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健康ダイジェスト

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■一般用医薬品、購入1万2000円超で減税 1525品目対象に1月からスタート

 風邪薬や便秘薬など薬局、薬店、ドラッグストアで売られている一般用医薬品(OTC医薬品)の一部の購入額が年間1万2000円を超えた世帯の税金が軽減される医療費控除の特例制度が、来年1月からスタートします。

 軽い病気の症状なら医療機関にかからず、市販薬で治してもらうよう促すのが狙いで、政府には財政を圧迫する医療費の削減につなげたいとの思惑があります。症状に効く成分を含むと国が認めた医薬品が減税対象となり、パッケージに「セルフメディケーション税 控除対象」と記した目印が付いた製品が店頭に登場します。 

 来年から、医薬品を買った時のレシート(領収書)をこまめに残す人が増えそうです。

 1月に始まる税金の軽減制度は、家庭でもよく使われる一般用医薬品(OTC医薬品)が対象。その中でも、医療用医薬品としても実績があり、安全性が認められて処方箋(せん)がなくても店頭で手に入れられるようになった「スイッチOTC」に限られます。

 例えば、総合感冒薬の「パブロンSゴールドW微粒」(大正製薬)や、解熱鎮痛薬の「ロキソニンS」(第一三共ヘルスケア)、筋肉痛などを緩和する経皮鎮痛消炎テープ剤「フェイタス5・0」(久光製薬)など、およそ1525品目あると見なされます。

 税金の軽減制度は、こうした医薬品の年間購入額が、世帯主と扶養家族らを含めた合算で、計1万2000円を超えた部分の金額について、8万8000円を上限に、総所得金額から控除を受けられる仕組み。来年1月から2021年12月末まで5年間の時限措置で、市販薬を活用して健康管理する人を増やすことを目指す「セルフメディケーション(自主服薬)税制」と呼ばれます。    

 手続き上は、確定申告をして、払った税金の一部を取り戻します。このため1月1日から12月末までに購入したことを示す品目や金額が記載されたレシート(領収書)が必要になります。また、確定申告をする人が、1年間に定期健康診断やがん検診、感染症の予防接種を受けるなど健康管理に努めていた証明書類も必要。

 厚生労働省の試算モデルでは、課税所得400万円と仮定した世帯主と妻や子供らを合わせた購入額が年間2万円だった場合、適用下限額の1万2000円を差し引いた8000円が課税所得から控除されます。所得税(国税)と住民税(地方税)は、計2400円が戻ってくる計算になります。  

 税制上のメリットを設けることにより、厚労省医政局は、国民の健康管理意識の向上を期待すると同時に、「OTC医薬品で代えられるところは切り替えてもらい、高額な国民医療費を削減する効果をもたらしたい」としています。

 2016年12月31日(土)

 

■高齢者、寒い浴室で急激な血圧変化 暖房で温度差なくして事故予防

 高齢者が寒い浴室で風呂に入ると、血圧が30以上変動するとの実験結果を東京都健康長寿医療センター研究所の高橋龍太郎・前副所長らが30日までにまとめました。浴室を暖かくすると変動幅を半分程度に抑えられたといいます。

 高齢者に多い入浴中の死亡の原因になると考えられ、高橋さんは「脱衣室や風呂を暖房器具で暖めるなど、気温差の少ない環境づくりを心掛けてほしい」と話しています。

 実験は、東京ガスの試験室で実施。62~77歳の男性31人が参加し、風呂に入ってから出るまでの血圧などの変化を調べました。

 脱衣室と浴室の温度を18度、湯温を41度にした場合、服を脱いだ直後に平均で154に上がった最高血圧が、風呂に入ると122に急降下。風呂から出ると再び急上昇しました。

 血圧の変動は温度の変化によって血管が収縮したり、拡張したりするために起きると考えられ、変動幅は32~35でした。脱衣室と浴室を25度にすると、血圧の変動幅は15~22に縮小しました。

 高橋さんによると、高齢者の血管は硬く、弾力性がないため血圧の変動幅が大きくなります。加えて脈拍数が少ないため、血圧の急降下により必要な血液を届けにくくなり、入浴中に心筋梗塞(こうそく)や脳梗塞、意識障害、失神、転倒を起こして、溺死(できし)することもあります。

 東京都健康長寿医療センター研究所は、これまでに全国の消防本部への調査を基に、急激な温度変化による健康被害で、高齢者を中心に年間約1万7000人が入浴中に死亡したとの推計を発表。気温が下がる1月の心肺停止者数は、8月の約10倍に上ると注意喚起しています。

 安全な入浴法である「湯温41度以下、10分未満」を提唱している消費者庁のまとめによる安全な入浴方法は、①入浴前に脱衣場を暖める、②浴槽にお湯を張る時はシャワーからお湯を張って浴室全体を温める、③湯温は41度以下、湯につかる時間は10分未満に、④浴槽から急に立ち上がらない、⑤飲酒、食事直後の入浴は控える、⑥入浴する前に同居者に一声かける。

 2016年12月31日(土)

 

■糖尿病患者の平均寿命、治療法の進歩で改善 男性71歳、女性75歳

 2001~2010年に死亡した糖尿病患者の平均年齢は、男性が71・4歳、女性が75・1歳となり、日本人全体の平均寿命より男性が8・2歳、女性は11・2歳短かったと、愛知医科大学などの研究チームが全国調査の結果を国内専門誌で報告しました。

 一方、糖尿病患者の死亡時平均年齢の伸びは日本人全体よりも大きく、30年前の同様のデータと比べると男女とも差が2~3歳縮まりました。栄養管理や治療法の進歩が、改善を後押ししたとみられます。

 糖尿病患者は、脳梗塞(こうそく)や心筋梗塞を発症しやすいほか、白血球の機能が落ちて肺炎にかかりやすくなるため、日本人の平均寿命を待たずに亡くなる人が少なくありません。

 研究チームは、全国の1164医療機関に対してアンケートを実施、241施設から集まった2001~2010年に死亡した4万5708人分のデータを分析しました。1971~1980年に死亡した糖尿病患者の死亡時平均年齢を調べた過去の調査では、男性63・1歳、女性64・9歳で、日本人全体の平均寿命よりそれぞれ10・3歳、13・9歳短かくなっていました。

 研究代表者の中村二郎・愛知医科大学教授(糖尿病内科)は、「治療法や薬剤の進歩で患者の体調管理がよくなっていることが実証された」と話しています。

 2016年12月30日(金)

 

■独協医大病院、新たに31人が発症 胃腸炎の集団感染、計198人に

 入院患者162人と医療従事者5人の計167人が感染性胃腸炎を発症し、うち1人からノロウイルスが検出された独協医科大学病院(栃木県壬生〔みぶ〕町)で28日、新たに入院患者31人の発症が確認されました。25日からの発症者は計198人となり、うち141人はすでに治癒したといいます。

 同病院の病床数は1167床で、全入院患者の1割以上が発症したとみられます。33の病棟の大半で発症しており、県南健康福祉センターは28日も立ち入り検査を実施し、感染経路などを調べています。

 感染を受け、同病院は入院患者への面会を原則禁止しており、28日は、お見舞いに来た家族や知人らが持参した着替えや花束を病院に預けて帰っていました。同病院庶務課によると、重篤な入院患者への面会は個別で相談に応じるといいます。

 県健康増進課によると、栃木県内48の観測医療機関の感染性胃腸炎の報告数は、12月12~18日の週で1機関当たり14・44人。警報基準の20人には達していないものの、例年より半月程度早く流行が始まっており、6年前の同時期に近い高水準といいます。

 県健康増進課は、「例年、年が明けると流行は鈍化するが、3月まで患者数が高い水準で推移する」と、対策を呼び掛けています。

 感染性胃腸炎の感染経路は、ウイルスに汚染された食品を食べる「経口感染」や、患者の嘔吐(おうと)物の処理で消毒し切れなかったウイルスが塵(ちり)などと一緒に舞い上がって、人が吸い込む「塵埃(じんあい)
感染」などがあります。

 県生活衛生課によると、食品を取り扱う飲食店や食品製造業者にせっけんを使った手洗いの徹底や、下痢、嘔吐の症状がある従業員を業務に従事させないことなどを呼び掛けています。また、塵埃感染を避けるためには、嘔吐物を除去する際には、次亜塩素酸ナトリウムを含む消毒液や漂白剤で消毒するのが効果的といいます。

 2016年12月30日(金)

 

■全国のインフルエンザ患者、1週間で推計28万人に 東京都は流行注意報を発令

 厚生労働省と国立感染症研究所は12月26日、12月12日〜18日までの1週間のインフルエンザの流行状況を公表しました。定点1医療機関当たりの患者報告数は、前週より1・71人多い5・02人。43都道府県で前週より患者報告数が増えています。

 定点医療機関からの報告をもとにこの1週間に受診した患者数を推計すると、約28万人に上り、前週の約18万人より約10万人増加しました。定点1医療機関当たりの患者報告数は、前週の3・31人から5・02人に増えました。

 年齢別では、10歳~14歳がおよそ5万人で最も多く、次いで5~9歳がおよそ4万人などでした。

 都道府県別では、福井県の11・16人が最も多く、注意報レベルの10人に達しています。このほか、富山県9・73人、栃木県9・53人、北海道9・33人、岩手県9・29人、福島県8・47人、沖縄県8・43人、群馬県8・34人と続いています。首都圏は、埼玉県7・01人、東京都6・24人、神奈川県6・22人など。

 保健所レベルでは、北海道内の八雲、中標津、北見の3保健所地域で警報レベルの30人を超えているほか、1都1道1府20県の50保健所地域で注意報レベルにあります。

 インフルエンザによる閉鎖も増えており、全国で670の保育所、幼稚園、小学校、中学校、高校において、休校や学年閉鎖、学級閉鎖がありました。休校は11、学年閉鎖は114、学級閉鎖は545に上ります。

 インフルエンザウイルスの検出状況を11月14日〜20日よりの直近5週間でみると、AH3亜型の検出割合が最多で、AH1pdm09、B型の順に多くなっています。

 厚労省によると、インフルエンザは、38度以上の発熱、頭痛、関節痛、筋肉痛、全身倦怠(けんたい)感などの症状が比較的急速に現れるのが特徴。普通の風邪と同じように、のどの痛み、鼻汁、せきなどの症状もみられます。

 予防や重症化防止には、ワクチン接種が有効とされています。このほか、マスクによる飛沫(ひまつ)感染対策、手洗いの徹底、アルコール消毒、適度な湿度の保持、人混みへの外出を控える、休養と栄養バランスなどが大切だといいます。

 また、東京都は12月28日、都内でインフルエンザの患者が急激に増えていることから、今後、大きな流行が起きる恐れがあるとして、インフルエンザの流行注意報を出しました。流行注意報が出るのは例年に比べて1カ月余り早くなっています。

 東京都によりますと、12月19日〜25日までの1週間に都内の419の定点医療機関から報告されたインフルエンザの患者は1医療機関当たり10・58人となり、前週の約1・7倍と急激に増えています。

 また、検出されているウイルスは、A香港型が全体の93%を占め、患者は14歳以下の子供が全体のおよそ60%に上っているということです。感染の広がりを受けて都内では、12月25日までに延べ278の幼稚園や学校が学級閉鎖などの措置を取っています。

 東京都は、手洗いのほか、部屋の湿度を適度に保って乾燥を防ぐなど、インフルエンザの予防を徹底するよう呼び掛けています。

 2016年12月29日(木)

 

■福島県の甲状腺がん確定、10人増の145人に 2巡目の本格検査が終了
 
 福島県は27日、東京電力福島第一原発事故時に18歳以下だった約38万人に対する甲状腺検査で、7~9月に新たに10人ががんと診断され、計145人になったと発表しました。

 福島県の「県民健康調査」の検討委員会は、「これまでのところ被曝(ひばく)の影響は考えにくい」との立場を変えていません。

 甲状腺検査は、2011年秋から2013年度までの1巡目(先行検査)、2014年4月から2015年度の2巡目(本格検査)が終わり、今年度から3巡目(本格検査の2回目)に入っています。

 9月末までに、甲状腺がんの悪性または悪性疑いと診断されたのは、6月末の前回発表から9人増の計184人。うち116人は1巡目の検査で、68人は2巡目の検査で見付かり、3巡目の検査ではまだ報告されていません。2巡目の検査で甲状腺がんの悪性または悪性疑いと診断された68人の年齢は、検査時点で9歳から23歳。性別は男性31人、女性が37人と1対1・19の比率でした。通常、甲状腺がんは女性の比率が高くなっていますが、男性比率が極めて高い結果となりました。

 この点について、27日に開催された検討委員会で清水一雄委員が、「チェルノブイリ原発事故の変化の一つに男女比がある」とベラルーシの甲状腺医デミチク医師が言及していたことに触れ、福島県立医科大学の見解をただしましたが、甲状腺検査を担当している大津留晶氏は回答を控えました。また、春日文子委員が再発状態や遠隔転移について質問しましたが、これについても回答しませんでした。

 なお、68人の甲状腺にある、のう胞や結節(しこり)の大きさは5・3ミリから35・6ミリで、1巡目の検査の結果は、のう胞や結節が認められないA1判定だったのが31人、5ミリ以下の結節や20ミリ以下ののう胞が認められるA2判定だったのが31人で計62人。5・1ミリ以上の結節や20・1ミリ以上ののう包胞が認められるB判定だったのは5人。検査未受診者が1人いました。

 1巡目の検査では102人が手術を受け、101人が甲状腺がんと確定し、1人は良性腫瘍(しゅよう)でした。2巡目では手術を受けた44人で甲状腺がんが確定しました。6月末の前回発表では、原発事故当時5歳だった1人ががんと診断されましたが、新たにがんと診断された10人に5歳以下はいませんでした。

 福島県の「県民健康調査」の検討委員会は、被曝の影響が考えにくい理由として、チェルノブイリ原発事故に比べ福島県民の被曝線量が少ないとみられることや、がんが多発した5歳以下にほとんど発生していないことを挙げています。

 福島県では3カ月おきに、最新の甲状腺検査結果を発表しています。

 2016年12月29日(木)

 

■介護や育児で退職、4月から再雇用企業に助成金 1人当たり20万~40万円

 厚生労働省は来年4月、介護や育児などを理由に企業を退職した人の再雇用制度を後押しするため、企業向けの助成金を新設します。

 元従業員を復職させた企業に1人につき20万~40万円を支給するもので、多様な人材の活躍を目指す政府の「働き方改革」の一環。2017年度予算案に約37億円を計上し、初年度は最大1万人を対象とします。

 再雇用制度の対象となる離職理由は、妊娠、出産、育児、介護の4つで、いずれかの理由で退職した人を再雇用し、6カ月以上雇い続けた企業に助成金を支給します。助成額は、1人目は大企業30万円、中小企業40万円、2人目以降は、大企業20万円、中小企業30万円。再雇用して6カ月目と1年目に、半分ずつ2回に分けて支給します。

 再雇用制度を利用する前提条件として、企業には、再雇用制度を就業規則に盛り込むほか、退職時に再雇用の希望者のリストを作成することを義務づけます。再雇用する人には、退職から1年以上が過ぎていれば、離職していた期間は問わない方針。

 ただし、制度の悪用を防ぐため、再雇用後の処遇が著しく低くなる場合は対象外にすることを検討。例えば、子育て前に正社員だった人を賃金の低いパートなどとして再雇用した場合は、対象外とします。また、助成金を受けられる再雇用者の人数は、1社当たりの上限を設けます。

 2015年の国立社会保障・人口問題研究所の調査によると、第1子の出産を機に離職する女性は約5割。介護離職も深刻で、総務省の調査によると、家族の介護のために仕事を辞める人は年間約10万人に上ります。2014年の厚労省の委託調査によると、介護を理由に仕事を辞めた正社員の6割弱が「仕事を続けたかった」と回答しており、働きたくても不本意に辞める人も少なくありません。

 しかし、介護や子育てが一段落して働ける状況になっても、キャリアが一度途切れてしまうと、退職前に培った業務経験を生かして元の企業に復職することは簡単ではありません。厚労省の委託調査では、定年後の制度を除いて、再雇用制度を設けている企業は16・7%にすぎません。

 こうした状況を踏まえ、厚労省は、「再雇用制度は、働く側は、能力や経験を生かしやすい一方、企業にも、新たに人を雇って育てるコストを減らせる利点があるはず」と今回の制度の意義を強調しています。

 2016年12月28日(水)

 

■野鳥から鳥インフル検出、過去最高の年の2倍近くに達す 15道県で118件 

 今シーズン、死んだ野鳥などから高病原性の鳥インフルエンザウイルス(H5N6型)が検出されたケースは、すでに過去最高だった6年前の合計の倍近くに達しており、前例のない勢いで広がっています。環境省は、鳥インフルエンザウイルスが検出されず、監視態勢が強化されていない地域での検査を優先して行うことなどを申し合わせました。

 環境省によりますと、死んだ野鳥や野鳥のフンなどから致死率の高い高病原性の鳥インフルエンザウイルスが検出されたケースは、11月から12月27日までに北海道や秋田県、鹿児島県など15道県の118件に上り、すでに過去最高だった2010年から2011年にかけてのシーズン中に検出された62件の倍近くに達しています。

 鶏やアヒル、ウズラなどの家禽(かきん)から鳥インフルエンザウイルスが検出されたケースも北海道や青森県、新潟県など5道県の7件に上っており、鳥インフルエンザウイルスを含んだ野鳥のフンを小動物が運ぶなどして広がった恐れも指摘されています。

 鳥インフルエンザウイルスは、渡り鳥が大陸から運んできます。人間への感染はまれながら、家禽に広がりやすく、その際の経済的な損失は大きくなります。今シーズン、韓国ではすでに2500万羽を超える鶏やアヒルを殺処分し、日本では野鳥の感染件数が過去最高を超えました。鳥の種類によっては症状が現れにくく、確認されているよりも広範囲に感染が拡大している恐れもあります。

 20年ほど前に中国の家禽で最初に見付かって以来、鳥インフルエンザウイルスは少しずつ性質を変えながら感染範囲を広げてきました。近年では2010~2011年に韓国や日本で、2014~2015年に北米などで流行し、今シーズンは欧州でも感染報告が相次いでいます。流行が起きやすい状態が数年間は続く、との見方も出ています。

 環境省は、年明け以降も鳥インフルエンザウイルスが検出されるケースが増える恐れがあるとして、27日午後、専門家による緊急の対策会議を開きました。対策会議では、検査機関の態勢が限られる中、鳥インフルエンザウイルスが検出されず、監視態勢が強化されていない地域での検査を優先して行うことなどを申し合わせました。

 環境省は死んだ野鳥を見付けた時は、触らずに自治体に連絡することや、感染拡大を防ぐため、なるべく鳥のフンを靴で踏まないよう呼び掛けています。

 2016年12月28日(水)

 

■香港、鳥インフルで今冬初の死者 広東省に渡航歴のある75歳男性

 香港の保健当局は27日、75歳の男性が鳥インフルエンザに感染して死亡したと発表しました。

 男性は中国本土への渡航後、H7N9型の鳥インフルエンザウイルスへの感染が確認されていました。香港で今年の冬に鳥インフルエンザで死者が出たのは、初めて。

 基礎疾患を持つ75歳の男性は11月28日に香港に隣接する中国本土の広東省東莞(とうかん)市を訪れており、12月8日に胸の不快感のため病院にて受診。翌9日に香港に戻り、せき、息切れ、鼻水、胸の不快感のため、すぐに救急車で病院に搬送されました。検査ではエンテロウイルス/ライノウイルスに関して陽性を示し、鳥インフルエンザウイルスについては陰性でした。

 その後、男性は17日には発熱し、肺炎と診断されました。さらに21日、検査によりH7N9型鳥インフルエンザウイルスに対して陽性であることが確認され、容態が重体であるため隔離された下で処置を受けていましたが、25日に死亡しました。男性は、家きんや生鮮市場との接触については否定していたといいます。

 英字紙サウスチャイナ・モーニング・ポストの電子版は、同居者や医療関係者ら、男性と密接に接触した50人余りが医学観察下に置かれていると伝えています。

 同紙によると、香港でH7N9型鳥インフルエンザウイルスの域外感染が確認されたのは、17例目。

 鳥インフルエンザとは、鳥類がかかるA型インフルエンザの一種で、H5N1型、H7N7型などに分類されます。感染した鳥類が全身症状などの特に強い病原性を示すものを高病原性鳥インフルエンザと呼び、ニワトリ、七面鳥、ウズラなどが感染すると大量死することもあります。

 生きた病鳥や内臓、排泄(はいせつ)物に接触することで、鳥から人間にも感染し、発病した場合の致死率は6割を超えます。

 人から人への感染は2008年1月、中国でH5N1型による感染が初確認されましたが、ウイルスの変異はありませんでした。もし、ウイルスが人間の体内などで変異して、空気感染力などを持つ新型インフルエンザになると、世界中で大流行する恐れがあるため、各国政府も警戒を強めています。

 2016年12月28日(水)

 

■がん免疫治療薬「オプジーボ」、胃がん治療向けの承認申請 2017年中に国内販売か

 小野薬品工業は27日、がん免疫治療薬「オプジーボ」(一般名・ニボルマブ)を治癒切除不能な進行・再発の胃がんの治療にも使えるように、審査を担う独立行政法人の医薬品医療機器総合機構に申請したと発表しました。

 2017年度に承認される見通しだといい、すでに使われている皮膚がんや肺がん、腎臓がんなどに加え、患者数の多い胃がんにも活用の幅が広がることになります。

 オプジーボは、体の免疫機能を高めて、がん細胞を攻撃する新しいタイプのがん治療薬。手術ができないほど進行したがんを縮小させるなど、これまでの抗がん剤にはなかった治療効果が確認されています。遺伝子組み換え技術などを応用し、微生物や細胞が持つタンパク質を作る力を利用して製造される「バイオ医薬品」です。

 小野薬品工業は、胃がんのほか、あごや舌などのがんの治療にも使えるように申請しています。承認を取得すれば、2017年度には6種類のがん治療に使われることになります。

 ただ、肺がんの場合には体重60キロの男性患者が1年間使用すると、およそ3500万円かかると試算されるほど高額なため、医療費を抑えたい政府は来年2月からオプジーボの薬価を半額に下げることを決めました。

 2016年12月28日(水)

 

■喫煙の動脈硬化リスク、最大5・2倍 滋賀医大が1000人調査

 動脈硬化が進む危険性が、たばこを吸う人は吸わない人と比べて1・8~5・2倍高いことが、約1000人を対象にした滋賀医科大の大規模調査で明らかになりました。論文は、アメリカの心臓学会誌に掲載されました。

 動脈が硬くなったり狭くなったりすると、脳卒中や心筋梗塞(こうそく)につながります。喫煙と動脈硬化の因果関係については、病気を発症した人での研究はありましたが、一般の喫煙者の動脈がどう硬くなっていくかを詳しく調べ、因果関係を明らかにしたのは、国内で初めてといいます。

 三浦克之教授らの研究チームは、滋賀県草津市の健康な40~79歳の男性1019人、うち喫煙者329人を対象に心臓や首、足の血管の状態をコンピューター断層撮影(CT)や超音波で測定。飲酒や運動の有無など、たばこ以外の影響を除き、動脈の硬化と喫煙との関係を調べました。

 その結果、喫煙者の動脈硬化の進み具合の「危険度」は非喫煙者に比べて、足へ血液を送る末梢(まっしょう)血管で5・2倍、心臓から全身に血液を送る大動脈で4・3倍、脳へ血液を送る首の頸(けい)動脈で1・9倍、心臓の冠動脈で1・8倍でした。

 喫煙習慣が長期間にわたったり喫煙量が多いほど、動脈硬化の進むリスクは高くなりました。一方で、禁煙期間が長くなると、動脈硬化の進むリスクは低下する傾向もわかりました。

 三浦教授と久松隆史客員准教授は、「喫煙が全身の血管の動脈硬化を進展させることが明瞭に示された。動脈硬化による心臓病や脳卒中を予防するためには、まずタバコを吸い始めないこと、また、喫煙者ではできるだけ早く禁煙して、動脈硬化が進むのを予防することが大切だ」と話しています。

 2016年12月27日(火)

 

■排卵日検査薬、一般の薬局、薬店で販売 武田薬品など

 武田薬品工業が27日、女性が妊娠しやすいとされる排卵日を予測する排卵日検査薬「ハイテスターH」を一般の薬局、薬店で売り出しました。

 厚生労働省が11月、検査薬として25年ぶりに排卵日の検査に使う一般用医薬品7品目を承認し、これまで医師の処方箋(せん)を必要とする医療用医薬品として調剤薬局でしか販売できませんでしたが、一般の薬局、薬店でも販売できるようになった影響です。

 排卵日検査薬は、尿中の排卵を促す女性ホルモンである黄体形成ホルモンを検出するもので、女性が最も妊娠しやすい時期とされる排卵日を1日前に予測します。

 排卵日検査薬「ハイテスターH」は、検査薬大手のミズホメディー(佐賀県鳥栖市)から製品の供給を受け、武田薬品工業が売り出しました。すでにロート製薬は12月21日に、排卵日検査薬「ドゥーテストLH」を発売しました。反応する感度がよく、尿をかける時間が2秒と短くすみます。

 ミズホメディーも来年に排卵日検査薬を発売し、製薬企業のアラクス(名古屋市)も来年早々に売り出す予定。

 2016年12月27日(火)

 

■ノロウイルス大流行、過去最悪に迫る高い水準 遺伝子変異型ウイルス広がる

 国立感染症研究所は27日、ノロウイルスなどが原因の感染性胃腸炎の1医療機関当たり患者数が、12月12~18日の直近1週間で20・89人となり、大流行した2012年の19・23人を上回ったと発表しました。

 厚生労働省によると、現行の統計を始めた1999年以降、流行警報の基準となる20人を全国平均で超えたのは2006年の22・81人以来、10年ぶり2回目。

 ノロウイルスは感染すると、1~2日の潜伏期間の後、激しい嘔吐(おうと)や下痢を繰り返します。乳幼児や高齢者の場合、脱水症状などを起こして入院治療が必要になることもあります。保育所や幼稚園、学校、老人福祉施設などで感染が広がることが多く、厚労省は改めて手洗いや消毒を徹底するよう呼び掛けています。

 全国に約3000ある定点医療機関から報告された患者数は、直近1週間で6万6015人で、11月に入ってから急増しています。

 都道府県別にみると、山形県が47・27人で最も多く、宮城県34・08人、埼玉県31・66人、宮崎県30人、富山県29・24人、東京都28・46人、三重県23・47人、兵庫県24・08人、大阪府21・25人、愛知県20・9人などと、21都府県で警報レベルの20人を超え、猛威を振るっています。

 ウイル遺伝子が変化したタイプ(変異型)のウイルスが広がったとみられます。

 北里大学の片山和彦教授(ウイルス感染制御学)は、「2006年や2012年も変異型のウイルスが流行しており、子供に続いて大人でも大規模な食中毒などが続発した。今冬も注意が必要で、手洗いの徹底など感染予防に努めてほしい」と話しています。

 厚労省は先週、全国の自治体などに改めて感染予防対策を促す通知を出しました。変異型のウイルスは一般の検査キットでは確実に判定できない可能性があるため、厚労省は「ノロウイルスの可能性がある場合は、感染防止対策に努めてほしい」と呼び掛けています。

 2016年12月27日(火)

 

■ワクチン未接種の女性にも一定割合で症状 子宮頸がんワクチン全国調査

 子宮頸(けい)がんワクチンを接種した後に、原因不明の体の痛みなどの症状を訴える女性が相次いだ問題で、厚生労働省の研究班は、ワクチンを接種していない女性にも一定の割合で同様の症状がみられたとする全国調査の結果を公表しました。

 厚生労働省は「この結果だけでは接種と症状との因果関係は判断できない」として、現在中止している接種の積極的な呼び掛けを再開するかどうかは引き続き検討するとしています。

 子宮頸がんワクチンは、国内で7年前に接種が始まり、2013年4月からは小学6年生から高校1年生の女子を対象とする定期接種に追加されました。以来、ワクチンを接種した後に体の痛みなどを訴える女性が相次ぎ、厚労省は、定期接種を始めたわずか2カ月後、接種の積極的な呼び掛けを中止する異例の対応を取りました。

 接種と症状との因果関係を調査してきた厚労省の専門家会議は、2014年1月、「ワクチンの成分によって神経や免疫などに異常が起きるとは考えにくく、接種の際の不安や痛みなどが切っ掛けで症状が引き起こされた可能性がある」とする見解をまとめました。

 しかし、その後も詳しい原因は特定できず、2015年11月、厚生労働省は接種していない人にも症状が出ているかを調べるため、大規模な調査を行う方針を打ち出していました。

 この実態を把握するために行った全国調査の結果が26日、厚労省の研究班により専門家会議の中で報告されました。

 全国調査では、2015年末までの半年間に全国の病院を受診した12歳から18歳の男女2500人余りの症状について、「体の痛みや運動障害、それに記憶力の低下などの症状が3カ月以上続いて、仕事や学校生活に支障が出ていないか」を分析しました。その結果、子宮頸がんワクチンを接種した女性では、推計で10万人当たり27・8人に症状が確認された一方で、接種していない女性にも、推計で10万人当たり20・4人に症状がみられることがわかったということです。

 この結果について、厚生労働省は「同じ症状が出た場合でも、社会問題となったことで、ワクチンを接種した人のほうが医療機関を受診することが多いとみられる上、医師もより慎重に診断するため報告が上がりやすくなることも考えられる」とし、「今回の調査結果だけで接種した人と、していない人の発症率を比べることはできず、接種と症状との因果関係は判断できない」としています。

 このため厚生労働省は、引き続き専門家会議で因果関係の検証を進め、接種の積極的な呼び掛けを再開するかどうかを判断したいとしています。

 今回の全国調査の結果について、日本産科婦人科学会の藤井知行理事長は、「これまで学会が訴えてきた通り、我が国においてもワクチンと関係なく思春期の女性にとう痛や運動障害などワクチン接種後に報告されている多様な症状を呈する方が相当数いらっしゃることが確認されました。こうした症状のある女性の診療に今後も真摯(しんし)に取り組んでいくとともに、将来、我が国だけで多くの女性が子宮頸がんで命を落とすという不利益がこれ以上拡大しないよう、国が一刻も早くワクチンの接種勧奨を再開することを強く求めます」とするコメントを発表しました。

 また、子宮頸がんワクチンの問題で国と製薬会社2社に対して治療費などを求める訴えを起こしている弁護団が26日、記者会見を開きました。この中で、弁護団の水口真寿美弁護士は、「ワクチンの接種後に起こる症状の特徴は、1人の患者に複数の症状が出ることだと考えているが、今回の調査は症状が1つだけの人も対象になっているなど、実態を正しく捉えられていないと感じる。今回の調査結果だけでワクチンを接種していない人にも接種後の人と同様の症状が出ているとはいい切れず、この結果をもとに接種の積極的な呼び掛けを再開するかどうか議論するのは科学的ではない」などと指摘しました。

 2016年12月27日(火)

 

■ピロリ菌除去後も遺伝子異常で、がんの再発リスク3倍 国立がん研究センターが調査

 胃がんの手術が成功し、原因となるピロリ菌の除去をした人でも、「メチル化」と呼ばれる異常が遺伝子に多く蓄積していると、再びがんになるリスクが3倍高くなっているとする研究結果を国立がん研究センターなどの研究チームがまとめました。

 国内で胃がんと診断される人は毎年13万人を超え、手術後には胃がんができる原因とされるピロリ菌を抗生物質で取り除く治療も行われていますが、その後、再びがんになる人も少なくなく早期発見が課題となっています。

 国立がん研究センターの牛島俊和・エピゲノム解析分野長らの研究チームは、胃の粘膜にすみ着くピロリ菌除去の治療後の患者795人を対象に、メチル化と呼ばれる異常が遺伝子にどの程度起きているのか調べました。

 そして、異常の多さに応じて患者を4つのグループに分け、毎年1回、平均5年にわたり内視鏡検査を実施したところ、異常が最も少なかったグループでは新たな胃がんを発症した人の割合が約7%だったのに対し、最も多く異常が蓄積したグループでは約20%と約3倍に上っていました。

 研究を行った牛島分野長は、「除菌した後でも発症リスクの高い人がわかれば、検診を徹底し、早期発見につなげることができる。メチル化の異常は肝臓や大腸など、ほかのがんにもかかわるとみられるので、同様の診断に使えるか研究を進めたい」と話しています。

 2016年12月26日(月)

 

■ウイルスの遺伝情報を壊せる酵素を開発 岡山大学の研究グループ

 ウイルスの遺伝情報を壊すことができる酵素を作り出したと岡山大学大学院の研究グループが発表し、今後、この酵素を使ってエイズウイルスなどさまざまなウイルスの感染予防や病気の治療につなげたいとしています。

 岡山大学大学院自然科学研究科の世良貴史教授(タンパク質工学)が記者会見を開いて発表したところによりますと、体内に侵入したウイルスは自身の遺伝情報であるRNA(リボ核酸)をコピーしながら増やすことで、さまざまな病気を発症させるということですが、研究グループは、この遺伝情報にくっ付いて壊し、増殖を防ぐ酵素を開発したということです。

 酵素は「人工RNA切断酵素」と名付けられ、遺伝情報を壊す機能を持つ酵素と、遺伝情報を認識してウイルスにくっ付くタンパク質を組み合わせています。

 実験では、この酵素でインフルエンザウイルスの遺伝情報を5分ほどで完全に壊すことができたいうことで、遺伝情報を壊せばウイルスは体内で増えることができず病気も発症させないとしています。

 ウイルスごとに遺伝情報にくっ付くタンパク質を変えることで、ほかのウイルスへも応用が可能だとしており、エイズウイルスやエボラウイルスなど、RNAが遺伝情報となるさまざまなウイルスの感染予防や病気の治療につなげたいとしています。

 世良教授は、「ウイルスによる世界的な流行がいつ起こるかわからない中で、病気を防ぐ技術として近い将来の実用化を目指していきたい」と話しています。

 2016年12月25日(日)

 

■強壮用の健康食品9製品から医薬品成分 頭痛、動悸など健康被害を生じる恐れ

 厚生労働省は24日までに、2014年度に国内で強壮効果を目的として販売されている健康食品を調べたところ、171製品のうち9製品から医薬品成分を検出したと発表しました。

 この医薬品成分が原因で頭痛や動悸(どうき)などの健康被害を起こす可能性があるとして、厚労省は製品を購入しないよう注意を呼び掛けています。

 いわゆる健康食品については、医薬品成分を含有する製品が発見されたり、医薬品成分を原因とする健康被害が報告されているため、厚労省は、これらの製品の流通実態の把握と取り締まりを行うために、市場流通品を購入して、分析を行う「無承認無許可医薬品等買上調査」を2001年から実施しています。

 2014年の買上調査では、強壮効果を目的として販売されている健康食品171製品を40道府県で購入し、国立医薬品食品衛生研究所で分析を行った結果、岩手県、山形県、埼玉県、香川県、愛媛県、福岡県で販売されていた「VANTN G」「龍」「男快」「2H&2D」「HSA キング」の9製品から、性的不能治療薬の成分「タダラフィル」「シルデナフィル」「ホモタダラフィル」の3種類が検出されました。

 現在のところ、これらの製品による健康被害は報告されていないといいますが、これらの製品により頭痛、動悸などの健康被害を生じる可能性があるといいます。

 すでに関係する県が取り扱い業者などに対して、販売停止、回収を行うよう求めているといいますが、厚労省は、9製品を持っている人は直ちに使用を中止するとともに、健康被害が疑われる場合には医療機関を受診するよう呼び掛けています。

 2016年12月25日(日)

 

■小中高生の視力、いずれも過去最悪 スマホなどの長時間利用が影響

 裸眼の視力が「1・0未満」の子供の割合が小中高で過去最高となったことが22日、文部科学省の2016年度学校保健統計調査(速報)で明らかになりました。文科省は、「スマートフォンやテレビゲームの長時間利用が影響したのではないか」と分析しています。

 全国の5~17歳の343万7000人(全体の25・3%)を対象に調べました。

 視力が1・0未満の子供の割合は、小学生が31・46%、中学生が54・63%、高校生が65・98%で、いずれも調査を始めた1979年以来最も高くなりました。これを30年前の親の世代と比べると、小学生が12ポイント、中学生が17ポイント、高校生が13ポイント、いずれも高くなっています。幼稚園は27・94%で、過去最高だった2008年度の28・93%は下回ったものの、3年連続で上昇しました。

 東京都内の眼科医によりますと、授業で黒板の文字が見えず、眼鏡を作るために訪れる子供は増えており、低学年から中学年にかけてが特に多いということです。

 東京都眼科医会の前田利根常任理事は、「幼いころからゲームやスマートフォンなどに触れる機会が多いことが影響しているのではないか。これらを15分使ったら、いったん休憩するなど、家庭でルールを決めることが必要だ」と話しています。

 虫歯のある子供の割合は、中学生が37・49%、高校生が49・19%で、過去最低となりました。ピークは1970~80年代で、小学生と中学生は1979年にそれぞれ94・76%、94・52%、高校生は1980年に95・90%と過去最高でした。

 また、東京電力福島第1原子力発電所事故後に増えていた福島県の肥満の子供の割合は、事故前の水準にほぼ戻りました。

 実際の体重と標準体重から算出する肥満度が一定水準を超えた子供を「肥満傾向児」と、文科省は定義。全国の5~17歳の69万5000人(全体の5・1%)を調べました。福島県の割合は事故後の初調査となった2012年度以降、多くの年齢で3年連続で全国トップとなりました。事故後、屋外での運動制限や、車で子供を送り迎えする保護者が増えたことなどが、影響したとされています。

 9歳の肥満傾向児の割合は、2010年度に11・16%(全国8位)だったものの、2012年度に13・97%(1位)に上昇。2013年度は12・76%(2位)、2014年度は15・07%(1位)、2015年度は12・84%(2位)と高水準が続きましたが、2016年度は12・02%(5位)に改善しました。

 文科省は、「独自の運動プログラムを学校で実施するなど、運動不足解消に向けた福島の取り組みが奏功している」とみています。

 全国的には肥満傾向児の割合は、10年前に比べて減少傾向にあります。2006年度は6歳が5・34%、12歳は11・73%でしたが、2016年度はそれぞれ4・30%、9・52%に低下しました。

 2016年12月23日(金)

 

■エボラ出血熱、初めてのワクチンで発症を予防 高い確率で予防とWHO発表

 西アフリカのギニア、シエラレオネ、リベリアなどで流行したエボラ出血熱について、世界保健機関(WHO)は、カナダ政府が開発したワクチンが病気の発症を高い確率で予防するとした臨床試験の結果を発表し、新たな流行を防ぐための対策の要となる初めてのワクチンとして期待されることを明らかにしました。

 このワクチンは、カナダ政府が開発したもの。WHOなどの研究グループは、エボラ出血熱が流行していた西アフリカのギニアを中心に昨年3月から今年1月まで、患者と接触した可能性が高い家族や知人など感染の疑いがある1万2000人余りを対象に臨床試験を行いました。

 その結果、感染の疑いがわかり、すぐにワクチンを接種したおよそ3700人は、接種から10日たっても1人も病気を発症しなかったということです。一方で、ワクチンの接種を3週間遅らせた人や、接種しなかった人は、およそ8000人のうち34人が病気を発症したとしています。

 エボラウイルスには複数のタイプがあり、今回のワクチンは、2013年から今年にかけて西アフリカのギニアなどで流行した「ザイール」というタイプのウイルスに効果があるよう開発されたということです。

 WHOは、このワクチンが「エボラウイルスへの感染を防ぐ初めてのワクチンだ」としており、エボラ出血熱の新たな流行を防ぐための対策の要になると期待されています。今後新たな問題が生じない限り、ワクチンは最速の認可手続きを経て、2018年に入手可能となることも視野に入っているといいます。

 エボラ出血熱は、2013年の12月から西アフリカのギニア、リベリア、シエラレオネの3カ国を中心に過去最悪の規模で流行し、2016年1月に終息するまでに2万8000人以上が罹患し、世界全体で1万1300人以上が死亡しました。

 2016年12月23日(金)

 

■75歳未満のがん死亡率、目標下回る15・6%減 乳がんと子宮頸がんは増加

 2015年までの10年間にがんによる75歳未満の死亡率を20%減らすという国の目標が達成できなかったことが21日、厚生労働省のがん対策推進協議会で報告されました。

 報告した国立がん研究センターが人口動態統計を基に、高齢化などの影響を取り除いた死亡率を計算したところ、2015年は人口10万人当たり78・0人で、がん対策推進基本計画で国が掲げた減少目標である人口10万人当たり73・9人を達成できませんでした。10年前の2005年の92・4人から、減少幅は15・6%減にとどまりました。

 がん研究センターによると、75歳未満のがん死亡率は長期的に減少傾向で、肝臓がんによる死亡者は2005年から半減、胃がんによる死亡者も3割ほど減りました。しかし、肺がんや大腸がんは減少率が鈍化しており、乳がんと子宮頸(けい)がんは逆に増加しました。特に子宮頸がんは、死亡率の増加が加速しています。

 減少幅が国の目標に届かなかった理由について、がん研究センターの片野田耕太・がん登録統計室長は、「患者数の多い肺がんや大腸がんで、死亡率の減少が鈍化したため」と説明しています。

 肺がんは、2005年までの10年間は9・3%減でしたが、2015年までの10年間では7・3%減にとどまりました。大腸がんも、2005年までの10年間の10・0%減から、2015年までの10年間は6・5%減と減少幅が縮小しました。喫煙率の改善やがん検診の受診率の向上が十分ではなかったことが、影響しているといいます。

 子宮頸がんは、原因となるウイルスの感染対策が十分にできていないことなどが影響し、2005年までの10年間は3・4%増でしたが、2015年までの10年間は9・6%増でした。

 国は目標達成が困難との予測を受け昨年、がん対策加速化プランを策定。がん対策基本法が今月、改正されたことも踏まえ、がん対策推進協議会は2017年度から始まる次期基本計画の見直しを進めています。

 目標を達成できなかったことを踏まえ、厚労省は「実効性のある対策を検討する」と話しています。

 2016年12月22日(木)

 

■ノロウイルス、遺伝子変異で感染リスク増大の恐れ 餅つき大会中止など各地に影響広がる

 大きな流行になっているノロウイルスは、遺伝子に複数の変化が起きて、人への感染の危険性が高まっている恐れのあることが国立感染症研究所や北里大学などの調査でわかりました。

 過去に感染し免疫を獲得した人でも再感染しやすくなっている可能性があり、子供中心の流行が今後、大人にも拡大し、食中毒の多発などにもつながる恐れがあるとして、専門家が注意を呼び掛けています。

 ノロウイルスは、激しい嘔吐(おうと)や下痢などの胃腸炎を引き起こすウイルスです。感染力が強く、乳幼児や高齢者の場合、脱水症状などを起こして入院治療が必要になることもあります。

 国立感染症研究所などの研究グループが、今シーズン、全体の7割以上を占める「G2・2」というタイプのウイルスを詳しく調べたところ、遺伝子に変化が起きていることが明らかになりました。遺伝子の変化は、人への感染力にかかわる部分で起きていて、過去に感染し、免疫を獲得した人でも再感染しやすくなっている可能性があるということです。

 同様の遺伝子の変化は、10年前の2006年にも確認され、大きな流行が起きています。当時、流行していた「G2・4」というタイプのウイルスの遺伝子が変化し、人が免疫を持たない新たなウイルスとなって感染を広げました。例年より1カ月早い10月ごろから患者が急速に増え始め、国立感染症研究所によりますと、9月から12月上旬までの3カ月余りで、子供を中心に患者は推計300万人以上に上りました。

 このうち、東京都内のホテルでは利用客など360人以上の集団感染が発生。ノロウイルスの感染経路は通常、ウイルスの付着した手を口元に持っていく経路がほとんどですが、このケースでは利用客の嘔吐物を通じて床のじゅうたんにウイルスが付着し、消毒が十分でないまま、そのじゅうたんの上を人が歩くことでウイルスが空中に舞い上がり、感染が広がった可能性が指摘されています。

 また、2006年は、ノロウイルスが原因の食中毒も多発。厚生労働省によりますと、ノロウイルスが原因の食中毒は499件と、例年より100件以上多く、患者は2万7616人に上りました。

 ノロウイルスについて詳しい北里大学の片山和彦教授は食中毒が多発した理由について、遺伝子の変化によって免疫を持つ大人にも感染が広がったこと、症状が治まってもウイルスが1、2週間ほどは便から排出されることを知らない人が多いと思われること、手や腕のそでぐちなどにウイルスが付着した状態で調理を行ったケースがあったことなどを挙げています。

 片山教授によりますと、年明けの1月以降に食中毒の発生が多くなったケースもあり、「自分が感染した場合だけでなく家族に感染者がいる場合も調理前に服を着替え、手洗いの徹底を行うことが重要だ」ということです。

 一方、ノロウイルスが全国的に猛威を振るう中、各地に影響が広がっています。

 宮城県では、水揚げされたカキからノロウイルスが相次いで検出され、宮城県漁業協同組合は、12月20日から25日まで、県内すべての海域で生食用カキの出荷を見合わせました。静岡市清水区の小学校では11月に、給食の調理員がノロウイルスに感染していたことがわかり、一時的に給食を中止しました。

 影響は、年末年始にかけての催し物にも及んでいます。全国的に相次いでいるのが、ノロウイルスの流行を理由にした餅つき大会の開催中止です。

 千葉県木更津市の郷土博物館は、23日に開催予定だった餅つき大会の開催を見送りました。10年前からほぼ毎年行っていましたが、ノロウイルス対策を理由に中止するのは初めて。地元の保健所から、「流行のピークなのでやめたほうがよい」と助言されたといいます。同館は、「昨年は子供からお年寄りまで150人ほどが来場した。万一の時はたくさんの人が感染してしまう」と理解を求めています。

 岡山市の岡山聖園(みその)幼稚園も、年末恒例の餅つき大会を今年は中止しました。「子供が伝統文化に触れ食育にもなっていたが、子供の健康が第一」と説明しています。川崎市の武蔵小杉駅前の商店街や愛知県豊川市の豊川市民病院も、同様に取りやめました。

 餅つきは、手返しや切り分け、味付けなど、手で触れる工程が多く、手指についたノロウイルスから感染が広がりやすくなります。熊本県南小国町の保育園では、8日の餅つき大会が原因とみられる食中毒が発生し、園児や保護者など計52人が嘔吐や下痢を訴えました。

 一方、感染防止策に取り組み、例年通り開催するところもあります。東京都世田谷区の上町児童館では18日、餅つき大会が行われました。調理スタッフは全員マスクと手袋を着用し、子供たちには消毒を徹底しました。親子で参加した近くの主婦は、「餅つきは家庭ではできない体験。実施できてよかった」と話しています。

 東京都町田市の小川自治会は昨年から、同市保健所の助言に従い、ついた餅をあんこ餅ときなこ餅に調理するのをやめました。白餅として販売し、自宅で煮たり焼いたりして食べてもらいます。「ついた餅は飾り用の鏡餅にして食べないようにするか、雑煮や汁粉など火を通して提供すれば、感染リスクは減らせる」と同保健所。

 厚労省によると、餅つきに食品衛生法の規定はなく、主に自治体の保健所などの判断に委ねられるため、各地で対応が異なっています。

 日本の食文化に詳しい熊倉功夫・国立民族学博物館名誉教授は、「餅つきには共同体を結び付けてきた側面もあり、中止すると地域がますますバラバラになる。衛生面と両立する方法を模索してほしい」と話しています。

 2016年12月22日(木)

 

■薬価改定を毎年実施、政府が基本方針を決定 2018年度から実施へ

 政府は20日、現在、2年に1度行われている薬価の改定を巡って、本格的な改定が行われない年にもすべての薬の中から一部を抽出して調査を行い、価格変動が大きい薬の価格を見直すなど、薬価を毎年改定するとした基本方針を決定しました。市場の実勢に近い価格に下げやすくし、高騰する医療費の抑制につなげます。

 薬価の改定を巡っては、政府の経済財政諮問会議で、民間議員が市場価格が適切に反映されるよう、毎年改定を実施することなどを求める提言を提出し、安倍晋三首相大臣が薬価制度の改革の基本方針を取りまとめるよう指示しました。

 これを受けて、麻生太郎副総理兼財務相、塩崎恭久厚生労働相、菅義偉官房長官、石原伸晃経済再生担当相が閣議の後、持ち回りの4閣僚会合で、薬価制度の抜本改革に向けた基本方針を決定しました。

 それによりますと、2年に1度の本格的な薬価改定が行われない年にも、すべての薬の中から、大手の流通業者などが扱う一部の薬を抽出して調査を行い、市場価格と薬価(公定価格)との差が大きい薬の価格を下げるなど、薬価を毎年改定するとしています。また、効能の追加などによって、当初の予想を上回る販売額となった薬は、新薬の保険適用の機会を最大限活用し、年に4回見直すとしています。

 一方、具体的な調査方法などは、厚労相の諮問機関である中央社会保険医療協議会(中医協)で検討して、来年結論を出すことになりました。

 薬価の毎年改定は、2018年度から実施します。

 公的保険を適用する薬の価格は、国が決定権を持ちます。今の制度では2年に1度見直す決まりで、1度決まれば2年間、薬価(公定価格)は変わらないものの、医療機関の仕入れ値に近い市場価格は後発薬の普及などで下がる傾向にあります。

 この差額は、製薬会社や医療機関の収益となっています。超高額のがん治療薬オプジーボのように海外より2倍以上高い薬が登場し、政府は見直しの頻度を高める必要があると判断しました。

 2016年12月22日(木)

 

■アスベストが原因で労災認定など、新たに1053人 勤務先は全国918事業所

 厚生労働省は20日、アスベスト(石綿)が原因の疾病で2015年度に新たに労災認定を受けたり、石綿健康被害救済法に基づく特別遺族給付金の支給対象になったりした人が働いていた全国918事業所の名称を公表しました。このうち初公表は695事業所。

 厚労省によると、2015年度に肺がんや中皮腫、石綿肺などで労災認定されたのは1033人、特別遺族給付金の対象は20人、計1053人でした。業種別では、アスベストが含まれる断熱材などを扱っていた影響で建設業が552人と最も多く、次いで、アスベストの製造工場を含む製造業が416人となっています。

 アスベストは健康被害が出るまでに30年から40年と長い潜伏期間があるため、厚労省は、1053人の勤務先のうち、個人で仕事を請け負う「一人親方」や特定できなかったぶんを除いた全国918カ所の事業所の情報をホームページで公表しており、過去に働いていた人や周辺住民に健康状態の確認を呼び掛けています。

 厚労省は21、22日の午前10時から午後5時まで、専用の電話相談の窓口を設置します。番号は03(3595)3402。各地の労働局や労働基準監督署でも相談を受け付けます。

 また、被害者支援の民間団体「中皮腫・アスベスト疾患・患者と家族の会」も21、22日の午前10時から午後6時まで、フリーダイヤル0120・117・554で電話相談を受け付けます。

 2016年12月21日(水)

 

■ノロウイルス、患者の増加続き大流行並みに 東京、山形など13都県で警報レベル

 国立感染症研究所は20日、ノロウイルスなどによる感染性胃腸炎の患者報告数が12月5~11日の直近の1週間で、1医療機関当たり19・45人を数えたと発表しました。

 前週の17・37人からの伸びは小さいものの、今季も含めた過去10シーズンで最も流行した2012年のピーク時の19・62人に迫る水準です。専門家は、こまめな手洗いや嘔吐(おうと)物などの適切な処理を呼び掛けています。

 国立感染症研究所によると、全国約3000カ所の小児科など定点医療機関から報告された患者数は、11日までの1週間では6万1547人で、前週を6671人上回りました。1医療機関当たりだと、19・45人と昨季のピーク時の2倍ほどで、猛威がなお続いています。最近では2006年に22・81人だった週があります。

 直近1週間の1医療機関当たりの患者数を都道府県別にみますと、山形県が45・37人と最多で、宮城県41・44人、埼玉県30・89人、東京都27・24人、三重県26・18人、宮崎県26・03人、福井県25・23人、神奈川県24・75人、兵庫県23・51人、千葉県22・88人、富山県20・93人、静岡県20・92人、愛知県20・52人など。13都県で、大きな流行が疑われる警報レベルの20人を上回りました。

 今シーズンでこれまでに検出されたノロウイルスの大半は、近年流行していなかった「G2・2」タイプ。免疫がない子供がかかりやすいとみられ、各地の幼稚園や保育所、小学校などで集団感染が相次ぎ、学級閉鎖や休校も出ています。

 ノロウイルスは感染力が非常に強く、患者との接触や患者の排せつ物、嘔吐物、ウイルスに汚染された食品などを通じて、口から感染します。

 国立感染症研究所の木村博一室長は、「今は子供を中心に感染が広がっているが、今後、大人や高齢者に感染の広がりが移っていくことが懸念される。また食中毒の危険もあるので、忘年会のシーズンだが、しっかりと食品は加熱するとともに、食事前を始め手洗いを徹底してほしい」と話しています。

 2016年12月20日(火)

 

■がん免疫治療薬「キイトルーダ」、がん患者に無償提供 アメリカの製薬大手メルク

 アメリカの製薬大手メルクの日本法人であるMSDは19日、がん免疫治療薬の「キイトルーダ」(一般名・ペムブロリズマブ)について、条件付きで一定期間患者に無償提供すると発表しました。

 薬価が決まるまで患者が使えない状況に対応するためで、患者の要望に応えるとともに、医療現場で早く浸透させる狙いがあるとみられます。

 キイトルーダは、小野薬品工業が製造販売する「オプジーボ」(一般名・ニボルマブ)の類似薬。体の免疫力を再活性化させることで、がん細胞が免疫の攻撃を逃れる仕組みを解除し、がんを治療します。9月に皮膚がんの一種である悪性黒色腫(メラノーマ)に対して厚生労働省から承認を得たのに続き、19日付で肺がんの大部分を占める非小細胞肺がんについても認められました。

 無償提供の対象は、肺がん患者のうち、最初の抗がん剤としてキイトルーダの使用が可能な患者です。臨床試験に参加していた医療機関のうち、市販後の調査などに協力できる所に無償提供を限定します。使用の可否は事前検査で判断され、期間は薬価が決定するまでとしています。2017年2月にも薬価が決まる見通し。

 抗がん剤などの無償提供を行う例はありますが、新薬は薬価が決まってから売るのが一般的です。日本肺癌(がん)学会と患者団体が肺がんの最初の抗がん剤としてキイトルーダを使えるよう、早期承認の要望書を厚労省に出していました。

 オプジーボを製造販売する小野薬品とその提携企業の米ブリストル・マイヤーズスクイブは、キイトルーダがオプジーボの特許を侵害しているとして、日米欧の各国でライセンス料の支払いを求めて提訴しています。

 2016年12月20日(火)

 

■抗精神病薬、知的障害児の1割に処方 うち半数で300日以上の長期処方

 財団法人・医療経済研究機構などの研究チームが健康保険組合加入者162万人を対象に行った調査で、主に統合失調症の治療に使われる抗精神病薬が知的障害児の約1割に処方されていることが明らかになりました。

 人口に対する統合失調症患者の割合よりはるかに高く、うちほぼ半数で年300日分以上も薬が出ていました。研究チームは、「大半は精神疾患がないケースとみられ、知的障害児の自傷行為や物を破壊するなどの行動を抑制するためだけに処方されている可能性が高い」として、警鐘を鳴らしています。

 研究チームは、健康保険組合の加入者162万人の診療報酬明細書(レセプト)のデータベースを使い、2012年4月〜2013年3月に知的障害と診断された患者2035人(3〜17歳)を1年間追跡調査。

 その結果、抗精神病薬を期間内に1回でも使った人は、12・5%いました。年齢別では、3〜5歳が3・7%、6〜11歳が11%、12〜14歳が19・5%、15〜17歳が27%と、年齢が上がるほど処方割合が高くなっていました。

 また、2種類以上の薬が31日以上継続して処方される「多剤処方」の割合も、年齢が上がるとともに増加していました。

 統合失調症患者は人口の0・3〜0・7%とされ、発症も10歳代後半から30歳代半ばが多くなっています。患者の大半には抗精神病薬が処方されるといいます。

 知的障害児の行動障害の背景に精神疾患が認められない場合、世界精神医学会の指針では、まずは薬を使わず、環境整備と行動療法で対処するよう勧めています。抗精神病薬は興奮や不安を鎮める一方で、長期の服用により体重増加や糖尿病などの副作用が出る恐れがあるほか、適切な療育が受けられない恐れも出てきます。

 研究チームの奥村泰之・医療経済研究機構主任研究員(臨床疫学)は、「国内でも指針を整備し、知的障害児に安易に抗精神病薬が処方されないようにすべきだ」と指摘しています。 

 子供の精神医療に詳しい横浜市立大学病院の藤田純一医師は、「知的障害のある子供の一部は自分を傷付けるなどの行動をとることがあり、落ち着かせるために抗精神病薬を処方するケースがある」と指摘した上で、「抗精神病薬が安易に処方されている恐れがあり、ガイドラインなどを整備して適切な処方を促すべきだ」と話しています。

 2016年12月19日(月)

 

■うつ病の重症度に関連する血中代謝物質を発見 九州大学、大阪大学など

 うつ病患者の血液に含まれる代謝物質の中に重症度に関連するものがあることを、九州大学や大阪大学などの研究チームが発見しました。採血でうつ病の重症度などを客観的に評価する方法の開発に役立つ可能性があるといいます。

 アメリカの科学誌プロスワンの電子版で17日、発表しました。

 研究チームは、九州大学病院や大阪大学病院、国立精神・神経医療研究センターなどを受診したうつ病患者や抑うつ(気分の落ち込み)の症状がみられる患者計90人を対象に、問診で抑うつの重症度を評価するとともに、高度な分析機器で血液中の100種類以上の代謝物質を網羅的に計測しました。

 その結果、20種類は量の変化が重症度と関連しており、うち3―ヒドロキシ酪酸やベタインなど5種類は特に強い関連があることが明らかになりました。また、抑うつ気分、罪悪感、自殺念慮(自殺したい気持ち)などの症状ごとに関連する代謝物質が異なることも、明らかになりました。

 うつ病の重症度は、本人の主観的な申告に基づいて専門家の面接でその程度を判断していますが、今回の発見で症状のより客観的な評価法の確立や新薬開発につながることが期待されます。

 九州大学の加藤隆弘・特任准教授(精神医学)は今後、大規模な研究での検証が必要とした上で、「重いうつ状態の患者さんは隠れたところにも多くいる。健康な人との比較試験なども行い、将来的に採血で診断できるような方法を開発したい」と話しています。

 2016年12月19日(月)

 

■動物園の7割、鳥類の展示や酉年にちなむイベントを見直し 全国の89施設調査

  全国で感染が広がる高病原性鳥インフルエンザウイルス対策として、日本動物園水族館協会に加盟する動物園89施設のうち、約72%に当たる64施設が鳥類の展示や、来年の干支(えと)である「酉(とり)」にちなんだイベントを中止したり、変更したりしたことが18日、マスコミの集計で明らかになりました。

 この冬は野鳥の感染が過去最多となり、北海道と青森県、新潟県では養鶏場などでも発生し、鶏やアヒルの殺処分に追われました。各動物園は飼育する鳥類の感染を防ごうと警戒を強めていますが、野鳥が運ぶウイルスを「完全には防げない」と悩みも深まっています。

 対策で多かったのは、来園者の靴底などに付着したウイルスの感染を防ぐため、鳥類に直接触れ餌(えさ)を与えるイベントの中止や変更。

 千葉県の市川市動植物園は、年賀状用に企画したニワトリとの記念撮影を打ち切りました。横浜市の野毛山動物園も、鶏と触れ合える展示をやめ、記念撮影イベントを中止しました。

 秋田市の大森山動物園と名古屋市の東山動植物園では、感染例が出て休園中。

 池がある東京都の羽村市動物公園は、鳥用の餌の販売を中止し、東京都の多摩動物公園と愛知県豊橋市の豊橋総合動植物公園は、池の水を抜きました。

 北海道旭川市の旭山動物園は、出入り口に靴底の消毒マットを設置して、人気イベント「ペンギンの散歩」を継続しています。中止や変更のない施設は、「鳥類がいない」「もともと冬は鳥類舎の立ち入りを禁止している」としています。

 一方、静岡県伊東市の伊豆シャボテン動物公園は、「鳥類は上に網を張り、夜間は獣舎にしまい、野鳥が近寄らないよう対策しているが、リスクをゼロにするのは難しい」と困惑する声を上げています。

 アヒルを屋内展示に切り替え、行進イベントを中止した兵庫県姫路市の市立動物園は、「危なくて怖い場所だと思わないでほしい。感染動物との濃厚接触などがなければ危険はほとんどない。心配なく遊びに来てほしい」と呼び掛けています。

 2016年12月18日(日)

 

■脳卒中、心臓病による死亡率を5%減へ 学会が5カ年計画、禁煙や減塩で生活改善

 日本人の死因の上位にある脳卒中と心臓病による年齢調整死亡率を5年間に5%減らし、日常的に介護を必要とせず、心身ともに自立して過ごせる「健康寿命」を延ばすことを目指した5カ年計画を、日本脳卒中学会と日本循環器学会が17日までに発表しました。関連19学会の協力を得て初めて策定。計画は2035年まで5年ごとに見直しながら強化します。

 高血圧や肥満などの生活習慣病と大きく関連するため、禁煙や減塩、節酒、運動などの生活改善の目標値を盛り込みました。

 心不全や心筋梗塞(こうそく)などの心臓病は日本人の死因の2位で、脳卒中は4位。合わせた死亡数は65歳以上ではがんと肩を並べ、75歳以上ではがんを上回り、介護が必要となる原因の約4分の1を占めます。患者の多くは動脈硬化をもとに発症し、発症直後の死亡率が高いなどの共通点があります。

 5カ年計画では、発症直後に適切に対応するため、患者の救急搬送を受け入れ、専門の医師がいる「1次センター」の整備が必要としました。

 生活習慣病やメタボリック症候群に適切に対応すれば、発症や病気の進行を抑えられると指摘し、喫煙率を今の約18%から15%に下げ、公共の場での受動喫煙を完全になくすことを提唱しました。さらに、多量に飲酒する人を10%減らすほか、1日の食塩の摂取を2グラム減らし、1日の平均歩数を今より千歩増やすなどの目標値を示しました。

 脳卒中と心臓病は再発を繰り返すため、両学会は予防だけでなく、発症から介護まで切れ目のない医療体制をつくる必要があると訴えました。

 日本脳卒中学会の鈴木則宏理事長は、「心臓病や脳卒中の対策を進める基本法の制定を目指しており、その裏付けとしたい」と述べました。

 2016年12月18日(日)

 

■動物用ワクチン、製造大手の微生物化学研究所が不正 40日間の業務停止に

  動物用医薬品の製造大手「微生物化学研究所」(京都府宇治市)が、国の承認と異なる製法でイヌやネコ、家畜用のワクチンや診断薬を製造、出荷したとして、農林水産省は16日、同社に対して医薬品医療機器法(旧薬事法)に基づき、12月21日から1月29日までの40日間の業務停止命令と業務改善命令を出しました。

 農水省によると、製造する67製品のうち鶏の伝染性気管支炎や狂犬病を予防する動物用ワクチンなど55製品で、有効性を確かめる試験をしなかったり、試験で有効性の基準値を超えなかった医薬品の試験結果を書き換えたりするなどの不正があったといいます。

 同省の9月の立ち入り検査で、発覚しました。医薬品の安全性に影響を与える恐れはないことは、確認されているといいます。

 また、動物用医薬品の原料生産に使う遺伝子組み換え微生物を、国が確認した区域外に持ち出していたことも判明。遺伝子組み換え生物の取り扱いについて定めたカルタヘナ法に違反するとして、この微生物の使用も中止されました。

 遺伝子組換え微生物は原料の精製、廃棄の過程で薬剤処理などにより死滅し、環境中への逸出はなかったことが確認されているといいますが、微生物の使用再開には、拡散防止措置について農林水産相の確認を受けることが必要となります。

 2016年12月18日(日)

 

■イギリス、体外受精技術「ミトコンドリア置換」を承認 3人の親を持つ子誕生へ

 子供の重い遺伝病を防ぐため、イギリスで体外受精をさせた受精卵の核を別の女性の卵子に移植する医療技術が世界で初めて公式に認可され、現地メディアは父親と母親、それに別の女性の3人の遺伝子を持つ子供が来年にも生まれる可能性があると伝えています。

 細胞でエネルギーを作り出すミトコンドリアの遺伝子異常は、母親から子供に引き継がれ、神経や筋肉などが影響を受けて筋ジストロフィーなどの難病を発症させる恐れがあるとされています。ほかにも、卵子の成熟や受精などが妨げられ、受精卵が着床しづらくなるとの指摘もあります。

 これを防ぐため、イギリス政府の研究監視機関「ヒト受精・発生学委員会」は15日、体外受精をさせた受精卵の核を別の健康な女性の卵子に移植し、正常なミトコンドリアを持つ受精卵を作る「ミトコンドリア置換」と呼ばれる体外受精技術を初めて認可しました。ミトコンドリアには核とは別に独自のDNAがあるため、このミトコンドリア置換によって、生まれる子供は母親と父親、それに別の女性の3人の遺伝子を引き継ぐことになります。

 イギリスでは、昨年2月、ミトコンドリア置換を認める法律が成立し、医療機関は研究監視機関の認可を受ける必要があるとされていました。

 同じような体外受精技術を使い、今年4月、規制のないメキシコでアメリカの医師らにより、3人の遺伝子を持つ男の子が生まれたことがわかっていますが、この体外受精技術が公式に認可されるのは、今回、世界で初めてです。

 イギリスのメディアは、第一例はニューカッスル大学が実施し、早ければ来年末にも3人の遺伝子を引き継ぐ子供が生まれる可能性があると伝えています。

 イギリスでは、今回の認可について、多くの家族に希望を与えるとする意見がある一方、安全性や倫理的な問題を懸念する声も出ていて、今後、議論を呼びそうです。

 2016年12月17日(土)

 

■水素水の健康効果をうたう業者に表示改善を要望 国民生活センター

 水素を高い濃度で含んでいるなどとして販売されている飲用の「水素水」や、水素水の生成器の一部商品について、国民生活センターは16日までに、商品パッケージや広告で健康効果をうたった表示がみられ、健康増進法や景品表示法、医薬品医療機器等法(薬機法)に抵触する恐れがあると発表しました。

 国民生活センターは業者に対して、健康保持や増進効果があると受け取れる表示を改善することや、水素濃度を表示する場合、賞味期限まで保証できる濃度を記載することなどを要望。消費者庁と厚生労働省に対しても、業者に表示の改善を指導するよう要請しました。

 国民生活センターは、通信販売サイトで上位に表示されたパッケージ入り水素水10商品と、水素水の生成器9商品を選び、パッケージの表示や販売サイトの商品説明、パンフレットなどを調査。12商品で「さまざまな病気の原因といわれる悪玉活性酸素を無害化」「血液サラサラ」「アトピーに かゆい部分に水素水をつけて下さい」などと、水素水に健康への効果があると受け取れる記載がありました。

 食品で健康への効果を表示できるのは、健康増進法などに基づき、特定保健用食品(トクホ)や機能性表示食品、栄養機能食品に限られています。こうした食品として許可されたり、届け出があったりしたものは、水素水ではこれまでありません。

 パッケージ入り水素水10商品の開封時の溶存水素濃度を測定したところ、充てん時・出荷時の濃度記載があった5商品のうち3商品は表示より低く、表示がなかった3商品のうち2商品では水素分子が検出されなかったといいます。

 開封時に水素が検出された8商品を未開封のまま20度で1カ月間保管したところ、全商品で水素濃度がやや低下。水素水の生成器で作った水をコップに移し替えると、1時間後には水素濃度が約50〜60%に低下していたといいます。

 業者へのアンケートも実施したところ、水素水の飲用で期待できる効果として最も多かったのは「水分補給」だったといいます。

 水素水を巡っては、栄養と健康についての調査研究を行う国立研究開発法人「医薬基盤・健康・栄養研究所」(大阪府)が、水素水を「水素分子(水素ガス)の濃度を高めた水」と定義し、「ヒトに対する有効性については信頼できる十分なデータが見当たらない」とする見解を示しています。また、「水素分子(水素ガス)は腸内細菌によって体内でも産生されており、その産生量は食物繊維などの摂取によって高まるとの報告もある」としています。

 2016年12月17日(土)

 

■10歳前に凍結保存した卵巣組織、体内に戻して出産  イギリスの女性が世界初

 イギリスのロンドンで、10歳になる前に採取・凍結保存しておいた卵巣組織を用いて生殖能力が回復した女性が妊娠・出産しました。担当した医師らが14日、明らかにしました。

 卵巣組織の凍結保存を行ったイギリスのリーズ大学によると、10歳になる前に摘出した卵巣組織を使った妊娠・出産例は、世界初です。

 リーズ大学によると、重度の血液疾患を発症していたモアザ・アルマトルーシさん(24歳)は、9歳の時に右側の卵巣を摘出して凍結保存していました。化学療法を受ける前の摘出でした。

 そして昨年、この卵巣組織をアルマトルーシさんの体内に戻したところ、妊娠機能が回復し、13日にロンドン市内の個人病院で男児を出産しました。

 アラブ首長国連邦のドバイ出身のアルマトルーシさんは、生まれながらに難病のベータサラセミアを患っていました。ベータサラセミアは、ヘモグロビンの生成異常が生じる病気で命にかかわることもあります。

 骨髄移植を受けるためにアルマトルーシさんは化学療法を受けましたが、これによって残っていた左側の卵巣が損傷し、20歳代初期に閉経。今回、凍結保存しておいた卵巣組織を移植したところ、ホルモン値は通常レベルまで上昇して排卵が起き、妊娠機能が回復したと、リーズ大学がウェブサイトで説明しています。

 昨年には、ベルギーの女性(27歳)が13歳の時に凍結保存していた卵巣組織を用いて出産しています。

 2016年12月15日(木)

 

■化血研、2つの血液製剤を承認書と違う手順で試験 安全性には問題なし

 国の承認と異なる方法で血液製剤を製造するなどしていた化学及(および)血清療法研究所(化血研、熊本市)が、新たに2つの血液製剤で、安全性などを確かめる試験を承認書と違う手順で行っていたことがわかりました。厚生労働省によりますと、安全性に問題はないということです。

 化血研は、およそ40年にわたって未承認の成分を添加するなどして血液製剤を製造した上、組織的に隠匿していたとして、今年1月から110日間の業務停止処分を受けました。

 さらに厚労省から指摘され、ほかの血液製剤やワクチン合わせて35製品について調査した結果、新たに2つの血液製剤で、安全性などを確かめる試験を承認書と違う手順で行っていたことがわかりました。具体的には、試験で使う試薬について有効性をチェックする作業を一部省いたほか、品質が異なる試薬を使っていたということです。

 これについて化血研は、「承認書の手順を製造過程に落とし込む際、数字の誤記はあったが、製品としては問題ない」と説明しています。厚労省によりますと、いずれも法令違反に当たらない軽微なミスで、ほかの製薬会社で代替品が確保できない2つの血液製剤の安全性に問題はなく、出荷を認める方針です。

 厚労省はほかの製品についても調べた上で、化血研に対し行政処分を行うことにしています。

 2016年12月15日(木)

 

■子宮頸がんワクチン、健康被害女性が2次提訴 57人が4地裁に

 国が接種を呼び掛けた子宮頸(けい)がんワクチンが全身の痛みなどの健康被害を引き起こしたとして、21都道府県に住む15~22歳の女性57人が14日、国と製薬会社2社に損害賠償を求め、東京、名古屋、大阪、福岡各地裁に2次提訴しました。7月の1次提訴を含めた原告は、計119人となりました。

 弁護団によると、提訴した地裁別の原告数は、東京25人、名古屋5人、大阪7人、福岡20人。2010年8月~2013年8月に接種を受けた後、全身の痛みや運動障害、記憶障害などを発症したとして、1人当たり1500万円、計8億5500万円の損害賠償を求めています。

 原告が問題としているワクチンは、イギリスの製薬会社グラクソ・スミスクラインの「サーバリックス」と、アメリカの製薬大手メルクの日本法人MSDの「ガーダシル」。日本より先に承認された海外で、死亡例などの副作用が報告されていたと指摘。国は被害を予見できたのに安全性を調査せず承認し、接種を推奨した責任があり、2社には製造物責任があると訴えています。今後、各自の症状に応じて請求額を増やします。

 グラクソ・スミスクラインは「訴状が届いておらずコメントは差し控える」、MSDは「原告の主張に類似する症状とワクチンとの間に関連性はないとされている」とコメントしました。

 東京地裁への提訴後、厚生労働省で記者会見した千葉県の通信制高校2年の女性(17歳)は、「ワクチン1本でどうしてこんなにボロボロな体になってしまったんだろう」と訴えました。中学1年の時に3回接種し、3回目の1週間後に激しいめまいや頭痛などが襲いました。中2で腹痛に悩まされ、痛みは手足や背中にも広がりました。ピアノが大好きでしたが、記憶障害で曲が覚えられなくなり、希望校への進学も諦めたといいます。

 東京以外の3地裁では1次提訴の審理が始まっており、国と製薬会社は請求棄却を求め、製薬会社はワクチン接種と健康被害の因果関係を否定して争っています。

 2016年12月15日(木)

 

■感染性胃腸炎の患者が急増、宮城県などで警報レベル 5割はノロで近年にない型

 例年、冬に流行し、下痢や嘔吐(おうと)を引き起こす感染性胃腸炎が、今季も流行しています。国立感染症研究所によると、3~5割はノロウイルスが原因とみられ、今季は乳幼児が免疫を持つ可能性の低い、数年前にはやった型のノロウイルスの検出が多数報告されており、注意が必要です。

 国立感染症研究所が定点観測している全国約3000の小児科からの患者報告数は、11月28日から12月4日までの1週間で5万4876人で、例年より早く流行が始まったため過去10年間の同時期と比べて多くなっています。

 1医療機関当たりでは、17・37人。都道府県別では、宮城県(45・75人)、山形県(33・47人)、三重県(27・71人)、埼玉県(26・73人)、東京都(26・64人)、神奈川県(23・62人)、奈良県(23・09人)、宮崎県(20・83人)、千葉県(20・24人)、兵庫県(20・12人)などで多くなっています。20人を超えると警報レベルを突破し、各自治体が警報を出しています。

 ノロウイルスは遺伝子型が約30種類ありますが、中でも今季は「G2・2」という種類が小児を中心に検出されています。国立感染症研究所によると、2009~2012年にかけて、各地でこのウイルスの感染者が出ていたものの、その後はあまり出ていませんでした。

 宮城県では幼稚園、保育所などで集団感染が80件以上発生し、その多くがノロウイルスの「G2・2」だといいます。

 国立感染症研究所・感染症疫学センターの木村博一第6室長は、「G2・2の流行のなかった最近生まれた子供は免疫がないと思われ、感染が広がりやすい恐れがある」と指摘しています。

 ノロウイルスは感染力が強いのが特徴で、感染者の便や嘔吐物に大量に含まれ、主に人の手や食品を介して広がります。木村室長によると、感染者の便には最大で1グラム当たり1兆個のノロウイルスが含まれ、感染は数十個が体内に入るだけで成立するといいます。

 木村室長は、「感染すると、症状がなくなってからも排せつ物にはウイルスは含まれ、長い場合は1カ月に及ぶこともある。知らないうちに感染源になる恐れもあり、特にトイレの後は手洗いを徹底してほしい」と呼び掛けています。

 ノロウイルス感染防止に関する注意点は、▽手洗いは、指と爪の間や、指と指の間も含めて十分行う。水で流すのは30秒以上時間をかける。▽嘔吐物の片付けはマスク、手袋、エプロンを着用し、飛び散らないよう丁寧にペーパータオルなどで除去する。床などは薄めた塩素系漂白剤を使って浸すように拭き取る。▽包丁やまな板などの調理器具や布巾は、85度以上の熱湯で1分以上加熱する。▽加熱用カキなどの食品の調理は、85~90度で1分半以上火を通す。

 2016年12月14日(水)

 

■今冬の鳥インフル国内感染、過去最高の64件に 環境省が野鳥監視を強化 

 11月以降、死んだ野鳥などから高病原性の鳥インフルエンザウイルス(H5N6型)が検出されるケースが、13日までに全国で過去最高を上回る64件に達し、環境省は野鳥の監視を強化しています。

