自らの体と心と病を知り/自らの健康を創る/健康創造塾/自らの体と心と病を知り/自らの健康を創る/健康創造塾
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■餅詰まらせ病院に搬送、7割が元日に集中 東京消防庁が注意喚起
過去5年間の正月三が日に、東京都内で餅(もち)をのどに詰まらせて病院に搬送された約100人のうち、7割が元日に集中していることが東京消防庁の調べでわかりました。東京消防庁は多くの人が元日に久しぶりに餅を食べることから詰まらせやすいとみて、注意を呼び掛けています。
東京消防庁によりますと、2014年から今年までの5年間の正月三が日に、東京都内で餅をのどに詰まらせて窒息状態に陥り、救急車によって病院に搬送された人は合わせて97人で、このうち5人が死亡しました。
搬送された人の9割は60歳以上が占めており、餅をかんだり飲み込んだりする力が弱いことが原因とみられるということです。
また、過去5年間に搬送された97人を日付別に調べると、全体のおよそ7割に当たる合わせて66人が、いずれも元日に搬送されていたことがわかりました。
東京消防庁は多くの人が元日に久しぶりに餅を食べることからのどに詰まらせやすいとみて、注意を呼び掛けています。
一工夫でトラブルが生じるリスクは下げられます。あらかじめ一口大に切っておくことが第一。次に、水分があると餅の付着性が下がって飲み込みやすくなるため、よくかんで唾液(だえき)と十分に混ぜ、こまめに飲み込みようにし、食べる前には汁物などで口を潤します。その点で、磯辺焼きより、大根おろしであえるなど水分と一緒に食べたほうがいいといえます。
食べる時は会話を控え、いすの奥に腰掛けて体を安定させます。特に高齢者や子供は、周囲の人が見守るのが望ましく、乳児は控えます。
もし餅を詰まらせたら、周囲の人はどう対処したらいいのでしょう。自力で強いせきをしている時は、続けるように促すとともに、119番通報して救急車を呼ぶこと。せきができない、あるいは初めはせきをしていたのに、できなくなってきた場合には、背部叩打(こうだ)という応急処置を行います。
救助者が患者の背後から、片手で胸または下あごを支えてうつむかせます。もう片方の手のひらの付け根で、肩甲骨の間を何度も強く迅速にたたいて餅を吐き出させます。この背部叩打に、腹部突き上げという応急処置を組み合わせることも有効。まず救助者が患者の背後から、両腕を腹部に回します。片方の手で握り拳を作り、親指側を患者のへその上、みぞおちより下に当てます。その握り拳をもう一方の手で握り、素早く手前上方に向かって圧迫するように突き上げます。
救急車の到着まで、背部叩打と腹部突き上げの2つを繰り返すといいといいます。119番通報でも応急処置の指導をしてくれます。
2018年12月31日(月)
■障害者への虐待、過去最多2618件 施設職員の加害が増加
厚生労働省は26日、2017年度に全国の自治体などが確認した障害者への虐待は前年度より98件多い2618件だったと発表しました。特に障害者福祉施設職員による虐待が増えており、厚労省は「背景には施設の利用者の増加があり、施設側が自ら通報するケースが増えていることが要因」とみています。1件で複数の人が虐待を受ける場合もあり、被害者数は346人増の3544人、死亡者数は4人減の1人でした。虐待件数と被害者数は、調査が始まった2012年度以降最多でした。
虐待を受けた人の障害の種類別では、重複障害を含め、知的障害1825人、精神障害1101人、身体障害720人。虐待の種類については、暴力などの「身体的虐待」や「経済的虐待」、「心理的虐待」が多いということです。
家族など養護者による虐待は19件増の1557件、被害者は16人増の1570人で、このうち1人が死亡しました。雇用主や職場の上司らによる虐待は16件増の597件、被害者は336人増の1308人。また、障害者福祉施設の職員らによる虐待は63件増の464件、被害者は6人減の666人でした。養護者による虐待は2012年度からほぼ横ばいが続いていますが、雇用主らは4・5倍、施設職員は5・8倍に増えています。
施設での虐待の発生要因(複数回答)は、職員らの「教育・知識・介護技術などの問題」(59・7%)が最多。このほか「倫理観や理念の欠如」(53・5%)、「職員のストレスや感情コントロールの問題」(47・2%)などでした。
厚労省は、「施設職員に対し、利用者への対応や感情のコントロールなどの研修を強化していきたい」としています。
2018年12月30日(日)
■初の錠剤は服用1回タイプ、インフルエンザ新薬に注目 子供には処方できないケースも
インフルエンザが本格的な流行期を迎えています。厚生労働省によると、23日までの1週間の患者数は全国で推計31万3000人。正月休み明けに会社や学校が再開すると、さらに感染者が増える恐れがあります。
そんな中、今季は利便性の高い新薬「ゾフルーザ」が登場し、治療薬の選択肢が広がっています。
インフルエンザ治療薬は主に4種類ありますが、今年3月に発売されたゾフルーザは初の錠剤で、服用はわずか1回。製造元の塩野義製薬(大阪市中央区)によると、4~9月の売り上げはインフルエンザ薬の65%を占め、注目の高さがうかがえます。
従来の治療薬は細胞内で増殖したウイルスが細胞の外に広がるのを抑えますが、ゾフルーザは細胞内でウイルス自体の増殖を抑えるのが特徴で、ウイルスを減らすのが速く高熱や体の痛みで苦しむ日が少なくてすみ、周りの人への感染をより抑えられる可能性があるとされています。
ユアクリニックお茶の水(東京都千代田区)の杉原桂(かつら)院長(小児科)は、「ゾフルーザの使用はもっと広がるだろう」と話しています。仕事のある人は、服用が1回ですむ薬を希望することが圧倒的に多いといいます。粉末を吸入するタイプや点滴薬が普及していますが、「ゾフルーザは錠剤なので服用しやすく、体内に取り込む確実性も高い」といいます。対象は体重10キロ以上ですが、錠剤を飲めない子供などは処方できないこともあります。
ゾフルーザに、カプセルを複数回服用するインフルエンザ治療薬タミフルと同程度の治療効果があることは、成人を対象とした国際共同試験で示されています。ただ、発売から日が浅く、データがまだ少ないため、日本小児科学会は今シーズンの治療指針で推奨していません。
薬が効きにくい耐性ウイルスを懸念する専門家の声もあります。国際共同試験では成人の9・7%、小児の23・3%で確認され、いずれもタミフルより高くなっています。耐性ウイルスに感染すると、発熱などの症状が消えるまでの時間も長くなります。
国際共同試験に参加したけいゆう病院(横浜市)の菅谷憲夫感染制御センター長は、「重症の患者など、状態が悪い人に使った場合の影響が心配だ」と話しています。
塩野義製薬は、「有効性と安全性のデータを蓄積し、適正使用を推進したい」としています。
2018年12月30日(日)
■出生前診断、10年で2・4倍に急増 2016年は7万件実施
出産前に胎児の染色体異常などを調べる出生前診断の国内実施件数が、この10年間で2・4倍に急増したことが、国立成育医療研究センターなどの研究チームの調査で28日までに判明しました。直近の2016年は約7万件と推定され、35歳以上の高年妊婦に限れば4分の1が受けている計算になります。
診断で異常が確定すると大半が中絶を選ぶため、「命の選別」につながるとの懸念も強く、慎重な実施が求められてきましたが、普及が急速に進んでいる実態が浮かび上がりました。
国内の出生前診断は登録制度がなく、実施件数や施設数は把握されていません。研究チームは、医療機関が採取した母親の血液などを調べる解析施設への調査などから、母体血清マーカー検査、新型出生前診断(NIPT)、羊水検査、絨毛(じゅうもう)検査の総数を推計しました。
調査によると、2006年の実施件数は約2万9300件で、全出生数に対する割合は2・7%、高年妊婦に限れば15・2%でした。これに対し、2016年の実施件数は約7万件で全出生数の7・2%、高年妊婦では25・1%と大きく伸びていました。
検査別では、母親の血液中の成分から胎児の染色体異常などを調べる母体血清マーカー検査が2006年の約1万7500件に対し、2016年は約3万5900件と倍増しました。母親の血液に含まれる胎児のDNA断片から比較的精度よく調べられる新型出生前診断は、日本産科婦人科学会の指針に基づく臨床研究の形で導入された2013年から増え続け、2016年は共同研究組織の登録分だけで1万3628件でした。だが、海外の業者と提携して新型出生前診断を提供するなど、近年問題化している無認可施設の実施件数は含まれておらず、実数はさらに多いとみられます。
羊水検査は2006年の1万1703件から、2016年は1万8600件に伸びたものの、新型出生前診断の導入以降は減少傾向となっています。検査可能な施設数は羊水検査が876施設、母体血清マーカー検査が1509施設と推定しました。
日本産科婦人科学会は新型出生前診断の実施施設拡大を視野に、指針の見直しを検討しています。
出生前診断は生まれる前に胎児に障害や病気がないか調べる検査の総称で、その種類によって、受けられる時期、検査対象、正確さ、費用が大きく異なります。羊水検査と絨毛検査は精度が100%ですが、妊婦の腹部に針を刺すため流産の恐れがあります。母体血清マーカー検査と新型出生前診断は母親の血液から調べられ、手軽なのが特徴。新型出生前診断のほうが精度(陽性的中率)は平均89%と高いものの、ともに検査結果を確定するためには羊水検査などを受ける必要があります。
国立成育医療研究センターの佐々木愛子医師(周産期医学)は、「遺伝の専門家の意見を聞いて、倫理的なことも含めてよく考えて検査するか決めてほしい」と話しています。
2018年12月30日(日)
■全国の産婦人科・産科病院が過去最少に 小児科病院も減、厚労省調査
全国の産婦人科と産科を掲げる病院は2017年10月時点で、前年比19減の1313施設で、統計を取り始めた1972年以降で最少となったことが、厚生労働省が28日までに公表した2017年医療施設調査で明らかになりました。
27年連続の減少で、平成初期の1990年の約半数になりました。産婦人科と産科の診療所(20床未満)は、2014年と比べて142減の3327施設でした。
小児科病院は、前年比26減の2592施設と24年連続の減少。小児科診療所も、3年間で1225減り、1万9647施設となりました。
厚労省の担当者は、「出生数の減少や少子化の影響、地域で産科の集約化が進んでいることも背景にあるのではないか」としています。
調査によると、全国の医療施設は前年比419減の17万8492。内訳は一般病院7353、精神科病院1059。診療所は10万1471、歯科診療所は6万8609。
人口10万人当たりの勤務医(医療機関で働く医師)は増えており、全国平均は171・7人(前年比0・2人増)。都道府県別では、高知県(259・7人)が最も多く、徳島県(229・9人)、京都府(215・0人)が続きました。最少は埼玉県(124・9人)、次いで静岡県(134・3人)、新潟県(136・9人)。
厚労省は2017年病院報告も公表。国が医療費適正化に向け入院期間の短縮を目指す中、患者1人当たりの入院期間を表す平均在院日数は前年より0・3日短い28・2日でした。
2018年12月29日(土)
■急性Tリンパ芽球性白血病に有効な治療薬を発見 自治医科大ら
小さな子供や15~39歳の「AYA世代(思春期・若年成人」と呼ばれる若年層に多く発症する血液がん「急性Tリンパ芽球性白血病」(T―ALL)の治療に有効な物質を、自治医科大学(栃木県下野市)などの共同研究チームが発見しました。特許を出願中で、アメリカのがん学会誌「クリニカル・キャンサー・リサーチ」(電子版)に発表しました。
自治医科大の菊池次郎准教授(腫瘍学)らによると、この病気は2~4歳で10万人のうち4、5人の割合で発症し、現在は骨髄移植や抗がん剤による治療が行われています。5年生存率は35%ですが、脳に転移すると5年以上の生存は望めないといいます。
理化学研究所や山梨大学との共同研究で、この病気の発症や進行にリジン特異的脱メチル化酵素(LSD1)が関係していることが判明。脳に転移したマウスにLSD1の働きを阻害する化合物を投与したところ、白血病細胞の増殖を抑制し、生存期間が2倍以上延びることが確認されました。
今後、臨床試験により人での安全性と有効性が検証されれば、脳転移にも有効な世界初の分子標的薬として大幅な延命効果が期待できます。
菊池准教授は、「これまでは抗がん剤や骨髄移植で効果がないと、なすすべがなかった。患者に対する治療効果が期待でき、特に脳転移した場合の生存率を改善できる可能性がある」と話しています。
2018年12月28日(金)
■たばこの警告表示面積、50%以上に引き上げへ 2020年4月から適用
たばこの包装に表示する健康被害に関する警告について、財務省は28日、表示にかける面積を広げることを決めました。これまでは包装の主な面積の30%以上としていましたが、世界保健機関(WHO)が推奨する50%以上に引き上げます。警告表示のルール変更は約15年ぶりとなります。
今後、関連する省令を改正し、2020年東京オリンピック・パラリンピックで新表示のたばこを流通させるため、一部を除いて2020年4月1日の販売分から順次、適用します。
警告がはっきりとわかるように文字を大きくし、警告表示を区切る枠線を現状より太い「1ミリ以上」とし、文字と枠線の色は白か黒に限定します。
病気のリスクなど警告の定型文言も8種から10種に増やし、「たばこの煙は、周りの人の健康に悪影響を及ぼします」など受動喫煙に関する表現を充実させます。未成年の喫煙防止に関する文言は必ず表示することにします。たばこが原因で健康を害した人たちの写真など、画像による警告の実施は見送りました。
普及の進む加熱式たばこについても表示面積は50%以上としますが、健康被害の科学的知見が得られていないとして、「悪影響が否定できません」などと、紙巻きたばこよりも表現を緩めます。
財務省の審議会の分科会では、たばこ広告についても、業界に自主規制を要請。これを受け、日本たばこ協会は、新聞や雑誌への広告掲載の制限を強化する方針です。
2018年12月28日(金)
■精神障害者の就労パスポート、来年度中に導入へ 採用や職場定着を支援
精神障害者の就職支援のため、厚生労働省は、一人ひとりの障害の状況などを盛り込んだ「就労パスポート」を来年度中に導入します。必要な配慮や強みをあらかじめ企業側に知ってもらうことで、採用や職場への定着につなげたい考えです。
25日、障害者団体や企業などの関係者が参加して会合を開催し、具体的な記載内容や使い方について議論を始めました。プライバシーにもかかわることから、慎重に対応する方針です。
就労パスポートは、ハローワークなど障害者の就業を支援する公的機関が、本人とともに作成します。「一つのことに集中して作業するのが得意」など障害の状況や得意なことのほか、体調管理の方法などが記載される予定。
こうした情報はこれまで、支援機関ごとに、項目や書式がまちまちでした。統一的な就労パスポートを導入することによって、関係機関が連携して支援をスムーズに行えるようになります。
厚労省などによると、民間企業で働く障害者は約49万6000人(2017年)。このうち精神障害者は約1割を占めます。年々増加し、今年4月には、改正障害者雇用促進法で企業などに雇用を義務付ける対象に精神障害者が加わり、増加に弾みがつくと期待されています。
ただ、採用から1年後の職場定着率は49%で、身体障害者の61%、知的障害者の68%より低くなっています。精神障害は外見ではわかりづらく、偏見も根強いため、企業側に伝えずに就職する人も少なくない結果、適切な支援が得られず離職に至りやすいことが問題となっており、企業側から「職場でどんな配慮が必要かわからない」「任せられる仕事を知りたい」といった声が出ていました。
2018年12月27日(木)
■iPS細胞から角膜、大阪大が国に研究申請へ 来春の移植手術を目指す
iPS細胞(人工多能性幹細胞)からつくる角膜の細胞を患者に移植する大阪大学の研究チームの臨床研究が26日、学内の審査委員会で了承されました。今後、厚生労働省に申請し、同省の部会で了承されれば、実際に始められます。来年5~6月の移植手術を目指しているといいます。
大阪大の西田幸二教授(眼科学)らの研究チームが、「角膜上皮幹細胞疲弊症」の患者4人に移植手術をします。この病気は、黒目の表面を覆う「角膜」を新たにつくる「幹細胞」がけがなどで失われ、角膜が濁って視力が落ち、失明することもあります。
他人の角膜を移植する治療法がありますが、慢性的に提供数が不足し、海外からの輸入に頼っています。臨床研究では、第三者のiPS細胞を角膜の細胞に変化させて直径3・5センチ、厚さ0・05ミリの円形シート状にした後、患者の目に移植し、主に安全性を調べ、有効性も確かめます。移植した細胞が角膜を再生すると期待されています。
今回の手術の対象となる患者は、国内で年間100~200人ほどいると推定されるといいます。阪大病院を受診中の約50人の中から、臨床研究の条件に合う人を選んで手術をします。最初の2人はiPS細胞と免疫の型を合わせず、その結果、拒絶反応が起きなければ、3、4人目も合わせない計画といいます。
研究チームは6月、再生医療安全性確保法に基づいて設けられている大阪大の委員会に計画を申請。この日、2度目の審査があり、患者への説明文書を分かりやすく修正することを条件に、計画を「適切」とする意見をまとめました。
西田教授は審査後、「iPS細胞を使えば品質が高く、より治療効果が見込める移植用の角膜を作製できる。臨床研究の後、間を空けずに治験に移行したい。5~6年後には一般的な医療にすることが目標だ」と話しました。
iPS細胞からつくった細胞の患者への移植は、これまで理化学研究所などの研究チームが目の難病の加齢黄斑変性で、京都大の研究チームがパーキンソン病で、それぞれ実施しています。ほかにも大阪大の心不全や慶応大の脊髄(せきずい)損傷など複数の計画が進んでいます。
2018年12月27日(木)
■精神疾患で公立校教員5077人が休職 多忙によるストレス一因
2017年度にうつ病などの精神疾患で休職した公立小中高校などの教員は前年度比186人増の5077人だったことが、文部科学省の人事行政状況調査でわかりました。心の病気による休職は2007年度以降、5000人前後で推移しており、多忙でストレスを抱えていることが要因の一つとみられています。
調査は毎年、都道府県と政令指定都市の計67教委を対象に実施。発表によると、病気での休職者は同38人増の7796人。精神疾患による休職者はこのうち5077人で、公立小中高校などの全教員約92万人の0・55%に当たります。今年4月までに復職したのは1994人、引き続き休職したのは2060人で、1023人は退職していました。世代別では、30歳代(0・63%)が最も割合が高く、40歳代(0・62%)、50歳代以上(0・57%)などと続きました。現場で経験を積み、責任が増す年代ほど、心の病にかかる傾向がみられました。
精神疾患での休職者は急増しており、最近25年で4倍超になりました。文科省の担当者は、「休職者が高止まりしている背景には、学校業務が多忙なことに加え、保護者らへの対応のストレスなどもある。働き方改革で業務を見直すことが必要」としています。
一方、免職や減給などの懲戒処分や、懲戒より軽い訓告など受けたのは同2929人減の5109人。体罰での処分は同69人減の585人、わいせつ行為での処分は同16人減の210人でした。
また、再任用の教職員は今年4月現在、同4739人増の4万595人で過去最多となりました。フルタイム勤務が2万6192人、短時間勤務が1万4403人でした。
2018年12月26日(水)
■抗菌薬を処方された半数近くが飲みきらず 感染症が治らず耐性菌が出現する恐れも
抗菌薬(抗生物質)を医師から処方された人の半数近くが最後まで飲みきらず、残った薬を体調が悪くなった時に飲んだ人も2割を超えることが、国立国際医療研究センター病院(東京都新宿区)の調査でわかりました。家族や他人からもらって飲んだ人も約2割いました。
調査は8~9月、10〜60歳代の男女721人を対象にインターネットで実施しました。
抗菌薬は細菌が増えるのを抑えるために用います。服用して症状が改善しても、途中でやめると細菌を完全に退治できないため完治しなくなる恐れがあり、薬が効かない耐性菌の出現にもつながります。抗菌薬をきちんと飲みきり、使い回しは避ける必要があります。
今回、処方された抗菌薬を飲みきっているかどうか尋ねた質問では、「最後まで飲みきっている」が52%でした。「治ったら途中でやめる」(34%)、「最初からできるだけ飲まない」(8%)など、不適切な飲み方をする人もほぼ同数の48%に上りました。
飲み残した薬について、45%が「すべて捨てている」と回答。一方で、「いつか使おうととってある」30%、「体調が悪い時に飲んだことがある」22%と、半数以上が捨てずに保管していました。「他人にあげたことがある」も3%いました。
別の質問で、家族または他人から抗菌薬をもらい、飲んだことがあると答えた人は21%。医師以外からもらった抗菌薬を飲むことについて、「症状が同じならば問題ない」18%、「受診せずに済むので好都合」10%など、肯定的にとらえる人も一定数いました。
抗菌薬は、風邪やインフルエンザなど、ウイルスで感染する病気には効きません。しかし、風邪で抗菌薬の処方を希望する人が3割いるなど、正しい理解の普及が課題となっています。
薬剤耐性の研究を行う国立国際医療研究センター病院AMR臨床リファレンスセンターの藤友結実子さんは、「医師が処方した通りに抗菌薬を飲みきることが、薬剤耐性対策にもつながる」と話しています。
2018年12月26日(水)
■国の機関の障害者雇用1・22%で4273人不足 厚労省が発表
厚生労働省は25日、国の機関が雇用する障害者数が今年6月時点で、3902・5人(短時間労働者は0・5人分と計算)となり、雇用率は法定(2・5%)を大幅に下回り、1・22%だったと発表しました。中央省庁などでの長年にわたる不適切な計上が原因で4273・5人が不足しており、政府は来年末までの改善を目指しています。
中央省庁の障害者雇用を巡っては、昨年6月時点の水増しが今年8月に発覚。水増しは28機関3700人に達していました。
今回は立法・行政・司法の43機関のうち、法定雇用率を達成したのは8機関。立法機関は衆院と参院の法制局の2機関で、司法で達成した機関はありませんでした。
行政機関では、内閣法制局、警察庁、個人情報保護委員会、厚生労働省、海上保安庁、原子力規制委員会の6機関が達成。最も障害者雇用数が不足しているのは国税庁で、1068・5人。次いで国土交通省(713・5人)、法務省(574・5人)、防衛省(360・5人)の順でした。
立法機関の実雇用率は1・03%、行政機関の実雇用率は1・24%、司法機関の実雇用率は0・98%にとどまり、国の機関全体では1・22%でした。
一方で、同時に公表された都道府県の障害者雇用数は8244・5人で、実雇用率は2・44%。市町村の障害者雇用数は2万5241・5人、実雇用率は2・38%で、いずれも法定雇用率をわずかに下回るだけで、国との格差が浮き彫りになりました。
厚労省の担当者は、「不適切計上の再発防止や、障害者が活躍できる場を職場につくることに、専門家の力を借りながら取り組んでいく」と述べました。
2018年12月26日(水)
■終末期がん患者、4割が体の苦痛を抱える がん研究センターが初の調査
がん患者の約4割が亡くなる前の1カ月間に、体の痛みや吐き気、呼吸困難などを抱えていたことが、明らかになりました。国立がん研究センター(東京都中央区)が26日、調査結果を公表しました。がん患者らの遺族に行ったもので、全国的な調査は今回が初めて。心身の苦痛を軽減する緩和ケアの普及が求められます。
今年2~3月、人生の最終段階(終末期)の療養生活の実態を把握しようと、2016年にがんや心疾患、脳血管疾患、肺炎、腎不全で亡くなった20歳以上の患者の遺族4812人を対象に「医療や療養生活の質」に関するアンケートを実施。2295人から有効回答を得ました。
がんでは、患者の遺族約3200人のうち、1630人(51%)から有効回答を得て、国立がん研究センターが分析しました。自宅や病院など亡くなった場所で受けた医療に関する全般的な満足度は、患者遺族の76%が「満足」と回答。その一方で、がん患者が亡くなる前の1カ月を痛みが少なく過ごせたか聞いたところ、「そう思わない」「あまりそう思わない」など、痛みがある状態だったのは42%に上りました。
穏やかな気持ちで過ごせたかについても、「そう思わない」「あまりそう思わない」などを合わせると、気持ちのつらさを抱えていた患者が35%を占めました。
また、医師が患者の苦痛を和らげるよう努めていないと思った180人余りに、理由を尋ねたところ、「対処してくれたが不十分だった」が41%、「診察の回数や時間が不十分だった」が34%、「苦痛を伝えたが対処してくれなかった」が18%などとなりました。
一方、介護に負担を感じていた患者遺族は42%で、患者との死別後、17%の遺族が鬱(うつ)症状に悩まされていました。
国立がん研究センターの加藤雅志・がん医療支援部長は、「適切な緩和ケアを行えば、痛みは減らせる。患者とのコミュニケーションを重ねながら、ケアの充実を進める必要がある」と話しています。
同センターは来年1~3月、終末期の医療や療養生活の現状に関してさらに詳細に把握するため、心疾患などで死亡した患者の遺族約5万人を対象とした調査を実施する予定。
2018年12月26日(水)
■外国人労働者の受け入れ拡大、基本方針など正式決定 政府が共生に126施策
来年4月からの外国人労働者の受け入れ拡大に向け、政府は24日、新たな在留資格の制度に関する「基本方針」や、外国人との共生を図るための「対応策」などを正式に決定しました。新たな制度は事実上、単純労働の分野まで受け入れを広げるもので、大きな政策転換となります。
外国人労働者の受け入れを拡大するため、新たに「特定技能」の1号と2号の在留資格を設ける法律が、来年4月に施行されるのを前に、政府は25日、新たな制度に関する「基本方針」と、介護や建設など14の受け入れ分野ごとの「運用方針」、それに外国人との共生を図るための「対応策」を正式に決定しました。
「基本方針」には悪質ブローカー(仲介業者)を排除することや、地方の人手不足を解消するため、都市部に外国人が集中しないように必要な措置をとるよう努めることが盛り込まれました。
また、分野別の「運用方針」には、来年4月からの5年間に14の受け入れ分野を合わせて最大で34万5000人余りの受け入れ見込み数と、経済情勢の変化がない限り、これを受け入れの上限として運用することが示されました。
さらに、外国人との共生を図るための「対応策」には、126の施策が盛り込まれました。この中には行政サービスの多言語化を進めることや、在留資格に必要な日本語の試験をベトナムなど9カ国で行うこと、それに都市部に外国人が集中するのを防ぐため、地域別や業種別の外国人の数を定期的に公表することなどが含まれています。
新たな制度は事実上、単純労働の分野まで受け入れを広げるもので、大きな政策転換となります。安倍晋三首相は、「それぞれの立場で強いリーダーシップを発揮し、施策を着実に実行に移し、外国人の皆さんが日本で、そして地方で働いてみたい、住んでみたいと思えるような制度の運用と社会の実現に全力を尽くしてもらいたい」と指示しました。
「運用方針」によりますと、「特定技能1号」の対象となる介護や建設など14分野のうち、来年4月から新たな技能試験が行われるのは、介護、宿泊、外食業の3つの分野になる見通しです。このほかの11分野は、来年度中に試験を始める予定だということで、当面は、技能実習生からの移行が中心になりそうです。
「運用方針」に明記された14の分野ごとの来年4月から5年間の最大の受け入れ見込み数は、次のようになっています。
「介護」が6万人。「ビルクリーニング」が3万7000人。「素形材産業」が2万1500人。「産業機械製造業」が5250人。「電気・電子情報関連産業」が4700人。「建設」が4万人。「造船・舶用工業」が1万3000人。「自動車整備」が7000人。「航空」が2200人。「宿泊」が2万2000人。「農業」が3万6500人。「漁業」が9000人。「飲食料品製造業」が3万4000人。「外食業」が5万3000人。
「対応策」は外国人の生活支援策が柱になっています。多様な悩みを相談できる一元的な窓口が全国におよそ100カ所整備され、行政サービスや災害情報、警察の「110番」などで、多言語での対応が進められます。
来年度には、気象庁のホームページや緊急地震速報などを発信するアプリも多言語化される予定です。また、地方の人手不足を解消するために、外国人が都市部に集中するのを防ぐ取り組みも盛り込まれました。
外国人を呼び込む先導的な地方の取り組みは、財政的に支援することや、地域別や業種別の外国人の数を定期的に公表することが明記されました。法務省は3カ月ごとに公表すると説明しています。
このほか、低賃金などが問題となった技能実習制度の悪用を防ぐ仕組みなども盛り込まれています。日本語の試験は14のいずれの分野も新たな「能力判定テスト」か、今ある「日本語能力試験」で、基本的な内容が理解できる「N4」以上のレベルと認められることが必要となります。また、新たな「能力判定テスト」は、ベトナム、フィリピン、カンボジア、インドネシア、中国、タイ、ミャンマー、モンゴル、ネパールの9カ国で実施されます。
この9カ国とは、悪質なブローカーの介在を防ぐため、2国間協定を結ぶことにしています。また、雇用形態は原則、受け入れ先による「直接雇用」とし、農業と漁業は季節によって仕事の量が変動することなどから、「派遣」も認めるとしています。
外国人労働者の受け入れが来年4月から拡大されるのに合わせて、外国人の在留管理を厳しくするため、出入国在留管理庁が新設されます。現在の法務省の入国管理局を格上げする形で、約470人増員し、全体で合わせて、約5400人と体制を強化する方針です。
2018年12月25日(火)
■岐阜県で豚コレラの6例目の感染確認 7500頭余の殺処分に自衛隊派遣
岐阜県は25日朝、岐阜県関市の養豚場の豚から、豚(とん)コレラウイルスの陽性反応を確認したと発表しました。9月に岐阜市の養豚場で国内では26年ぶりに確認されて以来、飼育施設の豚やイノシシでの感染確認は6例目、民間の養豚場では2例目となります。
殺処分の対象はこれまでの10倍以上の7547頭で、岐阜県は自衛隊に派遣を要請しました。
県によると、養豚場では23~24日、出荷する豚68頭の検査中にメス1頭から遺伝子検査で陽性反応が出ました。県が養豚場の20頭を選び出して改めて検査したところ、25日未明にこのブタと別の豚舎のメス1頭の合わせて2頭から陽性反応が出たため、国と協議して殺処分することを決めました。発熱などの症状はなかったといいます。養豚場では野生イノシシ対策のワイヤメッシュ柵も設置するなどの防疫対策を取っており、22日まで豚を出荷していました。
県は25日午前7時から、家畜伝染病防疫対策本部員会議を開いて対応を協議。殺処分の対象がこれまでより多いため、今後90時間以内に豚を殺処分し、来年1月3日までに埋却や施設の消毒を進めることにしました。自衛隊にも災害派遣を要請し、防疫措置に陸上自衛隊第10師団(名古屋市)から支援を受けます。
古田肇知事は、「今度は民間の大規模農場で、大変に残念だ。さらに強い危機感を持って対応を。寒波に向かう中で長丁場の防疫措置になる。職員の体調管理に十分な留意を」と指示しました。
岐阜県内では、飼育施設での豚コレラの感染がこれまでに養豚場、岐阜市と県の施設などの豚やイノシシで計5例発生し、野生のイノシシ79頭でも確認されていました。22日には愛知県内でも、犬山市で捕獲された野生イノシシから豚コレラが確認されています。
豚コレラは人には感染せず、感染した豚の肉を食べても健康への影響はありません。
2018年12月25日(火)
■今年の健康食材は「サバ」 缶詰は80種超、ブランドサバは20種
平成最後の年を象徴する食は「サバ」で、平成30年の世相を反映した「今年の一皿」にサバが選ばれ、家庭料理を代表する「食トレンド大賞」にサバ缶が選ばれました。ここ数年、魚の人気は熟成肉や鶏むね肉など、肉に押されがちでしたが、魚食のよさが見直された年になりました。
大衆魚として長年、日本人に親しまれてきたサバは、健康や美容に効果が期待できる栄養素を豊富に含むことから、改めて注目されるようになりました。
ブームの立役者はサバ缶で、下処理の手間が要らず、手ごろな値段で長期保存ができます。利便性に加えて、水煮缶は生のサバよりDHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)、さらには美肌効果のあるビタミンB2が多く含まれていることもヒットの要因となりました。
従来の地味なイメージを一新させるおしゃれなデザインの「おしゃれサバ缶」や、原料にこだわった「プレミアムサバ缶」が登場し、女性たちの心もしっかりとつかみました。
サバ缶は80種を超え、生産量は今やツナ缶を抜いてトップに。家庭では、和洋中とさまざまなメニューに活用され、食卓を彩りました。
料理レシピ検索・投稿サイトの「クックパッド」では、「炊き込みご飯」や「アクアパッツァ」など、サバ缶を使ったさまざまなレシピが話題となり、この広がりから、今年の「食トレンド大賞」にサバ缶を選びました。同社は、「時短、健康志向、低価格、おいしさのすべてがそろい、手軽に魚を食べたいというニーズに応えた」と説明しています。
一方、食に関する調査・研究を行う「ぐるなび総研」(東京都千代田区)は、サバを「今年の一皿」に選定しました。今年は各地で大きな災害に見舞われ、防災意識の高まる中、サバ缶など缶詰の「非常食」としての重要性が再認識されたことや、今年10月に「日本の台所」と呼ばれた東京都中央卸売市場築地市場が豊洲へ移転し、次世代に向けて日本の魚食文化を考える節目となったことを、選定の理由に挙げました。
乱獲で激減した太平洋クロマグロ、ニホンウナギが相次いで絶滅危惧種に指定され、持続可能な漁業への関心が高まる中、「サバはしっかり資源管理をしながら、漁獲量が安定的に伸びてきている。持続可能な漁業の優等生といえます」と、水産業に関係する企業や団体で構成されている一般社団法人「大日本水産会」の白須敏朗会長は話しています。
農林水産省の2017年漁業・養殖業生産統計によると、サバ類の漁獲量は約51万トンで、総漁獲量(海面漁業)の16%ほどを占めます。白須会長によると、海外でも人気を呼んで、約20万トンを主に缶詰でアジアやアフリカへ輸出しているとのこと。
国内ではおいしさを競うようにブランドサバの開発も行われ、大分市の「関さば」や宮城県石巻市の「金華さば」など各地に天然、養殖合わせて約20種類があります。サバを主役にしたさまざまな催しも開かれ、町おこしに一役買っています。
日本で取れるサバ類は秋から冬に旬を迎えるマサバと、年間を通じて脂の乗りがほぼ一定のゴマサバの2種類があり、マサバのほうが圧倒的に量が多くなっています。国立研究開発法人「水産研究・教育機構」中央水産研究所資源研究センターの主任研究員、由上(ゆかみ)龍嗣さんは、「太平洋にいるマサバは約200万トンで、2013年以降は増加傾向にあります」と話しています。
春に日本近海で生まれたマサバは、黒潮に乗って回遊します。稚魚から成長しながら日付変更線付近まで移動し、秋になると日本近海へと帰ってきます。今年は暖冬の影響でなかなか水温が下がらず、日本近海に戻ってくるタイミングが遅れたものの、11月末から水揚げされ始めました。今年生まれた稚魚が大量に確認されているため、今後も豊漁が期待できるといいます。
2018年12月24日(月)
■大腸ポリープ切除、AIシステムが診断支援 医療機器として初承認
名古屋大学や昭和大学など共同研究チームは10日、大腸がんの前段階のポリープを内視鏡検査で見付ける人工知能(AI)システムが医薬品医療機器等法に基づく承認を得たと発表しました。内視鏡の画像をAIが診断して医師に伝えるシステムが承認を受けるのは初めてといいます。検診での見逃しを防ぐことで、大腸がんによる死亡が減らせると期待されます。
このシステムは、名古屋大と昭和大、工業製品の設計用ソフトウエアなどを手掛けるサイバネットシステム(東京都千代田区)が共同開発しました。サイバネットシステムは内視鏡メーカーのオリンパスと組み、2019年夏までに医療機関に提供する計画です。
国立がん研究センター中央病院などの国内5カ所の病院と協力し、約6万枚の大腸の内視鏡画像をAIに学ばせました。臨床試験(治験)では、いずれがんになるため切除する必要のある「腫瘍性ポリープ」なのか、切除する必要がない「非腫瘍性ポリープ」なのかを98%の精度で見分けられました。専門医に匹敵する水準だといいます。
大腸がんで亡くなる人は、女性ではがんの中で最も多く、男性でも3番目。初期では自覚症状がほとんどなく、見付かった時には進行していることが多くなっています。がんになるポリープを切除すれば予防効果が高いものの、ポリープが微小だったり平たんや平らに近い形状だと、熟練の専門医でないと見落としてしまいやすいという課題がありました。
共同研究チームによると、大腸がんに進行するポリープの見落としを1%減らすことで3%の大腸がんを予防でき、開発したAIシステムによって医師による見落としを軽減できるといいます。
2018年12月24日(月)
■陣痛促進剤の説明文書、ウェブサイトで公開 製薬4社
お産の痛みを和らげる無痛分娩(ぶんべん)で使われることが多い陣痛促進剤(子宮収縮薬)について、販売元の製薬各社は21日までに、お産の最中におなかの痛みが急に強くなった場合はすぐに医師や助産師らに知らせることなど、使用上の注意をまとめた妊婦、家族向け説明文書を各社のウェブサイトで公開しました。
無痛分娩での事故に関心が高まる中、安全に関する情報を医療機関から妊婦側に確実に伝えてもらうため、厚生労働省が作成を求めていました。
公開したのは、オキシトシンやプロスタグランジンの製剤を販売する丸石製薬、富士製薬工業、科研製薬、あすか製薬。
2018年12月24日(月)
■視力1・0未満の割合が最悪、小学生34%・高校生67% 文科省調査
裸眼の視力が1・0未満の高校生の割合は3人に2人の67・09%に上り、過去最悪となったことが、文部科学省が21日公表した2018年度学校保健統計調査(速報値)で明らかになりました。小学生も過去最悪だった前年度からさらに増加し34・10%。一方、虫歯の割合は中高生で最も少なくなり、肥満傾向児の割合も長期的な減少傾向が続きました。
今回の調査は、全国の5~17歳の25・3%に当たる約342万人を対象に実施しました。文科省によると、視力1・0未満の割合は、幼稚園では4人に1人の26・69%、中学生で半数以上の56・04%となるなど、加齢により上昇。どの学校種でも統計を取り始めた1979年度以降、増加傾向が続いています。視力0・3未満の割合は、中学生で25・54%、高校生で39・13%に上りました。
文科省は、「スマートフォンの普及や携帯ゲームの人気などで、子供が近くで物を見る時間が増えていることが背景にあるのではないか」としています。
一方で、虫歯の割合は幼稚園や小中高校の全学校種で前年度より下がり、35・41%の中学生と45・36%の高校生は過去最低となりました。口腔(こうくう)ケアに対する意識の高まりや学校の保健指導の充実が要因といいます。
身長別標準体重から算出した肥満度が20%以上の肥満傾向児の出現率を学年別にみると、男子は高1の11・01%、女子は小6の8・79%が最も高くなりました。学年によって前年度からの増減はあるものの、総じて減少傾向が続いています。東日本大震災以降、運動不足などで肥満傾向児が増えた福島県も、目立った増加などはありませんでした。
今回の調査では、鼻腔(びくう)・副鼻腔疾患の小学生は13・04%、高校生は9・86%となり、これまでで最も多くなりました。耳疾患を持つ小中学生や、アトピー性皮膚炎の中高生もそれぞれ過去最多となり、文科省は「はっきりとした要因は不明だが、アレルギー体質の子供が増えている影響が考えられる」と分析しています。
2018年12月23日(日)
■がん治療薬「キイトルーダ」を全臓器に承認 一部の遺伝子異常に
免疫の力を使ってがんを攻撃できるようにするオプジーボと同様の作用をするMSD(東京都千代田区)のがん治療薬「キイトルーダ(一般名・ペムブロリズマブ)」について、厚生労働省は21日、遺伝子検査で薬が効くとわかれば、血液がんを除く成人のすべてのがんで使うことを正式に承認しました。
がん治療薬は、肺や胃、大腸など臓器の種類を基本に使用範囲が認められてきました。今回のような臓器にかかわらず、特定の遺伝子変異を原因とするがんの治療薬として承認されたのは初めてで、患者が少ない部位のがんでも、早く薬が使えるようになると期待されています。
今回の使用拡大は、がん細胞の遺伝子の修復にかかわる別の遺伝子に変異があるタイプ。このタイプの患者は、大腸がんでは6%おり、胃や前立腺などのがんでもよくみられるといいます。キイトルーダが使えるようになるのは、がん関連遺伝子を網羅的に調べる遺伝子検査でこのタイプとわかった患者のうち、進行・再発がんでほかに治療法がなくなった人に限られます。
キイトルーダは現在、悪性黒色腫や肺がん、ホジキンリンパ腫、尿路上皮がんのいずれも、一部に対し承認されています。肺がんの治療に使う場合、年間の薬剤費は約1200万円。免疫の力を使ってがんを攻撃できるようにする免疫チェックポイント阻害剤の一種で、一部の患者に高い効果がみられるものの、その割合は2割程度とされます。そのため、効果が事前に予測できる指標が求められてきました。
今回の指標は、がん細胞の遺伝子検査をして、傷付いた遺伝子がどの程度修復できるかをみる「マイクロサテライト不安定性(MSI)」。MSIが高いと修復機能が低く、キイトルーダの効果が高い可能性があるといいます。
細胞は、遺伝子の傷が積み重なって、がん化します。MSIが高いと遺伝子変異数も多く、腫瘍(しゅよう)の中に免疫にとってがんの目印になる物質も多く、免疫チェックポイント阻害剤が効きやすいとされます。
アメリカの研究では、MSIが高い患者にキイトルーダを使うと、がんが進行しない人も含めると7割以上の患者に効果があったといいます。MSIが高い患者は固形がん全体で約3%。子宮がんや大腸がん、胃がんに多いとされます。
国立がん研究センター東病院の吉野孝之医師(消化管内科)は、「臓器別ではないがん治療薬の開発が進んでいる。臓器別に治療方針を立てる時代から、臓器を超えて治療する新しいがん治療の幕開けになる」と話しています。
2018年12月23日(日)
■心不全の入院患者26万人、毎年1万人増 高齢化が影響
心不全で入院した国内の患者数が2016年は26万157人だったと、国立循環器病研究センター(大阪府吹田市)が19日発表しました。2012年の約21万3000人から、毎年1万人のペースで増え続けているといいます。
同センターは日本循環器学会と共同で、循環器の専門医がいる全国1353の施設を調査しています。循環器の病気で入院する患者のほぼすべてが含まれるといいます。
心不全は、全身に血液を送り出すポンプの働きをする心臓が、ポンプ機能を果たせなくなり、体に症状が現れた状態(病態)を指します。増加の主な原因は高齢化ですが、年齢別の人口比を基に調整し、高齢化の影響を差し引いても、心不全での入院はわずかだが増えているといい、団塊世代が後期高齢者(75歳以上)になると、患者はさらに急増すると推計されています。発症すると5年間で半数以上が亡くなり、大腸がんよりも予後が悪くなっています。
同センター循環器病統合情報センターの宮本恵宏センター長は、「急性心筋梗塞(こうそく)の治療態勢が進歩し、命を落とす患者が減ったが、心臓に後遺症を抱えて暮らす人が増えていることが心不全の増加につながっている」と分析しています。高血圧などが増え、40歳代などの比較的若年で心筋梗塞を起こす人が増えていることも要因といいます。
調査では、2016年の急性心筋梗塞での入院は7万3421人でした。
また、過去のデータも含めて抽出した心不全患者約11万人の性別、年齢を調べたところ、男性の平均年齢75歳に対し、女性は81歳で、女性の心不全患者はより高齢であることが明らかになりました。
2018年12月23日(日)
■iPS細胞を使った血小板、アメリカで治験 京都市のメガカリオン
京都に本社を置くベンチャーの「メガカリオン」がiPS細胞(人工多能性幹細胞)を用いて作った輸血用の血小板の実用化に向け、効果や安全性を確かめる臨床試験(治験)を年明けにもアメリカで始めることが22日、明らかになりました。アメリカで企業がiPS細胞由来の再生医療を治験するのは初めて。iPS細胞の再生医療への取り組みはこれまで、大学など研究機関が中心でしたが、企業も加わることで実用化が加速しそうです。
メガカリオンはiPS細胞から、血小板の元となる細胞を作って凍結保存しておきます。血液製剤が必要になった場合は解凍して増殖させ、血小板に変化させる技術を確立しています。アメリカで年明けにも始める治験は、再生不良性貧血などが対象で、拒絶反応が出にくい患者を対象に行う予定。
血小板は血液成分の一つで、けがや手術時の止血や、血小板が減少する血液の難病などの治療に使われます。現在は献血に頼った状況ですが、国内での保存期間は採血後からわずか4日と定められています。さらに少子高齢化による献血の減少で、将来的な供給不足も懸念されています。
メガカリオンは東京大学医科学研究所の中内啓光特任教授と京都大学iPS細胞研究所の江藤浩之教授の開発した技術を元に、実用化を目指してきました。同社の製法では、血小板になる前の段階で冷凍保存ができるため、必要に応じて血小板を大量に安定して生産できます。無菌状態で培養し、ウイルスや病原体の混入リスクも低いため、保存期間も数週間に延びるといいます。国内では、来年度中にも治験を開始する方針。
日本国内の市場規模は約700億円で、アメリカは3倍以上と推定されています。メガカリオンはアメリカでの治験を進め、国際的な普及を狙います。将来的には献血システムが整備されていないインドや東南アジアなど医療途上国に安定供給する考え。
一方、富士フイルムは20日、治療用のiPS細胞(人工多能性幹細胞)の生産施設をアメリカのウィスコンシン州に新設すると発表しました。投資額は約25億円。iPS細胞を使った再生医療製品の開発を加速させるのが狙いで、2019年度中に稼働させます。
富士フイルムは、日本国内でiPS細胞による移植医療の承認を国から得るための臨床試験(治験)を2018年度中に申請する方針で、アメリカでも治験の実施を計画しています。
生産施設はアメリカの子会社が設け、アメリカ当局の品質管理基準に対応した培養設備などを導入します。生産したiPS細胞により、パーキンソン病や心疾患、がんといった分野での再生医療製品の開発を急ぎます。他社からの生産受託も想定しています。
同じく傘下のジャパン・ティッシュ・エンジニアリング(愛知県蒲郡市)も皮膚や軟骨の再生医療製品の生産・販売を手掛けており、富士フイルムは再生医療事業の早期拡大を目指しています。
2018年12月22日(土)
■日本陸連、鉄剤注射を原則禁止へ 違反しても罰則なし
日本陸上競技連盟は20日、貧血対策に使われてきた「鉄剤注射」の不適切使用の根絶に向けた初の協議会を東京都内で開きました。最初の具体策として、来春までに鉄剤注射を原則として禁止にするガイドライン(指針)をまとめることを決めました。
中学、高校、大学、実業団の団体幹部らが出席して、意見交換しました。鉄剤注射は重篤な貧血に対する医療行為で認められていますが、血液中で酸素を運ぶヘモグロビンを増やすため持久力が上がる効果もあり、中高生年代の指導者や選手が競技力向上を目的に頻繁に使う例もありました。その影響で、鉄分の過剰摂取となり、肝臓などに機能障害を引き起こす懸念が高まっており、日本陸連の尾県貢専務理事は「鉄剤注射はドーピングに近い行為で、社会では認められない。全員から鉄剤注射根絶へ強い同意を得た」と話しました。指針では、医師が医学的見地から必要と判断した鉄剤注射は認めるものの、指導者や選手、親らが希望した場合は禁止とします。日本陸連の山沢文裕医事委員長は、「監督の依頼で血液検査せずに鉄剤注射していた医師がいた可能性がある」とも指摘。日本陸連は医師との連携強化も図るため、今年度内に各都道府県協会の医事担当者を集める臨時会議を開き、各地の医師に鉄剤注射の適切な使用の啓発に努めます。貧血や鉄剤注射につながる食事制限や過剰な練習なども含め指導者が注意すべき情報も伝えます。
来年の全国高校駅伝から、血液検査結果の提出を検討することを確認しました。ただし、個人情報の取り扱いなど課題もあるため、鉄剤注射の有無や使用理由などを出場チームが文書で提出する方法も含めて調整します。実態把握が目的で、違反した際の罰則などの規定は想定していません。
日本学生陸上競技連合は急ぎ、29日に開かれる全日本大学女子選抜駅伝の開会式後に、出場選手らに鉄剤注射の危険性を説明する講習を行うことを決めました。同連合の永井純専務理事は、「選手自身が知ることが重要。単発でなく、継続していきたい」と話しました。
国立スポーツ科学センターの蒲原一之医師は、「鉄剤注射の根絶を指導者や医師の良識に任せるだけでは効果がない。非常に強硬的な手段だが、全国高校駅伝以外でも、幅広く血液検査結果の提出を義務化していくことが抑止力になる」と話しています。
2018年12月22日(土)
■アトピー性皮膚炎、中高生が過去最多で幼稚園児は過去最少 文科省調査
アトピー性皮膚炎を発症している中高生の割合が過去最多となったことが、文部科学省が21日公表した2018年度学校保健統計調査(速報値)で明らかになりました。一方、幼稚園児は過去最少で、文科省は「幼少時に清潔な環境で育ち、免疫を獲得できずにアレルギー疾患となる子供が増えている可能性がある」と指摘しました。
調査は4~6月、全国の国公私立の幼稚園や小中高などの児童・生徒を対象に実施。全体の25%に当たる約342万人を抽出して、健康状態を確認しました。
アトピー性皮膚炎の発症者は中学校2・85%、高校2・58%で、いずれも過去最多となりました。小学校は最も割合が高く、前年度比0・14ポイント増の3・40%でした。一方、幼稚園は2・04%で、過去最少となりました。
文科省の担当者は、「はっきりした要因は不明」としつつも、専門家の意見として「抗菌、除菌グッズが増え、子育て環境は清潔になっている。こうした環境で育った子供は免疫を十分獲得できず、成長過程でアレルギー体質になりやすいといわれる」と説明。幼稚園児のアトピー性皮膚炎が減っていることについては、「保護者に保湿などスキンケアの意識が広がったためではないか」と指摘しました。
アレルギー体質の子供は耳や鼻の疾患にもなりやすいとされ、今回の調査では耳疾患が小学校と中学校で、鼻腔(びくう)・副鼻腔疾患が小学校と高校で過去最多となりました。
2018年12月22日(土)
■スマホ、ゲーム3時間超で、体力は平均以下の子供急増 スポーツ庁調査
スマートフォンなどで映像を平日1日当たり3時間以上視聴している児童や生徒が昨年度から急増し、その児童らの体力は全国平均値よりも低いことが、スポーツ庁が20日に公表した2018年度の「全国体力・運動能力、運動習慣等調査(全国体力テスト)」で明らかになりました。
調査は今年4~7月、全国の小学5年生と中学2年生約206万人を対象に実施。質問紙による生活習慣などの回答に加え、小学生は握力や反復横跳び、50メートル走など8項目、中学生は男子1500メートル、女子1000メートルの持久走または20メートルシャトルランの選択を含めた8項目を点数化し、体力合計点(80点満点)を算出しました。
スマートフォンやパソコン、テレビ、ゲームなどの映像を平日に見ている時間を尋ねた質問では、1日当たり「3時間以上」と答えた割合が、小5男女と中2男女のいずれも昨年度から大幅に増加。特に小5男子は32・8%から38・1%、中2男子は31・5%から35・7%と急増しました。3時間以上視聴している児童・生徒は、体力合計点が全国平均値を下回りました。
小5男女はいずれも最も視聴時間が短い「1時間未満」で体力合計点が最も高くなり、中2男女は「1〜2時間」で体力合計点が最も高くなりました。視聴時間が長くなると体力合計点が低下する傾向にあり、最も長い「5時間以上」は小中の男女すべてで最も低くなりました。
調査を担当した西嶋尚彦・筑波大教授は、「視聴時間が増加すると外遊びの時間が減るだけでなく、姿勢や目が悪くなるなどの影響もある」と指摘しています。
2018年12月22日(土)
■脊髄損傷治療に幹細胞、製造販売を了承 厚労省の薬事分科会
厚生労働省の薬事分科会は20日、札幌医科大学と医療機器大手のニプロが開発した脊髄損傷の再生医療製品の製造販売を条件付きで了承しました。患者の骨髄から取り出した幹細胞を増やし、点滴で体内に戻します。
厚労相が正式に承認すれば、細胞を使って脊髄損傷の症状改善を目指す初の再生医療製品が2019年にも実用化される見通しです。
製造販売が了承されたのは細胞製剤の「ステミラック注」。まず脊髄を損傷して1カ月以内に骨髄を採取し、神経や軟骨などに変わる「間葉系幹細胞」を取り出します。5000万~2億個ほどに増やした上で、製剤にして1回の点滴で患者の体内に戻します。
間葉系幹細胞が分泌する物質が神経細胞などを活性化させると期待します。患者自らの細胞を使うので、免疫抑制剤がいりません。臨床試験(治験)では、間葉系幹細胞を投与した13人のうち12人で症状が改善しました。
人数が少ないため、今後7年以内に改めて有効性や安全性を確認するという条件を付けました。期間中に患者90人に間葉系幹細胞を投与し、リハビリをします。リハビリだけをした患者179人より回復が進めば、製造販売を続けられます。
国内で10万人以上の患者がいるとされる脊髄損傷はリハビリ以外に有効な治療法がない中、損傷からさほど期間がたたない患者に細胞を使い、治療を試みる再生医療の実用化が見えつつあります。
慶応大学は他人のiPS細胞(人工多能性幹細胞)から神経の元になる細胞を作り、脊髄の損傷部に移植する臨床研究を計画しています。今月17日付で厚労省に申請し、認められれば来年夏にも研究が始まります。
2018年12月21日(金)
■iPS細胞で脊髄損傷の機能回復目指す 慶応大が臨床研究を申請
iPS細胞(人工多能性幹細胞)から神経の元になる細胞を作り、脊髄損傷の患者に移植する臨床研究について、慶応大学の岡野栄之(ひでゆき)教授らの研究チームは厚生労働省に計画の承認を申請しました。慶応大が18日、発表しました。認められれば来年にも移植を行うとみられ、iPS細胞を使った世界初の脊髄損傷の臨床研究となる見通しです。
研究チームは昨年2月、学内の審査委員会に実施計画を申請し、11月27日に了承されていました。厚労省への申請は今月17日に行いました。
脊髄損傷は交通事故やスポーツ中のけがなどで脊髄が損傷し、脳と体をつなぐ神経が傷付き手足のまひなどが起きます。計画では、脊髄を損傷してから2~4週間以内で、運動機能や感覚を失った重度の成人患者を対象に、治療の安全性と有効性を確認します。
京都大学が備蓄している拒絶反応が起きにくい免疫タイプの健常者の血液から作ったiPS細胞を使って、慶応大が神経細胞の元になる細胞を作製。患部に細胞約200万個を移植して新たな神経細胞を形成、神経信号の途絶を修復して運動機能や感覚を回復させることを目指すます。
研究チームは重度の脊髄損傷を起こしたサルで実験し、後脚で立ち上がり、握力を回復させることに成功。iPS細胞を使った移植はがん化が懸念されますが、マウスの実験でがん化しないことも確認しました。
国内の脊髄損傷患者は年間約5000人で、重度の場合は車椅子生活を強いられます。有効な治療法はなく、新たな治療法の開発に大きな期待が寄せられています。
2018年12月21日(金)
■学校や病院の屋内全面禁煙、来年7月から フロア全体を喫煙室と認める案も浮上
厚生労働省は18日、学校や病院、行政機関の庁舎などの屋内全面禁煙の施行日について、2019年7月1日とする方針を決めました。自民党の厚生労働部会に提示し、了承されました。
2019年9月開幕のラグビーワールドカップ(W杯)に間に合わせる狙いがあるといいます。受動喫煙対策を強化する改正健康増進法は当初、2019年夏ごろに施行する予定でしたが、施行日は未定でした。
来年7月以降は、受動喫煙の影響が大きい20歳未満の人や病気の患者、妊婦らが利用する学校や病院、行政機関が屋内全面禁煙となります。薬局や介護施設、整骨院などの施術所、児童福祉施設なども対象となります。敷地内の屋外に喫煙所を設置することは認める一方、屋内の喫煙所は施行日までに撤去しなければなりません。
改正健康増進法が全面施行されるのは、東京オリンピック・パラリンピックが開催される前の2020年4月以降。多くの人が利用する飲食店や事務所、鉄道、ホテルのロビーなどは、原則として屋内禁煙となります。たばこの煙が外に漏れないよう対策をした喫煙専用室の設置は認めるものの、20歳未満の立ち入りや飲食は禁止します。
加熱式たばこについては、飲食可能な専用喫煙室の設置が可能。客席面積が100平方メートル以下の小規模な飲食店は、紙巻きたばこの喫煙可とすることも選択できます。
厚労省の専門家委員会は現在、喫煙専用室と認める設置基準を検討中。階数が複数ある店舗では、2階以上のフロア全体を喫煙室と認める案も浮上しています。密閉された喫煙専用室をつくる必要がなくなり、煙が少ない加熱式たばこであれば吸いながら飲食もできるようになります。店側は歓迎する方向ですが、受動喫煙が完全に防げるか、一部団体からは批判があります。
2018年12月20日(木)
■外国人介護人材、事業所ごとに上限を設け訪問介護は除外 政府方針
外国人就労の拡大に向けて来年4月に導入される新在留資格を巡り、業種ごとの指針を記した分野別運用方針案の全容が18日、判明しました。
特定技能1号の対象14業種のうち、最多の受け入れを予定する介護業は事業所ごとの採用人数に上限を設定。事実上の永住が可能な特定技能2号の受け入れを予定する2業種は、いずれも指導的立場での実務経験を資格取得要件に加えました。
政府は運用方針と合わせ、業種横断的な基本方針と法務省令、外国人支援策をまとめた総合的対応策の素案を与党に提示しており、25日にも閣議などで決定します。自民党は政府からの報告を聴取する衆院法務委員会の閉会中審査を来年1月23日に開く方向で、調整しています。
運用方針は、外国人労働者の受け入れ業種、2019年度から5年間の受け入れ見込み数、仕事の内容、雇用形態、どの程度の日本語レベルを求めるかなどを盛り込みます。政府の素案は受け入れ業種の数を14、受け入れ見込み数を5年間で最大34万5150人としました。
運用方針案と付属文書によると、最大6万人を受け入れる介護業の事業者が特定技能1号の外国人を採用する場合、事業所ごとに採用に上限を設け、常勤職員の総数を上回ってはなりません。日本人の雇用を守るのが狙いとみられます。特定技能1号の外国人には比較的簡単な技能や日本語能力しか求めないことから、高齢者施設での食事や入浴、排せつの介助など補助的業務に限り、訪問介護は対象外から外します。
経済連携協定(EPA)に基づき、高い技術や日本語能力を持つと認められた外国人の介護福祉士は即戦力とみなし、訪問介護ができます。仕事のすみ分けを行うことで、人材を有効活用します。
2018年12月19日(水)
■アスベストで肺がん、2017年度の労災認定など1054人 建設業554人、製造業405人
職場で吸い込んだアスベスト(石綿)で肺がんなどになったとして、昨年度に労災と認定されたり、遺族が補償を受けたりした人は、1000人余りに上りました。
厚生労働省によりますと、職場で吸い込んだアスベストが原因で肺がんや中皮腫などになったとして、2017年度新たに労災と認定されたり、遺族が補償を受けたりした人は1054人となりました。
業種別では、アスベストが含まれる断熱材などを扱っていた影響で、建設業が最も多く554人、アスベストの製造工場を含む製造業が405人などとなっています。
健康被害が広く知られるようになった2005年度以降、毎年1000人前後が労災と認定されており、昨年度までで合わせて1万6700人を超えました。
