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■禁煙補助薬で6人意識障害か 車の事故3例
厚生労働省は30日、禁煙治療に使われる飲み薬「チャンピックス」(成分名・バレニクリン)を服用した患者のうち6人で、気を失うなど副作用が疑われる意識障害が起こっていたと発表しました。
厚労省によると、チャンピックスは国内で販売されている禁煙補助薬の中で唯一、脳に直接作用します。6人は40~70歳代の男女。うち3人は自動車の運転中に起き、2人が意識を失い、1人が眠くなりました。3人とも交通事故を起こしましたが、本人にけがはありませんでした。残り3人はボッーとするなど、意識のレベルが低下しました。
60歳代の男性は、飲み始めて8日目に意識障害が起きました。服用してから約20分後、車の運転中に意識を失い、気付いた時には側溝に車が突っ込んだ状態だったといいます。
チャンピックスは2008年5月から経口禁煙補助薬として販売され、年間使用者数は推計41万4000人。販売元の製薬大手ファイザー(東京都渋谷区)は医師向けの添付文書を改訂し、自動車の運転等危険を伴う機械の操作に従事させないよう注意を促しています。
チャンピックスはニコチンを含みませんが、脳の神経細胞のニコチンを受け取る部分をブロックし、禁断症状を抑えるだけでなく喫煙しても満足感が得られないような作用があります。少量で1日1回から始め、次第に回数と量を増やし、3カ月間続けます。チャンピックスを使用して医療機関で禁煙治療を受ける場合は、一定の条件を満たせば保険適用となり、ニコチン依存症の人の禁煙に効果を上げています。
2011年8月31日(水)
■最も不安な自然災害は「地震」が9割 家庭の防災グッズ費用は3割増
明治安田生命保険は30日までに、防災に関するアンケート結果をまとめました。地震や集中豪雨などの自然災害に「不安を感じている」と答えた割合は、前年調査に比べ7・4ポイント上昇の78・6パーセントに上り、2007年の調査開始以来、最高となりました。
最も不安を感じる自然災害としては、「地震」と答えた割合が90・9パーセントに上り、こちらも調査開始以来、初めて9割を超えました。2位は「集中豪雨・土砂災害等」の52・7パーセントで、「津波」と答えた割合も24・4パーセントと前年に比べ11・6ポイントも上昇しました。3月11日の東日本大震災の影響で、自然災害に関する意識が高まっていることがうかがえます。
同社は2007年から、9月1日の「防災の日」を前にアンケートを実施しており、今年は8月上旬に全国の20~59歳の男女1097人を対象に、インターネットで質問しました。
具体的な震災対策としては、「防災グッズの準備」が44・8パーセントと10・9ポイント上昇してトップ。「避難場所・ルートの確認」が23・2パーセント、「家具の固定・ガラス拡散対策の徹底」が21・8%と続きました。
防災グッズとして準備したものとしては、「懐中電灯」と答えた割合が91・9パーセント、「水」が89・2パーセント、「缶詰などの食料品」が85・4パーセントでした。また、防災グッズにかける平均費用は、「1万~3万円未満」と答えた割合が34・1パーセントで最も多くなりました。集計上の平均額は9606円となり、前年より2300円増えて調査開始以来、初めて増加しました。
震災時に持ち出したいものとしては、「携帯電話」が82・5パーセントとトップで、4年連続首位だった「現金」(77・8パーセント)を初めて上回りました。同社は、「安否確認の手段や情報源として高く評価されたのでは」と分析しています。
一方、防災グッズの準備など対策については「特に何もしていない」と答えた割合が35・7パーセントを占めたほか、3人に2人は家族との連絡手段や集合場所を決めていませんでした。被災地の東北や震災の影響が大きかった関東、東海以外の地域で、取り組みの遅れが目立ちました。
2011年8月30日(火)
■神奈川県の南足柄産の茶、出荷停止を解除 福島県のユズは停止指示
政府は29日、神奈川県南足柄市産の茶について、原子力災害対策特別措置法に基づく出荷停止を解除するよう県に指示したと発表しました。一番茶から食品衛生法上の暫定基準値(1キログラム当たり500ベクレル)を上回る放射性セシウムが検出され、出荷停止となっていました。茶の出荷停止解除は、全国で初めて。
厚生労働省によると、足柄市の3地域で採取して乾燥させた荒茶(三番茶)を検査した結果、含まれる放射性セシウムがいずれも基準値を下回り、解除条件を満たしました。出荷できるのは、三番茶以降となります。荒茶から検出されたセシウムは1キログラム当たり218~430ベクレル。
これまでに茶が出荷停止となった市町村があるのは、茨城、栃木、群馬、千葉、神奈川の5県。神奈川県では、9市町村で継続しています。
一方、政府は同日、福島県南相馬市と福島市で栽培されたユズに対しては出荷停止を指示しました。県が8月末を前に検査したところ、南相馬市は放射性セシウムが2400ベクレルと830ベクレル、福島市は760ベクレルと680ベクレルと、いずれも規制値を超えました。
2011年8月29日(月)
■関節リウマチ起こす物質解明 治療薬開発に期待、大阪大
免疫機能が過剰に働いて手足の関節に炎症や骨の破壊などが起こる関節リウマチの発症に、細胞内の「Ahr」というたんぱく質が関与することを大阪大や慶応大、国立環境研究所(茨城県)などのチームがマウスで解明、米科学アカデミー紀要電子版に掲載されました。
大阪大の岸本忠三教授(免疫学)は、「Ahrの働きを抑える薬剤を作れれば、関節リウマチの治療薬となるかもしれない」としています。
関節リウマチでは、リンパ球の一種「Th17細胞」が増え、過剰に働いています。
チームは、関節リウマチのような症状を強制的に発症させられる手法をマウスに使い、解析。Ahrを働かなくしたマウスではTh17細胞の数が減少し、関節リウマチを起こそうとしても発症しませんでした。このためチームはAhrが多く作られることで、Th17細胞が増えて発症するとみています。
Ahrが多く作られる原因としては、さまざまな免疫細胞が出す指令が過剰になることが考えられるといいます。Ahrは哺乳類や爬虫類の細胞に存在しますが、詳しい機能はわかっていませんでした。
現在の日本には、60~70万人の関節リウマチの患者がいます。女性の患者が男性の3~4倍と多く、発病するのは主に30~50歳代に認められますが、60歳を超えてから、あるいは16歳未満の若い時期に発病する人も認められます。関節リウマチの発病には遺伝が関係することがわかっていますが、家族に関節リウマチの人がいるからといって、必ずしも発病するわけではありません。
2011年8月28日(土)
