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健康ダイジェスト

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■健康保険証の個人情報が名簿業者に流出 2008年より以前の約10万人分

 病院を受診する際に提示する健康保険証の番号や氏名、住所など、およそ10万人分の個人情報が名簿業者に流出していたことが29日にわかり、厚生労働省は医療機関から患者の情報が流出したものとみて原因を調べています。

 厚労省によりますと、流出していたのは、国民健康保険や企業の健康保険などに加入している、およそ10万3000人分の個人情報で、健康保険証の番号や氏名、住所、生年月日に加え、電話番号なども含まれているということです。

 流出が確認された個人情報は、大阪府約3万7000人、奈良県約2万5000人、滋賀県約2万4000人など、近畿地方を中心に、沖縄を除く全国46都道府県にまたがっています。

 厚労省によりますと、流出した情報には複数の保険の運営主体のものが含まれているほか、保険の運営主体が把握していない個人の電話番号も含まれていることから、病院や薬局などの医療機関から患者の情報が流出し、名簿業者に持ち込まれたとみられるということです。

 また、流出した情報には、後期高齢者医療制度の導入に伴って付与された番号が含まれていないことから、流出したのは制度が始まった2008年4月より以前の情報とみられるということです。

 こうした情報は名簿業者に持ち込まれていたものの、これまでのところ悪用されたケースは確認されていないということですが、厚労省は情報が流出した原因を調べています。

 2015年12月31日(木)

 

■ギニアでエボラ出血熱の終息宣言 WHOが発表

 西アフリカで過去最悪の規模で感染が拡大したエボラ出血熱について、世界保健機関(WHO)は29日、2500人以上が死亡したギニアで2年ぶりに感染が終息したと発表しました。

 しかし、隣国のリベリアでは終息宣言の後に感染が再発しており、WHOは引き続き警戒を緩めないよう求めています。

 今回のエボラ出血熱の流行は、西アフリカのギニア、リベリア、シエラレオネの3カ国を中心に過去最悪の規模で拡大し、WHOによりますと、世界全体では疑い例も含めると2万8600人以上の感染者が報告され、1万1300人以上が死亡しました。

 このうち、ギニアでは2年前、今回の流行の切っ掛けとなる1例目の患者が出て、その後、感染者は3800人を超え、死者も2500人に上っています。しかし、隔離などの感染対策を徹底したことで、今年に入ると新たな感染者は減り続け、WHOは29日、感染者がいなくなってからウイルスの最大潜伏期間の2倍に当たる42日が経過したため、感染が収まったと判断して終息宣言を出しました。

 現地では、市民の間から「エボラから解放された」と喜びの声が上がる一方で、医療体制や経済の立て直し、家族を失った人たちへの支援など復興に向けた取り組みが急務となっています。

 一方、今年5月以降、2度にわたって終息宣言を出した隣国のリベリアでは、いずれも1、2カ月後に再び新たな感染者が発生したため、エボラ出血熱の地域全体での完全な終息は来年以降に持ち越されることになっています。

 WHOは声明で、「(エボラ出血熱感染の)新たなケースが出た場合、周囲に拡大する前にすぐに特定されるよう、90日間の高度な監視期間にギニアは移行する」と述べ、引き続き警戒を緩めないよう求めています。

 2015年12月30日(水)

 

■筋委縮性側索硬化症の患者死亡、遺族が人工呼吸器の会社を提訴

 全身の筋肉が徐々に動かなくなる難病、筋委縮性側索硬化症(ALS)の男性が自宅で使用していた人工呼吸器が止まって死亡したことを巡り、遺族が「製品に欠陥があった」として28日、製造や販売をしている会社に賠償を求める訴えを東京地方裁判所に起こしました。

 訴えを起こしたのは、2013年にALSを発症し、入退院を繰り返した後、自宅で人工呼吸器を使用していた埼玉県の当時65歳の男性の遺族5人。訴えによりますと、2014年10月、人工呼吸器の電源コードが内部で断線して止まったため男性は呼吸が停止し、10日後に死亡したということです。

 遺族5人は、「製品に欠陥があった」として、製造や販売をしている「フィリップス・レスピロニクス合同会社」に、7200万円余りの賠償を求めています。

 遺族によりますと、人工呼吸器が止まる前、外部から電源の供給がなくなり、内部のバッテリーが作動したことを示す表示が出たということですが、この表示の意味について事前に会社から詳しい説明はなかったとしています。

 提訴の後で会見した男性の妻は、「人工呼吸器を使っている人たちの安心や安全のためにも、なぜこのような事故が起きたのか解明したい」と話していました。

 遺族の代理人によると、フィリップス・レスピロニクス合同会社から同じ製品で過去1年間に電気コードの断線が17件あったと説明を受けたといいます。

 一方、会社側は、「訴状を受け取ってないのでコメントは差し控えたい」としています。

 2015年12月28日(月)

 

■認知症で免許取り消し処分のドライバーが急増 東京都内で60人に上る

 認知症の診断が出て運転免許の取り消し処分を受けた人は、今年の東京都内で60人と、2年前の9倍近くに急増していることが警視庁の調べでわかりました。

 警視庁によりますと、認知症の診断が出て運転免許の取り消し処分を受けた人は、東京都内で、今年に入って11月末までに60人に上っているということです。すでに昨年1年間の53人を上回り、一昨年の7人と比べると、9倍近くに急増していることがわかりました。

 道路交通法では、交通事故を起こしたり免許を更新したりした際に、警察官などが認知症の疑いがあると判断した場合、ドライバーは「臨時適性検査」と呼ばれる医師の診断を受けるよう定められています。そして、認知症と診断されると、症状によっては、交通事故を起こす恐れがあるとして免許の取り消しや停止の処分が出されます。

 警視庁は、高齢化によって本人が気付かないうちに認知症の症状が進むケースが増えるとみて、家族などの周囲が変化に気付いてほしいと呼び掛けています。

 警視庁運転免許本部の小高博之課長は、「60歳代前後の団塊の世代は運転免許を持っている人が比較的多く、高齢化に伴って認知症のドライバーはさらに増加するとみられる。変化に気付けば免許の返納を検討してほしい」と話しています。

 一方、今年の愛知県内の交通事故で死亡した高齢者48人のうち、少なくとも約15パーセントに当たる7人に認知症の疑いがあることが、愛知県警の調べでわかりました。

 遺族の話や事故捜査の結果から、愛知県警が分析。愛知県警は、個人の特定につながるとして内訳を明かしていませんが、7人のうち過半数が歩行者で、車両運転者も含まれるといいます。危険な横断や暗い時間の徘徊(はいかい)中の事故も、ありました。

 伊藤泰充県警本部長は、「今年の交通事故死者は高齢者のみが増加している特徴があり、多くは高齢者側にも交通違反がみられる」と指摘。認知機能や体力の低下を自覚できず、危険な行動をする高齢者特有の状況が違反の原因になっていると説明しました。今年の愛知県内の交通事故による死者66人のうち、高齢者は48人と7割超を占めています。

 2015年12月27日(日)

 

■子育て中のがん患者、推計5万6000人 その子供たちは9万人近く

 子育て中にがんと診断される人は、年間、推計5万6000人に上り、その子供たちは9万人近くになるとする調査結果を、国立がん研究センターのグループがまとめました。

 出産の高齢化が進む中で、子育て中のがん患者の実態がわかったのは初めてで、研究グループは、心理面で子供を支える態勢作りなどが必要だとしています。

 国立がん研究センターのグループは、一昨年までの5年間にがん研究センターの中央病院に入院した患者のデータを基に、18歳未満の子供を持つ全国のがん患者の数を推計しました。

 その結果、18歳未満の子供を持つ人でがんと診断される人は、年間、5万6000人に上り、その子供の数はおよそ8万7000人になったということです。また、中央病院のデータでは、患者の平均年齢は男性が46・6歳、女性が43・7歳で、子供の平均年齢は11・2歳でした。

 がんの種類では、男性は胃がん(15・6パーセント)、肺がん(13・2パーセント)、女性は乳がん(40・1パーセント)、子宮がん(10・4パーセント)の順に多くなりました。

 子育て中にがんと診断されると、子供に病気をどう伝えるのかや、心理面で子供をどう支えるのかなどさまざまな課題に直面することが予想されます。出産の高齢化が進む中、こうしたケースは今後も増えるとみられています。

 国立がん研究センターの井上泉特任研究員は、「がん患者の子供の存在は、社会の目がほとんど届かないところにあると思う。社会的なレベルで支援態勢作りを急ぐ必要があると思う」と話しています。

 2015年12月25日(金)

 

■厚生労働省、化血研を年明けにも業務停止処分へ

 熊本市にある製薬会社「化学及(および)血清療法研究所(化血研)」が、長年にわたって国の承認とは異なる方法で血液製剤を製造し、組織的な隠蔽を図っていた問題で、厚生労働省は来年1月にも会社に対し、薬の販売を一定期間禁止する業務停止処分を行う方針を決めました。

 この問題は、化血研がおよそ40年にわたって、国の承認とは異なる方法で血液製剤などを製造し、不正を隠すために製造記録を偽造するなど組織的な隠蔽を図っていたものです。

 不正が発覚した今年の5月以降、厚労省は化血研に対し立ち入り検査を行い、業務改善命令を出した上で業務停止処分を行う方針でしたが、立ち入り検査で書類の偽造など悪質な行為が確認できたとして手続きを早め、医薬品医療機器法(旧薬事法)に基づき年明けにも業務停止処分を行う方針を固めました。

 業務停止の期間は数十日から数カ月の間となる見込みで、会社はほかに代替できるものがない一部の血液製剤やワクチンを除いてすべての薬を販売できなくなります。

 化血研では、このほかにも医薬品の原料で生物テロにも使われるおそれのあるボツリヌス毒素を運ぶ際に、必要な届け出を怠るなど問題が相次いで発覚しています。

 2015年12月25日(金)

 

■ノロウイルスなどによる感染性胃腸炎の患者、1週間で3万人を超える

 ノロウイルスなどによる感染性胃腸炎の患者が、直近の1週間で3万人を超えました、国立感染症研究所は、調理や食事前の手洗いを徹底するよう注意を呼び掛けています。

 国立感染症研究所によりますと、全国およそ3000の小児科の医療機関から報告されたノロウイルスなどによる感染性胃腸炎の患者は、12月13日までの1週間に3万2022人に上り、前の週から4700人余り増えて、今シーズン初めて3万人を超えました。

 1医療機関当たりの患者数を都道府県別にみますと、大分県が24・33人、兵庫県が14・87人、愛媛県が14・73人、東京都が14・31人、神奈川県が14・14人、石川県が13・34人、宮崎県が12・92人などとなっており、40以上の都道府県で前の週より増加しています。

 ノロウイルスは、感染力が非常に強いため、激しいおう吐や下痢を引き起こします。今年は遺伝子の変異した新型も現れ、医療機関で使う迅速診断キットではノロウイルスかどうかを確実に判断することが難しいということです。

 専門家は、石けんを使った手洗いを徹底することや、吐いたものや便を処理する際は次亜塩素酸ナトリウムを含む市販の漂白剤などを使って消毒するよう注意を呼び掛けています。

 国立感染症研究所の片山和彦室長は、「流行は例年、12月下旬から1月中旬ごろピークを迎えるが、今年は新型も検出されているので、患者数の推移をより注意してみていく必要がある。手洗いなど予防に心掛け、乳幼児や高齢者は脱水症状やおう吐物による窒息に注意が必要だ」と話しています。

 2015年12月25日(金)

 

■韓国のMERS、政府が公式の終息宣言 186人が感染し、38人が死亡

 今年の5月以降、感染が広がり38人が死亡した韓国の中東呼吸器症候群(MERS)コロナウイルスについて、韓国政府は24日午前0時、国際機関の基準に基づいて公式の終息宣言を出しました。

 韓国では今年の5月に、中東から帰国した男性からMERSコロナウイルスの感染が広がり、186人が感染し、このうち38人が死亡しました。

 世界保健機関(WHO)はMERSの流行の終息を宣言する基準として、患者がいなくなってからウイルスの最長潜伏期間の2倍に当たる28日後と定めています。

 11月25日、MERSに感染した後に治療を受けていた男性患者(35歳)が死亡し、28日が経過したことから、韓国保健福祉省は24日午前0時に事態は終了したと発表しました。

 韓国政府は今年7月下旬、新たな感染者が出なくなったとして事実上の終息宣言を出しましたが、WHOの基準に基づく終息宣言までには、最初の患者が確認されてからおよそ7カ月かかったことになります。

 韓国では、MERSの感染拡大によって多い時で6700人が隔離の対象となり、全国の2900校が休校になるなど市民生活に大きな影響が出ました。また、6月だけで外国からの観光客が前年と比べて52万人減少し、観光収入がおよそ780億円減るなど経済的にも大きな打撃を受けました。

 韓国政府は公式の終息宣言を出したものの、今後も海外から新たな感染症が流入する可能性はあるとして、防疫対策を進めています。

 韓国でのMERSコロナウイルスは、すべての患者が病院内で感染したとみられており、院内感染をどう防ぐかが課題として浮かび上がりました。感染者の内訳を見ますと、もともと入院していた人など患者が44パーセント、見舞いなどで病院を訪れた人が35パーセント、そして医療スタッフが21パーセントでした。

 このうち医療スタッフの感染は、院内感染を拡大させた原因の1つになったため、韓国の病院では医療スタッフに対する感染防止の教育が進められています。具体的には、防護服を脱ぐ際に服に付着していた患者の飛まつを手で触り、感染したとみられるケースがあったということで、防護服を正しく扱うよう指導しているということです。

 韓国原子力病院のイ・ヒョラク医師は、「防護服は正しく脱がなければ着る意味がないといってもよい。医療器具や防護服の性能も重要だが、使い方や本人の行動がもっと重要だ」と話しています。

 2015年12月24日(木)

 

■大村さん開発のイベルメクチン、胆管がんにも効果 九大研究グループが発表

 今年、ノーベル賞を受賞した北里大学特別栄誉教授の大村智さんが開発した熱帯病の治療薬「イベルメクチン」が、胆管がんを縮小させる効果があるとする研究成果を九州大学の研究グループが22日、発表しました。

 イベルメクチンは、失明につながる熱帯病「オンコセルカ症」などの特効薬で、今年のノーベル医学・生理学賞を受賞した大村智・北里大特別栄誉教授らが開発。アフリカやアジアなどで、年間約3億人に投与されています。

 この薬を九州大学生体防御医学研究所の西尾美希助教などの研究グループが詳しく調べたところ、胆管がんの原因となる「YAP1」(ヤップワン)というタンパク質の働きを抑える効果があることがわかったということです。また、胆管がんのマウスにイベルメクチンを投与したところ、がんの増殖を3分の1に抑えることにも成功しました。

 西尾助教は、「YAP1は、胆管がん以外にも肝臓にできるがんの原因になっているタンパク質だ。これらのがんの縮小にも効果があるのかさらに調べたい」と話しています。

 研究成果は22日、米国科学アカデミー紀要電子版に掲載されました。

 2015年12月22日(火)

 

■中国の北京、最高レベルの「赤色警報」3日目 2100の工場で生産中止や削減

 中国政府は21日、大気汚染警報で最高レベルの「赤色警報」の2度目の発令から3日目を迎えた首都北京で、警報によるスモッグ対策の一環として、2100の工場に生産の一時中止または削減を命じたと発表しました。

 北京市当局は19日、4段階ある大気汚染警報のうち最も深刻な「赤色警報」を発令し、22日までの4日間継続すると発表。2013年に導入された「赤色警報」は、今月7日に初めて発令され、今回が2度目となります。

 北京市経済情報化委員会のある幹部は、北京市周辺にある2100の工場への生産の一時中止または削減の命令について、「温室効果ガスの排出を削減するための緊急対応策の一環だ」と語りました。各工場へは毎日、査察官が立ち寄っており、全工場とも「厳密に指示に従っている」といいます。

 独自の観測結果を発表している在北京アメリカ大使館によると、肺に深く入り込む有害な微小粒子状物質PM2・5の濃度は、21日早朝の時点で1立方メートル当たり172マイクログラムでした。世界保健機関(WHO)が、24時間のPM2・5暴露上限値とする同25マイクログラムの7倍近くとなっています。

 国営紙、北京日報が伝えた環境当局の報告によると、PM2・5の濃度は22日には1立方メートル当たり300マイクログラムを超えると予想されています。

 2015年12月21日(月)

 

■B型肝炎ワクチン、小児科で接種中止のケースも 化血研の不正受け不足

 化学及(および)血清療法研究所(化血研、熊本市)の不正製造の影響で、B型肝炎ワクチンが足りずに接種の予約を中止する医療機関が出てきています。

 国内シェア8割を占める化血研製の出荷が9月から止まっているためで、厚生労働省は安全性が確認されれば出荷を認める方針ですが、年明けになる可能性もあるといいます。

 B型肝炎ワクチンは、国内に流通するのは化血研製とMSD(東京都千代田区)製のみで、昨年は計約200万本出荷されました。厚労省は来年度にも、市町村が実施する定期接種にする方針で、対象は0歳児で1人に3回接種します。

 兵庫県尼崎市の「こどもクリニックまえの」は現在、ワクチンの在庫がなく、接種できなくなりました。MSD製も注文が集中して手に入らないといいます。院長は、「化血研がしたことは許されないが、子供がウイルスに感染する可能性が高まるような影響が出るのも問題だ」と語っています。

 東京都東村山市の「どんぐりキッズクリニック」では、9月から新規接種の予約を断っています。2社のワクチンを使っていますが、在庫は残り数人分といいます。

 化血研製を販売するアステラス製薬は、「在庫は残り1カ月分と予想している。医療機関には入手が難しい場合、代替製品への切り替えをお願いしている」と説明。第一三共も、「供給が困難な状態」としています。

 厚生労働省はMSDに対して、前倒しの出荷や増産を要請。MSDは、「可能な限り協力すべく厚労省と協議している」と話しています。

 化血研が出荷を自粛しているワクチンは、B型肝炎のほか、日本脳炎とA型肝炎があります。

 アステラス製薬によると、シェア4割の日本脳炎ワクチンは在庫が残り1カ月強、シェア100パーセントのA型肝炎ワクチンは残り2カ月強といいます。

 2015年12月20日(日)

 

■診察料など0・49パーセント引き上げ 診療報酬全体8年ぶりマイナス

 診察料や薬代の公定価格である診療報酬について、政府・与党は18日、来年度の見直しで診察料などの本体部分を0・49パーセント引き上げることを決めました。前回の2014年度改定時の0・1パーセントに比べ、大きく上積みします。

 一方、医薬品や医療材料の薬価部分は減額し、全体の診療報酬の改定率はマイナス0・84パーセントほどで調整。社会保障費の伸びを抑制しつつ、医師ら医療従事者の人件費となる本体を増やすことで医療業界に配慮します。

 診療報酬は、2年ごとに見直されます。改定率がプラスなら医療機関の収入が増えるとともに、財源となる公費や保険料、原則1~3割の患者の窓口負担も増えます。マイナスなら逆にいずれも減ります。1パーセン分で国費は年間約1110億円、窓口負担は年間約540億円の増減となります。

 来年度の改定では、医療機関の経営に直結する診察料などの本体部分について、医療業界に加え厚生労働族議員や厚労省がプラスを強く主張。当初は前回並みの小幅なプラス改定で調整していましたが、最終的に上積みすることで財務省と折り合いました。

 上積みする分の財源は、処方する湿布薬の枚数を制限するなど診療報酬にかかわらない医療の給付を絞り込むことで捻出。さらに、18日に閣議決定された今年度補正予算案に、来年度予算で想定していた社会保障の施策の多くが前倒しで盛り込まれたことで確保しました。

 一方、薬代は9月時点での実勢価格が公定価格を下回っており、その差額分をほぼそのまま薬価に反映。改定率はマイナス1・33パーセントほどで調整しています。その分、薬は安くなります。

 全体の改定率がマイナスになるのは、2008年度以来8年ぶり。前回はプラス0・1パーセントでしたが、消費増税対応分として1・36パーセントを上乗せしたため、実質的に2回連続の引き下げとなります。診察料などの本体は、2008年度からプラス改定が続きます。

 2015年12月20日(日)

 

■化学工場従業員ら5人、ぼうこうがんを相次ぎ発症 厚労省が注意を呼び掛け

 厚生労働省は18日、従業員40人の化学工場で退職者も含め5人がぼうこうがんを相次いで発症していたことを公表しました。この工場では発がん性があるとみられる化学物質を扱っていたということで、厚労省は原因を調べています。

 厚労省によりますと今月、染料や顔料になる化学製品を製造する工場で、40人いる従業員のうち4人と退職者1人の合わせて5人が昨年2月から今年11月にかけて相次いで、ぼうこうがんを発症したと、労働局に報告があったということです。5人はいずれも男性で、40歳代後半から50歳代後半、1991年以降、7〜24年にわたり工場に勤務。

 この工場ではオルト-トルイジンなど芳香族アミンという化学物質のうち、5種類を原料として扱っており、がんを発症した従業員は原料を混ぜ合わせたり、乾燥させたりする作業に携わっていたということです。

 これらの化学物質は一定程度、発がん性があるとみられることから、労働安全衛生法では、取り扱う場合に工場内の換気やマスクの着用といった安全対策が努力義務とされています。

 厚労省は、退職して7年以上たって発症している人もいることから、当時の安全対策などについて調査するとともに、オルト-トルイジンを中心に原因を調べています。オルト-トルイジンなどを扱っている事業所は国内におよそ40カ所あるとみられ、厚労省は業界の団体を通じて注意を呼び掛けています。

 オルト-トルイジンは、芳香族アミンと呼ばれる化学物質の一種で、着色のための染料や顔料の原材料として化学工場などで使用されています。人体に有害で発がん性があるとみられることから、労働安全衛生法ではこうした物質を取り扱う事業者に対して、空気中に物質が広がらないよう容器を密閉するなど適切に管理しながら使用することなどを求めています。

 国内の化学メーカーで作る日本化学工業協会と化成品工業協会によりますと、オルト-トルイジンを取り扱う際は、容器を密閉し、工場の換気を行うこと、さらには、従業員にマスクの使用を徹底するなどの対策を行っているということです。

 今回のように工場の従業員などが、ぼうこうがんを発症したケースは聞いたことがないということで、厚労省からの要請を受け、業界団体に加盟する合わせておよそ300社に対し、従業員がオルト-トルイジンを吸い込むことがないよう対策を徹底することや、健康診断を実施するように呼び掛けたとしています。

 2015年12月19日(土)

 

■在宅医療の患者、最多の15万6400人 厚労省の2014年調査

 通院が困難な患者の自宅などを医師が訪れて診療する「在宅医療」を受けた人は2014年に1日当たり推計15万6400人となり、1996年に調査を始めて以来最多だったことが17日、厚生労働省の患者調査でわかりました。

 入院患者の推計数は131万8800人で、2011年の前回調査より約2パーセント減少しました。

 終末期を迎えた患者を中心に、住み慣れた自宅での療養を望む声の高まりを受け、厚労省は2011年度から在宅医療の推進に向けた政策を展開しており、入院から在宅医療へのシフトが進んでいるとみられます。

 厚労省の担当者は、「在宅医療拠点となる病院や診療所に国が補助金を出して支援するなど、対応できる医療機関が増えたためだろう」と増加の要因を説明しています。

 調査は3年ごとに実施。2014年10月の特定の1日について、1万3573カ所の医療機関を対象に入院や外来、在宅の患者の数などを調べ、その結果を基に全国の推計値を算出しました。

 調査結果によると、在宅医療を受けた患者の1日当たりの推計数は15万6400人で、約11万人だった2011年の前回調査と比べると約4割増えました。調査を始めた1996年以降、7万人前後で推移していましが、2008年から増加傾向が続いています。

 在宅医療のうち、定期的な「訪問診療」を受けた患者は前回から7割増え、11万4800人となりました。必要に応じて医師を呼ぶ「往診」を受けたのは、3万4000人でした。

 在宅医療を受けた人を含む外来患者は723万8400人で、前回からほぼ横ばい。年齢層別では70~74歳が最多の85万4500人で、65歳以上が全体の48パーセントを占めました。

 入院患者は80~84歳が18万8900人で最も多く、65歳以上が全体の71パーセントを占めました。

 また、2014年9月中に医療機関から退院した患者の平均在院日数は31・9日となり、前回調査から0・9日短縮しました。

 2015年12月18日(金)

 

■北極圏の平均気温、1900年以来最高を記録

 北極圏の、今年9月までの1年間の平均気温が1900年に観測を始めて以来、最高を記録したと、アメリカの気象当局が明らかにし、地球温暖化に警鐘を鳴らしています。

 アメリカの海洋大気局(NOAA)は毎年、世界各国の研究者とともに、北極圏の環境の変化を調べており、15日、今年の報告書を公表しました。

 それによりますと、北緯60度より北の北極圏では、今年9月までの1年間の地表の平均気温が平年よりも1・3度高くなり、1900年に観測を始めて以来、110年余りの間で最高を記録しました。

 また、今年、北極海を覆った氷の面積は、2月下旬に最大になりましたが、比較できるデータがある1979年以降で見ると、最も小さかったということです。

 さらに、氷の古さを分析した結果、できたばかりの薄い氷の占める割合が全体の70パーセントで、およそ30年前の2倍に増えており、北極海の氷が年々、薄くなっているとしています。

 北極圏全体の積雪量も減少傾向にあり、1979年以降は10年間に18パーセントの割合で減少しています。グリーンランドでも今年、2012年以来となる大規模の融解が発生し、地表を覆う氷床の半分以上が失われました。

 北極圏の気候の変化について、NOAAの研究者は気温の上昇に伴って雪や氷が解け、地表や海面がより多くの熱を吸収するようになった結果、さらに雪や氷が解けやすくなるという悪循環が起きていると指摘し、「北極圏では、地球上のほかの地域に比べて2倍の速さで温暖化が進んでいる。その影響は北極圏の各地域に重大な問題をもたらしている」と警鐘を鳴らし、「北極圏で起きていることは、北極圏にとどまらないことも周知の通りだ」とも付け加えています。

 2015年12月17日(木)

 

■リンゴ病が再流行の兆し 10月以降患者が増加

 主に夏場に流行し、ほおなどに赤い発疹ができる伝染性紅斑、いわゆるリンゴ病の患者が10月以降再び増えており、国立感染症研究所は手洗いの徹底など、注意を呼び掛けています。

 伝染性紅斑、いわゆるリンゴ病は子供を中心に流行するウイルス性の感染症で、風邪に似た症状とほおに赤い発疹が出ますが、妊婦が感染すると流産などの原因になることがあります。

 国立感染症研究所によりますと、全国およそ3000の小児科の医療機関から報告された患者の数は12月6日までの1週間に2480人に上り、過去10年の同じ時期と比べて最も多くなっています。

 リンゴ病は通常、夏に流行のピークを迎え、その後、患者数が減少しますが、今年は10月以降再び増加しており、再流行の兆しがみられるということです。

 各地の流行状況を示す1医療機関当たりの患者数は、大分県が2・36人、秋田県が2・11人、山形県が2・03人、熊本県が1・78人などと、九州や東北を中心に患者の多い状態となっています。

 国立感染症研究所の砂川富正室長は、「周りにウイルスを広げるのは、ほおが赤くなってリンゴ病だとわかる前なので、予防には日ごろから手洗いを徹底することが大事だ。特に妊娠中の女性はリンゴ病の患者が出た保育園や幼稚園への出入りを避けたり、子供との食器の共有を避けるなどしてほしい」と話しています。

 2015年12月17日(木)

 

■京大iPS研と武田薬品が新薬研究を始める 資金200億円、研究者100人

 iPS細胞(人工多能性幹細胞)の技術を応用して心不全や糖尿病などの治療薬を開発する研究を共同で進めることになった京都大学iPS細胞研究所と大手製薬会社の武田薬品工業の研究設備が、神奈川県藤沢市に設けられ、15日、報道関係者に公開されました。

 iPS細胞研究所と武田薬品は今年4月、心不全や糖尿病などの新たな治療薬を開発する共同研究を進める契約を結び、武田薬品が、今後10年間で200億円の資金を提供し、京都大学の山中伸弥教授の指導の下、12月から新たな治療薬を開発する研究を本格的に始めています。iPS細胞研究所の6人を中心に60人の研究者が参加し、来年4月には40人以上の研究者を国内外からさらに受け入れる予定。

 15日、藤沢市にある武田薬品の湘南研究所に設けられた共同研究の設備の一部が、報道関係者に公開されました。

 両者は今後、この研究施設で、心不全や糖尿病、精神疾患、がんなどの患者から作ったiPS細胞を使って、武田薬品が持つ新薬の候補となる物質に治療効果があるかどうかや副作用がないかなどを調べ、新たな薬の開発につなげたり、病気で傷んだ部位に新たな細胞を移植する治療法を開発したりしていくことにしています。成果は知的財産権を確保した上で、公表するとしています。

 山中教授は「臨床応用という大変な世界に飛び込んでいく最高の舞台と考えています。病気に苦しんでいる患者に一日も早く貢献できるようにしたい」と話していました。

 iPS細胞の人への応用は、体のさまざまな組織を作り出す「再生医療」がよく知られていますが、世界的には新薬の開発のためにiPS細胞を役立てる研究が盛んです。

 新薬の開発は現在、新薬の候補となる有望とみられる物質をまず動物に投与し、安全性や効果が確認できた段階で人に応用する臨床研究や治験に進むのが一般的です。

 しかし、動物で効果があっても人では効果がない物質も少なくありません。また、人に未知の物質を投与してその効果を調べるには、安全性などの面で高いハードルを越える必要もあります。このため、こうした手順を踏んで進んでいくには膨大な時間と費用が必要でした。

 ところが、iPS細胞を使って病気の人の神経細胞や心臓の細胞を大量に作り出せば、さまざまな新薬の候補を直接投与し、実験室で安全性や効果を簡単にしかも安価に調べることができます。候補となる物質が有望なのかどうか、早い段階で見通しを立て、資金を集中的に投入して研究開発を進めることができるため、新薬の開発を大きく変えると期待されています。

 実際に京都大学iPS細胞研究所では昨年、全身の骨を形づくる元となる軟骨ができず、手足などが成長しにくい「軟骨無形成症」という難病の新薬の候補となる物質をiPS細胞を使って見付け出すことに成功しています。

 製薬会社は、新薬として開発途中の物質や当初有望と思われたものの開発を中止してしまった物質を数多く保有しています。これらの物質をiPS細胞の技術を使って効果があるかどうか検証すれば、これまで見付けられなかった新たな薬の効果を発見できる可能性なども期待されています。

 2015年12月16日(水)

 

■企業のストレスチェック、保険会社が支援ビジネス

 従業員の心の不調を未然に防ぐため、企業に「ストレスチェック」を義務付ける制度が12月1日から始まったことを受け、保険会社はストレスチェックの結果を専門的に分析するなど、企業を支援するビジネスやサービスを相次いで導入しています。

 ストレスチェックは、働く人の心の不調を未然に防ごうと、従業員のストレスの度合いを確認するもので、12月1日から、従業員50人以上の企業は年に1度の実施を法律で義務付けられました。ただ、中小企業を中心に、チェックした結果の分析や対応の仕方に戸惑う声も出ており、保険会社の間では、ストレスチェックを行う企業を支援するサービスを相次いで導入しています。

 このうち、生命保険会社の「第一生命」は、所属する保健師を企業に派遣して、ストレスチェックの進め方や強いストレスがかかっている従業員への対応の仕方などを助言するセミナーを開催しており、企業に呼び掛けています。

 また、損害保険会社の「損保ジャパン日本興亜」は、ストレスチェックの結果を部署や年齢層ごとに分析して職場環境の改善を促したり、従業員と面談する医師を紹介したりする有料の事業を新たに始めました。この事業を担当する子会社の今井達也社長は、「従業員のメンタルヘルスを経営課題と捉える企業が増えてきており、健康的な職場作りをサポートしていきたい」と話しています。

 こうした取り組みは、ほかの保険会社も進めており、企業にメンタルヘルスへの対応を促す動きが広がりそうです。

 一方、ストレスチェックを義務付けられた企業からは、どのように実施すればよいのか、戸惑いの声が出ています。

 東京都に本社がある配管設備のメーカーでは、全国各地に勤務するおよそ400人の従業員に、どのようにストレスチェックに回答してもらうかや、チェックの結果をどのように分析すれば職場の改善につなげられるか、従業員と面談する医師をどう確保するかなどが課題になっているということで、専門の外部の企業にストレスチェックの実施を委託することを検討しています。

 この企業の鈴木俊孝人事課長は、「チェックの結果、ストレスが高い従業員がいた場合、プライバシーを守りながら、業務上の配慮をどう行うかも課題になると思う。ストレスチェックをどのように実施するかは、情報収集をしている段階で、まだ具体化はできません」と話していました。

 2015年12月15日(火)

 

■所得が低い人ほど、野菜や肉を食べず 厚労省が国民の健康状態を調査

 所得が低い人ほど、米やパンなど穀類の摂取量が増える一方で、野菜や肉の摂取量が少なく、栄養バランスのよい食事が取れていないことが、厚生労働省の国民健康・栄養調査でわかりました。

 厚労省は、国民の健康状態などについて毎年調査を行っており、昨年は、回答を得られた3600世帯余りについて結果を分析しました。

 それによりますと、米やパンなど穀類の1日の摂取量は、所得が200万円未満の世帯では、男性は535グラム、女性は372グラムと、所得が600万円以上の世帯より20グラムから40グラム多くなっていました。

 一方、野菜の摂取量は、所得が200万円未満の世帯では、男性は253グラム、女性は271グラムと、所得が600万円以上の世帯より40グラムから70グラム少なくなっていました。

 所得の低い人は、肉の摂取量も少なく、所得が低い人ほど栄養バランスのよい食事が取れていないことがわかりました。

 また、健康診断を受けていない人の割合は、所得が600万円以上の男性では16・1パーセントだったのに対し、所得が200万円未満の男性は42・9パーセントと、所得が低くなるほど高くなっていました。

 厚労省は、「所得が低い人は栄養バランスのよい食事をとる余裕がなくなっているのではないか。食事の内容を見直すなど健康への関心を高めてほしい」と話しています。

 2015年12月14日(月)

 

■老化した卵子の質の改善に自分の組織を移植 産科婦人科学会、臨床研究を容認

 不妊に悩む女性の卵子に女性自身の細胞の一部を注入し、老化した卵子の質を改善させようという不妊治療について、日本産科婦人科学会は、国内での実施を申請した医療機関に対し、臨床研究として実施を承認したと発表しました。

 これは、12日に開かれた日本産科婦人科学会で承認されました。それによりますと、この技術はアメリカのベンチャー企業が提供しているもので、女性の卵巣の組織にある細胞から、エネルギーを作り出すミトコンドリアと呼ばれる器官を取り出し、体外受精の際に本人の卵子に注入することで、卵子の質が改善し、妊娠しやすくなるというものです。

 カナダやトルコなどで200回以上実施され、20人以上の赤ちゃんが誕生しているといいます。

 日本産科婦人科学会は会見で、「未知の問題が存在する可能性は否定できず、科学的な効果は十分に検証されていない。初期の研究や実験段階の治療法だと考えられる」との見解を示した上で、この技術の実施を申請した大阪府内の民間クリニックに対し、治療ではなく臨床研究としての実施を承認したと発表しました。

 日本産科婦人科学会の苛原稔倫理委員会委員長は、「学会としてこの治療法を広めようという段階のものではなく、その科学的なメカニズムや治療効果について今後見極めていく必要がある」としています。

 2015年12月13日(日)

 

■犬の体外受精に世界で初めて成功 アメリカの研究チーム

 アメリカの研究チームが、体外受精で子犬を誕生させることに世界で初めて成功したと発表し、絶滅の恐れがある種類の犬の繁殖や、人間と共通する遺伝性の病気の研究に応用できるのではないかと、期待が高まっています。

 これは、アメリカのコーネル大学とスミソニアン協会の研究チームが、科学誌「プロスワン」に10日までに発表したもので、体外受精でビーグル犬5匹と、ビーグルとコッカー・スパニエルの雑種2匹の計7匹の子犬の誕生に、今年7月に成功したということです。

 人間の体外受精は、1978年に初めて子供の誕生に成功しましたが、犬の場合は、排卵が1年に1度か2度ほどしかない上、卵子の受精可能な期間が人間と違うことなどから、1970年代半ばから失敗が続いていました。

 今回、研究チームは、採卵の時期を工夫したほか、マグネシウムを含む溶液を加えて受精の動きを活発化させることで、体外受精による子犬の誕生に成功したとしています。親は3組おり、受精卵19個を雌犬に移植しました。

 生後5カ月となった子犬はすべて元気で、健康状態に問題はないといいます。

 研究チームは「今回の技術は希少な犬種の保存に役立つ強力な技術だ」と述べて、絶滅の恐れがある種類の犬の繁殖や、人間と共通する遺伝性の病気の研究に応用できるのではないかと期待を高めています。

 2015年12月11日(金)

 

■化血研、動物用ワクチンでも不正製法 農水省が約30種で確認

 血液製剤を40年以上にわたって不正に製造していた「化学及血清療法研究所」(化血研、熊本市)が、家畜に使う動物用ワクチンと診断薬でも国が承認していない方法でつくっていたことが、農林水産省の調査で明らかになりました。

 不正製造は継続的に行われていたとみられ、農水省は9日、医薬品医療機器法違反の疑いで、化血研への立ち入り調査を始めました。

 不正があったのは化血研が製造する動物用ワクチンなど約50種類のうち約30種類。豚の下痢や牛の流産などを引き起こす感染症を防ぐためのワクチンなどで、細菌の混入を調べる際、承認された手順通りに検査していませんでした。

 今年2月に化血研から「承認された手順通りにつくっていない製品が見付かった」と報告を受けた農水省が調べ、不正を確認しました。出荷済み製品は品質を調べる国家検定を通過しており、安全性に問題はないといいます。

 製造記録の偽造といった隠蔽(いんぺい)は現時点で確認されていないものの、医薬品製造に対する国のチェックを軽視する姿勢が、化血研の各部門に広がっていた可能性が出てきました。農水省は資料の提出などを求め、さらに調査します。

 化血研は、動物用ワクチン8種類の出荷を自粛しているといいます。担当者はマスコミの取材に対し、「農水省の指導のもと適切な対応をしたい」と話しています。

 2015年12月10日(木)

 

■中国の大気汚染が拡大 新たに2都市で警報最高レベルに

 中国で8日、大気汚染警報のうち最高レベルの「赤色警報」が7日に発令された北京に続き、複数の都市で同警報が発令されました。

 国営メディアが9日、報じました。当局は、一部地域ではスモッグが12日まで続く見込みとしています。

 国営英字紙チャイナ・デーリーは、「赤色警報」を初めて発令した北京に続き、同市周辺に位置する河北省定州および辛集市が8日、初めて同警報を発令したほか、北部の27都市が警報レベルを引き上げたと伝えました。

 大気汚染により、同地域に暮らす3億人以上の人々が影響を受けているといいます。大気汚染の主な原因は、冬の暖房のために石炭が各地の農村で燃やされているためだと指摘されています。

 北京市環境保護局は今週、公式サイトで「予報によれば、12月8日から12日にかけて、大気中における(スモッグの)拡散の総体的な状況は好ましくない」と発表しました。

 独自の測定値を公表している米大使館によると、北京では9日、肺に深く入り込む有害な微小粒子状物質PM2・5の1立方メートル当たりの濃度が、日本の環境省が「外出を控えるよう呼び掛ける」とする値の3倍から4倍の250マイクログラムを超えたといいます。

 大気環境に詳しい九州大学応用力学研究所の竹村俊彦教授は、大気汚染物質が国境を越えてどのように拡散するのか、コンピューターで予測しました。

 それによりますと、中国では上空の風が弱いため、10日までは大気汚染物質の濃度は高い状態が続くということですが、日本に拡散するまでに濃度は薄まる見込みだということです。

 その上で竹村教授は、「日本への影響は限定的になると考えられる。今後、日本海の北側を前線が移動すると考えられ、風向きの予想から大気汚染物質は北海道や東北の日本海側に到達する可能性がある。大気汚染物質に対しアレルギー性の疾患がある人や呼吸器の弱い人は注意が必要で、濃度が高くなりそうな日は屋外での活動を控えたり、マスクをしたりするなどの対策を取ったほうがいい」と述べて、注意を呼び掛けました。

 2015年12月9日(水)

 

■健康食品、摂取リスクの注意喚起 食品安全委員会

 健康食品の摂取リスクなどを検討してきた内閣府食品安全委員会(佐藤洋委員長)は8日、「いわゆる『健康食品』に関する報告書」を公表しました。

 これに合わせ「健康食品で逆に健康を害することもある。科学的な考え方を持って、食品を取るかどうか判断してほしい」とする異例の委員長談話を発表し、注意喚起しました。

 同委員会の専門家グループでは、食品のリスク要因を主に製品、摂取者、情報の3点から分析。その上で、健康食品を選ぶ時に注意すべき項目を19のメッセージにまとめ、ホームページで公開しています。

 メッセージは、「現在の日本人が通常の食事をしていて欠乏症を起こすビタミンやミネラルはあまりない」と説明。サプリメントでビタミンやミネラルを摂取すると、過剰摂取のリスクがあると注意を喚起しました。

 また、健康食品は品質管理の規制の対象になっていないことや、医薬品と併用すると薬の効果が弱まったり強くなりすぎたりする可能性もあることなどを指摘し、安全性に関する注意点を多く挙げました。

 2015年12月9日(水)

 

■北京の大気汚染、初の最高レベル「赤色警報」を発令 市全域で交通規制

 中国の北京市は7日夕、微小粒子状物質PM2・5などによる深刻な大気汚染が8日から10日まで続くことが予想されるとして、初めて最高レベルの「赤色警報」を出しました。

 車両の半分が走れなくなるほか、市教委は小中学校などの休校を指示。市民生活への影響が広がりそうです。

 北京市は3月、大気汚染への応急対策を定め、4段階の警報レベルごとに政府や市民、企業などの対応を決めました。2013年10月の制度開始以来、深刻な汚染が3日以上続くという赤色警報が出るのは初めて。

 工場の稼働制限などの緊急措置がとられるほか、市全域で交通規制が行われ、偶数日は偶数ナンバー、奇数日は奇数ナンバーしか走れなくなります。市教委は、市内の小中学校と幼稚園の休校、休園を指示。企業は、在宅勤務などの検討も求められます。

 北京では先週も深刻な大気汚染が続いたばかりで、初の赤色警報で暮らしへの影響が広がれば、不満が高まりそうです。

 2015年12月8日(火)

 

■iPS細胞で再生医療実現、文科省が行程表を改訂 毛包や歯などを追加

 文部科学省は4日、さまざまな細胞や組織に成長させられるiPS細胞(人工多能性幹細胞)による再生医療の実現に向けた行程表(研究ロードマップ)の改訂版を発表しました。

 心不全治療のための心筋は2年後、糖尿病治療のための膵臓(すいぞう)の細胞は4年後など、iPS細胞をもとにつくる計19の細胞や器官について、人を対象に研究で使い始める目標時期を明記しました。

 工程表は2009年に初めて作成され、2013年2月に更新、今回は2回目の改定。今回は、人を対象にした臨床研究や治験をまとめて「臨床応用」と定義し、研究者の見通しをもとにその開始目標を設定しました。研究の進展を受け、がん治療用の免疫細胞や毛髪をつくる頭部の毛包、歯など新たに5細胞や器官を追加しました。

 iPS細胞からの網膜の細胞を目の難病患者に移植する研究が昨年9月に始まったのに続き、早ければ来年度からパーキンソン病の治療に使う神経細胞や血小板、角膜について臨床応用を始めるとしました。

 一方、赤血球や腎臓(じんぞう)などは、技術的な困難さからこれまでの目標よりも数年遅くなりました。臨床応用の開始まで7~10年以上かかる見込みといいます。毛包は4~5年後、歯は7年後以降の見込み。

 研究段階を経て実用化する時期のめどは示しませんでした。研究の結果に加えて、製薬会社などの参加が不可欠になるためといいます。

 iPS細胞研究に年80億円ほどを投じている文科省は、「研究の進み具合を把握しながら、再生医療研究を引き続き支援していきたい」としています。

 2015年12月7日(月)

 

■患者が使った薬、ジェネリックが56パーセント 2年前より9・3ポイント増加

 厚生労働省は4日開かれた中央社会保険医療協議会(中医協)で、今年9月の時点で、患者が使用した薬のうち価格の安い後発医薬品、いわゆるジェネリック医薬品の占める割合が、56・2パーセントになったという調査結果を報告しました。

 厚労省は、2年に一度行われる診療報酬の改定に向けた「薬価」の調査に合わせて、医薬品の特許が切れた後に販売される価格の安い後発医薬品、いわゆるジェネリック医薬品の使用割合も調べており、その結果を4日の中医協で報告しました。

 それによりますと、今年9月の時点で、全国の病院や薬局などを通じて患者が使用した薬のうち、ジェネリックの占める割合は数量ベースで56・2パーセント。これは同じ調査を行った2年前と比べ、9・3ポイント増えており、これまでで最も高くなりました。

 厚労省は、「ジェネリック医薬品の使用割合は順調に増えている。今後も品質情報を開示して、安心して使ってもらえるようにするなど、啓発活動を行い使用を促進したい」としています。

 ジェネリック医薬品の使用割合を巡って、政府は医療費の抑制に向けて、2020年度までのなるべく早い時期に80パーセント以上に引き上げるとする目標を掲げています。思惑通りに普及が進めば、医療費の削減効果は2020年度に1・3兆円になるといいます。

 2015年12月6日(日)

 