 環境省によりますと、死んだ野鳥や野鳥のフンなどの検査で高病原性の鳥インフルエンザウイルスが検出されたケースが、11月から12月13日までに北海道や秋田県、鹿児島県など11道県で64件に上りました。これは過去最高だった2010年から2011年にかけてのシーズンに検出された62件をすでに上回っています。

 鶏やアヒル、ウズラなどの家禽(かきん)では、青森、新潟の2県で4件の感染が確認され、殺処分されました。

 環境省は海外から飛来する渡り鳥などによって広まったとみて、警戒レベルを最も高い「3」に引き上げて警戒を強めていますが、13日、各都道府県に対して文書を出し、野鳥の監視強化や、死んだ野鳥が見付かった場合には速やかに国に連絡し連携して対処することなどを改めて指示しました。

 また、国内で鳥インフルエンザウイルスが人に感染したケースは報告されていないということで、冷静な対応を求めるとともに、死んだ野鳥を見付けた時は触らずに自治体に連絡することや、感染を防ぐためなるべく鳥のフンを靴で踏まないよう呼び掛けています。

 山本公一環境相は、「今後、監視の強化がより一層必要だと考えている。引き続き緊張感を持って対応していきたい」と述べ、全国各地の環境省の事務所を通じて野鳥の監視を強化する考えを示しました。

 2016年12月13日(火)

 

■毎月末の金曜は早帰りで買い物、外食を 来年2月からプレミアムフライデーを実施

 経済産業省や経団連、小売り、旅行などの業界団体でつくるプレミアムフライデー推進協議会は12日、東京都内で初会合を開き、毎月末の金曜に消費活動を促す「プレミアムフライデー」を来年2月24日から実施すると決めました。

 買い物しやすいように、企業が従業員に対して午後3時には仕事を終えるよう呼び掛け、長時間労働の是正など働き方改革にもつなげる考えです。

 詳細を詰めるためのプレミアムフライデー推進協議会には、日本百貨店協会や日本チェーンストア協会、全国商店街振興組合連合会など15団体が参加。経産省と各団体が企業だけでなく商店街や自治体にも呼び掛けて、具体的な方法を検討します。

 主導する経産省は広告費などとして、2016年度の補正予算に2億円を計上しており、PRに使う統一ロゴマークも公表しました。

 毎月末の金曜日に午後3時には仕事を終えて、買い物や外食、週末の旅行などに出掛けてもらうことで、低迷を続ける個人消費を盛り上げるねらいがあります。アメリカでは「ブラックフライデー(黒字の金曜日)」と呼ばれる年末慣例の商戦が定着しており、これを参考に毎月末に各地のショッピングセンターや商店街などがイベントやキャンペーンを開催することを想定しています。

 すでに具体的な取り組みに向けて動き始めている自治体や企業もあります。静岡県の商工会議所は市などと連携して、金曜日には飲食店を早めに開けて、会社帰りの客を呼び込む準備をしています。日本航空は、金曜の夕方から土日にかけてのツアーをつくる検討を進めます。

 経産省は、「安売り目的ではなく、良質の商品やサービスを適正な価格で提供してもらいたい」としています。

 2016年12月13日(火)

 

■難病への医療費助成、新たに24種類の病気追加へ 無虹彩症や前眼部形成異常など

 原因がわからず、治療が難しい難病への医療費の助成について、厚生労働省は新たに、重い視覚障害を起こす「無虹彩症」など24種類の病気を、対象に追加する方針を決めました。

 厚生労働省は、原因がわからず、治療が難しい難病のうち、診断基準が確立していて、患者数が人口の0・1%程度を下回っている306の病気について、症状が重い患者に限り医療費を助成しています。

 厚労省の専門家会議が12日に開かれ、学会などから報告があった222種類の病気のうち、新たに24種類を医療費の助成の対象として追加すべきだとする報告書をまとめました。

 追加されるのは、虹彩の遺伝的な異常で失明することもある「無虹彩症」や、角膜が白く濁って視覚障害を起こす「前眼部形成異常」などで、助成の対象となる難病は合わせて330種類となります。

 このほか、14種類は、すでに助成の対象になっている難病に含まれることになり、それ以外の病気は、診断基準が確立していないなどの理由で、助成の対象とすることは見送られました。

 厚労省は、今回、追加した難病について来年度から医療費の助成を始めることにしています。

 2016年12月12日(月)

 

■改正がん対策基本法が成立 仕事と治療の両立、希少がんの研究推進が柱

 がんになっても安心して暮らせる社会の構築を目指す「がん対策基本法」の改正案が12月9日、衆議院本会議で全会一致で可決され、成立しました。仕事と治療の両立や、患者数の少ないがんの研究促進などが柱。

 がん対策基本法の改正は初めてで、2006年のがん対策基本法成立から来年4月で10年になるのに合わせ、超党派の議員連盟が内容をまとめました。

 この10年でがん対策や医療技術は進み、闘病しながら仕事や学校などの社会生活を送る患者も増えました。改正案では、企業などの事業主に対してがん患者の雇用継続に配慮するよう求め、患者が適切な医療だけでなく、福祉や教育などの必要な支援を受けられるようにすることを目指します。

 一般社団法人CSRプロジェクト(東京都千代田区)の桜井なおみ代表理事は、がんと診断された段階で従業員を解雇する職場の実態などを調査し、国に改善を働き掛けてきました。「職場のだれもが患者になってもおかしくない。治療しながら働き続ける選択が当たり前になる切っ掛けになる」と話しています。

 また、改正案では、患者数が少ない希少がんや、膵臓(すいぞう)がんなど治療が難しい難治性がんの研究を進めることや、国や地方自治体は国民ががんに関する知識を深められるような施策を講じることなども盛り込まれました。さらに、検診でがんの疑いが指摘されても精密検査を受けない人がいるため、国などが対策をとることも盛り込まれました。

 国立がん研究センターの若尾文彦・がん対策情報センター長は、「検診の効果が上がり、死亡率の減少につながる」と期待しています。

 改正がん対策基本法の柱は、▽事業者の責務として、患者の雇用継続への配慮、▽小児がんの子供が学業を続けるための環境整備、▽希少がん、難治性がんの研究推進、▽検診でがんの疑いがある人の受診促進、▽診断時からの緩和ケア、良質なリハビリの提供。

 2016年12月11日(日)

 

■大気汚染が妊婦の胎盤早期剥離に関連 九州大学などが解明

 大気汚染物質の一つ、二酸化窒素(NO2)濃度が大幅に上昇すると、出産前に妊婦の胎盤が子宮からはがれてしまう「常位胎盤早期剥離(はくり)」のリスクが高まるとの疫学調査結果を、九州大学と国立環境研究所(茨城県つくば市)の研究チームが9日、発表しました。国際環境疫学会誌の電子板に掲載されました。

 早期剥離は、妊婦の0・6%程度に起こるとされます。母子ともに深刻な影響が懸念され、命の危険もあります。

 研究チームは、日本産科婦人科学会が匿名で収集している約5万人の妊婦や胎児のデータを利用。2005~2010年に九州・沖縄地方の28病院で出産した妊婦のうち、早期剥離と診断された821人を対象に、病院に最も近い一般環境大気測定局での大気汚染物質濃度との関連を調べました。

 大気汚染物質と心筋梗塞(こうそく)との関連を調べた海外の研究などを踏まえ、汚染物質によって胎盤に影響が出るまでの時間を約1日、発症から出産まで約1日と仮定。出産2日前の日の平均濃度との関係を分析したところ、早期剥離のリスクは、NO2が10ppb(ppbは10億分の1)上昇するごとに1・4倍になるとの結果になりました。

 10ppbの上昇は、住宅地などに設置された全国の一般環境大気測定局の年平均値がほぼ2倍に上昇する状況に相当します。ほかの大気汚染物質である浮遊粒子状物質(SPM)、光化学オキシダント(Ox)、二酸化硫黄(SO2)では、早期剥離と明確な関連はみられませんでした。

 実際に妊婦がいた場所と一般環境大気測定局の濃度に差があるなど、分析の精度には限界もあるといいます。

 国立環境研究所の道川武紘主任研究員は、「微小粒子状物質PM2・5との関係なども含めて分析を進め、早期剥離の発症メカニズムや予防策を明らかにしたい」としています。

 2016年12月10日(土)

 

■指針守らず新型出生前診断を実施した3医師を懲戒処分 日本産科婦人科学会

 妊婦から採取した血液でダウン症、エドワーズ症候群、パトー症候群の3種類の染色体異常を調べる新型出生前診断を、学会の指針に反して認可外の施設で実施したとして、日本産科婦人科学会(日産婦)は10日、会員医師計3人を懲戒処分としました。

 東京都の2人と大阪府の1人で、氏名や施設名は公表しませんでした。

 日本産科婦人科学会によると、今後は指針に従うとの始末書を提出した2人を最も軽い厳重注意とし、始末書を出さず指針に従う意思が確認できなかった1人を一段階重い譴責(けんせき)にしました。譴責にした医師には年末までに指針に従うという誓約書の提出を求め、提出がない場合はさらに処分を検討するといいます。

 新型出生前診断はダウン症などの有無を事前に知ることで中絶が広がれば、命の選別につながりかねないとの指摘もあり、2013年4月、適切な遺伝カウンセリング体制を整備するなどの目的で臨床研究として始まりました。対象となるのは、ほかの検査で染色体異常が疑われるケースや出産時の年齢が35歳以上の妊婦です。

 当初は日本産科婦人科学会の指針に基づき、日本医学会が認定した昭和大、阪大など15施設で実施され、現在は75施設が登録されています。

 処分を受けた3人が所属する3施設は、いずれも認定を受けていませんでした。

 2016年12月11日(日)

 

■卵アレルギー、生後6カ月から粉末を食べて予防 発症を80%抑制

 アトピー性皮膚炎の乳児は卵アレルギーになるリスクが高いことが知られていますが、生後6カ月の段階からゆで卵をごく少量ずつ食べさせると、1歳になった時には卵アレルギーの発症を80%抑えられたとする研究成果を、国立成育医療研究センターなどの研究チームが発表しました。

 この研究を行ったのは、国立成育医療研究センターの大矢幸弘医長らの研究チームです。

 研究チームでは、生後4カ月までにアトピー性皮膚炎になった乳児121人を2つのグループに分け、離乳食を始めるころの生後6カ月の段階で一方のグループの乳児には硬くゆでた卵の粉末50ミリグラムを、もう一方のグループの乳児にはカボチャの粉末を毎日食べてもらいました。さらに、生後9カ月からは卵の粉末の量を250ミリグラムに増やし、1歳になった時点でゆで卵半分に相当する7000ミリグラムの卵の粉末を食べてもらいました。

 その結果、卵の粉末をずっと食べていた乳児60人のうち、卵アレルギーを発症したのは5人だけでしたが、カボチャの粉末を食べた61人では23人が発症したということです。

 研究チームでは、ごく少量の卵を食べることでアレルギーの発症を80%抑えることができたとしており、アレルギーの原因となり得る食品でも、早期からの摂取で発症予防につながる可能性を示したとしています。

 研究チームによりますと、国内ではアレルギーを懸念して幼いうちに卵を食べさせない傾向が強く、3歳児全体の6%近くが医師の指示で摂取を制限しているということです。

 大矢医長は、「生後6カ月ごろから少量ずつ食べ始めたほうがよい結果になることが証明できた。今後はできる限り早期から治療することで、子供のアレルギーを減らしていけるようにしたい」と話した上で、「卵の加熱が不十分だと危ないため、家庭で実施するのは危険。必ず専門医に相談してほしい」と指摘しています。

 研究成果は9日、イギリスの医学誌ランセットに掲載されました。

 2016年12月10日(土)

 

■ノロウイルスなどによる感染性胃腸炎の患者、早めに急増 1週間で約4万人

 ノロウイルスなどを原因とする感染性胃腸炎の患者が、例年より早めに11月中旬から急増しています。近年では、最も流行した2012年とほぼ同じペースといいます。

 抵抗力の弱い子供や高齢者は重症化して死に至る恐れもあり、厚生労働省が警戒を呼び掛けています。

 国立感染症研究所によると、ノロウイルスは感染力が強く、1~2日間の潜伏期間を経て嘔吐(おうと)や下痢、発熱などの症状が出ます。手洗いや嘔吐物の適切な処理などを徹底する必要があります。

 全国約3000の小児科から報告された患者数は、集計を終えた11月21~27日の1週間で約4万人、医療機関1カ所当たり12・85人で、2006年以降の同時期と比べると、2006年(19・82人)、2012年(13・02 人)に次いで多くなっています。関西では、奈良県、兵庫県、大阪府が全国平均を上回りました。

 10月に流行入りして以降、大阪府豊中市では、こども園など2カ所でそれぞれ100人以上が感染。市によると、市保健所ができた2012年度以降では最大規模の集団感染といいます。

 市保健所は今月2日、市内の保育園や幼稚園の担当者を集めて研修会を開き、嘔吐物を処理する場合は、 飛沫(ひまつ)になって飛び散っている可能性があるため、半径2メートルの範囲を次亜塩素酸ナトリウムを含む漂白剤で消毒するよう呼び掛けました。また、ぞうきんなどはなるべく使い捨てにすることや、園児や職員らに手洗いを徹底させることも求めました。

 大阪府藤井寺市の「藤井寺特別養護老人ホーム」では、職員がドアノブや自動販売機のボタン、手すりなどを2時間おきに消毒。トイレ使用後は必ず、手袋をした職員が便座をふき取りする徹底ぶり。奥田益弘理事長は「年中続けて習慣化させることが大事。今年も感染ゼロで乗り切りたい」と気を引き締めています。

 園田学園女子大の山本恭子教授(感染免疫学)は、「予防策として有効なのは手洗いの徹底。タオルを共用せず、ペーパータオルを使うことも効果的だ。感染した場合は、嘔吐や下痢で脱水症状を起こす危険もあり、速やかに医療機関で受診してほしい」と話しています。

 消費者庁が昨年、流行に備えて行ったインターネット調査によると、「食事の前に手を洗う」と答えた人は約53%にとどまり、「トイレの後に手を洗わないことがある」も約15%いました。「嘔吐物を処理した後に洗う」は42%、「おむつ替えやトイレ介助の後で洗う」も33%で低調でした。

 見た目で汚れていなくても、手に付着したウイルスが口から体内に入り、病気に感染する可能性があります。消費者庁は、必ずせっけんでよく手を洗うよう注意を促しています。

 2016年12月9日(金)

 

■グミにアレルギー物質 UHA味覚糖が18・5万袋自主回収へ

 菓子メーカー大手のUHA味覚糖(大阪市)は7日、全国の「セブンーイレブン」で販売していたグミに、パッケージには表示されていないアレルギー物質の乳成分が含まれていたとして、およそ18万5000袋を自主的に回収すると発表しました。

 UHA味覚糖によりますと、回収する商品は、「贅沢(ぜいたく)コロロ ショコラグレープ」です。11月15日から全国の「セブンーイレブン」の店舗限定で販売し、回収の対象は、およそ18万5000袋に上るということです。

 11月21日、商品を買った人から会社側に、「乳アレルギーの子供が食べたら症状が出た」という連絡が入り、製造した奈良工場で調べたところ、商品に含まれるチョコレートを供給している別の会社が、成分の分析を行っていなかったため、含まれないはずの乳成分が入っていたことが明らかになったということです。

 これまでに、7歳の子供など3人が、アレルギーの症状を訴えているということで、乳アレルギーがある人はこの商品を食べないよう呼び掛けています。

 商品を買った人は、UHA味覚糖に着払いで商品を送れば、会社側が代金を返すということです。問い合わせの電話番号は、フリーダイヤル0120ー201-993、0120・653・910、午前9時から午後5時半まで受け付けています。

 今回の件について、UHA味覚糖は「深くおわび申し上げます。一層品質管理を徹底し、再発防止に努めます」としています。

 2016年12月8日(木)

 

■乳児用パジャマに有害物質 「無印良品」自主回収へ

 生活雑貨などの「無印良品」を運営する良品計画は7日、基準値を超える有害物質ホルムアルデヒドが検出されたとして、乳児用のパジャマ商品を自主回収すると発表しました。

 対象となるのは、「オーガニックコットンフランネルお着替えパジャマ(ベビー・赤)」の80センチ、90センチ、100センチの3サイズ。10月26日~12月5日に、全国で694着を販売しました。宮崎市が実施した衣料品などの抜き打ち検査で、ホルムアルデヒドが検出され、11月26日に宮崎市内の店舗に連絡がありました。

 良品計画によりますと、健康被害は報告されていないということです。

 最寄りの無印良品の店舗に持ち込むか着払いで送ってもらえれば、返金します。問い合わせは、通話無料の良品計画お客様室、電話(0120)640772。

 ホルムアルデヒドは発がん性が高いとされ、2月には集英社が発行する少女漫画雑誌「りぼん」、講談社が発行する少女漫画雑誌「なかよし」などの付録のマニキュアから検出されたとして、両社が回収を発表しています。

 2016年12月7日(水)

 

■国内の温室効果ガス排出量、2年連続で減少 原発事故後初、省エネ定着

 環境省は6日、2015年度の国内の温室効果ガス排出量(速報値)が、二酸化炭素(CO2)換算で前年度に比べて4100万トン減、率にして3%減の13億2100 万トンだったと発表しました。

 前年度に続き2年連続の減少となりました。2年連続で減少したのは2009年以来で、2011年の東京電力福島第1原発事故後、初めて。

 部門別にみますと、サービス業やオフィスなどの「業務その他部門」で5・7%、「家庭部門」で4・8%、工場などの「産業部門」で2・1%、いずれも前年度に比べて減少しました。

 これについて環境省は、昨年度は平年に比べて冷夏や暖冬だったため電気の使用量が減ったことや、原発事故後、省エネ意識が高まったこと、企業や家庭においてエネルギー効率の高い発光ダイオード(LED)照明が普及し、エアコンの省エネ性能が向上したことなどを要因として挙げています。

 また、水力や太陽光発電などの再生可能エネルギーの導入が進んだことも要因として挙げており、昨年度の再生可能エネルギーの発電量は1303億kWhと、全体のおよそ15%を占めて過去最高となりました。

 原発事故後、火力発電所の稼働が増えて排出量は2013年度にピークの14億500万トンに達しましたが、2014度から省エネや再生可能エネルギーの拡大で減少が続きました。

 政府が掲げる「2020年度までに原発ゼロでも2005年度比3・8%減」の目標も、2015年度は2005年度比5・2%減と原発事故後で初めて達成しました。

 一方、冷蔵冷凍庫やエアコンの冷媒として使われ、オゾン層は破壊しないが温室効果が高い代替フロン「ハイドロフルオロカーボン(HFC)」の排出量は、CO2換算で前年度より360万トン増えて3940万トンとなり、今後に課題を残しました。

 山本公一環境相は、「気候の影響もあったので、来年も同じ傾向が続くとはいえない。日本にはもっと活用できる自然エネルギーがあるので、最大限に利用していきたい」と述べ、再生可能エネルギーの普及拡大にさらに力を入れる考えを示しました。

 2016年12月7日(水)

 

■抗菌薬の使用抑制を求めるマニュアル作成へ 厚労省、医療機関向け

 抗生物質などの抗菌薬の過剰な使用によって薬の効かない薬剤耐性菌への感染が世界的に広がる恐れがあることから、厚生労働省は5日、抗菌薬の適切な使用を医療機関に求めるマニュアルを新たに作成することを決めました。

 薬剤耐性菌は、抗菌薬を服用した人や動物の体内で増えていく薬への耐性を得た細菌で、対策を取らずに流行した場合、2050年には世界で年間およそ1000万人が死亡すると、イギリスの研究機関が推計しています。

 厚労省は5日、薬剤耐性菌が広がる背景には抗菌薬の過剰な使用があるとして、専門家による会議を開いて、医療機関向けのマニュアルを新たに作成することを決めました。

 マニュアルでは、外来の患者を受け持つ医療従事者を対象に、日常的に診察する主な病気の治療法を解説。また、風邪や下痢の症状がみられる「急性気道感染症」や「急性下痢症」の患者への対応を想定し、抗菌薬が必要ないと判断した場合は、使用を控えるほか、抗菌薬の処方を求める患者や家族に対して理解を求めるなど、具体的な対応の手順を示すということです。

 厚労省は、「国際的な取り組みが急務になっているので、医療機関には抗菌薬の適切な使用を徹底するよう求めていきたい」と話しています。

 抗生物質などの抗菌薬が効きにくい薬剤耐性菌は、不適切な薬の使用などを背景に広がり、世界的に深刻な問題となっています。イギリス政府からの委託を受け調査を行ったシンクタンクなどによりますと、世界全体では2013年現在、年間で推計70万人が薬剤耐性菌が原因で死亡しているということです。また、このまま何も手を打たなければ、死者は2050年までに世界全体で年間推計1000万人に上り、現在のがんによる死者数を上回ると警鐘を鳴らしています。

 日本国内でも、ほとんどの抗生物質が効かない「カルバペネム耐性腸内細菌科細菌」に感染、発症した患者が、昨年1年間だけで1600人に上っています。専門家によりますと、その多くは高齢者で、手術後に容体が悪化して、入院期間が長期に及んだり、肺炎を起こして重症になったりするケースもあり、因果関係はわからないものの、死亡した人は50人以上に上っています。

 カルバペネム耐性腸内細菌科細菌以外の薬剤耐性菌でも、院内感染が原因で患者が死亡したり、生まれたばかりの新生児が感染し、重症化する例などが報告されています。

 厚労省はすでに4月、抗菌薬の使用量を2020年までに3分の2に減らすことを目標とした行動計画を策定しています。

 薬剤耐性菌の問題に詳しい国立国際医療研究センターの大曲貴夫国際感染症センター長によりますと、世界的に薬剤耐性菌が広がっている背景については、「新しい抗菌薬の開発が進まない中、医師が本来は必要のない抗菌薬を処方している問題がある」ということです。さらに、患者側の問題として、「適切に処方された薬の服薬を途中でやめてしまうことなども背景にある」と指摘しています。

 2016年12月5日(月)

 

■新型インフルなど感染症対策にホットライン 日中韓の保健相会議が共同声明

 日本、中国、韓国の3カ国の保健相会議が4日、韓国のプサン(釜山)で開かれ、国際的な脅威である新型インフルエンザなどの感染症への対策として、3カ国が患者や接触者などの渡航情報を迅速に共有する連絡体制を構築するなど、検疫の強化を盛り込んだ共同声明を採択しました。

 今回が9回目となる保健相会議には、日本から塩崎恭久厚生労働相、中国から李斌国家衛生計画出産委員会主任、韓国からチョン・ジンヨプ保健福祉相が出席し、議論の成果をまとめた共同声明を採択しました。

 共同声明では、新型インフルエンザのほか、西アフリカで過去最悪の規模で感染が拡大したエボラ出血熱、韓国で感染が広がった中東呼吸器症候群(MERS)、ジカ熱(ジカウイルス感染症)などの感染症の流行を受け、公衆衛生分野での国際協力の強化が求められていると指摘。

 国際的な脅威である感染症への対策を強化するため、地理的に近い3カ国が連携して検疫を行う必要性が増しているとして、感染症が発生した医療機関の情報に加え、患者や接触者などの渡航情報を迅速に共有するため、3カ国の当局間にホットラインを設けるとしています。

 また、共通の課題である少子高齢化への対応として、介護サービスなどの政策について意見交換を促進することや、日中韓3カ国でいずれも開催を控えているオリンピック・パラリンピックに向けて、他人のたばこの煙を吸い込む受動喫煙対策の強化に向けた協力を進めていくとしています。

 塩崎厚労相は会議の後、「保健分野での問題意識を高め、協力に向けた合意ができ大変意義のある会合となった。感染症対策は、3カ国の間だけではなく世界でいろいろな感染症が起こり得る。地域で年間2000万人以上が行き来している中で、検疫でどれだけ防げるのか知恵を出していくことが大事だ」と述べました。

 2016年12月4日(日)

 

■今冬の鳥インフル国内感染、過去最悪ペース 中国から飛来の野鳥が発生源

 新潟、青森両県の養鶏場や農場で飼育されている鳥から鳥インフルエンザウイルスが見付かるなど、ウイルスの流行が懸念される中、全国で確認された今冬の国内感染例が過去最悪のペースで推移していることが3日、環境省などのまとめで明らかになりました。

 海外から飛来する渡り鳥などが感染ルートとみられ、日本だけでの感染防止対策には限界があるのが実情で、専門家からは国際的な取り組みの強化を求める声も上がっています。

 環境省や農林水産省によりますと、国内で今冬に高病原性鳥インフルエンザウイルスの感染が確認された野鳥などは、鹿児島県でナベヅルなど20件、鳥取、秋田両県でコハクチョウ、コクチョウなど各5件を始めとして、3日現在で37件に上りました。

 1シーズンでの最多は2010~2011年の58件ですが、12月初めの段階での件数は今季が最多で、環境省は「過去最大規模の流行になる恐れもある」として、養鶏場などへ最大級の警戒を呼び掛けています。2010~2011年は家禽(かきん)でも9県の24農場などで確認、約183万羽が殺処分されています。

 11月28日に家禽への感染が今冬初めて確認された新潟、青森両県では3日も、計約54万羽の鶏と計約2万3000羽のアヒルの殺処分や埋却作業が進められ、周辺の幹線道路では通行する畜産関係車両の消毒を24時間態勢で行うなど、感染拡大の防止に躍起です。

 農水省によると、越冬のため、ロシアから中国などを経由して飛来する渡り鳥がウイルスを運んでいるとみられます。野鳥が持ち込んだウイルスは小動物などが媒介して家禽に感染しており、今冬も東北などで鳥インフルに感染した野鳥が確認されました。

 毎年のように感染が確認されている中国などでは、感染防止に有効な殺処分をせず、ワクチン接種で対応しているためにウイルスを排除しきれず、中国の国内外に感染が広がっていると見なされています。

 京都産業大学鳥インフルエンザ研究センターの大槻公一センター長によると、中国などでは家禽数が多い上、管理された施設ではなく個人で飼育しているケースが多く、「事実上、野放し状態」といいます。世界で確認されている高病原性H5型の亜種は、ほぼ中国が発生源とみられています。

 今秋以降、日本への渡り鳥の飛来ルートにある韓国でも鳥インフルエンザが拡大しており、新潟、青森両県で確認されたウイルスは韓国と同じH5N6型でした。同型の感染拡大は、中国内でも10月に確認されています。

 日韓両国では鳥インフルが確認された場合、互いに通報するルールがあり、今回も韓国からの通報に基づき、農水省が11月中旬に注意喚起していたものの、防ぐことができませんでした。

 大槻センター長は、「現在、かつてないほどの感染が世界的に流行している。一国だけでの対応には限界がある」として、足並みをそろえた国際的な対応を求めました。

 人への感染の恐れが基本的に少ない鳥インフルエンザが警戒されるのは、人から人へ感染する新型インフルエンザへ突然変異する可能性があるからです。

 2016年12月4日(日)

 

■リン脂質の摂取に認知症改善効果 九州大学が臨床試験で確認

 九州大学などの研究チームは、生物の細胞膜に含まれるリン脂質の一種「プラズマローゲン」を食べ続けることで、認知症の一つであるアルツハイマー病の症状の改善が期待できることを、臨床試験で確認したと明らかにしました。

 研究チームは今回、東京都や大阪府など7都府県の計25医療施設で治療を受けている、軽いアルツハイマー病を抱えた60~85歳の男女計98人を対象に臨床試験を実施。半数の患者には毎日、ホタテから抽出したプラズマローゲンを混ぜたゼリーを半年間食べてもらいました。

 30点満点の記憶力テストでは、ゼリーを食べた患者らは臨床試験開始前と比べて、平均点が2・2点上昇しました。一方、ゼリーを食べなかった患者らは、平均点が0・4点上昇しただけでした。

 プラズマローゲンは、人間を始めとしてさまざまな生物の体内でつくられていますが、アルツハイマー病の患者の血中では健常者よりも量が少なくなっています。マウス実験では症状の改善効果が確認できており、サプリメントも市販されています。

 藤野武彦・九州大学名誉教授(健康科学)は、「今後、プラズマローゲンが症状を改善する仕組みを解明したい」としています。

 2016年12月3日(土)

 

■アレルギー疾患の治療に拠点病院を整備 厚労省が初の指針案

 ぜんそくや花粉症などアレルギー疾患の患者が急増する中、厚生労働省は、全国どこの地域に住んでいても適切な医療を受けられるよう、地域ごとに専門的な治療を行う拠点病院の整備や、患者の相談支援に当たる体制の充実などを盛り込んだ、アレルギー対策の基本指針を初めて取りまとめました。

 学校給食での事故などを受け昨年12月に施行された基本法に基づく指針で、厚労省は2018年度にも拠点病院を指定します。

 アレルギー疾患は、この10年ほどで急増し、厚労省によりますと、乳幼児から高齢者まで国民の2人に1人が何らかのアレルギーを持つと推計されています。中でも、ぜんそくの患者は少なくともおよそ800万人と推計されています。

 しかし、専門の医師が不足していることから、適切な治療が受けられず、重症化する患者が後を絶たないことが問題となっています。

 このため、厚労省の協議会は、ぜんそく、アトピー性皮膚炎、花粉症、鼻炎、食物アレルギー、結膜炎の6つのアレルギー疾患について、2日、対策の基本指針を初めて取りまとめました。

 それによりますと、地域ごとに専門性の高い医師を配置した拠点病院や、かかりつけ医と連携して適切な医療を提供できる体制を整備するとともに、予防や治療の先進的な研究を進めるとしています。

 また、インターネット上に科学的な根拠が明らかとはいえない治療などの情報があふれているとして、患者と医療関係者向けにホームページを作成し、最新の研究成果などの情報を提供するほか、患者の相談に応じる専門窓口を医療機関などに設置して支援体制を充実させるとしています。

 アレルギー疾患に詳しい医師や患者会などによりますと、アトピー性皮膚炎やぜんそくは、炎症を抑えるために、一時的にステロイドを使った治療が必要になることがありますが、副作用を避けようとしてステロイドを使わない治療を続けると重症化することもあるということです。

 厚生労働省は、「アレルギー疾患は長期間、症状に苦しめられることが多く、生活への影響も大きい。今後は自治体などと連携して患者が安心して生活できる体制を整備したい」と話しています。

 2016年12月3日(土)

 

■世界の若者、年25万人がエイズ感染 2030年には39万人、ユニセフが増加警告

 国連児童基金(ユニセフ)は世界エイズデーの12月1日、エイズに関する報告書を公表し、2015年に15~19歳の若者約25万人が新たにエイズウイルス(HIV)に感染したと明らかにしました。

 対策を強化しなければ、2030年の新規感染者数は39万人に膨れ上がると警告し、国際社会に撲滅に向けた取り組みを促しました。

 報告書によると、10~19歳の感染者の総数は2015年時点で推定180万人となり、10年前から28%増加しました。エイズによる年間死者数も、2000年の1万8000人から2015年は4万1000人へと倍以上に増えています。

 ただ、患者総数が拡大する一方、新たな感染者数は減少傾向にあります。しかしながら、性交渉などによって感染した15~19歳の減少幅は、主に母親から感染した0~14歳に比べ小さくなっています。

 報告書では、感染者の半数以上が住むアフリカでは今後、若者人口の大幅増が見込まれ、現状の対策のままでは新規感染者数が増加に転じる恐れがあると指摘しています。

 ユニセフのアンソニー・レーク事務局長は、「エイズを撲滅するには、すべての子供と青少年に治療や対策が届くよう努力しなければならない」として、対策を早急に進めるよう呼び掛けています。

 2016年12月2日(金)

 

■トクホ商品の買い上げ調査を開始 消費者庁、品質把握へ

 特定保健用食品(トクホ)の一部で健康増進効果にかかわる成分が規定量を下回っていた問題を受け、消費者庁は11月30日までに、トクホの買い上げ調査を始めるなどの対策を発表しました。

 国内で出回っている加工食品や輸入食品は、厚生労働省や農林水産省が一定数、店頭から抜き取ったり、買い上げたりして、残留農薬や微生物の有無、それに表示が適正に行われているのかどうか調査をしています。しかし、国が許可したトクホはそうした検査がされていませんでしたが、買い上げ調査を始めることで許可後も消費者庁が品質を把握できるようにします。

 買い上げ調査は今年度から始め、抜き打ちで実施。事業者には年1回程度、第三者機関による成分量の分析を受けて結果を消費者庁に報告することを義務付けます。

 一方、問題を受けて事業者に求めていた有効成分量の調査結果が30日までに出そろい、消費者庁は現在販売中の366商品すべてで問題はなかったとしました。

 消費者庁は9月、大阪市の通販会社「日本サプリメント」が販売する粉末清涼飲料「ペプチド茶」など6商品について、健康増進効果に関与する有効成分量が表示より少ないなどとして、1991年に特定保健用食品制度が発足し、1993年6月に初めて2商品が許可されて以来、初めて許可を取り消しました。

 2016年12月1日(木)

 

■豆腐の常温状態での販売を解禁へ 災害時の重要なタンパク源に

 厚生労働省は11月29日、通常は冷蔵庫や水槽で保存されている豆腐を、常温状態でも販売できるよう食品衛生法に基づく規格基準を見直す方針を決めました。

 同日開かれた厚労省の専門部会で、高度な殺菌や包装の技術を使用すれば常温保存でも安全性に問題がない、と判断しました。今後、食品安全委員会のリスク評価などを経て、早ければ来年にも実際の販売が解禁される見通し。

 かつては製造・保管中の取り扱いが不衛生なため細菌の繁殖で健康被害が起きたことがあり、1974年に定められた規格基準で、豆腐はおおむね10度以下に冷蔵保存するか、水槽内で冷水を絶えず交換しながら保存することが義務付けられました。

 しかし、パッケージや殺菌技術などが進歩し、国内メーカーは1986年から常温保存用の豆腐を海外に輸出しており、2014年には全国豆腐連合会などの業界団体が基準の見直しを要望。厚労省が海外に輸出している2社の商品をもとに、安全性を調査していました。

 全国豆腐連合会は、「解禁されれば、災害時の緊急物資、非常食として重要なタンパク源となり得る。半年から1年はもつので、備蓄としても期待できる」としています。

 2016年12月1日(木)

 

■早期の食道がん、禁酒で再発リスクが半減 京都大学などが追跡調査

 早期の食道がんの治療後に起きやすい再発は、飲酒をやめることで確率を半減できるとする調査結果を、全国16の医療施設でつくる研究チームがまとめ、専門誌に報告しました。

 食道がんは早い段階で見付ければ体への負担が軽い内視鏡で治療できる一方、残った食道のほかの個所でがんが再発しやすいことが課題となっています。

 早期の食道がんと診断され、内視鏡で治療を受けた患者330人に協力してもらい、治療後の経過を追う過程で、飲酒は食道がんの原因になりやすいため、日常的に飲んでいた人には禁酒するよう指導しました。

 治療後2年の時点で、内視鏡で切除したのとは別の個所に新たにがんができた確率は、禁酒しなかった人では16%、禁酒した人では9%。より長く経過を追えた人たちを含めて全体の傾向を分析すると、禁酒した人の再発リスクは禁酒しなかった人に比べ53%低くなりました。

 禁酒によって食道がんの再発をどの程度減らせるかは、世界的にもわかっていませんでした。

 研究チームの武藤学・京都大学教授は、「早期でがんを見付けて内視鏡治療を受ければ、食道を温存できる。一方で、再発の可能性が残る。治療後も定期的な検査を受け、禁酒することが大切」と話しています。

 2016年11月30日(水)

 

■ノロウイルスなどによる感染性胃腸炎の患者、1週間で4万人超 過去10年で2番目の多さ

 ノロウイルスなどによる感染性胃腸炎の患者は、直近の1週間で4万人以上に上り、この時期としては過去10年で2番目に多くなっています。国立感染症研究所は、調理や食事前の手洗いを徹底するよう注意を呼び掛けています。

 国立感染症研究所によりますと、全国およそ3000の小児科の医療機関から報告されたノロウイルスなどによる感染性胃腸炎の患者は、今月20日までの1週間に4万1442人を数え、前の週から1万人以上増えました。この結果、1医療機関当たりの患者数は13・12人となり、過去10年の同じ時期では2006年に次ぐ多さとなっています。

 1医療機関当たりの患者数を都道府県別にみますと、宮城県が30・66人、三重県が24・91人、広島県が24・31人、奈良県が23・74人、東京都が20・24人などとなっており、42の都道府県で前の週より増加しています。

 ノロウイルスは昨年から、遺伝子の変異した新型も現れていますが、今年はこれまでのところ、従来型のものが多くなっています。感染力が非常に強いため、激しいおう吐や下痢を引き起こします。

 専門家は、せっけんを使った手洗いを徹底することや、吐いた物や便を処理する際は次亜塩素酸ナトリウムを含む市販の漂白剤などを使って消毒するよう注意を呼び掛けています。

 ノロウイルスに詳しい北里大学の片山和彦教授は、「例年よりも流行の立ち上がりが半月ほど早くなっている。この時期は小学生以下の子供たちの間で感染が広がりやすい時期なので小さな子供を中心に脱水症状やおう吐物による窒息に注意が必要だ」と話しています。

 2016年11月29日(火)

 

■19成分を含む薬用せっけん、日本で230種類流通 アメリカに続いて販売停止へ

 感染症のリスクを高める恐れがあるとして、アメリカで販売停止が決まったせっけんと同じ成分を含む製品が日本でも230種類流通していることがわかり、すべての製造販売会社は厚生労働省の求めに応じて、別の成分に切り替えるか販売を取りやめる方針です。

 アメリカでは抗菌効果をうたった、せっけんの一部について、感染症を予防する効果がなく、細菌の免疫力によって、かえって感染症のリスクが高まるなどと指摘され、食品医薬品局(FDA)はトリクロサンなど19の成分を含む製品について、来年9月までに販売を停止することを決めました。

 これを受けて、厚労省が国内の流通状況を調べたところ、これらの成分のうち、トリクロサンとトリクロカルバンを含む薬用せっけんが、合わせて230種類販売されていたことがわかりました。厚労省は製造販売会社に対して別の成分に切り替えるよう求めており、すべての製造販売会社は来年9月までに切り替えるか、販売を取りやめる方針です。

 トリクロサンなどを含むせっけんは、国内では薬用せっけんに分類されています。医薬品医療機器法(旧薬事法)に基づき、医薬部外品として、国の承認を得て広く販売されており、薬用ボディーソープや薬用洗顔料なども含みます。

 厚生労働省は、「今のところ健康被害は確認されていないが、国際社会と協調して対応する必要がある」としています。

 アメリカでは別の成分についてもFDAが検証を進めており、販売停止の対象がさらに拡大する可能性もあるということです。

 2016年11月29日(火)

 

■皮膚がん免疫治療薬「キイトルーダ」、肺がんへの使用承認へ 厚労省の部会

 アメリカの製薬大手メルクが製造する、がん免疫治療薬「キイトルーダ」(一般名・ペムブロリズマブ)が、肺がんの大部分を占める非小細胞肺がんに使える見通しとなりました。

 キイトルーダは、小野薬品工業が製造販売する「オプジーボ」(一般名・ニボルマブ)と同じく、体の免疫力を再活性化させることで、がん細胞を破壊する薬で、医療現場は大きな期待を寄せています。オプジーボの売り上げの9割以上を占める肺がん向けが使用対象となることで、2つの薬の競争は激しくなります。

 11月24日、厚生労働省が開いた薬事・食品衛生審議会の部会で、キイトルーダを肺がん向けに承認して問題ないと判断しました。12月にも厚労省が正式承認します。

 キイトルーダはオプジーボと作用が同じで、対象疾患も重なり競合します。オプジーボとの大きな違いは、肺がん患者に対して最初の抗がん剤として使える点といいます。

 オプジーボが使えるのは現時点で、皮膚がんの一種である悪性黒色腫(メラノーマ)と、肺がん、腎臓がんの3種類。一方、キイトルーダは9月に悪性黒色腫への使用が承認され、今回の肺がんで2種類目となります。

 キイトルーダは月内にも悪性黒色腫向けに発売できる見込みでしたが、オプジーボの薬価引き下げ問題が背景にあって、まだ発売できていません。キイトルーダの薬価は類似薬であるオプジーボの薬価を基準に決まるため、半額になったオプジーボと年額で同水準になると予想されます。

 オプジーボの類似薬となるがん免疫治療薬はほかに、日本の中外製薬、イギリスのアストラゼネカ、ドイツのメルクとアメリカのファイザーの連合がそれぞれ国内で開発しています。来年以降、日本市場に登場する可能性があり、がん免疫治療薬を巡る競争はさらに激しくなりそうです。

 2016年11月28日(月)

 

■機能性表示食品に植物エキスなど追加へ 消費者庁

 消費者庁の機能性表示食品制度に関する検討会は26日までに、植物エキスや糖質・糖類を同食品の関与成分として認めるべきだとする報告書をまとめました。

 同庁はこれを受け、より細かい対象成分などを検討し、ガイドラインを改正します。企業の責任で機能性を表示できる対象を広げ、消費者の選択肢を増やします。

 植物エキスは多くの場合、どの成分が機能性に結び付いているのかを特定できず対象外でした。業界団体の健康食品産業協議会(東京都新宿区)によると、植物エキスを使った健康食品は現在、朝鮮ニンジンや青汁などを使った商品があります。糖質・糖類は、オリゴ糖やキシリトールなどが対象になるとみられます。

 機能性表示食品制度は、2015年4月1日に開始。企業は臨床試験か既存の研究論文によって有効性などを証明できれば、販売を開始する60日前に消費者庁に届け出るだけで、「目の健康に役立つ」とか、「丈夫な骨をつくる」「おなかの調子を整える」など、サプリメント(栄養補助食品)や加工食品、生鮮食品のパッケージに体の部位を示して機能を表示することができるようになりました。

 現在は、キユーピー社のサプリメント「ヒアロモイスチャー240」など約500品が受理されています。

 富士経済(東京都中央区)によると、機能性表示食品の市場規模は2015年見込みで303億円。国の許可が必要な特定保健用食品(トクホ)から移行する流れもあり、2016年は699億円と予測しているといいます。

 2016年11月27日(日)

 

■インフルエンザ、全国的な流行期に入る 2009年に次ぐ過去2番目の早さ

 インフルエンザの患者が全国的に増えており、国立感染症研究所は25日、インフルエンザが全国的な流行期に入ったと発表しました。1999年の調査開始以来、2009年に次いで2番目に早く、昨シーズンに比べると1カ月以上早い流行期入りで、専門家は早めのワクチン接種など対策の徹底を呼び掛けています。

 国立感染症研究所によりますと、今月14~20日の1週間に全国およそ5000の医療機関から報告されたインフルエンザの患者数は、前の週から2700人余り増えて6843人となりました。

 この結果、1医療機関当たりの患者数は1・38人と、流行開始の目安とされる1人を超え、国立感染症研究所はインフルエンザが全国的な流行期に入ったと発表しました。

 流行期入りの発表は昨シーズンよりも1カ月以上早く、調査が開始された1999年以来、新型インフルエンザが流行した7年前の2009年に次ぐ早さだということです。

 都道府県別の患者数を見ますと、沖縄県が8・12人と最も多く、次いで栃木県が5・50人、福井県が3・50人、北海道が2・92人、岩手県が2・60人などとなっており、すべての都道府県で前の週より増加し、28の都道県で1人を超えました。

 一方、これまでに検出された今シーズンのウイルスは、高齢者が重症化しやすいとされるA香港型が8割以上を占めているということです。

 国立感染症研究所の砂川富正室長は、「今シーズンは、呼吸器感染症の患者の増加が全体的に早い印象があり、湿度が低いことが影響している可能性がある。例年1月から2月ごろといわれる流行のピークが早まる可能性もあり、高齢者を中心に早めにワクチンを接種するとともに、手洗いやマスクの着用などのせきエチケットを心掛けてほしい」と話しています。

 今シーズンに検出されたウイルスの8割以上を占めるA香港型は、高齢者が重症化しやすいとされており、国立感染症研究所によりますと、前回、A香港型が流行の主流となった2年前のシーズンでは、指定された全国500の医療機関でおよそ1万2000人が入院し、このうち60歳以上が全体の6割を占めていました。

 厚生労働省では、ワクチンを接種した高齢者は死亡のリスクが5分の1に、入院のリスクが最大で3分の1程度にまで減らせる効果が期待されるとして、早めのワクチン接種を呼び掛けています。

 また、今月20日までの1週間に休校、学年閉鎖、学級閉鎖の措置を取った保育所や幼稚園、学校の数は全国で187施設に上り、昨年の同じ時期の10施設と比べて大幅に増えています。

 2016年11月26日(土)

 

■インフルエンザ治療薬のタミフル、1歳未満も使用可能に 24日付で保険適用

 厚生労働省の部会は24日、インフルエンザ治療薬タミフルを1歳未満の乳児に投与することを認めました。24日付で保険適用となりました。

 1歳未満への使用は安全性と有効性が確認できていないとして、保険の対象外でした。しかし、乳児はインフルエンザ脳症などで重症化するケースが多く、欧米では1歳未満の乳児へのタミフルの投与が認められていることから、日本感染症学会、日本小児感染症学会など関連3学会が乳児にも使用を認めるよう要望していました。

 1歳未満の乳児に投与することを認められたのは、子供向けに甘くした「タミフルドライシロップ(粉薬)」。これまで乳児のインフルエンザ治療薬には点滴薬の「ラピアクタ」しか認められておらず、経口薬は初めてです。

 タミフルは2001年に成人用、2002年に子供用の販売が始まりました。服用した子供が転落するなど異常行動による事故が続発したため、厚労省が2007年から、体格が大きく行動の制止が難しい10歳代への投与を原則中止としています。服用と異常行動の因果関係は、厚労省研究班が調べています。

 2016年11月25日(金)

 

■糖尿病の30歳代男性、心疾患リスク18倍に 新潟大学が研究

 糖尿病の30歳代男性が心筋梗塞(こうそく)や狭心症などの心疾患を発症する確率は、糖尿病ではない同年代の男性の18倍高いとの分析結果を、新潟大学の曽根博仁教授(内科)、藤原和哉准教授(内科)らの研究チームが欧州の医学会誌に発表しました。

 一般に糖尿病患者の発症率は2~4倍とされますが、それを大幅に上回りました。

 心筋梗塞などは働き盛りの突然死の主な原因とされ、糖尿病で血糖値が上がると、動脈硬化が進んで発症しやすくなります。

 研究チームは診療報酬明細書(レセプト)のデータベースから、2008~2012年に健康診断を受け、心疾患になったことがない31~60歳の男性11万1621人を抽出。高血圧や肥満など他の要因に配慮し、糖尿病の人と血糖値が正常な人の手術やカテーテル治療を要した心疾患の発症率を比べました。

 その結果、30歳代では最大18・2倍の差があり、40歳代は2・7倍、50歳代は2・5倍に縮まりました。血糖値がやや高めな「糖尿病予備群」でも30歳代の発症率は2・9倍で、40歳代の1・6倍、50歳代の0・9倍を上回りました。

 研究チームの曽根博仁教授(内科)は、「糖尿病と診断されたり、血糖値が高めだったりした場合は、若くても安心できず、逆に若いからこそ危険性が高いといえる。早めに生活習慣の改善などに取り組むことが重要だ」と話しています。

 2016年11月24日(木)

 

■ジカ熱感染の新生児、遅発性の小頭症発症の可能性も  アメリカ疾病対策センターが研究

 新生児がジカ熱(ジカウイルス感染症)に感染した場合、出生時には正常と思われても、後に深刻な脳障害を示し、頭部の成長が異常に小さい小頭症を発症するケースがあることが明らかになりました。アメリカの疾病対策センター(CDC)が22日、研究報告を発表しました。

 CDCが発表した今回の報告書で取り上げているのは、母親が妊娠中に蚊が媒介するジカ熱に感染したブラジルの新生児13人のケース。声明によれば、これらの新生児13人のうち11人が後に小頭症を発症し、頭部の成長の遅れと小頭症から深刻な神経系の合併症を併発していました。

 また、新生児13人のうちの7人がてんかんを発症し、全員に混合型の脳性まひに合致する重度の運動障害がみられたといいます。

 ただし、CDCの研究チームが新生児を調査した期間は生後1年間であり、この段階では幼すぎるために、13人に何らかの知的障害があるかどうかは判断できなかったとしています。

 研究者の間ではこれまで、妊婦がジカ熱に感染すると新生児が小頭症を発症する恐れがあり、また、小頭症の症状が現れなくても、脳障害を引き起こす可能性があることは知られていましたが、今回発表された研究報告で初めて明らかにされたのは、胎内でのジカ熱への感染が遅発性の小頭症の発症につながることを示している点です。

 報告書は、「調査結果は、出生時における小頭症だけが先天性のジカ熱の本質的な特徴ではないことを示している」として、「小頭症の症状は、出生時には明確に現れない場合もあるが、乳幼児期になって潜在的な脳疾患を併発する恐れがある」と指摘しています。

 研究チームは、母親の胎内でジカウイルスにさらされた新生児全員が発育上の障害を抱えるわけではなく、今回の研究は、遅発性の小頭症の発症頻度については解明の手掛かりを与えるものではないと主張。一方で、医師らに対しては、ジカウイルスにさらされた胎児に出生前診断で脳のスキャンを実施するとともに、医学上、発育上の経過観察を包括的に行う必要があると呼び掛けています。

 2016年11月24日(木)

 

■日常的残業で「精神不調」、5人に1人 日本能率協会が意識調査

 日常的に残業をしている人の5人に1人が「精神面で不調を感じた」と訴えていることが、日本能率協会(東京都千代田区)が22日までにまとめた「仕事と健康に関する意識調査」でわかりました。

 担当者は、「意欲の低下やすぐ落ち込んでしまう状態になると仕事の効率が落ち、長期化すればうつ病といった精神疾患になる恐れがある」として、業務などを見直す必要があると指摘しています。

 調査は7~8月、正規、非正規で働く20~69歳の男女にインターネットで実施、1000人が回答しました。

 日常的に残業している人は、514人。この人たちに残業の私生活への影響を複数回答で聞いたところ、「特に影響はない」とした人(34・6%)を除くと、「精神面で不調を感じた」が18・9%で5番目に多くなりました。そのほかは「趣味の時間が減った」(28・4%)が最多で、「睡眠不足になった」(25・1%)、「食生活が乱れた」(22・2%)、「身体面で不調を感じた」(21・4%)が続きました。

 「精神面で不調を感じた」という回答は、1日当たりの残業が2時間以上3時間未満の人では25・3%、3時間以上では25・0%で、「身体面で不調を感じた」という回答をそれぞれ6・6ポイント、4・2ポイント上回りました。1日当たり3時間の残業は、月に20日間働くと60時間の残業となります。

 残業を減らすため職場に求めること(複数回答)は、「必要ない業務をやめる」(29・8%)、「残業をしない職場の雰囲気づくり」(28・6%)、「特定の人に負荷がかからない仕事の割り振り」(24・9%)、「職場の人員を増やす」(24・1%)が上位でした。

 2016年11月22日(火)

 

■がん細胞への攻撃力、数十倍 京大がiPSから免疫細胞を作製

 人のiPS細胞(人工多能性幹細胞)から、がん細胞を高い精度で認識し、攻撃力を数十倍強めた免疫細胞を作製することに成功したと、京都大学などの研究チームが発表しました。

 研究チームは、この免疫細胞を使って血液のがんである白血病患者を治療する計画を進め、2019年の臨床試験(治験)開始を目指しています。論文は22日、アメリカの医学誌電子版に掲載されました。

 京都大学の河本宏教授(免疫学)らは2013年、人のiPS細胞から、がん細胞を攻撃する免疫細胞の一種「キラーT細胞」を作製することに成功しました。

 キラーT細胞は、細胞表面にある分子の違いで攻撃相手を見分けますが、iPS細胞から作ったキラーT細胞は分子を認識する力が弱く、そのままでは医療応用が難しいという課題がありました。

 今回、iPS細胞をキラーT細胞に変える途中で、質の良い細胞だけを取り出すなど培養方法を改良し、攻撃力の強いキラーT細胞を作製することに成功。さらに、白血病などに高頻度で出現するタンパク質「WT1抗原」に反応するタイプのキラーT細胞を作製し、実際に白血病細胞だけを攻撃する能力が高いことを確認しました。

 実験では、このタイプのキラーT細胞を人の白血病細胞を移植したマウス15匹に投与したところ、4匹が150日以上生存しました。投与しなかったマウスは、75日以内に15匹とも死にました。

 iPS細胞はほぼ無限に増やせるため、たくさんのキラーT細胞を作製できます。

 河本教授は、「治験に向け、さらに安全性を検証したい。反応するタンパク質を変えたりして、ほかのがんへの応用も考えたい」と話しています。

 2016年11月22日(火)

 

■震災後3カ月以内に妊娠した新生児、極低体重の割合2〜3倍に 精神的ストレスが原因

 2011年3月に発生した東日本大震災から3カ月以内に妊娠した福島県の女性は、新生児が「極低出生体重児」と呼ばれる体重1500グラム未満で生まれる割合が、震災前の2倍から3倍に上っていたとする分析結果を日本医科大学などの研究チームがまとめました。

 研究チームでは、「震災後の精神的なストレスが原因と考えられ、災害時の妊婦のケアを充実させる必要がある」と話しています。

 日本医科大学などの研究チームが福島県と合同で、東日本大震災の前後に妊娠した県内の女性1万2300人を詳しく分析した結果、明らかになったものです。

 震災後3カ月以内に妊娠した女性は1728人いましたが、生まれた新生児が体重2500グラム未満の「低出生体重児」だった女性は、全体の11%に当たる185人で、震災前に比べて2ポイントから3ポイント増えていました。このうち、新生児が体重1500グラム未満の極低出生体重児だった女性は20人で、震災前の2倍から3倍の高い割合に上っていました。

 小さく生まれた極低出生体重児は、体の機能が未熟なために脳性マヒや知的障害などの合併症を起こしやすく、免疫力も弱いために重症の感染症にかかりやすいため、出産後、多くの場合は新生児特定集中治療室(NICU)での保育が必要になります。

 低出生体重児と極低出生体重児が生まれる割合は、震災から4カ月後以降は震災前の状態に戻っていました。

 分析を行った日本医科大学の中井章人教授は、「災害時に精神的なストレスを強く感じることが、早産や低出生体重児の原因になることが指摘されていて、東日本大震災でも同じ原因と考えられる。災害時に妊婦が不安や悩みなどを相談できる支援態勢の強化が必要だ」と話しています。

 2016年11月21日(月)

 

■鳥インフルエンザ、警戒レベルを最高の3に引き上げ 環境省

 環境省は21日、鳥取市内で見付かった野生のコガモのふんと、秋田市大森山動物園(同市浜田)で飼育中に死んだコクチョウ2羽から検出された鳥インフルエンザウイルスがいずれも、強い毒性の高病原性(H5N6型)だったと明らかにしました。

 鹿児島県でも高病原性ウイルスが確認されており、環境省は21日、鳥インフルエンザの警戒レベルを最高の「3」に引き上げました。

 警戒レベルが最高の3に引き上げられるのは、2014年11月以来、2年ぶり。調査の頻度を上げるなど、野鳥の監視を強化します。

 環境省によると、コガモのふんは鳥取大学が15日に独自の調査で採取。環境省は21日、採取地点から10キロ圏内を野鳥監視重点区域に指定しました。今後、調査チームを現地に派遣し、感染のリスクが比較的、低い鳥にまで対象を広げて検査するなどして、感染ルートの解明を進めることにしています。

 秋田市のコクチョウについては、今月15日と17日、大森山動物園で飼育されていたコクチョウが死んでいるのが見付かり、簡易検査の結果、鳥インフルエンザウイルスの陽性反応が出ました。このため北海道大学に2羽の検体を送り詳しく検査したところ、毒性の強いH5N6亜型鳥インフルエンザウイルスが検出されました。

 高病原性ウイルスは、鹿児島県出水市のツルのねぐらで14日に採取した水からも検出されています。 

 2016年11月21日(月)

 

■受動喫煙を経験した場所、飲食店が4割超 厚労省が対策を強化へ

 他人のたばこの煙を吸い込む受動喫煙を経験した場所について厚生労働省が調査したところ、「飲食店」と回答した人が4割余りで最も多かったことがわかりました。

 厚労省は健康被害を防ぐため、受動喫煙の対策を強化する検討を進めています。

 厚労省は受動喫煙などの状況を調査するため、2年に1度、アンケート調査を行っており、昨年11月に全国のおよそ3500世帯から回答を得ました。

 この中で、過去1カ月の間に受動喫煙を経験した場所について複数回答で聞いたところ、「飲食店」と回答した人が41・4%で最も多く、次いで「遊技場」が33・4%、「職場」と「路上」がともに30・9%でした。さらに、「医療機関」や「行政機関」、「学校」という回答もそれぞれ5%前後あったということです。

 また、受動喫煙の対策を強化してほしい場所を聞いたところ、「飲食店」が35%と最も多く、次いで「路上」が34・8%、子供が利用する「公園」や「通学路」が28・2%となっています。

 厚労省は、受動喫煙は脳卒中や肺がんなどのリスクを高めるとして、不特定多数の人が出入りする施設を中心に喫煙を規制し、違反した場合は管理者と喫煙者に罰金を科す方向で検討を進めています。

 施設によって規制レベルを分け、患者や未成年者らが主に利用する医療機関と小中高校を「敷地内禁煙」、多数の人が利用する施設と位置付けた官公庁やスポーツ施設、社会福祉施設、大学などを「建物内禁煙」、飲食店やホテル、船、駅、空港内などを「喫煙室による分煙可」としています。

 2016年11月20日(日)

 

■所得が高い高齢者、介護保険3割負担へ 2018年8月から

 現役世代並みの所得がある高齢者が介護保険サービスを利用した場合、自己負担の割合を現行の2割から3割に引き上げる時期について、厚生労働省は2018年8月からとする方針を固めました。

 今後、政府、与党内で調整し、来年の通常国会で関連法の改正を目指します。

 対象は年金収入だけで年収383万円以上の単身者など、現役世代並みの所得がある高齢者で、介護保険サービスの利用者のうち数%とみられます。

 介護保険の自己負担は原則1割ですが、単身で年金収入だけの場合で年収280万円以上といった高齢者は、昨年8月から2割に引き上げられています。今回は、それに続く負担増となります。

 毎月のサービス利用料の自己負担上限額は、2017年8月から一部が引き上げられます。課税所得が145万円未満で市区町村民税が課税されている人がいる世帯の上限額は、月3万7200円から4万4400円になります。

 介護保険の総費用は、2016年度予算ベースで10兆円強。高齢者に所得に応じた負担を求める一方、40~64歳の大企業社員が支払う保険料も増やし、制度全体の安定を図ります。

 2016年11月20日(日)

 

■インフルエンザ、例年より早く全国的な流行期入りの可能性 1週間の推計患者は5万人

 11月7日から11月13日までの1週間に、全国の医療機関を受診したインフルエンザの患者は推計5万人となり、例年より早いペースで増えています。国立感染症研究所は「早ければ来週にも全国的な流行期に入る可能性がある」として、手洗いなど予防策の徹底を呼び掛けています。

 国立感染症研究所の定点調査によりますと、最新の1週間に全国の医療機関を受診したインフルエンザの患者は推計5万人に上り、前の週から2万人増えました。

 1医療機関当たりの患者数でみますと0・84人となり、全国的な流行期入りの目安とされる「1」に迫っています。

 これは、昨年と比べると1カ月以上、例年と比べても2週間から3週間ほど早いペースだということです。

 1医療機関当たりの患者数を都道府県別にみますと、最も多いのが沖縄県で7・97人、次いで栃木県が2・86人、北海道が1・92人、福井県が1・91人、岩手県が1・54、群馬県が1・36人、埼玉県が1・12人などとなっており、39の都道府県で前の週より患者が増えています。「1」を超える流行期入りレベルは7道県で、「10」を超える注意報レベル、「30」を超える警報レベルの都道府県はありません。

 また、厚生労働省によりますと、この影響で学級閉鎖などの措置を取った保育所や幼稚園、学校の数は1週間で66施設と、昨年の同じ時期の7倍余りに上っているということです。

 国立感染症研究所の砂川富正室長は、「早ければ来週にも全国的な流行期に入る可能性がある。早めにワクチンを接種するとともに、手洗いやマスクの着用などのせきエチケットを徹底してほしい」と話しています。

 2016年11月19日(土)

 

■WHO、ジカ熱の「緊急事態」を解除  対策継続求める

 南米と北米の両大陸を中心に広がっていたジカ熱(ジカウイルス感染症)について、世界保健機関(WHO)は18日、「国際的に懸念される公衆衛生の緊急事態」には該当しない状況になったとして解除を決めました。2月1日から9カ月あまりでの解除ですが、「重要な課題であることに変わりはなく、集中的な取り組みが必要だ」と強調しました。

 18日にあった専門家委員会で、デイビッド・ヘイマン委員長は「緊急事態ではなくなったが、ジカ熱はWHOが取り組む優先課題だ。専門的な助言機関をつくって対応を続ける」としました。

 WHO緊急保健プログラムの役員を務めるピーター・サラマ氏は記者会見で、「ジカ熱の重要度を引き下げるものではない」と説明。長期的な計画に基づいて、ジカ熱の研究や治療態勢などを強化していく必要があると呼び掛けました。

 WHOなどによると、ジカ熱は主にネッタイシマカなどが媒介して広がる感染症で、性行為でも感染が拡大するとされています。感染者の大半は軽い症状しか出ないものの、妊婦が感染した場合、胎児の頭部と脳が異常に小さくなる小頭症と呼ばれる先天異常を引き起こす恐れがあるほか、筋力低下などを伴う神経疾患であるギラン・バレー症候群の発症要因になっている可能性もあります。

 2015年5月にブラジル北東部の州で地域的な流行が確認されて以降、中南米を中心に流行が急拡大し、今年8月に開かれたリオデジャネイロ夏季オリンピックでは選手や観客らにも不安が広がり、60を超す国・地域から感染が報告されています。

 WHOはこれまでに、ジカ熱の流行地域に住む人や、流行地域から帰国した男女に対し、コンドーム使用など「より安全な性行為」の実施や、性行為そのものを控えるよう勧告する事態になっていました。

 WHOは今後もジカ熱の危険は存在し続けるとして、流行地域では虫よけを徹底し、流行地域から帰国した人には6カ月間性行為を控えることなどを求めています。

 2016年11月19日(土)

 

■ゲノム編集で網膜色素変性症の症状改善に成功 理研などが動物実験で

 生物の遺伝情報を自在に書き換えるゲノム編集と呼ばれる技術を使って、網膜の遺伝子を操作し、失明の原因となる網膜色素変性症の症状を改善させることに、理化学研究所などがラットを使った実験で成功しました。

 この研究を行ったのは、理化学研究所の恒川雄二研究員とアメリカのソーク研究所の研究チームです。研究チームでは、ゲノム編集を使い、網膜の視細胞の変性により進行性の視覚障害を来す網膜色素変性症のラットの目の網膜にある細胞の遺伝子を操作しました。

 その結果、網膜の細胞のおよそ4%が正常に機能するようになり、ラットは、光を感じて反応できるようになったということです。

 これまでのゲノム編集は、細胞分裂が起きるタイミングをねらって行っていたため、脳や心臓、網膜などの分裂をしていない細胞ではできませんでしたが、研究チームでは、こうした細胞でもゲノム編集ができる「HITI(ヒティ)」と名付けた新たな手法を今回開発したということです。

 理化学研究所の恒川研究員は、「新たなゲノム編集の方法を使えば、脳や心臓を始め、神経や筋肉などの遺伝子の異常が引き起こすヒトの難病についても治療できる可能性がある。さらに研究を進めていきたい」と話しています。

 論文は17日、イギリスの科学誌ネイチャーに掲載されました。

 2016年11月18日(金)

 

■危険な病原体を扱う研究施設、国が支援へ 長崎大学が建設を計画

 長崎大学が建設を計画している危険度が特に高い病原体を扱う感染症の研究施設の整備について、政府は17日、持ち回りの関係閣僚会議を開き、国の危機管理上、重要な施設だとして、安全対策などで積極的に支援を行う方針を決めました。

 政府は国際的な脅威である感染症の研究拠点の整備を急いでおり、長崎大学は長崎市の坂本キャンパスに、エボラウイルスなどの危険度が特に高い病原体を扱う「BSL4(バイオセーフティーレベル4)」と呼ばれる研究施設を建設する計画ですが、地元住民からは安全性を懸念する声も出ています。

 具体的には、世界最高水準の安全性を備えた研究施設の建設と、維持管理に必要な支援を行うほか、関係省庁や有識者などで作る「施設運営監理委員会」を設置して、安全性のチェックを行うとしています。

 さらに、万が一事故が発生した場合には、関係省庁を招集するとともに、政府の担当者や専門家を現地に派遣して、大学や自治体と連携して対応するなどとしています。

 長崎大学にBSL4が設置されれば、東京都武蔵村山市にある国立感染症研究所村山庁舎の実験施設に続いて、国内で2例目となり、政府は今回決定した方針に基づいて、来年度予算に施設設計などの準備費として数億円を計上する予定といいます。

 菅義偉官房長官は、「安全面などのさまざまな対策に対して、国として支援していく方針をまとめた。近日中に県、市、大学の3者で対応を協議すると報告を受けているので、その決定を踏まえて、国としてもしっかり取り組んでいく」と述べました。

 長崎市の田上富久市長は14日、菅官房長官と面談し、国の関与を強く求めていました。

 BSL4と呼ばれる高度な安全設備を備えた実験施設は、感染症法で危険性が特に高い「1類感染症」に指定されているエボラ出血熱、クリミア・コンゴ出血熱、痘そう、南米出血熱およびラッサ熱のウイルス性出血熱、ペスト、マールブルグ病の7種類の病原体を取り扱うことが認められた施設で、ワクチンや治療薬を開発するためにウイルスの詳しい解析や実験などが行われます。世界保健機関(WHO)の指針や国の安全基準に基づいて運用され、病原体の流出を防ぐため研究者は防護服を着て実験を行うほか、空調の管理や実験器具の消毒の徹底などが義務付けられています。

 厚労省によりますと、海外では欧米やアジアなどの19カ国で合わせて41施設が稼働しています。

 2016年11月18日(金)

 

■措置入院患者、2015年度末は1519人 厚労省調査

 精神疾患のため自分や他人を傷付ける恐れがある人を法律に基づき行政が強制入院させる「措置入院」の対象者が、2015年度は7106人(前年度比245人増)だったことが17日、厚生労働省の調査で明らかになりました。

 2014年度末時点の入院者は1476人おり、2015年度中に退院した人は7063人でした。2015年度末時点の入院者数は1519人で、前年度末より43人増加しています。

 都道府県別の新規入院者で最も多かったのは東京都の1704人で、神奈川県730人、埼玉県644人が続き、最小は徳島県の13人。年度末時点の入院者は東京都が225人で最も多く、埼玉県が120人で続きました。

 都道府県などが患者本人や家族の同意なしに入院させる措置入院は、精神保健福祉法に基づく対応で、2人以上の精神保健指定医が「加害」や「自傷」の恐れがあると判断することが条件となっています。精神保健指定医が定期的に診察し、入院の必要がなくなったと判断した場合、病院が自治体に「症状消退届」を提出。都道府県知事らが退院について判断します。

 措置入院を巡っては、今年7月に神奈川県相模原市の障害者施設で19人が死亡、27人が重軽傷を負った事件で、逮捕された元職員の植松聖容疑者(26)が、今年2月に同市の病院に措置入院していました。厚労省の検討チームは9月に、自治体や医療機関による退院後の患者支援が不十分だったと評価しました。

 これを踏まえ、検討チームは都道府県知事らが責任を持って、入院中から退院後まで患者を支援していく仕組みの創設を、今月末にまとめる再発防止策の報告書に盛り込む予定。

 2016年11月18日(金)

 

■肥満が免疫細胞を老化させ、糖尿病を起こす 慶大などがマウス実験で解明

 肥満によって糖尿病など生活習慣病の発症リスクが高まるのには、免疫細胞の老化が関係していることを、慶応大などの研究チームがマウス実験で解明しました。人間でも肥満がさまざまな生活習慣病を引き起こすことから、今後予防や治療につながる可能性があります。

 免疫細胞が加齢に伴って老化すると、働きが低下したり、炎症を起こす物質を放出したりして、高齢者での糖尿病や心血管疾患の発症の増加につながっています。慶応大学の佐野元昭准教授(循環器内科)らは、こうした免疫細胞の老化と肥満との関係を調べました。

 生後1カ月のマウスに3カ月ほど高脂肪食を与え続けたところ、内臓脂肪内で、通常は高齢のマウスにしかみられないような老化状態のTリンパ球が増えるのを発見。このTリンパ球が炎症を引き起こす物質を大量に放出し、マウスの糖尿病発症につながりました。

 さらに、この老化状態のTリンパ球を、生後4カ月ほどの健康なマウスの内臓脂肪に注入したところ、約2週間で炎症を引き起こす物質の血液中の濃度が上がり、糖尿病になっていることを確認しました。

 佐野准教授は、「免疫細胞の老化が肥満での糖尿病に絡むことを明らかにしたが、動脈硬化などほかの生活習慣病にも関係している可能性がある。肥満が原因で起こる病気に対し、老化状態のTリンパ球を取り除き、免疫機能を回復させるような治療が効果的だと考えられる」と話しています。

 研究成果は、アメリカの医学研究専門誌「ジャーナル・オブ・クリニカル・インベスティゲーション」(電子版)に掲載されました。

 2016年11月18日(金)

 

■日本脳炎と麻疹風疹ワクチンが不足 医療機関に問い合わせ相次ぐ

 蚊が媒介する感染症である日本脳炎を予防する日本脳炎ワクチンと、はしか(麻疹)の予防接種として一般的に使われているMR(麻疹風疹混合)ワクチンが不足し、各地の医療機関や自治体窓口などに問い合わせが相次いでいます。  

 日本脳炎ワクチンについては生後早めの接種を勧める見解が出され、MRワクチンでも今夏の関西空港でのはしかの集団感染などを受け、定期接種以外の接種などで需要が増えたためとみられます。ただし、ワクチンの接種が多少遅れても問題ないといい、専門家は冷静な対応を呼び掛けています。

 日本脳炎ワクチンは、3歳で1回目、1~4週間後に2回目、約1年後に3回目、9歳で4回目を接種するのが一般的。3歳児を持つ京都府内の女性は10月、予約していた2回目について病院から「確保できない。キャンセルしてほしい」と電話があったといいます。

 いつ入荷するかの言及はなく、「また問い合わせてほしい」というばかり。女性は「待っていればいいのか、どうすればいいのか」と困惑した表情で話しています。

 各地の病院では夏ごろから、日本脳炎ワクチンのほか、1歳と小学校入学前年の計2回定期接種するMRワクチンの入荷が難しい状態になっており、大阪市生野区の「浦岡小児科」では、それぞれ40人近い子供が順番待ちをしています。神戸市北区の「わくこどもクリニック」でも、多い時で各20~30人が待っており、ほかの病院への問い合わせを促しているといいます。

 厚生労働省は9月、都道府県間でワクチンを調整するよう求める通知を出しましたが、解決には至っていません。京都府からの委託で予防接種の相談を受け付ける府予防接種相談センターには9~10月の2カ月間に、「どの病院にも断られた」との電話が計約60件ありました。大阪府医療対策課や神戸市保健所にも、同様の電話が相次いでいます。

 日本脳炎の国内の患者数は近年、中高年を中心に年間10人以下で推移していますが、この10年間で0~10歳児の発症が西日本を中心に8件あり、日本小児科学会は今年2月、患者が発生した地域などでは生後6カ月ごろからの接種を推奨。4月からは、定期接種の対象外だった北海道で、病気を媒介する蚊の生息域が温暖化で広がる可能性があるとして定期接種が始まりました。

 また、血液製剤などの不正製造が発覚した化学及血清療法研究所(化血研、熊本市)で一時、出荷が制限されたことも影響しているとみられます。

 MRワクチンでは、製造する阪大微生物病研究会、武田薬品、北里第一三共の国内3社のうち、北里第一三共が昨年10月以降、効き目が基準を下回る恐れがあるなどとして出荷停止中で、今年8月ごろから品薄状態に。2012年から風疹(三日ばしか)が流行したことを受けて成人のMRワクチン接種に補助を出す自治体が増加したことに加え、今年8月には関西空港の従業員らがはしかに集団感染したことなどを受け、成人の需要も増し、追い打ちをかけたとみられます。

 日本ワクチン産業協会によると、2014年に生産されたワクチンは、日本脳炎、MRとも約230万本。最新のデータは明らかにされていませんが、厚労省は「地域や銘柄ごとに偏りがあるかもしれないが、流通の全体量としては不足していないと考えている」として、推移を見守っているといいます。

 2016年11月17日(木)

 

■オプジーボで効果ある皮膚がん患者、特定の免疫細胞が増加 治療効果の判定に応用期待

 体の免疫機能を高めて、がん細胞を攻撃する新しいタイプのがん治療薬「オプジーボ」(一般名・ニボルマブ)が効く皮膚がんの患者は、「9型ヘルパーT(Th9)細胞」と呼ばれる血液中の免疫細胞が増え、がん細胞への攻撃力を高めることがわかったと、京都大学の大塚篤司助教(皮膚科学)らの研究チームが発表しました。

 将来的には、血液検査で、治療効果を判定できる可能性があるといいます。

 大塚助教によると、オプジーボは皮膚がんの一種であるメラノーマ(ほくろのがん、悪性黒色腫)の患者では、約3割には治療効果があり、約7割には治療効果がないとされますが、その違いが生じる仕組みがわかっていませんでした。

 日本でのメラノーマの発症数は、人口10万人当たり1・5~2人くらいといわれ、年間1500~2000人くらい発症しています。白色人種の多い欧米では人口10万人当たり10数人以上で、オーストラリアは20数人以上の発症と世界一です。日本でも外国でも年々、発症数の増加傾向が認められています。

 研究チームは、メラノーマの患者46人にオプジーボを投与し、それぞれの血液を調査。その結果、腫瘍縮小などの治療効果のあった18人は、末梢血中に存在するTh9細胞の数が治療前の約3倍に増加しました。一方、効果のなかった28人では変化はみられませんでした。

 Th9細胞自体は、がんを攻撃しないものの、この細胞から分泌されるインターロイキン9という分子が、がんを攻撃する免疫細胞(キラーT細胞)を活性化させるといいます。

 研究チームの論文は、国際科学誌「Oncoimmunology(腫瘍免疫学)」に掲載されました。

 2016年11月17日(木)

 

■がん治療薬「オプジーボ」、来年2月に半額へ 患者急拡大で中医協が了承

 高額な肺がんなどの治療薬「オプジーボ」(一般名・ニボルマブ)について、厚生労働大臣の諮問機関である中央社会保険医療協議会(中医協)は16日の総会で、来年2月から薬価を50%引き下げることを了承しました。

 皮膚がん、肺がん、腎臓がんの治療薬であるオプジーボは、肺がんの場合には体重60キロの男性患者が1年間使用すると、およそ3500万円かかると試算され、国の医療保険財政を圧迫しているとして、再来年4月の定例の薬価改定を待たず、緊急的に薬価を引き下げることになっており、引き下げ幅が焦点となっていました。

 16日に開かれた中医協で、厚生労働省はオプジーボについて、今年度の年間販売額を追加された薬の効能を考慮して試算し直した結果、1500億円を超えると推計できるとして、当初の予測より販売額が拡大した場合の「市場拡大再算定」というルールを適用し、価格を50%引き下げる案を示しました。また、引き下げは、来年2月から行うとしています。

 これに対し、出席者からは「企業活動に大きなダメージを与えかねない。試算の仕方は本当に問題ないのか」という指摘が出されましたが、最終的に、中医協として価格を50%引き下げることを了承しました。

 オプジーボを開発した小野薬品工業は、「本来の改定時期である再来年度、2018年度の薬価引き下げは想定していたが、時期が早まったことで、企業に想定外のマイナスが出ることとなった。唐突なルールの変更は、企業の予見性を損ねるため、制度の見直しを求めたい」と述べました。また、今回の引き下げについて、来週22日までに厚労省に不服意見を提出できることについて、「内容を精査し、検討したい」としています。

