が増え、急性骨髄性白血病の症状を示すことがわかりました。実験した11匹のマウスはすべて約100日以内に死亡しました。この遺伝子は、たくさんの別の遺伝子の働きを調節し、造血幹細胞が増殖しすぎないようにする「ブレーキ役」と考えられるといいます。

 また、複数の白血病の人の細胞を解析すると、この遺伝子の働きが低下していることも確認できたといいます。

 大阪大の木戸屋浩康・助教(血管生物学)は、「急性骨髄性白血病の新しい発症メカニズムを明らかにできた。この遺伝子をターゲットにした治療薬の開発などにつなげたい」と話しています。

 2019年3月12日(火)

 

■新型インフルエンザの大流行は不可避 WHO、対抗戦略を発表

 世界保健機関(WHO)は11日、今後10年間にわたりインフルエンザの脅威から世界中の人々を守るための新戦略を発表しました。新たなパンデミック(世界的大流行)の発生は「避けられない」と、WHOは警告しています。

 WHOは、インフルエンザの年間の感染者数(大部分は季節性)は世界で約10億人、うち300万~500万人は重症で29万~65万人が死亡しているとして、インフルエンザを公衆衛生における世界最大の難題の一つと指摘。WHOが今回打ち出した戦略は、2019年から2030年にかけて季節性インフルエンザを予防し、動物から人へのウイルスの拡散を抑え、次のパンデミックに備えることを目的としています。

 インフルエンザの破壊的なパンデミックは、たびたび発生しています。1918年に発生したスペイン風邪では世界で数千万人が死亡。それ以降、世界規模の大流行は1957年、1968年、2009年と3回発生しており、2009年のパンデミックではブタ由来のH1N1型インフルエンザにより世界214カ国で約1万8500人が命を落としました。

 WHOは多くの人に免疫がない新型インフルエンザのパンデミックは避けられないとして、「これほど相互につながり合った世界では、問題は新たなパンデミックが起きるかどうかではなく、いつ起きるかなのだ」と警鐘を鳴らしています。

 新戦略を立ち上げるに際して、テドロス・アドハノンWHO事務局長は、「インフルエンザの大流行による損失は、予防費用をはるかに上回る」と指摘。WHOによると、パンデミックへの備えに必要な費用は1人当たり年間1ドル(約110円)未満とみられるのに対し、パンデミックが発生した場合の対応費用は、およそ100倍になります。

 WHOは今回発表した戦略で各国に対し、従来の健康事業を強化するとともに、それぞれの状況に応じてインフルエンザ対策計画を策定し、疾病の監視、対応、予防、拡大防止などに力を入れるよう呼び掛けています。

 感染拡大を防ぐ最も効果的な方法としてWHOが推奨しているのが、特に医療従事者やインフルエンザ合併症のリスクが高い人々に毎年予防接種を受けてもらうようにすることです。

 一方でWHOは、より効果的で利用しやすいワクチンと抗ウイルス薬治療を開発する必要性を訴え、研究開発や技術革新、ワクチン改良などを実現するために、関係各所との協力を拡大すると主張。新戦略によるメリットはインフルエンザに限らず、エボラ出血熱など、その他の感染性疾患の検出増加にもつながると述べています。

 2019年3月12日(火)

 

■風疹患者再び増、1週間で113人 麻疹患者は26人

 国立感染症研究所は12日、直近1週間(2月25日~3月3日)の風疹の新規患者数が113人に上ったと発表しました。2週連続で100人を超え、今年に入って増加傾向にあります。専門家は春の異動シーズンで感染がさらに広がる恐れがあるとして、注意を呼び掛けています。

 都道府県別では、新規患者数の最多は東京都の35人。神奈川県21人、大阪府15人、千葉県11人と続きました。

 風疹は昨夏から患者が増加。昨秋から冬にかけて、16週連続で1週間100人を超えました。2018年の年間患者数は2917人に上り、現行の統計調査が始まった2008年以降、2番目の多さでした。今年の累計患者数も768人で、すでに2014~2017年の各年の年間患者数を超えました。

 風疹は2~3年流行が続くことが多く、前回の流行では2012年に2386人の患者が出て、2013年には1万4344人とさらに増えました。感染症に詳しい、岡部信彦・川崎市健康安全研究所長は、「春の異動で感染が広がると、前回流行の二の舞いになる」と警告しています。

 厚生労働省も対策に乗り出しました。患者の中心は、過去に1回もワクチンの定期接種を受ける機会がなかった39~56歳男性です。約1610万人いるこの世代の男性が2019~2021年度の3年間、原則無料でワクチン接種を受けられるようにします。早ければ4月から始めます。供給不足を防ぐため、2019年度は39~46歳に絞ります。抗体検査を受けてもらい、免疫がない人にワクチンを打ちます。免疫がないのは2割ほどとみられます。

 対象者は、居住する市区町村から配られるクーポン券を持参すれば、抗体検査は原則全国どこでも受けられます。厚労省は健診の機会にもクーポン券を持参すれば検査を受けられるように、事業所や自治体に呼び掛けています。

 厚労省は3月中のクーポン券送付を呼び掛けていますが、準備の進み具合は自治体間で差があります。東京都練馬区や名古屋市は3月末の発送を目指すものの、横浜市や大阪市はまだ発送時期のめどはついていないといいます。

 風疹はウイルス性の感染症で、くしゃみやせきなどのしぶきでうつり、2~3週間後に発熱や発疹、リンパ節のはれなどの症状が出ます。症状を和らげる対症療法以外に治療法はなく、ワクチンで感染を防ぐしかありません。妊娠初期にかかると、赤ちゃんに難聴や心疾患などの障害が起こる恐れがあります。

 岡部さんは、「周りに妊婦や出産希望者がいる人は、制度を待たず、自主的にワクチン接種を検討してほしい」と話しています。厚労省とは別に抗体検査やワクチン接種に補助を出す自治体もあります。

 関西を中心に流行しているはしか(麻疹=ましん)も、同じ直近1週間(2月25日~3月3日)で新規患者26人が報告されて、今年の累計患者数は285人に上り、昨年1年間の患者数を超えました。はしかと風疹の混合ワクチン(MRワクチン)を打てば予防することができます。

 2019年3月12日(火)

 

■厚労省、健康を保つための食事摂取基準を改定 「フレイル」予防にはタンパク質摂取を

 厚生労働省が高齢者の食事に関し、「フレイル」と呼ばれる心身の虚弱状態を防ぐため、65歳以上の人は毎日、体重1キログラム当たり1グラム以上のタンパク質を取ることが望ましいとする目安を初めて示しました。

 フレイルは、加齢に伴って筋力や認知機能が衰えて日々の活動が低下する状態で、放っておくと介護が必要になります。フレイル対策では、軽い運動に加えて食事の改善が重要です。

 厚労省は健康を保つための食事の基準をまとめた「食事摂取基準」の改定案に、フレイル予防の目安を盛り込みまし。例えば体重50キロの人の場合、食事を通じて最低1日50グラムのタンパク質摂取が必要になります。

 日本食品標準成分表によると、食品100グラム中に含まれるタンパク質は、焼きさば25グラム、ロースとんかつ22グラム、納豆17グラム、ゆで卵13グラムなど。

 改定案は、1日の食事に対するタンパク質の望ましい割合(総エネルギー量で比較)も改めました。今の基準は全年代通じて「13~20%」ですが、改定案は50~64歳「14~20%」、65歳以上「15~20%」としました。摂取上限を20%で据え置いたのは、タンパク質の取り過ぎは腎機能の悪化や糖尿病につながる恐れがあるためだです。

 ほかの栄養分の割合(65歳以上)は、炭水化物「50~65%」、脂質「20~30%」が望ましいとしました。

 このほか改定案では、食塩の摂取基準についても変更しました。高血圧や腎臓病を予防するための目標量について、15歳以上の男性では1日当たり7・5グラム未満、女性では6・5グラム未満に設定。男女とも今の摂取基準に比べて0・5グラム引き下げました。高血圧と腎臓病の重症化を防ぐための食塩の目標量として、新たに男女とも「1日6グラム未満」とする目標も設定しました。

 健康増進法に基づく日本人の食事摂取基準は、5年に1度見直されます。厚労省は近く改定案を決定し、来春から新基準を適用します。

 2019年3月11日(月)

 

■大塚製薬、アルコール依存症治療薬を発売 国内初の飲酒量低減薬

 大塚製薬は3月5日から、アルコール依存症患者における飲酒量を低減する治療薬として「セリンクロ(一般名:ナルメフェン)」を、全国の医療機関向けに発売したと発表しました。

 セリンクロは、飲酒の1~2時間前に服用することで、中枢神経系に広く存在するオピオイド受容体調節作用を介して飲酒欲求を抑え、アルコール依存症患者の飲酒量を低減する薬剤です。ヨーロッパでは、2013年からデンマークの製薬大手ルンドベックにより飲酒量低減薬として承認、販売されています。

 日本では、大塚製薬とルンドベックが共同で開発を進めてきました。抗酒薬や断酒維持を目的とした断酒補助剤は国内でもすでに販売されていますが、多量な飲酒を繰り返すアルコール依存症患者が飲酒量を減らしていく過程を補助する薬剤はありませんでした。

 アルコール依存症は、多量な飲酒を繰り返すことで飲酒したいという欲求が強くなり、飲酒行動をコントロールすることが難しくなる疾患です。国内には治療が必要なアルコール依存症患者が100万人いるとされ、健康や仕事、家庭生活に重大な支障を来すことで、社会的・経済的な影響が大きいとされています。

 最新のアルコール・薬物使用障害の診断治療ガイドラインでは、最終的な治療目標は原則的に断酒の達成とその継続とした上で、飲酒量低減治療は断酒に導くための中間的ステップあるいは治療目標の1つとして位置付けられています。セリンクロが飲酒量低減治療の新たな選択肢となることにより、アルコール依存症患者の治療に貢献することが期待されます。

 アルコール依存症を治療する意志のある患者を対象にした臨床試験(治験)では、偽薬(プラセボ)に比べて、試験期間中の飲酒日数と飲酒量をともに有意に減らせられたといいます。

 2019年3月11日(月)

 

■日立、iPS細胞の自動培養装置を製品化 再生医療向けに大量に培養

 日立製作所は11日、iPS細胞(人工多能性幹細胞)の商用生産に向けた自動培養装置を開発し、1号機を大日本住友製薬に納入したと発表しました。厚生労働省が定める再生医療の品質管理基準「GCTP省令」に対応し、臨床向けのiPS細胞を大量に培養できます。

 日立はグループ各社を通じて細胞の培養受託や輸送事業も強化し、再生医療ビジネスを丸ごと支援する体制を整えます。

 製品名は「アイエース2」。価格は顧客が作る細胞の種類などによって異なりますが、1台数億円とみられます。

 培養容器や細胞の栄養剤「培地」をためておくボトル、培地を流し込む流路などを外部と遮断した構造で、病原体や微生物の侵入を防ぎながら人の手を介さずに効率的に培養します。品質管理に必要な操作した人を記録する機能を搭載。本体には、培養室内の浄化作業に使う過酸化水素ガスに耐えられる材質を採用しました。

 大日本住友製薬は、培養した細胞をパーキンソン病患者に移植して治療する研究に使います。大日本住友製薬には3月末に2号機の納入も予定しています。日立はさらに2020年度に、ほかの企業に対して1台の納入を目指します。

 研究段階の細胞培養は少量ですむため、製薬企業や大学はこれまではほぼ手作業で対応してきました。ただ再生医療が医療として提供されるようになると、安く安定した細胞の供給が必要になります。日立グループは日立化成が細胞培養受託事業を手掛けるなど、機器やサービスの提供を広げています。

 2019年3月11日(月)

 

■乳児用液体ミルク、店頭販売を開始 災害時の備えにも期待

 お湯で溶かす必要のない赤ちゃん用の液体ミルクの店頭販売が11日から始まり、メーカーは、安全な水が入手できない災害時の備えとしても期待されるとしています。

 液体ミルクは母乳に成分を似せた乳製品で、常温のまま哺乳瓶に移して授乳できます。「江崎グリコ」は、赤ちゃん用の液体ミルクを先週のネット通販に続いて、11日から全国のベビー用品店やドラッグストアなどでも売り出しました。

 このうち東京都内の店舗では、子育て中の親を対象にした体験会が開かれ、担当者が常温で半年間保存でき、お湯に溶かす必要がないという特長のほか、開封後はすぐ赤ちゃんに与え、雑菌が繁殖しやすいため飲み残しは使わないなどの注意点を説明していました。

 参加した母親の1人は「出掛ける時は小分けの粉ミルクとお湯を持ち歩いていたので、荷物を減らせてありがたいです。最近は災害も多いので、家で保存しておこうと思います」と話していました。

 赤ちゃん用の液体ミルクは欧米を中心に普及する一方、国内では販売されていませんでしたが、厚生労働省と消費者庁が必要な基準を定めたことで、国内でも製造や販売ができるようになりました。

 江崎グリコの乳製品は「アイクレオ赤ちゃんミルク」で、125ミリリットル紙パック容器入りで希望小売価格は1本216円。同社の粉ミルクとの同量換算で3~4倍程度の出費になります。

 江崎グリコは、子育ての負担軽減に加え災害時の備えとしても期待されるとしており、商品開発を担当した永富宏さんは「東日本大震災などでは、『赤ちゃんにミルクをあげられない』という切実な声も聞かれた。きれいな水の確保が難しい場合に活用してほしい」と話していました。

 液体ミルクは、乳業大手メーカーの「明治」も13日、商品を発表する予定です。

 2019年3月11日(月)

 

■人工透析中止で患者死亡、東京都が口頭で指導 チェック体制が不十分

 東京都福生市の公立福生(ふっさ)病院で女性患者の人工透析が中止されおよそ1週間後に死亡した問題で、病院側が治療中止の妥当性について倫理委員会で協議せず、東京都が第三者のチェック体制が不十分だったなどとして、口頭で指導していたことがわかりました。

 昨年8月、福生病院で、腎臓病を患っていた44歳の女性の人工透析の治療が中止され、女性はおよそ1週間後に死亡しました。

 女性はもともと別のクリニックで透析を受けていましたが、クリニックの勧めで昨年8月に福生病院を受診し、その日のうちに透析の中止を選択して、同意書に署名していました。

 関係者によりますと、女性と担当医が透析を中止するに当たって、病院ではその妥当性についてほかの分野の専門家を含めて検討する「倫理委員会」を開いていませんでした。

 日本透析医学会では、透析を見合わせる時に倫理的な問題がある場合、倫理委員会や外部委員会などの助言があることが望ましいなどと提言しています。

 東京都は、病院が倫理委員会を開かなかったことなど、第三者によるチェック体制が不十分だったとして、担当医と患者のやりとりについて複数の医師がチェックしたり、助言したりする仕組みを作るよう口頭で指導したということです。

 女性の人工透析治療を中止したことについて、公立福生病院は「多職種で対応し家族を含めた話し合いが行われ、密室的環境で独断専行した事実はない。悪意や手抜きや医療過誤があった事実もない」などとコメントしています。

 2019年3月11日(月)

 

■アレルギー予防、母乳に効果なし 厚労省が新指針

 赤ちゃんの授乳と離乳食に関する国の指針に、母乳によるアレルギー予防効果はないことが盛り込まれることが決まりました。2007年以来、12年ぶりとなる指針改定は、母乳への過度な期待が親たちを悩ませている現状を踏まえ、授乳の支援の見直しを呼び掛けています。

 8日、厚生労働省の「授乳・離乳の支援ガイド」改定に関する研究会で、改定案が大筋で了承されました。改定案では、卵アレルギー予防のため、離乳食の初期から卵黄を与えることも盛り込まれました。2019年度から全国の産科施設や保健師らが指導の根拠にするほか、母子手帳にも反映されます。

 現行指針は、母乳が乳幼児期のアレルギー疾患予防に一定の効果があるとの研究結果を紹介していました。これに対し改定案は、最新の知見を基に「予防効果はない」と明記。粉ミルクや液体ミルクを選ぶ親の決定も尊重するべきだとし、「母親に安心感を与える支援が必要」としました。

 乳育児は世界保健機関(WHO)が推進し、国も後押ししています。2015年の厚労省調査で、生後3カ月では55%が母乳のみで育てています。だが、授乳の悩みは絶えず、厚労省研究班は昨年、科学的根拠に基づく再検討を要望。改定案には、粉ミルクを併用する混合栄養でも肥満リスクが上がらないことも記載されました。

 また、卵アレルギーを予防する離乳食に関する新たな見解も盛り込まれました。国立成育医療研究センターによる研究などを基に、これまでより早い離乳食の初期に当たる生後5~6カ月から、加熱した卵黄を試すことを推奨しています。

 現在の指針では、アレルギーの原因となる食べ物を与えることを避け、遅れる傾向があることも指摘されていました。卵を与える時期も生後7~8カ月ごろとしていました。

 さらに、母乳育児の場合、生後半年間まで鉄やビタミンDが不足しやすいとする研究成果があることを指摘。母親の食事で補給することも促しています。

 研究班の責任者で杏林大の楠田聡客員教授は、「母乳にメリットがあるのは間違いないが、過度に期待することはできない。混合栄養の親にはサポートが足りない現状があり、授乳不安が強く、より適切な支援が必要だ」と話しています。

 2019年3月10日(日)

 

■人工透析中止、福生病院院長が容認 女性死亡「意思を複数回確認」

 東京都福生市の公立福生(ふっさ)病院の人工透析治療を巡る問題で、外科医(50歳)は2014年ごろ、治療中止という方針を松山健院長(当時・副院長)に提案し、松山院長が了承していました。その後、患者に対して治療をやめる選択肢の提示が始まり、昨年8月に亡くなった女性(当時44歳)以外にも30歳代と55歳の男性ら数人が治療をやめる選択肢を示され、少なくとも2人が死亡しました。

 了承した理由について松山院長は、「選択肢を患者に提示することが普通の医療だから」と話しています。

 死亡した女性を巡っては、外科医と腎臓内科医(55歳)が昨年8月、「透析を受けない権利を患者に認めるべきだ」とする考えに基づき、透析治療の継続と、「死に直結する」という説明とともに治療をやめる選択肢を女性に提示。女性は治療をやめる意思確認書に署名しましたが、「撤回しようかな」などと治療再開の意思を示して亡くなりました。

 松山院長は「いろいろな選択肢を(女性に)与え、本人が(透析治療の中止を)選んだ上で意思を複数回確認しており、適正な医療だ」と強調。約5年前から透析治療中止を容認していたため外科医らから特段の報告はなく、女性のケースを知ったのは亡くなった後だったといいます。

 福生病院は、日本透析医学会のガイドラインで設置が望ましいとされている倫理委員会を開きませんでした。松山院長は「普通の医療の一環だから」と説明。「(病院全体で)年間200~300人が亡くなる。毎回開くのは非現実的だ」と話しました。

 一方、福生病院では2013年4月~2017年3月、最初から透析治療をしない「非導入」の選択肢を終末期ではない患者計149人に示し、20人が死亡しました。末期的な容体に限定している学会のガイドラインから逸脱していますが、松山院長は「非導入の選択肢は必要で、そのほうが倫理的だ。(他の医療機関は)『非導入の選択肢はない』と表向きはいうかもしれないが、患者を診ていたら(非導入が)あり得ることは医療人の誰もが思っていることだ」と話しました。

 また、松山院長は終末期医療について「意識がなく、意思表示が全くできない患者がいる。胃ろうや人工呼吸器は生命的には永らえる。医療費もそれなりに発生するが、それを是とするかどうかだ」と指摘。「透析治療を含め、どういう状況下でも命を永らえることが倫理的に正しいのかを考える切っ掛けにしてほしい」と語りました。

 2019年3月10日(日)

 

■膝関節の軟骨、iPS細胞で再生 京大が臨床研究申請へ

 京都大学iPS細胞研究所の妻木範行教授らは他人のiPS細胞(人工多能性幹細胞)から育てた軟骨組織をケガや運動などで軟骨が損傷した膝関節に移植して補う再生医療の臨床研究について、2019年中に学内の審査機関に申請する方針です。損傷部が小さい膝関節が対象ですが、将来は肘や足首などの軟骨損傷や高齢者に多い変形性膝関節症にも広げたい考えです。

 研究チームは臨床研究計画書を再生医療に関する学内審査機関に申請する予定。承認されれば国の審査に進みます。順調に進んだ場合、2020年中に1例目の移植実施を目指します。

 臨床研究がうまくいけば、旭化成が実用化を検討します。共同研究を通じて、軟骨組織の量産技術を確立します。2029年の実用化が目標。

 京大が備蓄するiPS細胞から直径2~3ミリメートルの球状の軟骨組織を育て、数平方センチメートルの患部に移植します。周囲の軟骨組織とくっ付いて機能することを期待します。移植した軟骨組織は血管がなく、患者の免疫細胞が軟骨細胞に触れることもないため、拒絶反応が起きにくくなります。

 膝関節の軟骨を損傷したブタを使う実験では、人のiPS細胞から作った軟骨組織を移植。約1カ月にわたり体重約30キログラムを支えることができました。

 関節軟骨は弾力性のある滑らかな組織で、関節をスムーズに動かす役割を果たします。軟骨は運動やケガなどで傷付くと修復が難しく、一部の軟骨が欠損すると日常生活で支障が出る場合もあります。

 従来の治療は、人工関節に置き換える手術や、患者から正常な軟骨の一部を切り取って培養して増やし、患部に移植する手法があります。ただ培養中に変質するという課題がありました。

 2019年3月10日(日)

 

■116歳の女性、ギネス認定の世界最高齢に 甘い物が大好物

 福岡市東区に住む116歳の田中カ子(かね)さんが9日、「存命中の世界最高齢」のギネス世界記録に認定されました。ギネスワールドレコーズジャパン社から公式認定証を手渡されると、「ありがとうございます」と感謝の言葉を述べ顔をほころばせました。

 田中さんは1903(明治36)年1月2日、旧和白村(現福岡市東区)生まれ。この日、田中さんは入所する老人ホーム内の会場に、手押し車を押しながら歩いて登場。甘い物が大好物で、ひ孫からチョコレートを渡されると、ぱくっと口に入れました。「いくつ食べたい?」との問いかけに「100個」と答え、市が用意したイチゴのケーキも元気にほおばりました。

 今までで一番楽しかった出来事を聞かれると、「今!」と力いっぱい答えました。

 家族らによると、19歳で結婚し、夫が営む米穀店を手伝いながら、実子4人と親戚の子ら4人を育てました。老人ホームでは、毎日3食を残さずに食べ、おやつのチョコレートや炭酸飲料が大好物。普段は施設内を手押し車を押しながら歩き回り、ほかの入居者とオセロ風ゲームを楽しんでいます。

 好奇心旺盛で勝ち気な性格。昨年7月に国内最高齢となった際には、「次は世界一」と意気込んでいたといいます。今は、「120歳を目指す」と家族に話しているといいます。

 男性の世界最高齢は、ギネス認定されていた北海道足寄(あしょろ)町の野中正造さんが今年1月に113歳で亡くなっており、ギネス社が調査中。

 2019年3月10日(日)

 

■TDK、磁気センサーで心臓の動きを可視化 測定コスト5分の1に

 TDKと東京医科歯科大学は、心臓の動きをリアルタイムに可視化できる磁気センサーを開発しました。心臓が動く時の磁場を読み取り、異常の有無を非接触で調べます。

 4月から不整脈や狭心症といった心疾患を持つ数百人の患者を対象に半年から1年かけて臨床試験し、実用化を目指します。従来の測定機と比べて、計測コストを5分の1程度に下げられる見通しです。

 TDKが開発したセンサーは「心磁計」と呼ぶ、心臓の動きを面的に把握する装置。HDD(ハードディスク駆動装置)の磁気ヘッドに使う磁気センサーを応用しました。精度を高め、磁気センサーとして世界で初めて心臓の動きをリアルタイムで測定できるようにしました。心電図よりもより正確に心臓の状態を調べられ、不整脈の診断などに効果を発揮しそうです。

 測定機は2平面上に百数十個の磁気センサーを並べており、患者は胸を近付けて測定します。室温で服の上から手軽に測定でき、患者の負担を軽減できます。

 これまでの心磁計は、「超電導量子干渉素子(SQUID)」と呼ばれる高感度磁気センサーを使っていました。超電導材料を冷やすのに液体ヘリウムが必要で、装置は大型になり、導入にも数億円のコストが掛かり、年間のランニングコストも1000万円以上になるため、一部の研究機関でのみ活用されています。

 TDKは4月から、持ち運びもできる磁気センサーを医療機器メーカーなどにサンプル出荷することを予定しています。

 TDKと共同で磁気センサーの開発を進める東京医科歯科大学大学院の川端茂徳教授は、「心臓はまだわからないことが多い」と語り、開発した磁気センサーで知見を深められると期待しています。

 2019年3月10日(日)

 

■人工透析中止で死亡した女性、最初の受診日に中止に同意 福生病院

 東京都の公立福生(ふっさ)病院で、女性患者の人工透析が中止され、およそ1週間後に死亡した問題で、女性はもともと別のクリニックで人工透析を受けていて、治療場所を変えて福生病院を初めて受診した日に、透析を中止する同意書に署名していたことがわかりました。東京都は、どのような話し合いで中止が決まったのか詳しい経緯を調べています。

 昨年8月、東京都福生市の公立福生病院で、腎臓病を患っていた44歳の女性の人工透析の治療が中止され、女性は、およそ1週間後に死亡しました。

 関係者によりますと、女性はもともと別のクリニックで人工透析の治療を受けていましたが、クリニックの勧めで地域の中核病院である福生病院を受診しました。

 東京都などによりますと、福生病院にはより高度な透析治療を受けようと別の医療機関の紹介状を持ってやってくる患者も多いということです。

 女性は、初めて訪れた日に医師などと話し合った結果、人工透析治療の中止を選択し、同意書に署名したということです。

 日本透析医学会のガイドラインでは、人工透析を中止するのは、回復の見込みがない終末期の患者が事前に意思を表明し、全身の状態が極めて悪くなった場合などに認められるとしています。

 また、関係者によりますと、女性は当初、人工透析の中止を選んだものの、亡くなる前、病状が悪化し、うなされた状態で人工透析を再開したいと話し、医師がそれを把握していたということです。しかし、その後、病院側が女性の意識がはっきりした時に確認したところ、「透析はしません」とも話していたということで、透析治療は再開されませんでした。

 日本透析医学会のガイドラインでは、人工透析を見合わせた患者やその家族が再開を希望した場合、病院はその意思を尊重し人工透析を再開するとしています。

 東京都は今後、女性と医師との詳しいやり取りを確認し、本人の意思に基づいて適切な対応が取られたのか、調べることにしています。

 一方、公立福生病院は、「現場では家族を含めた話し合いが行われ、その記録も残されている。悪意や手抜きや医療過誤があった事実はない」などとコメントしています。

 2019年3月10日(日)

 

■さいたま市の40歳代男性、はしか発症 ベトナムから帰国しJRやバス利用

 今月、ベトナムから帰国した、さいたま市に住む40歳代の男性が、はしか(麻疹=ましん)に感染していることがわかりました。埼玉県は、この男性が発症後に利用した交通機関を公表し、接触した可能性があり、はしかの疑いがある症状が現れた場合は、医療機関を受診するよう呼び掛けています。

 埼玉県によりますと、この男性は仕事でベトナムに滞在し今月帰国した後、4日に発熱や発疹の症状が出て、さいたま市内の医療機関を受診し、8日、はしかと診断されました。医療機関が市保健所に届け出ました。

 男性は快方に向かっているということですが、接触した人がはしかに感染している可能性があるため、発症後にこの男性が利用した交通機関を公表しました。

 それによりますと、男性は今月4日午前6時半ごろにJR埼京線で中浦和駅から池袋駅まで移動、その後、JR山手線に乗り換えて高田馬場駅まで移動しました。午後7時ごろから、同じルートを逆に使って帰宅しています。

 また、今月6日には午前7時前に、さいたま市内などを走る国際興業バスに乗って土合小学校から中浦和駅まで移動しました。その後、JR埼京線の中浦和駅から池袋駅まで利用し、JR山手線に乗り換えて高田馬場駅まで移動しました。午後6時ごろからは、同じルートを逆に使って中浦和駅まで戻り帰宅したということです。

 埼玉県では、この男性と接触した可能性があり、はしかの疑いがある症状が現れた場合には、最寄りの医療機関に連絡した上で受診するよう呼び掛けるとともに、感染を広げないために受診の際は公共交通機関を利用しないでほしいとしています。

 はしかは麻疹ウイルスによって引き起こされる病気。感染力が極めて強く、同じ空間にいるだけで空気感染します。発熱、せき、鼻水、目やになど、風邪と似た症状が当初みられ、いったん熱が下がった後、再び高熱が出て、全身に発疹が現れるといいます。

 はしかは全国的に流行しており、埼玉県内では今月3日現在、6人が感染。さいたま市内では今年初めて感染が確認されました。

 2019年3月10日(日)

 

■約20人の患者が人工透析を受けず、複数死亡か 福生病院を東京都が調査 

 東京都福生(ふっさ)市の公立福生病院が腎臓病患者の女性に人工透析治療をやめる選択肢を示し、中止を選んだ女性が死亡した問題で、同病院が2013年以降、女性のほかに「約20人の人工透析治療を導入しなかった」と説明していることが8日、明らかになりました。20人の中には死亡した患者が複数いるとみられ、東京都が事実関係などを調べています。

 この問題を巡っては、東京都が6日、医療法に基づいて福生病院への立ち入り検査を実施。日本透析医学会も調査委員会を7日に立ち上げ、調査に乗り出すことを決めました。

 東京都によると、福生病院の腎臓病総合医療センターでは担当の男性医師2人が2013年以降、ほかの診療所の紹介状を持って受診した患者149人に対し、人工透析治療を行わない選択肢を含めて提示。担当医は命にかかわる可能性について知らせた上で高齢者ら約20人が人工透析治療を受けないことを選び、うち複数が死亡したとみられると説明しているといいます。

 これまでに女性患者(当時44歳)が2018年8月に透析治療をやめ、約1週間後に死亡したことが明らかになっていますが、この女性以外にも治療を途中でやめた患者が複数いるといいます。

 日本透析医学会は2014年、終末期の患者について、本人の意思が明らかな場合に人工透析をしないことや中止も選択肢とする提言をまとめています。

 東京都は人工透析治療を目的とした紹介状を持つ患者は終末期には当たらないとみて、立ち入り検査の際に福生病院側に口頭で改善指導しました。これに対し、担当医は都の調査に「患者の意思確認の同意書もあり、手続きは適切だ」「治療をしなければ(死亡の)切迫性があり終末期に当たる」などと主張しているといいます。

 今回の件について、病院を運営する組合の管理者を務める福生市の加藤育男市長と公立福生病院の松山健院長は連名で、次のようなコメントを出しました。

 「公立福生病院を受診された患者が血液透析を受けないことを希望され、当院で亡くなったとの新聞記事が大きく報道されています。血液透析を受けておられる方々でも、単に腎臓だけ悪い方、腎臓も他の臓器も悪い方などさまざまでございます。日常的な透析治療の辛さも当然さまざま状況に置かれていると考えています。今回、腎臓病総合医療センターの現場では、多職種で対応し家族を含めた話し合いが行われ、その記録も残されています。密室的環境で独断専行した事実はございません。また、当院で悪意や手抜きや医療過誤があった事実もございません。本件に関しましては、東京都福祉保健局の立ち入り検査が行われ、また、近々、日本透析医学会の調査も予定されています。こうした第三者機関の検査結果等も待ちつつ、早急な事実関係の把握に努め、適正に対応して参ります」

 2019年3月9日(土)

 

■拒絶反応少ないiPS細胞 、ゲノム編集で作製成功 京都大iPS細胞研究所

 京都大学iPS細胞研究所の金子新准教授と堀田秋津講師らの研究チームは、再生医療に利用した際に拒絶反応を起こしにくいiPS細胞(人工多能性幹細胞)の作製法を開発しました。新技術で作ったiPS細胞を12種類用意すれば、再生医療の際、日本人の95%以上で適合するといいます。再生医療の普及に役立つ成果です。

 論文は8日付でアメリカの科学誌「セル・ステム・セル」の電子版に掲載されました。

 再生医療での拒絶反応は、患者の体内に入れた他人の細胞を、患者の免疫が排除しようとすることで起こります。研究チームは遺伝子を効率よく改変する「ゲノム編集」技術を使い、2種類の遺伝子の働きを抑えたiPS細胞を作製しました。

 こうして作ったiPS細胞から血液細胞を作り、マウスに移植しました。1週間経過を観察すると、ゲノム編集をしていない場合に比べて、移植細胞が免疫から攻撃されにくくなっていました。

 京都大は再生医療向けに拒絶反応の起こりにくい特殊なiPS細胞を探して、備蓄する事業を進めています。これまでに3種類用意しており、2020年度末までに10種類そろえて、日本人の50%をカバーする計画を示しています。

 研究チームは今回の新技術で12種類のiPS細胞を用意するだけで、日本人の95%以上をカバーできると試算しています。同研究所の山中伸弥所長は「次世代iPS細胞」と位置付けて、2020年には整備する目標を掲げており、今回の新技術を応用する見込みです。

 現在、世界のほとんどの人に対し、移植時の拒絶反応のリスクが小さいiPS細胞を提供するためには、1000種類を超すiPS細胞が必要になります。ゲノム編集技術を使えば、種類を大幅に減らせます。

 2019年3月8日(金)

 

■発達障害をゲーム形式の治療アプリで改善 塩野義製薬が米社と提携

 塩野義製薬は7日、発達障害をビデオゲームを通じて治療する「デジタル薬」と呼ばれるアプリの開発、販売権をアメリカのスタートアップ企業から取得したと発表しました。臨床試験(治験)を経て、承認を得られれば日本や台湾で販売できるようになります。

 子供向けで、スマートフォン(スマホ)で遊びながら脳の前頭前野を刺激、活性化させ、注意機能などが改善するといいます。塩野義製薬は契約金としてまず約22億円、売り上げなどに応じて最大約117億円を支払いますs。

 アメリカのアキリ・インタラクティブ・ラブズ(マサチューセッツ州)が開発中の2つの治療アプリについて、日本や台湾での事業化権を取得しました。

 取得した治療アプリのうち、発達障害の一種である注意欠陥・多動性障害(ADHD)治療アプリは、8~12歳の子供348人に対する治験で注意機能の改善がみられました。正式な薬としての承認を得るため現在、アキリ社がアメリカの食品医薬品局(FDA)に申請中です。

 もう一方の子供の自閉スペクトラム症(ASD)の治療アプリは、大規模な治験を予定しています。

 「デジタル薬」を巡っては、大塚製薬が錠剤にセンサーを埋め込み、飲んだかどうか医師が確認できるようにするなど取り組みが始まりつつあります。塩野義製薬が今回、取得したような実際の治療にまで踏み込むものは珍しいといいます。

 2019年3月8日(金)

 

■はしかが大阪府で感染拡大 今年の累積患者数102人に

 過去10年間で最多のペースではしか(麻疹=ましん)の感染拡大が続く中、大阪府は7日、今年の累積患者(3日現在)が102人になったと発表しました。前回(2月24日現在)の集計より6人増え、引き続き都道府県で最多となる見通し。

 100人を超えたのは2008年以来となります。新たな報告数は減っているものの、収まる見通しは立っていません。

 大阪府以外の近畿各府県のまとめ(3日現在)では、兵庫県の累積患者数は2人増の5人、奈良県は2人増の4人。奈良県は2009年以降の年間患者数で最多となっています。京都府は8人、和歌山県は7人、滋賀県は4人で、前回と同数でした。

 2019年3月8日(金)

 

■虫歯治療の麻酔で2歳女児死亡 福岡県の歯科医を書類送検へ

 福岡県春日市の歯科医院で2017年7月、虫歯の治療後に女児(当時2歳)が死亡した医療事故があり、福岡県警は7日、当時院長だった50歳代の男性歯科医を業務上過失致死容疑で福岡地検に書類送検する方針を固めました。県警は、男性歯科医が容体の変化を見逃さずに救急車を呼ぶなどの適切な対応を取っていたら、命を救えた可能性が高いと判断しました。

 死亡したのは春日市の山口叶愛(のあ)ちゃん。家族によると、2017年7月1日夕に虫歯治療のため医院を訪れ、女性担当医が歯茎に麻酔薬を注射し、歯を削るなど約50分間にわたり治療しました。治療直後に叶愛ちゃんが目の焦点が合わないなどぐったりしたため、両親は女性担当医から引き継ぎを受けた院長だった男性歯科医に処置を求めましたが、男性歯科医は脈を計測して「特に問題ない。よくあること」などと説明し、救急などの処置を取らなかったといいます。

 叶愛ちゃんは医院内で休んでいましたが、約1時間後にけいれんを起こすなどしたため、両親が車で近くの救急病院に連れて行きました。意識不明の状態が続き、2日後の3日昼過ぎに死亡しました。司法解剖の結果、死因は麻酔薬のリドカインの急性中毒による低酸素脳症でした。

 男性歯科医は代理人弁護士を通じ、「専門家として求められる措置は取っており、対応は適切だった」としています。歯科医院は事故後に閉院しました。

 2019年3月7日(木)

 

■人工透析の治療中止後に40歳代の女性死亡 東京都が公立病院を立ち入り検査

 東京都福生(ふっさ)市の公立病院で、腎臓病を患っていた40歳代の女性患者の人工透析の治療が中止され、患者が数日後に死亡したことがわかりました。病院側は医師と女性が話し合って中止を決めたとしていますが、東京都は病院を立ち入り検査し、医師と女性との話し合いの詳しい経緯を調べています。

 昨年8月、東京都福生市の公立福生病院で、腎臓病を患っていた44歳の女性の人工透析の治療が中止され、女性は数日後に死亡しました。

 病院長は取材に対し、女性は医師と複数回話し合って、透析治療を受けないことを決めたと説明しています。

 日本透析医学会のガイドラインでは、人工透析を中止するのは、回復の見込みがない終末期の患者が事前に意思を表明し、全身の状態が極めて悪くなった場合などに認められるとしています。

 東京都は6日、医療法に基づいて病院に立ち入り検査を行い、女性が治療の中止に同意した経緯や治療を中止した後、考えを変えて治療の再開を望んでいなかったかなどについて、詳しく調べることにしています。

 公立福生病院は、「東京都の調査を受けているので、結果が出るまで詳しいことはコメントできない」としています。

 人工透析の治療を専門とする医師など1万3000人余りが参加する日本透析医学会は7日、「大変に重要な案件と考えている」として調査委員会を立ち上げ、今後病院に立ち入り調査を行って関係者から事情を聴くなどして、事実関係を調べることを公表しました。

 その上で、学会の外部の専門家を含めた倫理委員会で審議し、学会としての見解を公表するということです。

 人工透析は、病気で腎臓の機能が低下した患者に対して、専用の装置を使って、血液の中の老廃物などを取り除いて血液をきれいにする治療法です。

 日本透析医学会は、5年前に人工透析を見合わせる際の条件などを定め、「提言」としてガイドラインをまとめています。それによりますと、見合わせる時は主に人工透析を行うことが患者の生命に危険を及ぼす場合や、状態が極めて悪い、いわゆる終末期の患者が人工透析の中止を希望した場合としています。

 そして、患者の体の状態が改善した場合や、患者や家族が再開を希望した場合は人工透析を再開するとしています。また、患者が人工透析を強く拒否した場合は、医療チームが治療の必要性について納得してもらうよう努力した上で、それでも患者の意思が変わらなければ尊重するとしています。

 2019年3月7日(木)

 

■赤ちゃん用の液体ミルクを江崎グリコが発売 消費者庁は注意喚起 

 子育て中の家庭から要望が出ていた赤ちゃん用の液体ミルクが今週、発売されました。消費者庁は流通が本格化するのを前に、飲み残しは使わないなどの注意点をまとめ、ホームページで公表しました。

 発売されたのは大手菓子メーカー「江崎グリコ」の125ミリリットルの紙パック入りの商品で、6カ月間、常温で保存できます。

 公式サイトでの通販に加え、3月11日からベビー用品店などでの販売が始まるほか、大手乳業メーカーの「明治」も来週、新たな商品を発表することにしています。

 赤ちゃん用の液体ミルクは海外で普及しているのに対し、国内では発売されていませんでしたが、子育て中の家庭などからの要望を受けて、厚生労働省と消費者庁が衛生基準や乳児の発育などに適した「特別用途食品」の表示基準を定め、それぞれのメーカーで商品開発を進めていました。

 一方、今回の発売に合わせて消費者庁は使用上の注意点をまとめ、ホームページで公表しました。

 この中では、紙パックや缶などに入った商品は清潔な容器に移し、開封後はすぐ赤ちゃんに与えるとともに、飲み残しは雑菌が繁殖しやすいため、使わないよう呼び掛けています。

 消費者庁の岡村和美長官は、「乳児が飲むものなので、購入する際は『特別用途食品』のマークを確認してほしい」と話しています。

 2019年3月7日(木)

 

■点滴過剰投与で高3女子が死亡 男性医師を書類送検、大阪府警

 大阪府高石市の高石藤井病院で2015年12月、不適切な点滴投与で高校3年の女子生徒(当時18歳)を死亡させたとして、大阪府警捜査1課は6日、治療に当たった元非常勤の男性医師(44歳)を業務上過失致死容疑で書類送検し、発表しました。

 捜査1課によると、医師は2015年12月29日、知人男性と食事をした後、目のはれやせきなどの食物アレルギーとみられる症状を訴えて救急外来を受診した女子生徒に、アドレナリン注射薬を過剰に投与するなどして、翌日にアナフィラキシーショックで死亡させた疑いがあります。医師は注射薬1ミリリットルを静脈から点滴で投与したといい、女子生徒は直後から「苦しい」と訴えていました。

 府警に対し、別の複数の医師が薬剤の投与について問題があったとの見解を示し、書類送検された医師も「正しい処置ができていれば、事故は防げた」などと話したといいます。

 女子生徒の家族が2017年11月に刑事告訴。遺族は医師と病院側に損害賠償を求めて提訴し、同年9月に病院側が落ち度があったことを認めて和解が成立しています。

 2019年3月7日(木)

 

■経済的な理由で受診が遅れ、2018年に77人死亡 民主医療機関連合会が調査

 全日本民主医療機関連合会(東京都文京区)は6日、経済的な理由により医療機関での受診が遅れ、2018年に死亡した人が77人いたと発表しました。このうち22人は、保険料が払えないなどの理由で公的医療保険に加入していない無保険者だったといいます。

 調査は2018年1~12月、同連合会に加入する全国の病院・診療所636カ所を対象に実施。死亡した77人のうち57人は60歳代以上でした。

 無保険者を除く55人のうち、11人は保険料滞納で有効期間が短い「短期保険証」しか持っておらず、2人は滞納で医療費が全額自己負担となる人でした。37人は通常の保険証を持っていましたが、自己負担分を払えないなどの理由で早期に受診していなかったといいます。

 国民健康保険に加入していた50歳代男性は、製造業を営んでいたもののリーマン・ショックで失業。体調不良が数カ月続きましたが、自己負担分を払えないとして病院に行きませんでした。受診時に重度のがんが判明、4カ月後に亡くなったといいます。

 政府は、医療費抑制策として後期高齢者の自己負担引き上げなどを検討する方針。全日本民主医療機関連合会の岸本啓介事務局長は、「明らかに受診抑制になる。相当な危惧を持たざるを得ない」と話しています。

 また、岸本事務局長は、一定の条件に該当すれば無料または低額で受診できる医療機関があるので、受診をためらわないでほしいと呼び掛けています。

 2019年3月6日(水)

 

■2007年以降、介護ベッド事故が79件発生 このうち43人が死亡

 介護用ベッドの利用者が手すりに首や手足を挟まれる重大事故が、全国で後を絶ちません。消費者庁への報告が義務付けられた2007年以降、79件が発生し、このうち43人が死亡しました。大半が介護施設などでの事故とみられ、安全対策を強化したベッドへの入れ替えが進まないことが背景にあります。

 死亡事故の中で多いのが、手すりと手すりの透き間や、手すりと頭部のボードとの間に首が挟まれるケース。36件発生した重傷事故では、手すりの透き間に腕や足などを挟まれ、骨折した高齢者が多くなっています。

 「入所者が手すりに片手を突っ込んだ状態でリクライニングを動かしてしまい、強い力で挟まれたことがあった」と、東北地方の特別養護老人ホームで働く男性職員はそう打ち明けています。自分の体を支えられず倒れ込む恐れのある人や、危険な状態から自力で抜け出せないと思われる人、認知症で予測できない行動をとる人などは、特に注意が必要となります。

 2007年施行の改正消費生活用製品安全法では、生活関連製品による重大事故や火災が発生した場合、メーカーなどに国への報告が義務付けられました。以後、介護用ベッドに関する重大事故は毎年数件~十数件が報告され、消費者庁は、大半が認知症の高齢者とみています。

 2007、2008年度に計27件の重大事故が報告されたことから、経済産業省は2009年3月、介護用ベッドに関する日本工業規格(JIS)を改正。頭や手足が挟まらないよう、手すりの透き間を狭くするなどの安全対策が強化されました。

 重大事故が後を絶たないのは、規格改正前のベッドが依然利用されているためです。介護用ベッドメーカーの業界団体「医療・介護ベッド安全普及協議会」などによると、介護用ベッドは高いもので50万円を超え、大量に入れ替えた場合の負担は大きくなります。

 消費者庁の担当者は、「十分な見守りができない場合は、できるだけ規格改正後のベッドを利用してほしい」と呼び掛けています。

 規格改正後の介護用ベッドへの入れ替えが難しい場合、手すりの透き間をふさぐことが事故防止に有効とされています。各メーカーが配布する専用の補助器具やカバーのほか、クッションや毛布などで透き間をふさぐだけでも効果があります。介護用ベッドの周囲を整理・整頓し、利用者が身を乗り出さなくてすむ環境にしておくことも有効です。

 向殿(むかいどの)政男・明治大名誉教授(安全学)は、「介護用ベッドの重大事故は、あまり知られておらず、国はもっと注意喚起する必要がある。事故がなくならなければ、規格改正前のベッドの使用を禁止する措置も検討すべきだ」と指摘しています。

 2019年3月6日(水)

 

■はしか患者、新たに33人で累計258人に 大阪府94人、東京都19人

 国立感染症研究所は5日、2月24日までの1週間に新たに33人のはしか(麻疹=ましん)患者が報告されたと発表しました。今年の累計患者数は258人となり、過去10年で最多ペースの増加が続いています。

 都道府県別では、これまで患者が多かった大阪府や東京都、愛知県で引き続き増え、累計患者数は大阪府が94人で最も多く、三重県50人、愛知県 25人、東京都19人と続いています。

 はしかは、発熱や全身に発疹が出るウイルス性の感染症で、感染力が極めて強く、重症になる場合があるほか、妊婦が感染すると流産や早産の恐れもあります。年明けから三重県や大阪府で局所的に急増。さらに愛知県や東京都など感染が全国規模に広がっています。

 唯一の予防法はワクチン接種ですが、報告された患者の多くは接種歴がないか不明だといいます。

 ウクライナやフィリピンなど世界的にも流行しており、流行国から帰国後に発症したケースも多くなっています。国立感染症研究所は海外渡航前にはワクチンの接種歴を確認し、必要に応じて接種するよう求めています。

 2019年3月6日(水)

 

■子宮頸がんウイルスの郵送検査サービスを開始  シミックヘルスケア

 シミックホールディングス傘下のシミックヘルスケア(東京都港区)は、子宮頸(けい)がんの原因となるヒトパピローマウイルス(HPV)の郵送検査サービスを始めました。自宅に届く専用検査キットを使って検査申込者自身で検体を採取し、検査機関に送ります。医師による採取への抵抗感をなくし、受診率向上につなげたい考えです。

 新サービス「セルチェック子宮頸がん」は、婦人科検診や健康診断のオプションとして健康保険組合や企業、自治体に売り込み、4月以降は全国の薬局でも販売します。料金は一般向けの店頭価格で7000~9000円を想定しており、団体向けは規模などによって異なります。

 専用のウェブサイトで申し込みと、検査結果の閲覧ができます。結果は陽性か陰性、測定不能のいずれかを通知します。HPVは種類によってがん発症リスクが異なることから、陽性の場合はウイルスの種類(ハイリスクである16型または18型、その他)も報告します。陽性だった人には、看護師による無料相談サービスと精密検査のための医療機関検索サービスを提供します。

 子宮頸がんは子宮の入り口に発生するがん。原因のほとんどがHPVの感染に由来し、患者の9割超からHPVが検出されます。国内では20~30歳代を中心に罹患(りかん)率が高まっているものの、検診の受診率は海外に比べて低くなっています。これまでのHPV検査は医師が検体を採取しており、低受診率の背景には被検者の抵抗感もあるとみられます。

 シミックヘルスケアは今後、「セルチェック」を自己検査キットシリーズとしてブランド展開する計画で、慢性腎臓病や睡眠、精神疾患、乳がんなどさまざまな疾患や兆候へ適用し、早期発見や重症化予防に貢献したいとしています。

 2019年3月6日(水)

 

■国内最高齢男性が112歳の誕生日 長寿の秘訣は「笑って喜ぶこと」 

 新潟県上越市に住む国内最高齢の男性、渡邉智哲(ちてつ)さんが5日、112歳の誕生日を迎え、「いつでも笑って喜ぶことで長生きできています。まだまだ、大丈夫です。サンキュー」と笑顔で語りました。

 1907年(明治40年)3月5日生まれで、今は家族にも恵まれ、子供5人、孫は12人、ひ孫が16人。そして、2019年1月には、やしゃごも生まれたといいます。

 5日に112歳の誕生日を迎えた渡邉さんのもとを、上越市の村山市長が訪ね、「おめでとうございます。いいお顔ですね」と述べ、「112本」のバラの花束を手渡しました。

 甘い物が大好きという渡邉さんには、家族から「112」の数字をかたどったケーキが贈られ、おいしそうに味わっていました。

 好きな食べ物を尋ねられると、渡邉さんは「おまんじゅう」と話し、ふだん心掛けていることについては、「喜んで笑うことです」と笑顔で応じていました。

 また、渡邉さんは、得意とする習字の腕前も披露し、ひらがなで「ありがとうさま」、漢字で「日本一」と勢いよく、書き上げていました。

 渡邉さんは、「お祝いいただいてありがとうございます。極楽で喜んでおります。いつでも笑って喜ぶことで長生きできています。まだまだ、1年、2年、大丈夫です。頑張ります。サンキュー」と話していました。

 2019年3月5日(火)

 

■ロンドンの男性、世界2人目のエイズ完治例か 耐性ドナーからの幹細胞移植で

 HIV(エイズウイルス)に感染したロンドン在住の男性が幹細胞移植を受け、完治した可能性があるとの症例研究が発表されました。5日発行のイギリスの科学誌「ネイチャー」で、ロンドン大学のラビンドラ・グプタ教授らが報告しています。

 グプタ教授の患者はロンドンに住む匿名の男性で、2003年にHIV感染が判明。2012年以降、HIVを制御する抗レトロウイルス薬で治療を受けていました。その後、進行した悪性リンパ腫が見付かったため化学療法を受けた後、2016年に幹細胞移植を受けました。ドナーはHIVに耐性のある変異遺伝子を持っていました。

 男性患者は移植後も1年4カ月の間、抗レトロウイルス薬による治療を続けましたが、1年半前に投与を中止した後もHIVは検出されていません。

 研究チームは完治したと判断するにはまだ早すぎるとして、今後も引き続き男性患者の状態を観察する構え。

 グプタ教授は、この治療がすべての患者に適用できるわけではないとした上で、新たな治療法への希望が示されたと主張しています。

 HIV感染者が幹細胞移植で完治したとされる例は、10年以上前の2007年にドイツのベルリンで報告されていました。

 「ベルリン患者」と呼ばれるティモシー・レイ・ブラウンさんは、HIV感染で抗レトロウイルス薬の治療を受けている間に急性骨髄性白血病と診断され、HIV耐性を持つドナーから2回の幹細胞移植を受けました。抗レトロウイルス薬の投与を中止してから数年後にHIVの痕跡が見付かったものの、ウイルス量は検出限界以下の状態が続き、唯一の完治例とみなされています。

 研究者らはこれまで、ベルリン患者の治療を再現しようと試みてきましたが、成功例は報告されていませんでした。

 グプタ教授は、「同様の治療で2人目の患者が寛解したことにより、ベルリン患者が例外だったのではなく、この治療がHIVを消滅させたということが立証された」と話しています。

 ただし専門家らによると、HIV耐性を持つドナーからの幹細胞移植によって一部のエイズ患者だけが治る仕組みはまだわかっていません。また、HIVに感染しても通常は抗レトロウイルス薬により健康状態を維持できる一方、幹細胞移植には大きなリスクも伴います。そのため現時点での対象者は、エイズ以外の理由で移植が必要な人に限られるといいます。

 2019年3月5日(火)

 

■iPS細胞から作った目の角膜移植、厚労省の部会も了承 6月から7月ごろにも実施へ

 iPS細胞(人工多能性幹細胞)から作製した目の角膜の組織を患者に移植して、視力を回復させる大阪大などの臨床研究が厚生労働省の部会で条件付きで了承されました。iPS細胞を使った角膜の再生医療は世界で初めてで、角膜移植を待つ患者の新たな選択肢になるか注目されます。

 厚労省の部会で了承されたのは、大阪大の西田幸二教授らの研究チームが計画している臨床研究で、角膜が濁って視力が大きく低下し、失明することもある「角膜上皮幹細胞疲弊症」の患者4人にiPS細胞から作製した円形のシート状の角膜の組織を移植し、1年間、安全性と有効性を確認します。

 厚労省の部会は5日、計画について審議し、患者4人のうち2人が終わった段階で部会に報告することなどを条件に了承しました。

 iPS細胞を応用した角膜の再生医療は世界で初めてで、臨床応用に向けた厚労省の手続きが終わったのは目の網膜の難病やパーキンソン病、それに重い心臓病などに続いて6件目です。

 計画では元になるiPS細胞は京都大で保管されているものを使い、数百万個の細胞で角膜の組織を作る計画で、拒絶反応を抑える免疫抑制剤については2例目までは使用して、その後は状況をみて、使用するか検討することにしているということです。

 研究チームは今後、対象となる患者を選定し、早ければ今年6月から7月ごろには1例目の移植を行いたいとしています。

 厚生労働省によりますと、角膜の移植はアイバンクに事前に登録した人などが亡くなった時に角膜を提供してもらい行っていますが、提供者が減っていて、昨年3月の時点で角膜の移植を待つ人の数は全国で1600人以上いるということです。

 研究チームでは、安全性と有効性が確認できれば対象となる病気を広げていきたいとしています。

 西田教授は、「ここからがスタートで、安全に迅速に臨床研究を行い、早く標準的な治療になるよう実施していきたい。角膜移植では角膜を提供してくれるドナーが不足しており、補うような役割を果たせればと思っている」と話しています。

 今回の臨床研究の対象となるのは角膜上皮幹細胞疲弊症と呼ばれる病気で、角膜の最も外側にある「角膜上皮」と呼ばれる組織が病気やけがなどで傷付いて白く濁り、視力が低下するほか、悪化すると失明することもあります。国内の患者数は500人ほどと推定されています。

 2019年3月5日(火)

 

■人の臓器を持ったブタなどの動物の出産、解禁 文科省が指針改定

 動物の受精卵が成長した胚(はい)に、人の細胞を注入した「動物性集合胚」の取り扱いについて、文部科学省は1日、より幅広い研究ができるように指針を改定しました。禁じられていた動物性集合胚の動物の子宮への移植や、この胚を使った出産が可能になります。

 動物の体内で人の臓器を作る研究が、国内でも本格化するとみられます。人の子宮への移植や、この方法で生まれた動物の交配は禁じます。

 指針の改定で、例えば膵臓(すいぞう)ができないようにしたブタの胚に人のiPS細胞(人工多能性幹細胞)を注入後、胚をブタの子宮に移植し、人の膵臓を持つ子供のブタを作れます。

 将来的には、この方法で作った臓器を取り出し、治療目的での人への移植も検討されています。人と動物の外見が混じった個体が生まれる可能性は、極めて低いとされます。

 これまで動物性集合胚を作るのは基礎研究に限られ、最長14日しか培養できず、移植もできませんでした。

 研究を進めるには、研究機関と文科省の2段階の審査で認められる必要があります。東京大のグループが研究の準備を進めています。

 2019年3月5日(火)

 

■風疹の1週間の患者数、今年初めて100人超 2013年に次ぐ大流行の恐れ

 風疹の患者数は、2月24日までの1週間に、新たに109人報告され、今年の患者数は650人になりました。1週間の患者が100人を超えるのは今年に入って初めてで、国立感染症研究所は、今年は大きな流行になる可能性があるとして、注意を呼び掛けています。

 風疹は、発熱や発疹などの症状が出るウイルス性の感染症で、妊娠中の女性が感染すると生まれてくる赤ちゃんの目や耳、それに心臓などに障害が起きる可能性があります。

 国立感染症研究所によりますと、2月24日までの1週間に、全国の医療機関から報告された患者は109人と、今年初めて100人を超えました。これで、今年の累積患者数は650人となり、昨年の同じ時期の4人と比べて大幅に増えています。

 国立感染症研究所は、年間の患者数が1万4344人に達した2013年に次ぐような大きな流行に可能性があるとしています。

 都道府県別のこれまでの累積患者数は、東京都が173人、神奈川県が93人、千葉県が68人、大阪府が59人、福岡県が44人などとなっています。

 厚生労働省は流行の中心となっている39歳から56歳の男性を対象に、ワクチンの接種などを原則無料で実施する制度を始めることにしているほか、自治体によっては妊娠の可能性がある女性やその家族を対象に、接種費用を補助するところもあり、国立感染症研究所は、国や自治体の制度を活用してワクチンの接種を検討するよう呼び掛けています。

 感染症に詳しい川崎市健康安全研究所の岡部信彦所長は、「大きな流行になった2013年は前の年から患者が多く、今年もその時の状況に似ていて、今年が大きな流行になる恐れがあると思う。赤ちゃんに障害が起きる先天性風疹症候群を防ぐためにも、ワクチンを接種した記録がない人などは国や自治体の制度を活用して、ワクチンの接種を検討してほしい」と話しています。

 2019年3月5日(火)

 

■拡張型心筋症の治療法、名大が今春にも臨床研究へ 心臓に袋をかぶせて進行抑制

 心臓が膨らんで筋肉が薄くなり、血液を全身に送り出すポンプ機能が低下する難病「拡張型心筋症」の患者に対し、心臓にメッシュ状の袋をかぶせて進行を抑える臨床研究を、名古屋大の研究チームが今春にも始めます。心臓移植に至る重症患者を減らせる新たな治療法として、3年以内の実用化を目指すといいます。