■2010年度の概算医療費、過去最高36・6兆円 70歳以上が44パーセントを占める
厚生労働省は26日、2010年度の概算の医療費が前年度比3・9パーセント増の36兆6000億円になったと発表しました。比較できる01年度以降で金額、伸び率ともに最高となりました。
10年度に医療機関に払う診療報酬を0・19パーセント増やす改定をしたことに加え、高齢者の増加や医療技術の高度化で、医療費の増加が続いています。
概算医療費は、国民医療費から全額自己負担の医療費などを除いた金額で、国民医療費の98パーセント程度とされます。国民医療費より1年程度早く発表され、速報値の役割があります。
概算医療費の増加は8年連続。中でも、75歳以上は12兆7000億円と前年度比5・5パーセント増えました。高齢化が進むと医療費は増える傾向にあり、全体の44・3パーセントを70歳以上の医療費が占めました。
1人当たりの医療費は平均28万7000円。70歳未満は17万4000円で、70歳以上は79万3000円、後期高齢者医療制度の対象となる75歳以上は90万1000円。また、患者1人の1日当たり医療費は1万3900円で、09年度より3・8パーセント増えました。
医療機関などに支払う医療費の単価を決める診療報酬の見直しで、救急医療への報酬を10年度に引き上げた影響や医療技術の進歩が主な要因とされます。
診療の種類別にみると、入院が14兆9000億円(40・7パーセント)、入院外と調剤で19兆円(52パーセント)、歯科は2兆6000億円(7・1パーセント)。とりわけ、入院医療費は前年度比6・2パーセント増と、伸びが大きくなりました。逆に、処方箋1枚当たりの調剤医療費は前年度比0・6パーセント減の7984円で、10年度に薬価を減額改定した影響などで4年ぶりに減少しました。
厚労省は医療費抑制に向け、機能別に病床を再編して効率化するなどの入院日数の短縮策のほか、新薬より安い後発薬の使用促進策などを打ち出しています。ただ、費用対効果や目標の実現可能性には不透明な面もあり、今後一段の対策が必要となりそうです。
2011年8月27日(土)
■ビタミン剤、過信は禁物 女性の循環器疾患は低減
ビタミン剤を飲み続けた女性が心筋梗塞などの循環器疾患になるリスクは、全く飲まない人の6割に下がりますが、生活習慣に気を付けることが大前提ーー。国立がん研究センター(東京都中央区)などの研究班が25日、調査結果を公表しました。
研究班は全国9地域で、1990~2006年に40~69歳の男女約6万3000人を対象に、5年間隔で2回、ビタミン剤の摂取状況とがんや循環器疾患との関係を調べました。期間中に何らかのがんになった人は4501人、循環器疾患を発症した人は1858人。
女性の場合、「初回調査時も5年後もビタミン剤を飲んでいなかった人」に比べ、「初めは飲んでいたがやめた人」はがんのリスクが17パーセント、循環器疾患のリスクが8パーセント高くなり、「初めは飲んでいなかったが飲み始めた人」はがんのリスクが24パーセント高く、循環器疾患のリスクが32パーセント高くなりました。反対に、「初回も5年後も飲んでいた人」はがんのリスクが92パーセントに下がり、循環器疾患のリスクが60パーセントに下がりました。
ただし、「初めは飲んでいたがやめた」グループには肥満や高血圧、糖尿病、運動不足の人が多いなど、ビタミン剤の摂取以外の要因が影響した可能性があります。国立がん研究センターの笹月静予防研究部室長は、「過去に摂取の経験がある人は不健康な傾向がある場合が多く、その影響も出たのではないか」とみています。 反対に、「初回も5年後も飲んでいた」グループには、検診受診率が高く、食事によるビタミン摂取量も多いなどの特徴があったといいます。
男性の場合、ビタミン剤の飲み方でリスクに差はありませんでした。笹月室長は、「男性で差が出ないのは飲酒や喫煙により、ビタミン剤の効果が打ち消されたためと思われる。ビタミン剤以外にも、運動や食事などによる生活習慣の改善が重要だ」としています。
2011年8月26日(金)
■セシウムの22パーセント、ヨウ素の13パーセントが東日本の陸地に降下 国立環境研
東京電力福島第一原子力発電所事故で放出された放射性物質のうち、セシウム137の22パーセント、ヨウ素131の13パーセントが東日本の陸地に降下したことが、国立環境研究所(茨城県つくば市)の大原利真・地域環境研究センター長らの推計で判明しました。
放射性物質の降下は、北は岩手や宮城、山形の各県から、南は関東を越え静岡県にも届き、新潟や長野、山梨の各県にも到達しました。
研究グループは、第一原発からセシウム137が約1万テラ・ベクレル(テラは1兆)、ヨウ素131が約14万テラ・ベクレル放出されたと仮定し、大気汚染物質の拡散を予測するモデルを使って、3月11日の事故発生から3月下旬までに、放射性物質が東日本でどう拡散したかを分析しました。
その結果、セシウムは粒子となって雨や雲に取り込まれ、地表に降下するため、降雨などの気象条件の影響を受け、局地的に降下量が多い地域が生じることがわかりました。一方、ヨウ素は、ガス状のものが多く、第一原発を中心に同心円状に広がったことがわかりました。
2011年8月25日(木)
■屋外活動で放射線量に新たな目安 政府、学校などの除染支援
政府は、小中学校や幼稚園での屋外活動を制限する放射線量としてきた毎時3・8マイクロシーベルトの基準を廃止し、今後は毎時1マイクロシーベルトを目安とし、校庭などの除染を進める方針を固めました。
政府は、国際放射線防護委員会の被曝線量の基準に従い、これまで年間20ミリシーベルトを超えないように毎時3・8マイクロシーベルトと設定。しかし、生徒・児童らの被曝線量を年間20ミリシーベルトを目安に算定していたことに高すぎるとの批判があり、福島県内外で放射線量を下げるために校庭などの土を取り除く作業が進み、現在は、すべての学校などで毎時3・8マイクロシーベルトを下回っていることなどから、事実上これまでの「安全値」を見直す形になりました。
文部科学省は、子供が学校で受ける積算線量を年間1ミリシーベルト(1000マイクロ・シーベルト)以下に抑えることを目指し、除染費用を支援します。
毎時1マイクロシーベルトは、年間の積算放射線量が1ミリシーベルトを超えない目安と位置づけ、屋外活動を制限する新たな基準とはしない方針。年間1ミリシーベルトは、平常時に自然界や医療行為以外で浴びる線量の限度とされます。
文部科学省は新たな目安について、今月26日にも福島県に通知を出して周知を図ることにしています。
2011年8月24日(水)
■個人輸入薬に注意を、1割の人に副作用 厚労省が初の調査