 大企業のサラリーマンらが加入する健康保険組合連合会の幸野庄司理事は、「市場規模が30倍程度に増え、前提が大きく変わったのだから、見直すのは正しい方向だ。薬の値段は、国民の税金や保険料で賄われており、限りがあるので、こういったシビアな対応が今後も必要になってくる」と述べました。

 オプジーボは、体の免疫機能を高めて、がん細胞を攻撃する新しいタイプのがん治療薬。手術ができないほど進行したがんを縮小させるなど、これまでの抗がん剤にはなかった治療効果が確認されています。遺伝子組み換え技術などを応用し、微生物や細胞が持つタンパク質を作る力を利用して製造される「バイオ医薬品」です。

 2014年9月の発売当初は、皮膚がんの一種であるメラノーマの治療薬として承認され、年470人程度の患者で採算がとれるように価格が高めに設定されました。その後、患者数の多い肺がんの一種である非小細胞肺がんや、腎臓がんの一種である腎細胞がんにも使えるようになって、対象患者が約1万5000人に広がり、販売額が急増しました。

 2016年11月17日(木)

 

■ゲノム編集で肺がん治療 中国の四川大学が新手法で初

 イギリスの科学誌「ネイチャー」の電子版は15日、中国・四川省成都にある四川大学の研究チームが生命の設計図と呼ばれるゲノム(全遺伝情報)を自由に改変できる「ゲノム編集」の手法を使い、肺がん患者を治療する臨床試験を実施したと報じました。

 四川大学の研究チームは10月28日に実施した臨床試験で、転移性の非小細胞肺がんの患者の血液から免疫T細胞を取り出し、免疫反応をつかさどる遺伝子を「クリスパー・キャス9」と呼ぶ新しいゲノム編集の手法で操作。がん細胞を攻撃するように改変し、患者に戻しました。経過は順調で、近く2回目の治療を実施するといいます。

 大学病院の生命倫理委員会の承認を得て実施したとしています。研究チームは計10人に対し同様の臨床試験をする計画で、6カ月間経過を観察して安全性を確かめます。

 ゲノム編集は従来の遺伝子組み換えと比べ、ねらった遺伝子を格段に高い精度で操作できます。

 アメリカではすでに別のゲノム編集の手法を使ったエイズ治療の臨床試験が実施されていますが、クリスパー法は従来の手法と比べ、操作が簡単で改変の効率もよいとされ、医療への応用に向けた研究が加速していました。

 アメリカでも来年早々、ペンシルベニア大学がクリスパー法を使ったがん治療の臨床試験を行う予定です。

 2016年11月16日(水)

 

■睡眠6時間未満が4割で過去最多に 厚労省が国民健康・栄養調査

 厚生労働省の2015年国民健康・栄養調査で、1日の平均睡眠時間が6時間未満の人の割合が39・5%で、過去最多になったことがわかりました。

 調査は2015年11月に、全国約3500世帯を対象に実施。1日の平均睡眠時間は、6時間以上7時間未満が最も多くなりました。6時間未満の人の割合は、2007年には28・4%でしたが、ほぼ毎年増え続け、2015年には39・5%に達しました。6時間未満の男性の44・5%、女性の48・7%が、日中に眠気を感じています。

 睡眠時間を確保する上での妨げを複数回答で尋ねたところ、6時間未満の男性では「仕事」が37・7%と最も多く、次いで体調が悪く寝付けないとして14・0%が「健康状態」を挙げました。女性では「家事」が21・0%、「仕事」が19・7%。

 年代別では20~30歳代で、「就寝前に携帯電話、メール、ゲームに熱中すること」が目立ちました。

 一方、栄養バランスのとれた食事を摂取しているかも調査。「主食」「主菜」「副菜」(野菜、海藻、キノコなど)を組み合わせた食事をほぼ毎日2回以上食べる人は、男性47・6%、女性52・7%でした。中でも、20歳代男性は39・1%、20歳代女性は38・4%にとどまりました。

 1回30分週2回以上の運動を続けている人の割合も、70歳以上の男性56%、女性38%だったのに対し、20歳代の男性17%、女性8%と、若い世代ほど低くなりました。

 特に20歳代女性は、9割以上が運動習慣を持たず、栄養バランスのとれた食生活を送っていない割合が高いなど、生活習慣に問題があることが浮き彫りになりました。

 2016年11月15日(火)

 

■細胞を若返らせ肝臓を再生 国立がん研究センター、動物実験で成功

 肝臓の細胞に3種類の特殊な化合物を加えることで、肝細胞のもととなる「肝前駆細胞」に若返らせることにネズミを使った実験で成功したと、国立がん研究センターの研究チームが14日、発表しました。

 この肝前駆細胞を遺伝子組み換えにより慢性肝炎にしたネズミの肝臓に移植したところ、肝前駆細胞が増殖して肝臓の細胞に変化し、8週間後には、最大で肝臓の細胞の9割を再生させて肝臓の働きが正常に戻ったということです。安全性の面でも問題は起きませんでした。

 人でも成功すれば、肝臓がんや肝硬変など重い肝臓病の再生医療に道が開けます。

 研究チームによりますと、重い肝硬変や肝臓がんの患者の中には、肝臓の移植手術で命を救えるケースがありますが、ドナー不足のため国内ではおよそ13%の患者しか移植を受けられていないということです。iPS細胞(人工多能性幹細胞)から肝臓のもとになる細胞を作って移植する治療の研究も進んでいますが、うまく再生できていないといいます。また、遺伝子を導入して作製するため、移植した細胞ががんになる懸念もあります。

 国立がん研究センターの落谷孝広・分子細胞治療研究分野長は、「肝臓移植に代わる新たな治療法となるよう、さらに安全性を確かめる研究などを進めていきたい。肝臓だけでなくさまざまな臓器にも応用できる可能性がある」と話しています。

 研究成果は、アメリカの科学誌電子版に掲載されました。

 2016年11月15日(火)

 

■呼吸器感染症の「非結核性抗酸菌症」の患者が増加 長引くせきに用心を

 結核菌と、らい菌以外の抗酸菌の感染で起きる、慢性の呼吸器感染症の一種である「非結核性抗酸菌症」の発病率が7年前の2・6倍に増加しているとの調査結果を、慶応大学の長谷川直樹教授らの研究チームがまとめました。

 長谷川教授は、「この病気は不明な点が多く、診断と治療体制を確立する研究が必要だ」と指摘しています。

 調査は、日本呼吸器学会の認定施設と関連施設884施設に2014年1~3月の新規診断患者数をアンケートし、約500施設から回答を得ました。

 新規診断患者数から推定された発病率は10万人当たり14・7人で、2007年に別の研究チームが行った調査での10万人当たり5・7人の2・6倍となりました。肺結核の10・7人(2013年)も上回る数値となっています。

 増加原因は不明で、検査精度の向上なども考えられるといいます。

 抗酸菌は結核の原因である結核菌の仲間を指し、水中や土壌など自然環境に広く存在して、酸に対して強い抵抗力を示す菌です。結核菌よりもかなり病原性が低く、健康な人では気道を介して侵入しても通常は速やかに排除されて、ほとんど発症しません。

 結核と症状が似ているために間違えられることもありますが、結核と非結核性抗酸菌症の大きな違いは、人から人へ感染しないこと、疾患の進行が緩やかであることです。発病すると、主に気管支や肺に炎症を起こし、長引くせきが出ます。確実に有効な薬がないため、複数の抗菌薬を長期間、飲まなければなりません。

 2016年11月15日(火)

 

■傷を数十分で自己修復、大阪大がコーティング材を開発 止血シートや車の塗料に応用期待

 表面に傷がついても自己の力で素早く修復する新たなコーティング材料を開発したと、大阪大学の原田明特任教授らの研究チームが発表しました。切り傷や擦り傷が数十分でほぼ完全に消えるといいます。

 車の被膜塗料などへの応用も期待される成果で、論文は11日、アメリカの総合化学誌「ケム」電子版に掲載されました。

 「自己修復材料」と呼ばれる物質で、高級車の塗装やスマートフォン画面の保護フィルムなどで実用化されています。ただし、従来の製品は傷が完全に修復できなかったり、修復するのに数時間かかったりしていました。

 研究チームは、長いひも状の分子に、多数のリング状の分子が貫通した、数珠やネックレスのような構造を持ったポリロタキサンという特殊な高分子を開発。リング部が自在に動く仕組みで、切断箇所でリング部が反応して再び高分子同士をつなぎ、傷やへこみを修復します。

 溶媒を含んだゼリー状と溶媒を除いたフィルム状の2種類を作製し、性能を確認したところ、ゼリー状では切断部が10分以内に80%、フィルム状では傷が30分でほぼ100%修復できました。

 研究チームは、「臓器の傷に貼り付ける止血シートなどの医療製品にも幅広く応用できる」とし、早期の実用化を目指します。

 2016年11月15日(火)

 

■マウスのiPS細胞から内耳細胞を作製 遺伝性難聴の治療薬に期待

 音の振動を神経の電気信号に変換する内耳の仕組みに異常がある遺伝性難聴で、原因となる細胞をマウスのiPS細胞(人工多能性幹細胞)から作製したと、順天堂大学の神谷和作准教授らの研究チームが発表しました。

 論文は11日付の国際幹細胞学会誌電子版に掲載されました。

 治療薬になる可能性がある化合物を試し、候補を絞り込むのに使えます。将来は人のiPS細胞から正常な細胞を作り、内耳に送り込んで定着させる再生医療を実現できる可能性があるといいます。

 内耳の蝸牛(かぎゅう)管は高濃度のカリウムイオンを含むリンパ液で満たされており、音の振動を受けた有毛細胞がカリウムイオンを取り込んで神経の電気信号に変換します。カリウムイオンは周囲の細胞を経由して、リンパ液に戻されます。

 一方、遺伝性難聴患者の約半分では、細胞同士でカリウムイオンを輸送する結合部の構造が崩れ、リンパ液に戻せません。原因はタンパク質「コネキシン26」の異常で、神谷准教授らは「GJB2」という遺伝子が働かないようにして難聴にしたマウスのiPS細胞から異常な内耳細胞を作り、タンパク質が次第に壊れて結合部が崩壊していく様子を再現しました。通常のマウスのiPS細胞からは、結合部が正常な内耳細胞を作製しました。

 神谷准教授は、「難聴を再現した細胞を使って、細胞間のつながりを修復する薬を開発できれば、根本的な治療につながる」と話しています。

 同じタイプの遺伝性難聴の患者は日本でも3万人以上いるとされ、根本的な治療法はなく、補聴器や人工内耳で聴力を補うだけです。

 2016年11月12日(土)

 

■川崎病の新診断法、三重大など開発 治療薬の早期選定が可能に

 三重大学などは10日、循環器疾患などに使う研究用試薬が川崎病の治療法を早い段階で診断するのに有効であると発表しました。後遺症を防ぐことができ、患者の体質に合った治療法がわかります。三重大は2年後をめどに、企業と共同で診断薬の実用化を目指します。

 川崎病は、乳幼児の全身の中小動脈に炎症を起こす疾患。1歳前後に発症しやすく、発熱や発疹、目の充血などの症状が出ます。小児科医の川崎富作博士により日本で最初に報告された病気で、日本を始め東アジアに多く、原因は解明されていません。患者数は年々増加し、2014年には国内で年間約1万5000人が発症しました。

 後遺症として、心臓の血管に冠動脈瘤(りゅう)ができる可能性があり、心筋梗塞(こうそく)などの恐れがあります。発症から9日までに治療するのが望ましいとされます。血液製剤「ガンマグロブリン」での治療が一般的ですが、約15%の患者には効かないという問題がありました。

 現在の治療法では、最初にガンマグロブリンを投与し、24時間以内に発熱が解消されない患者に、副作用の危険があるステロイドなどの投与による追加治療をしています。最初の治療の効かない患者には最初の24時間がタイムロスとなり、後遺症のリスクが高まるため、治療法を確実に診断する手段が求められていました。

 三重大学を中心とした6つの研究機関でつくる厚生労働省の研究班は、発症時に体内で作られるタンパク質「テネイシンC」に着目。患者111人の血液を調べ、テネイシンCの値が高い患者はガンマグロブリンが効きにくく、合併症が起こりやすいことを解明しました。

 この研究結果から、テネイシンCの数値が高い患者は、ガンマグロブリンによる治療を省き、初期段階で別の治療法を選択できます。

 研究にかかわった国立国際医療研究センター小児科の大熊喜彰医師は、「早期に診断と治療を行い、後遺症をゼロにしたい」と話しました。

 三重大は約10年前に、心筋梗塞や心不全などの重症度を測るため、テネイシンCの血中濃度を測る研究用試薬を免疫生物研究所と開発。この研究用試薬は保険適用外で、現状では専門機関で診断するのに1〜2週間かかるため、すぐに診断できる試薬の量産化が必要となります。

 三重大大学院医学系研究科の今中恭子教授は、「一刻も早く実用化したい。実用化すれば合併症を引き起こすリスクを軽減できる。さらなる研究を重ねたい」と語りました。

 2016年11月12日(土)

 

■治療薬「オプジーボ」、悪性リンパ腫にも有効性  近く正式承認へ

 高い治療効果が期待できる一方で、極めて高額なため薬価の引き下げが検討されている新しいタイプのがん治療薬「オプジーボ」(一般名・ニボルマブ)について、厚生労働省は、新たに悪性リンパ腫の一種にも有効性が認められるとして、近く承認する方針を固めました。

 オプジーボは、体の免疫機能を高めてがん細胞を攻撃する新しいタイプのがん治療薬で、2014年9月の発売当初は皮膚がんの一種であるメラノーマの治療薬として承認され、その後、患者数の多い肺がんの一種である非小細胞肺がんや、腎臓がんの一種である腎細胞がんの患者にも対象が拡大されました。

 11日に開かれた厚労省の専門家会議では、血液のがんである悪性リンパ腫の一種「ホジキンリンパ腫」の患者に対しても、新たに有効性が認められるとして、承認すべきだとする答申がまとまりました。

 厚労省は今回の答申を受けて、患者数が国内でおよそ2000人と推計されるホジキンリンパ腫の治療薬としても、オプジーボを承認する方針を固めました。約1カ月後に正式承認され、保険適用が認められます。

 オプジーボを巡っては、肺がんの場合、体重60キロの男性患者が1年間使用すると、およそ3500万円かかると試算され、医療費の自己負担分が一定額を超えた場合に軽減される高額療養費制度があるために、患者の負担は月9万円程度ですが、残る金額は患者が加入する医療保険と国や自治体の公費で賄われ、使用する患者が増えるにつれて保険財政を圧迫すると懸念されています。

 このため国は、薬価の大幅な引き下げや、効果が見込める患者に使用を限ることなどを検討しています。

 2016年11月11日(金)

 

■高額ながん治療薬「オプジーボ」、最大50%値下げへ 来春までに

 患者1人で年間約3500万円かかる高額な新型がん治療薬「オプジーボ」(一般名ニボルマブ)について、政府は薬価を緊急的に最大50%引き下げる方針を固めました。厚生労働省は最大25%引き下げる方針でしたが、首相官邸などが社会保障費の抑制が課題となる中で難色を示し、下げ幅を拡大します。

 16日にも、厚労相の諮問機関である中央社会保険医療協議会(中医協)に提案し、来春までに値下げします。

 オプジーボは日本発の画期的な免疫療法薬として、2014年9月に皮膚がんの一種であるメラノーマの治療薬として発売され、年間470人程度の患者で採算がとれるように、100ミリグラム約73万円と高めの薬価が設定されました。

 ところが、昨年12月に肺がんにも使えるようになり、対象患者が約1万5000人に拡大して販売額が急増。イギリスやアメリカでの薬価の2~5倍に上ることもあって「高すぎる」という批判が強まり、2年に1度の薬価改定(次回は2018年4月)を待たず緊急的に値下げすることで調整していました。

 値下げ幅は、薬の販売額が急増した場合のルールを活用。年間1000億円から1500億円なら最大25%、1500億円以上なら最大50%引き下げる仕組みです。

 オプジーボはメーカーの見込みでは出荷額ベースで1260億円ですが、厚労省は流通経費などを乗せると販売額が1500億円を超えると判断しました。

 2016年11月11日(金)

 

■食品大手フジッコ、商品60万個自主回収 総菜にプラスチック破片が混入

 食品大手のフジッコ(神戸市)は10日、総菜の商品の中にプラスチックの破片が混入していたとして、60万個余りの商品を自主回収すると発表しました。

 フジッコが自主回収するのは、カップ入りの総菜「おかず畑 おばんざい小鉢」というシリーズ商品の「切干大根」と「ひじき煮」、それに「うの花」のそれぞれ2パック入りの商品。回収の対象となる商品は、合わせて60万6700個余りです。

 先月以降、商品を買った客から「プラスチックの破片が商品に入っている」という連絡が合わせて5件あり、調査したところ、商品の容器に使っているプラスチックの長さおよそ3センチ、幅およそ1センチの破片が混入していたことがわかったということです。

 これらの商品は、兵庫県西宮市にある工場で製造され、今年9月から全国で販売されているということです。製造の過程で、包装用のシールを切断する位置が機械トラブルでずれて商品の容器のプラスチックが切れてしまい、混入したとして、商品を回収するとともに、販売を9日から一時休止することを決めました。

 フジッコは、「多大なるご迷惑をかけ、深くおわび申し上げます。管理体制を一層強化し再発防止に努めます」としています。

 同社に商品を送れば代金を返します。問い合わせの電話番号は、フジッコお客様相談室、フリーダイヤルは0120-078ー126で、午前9時から午後5時まで受け付けるということです。

 2016年11月10日(木)

 

■世界の昨年1年間の平均気温、観測史上最高に 産業革命前より1度高く

 昨年1年間の世界全体の平均気温は観測史上最も高くなり、産業革命前との差が初めて1度を超えたことが、北アフリカのモロッコで開かれているCOP22(第22回国連気候変動枠組み条約締約国会議)で報告され、パリ協定に基づく世界規模の温暖化対策が急務であることが改めて確認されました。

 世界気象機関(WMO)は8日、2011年から2015年までの5年間の世界の気象と地球温暖化の影響について報告書をまとめ、COP22の会場で発表しました。

 それによりますと、昨年までの5年間は世界全体の平均気温が観測史上最も高くなり、特に昨年は5年間で最も暑く、18世紀後半にイギリスから始まった産業革命前との差が初めて1度を超えたということです。

 また、海面の水位も海氷や陸上の雪が溶けることで、人工衛星の観測によると世界全体の平均で1年に3ミリほど上昇しており、2012年にニューヨーク市などアメリカの東海岸を襲ったハリケーン、サンディの高波による被害や、2013年に高知県四万十市で国内で最も高い41度の最高気温を観測するなど日本各地で記録された猛暑は、人類が排出した温室効果ガスによる地球温暖化によって、被害や影響がより深刻になったと指摘しています。

 地球温暖化対策の新たなルールであるパリ協定では、世界の平均気温の上昇を、産業革命前に比べて今世紀末に2度未満、できれば1・5度までに抑えるよう努力するという目標を掲げていますが、今回のWMOの報告で、パリ協定に基づく世界規模の温暖化対策が急務であることが改めて確認されました。

 WMOのペッテリ・ターラス事務局長は、「気候変動の影響は1980年代以降、世界規模で目に見えるようになっている。熱波や干ばつ、記録的な大雨や洪水などの危険性が増えている。これは深刻に受け止めるべき事態で、COP22での議論に生かされることを期待している」と話しています。

 2016年11月9日(水)

 

■インプラント治療を受けた4割の人にあごの骨の病気や炎症 日本歯周病学会が初の調査

 歯を失った人に金属を埋め込んで人工の歯を取り付けるインプラント治療を受けて3年以上たった人の40%余りが、細菌に感染することであごの骨が溶ける病気や、この病気になる前の段階の炎症を起こしていることが、日本歯周病学会が行った初めての調査でわかりました。

 専門家は、この病気を防ぐため、定期的に検診を受け、必要に応じて専門的な処置を受けることが重要だと指摘しています。

  歯のインプラント治療はあごの骨に金属を埋め込んで人工の歯を固定するもので、入れ歯よりも見た目が自然で、自分の歯に近い感覚が得られるなどとして希望する人が増え、国内ではおよそ300万人が治療を受けたとみられています。

 この中で、治療した部分の周りに細菌が感染して炎症が起き、金属を埋め込んだ骨が溶けるインプラント周囲炎という病気になる人が増え、日本歯周病学会が全国の実態を初めて調査しました。

 治療後、3年以上たった267人を調べたところ、9・7%の人がインプラント周囲炎にかかっており、この病気になる前の段階の炎症が起きた人を含めると43%に上るということです。

 日本歯周病学会によりますと、このインプラント周囲炎は30歳代から60歳代の人のおよそ8割がかかるとされる歯周病と似ていますが、進行が非常に早く、インプラント治療を受けて半年ほどで骨が溶け始めた患者もいるということです。

 調査した日本歯周病学会の副理事長で日本大学松戸歯学部の小方頼昌教授は、「インプラント治療を受けると半永久的に使えると思っている人が多いが、放置すれば、また歯を失う恐れがある。定期的な検診と必要な処置を受けてほしい」と呼び掛けています。

 また、大阪歯科大学の馬場俊輔主任教授は、「最近、インプラント周囲炎で受診する患者が増えている。インプラント治療で取り付けた歯は何もしなくても長持ちすると誤解している患者は多い。インプラント周囲炎になると進行が非常に早く、自覚症状も少ないので、気が付くと深刻な状態になっていることも多い。メンテナンスが重要なことを十分理解してほしい」と話しています。

 2016年11月8日(火)

 

■ジカ熱不活化ワクチン、臨床試験を開始 アメリカ国立衛生研究所 

 中南米や東南アジアでの流行が続くジカ熱(ジカウイルス感染症)について、アメリカの国立衛生研究所(NIH)は7日、ウイルスの病原性をなくした「不活化ワクチン」を人に投与する臨床試験を新たに開始したと発表しました。

 すでにウイルスの遺伝子を組み込んだDNAワクチンでの臨床試験を始めていますが、複数の候補を調べ、最適な予防法を確立したい考え。試験では18~49歳の75人に不活化ワクチンを接種し、安全性や、ウイルスを無害化する抗体ができるかどうかを見極めます。

 黄熱病や日本脳炎など、特徴の似た別のウイルスの抗体を持つ人にワクチンを接種すると、劇症化する恐れも指摘されていることから、別のワクチンと併用した場合の副作用も調べます。

 さらに数カ月後には、不活化ワクチンの接種回数や量を変えたり、DNAワクチンと併用したりして安全性を確認する複数の別の臨床試験を開始します。

 蚊が媒介するジカ熱は、昨年以降、中南米や東南アジアを中心に広がっており、世界保健機関(WHO)によりますと、73の国と地域で感染の拡大が報告されています。

 2016年11月8日(火)

 

大塚製薬、ゼリー飲料にカビ混入 4商品270万個を自主回収へ

 大手製薬会社の「大塚製薬」(東京都千代田区)は7日、一部のゼリー飲料にカビが混入していたとして、およそ270万個を自主回収すると発表しました。

 自主回収するのは、大塚製薬が全国で販売している「カロリーメイトゼリー」のアップル味(賞味期限が2016年12月11日~2017年7月8日)、ライム&グレープフルーツ味(同2016年12月29日~2017年7月10日)、フルーティミルク味(同2017年1月8日~6月28日)、それに「ジョグメイトプロテインゼリー」(同2016年10月15日~2017年4月10日)の4種類の商品です。

 大塚製薬によりますと、10月31日に販売業者から「開封していない商品の容器が膨張している」という連絡があり、調べたところ内部にカビが混入していたということです。この商品は、佐賀県吉野ケ里町の工場で生産され、何らかの原因で混入したカビが内部で成長する際に二酸化炭素を発生させ、容器が膨張したということです。

 今のところ、健康被害の報告はないということですが、今年3月以降に生産したおよそ270万個の商品の回収を決めました。着払いで商品を返品した場合、代金相当のプリペイドカードを送るとしています。

 大塚製薬は「お客様に多大なるご迷惑とご心配をお掛けし、深くおわびします」というコメントを発表し、今後、カビが混入した原因を調査することにしています。

 電話での問い合わせの番号は0120-562-353で、平日の午前9時から午後6時まで受け付けますが、今月12日の土曜日と、13日の日曜日も対応するということです。

 2016年11月7日(月)

 

■再び冷凍食品からO157を検出 先月の集団食中毒と同じ製造元

 静岡県の食品加工会社が委託製造した冷凍食品から病原性大腸菌O157が検出され、およそ5万個の商品を自主回収することになりました。製造を委託されていたのは、先月、神奈川県で起きた集団食中毒の原因とみられる製品を作ったのと同じ静岡県沼津市の食品加工会社「タケフーズ」で、静岡県が原因の究明を急いでいます。

 自主回収されるのは、静岡県沼津市の食品加工会社の大手「米久」が委託製造し、全国で販売している冷凍食品の「ジューシーメンチカツ」(14個入り、420グラム)約2万パックと、「クリーミィーコロッケ」(同)約3万パック。米久によりますと、「ジューシーメンチカツ」を食べた人から腹痛の訴えがあり、保健所が調べたところ、商品からO157が検出されたということです。

 この商品の製造を委託されていたのは、先月、神奈川県で起きたO157による集団食中毒の原因とみられる冷凍食品を作ったのと同じタケフーズです。

 米久は6日、「ジューシーメンチカツ」と同じ製造ラインが使われた「クリーミィーコロッケ」も回収することを決めました。静岡県が、汚染のルートなど原因の究明を急いでいます。

 対象の2商品は、合わせておよそ5万パックが全国のスーパーなどに流通しており、すでに出荷先からの在庫の回収は始めたということで、米久では「冷凍庫を確認し、見付けたら食べずに連絡してほしい」と呼び掛けています。

 電話での問い合わせは米久お客様相談室で、平日の午前8時から午後5時まで受け付けており、番号は0120-409-109です。

 2016年11月7日(月)

 

■1日3杯以上のコーヒーで脳腫瘍リスクが低下 国立がん研究センターが発表

 コーヒーを1日3杯以上飲む人は脳腫瘍(しゅよう)を発症するリスクが低いという研究成果を、国立がん研究センターの研究チームがまとめました。コーヒーに含まれる成分の一部が発がん抑制に関係している可能性があるといいます。

 国内10地域に住む40~69歳の男女約10万人に、コーヒーを飲む頻度などの習慣を聞き、その後約20年にわたって経過をみたところ、157人が脳腫瘍を発症しました。

 研究チームは、コーヒーを1日3杯以上、1~2杯、1杯未満と飲む頻度で3グループに分けて、年齢や喫煙歴などの影響を取り除き、脳腫瘍のリスクを調べた結果、1日3杯以上飲む人は1杯未満の人に比べて、脳腫瘍の発症リスクが53%低くなりました。

 コーヒーに含まれるクロロゲン酸やトリゴネリンという成分には抗酸化作用などの働きがあり、発症を抑えた可能性があるといいます。一方、海外では1日7杯以上と過剰に飲むと逆にリスクが高まるとの報告もあり、研究チームは、予防効果が出やすい適量があるとみています。緑茶についても同様に調べましたが、関連はみられませんでした。

 国立がん研究センターの澤田典絵室長は、「脳腫瘍の症例そのものがあまり多くなく、科学的根拠として確立するには、さらなる研究成果の蓄積が必要」と話しています。

 研究成果は、国際対がん連合(UICC)が発行するがん専門誌「インターナショナル・ジャーナル・オブ・キャンサー」の電子版に掲載されました。

 2016年11月6日(日)

 

■友人の種類が多いと歯の本数も多い 長寿医療研究センターが高齢者を調査

 近所の幼なじみや学生時代の同級生、趣味の仲間など友人の種類が多い高齢者ほど歯が多く残っていることが、国立長寿医療研究センター(愛知県大府市)などの研究チームが高齢者約2万人を対象にして行った調査でわかりました。多様な付き合いがあるほうが、虫歯予防に役立つ情報が集まりやすいのが要因とみられます。

 研究チームは2010年に、愛知県を中心に全国30自治体の高齢者約1万9700人(平均年齢73・9歳)にアンケート。仲間の口コミで歯科医院を選んだり、虫歯予防の器具を使ったりするなど、友人の影響が大きいとみて、友人の種類と歯の状態を尋ねました。

 友人は、同じ地域や近所の住人、幼なじみ、学生時代の仲間、仕事の同僚や元同僚、趣味や関心が同じ人、ボランティア活動などの仲間、その他の7種類に分け、何種類いるか質問。回答は1種類が8815人と最多で、2種類が6189人、3種類が2921人と続きました。

 一方、歯の状態は、20本以上、10本以上19本以下、1本以上9本以下、ゼロ本の4つに分類。20本以上なら入れ歯の必要がなく、健康な食生活を送りやすいとされます。

 友人の種類との関係を分析すると、友人の種類が多いほど歯の本数が多い結果がくっきりと出ました。友人と会う頻度、友人の合計数などさまざまな要因を考慮して数値化すると、友人の種類が1つ増えると、歯が多い可能性が1・08倍高まることも明らかになりました。

 国立長寿医療研究センターの近藤克則老年学・評価研究部長(千葉大教授)は、「高齢者にとって歯の予防を取り巻く環境は過去数十年間で大きく変わったが、友人の種類が多いほど得られる情報が多く、変化に適応しやすかったと考えられる」と話しています。

 2016年11月6日(日)

 

■睡眠を制御する2遺伝子を発見、筑波大など 睡眠障害などの治療への応用も

 睡眠と覚醒の制御に重要な役割を果たす2つの遺伝子を、筑波大学やアメリカのテキサス大学などの研究チームが世界で初めて発見したと発表しました。今後、睡眠障害などの治療への応用が期待されます。

 この遺伝子を発見したのは、茨城県つくば市にある筑波大学・国際統合睡眠医科学研究機構の柳沢正史機構長と船戸弘正教授などの研究チームです。

 研究チームは6年前から、化学物質を使って無作為に遺伝子に変異を起こした8000匹のマウスの中から、脳波や筋電図などを分析して、睡眠時間が極端に長いグループと、浅い眠りのレム睡眠時間が大幅に短いグループを抽出。2つのグループに共通の遺伝子変異がないかを調べました。

 その結果、過眠症のグループでは、細胞内でさまざまな情報を伝達している「Sik3」と呼ばれる遺伝子が変異していたことを突き止めました。また、「Nalcn」と呼ばれる遺伝子が変異すると、浅い眠りのレム睡眠の時間が大幅に減少し、目覚めやすくなっていたということです。

 人間を含む哺乳類や鳥類は通常、体の骨格筋は脱力して休んでいるが脳は覚醒に近い状態で活動している浅い眠りのレム睡眠と、より深い眠りのノンレム睡眠を繰り返してから目覚めます。Sik3遺伝子はノンレム睡眠の必要量を決めており、Nalcn遺伝子はレム睡眠の終了に関与していると考えられるといいます。また、Sik3遺伝子は、ショウジョウバエや線虫でも睡眠に似た状態を制御していることがわかりました。 

 研究チームによりますと、これまで睡眠と直接かかわる遺伝子は見付かっていなかったということで、今後、睡眠と覚醒を切り替える仕組みの解明が進み、将来は人間の睡眠障害などの治療法改善につながると期待されます。

 筑波大学の柳沢機構長は、「睡眠や覚醒に関与する遺伝子をさらに発見していきたい」と話しています。

 この研究成果は、イギリスの科学雑誌、ネイチャーの電子版に3日付で掲載されています。

 2016年11月5日(土)

 

■ジカ熱を「知っている」人は54% 内閣府が初の世論調査

 内閣府は4日、中南米や東南アジアを中心に感染が広がっているジカ熱(ジカウイルス感染症)に関する世論調査の結果を公表しました。

 調査は9月22日~10月2日に、全国の18歳以上の男女3000人を対象に個別面接方式で実施し、61%に当たる1831人から回答を得ました。

 それによりますと、「ジカ熱がどのような病気か知っているか」という質問に対し、「知っている」と答えた人は、「詳しく」「ある程度」を合わせて54・0%でした。「名前は知っているがどのような病気かは知らない」と答えた人は37・7%で、「全く知らない」と答えた人は7・9%でした。

 予防法を聞く質問(複数回答)では、「蚊に刺されないよう長袖・長ズボンを着用する」が72・9%、「虫よけスプレーなどを使用する」が54・1%に上った一方、「性行為の際にコンドームを使用するか、性行為を控える」は14・6%にとどまり、性行為による感染の危険性についての認知度は低いことが明らかになりました。

 これについて、内閣官房の担当者は「来年2月には流行地域のブラジルでカーニバルもあり、渡航者が増えることも予想されるので、蚊を媒介としたもの以外でも感染するリスクがあることを重点的に周知したい」としています。

 海外で流行するジカ熱の予防策で国に求めることを聞く質問(複数回答)では、「検査法・治療法・予防法(ワクチン)の開発またはその支援」が66・4%で最も多く、次いで「蚊の駆除対策の推進」が48・7%でした。

 調査は今年初めて実施しました。中南米や東南アジアでのジカ熱の流行拡大を受け、世界保健機関(WHO)が緊急事態宣言をした今年2月以降、日本政府はジカ熱対策のための普及啓発活動を強化しています。

 2016年11月5日(土)

 

■地球温暖化対策の枠組み「パリ協定」が発効 目指すは脱炭素社会 

 国連の気候変動枠組み条約事務局によりますと、国連があるニューヨークの時間の4日午前0時(日本時間4日午後1時)、地球温暖化対策を進める国際的な枠組み「パリ協定」が発効しました。

 パリ協定は昨年12月、世界190以上の国と地域が参加してフランスで開かれた国連の会議、COP21で採択された、温室効果ガスの削減に取り組む新しい国際的な枠組みです。

 パリ協定では、締約国が55カ国以上になり、その国々の温室効果ガスの排出量が世界全体の55%以上に達すると、30日後に発効すると定めていますが、10月5日に2つの条件が満たされ、4日に発効に至りました。

 産業革命からの気温上昇を2度より低く抑えるため、世界全体の二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガスの排出量をできるだけ早く減少に転じさせ、今世紀後半には実質的にゼロにする「脱炭素社会」を目指しており、各国が5年ごとに削減目標を提出し、対策を進めることが義務付けられています。

 先進国だけに削減義務を課した以前の京都議定書とは違い、パリ協定は発展途上国を含むすべての国が参加します。各国がそれぞれ自ら目標を設定して取り組むことから、地球温暖化を抑える上でどれだけ実効性を持たせることができるのか、今後、各国の姿勢が問われることになります。

 11月7日からは北アフリカのモロッコでCOP22が開かれ、各国の取り組みや目標の達成状況をどう評価、検証するのかや、発展途上国に対する資金支援をどのように進めるのかなど、具体的なルール作りを話し合うことになっています。

 会議に合わせて、パリ協定の締約国による第1回の会合も11月15日に開かれる予定ですが、日本は国連の示した締め切りに締結が間に合わなかったため締約国としては参加できず、会合の決定に異議の申し立てができないオブザーバーとしての参加になります。

 これについて、専門家や環境NGOなどからは、温室効果ガスの主要排出国である中国やアメリカ、それにEU(ヨーロッパ連合)の各国が早期にパリ協定に締結したことで、会合の議論をリードすることが見込まれるとして、日本の発言力の低下を懸念する声が出ています。

 2016年11月4日(金)

 

■喫煙、がんの危険性高める遺伝子変異誘発 世界の患者5243人を調査

 国立がん研究センターや理化学研究所など日本、イギリス、アメリカ、韓国の共同研究チームは、たばこを毎日1箱吸うと肺の細胞に異常が生じ、遺伝子の突然変異が年に150個蓄積すると発表しました。

 17カ国のがん患者5243人の症例を解析しました。遺伝子の変異が蓄積すると、細胞ががん化するとされており、喫煙が肺がん発症の危険性を高めることが改めて確認されました。論文は4日付のアメリカの科学誌サイエンスに掲載されました。

 共同研究チームは、喫煙との関連が報告されている肺がんなど17種類のがんについて、5243人の症例の遺伝子データを解析。喫煙者に発症したがんは、非喫煙者より遺伝子の突然変異が多く、数は喫煙量に比例することが明らかになりました。 

 たばこを毎日1箱(20本)吸い続けた場合、1年間に肺で平均150個、喉頭で平均97個、咽頭で平均39個、口腔(こうくう)で平均23個、膀胱(ぼうこう)で平均18個、肝臓で平均6個の突然変異が発生し、生涯を通じて蓄積すると推計されました。臓器によって、たばこに含まれる発がん性物質が直接変異を誘発するタイプや、間接的に誘発するタイプなどがあることも判明しました。

 国立がん研究センターの柴田龍弘・がんゲノミクス研究分野長は、「ほとんどの細胞は遺伝子異常が起きても修復して分裂していく。150個の蓄積は明らかに多い。変異が起きる仕組みを解明できれば、がんの予防や治療に役立つ」と話しています。

 2016年11月4日(金)

 

■認可外施設での新型出生前診断の中止求める 日本医師会など5団体が声明

 妊婦から採取した血液でダウン症、エドワーズ症候群、パトー症候群の3種類の染色体異常を調べる新型出生前診断について、日本医学会が認定した施設以外で検査が行われているとし、日本医師会や日本産科婦人科学会など5団体は2日、「直ちに検査の受諾および実施を中止すべきだ」などとする共同声明を発表しました。

 新型出生前診断はダウン症などの有無を事前に知ることで中絶が広がれば、命の選別につながりかねないとの指摘もあり、2013年4月、適切な遺伝カウンセリング体制を整備するなどの目的で臨床研究として始まりました。対象となるのは、ほかの検査で染色体異常が疑われるケースや出産時の年齢が35歳以上の妊婦で、20万円程度の自己負担があります。

 当初は日本産科婦人科学会の指針に基づき、日本医学会が認定した昭和大、阪大など15施設で実施され、現在は75施設が登録されています。

 しかし、日本医学会の認定を受けていない東京都や大阪府の複数のクリニックで、日本産科婦人科学会の指針の条件を満たさない検査が行われていることが、今年10月に発覚。

 ホームページで新型出生前診断の仲介を宣伝したり、指針で対象外となっている遺伝病を検査対象にしたりしているといいます。検査は妊婦から採血し、血液を検査機関に送るだけで行えることから、産婦人科以外で行われる恐れもあります。

 日本医学会の横倉義武会長は、「検査は一定の倫理を持って行われるべきで、極めて遺憾だ」と強調。日本産科婦人科学会は、複数のクリニックの医師から事情を聴き、12月にも処分を行うことを明らかにしました。

 一方、日本生殖医学会は2日、体外受精させた受精卵の染色体異常を調べる着床前検査を行ったと公表した浜松市のクリニックの医師に対し、「日本産科婦人科学会が着床前検査を認めていないと知りながら行った」として、生殖医療専門医の資格を喪失させる処分を行いました。

 2016年11月3日(木)

 

■医療事故調査、25%で外部委員入らず 第三者機関が分析

 患者の予期せぬ死亡を調べる国の医療事故調査制度で、昨年10月の運用開始から丸1年間で報告された、医療機関が自ら実施する院内調査161件のうち、40件(25%)で調査委員会に外部委員が参加していませんでした。第三者機関の日本医療安全調査機構が2日、発表しました。

 遺族が調査に納得できず、日本医療安全調査機構に再調査を依頼したのは、13件に上りました。

 日本医療安全調査機構の木村壯介常務理事は、「院内調査は公平性、中立性を確保するため、外部委員が参加するのが望ましい。病院への周知を図るとともに、委員の推薦体制整備など支援を充実させたい」と話しています。

 この医療事故調査制度は、患者の予期せぬ死亡事故が起きた場合に、全国約18万カ所の医療機関や助産所が自ら原因などを調べ、結果を日本医療安全調査機構と遺族に報告します。

 昨年10月~今年9月に提出された院内調査報告書161件を日本医療安全調査機構が分析したところ、調査結果が出るまでに平均で118・5日かかり、医療機関からは、調査のための外部委員を選ぶのに時間を要したといった理由が挙げられているということです。また、再発防止策の不記載は19件に上り、遺族からの意見の記載は59件にとどまりました。

 医療事故の届け出数は1年間で388件で、当初想定した年1300~2000件を大幅に下回りました。患者が死亡してから届け出るまでは平均31・9日で、最短は2日、最長は237日。届け出対象となるか、医療機関が判断に迷うケースも多いとみられ、厚生労働省は6月に省令を改正し、届け出基準の統一化を進めています。

 木村常務理事は、「報告するかどうか判断に時間がかかる医療機関もあり、制度が浸透しているとは言い難い。患者や遺族から信頼を得られるよう、迷ったら届け出てほしい」と話しています。

 2016年11月3日(木)

 

■販売中のトクホ359品調査で、成分の含有量に問題なし 消費者庁が公表

 特定保健用食品(トクホ)の関与成分量に関する調査結果について、消費者庁は1日、現在販売されている366品のうち359品で適正に含有されていたと発表しました。残りの7品は分析中のため、11月末までに消費者庁へ調査結果が報告される予定。

 日本サプリメント(大阪市)が販売する粉末清涼飲料「ペプチド茶」など6商品で、健康増進効果に関与する成分量が規定値を下回っていたためトクホの許可を初めて取り消した問題を受け、消費者庁は9月27日付で業界団体を通し、201社1271品を対象に、第三者機関か自社による最新の関与成分量の調査結果を出すよう求めていました。このうち2社2品については連絡がとれず、回答を得られませんでした。

 1271品のうち、現在販売されている366品を対象に、関与成分の含有量が許可申請書で記載されている内容と合致しているかどうかについて、201社は登録試験機関などへの分析依頼、または自社分析を行いました。

 分析の結果、分析が終了していない7品を除く359品では、適正に含有されていたとする報告が寄せられました。そのうち自社分析によるものが、195品に上りました。トクホは一度許可されれば更新する必要がなく、許可後の関与成分量の調査は初めて。

 また、調査結果から、現在販売されていない商品が903品に上ることも判明しました。このうち許可の失効を予定しているのが196品、最近許可されたばかりで近く販売するのが39品を数えました。残り668品については、再販を予定しているという回答でした。

 販売中の商品と、そうでない商品を消費者が区別できるように、消費者庁ではホームページ上の許可品目一覧に、現在販売されている366品について「販売中」と明記する方針。

 今後は、残りの7品の分析データを待つとともに、抜き打ちで調査したり定期的にデータの提出を求めたりするなどの再発防止策を検討することにしており、消費者庁は「消費者の信頼を裏切ってしまったことは、非常に残念だ。対策を講じて、信頼の回復を図っていきたい」と話しています。

 2016年11月2日(水)

 

■病者用低タンパク質食品、国の基準満たさず 特別用途食品で消費者庁

 消費者庁は2日、病気の人や高齢者、乳幼児などを対象に、健康上の効果について表示が許可された「特別用途食品」のうち、腎臓病の人向けに販売された低タンパク質食品2品で、国の許可基準を満たしていなかったと発表しました。

 2品の販売はすでに中止され、これまで健康被害の情報は寄せられていないといいます。

 問題となったのは、長野県松本市の薬品会社「キッセイ薬品工業」が販売していた低タンパク質食品の「げんたそうめん」と「げんたうどん」の2品。

 消費者庁は9月、効果のある成分を表示通り含まずに販売していたとして特定保健用食品(トクホ)の粉末清涼飲料「ペプチド茶」など6商品の許可を取り消したことに関連し、トクホ同様、同庁から特別用途食品の表示許可を受けている16社64品目についても、第三者機関による最新の成分調査結果を出すよう求めていました。

 消費者庁が調査結果を分析したところ、「げんたそうめん」で、100グラム当たりのタンパク質量が許可基準より0・2グラム超過していたことが判明。

 キッセイ薬品工業は2日、今回の調査では基準を満たした「げんたうどん」についても、過去に基準を超えたことがあったとホームページで公表し、2品の販売を中止しました。

 特別用途食品は、乳児、幼児、妊産婦、高齢者、病者などの発育、健康の保持・回復などのための特別な食品であり、厚生労働大臣がその用途に適するという表示を許可したものです。低カロリー食品、低ナトリウム食品といった病者用食品や、咀嚼(そしゃく)困難者用食品のような高齢者用食品、妊産婦・授乳婦用粉乳、乳児用調整粉乳、特定の保健の目的が期待できる特定保健用食品があります。

 それぞれ許可基準が定められた食品と、学識経験者の意見によって個別に評価される食品があります。食品の種類としては、病者用食品にのみ、醤油、ジャムなどの単一食品、および複数の食品をセットにした組合わせ食品があります。

 2016年11月2日(水)

 

■マイコプラズマ肺炎、1週間の患者数が過去最多に 国立感染症研究所が注意喚起

 若い世代に多いマイコプラズマ肺炎の週単位の患者数が、統計を取り始めて以降最も多くなったことが、国立感染症研究所の定点調査で判明しました。

 マイコプラズマ肺炎は、マイコプラズマという細菌による感染症で有効なワクチンはなく、国立感染症研究所は、せきエチケットやマスク、手洗いでの予防を呼び掛けています。

 乾いたせきが長期間続くのが特徴で、せきのしぶきや患者との接触などで感染します。潜伏期間は2~3週間と長めで、発熱やだるさ、頭痛などの症状を伴い、重症化すると脳炎や髄膜炎、中耳炎などを引き起こす恐れがあり、死亡することもあります。

 国立感染症研究所によりますと、10月23日までの1週間に全国およそ500の定点医療機関から報告された患者の数は758人で、1週間当たりの患者数でみますと、1999年に統計を取り始めて以降で最も多くなっています。

 1医療機関当たりの平均患者数は1・61人で、前の週から0・38人増えました。都道府県別では、最も多いのが岐阜県で6・6人、次いで群馬県が3・75人、奈良県が3・33人、青森県、石川県、大阪府が3人などとなっています。

 マイコプラズマ肺炎は例年秋から冬にかけて流行し、患者のおよそ8割が14歳未満の子供です。一般的な風邪などと判別しづらいものの、特徴的な乾いたせきがダラダラと続く場合は注意が必要。

 国立感染症研究所の見理剛室長は、「例年これからが流行のピークを迎える時期なので、今後さらに患者数が増える可能性もある。小学校や中学校に通う子供たちを中心に、せきが続いたり声がかれたりする場合はマスクを着用し、早めに医療機関を受診してほしい」と話しています。<

 2016年11月2日(水)

 

■冷凍メンチで17人が食中毒の疑い O157検出、児童2人が重症

 神奈川県平塚市の食肉販売会社の冷凍食品を食べた17人が腹痛などの症状を訴え、病原性大腸菌O157が検出された問題で、静岡県は集団食中毒の疑いがあると見なして、冷凍食品を製造している静岡県沼津市内の食品加工会社を立ち入り調査するなどして原因を調べています。

 神奈川県によりますと、10月上旬から下旬にかけて、平塚市の食肉販売会社「肉の石川」の冷凍食品「和牛・相模豚メンチ肉の石川」を食べた同県内の1~79歳の男女17人が、腹痛や下痢などの症状を訴えました。このうち5歳の男児と8歳の女児の2人が重症になり入院しましたが、男児は快方に向かっているということです。

 保健所が調べたところ、販売前の同じ冷凍食品から病原性大腸菌O157が確認され、一部の患者の便から検出された菌と遺伝子パターンが一致したということです。17人は10月8~22日ごろ、平塚市や相模原市、秦野市内のスーパー「イトーヨーカドー」3店舗で購入した冷凍食品を食べたといいます。

 この冷凍食品は、委託された静岡県沼津市にある食品加工会社「タケフーズ」が作ったもので、静岡県によりますと、冷凍の生肉を仕入れて加工や包装などを経て今年8月末に製造されたということです。

 静岡県は、タケフーズの製造方法や衛生環境などを調べるため、10月28日と31日に立ち入り調査を行った結果、定期的に消毒が行われていたことが確認され、従業員の検便からはO157は検出されなかったということです。

 静岡県と神奈川県は、O157による集団食中毒の疑いもあるとみて引き続き原因を調べています。

 これについてタケフーズは、「担当者が不在なため今はコメントできません」としています。

 冷凍食品を販売したイトーヨーカドーでは、10月24日に保健所から「食中毒の疑いがある」という連絡を受けて、26日には取り扱っていた神奈川県と千葉県の合わせて26店舗の売り場からすべての冷凍食品を撤去したということです。

 食べた人が症状を訴えたのは、賞味期限が来年2月26日のものですが、イトーヨーカドーは、来年2月17日と4月12日の製品も自主回収を進めており、撤去するまでの1カ月余りの間におよそ3300個を販売したということです。

 それぞれの店舗は、商品やレシートを持ち込めば返金する対応を取っており、店内に文書を掲示するなどして、回収を進めているということです。

 2016年11月1日(火)

 

■ジカ熱で男性の生殖機能にダメージも アメリカの研究チーム、マウスで確認

 妊娠中の女性が感染すると、胎児が小頭症になる危険性があるジカ熱(ジカウイルス感染症)について、アメリカのワシントン大学などの研究チームは1日、ジカ熱に感染させたマウスでは、精巣の委縮や精子の減少など生殖機能にダメージを受けることを確認したと、イギリスの科学誌ネイチャーで発表しました。

 中南米などを中心に感染が広がっているジカ熱を巡っては、多くの場合、症状は軽いとされている一方で、過去の研究でも、感染したマウスは健康なマウスに比べ繁殖能力が劣ることが報告されています。

 ワシントン大学のマイケル・ダイアモンド教授らの研究チームは、オスのマウスを使った実験で、ジカ熱のウイルスを感染させた2週間後に、テストステロンなど2種類の男性ホルモンが減少するのを確認。マウスはその後、睾丸が小さくなり、精液の中の精子の数が大幅に減少し、メスのマウスが妊娠する確率が通常の4分の1の20%程度に下がったといいます。

 研究チームは、ジカウイルスの感染によって、精巣内で作った精子を運ぶ精細管が損傷を受けたのが原因だとみています。

 今回の研究成果について、研究チームは「人間の男性でも同じ影響が出るかどうかはまだわからない」と強調しながらも、男性の精子の中からウイルスが見付かるケースが報告されていることから、「今後長期的な影響を調べる必要がある」と話しています。

 蚊が媒介するジカ熱は、昨年以降、中南米や東南アジアを中心に広がっており、世界保健機関(WHO)によりますと、73の国と地域で感染の拡大が報告されています。

 2016年11月1日(火)

 

■受動喫煙の規制強化、医療側「全面禁煙は非現実的」 厚労省がヒアリング

 厚生労働省は10月31日、他人のたばこの煙にさらされる受動喫煙の防止対策の規制強化について、病院、飲食業、消費者などの関係団体からヒアリングをしました。厚労省は医療機関や学校の敷地内は全面禁煙とする案を示していますが、医療者側から「建物の外まで全面禁煙とするのは現実的でない」などと反発が出ました。

 厚労省が10月12日に公表した新たな法整備の案では、受動喫煙は脳卒中や肺がんなどのリスクを高めるとして、不特定多数の人が出入りする施設を中心に喫煙を規制し、違反した場合は管理者と喫煙者に罰金を科す方向で検討を進めています。施設によって規制レベルを分け、患者や未成年者らが主に利用する医療機関と小中高校を「敷地内禁煙」、多数の人が利用する施設と位置付けた官公庁やスポーツ施設、社会福祉施設、大学などを「建物内禁煙」、飲食店やホテル、船、駅、空港内などを「喫煙室による分煙可」としています。

 この日のヒアリングには10団体が出席。このうち全国消費者団体連絡会は、「受動喫煙は、健康への影響が大きく対策を進めるべきだ」などと全面的に賛成しました。

 その一方で、民間病院などでつくる4病院団体協議会は、敷地内禁煙が一般的なアメリカと比べ、日本は患者の平均入院日数が数倍長いことを挙げて「療養病棟や精神科病棟は生活の場に近い環境だ」と指摘し、例外や経過措置などの弾力的な規制を求めました。日本ホスピス緩和ケア協会は、「末期のがん患者が多く入院しており、喫煙の習慣に配慮して敷地内では認めている場合がある」と現状を説明しました。

 また、外食産業でつくる日本フードサービス協会などは「喫煙客が離れる」「法律で一律に規制強化するのではなく、業界の自主的な取り組みを支援してほしい」、全国麻雀業組合総連合会は「店舗の小さい店が多く、喫煙室を設けるのは厳しい」、海運業の団体は「小さい船は、すぐに喫煙室を設置できない」と反対の意見が相次ぎました。

 医療機関での禁煙を巡っては、日本医師会が2012年に「受動喫煙ゼロ宣言」を発表し、全医療機関で敷地内禁煙を推進しています。

 厚労省は、今後も1~2回ヒアリングを実施した上で、早ければ来年の通常国会に必要な法案を提出する方針です。

 2016年11月1日(火)

 

■ベトナムでジカ熱に起因する小頭症 東南アジアでタイに次ぐ2カ国目

 ベトナム保健当局は30日、中部ダクラク省で、同国で初めてジカ熱(ジカウイルス感染症)の影響とみられる乳児の小頭症が確認されたと明らかにしました。国営メディアによると、東南アジアでジカ熱由来とみられる小頭症が確認された国は、タイに続き2カ国目。

 国営メディアによると、保健当局は10月中旬、ジカ熱との関係が疑われる4カ月の小頭症の乳児の事例を確認し、乳児と母親(23歳)の検査を実施。その結果、母親が妊娠中にジカ熱特有の症状を示していたことが判明し、小頭症が母親のジカ熱に起因する可能性が高いと判断しました。

 タイでは、同国保健省が9月30日に、国内の新生児2人が小頭症を発症していることについて、母親2人が妊娠中にジカ熱に感染したことと関連があると発表し、東南アジアの国で初めてジカ熱由来とみられる小頭症が確認されました。

 ジカ熱は主に蚊が媒介するウイルス感染症で、妊婦が感染すると小頭症の子供が生まれる可能性があります。タイでは2012年に初めて感染が確認され、今年は首都バンコクなどで300人以上の感染が報告されています。同国には東南アジア最多となる約6万7000人の在留邦人がおり、在タイ日本大使館は蚊に刺されないよう注意を呼び掛けています。

 一方、ミャンマーの複数のメディアは10月28日、同国の最大都市ヤンゴンに住む外国人の妊婦がジカ熱に感染しているのを保健省が確認したと報じました。妊婦は欧米系で国籍は不明です。

 ミャンマーでの感染確認は、初めてといいます。

 ジカ熱は、ブラジルなど中南米を中心に流行が拡大。東南アジアでもシンガポールやタイで多数の感染が確認されており、世界保健機関(WHO)は9月に「地理的な拡大が続いている」と指摘しています。

 2016年10月31日(月)

 

■「出産後も働く」が初の5割超、内閣府調査 「妻は家庭」に反対も5割超

 内閣府が29日に発表した「男女共同参画社会に関する世論調査」で、女性に子供ができても「ずっと職業を続けるほうがよい」と答えた人が、54・2%となりました。2年前の前回調査から約10ポイント上昇し、1992年の調査開始以来、初めて5割を超えました。

 「ずっと職業を続けるほうがよい」との回答は、男性が52・9%、女性が55・3%でした。年代別では、18~29歳、70歳以上で40%台と低めでしたが、それ以外ではいずれも6割近くで、40~49歳が59・8%で最多。「子供ができたら職業をやめ、大きくなったら再び職業を持つほうがよい」と回答したのは、全体で26・3%でした。

 一方、「夫は外で働き、妻は家庭を守るべきだ」との考え方に賛成する人は、40・6%。2014年の前回調査から4ポイント減少しました。反対する人は、5ポイント増の54・3%で5割を超えました。反対する人が5割を超えるのは、2009年調査以来。

 内閣府の担当者は、「女性の活躍推進に向け、さまざまな就労施策を展開してきたことが功を奏した」と分析しています。

 調査では、結婚して名字が変わった場合、働く時に旧姓を通称として使いたいかどうかを初めて質問。「使用したいと思わない」との回答が62・1%で、「使用したいと思う」の31・1%を大きく上回りました。「使用したいと思う」と答えた割合を男女別にみると、男性が39・5%、女性が23・9%でした。

 社会全体の平等感については、「男性のほうが優遇されている」が2012年調査から4ポイント上昇して74・2%、「女性のほうが優遇されている」は3・0%でほぼ横ばいでした。

 女性が増えたほうがよい職業(複数回答)については、「国会議員、地方議会議員」が58・3%で前回に続きトップ。「企業の管理職」(47%)、「閣僚、都道府県・市町村の首長」(46・1%)が続きました。

 調査は8月25日~9月11日に、全国の18歳以上の男女5000人を対象に個別面接方式で実施しました。回収率は61・3%。

 2016年10月30日(日)

 

■スギ花粉成分入りのコメを食べて花粉症治療 臨床研究11月開始へ

 スギ花粉の成分を含んだ特殊なコメを食べて、花粉症の治療につなげる臨床研究を、大阪府立呼吸器・アレルギー医療センター(大阪府羽曳野市)と東京慈恵会医科大学(東京都港区)などの研究チームが11月から始めます。うまくいけば、コメを食べるだけで花粉症を根治できる可能性があります。

 スギ花粉による花粉症は、日本人の約4人に1人が発症していると推計されています。スギの花粉に含まれ、花粉症の原因となる物質(抗原エキス)を少量だけ口に含んだり、注射したりして症状を抑える治療法がありますが、効果が現れるのに3~5年かかり、治療を行える専門医が限られていることが欠点です。

 今回の臨床研究では、原因物質の目印となる部分がコメ粒の中で作られるように遺伝子を組み換えた「花粉症緩和米」を使用します。花粉症緩和米はすでに、国立研究開発法人の農業・食品産業技術総合研究機構(茨城県つくば市)が開発し、隔離して栽培しており、今回、希望する研究機関や企業に提供することになりました。

 コメは、日本人に身近な上、胃で分解されずに腸まで届くタンパク質を含んでいます。花粉症の人が毎日食べ、この目印が腸で吸収されるうちに、体内の免疫機能がこの目印に慣れて、過剰に反応しなくなると考えられています。原因物質そのものは含まれていないため、強いアレルギー症状は出ないとされます。

 2012~2014年に、東京慈恵会医科大学で花粉症の患者らに花粉症緩和米を食べてもらったところ、症状は改善する傾向にありましたが、効果ははっきりしませんでした。この花粉症緩和米による副作用が出た人は、いませんでした。

 臨床研究では、花粉症の10人に約1年間、電子レンジで温めるパックご飯にした花粉症緩和米を毎日5グラム、普通のコメに混ぜて食べてもらい、血液検査でスギ花粉に反応する抗体の量をみます。このほか、3グループ各15人に約半年間、花粉症緩和米と普通のコメを計50グラム、割合を変えて食べてもらい、鼻水やくしゃみなどの症状が改善するかどうかを比較します。

 研究チームの田中敏郎・大阪大教授は、「悪さをする免疫細胞だけを増えないようにすることができ、花粉症の根本的な治療になる可能性がある」と話しています。

 2016年10月29日(土)

 

■他人のiPS細胞移植、臨床計画を国に提出 神戸市立医療センターなど

 神戸市立医療センター中央市民病院と大阪大学医学部付属病院は27日、他人のiPS細胞(人工多能性幹細胞)から作製した網膜組織の細胞を使って、目の難病患者を治療する「多家移植」と呼ばれるタイプの世界初の臨床研究計画を厚生労働省に提出しました。

 5人の患者の目に、網膜組織の細胞を含んだ液体を注入して移植する方針。厚労省の評価部会で順調に進んで年内にも承認されれば、来年前半にも1例目の移植手術が行われる見通し。

 臨床研究は、京都大学iPS細胞研究所など4機関が実施します。視野がゆがんで視力が低下し、悪化すると失明の恐れがある「滲出型加齢黄斑変性(しんしゅつがたかれいおうはんへんせい)」を発症し、薬が効かない重症の患者が対象。

 京都大学で作製した他人に移植しても拒絶反応が起きにくいiPS細胞を、理化学研究所が網膜色素上皮細胞に分化させ、神戸市立医療センター中央市民病院と大阪大学医学部付属病院が移植します。

 計画を巡っては、大阪大学の特定認定再生医療等委員会が9月、患者に対して研究内容を説明する文書をわかりやすくすることを条件に「適切」と認める結論を出しました。

 神戸市立医療センター中央市民病院などは計画を修正し、委員会の意見書とともに厚労省に提出しました。

 2016年10月29日(土)

 

■AEDで9年間に835人を救命 京都大など9年間のデータ解析

 街中で突然、心臓が機能を停止して倒れた人のうち、自動体外式除細動器(AED)による救命処置が行われたことで日常生活ができるまでに回復した人は、過去9年間に全国で推計835人に上るとする研究結果を京都大学などの研究チームが発表しました。

 救命処置には心臓マッサージなどもありますが、AEDがなければ救命できなかった人の数が出されるのは初めてで、専門家は「AEDの効果がはっきりと示されたもので、積極的に活用すれば救える人はさらに増やせる」と話しています。

 京都大学と大阪大学の研究チームは、心臓が細かく震えて血液を全身に送れない心室細動を起こした人に、瞬間的に強い電気ショックを与えて救命するAEDが、全国の商業施設や路上など街中で使われた約4万4000ケースを分析。

 その結果、突然倒れた人に対し、近くにいた人がAEDを使い、電気ショックで救命処置をした割合は、2005年は1・1%でしたが、2013年には16・5%にまで増えていました。

 AEDが使われたことで助かり、日常生活ができるまで回復した人を推計したところ、2005年には全国で6人だったのが、2013年には201人にまで増え、9年間で合わせて835人が、AEDの効果で救われていたということです。

 また、AEDが使われた人のうち、日常生活ができるまで回復できた割合は38・5%だった一方、AEDが使われなかった人は18・2%にとどまり、2倍近い差がありました。

 研究結果は、27日付でアメリカの医学誌「ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン」に掲載されました。

 京都大学健康科学センターの石見(いわみ)拓教授(救急医療)は、AEDがなければ救命できなかった人の数が出されるのは初めてだとした上で、「公共の場にAEDを設置する意義が裏付けられた。今後、積極的に活用すれば救える人はさらに増やせる」と話しています。

 国内でAEDは、2004年から医療機関以外でも使えるようになり、これまでに約50万台が公共施設などに設置されています。

 2016年10月28日(金)

 

■男性のサービス職、若年死するリスクが最も高い職業に 管理職、農林漁業職が続く

 国立国際医療研究センター(東京都新宿区)の研究チームは、飲食店員や美容師などサービス職の男性では、脳卒中や心筋梗塞(こうそく)で若くして死亡するリスクがほかの職業の男性よりも高いという研究結果をまとめ、国際医学誌の電子版に発表しました。アメリカでも同様の傾向があるといいます。

 和田耕治医師(産業保健学)の研究チームは、人口動態統計や国勢調査の結果をもとに、2010年に死亡した25~59歳の男性のうち、脳卒中などの脳疾患で亡くなった約2300人と、心筋梗塞や解離性大動脈瘤(りゅう)などの心疾患が原因で亡くなった約2800人を、11種類の職業別に分析しました。無職の人は除き、女性は調べませんでした。

 統計学的な調整を加えて計算したところ、飲食店員や美容師、介護職員、看護助手、旅行ガイドなどのサービス職の男性が脳疾患や心疾患で亡くなるリスクが、最も高くなりました。脳疾患では販売職の4・6倍、心疾患では販売職の3・7倍でした。

 管理職、農林漁業職、建設・採掘職、輸送・機械運転職が続きました。

 和田医師は、「職業によって、過労死と関連する脳卒中や心筋梗塞で早く亡くなるリスクが異なることが明らかになった。リスクの高い業態では、労働時間の短縮やストレスの低減、禁煙など、より積極的な対策をとってほしい」と話しています。

 2016年10月28日(金)

 

■精神保健指定医89人を処分へ 不正取得で資格取り消し

 重い精神障害がある患者に強制的な入院が必要かどうかなどを判断する精神保健指定医の資格について、厚生労働省は、不正に取得していた49人の医師と、その上司に当たる指導医40人の合わせて89人を対象に資格を取り消す処分を発表しました。一度にこれだけの人数の精神保健指定医が行政処分を受けるのは初めて。

 26日に開かれた医道審議会の答申を受けて、厚労省が発表しました。それによりますと、精神保健指定医の資格を不正に取得していたのは、全国12自治体の国公立や私立の大学病院などに勤務していた49人の医師で、いずれも定められた症例を十分に診療していないのに、しているように装うなどして国に報告していたということです。

 厚労省は、上司に当たる指導医40人と合わせて89人を対象に資格を取り消す処分を行ったということです。さらに、現在資格を申請していて、不正が疑われていた5人の医師のうち1人は申請を取り下げ、残る4人は申請を却下したということです。

 一方、今年7月に、相模原市の知的障害者施設で19人が死亡、27人が重軽傷を負った事件で、逮捕された元職員の男の措置入院の診断にかかわった医師の1人についても、厚生労働省は資格を不正に取得していたと認定しましたが、本人が資格の返上を申し出たため、今回の処分の対象には含まれていないということです。

 今回の処分について、厚労省は、「このような事態は精神科医療の信頼を大きく損なうものだと考えている。今後は信頼を回復できるよう対応を検討していきたい」とコメントしています。

 精神保健指定医の資格を巡っては、昨年4月、川崎市の聖マリアンナ医科大学病院で、11人の医師の不正取得が明らかになり、厚労省が2009年から2015年7月にかけて資格を申請した全国の3000人余りの医師を対象に調査を進めていました。

 精神障害がある患者や家族で作る全国精神保健福祉会連合会の小幡恭弘事務局長は、「精神保健指定医の資格には人権にかかわる強制的な入院を決める権限があるのにその資格を不正に取得していたことは、精神科医療への信頼性を揺るがす大変な事態であり、医師の責任の重さや人権感覚が弱まっているのではないかと不安を抱いている。国には監督責任があり、このような不正がされないよう原因などをしっかりと検証するべきだ」と話しています。

 精神保健指定医は、精神障害のある患者が自分や他人を傷付ける恐れがある場合などに強制的な入院が必要かどうかを判断する専門の医師の資格。強制的な入院には人権に配慮した専門的な判断が求められるため、都道府県などが患者本人や家族の同意なしに入院させる「措置入院」の際は2人、患者本人の同意を得ずに家族などの同意だけで入院させる「医療保護入院」では、少なくとも1人の精神保健指定医が「必要だ」と診断することが要件となっています。

 資格を取得するには、3年以上の精神科での実務経験に加えて、統合失調症や児童・思春期の精神障害、認知症など8種類の症例について診療を行った上でレポートを国に提出し、国の審査を経て厚生労働大臣が指定します。

 厚労省によりますと、精神保健指定医の数は精神障害のある人の増加を背景に年々増え、今年4月の時点で全国で1万4707人に上っています。強制的な入院の件数も増え続け、医療機関からの届け出は、2014年度の措置入院と医療保護入院で合わせて17万件を超えました。

 日本精神神経学会の元理事長で、さいたま市にある大宮厚生病院の小島卓也副院長は、「精神保健指定医の資格は、患者の人権を守りながら治療に当たるための制度であり精神科医療には不可欠な資格にもかかわらず、今回の事態で患者などに対して不安と不信感を招いた」と批判した上で、資格の不正取得が広がっている背景について、「取得に必要な8症例の中には児童・思春期などなかなか集まりにくい症例もある。制度ができてから30年近くが経っており、当時とは環境が違ってきているので、制度の見直しが必要ではないか」と指摘しています。

 2016年10月27日(木)

 

■医療機器のロボットスーツ、脳卒中のリハビリにも活用 7病院で治験開始

 全身の筋力が低下した難病患者の歩行機能の改善が期待できるとして、国から医療機器としての承認を受けた装着ロボットスーツ「HAL(ハル)医療用」を脳卒中後の歩行障害のリハビリ治療に活用しようと、全国の7病院で臨床試験(治験)が始まりました。

 HALの両脚装着タイプを使った治療は今春、全身の筋肉が徐々に動かなくなる筋委縮性側索硬化症(ALS)や筋ジストロフィー、脊髄性筋委縮症、先天性ミオパチーなど、筋肉や神経が衰える8つの難病を対象に公的医療保険の適用となりましたが、患者数が格段に多い脳卒中での承認を目指しています。

 今回の治験に参加するのは、筑波大病院、茨城県立医療大病院、筑波記念病院、志村大宮病院(いずれも茨城県)、国立病院機構新潟病院、福岡大病院、福岡リハビリテーション病院。

 脳卒中発症後5カ月以内で、片側に運動まひがある人が対象で、HALの片脚装着タイプをつけて5週間治療し、効果を確認します。HALは茨城県つくば市のベンチャー企業のサイバーダインが開発したもので、患者が足を動かそうとする際に太ももやひざの皮膚の表面に流れる微弱な電気信号を検知し、モーターで両足に装着した器具を動かすことで歩行を助ける仕組み。歩行運動を繰り返し、「歩けた」という感覚を脳にフィードバックすることで機能回復が期待できるといいます。

 厚生労働省によると、国内の脳卒中患者は約118万人に上り、まひなどの後遺症によって介護が必要となる原因疾患の1位。

 鶴嶋英夫・筑波大准教授(脳神経外科)は、「これまでの臨床研究で、通常のリハビリでは十分な効果が得られず屋内でようやく歩ける状態の患者が、屋外の社会活動に復帰できる程度まで回復した場合もあった。歩行能力が回復できる人が増えれば、職場復帰など社会全体でのメリットも大きい」、「2年程度で脳卒中患者向けの医療機器の承認申請までもっていきたい」と話しています。

 2016年10月26日(水)

 

■温室効果ガスの世界平均濃度、過去最高を更新 2015年、世界気象機関が発表

 地球温暖化の原因となる二酸化炭素、メタン、一酸化二窒素の3種類の温室効果ガスの世界平均濃度が昨年、いずれも観測史上最も高い値になったことが、気象情報を専門に扱う世界気象機関(WMO)の解析でわかりました。

 WMOは、地球温暖化の原因となる主要な3種類の温室効果ガスについて、世界50カ国の気象当局や研究機関が観測しているデータを解析しており、24日、2015年のデータを発表しました。

 発表によりますと、二酸化炭素の昨年の世界の平均濃度は400ppm(1ppmは100万分の1)となり、世界各地で観測を始めた1984年以降で最も高くなりました。また、前の年からの増加量も2・3ppmと過去4番目の多さとなり、最近10年間の1年当たりの平均増加量の2・08ppmと比べて拡大しています。

 これについてWMOは、昨年は太平洋の東側で海水温が高い状態が続くエルニーニョ現象によって、熱帯地域で気温が高く雨量が少なくなったため、森林火災などで二酸化炭素の排出量が多くなったことが影響していると分析しています。

 このほかの温室効果ガスの昨年の世界の平均濃度は、メタンが1845ppb、一酸化二窒素が328ppbで、いずれも観測史上、最も高い値になりました。

 WMOのターラス事務局長は、「2015年はパリ協定採択により温暖化対策の新たな時代の幕開けを告げたが、温室効果ガスも記録的な値になるという現実に直面した年となった」と指摘しました。

 WMOの解析で中心的な役割を果たした気象庁の上野幹雄全球大気監視調整官は、「温室効果ガスを減らす取り組みを続けるとともに水害など温暖化によって高まっている自然災害のリスクへの対策も進める必要がある」と話しています。

 2016年10月26日(水)

 

■過労で精神疾患、30歳代が3割超を占める 労災認定で目立つ若年層

 長時間労働やパワハラなどによってうつ病などの精神疾患を発症し、労災認定を受けた男女はともに30歳代が3割超を占め、年代別で最も多いことが25日、厚生労働省研究班の調査で判明しました。20歳代も含めると男性は約5割、女性は約6割を若年層が占め、深刻な現状が浮き彫りになりました。

 厚労省の研究班は、2010年1月~2015年3月に支給決定された精神疾患による2000人の労災認定事案を分析しました。

 うつ病などの精神疾患の発症時の平均年齢は、39.0歳。年代別でみると、男性は30歳代が436人(31・8%)で最も多く、40歳代が392人(28・6%)、20歳代が262人(19.1%)と続きました。一方で、女性も最も多かったのは30歳代の195人(31・2%)でしたが、次の20歳代の186人(29・8%)と僅差でした。

 自殺による死亡は男性352人、女性16人と男性が大半を占めました。男性の場合、40歳代が101人(28・7%)で最も多くなりました。女性の場合は、20歳代が9人(56・3%)で半分以上を占めていました。

 長時間労働による過労や、職場内での優位性を背景にしたパワーハラスメントで精神的・身体的苦痛を与えられるなどでうつ病などの精神疾患を発症し、自殺するケースは後を絶ちません。大手広告会社、電通の新入女性社員だった高橋まつりさん(当時24歳)は、過労でうつ病を発症し、昨年12月25日に自殺しました。

 遺族側代理人によると、今年9月に労災と認定された高橋さんの残業時間は昨年10月が130時間、11月が99時間で、休日や深夜の勤務も連続していました。これを受け、東京労働局の過重労働撲滅特別対策班などは、電通の東京本社と3支社、主要5子会社を労働基準法に基づき立ち入り調査しました。

 厚労省は、若者が過労による精神疾患で労災認定を受けるケースが多い事態を重くみています。今年度から若者に特化したメンタルヘルス事業を始めており、産業医や産業カウンセラーを企業に派遣して、若手従業員を対象とする研修会を開き、自分のストレスにどう気付くかなどを伝えています。

 厚労省の担当者は、「若年労働者のメンタルヘルス対策の重要性が示唆された。若者の心のケアに力を入れていきたい」と話しています。

 2016年10月26日(水)

 

■乳児の就寝中窒息死、5年間に160人 大人用寝具の危険大、消費者庁

 消費者庁は21日、2014年までの約5年間に、ベッドや布団などで就寝中に窒息死した1歳未満の乳児が160人に上るとの集計結果を明らかにしました。

 この集計結果について、消費者庁は24日に会見を開いて、詳しい内容を説明しました。それによりますと、集計には個別の死因などが記された厚生労働省の人口動態調査に使われる調査票が使われ、事故のほとんどが家庭内で起きていました。

 詳細が明らかになっている事故の状況を具体的にみますと、顔がマットレスや布団などに埋まったケースが33件、掛け布団などが顔にかかったり首に巻き付いたりしたケースが17件、ベッドと壁などの透き間に挟まれて身動きできなくなったケースが13件、ベッドなどから転落したケースが7件となっており、多くは大人用の寝具が原因になっているとみられるということです。また、一緒に寝ていた家族の体の一部で圧迫されたケースも5件ありました。

 その上で注意点として、できるだけベビー用のベッドを使い、1歳まではできるだけ仰向けで寝かせることや、敷布団やマットレスは子供用の固めのものを使用し、掛け布団は乳児が払いのけられる軽いものを使用すること、就寝中は枕やタオル、衣服など口や鼻を覆ってしまうようなものは周りに置かないことなどを挙げています。

 子供の傷害予防に取り組むNPO法人「セーフ・キッズ・ジャパン」理事長の山中龍宏・緑園こどもクリニック院長は、「布団や枕が柔らかいと体が沈みやすく、頭を動かしにくいので乳児には危険。窒息の原因になるので、ぬいぐるみなどの小物も置いてはならない」と語っています。

 消費者庁は都道府県の保健部局と協力して、幼い子供を抱えた保護者に直接、注意点を伝えるなど、防止策を検討していきたいとしています。

 政府は6月、相次ぐ子供の死亡事故を防ごうと、各省庁や警察、消防がばらばらに収集してきた事故情報を共有する「連絡会議」を立ち上げ、消費者庁が事務局を担っています。

 人口動態統計によると、14歳以下の子供は2014年までの約5年間に、交通事故を除く不慮の事故で毎年300人前後が死亡。おもちゃや食品を喉に詰まらせた窒息死や、ベランダなどからの転落死、浴槽での溺死が目立っており、連絡会議で分析を進めます。

 2016年10月25日(火)

 

■化粧品広告の85%が国の基準に抵触 効能を強調する体験談、JARO調査

 化粧品の広告で、「たくさんの感激のお便り」と題し、体験談として「シミが薄く」などと効能・効果を強調する表示は国の基準で禁じられていますが、日本広告審査機構(JARO)などがインターネット広告やウェブサイトを調べた結果、85%が基準に抵触していたことが24日、わかりました。