 拡張型心筋症では主に投薬治療が行われるものの、根本的な治療は心臓移植しかありません。心臓の膨らみを袋で抑える手法は欧米でも試みられましたが、心臓の一部を圧迫し、かえって心機能を悪化させたケースもあり、実用化には至っていません。

 研究チームは心臓の画像を基に、患者に適したサイズの袋を作る手法を開発。袋は外科手術の縫合用の糸をメッシュ状に編んだもので、一部に穴を開けて心臓を圧迫しない構造にしました。ブタなどの実験で、心機能の改善効果を確認できたといいます。

 対象は20~75歳の患者3人で、手術後は半年間、安全性や心機能を調べます。その後、保険承認を目指す臨床試験(治験)に移る方針。

 研究チームの秋田利明・特任教授(心臓外科)は、「手術は1時間以内ですみ、感染症などのリスクも少ない。早期に実用化し、心臓移植でしか救命できない重症者を減らしたい」と話しています。

 坂田泰史・大阪大教授(循環器内科)は、「心機能を維持する治療の選択肢になると期待できる。今後、どんな患者に有効かを見極めることが課題になる」と話しています。

 拡張型心筋症は、呼吸困難や不整脈などの症状が起きる難病。多くは原因不明で、補助人工心臓を装着し、心臓移植を待つ患者も多くいます。国の医療費助成を受ける患者は2016年度末現在、約2万8000人。

 2019年3月4日(月)

 

■平日の睡眠不足を補う週末の寝だめに効果なし アメリカのコロラド大で実験

 平日の睡眠不足を補うために週末は長く眠る、いわゆる「寝だめ」の効果について、アメリカの研究チームが実験して調べたところ、睡眠不足を十分補えず、効果がないことがわかったとしていて、ふだんから1日7時間の睡眠をとるよう勧めています。

 この研究は、アメリカのコロラド大学の研究チームが28日、科学雑誌「カレント・バイオロジー」に発表しました。

 研究チームは、18歳から39歳までの肥満ではない男女36人を、9時間の睡眠時間をとるグループ、5時間しか寝ないグループ、それに平日は5時間寝て、週末の2日間好きなだけ寝てもよい「寝だめ」をするグループに分けて、9日間、観察しました。

 その結果、「寝だめ」をするグループの人達の睡眠時間は、週末に好きなだけ寝てもよいとはいうものの、1日当たり1時間程度しか増えませんでした。その一方で、平日には眠りに就く時間が遅れ、睡眠不足を十分、補えないことがわかりました。

 また、「寝だめ」をする人達は、日中起きている時間が多いことから、間食が増え、最大で体重が1・3キロ増加したほか、糖尿病のリスクも高くなるなど、かえって悪影響があると指摘しています。

 研究チームでは、この研究結果から、寝だめには効果がないことがわかったとしており、「テレビやスマホを見る時間を減らし、ふだんから少なくとも1日7時間の睡眠をとるべきだ」と勧めています。

 2019年3月4日(月)

 

■スマホ充電ケーブルの事故、5年間で80件超 化学やけどを負うケースも

 スマートフォン(スマホ)の充電ケーブルのコネクターが異常に発熱してやけどを負うなどの事故は、この5年間で80件を超えています。「化学やけど」と呼ばれるけがを負ったケースもあり、製品評価技術基盤機構(NITE)が注意を呼び掛けています。

 NITEによりますと、スマートフォンなどの充電ケーブルが異常に発熱したり発火したりした事故は、2018年3月までの5年間に86件報告され、20人余りがやけどなどのけがをしています。

 このうち最も多いのが、コネクターの内部にほこりや飲み物などが入り込んだまま使ったためショートしたり、異常に発熱したりしたケース。2016年7月には大阪府の40歳代女性が「充電中のスマホから異臭がし、ケーブルとの接続部分が焦げて指がやけどした」という事故を始め、28件が報告されています。

 また、変形したコネクターを使ったためにショートしたケースも22件と多く、2017年10月には宮崎県の30歳代の男性が、スマートフォンは接続せずに、コンセントに充電ケーブルを接続したままの状態で放置していたところ、周辺が燃える火災が起きています。

 さらに、電源に接続されたコネクターが就寝している人の皮膚に長時間触れたために、汗などが電気分解され、発生した物質で皮膚が傷付く「化学やけど」を負った人も2人いて、このうち1人は重傷だということです。

 このためNITEは、充電ケーブルに無理な力をかけないこと、変形したコネクターは使わないこと、コネクターにゴミなどが入り込んでいないか確認すること、それに電源に接続したコネクターを長時間体に触れさせないことといった注意点を公表し、事故を防ぐよう呼び掛けています。

 2019年3月4日(月)

 

■より深刻な「アフリカ豚コレラ」がアジアで拡大 日本も警戒を

 豚の伝染病の豚(とん)コレラが岐阜県、愛知県、大阪府、長野県、滋賀県の5府県で発生しましたが、さらに感染力が強く深刻な別の豚の病気「アフリカ豚コレラ」への感染が、2月からベトナムの養豚場で相次いで報告されるなどアジアで拡大し、農林水産省は関係者に警戒を呼び掛けています。

 アフリカ豚コレラは5府県で発生した豚コレラとは全く違う豚の病気で、人には感染しませんが、豚には極めて強い感染力があり、皮膚や内臓に出血による紫斑ができ、感染から10日以内に確実に死に至ります。流行による経済的損失は甚大で、ウイルスが検出された養豚場では全頭を処分しなければならないため、現時点で最も警戒されています。

 アフリカ豚コレラは1921年にケニアで最初に発見されて以来、サハラ砂漠以南の地域や西アフリカで流行を繰り返していましたが、12年ほど前に東ヨーロッパやロシアなどで発生し、2018年8月、初めて中国で発生すると、中国国内のおよそ130カ所の養豚場などに拡大し、モンゴルでも発生が確認されました。

 今年2月からベトナムの養豚場でもアフリカ豚コレラの感染が相次いで確認され、2月27日の時点で10カ所以上の施設で発生が報告されています。

 農水省はベトナムから日本に来る飛行機の利用客に対して、許可なく肉を持ち込まないことなどを呼び掛けるとともに、動物検疫所の探知犬や職員を増やして対策を強化しています。

 農業・食品産業技術総合研究機構の山川睦海外病研究調整監は、「アジアで豚に対する感染が拡大しているため日本に入る恐れが高まっている。養豚場での衛生管理もこれまで以上に徹底してほしい」と話しています。

 2019年3月3日(日)

 

■摂食障害者の半数以上が職場での昼食に心の負担 6割が離職を経験

 治療を続けながら働く摂食障害の患者の半数以上が職場での昼食に心の負担を感じ、症状が悪化したために仕事を辞めた経験があるという患者も60%近くに上るという調査結果がまとまりました。

 この調査は、摂食障害の専門家などでつくる日本摂食障害協会が昨年、インターネットなどを通じて行い、就労経験のある10歳代から60歳代までの患者298人が回答しました。

 摂食障害は、体型へのこだわりやストレスなどが原因で食事がとれなくなる拒食症や、逆に大量に食べてしまう過食症の症状があり、専門家によると全国で数十万人が症状を持っているとみられています。

 調査によりますと、「症状がありながら就労している」と答えたのは72・6%で、多くの患者が生活や通院、過食のため食費がかかるといった理由で完治する前に仕事に就いていました。

 また、摂食障害のために仕事上の困難を感じているか尋ねたところ、79・9%が「ある」と答え、「拒食症でほとんど食べることができないが、昼食に誘われる」とか「過食の衝動が起きるのが怖く、昼食を控えたいが、仲間に誘われ難しい」など、職場での食事が大きな負担だという答えが半数を超えました。

 そして、働いた経験がある患者のうち58・2%が「症状が悪化した」などの理由で「仕事を辞めた経験がある」と答え、治療と仕事の両立に課題がある実態がうかがえました。

 調査を行った日本摂食障害協会の理事で精神科医の西園マーハ文さんは、「無理をして周囲に合わせて食事をして症状が悪化し、入院するケースも出ている」と話しています。そのため、患者と会社が症状を共有して対応を考えることが大切だとしており、「働き方についてよく話し合い、1人で昼食をとることや会食を強要しないことなどを会社に理解してもらうことが大切だ。社会参加は回復する上でも大切なことで、会社側も治療をしながら長く働けるような支えを考えてほしい」と話しています。

 摂食障害の好発年齢は、元来10歳代から20歳代前半の若年女性でしたが、近年では高年齢化が指摘され、働く女性の摂食障害患者は珍しくなくなってきています。

 2019年3月3日(日)

 

■新型出生前検査、小規模な医療機関も可能に 産科婦人科学会が条件緩和

 生まれる前の赤ちゃんに染色体の異常がないかを調べる新型出生前検査について、日本産科婦人科学会は、現在検査を行っている規模の大きな病院だけでなく、小規模な医療機関でも行うことができるように条件を緩和して、検査を行う施設を増やす方針をまとめました。

 新型出生前検査は、妊婦の血液を流れる胎児のDNAからダウン症、エドワーズ症候群、パトー症候群を引き起こす3つの染色体異常があるか判定する検査で、日本産科婦人科学会は検査を行う医療機関の条件を定め認可を受けた施設で行うよう求めています。

 これまでの条件は、産婦人科と小児科の両方の医師が常勤していること、検査の前と後に心理的なサポートも含めた専門的なカウンセリングを行うことなどとし、大学病院などの規模の大きな全国の92の病院が認可を受けて実施しています。

 しかし、罰則がなく認可を受けずに検査を行う医療機関が15以上あるとされることから、学会は、一定の条件を満たせば連携施設という名称でクリニックなどの小規模な医療機関でも検査が行えるよう条件を緩和し、認可施設を増やす方針をまとめました。

 連携施設の条件として、研修を受けた産婦人科の医師がいれば小児科の医師の常勤は必要なく、検査の前後のカウンセリングは検査の説明や情報提供でその代わりにすることができるということです。そして、連携施設の検査で「異常の可能性がある」という結果が出た場合には、規模の大きな病院に紹介して専門的なカウンセリングを行うとしています。

 学会は今後、関連するほかの学会や国民から意見を募り、最終的に決定したいとしています。

 この新型出生前検査で異常が見付かると妊婦の9割以上が人工妊娠中絶を選んでいることなどから、臨床遺伝の専門医が集まる日本人類遺伝学会などは、適切に判断するためには検査前の段階から十分なカウンセリングが必要だとして今回の方針に反対しています。

 日本産科婦人科学会の苛原稔倫理委員長は、「連携施設でも原則として専門的な知識を持った医師が検査を行うことになり、カウンセリングも高いレベルのものを求めていく。妊婦に寄り添う形で適切に進めていきたい」としています。

 国内では2013年から始まった新型出生前検査は、晩婚化で高齢での出産が増えていることなどを背景に、検査の件数は年間1万件以上あり、昨年9月までに認可施設で行った検査は累積で6万件以上に上っています。

 2019年3月3日(日)

 

■はしか、世界98カ国で患者増加 ユニセフが発表

 日本を含む世界各地で、はしか(麻疹=ましん)の感染が広がっていることから、国連児童基金(ユニセス)は、各国の政府などに対し、子供へのワクチンの接種を徹底させるよう呼び掛けています。

 ユニセフは1日、世界各地ではしかの感染が拡大しており、2018年に、2017年よりも患者が増加した国は98カ国に上ることを明らかにしました。

 世界保健機関(WHO)の調べでは、2018年に患者の数が最も多かったのはインドで6万4972人、続いてウクライナが5万3218人、パキスタンで3万3224人などとなっています。

 アジアでもはしかの感染は拡大傾向にあり、フィリピンでは今年に入り1万2000人以上が感染、早くも昨年1年間の約1万6000人に迫る勢いで、死者も200人以上出ています。日本でも感染者が増加、国立感染症研究所の集計では大阪府、三重県など22都道府県で220人以上の感染が報告されています。

 ユニセフは、感染が拡大している原因として、医療体制が脆弱(ぜいじゃく)なことや紛争のために十分な治療が提供できないこと、それにはしかに対する危機感が市民の間で薄いことなどを指摘しています。

 またアメリカでは、健康上のリスクを引き起こすとしてワクチンの接種を控えたり拒否したりする動きが広がっており、こうした動きも感染拡大の原因として挙げています。

 ユニセフは、各国の政府や市民に対し、ワクチンは安全かつ効果的で命を守るものだと理解した上で、生後6カ月から5歳までのすべての子供にワクチンの接種を徹底させるよう呼び掛けています。

 2019年3月3日(日)

 

■薬の管理をロボットに任せる日本初の薬局が誕生 大阪市中心部に

 棚にある薬の管理はロボットに任せる「次世代型」の調剤薬局が1日、大阪市中心部に日本で初めてオープンしました。薬剤師は患者に薬の注意点などを伝える「服薬指導」に集中でき、患者は薬局が無人となる時間外でも、処方された薬を受け取れます。このロボットシステムの導入は日本で初めてといいます。

 開業したのは「梅田薬局」で、大阪市北区のヒルトンプラザイースト5階にできた医療モール「大阪梅田メディカルセンター」内で営業を始めました。

 アメリカの医療機器大手のロボットで、日本BDが発売。薬剤師の指示があると、処方箋(せん)の情報をもとに、ロボットアームが使用期限が近い薬を調剤棚から選び取り、10秒ほどで払い出し口に届けます。

 梅田薬局では、約2000種類の薬を調剤棚にそろえます。棚に薬を入れる時は、薬剤師が箱などに記載されたバーコードを読み取り、装置の入り口に置きます。すると、ロボットアームが自動的に整理し、棚に並べていくといいます。さらに、昼夜を問わず空いた時間に、使用頻度に応じて最も効率的な薬の配置に並べ替えます。

 日本BDによると、ヨーロッパを中心に、すでに約8000台が導入されています。一方、日本ではまだ、薬の整理や管理、棚からの取り出しは、薬剤師が手作業でやるのが一般的です。ただ、薬を探すのに時間がかかるなどして、患者が薬局で待たされることも多くなっています。ロボットの導入で、待ち時間は大幅に短縮されそうです。

 営業時間後でも、QRコードを機械にかざせば、薬剤師がいなくても薬を受け取れます。営業時間内に薬剤師から服薬指導を受ける必要はあるものの、その後はいったん店を離れられるため、日中は時間がない人にとっても便利。

 梅田薬局を運営するメディカルユアーズの渡部正之社長は、「この調剤を自動化する装置を活用し、待ち時間ゼロの薬局を目指したい」と話しています。

 2019年3月3日(日)

 

■在宅医療利用の患者、1日当たり18万人で最多 2017年調査

 2017年に通院が困難な患者らの自宅などを医師が訪れる「在宅医療」を受けた患者数が1日当たり推計18万人となり、1996年の調査開始以来、最多だったことが1日、厚生労働省の患者調査で判明しました。

 患者が入院から在宅医療へシフトしていることが背景とみられ、厚労省担当者は「高齢化で在宅医療の需要が増し、国も医療機関などに補助金を出して政策的な支援を進めているため」とみています。

 患者調査は3年に1度。2017年10月、全国1万3594カ所の医療機関を対象に、入院や通院した計約343万人を基に推計値を算出しました。

 在宅医療を受けた外来患者の推計は1日当たり18万100人で、2014年の前回調査と比べて2万3700人増加。「訪問診療」(11万6000人)が過半数を占めたほか、必要な時に医師を自宅に呼ぶ「往診」(4万4000人)、看護師など「医師・歯科医師以外の訪問」(2万人)が続きました。

 外来患者の総数は、2014年の前回調査から4万人減少の719万人。年齢層別では、65歳以上が364万人で、35~64歳が218万人でした。

 入院患者は推計131万人(前回比6200人減)で、このうち65歳以上が7割を占めました。一方、2017年9月に医療機関から退院した患者の推計の平均在院日数は29・3日。前回から2日短縮し、減少傾向が続いています。

 2019年3月2日(土)

 

■肺がん治療薬の副作用で、2年半に52人死亡 「オプジーボ」治療歴ある患者はリスク高

 肺がん治療薬「タグリッソ」の使用後に副作用とみられる症状が出て、約2年半で52人が死亡していたことが、製造販売元のアストラゼネカによる調査で判明しました。報告を受けた厚生労働省は、患者の治療歴に注意して使うよう呼び掛けました。

 タグリッソは「EGFR」という遺伝子に突然変異があるタイプの肺がんの治療薬で、手術ができないか再発の患者が対象。調査では、2016年3月から2018年8月までに、タグリッソによる治療を受けた患者3578人を調べました。このうち2079人に下痢や爪の炎症、発疹などの副作用がみられました。亡くなった52人中、27人が間質性肺疾患を発症していました。

 背景を詳しく調べたところ、がん免疫治療薬「オプジーボ」での治療後に、タグリッソを使うと、治療歴のない患者と比べ、間質性肺疾患を発症するリスクが2倍以上に高まることがわかりました。

 2019年3月2日(土)

 

■「かかりつけ薬剤師」の研修受講シール、ネットで不正売買 厚労省が対策要請へ

 薬局に勤める薬剤師が「かかりつけ薬剤師」になるための研修を受講した時に受け取るシールが、インターネット上で不正に売買されていることが1日、明らかになりました。厚生労働省は、研修制度の信頼性を揺るがしかねないとして、研修を行う団体に対策を求める通知を出す方針です。

 インターネット上で出品されていたのは、国内では最も多く薬剤師向けの研修を行っているとされる日本薬剤師研修センターの研修を受講した際に、受け取ることができるシールです。

 薬剤師は必要な研修を受けたことを証明するシールが一定の枚数に達すると、認定薬剤師になることができ、さらに、勤務経験の要件などを満たすと「かかりつけ薬剤師」になることができます。

 「かかりつけ薬剤師」は、患者ごとの複数の処方箋を把握して、同じような作用の薬がないか管理することなどで、加算した調剤報酬を受けることができ、厚労省は、患者が安心して薬を服用するために積極的に導入を進めています。

 シールは、個人が商品を売買するインターネットのオークションサイトなどで、1枚1100円や、30枚余りで1万5000円などとして出品され、一部は売買が成立したことを示す表示もあり、日本薬剤師研修センターはシールが本物であることを確認したということです。

 厚労省は、研修制度の信頼性を揺るがしかねないとして、日本薬剤師研修センターに対して、名簿による受講者の管理など対策を求める通知を出すほか、薬剤師で作る団体などには不適切な方法で認定を取得しないように所属する薬剤師に周知することを求める通知を出す方針です。

 日本薬剤師研修センターの豊島聰理事長は、「多くの薬剤師はきちんと研修を受けていると思っているだけに、大変憂慮すべき事態だ。今後、不正防止の対応を検討したい」と話しています。

 また、シールの売買がされていたインターネットのサイトやアプリを運営している会社は、禁止されている出品だとして削除を進めたり、日本薬剤師研修センターと相談して、対応を協議したりしているとしています。

 「かかりつけ薬剤師」からは、シールが売買されていることに怒りの声が聞かれました。東京港区の薬局では9人の薬剤師が勤務しており、業務の時間外にそれぞれが研修を受け、5人が「かかりつけ薬剤師」として業務を行っています。

 薬局を経営している北村兼一さんは、「シールの売買は、研修にかけるべき時間と労力をお金で買っていることになり、本来の趣旨である自己研さんができずに本末転倒だ。やめてほしいです」と話しています。

 2019年3月2日(土)

■ドリンク剤の成分の「タウリン」、難病の治療薬に 川崎医大が効果を解明

 栄養ドリンク剤の成分としておなじみのタウリンが、難病「ミトコンドリア病」の治療薬として初めて承認されました。効果を突き止めた研究の中心となったのは、川崎医科大(岡山県倉敷市)の研究チームでした。研究開始から約20年かけて、ようやく難病患者への福音にたどり着きました。

 ミトコンドリア病は、細胞の中でエネルギーを作り出すミトコンドリアの働きが低下することで起きます。いろいろなタイプがあり、その中では、けいれんや意識障害といった脳卒中に似た発作を何度も起こす「MELAS(メラス)」という型が最も多くみられます。患者の脳は発作の度に傷付いていき、発作が起き始めてからの余命は平均16・9年とされています。

 2000年に太田成男・現順天堂大大学院客員教授らが、MELAS患者の遺伝子異常と、アミノ酸の一種であるタウリンのかかわりを報告しました。川崎医科大神経内科学の砂田芳秀教授らはこの報告に注目し、2002年から臨床研究を開始。2012年に厚生労働省の研究事業に採択され、翌2013年から医師主導の臨床試験(治験)を始めました。

 砂田教授らは患者数の把握から始め、全国調査で約300人の患者がいることを確認しました。ここから治験対象者を絞り込むのが大変だったといいます。

 結果を科学的に検証するには、患者の条件をできるだけそろえる必要があります。約300人から遺伝子異常のタイプや発作の回数、本人の希望などでふるいにかけました。途中で病状が変わってしまい、残念ながら検証から外した候補患者もいたといいます。

 最終的に全国10医療施設の10人の協力を得て、1年間にわたり粉末状の「タウリン製剤」(製造・大正製薬)を1日9~12グラム飲んでもらいました。

 すると服用中の1年間、一度も発作がなかった6人を含め、計8人で服用前と比べ1年間の発作回数が半分以下になり、重い副作用はなかったといいます。タウリンを補ったことで、病気のため障害を受けていたミトコンドリアによるタンパク質の合成機能が改善したとみられます。

 砂田教授は、「発作以外の症状への効果や、効く人と効かない人の違いはどこにあるのかなどまだ不明な点は多い。ですが、薬で発作を減らせば患者さんの寿命が延び、生活の質も大幅に改善するでしょう。新薬開発には多額の研究費がかかる。タウリンという安価な既存薬が持つ新たな効果を見いだせたことは、医療経済的にも意義があると思います」と話しています。

 タウリンはイカやタコなどに豊富に含まれる物質で、人間の体内にも体重の0・1%、例えば体重60キロの人なら60グラムあります。生命活動に重要なさまざまな働きをしており、大正製薬の医薬品「タウリン製剤」としては、肝臓や心臓の機能改善薬として1987年から使われています。大正製薬が1962年から販売する栄養ドリンク剤「リポビタンD」にも、タウリンが1000mg配合されています。

 2019年3月2日(土)

 

■配線器具の事故、5年で367件 6割で火災、6件で10人死亡

 延長コードなどの配線器具を不適切に使うなどした結果、火災などの事故が2013~2017年度の5年間に367件起きていたことが2月28日、製品評価技術基盤機構(NITE)の調査で明らかになりました。うち6件の事故で10人が死亡しました。

 製品評価技術基盤機構は、消費電力の大きい暖房器具を多く使う冬は特に注意が必要として、コードに無理な力を加えないことや、たこ足配線などをやめるよう呼び掛けました。

 367件の内訳は、延長コードや、プラグの差し込み口が複数あるテーブルタップにかかわるものが計276件で全体の約75%を占めたほか、コンセント関連が61件ありました。製品起因でない事故の原因としては、内部にほこりや液体が入ったことによる異常発熱や、外部から強い力が加わったことによるコードの断線・ショートなどが目立ちました。

 367件中、6割超の235件が火災を伴い、火災や焼損事故の6件で10人が死亡しました。

 配線器具のほか、近年はスマートフォンなどを充電するケーブルの事故も増えています。就寝している人間の皮膚に、電源に接続したケーブルのコネクターが接触し、汗が電気分解されて皮膚に化学やけどを負う事故も発生しました。

 製品評価技術基盤機構は、「配線器具や充電ケーブルは正しく扱ってほしい」としています。

 2019年3月2日(土)

 

■美容医療トラブルで男性の相談が年間400件 損害賠償を求める訴訟も起きる

 整形手術や脱毛などの「美容医療」を巡り、施術を受けた男性がトラブルを訴えるケースが多発しています。国民生活センターには年間400件前後の相談が寄せられるほか、医師に損害賠償を求める訴訟も起きました。

 消費者庁は、専門機関に相談することなどを呼び掛けていますが、ためらう男性は多いとみられ、専門家は「男性が話せる窓口の拡充が必要」と指摘しています。

 国民生活センターによると、美容医療に関する相談件数は、2017年度は1878件。ピークだった2014年度の2501件より減ったものの、毎年2000件前後に上っており、高止まりが続いています。このうち、男性からの相談は、2017年度は20%の382件。過去10年間でみても、年間約400件前後に上ります。

 相談内容は、「脂肪吸引の手術を受け、痛みが残った」「二重まぶたに整形したが、はれが引かない」「ニキビ痕の治療を受けたら皮膚が化膿」など。症状などの改善のために、さらなる手術を求められたケースもあり、女性と同様にさまざまなトラブルが起きているといいます。

 医師らでつくる「日本美容外科学会」(JSAS、東京都大田区)によると、ホームページなどで「男性歓迎」をPRしたり、専用待合室を設けたりする美容医院も増えてきています。特に都市部で目立つといいます。

 施術を受けた男性が訴訟を起こすケースも生じました。大阪府内の男性(58歳)は2017年3月、脂肪吸引手術で痛みが出たとして、大阪市内の美容外科の医師に慰謝料など約270万円の賠償を求めて提訴。訴状によると、会社勤めの男性は仕事でストレスを感じるうちに、体形をスリムにして自信を取り戻したいと考え、ホームページで探して来院。2013年に1900ccの脂肪を吸引する手術を受けました。

 しかし、腹部にへこみが残ったほか、手術痕が引きつるなどの痛みが出たといいます。男性は「医師は危険性に関する説明義務を怠り、吸引量も過剰だった」と主張し、美容外科側は「吸引行為は適切で、へこみは通常の人と同程度」と反論。訴訟は昨年6月、美容外科側が50万円を支払い、再発防止策を講じると誓約するなどの内容で和解しました。

 美容医療のトラブルについて、消費者庁は、ホームページや広告をうのみにせず、手術内容や危険性を把握することが重要として、相談業務を行う各地の医療安全支援センターなどに相談するよう呼び掛けています。また、異常を感じたら、すぐに医療機関を受診するよう助言しています。

 しかし、相談をためらう男性は少なくないとみられます。内閣府が2012年にまとめた意識調査結果で「悩みがあったら気軽に相談する」と回答した男性は2割しかおらず、「男性は悩みや弱音など私的な感情を見せない志向性がある」とされました。

 著書に「『男らしさ』のゆくえ」がある京都大の伊藤公雄・名誉教授(文化社会学)は、「男性は、問題を自分一人で解決しようとする傾向が強い。『美容医療を受けるなんて男らしくない』との考えも根強く、相談できずに苦しむ男性は多いのではないか。相談窓口を週に1回は男性専用にするなどして、相談しやすい環境を整える必要がある」と話しています。

 2019年3月2日(土)

 

■「キラーT細胞」のがん攻撃力が疲弊する仕組みを解明 慶大など日米の研究チーム

 がんを攻撃する免疫細胞「キラーT細胞」は、活性化され続けると「疲弊」して攻撃力が弱まることが知られています。慶応大とアメリカのラホヤ免疫アレルギー研究所の共同研究チームは、疲弊の原因となる遺伝子を突き止めました。論文は2月28日、イギリスの科学誌「ネイチャー」電子版に掲載されました。

 オプジーボなどのがん免疫療法はキラーT細胞のがんを攻撃する力を利用しますが、疲弊したキラーT細胞の攻撃力は弱く、その仕組みの解明が課題でした。

 慶応大医学部の吉村昭彦教授(免疫学)らは、疲弊化したキラーT細胞で特徴的に働く遺伝子を解析。遺伝子の働きを調節するタンパク質「Nr4a」が、キラーT細胞のブレーキ役となる分子「PD-1」の働きを強める一方、がん細胞を攻撃する分子の産生を弱めていることもわかりました。

 Nr4a遺伝子を欠損させたキラーT細胞を作り、腫瘍を持つマウスに移植したところ、腫瘍が小さくなり、90日後も約7割が生存していました。一方、通常のキラーT細胞を移植したマウスは約半数のキラーT細胞が疲弊し、90日後の生存率は0%でした。 

 共同研究チームは今後、人のキラーT細胞でも同様の仕組みがあるか調べます。吉村教授は、「Nr4aなどキラーT細胞の疲弊を引き起こすタンパク質を標的とした阻害剤は、がん治療の新たな鍵になり得る」と話しています。

 2019年3月2日(土)

 

■海溝の最深部の生物もプラスチック汚染 イギリスの大学が調査

 海溝の最深部に生息する動物の消化管内にプラスチック片が蓄積していることが、27日発表された最新の研究結果で明らかになりました。これは人為的な汚染が、地球の奥深くまで達していることを示しています。

 プラスチックの年間生産量は3億トン以上に上っており、少なくとも5兆個のプラスチック片が海洋を漂っています。

 深海探査は多大な費用と時間を要するため、プラスチック汚染に関するこれまでの研究の大半は、表層部付近を対象としていました。そうした過去の研究では、魚、カメ、クジラ、海鳥などに広くプラスチック汚染が及んでいることが示されていました。

 イギリスのチームが行った今回の研究では、世界最深級の海溝6カ所に生息する複数の小型のエビが、プラスチック片を摂取していたことがわかりました。地球で最も深い海底凹地であるフィリピン東部のマリアナ海溝では、調査を行ったすべての動物の消化管内からプラスチック繊維が発見されました。

 イギリスのニューカッスル大学自然環境科学部のアラン・ジェイミーソン氏は、「何か見付かるかもしれないと半信半疑だったが、結果はすごいものだった」と話しています。

 ジェイミーソン氏と研究チームは通常、深海域に生息する新種生物の探索を主に行っていますが、過去10年間の探索の過程で、水深6000~1万1000メートルの深海に生息する小型エビの標本が多数蓄積されたことが切っ掛けとなり、深海部でのプラスチックの蓄積を調べることにしました。

 エビの標本90個体を解剖したところ、うち65個体(全体の約72%)に1個以上のプラスチック微小粒子が含まれていました。

 イギリスの国王立協会のオンライン科学誌「ロイヤルソサエティー・オープンサイエンス」に掲載された論文によると、これらのプラスチック微小粒子を摂取したのは深海部より水深が浅い場所にいた時だったものの、死んで沈んだため深海部で発見されたのかどうかは不明だといいます。

 ジェイミーソン氏は「海中に今あるものはすべて最終的に沈んでいく。ひとたび深海に達したら、それを取り戻すための仕組みはどこにあるのだろうか」と問い掛け、「我々は自分たちのあらゆるごみを、最も解明が進んでいない場所に積み上げ続けている」と話しています。

 2019年2月28日(木)

 

■塩野義製薬と長崎大、マラリア撲滅目指し共同研究 2023年にも新薬候補 

 塩野義製薬と長崎大学は28日、マラリアの撲滅を目指し、予防ワクチンや治療薬などの研究開発を共同で行う包括的連携協定を結びました。感染症治療薬に強みを持つ塩野義と、熱帯医学研究に半世紀以上取り組んできた長崎大の知見により、日本発のマラリア新薬の創製を目指します。また、ほかの国内外の研究機関や製薬企業との協業も進める考えです。

 長崎大は4月に、熱帯医学研究所内に「シオノギグローバル感染症連携部門」を設立予定。連携協定の第1期5年間のうちに、マラリア患者がいる東南アジアで臨床試験(治験)も始めたいとしています。マラリア予防ワクチンはまだ実用化された例がないものの、長崎大の北潔教授は「(塩野義と)双方の強みを生かしてマラリア撲滅に取り組む」と話しています。

 また、塩野義の手代木功社長は、同社と長崎大を中心に、日本でマラリア研究を進める研究機関や創薬技術を持った企業と協業するオープンイノベーションの取り組みを進める構想も明らかにしました。

 マラリアはエイズウイルス(HIV)、結核と並ぶ世界3大感染症の一つ。媒介する蚊によって罹患(りかん)しやすく、命を落とす危険もあります。亜熱帯、熱帯地域に流行しますが、近年は地球温暖化の影響で流行地域の北限が上昇しているとの指摘もあります。また、主な流行地域のアフリカには近年、ビジネスや人道援助などを目的にした渡航者も増加しており、マラリアは世界の健康課題の一つになっています。

 世界保健機関(WHO)によると、2017年にはアフリカを中心に推定2億1900万人がマラリアに感染し、43万5000人が死亡、その6割が5歳未満の子供とみられます。WHOは2030年までに全世界の発症件数と致死率を2015年の90%以下に抑えることなどを目指しています。ただ、現在の治療薬には耐性や副作用が指摘されているほか、マラリアは一度感染しても十分な免疫が獲得されず、何度も感染することなどから予防ワクチンの開発が難しい状態です。

 世界の研究機関や製薬企業はマラリア撲滅に向けての研究開発を競っています。イギリスの製薬大手グラクソ・スミスクラインは数十年以上にわたってマラリア予防ワクチンの研究開発を継続。WHOは2019年からアフリカのガーナ、ケニア、マラウイで試験投与を開始します。

 創薬研究が活発な日本も、マラリア撲滅に向けた動きは活発。大阪大微生物病研究所と製薬ベンチャー「ノーベルファーマ」がアフリカで臨床試験(治験)を進めているほか、製薬会社や厚生労働省などでつくる官民ファンド「グローバルヘルス技術振興基金(GHITファンド)」は、武田薬品工業やエーザイなどが取り組む抗マラリア薬やワクチンの開発に計50億円を投資しています。

 こうした動きが続く中、塩野義と長崎大はマラリア新薬の実現に向けて新しい取り組みを開始します。塩野義の手代木社長は、「日本発のイノベーションでマラリア撲滅に寄与したい」と意気込んでいます。実現すれば、日本の創薬力を改めて世界に示す絶好の機会にもなります。

 2019年2月28日(木)

 

■東京オリンピック・パラリンピック、全面禁煙に 会場敷地内、加熱式たばこ含め

 2020年東京オリンピック・パラリンピック大会組織員会は28日、加熱式たばこを含め、大会期間中は競技会場の敷地内を全面禁煙にすると発表しました。選手や関係者、観客、大会スタッフ、ボランティアなど来場するすべての人が対象となります。組織委によると、夏季オリンピックでは近年、会場の屋内禁煙が進んできましたが、屋外も含めた敷地内の全面禁煙は初めてとみられます。  

 国際オリンピック委員会(IOC)は「たばこのないオリンピック」の推進を掲げています。IOCが1988年に禁煙方針を作成して以降、大会中は屋外の指定エリアを除いて禁煙が定着。2018年平昌冬季オリンピックは屋外も含めて禁煙が実施されました。

 ただ、平昌オリンピックでは敷地内にスタッフ用の喫煙所を設置。会場周辺でも、たばこの吸い殻のポイ捨てが問題となる例もあったといいます。東京大会ではより厳しい禁煙を実現するため、スタッフらに周知徹底し観客にも理解を求めていく考えです。

 2018年には、受動喫煙対策を強化する改正健康増進法が成立。事務所や飲食店など多くの人が集まる施設を原則として屋内禁煙とし、加熱式たばこも規制対象に含めました。東京都でも受動喫煙防止条例が成立し、オリンピック前の2020年4月に全面施行されます。

 組織委は国内でのこうした禁煙意識の高まりも踏まえ、加熱式たばこも含めた敷地内の全面禁煙を決定。東京大会を通じ、健康的なライフスタイルの推進を目指します。

 山下聡大会運営局長は、「(IOCから)何人たりとも会場内、敷地内は禁煙にするよう話があった」と説明し、観客のいない選手村などには、動線から離れた場所に例外的に喫煙所を設置するといいます。

 会場の敷地外は原則として、自治体の条例に基づいて対応します。山下局長は、「周知徹底を図るとともに(敷地外に)既存の喫煙所がある場合はご案内するなど、きめ細かく対応したい」と話しています。

 2019年2月28日(木)

 

■島根大ががんゲノム医療で不適切登録 外部の検査会社に個人情報も提供

 島根大学医学部付属病院(島根県出雲市)が、がん患者の遺伝子を調べて治療する「がんゲノム医療」で、規定に反して患者6人から同意文書を取らずに検査対象となる登録をしていたことが28日、わかりました。また、患者の個人情報を不適切に検査会社に伝えていたことも判明しました。

 島根大病院は、国立がん研究センター中央病院(東京都中央区)が進めるがんゲノムの先進医療に協力医療機関として参加。中央病院の電子システムに患者の症例の登録が可能になったばかりの昨年11月1日の午前4時台に6人の症例を登録しました。

 中央病院は「時間的に文書で同意を得たとは考えにくい」とみて、島根大病院に確認。手順に不備があったと判断して厚生労働省に報告し、昨年12月に島根大病院を監査しました。

 症例の登録については、中央病院が患者による文書での同意が必要と規定しており、島根大病院は「検査を希望する患者のため、登録を急いだ。口頭で同意を得ていた」としています。

 また、島根大病院は患者5人のがん組織の検査に当たり、提供しないよう規定されている患者の氏名や生年月日などの個人情報を含む病理報告書を添付して、外部の検査会社に送っていました。

 井川幹夫・島根大病院長は、「同意書取得の手順と個人情報漏えいで不適切な事態を発生させ、心からおわびします。病院全体で研修を行い、再発防止に努めます」と陳謝しました。

 島根大病院では昨年11月、殺人事件の被害者の電子カルテを一部の職員が業務以外の目的で閲覧していたことが明らかになっています。

 2019年2月28日(木)

 

■はしか感染防止に「患者1人でも原則公表」 全国最多の大阪府が方針

 全国的にはしか(麻疹=ましん)の患者が増える中、大阪府は感染拡大を防ぐためにより広く注意喚起する必要があるとして、患者が1人でも出た場合は原則公表する方針を固めました。

 はしかは、発熱や全身に発疹が出るウイルス性の感染症で、感染力が極めて強く、重症になる場合があるほか、妊婦が感染すると流産や早産の恐れもあります。

 大阪府では、今年に入って2月17日までの患者が昨年1年間の患者数15人の5倍を超える81人となるなど、全国で最も多くなっています。

 大阪府では感染拡大を防ぐために、より広く注意喚起する必要があるとして、患者が出た際の新たな公表基準を設ける方針を固めました。

 具体的には、これまで「10人以上の集団感染があった場合」などとなっていた公表基準を改め、患者が1人であっても感染拡大の防止につながる場合は原則、公表していくということです。

 はしかの公表基準については現在、大阪府内でも独自に保健所を設置している政令指定都市や中核市などで異なっています。

 このため大阪府は患者が1人であっても原則公表する方針を、今後大阪府内の統一した基準にできるよう関係する自治体と協議を進めています。

 2019年2月28日(木)

 

■産科医は新潟県、小児科医は茨城県が最も不足 厚労省公表

 医師が都市に集中し、地方で不足する「偏在」の解消を目指している厚生労働省は27日、産科医と小児科医の都道府県別の充足度について、両科とも最大2・2倍の開きがあったとの推計結果を明らかにしました。

 単純な人口比の医師数ではなく、医師の性別や年齢、患者の需要などの影響も加えた指標で示しました。値が大きいほうが充足度が高くなります。

 産科で1位は東京都(18・4)で、秋田県(15・8)、和歌山県(14・3)と続きました。最下位は新潟県(8・2)で、熊本県(8・6)、福島県(8・8)の順でした。

 小児科では1位が鳥取県(173・8)で、東京都(142・4)、京都府(140・6)が続きました。最下位は茨城県(78・3)で、埼玉県(79・0)、鹿児島県(82・7)の順でした。

 医師全体の偏在指標でみると、1位は東京都で、最下位の岩手県とは1・9倍の開きがありました。値はいずれも暫定値としています。

 厚労省は、この日開かれた有識者検討会に産科、小児科の推計結果を示すとともに、医師の偏在解消策などを盛り込んだ中間取りまとめ案について大筋で了承を得ました。産科、小児科については、下位3分の1に当たる16県では十分な医療提供体制を確保できるよう、医療機関の集約化などの施策を重点的に進めるとしています。

 2019年2月28日(木)

 

■地球温室化を防ぐ「層積雲」、CO2濃度上昇で消失の可能性 約8度の劇的な気温上昇の恐れ

 海上の雲は太陽光を宇宙空間に反射することで、地球が温室状態になることを防いでいます。だが、大気中の二酸化炭素(CO2)量が現在の3倍になった場合、この雲が崩壊し消失する可能性があると警告する研究結果が25日、発表されました。

 今回の研究をまとめた論文の主執筆者で、アメリカのカリフォルニア州パサデナにあるジェット推進研究所の科学者タピオ・シュナイダー氏は、「今回の結果は、気候変動に、これまで知られていなかった危険な限界値が存在することを示している」と語りました。

 このような雲は「層積雲」と呼ばれ、アメリカのカリフォルニア州、メキシコ、ペルーなど主に南北アメリカ大陸西側の亜熱帯性の海洋の約20%を覆っています。

 論文によると、「層積雲が消失すると、地球は温室効果ガス濃度の上昇にのみ起因する温暖化に加えて、約8度にも及ぶ劇的な気温上昇に見舞われる」といいます。

 これほどの規模の気温上昇は、極地の氷を融解させ、数十メートルもの海面上昇を引き起こすと考えられます。

 前回、地球がこれほどの高気温になったのは約5000万年前で、そのころはワニが北極地方を歩き回っていました。この半分の規模の温暖化でさえ、人類の適応能力を超えると考えられると、シュナイダー氏は指摘しています。

 人為的な地球温暖化が始まって以降、大気中のCO2濃度は285ppmから410ppmへと45%近く上昇しています。シュナイダー氏ら研究チームは、層積雲の挙動をモデル化する革新的な手法を用いて、CO2濃度が1200ppmに達した場合、温暖化の加速が制御不能になるとされる「臨界点」はこれよりも幾分高いかもしれないと考えられているにもかかわらず、層積雲による防護の覆いが崩壊する恐れがあると推算しました。

 現在の3倍に当たるこのCO2濃度を超えることは、それほど現実離れした話ではないかもしれないとシュナイダー氏は警告しています。

 気候変動によって起こる問題に対する緊急警告が発せられてから30年経過しましたが、世界の温室効果ガス排出量は今なお年々増加の一途をたどっています。

 オーストラリアのメルボルン大学気候・エネルギー学部のマルテ・マインシャウセン学部長は、今年発表予定の論文を引用し、何も対策を取らず現状通りの水準でCO2の排出が進行すると、CO2濃度は「2104年までに1200ppmを超える」と説明しました。

 イギリスの科学誌「ネイチャー・ジオサイエンス」に発表された今回の研究結果は、現在より気温が約12度高かった5000万年前の始新世初期に関する長年の謎を解決する可能性があります。

 これほどの水準の温暖化は、CO2濃度が約4000ppmにまで上昇していなければ説明がつかないものの、実際の濃度はその25~50%にしか達していなかったことが地質学的証拠で明らかになっています。

 今回の研究によると、1000~2000ppmのCO2濃度がまさに、地球を冷却させる層積雲を消失させ、気温を最高で8度押し上げる限界値に当たります。

 シュナイダー氏は、「層雲層の消失に起因する気温の急上昇は、始新世における温室気候の出現を説明できる可能性がある」と指摘しました。

 2019年2月27日(水)

 

■虚偽広告の医薬品売り上げ4・5%、製薬企業から没収 厚労省方針

 厚生労働省は、虚偽・誇大広告など不当な方法で医薬品の販売を拡大した製薬企業に課徴金を支払わせる新たな制度について、没収する額を売り上げの4・5%とする方針を決めました。従来の罰金よりも支払う額が跳ね上がる可能性があり、再発防止の効果が期待できます。

 通常国会に提出する医薬品医療機器法(薬機法)の改正案に盛り込みます。2021年夏までの施行を目指します。

 医師が処方する医療用医薬品の中には1兆円以上も売り上げるヒット商品がある一方、違反した場合には刑事罰として200万~1億円の罰金があるだけで、抑止効果が乏しいとされていました。厚労省は2013年に発覚した製薬大手ノバルティスファーマの降圧剤「バルサルタン」(商品名ディオバン)のデータ改ざん事件を機に、違法行為で得た利得を徴収する課徴金制度創設を検討。昨年11月の有識者会議で制度創設を提案し、了承されていました。

 当初、一般の商品の不当表示を規制する改正景品表示法と同様に売り上げの3%を検討していました。これに対し、検討段階で「3%では少ない」「製薬企業は一般企業よりも収益率が高い」などの意見が出たため、製薬企業の営業利益率の中央値に相当する4・5%まで引き上げました。課徴金制度が導入されれば、数百億円単位に上る課徴金を支払うケースが出る可能性もあります。

 課徴金の納付命令を出せるのは厚労省と都道府県で、業務命令などの行政処分で十分な抑止効果が得られていると判断した場合は、納付命令を出さない規定も設けます。さらに、一定の売り上げに達しない場合は、違反があっても納付命令の対象外とすることも検討しています。

 2019年2月27日(水)

 

■目の難病「網膜色素変性症」、肝硬変薬で治療 京都大が3月から治験へ

 失明の恐れがある目の難病「網膜色素変性症」の臨床試験(治験)を3月1日から始めると、京都大医学部付属病院の池田華子准教授(眼科学)らの研究チームが発表しました。肝臓病で使われている薬を患者に服用してもらい、2025年ごろの保険適用を目指します。

 網膜色素変性症は、網膜の光を感じる視細胞が徐々に失われて視野が狭くなったり視力が低下したりする難病で、国内の患者数は約3万人とされます。進行を予防する有効な治療法はなく、人生の途中で失明する原因として緑内障、糖尿病に続いて3番目に多くなっています。

 研究チームは、企業との共同研究で、3種類の必須アミノ酸を投与することで、マウスの視細胞が死滅しにくくなったことを確認。肝硬変で使われている薬に、これらの必須アミノ酸が含まれていることに着目しました。

 治験では、この薬を、京都大病院を受診する成人患者70人を対象に1年半服用してもらい、効果や安全性を確かめます。

 池田准教授は、「3種類の必須アミノ酸には、視細胞のエネルギー源となる物質を増やす効果があるとみられる。少しでも早く、治療に使えるよう研究を進めたい」と話しています。

 2019年2月27日(水)

 

■子宮内膜症による不妊、酵素が原因か 韓国と米国のチームが発表

 子宮内膜症という病気の女性の一部は、不妊症になることが知られています。その原因は不明ですが、韓国とアメリカの研究チームが「特定の酵素の不足が原因ではないか」との研究結果をアメリカの科学誌に発表しました。治療法の開発につながるかもしれないといいます。

 この子宮内膜症は、子宮の内側の壁にしか存在しないはずの組織が子宮以外の場所である腹膜や卵巣などにでき、月経の周期に合わせて発育と出血を繰り返すもの。強い月経痛や慢性の下腹痛、周囲の器官を癒着させて痛みが出るなどの症状があります。生殖年齢にある女性の10人に1人にみられます。

 研究チームは、子宮内膜症と診断され、不妊症でもある女性21人の子宮内膜を調べ、「HDAC3」と呼ばれる酵素が少ないことを発見。さらに、遺伝子操作でHDAC3を持たないマウスを作製し、不妊症になることを確かめました。

 2019年2月27日(水)

 

■千葉県で新たに2人がはしかに感染 県内の患者は8人に

 千葉県茂原市の病院ではしか(麻疹=ましん)の患者への対応に当たった看護師など県内の2人がはしかに感染していたことが27日、新たにわかりました。

 千葉県によりますと、はしかの感染が確認されたのは茂原市の公立病院に勤務する30歳代の女性看護師と市川市に住む30歳代の女性の2人です。

 このうち女性看護師は2月10日、夜間救急外来を受診したはしかの女性患者を対応した後、25日の夜に発熱の症状が出て検査の結果、はしかの感染が確認されたということです。

 また、市川市に住む女性は2月21日に悪寒の症状があり、24日に発疹が出てその後、医療機関を受診し26日、はしかの感染が確認されました。この女性は直近に海外渡航歴がなく、どこで感染したか不明だということです。

 2月20日から24日にかけて都営新宿線で本八幡駅から九段下駅まで移動、その後、東京メトロの半蔵門線や東急田園都市線を使って東京都世田谷区の駒沢大学駅まで乗車し、同じ経路で戻っています。

 乗車の時間帯は、20日と21日は午前5時ごろに本八幡駅を出発、午後9時ごろに駒沢大学駅を出発。22日は午前5時ごろに本八幡駅を出発、午後11時ごろに帰宅していますが、この間の詳しい経路は明らかにされていません。23日は午前8時半ごろに本八幡駅を出発、午後8時半ごろに駒沢大学駅を出発。24日は午前9時ごろに本八幡駅を出発、午後4時半ごろに駒沢大学駅を出発したということです。

 千葉県ははしかにかかったことがなかったり、予防接種したかわからない場合などは2回のワクチン接種を検討するよう呼び掛けています。また、はしかが疑われる症状が出た場合には事前に医療機関に連絡した上で、指示に従って受診するよう呼び掛けています。

 これで今年の千葉県内のはしかの患者は8人となりました。

 2019年2月27日(水)

 

■じゅうじゅうカルビ、全店を一時閉店 O157による食中毒が発生

 すかいらーくホールディングス傘下の「トマトアンドアソシエイツ」(兵庫県西宮市)は25日、焼き肉チェーン「じゅうじゅうカルビ」の東京都や大阪府など計7店で、腸管出血性大腸菌O(オー)157による食中毒が発生し、全61店で同日から営業を停止したと発表しました。8~12日に来店した計8人が発症しました。

 東京都や大阪府のほか、神奈川県、兵庫県、埼玉県、福井県の店舗で食中毒の症状の連絡が保健所や客からありました。同社は共通して食べた食材が原因とみています。原因の特定と対策が講じられるまで営業停止を続けるといいます。

 福井県医薬食品・衛生課によると、同県内で今月16日、20歳代男性が下痢や腹痛を訴えて医療機関を受診。検便したところO157が検出されました。男性は10日、福井市内の「じゅうじゅうカルビ」で食事をしましたが、発症までに外食した店が複数あり、O157への感染原因は不明といいます。男性はすでに回復したといいます。同県内でほかにO1577を訴えた人はいません。

 トマトアンドアソシエイツ は、「8~12日の期間またはその前後において、「じゅうじゅうカルビ」でお食事をされ、体調不良を感じたお客様がいらっしゃいましたら、誠に恐れ入りますが、お客様相談室までお申し出くださいますようお願い申し上げます。今後は、本件の発生原因の特定に全社を挙げて取り組むとともに、体調不良の症状がみられたお客様に対して真摯に対応してまいります。お客様には多大なご迷惑とご心配をおかけしましたことを重ねて深くお詫び申し上げます」とコメントしています。

 問い合わせ先のお客様相談室の電話番号は 0120-777-327 (午前9時~午後6時)。

 2019年2月26日(火)

 

■環境省、汚れたプラスチック輸出を原則禁止へ 削減やリサイクルを強化へ

 原田義昭環境相は26日の記者会見で、汚れてリサイクルできないプラスチックごみを中国などアジア各国へ輸出してきたことについて「基本的にはやめなければいけない」と述べ、原則禁止とする考えを表明しました。今秋にも関係省令を改正し、輸出手続きを厳格化します。今後はプラスチックごみの削減やリサイクルを強化する方針です。

 日本を含む先進国はプラスチックごみを自国内で処理しきれず、安価な原料として受け入れるアジア諸国に輸出してきました。日本は2017年に約150万トンを輸出。この中には▽たばこの吸い殻が入ったペットボトル▽建物解体で木くずや土砂が混じった断熱材▽正しくリサイクルされなかった家電製品なども多いといいます。

 世界最大の輸入国だった中国は2017年末にプラスチックごみの輸入を禁止。日本は輸出先を変え2018年には約100万トンを輸出しましたが、台湾やマレーシアなど他のアジア各国・地域も輸入制限の動きをみせています。

 環境省によると、廃棄物の越境移動を規制するバーゼル条約の締約国会議が4月末からスイスで開かれ、条約の対象品目に「汚れたプラスチック」を追加する改正案が議論されます。日本も提案に賛同し、プラごみ輸出の際には相手国の同意を必要とするなど規制強化する方針です。

 会見で原田環境相は、「これからは発生量を抑え、きちんとリサイクルできる体制を作るのが基本だ」と強調しました。

 2019年2月26日(火)

 

■アメリカでマラリア防ぐワクチンの臨床試験始める 日本人研究者の創薬ベンチャー

 日本人研究者が創業したアメリカのメリーランド州の創薬ベンチャー「VLPセラピューティクス」が、マラリアの感染を防ぐワクチン候補薬の安全性や効果を確かめる臨床試験をアメリカ国内で始めました。創業者の1人で最高経営責任者(CEO)の赤畑渉さん(45歳)は、「世界の人口の約半数に感染のリスクがある病気で、実用化されれば多くの命を救えるかもしれない」と話しています。

 アメリカの食品医薬品局(FDA)が1月に許可しました。5月から30人にワクチン候補薬を3回ずつ投与し、感染時に速やかに治療できる体制を整えた上で、蚊を使って実際に感染を防げるか調べます。年内には結果が得られる見通し。

 ワクチン候補薬は、ゲノム(全遺伝情報)を持たないものの、外見が特定のウイルスと同じ形状の微粒子(VLP)の表面に、マラリアの抗原となるタンパク質を結合させた構造。投与すると体内で抗体が作られ、マラリア原虫が侵入すると免疫が働いて撃退する仕組みです。

 赤畑さんはアメリカ国立衛生研究所(NIH)の上席研究員を経て2013年に同社を設立し、感染症やがんのワクチン開発に取り組んできました。病原体を弱毒化させた生ワクチンはごくまれに病気を発症させる可能性がありますが、ゲノムを持たず、体内で増殖しないVLPワクチンにはそうした心配がないといいます。

 世界保健機関(WHO)によると、2017年にはアフリカを中心に推定2億1900万人がマラリアに感染し、43万5000人が死亡、その6割が5歳未満の子供とみられます。開発中のワクチンはありますが、実用化には至っていません。

 マラリアに詳しい金子修・長崎大熱帯医学研究所教授(病原原虫学)は、「高度流行地のマラリア患者は薬で治療してもすぐに再感染してしまうため、有効なワクチンができればその意義は極めて大きい。臨床試験の経過に注目したい」と話しています。

 2019年2月26日(火)

 

■世界最小268グラムの男の赤ちゃん、無事退院 慶応大学病院

 体重268グラムで生まれた極めて小さな男の赤ちゃんが、無事に成長して、今月20日、退院したと慶応大学病院(東京都新宿区)が明らかにしました。病院によりますと、元気に退院した男の子としては世界で最も小さく生まれた赤ちゃんだということです。

 慶応大学病院小児科によりますと、男の子は体重の増え方が緩やかで、おなかの中で亡くなるリスクが高かったため、昨年8月、妊娠24週で緊急の帝王切開を行い、体重268グラムで誕生しました。

 その後、新生児集中治療室で呼吸や栄養を管理しながら成長を促したところ、3238グラムまで大きくなって今月、退院したということです。

 病院によりますと、元気に退院した男の子としては世界で最も小さく生まれた赤ちゃんだということで、男の子は大きな合併症もなく元気だということです。

 世界の小さな赤ちゃんを記録するアメリカのアイオワ大学のデータベースによりますと、300グラム未満で生まれて元気に退院した赤ちゃんは世界で23人が記録されていますが、そのうち男の子は4人だけで、最も小さかった男の子は2009年にドイツで生まれた274グラムの赤ちゃんだったということです。

 病院によりますと、男の子が女の子よりも救命率が低いのは、男の子は肺の成熟が遅いことなどが理由とみられるといいます。

 2019年2月26日(火)

 

■埼玉県西部に住む3人がはしかに感染 医療機関で拡大か

 埼玉県西部に住む男女3人が相次いではしか(麻疹=ましん)に感染していたことがわかり、埼玉県は最初の患者が受診した医療機関で感染が広がった恐れがあるとして、はしかの疑いがある症状が出た場合は保健所に連絡してから医療機関を受診するよう呼び掛けています。

 埼玉県によりますと、はしかに感染したのは、埼玉県西部の狭山保健所管内に住む10歳代から40歳代までの男女3人です。

 このうち30歳代の男性は、今年1月フィリピンに10日間ほど滞在し、帰国した後に発熱や発疹の症状が出て1月9日、はしかと診断されました。

 その後、男性が最初に受診した医療機関で働く40歳代の女性スタッフと、同じ医療機関を受診した10歳代の男性が、いずれも発熱の症状が出て、先週はしかと診断されました。3人とも症状は回復しているということです。

 埼玉県は最初の患者が受診した医療機関で感染が広がった可能性があるとして、高熱や発疹などはしかの疑いがある症状が出た場合は、最寄りの保健所に連絡してから医療機関を受診するよう呼び掛けています。

 2019年2月26日(火)

 

■はしか患者増加、22都道府県で222人 海外での感染目立つ

 国立感染症研究所は26日、今年に入ってからのはしか(麻疹=ましん)の患者数が17日までで222人になったと発表しました。直近の1週間では48人が新たに感染し、過去10年間で最多ペースとなっています。

 発表によると、都道府県別では大阪府が77人で最も多く、三重県49人、愛知県20人、東京都14人、京都府9人と続きます。これまで中心だった関西以外の地域でも感染者が増え、22都道府県に拡大しています。渡航先のフィリピンやベトナムといった東南アジアでかかったとみられる人が目立ちます。

 大阪府では、百貨店「あべのハルカス近鉄本店」(大阪市)や大阪府済生会茨木病院(茨木市)で多数の患者が確認されています。三重県では、宗教団体の研修会に参加した人らの集団感染がみられました。

 千葉県では、フィリピンに滞在していた40歳代の女性がはしかに感染。女性を救急車で搬送していた30歳代の男性隊員にもうつりました。川崎市でも、11日に東南アジアから帰国した3歳未満の男児が発症しました。発熱後、市内のスーパーに外出したり、JR川崎駅から京浜東北線などを利用し、東京方面に出掛けたりしたといいます。

 国内では、2008年に約1万1000人の患者が出ましたが、2006年から子供への予防接種を2回にするなどしたことで、患者は減りました。2015年には、世界保健機関(WHO)から、国内に土着ウイルスが存在しない「排除状態」と認定されました。

 だが、その後も東南アジアなどで流行しており、こうした地域で感染した人が散発的にみられます。最近の国内の患者数は年間200人前後で推移しています。

 厚生労働省は、「渡航する人などは、予防のためにワクチン接種を検討してほしい」としています。

 はしかは、ウイルスに感染後、約10日間の潜伏期間を経て、38度前後の熱やせきなど、風邪に似た症状がみられます。2~4日続いた後、いったん熱は下がるものの、再び39度以上の熱や全身の発疹が出ます。熱が下がってからも、3日程度は人にうつす恐れがあります。患者のくしゃみなどで空気中に浮遊するウイルスを吸い込んだだけでもかかります。手洗いやマスクでは防げず、免疫がなければほとんど発症します。

 治療薬はないものの、ワクチンを2回接種することが有効。現在は、1歳児と就学前に2回、予防接種を受けることになっています。それでも感染することはあるものの、症状は比較的軽くてすみ、感染力も弱まります。