インターネットのサイトなどから個人輸入した薬を服用した人の1割強に意識障害や血圧上昇などの副作用が起きていることが、厚生労働省研究班の初の調査で判明しました。こうした薬の中には、有効成分の量が多いなどの偽造品も多いものの、個人で輸入して使うことは薬事法で規制されません。厚労省は対策強化の検討を始めました。
研究班が薬を個人輸入した経験のある663人のうち、追跡調査に協力した157人に尋ねると、13パーセントが副作用を経験していました。薬の種類は、勃起不全(ED)治療薬が約3割で最多。育毛剤、ダイエット関連、睡眠薬が続きました。購入の理由は「安かった」が6割で、「病院に行かなくていい」が3割でした。
ED治療薬を販売している4社による調査でも、ネット上でED治療薬を買った276人の約4割が頭痛やほてりなど副作用のような症状を経験していました。
厚労省によると、2008年以降、タイのやせ薬を服用し、疑い例を含め3人が死亡しました。10年6月に奈良県立医大病院にけいれんや意識低下を起こして運ばれた40歳代の男性は、偽造ED治療薬を用いていました。
有効性や安全性が確認されていない薬でも、1、2カ月分程度を自分の責任で輸入、使うことは薬事法では規制されません。厚労省の部会では、個人使用の場合でも副作用を報告する仕組み作りや、広告やネットの監視強化などを求める意見が出ており、同省は年内にも規制強化策をまとめます。
厚労省研究班の主任研究者である木村和子金沢大教授は、「一般の人が、国境を越えネットで薬を買う行為は薬事法の規制の枠外にあることが、偽造薬が出回る温床になっている。国際的な取り締まりの仕組み作りも必要」と話しています。
2011年8月23日(火)
■ピーナツの渋皮でアルツハイマー予防 岐阜薬科大など効果実証
ピーナツの渋皮に脳の神経細胞を活性化する効果があることを、岐阜薬科大(岐阜市)などの研究グループが突き止めました。ポリフェノールが多く含まれており、研究グループは渋皮を精製した粉末も開発。健康食品などに応用することで、認知機能が低下するアルツハイマー病の予防などが期待できるといいます。
粉末を開発したのは、岐阜薬科大の古川昭栄教授(神経科学)と、特殊高機能性化学品メーカー「岐阜セラツク製造所」(岐阜市)の研究グループ。
脳の働きを維持するのに欠かせないたんぱく質である神経栄養因子の機能が、老化やストレスなどによって低下し、記憶力や学習能力の衰えにつながることに着目。2008年から、神経栄養因子の機能を補う方法を探ってきました。
アルツハイマー病は、脳にアミノイドベータ(Aβ)たんぱく質が蓄積され、神経細胞の機能低下を引き起こすことが原因とされます。ふだんの食生活が、発症リスクの軽減や症状の進行抑制に影響する可能性があるため、野菜や果物などのほか、伝承薬として用いられてきた薬草の成分などを調査し、培養神経細胞を使った実験で、神経栄養因子と同じような働きをする物質を探しました。
その結果、中国で「長生果」と呼ばれ、不老長寿の豆とされるピーナツの渋皮に、神経栄養因子と同じような作用があることを発見しました。
この渋皮から抽出したポリフェノール成分を、老人斑の構成物質であるAβたんぱく質を脳に投与し、アルツハイマー病の疑似症状を作ったマウスに食べさせました。迷路などを使って少し前の記憶や前日の記憶の有無を調べたところ、Aβたんぱく質による記憶障害を改善する作用がみられたといいます。
研究グループは、脳神経細胞内にポリフェノールが結び付く何らかのたんぱく質があり、神経栄養因子の活性化に関与していると推定しています。今のところ、活性化の詳細なメカニズムは不明で、今後、解明していくといいます。うつ病などの高次脳機能障害にも応用できるとみています。
古川教授は、「ピーナツの渋皮の抽出物は機能低下した神経栄養因子に代わる機能を持つと思う。これまで渋皮は廃棄物として捨てられてきたが、資源の活用にもつながる」と話しています。今後、食品メーカーなどと協力し、この粉末を使った健康食品の開発を目指します。
2011年8月22日(月)
■新型インフル、武田など4法人が国産ワクチン安定供給へ
新型インフルエンザが発生した場合、半年以内に全国民分のワクチンを輸入ワクチンに頼らずに生産できる見通しが立ちました。厚生労働省は19日、国内のワクチンメーカー4社に最大で約1019億円の交付金を出し、2013年度中の実用化を目指すと発表しました。
インフルエンザワクチンは現在、鶏卵でウイルスを培養して生産しています。この方法では全国民分のワクチンを作るには1年半から2年かかるとされていましたが、人工培養した動物の細胞を使う方法で大幅に短縮します。4社は第一三共の子会社である北里第一三共ワクチンと武田薬品、ワクチン生産の財団法人である化学及血清療法研究所(熊本市)、阪大微生物病研究会(大阪府吹田市)。
生産体制ができ上がれば、他国で発生するなどしたウイルス株を入手してから半年間で、4法人の生産能力を合わせて1億3000万人分を超えるワクチンが生産されることになります。
4法人は今後、人工培養した動物の細胞を使う方式で作るワクチンの開発や生産に向けた準備に入ります。12年度中に生産体制を整えるとともに、薬事法の承認を得るのに必要な臨床試験(治験)などを実施し、13年度の発売を目指します。それぞれ、少なくとも2500万~4000万人分を生産できる能力を備える計画。
交付金の募集には、アステラス製薬と技術提携している医薬品ベンチャーのUMNファーマ(秋田市)や、スイスの製薬大手ノバルティスの日本法人も応募したもようですが、選ばれませんでした。4法人を選んだ理由について厚労省の血液対策課は、「学術的な観点や、事業を継続する力などで判断した」と説明しています。
09年に日本で新型インフルが大流行した際には、国産ワクチンの生産が間に合わず、海外メーカーの製品を緊急輸入しました。世界的に流行した場合は、海外でも品薄になって輸入が難しくなる可能性が高く、国産品を素早く作れる体制を整えることが課題となっていました。
2011年8月21日(日)
■人間ドック、受診者の9割超が「異常あり」 過去最低を更新
日本人間ドック学会は19日に記者会見を開き、2010年に全国の医療機関で人間ドックを受診した約308万人の検査状況を発表しました。それによると、検査成績の総合的な判定で「異常なし」だった人の全体に占める割合は8・4パーセントで、全国集計を始めた1984年以降過去最低を更新しました。
人間ドックの受診者を年代別にみると、最も多いのは50歳代で、以下は40歳代、60歳以上、39歳以下の順となっています。
いずれの年代においても、総合的な判定で「異常なし」だった健常者の割合は年々減少する傾向にあり、1984年には全体で29・8パーセントでしたが、2010年は8・4パーセントにまで落ち込み、9割超は「要経過観察」、「要治療」、「要精密検査」と何らかの異常があることを示す結果となりました。