■来年の花粉飛散は早めの2月ごろ 日本気象協会が発表

 日本気象協会は2日、2016年春のスギ・ヒノキ花粉の飛散予測を発表しました。

 花粉の飛散数は、関東甲信地方、中国地方で今春並みになります。九州地方では今春より多く、東海地方、四国地方ではやや多くなる見込み。

 エルニーニョ現象の影響で、東日本以西は暖冬傾向にあることから、スギ花粉の飛散時期は東日本、西日本で例年より早く、北日本は例年並みとなるといいます。

 日本気象協会によると、今春と比べて飛散数が多いと予想するのは、愛知県が最多の約4・5倍で、福岡県の約3倍が続きます。宮城県、山梨県も1・5倍以上の飛散数を見込んでいます。

 ただ過去10年間(2006~2015年)の平均値と比較すると、来春の飛散数は、東北地方を除いて全国的に少ない傾向だといいます。

 花粉が飛び始める時期は、九州地方全域で2月5日、首都圏では2月10日ごろ、東北地方は2月下旬から3月中旬と予想しています。

 ただし、スギ花粉は飛散開始と認められる前から、わずかな量が飛び始めます。2月上旬に飛散開始が予測される九州から関東は1月のうちから花粉対策を始めるとよいでしょう。

 2015年12月4日(金)

 

■血液製剤不正製造で、厚労省が立ち入り検査 熊本の製薬会社が数々の隠蔽工作

 熊本の製薬会社の「化学及血清療法研究所(化血研)」が長年にわたって国の承認とは異なる方法で血液製剤を製造し、組織的な隠蔽を図っていた問題で、厚生労働省は3日午後、熊本市にある「化血研」の本社に法律に基づく立ち入り検査に入りました。

 立ち入り検査を受けているのは、血液製剤の分野で国内シェアのおよそ3割を占める化血研の熊本市の本社。午後1時ごろ、厚生労働省の担当者が到着し、本社内に入っていきました。

 化血研は長年にわたって、国の承認を受けずに「ヘパリン」という血液を固まりにくくする成分を添加するなど、12種類の血液製剤のおよそ30の工程について、国が認めた内容とは異なる方法で製造していました。

 また、こうした不正を隠そうと、幹部の指示で記録の改ざんなど、組織的な隠蔽を図っていました。具体的には、製造記録に紫外線を当てて変色させ作成時期を古く見せかけていたほか、承認を受けずに勝手に添加した成分について出納記録の改ざんが行われていたということです。さらに、本物の記録は明朝体、虚偽の記録はゴシック体と社内で使い分け、国などの検査の際にはゴシック体の記録を見せていたといいます。

 この問題の調査に当たった会社の第三者委員会は、「重大な違法行為で常軌を逸した隠蔽体質だ」と厳しく批判したほか、2日夜会見した化血研の宮本誠二前理事長も、「社会的信用が失墜する極めて深刻な事態だ」として、役員全員の刷新を明らかにしました。

 厚生労働省は3日の立ち入りなどで、製造記録などを詳しく調べることにしていて、結果を踏まえ、今月中に業務改善命令を出す方針です。

 立ち入り検査について、化血研の上田信之経営管理部長が報道陣の取材に応じ、「立ち入り検査は今日と明日の2日間、行われると聞いている。製造記録や会議に使用した資料などの確認や、関係者からの聞き取りが行われている」と説明しました。そして、「患者の皆さんを始め医療関係者、国民の皆さんに多大なご迷惑をかけて大変申し訳ありませんでした。今回の事態を真摯(しんし)に受け止め、新しい体制で再発防止に全力で取り組んでいきます」と改めて謝罪しました。

 2015年12月4日(金)

 

■後発薬、来年度から新薬の半額に 厚労省が普及促し医療費抑制

 新薬と同じ有効成分と効果を持つジェネリック医薬品(後発薬)を新たに販売する際の価格が、2016年度から新薬の原則5割に引き下げられることが2日、固まりました。

 現在は原則6割ですが、厚生労働省が中央社会保険医療協議会(中医協)に提案し、大筋で了承されました。価格をさらに安くして普及を促し、医療費抑制につなげる狙い。

 厚労省は、医薬品の特許が切れた後に販売される価格の安いジェネリック医薬品の使用割合を、現在の50パーセント程度から2020年度までのなるべく早い時期に80パーセント以上に引き上げるとする目標を掲げています。

 こうした中、2日に開かれた中医協で、厚労省は、価格面からもジェネリック医薬品の使用を促進するため、現在、原則6割とされているジェネリック医薬品の価格を原則5割に引き下げるよう提案しました。出席者から異論は出されず、提案は大筋で了承されました。

 このほか2日の中医協では、ジェネリック医薬品への置き換えが進んでいない新薬の価格を特例的に引き下げている措置について、その対象を「置き換え率が60パーセント未満のもの」とした今の基準から「70パーセント未満」に広げることも了承されました。

 製薬業界は、基本的に容認する姿勢なものの、「一律に引き下げるのは乱暴だ」として、値下げの影響が大きいものなど、薬の種類ごとに対応を分けるよう求めています。

 厚労省は、近くまとまる薬価調査の結果を踏まえ、月内に最終決定し、2016年度の診療報酬改定に反映させます。

 2015年12月3日(木)

 

■RSウイルスの感染が拡大 患者数は過去11年で最多に

 乳幼児に肺炎などを引き起こすRSウイルス感染症の患者が、2003年に統計を取り始めて以降、最も多くなってます。国立感染症研究所は、手洗いなど対策の徹底を呼び掛けています。

 RSウイルス感染症は、発熱やせきなど、風邪に似た症状の出る病気で、秋から冬にかけて乳幼児を中心に流行し、初めての感染では肺炎などを引き起こし重症化することがあります。

 国立感染症研究所によりますと、11月22日までの1週間に、全国およそ3000の小児科の医療機関で新たにRSウイルス感染症と診断された患者は6687人で、前の週に比べておよそ1200人増えました。患者数はこの時期としては、2003年に統計を取り始めて以降、過去11年で最も多くなっています。

 都道府県別の患者数は、大阪府が580人、北海道が499人、愛知県が354人、東京都が335人、埼玉県が291人、兵庫県が266人、福島県が257人などとなっており、大都市を中心に感染が広がっています。

 RSウイルス感染症の流行は、例年、今月から来月にかけてがピークで、患者は今後さらに増えるとみられます。

 国立感染症研究所の木村博一室長は、「今後数週間はさらに患者が増える可能性がある。6カ月未満の赤ちゃんは、症状が悪化して気管支炎や肺炎を引き起こしやい。また、ぜんそくなどの持病がある高齢者も重症化しやすいので、手洗いやマスクといった感染防止対策を徹底してほしい」と話しています。

 2015年12月2日(水)

 

■「ストレスチェック」、12月1日から始まる 従業員50人以上の企業に義務付け

 労働に関する法律の改正で、12月1日から従業員50人以上の職場では、「ストレスチェック」を年に1回行うことが義務付けられます。

 従業員の精神的ストレスを早期に発見し、悪化を防ぐことが目的です。厚生労働省が作ったストレスチェックリストは57項目からなり、「非常にたくさんの仕事をしなければならない」「時間内に仕事が処理しきれない」「私の部署内で意見のくい違いがある」「仕事に満足だ」などの質問に答える形です。

 解答結果から「高ストレス」と判断された従業員は、医師との面談ができ、診断結果によっては事業者に対して、従業員の働く時間の短縮や配置換えといった対応が求められます。

 なお、ストレスチェックの結果は、従業員本人のみに通知され、結果による不当な解雇や異動は禁止されます。

 こうした制度ができた背景には昨年度、500人近くがうつ病を始めとする精神障害で労災を認められるなど、仕事のストレスが原因で体調を崩す人が年々増えていることがあります。

 民間企業の労務担当者を対象にしたアンケートでは、ストレスチェックを実施したことがないという回答が64パーセントに上りました。従業員5000人以上の企業でも、実施率は半数を下回る結果となっています。

 厚生労働省の塚本勝利産業保健支援室長は、「近年、仕事について強い不安や悩み、ストレスを感じる人が5割を超えるなどメンタルヘルスの対策が大きな課題になっている。制度を活用して不調を未然に防ぐとともに職場の改善にも活かしてほしい」と話しています。

 ストレスチェックの義務化を前に、東京都千代田区では11月30日、中小企業の経営者たちに自分たちのストレスの状態を測ってもらい、社内の健康管理の大切さを知ってもらう取り組みが行われました。

 この東京商工会議所が主催した取り組みには、中小企業の経営者など20人が参加しました。東京商工会議所の矢吹伸幸さんは、「ストレス度合いを知ってもらうことと、経営者が多く参加しているので、従業員の健康管理を経営者自ら考えてもらおうと企画した」と話しました。

 参加した経営者たちは、丸の内周辺でウオーキングをしたり、新丸ビル内にある健康相談が受けられる施設で体の水分量や基礎代謝量などを測定しました。そして、左指の脈のリズムからストレスの度合いを診断するストレスチェックを実際に受けました。

 体験した経営者は、「社員の健康管理は仕事への影響も大きいので、未然に防ぐという意味でストレスなどを可視化し、社員の健康管理をしていかないといけない」「(ストレスチェックを体験してみて)思ったより悪いので、びっくりした。社員の中にはストレスを処理できず、いろいろな問題を起こす人もいる。ストレスの解消を図ることは重要」などと話していました。

 東京商工会議所は、このイベントを今後定期的に開催することで、より多くの参加者たちに従業員の心身の健康を守る職場づくりを考えてほしいとしています。

 2015年12月1日(火)

 

■日中韓、感染症対策などで連携強化へ 京都で保健大臣会合

 日本・中国・韓国の3カ国の保健大臣会合が京都市で開かれ、中東呼吸器症候群(MERS)やエボラ出血熱などの感染症に関する情報共有をさらに強化することや、ウイルスなどに薬剤が効かなくなる「薬剤耐性」への対応を話し合うアジア太平洋地域の閣僚レベルの会合を、来年開くことを確認しました。

 会合は2007年に始まり、今回で8回目。日本での開催は2回目となります。京都市の京都迎賓館で開かれた日中韓3カ国の保健大臣会合には、塩崎厚生労働大臣と、中国の李斌国家衛生計画出産委員会主任、韓国のチョン・ジンヨプ保健福祉省長官が出席し、共同声明を採択しました。

 それによりますと、韓国で今年「MERSコロナウイルス」の感染が広がったことについて、「3カ国が協力して流行の拡大に対処し、患者に関する情報が円滑に伝達された」とした上で、今後の感染症対策では「コミュニケーションと情報共有をさらに強化し、より緊密な協力が必要なことを再確認した」としています。

 また会合では、ウイルスなどに薬剤が効かなくなる「薬剤耐性」が国際的な脅威になってきているとして、来年4月にアジア太平洋地域の閣僚レベルの会合を開き、対応を協議することを確認しました。

 この後、塩崎大臣は記者団に対し、「薬剤耐性の問題は今後さらに深刻化するとみられ、政府を挙げて取り組まなければならない。日中韓ともに、重要性を深く認識している」と述べました。

 2015年11月30日(月)

 

■子宮頸がんワクチン接種と症状の因果関係を調査へ 厚生労働省

 子宮頸がんワクチンを接種した後、原因不明の体の痛みなどを訴える患者が相次いだ問題で、厚生労働省は全国の医療機関を通じて同様の症状が出ている患者の調査を行い、ワクチンの接種と症状の因果関係を調べることになりました。

 子宮頸がんワクチンを巡っては、女子中学生や高校生を中心に接種の後に原因不明の体の痛みなどを訴える患者が相次いだため、厚生労働省は一昨年6月、積極的な接種の呼び掛けを中止しています。

 27日に開かれた厚労省の専門家会議では、接種と症状の因果関係を調べるため、小児科や神経内科などがあるベッド数200以上の全国の医療機関などを対象に、大規模な調査を行うことを決めました。

 この調査は、今年7月以降の半年間に体の痛みや歩行が難しいなどの運動障害、それに記憶力の低下といった症状が3カ月以上続いている12歳から18歳までの患者を対象に行われ、ワクチンを接種した場合と接種していない場合で、症状の発生率に違いが出るのか確認するとしています。

 以前から、ワクチンを接種した後に報告されている症状は、ワクチンとは無関係な思春期特有のものではないかとの指摘があり、ワクチンの接種をしていなくても体の痛みなどの症状がある患者がどのくらいいるかも把握します。

 厚労省は、調査の結果を踏まえて、子宮頸がんワクチンの接種について積極的な呼び掛けを再開するかどうか判断することにしています。

 2015年11月29日(日)

 

■梅毒の患者、若い女性に急増し2211人に上る 1999年以降で最多

 性感染症の梅毒の患者が今年、2000人を超え、現在の方法で統計を取り始めた1999年以降、最も多くなったことが国立感染症研究所のまとめでわかりました。専門家は、予防と早期の受診を呼び掛けています。

 梅毒は、性的な接触などによって起きる細菌性の感染症で、早期に抗生物質などで治療すれば治ります。しかし、発疹などの症状を長年、放置していると体のまひなどを引き起こす恐れがあるほか、妊娠中の母親が感染すると、死産や子供に重い障害が残る可能性もあります。

 国立感染症研究所によりますと、今年に入って11月15日までに全国の医療機関から報告された梅毒の患者は、2211人に上り、現在の方法で統計を取り始めた1999年以降、最も多くなりました。

 梅毒の患者の報告数は、10年ほど前から増加傾向にありましたが、2008年の831人をピークに2010年には621人まで減りました。しかし、2011年から急増し2014年は1671人でした。

 今年の患者のうち、女性の患者は昨年の同じ時期の2倍に上っており、妊婦中におなかの胎児にまで感染し、知的な発育の遅れ、運動障害などを引き起こす恐れのある先天梅毒となったケースも10人報告されています。

 感染症の問題に詳しい川崎市健康安全研究所の岡部信彦所長は、「不特定多数の人と性的な接触をしたり、コンドームを不適切に使用したりすると感染するリスクが高まる。疑わしい症状が出たら、早めに医療機関を受診してほしい」と話しています。

 2015年11月28日(土)

 

■iPhoneを活用した臨床研究を開始 慶大医学部、不整脈や脳梗塞など

 慶応大医学部は25日、スマホ「iPhone」を使った臨床研究を国内で初めて始めたと発表しました。生活状況の質問に答えたり、手の運動機能をスマホ内蔵のセンサーで調べたりして、不整脈や脳梗塞(こうそく)にかかるリスクを検討します。

 今回は個人向けの健康を診断するのではなく、スマホで集めたデータの質を確かめるのが狙い。

 iPhoneのセンサーなどを活用した研究は、米スタンフォード大など海外の機関では、糖尿病、ぜんそく、乳がんなどの分野で始まっています。アップルが一般公開している医学研究アプリ作成の基盤技術を利用しています。

 この基盤を使う研究を実施するのは、国内では慶応大が初めてといいます。循環器内科の福田恵一教授、木村雄弘・特任助教らが、取り組みます。

 アップルのサイトから「Heart & Brain」という無料アプリを入手し、同意した上で匿名、無料で研究に参加します。腕時計型のアップルウォッチを使って心拍を測定をしますが、そのウォッチを持たない人でも参加できます。動悸(どうき)が起きたら、日時や場所を記録する機能もあります。

 個人が特定できない形でデータを集め、不整脈などの状況を調べ、健康維持や病気の予防に活用できるかを評価。不整脈があると血栓ができて脳の血管を詰まらせ、脳梗塞を招くリスクが高まります。

 木村助教は、「多くの人が携帯するスマホなどのセンサーを活用することで、病気の早期発見や予防の可能性を探りたい」と話しています。

 2015年11月26日(木)

 

■温暖化で子供7億人、洪水や干ばつの危険に直面 ユニセフが警告

 フランスのパリで来週から開かれる地球温暖化対策の国連の会議COP21を前に、国連児童基金(ユニセフ)は温暖化の影響で、世界の子供23億人のうち7億人近くが洪水や干ばつの危険にさらされていると警告する報告書を公表しました。

 ユニセフは24日、報告書を公表し、地球温暖化の影響で、洪水が起きる可能性が高い地域に住む子供たちが5億3000万人、干ばつが起きる可能性が高い地域に住む子供たちが1億6000万人いると推計し、合わせて7億人近くの子供たちが危険にさらされていると警告しました。

 このうち、大規模な洪水や熱帯暴風雨による被害が起きる可能性が高い地域は、インド北部や中国南部などアジアに集中しているほか、干ばつが起きる可能性が高いのは、エジプトなどの北アフリカだとしています。

 その上で、これらの地域では、食糧不足による栄養不良やマラリア、下痢といった病気の流行などが懸念されると指摘しています。

 報告書の執筆者の一人で、ユニセフの政策専門家であるニコラス・リーズ氏は、「子供たちは、気候変動による打撃を受けるだろう。彼らはすでに、こうした影響の多くを受けている」として、来週からパリで開かれるCOP21で、地球温暖化の原因となる温室効果ガスの排出削減に向けた国際的な合意の必要性を訴えました。

 COP21を巡っては、国連の別の機関が、気象災害による死者がこの20年間で60万人を超えたとする報告書をまとめて対策を求めています。

 一方、世界銀行は、地球温暖化が特にアフリカで、干ばつによる食料不足や洪水による伝染病の流行などを引き起こし、経済成長や貧困からの脱却を難しくする恐れがあるとして、新たな支援の計画をまとめました。

 具体的には、農業用水のダムや水路の建設、高波や洪水への対策、それに二酸化炭素の排出を抑える水力や太陽光発電などの開発などを盛り込んでいます。

 世界銀行では、こうした対策を実行するため、自らの融資に加え、ほかの国際機関や民間の資金も活用し、来年から2020年までの5年間で160億ドル(日本円で2兆円)近い資金を投融資したい考えで、国連の会議COP21で提案することになりました。

 世界銀行のキム総裁は、「アフリカは温暖化の影響にさらされやすく、子供たちの発育不良や、伝染病、食料価格の高騰などあらゆる分野に打撃になる」として、温暖化対策で思い切った対策が取られなければ、アフリカで4300万人が貧困層に陥る恐れがあると警告し、国際社会に協力を呼び掛けています。

 2015年11月26日(木)

 

■エイズウイルスの感染力を低下させる蛋白質を発見 国立感染症研究所

 人間の体内にエイズウイルスの感染力を大幅に低下させる働きを持つ蛋白質があることを国立感染症研究所のチームが発見し、エイズの新たな治療薬の開発につながると注目されます。

 エイズウイルスの感染力を大幅に低下させる働きがあるとわかったのは、人間のリンパ節の中の細胞の一部に含まれる「MARCH8」と呼ばれる蛋白質です。

 国立感染症研究所の徳永研三主任研究官や、東京医科歯科大学、長崎国際大の共同研究チームは、MARCH8を持つ細胞と持たない細胞でそれぞれエイズウイルスを培養したところ、MARCH8を持つ細胞で増えたウイルスは、ほかの細胞に感染することがほとんどできませんでした。

 このためさらに詳しく調べたところ、MARCH8を持つ細胞で増やしたエイズウイルスは、細胞に感染する際に必要なウイルス表面の突起が極端に少なくなり、感染力が大幅に低下していたということです。

 徳永主任研究官は、「体内でMARCH8をたくさん作る薬ができれば、エイズの治療効果が期待できる。表面に突起を持つ別の種類のウイルスでも感染力の低下が確認されており、今後さらに研究を進めたい」と話してい

 2015年11月25日(水)

 

■エボラ出血熱、リベリアで再発する 2度目の終息宣言後に3人感染

 世界保健機関(WHO)は20日までに、エボラ出血熱の終息が宣言されていた西アフリカのリベリアで再び、感染者が3人確認されたと発表しました。

 感染が確認されたのは、首都モンロビア郊外に住む10歳の少年とその家族2人。感染経路などは、明らかにされていません。

 これまでに4800人あまりの死者を出したリベリアは、今年5月にいったん終息を宣言しましたが、その後患者が再確認され、9月に再び終息を宣言していました。

 エボラ出血熱は2013年12月の発生以来、西アフリカ3カ国を中心に大流行し、疑い例も含む死者は1万1314人、感染者は2万8634人に達しています。

 シエラレオネは、今月7日に終息を宣言。ギニアは、感染者がゼロとなり封じ込めに近付いています。完全な終息に向けて期待が高まっていましたが、リベリアでの再発で終息が遠のきました。

 2015年11月24日(火)

 

■働く世代のがん受診率向上へ、厚労省が「対策加速化プラン」

 日本人の2人に1人がかかると推計されているがんについて、厚生労働省は働く世代の検診の受診率を向上させ、死亡率を減らそうと「がん対策加速化プラン」をまとめました。

 これは20日に開かれた厚労省のがん対策推進協議会で、まとまりました。

 がんは日本人の死因で最も多く、2人に1人がかかると推計されています。しかし、検診の受診率は目標としている50パーセントに届かず、ほかの先進国に比べても低い水準で、早期発見や治療につながっていないと指摘されています。

 がん対策加速化プランでは、毎年、26万人がかかると推計されている働く世代への対策が重点的に示され、このうち、これまで自主的な取り組みに任されてきた職場の検診について、実態を調査した上で検査項目などを示したガイドラインを策定するとしています。市区町村が実施している検診についても、自治体ごとの受診率を公表し、働く世代などへの対策を促すとしています。

 さらに、抗がん剤などによる副作用や後遺症の治療ガイドラインの整備や患者への就労支援を行い、治療と仕事の両立を進めることや、患者個人の遺伝子情報に基づいた効果的な診断や治療法の開発に力を入れること、喫煙率を下げるため禁煙治療への保険適用の拡大などが盛り込まれています。

 厚労省は、こうしたプランを確実に進め、がんによる死亡率を2005年の人口10万人当たりの92・4人から20パーセント減らしたいとしています。

 2007年に施行されたがん対策基本法に基づき策定された「がん対策推進基本計画」で、今年末までの10年間にがんで死亡する75歳未満の人を20パーセント減少させるという目標を掲げていました。しかし、今年5月、現状のままでは目標が達成できず、がんで死亡する人は10年前に比べて17パーセントの減少にとどまることが、国立がん研究センターの推計で明らかになりました。

 背景には検診の受診率の低迷やたばこ対策の遅れがあると指摘され、厚労省は専門家などから意見を聞き、働く世代の検診の強化などを盛り込んだ「がん対策加速化プラン」の策定を進めていました。

 がん対策加速化プランについて、「全国がん患者団体連合会」の天野慎介理事長は、「職場でどのようながん検診が行われているのかすら把握されていないのが現状です。これまで不十分だった対策を進め、1人でも多くの命を救うことにつなげてほしい」と話していました。

 2015年11月23日(月)

 

■患者団体が精神科病院を4段階で評価  インターネットで公開中

 治療の実態がわかりにくく、よい医療機関を選ぶ手掛かりがない精神科の「見える化」を進めるため、うつ病などの患者や家族でつくるNPOが、診療の内容などを独自に点数化したアンケートの結果を、インターネットで公開しました。

 NPOは、「患者や家族が医療機関を選ぶ際の参考にしてほしい」としています。

 アンケート結果を公開したのは、うつ病や統合失調症などの患者や家族、医療者ら、およそ1万人の会員でつくる千葉県市川市のNPO法人「地域精神保健福祉機構(略称コンボ)」です。

 NPOによりますと、会員の患者のうち、40パーセント以上が信頼できる病院に出合うまで5年以上かかっているという調査結果があり、その間に症状を悪化させてしまうケースもあるということです。また、病気を画像や検査値で示せる体の病気と違い、回復度が見えにくい精神疾患は、治療成績の公開がほとんど行われていません。

 このためNPOは適切な医療機関を見付ける参考にしてもらおうと、100人以上の精神科医から意見を得て客観的に評価し得る質問を選んだ上で、今年6月から会員全員にこれまでにかかった医療機関の診療内容などを尋ねるアンケートを行いました。そして、有効な回答があったおよそ1200人分のデータを集計し、NPOのウェブサイトで公開しました。

 公開されたアンケート結果では、NPOが把握する精神科の医療機関の約4分の1に当たるという全国843の医療機関について、その総合評価が4段階で示されているほか、個別の医療機関ごとに、「病名を告げられたか」「治療法の選択肢が示されたか」「治療の効果について説明があったか」「飲んでいる薬は何種類か」「医師は人として信頼できる態度で接しているか」「医師の質問は(患者の自発的な)気付きを助けているか」といった、治療内容や医師の対応など25の項目について評価の結果が示されています。また、全国の平均と比較したグラフでも示されています。

 NPOの島田豊彰専務理事は、「精神科の治療の内容は、外から見えにくく、当事者が答えたアンケート結果を、病院や医師を選ぶ際の一つの参考にしてほしい」と話しています。

 公開された情報は11月中は誰でも見ることができますが、医療機関ごとの個別の25項目の評価に関しては12月以降、会員だけに限定して公開するということです。

 アドレスは(http://comhbo.net)。問い合わせはコンボ(電話047・320・3870)へ。

 2015年11月22日(日)

 

■産婦人科や産科設置の病院、過去最少に 全国で1361施設、24年連続で減少

 産婦人科や産科を設置している病院は、昨年10月の時点で全国で1300余りと、少子化の影響などによりこれまでで最も少なくなったことが、厚生労働省の調査でわかりました。

 厚労省は毎年、全国の医療機関を対象に診療科の状況や医師の数などについて調査を行っています。それによりますと、昨年10月の時点で精神科病院を除く一般病院は7426施設で、前年と比べて48施設減りました。

 このうち産婦人科や産科を設置している病院は全国で1361施設(前年比14施設減)と、24年連続で減少し、現在の形で統計を取り始めた1972年以降で最も少なくなりました。

 小児科を設置している病院も2656施設(前年比24施設減)と、21年連続で減少しました。

 厚労省の担当者は、「少子化による出生数の減少や、夜間や休日対応が多いなど厳しい勤務環境による産婦人科医の不足が背景にある」と分析。地域で産科の集約化、重点化が進んでいることも影響しているといいます。

 一方、人口10万人当たりの病院の常勤医師の数は全国の平均で165・3人と、前の年より3人増えました。

 医師の数が最も多かったのは高知県で234・8人、次いで徳島県が215・9人、福岡県が208・7人でした。最も少なかったのは埼玉県で114・8人、次いで新潟県が129・7人、福島県が131・3人でした。

 厚労省は、地域による医師の偏在を解消するために、近く専門家による検討会を立ち上げて対策を検討することにしています。

 2015年11月21日(土)

 

■労働者のストレスチェック、12月から義務化へ 従業員50人以上の企業が対象

 改正労働安全衛生法の施行によって、今年12月から従業員50人以上の企業に、「ストレスチェック」の実施が義務付けられます。

 義務化により、企業は1年に1度は従業員のストレス調査を実施する必要があります。企業が直接行うのではなく、医師や保健師などの専門家に依頼して、社員のストレスの程度をチェックします。

 結果は、医師や保健師などの実施者が従業員に通知する仕組み。本人の同意がなければ、ストレスチェックの結果を企業に伝えることは禁止されています。

 高いストレスを抱えていると判断された従業員に対しては面談指導を勧め、本人が必要性を認めた場合は医師など専門家が対応に当たります。企業はこれを受けて、職場の変更や就労時間の短縮など必要に応じた措置を講じることになります。

 大企業では、福利厚生サービスですでに契約している産業医らが対応するケースもありますが、大多数の企業は、改めてストレスチェックのために専門の事業者を活用することになりそうです。

 ストレスチェックが義務化された背景には、仕事などで強い不安や悩み、ストレスを感じている労働者が5割を超える状況や、仕事による強いストレスが原因で精神障害を発症し、労災認定される労働者の増加など、労働者のメンタルヘルスの不調を未然に防止する必要性が高まっていることがあります。

 ストレスチェックと面接指導の実施状況は、毎年、労働基準監督署に報告する必要もあります。

 また、医療・健康関連の業種以外からもストレスチェック支援に参入する動きがあり、ネットワークを利用したIT業界のサービス事業化も目立ちます。例えば、有線放送大手のUSENは、ストレスチェック専用サービス「こころの保健室」を展開。オフィス向けにメンタルヘルス用音楽を配信する事業と連携させて、取り組んでいます。

 ストレスチェックに詳しい三井住友海上火災保険法人開発室の向井孝行さんによると、専門事業者の対応は「サービスのレベルによって1人当たり300円から3000円とばらつきがある」といいます。

 2015年11月20日(金)

 

■中医協、2つの再生医療製品で保険適用 医薬品医療機器法の施行後、初めて

 中央社会保険医療協議会(中医協)は18日、ヒトの組織の細胞を培養して作る2つの再生医療製品について、一定の有効性が確認できたなどとして、公的医療保険を適用することを承認しました。

 これは、再生医療製品を新たに定義し、安全対策などの規制を盛り込んだ医薬品医療機器法(旧薬事法)の施行後、初めての保険適用となります。

 保険が適用されるのは、筋肉の組織の細胞を培養して作る製品で、重い心不全の患者に移植して心臓の働きを再生する「ハートシート」と、骨髄の細胞を培養して作る製品で、点滴で静脈に投与して臍帯(さいたい)血移植などによる合併症の急性移植片対宿主病を治療する「テムセル」という2つの再生医療製品です。

 中医協の総会では、委員からは「普及が進んだら、より多くの人が使えるように価格の見直しをしてほしい」といった意見が出されました。

 再生医療製品を巡っては、これまで治療が不可能とされた病気を根本的に治す可能性が指摘される一方、価格が高額なことなどが課題となっています。今回、保険適用が承認されたことで、患者がより安価に再生医療を受けられるようになると期待されています。

 2015年11月19日(木)

 

■俳優の阿藤さんが大動脈瘤破裂で急死 防ぐためには、CT検査がお勧め

 11月16日に死去していたことが報じられた俳優の阿藤快(あとう・かい)さんの突然の死は、大動脈瘤(りゅう)破裂胸腔内出血によるものといいます。

 健康そのものに見えた阿藤さんですが、テレビの医療系番組で心臓の血管が詰まっていると指摘されたり、背中の痛みを訴えたりしていたそうです。専門家は、「背中の痛みは大動脈瘤破裂の典型的な症状。痛みに気付いたら内科や心臓血管外科を受診してほしい」と呼び掛けています。

 所属事務所やこれまでの報道によると、阿藤さんは13日までメールで仕事の打ち合わせをしていたほか、東京都新宿区の自宅マンションの管理人が同日に外出する阿藤さんの姿を見掛けています。しかし、69歳の誕生日だった14日に事務所が送ったお祝いメールに返信がなく、15日の仕事にも姿を見せませんでした。このため、事務所のスタッフや親族らが現在は一人暮らしの阿藤さんの部屋へ行ったところ、布団の中で眠るように亡くなっていたといいます。

 亡くなったのは誕生日の14日とみられますが、前日まで外出もできるくらい元気で、普通の生活を送っていたことがうかがえます。

 死因とされる大動脈瘤破裂胸腔内出血は、心臓から出ている太い血管である大動脈にできた瘤(こぶ)が破れ、突然死することも多い病気。

 大動脈は、通常直径20ミリから30ミリ程度の太さがあり、50ミリから60ミリになると大動脈瘤と呼ばれます。原則的に症状が出ないものの、背中や胸、肩や腰などに痛みが出ることがあり、声がかすれる人もいます。

 阿藤さんは9月ごろから背中の痛みを訴え、舞台の共演者らにマッサージをしてもらっていました。タレントの大林素子さんには、10月に2回病院へ行ったことも打ち明けています。

 東京ベイ・浦安市川医療センター(千葉県浦安市)の渡辺弘之・ハートセンター長は、「破裂するまで症状がないことも多く、また破裂した後には治療が難しい。救急車で運ばれても助からないことも多い」と話し、「背中や腰の痛みは筋肉痛や神経痛と区別がつかないことも多いが、60歳以上で背中に痛みを感じたら内科や心臓外科を受診してほしい」と勧めています。

 サイレントキラーとも呼ばれる大動脈瘤の原因の多くは、血管の老化現象である動脈硬化。喫煙や高血圧、糖尿病など動脈硬化を促進する生活習慣や病気があると、大動脈瘤になる可能性が高くなります。

 阿藤さんは、数年前に出演したテレビ番組で「心臓の血管が詰まっている」と指摘され、血圧が少し高かったとも報じられています。また、10年前にタバコをやめたとされますが、60歳ぐらいまで喫煙していたことで、動脈硬化が進んでいた可能性があります。

 大動脈瘤は、CT(コンピューター断層撮影)で見付けることができます。

 川崎幸病院川崎大動脈センターの山本晋センター長は、「ほかの病気の検査でCTを撮った時に、大動脈瘤が見付かる人が多い。大動脈瘤が見付かったら、手術して人工血管を移植するか、カテーテル手術などの治療を受けることもできる」と話し、「60歳を過ぎたら、一度はCT検査を受けてほしい。検査で何もなければ安心だし、大動脈瘤が見付かったら治療を検討すればいい。大動脈瘤はすぐにできるわけではないので、次の検査は5~10年空けてもかまわない」と助言しています。

 2015年11月18日(水)

 

■「やせるスープ」 効果の根拠示されず 消費者庁が通販会社に再発防止命令

 即席スープを飲むだけでやせられるとの広告には根拠がなく、景品表示法違反(優良誤認)に当たるとして、消費者庁は11日までに、通信販売などを手掛ける日本イルムス(東京都板橋区)に、今後不当な表示を行わないよう再発防止を求める措置命令を出しました。

 対象商品は、日本イルムスが販売する「薬膳めかぶスープ」と「薬膳めかぶスープ極」。

 2014年2月~2015年4月、牛乳宅配事業者を通じて配ったチラシに、多くの種類の「薬膳葉実」を原料に配合していると称して、「ネバネバパワーと燃焼力で、強力なスッキリ感!」「16キログラムもやせて、お腹スッキリ!」「超低カロリーだから、無理な食事制限なし」「1日1杯でOK!」などと記載し、スープを飲むだけで運動や食事制限をしなくても、著しいダイエット効果があるかのように表示していました。

 消費者庁は、日本イルムスに対し表示の合理的な根拠を示すよう求め、同社は資料を提出しましたが、同庁は「合理的な根拠を示す資料とは認められない」と判断しました。

 消費者庁の調べによりますと、薬膳めかぶスープと薬膳めかぶスープ極は、宣伝チラシを通じて全国の33都道府県で販売され、1年間でおよそ4500万円の売り上げがあったということです。

 日本イルムスは、「措置命令を真摯(しんし)に受け止める。今後は再発防止に努める」とコメントしました。

 2015年11月17日(火)

 

■世界の糖尿病人口、4億人を超える 2015年、国際糖尿病連合が発表

 世界各国の糖尿病関連団体でつくる国際糖尿病連合(IDF、本部ブリュッセル)は15日までに、2015年の世界の糖尿病人口(20~79歳)が11人に1人に当たる約4億1500万人に上るとの推計を発表しました。有病率は8・8パーセントで、昨年より2830万人増えました。

 先進国だけでなく発展途上国でも増加傾向にあり、有効な対策を施さないと、2040年には10人に1人に当たる約6億4200万人に達する見込みだとしています。14日は、国連が認定した世界糖尿病デーでした。

 糖尿病関連の医療費は約81兆円(6730億ドル)で、世界の主な国で全医療費の5〜20パーセントを占めています。糖尿病の医療費は、2040年までに約96兆円(8020億ドル)に増えると予測されています。

 国際糖尿病連合では、世界を7地域に区分し統計値を出しています。日本が含まれる「西太平洋地域」は、世界で最も糖尿病人口の多い地域。

 西太平洋地域の糖尿病人口は約1億5320万人(有病率8・8パーセント)で、全世界の37パーセントがこの地域に集中しており、2040年までに約2億1500万人に増加すると予測されています。中国とインドネシア、日本の3カ国が、世界ランキングの上位10位に名を連ねています。

 西太平洋地域は糖尿病人口が多いにもかかわらず、費やされている糖尿病関連の医療費は全世界の13パーセントに相当する約13兆円(1060億ドル)でした。

 世界ランキングでは、第1位は中国(1億960万人)で、初めて1億人を超えました。第2位インド(6920万人)、第3位アメリカ(2930万人)となり、上位3カ国の順位は昨年と同じでした。昨年10位だった日本は、9位で約720万人。

 糖尿病に起因する疾患による死者は、500万人でした。糖尿病と糖尿病合併症は、ほとんどの国で死亡原因の上位を占めています。

糖尿病を発症している可能性が高いにもかかわらず、検査を受けて糖尿病と診断されていない人の数は、全世界で約1億9300万人(46・5パーセント)に上ります。つまり、世界の糖尿病有病者のおよそ半分は、自分が糖尿病であることを知りません。

 適切な糖尿病の治療を続けていれば、脳卒中、失明、腎臓病、足病変といった合併症の多くは予防が可能ですが、そのためには早期診断と治療が必要となります。糖尿病は初期の段階では自覚症状の乏しい病気なので、1年に1回以上は糖尿病の検査を受ける必要があります。

 糖尿病は大きく1型糖尿病、2型糖尿病、妊娠糖尿病に大きくタイプが分かれます。2型糖尿病が最も多く、高所得の国では91パーセントを占めています。一方、1型糖尿病は約8万6000人の子供が毎年発症しており、発症数は毎年3パーセントずつ増加しています。世界の小児1型糖尿病(0〜14歳)の患者数は、約54万2000人に上ります。

 2015年11月15日(日)

 

■歩行を助けるロボットスーツ、医療機器に承認へ 厚労省、ALSや筋ジス患者ら対象

 全身の筋力が低下した難病患者の歩行を助ける「ロボットスーツ」について、厚生労働省は医療機器として承認する方針を決めました。体に付けて使用する装着型の医療ロボットが承認されるのは、初めてです。

 これは10日に開かれた厚労省の専門家会議で決まりました。承認されるロボットスーツ「HAL(ハル)医療用(下肢タイプ)」は、患者が足を動かそうとする際に太ももやひざの皮膚の表面に流れる電気信号を検知し、モーターで両足に装着した器具を動かすことで歩行を助ける仕組みで、茨城県つくば市のベンチャー企業サイバーダインが開発しました。

 これまで全国9つの病院で24人の難病患者を対象に行われた臨床試験(治験)では、ロボットスーツを装着後、決められた時間内に歩く距離がおよそ10パーセント伸びるなど効果が認められたということです。

 専門家会議では、ロボットスーツを繰り返し使うことで歩行機能の改善が期待できるとして、全身の筋肉が徐々に動かなくなる筋委縮性側索硬化症(ALS)や筋ジストロフィー、脊髄性筋委縮症など8つの難病の患者を対象にした医療機器として承認する方針を決めました。

 国は成長戦略にロボット産業の育成を盛り込んでおり、今回優先的に審査が行われた結果、申請から承認までの期間が8カ月と、通常の医療機器よりも審査期間が4カ月短縮されました。

 ロボットスーツは、11月中にも正式承認され、早ければ来年の春には健康保険が適用される見通しで、厚労省は今後5年間、使用実績を調べ安全性や有効性を確認することにしています。

 サイバーダイン社長の山海嘉之・筑波大教授は、「ロボットが(患者の)支援だけでなく治療で効果を上げた。新しい医療分野を作る大きな一歩だ」と話しています。

 装着型のロボットが初めて医療機器として承認されたことについて、医療ロボットの普及を進めている「医療機器センター」の菊地眞理事長は、「薬で治せない病気を技術を使って治療するというのは大きなインパクトがある。ヨーロッパではすでに認められている機器がようやく日本でも認められたことは非常に大きな意味がある」と評価しています。

 一方で、技術の進展に伴い医療費の高騰が懸念されると指摘した上で、「医療費が40兆円に上る中、新しい医療技術、治療が出てきても患者に大きな負担をかけるわけにはいかず、医療制度を今後どうするのか議論していく必要がある」と話しています。

 2015年11月15日(日)

 

■医療事故調査制度、開始から1カ月で報告20件 消化器外科5件、産科4件

 医療事故の報告や原因調査を、すべての医療機関に義務付けた「医療事故調査制度」が先月始まり、報告された医療事故は、この1カ月間で20件に上りました。医療機関は、それぞれの事故について調査を進めることになります。

 10月1日に始まった「医療事故調査制度」では、患者が死亡する予期せぬ医療事故が起きた場合、全国約18万カ所の医療機関や助産所に対し、原因の調査や第三者機関への報告、それに遺族に調査結果を説明することが義務付けられています。

 制度の開始から1カ月がたち、事故報告を受ける第三者機関「医療事故調査・支援センター」を運営する「日本医療安全調査機構」が13日会見し、20件の医療事故が報告されたことを明らかにしました。

 20件の内訳は、診療所や助産所からが5件、病院からが15件。報告までの期間は、3~25日で平均11日間となっています。

 診療科については、消化器外科での手術などが5件と最も多く、次いで死産など産科の4件、その他11件で、医療機関はそれぞれの事故について調査を進めることになります。

 一方、実際に起きた死亡事例が報告対象に当たるかどうかなどの問い合わせは、計250件でした。このうち約6割は医療機関からで、約15パーセントは遺族からでした。内容別(複数計上)では、報告する医療事故の範囲や判断に関するものが最多で25パーセント(68件)、院内調査についての相談が24パーセント(66件)でした。

 日本医療安全調査機構の木村壯介常任理事は、「制度の周知が、まだ進んでおらず、報告数は思っていたよりも少ないと感じている。今後、医療機関に報告を徹底し、この制度が患者や遺族に信頼されるよう運用していきたい」と話しています。

 2015年11月14日(土)

 

■皮膚に貼るだけで検温、シール状の極薄体温計 東大などが開発

 薄くて柔らかいプラスチック製の体温計を開発したと、東京大学などの研究グループが発表しました。

 髪の毛の太さよりも薄く、曲げても動作します。皮膚に貼り付ければ、25~50度の範囲で、さまざまな部位の体温を高い精度で測れるといいます。

 米科学アカデミー紀要(電子版)に、論文が掲載されました。

 東京大学と米テキサス大学の研究グループは、温度によって電気抵抗が変化するインクをシールに印刷する方法で、0・015ミリ(15マイクロメートル)の薄さの温度センサーを実現。0・02度単位の高精度で測れる上、体温に近い温度で1000回以上繰り返して使えることを確かめました。

 印刷技術を使った温度センサーはこれまで、0・1度以下の精度は困難で、耐久性の問題もありました。このインクを使えば、広い面積を測れるセンサーを容易に作製できます。ばんそうこうほどの大きさなら、使い捨てできるほど低コストで印刷できるといいます。

 広い面積の温度を直接リアルタイムに測れるので、赤ちゃんの体温を見守ったり、手術後の患部を常時モニターしたりするのに向くといいます。体全体の体温分布を計測し、快適なスポーツウェアの開発につなげるといった応用も考えられます。

 東京大の染谷隆夫教授は、「材料はとても安く、印刷の方法も簡単なので、センサーにつなげる電源や表示機器の小型化を検討し、3年後の実用化を目指したい」と話しています。

 2015年11月13日(金)

 

■iPSで作った免疫細胞で、がんの縮小に成功 マウスに投与、東京大学

 iPS細胞(人工多能性幹細胞)を使って体内の異物を攻撃する免疫細胞「キラーT細胞」を作り出し、マウスに投与することでがんを10分の1以下に縮小させることに、東京大学などのグループが成功しました。がんの新たな治療法の開発につながると期待されます。

 この研究を行ったのは、東京大学の中内啓光教授らのグループ。グループでは、ヒトのiPS細胞から、体内の異物を攻撃するキラーT細胞と呼ばれる免疫系の細胞を作り出しました。そして、このキラーT細胞をがんのマウスに投与したところ、がんの大きさが10分の1以下になり、半年後の生存率も60パーセントと3倍に高まったということです。

 免疫を担うキラーT細胞は、通常老化が早く増殖力がすぐに弱まってしまうものの、iPS細胞から作り出すと若返ったかのように増殖力を再び取り戻し、がん細胞を殺す効果も持続したということです。

 中内教授は、「今回、世界で初めてiPS技術で若返らせた細胞を使い、体内で腫瘍を小さくできることを示せた。数年以内に実際にヒトに投与して安全性や効果を確かめる臨床研究を始めたい」と話しています。

 一方、iPS細胞(人工多能性幹細胞)から神経の元となる細胞を作り、パーキンソン病の患者の脳に移植する、世界初の臨床研究を計画している京都大学のグループが、計画の見直しを検討していることがわかりました。

 ヒトの脳に大量の細胞を移植するため、高度な安全性が求められる「治験」という枠組みに切り替える方向で、世界初の移植手術は当初の予定より遅れ、再来年以降になる見込み。

 京都大学iPS細胞研究所の高橋淳教授などのグループは、手足が震えたり体が動かなくなったりする難病のパーキンソン病の患者を対象に、iPS細胞から作った神経の元となる細胞を脳に移植する臨床研究を計画しています。

 当初は今年の夏にも臨床研究の計画を大学の委員会に申請し、早ければ年内にも1例目の患者を選ぶ予定でした。しかし、iPS細胞から作った数百万個という大量の細胞を脳に移植する、世界初の試みとなるため、より高い安全性が求められるなどとして、臨床研究ではなく、国際的な基準に基づいて行う治験という枠組みに切り替える方向で検討しているということです。

 治験に切り替えた場合は、患者本人ではなく、ほかの人の細胞から作った拒絶反応が起きにくいiPS細胞を使う予定で、計画の見直しにより、世界初の移植手術は当初の予定より遅れ、再来年以降になる見込みだということです。

 2015年11月12日(木)

 

■温室効果ガスの平均濃度、過去最高を更新  世界気象機関が発表

 世界気象機関(WMO)は、世界各地で観測された地球温暖化の原因となる二酸化炭素などの温室効果ガスの平均濃度が、昨年も上昇を続け、観測史上最も高かったと発表しました。

 WMOは地球温暖化の監視のために、世界の気象当局や研究機関が観測している二酸化炭素やメタンなどの温室効果ガスのデータを分析し、世界の平均濃度をまとめており、9日、昨年の解析結果を公表しました。