 感染拡大を防ぐため、はしかが疑われる症状が出た場合は、医療機関に連絡をしてから受診します。妊娠中の女性がかかると、流産や早産の危険が高くなり、妊婦や予防接種を受ける前の0歳児などが感染しないようにすることが重要です。

 2019年2月26日(火)

 

■2型糖尿病患者、12~2月に数値悪化 寒さによる運動不足、食生活の乱れなど要因か

 生活習慣の乱れなどが原因となる2型糖尿病の患者は、冬場(12~2月)に血糖や血圧などのコントロールが悪化するとの研究結果を、東京慈恵医大の坂本昌也・准教授らの研究チームがアメリカの医学誌に発表しました。

 全国38病院で2013~2014年に、月1回以上の通院を続けた患者4678人が対象。(1)直近1~2カ月の血糖の状態を示すHbA1cヘモグロビンエーワンシー (2)血圧(3)血中のLDL(悪玉)コレステロール値の月別の変化を調査したところ、いずれも冬場(12~2月)は数値が高く、夏場(6~8月)は低いことがわかりました。

 また、これら3つの項目すべてで、治療上望ましい基準値を達成した患者の割合を調べると、夏場は15・6%だったのに対して、冬場は9・6%にとどまりました。冬のほうが夏より数値が悪かった理由として、寒さによる運動不足、年末年始の食生活の乱れ、風邪などが要因として考えられるといいます。

 糖尿病患者の多くは、高血圧や脂質異常症を伴い、動脈硬化を引き起こしやすくなります。動脈硬化が進むと、脳梗塞(こうそく)や心不全などのリスクが高まるため、糖尿病患者は血糖だけでなく、血圧や悪玉コレステロールの管理も大切です。

 坂本准教授は、「特に冬場は、医療者は治療強化、患者は生活習慣の改善が重要だ」と話しています。

 2019年2月26日(火)

 

■蚊の吸血行動を抑える物質、ロックフェラー大など発見 感染症対策に期待

 蚊の吸血行動を抑える物質を見付けたと、アメリカのロックフェラー大などが発表しました。蚊が人から人へとウイルスを媒介する感染症の対策に使える可能性もあるとして注目されます。論文がアメリカの科学誌「セル」に掲載されました。

 研究チームは、人の体内で食欲の調節にかかわっている特殊なタンパク質に似た物質が、ジカウイルス感染症(ジカ熱)やデング熱を媒介するネッタイシマカにもあることに着目。その物質の働きを高める化合物を突き止めました。

 この化合物をネッタイシマカに与えると、動物に近付いて血を吸うといった吸血行動の頻度が抑えられるようになりました。研究チームは、特殊なタンパク質に似た物質の働きにより蚊の「満腹感」が増したためとみており、「蚊が媒介する感染症の広がりを防ぐ新たな手法になる」としています。

  嘉糠洋陸(かぬかひろたか)・東京慈恵会医科大教授(熱帯医学)は、「蚊は満腹になるまで血を吸うと、人間から離れる。この現象に着目した素晴らしい研究だ」と話しています。

 2019年2月26日(火)

 

■がん免疫治療薬の効果、筋肉量が多い肺がん患者ほど長続き 大阪大が研究

 「オプジーボ」などの新しいがん免疫治療薬の効果は、筋肉量が多い患者ほど長続きするという研究結果を、大阪大の研究チームがまとめました。「筋肉量が、薬の効果を予測する指標の一つになる可能性がある」としています。論文がイギリスの科学誌「サイエンティフィック・リポーツ」に掲載されました。

 体内の免疫を活性化させてがんを攻撃するオプジーボや「キイトルーダ」は、一部の患者には劇的な効果がありますが、どの患者に効くかを事前に予測することは難しいという課題がありました。

 研究チームは、オプジーボやキイトルーダの投与を受けた肺がん患者42人を対象に、アジア人の平均的な筋肉量と比較し、筋肉量が多いグループと少ないグループに分け、薬の効果を調べました。

 その結果、筋肉量が多いグループの20人では、薬の効果が7カ月ほど続いたのに対し、筋肉量が少ないグループの22人では、薬の効果が2カ月ほどしか続きませんでした。薬の効果が1年以上続いた人の割合も、筋肉量が多いグループのほうが多くなりました。

 研究チームの白山敬之特任助教(呼吸器内科)は、「筋肉からは、がんの増殖を抑える物質が分泌されているとの報告もある。治療効果を上げるため、運動などで筋肉量を維持する取り組みが大切になるかもしれない」と話しています。

 2019年2月26日(火)

 

■東北大が「日本人基準ゲノム配列」作成し、ネットで公開 国際基準ゲノムとの差異解消

 東北大の研究チームは25日、標準的日本人に特有の全塩基配列のひな型となる「日本人基準ゲノム配列」を作成し、研究などに広く活用できるようインターネット上に公開したと発表しました。課題だった人種による違いを解消して一般的な日本人のゲノムを従来より正確に調べることができ、個人に応じた治療への礎になるといいます。

 個人の希少疾患などの原因を調べる場合、その人のゲノム配列のどこに変異があるかを比較するため、基準となる配列が必要となります。従来は、2003年に完了した「国際ヒトゲノム計画」に基づく国際的な基準配列が使われています。しかし、ヨーロッパ系とアフリカ系の集団を祖先に持つ人に由来し、一般的な日本人に特有の変化が反映されていないため、解析の際に誤りが出ることが問題となっていました。また、日本人の遺伝性の原因が強く疑われる疾患に対しても、半数程度の症例でしか原因となる遺伝子が同定できていませんでした。

 今回の配列は、東日本大震災を機に地元住民らの健康に関する追跡調査などをしている東北大の「東北メディカル・メガバンク機構」が、調査の参加者3人から同意を得て提供されたDNAを基に作成。2016年から部分的に作成・公開してきましたが、今回全体をつないで配列が完成しました。国際的な基準配列と比べ、24万6000カ所の塩基に違いがあり、うち98%を置き換えることに成功したといいます。

 機構長の山本雅之教授は、「(データの基になった)3人は東北の人に偏らないよう地域バランスに配慮した。臨床応用では、小児希少疾患などの病因の解明率を上げることができる」と話しています。

 2019年2月26日(火)

 

■オリンパス、内視鏡AI診断プログラムを3月発売 昭和大や名古屋大などが開発

 オリンパスは25日、大腸がんの早期診断を支援する人工知能(AI)のプログラムを3月8日に発売すると発表しました。同社製の内視鏡と組み合わせて使い、撮影したポリープの画像を解析。後にがんになる恐れがあり、切除する必要があるポリープの可能性を数値として表示します。

 内視鏡を用いた診断の経験が浅い医師らが使えば、その場で正しい治療法を判断しやすくなると期待できます。

 診断プログラム「エンドブレイン」は、昭和大横浜市北部病院、名古屋大大学院、富士ソフト傘下のサイバネットシステムが開発。オリンパスが、最大約500倍に拡大して観察できる同社製の内視鏡と組み合わせて販売します。プログラムの価格は450万円。3年間で約260台を販売し、関連機器と合わせて30億円の売り上げ規模を見込みます。

 大腸で発見されるポリープには切除する必要がある「腫瘍性ポリープ」とそうでないものがありますが、内視鏡の観察で判断がつかないものは通常、組織を採取して精密な検査に回します。ただ切除する必要のないポリープも多く持ち込まれるため、検査を担当する医師の業務量が増えているといいます。

 熟練医以外もAIのプログラムを参考に判断できれば、医療現場の人手不足解消につながる可能性もあります。

 開発に携わった昭和大横浜市北部病院の工藤進英消化器センター長は、「内視鏡検査を行う医師の中には初心者もいて、本来は切除しなくてもいいポリープも切除するなど、患者にも医療現場にも負担になっていた。それを解決できる手段として、AIを活用するというのは、医療の一つのステップアップだと感じている」と話しています。

 2019年2月25日(月)

 

■ノバルティス、日本で花粉症薬 今秋にも発売へ

 スイス製薬大手のノバルティスは2019年秋にも重症の花粉症患者向けの医薬品を国内で販売します。花粉症向けとしては世界で初めての「抗体医薬」で、高い治療効果が期待できます。気管支ぜんそくの薬として発売済みの薬を花粉症治療薬として、改めて承認を得ます。

 販売するのは「ゾレア」という薬で、医師が処方し医療機関で注射して使います。ノバルティスは日本で臨床試験(治験)を進め、花粉症薬としての有効性が認められました。今年秋にも承認され販売する見込み。

 対象となる患者は、花粉症で一般的に処方される抗ヒスタミン薬やステロイド点鼻薬などの既存薬を使っても十分に効果が得られない成人の重症患者。国内の最終段階の治験では、こうした患者に上乗せ投与することで鼻や目の症状の改善効果がみられました。

 ゾレアの薬価は75ミリグラム1本で約2万3000円で、使用する本数は体重や症状によって月1~16本と大きく異なります。そのため患者の自己負担額もさまざまとなりますが、多くのケースで3万円前後になるもよう。

 既存薬で効果が不十分な重症患者は、国内に200万~300万人いると推定され、ビジネスパーソンや女性の治療ニーズが高くなっています。

 ノバルティスは2002年にも日本だけを対象に最終段階の治験を実施しましたが、当時は抗体医薬が最新の医薬品だったこともあり、承認申請を断念した経緯があります。今回、改めて治験をやり直し、有用性を証明しました。

 抗体医薬はバイオ医薬品の一種で、疾患の原因をピンポイントで抑えられるのが特徴。重症疾患の治療によく用いられ、昨年には重いアトピー性皮膚炎に使える抗体医薬が登場しました。

 2019年2月25日(月)

 

■吸うと高揚「シバガス」、箱に400本 密輸の容疑で都内の大学生逮捕

 「シバガス」とも呼ばれ、吸い込むと高揚感が得られる指定薬物の「亜酸化窒素」を密輸しようとしたとして、東京都内の男子大学生が逮捕されました。大学生が注文しオランダから届いた段ボール箱には、ガスを詰めた小型のボンベが400本以上入っていたということで、警察は転売目的だった疑いもあるとみて調べています。

 逮捕されたのは東京都町田市の大学生、松下洋介容疑者(22)で、警察によりますと、一昨年12月、国の指定薬物になっている亜酸化窒素が入った小型のボンベ2本をオランダから航空貨物便で密輸しようとしたとして、医薬品医療機器法違反の疑いが持たれています。

 亜酸化窒素はシバガスとも呼ばれ、医療現場で麻酔として使われていますが、吸い込むと高揚感が得られるため「笑気ガス」ともいわれて乱用が懸念され、3年前から所持や販売などが禁止され、罰則は3年以下の懲役または300万円以下の罰金となりました。

 今回、税関の検査で見付かり押収された段ボール箱にはガスの詰まった小型ボンベが400本以上入っており、警察の調べに対し松下容疑者は「旧正月に訪れた中国で吸った。日本でも吸いたくてネットで注文した」などと容疑を認めているということです。

 警察は、密輸しようとした量が多いことから転売目的だった疑いもあるとみて詳しく調べています。

 2019年2月25日(月)

 

千葉県で消防隊員がはしか感染 患者救急搬送で感染か

 千葉県内で、2月に入って、はしか(麻疹=ましん)の患者を救急搬送した消防隊員がはしかに感染していたことが確認されました。

 千葉県によりますと、はしかの感染が確認されたのは、千葉県茂原市にある長生郡市広域市町村圏組合消防本部に所属する30歳代の男性隊員です。

 2月10日に発熱などの症状を訴え、その後、はしかの感染が確認された女性の患者を救急車で搬送した後、23日に自分も発熱の症状が出たため同県鴨川市の医療機関を受診し、24日、遺伝子検査ではしかに感染したことが確認されたということです。

 男性隊員は発症する前日の22日以降、救急車には乗車せず、公共の交通機関も利用していませんが、千葉県は受診先の医療機関などで男性隊員に接触した可能性のある人などに症状がないか、経過を観察しているということです。

 2019年2月25日(月)

 

■川崎市で東南アジアから帰国した男児がはしか感染 電車や商業施設を利用

 今月、海外から帰国した川崎市に住む幼い男児がはしか(麻疹=ましん)に感染していたことがわかり、男児が発症後に商業施設や電車を利用していたことから感染が広がる恐れがあるとして市が注意を呼び掛けています。

 川崎市によりますと、はしかに感染していることがわかったのは市内の3歳未満の男児です。

 この男児は東南アジアから帰国した1週間後の2月18日に発熱の症状が出た後、23日、医療機関ではしかと診断されました。

 男児は発熱の症状が出た翌日の19日、熱が下がったことから午後6時から8時ごろまで川崎区小田栄の「イトーヨーカドー川崎店」のフードコートやゲームコーナーを利用したほか、20日にはJR京浜東北線の川崎駅から東京駅、JR山手線の東京駅から御徒町駅、さらにJR上野東京ラインの上野駅から川崎駅まで利用したということです。

 川崎市では、はしかの感染が広がる恐れがあるとして同じ商業施設や経路を利用した人に対し、症状が現れた場合には事前に医療機関に連絡した上で、指示に従って受診することや受診する際は公共交通機関を利用しないことなどを呼び掛けています。

 2019年2月25日(月)

 

■免疫抑制剤使用の子供に安全にワクチン接種を 小児科医師が協力して臨床研究へ

 免疫を抑える薬を使っているため、水ぼうそう(水痘)などのワクチンを接種できない子供たちが接種を見送った後に感染症で死亡した事例が報告されていることから、全国の専門の医師が協力して、安全にワクチンを使用する方法を検討する臨床研究が始まることになりました。

 難病の治療や移植手術などで免疫抑制剤を使っている場合、水ぼうそうなどの一部のワクチンは、接種するとその感染症を発症してしまう恐れがあり、原則使用できないことになっていますが、ワクチン接種を見送った後に子供が水ぼうそうで死亡する事例が起きています。

 このため、全国各地の小児科の医師などが協力して、安全にワクチンを接種する方法を検討する臨床研究を3月から始めることになりました。

 対象となるのは、腎臓の機能が低下するネフローゼ症候群という病気や、臓器移植を受けた後の治療で免疫抑制剤を使用している子供などで、およそ2000人を選びます。ワクチンの接種は、専門の医師が免疫の状態を細かく検査するなどして、慎重に実施するということです。

 臨床研究の責任者を務める国立成育医療研究センターの亀井宏一医師は、「すべての患者に接種してよいわけではないが、問題のない子供には接種の機会を作れるようにしたい」と話しています。

 ワクチンの中には、生ワクチンと呼ばれる毒性を弱めているものの感染する能力がある病原体を使ったものがあります。健康な人は生ワクチンを接種しても毒性が弱いので、重い症状は出ずに免疫ができるため、その病気を予防することができます。しかし、免疫抑制剤を使用していると、毒性が弱い病原体であっても感染して発症してしまう可能性があるため、原則として生ワクチンの使用は禁忌とされ、接種できないとされています。

 その一方で、2012年までの10年間に、免疫抑制剤を使っているためにワクチンを接種できなかった3人の子供が、水ぼうそうを発症して死亡したことがわかっています。

 臨床研究を行う医師は、こうした事例について、水ぼうそうのワクチンを安全に接種できれば防ぐことができた可能性があると考えています。

 今回の臨床研究で、免疫抑制剤を使用している子供にワクチンを接種する時には、事前に免疫の状態を調べて、生ワクチンで重症化する恐れが低いことを確認したり、症状が出た時にすぐに対処する態勢を整えたりして、慎重に実施したいとしています。

 2019年2月25日(月)

 

■iPS細胞で「ミニ肝臓」、重症乳児に移植計画 横浜私立大が研究申請へ

 iPS細胞(人工多能性幹細胞)から「ミニ肝臓」を作製し、重い肝臓病の乳児に移植する臨床研究計画について、横浜私立大の研究チームが、夏にも再生医療を審査する慶応大の委員会に申請する方針であることが23日、わかりました。2020年度の移植を目指しています。

 谷口英樹教授、武部貴則准教授らの研究チームは、iPS細胞から「肝臓前駆細胞」「血管内皮細胞」「間葉系(かんようけい)細胞」という3種類の細胞を作製し、組み合わせて肝臓の機能を持つ組織「ミニ肝臓」(直径約0・15ミリ)を作製。大量に移植して肝臓の機能を補います。

 iPS細胞を使う臨床研究で移植する細胞数は、慶応大の脊髄(せきずい)損傷で約200万個、大阪大の心不全治療の心筋は約1億個。今回は数億個と大幅に多くなっています。

 研究チームはすでに重篤な肝疾患を発症する免疫不全のマウスに移植し、肝組織が作られて治療効果があったことを確認しました。

 計画では、生まれ付き肝臓で有毒なアンモニアを分解できない難病「OTC欠損症」の乳児が対象で、5人を想定しています。患者は国内で数百人とされています。治療には肝臓移植が必要なものの、安全面から生後数カ月たたないと臓器まるごとの移植はできません。ミニ肝臓はその間の「橋渡し」の役割を担うといいます。

 研究チームは、大人の肝硬変の治療への活用も目指しています。肝臓のような複雑な臓器全体を作るのは非常に難しいといいますが、ドナーが少なく提供臓器が不足しているため、作製も視野に入れています。

 谷口教授は、「臨床研究で安全性を確認し、将来的に臓器移植に代わるものにしたい」と話しています。

 細胞は京都大iPS細胞研究所から提供を受け、他人由来のため拒絶反応を抑える免疫抑制剤を使います。横浜市立大でミニ肝臓を作製し、国立成育医療研究センターで移植します。

 専門性が高いため、グループは再生医療の経験が豊かな慶応大の委員会で、計画を審査してもらう予定。

 OTC欠損症の乳児を対象にした治験は、国立成育医療研究センターも使われない受精卵から作るES細胞を使い、年内の実施を見込んでいます。ES細胞は肝細胞にして移植するのに対し、横浜私立大の研究は肝臓の役目を果たす組織を作った上で移植します。

 2019年2月25日(月)

 

■がん薬物療法を理解できる説明書を作成 静岡県立静岡がんセンター

 静岡県立静岡がんセンターは21日、複数の抗がん剤を使用するがんの薬物療法について、患者向けの説明書を医師、看護師、薬剤師らの多職種連携でまとめたと発表しました。同センターのホームページで25日から、70療法91冊分のデータを公開しています。

 患者を対象にした全国調査で、治療全般の悩みに占める薬物療法の割合が2003年の19・2%から2013年に44・3%と倍増していたのが切っ掛け。同センターの山口建総長は理由として①薬物療法の7~8割が外来で実施され、患者が副作用と自宅で向き合うことが多い②分子標的薬や免疫チェックポイント阻害剤といった新しい薬剤の登場と併用の増加③術前・術後に投与の機会が増えた、を挙げました。

 一方、病院では医師は治療方針、薬剤師は薬の説明、看護師は日常生活の注意と分担してバラバラに説明することが多く、患者が自分の治療の状況を把握しにくいという課題がありました。また、製薬会社の説明書も、自社の単剤使用に限られるという難点がありました。

 説明書は従来の説明書の欠点に対応するもので、「胃がん オプジーボ療法」「大腸がん ゼローダ+エルプラット療法」など療法別に、使用する薬剤の説明、副作用の種類と発現時期、副作用への対処法を1冊にまとめました。

 薬物療法は吐き気、下痢、脱毛など、一つの療法で多いと20種ほどの副作用を伴います。説明書は食欲不振や嘔吐(おうと)、貧血などの症状の現れ方に応じて、「自宅で様子を見て構わない」「すぐに病院に連絡」といった判断の目安を提示。副作用が出やすい時期を一覧表にするなど、治療過程がわかる工夫も施しました。

 静岡県立静岡がんセンターは2012~2015年度に説明書を試作し、患者、医療者から得られた評価を元に改良を加えました。同センターでは2017年3月から説明書を導入し、これまでに約1900人に配布しました。

 編集を担当した同センター研究所看護技術開発研究部の北村有子さんは、「起こり得る副作用を網羅し、患者の安心につながる内容になった。薬物療法上位100を網羅したい」と話しました。山口建総長は、「患者は読み返しながらセルフケアができる。医療者にとっては説明の標準化ができる。副作用のレベルに応じて対処できるので、医療安全にも役立つ」と話しています。

 著作権は放棄し、25日から誰でもダウンロード(URLはhttps://www.scchr.jp/information-prescription.html)できます。

 2019年2月25日(月)

 

■山形県で脳死の女児、臓器提供 6歳未満は国内11例目

 日本臓器移植ネットワークは22日、山形県内で入院中の6歳未満の女児が、臓器移植法に基づく脳死と判定され、臓器提供の手続きに入ったと発表しました。脳死と判定された6歳未満の子供からの臓器提供は11例目となります。

 日本臓器移植ネットワークによると、臓器提供は親族6人の総意。女児は1日に低酸素性脳症のため脳死とみられる状態となり、21日夕までに2回の脳死判定が終了しました。

 心臓が国立循環器病研究センターで10歳未満の女児に、肺が岡山大病院で10歳未満の女児に、肝臓が国立成育医療研究センターで10歳代の男性に、膵臓(すいぞう)と腎臓の一つが藤田医科大病院で50歳代の男性に同時に、もう一つの腎臓が東京都立小児総合医療センターで10歳未満の男児に移植される予定。

 脳死判定された女児の両親は日本臓器移植ネットワークを通じて、「明るく、元気で人懐っこい娘で、私達にとっては太陽のように輝き、なくてはならない存在でした。『娘がどこかで元気に生きていてくれるのなら…。その可能性を願ってもいいのなら』と、臓器提供という道を選択しました」などとするコメントを発表しました。

 岡山大病院では23日、肺が硬くなって縮んで働かなくなり呼吸困難などを来す特発性間質性肺炎の10歳未満の女児に対し、同病院で100例目となる脳死肺移植を実施し、成功したと明らかにしました。

 2010年に臓器移植法が改正され、15歳未満の子供もドナーになれますが、6歳未満の子供は今回で11例目と、ごくまれです。

 日本臓器移植ネットワークによると、約20年間の臓器提供者は22日現在、計584人。改正法以降でも年間100人に届きません。臓器移植を待つ患者は、1月末現在で1万3530人います。アメリカでは年8000~9000人のドナーがおり、人口比でみれば日本は1位のスペインの50分の1以下で、世界最低レベル。

 提供の意思を示す人の割合は2割程度おり、日本臓器移植ネットワークの門田(もんでん)守人(もりと)理事長は、「日本の場合、医療機関で臓器提供の選択肢提示が確実に行われるという制度になっていない。臓器提供を考える機会を与えられることなく亡くなっていることが少なくない。自分がどう生き、どう死ぬかを考える延長線上で臓器提供のことを考えてほしい」と訴えています。

 一方で、海外に渡航し移植を目指す子供が注目を集めています。アメリカで心臓移植手術を目指す1歳男児を応援するため、アメリカ大リーグの大谷翔平選手が1月、大阪府内の病院に見舞いに訪れました。インターネット衣料品通販大手ZOZO(ゾゾ)の前沢友作社長も同月、ツイッターで海外の心臓移植を目指す3歳児へ寄付の支援を呼び掛けると、あっという間に目標額に達しました。

 ただ、海外移植は数億円の費用がかかるなど問題があります。国際移植学会は2008年、臓器移植が必要な患者の命は自国で救う努力をするという「イスタンブール宣言」を出しました。「日本で増えないから致し方ないが、あるべき姿ではない」と考える医師も少なくありません。

 2019年2月24日(日)

 

■埼玉県嵐山町、鶏卵5万4000個を回収 抗菌剤を検出

 パック入りの鶏の卵から抗菌剤が検出されたとして、埼玉県は出荷した嵐山町の農事組合法人に対し鶏卵5万4000個余りの回収命令を出しました。埼玉県は、「この卵を食べたとしても健康被害はないと考えられる」としています。

 埼玉県によりますと、嵐山町の農事組合法人「セイメイファーム」が出荷したパック入りの鶏の卵を2月19日に検査したところ、抗菌剤「スルファモノメトキシン」が0・04ppmの濃度で検出されたということです。

 スルファモノメトキシンは、家畜の病気や寄生虫予防のため餌に混ぜて使う抗菌剤で、鶏の卵からの検出は認められていません。

 このため埼玉県は農事組合法人に対し、食品衛生法に基づいて、賞味期限が同じ3月4日となっているパック入りの卵5万4000個余りの回収命令を出しました。

 卵を出荷した農事組合法人の担当者は、「ご迷惑をおかけして申し訳ありません。再発防止に努めたい」と話しています。

 2019年2月24日(日)

 

■妊婦の腹から胎児の心臓に管刺し病気治療 学会が4月から臨床研究へ

 母親のおなかの中の胎児に病気が見付かった際に、生まれる前の段階から治療を行う「胎児治療」と呼ばれる新しい医療技術が急速に進んでおり、専門の医師で作る日本胎児心臓病学会が国内初めて、重い心臓病を対象にした胎児治療の臨床研究を今年4月から始めることになりました。

 対象となる病気は心臓から出る大動脈の入り口が狭くなる「重症大動脈弁狭窄症」で、心臓の一部が発達せず、生まれて間もない時期から大きな手術を繰り返すケースがあります。

 計画されている胎児治療は、針のような特殊な管を母親のおなかの外から胎児の心臓まで刺し込んで、管の先端からバルーンと呼ばれる器具を出して狭くなっている部分に設置し、血管を広げます。

 血管を広げた後は、バルーンを閉じてすぐに回収するということで、生まれた後の手術の回数が減り、日常生活への影響を少なくすることが期待できるということです。

 学会は、3年間で5人に実施して安全性と有効性を確かめたいとしています。

 胎児治療は国内では、呼吸ができなくなる難病など5つの病気で治療や臨床研究が行われていますが、心臓の病気を対象に行うのは初めてです。

 学会として臨床研究に取り組むのは珍しいということで、臨床研究の中心メンバーで国立成育医療研究センターの左合治彦医師は、「慎重に進めて、多くの患者に提供できるようにしていきたい」と話しています。

 大動脈弁狭窄症は、生まれる赤ちゃん1万人当たり2人から4人ほどがなるとされます。

 心臓病の患者やその家族で作る「全国心臓病の子どもを守る会」の神永芳子会長は、「妊娠中は赤ちゃんが無事に生まれるか不安が大きい時期で、治療ができれば希望につながると思う。安全に行うための技術を習得するとともに、患者への丁寧な説明も徹底して実施してほしい」と話しています。

 2019年2月24日(日)

 

■AEDの有効活用で救命率アップを 日本AED財団がアプリ開発

 AED(自動体外式除細動器)がどこにあり、いつ利用できるのか、正確な情報を登録してもらうことで救命率を上げようと、日本AED財団が街中にあるAEDの情報を登録するアプリを開発し、活用を呼び掛けています。

 「AEDN@VI」と呼ばれるこのアプリは、AEDを有効に活用して救命率を上げようと日本AED財団が開発しました。

 財団のサポーターに登録し、スマートフォンで街中にあるAEDや外出先で見付けたAEDの設置場所や利用できる時間帯などを打ち込んでもらうと、アプリの地図上に情報が表示されます。

 日本のAEDの設置数は50万台以上で、世界一の普及率といわれていますが、心臓発作による突然死は年間7万人を超え、近くに人がいた場合でも救急車の到着前にAEDが使われる割合は5%未満にとどまっています。

 財団では多くの人が協力して情報を打ち込み、随時更新していくことで、AEDについての正確な情報が全国規模で共有され、救命率の向上につながるとしています。

 日本AED財団の石見拓専務理事は、「日本はAEDが世界一多く設置されているが、いざという時に活用されず救える命が救えないという事態も起きている。多くの人に協力してもらいアプリを通じて有効に活用できるようしたい」と話しています。

 2019年2月24日(日)

 

■食道がんを対象に光免疫療法の治験開始へ がん研究センター東病院

 国立がん研究センター東病院(千葉県柏市)は21日、近赤外線という光を使ったがん治療法「光免疫療法」による食道がんを対象にした臨床試験(治験)を始めることを明らかにしました。患者の登録を3月にも開始します。これまでの光免疫療法の治験は頭頸(とうけい)部がんが対象で、他の部位では初めて。

 今回の治験は、医師が自ら計画して実施します。対象は既存の治療では効果がないと判断され、転移がなく比較的全身状態がよい食道がん患者数人程度。主に安全性を確認します。

 光免疫療法は、がん細胞の表面に多いタンパク質に結び付く抗体と、近赤外線に反応する化学物質をつなげ、薬剤として利用。この薬剤を患者に注射し、翌日にがんの部分に光を当てると、がん細胞に結び付いた薬剤に化学反応が起きて、がん細胞が破裂するといいます。

 さらに、破裂したがん細胞の成分に体の免疫機構が反応するため、光を当てた部位から離れた場所に転移したがんにも効果が期待できます。

 光免疫療法はアメリカの国立衛生研究所(NIH)の小林久隆・主任研究員らが開発した手法で、頭頸部がんについては、世界10カ国で承認に向けた最終段階の治験が始まっています。

 国立がん研究センター東病院の土井俊彦副院長は、「食道がんには、頭頸部がんの治験で使っている薬が結び付くタイプがあり、効果を期待できる可能性がある。効果が確認されれば、高齢者や他に病気を抱えていて手術が難しい患者への適用が検討できるかもしれない」と話しています。

 2019年2月23日(土)

 

■地域勤務医の残業時間上限、年1860時間 厚労省が見直し案

 医師の働き方改革について厚生労働省は20日、特例で「年1900~2000時間(休日労働含む)」としていた地域医療に従事する勤務医の残業時間の罰則付き上限について、年1860時間とする見直し案を有識者検討会に提示しました。当初案は過労死ラインの2倍を超える水準に相当し、批判が相次いでいました。

 特例の対象は地域の救急・在宅医療などを担う病院で、都道府県が指定します。厚労省は全国で約1400カ所程度が対象になるとみています。期間は、医師不足の解消が見込まれる2035年度末まで。それ以降は、一般の医療機関や一般労働者と同じ「年960時間(休日労働含む)」とする方針です。年960時間は、脳卒中などで労災認定される目安の「過労死ライン」(月80時間超)を踏まえています。

 厚労省は1月に特例の当初案を示しましたが、「過労死を招く」などとする批判が噴出。医師が自分の勉強にかける時間を除くなど、当初案の根拠とした調査を再集計しました。

 また、厚労省は同日、集中的に技能を磨く研修医らに対する残業時間の上限案も提示しました。初期研修医や専門医を目指して研修中の医師などが対象で、本人の申し出に基づいて適用します。特例病院の上限と同じ年1860時間とし、将来に向け減らす方針としています。

 残業の上限規制の適用は2024年度からで、厚労省は今年3月末までに規制の全体の枠組みをまとめる方針です。

 2019年2月23日(土)

 

■良品計画が飲料水59万本を自主回収 基準超える発がん性物質

 生活雑貨「無印良品」を展開している良品計画は22日、ペットボトル入りのミネラルウォーター「天然水」と「炭酸水」の計59万本ほどを自主回収すると発表しました。その一部から、基準値を超える発がん性物質の臭素酸が検出されました。健康被害の報告はないといいます。

 対象商品は330~500ミリリットル。無印良品の店やネットストアで昨年7月4日から今月21日まで販売してきました。製造は富山県黒部市の「黒部名水」に委託しました。

 台湾への輸出に伴う検査で2月12日に判明。国内販売分を自社で調べたところ食品衛生法で定める基準値の2~4倍に当たる1リットル当たり0・02~0・04ミリグラムの臭素酸が出ました。原因が特定できておらず、出荷した全商品を回収します。

 問い合わせは土日祝日を含む午前10時~午後6時、同社お客様相談室(0120・64・0858)。

 2019年2月23日(土)

 

■はしか、大阪府で全国最多見通しの81人に 8割が10~30歳代

 大阪府で感染拡大が続くはしか(麻疹=ましん)について、府は21日、今年の患者数が17日現在で81人になったと発表しました。前週まで全都道府県で最も多かった三重県は49人のまま増えておらず、府の患者数が全国最多となる見通し。患者は10~30歳代が8割を占め、この年齢層への対策が急務になっています。

 発表によると、11~17日に患者が急増。従業員や客計23人(府外の人も含む)が感染した百貨店「あべのハルカス近鉄本店」(大阪市阿倍野区)、院内で10人の患者が出た「大阪府済生会茨木病院」(大阪府茨木市)の集団感染などが、累積患者数を前週より30人以上も押し上げました。

 患者のうち最も多い年齢層は30歳代で25人、次いで10歳代の21人、20歳代19人。国のワクチン政策が変遷する中で、20~30歳代を中心に2回接種を徹底できていない人が多く、接種歴なしや不明も目立ちました。一方、過去の流行で感染し、免疫を持っている人が多い50歳代以上は1人にとどまりました。

 感染症に詳しい「りんくう総合医療センター」(大阪府泉佐野市)の倭(やまと)正也医師は、「免疫が不十分な世代が、ウイルスに狙い撃ちされた形だ」と分析。こうした人達が感染源となってウイルスを拡散させた恐れがあります。

 予防にはワクチンの2回接種が有効。それでも感染することはあるものの、症状は比較的軽くすみ、周囲の人への感染力もぐっと弱まる。実際、府の分析でも、2回接種後に感染した患者が他人へうつした事例は確認されていないといいます。

 倭医師は、「免疫のない集団に感染者が1人いれば、15人前後にうつるほど感染力が強いとされるが、2回接種した人の間で感染が起きても大規模な流行にはならない。だからこそ2回接種の徹底を」と強調します

 20日に開かれた感染症を検討する府の専門家会合では、あべのハルカスの集団感染事例や、国内外の移動が増える春休みに向けた対策の強化について話し合われました。

 委員長の本村和嗣(かずし)・府感染症情報センター長は、「発症までに最長3週間かかることを踏まえると、まだ今後も患者が増える恐れがある。終息は春ごろになるだろう」と分析しています。

 倭医師は、「世界各地で流行しており、国内でも集団感染がいつどこで起きてもおかしくない。初期症状は風邪に似ており、見落とす恐れもある。医師ははしかを念頭に置き、診察してほしい」と呼び掛けます。

 あべのハルカスの集団感染は、2月10日に従業員2人の感染が確認されて発覚しましたが、感染した客の大半は1月25~27日に来店しており、大阪市の担当者は「1月下旬にウイルスが持ち込まれた可能性が高い」と話しています。

 はしかのウイルスは、アフリカ、アジア、欧州など、地域ごとに流行する型が異なります。市によると、あべのハルカスの複数の感染者から東南アジアなどで主流の「D8型」が検出されたといいます。

 日本で過去に流行したのは別の型で、2010年以降は検出されておらず、世界保健機関(WHO)が2015年3月、「日本は排除状態にある」と認定しました。近年の国内症例は、いずれも海外からの持ち込みとされます。今後、海外の型のウイルスが国内に定着すると、認定が取り消される恐れもあります。

 2019年2月23日(土)

 

■糖尿病で筋肉減少のメカニズムを解明 神戸大が原因タンパク質特定

 血糖値が上がると筋肉が減少するメカニズムを神戸大大学院の小川渉教授(代謝糖尿病学)らの研究チームが解明しました。血糖値の高い状態が続く糖尿病患者は、加齢で筋肉が衰え、ほかの病気や認知症になりやすく、今回の発見が患者の健康寿命を延ばす薬の開発につながると期待されます。21日付のアメリカの医学誌「JCIインサイト」電子版に掲載されました。

 研究チームは、糖尿病になると筋肉に蓄積するタンパク質「KLF15」に着目。薬剤投与でマウスを糖尿病にすると筋肉量が約15%低下しましたが、筋肉にKLF15を持たないマウスでは低下が起こりませんでした。筋肉の減少は従来、ホルモンの作用で起こると考えられていましたが、実験の結果、血糖値の上昇でKLF15が増えることが原因とわかりました。

 一方、KLF15は正常時も筋肉で常に生成されていることから、同時にKLF15を分解する仕組みもあるとみて研究。タンパク質「WWP1」がこの役割を果たし、血糖値が上がると減少することを突き止めました。小川教授によると、WWP1とKLF15による筋肉減少のメカニズムは人にもあり、糖尿病以外でも作用するといいます。

 糖尿病に限らず、加齢などで筋肉や身体機能が衰える現象は「サルコペニア」と呼ばれます。高齢化が進む社会で健康寿命にかかわる課題として注目されるものの、治療薬はありません。

 小川教授は、「筋力が落ちると運動療法が難しくなり、糖尿病がさらに悪化する悪循環に陥る。今回のメカニズムに対応した薬が開発できれば、ギプス固定などで急に筋肉が落ちる場合も含め、糖尿病以外にも幅広く適用できる可能性が高い」と話しています。

 2019年2月23日(土)

 

■心筋細胞の再生に鎮痛解熱剤が効果 心臓病患者に応用へ

 心筋梗塞(こうそく)の治療などに向けて心筋細胞を再生させる研究をしている筑波大などの研究チームが、「ボルタレン」の商品名で知られる鎮痛解熱剤の成分を使うと再生する割合が高まることをマウスの実験で確かめました。心筋細胞の再生を妨げていた細胞内の炎症を鎮めるためとみられます。

 同大の家田真樹(まさき)教授によると、心筋梗塞は心筋細胞が減り、拍動しない線維芽細胞ばかりになります。心筋細胞はiPS細胞(人工多能性幹細胞)から作製することができますが、高価な上に心臓への移植手術が必要。

 研究チームは9年前、マウスの線維芽細胞に特定の遺伝子を注入するだけで、心筋細胞に再生できることを見付けました。「ダイレクト・リプログラミング」と呼ばれる手法で、iPS細胞を使わない再生医療技術として注目されています。

 その後、再生率を上げるために遺伝子と一緒に投与して効果がある化合物を探していました。「ジクロフェナク」という非ステロイド性抗炎症薬が最も効果があることを突き止めました。これは「ボルタレン」の商品名で知られる鎮痛解熱剤の成分で、すでに医療現場で使われています。

 大人のマウスの細胞に投与したところ、遺伝子注入だけなら1%を切る再生率が2~3%に上がりました。赤ちゃんマウスの細胞に投与したところでは、2%が7%に上がりました。

 家田教授は、「線維芽細胞の中で起きていた炎症が、心筋細胞への再生を阻害していた。それを鎮めたことで再生率が上がった」と話しています。

 今後はサルなどの大動物で安全性を確かめて、心臓病患者への応用を目指すといいます。研究成果は20日付のイギリスの科学誌「ネイチャー・コミュニケーションズ」(電子版)に発表されました。

 2019年2月23日(土)

 

■カルビー、レンジOKのポテチ自主回収 焦げ・発煙・発火で

 カルビーは22日、全国のファミリーマート限定で19日から発売した「レンジdeポテリッチ濃厚バター醤油(しょうゆ)味」約16万袋を自主回収し、同日付で販売中止にすると発表しました。

 電子レンジで温めて食べるポテトチップスと案内していましたが、購入客から「焦げ」や「発煙・発火」が起きたとの申し出が複数あり、自主回収を決めました。けが人は出ていないといいます。

 電子レンジに対応した耐熱性の包材を使い、袋に入れたまま電子レンジで40秒温めて食べると説明していました。包材の開発には2年半をかけ、50回以上の改良や試作を重ねていたといいます。

 対象商品は、滋賀県内の工場で1月31日と2月8日に作られ、賞味期限が「5月31日」または「6月8日」と記載されています。

 商品を料金着払いで、カルビー湖南工場(滋賀県湖南市柑子袋558)まで送ると、後日、返金するといいます。問い合わせは、カルビーお客様相談室(0120・55・8570)。

 3月12日に発売予定だった「レンジdeピザポテト」も同じ調理方法を提案していることから、発売中止を決めました。

 2019年2月23日(土)

 

■花粉飛散、早くも1都14県で本格化 全国的に前年を大きく上回る見通し

 気象情報会社「ウェザーニューズ」(千葉市美浜区)は20日、関東全域と九州北部など1都14県でスギ花粉の飛散が本格化したと発表しました。2月中旬から暖かい日が続いた影響だといい、東京都は昨年より14日、平年より5日早い18日に本格化したといいます。

 同社によると、今年の花粉飛散量は、前年比で群馬県6・83倍、神奈川県5・64倍、東京都4・26倍、長崎県3・13倍などと予想され、全国的に前年を大きく上回る見通し。

 関東以外で花粉飛散が本格化したのは、静岡、愛媛、山口、福岡、佐賀、長崎、大分、熊本の8県。スギ花粉の飛散ピークは東日本や西日本で3月中旬まで続くといい、東北でも3月に入ると花粉の飛散が始まるとみられます。

 2019年2月23日(土)

 

■スマホ自撮りで歯周病や口腔がんを発見 東北大とドコモが共同研究へ

 人工知能(AI)を活用して、歯周病や口腔(こうくう)がんを早期に発見できるスマートフォン(スマホ)のアプリを実用化しようと、産学の共同研究が始まることになりました。

 これは東北大とNTTドコモが発表したもので、今年4月から共同研究を始めるとしています。

 21日は実用化をイメージしたアプリが公開され、スマホのカメラで口の中を自撮りすると歯周病の症状が出ているかどうか、判定します。判定を行うのは、歯周病の人の口の中を学習したAIで、歯茎の色やはれがあるかどうかなどを瞬時に見極めることを目指します。

 また、同じくAIを活用して、舌の写真から口腔がんや、あごの動きが悪くなる顎(がく)関節症の症状があるかどうか調べことができるアプリも開発するということです。

 正式な診断はあくまで医師が担いますが、病気の予防や早期発見につなげたいとして、今後、精度を高めるための研究を重ね、2022年度の実用化を目指しています。

 東北大大学院歯学研究科の佐々木啓一研究科長は、「歯周病は自覚症状が少なく、検診の受診率は全国で4・3%程度と非常に低い」と指摘し、「どの時点で歯医者に行けばよいか、検診すればよいか、わからない人が多いのでそこを助けられればよいと思う」と話しています。

 また、NTTドコモ先進技術研究所の滝田亘所長は、「AIの技術は応用性が広いので社会に役立つサービスをつくっていく」と話しています。

 2019年2月21日(木)

 

■白血病などの遺伝子治療製品、国内初承認へ アメリカでは1回投与で5000万円超

 厚生労働省の再生医療等製品・生物由来技術部会は20日、患者の免疫細胞を増強する新たながん免疫療法に用いる製品の製造・販売の承認を了承しました。対象は難治性の白血病とリンパ腫ですが、今後、新たながん治療の柱となることが期待されます。

 同部会は、足の切断にもつながる重症虚血肢を対象とした製品についても了承。いずれも遺伝子治療技術を使った製品で、承認されるのは初めて。来月中に厚労相が承認し、今夏にも公的医療保険が適用される見通し。

 新たながん免疫療法に用いる製品は、製薬大手ノバルティスファーマ(東京都港区)の「キムリア」。子供や若者に多い「B細胞性急性リンパ芽球性白血病」と、「びまん性大細胞型B細胞リンパ腫」が対象。

 患者のリンパ球の一種の免疫細胞を取り出し、アメリカのノバルティス社の施設で遺伝子改変。がん細胞への攻撃力を高めてから体内に戻します。「CAR―T細胞療法」と呼ばれ、欧米ではすでに承認されています。アメリカでは1回の治療に約5200万円かかります。抗がん剤「オプジーボ」に続く超高額薬の登場は、公的医療保険でどこまでカバーすべきなのかという難しい問いを投げかけそうです。

 治療対象は、抗がん剤など既存の治療が効かない患者と再発患者で、国内に年約250人と予測されています。臨床試験では、白血病患者の約8割、リンパ腫患者の約5割で症状が大幅に改善しました。

 一方、重症虚血肢の治療製品は、製薬ベンチャーのアンジェス(大阪府茨木市)の「コラテジェン」。血管を新しく生み出す特定の遺伝子を組み込んだ物質を足の筋肉に注射します。血管を作る遺伝子の働きは、大阪大の研究チームが発見しました。

 重症虚血肢は閉塞(へいそく)性動脈硬化症や難病のバージャー病などで起き、痛みを伴いながら足の切断につながります。臨床試験では、患者の約7割で症状が改善。同社によると、治療対象の患者は年5000~2万人といいます。

 ただ、厚労省の部会は「効果は推定段階」と判断。承認は5年間の「期間限定」とし、投与した患者とそうでない患者の治療効果の比較調査を求めました。

 2019年2月20日(水)

 

■子宮頸がん50年間で4440万人 ワクチン、検診で撲滅できる可能性も

 ヒトパピローマウイルス(HPV)が主な原因となって発症する子宮頸(けい)がんは、検診の受診率とHPVワクチンの接種率を短期間に上げることができれば、今世紀末までに世界で事実上撲滅できる可能性があるとする論文が、イギリスの医学誌「ランセット・オンコロジー」に掲載されました。

 19日付で同誌に掲載された論文によると、検診の受診率とワクチン接種率が現状のままならば、2020~2069年の50年間に世界で4440万人の女性が子宮頸がんになり、その3分の2は国民生活の豊かさを示す国連開発計画(UNDP)の「人間開発指数」が中程度以下の国で発生すると見込まれるといいます。

 しかし、2020年までに12~15歳の女子のHPVワクチン接種率が80%以上に上がり、さらに少なくとも70%の女性が生涯に2度子宮頸がん検診を受けるようになるとすれば、今後50年間で1300万人程度が子宮頸がんになるのを予防できるといいます。その場合、子宮頸がんの罹患(りかん)率は、人間開発指数が非常に高い国では2059年までに、人間開発指数が中程度の国で2079年までに、女性10万人当たり4人未満に下がると予測しています。研究チームによると、「この罹患率は子宮頸がんは公衆衛生上の重大問題ではなくなったと見なし得る水準だ」といいます。

 論文の主執筆者、オーストラリアのニューサウスウェールズ州がん評議会のカレン・カンフィル教授は、子宮頸がんは非常に重大な疾患だが、その撲滅は手の届くところにあることを今回の研究結果は示唆している、と話しています。

 HPVは有り触れたウイルスで、主に性行為を通じて感染します。100種類以上あり、うち少なくとも14種類ががんを引き起こします。通常の免疫力があれば子宮頸がんになるまで15~20年かかるものの、エイズウイルス(HIV)感染などで免疫力が弱っていると短期間で発症します。HPVワクチンは臨床試験で、その安全性と子宮頸がんの70%を引き起こしているとされる2種のHPV(16型と18型)に対する有効性が示されています。

 世界保健機関(WHO)が今月発表したところによると、2018年に世界で新たに57万人が子宮頸がんになったと推定されています。女性のがんでは乳がん、結腸がん、肺がんに続いて4番目に多く、主に低所得国で毎年30万人以上の女性が命を落としています。

 2019年2月20日(水)

 

■すべてのインフルエンザウイルスに対抗できる免疫細胞を発見 オーストラリアの研究チーム

 知られているすべてのインフルエンザウイルスに対抗できる免疫細胞を発見したとする研究結果が18日、オーストラリアで発表されました。致死性のインフルエンザに対する万能の単回接種ワクチンの開発につながる可能性のある「極めて画期的な成果」だといいます。

 インフルエンザのウイルス株が変異を続けるため、ワクチンは製法を定期的に更新する必要があり、限られた防御しか提供できないのが現状です。

 オーストラリアの研究チームは今回、世界人口の過半数の人々の体内に存在する「キラーT細胞(免疫細胞)」が、一般的な種類のインフルエンザウイルスすべてに対し、有効に働くことを実験で証明したと主張しています。

 この結果が意味するのは、毎年更新する必要のない包括的なインフルエンザワクチンを開発するために、このキラーT細胞を利用できるかもしれないことです。さらに、この種の細胞を生まれ付き持っていない人々においても、効果を発揮させることが可能になるかもしれません。

 オーストラリアのメルボルン大学ピーター・ドハーティ感染免疫研究所の研究者、マリオス・コウツァコス氏は、「インフルエンザウイルスは人の免疫系から認識されるのを回避するために次々と変異し続け、非常に多様性に富んでいる。そのため、次のインフルエンザ流行を引き起こすウイルス株を予測して予防接種をすることがほぼ不可能になっている」と説明します。

 白血球の一種であるT細胞細胞は、異物や感染部を探しながら体内を循環しており、体内に侵入してくる細菌やウイルスの大群に対抗する人の免疫力にとって極めて重要な役割を担っています。いわゆる「殺し屋(キラー)」T細胞は、ほかの感染した細胞を直接標的にして殺傷する能力を持つ点で特異な存在です。

 コウツァコス氏と研究チームは、すべてのインフルエンザウイルス株に共通して見られるウイルスの部位を特定するために、質量分析法(質量に基づいて分子を分離する技術)を用いました。その結果、インフルエンザのA型、B型、C型の各変異株にキラーT細胞が有効に対抗できることがわかりました。

 世界保健機関(WHO)によると、主に季節性のインフルエンザの流行で毎年数十万人が命を落としているといいます。高齢者、子供、免疫不全患者などのほか、感染に対する免疫反応がこれまでに一度も構築されたことのない特定の民族集団にとって、特に高い危険性があります。

 研究チームは、今回の発見に関する特許を取得し、「世界中の汎発性および季節性のインフルエンザの影響を軽減するための万能インフルエンザワクチンの開発が可能になることを期待している」と述べています。

 2019年2月20日(水)

 

■老化物質を抑え、ハエの寿命を延ばすことに成功 大阪大の研究チーム

 老化によって増える特定のタンパク質の働きを抑えることで、ショウジョウバエや線虫の寿命を延ばすことに成功したと、大阪大の吉森保教授(細胞生物学)と中村修平准教授らの研究チームが発表しました。このタンパク質は人にもあり、研究チームは「健康長寿に生かせる可能性がある」としています。

 論文が19日、イギリスの科学誌「ネイチャー・コミュニケーションズ」に掲載されました。

 このタンパク質は、吉森教授らが2009年に発見した「ルビコン」。細胞内で病気の原因となる不要なタンパク質などを分解し、栄養になるアミノ酸に変えて再利用する「オートファジー(自食作用)」の作用を抑える働きがあります。

 研究チームは今回、ショウジョウバエや線虫の体内では、老化するにつれてルビコンの量が1・5~2倍に増えることを確認。それぞれ遺伝子操作でルビコンを作れなくして、寿命や健康への影響を調べました。

 その結果、ショウジョウバエと線虫は寿命が最大約2割延びました。また、老化による運動機能の低下も防げました。

 吉森教授は、「人の寿命を延ばせるかはわからないが、ルビコンの働きを抑える薬などがあれば、老後の健康を維持する方法につながるかもしれない」と話しています。

 福田光則・東北大教授(細胞生物学)は、「非常に興味深い成果だ。今後は、なぜルビコンがなくなると寿命が延びるかを詳しく解明してほしい」と話しています

 2019年2月20日(水)

 

■治療用幹細胞による脊髄再生医療、初の保険適用 薬価は1回1500万円

 厚生労働相の諮問機関である中央社会保険医療協議会(中医協)は20日、脊髄損傷に対する初の再生医療製品として薬事承認されていた治療用幹細胞「ステミラック注」に、公的医療保険を適用することを承認しました。26日にも保険治療が可能になる見通し。

 静脈注射で使い、薬価は1回当たり約1500万円。対象患者は250人程度を見込んでいます。

 けがで脊髄を損傷して1カ月以内の患者の骨髄液から、神経や軟骨などに変わる「間葉系幹細胞」を取り出して増殖させる細胞医療で、札幌医科大と医療機器大手「ニプロ」(大阪市北区)が共同開発。昨年12月に厚労省から最大7年間の条件付きで製造販売の承認を得ました。

 国内で10万人以上の患者がいるとされる脊髄損傷はリハビリ以外に有効な治療法がない中、損傷からさほど期間がたたない患者に幹細胞を使い、治療を試みる再生医療の実用化が見えつつあります。

 2019年2月20日(水)

 

■旧優生保護法下の強制不妊、被害者に一時金300万円超 救済法案を調整

 旧優生保護法(1948~1996年)下で障害者らに不妊手術が行われた問題で、与党のワーキングチームは、被害者に支給する一時金を300万円以上とする方向で調整に入りました。救済法案を検討している超党派の議員連盟と協議した上で、通常国会に議員立法を提出します。

 厚生労働省によると、旧優生保護法に基づき、約1万6000人に同意なく不妊手術が行われました。同意も含めると約2万5000人に上ります。一時金は、手術記録や同意の有無にかかわらず、一律に支給します。

 与党のワーキングチームは、約200万円の一時金を支給したスウェーデンなど海外の救済事例も参考に、300万円以上で検討を進めます。ただ、国を相手取った不妊手術を巡る訴訟では、原告側が賠償金として1000万円以上を請求しており、調整は難航も予想されます。

 差別的な政策を繰り返さないための教訓として、救済法案には、当時の社会風潮や不妊手術が強制された実態に関する「調査」も盛り込まれる方向です。原告側は、責任の所在を含めた旧優生保護法の「検証」を求めていますが、ワーキングチームのメンバーは「裁判が続いている状況で検証するのは難しい」と話しています。

 ワーキングチームと超党派議連は昨年12月、救済策の基本方針を了承しました。法案には「我々は、真摯(しんし)に反省し、心から深くおわびする」と明記します。救済対象は原則として法施行時点の生存者とし、厚生労働省内に設ける第三者の認定審査会が申請に基づいて判断します。

 2019年2月20日(水)

 

■C型肝炎薬「マヴィレット」が国内首位に 2018年の医薬品ランキング

 アメリカの医薬コンサルティングのIQVAは19日、日本国内における2018年の医薬品売上高ランキング(薬価ベース)をまとめました。アメリカのアッヴィのC型肝炎薬「マヴィレット」が首位となりました。

 市場全体は1・7%減の10兆3374億円で、薬価引き下げの影響から2年連続で市場規模は縮小しています。

 マヴィレットは2017年11月に国内販売が始まり、一気に普及しました。C型肝炎薬が首位となったのは2016年のアメリカのギリアド・サイエンシズ「ハーボニー」以来2年ぶりです。ただマヴィレットは患者に急速に行き渡った結果、四半期ベースでは2018年4~6月をピークに販売が減少に転じています。

 2017年に首位だったロシュのがん治療薬「アバスチン」は2位に転落しました。

 小野薬品工業のがん免疫薬「オプジーボ」は3位。ライバル薬であるアメリカのメルクの「キイトルーダ」が前の年に比べ2・5倍の伸びで6位に食い込んでおり、がん免疫薬の市場競争が激化しています。

 5位に入ったイギリスのアストラゼネカの胃潰瘍薬「ネキシウム」は2位から後退。同じ胃潰瘍薬で台頭してきたのが10位に入った武田薬品工業の「タケキャブ」で、24%増で初めてランクインしました。

 胃潰瘍薬は、後発薬の登場などで市場は2014年から減少傾向。後発薬にはネキシウムやタケキャブと同等の効果を持つものが多く、今後の売り上げの維持が注目されます。

 アメリカのジョンソン・エンド・ジョンソンの抗リウマチ薬「レミケード」は7位に順位を下げました。特許切れ薬ながらランクインを続けていますが、バイオシミラー(バイオ後続品)の浸透もあり、落ち込みが目立っています。

 2019年2月19日(火)

 

■はしかの感染拡大、患者167人に 同時期で過去10年で最多

 今年のはしか(麻疹=ましん)の患者数は、全国で167人に上っており、この時期としては過去10年で最も多くなっています。国立感染症研究所は必要な人はワクチンの接種を検討するほか、感染した疑いで医療機関を受診する際には事前に電話で相談してほしいと呼び掛けています。

 はしかは、発熱や全身に発疹が出るウイルス性の感染症で、感染力が極めて強く、重症になる場合があるほか、妊婦が感染すると流産や早産の恐れもあります。

 国立感染症研究所によりますと、2月10日までの1週間に全国の医療機関から報告されたはしかの患者は22人で、今年の患者数は20の都道府県で167人になりました。

 この時期としては、過去10年で最も多く、現在の統計を取り始めた中では年間の患者数が1万人を超えて大きな流行となった2008年に次いで多くなっています。

 都道府県別では、最も多いのが三重県で49人、次いで大阪府が47人、愛知県が17人、東京都が11人などとなっています。

 はしかは2010年を最後に、日本に定着していたウイルスによる感染は確認されておらず、今回も海外から持ち込まれたウイルスによる発生の可能性が高いとみられています。

 世界保健機関(WHO)によりますと、この数年、はしかは世界的に患者数が多い状態が続いていて、アジアや北米などで感染が拡大しています。

 2019年2月19日(火)

 

■患者の発熱・発疹ははしかの可能性を念頭に 厚労省が医療機関に通知

 関西を中心にはしか(麻疹=ましん)の患者が増えていることから、厚生労働省は18日、全国の自治体を通じて、発熱や発疹が見られる患者を診察する時には、はしかの可能性を念頭に置き、対策に当たるよう医療機関に求める通知を出しました。

 国立感染症研究所が12日に発表した最新の集計では、大阪府や三重県を中心に148人が報告され、過去10年で最多のペースとなっています。患者が新幹線で長距離を移動した事例も発覚し、厚労省は「全国ではしかが発生する恐れがある」と危機感を強めています。

 通知では、医療機関に対し、発熱や発疹の症状がある患者には海外渡航歴や国内旅行歴、予防接種歴を確認するなど、はしかを意識するよう呼び掛けました。はしかと診断した場合は、直ちに都道府県に届け出るとともに、感染力の強さに応じた院内感染予防策を取るよう求めました。

 厚労省は、自治体からの要請があれば感染症対策の専門家を派遣していきたい、としています。

 日本は2015年、国内由来のウイルス感染が継続して確認されていないとして、世界保健機関(WHO)からはしかの「排除状態」と認定されました。しかし、この数年、はしかは世界的に患者数が多い状態が続いており、アジアやヨーロッパ、北米などで感染が拡大しており、今回も海外から持ち込まれたウイルスによる感染の可能性が高いと見られています。

 はしかの予防には、ワクチンの接種が最も重要です。日本では現在、1歳と小学校入学前の合わせて2回、定期接種することになっていますが、過去には1回の接種だった時期もあります。

 厚労省は医療関係者や保育士など、乳児や妊婦などに接する人は特にワクチンが必要か検討してほしいとしています。

 また、専門家によりますと、妊娠中の女性はワクチンの接種ができないので、人混みを避けるようにしたほうがいいとしているほか、今後、妊娠を希望する人はワクチンの接種を早めに受けてほしいとしています

 感染症に詳しい川崎市健康安全研究所の岡部信彦所長は、「はしかは健康であっても感染すれば重い合併症を起こす可能性があり、ワクチンの接種を受けるなどして抵抗力を持っておくことが大切だ。そのため、子供は定期接種を必ず受けておくようにしてほしい。また、医療関係者や学校の関係者など不特定多数の人と接触する機会が多い人は、特にワクチンが必要か十分に検討してほしい」と話しています。

 2019年2月19日(火)

 