健常者の割合を男女別にみると、男性7・3パーセント、女性10・2パーセントでした。年代別では、39歳以下が17・7パーセント、40歳代が9・9パーセント、50歳代が5・6パーセント、60歳以上が3・7パーセントと、年齢が上がるにつれ健常者の割合が減っていました。
地域別では、最低が九州・沖縄地方の5・7パーセント、最高が中国・四国地方の13・3パーセントでした。その他は北海道が7・6パーセント、東北が9パーセント、関東・甲信越が8・1パーセント、東海・北陸が8・3パーセント、近畿が7・8パーセント。
検査項目別に異常頻度をみると、高コレステロールの26・5パーセントが最も高く、以下は肥満26・3パーセント、肝機能異常25・8パーセント、食道・胃・十二指腸潰瘍20・2パーセント、耐糖能異常18・5パーセントなどと続いています。男女別では、男性は肝機能異常が31・4パーセントで最も高く、女性は高コレステロールが最も高く26・2パーセントでした。
一方、人間ドックの総合がん検診で発見された症例報告数は合わせて7307例で、2008年より129例増加しました。検診で発見されたすべてのがんの発見数を100パーセントとして臓器ごとの割合をみると、胃がんの28・1パーセントが最も高く、結腸がんの11・9パーセント、肺がんの7・9パーセントと続いています。
年代別に見た特徴としては、胃がん、大腸がん、肺がんについては年齢が上がるにつれて割合が高くなる傾向がありました。また、前立腺がんは50歳以下にはほとんどみられず、60歳以上が過半数を占めています。乳がんは40〜59歳で約70パーセントを、子宮がんは30〜40歳代で約60パーセントを占めました。
日本人間ドック学会の笹森典雄名誉顧問は会見で、今後の人間ドックの在り方に関して、「個別化した、その人に合った指導を行うことで、その人が本当に改善をしようとする動機付けを与え、自分自身の生活を反省する場、健康づくりを目指す場にしてほしい」と述べました。
2011年8月20日(土)
■茨城県のコメから放射性セシウムを検出 全国で初めて
茨城県は19日、東京電力福島第一原発事故を受けた県産米の調査で、鉾田市内の収穫前のコメから1キログラム当たり52ベクレルの放射性セシウムが検出されたと発表しました。
出荷制限の対象になるかどうかの暫定規制値の1キログラム当たり500ベクレルは、大幅に下回りました。農林水産省によると、コメの放射性物質調査で、放射性セシウムが検出されたのは全国で初めて。
鉾田市は、空間放射線量が毎時0・1マイクロシーベルトを超えたため、収穫前に実施する予備調査の対象になりました。8月11日に市内3カ所の水田から刈り取り、日本食品分析センター多摩研究所(東京都多摩市)で測定した結果、1カ所のコメから1キログラム当たり放射性セシウム134が23ベクレル、同137が29ベクレルの計52ベクレルを検出しました。
ほかの2カ所では「検出せず」で、放射性セシウムが存在しないか1キログラム当たり20ベクレル未満でした。同県は出荷前に、鉾田市内で収穫後の本調査を行うことにしています。
同県農林水産部産地振興課は、「収穫後の結果をみてみないと数値がどうなるか何ともいえない」とした上で、「暫定規定値の10分の1程度のレベルなので、収穫後に500ベクレルに達することはないだろう」と述べ、出荷停止になる可能性は低いとの見方を示しました。
一方、同県がこれまで、潮来、鹿嶋、神栖の3市計11カ所で収穫後のコメについて行った本調査では、いずれも「検出せず」でした。
同県では2011年産米の安全性を確認するために、国が示した放射性物質調査の基本的方針に基づき44ある全市町村で調査を実施。通常は収穫した後の玄米について検査していますが、空間放射線量が平常時の毎時0・1マイクロシーベルト以下の範囲を超える13市町村では、予備調査として収穫前のコメも検査しています。予備調査の結果で、1キログラム当たり200ベクレルを超えた市町村については重点調査を行うとしています。
農水省は、コメの放射性物質の検査方法について、関東・東北地方の17都県を対象に収穫前と収穫後の2段階で検査する方針を示しており1キロ当たり500ベクレルを超えたコメには出荷制限をかけることになっています。茨城県の10年産米の生産量は、39万2800トンで全国5位でした。
2011年8月19日(金)
■新型インフル、未成年の7割が発症3日以内に死亡
2009~10年に新型として流行したインフルエンザA09年型で死亡した子供のうち、約7割は発症後すぐに悪化して3日以内に命を落としていたことが、厚生労働省研究班の調査で判明しました。
研究班は、「発症直後から手の施しようがない例が多く、死亡を避けるには予防接種などで感染を防ぐことが大切だ」と注意を促しています。
研究班は、10年3月までに国内で死亡した合計198人のうち20歳未満の41人について、主治医に面会して病状の変化などを調査しました。このうち約8割に当たる34人は発症当日から翌日にかけて症状が急変しており、約7割の28人は3日以内に亡くなりました。
死因は、直接の死因を特定できないまま心肺停止に至った症例と、急性脳症が各15例で大半を占めました。調査した順天堂大学の奥村彰久准教授(小児科)は、「季節性インフルエンザも傾向は似ており、注意が必要だ」と話しています。
2011年8月18日(木)
■男性の糖尿病は魚でリスク低下 マウスはビフィズス菌で長生き
魚介類を多く食べる男性は糖尿病になるリスクが低いことが17日、国立がん研究センターなどによる全国約5万人の追跡調査で判明しました。魚油に含まれるDHA(ドコサヘキサエン酸)、EPA(エイコサペンタエン酸)といった不飽和脂肪酸などが、血糖値を下げるインスリンの分泌を促すとみられます。
岩手、東京、長野など10都府県在住の40~69歳の男女を対象に、1990年代半ばから5年間に渡って調査。このうち971人(男性572人、女性399人)が糖尿病になりました。
魚介類の摂取量によって4グループに分けたところ、男性の場合、1日当たり約172グラムと最も多いグループは、同約37グラムと最も少ないグループに比べて糖尿病になるリスクが約3割低いことがわかりました。また、アジやイワシなどの小・中型魚や、サケやサンマなど魚油の多い魚を多く食べたほうが糖尿病になりにくいこともわかりました。
女性では、摂取量と病気との間に明確な関連はありませんでした。
一方、京都大や協同乳業などのグループは17日、ビフィズス菌「LKM512」をマウスに与えると、与えないマウスよりも寿命が延びたとする研究成果を発表しました。米科学誌プロスワン電子版に掲載されました。
グループの研究では、マウスに市販のヨーグルト約150ccに含まれる量のビフィズス菌を水に溶かして週3回投与。人の年齢で約70歳の時の生存率は、ビフィズス菌を与えたマウスが約80パーセント、生理食塩水を与えたマウスが約30パーセントとなり、大きな差が出ました。ビフィズス菌を与えたマウスは、毛並みも良くなるといいます。