 それによりますと、地球温暖化に大きな影響を与える二酸化炭素の昨年の世界の平均濃度は397・7ppmと、一昨年より1・9ppm高く、世界各地で観測を始めた1984年以降上昇を続け、これまでで最も高くなりました。年間の平均の増加量も、昨年までの10年間ではおよそ2・06ppmと、1990年から1999年までの10年間の平均のおよそ1・5ppmと比べて拡大しています。

 ほかの主要な温室効果ガスも、メタンの平均濃度は1833ppb、一酸化二窒素の平均濃度は327・1ppbと、いずれも昨年を上回り、最も高い値を更新しました。

 WMOのミシェル・ジャロー事務局長は声明で、「我々は恐るべき速度で未知の領域へと進んでいる」と警告しました。今回の結果は、今月30日からフランスで開かれる国連の会議、COP21に提出されるということです。

 気象庁の小出寛全球大気監視調整官は、「二酸化炭素などの削減が叫ばれる中でも大きく増加する傾向が続いており、削減に向けた取り組みが一層求められる」と話しています。

 気象庁によりますと、大気中に放出された二酸化炭素の増加によって、二酸化炭素が海水に溶けることで起きる「海の酸性化」も進行し、今後、海の生態系への影響などが懸念されています。海の表面だけでなく、水深150メートルから800メートルほどの場所でも酸性化が進んでおり、こうした傾向が続けば海洋の生態系への影響などが懸念されるとしています。

 気象庁はこれまで、船による観測データをもとに海の酸性化などを調べていましたが、今回、新たに海外の機関の観測データも加えて北西太平洋の海中の酸性化の状況を解析。それによりますと、これまで指摘されていた海水面近くに加え、水深150メートルから800メートルほどのやや深い場所でも、1990年以降酸性化が進んでいることがわかったということです。

 10年当たりの変化は同じ経度では、北へ行くほど変化の幅が大きいということで、亜熱帯の北部で人が排出した二酸化炭素の量が多いことと一致しているということです。

 気象庁によりますと、このまま海水の酸性化が続くと、将来的にはプランクトンや貝、それにサンゴなどの成長が妨げられるなど、海中の生態系などに影響を及ぼすことが懸念されるということで、今後、さらに監視を続けることにしています。

 2015年11月10日(火)

 

■すい臓がん発見の検査キットを開発 国立がん研究センター

 がんの中で早期発見が難しいすい臓がんを、血液を調べるだけで高い確率で見付け出せる検査キットを国立がん研究センター(東京都)のチームが開発し、3年後をめどに実用化を目指すことにしています。

 すい臓がんを早期発見するための検査キットを開発したのは、国立がん研究センターの本田一文ユニット長のチーム。

 チームでは、「アポリポプロテインA2(apoA2)アイソフォーム」という蛋白質が善玉コレステロールを形成し、すい臓がんの患者の血液の中で濃度が低下していることを米国立がん研究所との共同研究で発見し、この蛋白質を測定する検査キットを開発しました。

 そして、検査キットと従来からある血液マーカーを組み合わせ、がん患者と健康な人の血液合わせて653人分を調べたところ、早期のすい臓がんの患者を97パーセントから100パーセントの高い確率で見付け出すことができたということです。

 すい臓がんは、がんの中でも早期発見しにくく治療も難しいがんで、進行すると5年後の相対生存率が10パーセント未満になるのが実態です。

 チームでは今後、神戸大学などと協力し、さらに5000人分の血液で検査の有効性を確認し、3年後をめどに医療現場で広く使えるよう実用化を目指すことにしています。

 本田ユニット長は、「今回開発した検査方法はキット化されていて、どこでも使うことができる。より精密な検査が必要な人を見付け出し、がんの早期発見につなげたい」と話しています。

 成果は、イギリスの科学誌サイエンティフィック・リポーツ(電子版)に9日付で掲載されました。

 2015年11月10日(火)

 

■デング熱の国内感染、今季は1人も報告されず 海外感染は最多

 昨年、患者が162人に上ったデング熱の国内感染が、今季は1人も報告されていません。ウイルスを媒介する蚊の活動期も過ぎたため、ゼロでシーズンを終えそうです。

 一方、海外で感染して日本で発症した今年の患者数は、10月下旬で年間の過去最多を超えました。それでも国内感染が出ない理由は、はっきりしていません。

 3日午後、東京都渋谷区の都立代々木公園でウォーキングをしていた区内の女性(54歳)は、「夏の間は心配していたが、蚊が少なくなってきてやっと気分が晴れた」と語りました。この夏は外出時に必ず虫よけスプレーをつけ、大学生の子供2人にもスプレーを持たせていたといいます。

 デング熱は昨年、約70年ぶりに国内での感染が確認されました。代々木公園周辺は、国内感染した患者162人の約8割が感染した場所とみられています。推定感染地を東京都内まで広げると、患者の98パーセントになります。

 デングウイルスを媒介するヒトスジシマカは、日本での主な活動期は5月中旬~10月下旬。成虫は、越冬しません。

 東京医科大病院渡航者医療センターの濱田篤郎教授は、「国内感染が見付かっていない理由はわからないが、蚊を増やさない対策や、海外で感染した患者を早く診断する取り組みがうまくいった可能性はある」と指摘しています。

 代々木公園は4月から植木の刈り込みを例年よりも深くし、風通しをよくして蚊が潜みにくくしました。8月には園内30カ所に看板を立て、肌の露出を避けることや虫よけ剤の使用を利用者に呼び掛けました。

 東京都は今季、代々木公園を含む大規模な都立公園9カ所で、初めて春先から蚊を成虫にさせない薬を排水溝などに散布。10月23日までに9公園で捕獲した約2700匹にウイルス検査をしましたが、すべて陰性でした。検査は11月13日まで続けるといいます。

 また、患者を早く見付けられるよう検査態勢を強化。デング熱と早くわかれば、知らずに外出して蚊に刺されることを減らせるためです。流行国への渡航歴の有無にかかわらず、感染が疑われる人がいたら、保健所の職員が医療機関を訪ね、採取血液を回収してウイルス検査をしています。

 海外で感染して日本で発症した患者の報告数は、今年が10月25日までに251人。データのある1999年以降最多だった2013年1年間の249人を上回りました。

 川崎市健康安全研究所の岡部信彦所長は、「ウイルスが入ってくる事態は続いている。来年以降も蚊に刺されないように注意を続けることが大切」と話しています。

 2015年11月8日(日)

 

■エボラ出血熱、シエラレオネでも終息宣言 WHOが発表

 西アフリカで過去最悪の規模で感染が拡大したエボラ出血熱について、世界保健機関(WHO)は7日、感染者が最も多かったシエラレオネで流行が終息したと発表しました。しかし、隣国ギニアではまだ新たな感染者が出ており、WHOは引き続き警戒を緩めないよう呼び掛けています。

 エボラ出血熱は、昨年3月ごろからリベリア、シエラレオネ、ギニアの3カ国を中心に感染が拡大し、WHOによりますと、この3カ国で疑い例も含めると2万8000人以上の感染者が報告され、このうち1万1000人以上が死亡しました。

 中でもシエラレオネは、感染者数が全体の半数近くの1万4109人を占め、死者も3955人を超える中で、エボラ出血熱対策に当たった医療従事者307人が感染し、221人が死亡しました。

 隔離などの感染対策を徹底したことで、今年に入ると感染者数が減り続け、9月下旬以降、新たな患者が最長潜伏期間の2倍に当たる42日間にわたり報告されなかったことから、シエラレオネ政府とWHOは流行が終息したと判断しました。

 シエラレオネは今後、復興に向けて歩み出しますが、感染の長期化で深刻な影響を受けた医療体制や経済の立て直しが急務となっています。

 また、隣国のうち、4800人あまりの死者を出したリベリアでも、今年5月にいったん終息が宣言された後、感染者が再確認され、9月に再び終息が宣言されています。

 しかし、隣国のうち、ギニアでは1日までの1週間で新規感染者が1人出ており、ウイルスが国境を越えて侵入する危険性が残っています。また、発症から9カ月を経過した男性生存者の精液にウイルスが残る可能性が指摘されるなど、終息宣言後に感染が再発する恐れは消えていません。

 WHOでは、地域全体で感染が完全に終息するまで警戒を緩めないよう呼び掛けています。

 2015年11月8日(日)

 

■子育て中にがんを発症、年間5・6万人 国立がん研究センター推計

 がんと診断された患者のうち、18歳未満の子供がいる人は全国で年5万6143人に上るとの推計を、国立がん研究センターが4日発表しました。がん患者を親に持つ子供は、8万7017人いるといいます。

 子育て中のがん患者の実態が明らかになったのは、初めて。

 出産の高齢化に伴って、未成年の子供を持つがん患者が、がんである事実をどのように子供に伝え、どのような治療法を選択するかが問題になっています。心理面での影響が大きいとされる子供への支援も課題ですが、子育て中の患者らの実態はわかっていませんでした。

 国立がん研究センターの政策科学研究部の担当者は、「診療の中で、患者の子供は『見えない存在』になりがち。国は心理面でのサポートなど、子育て中のがん患者とその子供への支援体制づくりを急ぐべきだ」と指摘しています。

 国立がん研究センターは、2009年1月〜2013年12月の5年間に、同センター中央病院(東京都中央区)に入院したがん患者6693人(20〜59歳)のデータから、18歳未満の子供のいる患者の割合などを算定。その上で、地域ごとに集計したがんの登録データなどから全国での状況を分析しました。

 同センターの中央病院に入院するがん患者のうち、18歳未満の子供のいる人の割合は24・7パーセント。18歳未満の子供がいるがん患者が、がんと診断された平均年齢は男性46・6歳、女性43・7歳でした。子供の平均年齢は11・2歳でした。

 がんの種類では、男性は胃がん(15・6パーセント)、肺がん(13・2パーセント)、女性は乳がん(40・1パーセント)、子宮がん(10・4パーセント)の順に多くなりました。

 がん医療の中心となるがん診療連携拠点病院では、18歳未満の子供がいるがん患者の数は1施設当たり1年間で平均82人、がん患者が親の子供(18歳未満)は同128人と推計しました。

 2015年11月7日(土)

 

■はやり目の流行の勢い衰えず 冬に向け警戒が必要

 はやり目と呼ばれる流行性角結膜炎の流行が例年よりも拡大していることが4日、国立感染症研究所の調査でわかりました。例年であれば患者が減る秋になっても流行が続き、勢いが衰えないまま患者が増える冬場に突入する恐れがあり、専門家は注意を呼び掛けています。

 国立感染症研究所のまとめによると、今年は8月中旬以降、全国の定点医療機関からの報告が急増。最新データの10月19日~25日の1週間の速報値では、1医療機関当たりの患者数が全国平均で0・95人と、過去10年間で最多だった2005年同期の0・92人を上回りました。

 都道府県別では、宮崎が5・50人、鳥取県が4・33人、熊本県が4・11人、愛媛県が3・50人、長崎県が3・38人など西日本で多くなっています。

 流行性角結膜炎は、夏風邪のウイルスの一種であるアデノウイルスの感染で引き起こされる目の病気で、結膜の充血や涙、目やにが特徴。涙や目やにを介して感染し、特別な治療法はなく、対症療法が中心となります。

 国立感染症研究所の藤本嗣人室長は、「今季は過去5年以上大きな流行がなかったウイルスのタイプが主流となっており、患者数が増えた」とみています。

 アデノウイルスは感染力が強く、かかった場合は学校保健安全法の規定で、幼稚園から大学までの学校で出席停止となります。停止期間は感染を広げる恐れがなくなるまでで、多くは7~10日間程度。

 以前は、流行性角結膜炎はプールで移る夏の病気として知られ、大きな流行があった1980年代から90年代までは、6月中旬から下旬にかけて増え始め、7月下旬から8月下旬をピークとした季節性がみられました。近年では、かつてのような明確な季節性は見られず、一年中、感染者が出るようになっています。

 目の感染症に詳しい福岡大医学部の内尾英一教授は、「今年は家庭内感染が多い。タオルの共有はせず、手洗いが大事だ」と指摘しています。

 2015年11月6日(金)

 

■一般病院の収支、診療報酬の改定などで悪化 診療所は利益安定、厚労省調査

 2014年度の全国の一般病院(精神科を除く)の収支は、前回の診療報酬の改定で、実質的に改定率が引き下げられたことなどから全般的に悪化していることが、厚生労働省の医療経済実態調査でわかりました。

 厚労省は、医療機関に支払われる診療報酬の改定に向けた基礎的な資料とするため医療機関の経営状況を調査し、4日開かれた中央社会保険医療協議(中医協)に報告しました。

 それによりますと、2014年度の一般病院の収支は、平均で前の年度より5587万円減少して、1億1778万円の赤字となりました。また、収入に対する利益の割合を示す損益率は1・4ポイント悪化し、マイナス3・1パーセントでした。

 このうち、国立病院は平均で1987万円、公立病院は5億8141万円の赤字だった一方で、医療法人が経営する民間病院は3799万円の黒字でした。また、一般診療所は、前の年度より80万円減って、2047万円の黒字でした。設備投資額が大きく、消費増税による仕入れコストが上がった大規模な病院ほど、経営が悪化した可能性があります。

 一方、医師の平均年収は一般の民間病院の勤務医が1544万円、国立病院が1425万円、公立病院が1494万円、医療法人が経営する一般診療所が1215万円、個人経営の一般診療所が1192万円でした。

 国立病院の院長は1934万円で、前年度より8・4パーセント増加。2013年度で東日本大震災に関連する減額措置が終わったためとみられるといいます。最も高いのは一般の民間病院の院長で、0・1パーセント増の2930万円でした。一般診療所の院長の年収は、0・5パーセント減の2914万円と高い水準を維持しています。

 2015年11月5日(木)

 

■保険で禁煙治療、20歳代への拡大を検討 厚労省

 たばこのニコチンが切れるとイライラしてたばこを吸いたくなる「ニコチン依存症」の治療を巡り、公的医療保険が適用されていない20歳代の患者も保険の対象に含める検討が始まりました。

 厚生労働省は将来の医療費削減につながるとして、対象に含めることを提案。負担が増える保険の支払い側は、反対しています。

 ニコチン依存症は、「吸うつもりよりずっと多くたばこを吸ってしまったことがあるか」といった10の質問のうち、5つに当てはまると依存症と診断されます。

 2006年度から保険で診療を受けられるようになり、患者はニコチンを含んだ貼り薬などを処方されます。しかし、保険適用の対象は、1日の喫煙本数と喫煙年数をかけた指標が200以上の患者に限られています。1日40本吸う人でも5年以上たたないと保険が適用されない計算で、厚労省によると20歳代の依存症患者の約8割が対象外だといいます。保険適用なら患者の自己負担は、原則3割になります。

 厚労省は10月21日、厚労相の諮問機関である中央社会保険医療協議会(中医協)に対して、この200以上という指標を緩めて20歳代も治療を受けやすくすることを提案。日本医師会の中川俊男副会長も、「意志の強くない人もたくさんいる。将来の医療費削減を考えれば、むしろ推奨すべきだ」と後押ししました。

 一方、大企業の会社員らが入る健康保険組合代表の委員は、「自己責任で禁煙する人もたくさんいる。保険財政が厳しい時に、何でこんなものに保険を使うのか」と反発。医療保険は、予防接種や健康診断といった予防行為には原則として適用されません。若年層の依存症治療は、予防目的だという主張です。

 中医協は、診療行為の公定価格である診療報酬の来年度に向けた改定論議の中で協議し、来年2月までには結論が出る見込み。

 厚労省の2011年度の調査では、20歳代の喫煙率は男性が36・3パーセント、女性が12・7パーセントで、それぞれ全体の32・2パーセント、8・2パーセントより高くなっています。喫煙者の約7割がニコチン依存症という調査もあり、2011年時点の総務省の人口推計から試算すると、20歳代の患者は男性が約176万人、女性が約59万人に上ります。

 2015年11月4日(水)

 

■子宮頸がんワクチン、全国に相談窓口設置へ

 子宮頸がんワクチンの予防接種を受けた女子生徒などが原因不明の体の痛みを訴えている問題で、学校生活に支障が出ている生徒が少なくないことから、全国の都道府県などに相談窓口が設けられることになりました。

 2日は相談窓口の設置を前に、東京・霞ケ関の厚生労働省で、全国の都道府県や教育委員会の担当者を集め説明会が開かれました。

 子宮頸がんワクチンを巡っては、女子中学生や高校生を中心に接種の後、体の原因不明の痛みや記憶障害などの症状を訴える患者が相次いだため、厚労省は積極的な接種の呼び掛けを中止し、接種との因果関係が否定できない場合は医療費などを給付しています。

 厚労省によりますと、症状が回復していない患者の7割以上は通学できなかったり、留年したりして、学校生活に支障が出ているということです。

 説明会では、厚労省の担当者から「体調の悪化で授業などに出席できず、転校や留年を余儀なくされた」といった患者の声が紹介され、都道府県などに個人の状況に応じた支援を求めました。また、「信頼できる医療機関を紹介してほしい」という相談があった場合は、まずは全国に73ある協力医療機関を紹介し、次に研究班の医師を紹介するなど、具体的な対応が説明されました。

 説明会に出席した三重県教育委員会の担当者は、「子供たちの相談に応じられるよう必要な体制をとっていきたい」と話していました。

 相談窓口は、早ければ来週から全国の都道府県などに設置され、症状を訴える女子生徒や保護者からの救済方法や医療、教育などについての相談に応じるといいます。

 2015年11月3日(火)

 

■はしかワクチンなど38万本を自主回収 効果が基準を下回る、第一三共

 製薬大手の第一三共は11月30日、グループ会社の北里第一三共ワクチン(埼玉県北本市)が製造するはしかや風疹のワクチンの効き目に関し、製品の有効期間内に国から承認を受けた基準を下回る可能性があるとして、一部製品を自主回収すると発表しました。

 自主回収する対象は、2014年3月~2015年2月に製造された「はしか風しん混合生ワクチン(北里第一三共)」と「はしか生ワクチン(北里第一三共)」の2品目で、出荷本数は計約38万本。このうち、医療機関などが持つ未使用分を回収します。

 今月に実施した自社の定期的な品質検査の結果、はしかワクチンの有効成分が一定の生物学的作用を示す量に関して、有効期間内に承認基準を下回る可能性があることが判明したといい、原因を調べています。

 第一三共によると、これまでに有効性や安全性に影響があったとの報告はないとして、「多くの方々にご心配をおかけしたことを深くお詫びいたします。原因究明に努めるとともに、再発防止に注力してまいります」とコメントしています。

 2015年11月2日(月)

 

■厚労省、後発薬の価格引き下げへ 来年度、新薬の5割案が軸

 厚生労働省は来年度から、新薬の特許が切れた後に同等の品質で製造・販売される後発医薬品(ジェネリック)を普及させるため、新たに販売する後発薬の価格を引き下げる方針を決めました。現在は原則として先発薬の6割となっている公定価格を5割に引き下げる案が、軸となる見通しです。

 原則1~3割の患者の窓口負担は、減ることになります。膨れ上がる医療費を減らす狙いで、具体的な値下げ方法は年内に決めます。

 厚労省が10月28日、厚労相の諮問機関である中央社会保険医療協議会(中医協)に見直しを提案し、大筋で了承されました。診療行為や薬代の公定価格である診療報酬の改定に合わせ、来年度から値下げします。

 政府は、後発薬の普及率を2013年9月時点の5割弱から、2020年度末までに8割以上にする目標を掲げています。普及率が8割になれば、医療費は年間1兆3000億円抑制できます。

 後発薬は先発薬より開発費が安く、公定価格は公的な医療保険の適用対象となった時点で、先発薬の6割と定めています。同じ先発薬をもとにした後発薬が10種類以上あれば、価格競争が起きることを見込んで5割に設定。一方、バイオ医薬品は、通常より研究開発費がかかるとして7割になります。

 この日の中医協では、この3つの価格基準を一本化して引き下げる案のほか、同じ先発薬をもとにした後発薬が20種類あれば先発薬の4割、30種類あれば3割と価格基準を細分化する案も出ました。

 値段を下げて競争を激化させることで、国内に約200社あるとされる後発薬メーカーの統合、再編を促す狙いもあります。

 2015年11月1日(日)

 

■低体重の新生児、人工血管手術に国内で初めて成功 岡山大学病院

 体重が900グラムほどしかない重い心臓病の新生児に、人工血管を使ったバイパス手術を行うことに岡山大学病院のチームが国内で初めて成功し、新生児は近く、無事退院できることになりました。

 手術が成功し、無事退院できることになったのは、出産時の体重が895グラムの超低出生体重児の女の新生児で、岡山県在住です。

 30日に会見した岡山大学病院心臓血管外科の佐野俊二教授によりますと、新生児は「ファロー四徴症」と呼ばれる先天性の重い心臓病のため心臓から肺に血液が流れにくくなっていたということです。

 佐野教授のチームでは人工血管を使って、鎖骨下にある動脈から肺動脈にバイパスを作る手術を4月に実施し、9月には追加の手術を行いました。

 手術は成功し、新生児はミルクを飲めるようになって、体重も4キログラムほどに増えたということで、近く無事退院できる見込みです。

 岡山大学病院によりますと、体重が1キログラム未満の新生児に人工血管を使ったバイパス手術を行い、成功したのは国内では初めてだということです。

 新生児の両親は、「初めは手術もできないかもしれないといわれていたので、元気になって本当にうれしいです。この子には双子の姉がいるので家に連れて帰って2人を会わせてあげたいです」と話していました。

 また、会見した佐野教授は、「手術の技術の発達で治療が可能になってきた。低体重の赤ちゃんにも諦めずに治療が行われるようになってほしい」と話していました。

 2015年10月31日(土)

 

■20人以上の子供からエンテロウイルスを検出 東京都内の小児専門病院

 今年の夏以降、せきなどの症状の後に原因不明の体のまひを訴える子供が相次いで報告され、一部から「エンテロウイルスD68」が検出されましたが、東京都内の小児専門病院には先月中旬からの1カ月間だけで子供150人がぜんそくに似た症状を訴えて入院し、このうち20人以上からエンテロウイルスD68が検出されていたことがわかりました。

 日本小児科学会は、体のまひが確認された場合には自治体に報告するよう全国の医療機関に求めています。

 エンテロウイルスD68は、昨年、アメリカで大きな流行を起こし、子供を中心に1000人以上が重い呼吸器の症状を示して、一部に体のまひが起きたことが報告されています。この夏以降、日本でもせきなどの症状の後に体のまひを訴える子供が21の都府県で47人いたことがわかり、このうち2人からエンテロウイルスD68が検出されたため、国立感染症研究所が各地の衛生研究所とともに、まひがウイルスによるものかなど詳しい調査をしています。

 これらの患者とは別に、東京都府中市の都立小児総合医療センターでは、先月中旬から今月初めにかけて150人ほどの子供がぜんそくに似た症状を訴えて入院し、これまでに20人以上からエンテロウイルスD68が検出されたということです。この中に体のまひを訴えた子供はいないということですが、数人が集中治療室での人工呼吸器による治療が必要になりました。

 日本小児科学会は夏以降、エンテロウイルスD68が国内で感染を広げていたとみて、全国の医療機関に体のまひが確認された場合には自治体に報告するよう呼び掛けています。

 専門家によりますと、エンテロウイルスは、通常、夏から秋にかけて流行するため、今後、患者が急増することは考えにくいということですが、来年以降の流行に備え、流行の実態だけでなく検査法や治療法についても検討していく必要があるとしています。

 子供の治療に当たった都立小児総合医療センター感染症科の堀越裕歩医長は、「呼吸器の症状を訴える子供は、例年であれば秋から冬にかけてが多く、おかしいなと感じた。子供たちの中には、数は少ないが集中治療室に入って人工呼吸器をつけなければならないケースもあった。パニックになる必要はないが、かかったことがない人は症状が重くなることもあるので、手洗いやせきエチケットなどの対策を徹底してほしい」と話していました。

 2015年10月30日(金)

 

■原因不明のまひで全国調査へ 国立感染症研究所、子供からエンテロウイルス

 今年8月以降、発熱やせきなどの症状の後に原因不明の体のまひを訴える子供が相次いで報告され、その一部から「エンテロウイルスD68」と呼ばれるウイルスが検出されたことがわかり、国立感染症研究所は28日までに、体のまひがウイルスの感染によるものなのかなど詳しい全国的な調査を始めました。

 国立感染症研究所によりますと、今夏、発熱やせきなどの症状を訴えた子供が原因不明の体のまひになったという報告があり、日本小児神経学会などが調べたところ、8月以降だけで同様の患者が全国で47人見付かりました。患者は生後1カ月から11歳までの子供で、21の都府県から報告され、その多くが9月中旬に発症していました。

 また、患者のうち検査のサンプルが残っていた8人を調べたところ、2人からエンテロウイルスD68が検出されたということで、国立感染症研究所は、体のまひはこのウイルスによるものなのか、ほかに患者はいないのかなど、詳しい調査を始めました。

 エンテロウイルスD68は、1962年にアメリカで見付かったウイルスで、これまで散発的な感染が報告される程度でしたが、昨年、アメリカ国内で感染が広がり、1000人以上が重い呼吸器症状を訴えてその一部に体のまひが見られたことをアメリカの疾病対策センター(CDC)が報告しています。

 エンテロウイルスの流行は、通常、夏から秋にかけてで、専門家によりますと、今後さらにエンテロウイルスの感染が広がることは考えにくいということです。

 日本小児神経学会の調査を担当した福岡市立こども病院の吉良龍太郎医師は、「体のまひという症状は国内でも散発的に見られるが、8月以降の短期間に50例近く出たというのは聞いたことがない。原因の解明を急ぐとともに治療法も検討を急ぐ必要がある。子供の手や足が動かない時は医療機関に相談してほしい」と話しています。

 エンテロウイルスには100種類以上があり、手足や口に発疹ができる手足口病や、手足のまひを引き起こすポリオの原因になることが知られています。

 国立感染症研究所によりますと、エンテロウイルスに対する特効薬はなく、症状に応じた対症療法が中心となるということです。一方で、エンテロウイルスはインフルエンザと同じようにくしゃみの飛沫(ひまつ)などによって感染することがわかっていて、予防のためには手洗いなどが有効だということです。

 2015年10月29日(木)

 

■ハムなどの加工肉の発がん性指摘、「適切ではない」 食品安全委員会が見解

 世界保健機関(WHO)の専門組織である国際がん研究機関(IARC)が、ソーセージやハムなどの加工肉に発がん性があると指摘したことについて、内閣府の食品安全委員会がハム業界に代わり「この結果だけでリスクが高いと捉えるのは適切ではない」とする見解を発表しました。

 IARCは26日、食肉とがんに関する調査結果を発表し、加工肉について「発がん性がある」としたほか、牛や豚などのほ乳類の赤身肉についても「おそらく発がん性がある」などと指摘しました。加工肉については、赤身肉を塩漬けや薫製にする加工工程で発がん性物質が生じるとして、1日に50グラムを食べ続けた場合、大腸がんのリスクが18パーセント高まるとしています。

 これを受けて内閣府の食品安全委員会は27日、フェイスブック上で見解を発表。それによると、調査の詳細な結果が公表されていないため、引き続き検討が必要とした上で、今回のIARCの発表は主に加工肉などに含まれる物質に発がん性があるかどうかを解析したもので、発がん性の強さや、日常生活で肉を食べるだけでもリスクがあるかどうかなどについては、あまり考慮されていないと指摘しました。

 そして、この結果から「食肉や加工肉はリスクが高いと捉えることは適切ではない」として、食品としてのリスクについて専門の機関で食べる量などのデータに基づいて、改めて評価する必要があるとしました。

 食品安全委員会では、健康な食生活のためには「多くの種類の食品をバランスよく食べることが大切です」と呼び掛けています。

 一方、東京株式市場では、日本ハムや伊藤ハムなどの食肉加工関連の銘柄が大きく値下がりしました。SMBC日興証券の沖平吉康さんは、「市場は過剰反応だ」と語り、「今後株価は是正される」と分析しています。

 2015年10月29日(木)

 

■ソーセージ、ハムなどの加工肉に発がん性 国際がん研究機関が発表

 ソーセージやハムなどの加工肉と赤身肉を食べることでがんを発病する可能性があるとの研究結果を26日、世界保健機関(WHO)の専門組織である国際がん研究機関(IARC)が発表しました。

 食肉業界は研究結果について、科学的調査が不十分だとして反発しています。

 この研究には、10カ国から22人の研究者が参加。ソーセージやハム、ベーコン、サラミ、コーンビーフ、ビーフジャーキーなどの加工肉について発がん性があるとし、その危険性を喫煙やディーゼルエンジンの排ガスと同水準で一番大きい「グループ1」だと認定しています。

 加工肉が発がんの危険性を高める仕組みは完全に解明されていないとし、加工や調理の過程で生じる化学物質が何らかの影響を及ぼしている可能性があるとしています。

 また、加工していない牛、豚、羊などの赤身肉についてもがんを発病させる可能性があると考えられるとし、その危険性を広く使用されている除草剤のグリフォセートと同水準で2番目に大きい「グループ2A」に分類しました。

 IARCは、発がん性物質の評価機関として定評があります。今回の研究結果は、食肉の多量摂取と大腸がんの発現の関連性を裏付ける強い証拠が発見された多数の実験を根拠としています。大腸がんは、世界で3番目に頻度の高いがんとなっています。

 研究結果は、がん分野の医学誌「ランセット・オンコロジー」に掲載されました。その中でIARCは、「今回の研究は収集した大量のデータに基づいており、それによると広範な人種にわたり加工肉の摂取と大腸がんの一貫した関連性が認められる。何らかの偶然や偏り、あるいはデータの乱れがこの関連の原因とはいい難い。この結果、調査に携わったワーキンググループの大半の研究者が、加工肉摂取に発がん性があるという十分な証拠が存在するとの結論に達した」としています。

 また、研究では、加工肉の場合は大腸がんと胃がんとの関連性が確認され、赤身肉の場合はやや低い関連性ながら大腸、すい臓、前立腺の各がんの発病が確認されたとしています。

 今回の研究は、800本を超える研究報告を精査し、結論付けました。その中には、たとえ少量であっても毎日食べた場合はある種のがんの発現リスクが高まることを示唆する研究も紹介されており、毎日100グラムの赤身肉を食べると大腸がんのリスクが17パーセント高まり、毎日50グラムの加工肉を摂取すると18パーセント高まるとしています。

 IARCの発表を受け、北米食肉協会が「特定の結果を出すためにデータを歪曲した」と批判するなど、食肉生産業者は反発。また、栄養学の専門家らは、「肉は鉄分や亜鉛の重要な供給源であり、肉の過剰摂取に該当する人々は非常に少ない」と指摘するなど、発表された内容の解釈に注意を促しています。

 2015年10月27日(火)

 

■やせ薬1万8000錠を不正販売の疑い 六本木の開業医逮捕

 東京都港区六本木のクリニックの開業医が、肥満の治療薬を不正に販売したとして麻薬及び向精神薬取締法違反の疑いで、厚生労働省の麻薬取締部に逮捕されていたことがわかりました。この薬は「やせ薬」として利用されている実態があるとみられ、麻薬取締部は監視を強めています。

 逮捕されたのは、六本木4丁目で「アーバンライフクリニック六本木」を開業していた医師、澁谷雅彦容疑者(57歳)です。

 厚労省の関東信越厚生局麻薬取締部によりますと、澁谷医師は今年7月13日、向精神薬に指定されている薬「マジンドール」1万8000錠を中国人と日本人の男女3人に合わせて440万円余りで不正に販売したとして、麻薬及び向精神薬取締法違反の疑いが持たれています。

 このマジンドールは、中枢神経を刺激することで食欲を抑える効果がありますが、覚醒剤と似た特性があり依存性があるとされるため、厚労省は通常、重度の肥満患者にのみ処方することを認めています。しかし、保険が適用されない自由診療では医師の判断で処方でき、やせ薬として利用されている実態があるとみられ、麻薬取締部は不正な転売などに監視を強めています。

 麻薬取締部によりますと、澁谷医師は昨年からマジンドールを大量に仕入れ、中国人らに横流しして、およそ5000万円を稼いでいたとみられ、調べに対し「金もうけがしたかった」と容疑を認めているということです。麻薬取締部は、薬を購入した中国人らによって、国内のほか中国の富裕層向けにも転売されていたとみて調べています。

 逮捕された澁谷医師は、クリニックのホームページで「小顔ダイエット」、「モデルやタレントの駆け込み寺」などとマジンドールのやせ薬としての効能をうたっていました。

 マジンドールは、食欲を抑制する向精神薬として国内で唯一、健康保険の適用が認められていますが、覚醒剤に似た特性があり依存性があるとされるほか、不眠や頭痛などの副作用も報告されています。このため厚労省は身長1メートル70センチで体重100キロ程度といった重度の肥満患者にのみ処方することを認めていますが、保険が適用されない自由診療では医師の判断で処方できます。

 製造・販売元の富士フィルムファーマ社によりますと、年間の流通量はおよそ600万錠に上り、このうち3割が美容の目的で使われているとみられるということです。治療の必要性が高くない人たちの間で、やせ薬として利用されている実態があるとみられ、2008年には東京都のエステサロンを経営する医師が、診察せずに薬を処方させていたとして医師法違反の疑いで逮捕され、有罪判決を受けています。

 今回の事件では、マジンドールを購入した中国人ら3人も、不正に販売する目的で薬を所持していた疑いで逮捕・検挙されました。

 麻薬取締部の調べに対して、逮捕された中国人の1人は「中国のセレブ層にダイエット薬が人気で高く売れると思った」と供述し、一部を中国に送っていたとみられます。中国では、日本の薬は品質が高く安全だとして人気があるということで、麻薬取締部は今後、中国の富裕層などに向けて薬が横流しされるケースが増える恐れがあるとみて監視を強めています。

 肥満の治療に詳しい東京逓信病院の顧問の宮崎滋医師は、マジンドールについて「副作用として、のどの乾きや睡眠障害、それに長期間の服用によって薬物への依存が起きるほか、神経に作用するためそれ以外の弊害も出てくる可能性がある」と指摘しています。

 マジンドールは糖尿病や高血圧などの合併症がある肥満の患者の治療薬として主に使われているということで、「やせ薬として使うことは許されないことで、やせ願望の人が安易に服用すると健康障害を起こす恐れもあるため、必ず医師の適切な処方を受けた上で服用してほしい」と話しています。

 2015年10月26日(月)

 

■酸化染毛剤による皮膚障害相次ぐ 5年間で1000件の被害相談

 暮らしにかかわる事故を調べる消費者庁の消費者安全調査委員会(消費者事故調)は23日、白髪を染めたり髪の色を変えたりする染毛剤で起きる皮膚障害に関する報告書を公表しました。

 かぶれやただれなどの被害相談が相次いでいるとした上で、正しい知識が消費者に十分に伝わっていないと指摘。商品パッケージの正面に危険性を表示することなどを求めました。

 報告書によると、染毛剤のうち医薬部外品に分類される酸化染毛剤、特にパラフェニレンジアミンを含む酸化染毛剤は、色落ちが少ないものの、アレルギー性や刺激性の皮膚炎を起こす恐れがある化学物質を含みます。商品の使用説明書には、毎回、実際に使う48時間前に薬剤を皮膚に塗りアレルギー反応が出るかを調べるパッチテスト(皮膚試験)をするよう書かれています。

 アレルギー反応は酸化染毛剤を最初に使った際に必ず出るとは限らないものの、かゆみや水疱(すいほう)、赤くはれ上がるといった症状は一度発症すると、その後繰り返して発生する傾向があり、悪化が進み、仕事に行けないなど生活に差し障るケースも起きているといいます。

 消費者事故調が消費者に実施したインターネット調査では、「アレルギーになる可能性があることを知っている」と答えたのは62・1パーセント。「使用前にいつもテストする」としたのは2・3パーセントにとどまりました。また、自宅での毛染めで15・9パーセント、理容室や美容院での毛染めで14・6パーセントが、異常を感じたことがあると回答しました。

 報告書は、「現時点では代替可能な成分が存在せず、商品の改良で直ちに危険性を低減するのは困難」とする一方で、「重症化を防ぐには、消費者がいち早く異常に気付き、適切に対応することが必要だ」と指摘しました。

 理美容院でも同様の症状を引き起こす恐れがあり、消費者事故調は厚生労働省に対し、顧客への事前説明などを徹底させるよう提言。製造販売業者にも、注意情報を商品パッケージの正面に表示したり、ネット上に症例写真を載せるなどの対策を求めました。

 消費者庁によると、2010年度以降、染毛剤を使った後にかゆみや痛みなどの症状が出たとの相談は、約1000件寄せられました。このうち約160件は、皮膚がただれるなど1カ月以上の重症でした。

 2015年10月25日(日)

 

■新型ノロウイルス、大流行の恐れ高まる 厚労省が注意を呼び掛け

 今年9月以降に国内で発生したノロウイルスの集団感染は、「G2・17」という新型ウイルスによるものだったことがわかり、国立感染症研究所は、今後、新型ウイルスによる大きな流行が起きる恐れが高まったとしていて、厚生労働省も全国の自治体に注意を呼び掛けました。

 激しいおう吐や下痢を引き起こすノロウイルスの「G2・17」という新型は、昨年、国内で初めて感染が確認されましたが、国立感染症研究所が今年9月以降、国内で起きた集団感染のうち、遺伝子のタイプが判明したものを調べたところ、そのほとんどが新型ウイルスによるものでした。

 ノロウイルスの流行は毎年11月以降本格化しますが、国立感染症研究所は今シーズン、新型ウイルスによる大きな流行が起きる恐れが高まったとしています。

 また専門家は、新型ウイルスは遺伝子が変異しているため、現在、医療機関などで使われている迅速診断キットでは、感染を見逃す恐れがあり、病院や保育園などで感染拡大を防ぐ対策が遅れることが懸念されるとしています。

 ノロウイルスに詳しい国立感染症研究所の片山和彦室長は、「今回のようにウイルスの形が大きく変わった時には、人々の体に抗体が十分にできておらず、感染が拡大しやすい。大流行が起きる可能性が高まっているといえる」と話しています。

 また、「新型ウイルスは、今の迅速診断キットでは、十分見付けられない可能性がある。これまで優れたキットとして広く使われているので医療現場でノロウイルスの感染ではないと判断してしまいかねず、例えば保育園や高齢者施設などで、適切な対処ができず、感染が広がってしまう恐れもある。今回は、迅速診断キットの結果にかかわらず、患者の状況をみていただき、おう吐や下痢という、ノロウイルスの感染特有の症状が認められる場合には、適切な方法で便などの処理を行ってほしい」と話しています。

 なお、ノロウイルスなどの感染によっておう吐や下痢といった症状を伴う感染性胃腸炎の患者報告数が、宮崎県を除く九州の6県で前週を上回ったことが23日、各県がまとめた患者報告でわかりました。宮崎県の一部の地域では警報レベルを超過しており、感染が広がっている自治体では、患者のおう吐物や便を処理する際に注意を払うことや、手洗いなど予防策の徹底を求めています。

 2015年10月25日(日)

 

■原発作業員のがんリスク、低線量被曝でも上昇 国際チームが調査

 長期間にわたる被曝(ひばく)では、たとえ100ミリシーベルト以下の低線量であっても、線量に応じてがんリスクが高まるとの研究結果が21日、国際チームによって発表されました。

 研究は、イギリスやフランス、アメリカの原子力施設で1943年~2005年にかけて働いた作業員ら30万人以上を対象に、複数の国際機関が協力して行われた疫学調査に基づいています。作業員の平均年齢は、58歳でした。

 原子放射線の影響に関する国連科学委員会(UNSCEAR 、アンスケア)などは、被曝線量が100ミリシーベルトを超えると発がんリスクが高まるが、100ミリシーベルト以下では明確なリスク上昇を確認できないとの見解を示しています。

 これに対して国際チームは、100ミリシーベルト以下でも白血病のリスクが上昇するという調査結果をすでに発表していますが、今回新たに肺や胃、肝臓など白血病以外の固形がん全体でリスクの上昇を確認したといいます。

 この国際チームによるイギリスの医学誌ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル(BMJ)に発表された研究論文について、世界保健機関(WHO)付属の国際がん研究機関(IARC)は、「電離放射線の長期低線量被曝のがんリスクに関する直接的な証拠」を示していると述べました。

 研究論文の共同執筆者でIARCのオースレレ・ケスミニエン博士は、「研究結果は被曝放射線量の増加とすべての固形がんリスクとの間の密接な関係を実証するもの」としながら、「長期低線量被曝であっても、高線量の緊急被曝であっても、被曝した放射線量とがんリスクの間の関係は、放射線量単位で見ると同様だった」と指摘しました。

 今回の研究論文によると、固形がんで死ぬリスクは低いものの、がんによる死者100人のうち1人は職場での被曝に起因していることが考えらえるといいます。

 2015年10月23日(金)

 

■マンモ検診の推奨年齢、45歳に引き上げ 米国がん協会が新指針

 がん撲滅に取り組む米国の有力な非営利団体「米国がん協会」は20日、マンモグラフィー(乳房X線撮影検査)による女性の乳がん検診についての指針を改定し、毎年の受診を推奨する年齢を従来の40歳から45歳に引き上げました

 同協会によると、マンモグラフィーで乳がんの約85パーセントを発見できるものの、がんではないのにがんの疑いを指摘され、追加検査が必要になるケースも多いといいます。発症の危険性が比較的低い40歳代前半では、組織の一部を取り出す過剰な精密検査による体の負担も大きいといいます。

 このため新指針では、45歳から毎年受診し、55歳以降は2年に1回受診することを推奨しました。ただ、40歳以上の本人が希望する場合は、毎年受診してもかまわないとしています。家族にがん患者がいる場合などは、医師に相談した上で、早めの受診を勧めています。

 医師や自分自身が乳房のしこりを調べる視触診は、マンモグラフィーの精度が高まっていることなどもあり、「明確な効果が確認できない」として推奨対象から除外しました。本人が視触診で異常に気付いた場合は、すぐに医師に知らせるよう求めています。

 米国がん協会は、「さまざまな研究成果文献を分析した結果で、検診を行うことの利点と欠点のバランスを取った」と説明しています。

 一方、日本乳癌学会が定める診療指針は、40歳からのマンモグラフィー検診を推奨。独自に日本人の症例などを調べた文献などで調査しているため、日本での検診の在り方にすぐには影響しないとみられます。

 厚生労働省の担当者は、「そのまま日本に当てはまるとはいえない。今後、科学的知見が増えることで必要が出てくれば、がん検診の見直しの議論を再開する」と話しています。

 2015年10月23日(金)

 

■インフルエンザワクチン、供給不足を回避へ 厚労省が化血研の出荷を容認

 今シーズンのインフルエンザワクチンの製造量は2900万本余りで、昨シーズンより1割ほど少ないものの、厚生労働省は必要な量を供給できる見通しだとしています。

 厚労省の専門家会議が21日に開かれ、国内4つのワクチンメーカーが製造した今シーズンのインフルエンザワクチンは合わせて2973万本で、昨シーズンより1割ほど少なくなったことが報告されました。これは、ワクチンが対応できるウイルスの型がこれまでより1種類増えて4種類となり、ウイルスを増殖させる原材料の卵が不足したためだということです。

 一方、ワクチンの使用量は昨シーズン並みの2600万本程度と予想されていることから、厚労省は必要な量を供給できる見通しだとしています。

 また、厚生労働省は21日、国の承認と異なる方法でワクチンを製造したとして、今季の出荷を認めていなかった熊本市にあるワクチンメーカーの化学及血清療法研究所(化血研)のインフルエンザワクチンに対し、出荷を認めたと発表しました。

 「製造法の違いが、品質や安全性に重大な影響を及ぼさない。インフルエンザの予防やまん延防止の観点から出荷を認め、供給不足を避けるべきだ」と判断しました。

 今シーズンに製造されるインフルエンザワクチンのうち、化血研は全体の3割近い約850万本、大人1700万人分を担う見通し。出荷できない場合、化血研のシェアが高い東海地方や九州地方で、11月下旬にもワクチンの供給不足が予想されましたが、回避されることになりました。

 化血研は、「医療現場に迷惑を掛け申し訳ない。速やかに出荷を開始したい」としています。

 インフルエンザの流行に備え、今月から各地でワクチンの接種が始まっています。厚労省によりますと、例年通りであれば12月の初旬ごろから患者が増え始めるということです。

 2015年10月22日(木)

 

■福島原発事故、元作業員が白血病 厚労省が初の労災認定

 東京電力福島第一原子力発電所の事故後の収束作業などに当たった当時30歳代で、現在41歳の男性作業員が白血病を発症したことについて、厚生労働省は被曝(ひばく)したことによる労災と認定し、20日、本人に通知しました。

 2011年3月11日の東日本大震災による地震動と津波の影響により発生した原発事故に関連して、がんの発症で労災が認められたのは、初めてです。男性には、医療費や休業補償が支払われます。

 労災が認められたのは、2011年11月から2013年12月までの間に1年半にわたって各地の原子力発電所で働き、福島第一原発の事故の収束作業などに当たった男性作業員です。

 厚労省によりますと、男性は福島第一原発を最後に作業員をやめた後、白血病を発症したため労災を申請したということです。

 白血病の労災の認定基準は、年間5ミリシーベルト以上被曝し、1年を超えてから発症した場合と定められており、厚労省の専門家による検討会で被曝との因果関係を分析してきました。その結果、男性はこれまでに合わせて19・8ミリシーベルト被曝し、特に福島第一原発での線量が15・7ミリシーベルトと最も高く、その作業が原因で発症した可能性が否定できないとして労災と認定し、本人に通知しました。

 厚労省によりますと、原発作業員のがんの発症ではこれまでに13件の労災が認められていますが、4年前の原発事故に関連して労災が認められたのは、これが初めてです。

 福島第一原発の事故後では、被曝による労災は今回の件以外に10件が申請されており、このうち7件では労災は認められませんでしたが、3件は原発事故との関連性を検証する調査が進められています。