■内科医1万4400人、外科医5800人が5年後に不足 厚労省が推計

 特定の診療科や地域で医師不足が深刻化する中、厚生労働省は診療科ごとの医師の不足数を初めて推計し、公表しました。今のままでは5年後に、内科で1万4000人余り、外科で5000人余りの医師が不足する恐れがあるとしています。

 厚生労働省は将来の医師不足について初めて診療科ごとに推計し、18日開かれた有識者検討会で公表しました。

 それによりますと、医師の数が3年前と変わらなかった場合、5年後の2024年には、内科で12万7400人余りの医師が必要なところ、11%に当たる1万4400人余りが不足する恐れがあるとしています。また、外科では必要な医師の17%に当たる5800人余り、小児科で必要な医師の7%に当たる1200人余り、産婦人科で必要な医師の7%に当たる900人余りがそれぞれ不足する恐れがあるとしています。

 さらに11年後の2030年には、内科で1万6200人余り、外科で5500人余り、小児科で600人余り、産婦人科で300人余り、不足する恐れがあるとしています。

 一方、医師の数が必要な人数を上回る診療科もあり、5年後の2024年には、精神科で700人余り、皮膚科で600人余り、耳鼻咽喉科で500人余りが上回る可能性があるとしています。

 その上で厚労省は、各都道府県ごとに診療科別の必要な医師数を推計し、医師が多い地域からの移動を促したり、若手の医師などに数が足りていない診療科を選択するよう促すなどして、必要な医師を確保していきたいとしています。

 医師を巡っては現在、働き方改革が議論されていますが、長時間労働を防ぐためには診療科や地域ごとの医師の偏りを解消することが不可欠です。厚労省は必要な医師を確保するための実効性のある対策を早急に打ち出す必要があります。

 2019年2月19日(火)

 

■公害調停、ぜんそく患者ら94人が申し立て 医療費助成を求める

 自動車の排ガスなどによる大気汚染が原因で発症したと訴えるぜんそく患者が18日、全国一律の医療費助成制度の創設を求め、公害等調整委員会に公害調停を申し立てました。

 代理人の西村隆雄弁護士によると、東京都や川崎市を除くほとんどの自治体に医療費助成制度はなく、重い負担を強いられている患者からは「安心して暮らすためには早期の助成制度創設が必要だ」との声が高まっています。

 制度の実現には自動車メーカーの費用負担が欠かせないため、患者側はトヨタ自動車東京本社(東京都文京区)を訪問。財源負担を決断し、制度創設を国に働き掛けるように要請しました。

 調停を申し立てたのは、全国公害患者の会連合会のほか、首都圏や愛知県、大阪府などに住む30〜90歳代のぜんそく患者94人。その多くは、国が公害健康被害補償法に基づく患者の新たな認定を打ち切った1988年以降にぜんそくなどを発症したといいます。医療費の自己負担額を全額助成する制度を国に要請し、国内の自動車メーカー7社に「相応の財源負担」を求めています。

 申し立て後はトヨタ東京本社前に患者と支援者ら約300人が集まり、「大気汚染公害を生み出した社会的責任を果たせ」「世界に冠たる企業のトヨタには患者を救うお金があるはずだ」などと訴えました。

 患者側はこれまでも全国一律の医療費助成制度を求めてきましたが、環境省は「大気汚染とぜんそくの因果関係が認められておらず、新たな医療費助成制度を創設するような状況にないのではないか」などと反論して応じていません。調停申し立て後、同省は取材に「申請内容をよく拝見したい」、トヨタは「詳しい内容を聞いていないのでコメントできない」としています。

 2019年2月18日(月)

 

■iPS細胞で脊髄損傷を治療 厚労省、慶応大の計画を了承

 交通事故や激しいスポーツなどで背骨の中の神経が傷付いて手や足を動かせなくなった脊髄損傷の患者に、iPS細胞(人工多能性幹細胞)から作成した神経のもとになる細胞を移植して機能を回復させる慶応大の臨床研究の計画が、厚生労働省の部会で了承されました。

 iPS細胞を脊髄損傷の患者に応用するのは世界で初めてで、研究チームは早ければ今年中に患者への投与を始め、安全性と効果を確認したいとしています。

 厚労省の部会で18日了承されたのは、慶応大の岡野栄之教授と中村雅也教授らの研究チームが計画している臨床研究です。

 この臨床研究は、脊髄を損傷してから2週間から4週間の「亜急性期」と言われる段階の患者4人の患部に、人のiPS細胞から作製した神経のもとになる細胞約200万個を移植し、細胞を神経に変化させて機能の回復を目指すもので、1年かけて安全性と効果を確認します。

 国内では、毎年新たに5000人ほどが脊髄を損傷し、患者数は10万人以上とされ、長く、有効な治療法がありませんでしたが、昨年、患者から「間葉系幹細胞」と呼ばれる特殊な細胞を取り出し、培養して血液中に戻す別の治療が承認されており、iPS細胞を使った脊髄損傷の臨床研究は今回のものが初めてです。

 臨床研究が厚労省の部会で了承されたことを受けて、慶応大の研究チームが会見を開き、実施責任者の岡野栄之教授は、「およそ20年にわたって脊髄損傷の治療を目指して研究を進めてきたが、ようやくスタートの位置に立つことができたという思いだ。臨床研究の一番の目的はまずは安全性を確認することなので、気を引き締めてこれから実施に向けた準備を進めていきたい」と述べました。

 さらに、「今回の臨床研究で安全性と効果が確認できれば、より患者が多くいる慢性期の脊髄損傷の治療を実現するための研究も進めていきたい」と述べ、今後の展望も語りました。

 また、同じ研究チームで手術を担当する中村雅也教授は、「実際に移植する細胞で、腫瘍ができるような兆候がないか事前に確認するため、順調に進めば患者を選定するのは今年の秋から冬になる見込みだ」と話していました。

 iPS細胞を使う再生医療は、臨床応用を目指す計画が相次いでいます。移植第1号は、理化学研究所などが2014年に目の難病患者を対象に実施しました。2018年には、パーキンソン病患者の脳に神経細胞を移植する京都大の治験で患者に移植しました。さらに、重症の心不全を対象にした大阪大の臨床研究や、京都大の血小板を輸血する臨床研究が厚労省に認められました。

 2019年2月18日(月)

 

■厚労省、全国約3分の1を「医師少数県」に指定 不足地域に重点配分へ

 医師が都市部などに偏り、地方の病院で不足する偏在の問題を解消しようと、厚生労働省は少なくとも15の県を「医師少数県」に指定し、医師の確保に向けた対策を集中的に実施していく方針を固めました。

 医師が都市部などに偏り、地方で不足する偏在が進む中、厚労省は有識者検討会を立ち上げて対策を協議してきました。

 その結果、全国の都道府県の中で人口当たりの医師の数が少ない県などを「医師少数県」に指定し、集中的に対策を実施することで、目標年の2036年までに偏在の解消を目指す方針を固めました。

 医師少数県には岩手県や新潟県、静岡県など全都道府県の約3分の1に当たる、少なくとも15の県が指定される見通しです。

 これらの医師少数県では、2036年に合わせて2万4000人余りの医師が不足すると推計されています。

 一方で、東京都や京都府、奈良県など少なくとも15の都府県は「医師多数都府県」に指定され、2036年には合わせて1万8000人余りの医師が過剰になると推計されており、厚労省は医師少数県への医師の移動を促していきたいとしています。

 有識者検討会が昨年4月にまとめた医師の需給推計によると、医師の残業時間の上限を過労死認定の目安「月80時間」(休日労働を含む)とすると、2028年ごろにその時点で必要な医師数34万9000人を満たすとしていました。需給推計は、地域や診療科の偏在を考慮しない医師数で、偏在対策が急務であることを示しました。

 偏在対策の具体的な取り組みとしては、医師少数県で一定期間勤務した医師に国の認証を与える制度を活用したり、大学卒業後に特定の地域での勤務を義務付ける、医学部の「地域枠」を増やしたりすることなどが想定されています。

 ただ、医療関係者からはそれだけでは不十分だという声も上がっており、実効性のある対策を打ち出せるかが焦点となります。 

 2019年2月18日(月)

 

■尿酸値を下げる初のサプリメントを発売 ファンケルが18日に

 ファンケルが18日に売り出したサプリメント「尿酸サポート」は、尿酸に対する機能を臨床試験で確認した初めての機能性表示食品といいます。血中の尿酸値が高めの人向けに、尿酸の合成を抑えて排出を促す物質などを配合。手軽さをアピールして痛風予備軍に売り込みます。

 尿酸の合成を抑えて排出を促すとされるアンペロプシンと、尿酸の元になるプリン体の吸収を抑えるとされるキトサンを配合。血中の尿酸値が1デシリットル当たり6・0~7・0ミリグラムの人に有効と説明しています。

 臨床試験では、尿酸値6・0~7・0ミリグラムの男性39人がこの商品を3カ月摂取したところ、摂取前より平均で約0・15ミリグラム、尿酸値が下がったといいます。

 120粒入り(30日分)で定価3600円(税抜き)。当初は同社の通販サイトだけで販売しますが、4月18日から一般の店でも取り扱います。

 尿酸値は酒や魚卵などを取りすぎると高くなるとされ、激しい関節痛を起こす痛風などになる恐れがあります。国民生活基礎調査などによると、1995年に50万人弱だった国内の痛風患者は、2013年に100万人を突破しました。

 従来のサプリメントには尿酸に有効なものもあるものの、機能を明示した商品はこれまでありませんでした。酒類では、プリン体オフをうたう商品が多くみられます。

 2019年2月18日(月)

 

■群馬県の6歳未満の男児、脳死判定 10例目の臓器提供へ

 日本臓器移植ネットワークは、群馬県内の病院に脳症で入院中の6歳未満の男児が臓器移植法に基づく脳死と判定され、臓器提供の手続きに入ったと、17日発表しました。脳死と判定された6歳未満の子供からの臓器提供は10例目。

 日本臓器移植ネットワークによると、臓器提供は親族6人の総意といいます。男児は12日に脳機能に重い障害が起きる脳症のため脳死とみられる状態となり、16日午後11時5分までに2回の脳死判定が終了しました。

 心臓が東京大医学部付属病院で10歳未満の女児に、肺が東北大病院で10歳未満の女児に、肝臓が国立成育医療研究センター(東京都世田谷区)で10歳未満の女児に、腎臓が東邦大医療センター大森病院(東京都大田区)で10歳代男性に移植される予定。膵臓は医学的理由で断念し、小腸は該当者がいませんでした。

 脳死判定された男児の両親は日本臓器移植ネットワークを通じて、「人から求められると何でも分け与える優しい息子でしたので、臓器移植という選択が息子の意思に沿うものであると信じております」などとするコメントを発表しました。

 2019年2月18日(月)

 

■9カ国語対応の外国人向け「健康手帳」を作成 群馬県のNPO法人など

 外国人材の受け入れ拡大に向けて、外国人が群馬県内で病気やけがをした際に役立ててもらおうと、医療機関を紹介する相談窓口の連絡先などが9カ国語で書かれた健康手帳が作成されました。

 この健康手帳は、医療通訳を派遣する前橋市のNPO法人「群馬の医療と言語・文化を考える会」などが4月からの外国人材の受け入れ拡大に伴い、病気やけがで医療機関を受診する外国人が増えると見込まれることから作成しました。県内で住民の数が多い英語やベトナム語、ポルトガル語、中国語など8カ国の言語に対応し、日本語もあります。

 健康手帳には、医療機関を紹介する相談窓口や消防など緊急の連絡先が書かれているほか、持病や服用している薬、宗教上の制限など、医師に伝える情報をあらかじめ記入しておく欄が設けられています。

 また、インフルエンザの予防接種などを促して感染症の拡大を防ぐことや、健康を維持するためのポイント、妊娠時の相談先や医療保険制度についての解説なども盛り込まれています。

 健康手帳は、日本語と英語が2000部、他の言語は1000部ずつ、合わせて1万1000部作成され、群馬県内の日本語学校や外国人が働く企業、病院などに配られることになっています。

 NPO法人の原美雪副代表理事は、「言語の問題で病院に行けず受診が遅れるケースも聞くので手帳を持ち歩いてもらい、多くの外国人に活用してほしいです」と話していました。

 2019年2月18日(月)

 

■iCARE、睡眠時無呼吸症候群の検査サービスを開始 フィリップス製の機器を活用

 企業向け健康支援サービスを手掛けるiCARE(アイケア、東京都渋谷区)は、オランダのフィリップスの傘下企業と組んで睡眠時無呼吸症候群(SAS)の検査サービスを開始します。

 フィリップス製の機器を活用し、SASの疑いがある人に病院での受診を促します。SASによる交通事故や労働災害のリスクを抱える運送会社などの利用を見込んでいます。

 健康診断やアンケート調査からSASの可能性がある従業員を抽出し、フィリップス製の機器でSASの簡易検査を実施します。ストレスチェックなどを含むアイケアの既存サービスに、SASの検査を追加します。料金は一人当たり月額400円程度。フィリップス・レスピロニクス(東京都港区)と連携します。

 検査後にはアイケアのスタッフがチャットで結果を説明し、SASの疑いがある人には受診を促します。これまでは企業が検査を実施しても、時間や費用の問題から病院に行く従業員が少なかったといいます。検査後のフォローを手厚くすることで、受診率を高めます。

 SASは、運転手やパイロットの居眠り事故につながる危険性があります。

 2019年2月17日(日)

 

■東大など、ブタ体内で人間の膵臓作製へ 糖尿病治療に道

 東京大の中内啓光特任教授や明治大の長嶋比呂志教授らの研究チームは、人間の膵臓(すいぞう)をブタの体内で育てる研究を2019年度にも始めます。4月にも国が動物の体内で人間の臓器を育てる研究を解禁するのを受け、研究計画を東京大の倫理委員会に申請します。将来は膵臓の病気で発症する糖尿病患者に移植して治療につなげるのが狙い。

 動物の体内で作製した人間の臓器を移植して病気を克服する治療は、脳死からの臓器提供が不足する中、新たな治療法として研究が進んでいます。東京大や国の審査を経て研究を実施すれば、国内では初めてとなります。

 日本ではこれまで研究を規制していましたが、海外では研究が進んでいました。このため厚生労働省などは4月にも解禁する方針を決め、動物と人間の細胞が混ざった「動物性集合胚」と呼ばれる受精卵を、動物の子宮に戻して出産できるようになりました。

 研究では、人間のiPS細胞(人工多能性幹細胞)を活用します。膵臓を作る能力を失わせたブタの受精卵に注入して、人間と動物の細胞が混じった受精卵を作り、ブタの子宮に入れます。胎児まで育てば人間の膵臓を持つブタができます。

 中内特任教授はアメリカのスタンフォード大教授を兼任し、研究が解禁しているアメリカで人間の膵臓を持つ羊を作製する研究を進めてきました。また、ラットの体内でマウスの膵臓を作り、糖尿病になったマウスに移植し治療にも成功しています。

 今回の手法は、心臓や肝臓などさまざまな人間の臓器にも応用可能。中内特任教授は「(臓器移植を必要としている)患者本人の細胞で臓器が作れるiPS細胞には利点も多い」とみており、他人の臓器を使う脳死移植のような拒絶反応が起こりにくく、治療が可能になるといいます。

 ただ、動物による感染症のリスクや倫理問題などがあり、東京大や国などの審査ではこれらの問題を慎重に検討することになります。

 2019年2月17日(日)

 

■警視庁の防犯アプリ、ダウンロード16万件突破 行政発アプリでは異例のヒット

 警視庁が開発した防犯用のスマートフォン(スマホ)アプリ「Digi Police(デジポリス)」が、人気を集めています。画面タップで防犯ブザーが鳴り響き、痴漢被害者に代わって大声で助けを求めてくれ、登録先に緊急メールを発信します。

 配信を始めたのは2016年ですが、ここにきて利用者が急増。ダウンロード数は16万件を突破し、行政発アプリとしては異例のヒットとなっています。

 「みんなにお勧めしたい警視庁公認アプリ」。1月中旬、短文投稿サイト「ツイッター」でこんなつぶやきが急速に共有されました。切っ掛けは、アイドルグループ「NGT48」のメンバーが自宅マンションに押し掛けてきた男に顔をつかまれた事件の表面化。アイドルグループの運営会社は全メンバーに防犯ベルを配るなどの対策を発表しましたが、インターネット上でファンなどから「不十分だ」との声が相次ぎました。

 そこで注目を集めたのが、デジポリスの「防犯ブザー」機能。緊急時にベルの絵の画面をタップするとスマホの最大音量で電子音が鳴り響き、あらかじめ登録したメールアドレスに通知を送ります。合わせてスマホの位置情報を送ることも可能。

 インターネット上で「防犯ベルより役立つアプリ」として話題になり、1月だけでダウンロード数は約1万3000件と通常の月平均の6倍に達しました。

 「痴漢撃退」機能では、画面に「痴漢です 助けてください」と表示され、怖くて声が出せなくても周囲の人に見せて助けを求めることができます。さらに画面をタップすると、アプリが「やめてください」と大声を上げます。

 ほかにも、不審者の出没情報や警察署の位置などを表示する地図、特殊詐欺の防犯対策を指導する動画などが組み込まれています。   

 警視庁は一層の普及を目指し、3月に大幅な改修を予定。駆け込み先として交番の位置を地図に表示するなど防犯機能を強化します。紺を基調としたホーム画面は、より明るい色調のデザインに変更する方針といいます。

 警察が配信するアプリはほかにもあり、大分県警のアプリは、スマホを車のダッシュボードに固定すると前の車との車間距離を計測し、近付きすぎると音声などで警告します。県内で多い追突事故を減らすため、カー用品メーカーと共同開発しました。

 愛知県警は、飲食店などが不当に高い料金を請求する「ぼったくり」の摘発に力を入れており、条例に基づいて指定した悪質な店の位置を地図上に表示するアプリを配信しています。   

 防犯に詳しい東京未来大の出口保行こども心理学部長は、「多機能なアプリでもわかりにくいものは使われない。若い女性や子供が使いやすいものにすることが重要」と指摘。「デジポリスには、ワンタップで110番できる機能など、さらなる改善を期待したい」と話しています。

 2019年2月17日(日)

 

■外国人急患に24時間対応「医療通訳コールセンター」を開設 大阪府が新年度に

 大阪府は、病院と外国人の救急患者との意思疎通を支援する「医療通訳コールセンター」を新年度に発足させます。外国人の急患が病院側とうまくコミュニケーションがとれず、トラブルになるケースが増えており、24時間対応可能な医療通訳を待機させて病院側をサポート。4月から始まる外国人労働者の受け入れ拡大にも備えます。

 大阪府を訪れた外国人観光客は、2013年の263万人から2017年に1110万人に急増。府の外国人患者の受け入れ実態調査によると、2017年度に府内の病院の6割が救急搬送を含む外国人患者を受け入れ、約1万5000人(速報値)が受診しました。受け入れ時に多いトラブルの理由(複数回答)は、「言語・コミュニケーション」(39・2%)、「医療費などの未払いの発生」(18・6%)などが多くなりました。

 大阪医療センター(大阪市)の関本貢嗣副院長は、「一晩に3、4人の外国人急患が訪れると、対応が追い付かないこともある。文化や保険制度の違いが原因となることが多い」と指摘しています。

 府が新設する「医療通訳コールセンター」では、医療関連の用語に精通した通訳が英語、中国語、韓国語、スペイン語、ポルトガル語の5カ国語で24時間、病院側の問い合わせに電話で対応します。

 金銭トラブルや外国の保険会社への請求などへの対応を医療機関に助言する相談窓口も、新設予定。大阪府は、関連経費計約1800万円を新年度予算案に計上する方針です。

 2019年2月16日(土)

 

■東京都足立区、「ワンコイン」でがん検診 乳がんと子宮頸がんが対象

 乳がんと子宮頸(けい)がんの検診で受診率が低迷している東京都足立区は、対象年齢となる人の自己負担額を引き下げ、500円で受診できる「ワンコイン化」を始める方針です。

 足立区が2017年度に実施したがん検診の受診率は、40歳以上が対象の乳がん検診で13・4%、20歳以上が対象の子宮頸がん検診で13・6%で、いずれも2015年度に比べて5ポイント余り低くなっています。

 このため足立区は、新年度から検診への補助を増やし、これまで基本的には、乳がん検診が2200円、子宮頸がん検診が2000円だった自己負担額をそれぞれ500円に引き下げる「ワンコイン化」を始める方針です。

 また、乳がんや子宮頸がんの罹患(りかん)率が高いとされる年齢層に、2年ごとに受診を勧める文書を個人宛に新たに送ることにしています。

 足立区は2020年度には受診率20%を目指しており、「ワンコイン化で気軽に検診を受けてもらい、がんの早期の発見や治療につなげていきたい」としています。

 2019年2月16日(土)

 

■病院ではしかの集団感染、医師や事務職員など10人 大阪府茨木市

 大阪府茨木市の病院で、1月下旬からこれまでに医師や事務職員など合わせて10人が、はしか(麻疹=ましん)に感染していたことがわかり、大阪府はこの病院を訪れた人で、はしかのような症状が出た人は連絡するよう呼び掛けています。

 はしかの集団感染がわかったのは、大阪府茨木市にある大阪府済生会茨木病院です。

 大阪府によりますと、1月24日、風邪のような症状で受診した患者1人が、30日になってはしかに感染していたことが確認されました。

 その後、この病院の医師1人と事務職員5人、それに外来患者3人の合わせて9人が相次いで、はしかの症状を訴え、2月8日から15日までの間に9人全員が「はしか」に感染していると確認されました。いずれも症状は軽く、回復に向かっているということです。

 大阪府は、個人の特定を避けるため、患者の年齢や性別、どこを訪れていたかなど公表しないとしています。

 大阪府や病院は、これまではしかにかかったことがないか、かかったかどうかわからない人で、2月4日から9日までの間に大阪府済生会茨木病院を訪れ、発熱、せき、発疹、のどの痛み、それに鼻水などの症状がある人は、病院に電話で連絡するよう呼び掛けています。

 2019年2月16日(土)

 

■はしか、近畿地方で大流行 患者数の約7割が6府県と三重県

 今年に入り、はしか(麻疹=ましん)の患者が、近畿地方を中心に急増しています。2月6日現在、全国19都道府県で148人の感染が報告され、過去10年で最多だった2009年を上回るペース。

 患者は近畿6府県と三重県で約7割を占めますが、さらに全国に拡大する恐れがあり、行政機関がワクチン接種を呼び掛けています。

 はしかは感染力が極めて強く、飛沫(ひまつ)感染や接触感染に加え、空気中に漂うウイルスを吸い込む空気感染でも広がります。潜伏期間は10~12日程度とされ、発症すると高熱や発疹が出ます。肺炎、中耳炎を合併しやすく、1000人に1人の割合で脳炎を発症し、死亡することもあります。

 昨年末、三重県で開かれた研修会で集団感染が発生し、今年1月7日以降、男女31人が発症しました。県外からの参加もあり、和歌山県や愛知県などにも感染が広がりました。

 大阪市では、はしかに感染した三重県の男性が1月6日、アイドルグループの握手会に訪れ、近くにいた人が感染した可能性があります。同市のあべのハルカスの近鉄百貨店本店でも従業員11人の感染が見付かり、利用客8人への感染も確認されています。

 さらに、患者が東海道新幹線で新大阪―東京間を移動した例も明らかになり、感染拡大の恐れは高まっています。

 大阪府医療対策課の担当者は、「予防にはワクチン接種が有効。感染が疑われる場合は医療機関に連絡し、指示に従ってほしい」と話しています。

 2019年2月16日(土)

 

■インフルエンザ患者数、ピークから半分に 2週連続で減少

 厚生労働省は15日、4~10日の1週間に全国約5000カ所の定点医療機関から報告されたインフルエンザ患者数を発表。1医療機関当たりの患者数が26・28人と2週連続で減少し、前週の43・24人から大幅に減りました。1月下旬に57・09人の過去最多を更新して以降、患者数は減少に転じており、インフルエンザのはしかの潜伏期間は、10~12日程度とされます。猛威は収まったとみられます。

 都道府県別では、埼玉県の38・56人が最多。沖縄県(35・50人)、新潟県(35・44人)、大分県(35・12人)、宮城県(32・98人)が続きました。全都道府県で前週の報告数より減り、30人を超える「警報レベル」は12県となりました。

 1週間に医療機関を受診した患者数の推計も約98万3000人で、前週の約166万9000人から約68万6000人減りました。

 2019年2月16日(土)

 

■世界のはしか患者数、50%増加し約22万9000人 死者は約13万6000人に

 国際連合(UN)の専門機関である世界保健機関(WHO)は14日、2018年の世界のはしか(麻疹=ましん)患者数が前年比約50%増だったとして、はしかの流行を阻止するための取り組みが「後退している」と警鐘を鳴らしました。

 WHOは、はしかの再流行という憂慮すべき傾向が世界規模で起きていることを示す予備データを提示しました。予防接種率が過去最高水準に達している富裕国でも、この傾向が認められています。

 WHOの予防接種・ワクチン・生物学的製剤部門を統括するキャサリン・オブライエン氏は記者団に、「WHOのデータは、はしか患者数の大幅な増加を示している。この傾向はあらゆる地域でみられている」と語りました。

 オブライエン氏は、「現在起きている流行は長期化しており、かなり大規模で、さらに拡大している」とし、「これは個々に孤立した問題ではない」と述べました。

 また、報告された患者数は、実際の患者数の10%足らずだろうといいます。同氏は「報告数で50%の増加が確認されていることを考えると、我々が間違った方向へ向かっていることがわかる」と述べ、感染例の実際数は「数百万件」に上るだろうと指摘しました。

 2018年に世界各国で報告されたはしか患者数のWHOへの提出期限は、4月となっています。だが、すでにこれまでに寄せられたデータの段階で、前年17万3000人だった患者数は約22万9000人に増加しています。WHOの暫定統計によると、2018年のはしかによる世界の死者数は約13万6000人に上るといいます。

 はしかは非常に感染力が強い伝染病で、重度の下痢、肺炎、失明などを引き起こす可能性があり、場合によっては死に至る恐れもあります。WHOによれば、はしかは依然として「幼い子供の主要な死因の一つ」だといいます。

 はしかは1960年代から使用されている「安全かつ有効な」ワクチンの2回接種で容易に予防できるため、こうした状況はもどかしいとWHOは述べています。

 WHOの予防接種普及プログラムを統括するカトリーナ・クレシンガー氏によると、はしか患者数は2000年には85万人以上だったのに対し、2016年までは着実に減少していましたが、2017年以降に急増したといいます。

 貧困国や周縁地域、紛争国などでは、ワクチンを入手できないことが問題になります。しかしその一方で、ヨーロッパや他の富裕地域では、はしかワクチンに関する無関心と誤った情報に再流行の原因の一端があると専門家らは分析しています。

 一部の国々では、はしかワクチンを自閉症と関連付ける医学的根拠のない主張がなされ、そうした主張がいわゆる「反ワクチン」運動の支持者らによってソーシャルメディアなどで拡散されてもおり、これがはしかの再流行に関連しているとされます。

 だが、オブライエン氏は「我々はこれまでの進歩を後退させている」「現在の後退は、予防手段がないから起きているのではない。はしかの予防方法は確実にある」と述べ、「現在の後退の原因は、ワクチン接種が行われていないせいだ」 と指摘しました。

 2019年2月16日(土)

 

■東京都内で11日、スギ花粉の飛散開始 平均より5日早まる

 東京都は13日、11日から都内でスギ花粉が飛び始めたと発表しました。飛び始めは、過去10年の平均(2月16日)と比べて5日早いということです。

 東京都は、1月から千代田区、葛飾区、杉並区、北区、大田区、青梅市、八王子市、多摩市、町田市、立川市、府中市、小平市の都内12カ所で花粉の観測を行っており、このうち大田区で11日と12日の2日間、基準を上回る1平方センチメート当たり1個以上のスギ花粉が観測されました。

 このため、東京都は11日から都内でスギ花粉が飛び始めたと発表しました。これは、昨年(2月14日)と比べて3日早く、過去10年の平均と比べて5日早いということで、2月上旬に暖かい日が続き、スギの開花が早まったためではないかと分析しています。

 また、この春に東京都内で飛ぶ花粉の量は、過去10年の平均の1・2倍と、おおむね例年並みになる見通しです。

 東京都は、各地の観測結果をホームページに掲載しているということで、晴れて、暖かく、風のあるスギ花粉の飛散が多い日には、マスクやメガネの着用などの対策を行うよう呼び掛けています。

 2019年2月16日(土)

 

■はしか感染の横浜市の女性が成田から横浜へ移動 千葉市の男性も東京都内などを移動

 2月11日に、成田空港からバスや電車を利用した横浜市内の10歳代の女性が、はしか(麻疹=ましん)に感染していたことがわかり、横浜市は、同じ時間帯の利用者に感染が広がる恐れがあるとして注意を呼び掛けています。

 横浜市保健所によりますと、はしかの感染が確認されたのは市内に住む10歳代の女性です。

 女性は今月上旬、フィリピンに滞在中に発熱や発疹の症状が出て、2月11日に帰国した後、横浜市内の診療所を受診し遺伝子検査ではしかの感染が確認されました。

 保健所によりますと、女性はフィリピンで感染したとみられるということで、帰国後、周囲に感染する可能性があった時期に集客施設には行っていないものの、公共交通機関は利用していたということです。

 具体的には、帰国した2月11日の午前7時台前半に成田空港第3ターミナルからリムジンバスに乗って横浜駅まで移動し、午前9時半ごろに東急東横線で横浜駅から日吉駅に移動したということです。

 保健所は、感染が広がる恐れがあるとして、女性と同じ時間帯に同じ経路のバスや電車を利用した人に対し、発熱や発疹など感染が疑われる症状が現れた場合は、事前に医療機関に連絡した上で指示に従って受診するよう呼び掛けています。

 また、はしかの患者が各地で確認される中、千葉市では、インド洋の島国、モルディブから帰国した20歳代の男性がはしかと診断され、男性は鉄道で千葉県内や東京都内を移動していたということです。

 千葉市に住む男性は1月、モルディブから帰国した後、2月6日になって発熱の症状が出ました。その後の検査ではしかと確定するまでの間、医療機関に通うためなどで千葉県内や東京都内のJRや地下鉄を利用したということです。

 千葉市は感染が広がる恐れがあるとして、2月5日から12日にかけて男性が利用した交通機関の情報をホームページで公表し、注意を呼び掛けています。

 2019年2月15日(金)

 

■大阪市「あべのハルカス」近鉄百貨店、利用客8人がはしか感染 従業員10人も感染

 大阪市阿倍野区の「あべのハルカス」にある百貨店で、はしか(麻疹=ましん)に感染した従業員や利用客が相次いで確認されましたが、15日新たに利用客2人がはしかに感染していたことがわかりました。

 新たに感染が確認されたのは、「あべのハルカス近鉄本店」を1月25日に利用した奈良県の20歳代の男性と、26日に利用した大阪市の40歳代の男性です。

 2人はいずれも百貨店に設けられていたバレンタインフェアの特設会場を訪れており、奈良県の男性は2月13日、大阪市の男性は2月8日に、それぞれ発熱や発疹などの症状を訴えて医療機関を受診し、はしかと確認されました。

 百貨店では2月3日から10日にかけて、バレンタインフェアの特設会場などで働いていたアルバイトなどの従業員10人がはしかに感染したほか、1月26日または27日に特設会場を訪れた10歳代から30歳代の利用客6人も感染が確認されています。

 はしかは感染力が非常に強く、初期はせきや鼻水といった風邪に似た症状で、その後高熱や全身に赤い発疹が出て重症化すると死亡する場合もあります。

 大阪市は利用客がどこで感染したか特定はできていないものの、発症した時期などからこの百貨店での感染が強く疑われるとして、百貨店を訪れてから3週間以内にはしかの症状が出た場合は、事前に医療機関に連絡した上で早めに医療機関を受診するよう呼び掛けています。

 2019年2月15日(金)

 

■東海道新幹線で往復の女性、はしかに感染 大阪府が注意喚起

 2月上旬に東海道新幹線で新大阪と東京の間を往復していた女性が、はしか(麻疹=ましん)に感染していたことがわかり、大阪府は14日、感染が広がる可能性もあるとして、同じ新幹線に乗車した人などに注意を呼び掛けています。

 大阪府医療対策課によりますと、はしかの感染がわかったのは40歳代の女性です。

 女性は2月6日に発熱した後、8日の午前11時56分に新大阪を出発し午後2時半に東京に到着した東海道新幹線の「のぞみ340号」と、10日の午後6時に東京を出発し午後8時33分に新大阪に到着した「のぞみ121号」に、それぞれ乗車していたということです。

 女性は12日に医療機関を受診し、遺伝子検査の結果、13日に感染が確認されました。

 はしかは高熱などに続き全身に赤い発疹が出るのが特徴で、重症化すると最悪の場合、死亡することもあります。空気感染で広がり、感染力が非常に強いのも特徴です。

 大阪府は、女性が不特定多数の人と接触している可能性があるとして、女性と同じ新幹線に乗車していた人などに対し、3週間以内にはしかを疑う症状が出た場合は、事前に医療機関に連絡した上で速やかに受診するよう呼び掛けています。

 2019年2月14日(木)

 

■マイナンバーカード、健康保険証として利用可能に 2021年3月からすべての病院で

 政府は2021年3月から、原則としてすべての病院でマイナンバーカードを健康保険証として使えるようにします。マイナンバーカードは制度開始から3年たっても普及率は1割強にとどまっています。健康保険証を代用できるようになれば、取得する人が増えると期待され、マイナンバーカードの普及を通じて、北欧諸国などに比べて遅れるデジタル社会作りを加速させます。

 マイナンバーカードがあれば、現在では政府が運営するサイト「マイナポータル」を通じて、認可保育所の利用申請などの行政手続きがインターネットでできます。納税手続きをネットでする際の本人確認にも利用できます。自治体によっては、マイナンバーカードを使ってコンビニエンスストアで住民票の写しや印鑑登録証明書なども取得できます。

 2018年12月時点で、マイナンバーカードの交付実績は1564万枚と人口の12%程度。政府が今国会に提出する健康保険法改正案にマイナンバーカードを保険証として利用可能にする規定を盛り込み、関係省庁で普及に向けた作業部会を設けます。

 マイナンバーカードの裏面に搭載されたICチップを医療機関の窓口の読み取り機にかざすことで、診療報酬に関する事務を担う社会保険診療報酬支払基金から健康保険証の情報が病院に自動送信され、窓口で職員が情報を書き取る手間は必要なくなります。健康保険組合の判断で健康保険証をマイナンバーカードに切り替えれば、保険証の発行コストはなくなります。

 政府はカード利用の協力を健康保険組合や病院に呼び掛け、読み取り機のない診療所や病院には導入資金や改修費用を補助。電子化された健康保険証の情報と患者の診療報酬明細書(レセプト)の情報を連結することが可能で、患者の同意があれば医者は過去の処方歴を簡単に把握できるようになります。ICチップは外部から読み取られる恐れがなく、なりすましはできない上に、病院窓口の読み取り機にはカードの顔写真から認証できる仕組みも採り入れます。

 政府は2013年に世界最高水準のIT国家を目指すと閣議決定し、さまざまな手続きがネット上で完結するデジタル社会作りを進めています。マイナンバーカードの個人認証機能を行政分野に限らず、民間サービスにも広げることを目指し、マイナンバーカードの普及をデジタル社会作りの中核と位置付けています。

 2019年2月14日(木)

 

■スマホで聴く音楽、若者11億人に難聴リスク WHOが音量基準を提案

 世界保健機関(WHO)は12日、スマートフォンなどの携帯音楽機器で長時間、大音量の音楽を聴き続けると聴覚障害になる恐れがあるとして、音量制限機能などの搭載を求める国際基準を発表しました。現状では、世界の若者(12~35歳)の半数近くに当たる11億人が難聴になる危険性が高いと警告しました。

 WHOは「一度失った聴力は戻らないと理解すべきだ」と強調し、各国政府やメーカーに国際基準に沿った規制や機器の製造を要請しています。

 国際基準は、国際電気通信連合(ITU)と共同で策定。安全利用の目安を大人で音量80デシベル、子供で75デシベルを1週間に40時間までとし、機器にどの音量をどのくらい聴いたかを明示する機能を付けるべきだとしています。大音量で聴き続けた場合、自動的に音量を下げる機能も必要だとしました。

 さらに、ナイトクラブやディスコ、競技場などでも大音量にさらされるリスクが高まっているとして、規制を求めています。

 WHOによると、世界で聴覚障害に苦しむ人は約4億6600万人で、うち3400万人が子供。そのうちどれだけの人がスマートフォンやその他オーディオ機器の危険な使用によって聴力を損傷したのかはわからないとしていますが、今回の新しい国際基準によって、「日々、音楽を楽しむ若年消費者層を守ることができるだろう」と期待を寄せています。

 2019年2月13日(水)

 

■アメリカで、はしかの患者100人を超す 東部や西部10州で確認

 アメリカでは、はしか(麻疹=ましん)の感染が広がっており、今年に入って以降、確認された患者は100人を超えました。患者のほとんどはワクチンを接種していなかったということで、疾病対策センター(CDC)は、ワクチンの接種を呼び掛けています。

 CDCによりますと、アメリカで今年報告されたはしかの患者は、2月7日までで101人とすでに100人を超えています。

 感染は、東部ニューヨーク州や西部ワシントン州など、10の州で報告され、患者のほとんどはワクチンを接種していなかったということです。

 はしかは、発熱や、全身に発疹が出るウイルス性の感染症で、空気感染するため感染力が強く、乳幼児は重症になる場合があるほか、妊婦が感染すると流産や早産の恐れがあります。

 アメリカでは、ワクチン接種の広がりとともに患者は減少し、2000年にはCDCが撲滅を宣言したほか、2016年には世界保健機関(WHO)が南北アメリカについて土着のウイルスによる感染がない「排除状態」になったと認定しました。

 しかし、海外旅行者が国外からウイルスを持ち帰ったり、ワクチンに拒否感を示す一部の人達や、宗教上の理由などでワクチンを接種しない人達の間で感染は続いており、2014年には667人、昨年には372人の患者が報告されています。

 CDCは、感染の拡大を防ぐためにワクチンの接種を呼び掛けています。

 2019年2月13日(水)

 

■2種類のインフルエンザウイルスが同時流行 1シーズン2回感染も

 今年1月に過去20年で最多を更新したインフルエンザの患者数はようやく減少に転じましたが、流行は依然続いています。A型の2種類のウイルスが同時流行したことで感染者を増やしたとみられ、専門家は「今はA型の中でも高齢者が重症化しやすいA香港型が優勢になっており、流行のピークを越えても十分に警戒を」と呼び掛けています。

 「ひと冬にA型に2回かかることがあるんですか?」。長女(5歳)の感染を疑い、かかりつけ医を受診した大阪市内の女性(34歳)は4日夜、検査結果を聞いて耳を疑いました。長女はつい1カ月前にもインフルエンザの「A型」と診断されていたからです。

 女性は「可能性はあると聞いていたが、まさか我が家で起きるとは」と驚き、診察した冨吉医院(同市阿倍野区)の冨吉泰夫院長は「あまりないケースのはずだが、今季は同様の患者がほかにもいる。1度かかった人も油断せず、人混みをなるべく避け、手洗いを徹底してほしい」と話しています。

 国内で流行するA型には、2つのタイプがあります。1つは2009年に新型インフルエンザとして世界で大流行した「H1N1型」、もう1つは1968年以降、流行を続ける「A香港型」。このほかB型も、2種類あります。

 東北大の押谷仁教授(ウイルス学)は、「今季はA型の2つが勢いよく広がっており、流行の規模を大きくしている」と分析しています。

 ここ数年でみると、2014~2015年はA香港型、2015~2016年はH1N1型、2016~2017年はA香港型と交互に流行してきました。押谷教授は、「前季流行した型は、多くの人が一定の免疫を得ているとされる。このため翌シーズンは別の型がはやり、同時流行は起きにくいと考えられてきた」と説明します。

 その形が昨季の2017~2018年は崩れ、A型2種類とB型1種類がほぼ均等に表れました。「詳しい原因は不明だが、昨季は典型的な流行パターンにならず、A型が2種類とも大きく広がらなかった。結果的に免疫を持つ人が少なくなり、今季の同時流行を招いたのではないか」と推測しています。

 警戒すべき点は、「1シーズン2回感染」にとどまりません。現在、高齢者を中心に重症化しやすいA香港型が、それまで主流で6歳以下の子供にインフルエンザ脳症を起こしやすいとされるA香港型を追い抜き、検出されるウイルスの主流になっているからです。

 今年に入り、兵庫県淡路市の養護老人ホーム「北淡(ほくだん)荘」で7人が死亡するなど、各地の高齢者施設で集団感染が相次ぎ、専門家の間では「A香港型が原因では」との見方が強くなっています。

 実際に国立感染症研究所の統計でも、昨秋から昨年末はH1N1型が主流でしたが、今年1月以降はA香港型の割合が高まり、H1N1型を逆転しています。

 同じA型でも、H1N1型のウイルスは過去にはやったAソ連型と性質が似ており、高齢者の多くが一定の免疫を持っている可能性があります。一方、A香港型はより変異しやすく、感染して得た免疫が翌年以降は十分に働かないことも多くなります。変異のしやすさからH1N1型に比べてワクチンの効果を上げにくいことも、再感染や重症化につながる一因になっています。

 インフルエンザ対策に詳しい「けいゆう病院」(横浜市西区)の菅谷憲夫医師は、「A香港型の怖さを理解し、家庭や高齢者施設で発症者が出たら周囲の人に抗ウイルス薬の予防投与を検討するなど、引き続き緊張感を持って対応してほしい」と警鐘を鳴らしています。

 2019年2月13日(水)

 

■池江璃花子選手の白血病、若い世代のがんの1位 完治へは骨髄移植の選択肢も

 競泳女子のエース、池江璃花子(いけえ・りかこ)選手(18歳)が12日、自身のツイッターで白血病と診断されたことを公表しました。1月18日からオーストラリアで合宿中でしたが、体調不良で8日に帰国していました。池江選手は、「私自身、いまだに信じられず、混乱している状況です。今は少し休養を取り、1日でも早くまた、さらに強くなった池江璃花子の姿を見せられるよう頑張っていきたいと思います」とつづりました。

 同日、東京都内で会見した日本水泳連盟によると、オーストラリア合宿後半から体調不良を訴えることが多くなり、2月4日に現地で血液検査を実施。再検査を勧められたため予定を切り上げて8日に帰国し、再検査で病気が発覚しました。現在入院中で、12日から治療を開始。医師からは早期発見だったと説明を受けたといいます。

 治療を最優先し、16日からのコナミ・オープン、4月の日本選手権は欠場します。上野広治副会長は、「厳しい道のりになるが(来年の)東京オリンピックの代表選考会のスタートに立てるように見守ってほしい」と話しました。

 池江選手は昨年のジャカルタ・アジア大会で6冠を達成するなど成長著しく、2020年東京オリンピックでのメダル有力候補として活躍が期待されます。

 かつて「不治の病」とされた白血病は研究開発が進み、治る可能性の高い病気になりつつあります。「血液のがん」といわれ、固形がんのように手術では切除できず、抗がん剤治療が主となるものの、大きな副作用があります。

 国立がん研究センターなどによると、白血病の患者は年間約1万人ほどで、10万人当たり9・6人(2012年の推計値)。ただ、20歳代未満の若い世代では、がんの種別で1位(2009~2011年調査)となっています。

 大半の患者の発症原因は、不明です。異常な白血病細胞が無秩序に増殖するため、これを抑えることが治療の主な目的となります。進行が早い急性の場合、入院して抗がん剤を点滴投与します。治療の影響で生殖能力を失うことがあり、精子や卵子の凍結保存など温存治療も検討する必要があります。

 完治へ向けて「造血幹細胞移植」があります。骨髄の中の造血幹細胞を入れ替えるため、抗がん剤治療より強い副作用があり、嘔吐(おうと)や脱毛など体への負担は大きくなります。日本骨髄バンクによると、移植を求める患者は2030人で昨年末現在、ドナー(提供者)登録数は約49万人。ドナー数は十分のようにみえるものの、同バンクの広報担当者は「適合しない場合や、登録者が途中で辞退する人もおり、待っている患者はいる」と説明しています。

 白血病に詳しい北海道大病院血液内科の豊嶋崇徳(てしま・たかのり)教授は、「急性白血病は若年層に多いがんの代表だ。非常に進行が早いことで知られるが、約7~8割の患者は抗がん剤治療で白血病細胞が消える『完全寛解』の状態となる。その後も抗がん剤治療を半年から2年程度継続することで、約3~4割は根治が可能だ。また、抗がん剤治療のほかにも、骨髄移植の選択肢もある上、新たな治療法の開発も進んでいる。期待が大きい選手ではあるが、まずは治療に専念すべきで、競技継続は難しいものがあるといわざるを得ない。国民は完治することを祈りながら、治療に専念できる環境を整えることが重要だ」と話しています。

 2019年2月12日(火)

 

■全国の風疹患者、約1カ月で367人 春から大流行になる恐れ

 昨年、この10年余りで2番目に患者が多くなった風疹(三日ばしか)は、今年も約1カ月の患者数が367人と多い状態が続いています。例年、春から患者が増加する傾向にあるため、専門家は今年は大きな流行になる恐れがあるとして注意を促しています。

 昨年、全国の医療機関から報告された風疹の患者は2917人と、現在の方法で統計を取り始めた10年余りで2013年に次いで2番目に多くなり、今年も2月3日までの約1カ月の患者数は全国で367人と、この時期としては多い状態が続いています。

 都道府県別では東京都が101人、神奈川県が57人、千葉県が37人、大阪府が32人、福岡県が30人などと、首都圏が6割余りを占めています。

 風疹は発熱や発疹などの症状が出るウイルス性感染症。重症化や合併症の危険は低いものの、妊娠中の女性が感染すると、赤ちゃんに難聴や心疾患、白内障、発達の遅れなどの障害が出る「先天性風疹症候群」となる可能性があり、1月には埼玉県で男の子1人が先天性風疹症候群と診断されました。

 国立感染症研究所によりますと、風疹の流行は数年にわたって続く傾向があるほか、例年、春から患者数が増加するため、今年もこれからさらに患者が増えて大きな流行になる可能性があるとしています。

 厚生労働省は、子供のころに予防接種を受けた人が少なく、流行の中心となっている39歳から56歳の男性を対象に、ワクチン接種が必要か調べる抗体検査とワクチンの接種を原則無料で受けられる制度を始めることにしており、国立感染症研究所は「女性は妊娠の前に2回のワクチン接種を行っておくほか、新たな制度の対象となる男性はこれを活用をして検査やワクチン接種を行ってほしい」と呼び掛けています。

 2019年2月12日(火)

 

■高齢患者の蘇生や搬送の中止が可能に 東京消防庁が新たな仕組み導入へ

 高齢の患者が自宅などで心肺停止した際、救急隊が駆け付けても家族が「自宅でみとりたい」などとして、蘇生を拒否するケースが相次いでいることから、東京消防庁は救急隊が患者のかかりつけ医に連絡すれば、蘇生や搬送を中止できる新たな仕組みを導入する見通しになりました。

 東京消防庁が設置した専門家による懇話会は、高齢の患者にどのように対応すべきか今後の指針をまとめ、12日に村上研一消防総監に答申書を手渡しました。

 高齢者が自宅などで容体が悪化した際、救急隊が駆け付けても「自宅で最期を迎えたい」という本人や家族の意向で、蘇生が拒否されるケースが全国で相次いでいますが、多くの消防本部ではこうした場合の対応方針を決めておらず、現場の救急隊員からは戸惑う声も多く出ています。

 答申では、本人や家族が蘇生を望まない場合、救急隊がかかりつけの医師に連絡して了承を得れば、蘇生や病院への搬送を中止できる新たな仕組みが必要だとしています。また、現場で家族が署名する「同意書」を作り、蘇生や搬送を中止した経緯を記録に残すとしています。かかりつけの医師と連絡が取れなかった場合は、原則として蘇生を行い病院へ搬送するとしています。

 東京消防庁は答申を基にさらに細かい手順を検討し、早ければ今年中に新たな仕組みを導入する見通しです。

 高齢の患者の救急搬送の在り方については、さまざまな意見が聞かれました。68歳の男性は、「私はすでに書面に意思を表示しているので、この取り組みは本人の意思に従ってくれるという点で安心するし、すごくいいことだと思う。自分の意思を家族に伝えて話し合っておくことが必要だ」と話していました。

 また、80歳代の父親と70歳代の母親がいるという53歳の女性は、「よい取り組みだと思うが、気が動転して普通じゃない状態の時に冷静に同意書にサインできるかどうか難しい。事前に話し合いをしておけばいいが、家族が119番通報してしまう気持ちもわかる」と話していました。

 一方、48歳の会社員の男性は、「同意書を書くと現場で時間がかかってかえって面倒になるのではないか。また、各地の消防によって対応が異なるのも不公平で、人の生死にかかわる話なのできちんと国が法整備するよう検討してほしい」と話していました。

 答申をまとめた東京消防庁救急業務懇話会の会長の山本保博医師は、「患者や家族がどのような最期を迎えたいかについては、家族の中でもっと議論されるべきだし、ふだんから話し合えるような環境を作ってほしい。日本はまだ、最期の迎え方の意思決定をあいまいにすませてしまう傾向があり、何度も家族で話し合う必要がある」と話しています。

 2019年2月12日(火)

 

■iPS細胞備蓄にゲノム編集活用し、拒絶反応抑制へ 文科省が決定

 京都大が進める再生医療用のiPS細胞(人工多能性幹細胞)の備蓄・提供事業について、文部科学省の専門家会合は、ゲノム編集技術を活用して備蓄の効率を高める方針を決めました。ゲノム編集でiPS細胞の遺伝子を効率よく改変し、移植時の免疫拒絶反応を起きにくくさせて、ほぼすべての日本人に提供できる体制を整えます。

 京都大iPS細胞研究所は2013年度から国の事業として、拒絶反応が起きにくい特殊な免疫タイプの人の血液や臍帯(さいたい)血からiPS細胞を作製し、再生医療用に備蓄し、企業や研究機関に提供しています。現状では日本人の約40%に移植可能ですが、約90%の日本人の免疫タイプに対応するには、140種類のiPS細胞を備蓄する必要があるなどの課題がありました。

 2019年2月11日(月)

 

■大阪市「あべのハルカス」で女性販売員2人がはしかを発症 京都訪問中の男性も発症

 大阪市阿倍野区の「あべのハルカス」のバレンタインフェア会場で働いていた女性2人が、はしか(麻疹=ましん)に感染していたことがわかり、大阪市は売り場を訪れた人などに注意を呼び掛けています。

 大阪市によりますと、はしかに感染していたのは20歳代の女性2人で、「あべのハルカス」の近鉄百貨店で開かれているバレンタインフェア会場で販売員のアルバイトをしていました。2人は2月3日と5日、8日の3日間、ウイング館の9階にある特設会場の別の店でそれぞれ接客を担当していたということです。

 1人は2月3日から、もう1人は6日から熱が出て、発疹などの症状が出たため医療機関を受診したところ、2人とも10日に、はしかと診断されたということです。

 はしかは感染力が非常に強く、高熱のほかに全身に赤い発疹が出て、重症化すると死亡する場合もあります。はしかの潜伏期間は、10~12日程度とされます。

 大阪市は11日、2人が不特定多数の客らと接触したとみて、売り場を訪れてから3週間以内にはしかが疑われる症状が出た場合、医療機関に連絡して受診するよう呼び掛けています。

 一方、京都市保健所は11日、同市の友人を訪ねていた東京都の男性会社員(31歳)がはしかを発症したと発表しました。

 保健所によると、男性は1月22~25日にカンボジアを旅行。2月6日に発熱し、7日に東京都内の医療機関を受診したものの、はしかとは診断されませんでした。京都市を訪れた9日夜、発疹に気付き同市内の病院を受診し、検査で陽性が確認されました。現在、病院に入院中です。

 2019年2月11日(月)

 

■2018年の気温、観測史上4番目の高さ アメリカの政府機関が発表

 2018年の世界の平均気温は観測史上4番目の高さだったと、アメリカの政府機関が発表しました。観測史上の上位5位までを昨年までの5年間が占めており、地球温暖化に歯止めがかかっていない現状が改めて示されました。

 アメリカの海洋大気局(NOAA)と航空宇宙局(NASA)は6日、昨年、世界各地で観測された気温のデータの分析結果を発表しました。

 それによりますと、2018年の世界の平均気温は14・69度で、20世紀を通した平均気温と比べて0・79度高く、記録がある1880年以降で4番目の暑さとなりました。

 これまでで最も暑かったのは2016年で、上位5位までを2014年から2018年までの5年間が占め、温暖化に歯止めがかかっていないことが改めて示されました。

 また、極端な気象現象による自然災害も相次ぎ、アメリカだけでも南部のハリケーンや西部カリフォルニア州の山火事など被害額が10億ドル、日本円にして1100億円を超える災害が14件に上ったということです。

 アメリカのトランプ大統領は「温暖化を信じない」と述べるなど対策に否定的ですが、データをまとめた研究者は「温暖化が起きていることは疑いようがない。これまでにない量の雨が降るなど、地域レベルで影響が出ている」と述べ、警鐘を鳴らしています。

 例年、気温のデータは1月に発表されますが、政府機関が1カ月余り閉鎖した影響で2月にずれ込み、思わぬ形で政治の影響を受けることになりました。

 国連(UN)の報道官は記者会見でグテーレス事務総長の声明を読み上げ、「年間の平均気温が上がり続ける傾向を変えるには地球温暖化対策を世界規模で加速させなければならない」として、温室効果ガスの排出量を2030年までに、2010年と比べて45%削減する必要があると強調しています。

 その上で声明は、「事務総長は今年9月23日に地球温暖化対策サミットを主催する。その狙いはパリ協定の目標達成に向けた国際社会の政治的な意志を高め、気温の上昇を抑えるための具体的な行動を促すことだ」としています。

 国連が温暖化のデータの発表に合わせて半年以上先となるサミットについて具体的に説明したのは、地球温暖化対策が思うように進んでいないことに対するグテーレス事務総長の強い危機感の表れとみられます。

 2019年2月11日(月)

 

■「オプジーボ」などのがん免疫薬の効果を増幅 北大などで併用療法の研究進む

 「オプジーボ」「キイトルーダ」などのがん免疫薬でも効果がないがん患者に使える治療法の研究が、進んでいます。がん免疫薬は治療が難しかったがんに劇的に効く半面、投与した患者の2~3割にしか効きません。北海道大学など3つの研究チームは、がん細胞が免疫から逃れられないようにして、治療効果を高める技術を開発しました。マウスの実験ではがんが小さくなり、製薬会社などと組んで臨床応用を進めます。

 がん細胞は健康な人でも、1日数千個生まれます。がんを発症しないのは、病原体を取り除く免疫ががん細胞を排除するからです。しかしながら、がん細胞は目印を隠して免疫細胞をかく乱したり、攻撃モードに入らないようにしたりといった種々の方法で免疫の監視や攻撃をすり抜けて増殖します。

 京都大学の本庶佑(ほんじょたすく)特別教授らは、がん細胞が免疫の攻撃を逃れるカギとなるタンパク質を見付けました。そのタンパク質の働きを抑えることで、がん細胞への攻撃モードをオンにするのがオプジーボ。この成果で、本庶氏は2018年のノーベル生理学・医学賞を受賞しました。

 がん免疫薬は新薬が登場しましたが、いずれも効く患者の数は限られます。がん細胞を見付けて攻撃命令を出す「ヘルパーT細胞」や、命令を受けて出動する「キラーT細胞」などの機能に、個人差があるためです。こうした免疫細胞の能力を高めたり、働きを邪魔する物質を取り除いたりすれば、より多くのがん患者で高い治療効果を期待でき、がん免疫薬と組み合わると相乗効果で効き目が強まります。

 北海道大の瀬谷司客員教授と松本美佐子客員教授は、ヘルパーT細胞に働き掛けて、がんへの攻撃力を高める物質を合成しました。ヘルパーT細胞がキラーT細胞に命令を盛んに送り、がん細胞を目掛けて集中攻撃します。

 がん免疫薬を組み合わせ、人のがんを移植したマウスに投与。皮膚がんや白血病、悪性リンパ腫で試すと、15日たった時のがんの大きさはがん免疫薬だけを使った場合の半分になりました。製薬会社に協力を打診しており、数年後の臨床試験(治験)を目指します。

 熊本大の押海裕之教授と塚本博丈講師らの技術は、がん細胞への攻撃を邪魔する「インターロイキン6」を消します。このインターロイキン6はヘルパーT細胞に対して、標的をウイルスなど他の病原体に仕向けさせますが、その働きを消してがんに攻撃を集めます。がん免疫薬と併用すると、マウスの皮膚がんは26日後に半分に縮小しました。数年後の臨床試験(治験)を目指します。

 熊本大の諸石寿朗准教授らは、がん細胞が免疫の監視を逃れるのを防ぐ技術を開発しました。攻撃の目印を隠す働きをする「LATS1」と「LATS2」の2つの遺伝子を見付けました。これらを働かないようにしたがんをマウスに移植したところ、2カ月後も生き残りました。

 従来のがんの治療法は、手術、抗がん剤、放射線でした。手術では見えない病巣は除き切れず、がんと闘うリンパ節まで取るため免疫力が落ちます。抗がん剤や放射線でも、がん細胞をすべて殺すことは難しいという課題がありました。がん免疫薬なら、効く患者ではがん細胞をすべて取り除くことができる可能性があります。

 がん免疫薬は「第4の治療法」と呼ばれるまでになりましたが、がん治療に使えそうな未知の免疫の働きはまだ残っています。こうした働きを突き止めて制御できるようになれば、がん治療を変える潜在力を秘めています。

 2019年2月11日(月)

 

■省庁や国立大で原則、使い捨てプラスチック禁止 4月から食堂や売店で

 政府は8日、省庁や国立大など国の機関の食堂で、ストローなど使い捨てプラスチック容器の提供を4月から原則、取りやめる方針を決めました。国に環境負荷の少ない物品調達を義務付けるグリーン購入法の調達方針の改定を閣議決定しました。

 庁舎内のコンビニなど売店では、レジ袋に植物由来の素材を含むことなどを義務化します。食品ロスについても、食堂や売店に発生量の把握や削減目標の設定を義務付けました。4月以降、事業者との契約の際には選定の条件となります。

 グリーン購入法では、国が率先して環境に配慮した調達に取り組むよう、事務用品や設備、公共工事など幅広く調達方針を定めています。各省庁や国会、独立行政法人、国立大学など国の機関は毎年、基本方針に即して方針を決めています。