 化粧品の広告基準については、医薬品医療機器法(旧薬事法)で、医薬品や化粧品などの名称、製造方法や効能・効果に関して虚偽・誇大な広告を流すことを禁止しています。

 厚生労働省は、これに基づいて表現の範囲などに関する基準を定め、各都道府県に通知を出しています。例えば、化粧品(薬用化粧品を除く)の効能・効果の表現については、「毛髪にはり、こしを与える」「肌を整える」「肌を滑らかにする」「爪にうるおいを与える」「口唇の荒れを防く」など56種類から逸脱しないように求めています。

 日本化粧品工業連合会(粧工連)も、医薬品医療機器法の規定に基づくガイドラインで、「効能・効果や安全性についての体験談は認められない」と定めています。

 JAROは、「スマートフォンの普及でネット通販の利用者は増えており、広告の適正化は急務」と指摘。化粧品の広告主を対象としたセミナーを東京都や大阪市など5都市で開くなどして、適正表示を呼び掛けます。

 調査は7~8月、JAROが粧工連と共同で実施しました。検索サイトで「化粧水」「美容液」など12のキーワードを入力した際に出る広告とリンク先のウェブサイト300件を抽出して調べた結果、85%に当たる255件で基準に抵触する表現が見付かりました。

 複数の基準に抵触する広告・サイトが目立ち、最も多いのは効能・効果や安全性を保証する表現の216件でした。

 特に「たくさん感激のお便りが届いています!」と題し、「愛用者から『肌がぷりぷりになった』『張りが出た』との声が寄せられています」などと、効能・効果を保証するような複数の体験者の声を紹介したケースが、全体の約60%に当たる179件ありました。

 商品のカテゴリー別では、美容液が57件で最も多く基準に抵触する表現がありました。

 JAROなどの調査で見付かった、化粧品の不適切な広告表示の例は次の通り。

 「多くの皆さまの肌の悩みを解決」(美容液)、「ほうれい線が薄くなるジェル」(美容液)、「皮膚細胞の再生力に富んだ水を使用」(美容液)、「見た目年齢マイナス10歳美容液」(オールインワン)、「男のしわ取り、老け顔に」(オールインワン)、「本気でアトピー肌をケア」(オールインワン)、「細胞の再生を促します。アレルギー・アトピーにも効果的」(セット商品)、「シミも張りもこれで完結」(セット商品)、「保湿効果は最長24時間持続」(リップメーク用品)、「アンチエイジングケアのフェースクリーム」(クリーム・乳液)。

 消費者保護の観点からも、化粧品の広告主には正しい表現が求められそうです。

 2016年10月24日(月)

 

■腎臓病の運動療法、公的医療保険の適用に 慢性腎臓病患者の一部が対象

 体の中の老廃物を除去し、水分を調節する機能が低下した腎臓病の人が運動をすることで、特有の体力低下を防いだり、死亡率を減らしたりできることがわかってきて、人工透析を必要とせずにすむ効果もあるため、運動療法の一部が今年4月から公的医療保険の適用の対象になりました。

 腎臓病は新たな国民病ともいわれ、国内には慢性の腎臓病(CKD)患者が約1300万人おり、うち人工透析を受ける人は32万人超いるとされています。慢性腎臓病の人は食事制限があったり、全身の健康状態が悪化したりして、体力が落ちやすい上に、人工透析を受けると老廃物と一緒に体に必要なタンパク質も失い、筋肉がいっそう減りやすいとされます。

 腎臓病の人が取り組む運動は、腎臓リハビリテーションと呼ばれます。腎臓リハビリテーションには食事療法や心理的サポートも含まれるものの、運動療法が中核的な存在です。

 日本腎臓リハビリテーション学会理事長の上月(こうづき)正博・東北大教授によると、かつては「運動をすると尿中のタンパク質が増え、腎障害が悪化する」とされ、慢性腎臓病の人はあまり体を動かさないのが原則でした。しかし、激しい運動でなければ腎機能は悪化しないことが、最近の相次ぐ研究でわかってきました。

 体を動かすことで、体力が落ちたり筋肉が減ったりするのを抑え、日常生活にかかわる活動度も上がりやすくなり、糖尿病の悪化を食い止めるのにも役立ちます。日本も加わる国際研究チームの報告では、定期的に運動する人工透析患者はそうでない患者に比べ、調査期間中の死亡率が27%低くなりました。

 日本腎臓リハビリテーション学会が勧める運動は、歩行など20~60分の有酸素運動を週3~5回、自転車のペダル踏み式機器をこいだり、足を曲げ伸ばししたりするなど最大筋力の7割ほどで筋肉を鍛えるレジスタンス運動を週2~3回。透析中にする場合は、前半の時間に運動します。人工透析を続けると徐々に血圧が下がるので、後半の時間に運動すると下がりすぎる危険があるためです。透析のない日に運動しても構わいません。

 上月さんは、「医師に相談して無理のない程度から始め、少しずつ動く時間を延ばしてほしい」と話しています。

 新たな公的医療保険適用の対象は、進行した糖尿病性腎症で腎機能が落ちた患者で、一定条件のもとで医師が透析予防のための運動指導をした場合。

 糖尿病性腎症を合併した慢性腎臓病患者が、まだ透析が必要にはなっていない段階で運動することで、腎機能を改善したり、人工透析などに移行する割合を減らせたりできれば、医療費の節約にもつながります。

 大阪市立総合医療センター糖尿病・内分泌センターでは5年ほど前から、ゴムのチューブを使ったレジスタンス運動に力を入れています。糖尿病で外来を受診し、運動療法が可能と判断した患者全員に1本ずつチューブを手渡し、両手や両足でゆっくり引っ張るなどの運動をなるべく毎日続けてもらっています。

 現在、保険対象となるのは慢性腎臓病患者の一部に限られていますが、同センターの細井雅之部長は「保険適用は、運動療法を一層進めていくためのよい切っ掛けになる」と話しています。

 看護師として腎臓リハビリテーションに取り組む滋慶医療科学大学院大学(大阪市)の飛田伊都子准教授は、運動を通して日常生活でできることが増えることを重視し、「買い物の荷物を自分で持てるようになったり、お風呂に一人で入れるようになったり。それまで無理だったそんなことが可能になれば、生活の質は大きく高まる」と話しています。

 ただし、運動を続けても体力がなかなか上がらない人もいるといいますが、飛田さんは「慢性腎臓病の人はただでさえ、普通の人よりも体力が落ちやすい。現状を維持できるだけでも、腎臓リハビリテーションをする意義は十分にある」とみています。

 2016年10月23日(日)

 

■遺伝性のミトコンドリア病の早期診断方法開発 久留米大などが2018年度にも実用化へ

 福岡県の久留米大学と東京都の健康長寿医療センターの研究チームは20日、医療費助成の対象となる国指定の難病「ミトコンドリア病」を早期に特定できる診断方法を開発したと発表しました。従来より20ポイント高い98%の精度で特定ができ、体外診断薬については早ければ年度内に承認申請し、2018年度中の実用化を目指します。

 ミトコンドリア病は、細胞のエネルギーを作り出す小器官「ミトコンドリア」が遺伝子の変異などで機能が阻害されて起こる病気。症状は全身の筋力低下のほか、認知症、糖尿病、心筋症などになり、死に至ることもあります。患者は国内に約2000人、世界で約50万人と推定されており、原因不明の発達遅滞や難聴を抱える人の中にも患者がいるとみられています。

 従来の診断方法は、精度の問題のほか、限られた医療機関でしか実施されず、検体を研究機関などに送って解析を依頼する必要があるなど、確定診断まで時間も費用もかかる傾向にありました。

 研究チームは、ミトコンドリア病患者の血液中で、エネルギー不足などのストレスがあると分泌される「GDF15」というタンパク質の数値が上昇している点に注目。細胞モデルでの実験や患者約60人の血液を調べ、GDF15が客観的な診断指標となることを突き止めました。

 研究成果を活用し、名古屋市の検査薬メーカー、医学生物学研究所の協力を得て診断薬を開発。一般病院に普及している検査機器でも診断でき、10~20分ほどで結果がわかります。

 論文は20日、イギリスの医学誌「ネイチャー・レビューズ・ディジーズ・プライマーズ」の電子版に掲載されました。

 研究グループの古賀靖敏久留米大教授(小児科)は、「臨床現場では簡易な診断法が熱望され、海外からも問い合わせがあった。診断されていない患者の掘り起こし、早期治療につなげたい」と話しています。

 2016年10月23日(日)

 

がん患者が子供を持てる可能性を残す治療を がん治療学会が初のガイドライン案

 日本がん治療学会は、がん治療を受けても子供を持てる可能性を残せるようにしようと、乳がんや子宮頸がん、小児がんなど8つのタイプのがんについて、卵子の凍結保存や生殖機能を残すための手術法など具体的な対策を盛り込んだ初めてのガイドライン案をまとめました。

 若くしてがんになった患者の中には、抗がん剤などの治療のため不妊になり子供を持てなくなった人が多数いますが、今後のがん治療と妊娠の在り方を大きく変えそうです。

 日本がん治療学会がまとめた200ページに上るガイドライン案では、まず、がんの治療医の多くが患者に不妊になる可能性を伝えていない現状があるとした上で、今後は、患者が希望する場合には、将来子供をつくれる可能性を残すことを考慮して治療を進めること、必要なら、可能な限り早期に生殖医療の専門医を紹介すべきことを初めて明記しました。

 その上で、乳がんや子宮頸がん、小児がんなど8つのタイプのがんごとに、卵子の凍結保存や生殖機能を残すための手術法など具体的な対策を示しています。

 このうち女性で最も多い乳がんについては、がんの摘出手術の後、抗がん剤を使って体内のごく小さながんを殺す治療を始める前の段階で、卵子の凍結保存などの方法があるとした上で、こうした方法を行う場合、手術後、可能ならば4週間以内に、遅くとも12週間以内に抗がん剤治療を始めないとがんを悪化させる危険があると、具体的な期間も示しています。

 学会の理事を務める青木大輔慶応大学教授は、「本来であれば赤ちゃんをつくれたが、情報不足により子供ができない状況であるとすると、やはりそれは問題だろうと考えられるので、ガイドラインを基にして実際の医療を行っていくことにつながればいい。生殖医療の技術は飛躍的に進歩しており、医師は可能な場合、子供をつくれる可能性を残せるよう配慮した治療を行ってもらいたい」と話しています。

 ガイドライン案は、21日に横浜で開かれている日本がん治療学会で公開された後、生殖医療の専門の学会からも意見をもらうなどして完成し、全国のがん治療医に周知されることになっています。

 2016年10月21日(金)

 

■高齢者の肺炎、積極的治療を行わない選択も 日本呼吸器学会が新ガイドライン案

 日本呼吸器学会は、がんなどの終末期や老衰のためにかかる肺炎について、患者本人が希望する場合には積極的な治療を行わない選択肢を初めて認めるガイドライン案をまとめました。

 これらの肺炎は再発を繰り返すなど苦痛が続き、生活の質が損なわれることが多いためですが、専門家は「人生の最終段階で多くの人がかかる病気だけに医療現場や介護の現場など広い範囲に影響が出ると予想される。本人の意思を尊重するのが大原則で患者や家族の側もどのように死を迎えたいのか日ごろから話し合っておくことが大切だ」と話しています。

 肺炎は、がんや心臓病、老衰などのため体力が低下した高齢者が細菌感染などを起こして発症する場合が多く、毎年10万人以上が死亡する日本人の死因の第三位を占める病気です。

 終末期や老衰の場合、治療しても再発を繰り返し、激しいせきや高熱、それに呼吸困難や意識障害が続いたりするほか、人工呼吸器を装着して家族と会話もできないまま亡くなってしまうケースも少なくありません。

 また、学会などによりますと医療現場では高齢者が肺炎で救急搬送され入院するケースが増えており、長期の入院によってほかの救急患者の受け入れが難しくなったり、人工呼吸器などの医療機器が窮迫したりする事態が起きている医療機関もあるということです。

 こうした点を踏まえ、全国1万2000人の専門の医師らが加盟する日本呼吸器学会は、これらの肺炎の治療をどうすべきか議論してきました。

 その結果、今年の診療ガイドラインの改訂で、がんなどの終末期や老衰のため肺炎を起こした場合には、人工呼吸器の装着や抗生物質の投与などの積極的な治療は行わず、痛みを取り除く緩和ケアを優先する選択肢を初めて認める案をまとめました。

 具体的には、患者ががんなどの終末期や老衰の状態にあるか否か医学的に判断した上で、適切な情報提供と説明を行って、本人の意思を最大限に尊重するとしています。

 治療を差し控える場合には、医師が1人で決めるのではなく多くの専門職からなる医療チームが、患者や家族と話し合って決め、合意した内容を文書に残すなど人生の最後の段階での医療の在り方を定めた厚生労働省の指針に従うなどとしています。

 ガイドライン作成委員長である河野茂氏(長崎大学理事・副学長)は、「終末期の肺炎の場合、繰り返し苦しんだ末に亡くなってしまうことが多く、どこまで治療すべきか、患者や家族、医療者それぞれに葛藤がある。患者にとってどのような選択肢が望ましいのかを一緒に考えてもらう切っ掛けになってほしい」と話しています。

 日本呼吸器学会では、一般からも意見を募るパブリックコメントを行った上で、年明けにも全国の学会の医師に治療ガイドラインを配布することにしています。

 2016年10月21日(金)

 

■骨髄バンク、移植2万件達成 赤字で移植患者の負担金値上げも

 白血病など骨髄移植が必要な患者のためにドナー(提供者)を登録、仲介する日本骨髄バンク(東京都千代田区)は20日、バンクを介した非血縁者間の移植数が2万件になったと発表しました。

 1991年の発足以降、登録されたドナーは累計約68万人。現在は約46万人で、日本人の96%が移植を受けられるといいます。

 19日までに、骨髄移植が1万9768件で実施されたほか、2010年から可能になったドナーの血液中の幹細胞を移植する末梢(まっしょう)血幹細胞移植が232件で実施されました。1993年1月の初移植から1万件までは16年かかりましたが、ドナーの増加や患者の費用負担の軽減で、2万件までは8年弱で達成。

 2万件の移植は、日本に先駆けてバンクが設立されたアメリカに次ぐ件数で、韓国、台湾、中国を大きく上回ります。

 斎藤英彦理事長は、「骨髄移植は最も実績のある再生医療。2万人の患者に命をつなぐチャンスを提供することができた。ドナーの方を始め協力いただいた人に深く感謝する」と話しています。

 ただ、日本骨髄バンクに登録されたドナーの平均年齢は40歳代と高齢化しているほか、国の補助金などの公的な収入が7割にとどまるなど、財政基盤に課題も抱えています。

 年間の移植数は2012年に1360件でピークとなった後、新生児のへその緒の血を備蓄するさい帯血バンクの利用が増え、2015年には移植数は1268件に減ったため、日本骨髄バンクでは医療保険からの収入や斡旋(あっせん)手数料などの患者負担金が減り、2014年度は約1億円、2015年度は約1700万円の赤字決算となりました。今年度も、必要経費15億4500万円のうち約4000万円について財源の裏付けのない赤字予算を余儀なくされました。

 当面は職員の賞与カットなどの経費節減や積立金の取り崩しでしのぐ方針ですが、日本骨髄バンクは2018年度からの診療報酬の引き上げを国に働き掛ける一方、将来的には移植を受ける患者が支払う負担金の値上げも検討します。

 斎藤理事長は、移植数が右肩上がりだった時に患者負担金を値下げしてきた経緯を踏まえ、「値上げは避けられない気がする」と話しました。

 これに対し、経済的に苦しい移植患者を支援する「全国骨髄バンク推進連絡協議会」の野村正満理事長は、「財政が苦しいからといって、真っ先に患者負担金を引き上げるのは、少し違うのでは」と懸念を示しています。

 2016年10月20日(木)

 

■化血研の製造事業買い取りを断念 アステラス製薬が交渉打ち切り

 国の承認と異なる方法で血液製剤を製造するなどしていた化学及(および)血清療法研究所(化血研、熊本市)と事業譲渡の交渉を進めていた大手製薬会社、アステラス製薬(東京都中央区)が、交渉を打ち切る方針を決めたことがわかりました。厚生労働省は引き続き、化血研に対し、ほかの製薬会社と事業譲渡に向けて交渉するよう求めていくことにしています。

 化血研は、およそ40年にわたって国の承認と異なる方法で血液製剤を製造した上、組織的に隠蔽していたとして、今年1月から110日間の業務停止処分を受けました。

 さらに、厚生労働省から組織の抜本的な見直しを求められ、大手製薬会社のアステラス製薬と事業譲渡の交渉を進めてきましたが、19日、アステラス製薬は、化血研との交渉を打ち切る方針を決めました。

 アステラス製薬はワクチンや血液製剤などの製造事業の買い取り断念の理由について、「総合的に判断し協議を終了することを決定した」と説明しています。化血研の従業員約1900人の雇用や売却する事業の範囲などを巡って、意見が対立し、交渉が難航したとみられます。

 塩崎恭久厚生労働大臣は19日午後、記者団に対し「当初は、今年5月までに事業譲渡の結論を出す方針を国とも共有していたはずなのに、合意に至らなかったのは、化血研への不信感が高まっていることの表れではないか。事業譲渡を速やかに実現してもらいたい」と述べ、引き続き化血研に対し、ほかの製薬会社と事業譲渡に向けて交渉するよう求めていく考えを示しました。

 化血研を巡っては、日本脳炎ワクチンでも承認と異なる方法で製造していたとして、厚生労働省が業務改善命令を出す方針ですが、化血研は「承認申請の段階で製造方法を明記しており不正ではない」などと反論しています。

 一方、化血研側も19日午後、アステラス製薬との間で進めていた事業譲渡に向けた交渉を終了したと発表しました。

 交渉を終える理由は明らかにしていませんが、「今後も製品の安定供給に努めるとともに、厚生労働省の指導の下、引き続きガバナンス・コンプライアンス体制の抜本的見直しの検討を続けてまいります」とコメントしています。

 2016年10月19日(水)

 

■ワクチン業界の再編を提言 化血研問題受け、厚労省作業部会

 化学及(および)血清療法研究所(化血研、熊本市)が国の承認と異なる方法で血液製剤などを製造していた問題を受け、ワクチンと血液製剤の安定供給について議論していた厚生労働省の作業部会は18日、ワクチン産業の業界再編などを促す提言をまとめました。

 提言は、世界的には統廃合による規模拡大と寡占化が進み、メガファーマと呼ばれる4社がワクチン市場の約7割を占める一方、国内のワクチンメーカーは小規模のままで特定企業・団体に過度に依存し、国際競争力に乏しいと指摘。統廃合による規模の拡大など業界再編の推進や、グローバル企業との連携を求めました。

 化血研の出荷自粛によりワクチンに品薄が生じたことを踏まえ、可能な限り国内外の複数社でワクチンを供給する体制の確保も提言。血液製剤についても、複数の供給源を確保するため海外メーカーへの製造委託を検討することを提案しました。

 その上で、ワクチンや血液製剤のメーカーにはより高い順法精神が求められるとして、株式会社などへの組織形態の見直しでガバナンス(統治)とコンプライアンス(法令順守)を強化することを求めました。 

 厚労省によると、ワクチンの国内メーカーは6社、血液製剤は3社のみ。

 会見した塩崎恭久厚労相は、「護送船団方式でやってきた国内市場は統廃合が進まず、脆弱(ぜいじゃく)な供給体制を抱える。国家の安全保障の観点からも、提言の実現に向けて検討を進めていきたい。化血研に対しては、提言を踏まえ、事業譲渡を速やかに実現するように指導を継続していきたい」と述べ、今後は国の審議会などで議論を進める考えを示しました。

 化血研は約40年にわたり血液製剤を不正製造、組織的な隠蔽(いんぺい)をし、今年1月に医薬品医療機器法(旧薬事法)に基づき過去最長の110日間の業務停止命令を受けました。その後も、国の承認と一部異なる方法で日本脳炎ワクチンを製造していたとして、10月4日に厚労省から業務改善命令に向け、根本的な原因の究明や報告を求める命令を受けています。

 化血研は18日、厚労省から指摘されていた日本脳炎ワクチンの未承認製造を否定する内容の報告書と弁明書を同省に提出したと発表しました。

 化血研によると、ワクチンの原材料を製造する工程で微生物などを死滅させる「不活化処理」を一部していなかったとの厚労省の指摘に関し、「国が認めた承認書は、不活化処理をしないやり方を認めていると解釈している」と主張し、業務改善命令をしないよう申し入れもしました。

 これに対し、塩崎厚労相は「弁明書の内容をしっかりと精査してまいりたい」と述べました。

 2016年10月19日(水)

 

■iPS細胞から卵子つくり体外受精 九州大などがマウスで成功

 マウスのiPS細胞(人工多能性幹細胞)から体外培養で卵子をつくることに、九州大や京都大などの研究チームが成功しました。その卵子を体外受精させ、子や孫を得ることもできました。

 これまでよくわからなかった卵巣内で卵子が育つ過程を培養皿上で詳しく観察できるようになり、不妊の原因解明などにつながると期待されます。17日付のイギリスの科学誌ネイチャー(電子版)で発表しました。

 研究チームの林克彦・九州大教授(生殖生物学)らは、2012年にiPS細胞から卵子をつくったことを発表しています。この時はiPS細胞から卵子や精子の元になる「始原生殖細胞」をつくり、胎児から取り出した将来卵巣に育つ細胞と一緒に培養して、マウスの卵巣に移植していました。

 今回はiPS細胞からつくった始原生殖細胞を卵巣に育つ細胞と一緒にした後、体外で培養し続けました。卵子になるまでの約5週間を3つの時期に分けて、メスのマウスのホルモンや特定のタンパク質でできた培養液を使い分けたほか、卵巣内に近い環境を人工的に再現して細胞に栄養がゆき渡るように、細胞を浸す方法を工夫したり、塊になった細胞を手作業でばらしたりしました。

 その結果、1回の培養で、約600個から1000個の卵子ができました。できた卵子をオスのマウスの精子と体外受精させて子宮に戻した計1348個の受精卵から、最終的に8匹の子供が生まれました。通常の体外受精では、約6割の割合で子供が生まれるといい、それに比べるとかなり低かったものの、8匹はいずれも健康で、別のマウスとの間に孫も生まれました。

 また、2012年の時は、胎児の細胞からつくったiPS細胞を使いましたが、今回は大人のメスの尻尾の細胞からiPS細胞をつくっており、大人の卵子の特徴を再現できているといいます。

 卵巣内で卵子がつくられる過程に異常があれば、不妊や遺伝病の原因になります。林教授は、「複雑な生殖細胞の分化メカニズムを観察できるようになり、不妊原因や治療法の開発につながる」と話しています。

 研究チームは今後、培養方法をさらに改良し、マウス以外の動物への応用を目指すといいます。

 今回の研究について、再生医療に詳しい国立成育医療研究センターの阿久津英憲部長は、「卵巣に移植することなく、人工的な環境で卵子がつくれたことは科学的には大きな成果だ。ただ、人とマウスでは、卵子になる過程で働く重要な遺伝子が異なり、人の卵子がすぐにできるかどうかはわからない。国の指針では、研究のために人のiPS細胞から精子や卵子を作ることは認めているが受精は認めておらず、実際に人での研究を進める場合には慎重な対応が必要だ」と話しています。

 2016年10月18日(火)

 

■がん新薬「オプジーボ」、心臓に重い炎症 異常時の投与中止を厚労省が指示

 厚生労働省は18日、新しいタイプの抗がん剤「オプジーボ」(一般名・ニボルマブ)を投与された60歳代の患者が心臓に重い炎症を起こして死亡し、因果関係が否定できないとして、製造元の小野薬品工業(大阪市)に対し、患者に異常がみられた場合には投与を中止することなどを添付文書に盛り込むよう指示しました。

 オプジーボは、体の免疫機能を高めてがん細胞を攻撃する新しいタイプの抗がん剤で、肺がんや皮膚がん、腎臓がんの治療薬として承認されています。

 厚労省によりますと、2014年7月の薬の承認以降、投与された患者のうち6人が、心臓に重い炎症を起こす心筋炎を発症しました。この中で、因果関係が否定できない患者3人のうち、60歳代の男性患者1人が死亡したということです。

 ほかにも、血小板の量が減って内出血を起こす「免疫性血小板減少性紫斑病」や、筋肉が壊死(えし)する「横紋筋融解症」を発症した患者も報告され、オプジーボの投与を終えた後、14人が糖尿病などを発症したことも判明しているということです。

 このため、厚労省は小野薬品工業に対し、患者に異常がみられた場合には、投与を中止することなどを添付文書に盛り込むよう指示しました。

 オプジーボを巡っては、ほかの薬が効かない患者にも効果が期待できる一方で、患者1人の薬代が年間およそ3500万円と高いことでも注目され、厚生労働大臣の諮問機関が2段階で値下げする方針を示しています。

 2016年10月18日(火)

 

■RSウイルス感染症の患者、過去10年の同時期で最多に 44都道府県で前週よりも患者増加

 乳幼児が感染すると重い肺炎を引き起こすこともあるRSウイルス感染症の患者は10月9日までの1週間で7000人余りと過去10年間の同じ時期と比べ最も多くなっており、国立感染症研究所は手洗いやマスクなど、予防対策の徹底を呼び掛けています。

 RSウイルス感染症は、鼻水や発熱、せきなど、風邪に似た症状の出る病気で、秋から冬にかけて乳幼児を中心に流行し、初めての感染では肺炎や気管支炎を引き起こし、重症化することがあります。特に生後6カ月未満の新生児や早産児、特定の基礎疾患がある新生児は、重症化しやすく、病状の急速な悪化による無呼吸発作や突然死の危険性もあります。

 国立感染症研究所によりますと、10月9日までの1週間に全国およそ3000の小児科の医療機関で新たにRSウイルス感染症と診断された患者は7273人と、前の週より1800人以上増加し、過去10年の同じ時期と比べて最も多くなっています。

 また、このRS感染症は例年、年末ころにピークを迎えますが、その時期には来ていないにもかかわらず、過去10年で最も多かった2年前、2014年のピーク時の8280人に迫る患者数となっています。

 都道府県別では、東京都が最も多く723人、次いで大阪府が559人、埼玉県が445人、神奈川県が382人などとなっており、大都市を中心に感染が広がり、全国の44の都道府県で前の週よりも患者が増えています。

 国立感染症研究所の砂川富正室長は、「人口の多い関東地域の患者の増加が例年よりも早いことが患者急増の要因の1つと考えられる。ただ、流行のピークが早まっているだけなのか、それとも年末にかけて患者がさらに増加するのかについてはもう少し動向を注視する必要がある。小さな子供や免疫が低下している人を中心にマスクの着用や手洗いなどの対策を徹底してほしい」と話しています。

 2016年10月18日(火)

 

■慢性疲労症候群、診断の鍵となる血中物質を特定 大阪市立大、理研など

 強い疲労感や睡眠障害が半年以上続き、普通の生活が難しくなる「慢性疲労症候群(CFS)」の診断指標となり得る血液中の代謝物質を特定したと、大阪市立大や理化学研究所などの研究チームが17日明らかにしました。

 成果は、イギリスの科学誌「サイエンティフィック・リポーツ」電子版に掲載されました。

 研究チームによると、慢性疲労症候群は原因不明で、特徴的な身体異常が見付からないため診断が難しく、国内の推定患者は約30万人とされますが、治療法は確立していません。原因として、ウイルスや細菌の感染、過度のストレスなどの複合的な要因が引き金となり、神経系・免疫系・内分泌代謝系の変調が生じて、脳や神経系が機能障害を起こすためと考えられていますが、発症の詳細なメカニズムはわかっていません。

 今回特定した血液中の代謝物質は4種類あり、血液検査で測定することで迅速で高精度な診断や発症のメカニズム解明につながる可能性があるといいます。

 いずれも日本人の慢性疲労症候群患者67人と健常者66人を対象に採血し、病気に関連するとみられる物質を広く解析。細胞内でエネルギーを作る際に生じるイソクエン酸、ピルビン酸という代謝物質と、アンモニアを分解する際に生じるオルニチン、シトルリンという代謝物質を調べたところ、患者と健康な人では、その割合が有意に異なっていました。

 理研の片岡洋祐チームリーダーは、「これらの代謝物質を血液検査で簡単に調べられるようになれば、より早く客観的に診断でき、患者に合った治療方針も立てられる」と話しています。

 2016年10月17日(月)

 

■はしかの感染者、すでに昨年の4倍の145人に 8割は未就学児と20〜30歳代

 全国ではしか(麻疹)の感染が相次ぎ、今年に入ってからの感染者は昨年1年間のおよそ4倍の145人に上ることがわかりました。

 大阪府の関西空港などでの集団感染は、すでに終息したとみられますが、厚生労働省は今後も注意するとともに、子供の定期接種を徹底するよう呼び掛けています。

 17日に開かれた厚労省の専門家会議では、今年に入って10月2日までに、全国ではしかに感染した人は、昨年1年間のおよそ4倍となる145人に上ることが報告されました。このうち、就学前の子供と20歳代と30歳代を合わせて、全体のおよそ8割を占めているということです。いずれも海外から入ってきたウイルスが広がったと考えられています。

 今年7月以降は、関西空港や千葉県の松戸市などで集団感染が起きましたが、それぞれの自治体がすでに終息宣言を出しています。

 しかし、厚労省は今後も集団感染が起きる可能性は否定できないとして、「今後も注意するとともに、重症化しやすい子供の定期接種に必要なワクチンは今のところ、ある程度確保できているので、引き続き、定期接種を徹底してほしい」と呼び掛けています。

 はしかは、ウイルスに感染して引き起こされる病気です。初めは38度台の発熱に、せきや鼻水など風邪に似た症状が出ます。その後、39度から40度の熱になって体に発疹が現れます。特徴は強い感染力で、飛沫感染だけでなく、空気感染もします。インフルエンザのウイルスよりも感染力は強く、マスクをしても防ぐことは難しいと考えられています。

 過去、子供に感染が多かった流行のデータを見ると、発症した人の1000人に1人が死亡しています。妊娠している人が感染すると、流産や早産の恐れもあります。

 今回の感染拡大は、いずれも東南アジアなどの海外から入ってきたウイルスが広がったと考えられています。日本は海外から一時的に入ってくるウイルスの感染者はいても、国内で感染が長く継続するウイルスはなくなったとして、2015年、世界保健機関(WHO)から、はしかの「排除状態」にある国として認められました。

 一方で、はしかの免疫が十分でない人たちがいることや、外国との行き来が増えて、海外からウイルスが入ってくる危険性が高まっていることを一人一人が認識し、継続して対策を進めることが大切です。

 2016年10月17日(月)

 

■病院、学校敷地内は全面禁煙に 受動喫煙対策で厚労省

 厚生労働省は12日、2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向け、他人のたばこの煙にさらされる受動喫煙対策として、喫煙者本人や施設管理者への罰則付きで、特に未成年者や患者らが主に利用する医療機関や小中高校は敷地内全面禁煙とする初の制度案を発表しました。

 多数の人が利用する施設と位置付けた官公庁やスポーツ施設、社会福祉施設、大学は敷地内禁煙より緩い建物内禁煙、飲食店やホテル、事務所は喫煙室設置による分煙を認めるなど、施設によって規制レベルを分けました。今後、飲食業や旅館業など関係団体へのヒアリングなどを経て、法整備を目指します。

 国際オリンピック委員会(IOC)と世界保健機関(WHO)は開催都市に「たばこのない五輪」を求めており、2004年以降のロンドンやリオデジャネイロなどすべての開催都市は罰則を伴う防止策を導入しました。日本は健康増進法による努力義務にとどまり、罰則はありません。

 喫煙者や施設管理者に禁止場所での禁煙を義務付け、違反者には勧告や命令などを実施し、それでも違反が続く場合は罰則を適用する方針。自宅やホテルの客室内などは、規制の対象外。

 厚労省は、「世界に恥ずかしくないようにやっていかなければならない。諸外国の常識を考え、受動喫煙のないスモークフリー元年を確実に実現する」と説明しています。

 たばこ政策に詳しい地域医療振興協会の中村正和医師は、「実行可能な対策だ。飲食など関連業者の反発はあるだろうが、半歩進めることに意味がある。世論を醸成していくことが大事だ」と話しています。

 2016年10月16日(日)

 

■オゾン層は壊さないが温室効果が大きい 代替フロン規制、約200カ国が合意

 冷蔵庫やエアコンの冷媒に使われ温室効果が大きい代替フロン、ハイドロフルオロカーボン(HFC)が地球温暖化対策のため、段階的に生産規制されることになりました。

 15日、ルワンダの首都キガリで開かれていたモントリオール議定書締約国会合で、議定書を改正してHFCを規制対象に加えることが、約200カ国の代表により合意されました。日本などの先進国は、2019年から削減を始めます。

 日本やアメリカなど先進国は2036年までに基準年の2011~2013年の平均に比べ、二酸化炭素(CO2)で換算して85%に当たる量を削減します。中国やインド、途上国は2020年代を基準年とし、2040年代までに80~85%を削減します。中国などは2024年、インドなどは2028年から削減を始めます。

 HFCには複数の種類があり、温暖化への影響が大きいものを優先して規制し、影響が小さい物質に切り替えていきます。アメリカなどのチームによる研究では、HFCを規制すると今世紀末までに0・5度の気温上昇を抑えられるといいます。

 モントリオール議定書は1989年に発効し、太陽の有害な紫外線を遮るオゾン層破壊の原因となるフロンの使用が規制されました。HFCは、フロンの代わりに冷媒として使われるようになりました。

 しかし、HFCはオゾン層は壊さないものの、二酸化炭素の数百~数千倍も温室効果が大きいため、モントリオール議定書を改正し、HFCを規制対象に加えることが2009年に提案され、議論されてきました。

 今年5月の主要7カ国(G7)首脳会議(伊勢志摩サミット)では、年内の議定書改正を目指すことで一致。今回、アメリカはケリー国務長官が現地入りして議論を進めました。

 今回の議定書の改正案には、日本も賛成。今後、メーカーや冷蔵庫などを使うスーパー、コンビニなどはHFCを使わない自然冷媒の機器への切り替えを進めます。導入コストは現在高いものの、代替フロン使用をやめることで規制対象外になり、点検コスト削減や省エネが見込めます。

 環境省などによりますと、日本国内ではHFCの生産や消費を具体的に規制する法律がないため、今後、法改正などの対応が必要になるということです。

 2016年10月15日(土)

 

■2015年の結核感染者1040万人、死者180万人 WHOが警告  

 世界保健機関(WHO)は13日、2016年版の「世界結核報告書」を公表し、2015年の世界の結核感染者数は1040万人で、結核の流行拡大は予想をはるかに上回ると警告しました。

 2014年の結核感染者は960万人で、感染者の数は急増しています。死者数も増加しており、2015年の死者数は前年より30万人多い180万人でした。2000年以降、死者数は減少傾向だっただけに、WHOは「衝撃的な数値だ」として、「ワクチン開発や治療法研究の資金不足は深刻だ」と指摘しています。

 結核は肺が結核菌に感染することで罹患(りかん)する感染症で、症状が進むと血を吐くこともあります。しかし、結核にかかった人のうち5人に2人は、結核と診断されず治療を受けていませんでした。 また、50万人近くが既存の薬剤が効きにくい「多剤耐性結核」と診断されていました。その半数は、インド、中国、ロシアでの症例でした。

 一方、新たな結核の罹患者は、60%をインド(284万人)、インドネシア(102万人)、中国(92万人)、ナイジェリア(59万人)、パキスタン(51万人)、南アフリカの6カ国が占めています。

 今年の報告書で結核感染の数字が拡大したのは、2000~2015年のインドの感染症例数が少なすぎると研究者たちが気付いたためだといいます。

 2016年10月15日(土)

 

■産科医1人当たりの出産件数、2・7倍の格差 大都市近郊で負担大きく  

 産科の医師1人が1年間に担う出産の件数を各都道府県ごとに調べたところ、東京都や大阪府に隣接する埼玉県、千葉県、兵庫県などで医師の負担が重く、負担の少ない県と比べて最大で2・7倍の格差のあることが、日本産婦人科医会の調査でわかりました。

 開業医らでつくる日本産婦人科医会では、「妊婦の多い大都市近郊で、産科医が不足している実態が明らかになった。医師の適切な配置など対策を取ってほしい」と話しています。

 日本産婦人科医会は、今年1月時点での全国の産科の医師の数と昨年1年間の出産件数を基に、産科の医師1人が担う出産件数を都道府県ごとに調査。

 その結果、産科医1人当たりの出産件数が最も多かったのは埼玉県で、年間182件に上り、最も少なかった山形県の68件の2・7倍になっていました。次いで多かったのは佐賀県で164件、続いて千葉県が161件、兵庫県と沖縄県が149件、広島県が147件などとなっており、大都市の東京都や大阪府に隣接する県で医師の負担が大きい実態がわかったとしています。

 また、全国の産科医の数は、2009年の7290人から毎年増え続け、昨年は8264人となっていましたが、今年は8244人と初めて減少に転じたこともわかりました。

 これは、新たに産婦人科医を目指す若い医師の数が364人と少なく、退職する産科医も多かったことが原因だということで、日本産婦人科医会では、2010年度から産婦人科が研修医の必修科目から選択科目に変わり、2012年以降は新たに産婦人科を専攻する医師が減少していることが背景にあるとして、人材確保が急務の課題だと訴えています。

 調査を行った日本産婦人科医会の中井章人日本医科大学教授は、「産科医療は全国的にも厳しい状態が続き、地方の自治体で出産できる病院が少ないことなどが問題になっているが、一方で、埼玉県や千葉県など大都市近郊では、地方に比べ妊婦の割合が多く、産科医が不足している実態が明らかになった」と話しています。

 埼玉県では、一昨年から県内で受け入れができない場合、東京都と連携して都内に搬送する対応を取っています。中井教授は、「出産は緊急の場合があり、妊婦や赤ちゃんの命にかかわる。広域搬送は本来のあるべき姿ではない。負担が重い状態が慢性化すれば、提供できる医療が不安定になる可能性があり、安全なお産のためには、産科医全体の数を増やし、適切に配置する対策を取るなどしてほしい」と話しています。

 2016年10月14日(金)

 

■WHO、糖分多い飲料への課税を要請 肥満や糖尿病対策

 世界保健機関(WHO)は11日、糖分が多い清涼飲料水に20%以上の課税をすれば、世界的に増加傾向にある肥満や糖尿病を減らせるとする報告書を発表し、各国に課税強化を呼び掛けました。

 この報告書は、生活習慣病などの病気と、その予防のための政策について、WHOの研究グループがまとめたもので、スイスのジュネーブにある国連ヨーロッパ本部で発表されました。

 報告書の中で、研究グループは、糖分が多い清涼飲料水の過剰な摂取が肥満と糖尿病が増える要因の1つだとし、20%以上の課税をすれば、たばこと同様、人々の摂取量を大きく減らせるとしています。

 その上で、WHOは課税によって価格が上がれば、特に若者や低所得の人の摂取量を減らせるとしていて、「多くの人の苦しみを軽減でき、命を救うこともできる。医療費も削減できる」と指摘しています。

 WHOによりますと、世界で肥満に分類される人の数は1980年から2014年にかけ2倍以上に増加し、現在はおよそ5億人にも上るということです。糖尿病の人も1980年の1億800万人から、2014年には4億2200万人に増えているいうことです。

 糖分が多い清涼飲料水への課税については、メキシコ、フランス、ハンガリーなどがすでに導入し、イギリスやフィリピン、それに南アフリカも導入を検討しています。

 WHOは、「すでにメキシコでは、糖分の多い飲料に10%課税することにより、消費を6パーセント減少させた」としていますが、アメリカの清涼飲料水メーカーなどは、健康対策としての課税について、「根拠のない差別的な課税」だとして、反対しています。

 日本では、厚生労働省の有識者懇談会が2015年6月にまとめた提言「保健医療2035」の中で、安定した医療財源確保に向け、たばこ、アルコールと並んで砂糖の健康リスクに対する課税の検討を求めました。だが、国会質疑で批判が出るなどし、厚生労働省の来年度の税制改正要望には盛り込まれていません。

 2016年10月12日(水)

 

■イギリス発のマギーズセンター、東京に国内初オープン がん患者や家族を支援する施設

 がん患者や家族が気軽にいつでも、看護師ら専門職から支援を受けられる施設「マギーズ東京」が10日、東京都江東区豊洲にオープンしました。イギリス発祥の「マギーズセンター」の日本第一号で、無料、予約なしで相談に乗り、思いを受け止めます。

 建設費はすべて寄付で賄われ、センター長の秋山正子さん(66歳)は、「患者らが自分の力を取り戻し、前向きに生きられる切っ掛けとなる場所にしたい」と語っています。

 マギーズセンターは、乳がんで亡くなった女性造園家のマギー・ジェンクスさんの遺志を継ぎ、1996年にイギリスで開設された病院外の相談施設。イギリスや香港などの計約20カ所に広がっています。開放的な空間にキッチンやリビングを備え、家庭的な雰囲気の中で患者や家族、専門職らが対話を重ねるのが特徴です。

 その理念を受け継いだマギーズ東京は、平日午前10時~午後4時に開館。看護師や臨床心理士が常駐し、治療への向き合い方や、仕事、暮らしなどについてがん患者や家族の相談に応じます。さらに、治療中の体によい食事について学べるほか、ヨガなどの運動もできるということです。

 約80平方メートルの平屋の建物2棟と庭があり、内装には木材がたっぷりと使われ、大きなダイニングテーブルのあるオープンキッチンや相談室、一人になれる部屋などがあり、お茶を飲みに来るだけの人も受け入れます。

 看護師で、姉をがんで亡くした秋山さんと、がんを経験した会社員の鈴木美穂さん(32歳)が共同代表を務めるNPO法人が、マギーズ東京の運営を担います。

 建設費3900万円はインターネットのクラウドファンディングを始め、患者、がんで肉親を亡くした家族、一般らの寄付ですべて賄いました。建設計画が立ち上がってから2年半で、約3000人が協力し、7000万円が集まりました。イギリスのマギーズセンターと同様、今後の運営もすべて寄付で賄われます。

 センター長の秋山さんは、「がんと告げられるとショックで自分を見失う人もいるが、2人に1人ががんになり、がんとともに生きる時代なので、この施設を患者などが自分を取り戻せる場所にしていきたい」と話していました。

 問い合わせは、マギーズ東京(電話03ー3520−9913)へ。

 2016年10月11日(火)

 

■アスベストによる中皮腫死者、初めて1500人を超す 2015年人口動態統計

 アスベスト(石綿)被害を示す指標になる重篤ながんである中皮腫(ちゅうひしゅ)の年間死者が2015年に初めて、1500人を超えていたことが、厚生労働省の人口動態統計でわかりました。10年前の約1・6倍に増加しました。

 一方、労災認定はほとんど増えていません。専門家は、「労災として救われない被害者が拡大している」とみています。

 中皮腫は、ほとんどがアスベストを吸ったことが原因とされるがん。年間死者は1995年に500人、2005年に911人と推移し、2015年は前年よりも128人多い1504人でした。ところが、中皮腫患者の労災認定者は2008年度559人、2014年度529人などほぼ横ばいで、2015年度は539人。増加する死者との差が広がりつつあります。

 患者団体などでつくる石綿対策全国連絡会議(東京都江東区)によると、アスベストによる肺がん死者の統計はないものの、国際専門家会議が中皮腫の2倍発症すると考えていることから、年間約3000人と推定。アスベストによる中皮腫と肺がんによる死者は、計約4500人とみています。

 一方で、アスベストによる肺がんの労災認定者は減る傾向で、2008年度503人、2014年度が391人でしたが、2015年度が360人にとどまるなど、中皮腫よりも「救われない被害者」が急増しているとみられます。厚労省がアスベストによる肺がんの労災認定基準を厳しくしていることが一因と指摘されています。

 国内では、アスベストの製造販売は2012年3月に全面禁止されました。しかし、中皮腫の潜伏期間が20〜60年とされ、石綿輸入のピークが1974年と1988年ごろだったことと併せ、患者はさらに増えると考えられています。

 石綿対策全国連絡会議の古谷杉郎事務局長は、「身の回りの建物などに残された石綿を安全に除去処分し、アスベストのない社会を作ることが不可欠だ。肺がん患者を救えていないことに政府は危機感を持ち、厳しすぎる認定基準を見直すべきだ」と話しています。

 アスベスト(石綿)は、蛇紋石などの繊維性鉱物を綿状にほぐしたもので髪の毛の5000分の1程度と極めて細く、耐火、保温、防音性があり、安価だったことから「奇跡の鉱物」「夢の素材」と珍重され、建材、保温材、煙突、輸送機器などに使われました。

 飛散したものを吸い込むと、息切れ、胸痛、咳などの初期症状があり、吸い込んでから長い潜伏期間をへて、呼吸困難になる石綿肺、石綿肺がん、悪性中皮腫を発症する恐れがあります。2005年に石綿製品工場周辺の住民被害が発覚し、社会的関心を呼びました。現在も古い建物に残り、解体、改装で飛散する事故が相次いでいます。

 2016年10月9日(日)

 

■顕微授精で生まれた男性、精子濃度薄く不活発 ベルギーの大学病院で調査

 不妊に悩む男性の精子を卵子の細胞質に直接注入する顕微授精で誕生した男児は、成長しても一般男性より精子濃度が大幅に薄かったり、運動している精子の数が少なかったりする傾向があるとの調査結果を、ベルギーの研究チームがイギリスの科学誌ヒューマン・リプロダクションに発表しました。

 1992年に始まった顕微授精で生まれた子供たちは近年、世界で成人期を迎えていますが、男性不妊の原因が次世代に引き継がれることが確認されたのは初めて。

 今回成果を報告したブリュッセル自由大学病院は、世界で初めて顕微授精での妊娠、出産に成功し、生まれた子供たちを追跡調査しています。

 今年4月までの3年間、顕微授精で生まれた18~22歳の男性54人のデータを、自然妊娠で生まれた同世代の男性57人と比較。その結果、精子濃度や運動する精子数が全体として半分程度と低く、世界保健機関(WHO)が定める基準値を下回る人が通常の3~4倍に上りました。ただ、それぞれの父親の精子の数や運動の程度とは違う点もみられました。

 日本では1994年に出産例が初めて報告され、近年は男性不妊に限らず受精率を高める目的でも広く実施されています。日本産科婦人科学会によると、年間14万件以上が実施され、2014年までに計9万6000人が誕生しています。厚生労働省の研究班が子供の健康状態を調べていますが、精子の状態は追跡調査されていません。

 日本産科婦人科学会の元理事長で、生殖補助医療に詳しい吉村泰典・慶応大名誉教授(生殖医学)は、「顕微授精で男性不妊が次世代の男児に伝わる可能性は遺伝子の研究から予想されていたが、データで確かめられたことは極めて重要だ。彼らが子供をもてるかどうかが問われ、今後、顕微授精の実施時には十分な説明が求められる」と指摘しています。

 顕微授精は体外受精の一種で、体外顕微鏡で観察しながら培養液の中で実施します。当初は複数の手法が使われましたが、現在は一つの精子を人が選んで卵子の細胞質内に入れる「卵細胞質内精子注入法(ICSI)」を指し、この方法では日本で1994年に初の出産例が報告されました。受精率は60〜70%で、費用は1回30万円から50万円とみられます。

 2016年10月9日(日)

 

■生活保護受給の母親、25%が心身に疾患 男性の3割超はメタボ

 生活保護を受けている母子家庭のうち、母親の4人に1人が心身に疾患を抱えていることが7日、厚生労働省の調査でわかりました。

 来年度には生活保護の水準を見直す予定で、厚労省の担当者は「子供の貧困につながらないよう、実態把握を進める」としています。

 生活保護を受けている全世帯を対象に行う2014年7月の調査から、18歳以下の子供がいる約10万3000の母子世帯を分析。25・3%の母親に障害があったり、病気を患っていたりしました。

 そのうち半数近くは症状が半年未満と比較的軽度な精神障害で、1割強は半年以上続く重度な精神障害がありました。障害や病気がある母親のうち、働いている母親は4・8%でした。

 厚労省の2011年調査では、母子家庭の母親で自分の健康に悩みを抱えていると答えた人は全体の9・5%。生活保護受給世帯の母親は心身に疾患を抱えている割合が高い傾向にあります。

 一方、生活保護を受けている男性では、3人に1人がメタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)で、喫煙者が4割以上いることも、厚生労働省の調査でわかりました。

 いずれも生活保護を受けていない男性より、割合が高くなっています。生活保護受給者は健康への関心が低いという結果もあり、厚労省の担当者は「食事が安くて高カロリーのジャンクフードなどに偏っているとみられる」としています。

 2014年度に特定健康診査(メタボ健診)を受けた40歳以上の生活保護受給者約10万8000人の診断結果を分析しました。メタボと診断されたのは男性が32・7%で、女性が17・5%。受給していない男性の21・0%より10ポイント以上高く、女性は3倍近く高くなりました。

 60歳代後半の男性が34・6%(受給者以外は27・4%)、70歳代前半の男性が33・3%(同26・9%)と割合が高くなっています。受給男性の喫煙率は43・0%(同33・7%)で、特に50歳代が51・9%と多くなりました。

 生活保護費のうち約半分は医療扶助が占めています。厚労省は医療費を減らすため、今年度中に受給者の生活習慣病対策をまとめる方針。

 2016年10月9日(日)

 

■世界の平均寿命は急速に延び、加齢に伴う非伝染性疾病は増加 国際研究機関が報告書を発表

 世界の平均寿命は、1980年以降に10年増となる急速な伸びを示していることが、6日に発表された研究機関による国際保健の包括的な概観報告書で明らかになりました。 2015年の平均寿命は男性で69歳、女性で75歳近くになったといいます。

 この報告書「世界の疾病負担研究2015」は、アメリカのワシントン大学、日本の東京大学、世界保健機関(WHO)など7つの機関の共同研究として2007年から発表されているもので、イギリスの医学専門誌ランセットに発表されました。

 報告書によると、世界の寿命年数の増加分の大半は、特に過去10年間での感染症による死者数の急激な減少とともにもたらされたといいます。

 人口が増加する中、主要な死因であるAIDS(エイズ、後天性免疫不全症候群)/HIV(ヒト免疫不全ウイルス)と結核を合わせた死者数は、2005年の310万人から2015年には230万人となり、その減少率は25%を上回りました。

 同じ期間においては、下痢性疾患による年間死者数が20%減少しており、2005年には120万人だったマラリアの死者数も2015年には73万人となり、約3割の減少となりました。

 この10年間で、195のうち188の国と地域で、平均寿命が上昇しました。

 一方で、がん、心臓病、脳卒中といった非伝染性疾病については、2005年の3500万人から2015年には3900万人となり、その死者数が増加しています。

 子供支援の国際NGO「セーブ・ザ・チルドレン」イギリス支部のケビン・ワトキンス支部長は、ランセット誌に同時掲載された解説記事で「寿命が延びるにつれて、非伝染性疾病の負担が、治療の付随コストとともに増大している」と指摘しています。

 がん、冠動脈疾患、肝硬変、アルツハイマー病など、増加傾向にある非伝染性疾病の多くは、加齢に関連するものです。

 皮肉なことに、寿命が延びても、それに伴って体の不調を訴える不健康な状態での時間が増えていることを、100ページに及ぶ今回の報告書は明らかにしました。

 2016年10月9日(日)

 

■初めての過労死白書まとまる 企業の2割が残業80時間超

 政府は7日、過労死等防止対策推進法に基づく「過労死等防止対策白書」(過労死白書)を初めて閣議決定しました。

 1カ月間の残業時間が労災認定の目安となり、「過労死ライン」とされる80時間を超えた正社員がいる企業が22・7%に上るといった長時間労働の実態や、過労死・過労自殺の労災認定件数のデータなどを盛り込み、法制定の経緯や関係法令も収録、基礎資料を網羅した内容になっています。

 2014年の過労死等防止対策推進法施行を受け、厚生労働省は昨年12月~今年1月、企業約1万社(回答は1743社)と労働者約2万人(回答は約1万9000人)を対象とする調査を実施。結果を白書に盛り込みました。

 80時間の過労死ラインを超える残業をしている正社員がいる企業の割合を業種別にみると、最も高かったのは情報通信業で44・4%。研究や専門的な技術サービスを提供する企業が40・5%、運輸・郵便業が38・4%で続きましたた。厚労省は、「人員不足や、予定外の仕事が突発的に発生することなどが影響している」とみています。

 過労死等防止対策推進法について「大まかな内容を知っていた」とする企業は、38・1%にとどまりました。

 一方、労働者を対象とする調査では、正社員の36・9%が高ストレスを抱えていることがわかりました。業種別にみると、医療・福祉が41・6%、サービス業が39・8%と割合が高くなっています。

 正社員で自身の疲労の蓄積度について「高い」「非常に高い」とした人は、32・8%。睡眠時間についても、45・6%の人が「足りていない」か「どちらかといえば足りていない」としました。理由(複数回答)は「残業時間が長い」が最も多く、36・1%が挙げました。

 長時間労働などの「勤務問題」を原因の一つとする自殺者は、年間200人を超える状況が続いています。

 白書では過労死について、「労働時間や職場環境だけでなく、業界を取り巻く環境や労働者側の状況など多岐にわたる要因の分析が必要」と指摘。厚労省は約2万人を10年間追跡する大規模調査を準備中で、過労死の実態解明をさらに進めます。

 その上で、労働者の相談窓口の設置や継続的な啓発活動を通じて、過労死や過労自殺をゼロにすることを目指すと締めくくっています。

 過労死は、海外でもアルファベット表記の「KAROSHI」がそのまま通用するなど、日本特有の問題として知られるようになり、1991年には過労死や過労自殺をした人の遺族を中心に「全国過労死を考える家族の会」が結成され、防止に向けた社会的な機運が高まりました。その後、家族の会による署名集めなどの活動が実を結び、2014年に過労死等防止対策推進法が施行され、ようやく国を挙げて対策に乗り出すことになりました。

 法成立に尽力した家族の会の寺西笑子代表は、「公式な白書という具体的な形をまとめたことは評価したい」とした上で、「個別事案の背景などをもっと掘り下げ、具体的な対策につなげてほしい」と訴えています。

 2016年10月7日(金)

 

■紅茶由来のポリフェノールにノロ消毒効果 静岡県の研究所、世界初の発見

 紅茶由来成分でポリフェノールの一種「テアフラビン類」が抗ウイルス作用を持つことを世界で初めて発見したと、静岡県環境衛生科学研究所が6日発表しました。ノロウイルスなどのカリシウイルスに対して消毒作用があり、食中毒防止対策などへの活用が期待されます。

 研究成果は、国際学術誌に掲載されます。

 静岡県環境衛生科学研究所は2011年度から2015年度までの5年間、県の新成長戦略研究として県立大創薬探索センターやファルマバレーセンターと共同で、ノロウイルスの消毒薬に利用可能な薬剤を探索しました。

 その結果、紅茶の発酵過程で生じるテアフラビン類に、ウイルス感染力を大幅に低減させる効果があることがわかりました。マウスとネコ、ブタの細胞を使った実験では、ウイルスの感染力が約1000分の1になるなど、ヒトノロウイルスの代替ウイルスである3種類のウイルスに効果がありました。

 ノロウイルスは感染力が強く、感染者の手指や汚染された食品などを介して瞬時に拡大します。感染拡大の防止には消毒の徹底が重要ですが、現在推奨されている次亜塩素酸ナトリウムや加熱による消毒方法は、手指の消毒に適しません。天然成分であるテアフラビン類は肌に優しく、金属の腐食や塩素臭もないため、手洗いの消毒薬への利用を目指します。

 静岡県環境衛生科学研究所は、特許を受ける権利をファルマバレープロジェクト支援機構に譲渡。同支援機構は特許を出願し、静岡県内の企業と連携して手洗いの消毒薬の開発を進めています。

 静岡県環境衛生科学研究所の岡山英光所長は、「塩素臭が強く飲食店などで使いづらい次亜塩素酸ナトリウムに代わる新たな消毒剤を見付けたいとの思いで、研究に取り組んできた。お茶の生産が盛んな静岡県で発見されたテアフラビン類には、手に使える優しい消毒剤として世の中に出ていってほしい」と、今後の製品化に期待していました。

 テアフラビン類は、紅茶の製造過程でカテキン類2分子が結び付いて生成されます。紅茶の赤色の元となる成分の一つ。インフルエンザウイルスの不活性化効果や血流改善効果など、さまざまな機能を持つことが報告されています。

 2016年10月7日(金)

 

■尿酸値、小腸の働きが弱いと高めに 防衛医科大などが研究

 痛風との関係が深い尿酸値は、小腸の働きが弱いと高くなるという研究成果を、防衛医科大、済生会横浜市東部病院などの研究チームがまとめました。尿酸値を測ることで、消化器の病気を見付けられる可能性もあるとしています。

 研究成果は8月30日付けで、イギリスの科学誌に掲載されました。

 防衛医科大の松尾洋孝講師(分子生体制御学)によると、小腸は腎臓と同じように尿酸を体外に排出する働きもあることは知られていましたが、具体的な尿酸値への影響は明らかになっていませんでした。

 研究チームは、尿酸を体外に運ぶタンパク質をつくる働きがある遺伝子「ABCG2」に着目。この遺伝子のわずかな違いによって、小腸から尿酸を排出する程度が異なります。

 腎臓からの排出の影響を除くため、血液透析を受けている慢性腎不全患者106人について、遺伝子の違いで小腸の働きを評価し、3グループに分けて尿酸値を比較。小腸の働きが正常な患者に比べ、やや弱い患者は血液100ミリリットル当たりの平均尿酸値が0・8ミリグラム、弱い患者では1・3ミリグラム高いという結果が出ました。尿酸値は7・0ミリグラムを超えると、高尿酸血症と診断されます。

 また、急性腸炎の子供67人で、小腸に炎症が起きている時の血液100ミリリットル中の尿酸値を調べたところ、平均8・8ミリグラムと高かったものの、回復後の平均尿酸値はほぼ半減しました。小腸の炎症で尿酸値が高まることもわかったといいます。

 松尾講師は、「簡便に測ることができる尿酸値で、痛風だけでなく、急性腸炎など消化器疾患の兆候を見付けられる可能性もある」と話しています。

 痛風は、血液中の尿酸量が高い値を示す高尿酸血症が原因となって、関節が痛む発作症状。痛みの発作は、血液中に増えて溶け込めなくなった尿酸が尿酸塩結晶となって関節にたまり、この結晶を異物と判断した白血球が攻撃して起こるといわれています。

 2016年10月7日(金)

 

■人間の寿命に限界、125歳まで生きる確率は1万分の1以下 アメリカの大学が研究

 人間の寿命の上限を発見したとする研究論文が5日、発表されました。この研究結果を受け、記録史上最も長生きした人物の122歳という金字塔には、誰も挑戦しようとすらしなくなるかもしれません。

 アメリカのアルバート・アインシュタイン医科大学の研究チームは、世界40カ国以上の、最長でおよそ100年分の人口統計データを詳細に調べ、長年続いた最高寿命の上昇が1990年代に、すでにその終点に到達していたことを突き止めました。

 最高寿命の上昇は、1997年ころに横ばい状態に達しました。1997年は、フランス人女性ジャンヌ・カルマンさんが前人未到の122歳と164日で亡くなった年でした。

 研究論文の共同執筆者で、アルバート・アインシュタイン医科大のブランドン・ミルホランド氏は、「それ以降は、世界最年長者が115歳前後という傾向が続いている」と説明しました。

 こうした世界最年長者が115歳前後という傾向は、医療、栄養、生活などの状態の向上を受け、平均寿命が伸び続けている中でのもの。言い換えれば、最近は老齢期まで生きる人が増えていますが、群を抜いて長寿命の人は、以前ほどの高齢には達していなかったということになります。

 ミルホランド氏は、「このような傾向が当面の間、変わらず続くことが予測される」と指摘しています。そして、「115歳よりもう少し長生きする人がいるかもしれないが、今後どの年においても、世界の誰かが125歳まで生きる確率は、1万分の1に満たないと考えられる」としながら、「過去数十年間における医学の進歩は、平均寿命と生活の質(QOL)を上昇させたかもしれないが、最高寿命を伸ばすことには寄与していない」と続けました。

 寿命は、個体が生存する期間がどのくらいかを表すのに用いられる用語で、最高寿命は、ある生物種に属する最も長命の個体が到達する年齢を指します。

 他方で、平均寿命は、ある年齢層の人々が持つと見込まれる余命の平均値で、社会福祉の尺度となります。研究チームによると、平均寿命は19世紀以降、全世界でほぼ連続的に上昇しているといいます。

 人間の最高寿命もまた、1970年代から上昇を続けていましたが、現在は頭打ちの様相を示しています。これは、「不老の泉」を見付けたいという一部の人々の希望をよそに、人間の寿命に生物学的な限界がある可能性を示すものです。研究チームは、「人間の最高寿命は限定されており、自然の制約を受けるものであることを、今回の結果は強く示唆している」と論文に記しています。

 ミルホランド氏は、「それでもなお、不老長寿を追い求める人々は、今回の研究で明らかになった寿命の上限を超える、何らかの未発見の技術の登場への希望にすがり付くだろう」と予想しています。その上で、「従来型の医学の進歩に期待を寄せるのであれば、それは激しい失望に変わるであろう」とも指摘しています。

 2016年10月6日(木)

 

■遺伝性の感音難聴、内耳の毛の異常が原因 神戸大などが特定

 内耳や神経の病気で症状が現れる遺伝性の感音難聴について、神戸大学や京都大学などの研究チームは5日、原因となる遺伝子変異を特定したと発表しました。病気の状態を再現したマウスの作製にも成功し、感音難聴の治療薬開発が期待できるといいます。

 研究成果は、5日付のヨーロッパ分子生物学機構の専門誌(電子版)に掲載されました。

 感音難聴は、音を感じる内耳から聴覚中枢路にかけての異常による難聴で、その多くは両耳が同時に障害され、音の内容がはっきり聞こえず、全く聞こえなくなることもあります。遺伝性感音難聴の患者は、1000人に1~2人と高い確率で出生します。しかし、後天性(老人性)感音難聴も含めて、有効な治療法も治療薬も、現在ありません。

 研究チームは、最新の解読装置で難聴患者1120例の遺伝子を調べ、2家系で遺伝子「DIA1」の変異を特定しました。

 聴覚は、鼓膜の奥にあり、アクチンというタンパク質でできている器官「聴毛」が、一定の長さに保たれ振動することで生じます。

 実験では、DIA1の変異により、アクチンからなる聴毛が過剰に伸長し、形が崩れることが判明しました。さらに、このDIA1に変異があるマウスを作製すると難聴になったため、原因遺伝子と断定しました。

 研究チームの一人、神戸大学バイオシグナル総合研究センターの上山健彦准教授(脳科学)は、「アクチンは遺伝性感音難聴の3分の1にかかわり、後天性でも関係している可能性はある。マウスを使えば聴毛の形を正常にする治療薬の研究、開発が期待できる」と話しています。

 2016年10月6日(木)

 

■立って仕事して健康と業績アップ オフィス環境を変える企業が増加中

 仕事中の座りすぎは健康に悪影響があるとして、立って作業できる机を導入したり、体を伸ばせる遊具を置いたりといった工夫を凝らすなど、オフィス環境を変える企業が増えてきました。

 社員の健康増進を業績アップにつなげる健康経営の考え方や医療費削減の観点からも、注目されています。

 東京郊外の世田谷区玉川に本社を構える楽天。オフィスでは、座って作業をする人に交じり、自分の好きな高さの机に向かい、立って仕事をする人の姿が目立ちます。

 昨年、品川区東品川から本社を移転する際、「座り続けるのは体に悪い」という考え方から高さを自由に変えられる机を導入しました。大柄な外国人の社員も増え、日本の標準的な机では合わない人が出てきた事情もあったといいます。

 立って仕事をするのは、特に長時間デスクワークをするエンジニアが多く、「立っていると周りが見え、コミュニケーションが取りやすい」「姿勢を変えることで発想や気分を変えられる」など社員の反応は上々です。

 電線大手のフジクラ(東京都江東区)は、小学校の校庭などに置かれ、ぶら下がって遊ぶ遊具の「うんてい」を職場に設置しました。パソコンを続け猫背になった体を伸ばし、リフレッシュしてもらおうという配慮です。

 人事担当者は「打ち合わせで行き詰まると『うんていやろうか』という話になる」、女性社員は「体が伸びて気持ちがいいし、気分転換になる。男性も結構ぶら下がってます」と話しています。

 フジクラ2009年から、社員の健康を会社の活力につなげる取り組みを開始し、歩数計の配布などを通じ、意識を高めてきました。医療費増の要因にもなるメタボリックシンドロームと判定される社員が減ったほか、売上高、営業利益なども伸びたといいます。

 NTTソフトウェアの横浜事業所(横浜市)では、オフィスの壁を取り払い、サッカー場並みの全長110メートルの通路を障害物なく歩けるようにしました。「席にいるかどうかがすぐわかるので、気軽に立ち寄って打ち合わせができる」「歩く習慣が身に付き、普段も運動するようになった」といった声が、社員から上がっています。

 座りすぎ防止の取り組みの背景には、「長時間座っても心地いい椅子作り」を追究してきたオフィス家具業界の反省があります。「椅子をよくしても肩凝りや腰痛を訴える人を減らせなかった」とオフィス家具大手、イトーキ(大阪市)の担当者はいいます。

 イトーキは日常の仕事の中で体を動かす「ワークサイズ」を提唱し、昇降型机やストレッチができる場所、歩幅・姿勢のチェックができる通路などを設けたオフィスを提案中です。

 長時間椅子に座ったままで行うパソコン作業などの弊害については、早稲田大学の岡浩一朗教授(健康行動科学)も警鐘を鳴らしており、「週末に運動しているから、平日はじっとしていても大丈夫と思いがちだが、それは間違い。心疾患や糖尿病などのリスクが上がることに気付いてほしい」と話しています。

 健康経営とは、社員の健康増進を会社の成長につなげようとする考え方。社員の心身の活力を高めれば、働く意欲も増し、業績や企業価値が上がると見込み、企業イメージ向上による人材確保や将来の医療費抑制も狙います。経済産業省と東京証券取引所は今年、住友林業やネクスト、ワコールホールディングスなど企業25社を、社員の健康管理に優れた「健康経営銘柄」として選びました。

 2016年10月6日(木)

 

■すべての加工食品、主な原材料の原産国を表示 来年にも義務化へ

 レトルト食品や菓子類など国内で製造されたすべての加工食品について、主な原材料の原産国表示を原則的に義務付ける素案を国がまとめました。5日の有識者検討会で提示して、年内に細部を詰め、早ければ来年にも新しいルールができる見通しです。

 これまで加工食品全体の1~2割とみられる一部の食品にしか義務付けられていませんでしたが、消費者が食品を選ぶ際の判断材料となるように、すべての加工食品に広げます。消費者は食の安全や国産品を求める傾向が強く、対象をすべての加工食品に広げて食の安全性確保と農業者の生産意欲向上につなげる狙い。

 現行のルールでは、魚の干物や野菜の漬物など加工度が低い22食品群・4品目に限り、食品中の重さが50%以上を占める原材料について原産国表示を義務付けています。

 消費者庁と農林水産省がまとめた新しいルールの素案では、重さ50%に満たないものも含め食品中の重量1位の原材料について、原産国を表示。複数国産の素材を混ぜ合わせている場合は、重量の順に国名を上位3カ国程度まで記載します。

 例えば、しょうゆは現在、表示が義務付けられていませんが、新しいルールでは、原材料で重量が最も重い大豆について、原産国を表示します。また、複数国の大豆を混ぜて使っている場合、重量順に「アメリカ、カナダ、ブラジル」などと国名を表記します。

 一方、原産国表示が難しいケースもあり、例外の表示案も提示します。

 国のサンプル調査では、重量1位の原材料がすでに加工されたものである食品が約半数に上ることがわかりました。例えば、チョコレートケーキの原材料のチョコレートの場合、カカオ豆など原料の産地を逆上って調べるのが難しいこともあります。こうしたケースでは、チョコレートの製造国を「ベルギー製造」というように明記します。

 また、天候や季節により原料供給地が頻繁に変わったり、原産国が多数にわたったりして、国名をはっきりと表示できない場合、「A国またはB国」「輸入」といった例外表示も認める案を示します。

 今後、有識者検討会で、これらの例外表示の是非や条件付けを詰めます。

 新しいルールが固まれば、消費者委員会の意見やパブリックコメントを踏まえ、来年にも内閣府令の食品表示基準が改正される見通し。メーカーなどの事業者が準備する時間も必要なことから、数年程度の猶予期間を設けることも検討します。

 店で調理され、その場で販売される弁当などや、包装されていないパンなどの食品は、そもそも原材料表示の対象外で、新しいルールの検討対象にも入っていません。

 加工食品の原料原産地表示の拡大を巡っては、これまで消費者側と事業者側の意見がまとまらず、先送りされてきました。今年5月に、環太平洋経済連携協定(TPP)対策を話し合う自民党のプロジェクトチームが、国産品の消費を促すために「すべての加工食品」での表示義務を提言。この方針が6月に閣議決定され、有識者検討会での議論が進みました。

 2016年10月5日(水)

 

■化血研、新たな未承認製造が発覚 日本脳炎ワクチンの不活化処理を行わず

 厚生労働省は4日、国の承認とは異なる方法で日本脳炎ワクチンを製造していたとして、化学及血清療法研究所(化血研、熊本市)に医薬品医療機器法(旧薬事法)に基づく新たな行政処分を下しました。

 化血研は別のワクチンや血液製剤で不正製造を行い、今年1月に110日間の業務停止命令を受けていました。

 厚労省によると、化血研は日本脳炎ワクチンの原材料を製造する工程で、ウイルスの毒性などを失わせる不活化処理を行いませんでした。2011年1月の承認時から同様の工程だったとみられ、年間数十万本を出荷。

 ただ、製品を製造する全体工程で不活化処理をしており、安全上の問題はないといいます。

 化血研を巡っては、約40年前から国の承認と異なる血液製剤を製造し、組織的な隠蔽をしていました。業務停止後、5月に処分が終了して6月に製造を再開しましたが、厚労省は9月、医薬品医療機器法に基づいて抜き打ちで立ち入りを実施し、今回の問題が発覚しました。

 厚労省は化血研に対して、製造販売するインフルエンザワクチンなど35製品56品目の網羅的な調査も求めたほか、役員の関与を含めた根本的な原因の究明を求める報告命令も出しました。

 2016年10月5日(水)

 

■携帯電話からの通報が心停止患者の救命率を改善 金沢大がデータを分析

 心臓が停止して119番通報され、近くにいた人から心肺蘇生を施された患者が1カ月後に生存している割合は、携帯電話からの通報のほうが固定電話より高いという研究を、金沢大学の稲葉英夫教授(救急医学)らがまとめました。

 患者のすぐそばから通報することで消防署に容体が正しく伝わることや、具体的な指示を受けながら適切に心肺蘇生が行えたことなどが功を奏したしたとみられます。

 携帯からの通報は、管轄の消防本部につながるとは限らないなどのデメリットが指摘されていますが、稲葉教授は「携帯の利用を促したほうが救命率を上げられる可能性がある」としています。

 稲葉教授らは、2012年~2014年に石川県内の消防署が集めた119番通報のデータを基に、心停止患者のその後の経過や心肺蘇生の質などが電話の種類によって違いがあるかを分析。

 その結果、患者が1カ月後に生存していたのは、携帯電話からの通報では9%、固定電話が4%と差がありました。心拍が再開する割合、脳の機能を保ったまま1年後に生存している割合については、いずれも統計的に意味のある差まではみられなかったものの、携帯電話のほうが多い傾向がありました。

 通報者が患者のすぐそばから電話をかけていた割合は、固定電話では17%だったのに対し、携帯電話は53%と3倍を超えました。

 また、通報者らが消防本部の指示に従って胸骨圧迫(心臓マッサージ)を施した割合も、携帯電話のほうがが81%と固定電話より10ポイントほど高くなりました。

 稲葉教授らは、「携帯のスピーカーホン機能を利用して通話すれば、両手が空いて胸骨圧迫がしやすい」とも指摘しています。

 2016年10月5日(水)

 

■抗がん剤「オプジーボ」、来春値下げへ 再来年には追加値下げを実施

 厚生労働省は4日、優れた治療効果はあるものの、患者1人の薬代が年間およそ3500万円とされる新型がん治療薬「オプジーボ」(一般名・ニボルマブ)の薬価について、2017年度、2018年度の2段階で値下げする方向で検討に入りました。5日に開催される中央社会保険医療協議会(中医協)に提案します。

 具体的には、まず2017年4月に最大25%の薬価引き下げを想定。さらに2018年4月に追加値下げを実施しますが、下げ幅は中医協で検討します。

 薬価は国が定め、改定は原則2年に1度で、次回は2018年度。これまでの中医協の議論では、速やかに特例で改定して値下げを求める意見に対し、製薬業界は2017年度の改定に反対を表明していました。

 厚労省は、予想以上に売れた高額新薬を値下げする既存のルールを2017年度の特例改定に援用する考えですが、2018年度改定までに薬価設定のルールを抜本的に見直します。

 体の免疫力を再活性化させることで、がん細胞を破壊するオプジーボは日本発の新薬で、2014年発売。最初は皮膚がんの一種の悪性黒色腫(メラノーマ)に保険適用され、対象患者が470人と少ないことから薬価は100ミリグラムで約73万円と高額な設定となりました。

 ところが昨年12月、肺がんの一種である非小細胞肺がんにも効能を追加。保険適用の対象が1万5000人に拡大したのに薬価は見直されず、今年度の販売予測が1260億円に膨張。8月には手術不能か転移性の腎細胞がんにも保険適用されました。

 2016年10月5日(水)

 

■E型肝炎、豚肉の生食禁止で減らず 日赤が北海道で調査

 E型肝炎ウイルスの感染予防のため、国が食品衛生法に基づいて2015年6月12日に生食用の豚肉の販売や提供を禁止した後も、感染した人の割合が減っていないことが日赤の北海道での調査でわかりました。感染者は今年も全国的に増加しており、さらなる拡大防止策が求められそうです。

 北海道はE型肝炎ウイルス感染者が多いとされ、日赤が献血時に常に検査しています。日赤北海道ブロック血液センターによると、禁止前の2014年8月~2015年6月の献血者でウイルス感染を示す陽性は72人で、割合は0・029%でした。

 一方、禁止後の2015年7月~2016年3月は陽性が86人で、割合が0・044%と大きく変わりませんでした。陽性者の多くは、禁止後に新たに感染したとみられます。禁止後に豚の生レバーを食べた人もいたといいます。

 国立感染症研究所によると、E型肝炎の感染源として判明しているものは豚肉が最も多いものの、感染者の半数以上は感染源が不明となっています。

 調査を担当した日赤北海道ブロック血液センターの坂田秀勝さんは、「生食禁止の効果を正確に判定するにはより長い期間のデータが必要だ」と指摘した上で、「食肉の十分な加熱を徹底するほか、それ以外の感染経路がないかの解明も求められる」と話しています。

 E型肝炎巡っては、輸血で感染し慢性肝炎になった例が判明したほか、東京都内の献血の陽性率が北海道を上回ることも明らかになっています。

 E型肝炎は、E型肝炎ウイルスによって起こる肝炎。感染から急性肝炎の発症までの潜伏期間は平均で約6週間で、発熱や腹痛、嘔吐のほか、黄疸が出ることもあります。安静にしていれば多くは自然に回復するものの、重症化したり死亡することもあります。高齢者や妊婦は、重症化する危険性が高いとされます。

 肝がんなどにつながる慢性肝炎にはならないと考えられていましたが、輸血で感染した患者が慢性肝炎となった例が確認されました。主な感染源は豚肉、鹿肉、猪肉の生食などの飲食で、今年の全国の感染者は300人に迫り過去最高となっています。

 2016年10月4日(火)

 

■「生涯現役社会」の実現が重要 2016年厚生労働白書

 厚生労働省は、今年の厚生労働白書をまとめ、高齢化が世界に類をみないスピードで進む中、働く意欲のある高齢者が活躍し続けることができる「生涯現役社会」の実現が重要だとして、雇用環境の整備や再就職支援などに取り組む方針を打ち出しています。

 4日の閣議で報告された2016年の厚生労働白書は、「人口の高齢化を乗り越える社会モデル」を主なテーマにしています。

 それによりますと、日本の「高齢化率」は2060年には39・9%と、65歳以上の人口がおよそ2・5人に1人になる見通しで、世界に類をみないスピードで高齢化が進んでいるとしています。