ビフィズス菌を与えると、大腸内でポリアミンという成分が増えて、大腸の老化抑制、抗炎症の促進などの効果がありました。
2011年8月17日(水)
■熱中症搬送者、2年連続で3万人を突破 高齢者が5割弱
今年の夏、熱中症で病院に救急搬送された人の数が全国で3万5436人(5月30日~8月14日)に上り、2年連続で3万人を突破したことが、総務省消防庁のまとめた速報値でわかりました。
消防庁のまとめによると、期間中に救急搬送された人のうち、65歳以上の高齢者が46・5パーセントを占めました。初診で死亡と診断されたのは61人。3週間以上の入院が必要な重症は890人、中等症が1万1838人でした。東京都、埼玉県、愛知県では、搬送された人の数が2500人を超えました。
記録的猛暑だった昨年の夏は、7月~9月で5万3843人が救急搬送されました。
また、消防庁の速報値によりますと、今夏の8月8日〜14日の1週間に熱中症とみられる症状で病院に救急搬送された人は、全国で7071人に上り、週単位では今年に入って最も多くなりました。特に各地で35度以上の猛暑日となった8月9日からの3日間は、いずれも搬送者数が1日当たり1000人を超え、中でも10日は搬送者数が14281人に達しました。
熱中症とみられる症状で亡くなった人は、この1週間で少なくとも12都府県で35人に上り、死亡した人も週単位で今年に入って最も多くなりました。死亡した人の状況をみると、依然として65歳以上の高齢者が77パーセントと多くを占めているほか、3人に1人が午後5時から午前5時までの夜間の時間帯に亡くなっています。
消防庁などでは先週は日中猛烈な暑さとなった上、夜間も25度以上の熱帯夜が続いたことが影響したと分析しています。今週も厳しい暑さが続くと見込まれることから、消防庁では、昼夜、屋内外を問わず熱中症への対策を徹底して、予防に取り組むよう呼び掛けています。
2011年8月16日(火)
■肺の転移腫瘍でも自家移植 岡山大成功、肺がんに続き
岡山大病院(岡山市北区)の大藤剛宏呼吸器外科准教授は、悪性度の高い子宮平滑筋肉腫が左肺に転移し、従来の治療では全部摘出手術が必要な患者の肺を体外に取り出して、患部を切除、移植用の保存処理を行った後、正常な部分を体内に戻す自家移植手術に成功しました。
同大病院は昨年、原疾患が肺がんの男性患者に対し、同様の手術を世界で初めて成功させていますが、病巣が転移した転移性肺腫瘍の患者では初めて。
自家移植手術は、臓器提供者から摘出した肺を長時間保存する肺移植の技術を活用。肺活量の減少を最小限にとどめ、術後の呼吸不全を防ぎ、患者のQOL(生活の質)を向上させる治療法として注目を集めています。
患者は近畿地方の30歳代の女性。地元の病院で同肉腫の治療を受け、子宮の病巣は完全に除去されましたが、肺への転移が判明して岡山大病院に転院しました。病巣は左肺の上中部に大きく広がっており、当初は全摘を検討。しかし、検査で下葉の一部には転移していないことがわかり、自家移植を決定。8月上旬に手術しました。
大藤准教授らは、取り出した左肺に移植用の特殊な保存液を注入して冷却保存。病理検査で転移が認められなかった左肺の半分程度を切り離し、約2時間後に気管支や血管とつなぎ合わせました。
患者は現在、集中治療室から一般病棟に移りました。両肺を合わせた肺活量が50パーセントを下回ると息切れなど日常生活に支障が出ますが、女性は約70パーセントを維持し、経過も良好といいます。
大藤准教授によると、転移したがんなどへの応用も可能ですが、原疾患が完全に治療され、他の臓器に転移がない場合にしか手術は適用できません。同教授は、「肺の一部を戻すので、呼吸機能の低下を抑えられる。今後も患者さんのQOL向上に努めたい」としています。
2011年8月15日(月)
■妊娠中の被曝、子供への影響を調査 福島の7000組を対象に環境省検討
東京電力福島第一原発事故で被曝した恐れがある母親から生まれた子供に、どんな健康影響があるかを確かめるため、環境省が福島県の母子約7000組を対象にした調査を検討しています。すでに始まっている化学物質の大規模な健康調査の一環として実施します。
環境省は、今年1月から全国の約10万組(福島県は約7000組)の母子を調べる「エコチル調査」を始めました。母親が妊娠中の段階から調べ始め、子供のアトピーやぜんそくと化学物質との関連を探ります。
福島第一原発事故で、放射性物質が子供の健康に与える影響に関心が高まったとして、福島県では調査項目を追加。福島県が実施する全県民対象の被曝線量の推計調査から、母親の推計被曝量のデータを提供してもらいます。母親本人の同意を条件にします。
子供は、13歳になるまで追跡調査します。母親の被曝量と、子供の先天異常や精神神経発達との関連のほか、アレルギーやぜんそくも含めたさまざまな疾患について調べます。
2011年8月14日(日)
■子供のMRI検査、2割の病院で麻酔中に呼吸停止
子供にMRI(磁気共鳴断層撮影)検査をする時にかける麻酔で、呼吸が停止するトラブルを2割近くの医療機関が経験していることが、日本小児科学会医療安全委員会の調査で判明しました。
麻酔時の安全対策が不十分な実態も明らかになり、早急な対策が求められます。12日に東京都内で開かれた同学会学術集会で、発表されました。
MRI検査は、狭い装置内に横たわった状態で、通常30分以上かけて行われます。検査中は体を動かしてはならず、機械音も大きいため、子供の場合、危険の少ない飲み薬や座薬の麻酔で眠らせることが多いといいます。麻酔は主に小児科医が行いますが、危険性はこれまでも指摘されてきました。
同委員会は、昨年8~10月、小児科専門医研修施設520病院を対象にアンケートし、416病院から回答がありました(回収率80パーセント)。
それによると、これまでMRI検査での麻酔中に、何らかの合併症を経験したことがあるのは147病院(35パーセント)。そのうち呼吸停止は73病院で、全体の18パーセント。血中の酸素不足で呼吸が浅くなったり顔色が悪くなったりする呼吸トラブルは75病院、脈が異常に遅くなる徐脈は21病院が経験し、心停止も3病院でありました。
同学会は、検査を安全に行うための指針作りに乗り出します。
2011年8月13日(土)
■京大のiPS細胞、米でも特許 日米欧を制す
京都大は11日、山中伸弥教授らが世界に先駆けて開発したiPS細胞(人工多能性幹細胞)の作製技術に関する特許が、世界最大の医薬品市場を持つ米国で成立したと発表しました。