 福島第一原発で事故からこれまでに働いていた作業員は、延べおよそ4万5000人。年間5ミリシーベルト以上の被曝をした人は2万1000人余りに上っており、今後、労災の申請が増える可能性もあります。

 今回の労災認定について、チェルノブイリ原発の事故の際、被曝の影響を調査した長崎大学の長瀧重信名誉教授は、「労災の認定基準は、労働者を保護するためにわずかでも被曝をすれば、それに応じてリスクが上がるという考え方に基づいて定められていて、今回のケースは年間5ミリシーベルト以上という基準に当てはまったので認定されたのだと思う。福島第一原発での被曝量は15・7ミリシーベルトとそれほど高くはないので、福島での被曝が白血病の発症につながった可能性はこれまでのデータからみると低いと考えられるが、今後も、作業員の被曝量については、十分注意していく必要がある」と話しています。

 2015年10月21日(水)

 

■中年期の心の健康には、趣味か仲間との運動が必要 筑波大などが調査

 中年期の心の健康を保つには、趣味を持つか仲間と一緒に運動するのが有効、とする研究結果を筑波大などのチームがまとめました。

 1人でする運動や、ボランティア活動などでは、効果がはっきりしなかったといいます。

 厚生労働省が毎年実施している「中高年者縦断調査」の回答者のうち、2005年時点で心身ともに健康な50~59歳の男女約1万7000人のデータを抽出。「趣味」「運動」「地域行事」「子育て支援・教育」「高齢者支援」などの余暇・社会活動の有無と、心の健康指標の5年後の変化との関係を分析しました。

 その結果、何もしていない人に比べて、心の健康の悪化リスクが明らかに低かったのは、運動と趣味。特に運動は、いつも誰かと一緒にする場合にのみ、明確な効果が認められました。趣味は、女性は単独でも効果があったものの、男性は誰かと一緒にする場合だけ効果がありました。

 武田文(ふみ)・筑波大教授(公衆衛生学)は、「仕事などの役割がある現役世代だからなのか、社会活動の効果ははっきりしなかった。余暇活動は他者との交流が有効だと考えられる」と話しています。

 2015年10月20日(火)

 

■お茶2品種、「トクホ」成分豊富 開発した農研機構が発表

 農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)が開発したお茶「そうふう」「さえみどり」の2品種が、脂肪を分解する酵素を活性化させる「ケルセチン配糖体」を、ほかの茶よりも多く含んでいるとわかりました。

 農研機構が発表し、健康機能性の高い品種として需要が広がることを期待しています。

 農研機構は、農林水産省が所管する国立研究開発法人で、茨城県つくば市に本部があります。機構の組織の一つ、野菜茶業研究所(津市安濃町草生)が、全国で8割程度を占める「やぶきた」を始めとする計45品種を集め、数年前から分析を続けてきました。

 ケルセチン配糖体は、ポリフェノールの一種で、脂肪分解酵素の活性化のほか、血管機能や脂質代謝の改善といった効果が報告されています。ケルセチン配糖体を配合した緑茶が、特定保健用食品(トクホ)の人気商品となっています。

 茶葉を40倍の量の水で浸出して、含まれるケルセチン配糖体の量を調べました。2007年の2番茶で10品種を比べたところ、100ミリリットル当たりで「そうふう」は13ミリグラム、「さえみどり」は12ミリグラムのケルセチン配糖体がありました。これに対し、「やぶきた」は5ミリグラムで、ほかの品種もおおむね8ミリグラム以下でした。

 「そうふう」は2007年~2014年の間の4年分、「さえみどり」は2003年~2014年での9年分をそれぞれ調査。複数年の平均は、2品種とも100ミリリットル当たり14±6ミリグラムと、高い数値であることが確認されました。

 茶葉のどの部分に多く含まれているかも分析したところ、先端の「一芯一葉」と茎には少なく、先端から2番目以下の熟した葉に多いと判明しました。葉を選別すれば、よりケルセチン配糖体の含有量の高い茶にすることができます。

 「そうふう」は、2005年に品種登録され、花のような香りが特徴です。1991年に開発された「さえみどり」は、強いうまみと鮮やかな色の高品質の茶として知られています。

 野菜茶業研究所の担当者は、「もともと緑茶に多いカテキンに加えて、ケルセチン配糖体が天然で多く含まれているという強みを生かし、新しい飲料の開発も検討していきたい」と話しています。

 2015年10月19日(月)

 

■今年の熱中症搬送者5万5000人 高齢者が初めて半数超える

 今年、夏を中心に熱中症で病院に運ばれた人は、全国で合わせて5万5000人余りに上り、このうち65歳以上の高齢者が初めて全体の半数を超えたことがわかりました。

 総務省消防庁のまとめによりますと、今年に入って熱中症で病院に運ばれた人は、集計を始めた5月から9月までの5カ月間で、全国で5万5852人に上りました。今年は各地で、梅雨明けしてから8月上旬にかけて日中の最高気温が35度以上となる猛暑日が続き、7月27日から8月9日までの期間は2週連続で1万人を超えました。

 病院に運ばれた人のうち、65歳以上の高齢者が2万8016人と全体の50・2パーセントを占め、統計を取り始めた2008年以降で、初めて高齢者が全体の半数を超えました。

 また、都道府県別では東京都が4634人で最も多く、次いで埼玉県が3884人、大阪府が3714人、愛知県が3702人などとなっています。

 人口10万人当たりでは、和歌山県が69・75人と最も多く、熊本県64・49人、岡山県64・26人の順でした。

 さらに、熱中症で病院に運ばれた人のうち、少なくとも105人(全体の0・2パーセント)が死亡し、3週間以上の入院が必要な重症の人も1361人(2・4パーセント)、それより軽い中等症は1万8467人(33・1パーセント)、入院を必要としない軽症は3万5520人(63・6パーセント)に上りました。

 2010年以降のデータがある6~9月の搬送者は、前年比32・2パーセント増の5万2948人に上り、過去3番目に多くなりました。

 総務省消防庁は、高齢者の場合、のどの渇きを感じにくい上、体温調節もしにくいという特徴があることから、今後も高齢者の搬送者は増加すると予測しており、熱中症の予防には周囲の気遣いが重要だとして注意を呼び掛けています。

 2015年10月18日(日)

 

■アスベスト、学校など380施設で飛散の恐れ  文科省が早急の対策を指示

 文部科学省は16日、全国の国公私立の学校や公民館、体育館などでアスベスト(石綿)を含む煙突用断熱材を点検した結果、全体の0・3パーセントに当たる380施設で、劣化や損傷が見付かったと発表しました。

 380施設のうち、学校は283校含まれていました。

 また、室内に露出している配管の凍結防止のための保温材などを点検した結果、155施設で、劣化や損傷が見付かったといいます。

 保温材などにアスベストが含まれていることが確認されているのは2施設で、そのほかはアスベストを含むかどうかわからないまま使われているということです。

 155施設のうち、幼稚園や学校は74校で、都道府県別にみると千葉県が最も多く38校、次いで宮城県と三重県が14校などとなっています。

 天井や壁に吹き付けられ、飛散の恐れが大きいアスベストの対策は、ほぼ終了しています。昨年3月の石綿障害予防規則などのアスベスト関係法令の改正を受けて、調査対象を煙突用断熱材や配管の凍結防止のための保温材にも広げて、全国のおよそ13万施設を対象に点検しました。

 文部科学省は、環境基準を超える量が飛散する恐れは小さいとしていますが、施設を管理する地方自治体などに対して、応急措置として粉じんが飛び散る恐れのある場所に粘着テープを張るなど、早急に対策を取るよう求めました。施設や学校の名称は、公表していません。

 2015年10月17日(土)

 

■今季のインフルワクチン、出荷できず 製造4社の一つ

 インフルエンザワクチンを製造する国内4社の一つ、化学及血清療法研究所(化血研、熊本市)が、今季の出荷を始められないでいることが、15日わかりました。

 厚生労働省に指示された製造工程の確認が終わっていないのが理由とし、出荷の見通しは立っていないといいます。化血研は今季、850万本(大人で1700万人分)を担う予定で、長引けばワクチン不足が起きる恐れがあります。

 ワクチンの接種は10月下旬から本格化します。今季は4社で、計約3000万本(大人で6000万人分)製造することになっています。

 化血研によると、同社の血液製剤が国に承認された製造法とは異なる方法で作られていたことが明らかになり、6月から一部を除いて出荷の差し止めと製造工程の確認を指導されています。インフルエンザワクチンでも、同様の問題がないか確認するよう厚労省から求められ、その作業が終わっていないといいます。

 これまでに製造した450万本(大人で900万人分)は、有効性などを確認する国の検定を通っているものの、出荷できていません。

 化血研は、ワクチン不足が起きないように、ほかのメーカーなどに協力を依頼しているといいます。

 厚生労働省は、「未出荷が続くと、全国的にワクチンが不足する恐れもある」としています。

 2015年10月15日(木)

 

■6歳未満の男児提供の臓器、すべての移植手術が終了 東京都と千葉県の病院で

 12日に千葉県の病院で脳死と判定された6歳未満の男の子から提供された心臓などの臓器は、全国3カ所の病院に運ばれて、患者に移植する手術が行われ、13日午後にすべての手術が無事終了しました。

 日本臓器移植ネットワークによりますと、6歳未満の男の子の家族が臓器移植ネットワークのコーディネーターから説明を受けて、10日に脳死段階での臓器の提供を承諾し、12日午前1時半すぎ脳死と判定されたということです。

 男の子の両親は提供を承諾したことについて、「子供を失うことになり、親として深い悲しみの中にいます。その中で、臓器提供により誰かが救われたり、誰かの苦しみが和らげられる可能性があることは私たちに残された1つの希望のように感じています」とするコメントを発表しました。

 提供された臓器のうち、心臓は東京大学附属病院で、「左室心筋緻密化障害」という重い心臓病の10歳未満の男の子に移植されました。手術は午前中に無事終了し、男の子の経過は順調だということです。

 また、肝臓は東京都世田谷区の国立成育医療研究センターで、「先天性代謝異常症」の10歳未満の女の子に、腎臓は千葉東病院で、「慢性腎不全」の30歳代の女性に、それぞれ移植する手術が行われ、午後4時半すぎまでにすべて終了しました。

 東京大学附属病院で移植手術を行った心臓外科のチームは、午後6時から会見し、小野稔教授が「手術は大きな出血もなく3時間ほどで終わった。今は人工呼吸器も外れていて心臓の機能は良好だ」と、10歳未満の男の子が順調に回復していることを報告しました。その上で、「移植を受けた男の子の家族は、臓器を提供してもらったことに対し、強く感謝している思いだと話していた」と述べました。

 男の子は経過が順調なら、1カ月ほどで退院できるということです。

 5年前に改正臓器移植法が施行されて以降、15歳未満の子供から臓器が提供されたのは8人目で、脳死の判定基準がより厳しい6歳未満の子供からの提供は4人目です。

 2015年10月14日(水)

 

■子供の体力や運動能力、緩やかな向上傾向 スポーツ庁が調査

 子供の体力や運動能力が、緩やかに向上しています。スポーツ庁が11日に公表した2014年度の体力・運動能力調査によると、走ったり跳んだりする体力テストの結果は、ピークだった1985年には及ばないものの、現行の調査方式になった1998年度以降で最高となる年齢も多く、改善がみられました。

 スポーツ庁は、「2020年東京五輪・パラリンピックの開催が決まり、スポーツへの関心が高まっていることが影響している」と分析しています。

 体力・運動能力調査は、東京オリンピックが開かれた1964年度から国が毎年行っており、2014年度は5~10月に実施し、6歳から79歳までの6万5000人余りが対象となりました。調査はこれまで文部科学省が実施していましたが、今年10月に発足したスポーツ庁に引き継がれました。

 6~19歳は、50メートル走、握力など8項目を測定し、それぞれの結果を点数化(80点満点)しました。男子は、7歳、8歳、13~18歳の8つの年齢で、合計点が1998年度以降で最高となりました。例えば、16歳は55・71点となり、1998年度より7・71点高くなりました。

 女子も、8~11歳と13~19歳の11の年齢で、合計点が1998年度以降で最高の成績でした。

 種目別にみると、50メートル走、長座体前屈、上体起こし、反復横とび、20メートルシャトルランで成績が向上していました。50メートル走は、7歳男子が10秒58、17歳の女子で8秒82と、1998年度以降では最も速くなっています。反復横とびは、11歳男子が20秒間に46・15回で、1998年度と比べ4・84回多くなりました。

 調査に関わった順天堂大の内藤久士教授(運動生理学)は、「学校現場で過去の調査結果を検証して、体育の授業中に苦手分野を鍛えるなどの取り組みが功を奏した」と分析しています。

 一方で、握力やボール投げは、横ばいか低下する傾向がみられました。17歳の女子の握力は平均で26・98キログラムと、ピークだった1981年度より3キロほど少ないほか、12歳の男子のソフトボール投げは27メートル89センチと、ピークと比べて7メートル余り短くなっています。

 内藤教授は、「野球をする子供が多かった時代と比べてスポーツが多様化し、投げる動作に慣れていない子供が増えている」といいます。

 子供の体力は、全体的に向上しているものの、ピークだった1985年の水準には戻っていません。国は2012年に定めたスポーツ振興基本計画で、今後10年以内に1985年ごろの水準を上回ることを目標としており、スポーツ庁担当者は「今後も学校や地域で運動する機会を増やすことが重要」としています。

 2015年10月14日(水)

 

■高齢者の体力や運動能力、向上傾向続く 青少年も向上、スポーツ庁

 スポーツ庁は体育の日を前にした11日、2014年度体力・運動能力調査の結果を公表しました。調査項目を点数化した合計点は、高齢者と青少年の多くの年代で向上傾向が続き、現行方式になった1998年度以降、75~79歳、16歳、13歳のいずれも、男女で過去最高でした。

 スポーツ庁は、向上の背景に健康志向の高まりもあるとみています。高齢者については、運動習慣がある人ほど高評価で、「健康や日常生活の基本動作の維持に、運動の習慣は重要だ」としています。青少年については、「学習指導要領改定で体育の授業が増え、学校の取り組みの成果が出ている」と分析しました。

 体力・運動能力調査は、東京オリンピックが開かれた1964年度から国が毎年行っており、2014年度は6歳から79歳までの6万5000人余りが対象となりました。

 調査は握力やボール投げなどの種目で行われ、このうち小学生から高校生までの体力や運動能力は1985年ごろをピークに低迷していますが、ここ数年は緩やかな回復傾向にあります。

 一方、65歳以上の高齢者は男女ともに、ほとんどの種目で記録が向上する傾向が続いています。

 6分間にどれだけの距離を歩くことができるかをみる種目では、75歳から79歳の女性で534メートル18センチと、この種目の調査を始めた1998年より50メートル近く伸びました。片足で立っていられる時間は、65歳から69歳の男性で87秒82と、1998年の記録を18秒余り上回っています。

 合計点は、65歳から69歳の男性、70歳から74歳の女性、それに75歳から79歳の男女で、これまでで最も高くなりました。

 また、今回の調査では、「歩く」「服を着る」といった日常生活の動作の状態を尋ねる「日常生活活動テスト」(ADL)の結果と、日ごろの運動の頻度との関係を分析しました。

 この中で、休まないでどれくらい歩けるか尋ねたところ、日ごろ、運動をしない高齢者は「20分から30分程度」と答えた割合が最も多かったのに対し、週に3日以上運動している人では「1時間以上歩ける」と答えた割合が男性で73・9パーセント、女性で60・5パーセントに上りました。

 また、何にもつかまらないで立ったままズボンやスカートがはけるかどうか尋ねたところ、週に3日以上運動している人は男女ともに80パーセント余りが「できる」と答え、運動していない人より15ポイント前後高くなるなど、日ごろからよく運動をしている高齢者ほど、日常生活に必要な基本動作の機能も高いことがわかりました。

 スポーツ庁によりますと、ADLは介護が必要かどうかの指標にも使われるということです。健康スポーツ課の井上仁課長は、「日ごろの運動が、介護を必要としない元気な生活につながることが改めてわかった。健康増進のためにも運動やスポーツの環境整備に取り組みたい」と話しています。

 さらに、今回の調査では、肥満度を表す指標の体格指数「BMI」との関係で、実際の年齢よりも体力年齢が高い人の割合は、普通体重や肥満の人に比べて、低体重の人のほうが多いことがわかりました。

 スポーツ庁は、「太っていると悪い、やせたほうがいいという風潮はあるが、やせすぎると、健康上も体力的にも問題」として、注意を呼び掛けています。

 2015年10月13日(火)

 

■子宮頸がん原因ウイルス、男性も注意 中咽頭がんにも関与

 のどの奥のがんは、喫煙習慣や過度の飲酒の影響で発生することが多いとみられてきましたが、ヒトパピローマウイルス(HPV)のかかわりも高いことがわかりました。

 がん研究会がん研究所などの研究チームが、8日から名古屋市で開かれていた日本癌(がん)学会で発表しました。

 HPVは女性の子宮頸(けい)がんの原因として知られますが、中咽頭(いんとう)がんなどへの影響も注目されるようになってきました。そこで、研究チームは、119人の中咽頭がんのがん組織を調べたところ、計74人のがん細胞でHPVの感染がみられました。74人の内訳は、男性59人、女性15人。

 HPVには100種以上のタイプがありますが、子宮頸がんを起こすことで知られる16型が85パーセントを占めていました。HPVが中咽頭がんを起こしたと研究チームはみています。

 研究チームの古田玲子さん(現・北里大教授)は、「HPVは関係ないと思っている男性がいるかもしれないが、そうではない。米国ではHPVワクチン接種を受ける男性もいる」と話しています。

 中咽頭がんでもHPV感染があるタイプは、放射線や化学療法の効果が高いといわれていて、予後が良好であることが明らかになっています。

 HPV感染の有無でがんのタイプを分けて、治療効果をみる研究が進めば、治療法の選択が変わる可能性があるといいます。実際、強度を下げた治療、すなわち後遺症の軽い治療を行う試みも、すでに開始されています。

 2015年10月12日(月)

 

■ノロウイルスの新型、今年初めから流行し拡大 冬にかけて大流行になる懸念も

 高齢者や乳幼児を中心に激しいおう吐や下痢を引き起こすノロウイルスの新型が国内で確認され、広がりつつあることが、川崎市健康安全研究所などの調査でわかりました。

 毒性は従来と変わらないものの、多くの人は免疫がなく大流行する恐れがあります。流行期の冬を前に、同研究所は注意を呼び掛けています。

 ノロウイルスの新型は、川崎市健康安全研究所と国立感染症研究所などの研究グループが行った調査でわかったものです。

 ノロウイルスには人に感染する遺伝子の型が31種類ありますが、遺伝子型の判別が可能になった2004年以降、国内でも海外でも「G2・4」という型が流行の主流を占めてきました。 

 ところが、研究グループが昨年10月からの半年間、国内の感染性胃腸炎の患者から検出されたウイルス2000株以上を調べたところ、通常と異なるノロウイルスの遺伝子配列を発見し、「G2・17」という種類が変化した新型ウイルスとわかりました。

 さらに、この「G2・17」の遺伝子を詳しく解析したところ、人への感染のしやすさに関係する部分が変異し、人が免疫を持っていない新たなウイルスになっていたということです。

 この新型ウイルスは、今年1月から徐々に検出数が増加し、2月には「G2・4」ウイルスより多くなりました。川崎市では、今年1月から6月までの間に、36人から新型ウイルスを検出。同じ時期で、「G2・4」ウイルスの検出は17人でした。

 ノロウイルスに対しては、ワクチンや特別な薬はないため、おう吐や下痢によって脱水症状を起こさないよう水分を補給する対症療法が、治療の中心となります。通常は数日間で自然に回復しますが、乳幼児や高齢者の場合、脱水症状を起こし、入院による点滴などが必要になったり、吐いたものをのどに詰まらせ窒息で死亡したりすることもあり注意が必要です。

 2015年10月11日(日)

 

■インフルエンザの流行、すでに始まる 12月よりも前のワクチン接種を呼び掛け

 インフルエンザウイルスへの感染は、すでに始まっています。国立感染症研究所によりますと、9月27日までの1カ月に全国およそ5000の医療機関から報告されたインフルエンザの患者数は1178人。

 厚生労働省によりますと、長野県や愛媛県など8つの都道府県の10の学校や幼稚園などでは、学年閉鎖や学級閉鎖が報告されているということです。

 専門家は、本格的な流行が始まる12月よりも前に、ワクチン接種をしてほしいと呼び掛けています。

 国立感染症研究所の砂川富正室長は、「例年、12月の流行入りに向けて徐々に患者の数が増え始め、年明け1月から2月にかけて流行はピークを迎える。本格的なシーズンに入る前に早めのワクチン接種が望ましい」と話しています。

 今年は、インフルエンザワクチンの接種で対応できるウイルスの型が1種類増えて4種類となり、より高い効果が期待されています。

 これまでインフルエンザのワクチンが対応していたのは、A型のインフルエンザウイルス2種類とB型1種類の合わせて3種類。しかし、世界的に2種類のB型ウイルスがシーズン中、感染を広げる傾向がみられ、世界保健機関(WHO)がB型の追加を推奨しました。

 このため国内でも今年からB型を1つ追加し、4種類のインフルエンザウイルスに対応するワクチンが導入され、より高い効果が期待されるということです。

 厚労省によりますと、メーカーの希望小売り価格がおおむね1000円程度だったものが、1500円ほどに上がっているということで、接種率の低下につながらないか懸念する声も出ています。

 インフルエンザワクチンの接種は、今月から多くの医療機関で始まっています。東京都足立区の小児科の診療所では、まだ希望者は多くはないものの毎日、数人が接種を受けているということです。

 定期健診に来た子供連れの母親に和田紀之院長は、「今年は4種類のウイルスに対応するワクチンになった。生後6カ月以降はぜひ受けてほしい」と説明していました。

 和田院長は、「新しいワクチンは、2種類のB型のウイルスのどちらが流行しても効果が期待できる。流行は、まだ本格化してはいないが、接種率が上がると有効性も高まるので、大人も含めて予防接種を受けてほしい」と話しています。

 2015年10月10日(土)

 

■医療費、初めて40兆円を超える 2013年度、7年連続で増加

 厚生労働省は7日、2013年度に病気やけがの治療で全国の医療機関に支払われた国民医療費が前年度より8493億円(2・2パーセント)増えて、40兆610億円で確定したと発表しました。7年連続で過去最高を更新し、統計を取り始めた1954年度以来、初めて確定値で40兆円を超えました。

 高齢化に加え、医療技術の高度化などで費用が膨らんだことを背景に、国民1人当たりの医療費も7200円(2・3パーセント)増えて、31万4700円になりました。65歳未満は17万7700円、65歳以上は約4倍の72万4500円。

 今回公表されたのは国民医療費で、公的な医療保険と税金、患者負担を合算したもの。健康診断や予防接種などは、含まれません。

 税金の負担が約4割を占める医療費の増加は、国の財政を圧迫する大きな要因。政府は、団塊の世代がすべて75歳以上になる2025年に医療保険と税金だけで54兆円になると推計しており、無駄を省いて国民医療費の伸びを抑制する重要性が一層増しています。

 診療種類別でみると、入院医療費が14兆9667億円で37・4パーセントを占めました。

 財源別にみると、現役世代より窓口負担割合が小さい高齢者が増え、医療費に占める患者負担の比率は11・8パーセントと0・1ポイント低下しました。高齢化で窓口負担の比率は下がり続け、そのぶんを現役世代の医療保険や税金などで補っています。

 患者の窓口負担の額は4兆7076億円。前年より497億円増えたものの、全体の伸びより小さかったため負担比率は減りました。このほかの主な財源は、税金が15兆5319億円、医療保険が19兆5218億円でした。

 サラリーマンの自己負担が現行の3割になった2003年度の窓口負担の比率は、14・8パーセントでした。10年後の今回はこれより3ポイント低く、10年間で最低でした。実額でも国民医療費の総額が2003年度から約8・5兆円増えたのに対し、窓口負担は327億円しか増えていません。

 窓口負担が抑えられている最大の理由は、高齢者の増加。窓口負担は原則、就学後から70歳未満が3割、70~74歳が2割、75歳以上が1割で年長者ほど負担が減ります。入院や手術などで医療費がかさんだ場合の自己負担の上限を定めた高額療養費制度でも、70歳以上は優遇されています。このため高齢化が進むと、医療費全体に占める窓口負担の比率が小さくなります。

 政府は6月にまとめた経済財政運営の基本方針(骨太の方針)で、高齢者の自己負担や高額療養費制度の見直しを提言し、現金や預金など資産を持つ人の負担引き上げも検討するよう求めました。ただ痛みを伴う改革には与党内からも抵抗が強く、現役世代の負担を抑える機運は高まっていません。

 2015年10月8日(木)

 

■ノーベル賞受賞の大村氏の発見により開発された薬、沖縄の風土病に劇的効果

 ノーベル医学生理学賞を受賞した大村智・北里大特別栄誉教授の発見した抗生物質「エバーメクチン」を元に作った抗寄生虫薬「イベルメクチン」は、沖縄や奄美地方の風土病といわれた糞(ふん)線虫症の特効薬としても知られます。沖縄県内の医療関係者からは、「沖縄の恩人」「受賞するべき人が受賞した」と喜びの声が広がりました。

 糞線虫は、熱帯・亜熱帯に広く分布する寄生虫で、小腸上部の粘膜に寄生。普段は無症状なものの、免疫力が下がると下痢や腹痛が現れ、敗血症や肺炎で死につながることもあります。

 素足のまま人糞を使う畑で作業していた高齢者などを中心に、現在でも60歳以上の10パーセント近く、約2万5000人が保有しているとの推計もあります。

 元琉球大医学部付属病院第一内科教授の斎藤厚さんは、海外で寄生虫予防薬などとして使われていたイベルメクチンが糞線虫症にも効果があるとみて、1989年に研究会を発足。第一内科のメンバーと臨床試験を続け、2002年の国内認可にこぎ着けました。

 「副作用がない上に、ほぼ100パーセント駆除できる。大村先生にもデータを送っていたが、あまりの効果に本人も驚いていた」と振り返り、「世界中で救われた人が何千万人もいる。性格も気さくな方で、受賞を心待ちにしていた」と声を弾ませました。

 第一内科講師で糞線虫症が専門の平田哲生講師は、イベルメクチンを使った治療に二十数年間携わり、1000人ほどの患者を診てきました。「県民の健康に寄与する薬の開発で受賞したのは素晴らしい」と喜びました。

 また、大村氏が発見したエバーメクチンを元に作ったイベルメクチンは、寄生虫が引き起こすペットの犬の病気「フィラリア症」を予防する薬としても広く使われています。

 フィラリア症は、心臓に寄生虫が入り込み、血液の流れを悪くして犬を死に至らしめる病気。以前は、多くの犬が、フィラリア症にかかっていましたが、今では月に1回、薬を犬に飲ませるだけで病気を防ぐことができるようになりました。

 農林水産省によりますと、一昨年のイベルメクチンの販売額は牛などの家畜の寄生虫駆除に使うものも含めて、国内でおよそ30億円に上り、動物用医薬品の中で最も多くなっているということです。

 2015年10月8日(木)

 

■働き盛り世代を襲う胃がん、大腸がん、乳がん 痛みや異常に気付いたらすぐ受診を

 女優の川島なお美さんや、フリーアナウンサーの黒木奈々さんら働き盛りの世代の著名人が、相次いでがんで命を落としています。今や「2人に1人ががんになる」とされ、外来治療を受けながら働き続ける人もいます。

 専門家は、「早期発見で治るがんもある。自覚症状がある場合は、すぐに受診を」と呼び掛けています。

 9月24日に54歳で亡くなった川島なお美さんの命を奪った胆管がんは、検診などで見付けにくく、有効な治療薬も少ないなど治癒が難しいとされるがんの一つ。今年亡くなった任天堂の岩田聡社長や、柔道五輪金メダリストの斉藤仁さんも、胆管がんでした。いずれも働き盛りの50歳代の死で衝撃が大きかったものの、一般的には70歳代が多く、がん患者全体では2~3パーセントを占めます。治療は、手術が第一選択。

 自覚症状としては、みぞおちから右上腹部の鈍痛、食欲不振、体重減少、発熱などがみられます。また、胆管が詰まると黄疸(おうだん)の症状が出ます。皮膚や白目が黄色くなり、尿が茶色、便が白くなるほか、全身にかゆみが出ます。こうした症状がある場合は、先延ばしにせず、速やかに医療機関を受診することが勧められます。

 9月19日に32歳の若さで亡くなったフリーアナウンサーの黒木奈々さんは、胃がんでした。

 胃がんはかつて、塩分やストレスが原因とされてきましたが、今ではピロリ菌による感染が重要な危険因子とされます。北海道大学大学院がん予防内科学講座の浅香正博特任教授は、「40歳代までの感染者の場合、除菌によって胃がんの発生を90パーセント以上抑制できると考えられている」と説明。若い世代こそ検査を受け、感染が判明したら速やかに除菌するよう勧めています。

 除菌治療は、2013年2月から保険適用となりました。除菌治療に手術や入院は必要なく、胃酸を抑える薬と2種類の抗生物質を7日間、朝夕食後に服用します。

 9月23日に乳がんであることを公表したタレントの北斗晶さん(48歳)は、毎年秋ごろに乳がん検査を受けており、昨年の検査では異常は見付かりませんでした。今年に入り、右の乳房にチクッとする痛みがあるなど異変に気付いたものの、検査を受けている安心感もあり、すぐに受診することはなかったといいます。

 聖路加国際病院ブレストセンター長の山内英子医師は、「中間期がんといって、検診と検診の間に見付かるがんもあります。検診を受けていても、異変に気付いたらすぐに受診を」と呼び掛けています。

 5月に54歳で亡くなった俳優の今井雅之さんは、大腸がんでした。体調に異変を感じたのは昨年8~9月で、11月に病院で検査を受けたところ、ほかの臓器への転移がみられる「ステージIV」の大腸がんと診断されたといいます。ステージIVの場合、5年生存率は3割程度とされます。

 大腸がんは、大腸の内側の表面にある粘膜に発生するがんで、食の欧米化などにより近年増加傾向にあります。大腸がんになると、便に血が混じっていたり、便秘になったりするほか腹痛などの症状が現れるものの、初期にはほとんど自覚症状が出ません。ただ、便の中に混ざっている血液を検出する「便潜血検査」は早期発見に有効。

 がん研有明病院消化器センター大腸外科部長の上野雅資医師は、「大腸がんは診断も簡単で比較的治りやすい。早期発見のためにも40歳以上の人は定期的に検査を受けてほしい」と話しています。

 上野医師はまた、「日本人に多い、胃がんや乳がん、大腸がんなどは比較的治りやすい」と指摘。早期に発見できれば、外科手術をしなくても内視鏡手術ですむこともあるといい、「若い人は忙しく、痛みや異常を感じても病院にゆかずに悪化させてしまいがち。自分や家族のためにもがん検診をしっかりと受けてほしい」と話しています。

 2015年10月7日(水)

 

大村智氏がノーベル医学生理学賞を受賞 北里大、熱帯病の特効薬開発

 今年のノーベル医学生理学賞の受賞者に、熱帯の寄生虫の病気に効果がある抗生物質を発見したことなどで知られる北里大学特別栄誉教授の大村智氏が、アイルランド出身の研究者と中国の研究者とともに選ばれました。

 日本人がノーベル賞を受賞するのは、アメリカ国籍を取得した人を含め、昨年、物理学賞を受賞した赤崎勇氏と天野浩氏、中村修二氏に続いて23人目で、医学生理学賞の受賞は3年前、2012年の山中伸弥氏に続いて3人目となります。

 大村氏は、山梨県韮崎市出身の80歳。山梨大学を卒業後、北里大学薬学部の教授や北里研究所の所長などを務め、現在は北里大学特別栄誉教授を務めています。

 これまで微生物由来の有機化合物を多数発見し、薬学研究の分野で優れた業績を上げました。そして、寄生虫によって引き起こされるオンコセルカ症やリンパ性フィラリアなどの発生を劇的に抑えることができる「イベルメクチン」のもととなる「エバーメクチン」など、数々の抗生物質を発見しました。

 こうした業績が高く評価され、2012年には文化功労者に選ばれ、2014年にはガードナー国際保健賞を受賞しています。

 大村氏は記者会見で自らの業績について、「私の仕事は、微生物の力を借りているだけで、私自身が難しいことをしたわけでも偉いわけでもありません。私は、微生物がやってくれたことを整理しただけです」と語りました。

 大村氏とともに、アイルランド出身でアメリカ・ドゥルー大学の名誉リサーチフェローを務めるウイリアム・キャンベル氏、それに中国の研究機関に所属する屠(トゥー)ユウユウ氏も、今年のノーベル医学生理学賞に選ばれました。

 キャンベル氏は、大村氏と同じく寄生虫が原因となる感染症の治療に貢献したとして選ばれました。屠氏は、漢方として用いられていたキク科の植物から、世界三大感染症に数えられるマラリアに効く「アルテミシニン」という化合物を発見し、アルテミシニンを使った薬は今では世界中で使われているために選ばれました。

 ノーベル財団によりますと、中国人が医学生理学賞に選ばれるのは、今回が初めてだということです。

 2015年10月6日(火)

 

医療事故の被害者らの会、無料相談窓口を設置

 医療事故の被害者らで作る「患者の視点で医療安全を考える連絡協議会」(永井裕之代表)は2日、医療事故調査制度が1日から始まったことを受け、無料の相談窓口を設置したと発表しました。

 医療事故調査制度に対しては、「適正に運営されるのか」と遺族側から懸念の声が相次いでいます。

 医療事故の原因調査をすべての医療機関に義務付けた医療事故調査制度では、「予期せぬ死亡事例」が起きた場合に医療機関が自ら原因を調べ、遺族や厚生労働省が指定した第三者機関に報告します。

 しかし、調査するかどうかの判断は医療機関側に委ねられ、調査結果を報告する際には書面の提供を義務付けられていません。また、医療機関が調査しない事故については、遺族側から第三者機関に調査を依頼できません。

 要望が認められるまでの間、連絡協議会が電子メール(info@genkoku.net)や、090-1795-9452、または090-6016-8423の電話番号で相談を受け付けます。自身の体験をもとに、医療機関側との交渉の方法などを助言したり、弁護士などの専門家を紹介したりするといいます。

 医療機関の対応に疑問を抱く医療者から情報提供を受け付ける窓口(kan-iren-info@yahoogroups.jp)も設けました。

 連絡協議会の永井代表は、「本来は第三者機関に窓口が設置されるべきだ」と訴えた上、「遺族は突然のことに戸惑い孤立しがちだ。医療機関の対応に少しでも疑問を持ったら相談してほしい」と話していました。

 また、この医療事故調査制度は、事故が起きた医療機関での院内調査が基本となります。東京女子医大病院で昨年2月、原則禁止の鎮静剤を大量に使われ、当時2歳の長男を亡くした父親は2日、マスコミの取材に「院内調査では身内をかばい合い、真相が明らかにならない」と語りました。

 2015年10月5日(月)

 

■精子動かす酵素を特定、大阪大など 男性用避妊薬の開発へ可能性

 精子が十分に動くためのスイッチ役となる酵素を、大阪大や筑波大などのチームがマウスを使った研究で突き止めました。この酵素の働きを抑えると、不妊になることも確かめました。

 男性用の避妊薬の開発につながる可能性があるといいます。2日、アメリカの科学誌サイエンス電子版に発表されました。

 精子は尾を動かして卵子にたどり着き、受精しますが、どんな仕組みで尾が動き始めるかは不明でした。

 大阪大微生物病研究所の伊川正人教授(生殖生物学)らは、精巣にある「精子カルシニューリン」と呼ばれる脱リン酸化酵素が、尾を動かすスイッチになっていることを発見。

 雄マウスにカルシニューリン阻害剤を2週間投与して、この酵素の働きを抑えると、精子が尾を十分に曲げられなくなって動きが悪くなり、卵子を取り囲むゼリー状の透明帯を突き破れず受精できませんでした。投与を中止すると、1週間程度で精子の動きは元に戻り、受精して生まれた子供も正常でした。

 人間でも同様のスイッチの仕組みがあることから、男性用の避妊薬の開発や、不妊症の原因の解明につながる可能性があります。既存の酵素の働きを抑える薬は、体中の免疫に影響するので避妊薬には使えません。

 伊川教授は、「不妊症の原因究明に一歩近付いた。精子カルシニューリンを安全に阻害できれば、即効性のある経口避妊薬の開発につながる可能性がある」と話しています。

 カルシニューリンは全身の免疫細胞や精巣に存在し、人間へ応用するには精子カルシニューリンだけを阻害する方法を見付ける必要があります。男性用避妊薬などの開発には、早くても5~10年程度かかる見通し。 

 2015年10月4日(日)

 

■初のiPS細胞の移植、1年後も経過は良好 世界初の網膜手術

 理化学研究所などのグループは2日、iPS細胞から作った網膜細胞を臨床研究として移植した世界初の手術について、実施から約1年経った結果は良好だと発表しました。手術を受けた兵庫県内の女性に、がんなどの異常は見られないといいます。

 理研や先端医療センター病院は2014年9月12日、放置すると著しい視力低下を来す重い目の病気「滲出型加齢黄斑変性」の70歳代の女性患者に対し、患者のiPS細胞から作った網膜細胞を移植する世界初の手術を実施しました。

 滲出型加齢黄斑変性は、年を取るに従って、網膜の中心部にある黄斑部が病変を起こすもの。視野の真ん中が最も見えにくくなり、物がゆがんで見えたりします。早い人では40歳代でも発症し、アメリカでは成人の失明原因の第1位になっていますが、根治療法はないとされていました。

 手術を受けた女性は、進行を抑える薬の注射を18回受けましたが、視力が落ち続けていました。理研などのグループは、患者の細胞の遺伝子を詳しく調べ、がん化などの恐れがないと判断。目の中は、移植後も外から観察できて検査が容易であるため、何か異常が起きた場合に発見しやすいこともあって、iPS細胞の最初の医療への応用として実施が認められ、女性の皮膚からiPS細胞を作った後、網膜を保護する細胞に変化させ、シートにして移植しました。

 理研の多細胞システム形成研究センターによると、世界初の手術ということもあり、細胞の作製や安全性の確認のほか、手続きの問題など、何もかもが手探り状態で、壁にぶつかりながらの歩みだったといいます。

 手術から1年経った現在、患者の視力は手術前とあまり変わらない0・1程度を維持しており、「明るく見えるようになり、見える範囲も広がったように感じる。治療を受けてよかった」と話しているといいます。

 グループを率いた理研の高橋政代プロジェクトリーダーは、「世界中が注目する中、懸念されていたがんにならなくてよかった。早く多くの患者に使ってもらえる治療にしていきたい」と述べました。

 2例目の患者は遺伝子変異が見付かり、臨床研究を一時中断。安全性が確認された他人のiPS細胞を利用して再開する方針です。

 2015年10月3日(土)

 

■RSウイルス感染症、流行の兆し 都市部を中心に患者が急増

 乳幼児に肺炎や気管支炎などを引き起こすRSウイルス感染症の患者が急速に増えており、国立感染症研究所は手洗いやうがいといった感染予防策の徹底を呼び掛けています。

 RSウイルス感染症は発熱やせきなど風邪に似た症状の出る病気で、秋から冬にかけて乳幼児を中心に流行し、初めての感染では肺炎や脳症を引き起こし、重症化することがあります。

 国立感染症研究所によりますと、9月20日までの1週間に全国およそ3000の小児科の医療機関で新たにRSウイルス感染症と診断された患者は2936人に上り、9月に入って以降、急速に増えています。

 都道府県別では東京都が342人、福岡県が273人、大阪府が177人、新潟県が151人などとなっていて、都市部を中心に感染が広がっています。

 RSウイルス感染症の流行は例年、12月から1月にかけてがピークで、患者は今後さらに増えるとみられます。

 国立感染症研究所の木村博一室長は、「特に6カ月未満の赤ちゃんは症状が悪化して気管支炎や肺炎を引き起こしやい。またぜんそくなどの持病のある高齢者も重症化しやすいので手洗いやマスクといった感染防止対策を徹底してほしい」と話しています。

 2015年10月2日(金)

 

■人工細胞の繰り返し分裂に世界で初めて成功 神奈川大の研究チーム

 単純な分子から人工的に細胞を作り、繰り返し分裂させることに、神奈川大(横浜市)理学部の菅原正教授(物理有機化学)らの研究チームが、世界に先駆けて成功しました。

 自ら複製して増えていく細胞の特徴を再現できたことで、太古の昔に物質から原始生命が誕生した謎を解く手掛かりになると期待されるといいます。

 9月29日付のイギリスの科学誌ネイチャーコミュニケーションズ(電子版)に、論文が発表されました。

 研究チームは、DNAの断片と人工的に作った細胞膜で、人工細胞を作る研究を続けてきました。これまでに、細胞のような構造を作り、「細胞分裂」を起こして増殖させることに成功していましたが、増殖の際にDNAの原料物質を使い切ってしまうため、分裂は1回限りにとどまっていました。

 今回は、分裂した人工細胞が、外部にあるDNA複製の原料物質を取り込むことで自ら成長し、再び分裂するサイクルを繰り返させることができました。人工細胞の中でDNAが増え、分裂に至る過程は実際の生物のものと似ていました。

 今後、この人工細胞に突然変異が起きれば、「進化」するモデル人工細胞が誕生し、研究に生かすことが期待できるといいます。

 菅原教授は、「人為的な操作を加えなくても、『無生物』から『原始生命』が生まれる可能性を示している。太古の海辺で脂肪酸のような膜分子に栄養たっぷりの海水が入って細胞のような構造になったかもしれない」と話しています。

 2015年10月1日(木)

 

■医療事故調査制度、10月にスタート すべての病院が第三者機関へ報告

 医療死亡事故を起こした病院や診療所が自身で原因を調べ、遺族や第三者機関に報告する「医療事故調査制度」が10月から始まります。第三者機関の運営会議が28日に開かれ、届けられる医療事故は年間1000~2000件を想定していると明らかにしました。

 この医療事故調査制度は、真相の究明を求める患者側と、警察の介入を避けたい医療側からの要望で創設されました。

 調査の対象となるのは、10月1日以降に起きた「予期せぬ死亡事故」。すべての医療機関は、厚生労働省が指定した第三者機関の「医療事故調査・支援センター」に事故を届けます。

 医療機関の中に院内調査委員会を立ち上げ、診療にかかわった医師らへの聞き取りや診療記録のチェックなどで、事故の原因を調べます。調査の結果は遺族に説明し、医療事故調査・支援センターにも報告します。

 費用は医療機関が負担し、遺族が調査結果に納得できなければ医療事故調査・支援センターに、一律2万円で再調査を依頼できます。

 しかし、医療死亡事故が起きても、医療機関側が「予期できた」と判断すれば、調査の対象とはなりません。医療機関が調査しない事故について、遺族が医療事故調査・支援センターに調査を求めることはできません。

 また、事故の調査経験のない医療機関を支援するため、医療事故調査・支援センターに24時間電話で相談に応じる窓口が設置されます。相談には、医療安全が専門の医師や看護師が応じるということです。

 医療事故調査・支援センターを運営する日本医療安全調査機構の木村壯介常任理事は、「医療事故の再発を防ぐため、基本的には医療機関が原因を究明できるよう支援していきたい」と話しています。

 2015年9月30日(水)

 

■乳がんで抗がん剤治療、副作用の脱毛長期化も 専門医が女性調査

 乳がんで抗がん剤治療を受けた女性のほとんどが頭髪の大半を失う副作用を経験する上、治療終了から3年以上たっても頭髪の回復が半分以下という人が6人に1人の割合でいることが、がんの専門医などで作るグループの患者アンケートでわかりました。

 抗がん剤による脱毛の長期的な実態が判明したのは初めてといい、患者の長期的な支援の重要性を示す結果となりました。

 アンケートは2013年、全国47医療機関で乳がんの手術と標準的な抗がん剤治療を受けた女性を対象に実施。抗がん剤治療が終わってから5年以内の1478人(平均年齢54・7歳)の回答を分析したところ、抗がん剤の副作用で髪の「すべて」または「8~9割」が抜けた人は94パーセントでした。

 治療終了後の頭髪の回復度合いを、無回答を除く1267人についてみると、8割以上回復した人の割合は、終了後1年未満で53パーセント、1年以上3年未満で64パーセント、3年以上で62パーセント。必ずしも年数の経過に比例して回復するという関係にはなっておらず、3年以上たっても回復が5割以下という人が16パーセントと、6人に1人近くに上りました。

 脱毛中に使うウイッグ(かつら)の使用期間は、1年未満が42パーセントと最多でしたが、1年以上2年未満が29パーセント、2年以上3年未満が5パーセント、3年以上も4パーセントおり、ウイッグを長期に必要とする人がいるとわかりました。

 調査に携わった埼玉医科大学総合医療センターの矢形寛教授は、「『抗がん剤治療が終われば髪は元通りに生えてくる』と患者に説明する施設も多いと思うが、そうでない人がいることが明らかになった。患者への正しい説明や、治療が終わってからも悩みに応えられる仕組み作りが必要だ」と話しています。

 2015年9月29日(火)

 

■食生活など生活習慣が原因で、3080万人が死に至る 世界188カ国を対象とした研究 

 世界で高血圧や喫煙、肥満など回避可能な健康リスクとの関連による死者数が1990年以降、約23パーセント増加したとする研究論文が9月11日、発表されました。

 このイギリスの医学誌ランセットに掲載された研究論文は、世界188カ国を対象としたもので、世界保健機関(WHO)や世界銀行(WB)などの各種データに加えて、100カ国を超える国々の科学者約1000人から提供された統計を基にまとめられました。