 その上で、厚生労働白書は、働く意欲のある高齢者が活躍し続けることのできる「生涯現役社会」の実現が重要だとして、雇用環境の整備や再就職支援などに取り組む方針を打ち出しています。

 また、厚生労働白書は国が取り組むべき高齢者の就労支援策について、40歳以上の男女計3000人を対象に、今年に入ってインターネットを通じて実施した意識調査の結果を紹介しており、複数回答で聞いたところ、「企業が65歳以上の人を雇用するインセンティブ(動機付け)作り」が39・1%、「希望者全員が65歳まで働ける仕組みの徹底」が36・3%、「ハローワークでの高齢者への職業紹介の取り組みの強化」が29・1%だったとしています。

 意識調査で「何歳から高齢者になると思うか」と聞いたところでは、「70歳以上」が最も多い41・1%で、「65歳以上」が20・2%、「75歳以上」が16・0%、「60歳以上」が9・8%と続きました。とりわけ60歳代は半数近くが、「70歳以上」と答えました。

 高齢者は70歳以上という意識を持つ人が4割に上り、世界保健機関(WHO)が高齢者と定義している「65歳以上」とした人は半分の2割。少子高齢化に伴い働く高齢者が増えたことも、影響しているようです。

 65歳以上で働いている人は増え続けており、2015年には744万人いました。労働者の総数に占める割合は11・3%で、1970年と比べて約2・5倍になりました。

 厚労白書に記された内閣府の2013年の調査では、働きたい年齢について最も多かったのは「働けるうちはいつまでも」の29・5%で、「70歳ぐらいまで」の23・6%が次に多くなりました。

 2016年10月4日(火)

 

■B型肝炎ワクチン、10月から原則無料の定期接種に 4月以降に生まれた乳児が対象

 B型肝炎を予防するための0歳児に対するワクチンが、10月1日から予防接種法に基づく原則無料の定期接種となりました。厚生労働省が改正した政令を施行し、全国の市区町村が実施します。 

 今年4月以降に生まれた乳児が対象で、厚労省は生後2カ月と3カ月、7~8カ月の3回の接種が標準的としています。妊婦がB型肝炎ウイルスに感染していた場合は、子供への感染防止のため生後12時間以内に1回目の接種をしており、定期接種の対象からは除外します。

 B型肝炎は、血液や体液に含まれるウイルスによって感染。感染者の一部は急性肝炎や慢性肝炎を引き起こし、慢性肝炎は肝硬変や肝臓がんに進行する可能性があります。発症すると、抗ウイルス薬を飲み続ける必要があります。

 日本の感染者は約130万~150万人とみられ、母子感染のほか、性交渉や注射針の使い回し、血液の傷口への接触などで感染します。

 乳幼時に感染すると一生感染が続きやすいものの、ワクチンを3回接種すれば高い予防効果が期待できます。

 ワクチンは化学及血清療法研究所(化血研、熊本市)とMSD(東京都千代田区)の2社が製造します。化血研のB型肝炎ワクチンは国の承認と異なる方法で製造されたことがわかり、厚労省は今年1月に一時出荷自粛を要請しましたが、5月に出荷を認めました。

 2016年10月2日(日)

 

■19成分を含む薬用せっけん、代替品に切り替えを アメリカでの販売禁止受け厚労省

 米食品医薬品局(FDA)が抗菌成分「トリクロサン」や「トリクロカルバン」など19種類の成分を含むせっけんの販売を禁止するのを受け、厚生労働省は1日までに、対象成分を含む「薬用せっけん」を1年以内に代替製品に切り替えるよう促す通知を、都道府県を通じて製造販売会社に出しました。

 日本石鹼(せっけん)洗剤工業会などは9月26日、対象成分を含む「薬用せっけん」の切り替えに取り組むよう会員会社に要請。同会は、「有効性や安全性に問題はないと考えているが、国際的な状況や消費者の安心を考慮し、大局的に判断した」と話しています。対象商品の製造販売会社は、対象成分を含まない代替製品への切り替えを前向きに検討しているといいます。

 厚労省はこうした業界の取り組みを促すため、製造販売会社に対し1年以内に代替製品の承認申請をするか、承認取り下げの届け出を国へ出すよう求めています。承認申請があった場合、通常は6カ月かかる審査期間を短くします。

 トリクロサンなどを含むせっけんは、国内では「薬用せっけん」に分類されています。医薬品医療機器法(旧薬事法)に基づき、医薬部外品として、国の承認を得て広く販売されており、薬用ボディーソープや薬用洗顔料なども含みます。

 厚労省によると、対象成分を含む薬用せっけんは約800品目ありますが、今までに健康被害の報告はないといいます。

 厚労省は今後、根拠となる研究報告などFDAの措置に関する情報を確認し、国内の薬用せっけんの種類や流通状況を調査します。その調査結果を踏まえ、規制するかどうかを検討します。

 FDAは9月2日、「通常のせっけんと水で洗うより抗菌効果があるという科学的な根拠がなく、長期的な安全性も検証されていない」などとして、トリクロサンやトリクロカルバンなどを含むせっけんを1年以内に販売停止する措置を発表していました。一部のアメリカの企業は、すでにこうした成分の使用を中止しているといいます。

 2016年10月1日(土)

 

■厚労省、指定難病に24疾患を追加 小児慢性特定疾病には14疾患を追加

 厚生労働省の検討委員会は9月30日、医療費を助成する指定難病として、日本で約3000人の患者がいる「進行性ミオクローヌスてんかん」、呼吸困難に陥る「先天性気管狭窄症」など計24疾患を新たに追加する方針を大筋で了承しました。

 指定難病の患者は医療費の自己負担割合が2割となり、月額1000円から3万円が上限となります。正式決定後、来年春にも助成を始めます。

 2014年に成立した難病医療法に基づき、厚労省は発病の仕組みが不明で治療法が確立されていないなどの要件を満たす病気から指定難病を選定。これまで2度の選定で306疾患が指定されており、今回は3次分として222疾患から選定を進めていました。指定難病は、合計330疾患となります。

 また、4疾患は、すでに指定難病になっている疾患に含め、同じように扱うことにしました。

 指定難病に追加された疾患は、以下の通り。

 「先天性GPI欠損症」、「βケトチオラーゼ欠損症」、「三頭酵素欠損症」、「シトリン欠損症」、「セピアプテリン還元酵素欠損症」、「非ケトーシス型高グリシン血症」、「芳香族アミノ酸脱炭酸酵素欠損症」、「メチルグルタコン酸尿症」、「大理石骨病」、「進行性ミオクローヌスてんかん」、「先天性三尖弁狭窄症」、「先天性僧帽弁狭窄症」、「先天性肺静脈狭窄症」、「左肺動脈右肺動脈起始症」、「カルニチン回路異常症」、「前眼部形成異常」、「無虹彩症」、「カナバン病」、「進行性白質脳症」、「先天異常症候群」、「爪膝蓋骨症候群/LMX1B関連腎症」、「先天性気管狭窄症」、「特発性血栓症」、「遺伝性自己炎症性疾患」

 既存の指定難病に含める疾患は、以下の通り。

 「先天性両側性傍シルビウス裂症候群」、「ヘルマンスキーパドラック症候群合併肺線維症」、「シュバッハマン・ダイアモンド症候群」、「先天性角化不全症」

 一方、厚生労働省の子供の難病に関する専門委員会は9月28日、子供の難病として医療費を助成する小児慢性特定疾病に、網膜剥離やてんかんなどが発症しやすい「色素失調症」や、妊婦がウイルスに感染し生まれた新生児に難聴や発達障害などの異常が生じる「先天性サイトメガロウイルス感染症」、呼吸障害が起きやすい「2型コラーゲン異常症関連疾患」など14の疾患を新たに追加することで合意しました。

 正式決定後、来年度から助成を始める見通し。

 小児慢性特定疾病は、生命にかかわるわる慢性の疾患で、長期間高額な医療費がかかることなどが指定の要件。2014年にそれまでの514疾病からの拡大が決まり、現在は「ダウン症」や「先天性風疹症候群」など704疾病、約15万人が対象となっています。

 今回は、指定の要件を満たすとして小児科学会が要望した疾病などが対象とされました。

 また、現行の704疾病を細分化して、すでに類似する別の疾患に含む形で助成対象になっていた4疾患について独立した対象として疾患名を明示し、708疾病とすることも決めました。小児慢性特定疾病は、来年度から合計722疾病となる見込み。

 小児慢性特定疾病に追加される疾患は、以下の通り。

 「2型コラーゲン異常症関連疾患」、「TRPV4異常症」、「カラムティ・エンゲルマン症候群」、「偽性軟骨無形成症」、「色素失調症」、「先天性サイトメガロウイルス感染症」。「先天性トキソプラズマ感染症」、「先天性嚢胞(のうほう)性肺疾患」、「多発性軟骨性外骨腫症」、「点状軟骨異形成症(ペルオキシソーム病を除く)」、「内軟骨腫症」、「ハーラマン・ストライフ症候群」、「ビールズ症候群」、「ラーセン症候群」

 独立した対象として明示する4疾患は、以下の通り。

 「神経症状を伴う脊髄脂肪腫」、「瀬川病」、「ハッチンソン・ギルフォード症候群(プロジェリア)」、「ロイス・ディーツ症候群」

 2016年10月1日(土)

 

■抗がん剤「オプジーボ」の価格引き下げを要求へ 財務省が厚労省に

 財務省は、国の財政を圧迫している医療費の伸びを抑えるため、高額な肺がんなどの治療薬「オプジーボ」(一般名・ニボルマブ)の価格を、再来年4月の薬の価格の改定を待たずに臨時に引き下げる措置を実施するよう厚生労働省に求める方針を固めました。

 薬の価格は2年ごとに実勢価格を踏まえて国が見直していますが、高齢化の進展に加えて、高額な薬が次々と開発されており、薬価の見直しが追い付かず医療費の増大につながっているという指摘が出ています。

 特に患者1人当たり年間およそ3500万円の費用がかかるといわれる、肺がんの一種である非小細胞肺がん、皮膚がんの一種である悪性黒色腫(メラノーマ)の治療薬「オプジーボ」は、当初、想定されていた30倍以上の患者に使われるようになり、薬の売り上げは今年度、1260億円以上に達する見込みになっています。

 高額な療養費については、患者の負担が重くなりすぎないように上限を設けて国が費用の一部を負担しているため、財務省では、財政の圧迫につながるとして、「オプジーボ」の価格について、再来年4月の薬の価格の改定を待たずに臨時に引き下げる措置を実施するよう厚生労働省に求める方針を固めました。

 財務省は、臨時に価格を引き下げなければ、40兆円を超える医療費のさらなる増大につながり、財政への負担が重くなりすぎるとしており、来週開かれる財政制度等審議会でも提案することにしています。

 2016年10月1日(土)

 

■タイでジカ熱による小頭症の新生児を確認 東南アジアで初

 タイの保健当局は、ジカ熱(ジカウイルス感染症)が原因で頭部が先天的に小さい小頭症の新生児が産まれたとみられるケースが、タイ国内で2件確認されたと発表しました。

 世界保健機関(WHO)によると、東南アジアでジカ熱との関連が疑われる小頭症が確認されたのは、初めてです。

 タイの保健当局は30日、タイ国内で今月産まれた小頭症の新生児のうち、ジカ熱が原因で発症したとみられるケースが2件確認されたと発表しました。2人の新生児の母親は、血液検査などの結果、妊娠中にジカウイルスに感染していたとみられることがわかったということです。

 ジカ熱は主に蚊が媒介するウイルス感染症で、妊娠中の女性が感染すると小頭症の新生児が産まれることがあると指摘されていますが、東南アジアでジカ熱との関連が疑われる小頭症の新生児が確認されたのは、今回が初めてです。

 タイでは2012年に初めてジカ熱感染が確認され、今年は首都バンコクなどで300人以上の感染が報告されており、タイ政府はウイルスを媒介する蚊の駆除などの対策を強化することにしています。

 タイには約6万7000人の在留邦人がおり、在タイ日本大使館は、蚊に刺されないよう注意を呼び掛けています。

 日本の外務省も、妊娠中または妊娠を予定している女性は、タイやシンガポールなどジカ熱の感染が拡大している国への渡航をできるだけ控えるよう呼び掛けています。

 2016年9月30日(金)

 

■がん検診、北海道など7道県で不備 必要な事後評価を未実施

 総務省は30日、がん検診の精度を保つため都道府県が実施する事後評価について、17都道府県を抽出して2012~2014年度の状況を調査したところ、約4割に当たる7道県で不備が見付かったと発表しました。

 北海道は事後評価自体をしておらず、がん検診の精度の低下を防げなかった疑いがあるといいます。青森県、埼玉県、愛媛県、福岡県、長崎県は、主な4つの評価項目の一部が未実施でした。香川県は、望ましいとされる毎年度の評価をしていませんでした。

 抽出調査の対象外だった30府県でも不備がある可能性があり、総務省は「がん検診の質が十分に確保されていない状況がみられる」として、所管する厚生労働省に改善を勧告しました。

 北海道のある医療機関では、2012、2013年度に胃がん検診を受けた後、精密検査が必要とされた人の割合がいずれも30%を超え、適切とされる値である11・0%以下の約3倍に上りました。総務省は「多くの異常のない人が、がんと疑われたと考えられる」と指摘。逆に、がんがあるのに見逃したと疑われる例は、見付からなかったといいます。

 事後評価は、がんによる死亡者数、病院・医師による診療の質に違いがあることを受けて2006年に成立し、2007年に施行されたがん対策基本法で推進が定められました。都道府県には、(1)受診率やがん発見率など国が設定した指標のモニタリング、(2)外部の有識者協議会による評価、(3)評価結果の公表、(4)検診の実施主体となる市町村への指導などにより、がん検診結果を検証するよう求められています。

 総務省によると、北海道は4つの評価項目とも未実施でした。埼玉県は有識者協議会の評価を受けておらず、評価結果も未公表。青森県、愛媛県は評価結果を公表しておらず、福岡県、長崎県は市町村への指導をしていませんでした。がん検診は胃がん、肺がんなど5種類ありますが、香川県は毎年度一部の評価しかしておらず、対応にばらつきがありました。

 北海道の担当者は、「道の役割や評価方法がわからなかった。今後は適切に対応していく」と釈明しています。

 2016年9月30日(金)

 

■関西空港のはしか集団感染、大阪府が終息宣言を発表 従業員全員が回復

 関西国際空港の従業員を中心に8月から9月上旬にかけ、はしか(麻疹)の感染が広がった問題で、大阪府は29日、9月6日に感染が判明した女性従業員を最後に新たな患者は確認されず、集団感染は終息したと発表しました。感染した従業員計33人は、全員回復しています。

 関西国際空港を運営する関西エアポートによると、女性従業員は2日に発熱があり、同日から回復するまで出勤しませんでした。最後に出勤した1日から4週間、発症者がおらず、大阪府は国立感染症研究所感染症疫学センター(東京都)のガイドラインに基づき終息と判断しました。

 一方、関西国際空港の従業員の患者を搬送、診察した救急隊員と医師の2人は集団感染との関連性が認められましたが、空港を利用したり従業員と接触したりするなどして発症した患者計7人のうち、2人はウイルスの遺伝子型が異なり、残る5人は明確な関連性が判明しなかったといいます。

 関西国際空港の利用者については、15日にも新たな患者が出たほか、大阪府や兵庫県などで空港との関連がわからない、はしかの患者もいたことなどから、大阪府では引き続き、予防のためのワクチンを接種するなど注意を呼び掛けています。

 市民14人のはしか感染が確認された兵庫県尼崎市では12日以降、新たな感染者は出ていません。尼崎市保健所は、「おおむね状況が落ち着いてきたのではないか」とみています。

 2016年9月30日(金)

 

■がん診療連携拠点病院、7割近くが緩和ケアの体制が不十分 総務省が調査し勧告

 全国で地域ごとに指定されている「がん診療連携拠点病院」について総務省が抽出調査を行ったところ、7割近い病院でがんによる体や心の苦痛を和らげる専門医が常駐していないなど、緩和ケアの体制が十分ではないことがわかり、総務省は厚生労働省に対し体制を整備するよう勧告しました。

 がんの緩和ケアは、患者が仕事など日常生活をよりよく過ごしながら治療を受けることができるよう、体の痛みや心の苦しみを和らげるもの。厚労省は、全国のおよそ400の医療機関を「がん診療連携拠点病院」に指定し、緩和ケア専門の医師や看護師を配置するなどにより、体制の充実を図っています。

 こうした緩和ケアの実情について、総務省行政評価局が今年1月、全国の17都道府県の51の拠点病院を抽出して調べたところ、適切に薬を投与するなどして患者の体の痛みを和らげる専門の医師を常駐させていないなど、7割近い病院で体制が十分ではないことがわかりました。

 中には、カウンセリングなど心のケアを行う医師として、専門の資格を持っていない耳鼻咽喉科の医師を配置していた病院もあったということです。また、7つの病院では緩和ケアチーム専従の看護師を配置していないなど、拠点病院に求められる要件を満たしていない施設もあったということです。

 この結果を受けて、総務省は厚労省に対し、自治体や拠点病院と連携して緩和ケアの体制を整備するよう勧告しました。

 高市早苗総務大臣は記者会見で、「緩和ケアの実施状況は不十分で、がん患者やその家族の立場に立った対策を徹底してほしい」と述べました。

 緩和ケアに詳しい国立がん研究センターの若尾文彦医師は、「特に人口減少が進む地方都市ではがんや緩和ケアを専門とする医師や看護師を確保することが難しい現状がある。緩和ケアを待ち望む患者のためにも、自治体や病院などが連携して、地域の限られた医療者を有効活用できるよう体制を見直す必要がある」と指摘しています。

 2016年9月30日(金)

 

■消費者庁、トクホ全1271商品を調査 検査結果の提出を指示

 消費者庁は28日までに、特定保健用食品(トクホ)として認めた全1271商品の調査を始めました。取り扱う約200社に対し、成分の詳細がわかる直近の検査結果を1カ月以内に提出するよう指示し、今後は抜き打ちのサンプル調査にも乗り出します。

 大阪市の通販会社「日本サプリメント」が販売する粉末清涼飲料「ペプチド茶」など6商品について、虚偽の成分量を表示し、今月、トクホ初の許可取り消しとなった問題を受けた対応です。

 消費者庁は、社外の登録試験機関による分析か、各社が品質管理の一環で行っている検査に関する資料の提出を指示しました。2014年4月以降のデータを目安として想定しています。また、許可された商品を若干変更して販売していたり、すでに販売を終了していたりする場合は、届け出ることも求めました。

 消費者庁もトクホ商品の一部を店頭で買い、成分を調べる抜き打ちのサンプル調査についても、当初は来年度から始める予定でしたが、今年度内に前倒しします。

 日本サプリメントは2001~2005年に、「ペプチド茶」「食前茶」「豆鼓エキスつぶタイプ」など計6商品について消費者庁からトクホの許可を受け、「血圧が高めの方」「血糖値が気になり始めた方」らに適しているとして販売。2015年4月までに有効成分が全く含まれなかったり、表示より少なかったりしたことを把握していながら、今月まで消費者庁への報告を怠り、1991年にトクホ制度が始まって以来初めてトクホの許可を取り消されました。

 トクホ制度では、当初は許可が4年更新でその都度、消費者委員会や食品安全委員会が安全性や効果を審査していましたが、規制改革で1997年から永久許可制になり申請時だけの審査に変わりました。

 岡村和美・消費者庁長官は、「現制度では企業の良識に期待せざるを得ない。製法や原料などの事情が変わればすぐに報告すべきだ」としています。

 2016年9月29日(木)

 

■心不全促すタンパク質、熊本大が発見 根本的な治療法の開発に期待

 心筋細胞から過剰に分泌された「アンジオポエチン様タンパク質2(ANGPTL2)」というタンパク質が、心筋の収縮力を低下させ、心不全の発症を促す仕組みを発見したと、熊本大学大学院生命科学研究部の尾池雄一教授(分子医学)らの研究チームが発表しました。

 このタンパク質の働きを抑制することで、心不全の根本的な治療法の開発につながる可能性があるといいます。イギリスの科学誌ネイチャー・コミュニケーションズの電子版に28日、掲載されました。

 発表によると、アンジオポエチン様タンパク質2は本来、組織の正常な働きを助ける作用を有していますが、心筋細胞内で過剰に分泌されると、細胞のカルシウム濃度の調節やエネルギーを生成する力を弱めます。その結果、心臓のポンプ機能である心筋の収縮力や拡張力の低下を招き、心不全を引き起こすといいます。また、高血圧や加齢が、アンジオポエチン様タンパク質2の過剰分泌の一因となることも突き止めました。

 心不全のマウスを用いた遺伝子治療の実験では、遺伝子操作により作製したウイルスを投与して、マウスの体内で作られるアンジオポエチン様タンパク質2の量を減らすと、心臓のポンプ機能低下が抑制されるなど心不全の進行を抑える効果がありました。

 高齢社会の到来で心不全患者は世界的に増えていますが、重度の心不全患者においてはその5年生存率が約50~60%と低く、依然として非常に予後不良の病気です。

 尾池教授は、「これまで投薬などの対症療法が主だったが、遺伝子治療による根本的な心不全治療につながる。3〜5年以内に臨床試験に入りたい」と語っています。

 2016年9月29日(木)

 

■高額の新抗がん剤「キイトルーダ」、厚労省が承認 悪性黒色腫の治療薬

 アメリカの製薬大手メルクの日本法人「MSD」(東京都千代田区)は28日、体の免疫力を再活性化させることで、がん細胞を破壊する新しいタイプの抗がん剤「キイトルーダ」(一般名・ペムブロリズマブ)について、皮膚がんの一種である悪性黒色腫(メラノーマ)の治療薬として、厚生労働省の製造販売の承認を得たと発表しました。今後、発売に向けて準備を進めるといいます。

 キイトルーダは、小野薬品工業が製造販売する高額な抗がん剤「オプジーボ」(一般名・ニボルマブ)と同じ仕組みで作用する薬。

 オプジーボのライバルとなる薬剤が、日本国内で初めて登場することになります。アメリカでは悪性黒色腫に対して、キイトルーダがオプジーボよりも先に承認されていました。

 キイトルーダは日本では悪性黒色腫以外に、非小細胞肺がんにも承認申請されており、いずれもオプジーボと対象疾患が重なり競合します。

 オプジーボは2014年7月に、世界に先駆け日本で悪性黒色腫の治療薬として承認され、昨年12月、肺がんにも保険適用が広がりました。しかし、1人当たり年間3500万円かかるとされ、厚労省が薬価引き下げや適正使用のための検討を進めています。

 キイトルーダも、オプジーボと同等の薬価になると予想され、それらの議論に影響を及ぼすとみられます。両薬剤の悪性黒色腫に対する効果の優劣は、現時点では明らかになっていません。

 同様のがん免疫薬は、スイスのロシュやイギリスのアストラゼネカ、アメリカのファイザーなども開発中で、世界で競争が激化しています。

 キイトルーダは「MSD」(東京都)がん免疫薬「オプジーボ」と同じ作用を示す抗がん剤。オプジーボのライバル製品が国内で初めて登場することになる。米国では悪性黒色腫に対して、オプジーボよりも先に承認されていた。

 日本では悪性黒色腫以外に、肺がんの一種である非小細胞肺がんにも承認申請されており、いずれもオプジーボと対象疾患が重なり競合します。

 オプジーボを巡っては現在、年間約3500万円という薬価の高さが問題視されており、厚労省が薬価引き下げや適正に使用するための議論を進めています。

 キイトルーダもオプジーボと同等の薬価が付くと予想され、それらの議論に影響を及ぼすとみられます。両薬剤の悪性黒色腫に対する効果の優劣は、現時点では明らかになっていません。

 同様のがん免疫薬はスイス・ロシュや英アストラゼネカ、米ファイザーなども開発中で、世界で競争が激化しています。

 2016年9月28日(水)

 

■父母と別の女性、3人の遺伝子を受け継ぐ子供が誕生 アメリカのクリニックが実施

 3人の遺伝子を受け継ぐ新たな体外受精の技術を使って男の新生児が生まれたと、アメリカの不妊治療クリニックのチームが27日、イギリスの科学誌「ニューサイエンティスト」で明らかにしました。10月に開かれるアメリカの生殖医学会の大会で発表するといいます。

 生殖医学会の大会の発表要旨によると、アメリカのニューヨークにある不妊治療クリニックに所属するジョン・ザン医師らのチームが、重い遺伝性の病気「ミトコンドリア病」の36歳の母親の卵子から核を取り出し、あらかじめ核を取り除いた第三者の女性の卵子に入れた後、父親の精子と体外受精させました。5つの受精卵のうち、正常に育った1つを母親の子宮に戻しました。

 ニューサイエンティスト誌によると、体外受精はメキシコで行われ、今年4月に男児が誕生し、順調に育っているといいます。同誌は、男児を抱いたザン医師の写真を掲載しました。アメリカでは認められていないため、ザン医師は「規制のないメキシコで実施した」と述べています。こうした手法で健康な新生児が生まれたのは、世界で初めてとみられます。

 細胞内小器官であるミトコンドリアは、細胞の核とは別に独自のDNAを持ちます。核DNAは両親のものが子供に遺伝しますが、ミトコンドリアDNAは母親のものだけが受け継がれます。今回の手法を使った場合、核DNAは両親から、ミトコンドリアDNAは卵子提供者からそれぞれ受け継がれるため、遺伝的に「3人の親」を持つことになります。

 ミトコンドリアは細胞内でエネルギーのもとになる物質をつくる働きをしており、ミトコンドリアに異常があると、神経や筋肉に障害が出ることがあります。この母親も以前に、2人の子供をミトコンドリアの働きが低下することで起きるミトコンドリア病で亡くしているといいます。

 今回の手法を使うと、理論的には母親のミトコンドリアが受け継がれないため、ミトコンドリア病の予防につながります。ニューサイエンティスト誌によると、男児のミトコンドリアDNAに今のところ異常はみられないものの、今後も注視する必要があるとしています。

 この手法を巡っては、昨年2月にイギリスで臨床応用が承認されました。アメリカでも今年2月、有識者のアカデミーが臨床試験で実施することに倫理的に大きな問題はないとする答申をまとめています。ただ、将来に及ぶ安全面の不安や倫理上の懸念から、反対意見や慎重論もあります。

 東京大学の神里彩子特任准教授(生命倫理政策)は、「実用化に向けて議論が進んでいるイギリスでも、まだ科学的な安全性の検証が続いている中で、長期のフォローアップや出自を知る権利などの体制があいまいなまま実施されたのではないかと疑問に感じる。これが前例となり世界に影響が出ることが心配される。日本でも生殖の技術に関する規制を議論していく必要がある」と話しています。

 2016年9月28日(水)

 

■国民医療費2年連続の40兆円超え 過去最高更新は高齢化で8年連続

 厚生労働省は28日、2014年度に病気やけがの治療で全国の医療機関に支払われた医療費の総額である国民医療費(確定値)が、前年度比7461億円増(1・9%増)の40兆8071億円になったと発表しました。

 前年度に続き40兆円を超え、2007年度以降8年連続で過去最高を更新。厚労省は、高齢化や医療技術の高度化などが増加の要因と分析しています。

 年齢別では、65歳未満が16兆9005億円だったのに対し、65歳以上は23兆9066億円で、全体に占める割合は前年度比0・9ポイント増の58・6%となり、過去最大でした。

 国民1人当たりでは6400円増(2・0%増)の32万1100円で、これも8年連続で過去最高を更新。

 年代別でみると、0歳から14歳が15万3000円、15歳から44歳が11万6600円、45歳から64歳が27万8300円、65歳以上が72万4400円(前年比100円減)となっています。この結果、65歳以上の国民医療費の平均は、65歳未満の平均17万9600円(前年比1900円増)と比べ、およそ4倍になっています。

 診療種類別では、医科入院15兆2641億円(全体の37・4%)、医科入院外13兆9865億円(34・3%)、薬局調剤7兆2846億円(17・9%)、歯科2兆7900億円(6・8%)。

 財源別でみると、保険料19兆8740億円(48・7%)、国と地方自治体の公費15兆8525億円(38・8%)、患者の自己負担4兆7792億円(11・7%)でした。

 疾病別でみると、高血圧症など「循環器系の疾患」が5兆8892億円で最多。がんなどの「新生物」が3兆9637億円、リウマチなど「筋骨格系と結合組織の疾患」が2兆2847億円、肺炎など「呼吸器系の疾患」が2兆1772億円でした。

 国民1人当たりの医療費を都道府県別でみると、高知県が42万1700円で最も高く、長崎県39万6600円、鹿児島県39万600円と続きました。最も低いのは埼玉県で、27万8100円でした。

 厚生労働省は、「国民医療費は高齢化に加え、医療技術の高度化などによって増え続けている。結果を分析し、医療費の適性化に向けた検討を進めていきたい」としています。

 国民医療費は、国民が1年間に保険診療の対象として使った治療費の集計値。医科、歯科の診療費に加え、薬の調剤費や訪問看護の費用、入院時の食事代や生活にかかった費用なども含まれます。保険診療外の先進医療や健康診断、予防接種などの費用は含まれません。

 国民医療費が国民所得に占める割合は、11・2%でした。

 2016年9月28日(水)

 

■南極海の2カ所でもマイクロプラスチックを初検出 九州大、生態系への影響懸念

 海の生態系への影響が懸念されている大きさが5ミリ以下の微細なプラスチックのごみ「マイクロプラスチック」が、人の生活圏から遠く離れた南極海でも、日本の大学の調査で初めて検出されました。調査に当たったチームは、地球規模で汚染が広がっていることを示すものだとして、国際的な取り組みを急ぐ必要があると指摘しています。

 マイクロプラスチックは、ごみとして海に流れた包装容器などが紫外線や波の力で大きさが5ミリ以下まで細かく砕けたもので、分解されずに海を漂い続ける上、PCBなどの有害物質を付着しやすい特徴があり、プランクトンや魚、貝、海亀、鯨、海鳥などが餌と間違うと、有害物質も体内に取り込んでしまうため、生態系や人への影響が懸念されています。

 こうした中、九州大学や東京海洋大学などのチームは、今年1月、東京海洋大学の練習船で南極海の2カ所の海水を採取し、マイクロプラスチックが含まれているかどうか調べました。

 その結果、いずれの場所の海水からもマイクロプラスチックが検出され、その密度は、これまでに調査が行われた世界各地の海の平均の2倍から4倍余りと高い値だったということです。

 人の生活圏から遠く離れた南極海でマイクロプラスチックが検出されたのは、これが初めてです。

 調査を行った九州大学の磯辺篤彦教授は、「汚染が地球全体に広がっていることを示すもので各国が協力して実態の把握を進めるとともに、対策を急ぐ必要がある」と指摘しています。

 東京農工大学の高田秀重教授のチームは、世界各地の研究者やNGOの協力を得て、50余りの国や地域の海岸からマイクロプラスチックを集め、付着している有害物質の種類や量を分析しました。

 その結果、有害物質のPCBが日本やアメリカ、ヨーロッパで多く検出されたほか、アフリカや東南アジアでも、検出されたということです。また、農薬の成分のHCHが、アフリカやヨーロッパ、オセアニアなどで検出されたということです。

 これまでの高田教授のチームの研究では、マイクロプラスチックに付着した有害物質は、海水に溶け込んでいる有害物質と比べて10万倍から100万倍も濃縮されていることや、マイクロプラスチックを多く体内に取り込んだ海鳥は、体の脂肪に含まれる有害物質の濃度も高くなっていることが、明らかになっています。

 高田教授は、「マイクロプラスチックは軽くて浮きやすいため、国境を越えて遠く離れた場所まで流れていきやすく、有害物質の運び屋になっている。20年後には世界の海を漂流するプラスチックの量が今の10倍に増えるという予測もあり、マイクロプラスチック汚染がさらに進めば、人への影響も懸念される」と指摘しています。

 2016年9月27日(火)

 

■レーシック手術、ピーク時の45万件から5万件に減少 集団感染や眼鏡人気影響か

 視力を矯正するレーシック手術の件数が、ピークだった2008年の45万件から2014年には5万件にまで激減したとの推計を、慶応大学医学部眼科学教室の根岸一乃准教授がまとめました。

 アメリカや韓国など海外では広く普及し、国内のスポーツ選手らが手術を受けたことで日本でも一気に広まりましたが、患者の角膜炎集団感染などが影響したとみられます。

 レーシックは医療用レーザーで角膜を削って屈折率を調整し視力を回復させる手術で、15分ほどで終わります。根岸准教授によると、有効性・安全性を支持する研究論文は7000本以上あり、手術をした患者の95・4%が結果に満足したというデータもあります。

 根岸准教授が日本眼科医会の発表資料としてまとめた推計によると、レーシック手術の症例数は2000年の2万件から徐々に増え、2008年は45万件に達しました。しかし、2009年は29万件と減少に転じ、2012年は20万件、2014年には5万件まで減ったとみられます。

 原因の一つとみられるのが、2009年に東京都内の眼科病院で発覚した集団感染事件。十分な滅菌処理をしていない医療器具を使ってレーシック手術をしたため、患者が相次いで角膜炎などを発症しました。元院長は業務上過失傷害罪で禁固2年の実刑判決を受けました。

 消費者庁が2013年、レーシック手術を受けた20~60歳代の600人を対象にアンケート調査した結果、「光がギラギラしてにじむ」(16・5%)「ドライアイが半年以上続く」(13・8%)などの不具合があったと発表し、手術を受ける際にはあらかじめ十分な説明を受けるよう呼び掛けたことも、減少に拍車を掛けたとみられます。

 保険適用がなく、片目で十数万円から30万円ほどかかる高い手術費に加え、格安ショップが急増し、眼鏡が安価でデザイン性も高いファッションアイテムとして男女の幅広い層に普及したことや、低価格で性能のよいコンタクトレンズが続々と市場に出回ったことも、レーシック手術の減少の一因とみる関係者もいます。

 さらに、福岡大医学部眼科学教室の内尾英一主任教授は、「親から授かった体を傷付けるのに抵抗があるという日本人的な感覚も影響しているのでは」と分析しています。

 2016年9月27日(火)

 

■膵臓がんや食道がん、遅れる診断 がん研究センターが発見時の進行度を分析

 国立がん研究センター(東京都中央区)は26日、2014年にがんと診断された患者の進行度を分析し、発表しました。

 胃、大腸、肝臓、肺、乳房の従来の5部位に加え、食道、膵臓(すいぞう)、前立腺、子宮頸部(けいぶ)、子宮内膜(子宮体部)、膀胱(ぼうこう)、甲状腺の7部位で分析したのは初めてで、膵臓がんや食道がんは進行して診断される割合が高く、早期発見のための診断方法の改善などの課題が浮き彫りになりました。

 全国421のがん診療連携拠点病院などから集計した67万205例のうち、条件を満たす12部位の約38万例を分析しました。初公表の7部位は、規定の研修を受けた職員がいる323施設を対象にしました。

 がんの進行度は、最も軽いステージ0期から、ほかの臓器に転移するなど最も重いステージ4期までの5段階に分類。4期で見付かる症例は、膵臓が43・4%と12部位で最も高く、0期と1期は計12・4%にとどまりました。

 膵臓は胃の裏側にあるため画像検査などで見付けるのが難しく、自覚症状も少ないためとみられます。ステージの進んだ患者はがんを取り除く手術が難しく、抗がん剤だけの治療となった人が多くなりました。従来の研究では、膵臓がん患者の5年後の生存率は10%前後とされています。検査技術の向上が求められており、血液検査などで早期発見する方法の研究が進められています。

 食道は1期が34・1%で最も高いものの、3期が24・4%、4期が14・4%と進行した状態で発見される症例の割合も高く、改善の余地が大きそうです。

 子宮頸部はがん細胞が上皮にとどまる0期が61・3%と高く、子宮内膜と前立腺は1期がそれぞれ70・8%、51・4%で、早期に見付かる割合が高くなりました。検診の広がりや自覚症状の出やすさなどにより、比較的早い段階での発見につながったと考えられるといいます。抗がん剤だけでなく、放射線治療や内視鏡手術などと組み合わせた治療が、実施されていました。

 国立がん研究センターの若尾文彦・がん対策情報センター長は、「診断時の進行度の割合がはっきりすることで、各がんの実態がみえる。特に進行して見付かる割合が高い膵臓や食道は気になる症状があれば、医療機関を受診してほしい」と呼び掛けています。胃、大腸、肺、乳房、子宮頸部では、定期的ながん検診を勧めています。

 一方、若尾さんは、「進行度と生存率は部位ごとに異なる」とも指摘し、「大腸は進行していても予後が比較的良好だが、早期でも生存率があまり高くないがんもある。部位ごとの特徴にも注意してほしい。早期発見に向けた研究の進展も急がれる」と話しています。

 今回、各病院で2014年に診療した部位・進行度ごとのがんの症例数や治療方法も、ウェブサイト(http://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/brochure/hosp_c_registry.html)で公表されました。

 7部位では初めてで、例えばある病院で、1期の食道がんをどれぐらい診療し、手術や放射線、薬物などどのような治療をしたかを確認できます。各病院の特色がわかるので、治療を受ける病院やセカンドオピニオンを受ける病院を選ぶ際に役立ちそうです。

 2016年9月26日(月)

 

■中南米から帰国した東京都内の男性、ジカ熱に感染 フィリピンでは妊娠中の感染を初確認

 厚生労働省は26日、ブラジル以外の中南米地域に渡航歴のある東京都内の30歳代男性がジカ熱(ジカウイルス感染症)に感染していることが確認されたと発表しました。

 現地で蚊に刺され、感染したとみられます。中南米で流行が拡大した昨年5月以降、国内で感染が確認されたのは9例目。

 厚労省によりますと、男性はブラジル以外の中南米のジカ熱流行国に約1週間滞在し、9月16日に帰国。22日に発熱や発疹、筋肉痛などの症状が出たため医療機関を受診し、23日に陽性が確定しました。

 現在は自宅療養中で、熱も下がり、容体は安定しているといいます。

 一方、フィリピン当局は26日、同国で初めて、胎児に影響を与えるジカ熱に妊娠中の女性が感染している例を確認したと発表しました。

 ポーリン・ウビアル保健相によると、フィリピン国内では9月に入り12件のジカ熱感染例が確認されていますが、この中に妊娠19週目の第1子を身ごもる中部セブ島に住む22歳の女性が含まれていました。

 保健相は、「最初の超音波検査では胎児に異常はみられなかったものの、女性の経過を妊娠期間を通じて定期的に観察することになる」と述べました。

 確認された12例のうち8例は女性で、患者の年齢は9~55歳。全員、検査で陽性結果が出る前の1カ月以内に渡航歴はなく、また全員すでに回復しています。

 妊娠中の女性がジカ熱に感染した場合、出産する子供には小頭症などの先天性障害が起きることがあります。

 患者が発生した地域には、感染経路を突き止め、ジカウイルス対策を勧告するために特別チームが派遣されています。

 ジカウイルスは、蚊を媒介とするか、性交渉を通じて感染します。ジカ熱の治療法もワクチンも現在、開発されていません。科学者らは今月、ジカ熱の「世界的流行」に備えるよう警告を発しました。

 2016年9月26日(月)

 

■年金受給資格加入期間10年に短縮へ、閣議決定 来年10月の支払い分から

 政府は26日の臨時閣議で、年金を受け取れない人を減らすため、来年から年金の受給資格を得られる加入期間を25年から10年に短縮する法案を決定しました。

 政府は、消費税率を10%に引き上げて実施する予定だった社会保障の充実策のうち、年金を受け取れない人を減らすため、消費増税に先立って年金の受給資格の短縮を先行して行う方針で、26日の臨時閣議で必要な法案を決定しました。

 それによりますと、2017年10月の支払い分から、年金の受給資格が得られる加入期間を25年から10年に短縮するとしています。

 これにより、初めて基礎年金の受給資格を得る人はおよそ40万人、さらに65歳までに厚生年金を受け取れる人などを含めると、対象者はおよそ64万人に上る見込みです。

 年金制度を巡っては、公的年金の積立金を運用している年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の組織の見直しや、年金支給額の伸びを物価や賃金の上昇より低く抑える「マクロ経済スライド」の強化などを盛り込んだ年金制度改革の関連法案が継続審議となっており、政府与党は、今回閣議決定した法案と併せて、臨時国会での成立を目指す方針です。

 一方、野党は臨時国会で、GPIFの2015年度の運用実績が5兆3098億円の巨額赤字だったことを徹底追及する構えで、審議が難航して2つの法案の成立が来年の通常国会の3月末にずれ込むと、支給開始は再来年の2月ごろになる可能性もあります。

 公明党が早期の支給開始を求めていることもあり、厚労省は臨時国会で最優先に2つの法案の成立を目指す方針です。

 2016年9月26日(月)

 

■世界の健康目標、改善度合いに差 国連が報告書を発表

 国連(UN)の「持続可能な開発目標(SDGs)」の健康と福祉に関する報告書が9月21日、発表され、肥満やアルコール依存症、パートナーからの虐待などの問題が世界的に増加傾向にあることがわかりました。一方で、幼児死亡率や発育不全、貧困がもたらす諸問題などでは改善がみられるとされました。

 イギリスの医学誌「ランセット」に掲載された報告書では、1990年以降の世界188カ国の状況を、2016年から2030年までの国際目標であるSDGsに照らし合わせて評価し、改善の程度に大きな開きがあることが浮き彫りになりました。

 最も大きな改善がみられたのは、出産時やその直後の女性や子供の死亡率で、栄養失調による発育不全や幼少期の衰弱などのケースも減少しました。

 その一方で、HIV(ヒト免疫不全ウイルス)などのウイルス性疾患や結核の撲滅、さらには幼少期の肥満問題やパートナーからの暴力に関して設けられた目標を達成できた国は皆無でした。子供の過体重については、「過去15年間で大きく悪化した」と指摘されています。

 報告書では、健康に関するSDGsの目標33項目と照らし合わせて、その達成度を測定。達成度が高かったのは、欧州西部や北米、アジアの一部などの国々とオーストラリアでした。達成度が低かった国の大半は、アフリカに集中していました。最も達成度が高かったのはアイスランドで、シンガポールとスウェーデンがそれに続きました。

 アメリカは全体の28位で、「どちらかといえば低い」順位となりました。その理由については、「暴力行為やHIV感染、アルコールの過剰摂取、幼少期の過体重、自殺などによる死が主に影響している」と説明されました。また、医療保険の利用や質に大きな差があるアメリカの状況を反映した形で、妊婦や子供、新生児の死亡率が、そのほかの高所得国との比較で高かったことも明らかになっています。

 2016年9月25日(日)

 

消費者庁、トクホで初の許可取り消し ペプチド茶など6商品

 消費者庁は23日、日本サプリメント(大阪市)が販売する粉末清涼飲料「ペプチド茶」など6商品について、特定保健用食品(トクホ)の許可を取り消したと発表しました。トクホの許可取り消しは、1991年にトクホ制度が始まって以来初めて。

 日本サプリメントの調査で、高血圧などに効果があるとした成分の含有量が表示より少ないか、含まれていないことが判明しました。

 対象は、「ペプチド茶」など「かつお節オリゴペプチド」を配合した4商品と、サプリメント「豆鼓エキスつぶタイプ」など「豆鼓エキス」を配合した2商品。「血圧が高めの方」「血糖値が気になり始めた方」らに適した食品だとしていました。

 消費者庁によると、6商品は2001~2005年にトクホとして許可しました。外部からの指摘で日本サプリメントが調べたところ、実際には有効成分が表示より少ないことが、2014年3月に判明していました。今月に入って消費者庁に報告し、同庁は悪質性が高いと判断し、許可取り消しに踏み切りました。

 安全性に問題はないとみられ、健康被害の情報も寄せられていないといいますが、日本サプリメントは今月17日、6商品の販売を終了しました。

 トクホの審査では、第三者の研究機関による分析もあり、6商品はいずれも申請当時は必要な含有量を満たしてパスしていました。消費者庁によると、日本サプリメントが指定した分析方法が間違っていたり、発売後に成分の含有量が変わったりした可能性があるといいます。

 トクホは、消費者委員会や食品安全委員会が安全性や効果を審査し、消費者庁が許可します。トクホの制度は当初、4年更新で国もその都度審査していたが、1997年からは永久許可制になり申請時だけの審査に変わっています。

 トクホは現在、約1270品目あります。

 2016年9月24日(土)

 

iPS由来細胞のがん化、薬剤による防止法を開発 慶応大学チーム

 人のiPS細胞(人工多能性幹細胞)から作製した神経幹細胞が、マウスの体内でがんになるのを防ぐ方法を、慶応大学の岡野栄之教授(生理学)と中村雅也教授(整形外科学)らの研究チームが開発しました。

 22日付で、アメリカの科学誌「ステム・セル・リポーツ」電子版に発表しました。iPS細胞による治療の安全性を高めるのが狙いです。

 iPS細胞が機能を持ったさまざまな細胞になる過程で、細胞が過剰に増殖して一部ががん化する恐れが指摘されています。治療に使うには、がん化をいかに防ぐかが最大の課題で、さまざまな方法が研究されています。

 研究チームは、神経幹細胞の中で、組織への分化や細胞の複製に重要な遺伝子の働きを調節する「Notchシグナル」と呼ばれる伝達経路に注目。人のiPS細胞から作った神経幹細胞を、このNotchシグナルが働かなくなるようにする「GSI(ガンマセクレターゼ阻害薬)」という薬剤につけてから、脊髄(せきずい)が損傷したマウスに移植しました。

 その結果、GSIで処理した細胞を移植したマウスは、細胞が異常に増えることなく、移植後に回復した運動機能も維持されました。一方、GSIで処理しなかった細胞を移植したマウスでは、腫瘍(しゅよう)ができる時にみられる異常な細胞の増殖が起き、一時回復した運動機能は42日目以降に再び低下しました。

 研究チームでは、早ければ来年度にも、交通事故などで脊髄が損傷した患者に対して、iPS細胞から作製した神経幹細胞を移植して体の機能を回復させる臨床研究を始める方針です。

 岡野教授は、「がん化というiPS細胞治療の課題を克服できる可能性がある。実験で確認した仕組みはほかの組織の細胞にもかかわっており、人への移植手術を行う上で、さまざまな組織の移植治療の安全性向上につながる」と話しています。

 2016年9月23日(金)

 

■ストレスチェックの実施率、大手企業は5割で中小企業は2割 義務化1年目

 働く人の心の健康対策として昨年12月1日に始まったストレスチェックについて、今年7月時点で従業員1000人以上の企業は49・5%がすでに実施したのに対し、従業員200人未満の企業では20・6%にとどまったことが9月18日、メンタルヘルス対策を手掛けるアドバンテッジリスクマネジメント(東京都目黒区)の調査でわかりました。

 ストレスチェックは、従業員50人以上の事業所に年1回の実施が法律で義務付けられ、57項目からな質問票を使って、「非常にたくさんの仕事をしなければならない」「時間内に仕事が処理し切れない」「私の部署内で意見の食い違いがある」「仕事に満足だ」などの質問に答える形で心理的負荷を測定。

 回答結果から「高ストレス」と判断された従業員は、医師との面談ができ、診断結果によっては事業者に対して、従業員の働く時間の短縮や配置換えといった対応が求められます。また、ストレスチェックの結果は、従業員本人のみに通知され、結果による不当な解雇や異動は禁止されています。

 ストレスチェックが義務化された背景には、仕事などで強い不安や悩み、ストレスを感じている労働者が5割を超える状況や、仕事による強いストレスが原因で精神障害を発症し、労災認定される労働者の増加など、労働者のメンタルヘルスの不調を未然に防止する必要性が高まっていることがあります。

 義務化により、企業は制度開始から1年に当たる11月までに、初回を実施しなければなりません。

 調査は7月、従業員50人以上の企業600社を対象に実施。ストレスチェックの実施率は平均33・8%でしたが、規模が小さくなるほど下がりました。1000人以上が49・5%だったのに対し、500~999人が35・4%、200~499人が27・2%、200人未満では5社に1社にとどまりました。

 また、今後の予定として、外部に委託するか自社で実施するか決まっていない上、実施の時期も決まっていない企業の割合は200人未満で13・3%あり、規模が小さいほど準備が遅れている傾向も明らかになりました。

 アドバンテッジリスクマネジメントの調査担当者は、「中小での実施や準備が遅れているのは、費用や人員に余裕がないことが主な要因ではないか。中小企業が実施しやすいよう、各地の労働局は企業が抱えている問題を把握し、具体的な助言をすべきだ」と話しています。

 2016年9月23日(金)

 

■薬剤耐性菌の流行で世界的な経済危機の恐れ 世界銀行が発表

 すべての既存薬に耐性を持つ強力な細菌「スーパーバグ」の流行により、アメリカの投資銀行であるリーマン・ ブラザーズが破綻したことに端を発して2008年に起こった世界金融危機と同レベルか、それを上回る世界的な経済危機が誘発される恐れがあるとする報告書を世界銀行グループが19日、発表しました。

 この「薬剤耐性菌感染症:私たちの経済の将来への脅威」と題された報告書は、抗生物質、合成抗菌薬などの抗菌薬が従来のように感染症に効かない場合に、どんな問題が起きるかについて考察しています。

 抗菌薬への細菌の耐性は増加傾向にあり、今後、多くの感染症が再び治療不可能となり、生活困窮者が増えて世界各国は多大な代償を払う事態に陥るとして、2017年から2050年までを予測し、2050年までの世界全体の経済的損失は100兆ドル(約1京円)に上ると指摘しています。

 スーパーバグの流行によって、2050年までに極貧状態に陥る恐れがあるのは最大で2800万人。その大半は開発途上国の人々だとしています。

 報告書は、「世界は現在、1日1・9ドル(約190円)で暮らす極貧層を2030年までになくす方向におおむね向かっており、極貧層の人々の割合を3%未満に抑えるという目標に近付きつつある」ものの、「薬剤耐性菌感染症により、この目標は達成不可能となる危険性がある」と指摘。さらに、低所得国は2050年までに国内総生産(GDP)の5%以上を失う恐れがあると指摘しています。

 また、世界の輸出量は2050年までに最大3・8%縮小し、家畜の生産は年間2・6~7・5%減少すると予測しています。一方で、世界の医療費は2050年まで1年につき3000億ドルから1兆ドル(約30兆円から約100兆円)程度増える可能性があるとしています。

 薬剤耐性菌の問題に対する答えは容易には見付からないため、この世界的な経済危機は持続する可能性が高く、過去に起きた世界金融危機のように循環的な回復によって解決しそうにないといいます。

 抗生物質、合成抗菌薬などの抗菌薬が効きにくい細菌やウイルスなどは、人間や家畜に対する抗生物質の使いすぎなどによって生まれ、高齢者や持病のある人、それに開発途上国で適切な治療を受けられない人が感染すると、死に至ることもあります。

 21日、アメリカのニューヨークで開かれた国連総会では、初めて薬剤耐性菌感染症の問題についての閣僚級の特別会合が開かれ、およそ70の国と国際機関の代表がそれぞれの現状や対策などを表明しました。

 この中で、日本の塩崎恭久厚生労働大臣は、「アジアで薬が効きにくい菌などを監視する体制の整備に協力するほか、薬の研究開発への投資を続ける」などとした上で、「国際社会と連携し、先頭に立って取り組む」と決意を述べました。

 最悪の場合、2050年には薬が効きにくい細菌による肺炎やマラリアなどで世界中で1000万人が死亡するという研究結果もあり、特別会合では各国から強い危機感が示されていました。

 2016年9月22日(木)

 

■福井県と静岡県の化学工場で複数人が膀胱がんを発症 厚労省の調査で判明

 三星化学工業(東京都板橋区)の福井市にある工場で複数の従業員が膀胱(ぼうこう)がんを発症した問題に関連し、別の事業所で膀胱がんを発症した7人のうち5人が「MOCA(モカ)」と呼ばれる化学物質を取り扱っていたことが21日、厚生労働省の調べで判明しました。

 厚労省は当初、モカとは別の化学物質「オルト-トルイジン」を扱う全国の事業所を対象に調査していましたが、同日、日本化学工業協会など業界4団体に暴露防止対策の徹底や膀胱がんの検査の実施などを要請しました。

 別の事業所は、イハラケミカル工業(東京都渋谷区)の静岡県富士市にある工場(従業員約200人)で、1969年から2009年までモカを製造しており、担当者は「製造当初の詳しい暴露対策はわからないが、調査には協力している」と話しました。

 厚労省によると、7人は従業員1人と退職者6人の男性で、発症時は30歳~60歳代、1人はすでに死亡しました。少なくとも4人はオルト-トルイジンを扱っていませんでしたが、5人にモカの取り扱い歴が判明したといいます。ただ、発症した7人のうち2人は、どちらの化学物質も扱ったことがない可能性があるといいます。

 モカは、主に建築建材を作る際の硬化剤の原料として使われ、粉状になります。工場内の空気中濃度が高かったことを示す記録が残っており、厚労省の担当者は「従業員は吸引したと見なされる」としています。

 発がん性が指摘されており、労働安全衛生法に基づく省令では、排気装置の設置や暴露防止対策、従業員の健康診断が義務付けられている一方、膀胱がんの診断項目はないといいます。

 モカは全国約180の事業所で約2000人が扱っており、厚労省は、ほかにも膀胱がんを発症した従業員がいないか調査します。

 2016年9月22日(木)

 

■人のDNAを放射線から守るクマムシ由来のタンパク質を発見 東京大学、国立遺伝学研究所など

 地球上で最も高い耐久性を持つ生物といわれる極小の生物クマムシに特有のタンパク質が、放射線による損傷から人間のDNA(デオキシリボ核酸)を保護する働きを持つとする研究論文が20日、イギリスの科学誌ネイチャー・コミュニケーションズに発表されました。

 「ダメージを抑制するもの」という意味で「Dsup(ディーサップ)」と命名された新発見のタンパク質とともに培養した人の細胞は、X線を照射された際に受ける損傷が通常の細胞の半分に抑えられました。ほ乳動物の放射線耐久性向上につながると期待されます。

 この実験は、東京大大学院理学系研究科の国枝武和助教、同研究科の橋本拓磨・特任研究員、国立遺伝学研究所の豊田敦特任教授らの研究チームによるものです。

 クマムシは、陸、川、海に生息する4対8本の脚を持つ体長1ミリ未満の緩歩(かんぽ)動物で、特に陸生クマムシの多くは、外界の乾燥に応じて脱水し、乾眠という無代謝状態になります。乾眠状態では、超低温、高温、真空、高い線量の放射線照射など、さまざまな極限環境に耐久性を示すことが知られており、特に放射線については乾眠状態、通常状態いずれにおいても、人の半致死量の約1000倍となる4000Gyの放射線照射にも耐えることができます。しかし、このような高い耐久性能力を支える分子メカニズムについては、明らかになっていません。

 今回、研究チームは、約1200種に上るクマムシの中でも極限的な環境に特に高い耐久性を持つヨコヅナクマムシのゲノム(全遺伝情報)を100倍の精度で解読して分析。ヨコヅナクマムシが約2万個の遺伝子を持つことを明らかにし、このうち52・5%はほかの動物の遺伝子と類似し、41・1%は固有の新規遺伝子、1・2%は外来遺伝子を含むことがわかりました。

 また、遺伝子レパートリーをほかの動物種と詳細に比較した結果、酸化ストレスへの抵抗性が高いことが明らかになりました。これは、乾燥時に発生する酸化ストレスに対抗するために獲得されたものであると考えられるといいます。一方で、ストレス応答に必要な一部の遺伝子群を喪失していることもわかりました。

 これについて国枝助教は、ヨコヅナクマムシが耐久性を示す過酷な環境ストレスに対して、過剰な応答をしないよう適応した結果ではないかと推察しています。

 さらに、研究チームは、ヨコヅナクマムシの核DNAと結合するタンパク質を分離・同定し、これらのうち既知のタンパク質と類似しない新規タンパク質のディーサップを発見。ディーサップは核DNAと同じ局在を示すことを確認しました。なお、ディーサップを人の細胞に導入しても、DNAの近傍に局在していたといいます。

 このディーサップが放射線耐久性を付与するかどうか調べるため、ディーサップを導入した人の培養細胞にX線を照射した後、DNA切断の量を調べたところ、ディーサップ未導入の細胞に比べて切断量が約半分に低下していたといいます。この切断量の低下は、DNA切断自体の減少によるものであり、切断されたDNAの修復が高進したためではないことがわかっています。放射線は活性酸素を発生させて間接的に生体傷害を引き起こす作用があることから、ディーサップは活性酸素による攻撃からDNAを保護しているものと考えられます。

 また、研究チームは、ディーサップが放射線傷害からDNAを保護することから、細胞の放射線耐久性も向上している可能性を考え、細胞増殖能を喪失させる4GyのX線を照射した後の細胞の形態と増殖能を調べました。この結果、ディーサップ未導入の細胞では増殖がほぼ停止し、8日目以降は減少傾向を示すのに対し、ディーサップ導入の細胞では一部の細胞が正常な形態を保ち、8日目以降も顕著に増殖することがわかったため、ディーサップは人の培養細胞の放射線耐久性を向上させることが明らかになったといえます。

 国枝助教は今後の研究について、「クマムシのゲノムは有用な遺伝子資源。今回の研究で見付かったほかのクマムシ固有の遺伝子についても解析を進め、クマムシの高い耐久性能力を支える分子メカニズムを明らかにしていきたい」と話しています。

 2016年9月21日(水)

 

■高コレステロール該当者が3割を超える 人間ドック受診者で右肩上がり

 2014年の人間ドック受診者では、高コレステロールの該当者が全体の3割を超えたことが、日本人間ドック学会の全国集計結果で明らかになりました。

 同学会は、人間ドック受診者の生活習慣に関する主要6項目の検査結果を分析。コレステロールの検査に関しては、2014年の人間ドック受診者約313万人のうち、LDLコレステロール(悪玉コレステロール)が140mg/dl以上で高コレステロールと診断された人は約105万人に上り、全体の33・6%を占めました。

 1990年には8・9%しかなかった高コレステロールですが、その後右肩上がりに増加し続けています。増加傾向の要因として、食生活の欧米化と運動不足が挙げられます。

 コレステロールには、HDLコレステロール(善玉コレステロール)とLDLコレステロール(悪玉コレステロール)の2種類が存在しますが、コレステロール値が高くなってくると問題になってくるのはLDLコレステロール(悪玉コレステロール)の存在です。

 もともとコレステロールは細胞膜の維持のほか、ホルモンや脂肪の消化を助ける胆汁酸などを作り出す材料となり体に不可欠な存在ですが、LDLコレステロール(悪玉コレステロール)が増えすぎてしまうと健康に影響を及ぼします。また、LDLコレステロール(悪玉コレステロール)の厄介なところは自覚症状がほとんどないという点。気が付かない間に不調を招くことから、「サイレントキラー」との呼び名も付いています。

 このため、人間ドックや健康診断でコレステロールが高めとの結果が出た人は、毎日のコレステロールケアが必要。食事を含め、運動など生活習慣全般の改善を行っていく必要があるといえます。

 食事では、欧米風の高カロリー食品やコレステロール値の高い食品、脂分の多いファーストフードの過剰な摂取を制限し、野菜や果物、魚といった低カロリー食や低脂肪食、低炭水化物食を中心とした食生活に切り替えます。

 特にコレステロール対策に優れているのは野菜で、体に必要なビタミン、ミネラル、食物繊維などが豊富に含まれているため、毎日バランスよく摂取していくことが勧められます。その野菜の中でもコレステロールが高めの人に勧められる野菜は、「ブロッコリー」や「キャベツ」などといったアブラナ科野菜です。

 このアブラナ科野菜に多く含まれるアミノ酸の一種「SMCS(Sーメチルシステインスルホキシド)」が、コレステロール値の改善に効果があることが確認されています。体内のコレステロールは肝臓において酵素によって胆汁酸に変えられ体の外へと排出されますが、このSMCSには酵素の働きを活性化させることで、肝臓で処理されるコレステロールの量を増加させ、より多くのコレステロール排出を促す働きがあります。

 運動では、積極的に運動を行います。適切な体重の維持につながるばかりか、適度な運動を行うことで基礎代謝の向上効果が期待できます。また、喫煙、ストレス、過労、飲酒、睡眠不足など生活習慣全般の見直しも、高コレステロールの改善法、予防法として効果的です。

 2016年9月21日(水)

 

■肥満、高血圧をもたらす砂糖の取りすぎに注意を アメリカの心臓協会が提唱

 アメリカ心臓協会(AHA)は、1日に摂取する「添加した糖類」を女性は25グラム(100キロカロリー)、男性は37・5グラム(150キロカロリー)以下に制限すべきだという勧告を発表しました。25グラムは、日本の調理用計量スプーンでは大さじ3杯弱に相当します。

 添加した糖類とは、口当たりをよくするために製造工程で食品に添加する砂糖や、コーヒーに入れる砂糖、ホットケーキにかけるメープルシロップのような、人為的に味付けとして加える糖のことです。果物、野菜、牛乳、穀物などには、果糖、乳糖、麦芽糖などの糖類が自然に含まれていますが、これらは制限の対象に含みません。

 勧告の全文は、アメリカの医学誌「サーキュレーション」に掲載されています。

 アメリカ人はこの30年の間に、エネルギーを1日当たり150~300キロカロリー、添加した糖類を17・5グラム(70キロカロリー)以上、多く摂取するようになりました。今のアメリカ人は、添加した糖類を毎日88・8グラム(355キロカロリー)摂取しています。

 添加した糖類の過剰摂取は、肥満、高血圧、高脂血症、炎症などをもたらし、心臓病や脳卒中のリスクを高めることが示唆されています。また、添加した糖類の摂取が多いほど、カルシウム、ビタミンA、鉄、亜鉛の摂取が少なくなっています。

 この30年の間に、食事の際してのソフトドリンクの摂取も、2倍になりました。甘みは脳に快楽をもたらし食欲を高めるので、食事の量も増えます。固形の食料よりも飲料のほうが同じカロリーを摂取しても満腹感が少なく、結果としてより多くのカロリーを摂取することになります。

 また、アメリカ心臓協会は、2~18歳の子供についても、1日に摂取する添加した糖類を25グラム(100キロカロリー)以下に制限すべきだという勧告を発表しました。2歳未満の乳幼児については、食材や飲み物に糖類を加えないことを推奨しています。

 勧告は、2~18歳の子供でも添加した糖類の過剰摂取が肥満や高血圧などをもたらし、心臓病のリスクを高めると指摘。また、添加した糖類の多い食事をしている子供は、野菜や果物など心臓の健康によい食べ物の摂取が少ない傾向があるとしました。

 2016年9月21日(水)

 

■全国で流行のはしか、患者数が計115人に 1週間前から33人増

 関西空港などで集団感染が発覚したはしか(麻疹)の患者が、今年1月から9月11日までに全国で計115人になったと、国立感染症研究所が20日、速報値を発表しました。

 1週間前の発表より33人増えており、直近の4週間では96人と、集中的に感染が確認されています。昨年は1年間で35人でした。患者が100人を超えたのは、2014年の462人以来2年ぶりです。

 専門家は、「ワクチン接種はまずは子供を優先してほしい」と注意を呼び掛けています。

 国立感染症研究所によると、今年の週ごとの患者数は8月の第2週までは0~3人で推移していましたが、8月中旬以降は週当たり13人~37人が報告されました。

 115人の患者のうち、大阪府が43人で最も多く、兵庫県と千葉県がいずれも21人、東京都11人と続きます。

 年齢別では20歳代が38%と最多で、30歳代が20%。ワクチン未接種で免疫が不十分な人が少なくない乳幼児から若年層が中心で、40歳未満が9割近くを占めています。

 はしかは感染力が強く、空気感染します。感染防止にはワクチン接種が有効ですが、厚生労働省の専門家部会では複数の委員が「ワクチンが足りないとの声がある」と指摘し、子供の定期接種を優先することを確認しました。

 日本は、世界保健機関(WHO)西太平洋地域事務局によって2015年3月に、はしかが「排除状態」と認定されました。全国の地方衛生研究所が最近の患者のウイルスの遺伝子型を調べたところ、判明分は大半が中国や東南アジアに多いタイプでした。そのため国立感染症研究所は、今回の感染は海外から持ち込まれたウイルスが国内で広がったとみています。

 大阪府での集団感染について、国立感染症研究所の多屋馨子・感染症疫学センター第三室(予防接種室)長は、「適切な対応で3次感染は抑えられたと考えている」と分析し、「未接種や1度しかワクチンを受けたことがない人は、ワクチンが十分流通した後に接種を受けてほしい」と呼び掛けています。

 2016年9月20日(火)

 

■医療機器のロボットスーツ、貸し出し事業始める 茨城県のベンチャー企業

 全身の筋力が低下した難病患者の歩行機能の改善が期待できるとして、国から医療機器としての承認を受けたロボットスーツについて、茨城県のベンチャー企業がリハビリの現場などで普及につなげようと、医療機関に貸し出す事業を始めました。

 この装着型ロボットスーツ「HAL(ハル)医療用(下肢タイプ)」は、茨城県つくば市のベンチャー企業のサイバーダインが開発したもので、患者が足を動かそうとする際に太ももやひざの皮膚の表面に流れる微弱な電気信号を検知し、モーターで両足に装着した器具を動かすことで歩行を助ける仕組み。歩行運動を繰り返すことで機能が改善します。

 全身の筋肉が徐々に動かなくなる筋委縮性側索硬化症(ALS)や筋ジストロフィー、脊髄性筋委縮症、先天性ミオパチーなど、筋肉や神経が衰える8つの難病の患者が装着してトレーニングすると、歩行機能の改善が期待できるとして、昨年11月、医療機器として国の承認を受けたほか、今年4月にはロボット治療で世界で初めて、公的医療保険の適用の対象となりました。

 こうしたことを受けて、サイバーダインはリハビリの現場などで使ってもらい普及につなげようと、8月から医療機関などを対象に貸し出す事業を始めました。8つの難病の推定患者数は3000人以上とされ、歩行困難者にとっては行動範囲が広がるなどが期待されます。

 ロボットスーツを開発したサイバーダインは、「症状の進行を抑制し、難病患者の健康寿命を延ばすため役立ててほしい。今後は脊髄損傷など、ほかの病気やけがにもロボットスーツを医療機器として使えるよう、臨床試験を進めたい」としています。

 貸し出しを希望する医療機関などは直接、サイバーダイン(電話029ー869−9981)に申し込み、貸し出し料金は公的医療保険の中から同社に支払われます。

 2016年9月19日(月)

 

■65歳以上、過去最高の3461万人 女性は1962万人で初の3割超に

 祝日の「敬老の日」を前に総務省は18日、全国の65歳以上の高齢者の推計人口を発表しました。

 9月15日時点の高齢者人口は前年より73万人増の3461万人で、過去最多を更新し、総人口に占める割合は前年より0・6ポイント増の27・3%で、こちらも過去最高を更新しました。

 男女別では、男性は前年より35万人増の1149万人で男性全体の24・3%を占め、女性は前年より38万人増の1962万人で、女性全体の30・1%を占め、初めて3割を超えました。女性全体に占める65歳以上の高齢者の割合は、2001年に20%を上回り、2009年に25%を超えていました。

 後期高齢者医療制度の対象となる75歳以上の高齢者人口は1697万人で、総人口に占める割合は13・4%。男性が660万人、女性が1037万人でした。

 日本の総人口が減少する中、高齢者の占める割合は、一貫して増え続けています。日本の高齢者の割合である27・3%は、欧米主要6カ国との比較でも最も高く、22・7%のイタリア、21・4%のドイツを上回りました。1995年以降の伸び幅も日本は12・7ポイントに達して、イタリアの6・2ポイント、ドイツの6・0ポイントを大きく引き離しており、日本の高齢化が急速に進んでいることを改めて示しました。

 2015年の高齢者の人口移動を見ると、東京都や大阪府で転出超過の一方、埼玉県、千葉県、神奈川県などで転入超過となりました。

 高齢者の就業者数は730万人となり、12年連続で増加。約半数の360万人が企業などに雇用されており、このうち74・2%に当たる267万人がアルバイトやパートといった非正規雇用でした。

 就業者総数に占める65歳以上の就業者の割合は11・4%で、過去最高となりました。高齢者全体に占める就業者の割合を示す就業率は21・7%となり、18・2%のアメリカ、12・8%のカナダを上回るなど、欧米主要6カ国との比較でも最も高くなりました。男女別では、男性が30・3%、女性が15・0%でした。

 65歳から69歳までの高齢者に占める就業者の割合を示す就業率は、男性で52・2%、女性で31・6%となり、いずれも前年を上回り、高齢者の就業が進んでいる実態がうかがえます。

 高齢者の世帯主を含む2人以上で構成する「高齢者世帯」の2015年の1世帯当たり貯蓄現在高は、前年比69万円減の2430万円。3年ぶりの減少で、定期預金などが減りました。

 また、世帯主の年齢別にパック旅行費の支出金額を見ると、高齢者世帯が6万円を超え、ほかの年代を抑えて最も高くなりました。サプリメントなどの「健康保持用摂取品」への支出も高く、高齢者が健康に気を使いながら趣味を楽しむ様子が浮かび上がりました。 

 2016年9月19日(月)

 

■100歳以上が6万5692人 46年連続で過去最多、87%が女性

 100歳以上の高齢者が全国に6万5692人いることが9月13日、厚生労働省の調査でわかりました。前年から4124人増え、46年連続の増加となりました。

 毎年、祝日の「敬老の日」を前に調査しており、住民基本台帳に基づき、「老人の日」の9月15日時点で100歳以上となる高齢者の数を9月1日現在で集計しました。

 100歳以上の高齢者の内訳は、女性が3797人増の5万7525人と全体の87・6%を占め、割合で過去最高となりました。男性は327人増の8167人でした。

 国内最高齢は、鹿児島県・喜界島(喜界町)の田島ナビさんで116歳。男性は、東京都大田区の吉田正光さんで112歳。

 田島さんは、特別養護老人ホームで暮らしています。2歳上の夫との間に7男2女に恵まれ、今も島には自分の子供から、やしゃごの子供まで19人が生活。田島さんはベッドで寝ている時間が多いものの、3度の食事は欠かさないといいます。

 100歳以上の高齢者の人数を都道府県別にみると、東京都が最多の5607人で、神奈川県3577人、大阪府3458人と続きました。

 都道府県別の10万人当たりの人数は、島根県が96・25人で4年連続の1位。次いで高知県87・93人、鳥取県84・84人。上位10県のうち、9県を中国地方以西が占めました。下位は、埼玉県の30・97人、愛知県の35・05人、千葉県の38・27人と都市部が目立ちました。全国平均は51・68人で、前年から3・23人増えました。

 100歳以上の高齢者の増加傾向は止まらず、表彰を始めた1963年は全国で153人でしたが、1998年に1万人を突破し、2009年に4万人、2012年には5万人を超えました。

 今年度中に100歳を迎えた人と、迎える予定の人は9月1日現在で、1368人増の計3万1747人(男性4469人、女性2万7278人)で、こちらも46年連続で増加しました。

 100歳以上の高齢者が増加していることについて、厚労省は「医療技術の進歩と健康意識の高まりが相乗効果となって、平均寿命が延びているのではないか」と分析しています。

 厚労省は、100歳を迎える高齢者へのお祝いの品として、自治体を通じて記念品の銀杯や首相からのお祝い状を9月15日に贈っています。しかし、高齢化によってお祝いの品を贈る該当者が増加し、費用が増え続けていることから、2009年度に銀杯の大きさを一回り小さくしたのに続いて、今年度から銀杯をこれまでの純銀製から銀メッキ製に変更しました。

 純銀製の銀杯は1つ7624円でしたが、銀メッキ製は半額の3812円で、お祝い状なども含めた記念品の今年度の費用は昨年度のおよそ2億6500万円より4割ほど低い1億5000万円になる見込みだということです。

 厚労省は、「銀杯を楽しみにしている高齢者が多いのは承知しており、心苦しいが、見直さざるを得なかった。純銀製ではなくなったが、今後も長寿のお祝いに銀杯を贈り続けたい」と話しています。

 老人の日は改正老人福祉法で、2002年から9月15日と定められました。祝日の敬老の日は、2003年から9月の第3月曜日となっています。

 2016年9月18日(日)

 

■メタボ健診で「正常なレベル」の人は2割未満 健保連が326万人を調査

 40~74歳を対象とした特定健康診査(メタボ健診)を受けたサラリーマンらのうち、健康の目安となる「血圧」「脂質」「血糖」「肝機能」の4項目の数値すべてが厚生労働省の定める基準範囲内だった「正常なレベル」の人は5人に1人にとどまったことが、健康保険組合連合会(健保連)の調査でわかりました。

 健保連は約1400の健康保険組合で構成し、主に大企業の従業員と家族ら約3000万人が加入。このうち433の健康保険組合が、2014年度にメタボ健診を受けた約326万人の血圧、脂質、血糖、肝機能のデータを分析しました。

 調査結果では、4項目すべてで健康の目安基準をクリアしたのは、約62万人で全体の19・0パーセント。基準に届かず「生活習慣改善のために保健指導が必要」と判定されたのは、約107万人で全体の32・7パーセントでした。さらに大きく基準を外れ、健康リスクが高く「医療機関の受診が必要」と判定されたのは、約158万人で48・3パーセントに上りました。

 全対象者のうち36・9パーセントが「肥満」に該当し、どの年齢層でも肥満が4割近くを占めていました。なお、肥満の判断基準は、内臓脂肪面積が100cm2以上またはBMI25以上で、腹囲が男性では85cm以上、女性では90cm以上と定義されました。

 肥満、「非肥満」別にみると、非肥満者では血圧、脂質、血糖の3つの項目が基準範囲内である人が約半数を占めましたが、肥満者では2割に満ちませんでした。肝機能を加えた4つの項目の健康リスクの分布状況をみると、「医療機関の受診が必要」と判定されたのは、非肥満者では39パーセントだったのに対し、肥満者では65パーセントと半数を超えていました。

 また、肥満者では、非肥満者に比べて、複数の項目の健康リスクを保有する割合も高いこともわかりました。さらに、生活習慣病の治療薬を服用している割合は、非肥満者の13・3パーセントに対し、肥満者では31・3パーセントでした。

 健保連は、食事や運動など生活習慣の見直しによる改善を呼び掛けています。

 2016年9月18日(日)

 

■若い世代に多いがん「B細胞性急性リンパ性白血病」、原因遺伝子を発見 東大などの研究チーム

 若い世代の15歳から39歳までに多いがん、B細胞性急性リンパ性白血病は、これまで原因がほとんどわかっていませんでしたが、東京大学などの研究チームが、がんの原因となる遺伝子を発見し、新たな治療法の開発につながると期待されます。

 この研究を行ったのは、東京大学の間野博行教授などの研究チームです。

 研究チームでは、B細胞性急性リンパ性白血病の患者73人から、がん細胞を取り出し、次世代シーケンサー(配列解読装置)により遺伝子を詳しく解析しました。

 その結果、約65パーセントのがん細胞から合わせて19の遺伝子の異常が見付かり、これらの遺伝子が、がんを引き起こしていることがわかりました。そのうち、最も多い約16パーセントに見付かったのは「DUX4-IGH」という遺伝子で、2番目に多いのは「ZNF384」という遺伝子、3番目に多いのは「MEF2D」という遺伝子でした。

 さらに患者の治療反応性を調べるとと、「DUX4-IGH」あるいは 「ZNF384」遺伝子を有するB細胞性急性リンパ性白血病は予後良好群に属し「MEF2D」遺伝子を有するB細胞性急性リンパ性白血病は予後不良群に属することも明らかになりました。

 また、「DUX4-IGH」遺伝子の働きを抑えると、がん細胞が死滅することも確認できました。

 B細胞性急性リンパ性白血病の国内の患者は、年間5000人近くに上ります。15歳から39歳までの若い世代でみますと、最も多いがんの1つです。有効な抗がん剤の種類は限られ、5年生存率は6割程度にとどまっています。

 間野教授は、「この思春期ー若年成人世代のがん患者は、小児や大人のがんの治療法が開発されていく中で取り残されてきた世代だ。今回見付けた遺伝子を直接標的にするような新たな抗がん剤を開発したい」と話しています。

 2016年9月18日(日)

 

■ぜんそくを起こすタンパク質を特定し、症状抑制に成功 千葉大の研究チーム

 ぜんそくなど難治性アレルギー疾患の発症の鍵となるタンパク質を特定し、マウスを使ってアレルギー症状を起こさないことに成功したと、千葉大学の研究チームが発表しました。ぜんそくや膠原(こうげん)病などの発症や重症化を抑える治療薬の開発につなげたいとしています。