アスベストによる健康被害は、30年から40年もの潜伏期間を経て現れるため、厚労省では労災認定された人が働いていた全国の事業所、延べ1万3000カ所余りの名称や住所をホームページで公表して、不安のある人は医療機関や労働基準監督署に相談するよう呼び掛けています。2017年度新たに労災と認定された人が働いていた879事業所(前年度から16減少)の名称や住所を公表、637事業所は新たに公表されました。
アスベストによる健康被害で労災認定を受けた人は、建設業や製造業に限らず、さまざまな業種に広がっています。
2016年4月、がんの一種の胸膜中皮腫で死亡した元劇団員の加藤大善さん(当時71歳)もその1人で、今年7月、労災と認定されました。加藤さんは1974年からおよそ6年間、東京都練馬区の劇団「東京芸術座」に所属し、公演先の学校の体育館などで照明や舞台の設置作業に当たっていました。この際、天井に吹き付けられたアスベストを吸い込んだとみられています。
劇団を辞めてからは、長年、別の仕事をして生活していましたが、2014年12月に胸膜中皮腫を発症しました。労働基準監督署は遺族の請求を認め、40年以上前の劇団員だった時の作業が原因だと認定しました。
妻のみはるさん(68歳)は「劇団の仕事が関係しているとは当初は考えてもいなかったし、こんなことで命が奪われるのは悔しい。アスベストの問題は誰にでも起きることだと多くの人に知ってほしい」と話していました。
労災の申請に協力した元所属先の劇団は、「当時は私達もアスベストがどういうものかわからなかった。今も学校などでアスベストは使われているので、新たな被害が出ないように国は対策を図るとともに、埋もれている被害者を掘り起こして救済してほしい」とコメントしています。
被害者を支援している団体「中皮腫・アスベスト疾患・患者と家族の会」では、「まさか自分がという人が中皮腫を発症している。長い潜伏期間を経てから発症するため、当時の記憶もあいまいになりがちだが、ささいなことでも相談してほしい」と呼び掛けています。
団体では、20日と21日にアスベストの健康被害に関する全国一斉の電話相談を行うことにしています。午前10時から午後7時までで、電話番号は0120・117・554。
厚労省も労災補償制度の相談に応じるため、20日と21日の午前10時~午後5時に電話相談窓口を設置します。問い合わせ先は03・3595・3402。各都道府県の労働局や労働基準監督署でも随時、相談を受け付けます。
2018年12月19日(水)
■妊婦加算、年明けに凍結へ 中医協が了承、導入9カ月で見直し
妊娠中の女性が医療機関を外来受診した際に初診料などに上乗せされる「妊婦加算」について、厚生労働大臣の諮問機関である中央社会保険医療協議会(中医協)は19日、来年1月から制度運用を凍結するとの厚労省方針を了承しました。1月1日以降、上乗せ分の医療機関への支払いも、妊婦からの徴収も停止します。今年4月の導入から約9カ月で見直すことになりました。
妊婦加算で、妊婦の自己負担(原則3割)は初診で約230円、再診で約110円増えます。コンタクトレンズの処方といった妊娠と関係のない診療にも加算されることに、世論や与党の批判が集中。根本匠厚労相が14日、凍結の方針を表明しました。
中医協は19日に取りまとめた答申書で、「制度の趣旨と内容が国民に十分に理解されず、妊婦や家族に誤解と不安を与え、凍結に至ったことは誠に遺憾」と指摘しました。また、「必要な調査、検証が行われないまま凍結と諮問されたことは極めて異例といわざるを得ない」と厚労省の対応に苦言を呈しました。
委員からは、「妊婦加算については(導入前に)十分な議論が行われなかったのも事実」「患者目線が欠けている」などと反省の声も上がりました。
妊婦の診療は薬の処方などで特別な配慮が必要になり、医療機関に敬遠されることがあります。これを防ぐため、妊婦加算は4月の診療報酬改定で創設されました。厚労省は次の2020年度診療報酬改定で、制度自体の廃止を含む抜本的な見直しを検討することにしています。
2018年12月19日(水)
■糖尿病リスク予測ソフト、公開を再開へ 厚労省が「医療機器に該当せず」
国立国際医療研究センター(東京都新宿区)は19日にも、ホームページで、糖尿病の発症リスクを予測するソフトの公開を再開します。厚生労働省が「診断行為にかかわるもので、正規の承認手続きが必要な医療機器に該当するのでは」と指摘。10月25日から公開中止を続けていましたが、内容を精査した同省は「問題ない」と結論付けました。
公開が中止されていたのは、30~59歳のこれまで糖尿病と診断されたことのない人が身長、体重、腹囲、最高・最低血圧、喫煙習慣などのデータを入力すると、糖尿病の3年以内の発症リスクが予測できるソフト。企業の健康診断で得た約3万人のデータを基に、人工知能(AI)を活用して開発しました。発症リスクは「%」で示され、「あなたへのアドバイス」として「糖尿病予備軍(境界型糖尿病)に該当」などと表示されます。
医薬品医療機器法では、診断や治療、予防を目的としたソフトも医療機器として扱われます。厚労省は、公開中止後、発症リスクを判定する際の根拠や仕組みについて検討。その結果、予測は単に統計データに基づくもので診断行為には当たらないと判断しました。
厚労省監視指導・麻薬対策課は、「国の機関であり、慎重に対応した。医療機器に該当するかどうかは難しい判断だった」と釈明しています。
2018年12月19日(水)
■着床前検査、流産率は改善 産科婦人科学会の臨床研究
体外受精した受精卵の全染色体を検査し、異常のないものだけを母胎に戻す「着床前検査」を巡り、日本産科婦人科学会は16日、昨年2月から続ける臨床研究の中間結果を東京都内で開いたシンポジウムで発表しました。来年、参加人数や施設を増やした臨床研究の本格実施移行を検討する方針を明らかにしましたが、有効性の根拠となるデータは十分には示されませんでした。
着床前検査は、染色体異常によるダウン症などの受精卵段階での排除につながる懸念から「命の選別」との批判があり、日本産科婦人科学会はこれまで指針で禁止し、国内で実施する一部の民間クリニックを処分してきました。しかし、流産の防止に海外で使われており、日本人での効果を調べる臨床研究に踏み切りました。対象は35~42歳で、体外受精で3回以上妊娠しなかった女性と、流産を2回以上した女性計85人。データがある77人のうち38人が染色体異常のない受精卵を子宮に移植でき、27人が妊娠、3人が流産しました。流産率は11%で、不妊治療経験者の29%(日本産科婦人科学会の統計)と比べ「改善された」との見解を示しました。
しかし、臨床研究が遅れ、比較すべき対象である検査しなかった人のデータや、本来の研究目的である出産率のデータは今後示すとしました。
今回は予備研究の位置付けで、苛原(いらはら)稔・倫理委員長(徳島大教授)は、「一般診療には程遠いが、臨床研究の形で日本への導入の仕方を検討したい。来年3月ごろにステージを変えたい」と述べました。
2018年12月18日(火)
■iPS細胞備蓄事業、外部組織に移管 京大方針、公益財団法人に
人のiPS細胞(人工多能性幹細胞)を病気やけがで失われた体の機能を補う再生医療用に備蓄し、研究機関に提供する京都大学iPS細胞研究所の「ストック事業」について、事業を公益財団法人などの外部組織に移管する方針を固めたことが18日、明らかになりました。
関係者によると、新たな知見を求める基礎研究と、高品質のiPS細胞をあらかじめ大量に作製して備蓄するストック事業では、作業面などで求められる設備や人材、運用が異なります。このため研究や教育に主眼を置く大学で両立するのは困難と判断し、事業を外部組織に移管する方向で国と調整します。
京大は20日に開かれる文部科学省の専門部会でこうした方針を説明、専門部会は来夏までに事業の在り方についてまとめる予定。
ストック事業は文科省の再生医療に関するプログラムの一環として2013年度に開始し、大半を国費で賄ってきました。外部組織に移管し、寄付や備蓄細胞の販売収入などで安定的に事業を継続できる体制を目指します。
2018年12月18日(火)
■接骨、鍼灸などで不正広告が横行 厚労省、取り締まり強化へ
あんまマッサージ指圧師や鍼灸(しんきゅう)師らが従事する施術所で、法律で認められていない項目を掲示する不正広告が横行していることが、明らかになりました。患者への健康被害を防ぐため法律で厳しい広告制限がありますが、近年は無資格者が増えたり施術所間の競争が激化したりして、不正広告を生み出しています。厚生労働省は広告規制を見直した上で年内にも指針を作成し、適正広告との線引きを明示します。
接骨院で骨折や捻挫(ねんざ)などの施術に当たる柔道整復師やあんまマッサージ指圧師、鍼灸師は国家資格で、広告を掲示する場合、その内容は住所や氏名、業務の種類などに限定されています。違反すれば30万円以下の罰金を科す罰則もあります。
柔道整復師法などによると、「腰痛、肩凝り、骨折」など適応症や効果を示す広告は掲示できません。「交通事故専門」といった記載も同様で、料金の掲示も認められていません。「○○療院」「○○治療所」といった名称も、医療機関と誤認する恐れもあるため、使用することができません。
民間の健康保険組合などでつくる柔道整復師問題研究会が8月、東京都目黒区にある全145カ所の施術所の広告を調べたところ、適応症の記載が58%、料金表示が26%、「交通事故」取り扱いの記載は66%ありました。違法性がなかったのはわずか4カ所で、9項目に違反している施術所もありました。
不正広告が横行している背景には、マッサージ師などの数が増加したことによる過当競争があります。鍼灸師は1990年の約12万人から、2016年の約23万人へとおよそ2倍に増加。柔道整復師も同様に規制緩和されたことを受け、同時期にほぼ倍に膨れ上がっています。
さらに、街中にカイロプラクティック(整体術)やリフレクソロジー(足裏健康法)などの名目で無資格のマッサージ店が乱立。法規制がなく、広告は野放し状態になっており、さらに厳しい競争環境にさらされています。ウエブサイト上での不正広告も問題視されており、柔道整復師問題研究会が昨年、大阪市内の施術所のホームページを調べたところ、「割引券」で患者を誘引しながら、実際は保険適用されていた例もあったといいます。
厚労省によると、不正広告を発見した場合、保健所が行政指導をしているものの、自治体からは「指導が追い付かない」との声が出ているといいます。広告を規制する法には、厚労相が指定すれば、広告ができる項目の範囲を広げる規定もあります。厚労省はこの規定を活用して指針で適正項目を明示し、現在は不正となっている項目を解禁することなどを検討しています。
国民生活センターによると、施術所の利用の切っ掛けは2012年の調査で、「広告」が3割と最多。無資格者による施術で症状悪化を訴える相談も相次ぎ、同センターは「広告で消費者に過度な期待を与えることがないよう改善を」と呼び掛けています。
指針は有識者の検討会で議論を経て、来年度に施行・周知し、厚労省は2020年度から取り締まりを強化したい考えです。
2018年12月18日(火)
■医師の勤務間休息9時間、当直明けは18時間 厚労省が義務付けへ
厚生労働省は17日、長時間労働が常態化している医師の働き方改革に関する有識者の検討会に、終業から次の始業までの休息時間(勤務間インターバル)として「9時間」を義務付ける方針を示しました。当直明けの場合は2倍の「18時間」とします。
すでに一般の労働者の上限を超えて医師に特別な残業時間を設定することを決めており、確実な休息を確保することで健康を守る狙いがあります。
厚労省の方針では、当直がない通常の日勤を9時間程度と予想し、終業からの休息は「9時間」に、最低限必要な睡眠として「6時間程度」を示しました。アメリカの事例を参考に、当直は28時間制限を導入した上で、当直明けに「18時間」の休息を義務付けます。
医師は、患者からの診療の求めを原則拒めない応召(おうしょう)義務などがあり、来春施行の働き方改革関連法による残業時間の上限規制の対象から5年間外れています。
勤務間インターバルは過労死防止に有効とされ、欧米で導入が進んでいますが、日本で義務付けられれば医師が初めてのケースとなります。ただ、この日の検討会では、医師の偏在がある地方で義務付けられれば、「地域医療が守れなくなる」と懸念の声も上がりました。
2018年12月17日(月)
■旭川医科大、8K画像の内視鏡使い手術 全国初の保険適用
スーパーハイビジョンの8K内視鏡を使った手術のシステムが北海道の旭川医科大学に導入され、17日、がんの手術が行われました。鮮明な画像の8K内視鏡を使った保険医療の態勢が整えられたのは、全国でも初めてだということです。
北海道旭川市にある旭川医科大学は、これまでの16倍の高精細の画像を見ながら手術をすることができる、スーパーハイビジョンの8K内視鏡を使った手術のシステムを導入しました。
保険が適用される対象として、このシステムが導入されたのは全国でも初めてで、17日、手術が行われました。医師たちは、体の中を鮮明に映したモニターの画像で、細かい神経や血管の位置を確認し、直腸がんを切除する手術を行いました。
旭川医科大学病院は、このシステムで、主に大腸がんや胃がんなどの手術を行うことにしています。
8KのKは「千」を表す「キロ」で、画面の横に並ぶ画素数が約8000、縦横の合計が3300万画素で、従来のハイビジョンの2K画像の16倍になります。視力で表せば4・27に相当し、8Kの解像度を持つ内視鏡は、微細な血管などを確認することができ、健常な細胞や神経を傷付けずにがんを切除するなど、より正確な手術が可能になるとして、複数の会社が開発を行っています。
システムを導入した旭川医科大学の角泰雄教授は、「より簡単に神経や血管が認識できるようになり、さらに安全で確実な手術ができると思う」と話していました。
2018年12月17日(月)
■日本たばこ産業の喫煙率調査、半世紀の歴史に幕 厚労省は「終了は残念」
日本たばこ産業(JT)は13日、54年間続けてきた国内の喫煙者率の調査を今年で終了すると発表しました。国の調査よりも長い歴史があり、大きな規模を有していました。始めた当初は男性喫煙率が8割を超えていましたが、最近は3割を切っていました。
「全国たばこ喫煙者率調査」は前身の日本専売公社だった1965年に始まり、住民基本台帳から無作為抽出した約3万人を対象に訪問や郵送で、毎年実施してきました。やめる理由について、JTは「個人情報保護の観点から住民基本台帳の閲覧を制限する事例があり、将来にわたり調査の信頼性を担保し続けることが困難になったほか、本調査にかかる負担も勘案した」としています。
厚生労働省の担当者は、「過去からのトレンドを追える貴重な資料なので、調査終了は残念だ」とコメントを寄せています。
調査によると、1965年は男性喫煙率82・3%、女性喫煙率15・7%で、1966年は男女計の喫煙率のピークの49・4%を記録し、男性に限れば83・7%に上っていました。その後は健康への意識が高まって徐々に低下。最後の調査となった2018年は男性27・8%、女性8・7%、男女計17・9%と、いずれも過去最低に減りました。
JTの調査が終了することで、毎年行う喫煙率調査は、厚労省が1986年から約6000人を対象に実施している「国民健康・栄養調査」だけになります。
一方、国の調査は1986年から、約6000人を対象に実施しています。
2018年12月16日(日)
■COP24、パリ協定の運用ルール採択 すべての国が温暖化対策へ
ポーランドのカトウィツェで開かれている第24回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP24)は15日深夜(日本時間16日早朝)、地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」の運用ルールを採択しました。先進国と途上国に大きな差を設けず、すべての国が対策に取り組むという協定の骨格は維持されました。詳細な運用ルールが決まったことで、パリ協定は2020年以降に実施されます。
パリ協定は、産業革命前に比べ世界の平均気温上昇を2度未満に抑えた上で、1・5度未満にすることを目指します。
運用ルールでは、温室効果ガスの削減目標や達成の道筋についての情報などを提出し、説明する義務をすべての国が負います。また、2024年末までに、削減の実施状況に関する最初の報告書を提出することなどが盛り込まれました。実施状況のチェックなど一部の項目で途上国に能力に応じた柔軟な対応を認めるものの、すべての国が共通ルールのもとに温室効果ガスの削減に取り組むことになります。
京都議定書など2020年までの仕組みでは、先進国のみに削減義務を課し、途上国には温室効果ガス排出の測定や情報提供についても義務がありませんでした。しかし、世界のエネルギー起源による二酸化炭素排出量は、2015年に中国が3割弱を占め最大になるなど、途上国の割合が増えています。パリ協定の運用ルールづくりでは、途上国側も含めた削減効果が高い仕組みにできるかが焦点でした。
ただ、国際的に協力して削減する温室効果ガスの排出量の取り扱いに関して、合意できず先送りされました。「市場メカニズム」と呼ばれる仕組みで、海外からの支援で排出削減をした際に、支援国と排出削減した国の双方に排出量を二重計上できるようにすべきだとブラジルが主張。それに対し他国は反対し、最後まで合意に至りませんでした。
パリ協定のもとに各国は2030年までの削減目標を掲げていますが、現状ではそれがすべて達成されたとしてもパリ協定の目標の「2度未満」に届きません。今世紀末の気温上昇は、約3度になると指摘されています。
COP24のもう一つの焦点は、パリ協定が始動する2020年までに各国が削減目標引き上げに取り組むことが合意文書に盛り込まれるか否かでした。結果的には、各国に対し削減目標の引き上げを明確に促す表現は盛り込まれませんでした。
また、削減目標の期間の設定など一部の項目については、来年以降に議論が先送りされました。来年のCOP25の議長国はチリに決まりました。
会議の議長を務めたポーランドのクリティカ環境副大臣は採択時の全体会合で、「合意により、パリ協定の開始を確保できる。人類のために一歩を踏み出すことができた」と意義を強調しました。
2018年12月16日(日)
■がん遺伝子検査、医療機器として初承認 来春にも保険適用
厚生労働省の専門家会議は13日、100種以上の遺伝子を一度に調べてがんの治療法を探る検査法について、医療機器として製造販売を初めて認めることを決めました。遺伝子を元に最適な治療法を選ぶ「がんゲノム医療」の中核となる技術で、約1カ月以内をめどに2種類の検査法を正式に承認します。2019年春にも公的保険の対象となる見通し。
承認されるのは、シスメックスと中外製薬の検査法。がんにかかわる114~324種類の遺伝子の変化を一括で調べます。がんは遺伝子の変化によって薬の効果が違う場合があり、患者ごとの最適な治療法の選択に役立ちます。
対象となるのは、胃がんや肺がんといった固形がんにかかり、最適な治療法である「標準治療」をして効果の出なかった患者。確立された治療法のない希少がんや小児がんなども対象になります。
厚労省の承認後、2社が公的保険の適用を新たに申請すれば、2019年春にも患者は国の保険で検査を受けられるようになります。副作用を抑えつつ効果が高い薬を選べ、患者の生存率の向上や予後の改善につながります。
これまでこうした検査は、保険診療との併用ができる「先進医療」として国立がん研究センターなど特定の病院で受けることはできました。ただ保険適用されないため、検査費の自己負担は数十万円になっています。
国はがんゲノム医療を推進しています。普及すれば一時的に医療費は上がるものの、患者を絞り込んで無駄な投薬を防げれば医療費削減につながります。
現状では、このような遺伝子検査で最適な治療薬が見付かるのは、患者の1割~2割程度といわれます。今後、日本人の遺伝子の変化と薬の効果に関するデータが集まれば、精度向上や役立つ事例が増えると期待されています。
2018年12月15日(土)
■ゲノム編集出産で国際基準作成へ WHOが専門委を新設
中国の研究者が遺伝子を効率よく改変できる「ゲノム編集」を施した受精卵から双子の女児を誕生させたと主張して国際的な問題となる中、世界保健機関(WHO)は研究を行う上での指針となる国際的な基準をつくる必要があるとして、専門の委員会を新たに設けることになりました。
中国・南方科技大学の賀建奎准教授は、ゲノム編集の技術で遺伝情報を書き換えて双子の女児が生まれたと主張しており、各国の研究者からは、事実とすれば安全性や生命倫理の点で問題があるという指摘が相次いでいます。
こうした事態を受けてWHOは14日、ゲノム編集の技術を人の細胞に用いる際の問題点を科学の面だけでなく、倫理や法律、それに社会的な影響といった面でも検討する専門の委員会を設置すると発表しました。
委員会のメンバーはまだ決まっていませんが、WHOは、検討の対象となる各分野で世界をリードする研究者や専門家を集めたいとしており、委員会がまとめる報告を国際的な基準づくりに生かしたいとしています。
WHOは、「研究を行う前にリスクなどが十分に検討される体制を整える必要がある」としており、アメリカなど各国の取り組みを参考にしながら基準づくりを進めていく方針です。
現在、受精卵にゲノム編集を施す基礎研究について、各国の規制はさまざまです。アメリカは、公的機関が受精卵の遺伝子を改変する研究に資金を投入することを法律で禁じています。臨床試験の申請を受けるアメリカ・食品医薬品局(FDA)が受精卵をゲノム編集する臨床試験を通さず、実施できません。イギリスでは、国の専門機関が厳しく審査しますが、過去に基礎研究が認められた例もあります。
法律で基礎研究から禁止する国もあり、ドイツは受精卵の遺伝情報を改変する研究をした者に対し、罰金などの罰則規定を設けています。フランスも法律で禁止しています。
また、遺伝子を改変した受精卵を母胎に戻す行為については、いずれの国でも禁止されています。
日本ではこれまで基礎研究や、それに伴って母胎に戻す行為のどちらも規制する指針がありませんでした。現在策定中の指針で、どちらも対応しようとしています。新指針では、生殖補助医療向けの基礎研究に限り認め、受精卵は受精後14日以内のものに限定し、動物の子宮や母胎に戻すことは禁止します。
2018年12月15日(土)
■インフルエンザが全国的な流行期に入る 厚生労働省が発表
全国でインフルエンザの患者が増えており、厚生労働省は14日、インフルエンザが全国的な流行期に入ったと発表しました。昨シーズンより2週間遅い流行期入りで、例年並みだということです。
厚労省によりますと、12月9日までの1週間に全国約5000の医療機関から報告されたインフルエンザの患者数は、前の週から約3800人増えて8400人余りとなりました。
この結果、1医療機関当たりの患者数は1・70人と、流行の目安とされる「1」を超えたため、厚労省はインフルエンザが全国的な流行期に入ったと発表しました。
都道府県別では、香川県が最も多く4・0人、北海道が3・96人、愛知県が3・43人、和歌山県が2・90人、鹿児島県が2・76人などとなっており、全国の43の都道府県で患者が前の週よりも増えました。
これまでに検出されたウイルスは、9年前に新型インフルエンザとして世界的に流行したH1N1型と呼ばれるタイプが全体の7割を占めていますが、今後、どのタイプが主流になるかはわからないということです。
厚労省は、手洗いの徹底のほか、せきやくしゃみが出る場合にはマスクの着用を心掛けるとともに、高齢者は予防接種をしてほしいとしています。
厚生労働省によりますと、インフルエンザワクチンは11月の時点で、過去5年間の平均の使用量よりもさらに100万本以上多い2720万本の供給が見込まれており、供給が遅れた昨年とは異なり、ワクチンは十分にあるとしています。
東京都板橋区にある板橋中央総合病院の粟屋幸一呼吸器病センター長は、予防の重要なポイントとして、ワクチンの接種、手洗い、そして「せきエチケット」の3つを挙げています。
ワクチンについては、インフルエンザの流行のピークが例年は来月なので、今月中に接種することが大切だとしています。また、手洗いについては、パソコンのキーボードやリモコン、それにドアノブなど手が触れる物を介して感染することがあるため、外出先から帰った時や、食事の前などこまめに手洗いをしてほしいと話しています。さらに、「せきエチケット」として、口と鼻をマスクで覆って、せきやくしゃみをする際に周囲にウイルスを拡散させないように注意してほしいとしています。
粟屋センター長は、「注意点を守ることで感染のリスクを下げることができるので、対策を徹底して流行期を乗り切ってほしい」と話しています。
2018年12月14日(金)
■医師の残業、医師不足地域は月100時間超容認へ 160時間案も浮上
厚生労働省は2024年4月から適用する医師の残業時間の上限規制について、医師不足の地域の病院などでは月100時間超を容認する方向で検討しています。月平均160時間(年1920時間)まで認める案も浮上しました。
地域医療の体制を維持するためとするものの、極度の長時間労働を認めることになり、今後の議論が難航するのは必至。
働き方改革法で、一般労働者には休日労働を除き年720時間の残業上限の適用が決まりました。ただ医師は診療を原則拒めない「応召義務」などがあり、働き方も特殊です。厚労省は医療関係者や労働組合などとの検討会で、医師の制度の検討を進めてきました。
厚労省はまず、一般の医師に適用する上限を設ける意向で、休日労働込みで月平均80時間(年960時間)とする案があります。その上で地域医療の確保に欠かせない病院の医師や、研修医など技能向上が必要な医師向けに、さらに緩い上限をそれぞれ設定します。
このうち地域医療を担う医師への上限は、月100時間超とする方向。病院の勤務医のうち残業が月平均160時間(年1920時間)超は約1割おり、厚労省内にはこのラインを上限とする案があります。単月160時間の残業は、うつ病など精神疾患で労災認定される基準とも重なります。
この残業上限が適用される医師には、終業から次の始業まで一定の休息を確保する「勤務間インターバル制度」などを義務付け、将来は一般の医師と同じ上限時間に移行します。ただ一般労働者より大幅に長い残業を容認する案には、労働組合などから「規制の骨抜きで医師の長時間労働を防げない」という批判が上がっています。
厚生労働省は、来年3月末までに規制の内容をまとめることにしていますが、今後、議論が難航することも予想されます。
2018年12月14日(金)
■批判を受ける「妊婦加算」の見直しを検討 厚労省
妊娠中の女性が医療機関を外来で受診した際に請求される「妊婦加算」について、厚生労働省は13日、妊婦の自己負担をなくす方向で検討を始めました。「少子化対策に逆行する」「妊婦税だ」との批判が出ており、制度の廃止に向け、抜本的な見直しを行う方針。ただ同制度は、リスクを恐れて妊婦の診療を医療機関が敬遠しないよう促す狙いもあり、廃止する場合は代替策を検討します。
妊婦加算は、妊婦の外来の受診に当たって、胎児への影響を考慮した薬を処方するなど「丁寧な診療への評価」を目的として、今年4月の診療報酬改定で導入されました。初診で自己負担が3割の場合、230円程度負担が増えます。ところが、周知不足で制度自体を知らない女性も少なくありませんでした。支払い時に初めて自己負担の発生を知る人もいるなど、インターネットを中心に不満や不信感を訴える女性が続出しました。
制度を巡っては、不適切な運用も問題視されていました。投薬を伴わないコンタクトレンズの処方など、妊娠と直接関係のない場合、加算は特に批判を集めました。中には、「医師が妊婦であることを確認しなかったのに、加算された」といったケースもあったといいます。
13日に開かれた自民党厚生労働部会では、「妊婦の自己負担は廃止すべきだ」との意見が相次ぎました。会合後、小泉進次郎部会長は「妊婦をみんなで支えていくメッセージが逆行した形で届き続けることがないように対応していきたい。妊婦の自己負担の発生を断たなければ、国民の理解は得られない。知恵を出して時間をかけずに厚生労働省と調整したい」と述べました。
一方、厚労省はこうした批判を受け、11月から制度の趣旨や加算額などを記したリーフレットの配布を開始。制度は当面、段階を踏んで見直しを検討していく方針です。
まず、コンタクトレンズの処方など妊娠と直接関係ない場合にも加算が適用されている事例を制度から除外するなど運用を厳格化。診察時に医師が妊婦であると判断しなかった場合、算定できないことも改めて明確化します。
加えて、妊婦加算で自己負担が増えない措置を検討。当面は予算措置で、上乗せ部分が「負担ゼロ」となるような手当てを講じるとみられます。
2018年12月13日(木)
■東京都がインフル流行開始を発表 昨シーズンより2週間遅れ
東京都内でインフルエンザの患者が増えていることから、東京都は13日、インフルエンザの流行が始まったと発表しました。流行の開始は昨シーズンより2週間遅いということですが、東京都はこまめな手洗いなど対策の徹底を呼び掛けています。
東京都によりますと、12月9日までの1週間で都内419の医療機関から報告されたインフルエンザの患者は、1つの医療機関当たりで1・57人になりました。
東京都は、流行の開始の目安となる「1人」を超えたとして、13日、東京都内でインフルエンザの流行が始まったと発表しました。流行の開始は昨シーズンと比べて2週間遅いということです。
東京都内では、すでに学校や福祉施設などでインフルエンザとみられる集団感染が合わせて108件報告され、83の幼稚園や小中学校で学級閉鎖などが行われたということです。
インフルエンザは、例年12月から3月にかけて流行しており、東京都はこまめな手洗いやせきなどの症状がある場合のマスクの着用など、対策の徹底を呼び掛けています。
このほか、関東の各県では、神奈川県、千葉県、埼玉県、茨城県が13日までにインフルエンザの流行期に入ったと発表しています。
2018年12月13日(木)
■風疹ワクチン「足りない」が3割に上る 医師などの団体が医療機関を調査
流行が続く風疹について、予防接種のワクチンが「足りない」という医療機関が3割あまりに上っていることが、医師などの団体が行った調査でわかりました。厚生労働省は、予防接種を受ける前にまずは十分な免疫があるかを調べる抗体検査を受け、免疫がないことがわかった場合にワクチンを接種するよう呼び掛けています。
風疹は妊婦が感染すると赤ちゃんに障害が出る恐れがありますが、今年の患者数は2400人を超えています。
こうした中、医師などで作る団体「東京保険医協会」は風疹の予防接種の現状などについて、11月にアンケート調査を行い、東京都内の851の医療機関から回答を得ました。
それによりますと、「ワクチンが足りない」と答えた医療機関は3割あまりに上りました。また、予防接種を希望する人への対応を尋ねたところ、「ふだん診察している患者を優先し新規の人は断っている」、「大人は見合わせている」、「全く対応できていない」など約3割の医療機関で何らかの問題が生じているということです。
このため団体は、厚労省に対してワクチンがどれくらい不足しているのか現状を詳しく把握し、対策を取ることを求めています。
厚労省は、流行の中心となっている39歳から56歳までの男性について、来年から予防接種を原則無料とする方針ですが、まずは免疫があるかを調べる抗体検査を受けて、免疫が不十分だった場合に予防接種を受けるよう呼び掛けています。
2018年12月13日(木)
■血液から病気を早期発見 島津製作所が実用化へ
島津製作所は血液から高血圧やがんなどのさまざまな病気を診断する先端医療技術を実用化します。血液の分析は主力の分析機器「質量分析計」の技術を応用し、分析機器で国内最大手の同社はコアとする質量分析技術の新分野への用途開拓を進めます。有望分野として先端医療に着目、次代の成長につなげます。
血液から高血圧症の一種「原発性アルドステロン症」を診断するシステムを開発し、2019年の販売開始を目指します。患者数が国内に400万人とされる病気で、副腎から分泌されるアルドステロンというホルモンのバランスが崩れることで生じます。発症すると、動脈硬化や脳梗塞、心筋梗塞のリスクが高まります。
同社は国民の3人に1人が悩む高血圧症に着目。原発性アルドステロン症の研究で先行する東北大学と共同で、採血した血液中のアルドステロンの量を計測することで、1時間程度での確定診断を可能にしました。従来は院外の検査機関に血液を送って分析する必要があり、3日~1週間ほどかかっていました。治療方針の決定などを大幅に短縮できます。販売価格は未定で、主に医療現場に売り込みます。
ほかにも質量分析計の技術を応用して血液を解析し、病気を発見したり創薬につなげたりする事業に注力します。血液中のアミノ酸の量などから9割以上の確度で大腸がんを早期発見できる技術を京都市内の医療機関で試験導入。検便して疑いがあれば精密検査をする従来の手法に比べて、がん検診を簡易にできます。国立がん研究センターや神戸大学と共同で技術を確立し、2019年4月の実用化を目指します。受診料は1回当たり2万~3万円を想定しています。
8月には、わずかな血液からアルツハイマー病の原因物質の量を測定する受託解析も、製薬メーカーや研究機関向けに始めました。ノーベル賞を受賞した田中耕一シニアフェローの技術成果を使います。根本的な治療薬が開発されておらず、創薬に必要な血液中の原因物質の量を測定するニーズが高いと判断しました。
血液からさまざまな病気を早期発見するノウハウは、主に大学や企業の研究現場で使用される質量分析計の技術を応用しました。同社は連結売上高(2018年3月期で3765億円)の約6割を質量分析計を含めた分析機器で稼ぎます。液体、気体、固体のさまざまな物質の中に含まれる特定の成分の種類や質量を細密に計測できる総合力が強み。分析が難しいタンパク質の量を微細に計測できるようにした田中シニアフェローの技術など計測法のアプローチも豊富に有しています。
この強みを生かし、上田輝久社長は、「当社が提供する一連のサービスを活用すればがんや認知症などさまざまな病気を早期発見できる体制を構築したい」と語っています。上田社長は2015年の就任後、先端医療分野を成長エンジンに位置付け、2020年3月期までに先端医療分野の売上高を2017年3月期から倍の200億円に増やす目標を掲げます。分析機器というハードの販売だけではなく、受託解析などのサービスを提供するビジネスモデルの構築も目指します。
調査会社のシード・プランニング(東京都文京区)によると、質量分析技術などを活用した次世代の診断、検査の世界市場規模は2025年に132億ドル(約1兆5000億円)と2016年からの10年間で3・6倍になると試算。現状は未成熟の市場で、日立製作所や東レ、NECなどが尿や血液、内視鏡の映像などさまざまなアプローチからがんを早期発見する手法を開発中です。島津製作所は質量分析計で培った「みつける」「測る」技術を強みに開発競争で先行したい考えです。
2018年12月12日(水)
■新型出生前診断、認定外施設の実施が最大6900件 トラブルも39件
妊婦の血液から胎児の先天的な病気を調べる新型出生前診断(NIPT)を学会の認定なく行う医療機関が全国で15施設に増え、直近の半年の検査件数は最大約6900件(推計)とする調査結果を、認定85施設でつくる団体がまとめました。
直近の半年に認定85施設が行った検査約6800件(推計)に匹敵し、認定外施設による新型出生前診断が急速に広がる実態が明らかになりました。
新型出生前診断は人工妊娠中絶につながりやすく、認定施設では、検査の特徴や結果に関する遺伝カウンセリング、心理的なケアなどを丁寧に行います。しかし、認定外施設は体制が不十分で、妊婦を守る観点で問題があると指摘されています。
認定施設の団体「NIPTコンソーシアム」が11月、認定外施設に対し、聞き取りを行ったり、公表資料を分析したりしました。認定外施設から検査業務を請け負う会社にも調査しました。その結果、施設は2016年秋に初めて確認されてから15カ所に増え、検査件数は今年7~12月で計5500~6900件と見積もりました。
認定施設に対しても、認定外施設の検査でトラブルに遭った妊婦を受け入れた事例を調査したところ、44施設から39件のトラブルが報告されました。具体的には「染色体異常の疑い」との検査結果が郵送され、妊婦が内容について電話で問い合わせると、インターネットで調べるよういわれたなどのケースがありました。
新型出生前診断は、妊婦の血液に含まれる胎児のDNAを調べて、染色体異常で起きるダウン症など先天的な病気の可能性を判断します。実施に法規制はないものの、日本産科婦人科学会が定めた指針は、検査対象について、原則35歳以上の妊婦で、ダウン症、エドワーズ症候群、パトー症候群の3種類の病気に限るよう求めています。日本医学会は、指針順守の体制が整った医療機関として、全国で92施設を認定しています。
2018年12月12日(水)
■廃棄プラスチックを炭素化し再利用 龍谷大と企業が新技術を確立
廃棄プラスチックを炭素化し、エアコンのフィルターや壁紙へ応用することに成功したと、龍谷大学と炭素素材製品の研究開発を行う大木工藝(大津市)が発表しました。プラスチックごみによる海洋汚染などの問題が深刻化する中、プラスチックごみの新たな活用策として期待されます。
ペットボトルのみから活性炭を作り出す技術はすでに実用化されていますが、今回はペットボトルだけでなくプラスチックや樹脂も含む廃棄プラスチックから炭や活性炭を作り出し、再利用する手法を確立しました。
プラスチックは炭素や水素、添加物でできていますが、水蒸気を当てることで炭素以外の物質を除去します。こうして作られた活性炭を消臭剤や融雪剤、建材の製造に使用できるようになりました。
また、壁紙や保冷車に使われる大木工藝の節電シートにこの活性炭を活用することで、熱伝導効率の向上やコストダウンにも成功。冷暖房効果を最大限に生かし、環境負荷を低減する節電シートの性能をより高めることにつながりました。
龍谷大理工学部物質化学科の青井芳史教授は、「廃棄物を付加価値の高い材料に変えて、新たな道をつくっていく」と話しています。
2018年12月12日(水)
■コンゴのエボラ出血熱、死者285人に 患者の3分の1は子供
国連児童基金(ユニセフ)は11日、アフリカ中部のコンゴ民主共和国(旧ザイール)で流行しているエボラ出血熱について、患者の3分の1が子供で、親を失うか隔離された子供は数百人に上ると発表しました。
同国保健省が9日に発表した最新のデータによると、同国東部の北キブ州ベニ周辺で今年8月1日に流行が宣言されて以降、これまでに少なくとも285人が死亡し、4万4000人近くが予防接種を受けました。
コンゴでのエボラ出血熱の流行は、同国で初めて確認された1976年以降で10度目。ユニセフとそのパートナーの調査によって、今回のエボラ流行で、400人以上の子供が親を失うか隔離されたことが明らかになったといいます。
ユニセフ西部・中部アフリカ地域事務所のマリー・ピエール・ポワリエ代表は、「エボラに罹患(りかん)したと確認された子供が増え続けていることを深く憂慮している」、「子供がエボラに感染した場合、専門の医療施設で治療を受けるのが早ければ早いほど、生存の可能性は高まる。地域の力の結集と、国民への啓発稼働も重要だ」と訴えました。
今回エボラ出血熱が流行しているのは、鉱物資源の産地として知られる地域で、中央政府の統治が及ばない中で多くの武装勢力が資源の利権を奪い合い、深刻な紛争が続いています。11月には同地のイスラム武装勢力「民主同盟軍」と国連の平和維持活動(PKO)部隊が衝突したため、医療関係者のエボラ出血熱への緊急対応活動が一時中断に追い込まれる事態も起きました。
エボラ出血熱は、感染した人間の血液や分泌物、嘔吐(おうと)物などに含まれるエボラウイルスが体内に侵入することで感染します。1976年に初めて感染が確認され、2014~16年の流行時には西アフリカのギニア、リベリア、シエラレオネの3カ国を中心に1万人以上が死亡しました。
2018年12月12日(水)
■強制不妊手術の救済法案、来年の通常国会で成立へ 与野党で一本化
旧優生保護法(1948~1996年)の下で障害のある人らに不妊手術が行われた問題で、与党ワーキングチーム(WT)と超党派議員連盟はそれぞれ10日の会合で、両者の協議で一本化した救済法案の全体像を了承しました。与野党は一本化した法案を来年の通常国会に提出する予定で、会期内に成立する見通し。旧優生保護法の成立から70年を経て、ようやく救済の道筋がつき始めました。
救済法案では、前文に「生殖を不能とする手術や放射線の照射を強いられ、心身に多大な苦痛を受けてきたことに対して、我々は、真摯(しんし)に反省し、心から深くおわびする」と明記。一部の障害者団体からは主語を「国は」にしてほしいとの要望がありましたが、「我々は」を維持しました。超党派議員連盟によると、「すべての人が反省しなければならない」との思いを込めたといいます。
また、旧優生保護法の違憲性を問う国家賠償請求訴訟への影響を避けるため、違憲性に直接触れる形とはしません。
救済法案では、手術の記録がない場合などを含めて幅広く救済するとしました。被害者本人の申請に基づいて、厚生労働省内に設置する医学、法学、障害者福祉に関する有識者で構成する第三者機関「認定審査会」(仮称)が被害認定を行い、認定されれば一律の一時金を支給。一時金の金額は、「諸外国の例を参考に引き続き検討」とし、来年の法案提出まで持ち越しました。
申請は法律施行日から5年以内に行わなければなりません。申請後に本人が死亡し、被害が認定された場合、遺族や相続人に支給。被害者手帳の更新時などを利用して救済制度の周知を図るものの、被害者本人への個別通知はしません
2018年12月12日(水)
■豚コレラ、新たにイノシシへの感染確認 岐阜県内、家畜で4例目
今年9月以降、ブタやイノシシへの豚(とん)コレラの感染が相次いでいる岐阜県で、新たに、関市にある施設でイノシシへの感染が確認されました。岐阜県内の施設で豚コレラの家畜への感染が確認されたのは4例目です。
岐阜県によりますと、関市にある民間のイノシシの飼育施設で9日、メス1頭が衰弱して死に、県が検査を行ったところ、10日朝、豚コレラに感染していたことがわかったということです。
飼育施設では死んだイノシシのほかに22頭が飼育されていて、県は感染拡大を防ぐため、10日午後7時すぎまでにすべてのイノシシの殺処分を終えました。県は、およそ550メートル離れた飼育施設の所有者の土地にイノシシを埋めることにしています。
飼育施設は、元々は野生のイノシシの猟に使う犬の訓練施設でしたが、現在、犬はおらず、飼育施設の所有者は県に対して「飼育しているのは数年前に持ち込まれるなどしたイノシシで、出荷したことはない」と話しているということです。
関市では、これまでに豚コレラに感染した野生のイノシシが10頭見付かっていて、この飼育施設は周囲を金網で囲い、電気柵を使うなどの対策を取っていたということです。
岐阜県にあるブタやイノシシの飼育施設で豚コレラの感染が確認されたのはこれで4例目で、県は防疫措置を進めるとともに感染の原因を調べることにしています。
関市にある飼育施設で、豚コレラへの感染が新たに確認されたことを受けて、岐阜県は、施設の近くに住む住民を対象に説明会を開きました。
説明会は飼育施設近くの公民館で開き、地域の住民20人余りが参加。この中で「中濃家畜保健衛生所」の溝口博史所長が、豚コレラは人に感染しないことや今後の殺処分など防疫措置のスケジュールを説明しました。
出席した住民から「イノシシを埋めることで地下水が汚染されないか」と質問が出ると、溝口所長は「国の基準に従ってブルーシートを使うなど、水が汚染されない方法で適切に処分する」などと答えていました。
説明会に参加した65歳の男性は「身近な場所で豚コレラが出て驚いている。イノシシを埋めた後、水や農作物に影響が出ないか心配です」と話していました。
岐阜県では、これまで合わせて3つの飼育施設で、ブタの豚コレラへの感染が確認されていました。
今年9月、岐阜市内の農場で国内では1992年以来26年ぶりの豚コレラの発生が確認され、岐阜県は、この農場のブタおよそ600頭を処分しました。
11月には、岐阜市の「岐阜市畜産センター公園」で、2例目の豚コレラの感染が確認され、ブタ20頭余りが処分されました。
そして12月5日には、岐阜県美濃加茂市にある岐阜県の研究施設「岐阜県畜産研究所」で3例目となる感染が確認され、およそ500頭のブタが処分されました。
また、岐阜県内では、これまでに野生のイノシシ70頭でも豚コレラが確認されるなど感染が拡大していて、県は23の市と町の一部で禁止していた猟を、12月20日から恵那市と下呂市それに白川町を加えた26の市と町の一部に広げることを決めました。
2018年12月12日(水)
■風疹の予防接種と抗体検査、来年から3年無料へ 39~56歳の男性対象
風疹の感染拡大を防ぐため、厚生労働省は11日、流行の中心となっている30歳代から50歳代の男性を対象に、来年からワクチンの予防接種と免疫の有無を調べる抗体検査を原則無料とすることを決めました。
風疹は妊婦が感染すると赤ちゃんに障害が出る恐れがありますが、今年の患者数は2400人を超えていて、特に、子供のころにワクチンの定期接種の機会がなかった1962年4月2日~1979年4月1日に生まれた39歳から56歳までの男性が流行の中心となっています。
このため、厚労省は、この世代の男性を対象に、来年からおよそ3年間、予防接種を原則無料とすることを決めました。
妊婦への感染を防ぐには、男性を含めたすべての人が十分な免疫を持つ必要がありますが、この世代の男性は5人に1人が十分な免疫を持っていないとみられています。
厚労省は、まずは、十分な免疫があるかを調べる抗体検査を受けてもらい、免疫がないことがわかった場合にワクチンを接種する方針で、抗体検査の費用についても原則無料とすることにしています。
厚労省は、東京オリンピック・パラリンピックが開催され海外から多くの人が訪れる2020年までに国内の風疹患者をゼロにする目標を掲げています。
風疹の流行が続く中、患者が多く出ている地域の産婦人科では、風疹の感染に不安を訴える妊婦が相次いでいます。
このうち、名古屋市天白区にある産婦人科のクリニックでは、風疹に感染していないかや、感染を防ぐ抗体が十分か、不安を訴えたり、相談したりする妊婦が相次いでいます。
このクリニックを訪れた30歳代の妊婦は、妊娠6週の時、職場で3時間ほど打ち合わせをした50歳代の同僚の男性が数日後、風疹を発症したことを知りました。
女性は妊娠前の検査で、すでに抗体があってワクチン接種の必要はないと判定されていましたが、患者の間近に長時間いたため、心配になって相談に訪れました。
風疹は、感染しても15%から30%は症状が出ないため、詳しい検査の結果が出て感染の可能性が極めて低いことがわかるまで、不安で仕方なかったということで、「私のせいで、赤ちゃんに重い障害が残ってしまうのではないかと不安で、眠ることもできなかった」と話していました。
このクリニックの産婦人科医、種村光代さんは、「不安を訴える妊婦さんが増えている。最近は、働く女性が増えているので、職場での感染に注意しなければならない。成人男性がワクチンを接種して流行をなくさないと、妊婦の不安はいつまでたっても消えない」と話しています。
予防接種を原則、無料とする対象が39歳から56歳までの働く世代のため、厚労省は、夜間や休日でも接種できるよう医療機関に協力を求めることにしています。
また、企業に対しては、職場で実施している定期的な健康診断で、十分な免疫があるかを調べる抗体検査を実施するよう、要請していくことにしています。
根本匠厚生労働大臣は閣議の後の記者会見で、「今回の新たな対策によって、2020年7月までに、現在、39歳から56歳までの男性の抗体保有率を85%以上に引き上げ、風疹の感染拡大を収束させる」と述べました。
その上で、「今後、同様の感染拡大が起こらないように対策をさらに進める。必要なワクチンを増産するほか、事務手続きに関するガイドラインを作成するなどして自治体を支援し、対策の普及・啓発を徹底していく。今年度中に速やかに追加対策を実施し、2021年度末までに、この世代の男性の抗体保有率を90%以上にまで引き上げることを目指す」と述べました。
風疹対策の強化を政府に求めてきた自民党の小泉進次郎厚生労働部会長は、「予防接種の原則無料化や、事業所などの健康診断で抗体検査が行われる体制が整備されることは、新たな1歩だ。アメリカが、妊娠中の女性に日本への渡航自粛を呼び掛けるなど、緊急の事態となっていることを踏まえ、スピード感を持って対応してもらった」と述べました。
2018年12月11日(火)
今年の国内の風疹患者は、12月2日までに合わせて2400人を超え、10年前に現在の形で統計を取り始めて以降、大流行した2013年に次ぐ2番目の多さとなりました。
全体の7割は首都圏の患者ですが、近畿地方や東海地方などでも増えており、国立感染症研究所は、妊娠前の女性や、流行の中心となっている30歳代から50歳代の男性などに、ワクチン接種を呼び掛けています。
風疹は発熱や発疹などの症状が出る感染症で、患者のせきやくしゃみを通じて広がり、妊娠中の女性が感染すると赤ちゃんの目や耳、それに心臓などに障害が出る先天性風疹症候群となる恐れがあります。
国立感染症研究所によりますと、12月2日までの1週間に報告された風疹の新たな患者は118人で、今年の国内の患者数は合わせて2454人となりました。
患者数は2012年を上回り、10年前に現在の方法で統計を取り始めて以降、大流行した2013年に次ぐ2番目の多さとなりました。
全体の患者の約7割は首都圏で報告されていますが、近畿地方や東海地方、福岡県など各地で出ています。
都道府県別では、東京都が前の週から27人増えて834人、神奈川県が23人増えて342人、千葉県が8人増えて334人、埼玉県が8人増えて166人、福岡県が17人増えて112人、愛知県が6人増えて110人、大阪府が6人増えて105人などとなっています。
また、患者のうち、男性は約2000人と女性の4倍余りになっていて、男性患者全体の8割を30歳代から50歳代が占めています。
国立感染症研究所は、女性は妊娠する前に2度、ワクチンを接種しておくほか、流行の中心となっている30歳代から50歳代の男性などにも抗体があるか検査を行った上で、ワクチンを接種するよう呼び掛けています。
2018年12月11日(火)
■臍帯血の取引規制改正法が成立 民間バンクの取引を原則禁止
出産時に採取され白血病治療などに使われる臍帯血(さいたいけつ)に関し、民間バンクなどによる取引を原則禁止する改正造血幹細胞移植推進法が、10日の衆院本会議で全会一致で可決、成立しました。改正法は参院先議の議員立法で、早ければ今年度内に施行されます。
改正法では、第三者への臍帯血移植を目的にした、民間バンクの臍帯血販売や取引だけでなく、採取や保存も認めません。また、第三者への臍帯血移植を目的にした他の民間業者の販売や仲介も禁じました。例外として、本人や血縁者間で移植するためのケースでは認めます。また、一連の行為について国の許可を受けた公的バンクやその委託先には認めます。
今後、民間バンクなどが違反した場合、3年以下の懲役か300万円以下の罰金が科されます。
2014年施行の造血幹細胞移植推進法は、白血病治療のために臍帯血や骨髄をあっせんする公的バンクの設置を許可制としました。だが、個人の臍帯血を有料保管する民間バンクが第三者の治療目的で提供することは想定せず、規制の対象外でした。
臍帯血は、母親と胎児をつなぐへその緒や胎盤にある血液。造血幹細胞が多く含まれ、白血病などの治療に使われます。他のさまざまな細胞になる幹細胞も含んでおり、別の病気の治療研究が進んでいます。
臍帯血移植を巡っては昨年、経営破綻した民間バンクから流出した臍帯血が、がん治療や美容のため第三者に投与されていたことが明らかになりました。国に無届けで行ったとして、販売業者や医師ら計6人が再生医療安全性確保法違反容疑で逮捕され、4人が有罪判決を受けました。
厚生労働省は事件後、民間バンクに届け出を求め、ホームページで保管実績や管理状況などを公開しています。12月10日時点で2社が届け出ています。
2018年12月11日(火)
■長く歩く人ほど認知症になりにくい 東北大が研究発表
1日に歩く時間が長い人ほど認知症になりにくいとの研究結果を、東北大学の研究チームが発表しました。
調査は、宮城県大崎市の65歳以上の住民1万3990人を対象に実施。1日の歩行時間で「30分未満」「30分~1時間」「1時間以上」の3グループに分け、2007年から約6年間にわたって、認知症になった人がいるかどうかを調べました。
その結果、「1時間以上」のグループで認知症になった人の割合は、「30分未満」のグループと比べて28%少なくなりました。「30分~1時間」のグループも「30分未満」のグループより19%少なくなり、歩行時間が長いと認知症になりにくい傾向がみられました。
これらを踏まえ、厚生労働省の「国民健康・栄養調査」のデータも活用し、歩く時間の長さと認知症のなりやすさの関係を試算。仮に「30分未満」「30分~1時間」のグループが歩行時間を延ばし、それぞれ1段階上のグループに移行すると、認知症になる割合を14%抑えられるとしました。
65歳以上のすべての人が1日1時間以上歩けば、日本全体で認知症になる割合を18%抑えられる計算になるといいます。
研究をとりまとめた東北大学講師の遠又靖丈さんは、「認知症を予防するため、高齢者に歩く時間を増やすように呼び掛ける意義は大きい」と話しています。
2018年12月11日(火)
■デジタル機器の長時間視聴、子供の脳に影響 アメリカで大規模調査
子供4500人の脳をスキャンする大規模な調査により、デジタル端末やビデオゲームなどの画面を長時間眺めている子供の脳にはそうでない子供と「異なるパターン」がみられることがわかったと、アメリカの国立衛生研究所の研究チームが明らかにしました。
アメリカCBSの報道番組「60ミニッツ」は国立衛生研究所が3億ドル(約340億円)かけて実施している研究を取り上げ、来年以降に公開予定だという初期データを紹介。それによると、デジタル端末などの機器を1日7時間以上使用している9~10歳の子供の脳では、知覚情報を処理している大脳皮質に尚早な委縮の兆候がみられました。
また、言語と論理的思考に関する試験をさせたところ、デジタル端末などの機器を1日2時間以上使用している子供は成績が低い傾向もみられたといいます。
同番組でインタビューを受けた国立衛生研究所のガヤ・ダウリング医師は、「画面を見ている時間が原因なのかどうかはわからない。また悪影響なのかどうかもまだわからない」「いえることは、画面の視聴時間が長い子供の脳はこのようだということだ。そしてパターンは1つだけではない」と語りました。
研究の最終的な目的は画面視聴の中毒性を調べることですが、長期的な結果を判断するには数年かかるといいます。
アメリカ小児科学会が最近発表した画面視聴時間に関するガイドラインの主著者で、同番組に出演したディミトリ・クリスタキス医師は、「我々は今、次世代の子供たちに対する野放しの実験の真っただ中にあるのではないか」と懸念を示しました。
小児科学会では保護者らに対し、生後18~24カ月以下の子供についてはビデオチャット以外のデジタル機器の使用を避けるよう推奨しています。
2018年12月11日(火)
■「今年の一皿」は女性も注目の 「鯖」 健康や美容に気を付ける人に人気
食をテーマにした調査・研究を行っている「ぐるなび総研」(東京都千代田区)は6日、2018年の世相を反映する「今年の一皿」を発表しました。大賞に選ばれたのは「鯖(さば)」。鯖缶が注目を集め、魚食文化の良さが再認識された点が評価されました。
今年の一皿は、その年に話題になったことに加えて、社会の動きと関係が深く、世相を反映し、さらに食文化の記録として後世に受け継ぐ価値があることを基準に選定されます。飲食店情報サイト「ぐるなび」に蓄積されたデータと、ぐるなび会員への調査から食に関するキーワードを抽出し、メディア関係者らと協力して、その年を象徴する料理を選びます。
過去には、「ジビエ料理」(2014年)、「おにぎらず」(2015年)、「パクチー料理」(2016年)、「鶏むね肉料理」(2017年)が大賞に選ばれ、消費者にも定着してきました。「受賞後は取り扱う飲食店数が増加し、さらに人気が増す」(ぐるなび総研・三村麻里香さん)といいます。
今年は、「高級食パン」、「国産レモン」、「鯖」、「しびれ料理」の4つがノミネートされました。
「鯖」が大賞に選ばれた理由として、今年は各地で大きな災害に見舞われ、防災意識の高まる中、鯖缶など缶詰の「非常食」としての重要性が再認識されたことが挙げられます。とりわけ鯖缶は、DHA(ドコサヘキサエン酸)、EPA(エイコサペンタエン酸)、ビタミンB2などの栄養素が豊富で、健康や美容効果が期待できることから、テレビの情報番組などで紹介され、スーパーなどで品切れになるほどの人気となりました。
さらに、大分県の「関さば」や宮城県の「金華さば」などブランド魚の人気が高まり「町おこし」に一役買ったり、従来のイメージを払拭するような洗練されたデザインの「おしゃれ鯖缶」「プレミアム鯖缶」が登場するなど、鯖が流行に敏感な女性にも注目された一年となりました。
準大賞には、麻婆(マーボー)豆腐や担担麺など、中国原産の花椒(ホアジャオ)を使用し、食べた後に口内で新鮮な刺激を感じる「しびれ料理」が受賞しました。
授賞式では、鯖生産者を代表して大日本水産会の白須敏朗さんが、ぐるなび総研の滝久雄・代表取締役から記念品の有田焼の皿を授与され、「一皿といわず、さらにさらに食べていただきたい」と、ジョークを交えてあいさつしました。
2018年12月10日(月)
■厚労省、大阪府と福岡県に風疹対策強化を通知 神奈川県は風疹非常事態宣言
厚生労働省は10日、風疹が流行する大阪府と福岡県に対し、対策を強化するよう7日付で通知したことを明らかにしました。通知は、妊娠を希望する女性や妊婦の同居家族に免疫があるかを調べる抗体検査と、適切なワクチン接種を推進するよう求める内容。すでに、東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県、愛知県の5都県に対しても出されています。
国立感染症研究所によると、今年の全国の風疹患者数は2313人(11月25日現在)で、昨年の約25倍。東京都など首都圏を中心に流行が続いており、大阪府(99人)、福岡県(93人)でも患者数が増加しています。
風疹患者の中心は、子供のころに公費によるワクチン接種の機会がなかった30~50歳代男性で、厚労省は同世代に対する重点的な対策を進める方針を示しています。
また、風疹の感染拡大が続く中、神奈川県内では昨年の30倍以上の患者が報告されていることから、神奈川県は10日、5年ぶりとなる「風疹非常事態宣言」を出し、ワクチンの予防接種の呼び掛けなどを強化していくことになりました。
風疹は発熱や発疹などの症状が出る感染症で、妊娠中の女性が感染すると生まれてくる赤ちゃんの目や耳、それに心臓などに障害が出る可能性があります。
神奈川県によりますと、今年7月以降、首都圏を中心に風疹の患者が急増し、同県内では、昨年1年間で10人だった患者が今年は12月2日現在で343人と、34倍に上っています。
これは5年前に年間で1700人近い患者が報告された時以来の高い水準だということで、同県では広く風疹の予防に取り組んでもらうため10日、「風疹非常事態宣言」を5年ぶりに出しました。
神奈川県は、これまで行ってきた自治体への予防接種の助成を続けるとともに、今回の患者は30~50歳代の男性が多いことから、企業や経済団体を通じて予防接種を受けるよう働き掛けを強化していくことにしています。
2018年12月10日(月)
大手乳業メーカーの「森永乳業」は、全国のコンビニなどで販売しているプリンに金属の粉が混入した可能性があるとして、15万個余りを自主回収すると発表しました。
森永乳業が自主回収するのは、カップ入りプリン「森永の焼プリン140g」で全国のコンビニやスーパーで販売されています。
賞味期限が12月21日と22日で、賞味期限の下に記載されている5桁の英数字が4から始まる商品が対象で、合わせて15万3901個に上るということです。
会社によりますと、この商品を製造した東京都葛飾区の東京工場で定期点検の際、プリンの原料を入れる機械に金属同士がこすれたような跡があったため、自主回収を決めたということです。