 今回の改定では、使い捨てプラスチック削減や食品ロス削減に向けた方針が強化されているのが特徴。

 食堂でのストローやスプーン、皿など使い捨てプラスチック容器について、代替手段がない場合を除き使用を禁止することに加え、省庁内のコンビニなど売店のレジ袋は、植物などバイオマス由来原料を10%以上含むことを義務付けました。また、審議会など会議運営では、ペットボトル入り飲料や使い捨てプラスチックのコップなどを使用禁止とします。

 ただし、大量のプラスチックごみの原因となっていた使い捨て弁当容器については、代替品が困難なことなどを理由に禁止せず、排出抑制に取り組む業者との契約を努力義務にしました。

 食品ロスの削減については、食堂や売店での削減目標設定のほか、消費者への呼び掛けや啓発に取り組むよう定めました。具体的な取り組みとして、食堂で余った食材を持ち帰りたい時には容器を提供することなどを例示しています。

 環境省によると、この改定で年間に最大ペットボトル約8万5000本、レジ袋約100トンの削減効果を見込んでいます。環境省大臣官房環境経済課の荒木肇課長補佐は、「循環型社会への取り組みや食品廃棄物削減など、環境負荷低減に向けた取り組みを今後も続けていきたい」と述べています。

 2019年2月10日(日)

 

■女性がん患者支援の専門部署を初設置 国立がん研究センター

 女性のがん患者特有の悩みや相談に応じる専門の部署が、全国で初めて国立がん研究センター東病院(千葉県柏市)に設置され、多くの患者が利用しています。

 がんになる女性は毎年約40万人おり、妊娠や出産など女性特有の悩みがありますが、十分に対応できていないケースがあるとされていました。
 
 国立がん研究センター東病院は、全国でも初めて「レディースセンター」という部署を設けて、さまざまながんになった女性患者に対して治療前から治療後まで一貫して悩みや相談に対応しています。

 レディースセンターには、専門の看護師やカウンセラーが配置されており、治療後に妊娠を希望する患者に対して、治療を開始する前に卵子を凍結保存することができるか一緒に検討を行うなどするほか、抗がん剤の副作用による脱毛や皮膚の荒れに対して、目立たなくする対処法やメイクのアドバイスなどもしています。

 レディースセンターは、国立がん研究センターの診療科で紹介を受けることで利用でき、1カ月に約200人の患者から相談を受けているということです。

 レディースセンター長を務める国立がん研究センター東病院の秋元哲夫副院長は、「治療前から治療の後まで生活の質をできるだけ落とさないよう支援して、女性患者が安心してがん治療を受けられるようにしたい」と話しています。

 全国のがん患者のデータである「全国がん登録」によりますと、2016年の1年間に新たにがんと診断された女性は42万8000人でした。このうち、乳がんは9万4000人、大腸がんは6万8000人、胃がんは4万1000人などとなっています。また、15歳から39歳の若い世代の女性のがん患者は1万5000人でした。

 2019年2月10日(日)

 

■大阪大病院、30歳代男性に小腸移植 保険適用後、成人で初めて

 大阪大病院(大阪府吹田市)は8日、脳死判定されたドナーから、東京都内の30歳代男性に小腸を移植したと発表しました。移植は昨年10月で、今年1月、男性は退院しました。その後の経過も順調で、栄養を取るため常時体につないでいた点滴が必要なくなったといいます。

 病院によると、小腸移植は海外では広く行われているのに対し、国内では昨年まで公的医療保険の対象になっていなかったこともあり、27例とあまり広がっておらず、技術的にも難しいといいます。今回は保険適用後3例目で、成人は初めて。

 男性は2010年、潰瘍(かいよう)性大腸炎と診断されました。その後も血便が改善せず、大腸の一部と小腸のほぼすべてを切除。腸からの消化吸収が不十分になり点滴で栄養を取らざるを得なくなる短腸症と診断され、24時間点滴を流す生活をしていましたが、血管の状態や肝臓の機能が悪くなっていました。2016年から脳死小腸移植を待っていたといいます。ドナーは30歳代女性。

 会見に同席した男性は、「点滴での栄養摂取と、自分で吸収し、エネルギーになるという感覚はかなり違う。ドナーの方への気持ちは感謝の一言では言い表せません」と語りました。

 担当した大阪大病院小児外科の上野豪久講師は、「移植が必要な患者は全国にいると思う。こういう治療があることを知ってほしい」と話しました。

 また、男性は8日、大阪大病院を通じてコメントを出しました。内容は以下の通り。

 ドナー様、そして深い悲しみのさなかで決断をして下さったご家族様に心より感謝申し上げます。

 私は、8年前より、点滴を24時間流しながら生きていました。多くの制限がある中で自分なりの生き方を模索し、どうにもならない現実に時に苦悩、挫折しながら、それでも自分の人生の意味を問いながら、移植のその時を待っていました。

 幸い、術後の経過も良好で3カ月が経とうとしています。24時間流していた点滴も日中はしなくてもよくなり、身軽な状態で歩く世界はまぶしく、心震えたことは決して忘れません。

 これから一日一日を丁寧に、そして社会に少しずつ恩返しができたらなと思っています。本当に本当にありがとうございました。

 2019年2月10日(日)

 

■世界の自殺率、3分の1以上低下 10万人当たり16・6人が11・2人に

 世界全体の自殺率が1990年から3分の1以上低下しているとの分析結果が6日、イギリスの医学誌「ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル」に発表されました。

 世界保健機関(WHO)は自殺を重大な保健行政上の問題と位置付けており、自殺者数を少なくとも年間80万人と推定し、15~29歳の年齢層で2番目に多い死因となっているとしています。

 この大規模な健康調査をまとめた報告書「世界の疾病負担研究」に携わった専門家チームが考案したデータモデルによると、国ごとでは自殺者に関する数字に違いが見られるものの、世界全体の自殺率は明らかに低下傾向にあることがわかりました。

 研究結果によると2016年の自殺者数は推定81万7000人で、1990年から6・7%増となったものの、この30年で世界人口が急増したことから、年齢と人口規模で調整した10万人当たりの自殺率では16・6人から11・2人と32・7%減となりました。

 「世界の疾病負担研究」は慈善財団「ビル・アンド・メリンダ・ゲイツ財団」が資金援助している保健指標評価研究所が毎年実施しており、膨大なデータから死因、年齢、性別、地域別の死亡率を推定しています。

 専門家チームは全体の自殺率が減少傾向にあることを評価する一方、一部の国と地域ではいまだに自殺が損失生存年数を増加させている大きな要因であると指摘。損失生存年数は自殺時の年齢と国・地域の平均余命を比較して算出した年数で、2016年には世界全体で3460万年に上っています。

 また、性別で見ると10万人当たりの自殺率は男性15・6人、女性7・0人となっており、男性が女性を大きく上回っていることもわかりました。

 研究に協力したカナダ公衆衛生局のヘザー・オルパナ氏は、「自殺は回避可能な死因と考えられており、今回の研究は私たちが自殺防止に向けた取り組みを継続すべきであることを示している」と述べました。

 2019年2月10日(日)

 

■インフルエンザ脳症の患者が127人に上る 少なくとも5人死亡

 今シーズンに報告されたインフルエンザ脳症の患者数が127人に上ることが8日、国立感染症研究所の集計で明らかになりました。2009年に発生した新型インフルエンザの流行が終わった後では最多のペースといいます。

 インフルエンザ脳症を起こしやすいとされるH1N1型ウイルスへの感染が多いのが、原因とみられます。今後も増えると予想され、同研究所の砂川富正室長は「全身けいれんなど、脳症が疑われる症状が出たらすぐに病院を受診してほしい」と警戒を呼び掛けています。

 3日までの1週間に報告されたインフルエンザ患者数は、1医療機関当たり43・24人。前週に比べ減少に転じましたが、岐阜県、和歌山県、熊本県を除く44都道府県で30人を超える「警報レベル」となりました。

 インフルエンザ脳症はインフルエンザの合併症で、発熱後、意識障害や全身のけいれん、意味不明の言動などの症状が出て1日から2日という短期間に悪化するが特徴で、6歳以下の子供に多くみられます。8~9%が死亡し、約25%の子供に脳障害などの後遺症が出ます。

 感染症研究所によると、昨年秋から今年1月下旬までの脳症報告数(暫定値)は127人。1歳から40歳代の少なくとも5人の死亡が報告されています。

 同じ期間で比べると、2015~2016年が57人、2016~2017年が54人、2017~2018年が108人で、最近では最多のペースとなっています。シーズン全体で見ると、H1N1型が流行した2009~2010年に319人、2015~2016年に223人の患者が報告されました。

 1週間にインフルエンザで医療機関を受診したのは推計約166万9000人で、前週から約55万7000人減りました。都道府県別の1医療機関当たり患者数は、埼玉県の65・68人が最多。新潟県(62・51人)、宮城県(58・77人)、千葉県(56・89人)、大分県(52・14人)が続きました。

 直近5週間に検出されたウイルスは、高齢者を中心に重症化しやすいといわれるA香港型が53%で、それまで主流だったH1N1型(46%)を追い抜きました。

 2019年2月9日(土

 

■小児がん拠点病院、厚労省が初の見直し 来年度から指定の15カ所選定

 子供が亡くなる病気で最も多い小児がんについて、厚生労働省は、全国で15カ所ある小児がん拠点病院の指定を見直し、新たに静岡県の病院を加えることになりました。

 小児がんは年間で2000人から2500人が発症し、子供の死因として最も多くなっていますが、医療機関による治療レベルの差が指摘されているため、厚生労働省は2013年に、患者を集めて専門的な治療を行う小児がん拠点病院として全国15カ所を指定しました。

 今年度末に拠点病院の指定の期限を迎えるのを前に、厚生労働省は7日、有識者の検討会を開き、AYA(アヤ=思春期・若年成人)世代のがん患者への支援体制などを踏まえて、新年度から4年間、小児がん拠点病院に指定される医療機関を選びました。

 指定されることになったのは、東京の国立成育医療研究センター、静岡県立こども病院、大阪市立総合医療センターなど全国の13都道府県の15カ所の医療機関です。

 現在の小児がん拠点病院15カ所のうち、大阪府立母子保健総合医療センターは指定を受けず、静岡県立こども病院が新たに加わります。

 厚生労働省は、小児がん拠点病院が各地に「小児がん連携病院」を指定する枠組みも新年度から設けることにしており、長期にわたる患者の検査や治療を充実させたいとしています。

 新年度からの小児がん拠点病院に指定されるのは、北海道大学病院、東北大学病院、埼玉県立小児医療センター、東京都の国立成育医療研究センター、東京都立小児総合医療センター、神奈川県立こども医療センター、静岡県立こども病院、名古屋大学医学部附属病院、三重大学医学部附属病院、京都大学医学部附属病院、京都府立医科大学附属病院、大阪市立総合医療センター、兵庫県立こども病院、広島大学病院、九州大学病院です。

 2019年2月9日(土

 

■ファイザーが高血圧症治療剤を自主回収 発がん可能性物質が混入

 アメリカの製薬大手ファイザー日本法人(東京都渋谷区)は8日、高血圧症治療剤「アムバロ配合錠『ファイザー』」の5製品、計約76万4000錠を自主回収すると発表しました。提携するインドの工場で製造された薬の原材料に、発がんの可能性がある物質が混入していました。服用すると重い健康被害が出る恐れもありますが、現時点では被害の報告はないといいます。

 製品は昨年12月3日から今年1月23日にかけて、卸売業者を通じて国内約2500の病院や薬局に出荷され、使用期限が2021年の4月から7月までの製品だということです。医療用の医薬品のため、購入するには医師の処方が必要となります。

 薬の原材料となる有効成分「バルサルタン」の中に、発がんの可能性がある物質が混入していました。原因は調査中といいます。

 あすか製薬(東京都港区)が昨年7月、バルサルタンを原材料に使う高血圧症治療剤「バルサルタン錠『AA』」の4製品に、発がんの恐れがある物質が含まれていたと発表。厚生労働省が製薬各社に高血圧症治療剤の調査を呼び掛けたところ、ファイザーの薬でも同様の物質が含まれていると発覚しました。

 ファイザーは、患者自身の判断によって服用を中止すれば高血圧症の症状が悪化する恐れもあるため、今後の対応は医師や薬剤師と相談して決めてほしいと呼び掛けています。

 また、専用のフリーダイヤルで、患者や医療機関からの問い合わせを受け付けています。番号は0120・281・787。

 ファイザー日本法人の原田明久社長は、「多くの方々に多大なるご迷惑とご心配をおかけし、心からおわび申し上げます」とコメントしています。

 2019年2月8日(金)

 

■ロボット掃除機が電気ストーブを動かし火災発生 東京都内で2件相次ぐ

 自動的に部屋の中を動き回ってごみを吸い取るロボット掃除機が、近くにある電気ストーブに接触して火災につながったとみられるケースが、東京都内で2件相次いでいたことが8日、明らかになりました。

 東京消防庁は、「ロボット掃除機を使う際には、近くにある電気ストーブの電源コードを必ず抜くなどの対策を取ってほしい」と呼び掛けています。東京消防庁によりますと、昨年12月、東京都内のメゾネットタイプのマンションで電気ストーブがソファーに接触してソファーの一部が焼ける火事がありました。

 東京消防庁が原因を調べたところ、当時、部屋の中には人はおらずロボット掃除機が自動運転している状態で、掃除機が近くの電気ストーブに当たってストーブを50センチほど移動させ、ソファーに接触したことで火が出たとみられることがわかりました。幸いに、下階にいた住人が火災報知機の音に気付いて上階へいったため、すぐに火は消し止められ、けが人はいませんでした。

 再現実験を行ったところ、実際にロボット掃除機が電気ストーブを押すようにして移動させたり、電気ストーブのコードを巻き込んだりする様子が確認できたということです。ロボット掃除機にはセンサーが搭載されていますが、床の状態やストーブの重さなどによっては作動し続け、火災が発生する危険性があるといいます。

 同じようなロボット掃除機が原因で起きたとみられる火災は、今年2月に入っても別のマンションで1件確認されています。机の下にあった電気ストーブがロボット掃除機に押されてタンスに接触し、室内約20平方メートルが焼ける被害が出ました。住人はロボット掃除機を自動運転させたまま外出していたといいます。

 東京消防庁予防部調査課の西村太作消防司令補は、「これまでになかった火災事例で注意が必要だ」と話しています。

 ロボット掃除機をよく使うという40歳代の女性は、「ロボット掃除機が電化製品のコードを巻き込んでしまい、ひやっとしたことがあります。火災につながることもあるかもしれないので気を付けたいです」と話していました。また、先週ロボット掃除機を購入したばかりだという30歳代の女性は、「まだあまり使っていませんが、この時期は空気も乾燥していて火災も起きやすいので、使う時は気を付けたいです」と話していました。これから購入を考えているという40歳代の女性は、「映像を見るととても怖いです。自分も気を付けなければいけないと思いました」と話していました。

 2019年2月8日(金)

 

■中国で血液製剤がHIV汚染か 医療機関に1万2000本出回る

 中国・上海の大手国営医薬品会社「上海新興医薬」の販売する静注用人免疫グロブリン(IVIG)製剤に含まれるHIV(エイズウイルス)抗体から陽性反応が検出され、国家衛生健康委員会は5日、国家食品薬品監督管理局へ通報し、全国の各医療機関に対し同社薬品の使用停止と厳封処理を指示しました。

 関連する患者への病状の観察なども指示し、医薬関連部門に状況調査や薬品の処理作業への協力を求めています。

 IVIG製剤は、重症感染症や自己免疫疾患などに広く使用される薬品。IVIG製剤の原材料となる血漿(けっしょう)に含まれている抗HIV抗体は、陰性であることが条件とされています。

 全国の医療機関に出回ったIVIG製剤約1万2230本がHIV(エイズウイルス)に汚染されている可能性があるものの、これまでにこのIVIG製剤を使用した人について、HIV(エイズウイルス)への感染例は報告されていないといいます。

 2019年2月7日(木)

 

■暴力や暴言の児童虐待、最多の8万人 警察の通告、5年間で2・8倍に

 児童虐待の疑いがあるとして、全国の警察が2018年1年間に児童相談所に通告した18歳未満の子供の人数が、前年比1万4673人増の8万104人(暫定値)に上り、統計を取り始めた2004年以降、初めて8万人を超えたことが7日、警察庁のまとめでわかりました。刑法犯全体の認知件数は前年比10・7%減の81万74457件(暫定値)で、戦後最少を4年連続で更新しました。

 警察庁が発表した2018年の犯罪情勢によると、児童相談所への通告の内訳は、子供の前で両親が暴力を振るったり、暴言を吐いたりする「心理的虐待」が5万7326人(前年比23・4%増)で最も多く、全体の71・6%を占めました。暴行などの「身体的虐待」は1万4821人、食事を与えないなどの「育児放棄(ネグレクト)」は7699人、「性的虐待」は258人。

 2018年3月に東京都目黒区の船戸結愛(ゆあ)ちゃん(当時5歳)が虐待を受けて死亡した事件では両親が逮捕されるなど、虐待の摘発件数も過去最多の1355件に上りました。2014年からの5年間で通告人数は約2・8倍、摘発件数は約1・8倍にそれぞれ増えました。

 警察庁は2016年4月、全国の警察本部に対し、子供の体にあざなどの兆候がある場合は、虐待と断定できなくても、速やかに児童相談所に通告するよう通達。この通達後、通告件数は急増し、児童相談所に寄せられた通告の半数近くを警察が占めています。警察庁は、「被害が潜在化しやすい傾向があることを踏まえ、関係機関と連携していくことが必要」としています。

 ドメスティック・バイオレンス(DV)の認知件数も前年より5027件増の7万7482件(暫定値)で、過去最多でした。男性が被害者だったケースが1万5964件で、初めて2割を超えました。ストーカーの相談件数は3年ぶりに減少し、2万1551件でした。

 一方、刑法犯全体の認知件数は2003年以来、16年連続で減少。全体の7割以上を占める窃盗犯が58万2217件で、前年より7万3281件(11・2%)減りました。

 殺人などの重要犯罪は3・1%減の1万546件。一方で、強制性交等(18・0%増、1309件)、略取誘拐(27・2%増、304件)など少女らを狙った犯罪は増えました。SNSを通じて知り合った相手に襲われたり、連れ回されたりする被害が目立つといいます。

 知能犯は、特殊詐欺全体の認知件数が1万6493件で8年ぶりに減少に転じましたが、息子などを装う「オレオレ詐欺」は9134件で638件増えました。

 刑法犯の検挙率は37・9%で前年より2・2ポイント増加。殺人などの重要犯罪では4・2ポイント増の84・5%でした。

 2019年2月7日(木)

 

■生活保護、約164万世帯で過去最多 1人暮らしの高齢者世帯の増加が原因

 全国で生活保護を受けている世帯は昨年度、約164万世帯とこれまでで最も多くなりました。1人暮らしの高齢者世帯が増加しているためで、高齢者の貧困対策が課題となっています。

 厚生労働省のまとめによりますと、生活保護を受けている世帯は昨年度の1カ月平均で164万854世帯と、前の年度に比べて約3800世帯増加し、これまでで最も多くなりました。

 世帯の類型別では、「高齢者世帯」が約86万4700世帯と最も多く、前の年度より約2万8000世帯増え、その90%余りが1人暮らしでした。「障害者世帯」や「母子世帯」、「傷病者世帯」、「その他の世帯」では、減少傾向が続いています。

 国の研究所の予測では、日本の全世帯に占める1人暮らしの高齢者の割合は今後も増え続け、2040年には高齢の男性は5人に1人、女性は4人に1人が1人暮らしになるとされています。

 家族の支援を受けられず貧困に陥りやすい人が多くなるとも指摘されており、将来を見据えた高齢者の貧困対策が課題となっています。

 2019年2月7日(木)

 

■脂質代謝異常で発症か、もやもや病の遺伝子の働きを解明 京産大などのチームが発表

 日本や中国、韓国など東アジア人に多い脳の難病「もやもや病」にかかわる遺伝子が、細胞内で脂肪を蓄える働きをしていることを突き止めたと、京都産業大などの研究チームが発表しました。同病は原因不明で、これまで脂質の代謝との関係性は注目されていませんでした。研究チームは「代謝バランスが崩れ、病気が引き起こされている可能性がある」としています。

 研究成果は日本時間2019年1月31日23時に、アメリカの科学誌「ジャーナル・オブ・セルバイオロジー」(電子版)に掲載されました。

 もやもや病は脳の動脈が細くなり、手足の力が抜けたりする病気で、1957年に日本で発見され、脳の毛細血管がもやもやとした煙のように見えることが病名の由来。発症は5歳前後に多く、脳への血液供給不足による発達障害を合併する場合もあります。成人以降では血管が破れて脳出血が起きる場合もありますが、根本的な治療法はありません。日本国内の患者は1万数千人。歌手の徳永英明さんが病気を公表したことでも知られます。

 患者の遺伝子解析など従来の研究で、発症者には「ミステリン」という遺伝子に変異があることがわかっていました。ただ、そもそもミステリンが体内で果たす具体的な役割は不明でした。

 そこで、研究チームは今回、培養細胞を使ってミステリンが作るタンパク質の働きを詳しく分析。細胞内でこのタンパク質が中性脂肪やコレステロールなどの粒を包み込む様子が確認され、脂肪が分解しないようコントロールしていることがわかったといいます。

 研究チームの森戸大介・昭和大講師(京産大元主任研究員)は、「もやもや病は脂質の代謝異常が鍵となっている可能性があり、発病プロセスの解明につなげたい。また、肥満や動脈硬化といった他の脂質代謝異常による病気にも役立つかもしれない」と指摘。今後、患者と同様の遺伝子変異を持たせたマウスを使い、さらに詳しい分析を進めるといいます。

 2019年2月7日(木)

 

■マウスの腎臓、異種のラット体内で作製に成功 人の移植用腎臓への応用に前進

 ラットの体内で異種のマウスの腎臓を作ることに成功したと、自然科学研究機構生理学研究所の平林真澄准教授や東京大の中内啓光特任教授らの研究チームが発表しました。複雑で大きな臓器である腎臓を異なる種の動物の体内で作ったのは初めてだといいます。

 ブタなどの体内で人の移植用腎臓を作る研究につながる可能性のある成果で、6日、論文がイギリスの科学誌「ネイチャー・コミュニケーションズ」(電子版)に掲載されました。

 生理学研究所などの研究チームは、マウスの受精卵から、さまざまな細胞に変化できるES細胞(胚性幹細胞)を作製。このES細胞7個を、遺伝子を操作して腎臓を作れないようにしたラットの受精卵に注入し、別のラットの子宮に戻しました。その結果、生まれたラットの腎臓が、マウス由来の細胞でできていることを確認したといいます。ES細胞が臓器の空白を補完しようと、腎臓の細胞に分化したとみられます。

 慢性腎不全などで腎臓移植を待つ患者は国内で1万2000人を超えており、ドナー不足が深刻。研究チームは、「ブタなどでの移植用臓器作製の実現につなげたい」と話しています。

 中内特任教授らはすでに、ラットの体内でマウスの膵臓(すいぞう を作ることに成功しています。日本ではこれまで、動物の体内で人の臓器を作る研究はできませんでしたが、近く指針が改正され、こうした研究が解禁されます。

 自治医科大の花園豊教授(再生医学)は、「基礎研究として重要な成果だが、比較的近縁のマウスとラットでできたことが、(より違いの大きい)人とブタで応用できるかどうかは検証が必要だ」と話しています。

 2019年2月6日(水)

 

■医療機関の初診料、再診料を値上げへ 消費増税対応で10月から

 厚生労働省は6日、今年10月に予定されている消費税率10%への引き上げに伴い、医療機関に支払われる初診料(現在2820円)を60円、再診料(同720円)を10円それぞれ引き上げることを決めました。同日開かれた中央社会保険医療協議会(中医協=厚労相の諮問機関)に示し、大筋で了承されました。

 引き上げにより、10月以降は患者の窓口負担(年齢や年収により1~3割)が増えます。3割負担の患者の場合、初診料が18円増の864円、再診料は3円増の219円となります。入院料は医療機関の種類や規模に応じて異なりますが、一般病棟の入院基本料の場合230~590円引き上げられます。

 医療機関が医療機器などを仕入れる際には消費税がかかる一方、患者が窓口で払う料金は非課税のため、増税分は医療機関が負担することになります。そのため、消費増税に際しては診療報酬を引き上げ、医療機関の負担を減らす仕組みとなっています。

 2014年に消費税率が8%に引き上げられた際は、医療機関に支払われる初診料は120円、再診料は30円それぞれ引き上げられました。

 2019年2月6日(水)

 

■豚コレラ、愛知、大阪、長野、滋賀、岐阜の5府県に拡大 2万7000頭を殺処分へ

 昨年から岐阜県で発生していた豚(とん)コレラは6日朝、愛知県の養豚場でも確認され、出荷先の大阪府、長野県、滋賀県、それに岐阜県の4つの飼育施設にも感染が広がっていることが確認されました。豚コレラが発生したのは昨年9月以降、合わせて5府県となりました。

 豚コレラは人に感染することはなく、食べても影響はありませんが、ブタやイノシシでは下痢や高い熱などの症状が出て、多くの場合、数日のうちに死にます。

 昨年9月に、27年前の1992年以来となる発生が岐阜市の養豚場で確認されるなど、岐阜県内の合わせて8つの飼育施設で発生し、6日朝、愛知県の2カ所の養豚場でも確認されました。

 このため、農林水産省などがこれらの養豚場からブタが出荷されていた施設を調査したところ、大阪府、長野県、滋賀県、岐阜県の4つの飼育施設で豚コレラが確認されたということです。

 発生が確認された飼育施設では感染の拡大を防ぐため、飼育しているブタの殺処分が行われます。また、農水省は全国の養豚業者などに対して、飼育しているブタなどの状況をよく確認して、異常があればすぐに自治体の家畜衛生の担当部署に連絡するよう呼び掛けています。

 豚コレラの感染が確認された愛知県豊田市の養豚場は、県の調査に対し、最初に異常がみられるブタが見付かったのは、1月下旬だったとしています。しかし、この養豚場から県に最初に通報があったのは、2月4日のことで、食欲がないなど、ブタに異常が見られるという報告でした。

 このため、4日の時点で県はこの養豚場に初めての立ち入り検査を行うとともに豚コレラの可能性も検討しましたが、一部のブタでは流産もみられたことから、豚コレラ以外の病気ではないかと考えたということです。

 結果として、この時点では移動や搬出の制限などは行われず、5日朝には長野県に80頭が出荷されました。そして、5日の日中に簡易検査で陽性反応が出て、農水省の検査の結果、6日に感染が確認されました。

 愛知県畜産課の岡地啓之課長は、「県外の出荷先で豚コレラが発生したのは残念だ。発生に至った経緯について詳しく調べる必要がある」としています。

 全国の1600戸余りの養豚業者でつくる日本養豚協会の松村昌雄会長代行は、豚コレラの感染が5府県に拡大したことについて、「全国の関係者が感染の拡大防止に努めていたが、恐れていた事態が起きてしまったと感じています」とした上で、「これ以上、感染を広げないためにも、施設や車両、それに出入りする人の靴底や衣服の消毒をこまめにするなど、衛生管理をさらに徹底させるほか、養豚場の間でのブタの移動は最小限にするよう呼び掛けたい」と話しています。
 
 流通大手の「イオン」によりますと、今回、豚コレラが確認された愛知県豊田市にある養豚場から、県内にある「イオンリテール」の3店舗が豚肉を仕入れていましたが、6日から入荷していないということです。会社では、仕入れ先をほかの農場に切り替えたということで、店舗での豚肉の販売量には影響はないとしています。また、これまでに販売した豚肉は豚コレラに感染した豚のものではなく、安全なものだとしています。

 これまでに豚コレラの発生が確認された岐阜県や愛知県など5府県の農場では、合わせて2万7000頭の豚が飼育されていましたが、すべて殺処分されることになっています。

 全国で飼育されている豚は918万頭余りに上り、殺処分される豚は今のところ全体の0・3%ほどにとどまっています。このため農水省は「地域では多少の影響があるかもしれないが、全国的にみれば豚肉の流通への影響は今のところ限定的だ」としています。

 ただ、養豚が盛んな九州地方や関東地方に感染が拡大すれば、大きな影響が出ることが避けられないため、農水省は豚コレラが発生した農場での防疫措置を速やかに行い、これ以上の感染拡大を防ぎたいとしています。農水省はホームページなどで消費者に向けて、豚コレラはブタやイノシシの病気で人には感染しないことや、感染したブタの肉を食べて人に感染したという報告は世界的にないと説明しています。

 2019年2月6日(水)

 

■誤作動の恐れがある心臓ペースメーカー、対象機器が増加 使用患者が失神する事例も

 医療機器会社「日本メドトロニック」(東京都港区)がアメリカの製造元から輸入販売した植え込み型心臓ペースメーカーの不具合問題で、東京都は4日、誤作動を起こす恐れのある機器が新たに778台増え、計1936台になったと発表しました。

 発表によると、1月18日の問題発表時の同社側のリストに漏れがあり、「Adapta DR」「Adapta VDD」「Versa DR」(2017年7月~2019年1月出荷分)の3機種計775台で、新たに問題があることが発覚。別機種の「Sensia DR」(同)の3台についても対応が必要と判明しました。

 同社や東京都によりますと、これらの機器は集積回路に不具合があり、特定の条件が重なった時に正常に作動しない可能性があり、必要な血液が送られず失神や重い健康被害を引き起こす可能性があるということです。

 患者の体内から取り出さず、機器に内蔵されたプログラムを無線通信で修正したり、患者の状況次第では機器の交換が必要で、同社は、納入先の医療機関計820施設を通じて患者に連絡しています。

 問題の機器を巡っては、海外で昨年の秋以降、停止したケースが4件起きているほか、国内でも1月中旬、機器の使用患者が失神する事例が1件報告されたといいます。

 日本メドトロニックの患者向けの問い合わせの電話番号は0120ー911ー381で、平日の午前9時から午後5時まで受け付けています。

 2019年2月6日(水)

 

■子宮頸がんの患者数が増加 治りにくいタイプも若年層に広がる

 子宮頸(けい)がんの患者数が2000年ごろから増えているとする研究結果を、大阪大などの研究チームがまとめました。治療が効きにくいタイプの子宮頸がんも、若い世代で増えているといいます。アメリカの専門誌に掲載されました。

 大阪大の上田豊講師(産婦人科)らは、1976~2012年の大阪府がん登録データを使い、約2万5000人の子宮頸がんの患者について、高齢化による影響を調整した上で分析しました。

 人口10万人当たりの罹患(りかん)率は、1976年は28・0人でしたが、減少傾向となり、2000年は9・1人になりました。がん検診が普及し、がんの前段階で見付かって治療する人が増えたことなどが原因として考えられるといいいます。

 しかし、2000年以降は増加に転じ、2012年は14・1人になりました。性交渉の低年齢化などを指摘する声もありますが、原因ははっきりしないといいます。

 子宮頸がんはヒトパピローマウイルス(HPV)が原因となることが多く、性交渉によって感染します。中でも「18型」というタイプのウイルスが主な原因となる「腺がん」は見付かりにくく、治りにくいとされますが、30歳代以下の若年層で増えていました。

 最も早い段階で見付かった場合、治療法は手術か放射線治療が一般的ですが、若年層では放射線治療が効きにくいことも判明しました。

 上田講師は、「全国的にも同じ傾向だと考えている。検診のほか、ワクチンを打てる環境になったら接種するなどして、早期に発見、予防することが重要」と話しています。ワクチンは接種後の健康被害の訴えが相次ぎ、厚生労働省は2013年から積極的な接種の勧奨を中止しています。

 国立がん研究センターの統計によると、子宮頸がんは毎年約1万人が新たに診断され、2500人以上が亡くなっています。

 2019年2月6日(水)

 

■インフルエンザ薬の勢力図一変し、塩野義が台頭 「ゾフルーザ」の国内シェア47%に

 インフルエンザが猛威を振るう中、塩野義製薬が2018年3月に発売した抗インフルエンザ薬「ゾフルーザ」が国内市場を席巻しています。「1回飲むだけ」の手軽さから人気が過熱し、2018年10~12月の国内の数量シェアは47%を占めました。

 世界の大手製薬会社が「素通り」する感染症分野にこだわってきた成果が出ました。一方で、耐性ウイルス問題も浮上し、国内製薬大手で唯一、感染症を表看板に掲げる塩野義の持続力が試されています。

 「小さな錠剤で飲みやすかった」と、ゾフルーザを服用した東京都内の男性会社員(40歳)は手軽さに驚いています。ウイルスの増殖を防ぐ薬剤の血中濃度を長時間保てるため、12歳以上は錠剤を1度飲むだけで服薬は終わりです。粉状の薬を吸引する第一三共の「イナビル」や、1日2回、5日間飲み続けるスイスの製薬大手ロシュの「タミフル」と比べ患者の負担は小さくなります。

 医薬品卸が医療機関に販売した抗インフルエンザ薬の数量実績を基に各製品のシェアを集計したところ、3カ月で供給された計347万人分のうち、ゾフルーザが47%でトップ。2位がイナビル(18%)で、タミフル(17%)、沢井製薬のタミフル後発品(12%)と続きました。これまでタミフルとイナビルが市場をほぼ二分していた状況が一変しました。

 抗インフルエンザ薬市場で塩野義は新参者ながら、感染症の研究開発を半世紀以上続けてきた自負があります。1959年に初の自社抗菌薬「シノミン」を発売。これに着目したロシュが世界で販売して塩野義の業績を支え、その後も感染症薬を生み出してきました。

 1988年に新たに研究所を設立し、抗エイズウイルス(HIV)薬の研究を開始。抗菌薬しか扱ってこなかった塩野義が、異なる仕組みや大きさを持つ「ウイルス」の知見を培ったことが、ゾフルーザ誕生につながりました。

 業績への貢献も大きく、ゾフルーザの2018年4~12月期の売上高は99億円と塩野義の国内医療用医薬品で2番目の大型製品に浮上し、通期は130億円を見込んでいます。

 想定を上回る需要に対応し、塩野義は年明けから土日も含む24時間フル生産を続けています。800万人分を生産する計画でしたが、一段の増産の検討に入りました。供給が間に合わず出荷量を調整し、一部で品切れも発生。大阪市内の開業医は、「残り3人分しかない。追加注文したいがどの卸にも在庫がない」と話しています。

 塩野義は現在の錠剤に加えて、粉薬(顆粒=かりゅう)の承認も申請中で、予防投与の承認取得も目指しています。さらに、昨年11月には提携先のロシュがアメリカでの販売を開始。塩野義には、ロシュの販売量に応じてロイヤルティー収入なども入る見通しです。

 順風に見えるものの、リスクも浮上しています。1月24日、国立感染症研究所の調査でゾフルーザを服用した2人の小児患者から、薬が効きにくくなる耐性ウイルスが検出されたことが判明しました。耐性ウイルスが発生しやすいことは臨床試験でわかり国際学会でも説明はしていましたが、関東のある医師は「塩野義はもっと詳細に国内の医療現場に説明すべきだった」と話しています。

 医師が処方を控える動きも広がっている模様で、けいゆう病院(横浜市)小児科で感染症を専門とする菅谷憲夫医師は、「外来でどんどん使うのではなく、既存薬で抑えられない時の選択肢にすべきだ」と懸念しています。需要急増はいったん落ち着く可能性も出てきました。

 2019年2月5日(火)

 

■病気腎移植、先進医療として実施へ 厚労省が官報告示 

 腎臓がんなどの患者から摘出した腎臓の病巣を取り除き、腎臓透析などで移植を希望している別の腎不全患者に移植する病気腎移植(修復腎移植)について、厚生労働省は、入院費など一部に保険が効く先進医療として実施することを1月31日付で官報に告示しました。

 東京西徳洲会病院(東京都昭島市)が申請し、昨年7月に条件付きで承認されました。提供者(ドナー)に不利益がないよう注意を払い、移植を受ける患者の公平性なども保つよう、外部の専門家が協議する検討委員会の体制を整えることが条件でした。

 病気腎移植は、同病院と、臨床研究として病気腎移植を実施してきた宇和島徳洲会病院(愛媛県宇和島市)が担当します。今後4年間で42例の移植を実施し、移植後5年間の生存率やがん発生の有無などを調べます。5例目までは、1例ごとに厚労省に報告します。また、治療がうまくいかなかった患者が4人出た場合は中止します。

 結果が良好だった場合は、他の病院でも実施される可能性があります。国内では腎臓透析患者が30万人以上おり、移植を希望する患者も1万人を超えます。ただ、提供数は不足しており、臓器提供者が現れるまで10年以上待つケースも多くなっています。

 2019年2月5日(火)

 

■介護機器の研究拠点が東京都内に開設される 自動運転の車いすの実証実験も

 自動運転の車いすなど、先端技術の活用で介護の現場の負担を抑えようという研究拠点が東京都内に開設されました。

 研究拠点は、介護事業を手掛ける「SOMPOホールディングス」が東京都品川区のビルに設け、国内外から介護用の機器を集めてメーカーと共同開発をしたり、安全性を確かめたりします。

 このうち、開発中の自動運転の車いすは、ベンチャー企業の「 WHILL(ウィル) 」(横浜市鶴見区)と三菱電機などが、自動運転システムの実証実験を始めました。事前に学習した施設内の地図情報と照合しながら、車いすは自動で利用者を迎えに行き、利用後は待機場所に戻ります。無人のまま、エレベーターで異なる階に移動することもできます。

 利用者は乗車中、手元のコントローラーで車いすの動きを簡単に操作できます。左右のひじ掛けの先端には、歩行者や壁など周囲の情報を認識するセンサーが搭載され、接触する危険を検知すると自動で停止。施設運営者にとっては、車いすを押したり回収したりする人手が不要になります。

 今回の車いすは先月、アメリカで開かれた世界最大級の家電見本市「CES」のアクセシビリティー部門で最優秀賞を受賞しました。イギリスやオランダの空港などと導入に向けた協議を進めているといい、2020年までの実用化を目指します。WHILLのCTO(最高技術責任者)の福岡宗明さんは、「誰もが使いたいと思う乗り物にしたい」と話している。

 また、研究拠点では、要介護者の入浴の際、5分に1度行っている見守りの負担を減らすため、浴槽に呼吸や脈を感知するセンサーを取り付けて、精度や安全性を検証するということです。

 国内の介護人材の不足は深刻さを増しており、厚生労働省は、今のままでは2025年度には55万人の人手が足りなくなると推計しています。

 SOMPOホールディングスでは、安全性が確認されたものから運営する介護施設に導入し、3年後までに、20%の業務の効率化を目指すとしています。

 研究拠点の片岡眞一郎所長は、「このままでは将来的に介護事業が立ちゆかなくなるという危機感を持っており、人間とテクノロジーが共生する介護の在り方を提示していきたい」と話しています。

 2019年2月5日(火)

 

■乳幼児の誤飲事故、たばこが2割で最多 1歳前後に集中

 乳幼児が家庭用品などを誤って飲み込んでしまう事故の原因は、たばこが2割以上を占めて最も多いことが、厚生労働省が実施した2017年度の調査でわかりました。たばこが誤飲の原因で最多となるのは2014年度から4年連続。

 全国8病院の小児科を誤飲事故で受診した640件を集計しました。原因と推定されたものは多い順に、たばこ147件(23%)、医薬品など92件(14%)、食品類72件(11%)、プラスチック製品63件(10%)などとなりました。

 たばこを誤飲した年齢をみると、ハイハイや捕まり立ちができる生後6~11カ月が87件、独力で室内を移動できる1歳~1歳5カ月が46件と、1歳前後に集中していました。たばこの状態は、未使用91件、吸い殻41件などでした。

 厚労省は、乳幼児の手の届く場所にたばこや灰皿を放置しないことや、飲み物と間違いやすい空き缶やペットボトルを灰皿代わりに使わないことなど、誤飲防止に向けて注意を呼び掛けています。

 2019年2月5日(火)

 

■子宮頸がんワクチン、根拠のないうわさが接種の妨げに 国際がん研究機関が声明

 「世界がんの日」に当たる4日、世界保健機関本部直轄の研究所「国際がん研究機関」は声明を発表し、「根拠のないうわさ」が世界で毎年30万人以上の女性が死亡する原因となっている子宮頸(けい)がんの減少を妨げており、主な発症原因であるヒトパピローマウイルスの感染を防止するワクチンについて、「有効性と安全性をはっきりと確認している」と訴えました。

 国際がん研究機関は声明で、「ヒトパピローマウイルスのワクチンに関する根拠のないうわさが子宮頸がんの予防に急務とされているワクチン接種の拡大を不必要に遅らせ、妨げている」と指摘。

 ヒトパピローマウイルスは主に性交渉を通じて感染し、がんによる女性の死亡原因として4番目に高い子宮頸がんは世界で2分に1人の割合で女性の命を奪っています。

 国際がん研究機関によると、2018年には世界で50万人以上の女性が子宮頸がんと診断されており、ワクチン接種を始めとする予防対策が強化されなければ、子宮頸がんによって年間最大46万人が死亡する状況が2040年まで続く可能性もあるといいます。

 世界保健機関は少女全員にワクチン接種を勧めているほか、成人女性にもがんリスク軽減のためスクリーニング検査などを推奨しています。ワクチンは9歳から14歳の間に接種するのが最も効果的だといいます。

 また、国によってはヒトパピローマウイルスの感染拡大を阻止するため、男子にワクチン接種を勧めているところもあります。

 ただ、専門家らがヒトパピローマウイルスのワクチンの安全性を繰り返し指摘しているにもかかわらず、ワクチンには慢性疲労症候群や多発性硬化症といった副作用の可能性があるとのうわさから、現実には多くの人が接種を控えています。

 2019年2月5日(火)

 

■特定の腸内細菌で高齢者の認知症リスク減 食事による予防法開発の糸口に

 腸内に特定の細菌が多い高齢者は、そうでない人と比べて認知症の発症リスクが10分の1と大幅に低い可能性があるとの研究結果を、国立長寿医療研究センター(愛知県大府市)や東北大、久留米大などの研究チームが1月30日、イギリスの科学誌電子版に発表しました。

 長寿医療研究センターの佐治直樹もの忘れセンター副センター長は、細菌の作る物質が脳に影響している可能性があるとみており、「食事などを通じた認知症の予防法の開発につながるかもしれない」と話しています。

 研究チームは、もの忘れ外来を受診した高齢者128人について、認知機能の検査とともに検便を実施。便から腸内細菌のDNAを取り出して分析し、認知症との関連を調べました。

 その結果、認知症の人はそうでない人と比べ、「バクテロイデス」という種類の細菌が少ないことが判明。バクテロイデスが腸内細菌の3割超を占めるグループは、認知症を発症していない人が多く、リスクは10分の1と見積もられました。一方で、種類のわからない細菌が多い人はリスクが18・5倍に上りました。

 人の腸には乳酸菌や大腸菌など、重さ1キログラム、1000種類以上の細菌が生息しています。年齢や食事といった生活習慣などによって種類が変化し、肥満や心疾患に関係するとの研究もあります。研究チームは今後、実際に腸内細菌が認知症発症の原因となるかどうかを詳細に調べます。

 2019年2月4日(月)

 

■風疹検査、企業が健康診断に新たに追加へ 数社はすでに実施を決定

 風疹の患者数が昨年、この10年余りで2番目に多くなったことを受けて、厚生労働省は一部の世代の男性について、ワクチン接種が必要か調べる抗体検査とワクチンの接種を原則無料で受けられる制度を始めることになり、企業の中には、従業員に行う健康診断の項目に風疹の検査を新たに加える動きが出ています。

 風疹は昨年、全国の患者数が2917人に上る流行となり、そのうちの6割以上は30歳代から50歳代の男性でした。

 厚労省は、子供の時にワクチンの定期接種の対象にされていなかった39歳から56歳の男性を対象に、ワクチン接種が必要か調べる抗体検査と、必要だと判断された場合のワクチン接種が原則無料で受けられる制度を始めます。

 そこで、企業が従業員に対して行う健康診断を請け負う団体は、今春の健康診断から抗体検査を新たに追加する提案をし、大手航空会社など数社がすでに実施を決め、検討中の企業も多数あるということです。

 企業で働く合わせて90万人の健康診断を請け負っている全日本労働福祉協会の堀田芳郎さんは、「働く男性を対象とするので、職場の健康診断に組み込むことが一番効率的だと思う」と話しています。

 産業医で、風疹の予防に詳しい筑波大学の堀愛助教は、「こうした取り組みはとても大切だ。抗体検査で風疹の免疫が不十分とわかればワクチン接種が必要となるので、検査結果とともに、ワクチンを必ず接種する仕組みや、接種のための時間を作る取り組みも進めてもらいたい」と指摘しています。

 昨年の風疹の患者は7月下旬から増え始め、1週間に報告される患者数は10月中旬の218人をピークに、9月上旬から12月下旬まで16週連続で100人を超えました。

 患者の7割は東京都や神奈川県など首都圏で確認されましたが、東海や近畿、九州など各地でも感染が広がりました。男女別では、男性の患者数が女性の4倍以上となり、患者全体の6割以上は30歳代から50歳代の男性でした。

 風疹は、妊娠20週ごろまでの女性が感染すると、赤ちゃんに障害が出る先天性風疹症候群となる恐れがあり、2012年から2013年にかけての大流行で先天性風疹症候群の子供が45人報告され、このうち11人が生後1年ほどの間に亡くなっています。

 これ以降、この数年は報告がありませんでしたが、今年1月、埼玉県の医療機関で男の子1人が先天性風疹症候群と診断されました。

 風疹は、今年に入ってからは1週間で100人を超える報告はありませんが、各地で患者の報告は依然として続いており、国立感染症研究所では、風疹の流行は数年にわたって続く傾向があることから、今年も流行する恐れがあるので十分に対策を検討してほしいとしています。

 2019年2月4日(月)

 

■頭痛・イライラなど月経前の不調、アプリで改善サポート 京大など開発

 多くの女性が抱える月経前症候群(PMS)の改善に役立つアプリを、京都大学大学院の研究チームとコニカミノルタビジネスイノベーションセンタージャパン(東京都港区)が開発しました。心と体の状態を記録して周期を知り、生活や仕事のペースを調節するといった使い方を想定。実用化するための資金を、ネット上のクラウドファンディングで3月まで募っています。

 アプリの名称は「Monicia(モニシア)」。スマホに入れて、頭痛、むくみ、イライラ、不安といったPMSの25症状の有無と強さを毎日、4段階で入力します。月経の日数や量、体温、便通、体重も記入できます。アプリは無料で、睡眠中におなか周りの温度を計り、データをアプリに送る専用の端末もあり、1万円前後で販売する予定です。

 研究チームの産婦人科専門医・江川美保京都大学医学研究科助教によると、月経の3~10日前から起きるPMSの症状は、身体的なもの、精神的なものなど200種類以上。日本医療政策機構が昨年、18~49歳の働く女性2000人に実施した調査では、症状が出たことのある人は66%。うち63%は何も対処していませんでした。

 「症状が多様で、治まると忘れるなどPMSだと気付かない人も多い。別の病気が潜んでいる場合もあり、記憶ではなく記録することが正確な診断に役立ちます」と江川さん。

 コニカミノルタの江尻綾美さんも、長く精神的な不調に苦しみ、症状を記録したことを機に婦人科を受診し、体調がよくなった経験からアプリの開発を思い立ちました。「女性たちに安心して気持ちのよい朝を迎えてほしい」と話しています。

 クラウドファンディングは専用サイト(https://readyfor.jp/projects/monicia)で3月10日午後11時まで実施し、目標額の500万円集まれば成立し、アプリをリリースします。出資額に応じて返礼があり、1万円の場合は温度計測の専用の端末などが受け取れます。

 2019年2月3日(日)

 

■破折を原因とする抜歯が11年で倍加 背景に歯ぎしり、かみ締め

 歯が割れたり折れたりする「破折」を原因とする抜歯が11年で倍加したことが、長野県伊那市の上伊那歯科医師会の調査で明らかになりました。背景にあるのは「歯ぎしり」や「かみ締め」の癖とみられ、同会は「特にかみ締めは無意識でしていることが多い。まず気付いて」と呼び掛けています。啓発の第一歩として近くポスター1000枚を作り、長野県内各所に貼り出します。

 調査期間は2016年6~8月の41日間。上伊那8市町村の56歯科医院で抜歯した患者のうち、調査に同意した804人からデータを集めました。

 集計結果を見ると、抜歯原因の1位は虫歯で29%、続いて歯周病が26%、親知らず24%、破折20%。2005年に8020推進財団が行った全国調査と比べ、顕著だったのは破折の多さです。11年前に11%だった破折が、20%とほぼ倍加していました。

 そもそも同会が調査をする切っ掛けとなったのは、破折の多さでした。常務理事の橋本実樹さんは「実際に診療をやっていて破折の多さに気が付いた」と話し、「『欠け』は修理が効きますが、破折は歯の根まで割れるので抜くしかありません」。

 調査の結果、破折に至る原因で多かったのは「くさび状欠損」でした。歯の根元がえぐれる現象で、橋本さんは「その原因がストレスなどによる歯ぎしりやかみ締めの癖だといわれています」としています。

 食事をかむ時にかかる力に比べ、歯ぎしりやかみ締めは約3倍の強い力がかかるといわれています。癖となって続けるうちに歯に負担がかかり、破折につながる構図。

 同会の広岡明美会長は、「歯ぎしり、かみ締めは皆さん無意識のうちにやっています。まずはそれに気付いてほしい」と話し、「特にかみ締めは歯ぎしりと違って音がしませんからね、わかりにくい」とも説明しています。

 広岡さんによると、かみ締めを見付ける「鍵」は口を閉じている時に歯が当たっているかどうかで、「基本は歯が当たらないんです。歯が当たるのは癖だから、そこに気が付くことが大事」と説明しています。

 調査結果は、論文「長野県上伊那地区における永久歯の抜歯原因調査」にし、2017年6月発行の学術誌に掲載しました。橋本さんは「どの歯医者さんも感じていたとは思うが、破折の増加がデータで出たのは初めて」と前置きし、「地方の医師会が調査をして学術論文を書くケースは少ないと思います」と話しています。

 2019年2月3日(日)

 

■血液検査でがん、認知症を新たにリスク診断 味の素、エーザイ、シスメックスなど

 血液検査で発見される病気の幅が広がっています。味の素は4月から、1回の血液検査でがん・脳卒中・心筋梗塞の3大疾病の罹患(りかん)リスクを評価するサービスを始めます。エーザイとシスメックスも年内に、認知症の診断技術を確立することを目指します。がんや認知症の患者が増える中、手軽なリスク診断が広がれば、患者の負担減や医療費削減につながりそうです。

 血液検査は健康診断で実施されることが多く、血中のタンパク質や酵素の量を測ることで貧血や肝臓の異常、糖尿病などの罹患リスクがわかります。血液には多くの物質が含まれており、解析技術が進歩したことで、幅広い病気との関連が発見されるようになってきました。

 味の素の新サービスは、血液に含まれる複数のアミノ酸のバランスを分析して、罹患リスクを評価します。病気ごとに特定のアミノ酸の濃度が変化することを利用し、さまざまながんに現在かかっている可能性、10年以内に脳卒中と心筋梗塞になるリスクを同時に評価します。一度に多くの疾患リスクを評価できる利便性を訴え、病院や健診センターを通じた提供を増やしていくといいます。

 がんは異常を感じてから検査しても、すでに重篤化している可能性があります。脳卒中と心筋梗塞も突然発症するため、手軽にリスクを把握できることには大きなメリットがあります。

 認知症も早期発見が難しく、医師が対面で診断する方法が一般的ながら、物忘れやてんかんの症状とも似ており、初期段階では見分けがつきかねます。原因タンパク質を陽電子放射断層撮影装置(PET)を使ったり脳脊髄液を採取したりして調べると、費用が高く体への負担も大きくなります。

 エーザイとシスメックスは、血液からアルツハイマー型認知症を早期発見する技術の研究を進めています。タンパク質の構造を細かく観察できるシスメックスの機器で、原因タンパク質の量や形状と症状の進行との相関関係を調べています。

 電子部品商社のバイテックホールディングスも2018年、大阪大学と組んで微量の血液から原因物質を検出する技術の開発を開始。3年後をめどに実用化を目指します。

 がんは国内で年に約100万人が発症し、約38万人が死亡します。認知症患者数は2025年に700万人と、高齢者の5人に1人が罹患すると予測されています。厚生労働省によると国内のがん治療費は2016年度に約3兆7000億円で、この10年で約1兆円増えた。早期発見で早く手を打てれば効果的な治療が可能になり、治療費の抑制も期待できます。

 2019年2月3日(日)

 

■マイクロプラスチックごみ、国内河川原因の海洋汚染も影響 理科大と愛媛大が調査

 日本近海を漂う大きさが5ミリ以下の微細なマイクロプラスチックの汚染源が、中国や韓国などアジア諸国から漂着したプラスチックごみだけでなく、国内の河川からのごみも影響しているとの調査結果を東京理科大学の二瓶泰雄教授(河川工学)と愛媛大学の研究チームがまとめました。日本近海はマイクロプラスチック密度が世界平均より高い「ホットスポット」といわれており、二瓶教授は身近な生活からプラスチックごみを減らす必要を訴えています。

 調査は2015~2018年、中部、近畿地方を除く北海道から沖縄県までの全国29河川の36地点でマイクロプラスチック密度を調べました。9割に当たる26河川の31地点からマイクロプラスチックが検出され、平均すると1立方メートル当たり2・53個で、日本近海の平均3・74個に近くなりました。レジ袋や発泡スチロールの容器などが原因とみられます。

 最大値は千葉県の大堀川の13・6個で、利根川は8・7個、埼玉県の荒川では4・6個を検出。観測地点の人口密度や市街地率が高いほどマイクロプラスチックの密度が高く、都市部での汚染が深刻でした。

 さらに、マイクロプラスチックの大きさの分布を調べると、河川と海でほとんど大きさの差がなく、海に流出する前に相当量のプラスチックが細かく砕けていることが判明しました。二瓶教授によると、熊本市内の河川は2016年の地震の影響で災害ごみが発生したため、数値が高かったとみられます。

 二瓶教授は、「これまではプラスチック製品が海に出てから小さくなったと想定されていたが、陸域でも微細化が進んでいることがわかった。ごみの削減など陸での対策の強化が必要だ」と指摘。「例えばバケツや洗濯ばさみなどのプラスチック製品を長時間屋外に置いていても劣化してマイクロプラスチックとなり、空気中を漂って河川の汚染につながる場合もある。生活の中で意図せずに排出していることもある」と注意を呼び掛けています。

 同種の調査は昨年5~9月、環境問題対策のベンチャー企業ピリカ(東京都渋谷区)も実施しました。関東、関西地方の河川11本26カ所中25カ所からマイクロプラスチックを検出。最大だった大阪市の大川では1立方メートル当たり19・8個に上っており、汚染の深刻さが浮き彫りとなっています。

 2019年2月2日(土)

 

■フライドチキンを1日1個、死亡リスク13%増加 アメリカで女性を対象に調査

 油で揚げた鶏肉や魚を定期的に食べる人はがんを除いた死亡リスクが高まるとの調査結果が、明らかになりました。調査は閉経後の女性を対象にアメリカで行われました。

 医学誌「BMJ」で発表された調査結果によれば、1日当たり1個以上のフライドチキンを食べる女性は全く揚げ物を食べない女性と比較すると、死亡リスクが13%高かったといいます。また、揚げた魚や貝を毎日食べる女性の場合は、死亡リスクが7%高かったといいます。

 報告書の執筆者によれば、揚げ物は世界で広く食べられているものの、長期的な健康に対する影響はほとんどわかっていないということで、こうした揚げ物と死亡率との関係に注目した調査はアメリカでは初めてだといいます。

 2017年のアメリカ、イギリス、イタリア、スペインの研究者らによる45歳から79歳の男女4400人を対象にした調査では、フライドポテトやポテトチップス、ハッシュブラウンズなど油で揚げたジャガイモ料理を毎週2〜3回食べている人は食べない人達に比べると、早期に死亡するリスクが2倍になるとの可能性が示唆されていました。

 今回の調査は、アメリカ各地40カ所の病院で、1993年から1998年にかけて、50歳から79歳の女性約10万7000人を対象に食生活を調べました。その後、平均18年にわたって追跡調査を行いました。調査に参加した女性は122種類の食料品の摂取量などについて、質問に答えました。教育水準や収入、エネルギー消費、食事の質など死亡率に関係する要素も考慮しました。

 ただし、執筆者によれば、世界各地で揚げ方が違ったり使う油が異なったりするため、今回の調査結果が世界的に適応されるわけではないといいます。

 2019年2月2日(土)

 

■イルカやクジラなど50頭の死体すべてからプラスチック イギリスの研究チーム発表

 海岸に打ち上げられたイルカやクジラなどの哺乳類50頭の死体を調べたところ、すべての体内から大きさが5ミリ以下のマイクロプラスチックが見付かったとする研究結果が、イギリスの研究チームから発表されました。

 イギリスのエクセター大学などの研究チームは、イギリスの海岸に打ち上げられた動物のうち、イルカやクジラ、アザラシなど10種類の哺乳類、合わせて50頭を調べた結果を1月31日、イギリスの科学雑誌に発表しました。

 それによりますと、全体からは合わせて273個のプラスチック片が見付かり、このうち9割以上の261個が5ミリ以下のマイクロプラスチックで、すべての個体の消化器から見付かったということです。

 プラスチック片のうち最も多かったのは、魚を取る網や衣服などに使われる化学繊維で全体の84%、残る16%は容器やペットボトルなどに使われるものでした。

 研究チームは死因にマイクロプラスチックがかかわっているかはわからないとした上で、「マイクロプラスチックそのものや、表面に付着した化学物質が、これらの動物にどのような影響を与えるのかはまだわかっておらず、さらに研究する必要がある」としています。

 2019年2月2日(土)

 

■睡眠を誘発する遺伝子「nemuri」を発見 アメリカの大学の日本人研究者ら

 睡眠を誘発するとともに、免疫力を高める働きがある新たな遺伝子をアメリカの大学の日本人研究者らの研究チームが発見し、日本語からとって「nemuri(ねむり)」と名付けられました。

 新たな遺伝子を発見したのは、アメリカのペンシルベニア大学ハワード・ヒューズ医学研究所でリサーチスペシャリストとして研究活動を行う戸田浩史博士らの研究チームで、アメリカの科学雑誌「サイエンス」に1日付けで発表しました。睡眠障害や免疫の働きの改善に役立つ可能性があるといいます。 

 研究チームはショウジョウバエの遺伝子約8000種類を分析し、過剰に働かせるとハエが長時間眠る遺伝子を見付けたということで、この遺伝子の働きを止めると、ハエが起きている時間は長くなったということです。