 研究論文では、79の健康リスクによって2013年に3080万人が死に至ったとの結論に達しています。人口増加と高齢化を考慮した場合でも、1990年比で570万人も増えています。

 2013年に危険度が最も高かった健康リスクは、診断も治療も容易な高血圧であり、計1040万人の死亡の一因となっていました。

 高血圧に続く健康リスク上位の4つは、喫煙、肥満、高血糖、塩分の過剰摂取であり、世界全体の死者数を22・7パーセント押し上げました。

 また、最も危険な健康リスクは1990年以降、欠乏に起因するものから過剰摂取を原因とするものへと著しく変化し、赤身肉や糖分を含む飲料を多く摂取する一方で、果物や野菜の摂取量は少ない食生活が一因で死亡した人は、2013年の死者のうち21パーセントを占めていました。

 このほか、性別によって疾病の発症や死亡原因に大きな違いが生じることを明らかにしました。

 例えば、喫煙は男性では死につながる健康リスクの第2位で、2013年には440万人が死亡しています。これに対し、女性で喫煙を原因とする死者は男性よりも6割ほど少なくなっています。

 また、アルコール摂取は男性では健康リスクの上位10位以内に入っていますが、女性の場合は主な死亡原因ではなく、塩分の過剰摂取など食生活に起因する健康リスクが最も高くなっています。

 こうした研究結果について論文の共同執筆者、米ワシントン大学のアリ・モクダド氏は、「端的にいえば、我々はは悪しき生活習慣を送っているということだ」と説明し、「こうした習慣は避けられるもので、個人でも地域としても何らかの手段を講じられるはずだ」と述べ、健康リスクに起因した死を防がなければならないと強調しました。

 今回の研究には、アメリカのマイクロソフトの創始者ビル・ゲイツ氏と妻が創設した世界最大の慈善基金団体、ビル・アンド・メリンダ・ゲイツ財団が出資しています。

 2015年9月28日(月)

 

■WHO、アフリカでのポリオ流行の終息を発表 ナイジェリアで根絶

 WHO(世界保健機関)は25日、ポリオ(小児まひ)が西アフリカのナイジェリアで流行のおそれがなくなったと宣言し、アフリカのすべての国でポリオの流行が終息したと発表しました。

 幼い子供が感染しやすく、口から感染するポリオウイルスが神経を侵し、手足がまひするなどの後遺症が残るポリオは、多くの国で根絶されたものの、パキスタン、アフガニスタン、それにナイジェリアの3カ国では流行が続いていました。

 このうちナイジェリアについて、WHOは25日、昨年7月以降新たな感染者の報告がないとして、ポリオの流行国リストから外したと発表しました。

 ナイジェリアでは2012年にポリオの感染が122件報告され、世界全体の半数以上を占めていましたが、ワクチンの予防接種を広めた結果、流行のおそれがなくなったということです。

 これでアフリカのすべての国で、ポリオの流行が終息したことになります。

 WHOは、「ナイジェリアは目覚ましい前進を成し遂げたが、再び流行しないよう警戒を続ける必要がある」としています。

 一方、パキスタンとアフガニスタンでは、イスラム過激派などによってワクチンの接種が妨害されるケースもあり、今年に入ってからも合わせて41件の感染が確認されているということで、WHOはポリオの世界的な根絶に向けて努力を続ける必要があるとしています。

 日本では、1960年(昭和35年)に、ポリオ患者の数が5000人を超え、かつてない大流行となりましたが、生ポリオワクチンの導入により流行は収まりました。1980年(昭和55年)の1件を最後に現在まで、ワクチンによらない野生のポリオウイルスによる新たな患者は出ていません。

 2015年9月27日(日)

 

■定期接種前の11人、医療費など支給 子宮頸がんワクチン被害で厚労省

 子宮頸(けい)がんワクチンを接種した女性が副作用とみられる健康被害を訴えている問題で、厚生労働省の専門部会は24日、2013年4月のワクチンの定期接種化前に任意接種した11人を救済することを決めました。

 接種との因果関係が否定できないと判断し、医療費と医療手当(月額3万4000~3万6000円)を支給します。

 厚労省はこれまで全身の痛みなどの症状を副作用被害とするか判断を保留していましたが、今回、初めて因果関係が否定できないとして認定しました。

 ワクチン接種で健康被害が生じた場合、定期接種では入院、通院ともに医療費の自己負担分が支給されます。一方、定期接種前の任意接種の場合は、入院相当のケースしか医療費は支給されません。

 このため厚労省は、法律に基づく定期接種化以前に任意接種を受けた人にも、定期接種と同水準の医療費を支給する方針を17日に決めていました。11人には通院患者も複数含まれており、相当分の医療費が支払われます。

 厚労省によると、子宮頸がんワクチンは2009年の販売開始から2014年11月までに推定約338万人が接種を受けました。接種後に全身の痛みなど副作用の疑いが報告されたのは2584人で、大半が定期接種になる前の任意接種。このうち186人は、頭痛や倦怠(けんたい)感、関節や筋肉の痛みなどの症状が回復していませんでした。

 定期接種化前の任意接種で副作用が出たとして救済を申請した人は100人おり、これまでに支給が認められたのは18人、不支給が決まったのは9人でした。

 厚労省は今後、救済を申請したほかの人についても順次、審査を進めるとしています。

 2015年9月26日(土)

 

■STAP細胞、ハーバード大も再現できず 海外7チームが133回実験

 昨年科学界を騒がせたSTAP細胞の論文不正問題を巡り、アメリカのハーバード大の研究チームなどが計133回の再現実験ですべてSTAP細胞を作れなかったとの報告を、24日付の英科学誌ネイチャー電子版に発表しました。

 理化学研究所も、「STAP細胞はES細胞(胚性幹細胞)由来だった」との試料解析結果の報告を、ネイチャーに発表しました。

 ネイチャーに掲載されたSTAP論文は昨年7月に撤回されており、撤回済みの論文に関する報告を載せるのは異例といいます。ネイチャーは論説欄で、「論文撤回時の説明はSTAP現象が本物である可能性を残していたが、2本の報告は現象が本当ではないことを立証した」とコメントしました。

 ハーバード大のジョージ・デイリー教授らの報告によると、再現実験は中国の北京大、イスラエルのワイツマン科学研究所など計7つの研究チームが参加して実施。論文の共著者でハーバード大のチャールズ・バカンティ教授の研究室や、共著者の一部も協力しました。

 計7つの研究チームは、理化学研究所の小保方晴子元研究員らが作製に成功したとしていた、マウスの細胞を酸性の液体などで刺激する方法で、再現実験を試みました。しかし、論文に書かれていたような細胞が緑に光り出し、万能性を示す遺伝子が働き始めるといった現象は起こらず、STAP細胞はできなかったということです。

 また、STAP細胞の作製方法は、論文に掲載された以外にもバカンティ教授らが発表していましたが、こちらの方法でも万能性を持った細胞はできず、条件を変えての計133回の試みはすべて失敗に終わったといいます。

 理化学研究所の報告は松崎文雄チームリーダーらがまとめ、すでに昨年12月に理研調査委員会が公表した最終報告にも反映されています。松崎チームリーダーは、「国際的にも影響が大きかったので、試料の解析結果を科学的論文として報告する必要があると判断した」と説明しました。

 STAP細胞は、その存在が国際的にも改めて否定されたことになります。

 2015年9月25日(金)

 

■拒食症の10歳代女性、脳の一部が縮小 福井大研究チームが発表

 拒食症の10歳代の女性は、健康な同世代の女性と比べて、行動や感情を抑制する脳の部位「下前頭回(かぜんとうかい)」が縮小しているとする、福井大の藤沢隆史特命助教の研究チームの論文が、6月11日付で米科学誌プロスワン電子版に掲載されました。

 研究チームは、拒食症と診断された12~17歳の女性20人と、11~16歳の健康な女性14人の脳を磁気共鳴画像装置(MRI)で撮影して比較しました。

 平均すると、拒食症の女性の脳は栄養不足の影響などで容積が約10パーセント少なく、前頭前野の一部で行動や感情を抑制する「下前頭回」は左が19・1パーセント、右が17・6パーセント減少していました。

 拒食症が原因で下前頭回が縮小するのか、縮小のために拒食症になるのか因果関係は不明といいます。

 拒食症は、神経性の摂食障害の一つで、思春期前後の若い女性に多く発症し、どこにも病変が認められないのに心因性の反応によって食欲不振に陥り、著しいやせ症になることをいいます。母子関係に問題があるなど何らかの精神的原因によって極度に食欲を失うか、自分自身で太りすぎだと思い込んだり、美容上の観点から肥満を病的に恐れて節食や断食をすることから、やせが始まります。

 拒食と過食、嘔吐(おうと)を繰り返すケースもあります。体と心理面の両方の治療が必要とされています。

 藤沢特命助教は、「今回の研究成果から、治療効果を画像で判断できるようになり、有効な治療薬の開発にもつながるのではないか」と話しています。

 2015年9月23日(水)

 

■ピロリ菌の駆除に有効な化学物質の作用を解明 秋田大学大学院

 秋田大学は、大学院工学資源学研究科の伊藤英晃教授=分子生物学=が、胃がん発症のリスクを高めるとされるピロリ菌の駆除に有効な化学物質の作用を解明し、英科学誌「サイエンティフィック・リポーツ」のインターネットオンライン版に掲載されたと発表した。

 伊藤教授は、胃潰瘍の患者が治療薬を服用している場合、ピロリ菌の除菌率が高いとされることに注目。胃潰瘍の治療薬に含まれる化学物質「GGA」が除菌の効果を高める仕組みを突き止めた。

 伊藤教授は「研究が臨床に生かされ、効果的な除菌治療につながることを期待する」と話した。

 介護サービス事業者の倒産件数(負債額1000万円以上)が今年1~8月の8カ月で、前年1年間を上回る55件に達したことが、20日までに信用調査会社の東京商工リサーチの調べでわかりました。

 2000年の介護保険制度開始から、年間倒産件数の最多記録となりました。

 事業者に支払われる介護報酬が4月に2・27パーセント引き下げられたことや、景気回復で他業種に人材が流れたことによる人手不足が主な要因。高齢者が利用先の施設を変えなければならなくなったといった影響が、出ています。

 高齢化が進み介護サービスは有望業種として新規参入が相次いでいますが、都市部では過当競争もみられるほか、安易な投資や経営能力不足から行き詰まるケースが続出。

 東京商工リサーチの調査では、2013年と2014年の倒産件数はいずれも過去最多の54件を記録しましたが、今年はさらに増え、年間では80件を上回る勢い。

 小規模事業者のケースが増えており、55件のうち従業員5人未満が37件と約7割。5年以内の設立が過半数で、新規参入組が目立ちます。

 サービス種別では、介護報酬改定で小規模型の通所介護(デイサービス)が大幅に引き下げられた影響を受け、通所・短期入所が23件と最多。次いで訪問介護が21件でした。

 4月の報酬引き下げを見越して、事前に撤退を決めた例が多かったとみられ、1~3月の倒産が前年に比べ急増していました。

 8月からは一定以上の所得がある利用者は自己負担が1割から2割に引き上げられており、東京商工リサーチは「節約のための利用控えで経営が悪化すると、倒産はさらに増える可能性がある」としています。

 2015年9月23日(水)

 

■今夏の熱中症搬送者、認知症が疑われる高齢者が120人以上 東京23区で

 この夏、熱中症で救急搬送された人のうち、認知症が疑われる高齢者が東京23区で少なくとも120人に上っていたことが、マスコミによる自治体への取材でわかりました。

 中には認知症の影響でエアコンの使い方がわからず、冷房と暖房をつけ間違って熱中症になった人もおり、専門家は、体温調節の問題はこれからの季節でも起こり得るとして周囲で見守る必要性を指摘しています。

 今夏、熱中症で救急搬送された中で認知症の高齢者がどれだけいたのか、マスコミは東京23区の自治体に聞き取り調査を行いました。その結果、認知症が疑われる状態で熱中症になって救急搬送された人は、少なくとも120人に上ることがわかりました。現場に駆け付けた際、死亡していた人も、2人いました。

 ほとんどが独り暮らしの高齢者で、訪問介護のヘルパーや、高齢者の見守り活動をする地域包括支援センターの職員が倒れているのを見付けたケースが、多かったということです。

 中には、認知症の影響でエアコンの使い方がわからず、冷房のつもりが暖房をつけ続けていた人や、ダウンジャケットなど冬物の衣服を着込んで体温が上がっているのに気付かず熱中症になった人もいたということです。

 また、テレビのリモコンとエアコンのリモコンの区別ができず、エアコンをつけていると思い込んで、冷房の効いていない部屋で過ごして熱中症になった人もいたということです。

 認知症介護研究・研修東京センターの永田久美子研究部長は、「認知症の高齢者にとってエアコンのリモコンはボタンが多く操作が難しい。衣服の適切な選択ができないのも認知症の症状によるものだ。当たり前のことができなくなっている恐れがあるので、むしろ水分を取りましょうなどと、本人にわかりやすい注意喚起にしたほうが予防につながる」と話していました。

 さらに、永田研究部長は、「夏場だけに限った問題ではなく、冬にかけても暖房をかけすぎたりするなど体温調節の問題は深刻になる。家族だけでなく、地域の見守り活動や、高齢者と接する機会の多い医師やヘルパーなど、周囲で注意して見守る必要がある」と指摘しています。

 2015年9月21日(月)

 

大気汚染による早死に、世界で年間330万人以上 中国が最多、日本は15位

 大気汚染が原因で肺の病気などにかかって、寿命を全うできずに死ぬ人の数は、世界で年間330万人余りに上るという分析結果をドイツやアメリカの研究チームがまとめ、対策の必要性を訴えています。

 これは、ドイツやアメリカなどの研究チームが17日付のイギリスの科学雑誌ネイチャーに発表したものです。

 研究チームでは、大気中の微小粒子状物質「PM2・5」やオゾンなどによる大気汚染が原因で、慢性閉塞性肺疾患や虚血性心疾患、肺がんなど多くの病気にかかって死亡する人の数を把握しようと、地球全体の汚染物質の分布状況、工業や農業など分野ごとの排出量、それに各国の健康に関する統計データなどを基に分析しました。

 その結果、世界全体で2010年の1年間に大気汚染が原因で死亡した人はおよそ330万人に上るということです。国別では、中国がおよそ136万人と最も多く、インドがおよそ65万人、パキスタンがおよそ11万人と続き、日本は2万5000人となっています。上位には、アジア諸国が多く並びました。

 また、人の死につながった汚染物質がどの分野から排出されるのか分析したところ、中国やインドなどアジアの国々を中心に、石炭やまきを使った暖房や調理による住宅からの排出が全体の31パーセントを占め、次いで肥料や家畜から発生するアンモニアなど農業からの排出が20パーセント、火力発電所や工場からの排出が14パーセントとなっています。

 研究チームは、「このままでは大気汚染による死者の数は2050年には年間660万人に増える」と推計していて、「特にアジアで大気汚染を防ぐため、何らかの規制が必要とされるだろう」と訴えています。

 2015年9月20日(月)

 

■子宮頸がんワクチンの健康被害、6人を救済へ 定期接種で初

 厚生労働省の審査分科会は19日までに、子宮頸(けい)がんワクチンの定期接種後に副作用とみられる健康被害の救済を訴えた6人について、接種との因果関係が否定できないとして予防接種法に基づき医療費と医療手当の支給を決めました。

 同ワクチンで2013年4月からの定期接種の対象となった患者の救済決定は、初めて。

 6人は当時、定期接種の対象の小学6年から高校1年相当の女子で、全身の痛みや運動障害、多様な神経症状などの症状を訴えていました。救済を申請した別の1人は、「医学的に判定が難しい」として保留となりました。

 厚労省が17日に副作用とみられる健康被害報告の追跡調査結果を公表したのを受け、審査を始めました。申請者はほかに8人おり、順次審査を進めます。

 厚労省は、副作用の原因や治療法を解明する研究に参加した場合は、救済が認定されなかった人にも「調査協力支援金」を支払う方針を示しています。

 また、定期接種化前の任意接種で副作用が出たとして救済を申請した人が100人おり、別の会合で審査しています。これまでに18人が認定され、9人が認定されませんでした。

 ワクチン接種によって健康被害に遭った場合、定期接種と任意接種では救済制度が異なります。定期接種では通院、入院を問わず、医療費の自己負担分が支給されます。一方、任意接種の場合は、医療費は入院相当に限られ、通院治療でかかる費用は出ません。

 医療費と別に、定額の医療手当が定期接種では通院でも月3万4000円から3万6000円支給されますが、任意接種では入院相当しか出ません。

 厚労省は、医療費や医療手当は定期接種前後での差をなくすことを検討しています。

 2015年9月19日(土)

 

■100歳以上の高齢者、初めて6万人を超える 45年連続増、女性87パーセント

 100歳以上の高齢者が全国に6万1568人いることが11日、厚生労働省の調査で判明しました。前年度から2748人増えて、45年連続で過去最多を更新し、初めて6万人を超えました。

 都道府県別の人口10万人当たりの人数では、島根県が90・67人と3年連続で1位でした。

 毎年「敬老の日」を前に厚労省が調査しており、住民基本台帳に基づき、15日時点で100歳以上となる高齢者の数を1日現在で集計しました。男女別では、女性が5万3728人で87・3パーセントを占めました。

 今年度中に100歳になった人となる予定の人は計3万379人で、前年比2748人増。3万人を超えたのは初めてで、厚労省は「医療の進歩や健康意識の高まりが背景にある」とみています。

 国内最高齢は、東京都渋谷区の女性で115歳。男性は、名古屋市の小出保太郎さんで112歳。100歳以上の人数を都道府県別にみると、東京都が最多の5356人で、神奈川県3315人、大阪府3304人と続きました。

 人口10万人に占める100歳以上の人数は、全国平均で48・45人で、前年から2・24人の増加。都道府県別では、島根県が90・67人で3年連続で最多となり、高知県が85・37人、鹿児島県が80・40人と続き、上位10県のうち9県を中国地方以西が占めました。埼玉県が28・68人で26年連続で最少となり、下位は首都圏などの大都市圏が目立ちました。

 100歳以上の人数は、調査が始まった1963年は153人でした。1998年に1万人、2009年に4万人、2012年に5万人をそれぞれ突破しました。

 厚労省は来年度から、9月15日に100歳のお祝いに贈る「銀杯」を純銀性から銀メッキなどに変更する方針です。対象者の増加に伴って膨らんだ事業費を抑えるためで、来年度予算の概算要求では今年度予算と比べ45パーセント減の1億5000万円としました。

 2015年9月18日(金)

 

■優先席付近での携帯電源オフ、混雑時のみ JR東日本など、10月から

 JR東日本など鉄道37事業者は17日、混雑時を除いて、10月から優先席付近で携帯電話を使えるように変更すると発表しました。携帯の電波が心臓ペースメーカーに与える影響は「非常に低い」、とする総務省の指針を受けました。

 変更するのは、JR東日本や首都圏の私鉄、仙台市交通局、青森県の青い森鉄道など東日本の鉄道各社。これまでは優先席付近で携帯電話の電源を常に切るよう呼び掛けてきましたが、電源オフを求めるのは「体が触れ合う程度」の混雑時に限るといいます。

 総務省は2013年1月、携帯電話とペースメーカーなどの医療機器との離すべき距離を22センチ以上から、15センチ以上に改めて規定。医療機器の対策が進むなどして、同省の実験で影響が出たのは最大3センチでした。有識者会議は「距離の規定が逆に患者の不安をあおっている」とし、同省は8月に出した指針で「悪影響が出る可能性は非常に低い」と示しました。

 指針作成にかかわった東京女子医大の庄田守男教授は、「携帯の電波による誤作動の報告はなく安全だ」と話しています。

 JR東日本は、「携帯の性能向上で以前より強い電波が出なくなっている上、スマートフォンの普及で車内使用の必要性も高まっている」と説明し、「聴覚障害者から優先席でメール機能を使いたいとの声もあった」としています。

 鉄道各社は、車内のステッカーを混雑時に限定した内容のものに張り替えるなど、車内や駅の表示、車内放送などで周知を図ることにしています。

 全国の鉄道各社では、関西のJRや私鉄などがすでに昨年7月から同じような対応を取っています。 

 鉄道37事業者は、青い森鉄道、阿武隈急行、伊豆箱根鉄道、えちごトキめき鉄道、江ノ島電鉄、小田急電鉄、関東鉄道、京王電鉄、京成電鉄、京急電鉄、埼玉高速鉄道、相模鉄道、しなの鉄道、芝山鉄道、つくばエクスプレス、新京成電鉄、西武鉄道、仙台空港鉄道、仙台市営地下鉄、多摩都市モノレール、秩父鉄道、千葉都市モノレール、東急電鉄、東京メトロ、都営地下鉄、東京モノレール、東京臨海高速鉄道、東武鉄道、東葉高速鉄道、箱根登山鉄道、JR東日本、北総鉄道、ゆりかもめ、横浜高速鉄道、横浜市営地下鉄、横浜シーサイドライン、IGRいわて銀河鉄道。

 2015年9月18日(金)

 

■子宮頸がんワクチン接種、186人が症状回復せず 135人は通学や通勤に支障

 子宮頸がんワクチンの接種後に全身の痛みやしびれなどの副作用が報告された問題で、厚生労働省は17日、少なくとも186人が回復していないとの追跡調査結果を専門部会に報告しました。うち135人は、通学や通勤に支障が出ていました。

 厚労省は2013年6月から積極的なワクチン接種の呼び掛けを中止し、医療機関を通じて調査を行っていました。

 17日は厚労省の専門家会議が開かれ、2014年11月までにワクチンを接種し何らかの症状が出た2584人のうち、状況が把握できた1739人について調査結果が報告されました。

 それによりますと、症状が出てから1週間以内に回復した人は1297人と全体の75パーセントを占めた一方で、痛みやけん怠感、認知機能の低下などの症状が回復していない人が186人いることがわかりました。症状が続いている期間については、1年以上3年未満が113人、3年以上と答えた人も51人いました。

 ワクチンを接種したのは中学生や高校生が多く、症状が回復していない患者に生活の状況を複数回答で聞いたところ、通学できなかったり留年したりして学校生活に支障が出ていた人は135人と全体の73パーセントに上り、入院した期間がある人は87人、介助が必要な期間があると答えた人も63人いました。

 こうした患者について、厚労省はこれまで、実態が明らかになっていないとして救済を行っていませんでしたが、調査結果を受けて18日、医療費などの給付に向けた審査を始め接種との因果関係が否定できない場合は救済することにしています。

 子宮の入口にできる子宮頸がんは、主に「ヒトパピローマウイルス」と呼ばれるウイルスへの感染が原因で発症するがん。若い女性の間で増えており、年間およそ3000人が亡くなっています。

 予防には定期的な検診とワクチンの接種が効果があるとされ、国内では2009年からワクチンの接種が始まりました。2013年4月には、小学6年生から高校1年生までの女子を対象に国と自治体が費用を負担する「定期接種」に追加され、これまでにおよそ338万人が受けたと推定されています。

 しかし、接種の後、全身の痛みやしびれなどを訴える患者が相次いだため、厚労省は定期接種となった2カ月後の6月、「接種との因果関係が否定できない」として積極的な接種の呼び掛けを中止しました。

 このワクチンは世界保健機関(WHO)が推奨し、海外の多くの国で公費による接種が行われており、副作用が問題になり接種を中止したケースはないということです。

 厚労省の専門家会議は昨年1月、「ワクチンそのものが原因ではなく、接種の際の不安などの心理的な要因によって症状が出た可能性がある」とする見解をまとめましたが、詳しい原因は解明されておらず全国で接種を見合わせる動きが広がりました。

 2015年9月17日(木)

 

■体外受精の治療件数、過去最高の36万8764件 出生も過去最高の4万2554人に

 2013年に国内で行われた体外受精の治療件数は36万8764件と10年前の3・6倍に増え、過去最多を更新したことが、日本産科婦人科学会のまとめでわかりました。

 一方、この体外受精の治療の結果、産まれた子供の数は4万2554人と治療件数の1割ほどにとどまっています。

 日本で産まれた子供の約24人に1人が体外受精で産まれた計算になりますが、治療件数の伸びに比べて産まれた子供の数は増えておらず、10年前の2・3倍にとどまっています。

 また、体外受精の治療を受けた女性の年齢は、40歳以上のケースが41パーセントと、初めて4割を超えました。女性は30歳代半ばごろから妊娠する割合が低くなる上に、流産のリスクが高まることから、最終的に出産に至ったのは、35歳で17・2パーセント、40歳で8・3パーセント、45歳で0・8パーセントとなっています。

 日本産科婦人科学会は、体外受精を行っている全国の医療機関から毎年、件数などについて報告を受けています。

 専門家は、「女性が妊娠しにくくなる30歳代半ば以降になって治療を受ける夫婦が増加していることが、産まれる子供の数が増えない主な原因で、20歳代から30歳代前半の時期に仕事と出産・子育てを両立できるよう、社会の支援をさらに充実させるべきだ」と指摘しています。

 体外受精は、妻の卵子と夫の精子を体外で受精させ、妻の子宮に戻す不妊治療。国内で、初の体外受精児が誕生したのは1983年で、以来、体外受精で生まれた子供は計約38万4000人になりました。

 当初は、卵子の通り道が詰まっている患者らに限られた治療でした。近年は、晩婚化で妊娠を望む女性の年齢が上昇、加齢による不妊に悩む患者の最後の手段としても広がり、2004年度に体外受精費用の公費助成も始まりました。

 日本では晩産化も進行しており、1980年には26・4歳だった第一子出生時の母親の平均年齢が、2011年に30歳を超え、2013年には30・4歳となりました。

 2015年9月16日(水)

 

■がんの治療開始5年後の生存率、全国平均で64・3パーセント 国立がん研究センターが集計

 国立がん研究センターは9月14日、がん患者の命を治療によって、どのくらい救えたかを示す「5年相対生存率」について、全国40の都道府県別のデータを初めて発表しました。各都道府県ががん医療の弱点を分析し、生存率の向上に努めてほしいとしています。

 がんの「5年相対生存率」は、がん患者を治療によって、どのくらい救えたかを示すもので、特定の年齢の日本人が、5年後も生存している確率を100パーセントとした場合に、同じ年齢のがん患者が、治療後に何パーセント生存しているかという形で示します。

 今回のデータは、国立がん研究センターが、2007年に全国177のがん拠点病院で治療を受けた患者およそ16万8000人のデータをもとにまとめました。

 それによりますと、胃がんや肝がん、それに乳がんなどすべてのがんを合わせた「5年相対生存率」の全国平均は、64・3パーセントでした。また、都道府県別では、最も高かったのは東京都で74・4パーセント、次いで、長野県が70・5パーセント、新潟県が68・9パーセントでした。最も低かったのは沖縄県の55・2パーセントでした。

 がんの部位ごとに生存率の全国平均をみますと、乳がんが最も高く92・2パーセント、次いで大腸がんが72・1パーセント、胃がんが71・2パーセントと比較的高かったのに対して、肺がんが39・4パーセント、肝がんが35・9パーセントと厳しい状況が明らかになりました。

 これを都道府県別にみますと、乳がんでは長野県が最も高く96・1パーセント、青森県が最も低く81・1パーセント、大腸がんでは香川県が最も高く79・6パーセント、青森県が最も低く63パーセント、胃がんでは東京都が最も高く78・8パーセント、群馬県が最も低く60・9パーセント、肺がんでは長崎県が最も高く50・7パーセント、沖縄県が最も低く20パーセント、肝がんでは富山県が最も高く51・3パーセント、香川県が最も低く22・6パーセントで、いずれのがんでも、がんを早期発見できた患者の割合が高い都県で生存率が高くなる傾向がみられました。

 ただし、今回のデータは、治療から5年後の患者の状況が9割以上の割合で確認できた医療機関しか含まれていません。例えば東京では、17あった拠点病院のうち、3つの病院のデータしか反映されていません。このため都道府県別のがんの治療レベルをそのまま表すものではありませんが、がんの早期発見ができているのかなど、がん医療の弱点を分析するのに役立つということです。

 データをまとめた国立がん研究センターの西本寛がん統計研究部長は、「都道府県は結果を分析し、生存率の向上につながる対策を見付けて推進してほしい。また、今後は病院ごとの生存率を出せるようにしてがん医療の質の向上につなげたい」と話しています。

 2015年9月15日(火)

 

■1日コーヒーは3〜4杯、緑茶は5杯で健康効果 国立がん研究センターが調査

 コーヒーを1日3~4杯飲む人は、ほとんど飲まない人に比べて心臓や脳血管、呼吸器の病気で死亡する危険性が4割ほど減るとの研究結果を、国立がん研究センターや東京大などの研究チームが9月7日、公表しました。

 がんによる死亡との関連はみられず、すべての病気で死亡する危険性で比較すると24パーセント減でした。

 研究チームは、1990年代に10都府県に住んでいた40~69歳の男女約9万人を2011年まで、平均19年にわたって追跡し、生活習慣と日本人の主要な死因との関係を調べました。

 コーヒーを飲む量が多いほど死亡する危険性は減り、「1日3~4杯」と答えた人は、狭心症や心筋梗塞などの心臓病で死ぬ危険性が「ほとんど飲まない」と答えた人に比べて36パーセント低くなりました。脳内出血や脳梗塞などの脳血管病は43パーセント、肺炎などの呼吸器病は40パーセント低くなりました。

 5杯以上飲む人の場合は、数が少なく詳細な分析は困難といいます。砂糖やミルクを入れるかなど飲み方の違いは、考慮していません。

 また、緑茶を1日5杯以上飲む人は、すべての病気で死亡する危険性で1日1杯未満の人に比べて男性で13パーセント、女性で17パーセント低く、飲む量が増えるほど危険性が低下する傾向がみられました。

 死因別では、緑茶を1日5杯以上飲む男性は、ほとんど飲まない男性に比べて脳血管病で死亡する危険性が24パーセント減、呼吸器病で45パーセント減でした。女性は、心臓病で死亡する危険性が37パーセント減りました。

 これらの結果について考えられることとして、研究チームはコーヒーに含まれるクロロゲン酸と緑茶に含まれるカテキン、そして両方に含まれるカフェインの働きを挙げています。

 クロロゲン酸はコーヒーの色や苦味、香りの元となる成分で、カテキンは緑茶の渋みや風味の元となる成分であり、どちらも強力な抗酸化力を持つポリフェノールの一種です。

 クロロゲン酸には血圧の調整や血糖値の改善効果、抗炎症作用があり、カテキンには血圧やコレステロール、中性脂肪の調整効果や血糖値改善効果があるといわれています。また、カフェインには血管を保護し、呼吸機能を改善する働きがあるとされています。

 2015年9月14日(月)

 

■アルツハイマー病の原因物質、薬剤投与で人から人に感染か 英研究

 アルツハイマー病の原因とされる特殊なタンパク質が、30年前まで使われていた薬剤の投与によって、人から人に感染していた可能性があると、イギリスの研究チームが発表し、さらなる研究の必要性を呼び掛けています。

 これは、イギリスのロンドン大学などの研究チームが9月9日付のイギリスの科学雑誌ネイチャー電子板に発表しました。

 研究チームは、子供のころ、身長の伸びに問題があったため成長ホルモンの薬剤を投与され、その後脳の組織が破壊される難病、クロイツフェルト・ヤコブ病を発症して死亡した36歳から51歳の患者8人の脳を調べました。

 その結果、患者8人のうち7人で、高齢ではないのに脳内に、アルツハイマー病の原因とされるアミロイド・ベータという特殊なタンパク質の蓄積が確認されたということです。成長ホルモンの薬剤は、人間の遺体の脳下垂体の細胞から抽出したもので、混入した異常なタンパク質によって、神経難病のクロイツフェルト・ヤコブ病を発症する報告があったため、30年前に使用が中止になりました。

 調べた患者には、比較的若い年齢で、アルツハイマー病を発症するリスクを高める遺伝子の変異がなかったことなどから、研究チームは「子供のころに投与されたこの薬剤にアミロイド・ベータの「種」が混入して感染した結果、蓄積が進んだ可能性がある」としています。

 調査した研究者は、「今回調べた患者は特殊な事例で、アルツハイマー病が人から人に感染することを示したわけでは決してないが、発症のメカニズムをさらに研究する必要がある」と呼び掛けています。

 2015年9月13日(日)

 

■酒飲まない人の脂肪肝炎、血液検査で精度よく診断 大阪大チームが新手法開発

 酒をほとんど飲まない人が発症し、肝硬変や肝臓がんに進む恐れもある「非アルコール性脂肪肝炎(NASH、ナッシュ)」を、血液検査で精度よく診断できる新手法を開発したと、大阪大のチームが米医学誌電子版に発表しました。

 NASHの早期発見と患者の体の負担軽減につながるといいます。

 NASHの患者は、国内に約100万~200万人いると推定され、超音波検査で「非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)」とされた人の1割程度を占めるとされます。しかし、症状が出にくいため、脇腹に針を刺して肝臓組織を一部採取する肝生検で診断する必要があり、肝生検は入院が必要で患者の体の負担も大きいため、簡便な診断法の開発が求められてきました。

 大阪大の三善英知教授(肝臓病学)と鎌田佳宏准教授(同)らは、NASHの特徴とされる風船のように異常に膨らんだ肝臓細胞に伴って血中に増えるタンパク質と、肝臓組織が炎症で硬くなる線維化に伴って血中に増えるタンパク質をそれぞれ特定し、これらのタンパク質の量などの違いから、NASHを診断する検査手法を開発しました。

 大阪大病院のほか、大阪市立大や高知大の病院など計5病院で、肝生検でNASHと確定した患者約300人と、非NASHの約200人を対象に、この検査手法で患者かどうか見分けられるかを検証。その結果、約85パーセントの精度でNASH患者を判別できたとしています。

 三善教授は、「血液検査なら会社の健康診断で早期発見できるし、痛い思いをしなくてすむ。2、3年後の実用化を目指したい」と話しています。

 2015年9月13日(日)

 

■卵巣がんの消失、新しいタイプの治療薬で確認 京大研究グループ

 人の体内にできたがん細胞は、特殊な信号を出して免疫による攻撃を受けないようにしていますが、この信号を遮断する新しいタイプの治療薬を卵巣がんの患者20人に投与したところ、半数近くでがんがなくなったり、進行が止まったりする効果が確認された、と京都大学の研究グループが発表しました。

 この臨床研究は、京都大学の濱西潤三助教や小西郁生教授などのグループが、「抗PD-1抗体薬」という新しいタイプの治療薬「ニボルマブ」(商品名オプジーボ)を使って、行いました。

 人の体内にがんができると免疫細胞が攻撃しようとするものの、がん細胞は特殊な信号を出してこの働きを抑え、増殖を続けることが、最近の研究でわかってきています。ニボルマブは、がん細胞が出すこの特殊な信号を遮断するものです。

 研究グループは、卵巣がんの手術後に再発し、ほかの治療法では効果がみられない患者20人に、2週間に1回のペースで1年間投与しました。その結果、2人の患者でがんがなくなったほか、7人でがんが小さくなったり進行が止まったりする効果が確認できたといいます。

 一方、安全性については、患者に甲状腺機能低下症やリンパ球減少、発熱、関節痛といった副作用が現れましたが、ほとんどは軽度だったということです。

 このニボルマブは、小野薬品工業が昨年9月に発売した抗がん剤で、皮膚がんである悪性黒色腫の治療薬としてはすでに国内でも承認され、医療現場で使われています。そのほか、20種類以上のがんについて、世界各地で臨床試験が行われているということです。

 濱西助教は、「高い効果が確認されとても驚いた。予後不良の卵巣がんに対する新たな治療法として期待できる」と話しています。

 卵巣がんは、女性の悪性腫瘍の中で最も予後不良で、その罹患率および死亡率ともに増加傾向にあります。卵巣がんの 50パーセント以上が進行した状態で見付かり、手術療法と化学療法による集学的治療を行いますが、その70パーセント以上は再発します。再発がんで化学療法抵抗性になると有効な治療法がないため、新しい治療法が長年求められてきました。

 2015年9月11日(金)

 

■外来患者は「待ち時間」、入院患者は「食事」の不満が最多 厚労省が受療行動調査

 厚生労働省が9月8日に公表した2014年受療行動調査の概況によりますと、全国の病院の外来を受診した患者の57・9パーセントが、医師やスタッフの対応などに満足しており、不満を感じている患者は4・9パーセントにとどまることがわかりました。

 調査は厚労省が3年ごとに実施しており、外来患者の満足度は1996年以降では、2008年の58・3パーセントに次ぐ高さ。入院患者の満足度も66・7パーセントと高く、不満を感じている患者は4・6パーセントにとどまりました。

 外来患者の満足度を項目別にみると、「医師以外のスタッフの対応」に対する満足度が最高の58・3パーセントで、「医師との対話」の55・8パーセントもこれに次ぐ高さでした。これに対して、「診察までの待ち時間」への満足度は28・1パーセントにとどまり、「不満」が27・4パーセントを占めました。

 病院の種類別では、「特定機能病院」が65・1パーセントで最も高く、これに500床以上の「大病院」(特定機能病院などは除く)の60・4パーセント、「療養病床を有する病院」の57・0パーセントが続きました。これ以外は、20〜99床の「小病院」が56・9パーセント、100〜499床の「中病院」が56・0パーセントという結果です。

 入院患者の満足度を項目別にみると、「医師以外のスタッフの対応」の69・3パーセント、「医師による診療・治療内容」の69・1パーセントの順で高くなりました、これに対して、最も低いのは「食事の内容」の43・7パーセントでした。

 入院患者の満足度も特定機能病院が最高で、全体の76・7パーセントを占めました。以下は、大病院72・0パーセント、中病院68・3パーセント、小病院66・9パーセントと大規模な病院ほど満足度も高くなりました。療養病床を有する病院への満足度は63・2パーセントでした。

 受療行動調査は医療行政を検討する際の参考資料にするのが目的で、医療に対する患者の認識などを聞いています。今回の調査は昨年10月21〜23日にかけて実施し、外来と入院の患者計19万5155人に調査票を配布、15万4456人から回収しました。

 調査では、外来での待ち時間の長さも聞いており、全体の25・0パーセントが「15分未満」という結果でした。これに「15〜30分未満」を合わせると、半分近くが30分以内に診察を受けています。一方、「1時間以上1時間半未満」は10・7パーセント、「1時間半以上2時間未満」は7・4パーセント、「2時間以上3時間未満」は4・4パーセント、「3時間以上」は1・9パーセントで、待ち時間が長い患者の割合も高くなっていました。

 2015年9月10日(木)

 

■温州ミカンと大豆もやしが「機能性表示食品」に 生鮮食品では初めて

 消費者庁は8日、JAみっかび(静岡県浜松市)の温州ミカンと、発芽野菜を生産・販売するサラダコスモ(岐阜県中津川市)の大豆もやしについて、事業者の責任で健康効果をうたえる「機能性表示食品」の届け出を受理しました。

 4月の制度開始後、サプリメントを含め70件超の加工食品が受理されたましが、生鮮食品の受理は初めて。産地や小売店では、消費者に付加価値を認められ、ほかの商品より高く販売できるかどうか注目しています。

 JAみっかびは11月に「三ケ日みかん」の商品名で出荷し、サラダコスモは10月7日に「大豆イソフラボン子大豆もやし」の商品名で発売します。いずれも「骨の健康に役立つ」などとパッケージに表示します。

 JAみっかびの温州ミカンは、糖度が高いものに骨の健康を保つ効果がある成分のβ―クリプトキサンチンを多く含みます。糖度を測る光センサー選果機に8億円を活用し、独自商品の出荷にめどを付けました。

 同エリアの温州ミカンはいち早くブランド化を進め、東京都内の卸売市場における1~3月の平均単価は全体平均より1割高くなりました。青果卸大手は、「健康志向をうまくとらえれば一段の上昇が期待できそう」と話しています。

 サラダコスモは大豆もやしについて、「スーパーや百貨店の引き合いがあり、売り上げを倍増したい」と期待しています。一般にもやしは産地などの特徴を打ち出しにくく、価格はほぼ横並びでした。

 消費者庁によると、ほかに複数の生鮮食品の届け出があり、「書類が整い次第、受理したい」としています。とりわけ、温州ミカンの産地は愛媛県や和歌山県などと広く、同様の届け出が相次ぐ可能性があります。

 ただ、メーカーが成分を調整しやすい加工食品に比べ、生育環境に左右される生鮮食品では、機能性表示をどう正確に消費者へ訴えていくかが課題になります。農業・食品産業技術総合研究機構の山本万里・食品機能研究領域長は、「機能性をもたらす成分を一定に保つのは難しい」と指摘しています。

 首都圏を地盤とするスーパーは、「一般の生鮮品と違いがまだわかりにくく、しばらく様子をみたい」とし、すでに販売している機能性表示の加工食品についても、「今のところ売れ行きは堅調だが、物珍しさによる購入もある」とし、消費者の節約志向が根強い中で慎重な見方をしています。

 機能性表示食品は、アルコール類を除く加工食品や生鮮食品が対象。体の特定部位への効果を示す論文などの科学的根拠を消費者庁に届け、受理されれば「おなかの調子を整える」「肝臓の働きを助ける」などと表示できます。届け出から60日後以降、包装に機能を表示できるようになります。

 2015年9月9日(水)

 

■女性アスリート、約2割が疲労骨折を経験 日産婦が健康調査

 大学などで本格的に運動競技に取り組んでいる女性アスリートの約2割に疲労骨折の経験があることが、日本産科婦人科学会(日産婦)などのアンケート調査でわかりました。

 特にやせている人には、調査時点で無月経だったり、疲労骨折の経験があったりする傾向が、みられました。ともに過度なトレーニングや栄養不足が、原因の可能性があるといいます。

 アンケート調査は2020年の東京五輪開催に向け、文部科学省の依頼で国立スポーツ科学センターと共同で実施し、日産婦が8月29日に発表しました。女性アスリートを対象とした大規模な調査は、国内初。

 調査対象は、本格的に運動している大学生やそうでない大学生ら計2153人。同じ場所に繰り返し力が加わることで骨にひびが入る疲労骨折や、無月経との関係を中心にデータを解析しました。

 疲労骨折の経験は、本格的に運動していない大学生では4・3パーセントだったのに対して、栄養面などの管理がゆき届いている日本代表の選手は22・6パーセント、全国大会レベルの選手は23・3パーセントでした。時期は、4割が16、17歳の時でした。

 月経異常があるか尋ねたところ、本格的に運動していない大学生は2・4パーセントが無月経だったのに対して、全国大会レベル、地方大会レベルの選手は約3倍と高くなりました。

 無月経が続くと女性ホルモンが減って疲労骨折のリスクが高まると考えられていますが、今回の調査結果では疲労骨折時に無月経だったのは15パーセントだけでした。一方、体格指数(BMI)が18・5未満でやせている選手は、疲労骨折の経験者が約4割、無月経の割合が2~3割でした。

 競技別で疲労骨折や無月経の割合が高かったのは、陸上の中長距離と競歩、体操と新体操。中長距離と競歩で疲労骨折を経験したのは競技者の51パーセントに当たり、無月経は21・9パーセントでした。体操と新体操では疲労骨折経験者は35・7パーセントで、無月経は23・2パーセント。

 日産婦の女性アスリートのヘルスケア小委員会委員長として、調査を担当した久保田俊郎東京医科歯科大大学院教授は、「中高生時代から無月経や骨折を経験している選手が多く、その後の人生にかかわってくる」と指摘。栄養士などの意見を聞きながら、女性選手向けの健康指針を作る方針だといいます。

 2015年9月8日(火)

 

■メタボ検診、システム不備で十分活用できず 厚労省が28億円で導入、改修に2億円

 「メタボ健診」を受けたすべての人のデータを蓄積して、医療費の抑制につなげようと厚生労働省が整備したシステムに設計ミスがあり、およそ2割の人のデータしか活用できない状態だったのに、運用が開始されて6年経った今も改修されていないことが、会計検査院の調べでわかりました。

 このシステムは厚労省が約27億9千万円をかけて導入し、2009年から運用している「ナショナルデータベース」で、メタボ健診を受ける毎年2000万人以上のすべての健診データと、医療機関などが請求した診療報酬明細書のデータが合わせて100億件近く、個人が特定できないよう、氏名や生年月日、健康保険証の番号などの個人情報を暗号化する処理が行われた上で、蓄積されています。

 厚労省はこのベースを突き合わせてメタボリックシンドロームの人がどのような病気になり、いくら医療費がかかっているかを分析し、医療費の抑制につなげる対策を打ち出すことを目指しています。

 しかし、会計検査院によりますと、同じ人のデータでも健康保険証の番号などが半角文字と全角文字といった異なる形式で提供されると、暗号化した際に同じ人のものと認識されなくなるなどの設計ミスがあり、2011年度からの2年間ではメタボ健診を受けた人のおよそ2割しかデータを突き合わせできなかったということです。

 国は昨年度までの7年間にメタボ健診に約1257億円の補助金を投入していますが、その効果の検証にもシステムを十分活用できない事態となっています。

 厚労省は3年前には突き合わせ率が低いことを把握しましたが、原因がわからず改修していなかったということで、会計検査院はシステムを改修するよう求めました。

 厚生労働省は、「データを有効に活用できるように約2億円をかけ改修を進めている」とコメントしています。

 医療情報システムに詳しい東京大学大学院の山本隆一特任准教授は、「蓄積されたデータは膨大な量なので改修しても過去に逆上って分析できるようになることは期待できない。設計段階や完成してテストする段階で徹底的にチェックすべきで厚生労働省の対応が甘かったといわざるをえない。今後の我が国の医療を中心とする社会保障を考えていく上で大事なデータベースなのでもっと性能を上げないといけない」と指摘しています

 2015年9月8日(火)