会社では、商品を出荷した後に気付いたということですが、今のところ健康被害などの報告は入っていないとしています。
森永乳業は、「お客様にはご迷惑をおかけしおわび申し上げます。再発防止に向けて品質管理を一層強化します」と話しています。
問い合わせの電話番号はフリーダイヤル、0120-369-334で、今週金曜日までは、午前9時から午後8時まで電話を受け付けています。
2018年12月10日(月)
■ブタ体内で人の膵臓を作製 東大がiPS細胞で研究を申請へ
ブタの体内でヒトの膵臓(すいぞう)を作る研究計画を学内の倫理委員会に申請する方針を、東京大学医科学研究所の中内啓光(ひろみつ)特任教授が明らかにしました。動物の体内で人の臓器を作る研究が、国の指針で来春にも解禁されることを踏まえ、直後に申請するといいます。東大と国で計画が承認されれば、国内初の実施例となります。
中内特任教授によると、計画では膵臓ができないよう遺伝子改変したブタの胚(受精卵)に、さまざまな細胞に変化できる人のiPS細胞(人工多能性幹細胞)を注入し、「動物性集合胚」を作ります。その胚を母ブタの子宮に入れ、妊娠させます。
成功すれば、本来ブタの膵臓ができる場所にiPS細胞由来の人の膵臓ができます。出産前に胎児を取り出し、膵臓の状態や人の細胞が他の臓器や組織に広がっていないかを調べます。
中内氏特任教授は移植医療への応用を目指し、2010年にマウスの体内でラットの膵臓を作製。2017年にはラットの体内で作製したマウスの膵臓の一部を糖尿病のマウスに移植し、治療効果を確認したと発表しました。2011年にはブタの体内で別のブタの膵臓を作製したと報告しました。
国の指針は従来、動物の胚に人の細胞を注入した動物性集合胚の培養を最大14日間とし、動物の子宮への移植を禁止しましたが、研究の進展に伴い見直しを決定。文部科学省が5年間かけて改正指針案をまとめ、今年10月、創薬や基礎研究に限り、動物性集合胚から人の臓器を持つ動物を作る研究が認められました。臓器の人への移植は禁じます。現在、実施する際の手続きなどを検討中で、今年度内にも新指針の適用を開始します。
世界でも動物の体内で人の臓器作製に成功した例はありません。中内特任教授は、「最初に国の委員会で説明してから8年待ったが、国内での研究がようやく認められた。まずは胎児の段階で脳や生殖細胞に人の細胞が混ざっていないか、豚由来のウイルスが影響しないかなどを注意深く調べる」と話しています。
2018年12月9日(日)
■受精卵のゲノム編集「禁止に」 日本学術会議と国内4学会が声明
中国の研究者がゲノム編集技術で人間の受精卵の遺伝子を改変し、世界で初めて双子の女児を出産させたと報告した問題で、日本学術会議の幹事会は7日、「事実とすれば、生命倫理のみならず研究倫理にも反する極めて重大な行為で、断じて容認できない」との声明を発表しました。国内外の科学者や市民との対話を進め、「このような行為が起きないように働き掛けていく」としました。
声明では、ゲノム編集技術の人間の受精卵への臨床応用について「生まれた子供への予期せぬ副作用など、医学的にみて重大な懸念がある」などと指摘しました。
また、ゲノム編集技術にかかわる国内4学会は4日、人間の受精卵を使った同技術の臨床応用を禁止すべきだとする共同声明をまとめ、連名で発表しました。4学会は2016年4月にも同様の提言を発表しており、今回は改めて立場を明確にした形です。中国人研究者の報告内容の真偽は、現時点では明らかではありません。
4学会は、日本遺伝子細胞治療学会、日本人類遺伝学会、日本産科婦人科学会、日本生殖医学会。
共同声明では、ゲノム編集技術を「生命科学の研究に不可欠ともいえる重要なツールで、基礎研究における活用を今後も推進する」としつつも、「現時点で発展途上の技術であり、予期しない結果を生じる可能性がある」と位置付けました。人間の受精卵に臨床応用する研究は「遺伝子改変の影響が世代を超えて継続する。人類の多様性や進化に影響するような重大な事態につながることが懸念される」と指摘しました。
そして、人間の受精卵や生殖細胞のゲノム編集の禁止を訴えた上で、国民の理解を深めるため、4学会で連携し、社会への情報提供や啓発活動を積極的に行っていく、としました。
2018年12月9日(日)
■医療事故調査制度、導入3年で報告1169件 当初の想定を大きく下回る
医療事故調査制度が導入されてから、今年10月で3年が過ぎましたが、報告件数は相変わらず当初の想定を大きく下回っています。報告するか否かの判断が病院側の裁量に任される仕組みで、医療界には事故調査に消極的な傾向が残るためとみられ、医療事故の遺族の間には制度への不満がくすぶっています。
医療事故の遺族らでつくるグループが月1回ほど、制度の改善を求めて街頭に立ち、「公正で信頼される医療事故調査制度を求める署名にご協力お願いします」と訴えています。制度創設を目指して2008年に始まり、今に続く署名運動で、106回目の今年11月で丸10年となり、計3万9890人分が集まりました。
医療法に基づく医療事故調査制度は、2015年10月にスタート。すべての病院・診療所・助産所は、医療に起因する(医療が原因になった)疑いのある「予期せぬ死亡・死産」があった場合、第三者機関である医療事故調査・支援センター(東京都港区)に報告し、院内調査委員会を設置して調べることが医療機関に義務付けられました。
制度実現を巡っては、医療者の一部が反発して意見がまとまらず、制度創設論議が出始めてから10年以上かかりました。医療側に、責任追及につながることへの不安があったためです。そこで、幅広い意見に折り合いをつける内容で導入にこぎ着けた経緯があります。
報告するか否かの判断が医療機関にゆだねられたのも、そうした事情が影響したことが、当初の予想より報告が少ない背景にあります。
「調査してもらえない、説明に納得できない、などと、制度の現状に不満を持つ遺族からの相談は多いです」と話すのは、「患者の視点で医療安全を考える連絡協議会」代表の永井裕之さん(77歳)。東京都立広尾病院で1999年、点滴ミスにより妻を亡くした永井さんは、医療事故について遺族の相談に乗ってきました。制度の導入前は、具体的な運用を検討する厚生労働省の有識者会議で委員も務めました。
永井さんは、「制度の導入当初から、『小さく産んで大きく育てる』という気持ちでした。このままでは制度が国民から信頼されない。見直しが必要になっています」と話しています。
2016年6月に娘(当時32歳)を亡くした母親(60歳)は、病院による事故調査の経緯に不信を抱いています。「病院が作った調査報告書を見た時、まるでバカにされているような気がして悲しくなりました」。報告書は本文3ページ。「これではなぜ娘が亡くなったかわからない。きちんと検証されたのか、かえって疑念を持ちました」といいます。
娘は同5月、埼玉県蕨市内の病院で出産時に脳出血を起こしました。他の病院に搬送されたころには深刻な容体で、脳死状態のまま約1カ月して亡くなりました。当初、病院側は報告の必要なしと判断し、遺族が要望した結果、調査することになりました。
同病院は、「第三者の意見も聞いてしっかり調査した。報告書のページ数が少ないから簡単に扱ったというわけではない」と説明しています。
院内調査の結果に不服がある場合、遺族から医療事故調査・支援センターに独自調査を求めることもできます。この遺族は調査を申請したものの、「期待できない」といいます。調査結果を待たず、このケースは今年10月、民事訴訟に至りました。
同センターを運営する日本医療安全調査機構の常務理事で医師の木村壮介さんは、「現状は、一般の皆さんが満足できない状態になっているとは聞いています。何年かかるかわからないが努力したい。制度をもっと発展させるためには、社会全体の努力と理解と時間が必要だと思っています」と話しています。
制度がスタートしてから、報告は今年10月末現在で計1169件で、平均すると年400件に満ちません。
医療事故がどれくらい発生しているのか、正確なデータはありません。ただし、厚生労働省は年1300~2000件と試算しており、現状の報告件数とは大きな開きがあります。熱心な病院もある一方、病院間で対応に格差があります。
地域的な格差も目立ってきました。同センターがまとめた人口100万人当たりの報告件数をみると、最も多いのは宮崎県の年6・9件、次いで三重県5・4件、大分県5・0件。報告が少ないのは高知県0・6件、鹿児島県1・4件、宮城県1・5件などとなっています。
「三重県は、基本的に医療事故全例について県医師会が調査を支援し、医療安全のため、積極的に報告するスタンスでいるからでしょう」と、三重大学病院(津市)副院長で、医療安全管理部長の兼児(かねこ)敏浩さんは、県内の報告が多い背景を説明しています。同病院も、これまでに計3件を報告しました。
全体の報告件数が低迷している理由について、兼児さんは、「報告対象の基準があいまいで、病院側が報告をためらう面もあるのでは」と見ています。
2018年12月9日(日)
■慶応大、人の腸を「ミニ組織」で再現 新陳代謝が続き組織を長く維持
慶応大学の佐藤俊朗教授らは人の腸管にある幹細胞を体の外で培養し、実物に近い立体的な「ミニ組織」を作る技術を開発しました。人の腸管組織にあるタンパク質から最適な組み合わせを見付けて、生体内に近い培養環境を再現し、細胞の新陳代謝が続いて組織を長く維持できました。培養皿上で、薬の候補物質の効き目などを長期にわたり調べられるようになります。
研究成果は7日、アメリカの科学誌「セル・ステム・セル」(電子版)に掲載されました。
腸は食物の消化吸収などをする器官で、その働きの多くを腸の内壁の表面部分にある「腸管上皮」が担っています。腸管上皮には細菌のバリアーとなる粘液の分泌や、食欲や腸管の働きを調整するホルモンの分泌などさまざまな機能が備わっています。それぞれの役割を担う細胞があるものの、長くて約3週間で死に、老廃物として排出されます。
腸管上皮の幹細胞が増え、上皮のさまざまな細胞に育つことで新陳代謝を維持します。幹細胞は継続的に変化し、自身も枯渇を防ぐために複製します。研究チームはこれまでに人の腸管上皮細胞でミニ組織を作ることに成功していましたが、新陳代謝を再現できないため1週間ほどで機能を失ってしまい、長く維持できませんでした。
今回、幹細胞の働きを促すタンパク質を見直すなどして培養条件を工夫。従来の培養手法で使っていた特定のタンパク質が細胞の変化を邪魔していることに着目。代わりに人の腸管組織にある10種類のタンパク質の中から、生体内に近い環境を培養液で再現できる組み合わせを探しました。
その結果、成長ホルモンの一種である「IGF―1」と、細胞の増殖を促す「FGF―2」の2つのタンパク質が腸管の維持に深くかかわっていることを突き止めました。
これまでの手法で使っていた特定のタンパク質をこれら2つに置き換えたところ、幹細胞が増え続け上皮のさまざまな細胞に育ちました。作製した腸のミニ組織を電子顕微鏡や遺伝子解析で調べると、人の腸管上皮細胞のほとんどを再現できていました。
ミニ組織に既存薬をかけると、人の腸と同じように作用することを確認しました。実験では最低でも1年以上、腸管上皮としての機能を維持できました。長く維持できるミニ組織を実験で使えば、薬の候補物質が体内で吸収される過程や、効き目などを長期間追跡できます。動物実験に頼らず、毒性確認や遺伝子解析などが簡単にできる可能性もあります。
研究チームは今後、腸内細菌や線維芽細胞の再現も目指します。
2018年12月8日(土)
政府は、75歳以上が加入する後期高齢者医療制度で低所得者の保険料を軽減している特例を、来年10月の消費増税時に廃止する方向で検討に入りました。年金収入が年168万円以下の高齢者約740万人が対象になります。
政府は、特例廃止で社会保障費は年約600億円削減できると見込んでいます。来年度は半年分の約300億円で、薬の公定価格(薬価)引き下げなどと合わせ、6000億円と見込まれる来年度の社会保障費の伸びを5000億円未満に抑えます。
後期高齢者医療制度は、低所得者の保険料を7割軽減する仕組みとなっているものの、収入に応じてさらに最大9割まで軽減する特例があります。ともに年金収入が80万円以下の夫婦2人暮らしなら保険料は9割軽減され、全国平均で1人月380円。
政府は現在進めている来年度予算編成で、この特例を消費増税時に廃止することを検討。消費増税による増収分を使った低所得者の介護保険料軽減や低年金者への給付を併せて実施することで、特例廃止による「負担増」が相殺されると見込んでいます。また、相殺されない場合でも負担増を防ぐ仕組みを早急に検討します。
政府の社会保障制度改革推進本部は2016年12月、特例を2017年度から段階的に廃止すると決定。2017年4月の消費税率10%への引き上げに伴う増収分で低所得高齢者の負担を軽減することが前提でした。だが、安倍政権が諸費増税の延期を決めたため、特例廃止も先送りされました。
2018年12月8日(土)
■3大学の医学部で不適切入試 文科省の指摘受け相次ぎ発表
福岡大学、金沢医科大学、岩手医科大学は8日、それぞれ記者会見を開き、「医学部で不適切な入学試験を行っていると、文部科学省から指摘された」と公表しました。いずれも、特定の受験生を優遇するなどしていたといいます。
このうち福岡大学は8日午前、記者会見を開き、文部科学省から医学部の入試が「不適切」と指摘されたことを明らかにしました。
それによりますと、一般入試と推薦入試の両方で行われる「面接」の際に参考とする、高校時代の学力などを評価した「評定平均値」について、現役生を優遇する措置を取っており、一般入試の場合、現役生は最高で20点、1浪生は最高で10点、2浪生以上は点数化しないなど卒業からの年数によって独自に決めた点を評価に加えていたということです。
大学は、高校を卒業してから年数がたつほど、「評定平均値」の有効性が低くなると考えたためだと説明しています。黒瀬秀樹教学担当副学長は、「受験生には大きな不安と混乱を与えたことを心よりおわび申し上げます」と陳謝しました。
福岡大学は来年度以降の入試について、こうした優遇措置を一切取らないことを決めたとしています
石川県の金沢医科大学は昨年11月に実施した特別推薦入学試験、
大学によりますと、AO入試で北陸3県の高校の卒業生や金沢医科大学の出身者の子供、それに現役生と1浪生の受験生に、最大で20点上乗せしていたということです。AO入試で募集要項に明示しないまま石川、福井、富山の3つの県の出身者などに有利になるよう加点し、11月に文科省から不適切だと指摘を受けたということです。
また、編入学試験で北陸3県の高校の卒業生などに加点していたほか、一般入試の補欠合格者では年齢が低い受験生を優先していたということです。
こうした対応で合格ラインに達しながら不合格となった受験生は昨年度、AO入試と編入学試験で少なくとも合わせて8人いたほか、一般入試については調査中だということです。大学は、受験生が入学を希望する場合には受け入れる予定だと説明しました。
金沢医科大学は今後は、こうした加点は行わないとしており、神田享勉(つぎやす)学長は「公平性が重要な入学試験で、不適切だと指摘を受けたことは受験生や社会の信頼を失うものであり、深くおわび申し上げる」と謝罪しました。
また、岩手医科大学は今年1月の入学試験と今年2月の歯学部から医学部への編入試験について、不適切な運用が疑われると文科省から指摘を受けたことを発表しました。
入学試験については、追加合格者51人の中に、不合格となった受験生より点数が低い受験生が1人含まれており、優先的に合格させたのではないかと指摘されたということです。
大学側は、点数が低かった受験生も総合的な評価では合格基準に達しており、不正はなかったと説明しました。また、歯学部から医学部への編入試験では、岩手医科大学の歯学部の出身者を募集要項に明示しないまま、優遇して、合格させたことが不適切だと指摘されたということです。
これについて大学側は、地域医療を支える観点から裁量の範囲内と考えていたと説明しました。今後は、外部の有識者を交えて検証した上で、合格の判定基準などを示すとしています。
岩手医科大学の佐藤洋一医学部長は、「受験生などに心配をかけて申し訳ない。透明性ある公正な入試ができるよう体制を整えたい」と陳謝しました。
東京医科大学による不正入試問題を受け、文科省は今年8月から、医学部のある全国81の大学に対して同様の不正がないか調査を進めています。
10月の中間報告では、不適切な入試が行われた大学は東京医科大学以外にも複数あり、不適切な事例は性別や年齢による得点操作など少なくとも4種類あることを明らかにしました。一方で、具体的な大学名や数については、調査が途中であることや大学側が自発的に公表すべきだといった理由で明らかにしていません。
文部科学省は、各大学の対応などを見極めて、年末までに最終的な調査結果を公表するとしています。
2018年12月8日(土)
■梅毒患者が6000人を超え、増加一途 気付かぬまま他人に感染も
性行為などで感染する梅毒の今年の患者数が6000人を超え、現行集計上では昨年の5820人(暫定値)を抜いて過去最多を更新しました。患者増で最も心配されるのが妊娠中の女性の感染であるため、専門家は「妊娠中は感染リスクのあるような性行為を避けて」と呼び掛けています。
梅毒は、性的な接触でスピロヘータ (梅毒トレポネーマ)という細菌がうつる感染症。1948年からの報告制度では年間1万人以上の年もあったものの、制度変更があった1999年以降、2012年まではおおむね600~800人で推移して、「過去の病気」とされていました。それが、2013年に1000人を超えてからは増加する一方で、国立感染症研究所によると、今年1月から11月25日までの累積患者数は6221人となりました。
梅毒に感染すると、平均21日の潜伏期間を経て、性器や肛門、口など感染が起きた部位に、豆粒ほどの硬いしこりができた後に潰瘍(かいよう)ができる「硬性下疳(こうせいげかん)」と呼ばれる症状が出たり、ももの付け根部分のリンパ節がはれたりするものの、痛みはなく、治療をしなくても症状は自然に収まります。
感染症に詳しい川崎市健康安全研究所の岡部信彦所長は、「いったん治ったかのようにみえても、体内から病原体がいなくなったわけではない。ただし、症状がなくても、感染から数カ月は他人への感染力が強く、気付かずに他人に感染させているケースも少なくない」と指摘しています。
症状がいったん消えた後、再び4~10週間の潜伏期間を経て、今度は手のひらや足の裏などにうっすらと赤い発疹が出たり、発熱や倦怠(けんたい)感などの症状が出たりします。これらの症状も数週間~数カ月で消えます。しかし、無治療のままだと数年から数十年後に、心臓や血管、脳などの複数の臓器に病変が生じ、場合によっては死に至ることもあります。
女性では、20~30歳代での感染が増加。この年代で最も心配されるのが、梅毒にかかった妊婦から胎盤を通じて胎児が感染する先天梅毒です。流産、死産、早産などの原因となるほか、生まれても乳幼児期、学童期に内臓や目、耳などに異常が出ることがあります。
適切な抗菌治療を分娩(ぶんべん)4週間前までに完遂することで、先天梅毒は予防できます。母子保健法では妊婦の梅毒検査が義務付けられているものの、検査は基本的に妊娠初期です。このため、岡部所長は「母子感染を防ぐため、パートナーも含め、妊娠中は感染リスクのあるような性行為を避ける必要がある」と指摘。出産時を含めた複数回の検査やパートナーの検査も併せて行うことを勧めています。
梅毒患者が急増している理由について、東京都新宿区で性感染症の診療に当たる「プライベートケアクリニック東京」院長の尾上泰彦(おのえ・やすひこ)医師は、「疫学的調査が行われていないので不明」とした上で、「複数の人と性行為する人の増加、梅毒流行国からの観光客の増加などが影響しているとの見方がある」と指摘しています。
世界保健機関(WHO)の2012年の統計によると、世界の梅毒感染の報告数は約600万人。昨年、訪日外国人客数は2800万人を突破し、梅毒流行国から持ち込まれるリスクが高まっています。性風俗業界の関係者は、「日本の風俗店ではトラブル防止の観点などから外国人客を断るケースも多かった。だが、近年は外国人専用をうたう店も出てきている」と説明しています。
厚生労働省は今年10月、都道府県などに対し、医療機関による患者発生の届け出内容について、「性風俗への従事歴や利用歴の有無」を加えると通知。来年1月から適用し、感染傾向の分析や対策に役立てます。
一方、患者数が全国最多の東京都では特に、オリンピック・パラリンピックを控え感染拡大防止に躍起です。東京都南新宿検査・相談室では、HIV(エイズウイルス)と梅毒の同時検査を毎日(祝日などを除く。無料)実施。11月には、梅毒など性感染症の知識、相談先などを載せた総合ウェブサイト「東京都性感染症ナビ」を開設しました。
感染予防には、男性用避妊具を使用し、感染部位と粘膜や皮膚が直接接触するのを避けます。尾上医師は、「患者が無自覚なまま感染を拡大させることも多い。おかしいと思ったら内科などでなく、性感染症が専門の医師に診察を受けるか、近くにいない場合には泌尿器科や産婦人科、それに皮膚科の医療機関を受診してほしい」としています。
2018年12月8日(土)
■今夏の異常気象、地球温暖化の影響確実と証明 東大と気象庁が解析
国内で起きた今年の記録的な猛暑について、専門家が地球温暖化が進んでいないと仮定して解析したところ、同じような猛暑となる確率はほぼ0%で、地球温暖化の確実な影響が証明されました。
今年の夏は、埼玉県熊谷市の気温が観測史上国内で最も高い41度1分に達したほか、東日本の平均気温が統計を取り始めてから最も高くなるなど記録的な猛暑となりました。
これについて気象庁の検討会は、「特有の気圧配置や温暖化による長期的な気温の上昇傾向が影響した」と結論付けましたが、実際に温暖化がどのくらい影響していたのか証明されていませんでした。
東京大学大気海洋研究所と気象庁気象研究所の研究チームは、産業革命前の温暖化が進んでいない場合の気象状況が現在まで続いていると仮定した上で、今年の夏の記録的な猛暑が発生するかどうか確率を解析しました。
その結果、気圧配置の影響で平年に比べて高温になりやすかったものの、温暖化が進んでいなければ今年7月の上空の気温はおよそ2度低くなり、今年のような記録的な猛暑が発生する確率はほぼ0%で、温暖化が確実に影響していたことを証明できたということです。
これまで異常気象については、背景に温暖化の影響があると指摘されていたものの、個別の現象との関係を実際に証明する研究は始まったばかりで、具体的な温暖化対策の手掛かりになるとして世界的に注目されています。
東京大学大気海洋研究所の渡部雅浩教授は、「これまで何となくしかわからなかった温暖化と異常気象の関係を証明することができた。研究を進めることで異常気象が起こるリスクが実際にどれくらいあるのか、確率を出せるようにしたい」と話しています。
現実に起きた猛暑や豪雨といった異常気象に、温暖化の影響がどのくらいあったのかを証明するため、渡部教授らの研究チームが解析に使っている手法は、「イベント・アトリビューション」と呼ばれています。
この研究手法は、産業革命前から温暖化が進んでいない地球を仮定した上で、温暖化が進んだ現実の地球と比較することで、個別の異常気象に温暖化が与えた影響を証明していく手法です。
温室効果ガスの濃度や海面水温などのデータを基に100通りのシミュレーションを行って、気温や大気中の水蒸気量などを解析し特定の異常気象が起きる確率などを計算した上で比較します。
渡部教授によりますと、イベント・アトリビューションを使えば従来は個々の気象現象についてはっきり示すことができなかった温暖化の影響について、数値を用いて証明することができるため、具体的な温暖化対策につながるとして世界的にも注目されているということです。
渡部教授らの解析では、今年のの西日本豪雨の雨量が、温暖化の影響で6%ほど増加していた可能性が高いことも判明しました。
6月28日から7月8日を対象に九州から東海にかけての地域を5キロ四方に分けて、温暖化が進んでいないと仮定した場合の雨量と、温暖化が進んでいる現実の気象状況を基に解析した雨量を比較しました。温暖化が進んでいないと仮定した雨量は、1980年以降の20年間で上昇した気温や、それによって増加した大気中の水蒸気量を差し引いた上でシミュレーションしました。
その結果、観測点ごとの11日間の総雨量の平均は温暖化が進んでいない場合は252・3ミリだったのに対し、現実の気象状況を基に解析した雨量は267・9ミリと、温暖化の影響で雨量が6%ほど増加していた可能性が高いことがわかりました。
特定の豪雨に対し、温暖化がどれくらい影響していたか示されるのは今回が初めてです。渡部教授は、「6%増加というとたいした数字ではないようだが、それだけ雨量がかさ上げされたことによってより強い雨が広域で続くことにつながったと考えている」と話しています。
2018年12月7日(金)
■慢性腰痛の会社員、7割が「普段通り仕事できない」 塩野義製薬などが調査
会社勤めで慢性腰痛に悩む患者のうち7割は、出勤しても普段通りの仕事ができない状態を自覚していることが、塩野義製薬などの調査で6日、明らかになりました。痛みの強さと職場での生産性低下の相関関係も指摘できるといいます。
国内の慢性腰痛患者は1000万人ともいわれ、調査チームでは「職場での腰痛対策が生産性向上に役立つのでは」としています。
インターネットを通じて集めた、会社勤めで腰の痛みが3カ月以上続く慢性腰痛患者の全国の男女239人のデータを調査しました。
調査では、何らかの病気や症状を抱えながら出勤しても、仕事の量や種類が制限され、普段通りの仕事ができなくなり労働生産性が低下する「プレゼンティーズム」という概念に注目。
慢性腰痛患者で「健康上の問題は仕事に影響しなかった」というグループの痛みの強さは10段階評価で平均3・9だったのに対して、「仕事の妨げになった」と強く感じているグループは5・1と大きく差が開きました。
一方で、慢性腰痛を罹患(りかん)している期間は、痛みが仕事に強く影響したグループが平均111・2カ月、影響しなかったグループが112・6カ月とほとんど差がなく、罹患期間は生産性の低下に影響しないことが予想されるとしています。
塩野義製薬と調査を行った東京大医学部付属病院の松平浩特任教授は、「慢性腰痛患者の痛みの強さと職場での生産性の低下の相関関係が指摘できるのではないか。職場での慢性腰痛対策が、企業の生産性を高める可能性がある」と指摘しました。
2018年12月7日(金)
■ゲノム編集食品を届け出制に 厚労省が方針
厚生労働省の専門家会議は5日、生物の細胞が持つ全遺伝情報(ゲノム)の中で、狙った遺伝子を改変する「ゲノム編集」技術を使った食品の規制を含む報告書を大筋でまとめました。
報告書では、開発者は届け出をするだけでよいものの、消費者にとって安全面への懸念があるため、厚労省は今後、初のルール作りを目指します。同時に、消費者庁が食品への表示義務を検討します。
ゲノム編集は農水畜産物での研究が進み、食品流通に向けて世界的な動きが加速しています。遺伝子を切って変異を起こすといった遺伝子組み換えと異なる手法もあり、取り扱いが議論されていました。遺伝子組み換え食品は食品衛生法で安全審査手続きを義務付けており、すでに国内に流通しています。
報告書では、企業秘密に配慮しながら開発者から必要な情報の提供を求め、概要を公表することを明記。別の遺伝子を組み入れる場合は、遺伝子組み換え食品と同様に従来の法規制の対象としますが、その他の手法では審査する必要がありません。
開発者は、食品がアレルギーや毒性を示さないか確認する必要があります。消費者の不安解消に向け、理解を深める「リスクコミュニケーション」の推進も促しました。
ゲノム編集を巡っては、収穫量が多い稲や、身が多いマダイなどの販売を目指す企業があります。医療分野では受精卵を使った研究が来春解禁されるほか、中国でこの技術を使った双子が誕生したとの研究者の発表が問題視されています。
2018年12月6日(木)
■死亡ドナーからの子宮移植で世界初出産 ブラジルの32歳女性
ブラジルで、亡くなった人から子宮の提供を受けた女性が健康な赤ちゃんを産んでいたことが明らかになりました。死亡したドナーから移植された子宮での出産は世界で初めて。
移植手術を実施したブラジルのサンパウロ大学の研究チームは、子宮の問題で子供を産めない女性にとって新たな選択肢になるとしています。成果は5日、イギリスの医学専門誌「ランセット」で発表されました。
移植手術が行われたのは2016年9月。くも膜下出血で脳死状態になった45歳の女性から摘出した子宮を、生まれ付き子宮がないロキタンスキー症候群の32歳の女性に移植しました。その後、体外受精で準備していた受精卵を着床させ2017年12月、女性は帝王切開で女児を出産したといいます。
最近まで、子宮の問題で妊娠できない女性が子供を持つ方法は、養子縁組か代理出産しかありませんでした。今回の手術は、亡くなったドナーからの子宮移植で出産できることを示す画期的な成果です。
生体ドナーから子宮を提供されて出産に至った例は、2013年にスウェーデンで初めて成功して以降、これまでに計11件あります。しかし、子宮の移植を必要とする女性は生体ドナーの候補よりもはるかに多いため、医師は死亡した女性の子宮の移植がうまくいくかどうかに関心を寄せていました。
死亡した女性からの子宮移植はアメリカやチェコ、トルコで計10人に行われましたが、どれもうまくいかなかったとされます。
サンパウロ大教育病院のダニ・エイゼンバーグ医師は、今回の成果について「子宮が原因の不妊に悩む女性にとって、実際に取り得る新たな選択肢が生まれた」と説明。「医療の歴史での画期的な出来事」だとし、「死亡時の臓器提供の意思を示している人は生体ドナーよりもずっと多いため、潜在的なドナー人口が大きく広がったことになる」と述べています。
日本国内では慶応大学が親族間の子宮移植の臨床研究を計画していますが、倫理面の問題もあり、関連学会が指針作りを始めています。日本の臓器移植法は、脳死を含めた死者からの子宮の提供は認めていません。
2018年12月5日(水)
■武田薬品、シャイアー買収を承認 臨時株主総会を開催
武田薬品工業は5日、大阪市内で臨時株主総会を開き、アイルランド製薬大手シャイアーの買収について、株主の承認を得ました。創業家の一部が反対していたものの、株主の過半を占める機関投資家が賛成し、株主全体の3分の2以上の同意を得ました。
2019年1月にも7兆円弱を投じる巨額買収が成立し、売上高世界トップ10に入る巨大製薬会社が始動します。シャイアーがアイルランドの首都ダブリンで日本時間5日夜に開く総会で同意が決まれば、具体的な買収手続きに入ります。日本企業による海外企業の買収としては過去最大のものになります。
武田の臨時総会は5日午前10時にコンベンションセンター・インテックス大阪で始まり、約850人が参加しました。2時間半かけて買収の是非を議論し、行使された議決権のうち90%近くが同意となったもよう。
クリストフ・ウェバー社長は、臨時株主総会の冒頭で買収の意義を説明。「年間4000億円以上の研究開発投資が可能になる。世界でも競争力のある水準だ」と述べ、新薬の研究開発や営業面でも規模の拡大がメリットをもたらすと強調しました。
質疑応答に先立ち、事前に株主から受けた質問に対する回答が発表されました。有利子負債の削減計画に関連し、買収から3年後には統合によるコスト圧縮効果が年14億ドル(約1600億円)に達することや、非中核資産の売却を進めることを説明しました。
会場からは巨額買収の効果や世界市場における武田の立場を問う質問が相次ぎ、ウェバー社長は「日本市場は縮小しており、世界的な存在感がないと研究開発で勝てない。日本のグローバル企業になる」と回答しました。
武田薬品は5月、シャイアーに約460億ポンド(約6兆6000億円)での買収を提案。買収の対価は現金約3兆円と4兆円相当の新株で賄う計画で、臨時株主総会には新株発行を取締役会に委託する議案を提案しました。すでにアメリカやヨーロッパ、日本、中国の主要市場の当局から独占禁止法上問題ないとする承認を取得済み。
武田薬品の株主構成は機関投資家が計66%で過半を占めます。武田薬品のOBらでつくる「武田薬品の将来を考える会」や、武田薬品の社長、会長を務めた武田国男氏が反対を表明していましたが、機関投資家が賛成したことで買収が認められました。実現すれば単純合算で連結売上高が3兆5000億円の企業となります。
2018年12月5日(水)
■注意欠陥・多動性障害の子供の脳に共通の特徴 福井大学がAIで発見
物事に集中できない注意欠陥・多動性障害(ADHD)の子供の脳に共通して見られる特徴があることを福井大学の研究チームが発見し、将来的に正確な診断に応用できる可能性があるとしています。
ADHDは子供の時に発症し、注意力を持続できないほか、落ち着きがないなどの症状が現れる発達障害の一つで、有病率は学齢期の子供の3〜7%程度と考えられています。家庭や学校生活に支障を来たすため、投薬や生活環境に配慮するなどの治療が行われますが、自閉症などほかの障害と症状が似ているケースがあり、正確な診断が課題になっています。
福井大学の友田明美教授の研究チームは、日本やアメリカなどでADHDと診断された7〜15歳の男の子120人余りの脳の形態を磁気共鳴画像装置(MRI)と呼ばれる装置で調べ、どのような特徴があるか調べました。
その結果、およそ7割のADHDの子供の脳では、脳の前頭葉と呼ばれる部分にあり感情をつかさどるといわれる「眼窩前頭皮質」と呼ばれる部分の厚みが増して表面積が小さくなるなど、脳のおよそ20カ所で形態の特徴が見られたということです。
研究チームは、今回の解析は人工知能(AI)を使うことで発見できたとしており、これまでの症状の観察と画像解析を組み合わせることで、将来的に正確な診断に応用できる可能性があるとしています。
友田教授は、「ADHDは大人になるとうつ病につながりやすい。今後さらに精度を上げ、正確な診断を支援できるシステムをつくっていきたい」と話しています。
成果は、イギリスの科学雑誌「セレブラル コルテックス」(電子版)に発表しました。
2018年12月4日(火)
B型肝炎は、ウイルス感染によって肝臓が炎症を起こす病気。国内の持続感染者は推計で100万人以上で、このうち発症者は約7万人とされています。現在使われている薬では、ウイルスの増殖を抑えることができても、ウイルスそのものを除去することは難しいという課題がありました。
研究チームは、ウイルスのタンパク質と肝臓細胞のタンパク質が結び付くことで、ウイルスの増殖が始まることに注目。結び付きを阻害する物質を探すため、すでに別の用途で使われている薬約800種類を調べました。その結果、アメリカで認可されている抗寄生虫薬「ニタゾキサニド」に、ウイルスの増殖を抑えるだけでなく、減らす効果があることを確認しました。
研究を取りまとめた東大講師の大塚基之さんは、「効果を最大にする方法などを検討した上で、実用化の可能性を探っていきたい」と話しています。
2018年12月4日(火)
■気象の変化による寒暖差疲労に注意を 自律神経の働きの乱れでさまざまな症状
気象の変化などによる体調の悪化に詳しい医師は、今後予想される気温の低下で現れる「寒暖差疲労」の症状に注意を呼び掛けています。
気象病の外来を設けている東京都世田谷区のクリニックの久手堅(くでけん)司院長は、前日からの温度差が7度くらいになると寒暖差疲労になりやすいと指摘しています。
人間の体は、暑い中や寒い中でも、体の状態を一定に保とうとして自律神経が働き、汗を出して熱を発散させたり、反対に熱を体内に残したりしています。
しかし、急激な寒暖差があると自律神経の働きが乱れ、冷え性やだるさ、肩凝り、首凝り、頭痛、めまいなどの身体的な不調から、気分が落ち込みやすくいらいらするなどの精神的な不調まで、さまざまな寒暖差疲労の症状が出てくるということです。
久手堅院長は、「6日くらいから気温が下がり始め、週末には真冬の寒さになるので、かなり患者が増えるのではないか」と指摘しています。
その上で対策として、「自律神経は必ず首を通っているので、首が冷えると自律神経の乱れにつながる。入浴で首を温めたり、昼だけでなく夜寝ている間もマフラーやスカーフを巻くなどして、基本的な対策をするだけでもかなり防げると思う」と話しています。
2018年12月4日(火)
■低所得が高齢者の糖尿病リスクに 千葉大が1万人のデータを分析
長嶺由衣子・千葉大特任研究員らの研究チームが、高齢者1万人のデータを分析し、所得の低い高齢者ほど糖尿病が多いことを明らかにしました。最も所得の低い層は最も所得の高い層に比べて、女性は約1・4倍、男性は約1・2倍、糖尿病の有病率が高くなりました。
麻生太郎財務相は今年10月、「自分で飲み倒して、運動も全然しない」で糖尿病になった人の医療費を払うのは「あほらしい」と、知人の言葉を借りる形で発言して議論を呼びました。貧困層ほど糖尿病にかかる率が高いとの調査は多数ありますが、糖尿病患者の約半数を占める高齢者と経済格差の研究は国内で初めてといい、関係が改めて浮き彫りとなりました。
高齢者の大規模調査プロジェクト「日本老年学的評価研究(JAGES)」が2010年に愛知県で集めたデータを調べました。糖尿病と自己申告した人と、健診で「ヘモグロビンA1c」など医学的指標が悪い人の有病率を、所得別に4段階に分けました。
その結果、最も低い年収125万円以下の女性の糖尿病の有病率は、最も高い年収約300万円以上の層の1・43倍に上り、所得が低いほど糖尿病が多くなりました。男性は1・16倍で、最も所得が低い層のリスクが高くなりました。
長嶺研究員は、「糖尿病は必ずしも本人の責任だけではなく社会要因が影響している」と指摘。所得が低いと精神的ストレスを抱えて仕事ができなくなったり、栄養バランスが崩れて肥満が多くなったりすることを要因に挙げ、「低所得が糖尿病のリスクになることを考慮した対策が必要」としています。
結果は、日本疫学会が発行する学会誌「Journal of Epidemiology」に近く発表します。
2018年12月3日(月)
■筋委縮性側索硬化症にパーキンソ病薬 慶応大、iPS細胞で効果発見
慶応大の研究チームは、全身の筋肉が徐々に動かなくなる難病「筋委縮性側索硬化症(ALS)」の治療薬候補をiPS細胞(人工多能性幹細胞)を使って発見し、患者に投与する臨床試験(治験)を3日から開始すると発表しました。同日に患者の募集を始めました。
ALSは脳や脊髄の神経細胞に異常なタンパク質が蓄積するなどして発症します。国内患者数は約1万人で、根本的な治療法はありません。
研究チームは患者一人の細胞から作製したiPS細胞を使って、病気を起こす神経細胞を体外で再現。約1230種の既存薬を投与して効果を調べ、脳神経系の難病であるパーキンソン病の治療楽として広く使用されている「ロピニロール塩酸塩」が有効で、神経細胞が死ににくくなることを突き止めました。
従来の治療薬と比べ2~3倍の症状改善効果があったといいます。治験では、発症から5年以内の20〜80歳の患者20人に最大50週間にわたって投与し、安全性と有効性を確認します。
岡野栄之(ひでゆき)教授は、「従来と全く違う発想で発見した治療薬候補で病気の進行を抑え、ALS克服に貢献したい」と話しました。
治療薬候補は、遺伝が関係するとみられる家族性ALSの患者の細胞を使って見付けました。原因が不明で、国内患者の約9割を占める孤発性ALSの細胞でも約7割に効果がありました。
iPS細胞を使った創薬研究の治験は、患者本人から作る細胞で薬を試せるため効果を見極めやすいとの期待があり、京都大の筋肉の難病「進行性骨化性線維異形成症(FOP)」、慶応大の遺伝性難聴「ペンドレッド症候群」に続き国内3例目。治験を監督する医薬品医療機器総合機構(PMDA)が先月、届け出を受理しました。
2018年12月3日(月)
■環境省、「プラスチック資源循環戦略」を策定 途上国の海洋プラスチック抑制が柱
環境省が海洋プラスチックごみの拡大防止などに向けて策定した「プラスチック資源循環戦略」の最終案が11月25日、明らかになりました。途上国に対し発展段階に応じてオーダーメードで日本の技術やノウハウをパッケージで輸出することが柱。
植物などの生物由来の原料で作られ、リサイクル可能な「バイオマスプラスチック」の利用促進も盛り込みました。今年度内に正式決定し、来年6月に大阪市で開催する20カ国・地域(G20)首脳会議で政府方針として表明します。
最終案では、途上国への国際展開として「各国に適した形で適正な廃棄物管理システムを構築し、資源循環の取り組みを進める」と明記しました。
具体的には、分別収集システムやリサイクル・廃棄物処理施設の導入支援のほか、プラスチック代替品やリサイクルの技術革新の支援を行います。対象地域はアジア・太平洋、アフリカなどを想定しています。資源循環産業の発展を通じた経済成長や雇用創出も見込みます。
バイオマスプラスチックの利用促進と化石燃料由来プラスチックとの代替促進策として、2030年までにバイオマスプラスチックを約200万トン導入する数値目標も明記。焼却しても大気中の二酸化炭素の濃度を上昇させない特徴があり、地球温暖化対策にもなるため、可燃ごみ用指定収集袋などの燃やさざるを得ないプラスチックへのバイオマスプラスチックの使用を求めています。
また、2020年までに洗い流しのスクラブ製品に含まれるマイクロビーズの削減を徹底し、マイクロプラスチックの海洋流出を抑制することも掲げました。
このほか、生鮮食品のトレー、カップ麺の容器、シャンプーのボトルなどプラスチック素材でできた容器や包装を意味する「プラスチック製容器包装」について、2030年までに6割をリサイクルや再利用し、2035年までにすべての使用済みプラスチックを100%有効利用するとの数値目標も盛り込みました。
海洋プラスチックは毎年少なくとも800万トンが海に流出しているとされ、死んだ生物の体内からポリ袋が発見されるなど生態系への影響が懸念されています。2050年までに魚の重量を上回るプラスチックが海洋に流出するとの推計もあり、地球規模での環境汚染に拍車がかかりかねない事態となっています。
2018年12月2日(日)
■厚労省、企業健診での風疹抗体検査を要請へ 39~56歳男性が対象
首都圏を中心に流行する風疹の対策に取り組んでいる厚生労働省は、ウイルスの抗体検査を定期健診や人間ドックに合わせて実施するよう、企業や医療機関に協力を呼び掛けることを決めました。抗体を持つ割合が低く、感染しやすい39~56歳の男性が検査を受けやすくする狙いがあります。風疹は、気付かないまま感染を広げてしまうことが少なくありません。妊娠20週までの女性が感染すると、赤ちゃんに心臓病や難聴、白内障など「先天性風疹症候群」と呼ばれる障害が出る恐れがあります。ワクチン接種で予防できますが、妊婦は予防接種を受けられないため、周囲の人の感染を防ぐことが大切です。
ワクチンの定期接種は現在、1歳と小学校入学前1年間の計2回。ただ、1962年4月2日~1979年4月1日に生まれで、現在39~56歳の男性約1610万人は、制度変更の影響で定期接種を一度も受けておらず、抗体を保有する割合が約80%で、他の世代や女性に比べて低くなっています。企業の管理職などが多いとみられ、平日に医療機関で検査を受けるのが難しいとみられます。従業員の受診を義務付けた定期健診で採取した血液を利用することで、抗体検査を促進して、東京オリンピック・パラリンピックがある2020年までに抗体保有率85%を目指します。
厚労省は、30~50歳代の男性の抗体検査費用の実質無料化を決めており、検査に伴う追加費用は企業にかかりません。厚労省は、検査で抗体を持っていないことが判明した39〜56歳男性に限り、公費で予防接種を受けられるようにすることも検討しています。当初は30~50歳代男性への拡大を検討しましたが、ワクチンの供給量が十分ではないことなどから対象を限定し、詳細は今後、専門家の意見も聞いて決めます。
厚労省によると、今年の風疹患者は11月21日時点で2186人。30~50歳代男性が3分の2を占めます。
2018年12月2日(日)
■日本製の処方薬を中国人に横流しの疑い 医薬品卸売会社社長ら逮捕
中国で「神の薬」と呼ばれるほど人気が高い日本製の処方薬を、埼玉県の医薬品卸売会社が中国人の密売グループに横流ししていた疑いがあることが、捜査関係者への取材でわかりました。大阪府警察本部は、医薬品を無許可で販売する目的で保管していたとして、社長の男らを逮捕し、密売の実態解明を進める方針です。
逮捕されたのは、埼玉県にある医薬品卸売会社の60歳代の社長の男ら数人です。
捜査関係者によりますと、医師の処方箋が必要な痛風治療薬などの医薬品を、許可を受けずに病院や薬局以外の相手に販売する目的で保管していたとして、医薬品医療機器法違反(販売目的貯蔵)の疑いが持たれています。
中国では日本製の医薬品は、観光客からの口コミなどで評判が広がり「よく効く」として「神薬(神の薬)」と呼ばれ、医師の処方箋が必要なものは特に人気が高いということです。
警察は今年5月に、中国人向けのインターネット交流サイト(SNS)を利用して中国人観光客などに密売していた中国人のグループを摘発し、入手先について調べを進めた結果、埼玉県の医薬品卸売会社が仕入れた医薬品を大量に横流ししていた疑いがあることがわかったということです。
中国人への医薬品の密売を巡っては、医薬品卸売会社が摘発されるのは珍しいということで、大阪府警察本部は仕入れや販売の実態解明を進めることにしています。
2018年12月2日(日)
■コーヒーを1日3杯以上飲む女性、結腸がんリスクが低下 32万人以上のデータを分析
国立国際医療研究センターや国立がん研究センターなどの研究チームは7月、日本人のコーヒー飲用と大腸がんに関する研究を国際的ながん専門誌に発表しました。
国内の8つの大規模な疫学研究から32万人以上のデータを集め、総合的に分析しました。その結果、女性ではコーヒーを1日3杯以上飲む人は1杯未満の人に比べ、大腸がんの一種「結腸がん」になるリスクが20%低くなりました。男性や大腸がん全体でも、統計的に意味があるほどの差ではないものの、リスクが下がる傾向がみられました。
国立国際医療研究センターの溝上哲也疫学・予防研究部長は、「大腸がんは女性のがん死亡の第1位。リスクを高める飲酒、肥満、喫煙が男性より少ない女性で結腸がんのリスクを下げることを示すデータが得られたことは予防上意義がある」とし、「インスリンの効きが悪くなるインスリン抵抗性を抑えるなどコーヒーのさまざまな作用が、糖尿病や大腸がんの予防につながる」と見なしています。
数千人、数万人規模を長年追跡調査した疫学研究を複数まとめて評価する今回のような研究を、「メタ解析」と呼びます。
滋賀医科大の旦部幸博講師は、コーヒーと各種の病気のメタ解析の情報を集めています。2型糖尿病、心血管疾患、肝がんなどでリスクを下げる効果が認められました。一方、膀胱(ぼうこう)がんなどのリスクは上げていました。カフェインの作用が疑われていますが、はっきりしないといいます。全体の総死亡数に注目すると、コーヒーを飲まないより飲んだほうが、数%程度だが全体の死亡率を下げていました。
ただし、コーヒーは嗜好(しこう)品。野菜や果物などと異なり、厚生労働省などが摂取を積極的に勧めることはないといいます。「コーヒーが嫌いな人や、飲む習慣がない人が無理する必要はないが、1日に3、4杯程度ならばデメリットよりもメリットのほうが大きいといえるのではないか」と旦部講師は話しています。
2018年12月2日(日)
■赤ちゃん用の液体ミルク、江崎グリコが初の商品開発 来春にも販売へ
お湯で溶かさなくても飲ませることができる赤ちゃん用の液体ミルクを「江崎グリコ」が国内で初めて開発したと、11月29日に発表しました。厚生労働省の承認などを得て、来年の春にも販売を始めたいとしています。
江崎グリコが開発したのは、125ミリリットルの紙パックに入った0~1歳児向け液体ミルクです。常温で半年間、保存でき、赤ちゃんに飲ませる際はお湯に溶かす必要がないため、子育ての負担の軽減や、災害時などの備えにつながることが期待されるとしています。
欧米を中心に普及している液体ミルクについて、厚生労働省はこれまでなかったメーカーが守るべき衛生基準などを定め、今年8月から国内での製造・販売ができるようになりました。
江崎グリコは衛生基準を満たすよう紙パックに特殊加工を施し、密封性を高めたということで、商品を開発したのは国内メーカーでは初めてだということです。
江崎グリコマーケティング本部の水越由利子さんは、「自治体や家庭で備蓄してもらい、災害が起きた際に赤ちゃんの命を守る手段として役立ててもらいたい」と話しています。
母乳の代わりとなる液体ミルクを巡っては、明治も厚労省の認可を受ける準備を進めています。森永乳業も商品化を検討するなど、販売開始に向けた動きが今後加速しそうです。
2018年12月1日(土)
■臓器別でなく遺伝子変異対象に薬を承認へ がん免疫治療薬「キイトルーダ」
アメリカの製薬大手メルクが製造する、肺がんなどの免疫治療薬「キイトルーダ」について、厚生労働省の薬事・食品衛生審議会の部会は11月29日、臓器にかかわらず特定の遺伝子変異を原因とするがんの治療薬として承認することを了承しました。
使用対象の拡大が年内にも正式決定する見通し。臓器別でなく、遺伝子に着目して抗がん剤が承認されるのは初めて。
今回の使用拡大は、がん細胞の遺伝子の修復にかかわる別の遺伝子に変異があるタイプ。このタイプの患者は、大腸がんでは6%おり、胃や前立腺などのがんでもよくみられるといいます。キイトルーダが使えるようになるのは、がん関連遺伝子を網羅的に調べる遺伝子検査でこのタイプとわかった患者のうち、進行・再発がんでほかに治療法がなくなった人に限られます。
抗がん剤はこれまで、肺、胃、大腸、乳など臓器ごとに承認されてきました。しかし近年、違う臓器でも遺伝子変異のタイプが同じだと、共通して効きやすい薬があることがわかってきています。
埼玉県立がんセンターの赤木究(きわむ)医師は、「この薬は、大腸がんでは効果がわかってきているが、他の臓器も同様かどうかはまだ十分確認できていない。承認されたとしても、慎重な対応が必要だ」と話しています。
2018年12月1日(土)
■iPS細胞応用、慢性期の脊髄損傷回復 慶応大がマウスで成功
iPS細胞(人工多能性幹細胞)を使って、脊髄を損傷してから時間がたった慢性期のマウスを治療する実験に成功したと、岡野栄之(ひでゆき)慶応大教授(生理学)らの研究チームが11月30日、発表しました。
論文が29日付で、アメリカの科学誌「ステム・セル・リポーツ」(電子版)に掲載されました。損傷部位の周辺に細胞を移植すると、リハビリをしなくても運動機能が一部改善したといいます。
研究チームは、脊髄の損傷で後ろ脚が動かなくなって42日目のマウスを使用。人のiPS細胞から神経の元になる細胞を作り、その細胞にアルツハイマー病治療薬として開発された化合物「γセクレターゼ阻害剤(GSI)」を加えた後、約50万個をマウスに移植しました。GSIは神経細胞の成長を促すといい、移植した細胞は約1・5割が神経細胞に変化し、移植後56日でマウスは後ろ脚で体をある程度支えられるようになるまでに機能が回復しました。
研究チームによると、細胞移植の治療のみで慢性期の回復が確認されたのは世界で初めて。
脊髄損傷は交通事故やスポーツ中のけがなどで脊髄が損傷し、脳と体をつなぐ神経が傷付き手足のまひなどが起きます。
研究チームは脊髄損傷から2~4週間の患者を対象に、iPS細胞で治療する臨床研究を年内にも国に申請する予定。一方、国内に15万人以上いるとされる慢性期の患者については、損傷部位の周囲にかさぶた状の組織ができるなどの理由で、治療法の開発が困難でした。
岡野教授は、「慢性期はリハビリは難しく、細胞移植だけで効果があったのはよかった。しかし、まだマウスの段階なので知見を積み重ね、治療につなげていきたい」と話しています。
大阪大の山下俊英教授(神経科学)は、「マウスの実験で慢性期の機能回復を促せる手法が開発できたというのは画期的だ」と話しています。
2018年12月1日(土)
■iPS細胞使った脊髄損傷治療、慶応大が正式了承 来年にも移植へ
iPS細胞(人工多能性幹細胞)から神経の元になる細胞を作製し、脊髄損傷の患者に移植する岡野栄之(ひでゆき)慶応大教授らの臨床研究について同大は28日、計画の実施を正式に了承したと発表しました。近く厚生労働省に承認を申請します。
認められれば来年の夏にも移植を行うとみられ、iPS細胞を使った世界初の脊髄損傷の臨床研究となる見通しです。
学内の審査委員会が27日に正式に了承しました。研究チームは昨年2月に実施計画を申請し、審査委員会は今月13日に大筋で了承していました。
脊髄損傷は交通事故やスポーツ中のけがなどで脊髄が損傷し、脳と体をつなぐ神経が傷付き手足のまひなどが起きます。計画では、脊髄を損傷してから2~4週間以内で、運動機能や感覚を失った重度の成人患者を対象に、治療の安全性と有効性を確認します。
京都大が備蓄している拒絶反応が起きにくい免疫タイプの健常者の血液から作ったiPS細胞を使って、慶応大が神経細胞の元になる細胞を作製。患部に細胞約200万個を注射で移植して新たな神経細胞を形成し、神経信号の途絶を修復して運動機能や感覚の回復を促します。リハビリも同時に行い、移植後約1年間、効果や安全性を確かめます。
国内の脊髄損傷患者は年間約5000人で、重度の場合は車椅子生活を強いられます。有効な治療法はなく、新たな治療法の開発に大きな期待が寄せられています。
研究チームはすでに、重度の脊髄損傷を起こしたサルで実験し、後ろ脚で立ち上がり、握力を回復させることに成功。iPS細胞を使った移植はがん化が懸念されますが、マウスの実験でがん化しないことも確認しました。
岡野教授は、「基礎研究を始めて20年。ようやく実際の治療のスタートラインに立った。着実に知見を積み重ね、患者に届けたい」と話しています。
2018年11月30日(金)
■風疹患者、昨年の24倍の2186人に ワクチンは7都府県に重点的に流通へ
国立感染症研究所は28日、今年初めから11月18日までに報告された風疹患者が計2186人になったと発表しました。93人だった昨年1年間の約24倍に上っています。
同日までの1週間の報告数は123人で、11週連続で100人を超えました。
今年の累計患者数は、都道府県別で東京都763人(前週比35人増)、千葉県310人(16人増)、神奈川県295人(11人増)、埼玉県147人(8人増)、愛知県103人(3人増)、大阪府87人(5人増)、福岡県80人(10人増)などとなっています。患者が報告されていないのは青森県、高知県、大分県の3県。
また、患者のうち男性はおよそ1800人と女性の4・5倍となっており、男性患者全体の8割を30歳代から50歳代が占めています。一方、女性は20歳代が最も多く、患者は400人余りに上っています。
風疹の流行が関東などのほか、大阪府や福岡県にも広がっていることから、厚生労働省は予防接種のワクチンを重点的に流通させる地域を拡大することを決めました。
厚労省は29日に開かれた専門家会議で風疹を巡る今後の対策について協議しました。
風疹は、妊婦が感染すると赤ちゃんに障害が出る恐れがありますが、今年の患者数はすでに2186人に上り、30歳代から50歳代の男性が流行の中心となっています。
厚労省はこれまで特に患者が多かった東京都、千葉県、神奈川県、埼玉県、愛知県の5つの都県で予防接種のワクチンを重点的に流通させていましたが、大阪府や福岡県でも患者が増えているため重点的に流通させる地域を拡大し、これまでの5つの都県に大阪府と福岡県も加えた7都府県とすることを決めました。
厚労省は、ワクチンの数に限りがあるため、免疫が十分あるか調べる抗体検査を先に受けてもらい、免疫がないとわかった人にワクチン接種を受けるよう促しており、抗体検査の費用については今年度中にも全額公費で負担する方針を示しています。
2018年11月29日(木)
■不具合のペースメーカー、プログラム修正へ 年内にも開始
東京都中野区にある医療機器製造販売会社が、海外から輸入・販売した心臓のペースメーカーなどの医療機器に不具合を起こす恐れがある問題で、販売した会社は患者の体内から医療機器を取り出さず、内蔵されたプログラムを無線通信で修正し問題に対応することになりました。
この問題は、東京都中野区の医療機器製造販売会社「ボストン・サイエンティフィック ジャパン」がアメリカから輸入・販売した医療機器のセンサーに不具合を起こす恐れが見付かったものです。
不具合の恐れがあるのは、心臓のペースメーカー「アコレード」と「アコレードMRI」の2万4639台と、心不全の症状を改善させるための医療機器「ヴァリチュード」の311台で、その多くが患者の体内に埋め込まれているということです。
これらの製品では、センサーの一部の不具合で患者の脈の強さを誤って認識する恐れがあり、必要な血液が送られず失神など重篤な健康被害が起きる可能性があります。これまでに検査で不具合が2件見付かったものの、患者の健康被害は確認されていないということです。
販売した会社は医療機器を体内から取り出さず、内蔵されたプログラムを無線通信で修正し問題に対応することになりました。医療機関と連携しながら、年内にもプログラムの修正を始めることにしています。
会社では患者向けの問い合わせ窓口を設置しており、電話番号は0120−033−686、平日の午前9時から午後5時まで受け付けています。
2018年11月29日(木)
■ゲノム編集した中国の研究者、「もう1人妊娠の可能性」 国際会議は非難声明
「ゲノム編集」と呼ばれる技術で遺伝情報を書き換えた双子の女児を誕生させたと主張している中国の研究者が28日、香港で国際会議に出席し「もう1人、妊娠した可能性のある女性がいる」と述べました。しかし、ゲノム編集を行ったとする施設などの具体的な情報や証拠は、依然、示しませんでした。
中国の南方科技大学(広東省深圳市)の賀建奎准教授は28日、香港で開かれている国際会議に出席し「今回のことを誇りに思っている。技術を必要とする人がいるなら助けるべきだ」と述べ、ゲノム編集で遺伝情報を書き換えた双子の女児が産まれたと改めて主張した上で、自らの行為は正当だという考えを示しました。
また、「合わせて7組の男女の受精卵でゲノム編集を行った。もう1人、妊娠した可能性のある女性がいる」と述べ、遺伝情報を書き換えた胎児がいる可能性を示唆しました。
賀准教授は、会場のスクリーンにグラフや写真を映しながら説明しましたが、ゲノム編集などを行ったとする施設名のほか、男女の同意をどのように取ったのか、ゲノム編集を行う必要性をどう検討したのかなど、第三者が医学的な正当性や妥当性を検証できるような具体的な情報や証拠は示しませんでした。
一方、国際会議は最終日の29日、組織委員会名で声明を発表しました。声明では、賀准教授が主張する人の受精卵の遺伝情報の書き換えや、それを女性の子宮に戻して実際に赤ちゃんが産まれたとされる行為について、「実際に行われたのか独立した機関で調べる必要がある」とした上で、「事実とすれば無責任な手続きで、医学上の必要性は乏しいものだ。倫理上の基準を満たしておらず透明性も欠けている」と非難しました。
さらに、ゲノム編集など急速な進歩を遂げる科学技術を人に応用する場合には、安全上や倫理上の問題が伴うため議論を深めていく必要があるとし、「研究者は開かれた場で議論し、人々の理解を得ながら共通の規制や基準を作る役割を果たすとともに、国際的に登録する仕組みを作るよう働き掛けていく必要がある」としています。
香港で開かれていた国際会議に出席した研究者からは、批判や疑問の声が相次ぎました。このうち、埼玉医科大学ゲノム医学研究センターの三谷幸之介教授は、「発表を聞く限り、信頼性は高いと感じた。遺伝情報の操作は世代を超えて影響が続くので非常に責任が重い。研究者の間では、現時点での人への応用はまだ早いという認識だったが、それを無視して進めてしまったものでショックだ」と話していました。
また、オーストラリアの研究者は、「ゲノム編集は大きな可能性を秘めた技術なので、今回の問題で研究が後退しなければいいと思う」と話していました。このほかイタリアの研究者は、「子供がどこで産まれたのかや倫理委員会の承認を得たのかなどわからないことが多く、本当なのかもう少し検証することが必要だ」と話していました。
2018年11月29日(木)
■海外製の心臓ペースメーカーに不具合 販売会社が患者を経過観察へ