 また、この遺伝子が働くと、殺菌作用があるタンパク質が作られ、ハエは細菌に感染しても長く生きたということで、細菌から体を守る免疫にもかかわっているとしています。

 発見した新たな睡眠誘発遺伝子について、研究チームは日本語をそのままに「nemuri」と名付けました。

 研究チームでは、睡眠誘発遺伝子「nemuri」は、睡眠時間の不足や細菌への感染など、体にストレスがかかった時に働いて睡眠を引き起こしていると見なしています。

 睡眠誘発遺伝子「nemuri」そのものは人では見付かっていませんが、戸田博士は「一般的に生物は病気になると眠くなる。それは、今回のような遺伝子が働いているからかもしれない。人間でも風邪などになると眠くなり、眠れば治ることも多い。ほ乳類でも同じような遺伝子があるかを調べたい」と話しています。

 柳沢正史・筑波大学国際統合睡眠医科学研究機構長は、「膨大な種類の遺伝子を分析し、睡眠と免疫の関係を明らかにした画期的な研究だ」と話しています。

 2019年2月2日(土)

 

■慢性腎臓病でも大切なカロリー摂取、やせると高まる死亡率 東京医科歯科大が調査

 人工透析に至らない時期の慢性腎臓病(CKD)患者で、太っている人の方が緊急入院した時の院内死亡率が低いとする研究結果を、東京医科歯科大・茨城県腎臓疾患地域医療学寄付講座の頼建光(らいたてみつ)教授(腎臓内科)らがアメリカの科学誌「プロスワン」(電子版)に発表しました。

 人工透析になった腎臓病患者においては、体格とその後の経過で同様の傾向が研究で明らかになり「肥満パラドックス」と呼ばれていましたが、透析導入前の患者においては、病態の複雑さ多様さから研究が困難であり、これまで体重と死亡率の関係について統一した見解は得られていませんでした。

 2013~2015年度の3年間に、全国1700以上の病院が提供した診療記録のデータを活用。慢性腎臓病と診断された後、何らかの理由で緊急入院し、入院時の体格指数(BMI)がわかっている患者約2万6000人を選び、BMIの大小と入院時の感染症の有無で8グループに分けて100日後までの院内死亡率を比較しました。

 その結果、感染症の有無にはかかわらず、死亡率はやせているほど高く、太っているほど低くなっていました。感染症がなくBMIが25前後の人と比べて、最もやせているグループは院内死亡リスクが1・82倍になっていたといいます。ただし、糖尿病を合併したBM127以上の人の場合は、太っていても死亡率は低くなりませんでした。

 腎臓病では塩分やタンパク質などの制限が必要なことは知られていますが、同時に、健康な人と同程度のカロリー摂取も勧められることが診療ガイドラインにも盛り込まれています。

 頼教授は、「腎臓病になっても十分なカロリーを取って体重を維持し、やせないことの重要性を示す結果だ」と話しています。

 慢性腎臓病(CKD)は世界的に有病率が極めて高い、進行性の疾患で、日本にも1330万人もの罹患者がいます。進行すると、末期腎不全となり人工透析療法を必要とするだけでなく、心疾患やサルコペニアなどの重大な合併症を引き起こし、予後不良となることが知られています。

 2019年2月2日(土)

 

■インフルエンザの患者数、過去最多222万人に 全都道府県で警報レベル

 厚生労働省は1日、1月21~27日の1週間に報告されたインフルエンザの患者数が1医療機関当たり57・09人だったと発表しました。昨シーズンのピークだった54・33人を上回り、1999年の調査開始以来、最多。全都道府県で警報を出す基準(30人超)となりました。

 全国の医療機関をこの1週間に受診した患者数は推計約222万6000人で前週を約10万人上回りました。流行拡大が続く中、厚労省は最大限の警戒を呼び掛けています。

 今シーズンの患者数を押し上げている大きな要因は、A型の2タイプのウイルスが同時流行していることです。2009年に新型インフルエンザとして世界的に流行したA型の1つ「H1N1型」と「A香港型」です。直近5週間でのウイルス検出状況では、この2ウイルスでほぼ全部を占めます。

 厚労省によると、通常の年は流行原因となるウイルスは1タイプのことが多く、累計患者数が過去最多だった昨シーズンはA型とB型の2つが同時に流行したことが感染拡大につながりました。

 今シーズンは高齢者が生活している介護施設などで集団感染して死亡する事例が相次ぐほか、子供の感染が多くなっています。休校や学年閉鎖、学級閉鎖となった保育所、幼稚園、小中高は前週の6343施設から8928施設と大幅に増えました。年齢別では、70歳代以上が約6割を占めたほか、1~9歳が約2割に上りました。 

 全国約5000の定点医療機関から報告された患者数を都道府県別にみると、最多は埼玉県(84・09人)で、新潟県(77・70人)、千葉県(73・00人)、宮城県(69・81人)、神奈川県(67・94人)と続きました。31都道府県では前週の報告数を上回った一方で、16府県で減少しました。今シーズンの累計は推計約764万1000人となりました。

 厚労省は流行の拡大が続いているとして、こまめな手洗いや、せきやくしゃみが出た場合のマスクの着用のほか、発熱など体調の異変を感じたらできるだけ外出せずに休養したり、医療機関を受診したりするよう呼び掛けています。根本匠厚生労働相は1日の閣議後記者会見で、「具合が悪い場合は早めの受診をお願いしたい」と話しました。

 今年のインフルエンザについて、専門家は、高い熱が出る傾向があると指摘していて、主に子供で、40度程度の熱が出てけいれんや意味不明な言動などの症状が継続的に見られる場合や、41度以上の激しい高熱が出た場合はインフルエンザ脳症などが疑われることがあるので、迷わず、すぐにす医療機関を受診してほしいと呼び掛けています。

 2019年2月1日(金)

 

■緊急避妊薬を無許可販売の疑いで男を逮捕 警視庁が実態を調査

 フリーマーケットサイトを通じ外国製の緊急避妊薬「アフターピル」を無許可で販売したとして、警視庁生活環境課は1日までに医薬品医療機器法違反容疑で、仙台市太白区八木山本町の無職宝沢健資容疑者(46歳)を逮捕しました。

 容疑を認め、「目的はお金を得るため」「人助けという考えもあった」などと供述しているといいます。

 逮捕容疑は昨年7~8月、医薬品販売業などの許可を受けていないのに、群馬県の20歳代男性ら男女4人にインド製のアフターピル6箱を計約1万9000円で販売した疑い。

 生活環境課によると、宝沢容疑者はインターネット交流サイト(SNS)で「アフターピル 迅速発送」などと客を募り、フリーマーケットサイトに誘導。「腕時計」と称してアフターピルを1箱3000円前後で販売していました。2017年12月~2018年8月に計297回出品しており、約100万円を売り上げていたとみられます。 

 アフターピルは、避妊の失敗や望まない性行為の際に使うもので、性交後72時間以内に飲むことで妊娠の可能性を大幅に低くします。日本では2011年に承認されましたが、出血や頭痛など副作用の可能性があり、医師の処方せんが必要。女性からは「病院などに行くのは人目が気になる」という声も多く、SNS上での違法な売買が相次いでいます。中には、偽の成分のものも出回っていて、健康被害につながる恐れもあり、警視庁が詳しい実態を調べています。

 2019年2月1日(金)

 

■外国人患者の受け入れ拠点病院、382カ所整備へ 訪日客の急増に対応

 厚生労働省は観光などで来日する外国人の急増を受け、外国人患者に対応できる重症・軽症別の受け入れ拠点の医療機関を新年度中にも整備します。入院が必要な重症患者を受け入れる救急病院と、軽症患者を診る医療機関の2種類とし、少なくとも382カ所を設けます。通訳の配置などの財政支援を国は進めます。

 重症対応の受け入れ拠点は都道府県ごと、軽症対応の受け入れ拠点は全国に335ある医療提供の地域単位・2次医療圏ごとに1カ所以上とし、後者は診療所や歯科診療所でもよいとします。多言語対応が要件で、言語の種類や数は医療機関の状況に応じて選びます。医療通訳者の配置やテレビ電話通訳、翻訳機能のあるタブレット端末の利用など手段も問いません。

 受け入れ拠点は関係者が参加する協議会の意見を踏まえて、都道府県が決めます。厚労省は2月にも都道府県に通知を出して依頼する予定。今秋のラグビーワールドカップ日本大会や来年の東京オリンピック・パラリンピックの開催地、京都など外国人旅行者の多い地域には、速やかな選定を求めます。

 ほとんどの医療機関では多言語に対応できていないため、厚労省は新年度、財政支援を手厚くする方針。タブレット端末の配備や医療コーディネーターの養成のほか、一部の受け入れ拠点には医療通訳者の配置も助成します。また、希少な言語に対応できる遠隔通訳も試みるといいます。

 救急病院などを対象とした厚労省の調査(回答数1710)によると、2015年度に外国人患者を受け入れた施設は外来で80%、入院で59%。900施設は日本語での意思疎通が難しい事例を経験していました。

 外国人旅行者は2018年に、初めて3000万人を突破しました。今年4月には、外国人労働者の受け入れを拡大する新たな在留資格が導入され、外国人患者はさらに増えるとみられています。こうした状況を受け、政府は昨年6月、受け入れ拠点を整備する方針を決め、厚労省の「訪日外国人旅行者等に対する医療の提供に関する検討会」で条件などを検討していました。

 2019年2月1日(金)

 

■埼玉県で先天性風疹症候群の子供を確認 国内での確認は2014年以来

 妊娠中の母親が風疹ウイルスに感染することで胎児も感染し障害が起きる「先天性風疹症候群」の子供が埼玉県で1人確認されたことが、31日にわかりました。先天性風疹症候群の子供が国内で確認されたのは、2014年以来。

 厚生労働省や埼玉県によりますと、1月21~27日の週に、埼玉県の医療機関で男児1人が先天性風疹症候群と診断されたということです。男児の容体を明らかにされていませんが、男児の母親には風疹ワクチンの接種歴がありました。

 先天性風疹症候群は、母親が妊娠中に風疹にかかることで、赤ちゃんの目や耳、心臓などに障害が出るものです。昨年、全国から報告された風疹の患者数は2917人と、現在の方法で統計を取り始めた10年余りで2番目に多くなっており、先天性風疹症候群の発生が懸念されていました。

 先天性風疹症候群の子供が確認されたのは、患者数が1万人を超えた2013年の大流行に伴う患者以来、初めてです。

 2013年から2014年にかけての流行では、先天性風疹症候群の子供が45人確認され、このうち11人が生後1年ほどの間に亡くなっています。

 国立感染症研究所感染症疫学センターの大石和徳センター長は、「去年の夏以降、首都圏を中心に風疹の患者が増加していて、今回、埼玉県で確認された先天性風疹症候群は、去年からの流行に関係していると思う」と指摘しました。

 その上で、「今後、妊娠する可能性がある人は必ず、ワクチン接種をしてほしい。また妊婦の人は、妊娠がわかった時点で、パートナーなど家族と一緒に速やかに抗体検査を受けてほしい。仮に抗体が不十分であることがわかった場合、妊婦はワクチンを接種することができないので、妊娠20週くらいまでは人込みを避けるなど予防を徹底し、周囲にいる家族もワクチンを接種するなどして、妊婦への感染を防いでもらいたい」と注意を呼び掛けています。

 2019年1月31日(木)

 

■名古屋刑務所で300人がインフルエンザ感染 愛知県の患者数は全国1位

 愛知県みよし市にある名古屋刑務所でインフルエンザの感染が広がり、これまでに受刑者と職員、合わせて300人が感染していたことがわかりました。

 名古屋刑務所によりますと、12月20日ごろからインフルエンザの感染が広がり始め、1月31日までに受刑者のうち205人が感染したということです。これはすべての受刑者1709人の約12%に相当し、受刑者の感染者数は記録の残っている過去5年間で最も多いとしています。

 また、刑務所の職員も21%に相当する95人が感染したということで、受刑者と合わせたこれまでの感染者数は300人に上っています。

 このため、名古屋刑務所では、1月26日から受刑者全員の体温測定を始め、28日からはほとんどの工場を停止させて、炊事や洗濯などを除く刑務作業を中止し、居室で自習させる対応をとっています。

 名古屋刑務所によりますと、患者が急増したのは1月24日ごろで、「すでに発症のピークは過ぎたとみられる」としています。今も感染している受刑者の数は100人で、「病状が重い感染者はいない」としています。

 名古屋刑務所は、「感染源は不明だが、1人が感染して受刑者や職員の間で広がったのでは」とし、「早期に収束させるためにあらゆる対応をとっており、健康管理には万全を期していきたい」と話しています。

 愛知県では、1月14~20日までの1週間に報告された1医療機関当たりのインフルエンザの患者数が統計を取り始めて以降、最多の81・86人となって、全国でも最も多くなっており、インフルエンザ警報を出して予防の徹底を呼び掛けています。

 2019年1月31日(木)

 

■東京都のインフルエンザ患者数が過去最多 関東4県でも過去最多に

 東京都内ではインフルエンザの患者の増加が続き、1月27日までの1週間で、1医療機関当たりの患者数がこれまでで最も多くなったことがわかりました。東京都はこまめな手洗いなどの対策の徹底に加えて、感染が疑われる場合は医療機関を早めに受診するよう呼び掛けています。

 東京都によりますと、1月21~27日までの1週間に都内の415の医療機関から報告されたインフルエンザの患者数は、1つの医療機関当たり64・18人となり、前の週より10人以上増えました。

 これは、統計を取り始めた1999年以降では、昨年1月の54・10人を上回ってこれまでで最も多くなりました。これまでに検出されたウイルスを分析したところ、10年前に「新型インフルエンザ」として世界的に流行した「H1N1型」が全体の約70%を占めているということです。

 東京都はインフルエンザの流行を受けて、すでに1月17日に「流行警報」を発表しており、マスクの着用や手洗いの励行、適度な湿度の保持、十分な休養とバランスの取れた栄養摂取などを呼び掛けています。

 このほか関東地方では、1医療機関当たりのインフルエンザの患者数が埼玉県内で84・09人、千葉県内で73人、栃木県内で67人となり、いずれも統計を取り始めた1999年以降、2週連続で過去最多を更新したほか、神奈川県内でも67・94人と、1999年以降、過去最多になりました。

 2019年1月31日(木)

 

■自治医科大、難病「AADC欠損症」を遺伝子治療で改善 寝たきりから歩行器利用可も

 自治医科大学は23日、生後寝たきりになる子供の難病「芳香族Lアミノ酸脱炭酸酵素(AADC)欠損症」の患者6人に遺伝子治療を実施し、全員で症状が改善する効果があったと発表しました。2019年にも実用化に向けて厚生労働省へ医薬品の承認を申請します。

 研究成果をイギリスの科学誌「ブレイン」(電子版)に掲載しました。

 AADC欠損症は、遺伝子異常で脳内の情報伝達物質が作れなくなります。運動機能がほぼ失われ、患者の多くは一生涯を寝たきりで過ごします。世界で140人ほどの患者がいると見なされています。

 遺伝子治療は2015~2017年にかけて、国内で診断された4歳~19歳の6人の患者で試みました。情報伝達物質の合成に必要なAADCの遺伝子をウイルスに組み込み、脳内の運動を調節する部位に注射。

 2年間にわたって経過をみたところ、重症の5人は手を動かしたり首がすわった状態を維持したりできるようになり、うち3人は自力で歩行器歩行や背はい移動が可能となりました。歩行に手助けが必要だった1人も自力で走り、自転車やブランコに乗ることも可能となるまでに回復し、話す能力も改善しました。治療による大きな副作用は発生しませんでした。

 自治医科大は2018年から、新たに2人の患者にも同様の遺伝子治療を続けており、順調に経過しています。AADC欠損症と診断されている患者は他に日本に2人おり、また、海外からの治療希望者も10人以上いるといいます。

 2019年1月30日(水)

 

■武田薬品、デング熱ワクチンの販売承認を申請へ 2020年前半にも中南米などで

 武田薬品工業が開発中のデング熱ワクチン「TAK―003」について、販売承認を2020年前半にも申請する見通しであることが、明らかになりました。中南米やアジアで実施していた臨床試験(治験)の最終段階で、予防効果を確認しました。

 デング熱ワクチンはすでにフランスの製薬大手サノフィが手掛けていますが、武田薬品の製品は対象とする年齢層が広く、より多くの人に使える可能性があります。

 武田薬品はまず中南米など流行地域でワクチンの販売承認を申請し、その後アメリカやヨーロッパに広げる方針。このほど最終治験の初回解析を実施し、全4種のデング熱ウイルスに対して予防効果を確認しました。安全性も大きな懸念はありませんでした。

 サノフィの既存製品の接種対象は9歳以上ですが、今回の治験は4歳以上を対象に実施し、承認されれば対象者数は広がります。販売承認を見据え、1億ユーロ(約125億円)以上を投じてドイツで製造設備の準備を進めています。

 デング熱はネッタイシマカやヒトスジシマカなどを媒介としてデングウイルスに感染することで発症し、発熱や発疹などの症状が現れます。世界で年に約3億9000万人が感染し、うち2万人ほどが死亡しています。国境を越えた人の移動が活発化していることで先進国でも発症が増え、日本でも2014年に69年ぶりの国内感染が確認されました。

 2019年1月30日(水)

 

■旧優生保護法下の不妊手術で大阪の夫婦が提訴 知らない間に手術を受ける

 旧優生保護法(1948~1996年)の下で不妊手術を強制され、憲法13条が保障する幸福追求権などを侵害されたとして、大阪府内の聴覚障害のある70歳代の夫婦が30日、国に計2200万円の損害賠償を求める訴訟を大阪地裁に起こしました。

 訴状などによると、夫婦は1970年に結婚、2人とも両耳が全く聞こえず聴力障害2級と認定されています。妻は妊娠9カ月だった1974年5月、病院で胎児に異常があると言われて帝王切開で出産し、数日後に子供は亡くなったと聞かされました。その後、子供ができないことを不審に思って母親に相談したところ、「赤ちゃんはもうできない」と告げられ、夫婦とも知らない間に不妊手術をされたことを知ったといいます。出産と同時に行われたとみられます。

 夫婦は、同意なく妻が子供を産めない体にされ、精神的苦痛を負ったと主張し、国に慰謝料などの支払いを求めています。

 夫婦は提訴後に大阪市内で記者会見し、「不妊手術を受けたと後で気付いて怒りの気持ちが収まらなかった。今も子を産み育てたかったという気持ちがある。国には謝罪をしてほしい」と手話で訴えました。

 旧優生保護法を巡っては、全国7カ所で19人が裁判を起こしています。

 夫婦の代理人を務める旧優生保護法被害訴訟大阪弁護団は土日を除く午後1~4時、大阪弁護士会の高齢者・障害者総合支援センター(06・6364・1251)で相談を受け付けています。

 2019年1月30日(水)

 

■高齢者の活力低下状態を測定する機器を開発 健康機器メーカーのタニタ

 健康機器メーカーのタニタ(東京都板橋区)は29日、高齢化に伴って心身の活力が低下した状態を指す「フレイル」の予防につながる体組成計などを発売すると発表しました。カード型の活動量計や脂肪燃焼モニターも商品化し、高齢化が進む日本で健康寿命を延ばすことに力を入れます。

 フレイル予防の体組成計「MC―780A―N」は、2月1日に発売します。フレイルが悪化すると、寝たきりや要介護状態に陥る可能性があり、健康を維持する目安として、5年前に日本老年医学会が提唱しました。

 体組成計は体重計のような機器で、高齢者が乗って備え付けの持ち手を握ることで、足の裏や手のひらから微弱な電流を流す仕組みになっており、体重や体脂肪率などとともに、医師がフレイルの診断の指標とするSMI(骨格筋指数)などを測れます。SMIは手や足を動かすための筋肉の量と身長から割り出し、高齢者などが日常生活でどれだけ動けているかなどを示すとされます。販売価格は、税別で70万円。医療機関や健診施設での導入を見込み、初年度に100台の販売を目指すといいます。

 同時に発表した「脂肪燃焼モニター」は、脂肪が消費分解される際に発生する物質のアセトンを測れます。ストローに息を約4秒吹き込むと濃度を計測し、リアルタイムで脂肪の消費を確認できます。フィットネスクラブなどでの需要を想定し、2020年度中にも発売する方針。

 キャッシュカードと同じ大きさで、センサーを内蔵し消費エネルギー量や歩数などを測れる「カード型活動量計」も開発しました。社員証やポイントカードなどと一体化できるのが特徴です。販売価格は税別で1万円以下を予定しており、2019年10月ごろの発売を目指します。

 タニタ開発部生体科学課の深山知子さんは記者発表会で、「超高齢社会になって健康寿命が大事になっている。多くのお年寄りが健康に老後を過ごせるようにつなげていきたい」と話していました。

 2019年1月30日(水)

 

■慶応大、がんと闘う11種類の腸内細菌を発見 治療薬との併用で効果

 がん細胞への攻撃力を高める11種類の腸内細菌を見付けたと、慶応大の本田賢也教授、田之上大(たけし)専任講師(腸内細菌学)らの研究チームが発表しました。

 これらの腸内細菌をがん治療薬と一緒にマウスに投与すると、腫瘍の増殖を大幅に抑えられました。新たながん治療法につながる可能性がある成果で、論文がイギリスの科学誌「ネイチャー」に掲載されました。

 研究チームは、「CD8T細胞」という免疫細胞を活性化する極めて希少な11種類の腸内細菌を、健康な人の便から見付けました。

 これらの細菌のカクテルを、昨年ノーベル医学・生理学賞を受賞した本庶佑(ほんじょたすく)・京都大特別教授の発見から生まれたがん治療薬「免疫チェックポイント阻害薬」とともに、皮下に腫瘍を植え付けたマウスに経口投与しました。その結果、薬だけで治療したマウスの腫瘍に比べ、腫瘍の大きさは半分以下に抑えられたといいます。

 投与した腸内細菌が免疫細胞のCD8T細胞を活性化させ、治療効果を高めたとみられます。

 本田教授らは、11種類の腸内細菌の特許を取得。アメリカの新興企業が、これらの細菌を使ったがん治療の臨床試験をアメリカ国内で計画しているといいます。

 腸内細菌に詳しい大野博司・理化学研究所チームリーダーは、「腸内にはさまざまな種類の免疫細胞が存在し、腸内細菌と相互作用することが知られている。今回の成果はその一端を解明したもので、がん治療での臨床応用も期待される」と話しています。

 2019年1月29日(火

 

■日本人の白血球は11類型で発病や体格に影響 大阪大などが解析

 日本人の白血球の型は11のグループに大別でき、型の違いによって、がんや心疾患、糖尿病などの発症や体格に差が出ることがわかったと、大阪大や国立遺伝学研究所などの研究チームが発表しました。論文が29日、イギリスの科学誌「ネイチャー・ジェネティクス」(電子版)に掲載されました。

 一般的な血液型(A、B、O、AB型)は、赤血球の表面にある物質の種類によって4つに分類されます。これに対し、免疫細胞である白血球は、表面にあるHLA(ヒト白血球抗原)という物質にかかわる遺伝子の数が多く、白血球の型の詳細は不明でした。

 研究チームは、日本人1120人のゲノム(遺伝情報)を解析し、HLAにかかわる遺伝子が33個あることを突き止めまさいた。各遺伝子の配列は一人ひとり微妙に違い、配列が近いものをグループ分けすると、大きく11に分類できました。

 さらに、日本人約17万人分のゲノムや病気、体格などのデータベースと照らし合わせた結果、白血球の型によって、アレルギー疾患や肺がん、肝臓がんといった病気のかかりやすさなど、計52項目で違いがみられることがわかりました。中には心筋梗塞(こうそく)の発症や身長、肥満など、一見、免疫とは関係がなさそうな項目も含まれていました。

 研究チームの岡田随象(ゆきのり)・阪大教授は、「心筋梗塞や体格などにも違いが出たのは意外だった。さらに研究を進めて理由を調べ、医療に役立てたい」と話しています。

 2019年1月29日(火

 

■旧優生保護法下の強制不妊手術で新たに提訴 熊本県と静岡県の女性

 旧優生保護法(1948~1996年)に基づき強制不妊手術などを受けたとして熊本県と静岡県の女性2人が29日、国に損害賠償を求める訴えを起こしました。熊本県の女性は1人目に産んだ子供に障害があることを理由に手術を受けたと訴えており、一連の裁判の原告はこれで17人となりました。

 熊本県の72歳の女性は、長女に発達の遅れなどがあり、20歳代のころに2人目の子供を妊娠した時、医師から中絶手術と不妊手術を勧められたということです。女性本人には障害はありませんでしたが、手術に同意せざるを得なかったということで、「国が推進しなければ医師が手術を勧めることもなかった」と訴えています。

 弁護団によりますと、家族の障害を理由に手術を受けたとして訴えを起こすのは全国で初めてだということです。

 また、静岡県に住む聴覚障害のある女性は、49年前の1970年に障害を理由に不妊手術を強制されたと訴えています。

 2人は国に対し、それぞれ慰謝料など3300万円を支払うよう求めています。

 弁護団によりますと、旧優生保護法を巡る一連の裁判の原告はこれで17人となり、30日には大阪府に住み聴覚障害のある70歳代の夫婦も訴えを起こす予定です。

 厚生労働省は29日の提訴について、「訴状が届いていないのでコメントは差し控えたい」としています。

 熊本県の女性の弁護団は提訴の後、熊本市中央区で会見を開き、原告の女性のコメントを公表しました。それによりますと、女性は「年を経るほどに、小さい子を見ると後悔がわき上がってきます。若かった当時、不妊手術を勧める理由などの疑問を医師にぶつける強さがなぜなかったのか、自分を責め続けています」としています。その上で、「国の方針がなければ、医師が私に手術を勧めることもなかったのではないかと思います。国に私の人生を返してもらいたいという気持ちです」と訴えています。

 弁護団の松村尚美弁護士は、「原告の女性は、障害者が生まれると家族全体がさげすまれて孤立するような社会で生きてきた。社会に染み渡った考え方がいかに彼女を追い詰めたか。まさに彼女こそ優生思想の犠牲者だと考えている」と話していました。

 静岡県の女性の弁護団も提訴の後、会見を開き、大橋昭夫団長は「手術を強制された女性は“子供をもうけることができなかったことが悔しい”と話している。女性が回復できない被害を受けたことを法廷で追及する」と述べました。

 2019年1月29日(火

 

■難病医療費助成から外れた「軽症」患者の通院回数減 半年で5・3回から3・6回へ

 難病患者への医療費助成制度の変更に伴い、軽症の患者ら約15万人が制度対象から外れた問題で、対象外となった患者は半年間の平均通院回数が5・3回から3・6回に減ったことが、厚生労働省研究班の調査で明らかになりました。軽症者の受診頻度の変化がデータで示されたのは初めて。

 費用負担増から受診を控えた可能性を指摘する声もあり、研究班は軽症者を把握できる制度見直しの必要性を訴えています。

 2015年の難病法施行で軽症者は原則として医療費助成の対象外となりましたが、経過措置で2017年末までは助成を受けられました。研究班は8県の協力を得て、患者約3000人の経過措置の前と後を追跡調査しました。

 その結果、経過措置後も認定が継続され医療費助成が受けられた1795人は2017年の通院頻度が半年で5・7回、2018年は5・2回だったのに対し、医療費助成対象外となった204人では2017年の5・3回から2018年は3・6回と大きく減りました。

 困難に感じていることを聞くと、「制度の相談先がない」「難病相談・支援センターの利用」を挙げた医療助成対象外の患者の割合が認定患者を上回り、制度から切り離されることへの不安の強さをうかがわせました。

 研究班の代表を務める小森哲夫・国立病院機構箱根病院長は、「医療費助成対象外の患者の8割超は経過措置後の病状が『軽快・不変』と答えており、病状が安定し通院頻度が減ったなら喜ばしい。だが、これが続くとは限らず、悪化した時にすぐに支援につなげるため、軽症者の登録制度などの検討が必要だ」と指摘しています。

 患者団体「日本難病・疾病団体協議会(JPA)」の森幸子代表理事は、「受診を抑制している患者もいるとみられ、重症化が心配だ。制度から外れることで、情報が断たれてしまう不安が出るのも当然だ」と話し、2019年度に本格化する難病法の見直し議論で軽症者対応の再考を求める考えを示しました。

 2019年1月29日(火

 

■最も危険度が高い感染症、防御に挑む 長崎大、国内初の本格拠点を着工

 長崎大は26日、感染症研究拠点「BSL(バイオセーフティー・レベル)4施設」の起工式を、長崎市の同大坂本キャンパスで開きました。28日に建設工事に着手し、2021年7月に完成予定で、2022年度以降の稼働を目指しています。

 BSL4施設は、世界保健機関(WHO)が設けた4段階ある病原体の危険度のうち、最も危険度が高いエボラ出血熱などの病原体の研究ができます。完成すれば、国立感染症研究所村山庁舎(東京都武蔵村山市)に次いで、国内2カ所目のBSL4施設となり、海外に後れをとっていたワクチンや治療薬の研究が本格的に始まり、国内に侵入する感染症の防御力向上につながることになります。

 長崎大によると、施設は鉄筋コンクリート5階建てで、延べ床面積約5300平方メートル。26日は坂本キャンパスにある整備地で、作業員が資材を運んでいました。地盤を補強するために鉄骨を地中に埋め込む作業などを実施後、建物本体の工事に取り掛かります。

 坂本キャンパスの外では、近隣住民ら約40人が集まり、「長崎にBSL4はいらない」と書かれた横断幕を掲げて建設反対を訴えました。一部の住民は、施設の安全性が担保されていないとして、建設差し止めを求める仮処分を長崎地裁に申し立てています。

 2019年1月28日(月)

 

■インフルエンザで1月に入り6人死亡 長野県内

 長野県松本市の病院でインフルエンザの集団感染が起きて80歳代の入院患者2人が死亡するなど、1月に入って長野県内の医療機関や福祉施設で合わせて6人が死亡していたことがわかりました。長野県は、感染防止を徹底するよう改めて呼び掛けています。

 このうち松本市の松本協立病院では1月11日以降、入院患者19人と職員35人の合わせて54人がA型インフルエンザと診断され、1月25日に80歳代の入院患者の女性が死亡し、28日未明に80歳代の入院患者の男性が死亡しました。ほかの職員と入院患者の多くは快方に向かっているものの、治療中の人もいるといいます。

 集団感染の報告を25日に受けた長野県松本保健所が立ち入り調査して、感染経路などを調べています。

 松本協立病院の佐野達夫病院長は記者会見で、「亡くなった患者様のご冥福(めいふく)をお祈りするとともに、他の患者様やご家族にご心配をかけていることをおわび申し上げます」と述べました。

 長野県によりますと、別の医療機関でインフルエンザと診断された入院患者1人が死亡したほか、高齢者や障害者が入所する3つの福祉施設で集団感染が起きて3人が死亡しており、インフルエンザと診断された後、1月に入って合わせて6人が死亡したということです。

 長野県はインフルエンザの感染拡大を防ぐため、医療機関や福祉施設に対し、手洗いの徹底や、患者や入所者が頻繁に触れるドアノブの消毒などを徹底するよう改めて呼び掛けています。

 2019年1月28日(月)

 

■数本の毛髪で半年前まで逆上ってストレス診断 滋賀大学の研究チームが開発

 日常生活の中でため込んだ慢性的なストレスの度合いを、数本の髪の毛から測定する新たな技術を滋賀大学の研究チームが開発しました。社会全体で働き方改革への関心が高まる中、これまでより簡単に慢性的なストレスを診断できるということです。

 慢性的なストレスの新たな測定技術を開発したのは、滋賀大学教育学部の大平雅子准教授らの研究チームです。

 研究チームによりますと、人がストレスを感じると体内にホルモンが分泌され、髪の毛にはこのホルモンをため込む性質があることに着目し、独自に配合した薬品で髪の毛からホルモンを抽出し、その濃度を調べることでストレスの度合いを測定する技術を開発しました。

 髪の毛は一般的に1カ月に1センチ程度伸びるとされ、毛根から何センチの部分を調べるかによって、ストレスが積み重なった時期やその程度を、最長で半年前まで逆上って測定できるということです。また、数本程度の髪の毛があれば測定可能で、社会全体で働き方改革への関心が高まる中、これまでより簡単に慢性的なストレスを診断できるということです。

 研究チームでは、従業員へのストレスチェックが義務付けられている企業に活用してもらおうと今月、ベンチャー企業を立ち上げました。髪の毛を使ったストレスチェックをビジネス化するのは、国内では例がないということです。

 ベンチャー企業の社長に就任した研究チームの五十棲(いそずみ)計さんは、「自分ではストレスをため込んでいると気付いていない人にも客観的な数値で示すことができます。ストレスがない職場づくりに貢献していきたい」と話しています。

 生理学的にストレスの度合いを調べる手軽な方法としては、だ液からホルモンを抽出する方法が知られています。ただ、測定を行う直前に受けたストレスによってホルモンの濃度に大きな影響が出るため、長期にわたる慢性的なストレスを調べるには不向きとされています。

 これに対し、髪の毛から抽出する方法は最大で半年ほど前まで逆上ってストレスの度合いを測定することが可能ですが、これまでの技術では数十本の髪の毛を必要としていました。研究チームでは、より手軽に測定を行えるようにするため、ホルモンを抽出する薬品の配合を工夫した結果、数本の髪の毛だけで測定できる技術を確立しました。

 測定の手順としては、まず、毛根付近から切り取った髪の毛を1センチほどの単位で細かく切り分けます。髪の毛は1カ月に1センチほど伸びるとされているため、例えば2カ月前のストレスを調べたい場合は毛根から2センチの当たりを調べます。

 切り分けた髪の毛を薬品に浸し、ストレスにかかわるホルモンを抽出した後、その濃度を分析。ホルモンはストレスの度合いが強ければ強いほど濃度が高まることから、どの時期にどの程度のストレスが積み重なったかを客観的な数値で示すことができるということです。

 今回の研究を中心的に行っている大平准教授は28日の記者会見で、「髪の毛を使ったストレス研究は欧米で技術的に確立していたが、集団の健康状態をとらえるためのものだった。一人ひとりの状態に合わせてケアしようという今回の取り組みは国内では初めてとなる」と話しています。

 また、ベンチャー企業の社長に就任した五十棲さんは、すでにこの技術について企業からの問い合わせがきていることを明らかにした上で、「測定の正確性を高め、3年後までには技術を確立して企業に導入してもらえるようにしたい。1人3000円から5000円で診断できるようにして、5年後までに年間10億円の売り上げを目標にしていきたい」と話しています。

 2019年1月28日(月)

 

■厚労省、「頭が良くなる薬」の個人輸入禁止に 海外で健康被害報告も

 「頭が良くなる」「集中力が高まる」などの触れ込みで海外で販売されている「スマートドラッグ」について、厚生労働省は1月から、25品目を対象に、医師の処方箋(せん)や指示がなければ個人輸入を認めない規制措置に踏み切りました。海外での報告を踏まえ、健康被害や乱用の恐れがあると判断しました。

 厚労省は、「医師の処方箋がない薬を安易に使用するのは危険」と注意を呼び掛けています。

 スマートドラッグには明確な定義はないものの、本来、注意欠陥・多動性障害(ADHD)やてんかん、睡眠障害、うつ病などの治療に使われる医薬品を指します。厚労省によると、これらの薬には脳の血流を増やす成分などが含まれており、個人輸入代行業者が本来の用法とは異なり、集中力向上や学習能力の改善などを宣伝して販売しています。

 てんかん治療薬などを日本国内で入手するには医師の処方箋が必要なため、通常は本来の用法以外に流用することは難しくなっています。しかし、海外では脳の機能を高めるなどの効果をうたってインターネットで広く流通しており、日本語のサイトも多いことから、個人輸入して使われているとみられます。日本への医薬品の個人輸入は、1~2カ月分の少量であれば、医師の処方箋や指示は必要ありません。

 一方で、こうしたスマートドラッグの服用により、海外では吐き気や頭痛、倦怠(けんたい)感、意識障害などの副作用が報告されています。日本国内でも、国民生活センターには「子供のために頭が良くなるサプリを購入し、自分で試したら吐き気などで苦しくなった」といった相談も寄せられており、受験生などの若者が安易に使用することが懸念されています。

 こうした状況を受け、厚労省は今回、インターネット上で「脳の機能を高める」として販売されていた約60品目のうち副作用情報などが確認された25品目について、少量であっても、個人輸入時には医師の処方箋や指示を必要とする措置に切り替えました。医師がスマートドラッグとしての使用のために処方箋を書くことは考えにくいため、25品目の個人輸入は事実上、禁止となります。

 厚労省監視指導・麻薬対策課の担当者は、「今後も調査を続け、健康被害や乱用の危険があると判断した場合は規制対象を拡大する」としています。

 インターネットで個人輸入した医薬品を巡っては、スマートドラッグ以外でもさまざまな被害が報告されています。厚労省は、個人輸入の規制をさらに強化するため、罰則規定や麻薬取締官らによる捜査権限を盛り込んだ医薬品医療機器法(薬機法)の改正案を通常国会に提出する予定です。

 2019年1月27日(日)

 

■男性不妊治療、助成倍増し初回30万円に 2019年度から、女性と同水準に

 厚生労働省は23日までに、不妊治療を受ける男性への経済的支援を2019年度から拡充する方針を固めました。不妊治療で夫側に原因があり、精子を採取する手術を受けた場合について、治療1回につき15万円の助成を初回に限って30万円に倍増し、女性への経済的支援と同水準にします。

 不妊治療を受ける夫婦は年々増えているため、経済的な負担を軽減し、子供を持つ希望がかなえられるように後押しします。2019年度予算案に関連予算164億円を計上しました。

 対象は、体外受精と顕微授精。体外受精や顕微授精は健康保険が適用されず、1回の治療に50万円以上かかるケースもあります。これまでは夫婦ともに治療1回当たり最大15万円を助成し、妻側の初回治療に限って助成額を30万円に増額していました。ただ不妊の原因の半分は男性にあるとされることから、夫側も初回の助成額を30万円に引き上げます。

 こうした不妊治療への助成は、夫婦合算の所得が年730万円未満の人が対象になります。妻側は治療を始めた時に40歳未満なら6回、40歳以上43歳未満なら3回まで助成を受けられます。男性の年齢制限はありません。2016年度は男女合わせて14万1890件の助成がありました。

 晩婚化とともに不妊治療の需要は高まっています。日本産科婦人科学会によると、2016年には最多となる5万4110人の子供が体外受精で生まれました。厚生労働省の統計では2016年の総出生数は97万6978人で、18人に1人が体外受精で生まれた計算になります。

 事実婚のカップルは厚労省の助成を受けられませんが、東京都など一部の自治体で独自に支援しているところもあります。

 2019年1月27日(日)

 

■風疹の無料予防接種と抗体検査、まず39~46歳対象 4月以降に受診券を送付

 昨年首都圏を中心に風疹(三日ばしか)が流行したことを受け、厚生労働省は新年度、子供のころに定期接種を受けていない39~46歳の男性に抗体検査を促すことを決めました。4月以降に受診券を配り、検査で免疫がないことがわかれば、ワクチン接種を無料で受けられるようにします。

 厚労省は昨年12月、風疹の免疫の有無を調べる抗体検査を受け、免疫がないと判明した39~56歳の男性を3年間、原則無料の定期ワクチン接種の対象にすることにしました。ただ、対象者は約1600万人に上り、うち免疫がないのは2割程度と推計されています。接種希望者が集中すると、ワクチンの供給不足になる恐れがあります。

 このため厚労省では、特に患者が多い39~46歳の男性に対象を絞って、まず抗体検査を受けてもらうことにしました。4月以降に、市町村から抗体検査の受診券が送られます。対象者は、1972年4月2日~1979年4月1日生まれの男性。ただし、47~56歳の男性でも、市町村に希望すれば受診券をもらえます。

 風疹は妊婦が感染すると赤ちゃんに障害が出る恐れがありますが、昨年、首都圏を中心に2917人の患者が報告され、現在の方法で統計を取り始めた2008年以降の10年余りで2番目に多くなりました。妊婦への感染を防ぐには、男性を含めたすべての人が十分な免疫を持つ必要があります。

 厚生労働省は、東京オリンピック・パラリンピックが開催され海外から多くの人が訪れる2020年までに、国内の風疹患者をゼロにする目標を掲げています。

 2019年1月27日(日)

 

■太平洋のマイクロプラスチック、40年後には4倍か 九州大など予測

 生態系への影響が懸念されている小さなプラスチックのごみ「マイクロプラスチック」について、深刻な研究結果が示されました。日本近海などの太平洋で、2060年ごろまでに、最悪の場合、その浮遊量がおよそ4倍になると予測され、専門家は早急な対策が必要だと指摘しています。

 マイクロプラスチックはプラスチックごみが紫外線や波の力などの影響で大きさが5ミリ以下に細かく砕かれたもので、有害物質を付着しやすい上、魚などが食べることで体内の炎症や摂食障害などを引き起こすため、食物連鎖で生態系に広く悪影響を及ぼす可能性も指摘されています。

 これについて、九州大学や東京海洋大学などの研究チームは、3年前の2016年に調査船を使って日本から南極付近にかけての太平洋上で、マイクロプラスチックを採取して浮遊量を測定。アメリカの研究チームの測定結果や海流の影響などを加味し、50年先までの浮遊量をコンピューターシミュレーションで予測しました。

 その結果、プラスチックごみの海への流出がこのまま増え続けると、夏場を中心に、日本近海や北太平洋中央部などでの浮遊量が最悪の場合、いずれも2016年と比べて、10年後の2030年ごろまでには約2倍に、40年後の2060年ごろまでには約4倍に達することがわかりました。

 特に、2060年ごろまでの予測では、魚が餌を食べなくなったり成長が遅れたりするなど生態系に異常を及ぼす目安とされる「1立方メートル当たり1000ミリグラム以上」に達する海域が、日本周辺などに数多く現れると予測されています。

 調査を行った九州大学応用力学研究所の磯辺篤彦教授(海洋物理学)は、「最悪のシナリオにならないよう使い捨てプラスチックの削減や海への流出を防ぐ対策を先進国・途上国の双方が早急に進める必要がある」と話しています。

 2019年1月27日(日)

 

■動脈硬化や不整脈の小型検査機器を量産へ ロボットスーツのサイバーダイン

 ロボットスーツ「HAL(ハル)」を製造販売するサイバーダイン(茨城県つくば市)は福島県郡山市にある生産拠点で、脳卒中や心筋梗塞など循環器系疾患の原因となる動脈硬化や不整脈の程度を手軽に調べられる医療機関向けの小型検査機器「心電脈波検査装置」の量産を2019年内に始めます。地元のものづくり企業と連携し、当初は月100~200台程度を生産し、順次規模を拡大する方針です。

 心電脈波検査装置は、心電信号や脈波信号を計測し、動脈硬化の状態を調べます。足の指にクリップ部を装着し、本体を腹部に当ててボタンを押すだけで、30秒ほどで動脈の硬さを調べる脈波などの生体信号を計測できます。重さは100グラムほどで、手のひらサイズまで小型化し、持ち運びしやすく、手軽に検査できるようにしました。あらゆるモノがインターネットにつながる「IoT」に対応しており、同社の他製品と同様、計測データをパソコンに集積できます。

 この心電脈波検査装置は2018年12月に厚生労働省から医療機器としての製造販売承認を取得し、2019年1月に公的医療保険が適用になりました。これを受けてまずは医療機関向けに2019年夏にも量産に入ります。販売価格は他社製品の半分から3分の1に抑えたい考え。

 郡山市にある同社の「次世代型多目的ロボット化生産拠点」で、セル生産方式で装置を組み立てます。部品や製品をつかんだり、運んだりする作業にロボットを使ったり、従業員が一人乗りの機器で移動したりして、少人数でも対応できるようにします。生産に当たっては、地元のものづくり企業との連携を検討しています。

 当初の生産規模は月100~200台程度を見込んでいますが、医療機関だけでなく職場や家庭向けなども含め月産数千台規模にまで拡大する方針です。

 同社の生産拠点は高さ約17メートルの3階建てで、延べ床面積は約3500平方メートル。土地・設備を含めた総事業費は約11億円で、3分の2を福島県が助成しました。

 福島県が国内屈指の医療関連産業の一大集積地であり、医療機器産業や生産ロボット技術のさらなる発展が東京電力福島第1原子力発電所の事故からの復興に貢献できるとして、2016年8月に郡山市に拠点を設けました。サイバーダインの心電脈波検査装置の承認取得の影響で、量産開始までに時間がかかりました。

 2019年1月27日(日)

 

■全国の664医療機関が無料低額診療を実施 ネットで制度周知の声が上がる

 インフルエンザの流行が続き、47都道府県すべてで警報レベルを超える中、経済的に厳しい人達が負担なく診察を受けられる「無料低額診療」の制度を周知しようという声がインターネット上で広がっています。

 無料低額診療は医療機関が独自の基準を設けて、経済的に厳しい人の医療費の支払いについて、自己負担分の全額または一部を免除する制度です。

 現在実施しているのは全国の664の医療機関で、免除した医療費は医療機関が負担します。医療保険への加入の有無や国籍は問わないケースが多く、インフルエンザの流行が続く中、経済的に厳しい人が医療費の負担を考えて診察をためらうことのないよう制度を周知しようという声が、インターネット交流サイト(SNS)上で広がっています。

 実施している医療機関は都道府県などのホームページなどに掲載されており、医療機関は給与明細や源泉徴収票で所得などを確認し、医療費の全額を免除するか、一部を免除するかを決めています。

 無料低額診療を実施している東京都中野区の診療所では、ポスターを張ったりパンフレットを置いたりして制度を周知しています。

 制度を利用したい患者には社会福祉士の資格を持つ相談員が面接し、家族構成などを記す申請書を書いてもらったり所得が証明できる書類を提出してもらったりして、所得に応じた減免の額を決めています。

 川島診療所の松本明彦事務長は、「インフルエンザがはやる季節でもあり、制度を知ってもらって負担のない治療につなげたい」と話しています。

 生活が苦しい人たちへの支援活動を行っているNPO法人の代表で社会福祉士の藤田孝典さんは、「経済的に厳しいことから、痛みや、つらさを我慢して、重症となることがある。無料低額診療を行っている医療機関には医療相談室があるので、電話などで相談をしてみてほしい」と話しています。一方、「実施している医療機関は都市部に集中していて地域の偏りを改善していく必要がある。また、病院の外で処方された薬代は自己負担となるため、実際は医療機関が肩代わりしているケースが多くある。負担を減らす支援を国に求めたい」などと制度に課題もあると指摘していました。

 2019年1月26日(土)

 

■膵臓がん、切除手術前に抗がん剤使うと効果 生存期間延長を確認

 治療が難しい膵臓(すいぞう)がんで、切除手術後に抗がん剤を使うより手術前にも使った方が生存期間が平均で約10カ月長くなったとする研究結果を、東北大学病院などの研究チームが24日までに発表しました。生存期間は約1・4倍に延びました。現在は、手術後に抗がん剤を使う方法が日本膵臓学会の推奨する標準治療となっています。

 膵臓がんは国内で年間約4万人が発症。早期発見が難しく、3年生存率が約15%と部位別で最も低くなっています。進行した状態で見付かることが多く、他の臓器に転移がないなど手術で切除できる患者は、全体の2割程度とされます。

 研究チームは2013年から、全国57病院で手術できると判断された79歳以下の成人患者約360人を対象に、臨床研究を始めました。手術後に抗がん剤のS―1を投与する標準治療の患者グループと、手術前にも塩酸ゲムシタビンとS―1を組み合わせて投与する患者グループに分けて比較しました。

 その結果、標準治療に比べ、手術前にも投与した患者は平均生存期間が26・7カ月から36・7カ月になり、2年生存率は52・5%から63・7%になりました。手術前にも投与した患者では、周囲のリンパ節への転移や肝臓に再発するケースが減ったといいます。

 東北大学病院総合外科長の海野倫明(うんのみちあき)教授は、「抗がん剤治療を先に行うことで、がんが小さくなって手術しやすくなる効果も考えられる。今後は、手術前の抗がん剤投与が標準治療になるだろう」と話しています。

 2019年1月26日(土)

 

■インフルエンザの新薬ゾフルーザ、耐性ウイルス検出 服用した2人の小児から

 国立感染症研究所は、新しいインフルエンザの治療薬「ゾフルーザ」を使った患者から、治療薬に耐性を持つ変異ウイルスが検出されたと、24日発表しました。

 塩野義製薬(大阪市住吉区)が開発し、昨年発売したゾフルーザは、5日間連続で飲み続けたり、吸入が必要だったりする従来の薬と比べ、1回錠剤を飲めばすむため、インターネットなどで「画期的な治療薬」として話題になりました。一方、臨床試験の段階から、従来のインフルエンザ治療薬より耐性ウイルスが生まれやすいと指摘されていました。

 耐性ウイルスが広がると薬の効果が薄れるため、専門家は「薬の特徴を踏まえた上で適切な処方を」と呼び掛けています。

 耐性変異ウイルスが見付かったのは昨年12月。横浜市の小学校2校でインフルエンザの集団発生があり、A型にかかってゾフルーザを飲んだ2人の小児から検出されました。変異を持たないウイルスに比べて、ゾフルーザに対する効きが約80~120倍悪くなっていました。

 2人の耐性変異ウイルスは遺伝子配列が異なり、人から人への感染ではなく、それぞれの体内で増殖したとみられるといいます。

 ゾフルーザは臨床試験でも、耐性変異ウイルスの検出率が12歳未満で23・3%、12歳以上で9・7%と高くなっていました。タミフルなど従来の治療薬の検出率は0~2%程度。感染症に詳しい国立病院機構東京病院呼吸器センターの永井英明医師は、「1回飲むだけと便利だが、医師は耐性変異ウイルスのリスクも忘れず、注意深く処方するべきだ」と語っています。

 卸売業者から医療機関への供給量(2018年12月3日~2019年1月6日分)は、従来の4種類の薬と比べてゾフルーザが最も多く、全体の約4割を占めています。

 2019年1月25日(金)

 

■東大病院の最新カテーテル治療で男性死亡 東京都が中止を指導

 東京大学附属病院(東京都文京区)で昨年8月、40歳代の心臓病の男性がカテーテルを使った最新の治療の後に死亡し、東京都は立ち入り調査を行うとともに、安全が確認されるまでこの治療を中止するよう指導したことが24日、明らかになりました。

 東京大学附属病院の循環器内科では昨年9月、拡張型心筋症で心臓の弁がうまく働かない僧帽弁閉鎖不全症も起こしていた東京都内に住む40歳代の男性患者に、カテーテルを使って弁の働きを補う器具を入れる最新の治療を行いましたが、入れるのに必要な穴がうまく開かず治療を中止し、この男性はその後、肺に傷が付く気胸を起こすなど容体が悪化、2週間余りで10月に亡くなったということです。

 東京大学附属病院は昨年12月、医療事故調査をする日本医療安全調査機構と東京都に報告するとともに、外部の専門家を含めた調査委員会の設置や、検証が終わるまでこの治療を中止することを決めました。東京都も昨年12月、医療法に基づく立ち入り調査を行い、安全が確認されるまでこの治療の中止を継続するよう指導しました。

 このカテーテルを使った心臓病の治療は、昨年4月に保険が適用されるようになり、東京大学附属病院では昨年7月から実施し、この男性が6例目だったということです。

 東京大学附属病院は、「必要な報告をし、外部委員を交えた厳正、かつ公正な審査が予定されていますので、その結果を受けて今後の対応を検討します」とコメントしています。

 2019年1月25日(金)

 

■インフルエンザ患者、約213万人  過去最多の昨年2月に迫る

 全国でインフルエンザの流行が広がっており、1月20日までの1週間の推計の患者数は約213万人に達するとともに、47都道府県すべてで警報レベルを超えました。厚生労働省は、今後、さらに患者が増える恐れがあるとして、手洗いやマスクの着用など予防を徹底するよう呼び掛けています。

 厚労省によりますと、1月14~20日までの1週間の全国約5000の医療機関の平均の患者数は、前の週より15人余り増えて53・91人となり、統計を取り始めた1999年以降、最も多かった昨年2月の54・33人に次いで2番目に多くなりました。

 ここから推計した全国の患者数も前の週より50万人ほど増え、約213万人となりました。秋田県の特別養護老人ホームなど各地で死亡例が続き、厚労省は高齢者施設や病院を中心に注意を呼び掛けています。

 都道府県別の1医療機関当たりの患者数は、多い順に、愛知県が81・86人、埼玉県が70・03人、静岡県が69・42人、茨城県が68・05人、福岡県が67・18人などとなっており、今シーズン初めて47都道府県すべてで警報レベルの30人を超えました。

 入院は60歳代以上が多いものの、10歳未満も目立ちます。今シーズンの推計患者数は累計で約541万人。保育所や幼稚園、学校では休校が前週の8から102に急増し、学級閉鎖も446から4721に跳ね上がりました。

 検出されているウイルスは、10年前に「新型インフルエンザ」として世界的に流行したH1N1型と呼ばれるタイプが全体の6割を占めているということです。

 厚生労働省は、今後もさらに患者が増える恐れがあるとして、手洗いやマスクの着用などで予防を徹底することや、発熱など体調の異変を感じたら極力外出せずに休養したり、医療機関を受診したりするよう呼び掛けて

います。

 2019年1月25日(金)

 

■ゲノム編集サルから5匹のクローン誕生 中国の研究機関が発表

 24日の新華社電は、中国科学院神経科学研究所の研究チームがゲノム編集技術と体細胞クローン技術を使い、体内時計の機能を失わせた全く同じ遺伝情報を持つサル5匹を誕生させることに成功したと伝えました。ゲノム編集をしたサルの体細胞クローンは世界初といい、研究結果は中国の科学誌に掲載されました。

 神経科学研究所の研究チームは昨年1月、すでに別のクローンサルの誕生を発表していました。研究チームは新薬開発などの実験用サルをつくるのが目的で倫理上のルールは順守していると強調していますが、人と同じ霊長類のクローンづくりは引き続き議論を呼びそうです。

 新華社電によると、研究チームは遺伝子を狙い通りに改変するゲノム編集技術を使い、受精卵の段階で体内時計に関係する遺伝子が機能しないようにしたサル5匹をつくりました。その中から体内時計が最も働いていないとみられ、睡眠時間の減少や不安やうつといった症状の増加などが認めらるサル1匹を選びました。そして、そのサルの皮膚の細胞から遺伝情報が入った核を取り出して、事前に核を取り除いた卵子の細胞の中に入れて、全く同じ遺伝情報を持つクローンを5匹誕生させました。

 体内時計が機能しないと、精神疾患や糖尿病、循環器系疾患につながるとされます。

 研究チームは、「遺伝情報のそろった実験動物が使えるようになると、新薬開発の実験の効率が飛躍的に向上する」と主張。今後もさまざまな脳の病気モデルのクローンサルをつくりたいとしています。

 中国では人の受精卵で「ゲノム編集」を行い、双子が生まれていたことが今週、明らかになったばかりで、生命倫理にかかわる新しい技術を、人だけではなく、霊長類も含めて、それぞれどのようなルールのもとで研究に応用していくべきか改めて議論を呼びそうです。

 2019年1月25日(金)

 

■イチゴから基準値の10倍の農薬を検出 栃木県、約1000キロ回収へ

 栃木県壬生(みぶ)町の農家が生産したイチゴから、国の基準値の10倍に当たる濃度の残留農薬が検出され、県はこの農家が出荷したイチゴ60キロの回収を命じました。一部はすでに販売されすべての回収は難しい見通しですが、県は、食べても健康への影響はないとしています。

 栃木県が回収を命じたのは、壬生町の農家1軒が1月15日に出荷したイチゴの「とちおとめ」約60キロです。

 県によりますと、保健所の検査でこの農家が出荷したイチゴから、殺虫剤として使う農薬の「プロチオホス」と「フルフェノクスロン」が、国の基準値の10倍の濃度で検出されたということです。

 基準値を超える農薬が残っている恐れのあるイチゴは、4~22日に宮城、千葉、東京、神奈川各都県の6市場に出荷した計約1000キロ(約3700パック)と加工用の約24キロ分。JAが自主的に回収を進めていますが、すでに一部は販売され、回収できたイチゴは全体の1割ほどにとどまるということです。

 県は今回検出された農薬の量では、食べても健康への影響が出る恐れはないとしています。

 県の聞き取りに対し、この農家は「害虫が発生し、農薬を散布する適切な時期や量をよく確かめないまま、出荷の直前に農薬を使ってしまった」と話しているということです。

 記者会見で栃木県農政部の鈴木正人次長は、「いちご王国として、2000人の生産者がルールを守って生産している中、信頼が揺らぎかねない事態で非常に残念だ。農業団体などと連携し、対策を徹底したい」と述べました。

 2019年1月24日(木)

 

■オリンパスの医療機器、海外での不具合報告漏れ 7年間に853件

 医療用光学機器の世界的メーカー、オリンパス(東京都新宿区)が製造した医療機器を巡り、2017年までの7年間に853件の不具合の「報告漏れ」があったと同社が厚生労働省に報告していたことが明らかになりました。国内で販売されていない機器が海外で使われた際に起きた感染症や事故が大半。同社は厚労省に「心よりお詫(わ)びする」との書面を提出していました。

 朝日新聞社の情報公開請求に対し、厚労省が22日、同社から提出された「顚末(てんまつ)書」と「不具合報告漏れに関するご報告」を開示しました。

 顚末書によると、同社は2010年7月15日~2017年6月15日、国内で製造販売の承認や認証を受けている63機種について、「海外で有害事象を起こした際に不具合報告すべきものを報告していなかった」といいます。

 同社によると、国内で販売していない製品は報告が不要と判断していました。これに対し、厚労省側から2017年4月に報告すべきだと指導され、過去に逆上って報告しました。同社の内部文書によると、アメリカ、オランダ、フランス、ドイツの患者に十二指腸内視鏡TJF-Q180Vを使用した際に発生した院内感染300件余などが含まれています。

 国内の医療機器メーカーは不具合や事故、感染症が起きた際、厚労省に報告を求められています。不具合を迅速に把握し、類似の問題の発生を未然に防ぐのが目的です。

 オリンパス広報・IR部は取材に、「今回の未報告を真摯(しんし)に受け止め、経営トップから法令順守への強い意思を示すとともに、厚労省、外部の弁護士などとの連携もしていく」と回答しました。

 日本からNHK、朝日新聞、共同通信が参加する国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)の医療機器を巡る報道プロジェクトの一環で、朝日新聞が厚労省の公表資料などを分析。年に数十件から百件余だったオリンパスの不具合報告が、2018年1月公表分で激増していたため、情報公開請求などをしていました。

 日本ではこの十二指腸内視鏡は販売されず、感染は起きていません。欧米ではその後、特殊な洗浄ブラシの提供や注意喚起で安全対策が取られました。

 2019年1月23日(水)

 

■インフルエンザ患者の異常行動、95件を確認 19歳以下が94件

 厚生労働省によりますと、昨シーズン、季節性インフルエンザの患者による異常行動は95件報告されています。報告数は過去10シーズンで3番目に多く、95件のうち94件が19歳以下でした。