京大はこれで市場の8割を占める日米欧のすべてを制し、世界でiPS細胞の基本特許を事実上独占する形となりました。営利優先の民間機関ではなく公的機関である京大は、関連技術を学外でも積極利用してもらう方針で、今後は再生医療や創薬などの応用研究が一層加速しそうです。
今回成立した特許は、3種類の遺伝子を皮膚などの体細胞に導入してiPS細胞を作る方法と、2種類の遺伝子と細胞増殖を促す働きなどを持つたんぱく質を体細胞に導入してiPS細胞を作る基本技術。遺伝子を導入するために用いるウイルスなどの「運び役」は種類を問わず、作製に使う遺伝子と似ている「類似遺伝子群」も対象に含めました。
iPS細胞の特許を巡っては、米国では昨年末までに京大以外にも4つのグループが出願していました。このうち、内容の一部が重複する医療ベンチャーのアイピエリアン社は係争を避けるため今年1月に権利を京大に譲渡、残りのグループと激しい争いが続いていました。
山中教授は、「論文を書く苦労とは比べものにならないくらい金と時間がかかったが、ほっとしている。世界中の研究者と協力し、技術を臨床の現場に届けたい」と話しています。
2011年8月12日(金)
■東北大、肥満で血圧上昇の謎解明 肝臓からの神経信号関与
肥満になると血圧が上昇するメカニズムを、宮城県の東北大大学院医学系研究科の片桐秀樹教授(代謝学)と宇野健司助教(同)らの研究グループがマウスを使った実験で解明しました。肝臓に脂肪がたまった時に生じる神経信号が関与しており、この信号を調整する薬などを開発できれば、肥満や高血圧の治療につながる可能性があるといいます。
通常は肝臓に脂肪がたまると、交感神経を活性化する神経信号が脳に伝わり、代謝を促進して脂肪を燃焼、肥満を回避しようとします。体にはこうした維持機能が備わっていて、一時的に栄養を取りすぎても体重がすぐに増えることはありません。
しかし、栄養過剰な状態が続くと、肝臓からの神経信号が出続け、交感神経の過剰な活性化も続き、血圧が上昇するといいます。血圧は交感神経が活性化すると上昇し、肥満の人は交感神経が活性化しがちであることは、同グループのこれまでの研究でわかっていました。
今回の実験では、肥満のマウスは肝臓に脂肪合成を促す特定のたんぱく質を多く持っており、このたんぱく質を抑制すると、血圧上昇が止まることがわかりました。また、マウスの神経を遮断し、肝臓に脂肪がついた時に生じる神経信号が脳に届かないようにした場合も、通常のマウスと血圧に大きな差が出ないことが判明しました。
今後、神経信号を出すのに直接かかわる分子が特定できれば、神経信号を調節する薬や機器の開発も可能になるといいます。片桐教授は、「神経信号を調節して体の維持機能を活性化させると、肥満を解消できる可能性がある」と話しています。
成果は9日、欧州循環器学会誌電子版に掲載されました。
2011年8月11日(木)
■7月の熱中症搬送1万8000人 8月第1週は熱中症搬送3000人強
7月に熱中症で救急搬送された人は、前年同月比1パーセント増の1万7963人だったことが10日、総務省消防庁がまとめた確定値でわかりました。北日本では7月上旬、東日本では同月中旬の平均気温が1961年以降で最高を記録するなど、各地で厳しい暑さが続いていました。
消防庁によると、搬送者の46パーセントは65歳以上の高齢者。症状別では入院する必要のない軽症が62パーセントと最も多く、中等症は33パーセント、重症は2パーセントでした。亡くなった人は前年同月の95人に対し29人。
消防庁は、「熱中症に対する理解や予防が進んだとも考えられる」としています。
また、消防庁は9日、8月1日からの1週間に熱中症で病院へ搬送された人は、前年同期比56パーセント減の3149人にとどまり、死亡者は19人から3人に減ったとする全国速報値を発表しました。オホーツク海高気圧の影響で気温が低かったため、猛暑だった前年同期より少ないものの、前週の7月25~31日に比べると約3割多く、今夏の搬送者は増加傾向にあります。
速報値によると、都道府県別の搬送者数は、東京都の197人が最多で、以下、愛知県196人、埼玉県164人、千葉県150人、兵庫県142人の順。死亡者は岩手県、兵庫県、岡山県が各1人でした。3週間以上の入院を要する重症は68人。
2011年8月10日(水)
■新しい骨延長術、高度医療に承認 名大病院が開発
名古屋大学病院(名古屋市昭和区)は、骨の疾患に伴う低身長症の人などに用いる従来の骨延長術に、独自の「培養骨髄細胞移植」を併用した新たな治療法を確立し、厚生労働省の評価会議で高度医療の対象技術として承認されたと発表しました。
これまでは臨床研究でしたが、承認により今後は一般の診療として行えるようになりました。将来的に、保険診療にもつながる道筋ができたといいます。
骨延長術は、国内に約1万人いる軟骨無形成症で身長が伸びない患者や、左右の脚の長さが異なる脚長不等の患者などに用いる治療法。従来の方法は骨折した時に骨が自然に再生する力を利用して、骨を切ってその間隔を徐々に広げていくことで骨を引き伸ばすもの。10センチ伸ばすのに約1年ほどかかり、子供の患者の場合、学校に通えないなど生活に大きな支障が出ていました。
今回承認された技術は、患者の骨から骨髄細胞を取り出して培養し、骨を作る力を高めた上で、切った骨の隙間に注入します。従来の自然な治癒力に「援軍」を送り込むことで、骨の再生を加速させます。名大病院では2002年からこの細胞移植を併用した骨延長術を47例実施。従来の延長術の患者と比べ、治療期間が平均で約2カ月短縮されたといいます。患者ごとの治療期間のばらつきも少なかったといいます。
また、脚の骨を伸ばす間、医療用の釘を外から骨に打ち込んだままになりますが、治療期間が短いため、感染症などのリスクを減らせるといいます。
「ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針」に沿った再生医療としては、全国で初めての承認。今後は、国の先進医療専門家会議で保険診療との併用を認めるかどうか審議されます
名大病院の松尾清一院長は、「骨延長術を必要とする子供たちに福音だと思う。これから後に続く病院が増えれば、将来的に保険診療につながる可能性もある」と話しました。
2011年8月9日(火)
■車内放置の3歳児、13分で熱中症に 名工大などのグループが解明
自動車内など太陽光が差し込む気温45度の環境に3歳児を放置した場合、わずか13分で熱中症(脱水症状)になる可能性があることを、名古屋工業大の平田晃正准教授、金沢医科大の佐々木洋主任教授らの研究グループが、コンピューターを使ったシミュレーション実験で突き止めました。
車内に放置された子供が熱中症になるケースが各地で問題となる中、わずかな時間の放置にも警鐘を鳴らす結果で、米科学誌「電磁科学アカデミー」に近く発表します。