東京都中野区にある医療機器製造販売会社が、海外から輸入して販売した心臓のペースメーカーなど約2万5000台の医療機器にセンサーの不具合があることがわかり、この会社は医療機関を通じて、使用している患者の経過観察を行うことになりました。
経過観察の対象になるのは、東京都中野区の医療機器製造販売会社「ボストン・サイエンティフィックジャパン」が、アメリカから輸入して販売した心臓のペースメーカー「アコレード」と「アコレードMRI」の2万4639台と、心不全の症状を改善させるための医療機器「ヴァリチュード」の311台で、合わせて2万4950台です。
東京都の28日の発表によりますと、これらの製品は2015年11月25日から今年11月27日まで、全国1254の医療機関などに出荷され、その多くが患者の体内に埋め込まれているということです。
これらの製品では、センサーの一部に不具合があり、患者の脈の強さを誤って認識してしまうということで、そのまま使用すると患者が失神するなどの健康被害の可能性があるということです。
東京都によりますと、10月には、この製品を使用している患者に心拍数の異常が確認されるケースもあったということです。
ボストン・サイエンティフィックジャパンは、対象の機器を使用する患者を特定しているとしていて、医療機関に対して使用している患者の状況を経過観察するよう依頼するということです。
同社は、「患者様を始め、関係者の皆様にご迷惑をおかけすることを心よりおわび申し上げます」とコメントしています。
2018年11月28日(水)
■マスクに塗ってアレルギー反応を9割低減 エステーが花粉症対策製品を発売
エステーは28日、マスクの外側に塗る花粉症対策製品「モリラボ 花粉バリアスティック」を12月12日に発売すると発表しました。マスクだけ装着した場合に比べ、目のかゆみや鼻水の原因になるアレルギー反応を9割程度低減できるといいます。1年間で20万個の販売を目指します。
北海道のトドマツの間伐材から抽出した樹木精油を配合した薬剤を利用しました。樹木精油に含まれる香り成分は空気中に漂う花粉と結び付く性質があります。マスク周りに浮遊する花粉は香り成分と結び付くと、鼻の粘膜にある抗体と反応しにくくなり、アレルギーの発症を抑えられるといいます。一度塗ると約4時間、効果が持続します。
店頭想定価格は1058円前後。全国のスーパー、ドラッグストア、ホームセンターなどで発売します。1日4回、塗った場合で45日程度使用できます。
2018年11月28日(水)
■医学部の「地域枠」、22大学で欠員2割を超す 厚労省が公表
地方の医師不足を解消するため大学卒業後に特定の地域での勤務を義務付ける医学部の「地域枠」を巡り、2018年度に約30大学の定員が埋まらなかった問題で、このうち22大学は2割を超える定員割れを起こしていたことが、文部科学省と厚生労働省の調査で明らかになりました。
医学部の地域枠は、医師不足に悩む都道府県が奨学金を出し、返済を免除する代わりに卒業後の数年間、指定する地域や診療科での勤務を義務付ける仕組みです。
大学によっては、複数の都道府県で地域枠を設けています。文科省と厚労省はこの地域枠の学生数を初めて調査し、28日開かれた厚労省の専門家会議で結果を公表しました。
それによりますと、今年度の入試では、合わせて22の大学が23の府県で設けている地域枠で、2割以上の欠員が生じていました。
このうち国立大学は千葉大学の千葉県、東北大学の宮城県など12の大学の地域枠で、2割以上の欠員が生じていました。私立大学は近畿大学の静岡県、大阪府、奈良県、和歌山県など10の大学の地域枠で、2割以上の欠員が生じていました。
多くのケースで地域枠と一般枠を区別せずに入学試験を行い、入学後などに希望者を募る方式を採ったため、定員に達しなかったということです。最多は千葉大学の17人、次いで信州大学と東北大学の16人、近畿大学の15人、筑波大学の13人、山形大学と長崎大学の12人と続き、22大学では計161人に上ります。
国が定員を決める医学部では、10年前から地域枠を設けた大学は臨時で定員を増やせるようになりましたが、その欠員ぶんは一般枠の学生などが入学していたということです。
厚労省は、本来の機能を十分に果たしていないとして、全国の大学に対して、一般枠と区別して入学試験を行うなど改善を求めています。
一方、地域枠に欠員が生じている県からは、改善を求める声が上がっています。奈良県では、奈良県立医科大学に13人、近畿大学に2人の地域枠を設けていますが、近畿大学の枠が過去9年間の入試で定員に達したのは2回しかありません。奈良県福祉医療部の林修一郎部長は、「地域枠が埋まれば将来県内で必要な診療科の医師が増えることになるが、そういう効果が得られていないのは残念だ」と話しています。
近畿大学では、地域枠のぶん、医学部の定員が臨時で増えていますが、大学によりますと欠員のぶんは一般の学生が埋める形で入学しているということです。これについて奈良県の林部長は、「奈良のための枠が都会の医師を増やすために使われてしまっている。国からもらった非常に貴重な医学部の定員枠なので、しっかりと地域医療に役立つ形で使っていきたいし、そうした責任があると思う」と話しています。
国立大学で最も欠員の多かった千葉大学は、「学生が入学してから地域枠の希望者を募っていた。2020年度以降は地域枠の入試を別枠で行うことを検討している」としています。
次いで欠員の多かった東北大学は、「3年生になった時に地域枠の希望者を募っていた。地域枠と同じ役割を果たす別の制度を設けていて、一定の確保ができていると考えているが、今後の対応を検討したい」としています。
また、私立大学で最も欠員の多かった近畿大学は、「一般枠と同じ入試を行い、出願の際に地域枠の希望者を募集したが、その多くが合格点に達しなかった。今後は国の指導のもと、地域枠の学生の確保に努めたい」としています。
厚労省の専門家会議のメンバーで、日本医師会の今村聡副会長は、「地域枠の入試は一般入試とは別枠で行われ定員に達しているものだと思っていたので、今回の調査結果は衝撃だった」と話しました。地域枠の合格者が抑えられた理由については、「地域枠の希望者の学力が相対的に低くなることを大学側が不安視したのではないか」と指摘した上で、「地域枠の入試を別枠で行っても極端に学力が下がるとは思えず、本来の趣旨に即した入試にしてほしい。国も、大学任せにせず、地域枠の運用の在り方をチェックするべきだ」と述べました。
2018年11月28日(水)
■梅毒患者の性風俗従事歴、利用歴を確認へ 感染増加で、厚労省が対策
性行為などで感染する梅毒の患者が増え続けており、国立感染症研究所によると、今年の報告患者は11月11日時点で5955人。すでに昨年1年間の5820人を超え、48年ぶりに6000人を超す見通しとなりました。
患者の増加を受け、厚生労働省は来年1月、感染症法に基づく医療機関からの患者発生の届け出内容を変更し、性風俗への従事歴や利用歴を加えます。感染傾向を分析し、対策に生かすといいます。
根本匠厚労相は増加の要因について、27日の閣議後会見で「若年女性の患者数が増加し、異性間での性的接触による感染が増加していること」を一因とし、「梅毒の早期発見、早期治療の重要性について啓発し、対策に努めていきたい」と述べました。
国内の梅毒患者数は、1945年から1954年には20万人程度とされていましたが、ペニシリンなどの抗菌薬の普及で治療ができるようになると患者数は減少傾向を示し、1997年には報告された患者数が500人を下回りました。こうした状況は10年以上続きましたが、2010年の621人から再び増加に転じ、2013年には年間の患者の報告数が1228人と1000人を超えました。
その後、2015年には2690人、2016年は4575人、2017年は5820人と急激に増えており、今年は6000人を超すとみられています。
男性は20~50歳代から幅広く報告がありますが、女性は20歳代前半が特に多いといいます。
都道府県別の患者数は、東京都の1508人が最多。大阪府1019人、愛知県390人、神奈川県309人、福岡県268人と続き、広島県156人、岡山県143人、茨城県104人などにも広がっています。
梅毒は主に性的な接触により、スピロヘータ (梅毒トレポネーマ) と呼ばれる細菌に感染することで引き起こされる感染症です。感染してから6週間ほどは、一部の人を除いて、はっきりした症状が現れないことが多く、痛みなどの自覚症状もないのが特徴です。そして、感染から3カ月ほどで、体や手のひら、それに足の裏に「バラ疹」と呼ばれる赤い発疹や、のどの粘膜に乳白色の斑点が出るなどの症状がありますが、これも時間がたつと治まります。その後、感染から3年から10年ほど後に、顔や体にゴムのような腫瘍ができたり、血管の大動脈が破裂したりして、さらに症状が進むと、神経がまひして体が思うように動かせなくなることもあるということです。
戦前には、死亡例も報告されていましたが、現在は抗菌薬で治療ができるため、ほとんどが完治し死亡する患者はほとんどいません。しかし、妊娠中の女性が感染すると、流産したり、生まれてくる子供が「先天梅毒」になって視力低下などの障害が出ることもあります。
2018年11月28日(水)
■豊胸で充填剤を注入、しこりや感染症の合併症相次ぐ 学会が禁止の指針作成へ
美容目的の豊胸でジェル状の充填(じゅうてん)剤を注入した女性患者の間で、しこりができたり感染症が起きたりする合併症が相次ぎ、形成外科医らによる日本美容外科学会(JSAPS、正会員1220人)は1年以内を目標に、使用禁止などを盛り込んだ指針をつくることを決めました。国内では規制がないため、厚生労働省にも認可制などの仕組みを求めます。
充填剤はゼリーのような素材で、管状の器具で乳房に注入します。化学物質のポリアクリルアミドと水を混ぜたものや、シリコーン、ヒアルロン酸などの素材が使われます。シリコーン製のバッグと比べ、充填剤は全身麻酔が不要で傷が小さく、全国の美容クリニックで扱っています。
日本美容外科学会は6~7月に形成外科医約4000人に充填剤の使用に関するアンケートを実施。回答した132人のうち72人が、計108件の合併症を診察していました。症状別ではしこりなどのかたまり44%、感染症22%、皮膚変化8%、変形6%など。
豊胸の合併症を多く診療する野本俊一医師(日本医科大学付属病院)によると、充填剤は大胸筋を覆う筋膜と乳腺側の筋膜の間に注入します。その際に菌が入ったり、充填剤が乳腺に入ったりすると、炎症などが起きる恐れがあります。充填剤が乳腺や大胸筋などに散らばると、すべてを取り出すのは難しいといいます。
日本美容外科学会の大慈弥(おおじみ)裕之理事長(福岡大学副学長)は、「問題の背景には、安全性と有効性が担保されていない充填剤を医師が海外から個人輸入して使っている実態がある。充填剤の豊胸目的での使用はやめるべきだ」と話しています。
別団体の日本美容外科学会(JSAS、会員975人)も昨年3月、一部の充填剤による豊胸について、推奨できないとする声明を発表しました。
豊胸目的の充填剤を巡っては、アメリカの食品医薬品局は血管を詰まらせる危険があるなどとして使用を禁じています。流通した場合は押収や罰金などの措置を取ります。日本では、豊胸目的で国の承認を受けたものはありません。一方で、使用に対する規制がないため、医師が自由診療の中で使っており、流通量ははっきりしません。
充填剤を豊胸に使っている東京都内の医師は、「シリコーン製のバッグよりも胸が軟らかく仕上がるので患者の満足度は高い。問題を起こすのは技術のない医師で、いつ誰がどう施術したか登録する仕組みを作るべきだ」と話しています。
2018年11月27日(火)
■中国の研究者、ゲノム編集で双子誕生の動画を公開 日本の学会は反対声明を検討
中国の南方科技大学(広東省深圳市)の研究者が、「ゲノム編集」と呼ばれる遺伝情報を自在に書き換える技術を使って、エイズウイルスに感染しないよう人の受精卵を操作し、実際に双子の女児が11月に誕生したと主張する複数の動画を日本時間の26日、インターネットの動画サイトに公開しました。
人の受精卵のゲノム編集は遺伝性の病気の治療につながると期待される一方、影響が予測しきれないことなどから倫理上問題があるという指摘があり、アメリカでは、将来的には透明性を確保した上で数世代にわたって追跡調査を行うなど厳しい条件のもとでのみ容認し得るとしています。
今回は研究内容をまとめた論文が示されておらず、倫理的な手続きも明らかになっていません。
南方科技大学は、「賀准教授の研究は学術における倫理と規範に著しく違反している」とする声明を発表し、事実とすれば問題があるとして調査に乗り出しました。中国政府も、研究が本当に行われたのか調査し結果を公表するよう、広東省の担当部門に指示しました。
生命倫理が専門の北海道大学の石井哲也教授は、「生まれた子供にどのような健康問題が生じるのか検証がされていないので、悪影響が出た時には取り返しがつかず、とてつもない人権問題となる。中国国内の指針でもこうしたことは禁止されているはずで、どのような手続きで行われたのか検証する必要がある。こうした人体実験のようなことは国内でも海外でも行うべきではない」と強く非難しています。
ゲノム編集の技術を開発したカリフォルニア大学のジェニファー・ダウドナ教授は、「中国の研究者の主張が本当だとしたら、世界中の科学者が慎重に、透明性を確保した上で取り組みを進める中で逸脱した行為だ」とするコメントを出しました。
一方、人の細胞でのゲノム編集に世界で初めて成功したアメリカのブロード研究所のフェン・チャン博士は、「ゲノム編集を使わなくても子供へのエイズウイルスの感染を防ぐ効率的な方法はすでに確立されている。今回のように受精卵の遺伝子を操作することは、メリットよりもリスクのほうがはるかに大きい。十分な安全対策ができるまでは人の受精卵への応用は停止すべきだ」とするコメントを出しました。
アメリカを代表する研究者で作る「アメリカ科学アカデミー」は2017年、ゲノム編集の応用をどこまで認めるべきか、中国の研究者も加わって2年近くにわたり議論した上で報告書をまとめています。
この報告書では、ゲノム編集の人の受精卵への応用について、影響が世代を超えて受け継がれるなど倫理的な懸念がある一方、遺伝性の病気の治療につながる可能性があることから、将来的にはほかに治療の選択肢がない場合、透明性を確保し、数世代にわたる追跡調査を行うなど厳しい条件のもとで実施を容認し得るとしています。
一方、がんの遺伝子治療などの研究者でつくる日本遺伝子細胞治療学会は、今回のような研究がさらに行われるのを防ぐために、強く反対する声明を出す方向で検討を始めました。
学会では、今回の問題点として、ゲノム編集は技術的に完成していないため意図しない改変が起き、そうした改変が世代を超えて受け継がれ、人類の進化に影響を及ぼす恐れがあるとしています。また、こうした研究は技術の段階的な進歩と並行した社会的な議論を踏まえて行われるべきもので、そうした手順がない中での実施はあってはならないフライングだとしています。
日本遺伝子細胞治療学会の藤堂具紀理事長は、「早急に事実確認をした上で、理事会のメンバーで協議し、立場を明らかにしたい」と話しています。
2018年11月27日(火)
■イケア、ガラス製テーブルを自主回収 国内外で6人がけが
イケア・ジャパン(千葉県船橋市)は27日、ガラス製のテーブル「グリヴァルプ 伸長式テーブル ホワイト」を自主回収すると発表しました。国内では2017年6月から今年10月24日まで、東京都や神戸市などの8店舗とインターネット通販サイトで計379台を販売。
ガラス製の天板がレールから外れ、落下して割れる恐れがあるためで、国内では1人、海外を含めると6人がけがをしたといいます。
伸長天板を引き出すとテーブルの全長が125センチから188センチに伸びる仕組み。国内では10月半ば、落下した天板が足に当たってあざができたという報告が寄せられたといいます。
イケア・ジャパンは、「両面テープで固定していたレールが天板から外れた」としています。
購入者には商品代金を全額返金します。問い合わせは午前10時~午後7時、同社カスタマーサポートセンター(0120・151・870)。
2018年11月27日(火)
■子宮頸がん検診でHPV検査、初の推奨 国立がん研究センターが指針案
国立がん研究センターは22日までに、子宮頸(けい)がん検診として、がんの原因となるヒトパピローマウイルス(HPV)に感染しているかどうかを調べるHPV検査を初めて推奨するとの指針案をまとめました。主に海外の研究で、がんになる人を減らす効果が確認できたのが理由。本年度内に指針を改訂します。
HPV検査は、公的検診として全国の自治体で現在実施されている細胞診検査に比べて、回数が少なくてすむという利点があります。欧米ではすでに導入している国が多く、厚生労働省は公的検診の対象に加えるかどうか、専門家会合で議論する方針です。
HPV検査は、子宮頸部の細胞を採取し、HPVの有無を調べる検査。感染がわかった人に定期的に検査などを行うことで、がんになる前の段階の病変を見付けて取り除きやすくなり、結果的にがん患者を減らせると期待されます。
国立がん研究センターは、HPV検査の効果を調べた国内外の研究成果を分析。細胞の異常の有無を顕微鏡で調べる細胞診検査と比較した結果、がんを減らす効果が同等のレベルであることが判明しました。細胞診とHPVの併用検査でも同等でした。
細胞診は、公的検診では20歳以上の女性が対象で2年に1回受ける必要があるのに対し、HPV検査は30~60歳を想定しており、検査間隔は5年に1回と少なくてすみます。
ただHPV検査は、誤って陽性と判定してしまう例が多い上に、感染が確定しても免疫機能によってウイルスが排除されることも多々あり、がんになる人は一部。このため精密検査などを怠るケースが増える懸念があります。
HPV検査を公的検診に採用するには、現行の細胞診検査と組み合わせるかどうかなどの検討が必要。国立がん研究センターは今後、関連学会や厚労省に、こうした検討を進めるよう働き掛けます。
同センターの中山富雄検診研究部長は、「受診者にそれぞれの検査の性質を理解してもらうと同時に、経過観察の仕組みづくりが重要だ」と話しています。
2018年11月27日(火)
■オリンパス内視鏡使用後、欧米で190人院内感染 アメリカの遺族が提訴
医療用光学機器の世界的メーカー、オリンパス(東京都新宿区)の十二指腸内視鏡による検査・治療後、欧米の患者190人以上が抗生物質の効きにくい薬剤耐性菌に感染していたことが25日、判明しました。内視鏡の洗浄、滅菌しにくい構造が原因の可能性があります。アメリカの医療機関への注意喚起は積極的に行わないよう社内メールで指示していたことも判明しました。死者も複数出ています。薬剤耐性菌への感染が直接の死因かどうかは不明ですが、アメリカ国内では35人死亡の報道もあります。遺族らは約50件の損害賠償訴訟を起こしました。
日本からNHK、朝日新聞、共同通信が参加する国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)が今春から医療機器全般の事故を世界規模で調査し、明らかになりました。
アメリカの民主党議員の報告書や訴訟資料などによると、問題の内視鏡は福島県会津若松市の工場で製造され、2010年から欧米で販売された十二指腸内視鏡TJF-Q180Vで、2012~15年にアメリカ、オランダ、フランス、ドイツの17医療施設で190人以上が薬剤耐性菌に感染しました。
日本ではこの内視鏡は販売されず、感染は起きていません。欧米ではその後、特殊な洗浄ブラシの提供や注意喚起で安全対策が取られました。
オリンパスは、「訴訟に影響を与えるため、コメントは差し控える」としました。
2018年11月26日(月)
■中国で世界初のゲノム編集の双子誕生か 生命倫理面で論議も
中国の南方科技大学(広東省深圳市)の研究者が、遺伝子を効率よく改変できる「ゲノム編集」技術を人の受精卵に適用し、双子の女児が11月に誕生したとAP通信などが26日、報じました。事実なら、ゲノム編集で遺伝子を操作した子供が生まれたのは世界で初めて。ただ生命倫理や安全面での課題が多く、議論を呼びそうです。
大学側はホームページで、「学内では報告されていない。学術倫理や規範に反する」との声明を出し、調査を進める方針。
同大の賀建奎副教授が、AP通信や中国メディアに語りました。27~29日に香港で開くゲノム編集の国際学会で詳細を発表する見通し。
エイズウイルス(HIV)が細胞に侵入する入り口となるタンパク質の働きを遺伝子操作で抑えることで、エイズ感染を防ぐ狙いといいます。7組の男女が実験に参加し、1組が妊娠・出産しました。男性全員がHIVに感染しているものの、実際に女児がHIVの耐性を持って生まれてきたかどうかは不明で、今後18年かけて追跡調査するとしています。
これまで遺伝性難病の治療などを目的としたゲノム編集の研究は、海外で進められてきました。今回実験した賀副教授はアメリカのスタンフォード大などに留学した後、中国に戻り研究を続けました。ゲノム関連のベンチャー企業2社も起業したといいます。
ゲノム編集は生命の設計図とされる遺伝情報を精度よく改変できる画期的な技術ですが、安全性は確立していません。ある病気に感染しないように操作しても、他の病気にかかりやすくなる可能性があります。生命倫理面でも、望み通りに遺伝子を書き換える「デザイナーベビー」への応用につながりかねないとの懸念がありました。
ゲノム編集で改変した遺伝子が子孫に伝わる恐れがあり、ドイツ、フランスなどは受精卵のゲノム編集を法律で禁止しました。日本は子宮に戻す医療応用は当面禁止するものの、基礎研究のみ認める指針を国が作成中で、2019年4月にも解禁する見通しです。
南方科技大学は声明で、賀副教授が2月から休職中であることも明らかにしました。
生命倫理に詳しい北海道大学の石井哲也教授は報道を受けて、「中国では指針でこのような遺伝子改変は禁止となっているはずで、まだ論文が出ていないので真偽のほどは定かではない。生まれてから健康障害を起こす可能性があり、追跡調査が必要だ」と話しています。
2018年11月26日(月)
■体内埋め込み型医療機器の健康被害、調査結果を公表 国際調査報道ジャーナリスト連合
世界各国の記者で作る団体が、ペースメーカーや人工関節など体内に埋め込む医療機器の不具合などによって引き起こされる健康被害の実態について世界規模で調査を行い、26日から結果の公表を始めました。
調査を行ったのは、アメリカに本部を置く国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)です。
ペースメーカーや人工関節、輸液ポンプといった体内埋め込み型医療機器は、さまざまな国で同じ製品が販売されていますが、国によって認可の制度が異なる上、不具合や事故などが起きても、その情報が国境をまたいで十分に共有されているとは言い難いのが現状です。
このためICIJは、計36カ国、59の報道機関の250人以上の記者と連携して、医療機器の安全性に関する情報を世界規模で集めて分析する調査を行い、日本からもNHK、朝日新聞、共同通信が参加しました。
約1年をかけた調査では、各国で合わせて1500件以上の情報公開請求を行ったほか、医療機器が原因とみられる死傷事案や、医療機器のリコール(回収・修理)に関する情報800万件余りを集めました。
これらの情報を分析した結果、不具合などが原因で死亡したと疑われる人が過去10年間に世界で約8万3000人に上ることが判明したとしています。
ICIJは、26日からホームページに調査の結果をまとめた記事を掲載するとともに、今後、各国で集めた情報を横断的に検索できる独自のデータベースを公開することにしており、世界で流通している医療機器の安全確認に役立ててほしいとしています。
データベースの利用者は、国や医療機器メーカー、医療機器の名前で検索すれば、リコールや安全上の警告が得られます。
ICIJの調査では、医療機器メーカーは同じ医療機器を世界中で販売しています。技術の進歩により高額で最新鋭の医療機器が開発され、使用が多く見込まれる65歳以上の人口も、2030年までに世界で10億人に達するとされます。業界の年間売上高は2000年の1180億ドル(約13兆円)から、今年は4000億ドル(約45兆円)に増える見通し。
一方で、ある国でリコールや販売停止の処置が取られた医療機器が、別の国では売られ続け、不具合などによる健康被害が拡大しています。ICIJは、医療機器メーカーの対応を批判するとともに、各国政府が医師や患者に他国の情報を提供するシステムを欠いていると指摘しています。
2018年11月26日(月)
■歯の本数が少ないと適切な睡眠時間を保てない 東北大学などが研究
年を取ってもできるだけ自分の歯を保持することは健康長寿の秘訣で、これまでに、歯のない人は認知症になりやすい、骨折しやすいといった研究結果も報告されています。先ごろ東北大学などの研究チームは、65歳以上の高齢者を対象に歯の本数と睡眠時間との関連を検討し、歯の本数の少ない高齢者は、睡眠過多または睡眠不足のリスクが高くなると報告しました。
詳細は、世界睡眠学会および国際小児睡眠学会誌「Sleep Medicine」12月号オンライン版に掲載されています。
睡眠時間は短すぎても、長すぎても死亡率が上がるほか、糖尿病を始めとする循環器疾患や肥満などの全身疾患にも関連することが、過去の研究で示されています。また、歯は噛みこなしだけでなく、噛み合わせを良好に保つ役割も担っており、歯が1本もない人は下顎が上方に動くことで気道に影響が及び、睡眠時の呼吸を妨げる可能性があるとされています。しかし、これまでに高齢者を対象に歯の本数と睡眠時間との関連を調べた研究はありませんでした。
そこで研究チームは、日本の高齢者の実態把握を目的に2010年に調査が実施された日本老年学的評価研究に参加した65歳以上の男女について、現在の歯の本数と睡眠時間との関連を検証しました。睡眠時間は4~10時間を1時間ごとに区切り、歯の本数は20本以上、10~19本、1~9本、0本に4分割。睡眠時間は7時間を基準とし、性、年齢、BMI、教育歴、所得、メンタルヘルス、外出頻度、糖尿病の有無、歩行時間、日常生活行動、喫煙歴を調整した上で、睡眠不足または睡眠過多のリスクを解析しました。
解析対象は、睡眠時間の質問に対して回答の得られた2万548人で、平均年齢は73・7歳でした。
睡眠時間が7時間と回答したのは、全体の28・1%でした。歯が0本のグループでは、睡眠不足(4時間以下)が3・3%、睡眠過多(10時間以上)が9・0%だったのに対し、歯が20本以上のグループでは、それぞれ2・3%、2・8%でした。
解析の結果、歯が20本以上あるグループと比べて、0本のグループでは、睡眠不足のリスクが1・43倍、睡眠過多のリスクが1・75倍でした。また、残っている歯が1~9本のグループでは、それぞれ1・29倍、1・48倍と、0本のグループと同様の傾向が示されました。
研究チームは、「高齢者を対象に、歯の本数と睡眠時間との関係を明らかにしたのは、私たちが知る限り本研究が初めてだ」とした上で、結果については「歯の本数と睡眠時間にかかわるリスクとの関係性は、歯が1~9本残っている人よりも、歯のない人でいっそう強まった。より多くの歯を残せるよう歯の健康を保つことが、適切な睡眠時間の維持、ひいては健康長寿につながる可能性が示された」とコメントしています。
2018年11月25日(日)
■消費者庁、高齢者の冬場の入浴に注意を呼び掛け 浴槽で死亡、年4821人
「いい風呂の日」と呼ばれる11月26日を前に、消費者庁は高齢者に入浴に注意するよう呼び掛けています。日本人の暮らしに根付いた入浴の習慣ですが、入り方によっては危険と隣り合わせで、浴槽で意識を失って溺れるなどして死亡したケースは、2016年に65歳以上で4821人に上りました。同年に交通事故に巻き込まれて死亡した65歳以上の3061人を上回っています。
同庁消費者安全課によると、浴槽での死亡事故の約7割は11月から翌3月の間に発生。脱衣所や浴室と、湯を張った浴槽との温度差が大きく、血圧が急激に変化することが原因とみられます。地域差はそれほどなく、温暖な地域でも起きています。
消費者安全課は、注意点として◆入浴前に脱衣所や浴室を暖めておく→ヒートショック防止のため◆湯温は41度以下にし、湯につかる時間は10分までにする→熱中症にならないように◆入浴後、浴槽から急に立ち上がらない→意識障害(立ちくらみ)の防止◆アルコールを飲んだ直後の入浴は控える→脱水状態にならないように◆入浴前に同居者に一声かけておく→異常の早期発見、などを挙げています。
高齢者が入浴中になくなる事故の発生率と地域性と関係については、地方独立行政法人「東京都健康長寿医療センター」が2014年に公表した研究報告によると、高齢者1万人当たりの発生頻度の1位は香川県の7・16人、兵庫県の6・45人、滋賀県と東京都の5・83人と続いています。逆に、最も少ないのは沖縄県の1・78人で、次いで北海道の2・03人、山梨県の2・54人の順でした。
なぜ香川県などで多いのかは、よくわかっていません。逆に、寒冷地の北海道で少ないのは、二重窓を取り付けている家庭が多く、室内全体の温度が高めで、浴室との室温差が小さいためではないかとみられています。
2018年11月25日(日)
■胃がんの画像診断、人工知能が手助け 日本病理学会が試験運用へ
患者から採取した細胞や組織の画像を人工知能(AI)で解析して胃がんを判定する診断支援システムの試験運用を、日本病理学会が今年度内に始めます。福島など4県の計32病院が参加し、2020年度まで約3000件の症例を診断し、がんの見落としが起きないかなどを確かめます。
がんの確定診断は、細胞の形状などを顕微鏡で詳しく観察して判断しますが、担当する病理医は慢性的に不足しています。そこで、日本病理学会は、細胞組織の画像を病理医がチェックするとともにAI(病理診断支援AI)にも分析させる仕組みを考案。病理医が少なくても、AIの支援で正確にがんを見付け出し、診断の効率化と医師の負担軽減の両立を目指します。
来年3月までに福島県と徳島県の10病院でシステムの試験運用を開始。来年度には滋賀県と長野県の22病院も参加する予定です。各県では、地域の病院から、インターネット経由で大学病院など中核となる病院に画像を送ります。中核病院はAIの分析結果と病理医の判断を突き合わせ、胃がんかどうかを診断。結果を地域の病院に送り返します。
診断支援システムは、日本病理学会などが日本医療研究開発機構から計8億2000万円の補助を受けて開発しました。AIに約3000枚の画像を学習させた結果、胃がんを98%の精度で判定できるようになったといいます。
2018年11月25日(日)
■地球温暖化で年間数十兆円の損失 アメリカ政府報告書
アメリカ政府は23日、地球温暖化に関する報告書「第4次全米気候評価第2巻」を発表し、地球温暖化はすでに世界経済に損害を与えており、アメリカは炭素排出量を削減するための抜本的な行動を取らなければ、今世紀末まで年間数千億ドル(数十兆円)の損失を被ると警鐘を鳴らしました。
報告書は、地球温暖化の経済的影響について、最悪の場合、2090年の時点で、屋外での就労が困難になるなど、労働への影響が年間1550億ドル(17兆5000億円)、気温の上昇による人的な被害が同じく1410億ドル(15兆9000億円)、海面上昇による被害が1180億ドル(13兆3000億円)に上るなどと試算しています。
また、「大幅かつ持続的な世界規模の排出削減と地域的な適応努力がなされなければ、気候変動がアメリカのインフラと財産に与える損害は拡大し、今世紀中の経済成長の妨げとなる見通しだ」としました。影響は世界貿易に波及し、輸出入価格や、国外に事業やサプライチェーンを持つアメリカ企業も影響を受けるといいます。
この報告書は法律でアメリカ政府に作成が義務付けられているもので、これまで4年に1度改定され、トランプ政権では初めて。作成には政府や大学などの300人以上の研究者が参加し、エネルギー省、航空宇宙局(NASA)、海洋大気局(NOAA)など13の政府機関も携わり、1600ページ以上にまとめました。
アメリカではカリフォルニア州やフロリダ州の山火事、カリブ海やメキシコ湾岸のハリケーン被害などが相次いでいます。地球温暖化が進めば、渇水や洪水・高潮、山火事の頻度が増えたり、地域が広がったりします。報告書は対策として、温室効果ガスの排出に価格をつける炭素税などの導入や政府による排出規制、再生エネルギー研究への支援などを挙げました。
一方で、ドナルド・トランプ大統領は経済成長を優先させるなどとして、地球温暖化そのものにたびたび懐疑的な見方を示しており、報告書を踏まえ、トランプ政権が今後、地球温暖化を巡りどのような対応を取るのか注目されます。
2018年11月25日(日)
■風疹の抗体検査無料化、30~50歳代男性も 厚労省が全国に拡大
今年の風疹の流行に歯止めをかけるため、厚生労働省は抗体を持つ割合が低く感染しやすい30~50歳代男性に対し、抗体検査の費用を実質無料化する方針を決めました。すでに患者の多い地域で、自治体を通して一部男性への補助を始めていますが、全国に拡大します。
今年度の第2次補正予算案に関連経費を要求します。
風疹はワクチンで予防できるものの、妊婦には接種できません。妊婦が妊娠20週までに感染すると、赤ちゃんに心臓病や難聴、白内障など「先天性風疹症候群」と呼ばれる障害が出る恐れがあり、夫や職場の同僚の感染防止が急がれています。
しかし、1979年4月より前に生まれた男性は子供のころに公費での予防接種を1回も受けておらず、1979~89年度生まれの男性も接種は受けていても1回にとどまります。このため、約1600万人いる30歳代後半から50歳代半ばの男性は、約2割が感染を防ぐ抗体を持っていないとされ、実際に今年の流行でも患者の中心になっています。
抗体検査は免疫の有無や強さを調べることができ、費用は約6000円。妊娠を希望する女性には、国と自治体の折半で検査が無料でできる仕組みがあります。
厚労省は10月から患者が多い東京、千葉、神奈川、埼玉、愛知の1都4県の妊婦の家族らも対象に加え、来年度はさらに広げる予定でしたが、大阪府や福岡県でも患者が増えているのを受け「対策が急務」と判断。年度内から地域を全国にするとともに、対象者も30~50歳代男性全体に拡大し、自治体に補助制度を設けるよう促すことにしました。抗体検査で免疫がないとわかれば、ワクチンの予防接種を促します。
国立感染症研究所によると、今年の風疹患者は11日までの報告で2032人に上り2012~13年以来の大流行となっています。
2018年11月24日(土)
■温室効果ガスの濃度、また観測史上最高を更新 世界気象機関が発表
地球温暖化の原因となる二酸化炭素など3種類の温室効果ガスの世界の濃度が、昨年、いずれも観測史上最も高くなったことがわかりました。
世界気象機関(WMO)は、主要な3種類の温室効果ガスの世界の平均濃度について、各国の気象当局や研究機関が観測した昨年のデータを解析し、22日、年報を公表しました。それによりますと、二酸化炭素が405・5ppm、メタンが1859ppb、一酸化二窒素が329・9ppbと、いずれも一昨年を上回り、世界各地で観測を始めた1984年以降、最も高くなりました。
このうち、二酸化炭素と一酸化二窒素は1984年以降、毎年、増え続けています。また、産業革命前からは二酸化炭素は46%、メタンは157%、一酸化二窒素は22%増加したとしています。
温室効果ガスでオゾン層破壊物質でもあるフロンガスの一種「CFC―11」の排出量も公表。ビルの断熱材などに使われ、規制によって2010年には生産量がゼロになり、大気中の濃度は減少していましたが、今回の年報で減少幅が小さくなっていると指摘しました。東アジアでの排出量が増えているとみられるといいます。
12月2日にポーランドで開催予定の国連気候変動枠組み条約第24回締約国会議(COP24)を前に、WMO高官は、2015年の地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」で設定した、産業革命前からの気温上昇を2度未満に抑えるとの目標達成のため、各国政府に再び圧力を強めています。
ペッテリ・ターラス事務局長は声明で、「濃度の増加が止まる兆候はなく、地球温暖化や海面上昇、異常気象の増加などに拍車をかけている」として、「二酸化炭素や他の温室効果ガスを早急に削減しなければ、気候変動は地球上の生命にますます破壊的で不可逆的な影響を与えるだろう」と警告しました。解析にかかわった気象庁は、「大雨の頻度が増えるなど、地球温暖化による災害のリスクが高まっていると考えられ、引き続き、温暖化対策を進める必要がある」と話しています。
2018年11月24日(土)
■不正入試の東京医科大、国際基準の認定取り消し 日本医学教育評価機構
不正入試が明らかになった東京医科大学が、全国の医学部のある大学を評価する民間機関から受けていた国際基準を満たすという認定を取り消されました。約30大学が認定を受けていますが、取り消されたのは初めてです。
医学部のある全国の80大学が会員となっている評価機関「日本医学教育評価機構」によりますと、この制度は昨年に始まり、大学側が教育内容や学生の受け入れなど9つのの観点から、世界医学教育連盟(WFME)の国際基準を踏まえて評価を受けます。これまでに東京医科大学を含む新潟大学、東京医科歯科大学、東京慈恵会医科大学、千葉大学、東京大学など約30大学が国際水準を満たしているという認定を受けていました。
22日に開かれた日本医学教育評価機構の理事会で、東京医科大学は不正入試をしていた点から「教育機関として不適格だ」と判断され、認定を取り消す決定が出たということです。
認定が取り消されたことで、東京医科大学の学生や卒業生はアメリカでは医師免許が取れなくなる可能性があるということです。
2018年11月23日(金)
■脊髄損傷の治療、患者の細胞を医療製品として承認へ ニプロが開発
事故などで脊髄が傷付き手や足などが動かせなくなった患者の治療に使う、患者自身から取り出した特殊な細胞について、厚生労働省の専門部会は医療製品として承認する方針を決めました。今後、保険の適用に向けた手続きが行われる見込みで、脊髄損傷を治療するための細胞が医療製品として承認されるのは初めてです。
脊髄損傷は、事故などで背骨の中の神経が傷付いて手や足の感覚がなくなったり動かなくなったりするもので、患者は国内に10万人以上いるとみられ、毎年5000人が新たに患者になるといわれます。リハビリによって一部の運動機能が戻ることもあるものの、根本的な治療法はありません。
医療機器メーカーの「ニプロ」は札幌医科大学と共同で、脊髄が損傷した患者の骨髄の中から、「間葉系幹細胞」と呼ばれる特殊な細胞を取り出し、培養して増やした上で、5000万個から2億個程度を血液中に戻すことで、症状を改善させる治療法の開発を行ってきました。
間葉系幹細胞は脊髄の傷付いた部位に集まって神経細胞に変化したり、傷付いた細胞を修復させる物質を出したりして症状を改善させるということで、厚労省の専門部会は21日、「一定の有効性が期待できる」として、今後7年以内に改めて有効性や安全性を検証することなどを条件に、この細胞を医療製品として承認する方針を決めました。
厚労省によりますと、脊髄損傷を治療するための細胞が医療製品として承認されるのは初めてで、世界的にも珍しく、今後、保険を適用する手続きが進められる見込みです。
治療の対象は自力で歩けないなど比較的重症の患者で、損傷から1カ月以内に骨髄を採取します。失われた感覚や運動機能の改善が期待されます。臨床試験(治験)では、治療を受けた13人のうち12人に効果があったといいます。
脊髄損傷を巡っては、慶応大学の研究チームがiPS細胞(人工多能性幹細胞)を使った臨床研究を計画しているほか、海外ではES細胞(胚性幹細胞)を使った臨床研究が行われています。
2018年11月22日(木)
■21世紀末、同時多発的な気象災害のリスク増 日米欧研究チーム
21世紀末には地球上の多くの地域で熱波や山火事、豪雨、高潮といった複数の壊滅的な気象災害が一度に発生するようになると警告する論文が19日、イギリスの科学誌「ネイチャー・クライメート・チェンジ」に掲載されました。論文は日米欧の研究チームによるもので、「対策が別の災害で機能しなくなることもあり、多様な対策を検討すべきだ」としています。
論文の共著者の一人、アメリカ・ハワイ大学マノア校ハワイ海洋生物学研究所のエリック・フランクリン氏は、「人間社会は危険な相互に作用し合う複数の気象現象による複合的で壊滅的な影響を受けるようになるだろう」と警告しています。
大気中の二酸化炭素(CO2)やメタンなどの温室効果ガスが過剰になったため、生命を脅かす大規模な気象災害が発生し始めています。始まりは気温上昇で、主に乾燥地帯で干ばつ、熱波、山火事を引き起こし、非乾燥地帯には豪雨や洪水をもたらします。
地球温暖化によって海上で発生する暴風雨は巨大化し、その被害は海面上昇によって拡大します。
従来は、気候変動が引き起こす個々の事象についての研究が多く、人間社会が同時に複数の気象災害に見舞われる可能性が見逃されがちでした。
しかし、例えばアメリカ・フロリダ州は昨年、深刻な干ばつ、記録的な気温上昇、100件を超える森林火災、同州史上最大級の勢力だった大型ハリケーン「マイケル」の上陸を経験しました。
論文の主執筆者、ハワイ大のカミーロ・モラ教授は、「1つ、もしくは2~3の気象災害のみに注目すると、ほかの気象災害がもたらす影響が覆い隠され、気候変動が人類に及ぼす影響の評価が不完全なものになってしまう恐れがある」と語っています。
複数の気象災害が一度に発生するリスクは地域によって異なり、人類が速やかに温室効果ガスを削減できるかどうかによっても変わってきます。
人類が気温上昇を産業革命前と比べて2度未満に抑えることができれば、今世紀末にニューヨーク市が猛烈な暴風雨といった危険な気象現象に見舞われるのは1年に1回程度ですむでしょう。
しかし、温室効果ガス排出が現状のペースで進み、世界の平均気温が20世紀末より4度程度上昇した場合、ニューヨーク市は同時に最大で4つ、ロサンゼルスやオーストラリア・シドニーは3つ、メキシコの首都メキシコ市は4つ、ブラジルの大西洋沿岸では5つの危険な気象現象に見舞われる恐れがあります。どの予測シナリオでも、最も大きな被害を受けるのは熱帯沿岸地域で、東南アジアやアフリカ東部・西部、中南米の大西洋側では、6つのに気象災害さらされる危険性があるといいます。
研究チームは、同時多発的な気象災害リスクを調べるため、数千件の査読論文からデータを集め、火災、洪水、雨量、海面上昇、土地利用の変化、海洋の酸性化、暴風雨、温暖化、干ばつ、淡水供給への気候変動の影響を分析。地球温暖化の「副産物」が人の健康、食料、水の利用、経済、社会基盤、安全保障の6分野に与える影響を調べました。
論文の共著者の一人、アメリカ・ウィスコンシン大学マディソン校グローバルヘルス研究所のジョナサン・パッツ教授は、「熱波や猛烈な暴風雨といった気候変動の直接的な脅威だけを注視していると、より大きな脅威の不意打ちを受けることは避けられないだろう。脅威が組み合わさることで社会への影響はより大きいものになり得る」と警告しています。
論文によれば、極地方に近い温帯に位置するオーストラリア・タスマニア、カナダやロシアの一部など、とりわけグリーンランドは気候変動による壊滅的な被害を免れそうだといいます。
研究チームの平林由希子・芝浦工業大学教授(水文学)は、「温室効果ガスの削減目標や被害軽減の適応策を検討する場合には、複数災害の可能性も考慮する必要がある」と指摘しています。
2018年11月22日(木)
■名古屋工業大、サリドマイドの副作用防ぐ仕組み解明 血液がん治療薬で使用
胎児に奇形を引き起こした薬害で知られ、現在は血液がんの治療薬として使われているサリドマイドについて、名古屋工業大学の研究チームが20日、薬の副作用を防ぐ仕組みを解明したと発表しました。「薬の安全性と効果を高める研究の手掛かりにしたい」としています。
研究結果は同日、イギリスの科学誌「サイエンティフィック・リポーツ」(電子版)に掲載されました。
柴田哲男教授(フッ素化学)によると、サリドマイドの分子は右手と左手のように鏡に映した関係の二つの形があります。「左手型」の分子には奇形を引き起こす働きがあるものの、「右手型」だけを投与しても体内で一部が左手型に変わってしまうことがわかっています。このため現在は左右が混合した状態で販売され、胎児への影響から妊婦などの使用は禁止されています。
だが、右手型だけを投与したマウスに奇形が出なかったとする海外の実験結果があることから、研究チームでは、体内で一部が左手型に変わっても何らかの作用で奇形が防がれているのではないかと仮定。体内の環境に似せた溶液の中で調査した結果、右手型を多くした場合、一部が左手型と1対1に結び付いて、新たな分子を形成。安全で吸収されやすい右手型だけの分子が残ることで、薬害のリスクを抑えることにつながるといいます。
柴田教授は、「左右同量の現在の薬の型より、右手型が多いほうがリスクは低くなることは明らか」と指摘。その上で「右手型だけの合成には多大なコストがかかる。血液がんの治療薬としての効果にどう影響するかなども未解明で、一層の研究や検討が必要だ」と話しています。
サリドマイドは1950年代から60年代に妊婦のつわり防止などに使用されて薬害を起こし、国内では推定1000人が被害を受けました。血液中の特殊細胞が骨髄で増殖し、全身の骨を破壊する「再発または難治性の多発性骨髄腫」の治療薬として、2008年に再承認されましたが、妊婦の服用などが禁じられています。
2018年11月22日(木)
■iPS細胞由来の腸でノロウイルスを増殖 大阪大が成功、ワクチン開発に光
人のiPS細胞(人工多能性幹細胞)から作製した腸の細胞を使い、食中毒の原因となるノロウイルスを増やす方法を確立したとする研究成果を、大阪大学などの研究チームが20日、発表しました。予防法や治療法の開発に活用できるといいます。
ノロウイルスは、口から感染すると、小腸の上皮細胞で増え、激しい下痢や腹痛、嘔吐(おうと)などの症状が出ます。感染力がとても強く、毎年、集団感染が問題となっています。ウイルスを小腸から採取した細胞で増やす方法はあるものの、人の生きた細胞を使うことには倫理面の課題があり、ワクチンや特効薬の開発などの障害になっていました。
研究チームはiPS細胞を小腸の上皮細胞に分化させ、厚さ0・01ミリ・メートルのシートを作りました。シートにノロウイルスを感染させると、約70時間でノロウイルスの数が最大500倍に増えたといいます。このシートを60度で15分間加熱したり、濃度0・1%の次亜塩素酸ナトリウム溶液で30分間処理したりすると、ノロウイルスの増殖を抑えられました。さらに、数年前に日本で流行したタイプのノロウイルスを「免疫」にすることで、毎年最も流行するタイプのノロウイルスにも効果があることがわかりました。
研究チームの佐藤慎太郎・大阪大学特任准教授(免疫学)は、「iPS細胞のほうが産業応用に向いている。ノロウイルス研究のスピード化が図れ、ワクチン開発につながるのではないか」と話しています。
佐藤俊朗・慶応大学教授(消化器病学)は、「iPS細胞で作った腸の細胞は、胎児の細胞のように成熟しきれない課題がある。免疫や薬の効果を詳しく調べるには、大人の腸と比較した検証が必要だろう」と話しています。
研究成果は、アメリカの消化器病学会の学会誌に発表します。
2018年11月22日(木)
■消費増税に伴い初診料と再診料引き上げ 数円から数十円の見通し
来年10月の消費税率10%への引き上げに伴い、医療機関にかかる際の料金や入院料が、同月から引き上げられます。具体的な増額幅は年明け以降に決まりますが、初診料と再診料の自己負担は数円から数十円増える見通しです。
厚生労働省が21日、中央社会保険医療協議会(中医協=厚労相の諮問機関)の分科会で、消費増税に対応する診療報酬改定案を示し、おおむね了承されました。
医療機関が医療機器などを買う時には消費税がかかるものの、患者が窓口で払う料金は非課税で医療機関に負担が生じるため、診療報酬を引き上げて医療機関の負担を減らします。
診療報酬改定案は、現在2820円の初診料と720円の再診料などを上げるとしました。これに伴い、患者が自己負担する額(年齢や年収によって1~3割)も増えます。
消費税率が5%から8%になった2014年度の増税対応で補えたのは、医療機関全体で負担増分の92・5%。病院は85・0%にとどまった一方、診療所は111・2%でした。こうしたばらつきをならすため、今回は病院の負担軽減を手厚くし、入院基本料の引き上げ幅を大きくする方針です。入院基本料は、医療機関の種類や規模に応じて決まっています。
2018年11月21日(水)
■赤ちゃんポストの国際組織、慈恵病院などが設立 10カ国11団体が連携
親が育てられない子供を匿名で預かる「こうのとりのゆりかご」(赤ちゃんポスト)を運営する熊本市の慈恵病院は20日、同じ取り組みを行っている海外の団体と「国際ベビーボックス連盟」を設立したと発表しました。計10カ国の11団体が連携し、海外では「ベビーボックス」などと呼ばれる赤ちゃんポストが抱える課題の解決を目指します。
慈恵病院によると、設立は1日付で、アメリカやドイツ、ロシア、韓国などの団体が参加。4月に熊本市で赤ちゃんポストをテーマにした国際シンポジウムが開かれた際、各国の団体が情報交換の場を設けることで合意していたといいます。
国際ベビーボックス連盟は11月29日に開設するホームページで、子供の命をつなぐ海外事例の情報を発信するほか、団体間の相互訪問やシンポジウムの定期開催などで連携を図ります。
事務局長を務める慈恵病院の蓮田健副院長は記者会見で、「ゆりかごには『育児放棄を助長する』『出自を知る子の権利を損なう』などの批判がある。互いの活動を参考にしながら課題解決に取り組みたい」と話しました。
2018年11月21日(水)
■母乳に近い成分の「液体ミルク」を江崎グリコが製品化 来春にも発売、災害時に活用へ
乳児用液体ミルクの日本での販売が、来年春に始まる見通しとなりました。来年後半とみられていましたが、国内メーカーの「江崎グリコ」が準備を急いだ結果、半年前倒しできることになりました。
育児負担の軽減につながると期待されるほか、災害時の支援物資としても活用が見込まれます。
液体ミルクは、乳児に必要な栄養素を加えた乳製品。成分は母乳に近く、封を開ければ、常温のまますぐに飲ませることができます。日本で主流の粉ミルクは、お湯で溶かした後、赤ちゃんが飲みやすい温度まで冷ます必要があり、手軽さは液体ミルクの利点の一つです。ヨーロッパなどで一般販売されています。
日本では今年8月、液体ミルクの規格基準を定めた改正厚生労働省令の施行で国内販売が解禁されたことを受け、各メーカーが製造・販売の本格検討に入りました。ただ、販売には厚労相の承認のほか、消費者庁から乳児の発育に適した「特別用途食品」の許可を得るなど、厳しい審査をクリアする必要があります。このため、流通開始は「早くて来年後半」とみられていました。
しかし、粉ミルクの製造・販売も手掛ける大手菓子メーカー「江崎グリコ」が7月、乳児を持つ親1000人に行ったアンケート調査で、液体ミルクを「使ってみたい」と答えた人が51・8%に上るなど、需要の高さが判明。各メーカーも積極的に開発を進め、江崎グリコでは製品化に成功し、販売開始を前倒しできるめどが立ったといいます。商品は紙パック容器入りで、0~1歳児向けに1本125ミリ・リットル。価格は未定ながら、粉ミルクより割高になる見通しです。
液体ミルクは長年、日本で販売されてきませんでした。粉ミルクに比べ品質を保てる期間が短く、価格も割高になるため、「需要がどれくらいあるか見通しが立たなかった」からです。
国内販売解禁の機運が高まったのは、2016年4月の熊本地震で、フィンランド大使館が液体ミルクを救援物資として被災地に届け、注目を集めました。これを受け、政府が販売解禁に向けてかじを切りました。
今年起きた西日本豪雨の際も、東京都が岡山、愛媛両県の被災地に紙パック入りの液体ミルクを提供。日本栄養士会などでつくる「赤ちゃん防災プロジェクト」は、液体ミルクの一般販売が始まれば、災害時の救援物資として備蓄する取り組みを進めるよう全国の自治体に呼び掛ける方針です。
2018年11月21日(水)
■座礁マッコウクジラの胃からプラスチックごみ6キロ インドネシアの海岸で発見
インドネシアの海岸に打ち上げられたマッコウクジラの胃の中から、飲み物のカップやポリ袋など、約6キロに上るプラスチックごみが見付かり、国際的な環境保護団体はプラスチックの消費を減らすことが緊急の課題だと訴えています。
環境保護に取り組むNGOの世界自然保護基金(WWF)インドネシアによりますと、11月18日にインドネシア中部スラウェシ島南東部のワカトビ国立公園にあるカポタ島の海岸に、体長約9・5メートルのマッコウクジラの死体が打ち上げられました。
研究者らがこのクジラを調べたところ、体内から重さ6キロに上るプラスチックごみが見付かりました。その内訳は、約3・2キロのプラスチック製のひもに加え、ミネラルウォーター入りで売られるカップが115個、ポリ袋が25枚、ペットボトル4本などで、ビーチサンダルも2足含まれていました。海に流出したプラスチックごみを飲み込んだとみられます。
クジラが死亡した原因とごみとの関係はわかっていませんが、WWFインドネシアは「プラスチックによる海洋汚染が海や生き物に取り返しのつかない影響を与えている」として、プラスチックの消費を減らすことが緊急の課題だと訴えています。
今年6月にはタイ南部でも、死んだゴンドウクジラの胃の中から7・7キロを超すプラスチックごみが見付かり、80枚以上のポリ袋を飲み込んでいたといいます。
海洋保護団体の2015年の報告書によると、世界の海に流出したプラスチックごみの50%以上は、中国、インドネシア、フィリピン、タイ、ベトナムから来ていました。この5カ国から流れ込むプラスチックごみを65%削減すれば、世界のプラスチックごみの45%削減につながると報告書では指摘しています。
アメリカ政府がこのほど実施した調査によると、対策を講じなければ、世界の海を汚染するプラスチックの量は10年以内に3倍に増える見通し。こうした実態を受け、欧州連合(EU)の欧州議会は使い捨てプラスチック禁止法案を可決し、2021年に実施する見通しです。
2018年11月21日(水)
■第一生命が認知症保険を発売 大手生保としては初めて
第一生命保険は20日、大手生命保険会社としては初めて「認知症保険」を発売すると発表しました。これまで認知症は介護保険などに特約として追加する形でカバーしていましたが、今回は認知症だけを保障する保険として打ち出します。
「人生100年時代」の到来を見据え、市場拡大の目算が大きく、シニア層の関心も高い商品を提供します。
新たに発売されるのは「かんたん告知『認知症保険』」。認知症と診断されると給付金が出るタイプで、12月18日の発売を予定しています。40歳から85歳までが加入でき、契約から2年が経過した後、認知症と診断された場合、加入期間に応じて200万円から1000万円の保険金が支払われます。
東京都内で開かれた発表会で、第一生命保険の南部雅実常務は「健康不安があり今まで介護保険に入りにくかった高齢者のために開発した」と語りました。
発表会では、アメリカのITベンチャーと共同開発した目の動きでアルツハイマー型認知症を早期発見できる新サービスも公開。認知症保険の加入者とその家族向けに提供される認知症予防のスマートフォンアプリに実装され、脳トレや食事管理も行えます。
第一生命保険によると、2012年に462万人、2015年に525万人だった認知症患者は2025年には730万人に達し、65歳以上の高齢者の5人に1人が認知症になると予想され、市場拡大が見込まれます。他の大手生保に先駆けて存在感を強めたい狙いです。ターゲットのシニア層はすでに生命保険に加入している人が多く、新規取引は難しかったものの、身近な不安である認知症をピンポイントに保障する保険で提案の幅を広げます。
認知症保険は、T&Dホールディングス傘下の太陽生命保険と朝日生命保険の中堅2社が先行して販売しています。
2018年11月21日(水)
■マラリア薬化合物にエボラ出血熱の抑制効果 鹿児島大が確認し、新薬開発へ
鹿児島大学難治ウイルス病態制御研究センター(鹿児島市)の馬場昌範教授らの研究チームは20日までに、マラリアの治療薬「アモジアキン」の化学構造を変えた化合物に、エボラ出血熱のウイルス増殖を抑える効果があることを確認したと発表しました。研究結果は、国際学術誌「アンチバイラル・リサーチ」(電子版)に掲載されました。
今後、この化合物を基にした新薬の開発を目指します。
馬場教授は、マダニが媒介する感染症「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)」の治療薬の開発を目指した研究を行っており、アモジアキンを利用しています。アモジアキンにはエボラ出血熱患者の死亡率を低下させる効果がみられるとする別の研究者の論文が発表されたことから、抗エボラウイルス作用に関する研究も進めていました。
馬場教授らは、アモジアキンの化学構造を変えた約100種類の化合物を合成。共同研究しているアメリカの研究者が行った実験で、試験管内の培養細胞にエボラウイルスと化合物を投与したところ、アモジアキンの炭素原子を増やすなど2カ所の構造を変えた化合物が、ウイルスの増殖を強く抑える効果を示したといいます。
今後はアメリカでマウスなどを使った実験を行う方針。馬場教授は、「動物で効果を確認できれば、エボラ出血熱の新規治療薬につながることが期待できる」と話しています。
2018年11月20日(火)
■今年の梅毒患者、6000人に迫る 統計開始から20年間で最多
性感染症の「梅毒」の患者数が11月11日までに6000人近くに迫り、国立感染症研究所が現在の方法で統計を取り始めた1999年以降の20年間で最も多くなったことが20日、明らかになりました。専門の医師は「不特定多数との性的な接触を避け、コンドームの使用など予防の意識を徹底してほしい」と呼び掛けています。
梅毒は性的な接触などによってうつる細菌性の感染症で、発疹などの症状が出て、治療せずに放置すると血管が破裂したり、妊婦が感染すると子供に障害が残ったりする可能性があります。
国立感染症研究所によりますと、11月11日までに全国の医療機関から報告があった今年の梅毒患者は5955人と、すでに昨年1年間を上回り、現在の方法で統計を取り始めた1999年以降の20年間で最も多くなりました。
都道府県別には、東京都で1508人、大阪府で1019人、愛知県で390人などと大都市圏で多くの患者が報告されています。
梅毒の年間の患者数は1945年から1954年には20万人程度とされていましたが、ペニシリンなどの抗菌薬の普及で治療ができるようになると患者数は減少傾向を示し、1997年には報告された患者数が500人を下回りました。こうした状況は10年以上続きましたが、2010年以降再び増加に転じ、2013年には年間の患者の報告数が1228人と1000人を超えました。
その後、2015年には2690人、2016年は4575人、2017年は5820人と急激に増えており、今年も6000人を超えるとみられています。
増加の背景には、海外の流行地から日本を訪れる外国人観光客の増加や、交際相手などを手軽に探せるマッチングアプリの普及などで不特定多数の相手と性的な接触を持つ機会が増えていることがあるのではないかと専門家は指摘しています。
梅毒は主に性的な接触により、スピロヘータ (梅毒トレポネーマ) と呼ばれる細菌に感染することで引き起こされる感染症です。感染してから6週間ほどは、一部の人を除いて、はっきりした症状が現れないことが多く、痛みなどの自覚症状もないのが特徴です。そして、感染から3カ月ほどで、体や手のひら、それに足の裏に「バラ疹」と呼ばれる赤い発疹や、のどの粘膜に乳白色の斑点が出るなどの症状がありますが、これも時間がたつと治まります。その後、感染から3年から10年ほど後に、顔や体にゴムのような腫瘍ができたり、血管の大動脈が破裂したりして、さらに症状が進むと、神経がまひして体が思うように動かせなくなることもあるということです。
戦前には、死亡例も報告されていましたが、現在は抗菌薬で治療ができるため、ほとんどが完治し死亡する患者はほとんどいないということです。しかし、妊娠中の女性が感染すると、おなかの中の胎児に感染し、生まれる赤ちゃんに重い障害が残るケースもあります。