 年齢は10歳前後の子供が中心で、多くのケースが発熱から2日以内に起きています。

 異常行動の内容は、突然走り出すのが最も多くなっていますが、興奮して窓を開けて飛び降りようとしたり、歩き回ったりすることもあるということです。

 厚労省研究班の調査によると、インフルエンザ治療薬の種類別の報告数はタミフル23件、リレンザ16件、イナビル26件、ラピアクタ2件。昨年3月から販売されたゾフルーザは2件でした。イナビルを服用した10歳代の少年が翌日、家族が目を離しているうちに自宅マンションの8階のベランダから転落して死亡したケースもありました。一方、薬を服用していないケースでも、異常行動が16件ありました。

 性別では男性63%、女性37%。年齢は9歳と13歳が12件と最も多く、これまでと同様に小学生から中学生の男児に異常行動が出やすいという傾向が見られました。      

 2007年から厚労省はタミフルの10歳代への使用を原則、禁止してきましたが、異常行動との因果関係が明確ではないとして昨年8月、使用制限を解除しました。

 厚労省はインフルエンザ治療薬の処方にかかわらず、小学1年から19歳までがインフルエンザになった場合は、発熱から2日間はなるべく1人にさせず、玄関に施錠したり、ベランダに面していない部屋に寝かせたりするなど、異常行動に注意を払うよう呼び掛けています。

 2019年1月23日(水)

 

■東京医科大への助成金、2018年度は全額不交付 私学事業団

 私学助成の交付業務を担う日本私立学校振興・共済事業団が、汚職事件や医学部入試の不正問題が昨年発覚した東京医科大に対し、2018年度の私学助成金を全額交付しない方針を決めたことが22日、明らかになりました。柴山昌彦文部科学相が同日、閣議後の会見で明らかにしました。アメリカンフットボール部の悪質な反則問題があった日本大など7大学の助成金も減額します。

 文科省によると助成金の不交付や減額は、東京医科大(前年度約23億円交付)が全額不交付、日本大(同約92億円)が35%減額、医学部入試の不正が発覚した岩手医科大(同約18億円)、昭和大(同約55億円)、順天堂大(約56億円)、北里大(約41億円)、金沢医科大(約13億円)、福岡大(約37億円)がいずれも25%減額。各校への配分額は、3月中に決定されます。

 柴山文科相は、「一連の事案は大変残念。今回の減額措置なども踏まえ、不祥事に対してどのように臨むかを文科省として考えていきたい」などと述べました。

 東京医科大では昨年、文科省の私大支援事業を巡る汚職事件で前理事長と前学長が贈賄罪で起訴され、その後、医学部入試で長年、女子や浪人を重ねた受験生への差別や特定の受験生の優遇などが横行していたことが、全額不交付の理由とされました。私大の助成金が不交付となるのは極めて異例です。日本大はアメフット問題への事後対応など学校法人の管理運営が不適切とされました。助成金は年に2回配分されますが、日本私立学校振興・共済事業団は昨年10月、東京医科大と日本大に対する2018年度分の最初の支給を保留していました。

 岩手医科大など残りの5大学は医学部入試に不正があったものの、受験生の救済策などの対応が速やかにとられたため、減額幅が小さくなりました

 一方、医学部入試で文科省から不正の疑いを指摘されながら、大学側が否定している聖マリアンナ医科大については、事実関係が明らかでないとして現時点で減額の議論が見送られました。

 柴山文科相は、「第三者委員会を設置するよう再三指導してきたが、大学側がいまだに対応していないことは大変遺憾。不適切と確認された場合は、これまで対応が取られていないことも踏まえて減額が議論される」としています。

 2019年1月22日(火

 

ジェネリック医薬品で価格カルテルの疑い 公取委が製薬2社に立ち入り検査

 ジェネリック医薬品(後発薬)の卸価格でカルテルを結んだ疑いがあるとして、公正取引委員会は22日午前、独占禁止法違反(不当な取引制限)の疑いで医薬品メーカーの「日本ケミファ」(東京都千代田区)、「コーアイセイ」(山形市)の2社に立ち入り検査を始めました。ジェネリック医薬品の取引のみを対象にした立ち入り検査は初めて。

 関係者によると、2社は2018年ごろ、腎臓病患者の治療に使われる高リン血症治療剤のジェネリック医薬品で、「炭酸ランタン口腔(こうくう)内崩壊錠」(OD錠)と呼ばれる口の中で溶けやすい錠剤について事前に連絡を取り合い、卸売業者に納入する卸価格を高めにそろえるカルテルを結んだ疑いがあります。価格競争が起きないようにして値崩れを防ぐ目的だった可能性があるといいます。

 炭酸ランタン口腔内崩壊錠は2社を含む計5社が2018年2月に、厚生労働省の製造、販売承認を受けましたが、同年6月時点では、日本ケミファとコーアイセイだけが販売に向けた準備を進めていました。

 医薬品メーカーからの卸価格は、患者に処方される際の薬価の改定にも影響します。卸価格が高ければ、将来的には患者の医療費負担が増えていた可能性もあります。

 2社のホームページによると、両社はともにジェネリック医薬品を主力と位置付けています。民間信用調査会社によると、日本ケミファの売り上げは約300億円(2018年3月期)、コーアイセは約30億円(2018年6月期)。

 日本ケミファは立ち入り検査を認めた上で、「厚労省の製造、販売承認は得たが、安定供給のめどが立たず、発売時期は未定だった。公取委の調査には全面的に協力していく」としています。

 ジェネリック医薬品は、新たに開発した医薬品(先発薬)に対し、先発薬の特許期間が切れた後に同様の有効成分で製造され、品質や効き目が同等で低価格な薬。日本ジェネリック製薬協会の資料によると、新薬は9~17年程度の開発期間と数百億円以上の投資が必要とされる一方、ジェネリック医薬品は数年の開発期間で、費用も1億円程度に抑えられるといいます。

 公正取引委員会幹部は、「薬の価格を下げるためのジェネリックで、逆に高値を維持しようとしていたなら悪質だ」としています。

 2019年1月22日(火

 

■インフルエンザ脳症で小4男児死亡 長野県北信地方

 長野県北信地方に住む小学4年生の児童がインフルエンザに感染し、今月13日にインフルエンザ脳症で死亡していたことが22日、わかりました。同県では、重症化を防ぐため予防接種を受けるなど対策を呼び掛けています。

 長野県教育委員会などによりますと、北信地方に住む小学4年生の男子児童がインフルエンザに感染し、今月11日は登校したものの、12日から13日にかけて体調を崩し、13日に死亡しました。死因について、保護者から小学校に「インフルエンザ脳症で亡くなった」と説明があったといいます。

 インフルエンザ脳症は、インフルエンザにかかった患者が、突然、けいれんや意識障害などを起こす病気で、1日から2日という短期間に急速に症状が悪化するのが特徴です。

 長野県保健・疾病対策課によりますと、今年に入って、報告があったインフルエンザ脳症の患者数は3人で、重症化を防ぐには予防接種が有効だとしています。

 長野県内では1月7日から13日にかけてインフルエンザ感染者が1医療機関当たり43・87人に上り、30人以上で発令するインフルエンザ警報をこの冬初めて出したばかり。

 同県は、「流水やせっけんを使って十分な手洗いを行う」「具合が悪ければ早めに医療機関を受診する」「インフルエンザと診断されたら、学校や職場は休む」などの徹底を呼び掛けています。

 厚生労働省の人口動態調査によると、ここ数年、長野県内でインフルエンザが原因となった死亡事例は、2017年が47人、2016年が24人、2015年が35人、2014年が22人、2013年が29人。高齢者が多く、未成年は5年間で2014年の1人のみでした。

 2019年1月22日(火

 

■厚労省、ゲノム編集を使った遺伝子治療を4月解禁へ 遺伝病やがんの克服に期待

 厚生労働省は、遺伝子を効率よく改変する「ゲノム編集」技術を使った治療の臨床研究を4月に解禁します。16日、遺伝子治療の臨床研究指針の改正案を了承しました。海外では遺伝性難病やがんを対象に臨床研究が進められており、日本でも始まることになります。

 遺伝子治療は、病気の原因となる遺伝子を破壊したり、正しい遺伝子と入れ替えたりすることで病気を治療する方法。これまでの治療では、遺伝子が目的の場所に入らないことがありました。ゲノム編集を使えば狙った場所に遺伝子を入れたり改変したりすることができ、副作用が少なく効果的な治療になると期待されます。

 臨床研究指針の改正案では、遺伝子治療の臨床研究に関する従来の指針を見直し、患者の体内でゲノム編集を使った治療ができるようにします。研究機関には、ゲノム編集に使うタンパク質や核酸などの情報の提供を求めます。患者を治療する場合は、研究実施機関と国の2段階で安全性や効果などを審査しますが、人の受精卵や生殖細胞の遺伝子を改変する研究は禁止します。

 ゲノム編集を使った遺伝子治療は、海外ではすでに臨床試験が始まっています。アメリカでは、遺伝性難病である「ムコ多糖症2型」などで進んでいます。中国では、がん患者を対象に開始されています。

 日本では、マウスなどの動物を使った実験にとどまっていました。今後、自治医科大学は血友病の治療にゲノム編集を使います。京都大学などは、筋肉の機能が衰える「デュシェンヌ型筋ジストロフィー」の原因となる遺伝子のゲノム編集による治療に向けた研究を進めます。

 2019年1月21日(月)

 

■世界初のゲノム編集の双子、中国調査チームが事実認定 別の1人が妊娠中

 中国広東省の南方科技大学の賀建奎副教授が昨年11月、遺伝子を効率よく改変する「ゲノム編集」技術を使い、エイズウイルス(HIV)に感染しないよう受精卵を操作して双子を誕生させたと主張した問題に関し、地元広東省の調査チームは賀氏の主張は事実だと認定しました。

 動機については、「自分の名誉と利益を追い求めるため、国が禁止する生殖目的のゲノム編集を行った」としています。国営新華社通信が21日に伝えました。ゲノム編集によって子供が生まれたのは世界で初めて。

 賀氏は昨年11月、香港大で開かれた国際会議で、ゲノム編集を経た双子の誕生を発表しました。しかし、根拠となる具体的な情報を明らかにしなかったため、「真偽不明」として国内外で疑問視されていました。

 広東省の調査チームが事実だと認定したことで、今後、倫理面や安全性に問題があるとする批判が、さらに高まりそうです。

 南方科技大は21日、広東省の調査結果を踏まえ賀氏を解雇することを決めたと発表しました。

 調査チームによると、賀氏は2017年3月から2018年11月にかけて、偽造した倫理審査文書を使って、夫がHIVに感染した8組の夫婦(1組は途中で辞退)を募り実験を行いました。このうち2人が妊娠し、1人が双子の女の子を出産。もう1人は妊娠中だといいます。

 賀氏は2016年6月からひそかに外国人を含むチームを組織したとしていますが、かかわった個人や組織、資金源などは明らかではありません。 

 2019年1月21日(月)

 

■今年のスギ花粉、例年より飛散量が多い見込み 日本気象協会が予測発表

 日本気象協会(東京都豊島区)は21日までに、今春の花粉(スギ・ヒノキ)の飛散量の予測を発表しました。スギ花粉の飛散量は全国的に例年より飛散量が多くなるとみられ、中国地方は例年に比べて多く、東北地方から近畿地方はやや多く、九州地方は例年並みか多め、四国地方は例年並み。北海道のシラカバ花粉は例年を下回り、東京都心のスギ花粉は2月中旬に飛び始め、3月上旬から4月中旬までの長期間にわたって大量飛散が続くとしています。

 スギ花粉の飛散開始は、東日本と西日本で例年より遅くなる見通し。九州地方や四国地方、東海地方、関東地方の太平洋側では、2月中旬に飛散が始まるとみられるといいます。中国地方や近畿地方、北陸地方で2月下旬、東北地方南部で3月上旬、東北地方北部で3月中旬に飛散が始まるとみられるといいます。

 また、スギ花粉の飛散量がピークを迎える時期は、気温予想などから各地で例年並みか少し早まる見通し。福岡市で2月下旬から3月上旬、広島市や大阪市で3月上旬、高松市や名古屋市で3月上旬から中旬、金沢市や仙台市で3月中旬から下旬にピークを迎えるといいます。

 スギ花粉の飛散が落ち着くと、ヒノキ花粉が飛び始めます。ヒノキ花粉の飛散のピークは、スギ花粉のピークから約1カ月後になる見込み。ヒノキは花芽の生育がそれほど進んでいないとみられ、昨春に限定して比べると全国的に飛散量は減るとみられます。

 2019年1月21日(月)

 

男性の国内最高齢は111歳の渡辺智哲さん 新潟県上越市在住

 イギリスのギネスワールドレコーズ社から存命中の「世界最高齢の男性」として認定されていた北海道足寄(あしょろ)町の野中正造(まさぞう)さんが20日に113歳で死去したため、国内の男性の最高齢者は新潟県上越市に住む111歳の渡辺智哲(ちてつ)さんとなることが21日、わかりました。

 厚生労働省によると、渡辺さんは1907年(明治40年)3月5日生まれ。渡辺さんが入所している施設「保倉の里」によりますと、渡辺さんは職員から国内最高齢の男性になったことを伝えられると、笑顔で、「健康がまず第一。後10年生きていきたい。おいしい物を何でもいいから食べていきたい」などと話したということです。

 渡辺さんは上越市浦川原区の出身。台湾で働き、戦後に家族と地元へ戻って定年まで公務員として市内で働きました。

 厚労省によりますと、国内の女性の最高齢者は1903年(明治36年)1月2日生まれで、今月116歳の誕生日を迎えた福岡市の田中カ子(かね)さんだということです。

 2019年1月21日(月)

 

■初診からオンライン診療は指針違反 厚労省が是正通知

 今年度の診療報酬改定で新たに算定が認められた「オンライン診療」について、患者に一度も対面せず始めるなど国の指針を守っていない医療機関があるとの情報が、厚生労働省に寄せられています。同省は医師法違反の疑いがあるとして、都道府県に対して、医療機関への実態調査や勧告などで是正するよう求める通知を出しました。

 オンライン診療は、患者が来院せず、タブレット端末やスマートフォンの画面越しに医師の問診や服薬指導などを受ける方法。従来は医師が常駐していない離島やへき地で運用されていましたが、厚労省は2015年の通知でへき地限定ではないとの見解を示し、事実上全面解禁しました。さらに昨年4月の診療報酬改定で「オンライン診療料」(月1回、700円)や「オンライン医学管理料」(1000円)を新設し、普及を促しました。

 ただし、あくまで「対面診療の補完」の位置付けで、初診は原則禁止、同じ医師が半年以上診る、3カ月に1回は対面で診療などの要件が同省の指針で定められています。これに反した場合は、診察せずに治療することを禁じた医師法20条に抵触する恐れがあります。

 厚労省によると、一部の医療機関で、初診からオンライン診療をしたり、定期的な対面診療をしていなかったりするケースのほか、メールや会員制交流サイト(SNS)などを使って文字のみのやり取りで診療をしているとの報告があるといいます。このため昨年末に都道府県に出した通知で、問題事例を挙げながら、指針違反があった場合は調査し、速やかにやめるよう勧告するなど対応の徹底を求めました。

 同省の担当者は、「オンラインでも病気の見落としや誤診が起きないよう、適切に対応したい」と話しています。

 2019年1月20日(日)

 

■113歳の野中正造さん、老衰のため死去 男性で世界最高齢

 イギリスのギネスワールドレコーズ社から存命中の「世界最高齢の男性」として認定され、明治から平成にかけて4つの元号にわたる時代を生きてきた北海道足寄(あしょろ)町に住む野中正造(まさぞう)さんが20日未明、老衰のため113歳で亡くなりました。

 野中正造さんは明治38年(1905年)7月25日生まれで、2016年10月に国内最高齢男性となりました。2017年8月にそれまで世界最高齢と認定されていたイスラエル在住の男性(当時113)が亡くなり、2018年4月に世界最高齢の男性としてギネスワールドレコーズ社から認定されました。

 同居している孫の祐子さんによりますと、20日午前1時半ごろ、布団に横になった状態で息をしていないことに家族が気付き、かかりつけの医師が死亡を確認したということです。

 野中さんは農業や林業に携わった後、雌阿寒岳(めあかんだけ)山麓にある旅館「野中温泉」の2代目として経営に当たってきており、ふだんはテレビで大相撲やプロ野球を楽しんだり、昨年の誕生日には好物のケーキを家族と一緒に食べたりするなど19日まで、普通に食事を取り、特に変わった様子はなかったということです。

 孫の祐子さんは、「おじいちゃんのお陰で、私たち家族も幸せな楽しい日々を送ることができました。最期まで自宅で過ごし、尊厳のある死を迎えることができて、寂しいけども悔いはありません」と話していました。

 通夜は22日、告別式は23日にいずれも北海道足寄町茂足寄159の自宅で営まれます。

 2019年1月20日(日)

 

■ゲノム編集食品、年内にも食卓へ 一部は届け出のみで流通

 「ゲノム編集」と呼ばれる最新の遺伝子操作技術を使って生産された農産物や魚などを食品として流通させる際のルールについて、厚生労働省の専門部会は17日、新たな遺伝子が組み込まれていない食品は安全性の審査は必要ないとする最終報告書の案を大筋でまとめました。

 ゲノム編集は遺伝子を操作する最新の技術で、収穫量が増える稲や野菜、魚など、農林水産業の分野で応用に向けた研究が急速に進んでいます。最終報告書案の中では、ゲノム編集を使って新たな遺伝子を組み込んだ食品については、毒性がないかなど安全性の審査を行う必要があるとしています。その一方で、今、開発が進むほとんどの農水産物で行われている、新たな遺伝子は組み込まずに遺伝子の変異を起こさせる方法を応用した食品については、安全性の審査を必要とせず、事前に厚労省に届け出を求めて公表する仕組みを作ることが適当だとしています。

 そして、届け出が確実に行われるための対応を引き続き検討するよう厚労省に求めています。専門部会では、委員から、「届け出の義務化」についても盛り込むべきといった意見がありましたが、人に健康被害が生じる危険性が報告されていないため、現時点での届け出の義務化の導入は見送りました。

 ただ、将来的な義務化までは否定しない考えを最終報告書案に盛り込むことにしました。さらに、新しい技術に対する消費者の不安に配慮し、厚労省は届け出のない食品が判明した場合、食品の情報を公表するなどの行政指導を行う方針を示しました。

 ゲノム編集食品は早ければ年内にも流通が始まり、食卓に上る可能性があり、厚労省は今夏にも届け出制を導入したい考え。今後、消費者庁も食品としての表示方法の在り方について検討を急ぎます。

 厚労省は今後、最終報告書案の文言を修正した後、国民から意見を公募するほか、2月には東京都内と大阪市内の2カ所で説明会を開きます。

 2019年1月20日(日)

 

■2018年の自殺者2万598人、9年連続の減少 19歳以下は2年連続の増加

 2018年の全国の自殺者は、前年より723人少ない2万598人となったことが18日、警察庁の集計(速報値)でわかりました。9年連続の減少で、2万1000人を下回ったのは1981年以来、37年ぶり。ただ、19歳以下の自殺者数は増加しており、若年層への対策が求められています。

 全体のうち男性は1万4125人(前年比701人減)、女性は6473人(同22人減)で、男性が女性の約2・2倍でした。自殺死亡率(人口10万人当たりの自殺者数)は前年から0・5人減って16・3人で、1978年の統計開始以来最少。都道府県別では、山梨県が24・8人で最多、青森県が22・0人、和歌山県が21・5人と続き、最少は徳島県の12・0人でした。

 厚生労働省が1~11月の統計(1万9030人)を基に分析したところ、年代別では50歳代が3225人で最も多く、40歳代が3222人、60歳代が2811人など中高年の割合も高くなりました。

 20歳代以上の全年代が前年同期比で減少した一方、19歳以下の未成年だけは前年同期より16人増の 543人となり、2年連続で増加しました。男性が35人減ったものの、女性が51人増えました。原因・動機(複数計上)について全体では「健康問題」が9450人と最多で、次いで「経済・生活問題」、「家庭問題」と続きましたが、19歳以下では「学校問題」が最多でした。

 19歳以下の自殺者数は、1990年代から横ばい傾向が続いています。2017年10月、神奈川県座間市の住宅で未成年4人を含む9人が殺害された事件は、被害者らがSNS(交流サイト)に自殺願望をうかがわせる投稿をしたことが被害につながりました。

 政府はSNSの事業者に自殺を誘う情報の削除などを求める再発防止策をまとめ、相談体制の強化にも乗り出しました。

 全体の自殺者数が約3万4427人と最悪だったのは2003年。2012年以降は3万人を下回っています。厚労省自殺対策推進室の担当者は、「景気の回復や自殺を防ぐ取り組みなどが自殺数の減少に寄与している。いまだに2万人を超える人が自ら命を絶つという現状は重く受け止め、特に若者への対策に注力していきたい」と話しています。

 政府は2017年に自殺総合対策大綱を決定し、自殺死亡率を2026年までに2015年比で30%以上減少させることを目標としています。

 2019年1月20日(日)

 

■リンゴ病が関東や東北中心に流行 妊婦感染で流産の恐れ

 風邪に似た症状が出て、両ほおなどに赤い発疹ができる「伝染性紅斑」、いわゆるリンゴ病が関東地方や東北地方を中心に流行しています。主に子供がかかり自然によくなることが多い一方で、妊娠中の女性が感染すると流産や死産の原因になることもあり、自治体などが注意を呼び掛けています。

 国立感染症研究所によりますと、昨年10月以降、患者が急増し、全国およそ3000の小児科の医療機関から報告された患者の数は先月までの3カ月間で合わせて2万6400人余りに上り、前の年の同じ時期に比べておよそ9倍となっています。

 都道府県別の1医療機関当たりの患者数は宮城県が2・42人と最も多く、新潟県が1・33人、東京都が0・8人、山梨県が0・79人などと首都圏や東北地方を中心に流行しています。

 東京都や宮城県、新潟県などでは警報レベルを超え、自治体が注意を呼び掛けているほか、1月16日には山形県でも警報が出ました。

 リンゴ病の原因はヒトパルボウイルスB19で、感染した人の唾液、たん、鼻の粘液などに触れ、それが自分の口や鼻の粘膜に付いたり、せきの飛沫を吸い込んだりして広がります。10日から20日ほどの潜伏期間の後に発熱やせき、くしゃみなど風邪と似た症状が現れるほか、両ほおに赤い発疹、手や足に網目状の発疹が現れます。

 小児が感染しても、ほとんどが重症化せずに軽快します。成人では、頬の赤い発疹などの特徴的な症状が出ることは少ないものの、強い関節痛のために歩けなくなることもあります。妊婦が感染すると、本人には全く症状がなくても胎盤を介して胎児に感染し、流産や死産となる可能性があります。

 妊婦については厚生労働省研究班が流行した2011年に全国調査したところ、母親から胎児への感染が69例報告され、うち流産が35人、死産14人、中絶3人。感染者の約半数は自覚症状がありませんでした。半数以上の人は家族や子供が発病しており、家庭内での感染に注意する必要があります。

 国立感染症研究所は、「妊娠している人は特に、外出した後はこまめに手洗いをしたり、人混みをなるべく避けたり、風邪のような症状の人には近付かないことなどが重要だ。やむを得ず人の多いところにゆく場合はマスクをしっかり着用してほしい」と呼び掛けています。

 2019年1月19日(土)

 

■心臓ペースメーカー1158台に停止の恐れ 医療機関を通じて経過観察へ

 東京都港区の医療機器製造販売会社が海外から輸入して販売した心臓のペースメーカー1100台余りが不具合を起こす恐れがあることがわかり、この会社は医療機関を通じて患者の経過観察を行うことになりました。

 不具合の恐れがあるのは、医療機器製造販売会社「日本メドトロニック」がアメリカから輸入して販売した植え込み型心臓ペースメーカーで、「メドトロニック Adapta DR」1037台と、「メドトロニック Adapta VDD」91台、「メドトロニック Versa DR」30台の合わせて1158台です。

 会社や東京都によりますと、これらの製品は2017年7月28日から今月7日にかけて、医療機関など全国526の施設に出荷されましたが、集積回路に不具合があり、特定の条件が重なった時に正常に作動しない可能性があり、必要な血液が送られず失神や重い健康被害を引き起こす可能性があるということです。

 今回のペースメーカーは海外で、昨年の秋以降、停止したケースが4件起きているということです。

 国内では今のところ健康被害の情報はありませんが、会社では、医療機関を通じて患者の経過観察を行うことにしています。

 会社では、患者の体内から取り出さず、製品に内蔵されたプログラムを無線通信で修正することを検討していますが、患者の状況次第ではペースメーカーの交換が必要なケースもあるということです。

 日本メドトロニックの患者向けの問い合わせの電話番号は0120ー911ー381で、平日の午前9時から午後5時まで受け付けています。

 2019年1月19日(土)

 

■東北や日本海側で胃がんが目立ち、北海道は肺がん多く がん罹患率に地域差

 厚生労働省が17日付で初めて発表した「全国がん登録」の集計による2016年にがんと新たに診断された患者の実態から、がんにかかる割合を示す罹患(りかん)率に地域差があることも明らかになりました。

 住民の年齢構成を調整した人口10万人当たりの罹患率は、都道府県別で長崎県454・9、秋田県446・3、香川県436・7、北海道428・2、宮崎県426・4の順に高くなりました。最も低いのは沖縄県の356・3で、愛知県367・5、長野県367・6と続きました。

 がんの種類ごとに、都道府県別の罹患率も出ています。地域によって罹患率が異なる理由は明確でないものの、生活習慣の影響も指摘されます。胃がんは、食塩の摂取量が多い東北地方や日本海側で目立ち、新潟県74・7、秋田県70・3、山形県63・2などの地域が、全国平均48・2を上回っています。

 肺がんは、北海道、九州や四国の一部など喫煙率の高い地域に多い傾向がみられ、長崎県55・5、北海道51・4、愛媛県51・0などの地域が、全国平均44・4を上回っています。

 肝臓がんは、西日本で高い傾向があり、肝炎ウイルスの感染者の多さと関連しているといわれます。

 課題を対策につなげる動きも出ています。大腸がんで1位、胃がんで2位だった秋田県の健康づくり推進課は、「全国平均と比べ塩分摂取量が多く、喫煙率が高い。飲酒や運動不足なども含め、複合的に影響している可能性があり、生活習慣の改善などに力を入れたい」としています。

 肺がんで2位の北海道の地域保健課は、「禁煙外来のある医療機関を周知するなど、喫煙や受動喫煙の防止に努めたい」としています。

 がん対策に詳しい国際医療福祉大の埴岡健一教授は、「都道府県は、どのがんで罹患率が高いかを分析し、予防対策の強化につなげてほしい」と話す。

 2019年1月18日(金)

 

■インフルエンザ患者が急増し163万人 42都道府県で警報レベル

 全国でインフルエンザの患者が増えていて、1月13日までの1週間の患者数は163万人余りとなり、42の都道府県で警報レベルを超えました。厚生労働省は、1月下旬にかけてさらに患者が増える恐れがあるとして、手洗いやマスクの着用など予防対策を徹底するよう呼び掛けています。

 厚労省によりますと、1月13日までの1週間に全国およそ5000の医療機関から報告されたインフルエンザの患者数は、前の週より11万2000人余り増えておよそ19万人となりました。

 このため、1医療機関当たりの患者数は38・54人となり、この期間に医療機関を受診した全国の患者数の推計は前の週より100万人以上増え、およそ163万5000人となりました。

 都道府県別の1医療機関当たりの患者数は、愛知県で75・38人、熊本県で58・79人、岐阜県で53・94人、鹿児島県で52・34人、静岡県で52・22人などとなり、42の都道府県で警報レベルの30人を超えました。

 入院は60歳代以上が全体の64%を占め、10歳未満も23%と多くなりました。今シーズンのこれまでの患者数は推計で約328万人。休校や学級・学年閉鎖も相次いでおり、1週間で休校は8、学級閉鎖は446に上りました。

 これまでに最も多く検出されているウイルスは、10年前に「新型インフルエンザ」として世界的に流行したH1N1型と呼ばれるタイプが7割と最も多い一方で、昨年多かった「B型」はほとんど検出されていないということです。

 厚生労働省は、今月下旬にかけてさらに患者が増える恐れがあるとして、重症化しやすい子供や高齢者などに対して、こまめな手洗いや、せき、くしゃみが出る時はマスクを着用するなど「せきエチケット」の徹底を呼び掛けています。

 2019年1月18日(金)

 

■新たながん患者過去最多の年99万人に 部位別トップは大腸がん

 厚生労働省は、2016年に新たにがんと診断された患者数は延べ99万人を超え、過去最多となったと、17日付で発表しました。すべての病院に患者データの届け出を義務付けた「全国がん登録」という新たな制度による初の集計で、日本のがんの実態が判明しました。部位別では、大腸がんがトップでした。

 全国がん登録は、病院に届け出を義務化したがん登録推進法の施行に伴い、2016年から始まりました。それ以前の登録制度は任意で、登録漏れが指摘されていました。

 集計結果によると、2016年のがんの新規患者数は99万5132人(男性56万6575人、女性42万8499人、不明58人)。法施行前の登録を基にした2015年の患者数89万1445人(男性51万926人、女性38万519人)に比べ、10万3687人も多くなりました。

 集計した国立がん研究センターによると、患者数が急増したというより、さらに正確なデータが集まったためとみられます。

 部位ごとの患者数を見ると、大腸15万8127人(15・9%)、胃13万4650人(13・5%)、肺12万5454人(12・6%)の順に多くなりました。

 2015年と比較すると、順位は同じながら、全体に占める割合は胃や肺で下がりました。それぞれ原因となるピロリ菌の感染率や、喫煙率の低下を反映したとみられます。逆に、大腸は0・4ポイント上がっており、食生活の欧米化などの影響がうかがえます。

 男性は胃がんの9万2600人が最も多く、前立腺8万9700人、大腸8万9600人と続きました。女性は乳がんの9万4800人がトップで、次いで大腸6万8400人、胃4万1900人の順でした。

 がんと診断された人の割合(罹患(りかん)率)は、年齢構成を調整した人口10万人当たりで402・0。男性が469・8、女性が354・1で、男性のほうが高くなっています。

 今後は、新制度のデータが毎年発表されます。5年生存率については、2023年に最初の公表を行う予定。

 厚労省がん・疾病対策課の佐々木昌弘課長は、「データを詳しく分析し、患者の状態に応じた医療体制の整備を進めたい」としています。

 2019年1月17日(木)

 

■東京都がインフルエンザ流行警報を発表 昨季より1週間早まる

 東京都内でインフルエンザの患者が急激に増えたことから、東京都は17日、インフルエンザの「流行警報」を発表し、こまめな手洗いなど対策の徹底や感染が疑われる場合は早めに医療機関を受診するよう呼びか掛けています。

 東京都によりますと、1月7~13日の1週間に都内の419の医療機関から報告されたインフルエンザの患者の数は1つの医療機関当たり平均31・7人で、前の週の3・4倍と急激に増え、都全体で国の定める基準値の30人を超えました。

 東京都は、インフルエンザが大きな流行になっているとして、これまでの「流行注意報」を切り替えて17日、「流行警報」を発表しました。

 東京都内に警報が出るのは、昨シーズンより1週間早いということです。

 また、東京都内では今月13日までに延べ236の幼稚園や学校で学級閉鎖などの措置がとられたということです。

 これまでに検出されたウイルスを分析したところ、10年前に「新型インフルエンザ」として世界的に流行した「H1N1型」が全体の約72%を占めているということです。

 東京都は、こまめな手洗いなど対策の徹底や感染が疑われる場合は早めに医療機関を受診するよう呼び掛けています。

 2019年1月17日(木)

 

■外国人扶養家族の健保適用、「国内在住」に限定 不正利用防止へ厳格化

 入管法の改正に伴う外国人労働者の受け入れ拡大を受け、政府が検討を進めてきた健康保険法改正案の概要が17日、判明しました。健保が適用される扶養家族を原則「国内在住」に限るなど、不正利用ができないよう適用対象を厳格化することなどが主な柱。今月開会の通常国会に提出する方針です。

 日本の公的医療保険制度では、就労や留学のために来日した外国人も在留資格に応じて各医療保険に加入しなければなりません。入管法の改正で受け入れを拡大するのは労働者のため、加入するのは民間会社の従業員向けの健康保険です。企業などを通じて加入するため「不正な医療目的」では入れないものの、海外に残してきた家族にも使えます。そのため、日本に滞在する外国人が、他人を「母国の家族だ」と偽って健康保険を不正利用するのではないかと懸念する声が出ていました。

 改正案によると、扶養家族について、厚生労働省は「国内在住」を適用要件に加えます。この場合、子供の海外留学や、海外赴任に同行する日本人家族が扶養家族から外れます。海外居住者のうち、一時的な海外生活など「日本に生活の基盤があると認められる家族」は、例外的に扶養家族と認めます。例外となる対象は今後、省令で定めます。

 また、国会審議では、医療費の自己負担が軽減される国の「高額療養費制度」について、在留資格などを偽って来日した外国人が市町村の国民健康保険(国保)に加入して悪用するケースへの懸念が指摘されていました。このため、国保法の改正で、市町村が外国人の留学先の日本語学校に出欠状況などの報告を求められるよう調査対象を拡大します。

 ほかにも、海外で出産した配偶者にも支払われる出産育児一時金の審査も厳しくする見通しです。日本国内在住でも、「なりすまし」など公的医療保険の不正利用を防ぐため、保険証のほか本人確認書類の提示を求めるよう対策を進めます。

 2019年1月17日(木)

 

■地下鉄駅ホームのPM2・5濃度、最大で地上の約5倍に 慶応大が調査

 健康への影響が懸念される微小粒子状物質「PM2・5」について、慶応大学の研究チームが地下鉄駅で調査をしたところ、最大で地上の約5倍の濃度に上ったことがわかりました。電車がブレーキをかける際に車輪やレール、ブレーキの部品が摩擦で削れて発生しているとみられ、専門家は「呼吸器などに病気がある人や長期間働く人などへの影響を調査する必要がある」と指摘しています。

 日本の専門誌「大気環境学会誌」に論文が掲載されました。

 PM2・5は大気中を浮遊する大きさが1000分の2・5ミリ以下の極めて小さい粒子状の物質のことで、成分は鉄などの金属や硫酸塩や硝酸塩、そして有機物などさまざまです。工場や自動車の排ガスなどから発生するほか、中国からも飛来し、吸い込むと肺の奥まで入りこみ、ぜんそくや気管支炎、肺がんなど、呼吸器の病気や不整脈など循環器の病気のリスクが相対的に高まるとされています。

 日本では10年前に屋外の大気中の環境基準がつくられ監視が強化されてきましたが、地下鉄駅や地下街、屋内など閉鎖した場所の基準はなく、実態がよくわかっていません。

 慶応大学の奥田知明准教授(環境化学)の研究チームは、横浜市交通局の協力を得て、横浜市内の地下鉄駅のホームで、昨年7月17日の午前5時から午後8時までPM2・5の調査をしました。

 その結果、始発から濃度が上がり始め、1立方メートル当たりの1時間の平均濃度は午前9時から10時で最も高い約120マイクログラムとなり、同じ時間帯の地上の約5倍に上りました。また、始発後の午前6時から14時間の平均濃度は約80マイクログラムで、環境省の屋外の1日平均の基準35マイクログラムと比べると、約2・3倍となりました。

 成分を分析したところ、金属が多く、特に鉄を含むPM2・5は地上の約200倍に上りました。

 発生原因について、研究チームでは、電車がブレーキをかける際に車輪やレール、ブレーキの部品が摩擦で削れるほか、パンタグラフと架線の接触でもPM2・5が発生しているとみています。このPM2・5はトンネル内を浮遊したり、底にたまったりして、電車が通過するたびに巻き上げられて駅ホームに流れ込むと考えられます。

 また、通勤ラッシュで濃度が高くなるのは、時間当たりの電車の本数が増えることや、多くの人を乗せているため、車体が重くなりブレーキをかける際、車輪やレールにより摩擦がかかるためとみられます。

 奥田准教授は、「地上のPM2・5は改善されているが、地下鉄の実態はわかっていない。今回は1日だけの調査だったが、ほかの駅や地下鉄にも調査を広げる必要がある」とした上で、「地下鉄の空気の環境を誰が責任を持つのかわかりずらく、今まで見過ごされてきた空間だといえる。今後、地下鉄を始め、閉鎖空間の基準の整備も検討すべきだ」と指摘しています。

 横浜市交通局では送風機などでトンネルや駅構内の換気を行っているほか、トンネル内の清掃も定期的に行って粉じん対策をしているということです。

 今回のPM2・5の調査結果について、横浜市交通局は「健康への影響について科学的な知見や研究成果がまだ少ない中で今すぐ具体的な対策を講じるのは難しいが、今後の研究成果によっては対策を検討していかないといけないと考えている」としています。

 海外の地下鉄では10数年前からPM2・5の問題が指摘され、実態調査と対策が進んでいます。このうち、世界で最も古いイギリス・ロンドンの地下鉄では、2003年に調査が行われ、最も高い駅では1立方メートル当たりの3日間の平均濃度が、約480マイクログラムとなるなど、汚染が確認されました。

 調査結果をまとめた報告書では、駅員や一般利用者の肺への影響は低いとする一方、PM2・5の成分の中に鉄が認められ、毒性が確認されたとして、削減努力をすべきと指摘しています。

 こうした実態を踏まえ、ロンドン市長は一昨年、地下鉄の環境を改善するための行動計画を発表し、観測装置の設置や微粒子の吸着装置を使った除去などを行うとしました。

 PM2・5の健康影響に詳しい京都大学の高野裕久教授は、「濃度自体は高いが、一般の利用者のように駅を利用する時間が短ければ大きな問題にならないと考えられる。しかし、PM2・5の影響を受けやすい呼吸器や循環器に疾患がある人やアレルギーの人、高齢者や子供、また長く駅に滞在する人は、より注意をする必要がある。また、成分が屋外と異なって鉄などの金属が多いということが気になる。金属は一般的な大気環境中のPM2・5では、悪影響を及ぼす成分であると指摘されていて、地下鉄のPM2・5でも影響があるか調べることが必要だ」と話しています。

 2019年1月16日(水)

 

■埼玉県がインフルエンザ流行警報を発令 昨季より1週間早まる

 埼玉県は16日、インフルエンザの「流行警報」を発令しました。1月7~13日の1週間でインフルエンザの報告数が1医療機関当たり平均41・02人(前週比27・37人増)となり、県全体で国の定める基準値の30人を超えました。警報発令は昨シーズンより1週間早まりました。

 今シーズンのインフルエンザは昨年12月初めに流行期に入り、昨年末に患者数が増加したため8日に流行注意報を発令しましたが、1月に入りさらに患者数が増加していりため「格上げ」しました。埼玉県保健医療政策課は、せきエチケット、手洗いの励行、適度な湿度の保持、十分な休養とバランスの取れた栄養摂取など感染予防を呼び掛けています。

 埼玉県は259の医療機関から、インフルエンザの患者数などについて毎週報告を受けています。保健所管内別の患者報告数は幸手保健所55・21人が最も多く、鴻巣保健所54・21人、南部保健所(蕨、戸田両市)54・00人と続きました。

 一方、流行には地域差があるといいます。埼玉県は、「まだ流行していない地域でも油断せず、患者が増えている地域は拡大防止を徹底してほしい」と呼び掛けています。

 2019年1月16日(水)

 

■月経異常の女性運動選手、疲労骨折リスクが8倍 慶応大が調査

 月経に異常がある女性運動選手は、疲労骨折を起こすリスクが約8倍に上り、一度骨折すると繰り返すリスクも約5倍高まるとする研究結果を、慶応大学の研究チームがまとめました。イギリスの科学誌「サイエンティフィック・リポーツ」に掲載されました。

 日本整形外科学会によると、疲労骨折は1回の外傷で起きる通常の骨折とは異なり、骨の同じ部分に小さな力が繰り返し加わることで、小さなひびが入って、やがて完全に骨折する状態をいいます。女性選手の疲労骨折は、運動量の多さに食事量などが見合わず、エネルギー不足からホルモンのバランスが崩れ、骨粗しょう症を引き起こすことで生じます。

 研究チームは2017年、慶応大の体育会所属の女性選手56人を調べたところ、13人が脚を疲労骨折した経験がありました。このうち11人に、月経不順や無月経などの異常がみられることもわかりました。さらに1年間の追跡調査を行うと、3人が再び疲労骨折していました。また、練習メニューが過密化し、運動による消費エネルギーが高くなると疲労骨折を起こしやすくなる可能性も示されました。

 血液や尿の検査結果をみると、疲労骨折を経験した選手は、骨や筋肉がダメージを受けると生じる酵素の値が高く、骨の形成にかかわるタンパク質の値は低くなりました。これらの酵素やタンパク質の値を調べれば、疲労骨折のリスクを予測できる可能性があるといいます。

 研究を取りまとめた慶応大医学部の宮本健史・特任准教授(整形外科)は、「女性選手の疲労骨折は選手生命にかかわる。過去の骨折経験や月経の異常、血液や尿の検査値を参考に、トレーニングの方法の工夫や見直しが必要だ」と話しています。

 2019年1月15日(火)

 

■がんゲノム医療、全国40病院で 30カ所超を拠点病院に指定

 厚生労働省はがん患者の遺伝情報から最適な治療薬を選ぶ「がんゲノム医療」を全国で受けられるよう医療提供体制をつくります。遺伝子検査を実施し治療方針を決める病院は、中核拠点の大病院11カ所に30カ所程度を追加し、合計約40カ所に整えます。

 遺伝子検査が示した保険外の抗がん剤治療と、保険医療を組み合わせた混合診療を迅速に受けられるようにします。がんゲノム医療は2019年春にも保険適用になる見通しで、がん患者の治療の選択肢が広がりそうです。

 がんゲノム医療で使う遺伝子パネル検査は、多数の遺伝子を一度に検査して最適な抗がん剤を選び出します。効果が高く副作用も少ないとされます。一部の検査は春にも保険適用される見込み。

 厚労省は国立がん研究センター中央病院、東京大学病院、京都大学病院など11病院を「中核拠点病院」に指定しましたが、保険適用が始まれば、対応し切れなくなる恐れもあり、30カ所超を「拠点病院」として2019年度中に追加指定します。実際の治療に当たる全国135カ所の「連携病院」と合わせ、全国で医療を提供する体制が整います。

 混合診療を迅速に受けられる仕組みもつくります。日本は混合診療を原則禁止しており、保険診療と保険外診療を組み合わせた治療を受けると、保険診療分も含めて医療費は全額自己負担になります。遺伝子パネル検査を保険適用しても、そこで導かれた治療法が混合診療ルールに抵触すれば患者の医療費負担は重くなり、普及の制約になりかねません。

 そのため厚労省は例外として混合診療が認められる「患者申し出療養」の仕組みを使いやすくします。該当すると薬代は全額自己負担のままですが、保険診療分は原則3割ですみます。

 国立がん研究センター中央病院が抗がん剤治療の計画書を事前に作り、各地の病院が共有。過去の事例から病院内の準備期間を2カ月程度に短縮できる見込みで、患者の申し出から3カ月半程度で治療を始められそうです。

 遺伝子検査で最適な治療法と示されそうなのは保険適用外の抗がん剤が大半とみられ、保険外の治療を希望する患者が大幅に増える可能性があります。胃がんに効果がある保険適用の抗がん剤を、保険外となる肺がんの治療で使うことが有効という結果が示されることなどがあり得ます。

 国立がん研究センターによると、生涯でがんに罹患するリスクは男女ともに「2人に1人」。がんゲノム医療は一人ひとりの患者の状況に合わせた「個別化治療」につながると期待を集めます。ただ、すべてで有効な治療法に結び付けられるわけではありません。数十万円に上る検査費用が保険適用されれば、患者の自己負担は原則3割に抑えられる一方、保険財政を圧迫する恐れもあり、費用対効果の検証が必要になりそうです。

 2019年1月15日(火)

 

■リストバンド型端末で見守り、異変に早期対応 高齢者施設などで導入進む

 リストバンド型の端末を使い、高齢者の見守りや健康維持に役立てる取り組みが広がっています。昨年12月、京都市内のサービス付き高齢者向け住宅では、こうした端末を使った24時間の脈拍モニタリングを始めました。脈拍の異常時にはアラート機能が働き、早期に対応することで、本人や家族の安心につながることが期待されています。

 京都市下京区のサービス付き高齢者向け住宅「メディカルグランメゾン京都五条御前」に住む80歳代の男性は、手首に着けた黒のリストバンド型端末をうれしそうに触り、「最近腕時計をしていないから、代わりになるね」とほほ笑みました。

 男性の室内には専用のデータ通信装置が設置されており、端末が測定した脈拍をリアルタイムで送信。施設側が専用アプリで脈拍の波形を確認できるほか、上限や下限の数値を一定時間超えた場合、自動で職員にアラート(警報)が発信されます。使用者自身が異変を感じて緊急ボタンを長押しすることで、職員に急変を知らせることも可能です。

 施設を運営する「ジェイ・エス・ビー」によると、看護師が24時間常駐していることもあり、看取りを視野に入れた高齢の入居者も少なくありません。高齢者事業本部運営企画部長の井上隆司さん(40歳)は、「脈拍異常を検知することで、いつの間にか亡くなるという事態を防げるのではないか。患者さんと家族の安心、職員の負担軽減にもつながれば」と期待しています。

 昨年12月から試験的に、80~90歳代の入居者5人がリストバンド型の端末を使用。効果が確認できれば、同社が運営するほかの高齢者施設でも導入していく予定です。

 システムは岐阜県笠松町の松波総合病院が発案。2016年からは岐阜市の医療関連サービス会社「トーカイ」も加わって、昨年10月に実用化しました。医療機器としての認証を取得し、高い測定精度を備えています。トーカイの大塚幸平さん(28歳)は、「すでに100人程度のデータを集め、異変が起きた場合の波形を蓄積しつつある」といいます。

 リストバンド型の端末を見守りに生かすサービスはほかにもあり、セキュリティー会社「セコム」は2017年7月から、ホームセキュリティーのオプションサービスとして「セコム・マイドクターウォッチ」を開始。利用者自身がセコムに救急通報できるほか、突然意識を失って転倒した際の衝撃を検知したり、逆に一定時間体の動きを検知しなかった場合、セコムに自動的に通報される機能もあります。広報担当者は「常時装着することで、屋内外を問わずお客様の安全や健康を見守ることができる」と話しています。

 一方、リストバンド型の端末を使い、介護予防のための機能訓練を効率的に行う取り組みも始まっています。2017年8月にスタートした「モフトレ」は、利用者が専用の端末「モフバンド」を腕や足に着け、プログラムに沿った機能訓練などを行うと、どの程度できたかなどの結果を自動で記録。サービスを提供する「モフ」(東京千代田区)によると、高齢者を対象とする数百施設で導入され、高齢者向けのデイサービスなどで数千人が利用しています。可動域やバランス、実施回数などを正確に把握できるため、成果が見えやすく、本人のやる気にもつながっているといいます。

 2019年1月14日(月)

 

■梅毒など性感染症への注意呼び掛ける 全国各地の成人式で

 若者の間で梅毒などへの感染が課題になる中、成人式を機会に性感染症への啓発を進めようという動きが広がっています。

 14日の成人の日を前に、13日に成人式が行われた山形市では、参加者に梅毒の感染が広がっていることを示すチラシを配布したり、性感染症の検査への呼び掛けが行われたりしました。

 今回の性感染症の検査は国の研究事業の一環で無料で行われ、希望者は郵送で後日に届く検査キットで指先の血液を採って返送すると、梅毒やHIV(ヒト免疫不全ウイルス)などに感染していないかをインターネット上で匿名で確認できます。

 新成人の男子大学生は、「病気のことをあまり知らないので、知ることができてよかった。無料なら検査をしてみようと思います」などと話していました。

 このほか、14日に成人式が行われた東京都新宿区では、性感染症への対策をまとめた冊子や相談先の電話番号が書かれた文房具などが配付されました。冊子には、若い世代の感染が増えていることや、予防方法などがまとめられています。

 そして、会場でも梅毒への感染が20歳代で特に多くなっていることを記したシートを使って、新宿区の担当者が集まった人達に直接、感染への注意を呼び掛けました。

 また、仙台市では、成人式会場にブースを設けて、性感染症の種類や症状などをまとめたチラシを配布したほか、さいたま市でも市の職員と地元の大学生が協力して、梅毒の感染が増加している実態や相談・検査の窓口を紹介したチラシなどを配り、感染予防の啓発を進めました。

 2019年1月14日(月)

 

■千葉大の附属病院に1・5億円の賠償命令判決 医療ミスで患者が植物状態

 千葉大学医学部付属病院(千葉市中央区)で形成外科手術を受けた埼玉県の男性(26歳)と両親が、術後の処置のミスで重い障害を負ったとして千葉大に約3億2000万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が10日、東京地方裁判所でありました。佐藤哲治裁判長は看護師の注意義務違反を認め、約1億5000万円の支払いを命じました。

 判決によると、男性は2012年8月の20歳当時、上あごと下あごのズレを矯正する手術を受けました。この際、気管を切開して呼吸用チューブを取り付けられましたが、手術の4日後、チューブにたんが詰まって窒息状態に陥りました。異変に気付いた女性看護師2人が5分ほど吸引したものの改善せず、低酸素脳症による意識障害になり、脳に障害が残りました。

 判決は、看護師が呼吸の回数や脈拍を確認する義務があったにもかかわらず、男性の様子を十分に把握していなかったと指摘。医師を呼ばずに吸引を続けたのも不適切で、「早く処置をしていれば障害は生じなかった」と認定しました。

 男性は今も植物状態で、会見した父親(55歳)は「初歩的なミスが重大な事故につながるということが明らかになったのは大きな意義があると思います。病院には今後、息子の回復のために治療に全力を挙げてほしい」と話しました。千葉大学医学部附属病院総務課は「判決文を確認できていないのでコメントについては差し控える」としました。

 2019年1月14日(月)

 

■アルツハイマー病関連のタンパク質蓄積で学習効果喪失 認知機能が正常でも

 アルツハイマー病に関連する異常なタンパク質が脳に蓄積している人は、認知機能に異常がなくても学習効果を発揮できないとする研究結果を、東京大学の岩坪威(たけし)教授(神経病理学)らの研究チームがまとめました。アルツハイマー病の早期発見と治療につながる可能性があるといいます。

 認知機能が正常な60~84歳の男女154人を対象にして、2008~2014年に調査を実施。19人の脳で、アルツハイマー病患者にみられる異常タンパク質「アミロイドβ(ベータ)」の蓄積が確認されました。

 研究チームは対象者全員に、現在の日時や場所などを問う基本的な認知機能検査を3年間、半年から1年ごとに計5回受けてもらいました。その結果、アミロイドβの蓄積がある人は、ない人に比べて点数が伸びませんでした。

 アミロイドβに加え、もう一つの異常タンパク質「リン酸化タウ」が増えている人は、植物や動物の名前を挙げさせる検査の点数がよくありませんでした。いずれも、学習効果の喪失が原因とみられます。

 アルツハイマー病(アルツハイマー型認知症)は、認知症患者全体の半数以上を占めます。今回の結果を受けて、岩坪教授は「潜在的な認知機能の障害を判定する新たな基準を作り、早期の診断と発症予防につなげたい」と話しています。

 2019年1月13日(日)

 

■小学4年生への検診で受動喫煙が激減 埼玉県熊谷市が実施

 小学4年生を対象に「受動喫煙検診」を実施する埼玉県熊谷市で、たばこの煙に含まれるニコチンの代謝物質が尿中に高濃度含まれる子供の割合がこの約10年で大幅に減少し、受動喫煙の被害が激減しています。熊谷市は検診を長期間行うことで、保護者への意識付けができた結果だと分析しています。

 受動喫煙検診は熊谷市が2007年度から公費で実施。小学4年生全員に呼び掛け、9割に当たる1500人程度が毎年受診しています。尿中のニコチン代謝物質「コチニン」の濃度を測定し、どの程度受動喫煙の被害に遭っているかを調べています。高い値が出た場合は、小児科を受診させるよう保護者に警告文を送っています。

 検診で「高値」とされた子供の割合は、2007年度は12・6%、2008年度は18・9%だったのが、2017年度は4・0%まで減りました。検出限界値以下の子供の割合も、2008年度は44・9%だったのが、2017年度には81・3%と倍近くに増えました。毎年実施して保護者に検診の存在が知られることで、「受動喫煙防止への意識付けができ子供の健康が守られるようになった」と、熊谷市健康づくり課は成果を評価しています。

 2011年度からは中学2年生を対象に、アンケートによる追跡調査を実施。同じ子供の2013年度(小学4年生)と2017年度(中学2年生)で比較すると、保護者(父親)の喫煙率は48・8%から38・08%と約10ポイント減っており、保護者の意識改革にもつながっています。

 熊谷市の取り組みをほかの自治体も評価し、群馬県太田市は熊谷市の検診を応用し、3歳児検診での実施を検討中。千葉県木更津市も、効果的な施策として近く導入する予定。

 子供の受動喫煙に詳しい鈴木修一・国立病院機構下志津病院小児科医長は、「検診は保護者が禁煙する動機になっている。通常の検尿で調べることができ負担も少ない。ほかの自治体でも取り組んでいくべきだ」と話しています。

 2019年1月13日(日)

 

日本病理学会、検査画像にAI導入へ 胃がん判定で正解率8割

 組織や細胞を患者から採取し、がんの有無などを調べる病理検査に人工知能(AI)を導入しようと、日本病理学会が取り組んでいます。すでに8割近い正解率で胃がんを判定でき、「病理医のサポートができるレベル」にあるといいます。医師不足や見落としミス軽減の救世主として期待されます。

 がんなどが疑われる部位を薄く切り取り、病理医が顕微鏡で調べて病気の確定診断をします。がんの場合は悪性度なども判定し、主治医が治療方針や手術方法を決める参考にします。

 しかし、現状は病理医の人手不足と高齢化が深刻。日本病理学会によると、国内の病理専門医は2012年時点で、医師全体の0・8%に当たる約2500人。平均年齢は50歳を上回ります。日本病理学会の研修認定施設ですら2016年の調査で、病床数が400超の510病院の半数近くで常勤病理医が0~1人でした。

 病理医の過重負担や、それに伴う病変見落としは大きな課題です。100件につき約1件の割合で見落としを含む誤診が生じ、100件につき約5件の割合で悪性度などの判定間違いがあるといいます。医療機関が提訴されたケースもあります。

 そこで、国立情報学研究所(東京都千代田区)と協力し、病理検査を支えるAIの利用に乗り出しました。全国の16大学病院や学会支部からデジタル化した11万症例の検査画像計17万枚を集め、病理医が「胃がん」と診断した約1000例の画像をAIに学習させました。

 その結果、76・7%の割合でAIと病理医の判断が一致するようになったといいます。がんではない画像を26・5%の割合で「がん」と誤認してしまうため、実証実験で精度向上を目指します。

 実証実験は2019年にも、徳島県の3病院と福島県の7病院で開始します。2020年度には滋賀、長野両県の計17病院も参加する予定でえす。各地の中核となる病院に画像を送り、病理医とAIの判断を突き合わせます。将来、大腸がんや婦人科系のがんなど他の疾患にも拡大したい考えです。

 開発に携わる京都大病院の吉澤明彦医師(病理診断科)は、「人間とAIとで二重に検査画像をチェックできるようになれば、見落としの可能性や訴訟リスクなどによる病理医の精神的な負担も軽減できる」と期待を寄せています。

 2019年1月13日(日)

 

■AIが心電図判定、治療の要否を瞬時に見極め 慶大医学部が開発

 胸の痛みで救急外来を受診した患者の心電図から、急性心筋梗塞(こうそく)などでカテーテル治療が必要かどうかを見極める人工知能(AI)を開発したと、慶応大学医学部の佐野元昭准教授、後藤信一助教らが発表しました。論文が10日、アメリカの科学誌「プロスワン」電子版に掲載されました。

 後藤助教らは、過去10年間に慶応大学病院の救急外来を受診した約4万人の心電図のデータを基に、急性心筋梗塞や狭心症などカテーテル治療が必要な心電図の特徴をAIに学習させました。その結果、AIは、心電図だけで、経験を積んだ医師よりも高い80%以上の精度で治療の要否を判断できるようになったといいます。

 心臓に酸素や栄養を運ぶ血管が詰まったり、流れが悪くなる病気の中でも、完全に詰まる急性心筋梗塞は、心筋の壊死(えし)が急速に進み、死に至ることもあります。血管を広げるカテーテル治療によって、できるだけ早く血流を復活させることが重要ながら、手足などの動脈から心臓近くまで細い管を挿入するカテーテル検査は血管を傷付けるリスクなどを伴うため、専門医が心電図のほかに血液検査や超音波検査などの結果を総合的に診断した上で行ってきました。

 データに基づく次世代の個別化医療を研究している高木周・東京大学教授(生体力学)は、「将来は自覚症状が出る前の段階で兆候を発見できるようになる可能性がある」と評価しています。

 2019年1月12日(土

 

■昨年の梅毒患者、6923人に上る 出会い系アプリの利用も一因

 国立感染症研究所は11日、性行為などを通じて感染する梅毒の2018年患者数が速報値で6923人だったと発表しました。前年より約1100人増え、48年ぶりに6000人を超えました。

 感染が広がっている原因として、スマートフォンの「出会い系アプリ」や「マッチングアプリ」の利用があるとの見方も出ています。

 梅毒は、性的な接触でスピロヘータ (梅毒トレポネーマ)という細菌がうつる感染症。1948年からの報告制度では年間1万人以上の年もあったものの、近年はペニシリンなどの抗生物質の普及で患者数が年間数百人まで減り、「過去の病気」とされていました。それが2011年からは8年連続で増加を続けています。感染すると発疹のような症状が現れ、病気が進むと脳や神経に障害が出ます。特に注意が必要なのが妊婦で、胎内で感染した子供に失明など重い症状が出ることがあります。

 急増しているのが20歳代女性で、3年間で約10倍になりました。2018年1~9月の患者統計によると、20歳代女性は893人で全体(5081人)の2割近く、女性患者(1730人)の5割を占めました。男性は20~40歳代の幅広い年代に広がっています。地域別では、東京都(1284人)や大阪府(874人)など大都市部で目立っています。

 主な感染経路として、性風俗産業の利用者と従業員の接触があります。東京都の新宿区保健所が区内の医療機関を受診した患者を調べたところ、異性間性的接触による感染のうち、男女とも約半数は性風俗産業を半年以内に利用したか、関連の仕事に従事していた人でした。

 さらに、出会い系アプリやマッチングアプリ、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)の利用を指摘する専門家もいます。出会い系アプリなどは簡単な操作を売りにして2012年ごろから普及し、売買春の温床にもなっているとされます。保健所の相談窓口でもここ数年、これらの利用を明かす相談者が出てきました。