 論文は16日付で、アメリカの学術誌「サイエンス・イムノロジー」電子版に掲載されました。

 ぜんそくなどのアレルギー疾患は、アレルギーの原因となる物質に反応した病原性の免疫細胞が血管から外に出て、肺や気管などの組織に到達することで発症します。

 千葉大学の研究チームは、病原性の免疫細胞が血管から外に出るのを手伝う「ミル9分子」と呼ばれるタンパク質を発見。このタンパク質は炎症に伴って血小板から放出され、血管の内側に集まって付着して網のような構造になり、そこを足場に病原性の免疫細胞が血管から外に出ていることがわかったといいます。

 さらに、この「ミル9分子」と病原性の免疫細胞がくっ付くことを防ぐ抗体をつくり、ぜんそくのマウスに投与したところ、免疫細胞が血管の外に出なくなり、ぜんそくの症状を起こさなくなったことが確認されたということです。

 大手製薬会社との共同研究で、人に使える抗体も作製していて、実用化を目指して研究を進めています。

 現在、重度のぜんそくの治療は、免疫細胞の働きを弱めるステロイド注射など対症療法が主流ですが、患者の免疫力が低下する恐れがあり、効果がない例も近年、多く報告されています。今回の抗体はステロイドに比べ、正常な免疫細胞に与える影響が少なく、重症患者にとって有効な治療法になり得るといいます。

 研究代表者の中山俊憲・千葉大教授(免疫発生学)は、「慢性で有効な治療法がない人に今回の物質が使える可能性が大きく、10年以内に新たなぜんそく治療法の確立を目指す。ぜんそくだけでなく、リウマチや膠原病などにも使える可能性が十分あると考えている」と話しています。

 2016年9月17日(土)

 

■iPS細胞の他家移植、サルで拒絶反応なく成功 理研の研究チーム

 拒絶反応が起きにくい特殊なiPS細胞(人工多能性幹細胞)を使って重い目の病気の患者を治療する他家移植という世界初の臨床研究を計画している、神戸市の理化学研究所の研究チームが、猿のiPS細胞から作った目の組織を、別の猿に拒絶反応なく移植することに成功し、人での安全性を裏付ける成果として注目されています。

 研究を行ったのは、理化学研究所の高橋政代プロジェクトリーダーなどの研究チームです。

 研究チームでは、多くの猿と免疫の型が一致する特殊な猿を見付け出し、その猿のiPS細胞を使って網膜の組織である網膜色素上皮細胞を作り出しました。

 そして、別の猿2頭の目に移植し、免疫抑制剤を使わないまま経過を観察した結果、6カ月たっても拒絶反応は起きず、正常な目に近い状態を保ったということです。一方で、免疫の型が一致しない組織を移植した別の猿5頭は、数カ月以内に拒絶反応が起き、網膜剥離などの症状が出たということです。

 拒絶反応が起きにくい特殊な免疫の型のiPS細胞は、人でも京都大学iPS細胞研究所が保管しており、研究チームではこのiPS細胞を使って重い目の病気「加齢黄斑変性」の患者を治療する他家移植という世界初の臨床研究を計画しています。

 他家移植は、患者自身のiPS細胞を使うより時間や費用がかからないため、再生医療の普及につながると期待されており、研究チームでは、今回の成果は人でも拒絶反応がなく安全に移植が行えることを裏付けるデータだとしています。

 また、免疫抑制剤は感染症やがんなどのリスクがあり、使わずにすめば患者の利点になります。研究チームは加齢黄斑変性の患者の免疫の型を調べる作業を進めており、杉田直(すなお)・副プロジェクトリーダーは「実際の患者でも型が合えば免疫抑制剤を使わなくても、うまくいくのではないか」と話しています。

 研究成果は15日付で、アメリカの科学誌「ステム・セル・リポーツ」オンライン版に掲載されました。

 2016年9月17日(土)

 

■隠れメタボの人、筋肉に血糖を取り込む力が2割低下 順天堂大が研究

 太っていないのに血圧や血糖などに異常がある「隠れメタボ」の人は、血液中の糖を筋肉に取り込む力が落ちているとする研究結果を、順天堂大などの研究チームがまとめました。

 日本人は欧米人と比べ、太っていなくても生活習慣病を発症しやすいとされます。太っていると血液中の糖を体の細胞に取り込ませるインスリンという膵(すい)臓から分泌されるホルモンが効きにくくなるため、研究チームはこの現象が太っていない人でも起きていないかを調べました。

 研究に参加したのは男性114人。さほど太っていない状態(体格指数=BMI23以上25未満)でも高血圧、高血糖、脂質異常のどれか一つでもある人は、異常がない人と比べ、インスリンの作用で糖を取り込む筋肉の能力が20パーセントほど低くなりました。低さの度合いは、太っている「真性メタボ」の人たちとほぼ同等でした。

 真性メタボの人は、やせることで生活習慣病を防ぎやすいのに対して、隠れメタボでは効果の高い予防法は確立していません。インスリンの効きをよくするには有酸素運動や筋トレが効果的とされており、今回の結果は隠れメタボの対策につながる可能性があるといいます。

 順天堂大の田村好史(よしふみ)准教授は、「まずは少しずつでもいいので、体を動かす習慣をつけることが大切」と話しています。

 研究論文は、アメリカの内分泌学会の機関誌に掲載されました。

 2016年9月16日(金)

 

■体外受精児、過去最多4万7000人出生 体外受精の件数も39万超で過去最多

 2014年に日本国内の医療機関で実施された体外受精の件数は39万3745件で、その結果4万7322人の子供が生まれ、いずれも過去最多となったことが日本産科婦人科学会の集計でわかりました。

 2014年の総出生数は約100万3500人で、体外受精で生まれた子供の割合は約21人に1人となりました。

 日本産科婦人科学会が毎年、体外受精を行っている全国の医療機関からの報告を基にまとめている集計によると、体外受精の実施件数は2013年に比べて約2万5000件増加し、出生数も約4700人増えました。

 晩婚化を背景に、加齢による不妊に悩む女性が増えていることが増加の要因とみられます。2005年に比べ件数は3・1倍、出生数は2・5倍と急増しています。

 また、体外受精を受けた女性を年齢別にみますと、40歳以上が全体の4割を超えていますが、実際に出産にまで至る割合は年齢とともに下がり、40歳でみても10パーセントを切っています。

 国立成育医療研究センター周産期・母性診療センターの齊藤英和副センター長は、「出産にまで至る割合が低い40歳以上で体外受精を受ける人が増えているのは問題だ。妊娠適齢期の知識の不足や社会のサポートが十分でないことが背景にあると思う。若いうちから妊娠にかかわる知識を持てるようにするとともに、仕事と子育ての両立の支援をさらに充実していく必要がある」と話しています。

 体外受精は、精子と卵子を体外で受精させ、女性の子宮に戻す不妊治療。国内初の体外受精児は、1983年に誕生しました。体外受精で生まれた子供の数は、今回で累計43万1626人となり、初めて40万人を突破しました。この約半数が、受精卵などの凍結技術を使って生まれています。

 2016年9月15日(木)

 

■高齢女性、美容医療のトラブルに注意を しわ取り注射で1300万円の請求も

 高齢女性が美容クリニックでアンチエイジングの施術を受け、高額請求されるトラブルが相次いでいます。国民生活センターは、顔のしわやたるみを取るなどの美容医療の施術内容や費用の根拠について納得がいくまで説明を受けるよう、注意を呼び掛けています。

 神奈川県の70歳代の女性は今年春、しわ取りの広告を見て、美容クリニックを訪れました。説明を受けるだけのつもりでしたが、スタッフに「すぐ終わるから」といわれて処置室へ誘導され、約30分の施術で注射4本を打たれました。帰宅後、請求書をよく見ると、費用は約1300万円でした。

 60歳以上の女性から寄せられた美容医療のトラブル相談は、2006年度は76件でしたが、2013年~2015年度は各年度とも200件以上に上りました。

 一般的に美容医療は健康保険が使えない自由診療のため、各美容クリニックが施術代を自由に設定できるため、高額な費用に関する相談が目立つといいます。国民生活センターが昨年度の相談に関して調べたところ、平均は約127万円でした。

 料金基準が不明瞭なケースもあり、別の70歳代の女性は「800万円のリフトアップ注射なら20年もつ」といわれ、「払えない」と断ると、最終的に半額の値下げ提示を受けたといいます。

 費用以外では、術後に施術部分がはれたり、しこりができたりといった相談のほか、美容クリニック側が説明していた効果を感じられないといった声も寄せられているといいます。

 高齢女性が美容クリニックを訪れる切っ掛けは、手軽さをアピールする新聞の折り込み広告が多いといいます。広告には「体に全く負担がない」「注射でマイナス10歳」など、違法の恐れがある表現も見受けられたといいます。

 公益社団法人・日本美容医療協会理事の征矢野(そやの)進一医師によると、しわ取り注射は高くても1本十数万円が相場。協会加盟の美容クリニック以外では、診療内容や料金、広告表示について口を挟むのは難しいといいます。

 国民生活センターの丸山琴野さんは、「納得できないまま、その日のうちに契約することは、決してしないようにしてほしい」と注意を呼び掛けています。

 国民生活センターは「60歳以上の消費者トラブル110番」として、16日午前10時から午後4時まで、さまざまな相談を受け付けることにしています。電話番号は、03-5793-4110。

 2016年9月15日(木

 

■卵子を経ずに子孫誕生、マウス実験で成功 イギリスとドイツの研究チーム

 イギリスとドイツの研究チームが13日、卵子ではない細胞の一種と精子を結合させ、新生児マウスを誕生させることに世界で初めて成功したと発表しました。

 イギリスの科学誌ネイチャー・コミュニケーションズに発表された研究論文によると、子供をつくるのに卵子を必要としないという魔術のような方法を通じて誕生したマウスは健康で、正常な寿命を持ち、さらに従来の方法で子孫をもうけることもできたといいます。

 論文の主執筆者で、イギリスのバース大学のトニー・ペリー氏は、「胚発生が起きるように精子を再プログラム化できるのは、卵細胞だけだとこれまで考えられていた」と述べ、「精細胞によって受精した卵細胞しか、ほ乳類の生きた子供の誕生をもたらすことはできないという定説が、初期の発生学者らが1827年ころに、ほ乳類の卵細胞を初めて観察し、50年後に受精を観察して以来ずっと支持されてきた。しかし、我々の研究はこの定説に異を唱えるものだ」と続けました。

 細胞には2種類のタイプがあります。卵や精子などの「減数分裂する」生殖細胞と、体の組織や臓器の細胞の大半が含まれる「有糸分裂する」細胞です。

 ほ乳類の生殖には、結合して胚を形成するための卵と精子が必要とされています。しかし、研究チームは今回、マウスの子をつくるのに、減数分裂の卵細胞を用いず、「単為発生胚」と呼ばれる有糸分裂細胞の一種を使用しました。

 単為発生胚は、極めて初期段階の単細胞胚で、受精を経ずに形成されます。今回の研究では、マウスの卵細胞を化学的に活性化して単為発生胚を作製しました。そして、この単為発生胚が2つの細胞に分裂する直前に、胚を受精させるための精子の核を胚に注入しました。

 こうしてつくられた子供のマウスの生存率は、従来の方法でつくられた通常のマウスの4分の1でした。

 研究はまだ初期段階とはいえ、将来的には、ほかの種類の有糸分裂細胞、例えば皮膚細胞などが、子孫をつくるために使われる可能性があることを示唆しています。そうすると、男性の同性愛者、高齢女性、不妊で悩む夫婦などが、両親のDNAを持つ子供をもうける可能性も開かれてきます。

 トニー・ペリー氏は、「どの有糸分裂細胞でも、同じ方法で精子を再プログラム化できるようになれば、卵細胞は不要になるだろう」と語り、「これは、生殖に革命をもたらすかもしれない」と付け加えました。

 現在のところ、単為発生胚を作製するには卵細胞を必要とします。ほ乳類では、単為生殖は自然に発生することはなく、単為発生胚が偶然に形成されたとしても、その成長過程で死んでしまいます。

 トニー・ペリー氏は、「卵細胞から作製する必要のある単為発生胚を、将来的には複製することができるようになるかもしれない。これは卵細胞のこの機能が過去のものになることを意味する」と続けました。

 2016年9月14日(水)

 

■2015年度の医療費、41・5兆円に 13年連続で過去最高を更新

 昨年度・2015年度に、国民が医療機関で病気やけがの治療を受けるためにかかった医療費は、概算で初めて40兆円を超えて、13年連続で過去最高を更新しました。公的な医療保険と税金、患者負担の合計額で、労災や全額自費の診療、健康診断などは含まれません。

 厚生労働省のまとめによりますと、昨年度・2015年度の医療費は今の形で統計を取り始めて以来、初めて40兆円を超えて、概算で41兆4627億円でした。これは、前の2014年度と比べて1兆5100億円、率にして3・8パーセント増え、増加額としては最大の伸びで、医療費は2003年度以降、13年連続で過去最高を更新しました。

 国民1人当たりの医療費は、75歳以上の後期高齢者では94万8000円と、75歳未満の22万円の4・3倍に達しました。全体の平均は、前の2014年度より1万3000円増えて、32万7000円でした。

 医療費の伸び率は、全都道府県でプラスとなっており、千葉県が5・0パーセント増で最も高くなりました。

 医療費の内訳を、診療の種類別でみると、医科の入院が16兆4000億円、医科の外来が14兆2000億円、歯科が2兆8000億円、調剤が7兆9000億円となっています。高額なC型肝炎治療薬が発売された影響で、調剤は前の2014年度と比べて約6800億円、率にして9・4パーセントも急増し、医療費を押し上げました。

 一方、価格が安い後発医薬品、いわゆるジェネリック医薬品の使用割合は、2015年度は数量ベースで60・1パーセントと、前の2014年度より3・7ポイント増えました。

 厚労省は、「昨年度は、高齢化の進展や医療技術の高度化に加え、高額なC型肝炎治療薬の使用が2015年秋以降に増えたことが医療費を押し上げた」と分析して、今後の動向を注視していくとしています。

 2016年9月14日(水)

 

■はしか患者、15の都道府県の82人に 1週間前より26人増

 国内のはしか(麻疹)の患者は、9月4日までの1週間に大阪や兵庫など6つの都府県で新たに26人が報告されるなど、合わせて82人に上っています。

 専門家は、局所的な流行が起きているとした上で、まず重症化しやすい乳幼児へのワクチンの定期接種をきちんと行うこと、そして患者が出ている地域でワクチンを打っていない人は、医療機関に相談して接種することなどを呼び掛けています。

 はしかは、発熱や全身に発疹が出るウイルス性の感染症で、発病した人の3割ほどが中耳炎や肺炎などの合併症を起こすほか、妊婦が感染すると流産や早産の恐れがあります。また、子供の感染が多かった過去の流行のデータをみますと、発病した1000人に1人の割合で死亡することがあるとされ、死亡で多いのは1歳前後の乳幼児です。

 国立感染症研究所によりますと、今年に入って、9月4日までに全国の医療機関から報告されたはしかの患者数は、15の都道府県で合わせて82人に上っています。82人の約6割は、20〜30歳代が占めています。

 このうち最も新しい9月4日までの1週間でみますと、新たな患者は、大阪府が10人、東京都が5人、千葉県が4人、兵庫県が4人、埼玉県が2人、神奈川県が1人の26人で、この6つの都府県以外で患者は報告されていません。

 このうち大阪府では、8月17日以降、関西空港の職員33人の感染が確認されたほか、9月12日までに、これらの職員と接触した医療従事者や救急隊員、それに空港の利用者など6人の感染も確認されています。

 また、保育園や幼稚園の園児の感染が確認された兵庫県尼崎市では、9月5日以降も15人以上の患者が確認されているということです。

 はしかは2008年以降、全数調査が行われ、2008年は患者が1万1000人余りに上りましたが、2009年は732人、2010年は447人、2011年は439人などと例年、数百人程度にとどまり、昨年、2015年は35人でした。

 感染症の問題に詳しい川崎市健康安全研究所の岡部信彦所長は、「現在は局所的な流行にとどまっている状態で、過剰に不安になる必要はない。ワクチンの接種は乳幼児の定期接種を優先した上で、患者が出ている関空周辺や尼崎にいる人で、ワクチンを打っていなかったり、過去にはしかにかかっていなかったりする人は、医療機関に相談して接種してほしい」と話しています。

 国立感染症研究所によりますと、今年報告された患者では、ほぼ半数の人が、ワクチンの接種歴がありませんでした。

 川崎市健康安全研究所の岡部所長によりますと、特に注意が必要なのは、定期接種を受け終わっておらず、感染するリスクが高い小学校入学前の乳幼児だということで、定期接種は必ず受けることが大切だということです。

 また、妊婦が感染すると、重症化しやすく流産や早産の恐れがあることから、特に妊娠を希望する女性は、免疫が十分あるかなどを医療機関と相談した上で、必要な場合には、接種を受けることが重要だと指摘しています。

 一方、すでに妊娠中の女性は、ワクチンを打つことができないため、患者が発生した地域を訪れるのは避けたほうがよく、身近に発熱や発疹の症状がある人がいる場合は近寄らないようにしてほしいと話しています。

 2016年9月13日(火)

 

■8月の熱中症搬送者2万1383人 高齢者が半数を占め、死者24人

 総務省消防庁は13日、熱中症のため8月に全国で2万1383人が救急搬送されたと発表しました。前年の8月に比べ10・6パーセント減の2542人少なくなりましたが、高気圧に覆われ猛暑が続いた九州地方では全県で前年の搬送者数を上回りました。

 全国の搬送者のうち、65歳以上の高齢者が、ほぼ半数を占めました。

 搬送先で死亡が確認されたのは24人。3週間以上の入院が必要な重症は469人、短期の入院が必要な中等症は7131人でした。

 都道府県別では、大阪府が1509人で最も多く、愛知県1267人、兵庫県1185人と続きました。

 人口10万人当たりの搬送者数は、熊本県の39・00人が最多で、次いで鹿児島県35・97人、長崎県31・57人。

 また、総務省消防庁は13日、9月5日~11日の1週間に、全国の1460人が熱中症のために救急搬送されたとの速報値を発表しました。台風に伴う雨の影響で気温が上がらなかった地域が多く、前週の1436人から微増にとどまりました。搬送時に亡くなった人はいませんでした。

 集計によると、3週間以上の入院が必要な重症は19人、短期入院が必要な中等症は408人でした。65歳以上の高齢者が、44・9パーセントを占めました。

 都道府県別でみると、東京都が107人で最も多く、埼玉県の104人、大阪府の83人と続きました。

 消防庁は、9月末ごろまでは気温が高い日もあるとして、小まめな水分補給などの予防策を取るよう呼び掛けています。

 2016年9月13日(火)

 

■ベトナムから訪日の女性、ジカ熱感染を確認 昨年の流行以降、国内で8例目

 厚生労働省は12日、日本に仕事で訪れているベトナム在住の外国籍の40歳代女性が、ジカ熱(ジカウイルス感染症)に感染していることが確認されたと発表した。

 中南米を中心に流行が広がった昨年5月以降、国内で確認されたのは8例目。アジアで感染したとみられる患者が国内で確認されたのは、初めてです。

 厚労省によりますと、ジカ熱への感染が確認されたのはベトナム在住の40歳代の外国籍の女性で、9月8日に仕事で来日し、東京都内のホテルに滞在。5日から頭痛などの症状がありましたが、来日後に発疹や結膜炎、関節痛などの症状が出たため、9日に都内の医療機関を受診し、10日に感染が確認されたということです。

 女性は、「ベトナムで蚊に刺されたが、日本国内では蚊に刺されていない」と話しているということです。現在は、容体が安定しているといいます。厚労省は、女性の具体的な国籍や妊娠の有無は明らかにしていません。

 厚労省は、「今のところ国内で蚊を媒介して感染が広がるリスクは低い」とした上で、感染が拡大しているシンガポールや中南米などに渡航する際には、引き続き注意するよう呼び掛けています。

 ジカ熱は、主に中南米を中心に流行が広まっていましたが、8月末以降、シンガポールで300人以上の感染が確認されるなど、日本により近い場所での感染拡大に専門家は警戒を呼び掛けています。

 厚労省によりますと、アジアでジカ熱の流行地域として挙げられているのは、シンガポール、タイ、ベトナム、フィリピン、インドネシア、マレーシアの6カ国に上っています。

 ジカ熱の問題に詳しい神奈川県衛生研究所の高崎智彦所長は、「これまで中南米地域からウイルスが持ち込まれるケースはあったが、日本との距離が近い東南アジアからウイルスが持ち込まれたことで国内で感染が広まるリスクが高まっている」と指摘しています。

 その上で、「流行地域から帰国した人は日本国内でも2週間ほどは蚊に刺されない対策を行い、発熱や発疹などの疑わしい症状が出た場合、早期に医療機関を受診することが重要だ」と指摘しています。

 2016年9月12日(月)

 

■タイの首都バンコクで新たに21人がジカ熱に感染 通勤の日本人が多い中心部

 タイの首都バンコク中心部のサトーン地区で、ジカ熱(ジカウイルス感染症)の感染者が21人確認されました。タイのメディアが11日、保健省の話として報じました。

 同地区にはタイ有数のオフィス街があり、多くの日本人も通勤しています。在タイ日本大使館によると、日本人が感染したとの情報は入っていません。

 タイでは2012年に初めてジカ熱の感染者が確認され、今年前半だけでバンコクなどで約100人の感染者が報告されています。

 タイメディアによると、今回感染が確認された21人のうち1人は妊婦で、シンガポールへの渡航歴がある夫から感染した疑いがあります。バンコクでこれだけまとまった人数のジカ熱感染者が確認されたのは、初めてだということです。

 シンガポールでは、8月27日に初の国内感染が確認された後、ジカ熱の感染者が次々と増え、現在は300人以上の感染者が出ています。

 日本の外務省によると、アジアでジカ熱の発生が確認されているのはタイのほか、シンガポール、マレーシア、インドネシア、フィリピン、ベトナム。

 一方、欧州疾病予防管理センター(ECDC)は、タイについて「過去3カ月に広範な感染」、インドネシアとベトナムについては「過去3カ月に散発的な感染」があったとしています。

 2016年9月12日(月)

 

■iPS細胞、腫瘍のリスク減らす技術を開発 京大iPS細胞研究所

 体のさまざまな組織になるiPS細胞(人工多能性幹細胞)から新たな組織をつくる際に、腫瘍ができるリスクを減らす技術を京都大学の研究チームが開発しました。iPS細胞を使った再生医療の安全性を高める技術として期待されています。

 iPS細胞を体のさまざまな組織に変化させる際、元のiPS細胞の一部がわずかでも変化せずに残ると腫瘍の原因になる恐れがあり、こうした細胞を高い精度で取り除くことが再生医療の実用化に向けた課題となっています。

 京都大学iPS細胞研究所の齊藤博英教授(生命工学)を中心とする研究チームは、iPS細胞の中だけで働く「マイクロRNA-302」という小さな分子に注目し、この分子がない時だけ細胞を緑色に光らせる物質を人工的に作りました。そして、この物質をiPS細胞に入れて神経細胞に変化させる実験を行ったところ、完全に神経細胞に変化した部分は緑色に光り、iPS細胞が変化せずに残された部分は光らなかったということです。

 さらに、研究チームでは、この違いを目印にして、薬剤耐性にかかわる遺伝子を組み込んだ薬剤を使って、変化し切れずに残ったiPS細胞を高い精度で取り除く方法も開発したとしています。特殊な装置が必要な従来の方法と比べて、簡便だといいます。

 齊藤教授は、「この技術を利用して、iPS細胞から安全な細胞を作り、将来の臨床応用に役立てたい」と話しています。

 研究成果は9日、イギリスの科学誌サイエンティフィック・リポーツに発表されました。

 2016年9月12日(月)

 

■はしかと日本脳炎のワクチンが不足 患者急増に供給が追い付かず

 関西国際空港などを中心に感染が拡大しているはしか(麻疹)を予防するワクチンの供給不足が、複数の医療機関で起こっていることが8日、わかりました。はしかには特効薬がないためワクチンで予防するしかありませんが、このままだと接種が難しくなる恐れがあります。

 関係者によると、不足しているのははしかの予防接種として一般的に使われているMR(麻疹風疹混合)ワクチンと、蚊が媒介する感染症である日本脳炎を予防する日本脳炎ワクチン。すでに一部の医療機関では在庫不足のため接種が止まったり、接種時期の調整を迫られたりしています。

 宇都宮市の小児科クリニックでは9月に入り、MRワクチンの供給が停止。クリニックの在庫をやり繰りしていますが、「新規の予約を受けるのは難しい状態だ」といいます。

 東京都内の小児科医も、「いきなり手に入らなくなって驚いている。はしかが流行してきているので未接種の乳児への接種は優先したいが、このままだと時期が後倒しになるかもしれない」と危機感を募らせています。

 関係者によると、MRワクチンは生産する阪大微生物病研究会、武田薬品、北里第一三共の国内3社のうち、北里第一三共の製造が止まっており、今年8月ごろから品薄状態に。2012年から風疹(三日ばしか)が流行したことを受けて成人のMRワクチン接種に補助を出す自治体が増加したことに加え、今夏のはしか感染拡大で成人の需要も増し、追い打ちをかけたとみられます。

 一方、日本脳炎ワクチンは、乳児が相次いで日本脳炎に感染したことを受け、接種時期を従来の3歳から前倒しする自治体や医療機関が増加。日本脳炎ワクチンを生産する北里第一三共、化血研、阪大微生物病研究会、デンカ生研の国内4社の供給が、需要に追い付かない状態となっています。

 厚生労働省予防接種室は、「現状を注意深くみていく」としています。

 2016年9月11日(日)

 

■好き嫌いの感情、人工知能でコントロール PTSDの治療法開発に期待

 人工知能(AI)に人の脳の活動の様子を学習させることで、「好き」や「嫌い」といった感情をコントロールことができたとする研究成果を、京都にある研究所などのチームが発表しました。心的外傷後ストレス障害(PTSD)などの治療法の開発につながる可能性があるとしています。

 研究を行ったのは、京都府精華町にある国際電気通信基礎技術研究所(ATR)などのチームです。

 チームでは、まず男女12人の参加者に大量の顔写真を次々と見せて、好きか、嫌いか、1から10までの10ポイントで評価してもらいました。そして、その際の脳の活動の様子をfMRIという特殊な機器を使って観察し、「好き」という感情を抱いた時に現れる脳の活動の画像パターンを見付け出せるよう人工知能に学習させました。

 続いて、参加者に自由に物事を考えてもらい、「好き」を示す画像パターンが多く現れるように人工知能を使って参加者を誘導しながら、先の10ポイント評価で中くらいに好きだと判断した人の顔を見せました。

 すると、その人に対する好きだという感情の程度が平均で0・5ポイント上昇し、同様に嫌いと感じる際の画像パターンで実験したところ、嫌いの程度も0・4ポイント増えたということです。

 研究を行ったATRの脳情報通信総合研究所の川人光男所長は、「人工知能技術を使って重要な社会認知機能である顔の好みをコントロールできた。人の脳の活動パターンに影響を与える技術で、倫理的な課題も慎重に検討する必要があるが、この技術を応用することでPTSDや強迫性障害、恐怖症、慢性疼痛、自閉症、うつなどの疾患の治療法の開発につながると思う」と話しています。

 2016年9月11日(日)

 

■妊娠中の喫煙環境、子供の行動に影響 愛媛大など発表

 愛媛大大学院医学系研究科の田中景子助教らの共同研究チームはこのほど、妊娠中に母親が喫煙したり職場で受動喫煙したりした幼児は、かんしゃくを起こしたり集中力に欠けたりする割合が高くなる可能性があるとする研究成果をまとめました。

 田中助教によると、出生前後に喫煙にさらされた環境と子供の行動的問題の関連についての疫学研究は、日本で初めて。オランダの学術誌に発表しました。

 研究チームは2007年から、九州・沖縄の母子を対象に食事や生活習慣などの追跡調査を実施。1200組を対象に、妊婦と出生後1歳までの子供の喫煙・受動喫煙が、5歳時での行動的問題に関連するか分析しました。

 田中助教によると、妊娠中に喫煙していた母親の子供は、非喫煙者と比べ、よくかんしゃくを起こす、他の子をいじめる、うそをつくなどの行為問題がある割合が93パーセント増加しました。気が散りやすく集中できない、長い間じっとしていられないなど多動問題は、89パーセント多くなりました。

 母親が職場で受動喫煙していた場合は、行為問題がある割合が54パーセント、多動問題がある割合が69パーセント増えました。妊婦の家庭内での受動喫煙との有意な関連性は、認められませんでした。

 田中助教は、「受動喫煙した場所まで分析した研究は初めて。家庭より職場のほうが喫煙者が多いため影響を受けやすいなどの要因があるのかもしれない」と説明しています。

 2016年9月10日(土)

 

■はしかワクチン、乳幼児の定期接種分の確保を要請 厚労省が医療機関に

 関西空港(大阪府)や幕張メッセ(千葉市)を中心に、はしか(麻疹)の感染が広がり、ワクチンの接種を希望する人が増えていることから、厚生労働省は、就学前の乳幼児を対象にした定期接種のワクチンが不足する恐れがあるとして、都道府県などを通じ医療機関などに、定期接種に必要な量のワクチンを事前に確保するよう文書で要請しました。

 厚労省などによりますと、8月以降、関西空港の従業員や空港の利用者などおよそ40人に、はしかの感染が確認されました。このため、大阪府内の20歳代から30歳代を中心に、ワクチン接種を希望する人が増えているということです。

 厚労省は、今後も感染が拡大して、ワクチン接種を希望する人がさらに増えると、就学前の乳幼児を対象に1歳と小学校入学前の2度行っている定期接種のワクチンが不足する恐れがあるとして、全国の自治体や医療機関などに「定期接種が確実にできるよう配慮すること」「ワクチンの予約は必要な本数だけすること」を要請。卸販売業者に対しても、必要量を供給してワクチンの偏在が起きないよう配慮を求めました。

 9日時点で全国的には定期接種用の十分な在庫がある一方、8月以降の各地の感染拡大を受け、接種したことがない人らの接種の需要が増加。一部の医療機関や地域から入手が難しくなっているとの声も寄せられているといいます。

 厚労省は、感染拡大を防ぐには、免疫のない乳幼児への定期接種を計画通りに進めることが重要だとして、今後、自治体のワクチンの接種状況に応じて、メーカー側と供給量を調整していくことにしています。

 はしかに感染すると、治療は対症療法以外ありません。ワクチンを2回接種すれば、95パーセントは免疫ができますが、国内での1歳児のワクチン接種率は約50パーセントしかなく、感染の可能性がある人は全国に約300万人いると考えられています。

 2016年9月10日(土)

 

■他人のiPS移植の臨床研究を承認 大阪大審査委、条件付きで

 他人に移植しても拒絶反応が起きにくい特殊なiPS細胞(人工多能性幹細胞)を使って、重い目の病気の患者を治療する「他家移植」と呼ばれるタイプの世界初の臨床研究について、大阪大学に設置された再生医療を審査する委員会は8日、条件付きで計画内容を承認しました。

 今後、国の審議会が認めれば、来年前半にも世界初の臨床研究が実施されることになります。

 この臨床研究は理化学研究所や京都大学、大阪大学、神戸市立医療センター中央市民病院の4施設からなるチームが計画しているもので、加齢黄斑変性という重い目の病気の患者5人に、拒絶反応が起きにくい特殊なiPS細胞から作った目の網膜の組織を移植し、視力を回復させようというものです。

 特殊なiPS細胞は、京都大学が日本人の中に一定の割合でいる特殊な免疫のタイプの人から細胞を提供してもらい、すでに作っており、細胞培養によって多くの患者に供給できることから、治療のコストを大幅に下げ、再生医療の普及につながると期待されています。

 この臨床研究について、法律に基づいて大阪大学に設置された専門家委員会は8日、患者に対して研究内容を説明する文書により詳細なデータを盛り込むことなどを条件に計画内容を承認しました。

 委員長の早川堯夫(たかお)・近畿大客員教授は、「計画はデータの蓄積の上に立っている。条件は比較的軽微な手直しで、大きな変更は必要ない」と説明しました。

 今後は国の審議会で審査が行われる予定で、チームでは早ければ、来年前半にも1例目の手術を実施したいとしています。

 2016年9月10日(土)

 

■20歳以上の4人に1人、本気で自殺を考えた経験あり 日本財団が4万人調査

 日本財団(笹川陽平会長)は7日、全国の20歳以上の男女約4万人を対象とした自殺に関する大規模意識調査の結果を公表しました。

 4人に1人に当たる25・4パーセントが「過去に本気で自殺したいと思ったことがある」と回答。また、全体の6・8パーセントが「過去に自殺未遂をしたことがある」と答えており、過去1年以内に自殺未遂を経験した人は53万人超との試算結果も明らかにしました。

 2012年に3000人を対象にして内閣府が実施した調査でも、成人男女の23・4パーセントが「自殺したいと思ったことがある」と回答。自殺者数は減少傾向にあるものの、依然として社会に自殺リスクが潜む実態が浮き彫りになり、日本財団は「社会全体の課題として自殺対策に取り組むべきだ」と提言しています。

 調査は今年8月2日~9日、インターネットを通じて全都道府県の男女を対象にして実施。有効回答は4万436人分で、実際の年代別人口データを基に調整したものを回答結果としています。

 これまでの人生で「本気で自殺したいと思ったことがあるか」との質問には、25・4パーセントが「ある」と回答。20歳代は34・9パーセント、30歳代は34・2パーセントで、40歳代30・9パーセント、50歳代23・9パーセント。65歳以上は13・5パーセントとなり、若い世代ほど自殺リスクが高い結果となりました。全体では、女性(28・4パーセント)が男性(22・6パーセント)を上回りました。

 「過去1年以内に自殺未遂をした」と答えたのは男性0・5パーセント、女性0・6パーセント。2015年国勢調査の結果を基にした試算では、全国の53万人程度(男性は26万4000人、女性27万1000人)が1年以内に自殺未遂をしたことになるといいます。

 「過去1年以内に自殺未遂をした」人の81・4パーセントは、2つ以上の原因があったと回答。多かったのは健康問題や、家族からの虐待、家庭内暴力、生活苦、アルコール依存症でした。

 一方、「過去1年以内に自殺未遂をした」人の51・1パーセント、「過去に本気で自殺したいと思ったことがある」人の73・9パーセントが、誰にも相談していませんでした。

 日本財団の笹川会長は、「心の中で死を意識している人がこれだけいる。社会として対処する仕組みをつくる必要がある」と話しました。

 警察庁と内閣府によると、2011年まで14年連続で3万人を超えた国内の自殺者数は減少傾向にあるものの、2015年の自殺者数は2万4025人で、毎日65人の命が失われている計算になります。今年4月には、自殺防止の計画策定を地方自治体に義務付けた改正自殺対策基本法が施行されています。

 2016年9月8日(木)

 

■自閉症を発症するメカニズム遺伝子異常から解明 九州大の研究チーム

 自閉症を発症するメカニズムの一端を遺伝子異常の側面から解明したと、九州大学生体防御医学研究所の中山敬一主幹教授(分子生物学)らの研究チームが7日付で、イギリスの科学誌ネイチャー電子板に発表しました。

 自閉症の原因遺伝子がタンパク質に作用し、神経発達の遅延を引き起こす過程を解明。症状を抑制する治療や薬の開発につながると期待されます。

 自閉症は先天性の脳の発達障害で、他人との意思疎通が苦手だったり、物事を計画的に進められなかったりすることがあります。100人に1人が発症し、文部科学省によると、自閉症と診断された全国の通常学級に通う公立の小中学生は、約1万4000人に上るとされます。

 これまでの研究では、患者の多くが胎児の段階で半欠損した遺伝子「CHD8」を持ち、何らかの作用で自閉症につながることはわかっていました。

 中山教授らは、CHD8が半欠損したマウスを人工的につくり、自閉症を発症させて行動を観察。正常なマウスに比べ、不安を強く感じたり、仲間に関心を示さなかったりする自閉症の傾向がみられたといいます。次にさまざまな遺伝子の働きを調べた結果、半欠損した遺伝子CHD8が神経の発達を制御するタンパク質「REST」を異常に活性化させ、神経発達の遅延を引き起こすことがわかりました。

 自閉症は遺伝子に原因があるため、現在の医療では根本的な治療はできないといわれています。中山教授は、「タンパク質の働きを抑制して症状を改善させる治療法や薬の開発につなげていきたい」としています。

 金沢大学子どものこころの発達研究センターの東田陽博特任教授(神経化学)は、「自閉症にはほかにも原因遺伝子があり、すべてに当てはまるわけではないが、タンパク質への作用がわかったのは画期的」と話しています。

 2016年9月8日(木)

 

■ジカ熱、症状なくても半年は避妊具使用を WHOが感染防止の勧告を強化

 世界保健機関(WHO)は6日、ジカ熱(ジカウイルス感染症)が流行する地域に渡航した人は、少なくとも半年は性行為の際には避妊具を使うよう勧告しました。症状が出ていなくても、予防措置として必要だといいます。

 8月には、ジカ熱を発症してから半年後のイタリア人男性の精子から、ジカ熱のウイルスが発見されています。

 WHOは6月の勧告では、ジカ熱の感染地域から帰国した未発症の男性のみに、予防措置として2カ月間、性行為の際には避妊具を使うか、性行為を控えるよう呼び掛けていました。しかし、症状が出ていない男性や女性からそれぞれ性パートナーに感染した証拠が発見されたとして、勧告内容を見直して厳格化しました。

 ジカ熱は、ウイルスを媒介する蚊に刺されることが主な感染経路で、体液を通じても感染が広がります。

 ジカ熱に感染した多くの人は発症しないか、発症しても軽い発熱や湿疹、筋肉痛、関節痛などの症状で治まります。一方で、妊娠中の女性が感染すると、胎児が小頭症になる恐れがあります。

 ブラジルでは集団感染が発生したため、リオデジャネイロ・夏季オリンピック開催について懸念もありましたが、オリンピックの参加選手と観客の感染報告は今のところありません。

 WHOによると、11カ国で性感染の症例が報告されています。また、60カ国・地域が蚊に刺された感染者について報告しています。

 「多くの証拠が示しているのは、ジカウイルスが性行為によって感染可能であること、そしてその頻度がこれまで考えられていたより高いということだ」と、WHOは発表した感染防止の勧告で指摘しています。

 2016年9月7日(水)

 

■高齢者の性交渉、男性に心血管系疾患のリスク 女性の健康には恩恵

 回数の多い、満足のいく性的活動は高齢男性に心血管系疾患のリスクをもたらす一方で、高齢女性はオーガズムを感じる性行為を定期的に行うことで特定の健康上の問題を実際に予防できる可能性があるとの研究結果が6日、発表されました。

 大規模調査に基づく今回の研究論文の主執筆者で、アメリカのミシガン州立大学のフイ・リュウ准教授(社会学)は、「これは、性交渉がすべての人に同一の健康上の恩恵をもたらすという、広く支持されている仮説に異を唱える結果だ」と語っています。

 研究チームは、連邦政府資金による全米調査プロジェクトの対象者で47~85歳の2204人の調査データを分析。研究結果をアメリカの専門誌「保健・社会行動ジャーナル」に発表しました。

 研究チームによると、女性の調査対象者で「性交渉が極めて気持ちのよい、満足感が得られるものだとわかった」人々は、性交渉での満足感が少ない人々に比べて、高血圧症になる確率が低かったといいます。

 リュウ准教授は、「これについては男性より女性によく当てはまる可能性がある」「なぜなら、男性はパートナーとの関係の質に関係なく、パートナーから助けを受けられる可能性が女性より高いが、女性の場合、そのような恩恵をパートナーから得られる可能性があるのは良質の関係にある場合に限られるからだ」と説明しています。

 また、「オーガズムの間に分泌される女性の性ホルモンも女性の健康に恩恵をもたらす可能性がある」と指摘しています。

 その一方で、性交渉を週1回以上行っている男性は、心血管系疾患のリスクが通常より高くなりました。

 リュウ准教授は、「特筆すべきことに、性交渉を週1回以上行うことで、性的に不活発な高齢男性の2倍近い心血管系疾患リスクが高齢男性にもたらされることが明らかになった」、また「パートナーと極めて気持ちのよい、満足感が得られる性交渉をしていたという高齢男性は、そうではない男性よりも心血管系疾患リスクが高かった」としています。

 さらに、「高齢男性は、医学的および情緒的な理由から、オーガズムに達する困難が若い男性よりも大きいため、絶頂に達するために頑張りすぎて疲労の度合いがより高くなる上に、心臓血管系に加わるストレスがより高くなる可能性がある」と説明し、「男性ホルモンの一種であるテストステロンの濃度と、性欲を向上させる薬の使用が、男性の心臓血管の健康に悪影響を及ぼす可能性がある」と指摘しています。

 2016年9月7日(水)

 

■引きこもり、全国で推計54万人 人数は減少し、期間は7年以上が急増

 学校や仕事に行かず半年以上にわたり、家族以外とほとんど交流せずに自宅に閉じこもっている、いわゆる引きこもりについて内閣府が行ったアンケート調査によりますと、全国で引きこもりの人は推計でおよそ54万人と、前回、5年前の調査より減る一方、引きこもりが長期化する人が増えていることがわかりました。

 この「若者の生活に関する調査」は、内閣府が昨年12月に、全国の15歳から39歳までの男女5000人とその家族を対象にアンケート形式で行ったもので、62・3パーセントに当たる3115人から回答を得ました。

 調査では、「ふだんどのくらい外出するか」という質問に対し、「自室からほとんど出ない」や「趣味の用事の時だけ外出する」などと答えた人のうち、病気の人などを除いた人を広い意味での引きこもりと定義しています。

 調査結果によりますと、回答者の中で引きこもりに当たる人の割合は1・57パーセントで、このうち男性が63・3パーセントを占めています。内閣府は、調査を基に推計すると、全国で引きこもりの人は54万1000人とみており、5年前の前回調査より15万5000人減りました。

 年齢は、20歳~24歳と25歳~29歳が24・5パーセントで最も多く、30歳~34歳と35歳~39歳が20・4パーセントで続きました。

 一方、引きこもりになってからの期間については、「7年以上」と答えた人が前回調査のおよそ2倍の34・7パーセントに上り、長期化が進んでいる深刻な実態も浮き彫りとなりました。

 引きこもりが始まった時期については、20歳~24歳が34・7パーセントで最も多く、15歳~19歳が30・6パーセント、14歳以下が12・2パーセントでした。35歳~39歳も10・2パーセントと前回の5・1パーセントを上回り、比較的年齢が高くなってから引きこもる人が増えました。

 引きこもりが始まった理由については、「不登校」「職場になじめなかった」などの理由が挙がりました。

 就労経験については、「正社員だったことがある」と答えた人が27パーセントで、「契約社員や派遣社員などの非正規雇用だったことがある」と答えた人が35・1パーセント、「働いた経験がない」と答えた人が27パーセントに上りました。

 就職や進学を希望する人が60パーセントを超えた一方で、実際に就職活動をしている人は30パーセントに達しませんでした。

 家の生計を立てているのは、父親が65・3パーセントで、母親が22・4パーセント。生活保護などを受給している人は、4・1パーセントにとどまりました。

 内閣府は、「相談窓口の設置などにより、人数的には改善があったように思われるが、長期間引きこもりが続いている人への専門的な取り組みが必要で、訪問支援などの充実を図りたい」としています。

 専門家によれば、引きこもりは現在、長期化とともに、高年齢化しているといいます。一方、内閣府の調査対象は15歳から39歳に限定されており、40歳以上を含む、ひきこもりの全体像が明らかにはなっていません。前回の調査では、年齢別で23・7パーセントと最多だった35歳~39歳の世代の人たちが今回の調査では対象から外れており、そのまま引きこもっている可能性もあります。対象を広げ、実態を把握する取り組みが求められます。

 引きこもったまま高年齢化すると、自分の収入がなく、親の年金などに頼って生活していた人が、親の亡き後、たちまち生活に困窮することもあります。生活保護などの公的支援が必要になる可能性もあり、社会全体で取り組まなければならない課題を含んでいます。

 2016年9月7日(水)

 

■産婦人科と産科、過去最少を更新 25年連続減、厚労省が調査

 昨年10月時点で産婦人科や産科を掲げていた全国の病院は、前年比8施設減の1353施設であったことが、厚生労働省の2015年医療施設調査でわかりました。

 現在の形で統計を取り始めた1972年以降、25年連続の減少で、過去最少を更新しました。産婦人科と産科を合わせた施設数は、最も多かった1972年の2855施設と比べ半数以下となりました。

 小児科を掲げていた全国の病院も、前年より14施設少ない2642施設で、22年連続で減少しました。現在の形で統計を取り始めた1973年以降、1990年の4119施設をピークに、1994年から減少が続いています。

 厚労省は、「少子化による出生数の減少の影響があるほか、夜間・休日対応が多いなど勤務環境が厳しく医師のなり手が減っている」と分析し、産婦人科や産科については、「施術を巡って患者側から訴えられる訴訟リスクへの懸念も背景にある」との見方を示しています。

 2016年9月6日(火)

 

■中国や日本を襲う台風、海面水温の上昇で強大化  イギリスの科学誌で研究発表

 中国、台湾、日本、朝鮮半島を襲う台風は近年の海面水温上昇により勢力が強まってきており、今後さらに激しさを増すとみられるという研究成果が5日、イギリスの科学誌ネイチャー・ジオサイエンスに発表されました。

 科学者らはこれまで、太平洋北西部における台風の強度と頻度の変化を特定するのに苦戦してきました。さらに難しかったのは、それらの変化に地球温暖化が果たす役割を正確に突き止めることでした。

 アメリカを拠点とする執筆者の梅偉氏と謝尚平氏によると、台風研究で最も広く用いられているアメリカ海軍合同台風警報センター(JTWC)と日本の気象庁(JMA)のデータからは相反する傾向が現れていました。

 しかし、入手可能な記録データについて方法論の違いを補正した結果、単一の明確な傾向が見いだされ、「この37年間で、東アジアおよび東南アジアを襲った台風の強度は12~15パーセント増大している」といいます。

 こうした台風強度の増大は海面水温の上昇と関連していることが、データで示されました。海面水温上昇は気候変動に起因する可能性があるものの、これはまだ証明されていません。

 研究チームによると、地球温暖化の原因となる温室効果ガスを人間が排出し続けた場合の海面水温上昇の予測は、「中国本土東部、台湾、日本、朝鮮半島を襲う台風が今後、さらに強度を増すことを示唆している」、「激しい台風によって相当大きな損害が出ることを考えると、これは、この地域の人々や資産に対する脅威が高まることを示している」といいます。

 また、研究チームは、「これら沿岸地域の人口は急速に増大しており、海水面も上昇を続けている」と指摘しました。

 2015年12月、気候変動の進行阻止を目標とする「パリ協定」が採択されました。気候変動は、暴風雨の強大化、干ばつの長期化、海水面上昇による陸地の水没などを引き起こす恐れがあります。

 気候変動の進行阻止は、化石燃料の使用で発生する温室効果ガスの排出量を抑制することで達成されると考えられます。

 2016年9月6日(火)

 

■熱中症による搬送者が半減、1346人 前週、台風が影響

 総務省消防庁は6日、8月29日~9月4日の1週間に全国の1346人が熱中症で救急搬送されたとの速報値を発表しました。前週の確定値の2892人から半数以下となりました。

 台風の影響で雨が降った地域が多く、気温が上がらなかったためとみられます。搬送時に亡くなった人はいませんでした。

 集計によると、3週間以上の入院が必要な重症者は20人、短期の入院が必要な中等症は410人。65歳以上の高齢者が48・2パーセントを占めました。

 都道府県別でみると、東京都が99人で最も多く、愛知県の94人、埼玉県の86人と続きました。

 総務省消防庁による8月30日の速報値の発表では、8月22日~28日の1週間には全国の2821人が熱中症で救急搬送されました。前週の確定値の5668人からほぼ半減しました。

 台風などの影響で雨が降った地域が多く、気温が上がらなかったためとみられます。搬送先で2人の死亡が確認されました。

 集計によると、3週間以上の入院が必要な重症者は55人、短期の入院が必要な中等症は962人でした。65歳以上の高齢者が52・3パーセントを占めました。

 都道府県別でみると、大阪府が282人で最も多く、兵庫県の189人、愛知県の183人と続きました。死亡したのは大阪府、山口県の各1人。

 2016年9月6日(火)

 

■不妊治療を対象にした保険商品、日生が10月から販売へ 出産時には祝い金も

 健康保険の対象外で高額な不妊治療にかかる費用を保障する女性向け医療保険「シュシュ」が、生命保険業界では初めて、10月2日から販売されることになりました。

 不妊治療は健康保険の対象ではないため、1回当たりの治療に30万~40万円程度の費用がかかる場合があるなど、経済的な負担が課題となっています。

 こうした中、業界最大手の日本生命は、女性ががんや脳卒中などの病気にかかった場合に備える医療保険の保障の内容に、業界で初めて不妊治療を受けた際、給付金を支払うことを盛り込み、10月2日から販売することにしました。

 具体的には、保険の対象となる人が体外受精か、顕微鏡を使う顕微授精の治療を受けた際に、1回につき5万円から10万円の給付金を最大12回、受け取ることができるということです。不妊治療の有無にかかわらず、出産時には祝い金も受け取れ、1人目の10万円から徐々に増え、5人目以降になると100万円受け取れます。保険期間は10年~20年で、満期金は最大200万円。

 卵子を採取するための排卵誘発には公的な健康保険が適用されますが、体外受精や顕微授精の特定不妊治療は対象外。不妊治療を受ける夫婦は増加しており、日本生命は需要があると判断しました。

 保険の対象となるのは16歳から40歳までの女性で、保険料は年齢によって月払いの場合で9500円台から1万800円台となります。

 ただ、保険を成り立たせるため、給付金を受け取ることができるのは保険に加入して2年がたった後からだということです。

 不妊治療を対象にした保険商品の取り扱いは、今年4月に金融庁が保険業法の施行規則を改めて解禁したもので、今後、業界全体に広がるか注目されます。

 2016年9月5日(月)

 

■シンガポールのジカ熱感染者215人に拡大 ウイルスはアジア系統

 シンガポール政府は3日、国内におけるジカ熱(ジカウイルス感染症)の感染者が215人に上ったと発表しました。同国の専門家らによると、国内感染者のウイルス株はブラジル由来ではなくアジア圏のものだといいます。

 シンガポール保健省とシンガポール国家環境庁は3日夜の共同声明で、新たに国内のジカ熱患者26人が確認されたと発表。このうち24人は、国内での地域内感染が初めて確認されたアルジュニード・クレセント地区と関連があるといいます。残る2人の感染ルートは、明らかにしていません。

 シンガポール国内でジカ熱の地域内感染が初めて確認されてから1週間が経過する中、同国の専門家らは、国内ジカウイルスの遺伝子配列を突き止めたとの声明を発表しました。ジカウイルスはアジア系統に属し、すでに東南アジアで拡散しているウイルス株から変異した可能性があるといいます。また、感染ルートが不明な患者2人が感染したジカウイルスについても、南米系統のものではないと結論付けています。

 一方、マレーシア政府は3日、同国初となるジカ熱の国内感染とみられる事例が報告され、感染者の61歳男性が心臓関連の合併症で死亡したと発表しました。保健省によると、死亡した男性は同国東部ボルネオ島サバ州の住民で、心疾患、高血圧などのため健康状態が悪化していました。

 男性に近年の国外渡航歴がなかったことから、保健省は国内で感染した可能性が高いとしています。保健省のヌール・ヒシャム・アブドラ保健局長は3日午後、「男性の死因はすでに発症していた病気だったが、詳細な調査の結果はまだ出ていない」と国営ベルナマ通信に語りました。

 2日前の9月1日には、保健省が同国で初めてとなるジカ熱発症の疑いのある事例が見付かったと発表しており、熱帯に位置する同国でネッタイシマカが媒介するジカ熱の感染拡大への懸念がさらに高まっています。

 世界保健機関(WHO)によると、主に熱帯や亜熱帯に生息するネッタイシマカや、日本にも生息するヒトスジシマカが媒介するジカ熱は、これまでに中南米を中心に世界72の国や地域に広がっています。

 2016年9月5日(月)

 

■はしか感染、関西空港従業員以外にも拡大 大阪府内の患者35人に

 8月以降、関西空港で働く従業員にはしか(麻疹)の感染が相次ぐ中、新たに医療関係者と空港の対岸にある商業施設を訪れた男性1人の感染も確認されました。一連の感染の拡大で、空港の従業員以外の感染が確認されたのは初めてでです。

 大阪府は、緊急の会議を開いて対策を検討することにしています。

 関西空港では、8月17日以降、従業員31人がはしかと診断されており、大阪府は4日、新たに4人の感染が確認されたと発表しました。

 新たに感染が確認されたのは、関西空港で働く20歳代の女性従業員1人と、医療関係者2人、それに大阪府内に住む30歳代の男性1人です。

 このうち医療関係者は、40歳代の男性医師と40歳代の男性救急隊員で、はしかの感染が確認された従業員の診察や搬送をしたことがあります。30歳代の男性は8月27日に発症し、翌28日に空港の対岸にある大阪府泉佐野市のショッピングセンター「りんくうプレミアム・アウトレット」と周辺施設を訪れたということです。

 大阪府によりますと、8月以降、府内ではしかと診断された人はこれで35人となります。

 一連の感染の拡大で、関西空港の従業員以外の感染が確認されたのは今回が初めてで、大阪府は詳しい感染ルートを調べるとともに、7日に大阪市や堺市、それに和歌山県の担当者などを集めた緊急の会議を開き、対策を検討することにしています。

 はしかは、高熱などが続き全身に赤い発疹が出るのが特徴で、重症化すると最悪の場合、死亡することもあります。また、空気感染で広がるため感染力が、非常に強いのも特徴です。

 感染症対策に詳しい大阪府済生会中津病院の安井良則部長は、「はしかは、最も感染力が強い感染症といわれている。最近は、はしかウイルスが海外から持ち込まれるケースがほとんどで、国際空港は、感染の危険性が高い場所だ。1日何万人もの人が利用する空港で、はしかが出ると、多くの人に感染が広がる恐れがあり、空港で働く人は、ワクチンの接種を確認するなどの対策が必要だ」と話しています。

 2016年9月5日(月)

 

■リオ・オリンピック参加者のジカ熱感染報告はゼロ WHOが発表

 8月にブラジルで開催されたリオデジャネイロ夏季オリンピックの参加選手や観客、そのほかの参加者の間でこれまでにジカ熱(ジカウイルス感染症)の感染者は出ていないと、世界保健機関(WHO)が2日、明らかにしました。

 WHOで感染および公衆衛生緊急事態の責任者を務めるピーター・サラマ氏は、ブラジルの専門家らが9月1日にWHOの緊急委員会に提出した同国の状況に関する詳細なデータについて言及し、「旅行者にも選手らにもジカ熱と確認された発症例はない」と述べました。

 緊急委員会の委員長を務めたデービッド・ヘイマン氏も、オリンピック期間中に医療機関などで診断を受けた全参加選手と観客の中でジカウイルス感染による急性症状があった例はゼロだったという「非常に説得力がある」データがあると述べ、オリンピック閉幕後に自国に戻った選手、観客らからも感染報告は出ていないと語りました。

 オリンピック開催前には、ジカウイルスの感染が最も深刻なブラジルに世界中から観客が集まることで、感染が急速に拡大するのではないかとの懸念が広がっていました。しかしWHOは、オリンピックの開催時期がブラジルの冬季に当たるため、蚊が媒介するジカウイルスの感染リスクは「最小限」に抑えられるとの考えを強調していました。

 一方で、ピーター・サラマ氏は、国際的な感染拡大が続いていることや、ジカ熱と新生児の小頭症などとの関連についての知見がいまだ不十分なことから、「国際的に懸念される公衆衛生の緊急事態」の維持をチャンWHO事務局長に勧告し、チャン氏は受け入れました。

 WHOによると、ジカ熱は、中南米を中心に72の国や地域に広がっています。

 2016年9月4日(日)

 

■国内初、ジカウイルスの分離に成功 国産ワクチン開発へ

 中南米を中心に流行が続くジカ熱(ジカウイルス感染症)を巡り、千葉県衛生研究所は、患者の血清からウイルスを分離することに国内で初めて成功し、国産ワクチンの開発に向けて、ワクチンメーカーにウイルスを提供する契約を結んだと発表しました。

 蚊が媒介する感染症のジカ熱は、中南米を中心に流行が続いており、ワクチンの開発に向けて、アメリカで臨床試験が始まるなど、世界各国で研究が進められています。

 千葉市中央区にある千葉県衛生研究所は、今年4月20日に1年3カ月ほど滞在したオセアニア太平洋諸島から帰国し、22日にジカ熱への感染が確認された白井市に住む10歳代の男性の血清から、ジカウイルスを分離することに成功したと、2日発表しました。

 研究所によりますと、国内では9月2日の時点で合わせて10人の患者が報告されていますが、ウイルスの分離に成功したケースは初めてだとしています。採取した血清にサルの細胞を混ぜて培養し、ジカウイルスを増殖させたといいます。

 また、研究所は、国産ワクチンの開発に向けて、大阪府と熊本県にある2つのワクチンメーカーに、ウイルスを提供する契約を2日付けで結んだことも明らかにしました。

 千葉県衛生研究所は、「ワクチンの開発だけでなく、診断や治療などに関する研究が、国内でも進むことを期待したい」と話しています。

 2016年9月3日(土)

 

■日本人の肝臓がん、ゲノム解読で6分類 再発率、死亡率に差

 日本人の肝臓がんは、遺伝子の異常の起き方によって6つに分類でき、患者が5年後に再発したり、死亡したりする割合も15パーセントから100パーセントと大きく異なることが、国立がん研究センターなどの研究でわかりました。

 この研究を行ったのは、国立がん研究センターや理化学研究所などのチームです。

 研究チームは、肝臓がんの手術を受けた日本人の患者300人を対象に、手術で切除したがん細胞と患者の正常な細胞との間で全遺伝情報(ゲノム)にどのような違いがあるか詳しく調べました。

 その結果、がん細胞と正常な細胞とでは平均1万カ所に違いがあり、さらに詳しく調べたところ、どの遺伝子に違いが起きているかによって日本人の肝臓がんは、6つの種類に分類できることがわかったということです。

 さらに患者が、5年後、再発したり、死亡したりする割合も6つの種類で大きく異なっており、ARID2と呼ばれる遺伝子などに違いがある場合は100パーセント、MACROD2という遺伝子に違いがある場合は、15パーセントなどとなっていました。

 研究を行った国立がん研究センターの柴田龍弘分野長は、「再発などのリスクが高い患者は、手術後に綿密な検査を行うなどの対応が必要だ。また、どの遺伝子に変化が起きると再発などが起きやすくなるのかもわかったので、それを標的にした新しい治療法の開発につながる可能性がある」と話しています。

 研究チームによると、現在国内で年間約4万人が肝臓がんと診断され、約3万人が死亡しています。部位別がん死亡数では、男性は3位、女性は6位。 肝炎ウイルスの感染が主原因で、B型やC型の肝炎ウイルスの感染から慢性肝炎に、さらに肝硬変を経て、高い確率で肝臓がんを発症します。アルコール性肝障害や脂肪性肝障害から肝臓がんになるケースも増える傾向にあります。

 2016年9月3日(土)

 

■1週間で新たに32人のはしか患者を確認 ワクチン接種など呼び掛け

 国内のはしか(麻疹)の患者がこの1週間で30人以上確認され、国立感染症研究所は、ワクチンの接種など注意を呼び掛けています。

 国立感染症研究所によりますと、先月24日までに全国の医療機関から報告されたはしかの患者数は32人で、昨年1年間のはしかの患者数35人を上回る勢いで増えています。

 こうした中、厚生労働省によりますと、この1週間で新たに32人の患者が確認され、30人は関西国際空港で勤務している人だということです。

 国立感染症研究所によると、はしかは空気感染、飛沫(ひまつ)感染、接触感染などさまざまな経路で感染。免疫を持たない人がウイルスに触れると、90パーセント以上が感染します。10〜14日の潜伏期間を経て38度前後の発熱が2〜4日続いた後、39・5度以上の高熱とともに全身に発疹が現れるのが特徴です。

 肺炎や中耳炎、心筋炎などの合併症を発症することがあり、まれには中枢神経系合併症を起こすことがあり、うち20〜40パーセントに後遺症が残るといいます。また、幼児期に感染後、学童期になってから「亜急性硬化性全脳炎(SSPE)」という、進行性で致死的な中枢神経疾患を起こすこともあります。

 治療は、対症療法以外ありません。ワクチンを2回接種すれば、95パーセントは免疫ができます。しかし、国内での1歳児のワクチン接種率は約50パーセントしかなく、感染の可能性がある人は全国に約300万人いると考えられています。

 初期症状が風邪に似ていることから、風邪として医療機関を受診した場合には、2次感染の恐れもあります。このため、日本環境感染学会は2日、はしかが流行する恐れがあるとして、院内感染を防ぐよう全国の会員に注意喚起を出しました。

 感染力が強いはしかは肺炎や脳炎などを起こす可能性もあり、院内感染で重篤な事態につながる可能性があるため、発疹や発熱など疑いがある患者が来た時には隔離や保健所への報告を徹底し、医師らのワクチン接種なども再検討するよう求めています。

 日本は昨年、世界保健機関(WHO)から「はしかが排除状態にある」と認定されたばかりですが、厚生労働省によりますと、国内で持続的な感染が続けば「排除状態」でなくなる恐れもあるということです。

 国立感染症研究所の砂川富正室長は、「感染経路の調査から、今のところ、感染の広がりは限定的だと考えられる。ただ、はしかは非常に感染力が強いので注意が必要だ。ワクチン接種を進めるとともに、感染者が出た施設に行った人で発熱などの症状がある場合は医療機関に、まず相談の電話をしてほしい」と注意を呼び掛けています。

 2016年9月2日(金)

 

■認知症の原因タンパク質を抑制 新しい治療に期待

 アルツハイマー病の治療法を研究しているアメリカなどの研究チームが、患者の脳に蓄積するタンパク質を抗体を注射することで除去し、認知症の進行を抑えることができたと発表し、今後、新しい薬の開発につながるのではないかと期待されています。

 アルツハイマー病の患者の脳には、「アミロイドベータ」という粘着性のタンパク質が蓄積しており、取り除くことで認知症の進行が抑えられる可能性があるとして、各国で研究が進められています。

 アメリカとスイスの研究チームは、患者のリンパ球の中にできる抗体の遺伝子を組み換えて作った「アデュカヌマブ」という抗体によって、アミロイドベータを取り除ける可能性があることを突き止め、60歳代から80歳代までの初期のアルツハイマー病の患者の協力を得て、抗体を毎月1回、1年間にわたって注射で投与し、効果や安全性を調べました。

 その結果、患者の脳の中のアミロイドベータが減少し、1年後、最も減少幅が大きな患者では健康な人と同じ程度になっているのが、陽電子放射断層撮影(PET)による画像で確認でき、ほとんどのケースで認知症の進行を抑えられたとしています。

 一方で、脳浮腫や頭痛などの副作用で投与を続けられなくなった患者もいたということです。

 研究チームは今後、さらに多くの患者を対象にした臨床試験を欧米とアジアで行いたいとしており、アルツハイマー病の新しい治療や、予防の薬の開発につながるのではないかと期待されています。

 2016年9月1日(木)

 

■シンガポールのジカ熱感染、妊婦含む115人に拡大 感染経路は不明のまま

 シンガポールの保健省によると、8月27日に同国初のジカ熱(ジカウイルス感染症)の国内感染が確認されて以降、31日までに感染者は完治した人も含めて計115人に達しました。うち1人は、同国初となる妊婦の感染者でした。

 感染経路は特定できておらず、これまで感染者が集中していた中心部のアルジュニード・クレセント地区以外にも広がりつつあります。

 感染者はジカ熱が流行する中南米などへの渡航歴がなく、全員が国内で感染したとみられています。在シンガポール日本大使館によると、31日時点では、居住する約3万7000人の日本人に感染者が出たとの報告は入っていないといいます。

 ジカ熱は妊娠中の女性が感染すると、脳と頭部が先天的に小さい新生児が生まれる恐れがあるとされます。シンガポール保健省は蚊の駆除地域を広げる方針を決め、国内すべての妊婦に対し、発熱や発疹などの症状があれば受診するよう求めています。

 シンガポールのマウント・エリザベス・ノベナ病院の伝染病専門家、レオン・フー・ナム氏は、「ジカ熱感染が確認された患者1人につき、症状が出ていない人がさらに4人いると考えるべきだ」と指摘し、「感染者が今後も増える可能性が高い」と警告しています。

 日本の厚生労働省も29日、シンガポールをジカ熱の流行地域に指定し、妊婦らに可能な限り、渡航を控えてほしいと呼び掛けています。アメリカの疾病対策センター(CDC)やイギリス、オーストラリア、韓国、台湾も妊婦らにシンガポールへの渡航延期を勧めています。

 また、マレーシアの保健省も9月1日、最近シンガポールから帰国した女性1人のジカ熱感染を確認したと発表しました。マレーシア国内で感染者が判明したのは初めて。

 女性は8月19日にシンガポールに渡航し、3日間滞在したといいます。保健省によると、女性は帰国後に発熱し、発疹などの症状が1週間続いたため尿検査を受けたところ、陽性反応が出たといいます。この女性の成人の娘はまだシンガポールに滞在しており、検査で陽性反応が出ているといいます。

 2016年9月1日(木)

 

■受動喫煙で日本人の肺がん1・3倍 リスク「確実」に格上げ

 国立がん研究センターは31日、日本人で受動喫煙がある人は、ない人に比べて肺がんになるリスクが約1・3倍に上るという研究結果をまとめました。国際機関でたばこの煙の発がん性は報告されていますが、日本人を対象とした分析は初めて。

 研究結果を踏まえ、がん研究センターは、受動喫煙の肺がんリスク評価を「ほぼ確実」から「確実」に修正。乳がんについても受動喫煙との関連を「データ不十分」から「可能性あり」に変更しました。

 研究結果によると、国内の喫煙者の肺がんリスクは非喫煙者と比べ男性4・4倍、女性2・8倍。ただ、非喫煙者の肺がんは頻度が低く、個々の研究で統計学的な結果が得られていなかったといいます。

 がん研究センターは受動喫煙とがんの関連を報告した国内研究のうち、配偶者や家族の喫煙と発がん状況に関して1984〜2013年に発表された9本の論文を分析。統合した相対リスクを算出した結果、受動喫煙で肺がんのリスクが1・28倍上昇することがわかりました。

 これに伴い、ホームページや冊子で従来から示している「日本人のためのがん予防法」で、「他人のたばこの煙をできるだけ避ける」としていた表現から「できるだけ」を削除し、努力目標から明確な目標に変更しました。

 受動喫煙の防止には屋内の全面禁煙化が有効で、2014年時点で世界49カ国には飲食店などをすべて屋内全面禁煙とする法律があります。最近のオリンピック開催国では、ブラジル、ロシア、イギリス、カナダのいずれも実施済みです。

 がん研究センターの片野田耕太・がん登録統計室長は、「日本の禁煙対策は国際的には最低レベル。公共の場の屋内全面禁煙や受動喫煙の防止策を加速させてほしい」と話しています。

 多数の外国人が訪れる2020年の東京オリンピックに向けて、受動喫煙の対策強化が急務となりそうです。

 2016年8月31日(水)

 

■受動喫煙、肺がんの危険性を確実に高める たばこ白書を15年ぶりに改定

 厚生労働省の専門家会合は31日、他人のたばこの煙を吸う受動喫煙が、肺がんの危険性を確実に高めることなどを盛り込んだ「喫煙と健康影響」に関する報告書をまとめました。

 公共施設や飲食店など不特定多数の人が利用する室内の全面禁煙を提言、近くホームページで公開します。報告書は「たばこ白書」と呼ばれ、白書をまとめるのは2001年以来、15年ぶりで4回目。31日の検討会で了承を得て、正式に決まります。

 たばこ白書では、受動喫煙が原因の死者は年間約1万5000人で、日本の防止対策は「世界最低レベル」とする世界保健機関(WHO)の判定に言及。肺がんだけでなく、心筋梗塞や脳卒中、小児ぜんそく、乳幼児突然死症候群などと因果関係が十分あり、最もリスクの高い「レベル1」と判定しました。

 自らの喫煙は、肺、咽頭、喉頭、食道、胃、肝臓、膵臓、ぼうこうなどのがんや、心筋梗塞や脳卒中などとの因果関係がレベル1としました。妊婦の喫煙は、早産や低出生体重児などとの因果関係がレベル1としました。

 たばこ白書では、日本人の喫煙や受動喫煙の健康影響に関するデータを分析し、病気との因果関係を初めて「レベル1(十分)」、「レベル2(示唆的)」、「レベル3(不十分)」、「レベル4(ないことを示唆)」と4分類しました。

 日本では現在、健康増進法に基づき、医療機関や大学・学校、飲食店、公共交通機関などの公共の場では受動喫煙防止対策を努力義務としています。たばこ白書では、喫煙室は煙の漏れが防げないことや、清掃・接客で従業員が受動喫煙する問題を挙げ、「喫煙室を設置するのではなく、屋内の100パーセント禁煙化を目指すべきだ」と提言しました。

 専門家会合の座長、祖父江友孝・大阪大教授は、「たばことがんなどの病気の因果関係について、科学的根拠を示せたのは大きな意義がある。一般の人も、たばこの被害への理解を深めてほしい」と話しました。

 2016年8月31日(水)

 

■シンガポールのジカ熱感染者、82人に急増 さらなる拡大懸念

 シンガポール政府は30日、蚊が媒介するジカ熱(ジカウイルス感染症)の感染者が82人に急増したと発表しました。これまで感染者が集中していた地区の近くでも確認されていることから、感染のさらなる拡大が懸念されています。

 シンガポールでは、屋外にある建設現場で働いていた外国人の作業員や住民が8月下旬になって発熱などの症状を訴え、シンガポール保健省は27日、国内でのジカ熱の感染が確認されたと発表しました。

 感染が確認された中心部のアルジュニード・クレセント地区では、ジカ熱の拡大に歯止めをかけるべく蚊の駆除が集中的に行われていますが、保健省は30日夜、新たに26人の感染が確認されたと発表し、これで感染者は、すでに完治した人も含め82人となりました。

 新たに感染が確認された人のうち少なくとも5人は、感染が集中していたアルジュニード・クレセント地区の近くに住居や職場があるということで、感染がさらに拡大することが懸念されています。

 シンガポール環境庁は30日までに、感染が集中しているアルジュニード・クレセント地区の6000世帯のうち5000世帯を見回り、蚊が繁殖しかねない39カ所で駆除作業を行いました。自宅敷地内で蚊の産卵場所が見付かった住民には、最高で5000シンガポールドル(約38万円)の罰金が科されることもあるといいます。

 ジカ熱は、妊娠中の女性が感染すると、頭部が先天的に小さい小頭症の新生児が生まれるおそれが指摘されており、シンガポール保健省は、発熱などの症状がある妊婦や配偶者に検査を受けるよう呼び掛けるとともに、感染の拡大を防ぐための対策を急いでいます。

 一方、日本の厚生労働省も、インドネシア、フィリピン、タイ、ベトナムとともにシンガポールをジカ熱の流行地域に指定し、渡航する際は注意するよう呼び掛けています。

 2016年8月31日(水)

 

■新たな不妊治療法で2人が妊娠に成功 ミトコンドリアを卵子に自家移植

 不妊に悩む女性を対象に、体外受精の際、本人の細胞の一部を卵子に自家移植する新しい方法を使って国内で2人が妊娠したと、大阪市にある不妊治療専門のクリニックが発表しました。

 これは、大阪市北区にある不妊治療専門の「HORACグランフロント大阪クリニック」などでつくるグループが発表したものです。

 新しい方法はアメリカの企業が開発したもので、加齢などで老化した卵子に体外受精を行う際、本人の卵巣の細胞から取り出したミトコンドリアというエネルギーを作り出すごく小さな器官を移植することで卵子の質が改善し、妊娠しやすくなるとされるものです。

 このグループでは、20歳代から40歳代の女性25人を対象に臨床研究を始めており、うち6人でミトコンドリアを自家移植した受精卵を子宮に戻した結果、27歳と33歳の女性2人が妊娠に成功したということです。ミトコンドリアの自家移植が妊娠につながったかは不明といいます。患者は費用として250万円を負担します。

 日本産科婦人科学会は昨年12月、この新しい技術について他人のミトコンドリアではないため問題は少ないとしつつ、「科学的な効果は十分に検証されておらず、初期の研究や実験段階の治療法だと考えられる」とする見解を示した上で、臨床研究の実施を承認しています。

 HORACグランフロント大阪クリニックの森本義晴院長は、「この治療法がうまくいけば、卵子の状態が悪く、妊娠を望めなかった女性にとって希望になると思う。今後、日本中でこのサービスを使えるようにしたい」と話しています。

 生殖補助医療に詳しい石井哲也・北海道大教授(生命倫理)は、「ミトコンドリアには独自のゲノムがあり、生殖細胞への遺伝的な介入となることも考慮し、基礎研究で効果を確かめる必要がある。証拠がない医療を人体でやるのは問題だ。なし崩し的に実施されれば大きな社会問題に発展し得る」と指摘しています。

 開発したアメリカの企業によると、海外ではカナダなど3カ国で270例以上実施され、約30の出産例があるといいます。

 2016年8月30日(火)

 

■子供の原因不明のまひ95人に エンテロウイルスと関連か

 風邪に似た症状が出た後に、手足に原因不明のまひを起こす子供が昨年夏以降に相次いだ問題で、全国調査をしている厚生労働省の研究班は29日、昨年8月から12月にかけて、まひの症状で95人が入院したとする中間報告を発表しました。

 検査できた患者のうち、4分の1の呼吸器などからは、昨年9月をピークに流行した「エンテロウイルスD68」が検出されており、研究班は「断定はできないが、このウイルスが関連する可能性がより高まった」としています。

 手足のまひを起こした患者は、33都府県で115人の報告がありました。調査に協力した101人のうち、エンテロウイルスD68が流行していた昨年8月から12月にまひを起こし、入院した子供が95人。このうちほかの原因が考えられる患者を除いた61人は、過去のウイルス感染で報告のある「急性弛緩(しかん)性脊髄(せきずい)炎」と診断されました。うち1人は外国人で、国外で発症した可能性があるといいます。

 患者の多くは5歳未満で、9割に発熱、8割にせき、2割に消化器の症状がありました。発熱から平均4日以内にまひが出て、8割程度にはまひの後遺症が残っているといいます。

 研究班のメンバーで国立感染症研究所感染症疫学センターの多屋馨子室長は、「ウイルス感染とまひの関係は調査中だが、子供に突然の熱や呼吸器症状の後に手足が動かしにくくなる症状が出たら、早めに小児科を受診してほしい」と呼び掛けています。

 エンテロウイルスは、ポリオや手足口病の原因にもなるウイルスの総称で、1000種類以上あり、多くは夏から秋に流行します。エンテロウイルスD68はその一つで、子供を中心に発熱やせき、呼吸困難を引き起こします。せきやくしゃみなどの飛沫(ひまつ)を通じて感染が広がります。治療薬やワクチンはありません。今夏は流行が確認されていません。

 2016年8月30日(火)

 

■全国の医療事故報告3374件 調査開始以来、過去最多

 全国の医療機関から昨年、2015年の1年間に報告された医療事故の件数は3300件余りで、これまでで最も多くなったことが日本医療機能評価機構のまとめでわかりました。

 医療事故の分析などを行っている日本医療機能評価機構によりますと、大学病院など全国の主な医療機関275施設から昨年1年間に報告された医療事故は3374件でした。これは一昨年、2014年より463件多く、2004年に調査を始めてから最も多くなりました。

 報告された内容では、投与する薬や量の間違いや、体内へのガーゼの置き忘れなどが目立つほか、患者を取り違えて手術をしてしまったケースもありました。また、因果関係はわからないものの、患者が死亡したケースは一昨年よりも81件増えて306件に上りました。