感染して半年から2年程度は、細菌が患者の体内で増殖するため、ほかの人にうつすリスクが高く、予防の観点からも半年以内に治療を始めるのが重要だとされています。
感染の防止には、不特定多数の人との性的な接触を避けるほか、コンドームを正しく使うこと、さらに、新しい相手と交際を始める時や結婚する時、妊娠を考える時など、節目ごとに互いが梅毒の検査をする「節目検診」も予防には効果的だといいます。
東京都新宿区で性感染症の診療に当たる「プライベートケアクリニック東京」院長の尾上(おのえ)泰彦医師は、「梅毒は最初は自覚症状がなく、感染したことに気付にくいのが特徴だ。検査でわかりさえすれば治る感染症なので、痛みを伴わない発疹などの症状に気付いたら、皮膚科のほかに泌尿器科や婦人科など、梅毒について知識と経験の豊富な専門の医師を、速やかに受診してほしい」と話しています。
2018年11月20日(火)
■風疹患者、5年ぶりに2000人超える 3分の2は30~50歳代男性
風疹の患者数は、11月11日までの1週間に新たに139人報告され、今年のこれまでの患者は2032人となりました。患者が2000人を超えたのは、風疹が大流行した2013年以来です。
国立感染症研究所は20日、女性は妊娠の前に2度ワクチンを接種しておくほか、流行の中心となっている30歳代から50歳代の男性などにも、抗体があるか検査を行った上、ワクチン接種による感染拡大の防止を呼び掛けています。
風疹は、発熱や発疹などの症状が出るウイルス性の感染症で、妊娠中の女性が感染すると生まれてくる赤ちゃんの目や耳、心臓などに障害が起きる「先天性風疹症候群」となる恐れがあります。
国立感染症研究所によると、11月11日までの1週間に全国の医療機関から報告された新たな風疹の患者は139人で、10週連続で100人を超えました。これにより、今年これまでの患者は2032人となり、風疹が大流行した2013年の後の5年間で初めて2000人を超えました。
全体の7割余りは首都圏の患者ですが、東海地方や近畿地方、福岡県など各地で患者が増加しています。
都道府県別では、東京都が前の週から54人増えて716人、千葉県が9人増えて294人、神奈川県が25人増えて275人、埼玉県が11人増えて138人、愛知県が2人増えて97人、大阪府が13人増えて83人、福岡県が15人増えて70人などとなっています。
また、男性の患者が1600人余りと女性の4・5倍になっており、男性患者全体の8割、患者全体の3分の2を30歳代から50歳代が占めています。一方、女性は20歳代が最も多く、患者は130人に上っています。
根本匠厚生労働大臣は閣議の後の記者会見で、「職場で感染するケースも報告されており、30歳代から50歳代の男性の患者が多く、事業者側の協力を得ながら対策を進めることが必要だ。従業員が、抗体検査や予防接種のために医療機関の受診を希望した場合には、事業者側が勤務などに配慮するよう、都道府県の労働局などを通じて協力を求めたい。さらなる対策に向けて、感染状況や抗体検査の実施状況、それにワクチンの需給状況などを踏まえて、速やかに検討していきたい」と述べました。
患者全体の3分の2を30歳代から50歳代の男性が占めている背景には、この世代の男性にワクチンの定期接種がなかったため、免疫が十分でない人が多いことがあるとみられます。
こうした働き盛りの男性が集まる職場が、感染を広げる場になっていると指摘されており、国立感染症研究所の調査でも、感染経路の推定ができた今年の患者340人のうちほぼ半数の166人が、感染した可能性がある場所を「職場」と答えています。
こうした中、東京丸の内のオフィス街にあり、受診する人の9割がサラリーマンの「東京ビジネスクリニック」には、10月から毎日30人ほどが風疹の抗体検査やワクチン接種に訪れているということです。
院長の内藤祥医師は、「これだけ風疹に関する診療が多くなることはここ数年ではなかった」と話し、「先天性風疹症候群子供が生まれることを避けるため、妊娠中の女性だけが注意するのではなく、職場にいる男性も感染を広げないよう対策する必要がある」と指摘しています。
内藤医師は、「ワクチンは、風疹を防ぐ唯一かつ最も効果のある対策といえるので、多くの人に接種してほしい」と訴えた上で、仮に風疹に感染してしまった場合について「感染力が強く、手洗いやマスクでは完全に防ぐことはできないので、職場や通勤途中で感染を広げないため、体調がよくなったと思っても完全に治るまでは医師の指示に従って自宅で安静にしてほしい」と呼び掛けています。
2018年11月20日(火)
■精神疾患患者の4割、医師の説明「不十分」と回答 精神科医らが調査
精神疾患で医療機関を受診した患者の4割は、精神科医や心療内科医ら担当医の説明が不十分だと感じていることが、精神科医らでつくる研究チームの大規模調査でわかりました。精神科を担当する医師の診察時の態度について、患者側に尋ねる調査は珍しく、日本精神神経学会の学会誌に掲載されました。
調査は、全国の患者団体などを通じて患者と家族の計1万8000人に郵送で質問用紙を送付。有効回答は6202人(患者2683人、家族3519人)。
医師の診察時の態度に対する患者の評価は、「早く診察を切り上げようとする雰囲気がある」41%、「病名や薬について十分な説明がない」37%、「回復の見通しについて納得できる説明がない」36%など、十分な説明がないことへの不満が目立ちました。
一方で、「専門家として自信を持っている」85%、「親しみやすい雰囲気」83%、「頼りがいがある」83%など、高い評価を受けている項目もありました。
調査を行った「やきつべの径(みち)診療所」(静岡県焼津市)の児童精神科医、夏苅(なつかり)郁子さんは、「医師は診察室では圧倒的に強い立場で、患者や家族は評価どころではない。主治医のご機嫌を損ねないように顔色を見ている。精神疾患の治療には良好なコミュニケーションが不可欠。医師は患者との接し方を見直す切っ掛けにしてほしい」と話しています。
調査結果は、小冊子にして全国の精神科病院などに配布する予定。
2018年11月20日(火)
■認知症の人の3割、一般病院への入院時に身体拘束を経験 がん研究センター調査
認知症の人が病気やけがの治療で一般の病院に入院した際、ほぼ3割が体を縛られるなどの拘束を受けていたとする全国調査結果を、国立がん研究センターと東京都医学総合研究所の研究チームがまとめました。拘束の主な理由は、入院中の事故防止でした。
研究チームは、「認知症の高齢者は、身体拘束を受けると、症状が進んだり筋力が低下したりしやすい。不必要な拘束を減らす取り組みが求められる」と指摘しています。
中西三春・東京都医学総合研究所主席研究員らは昨年、全国の一般病院(100床以上)3466施設に調査書を送り、937施設から有効回答を得ました。主に病気やけがの初期治療を行う急性期とリハビリなどを行う回復期の病院を対象としました。集中治療室(ICU)や、精神科病院は除外しました。
集まったデータを分析したところ、認知症かその疑いがある入院患者2万3539人のうち、28%に当たる6579人が、拘束帯やひもなどを使った拘束を受けていました。ベッドの四方を柵で囲むだけのケースは含んでいません。こうした一般病院での実態は、これまでほとんど明らかになっていませんでした。
身体拘束の内容(複数回答)は、「車いすに拘束帯などで固定」13%、「点滴チューブなどを抜かないよう(物をつかみにくい)ミトン型の手袋をつける」11%、「ベッドからの転落防止で患者の胴や手足を縛る」7%、「チューブを抜かないよう手足を縛る」5%、「徘徊(はいかい)防止で胴や手足を縛る」4%などでした。
身体拘束は本来、意識が混乱した患者の生命や安全を守ることが目的。研究チームによると、医療現場では看護師らの人手が不足している上、安全管理の徹底を求める入院患者の家族などに配慮し、事故防止を最優先する意識が働く結果、他の対策を検討することなく、拘束を行いがちだといいます。
精神科病院を除いた一般病院では、身体拘束の可否や範囲について定めた法律や規定はなく、医療現場の判断に委ねられています。一方、介護施設では、介護保険導入の際、身体拘束は原則、禁じられました。
国内の認知症の人は、2012年の約462万人から2025年には約700万人に増えると推計されます。
白澤政和・桜美林大学教授(老人福祉学)は、「人権に対する配慮の観点からも残念な数字だ。身体拘束を減らすため、病院は認知症の人に対する意識を変え、防止に向けた検討会の設置や、リスク管理のマニュアルづくりを進めるべきだ」と話しています。
2018年11月19日(月)
■大阪府の梅毒患者、今年1000人超 女性は20歳代多く、主婦やOLに拡大か
大阪府内で今年に入り、梅毒の感染者数が累計1000人を超えたことが、大阪府などの調査でわかりました。全国的にも近年増える傾向にあり、大阪府は昨年1年間で845人でしたが、今年は1200人に迫る勢いといいます。関係機関は心当たりがある人に保健所などでの検査を呼び掛けています。
大阪府は東京都に次ぐ梅毒の流行地で、11月11日までの大阪府の集計によると感染者数は1028人。1999年に現在の集計法になって以降、初めて1000人を超えて最多となりました。
梅毒は個別の感染経路の追跡が難しく、流行の原因は断定できていません。全国的な傾向では、感染者の男女比は2対1で、男性は20〜50歳代に満遍なくいる一方、女性は半数が20歳代に集中しています。
男女別では男性が611人、女性が417人となりましたが、この5年で20歳代を中心に女性感染者数が26倍に急増したということで、性風俗店の利用者や女性従業員の感染のほか、主婦やOLにも広がっているとみられます。
大阪府以外の近畿では、11月11日までの集計で兵庫県222人、京都府95人、奈良県43人、和歌山県26人、滋賀県16人で、滋賀県以外は昨年1年間の数を超えました。
大阪府内の感染者の7割を占める大阪市は、若者の間での広がりに危機感を強めています。2日には、市の担当者が大阪市立大学の大学祭に参加してクイズ形式で啓発。「府内ではHIV(エイズウイルス)とセットで検査が無料になるので、公的検査の活用を」と話しています。
大阪健康安全基盤研究所の小林和夫・公衆衛生部長は、「不特定多数の相手との性的接触を避けるべきだ。一定の予防効果のあるコンドームの着用を心掛けてほしい」と話しています。
梅毒はスピロヘータ (梅毒トレポネーマ) という細菌が原因で起きる性感染症で、3週間程度で感染した部分にしこりができるなどし、その後、手足など全身に発疹が出ます。症状は、治まったり再発したりを繰り返します。抗菌薬で早期に治療すれば完治するものの、放置すると脳や心臓に大きな合併症を引き起こす恐れがあります。また、妊娠中の女性が感染すると、流産したり、生まれてくる子供が「先天梅毒」になって視力低下などの障害が出ることもあります。
2018年11月19日(月)
■ノバルティス社と元社員、2審も無罪 高血圧症治療薬データ不正
製薬大手ノバルティスファーマの高血圧症治療薬「ディオバン」を巡る臨床データ改ざん事件で、薬事法(現・医薬品医療機器法)違反(誇大広告)罪に問われた同社元社員、白橋伸雄被告(67歳)と法人としての同社の控訴審判決が19日、東京高裁でありました。芦沢政治裁判長はいずれも無罪とした1審・東京地裁判決を支持し、検察側の控訴を棄却しました。
白橋被告は京都府立医大の医師らによるディオバンの臨床研究で、データ解析を担当。薬の効果が実際より高く見えるよう改ざんした症例データや図表を提供し、「投与した患者は脳卒中や狭心症の発生率が低かった」などとする論文を学術雑誌に掲載させたとして起訴されました。
芦沢裁判長は判決理由で、論文を掲載させる行為は専門家向けの研究報告の性質を備えたもので、顧客の購入意欲を誘う手段として行われたとはいえず、薬事法が規制する誇大広告には当たらないと指摘。無罪とした1審判決の結論を維持しました。
一方、研究者に虚偽の情報を提供して論文を作成・発表させる行為については、「何らかの規制をする必要があり、新たな立法措置で対応することが考えられる」と指摘しました。
山上秀明・東京高検次席検事は、「主張が認められず、誠に残念。判決内容を十分に精査・検討し、上級庁と協議の上、適切に対処したい」とコメントしました。
ノバルティスファーマは、「再び無罪判決という結果になったが、問題の本質は医師主導臨床研究で弊社が適切な対応を取らなかったことにある。日本の医学・医療の信頼を失わせたことに、社会的・道義的責任を感じている」とのコメントを出しました。
2018年11月19日(月)
■がん治療と仕事の両立、モデル就業規則を作成 厚労省の研究班
がんになった労働者の3分の1が退職を余儀なくされる中、厚生労働省の研究班が、治療と仕事の両立を図るモデル就業規則を作成しました。何カ月休職すれば復職できるのかなど、研究結果や患者の経験を基に最適な働き方や会社の支援態勢を示しています。働くがん患者の支えになりそうです。「がん患者の就労継続及び職場復帰に資する研究班」の遠藤源樹班長(順天堂大准教授)らが、弁護士や社会保険労務士などの監修でまとめました。すでに、大手飲料メーカーなど十数社が試験運用を申し出ています。
厚労省が2016年にまとめた資料によると、がんになった労働者の約34%が依願退職したり、解雇されています。遠藤准教授が患者約1300人に行った追跡調査では半年の休職で約半分、1年の休職で6割がフルタイムで職場復帰しており、モデル就業規則の導入で、仕事を継続できる人がさらに増えることが期待されます。企業にとっても、雇用継続のための具体的な手法が書かれており、役に立ちます。
「がん罹患(りかん)社員用就業規則標準フォーマット」の名称で、通常の就業規則に加えて運用することになります。患者本人の申請に基づき支援を開始し、社内の「両立支援担当」を窓口にします。
会社は休職後、段階を踏んで完全復帰を目指す「サポートプラン」を提示し、データを基に、大腸がん、乳がん、胃がん、肺がんなどがんの種類ごとに最適な休職期間を設定。職場復帰後1年間は1日2時間程度の勤務にして、テレワーク、半日・時間休暇、通院休暇も認めます。また、休職した人が出た職場への人的支援も行います。
通勤ラッシュに耐えられなかったり、1日5、6回のトイレ離席や分食が必要だったり配慮が必要な場合もあるため、職場復帰後の生活について他の社員の理解を深めます。退職する場合も、再雇用制度を準備します。
健康と雇用の関係に詳しい小島健一弁護士は、「単なる復職支援にとどまらず、一定期間配慮すれば労使ともうまくいくことをデータや個別事例を根拠に示している。障害や病気を持つ人の就労拡大が求められる時代に意義深い」と話しています。
2018年11月19日(月)
■筋委縮性側索硬化症の治療薬に経口剤 田辺三菱製薬が開発、患者の利便性向上
田辺三菱製薬は、全身の筋肉が徐々に動かなくなる筋委縮性側索硬化症(ALS)の進行を抑制する注射剤の治療薬について、患者の負担を軽減するため、液体で経口服用できるように国内で臨床試験(治験)を進めています。
研究の結果、経口剤にすでに発売されている注射剤と類似の効果が認められ、12月7日からイギリスで開かれる国際シンポジウムで発表します。
新しく液状の経口剤として開発しているのは「エダラボン」。ALSの治療を始めてから14日間は連続投与が必要ですが、現在は注射剤(静脈点滴注射剤)だけのため、連日医療機関に通うか入院する必要がありました。液状の経口剤になれば自宅での投与が可能になります。
田辺三菱製薬は2020年度にも経口剤の製造販売を承認申請する方針で、2021年度の発売を目指しています。
エダラボンは脳梗塞の治療薬として2001年に発売され、2015年に日本でALS治療薬として承認を取得、続いて韓国とアメリカでも販売され、今年10月にはカナダでも承認されました。エダラボンが登場するまで、ALS治療薬は「リルゾール」の1種類しかありませんでした。
市場関係者は、「エダラボンが経口で投与できるようになれば、患者の利便性向上や独占期間(後発医薬品が出ない期間)の延長が可能」と指摘しています。
2018年11月18日(日)
■「スマートメーター」の部品焼損、1年間で16件 東京電力は公表せず
電気の使用量を細かく計れる新型の電気メーターとして、東京電力が家庭などに設置している「スマートメーター」で、部品の一部が焼損する不具合が一昨年から昨年8月にかけて16件起きていたことが、明らかになりました。これについて、消費者庁は火災事故としてインターネット上に掲載していますが、東京電力は公表していませんでした。
関係者によると、東光東芝メーターシステムズ(埼玉県蓮田市)が2015年4~11月に製造した約2万4000台のスマートメーターのコンデンサー部分に、不良があったといいます。東京電力によると、抵抗部と基板の一部が焼損したとみられ、電力が計測できなくなる不具合が、2016年9月から2017年8月までの約1年間に16件起きていたといいます。
東京電力は具体的な日時や場所を明らかにしていませんが、消費者庁などが運営する事故情報データバンクシステムによると、東京都内で2017年1~7月、東光東芝メーターシステムズ製のスマートメーターで同様の不具合が少なくとも10件起きていました。すべて「火災事故」と分類しています。
東京消防庁の火災調査書によると、このうち東大和市と八王子市の事例は、メーター内の制御基板でコンデンサーが短絡(ショート)して過電流が起きたことが原因でした。10件はいずれもスマートメーターの焼損で、建物など周囲への延焼はありませんでした。
東京電力の広報担当者は公表しなかった理由について、「スマートメーターには燃えにくい部品が使われ、火や煙が出たり建物に燃え移る危険性はなく、無用の混乱を避ける意味でも公表していない」としています。
不良品のスマートメーターは、対象者に通知した上で来年3月末までにすべて交換するといいます。
2018年11月18日(日)
■iPS細胞から、がんを攻撃するキラーT細胞を作製 京大などが成功
人のiPS細胞(人工多能性幹細胞)から、がんへの攻撃力を高めた免疫細胞「キラーT細胞」を作製することに成功したと、京都大学iPS細胞研究所などの研究チームが発表しました。マウスの実験で、がんを効果的に抑えることも確認しました。
新たながん免疫療法につながる可能性があるといい、16日のアメリカの科学誌「セル・ステムセル」(電子版)に論文が掲載されました。
人の体内では、絶えずがんが生まれているものの、キラーT細胞を含む免疫細胞ががん細胞にある特定の分子を目印に、がんを見付けて攻撃することで、健康を保っています。だが、がんが免疫の仕組みを回避したり、免疫細胞の攻撃力が弱まったりするとがんが増殖し、発症すると考えられている。
研究チームは2013年、iPS細胞からキラーT細胞を作製したとする論文を発表していますが、作製の過程で細胞表面に余分な分子ができてしまい、がんを発見する能力が阻害されるという課題がありました。
今回、遺伝子を効率よく改変する「ゲノム編集」の技術を活用し、まずiPS細胞から余分な分子を作る遺伝子を除去。その後、キラーT細胞に変化させて試験管内で調べた結果、がんを発見する能力が最大で約10倍高まっていました。人のがんを再現したマウスに投与したところ、何もしない場合に比べ、がんの増殖を3~4割に抑える効果が確認できたといいます。
がん治療薬「オプジーボ」は、がんが免疫の仕組みを回避するのを防ぎます。一方、今回の方法は免疫の攻撃力を高めることで、がんの治療を目指します。
研究チームの金子新(しん)・京都大学iPS細胞研究所准教授は、「研究を重ねて安全性と効果を向上させ、いずれはがん治療に使いたい」と話しています。
2018年11月17日(土)
■風疹ワクチンを増産し、機会のなかったすべての人に予防接種を 日本医師会が厚労省に要望
妊娠中の女性が感染すると赤ちゃんに障害が出る恐れがある風疹の患者が急増していることを受け、男性を含むすべての人が予防接種を受けられるようにすべきだとして、日本医師会が厚生労働省に対策を求めました。
風疹は発熱や発疹などの症状が出るウイルス性の感染症で、妊娠中の女性が感染すると生まれてくる赤ちゃんに障害が出る恐れがありますが、今年はすでに1884人の患者が報告され、昨年1年間の20倍に上っています。
これを受けて日本医師会は15日、厚労省に対策を求める要望書を提出しました。
今回の風疹は子供のころにワクチンの定期接種の機会がなかった30歳代から50歳代の男性を中心に感染が広がっていますが、要望書では、国がこの世代の男性への対策を怠ってきたと厳しく批判しています。
風疹ワクチンの接種の対象は1977年から1994年までは中学生の女子のみでしたが、同年の予防接種法改正以来、その対象は生後12カ月以上~90カ月未満の男女とされました。さらに、2006年以降は、風疹ワクチンは麻疹・風疹混合ワクチン(MRワクチン)として接種、第1期(1歳児)と第2期(小学校入学前年度の1年間に当たる子)に計2回接種しています。これは1回の接種では免疫が長く続かないため、2回目を接種して免疫を強め、成人になってから風疹や麻疹にかからないようにするためです。
2008年4月1日から5年間の期限付きで、麻疹・風疹混合ワクチンの予防接種対象が、第3期(中学1年生相当世代)、第4期(高校3年生相当世代)にも拡大され、接種機会を逸し1回しか接種されていない子も2回接種が可能になっています。
日本医師会は、妊婦や赤ちゃんを守るためにも男性の感染拡大を防ぐ必要があることから、予防接種の機会のなかったすべての人が接種を受けられるようにすべきだとして、必要なワクチンの確保など早急な対策を求めています。
要望書を提出した日本医師会の釜萢(かまやち)敏常任理事は、「対策の必要性を認識していたにもかかわらず、何ら有効な手立てを講じてこなかったのは行政の怠慢といわざるを得ない。多くの人が日本を訪れる東京オリンピック・パラリンピックを前に風疹の根絶に向けた抜本的な対策が必要だ」と話しています。
厚労省は、「要望も踏まえて引き続き対策に取り組んでいきたい」とコメントしています。
2018年11月17日(土)
■介護業、5年で最大6万人の外国人労働者受け入れ 政府が規模提示
政府は14日の衆院法務委員会理事懇談会で、外国人材の受け入れ拡大に向け在留資格を創設する出入国管理法改正案に関し、今後5年間で人材不足が深刻な14業種で、合計で最大約34万5000人の外国人労働者を受け入れる方針を示しました。2019年度の1年間は約58万6000人の労働者不足に対し、最大約4万7000人の受け入れを見込んでいます。
政府は、介護業や農業、漁業、飲食料品製造業など14業種で受け入れ規模の見込み数を検討しました。その結果、2019年度から5年間は合計で約145万5000人の労働者が不足し、約26万2000~34万5000人の受け入れを想定。2019年度の1年間では約3万3000~4万7000人を受け入れるとしています。
業種別では、今後5年間の累計で最も受け入れ規模が大きいのは介護業で、5万~6万人を受け入れる方針。次いで外食業が4万1000~5万3000人、建設業が3万~4万人などと続きました。
一方、来年度の1年間では農業の受け入れ規模が大きく、3600~7300人。ビルクリーニング業が2000~7000人、飲食料品製造業が5200~6800人、建設業が5000~6000人などとなっています。
14業種は、新在留資格「特定技能1号」の対象となります。熟練した技能を持つ人に与える「特定技能2号」について、菅義偉官房長官は14日の記者会見で「現時点で活用を予定しているのは建設と造船の2業種だけだ。具体的な受け入れ人数は推計しない」と述べました。
出入国管理法改正案は13日、衆院本会議で審議入りしました。与党は衆院法務委員会で提案理由説明と質疑を行い、今国会で成立させる方針。これに対し、立憲民主党など野党6党派は、成立を阻止する方針で一致しています。
2018年11月17日(土)
■岐阜市の飼育施設で2例目の豚コレラ感染 農水省、ウイルス侵入防止策徹底を指示
岐阜県は16日、岐阜市椿洞の「岐阜市畜産センター公園」の豚2頭を遺伝子検査した結果、家畜伝染病の豚コレラの陽性反応が出たと発表しました。同市の養豚場で9月、国内で1992年以来となる豚コレラ感染が確認されており、2例目。
岐阜県や農林水産省によりますと、畜産センター公園にある豚の飼育施設で、1頭に発熱や食欲不振などの症状が見られ、県の担当者が調べたところ16日未明、調べた2頭の豚のいずれからも豚コレラウイルスの陽性反応が出て、感染している疑いがあることがわかりました。この飼育施設では合わせて23頭の豚が飼育されており、県は速やかにすべての豚を殺処分しました。
岐阜市の養豚場では今年9月、国内では1992年に熊本県で発生して以来となる豚コレラが発生しており、岐阜市で飼育されている豚で豚コレラの発生が疑われるのは2例目です。
岐阜市では1例目となる養豚場での豚コレラの発生を受けて一時、設けていた搬出制限などは解除されていましたが、県内ではその後も野生のイノシシから豚コレラのウイルスが検出されていました。
岐阜県は今回、感染した疑いがある豚を飼育していた施設から半径10キロ以内を「搬出制限区域」に指定して、該当する8カ所の養豚場に対し区域の外への豚の搬出を禁止するとともに、消毒ポイントを設けて畜産関係の車の消毒作業に当たっています。
岐阜市の施設で2頭の豚が豚コレラに感染している疑いがあることがわかったことを受けて、農水省は、すべての都道府県に対し、飼育施設にウイルスの侵入を防ぐための対策を徹底させるよう指示しました。
これは吉川農林水産大臣が閣議の後の記者会見で明らかにしたもので、岐阜市の施設について「関係機関と連携しながら、汚染物品の処理など円滑な防疫対応をして、まん延防止に万全を期しているところだ」と述べました。農水省は、飼育施設内への出入りの制限や消毒を徹底するほか、柵を設けるなどしてイノシシなど野生動物の侵入を防ぐ対策に努めてもらいたいとしています。
農水省は1例目が発生した際、豚の肉や皮の輸出を停止しました。その後、個別の交渉で輸出を再開した国については原則、停止措置は取らない方針。
日本は豚コレラのウイルス撲滅状態を指す「清浄国」になる手続きを12月にも行う予定でしたが2例目の発生により、清浄国に復帰できるのは最短で来年2月となる見通し。2018年11月16日(金)
■エボラウイルス、初の輸入へ 厚労省、検査法を強化
エボラ出血熱など海外で発生している重大な感染症の検査体制を強化するため厚生労働省は15日、海外から原因ウイルスを提供してもらう検討を始めました。国立感染症研究所村山庁舎(東京都武蔵村山市)の研究施設「バイオセーフティーレベル(BSL)4」で病原体を扱います。
厚労省は地元の理解を得た上で、病原体の輸入の手続きを進めたいといいます。
感染症法で最も危険性が高い「一類」に指定されたうちの5種類の感染症の病原体が対象。エボラ出血熱のほかにラッサ熱、南米出血熱、クリミア・コンゴ出血熱、マールブルグ病を今回、検討します。一類の病原体は原則輸入できず、BSL4施設でしか扱えません。国内では1981年に建設されたものの、病原体の外部への漏出を心配する地元住民の反対もあり、2015年夏まで稼働していなかった国立感染症研究所村山庁舎の施設しかありませんが、病原体はまだなく、一類の輸入が決まれば初となります。
厚労省は15日午後に村山庁舎で開催される地元住民との協議会で、海外から病原体の提供を受けることを提案します。厚労省の担当者は、「地元の理解を得られるように、丁寧に説明していきたい」と話しています。
厚労省によると、現在の検査法は人工的に合成した病原体を使っており、治療効果を判断するために用いる中和抗体法という検査ができません。本物の病原体を使うことで、多くの先進国並みの標準的な検査法になるとしています。海外任せだった動物もできるようになり、国内研究者の育成にもつながるといいます。
2018年11月15日(木)
■ステップワゴンのバックドアに挟まれ首骨折 ホンダが改善対策を届け出
自動車メーカーのホンダは「ステップワゴン」などで車体後部のバックドアを上に開いた際に突然閉じてしまう恐れがあるとして、約60万台の改善対策を国土交通省に届け出ました。
対象となるのは、ホンダの「ステップワゴン」「ステップワゴンスパーダ」「NBOX+」「NBOX+Custom」など合わせて6車種の59万3815台です。
製造期間は2009年9月から今年9月までで、車体後部のバックドアの部品に不具合があり、上に開いている際に支柱が外れて突然閉じてしまう恐れがあるということです。
国土交通省によりますと、10月8日には千葉県で、ステップワゴンのバックドアを開けて荷物を出し入れしていた人が下がってきたドアに挟まれ、首の骨が折れる大けがをしました。ドアを何度も開け閉めすると、支柱のつなぎ目が外れる恐れがあり、10月7日にも愛知県で同様の事故があり1人が軽いけがをしたといいます。
ホンダは16日から全国の販売店で無料で改修に応じることにしています。
2018年11月15日(木)
■梅毒患者が6000人台になる見込み 流行国からの訪日客増加も影響か
性行為などで感染する梅毒の患者数が増え続け、今年の患者数が現行集計上で過去最多の6000人台に達する見込みであることが13日、明らかになりました。2012年以前は患者数が年間1000人を下回る状況が長く続くなど「過去の病気」とされていましたが、近年は急増。流行は「外国人観光客の増加などが影響を及ぼしている」との見方もあります。
国立感染症研究所の集計によると、今年1月から11月4日までの累積患者数は5811人。現行の集計方式となった1999年以降最多で、44年ぶりに5000人台を記録した昨年の5820人(暫定値)を超すのが確実な情勢となりました。
都道府県別の患者数では、東京都の1474人が最多で、大阪府997人、愛知県375人、神奈川県305人、福岡県256人、兵庫県218人の順で大都市中心となっていますが、広島県153人、岡山県141人など地方都市にも広がりをみせています。
東京都新宿区で性感染症の診療に当たる「プライベートケアクリニック東京」院長の尾上(おのえ)泰彦医師は、梅毒患者の拡大理由は「疫学的調査が行われていないので不明」とした上で、「複数人と性行為する人の増加、梅毒流行国からの観光客の増加などが影響を及ぼしているとの見方もある」と指摘。世界保健機関(WHO)の2012年の統計によると、世界で約600万人が感染しており、特に東南アジアやアフリカ地域で多く、先進国でも増加傾向にあります。
患者は男性が20~40歳代を中心に幅広い年代で報告があり、女性は20歳代前半の報告数が極端に多くなっています。
梅毒はスピロヘータ (梅毒トレポネーマ) という細菌が原因で起きる感染症で、3週間程度で感染した部分にしこりができるなどし、その後、手足など全身に発疹が出ます。症状は、治まったり再発したりを繰り返します。抗菌薬で早期に治療すれば完治するものの、放置すると脳や心臓に大きな合併症を引き起こす恐れがあります。また、妊娠中に感染すると、流産したり、生まれてくる子が「先天梅毒」になったりすることがあります。
予防するには、コンドームを使用し、粘膜や皮膚が直接接触するのを避けます。それでも完全に防げるわけではなく、感染が疑われる場合、早めに医療機関を受診します。
日本性感染症学会と厚生労働省研究班は梅毒の早期治療につなげるため、今年6月、梅毒が疑われる場合の症状や治療方法などをまとめた「梅毒診療ガイド」を作成。東京都も11月1日、梅毒などの性感染症に関するウェブサイト「東京都性感染症ナビ」を開設しました。性感染症の知識を解説しているほか、検査や相談の仕方を詳しく紹介しています。
2018年11月14日(水)
■iPS細胞選別、10分の1以下に時間短縮 大日本住友製薬が装置を開発
人のiPS細胞(人工多能性幹細胞)から作製した神経細胞をパーキンソン病患者の脳内に移植して治療する研究を京都大学の研究チームと協力して進めている大日本住友製薬が、移植に適した神経細胞を高速で選別できる装置を開発したことが14日、明らかになりました。
同社は、移植する神経細胞を保険適用の医薬品として製造販売できるよう目指しており、大量の細胞が必要になる治療の実用化に向け弾みがつきそうです。
従来は1人のパーキンソン病患者の移植に必要な量の神経細胞を選び出す作業に10時間以上かかっていましたが、10分の1以下となる1時間以内に短縮できるといいます。
パーキンソン病は、脳内で神経伝達物質ドーパミンを出す神経細胞が減り、手足の震えなどが起こる神経の病気。10月に京都大学医学部附属病院で行われた1例目の医師主導の臨床試験(治験)では、他人のiPS細胞から作製された神経細胞を、患者の脳に約240万個移植しました。
大日本住友製薬では、治験の実績を踏まえ、保険適用対象の医薬品として、厚生労働省に製造販売の認可申請を行う方針で、今年3月には大阪府吹田市内にある研究所内に商業用生産施設「SMaRT(スマート)」を完成させました。京都大学iPS細胞研究所などから供給されるiPS細胞をこの施設に運び、細胞を増やしたり、網膜の細胞など目的の細胞に変化させたりして、治療に使える再生医療製品として出荷します。
同社は、理化学研究所や京都大学、慶応大学などと連携し、加齢黄斑変性や網膜色素変性といった目の病気、パーキンソン病、脊髄損傷をiPS細胞を使って治療する医療製品の開発を進めています。再生医療を事業の次の柱の1つにしたい考えで、2030年にこの分野で2000億円の売上高を目指しています。
2018年11月14日(水)
■iPS細胞で脊髄損傷治療、慶応大が承認 来夏にも臨床研究へ
事故などで脊髄を損傷し体が動かせなくなった患者に、iPS細胞(人工多能性幹細胞)から作製した神経のもとになる細胞を移植し、体の機能の回復を目指す慶応大学の研究チームの臨床研究について、大学の委員会は大筋で了承しました。iPS細胞を脊髄損傷の患者に応用するのは世界でも初めてだということで、今後、国に申請するなど実施に向けた手続きが本格化します。
脊髄損傷は、交通事故やスポーツの事故などで中枢神経である背骨の中の神経の太い束が傷付くことで手や足が動かなくなったり、感覚がまひしたりするもので、現在はリハビリなどが行われますが、有効な治療法は確立されていません。国内では、毎年約5000人が新たに脊髄損傷になり、患者数は10万人以上とされています。
慶応大学の岡野栄之教授(生理学)と中村雅也教授(整形外科学)らの研究チームは、脊髄損傷の患者に人のiPS細胞から作製した神経のもとになる細胞、約200万個を移植する世界初の臨床研究を計画しています。
移植された細胞が神経細胞に変化することにより、脳からの信号が伝わり、手や足が再び動かせるようになることを目指します。
この臨床研究は昨年、大学の委員会に申請されて審査が続いていましたが、13日に開かれた委員会で大筋で認められたということです。
大学の委員会では、来月にも正式に承認される見通しで、その後、国に申請して審査を受けるなど、実施に向けた手続きが本格化することになり、順調に進めば来夏にも臨床研究が始まります。
臨床研究は、脊髄を損傷して2週間から4週間ほど経過した「亜急性期」といわれる段階の患者に対して行われます。京都大学で保管されている人のiPS細胞を使って神経のもとになる細胞を作製し、脊髄の損傷した部分に約200万個移植する計画です。そして、免疫抑制剤を使用して拒絶反応が起きないようにコントロールし、移植した細胞は神経細胞に変化することで脳からの信号が伝わるようになるということです。さらに、リハビリも取り入れることで、手足の運動機能などが回復することを目指します。
研究チームではこれまで、脊髄を損傷したサルが歩けるように回復させる実験に成功したとしています。最初は最も効果が高いと期待されている亜急性期の患者を対象にしますが、効果が確認されれば将来的には脊髄損傷から何年も経過した慢性期の患者に対しても、効果が期待できないか検討することにしています。
しかし、この臨床研究では、未熟な細胞を移植するため、細胞が腫瘍の原因となる恐れがあり、腫瘍ができるのをどのように抑えるかやMRIなどを使って腫瘍ができた場合に早く発見して対処することが適切にできるかなどの安全性の確認について慎重に行う必要があります。
iPS細胞を使った再生医療は、神戸にある理化学研究所などの研究チームが重い目の病気の加齢黄斑変性の患者に実施しているほか、京都大学の研究チームが体が動かなくなる難病のパーキンソン病の患者にも行っています。
2018年11月14日(水)
■外食でプラスチックごみ削減の動き本格化 H&Mジャパンは買い物袋を紙製に
プラスチックごみの削減に向けた新たな動きが続いています。ロイヤルホールディングス(福岡市)は12日、運営するロイヤルホストの直営全213店舗で、プラスチック製ストローの提供を2019年4月から順次、廃止すると発表しました。プラスチックごみの廃棄による海洋汚染対策の取り組み。
ストローを必要とする客には紙製を提供します。まず東京都内の4店舗で今月中にも試行します。ロイヤルホスト以外に、グループ傘下のリッチモンドホテルなどでも同年4月から廃止。グループのすべての飲食店とホテルで、2020年中までにプラスチック製ストローを提供しなくなるといいます。
ファストフード大手の日本マクドナルドも、おまけとして配ったプラスチック製のおもちゃを客から回収し、トレーにリサイクルする取り組みを始めており、13日から全国の店舗で商品を載せるトレーの一部をリサイクル素材を使ったものに切り替えました。
このうち、東京都大田区の店舗では、従業員が客にトレーを渡す際に、子供向けのセットメニューのおまけとして配ったロボットや車などのプラスチック製のおもちゃが原料になっていると説明していました。
全国の店舗で不要になったおもちゃの提供を呼び掛けたところ、合わせて127万個が集まり、ほかの原料と混ぜておよそ10万枚のトレーに加工できたということです。
客の女性は、「おもちゃのほかにいろいろなプラスチック製品を回収して、リサイクルを広げていけばよいと思う」と話していました。
日本マクドナルドは、2025年までに商品の容器や包装をリサイクル素材などに置き換えるというグループの方針に沿って、プラスチックごみの削減を進めることにしています。
広報担当の石黒友梨さんは、「プラスチックごみに対するお客様の関心は高いので、来年も、おもちゃを再利用する取り組みを続けたい」と話していました。
2018年11月13日(火)
■風疹患者、昨年の20倍の1884人に 9週連続で100人超
国立感染症研究所は13日、今年初めから今月4日までに報告された風疹患者が計1884人になったと発表しました。93人だった昨年1年間の約20倍に上っています。同日までの1週間に全国の医療機関から報告された患者数は154人で、9週連続で100人を超えました。
首都圏では依然として患者が多い状態が続いているほか、近畿地方や愛知県、福岡県など各地で増えてきており、国立感染症研究所は、女性は妊娠する前に2回ワクチンを接種することなどを呼び掛けています。
風疹は発熱や発疹などの症状が出るウイルス性の感染症で、妊娠中の女性が感染すると生まれてくる赤ちゃんの目や耳、それに心臓などに障害が起きる「先天性風疹症候群」となる恐れがあります。
都道府県別では、東京都が前の週から41人増えて656人、千葉県が16人増えて285人、神奈川県が18人増えて250人、埼玉県が16人増えて127人、愛知県が5人増えて94人、大阪府が12人増えて71人、福岡県が11人増えて55人などとなっています。
また、男性患者は1539人と女性の約4・5倍で、男性患者全体の8割以上を30歳代から50歳代が占めています。一方、女性は20歳代が最も多く、患者数は118人に上っています。
国立感染症研究所は、今後「先天性風疹症候群」が増える恐れがあるとして、女性は妊娠する前に2回ワクチンを接種するほか、妊婦の家族など周りにいる人もワクチンの接種が重要だと呼び掛けています。
2018年11月13日(火)
■「はたちの献血」キャンペーン、18歳成人移行前に終了 名称変更し啓発
「はたちの献血」キャンペーンが、40年以上にわたる歴史に幕を下ろす見通しとなりました。成人年齢が20歳から18歳に引き下げられることになり、厚生労働省幹部は「20歳にこだわる理由がなくなったため」としています。
「はたちの献血」は厚労省と都道府県、日本赤十字社が主催するキャンペーンで、1975年に始まりました。献血者が減少しがちな冬期において安全な血液製剤を安定的に患者に届けるため、成人式が行われる1月から2月にかけてポスターやCMで啓発活動をして、全国の若者に献血への協力を呼び掛けてきました。
20歳前後の著名人がイメージキャラクターに起用され、プロゴルファーの石川遼選手、女優の武井咲さん、フィギュアスケートの羽生結弦選手、女優の広瀬すずさんなどが務めてきました。
献血は体重など一定の条件を満たせば16歳から可能で「はたち」とは無関係なものの、「社会の一員」として認知される成人の節目にキャンペーンを展開することで、若者に社会貢献を促す効果を狙いました。
背景にあったのは、深刻な献血離れ。日本は安全性の観点から、すべての輸血を国内の献血で賄っていますが、日本赤十字社の集計によると、1996年度に600万人だった献血者数は2016年度は483万人に減りました。1994年度からの年代別の献血者数の推移をみると、40歳代と50〜60歳代が増加傾向にあるのに対して、16〜19歳、20歳代、30歳代が減少しており、若い世代の献血離れが鮮明。
特に20歳代は1994年度の210万人から、2016年度は78万人と3分の1近くまで減少しています。これは少子化による人口減のスピードを上回るもので、現状の献血率のままでは2027年に約85万人の献血者不足に陥るとの予測もあります。
「はたちの献血」キャンペーンの効果が数字に現れていないばかりか、20歳未満は対象外との誤解を招いている可能性もあります。成人年齢を18歳に引き下げる改正民法が今年6月に成立し、2022年4月から施行されれて20歳は成人の節目ではなくなるため、厚労省は2021年で「はたちの献血」を終了する方針を固めました。
厚労省は今後、名称を刷新した後継キャンペーンの内容を詰める予定で、10歳代を巻き込む新しい効果的な啓発方法を探る方向でまとまっています。
2018年11月12日(月)
■風呂につかる習慣がある高齢者、要介護リスクが約30%低下 千葉大などが調査
日ごろから風呂につかる習慣がある高齢者は介護が必要になるリスクが低くなるという調査結果を、千葉大学などの研究チームがまとめました。研究チームは、入浴を介護予防の対策としてより活用すべきだとしています。
千葉大学などの研究チームは、入浴が健康に与える影響を調べようと、全国の18市町村に住む要介護認定を受けていない高齢者およそ1万4000人を対象に、3年間かけて大規模な調査を行いました。
この調査では、ふだん、どれくらいの頻度で風呂につかっているかなどを事前に調べた上で、3年後の状態を確認し、そのデータを統計的な手法を使って分析しました。
その結果、冬場に週7回以上、風呂につかっている高齢者は、週2回以下の高齢者より介護が必要な状態になるリスクが29%低くなったということです。
研究チームは、事故や病気などに十分注意することを前提に、高齢者の入浴を介護予防対策としてより活用すべきとしています。
千葉大学附属病院の八木明男医師は、「入浴が健康にいいことが学術的にも立証できた。1人暮らしの高齢者には、公衆的浴場を利用することや施設での入浴をうまく組み合わせて入浴を促すことが大切だ」と話しています。
2018年11月12日(月)
■全国の健康保険組合、がんや糖尿病重視し歯科後回し 東大が調査
全国の健康保険組合が、がんや糖尿病など中高年に多い病気の対策を優先させる一方、歯科を重く見ているのは1割未満との調査結果を東京大学の研究ユニットがまとめました。歯科を重視すれば医療費全体の削減が見込まれますが、現実には後回しになっている実態が浮かび上がりました。東京大学政策ビジョン研究センター・データヘルス研究ユニットが、健康保険組合のデータを集めた「データヘルス・ポータルサイト」にある「健康保険組合連合会」(健保連、約3000万人)の情報を基に分析。2016年度の1363組合を調べたところ、がんの医療費抑制を重視していたのは513組合、糖尿病なども529組合だった一方で、歯科は128組合にとどまりました。
健保連によると、歯科の1人当たりの医療費は年間約1万7000円で、がんの約1万6000円や糖尿病の1万3000円より高くなっています。ブラッシングの徹底などの予防策を取れば、加入者自身が健康になる上、医療費全体の抑制にもつながるといいます。
研究ユニットの古井祐司・特任教授は、「中高年に多い生活習慣病にばかり目が向いている実態がわかった。予防可能な歯の対策にも取り組むべきだ」と話しています。
2018年11月11日(日)
■風邪に効かない抗菌薬、半数が効くと誤認 国際医療研究センター病院が調査
風邪で医療機関を受診した際、本来は効果がない抗生物質などの抗菌薬を処方してほしいと考える人は約30%いるという調査結果がまとまりました。
抗菌薬の不適切な使用は薬が効かない「耐性菌」を増やすことにつながり、専門家は「正しい知識を普及していく必要がある」と話しています。
抗菌薬は肺炎などを引き起こす細菌が原因の病気には、細菌を壊したり増えるのを抑えたりして効果がある一方で、風邪やインフルエンザなどウイルスが原因の病気には効かないことがわかっていますが、風邪に処方されるケースがあり、薬が効かない耐性菌を増やすことにつながっていると指摘されています。
国立国際医療研究センター病院(東京都新宿区)は、8~9月にインターネットを利用して、全国の10歳代から60歳代までの一般の男女721人に対して、抗菌薬に対するアンケート調査を行いました。
その結果、「抗菌薬がどのような病気に有用か」という質問に対して、「風邪」と答えた人が49・9%、「インフルエンザ」と答えた人は49・2%と、ほぼ半数の人が誤って認識していることが判明しました。
また、「風邪で受診した時に処方してほしい薬」を複数回答で質問すると、せき止め62%、解熱剤60%など症状を和らげる薬が多い一方で、30・1%の人が「抗菌薬」と答えました。
調査を行った国立国際医療研究センター病院の具芳明医師は、「患者が強く希望すると医師も処方せざるを得ない場合があり、一般の人にも正しい知識を普及していく必要がある」と話しています。
2018年11月11日(日)
■コンゴのエボラ出血熱、過去最悪の事態に 319人が感染、うち198人が死亡
エボラ出血熱が流行しているアフリカ中部のコンゴ民主共和国(旧ザイール)で、感染が確認された人が300人を超え、政府は1976年に最初の流行が起きて以来、最悪の事態になっていると発表しました。
コンゴ民主共和国のカレンガ保健相は9日、声明を出し、北東部の北キブ州やイトゥリ州などで今年8月1日以降続いているエボラ出血熱の流行で感染が確認された人が319人になり、198人が死亡したと発表しました。
コンゴ民主共和国では、1976年以来、これまでに9回の流行が起きていますが、今回、感染が確認された人の数は、これまでで最も多かった最初の流行を超え、過去最悪の事態になったということです。
今回、感染が流行している北東部は鉱物資源の産地として知られ、中央政府の統治が及ばない中で多くの武装グループが資源の利権を奪い合い、深刻な紛争が続いています。
国連は、世界最大規模の平和維持活動(PKO)の部隊を送り込んでいるものの情勢は安定せず、戦闘に阻まれて医療関係者が十分に活動できない中でエボラ出血熱の感染が広がっています。
カレンガ保健相は、声明の中で「今回の流行ほど複雑な状況はない。地元の住民と政府、それに国際社会の連携が欠かせない」と訴えています。
エボラ出血熱は、感染した人間の血液や分泌物、嘔吐(おうと)物などに含まれるエボラウイルスが体内に侵入することで感染します。1976年に初めて感染が確認され、2014~16年の流行時には西アフリカのギニア、リベリア、シエラレオネの3カ国を中心に1万人以上が死亡しました。
2018年11月11日(日)
■休日の生活リズがずれると、平日に強い眠気 花王が研究
花王のパーソナルヘルスケア研究所は9日、平日と休日で生活リズムのずれがある人ほど、平日昼間に強い眠気を感じる傾向があるとの研究結果を公表しました。今後、生活リズムと健康の関係についての知見を蓄積し、健康食品など関連事業につなげる考えです。
研究は、平日を「就業前後」「就業時間中」「深夜」の3つの時間帯、休日を「朝」「昼」「夜」など5つの時間帯にそれぞれ分けて、20~60歳代の1142人(男性750人、女性392人)の身体活動量を2014~2017年に調べました。身体活動量は、独自に開発した装置で歩数などを測定しました。
時間帯別の身体活動量と平日昼間の眠気の強さの関係を調べたところ、平日・休日とも朝の身体活動量の多い人が、最も眠気を感じる割合が低くなりました。一方、眠気を感じる割合が高かったのは、平日と休日で身体活動量の多い時間帯が異なる人でした。
パーソナルヘルスケア研究所は、「平日に職場で眠気を感じないようにするには、休日でも平日と同じリズムで過ごすことが重要」としています。
パーソナルヘルスケア研究所は9月11日、20〜50歳代の男性では、平日の生活リズムと休日の生活リズムとの組み合わせパターンと肥満には相関があり、肥満傾向の高い生活リズム、肥満傾向の低い生活リズムがあるとの研究結果を公表しました。
男性1092人の身体活動量を2014~2017年に調べたところ、平日の通勤時間帯の身体活動量が高い人で、休日も朝、夕、夜のいずれかの時間帯で身体活動量の高い人は、肥満者の割合が少ない傾向にありました。また、平日の深夜帯に身体活動量が高い人は、肥満者の割合が多く、その中でも、休日の生活リズムにおいて特に身体活動量が高い時間帯がない人や、昼に身体活動量の高い人は、肥満者の割合がより多い傾向にあることもわかりました。
花王は、脂肪の代謝を高める茶カテキンを配合したトクホ飲料「へルシア」などの健康食品を手掛けています。生活リズムと健康に関する情報を発信するとともに、へルシアなど自社健康食品の活用を提案しています。
2018年11月10日(土)
■旅行客のギョーザからアフリカ豚コレラを検出 中国から羽田空港に持ち込み
中国で感染が広がっている豚の伝染病の「アフリカ豚(とん)コレラ」に感染していたとみられる豚肉の製品が羽田空港から入国しようとした旅行客の荷物から見付かり、農林水産省は9日、養豚業者などに改めて警戒を呼び掛けています。
アフリカ豚コレラは日本で感染事例のある豚コレラよりも致死率が高く、豚が感染すると発熱や出血などの症状が出てほぼすべてが死ぬため、養豚業者に強く警戒されている豚の伝染病です。人には感染せず、感染した肉を食べても問題はありません。もともとアフリカで発生していましたが、今年8月に中国で初めて感染が確認され、その後、中国各地の養豚場で感染の報告が相次いでいます。
農水省によりますと、10月14日に羽田空港にある動物検疫所が中国の上海からの旅行者が許可なく持ち込もうとしたギョーザを回収し調べたところ、アフリカ豚コレラのウイルスの遺伝子が検出され、感染していた豚肉が使われているとみられるということです。旅行客は日本人でない東洋人だとしました。
ギョーザは自家製で非加熱の状態だったということで、農水省は国内の養豚業者に対して飼育場への人の出入りを最低限に抑えるほか、餌の加熱処理など対策の徹底を改めて呼び掛けているほか、中国と日本を結ぶ航空会社に対し、肉製品は許可なく持ち込めないことを乗客に呼び掛けるよう協力を求めています。
アフリカ豚コレラのウイルスが動物検疫所で回収した食品から検出されるのは、10月1日に北海道の新千歳空港で中国の北京から来た外国人旅行者から回収した豚肉ソーセージ以来、2例目になります。
農林水産省動物衛生課の担当者は、「関係機関と連携してウイルスを侵入させないよう検疫を徹底したい」と話しています。
2018年11月10日(土)
■肺結核の日本医大教授、診療続け患者が感染か 11人から陽性反応
日本医科大学付属病院(東京都文京区)で、肺結核を発病した医師がそのまま診療を続け、複数の患者に菌が感染した疑いがあることが9日、わかりました。9日時点で検査を受けた11人から陽性反応が出ました。今のところ結核を発病した人はいないものの、予防のために薬で治療している人もいるといいます。
病院によると、肺結核になったのは耳鼻咽喉(いんこう)科・頭頸部外科の教授。今年6月ごろから夜間のせきやたんがひどくなり、7月10日に結核と診断され、翌日他の病院に入院する直前まで診療を続けていました。
発病した経緯はわかっていません。診療時はマスクを着用していたといいます。
病院はこの医師と同じ診療科の医師や看護師ら75人に胸部エックス線検査を行いましたが、結核の発症者は確認されませんでした。病院は続いて、この医師の診療を受けて接触した時間が長かった患者や免疫が下がっている糖尿病患者ら約370人に7月下旬、検査を呼び掛ける通知を出し、8月に説明会を開催。検査を実施していますが、現時点で11人の患者から陽性反応が出ています。発病者は出ておらず、結核に感染し検査が陽性でも、発病していなければ他人に感染させることはありません。
医療従事者は結核を発病すると周囲に感染させる恐れが高いため、病院が定期健診を年1回することが感染症法で義務付けられています。病院の教授は2016、2017年の定期健診で要受診の判定を受けていました。2016年ごろにすでに発病していた可能性が高いものの、精密検査を受けていませんでした。
病院の担当者によると、健診結果から病院が対象職員に精密検査を促す仕組みになっていませんでした。「医師で専門家のため、ある程度自分で判断してしまったようだ」といいます。今年度から、呼吸器系の異常は病院側が把握し、検査を促すとしています。
結核研究所の森亨名誉所長は、「個人の責任というよりは、病院の管理責任の問題だ。異常が見付かったら、病院がフォローすべきだ」と指摘しています。
日本医科大病院の高橋浩副院長は、「今後、すべての検査が終わった段階で、結果を公表することも検討する」としています。
医療従事者を含む病院での集団感染は、相次いで発生しています。国内で新たに見付かった結核患者は、2017年が約1万7000人。多くは70歳以上の高齢者ですが、医師38人を含む看護師や保健師、理学療法士などの医療従事者が計534人に上っています。
2018年11月9日(金)
■パーキンソン病患者へのiPS細胞移植、1例目実施 京大病院、50歳代男性に240万個
京都大学医学部附属病院の高橋良輔教授と、京都大学iPS細胞研究所の高橋淳教授らは9日、iPS細胞(人工多能性幹細胞)から育てた神経細胞約240万個をパーキンソン病患者の脳に移植したと発表しました。
医師主導による臨床試験(治験)の1例目で、10月に50歳代の男性患者で実施しました。患者は手術前と同じように過ごしているといいます。国内でiPS細胞の移植は目の網膜の難病に続いて2番目、保険が適用される一般的な治療法にすることを目指す治験は初めてとなります。
記者会見した高橋淳教授は、「患者さんに勇気と覚悟を持って参加してもらい感謝している。手術後の経過は良好。結果がすべてなので、今までに積み上げてきた研究の審判が下されると思うと厳粛な気持ちだ」と語りました。
治験では、あらかじめ備蓄しておいた他人のiPS細胞から神経細胞を作製し、患者の頭蓋骨に穴を開けて特殊な注射針で移植します。今回は脳の左側に移植しました。問題が起きなければ半年後に右側にも移植します。2年かけて経過を観察し、安全性と治療効果を確かめます。
計画では計7人の患者に移植し、治験の結果を基に大日本住友製薬が国に製剤化を承認申請します。
パーキンソン病は手足などが震える神経の病気で、厚生労働省の推計では国内に約16万人の患者がいます。神経伝達に欠かせないドーパミンという物質を作る脳の細胞が減ることで発症し、手足が震えたり、体が動かなくなったりします。現在は不足したドーパミンを補う薬を飲んだり、脳に電極を埋めて電気刺激で症状を抑えたりする治療がありますが、効果が持続しないなどの課題がありました。
海外では、中絶した胎児の神経細胞を患者の脳に移植する治験が進み、症状の緩和などに効果が出ているといいます。ただ、移植に使う神経細胞を大量に調達するのは、費用や倫理の面から難しくなっています。血液などから作製でき、ほぼ無限に増えるiPS細胞ならこうした問題が起きにくく、今回の治験がうまくいけば、再生医療の普及に弾みがつきます。
iPS細胞から作製した細胞の移植は、理化学研究所などが治療の実施に向けた研究段階として2014年に、加齢黄斑変性という重い目の病気の患者を対象に実施し、これまでに6人の患者に移植手術を行い、安全性や効果などを評価しています。今回の臨床試験はこれに続くものになります。
2018年11月9日(金)
■薬局を機能別に3分類し、地域密着型を新設 厚労省が方針
厚生労働省は8日、保険薬局を機能別に3分類する方針を決め、厚生科学審議会の医薬品医療機器制度部会に提案しました。最低限の機能を持つ薬局、在宅医療に対応する「地域密着型」、抗がん剤など特殊な調剤ができる「高度薬学管理型」の3種類。将来は診療報酬に差をつけ、医療費削減の狙いもあるとみられます。
来年の通常国会に医薬品医療機器法(薬機法)の改正案を提出し、早ければ2020年度から始めます。具体的な要件などは、法改正後に厚労省内の審議会で議論して決めます。
高齢化などで在宅医療のニーズが増える中、患者宅を訪問したり、高度な抗がん剤の調剤を担ったりする地域の薬局もあります。しかし、現状では薬局ごとの特徴がわかりにくいという課題がありました。
厚労省案では、「地域密着型」の要件について、他の薬局との輪番制による休日夜間の対応や、患者宅訪問での服薬指導・残薬確認、無菌調剤の態勢を想定。「高度薬学管理型」は、プライバシーが確保された個室の設置、専門性の高い薬剤師の配置、抗がん剤など特殊な薬剤を確保する態勢を想定しています。
厚労省は、薬代で利益を得ようとする病院による薬漬け医療が問題化したため、薬の調剤を病院から院外の薬局で行う「医薬分業」を推進してきました。院外処方の診療報酬を手厚くした結果、今では7割超が院外。しかし、院外処方は患者負担の重さに見合うサービスがなく、患者が利点を実感できないとの批判もありました。
2018年11月8日(木)
■風疹排除に向け、成人男性の予防接種に対策を 予防接種協議会が厚労省に要望
流行拡大が続く風疹について、日本小児科学会や日本産科婦人科学会など17団体が加盟する予防接種推進専門協議会は7日、職場の健康診断で風疹に対する免疫を調べる抗体検査を行うなど、企業と連携して流行の中心となっている30~50歳代の男性への対策をするべきだとの緊急要望書を、厚生労働省に提出しました。
妊娠中の女性が感染すると赤ちゃんに障害が出る恐れがある風疹の患者が急増していることを受け、専門家の団体が厚生労働省にワクチンの増産などを求める緊急の要望を行いました。
風疹は発熱や発疹などの症状が出るウイルス性の感染症で、妊娠中の女性が感染すると生まれてくる赤ちゃんの目や耳、それに心臓などに障害が出る恐れがありますが、今年報告された患者数は10月28日までで1692人に上っています。
これを受けて小児科や産婦人科などの学会でつくる専門家の団体が、厚生労働省に対策を求める緊急の要望書を提出。要望書では、十分な免疫を得るために必要な2回のワクチン接種を、妊娠を希望する女性が確実に受けられるようにすることや、子供のころにワクチンの定期接種の機会がなく、今の感染の中心となっている30歳代から50歳代の男性を対象とした予防接種の制度を作ることなどを求めています。
その上で、ワクチンの安定供給のため製造業者に直ちに増産を依頼し、必要な数のワクチンを確保するよう求めています。
政府は、東京オリンピック・パラリンピックが開かれる2020年度までに風疹の流行を排除する目標を掲げていますが、要望書は「このまま患者数が増加すれば、排除達成は困難」としました。
要望書を提出した予防接種推進専門協議会の岩田敏委員長(国立がん研究センター中央病院感染症部長)は、「風疹を完全に排除するには免疫の不十分な人全員がワクチン接種を受けられるようにすることが必要で、会社の健康診断に風疹の予防接種を取り入れるなど企業と連携した取り組みが必要だ。国は速やかに対応してほしい」と話しています。
2018年11月8日(木)
■塩野義製薬が抗うつ薬の治験開始 服用翌日に効果が出る新薬の開発・販売権取得