 帝京大学ちば総合医療センター産婦人科の鈴木陽介医師らは、東京都、大阪府、岡山県など人口当たりの梅毒患者が多い都道府県は、ある3つの出会い系アプリの利用率も高い傾向があるとの調査結果をまとめ、昨年秋の日本性感染症学会で発表しました。鈴木医師は、「アプリ利用による男女の接触が新たな感染経路になっている可能性があり、詳細な調査と対策を急ぐべきだ」と指摘しています。

 厚生労働省は今月から、医療機関による患者発生の届け出内容について、「性風俗への従事歴や利用歴の有無」を加えるなどして感染経路を詳しく分析する方針です。

 2019年1月12日(土

 

■鉄剤注射、陸上に限らず全競技で注意喚起 医師会が文書通知へ

 高校駅伝の一部強豪校で貧血治療用の鉄剤注射が不適切に使われていた問題で、日本医師会は全国の医師に向け、陸上選手に限らず各競技、全年代の選手に対し安易に使用しないよう文書で注意喚起する方針を決めました。近く日本医師会長名で、各都道府県医師会などに所属する約21万人の医師に伝達します。

 日本陸上競技連盟が昨年12月に表明した鉄剤注射の「治療名目でも原則禁止」の方針に、医師会が協力することになります。

 陸連は昨年12月27日、鉄剤注射の不適切使用の根絶には医療現場との連携が不可欠と判断し、日本医師会に協力を要請していました。

 陸連や医師会の複数関係者によると、文書では、鉄剤注射が高校生の一部選手に使われていた実態があり、陸連から根絶に向けて協力依頼を受けた経緯などを説明。「鉄分の過剰摂取につながることがあり、慢性の副作用を引き起こす恐れがある」などと指摘し、選手や指導者から依頼されても安易に使わないよう注意を促しています。

 医療現場の理解をより深めてもらうため、文書には陸連の注意事項も添付します。陸連は、重度の貧血治療でも「最初は経口鉄剤」とし、注射による治療を行う場合は血液検査をするよう求め、鉄剤注射の「過剰使用による副作用は重篤」などと注意喚起しています。

 鉄剤注射は、重篤な貧血に対する医療行為で認められている一方、血液中で酸素を運ぶヘモグロビンを増やすため持久力が上がる効果もあるとして、女子の長距離選手を中心に2000年ごろから全国的に広まったとされます。

 陸連は2016年4月、肝機能障害などを引き起こす恐れがあるため、鉄分の取りすぎに注意するよう選手や指導者に警告。駅伝強豪校での不適切使用の実態が明らかになった昨年12月、鉄剤注射を原則禁止とする方針を表明し、根絶に乗り出しました。

 2019年1月12日(土

 

■子供の難病、6疾病を追加指定 夏ごろから医療費を助成

 厚生労働省の専門委員会は10日、子供の難病として公的な医療費助成を受けられる「小児慢性特定疾病」として、非特異性多発性小腸潰瘍症など6疾病を新たに指定すると決めました。夏ごろから助成が始まる見込み。日本小児科学会などから指定の要望が出ていました。

 小児慢性特定疾病は生命にかかわる慢性の病気で、長期にわたり高額な医療費がかかることなどが指定の要件。現在は小児がんやダウン症、先天性風疹症候群など756疾病、約11万人が対象になっています。

 新たに指定されるのは、非特異性多発性小腸潰瘍症、MECP2重複症候群、武内・小崎症候群、脳動静脈奇形、海綿状血管腫(脳脊髄)、巨脳症―毛細血管奇形症候群。

 2019年1月12日(土

 

■昨年の風疹患者、2917人に上る 10年余りで2番目の多さ

 国内で昨年報告された風疹の患者数は2917人に上り、現在の方法で統計を取り始めた2008年以降の10年余りで2番目に多くなりました。専門家は今年も流行が続く恐れがあるとして、早ければ3月中にも始まる見込みの男性を対象にした予防接種の制度も活用するなどしてワクチンを接種してほしい、と呼び掛けています。

 昨年、全国の医療機関から報告された風疹の患者は7月下旬から増え始め、1週間に報告された患者数は10月中旬に218人と最も多くなったほか、12月下旬まで16週連続して100人を超えました。

 その結果、昨年1年間の患者数は2917人と、現在の方法で統計を取り始めた10年余りで2013年に次いで2番目に多くなりました。

 患者全体の7割が首都圏の患者だったほか、男性の患者数は女性の4倍以上となり、男性患者全体の8割を国のワクチン制度変更の影響で免疫のない人が多い30歳代から50歳代が占めました。都道府県別の累計患者数では、多い順に東京都945人、神奈川県402人、千葉県383人、埼玉県191人、福岡県187人、大阪府120人。

 国立感染症研究所によりますと、風疹の流行は数年にわたって続く傾向があることから、今年も流行する恐れがあるとしています。

 風疹は妊娠中の女性が感染すると赤ちゃんに障害が出る「先天性風疹症候群」となるケースがあり、厚生労働省によりますと、感染の中心となっている39歳から56歳の男性を対象に予防接種を原則無料とする制度が早ければ3月中にも始まる見込みです。

 国立感染症研究所感染症疫学センター第三室の多屋馨子(たや・けいこ)室長は、「春から再び患者が増加傾向になる恐れがあることから、女性は妊娠前にワクチンを接種するほか、対象となる男性は制度を活用してほしい」と呼び掛けています。

 2019年1月11日(金)

 

■勤務医の残業上限、年2000時間も検討 救急・在宅医療など特例で

 2024年度から勤務医に適用される残業時間の罰則付き上限について、一部の特定の医療機関に勤める医師では年1900~2000時間の水準とする案を厚生労働省がまとめたことがわかりました。2035年度末までの特例として検討します。一部の医師が続けている長時間労働を追認する形となり、異論も出そうです。

 対象は、地域医療への影響が懸念され、救急・在宅医療など緊急性の高い医療に対応する全国の施設を想定。業務がやむなく長時間になる医師に限ります。ほかの一般勤務医の上限は年960時間とします。新年度以降、企業に適用される上限は、休日労働を含めて年最大960時間。特例ではこれらの2倍もの長い残業が認められることになります。

 医師の働き方改革を議論する検討会に11日に提案し、3月末までに結論を出す方針といいます。

 案では、複数の月で平均80時間超という脳・心臓疾患の労災認定基準の残業時間を考慮し、勤務医は年960時間を上限とします。

 この上限まで残業を減らすと診療に大きく影響する場合に特例を認め、年1900~2000時間程度以内で検討します。この場合、月平均約160時間となり、1カ月だけで精神障害の労災認定基準に匹敵します。特例は医師不足や勤務環境の改善を進めながら段階的に引き下げることも検討します。月当たりの上限はいずれも100時間とする一方、例外を認めます。

 年2000時間という突出した長さの背景には、医師の1割が年1920時間超の残業をしている実態があります。こうした医師が一人でもいる病院は全体の3割で、大学病院や救急救命センターがある病院に限ると9割に上ります。規制が始まれば、医療機関は上限超えの勤務医をゼロにすることが求められますが、医師は急に増やせず、一部は対応しきれないとみられているためです。

 医師の都道府県間の偏在を解消する目標時期を2036年としていることなどから、特例は2035年度末までとしているといいます。

 2015年度の調査では、自殺や死を毎週または毎日考える医師が3・6%いるとされます。医師の健康を確保するため、特例を適用する場合、終業から始業までに最低9時間の休息を確保する勤務間インターバルや連続勤務を28時間までとする制限を義務付ける方針。

 2019年1月11日(金)

 

■肺炎ワクチン接種、助成期間を2023年まで延長 高齢者の接種低調により

 厚生労働省の専門部会は10日、高齢者の肺炎予防に有効な肺炎球菌ワクチン接種に対する現行の公費助成を5年間延長することを決めました。2023年度まで引き続き、65、70、75歳といった5歳刻みの年齢に達する時に接種を受けた場合、8000円前後かかる費用の約3割が助成されます。

 肺炎は高齢者の死因として増加傾向にあり、肺炎球菌は肺炎の原因となるほか、血液中などに入ると敗血症や髄膜炎などを引き起こします。ワクチンは1回の接種で、肺炎の発症や重症化を予防する効果が続きます。本来、法律に基づく定期接種として、公費助成を受けられるのは65歳になる時だけですが、厚労省は接種の機会を増やすため、2014~2018年度に限定して、助成対象とする年齢の範囲を拡大する経過措置を取りました。

 しかし、接種率は現在、どの年代の高齢者も10~40%程度にとどまることから、厚労省の部会は経過措置の延長が必要と判断しました。過去に接種したことがある人は、対象外となります。今後、医療機関などを通じて、高齢者に対する周知の強化も課題になります。

 2019年1月11日(金)

 

■センサーで病気の予兆つかむ住宅を開発へ 積水ハウスが2020年春にも販売

 脳卒中などによる自宅での突然死を防ごうと、大手住宅メーカーが病気の予兆をつかむ「見守りシステム」を持たせた住宅の開発に乗り出しました。

 1人暮らしの高齢者などが脳卒中や心筋梗塞などで自宅で倒れると、発見が遅れて突然死につながるケースが後を絶たず、いかにその予兆を早期につかむかが課題となっています。

 こうした中、大手住宅メーカーの「積水ハウス」は、住宅内にセンサーを設置し、病気による体の変調を早期につかむ「見守りシステム」の開発を始めました。

 寝室や浴室、それにリビングの壁などにセンサーを設置して、住んでいる人の心拍や呼吸などを計測し、異常があれば警備会社などに連絡が行く仕組みです。

 脳卒中の年間発症者数は約29万人とされ、その79%が「家」で起き、脳卒中の患者数は老若男女問わず日本では100万人を数えています。

 積水ハウスはNEC、NTTコムウェア、慶応大理工学部、慶応大病院、コニカミノルタ、産業技術研究所、日立製作所と協力して「見守りシステム」の開発を進め、2020年春には実用化して、自社の物件を始め、ほかの住宅メーカーの物件や介護施設などにも広げていきたいとしています。

 積水ハウスの仲井嘉浩社長は、「高齢化が進む中、家はただ単に帰って安らぐ場所だけでなく、健康を維持する場所になるなど、その役割は今後どんどん増えてくると思う」と話しています。

 2019年1月10日(木)

 

■頭頸部のがん治療にiPS細胞を投与 理研と千葉大が年内にも治験開始へ

 人のiPS細胞(人工多能性幹細胞)から特殊な免疫細胞を作り、顔や首にできる「頭頸部(とうけいぶ)がん」の患者に投与する臨床試験(治験)を、理化学研究所と千葉大学の研究チームが年内にも始める計画であることが明らかになりました。

 免疫力を高めてがん細胞の縮小を目指す治療法で、iPS細胞を使ったがん治療の治験は国内では例がないといいます。

 頭頸部がんは、鼻や口、喉、あご、耳などにできるがんの総称で、日本ではがん全体の5%程度を占めます。進行した頭頸部がんでは現在、抗がん剤と放射線を組み合わせた治療が主に行われていますが、患者の半数は再発するとされ、新たな治療法が求められているといいます。

 治験を計画しているのは、理研生命医科学研究センターの古関明彦・副センター長、千葉大の岡本美孝・教授(頭頸部腫瘍学)らの研究チーム。計画では、健康な人のiPS細胞から免疫細胞の一種「ナチュラルキラーT(NKT)細胞」を作製。この細胞をがん患部につながる血管に注入します。対象は手術などが困難な再発患者3人で、最初に3000万個を注入し、副作用などを見ながら細胞数を変えて計3回投与します。2年かけて安全性や効果を調べる予定。

 NKT細胞は、自らがん細胞を攻撃する上、他の免疫細胞を活性化する働きを持つとされます。頭頸部がんの患者自身のNKT細胞を培養し、患者に戻す千葉大の臨床研究では、1回の投与でがん細胞が最大3~4割縮小したといいます。しかし、NKT細胞は血液中に0・1%程度しかなく、培養にも時間がかかるため、繰り返し培養して投与するのは難しいという課題がありました。

 こうした課題を解決するため、研究チームは無限に増えるiPS細胞に着目。人の血液からNKT細胞を採取し、いったんiPS細胞にして大量に増やした後、再びNKT細胞に戻す方法を開発しました。この細胞をマウスに投与した結果、がんの増殖が抑えられました。今回の治験で安全性に問題がなければ、有効性を調べる治験に移ります。肺がん治療への応用も検討しています。

 日本がん免疫学会理事長の河上裕・慶応大教授は、「NKT細胞はがんを攻撃する他の免疫細胞を誘導する可能性も報告されており、腫瘍が縮小するだけでなく、生存期間も延びれば、有効な治療法となり得る」と話しています。

 2019年1月10日(木)

 

■忘れた記憶を薬で回復、東大など発表 神経刺激、脳を活性化

 忘れてしまった記憶を薬で回復させる実験に成功したと、東京大学や北海道大学などの研究チームが発表しました。記憶を回復させる効果がある薬の発見は世界初といいます。

 アルツハイマー病などの認知症の治療に役立つ可能性があります。アメリカの科学誌「バイオロジカル・サイカイアトリー」電子版に8日、論文が掲載されました。

 研究チームは20歳代を中心とした健康な男女計38人に100枚程度の写真を見せ、約1週間後に覚えているかを調べる実験を実施。めまいの治療薬として使われている「メリスロン」を飲んだ場合と、飲まなかった場合で正解率を比較しました。

 その結果、薬を飲むと、忘れていた写真を思い出すケースが増え、正解率は最大で2倍近く上昇することが判明。忘れた写真が多かった人ほど効果があり、見たかどうか判別が難しい写真で正解率がより高まる傾向があることも明らかになりました。

 この薬は脳内の情報伝達にかかわる「ヒスタミン」という物質の放出を促進する働きがあります。この効果で記憶を担う神経細胞が活性化し、忘れた記憶の回復につながったとみています。ただし、もともと成績がよかった人では正解率は低下しました。はっきりした記憶に対してはヒスタミンが雑音のように働き、かえって記憶をぼやかしている可能性があるといいます。

 記憶が回復する仕組みを詳しく解明し、認知症の研究成果と組み合わせることで、アルツハイマー病などの新たな治療法につながる可能性がありまうs。

 研究チームの池谷裕二東大教授(薬理学)は、「記憶回復のメカニズムがわかったので、今後はより効果の高い薬の開発につなげたい。認知症患者らの生活の質を高められる可能性がある」と話しています。

 2019年1月9日(水)

 

くわえるだけで磨ける全自動歯ブラシを発売へ 早大などが開発

 口にくわえるだけでブラシが自動的に動き、歯を磨ける全自動タイプの歯ブラシを早稲田大学などのチームが世界で初めて開発しました。自力で歯磨きができない高齢者の自立や、介護の軽減に役立つといいます。

 アメリカのラスベガスで日本時間9日に開幕する家電・IT見本市「CES」で発表します。

 開発した歯ブラシは手のひらに載るサイズの小型装置に、マウスピースのような形のブラシを付けて使います。口にくわえて電源を入れると、内蔵モーターでブラシが上下左右に柔軟に動き、歯を磨けます。

 歯の裏側や奥歯のかみ合わせ部分も磨くことができ、手で磨くのと同等の効果があるといいます。複数の歯を同時に磨くため、所要時間は30秒程度ですみます。電源は充電池を使用。

 早大の石井裕之准教授(ロボット工学)と、大学院生が起業した企業「Genics」(ジェニックス、東京都新宿区)が共同開発しました。来年度中に数万円程度で試験販売を開始し、ブラシは口の大きさに応じて数種類を用意します。

 筋力が衰えて自力で歯を磨けない高齢者や障害者のほか、手を使わずにすむため健常者が歯を磨きながら服を着ることもできます。今回は成人向けに開発しましたが、子供や中高生の口に合う歯ブラシも開発していくといいます。

 石井准教授は、「すべての人を歯磨きの煩わしさから解放する。これはもう歯磨き革命だ」と話しています。

 2019年1月9日(水)

 

■認知機能リハビリ用ゲームがタブレットに対応 東京工科大学が開発

 東京工科大学は、統合失調症などの認知機能障害者の就労支援などを目的としたリハビリテーション用ゲームソフトウエア「Jcores(ジェイコアーズ)」の改訂版を開発しました。2019年4月をめどに病院施設などで運用を開始する予定。

 Jcoresは、東京工科大学コンピュータサイエンス学部の亀田弘之教授らの研究チームが、帝京大学医学部の池淵恵美教授らと2011年に共同開発した日本初の認知機能リハビリテーション専用のゲームソフトです。この種のソフトウエアとしては現在、日本で最も普及しており、統合失調症患者などの就労支援を行うプログラム「VCAT-J」として、デイケア施設や大学病院での臨床現場で運用されています。

 統合失調症では、注意や記憶などの認知機能の障害により、日常生活や就業がうまくいかなくなることが知られています。同ゲームソフトによるトレーニングで、これらの改善効果が報告されています。

 今回の改訂版(Ver2.0)では、従来のパソコン版(Windows)に加え、タブレット端末(iOS、Android)にも対応するとともに、高齢者向けにタッチパネルなどの操作性を向上させました。こうした改良によって、より多くの病院施設などでの導入が期待されるとしています。

 2019年1月9日(水)

 

■インフルエンザ流行、注意報レベルに 1週間で44万6000人が医療機関を受診

 厚生労働省は9日、全国約5000カ所の医療機関から昨年12月24~30日に報告されたインフルエンザの患者数が1医療機関当たり11・17人となり、注意報レベルとされる10人を超えたと発表しました。年末年始の交通機関の混雑、企業や学校の再開などで、患者はさらに拡大している恐れもあります。

 国立感染症研究所によると、昨年12月24~30日に全国の医療機関を受診した患者は約44万6000人と推計され、前週の約31万3000人より約13万3000人増加しました。今シーズンの推計患者数の累計は、約106万人となりました。

 都道府県別では、1医療機関当たり患者数が10人を上回ったのは13都道府県で、多い順に、北海道32・07人、愛知県30・45人、岐阜県20・33人、熊本県14・53人、三重県13・68人、福岡県13・59人、長野県12・78人、東京都11・53人、高知県11・23人、神奈川県11・21人、大阪府11・01人、長崎県10・47人、埼玉県10・02人。このうち北海道と愛知県は、大流行中の目安となる警報レベルの30人を超えています。43都道府県で、前週よりも患者数が増えました。

 直近5週間に検出されたウイルスは、2009年に新型として流行したA型が最も多く、A香港型、B型が続きました。

 厚労省は、動向を注視するとともに、こまめな手洗いや、せきやくしゃみが出る時はマスクを着けるといった「せきエチケット」の徹底を呼び掛けています。インフルエンザは例年、1月末から2月上旬にかけて流行のピークを迎えます。

 2019年1月9日(水)

 

■無痛分娩、両親と病院側が和解 重い障害を負った長女は死亡

 麻酔で出産の痛みを和らげる無痛分娩(ぶんべん)の処置が原因で、生まれた長女が脳に重い障害を負ったとして、京都府内に住む両親が医療法人「ふるき産婦人科」(京都府京田辺市、休院中)と男性院長に約1億円の損害賠償を求めた訴訟が、大阪高裁で和解しました。昨年12月7日付。

 産婦人科側が、長女が重篤な状態に至ったことを厳粛に受け止めて遺憾の意を表し、今月末までに5840万円を支払います。

 訴状などによると、30歳代の母親は2011年4月、同産婦人科で無痛分娩のため、背中に細い管を差し込み麻酔薬を注入する「硬膜外麻酔」を受けました。お産が進まなかったことから陣痛促進剤(子宮収縮薬)を注入するなどしたがうまくいかず、帝王切開で出産。仮死状態で生まれた長女は脳性まひで寝たきりとなり、2014年12月に3歳8カ月で死亡しました。

 昨年3月の1審・京都地裁判決は、院長が合理的な理由がないのに多量の陣痛促進剤や高濃度の麻酔薬を投与し、分娩中に胎児の状態を確認する装置を使用しなかった過失があると認定しましたが、脳性まひとの因果関係は認めず、請求を棄却。両親が控訴し、大阪高裁が昨年9月に和解を勧告していました。

 和解条項では、和解金を7400万円とした上で、出産事故に関する公的な補償金制度で両親に支給された1560万円を和解金から差し引き、産婦人科側には5840万円の支払い義務があるとしました。両親が産婦人科側の刑事責任を問わないことも盛り込まれました。

 ふるき産婦人科では、2012年と2016年にも母子2組が麻酔後に重度障害を負う事故があり、いずれも京都地裁で損害賠償請求訴訟が起こされています。うち1組の家族が院長を業務上過失致傷容疑で刑事告訴しましたが、不起訴(嫌疑不十分)となっています。

 2019年1月8日(火)

 

■男性向けの尿漏れ専門の外来を開設  関西医大病院、日本で初

 関西医科大学附属病院(大阪府枚方市)は7日、前立腺がんなどの手術後に起きる男性の尿漏れを専門に診る「男性尿失禁外来」を開設したと発表しました。病院によると、こうした専門外来は日本の医療機関で初めてといいます。

 自分の意思と関係なく尿が漏れてしまう「尿失禁」は女性に多く、国内の40~50歳代女性の2~3人に1人が経験しているとの研究もあります。一方、男性は女性より尿失禁は少ないものの、前立腺がんの手術後に尿失禁に悩む人が1万人以上いるとされます。

 新たに開設した外来では、通常の泌尿器科では対応が難しい術後の重症患者を主な対象にします。前立腺の摘出手術は国内で年間約2万件あり、多くの患者が尿漏れを経験します。1年後にはほとんどの人が改善しますが、深刻な状況が続く人が1~3%いるといいます。

 尿を止める筋肉や神経が傷付くことが原因で、重症の場合、尿漏れをしにくくする人工尿道括約筋を体内に植え込む手術もありますが、この手術ができる医療機関は限られているといいます。

 関西医科大学附属病院腎泌尿器外科の木下秀文教授は会見で、「専門外来ができることで、これまで悩んでいた人たちに正確な情報を発信することができる。正しい治療を行うことで患者の生活を大きく改善できるはずだ」と話しています。

 会見には実際に人工尿道括約筋を装着している男性も出席し、「尿漏れがひどいと外出もできなかったです。同じ悩みを抱える人にも勧めたいです」と話していました。

 男性尿失禁外来は毎月奇数週の土曜日午前。問い合わせは大学病院の代表072・804・0101。

 2019年1月8日(火)

 

■風疹の新規患者、16週ぶりに100人を下回る84人 累計患者は2806人

 国立感染症研究所は8日、風疹の患者が昨年12月17~23日の1週間で新たに84人報告されたと発表しました。週当たりの新規患者が100人を下回ったのは、昨年8月27日~9月2日以来16週ぶり。

 流行が落ち着きつつある様子がうかがえます。ただし、2012~13年の流行時には、新規患者数が一度減った後に再び増加に転じたこともあります。国立感染症研究所は引き続き、免疫の有無を調べる抗体検査や、免疫状態の低い人のワクチン接種を呼び掛けています。

 都道府県別では、依然として東京都が最多で19人。以下、多い順に神奈川県14人、千葉県と福岡県9人、茨城県と兵庫県4人。

 2018年の累計患者数は、2806人となりました。都道府県別の累計患者数では、多い順に東京都920人、神奈川県387人、千葉県376人、埼玉県183人、福岡県160人、愛知県119人、大阪府115人。

 2019年1月8日(火)

 

■東京都、インフルエンザ流行注意報を発表 昨シーズンより2週間遅く

 東京都内でインフルエンザの患者が急激に増えていることから、東京都は8日、インフルエンザの「流行注意報」を発表し、こまめな手洗いなど対策の徹底を呼び掛けています。

 東京都によりますと、12月30日までの1週間に都内の419の医療機関から報告されたインフルエンザの患者の数は1つの医療機関当たり11・53人で、前の週のおよそ1・5倍になりました。このため、都は今後大きな流行に拡大する恐れがあるとして、8日、インフルエンザの流行注意報を発表しました。

 都内に流行注意報が出るのは、昨シーズンより2週間遅いということです。

 自治体別では、最も多いのが荒川区で17・29人、次いで八王子市が15・94人、大田区が15・81人などとなっています。また、都内では、12月30日までに213の幼稚園や小中学校で学級閉鎖などの措置がとられたということです。

 これまで検出されたウイルスを分析したところ、10年前に「新型インフルエンザ」として世界的に流行した「H1N1型」が全体の71%を占めているということです。

 東京都は、こまめな手洗いのほか、せきやくしゃみが出る場合にはマスクを着用を心掛けるなど、対策の徹底を呼び掛けています。

 このほか、関東の各県では神奈川県と埼玉県、群馬県で8日、インフルエンザの「流行注意報」が発表されました。

 2019年1月8日(火)

 

■胎児の染色体異常を調べる羊水検査、2015年から減少 新型出生前検査利用で

 胎児に染色体異常があるかどうかを確認する羊水検査の実施数(推計)が、2015年以降、減少に転じていたことがわかりました。

 妊婦の高齢化を背景に、2014年までの10年は増加の一途でした。採血だけで調べられる新型出生前検査の登場により、新型検査で陰性の場合、母体に負担の大きい羊水採取をしなくてすむようになったためとみられます。

 羊水検査は妊婦の腹部に針を刺して子宮内の羊水を採るため、0・3%の確率で流産の恐れがあります。しかし、染色体異常が起こりやすい高齢妊娠の広がりとともに実施数は増加し、国立成育医療研究センターなどの推計によると、2014年は最多の2万700件に上りました。

 ところが、2015年に2万100件と減少に転じ、2016年は1万8600件とさらに現象しました。胎盤組織を採取し、染色体異常を調べる絨毛(じゅうもう)検査も2016年は減少していました。

 新型出生前検査は2013年4月に臨床研究として始まり、現在92病院が参加。参加病院の多くが加入する団体によると、2018年9月までの5年半に6万5265人が新型検査を受けました。

 対象は35歳以上や、過去に染色体異常の子供の出産歴がある妊婦らで、母親の血液に含まれる胎児のDNA断片からダウン症など3つの病気の可能性を調べます。新型出生前検査で陽性の場合、羊水検査や絨毛検査で最終確認が必要ですが、陰性なら行いません。

 昭和大学病院産婦人科の関沢明彦教授は、「新型検査が浸透すれば、妊婦の負担を最小限に抑え、流産のリスクも減らすことができるだろう」と話しています。

 2019年1月7日(月)

 

■子供の誤飲事故、たばこが4年連続で最多 厚労省調査

 2017年度中に各地の小児科から報告された子供の誤飲事故を分析した結果、たばこが原因だったケースが23・0%を占め4年連続で最多となったことが、厚生労働省の調査で12月30日までにわかりました。

 厚労省は、「子供の手の届く場所に放置したり、空き缶やペットボトルを灰皿代わりにしたりするのは絶対に避けるべきだ」と呼び掛けています。

 国立成育医療研究センター総合診療部(東京都世田谷区)など全国8カ所のモニター病院から寄せられた家庭用品などによる健康被害情報を分析。2017年度に子供の誤飲事故は640件報告され、原因はたばこが最多で147件でした。灰皿のたばこを食べたり、吸い殻を入れていたお茶の飲み残しを飲んだりするケースがありました。

 たばこ以外の原因は、医薬品・医薬部外品92件、食品類72件でした。

 年齢別では、ハイハイやつかまり立ちを始める「6~11カ月」が最多。「12~17カ月」と合わせ、1人で室内を移動できるようになる1歳前後の乳幼児が9割に上りました。

 たばこを誤って口に入れた場合、水などを飲ませるとニコチンが吸収されやすくなる恐れがあるといいます。厚労省の担当者は、「飲み物を与えず、直ちに病院を受診してほしい」と話しています。

 2019年1月7日(月)

 

■未承認の医薬品医療機器の個人輸入、麻薬取締官に捜査権限 厚労省が法規制を整備へ

 インターネットの普及で急増している未承認の医薬品などの個人輸入について、厚生労働省が近年目立つ偽造薬の流通や健康被害を防ぐため、法規制を整備する方針を固めたことが6日、わかりました。偽造薬を水際で食い止めるなど個人輸入を厳格に監視・管理ために、税関との連携を強化し、麻薬取締官に捜査権限を付与することを検討します。次の通常国会に医薬品医療機器法の改正案を提出することを視野に入れています。

 医薬品や医療機器、化粧品を営業目的で輸入する場合、厚労相や都道府県知事の承認・許可が必要になります。個人が自ら使用するために輸入する場合は、厚労省局長通知に基づき、地方厚生局に商品説明や医師の処方箋などを提出。他に転売や譲渡しないことを確認した上で、通関時に必要な確認済輸入報告書(薬監証明)を取得しなければなりません。ただし、2カ月分など個人で使用することが明らかな数量である場合は、薬監証明を得る必要がありません。

 個人輸入は近年急増しており、厚労省によると、薬監証明を得た個人輸入は2010年度に1303件、2851品目だったのが、2017年度は4450件、1万1159品目で、品目だけでも約4倍に膨れ上がりました。

 一方で、偽造薬や健康への被害も目立つようになりました。厚労省は2015年までの5年間で、日本向けに広告している海外サイトから製品を買い上げて分析した結果、表示と異なる医薬品成分が含まれる偽造薬が約3割あることを把握しました。2018年4月には、インターネットで「インド製」と表示された経口妊娠中絶薬を個人輸入し、服用した20歳代の女性が多量の出血やけいれん、腹痛などの健康被害を訴えました。2002年には中国製ダイエット食品を輸入し、4人が死亡したケースもあります。

 国際刑事警察機構(ICPO)は2014年に、「世界的な組織犯罪グループが偽造薬の製造や流通に関与している」との報告書をまとめており、厚労省が対応に乗り出しました。

 厚労省は、薬監証明制度の根拠が局長通知レベルにとどまっていることから、法令上の位置付けを明確化することを検討。偽造薬の流通を防ぐとともに、個人輸入の医薬品が正規ルートに入ることを防止します。

 その上で手続き違反や取り締まりに当たって、輸入制限を可能にするための法令を整備します。不正ケースに対する捜査の主体については、薬事規制当局である厚労省の麻薬取締官や都道府県の麻薬取締員が最適と判断しています。

 2019年1月7日(月)

 

■眼鏡で初の定額制、月2100円で掛け替え可能 メガネの田中が全国116店に導入

 メガネの田中(広島市中区)は4月1日から、毎月一定の料金を払うことで眼鏡を掛け替えられる定額制サービスを始めます。洋服などさまざまな業界で「サブスクリプション」(定額制)サービスが広がる中、眼鏡チェーンでは全国初の取り組みで、新規需要の開拓を狙います。

 定額制サービスは「なりたい自分になる」という考え方から「ニナル」と名付け、同社が全国14都府県に展開する116店で導入。利用者は月額2100円(税抜き)で、数百種類の中から眼鏡かサングラスを1本選べます。3年間の契約期間中、フレーム3本、レンズ3組をそれぞれ、いつでも交換できるといいます。

 対象のフレームは、高価格帯とされる3万円台を中心にそろえ、毎回新品を用意します。レンズも交換の度に視力を合わせます。子供向けに月額1800円(税抜き)で、視力の変化や体の成長に合わせてフレームやレンズの交換が無制限のサービスも同時に開始します。

 メガネの田中の調査では、眼鏡を選ぶ際に色やデザイン、形にこだわりたい人が多いものの、実際の購入時は無難なデザインや従来と同じタイプを選ぶ人が多いといいます。担当者は、「今までにないデザインの眼鏡を選び、新年度の学校や職場を新たなイメージで迎えてほしい」とPRしています。

 2019年1月6日(日)

 

■見付けにくいがんを血液や尿で早期発見 検査技術の開発が相次ぐ

 早期に発見することが難しい膵臓(すいぞう)がんや腎臓(じんぞう)がんを、血液や尿で調べる技術開発が相次いでいます。千葉県がんセンターは尿から膵臓がんの目印を見付ける技術を開発し、大阪大学は血液中の4種類の物質をもとに、85%の精度で膵臓がんの患者を見分ける手法を作りました。

 また、がん研究会と大阪大学は、腎臓がんの検査の目印を見付けました。それぞれ健康診断などの簡易検査で実用化できれば、早期治療や生存率向上につながります。

 膵臓がんは発見しにくく、6割以上の5年生存率を見込める「ステージ1」などの早期に見付かる患者は1割という報告があります。腎臓がんも血液検査での目印がなく、8割が別目的の検査で見付かっており、がんが大きくならないと自覚症状がありません。

 磁気共鳴画像装置(MRI)など高価な装置で調べる方法もありますが利用が限られ、安く簡便な検査法が求められています。

 千葉県がんセンター外科の星野敢主任医長と石毛文隆医長は、がんから尿へ出るRNA(リボ核酸)の一種を目印に、膵臓がんを見付ける技術を開発しました。13人の患者と30人の健康な人を対象にした実験では、7割強の精度で患者を見分けることができました。

 実用化には9割の精度が必要とみており、複数の目印を組み合わせるなどの改良を行い。企業に働き掛けて実用化を目指すといいます。

 大阪大学の土岐祐一郎教授と秋田裕史助教は、血液中の4種類の脂質から膵臓がんを調べる手法を開発しました。116人の患者と138人の健康な人で試すと、患者を見分ける精度は85%でした。秋田助教は、「精度は有望な水準にある。より多くの症例で確かめたい」と話しています。

 がん研究会の植田幸嗣プロジェクトリーダーと大阪大学は、がんが血液中へ出す微粒子に着目。その表面にある分子の「AZU1」を目印に、腎臓がんを見付ける手法を作り、初期のがんの患者でも半数以上を検出できました。東ソーが診断装置を作製しており、1~2年後の臨床試験(治験)を目指しています。

 血液や尿からがんを早期に見付ける検査技術の開発には、島津製作所や日立製作所などの企業が積極的に取り組んでいますが、乳がんや大腸がんなど患者数が多いがんが中心です。

 2019年1月6日(日)

 

■訪日客など外国人患者の診察時に通訳費を加算へ 厚労省方針

 厚生労働省は、通訳の確保など医療行為以外のコストのかかる外国人の診察に関し、コスト分を患者に転嫁できるよう算定の目安を定めます。訪日客など外国人患者は今後も増える見通しで、厚労省は医療機関の経営への影響などを考慮し、今年度中に、患者にコスト分を請求する際の算定方法などの具体例を示します。

 厚労省が「月50人の外国人患者のある中規模病院」を想定し、医療行為以外にかかる追加コストを試算したところ、「ウェブサイトの多言語対応など初期費用」に50万~200万円、「通訳や外国語対応できる看護師の確保など運営費」に年1800万~2600万円がかかります。患者1人当たり3万~5万円に相当します。

 だが、厚労省の2016年の調査によると、8割の医療機関が外国人患者に追加コスト分を請求していませんでした。一方で、通常の医療費の2~3倍に設定しているケースもあり、国民生活センターに「喉に刺さった魚の骨を大学病院で取り除いてもらったら5万円近くも請求された」と中国人からの苦情が寄せられました。

 4月には外国人A労働者受け入れを拡大する改正出入国管理法の施行も外国人患者増加の要因になりそうで、厚労省は、放置すれば地域医療の混乱を招きかねないと判断。患者の理解を得られるような方策を示します。追加コストに基づく患者負担の積算方法を示すことなどが想定されます。

 2019年1月5日(土

 

■リンゴ病が首都圏や東北地方で流行中 妊婦感染で流産の恐れ

 両頬が赤くなることからリンゴ病とも呼ばれる「伝染性紅斑」が、首都圏や東北地方を中心に流行しています。主に子供がかかり自然によくなることが多い一方で、妊婦が感染すると胎児に悪影響を及ぼし、流産や死産につながる恐れもあり、注意が求められています。

 リンゴ病の原因はヒトパルボウイルスB19で、感染した人の唾液、たん、鼻の粘液などに触れ、それが自分の口や鼻の粘膜に付いたり、せきの飛沫を吸い込んだりして広がります。10日から20日ほどの潜伏期間の後に発熱やせき、くしゃみなど風邪と似た症状が現れるほか、両頬に赤い発疹、手や足に網目状の発疹が現れます。

 小児が感染しても、ほとんどが重症化せずに軽快します。成人では、頬の赤い発疹などの特徴的な症状が出ることは少ないものの、強い関節痛のために歩けなくなることもあります。妊婦が感染すると、本人には全く症状がなくても胎盤を介して胎児に感染し、流産や死産となる可能性があります。

 国立感染症研究所が全国約3000の小児科定点医療機関から受けている患者報告によると、週当たりの患者数は2018年は10月ごろから増え始めました。その後、近年で最も多い水準で推移しています。

 都道府県別では、最新のデータ(12月10~16日)で1医療機関当たりの患者が最も多いのは宮城県(5・64人)。以下、東京都(2・05人)、埼玉県(1・98人)、新潟県(1・91人)、岩手県(1・87人)、神奈川県(1・45人)、山梨県(1・33人)と続いています。全国平均は0・88人。

 妊婦については厚生労働省研究班が流行した2011年に全国調査したところ、母親から胎児への感染が69例報告され、うち流産が35人、死産14人、中絶3人。感染者の約半数は自覚症状がありませんでした。半数以上の人は家族や子供が発病しており、家庭内での感染に注意する必要があります。

 かずえキッズクリニック(東京都渋谷区)の川上一恵院長によると、東京都でも昨年秋ごろからはやっているといい、「発病前に感染が広がるので予防の難しい面もあるが、妊婦さんは人混みに出るのを控え、出掛ける時はマスクの着用を心掛けてほしい」と話しています。

 2019年1月5日(土

 

■ユニクロ、脱プラスチックの買い物袋を導入へ 2019年にも世界2000店舗で

 ストローから始まった企業の脱プラスチックの取り組みが、世界の大手アパレル企業に広がり始めました。ファーストリテイリング傘下のユニクロは、日本を含む世界2000店舗で使うレジ袋や商品の包装材を全面刷新します。スペインのZARAも2019年以降、日本の店舗で紙製のレジ袋に順次切り替えます。環境問題への対応によって企業を選別する動きが投資家や消費者の間で広がっており、環境重視の経営を進めていきます。

 日本企業の脱プラスチックの動きは、これまで外食店でのストローが中心でした。ただ、消費者から出る年400万トンの廃プラスチックのうちストローはごくわずかであり、買い物袋やスーパーなどで使うレジ袋のほうが圧倒的に量が多いため、アパレル企業の取り組みが定着すれば脱プラスチックの実効性が上がります。

 ユニクロが世界で顧客に提供する買い物袋は、年間数億枚になります。すでにヨーロッパなど環境規制が厳しい一部地域では、紙製の袋に切り替えましたが、大半の店舗ではプラスチック製の袋を使っています。

 約830店を展開する日本を含め世界規模で脱プラスチックを進めるため、新たな素材の活用など実験・検証を始めました。レジ袋だけでなく、年間で約1億枚を販売する機能性肌着「ヒートテック」の包装材なども見直しの対象とします。

 レジ袋では、微生物が分解できる生分解性プラスチックや、紙など複数の素材を対象に、コストと環境対応の観点から切り替えが可能か検討します。導入当初は一定のコスト増を容認するとみられますが、コスト低減に向けた研究も続けます。すでに試作品を作っており、安全性や安定性に加えて消費者の反応を踏まえて切り替え時期を判断するといいます。

 ファーストリテイリングの柳井正会長兼社長は、「サステイナビリティー(持続可能性)はあらゆる企業にとって最大の課題」と指摘。投資家が環境問題などへの対応を重視する「ESG投資」で選ばれるようにします。「コストが高いから対応しないでは業界のリーダーになれない」としており、基本的には全世界で統一する方針です。

 ZARAを展開する衣料品世界首位のインディテックスは、日本でプラスチック製の買い物袋から紙製に切り替える計画です。現在はビニールバッグと紙製バッグを使い、靴やかばんなどの商品をビニールバッグで包装しています。2019年以降に、紙製に一本化したい考え。

 スウェーデンのヘネス・アンド・マウリッツ(H&M)は2018年11月、日本で買い物袋を紙製に切り替え、有料にすると発表。国内88店で使う買い物袋を順次、紙製にします。

 良品計画も、2019年春に開店する東京・銀座の「無印良品」で紙製を使い、利用客の反応をみて他店への拡大を検討します。

 2019年1月5日(土

 

■新型がん免疫薬「CAR―T」の治験開始へ 武田薬品が固形がんを対象に

 武田薬品工業は4日、新型のがん免疫療法として知られる「CAR―T」の臨床試験(治験)を今年中にも開始すると発表しました。国内スタートアップ企業から全世界での開発権を獲得しました。武田がCAR―TCの治験を行うのは初めて。がん分野のパイプラインを強化し、世界大手との競合に挑みます。

 治験を開始するのは、国立がん研究センター・山口大学発スタートアップ企業のノイルイミューン・バイオテック(東京都中央区)が保有する候補品で、固形がんを対象としています。武田は2017年9月から同社と共同研究を進めており、今回の契約につながりました。

 CAR―Tは「キメラ抗原受容体T細胞」の略で、免疫を担うT細胞の遺伝子を操作して、がんを見付ける能力を高めたもの。スイス製薬大手ノバルティスファーマの「キムリア」が世界初の製品として2017年にアメリカで実用化し、1回5000万円以上の超高額な薬価が話題となりました。日本では承認申請中です。

 CAR―Tを開発する企業は世界的に増えており、製薬大手が開発を手掛けています。日本でも第一三共や小野薬品工業、タカラバイオなどが参入して、治験やスタートアップ企業との提携を進めています。

 CAR―Tは一般に、白血病やリンパ腫などの血液がんには高い効果を発揮するものの、肺がんや乳がんなどの固形がんでは効果不十分でした。ノイルイミューン・バイオテックのCAR―Tは、山口大の玉田耕治教授が開発した技術を活用し、免疫を活性化する成分を出すよう改良を加えてあり、固形がんへの攻撃力を高めています。

 同様の改良を加えたCAR―Tが世界では複数登場しており、開発競争が激化しつつあります。武田は早期に固形がんへの効果を実証し、この領域で主導的な立場を狙う考えです。

 2019年1月4日(金)

 

■がん遺伝子変異、加齢で増加 飲酒・喫煙が促進、京大などが裏付け

 がんの原因になり得る遺伝子の変異は、健康な人でも多く起き、それは加齢や飲酒、喫煙によって増えるとの研究報告を、京都大学や東京大学などの研究チームがまとめました。加齢や飲酒、喫煙が、がんのリスクを高めることは統計学的な傾向で明らかになっていますが、遺伝子レベルでも裏付けられた形です。

 研究報告は2日付で、イギリスの科学誌「ネイチャー」(電子版)に掲載されました。

 研究チームは、喫煙や飲酒とがんの関連が大きいとされる「食道」に着目。23~85歳の食道がん患者を含む134人について、がんになっていない「正常な食道上皮の組織」を採取。自身の血液細胞の遺伝子と比較し、遺伝子の変異がどれほど起きているか、網羅的に調べました。

 その結果、134人のうち食道がんの患者は全員で、健康な場合も94%の人で、何らかの遺伝子の変異がみられました。がん患者かどうかにかかわらず、変異の数は加齢に伴って増加。飲酒や喫煙の習慣がある人は、ない人に比べて、変異の数が増すペースが統計的に有意に高まっていました。がんとの関連が深いとされる「がん関連遺伝子」でも、同様の傾向がみられました。

 ただし、がん細胞で一般的にみられる遺伝子変異のパターンとは異なる部分もあったといいます。

 研究チームの小川誠司・京都大教授(腫瘍(しゅよう)生物学)は今回の研究成果について、「がんの初期の発生を解き明かす大きな手掛かりだ。一方で、(正常な細胞が)がんになるにはまだ段階があり、飲酒や喫煙をしない人はそれほど心配することはない」と話しており、早期診断や予防につなげたいといいます。

 研究チームによると、がんは細胞の特定の遺伝子に異常が生じ、増殖することで発症します。加齢に加え、生活習慣によってリスクが高まるとされますが、詳細メカニズムは不明。

 2019年1月3日(木)

 

■昨年夏の猛暑、地球温暖化なければ起こる確率0%だった 気象研究所などがスパコンで分析

 気象庁気象研究所(茨城県つくば市)と東京大学大気海洋研究所の研究チームは、国内の昨年の記録的な猛暑は地球温暖化の影響がなければ、ほぼ起こらなかったとする分析結果をまとめました。

 地球温暖化が進むと、熱波や豪雨などの異常気象が増加すると予測され、個々の異常気象に地球温暖化がどう影響しているか分析する研究が進んでいます。研究では、温暖化が進む実際の地球と、温暖化が起こっていない架空の地球の気温などをスーパーコンピューターで再現して比較します。

 研究チームは今回、温暖化なしのケースでは温暖化の原因となる二酸化炭素の濃度や海面水温などを産業革命前のデータを使って計算。日本で昨年のような高温が発生する確率を比較しました。温暖化ありのケースでは昨年以上の高温は19・9%の確率で発生しましたが、温暖化なしのケースではほぼ0%でした。

 また、昨年夏の西日本豪雨について、降雨量への温暖化の影響も分析。6月28日~7月8日の東海から九州までの地域全体の平均的な降水量は、1980年以降の気温上昇がなかった場合と比べ、6%程度増えた可能性があることもわかりました。

 特定の豪雨に対し、温暖化がどれくらい影響していたか示されるのは今回が初めてです。東京大学大気海洋研究所の渡部雅浩教授は、「6%増加というとたいした数字ではないようだが、それだけ雨量がかさ上げされたことによってより強い雨が広域で続くことにつながったと考えている」と話しています。

 昨年は、埼玉県熊谷市の気温が観測史上国内で最も高い41度1分に達したほか、東日本の6~8月の平均気温が1946年の統計開始以降最も高くなりました。温暖化対策の国際的な枠組み「パリ協定」では産業革命前からの世界の平均気温の上昇幅を2度未満にすることを目指していますが、すでに1度程度上昇しています。

 今田由紀子・気象研究所主任研究官は、「温暖化が進み1・5~2度上昇すれば、過去数回しか経験したことがないような猛暑が当たり前になる可能性がある」と指摘しています。

 2019年1月3日(木)

 

■小児がん治療で抗体を失った子供へのワクチン再接種に助成広がる 大阪市や京都市など90市区町村

 小児がん治療に伴って骨髄移植の手術を受けたなどの影響で、治療前に受けた定期予防接種ワクチンの抗体が失われてしまった子供を対象に、再接種の費用を独自に助成する自治体が増えています。予防接種法で公費補助は1回だけで、再接種は個人の全額自己負担となる中、患者側の負担が大きいとして患者団体などが助成を求めており、国も制度改正の検討を始めました。

 「健康面も家計の面も、不安が大きかった」。愛知県豊橋市の女性(38歳)の長女(9歳)は、1歳の時に肝臓に腫瘍ができる小児がんになり、肝臓移植を受けました。長女は2歳で退院しましたが、今も免疫抑制剤の服用が必要です。風疹やはしかの抗体ができにくく、何度も予防接種を受ける必要があります。

 女性は入院に付き添い、ドナーとなった夫も会社を休みました。収入が減る一方で、再接種の費用のほか、交通費や食費などで増えた出費は計200万円近くに上ります。

 女性は別の自治体で再接種への助成制度があることを知り、豊橋市に要望。豊橋市は昨年4月から、小児がん治療を受けている子供を対象に助成を始めました。女性は「再接種が必要な子は全国にいる。制度が広がってほしい」と願っています。

 風疹やはしかなど定期予防接種は、予防接種法に基づいて市町村と特別区が実施。費用の約9割を国が負担し、ほとんどの自治体では無料です。予防接種法の施行令で、小児がんによる長期療養などで定期予防接種を対象年齢内に受けていない場合は、回復後2年以内は接種時の助成が可能となっています。しかし、一度接種を受けた後の再接種は、1種類のワクチンにつき1人1回の助成の原則を超えるために対象外となってしまいます。

 しかし、小児がんなどの治療で、骨髄移植など造血幹細胞移植を受けると、一度得た抗体が高い確率で消失します。抗がん剤治療や免疫抑制剤の服用で抗体が弱まるケースもあります。

 1年間で新たに小児がんと診断される子供は全国で約3000人。造血幹細胞移植例(20歳未満)は年550~650例とされます。すべての定期予防接種の対象ワクチンを再接種した場合、10万~20万円以上が必要で、患者の家族らが法改正や助成を求めてきました。

 厚生労働省が昨年秋に、初めて実施した調査では、昨年7月時点で、大阪市や名古屋市、京都市、新潟市、浜松市、堺市など90市区町村が助成を実施し、そのうち28自治体が全額補助していました。83自治体が近く助成を始める予定で、238自治体も実施を検討しています。

 全国に先駆けて、6年前に制度を始めた東京都足立区では、病気治療で抗体が消失し、医師の証明が出たケースに助成。担当者は「がんの子供を支える家庭の経済的負担を少しでも軽減したい」といいます。

 多くの自治体で、造血幹細胞移植の患者を助成の対象としていますが、抗がん剤治療は「免疫が消失することが医学的に実証されていない」として対象から除外している自治体もあります。

 大阪府池田市の女性(40歳)の長男(9歳)は2年前に白血病になり、抗がん剤治療で寛解しましたが、昨年10月に水ぼうそうが重症化して入院。7年前に接種したワクチンの抗体が、抗がん剤治療で失われたとみられるものの、池田市では助成の対象外です。女性は「感染を広めないために、再接種は重要。対象に加えてほしい」と求めています。

 「国が対応すべき課題」として、助成を見送る自治体もあります。厚生労働省は「今後、法改正の必要性や制度の在り方について、厚生科学審議会で検討していく」としています。

 2019年1月2日(水)

 

■千葉大発のバイオベンチャー、遺伝子治療の治験開始へ 今年の春にも

 千葉大学発のバイオベンチャーのセルジェンテック(千葉市中央区)は、遺伝子治療の臨床試験(治験)を今年春にも国内で始めます。患者から取り出した脂肪細胞に必要な遺伝子を入れて体内に戻す治療法で、同様の治療法は国内ではまだ認められていません。治験は千葉大と共同で進め、成功すれば血友病などさまざまな病気にも応用する方針です。

 まずはコレステロールが体内に大量に蓄積する状態を引き起こすまれな遺伝性の病気「LCAT(エルキャット)欠損症」を対象にします。遺伝子が欠けているために、患者が若くても腎不全や角膜混濁などの症状につながる特徴があり、根治する方法は現在ありません。

 欠けている遺伝子を入れた脂肪細胞を患者に移植すると、細胞が必要な酵素「LCAT」を安定して出し、症状が改善する仕組み。脂肪細胞の寿命は10年ほどといわれており、数年間は効果が持続すると考えられています。

 LCAT欠損症は日本で20人ほどの患者がいます。3人の患者を対象に治験を実施し、2020年にも再生医療・遺伝子治療用細胞医薬品としての承認を申請する方針です。この治療法に対して、セルジェンテックは日本医療研究開発機構(AMED)の補助を受けています。

 使う遺伝子を変えれば糖尿病、血友病、ライソゾーム病などの疾患に応用可能で、セルジェンテックでは血友病向けの開発を進めています。血友病は年間数百万~数千万円の薬剤費がかかり、その代替法として遺伝子治療への期待が高まっています。

 セルジェンテックは2003年設立。日水製薬(東京都台東区)が出資し、同社と共同で細胞培養などの技術を研究しています。

 2019年1月2日(水)

 

■餅をのどに詰まらせ10人搬送、うち80歳代の1人死亡 東京都内

 東京都内で1日午前0時から午後4時までに、餅をのどに詰まらせる事故で27~98歳の男女10人が病院に救急搬送され、うち1人が死亡しました。東京消防庁が1日、発表しました。

 同庁によると1日午前10時10分ごろ、昭島市に住む80歳代の男性が、自宅でお雑煮の餅をのどに詰まらせて心肺停止の状態になり、その後に病院で死亡が確認されました。50~80歳代の男女計4人も重篤になっているといいます。

 同庁は窒息事故を防ぐポイントとして、餅は小さく切る、ゆっくりとかんで飲み込む、高齢者や乳幼児の食事には注意を払う、応急手当ての方法を理解するなどの点に気を付けるよう、注意を呼び掛けています。

 2019年1月1日(火)

 

■安く早く酔えるストロング系缶チューハイに人気 アルコール依存症に陥るリスクも

 スーパーやコンビニで売られる缶チューハイは1缶100円程度と手軽で、年末年始の家飲みでも主役となりそうです。元来は低アルコール飲料として人気を集めましたが、近年はアルコール度数7~9%と高めのストロング系が、「安く、早く酔える」と支持されています。その一方で、気軽なイメージで飲みすぎてしまうリスクに、専門家は警鐘を鳴らしています。

 缶チューハイやハイボール、カクテルなどは、RTD(Ready to drink、炭酸水などで割らずにすぐ飲める酒)と呼ばれ、ここ20年、市場が拡大しています。中でも人気を引っ張っているのが、アルコール度数4度~7度が一般的だった缶チューハイのストロング系商品。調査会社インテージによると、2017年のRTD市場売り上げの半分強をストロング系が占め、4年前の2倍近くになりました。現在の主流は9%で、今年はワインの度数に匹敵する12%のチューハイも発売されました。

 切っ掛けとなったのは、キリンビール(東京都中野区)が2008年に発売したアルコール度数8%の「氷結 ストロング」。同社マーケティング本部の名郷根宗(なごうねたかし)さんは、「2008年はサブプライムローン問題やリーマン・ショックの影響で、国内でも節約志向が強かった。1缶で飲みごたえがあり、缶ビールの約半額というお得感が時代のニーズをとらえた」と話しています。

 実際、同社が2017年に「缶チューハイを購入する時の選び方」について300人に複数回答でアンケートを行ったところ、「よりコストパフォーマンスがよいもの」と答えた人が66%でした。

 国内で缶チューハイの先駆けとなったのは、1984年に宝酒造(京都市下京区)が発売した「タカラcanチューハイ」。酒類の消費動向などを調査し、専門誌を発行する酒文化研究所(東京都千代田区)の山田聡昭(としあき)さんは、「街の酒場でのチューハイブームを受けて作られ、辛口テイスト。焼酎ベースで、中高年男性の酒というイメージだった」と振り返っています。

 イメージががらりと変わったのは2000年代。ビール各社が参入し、ベースを焼酎からウオツカなどに変更。アルコール度数は5%前後で果汁感も強め、女性も手に取りやすいよう缶デザインにもこだわり、愛好者の裾野が広がりました。

 大手メーカーによるビール類の総出荷量は13年連続で減少しており、各社はチューハイなどのRTDに一段と力を入れています。酒文化研究所の山田さんは、「ブドウや米から時間をかけて作るワインや日本酒などと異なり、原酒と香料などの組み合わせで作るRTDは商品開発がしやすい」とメーカーの利点も指摘しています。

 果汁感の強さや炭酸の爽快感、カラフルな缶のデザインで「軽い酒」とイメージしがちな缶チューハイ。しかし、ベースは焼酎やウオツカなどで、ストロング系となると度数は7%以上です。9%のチューハイ(350ミリリットル)の純アルコールは約25グラムで、厚生労働省が1日の「節度ある適度な飲酒」の量とする「純アルコール20グラム程度」を1缶で超えてしまいます。

 アルコール専門外来がある「慈友クリニック」(東京都新宿区)の中田千尋院長は、「近年、アルコール依存症と診断される患者さんの多くに、ストロング系がかかわっている印象を受ける」と話しています。

 以前は、患者が「よく飲む酒」としてカップ酒やペットボトル入り焼酎が挙がりましたが、今はストロング系缶チューハイを何缶も飲んでいると話すケースが急増。また、一般的な350ミリリットルではなく、ロング缶と呼ばれる500ミリリットルを選んでいる人が多いといいます。

 慈友クリニックでは、「1人で時間の切れ目なく酒を飲む日が、連続2日以上あること」をアルコール依存症の診断基準の一つとしています。中田院長は、「低価格でどこでも手軽に買えるチューハイなどが、絶え間ない飲酒を招く恐れがある」と指摘しています。

 特に、女性は注意が必要になります。RTDはレモン・グレープフルーツ・桃・ぶどう・オレンジなどの果汁感が強く爽快感があるものや、甘めのものを各社が競って発売しており、男性よりも女性に高い人気を呼んでいます。「個人差もあるが、男性と比較し、女性の代謝能力は約半分。十分注意してほしい」と中田院長。

 アルコール依存症の治療で知られる国立病院機構・久里浜医療センター(神奈川県横須賀市)によると、アルコールの分解は、肝臓・心臓・筋肉などの働きに左右されます。女性は、一般的に男性よりも体が小さく、肝臓のサイズも比例することや、体脂肪が多い分、筋肉量が少ないので、分解にも時間がかかりやすいといいます。

 NPO法人「ASK(アルコール薬物問題全国市民協会)」では、女性をターゲットにしたアルコール商品のCMや、缶ラベルに果物などをあしらい、清涼飲料のような印象を招くパッケージデザインについて、酒類メーカーに改善を求めています。

 中田院長は、「早く酔いたいと、より高い度数を選ぶことが習慣化している人は注意してほしい」と呼び掛け、含まれるアルコール量についての知識を持つよう訴えています。

 2019年1月1日(火)

 

■3日程度の診療用の水確保を災害拠点病院などに要請へ 病院の2割で災害設備が不十分

 全国の災害拠点病院など主な病院の約2割が、機能を3日程度維持するのに必要な発電や給水設備を備えていないことが、厚生労働省の調査でわかりました。

 西日本豪雨や北海道地震など大災害が相次いだため、政府は重要インフラ(社会基盤)の緊急点検を実施。736カ所の災害拠点病院に、救命救急センターと周産期母子医療センターを加えた822病院を調べました。

 それによると、必要な非常用自家発電設備を持っていないのは157病院(うち災害拠点病院125カ所)。給水設備では207病院(同179カ所)でした。

 災害拠点病院は2012年に指定要件が改正され、3日分程度の燃料確保や適切な容量の受水槽の保有が義務付けられました。

 主な病院の25%に当たる207病院に必要な給水設備がないことが判明した事態を受け、厚生労働省は12月20日、医療提供が特に求められる災害拠点病院、救命救急センター、周産期母子医療センターに対し、診療を3日程度維持できる水の確保を求める方針を決めました。

 この日の専門家会合で厚労省が提案し、了承されました。医療現場では人工透析や洗浄、清掃などで大量の水を使います。昨年7月の西日本豪雨では大規模な断水が生じ、診療できなくなったり、自衛隊などから給水を受けたりする医療機関が相次ぎました。厚労省は今後、受水槽や地下水設備の増設に必要な経費を補助していきます。

 東京医科歯科大学の大友康裕教授(救急災害医学)は、「改正前に指定された病院で、要件を満たしていないところが多いのだろう。この機会に必要な設備を整えるべきだ」と話しています。

 2019年1月1日(火)

 

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