 

■定期接種化前の人にも救済を拡大 子宮頸がんワクチン被害

 子宮頸(けい)がんワクチンの接種後に健康被害を訴える女性が相次いでいる問題で、厚生労働省は、今秋にも救済策を拡大する方針を固めました。

 法律に基づく定期接種になる前に接種を受けた人にも、定期接種と同じ水準の医療費の支給を検討しています。ただし、救済の対象になるには、接種との一定程度の因果関係が厚労省に認められる必要があり、どれだけ広がるかが課題となります。

 子宮頸がんワクチンは、国が2011年11月から接種費の公費助成を始めました。2013年4月には予防接種法に基づいて市町村が実施する定期接種となったものの、体の痛みやけいれん、歩行障害などの報告が続き、2カ月後に厚労省は積極的な推奨を中止。

 厚労省によると、接種の対象は原則小学6年から高校1年の女子で、これまでに接種を受けたのは約340万人。このうち、定期接種前が9割以上を占めます。健康被害は約2600人ぶんが報告され、ほとんどが定期接種前といいます。報告のうち重症は4分の1。

 ワクチン接種によって健康被害に遭った場合、定期接種とそれ以外では救済制度が異なります。定期接種では通院、入院を問わず、医療費の自己負担分が支給されます。一方、定期接種ではない場合は、医療費は入院相当に限られ、通院治療でかかる費用は出ません。

 医療費と別に、定額の医療手当が定期接種では通院でも月3万4000円から3万6000円支給されますが、定期接種以外では入院相当しか出ません。

 厚労省は、医療費や医療手当は定期接種前後での差をなくすことを検討しています。障害年金なども定期接種のほうが手厚いものの、同水準にすることには否定的。医療費などの支給を受けるには、審査をへて接種との因果関係が「否定できない」と厚労省に判定される必要があります。厚労省は、判定の仕組みは変えないとしています。

 定期接種前に接種を受けた人からの救済の申請は、今年7月までに98件。このうち結果が出たのは27件で、支給されたのは18件で、9件が不支給でした。

 2015年9月6日(日)

 

■子宮頸がんワクチン接種、 症状未回復約200人 厚生労働省が追跡調査

 子宮頸(けい)がんワクチンを接種した後、原因不明の体の痛みなどを訴え、症状が回復していない患者がおよそ200人いることが、厚生労働省の調査で初めてわかりました。

 結果を受けて厚労省は近く、医療費などの給付に向けた審査を始め、接種との因果関係が否定できない場合は救済する方針を固めました。

 子宮頸がんワクチンは子宮の入り口にできるがんを予防する効果が期待されるとして、国内では6年前の2010年11月から接種が始まりました。2013年4月には、小学6年生から高校1年生までの女子を対象に、国と自治体が費用を負担する定期接種に追加され、これまでにおよそ340万人が受けたと推定されています。

 しかし、体の痛みやけいれん、歩行障害などを訴える患者が相次いだため、厚労省は2013年6月、積極的な接種の呼び掛けを中止し、何らかの症状が出たおよそ2600人を対象に医療機関などを通じて追跡調査を行いました。

 その結果、痛みの症状が残っていた患者や、全く症状が回復していなかった患者が合わせておよそ200人いることが、初めてわかりました。中には歩けなくなり、学校に通えなくなった人もいるということです。

 子宮頸がんワクチンを接種し、こうした症状を訴えた患者について、厚労省はこれまで、実態が明らかになっていないとして救済を行っていませんでしたが、調査結果を受けて近く、医療費や障害年金の給付に向けた審査を始め、接種との因果関係が否定できない場合は救済する方針を固めました。

 子宮頸がんワクチンを接種し、現在も歩行障害などに苦しんでいる高校2年の女子生徒の母親で、「全国子宮頸がんワクチン被害者連絡会」の松藤美香代表は、「救済の申請をしても審査が進まない状況だったので、救済に向け動き出したことに期待している。その一方で、治療法の解明は進んでいないので対策を急いでほしい」と話しています。

 2015年9月5日(土)

 

■昨年度の医療費、初の40兆円突破が確実に 12年連続で過去最高を更新

 2014年度に病気やけがの治療で全国の医療機関に支払われた医療費が、前年度より7001億円、率にして1・8パーセント増えて39兆9556億円になりました。高齢化や医療技術の高度化の影響で、12年連続で過去最高を更新。

 厚生労働省が3日に速報値を公表しました。1年後に公表する確定値では、初めて40兆円を超える見通し。

 今回、公表したのは公的医療保険と公費、患者の窓口負担を集計した医療費の概算で、労災や全額自己負担のぶんは含まれず、医療費全体の約98パーセントぶんに相当します。このため、厚労省の担当者は、「確定値となる国民医療費では40兆円に上っていると思って間違いない」と話しています。

 増加の大きな要因は高齢化で、75歳以上の1人当たりの医療費は93万1000円で、75歳未満の21万1000円の4倍以上になります。ただし、人口減少や後発医薬品(ジェネリック医薬品)の普及で、伸び率は鈍化傾向にあります。2009〜2011年度は3パーセント台でしたが、2012年度以降は2パーセント前後で推移しています。 

 医療費の内訳を診療の種類別でみると、入院が16兆円、通院が13兆8000億円、歯科が2兆8000億円、調剤が7兆2000億円となっています。

 昨年度の医療費が過去最高となったことを受けて、塩崎厚生労働大臣は閣議の後記者団に対し、「医療費が初めて40兆円となった。前年度からの伸び率は少し低くなっているが、健康を確保しながら国民の負担を持続可能なものにしていくことが大事だ」と述べました。

 その上で大臣は、「厚生労働省としては予防や健康づくり、医療供給体制の再構築などを進めようとしており、価格が安い後発医薬品、いわゆるジェネリック医薬品の活用や市町村などの保険者の役割の強化など、引き続き、改革を力強く推し進めていかなければならない」と述べ、医療費の抑制に向けた対策を強化していく考えを強調しました。

 2015年9月5日(土)

 

■デング熱、蚊のウイルス検査を11月まで継続 東京都が23公園で

 蚊のヒトスジシマカが媒介する感染症であるデング熱の国内での感染は、今年は今のところ確認されていませんが、東京都は、蚊の活動時期がしばらく続くことから、今年11月まで都内の公園でウイルスを持つ蚊がいないか検査を続けることにしています。

 デング熱の国内での感染は、およそ70年間ありませんでしたが、昨年、東京都内の代々木公園を中心に感染が相次ぎ、感染者は全国の162人に上りました。

 東京都は、今年から公園の側溝に蚊の発生を抑える薬剤を入れたり、都内25の公園でウイルスを持つ蚊がいないか検査を行うなど、新たな対策を始めています。

 今年は国内での感染は確認されていないものの、蚊は気温が15度以上あれば活動を続けるとされていることから、今後も流行が起きる可能性が指摘されているため、東京都は今年11月まで蚊のウイルス検査を続けることにしています。

 3日は、練馬区の光が丘公園で、都から委託を受けた業者が前日仕掛けた装置に集まった蚊を採取。採取した蚊は都の研究施設で検査が行われ、ウイルスが検出された場合は都が速やかに公表することにしています。

 東京都環境保健衛生課の齊藤祐磁課長は、「気温は下がってきたが、蚊は夏が終わった9月に最も活発に活動するので、調査を続けていきたい。草むらに入る時などは長袖、長ズボンを着用するなどの対策を続けてほしい」と話していました。

 一方、昨年感染者が相次いだデング熱について、国は45の都府県に対して今年4月、観光地や公園などの中から感染のリスクのある場所を選び出して事前に蚊の生息状況を調べ、感染が起きた時に備えるよう求めていますが、全体の3分の1に当たる15の府県で、場所の選定と生息調査のいずれも実施できていないことがわかりました。

 デング熱に詳しい国立感染症研究所の高崎智彦室長は、「蚊の生息場所を事前に知っておけば、ウイルスを持っているかどうか直ちに調べ、拡大を防ぐ対策を迅速に行える。まずは地域で最も人の集まる公園をリスク地点に選ぶなどして、すべての自治体が調査しておいてほしい」と話しています。

 2015年9月3日(木)

 

■C型肝炎新薬による治療を医療費助成対象に 月の患者負担最大2万円

 厚生労働省は8月27日、国内のC型肝炎患者の約7割を占める遺伝子タイプ1型に効くとされる新しい飲み薬による治療を医療費助成の対象とすることを決めました。

 新しい飲み薬は、アメリカの製薬会社ギリアド・サイエンシズの「ハーボニー配合錠」(一般名:レジパスビル・ソホスブビル配合剤)。患者の約3割を占める遺伝子タイプ2型向けの同社の飲み薬「ソバルディ」に別の成分を組み合わせた薬で、価格はソバルディの1錠6万1799円を上回り、1錠8万171円に決まりました。

 1日分の1錠は12週間、毎日服用しますが、従来の治療方法より大幅に短く、医療費助成で患者の自己負担は月額最大2万円となります。保険適用となる8月31日の治療から助成します。

 C型肝炎患者の約7割を占める遺伝子タイプ1型で、慢性肝炎と初期の肝硬変の患者に効果があるとされ、うつなどの重い副作用を伴うことがある従来のインターフェロンの注射が不要となります。

 ギリアド社の臨床試験(治験)では、100パーセントの患者の症状が改善したといいます。

 NPO法人「東京肝臓友の会」事務局長で自身も治療経験がある米沢敦子さんは、「インターフェロンので副作用が出て、治療ができずにいる人は多くいる。待ちに待った薬だ」と歓迎しています。 

 2015年8月30日(日)

 

■健康寿命、男女ともに日本が首位 英誌に188カ国調査

 介護の必要がなく、健康的に自立して生活できる期間を示す「健康寿命」について、男女ともに日本が世界で最も長いとする研究結果を、アメリカの大学の研究チームが発表しました。

 これはアメリカのワシントン大学(西部ワシントン州)などの研究チームが発表したもので、イギリスの医学雑誌「ランセット」の電子版に27日、掲載されました。

 研究チームは、病気やけがなどによる介護の必要がなく、健康的に自立して生活できる期間を示す健康寿命について、1990年から2013年までの世界188の国と地域のデータを分析しました。

 その結果、日本は2013年の時点で、男性が71・11歳、女性が75・56歳となり、男女ともに世界で最も長いことがわかったということです。この2013年の日本人の平均寿命は、男性が初めて80歳を超え、女性は86歳台でした。

 また、男性では、日本に次いで、シンガポールが70・75歳、ヨーロッパのフランスとスペインに挟まれた国であるアンドラが69・92歳でした。

 女性は、アンドラが73・39歳、シンガポールが73・35歳となっています。

 世界の健康寿命の平均は、男性が60・59歳、女性が64・13歳でした。

 日本の健康寿命は1990年と比べて、男女ともに3年余り伸びたということです。

 健康寿命は、世界保健機関(WHO)が提唱する健康を測る指標の一つとなっていて、感染症対策の進歩などを背景に世界的にも伸びているということです。

 2015年8月29日(土)

 

■ノロウイルスが変異し、今年初めから流行 秋以降に大流行になる懸念も

 高齢者や乳幼児を中心に激しいおう吐や下痢を引き起こすノロウイルスが変異し、人が免疫を持たない新たなウイルスとなって、今年初めから国内で感染を広げていたことがわかりました。

 ノロウイルスの本格的な流行は秋以降で、秋以降も新たなウイルスが主流となった場合には、例年にない大きな流行になるおそれがあるとして、国立感染症研究所は全国の地方衛生研究所に対して、ウイルスの分析を徹底し、注意喚起につなげるよう求めました。

 ノロウイルスの変異は、川崎市健康安全研究所と国立感染症研究所などの研究グループが行った調査でわかったものです。

 ノロウイルスには人に感染する遺伝子の型が31種類ありますが、遺伝子型の判別が可能になった2004年以降、国内でも海外でも「G2・4」という型が流行の主流を占めてきました。

 ところが、研究グループが昨年10月からの半年間、国内の患者から検出されたウイルス2000株以上を調べたところ、今年に入って「G2・17」という型が急激に増え、7月以降はすべてこの型になっていました。

 さらに、この「G2・17」の遺伝子を詳しく解析したところ、人への感染のしやすさに関係する部分が変異し、人が免疫を持っていない新たなウイルスになっていたということです。

 ウイルスの変異によって新たなタイプが出てくると、人がそれまでに獲得した免疫が役に立たなくなるため、感染する人が増え大きな流行になるおそれがあります。

 患者数の統計が始まった1999年以降、ノロウイルスを含む「感染性胃腸炎」が最も大きな流行になったのは、9年前の2006年です。この時は、これまで流行してきた「G2・4」型のノロウイルスの遺伝子が変異し、人が免疫を持たない新たなウイルスとして感染を広げました。

 そして、例年より1カ月早い10月ごろから患者が急速に増え始め、全国およそ3000の小児科の医療機関から報告される「感染性胃腸炎」の患者は、10月からの3カ月間の累積で1医療機関当たり166・8人と、前の年の同じ時期の1・6倍に上りました。

 国立感染症研究所は、9月から12月上旬までの3カ月余りで、子供を中心に患者は303万9000人に上ったと推計しています。また、10月から12月までに、高齢者施設を始め、医療機関、保育所・幼稚園と、抵抗力の弱い人たちが集まる施設で、少なくとも2405件に上る集団発生が起きていました。

 国立感染症研究所の片山和彦室長は、「新たなG2・17型のウイルスが秋以降も流行の主流になった場合には、2006年の時と同じような大流行につながりかねない。どの程度検出されるか監視し、警戒する必要がある」と指摘しています。

 ノロウイルスに対しては、ワクチンや特別な薬はないため、おう吐や下痢によって脱水症状を起こさないよう水分を補給する対症療法が、治療の中心となります。通常は数日間で自然に回復しますが、乳幼児や高齢者の場合、脱水症状を起こし、入院による点滴などが必要になったり、吐いたものをのどに詰まらせ窒息で死亡したりすることもあり注意が必要です。

 2015年8月28日(金)

 

■「人食いバクテリア」感染者が過去最多284人に 致死率約3割

 致死率が約3割とされ、「人食いバクテリア」とも呼ばれる劇症型溶血性レンサ球菌感染症に感染した患者の今年の報告数が、調査を始めた1999年以降、最多となりました。

 国立感染症研究所が8月25日に発表した速報値では、8月16日時点で284人。都道府県別にみますと、最も多いのが東京都で45人、次いで大阪府が28人、神奈川県が20人、千葉県と兵庫県が15人などとなっています。

 同研究所によると、これまで最多だったのは昨年1年間の273人で、今年は8月9日時点で279人に上って、これを超えていました。

 原因となるのは主にA群溶血性レンサ球菌で、子供を中心に咽頭(いんとう)炎や皮膚炎を起こすことで知られます。この菌が傷口から入って感染すると、38度以上の発熱や、手足が赤くはれて壊死(えし)することがあります。多臓器不全などにより数日で死亡することや、ショック症状で数十時間以内に死亡することもあります。

 劇症型の患者は30歳代以上が大半を占め、特に60歳代以降の高齢者は重症化しやすいので注意が必要だといいます。1987年にアメリカで初めて報告され、日本では1992年に初めて感染者を出しましたが、まだ現状では劇症化する仕組みはよくわかっていません。

 国立感染症研究所によると、劇症型溶血性レンサ球菌感染症の統計を取り始めた1999年以降、患者は徐々に増える傾向にあり、2012~2014年に報告された患者の29パーセントが死亡したといいます。

 東京女子医科大の菊池賢教授(感染症科)は、「通常は抗菌薬が効く。ただ、急に悪化する場合があるので、手足のはれが広がるようならすぐに医療機関を受診してほしい」と話しています。

 2015年8月27日(木)

 

■エボラ出血熱、シエラレオネで患者ゼロ 終息宣言へ秒読み段階に

 エボラ出血熱の流行で西アフリカで最も多い1万3000人以上が感染したシエラレオネで、流行が始まって以来初めて患者の数がゼロになりました。周辺国では今も感染が続き、世界保健機関(WHO)では警戒を緩めないよう呼び掛けています。

 WHOによりますと、西アフリカのシエラレオネでは8月16日までの1週間に、エボラ出血熱の新たな患者が報告されませんでした。そして、24日には、最後の入院患者となった35歳の女性がシエラレオネ第3の都市マケニの病院を無事に退院し、シエラレオネで流行が始まって以来初めて患者の数がゼロになりました。

 マケニの病院では式典も開かれ、病院関係者や治癒した患者らが「感染者ゼロ」を祝い、出席したコロマ大統領が「シエラレオネにおけるエボラ出血熱の終息の幕開け」と称賛しました。

 シエラレオネでは、2014年5月に最初の感染を確認。それ以降、西アフリカの流行国で最も多いおよそ1万3500人が感染し、3900人余りが死亡しましたが、このまま新たな感染が42日間報告されなければ、隣国のリベリア同様、流行の終息が宣言されることになります。

 しかし、隣国のギニアでは、8月16日までの1週間で新たに3人の患者が報告されるなど今も感染が続いており、ウイルスが国境を越えてシエラレオネに侵入する危険性は残っています。

 西アフリカで猛威を振るったエボラ出血熱の感染者は約2万8000人を数え、その3分の1以上が死亡しました。

 WHOでは、地域全体で感染が終息するまでは警戒を緩めないよう呼び掛けています。

 2015年8月26日(水)

 

■熱中症搬送者は2294人 気温上がらず大幅減、17~23日の1週間

 総務省消防庁は25日、8月17~23日の1週間に熱中症で救急搬送されたのは、全国で2294人だったとの速報値を発表しました。前週の4117人(速報値からの改定値)と比べると、1823人の大幅な減少となりました。

 全国的に最高気温が35度以上の猛暑日がほとんどなく、気温が上がらなかったためとみられます。搬送時に亡くなったのは3人でした。

 集計によると、3週間以上の入院が必要な重症者は36人、短期の入院が必要な中等症は70人でした。65歳以上の高齢者が45パーセントを占めました。

 都道府県別でみると、東京都が228人で最も多く、愛知県の171人、埼玉県の161人と続きました。死亡したのは三重県、大阪府、長崎県の各1人。

 また、5月19日~8月23日の搬送者数は5万2268人で、昨年同時期の3万8708人を大幅に上回りました。

 消防庁は暑さが和らいでも油断せず、熱中症の予防策を取るよう呼び掛けています。

 2015年8月25日(火)

 

■男性の歯周病リスク、受動喫煙が喫煙より高い数値 東京医科歯科大など調査

 たばこを吸わない人でも、ほかの人のたばこの副流煙にさらされると歯周病リスクが高まるという研究結果を、東京医科歯科大と国立がん研究センターの共同研究グループが発表しました。

 男性の非喫煙者で、家庭と家庭以外で受動喫煙した人の場合、非喫煙者で受動喫煙の経験がない人に比べリスクは約3・6倍となり、喫煙者のリスクを上回る結果でした。このため、共同研究グループは喫煙者に対し、「自分や家族の健康のために禁煙を」と呼び掛けています。

 この研究は、生活習慣とがんなどの生活習慣病との関連について追跡調査する多目的コホート研究の一環として実施されました。1990年の生活習慣などのアンケート調査に答えた、秋田県横手保健所管内に住む当時40〜59歳の男女1500人を対象に、2005年から2006年に歯科アンケート調査へ回答してもらうとともに歯科検診を受けてもらい、そのうち男女1164人(男性552人、女性612人)を対象に解析しました。

 対象者を男女別に「受動喫煙経験のない非喫煙者」から「喫煙者」まで6つのグループに分けるとともに、6ミリ以上の歯周病ポケットが1歯以上ある場合を重度の歯周病と定義した上で解析したところ、男性の場合、受動喫煙経験のない非喫煙者に比べて、喫煙者の重度の歯周病リスクは約3・3倍に跳ね上がりました。

 しかし、非喫煙者でも家庭と家庭以外で受動喫煙経験のある人の場合は、約3・6倍と喫煙者を上回る数値となりました。家庭のみで受動喫煙経験のある非喫煙者も、約3・1倍と高くなりました。家庭以外のみで受動喫煙経験のある非喫煙者の場合は、約1・3倍でした。

 ただ、女性については、喫煙・受動喫煙の状況と歯周病との間に関連はみられなかったといいます。

 たばこのニコチンには、歯周病を引き起こす歯周病菌の発育を促進し、その病原性を高める働きがあります。また、喫煙そのものが全身の免疫力を低下させ、歯を支える組織の破壊を助長するため、歯周病菌に感染しやすくなります。

 受動喫煙でも、同様のメカニズムが働くと推察されるといいます。実際、たばこの先から出る副流煙には、フィルターを通して吸う主流煙より、ニコチンが多く含まれています。

 共同研究グループは、「喫煙は歯の健康を低下させるリスク要因であることが確認された」とした上で、「歯周病は糖尿病などほかの病気のリスク要因でもあるので、予防や治療を心掛ける必要がある」としています。

 2015年8月24日(月)

 

厚労省が来年度から新たな取り組み 高齢者の生活改善と終末期医療を支援

 高齢者の病気が重症化したり、寝たきりになったりするのを防ごうと、厚生労働省は、管理栄養士などが高齢者が集まる場所に積極的に出向いてリスクの高い人を見付け出し、生活改善の指導をする新たな取り組みを来年度から始める方針を固めました。

 厚労省によりますと、75歳以上の高齢者は筋力や口の機能の衰えによって低栄養になったり、急激にやせたりするリスクが高くなり、その結果、病気が重症化したり、寝たきりになったりすることがあるということです。

 厚労省は、こうした人たちに、それまでの生活習慣を改善してもらおうと、来年度から新たな取り組みを始める方針を固めました。具体的には、まず管理栄養士や歯科衛生士が高齢者が集まる薬局や地域包括支援センターに積極的に出向いて、低栄養ややせすぎと思われる人を見付け出します。

 そして、その場でのアドバイスにとどまらず、自宅を訪問して食事の取り方や歯磨きの仕方などを指導するというものです。

 医療費を抑制するねらいもあり、厚労省はこの取り組みを全国の自治体に呼び掛けてモデル事業として行う方針で、必要な費用10億7000万円余りを来年度予算案の概算要求に盛り込むことにしています。

 また、厚生労働省は23日、治療によって回復の見込みがなく死期が迫った場合に、患者と家族の不安や悩みを聞き、みとりを含む終末期医療の選択肢など必要な情報を提供する相談支援チームの整備事業を、来年度から全都道府県で実施する方針を固めました。

 高齢化率25パーセント、平均寿命が80歳を超えた日本は、年間死者数が120万人に上ります。厚労省は事業を通じ、「多死社会」を見据えた終末期医療の在り方を検討、将来の医療・介護提供体制見直しにもつなげる考えです。

 2015年8月23日(日)

 

■手足のえ死を引き起こす細菌性の感染症、患者が過去最多に

 手や足のえ死を引き起こし死に至ることもある「劇症型溶血性レンサ球菌感染症」の患者が今年、統計を取り始めて以降最も多い279人に上っています。

 国立感染症研究所は、手足のはれなど感染が疑われる症状が出た場合には、速やかに医療機関を受診するよう呼び掛けています。

 原因となるA群溶血性レンサ球菌は通常、人の鼻や口などから感染し、無症状なことも多く、咽頭炎や皮膚の感染症ですみます。ところが、まれに菌が傷口から血液などに侵入し、劇症化する場合があります。

 劇症型溶血性レンサ球菌感染症の初期症状は手足のはれや激しいのどの痛みなどで、急激に手足が壊死し、錯乱状態となり、多臓器不全などでショック状態から死に至ることがあります。発症するのは30歳代以上が中心で、高齢者が多い傾向にあります。発症したら迅速な治療が重要ですが、手足の壊死した部分を切除するなど対症療法にとどまります。

 劇症型溶血性レンサ球菌感染症の統計を取り始めた1999年以降、患者は徐々に増える傾向にあり、昨年は273人でしたが、国立感染症研究所によりますと、今年は8月9日の段階ですでに279人に上り、統計を取り始めて以降最も多くなりました。

 都道府県別にみますと、最も多いのが東京都で44人、次いで大阪府が28人、神奈川県が20人、千葉県と兵庫県が15人などとなっています。

 国立感染症研究所によると、重症化しやすいのは60歳以上だということで、手足のはれや激しいのどの痛みなど感染が疑われる症状が出た場合には、速やかに医療機関を受診するよう注意を呼び掛けています。

 国立感染症研究所の池辺忠義主任研究官は、「原因となるA群溶血性レンサ球菌は子供への感染がよくみられるが、通常発熱程度で治まる。なぜ劇症化するのか詳しくわかっておらず、けがをした場合には、きちんと消毒して病原菌が入らないようにしてほしい」と話しています。

 2015年8月22日(土)

 

■危険な病原体を扱うレベル4施設、長崎大に設置 文科省、予算要求へ

 文部科学省は21日までに、エボラ出血熱などの危険な病原体を取り扱うバイオセーフティーレベル(BSL)4の施設を長崎大(長崎市)に設置するための必要経費を、2016年度予算の概算要求に盛り込む方針を固めました。

 数年かけて大学内での建物新設や実験装置の配備を進め、事業は100億円規模になる見通し。

 レベル4施設と呼ばれる高度な安全設備を備えた施設は、感染症法で危険性が特に高い「1類感染症」に指定されているエボラ出血熱、天然痘、ラッサ熱など7種類の病原体を取り扱うことが認められた研究施設で、ワクチンや治療薬を開発するためにウイルスの詳しい解析や実験などが行われます。世界保健機関(WHO)の指針や国の安全基準に基づいて運用され、病原体の流出を防ぐため研究者は防護服を着て実験を行うほか、空調の管理や実験器具の消毒の徹底などが義務付けられています。

 長崎大が認められると、今年8月7日にレベル4施設として稼働した東京都武蔵村山市の国立感染症研究所村山庁舎に続いて、国内2カ所目となります。

 長崎大はもともと、江戸時代末期の1857年に医学伝習所として開学し、オランダ海軍の軍医ポンペが日本人に医学を教えたのが始まりです。その流れを受け、熱帯の感染症に特化した国内唯一の研究施設「熱帯医学研究所」が設置されているなど、危険な病原体を取り扱う研究拠点となる素地があるために、レベル4施設の設置が進められることになりました。

 ただ、最も危険度が高い病原体を扱う施設だけに、建設候補地の坂本キャンパス(長崎市)周辺の住民などからは、病原体が外部に漏れる不安があるなどとして反対する声も上がっています。

 2015年8月21日(金)

 

■子宮頸がんワクチン接種後の診療手引、医師会と医学会が発表 「心因」の表現用いず

 子宮頸(けい)がんワクチン接種後に全身の痛みなどを訴える10歳代の女性が相次いでいる問題で、日本医師会と日本医学会は19日、接種後に生じた症状に対する医師向けの診療手引きを公表しました。

 厚生労働省の専門家検討会は昨年、体の異常は接種時の痛みや不安による「心身の反応」との見解をまとめましたが、「心の問題」とされたことへの患者らの反発を考慮し、手引きでは「心因という表現は原則として用いない」と明記しました。

 診療手引きでは、体の持続的な痛み、倦怠(けんたい)感、運動障害、記憶など認知機能の異常といった多様な症状や経過、生活上の支障について、患者や家族から丁寧に聞き取り、長めの診療時間を確保することが望ましい、との基本姿勢を示しました。

 痛みの診断の際には、患者の思い込みや気のせいという意味合いが含まれる可能性があるため、心因という言葉を使わないことで合意したといいます。

 治療に当たっては、痛みなどの症状は神経系の反応であり、原因の特定が困難であることを患者に繰り返し説明し、痛みを抑える治療のほか、筋力をつける運動を積極的に行うことを推奨しました。また、必要に応じて学校などと連携し、患者の精神や心理を専門とする医師を併せて受診することも推奨しました。

 子宮頸がんワクチンは2013年4月に定期接種化されましたが、体の痛みや運動障害、記憶障害など多様な症状を訴える患者が出たため、厚労省が2カ月で積極的な接種呼び掛けの中止を決めてから、約2年が経過しています。

 日本医師会の横倉義武会長は、「全国の医療機関で活用し、適切な治療につなげてほしい」と話しました。診療手引きは、日本医師会のホームページで見られます。

 子宮頸がんワクチン接種後の体調不良に苦しむ患者の中には、診察した医師から「気のせい」「ワクチンのせいだと思うから悪くなる」などといわれたケースが、少なからずあります。今回の診療手引きには、そうした相互不信をある程度和らげる役割が期待されます。

 「全国子宮頸がんワクチン被害者連絡会」の松藤美香代表は、「患者の訴えに向き合う姿勢を示してくれた点では前進」と話しています。

 ただ、日本医師会の小森貴常任理事が「病態を明らかにするのが狙いではない」と説明したように、診療手引きは接種で起こり得る健康被害を定義したものではありません。因果関係に踏み込まないままでは、患者の被害補償や安全性の議論は進みません。

 「日本だけ(ワクチンを打たず)子宮頸がんが将来増えるのを憂う」(高久史麿・日本医学会会長)のであれば、多様な症状が起きる原因の解明と治療法の研究が急がれます。

 2015年8月20日(木)

 

■米食品医薬品局、女性版バイアグラを承認 性的欲求低下治療で初

 米食品医薬品局(FDA)は18日、女性の性的欲求低下障害を改善する経口薬「フリバンセリン」を承認したと発表しました。同障害の治療薬としては、男性用、女性用を通じて初の承認となります。

 血流に作用する男性機能不全(ED)治療薬バイアグラとは原理が異なり、脳に直接作用してドーパミンなどの神経伝達物質の分泌量を調整することで、女性の性的な欲求を高める効果があります。アルコールと併用すると深刻な副作用が出る恐れがあり、服用には配慮が不可欠といいます。

 FDAや米メディアによると、この薬はノースカロライナ州の製薬会社スプラウト・ファーマシューティカルズ社が開発。「女性版バイアグラ」として注目を集めており、商品名「Addyi(アディ)」として、10月から販売を開始します。

 閉経前の性欲が減退した女性が対象で、パートナーとの性行為が苦痛に感じるような場合に、特別な訓練を受けた公認の医療専門家や薬局による処方を受けて1日1錠服用します。およそ2400人を対象とした治験では、性的な満足を得られる回数が平均で月1回ほど増え、調査でも性欲に一定の改善がみられたといいます。

 ただ、吐き気やめまい、低血圧、眠気など副作用が出る可能性があります。特にアルコールやほかの薬と一緒に飲むと失神など深刻化する恐れがあり、服用中は飲酒などを避ける必要があります。

 FDAは2010年以降、2度にわたり申請を却下しましたが、新薬を支持する女性団体などが「薬を承認しないのは性差別」との批判を上げて働き掛けを強めていました。アメリカでは、女性の10人に1人が性的欲求が低下する障害を抱えているとされます。

 一方、強い副作用から承認に反対する声もあり、服用を巡っては今後も議論を呼びそうです。

 2015年8月19日(水)

 

■7月の熱中症搬送、2万4567人 8月10~16日は大幅減の3989人

 総務省消防庁は18日、全国で7月に熱中症で救急搬送された人は2万4567人で、7月の搬送者数としては調査を始めた2008年以降最多だったと発表しました。搬送時に死亡したのは39人でした。

 日本気象協会によると、梅雨明け以降、関東から東北の太平洋側を中心に平年より気温が高かったのが要因とみられます。

 月間の搬送者数では、2010年8月の2万8448人、2013年8月の2万7632人に次いで3番目。

 8月10~16日の1週間に全国の3989人が救急搬送されたとの速報値も、消防庁は発表。搬送者数が1万人を超えた前週、前々週に比べ、大幅に減りました。

 天候の悪化で暑さがやや和らいだためとみられますが、初診時に熱中症を起因とする死亡者は8人、3週間以上の入院が必要な重症者は78人、短期の入院が必要な中等症は1440人でした。

 搬送者の年齢別では、65歳以上の高齢者が57パーセントを占めました。都道府県別では、東京都の303人が最も多く、愛知県277人、大阪府276人と続きました。

 また、今年の熱中症による搬送者数は、消防庁がカウントを始めた4月27日以降における累計では5万1276人に達しています。

 日本気象協会によると、残暑が厳しいと予想される地域もあるため、引き続き熱中症への警戒が必要だといいます。

 2015年8月18日(火)

 

■健康長寿を支援するロボットの開発拠点が完成 愛知県の長寿研が設置

 愛知県大府市の国立長寿医療研究センター(長寿研)に、高齢者の介護や体の訓練を行うロボットの開発拠点が完成し、見学会が開かれました。

 この「健康長寿支援ロボットセンター」は、長寿研が愛知県と共同で設置しました。

 長寿研は、病院と研究所が併設された高齢者医療の専門機関。現在のロボットはまだ高齢者の複雑な動きや反応に対応できなかったり、機能が限られたりして現場のニーズに合っていない製品も少なくないといい、より利用者の声を反映した完成度の高い製品の開発を支援するために、健康長寿支援ロボットセンターを設置しました。

 17日に開かれた見学会では、地元の企業などが開発した9種類のロボットが披露され、このうち、一宮市のメーカーが開発した歩行器は利用者の腰をベルトで固定して転倒を防ぐとともに、軽い力で足を動かせるようになっています。

 また、豊田市のメーカーの足型のロボットは、内股、膝、それに足首の3カ所に組み込まれたモーターが連動して動き、両足がまひして動かない人でも、わずかな体重移動で歩くことができるということです。

 このほか、画面を見ながら腕に取り付けた装置を操作してゲーム感覚でリハビリができるロボットや、人の顔を認識して会話ができるロボットなどが展示され、見学に訪れた人は最新のロボットの技術を興味深そうに見て回っていました。

 健康長寿支援ロボットセンターの近藤和泉センター長は、「日本で高齢者人口がピークになるおよそ10年後に向け役に立つロボットを開発し、その後、高齢化を迎えるアジア各国にも売り込んでいきたい。ものづくりの技術を生かせば、日本人が得意なきめ細かな配慮が行き届いた生活支援のロボットができる」と話していました。

 2015年8月17日(月)

 

■世界の上半期の平均気温、過去最高 20世紀の平均を0・85度上回る

 国連の世界気象機関やアメリカ海洋大気庁(NOAA)によりますと、今年1月から6月までの上半期の世界の平均気温は地表および海面上での温度を合わせ、調査を開始した1880年以降で最も高くなったということです。

 今年上半期の世界の平均気温は20世紀の平均よりも0・85度高く、これまでで最も高かった2010年よりも0・09度上回りました。

 月別にみると、3月、5月、6月がこれまでの月間の平均気温の最高を更新し、1月と2月がそれぞれ2番目、4月が4番目の高さだったということです。6月の平均気温についてみると、これまでに最も高かった2014年6月を上回り、20世紀の平均よりも0・88度高くなりました。

 また、地域別にみても、ユーラシアやアフリカなど多くの陸地で、これまでの平均気温を上回っています。

 一方、暑さ以外にも異常気象とみられる現象が世界各地で確認されています。

 インドでは、5月下旬から気温が急に上昇し40度を超える地域が相次ぎ、2000人以上が死亡しました。その一方、スカンジナビア半島では、多くの地域で今年6月の平均気温が例年を下回り、ノルウェーでは1900年に統計を取り始めて以降、18番目に寒い月になったということです。

 また、アメリカのカリフォルニア州では、3年前の2012年から雨や雪が少ない状態が続き、今年も水源となる山間部の積雪が平年を大きく下回ったことなどから、今年4月には初めて州全体に25パーセントの節水が義務付けられました。

 さらに、タイでも昨年1月からほとんどの地域で降水量が平年を下回っており、干ばつの影響で農作物にも被害が出ています。

 ロシアの首都モスクワでは、8月の最高気温の平均は21度5分ほどですが、今年は8月初めから暑い日が続いています。9日の最高気温は33度まで上がり、今年1番の暑さを記録しました。

 モスクワでは、冷房設備がない建物も多く、クレムリンのすぐ近くにあるアレクサンドロフスキー公園には涼を求めてたくさんの人たちが集まっています。公園の噴水では子供と水浴びをして遊んだり、水で顔を潤したりして暑さをしのぐ人の姿が見られました。

 中東では、7月下旬から一部の地域で50度を超えて死者が出るなど、記録的な熱波が各国を直撃しています。

 このうちエジプトでは、連日50度前後の猛暑が続き、エジプト保健省によりますと、この暑さによる影響で8月10日までに首都カイロなどで21人が死亡、66人が病院で手当てを受けたということです。

 また、イラクの首都バグダッドでは7月30日、気温が50度を超えて、イラク政府は急きょ休日を増やして、国民に直射日光を避けたり、水分を十分に取ったりするよう、熱波への対策を呼び掛けました。イラクでは、2003年のイラク戦争以降、治安が悪化したことで発電設備が破壊されたほか、電気の供給網の整備が不十分なために電力不足が深刻化しています。8月に入っても、連日50度近い暑さが続き、国民の間ではエアコンが使えないなどとして不満が高まり、政権の対応を批判するデモが相次ぐ事態になっています。

 クウェートなど湾岸諸国でも、連日40度を超える日が続き熱波に見舞われています。

 イランでは、先月末、ペルシャ湾に近い南西部の港町で45度に達し、湿度も考慮に入れた「体感温度」はおよそ74度という記録的な暑さを記録したと伝えられています。標高が1000メートルを超える首都テヘランでも、夏の始まりとされた6月下旬以降、35度を超えた日数は昨年より5日、40度を超えた日数は2日増えており、例年より厳しい暑さに見舞われています。

 2015年8月16日(日)

 

■中国、大気汚染で1日4000人、年間160万人死亡 米大学の研究チームが算出

 中国で深刻な大気汚染の影響によって1日に約4000人が死亡しているとの研究結果を、米カリフォルニア大バークリー校のチームがまとめました。中国で早死にする人の約6分の1を占めるとしています。

 研究結果は近く、米科学誌に掲載されます。AP通信が14日までに、伝えました。 

 カリフォルニア大バークリー校の研究チームが、中国当局が定めた新たな大気の監視基準に基づいて算出したところ、中国では年間約160万人が、大気汚染を原因とする心臓や肺の疾患、脳卒中で死亡しているといいます。

 世界保健機関(WHO)が2014年に発表した報告書では、世界中の大気汚染に関連する死者は年間約700万人。そのうち約23パーセントを中国が占めている計算になります。

 研究チームによると、13億人を超える中国の人口の38パーセントが、米環境保護局(EPA)の基準で「不健康」とされる大気レベルの地域に居住しています。状況が最も深刻なのは北京の南西部といい、頻繁に基準値を大幅に超える汚染が報告される河北省石家荘市などが該当するとみられます。

 発電や暖房のために燃やされる石炭から排出される有害物質が、健康被害の元凶とされています。EPAの2010年の統計では、米国でも年間6万3000~8万8000人が大気汚染による疾患で死亡しています。ただ中国の場合、石炭の使用量が増える冬に状況が最悪になっているのが特徴といいます。

 2013年には、北京のがん患者が10年間で60パーセント増加したとの統計も示されています。

 北京と河北省張家口市では、7年後の2022年に冬季五輪が開催されます。北京市は大気汚染の改善を国際オリンピック委員会(IOC)に約束し、石炭利用の削減やディーゼル車規制、汚染物質を排出する工場の閉鎖などの対策を強化する構え。

 しかし、同市は2008年夏季五輪を開催した際も大気汚染の改善を誓いながら、五輪後は状況がさらに悪化した「前科」があります。同夏季五輪では、男子マラソンの世界記録保持者(当時)、ハイレ・ゲブレシラシエ(エチオピア)が、大気汚染を理由にマラソン出場を回避しました。

 今回の研究結果が公表されたことで、北京冬季五輪でも、ノルディックスキー距離などの屋外で行われる持久系種目を中心に、大気汚染を懸念する声が高まりかねません。

 2015年8月15日(土)

 

■ダイエット、速効性なら低脂肪の食事が優位 米チーム研究

 同じカロリーの食事なら、炭水化物より脂肪を減らしたほうがダイエット効果が高いとする研究結果を、米国立保健研究所(NIH)などの研究チームが13日、発表しました。

 ご飯やパンなどの炭水化物を減らすと体脂肪の燃焼率は高まりますが、低脂肪の食事のほうが体脂肪そのものの減少量は7割近く増えました。最近は米国だけでなく日本でも白米やパン、めん類、芋類などを控える低炭水化物ダイエットが人気ですが、優位性には疑問を示す結果となりました。

 米専門誌セル・メタボリズム電子版に、研究チームの論文が掲載されました。肥満と診断された成人男女19人(平均年齢35・4歳、平均体重106キロ)が計2回、2週間ずつ専用施設に滞在。炭水化物か脂肪のどちらかを減らしてカロリーを3割抑えた制限食を提供し、一定の運動を毎日続けてもらいました。2回目の滞在では、制限食の種類を変え、効果の違いを比べました。

 その結果、体脂肪の減少量は、炭水化物を減らした場合で1日に53グラム相当、脂肪を減らした場合で89グラム相当と、約1・7倍の開きがあり、ダイエット効果に差があることが裏付けられました。

 ただ、研究チームは、あくまで短期的な実験に基づくもので「長期間続けた場合には当てはまらない」としています。炭水化物を減らすと体内の脂肪が消費される割合が増えるため、半年以上続ければ似たような効果になるとの試算もあります。

 研究チームは、「実際のダイエットでは、食事制限のしやすさや長続きできるかどうかが重要な要素になる」とも述べました。

 2015年8月14日(金)

 

■子供の自殺、長期休み明けに集中 9月1日が最多

18歳以下の自殺人数を日付別に分析したところ、9月1日が突出して多く、夏休みなど長期休暇が明けた時期に集中していることが、内閣府の調査でわかりました。

 増加傾向がみられる8月下旬から9月上旬を前に、文部科学省は今月4日、児童・生徒への見守りを強化するなど重点的な対応を求める通知を全国の都道府県教育委員会に出しました。

 1972~2013年の42年間に自殺した子供の総数は1万8048人で、日付別に合計しました。最も多かったのは9月1日(131人)で、4月11日(99人)、4月8日(95人)、9月2日(94人)、8月31日(92人)が続きました。

 7月下旬から8月上旬は40人以下の日が多いのに対して、8月20日以降は連日50人を超えていました。夏休みや春休みなどの終わりが近付くと、自殺者が増える傾向が浮かび上がりました。

 内閣府は、「環境が大きく変わり、プレッシャーや精神的動揺が生じやすいと考えられる」と指摘。長期休業の期間に合わせて、児童・生徒の見守りを強化したり、相談に応じたりすることが効果的だと提言しました。

 親や教師を始め周囲の大人は、どのようにフォローしていけばいいのでしょうか。

 文部科学省の資料によれば、小学生の自殺の原因・動機は男女ともに「家族からのしつけ・叱責」が最も多く、女子では「親子関係の不和」も同率で最多となっています。また、小学生の男子では「いじめ」による自殺の割合が0パーセントとなっているのに対し、女子では11・1パーセントと多い割合になっています。

 中学生では、男子は「学業不振」、女子では「その他学友との不和」という理由が最も多く、男女ともに「いじめ」も理由として挙がっているものの、女子では4・2パーセントと、小学生の時よりも低い割合となっており、男子は5・8パーセント。さらに、女子の自殺の理由としては、「うつ病」(11・1パーセント)も挙げられています。

 また、高校生男子では「学業不振」「その他進路に関する悩み」が自殺の原因・動機として多くなっているのに対して、女子では「うつ病」が21・8パーセントと最も多くなっており、男子では11・6パーセント。

 ただし、上記のような自殺の原因・動機は、あくまで後日の聴き取り調査や遺書によって判断されたものであり、子供が実際に自殺に至るまでには、さまざまなストレスや精神的プレッシャーの影響も考慮する必要があります。

 現代は、子供でもスマートフォンやパソコンから簡単にあらゆる情報にアクセスできる時代。そこには、自殺を始めとする世界の悲惨なニュースや映像も含まれています。こうした情報による無自覚なストレスから子供を守ることも、大人の役割といえるでしょう。

 また、近年増加している子供の「うつ」と、自殺の原因として問題となることの多い「いじめ」には共通点があります。それは、両者とも、家族や周囲に自分が「うつ」っぽいことや、「いじめ」にあっていたりすることを隠そうとする点です。

 そのため、親や周囲の大人は、本人の態度や行動に現れる「サイン」を見逃さないことが大切です。

 △頭痛・腹痛などの体調不良を頻繁に訴える(「仮面うつ」であるこも多い)△一人になりたがったり、部屋に閉じこもったりしがちになる「引きこもり」△食欲不振や過食による肥満△眠れない、あるいは起きられない、昼夜逆転

 以上が、子供の「心の不調」につながっている可能性のある態度の一例です。

 子供の「うつ」に対しては、環境を改善することが有効といわれており、具体的な対策としては、長期の休みで乱れがちな生活のペースを、平常時に近付けていくことが挙げられます。まずは、就寝や起床、食事の時間をキチンと決めて十分な睡眠をとり、規則正しい生活を送ることから、夏休み明けへの対策を始めるとよいでしょう。

 また、子供の「うつ」に対する投薬治療には、副作用のリスクや危険性が指摘されていることから、医師やカウンセラーにかかる場合は、まず親が相談に行くなどして信頼のできる医療機関や施設を選ぶことも大切です。心の病は遺伝性や家族性、家庭性を持っていることが多く、家族で一緒になって治ろうとする心がなければ根治は難しいものなのです。

 2015年8月13日(木)

 

■手足口病の患者、今シーズン最多の3万2289人に  流行は東北地方へ拡大

 4歳くらいまでの幼児を中心に、例年夏に流行する手足口病の患者数が8月2日までの1週間で全国で3万人を超えたと、国立感染症研究所が11日に発表しました。

 流行は首都圏から東北地方に広がっており、手洗いをしっかりするよう予防を呼び掛けています。

 手足口病は、手のひらや足の裏、口の中などに発疹や水疱ができるウイルス性の感染症で、幼児を中心に感染し、まれに脳炎や髄膜炎などの重い症状を引き起こすことがあります。毎年夏に幼稚園や保育園などで流行しますが、今年は春先から西日本で感染が増え始め、過去10年間で2番目に規模の大きい流行となっています。