塩野義製薬はアメリカの製薬会社から開発権を取得した抗うつ薬について、日本で臨床試験(治験)を始めました。
服用した翌日に効果が現れるほか、2週間連続で服用すると効果が1カ月近く続きます。従来の抗うつ薬は効果が出るまで2~4週間かかり、毎日服用する必要がある上、やめると症状が悪化していました。塩野義製薬は服用回数を減らせる医薬品の開発に取り組み、競争力を高めます。
治験を始めた新しい抗うつ薬はアメリカのセージ・セラピューティクスが開発した「SAGE―217」で、塩野義製薬は6月に100億円を投じて日本と韓国、台湾での開発・販売権を取得しました。同社は抗うつ薬「サインバルタ」を販売しており、日本での2018年度の売上高は260億円の見込み。新薬の売上高はサインバルタを大きく上回ると期待しています。
厚生労働省によると、うつ病などの気分障害を持つ患者は2014年に111万人を超え、増加傾向にあります。調査会社の富士経済(東京都中央区)は、抗うつ薬を含む中枢神経領域の治療薬の国内市場規模が2024年に約6500億円と、2016年から1割超拡大するとみています。
塩野義製薬は、患者にとって使い勝手のいい医薬品の開発を進めています。今年3月に発売したインフルエンザ治療薬「ゾフルーザ」は、錠剤を1回飲むだけで治療が完結します。承認取得を目指している抗エイズウイルス(HIV)薬「カボテグラビル」は長期作用型注射剤で、投与周期が1カ月に1回からと長くなっています。
2018年11月8日(木)
■健康保険法を改正し、適用条件を厳格化へ 医療目的の来日、なりすまし受診に歯止め
政府・自民党は、外国人による公的医療保険の不適切利用を防ぐため健康保険法を改正し、適用条件を厳格化する方針を固めました。加入者の被扶養親族が適用を受けるためには、日本国内に居住していることを要件とする方向で検討しています。来年の通常国会への改正案提出を目指します。
方針を固めたのは、外国人労働者の受け入れ拡大に向けて、現行制度の不備を正す必要が出てきたためです。外国人の窓口となる自治体などからは、社会保障制度を巡るさまざまな問題が提起されています。
医療保険を巡っては、本来は医療が目的の外国人が、留学生や技能実習などの在留資格で来日するケースがあるとされます。日本の国民健康保険や、大企業の健康保険組合、中小企業の全国健康保険協会(協会けんぽ)に入れば、医療費の自己負担は原則3割で、質の高い医療を受けることができるためです。
たとえ高額な医療費がかかった場合でも、収入に応じて治療費の自己負担分が軽くなる「高額療養費制度」があります。政府関係者は、「日本の医療保険制度は、手厚いがゆえに悪用される可能性がある」と語っています。
また、会社員が対象の健康保険は、加入者本人に扶養される3親等内の親族にも適用されますが、日本国内に住んでいる必要がないため、訪日経験のない海外の親族らが母国や日本で医療を受けて健康保険を利用する事例が相次いでいます。
健康保険証を他人が利用する「なりすまし受診」も問題となっています。自民党の「在留外国人に係る医療ワーキンググループ」が8月に行ったヒアリングでは、神戸市の担当者から実例が報告されました。神戸市に不法滞在していたベトナム人女性が2014年、日本在住の妹の国民健康保険証を利用してエイズウイルス(HIV)の治療を2年間受けていたことが発覚。1000万円以上(自己負担含む)の医療費がかかったといいます。健康保険証には顔写真がないため、病院での本人確認には限界があります。
こうした事態を受け、厚生労働省は今年に入り、不正事例の調査を開始しました。ただ、外国人やその家族の健康状態を来日前に正確に把握するのは困難で、不正利用の実態把握は進んでいないのが実情です。
自民党厚労部会は政府に対し、「外国人にも年金や医療保険の仕組みや手続きが理解できるようわかりやすい説明に努める」ことを求めました。
2018年11月7日(水)
■妊娠中後期の飲酒、妊婦自身にも悪影響確認 高血圧症候群のリスク上昇
妊婦が飲酒すると妊娠高血圧症候群になるリスクが高まるとの調査結果を、東北大学病院周産母子センターなどの研究チームがまとめ、7日発表しました。赤ちゃんの先天異常や発達の遅れといった危険性はすでにわかっていましたが、妊婦自身への悪影響が確認されました。
妊娠高血圧症候群は、妊婦の5~10%に生じるとされます。高血圧から脳出血、肝臓や腎臓の機能障害など重い合併症につながる恐れがあり、妊婦の死亡率、流早産や低出産体重児の出生率が高くなります。
研究チームは、国が全国規模で実施する「エコチル調査」に参加した妊婦7万6940人について、妊娠初期と妊娠中後期に飲酒の状況を質問。妊娠初期に酒を飲んでいた人は7323人(9・5%)おり、妊娠中後期でも酒を飲んでいた人は1965人(2・6%)いました。このうち、妊娠高血圧症候群のリスクが上がるのは、妊娠中後期に毎日、日本酒1合以上に相当する飲酒を続けていた妊婦(58人)。この場合、全く飲酒しない妊婦に比べて、3・45倍リスクが高くなりました。
2018年11月7日(水)
■「子宮移植」臨床研究の指針を策定へ 慶大、計画案を学会に提出
生まれ付き子宮がない女性などに親族などから提供された子宮を移植して出産を目指す「子宮移植」について、日本産科婦人科学会などの学会は、臨床研究の指針の策定を始めることになりました。国内で子宮移植の検討を行うチームが臨床研究の計画案を学会に提出したことなどを受けて始めるもので、技術的な課題や倫理的な問題について議論が本格化することになります。
子宮移植は、生まれ付き子宮がない女性などに親族などから提供された子宮を移植し、あらかじめ準備していたパートナーとの受精卵を着床させて妊娠、出産を目指すもので、スウェーデンなどの一部の国で行われ、世界で10人あまりが生まれたと報告されています。
国内では、慶応大学病院のチームと名古屋第二赤十字病院などのチームが、それぞれ臨床研究の実施を検討しており、このうち慶応大学病院の木須伊織・特任助教(産婦人科)らのチームは7日、日本産科婦人科学会と日本移植学会に臨床研究の計画案を提出したことがわかりました。
計画案では、先天的に機能性子宮を持たないものの、卵巣機能に異常はなく正常に機能しているロキタンスキー症候群の女性を対象として、3年間で5例程度を実施するとしています。
慶応大学病院のチームは2013年に、一度摘出した子宮を再移植したサルが出産に成功したと発表。2014年には「子宮提供者の自発的な意思決定や安全を確保する」などとした指針を策定するなど、実施に向けた準備を進めていました。
ロキタンスキー症候群は女性の4500人に1人ほどの割合でいるとされており、提出を受けた学会は、子宮移植を受ける患者や提供者の条件、それに実施する施設や医師の要件などを指針としてまとめる議論を始めることになりました。
子宮移植を巡っては、出産のために健康な女性から子宮を取り出すことが許されるのかといった倫理的な問題に加え、これまでに世界で行われた移植では出産に至らないケースも報告されているほか、移植後に服用する免疫抑制剤の胎児への影響など、技術面や安全面での課題もあり、今後、議論が本格的に行われることになります。
日本産科婦人科学会の倫理委員会の委員長で徳島大学の苛原稔教授は、「子宮移植は病気で子宮がない女性の選択肢の1つとしては考えられると思う。ただし、一般化されていない技術であり、問題点を一つ一つ解決しながら取り組むべきものだ。学会として指針を作り、研究を支援していきたい」と話しています。
海外ではこれまでにロキタンスキー症候群のほか、がんなどで子宮を摘出した女性を含めて、少なくとも54例の子宮移植が実施されており、2014年にスウェーデンで子宮移植を受けた36歳の女性が世界で初めて出産するなど、スウェーデンやアメリカ、ブラジルなどで13人の子供が生まれています。
一方、専門家によりますと、トルコやスウェーデンでは流産したケースが報告されているほか、移植した子宮がうまく定着せず、再び取り出したケースも10例以上報告されているということです。
臓器移植は通常、心臓などの臓器の働きが悪くなり、命の危険がある場合などに行われます。しかし、子宮移植は妊娠や出産をするために健康な第三者の体にメスを入れ子宮を取り出すため、提供者の体と心に大きな負担が伴うことになり、倫理的に許されるのかといった課題があります。
また、子宮移植を受けた患者は、拒絶反応が起きないかなどを時間をかけて確認した上で受精卵を子宮に着床させるほか、出産は帝王切開で行い、出産後は移植した子宮を手術で取り除くことになります。
生命倫理の問題に詳しい北里大学医学部の齋藤有紀子准教授は、子宮がないために妊娠を諦めていた人たちの気持ちは切実で、その思いは否定されるべきではないとした上で、「健康な体にメスを入れる生体移植は、やむを得ない場合に例外的に行われるもので、生命の維持にかかわらない子宮移植に関しては、当事者の切実さや技術の確立だけですぐに正当化できるものではない。この技術は不妊医療、移植医療としての側面に加え、当事者の親の気持ちや移植という選択肢を示すことで、当事者自身が感じるプレッシャーなどにどのように対応していくのかといった課題もあり、課題の解決なしに見切り発車をすると、当事者の女性やその家族が置き去りとなってしまう可能性がある」と指摘しています。
2018年11月7日(水)
■世界最短の1カ月でインフルエンザワクチン製造 田辺三菱製薬、タバコの葉を使う技術を開発
感染症を予防するワクチンの製造に、約60年ぶりの技術革新が起きようとしています。田辺三菱製薬は早ければ2018年度内に、世界最短の1カ月で製造するインフルエンザワクチンの承認をアメリカで申請します。
製造に6カ月以上かかる従来のワクチンは、流行型に適合しなかったり不足したりするなどの課題がありました。効果を高めたワクチンを即座に供給できるようになれば世界的な大流行(パンデミック)のリスクを抑えられ、政府のワクチン備蓄の在り方も変わる可能性があります。
体内の免疫力を高めるワクチンを作るには、ウイルスを培養で増やした上で毒性を取り除く必要があります。一般的なのは鶏卵を使う方法で、1950年代から続いています。ただ特別な環境で飼育した鶏と受精卵を確保しなければならないため、出荷まで1年以上がかかります。医師ら医療関係者向けの出荷でさえ、6カ月以上が必要。
2000年代前半に致死率の高い強毒性の鳥インフルエンザが人に感染することが確認され、2009年には新型インフルエンザにより全世界で推定28万人以上の死者が出たことから、製薬各社は迅速にワクチンを製造する技術の開発に取り組んできました。
田辺三菱製薬がワクチン製造に使うのは、タバコの葉です。流行しているウイルスの型を分析し、その遺伝子をタバコの葉の組織に組み込んで、成育後に収穫してワクチン成分を抽出する仕組みです。
同社は動物の細胞を使った製法の開発に取り組んでいましたが、量産が難しいという課題に直面し、目を付けたのが成育が早く葉の収量が多いタバコでした。アメリカのフィリップモリス・インターナショナルと2013年に共同で買収したカナダのバイオ医薬品会社、メディカゴの技術を使い、1カ月で大量生産する技術の開発にめどを付けました。
田辺三菱製薬はアメリカで2018年度中にもインフルエンザワクチンの製造販売の承認を申請する見込みで、2019年度の実用化を目指します。
アメリカを先行させるのは遺伝子組み換え技術に関する基準が整っているためで、日本でも阪大微生物病研究会と共同で開発する方針。ほかの感染症への展開についても、「いいワクチンがないロタウイルスやノロウイルスを検討している」といいます。
田辺三菱製薬はワクチン販売の国内最大手で、2018年3月期(国際会計基準)のワクチンの売上高は約350億円。今後は新型ワクチンの実用化やアメリカとカナダにある工場の拡充などを進め、この規模を約3倍の1000億円に増やす計画です。
調査会社TPCマーケティングリサーチによると、日米欧のワクチンの市場規模は2兆3000億円とされ成長が続いています。うちインフルエンザワクチンは約3600億円程度ですが、パンデミックが起きると市場は2~3倍に膨れ上がります。
世界のワクチン市場はアメリカのメルクやファイザー、イギリスのグラクソ・スミスクライン、フランスのサノフィの4社がシェア9割を握っており、国内最大手の田辺三菱製薬ですらシェアは1%強にすぎません。新たな製造技術が実用化されれば、この外資4社の牙城を切り崩す可能性もあります。
2018年11月7日(水)
■急性弛緩性まひの報告が10月ごろから増加 風邪に似た症状の後に子供の手足がまひ
子供の手足に急にまひが出る「急性弛緩(しかん)性まひ」の報告数が、10月ごろから増加しています。3年前、エンテロウイルスD68感染症の流行と同時にまひの報告が相次ぎ、厚生労働省は今年5月から全国の医療機関に報告を求め、監視を強めていました。今回も、エンテロウイルスD68感染症との関連が指摘されています。
専門家は、手洗いの徹底と医療機関への早めの相談を呼び掛けています。
国立感染症研究所によると、全国で週に数例だった急性弛緩性まひの報告が最新の1週間(10月22~28日)で9例報告されました。その前週も10例報告されました。感染症疫学センター第三室の多屋馨子(けいこ)室長は、「1週間に10例は多い」と指摘しています。
5月以降の累計は86例に上り、兵庫県、岐阜県で8例、東京都、愛知県で6例、福岡県5例、埼玉県、千葉県、神奈川県、大阪府で4例と続きます。
原因として、エンテロウイルスD68の感染が指摘されています。このエンテロウイルスD68は、1962年にアメリカで見付かったウイルスで、散発的な感染が報告される程度で推移した後、2014年、アメリカ国内で感染が広がり、1000人以上が重い呼吸器症状を訴えてその一部に体のまひがみられたことをアメリカの疾病対策センター(CDC)が報告しています。
小児まひとも呼ばれるポリオや手足口病を引き起こすエンテロウイルスの仲間で、せきのしぶきなどで感染し、夏から秋に流行します。発熱やせきなど風邪に似た症状が出ますが、対症療法しかなく、感染を防ぐためのワクチンもありません。
病原体の検査には時間がかかるため、現時点では急性弛緩性まひの患者の一部からしか検出されていません。だが、各地の医療機関から今年は11月6日までに、呼吸器の病気を含めてエンテロウイルスD68の検出が26件報告されました。2017年は6件、2016年は1件でした。
285件報告された2015年は、すべてがエンテロウイルスD68との関連があるとは確認できていないものの、流行のあった8~12月に手足のまひが出て、脊髄(せきずい)に異常があった人が約60人に上りました。大人は4人だけで、半数以上が5歳未満でした。その多くにまひが残りました。
厚労省の研究班に参加する吉良龍太郎・福岡市立こども病院小児神経科長は、「この病気はまだ十分に知られておらず、風邪のような症状の後に手足にまひが出たら、医療機関に相談してほしい。予防には手洗いやうがいが欠かせない」と話しています。
2018年11月7日(水)
■スマホ内蔵のリチウム電池による出火、5年間で168件 東京消防庁が注意喚起
スマートフォンやノートパソコンなど携帯型電子機器に多く使われる小型のリチウムイオン電池が発火し、火事になるケースが相次いでいます。東京都内では昨年までの5年間に計168件の火災が発生し、重体1人を含む41人が負傷しました。誤った充電や破損が主な出火原因で、東京消防庁が注意を呼び掛けています。
10月28日夜、「スマホを触っていたら急に火が出た」と東京都江東区の民家から119番がありました。住人の男性が水をかけて火を消し止めたものの、スマホに内蔵されたリチウムイオン電池のバッテリーは黒焦げになっていました。スマホを自分で修理していた際、突然、出火したといい、電池の過熱が原因とみられます。
リチウムイオン電池は繰り返し充電可能で、小型で軽量なのに蓄電量が多いのが特長で、スマートフォンやタブレ ット、電子たばこ、ノートパソコン、電動アシスト自転車などにも使われています。一方、発火や異常過熱の危険性が指摘され、ショートを防ぐための保護回路が設けられるなど安全策が施されています。
近年は海外製品も増え、昨年の輸入量は約6000万個に達しましたが、粗悪な製品もあり、発火事故が増えているといいます。
東京都内で「火災」として消防隊が出動したケースは2012年の4件から、2017年は56件に増加。このうち5件は、ぼやではすまずに火が燃え広がり、住宅を焼きました。
火災になることが最も多いのは、スマホなどを充電する携帯用のモバイルバッテリー。2017年の56件の火災のうち11件を占め、中学校の教室で生徒のバッテリーがショートし、消防車が出動する騒ぎも起きました。
出火原因は、電圧の異なる電化製品にリチウムイオン電池を接続する誤充電や、電池への強い衝撃が多いといいます。水没やペットの唾液でぬれた電池を乾かした後に使ったり、真夏に高温になった車内に長時間放置したりして、出火した例もありました。
2015年には、江戸川区の階段で男性が尻もちをついた際、ズボンの後ろポケットに入れていたスマホのバッテリーが破損して炎が上がり、やけどを負うなど、5年間の負傷者は41人に上っています。
発火などの事故が起きたリチウムイオン電池は海外製が多く、事前に充電中の異臭や膨張、電池の減りが早いなどの兆候がみられることもあるといいます。東京消防庁は、「異常を感じたらすぐに使用をやめ、製造会社や販売店に相談してほしい」と注意を促しています。
相次ぐ発火事故を受け、経済産業省は今年2月、モバイルバッテリーを電気用品安全法の規制対象に加え、製造・輸入業者に製品の検査や試験を義務付けました。来年2月からは、技術基準を満たしていることを示すPSEマークが必須になり、安全性をクリアしていない製品は販売できなくなります。経産省製品安全課は、「消費者側もPSEマークを確認し、粗悪品の購入や使用を控えてほしい」としています。
2018年11月6日(火)
■インフルエンザ薬「ゾフルーザ」シェア1位に 1回の服用で治療が完結し人気を集まる
今年3月に発売され、錠剤を1回飲むだけでインフルエンザの治療が完結する塩野義製薬の「ゾフルーザ」の国内医療機関への売り上げが4月からの半年間で、抗インフルエンザ薬市場の65%を占めていたことが6日、判明しました。
飲み薬では初めて1回の服用ですむことから、複数回服用の「タミフル」や吸引式の「イナビル」などの定番薬を抑え、一気にシェアを拡大しました。今シーズンはタミフルのジェネリック医薬品(後発薬)も発売が始まり、流行の本番を迎えるインフルエンザの治療薬市場の勢力図は一変しそうです。
塩野義製薬が、アメリカの医薬品コンサルティング「IQVIA」のデータを基に算出したところ、国内の医療機関に流通販売した抗インフルエンザ薬の4~9月の売上高は、ゾフルーザが65%でした。
一方、製薬各社の決算発表によると、金額ベースでは、同期間のゾフルーザの国内売上高は4億6000万円でした。2017年度の売上高が国内首位だった第一三共のイナビルは1億円にとどまり、タミフルを国内販売する中外製薬は備蓄分を除いた売上高を「0億円」と計上しました。
既存薬のイナビルは吸引式で、カプセルのタミフルは1日2回、計5日間服用しますが、ゾフルーザは1日1回の服用で治療が完結するため患者の負担が軽くなります。
また、既存薬では細胞内で増殖したウイルスが細胞外に広がるのを防ぐのに対し、ゾフルーザは細胞内でウイルス自体の増殖を抑制する世界初の仕組みを持つことから効果が早く現れ、長く続くのも特徴。
統計の残る1999年以来、インフルエンザの推定患者数が最多となった2017年度は、ゾフルーザが3月14日に発売されると月末までのわずか約2週間で24億円を売り上げました。今シーズンが市場への本格参入となりますが、塩野義製薬の手代木功社長は「将来的に国内シェア7割を目指したい」と強気の姿勢をみせます。
抗インフルエンザ薬については、9月からタミフルの後発品が沢井製薬から発売されるなど選択肢が増えています。沢井製薬の澤井光郎社長は、「積極的な営業を行うわけではないが、一定の需要を見込んでいる」と話しています。
2017年度の売上高は、国内首位のイナビルが253億円、タミフルが169億円でした。ただ、両社とも今シーズンは前年ほどの流行を見込んでいません。第一三共は2018年度の売り上げを190億円(前年同期比25%減)と計画。中外製薬は「後発品とゾフルーザが発売されることを折り込んで予想も抑制している」とし、2018年の売り上げについて56億円(66・9%減)と予想しました。
一方、塩野義製薬はゾフルーザの売り上げを130億円と見込み、金額ベースの予想でも2位となっています。
2018年11月6日(火)
■流行続く風疹患者、1692人に上る 8週連続で新たな患者100人超
国立感染症研究所は6日、10月22〜28日までの1週間に新たに170人の風疹患者が報告され、今年の累計患者数が1692人になったと発表しました。100人超の増加は8週連続となったほか、前の週に当たる10月21日までの1週間の患者の数は追加の報告などを受けて修正されて215人と、今年初めて200人を超えていたということです。
患者の中心は、ワクチンの接種率が低い30歳代から50歳代の男性。専門家は、「対策をうたないと、東京オリンピックの2020年まで感染が続くこともあり得る 」と懸念しています。
都道府県別では、東京都が前の週から60人増えて589人、千葉県が19人増えて269人、神奈川県が24人増えて233人、埼玉県が13人増えて110人、愛知県が4人増えて88人、大阪府が7人増えて56人などとなっており、首都圏の患者が全体の約7割を占める一方で、首都圏以外の地域でも患者の数が増えてきています。
男女別では、女性の305人に対して、男性は1387人と4・5倍多く、男性患者全体の8割を30歳代から50歳代が占めています。また、女性では20歳代が最も多く、患者数は108人に上っています。
感染症研究所は6日、緊急情報を発表。妊娠初期に風疹にかかると、赤ちゃんに難聴や心疾患などの障害が出る「先天性風疹症候群」が増える恐れがあります。妊娠中は予防接種が受けられないため、妊娠の2カ月前までに2回ワクチン接種をすませておくほか、妊婦の家族など周りにいる人もワクチンの接種が重要だと呼び掛けました。
1万6000人超の患者が出た2012~13年の流行では、45人の赤ちゃんに障害が出て、うち11人が亡くなりました。
神戸市の西村麻依子さん(35歳)は、長女(6歳)を妊娠中だった2012年、風疹にかかりました。長女には心臓に穴が開き、脳の一部が石灰化するなどの症状が出ました。多くの症状は回復したものの、今もしゃべり方が幼いなど発達の遅れがみられます。西村さんは、「娘にもつらい思いをさせた。ワクチンをうてば風疹は防げると伝えたい」と話しています。
アメリカの疾病対策センター(CDC)は10月22日、予防接種や罹患(りかん)歴のない妊婦は日本に渡航しないよう勧告。風疹は一度流行すると、2~3年にわたり流行が続くことが多く、専門家は今回も感染が続く恐れがあると懸念しています。
来年にはラグビーワールドカップ、2020年には東京オリンピック・パラリンピックが控えています。政府は2020年度までに持続的な感染が1年以上確認されない「風疹の排除」を目指していますが、何も手をうたなければ大型イベントにも影響が出かねません。
今回の流行は、過去の制度変更の影響でワクチンの接種率が低い30歳代から50歳代男性を中心に感染が広がっています。同年代で抗体が少なく感染のリスクが高い人は、数百万人いるとみられます。
感染症研究所感染症疫学センターの多屋馨子(けいこ)室長は、「30~50歳代男性の抗体保有率を上げない限り流行が繰り返される。抗体検査を職場の定期健診に組み込むなどの取り組みが必要だ」と訴えています。
2018年11月6日(火)
■昨季のインフルエンザ患者の異常行動95件 うち94件が19歳以下
突然走り出す、飛び降りるなど重度の異常行動を起こした季節性インフルエンザ患者の報告が昨季、95件あったことがわかりました。厚生労働省研究班が5日、公表しました。
報告数は過去10季で3番目に多く、95件のうち94件が19歳以下でした。インフルエンザ治療薬を使っていない例もあり、厚労省はインフルエンザ発症後の異常行動への注意を呼び掛けています。
調査によると、インフルエンザ治療薬の種類別の報告数はタミフル23件、リレンザ16件、イナビル26件、ラピアクタ2件。3月から販売されたゾフルーザは2件でした。イナビルを服用した10歳代の少年が翌日、家族が目を離しているうちに自宅マンションの8階のベランダから転落して死亡したケースもありました。一方、薬を使っていないケースでも16件ありました。
性別では男性63%、女性37%。年齢は9歳と13歳が12件と最も多く、これまでと同様に小学生から中学生の男児に異常行動が出やすいという傾向がみられました。
2007年から厚労省はタミフルの10歳代への使用を原則、禁止してきましたが、異常行動との因果関係が明確ではないとして8月、使用制限を解除しました。
厚労省はインフルエンザ治療薬の処方にかかわらず、小学1年から19歳までがインフルエンザに罹患した場合は、少なくとも発熱から2日間は玄関に施錠したり、ベランダに面していない部屋に寝かせたりするなど、異常行動に注意を払うよう保護者に呼び掛けています。
2018年11月6日(火)
■5時間未満と10時間以上の睡眠で認知症リスク上昇 九州大が高齢者で研究
1日の睡眠時間が5時間未満の人や10時間以上の人は、5時間以上7時間未満の人に比べて認知症や死亡のリスクが高いことが、高齢者を対象にした研究で明らかになりました。
これまでに行われたいくつかの研究では、睡眠時間が短い、または長いことが、死亡リスクの上昇と関係することが示唆されており、睡眠時間と認知障害の間にはU字形の関係があると報告する疫学研究もありました。しかし、東洋人における睡眠時間と認知症発症の関係は、十分に調べられていませんでした。
そこで九州大学の小原知之氏らは、日本の高齢者を対象として、毎日の睡眠時間と認知症および死亡の関係を調べるために、日本を代表する大規模疫学研究である「久山町研究」のデータを分析しました。対象となったのは、福岡県糟屋郡久山町に暮らす60歳以上の高齢者で、登録時には認知症ではなかった1517人(男性667人、女性850人)です。
登録時に自己申告された昼寝も含む1日の睡眠時間に基づいて、5時間未満(32人、平均年齢71・6歳、男性が50・1%)、5時間以上7時間未満(405人、68・9歳、33・2%)、7時間以上8時間未満(446人、69・1歳、40・2%)、8時間以上10時間未満(522人、70・8歳、51・0%)、10時間以上(92人、73・8歳、65・6%)の5群に分けました。
最長10年の追跡期間中に、294人(男性110人、女性184人)が認知症を発症しました。うちアルツハイマー病は197人、血管性認知症は76人でした。死亡したのは282人でした。うち66人の死因は心血管疾患(心筋梗塞、脳卒中など)で、108人はがん、42人は呼吸器感染症でした。
睡眠時間が5時間以上7時間未満の高齢者を参照群として比較すると、年齢と性別を考慮した認知症の発症率と死亡率は、5時間未満の高齢者と10時間以上の高齢者で高くなっていました。BMI(体格指数)や高血圧、糖尿病、飲酒習慣、喫煙習慣なども考慮してそれぞれのリスクを算出したところ、睡眠時間が短い集団と長い集団におけるリスク上昇は明らかでした。
5時間以上7時間未満の高齢者に比べ、睡眠時間が5時間未満の高齢者の認知症のリスクは2・64倍、あらゆる原因による死亡のリスクは2・29倍でした。同様に、睡眠時間が10時間以上の高齢者の認知症のリスクは2・23倍で、死亡のリスクは1・67倍でした。認知症のタイプがアルツハイマー病だった高齢者、血管性認知症だった高齢者を分けて、それらの発症と睡眠時間の関係を調べても、同様の関係が認められました。
最後に、認知症と死亡のリスクに睡眠薬の使用が及ぼす影響について検討しました。睡眠時間は問わずに、睡眠薬を使用していた高齢者を1つのグループとして、睡眠時間が5時間以上7時間未満で睡眠薬を使用していなかった高齢者と比較したところ、認知症のリスクは1・66倍、死亡のリスクは1・83倍で、いずれも統計学的に有意なリスク上昇が認められました。
今回得られた結果は、高齢者の認知症と死亡の予防において、適切な睡眠時間を維持することが重要であることを示唆しています。
調査結果は、アメリカの老年病学会の雑誌「Journal of the American Geriatrics Society」(オンライン版)2018年6月6日号に報告されました。
2018年11月6日(火)
■医師処方薬、自宅配送可能に 2020年春にも実施へ
患者がスマートフォンやタブレット端末で薬剤師の説明を受けて、医師処方薬を自宅に配送してもらえるよう、厚生労働省が医薬品医療機器法(薬機法)を改正する方針を固めました。来年の通常国会に法案提出し、早ければ2020年春の実施を目指します。
医師によるオンライン診療はすでに一部始まっており、今回の法改正により薬剤師の「オンライン服薬指導」も認めることで、患者は診察から服薬までを在宅で一貫して受けられるようになります。
薬は市販薬(一般用医薬品)であれば今でも通信販売で買えますが、医師が処方する医療用医薬品は、薬機法で薬剤師による対面の服薬指導が義務付けられています。情報通信端末を使って離れた患者の問診をする医師のオンライン診療は、初診は原則禁止などの条件付きながら、今年度の診療報酬改定で導入しやすくなりましたが、院外処方された薬は調剤薬局まで出向かないと買えないという難点がありました。
このため、国は今年5月から、国家戦略特区を利用して、福岡市、愛知県、兵庫県養父市の3地域で薬剤師のオンライン服薬指導を解禁。患者が離島やへき地に居住し医師のオンライン診療を受けていて、薬剤師とは対面が難しい場合に限って、薬剤師が患者に薬を飲む回数や量などの基本的な情報を伝え、保管方法や副作用が出ていないかどうか、他の薬との飲み合わせなども確認した上で、郵送などで薬を受け取れるようになりました。
厚労省は法改正でこれを全国に広げつつ、国家戦略特区と同様に地域を山間部などに限定したり、薬剤師に一定の対面指導を義務付けたりといった条件は課す方針です。
これまでの国家戦略特区では、要件が厳しすぎて利用が広がっていないとの指摘がある一方、日本薬剤師会などは「薬は飲み合わせを間違えれば、副作用を招く恐れがあり、患者の安全性が担保できない」と拡大に慎重な姿勢をみせています。法案提出まで、要件を巡って関係者間の詰めの作業が続くとみられます。
2018年11月5日(月)
■糖尿病リスク予測ソフト、公開翌日に中止 厚労省が「未承認の医療機器」と指摘
国立国際医療研究センター(東京都新宿区)が、糖尿病の発症リスク予測ソフトを開発してホームページに公開したところ、厚生労働省から「未承認の医療機器に当たるのでは」と指摘され、中止する事態となっています。医療機器の提供には国の承認など法的な手続きが必要です。
同センターは、「診断でなくリスク予測なのに」と困惑しています。
問題となったのは、30~59歳のこれまで糖尿病と診断されたことのない人が身長、体重、腹囲、最高・最低血圧、喫煙習慣などのデータを入力すると、糖尿病の3年以内の発症リスクが予測できるソフト。約3万人の健康診断データを基に、人工知能(AI)を活用して開発しました。発症リスクは「%」で示され、「あなたへのアドバイス」として「糖尿病予備軍(境界型糖尿病)に該当」などと表示されます。
10月24日に同センターのホームページにソフトを公開したものの、翌日に厚労省から「医薬品医療機器法に触れる可能性がある」と指摘されたため中止しました。
同センター疫学・予防研究部の溝上(みぞうえ)哲也部長は、「予測結果を参考に生活習慣を改善するためのもの。医療機器とみなされるとは」と驚いています。
ただ、予測結果の表現を修正すればすむ可能性もあるといいます。厚労省は「『あなた』と個人を特定して発症リスクを表示しているため診断行為になる。同じ健康状態の人の発症リスクとして示すなら問題ない」と説明。同センターは再公開に向けて、修正作業を進めています。
厚労省は、「病気の予測ソフトは増えているが、診断と混同される可能性がある。国民に誤解を与えないよう注意が必要」としています。
2018年11月5日(月)
■猛暑でアース製薬とグンゼが減益 虫よけやストッキング不調
家庭用の殺虫剤などを手掛ける「アース製薬」は、今年1年間の決算の最終的な利益の見通しを大幅に下方修正しました。猛暑の影響でアウトドアを楽しむ人が減り、虫よけなどの売り上げが減ったことが主な要因だとしています。
発表によりますと、アース製薬は今年12月期の決算の最終利益の見通しについて、これまでの30億円から95%少ない1億5000万円へと大幅に下方修正しました。
この夏の記録的な猛暑の影響などでアウトドアを楽しむ人が減った上、蚊の活動も鈍り、虫よけなどの売り上げが減少したことが主な要因だとしています。
アース製薬は、「猛暑の影響は予想以上だった。今後は虫よけだけでなく、日用品の販売を伸ばすなど、主力商品の多角化に力を入れていきたい」としています。
一方、繊維メーカーの「グンゼ」が5日発表した2018年9月中間決算は、前年比3・4%減の32億円と営業減益でした。もともと減少傾向にあった女性向けのストッキングの需要が、今年の猛暑でさらに振るわなかったことが原因といいます。
ストッキングを含む靴下類は売上高の約14%を占める主力分野の一つですが、今回の中間決算では約8%減の98億円と低調でした。広地厚社長によると、夏場はサンダル履きで過ごす「素足派」の人や、足底付近だけを覆うフットカバーですます人が近年増加。女性向けのストッキングの落ち込みはその中でも大きく、さらに今夏の猛暑が追い打ちをかけたといいます。
一方、猛暑には飲み物がよく売れたというプラス面もあり、ペットボトル用のプラスチックフィルムの販売は好調でした。全体の売上高は約1・1%増の685億円、純利益は約0・4%増の25億円とほぼ横ばいでした。
2018年11月5日(月)
■風疹流行で母親団体、小泉進次郎氏に要望 「東京五輪までの撲滅に全力」と回答
首都圏を中心に風疹の患者が大幅に増加する中、妊娠中に感染し子供に障害が出た母親などでつくる団体が、自民党の小泉進次郎厚生労働部会長と面会し、感染の中心となっている成人男性を対象にワクチンの定期接種を実施するなど、対策を強化するよう求めました。
風疹は今年、患者が大幅に増加しており、妊娠中の女性が感染すると赤ちゃんに難聴や心臓病、白内障などの障害が出る恐れがあります。
5日は、風疹によって子供に障害が出た母親などでつくる団体「風疹をなくそうの会」が自民党本部を訪れ、小泉厚生労働部会長と面会し、対策の強化を求める要望書を手渡しました。
要望書では、子供のころにワクチンを受ける機会がなかった30歳代から50歳代の男性が感染の中心となっていることから、こうした人たちを対象にワクチンの定期接種を国や自治体が助成する形で実施することなどを求めています。
風疹による障害で娘を亡くした、団体の共同代表を務める可児佳代さんは、「私たちと同じような思いをする、お母さんをなくしてほしい」と涙ながらに訴えました。
面会の際、小泉氏は「東京五輪のある2020年までに撲滅できるよう、全力を尽くす」と回答し、面会の後の記者会見で「風疹は撲滅できるにもかかわらず実現できていないということは何かが足りないはずで、政治にできることを関係者とも話し合って行動に移したい」と述べました。
2018年11月5日(月)
■70歳まで就業、月10万円増の年金33万円も 繰り下げ受給で初試算
公的年金の受給開始時期(原則65歳)について、70歳まで遅らせた場合の年金水準の試算を厚生労働省が初めてまとめ、2日の社会保障審議会年金部会で公表しました。
夫婦2人のモデル世帯(2014年度)の場合、70歳まで働き、年金の受け取りも70歳まで遅らせると月33万1000円となり、60歳で仕事を辞めて65歳から受け取る一般的なケース(月21万8000円)より最大10万円以上増えます。
年金の支給は原則65歳からですが、受給開始の時期は60~70歳の間で選べ、いつ受給を開始しても平均寿命までの受給総額は変わらない設計です。繰り下げ受給を選択すると1カ月につき0・7%ずつ増額されるものの、利用者は全体の約1%にとどまっており、制度の周知が不十分との指摘が出ていました。
政府は、継続雇用年齢の義務付けを現行の65歳から70歳に引き上げたい考えで、年金の受給開始時期を70歳以降も選択できるよう検討を進めています。試算は、高齢になっても働き続け、年金の受給開始も遅らせた場合の年金受け取り額をイメージしてもらう狙いがあります。
厚労省は、年金の財政検証で使う「モデル世帯」に沿って、平均手取り月収が34万8000円(ボーナス込み)で40年間会社勤めをした夫と専業主婦について試算。65歳まで仕事をし、65歳で受給を開始した場合の年金額は月22万8000円で、60歳で仕事を辞めた場合より微増します。65歳まで働き、受給開始時期を70歳に繰り下げた場合は月32万3000円と大幅に受け取りが増えます。70歳まで働き、70歳から受給開始するとさらに増え、33万1000円になります。
高齢者に多い短時間勤務(週20時間)の場合、65歳で年金受給を始めてからも70歳まで働き続ければ月22万3000円と、若干の上乗せになります。
ただ、社会保障審議会年金部会では委員から「女性就業率が7割となり、65歳以上の単独世帯も女性が男性を上回っている」として、モデル世帯が現状を反映していないとの指摘も相次ぎました。
厚労省は、「今後対応を検討したい」としています。
2018年11月4日(日)
■妊婦の栄養不足、子供の脳に影響し高血圧リスクに 東大などが解明
過度なダイエットや貧困などで妊婦が栄養不足になると、生まれた子供の脳内の血圧調節システムが崩れ、成長しても高血圧になりやすいとの仕組みを、東京大学などの研究チームが動物実験で明らかにしました。日本の若い女性はやせた人が多く、研究チームは、人間でも同様に妊娠中の食事に注意すべきだと指摘しています。
論文は、アメリカの医学誌電子版に2日、発表されました。
妊娠後期は、エネルギー代謝にかかわるストレスホルモンが増えます。栄養不足の妊婦は胎盤でストレスホルモンを分解できず、ホルモンが胎児に移行し、生まれた子供は大人になると高血圧になりやすくなります。ただ、ホルモン量は成長すると減るのに高血圧になりやすい理由は不明でした。
東大の藤田敏郎名誉教授(内科学)らの研究チームは、妊娠中のラットを通常の食事とタンパク質の少ない低栄養の食事を与えるグループに分け、生まれた子供を比べました。低栄養の食事のラットの子供は低体重で生まれ、成長すると肥満になりやすく、塩分が多い食事を与えると血圧が大幅に上昇しました。
脳の細胞を調べると、低体重の子供は血圧調節システムのバランスが崩れ、血圧上昇の遺伝子が働きやすくなっていました。胎児のころに崩れると、大人になっても続くとみられています。
別の実験で、低栄養の親から胎児に移るストレスホルモンの働きで、血圧調節システムが崩れることを確認しました。
国の統計によると、やせ形の女性(BMI18・5未満)は昨年、20歳代21・7%、30歳代13・4%と、上の年代より割合が高くなっています。一方、2500グラム未満で生まれる低出生体重児の昨年の割合は9・4%で、近年はほぼ横ばいです。
実験結果を踏まえ、藤田教授は「妊婦も産科医も、妊娠中の栄養不足によって胎児の成長後も悪影響が長期に残ることを知ってほしい」と呼び掛けています。
2018年11月4日(日)
■児童・生徒の自殺、2017年度は250人 文部科学省が調査
全国の学校で2017年度、自殺した児童・生徒は250人に上り、この30年間で最も多かったことが文部科学省の調査でわかりました。
文科省によりますと、2017度、全国の小中学校と高校から報告があった児童・生徒の自殺者数は、前の年度より5人増えて250人でした。内訳は小学生が6人、中学生が84人、高校生が160人となっています。
自殺の原因について複数回答で尋ねると、「不明」が最も多く140人、次いで卒業後の進路に悩むなどの「進路問題」が33人、「家庭不和」が31人、「いじめの問題」が10人などとなっています。
全世代の自殺者数はここ数年、3万人を下回るなど減少傾向にありますが、子供たちについては高止まりしているのが実情です。
自殺総合対策推進センターの本橋豊センター長は、「子供の自殺の場合、遺書がないケースが多く、原因がわからないため対策が立てづらくなっている。まずは未然に防ぐよう、子供たちのSOSをつかむ仕組み作りが必要だ」と指摘しています。
2018年11月4日(日)
■BCGワクチン、溶剤からヒ素検出で出荷停止 厚労省、安全性に問題なし
子供の結核予防のため1歳未満の乳児を対象に接種しているBCGワクチンを溶かすための生理食塩液から、基準を超えるヒ素が検出され、8月からワクチンとともに出荷を停止していることを2日、厚生労働省が明らかにしました
検出されたヒ素はごく微量で、この量以下ならば一生の間、毎日注射しても健康に悪影響が出ないとされる国際的な許容量の数十分の1だったため、ワクチンの安全性に問題はないといいます。生理食塩液を入れるガラス製の容器からヒ素が溶け出るのが原因とわかり、容器を別の製品に代えたところ基準を超えるヒ素は検出されなくなりました。
現在は、在庫分のBCGワクチンが接種されています。11月中旬にも別の容器に取り換えて出荷を再開する予定で、BCGワクチンは不足しない見込み。
厚労省によると、ヒ素が検出されたのは日本ビーシージー製造(東京都文京区)が作る乾燥BCGワクチンの生理食塩液。8月9日に判明し、出荷を停止しました。厚労省は発覚から約3カ月間、事実を公表していませんでした。
2018年11月4日(日)
厚生労働省は、新型インフルエンザが流行した場合の対策として備蓄しているワクチンについて、中国を中心に1500人以上の感染が報告され国際的に警戒が高まっている「H7N9」型と呼ばれる新しいウイルスから作ったワクチンに順次、切り替える方針を決めました。
新型インフルエンザは、鳥インフルエンザウイルスが変異して、人から人に感染するようになったもので、免疫を持たないため世界で大きな流行となることが予測されるため、厚労省は、これまで最も警戒されてきた「H5N1」型と呼ばれる鳥インフルエンザウイルスから作ったワクチンを備蓄してきました。
しかし、世界保健機関(WHO)によりますと、5年前に新たに報告されたH7N9型と呼ばれる鳥インフルエンザウイルスが主に中国で、5年間に1500人以上に感染して600人以上が死亡し、H5N1型の20年間の感染者の2倍程度に達するなど、新たなウイルスに対する警戒が高まっています。
このため厚労省は、予算を確保した上で、現在備蓄されているワクチン1000万本について、2年後から期限が切れ次第、順次、H7N9型のウイルスから作った新しいワクチンに切り替え、最終的にはすべてを置き換える方針を決めました。
新型インフルエンザのためのワクチンの備蓄は12年前に始まりましたが、ウイルスの種類を変更するのは初めてです。
厚労省結核感染症課の丹藤昌治室長は、「H7N9型は新型インフルエンザに変わる可能性が高いといわれているため、できる限り早く備えたい」と話しています。
2018年11月3日(土)
脊髄(せきずい)損傷の患者の脊髄に電極を埋め込み、患者の意図に基づく電気信号を伝えながらリハビリを行ったところ、歩く機能が改善したという研究成果を、スイス連邦工科大学ローザンヌ校などの研究チームが発表しました。リハビリでの活用などが期待され、事故などで長年体の自由を失っている人々に希望をもたらしています。
論文は1日、イギリスの科学誌「ネイチャー」に掲載されました。
通常、脊髄を損傷すると脳からの電気信号が足に届かなくなります。脳神経外科医と技術者らからなる研究チームは、足を動かすという患者の意図を反映するような電気信号を、足の動きの計測データやコンピューターシミュレーションなどを活用して作り出しました。
患者が足を動かしたいと思うタイミングに合わせて、下半身の筋肉の動きをつかさどる脊髄の特定部位に埋め込んだ電極に、発信装置から信号が流れることで、あたかも脳から刺激されたような状態にしました。
脊髄損傷になった20~40歳代の男性3人に、この方法で5カ月間リハビリをしたところ、いずれも運動機能を示すスコアが改善。神経接合が再生して筋肉の連鎖反応を引き起こし、動かなかった足が動くようになりました。
2011年に交通事故に遭って以来、もう歩くことはできないといわれていたヘルトヤン・オスカムさん(35歳)は、5カ月のリハビリを終えた時点で、電気信号なしでも短距離を歩けるようになりました。別の患者デービッド・ムゼーさん(28歳)も、2010年の事故で左脚が完全にまひしていましたが、5カ月のリハビリの結果、電気刺激を使った歩行器で最長2時間歩くことに成功しました。短距離ならば自力で歩くこともできるといいます。
研究を率いたスイス連邦工科大学の神経科学者グレゴワール・クルティーヌ氏は、「10年以上にわたる慎重な研究が結果を生んだ」と述べました。
これ以前の臨床試験では、脊髄にいわゆる連続電気刺激を与える方法が用いられていましたが、マウス実験では成功していたものの、人間に対しては期待していた結果が得られていませんでした。しかし、対象部位を特定した電気刺激を使った今回のリハビリを5カ月続けた結果、3人の患者がまひしていた筋肉を電気刺激なしでも動かせるようになりました。
今回、試験治療の対象となったのは下半身にある程度の感覚が残っていた患者で、クルティーヌ氏は今後、脊髄損傷事故に遭ったばかりの患者を対象に試験治療を実施していく予定だといいます。
脊髄損傷は、iPS細胞(人工多能性幹細胞)を使った治療法の研究も進められています。脊髄損傷のリハビリに詳しい国立障害者リハビリテーションセンター研究所の河島則天さんは、「今回のような技術の進歩が再生医療の成果と融合すれば、患者が再び歩く機能を取り戻すことも夢ではないだろう」と話しています。
2018年11月3日(土)
■筋肉の中に骨ができる難病「FOP」の治療薬候補を発見 iPS細胞使い、京大など
筋肉や腱などの中に骨ができる難病「進行性骨化性線維異形成症(FOP)」の治療に役立つ可能性がある新しい化合物2種類を発見したと、京都大学と大日本住友製薬の研究チームが発表しました。
患者数が少ないため研究が進みにくい難病の仕組みや治療法を、患者のiPS細胞(人工多能性幹細胞)を使って追究した研究の成果です。論文が2日、アメリカの科学誌「ステム・セル・リポーツ」(電子版)に掲載されました。
FOPは遺伝子の変異が原因で、本来は骨がない部位に骨ができる病気。外傷や感染による炎症の刺激で骨化が急激に進むとされますが、刺激がなくても骨化が進む場合があり、詳しい発症メカニズムは不明です。国内の患者数は、推定80人程度と極めて少なく、根本的な治療法は確立されていません。
京大iPS細胞研究所の池谷真(いけやまこと)准教授らは、骨になる手前の軟骨を作りやすいマウスの培養細胞に、FOPの原因遺伝子を組み込み、発症の仕組みを詳しく調べました。この細胞に4892種類の化合物を加え、骨化を抑える効果がある7種類の化合物を見付けました。
さらにFOP患者のiPS細胞で効果を確かめ、2種類を選びました。この2種類をFOPの病態を再現したマウスに投与すると、骨化を抑える効果があったといいます。
いずれもがんの治療薬として過去に臨床試験が行われたことがある化合物で、池谷准教授は「すぐに臨床応用は難しいが、謎が多いFOPの発症の仕組みを解明し、治療薬を開発する重要な手掛かりになる」と話しています。
2018年11月3日(土)
■父親が高齢なほど新生児の健康リスク上昇 アメリカ・スタンフォード大が研究
父親が45歳以上の新生児は、低体重で生まれたり、新生児集中治療室での処置が必要になったりする確率が高いとの研究結果が1日、発表されました。
イギリスの医学誌「ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル」に発表され研究論文によると、アメリカのスタンフォード大学のマイケル・アイゼンバーグ氏率いる研究チームは、父親が高齢であることが新生児や母親に及ぼす可能性のある影響を理解するために、アメリカで2007~16年に記録された出生データ4050万件以上を綿密に調査しました。
その結果、父親が45歳以上の新生児は、それよりも若い父親の新生児に比べて出生体重が平均20グラム軽く、また2500グラム未満の低出生体重児となるリスクが14%高くなりました。
また、父親が45歳以上の新生児は、父親が25~34歳の新生児に比べて、新生児集中治療室で処置を受ける確率が14%、けいれんを起こす確率が18%、それぞれ高くなりました。
さらに父親が55歳以上の新生児は、出生直後の健康状態の評価に使われる標準検査の結果が劣る傾向がみられました。55歳以上の男性の子供を妊娠している女性でも、妊娠性糖尿病の発症リスクが34%上昇することもわかりました。研究チームは、早産の13%が父親の高齢に起因すると推測しています。
研究チームは、これらの結果はすべて制御された実験ではなく医療記録の分析に基づくもので、因果関係について確固たる結論は導き出せないと注意を促しています。また、これらのマイナスの結果の全体的なリスクは依然として低かったと補足しました。
だが、母親の年齢や喫煙歴、教育水準など、結果に影響する可能性のあるその他の因子を考慮に入れても同じ結果が得られたと、研究チームは指摘しています。
「これら出生にまつわるマイナスな結果が有意な数で現れる事態は、父親が45歳になる前に子供をもうけることを選択していた場合には回避できたことが推測される」と研究チームは結論付け、「家族計画や生殖カウンセリングに関する議論の中に、父親の年齢に関連するリスクを含めるべきだ」と述べています。
富裕国では男性が父親になる平均年齢が上昇傾向にあり、45~55歳以上で父親になる割合も増加しています。
アメリカでは、父親が40歳以上の新生児の出生数の割合がこの40年間でほぼ倍増し全体の9%、50歳以上の場合は0・5%から1%に増えています。
同様の傾向はヨーロッパでもみられます。例えばイギリスでは、35歳以上の父親の割合が1993年は全出生数の25%だったのに対し、2003年には全体の40%を占めるに至りました。
最近の研究では、中年期以降に父親になることが子供の自閉症や遺伝的異常、精神障害などのリスク上昇に関連する可能性が示唆されています。原因の一つとして考えられるのは、男性の加齢に伴う生殖細胞(精子)の変化。この変化は遺伝子そのものではなく、遺伝子がどのように発現するかに影響を与えます。
2018年11月2日(金)
■名古屋大、「朝食抜くと体重が増える」を確認 体内時計のリズムの乱れが原因
朝食を抜くと体重が増えるのは、体内時計のリズムの異常が原因で起こるという仕組みを、名古屋大学などの研究チームがラットの実験で明らかにしました。1日、アメリカの科学誌「プロスワン」に発表しました。
朝食を抜くと、肥満や糖尿病などを引き起こすことは従来の観察研究で知られていましたが、体内時計の乱れで起きる詳しい仕組みは、よくわかっていませんでした。
小田裕昭・名古屋大准教授(時間栄養学)らの研究チームは、通常の活動時間中に高脂肪食のえさを与える「朝食あり」と、えさの与え始めを4時間遅らせる「朝食抜き」の2つの環境下でラット計56匹を育てました。2週間にわたって、体重の増減や、肝臓の体内時計のリズムの変化などを調べました。
その結果、食べた量は同じでも朝食抜きは体重の増加量が朝食ありよりも5グラム多い67・4グラムでした。体内時計の遺伝子が働くリズムも約4時間遅れたほか、体温についても朝食を食べるまで上がらないなど上昇していた時間が短くなりました。
朝食を抜くと、体脂肪の代謝を担う肝臓で体内時計のリズムが乱れ、代謝が落ちるほか、体温の上昇が抑えられることで消費エネルギーが少ないため、脂肪がたまりやすくなったと考えられるといいます。
小田准教授は、「規則正しく朝食を取ることは体内リズムの正常化に重要であることを示しており、人間でも生活習慣病の予防につながることが期待される」と話しています。
2018年11月2日(金)
■第三者提供の体外受精、4割容認で反対上回る 東大病院調査
不妊に悩む夫婦が第三者の精子や卵子を使う「体外受精」について、容認する人の割合が4割弱で、反対を上回ることが、東京大学などの研究チームの意識調査でわかりました。「代理出産」についても容認が約4割と反対を上回りました。
いずれも、判断できないと答えた人が4割弱おり、研究チームは「社会的合意を得るには、知識の提供と議論の活発化が必要」としています。調査結果は11月1日、アメリカの科学誌「プロスワン」に発表されました。
東大病院の平田哲也講師(生殖医学)らの研究チームは2014年2月、20~59歳の男女2500人にインターネットを通じて意識調査しました。
日本には、第三者の精子や卵子を使う「体外受精」や、夫婦の受精卵をほかの女性の子宮に入れる「代理出産」といった生植補助医療に関する法律はありませんが、第三者の精子を使う人工受精(AID)や卵子提供は実施されています。代理出産については、日本産科婦人科学会が家族関係の複雑化などを理由に禁止する見解を出しています。
調査の結果、第三者の精子や卵子、受精卵の提供については「認めてよい」が36・2%、「認められない」は26・6%でした。「わからない」は4割弱。不妊に悩んだ経験がある人たちは、経験がない人たちより「認めてよい」と答える割合が高くなりました。一方、「認められない」と答えた人の割合は、20歳代よりも50歳代のほうが高くなりました。
代理出産については「認めてよい」が40・9%、「認められない」は21・8%。こちらも「わからない」が4割弱ありました。不妊に悩んだ経験のある人では、男性50・8%、女性51・7%が「認めてよい」としました。
第三者の精子や代理出産などで生まれた子供に、遺伝上の親を知る「出自を知る権利」を認めるかを尋ねたところ、「事実を知る権利がある」と答えた人は46・3%、「知らせるべきではない」は20・4%でした。若い人ほど認める傾向が強く、不妊治療経験者は認めない傾向が強くなりました。
平田講師は、「ほぼすべての設問で『わからない』と答える人が3割を超えた。生殖医療を身近に感じられない人が多いためだろう。法整備に社会の合意を得るには、知識の普及と議論の活発化が必要だ」と話しています。
AIDや代理出産について、国内では法制備が不十分な状態が続いています。AIDを国内で最も多く実施する慶応大学病院(東京都新宿区)は、精子の提供者(ドナー)不足のため、事業の存続が危ぶまれています。海外で出自を知る権利が認められてきた状況を踏まえ、昨年、ドナーの同意書の内容を変更。匿名性を守る方針は変わらないものの、生まれた子供が情報開示を求める訴えを起こし、裁判所が開示を命じれば、公表する可能性がある旨を明記しました。
日本はAIDで生まれた子供の父親が、育てた男性かドナーのどちらなのかを明確に決めた法律がないため、扶養義務など法的トラブルが起こり得ることも丁寧に説明しました。すると、新規のドナーを確保できなくなりました。
一方、代理出産については、生まれた子供の引き渡しや受け取りを拒否するといったトラブルが起きる可能性などを理由に、日本産科婦人科学会が見解で禁止する一方、国内のクリニックで代理出産が行われたケースや、海外で依頼する例が明らかになっています。
最高裁は2007年、アメリカの女性に代理出産を依頼して生まれた子供と、依頼した夫婦との間に民法上の親子関係を認めないとする決定を出しました。その際、法整備の必要性を指摘しました。
2018年11月1日(木)
■カインズが甘栗4万9000袋を自主回収 一部に細菌混入、21都府県の161店舗で販売
ホームセンターを展開するカインズ(埼玉県本庄市)が販売した中国産「天津むき甘栗」の一部に細菌が混入し、4商品の計約4万9000袋を自主回収していることが10月30日、明らかになりました。細菌が検出された商品は甘栗が直接入った小袋が膨張し、細菌が増殖して腐敗した甘栗を食べた場合、健康被害が生じる可能性があります。
カインズは現時点で健康被害を把握していないものの、食べないように呼び掛けています。
対象商品は、むいた複数の甘栗100グラムが直接入った商品(賞味期限2019年7月17日)、110グラムの小袋が3パック入った商品(同)、100グラムの小袋が3パック入った商品(賞味期限2019年8月19日)、100グラムの小袋が10パック入った商品(同)。税込み価格は98~880円。
8月1日~10月23日、21都府県の161店舗で販売し、一部は在庫から回収しました。甘栗の産地は中国河北省で、自社ブランド商品として現地企業に委託生産し、カインズが輸入しました。
10月22日、埼玉県の店舗に男性が未開封のままで膨張した小袋を持ち込みました。男性は別の小袋を食べたものの、味などに異常の指摘はなかったといいます。
カインズが各地の在庫品を確認した結果、滋賀県でも膨張した小袋が見付かりました。混入した細菌が膨張に関連しているとみられます。
膨張した小袋を検査機関に委託して調査した結果、中から「パエニバシラス属」の細菌の一種を検出。この細菌は食中毒菌ではないものの、同属の細菌が高齢などで抵抗力の弱い人の体内に入るとまれに感染症を起こす恐れがあるとされます。
カインズは、「微生物が増殖する可能性がある。消費者の皆さまに多大なご迷惑を掛け、深くおわびします。食べずに回収に協力をお願いしたい」としています。
カインズは販売した商品かレシートで購入が確認できた場合、返金します。問い合わせは「お客様相談室」=フリーダイヤル(0120)877111(休日を含む午前10時~午後6時)=へ。
2018年11月1日(木)
■ロート製薬の「リアップ」後発品、17日に発売 30~40歳代男性をターゲット
ロート製薬は1日、男性向け発毛剤市場に参入し、有効成分「ミノキシジル」を配合した「リグロEX5」を17日に発売すると発表しました。市販の発毛剤市場は大正製薬の「リアップ」の独占状態でしたが、特許の期限切れを受け後発品を発売。30~40歳代男性をターゲットに、これまで発毛剤を使っていなかった層も開拓しながら追い上げを図ります。
新製品は頭皮に塗布して使うタイプの医薬品で、5%配合したミノキシジルが毛の根元部分だけでなく周辺組織の脂肪幹細胞にも働き掛けて新しい毛髪が生える手助けをします。60ミリリットル入りで希望小売価格は7560円。
薄毛の悩みに答えたり、頭皮を健康に保つための生活習慣を提案したりする専用アプリも配信して先発品との違いを出し、発売後1年間で20億円の売り上げを目指します。今後は「リグロ」ブランドで関連商品も発売する方針といいます。
発毛剤市場では、8月に「スカルプD」で知られるアンファー(東京都千代田区)が初のリアップ後発品「メディカルミノキ5」を発売するなど参入の動きが活発になっています。
2018年11月1日(木)
■胎児の心臓異常をAIで自動検知するシステム開発 理研、昭和大学など
理化学研究所と昭和大学、大手電機メーカーの富士通の共同研究チームは18日、リアルタイムで胎児の心臓異常を自動検知するシステムを開発したと発表しました。人工知能(AI)を活用したこのシステムによって先天性心疾患の見落としを防ぎ、早期の診断や治療計画の立案につなげるといいます。
先天性心疾患は生まれながらに心房や心室、弁、血管のつながり方などに異常が認められる病気。新生児100人に1人の割合で発症し、すべての先天性疾患の中で発症頻度が最も高くなっています。死亡する新生児の約20%は重症先天性心疾患によるといわれるほど。
近年では小児科の治療技術の進歩によって、先天性心疾患の新生児を治療した時の予後は著しく改善しています。さらに、胎児期の診断を経て出生の直後から1週間以内に治療した場合の治療成績は、出生後に診断されて手術などの治療をした場合より良好となります。
しかし、胎児の心臓は小さい上に構造が複雑で動きも速く、超音波検査の際には高い技術を要します。検査の技術は経験などに左右されるため、検査をする人が違えば差が出てしまいます。
そこで共同研究チームはAI技術の「物体検知技術」を用いて、胎児の心臓構造の異常を自動で検知する技術を開発。加えて、検査を迅速化して結果の把握および説明を簡便化する新たな検査結果表示システムも開発しました。これまでに23例の先天性心疾患の胎児の超音波検査画像を使って精度を検証し、1例を除くすべてで正しく検知したということです。