 このほか、医師や看護師などが重大な医療事故につながり兼ねないと感じた、いわゆる「ヒヤリーハット」の事例も、全国の586の医療機関で合わせて78万件を超え最多となりました。

 報告件数が増えていることについて日本医療機能評価機構は、「医療事故を報告して、再発防止に生かさなくてはならないという意識が、医療機関の間に定着してきたのではないか。医療界全体が患者に信頼してもらえるよう、さらに報告の徹底を求めたい」と話しています。

 また、見た目が似た薬を医師や薬剤師らが誤って使ったケースは、2010年1月から今年3月までに計24件あったことが、日本医療機能評価機構のまとめでわかりました。機構は「名称をきちんと確認することが必要だ」と注意を呼び掛けています。

 全国約1000の医療機関を対象にした医療事故情報の収集事業で報告された事例を分析しました。患者自身が誤ったケースは除外しました。

 機構のまとめによると、24件の内訳は注射薬10件、内服薬6件、外用薬5件、その他3件でした。注射薬では、薬剤を入れたガラスの容器(アンプル)の形が似ていたのが7件、内服薬では、包装の外観が似ていたのが5件と目立ちました。

 取り違えが起きた場面は注射薬では9件が薬剤の準備中で、主にかかわっていたのは助産師・看護師が6件、医師が3件。内服薬では6件すべてが調剤中で、いずれも薬剤師がかかわっていました。

 24件のうち23件は、患者に使われました。死亡例はなかったものの、障害が残った可能性がある事例が、3件ありました。新たな治療が必要になった事例は、11件でした。

 製薬業界は、アンプルや内服薬の包装、外用薬の容器などにバーコードを表示する取り組みをしており、機構は、バーコードを薬剤の照合に使うことも医療機関に求めています。

 2016年8月29日(月)

 

■シンガポール、ジカ熱に41人が感染 初めて国内感染を確認

 シンガポール政府は28日、蚊を媒介して感染するジカ熱(ジカウイルス感染症)に、屋外で働いていた建設作業員など41人が感染し、今後もさらに増える可能性があると発表しました。いずれも感染が拡大している中南米への渡航歴が確認されていないことから、国内で感染が広がったものとみて、感染経路の特定を急いでいます。

 シンガポール保健省と環境庁が発表した共同声明によりますと、ジカ熱への感染が確認されたのは、シンガポール中心部の屋外の建設現場で働いていた外国人の作業員36人や、同じアルジュニード・クレセント地区に住むシンガポール人4人とマレーシア人女性の合わせて41人で、このうち34人はすでに症状が治まっているということです。残る7人は依然症状があり、入院しているといいます。

 41人はいずれも、ジカ熱の感染が拡大している中南米などの流行地域への渡航をしないまま、8月下旬から発熱、発疹、結膜炎などの症状を訴えたということで、保健省ではシンガポール国内で感染したものとみて、感染経路の特定を急ぐとともに、ほかにも感染した人がいないかどうか検査を続けています。感染者に日本人は含まれていないとみられます。

 シンガポールでは今年5月にも、ブラジルに渡航した男性が帰国後にジカ熱を発症しましたが、国内での感染が確認されれば今回が初めてとなります。

 赤道直下のシンガポールは年間を通し蚊が発生するため、政府が警戒を強めていました。シンガポールは東南アジアの金融・貿易の中心地で、日本人駐在員やその家族ら約3万7000人が生活しています。

 世界保健機関(WHO)によりますと、ジカ熱は東南アジアでもインドネシアやタイ、フィリピンなどで国内での感染が報告されており、各国が警戒を強めています。

 2016年8月29日(月)

 

■ネットを使った不眠改善プログラムを開発 千葉大病院が参加者を募集

 千葉大病院(千葉市中央区)が、インターネットを使った不眠症の治療プログラムを開発しました。薬に頼らず、自らの考え方や行動を見直す認知行動療法を活用し、自宅にいながら治療を受けられるのが特徴。

 千葉大病院では、治療の効果を確かめる臨床試験の参加者を2018年3月まで募集しています。

 不眠症とは、実際の睡眠時間の長短にかかわらず睡眠不足感が強く、日常生活を送る上で支障が起きる状態です。日本睡眠学会のガイドラインでは、成人の3割以上に入眠障害、中途覚醒(かくせい)、熟眠障害、早朝覚醒の不眠症状があるとされ、長く続くとうつ病などにつながるケースもあります。一般的な治療法は、睡眠薬を使ったものですが、薬が効いている間に布団から起きてしまうと、効果がすべて眠気、ふらつき、頭重感などの副作用に変わってしまうなど、副作用が出ることがあります。

 認知行動療法は、考え方や行動を見直すことで改善を図る、薬を使わない精神療法。うつ病や不安障害などの治療に効果があるとされ、不眠症の治療にも効果があるという医学的根拠(エビデンス) が示されてきています。

 今回の治療プログラムは、千葉大大学院の清水栄司教授(認知行動生理学)らが開発しました。患者は、自宅のパソコンからインターネットでアクセスし、1日20分程度のプログラムに取り組みます。

 治療期間は5週間。1週目は睡眠時間などを記録する「睡眠日誌」をつけ、2週目以降は、「ベッドでは寝ること以外のことはしない」「寝つけないときはベッドを出る」など睡眠に適した行動を学び変化を試みる、睡眠について偏った考えを変える、効率的な睡眠を得る時間を設定しそれに沿った睡眠をとる、呼吸法などで気持ちをリラックスさせるなどの不眠治療プログラムに従って、睡眠習慣の改善を促します。

 その後6週間は、経過観察を行います。セラピストからの助言も、随時メールで受けられます。

 清水教授は、「病院に行かずに気軽に治療を受けることができる。薬に頼らない認知行動療法の普及につなげたい」と話しています。

 臨床試験の対象者は、不眠症と診断され、睡眠薬の減量を希望している18~65歳で、うつ病、不安症、統合失調症、アルコール依存症、パーソナリティ障害などほかの病気が診断されていない人。臨床試験の開始時と6週間後の計2回、千葉大病院に通院する必要があります。

 応募や問い合わせは、参加者の募集サイト(http://www.chibasad.com/index.html)から。

 2016年8月28日(日)

 

■大腸がんの再発、転移を防ぐ新物質を開発 国立がんセンターなど

 国立がん研究センターや理化学研究所などの研究チームは26日、大腸がんの再発や転移を防ぐ可能性がある新たな化学物質を開発したと発表しました。

 従来の抗がん剤が効きにくく、再発や転移をしやすい「がん幹細胞」を抑える効果があり、新たな抗がん剤として実用化を目指すといいます。

 大腸がんは国内では年間約13万人が発症して、部位別で最も多くなり、年間約5万人が死亡しています。転移がなければ手術で治りますが、転移して再発した場合、抗がん剤を併用して治療を続けるうちに抗がん剤が効かなくなるため、転移がある大腸がん患者の5年生存率は約15パーセントにとどまっています。

 大腸がん患者の9割は、細胞の増殖などを制御する「Wnt(ウィント)シグナル」と呼ばれる細胞内の命令系統に異常が生じて、がん細胞やその元になるがん幹細胞の増殖、発生が引き起こされるといいます。

 国立がん研究センター研究所の山田哲司(てっし)・創薬臨床研究分野長らは、このシグナル異常に強く関与している酵素を発見。この酵素の働きを妨げることで、がん細胞の増殖を抑える「NCB―0846」と呼ぶ新しい化学物質を作製しました。

 人間の大腸がんの細胞を移植したマウスに、この「NCB―0846」を投与したところ、しなかった場合に比べ、腫瘍(しゅよう)の拡大を8~9割抑えられました。特に、従来の抗がん剤が効きにくいがん幹細胞が、新たに腫瘍を作る能力を大幅に抑制できたといいます。

 山田さんは、「大腸がんの再発や転移にかかわるがん幹細胞を抑える効果が高い物質を開発できた。動物実験をさらに進め、1~2年後には臨床試験(治験)に入りたい」と話しています。

 研究成果は、イギリスの科学誌ネイチャー・コミュニケーションズ電子版に26日付で掲載されました。

 2016年8月27日(土)

 

■子供の食べ物、家計のゆとりで格差 厚労省が乳幼児栄養調査

 家計にゆとりがある家庭の子供は野菜や魚の摂取頻度が多く、ゆとりがない家庭ではインスタント食品が多いという傾向が、厚生労働省が24日にまとめた2015年度の「乳幼児栄養調査」で、明らかになりました。

 厚労省によると、乳幼児に関し、経済状況と食べ物摂取の関連が明らかになったのは初めてといいます。

 乳幼児栄養調査は、食生活の改善に役立てるため1985年度から10年ごとに実施し、今年が4回目。保護者を通じ無作為に選んだ全国1106地区の6歳未満(2015年5月31日現在)の子供3871人を分析しました。経済状況に関する項目は、初めて設けました。

 その結果、家計に「ゆとりがある」と回答した家庭では、野菜を1日2回以上食べる子供が60・5パーセントだったのに対し、「ゆとりがない」とする家庭では46・4パーセントにとどまり、摂取頻度に差がみられました。「ゆとりがある」家庭では、魚を週4日以上食べる子供が49・5パーセントだったのに対し、「ゆとりがない」家庭では34・7パーセントにとどまり、摂取頻度に15ポイント近い差がみられました。大豆・大豆製品、果物でも、同様の傾向が出ました。

 一方、インスタントラーメンやカップ麺を週1回以上食べる子供の割合は、「ゆとりがない」家庭の13パーセントが「ゆとりがある」家庭の7・8パーセントの2倍近くに上りました。菓子・菓子パンでも、同様の傾向が出ました。厚労省は、「大人も同様の傾向にあり対策が必要。結果を分析した上で栄養施策に生かしたい」としています。

 また、食事が原因と思われるアレルギー症状は、約7人に1人の14・8パーセントが経験。そのうち87・8パーセントが医療機関を受診しましたが、11・2パーセントは受診しませんでした。受診しなかった保護者の対応(複数回答)は、「母親など家族に相談した」(43・8パーセント)や「インターネットや雑誌で対処方法を探した」(25・0パーセント)が多くなりました。

 食物アレルギーの原因と思われる食べ物の除去や制限をしたことがある保護者は23・6パーセントでしたが、このうち約4割は医師の指示を受けていませんでした。厚労省は、「原因の食べ物を正確に特定しないとアレルギー症状を繰り返したり、不必要に栄養を除いたりする可能性がある」として、「調査結果を自治体などに知らせて、医師の指示を受けるよう啓発したい」と話しています。

 朝食を食べないことがある子供は6・4パーセントで、対象年齢などは異なるものの、10年前の2010年度と似た水準でした。ただし、保護者が「全く食べない」「ほとんど食べない」という世帯では、子供が「必ず食べる」割合がいずれも約8割に下がり、保護者の食生活を反映していました。

 授乳期の栄養方法は、母乳の割合が増加。出産施設での支援の充実などを背景に、生後1カ月では51・3パーセント(前回比で8・9ポイント増)、3カ月で54・7パーセント(前回比で16・7ポイント増)でした。

 女子栄養大の川端輝江・教授(基礎栄養学)は、「生活にゆとりのない家庭は、ゆとりのある家庭と比べ、親の年齢が若く、共働きや一人親も多いと考えられる。子供の食事内容の差は、金銭的な問題だけでなく、親の食べ物の好みや栄養や健康に関する知識、調理にかけられる時間の差を反映しているのだろう。栄養バランスの偏りは年齢が低いほど将来の健康問題への影響が大きい。生鮮食品は買い物が重要なので、時間の余裕がない家庭でも買い物がしやすい流通システムがあるといい」と話しています。

 2016年8月27日(土)

 

■日本の自然災害リスク、先進国で2番目の17位 国連大学が発表

 日本は自然災害への対処能力は高いものの、地震や水害に見舞われることが多いため、国民が被害を受けるリスクはほかの先進国に比べてはるかに高いとする「世界リスク指標」を、国連大学の環境・人間の安全保障研究所が25日発表しました。

 調査した171カ国のうち、日本は自然災害リスクが高い順で17位。欧米の先進国の多くは、100位より下で、アメリカは127位、イギリスは131位。中国は85位でした。

 国連大学の環境・人間の安全保障研究所は、地震、台風、洪水、干ばつ、海面上昇の5種類の自然災害への脅威にさらされている地勢的な状況、国民の数、災害の影響を受けやすいスラムの居住者数や貧困層の割合、災害が起きても対処できる医師や病院の数、政府の汚職度合い、保険の加入率、公衆衛生への支出、森林管理の状況、識字率など28項目の指標をベースに、世界リスク指標を算出しました。

 自然災害リスクが最も高いとされた国は南太平洋の島国バヌアツで、2位はトンガ、3位はフィリピン、4位はソロモン諸島、5位はバングラデシュ。上位15カ国はすべて赤道近辺に位置し、うち6カ国は島国でした。これらの国は、地球温暖化に伴う海面上昇で国土を失うほか、強大化するサイクロンによる被害拡大などが懸念されます。

 また、自然災害リスクが高いほうから上位50カ国の大半は、オセアニア、東南アジア、ブルンジ・カメルーン・ジンバブエなどの中央アフリカ諸国、ニジェール・セネガル・チャドなどの南部サヘル諸国が占めました。

 自然災害リスクが高いほうから上位50カ国に入っている先進国は、12位のブルネイと17位の日本、50位のオランダだけでした。この3カ国はいずれも、自然災害への脅威にさらされている地勢的な状況で、それぞれ6位、4位、12位との評価を受けました。

 自然災害リスクが高い発展途上国の対処能力を高める支援が日本に求められる一方で、日本自らも自然災害への備えがさらに必要なことを示したといえるでしょう。

 一方、災害リスクが最も低いとされた国はカタールで、169位のサウジアラビア、164位のバーレーン、163位のアラブ首長国連邦などと併せ、中東諸国の災害リスクは軒並み低くなりました。いずれも外海に面していないのが特徴で、自然災害を受ける機会が少なく対処能力も高いのが理由でした。

 国連大学のマティアス・ガルシャーゲン博士は、「日本は技術的に非常に高い対処能力を持つが、東京電力福島第1原発事故では自然災害に伴う被害が連鎖的に拡大し得ることが示された。単に技術面だけでなく、人材育成やリスクコミュニケーションの充実が課題だ」と話しています。

 2016年8月25日(木)

 

■沖縄県で10人がレプトスピラ症を発症 川遊びで感染か

 沖縄県は25日、人が感染すると、腎障害を引き起こす恐れのある感染症「レプトスピラ症」と診断された患者が6月以降、県内で10人に上ったと発表しました。このうち7人は、8月に診断されました。

 夏休みに沖縄本島などで川遊びなどをした際に感染した可能性が高く、増加傾向にあるとして、注意喚起しています。

 男女10人のうち4人は沖縄本島北部、1人は石垣島、5人は西表島で感染したと推定されています。また、9人は河川、1人は水田が感染源と推定されています。

 感染者の年代は、10歳未満から50歳代までと幅広くなっています。いずれも回復に向かっています。

 レプトスピラ症は、病原菌を持つネズミやマングースなどの野生動物の尿に汚染された水や土壌が、皮膚の傷や鼻や目の粘膜に触れて感染。重症化すると、腎機能障害、黄疸などの症状が現れ、治療しないと死に至ることもあります。治療には、ペニシリンやストレプトマイシンなどの抗生物質が有効とされています。

 沖縄県は、皮膚に傷がある場合は河川での遊泳やカヌー、カヤック、トライアスロンなどのレジャーを控えること、河川や滝などの生水はそのまま飲まないこと、畑・水田・山林で作業をする場合は長靴や手袋を使用し土や水との直接的な接触を避けること、捕獲したネズミなどの野生動物との素手での接触を避けることを、感染予防法として呼び掛けています。

 また、河川でのレジャー後や、畑・水田・山林で作業をした後、2週間以内に突然の頭痛、発熱、筋肉痛、関節痛、結膜充血などの症状が出たら、すぐに医療機関を受診し、川遊びなどの状況を伝えることを呼び掛けています。

 2016年8月25日(木)

 

■子供の心臓の幹細胞で再生医療 岡山大が治験を始める

 重い心臓病の子供を対象に、心筋になる能力を持つ「幹細胞」を心臓から取り出し、培養後に本人に戻して機能を回復させる再生医療の治験が岡山大学病院で24日始まり、兵庫県西宮市の生後10カ月の女児に手術が実施されました。

 2年後の健康保険の適用を目指しており、同病院は、心臓病の子供を対象にした再生医療が実用化されれば世界初としています。

 治験は安全性や効果を確かめるのが目的で、今回の対象は、全身に血液を送り出す心臓の機能が弱い「機能的単心室症」。この病気の患者には、これまで血液の流れを改善する手術が行われていますが、完全に治すのは難しく、また日本では子供が心臓移植を受けられる機会が少ないため、新たな治療法として期待されています。

 手術を実施したのは、王英正教授などの医療チーム。24日、生後10カ月の女児の心臓から、わずかな組織を取り出す手術が行われ、今後、1カ月ほどをかけて、中に含まれる幹細胞を培養するということです。岡山大学病院によりますと、手術はおよそ3時間半で終わり、女児の容体は安定しているということです。

 手術を受けたのは、兵庫県西宮市に住む大庭あかりちゃん。機能的単心室症の一種で、全身に血液を送り出す左心室が非常に小さい、「左心低形成症候群」と診断されました。生まれて間もなく、肺に血液を送る右心室の力を借りて全身に血液を送り出すようにする手術を受けましたが、このまま成長すれば十分な機能を果たせなくなるおそれがあったということです。

 医療チームはこれまでに、0歳から5歳までの延べ41人の子供を対象に臨床研究を行い、幹細胞を体に戻した後1年が過ぎると、血液を送り出す心臓の機能が平均で7パーセント改善し、目立った副作用はみられなかったということです。

 今後、治験は岡山大学病院のほか、神奈川県と静岡県の病院の3カ所で合わせて39人の6歳以下の患者を対象に行われ、安全性や効果が確認されれば、通常1年ほどかかる審査期間が半年程度に短縮される厚生労働省の「先駆け審査指定制度」に基づいて審査が行われる見込みです。

 手術を前に母親の大庭まどかさんは、「心臓の機能が1パーセントでも改善するならと、わらにもすがる思いで治験に参加しました。今の医療では助からない病気もあるので、同じような難病の子供たちが助かる道ができればいいと思います」と話していました。

 執刀した王教授は、「健康保険が適用されれば、より多くの施設で、より多くの患者に対して、この治療を行うことができる。世界で初めてのこの技術を確立し、難病で苦しむ子供に新たな治療法を提供したい」と話しています。

 2016年8月24日(水)

 

■千葉市のコンサートに、西宮市の麻疹患者が来場 2次感染者が増える可能性

 千葉市の幕張メッセで8月14日に開かれた人気外国人アーティスト、ジャスティン・ビーバーのコンサートに、麻疹(はしか)に感染していた男性が来場していたことが判明しました。潜伏期間の10日が経過し、接触者に症状が現れる可能性があることから、国立国際医療研究センター病院・国際感染症センターが24日、関係各都県の医療機関などに注意を呼び掛けました。

 患者は兵庫県西宮市在住の10歳代の男性で、同市の発表によると発症の10日以内にインドネシアのバリ島を訪れていました。9日に39度を超える発熱があり13日以降、全身に発疹が現れました。その状態で13〜15日に神奈川県と東京都内を訪問、14日には千葉市の幕張メッセであったコンサートを観賞していたといいます。主催者によると、同日のコンサートの来場者は約2万5000人だったといいます。

 男性は19日に、西宮市内の医療機関で麻疹と診断されました。また、患者の男性の同居家族3人も発症が確認されています。

 国立感染症研究所によると、麻疹は空気感染、飛沫(ひまつ)感染、接触感染などさまざまな経路で感染。免疫を持たない人がウイルスに触れると、90パーセント以上が感染します。10〜14日の潜伏期間を経て38度前後の発熱が2〜4日続いた後、39・5度以上の高熱とともに全身に発疹が現れるのが特徴です。

 肺炎や中耳炎、心筋炎などの合併症を発症することがあり、まれには中枢神経系合併症を起こすことがあり、うち20〜40パーセントに後遺症が残るといいます。また、幼児期に感染後、学童期になってから「亜急性硬化性全脳炎(SSPE)」という、進行性で致死的な中枢神経疾患を起こすこともあります。

 治療は、対症療法以外ありません。ワクチンを2回接種すれば、95パーセントは免疫ができます。しかし、国内での1歳児のワクチン接種率は約50パーセントしかなく、感染の可能性がある人は全国に約300万人いると考えられています。

 初期症状が風邪に似ていることから、風邪として医療機関を受診した場合には、2次感染の恐れもあります。このため、国際感染症センターは旅行経路にある医療機関に対し、24日以降に発熱などで受診する患者には注意するよう呼び掛けています。

 国立感染症研究所の大石和徳センター長は、「1歳未満の赤ちゃんやワクチンを接種していない人は重症化するおそれが高い。発熱や発疹などの症状が出た場合は人の集まる場所には行かず、早めに医療機関を受診してほしい。特に妊婦は早産や流産することもあるので注意してほしい」と話しています。

 2016年8月24日(水)

 

■運動で13種類のがんの発症リスク低減 アメリカの国立がん研究所が調査で特定

 余暇によく運動する人はそうでない人に比べ、13種類のがんにかかるリスクが有意に小さくなるとの調査結果をアメリカの国立がん研究所などがまとめ、アメリカの医学誌「JAMA」オンライン版に発表しました。

 国立がん研究所によると、運動などで体をよく動かす人ががんにかかりにくいことは、患者数が多い結腸がんや乳がんのほか、子宮内膜がんでもすでに示されていました。研究チームは今回、計144万人分のデータを含む複数の疫学研究を集めて解析し、骨髄性白血病、多発性骨髄腫、食道がん、肝がん、腎がん、胃噴門部がん、肺がん、直腸がん、膀胱がん、頭頸部がんの10種類のがんでも同様の結論を得ました。

 太っていたり、喫煙歴があったりしても、運動によるがんのリスク低減傾向に大きな違いはみられなかったといいます。

 研究チームは、アメリカおよびヨーロッパの12件の研究データを統合し、19~98歳の成人144万人のデータベースを作成。自己申告された運動(ウォーキング、ランニング、水泳など)の内容によって、26種類のがんのリスクに差がみられるかどうかを検討しました。今回の研究では、仕事や家事を除く余暇時間に、健康向上のために自主的に行う運動に焦点が当てられました。

 検討したがんのうち、半数のリスク低減に運動との関連がみられ、がんリスクは全体で7パーセント低減し、リスク低減の範囲は42パーセント(食道がん)から10パーセント(乳がん)におよびました。結腸がんと肺がんは、それぞれ16パーセント、26パーセント低減しました。

 なお、非ホジキンリンパ腫、甲状腺がん、胃がん、軟部腫瘍、膵臓がん、リンパ性白血病、卵巣がん、脳腫瘍には、運動量との関連が認められませんでした。

 また、前立腺がんと悪性黒色腫は、運動によって発症率がそれぞれ約5パーセント、27パーセント上昇していたことがわかりました。悪性黒色腫は屋外で過ごす時間の増加と関連しているとみられますが、前立腺がんについては今のところ、運動で発症率が高まる原因は不明。

 研究論文をまとめた著者らは、「今回、運動ががん予防に役立つ理由は明らかにしていないが、運動をするとさまざまながんとの関連が認められているホルモンの値が低下するほか、インスリンおよびインスリン様増殖因子の値も制御される」と指摘し、「運動する人の細胞は酸化ストレスを受けにくく、DNA損傷を修復する能力も高い。食道がんを始めとする致死率の高いがんに大幅なリスク低減が認められたことは非常に喜ばしい」と説明しています。

 適度な運動を日常生活に取り入れることは、がんの予防にも効果的といえるでしょう。

 2016年8月23日(火)

 

■脳死患者からの臓器提供、移植法施行後399例目 栃木県の成人男性

 日本臓器移植ネットワークは20日、栃木県済生会宇都宮病院に脳血管障害で入院していた成人男性が午前8時2分、臓器移植法に基づき脳死と判定されたと発表しました。男性は書面で臓器提供の意思を示していませんでしたが、家族が承諾しました。

 脳死判定は1997年の臓器移植法施行後399例目で、本人の意思不明は232例目。

 心臓は、東京女子医大病院で50歳代男性に移植されました。心臓以外の臓器は、家族が承諾しませんでした。

 日本臓器移植ネットワークは18日、九州地方の病院に頭部外傷で入院していた30歳代の男性が午前7時44分、臓器移植法に基づき脳死と判定されたと発表しました。男性は書面で臓器提供の意思を示していませんでしたが、家族が承諾しました。脳死判定は1997年の臓器移植法施行後397例目、本人の意思不明は230例目。

 心臓は東京大病院で50歳代女性、片方の肺は福岡大病院で50歳代男性、もう片方の肺と肝臓は京都大病院でそれぞれ40歳代男性と50歳代女性に移植されました。膵臓(すいぞう)と片方の腎臓(じんぞう)は福島県立医大病院で50歳代男性、もう片方の腎臓は佐賀大病院で10歳代女性に移植されました。小腸は医学的理由で、提供を断念しました。

 逆上って、日本臓器移植ネットワークは17日、東京医大八王子医療センターに入院していた60歳代の男性と、近畿地方の病院に入院していた20歳代の男性が、臓器移植法に基づきそれぞれ脳死と判定されたと発表しました。2人とも書面で臓器提供の意思を示していませんでしたが、家族が承諾しました。

 脳死判定は1997年の臓器移植法施行後395例目と396例目に相当し、本人の意思不明は228例目と229例目に相当します。

 東京の男性が低酸素脳症で脳死と判定されたのは、17日午前4時47分。心臓は大阪大病院で40歳代男性、片方の肺は岡山大病院で60歳代男性、肝臓は名古屋大病院で50歳代男性、腎臓は片方ずつ東京女子医大病院で60歳代女性と50歳代女性に移植されました。

 2016年8月22日(月)

 

■ジカ熱、マイアミビーチ市でも5人が感染 妊婦に渡航自粛を勧告

 アメリカ南部フロリダ州の保健当局は19日、新たにマイアミビーチ市で5人が蚊に刺されジカ熱(ジカウイルス感染症)に地域感染したとみられると発表しました。

 5人の身元は特定していませんが、男性3人、女性2人だといいます。うち3人は、外部からマイアミビーチ市を訪れた際にジカウイルスに感染し、自宅のあるテキサス州、ニューヨーク州、台湾にそれぞれ戻りました。

 地域感染が確認されているのは、多くの観光客が訪れるマイアミビーチの浜辺など約3・9平方キロの地区に限定されています。

 アメリカの疾病対策センター(CDC)は妊婦に対し、マイアミビーチ南端部の東西約1キロ、南北2~3キロの地区に立ち入らないよう呼び掛けています。観光シーズンでにぎわう地元経済にも影響しそうです。

 マイアミビーチ市のあるフロリダ州マイアミデード郡では7月29日、別市であるマイアミ市の中心部の北にあるウィンウッド地区で、ジカウイルスの地域感染がアメリカ本土で初めて確認されており、同郡で地域感染が確認されたのは今回で2カ所目となりました。

 マイアミビーチ市は、ビスケーン湾を挟んでマイアミ市から東に約6・5キロ離れた半島に位置しており、ウィンウッド地区とは橋で行き来ができます。

 19日の発表により、フロリダ州内で確認された地域感染の総数は36件に増えました。

 CDCはマイアミデード郡全域に関しても、至急の用がない限り渡航延期を検討するよう妊婦やその性的パートナーに勧告しています。

 2016年8月21日(日)

 

■ジカ熱ウイルス、成長したマウスの脳を破壊 アメリカ研究チームが発表

 中南米を中心に感染が広がるジカ熱(ジカウイルス感染症)は大人が感染しても多くの場合、症状は軽いとされていますが、アメリカの研究チームはウイルスが大人の脳にも感染するおそれがあることをマウスの実験で突き止め、19日までにアメリカの科学誌「セル・ステムセル」に発表しました。

 研究チームは、人の場合でも長期的に見て脳への影響が出ないか調べることが重要だとしています。

 蚊が媒介する感染症、ジカ熱は妊娠中の女性が感染すると頭部が先天的に小さく、脳の損傷や機能障害などがある小頭症の新生児が生まれるおそれが指摘されている一方、大人が感染しても症状が出ないか、発熱などの症状が出ても比較的軽いとされています。

 しかし、実際に体調が悪化した大人は、発疹、体の痛み、目の充血などの症状を訴える場合があるといいます。また、ジカウイルスは、衰弱やまひなどの神経系の問題を引き起こすおそれがあるギラン・バレー症候群と呼ばれる疾患との関連が指摘されています。

 アメリカのロックフェラー大学などの研究チームは、大人の脳への影響を調べようと、遺伝子操作でウイルスへの抵抗性をなくした生後6週間の成長したマウスの目にジカ熱のウイルスを注射しました。その結果、注射してから3日後には、マウスの脳の中でジカ熱のウイルスの存在を示す抗体が増え、その後、神経細胞の元になる神経前駆細胞の周囲にウイルスが集まって一部の細胞が死んだり、神経細胞(ニューロン)の新生が減少したりしていたことが確認できたとしています。

 この神経前駆細胞は未分化型の脳細胞で、学習や記憶にかかわる領域にある脳細胞です。研究チームは人の場合、ウイルスへの感染が認知機能にどう影響するかはわからないとする一方、感染から長期間が経った後で影響が出ることがないのかについても調べることが重要だとしています。

 共同研究者で、アメリカのラホヤ・アレルギー免疫研究所のスジャン・シュレスタ教授は、「通常はジカウイルス感染が治った後に発症するギラン・バレー症候群の患者発生は、成人の神経前駆細胞への感染に関連している可能性がある」と語っています。

 今回の研究成果について、ジカ熱の問題に詳しい神奈川県衛生研究所の高崎智彦所長は、「ジカ熱のウイルスが大人のマウスの脳にも感染することを示した研究で、これまで報告されている小頭症のような赤ちゃんへの影響だけでなく、成人でも脳炎や記憶障害などの症状を引き起こす可能性を示している」と指摘しています。

 一方、これまでにウイルスが脳に直接侵入し、こうした症状を引き起こした例は実際には報告されていないということです。このため、高崎所長は「ジカ熱のウイルスが大人の脳に障害を与える可能性を明らかにするには、より人に近いサルなどを使って実験を行い、脳への影響を引き続き調べる必要がある」としています。

 2016年8月19日(金)

 

■京大、新生児臍帯血から高品質のiPS細胞作製 研究機関に提供へ

 京都大学iPS細胞研究所(山中伸弥所長)は、再生医療に役立てるため、新生児のへその緒や胎盤に含まれる臍帯血(さいたいけつ)の細胞から、拒絶反応が起きにくいiPS細胞を作って保管し、研究機関などへの提供を始めることになりました。

 成人の血液細胞から作る従来の方法に比べ、遺伝子変異が少なく、品質が高い細胞を効率よく作れると期待されています。

 体のさまざまな組織になるiPS細胞は、病気やけがで失われた体の機能を取り戻す再生医療への応用が期待され、患者本人から作れば拒絶反応が防げると考えられていますが、多くの時間と費用がかかるのが課題になっています。

 このため京都大学iPS細胞研究所は、特殊なタイプの免疫を持つ人に協力してもらい、他人に移植しても拒絶反応が起きにくいiPS細胞をあらかじめ作って保管し、研究機関などに提供する「iPS細胞ストック」という取り組みを進めています。

 この中で、iPS研究所は、東海大病院(神奈川県)の「臍帯血バンク」に白血病の治療などのために保管されていた臍帯血を家族などから同意を得た上で譲り受け、先月、iPS細胞を完成させました。

 これまでは、献血をした大人から承諾を得てiPS細胞を作っていましたが、臍帯血を使えば、紫外線などの影響による遺伝子の変異が少ない、より質の高いiPS細胞を効率よく作れると考えられています。

 iPS研究所は、臍帯血から作ったiPS細胞の提供を、今月下旬以降始めるとともに、臍帯血バンクのほか、献血や新たに骨髄バンクに登録した人にも今後、協力を呼び掛け、保管するiPS細胞を増やしていくことにしています。

 2016年8月18日(木)

 

■救急出動で不搬送、10年間で約5割増加 本人拒否が最多

 119番通報を受けて救急車で出動した救急隊が、誰も運ばずに引き返す「不搬送」が、2014年までの10年間に約5割増えたことが、総務省消防庁の情報公開でわかりました。

 高齢化などで緊急性の低い119番通報が増えていることが一因とみられ、空振りの出動が増え続けると、重症者の搬送に影響する恐れがあります。

 2014年の不搬送は63万4000件で、2005年の43万3000件と比べて46パーセント増えていました。一方、救急車の出動総数は598万件で、2005年と比べて13パーセント増にとどまっていました。

 出動に占める不搬送の割合は、大阪府(14・4パーセント)や兵庫県(12・9パーセント)、東京都、埼玉県(どちらも12・8パーセント)など大都市圏で高くなりました。

 不搬送の理由は、家族らが通報したものの本人が搬送を拒む「拒否」(32パーセント)が最も多く、救急隊員が応急処置をして医療機関に搬送しない「現場処置」(18パーセント)が次ぎました。けが人や病人がいなかった例や、誤報・いたずらは計11パーセントでした。

 具体的には、「体調が心配で救急車を呼んだが、救急隊員に血圧などを測ってもらい安心した」「家族が救急車を呼んだが、本人は病院に行く意思がない」「到着時に明らかに死亡していた」など、理由はさまざま。高齢化や携帯電話の普及で、結果的に緊急性が低くても、まず119番する人が増えているとみられます。

 京都橘大の北小屋裕助教(救急救命学)は、「在宅の患者や高齢者は発熱でも不安になる。訪問看護や介護でみてもらえないケースは119番を選びやすい」と指摘しています。

 救急隊は現在、どんな通報でもほぼ出動しています。山形市で2011年、一人暮らしの大学生が自宅から通報したものの、市消防本部が「意識や呼吸がしっかりしている」として救急隊が出動せず、その後死亡した事件が起き、ほぼ出動する傾向が強まっています。

 地域によっては、すべての救急隊が出動している事態が散発。救急車の出動総数は7年連続で増加しており、このまま出動の増加に歯止めがかからないと、現場への到着に時間がかかり、一刻を争う重症者の搬送に影響しかねません。

 自治体は、救急隊を増やしたり、広報活動で適正利用を呼び掛けたりしていますが、抜本策は打ち出せていません。

 2016年8月17日(水)

 

■ダニ媒介脳炎で北海道の40歳代男性が死亡 国内では初

 7月中旬、北海道でマダニにかまれた男性が「ダニ媒介脳炎」という感染症にかかり、8月13日に死亡したことがわかりました。

 ダニ媒介脳炎の国内での感染は、1993年10月に現在の北海道北斗市で酪農家の主婦の感染が確認されて以来2例目で、感染した人が死亡したのは初めてです。

 厚生労働省によると、ダニ媒介脳炎はフラビウイルスが原因で、このウイルスを持ったマダニがいない地域では感染は起きません。北海道の一部地域でウイルスが見付かっています。人から人に直接感染することはないとされます。

 潜伏期間は7~14日で、発熱や筋肉痛などのインフルエンザに似た症状の後、髄膜炎や脳炎を起こします。海外では多数の死亡例が報告されています。 

 北海道などによりますと、7月中旬、道内の40歳代の男性が草やぶでマダニにかまれ、医療機関で診察を受けたところ、フラビウイルスを持ったマダニにかまれることで起きるダニ媒介脳炎に感染していることがわかりました。

 男性は発熱や意識障害、けいれん、髄膜炎、脳炎などの症状が出て、札幌市内の病院に入院していましたが、8月13日に死亡しました。

 北海道保健福祉部は、「草が茂った場所に入る際は、マダニにかまれないよう長袖、長ズボンを着用し、肌の露出を避けることが重要」と注意を呼び掛けています。

 2016年8月16日(火)

 

■熱中症による救急搬送、14日までの1週間で5554人 秋田県で高齢の2人が死亡

 8月8日から14日までの1週間に全国で熱中症で病院に救急搬送された人の数は、速報値で5554人に上ることが総務省消防庁のまとめでわかりました。

 1週間に救急搬送された人の数は、前の週の6719人から1165人少なくなりましたが、これで8月に入って救急搬送された人の数は合わせて1万2273人に達しました。

 秋田県では、2人の死亡が確認されました。2人は80歳代の女性と75歳の男性で、秋田県内で猛暑日を観測した8日に自宅寝室で意識を失っているのが見付かり、搬送先の病院で死亡。2人とも体温は39度を超えていたといいます。

 そのほか、3週間以上の入院が必要な重症者は136人、短期の入院が必要な中等症は1932人でした。

 年齢別でみますと、65歳以上が3084人と全体の55・5パーセントを占めているほか、18歳以上65歳未満が1860人、新生児と乳幼児を含む18歳未満は610人となっています。

 都道府県別では、東京都が372人と最も多く、次いで愛知県が301人、大阪府が298人、福岡県が266人などとなっています。

 総務省消防庁は、「今後も全国的にしばらくは気温が高い日が多くなると予想されているので、お年寄りを中心に引き続き熱中症に十分注意してほしい」、「水分と塩分を補給し、適度に冷房を使って温度調節をしてほしい」と呼び掛けています。

 2016年8月16日(火)

 

■老化物質「AGE」、虫歯の進行にブレーキ 大阪大が発表

 歯に蓄積した老化物質「AGE」(終末糖化産物)の働きで、年を取ると虫歯の進行が遅くなるという研究結果を、大阪大学の三浦治郎助教(総合歯科学)らのチームが明らかにし、歯学専門誌電子版に15日発表しました。

 虫歯への耐性を強めているとみられ、チームは「加齢と虫歯の関係性の解明や、AGEを利用する治療法開発につながる可能性がある」としています。

 チームによると、AGEはタンパク質の糖化により作られる物質で、多くの種類があります。加齢に伴って体内に蓄積され、老化に関与するほか、糖尿病や動脈硬化、腎不全などを悪化させる物質として研究が進んでいます。

 チームは、歯の象牙質と呼ばれる部分で、AGEが虫歯になっている個所に多く蓄積していることを、蛍光現象を利用した特殊な測定法で詳細に観察するのに成功しました。分析を進めると、AGEが多い個所は、虫歯の原因となる酸や酵素を加えても歯が溶けにくいことが判明しました。

 高齢者は、歯の象牙質にAGEが多く蓄積され、酸や酵素に対する耐性が強まるため、若年者よりも虫歯が進行しにくい傾向があるとみています。

 2016年8月15日(月)

 

■日本脳炎の予防接種、生後6カ月からへの前倒しを推奨 日本小児科学会

 ウイルスを持つ蚊に刺されて感染する日本脳炎の予防接種について、日本小児科学会は、近年患者が報告されるなど感染のリスクが高い地域では、通常3歳で受ける最初の接種を前倒しするよう呼び掛けています。3歳未満の子供が発症した例があることを受けました。

 日本脳炎は、ウイルスを持つ豚の血を吸ったコガタアカイエカなどを介して感染します。感染しても発症するのは100~1000人に1人とされますが、発症すると20パーセントから40パーセントの人が亡くなり、けいれんや意識障害などの後遺症が残ることもあります。

 1966年の2017人の患者報告をピークに減少し、ワクチンの普及もあって1992年以降は年10人以下で推移しています。法律では生後6カ月から接種できるものの、国は標準的なスケジュールを3歳からとしています。

 ただし、2011年には沖縄県で1歳児、2015年には千葉県で0歳児が、日本脳炎に感染しました。

 小児科学会は今年2月、近年患者が報告された地域や豚のウイルス感染率が高い地域では、生後6カ月から接種を受けるよう推奨する見解をまとめました。豚のウイルス感染率については、国立感染症研究所が全国調査を行っており、昨年は千葉県、茨城県、山梨県、静岡県、三重県、福岡県、佐賀県などが80パーセント以上と高く、人への感染リスクも高いとされます。

 小児科学会の見解をを受けて、千葉県は4月、県内の市町村に対し早期接種の検討を呼び掛けました。養豚業が盛んな旭市では地元の小児科医と連携し、乳幼児健診の際に勧めています。佐藤好範・千葉県小児科医会長は。「患者が1人出れば、その周辺に多くの感染者がいると考えられる。ワクチンで防げるものは防ぐべきだ」と話しています。

 静岡県小児科医会も、早期接種を呼び掛けていくことを決定。ホームページなどで周知を始めた病院もある一方、早期接種の呼び掛けは事業主体の市区町村によって、温度差があります。

 予防接種に詳しい川崎市健康安全研究所の岡部信彦所長は、「標準的な接種年齢を3歳とした明確な根拠は示されていない。3歳以下でのデータは少ないものの、副反応が増加するなどの影響は考えにくい」と話しています。

 厚生労働省は、「各自治体が判断すること。今のところ、全国的に接種の前倒しを議論することは検討していない」としています。

 2016年8月14日(日)

 

■結核の新規患者数が1万8280人に減少 人口10万人当たり14・4人に

 厚生労働省は12日、2015年の結核の患者数調査の結果を発表しました。人口10万人当たりの新規患者数(罹患〔りかん〕率)は14・4人で、2015年までに15人以下とする政府目標に到達したとしています。

 2015年の1年間に結核と新たに診断された患者は前年比1335人減の1万8280人、死亡したのは1955人でした。新規患者の4割近くが80歳以上でした。

 罹患率が高いのは大阪府が23・5人、兵庫県、東京都、大分県がいずれも17・1人。全国では2005年22・2人、2010年18・2人などと16年連続で減少しています。

 厚労省は、日本が先進国の中では結核の罹患率が高いことが問題となっているため、1年間に新たに結核と診断される患者数を東京オリンピックが開かれる2020年までに、人口10万人当たり10人以下とする次の目標を定め、対策を強化していくことを決めました。

 10人以下は、世界保健機関(WHO)が定める結核の「低蔓延(まんえん)国」の条件です。厚労省は今秋にも予防指針を改定し、新目標を盛り込みます。

 結核では、長引くせき、体重減少、発熱が起きます。厚労省は、新たな目標に向け、早期受診や診断後の服薬継続を呼び掛け、感染拡大を抑えたいとしています。

 12日に厚労省で会見したNPO法人「ストップ結核パートナーシップ日本」の石川信克理事は、「患者の6割以上を占める高齢者の対策が重要」と指摘し、「医師が結核を疑って早めに診断し、感染が広がらないようにすることが大切だ」と話しました。

 2016年8月13日(土)

 

■ダニ媒介脳炎、23年ぶり患者確認 北海道の40歳代男性

 厚生労働省は12日、ウイルスを持ったマダニにかまれて起きる「ダニ媒介脳炎」が北海道で確認されたと明らかにしました。患者は40歳代の男性で、国内での感染確認は1993年に北海道で見付かって以来2例目。

 厚労省は、ダニ対策の強化を都道府県などを通じて求めています。

 厚労省と北海道保健福祉部によると、男性は7月中旬に北海道内でマダニにかまれ、発熱や意識障害、けいれん、髄膜炎、脳炎などの症状が出ました。重症で現在も入院しています。海外への渡航歴はないといいます。

 男性が受診した札幌市内の医療機関から今月、札幌市に報告がありました。北海道は10日付で、道内14総合振興局・振興局や札幌市などに対し、住民への注意喚起を要請しました。

 厚労省によると、マダニは民家など人の管理の行き届いた場所には、ほとんどおらず、森林や沢に沿った斜面、牧草地などに生息。1993年の感染確認例は、酪農家の主婦が発症したといいます。

 ダニ媒介脳炎は、蚊が媒介する日本脳炎と同じ分類のフラビウイルスによる感染症。海外では死亡や後遺症が残ったケースも報告されています。

 このフラビウイルスは、ネズミとマダニとの間を行き来しています。北海道の一部地域ではウイルスが見付かっており、西日本でもウイルスの抗体を持ったネズミが確認されています。

 北海道保健福祉部の担当者は、「やぶや野山に入る際は長袖と長ズボンを着用し、肌の露出を避けることが重要」としています。厚労省は、「マダニにかまれたら、早期に医療機関を受診し、適切な治療を受けることが重要」としています。

 2016年8月13日(土)

 

■海外旅行、蚊に用心 デング熱・マラリアなどへの対処法

 夏休みに海外旅行をする人も多いと思われますが、気を付けなければいけないのが蚊です。刺されるとデング熱やマラリア、ジカ熱といった感染症にかかる可能性があり、深刻な場合は死に至ることもあります。

 東京都渋谷区の代々木公園前では7月中旬、経済連携協定(EPA)で来日したインドネシア人看護師ら約10人がデング熱の症状などをまとめた啓発パンフレットを配り、用意した虫よけ剤の利用を呼び掛けました。デング熱は蚊がウイルスを媒介して高熱を引き起こす感染症で、インドネシアでは2014年に600人以上が死亡するなど流行。日本でも2年前に首都圏を中心に約160人が国内感染したと知り、啓発を企画しました。

 厚生労働省によると、海外でデング熱に感染して帰国する日本人は毎年、200人ほどいます。7月にはフィリピンから帰国した新潟県の30歳代女性が、デング熱が重症化した「デング出血熱」で日本国内では2005年以来11年ぶりに亡くなりました。

 国立感染症研究所ウイルス第一部の西條政幸部長は、「デング熱は基本的には自然に治り、致死率は高くはないが、中には出血症状や循環不全などの重い状態になることがある。どういう要因で重症化するか詳しくはわかっていない」と話しています。

 蚊がウイルスなどを媒介する感染症は、ほかにマラリアやジカ熱などもあります。マラリアなど予防薬である程度防げるものがある一方、デング熱やジカ熱には予防薬も治療薬もありません。

 このため、海外旅行で流行地を訪れる際には、まずは蚊に刺されないようにするのが第一。

 代々木公園前で注意を呼び掛けたインドネシア人看護師モハマド・ユスプさんは、「長袖と長ズボン、靴下をはいて肌を出さない」服装と、虫よけ剤(ディートという成分が含まれるもの)の適切な利用を勧めます。また、インドネシアでは汗をかくと小まめに水浴びし、蚊が好む汗の臭いを消しているといいます。

 旅行前には感染時に早く気付けるよう、渡航先で流行する感染症と症状を確認しておくことも大切。厚労省検疫所のウェブサイト(http://www.forth.go.jp/)では、地図上で渡航先を選ぶと感染症流行状況や対処法がわかります。

 デング熱は熱帯や亜熱帯全域で、ジカ熱は近年は特に中南米で流行。デング熱は熱や頭痛、発疹などの症状が出ます。マラリアも発熱があります。ジカ熱は症状が軽く気付かないこともあるものの、妊婦が感染すると小頭症の子供が生まれる恐れがあるとされ、厚労省は妊婦に流行地へ渡航しないよう呼び掛けています。

 では、海外旅行先で感染が疑われる症状が出たらどうすればいいのか。国立国際医療研究センター・トラベルクリニック医長の金川修造さんは、「まず現地の病院にいってほしい。マラリアは一刻も早く治療しないと危険な状態になることもある」と話しています。現地の病院は感染症の処置に慣れていて、旅行保険会社やホテルに紹介してもらうとよいといいます。

 また、「デング熱は3、4日で熱が下がるが、そこから血小板が減って重症化することもある」。血小板が減少すると解熱剤の成分によっては悪化させることもあるといい、流行地に行く場合は成分がアセトアミノフェンの解熱剤を持って行くことを勧めています。

 帰国時や帰国後に発熱などの症状があった場合は、最寄りの検疫所か保健所に相談すれば、感染症の対応経験がある病院も紹介してもらえます。

 2016年8月12日(金)

 

■ナイジェリアでポリオ新規患者2人が発生 WHOが発表、根絶認定遠ざかる

 世界保健機関(WHO)は11日、アフリカ西部のナイジェリア政府より、同国で2014年以来の再発となるポリオ(小児まひ)の新規患者が2人発生したとの報告を受けた、と発表しました。

 WHOは声明で、ナイジェリア北東部ボルノ州に住む2人の子供が、ポリオによるまひ症状を発症した、と述べています。

 この新規患者の発生は、7月に国内ポリオ患者がゼロになってから丸2年を迎えたばかりだったナイジェリアにとって、大きな後退となります。そのままゼロが続けば、2017年7月にポリオウイルス根絶の認定を受ける見込みでした。

 WHOアフリカ地域事務局のマチディソ・モエティ局長は、「現在の最優先事項は、感染発生地域周辺の子供全員に、速やかに予防接種を受けさせることだ」と述べました。

 イスラム原理主義国家の樹立を目指す過激派組織「ボコ・ハラム」との紛争で荒廃したボルノ州では、これまで予防接種の実施が困難でした。さらに、ボルノ州は現在、食糧危機に直面しており、国連児童基金(ユニセフ)は7月、約5万人に上るナイジェリアの子供が餓死の危機にさらされていると警告していました。

 ユニセフ・ナイジェリア事務所の広報担当官は、「ナイジェリア北東部で野生株ポリオウイルスの発生が確認されたことは、紛争によって荒廃したボルノ州の子供たちが直面している緊急事態を浮き彫りにしている。同州の子供たちはすでに、危険なほど高い水準の栄養不良に直面している」と指摘しました。

 ナイジェリアでは、ワクチンの安全性に対する親たちの懸念を受け、2003年に一部の北部州がワクチン接種を禁止して以降、ポリオウイルスを封じ込るための懸命の取り組みが続けられていました。

 WHOによると、感染力が高いウイルス感染症のポリオは、主に低年齢の子供が発症し、永久的なまひを引き起こす恐れがあります。治療法はなく、予防接種で防ぐことしかできないといいます。

 ポリオは、世界の多くの国で根絶されたものの、ナイジェリア、それにパキスタン、アフガニスタンの3カ国が流行国リストに入っています。パキスタンとアフガニスタンでは、イスラム過激派などによってワクチン接種が妨害されるケースもあって患者の発生が続いており、WHOはポリオの世界的な根絶に向けて努力を続ける必要があるとしています。

 日本では、1960年(昭和35年)に、ポリオ患者の数が5000人を超え、かつてない大流行となりましたが、生ポリオワクチンの導入により流行は収まりました。1980年(昭和55年)の1件を最後に現在まで、ワクチンによらない野生株ポリオウイルスによる新たな患者は出ていません。

 2016年8月12日(金)

 

■7月の予期せぬ死亡、32件届け出 医療事故調査制度

 患者の予期せぬ死亡が対象の医療事故調査制度で、第三者機関の日本医療安全調査機構(東京都港区)は9日、7月に医療機関から「院内調査」が必要として届け出があった事案は前月より2件少ない32件だったと発表しました。

 昨年10月の医療事故調査制度の開始後の累計は317件となり、このうち規定に従って院内調査の結果報告書が日本医療安全調査機構に提出されたのは112件となりました。

 7月に調査が必要として届け出があった32件の内訳は、病院(20床以上)が31件で、診療所(20床未満)が1件。地域別では、関東信越が最多の9件で、近畿8件、北海道と東海北陸が各4件、東北と中国四国が各3件、九州が1件でした。

 診療科別では、外科が7件、内科4件、心臓血管外科が3件などでした。

 一方、7月にあった日本医療安全調査機構への再調査依頼は、遺族側から3件、医療機関側から2件。制度開始後の再調査依頼は、この5件を含め9件となりました。

 2016年8月11日(木)

 

■女性に多い肺腺がん、発症リスク影響の6遺伝子発見 国立がん研究センターなど

 女性や非喫煙者に多いタイプの肺がんの発症しやすさを決める6つの遺伝子を見付けたと、国立がん研究センターなどの研究チームが9日、発表しました。

 かかりやすい人を予測し、検診などで早期発見できる可能性があるといいます。

 肺がんは毎年約7万人が亡くなり、がんの種類別で最多。研究チームは、日本人の肺がんの4分の1程度を占め、非喫煙者や女性、若年者の発症も多く、「EGFR」という遺伝子の変異によって発症する肺腺がんに注目しました。

 この肺腺がんの患者3173人と、がんを発症していない1万5158人の全遺伝情報を比べたところ、免疫反応などにかかわる「HLA-DPB1」など6つの遺伝子に特定のパターンの配列があると、発症に関係していることがわかりました。

 6つの遺伝子のうち1つで特定のパターンの配列があると、発症しやすさが1・19~1・42倍になり、複数の遺伝子で特定のパターンの配列があれば、リスクがさらに高まっていくといいます。

 そのため、事前に遺伝子検査を行って肺腺がんになりやすい人を見付け出しておき、定期的に検診を行うような体制を作れば、がんの早期発見につなげられる可能性があるとしています。

 国立がん研究センター研究所の河野隆志・ゲノム生物学研究分野長は、「この肺腺がんは日本を含むアジアに多いタイプで、喫煙との関連が比較的弱く、効果的な予防法もない。早期に発見すれば生存率を高められるので、リスクが高い人に若い時から検診を受けてもらうなどして、早期発見に結び付けたい」「今回見付けた遺伝子に加え、生活要因や環境要因の研究も進めていく必要がある」と話しています。

 2016年8月10日(水)

 

■9日の熱中症搬送532人搬送、1人死亡 1~7日の熱中症搬送6588人、12人死亡

 気象庁によりますと、9日は西日本と東日本を中心に、日本の東の海上にある太平洋高気圧に覆われた上、大陸にある温暖なチベット高気圧が日本の上空に張り出して2つの高気圧が重なる状態となりました。このため、暖かい空気が地上に吹き下ろし、晴れて強い日差しが地上に届きやすくなり、各地で猛烈な暑さとなりました。

 特に東日本の太平洋側では、北上する台風5号による北からの風が内陸の山を越えて暖かく乾いた風として吹き降ろす「フェーン現象」が加わったため、各地で気温が上昇しました。

 各地で猛烈な暑さとなった影響で、熱中症や熱中症とみられる症状で病院に運ばれた人は9日午後5時現在、全国で少なくとも532人に上り、1人が死亡しました。

 マスコミが全国の消防や警察に取材して午後5時現在でまとめたところ、熱中症や熱中症とみられる症状で9日、病院に運ばれた人は全国の46都道府県で少なくとも532人に上りました。

 栃木県那須烏山市では9日午前6時前、93歳の女性が自宅でぐったりしているのが見付かり、その後、死亡が確認されました。消防によりますと、熱中症の症状で亡くなったとみられるということです。

 都道府県別では愛知県が49人と最も多く、次いで東京都が44人、福岡県が42人、埼玉県が36人、神奈川県が29人、千葉県が28人などとなっています。

 また、総務省消防庁の9日の発表によると、8月1~7日の1週間の熱中症による救急搬送者は全国で6588人、うち搬送先で死亡が確認されたのは12人に上りました。

 いずれも速報値。搬送者数、死者数ともに1週間当たりでは今年最多となりました。

 消防庁は7月下旬に関東甲信地方や東北地方で梅雨明けして以降、気温の高い日が続いたことが要因とみています。3週間以上の入院が必要な重症者は141人、短期の入院が必要な中等症は2118人。搬送者のうち、65歳以上の高齢者は3330人で、約半数を占めました。

 都道府県別の搬送者は大阪府の416人が最多で、東京都398人、愛知県383人が続きました。死亡したのは北海道、埼玉県、兵庫県で各2人、岩手県、秋田県、神奈川県、大阪府、山口県、福岡県で各1人。

 今年の統計を始めた4月25日以降の合計では、搬送者数は3万1743人、死者は45人となりました。 

 2016年8月9日(火)

 

■脂肪細胞増で腹部大動脈瘤が破裂 近畿大などがラットで解明

 突然破裂して死に至ることもある腹部大動脈瘤(りゅう)が破裂する原因をラットで明らかにしたと、近畿大学などの研究チームが8日、イギリスの科学誌サイエンティフィック・リポーツに発表しました。

 破裂の予見・予防や治療薬の開発に役立つ可能性があるといいます。

 大動脈瘤は、動脈の壁の一部が異常に大きくなった状態。2015年には年間1万6000人以上が亡くなり、日本人の死因の9位。破裂まで自覚症状がないことが多く、なぜ突然破裂するのかは不明でした。

 近畿大学の財満信宏准教授(食品科学)らは、ラットの腹部の動脈を人工的に大動脈瘤と同じような状態にして、血管を詳しく調べました。

 血管の壁の外側で脂肪細胞が増えており、その脂肪細胞が免疫細胞を呼び寄せていました。そして、免疫細胞が出す酵素が、血管の壁の強度を保つ繊維を壊すことがわかりました。血管内の圧力に耐えられなくなった結果、破裂するとみられます。

 大動脈瘤のような状態のラットがエイコサペンタエン酸(EPA)を豊富に含む魚油を食べると、中性脂肪の一種を食べた同様の状態のラットに比べ、破裂のリスクが下がることも判明しました。

 財満准教授は、「食事による予防法の発見にも力を入れたい」と話しています。

 2016年8月8日(月)

 

■新薬オプジーボ、腎臓がんの一部でも保険適用へ 厚労省部会が了承

 免疫の働きを利用した新しい仕組みのがん治療薬「オプジーボ」(一般名・ニボルマブ)について、厚生労働省の薬事・食品衛生審議会の部会は5日、腎臓がんの一部である腎細胞がんについても使用を認めることを了承しました。厚労省が約1カ月後、正式に承認し、保険適用が認められる見通し。

 オプジーボは、優れた効果が期待されるものの、極めて高額な新薬。現在、皮膚がんの一種の悪性黒色腫(メラノーマ)と、肺がんの一部である非小細胞肺がんが、保険適用となっています。

 新たに使用が認められたのは、切除できなかったり進行性だったりする腎細胞がんで、年間4500人程度が対象となると推計されます。適応拡大により使用患者が増えても薬価を見直す制度はなく、体重60キロの患者が1年間使うと薬剤費は年3500万円。

 医療費の自己負担分が一定額を超えた場合に軽減される「高額療養費制度」があるために、患者の負担は月9万円程度ですが、残る金額は患者が加入する医療保険と国や自治体の公費で賄われ、保険財政への影響が懸念されています。

 厚労省は、使用する医師や患者を絞り込むことで医療費抑制につなげようと、オプジーボのような新たな作用の仕組みを持つ新薬の適正使用を進める指針を策定中ですが、今回の部会には間に合いませんでした。

 部会では、「指針を見ながら審査したい」との声が出たといいます。

 販売元の小野薬品工業(大阪市中央区)は、悪性リンパ腫の一部であるホジキンリンパ腫と、頭頸(とうけい)部がんについても、厚労省にオプジーボの適応拡大を申請しています。

 2016年8月7日(日)

 

■過体重、中年の脳の老化を加速 ケンブリッジ大学が発表

 過体重や肥満の中年の人々の脳では、老化が加速している兆候が示されているとの研究結果が4日、海外で発表されました。

 医学的に過体重とされる人の脳では、大脳白質という脳の異なる部位間の情報伝達を可能にする結合組織の各測定値が、やせた人に比べて著しく低いことを研究チームは発見しました。

 アメリカの専門誌「加齢神経生物学」に掲載された論文によれば、研究結果から判断すると、40歳の過体重の人の脳は、老化が10年進んでいると考えられるといいます。また、この10年の格差は、過体重や肥満の人々が年を取り、長い時間を経ても残り続けます。

 論文の筆頭執筆者で、イギリスのケンブリッジ大学精神医学部の科学者のリサ・ローナン氏は、「脳の大きさは、老化が進むにつれて自然に小さくなる」と説明。その上で、標準体重の人々に比べて「過体重や肥満の人々は、大脳白質の減少量が大きい」と説明しました。

 だが、現段階では、過体重が原因でこのような脳の変化が起きているのか、それとも大脳白質量の低下が体重増加を引き起こしているのかについては、「科学的にはまだ推測の域を出ていない」と指摘しています。

 論文の共同執筆者で同じくケンブリッジ大学のポール・フレッチャー氏は声明で、「これら2つの因子の相互作用については、健康に重大な結果がもたらされる可能性があるため、その仕組みを解明することは重要となる」と述べています。

 ローナン氏と研究チームは、20歳から87歳までのボランティア500人近くから収集したデータを調べました。その結果、過体重のグループでは、年齢が中年を超えないと大脳白質密度の格差が現れなかったことから、脳の脆弱(ぜいじゃく)性が中年期以降に高まることが示唆されました。

 研究チームによれば、過体重の人とやせた人との認知能力やIQ(知能指数)の測定可能な差については、大脳白質の縮小との対応関係は存在しなかったといいます。

 論文の別の共同執筆者で同じくケンブリッジ大学のサダフ・ファローキ氏は、「脳構造におけるこれら変化の影響に関しては、現時点ではまだ不明」と話し、「明らかなのは、今回の研究を出発点として、体重、食事、運動などが脳や記憶に及ぼす影響をさらに詳細に調査する必要があることだ」と付け加えました。

 2016年8月7日(日)

 

■細胞シートを心不全患者に移植 医療保険の適用1例目、大阪大学

 重い心臓病の患者に筋肉の細胞から作ったシートを移植して、機能の回復を促す再生医療で、公的医療保険が適用されるようになってから初めての移植手術が5日、大阪大学で行われました。

 この再生医療は、重い心臓病の患者の足から筋肉の元となる細胞を取り出して培養し、直径5センチほどの膜にした「細胞シート」を心臓に貼り付けて機能を回復させるものです。

 大阪大学・心臓血管外科の澤芳樹教授などの医療チームが開発し、細胞シートは昨年、期限付きで製造・販売が承認されました。

 5日は、昨年11月に公的医療保険が適用されるようになってから初めての移植手術が、大阪大学医学部附属病院で行われました。

 手術を受けたのは、大阪府能勢町の66歳の男性で、心臓への血流が悪くなって心筋の働きが鈍くなる虚血性心筋症を起こしました。医療チームは今年5月、太ももの細胞を取り出してシートを作り、5日に5枚を心臓の表面に移植しました。手術は2時間ほどで終わり、異常がなければ1カ月ほどで退院できる見込みだということです。

 執刀した澤教授は、「再生医療は、これまで実験の段階だったが、これを切っ掛けに実際の治療として患者の元に届けていきたい」「提供者不足が深刻な心臓移植や、合併症などの問題がある人工心臓に代わる新たな治療法として普及してほしい」と話しています。

 医療チームはこれまで、細胞シートを用いて、心臓の筋肉が薄くなりポンプ機能が低下する拡張型心筋症なども含め40例以上の臨床研究を実施。手術に伴う重い合併症は認められず、多くの患者で症状が改善したといいます。

 大阪大学では今後、月に1~2人に同様の移植を進める予定といいます。

 2016年8月6日(土)

 

■サリドマイド、希少難病の治療に有効性 千葉大学病院などが発表

 がんなどの治療に使われている薬「サリドマイド」がクロウ・フカセ(POEMS)症候群という難病の治療に有効性があることが、臨床試験でわかったと千葉大学病院などの研究チームが発表しました。

 クロウ・フカセ症候群は、骨髄の中にある形質細胞の腫瘍によって生じ、胸や腹に水がたまったり、手足がしびれたりするなど、多くの臓器に障害が出る重篤な病気で、全国に推定で約340名と患者が非常に少ない「希少疾患」とされています。

 現在は血液の細胞を移植する治療などが行われていますが、患者の半数は年齢などの理由で受けることができません。

 千葉大学病院など全国12の病院で作る研究チームは、サリドマイドという薬について、この難病への有効性を調べる臨床試験を進めてきました。サリドマイドは昭和30年代に四肢欠損の奇形児の誕生を引き起こす深刻な薬害が相次ぎ、国内では40年以上販売が禁止されていましたが、8年前に再び承認され、炎症性疾患やがんの治療薬として使われています。

 臨床試験では、4年間で24人を対象に調べた結果、サリドマイドを使ったグループでは症状の原因となっているとされる特定のタンパク質が39パーセント減少したほか、筋力も改善し、有効性が確認できたということです。

 これを受け、製薬会社が今後、承認に向けた手続きを進める方針で新たな治療法につながると期待されています。

 千葉大学病院の桑原聡教授は、「病気が知られておらず、診断されていない患者も少なくないと思うので、承認されて早期に発見治療できるようにしたい」と話しています。

 2016年8月6日(土)

 

■人工知能、がん治療法を助言し命救う アメリカIBMの「ワトソン」

 東京大学医科学研究所が導入した2000万件の医学論文を学習した人工知能(AI)が、専門の医師でも診断が難しい特殊な白血病を10分ほどで見抜き、治療法を変えるよう提案した結果、60歳代の女性患者の命が救われたことがわかりました。

 人工知能は、このほかにも医師では診断が難しかった2人のがん患者の病名を突き止めるなど、合わせて41人の患者の治療に役立つ情報を提供しており、専門家は「人工知能が人の命を救った国内初のケースだと思う」と話しています。

 東京大学医科学研究所の附属病院は、アメリカの大手IT企業IBMなどと共同で、人工知能を備えたコンピューターシステムで、アメリカのクイズ番組で人間のチャンピオンを破った「ワトソン」に2000万件に上るがん研究の論文を学習させ、診断が極めて難しく治療法も多岐にわたる白血病などのがん患者の診断に役立てる臨床研究を昨年から進めています。

 このうち66歳の女性患者は当初、医師から「急性骨髄性白血病」と診断され、効果がある2種類の抗がん剤を組み合わせる標準的な治療を数カ月間、受けましたが、体の免疫機能を担う白血球の数は回復せず、高熱を出して意識障害を起こすなど容体が悪化し、その原因もわかりませんでした。

 このため、女性患者の1500に上る遺伝子の変化のデータをワトソンに入力し分析したところ、10分ほどで「STAG2」と呼ばれる遺伝子の変化が根本の原因を作り出している「二次性白血病」という別のがんにかかっていることを見抜き、抗がん剤の種類を変えるよう提案したということです。

 女性は治療が遅れれば、免疫不全による敗血症などで死亡していたおそれもありましたが、ワトソンが病気を見抜いたために命を救われ、無事退院しました。

 こうした病名の診断は、現在、複数の医師が遺伝情報のデータと医学論文を突き合わせながら行っているものの、データが膨大なために必ずしも結論にたどり着けるかどうかわからないということです。

 研究を行った東京大学医科学研究所の宮野悟教授は、「1人の医師がすべての膨大な医療情報を把握するには限界があり、情報を蓄積して自ら学習する人工知能の活用は医療の世界を変える可能性を秘めている」と話しています。

 また、人工知能学会の会長の山田誠二国立情報学研究所教授は、「人工知能が人の命を救った国内初のケースといってもいい。人工知能にとって医療やヘルスケアの分野は最も実用化が進む大きな市場になると予想され、今後も導入が進んでいくだろう」と指摘しています。

 こうした医療分野での人工知能の活用は、アメリカで先行しており、すでに複数の病院で白血病や脳腫瘍の治療の支援などに使われています。

 2016年8月5日(金)

 

■ジカ熱のワクチン開発、サルで感染防止に成功 アメリカの研究チーム

 感染拡大が続くジカ熱(ジカウイルス感染症)について、アメリカなどの研究チームがサルを使った実験で、開発した3種類のワクチンによってジカウイルスへの感染を防ぐことに初めて成功したと、4日付のアメリカの科学誌サイエンス電子版で発表し、ワクチンの実用化に向けて弾みがつくと期待されています。

 蚊が媒介する感染症のジカ熱は、妊娠中の女性が感染すると頭部が先天的に小さい小頭症の新生児が生まれるおそれが指摘されており、ブラジルなど中南米のほか、アメリカでも地域に生息する蚊から感染したとみられるケースが報告されています。

 アメリカのハーバード大学や陸軍の研究所などの研究チームは、病原性をなくしたウイルスを使う「不活化ワクチン」と、人工的に作ったウイルスの遺伝子の一部を使った「DNAワクチン」、それに遺伝子を別のウイルスに組み込んで作ったワクチン、合わせて3種類を開発し、それぞれアカゲザルに投与しました。投与してから数週間のうちに、いずれのワクチンでもサルの体内でウイルスを無害化する抗体が増えました。

 そして、ジカウイルスを注射したところ、血液などからウイルスは検出されず、研究チームは、人に近いサルで、初めて感染を完全に防ぐことができたとしています。

 ジカ熱のワクチンを巡っては、アメリカの国立衛生研究所などが今回とは異なる「DNAワクチン」を18歳から35歳の健康な80人に投与して、安全性を確かめる臨床試験を始めており、さまざまな研究が進むことでワクチンの実用化に向けて弾みがつくと期待されています。

 一方、世界保健機関(WHO)は4日、蚊を媒介して感染するジカ熱について、最新の調査結果を発表しました。

 それによりますと、7月29日に、国内で生息する蚊からの感染が初めて報告されたアメリカが新たに加わり、これまでにジカ熱の感染が報告されたのは、中南米や東南アジアなど、68の国と地域となっています。

 また、妊娠中の女性が感染して新生児に小頭症などの悪影響が出たと報告されているのは14の国と地域で、このうちブラジルが1749例と最も多く、アメリカでも19例に上っているということです。

 WHOによりますと、国や地域によっては、ジカ熱の感染の報告が減っているところもあるということですが、引き続き警戒が必要だとしており、蚊に刺されないための対策を徹底するよう呼び掛けています。

 2016年8月5日(金)

 

■慢性期の脊髄損傷、細胞移植とリハビリで相乗効果 慶大がマウスで実験

 交通事故などで脊髄損傷になった患者は半年以上たつと、将来、体のさまざまな組織になるiPS細胞(人工多能性幹細胞)などを使った神経の細胞の移植が可能になっても、運動機能を回復させることは難しいと考えられていますが、慶応大学などの研究チームは、細胞の移植と歩行訓練を組み合わせれば、運動機能を回復できる可能性があることをマウスを使った実験で明らかにしました。

 この研究を行ったのは、慶応大学の中村雅也教授らのチームです。チームでは、脊髄を損傷して6週間以上が経過したマウスに、リハビリとしてまず1週間の歩行訓練をした上で、神経を新たに作り出す神経幹細胞などを移植し、再び8週間、歩行訓練のリハビリを行いました。

 その結果、治療前は足を引きずりうまく歩けなかったマウスがしっかりと歩き、歩行のスピードも1・5倍になったということで、細胞移植だけやリハビリだけのマウスに比べて、相乗効果で回復度合いが高くなりました。

 研究チームでは、交通事故などで脊髄損傷になった患者にiPS細胞を使って神経を再生するための研究を進めていますが、国内に20万人以上いるといわれる半年以上がたった慢性期の患者は症状が固定してしまい、運動機能の回復は難しいと考えられてきました。

 中村教授は、「iPS細胞を使った移植とリハビリを組み合わせれば、慢性期の患者でも回復できる可能性のあることがわかった。治療法の開発に向けた大きな一歩だ」と話しています。

 研究チームでは、2017年度にも、脊髄を損傷して2~4週の患者に、iPS細胞から作った神経幹細胞を移植する臨床研究を始める方針。2019年をめどに、慢性期の患者に対して、神経幹細胞の移植と体の動きを助ける装着型ロボットを使うリハビリを組み合わせた臨床研究を試みる計画も検討しています。

 今回の研究成果は3日、イギリスの科学誌電子版に発表されました。

 2016年8月4日(木)

 

■E型肝炎、1400人に1人が感染 東京都の献血で

 輸血で感染することがあるE型肝炎ウイルスについて、東京都内で献血した人の約1400人に1人が感染していたことが3日、日本赤十字社の調査で明らかになりました。全国で感染率が最も高いと考えられている北海道の2倍近くに上りました。

 E型肝炎に関しては、移植患者らが輸血で感染し、起こらないとされていた慢性肝炎になった例が判明しています。厚生労働省や日赤は今後、免疫が低下するなどリスクの高い人には、血液の提供前にウイルスを検査する仕組みが必要かどうかを検討します。

 E型肝炎はウイルス性の急性肝炎で、輸血のほか、ウイルスに汚染された水の摂取、豚肉の生食などで感染します。発症すると黄疸(おうだん)のほか熱やだるさ、吐き気など急性肝炎の症状が出て、一部は劇症肝炎になる恐れがあります。一方で大半の患者は回復し、感染しても症状が全く出ない人も多くみられます。

 日赤によると、3月から6月に東京都内で献血した人から約1万5000人を抽出して検査した結果、20歳から60歳代の11人からE型肝炎ウイルスを検出しました。

 検出された人の居住地は、東京都だけでなく千葉県や埼玉県、神奈川県、山梨県に及び、感染率を基に試算すると、関東甲信越地域で年間約8000人が感染している可能性があるといいます。

 輸血によるE型肝炎ウイルスへの感染は2002年~2014年に17人が確認されていますが、日赤は具体的な対策は取っていません。

 国立感染症研究所の石井孝司室長は、「免疫が低下していてリスクが高い人に輸血する時は、輸血用血液のE型肝炎ウイルス検査が必要ではないか」としています。

 2016年8月4日(木)

 

■お好み焼きとご飯など主食の重ね食べは肥満のもと 大阪府が調査結果を発表

 大阪府民の食への意識と行動について、大阪府が初めて調査したところ、肥満の人は、お好み焼きとご飯、うどんとかやく御飯、ラーメンとチャーハン、パスタとパンなど、2種類以上の主食を同時に食べる「重ね食べ」の回数が多いという結果がまとまりました。

 大阪府は、食べる量や回数に気を付けるよう注意を呼び掛けています。

 昨年、2015年11月から12月にかけて、大阪府は18歳以上の府民を対象に、初めてとなる食への意識と行動についての調査を行い、回答が得られた1858人の結果を分析しました。

 調査では、「米・パンと麺類や粉もん(お好み焼き、たこ焼きなど)を一緒にどのくらい食べているか」と質問。「1日1食」以上は男性は27パーセント、女性26パーセント、「週1食」以上は男性の61パーセント、女性の47パーセントを占めました。

 肥満度別では、男性では「やせ」の53パーセント、「普通」の59パーセント、「肥満」の71パーセントが、重ね食べを「週1食」以上していました。女性では「やせ」の42パーセント、「普通」の46パーセント、「肥満」の56パーセントが、「週1食」以上重ね食べしていました。

 また、男性の39パーセント、女性の58パーセントが、重ね食べは「太りそうだと思う」と回答しました。

 この結果について、大阪府は、肥満の人は主食の重ね食べをしている回数が多いことがわかったとしており、外食業界に対して今後、定食メニューのご飯をサラダや煮物に置き換えるよう働き掛ける考えです。

 上家和子・大阪府健康医療部長は、「肥満傾向の人は、生活習慣病のリスクが高まる。重ね食べは大阪の食文化だが、食べる量や回数に気を付けてほしい」「ご飯を食べるより、お好み焼きの野菜のかさを増やすなど、ちょっとした工夫でバランスのよい食事を目指してほしい」と話しています。

 2016年8月3日(水)

 

■2015年の地球は観測史上最も暑い1年 温室効果ガス濃度も最高

 昨年、2015年の地球は、温室効果ガスの濃度が最も高くなり、観測史上最も暑い1年になったとアメリカの政府機関が発表し、温暖化の傾向が続く中で世界各地で異常気象が引き起こされていると分析しています。

 アメリカの海洋大気局(NOAA)は、62カ国の450人を超える研究者の協力を得て、昨年、世界各地で観測された気候の指標となるさまざまなデータを分析してまとめた報告書を2日、発表しました。

 それによりますと、昨年の地球表面の平均気温は、これまでで最も高かった一昨年、2014年よりもおよそ0・1度上がり、産業革命前の平均と比べて初めて1度以上上回って、観測史上最も暑い1年になったということです。

 温室効果をもたらす二酸化炭素の濃度が平均で399・4ppmと、これまでで最も高くなったことに加え、南米沖太平洋の赤道付近の海面温度が高くなるエルニーニョ現象が続いたことで、気温の上昇が増幅したとしています。

 さらに、こうした影響で北極地域などの氷河が溶けるなどして、海水面は人工衛星による観測が始まった1993年と比べて平均で7センチ上昇し、過去最高を更新しました。

 一方、深刻な干ばつに見舞われた地域はほぼ倍増。2014年には地球の8パーセントでしたが、2015年には地球の14パーセントとなりました。台風などの熱帯低気圧は101個発生して、2010年までの30年間の平均をおよそ20個上回ったということです。

 NOAAの報告書では、「ほとんどの指標は温暖化の傾向が続いていることを示している」とした上で、「気候変動によって世界各地で異常気象が引き起こされている」と分析しています。

 2016年8月3日(水)

 

■E型肝炎の感染者、過去最多 豚肉、イノシシ肉、シカ肉で感染、加熱不十分

 豚肉の生食などを通じて感染するE型肝炎の感染者が今年に入って増加し、国に届け出が義務付けられてから過去最多だった昨年の212人をすでに上回ったことが2日、国立感染症研究所の調べでわかりました。