 国立感染症研究所によると、8月2日までの1週間で、全国の小児科定点医療機関約3000カ所から報告のあった患者数は3万2289人に上り、前週に比べて2785人増えました。医療機関当たりに換算すると、10・26人となっており、今シーズンで最多となりました。

 都道府県別にみると、医療機関当たりの患者数は、宮崎県が最も多く19・61人、次いで新潟県が19・59人、宮城県が18・73人、山形県が18・67人、福島県が17・54人、石川県が17・24人、福井県が13・77人と、33の都道府県で前週より増加傾向にあります。

 首都圏でも埼玉県の16・73人を筆頭に、東京都が14・09人、神奈川県が13・25人などと、医療機関当たりの患者数が10人を超えています。

 国立感染症研究所では、「通常は3~7日間で症状が治まるが、重症化すると髄膜炎や脳炎などの合併症のほか、心筋炎や急性弛緩性まひなどを発症するケースもある」とし、予防策として「症状が治まっても便から長期間ウイルスが排出されるので、予防のためには家庭や保育園などでおむつを適切に処理したり、こまめに手洗いをしたりすることが大事だ。口の中の発疹のせいで飲み物を嫌がる子供がいるが、暑い日が続いているので脱水症状を起こさないよう気を付けてほしい」と話しています。

 2015年8月12日(水)

 

■熱中症搬送、2週連続で1万人を超す 死者は今夏最多の32人

 総務省消防庁は11日、3~9日の1週間に全国の1万1219人が熱中症で救急搬送されたとの速報値を発表しました。1週間の搬送者数としては、2008年の統計開始以来過去最多だった前週の1万1995人から776人減りましたが、2週連続で1万人を超えました。

 1週間を通じて、全国的に気温が高かったためとみられます。北海道や東北でも最高気温35度以上の猛暑日が相次ぎ、北日本や近畿で搬送者数が増えました。

 搬送時に亡くなったのは、今夏最多の32人でした。初診時に死亡が確認された人は、大阪府が4人と最も多く、次いで宮城県の3人でした。3週間以上の入院が必要な重症者は331人、短期の入院が必要な中等症は3861人でした。

 搬送者数は4243人だった前年同期(4〜10日)の約2・6倍で、3~9日の期間中、毎日1000人以上が搬送され、日付別では3日の1911人が最多でした。

 年代別では、65歳以上の高齢者が5894人(52・5パーセント)と半数を超え、都道府県別では猛暑日が続いた東京都の971人が最多で、大阪府の911人、愛知県の749人、兵庫県の710人、埼玉県の676人と続きました。

 今年の集計を始めた4月27日以降の搬送者数は計4万70187で、このうち90人が死亡、1200人が重症でした。

 消防庁は今後も暑さに警戒が必要だとして、「こまめに水分補給や休憩をしてほしい」と呼び掛けています。

 2015年8月11日(火)

 

■温州ミカン、機能性表示食品へ 生鮮食品で初の見通し

 食品が体にどのようによいかを国の許可なく、事業者が表示できる「機能性表示食品」として、消費者庁が浜松市のJAみっかびの温州(うんしゅう)ミカンの届け出を近く受理する方針を固めたことが6日、わかりました。

 4月の制度開始以降、60件超の加工食品が受理されたましが、生鮮食品では初の機能性表示食品となる見通し。

 JAみっかびは、温州ミカンが含む成分でカロテノイドの一種である「β―クリプトキサンチン」には骨の健康を保つ効果があるとの研究結果を、消費者庁に提出していました。届け出から60日後以降に、包装に機能を表示できるようになります。

 温州ミカンの産地は、愛媛県や和歌山県などと広く、同様の届け出が相次ぐ可能性があります。

 機能性表示食品は、アルコール類を除く加工食品や生鮮食品が対象。体の特定部位への効果を示す科学的根拠を消費者庁に届け、受理されれば「おなかの調子を整える」「目の健康に役立つ」「丈夫な骨をつくる」などと表示できます。

 特定保健用食品(トクホ)は国の審査を受ける必要があり、許可までに時間やコストがかかりますが、機能性表示食品は中小事業者でも利用しやすいとされます。一方、消費者団体からは、「根拠や安全性が乏しいものも受理される」と懸念する声も上がっています。

 特産の温州ミカンが機能性表示食品として認められる見通しになったことを受け、JAみっかびの後藤善一組合長(59歳)は6日夜、「体によいと示すことで他の食品との差別化を図ることができる。とてもうれしく、生産者の励みにもなる」と喜びを語りました。

 国内のミカン出荷量が減少を続ける中、「ただおいしいだけでは競合してしまう」(後藤組合長)ことから、同JAは機能性表示食品制度を需要拡大の好機ととらえ、早い段階から準備を進めていました。

 健康への効果は、出荷の際に用いる段ボールに表示することになるといいます。後藤組合長は表示方法などについて、「取引業者に説明し、消費者に信頼してもらえるようにしたい」と述べました。

 2015年8月10日(月)

 

■睡眠時無呼吸症候群、3割が160以上に血圧上昇 突然死の可能性も

 睡眠時無呼吸症候群で呼吸が止まった時に血圧が160以上まで上昇する人が3割に上ることが、自治医科大(栃木県)とオムロンヘルスケア(本社・京都府)の共同研究でわかりました。

 自治医科大循環器内科の苅尾七臣(かずおみ)・主任教授は、「脳卒中や心筋梗塞(こうそく)、突然死を引き起こす可能性がある」と指摘しています。

 睡眠中に呼吸が止まって血液中の酸素量が低下した時に、それを検知して自動で血圧を測る血圧計を開発。全国25の医療機関で、睡眠時無呼吸症候群の30歳代から80歳代の男女約1000人を対象に、睡眠中の血圧を測りました。

 その結果、約3割の人で血圧が160以上になり、呼吸は1回につき約2分止まっていました。呼吸が長く止まる人や高齢者ほど血圧が上昇しやすく、中には血圧が216まで上がった人もいました。昼間や夜間の平均血圧でみれば正常でも、無呼吸時に血圧が急上昇している人もいたといいます。

 血圧の下がる夜間は120を超えると高血圧とされますが、無呼吸時の血圧上昇でどの程度、脳卒中や心筋梗塞のリスクが高まるのかはわかっていません。ただ、高血圧の人の場合、健康な人に比べて、血圧が160だと脳卒中や心筋梗塞による死亡リスクが4倍、180で8倍に高まるとのデータがあります。

 睡眠時無呼吸症候群は国内に200万人から300万人いるとみられ、糖尿病、認知症のリスクが高まるほか、昼間の眠気が事故の原因になるケースもあります。

 苅尾さんは、「睡眠時無呼吸症候群だと気付いていない人もいる。昼間に眠気がある人などは受診してもらいたい」と話しています。

 睡眠時無呼吸症候群では、一晩7時間の睡眠中に10秒以上呼吸が停止し、30回以上も繰り返します。呼吸停止と呼吸再開は、眼球が速く動くレム睡眠、眼球は動かず大脳が休むノンレム睡眠の両方に現れます。

 原因により、睡眠中の呼吸運動が停止するために無呼吸となる中枢型、呼吸運動は持続しているものの上気道がふさがるために無呼吸となる閉塞(へいそく)型、両者の混合型の3型に分類されます。

 中枢型は呼吸中枢の障害によって起こりますが、極めてまれな病態です。一般に問題になる場合のほとんどは、咽頭(いんとう)や喉頭(こうとう)などに原因があって、特徴的ないびきとともに、一時的に上気道がふさがる閉塞型。いびきは、呼吸停止時と呼吸再開時に反復して起こります。

 無呼吸により動脈血の酸素飽和度が低下するとともに、眠りが浅くなったり、途中で目覚めたりするため、夜間に十分に眠れず、昼間に強い眠気や集中力の低下、注意力の低下、活力の喪失、抑うつ症状などを招きます。また、運転中や仕事中の居眠りから事故を起こすケースもあり、社会的問題にもなっています。

 30~60歳の男性では4パーセント、女性では2パーセントくらいの頻度でみられるとされますが、成人の発症者には首が太くて短い、肥満している人が多いことから、肥満との関係が指摘されています。

 2015年8月9日(日)

 

■「夜型幼児」が国内で30万人を超す 保健医療科学院、全国調査

 幼稚園や保育園に通う3~6歳児の約10パーセントが、早寝早起きが苦手な「夜型」の生活パターンを持っていることが、国立保健医療科学院(埼玉県)などの8日までの全国調査でわかりました。

 全国で少なくとも30万人の幼児が夜型に当たる計算といいます。

 調査は2013年10~12月、幼稚園と保育園に通う全国の幼児の保護者1万人余りを対象に、「毎朝午前6時に起きるとすれば、どのくらい難しいか」「何時ごろに疲れて眠そうになるか」といった目覚めと眠気に関する10問について、3~5個の選択肢の中から回答を選ぶ質問票を配布して実施しました。

 有効な回答があった7656人分を点数化し、点数に応じて朝型、中間型、夜型に分けました。その結果、朝型は約33パーセントにとどまり、中間型は約57パーセント、夜型は約10パーセントでした。

 2013年には、全国で約420万人の3~6歳児のうち、幼稚園や保育園に通園するのは約300万人で、10パーセントは30万人に当たります。

 成長や行動に問題が生じることが懸念される幼児の夜型が、依然として多い実態が示されました。

 2015年8月8日(土)

 

■熱中症搬送、全国で868人 3人死亡3人重体

 日本列島は8日、高気圧に覆われ、西日本を中心に猛暑となりました。最高気温が35度以上の猛暑日は全国928の観測地点のうち140カ所以上、30度以上の真夏日は猛暑日を含め590カ所以上に上りました。

 気象庁によると、大分県日田市で全国最高の39・0度を記録したほか、佐賀市で38・6度、京都市で38・1度、大阪市で38・0度を記録しました。福岡県久留米市38・5度、熊本県人吉市37・8度など観測史上最高となった地点もありました。

 東京都心の最高気温は32・6度で、7月31日以降、8日間続いていた猛暑日の記録が途切れました。

 マスコミが各地の消防や警察に取材して、午後8時現在でまとめたところ、8日に熱中症とみられる症状で、沖縄県を除く全国すべての都道府県で少なくとも868人が病院に運ばれ、3人が死亡し、3人が意識不明の重体となっています。

 都道府県別では、兵庫県で84人、大阪府で79人、福岡県で73人、愛知県で50人、埼玉県で37人などとなっています。

 このうち、高知県土佐市では82歳の女性が自宅の庭で倒れているのが見付かり、病院に運ばれましたが、その後、死亡が確認されました。また、新潟県長岡市では83歳の男性が自宅近くの畑で倒れているのが見付かり、病院に運ばれましたが、死亡が確認されました。

 一方、東京都板橋区では90歳と86歳、それに82歳の3姉妹が同じ住宅の中で死亡しているのが見付かりました。いずれも熱中症の疑いがあり、3~4日前に死亡したとみられます。

 警視庁板橋署によると、数日前から電話がつながらず、知人が8日午前10時すぎに訪れたところ、倒れているのを見付けました。姉妹は3人暮らしで、それぞれ、玄関、居間、寝室で倒れていました。クーラーはあったが、使用されていませんでした。

 2015年8月8日(土)

 

■妊娠中に母親が風疹、障害の乳児45人のうち7人死亡 国立感染症研究所が調査

 2013年までの2年間で、妊娠中に母親が風疹にかかったことが原因で障害を負った新生児45人のうち、少なくとも7人が死亡していたことが、国立感染症研究所などの調査でわかりました。

 専門家は、「ワクチン接種を徹底し、風疹をなくすことが重要だ」と指摘しています。

 妊娠初期の女性が風疹に感染すると、生まれてくる新生児の耳や目、心臓などに障害が出る先天性風疹症候群になる不安があり、2012年から2013年にかけて大人の間で風疹が流行した際には、45人の新生児が先天性風疹症候群になったと報告されています。

 今回、国立感染症研究所などの研究グループがこのうちの21人について、その後の経過を詳しく調査したところ、生後5カ月までに7人が、肺炎や呼吸不全、それに心筋炎などを起こして死亡していたことがわかりました。

 また、どんな障害があるかについて調べたところ、70パーセント以上の新生児で難聴や心臓の疾患があり、また、およそ20パーセントで白内障があったほか、肝機能や精神発達の障害などもあったということです。

 調査を行った国立感染症研究所感染症疫学センターの砂川富正室長は、「先天性風疹症候群は赤ちゃんに非常に重篤な症状をもたらすことがわかった。風疹の流行をなくすことが重要で、ワクチン接種の徹底が必要だ」と話しています。

 風疹は、5年から7年おきに流行を繰り返しています。感染を防ぐ唯一の方法は、ワクチンの接種です。今の子供たちは感染を確実に防ぐために、1歳と小学校入学前の2回、麻疹と風疹の混合ワクチン(MRワクチン)を無料で接種することができます。しかし、1995年3月までは、接種の対象は中学生の女子に限られていて回数も1回だけでした。

 女性でも免疫が落ちている人がいるほか、特に男性は風疹のワクチンを一度も接種する機会がなかったり、機会があっても接種していなかったりして、免疫がない人が多いのです。そんな中で、2012年から2013年にかけての大流行が起き、45人の新生児に障害が出ました。

 厚生労働省は、東京オリンピックが開かれる5年後までに風疹の流行をなくすことを目標に対策を進めるとしています。自治体の多くは今年度、妊娠を希望する女性などを対象に、風疹の免疫を調べる抗体検査やワクチンの接種費用を助成しています。

 しかし、助成の対象は一部の人に限られている上、検査や接種を受けるには、医療機関に出向かなければいけないため、免疫がない成人への対策は思うように進んでいません。

 ワクチンで防げる風疹で、これ以上苦しむ親子を増やさないために。実効性のある対策が国に求められるとともに、私たち大人ひとりひとりの行動が求められています。

 2015年8月7日(金)

 

■卵子提供では「産んだ女性が母」 自民党部会が特例法案を了承

 不妊症の夫婦に対する生殖補助医療の法整備について検討している自民党の法務部会と厚生労働部会の合同部会は5日、生殖補助医療によって生まれた子供と親との親子関係を民法で特例的に定めるとする法案を了承しました。

 不妊症の夫婦が第三者から精子や卵子の提供を受けるなどして行われる生殖補助医療を巡っては、国内に関連する法律がなく、安全性や倫理上の問題が指摘されていることから、自民党の合同部会が法整備の検討を進めています。

 法案によりますと、女性が自分以外の第三者から卵子の提供を受けて妊娠、出産した時は、出産した女性をその子の母とすることや、妻が夫の同意を得て夫以外の第三者から精子の提供を受け妊娠した子供について、夫はその子が自分の子供であることを否認できないとしています。

 また法案では、施行からおおむね2年をめどに、精子や卵子の提供や、ほかの女性に代わりに子供を産んでもらう代理出産に関する規制の在り方について、必要な法整備を行うなどとしています。

 自民党の合同部会はこの法案について、今後党内手続きなどを経て、今の国会での提出を目指したいとしています。

 生殖補助医療に関するプロジェクトチーム座長を務める古川俊治参院議員は、「精子、卵子提供などで生まれている子供の親子関係を規定するもので、福祉に資する。大きな一歩だ」と述べました。

 国内では、第三者から精子や卵子の提供を受けるなどの生殖補助医療に関する法律がないまま治療が進んでいるのが現状です。このため、生まれた子供と生みの親、遺伝上の親との間で親子関係を巡るトラブルになる不安があることから、法整備を求める声が上がっています。

 第三者からの精子提供による妻の妊娠、出産は、国内では東京都の慶応大学病院が中心となって戦後まもなく始まりました。この治療で生まれた子供は、これまでに少なくとも1万人を超えると推定されています。

 卵子提供については、一部の医療機関が姉妹の間などで行っているほか、先月、民間のNPO法人が匿名の第三者からの卵子提供を子供ができない夫婦に仲介したことを公表しました。

 このほか、専門家などによると、卵子の老化などで自らの卵子での妊娠が難しくなった女性が海外で卵子を購入して出産するケースもあるとみられますが、実態はわかっていません。さらに、子供ができない女性が、ほかの女性に代わりに産んでもらう代理出産を、海外で行うケースも増えているとみられます。

 生殖補助医療に詳しい、明治学院大学の柘植あづみ教授は、「第三者が関係する生殖補助医療で多くの子供が生まれている中、親子関係がきちんと定められることは一定の安心につながる。しかし、治療の在り方や規制について社会的な議論を急がなくてはいけない」と話しています。

 2015年8月6日(木)

 

■熱中症搬送、4日1143人、5日1164人 死者は4日2人、5日5人

 気象庁によりますと4日は広く高気圧に覆われて気温が上がり、群馬県館林市で38・5度、福島県伊達市と茨城県大子町で38・3度などと、全国の928観測地点のうち174カ所で猛暑日となり、東京の都心では1875年(明治8年)に統計を取り始めてから最も長い5日連続の猛暑日となりました。

 マスコミが各地の消防や警察に取材して4日午後8時現在でまとめたところ、4日に熱中症とみられる症状で病院に運ばれた人は少なくとも全国で合わせて1143人に上り、2人が死亡し、6人が意識不明の重体となりました。

 5日も全国的に気温が上がり、群馬県館林市で39・8度、福島県伊達市で39・7度を記録したほか、北海道でも35度以上の猛暑日となったところがあり池田町で37・1度、帯広空港で35・8度と観測を始めてから最も高くなりました。

 東京都心も最高気温35・2度と6日連続で猛暑日となり、1875年(明治8年)に統計開始以来初の記録を更新しました。

 全国の9割近くの観測地点で30度以上の真夏日となり、マスコミが各地の消防や警察に取材して5日午後8時現在でまとめたところ、5日に熱中症とみられる症状で全国で少なくとも1164人が病院に運ばれ、5人が死亡、7人が意識不明の重体となりました。

 都道府県別では、大阪府で82人、埼玉県で71人、愛知県で67人、兵庫県で61人、東京都で54人などとなっています。

 このうち5人が死亡し、茨城県では大洗町の農業用ハウスで倒れていた88歳の女性が熱中症とみられる症状で死亡するなど2人の高齢者が死亡したほか、栃木県では益子町の畑で倒れていた90歳の男性が熱中症とみられる症状で死亡しました。

 明日6日も猛烈な暑さが続く見込みで、冷房を使い、こまめに水分をとるなど引き続き熱中症に十分注意が必要です。

 2015年8月5日(水)

 

■熱中症搬送、先週1万1672人 1週間で過去最多、死者25人

 総務省消防庁は4日、7月27日~8月2日の1週間に、全国で今年最多となる1万1672人が熱中症で救急搬送され、25人が死亡したと発表しました。

 いずれも速報値。死者は、今年の集計を開始した4月27日からの累計で55人となりました。1週間の搬送者数としては、2013年7月8日~14日の1万1427人を上回り、統計を取り始めた2008年以降で最多。1万人超えは2013年に2回記録して以来3回目。東京都心は4日、観測開始以来、最長となる5日連続の猛暑日となりました。

 都道府県別の搬送者数は、東京都の1095人が最多で、愛知県989人、埼玉県805人、大阪府801人と続きました。搬送者数は、1週間前の7月20日~26日の7743人を大幅に上回り、昨年同時期の5712人の2倍に達しました。

 7月29日に東北北部や山口県を含む九州北部が梅雨明けとなり、全国的に暑さが本格化したためとみられます。今年最多の223地点で猛暑日となった8月1日は、2571人が搬送されました。

 搬送者を年代別でみると、65歳以上の高齢者が5689人(48・7パーセント)と全体の半数近くを占めました。18~64歳は4470人(38・3パーセント)、7~17歳は1411人(12・1パーセント)、6歳までは102人(0・9パーセント)。

 死者は愛知県3人、埼玉、和歌山、山口の3県が各2人など。3週間以上の入院が必要な重症者は312人、短期の入院が必要な中等症が3736人でした。

 4月27日からの累計の搬送者数は3万5428に上り、うち高齢者は49・1パーセントの1万7401人。

 猛暑日が続く東京都内では8月2日夜、練馬区などで高齢者が屋内でエアコンを使わないまま過ごし、熱中症で死亡したといいます。夜間の最低気温が25度を下回らない熱帯夜も続いており、就寝中に熱中症にかかることもあります。

 東京消防庁は、「エアコンなどを効果的に使って室内に熱気をためないように心掛けてほしい」と呼び掛けています。

 福島医大医学部衛生学・予防医学講座の各務(かかむ)竹康助教は、「熱帯夜で寝不足が続くと、熱中症になりやすくなる。まずは十分な睡眠をとるよう心掛けてほしい」と話しています。屋内では、エアコンや扇風機を使って「風の動き」をつくることが大切だといいます。「仕事で若い人ほど体を使う作業が多く、無理をしやすい」と若い世代にも注意を呼び掛けています。

 2015年8月4日(火)

 

危険な病原体を扱うレベル4施設、初めて稼働へ 東京都の国立感染症研究所

 塩崎恭久厚生労働相は3日、東京都武蔵村山市の藤野勝市長と会談し、市内の国立感染症研究所村山庁舎にあるバイオセーフティーレベル(BSL)4の施設を稼働させる方向で合意しました。

 レベル4施設は、エボラウイルスなど特に危険な病原体を扱うことができますが、日本で稼働している施設はありませんでした。

 先進7カ国(G7)でレベル4施設が稼働していないのは日本だけ。34年前、村山庁舎内にレベル4施設に相当する高度安全実験施設が建設されましたが、地元の反対で、扱う病原体の危険性を1段階下げたレベル3施設として、新型肺炎のSARSや鳥インフルエンザなどのウイルスの研究や分析を行ってきました。昨年から西アフリカで大流行したエボラ出血熱の国内侵入が懸念され、レベル4施設が必要との声が上がっていました。

 こうした中、塩崎厚労相は藤野市長と会談し、「施設の稼働は国民の生命や健康を守るために不可欠だ」として、市側の要望を踏まえ、施設の安全対策や災害対策を強化するほか、施設の使用状況などを積極的に情報開示する方針などを伝え、協力を求めました。これに対し藤野市長は、「市民から出された質問などに国が丁寧に説明をしてきたことは理解した」と述べ、近く施設を稼働させることで合意しました。

 藤野市長は会談の後、「万が一、エボラ出血熱が国内で発生した場合に備えて、施設の稼働に合意したものだ」と述べました。また、塩崎厚労相は記者団に対して、「安全対策、防災対策を十分に行うことなどを前提に、施設の稼働に理解をいただいた。1週間ほどで稼働の判断をさせていただきたい」と述べました。

 レベル4施設と呼ばれる高度な安全設備を備えた実験施設は、感染症法で危険性が特に高い「1類感染症」に指定されているエボラ出血熱など7種類の病原体を取り扱うことが認められた施設で、ワクチンや治療薬を開発するためにウイルスの詳しい解析や実験などが行われます。世界保健機関(WHO)の指針や国の安全基準に基づいて運用され、病原体の流出を防ぐため研究者は防護服を着て実験を行うほか、空調の管理や実験器具の消毒の徹底などが義務付けられています。

 厚労省によりますと、海外では欧米やアジアなどの19カ国で合わせて41施設が稼働しています。国内では東京都武蔵村山市の国立感染症研究所村山庁舎と、茨城県つくば市の理化学研究所の合わせて2カ所に設置されているものの、いずれも周辺住民の反対で稼働ができない状態が続いていました。

 しかし、西アフリカでエボラ出血熱の感染が過去最大の規模で広がったことを受けて、厚労省は今年1月、国立感染症研究所の施設の稼働に向けて、武蔵村山市や地元の自治会などと作る協議会を発足させ、半年余りにわたって協議を重ねてきました。

 レベル4施設を巡っては感染症の専門家や日本学術会議から、生物兵器によるテロや重大な感染症が確認された際に国民の命を守るため早急な稼働を求める声が上がっていました。

 2015年8月4日(火)

 

■熱中症で1574人搬送、3人死亡6人重体 多治見市では39・2度

 日本列島は2日も高気圧に覆われ、厳しい暑さとなりました。岐阜県多治見市で39・2度、京都市で39・1度に達するなど、最高気温35度以上の猛暑日となる地点が各地で相次ぎました。

 一方、大気の状態が不安定になり、山沿いでは、雷雨が発生しました。気象庁は3日も、猛暑と局地的大雨への注意を呼び掛けています。

 気象庁によると、2日は全国928の観測地点のうち猛暑日は170カ所を超え、最高気温が30度以上の真夏日は猛暑日を含め660カ所を超えました。

 マスコミが各地の消防や警察に取材して午後8時現在でまとめたところ、熱中症とみられる症状で全国で少なくとも1574人が病院に運ばれ、3人が死亡し、6人が意識不明の重体となっています。

 都道府県別では、愛知県が153人、大阪府が103人、埼玉県が95人、千葉県が82人などとなっています。

 このうち、岡山県倉敷市では65歳の女性が自宅で倒れているのが見付かり、病院に搬送されましたが、その後死亡が確認されました。消防によりますと、熱中症の疑いがあるということです。また、山口県と愛媛県でも、高齢者が熱中症とみられる症状で病院に搬送され、死亡が確認されました。

 一方、和歌山市の丸の内拘置支所では、熱中症とみられる症状で2日連続、収容者が病院に搬送されました。

 丸の内拘置支所では、7月31日に収容中の男性が熱中症とみられる症状で死亡したのに続いて、1日も20歳代の収容者が熱中症とみられる症状で病院に運ばれていたことがわかりました。

 1日午後4時すぎ、丸の内拘置支所から「収容中の男性がけいれんを起こしている」と消防に通報がありました。消防が駆けつけたところ、20歳代の収容者が熱中症とみられる症状でグッタリしていて、病院に運ばれ、手当てを受けました。症状は軽いということです。

 和歌山地方気象台によりますと、1日の和歌山市は日中の最高気温が37度1分に達し、今年一番の暑さになっていました。

 丸の内拘置支所では7月31日も収容中の2人が熱中症とみられる症状で病院に運ばれ、このうち、1人が死亡し、もう1人も一時、意識不明の重体になりました。

 丸の内拘置支所を所管する大阪刑務所によりますと、収容者にはお茶などの飲み物が用意されていますが、部屋にエアコンはないということです。

 大阪刑務所は、「前日の出来事を受けて、室内の換気や水分補給などには気を配っていた。今後、さらに健康管理に気を付ける」としています。

 2015年8月2日(日)

 

■胃がん検診、50歳以上に引き上げへ 早ければ来春にも導入

 市区町村が実施する胃がん検診の対象年齢が、40歳以上から50歳以上に引き上げられる見通しになりました。バリウムを飲むX線検査に加え、新たに内視鏡検査を導入し、検診間隔も1年に1回から2年に1回になります。

 厚生労働省の専門家検討会で7月30日、了承されました。

 検討会に提出された報告書案では、40歳代の胃がんの罹患(りかん)率が1990年に比べ、半減していることなどが示されました。

 国立がん研究センターが4月に公表したガイドラインは、胃がんの内視鏡検査の対象は50歳以上が望ましく、受ける間隔は「2~3年に1回とすることが可能」としており、X線検査についても、50歳以上に引き上げても問題ないとの意見でまとまりました。

 また、40歳以上の女性に行われている乳がん検診については、これまで推奨してきた医師が乳房を見て触る視触診を「任意」とし、マンモグラフィー(乳房X線撮影)だけでもよいとしました。従来は国の指針で併用が推奨されてきたが、2012年度は約3割の自治体が集団検診で視触診をしていなかったといいます。

 医師の視触診の技量に差があり、医師の確保が難しいことや、整備が進むマンモグラフィーだけでも40~74歳で死亡率が25パーセント減少するという研究結果なども踏まえて、判断しました。

 胃がん、乳がんともに、年内に指針を改定した上で、早ければ来春の検診から導入されます。

 2015年8月2日(日)

 

■熱中症で1677人搬送、3人死亡12人重体 多治見市で今夏最高39・9度

 日本列島は1日も北海道を除いて、晴れて気温が大幅に上昇した所が多くなりました。気象庁によると、岐阜県多治見市では39・9度を観測し、今夏全国で最高となりました。

 群馬県館林市は39・4度、京都市は38・5度、名古屋市は38・4度を観測。午後5時時点で、全国観測点928地点のうち、35度以上の猛暑日は223地点に上り、今夏最多を更新しました。

 マスコミが各地の消防や警察に取材して午後8時現在でまとめたところ、熱中症とみられる症状で全国で少なくとも1677人が病院に運ばれ、3人が死亡し、12人が意識不明の重体となっています。

 都道府県別の搬送者は、これまでに埼玉県が162人、大阪府が133人、東京都と愛知県が96人などとなっています。

 このうち、甲府市上小河原町の住宅では、午前10時前、65歳の男性が意識不明の状態で倒れているのを家族が見付け、病院に運ばれましたが、その後、死亡が確認されました。消防によりますと、熱中症が原因とみられるということです。

 兵庫県丹波市では、午後1時前、農作業中の89歳の女性が畑で倒れているのが見付かり、病院に運ばれましたが、死亡しました。警察は、女性が熱中症で亡くなった可能性が高いとみて当時の状況を調べています。

 また、名古屋市では、1日から販売した「プレミアム商品券」を買うために並んだ計約10人が熱中症の疑いなどで救急搬送されました。

 気象庁は2日についても北海道以外に高温注意情報を発表し、こまめに水分を取ったり適切に冷房を使ったりして熱中症に十分注意するよう呼び掛けています。  

 2015年8月2日(日)

 

■夜尿症の治療指針、来年6月に見直しへ 学会が12年ぶりに

 小学校に入学する年齢になっても、お漏らしが続く夜尿症について、専門の医師で作る日本夜尿症学会は、現在の治療指針には最新の薬についての情報などが盛り込まれておらず、誤った処方をされる不安があるとして、来年6月、12年ぶりに指針を見直すことを決めました。

 夜尿症は、小学校に入学する年齢になっても週に数回以上、お漏らしが続く病気で、患者は全国でおよそ80万人いると推計されています。

 日本夜尿症学会では、薬で治療する場合は、飲み薬の抗利尿ホルモン剤をまず処方することを3年前から推奨しています。

 しかし、11年前にまとめられた現状の治療指針では、かつて主流だった重い副作用がある抗うつ薬の処方が推奨されており、誤った処方をされる不安があるということです。

 昨年の医師国家試験にも現状の指針に基づいて、抗うつ薬を使うべきだと回答させる問題が出題され、学会に問い合わせが寄せられたことなどから、来年6月に12年ぶりに指針を見直す方針を決めました。

 日本夜尿症学会の金子一成理事長は、「国際的に見ても時代遅れの指針になっていて、抗うつ剤への抵抗感から受診をためらうケースもあったと思う。最新の情報をしっかりと盛り込み、早く治したいと悩んでいる子供や家族にもわかりやすい指針を作りたい」と話しています。

 夜尿症は、肉体的にも知能的にも正常なのに、5〜6歳を過ぎても継続的に夜間のお漏らしがある状態。排泄障害の1つで、遺尿症とも呼ばれます。

 睡眠中に無意識に排尿してしまうのは、膀胱に尿がいっぱいになったのが自覚できなかったり、膀胱に尿が十分にたまっていないのに我慢できないために起こります。

 乳児のお漏らしは当たり前のことで、成長するに連れて夜尿の回数は減っていき、ほとんど5〜6歳までにはなくなります。しかし、その年齢にはかなり個人差があり、5歳を過ぎて夜尿があっても、必ずしも病的というわけではありません。経過をみて、次第に回数が減ってくるようであれば、夜尿症として大騒ぎすることはありません。

 一説では、5〜6歳児では約20パーセント、小学校低学年では約10パーセント、小学校高学年では約5パーセントに夜尿症がみられるとされています。男女別では、児童・学童では男子のほうが多く、成人では女性のほうに多いとされ、遺伝する傾向も指摘されています。

 原因としては、いくつかのことが考えられています。一つには、排尿のメカニズムに関係する自律神経の緊張状態が考えられます。自律神経の一つである副交感神経が過敏で、排尿を促す信号をすぐに出してしまう状態です。二つ目は、普通は尿は夜間に作られる量が減るはずですが、ホルモンの調節が未熟で脳下垂体から出る抗利尿ホルモンが少ないため、夜中にもたくさんの尿ができるのも一つの原因と考えられています。

 さらに、先天的に膀胱の容量が小さいことも、夜尿症の原因になります。これらの原因が発症者個人について、必ずしも明確にわかるわけではありません。以上の原因のほかに、夜尿が尿路感染症や尿崩症の症状としてみられる場合があります。

 2015年8月1日(土)

 

■長寿日本、女性は3年連続で世界1位 男性は3位

 2014年の日本人の平均寿命は、女性が86・83歳、男性が80・50歳と、いずれも過去最高を更新し、女性は3年連続で世界1位に、男性も世界3位と、日本はトップクラスの長寿国となっています。

 厚生労働省によりますと、2014年の日本人の平均寿命は、女性が86・83歳、男性が80・50歳で、2013年に比べて女性は0・22歳、男性は0・29歳上回り、いずれもこれまでで最も長くなりました。

 女性と男性の平均寿命の差は6・33歳で、2013年より0・07歳縮まりました。男女差は女性の延びの大きさに伴って拡大傾向にありましたが、2003年の6・97歳をピークに緩やかに縮まってきています。

 平均寿命が公表されている主な国や地域と比べると、女性は3年連続で世界1位で、スペイン、フランスが続いています。男性は2013年よりも順位が1つ上がり、香港、アイスランドに次ぐ世界3位で、日本はトップクラスの長寿国となっています。

 平均寿命が延びていることについて厚労省は、「医療技術の進歩で日本人の主な死因のがんや心臓病、それに肺炎などに対する効果的な治療ができるようになったことや、健康志向の高まりで元気なお年寄りが増えていることが背景にあり、今後、さらに平均寿命が延びる可能性はある」と分析しています。

 日本人の平均寿命が延び続ける背景には、心身ともに「若返っている」高齢者の存在があることが、専門家の調査でわかってきました。

 東京都新宿区に住む福屋智亘さんと(76歳)、妻の良子さん(76歳)は、毎週スポーツジムに通い体力を維持しています。福屋さんの歩く速度は秒速1・74メートルで、13年前に日本老年学会の研究グループが調査した60歳代後半の人より速く、身体機能が10歳以上「若返って」いることがうかがえます。

 福屋さん夫婦は体力作りに加え、日ごろからパソコンを使って調べ物をするなど好奇心を失わないよう心掛けているということです。「新しいことを覚えるのに時間がかかるか」、「予定や約束を忘れることがあるか」など合わせて14の項目を尋ねる認知機能を測る調査でも、2人とも10歳以上若返る結果となりました。

 福屋さんは、「趣味を楽しむには体力が必要です。わからないことがあるとすぐ調べ、新しい知識が入ってくるとワクワクします。これが若さの秘けつだと思います」と話していました。

 日本老年学会の研究グループが、都内のある地域の高齢者およそ3500人を対象に認知機能を調べた結果、今年と2004年を比べると、高齢者が5歳から10歳程度若返っていたことがわかったということです。

 高齢者の研究を続けている桜美林大学加齢・発達研究所の鈴木隆雄所長は、「今の60歳代から80歳代は、日本の高度経済成長とともに歩んできた世代で、食生活の改善や医療技術の進歩の恩恵を受けている。また、この世代は教育を受ける機会が広がり、生涯を通じて学ぶ意欲が高まっていることも若返りに影響している」と話しています。

 2015年7月30日(木)

 

■国内初、匿名の第三者の卵子で体外受精へ NPO法人が仲介

 神戸市のNPO法人「卵子提供登録支援団体(OD―NET)」は27日、早発閉経の女性患者2人が匿名の第三者から卵子の提供を受け、受精卵を作製したと発表しました。

 姉妹や友人からの卵子提供で出産した例はあるものの、見ず知らずの他人からの提供が明らかになったのは初めて。国内で今後、こうした新たな形の卵子提供が広がる可能性もあります。

 受精卵は凍結保存されており、肝炎などに感染していないかを確認した上で、患者の女性に年内にも移植し、順調にいけば来年にも子供が生まれます。国内で卵子提供の法制度が整備されていない中、民間で先行した形。子供の出自を知る権利の確保や、提供者の体に問題が起きた時の補償など、多くの課題があります。

 卵子提供を受けたのは、いずれも早い時期に月経が来なくなる早発閉経で成熟した卵子のない30歳代の女性。2人の卵子の無償提供者も、子供のいる30歳代の女性でした。

 OD―NETによると、生まれてくる子供に対しては、産んだ母親のほかに卵子を提供してくれた親がいることを小学校入学前に告知し、本人が希望する場合は15歳で提供者のデータを知らせることになっていると説明し、2組とも同意しているとしています。

 OD―NETの岸本佐智子代表は記者会見で、「提供者の方には感謝の気持ちでいっぱい。これからは自分たちが頑張る番だと思っている」とする患者の1人の手紙を読み上げました。

 OD―NETは2013年1月、病気で卵子は作られないものの出産はできる患者に対し、匿名で卵子を無償提供する35歳未満で子供のいるボランティアの募集を開始。医学的に条件が合った2組について、不妊治療クリニックでつくる「日本生殖補助医療標準化機関(JISART)」の倫理委員会が治療実施を承認したことを、今年4月に明らかにしていました。

 卵子提供の仲介は、患者や提供者の年齢や血液型、居住地などを考慮して決めましたが、お互いの情報は知らせません。今回の2組のほかにも、計8組で今後の提供を目指しているといいます。

 卵子提供による出産は長野県の諏訪マタニティークリニックが1996~97年に、妹の卵子を姉の夫の精子と体外受精させて姉が出産する治療を実施。それ以降、JISARTに加盟する不妊治療クリニックが独自に基準を定め、姉妹や友人からの卵子提供で24人が誕生しています。

 2015年7月30日(木)

 

■先週の熱中症搬送者、今年最多の7392人 死亡者3人、重症者156人に上る

 今月20日から26日の1週間に、熱中症で病院に運ばれた人は全国で7392人に上り、1週間の搬送者としては今年に入って最も多くなったことが、総務省消防庁のまとめでわかりました。

 先週は、湿った空気の影響で広い範囲で雨となった23日を除き、高気圧に覆われて東北から西日本にかけて晴れ、各地で最高気温が35度を超える猛暑日になりました。

 このため、熱中症の搬送者が相次ぎ、1週間の搬送者としては、前の週より1162人増え、今年に入って最も多くなりました。

 このうち、病院に搬送された段階で死亡が確認されたのは千葉県、石川県、佐賀県の各1人計3人。佐賀県唐津市では25日、農作業をしていた80歳代の女性が倒れているのが見付かり、病院に搬送されましたが死亡しました。また、3週間以上の入院が必要な重症者は156人に上りました。

 都道府県別では、東京都が827人と最も多く、次いで埼玉県が721人、千葉県が522人、神奈川県が515人、愛知県が475人、大阪府300人などとなっています。年齢区分別では、65歳以上の高齢者が3418人で、全体の46・2パーセントを占めました。

 5月19日からの搬送者数は2万1865人となり、昨年同期を1341人上回っています。

 今週も北日本から西日本にかけて晴れる日が多くなり、厳しい暑さが続く見込みで、総務省消防庁は、水分をこまめにとるとともに室温が28度を超えないようにエアコンや扇風機を適切に使うなど、熱中症の予防に努めるよう注意を呼び掛けています。

 2015年7月28日(火)

 

■韓国のMERS、2カ月ぶり隔離対象者ゼロに 事実上の終息宣言へ

 韓国で感染が広がった中東呼吸器症候群(MERS)コロナウイルスで、韓国政府は27日、国内で感染した疑いがあるとして隔離しなければならない人は約2カ月ぶりにいなくなったと発表し、市民の間で、流行が終息するのではとの受け止めが広がっています。

 韓国では今年5月20日、中東から帰国した男性からMERSコロナウイルスの感染が広がり、これまでに186人が感染、このうち36人が死亡するなど、アジアで初めての大規模な流行になりました。

 韓国政府は、流行を食い止めるため国内の病院などで感染した疑いがある1万6000人以上を、自宅や医療機関での隔離の対象としてきました。ただ、27日午前0時の時点で感染した疑いがある人がいなくなったのは、国内で感染した疑いのある人のみで、中東から帰国し国外で感染した可能性を排除できない人が15人おり、現在自宅での隔離の対象にしているということです。

 世界保健機関(WHO)は、MERSコロナウイルスの流行の終息を宣言する基準として、すべての感染者が回復してから28日間、新たな感染者が出ないことを挙げています。韓国政府によりますと、まだ治療を受けている人がいるということです。

 このため、国際的な基準にのっとった流行の終息宣言までにはまだ時間がかかるとみられますが、MERSコロナウイルスで外国からの観光客が減少するなど、経済的な打撃が大きいだけに、市民の間で、流行が終息するのではとの受け止めが広がっています。

 聯合ニュースによると、WHOに先立ち、韓国政府は28日にも独自判断で事実上の終息を宣言し、国内外に安全をアピールする構えだといいます。

 2015年7月28日(火)

 

■喫煙による糖尿病リスク、禁煙10年以上で解消 国際医療センターが5万人調査

 たばこを吸っていると、糖尿病にかかるリスクが高まる一方、禁煙を10年以上続ければリスクは吸わない人と変わらなくなるという報告を、国立国際医療研究センターなどのグループがまとめ、22日付の米科学誌で発表しました。

 禁煙による糖尿病の予防効果を大規模調査で確認したのは、珍しいといいます。

 関東などに本社のある8つの企業に勤める男女約5万4000人について、喫煙状況を含む健診データを提供してもらい、その後を4年間ほど追跡。この間に約2400人が、過食や運動不足、肥満といった生活習慣も原因とされる2型糖尿病を発症していました。

 糖尿病の発症にかかわるほかの要因が影響しないようにして解析したところ、たばこを吸う人では吸わない人に比べ、1日に11~20本の人で36パーセント、21本以上の人では50パーセント、2型糖尿病にかかるリスクが高くなりました。

 こうしたリスクは、禁煙をしても期間が5年未満だと変化はみられませんでしたが、10年以上禁煙した人では、もともと吸わない人とほぼ同じでした。

 たばこの煙のせいで、血中の糖を処理するインスリンが効きにくくなったり、インスリンをつくる細胞の機能が落ちたりすることが考えられています。

 報告をまとめた国立国際医療研究センターのシャミマ・アクター研究員は、「禁煙を続ければリスクは確実に下がる。たばこをやめることをためらわないでほしい」と話しています。

 国内の2型糖尿病の発症者数は、950万人とも720万人ともいわれてます。

 2015年7月26日(日)

 

■熱中症で1009人搬送、佐賀県などで1人死亡3人重体 65歳以上の高齢者は注意を

 マスコミが全国各地の消防や警察に取材して25日午後8時現在でまとめたところ、熱中症とみられる症状で44の都道府県で少なくとも1009人が病院に運ばれ、このうち1人が死亡、3人が意識不明の重体となっています。

 都道府県別では、埼玉県で117人、愛知県で92人、千葉県で69人、神奈川県で60人、福岡県で59人などとなっています。

 このうち、佐賀県唐津市では80歳代の女性が自宅近くの畑で農作業中に倒れて死亡しました。また、群馬県藤岡市では84歳の男性が農作業中に倒れ、島根県安来市では93歳の男性が自宅で倒れて、いずれも意識不明の重体になっています。また、山口県防府市でも70歳代の男性がスーパーの駐車場に止まっていた車内でぐったりしていて、意識不明の重体になっています。

 気象庁によりますと、25日も東日本や西日本を中心に広く高気圧に覆われて晴れ、気温が上がりました。

 日中の最高気温は、群馬県伊勢崎市で37度4分、埼玉県熊谷市で37度1分、兵庫県豊岡市で37度、岐阜県多治見市と福岡県太宰府市で36度6分、松江市で35度7分、名古屋市で35度4分などと、全国58カ所で35度以上の猛暑日となったほか、京都市で34度4分、東京の都心でも33度1分まで上がり、気象庁の全国の観測点のおよそ6割に当たる545カ所で30度以上の真夏日となりました。

 26日も、東北から中国・四国地方にかけての広い範囲で晴れる見込みで、日中の予想最高気温は、埼玉県熊谷市と前橋市で38度、甲府市と兵庫県豊岡市で37度、福島市と東京の都心、名古屋市、それに鳥取市で36度、山形市と横浜市、長野県松本市、京都市で35度などと、各地で猛烈な暑さとなる見込みです。

 気象庁は、各地に高温注意情報を発表して、こまめに水分をとったり適切に冷房を使ったりして、熱中症に十分注意するよう呼び掛けています。

 熱中症で特に注意が必要なのは、65歳以上の高齢者。昨年6~9月に近畿で搬送された約6600人のうち高齢者は48パーセントを占めました。大阪市立総合医療センター救命救急部の宮市功典部長は、「加齢により体内の水分量が減っている。降圧剤や利尿剤など脱水作用のある薬を飲んでいる人もいるので注意が必要だ」と指摘しています。

 気象庁が通常、気温を地上1・5メートルの高さで観測していることも忘れてはなりません。晴天時は地面に近いほど気温が高くなるため、背の低い子供などへの配慮が必要で、汗腺など体温調節能力が発達していない子供は、皮膚温より気温が高いと、熱を放散できずに体温が上がります。

 環境省によると、熱中症は7月中旬から8月上旬にかけて多発しますが、ピークは暑さが最も厳しい8月上旬よりも前になる傾向があります。体が暑さに慣れるのに、数日から2週間程度かかるためです。