今後は、日本の大学病院では年間出産数がトップレベルの昭和大学病院の4つの付属病院の産婦人科にて、本格的に実証試験を進める予定で、2020年度の実用化を目指すとしています。また、数十万枚もの大量の胎児超音波検査画像を追加で取得してAIに学習させ、スクリーニング精度の向上および実証と検査対象の拡大を図ります。
理化学研究所革新知能統合研究センターの小松正明研究員は、「今後、システムの精度を専門医の水準にまで引き上げ、施設間の診断格差の解消や見落としを防ぐことに役立てたい」と話しています。
2018年11月1日(木)
■「青汁で痩せる」は根拠ない広告 消費者庁が通販会社に課徴金
消費者庁は10月31日、根拠なくダイエット効果を標榜していたなどとして、「めっちゃたっぷりフルーツ青汁」を販売する通信販売会社「シエル」(東京都渋谷区)に対し、景品表示法違反(優良誤認と有利誤認)で再発防止などを求める措置命令を出すとともに、1億886万円の課徴金納付命令を出しました。
消費者庁によると、シエルは自社のホームページ上で、「ダイエットがうまくいかない」「フルーツ青汁があります!」などと記載するとともに、「体内環境を整え、痩せやすい習慣を作る!」「149種類の酵素で燃えるカラダを作る!」「生きた乳酸菌が直接腸まで届き、溜めにくいボディに!」などと表示していました。その他、細身のウエストにメジャーを巻き付けたタレントのGENKINGさんの写真とともに「ダイエット Diet」などと表示していました。
消費者庁はこれらを「あたかも摂取するだけで容易に痩身効果が得られるかのような表示」であると判断、不実証広告規制に基づき、表示の根拠を示す資料の提出を求めました。ただ、シエルから資料の提出はなく、優良誤認表示を認定しました。
また、ホームページにおいて、通常5980円のところ680円の特別価格で始められる定期購入コースには「毎月先着300名様限定」と記載していましたが、実際には最大で月に2万4000人が定期購入コースに加入しており、有利誤認表示であると認定しました。
課徴金納付命令も併せて出し、シエルは1億886万円を2019年6月3日までに納付しなければなりません。課徴金から逆算した対象期間の売上額は、約36億3000万円。
違反表示がなされていたのは、2015年12月10日から今年1月30日まで。課徴金対象期間は2016年4月1日から今年7月30日まで。対象期間が違反表示期間とずれるのは、課徴金制度の導入が2016年4月1日からであったことと、違反表示を終了した後、半年間までが課徴金の対象期間となるため。
シエルはホームページ上で「命令を真摯に受け止め、今後の一切の誤認表示を行わないための再発防止に向けての社内強化に努め、これからもより良い商品とより良いサービスをご提供させて頂けるよう努めてまいります」とのコメントを出しています。
なお、シエルは10月16日、小林裕二社長名義で「お詫びとお知らせ」として消費者に誤認させる恐れのある表示を行っていたと公表していました。
2018年11月1日(木)
■健康な食事「スマートミール」認証スタート 初回はタニタ食堂、ファミマなど68事業者
日本栄養改善学会や日本肥満学会、日本糖尿病学会、日本給食経営管理学会など10学協会で構成される「健康な食事・食環境」コンソーシアムは、バランスの取れた健康な食事「スマートミール」認証制度の第1回として、68事業者を選びました。選ばれた条件は、エネルギー量(カロリー)、栄養比率、塩分などで基準を満たす食事の継続的な提供をしていることに加え、情報提供や説明ができる人を配置していることなどでした。
外食部門で認証されたのは、モスフードサービス、丸の内タニタ⾷堂、⼤⼾屋、東京ドームホテルなど25事業者。モスフードサービスは、関東地区14店舗で提供する「バランスセット」が星2つに認定されました。丸の内タニタ⾷堂は、「野菜カレー定⾷」「⼿ごねハンバーグゴロっと野菜のトマトソース定⾷」などが星3つに認定されました。
中食(持ち帰り弁当など)部門で認証されたのは、ファミリーマート、⼤⼾屋など11事業者。ファミリーマートは、1万6319店で扱う「炙り焼き鮭幕の内弁当」が星3つに認められました。
給食(学校や企業などの食堂)部門で認証されたのは、カネテツデリカフーズ、⽇本⽣命保険相互会社東京本部、キユーピー、 島津製作所北⾷堂、⾹川栄養学園⼥⼦栄養⼤学など34事業者。
認証を受けた事業者は、「スマートミール」の認証マークを店舗や事業所内で掲示できます。
2018年10月31日(水)
■慶大病院、新規の不妊治療受け入れ中止 第三者からの精子提供が足りず
不妊治療として第三者が匿名で提供した精子で行う人工授精(AID)について、慶応大学病院は29日、新規の患者受け入れを当面中止することを確認しました。「出自を知る権利」の意識の高まりを背景に、精子の提供者(ドナー)確保が難しくなったためです。治療中の患者は凍結保存した精子で対応します。
国内のAIDは同病院が半数を手掛けており、大きな影響を与えそうです。
AIDは、無精子症などで精子提供を必要とする夫婦を対象とした不妊治療として、同病院が1948年に国内で初めて実施。全国で年3000件以上行われ、100人前後が誕生しています。実施数は同病院が最多で、2017年は1634件でした。
同病院は、匿名の精子ドナーを年10人ほど確保してきました。だが、近年は「出自を知る権利」が重視され始め、AIDで生まれた子供が「遺伝上の父」を知ることを望んだ場合、ドナー情報を開示せざるを得なくなる可能性が高まっています。
昨年6月、こうした経緯をドナーの同意書に明記して説明を始めたところ、精子の提供を見送るケースが相次ぎ、新たなドナーがゼロになりました。同病院は今年8月から、AIDの新規患者受け入れを見合わせ、存続を協議してきました。この日は外部の有識者も交えた会議で、新規患者受け入れ中止の方針を確認しました。
国内でAIDを実施する医療機関は、匿名を前提に、募集方法も対象もそれぞれの裁量でドナーを確保してきました。「出自を知る権利」を法で定めるスウェーデンやオーストリアなどの国もあるものの、日本は民間任せで、しわ寄せが当事者に及んでいます。
100人に1人という無精子症の男性とそのパートナーにとって、AIDは子供を授かる数少ない選択肢の一つ。治療を求めるカップルや生まれる子供が安心でき、ドナーの協力も得られやすい仕組みの具体化が差し迫った課題となっています。
一方、精子提供を巡っては、医療機関を介さず、インターネットなどを通じて個人的に精子の受け渡しを行うケースがあり、感染症の予防策が十分でないなど、医学的なリスクがあると指摘されています。
北川雄光・慶応大学病院長は、「国による法制化や学会によるガイドライン(指針)の確立が必要と考えており、今後、積極的な働き掛けをしていきたい」とコメントしました。
2018年10月31日(水)
■バス乗客の転倒事故、5年間で骨折などの重傷249件 60~90歳代の高齢者が8割超
路線バスの乗客が運行中に転倒し、骨折などの重傷を負う事故が2017年度までの5年間で249件起きていることが、消費者庁のまとめで明らかになりました。高齢者が停発車などの際に転倒するケースが大半を占めます。
低料金で広範囲の移動が可能な路線バスを利用する高齢者は多く、バス会社は対応に苦慮しています。
「毎日バスを利用しているが、これまでに何度も転びそうになった」。11月12日、東京都文京区のバス停でバスを待っていた80歳代女性は、そう語気を強めます。女性はビル清掃の仕事に出勤するため、毎日路線バスを利用しています。「運転が荒くて転んで入院した知り合いもいる。運転手は高齢者の安全に気を配ってほしい」と訴えています。
消費者安全法は、消費者が商品を使用したり、サービスを受けたりして重傷を負ったケースなどについて、事業者から連絡を受けた自治体などに、消費者庁への報告を義務付けています。
消費者庁によると、報告を受けたバス乗車時の転倒事故は年間50件前後で推移し、2013~17年度で計249件。年齢の報告がないケースもあるものの、60~90歳代の乗客がけがを負ったケースは少なくとも8割を超えます。今年度も10月4日現在で26件の報告がありました。
事故では、停発車時に転倒したり、前方の車が急ブレーキをかけた影響で転倒したりして、腰や足などの骨を折るケースが目立っています。国土交通省は、バス事業者に対し、高齢者の特性を踏まえた運転者教育や効果的な車内アナウンスの訓練などを求めています。しかし、東京都内のあるバス事業者は、「運転技術は運転手ごとで差があり、車内アナウンスを行わない運転手もいる。全員に教育を浸透させるのは難しい」と明かしています。
年齢を理由に自動車の運転をやめる高齢者もいる中、路線バスは重要な交通手段であり、多くの自治体は高齢者のバス料金の補助制度を設けています。
東京バス協会は、東京都の補助で都内の70歳以上の高齢者にシルバーパスを発行。住民税が非課税などの場合は年間1000円、それ以外は年間2万510円で都内の大半の路線バスと都営地下鉄などを利用できます。発行枚数は年々増え、2016年度は97万9984枚。都内の70歳以上のおよそ半数がシルバーパスを持つ計算です。
東京都福祉保健局の担当者は、「高齢者の社会参加には必要な制度。転倒については事業者に具体的対策を取ってもらうしかない」と話しています。
戸崎肇・首都大学東京特任教授(交通政策)は、「運転手は乗客が着席してから発車するのが原則だが、運行時間を守るために発車を急ぐケースもある。事故防止には、乗客全員が高齢者への理解を深め、声かけなどの対策を社会全体で考えていく必要がある。シルバーシートを増やしたり、車内のバリアフリー化を進めたりすることも重要だ」と指摘しています。
2018年10月31日(水)
■超高額「1回5000万円」の白血病新薬が承認間近に アメリカでは1回約1億円の眼病薬も出現
本庶佑(ほんじょ・たすく)京都大特別教授のノーベル医学・生理学賞受賞の決定を受けて、注目が集まるがん治療薬「オプジーボ」が、11月から3度目の値下げを実施します。当初は患者1人当たり年間3500万円かかる「超高額薬」として批判を浴びたものの、4分の1以下の価格に落ち着きます。
一方、1回の投与で約5000万円の白血病治療薬の承認を間近に控え、アメリカでは1回約1億円の眼病薬も登場。政府は薬の費用と効果を薬価に反映させる議論を急ぎ、医療保険財政への危機に備える構えです。
オプジーボは2014年、画期的な新薬として登場したものの、あまりに高額なため「医療保険財政を圧迫する」として非難されました。
当初は皮膚がんの一種である「悪性黒色腫(メラノーマ)」が対象で、予想患者数は470人と予想されました。採算が取れるように100ミリグラム当たり約73万円、患者1人当たり年間3500万円と見積もられた経緯があります。
適用範囲が拡大されると、「患者5万人が使うと年1兆7500億円かかる」との試算が明らかになり、財政破綻を避けるため2017年2月には緊急措置で半額に引き下げました。国内では現在、悪性黒色腫、非小細胞肺がん、腎細胞がん、悪性リンパ腫、頭頸部がん、胃がん、悪性胸膜中皮腫の計7種類のがんを対象に使用が承認されています。
薬価は原則2年に1度改定されていたものの、オプジーボの登場を契機に、対象患者が拡大して販売額が急増した薬は「新薬が保険適用される年4回の機会を活用して値下げする」などにルールを変更。ルールに沿い、オプジーボは11月から100ミリグラム当たり約17・4万円となり、当初から7割以上の値下げが決まりました。
超高額薬はオプジーボにとどまらず、スイスの製薬大手ノバルティスの日本法人は今年4月、オプジーボと同様に次世代のがん治療薬として開発が進む「CAR-T細胞療法」の製造販売の承認を厚生労働省に申請し、年内にも承認される見通しです。
この療法は、遺伝子組み換え技術を使い免疫細胞を活性化させるもので、若年性の白血病などに治療効果が確認されています。アメリカでは「キムリア」の製品名で昨年8月に承認され、ヨーロッパでも今年8月に承認を取得しました。ただアメリカでは、投与1回当たり47万5000ドル(約5300万円)。厚労省によると、日本での同薬の患者数は250人程度とみられ、市場規模を100億~200億円と見積もっています。
そのほか、アメリカでは、投与1回当たり4200万円のリンパ腫治療薬「イエスカルタ」や、両眼への投与1回当たり1億円近くにもなる遺伝性網膜疾患の治療薬「ラクスターナ」も出現しています。
厚労省の担当者は、新たな超高額薬の登場に「現在の薬価制度では対応が難しい」と懸念を示しています。遺伝子組み換えや細胞を改変するこうした「バイオ新薬」は、開発費が大きく膨れ上がり薬価に反映されているといいます。
しかし、保険が適用されるため、患者の一般的負担は3割。大半は高額療養費制度が適用され、数千万円の薬でも自己負担は所得に応じて異なるものの年間100万円程度となり、残りは公費負担です。
医療保険財政への懸念から、厚労省は薬の費用がその効果に見合うか分析する「費用対効果」の手法について、来年度からの本格導入を目指しています。すでに2016年度に試行的に導入され、オプジーボなどが検討の対象になりました。
10月10日に開かれた厚労省の社会保障審議会部会でも、キムリアなど超高額薬への対応の必要性を議論しましたが、「経済性で保険適用を判断するのは難しい」との意見も出ました。
これに対し、10月9日に開かれた財務省の財政制度等審議会分科会では、「費用対効果評価の活用」を確認し、厚労省を牽制。日本医師会は「費用対効果を用いるべきでない」との立場を示すなど、関係機関の思惑が錯綜しています。
2018年10月31日(水)
■大気汚染、世界で毎年60万人の子供が死亡 知能の低下にも直面、WHO報告
世界保健機関(WHO)が29日に発表した報告によると、大気汚染により、毎年約60万人の15歳未満の子供が死亡しており、知能の低下から肥満や耳の感染症に至るまで、さまざまな症状が引き起こされています。
WHOはこの報告書「清浄な空気のための処方」で、世界の子供の約93%に相当する18億人に影響を及ぼしている大気汚染に関する最新の科学的知見をまとめました。
子供は特に大気汚染の影響を受けやすく、毎日、屋内および屋外で危険な有害大気を吸っている18億人の子供のうち、6億3000万人は5歳未満だといいます。5歳未満で亡くなる世界の子供の10人に1人が大気汚染が原因で死亡しているとしています。
また、世界人口の10人中9人が深刻な大気汚染の中で暮らしており、毎年700万人の早死にを引き起こしていると指摘。アジア、アフリカ、ラテンアメリカの大部分が最悪の影響を受けているとしています。
テドロス・アダノム事務局長は声明で、「汚染された空気は何百万人もの子供たちに害を及ぼし、命を奪っている」とし、「これは許されないことだ。すべての子供は成長し、その潜在能力を十分に発揮できるよう、きれいな空気を呼吸できるようにすべきだ」と述べました。
WHOの公衆衛生・環境局長、マリア・ネイラ氏は、「汚染が死産や早産の原因となっている証拠や、成人になるまでの病気など、この研究で明らかになった懸念すべき要因は、世界的な政策変更につながるはずだ」と述べました。
ネイラ氏は、重要なのは神経発達の問題だと指摘。「私たちの子供の認知IQが低下することを想像してみてほしい。新たな世代はIQが低下する危険に直面している。これは、新しいだけでなく、非常に衝撃的なことだ」と述べました。
この研究によると、大気汚染と中耳炎や耳の感染症との関連性を示す明確で一貫した証拠があるほか、小児に肥満やインスリン抵抗性を引き起こすことを示す証拠もあるとしています。
大気汚染は、小児がん、ぜんそく、肺機能の低下、肺炎などの急性下気道感染症の原因にもなることも報告されています。
2018年10月30日(火)
■ED薬などのオンライン診療、厚労省が指導を徹底へ 初診での対面診療をしない処方が横行
対面での医師の診察を一度も行わずにオンライン診療による勃起不全(ED)や男性型脱毛症(AGA)の治療薬などの処方が横行していることを受け、根本匠厚生労働相は30日、閣議後の会見で「無診療治療を禁止する医師法違反の疑いもある事案については保健所が指導する」と述べ、不適切なオンライン診療をしている医療機関を指導する考えを示しました。
根本厚労相は、今年3月に定めたオンライン診療のガイドラインで、医療上の安全性、必要性、有効性の観点から初診での対面診療は「最低限順守する事項である」との認識を示しました。例外として初診からオンライン診療が認められるのは、禁煙外来とすぐに適切な治療が受けられない離島など「極めて限定的なケースに限られる」としました。
オンライン診療は4月に一部で公的医療保険が認められ、スマートフォンで診察が受けられるため普及が進んでいます。そのためのアプリを提供する企業が次々と出て、手軽に受診できます。日本医療ベンチャー協会によると、全国で月に1000~2000件の診察がオンラインで行われているといいます。
ネットで検索すると、「ED薬を処方、来院する必要は一切なし」などと説明する医療機関が多数出てきます。その一部の医療機関は、通院不要とし、スマホで質問に答え、画面上で医師の診察を受ければよいとしています。
オンライン診療による治療薬の処方は、EDのほかAGA、低用量ピルなど、患者が人目に触れることを嫌う傾向がある薬が多くなっています。花粉症治療のための抗アレルギー薬や、抗インフルエンザ薬の予防投与の処方などもあります。
国民生活センターには、「一度も対面診療をせずに薬の危険性の説明が不十分だった」「薬が効かなかった」などの相談が寄せられているといいます。
医療安全が専門で名古屋大病院医療の質・安全管理部の長尾能雅教授は、「初診で対面診療し、問診のほか視診、打診、聴診、必要によっては血液検査やX線撮影などを行うことで正しい診断ができる。薬の副作用を予防することもできない危険性がある」と話しています。ED薬では、多くの心臓病患者が使っているニトログリセリンなどとの併用が禁忌とされ、死亡例もあります。
厚生省(当時)は1997年、遠隔診療の通知で、「初診及び急性期の疾患に対しては、原則として直接の対面診療によること」としました。2015年に厚労省が遠隔診療は離島、へき地に限らないことを明示したことでオンライン診療が増えました。「原則」なら問題ないと解釈して初診でも対面診療をしない場合が出てきたことから、厚労省は通知のあいまいな部分を明確にするため、今年3月に定めたオンライン診療のガイドラインで極めて限定的なケースを除いて初診は対面でと示しました。
一方、根本厚労相はガイドラインについて、今後のオンライン診療の普及状況や情報通信技術の進展などを踏まえて定期的に見直す考えも合わせて示しました。
2018年10月30日(火)
■今年の風疹患者数は1486人に 7週連続で100人超え、流行拡大止まらず
国立感染症研究所は30日、今年初めから10月21日までに報告された風疹患者が計1486人になったと発表しました。93人だった昨年1年間の約16倍に上っています。
21日までの1週間の報告数は174人で、7週連続で100人を超えました。1週間の患者が170人を超えたのは、10月7日までの1週間に続いて2回目目となり、感染が次々と起きている状態が続いています。
今年の累計患者数は、都道府県別で東京都が前の週から61人増えて509人、千葉県が17人増えて251人、神奈川県が31人増えて195人、埼玉県が6人増えて96人、愛知県が10人増えて84人、大阪府が14人増えて48人と、首都圏の患者が全体の約7割を占める一方で、首都圏以外でも患者の数が増えてきています。
男女別では、女性の266人に対して男性は1220人と約4・5倍になっており、30歳代から50歳代が男性患者全体の8割を占めています。また、女性では20歳代が最も多く、患者数は94人に上っています。
妊婦が風疹に感染すると、赤ちゃんが難聴や心臓病、白内障などになって生まれる可能性があります。厚生労働省は、患者数の多い5都県の妊娠を希望する女性や妊婦の家族らに対し、抗体検査や予防接種を受けるよう重点的に呼び掛けています。
2018年10月30日(火)
漫画家のツイートを切っ掛けに、救急車を呼ぶかどうか相談できたり、開いている病院を紹介してもらえる電話番号「#7119」がネット上で話題になっています。#7119を運用する自治体は少しずつ増えており、利用できる人は今、全国の約40%となっています。
#7119は、具合が悪くなったり、けがをしたりして救急車を呼ぶかどうか、今すぐ病院に行ったほうがいいのかどうか迷った場合などにアドバイスを受けられる消防庁救急相談センターの専用回線です。
医師、看護師、救急隊経験者などの相談医療チームが24時間年中無休で電話を受けており、救急車を呼ぶ必要があるかどうかや開いている病院はどこなのか、また応急処置の方法などを相談できます。
具合の悪くなった女性の漫画家が10月15日、#7119を利用して手当てを受けた経験をツイートしたところ、6万回以上リツイートされるなどネット上で話題になり、「知らなかった」とか「番号を覚えておこう」などといった声が上がっており、まだ番号が広く知られていない実態もうかがえます。
#7119は東京都が2007年に最初に導入し、これまでに大阪府や福岡県、埼玉県など9の都府県が全域で導入しており、利用できるのは一部で実施している県なども含めて国の人口データを基に計算すると、全国の約40%の人となっています。
導入の背景には、救急車を呼ぶかどうか事前に相談することで不要な119番通報を減らし救急医療の体制を充実させたいという狙いがあり、国は全国的な普及を目指して自治体や各地の消防本部に導入を働き掛けています。
2018年10月29日(月)
統合失調症と双極性障害(そううつ病)の入院患者が退院から1カ月以内に精神科を受診すると、再入院のリスクを約5割も減らせるという国の診療報酬明細書(レセプト)の分析結果を、医療経済研究機構などのチームがまとめました。病状悪化に伴う再入院を防ぐため、患者が退院後に医療支援を受けられる体制が求められます。
レセプトのデータベースを使い、2014度に新たに精神病床に入院した高齢者を除く統合失調症と双極性障害の患者4万8579人の退院後を追跡。85%が30日以内に精神科を受診していました。
退院から30日以内の受診の有無と、退院後30~210日の半年間での再入院との関係を調べると、受診した層の再入院率は22%だったのに対し、受診しなかった層は38%で、受診でリスクは46%減っていました。退院後の早期受診と再入院の関連性が明らかになったのは初めてといいます。
また、入院までの半年間に精神科を受診する機会の少ない患者は、退院後1カ月以内に精神科を受診しない傾向もみられました。
退院から30日以内の精神科の受診については、アメリカの低所得者層で統合失調症が64%、双極性障害が62%、カナダ・オンタリオ州で統合失調症が65%との研究報告があり、いずれも日本のほうが高いとみられます。
調査した奥村泰之・東京都医学総合研究所主席研究員(臨床疫学)は、「再入院を減らすため、患者が退院後に精神科から支援を確実に受けられるよう、国などによる体制作りが必要だ」と指摘しています。
2018年10月29日(月)
妊婦が感染すると、胎児の脳や目に障害が出たり、流産や死産を引き起こしたりすることもあるトキソプラズマ症に向けて、妊婦が服用できる初の保険適用薬が9月に発売されました。胎児の感染や重症化を防ぐ効果があります。
単細胞の原虫の一種であるトキソプラズマは世界中に存在し、人や動物、鳥に感染します。生肉や加熱が不十分な肉を食べたり、猫のフンが混じる土や水が誤って口に入ったりして、感染することがあります。
通常は感染しても、ほとんど症状が出ません。ただ、妊婦が感染した場合は、血液中に流入したトキソプラズマが胎盤を介して胎児に感染する可能性があり、流産や死産になったり、胎児が知能障害、けいれん、まひ、水頭症、脈絡網膜炎などの視力障害を生じる先天性トキソプラズマ症を発症する可能性があります。
国内では推計で年間約1000人の妊婦が新たに感染し、約100人の感染児が生まれます。このうち明らかな障害がみられる重症児は10人程度で、生まれてしばらくして症状が出ることもあります。
国立感染症研究所寄生動物部室長の永宗喜三郎さんは、「妊娠中は火を十分に通した肉を食べ、野菜や果物はよく洗う。新たに猫を飼い始めないことも予防策として有効です」と話しています。
妊婦を対象に、免疫の有無を調べる抗体検査の費用を公費助成する自治体も一部あります。採血で簡単に調べられ、妊婦健診を行う医療機関の半数程度で抗体検査を実施しています。
東京都の会社員女性(40歳)は1月、妊娠を機に抗体検査を受けました。結果は陽性で、精密検査で妊娠6週ごろに感染したことがわかりました。新婚旅行で東南アジアに行っており、「サラダなどの生野菜が汚染されていたのかも」と振り返ります。
海外ではスピラマイシンという薬で治療するのが一般的ですが、国内では当時まだ販売されていませんでした。女性は出産まで、同じ効果があるとされるアセチルスピラマイシンという抗菌薬を服用し、生まれた女児は幸い、感染を疑う症状もなく経過観察中です。
ただ、この抗菌薬は別の感染症の薬として承認を受けており、トキソプラズマ症の治療に使うと保険が利かず、処方する医療機関も限られていました。日本産科婦人科学会は2011年、スピラマイシンの導入を厚生労働省に要望。これを受けて製薬企業が製造販売に向けて動き出し、保険適用が実現しました。
服用方法は、妊娠中の感染またはその疑いがわかった時から、1日3回、2錠ずつを飲み続けます。海外の報告では、重症で生まれてくる赤ちゃんを8割以上減らす効果がありました。治療に保険が使えるようになり、抗体検査を受ける妊婦の増加が予想されます。
ミューズレディスクリニック(埼玉県ふじみ野市)院長で産婦人科医の小島俊行さんは、「胎児へのうつりやすさや重症化のリスクは、妊婦が感染した時期で異なる。感染がわかったらまず正しい情報を得て対応することが大切。主治医の説明で不安が解消されない時は、診療経験が豊富な医師のカウンセリングを検討してほしい」と話しています。
相談できる医療機関や感染予防の具体的な内容を知りたい時は、母子感染に関する専門医らの研究班(http://cmvtoxo.umin.jp/)や、患者会「トーチの会」(http://toxo-cmv.org/)のサイトが参考になります。
2018年10月29日(月)
あなたがデータを入力すると、3年後に糖尿病になる危険度がわかる予測ツールを、国立国際医療研究センター(東京都新宿区)が開発し、24日からホームページ(https://www.ncgm.go.jp/riskscore/)で公開を始めました。
予測ツールは、30~59歳のこれまで糖尿病と診断されたことのない人が対象。約3万人の健康診断データを基に、AI(人工知能)を使って開発しました。身長や体重、血圧、喫煙習慣などの基本データを入力すると、3年後の糖尿病発症リスクや、同性・同年代の平均との比較結果がわかります。血液検査のデータを加えると、より精度の高い予測が可能です。
国内には、糖尿病が強く疑われる約1000万人に加え、糖尿病の可能性が否定できない人も約1000万人います。健康診断などで異常が見付かる前にリスクを評価し、「糖尿病予備群(境界型糖尿病)」だとわかれば運動や食事、禁煙などの対策をとることで、病気になるリスクを下げることができます。
国立国際医療研究センターの溝上哲也・疫学・予防研究部長は、「自分のリスクを知ってもらうことで、生活習慣の改善を促したい」と話しています。
2018年10月29日(月)
消費者庁は25日、酵素飲料「山野草醗酵酵素ブルーベリーDX」を販売している健康食品販売会社「言歩木(ことほぎ)」(千葉県市川市)に対し、飲むだけで視力がよくなったり、かすみ、ぼやけなどの目の症状が改善したりするかのように宣伝したことが景品表示法違反(優良誤認)に相当するとして、1814万円の課徴金を支払うよう命じました。
言歩木は2016年5月24日から2017年11月1日までの間、「視界爽快」「小さな文字や画面もバッチリ!」などのキャッチコピーを用いた広告を日刊新聞紙等で使用。
この広告表示について、「あたかも、本件商品を摂取するだけで、本件商品に含まれる酵素の働きにより、視力の回復効果及び、かすみ、ぼやけといった目の症状の改善効果が得られるかのように示す表示をしていた」として、言歩木に表示の裏付けとなる根拠の提出を求めましたが、同社から提出された資料は合理的根拠と認められないものだったとのこと。
今後は再発防止策を講じることや、表示の裏付けとなる合理的な根拠をあらかじめ有することなく、同様の表示を行わないことなどが命じられました。
山野草醗酵酵素ブルーベリーDXは2009年から販売が開始された商品で、2017年10月末に販売を終了しましたが、課徴金対象期間の2016年5月24日から2017年11月1日までの間には6億471万1310円を売り上げていました。
言歩木は、「景品表示法の認識不足だった。再発防止に努める」としています。
2018年10月28日(日)
海洋汚染が深刻化している微小なプラスチック片「マイクロプラスチック」が世界各地の塩から見付かったと、韓国・仁川大学と環境保護団体グリーンピース・東アジアの共同企画による研究チームが発表しました。21の国・地域から集めた39種のうち9割から検出され、アジアの国で含有量が多い傾向にありました。日本の塩は調査対象外。
これまで世界各地の水道水や魚介類などからの検出も報告されています。直径5ミリ以下のマイクロプラスチックは海などに大量に存在し、表面に有害な化学物質を吸着する性質があります。人の健康への影響は詳しくわかっていませんが、日本やヨーロッパなど8カ国の人の便からも見付かっています。
研究チームはアメリカや中国、オーストラリア、ブラジル、フランスなどの海塩や岩塩、塩湖の塩の計39種を調べ、36種からマイクロプラスチックを検出しました。塩1キロ当たりに含まれる数はインドネシアの海塩が突出して多く、約1万3600個でした。台湾の海塩の約1700個、中国の海塩の約700個と続き、上位10種のうち9種をアジアが占めました。
研究チームは、プラスチックごみの海への流出がアジアで多いのが要因とみています。一方、台湾の海塩は複数調べており、種類によってはマイクロプラスチックがありませんでした。フランスの海塩と中国の岩塩も検出されませんでした。39種の平均では、1キロ当たり約500個を検出しました。
仮に1日当たり10グラムの塩を摂取すると、平均的な成人は塩だけで年間約2000個のマイクロプラスチックを摂取する可能性を本研究は示唆しています。世界で2番目にプラスチックごみを海へ排出していると考えられ、最も汚染度の高いインドネシアの塩を除外しても、平均的な成人は年間何百個ものマイクロプラスチックを摂取する可能性があります。
世界で食卓のマイクロプラスチック汚染が進んでいる恐れがあり、仁川大学のキム・スンキュ教授は、「調査結果は、海由来の製品を介したマイクロプラスチックの人体への摂取は、特定の地域におけるプラスチックの排出と強く関連していることを示唆している。マイクロプラスチックへの曝露を制限するために必要な予防策は、プラスチックの排出を抑制すること、そして何より、プラスチックごみを削減することだ」と話しています。
グリーンピース・東アジアのキャンペーナー、キム・ミキョン氏は、「健康と環境のため、企業は率先して使い捨てプラスチック製品の製造や使用を減らす努力をするべきだ」と強調しています。
10月初め、環境保護団体グリーンピースも含む世界で1300以上の団体が参加する「ブレイクフリープラスチック」が発表した調査結果では、世界の海や河川を汚染している使い捨てプラスチックに最も依存し頼っている企業は、コカ・コーラ、ペプシコ、ネスレであると指摘しています。
2018年10月28日(日)
旧優生保護法下で障害のある人らに不妊手術を強制されるなどした問題で、自民、公明両党の与党ワーキングチーム(WT)は、手術記録がない人や手術に同意した人も救済対象とする方針を固めました。一時金の支給を柱とする救済法案を来年の通常国会に提出したい考えです。
厚生労働省によると、1946~96年の旧優生保護法に基づき、障害のある約1万6000人が同意なしの不妊手術を受けました。手術に同意した人も含めると、不妊手術を受けた人は計約2万5000人に上ります。手術の記録がないケースが大半ですが、WTは幅広い救済が必要と判断しました。
救済の対象者は本人による申請を原則とし、第三者機関が認定します。認定されれば、生存者はすべて救済される仕組みで、一時金の支給金額は今後検討します。
救済法案には、被害者への「おわび」も盛り込む方針。旧優生保護法が議員立法だったことを踏まえ、おわびの主体は「政府」ではなく、国民を意味する言葉とする案が有力です。ハンセン病元患者への補償金支給などを2001年に定めたハンセン病補償法の前文で、おわびの主体を「我らは」とした例を参考にします。
救済法案は、超党派の議員連盟のプロジェクトチーム(PT)も検討しています。WTは10月内にも独自の救済案をまとめ、議員連盟の救済策と一本化した上で、議員立法として来年の通常国会への提出を目指します。
2018年10月28日(日)
人に移植するための臓器を動物の体内で作り出す研究を進めるため、国の生命倫理専門調査会は、人の細胞を混ぜた動物の受精卵(胚)を動物の子宮に戻して出産させることを認めるとした指針の改正を了承しました。この研究では、人の神経を含む脳を持った動物が生まれる可能性があるため倫理的な問題も指摘されており、専門調査会は今後、個別の研究に対して国が行う審査を慎重に行う必要があるとしています。
動物の受精卵に人の細胞を混ぜた「動物性集合胚」を作る研究は、腎臓や膵臓(すいぞう)など移植のための臓器をブタなどの動物の体内で作り出すことを目的に行われています。
国内ではこれまで、動物性集合胚を作ることは認められていたものの、動物の子宮に戻すことは国の指針で禁止されていましたが、26日の内閣府の生命倫理専門調査会で、動物の子宮に戻して出産させることを認めるとした文部科学省がまとめた指針の改正案が了承されました。
現行の指針などでは、問題のある研究が行われないよう、個別の研究に対して国が審査を行い、大臣の認可を受ける手続きを求めているほか、動物の体内で作った臓器を人に移植することは、「安全性が確認できない」として禁止しています。
この研究では、人の神経を含む脳を持った動物が生まれる可能性があり、一部の専門家は倫理的な問題があると指摘していますが、専門調査会では「動物の体内で人の脳神経ができたとしても、ブタなどでは高度な脳機能を持つ可能性は極めて低く、研究する意義がある」と判断したとしています。
国は改正手続きを進め、早ければ来春にも動物の体内で人の移植用臓器を作る研究や、人の臓器を持つ動物で病気を再現し創薬を目指す研究が国内で解禁されることになります。具体的には、膵臓の異常による1型糖尿病の治療を目指して、ブタの受精卵に人のiPS細胞(人工多能性幹細胞)を入れて人の膵臓を持った子ブタを産ませ、移植しても拒絶反応がない臓器を作る研究などが進むとみられます。
生命倫理専門調査会の会長代理で、国立成育医療研究センターの五十嵐隆理事長は、「従来は動物性集合胚の成長の制御が難しかったが、技術が進んだことなどから、人と動物の境界があいまいな生物はかなりの精度でできない仕組みができた。最先端の研究が進むよう、指針の改正を了承できたことは非常によかった。ただ、一般の国民には、人なのか動物なのかわからない生物ができるのではという懸念があると思う。今後、個別の研究計画を審査する国は、慎重に検討する必要がある」としています。
一方、生命倫理が専門の北海道大学の石井哲也教授は、指針の改正について「人の脳神経を持つ動物などが誕生することに、多くの人は気味が悪いなどの違和感を持つと思うが、今回の議論はそうした思いに十分に応えていない。仮に人の要素が強い動物が生まれてしまえば、取り返しがつかなくなり、人間の尊厳も脅かされる事態になりかねない。そうした倫理的な問題についても十分に検討されていない」と批判しました。
2018年10月28日(日)
■ユニ・チャーム、通常型の尿漏れケアショーツを発売 介護・老人用のイメージ一掃
ユニ・チャームが11月上旬、軽失禁に悩む女性向けに、新たなケアショーツを発売します。通常の女性用ショーツと同じフォルムを実現し、体の動きにフィットする構造が特徴で、同社によると「業界で初めて」の製品といいます。冬場は尿漏れの頻度が高まるため、適切な専用品で快適に過ごしてほしいとしています。
ユニ・チャームが、軽い尿漏れに悩む女性500人に頻度と量を調査し、夏(8月)と冬(12月)を比べたところ、「尿漏れが週に1回以上」について「はい」と回答した人は、12月のほうが25%も多い結果となりました。また、「尿漏れの量が大さじ1以上」に関しても、12月は18%増となり、冬場に症状が高まることもわかりました。寒さが増す秋から冬にかけては、せきをすることも多く、少しのせきでも尿漏れを感じたり、汗をかきにくくなったりしますが、尿量が増えることが影響しているとみられます。
この傾向は、消費行動にも現れています。軽失禁向けのケア製品市場について2015年から3年間の平均成長率をみると、9月を100とした場合、12月は平均131と拡大し、毎年10~12月にかけて需要が増しています。
こうした冬場の需要の高まりを受けて、ユニ・チャームは11月上旬に新商品「チャームナップ アクティブショーツ」を投入することにしました。新商品は岡山県立大学と共同研究したもので、機能性や快適性に比べると消費者の満足度が低い形状や色といった「意匠性」に着目し、30~70歳代の女性267人を対象に調査し、8000以上の試作品を用いて最適な形状を絞り込みました。
従来のパンツタイプの商品は、「股上が深く大きい」「足の周りにフリルがある」といったデザインから、「介護・老人用」というイメージが先行し、購入に結び付かないケースがありました。そこで新商品は、一般的な女性用ショーツと同じフォルムを目指し、股上を浅くV字形に引き上げるデザインにしました。足繰り回りに新開発の伸縮素材を用いて、動いてもショーツが体にフィットする設計で、ショーツ全体が常に上に引き上げられた状態を保ってずり下がりを防ぎました。
ユニ・チャームによると、軽失禁に悩むのは40~70歳代と幅広く、専用品を使用するのは長時間の外出など特に心配な時で、実際に自分が感じる尿漏れの量より多いものを使用する傾向があります。新製品は中量用(50cc)と、長時間安心用(150cc、大人の1日の尿量とほぼ同じ)があり、サイズも「S~M」と「L~LL」が選べます。中量用は1袋8枚入りで、想定価格は税別900円前後。
同社は、「高度な尿吸収機能を備え、さらに抵抗感ないデザインなので、さまざまな生活シーンで活用して外出を楽しんでほしい」としています
2018年の女性用の軽失禁向けケア製品市場の規模は約400億円で、尿漏れケアの認知が進み、ここ10年で市場規模は約3倍になったといいます。ユニ・チャームは引き続き市場が拡大すると予測しています。
2018年10月27日(土)
■聴覚や言語障害者も119番通報可能に スマホなどのインターネット接続機能を利用
聴覚や言語に障害がある人たちを対象にした緊急通報(119番通報)システムの説明会が神奈川県海老名市で開かれ、参加者がスマートフォン(スマホ)や携帯電話などを操作して通報内容を伝える手順を学びました。
「NET119緊急通報システム」は、聴覚の障害だけではなく、音声の発声に障害がある人たちがスマートフォンなどのインターネット接続機能を利用して、画面の操作だけで救急車や消防車を呼ぶことができる新しいシステムで、海老名市で27日、通話による通報が難しい市民を対象に使い方の説明会を開きました。
参加者は、外出先でもGPS機能で居場所を簡単に通報できることや、チャットによる文字のやり取りで体調や現場の状況などを伝えることができることを学びました。この後、自分のスマートフォンなどで通報までの手順を繰り返し、いざという時に落ち着いて通報できるよう練習していました。
総務省消防庁によりますと、今年6月時点で、このシステムを導入している消防は約2割にとどまっており、東京オリンピック・パラリンピックまでには全国で利用できるよう普及を目指しているということです。
参加した聴覚障害者の女性は、「どこからでも通報できるようになってよかった。早くシステムが全国に広がってもらえれば、安心して生活できる」と手話で話していました。
従来の緊急通報システムはFAXを使う手書き発信によるFAX119が利用されてきました。また、携帯電話によるメールが普及した後はメールを作成して発信するメール119が利用されています。これに対してNET119緊急通報システムは、最も新しいサービスです。システムを導入するには、市区町村の窓口への登録が必要で、月額使用料がかかります。登録時には、「自宅の場所」「よく行く場所」、持病などの医療情報、家族などの連絡先も登録可能です。
2018年10月27日(土)
■多剤耐性結核、新薬の臨床試験で80%が治癒 ベラルーシの医療チームが成果
従来の薬が効かない「薬剤耐性結核」の患者を対象にベラルーシの医療チームが行った新薬の臨床試験で、治癒した患者の割合が80%だったことが22日、明らかになりました。世界的に死亡率の高い結核との闘いで「ゲームチェンジャー」になり得る画期的な成果です。
ベラルーシは、2〜4種類の抗結核薬を約6カ月服用する標準的な治療において、効き目の強い第一選択薬であるイソニアジドとリファンピシンの2剤が効かなくなった「多剤耐性結核」の感染率が世界で最も高い国の一つとなっています。首都ミンスクにある研究所などの医師らは、新薬ベダキリンと抗生物質を組み合わせた治療を数カ月かけて実施した結果、新薬を投与された患者181人のうち168人が治癒していた。
世界保健機関(WHO)の9月の発表によると、現状では多剤耐性結核の治癒率は55%にすぎません。新薬による治癒率は80%と、これをはるかに上回ります。東欧やアフリカ、東南アジアの別の国で行った臨床試験でも、おおむね同じ結果が出たといいます。国際結核肺疾患予防連合(IUATLD)のポーラ・フジワラ氏は今回の成果について、「薬剤耐性の極めて高い多剤耐性結核の治療でベダキリンのような新薬が効果的であり、ゲームチェンジャーになり得るということを裏付けた」と高く評価しました。
WHOによれば、2017年には結核で少なくとも170万人が死亡しており、世界の感染症による死亡原因で上位に入っています。
研究成果は、今週開催される結核に関する国際会議で発表されました。
2018年10月27日(土)
■欧州議会、使い捨てプラスチック禁止法案を可決 2021年に実施の見通し
欧州連合(EU)の欧州議会は24日、プラスチックごみによる海洋汚染対策の一環として、ストローや食器類など使い捨てのプラスチック製品の流通禁止を盛り込んだ規制法案の採決を行い、圧倒的多数の賛成で可決しました。採決の結果は、賛成571人、反対53人、欠席34人でした。
年内に加盟国で構成する欧州理事会に承認を図り、2021年に実施される見通しが強まりました。
規制法案は、EUの行政執行機関の欧州委員会が今年5月に提示しました。製品別に規制を定め、プラスチック製のスプーン、フォーク、皿などの食器類や、ストロー、軸にプラスチックを使う綿棒、風船に付ける柄などは、EU域内での流通を禁止します。ペットボトルは2025年までにリサイクル率90%を目指すほか、プラスチックを使うたばこのフィルターは2030年までに80%削減する目標を掲げました。欧州議会の修正案では、発泡スチロールのファストフード包装容器などを禁止対象に新たに加え、当初の法案から対応を強化しました。
欧州委員会によると、EU域内では海岸に打ち上がるごみの8割以上がプラスチック素材で、その大部分を使い捨て製品と釣り具が占めます。規制法案は、流通の総量を規制して海洋プラスチックごみ問題の進行を食い止める狙いがあります。欧州理事会で承認されると、加盟国が国内法を整備します。
海洋プラスチックごみはアジアの新興国が主な排出源とされますが、国際社会の協調した取り組みが欠かせません。人口5億人のEU市場の規制が国際社会にもたらす影響は大きく、EUは世界のプラスチックごみ対策をリードしたい考えです。
世界経済フォーラムの報告書は、現在のペースでプラスチックごみが海に流入し続ければ、2050年には世界に生息する魚の総重量をプラスチックごみが上回ると指摘しています。
環境保護団体の世界自然保護基金(WWF)は、今回の採決により「EUはプラスチック汚染削減、より強力な循環型経済の発展に向けた世界的リーダーとしての道を歩み始めた」と評しました。一方WWFは、欧州議会は使い捨てプラスチック製品の定義における法律の抜け穴をふさぐ機会を逃したとも指摘。実際には再利用できない可能性がある製品にも、再利用可能との表示ができるとしました。
2018年10月27日(土)
■今年の熱中症搬送、9万5137人に上る 記録的な猛暑が影響し過去最多
総務省消防庁は25日、5~9月に熱中症で救急搬送された人が全国で9万5137人に上り、160人が死亡したとの確定値を発表しました。搬送者数は昨年を4万2153人上回り、2008年に統計を取り始めて以降で最多。死者数も昨年から112人増加し、2010年(171人)に次いで2番目に多くなりました。
7~8月に各地の最高気温が35度を超え、記録的な猛暑に見舞われたことが影響しました。
搬送者の内訳をみると、65歳以上が48・1%と最多で、18歳以上65歳未満が37・0%、7歳以上18歳未満が13・9%と続きました。人口10万人当たりの搬送者数は岡山県119・49人、群馬県108人、岐阜県106・5人と続きました。
発生場所は住居(40・3%)、道路(13・4%)、屋外(12・8%)の順に多くなりました。死者数は愛知県14人、埼玉県13人、大阪府12人の順でした。
特に目立ったのが、「災害級の猛暑」とされた7月。この月の搬送者数5万4220人、死者数133人は、2008年に熱中症の調査を始めて以来、月単位の数字としては過去最多でした。
2018年10月26日(金)
■患者最多の東京都が風疹緊急対策 予防接種補助、妊婦の夫などにも
首都圏を中心に風疹が流行する中、全国で患者が最も多い東京都が緊急対策を発表しました。男性患者の急増を踏まえて、10月以降、風疹の免疫についての無料検査や予防接種の費用を補助する事業の対象を、妊娠を希望する女性だけでなく夫などの同居している人にも広げることになりました。
首都圏を中心に感染の拡大が続いている風疹は、発熱や発疹などの症状が出るウイルス性の感染症で、妊娠中の女性が感染すると生まれてくる赤ちゃんに障害が出る恐れがありますが、現在、首都圏を中心に感染の拡大が続いています。
東京都は、10月21日現在で都内の風疹の患者が510人と全国で最も多く、このうち男性が419人と80%を超えていることを踏まえて緊急の対策をまとめました。
それによりますと、東京都が、妊娠を希望する19歳以上の女性を対象に風疹の免疫が十分にあるかを無料で検査する事業について、今月以降、対象を妊婦の夫や妊娠を希望する女性の夫など同居している人にも拡大します。
また、検査の結果、免疫が不十分だった人が予防接種を受ける場合に、東京都が都内の自治体に対して費用の半額を補助する事業の対象も同居している人に拡大することにしています。予防接種の自治体への補助は10月1日以降のぶんについても対象にするとしています。
ただ、区市町村によって対象が拡大される時期や予防接種の費用の個人負担の割合は異なるということで、詳細についてはそれぞれの自治体に問い合わせてほしいとしています。
東京都の小池百合子知事は記者会見で、「風疹はせきやくしゃみなどで感染する。外出後は手洗いをしっかり行うなど、都民一人一人が予防を心掛けてほしい」と話しています。
2018年10月26日(金)
■社会福祉施設の労働災害死傷者、8738人に 過去最悪を更新
高齢者や障害者の介護などを担う社会福祉施設で昨年、腰痛や転倒など4日以上の休業を伴う労働災害で死傷した職員が前年比5・5%増の8738人となり、過去最悪を更新したことが、厚生労働省のまとめでわかりました。経験が3年未満の職員の労災が4割超を占め、安全教育の徹底などが急務となっています。
厚労省によると、昨年の社会福祉施設での労災は2008年の約1・8倍で、同じ期間の職員数の約1・5倍の増加を上回るペースでした。
全産業における労災の死傷者数は1980年前後は年30万人台でしたが、安全対策の強化などで減少。2008年以降は年11万~12万人台で推移している中、社会福祉施設での増加が目立っています。
社会福祉施設での労災の内訳は、高齢者をベッドから車イスに移す際などの「動作の反動・無理な動作(腰痛など)」の2983人が最も多く、「転倒」の2893人が続きました。生命にかかわる度合いの比較的小さい労災が多く、「交通事故(道路)」、「墜落・転落」は少数です。
年齢別では、50歳以上が57%に上りました。仕事の経験年数別では、3年未満の人が43%を占めました。介護需要の高まりで新たに採用された職員や、中高年層の職員が労災に見舞われやすい傾向がうかがわれました。
疾病別では、介護現場で発生しやすい腰痛が1214人と増加傾向が続いていました。厚労省は2013年に改定した「職場における腰痛予防対策指針」で、福祉・医療分野では原則、職員が利用者を抱き上げないよう求めています。ベッドから車イスへの移動などで、前かがみや中腰の姿勢で高齢者や障害者を持ち上げると、腰などに大きな負担がかかり、腰痛になる危険性があるためです。
ただ、厚労省によると、多くの介護職場で「指針が知られていない」のが実情といいます。腰痛予防の講習会を全国各地で開き、職員の負担を軽減するリフトの導入に補助金を出すなどしているものの、現場の意識改革や導入は十分に進んでいません。
介護現場の人手不足は深刻で、人材確保の観点からも、新人向けの安全研修の徹底や、負担を軽減する機器の導入など、労災防止対策の重要性が増しています。
2018年10月26日(金)
■人気の「プチ整形」でトラブル相次ぐ 未承認薬使用も
顔のしわ取りなどの美容医療で、皮膚の下に化学物質を注射する「フィラー(充てん剤)施術」を巡るトラブルが相次いでいます。メスを使わない「プチ整形」として人気ですが、使われる物質の多くは国内未承認で、安全性が確認されていないといいます。
後遺症が出たり痛みが残ったとして、医師に損害賠償を求める訴訟に発展するケースもあり、大阪地裁では少なくとも4件係争中です。
「今日なら割引があり、他の注射もサービスします。全く危険はありません」。大阪府内の女性(66歳)は昨年6月、奈良市内の大手美容整形外科を訪ねた際、こんな言葉でフィラー施術を勧められました。来院は初めてだったものの、その日のうちに頬などに充てん剤「アルカミド」を注射する施術を受け、342万円の費用を支払いました。
だが、直後から鼻、頬に痛みやしこりを感じるようになり、医師に相談してもマッサージをされただけでした。半年後、別の病院でアルカミドの除去手術を受けたものの、液状のためすべてを取り除くことができず、今も痛みが続いています。
専門家は、「どんなトラブルが起きてもおかしくない」と警鐘を鳴らしています。
2018年10月25日(木)
■膀胱がんを17人が発症 発がん性物質「モカ」扱う7工場で
ウレタン防水材などの原料に使われる化学物質で、発がん性があるとされる「MOCA(モカ)」を取り扱っていた全国7カ所の事業所で、労働者と退職者計17人が膀胱(ぼうこう)がんを発症していたことが25日、厚生労働省の調査でわかりました。
モカの取り扱いに当たっては、排気装置の設置や健康診断の実施などが義務付けられています。厚労省は今月19日、業界団体などに対し、法令順守の徹底を求める注意喚起を通知しました。
モカはマンションの防水材などに使うウレタン樹脂を固める硬化剤に使われる化合物で、世界保健機関(WHO)の下部組織に当たる「国際がん研究機関」が2010年、発がん性物質と認定しました。国内では昨年時点で、全国の333工場の3747人に取り扱い歴があります。
2016年にモカを扱う静岡県富士市の旧イハラケミカル工業(現クミアイ化学工業)静岡工場で、労働者ら5人が膀胱がんを発症していたことが発覚。厚労省が他の事業所でも同様の事例がないか、調査していました。
この結果、全国6カ所の事業所で、8人の膀胱がん発症者が出ていたことが判明。すでに発症者が確認されている静岡工場でも、新たに4人の発症が確認されました。
発症が確認された計17人のうち12人は、すでに事業所を退職しているといいます。厚労省は事業所の従業員らに対し、労災制度の手続き方法などの案内に乗り出す方向で検討しています。
2018年10月25日(木)
■脂肪肝疾患を判定する血液中の物質を特定 島津製作所、健診への実用化目指す
聖路加国際大学(東京都中央区)と島津製作所(京都市中京区)は25日までに、肥満や糖尿病の人に多い「非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)」かどうかを判定するのに使える血液中の物質を特定したと発表しました。
健康診断などで血液を調べれば早期発見できるようになり、肝硬変や肝臓がんに悪化するのを防げる可能性があるといいます。島津製作所は2020年の臨床応用を目指します。
NAFLDはアルコールを全く飲まない人や、少しだけ飲むという人にも肝臓に脂肪がたまる病気で、進行すれば肝臓がんになる恐れがあります。原因として肥満や糖尿病などの生活習慣病との関連が指摘されており、日本には1000万人以上の患者がいると推定されています。診断には超音波検査や血液検査、針を皮膚から肝臓へと突き刺し、肝臓の組織の一部を採取する肝生検などが行われているものの、手間と費用がかかりすぎる点が課題となっています。
今回、聖路加国際病院で2015~16年に人間ドックを受けた3733人の血液を採取して分析。NAFLDと診断された826人の患者は「グルタミン酸」などの70種の物質の量が健常者と異なることがわかりました。
2018年10月25日(木)
■出産時のバランスボール使用で子宮破裂 夫婦が大阪市の産科医を提訴
出産中にバランスボールを突然使うよう指示されて転倒し、子宮が破裂して生まれた男児もその後死亡したなどとして、山梨県の30歳代の夫婦が大阪市東淀川区の産婦人科クリニックと担当医を相手取り、約9000万円の損害賠償を求める訴訟を大阪地裁に起こしました。24日に第1回口頭弁論があり、クリニック側は争う姿勢を示しました。
産科医療関係者によると、一部の産科や助産院では、陣痛緩和のためバランスボールを用いるといいます。
訴状によると、妻は大阪府内に住んでいた2013年6月、破水して入院しました。ベッドに置かれたバランスボールに上半身を覆いかぶせるように乗せたものの、片方の腕に点滴がつながれていた上に陣痛もあり、バランスを崩して転倒。担当医が急きょ帝王切開すると、子宮が破裂していました。男児は仮死状態で生まれて脳性まひが残り、1歳7カ月で死亡しました。
夫婦は子宮破裂は転倒が原因とし、「触ったこともないバランスボールを使うよう突然指示され、介助の看護師もいなかった」と主張。手術でガーゼを体内に置き忘れ、翌日に除去するため再手術を受けるなどの医療ミスや子宮破裂のショック、男児の介護疲れで夫婦が精神疾患にかかるなど精神的苦痛を受けたと訴え、逸失利益や慰謝料を求めています。
医療事故の分析に当たる第三者機関「日本医療機能評価機構」の報告書は今回の件について、「子宮破裂の原因は転倒による衝撃の可能性もあるが、断定は困難」とした上で、「バランスボールを使う場合、使用方法を十分に説明し、安全に十分に配慮することが望まれる」と指摘しています。
夫は、「なぜ子供が亡くなったのか、本当のことを知りたい」と話しています。被告側の代理人弁護士は、「現時点ではコメントは差し控えたい」としています。
2018年10月25日(木)
■人体からもマイクロプラスチックを検出 日本など世界の8人を調査
ヨーロッパとロシア、日本の被験者を対象にした調査で、それぞれの排せつ物から微小なプラスチック片「マイクロプラスチック」が検出されたことが23日、発表されました。食物連鎖の中にプラスチックが広く存在することを示した初の調査結果だといいます。
オーストリア・ウィーンで開催中の胃腸病学会議で発表された結果によると、小規模の予備的研究に参加した日本、イギリス、イタリア、オランダ、オーストリア、ポーランド、フィンランド、ロシアの各1人、計8人のボランティア被験者全員が数種類のプラスチックを排出しており、排せつ物10グラム当たり平均20個のマイクロプラスチックが検出されたといいます。
被験者の直前1週間の食事の記録をみると、いずれもプラスチック包装された食べ物やプラスチックボトル入りの飲み物を飲んでいました。ベジタリアンはおらず、6人は海産物を食べていました。
マイクロプラスチックは大きさが50~500マイクロメートルで、海産物、食品包装材、ほこり、ペットボトルなどを経由して体内に取り込まれた可能性があると、研究チームは推測しています。
1マイクロメートルは1000分の1ミリ。人毛の直径は約50~100マイクロメートルです。
サンプルの分析を行ったオーストリア連邦環境庁の研究者ベティーナ・リープマン氏によると今回、9種類の異なるプラスチックを検出したといいます。
最も多く検出されたのは、ペットボトルのふたや梱包用ロープなどに使われているポリプロピレン(PP)と、飲料水のボトルや繊維素材などに使われているポリエチレン・テレフタレート(PET)の2種でした。
この2種とポリスチレン(使い捨て食器やカップ、保冷容器など)とポリエチレン(レジ袋など)を合わせると、今回検出されたマイクロプラスチック全体の95%以上を占めました。
研究を主導したオーストリア・ウィーン医科大学のフィリップ・シュワブル氏は、「今回の研究では、栄養に関する(体の)働きとマイクロプラスチックへの暴露との確実な関連性を実証することはできなかった」と述べました。
動物に関する過去の研究では、マイクロプラスチックの濃度は胃腸内が最も高かった一方、少量のマイクロプラスチックが血液、リンパ液、肝臓などからも検出されていました。
シュワブル氏は、「マイクロプラスチックを巡っては、炎症反応の切っ掛けとなったり、有害物質として吸収されたりすることによって、消化管に損傷を与える恐れがあるとの初期的な兆候がみられる」と指摘しながら、「人体に対するマイクロプラスチックの潜在的な危険性を評価するためには、さらに研究を重ねる必要がある」と続けました。
2018年10月24日(水)
■アメリカが妊婦の日本への渡航自粛を勧告 風疹の感染拡大で
首都圏を中心に風疹の感染が広がっていることを受けてアメリカの疾病対策センター(CDC)は22日、予防接種を受けていないなど感染の恐れがある妊娠中の女性に対しては、感染の拡大が収まるまで日本への渡航を自粛するよう勧告しました。
風疹は発熱や発疹などの症状が出るウイルス性の感染症で、国内で首都圏を中心に患者数が増えています。
こうした状況を受けてアメリカのCDCは22日、海外旅行先の感染症で呼び掛ける警戒レベルを3段階の2番目である「勧告」に引き上げると発表しました。
CDCはこの中で、日本への渡航者に対して、事前に予防接種を受けているか確認するよう呼び掛けています。特に妊娠中の女性に対しては、これまでに風疹の予防接種を受けていなかったり風疹に感染したことがなかったりする場合、感染の拡大が収まるまで日本への渡航を自粛するよう求めています。
世界保健機関(WHO)は、3年前に南北アメリカ大陸で風疹が撲滅されたと発表しました。厚生労働省によりますと、今のところ妊婦への渡航の自粛を求めているのはアメリカだけだということです。
2018年10月24日(水)
■京大、遺伝性乳がん卵巣がんの仕組み解明 発がんリスク測定に期待
がん抑制遺伝子の一つ「BRCA1」が欠損した乳腺や卵巣では、女性ホルモンがDNAを切れた状態にしやすくなってがんのリスクを高めることがわかったと、京都大学の研究チームが22日発表しました。がんのリスクを測定する方法に活用できる可能性があります。
研究成果は23日、アメリカの「科学アカデミー紀要」(電子版)に掲載されました。
国内では遺伝性乳がん卵巣がん症候群として、遺伝性乳がんの患者は年間数千人、遺伝性卵巣がんの患者は年間約1000人新たに見付かり、それぞれのがん患者全体の3~10%を占めます。BRCA1の変異があったアメリカの人気女優アンジェリーナ・ジョリーさんは、予防のため乳房や卵巣、卵管を摘出したことで知られます。しかし、BRCA1の変異ががんを発症させる仕組みは、よくわかっていませんでした。