 感染源が推定できた症例のうち半数は豚肉で、次いでイノシシ肉、シカ肉の順でした。また、輸血から感染が疑われた症例もあったといいます。

 豚の生肉やレバーを食べた人もおり、加熱調理や感染防止策の不徹底などが考えられるといいます。

 感染研の最新のまとめによると、報告のあった感染者は7月24日現在で、241人となりました。4類感染症として感染症発生動向調査の対象となった2003年11月以降、年間で最多を記録した昨年の報告数212人をすでに上回っています。

 東日本が多く、北海道が79人と約3分の1を占めました。東京都28人、神奈川県19人、群馬県13人、千葉県12人、埼玉県11人と続きました。

 E型肝炎はウイルス性の急性肝炎で、ウイルスに汚染された食物や水を摂取することで感染。15日から50日の潜伏期間の後、腹痛や食欲不振といった消化器症状を伴う急性肝炎を発症します。ウイルスに汚染されたイノシシやシカなど野生鳥獣の生肉(ジビエ)、加熱が不十分な肉が感染源と疑われるケースも少なくありません。

 国立感染症研究所は、「不明な点も少なくないが、豚の生肉やレバー等の生食はE型肝炎ウイルス感染のリスクが高い」と指摘し、「国民全体にE型肝炎の感染のリスクについて、より一層の周知徹底と理解が重要」としています。

 感染者の報告があった自治体も、「食肉の十分な加熱に加え、野生鳥獣の肉を生で食べることをやめるようにしてほしい」と呼び掛けています。

 2016年8月2日(火)

 

■フラッシュバック現象、マウス実験で仕組み解明 富山大学など

 日常生活の何気ないことが引き金になって過去のつらい経験を思い出す「フラッシュバック現象」が起きる仕組みを富山大学などの研究チームがマウスを使った実験で明らかにし、心的外傷後ストレス障害(PTSD)の治療法の開発につながる成果として注目されています。

 富山大学の井ノ口馨教授などの研究チームは、マウスをおちょこなど形に特徴がある物体とともに箱の中に入れ、平常の場合と怖い経験をした場合とで、物体についての記憶がどのように変わるか調べました。

 その結果、平常の場合、マウスは24時間後には物体の形を忘れていたのに対し、怖い経験をした場合、24時間後も物体の形を覚えていたということです。

 また、マウスの神経細胞を調べた結果、物体の形を覚えていた細胞は、怖い経験そのものを覚えていた細胞とおよそ70パーセント重なっていることがわかり、こうした重なりが、日常生活の何気ないことが引き金になって過去のつらい経験を思い出すフラッシュバック現象の原因になっているとみられるということです。

 井ノ口教授は、「今後、さらに研究を進めて、つらい体験と、その際の何気ない経験の両方を記憶している細胞の活動を弱めてフラッシュバック現象が起きるのを防ぐことができれば、PTSDの症状を和らげる治療法の開発につながる可能性がある」と話しています。

 2016年8月1日(月)

 

■ジカ熱、リオで50万人のうち25人に感染する可能性 ホンジュラスでは小頭症の新生児が3日で6人誕生

 ブラジルなど中南米を中心に流行しているジカ熱(ジカウイルス感染症)は、訪れる外国人を不安にさせてきた要因の一つです。妊娠中の女性が感染すると小頭症の新生児が生まれる可能性が高まるとして、世界的に懸念が高まった病気です。

 しかし、8月5日に第31回夏季オリンピックが開催されるリオデジャネイロの街では、ジカ熱を警戒する人の姿はほとんど見られません。コパカバーナビーチで観光客にチョコレートを売る女学生のカリニ・ホシャさん(20歳)は、毎日半袖のTシャツにビーチサンダル姿で、「感染の心配はしていない」と笑います。

 ロンドンからやってきたイギリス人女性イマジン・エベレストさん(19歳)は、「ブラジルに来る前のほうが心配していた。来てみて問題がないと思うようになった」。持ってきた虫よけスプレーも使っていないといいます。

 南半球の今は冬で、最も気温が下がる季節。ウイルス学者のペドロ・バスコンセロス氏は、「冬のリオは気温が低く、乾燥するため、蚊は少ない。感染の可能性はほとんどない」と話しています。統計によると、リオで今年1月にジカ熱に感染したとみられる人は7733人。気温が下がるに従って減少し、6月は510人でした。

 夏季オリンピック期間中にリオを訪れると予想される外国選手団や観光客は約50万人。感染の仕組みを数学的に分析してきたサンパウロ大医学部のエドゥアルド・マサジ教授は、同じく蚊が媒介するデング熱感染者の過去の統計をもとに、「ジカ熱に感染する可能性があるのは、50万人のうちの25人。実際に症状が出るのは5人ほどだ。確率的には、リオの街ではジカ熱に感染するよりも、銃撃戦の流れ弾で死亡したり、性的暴行を受けたりする可能性のほうが高い」といいます。

 ただし、リスクはゼロではありません。ジカ熱を研究するオズワルド・クルス財団のパウロ・ガデリャ会長は、「妊婦がいったん感染すれば、小頭症の子が生まれるなどの重大な結果をもたらす。特に女性は虫よけを使って蚊に刺されないよう注意すべきだ」と呼び掛けています。

 一方、中米のホンジュラスでは、小頭症の新生児が3日間に6人誕生し、ジカウイルスの拡散に対する新たな懸念が持ち上がっていることを複数の医師が30日、明らかにしました。

 6例すべてがジカウイルス関連の小頭症で、特にジカ熱の被害が大きい首都テグシガルパの真南に位置するチョルテカ市内の同一の病院で記録されました。ジカウイルスは蚊の媒介だけでなく性交渉でも感染します。

 疫学者のグスタボ・アビラ氏は、「小頭症の新生児は毎年生まれるが、3日間に6人はただならぬ事態だ」と語りました。

 2016年7月31日(日)

 

■ジカ熱、アメリカ国内の蚊から初感染疑いの患者 南部フロリダ州

 アメリカ南部フロリダ州で、地域に生息する蚊からジカ熱(ジカウイルス感染症)に感染したとみられるケースが、アメリカ国内で初めて見付かりました。フロリダ州には多くの観光客が訪れることから、保健衛生当局は感染拡大への警戒を強めています。

 蚊が媒介する感染症のジカ熱は、妊娠中の女性が感染すると、頭部が先天的に小さい小頭症の新生児が生まれるおそれが指摘されており、これまでに中南米を中心に67の国と地域で感染の拡大が確認されています。

 フロリダ州の保健衛生当局は29日、今月上旬にジカ熱に感染した男性3人、女性1人のケースについて、流行地域への渡航歴がなく、感染した人との性交渉もないことから、地域に生息する蚊から媒介されて感染したものとみられると発表しました。

 アメリカ国内で蚊からジカ熱に感染したとみられるケースは、初めてです。これまでアメリカ国内では、1600件以上の感染が報告されてきましたが、そのほとんどはジカ熱の流行地域を旅行中に感染した人々が国内に持ち込んだもので、ほかに少数の性的感染のケースが報告されていました。

 フロリダ州の保健衛生当局によりますと、感染は今のところ中心都市マイアミの狭い範囲に限られ、4人は別の感染者の血液を吸った蚊によって感染したとみられるとしています。

 調査では、周辺にいる蚊からウイルスは検出されていませんが、フロリダ州は夏休みの時期を迎え、世界各地から観光客が訪れることから、保健衛生当局は、今後同様の感染が広がるおそれもあるとして、蚊の駆除や虫よけの配布など、感染の拡大防止のための対策を強化しています。

 フロリダ州のリック・スコット知事は記者会見で、「感染者のうち1人が女性で、残りの3人は男性だ。感染例はすべて現在進行中のものだが、いずれの患者にも入院が必要になるような症状は出ていない」と述べました。

 フロリダ州の保健衛生当局が、アメリカ国内で初めて、地域に生息する蚊から男女4人が感染したとみられると発表したことについて、ホワイトハウスのシュルツ副報道官は29日の会見で、オバマ大統領が報告を受け、情報収集に全力を挙げるよう関係機関に指示したことを明らかにするとともに、フロリダ州を支援する考えを示しました。

 また、シュルツ副報道官は「今回の発表で議会は目を覚ますべきだ」と述べ、ジカ熱への対策費が議会で承認されていないことに強い懸念を示しました。

 2016年7月30日(土)

 

■中高生、8時間半睡眠が心の健康に最良 東大、高知大が研究

 中学生や高校生は、睡眠をおよそ8時間半しっかりととった場合に心の健康状態が最もよくなり、逆に5時間半未満と短い場合にうつの症状が表れやすくなることが、東京大学や高知大学の研究でわかりました。

 心療内科の医師で健康教育学が専門の東京大学の佐々木司教授などの研究チームは、高知県、三重県の中学生と高校生合わせて1万8000人余りを対象にアンケート調査を行い、平日夜間の睡眠時間ごとに、落ち込んだり意欲が湧かなかったりといった、うつの症状を感じている人の割合を調べました。

 その結果、男子では、睡眠が5時間半未満の場合、うつや不安の症状を感じている人が半数以上と最も多くなったのに対し、8時間半から9時間半の場合、およそ2割と最も少なくなりました。

 女子では、睡眠が5時間半未満の場合、うつや不安の症状を感じている人が7割以上と最も多くなったのに対し、7時間半から8時間半の場合、およそ半数と最も少なくなりました。

 こうしたデータから、中学生や高校生は、睡眠をおよそ8時間半しっかりととった場合、心の健康状態が最もよくなり、逆に5時間半未満と短い場合にうつや不安の症状が表れやすくなることがわかったということです。

 平日夜間の睡眠時間の平均は、中1男子が7・9時間、中1女子が7・5時間、高3男子は6・8時間、高3女子は6・6時間でした。

 近年、睡眠不足と精神疾患に関連があることが判明していますが、精神疾患にかかりやすくなる思春期に、どの程度の睡眠時間が必要かわかっていなかったため、研究チームはアンケート調査を実施しました。

 佐々木教授は、「精神的な病気の人の多くは10歳代の時に発症している。中学生、高校生のころに心の健康状態を良好に保つことは非常に重要で、そのためにも十分な睡眠をとってほしい」と話しています。

 2016年7月30日(土)

 

■新種の抗生物質、人の鼻の中に生息する細菌から発見 ドイツの大学

 人の鼻の中にいる細菌から新種の抗生物質(抗菌剤)を発見したと、ドイツの研究チームが発表しました。抗生物質が効かない薬剤耐性菌の問題が深刻となる中、研究チームは新たな治療薬の開発に役立つ可能性があるとしています。

 ドイツのチュービンゲン大学の研究チームは、「黄色ブドウ球菌」が鼻腔内に常在する人は全体の3割で、7割の人には存在しないのはなぜかについて調査していました。黄色ブドウ球菌は、重症の細菌感染症の最も多い原因の一つで、これによって多くの人が実際に命を落としています。また、黄色ブドウ球菌の菌株の一種は、抗生物質に対する耐性を獲得しています。

 研究チームは、これとは別のブドウ球菌属の細菌で、体の中でも特に鼻の中に多く生息する「スタフィロコッカス・ルグドゥネンシス」が、黄色ブドウ球菌と闘う抗生物質を生成することを発見し、「ルグドゥニン」と名付けたということです。

 さらに、この新種の抗生物質「ルグドゥニン」を皮膚の感染症にかかったマウスの背中に塗ったところ、原因となる細菌を死滅させたほか、抗生物質が効きにくいメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)でも効果が確認されたということです。有害な副作用は、確認されませんでした。

 チュービンゲン大学のアンドレアス・ペシェル氏は、「人に関連する細菌が、実効のある抗生物質を生成することが明らかになるとは、極めて予想外の、心躍る発見であり、抗生物質の開発を新たに構想する上で非常に役立つ可能性があると考えている」と述べ、「さらに大規模なふるい分け調査計画がすでに開始されており、ヒト細菌叢(そう)から発見される抗生物質がさらに多数存在すると確信している」と続けました。

 人体には1000種以上の細菌類が生息しており、抗生物質を生成する細菌がさらに多数存在している可能性が高いといいます。

 抗生物質に詳しい東北大学の賀来満夫教授は、「通常、抗生物質は土壌などの環境から見付かるので、人の体内から見付かったことは大きな発見だと思う。耐性菌が次々と出てくる一方、新しい抗生物質はなかなか見付からない。今後は人の体内にいる細菌から新しい薬が生まれるかもしれない」と話しています。

 2016年7月29日(金)

 

■がん治療の副作用に対処、初の手引き書を作成 国立がん研究センター

 抗がん剤などのがん治療を受けると髪の毛が抜けたり、顔に発疹ができたりするなどがん患者は、がんそのものの闘病のほかに外見にかかわる深刻な副作用とも闘わなければなりませんが、こうした副作用の治療法や日常的なケアの仕方をまとめた初の手引き書を7月27日、国立がん研究センターの研究班が作成しました。

 抗がん剤や放射線による治療を受けると、髪の毛や眉毛が抜けたり、手や足が水膨れを起こしたり、爪がひび割れたりするなどがん患者は、外見にかかわる深刻な副作用に悩むことが少なくありません。

 しかし、こうした副作用については、命にかかわるものではないため医師の側も対処法について十分、知識がないことも多く、患者の側も間違ったケアをして症状を悪化させてしまう人がいました。

 国立がん研究センター中央病院・アピアランス支援センター長で、臨床心理士の野澤桂子さんなどの研究班は、がんの専門医だけでなく、薬学、看護学、香粧品学、心理学という異なる専門領域の専門家も集めて、初めての手引き書を作成しました。

 この中では、脱毛や手足の水膨れなど50項目の副作用への対処法について、「強い科学的根拠があり行うことが強く勧められる」から「無効性あるいは害を示す科学的根拠があり、行わないよう勧められる」までA、B、C1a、C1b、C2、Dの6段階で評価しています。

 例えば、抗がん剤治療の影響で顔に染みができたり黒ずんだりして悩む患者は多く、予防のためとしてビタミンCが処方されることがあります。しかし、今回の手引き書ではC2判定、「科学的根拠がなく勧められない」とされました。

 また、放射線治療を受けると、肌が荒れて赤くなったりしますが、症状を悪化させるとして入浴の際、洗うのを避けるよう指導されることがありました。しかし、実際には洗ったほうが皮膚のかゆみや赤みが軽くなるという研究報告があり、手引き書ではB判定、「科学的根拠があり勧められる」とされています。

 さらに、抗がん剤治療で起きる脱毛は多くの患者が悩む問題で、特定のシャンプーが推奨されたりしていますが、手引き書では、「市販のシャンプーを使ってがん患者だから重い副作用が起きたという報告はなく、特定のシャンプーを推奨したり否定したりする根拠はない」とした上で、治療前から使っていたシャンプーを使うことについて勧められるとC1a判定としました。

 野澤さんは、「医学や看護学、心理学などの専門家が集まって、初の統一の意見として出せたことは大きい。医療者が最低限の基準を示すことで、患者さんが外見のことで社会から切り離されたりしないようサポートしていきたい」と話しています。

 2016年7月28日(木)

 

■子宮頸がんワクチンで副作用、女性63人が集団提訴 国と製薬2社相手に

 子宮頸(けい)がんワクチン接種後の健康被害を訴える15歳から22歳の女性63人が27日、国と製薬会社2社に総額約9億4500万円の損害賠償を求める集団訴訟を東京、大阪、名古屋、福岡の4地裁に起こしました。

 体の痛みや歩行困難、視覚障害といった症状を訴え、国と製薬会社はこうした被害を予見できたにもかかわらず回避措置を怠ったと主張しています。

 子宮頸がんワクチンの副作用を巡る集団提訴は、初めて。各地裁に提訴したのは、東京28人、名古屋6人、大阪16人、福岡13人。接種時期は、2010年7月から2013年7月で、ほとんどが中高生時でした。

 1人当たり一律1500万円に、各自の症状に応じた賠償金を上乗せして請求します。弁護団には被害相談が続いており、追加提訴を予定しています。

 訴状では、グラクソ・スミスクライン(GSK)社のワクチン「サーバリックス」(2009年国内承認)とMSD社の「ガーダシル」(2011年国内承認)について、日本に先行して承認した海外では、死亡例や重症例など多数の副作用が報告されていたと指摘。国は危険性を認識していたにもかかわらず安全性の調査をせず承認し、ワクチン接種を推奨した責任があるなどと主張しています。症状とワクチン接種の関係については、接種後に共通の症状が現れていることから「法的因果関係が認められる」としました。

 厚生労働省によると、これまでに接種した人は推計で約340万人。今年4月末までに医療機関と製薬会社から報告された「副作用が疑われる例」は、約2900件でうち重症は約1600件に上ります。ワクチン接種は、政府が2010年の閣議決定で緊急促進事業に位置付け、接種費用が全国でほぼ無料になったことから接種者が急増。

 2013年に定期接種にしたものの、深刻な被害の訴えが相次ぎ2カ月後に積極的推奨を中止し、3年余りが経つ異例の事態が続いています。

 提訴について、厚労省の担当者は、「訴訟については現時点で報道されている以上のことは承知しておらず、コメントは差し控えたい。今後も、子宮頸がんワクチンの接種後に起きた症状で苦しんでいる方々に、寄り添いながら支援をしていくことが何より重要と考えている」と話しました。

 また、GSK社は、「訴状を受け取っていないのでコメントは差し控えます」との声明を出しました。MSD社は、「ワクチンは世界各国で承認を受けています。訴状を受け取りましたら、法廷で証拠を提出する考えです。原告の主張の内容に根拠はないと信じています」との声明を出しました。

 子宮頸がんは、性行為によるヒトパピローマウイルス(HPV)感染が主な原因とされます。厚労省によると、国内では年間約1万人(上皮内がんを除く)が新たに診断され、約2700人が死亡。ワクチンは約半年間に3回受けるのが基本で、子宮頸がん全体の5~7割の原因とされる2種類のHPVの感染を防ぐ効果があるとされます。

 2016年7月27日(水)

 

■日本人女性の平均寿命、世界一から転落 過去最高更新も、香港に抜かれ2位

 2015年の日本人女性の平均寿命は87・05歳、男性の平均寿命は80・79歳で、いずれも過去最高を更新しました。平均寿命が公表されている主な国や地域と比較すると、女性は香港に抜かれて4年ぶりの世界2位、男性は3位から4位に順位を下げました。

 厚生労働省が27日に発表した「簡易生命表」でわかりました。

 2015年の平均寿命は、前年と比べて女性が0・22歳、男性が0・29歳延びました。男女差は、前年より0・07歳縮まり6・26歳でした。女性の延びの大きさに伴って拡大傾向にあった男女差は、2003年の6・97歳をピークに緩やかに縮まってきています。

 平均寿命が過去最高を更新したのは、男女ともがん、心疾患、脳血管疾患の「3大疾患」による死亡が減ったことが大きいといいます。3大疾患で死亡する確率は、女性が46・92パーセント、男性が51・60パーセントでした。

 厚労省は、各年齢の人が平均で後、何年生きられるかを示す「平均余命」の見込みを毎年計算しており、0歳の平均余命が平均寿命となります。

 厚労省の担当者は、「治療や薬の進歩で主要な死因であるがんや心疾患などの死亡状況が改善され、病気になっても長生きできる人が増えた。健康志向の高まりで元気なお年寄りが増えていることもあり、今後も男女の平均寿命が延びることが期待される」としています。

 日本人の平均寿命は、戦後間もない1947年で女性が53・96歳、男性が50・06歳でした。女性は1960年に70歳、1984年に80歳を超え、男性は1971年に70歳、2013年に80歳を超えました。

 女性は2014年まで3年連続で世界1位でしたが、平均寿命が0・57歳延びて87・32歳となった香港に抜かれました。男性はスイスに抜かれ、香港、アイスランド、スイスに次ぐ世界4位でした。

 2016年7月27日(水)

 

■発毛を促す細胞を頭皮に移植 東京医大が毛髪再生で臨床研究

 若いうちから髪の毛の生え際が後退したり頭頂部の毛が薄くなる「壮年性脱毛症」は、日本人の男性の3割が悩むともいわれますが、発毛を促す細胞を頭皮に移植することで髪の毛を再生しようという初の臨床研究を、東京医科大学などの研究チームが今月スタートさせました。脱毛に悩む人の根本的な治療法となるのか注目されます。

 脱毛症の中でも頻度の高い壮年性脱毛症は、男性ホルモンが発毛を抑えることなどが原因で、20歳代の若いうちから髪の毛が薄くなったり短くなったりします。日本人の男性のおよそ3割に当たる2400万人で発症するといわれ、女性で悩む人も少なくありません。

 東京医科大学病院と大手化粧品メーカー資生堂の研究チームは、こうした人の髪の毛の再生を目指す臨床研究を今月から始めました。

 臨床研究では、まず頭の後ろの部分から10本程度の髪の毛が含まれる数ミリの頭皮を切り取り、この中に含まれる「毛球部毛根鞘細胞」と呼ばれる細胞を取り出します。この細胞を3カ月ほどかけて100万個にまで増やした後、髪の毛が薄くなった頭皮の部分に注射器で移植します。

 毛球部毛根鞘細胞は、脱毛の原因となる男性ホルモンの影響を受けにくい特徴を持っているほか、移植した細胞が発毛を促進し、薄く細く短くなって頭皮の下に隠れてしまった髪の毛を再び太く長い髪の毛にすることが期待されるということです。

 研究チームでは、男女合わせておよそ60人にこの治療を行う予定で、発毛を促す細胞を頭皮に移植して髪の毛を再生する臨床研究が行われるのは国内では初めてです。3年間で有効性や安全性を確かめるといいます。

 研究に参加した50歳代の女性は、「頭のてっぺんの毛が薄くなり、細くなったのが気になっていました。自分の細胞を使うため拒絶反応の心配も少ないということなので期待しています」と話していました。

 研究を行う東京医科大学の坪井良治・主任教授は、「育毛剤などは使用し続けないと効果が続かないが、この方法は一度の治療で数年以上、効果が持続する可能性があるのが大きなメリットだ。今後5、6年の間に実用化を目指したい」と話しています。

 毛髪の再生に詳しい大阪大学大学院の板見智皮膚・毛髪再生医学寄附講座教授は、「壮年性脱毛症は髪の毛が全くなくなる病気ではなく、毛が細く、十分に伸びなくなり皮膚の表面にまで出てこなくなるものだ。細胞を使った新たな治療で十分に伸びる髪の毛になれば発症する前の状態に回復させられる可能性があり、現状の薬物療法あるいは植毛などの手術療法で十分に満足度が上がっていない人にとって朗報となることが期待される」と話しています。

 2016年7月26日(火)

 

■ジカ熱の感染リスク、妊娠可能な年齢層の女性165万人に及ぶ イギリスの研究チームが発表

 昨年5月以降、中南米を中心に続くジカ熱(ジカウイルス感染症)の流行で感染のリスクにさらされる妊娠可能な年齢層の女性は推計165万人に上り、数万人の妊婦の新生児に生まれ付き頭が小さい小頭症などの悪影響が出るおそれがあるとする研究報告をイギリスなどの研究チームが発表しました。

 ジカ熱の流行は、現在もブラジルなど中南米を中心に続いており、妊娠中の女性が感染すると生まれ付き頭が小さい小頭症の新生児が生まれる原因となるおそれが指摘されています。

 イギリス南部のサウサンプトン大学などの研究チームは、各国の人口の年齢層の分布や、ジカ熱と同じく蚊がウイルスを媒介して広がるデング熱の流行のデータなどを使って今後、免疫の獲得によって流行が収束するまでにどのくらいの人が感染するかシミュレーションを行いました。

 その結果、ブラジルやメキシコなどの中南米では推計9340万人が感染し、このうち妊娠可能な年齢層の女性の数は165万人に上ることがわかったとしています。

 国別にみますと、感染のリスクにさらされる妊娠可能な年齢層の女性が最も多いのはブラジルの58万人、メキシコが26万人、ベネズエラが14万人などとなっています。研究チームによりますと、この推計を基にした場合、新生児に小頭症などの悪影響が出る可能性がある妊婦は数万人に上るおそれがあるということです。

 小頭症を始めとした先天性疾患の新生児は、7月7日までにブラジルやコロンビアなど8つの国や地域で1700人以上報告されています。

 ジカ熱の問題に詳しい神奈川県衛生研究所の高崎智彦所長は、「小頭症との関連が指摘される中、165万人という数字は出産可能年齢の女性たちが大きなリスクに直面していることを表している。オリンピックも来月から始まるが、日本人についても妊娠中や妊娠を予定している女性は改めて行かないよう呼び掛けたい」と話しています。

 2016年7月26日(火)

 

■118市町村が生活習慣病の重症化予防を実施 日本健康会議が調査

 経済界や医療関係団体、地方団体が連携して国民の健康づくりや医療費抑制を進める「日本健康会議」は25日、昨年設定した健康に関する2020年までの数値目標の達成状況を公表しました。

 生活習慣病の重症化予防に取り組む市町村を800以上にするとの目標に対し、初年度となる2016年度に実施したのは15パーセントの118市町村にとどまりました。

 日本健康会議は、経団連や日本医師会、全国知事会などが参加し2015年7月に発足しました。厚生労働省の支援を得ながら、先進的な取り組みを企業や自治体に普及させることを目指しています。

 数値目標は8項目で、国民健康保険(国保)の運営主体である市区町村や、主に大企業の健康保険組合、中小企業の従業員らが加入する協会けんぽなど計約3500団体を対象に、6月から7月にかけてアンケート調査をしました。生活習慣病予防に関しては、かかりつけ医との連携や事業の効果検証を要件に評価した結果、達成した市町村は118でした。

 このほか、健康づくりへの住民意識を高める制度について、導入市町村を800以上にするとの目標に対し、現段階で115市町村が実施と回答。従業員の健康管理に努める企業を500社以上にする目標では、138社が達成しました。一部の企業では、従業員の定期健診を促す取り組みやストレスチェックを行っています。

 日本健康会議の事務局は、「遅れている項目もあるが、全体的には良好な達成状況だ」としています。

 2016年7月25日(月)

 

■脳死判定医、36都道府県の278人をリスト化 臓器提供の機会増を期待

 脳死の人や家族が臓器提供を望んでも、脳死判定に対応できる医師の不足で、意思を生かせない事例を減らすため、日本移植学会などでつくる協議会は、派遣可能な脳死判定医のリストをまとめました。医療施設を超えて、臓器提供の機会を増やすことが狙い。

 協議会の23日の会合で報告しました。臓器提供に伴う脳死判定は、回復の可能性がなく、家族も提供を希望する場合に、臓器移植法に基づいて脳波や呼吸が止まっているかなどを2回繰り返して調べます。これには、脳神経外科医、神経内科医、救急医、麻酔・蘇生科・集中治療医または小児科医であって、脳死の十分な診療経験と一定の資格を持つ医師2人以上が当たります。

 臓器提供は制度上、大学病院など約900施設で可能ですが、脳死判定には半日ほどかかり、通常の診療に影響も出ます。施設によっては判定医の確保が難しく、臓器提供の意思を生かせないことがあることから、厚生労働省は昨年、2人目の判定医は、事前に非常勤契約などをしていれば、外部の医師でもよいと認めました。

 日本移植学会や日本救急医学会など移植医療にかかわる54団体でつくる協議会がまとめたリストには、脳死判定医の要件を満たし、職場で派遣の許可を得た36都道府県の278人を掲載。人手不足の施設でも近隣の施設と連携して、提供体制がとれるように活用してもらいます。

 リスト作成にかかわった横田裕行・日本医科大教授は、「脳死判定医の支援があれば、臓器を提供できるという施設は増えていくのではないか」と期待を寄せています。

 内閣府が2013年に3000人を対象に行った調査によると、脳死と判定された場合、43・1パーセントが臓器を「提供したい」または「どちらかといえば提供したい」と回答。一方、家族の同意だけで臓器提供できるようになった2010年以降も、臓器提供は年40件~50件台で推移しており、先進国で最少の水準です。法的脳死判定前の「脳死とされ得る状態」から臓器摘出までに、平均60時間以上かかっています。

 協議会は、医療施設の人的、時間的な負担が、臓器提供が増えない一因としています。

 2016年7月24日(日)

 

■熱中症による死亡者、9割が屋内で発見 8割弱は65歳以上

 東京23区内でこの5年間に熱中症で死亡した人の9割が屋内で発見されていたことが、東京都監察医務院の死因調査でわかりました。

 「屋内は大丈夫」と誤解している人が多いと、注意を呼び掛けています。

 監察医務院は、東京23区内で見付かったすべての異状死について解剖などで死因を調べており、熱中症で病院に運ばれた場合も対象となります。毎年、熱中症による死亡と認定したケースの状況を公表しています。

 2011年から2015年の公表データを集計すると、この5年間に熱中症で死亡したのは、男性219人、女性146人の計365人で、うち90パーセントの328人が屋内で見付かっていました。

 328人のうち、エアコンがあったのは160人、エアコンがなかったのは134人、不明34人。エアコンがあったのに発見時に使われていなかったのは、138人でした。一人暮らしは、203人でした。

 死亡者全体の365人でみると、65歳以上が79パーセントに当たる290人。死亡したと推定される時間帯は、午前5時から午後5時の日中が39パーセントに当たる142人、午後5時から午前5時の夜間が28パーセントに当たる104人、不明が33パーセントに当たる119人でした。

 また、最高気温が34度以上の日が連続した時期に、死亡者が増える傾向にありました。昨年は34度以上が9日間続いた7月30日から8月7日に、48人が亡くなっています。

 監察医務院の福永龍繁(たつしげ)院長は、「高齢者は暑さを感じにくく、気付かぬうちに脱水が進みやすい。屋内だからと安心してはいけない。エアコンなどで温度調節するとともに、意識的に水を飲むよう心掛けてほしい」と話しています。

 熱中症は、高温だから発症するわけではありません。室温や気温が高い中で、体内の水分や塩分などのバランスが崩れ、体温の調節機能が働かなくなると、体温上昇、めまい、体のだるさ、さらにはけいれんや意識の異常などの障害がもたらされます。これが熱中症の症状であり、炎天下でなくても、家の中が高温で湿度が高ければ体から熱が逃げにくくなって発症します。

 気象庁によると、今年の夏は2010年夏以来のラニーニャ現象によって、猛暑になると予想されます。2010年夏は北日本、東日本で、気象庁が統計を取り始めた1946年以降で最も暑くなり、監察医務院によると、東京23区内での熱中症による死亡者は210人と過去最多を記録しています。

 2016年7月24日(日)

 

■オプジーボの後に別の薬、連続使用で3人死亡 厚労省が注意喚起

 厚生労働省は22日、体の免疫力を再活性化させることで、がん細胞を破壊する新しいタイプのがん治療薬「オプジーボ」(一般名・ニボルマブ)を肺がんの治療で使った後に、別の肺がん治療薬で治療したところ、重い副作用が8例出て、そのうち3人が死亡したとして、日本医師会や日本薬剤師会など7団体に注意喚起と情報提供を呼び掛ける文書を出しました。

 厚労省によると、オプジーボを使用後に、がん細胞だけを狙い撃ちすることで抗がん作用を示す薬である「上皮成長因子受容体チロシンキナーゼ阻害剤(EGFR―TKI)」を投与された肺がんの患者、およそ6500人のうち、患者8人が肺の機能が低下し呼吸困難に陥る間質性肺炎などを起こしていたことがわかりました。このうち、60歳代から80歳代の男女合わせて3人が死亡したということです。

 間質性肺炎は、オプジーボとEGFR―TKIそれぞれで副作用として知られています。これらの薬を販売する製薬会社は、間質性肺炎などの副作用を引き起こすおそれがあるとして、患者の状態が悪化した場合などは使用を中止するよう添付文書で警告しています。

 厚労省は「2剤を続けて使ったことで副作用のリスクが増大したかは不明」としながらも、治療の際、間質性肺炎などの既往歴を確認したり、患者の状態に注意しながら慎重に投与するよう改めて要請しました。

 EGFR―TKIには、「イレッサ(一般名・ゲフィチニブ)」「タルセバ(一般名・エルロチニブ)」「ジオトリフ(一般名・アファチニブ)」「タグリッソ(一般名・オシメルチニブ)」の4種類があります。

 2016年7月23日(土)

 

■電動車いす事故相次ぎ、7年間で死者36人 消費者事故調が報告書

 高齢者などが使うハンドルの付いた電動車いすの事故が相次いでいることを受けて、消費者庁の消費者安全調査委員会、いわゆる消費者事故調は、簡単な操作で発進できる仕組みが事故原因の1つと考えられるとして、操作方法の見直しなどの再発防止策を盛り込んだ報告書をまとめました。

 ハンドルの付いた電動車いすは、アクセルレバーを手で軽く押すだけの簡単な操作で発進させることができ、足腰が弱くなった高齢者の日常的な移動手段として普及しています。一方で事故も相次ぎ、消費者事故調によりますと、2008年から2014年までの7年間に起きた事故で亡くなった人は36人に上り、15人が大けがをしたということです。

 このため消費者事故調が、現地調査のほか、利用者へのアンケート調査などを行って分析したところ、踏切の前で停止中に突然、具合が悪くなって前のめりに倒れるなど、何らかの理由で意図せずにアクセルレバーに触れて車いすが発進した可能性が考えられるケースが複数あったり、前輪付近の路面が見えにくかったりする構造が事故につながっていたり、運転が安定しない急な坂道が多かったりすることが、判明しました。

 消費者事故調は22日、再発防止策を報告書にまとめ、アクセルレバーを一方向に軽く押すだけの簡単な操作で発進できる仕組みが事故原因の1つと考えられるとして、経済産業省に対して意図しない発進を防ぐ対策をとるようメーカーに指導することなどを求めています。

 また、運転操作の誤りが事故につながった可能性のあるケースもあったことから、厚生労働省、国土交通省、消費者庁など関係する省庁に対して、教育や訓練を継続的に行うことなどを求めています。

 消費者事故調によると、全国で使用されているハンドルの付いた電動車いすは推定、約8万5900台。

 消費者事故調の畑村洋太郎委員長は、「長期的には事故を防止する機能を持った製品の開発が求められるが、まずは現時点で可能な製品の改善が必要だ。電動車いすは社会が高齢化していく中で強く求められている製品で、だからこそ、どんな危険性があるのか、使う人はもちろん周りの人も共有していく必要がある」と話しています。

 消費者事故調の提言について、スズキ、今仙技術研究所、ヤマハ発動機といった電動車いすのメーカーなどで作る電動車いす安全普及協会は、「これまでもお客様が製品を安心・安全にご利用いただけるよう取り組みをしてまいりました。このたびの報告書については、ご指摘いただいた内容を真摯(しんし)に受け止め、電動車いすの安全な普及に向けてより一層の改善に取り組んでまいります」とコメントしています。

 2016年7月23日(土)

 

■がん患者の5年生存率6割 早期発見で少し向上

 国立がん研究センター(東京都中央区)は7月22日、2006年~2008年にがんと診断された患者を対象として追跡した5年生存率を発表しました。5年後に生存している割合を示す5年生存率が高いほど、治療で命を救える効果があり、5年が治療や経過観察の目安といわれています。

 全部位では、男性59・1パーセント、女性66・0パーセント、男女計62・1パーセントで、前回(2003年~2005年)比はそれぞれ3・7ポイント、3・1ポイント、3・5ポイント上昇となりました。

 同データは、都道府県が行う「地域がん登録」データを活用して算出されたもので、今回の集計期間には27府県が参加し、そのうち国内精度基準を満たした東北から九州までの21県の64万4407人の情報に対して、全部位と部位別、臨床進行度別、年齢階級別5年生存率について集計を行いました。

 全部位の5年生存率については、前回集計の男女計58・6パーセントと比較して向上していますが、2006年~2008年の罹患状況を踏まえると、前立腺がんや乳がんなど予後のよいがんが増えたことなどの影響も考えられるため、国立がん研究センターは治療法の改善などが影響しているとはいえないとしています。

 また、部位別で5年生存率が高かったのは、甲状腺の93・7パーセント、皮膚の92・4パーセントで、5年生存率が低かったのは、膵臓(すいぞう)の7・7パーセント、胆のう・胆管の22・5パーセント、肺の31・9パーセント、肝臓の32・6パーセント、脳・中枢神経系の35・5パーセント、多発性骨髄腫の36・4パーセント、食道の37・2パーセント、白血病の39・2パーセントでした。

 喉頭は78・7パーセント、膀胱は76・1パーセント、大腸は71・1パーセント、腎臓・尿路(膀胱除く)は69・1パーセント、悪性リンパ腫は65・5パーセント、胃は64・6パーセント、口腔・咽頭は60・2パーセントでした。

 部位別に5年生存率が高い(70~100パーセント)群を男女別にみていくと、男性では、前立腺が97・5パーセントと最も高く、皮膚の92・2パーセント、甲状腺の89・5パーセント、膀胱、喉頭、結腸、腎臓・尿路(膀胱除く)と続き、女性では、甲状腺が94・9パーセントと最も高く、皮膚の92・5パーセント、乳房の91・1パーセント、子宮体部の81・1パーセント、喉頭、子宮頸部、直腸と続きました。

 一方、部位別に5年生存率が低い(0~39パーセント)群を男女別にみていくと、男性では、最も低いほうから膵臓7・9パーセント、胆のう・胆管、肺、脳・中枢神経系、肝および肝内胆管、食道、多発性骨髄腫、白血病、女性では、最も低いほうから膵臓7・5パーセント、胆のう・胆管、肝および肝内胆管、多発性骨髄腫、脳・中枢神経系でした。

 どの部位でも、一様に臨床進行度が高くなるにつれ、生存率が低下しており、多くの部位では、早期で診断された場合には生存率が良好であることがわかりました。また、おおむね加齢とともに生存率が低くなる傾向がみられましたが、若年者より高齢者の生存率が高い部位や、年齢と生存率との相関がはっきりとみられない部位もあったといいます。

 国立がん研究センターの若尾文彦・がん対策情報センター長は、「治療法が改善され、検診で早期発見ができるようになった」と分析しています。例えば、白血病で新しい薬が治療に導入され、肝臓がんでは局所療法に効果が出ているといいます。

 若尾さんは、「大腸がんや肺がん、乳がんでその後に分子標的薬や新しい抗がん剤が登場しており、次の集計ではさらに生存率の向上が見込まれる」と話しています。

 医学博士の中原英臣・山野医療専門学校副校長は、「昔はレントゲンという1枚のフィルム写真でがんを探したが、今は画像診断、例えば、MRI(磁気共鳴画像装置)、CT(コンピュータ断層撮影)、PET(陽電子放射断層撮影)で立体的に撮影し、検査できる。その結果、1センチ未満の小さなものでも発見できるようになったのが大きい。近い将来、5年生存率ではなく、10年生存率が基準になるだろう」と指摘しています。

 2016年7月23日(土)

 

■新潟県の30歳代女性、デング出血熱で死亡 フィリピンで感染か

 厚生労働省は22日、フィリピンに滞在歴のある新潟県の30歳代女性が、デング熱が重症化したデング出血熱を発症し、死亡したと発表しました。フィリピンで感染したとみられるといいます。

 近年の国内におけるデング熱による死亡は、2005年以来2例目。厚労省は女性が国内で蚊に刺されておらず、感染拡大の可能性は低いと説明しています。

 厚労省や新潟県によると、女性は6月29日から7月15日までフィリピンに滞在。滞在中から頭痛、発熱があり、現地の医療機関で解熱剤を受け取ったということで、帰国時には発熱が治まって、空港のサーモグラフィーに反応しなかったとみられます。

 16日に新潟市内の医療機関を受診し、発疹や出血、ショック状態などがあったため入院となり、検査の結果19日にデングウイルスの感染が確認され、21日に死亡しました。

 デング熱はデングウイルスを持つ蚊に刺されることで起こる感染症で、頭痛や発熱、発疹などを引き起こします。通常は2~7日で熱が下がりますが、まれに重いデング出血熱を発症することもあり、早期に適切な治療を行わないと死に至ることがあります。

 日本では2014年に、東京都の代々木公園を中心に約70年ぶりに国内感染が確認され、162人に感染が広がりました。デング熱は、人から人へは感染しません。

 2016年7月22日(金)

 

■脳の詳細な地図を作製し、100領域を新たに特定 アメリカのワシントン大

 画像診断装置を使って脳を詳細に調べ、構造や働きなどに基づいて180の領域に分けた「脳の地図」を作製したとアメリカのワシントン大の研究チームが20日付のイギリスの科学誌ネイチャー(電子版)に発表しました。

 脳地図の作製の過程では、大脳皮質または灰白質と呼ばれる脳のしわの多い外層部分で、これまで特定されていなかった100近くの領域が新たに特定されました。

 アメリカのオバマ政権が推進する人間の脳機能の解明を目指す研究プロジェクトの一環。成果は脳研究の土台となり、老化や脳の病気の研究に役立つと期待されます。

 科学誌ネイチャーに発表された今回の研究に共同で資金を提供している米国立衛生研究所のブルース・カスバート氏は、「これら最新の知見とツールは、人間の皮質の進化の過程、さらには脳の特化した各領域が人の健康や病気で果たす役割などを説明する助けになるはずだ」と話しています。

 この新たな脳地図によって、「将来的には脳外科手術にかつてないほどの正確さが提供される可能性もある」と、カスバート氏は期待を寄せています。

 1909年、ドイツの神経科学者コルビニアン・ブロードマン氏は、史上最も有名と見なされる脳の地図を発表しました。同氏の脳地図は、領域を構成する細胞の種類がそれぞれ異なるという発見に基づいて作製されました。大脳皮質を数十の領域に区分した「ブロードマンの脳地図」は、現在でも使われています。

 随意筋の動きや、言語、視覚、音声、性格の各側面など、それぞれをつかさどる脳の領域については、これまでにも大まかに判明していました。だが、脳の領域がいくつ存在するかや、特に各領域がどのような働きをしているかを巡っては、科学者らはいまだに意見が分かれています。

 神経科学者、コンピューターの専門家、技術者などからなる研究チームによると、右脳と左脳にはこれまで、それぞれ83の領域があることが知られていたものが、今回発表された最新の脳地図により、この数は180にまで増加したといいます。

 研究では、さまざまな画像診断装置を用いて22~35歳の健康な成人210人の脳を分析し、刺激を与えた時の反応や構造、神経のつながり方などさまざまな情報に基づき、大脳の表面を覆う大脳皮質を調べました。研究チームは、これらの得られたデータを組み合わせ、より詳細な領域についての情報を得ることができたとしています。

 研究チームは次に、別の健康な成人210人からなる新たなグループを対象に、新たに開発したソフトウェアの試験を実施した結果、個人差はあるものの、新グループの成人の脳でも、脳地図に示された領域を正確に特定できることがわかりました。

 研究論文の執筆者で、アメリカのワシントン大学医学部のマシュー・グラッサー氏は。「この状況は、天文学に似ている。地上の望遠鏡によって宇宙の比較的大まかなイメージがつくられた後に、大気を補正する補償光学や、宇宙望遠鏡が登場したようなものだ」と説明しました。

 2016年7月21日(木)

 

■オメガ3脂肪酸、大腸がん患者の死亡リスク低減 アメリカの研究 

 大腸がんの患者が、マグロやサケなどの脂肪が多い魚に含まれるオメガ3脂肪酸を大量に摂取すると、生存率が高まる可能性があるとの研究論文が20日、発表されました。

 研究は、アメリカの17万人以上のデータを基に行われました。このうちの1659人が大腸がんを発症しましたが、オメガ3の大量摂取と死亡リスク低減との間に相関関係が強く示されました。

 イギリスの医学誌ブリティッシュ・メディカル・ジャーナルの消化器病学専門誌「ガット」に発表された研究論文によると、大腸がんとの診断後のオメガ3脂肪酸の摂取量が1日当たり0・3グラムの患者は、同0・1グラム未満の患者に比べて、死亡リスクが41パーセント低くなりました。

 ガット誌に発表された論文は、「今回の発見がほかの研究でも確認できれば、大腸がん患者は、これらの魚の摂取を増やすことで、生存期間を延ばす恩恵を受けられる可能性がある」としています。

 オメガ3脂肪酸とは、DHA(ドコサヘキサエン酸)、EPA(エイコサペンタエン酸)、α—リノレイン酸の総称で、不飽和脂肪酸の一種。人間の体内では作ることができない栄養素であり、サンマ、イワシ、アジ、サバ、マグロ、ニシン、ブリなどの特に背の青い魚や、白身魚のサケに多く含まれています。

 オメガ3脂肪酸は、細胞が機能するためには不可欠なものです。脳の機能との関係も深いため、集中力を上げたり、イライラを解消したりする効果や、悪玉コレステロールを分解し、血液をサラサラにする効果もあります。ほかにも、心臓病の予防、生活習慣病の予防、疲労回復、関節痛やアレルギー症状の緩和などに有効とされています。

 食品でDHA、EPAを多く取りたいけれど青魚が苦手という人には、α—リノレイン酸がお勧め。生体内でDHA、EPAに変わるα—リノレイン酸を多く含む食品として、えごま、亜麻仁(あまに)、くるみ、チアシードが挙げられます。

 2016年7月21日(木)

 

■芋焼酎に血糖値の上昇抑える効果 鹿児島大、研究で確認

 芋焼酎には血糖値の上昇を抑える効果があるという研究論文が、鹿児島大学農学部などの共同研究チームから発表されました。

 焼酎を始めとした蒸留酒は製法上、糖質を含まないため、日本酒やビールのように糖質を含む醸造酒に比べて血糖値が上がりにくいことは従来からいわれていました。しかし、今回の研究のポイントは、水と比べても焼酎のほうが血糖値の上昇を抑制できると示された点にあります。

 研究では、健康な30歳代から50歳代の男女3人ずつ計6人に対し、芋焼酎、日本酒、ビール、水の4種類を、アルコール量が40グラムになる配分で1週間おきに1種類ずつ飲みながら夕食を取ってもらいました。

 食事前と食事後1時間と2時間、12時間の4回採血し、血糖値を測定しました。その結果、6人の平均値で芋焼酎を飲んだ後の血糖値の上がり方は、ほかの3つの飲料に比べて明らかに緩やかでした。食事後1時間の血糖値では、水が約50パーセント上昇したのに対し、芋焼酎は約15パーセントにとどまったといいます。

 血糖値抑制のメカニズムはまだはっきりとはしていませんが、共同研究チームの責任者、鹿児島大医歯学総合研究科の乾明夫教授は「芋焼酎の麹(こうじ)成分が筋肉への糖の取り込みを促進するのかもしれない」とみており、「アルコールでなく糖質も含まない水と比べても、芋焼酎は血糖値の上昇を抑えられた。芋焼酎は食事に注意すれば、糖尿病を心配する人たちでも比較的安心して楽しめる」と話しています。

 今回の研究は2009年から2011年にかけて行われ、結果は米国の科学雑誌に今年4月に掲載されました。

 芋焼酎はブーム時から比べると出荷量は減少しており、鹿児島県酒造組合は「アピール材料が増えるのはありがたい」と喜んでいます。

 2016年7月20日(水)

 

■ジカ熱、患者を看護していた人が感染 アメリカ西部ユタ州

 中南米を中心に急速に流行が拡大し、この夏、国内でも流行が懸念されているジカ熱(ジカウイルス感染症)について、アメリカの疾病対策センター(CDC)は、西部ユタ州でジカ熱患者を看護していた人が感染したと発表しました。

 流行地域への渡航歴がなく、感染した人との性交渉もないケースは、アメリカでは初めてとみられ、CDCは感染経路について調査を進めています。

 ジカ熱は、妊娠中の女性が感染すると、頭部が先天的に小さい小頭症の新生児が生まれる出生異常を引き起こすと指摘されています。

 CDCは18日、西部ユタ州でジカ熱の男性患者を看護していた親戚が、ジカ熱に感染したと発表しました。70歳代で基礎疾患を抱えていた男性患者は6月末に死亡しましたが、流行地域への渡航歴があり、血液からは通常の感染者の10万倍を超える量のウイルスが検出されたということです。

 男性患者の親戚はその後回復していますが、流行地域への渡航歴がない上、感染した人との性交渉もないということです。

 アメリカ国内では、流行地域への渡航歴がある感染者との性交渉による感染者が、これまでに1300人余り報告されていますが、この蚊の媒介と性交渉の2つの経路以外で感染したケースは初めてとみられます。

 一方で、ユタ州には、ジカ熱のウイルスを媒介する蚊が生息していないとされるため、これまでのところ感染経路はわかっていません。

 CDCは、「ジカウイルスについては毎日、何か新しいことが明らかになっている。性交渉以外で人から人へ直接感染する例があるのかどうかわからず、調査を続ける」としています。

 ジカウイルスは、血液、精液、唾液、尿、母乳、女性生殖管の分泌物サンプルなどで検出されることが、これまでの研究で判明しています。

 「空気感染が可能性の一つとして考えられるか」との記者の質問に対し、CDCの医療の質向上部門の医学疫学者、マイケル・ベル氏は「我々の一連の作業において、検討のテーブルから本当に除外されるものは何一つない。このテーブルは非常に広く、可能性を過小評価するのは極力避けたいと考えている。だが、医療処置のようなことが行われていない限り、そうしたことが起きる可能性は極めて、極めて低いと思われる」と答えました。

 2016年7月19日(火)

 

■高品質・高効率でiPS細胞を作製することに成功 慶大の研究チーム

 体のさまざまな組織になるiPS細胞(人工多能性幹細胞)を作り出す際、卵子で働く遺伝子を加えることで効率よく作製する方法を慶応大学の研究チームが開発しました。

 今後、iPS細胞を使った再生医療のコストダウンにつながる可能性があると期待されます。

 この研究を行ったのは、慶応大学の福田恵一教授らの研究チーム。チームでは、卵子の中で活発に働く「H1foo」と呼ばれる遺伝子が、体のさまざまな組織に変化する細胞の多能性にかかわっているとみて、マウスの細胞からiPS細胞を作り出す際、この遺伝子を加えたところ、これまでの4倍の高い確率でiPS細胞を作り出すことに成功したということです。

 H1foo遺伝子には、ほかの遺伝子を働きやすくする作用があると考えられています。

 研究チームによりますと、iPS細胞は質の高いものを作り出そうとすると、作製の効率があまり高くないため、コストがかかっていましたが、今回の方法を応用すれば大幅なコストダウンが期待できるということです。

 福田教授は、「患者自身の細胞を使った自家移植をiPS細胞で進める上で大きな一歩となるのではないか」と話しています。

 2016年7月18日(月)

 

■新型出生前診断、3万人超が受診 導入3年間で病院グループが集計

 妊婦の血液からダウン症、エドワーズ症候群、パトー症候群の3種類の染色体異常を調べる「新型出生前診断」の臨床研究を実施している病院グループが16日、導入から3年間で計3万615人が検査を受け、1・8パーセントに当たる547人が陽性と判定されたと発表しました。

 確定診断のため、腹部に針を刺して子宮内の羊水を採取する羊水検査などで染色体異常が確定した417人のうち、94パーセントに当たる394人が人工妊娠中絶を選択したといいます。

 集計によると、陽性と判定されて羊水検査を受けた458人のうち、91パーセントに当たる417人が染色体異常と診断され、高い精度で判定できることがわかりました。

 一方、陽性と判定されたうち89人は羊水検査を受けず、その多くは死産だとみられます。89人の中の13人は臨床研究から離脱し、人工妊娠中絶を選択したケースが含まれるとみられるといいます。

 病院グループ事務局の関沢明彦・昭和大教授は、94パーセントが人工妊娠中絶を選択したことについて、「当事者たちは悩んで苦渋の決断をしている。最終的な判断は尊重されるべきだと考える」と話しました。

 新型出生前診断は十分な情報がないまま中絶が広がれば、命の選別につながりかねないとの指摘もあり、2013年4月、適切な遺伝カウンセリング体制を整備するなどの目的で臨床研究として始まりました。対象となるのは、ほかの検査で染色体異常が疑われるケースや出産時の年齢が35歳以上の妊婦で、20万円程度の自己負担があります。

 当初は日本産科婦人科学会の指針に基づき日本医学会が認定した昭和大、阪大など15施設で実施され、現在は71施設が登録されています。病院グループへの参加は1年目の37施設から現在は66施設に増加。さらに、病院グループに参加していない認定施設でも検査は実施されています。

 検査を受けた妊婦も1年目の約8000人から、2年目は約1万人、3年目は約1万2000人と大幅に増えました。

 関沢教授は、「臨床研究としての目的は終えつつある。一般の診療への移行に向けて、議論すべき時期にきている」と話しています。

 2016年7月17日(日)

 

■2014年度のメタボ健診受診率は48パーセント 目標の7割は依然未達成

 政府は、中高年への実施が義務付けられている特定健康診査(メタボ健診)の受診率を、来年度の2017年度までに70パーセントとする目標を掲げていますが、2014年度は48・6パーセントにとどまり、目標と開きのあることがわかりました。

 メタボ健診は、内臓に脂肪がついて病気になる危険性が高まるメタボリックシンドローム(代謝症候群)を早期に発見し改善につなげようと、40歳から74歳までの人を対象に実施することが義務付けられており、政府は2017年度までに受診率を70パーセントとする目標を定めています。

 こうした中、厚生労働省のまとめによりますと、対象者約5385万人のうち、2014年度にメタボ健診を受けた人は約2616万人で、受診率は前の年度より1ポイント微増して48・6パーセントとなり、目標の70パーセントを達成できなかったことがわかりました。

 公務員らが加入する共済組合で74・2パーセント、大企業の会社員ら向けの健康保険組合では72・5パーセントと目標の70パーセントを超えましたが、市町村が運営し自営業者らが入る国民健康保険は35・3パーセントでした。

 また、メタボ健診を受けた人のうちメタボリックシンドロームに該当する人は、予備群と呼ばれる人を含めて26・2パーセントと、全体のほぼ4人に1人に上ったということです。

 メタボ健診の受診率が目標と開きがあることについて、厚労省は事業所が受診を指示する会社員などと比べて、扶養されている家族は受診率が低いなどと分析しており、目標の達成に向けて、今後、具体策を検討する方針です。

 2016年7月17日(日)

 

■ジカ熱、性交渉で女性から男性に感染 アメリカで初の報告

 中南米を中心に流行が続くジカ熱について、アメリカの疾病対策センター(CDC)は、性交渉を通じて女性から男性に感染した可能性があるケースが初めて報告されたと発表し、性交渉による感染のリスクに注意するよう呼び掛けています。

 ジカ熱は主に蚊が媒介する感染症で、中南米を中心にこれまでに62の国と地域で感染の拡大が確認され、妊娠中の女性が感染すると、先天的に頭部が小さい小頭症の子供が生まれるおそれが指摘されています。

 CDCは15日、アメリカのニューヨーク市内で、ジカ熱を発症した20歳代女性との性交渉によって感染した可能性がある20歳代の男性が報告されたと発表しました。

 男性には過去1年間、海外への渡航歴はなく、感染が広がる地域から戻ったばかりのパートナーの女性とコンドームを使わずに性交渉をして、1週間後に発熱や発疹、関節痛などのジカ熱の症状を訴え、感染が確認されました。男性の性行為の相手は、このパートナーの女性だけで、「発症前の1週間は蚊に刺されてもいない」と語っているといいます。

 パートナーの女性は、ニューヨークに向かう現地の空港で、すでにジカ熱の症状が出始めており、その後、発熱、背部痛、はれなどを発症して医療機関にかかり、検査の結果、感染が確認されたということで、妊娠はしていません。女性がジカウイルスに感染したとみられる旅行先は、明らかにされていません。

 ジカ熱は、これまで性交渉を通じて男性から女性に感染することは確認されていましたが、女性から男性に感染する可能性が報告されたのは今回が初めてです。

 CDCはジカ熱の予防指針で、ジカウイルスは性行為によって「男性側からパートナーの女性に感染する」としていたガイドラインの内容を修正するといいます。

 CDCは、「これまでは男性から女性への感染に注意を呼び掛けてきたが、これからは逆のパターンもあり得ると認識してほしい」として、性交渉による感染のリスクに注意するよう呼び掛けています。

 2016年7月16日(土)

 

■京大、iPS細胞備蓄の採血を東京でも 2022年度までに日本人の8割をカバー

 京都大iPS細胞研究所(CiRA)は7月8日、健康な人の細胞から作った再生医療向けのiPS細胞を備蓄する「iPS細胞ストック」を進めるため、京都大で実施している採血を東京都内でも始めると発表しました。

 今までは採血のために平日に京都大に来てもらう必要がありましたが、8月以降に東京海上グループの提携医療機関である海上ビル診療所(東京都千代田区)での採血が可能になります。同診療所は東京駅から徒歩約5分で、土曜日の採血も可能。

 他人に移植しても拒絶反応が起きにくい特殊な免疫の型を持った人の血液の細胞からiPS細胞を作って、備蓄します。特殊な免疫の型を持つ人は日本人の数百人に1人とされ、日本赤十字社の献血者や、骨髄バンクの新規ドナー登録者らの中から、該当する免疫の型を持つ人に協力を呼び掛けています。

 CiRAによると、これまで約50人が協力の意思を示し、十数人が採血を終えましたが、遠方を理由に協力が得られない人もいたといいます。

 現在は日本人の約2割に合うiPS細胞を供給できる状況であり、2022年度末までに日本人の大半と一致する型の備蓄を目指しています。日本人の8割と一致させるためには、75種類の型が必要といいます。

 これらのiPS細胞ストックを使えば、患者一人ひとりからiPS細胞を作り出す場合に比べ大幅なコストダウンが可能で、再生医療の普及の一つのカギといわれています。

 CiRAの山中伸弥教授は会見で、「東京でも細胞を提供してもらえるようになることで、難しいプロジェクトが今までよりもずいぶん早く進められると思う」と話しました。

 2016年7月16日(土)

 

■1年間の新規がん患者、初の100万人超 がん研究センターが予測を発表

 国内で今年新たにがんと診断される患者は101万人に上り、初めて100万人を超えるとする予測を国立がん研究センターが15日、発表しました。

 がんの患者数の予測は、毎年、国立がん研究センターが国や自治体のがん対策の目標設定などに役立ててもらおうと行っているものです。2012年までのがん発症者数の推計値などを元に、従来の傾向が続くという前提で算出し、後で予測を上回ったか下回ったかを調べ、がん対策の評価にも役立てます。

 発表によりますと、今年1年間に新たにがんと診断される患者は男性が57万6100人、女性が43万4100人の計101万200人で、昨年の予測よりも2万8000人増え、初めて100万人を超える見込みです。これは1975年の約5倍の水準であり、高齢者の増加に伴い、発症する人が増えるとみられます。

 がんの種類別にみますと、男性では、前立腺がんが最も多く9万2600人、次いで胃がんが9万1300人、肺がんが9万600人、大腸がんが8万4700人、肝臓がんが2万9000人などとなっています。

 女性では、乳がんが最も多く9万人、次いで大腸がんが6万2500人、肺がんが4万3200人、胃がんが4万2600人、子宮がんが3万200人などとなっています。

 男女合計では、最も多いのは大腸がんの14万7200人で、昨年より1万1000人増えます。胃がん、肺がん、前立腺がん、乳がんと続き、上位5位は昨年と同じでした。

 一方、今年のがんの死亡者数は、男性が22万300人、女性が15万3700人の合わせて37万4000人になると予測され、昨年の予測よりも約3000人増えるということです。

 男性は、肺がんの5万5000人が最も多く、胃がん、大腸がんと続きました。女性は、大腸がんの2万4000人が最も多く、肺がん、胃がんの順でした。

 これらの結果は、インターネット上の「がん情報サービス」で公開されています。

 国立がん研究センターがん登録センターの片野田耕太室長は、「大腸がんの発症が増えたのは高齢化が大きな要因。一方で胃がんも高齢化の影響は受けるものの、原因となるピロリ菌の感染者が減っているので横ばいにとどまった。高齢化の影響で、がんの、り患数は今後もしばらくは増え続ける見込みだ。国や都道府県などはこれらのデータをがん対策の立案や評価に役立ててほしい」と説明しています。

 2016年7月15日(金)

 

■吐く息で蚊が退避、ジカ熱対策マスクを新発売 愛知県のメッシュ製造会社

 中南米を中心に猛威を振るい、この夏、国内でも流行が懸念されているジカ熱(ジカウイルス感染症)対策として、愛知県豊橋市大村町のメッシュ製造会社「くればぁ」が、装着しているだけでウイルスを持つ蚊を寄せ付けにくくするというマスクの販売を始めました。

 今年8月に開催されるリオデジャネイロ五輪・パラリンピックに出場する選手たちからも、インターネットで予約が入っているといいます。

 開発したマスクは、「bo―bi PRO(ボービ プロ)」。特徴は、フィルターに蚊の嫌がるヒノキ成分を染み込ませてあること。呼気中の二酸化炭素にヒノキ成分を化学吸着させて、呼吸するだけでマスクを通して蚊を退避させる効果があるといいます。

 蚊には、人間の呼気に含まれる二酸化炭素やニオイ成分「イソ吉草酸」、体から排出される汗を感じて近寄ってくる性質があります。

 マスクは12層からなり、PM2・5や微細なウイルスの侵入を食い止める一方、口の周りに密着し、隙間から二酸化炭素が漏れない構造になっています。また、イソ吉草酸はマスクのガーゼ成分との化学変化により中和させています。

 マスクの内側には、汗を吸収し、肌に触れると体温を下げる特殊な繊維も使用。マスク内のフィルターは、独自の特許技術で、息苦しくなく着用できるようになっているといいます。

 外部の調査機関による実験では、マスクを付けた人の周囲の蚊の90パーセント以上が逃げたことが実証されました。

 くればぁ社は10年ほど前、マラリアやデング熱対策として、感染のもととなる蚊を遠ざけるのに有効なヒノキ成分を網に染みこませた「虫退避ネット」を開発し、海外などから注文が殺到したことがありました。また、2014年にはアフリカで流行したエボラ出血熱対策用のマスクを開発し、医療従事者向けに無償提供したことがあります。

 今回、五輪が開かれるブラジルでジカ熱が流行し、「対策の製品を作ってほしい」という要望が1000件以上寄せられたことから開発に乗り出し、販売にこぎ着けました。

 中河原毅社長は、「ウイルスの侵入を防ぐという本来の機能だけでなく、吐く息も利用して蚊を寄せ付けない次世代型のマスク。夏でも使いやすいのが特徴」と話しています。

 マスクは、交換用フィルター10枚とマスクカバーに、虫よけ用のオーガニックオイルも付いたオーダーメイドが1万4980円。マスクの使い捨てタイプ5枚入りが2980円。マスクの使い捨てタイプ20枚入りが8980円。

 問い合わせは、くればぁ(0532・51・4151)へ。すでに大量の注文を受けているため、当面はネット販売のみ。

 2016年7月14日(木)

 

■厚労省、指定難病に9疾患追加へ 来年春にも助成を開始

 厚生労働省の専門家委員会は13日、医療費助成の対象となる指定難病として、骨がもろくなる「大理石骨病」など代謝異常の9疾患を新たに追加することでほぼ合意しました。正式決定後、来年春にも助成を開始します。

 指定難病は、2014年に成立した難病医療法に基づき56疾患が指定され、昨年の2次分の選定で計306疾患に広がりました。厚労省は3次分として222疾患から選定を進めており、まず9疾患を選びました。今秋までに、残り213疾患について引き続き検討し、さらに追加する疾患を順次選びます。

 新たに追加されるのは、「大理石骨病」や、国内に約1500人の患者がいる「シトリン欠損症」、世界に50人程度の「セピアプテリン還元酵素欠損症」、「先天性GPI欠損症」、「βケトチオラーゼ欠損症」、「三頭酵素欠損症」、「非ケトーシス型高グリシン血症」「芳香族アミノ酸脱炭酸酵素欠損症」、「メチルグルタコン酸尿症」。

 厚労省は、発病の仕組みが不明で治療法が確立されていないなどの要件を満たす病気から指定難病を選定。

 医療費助成による自己負担の限度額は大人の場合、世帯収入などに応じて原則、月2500円から3万円。生活保護世帯は、自己負担が生じません。

 2016年7月14日(木)

 

■がん治療薬のオプジーボ、適応外投与で副作用 学会が注意を呼び掛け

 体の免疫力を再活性化させることで、がん細胞を破壊する新しいタイプのがん治療薬「オプジーボ」(一般名・ニボルマブ)を、安全性や有効性が確認されていない大腸がんなどの患者に投与し、全身の筋力が低下する重症筋無力症などの重い副作用を起こすケースが複数起きていたことがわかり、全国のがんの専門医でつくる日本臨床腫瘍学会は緊急の声明を出して注意を呼び掛けることになりました。

 オプジーボを別のがんの治療と併せて行った60歳代の男性患者が死亡したこともわかり、製造販売元の小野薬品工業も社員が医療機関を一つひとつ訪ねて、ほかの抗がん剤などとの併用を原則として行わないよう直接説明を行うことを決めました。

 点滴薬のオプジーボは、体の免疫の機能を再活性化させて、がん細胞を破壊する新しいタイプのがん治療薬で、手術ができないほど進行した皮膚がんの一種「メラノーマ」や、肺がんの一種でがんを縮小させるなど、これまでの抗がん剤にはなかった治療効果が確認され、2014年7月に世界に先駆け日本で承認されました。

 その一方、肺の機能が低下し呼吸困難に陥る間質性肺炎や、全身の筋力が低下して歩けなくなったりする重症筋無力症、1型糖尿病などの重い副作用が起きることも報告されています。

 このため国内では、副作用に対応できる医療機関に限って薬が出荷されていますが、日本臨床腫瘍学会によりますと、一部の医療機関がオプジーボを海外から輸入し安全性や有効性が確認されていない大腸がんなどの患者に投与して、副作用が起きたたケースが複数確認されたということです。医療機関のホームページなどで情報を得たがん患者が、自由診療の形で投与を受けているということで、入院設備がないため副作用に対応できず、国立がん研究センターに救急搬送されてくるケースが起きています。

 小野薬品工業によりますと、オプジーボは6月15日までに推定で7542人に投与され、715人に重篤な副作用が起きたことが報告されています。このうち、間質性肺炎は176人報告され、死亡例も10人以上となっています。また、重症筋無力症が8人、糖尿病の中でも症状が急激に進み死に至ることもある劇症1型糖尿病が7人報告されています。

 日本臨床腫瘍学会では、薬の投与を受ける場合は、がん診療連携拠点病院などに指定されていて、5年以上のがんの化学療法の経験のある医師がいることなど10の条件を示し、そのすべてを満たしている施設で治療を受けるよう呼び掛ける緊急の声明を出すことを決めました。

 日本臨床腫瘍学会の理事長を務める国立がん研究センター中央病院の大江裕一郎副院長は、「適切に対応しないと命にかかわったり重篤な障害を起こしたりする副作用がある。そうした副作用に対応できる施設で治療を受けていただきたい」と話しています。

 2016年7月13日(水)

 

■子宮頸がんワクチン、女性64人が集団提訴へ 国と製薬2社相手に

 子宮頸(けい)がんワクチン接種後の健康被害を訴える15~22歳の女性64人が7月27日に、国と製薬会社2社に総額9億6000万円の損害賠償を求め、東京、大阪、名古屋、福岡の4地裁で一斉に集団提訴することが決まりました。子宮頸がんワクチンの薬害訴訟東京弁護団が12日、会見で明らかにしました。

 弁護団によりますと、女性たちはワクチンを接種した後、失神や歩行障害、視覚障害、記憶障害など多数の症状が出ました。適切な医療が受けられなかったり、学校に通えなくなったり、車いすでの生活を余儀なくされたりなどしたといいます。海外で重い副作用の報告事例があり、国は健康被害を予見できたにもかかわらず、回避措置を怠ったと主張。製薬2社には、製造した責任などを問います。1人当たり少なくとも1500万円、総額9億6000万円の賠償を求め、後日個別の症状に応じて増額するとしています。

 集団提訴することを3月に明らかにした時点では、提訴の意思表明をした女性は12人でしたが、全国で原告を募った結果、64人に増えました。症状が重く、提訴に踏み切れなかった人もいるといいます。今後、追加提訴も予定しているといいます。

 被害者らでつくる全国子宮頸がんワクチン被害者連絡会は、これまで約3200件の相談を受け、約550人の被害を確認しているといいます。

 子宮頸がんワクチンは、グラクソ・スミスクライン社の「サーバリックス」とMSD社の「ガーダシル」。国が2009年と2011年に承認し、販売が始まりました。

 厚生労働省によると、これまでに接種した人は推計で約340万人。今年4月末までに報告された「副作用が疑われる例」は約2900件で、うち重症は約1600件といいます。

 政府が2010年の閣議決定で接種を緊急促進事業に位置付け、接種費用が全国でほぼ無料になったことから接種者が急増。2013年4月に定期接種にしたものの、深刻な被害の訴えが相次いだため2カ月後に積極的推奨を中止し、3年余りが経つ異例の事態が続いています。

 厚労省は、「現段階では詳細を把握していないのでコメントできない。症状を訴える人たちに対しては引き続き寄り添った支援をしていきたい」としています。

 グラクソ・スミスクライン社は、「訴訟の内容がわからない段階でコメントは控えたい」とコメントしています。MSD社は、「提訴が行われた場合、法廷で証拠を提出する考えです」とコメントしています。 

 2016年7月13日(水)

 

■再生医療で脱毛症の治療 京セラと理研が共同研究

 京セラと理化学研究所、医療ベンチャーのオーガンテクノロジーズは12日、脱毛症の治療を目指し、毛髪が生えるもととなる毛包を幹細胞を利用して再生する共同研究を開始すると発表しました。

 神戸市を拠点に共同研究を進め、2020年の再生医療技術の実用化を目標としています。

 毛包は、皮膚にある毛が生える器官。理研の辻孝チームリーダーはマウス実験で、毛包から2種類の幹細胞を取り出し、組み合わせて移植する手法で発毛させることに成功しています。

 現在普及している脱毛症の治療法には、後頭部の頭皮を切り取って患部に一本ずつ移植するやり方がありますが、この場合、頭髪の数は増えません。今回の再生医療技術を使えば、頭髪の数も増やせます。

 採取する髪の数も、今までの20分の1程度の100本程度で済む見込みだといい、正常な毛包から幹細胞を抽出し、100~1000倍に増やして脱毛した部分に移植します。

 3者の共同研究では今後2年かけ、治療効果や安全性を調べ、生産技術を開発します。京セラは微細加工技術で、毛包の製造工程を自動化する機械などで貢献。最終的にはコストなどを見極めて実用化の判断をします。

 日本の再生医療ビジネスは、臓器再生など高度医療に取り組むケースが多くなっています。一方で、脱毛症の患者は国内に1800万人以上とされ、ヘアケアや育毛剤、かつらなど関連市場は年4350億円あります。

 理研の辻リーダーは、「実現可能な分野から実績を上げ、ほかの臓器再生の事業につなげていきたい」と話しています。

 再生医療技術を使った毛髪再生では、資生堂もカナダのバイオ会社と技術提携し、6月に東京医科大の研究チームなどと臨床研究を始めると発表。2018年中の事業開始を目標としています。

 2016年7月13日(水)

 

■熱中症で搬送、先週は4659人  昨年同期の3・5倍に上る

 熱中症で病院に救急搬送される人が増えており、総務省消防庁の集計によると、全国で7月4日から10日までの1週間の搬送者数は、今年初めて4000人を上回りました。

  1335人だった昨年同期に比べて3・5倍となっており、消防庁や搬送者が増えた自治体は、具合が悪い場合、早めに医療機関を受診するよう促しています。

 7月4日から10日までの1週間の搬送者数は、前週比60パーセント増の4659人。今年の累計搬送者数は、1万3687人となりました。

 搬送時の症状の程度は、軽症が2845人と全搬送者の6割超を占めましたが、入院が必要な中等症が1619人、3週間の入院が必要な重症が106人、死亡者も8人確認されました。

 年齢別では、65歳以上の高齢者が2670人で最も多く、全搬送者の6割近くに上り、前の週と比べると2倍近くに増えています。18歳以上65歳未満は1524人、乳幼児を含む18歳未満は465人でした。

 都道府県別では、兵庫県が最多の409人。以下は、大阪府370人、愛知県284人、福岡県277人、東京都272人、埼玉県211人、岡山県182人、神奈川県177人、広島県172人、熊本県162人、京都府159人、千葉県148人の順でした。

 例年7月から8月にかけて熱中症患者が多いことから、消防庁は「特に高齢者の方は暑さを感じにくく、室内でも熱中症になることはあるので十分に注意してほしい」としています。

 消防庁は、熱中症予防のポイントを盛り込んだ動画を作成し、頭痛や嘔吐などの症状が改善しない時は医療機関を受診することに加え、言動がおかしい、体温が極端に高い、意識がもうろうとするといった場合は、119番通報するよう求めています。

 日本気象協会が推進するプロジェクト「熱中症ゼロへ」のサイトでは、都道府県ごとの「倒れるかも予測」を公開しています。過去の気象データと救急搬送人員の情報に基づき、熱中症の症状が重くなる可能性がある人が多いか少ないかを予測。例えば、東京では14日が「多い」、15日から18日までは「やや多い」としています。

 2016年7月12日(火)

 

■結腸がんの再発リスク、遺伝子から予測 国立がん研究センターなどが成功

 毎年9万人近くが発症する結腸がんについて、手術後の再発リスクを患者の遺伝子から予測することに成功したと、国立がん研究センターなどが発表しました。

 再発リスクの予測が患者ごとに可能になり、リスクに応じた抗がん剤の選択が進むことが期待されます。成功したのは、国立がん研究センターと横浜市立大学、ジェノミック・ヘルス社らの共同研究チームです。

 共同研究チームでは、2000年から2005年に日本国内の12病院において手術のみを受けた結腸がんの患者630人(再発210人、無再発420人)の遺伝子を調べ、一人ひとりの遺伝子の変化と再発リスクとの関係を詳しく分析しました。

 その結果、0から100までの数値で再発リスクを評価することに成功したということで、数値が25ポイント上昇すると、手術後5年間の再発リスクが2倍になることなどがわかったということです。

 また、これまで再発リスクは、1から4までのがんのステージで主に見ていましたが、ステージ2の比較的早期のがんでも評価のポイントが高い場合には、手術後5年間の再発リスクが19パーセントと低くないことなどがわかったということです。

 結腸がんは、再発予防のため手術後に抗がん剤治療が行われることがあります。その種類によっては、手足のしびれや痛みが長期間続く副作用も報告されています。

 研究を行った国立がん研究センター東病院消化管内科の吉野孝之科長は、「副作用の強い抗がん剤を使うべきかどうかなど、重要な情報になると思う。今後広く医療現場で使えるようにさらに研究を続けたい」と話しています。

 2016年7月11日(月)

 

■被爆者数17万4000人で過去最少 死者は9587人で過去最多

 広島と長崎に投下された原爆で被爆し、被爆者健康手帳を持っている全国の被爆者は2015年度末で17万4080人となり、過去最少を更新したことが1日、厚生労働省のまとめでわかりました。

 厚労省によると、被爆者健康手帳の交付は旧原爆医療法の施行で1957年度から始まりました。1981年度末には37万2264人とピークを迎えましたが、その後は減っていき、2014年度末は18万3519人でした。 

 2015年度に亡くなった全国の被爆者は、最多の9587人と公表。新たに被爆者健康手帳を交付された人もいるため、2014年度末からの減少数は9439人になりました。

 平均年齢は2014年度末時点に比べ、0・73歳高い80・86歳でした。

 自治体別では、被爆者健康手帳を持つ人が最も多い広島市が2015年度末時点で5万6174人、長崎市が3万2547人でした。

 戦後71年を迎え、被爆者の高齢化が一層進む中、国には、被爆者団体などが求める原爆症認定制度の抜本的見直しなどへの対応が求められます。また、悲惨な体験の継承の在り方も今後の大きな課題です。

 2016年7月1日(金)

2019年7月〜 1月〜6月 2018年7月〜12月 1月〜6月 2017年7月〜12月 1月〜6月 2016年7月〜12月 1月〜6月 2015年7月〜12月 1月〜6月 2014年7月〜12月 1月〜6月 2013年6〜12月 5月 4月 3月 2月 1月 2012年12月 11 10月 9月 7月 6月 5月 4月 3月 2月 1月 2011年12月 11月 10月 9月 8月 7月 6月 5月 4月3月 2月 1月 2010年12月 11月 10月 9月 8月 7月 6月 5月 4月 3月 2月

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