熱中症は体重の3パーセント相当の水分が失われると、発症するとされています。大人でおおよそ2キロ、3歳児で400グラムとなります。熱中症の人体実験が倫理的に難しいため、これまで詳しい資料はありませんでした。
屋外の気温が20度台後半でも、車内など密閉された空間では45度に、気温が30度を超えると50度に上がることもあります。平田准教授は、「自動車内に幼児を放置する危険性を改めて示す結果」と説明しています。
研究グループは、コンピューター内に再現した人体のモデルに、発汗量や体温上昇などの情報を入力して実験。3歳児は太陽光による体温の上昇こそ大人より少なかったものの、外気温の影響を受けやすく、気温40度の際には17分で熱中症の状態になりました。一方、大人では熱中症になるのに、同じ条件で1時間以上かかりました。
幼児は体重当たりの体表面積が大きく、多くの熱を早く吸収します。さらに、汗腺数が250万と大人と変わらないことから発汗が多く、体重の3パーセントぶんの水分が大人より早く失われることがわかりました。
2011年8月8日(月)
■小児の腸の病気、早期発見へ診療指針 日本小児救急医学会
乳幼児に多く、腸がふさがり重症化すると死亡することもある腸の病気の診療指針を、日本小児救急医学会がまとめました。国内では毎年3000~4000人の患者が出ている可能性がありますが、早く見付ければ多くのケースで手術が不要。診療指針では、家庭でも気付くような病気の兆候などをまとめました。
この腸の病気は、腸の上方の腸管が下方の腸管の中に入り込むことで起こる小児腸重積症。腸閉塞(へいそく)の一種で、重なった部分が圧迫されて、腸の内容物が通過できなくなります。多くは原因不明ですが、乳幼児での代表的なおなかの急性疾患の一つです。病理解剖統計の分析によると、過去20年間で少なくとも50人が死亡しています。
年齢的には、10歳未満の子供、特に1歳以下の乳児に多くみられます。よく起こるのは、小腸の最後の部分である回盲部が上行結腸の中に入り込むケースで、腸管が二重、または三重になることがあります。乳児の小腸と上行結腸は腸間膜による固定が弱くて、動きやすいため、回盲部が上行結腸の中に入り込みやすくなります。下方の小腸の中へ、上方の小腸が入り込んだりもします。
早く発見すれば、空気を使って腸の内側から、はまり込んだ部分を押し戻すなどして治せます。しかし、発見が遅れて病気が進むと、血が流れなくなって腸が壊死(えし)し、腹膜炎やショックで死ぬこともあります。
病気は広く知られていましたが、病院により治療法にバラツキがあり、小児救急医学会の委員会が2004年から指針作りを検討。診断基準や重症度の評価方法、症状に応じた指針を作りました。
診療指針によると、この小児腸重積症の特徴は腹痛や血便、嘔吐(おうと)など。家庭でも、元気だった乳児が急に不機嫌になったり、5〜20分ごとに泣いたり泣きやんだりを繰り返したり、授乳したり抱いたりしても泣きやまず、いつもと様子が違うなどの場合は、この病気を疑って医療機関を受診する必要があります。
医師向けには、重症なら集中治療ができる施設での点滴などで十分に体調を回復させた上で、手術することなども提唱しています。
14日に、日本小児科学会で診療指針を発表し、意見を募ります。指針作成委員長の伊藤康雄・国際医療福祉大学教授は、「早く発見すれば、しっかり治療できる。ガイドラインを役立ててもらい、助けられる命を救いたい」と話しています。
2011年8月7日(日)
■ローヤルゼリーのデセン酸に寿命を延ばす効果 健康食品メーカーが研究
総合健康食品メーカーのアピ(岐阜市)は、東京都健康長寿医療センター研究所などとの共同研究で、ローヤルゼリーに含まれる脂肪酸の一種「デセン酸」が寿命を延ばす効果があることを、線虫を使った実験で突き止めました。
ローヤルゼリーの成分で寿命を延ばす効果がある物質が特定されたのは初めて。将来、人間の寿命にかかわる遺伝子の解明などにつながる成果として、9日に米国のオンラインジャーナル「PLos ONE」電子版で発表します。
共同研究は、アピの研究開発機関の長良川リサーチセンター、同研究所、岐阜県国際バイオ研究所などが3年前から取り組んできました。
デセン酸は、ローヤルゼリー特有の物質で、その含有量によってローヤルゼリーの品質が決まります。これまで効能については明らかになっていませんでした。
実験では、寿命が3~4週間と短く、寿命に影響を与える物質の探索に使われる線虫を使用。線虫にデセン酸を与えたところ、寿命が最長で12パーセント程度延びました。今後はより高等な生物での研究を進め、デセン酸の詳しい働きなどを調べていきます。
長良川リサーチセンターの市原賢二センター長は、「ローヤルゼリーの成分はまだ未知の部分が多い。今回の成果で健康への効用の可能性が広がった」と語り、東京都健康長寿医療センター研究所の本田修二研究員は、「人の寿命に関与する遺伝子を探る上で良い材料。米国で盛んな遺伝子研究に、日本から研究成果を発信したい」と語りました。
ローヤルゼリー特有のデセン酸については、はっきりとした効能についてはまだ解明されてはいませんが、体に役に立つ性質が見付かり始めています。デセン酸の成分は、糖尿病などで使われるインシュリンとよく似ていることがわかっており、この特徴が体の糖分の代謝を正常な状態にするといわれています。
また、脂肪酸の一種のデセン酸は、抗菌作用の特徴を持っており、自然界に存在しているローヤルゼリーの保存料の役割をしているといわれています。さらに、皮脂の分泌を抑制する働きによる肌荒れの改善も期待されています。そのほかには、さまざまな生活習慣病や更年期障害、自律神経障害の予防などにも期待が寄せられています。
2011年8月6日(土)
■iPS細胞から精子を作り、健常なマウス誕生 京大の研究グループ
さまざまな組織や臓器の細胞に変化できるマウスのiPS細胞(人工多能性幹細胞)から精子を作り、健常なマウスを誕生させることに、京都大の斎藤通紀(みちのり)教授らの研究グループが成功しました。
iPS細胞から受精可能な生殖細胞ができるのは、世界で初めて。もう一つの万能細胞であるES細胞(胚性幹細胞)でも成功しており、不妊症の原因解明や治療法開発への応用が期待されます。5日の米科学誌セル電子版に掲載されました。
斎藤教授らは、雄のマウスの皮膚の細胞から作ったiPS細胞を特殊な条件で培養し、将来は全身に育つ「胚体外胚葉」という細胞を作製。体内で精子が作られる時に働くたんぱく質を加えたところ、精子や卵子の元になる「始原生殖細胞」が大量にできました。
この細胞の塊を、先天的に精子を作れないマウスの精巣に移植すると、8~10週間で成熟した精子ができました。通常の卵子と体外受精させ、代理母のマウスに移植したところ、3~4割で子供が生まれました。ES細胞の精子から生まれたマウスでは、成長後に通常のマウスと交配させると、孫に当たるマウスも生まれました。iPS細胞でも同様の結果が得られるとみています。