 冷夏だった2003年の記録では、8月上旬と下旬の急に気温が上がった時に東京都内で熱中症患者が急増しました。暑さに慣れる機会が少なかったためとみられています。

 環境省は熱中症予防情報サイト(http://www.wbgt.env.go.jp/)で、気温や湿度などから算出する「暑さ指数」を公開中。「ほぼ安全」「注意」「警戒」「厳重警戒」「危険」の5段階で、地域ごとに検索できます。

 同省によると、特に注意が必要なのは上から2段階に当たる「危険」と「厳重警戒」の時で、外出時は炎天下を避け、室内でも室温の上昇に注意が必要としています。また、運動時には、頻繁に休憩をとり、水分と塩分を補給し、激しい運動や持久走は避けるように呼び掛けています。

 2015年7月26日(日)

 

■小児用人工心臓を初の保険適用、8月から実施 厚労省

 厚生労働相の諮問機関、中央社会保険医療協議会は22日、重い心臓病の子供が使う小児用補助人工心臓について、「医療上の必要性が極めて高い」として保険適用を承認しました。

 国内では大人用しか承認されておらず、小児用の適用は初めて。8月1日から実施されます。心臓移植を受けるまでの間、心機能の低下を補うつなぎとして使われます。

 保険適用が承認された小児用補助人工心臓は、ドイツの医療機器メーカー、ベルリンハート社が開発した「EXCOR(エクスコア)」。体内に装着したポンプが血液を送り出し、心臓の働きを補助します。

 厚労省によると、年間25人程度の子供に使われると見込まれます。

 保険適用後も心臓の片側を補助するために1カ月間使用した場合、手術費も含め900万円近く医療費がかかります。実際には、患者の自己負担を軽減する高額療養費制度や、自治体単位の医療費助成制度があるため、患者負担はかなり抑えられる見通し。

 EXCORは欧米では1990年代から広く使われ1000例以上の使用実績がありますが、日本国内で医療機器の承認に遅れが生じており、国内で海外の医療機器が使えない「デバイスラグ」として問題視されていました。

 今年1月には心臓移植を待っていた6歳未満の女児がEXCORを使えず、大人用補助人工心臓を使用していた際に生じたとみられる血栓で脳の血管が詰まり、脳死に至りました。女児の両親が早期承認を求めるコメントを発表し、日本小児循環器学会も厚労省に要望書を提出した結果、厚労省の専門部会は6月に、申請からわずか約7カ月という異例の迅速審査で国内販売を認めました。

 ただ、保険適用が承認されても課題は残ります。小児用補助人工心臓の長期使用には血栓が生じて脳梗塞などを発症させるリスクがあるため、心臓移植の臓器提供者が現れなければ、いずれ命を落とすことになります。子供たちを救うには、臓器提供者の存在が不可欠となります。

 2015年7月24日(金)

 

■加齢黄斑変性の80歳英国人男性、人工眼で視力回復 日本にも数十万人の患者

 加齢に伴い視野の中心部が見えにくくなる眼病「加齢黄斑変性」を患う80歳のイギリス人男性が、網膜に埋め込んだ電極を介して眼鏡に取り付けた小型カメラの映像を脳に伝える「人工眼」により、一部を残して失っていた視力の大半を取り戻しました。加齢黄斑変性の患者で人工眼の効果が確認されたのは、世界で初めてといいます。

 イギリス中部のマンチェスター大学は22日、引退した技師で80歳のレイ・フリンさんの手術が成功したと発表しました。手術は6月中に行い、約2週間後の7月1日に人工眼装置を起動させたといいます。

 4時間に及ぶ手術を主導したマンチェスター大学のパウロ・スタンガ教授は、「フリンさんの経過は非常に素晴らしく、人や物の輪郭がとらえられるようになった」と説明しました。

 同教授によれば、フリンさんが患っている委縮型の加齢黄斑変性は欧米の失明原因の第1位だが、治療法がありません。社会の高齢化に伴い、患者は年々増えています。日本の患者数も数十万人と推測されています。

 今回使われた技術では、小型カメラがとらえた映像を細かい電気信号に変換し、網膜の表面に埋め込んだ電極に無線で送信。電極が残った健康な細胞を刺激することで、脳に光パターンを再生します。患者が一定の学習期間をへて、この光パターンを完全に読み取れるようになれば、目を閉じても映像を感知できる人工視力を獲得します。

 マンチェスター大学の声明によるとフリンさんは今、大好きな地元サッカーチーム、マンチェスター・ユナイテッドの試合を観戦したり、庭いじりをしたりできるようになるのを心待ちにしているといいます。

 2015年7月23日(木)

 

■先週の熱中症搬送者、今年最多の6165人に 死者は14人、最多は埼玉県

 総務省消防庁は22日、7月13~19日の1週間に熱中症で搬送された人は全国で6165人だったと発表しました。患者が急増した前週の約2倍になり、1週間当たりとしては今年最多でした。

 65歳以上が53・9パーセントを占めました。死者は14人でした。

 都道府県別では、埼玉県が605人と最多、次いで東京都の578人、大阪府の340人、神奈川県の339人、愛知県の330人でした。

 死者が出たのは埼玉県6人、岩手県3人のほか、福島県、栃木県、群馬県、東京都、兵庫県で各1人。 

 年齢別では、65歳以上の高齢者が3322人と半数を占め、18歳以上65歳未満の成人が2038人、7歳未満の子どもが60人でした。

 最高気温が35度以上になる猛暑日を各地で記録した13~15日は毎日、1300人以上が搬送され、14日は1590人を記録しました。今年の集計を始めた4月27日以降、搬送者数は計1万5895人、死者数は計25人となりました。

 本格的な夏を迎え、消防庁は冷房や扇風機の適切な利用や水分補給など、対策と注意を呼び掛けています。

 2015年7月22日(水)

 

■手足口病、過去10年で2番目に大きい流行に 患者数は全国で2万人を超す

 4歳くらいまでの幼児を中心に、例年夏に流行する「手足口病」の患者が、この10年で2番目に多くなっています。国立感染症研究所は、特に幼い子どものいる家庭に向けて、こまめに手を洗うなど予防に努めてほしいと呼び掛けています。

 手足口病は、手のひらや足の裏、口の中などに発疹や水疱ができるウイルス性の感染症で、幼い子どもを中心に感染し、まれに脳炎や髄膜炎などの重い症状を引き起こすことがあります。

 患者のせきやくしゃみなどの飛沫や、排出物を触った手などを介して、感染します。通常は1週間程度で治りますが、症状が治まった後も2~4週間は、便などからウイルスが排出されます。

 今年は、過去10年で2番目の大きな流行となっており、国立感染症研究所によりますと今月6日から12日までの1週間に全国3000の小児科の定点医療機関から報告された患者の数は2万3329人で、前の週の1万7294人からさらに6035人増えました。1医療機関当たりの患者数は7・39人で、国の警報基準である5人を超えています。

 1医療機関当たりの患者数を都道府県別でみますと、福井県が最も多く19・91人、次いで奈良県が15・71人、京都府が14・78人、埼玉県が12・59人、栃木県が12・33人、群馬県が11・48人、東京都が10・34人などとなっています。当初、西日本が中心だった流行が全国的に広がってきており、39の都道府県で患者が増えています。

 また、今年は手足口病を引き起こすウイルスの中でも、治った後に爪がはがれることもある「コクサッキーA6」という型が3割ほどを占めています。

 国立感染症研究所の藤本嗣人室長は、「患者の便からは治った後も長期間ウイルスが排出されるので、家庭や保育園などでオムツを適切に処理したり、こまめに手洗いをしたりすることが大事だ。口の中に発疹ができると飲み物も飲みたがらない子どももいるが、暑い日が続いているので脱水症状を起こさないよう気を付けてほしい」と話しています。

 2015年7月21日(火)

 

■卵子精子の元、人のiPS細胞から高効率で作製 京大教授ら

 人のiPS細胞(人工多能性幹細胞)から卵子と精子の元になる「始原生殖細胞」を高効率で作り出す手法を、京都大の斎藤通紀教授らが確立しました。今後、この始原生殖細胞から卵子や精子が作れるようになれば、不妊や遺伝病の原因解明につながると期待されます。

 米科学誌セル・ステムセル電子版に、17日付けで発表しました。始原生殖細胞は受精卵が子宮に着床した後に現れるため、母体から取り出して研究に使うことには、倫理的に難しい面がありました。

 斎藤教授らはiPS細胞を使ってマウスの始原生殖細胞を作り、卵子と精子に変えて子どもを得ることに世界で初めて成功。だが、人の始原生殖細胞を安定して作ることができませんでした。

 そこで、始原生殖細胞に特徴的な遺伝子が働くと光るiPS細胞を作り、さまざまな条件で培養した結果、特定の2種類の化合物で刺激した細胞を使えば、マウスと同じ手法で人の始原生殖細胞を高効率で作り出せることがわかりました。

 イギリスのケンブリッジ大などのグループも昨年、斎藤教授らとは別の手法で人の始原生殖細胞を作ったと発表。今後、こうした細胞を使って卵子や精子を体外で作る研究が進めば、不妊や遺伝病の原因がわかる可能性もあります。

 ただ、こうした技術は倫理的な課題もあり、文部科学省は人の万能細胞であるiPS細胞やES細胞(胚性幹細胞)から生殖細胞を作る研究を指針で規制しています。

 斎藤教授は、卵子や精子を作るには多くの課題があるとした上で、「今回、出発点となる細胞ができた。研究をさらに発展させていくことが重要だ」と話しました。

 2015年7月21日(火)

 

■熱中症で653人搬送、埼玉県が最多の87人

 マスコミが各地の消防や警察に取材して19日午後8時現在でまとめたところ、熱中症とみられる症状で、44の都道府県で少なくとも653人が病院に運ばれました。

 都道府県別では、埼玉県で87人、神奈川県で47人、愛知県で43人、千葉県で39人、福岡県で38人などが病院に運ばれました。

 一方、千葉県香取市で草刈りをしていた47歳の男性が熱中症の疑いで病院に搬送され、およそ1時間後に死亡が確認されましたが、病院が詳しく調べた結果、熱中症ではありませんでした。

 暑さが厳しくなり、熱中症で病院に運ばれる人も増えてきましたが、重症化することもあり、総務省消防庁によると、4月下旬から7月12日までに10人が亡くなりました。

 熱中症は、気温や湿度の高い環境で、体温調節がうまくいかなくなることで起こります。昭和大の三宅康史教授(救急医学)によると、体は汗をかいたり、皮膚近くに血流を集めて冷ましたりして体温上昇を防いでいます。

 ところが、暑い環境や激しい運動によって大量の汗をかき、水分や塩分が不足すると、内臓や脳を巡る血流も減り、めまいや立ちくらみなどの熱中症の症状が現れます。そのまま高温多湿の環境に居続けると、症状が進み、頭痛や嘔吐、倦怠感などが出てきます。

 さらに進むと、汗をかけないことや血流の低下で、熱を体外に発散できなくなって内臓がダメージを受け、体温が40度を超すと細胞が壊れ始めて戻らなくなります。すると、意識を失ったり、多臓器不全になったりして、死亡してしまうことがあります。

 神奈川県立保健福祉大の谷口英喜教授(栄養学)は、「熱中症は体に熱がこもり、臓器がゆで卵の白身のように固まって機能が低下してしまう状態。後遺症に苦しむ人も多いことも特徴だ」と話しています。後遺症には、記憶力低下などの神経障害や、腎臓や肝臓の機能不全などがあるといいます。

 2015年7月20日(月)

 

■韓国のMERS、12日連続で感染者なし 8月中旬以降、終息宣言の見通し

 韓国で、重い肺炎などを引き起こす中東呼吸器症候群(MERS)コロナウイルスの感染が鎮まりつつあり、「終息宣言」も視野に入ってきました。

 韓国の保健福祉省は17日午前、前日午前までの新たな感染者はゼロだったと発表。これで12日連続で新たな感染者は確認されておらず、公式的に世界保健機構(WHO)が検討中である終息基準日を適用すると明らかにしました。終息宣言は8月中旬以降になる見通しです。

 保健福祉省によると、MERSコロナウイルスへの感染者は5月20日に初めて確認されてから、今月4日までで計186人に上ります。5日以降は新たな感染者は出ていません。16日午前までで、感染者のうち36人が死亡し、致死率は19・4パーセントです。134人が退院し、16人が入院して治療を受けています。

 隔離対象者は155人で、前々日の258人より103人減りました。日常生活に戻った隔離解除者は1万6538人で、前々日の1万6432人より106人増えました。

 韓国では一時、外ではマスクをつける人が増え、ショッピングモールや遊園地などの人出が大幅に減りました。今では日常に戻り、マスクをつける人はほとんどいません。学校の休校もすべて解除され、街もにぎわいを取り戻しつつあります。

 こうした中、韓国政府も終息宣言の基準についてWHOと協議を進めています。保健福祉省によると、最後のMERS治療患者の遺伝子検査で陰性反応が確定した日から最長潜伏期間の2倍に当たる28日間、新たな感染者が出なければ終息を宣言するのが、国際的な基準とされています。現在、MERS治療患者のうち2人が陽性状態。

 これらを踏まえ、保健福祉省は国内感染者の発病がほぼ病院内であり、該当患者が病院内で治療および管理されているという点をWHOに強調する計画で、終息宣言が早まる可能性はあります。

 また、保健福祉省は、公式的な終息宣言以前に、MERS危機段階を「注意」から「関心」段階に下げることを明らかにしました。

 2015年7月19日(日)

 

■子どもの臓器提供、申し出97人で実際の提供14人 改正移植法の施行から5年

 改正臓器移植法の施行から5年間で、18歳未満の子ども97人の臓器提供が検討され、83人が提供に至らなかったことが17日までに、日本臓器移植ネットワークのまとめでわかりました。

 15歳未満の脳死の子どもからの臓器提供が可能となって17日で5年になるのに合わせ、移植ネットが医療機関とのやりとりをまとめ、発表しました。

 改正法が全面施行された2010年7月17日から今年3月末までに、頭部のけがなどで回復困難となった18歳未満の97人で、臓器提供について病院側から移植ネットに連絡がありました。脳死判定後の9人、心臓の停止後の5人、計14人で臓器提供に至りました。

 提供に至らなかった83人の理由で最も多かったのは、「施設の体制整備がまだ」(17・5パーセント)でした。続いて「(最終的に)家族が提供を望まず」(16・5パーセント)、「虐待の疑いが否定できず」(10・3パーセント)などでした。

 改正法は、子どもからの臓器提供に道を開く一方、虐待を受けた子どもから臓器が提供されることのないよう適切な対応を取るとしています。このため18歳未満の子どもの臓器提供を実施する医療機関は、事前に虐待の有無を判断しています。

 移植ネットへの連絡の切っ掛けは、家族からの申し出が3分の2を占めました。連絡数は、改正法の施行後3年間は増えましたが、2013年をピークに減少に転じました。

 移植ネットの担当者は、「子どもの死は普通は想像しておらずつらい中、これだけの方が提供を望んでくれた。思いを遂げられるような体制をつくり、移植を待つ人の希望にもなるようにしていきたい」と話しています。

 2015年7月18日(土)

 

■成田空港到着のギニア人男性、エボラウイルス検出されず

 厚生労働省は16日、西アフリカのギニアに滞在歴があり、成田空港に15日夜到着したギニア国籍の30歳代男性が38度以上の熱を出し、エボラ出血熱感染の疑いがあり検査したが陰性だったと発表しました。

 男性は飛行機内での自覚症状はありませんでしたが、成田空港到着時は38度7分の熱がありました。千葉県内の感染症指定医療機関である成田赤十字病院に入院した時は37度1分。マラリアやインフルエンザの簡易検査は陰性でした。

 厚労省は男性の血液検体を東京都武蔵村山市にある国立感染症研究所村山庁舎に搬送し、エボラウイルスに感染していないかどうか詳しい検査を行った結果、エボラウイルスは検出されませんでした。

 厚労省によると、男性は今月13日まで約3カ月間、ギニアに滞在していましたが、現地でエボラ出血熱の患者と接触したという情報はないということです。

 エボラ出血熱を巡っては、これまで西アフリカに滞在歴があり、日本に到着した後に発熱の症状を訴えた9人について詳しい検査が行われましたが、いずれも感染は確認されていません。

 一方、世界保健機関(WHO)は15日、西アフリカのリベリアで6月30日に再び確認されたエボラ出血熱の新規患者の感染源が、回復後もウイルスを保持していた元患者だった可能性が高いと発表しました。

 WHOによると、この3カ月で初の新規感染例となった17歳の少年の遺体から採取されたウイルスの遺伝子は、近隣国のギニアやシエラレオネで広まっているウイルスの型と合致しませんでした。

 WHOはエボラ出血熱流行に関する最新の状況報告の中で、「ウイルスのゲノム配列による現時点の証拠からは、リベリア国内で回復した患者のウイルスの再出現が感染源である可能性が非常に高いことが強く示された」と述べています。

 リベリアでは5月9日にエボラ出血熱の終息宣言が出されていましたが、6月30日に首都モンロビア近郊のマージビ郡で死亡した17歳の少年から陽性反応が確認され、現在までに少年を含め6人の新規感染者が出ていました。

 リベリア保健省は15日、さらに2人目の患者が死亡したと発表。この患者は、首都モンロビアで報告された初の死者となりました。

 2015年7月15日(水)

 

■熱中症で726人搬送、岩手県などで7人死亡 8人が意識不明の重体に 

 熱中症についてマスコミが各地の消防や警察に取材したところ、15日午後5時現在、熱中症とみられる症状で全国で7人が死亡し、8人が意識不明の重体になっていることがわかりました。

 熱中症とみられる症状で病院に運ばれた人はすべての都道府県で少なくとも726人に上り、このうち、岩手県の3人を含む合わせて7人が死亡し、8人が意識不明の重体になっています。

 岩手県では、大船渡市や奥州市、それに一関市で、いずれも室内にいた70歳代から80歳代の男女3人がそれぞれ、熱中症とみられる症状で死亡したということです。

 午後1時半ごろ、大船渡市三陸町の住宅で、79歳の男性が話しかけても反応がないと家族から消防に通報がありました。男性は心肺停止の状態で病院に運ばれましたが、まもなく死亡し、消防によりますと、病院の話から熱中症とみられるということです。男性は当時、窓を閉めたままの寝室で休んでいて、扇風機を動かしていたものの冷房はつけていなかったということです。

 消防によりますと、奥州市水沢区でも午後3時すぎ、83歳の女性が住宅の中でぐったりしていると家族から消防に通報があり、病院に運ばれましたが、熱中症の疑いで死亡しました。消防によりますと、女性がいた部屋は窓が閉まったままで、扇風機はついていたということです。

 このほか、一関市花泉町でも自宅のベッドで休んでいた87歳の女性が意識不明の状態で病院に運ばれましたが、熱中症とみられる症状で死亡したということです。

 15日の岩手県は県の南部や沿岸を中心に30度以上の真夏日となり、一関市では最高気温が33度6分まで上がりました。

 岩手県のほか、宮城県亘理町では15日朝、80歳代の女性が体調不良を訴えて病院に運ばれ死亡しました。

 東京都北区では午前8時ごろ、90歳代の女性が自宅で意識を失って倒れているのが見付かり、死亡しました。

 さらに、埼玉県坂戸市で91歳の女性が、群馬県桐生市では79歳の女性がいずれも搬送先の病院で死亡しました。

 2015年7月15日(水)

 

■熱中症で820人搬送、埼玉県と東京都の高齢者3人死亡

 日本列島は14日も気温が高い状態が続き、全国928の観測点のうち99カ所で最高気温が35度以上の猛暑日となりました。最も暑かったのは群馬県館林市で39・3度。

 最高気温30度以上の真夏日は47都道府県すべてで記録し、600カ所に上りました。福島県伊達市の39・1度など、観測史上最高を記録した地点も出ました。

 この厳しい暑さの中、マスコミの集計によると、少なくとも全国で計820人が熱中症とみられる症状で搬送され、うち高齢者3人が死亡しました。

 埼玉県では、川越市の83歳の女性が自宅で死亡し、熊谷市でも83歳の男性が庭で倒れ死亡しました。東京都奥多摩町では、92歳の男性が畑で倒れ、病院で死亡が確認されました。

 また、総務省消防庁の14日発表によると、6~12日の1週間に、全国で3058人が熱中症の症状で救急搬送されました。前週の471人の6・5倍に増えました。搬送時に死亡したのは4人でした。

 9日に九州地方で最高気温が35度以上の猛暑日を今年初めて記録したほか、週末も各地で真夏日となるなど急激な気温上昇が原因とみられます。

 集計によると、3週間以上の入院が必要な重症者は52人、短期の入院が必要な中等症は945人でした。65歳以上の高齢者が半数近くを占めました。

 埼玉県が190人で最も多く、大阪府の185人、熊本の172人と続きました。死亡したのは北海道、埼玉、佐賀、長崎の各1人。

 日本列島は15日も九州地方から東北地方の広い範囲で晴れて気温が上がる見込みで、15日の予想最高気温は前橋市と埼玉県熊谷市で36度、佐賀市で35度、東京の都心や福島市、福井市、京都市、それに岡山市で34度などと、各地で厳しい暑さが続く見込みです。

 気象庁は関東甲信に高温注意情報を発表して、15日も引き続き、冷房を使って水分をとるなどして、熱中症に十分注意するよう呼び掛けています。

 熱中症対策に詳しい横浜国立大学の田中英登教授は、猛暑が続いて熱中症で死亡したとみられる人が相次いでいることについて、「先週の金曜日から急に気温が上がったために、体が暑さに慣れる暑熱順化という状態にならず、熱中症になりやすくなっているのではないか」と指摘していました。

 その上で、田中教授は「特に高齢者は汗をかく能力が低下して、体温調節が難しいほか、暑さも感じにくくなっているため、脱水症状になりやすい」とし、「本格的な夏を前に、朝や夕方の涼しい時間にウォーキングなどの軽い運動をして、暑さに慣れる体づくりをしてほしい」と話していました。

 2015年7月14日(火)

 

■熱中症で872人搬送、埼玉、栃木、静岡各県の高齢者4人死亡

 マスコミが各地の消防や警察に取材して13日午後8時現在でまとめたところ、熱中症とみられる症状で病院に運ばれた人は44都道府県で少なくとも872人に上り、12日の同じ時点より103人多くなりました。

 病院に運ばれた人のうち、栃木、埼玉、静岡各県の高齢の男女4人が死亡し、6人が意識不明の重体になっています。

 午前11時ごろ、埼玉県鳩山町の自宅で寝ていた82歳の無職女性の意識と呼吸がないと家族から119番があり、搬送先の病院で死亡が確認されました。女性がいた部屋は窓は開いていましたが、エアコンや扇風機はなかったということです。

 また、静岡県掛川市大渕の茶畑で農作業をしていた84歳の男性、埼玉県深谷市の路上で草むしりをしていた79歳の女性が倒れ、病院で死亡が確認されました。栃木県大田原市でも、自宅寝室で84歳の女性が意識を失い、病院で死亡しました。

 さらに、京都市上京区で95歳の女性が室内で倒れて意識不明の重体になっているほか、埼玉県上尾市でも90歳の女性が自宅で倒れ、意識不明の重体となっています。

 病院に運ばれた人を都道府県別でみると、埼玉県が108人と最も多く、次いで新潟県が58人、大阪府が52人、神奈川県が47人、福島県が46人などとなっています。

 関東から中国地方にかけては15日ごろまで晴れ間が広がり、暑い日が多い見込み。今週後半には、全国的に梅雨空に戻るとみられます。

 気象庁は、「冷房を使ってこまめに水分を補給するなどして、体調管理に気を付けてほしい」と熱中症の予防を呼び掛けています。

 2015年7月14日(火)

 

■熱中症で538人搬送、北海道と埼玉の2人が死亡

 12日は全国的に気温が上がり、北海道から西日本の日本海側にかけての各地で35度以上の猛暑日になりました。九州北部では大気の状態が不安定になるため、これから13日昼前にかけて非常に激しい雨が降る恐れがあり、気象庁は土砂災害や低い土地の浸水、それに川の増水に十分注意するよう呼び掛けています。

 気象庁によりますと、北日本や東日本を中心に広く高気圧に覆われたほか、西日本では台風9号の影響で暖かい空気が流れ込んでいるため全国的に気温が上がりました。

 最高気温は群馬県館林市で36度6分、北海道帯広市と足寄町で36度3分、福井市で35度7分、兵庫県豊岡市で35度1分の猛暑日になり、北海道では十勝地方などの14の観測地点で7月としては観測を始めて以降最も高い気温になりました。また、福島市で34度3分、名古屋市で33度1分、東京の都心で32度などと、全国の観測点の6割にあたる550余りの地点で真夏日になりました。

 気温の上昇で各地で熱中症を訴える人が相次ぎ、マスコミが各地の消防や警察に取材して12日午後5時現在でまとめたところ、熱中症とみられる症状で45の都道府県で少なくとも538人が病院に運ばれ、2人が死亡しました。

 都道府県別では、埼玉県が53人と最も多く、次いで北海道が40人、愛知県が39人、大阪府が32人などとなっています。

 このうち、北海道の清水町では正午すぎ、農作業をしていた83歳の女性が倒れていると消防に通報があり、女性は搬送先の診療所で死亡が確認されました。

 また、埼玉県三郷市では午後4時前に95歳の女性が自宅で意識を失っているのが見付かり、病院に運ばれましたが午後4時30分ごろ、死亡が確認されました。

 13日も東北から西日本にかけては気温が上がり、日中の最高気温は福島市で36度、金沢市や前橋市で35度、京都市で34度などと予想されています。気象庁は、こまめに水分を補給したり適切に冷房を使ったりして熱中症に十分注意するよう呼び掛けています。

 2015年7月12日(日)

 

■熱中症で402人搬送、全員が命に別状なし 関東と東海は今年初の猛暑日

 日本列島が広く太平洋高気圧に覆われた11日、台風9号の影響で雨が降った九州を除く各地で梅雨の晴れ間が広がり、気温が上昇して各地で30度を超す真夏日を記録しました。

 気象庁によると、真夏日は全国927地点のうち418地点で記録し、北海道帯広市では34・7度を記録しました。さらに、岐阜県郡上市八幡町で35・8度、茨城県笠間市で35・2度、群馬県館林市で35・0度となるなど、関東地方と東海地方で今年初めて35度以上の猛暑日となりました。

 気温の上昇で各地で熱中症を訴える人が相次ぎ、東京消防庁など各地の消防によると、11日夜までに全国で少なくとも計421人が熱中症とみられる症状で救急搬送されました。

 青森県内では、青森市で高校野球の試合中だった選手2人を含む5人を病院に搬送。神奈川県内では、川崎市でサッカーの部活動をしていた男子中学生が重症になるなど、20人を搬送しました。東京都内では45人、千葉、埼玉各県では28人ずつが病院に運ばれました。いずれも命に別条はないといいます。

 関東地方から中国地方にかけては15日ごろまで晴れ間が広がり、暑い日が多い見込み。来週後半には、全国的に梅雨空に戻るとみられます。

 気象庁は、「部屋の風通しをよくし、こまめに水分を補給するなど体調管理に気を付けてほしい」と熱中症予防を呼び掛けています。

 2015年7月11日(土)

 

■熱中症で309人搬送、佐賀県で1人死亡 35度以上の猛暑日12地点

 日本列島は10日、高気圧の影響などにより、各地で気温が上昇し、大分県日田市など12地点で猛暑日となりました。

 気温上昇で各地で熱中症を訴える人が相次ぎ、マスコミの集計では、少なくとも全国で309人が熱中症とみられる症状で病院に搬送され、佐賀県鹿島市では84歳の男性が山道で倒れているのを家族が発見、病院で死亡が確認されました。

 大阪市の中学校ではグラウンドや屋外で部活中の生徒13人が体調不良となり、11人が病院へ運ばれました。熊本市でも、中学生24人が救急搬送されましたた。

 気象庁によると、大分県日田市で37・0度、熊本市で35・9度、長崎県佐世保市で35・6度など12地点で、最高気温が35度以上となる猛暑日となりました。262地点では、最高気温が30度以上となる真夏日となりました。

 関東地方にも強い日差しが照り付け、群馬県館林市、埼玉県熊谷市のほか、東京都練馬区などで30度以上を記録しました。

 気象庁によると、週末も北日本から西日本の広い範囲で晴れ間が広がり、蒸し暑くなる見通し。

 2015年7月11日(土)

 

■iPS細胞治験、ベンチャー企業が開始 2017年に網膜移植へ

 高齢者に多い目の難病「加齢黄斑変性」の患者に、iPS細胞から作った網膜の細胞を移植し、患者の視力を回復させる臨床治験を東京のベンチャー企業などが2017年から始める計画を明らかにしました。

 臨床治験の計画を明らかにしたのは、東京都港区に本社のあるベンチャー企業「ヘリオス」と、大阪市に本社のある大手製薬会社の「大日本住友製薬」などのグループです。

 iPS細胞を使った加齢黄斑変性の治療は昨年9月、世界で第1例目となる患者への移植手術を神戸市の理化学研究所などが行いましたが、ヘリオスなどの研究グループでは、理化学研究所から技術の移転を受け、広く一般の人がこの治療を受けられるよう準備を進めていました。

 その結果、iPS細胞から網膜の細胞を高い効率で作る技術の開発や細胞の製造・販売の体制が整ったため、2年後の2017年から臨床治験を始める計画だということです。

 治験では、京都大学iPS細胞研究所からiPS細胞の提供を受けて網膜の細胞を作り、加齢黄斑変性や「網膜色素変性」などの数十人の患者に細胞が含まれる液体を注射して、視力が回復するかどうかなど安全性と効果を検証します。

 5年後の2020年にも再生医療製品としての販売を目指したいということで、大日本住友製薬が治験や製品開発などの費用68億円を負担します。

 ヘリオスの鍵本忠尚社長は、「研究者からバトンを受け取り、企業が実際の商品化を行っていく段階になった。患者や医師に新しい治療法を提供し、再生医療を産業として育てていきたい」と話し、「液体を注射する方法なら、冷凍できて医薬品と同じように販売でき、手技も楽になる。大量培養の技術が向上しているので、原価が下がり産業化がみえてくる」としています。

 2015年7月10日(金)

 

■腸内フローラが腸炎を抑える仕組みを突き止める 慶大の研究チーム

 人間の腸の中では、数多くの細菌が「腸内フローラ」と呼ばれる生態系を作っていますが、この細菌の一種が腸の炎症反応を抑える仕組みを、慶応大学の研究チームが突き止めました。

 20歳代を中心に発症し、国内に16万人を超える患者がいる潰瘍性大腸炎やクローン病などの炎症性腸疾患に対する、新たな治療法の開発につながると期待されます。

 この研究を行ったのは、慶応大学の吉村昭彦・教授らの研究チームです。

 研究チームでは、人間の腸の中に多く生息する細菌、「クロストリジウム属細菌」に注目し、マウスで実験を行いました。その結果、この細菌が、腸の特定の細胞を刺激することで「Tレグ」と呼ばれる免疫反応を制御する細胞が増え、炎症反応が抑えられることがわかったということです。

 腸内には100兆個以上の細菌が生息し、腸内フローラと呼ばれる生態系を形成して互いに免疫のバランスを調整しているとみられていますが、研究チームでは具体的な仕組みがわかったことで、潰瘍性大腸炎やクローン病などの炎症性腸疾患の新たな治療法の開発につながるとしています。

 研究を行った吉村教授は、「免疫を抑える細胞を増やす薬を開発できれば、潰瘍性大腸炎や食物アレルギーといった免疫が過剰に働く病気に有効なのではないか」と話しています。

 2015年7月8日(水)

 

■リンゴ病が全国的流行に拡大 とりわけ妊婦は注意を

 風邪のような症状に続いて、ほおなどに赤い発疹が出る伝染性紅斑、いわゆるリンゴ病が全国的に流行しており、国立感染症研究所は手洗いの徹底など注意を呼び掛けています。

 伝染性紅斑、いわゆるリンゴ病は、小学校入学前後の6歳以下の子どもの感染が7割を占めるウイルス性の感染症で、約10日の潜伏期間の後、両ほおに赤い発疹が現れ、続いて体や手足に網目状の発疹が広がります。これらは通常1週間で消えますが、ほおに発疹ができる7~10日前に微熱や風邪のような症状がみられます。

 大人が感染すると関節痛などの症状も出て、特に妊婦では流産や胎児の異常の原因になることがあります。

 国立感染症研究所によりますと、今年に入って全国およそ3000の小児科の定点医療機関から報告されたリンゴ病の患者は6月28日までに4万4728人に上り、過去10年で3番目に多くなっています。

 都道府県別に1医療機関当たりの患者数を直近の1週間でみますと、滋賀県で2・91人、長野県で2・54人、埼玉県で2・53人、福島県で2・41人、大分県で2・03人などとなっています。当初、東京都や埼玉県など関東が中心だった流行が全国的に広がってきているということです。

 国立感染症研究所の砂川富正室長は、「4年前に次ぐ大きな流行になりつつある。患者が、周りにウイルスを広げる時期はほおが赤くなってリンゴ病だとわかる前なので、予防には日ごろから手洗いを徹底することが大事だ。特に妊娠中の女性はリンゴ病の患者が出た保育園や幼稚園に出入りするのを極力避けるなど気を付けてほしい」と話しています。

 リンゴ病は例年、7月上旬ころにピークを迎える傾向があるため、各自治体も注意を呼び掛けています。

 2015年7月7日(火)

 

■厚労省、母乳ネット販売で注意を呼び掛け 乳幼児に感染リスク

 厚生労働省は3日、インターネット上で母乳をうたった商品が販売されているとの情報があるとして、「衛生管理が不明な第三者の母乳を乳幼児に与えるのはリスクがある」との注意を呼び掛ける通知を、都道府県など全国の自治体に出しました。

 自治体が販売業者を把握した場合は、実態を確認し、食品衛生法に基づき必要な指導を行うよう求めています。

 厚労省は文書で、既往歴や搾乳方法、保管方法などの衛生管理状況が不明な第三者の母乳について、「病原体や医薬品などの化学物質が母乳に含まれていた場合、乳幼児がこれらにさらされるリスクがある」と指摘。母乳を通じて感染する可能性がある病原体の例として、エイズウイルス(HIV)や、白血病ウイルス(HTLV-1)を挙げています。

 その上で、妊産婦訪問、新生児訪問、乳幼児健康診査などを利用し、妊産婦や乳幼児の養育者に、ネット販売されている母乳のリスクを広く注意喚起するよう求めました。

 消費者庁も同日、「過去にネットで母乳と称した商品を販売していたとみられる情報を確認した」と注意を呼び掛けました。同庁は母乳が出ない母親に向け、「1人で悩まず、医師や保健師などに相談するように」としています。

 また、厚労省も母乳が出ずに悩む人に向け、「乳幼児の栄養摂取は母乳だけにこだわらず、必要に応じて粉ミルクを使うことが望ましい」としています。 

 ネット販売の母乳の危険性は、昨年7月に設立された国内唯一の「母乳バンク」を持つ昭和大江東豊洲病院(東京都江東区)の取り組みからうかがい知ることができます。

 母乳バンクは早産や病気などで母乳が出にくい母親に代わり、医療目的で別の女性の母乳を乳児に与える機能を持ちます。使われる母乳は徹底的に安全を追求したもので、提供する女性は血液検査を受け、感染症の有無、飲酒や喫煙の習慣のチェックを経て、ようやくドナーとして登録されます。

 ドナーが自宅で搾った母乳は、すぐ冷凍して母乳バンクに送付。細菌検査や母乳成分の基準をクリアすれば、さらに62・5度で30分間、低温殺菌処理されます。これで細菌がないことが確認されたものが、マイナス70度で冷凍保存されて出番を待ちます。しかし、冷凍保存期間は3カ月が限度。解凍した場合は一気に細菌が繁殖するため、24時間以内の利用が必要だといいます。

 母乳バンクの運営を主導する水野克己・小児内科教授は、「安全な母乳を全国に提供できるシステムを早期に整備し、ネット売買をなくしたい」と話しています。

 2015年7月7日(火)

 

■歯周病菌、インフルエンザの感染助長か 日大歯学部チームが発表

 歯周病の原因となる口の中の細菌が、インフルエンザウイルスの感染を助長し、患者の症状を悪化させる可能性があるとする研究報告を日本大学の研究チームが発表しました。

 口の中の細菌には、タミフルなどの抗ウイルス薬を効きにくくしたり、ウイルスの増殖を助けたりするものもあり、インフルエンザ対策での口のケアの重要性がますます注目されます。

 この研究を行ったのは、日本大学歯学部の落合邦康教授らのチームです。

 インフルエンザウイルスは、人の細胞内外にある特定の酵素の助けを借りて細胞に入り込み、内部で増殖することによって感染を広げます。

 研究チームでは、口の中にある歯周病菌がこの過程に関わっているのではないかとみて、昨冬流行した高齢者が重症化しやすいA香港型(H3N2)ウイルスで実験。このインフルエンザウイルスに、歯周病菌の一種であるジンジバリス菌が出す酵素を加えると、ウイルスが細胞に感染しやすくなるのを確認したということです。

 研究チームでは、口の中で歯周病菌が増えるとウイルスの細胞への感染を助長し、インフルエンザを悪化させる可能性があるとしています。

 落合教授は、「歯周病や虫歯は命には関わらないと軽視されがちだが、高齢者は免疫力が弱まっており、口のケアが悪いと、インフルエンザ感染と重症化の危険性が著しく増加する可能性がある。健康で長生きするには習慣的な口のケアが重要だ」と話しています。

 2015年7月6日(月)

 

■C型肝炎の新薬承認 患者の7割から8割を占める1型が対象に

 厚生労働省は3日、製薬会社ギリアド・サイエンシズのC型肝炎治療薬「ハーボニー配合錠」(一般名=レジパスビル・ソホスブビル配合剤)を承認しました。

 日本のC型肝炎患者全体の約7割から8割を占める遺伝子タイプ1型が対象。飲み薬で高い効果が期待され、注射薬インターフェロンが不要になるといいます。

 この新薬のハーボニー配合錠は、患者の約2割から3割を占める遺伝子タイプ2型を対象にした同社のソバルディ(一般名・ソホスブビル)に、別の成分のレジパスビルを組み合わせたもの。1型の新薬として承認申請していました。1日1錠を12週間飲みます。

 同社によると、臨床試験(治験)では患者157人に使われ、全員でウイルスが確認されなくなったといい、著効率が期待できます。

 今後、価格決定や保険適用などの手続きを経て、8~9月には販売される見通し。1錠6万1799円のソバルディより、高額になる可能性があります。

 患者団体「東京肝臓友の会」の米沢敦子事務局長は、「一日も早くと待ち望んでいた。患者にとっては朗報」と話しています。

 日本は先進国の中で最も肝臓がんの発症率が高い国の一つといわれていますが、その原因は主としてC型肝炎ウイルスの感染であり、100万人を超す日本のC型慢性肝炎患者の約7割から8割が遺伝子タイプ1型のC型肝炎ウイルスに感染しているといわれています。

 2015年7月5日(日)

 

■韓国のMERS、5日ぶりに新たな感染者を確認 感染者183人、死者33人に

 重い肺炎などを引き起こす中東呼吸器症候群(MERS)コロナウイルスの感染が広がる韓国で、5日ぶりに新たな感染者が確認されました。韓国政府は、引き続き感染拡大の防止策を進めていくと強調しています。

 韓国の保健福祉省は2日の記者会見で、新たに1人がウイルスに感染していたことが1日に確認されたと発表し、これで感染者は183人、このうち死亡した人は33人となりました。退院者は5人増え、102人に上りました。

 感染が確認されたのは、ソウルのサムスンソウル病院で感染者の治療に当たっていた24歳の女性看護師で、6月30日の病院内1次遺伝子検査で陽性判定を受け、1日の疾病管理本部での2次検査で感染が確認されました。これで、サムスンソウル病院内での感染者は88人となりました。女性看護師の詳しい感染経路は調査中だといいます。

 保健福祉省は記者会見で、「患者が発生しているため、終息の時期について話すのは今はまだ早い」と述べ、終息が近いのではないかという一部の見方を否定するとともに、今後も患者の推移を注視しながら対策を続ける必要があるという考えを強調しました。

 そして、引き続き感染者と接触した人など2200人余りを自宅や医療機関での隔離の対象として、これ以上感染が広がらないよう取り組むとしています。

 また、韓国大統領府は3日、MERSコロナウイルスの感染者が国内で初めて確認された5月20日朝、朴槿恵(パク・クネ)大統領に即座に報告し、大統領は「感染経路の把握と新たな感染防止」などを指示していたと明らかにしました。初動が遅れたとの批判への反論ながら、結果的に感染は拡大しており、実効性が伴わなかったとの指摘も出そうです。

 大統領秘書室が国会運営委員会に提出した報告書によると、大統領府は当日午前8時ごろ、保健福祉省から初の感染確認の報告を受け「直後に大統領に報告した」。大統領は、感染拡大防止に加え「当局の対応とMERSに関する正確な情報の提供」を指示したといいます。

 2015年7月4日(土)

 

■エボラ出血熱疑い、検査で陰性 ギニアから帰国した静岡県の男性

 厚生労働省は1日、静岡県在住の40歳代男性が西アフリカのギニアから帰国後に発熱し、エボラ出血熱への感染が疑われたため、採取した血液を東京都武蔵村山市の国立感染症研究所に送って詳しい検査をしたところ、陰性だったと発表しました。

 国内で感染が疑われ、検査で否定されたのは8人目。男性は入院先の静岡市立静岡病院で、マラリアと診断されました。

 男性は仕事のため6月24日までの数カ月間、ギニアに滞在し、6月30日夜に成田空港に到着。静岡県東部のホテルに宿泊した翌7月1日早朝、39・8度の発熱を訴え検疫所に連絡しました。感染症指定医療機関の静岡市立静岡病院に搬送された際には、熱は38・9度でした。

 厚労省によりますと、男性がギニアでエボラ出血熱の患者と接触したという情報はないということです。

 一方、西アフリカのリベリア政府は1日、エボラ出血熱の感染者が新たに2人確認されたと発表しました。2人は、先月約6週間ぶりにエボラ出血熱への感染が確認され、その後死亡した17歳の青年から感染したといいます。

 保健当局が語ったところによると、感染した2人は6月28日に死亡した17歳の青年と生前に、首都モンロビアの南東、車で約1時間の国際空港の近くの村で、身体的接触があったといいます。

 世界保健機関(WHO)は、「これまでに102人の接触が確認されているが、調査が続けばこの数は増える見込みだ」と最新の報告書で述べています。また、「現段階では感染源はわかっていない。死亡した患者には最近の渡航歴、感染地域からの訪問者との接触、または葬儀の参列などはなかった」としています。

 2015年7月3日(金)

 

■市区町村の胃がん検診に内視鏡を導入 厚労省が指針を改定へ

 市区町村が行う胃がん検診で、バリウムをのむ従来のX線検査(バリウム検査)に加え、新たに内視鏡検査(胃カメラ)が導入される見通しになりました。厚生労働省の専門家検討会で、6月29日に了承されました。

 今後、対象年齢や受ける間隔を決め、指針を改定します。早ければ来春の検診から導入されます。

 一部の市区町村では独自の公的負担をして、鼻や口から内視鏡を入れる内視鏡検査をすでに実施していますが、指針が改定されれば導入する自治体が増えるとみられます。

 専門家検討会では、国立がん研究センター(東京都中央区)が4月に公表した2014年度版胃がん検診のガイドラインで、内視鏡検査を初めて「推奨」としたことなどから、検診に取り入れる科学的根拠があると判断されました。

 国立がん研究センターのガイドラインでは、内視鏡検査の対象年齢はがんのリスクが高まる50歳以上が望ましく、受ける間隔は「2~3年とすることが可能」としています。

 現在は、厚労省の指針により、40歳以上の住民を対象にX線検査を年1回行っています。X線検査は引き続き推奨するものの、対象年齢と受診間隔が内視鏡検査とはずれが生じます。

 全国的に市区町村が導入するには、内視鏡の専門医の確保、検査施設の整備、財政的な負担への対応などの課題が残ります。

 こうした点の議論を専門家検討会で続け、8月をめどに報告書をまとめるといいます。

 胃がん検診で行われているX線検査は、がんを早期に発見し死亡率を減少させる効果があります。そのため多くの検診で取り入れられていますが、検査による放射線被曝(ひばく)が問題視されていました。国立がん研究センターによると、新潟県や鳥取県、韓国で行われた近年の研究では、内視鏡検査で胃がんの死亡率を減少させる効果が確認されているといいます。 

 2015年7月2日(木)

 

■リベリアでエボラ出血熱が再発、新たに死者1人 5月に終息宣言したはずが

 西アフリカのリベリア政府は6月30日、国内で新たなエボラ出血熱の感染者が再び確認され、死亡したと発表しました。6週間余り前の5月9日に、エボラ出血熱の流行が終息したと宣言されていましたが、再燃する恐れが出てきました。

 死亡したのは、17歳の患者。首都モンロビア近郊のマージビ郡で感染が確認されました。流行が続くギニアやシエラレオネとの国境沿いではなく、感染経路は判明していません。今後、感染源を特定できるかが封じ込めの鍵となります。

 同国の副保健相は、「パニックになる必要はない。患者は死亡したが、亡くなる前に検査で陽性が確認された。遺体は埋葬され、接触のあった可能性のある人はすでに特定、隔離されている」と語りましたが、その人数や、死亡した患者についての詳しい情報は明らかにしませんでした。

 昨年3月ごろに西アフリカで始まったエボラ出血熱の流行はリベリア、ギニア、シエラレオネの3カ国を中心に過去最悪の規模で広がり、世界保健機関(WHO)によりますと、アメリカとヨーロッパを含む9カ国で合わせて2万6600人以上の患者が報告され、その41パーセントに当たるおよそ1万1000人が死亡し、中でもリベリアでは最も多い4700人超が死亡しています。

 2015年7月1日(水)

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