斎藤教授は、「今回の成果をヒトに直接応用できるかどうか、まだまだ基礎研究が必要だろう」と話しています。
2011年8月5日(金)
■糞便臭を良い香りに変える新繊維 シキボウなどが開発
紡績大手のシキボウ(大阪市)は3日、香料メーカーの山本香料(大阪市)と共同で、糞便臭をよい香りに変える機能を持つ消臭加工繊維「デオマジック」を開発、来年春にも発売すると発表しました。
悪臭を別の香りで覆う従来の手法ではなく、悪臭を香料に混ぜ合わせ、さらによい香りに変化させる発想から生まれた新繊維で、高齢者のおむつカバー用繊維などとして売り込みます。
新繊維は、何十種類もの香料をブレンドして作る香水があえて、糞便臭のような不快に感じられる成分を少量含ませ、それらによって香りをマイルドにさせていることをヒントにしました。両社は糞便臭を加えて香料のにおいがさらによくなる調合の研究を進め、1年間かけて「森林の中にいるような清涼感のある香り」(山本香料の山本芳邦社長)を開発。
その香料を100マイクロメートル以下のマイクロカプセルに詰め込んで、繊維に付着させました。繊維を使う際にマイクロカプセルが壊れることで、香料が糞便臭をよい香りに変えます。
新繊維は10回程度洗濯すれば消臭効果が小さくなるため、同じ成分の香料スプレーの商品化も目指します。新製品では、「糞便臭がほとんど感じられない程度」(シキボウの辻本裕開発技術部次長)まで消臭でき、尿の臭いにも対応できます。
シキボウで介護や病院、ペット用の繊維など「糞便臭が気になる用途」への展開を目指します。
デオマジックの価格は、一般の繊維より約2割高くなる見通し。初年度1億円、発売3年目に3億円の売り上げを目標にしています。
2011年8月4日(木)
■夏の脳血栓に注意を 体重減は危険信号
脳梗塞の一つで、脳内の血管が動脈硬化などで詰まって起こる脳血栓の患者は夏場にも多いということが、約4万6000人分のデータを分析してわかりました。脳の血管の病気は一般的に冬に多いというイメージですが、専門医らは「夏場も十分な水分補給で予防を」と注意を呼び掛けています。
中国労災病院(広島県呉市)の豊田章宏リハビリテーション科部長が、2002~08年度に32の労災病院に脳卒中で入院した4万6031人のデータを分析したところ、脳血栓の患者は春2541人、夏2798人、秋2637人、冬2687人で、最も多かったのは夏でした。月別では7月が最も多く、1、8月の順でした。
脳卒中は全体の約7割を占める脳梗塞、血管が破れる脳出血、くも膜下出血の三つに大別されます。さらに、脳梗塞は脳血栓と、不整脈などが原因で血液や脂肪の塊が運ばれて脳血管が詰まる脳塞栓の二つに分かれます。今回の調査で、脳塞栓や脳出血、くも膜下出血は夏に少なく、冬に多いという結果が出ました。
血管が詰まって起こる脳血栓が夏場に多いのは、血液中の水分が減り、どろどろになりやすいためです。電力不足から節電が求められている今夏は、エアコン使用を無理に控えたり、設定温度を高くしすぎたりすると、脱水症状から脳血栓になる危険性が高まります。
脱水を防ぐためには、こまめな補給を心掛けて水を多めに飲み、酒は控えめにします。ろれつが回らなかったり、体にしびれを感じたりしたら、すぐ検査を受けたほうがいいでしょう。体重が1週間で3キロも減ったら危険信号で、体力が弱る夏風邪にも注意したいところです。
2011年8月3日(水)
■コメの放射線検査、収穫前と後の2段階で 農水省方針
間もなく収穫期を迎えるコメの放射性物質検査について、農林水産省は、収穫前と収穫後の2段階で実施する方針を固めました。
検査の手順は、土壌のセシウム濃度が一定以上の地域を中心に、市町村が収穫前のコメを刈り取ってサンプルを採取し、玄米で検査を実施します。その後、高い値が出た地域については、収穫後の検査の際に調査地点を増やします。
国の基準値(1キロ当たり500ベクレル)を超えた場合、政府としてその市町村のコメを出荷停止とし、市場に汚染米が出回らないようにします。
農水省は厚生労働省などと検査方法について調整を進めており、検査の実施主体となる自治体に示す統一的な手順として、近く通知。鹿野道彦農水相は2日の閣議後の記者会見で、「今週中に公表したい」と述べました。
収穫前のコメの実の検査は予備検査と位置付け、土壌の放射性セシウム濃度が1キロ当たり1000ベクレルを超す地域、空間放射線量が平常時より高い地域を対象とする方向で検討しています。空間放射線量については、毎時0・1マイクロシーベルトを目安とします。
政府はすでに、福島県の一部自治体を対象に今年のコメの作付け制限を指示。農水省は、土壌中のセシウムの濃度が土1キロ当たり5000ベクレルを超える農地で収穫されたコメは、国の基準値を超える可能性があるとの考えを示しています。
2011年8月2日(火)
■九大、がん抑制メカニズムを解明 特定たんぱく質質が関与
九州大生体防御医学研究所の鈴木聡教授(ゲノム腫瘍学)らの研究グループが、がんの進行を左右するメカニズムに「PICT1」というたんぱく質が関わっていることを突き止めました。
生存率を高める新薬の開発や、高度な予後予測につながる可能性があり、7月31日付米医学誌ネイチャーメディシン電子版に発表しました。
研究では、人間の細胞核の核小体の中に存在するPICT1の性質を解明。正常な細胞の場合、PICT1は「リボゾームたんぱく質」と結合していますが、患者から摘出したがん細胞の中でPICT1を減少させると、リボゾームたんぱく質が核小体から出て、がん細胞の増殖を抑制する別のたんぱく質「p53」と結合し、p53の働きを活性化させることがわかりました。
PICT1はこれまで全容がわかっておらず、がんを抑える作用があると予想されていました。
また、がん患者のPICT1と生存率の関係も調査。食道がんでは、PICT1が少ない患者の5年後の生存率が1・7倍になり、大腸がんでも1・3倍になることが確認されました。
2011年8月1日(月)
2019年1月〜 20187月〜12月 1月〜6月 2017年7月〜12月 1月〜6月 2016年7月〜12月 1月〜6月 2015年7月〜12月 1月〜6月 2014年7月〜12月 1〜6月 2013年6〜12月 5月 4月 3月 2月 1月 2012年12月 11月 10月 9月 8月 7月 6月 5月 4月 3月 2月 1月 2011年12月 11月 10月 9月 8月 7月 6月 5月 4月 3月 2月 1月 2010年12月 11月 10月 9月 8月 7月 6月 5月 4月 3月 2月 1月
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