医学研究科の武田俊一教授や笹沼博之准教授らは、BRCA1を働かなくした人の乳がん細胞を作製。妊娠中の女性と同じ血中濃度となるように女性ホルモン「エトロゲン」を投与すると、細胞が異常に増殖するとともに、細胞の遺伝子の集まりである染色体DNAの多くが切断されたままになりました。細胞を解析すると、BRCA1は本来、エストロゲンによって切断された染色体DNAの修復を促す働きがあるとわかりました。
笹沼准教授は、「現在は遺伝子の変異がある女性について発がん頻度を判断できない。研究が進み、例えば発症が50歳以降と予測できれば、出産後に乳房や卵巣の予防的切除を受けることなども可能になる」と話しています。
2018年10月24日(水)
■成人男女の将来の不安、「年金が十分か」が最多 厚労省調査
成人男女が将来に不安を感じることとして、最も多いのは「公的年金が老後の生活に十分であるかどうか」であることが、厚生労働省の「社会保障を支える世代に関する意識調査」でわかりました。
調査は2016年7月、20歳以上の男女約1万2500人を対象に行い、約9500人から回答を得ました。
将来、一番不安なことについて、男性の50%、女性の51・5%が「年金が十分であるかどうか」を挙げました。
年代別でも、すべての年代で「年金」がトップ。「医療や介護が必要になり、負担が増大するのではないか」が、男性15・3%、女性16・3%で続きました。
今後、充実させる必要があると考える社会保障分野(複数回答)では、71・6%が「年金」を挙げ、3年前の前回調査(64・5%)から7・1ポイント上昇しました。次いで、「高齢者医療や介護」(54・3%)、「子ども・子育て支援」(40%)でした。
社会保障の給付と負担の考え方については、男女ともに「社会保障の給付水準を維持し、少子高齢化による負担増はやむを得ない」が最も高く、男性は25・4%、女性は23・7%でした。
2018年10月23日(火)
■風疹患者、6週連続で100人超え 今年の累計患者は1289人
風疹の患者数は10月14日までの1週間に全国の医療機関から新たに141人報告され、今年のこれまでの累計患者は1289人に上りました。新たな患者が100人を超えるのは6週連続で、各地で感染が続いています。
国立感染症研究所は、妊娠した女性が感染した時に赤ちゃんの目や耳、心臓などに障害が出る「先天性風疹症候群」が増える可能性があるとして、女性は妊娠する前に2回ワクチンを接種するほか、妊婦の家族など周りにいる人もワクチンの接種が重要だと呼び掛けています。
都道府県別では、東京都が前の週から46人増えて432人、千葉県が15人増えて234人、神奈川県が26人増えて163人、埼玉県が9人増えて90人、愛知県が10人増えて71人、大阪府が4人増えて33人、福岡県が8人増えて25人などとなり、首都圏の患者が全体の7割以上を占めています。
男女別では、女性の227人に対し、男性は1062人と約5倍になっていて、30歳代から50歳代が男性患者全体の8割を占めます。また、女性では20歳代が最も多く、患者数は79人になっています。
国立感染症研究所の多屋馨子室長は、「新たな患者の報告が6週連続で100人を超え、患者の増加のスピードは全く衰えていない状態だ。先天性風疹症候群を防ぐため、ワクチンの接種ができない妊婦はまず、自分に免疫があるか医療機関で検査し、免疫がない場合には人混みなどの混雑を避けた上で、家族など周りにいる人たちにワクチンを受けてもらうなどして予防をしてほしい。また、男性も含めワクチンを接種するべきかわからない人は、母子健康手帳に2回以上の接種の記録があるか確認し、記録がなければ抗体検査を受けるなどワクチンの接種を検討してほしい」と話していました。
また、アメリカの疾病対策センターが日本での風疹の感染状況を受けて、22日、警戒レベルを上から2番目の「より注意」に引き上げたことについて、「アメリカ当局のこうした対応は、5年前に日本で風疹が大規模に流行した時以来で、強い危機感を持って受け止めるべきだ」と話していました。
2018年10月23日(火)
■難病の医療費助成、疾患ごとの認定率に開き 軽症除外で49~97%
難病医療法に基づいて公的な医療費助成を受ける難病の重症患者などの認定率に、疾患によって49~97%と大きな差があることが、厚生労働省の全国調査で明らかになりました。18日に開かれた難病対策委員会で公表しました。
厚労省は、「症状を抑える薬が出た疾患は、重症者の認定率が低くなる。バラツキがあるのは当然だ」と説明しています。
厚労省は2015年の難病医療法施行に伴う医療費助成の経過措置が今年1月に終了したことを受け、難病患者の医療費の受給状況を調べました。従来、医療費助成を受けていた71万7000人のうち、引き続き受給者として認定された人は約57万人(79・6%)。軽症を理由にj受給者として認定されなかった人は約8万6000人(11・9%)でした。また、申請がなかったり、不明だったりした人は約6万1000人(8・5%)でした。
疾患別で認定率が高かったのは、記憶力低下や歩行障害が出る亜急性硬化性全脳炎97%、脊髄小脳変性症93%、パーキンソン病関連疾患92%など。認定率が低かったのは皮膚病の天疱瘡(てんぽうそう)49%、脳の血流が低下するもやもや病61%、約14万人と患者の多い潰瘍性大腸炎69%など。都道府県別の認定率も、高知県の69%から宮城県の86%まで幅がありました。
難病医療法によって、医療費助成の対象となる難病は56疾患から331疾患に拡大されました。医療費助成対象は原則、重症患者に絞られ、以前から助成を受けていても軽症と判断された人は打ち切られることになりました。ただ、昨年末までは経過措置として、症状の軽重を問わず、医療費助成が行われていました。
重症度の判断は、介助の必要性など、国の基準に従い、自治体による研修をすませるなどした難病指定医が行っています。患者団体「日本難病・疾病団体協議会」の森幸子代表理事は難病対策委員会で、「差の大きさに驚いている。重症度を認定する基準に差がないか、国は精査してほしい」と指摘しています。
難病医療法には、施行後5年以内の見直し規定があります。難病対策委員会の千葉勉委員長(関西電力病院長)は、「基準の公平化が重要だ。疾患ごとに『どれぐらい困っているか』を数値化し、認定するような作業が必要だ」として、今後の見直し議論の中で、重症度基準の見直しも検討する考えを示しました。
2018年10月23日(火)
■ソーセージからアフリカ豚コレラを検出 中国から新千歳空港に持ち込み
農林水産省は22日、北海道・新千歳空港に持ち込まれた豚肉ソーセージから、家畜伝染病であるアフリカ豚(とん)コレラの陽性反応が出たと発表しました。今後、感染力のあるウイルスが存在するか確認しますが、加熱処理されているとみられ、ウイルスは死滅している可能性が高いといいます。
発表によると、国内でアフリカ豚コレラの陽性反応が確認されたのは初めて。豚肉ソーセージは1日、中国の北京から来た外国人の乗客が10数本を真空パックにしたもの計約1・5キログラムを持ち込みました。中国からの豚肉の持ち込みは、家畜伝染病予防法で禁止されており、動物検疫所で遺伝子検査を行ったところ、陽性反応が出ました。
豚肉ソーセージはすべて任意放棄され、空港外に持ち出されていません。製品表示がなく、産地は特定できていません。
アフリカ豚コレラは、豚やイノシシに感染する病気で、強い感染力と高い致死率が特徴。人には感染せず、感染した肉を食べても問題はありません。もともとアフリカで発生していましたが、今年8月に中国で初めて感染が確認され、その後、中国の54カ所の養豚場などに広がるなど感染の報告が相次いでいます。
このため農林水産省は22日、水際での侵入阻止のため、空港の動物検疫所に対して監視の強化を指示したほか、国内の養豚業者に対して飼育場への人の出入りを最低限に抑えるほか、餌の加熱処理など対策の徹底を呼び掛けています。
農林水産省動物衛生課の熊谷法夫課長は、「ウイルスが間近まで迫っていると感じている。国内での感染は何としても食い止めたい」と話しています。
2018年10月22日(月)
■障害者雇用水増し、地方自治体は約3800人 不正算入1割以下、政府発表
中央省庁が雇用する障害者数を水増ししていた問題を受けて、全国の地方自治体の障害者雇用の実態を調べた結果、昨年6月時点で雇用していたとする4万9689人のうち3809・5人(短時間労働者は0・5人分と計算)の不適切な障害者雇用数の算入があったことが22日、明らかになりました。同日開かれた関係府省の連絡会議で、原因を検証してきた第三者委員会から報告されました。
中央省庁は半分以上が水増しでしたが、自治体では1割以下にとどまりました。
都道府県の機関別(教育委員会、市町村除く)では、33都道府県で不正算入があり、8633人のうち6815人の水増しがありました。山形県の76人が最多で、愛媛県63人、島根県45・5人、石川県42人が続きました。市町村では2万6412人のうち769人、教育委員会では1万4644人のうち2359人の水増しがありました。都道府県の教育委員会別では、愛知県が392・5人で最も多くなりました。
全国の自治体の実際の雇用率は2・40%から2・16%へと低下。法定雇用率からの不足は677人から4667・5人と大幅に増えました。
調査では、障害者手帳を確認しないなど、国のガイドラインに沿わない手続きで算入された不適切事案について報告を求めました。対象は都道府県や市町村、教育委員会教育委員会などで、法定雇用率は自治体で2・3%、(今年4月から2・5%)、教育委員会で2・2%(同2・4%)でした。
一方、独立行政法人でも調査が行われ、雇用していたとする障害者1万276・5人のうち52・5人が水増しでした。
2018年10月22日(月)
■幼児用座席付き自転車の事故、子供の救急搬送1349人 東京都内で過去6年間に
幼児用座席の付いた自転車(チャイルドシート付き自転車)の事故で病院に救急搬送された子供が、2016年までの6年間に東京都内だけで1349人に上ることが、消費者庁のまとめでわかりました。
買い物や送り迎えなどで子供と自転車に同乗する際は、1人で乗る時よりもバランスを崩しやすく、転倒などの事故も多いとして、消費者庁は保護者に対して注意を呼び掛けています。
事故のパターンで目立つのは、運転席の前の幼児用座席に子供を乗せて電動自転車で走っていたら、道路と歩道の段差を越えようとした際に転倒し、子供はシートベルトを着けていたものの、ヘルメットを着用しておらず、頭の骨を折るけがを負ったというケースです。また、曲がり角でバランスを崩したり、雨の日で道路が滑りやすくなっていたりして転倒したケースも目立ちます。
消費者庁によると、2011~16年に都内で搬送された1349人のうち、157人が入院を必要とするけがを負っていました。搬送された人数を年齢別にみると、2歳が416人で最も多く、1~3歳が8割近くを占めていました。幼稚園や保育園などへの自転車での送り迎えが始まる4~7月に増える傾向があるといいます。
子供2人を同時に乗せる「3人乗り」での事故も起きています。運転席の前後の幼児用座席に子供2人を乗せて買い物から帰る途中、荷物が多く、自転車がふらついて転倒。後ろの座席に乗っていた3歳児が、腕を骨折したという例も報告されています。
事故が起きるのは、走行中だけとは限りません。朝、兄を幼稚園に送るために慌てていて、年下の1歳児をヘルメットをつけずに前方の幼児用座席に座らせ、兄を乗せるために後輪側に移動した際に自転車が転倒。1歳児はシートベルトはしていましたが、コンクリートの地面に頭を強打し、頭蓋(ずがい)内損傷のけがを負ったという例も報告されています。
消費者庁は、子供を自転車に乗せる際はヘルメットをかぶらせて、座席に乗せたらすぐにシートベルトを着けること、子供を乗せたまま自転車から目を離さないこと、前後の幼児用座席に2人乗せる場合は、バランスを安定させるため、乗せる時は「後ろから前」、降ろす時は「前から後ろ」の順番を守ること、乗り降りの際は自転車を平らな場所に止め、スタンドにロックをかけたりハンドルを固定したりすること、自転車を買う際は、自転車協会が安全基準を満たした自転車に交付している「BAAマーク」「幼児2人同乗基準適合車」の表示を参考にすることなどを呼び掛けています。
2018年10月22日(月)
■今年の風疹患者1103人、昨年の12倍に 集団予防接種を実施する企業も
関東を中心に風疹の流行が続いており、今年に入ってからの患者数は10月10日時点で1103人となり、昨年1年間の約12倍に上っています。患者の中心は30~50歳代男性で、時間のない働き盛り世代に当たるため、職場で集団予防接種をする企業も出ています。
患者が増え始めたのは7月下旬で、直近では5週連続で100人超の患者が出ました。特に多いのが東京都、千葉県、神奈川県、埼玉県など首都圏。そのほか愛知県や大阪府、広島県、福岡県などでも患者が発生。今年、風疹患者が出ていないのは、7日までの報告で、佐賀県や長崎県など九州を中心に7県のみです。
風疹はウイルス性の感染症で、くしゃみやせきなどのしぶきでうつります。潜伏期間は2~3週間。発熱や発疹、リンパ節のはれが主な症状で、発疹が出る1週間前から人に感染します。妊娠初期の女性がかかると、赤ちゃんに難聴や心疾患など先天性風疹症候群による障害が出る可能性があります。
1万6000人を超える患者が出た2012~13年の大流行では、45人の赤ちゃんに先天性風疹症候群による障害が出て、うち11人が亡くなりました。発熱などの症状を和らげる対症療法以外に治療法はなく、ワクチン接種で感染を防ぐほかありません。
ワクチンは1回接種だけでは免疫がつかない人が5%おり、2回接種でより高い効果が得られます。接種歴が不明で、抗体検査の時間がない場合も、免疫がすでにある人が再度接種しても副作用などの問題はありません。子供のころの接種歴は母子手帳に書いてあり、大人になったら自分で保管することが大切です。
また、ワクチンには弱い感染力のあるウイルスが含まれるため、妊娠中は予防接種が受けられないので、女性は妊娠の2カ月前までにすませておく必要があります。
今年の風疹患者の約7割は、働き盛りの30~50歳代男性です。この世代は予防接種の制度変更の影響で、抗体保有率が低くなっています。2013年の流行時は20~60歳の患者のうち、男性の7割弱、女性の4割弱が職場で感染しました。
社内での感染を防ぎ、従業員やその家族の健康を守ろうと、ロート製薬は全従業員約1700人を対象に、希望者に集団予防接種を始めました。19日、まず東京支社で始め、今後、大阪本社などでも実施していきます。ワクチン接種の費用は1人1万円程度かかりますが、会社が全額負担します。
同社広報によると、予防接種を受けた社員からは「受けようと思っていたけれど、受けられていなかったのでありがたい」「ニュースで風疹が広がっていることを知り、周囲に迷惑をかけてはいけないと思った」など、歓迎の声が寄せられたといいます。
2018年10月22日(月)
■アルミ缶に洗剤を移し替えると 、化学反応で破裂 消防庁が、注意喚起
JR新宿駅(東京都新宿区)のホームでアルミニウム製の缶からアルカリ性の洗剤が噴出し、通行人が負傷する事故が起きました。洗剤と缶が化学反応を起こし、発生した水素ガスの圧力で缶の蓋が外れ、洗剤が飛散したとみられます。東京消防庁が洗剤の容器の移し替えに注意を呼び掛けています。
「山手線のホームでアルミ缶が爆発しました!」。8月26日早朝、新宿駅員からの110番通報を受けて警察官が駆け付けると、現場にはコーヒーのアルミ缶が転がり、無色透明の液体が飛び散っていました。ホームを歩いていた20歳
代と30歳代の女性2人に液体がかかり、顔や足に軽いやけどを負いました。
新宿署は10月、30歳代の飲食店従業員の男を過失傷害容疑で書類送検。男は自宅で自転車のチェーンを掃除するため、勤務先にあった洗浄力の強いアルカリ性の業務用洗剤をボトル型のアルミ缶に移し替え、リュックサックに入れて持ち出しました。不審な音がしたのでリュックサックを開けて缶を見たところ、いきなり破裂したといいます。
2012年10月、東京メトロ丸ノ内線の車内で乗客が持っていた強アルカリ性の業務用洗剤を入れたアルミ缶が破裂し、複数の乗客がやけどなどの症状を訴えた同様の事故が起きた際、東京消防庁が行った実験では、アルミ缶にアルカリ性業務用洗剤100ミリリットルを入れて放置したところ、洗剤に含まれる水酸化ナトリウムがアルミと反応し、アルミが溶けて水素ガスが発生。約6時間後、缶の側面に穴が空いて洗剤があふれ出しました。
アルミ缶やスチール缶に酸性の洗剤を入れた場合も同じような反応が起きるため、洗剤は通常ポリエチレンの容器に入れて販売されています。また、酸性の洗剤は塩素系洗剤と混ぜると、有毒な塩素ガスが発生する恐れがあります。
消費生活アドバイザーの阿部絢子さんは、「業務用洗剤だけでなく、トイレ掃除向けなどの家庭用洗剤でも同様の事故は起こり得る。販売時の専用容器からの洗剤の移し替えはしないでほしい」と注意を呼び掛けています。
2018年10月21日(日)
■森永乳業、ヨーグルト1865個を自主回収 大腸菌群の混入疑い
大手乳業メーカー「森永乳業」は19日、ヨーグルトの一部の商品で大腸菌群が混入した可能性があるとして、1800個余りを自主回収すると発表しました。
森永乳業が自主回収するのは「濃密ギリシャヨーグルト パルテノ プレーン加糖」というヨーグルトの商品1種類です。
このうち回収の対象となるのは賞味期限が11月4日のもので、関東地方、福島県、山梨県、静岡県の1都9県で販売された1865個です。
会社によりますと、この商品を製造した森永乳業グループの横浜乳業(神奈川県綾瀬市)の工場で出荷前の検査で不備が見付かったため商品を再検査したところ、下痢や発熱の恐れがある大腸菌群と呼ばれる微生物が混入した可能性があることがわかりましたが、再検査の結果が出る前に一部を誤って出荷していたということです。
18日に出荷されましたが、現時点で健康被害などの報告は入っていないとしています。実際に混入したかどうかや、混入の恐れに至った原因などについては調査中。
森永乳業は「お客様にご迷惑をお掛けしておわび申し上げます。再発防止に努めます」と話しています。
購入した消費者は、中身を廃棄した上で空容器を横浜乳業に着払いで送れば、代金を返金します。問い合わせ先は、森永乳業「お客様相談室」0120(369)334。午前9時から午後5時まで受け付けます。10月20〜26日は午後8時まで受け付けます。
2018年10月21日(日)
■有害物混入のワインをネットオークションで落札 マンズワインが30年以上前に製造
有毒物質が混入した疑いがあるとして、30年以上前に自主回収対象となった可能性があるワインが、インターネット上のオークションに出品され、落札されていたことがわかりました。
ワインはキッコーマンの子会社・マンズワイン(東京都港区)製の「氷果(ひょうか)葡萄(ぶどう)吟醸」(1980、1981年製)、「貴腐葡萄房選り」(1979年製)とみられる3本。今年8月上旬、同じ出品者がオークションサイト「ヤフオク!」に出品し、すぐに落札されました。
1980年代にオーストリアや旧西ドイツ産のワインに甘みを持たせるため、プラスチックなどの原料で、摂取すると腎障害などを起こす恐れがある有害な「ジエチレングリコール」が混入されていることがヨーロッパで発覚。マンズ社もブレンド用に輸入ワインを使ったため混入し、旧厚生省が1985年、計約39万本の回収を求めました。ただ、多くが消費されたとみられ、回収できたのは約4万本でした。当時から現在まで健康被害の情報はないといいます。
キッコーマンでは今後、出品者や落札者に連絡できないかサイト側と協議するとともに、同様の出品がないか、インターネットの確認を徹底するといいます。
キッコーマンの広報担当者は、「当時、購入者宅を戸別訪問して回収しており、もうほとんど世の中には存在していないと認識していた。今後はオークションサイトにこういった商品が出ていないかチェックしたい」と話しています。
2018年10月20日(土)
■省庁、障害者4000人採用へ 水増し問題受け来年2月に統一試験
中央省庁の障害者雇用率水増し問題を受け、政府が検討してきた雇用拡大方針の全容が18日、明らかになりました。常勤雇用については、通常の国家公務員採用試験とは別に障害者を対象とする統一筆記試験を新設し、人事院が2019年2月ごろに初めて実施します。
これとは別に非常勤を含め、必要な省庁ごとに人材を募集します。合わせて約4000人を2019年中に採用し、2・5%の法定雇用率を満たす目標を掲げる見通しです。
個人の事情に応じた柔軟な制度として、非常勤での採用後に常勤に移れる「ステップアップ制度」や、常勤採用前に非常勤で働ける「プレ雇用制度」を創設。障害者の正規雇用比率を民間企業並みの4割とすることを目指します。単に雇用率を上げるだけでなく、定着のための環境整備が問われます。同様に不適切な例が相次いで発覚した地方自治体の対応にも影響しそうです。
一連の方針は、水増しの検証結果が22日に公表された後に打ち出します。
障害者雇用は2017年6月時点で、国の27機関で計約3460人の不正算入が判明。実際の雇用率は1・19%に下がって当時の法定雇用率2・3%を大きく割り込みました。集計で障害者から除かれる人の雇用を維持し、現在2・5%に上がっている法定雇用率を達成するには約4000人が必要になりました。
ただ早期の大量採用方針には、応募者数などの見積もりが立たない側面も強く「4000人はあくまで努力目標」との声もあります。
今後の採用は、人事院の統一試験が最も多くの人の入り口となる見込み。試験を通過した障害者に希望先の省庁が面接して採用を決め、2019年4~6月ごろの配属を想定しています。統一試験を随時行うのは難しいため、必要な省庁ごとに、2018年度中にも特別採用を進めます。
非常勤も省庁別に採用し、週に約29時間以上働く「期間業務職員」や、さらに勤務時間の短い形態を受け入れます。障害の特性に応じて安定的に雇用を確保するための運用指針を2018年中に作ります。
2018年10月19日(金)
■患者1千万人の大人の耳鳴り、薬は効かず 学会が初の診療指針
大人の10人に1人以上が抱えている「耳鳴り」の診療に関する国内初の指針案を日本聴覚医学会がまとめ18日、神戸市であった大会で概要を発表しました。耳鳴りの多くは薬による治療は効果がなく、カウンセリングを丁寧にして耳鳴りとうまく付き合えるように支援することの重要性を強調しています。
耳鳴りは外に音源がないのに、自分の耳の中で音が聞こえる状態。アメリカの診療指針(2014年)では、耳鳴りの経験がある人は成人の10~15%とされ、日本には1000万人以上いるとみられます。ほとんどの場合は難聴を伴い、約20パーセントの人は苦痛を伴う耳鳴りがあるといわれています。ストレスや難聴、耳の病気のほか、原因がよくわからない場合もあります。多くは回復が難しく、症状を和らげながらうまく付き合うことが必要です。
指針では、治療の際にまずカウンセリングをすることを推奨し、耳鳴りの原因や付き合い方を知ることで、患者が覚える不安や苦痛を軽くできる場合も少なくないと指摘しました。
また、現状の受け止めや考え方を変えることで精神的な苦痛を緩和する認知行動療法も効果が高いとしました。耳鳴りを和らげるため、補聴器のような機器で別の音を流す音響療法や、難聴の場合は補聴器も効果があることを紹介しています。
一方、向精神薬などの薬物療法や、栄養補助食品、頭部への磁気刺激は、効果の科学的根拠が十分検証されていないため、現時点では勧めないとしました。向精神薬は、抑うつや不安、不眠などの症状の緩和のために用いられるべきだと指摘しています。
患者が適切な診療を受ける上での課題も盛り込み、心理療法士のいる耳鼻科が少ないことや、耳鳴りに対して適切な認知行動療法を身近な医療機関が提供できるような環境の整備が今後求められるとしています。
指針案は来春、正式に公表されます。指針の研究開発班代表の小川郁・慶応大学教授(耳鼻咽喉〈いんこう〉科)は、「多くの耳鳴りは白髪などと同じで加齢とともに付き合うことになる。患者が現状を受け入れられるように医療機関に丁寧な説明が求められる」と話しています。
2018年10月18日(木)
■プラスチックごみ、25%の自治体で保管増加 中国の輸入規制で行き場失う
環境省は18日、中国がペットボトルなどのプラスチックごみの輸入を禁止した影響に関する調査結果を初めて公表しました。プラスチックごみを産業廃棄物として処理する業者を監督する都道府県や中核市のうち、およそ4分の1が管内での保管量が禁輸前に比べ増加したと回答。禁輸で行き場を失ったプラスチックごみの影響の広がりが浮き彫りとなりました。
中国は再生プラスチックの原料として、プラスチックごみを世界各国から大量に輸入してきました。しかし、洗浄が不十分なごみが多く洗浄液を使って出た排水はそのまま川に流されていたため、環境汚染や健康被害が懸念されるようになり、昨年12月末に輸入禁止へと方針転換し、その後、タイやベトナムなども受け入れを規制しました。貿易統計によると、日本は昨年まで年間約150万トン前後のプラスチックごみを輸出し、その半数が中国向けでした。
調査は8月に実施。38都道府県と産廃処理業の監督権限を持つ75市のうち64市から回答を得ました。管内の産廃処理業者で保管量が増加傾向にあると回答したのが26自治体で、このうち5自治体は廃棄物処理法に基づく保管基準を上回る量を抱えた業者を確認したといいます。
また、産廃処理業者175社からの回答では、プラスチックごみの分別や破砕などを行う中間処理業者の56・0%、最終処分業者の29・6%で処理量が増加したといいます。プラスチックごみの受け入れを制限している、または制限を検討していると答えた業者も34・9%に上りました。
回答した自治体のうち、宮城県環境政策課では「産廃処分業者への問い合わせは増加傾向にあるが、プラスチックごみであふれかえるほどではない」と説明、ただ「従来はプラスチックごみを売ることで企業が利益を得ていたことから、排出抑制の取り組みが不足していた。今後は地域で資源を循環させるとともに、リサイクル製品の使用拡大も支援する必要がある」と話しました。
環境省は、処理施設のさらなる活用や整備を進めることにしており、処理が追い付かなくなれば、不法投棄など不適切な処理が行われる恐れがあるとしています。
2018年10月18日(木)
■2040年の長寿国ランキング、首位スペイン、2位日本 ワシントン大学が予想
日本は、長らく誇ってきた「世界最長寿の国」の肩書きを奪われるかもしれません。アメリカ・ワシントン大学の「保健指標・評価研究所」が16日、平均寿命の国別ランキングで、2040年にはスペインがトップの日本を上回るという見解を発表しました。
保健指標・評価研究所は、「世界の疾患負担」の研究データを基に、195の国と地域における平均寿命や死亡率、死因を予測。2040年の各国の平均寿命予想を算出し、ランキングを付けました。
2016年の平均寿命は、日本が83・7歳でトップ、スペインは82・9歳で4位につけています。2040年には、スペインの平均寿命が85・8歳まで延び、85・7歳となる日本を超えて、「世界最長寿の国」に躍り出るといいます。イギリスの新聞・ガーディアンによると、食の研究に国を挙げて取り組んでいることが、スペインの平均寿命を押し上げる要因の一つとみられるといいます。
現在と比べて国別ランキングが上昇する国は、インドネシア(117位から100位)、ナイジェリア(157位から123位)、ポルトガル(23位から5位)、ポーランド(48位から34位)、トルコ(40位から26位)、サウジアラビア(61位から43位)。
2016年時点で137位だったシリアは、果てしなく続く破滅的な内戦が終結すると仮定した場合、2040年には80位まで上昇します。
一方、現在よりも国別ランキングが下がる国は、カナダ(17位から27位)、ノルウェー(12位から20位)、オーストラリア(5位から10位)、メキシコ(69位から87位)、台湾(35位から42位)、北朝鮮(125位から153位)。
また、世界全体の平均寿命は、2016年の73・8歳から2040年には5年ほど延びて、77・7歳に達するといいます。
今から20年先の平均寿命を決定付けるトップ5の要因はすべて、いわゆる「生活習慣病」に関連する高血圧、太りすぎ、高血糖、飲酒、喫煙となっています。また6番目に、中国だけで年間100万人の命を奪っていると科学者たちが推定している大気汚染が挙げられています。
一方、2018年時点の世界の貧困国は、平均寿命においても今後も見通しが明るくありません。アフガニスタンだけを例外として、2040年の下位30カ国はサハラ以南のアフリカ諸国か太平洋の小さな島国で、平均寿命は57~69歳にとどまると予測されています。
保健指標・評価研究所のクリストファー・マレー所長は、「不平等はこれからも大きいままだろう」「相当な数の国々で、あまりにも多くの人が比較的低い所得しか得られないまま、教育もあまり受けられず、早死にするだろう」と指摘。「だが、各国は主要なリスク、特に喫煙と貧弱な食事という問題に人々が取り組むことを支援できれば、より早い進展をみせることができるだろう」とも述べています。
2018年10月18日(木)
■魚をほとんど食べない人、大動脈疾患による死亡リスクが2倍に 筑波大など研究
日本人36万人以上を対象とした研究で、魚をほとんど食べない人では大動脈解離や大動脈瘤などの大動脈疾患による死亡リスクが増加することが、世界で初めて明らかになりました。
研究は、国立がん研究センター社会と健康研究センターの井上真奈美部長、筑波大学医学医療系の山岸良匡准教授らの研究チームによるもので、詳細はヨーロッパの栄養学カテゴリーの専門誌オンライン版に掲載されました。
研究チームは、国内の8研究に参加した40歳以上の男女で、心臓の病気やがんの既往歴のない計36万人分の食習慣アンケートをまとめて解析し、魚摂取頻度と大動脈疾患による死亡リスクとの関連を計算しました。
その結果、魚摂取が週に1~2回の人たちと比べ、魚をほとんど食べない人たちでは、大動脈瘤や大動脈解離で死亡するリスクが約2倍になっていました。魚を月1~2回以上食べる人たちには、死亡するリスクの上昇はありませんでした。
魚に多く含まれるドコサヘキサエン酸(DHA)やエイコサペンタエン酸(EPA)が中性脂肪やコレステロールを減らし、病気のリスクを抑えているとみられます。
山岸准教授(社会健康医学)は、「魚の摂取が心臓病を抑えることは知られているが、大動脈の病気を防ぐことを示したのは初めてだ。魚の摂取頻度がかなり少ない場合には大動脈の病気での死亡リスクが高くなることがわかった。少なくとも月に1~2回食べていれば大動脈の病気での死亡リスクは抑えられるが、魚を多くより多く摂取することが大切」と話しています。
2018年10月18日(木)
■コンゴのエボラ出血熱、感染拡大の恐れ 214人が感染、うち139人が死亡
エボラ出血熱が流行しているアフリカ中部のコンゴ民主共和国(旧ザイール)で、対応支援に当たっていたアメリカ疾病対策センター(CDC)の医療チームが、安全上の懸念を理由に、最悪の被害が出ている地域から退避しました。状況に詳しい政府当局者が15日、明らかにしました。
世界保健機関(WHO)によると、8月1日から始まった今回の流行では、これまでに疑い例を含めて214人の感染が報告され、うち139人が死亡しました。
WHOによると、医療チームが困難に直面して機能を果たすことができず、最近になって感染例が増加。現地で衝突が激化したため対応が難しくなり、近隣諸国にも感染が広がるリスクが増大しました。
WHOは17日にジュネーブで臨時委員会を開き、今回の事態が「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」に該当するかどうかを検討するとともに、感染拡大を食い止めるための対策について協議します。
2週間前にはWHOのテドロス・アダノム事務局長が国連安全保障理事会の会合で、感染地域拡大のリスク評価を「高い」から「非常に高い」へ引き上げたと報告していました。
隣国のウガンダだけでなく、ルワンダ、南スーダン、ブルンジへの拡大も懸念される一方、アフリカ大陸の外へ感染が拡大する可能性は低いとしています。
WHOによると、コンゴでは断続的な武力衝突が発生し、長期にわたる人道危機に見舞われています。患者が集中している北キブ州とイトゥリ州では推定100万人以上が国内外へ逃れており、そうした難民や避難民の移動がエボラ出血熱の感染拡散の潜在的なリスク要因になっているといいます。
コンゴでのエボラ出血熱の流行は1976年以降10度目で、今回流行している同国北東部はウガンダ、ルワンダ、南スーダンとの国境に近く、武装勢力の活動が活発な地域で、患者の対応に当たる医療チームが襲撃される事件が相次いでいました。
2018年10月17日(水)
■日本の競争力、9位から5位に上昇 健康やデジタル分野が高評価
世界経済フォーラム(WEF)が17日発表した2018年版「世界競争力報告」によると、日本の総合順位は前年の9位から上昇して5位でした。健康やデジタル分野の評価が高く、アジア勢では香港を上回りシンガポールに次ぐ2番目の高さとなりました。
調査対象は140カ国・地域。今回から労働市場の多様性や起業文化などを重視し、評価方法を大きく変えました。1位は10年ぶりにアメリカで、前年まで9年連続の1位だったスイスは4位に転落。主要20カ国・地域(G20)ではドイツやイギリスが上位10位以内に入りました。
5位に上昇した日本を項目別にみると、寿命の長さを背景に「健康」の評価が1位。インターネットや携帯電話の普及率が高く「情報通信技術(ICT)の採用」で3位、鉄道や道路など「インフラ」は5位でした。一方、企業統治や批判的思考、労働市場の多様性などの評価は低くなりました。
総合で1位に返り咲いたアメリカは、起業が活発なビジネス環境や、金融システムが高い評価を得ました。
アジア・オセアニア地域ではシンガポールが2位、香港が7位、オーストラリアが14位、韓国が15位、中国が28位で、日本を除き、前年から大きな変動はありませんでした。モンゴルやカンボジアは90位以下で、これらの国は貿易摩擦など急激な環境の変化に脆弱だとされました。
WEFは人工知能(AI)や、あらゆるモノがネットにつながるIoT技術などの「第4次産業革命」が各国の競争力を大きく左右していると分析しています。しかし、報告書は、どの国もアイデアを製品の商品化につなげる力が相対的に弱いという課題を指摘。WEFのサーディア・ザヒディ氏は、「技術そのものは問題解決の特効薬にならない。技術を生かすために人材と制度に投資する必要がある」と話しています。
WEFは世界各国の政治家や経営者が集まる年次総会「ダボス会議」の主催団体。世界競争力報告は1979年から発表しています。今回は12項目、98種類の指標を基にした0~100のスコアで評価。100に近いほど競争力の先端にいると定義しました。
2018年10月17日(水)
今年も流行期が近付き、全国各地で学級閉鎖を行う学校も出始めたインフルエンザ。今シーズンは、1回の服用で治療できる塩野義製薬の新薬「ゾフルーザ」の販売が本格化するほか、中外製薬の定番薬の「タミフル」には後発医薬品が登場し、治療薬の市場も変化しそうです。
ゾフルーザは今秋にはアメリカでも承認される見通しで、年間売上高1000億円以上の「ブロックバスター(大型新薬)」入りもみえてきました。M&A(合併・買収)などによって新薬の種を社外に求める動きが潮流となる中、自社開発を貫く戦略が実を結びつつあります。
塩野義製薬が3月に発売したゾフルーザは、細胞内でウイルスの増殖を防ぐ仕組み。効果が早く現れて長く続くため、1回の服用で治療できます。細胞内で増殖したウイルスが細胞外に遊離するのを抑える薬剤で、増殖そのものを抑制する作用はなく、5日間服用が必要なタミフルなど競合薬に比べて患者の負担が軽くなり、飲み忘れも防ぎやすくなります。
ゾフルーザが初めて本格的に市場に出回る今シーズンは、塩野義製薬は国内だけで130億円の売上高を見込んでいます。大人1回分の薬価は2錠で4789円と高めながら、使い勝手や効果を考えれば問題にならないとみて攻勢を掛けています。小児や錠剤を飲み込むことが困難な患者向けの粉末剤についても年内に承認申請するほか、予防投与の臨床試験(治験)も近く始め、2019年秋の承認申請を目指します。
競合薬への影響は大きく、2017年度に過去最高の253億円を売り上げ、インフルエンザ治療薬で国内首位の第一三共の「イナビル」は、昨シーズンほどの流行を見込んでいないこともあり、2018年度は25%減の190億円に落ち込む見通し。
2017年度に169億円を売り上げ、国内2位のタミフルは、2018年1~6月期はインフルエンザの流行もあって前年同期比2・4%増の84億円を売り上げたものの、沢井製薬が9月に国内初のタミフルの後発薬「 オセルタミビル」を半額で発売したことも影響し、通期では2017年実績を大きく下回りそうで、ゾフルーザに抜かれる可能性が高まっています。
インフルエンザ治療薬を巡っては、今年8月、一斉に添付文書の改訂が行われました。2007年以降原則中止されていたタミフルの10歳代への投与が再び認められたほか、すべての薬剤で異常行動に対する注意喚起の記載を統一。「重要な基本的注意」の記載が「抗インフルエンザウイルス薬の服用の有無または種類にかかわらず、インフルエンザ罹患時には異常行動を発現した例が報告されている」と改められ、「重大な副作用」の欄には因果関係は不明としつつ「異常行動」が追加されました。
新薬の登場や後発薬の参入、さらにはタミフルの10歳代への投与解禁も含め、治療選択肢が広がる今シーズンは、治療薬の市場の様子も一変しそうです。
2018年10月16日(火)
親族から肝臓の一部を移植する生体肝移植のドナー(提供者)で、経過観察のため定期的に病院を受診している人は4割に満たないことが、日本肝移植研究会の調査で明らかになりました。病院にカルテがないなどで、そもそも追跡できていないドナーも多くいます。専門家は全国の情報を一括管理する必要性を指摘しています。
脳死ドナーが少ない日本の肝臓移植は生体肝移植が主流。健康なドナーにメスを入れ、負担が大きいにもかかわらず、生体肝移植を受けた患者(レシピエント)に比べてドナーの健康や生活は十分に把握されていないことが問題視されてきました。
調査は、生体肝移植の経験がある66病院で、2011年までに手術を受けたドナー6505人を対象に実施。調査票で体調や手術後の受診、社会復帰の状況などを尋ね、2230人が回答しました。
それによると、定期的に受診していた人は38・9%にとどまりました。50・8%は通常の健康診断は受けていましたが、10・3%は全く受けていませんでした。67・1%のドナーが体調は「完全に回復した」と答え、90%以上が社会復帰していました。
生体ドナーは、患者が死亡したり、患者との関係が悪化したりすると受診が途絶えやすいといわれます。中には、今は生体肝移植を中止した病院もあり、古いカルテが廃棄された例もあるとみられ、調査票の回収率は34・2%にとどまりました。
調査を担当した國土(こくど)典宏・国立国際医療研究センター理事長は、「生体ドナー手術を受けた人は健康状態の継続的な観察や支援が必要だが、十分できていない。転居などの理由で別の病院を受診することも多いので、全国のドナー情報を一括管理し、過去の情報も長期的に保存できる支援拠点が必要だ」としています。
2018年10月16日(火)
兵庫県伊丹市の「第2西原クリニック」が、国に提出した計画で承認されていない病気の患者に対して再生医療を行ったと指摘されていたことがわかりました。健康被害は出ていないといいます。
指摘を行ったのは、国の認定を受けた再生医療の審査委員会で、第2西原クリニックは計画にない治療を中止しました。
第2西原クリニックによると、患者本人の脂肪から取り出した「幹細胞」を数週間かけて培養し、患者の静脈に点滴する再生医療を2015年から実施。計画では、自己免疫疾患としてアトピー性皮膚炎などの6種類の病気を挙げるほか、変形性ひざ関節症なども対象にしていました。治療を受けたのはほとんどが韓国人で、費用は1人60万円といいます。韓国では規制が厳しくこの治療が受けられないため、日本に来ているといいます。幹細胞は京都市の韓国系企業が培養、加工していました。
審査委員会は昨年末、「自己免疫疾患のカテゴリーに分類されないと思われる疾患名が散見される」などと指摘し、他の病気については計画を出し直すよう求めました。
第2西原クリニックによると、他の病気は「慢性疲労症候群」など3つの病気が中心で、治療を受けていたのは韓国人を中心に約500人。これらの病気の計画を出し直したものの、今年8月に却下されました。
第2西原クリニックの理事長は、「計画には代表的な6種類を羅列し、頻度の少ないものはひとくくりに『など』と記載していた」と主張。「疑義が出た疾患については誤解を招く恐れがあるので、昨年12月から中止した」と説明しています。
2018年10月16日(火)
風疹の患者数が10月1〜7日までの1週間でさらに151人増え、今年の患者は2014年以降の5年間では初めて1000人を超えて、1103人となりました。
新たな患者は5週連続で100人を超えており、国立感染症研究所は妊娠した女性が感染した時に赤ちゃんに障害が出る「先天性風疹症候群」が増える恐れがあるとして、女性は妊娠する前に2回ワクチンを接種するほか、妊婦の家族などもワクチンの接種が重要だと呼び掛けています。
都道府県別では東京都が前の週から45人増えて362人、千葉県が20人増えて216人、神奈川県が21人増えて132人、埼玉県が7人増えて78人、愛知県が5人増えて61人などとなっており、首都圏の患者が全体の7割以上を占めています。患者はほとんどが成人で、国の予防接種制度の変更で、ワクチン未接種の人が比較的多い30~50歳代の男性がとりわけ多くなっています。
風疹は妊娠20週までの女性が感染すると、胎児が先天性風疹症候群を発症し、心臓病や難聴、白内障などを起こす恐れがあります。妊娠初期ほど発症しやすく、妊娠1カ月で50%以上、2カ月で35%、3カ月で18%、4カ月で8%ほどといわれています。
ワクチンには弱い感染力のあるウイルスが含まれ、妊婦は接種できません。厚生労働省は妊婦に対し、患者が発生している地域では外出を控え、人混みを避けるよう注意喚起しています。
2018年10月16日(火)
精神科に新たに入院した患者の8割以上は、1年以内に退院しているとする調査結果を、医療経済研究機構などの研究チームがまとめました。
入院期間が長期化した場合、精神障害者の社会復帰が難しくなる傾向があるため、厚生労働省は2014年、新たに入院する場合は原則1年未満で退院する体制を確保するよう、医療・福祉関係者らに求める指針を策定しています。
研究チームは、厚労省のデータベースを活用し、2014年4月から2016年3月にかけて、全国約1620カ所の精神科病院などに新規に入院した約60万6000人について、退院までの日数を調べました。
その結果、入院患者の64%は90日以内に退院し、1年以内では86%に上りました。認知症患者が対象の病棟に限ると68%でした。90日以内の退院率は病院ごとに大きく異なり、精神科救急は46~96%、認知症治療病棟では0~88%となりました。
調査対象に、精神科に入院する患者の約2割を占める生活保護受給者は含まれていません。
研究チームは、「病院によって退院率に差があることが確かめられた。各病院には、治療方針を検討する参考にしてほしい」と話しています。
2018年10月15日(月)
65歳以上の独居男性のうち、約7人に1人が誰かと会話する頻度が2週間に1度以下であることが、国立社会保障・人口問題研究所の「生活と支え合いに関する調査」でわかりました。
調査は5年ごとに行われ、今回は2017年7月、18歳以上の男女約2万6400人を対象に実施し、1万9800人が回答しました。
普段の会話の頻度を尋ねたところ、最も少ない「2週間に1回以下」と答えた割合は、65歳以上の高齢の独居男性が15%で最も高く、65歳未満の独居男性が8・4%でした。独居の女性では、65歳以上が5・2%、65歳未満で4・4%と、いずれも男性に比べて低い割合になりました。
また、日ごろのちょっとした手助けについて「頼れる人がいない」と回答したのは、独居の高齢男性で30・3%、65歳未満の男性で22・8%でした。一方、独居の女性で「頼れる人がいない」としたのは、65歳以上で9・1%、65歳未満で9・9%にとどまりました。
国立社会保障・人口問題研究所は、「女性に比べ男性が社会的に孤立している状況が明らかになった。孤立が続けば、介護などの公的な支援や周囲からのサポートにつながらない恐れがある」と話しています。
2018年10月15日(月)
長野県警飯山署は14日、同県栄村の山林で、キノコ採りに出掛けて行方不明になっていた新潟県小千谷市千谷川、建築業田中正次さん(74歳)と同市西中、無職荻野長治さん(73歳)の2人が沢の中に倒れて死亡しているのを発見しました。道に迷って転落したとみて、詳しい経緯を調べています。
県警によると、8月以降、県内でキノコ採りに出掛けて死亡した人は計13人となり、昨年の2人を大きく上回っています。今年はマツタケが豊富とされることから、さらに遭難が増える恐れもあるといい、県警は急斜面に近付かないようにするなど、慎重な行動を呼び掛けています。
飯山署によると、同日午後1時15分ごろ、捜索隊員が見付けました。2人は友人同士で、荻野さんが11日午前、「田中さんとキノコ採りに行ってくる」と家族に言って出掛け、夜になっても帰宅しないため、双方の家族が新潟県警に届け出ていました。
2人が使っていた車が12日に栄村の山林に近い駐車場で見付かっており、山林の捜索を続けていました。
長野県警によると、同県大鹿村でも、キノコ採りで山に入った高森町の無職男性(75歳)と、12日から連絡が取れなくなっています。
2018年10月15日(月)
全身の筋力が徐々に低下する難病「筋委縮性側索硬化症(ALS)」の治療薬として、パーキンソン病で用いられている錠剤「レキップ」(ロピニロール塩酸塩)が使える可能性が高いと、慶応大学の岡野栄之(ひでゆき)教授(生理学)らの研究チームが13日、東京都内であった医療医療のシンポジウムで明らかにしました。患者由来のiPS細胞(人工多能性幹細胞)を使って病気の状態を再現し、効果を確認したといいます。
筋委縮性側索硬化症は、脊髄(せきずい)にある運動神経の細胞が少しずつ死んで起き、進行すると手足などの筋肉が次第に動かなくなり、呼吸も難しくなります。国内の患者は約1万人とされ、進行を遅らせる薬はあるものの、根本的な治療薬はありません。
創薬研究の際、マウスでは病態を作ることが難しいため、岡野教授らは、血縁者に患者がいる家族性筋委縮性側索硬化症の患者1人由来のiPS細胞から運動神経細胞を作製し、筋委縮性側索硬化症の病態を再現。既存薬を含め、治療に使えそうな1232種の化合物を加えたところ、レキップに細胞死を抑える効果が認められました。さらに、血縁者に患者がいない孤発性筋委縮性側索硬化症の別の患者22人由来のiPS細胞から作製した運動神経細胞でもレキップを試すと、16人の運動神経細胞で同様の結果が得られました。
岡野教授は「治療につながるよう研究を進めたい」と話しており、将来的には患者の治療への活用が期待されます。
論文は、アメリカの科学誌「ネイチャー・メディシン」10月号に掲載されました。
2018年10月14日(日)
健康への影響が懸念される微小粒子状物質「PM2・5」について、慶応大学の研究チームが地下鉄駅で調査をしたところ、最大で地上の約5倍の濃度に上ったことがわかりました。電車がブレーキをかける際に車輪やレール、ブレーキの部品が摩擦で削れて発生しているとみられ、専門家は「呼吸器などに病気がある人や長期間働く人などへの影響を調査する必要がある」と指摘しています。
PM2・5は大気中を浮遊する大きさが1000分の2・5ミリ以下の極めて小さい粒子状の物質のことで、成分は鉄などの金属や硫酸塩や硝酸塩、そして有機物などさまざまです。工場や自動車の排ガスなどから発生するほか、中国からも飛来し、吸い込むと肺の奥まで入りこみ、ぜんそくや気管支炎、肺がんなど、呼吸器の病気や不整脈など循環器の病気のリスクが相対的に高まるとされています。
日本では9年前に屋外の大気中の環境基準がつくられ監視が強化されてきましたが、地下鉄駅や地下街、屋内など閉鎖した場所の基準はなく、実態がよくわかっていません。
慶応大学の奥田知明准教授の研究チームは、横浜市交通局の協力を得て、横浜市内の地下鉄駅のホームで、今年7月17日の午前5時から午後8時までPM2・5の調査をしました。
その結果、始発から濃度が上がり始め、1立方メートル当たりの1時間の平均濃度は午前9時から10時で最も高い約120マイクログラムとなり、同じ時間帯の地上の約5倍に上りました。また、始発後の午前6時から14時間の平均濃度は約80マイクログラムで、環境省の屋外の1日平均の基準35マイクログラムと比べると、約2・3倍となりました。
成分を分析したところ、金属が多く、特に鉄を含むPM2・5は地上の約200倍に上りました。
発生原因について、研究チームでは、電車がブレーキをかける際に車輪やレール、ブレーキの部品が摩擦で削れるほか、パンタグラフと架線の接触でもPM2・5が発生しているとみています。このPM2・5はトンネル内を浮遊したり、底にたまったりして、電車が通過するたびに巻き上げられて駅ホームに流れ込むと考えられます。
また、通勤ラッシュで濃度が高くなるのは、時間当たりの電車の本数が増えることや、多くの人を乗せているため、車体が重くなりブレーキをかける際、車輪やレールにより摩擦がかかるためとみられます。
奥田准教授は、「地上のPM2・5は改善されているが、地下鉄の実態はわかっていない。今回は1日だけの調査だったが、ほかの駅や地下鉄にも調査を広げる必要がある」とした上で、「地下鉄の空気の環境を誰が責任を持つのかわかりずらく、今まで見過ごされてきた空間だといえる。今後、地下鉄を始め、閉鎖空間の基準の整備も検討すべきだ」と指摘しています。
横浜市交通局では送風機などでトンネルや駅構内の換気を行っているほか、トンネル内の清掃も定期的に行って粉じん対策をしているということです。
今回のPM2・5の調査結果について、横浜市交通局は「健康への影響について科学的な知見や研究成果がまだ少ない中で今すぐ具体的な対策を講じるのは難しいが、今後の研究成果によっては対策を検討していかないといけないと考えている」としています。
海外の地下鉄では10数年前からPM2・5の問題が指摘され、実態調査と対策が進んでいます。このうち、世界で最も古いイギリス・ロンドンの地下鉄では、2003年に調査が行われ、最も高い駅では1立方メートル当たりの3日間の平均濃度が、約480マイクログラムとなるなど、汚染が確認されました。
調査結果をまとめた報告書では、駅員や一般利用者の肺への影響は低いとする一方、PM2・5の成分の中に鉄が認められ、毒性が確認されたとして、削減努力をすべきと指摘しています。
こうした実態を踏まえ、ロンドン市長は昨年、地下鉄の環境を改善するための行動計画を発表し、観測装置の設置や微粒子の吸着装置を使った除去などを行うとしました。
PM2・5の健康影響に詳しい京都大学の高野裕久教授は、「濃度自体は高いが、一般の利用者のように駅を利用する時間が短ければ大きな問題にならないと考えられる。しかし、PM2・5の影響を受けやすい呼吸器や循環器に疾患がある人やアレルギーの人、高齢者や子供、また長く駅に滞在する人は、より注意をする必要がある。また、成分が屋外と異なって鉄などの金属が多いということが気になる。金属は一般的な大気環境中のPM2・5では、悪影響を及ぼす成分であると指摘されていて、地下鉄のPM2・5でも影響があるか調べることが必要だ」と話しています。
2018年10月14日(日)
海洋汚染が懸念されるプラスチックごみの削減を進めるため、環境省はレジ袋の有料化を小売店などに義務付けるほか、ペットボトルやストローなど、使い捨てのプラスチックの排出を抑制する数値目標を設ける方針を固めました。
プラスチックごみの削減やリサイクルを促進するため、政府は来年6月に大阪で開かれる主要20カ国・地域首脳会議(G20サミット)に向けて、「プラスチック資源循環戦略」の策定を進めています。
この戦略は環境省が設けた有識者の中央環境審議会小委員会で検討されていますが、環境省はこれまでの議論を踏まえ、買い物の際に配られるレジ袋の有料化を小売店などに義務付ける方針を固めました。
現在の容器包装リサイクル法では、スーパーやコンビニなどの事業者にレジ袋の有料配布などで消費を抑制するよう求めていますが、努力義務にとどまっています。
全国では、東京都杉並区が2008年に条例を施行したほか、京都市や北九州市など多くの自治体が小売業者などと協定を結んで有料化を進めています。
有料化を巡っては、消費者の負担増や客離れを懸念する声もあり、容器包装リサイクル法を改正し、レジ袋に料金を課す方式を軸に、レジ袋を辞退した人へのポイント還元なども認める方向で、実施時期は今後、小委員会で検討することにしています。
また、環境省はペットボトルやストローなど、使い捨てのプラスチックの排出を2030年までに25%抑制する目標を設ける方針も固めました。排出の削減はすでに進められているため、国として基準となる年は設けず、それぞれがこれまでの実績を踏まえて、抑制することを目指す方針です。
環境省はこれらを盛り込んだプラスチック資源循環戦略の素案を、10月19日に開かれる小委員会に示すことにしています。
2018年10月14日(日)
iPS細胞(人工多能性幹細胞)由来の医薬品を開発するオーストラリアのサイナータ・セラピューティクスは、2019年度中に日米で第2段階の臨床試験(治験)を始めます。ロス・マクドナルド最高経営責任者(CEO)が12日、明らかにしました。
今後の治験は富士フイルムホールディングスに移管する考えで、2018年度中にライセンス契約を結ぶとしています。
サイナータ社は、iPS細胞由来の医薬品開発で先行しています。健康な第三者のiPS細胞から作製した「間葉系幹細胞」を使って、骨髄や臓器移植の時に起きる重篤な合併症「急性移植片対宿主病」を治療する治験をイギリスなどで進めてきました。このほど少数の患者に対する第1段階の治験が終了し、安全性と有効性を確認できたといいます。
急性移植片対宿主病の治療では、すでに日本でJCRファーマが健康な人の骨髄から抽出した間葉系幹細胞を使う細胞医薬品「テムセル」を販売しています。
マクドナルド最高経営責任者は、「従来製品(テムセル)と比べ製造工程も少なく、投与回数も少ない。コストを大きく抑えられるだろう」と優位性を強調し、「iPS細胞から作製することで品質のばらつきを抑え、安定的に生産できる」と話しました。
富士フイルムと提携することについては、「サイナータはまだ小さな会社。戦略的なパートナーシップが重要だ」と説明。まず日米を先行することについては、「アメリカですでに希少疾患の指定を受けている。日本は再生医療の制度も整っており早期の実用化が期待できる」とし、遅くとも2022年度までに販売承認を取得する考えも示しました。
サイナータ社は急性移植片対宿主病のほか、間葉系幹細胞を使って脳卒中や循環器系の病気を治療する研究を進めており、他の病気に対する治験でも富士フイルムと提携することを検討していることも明らかにしました。
2018年10月13日(土)
日本の中高年男性の自殺は月曜日の朝に多いとの調査結果を、早稲田大学と大阪大学の研究チームがオランダの学術出版大手エルゼビアの専門誌に発表しました。職場のストレスやリストラなどを要因に、休日明けの出勤時間前に増えると、研究チームは分析しています。
これまでの研究で日本では夏休みなどの長期休み明けに学生と生徒の自殺が多いことや、月曜に自殺が多いこと、自身の誕生日に自ら命を絶つ人が多いことなどについては明らかになっていましたが、自殺が多発する時間帯については国内だけでなく他国でも体系的な研究がされてきませんでした。
研究チームは、厚生労働省の人口動態調査を基に、1974~2014年に自殺した約90万人のデータを分析対象とし、死亡日時が記録されている87万3268人について、比較的景気がよかった1994年以前と、不況が続いた1995年以降に分けて分析。若者(20~39歳)、中高年(40~65際)、高齢者(66歳~)の3世代について、男女別に曜日や時間帯の自殺者数を調べました。
その結果、1995年以降の中高年男性の自殺が1週間を通して月曜日に多く、少なくなる週末の土曜日と比べると1・55倍。1日を通してでは、朝(午前4時~7時59分)が最多で、深夜(午後8時~11時59分)の1・57倍でした。死因は首つりやガス中毒が多くなりました。
1994年以前では、世代、曜日、時間帯で大きな違いはなく、不況を背景に自殺の傾向が現れるとみられます。失業率が上がると、若者と中高年の男性だけ早朝の自殺者が増えることもわかりました。
いのちの電話など、自殺予防のための電話相談は深夜に受け付けていることが多く、研究チームの上田路子・早稲田大准教授(公衆衛生学)は「早朝から出勤時間帯の相談体制を充実させることが必要だ」と話しています。
2018年10月13日(土)
23年前の地下鉄サリン事件の影響で、今も体や心の不調を訴える被害者を対象にした健康診断が13日、東京都足立区で開かれました。
1995年3月20日に起きたオウム真理教による地下鉄サリン事件では、東京都心を走る地下鉄の車内に毒ガスのサリンがまかれ、通勤客や駅員らが呼吸困難や視覚異常などを訴えて13人が死亡し、約6300人が重軽症を負う被害を受け、23年たった今も体や心の不調を訴える人がいます。
健康診断は、被害者の支援を続けるNPO法人「リカバリー・サポート・センター」(東京都新宿区)が毎年秋に無料で開いており、13日は足立区内の保健所で20人あまりが医師の問診などを受けました。
リカバリー・サポート・センターによりますと、昨年の健康診断では多くの人が目の不調を訴えたということで、13日も必要な人にはサリン被害に詳しい医師がいる眼科を紹介していました。
また、今年7月、オウム真理教の元幹部らに死刑が執行された後、リカバリー・サポート・センターには被害者から「執行されても心身の状態がよくなるわけではない」「事件がこれで終わりとはなってほしくない」という声が複数寄せられたということです。
被害に遭った80歳の男性は、「今も目の焦点が合いづらい。死刑執行によって事件が風化し同様の事件がまた起きてしまうのではないかと心配に思っている」と話していました。
事件の直後から被害者の診察に当たっている聖路加国際病院の石松伸一医師は、「今後も継続して被害者が不安に感じていることに相談に乗っていきたい」と話していました。
健康診断は、10月20日には埼玉県越谷市で、11月10日と11日には東京都渋谷区で開かれる予定です。
2018年10月13日(土)
理化学研究所の辻孝チームリーダーと昭和大学の美島健二教授らの研究チームは、マウスのES細胞(胚性幹細胞)から唾液を分泌する機能を持つ唾液腺器官を再生することに成功しました。唾液の分泌量が少なくなって唾液の質に異常を来し、口の中やのどが渇く「口腔(こうくう)乾燥症(ドライマウス)」の改善に役立つ可能性があります。
ES細胞は受精卵から得られる万能細胞で、さまざまな臓器や組織の細胞をつくることができます。ただ唾液腺や乳腺などの分泌腺を持つ細胞は、他の細胞に比べてつくり方が確立していません。
研究チームは、胎児期のマウスで唾液腺ができる過程で働く遺伝子を解析し、唾液腺のもとになる組織の形成に重要な2つの遺伝子を特定しました。2つの遺伝子をES細胞からつくった口腔粘膜上皮に入れ、唾液腺器官を再生しました。この唾液腺器官をあらかじめ大唾液腺を切除したマウスに移植したところ、基本的な機能を備えた唾液腺に成熟して唾液を分泌しました。
唾液は消化や抗菌、口腔粘膜の保護などの作用を持ち、口内の環境を整える役割があります。唾液を分泌する機能に重い障害を抱えるシェーグレン症候群の患者は国内に約7万人に上り、効果的な治療法はありません。研究チームは人のiPS細胞(人工多能性幹細胞)をもとにした唾液腺器官の開発も計画しており、再生医療で症状を改善する道を探ります。
研究成果は、イギリスの科学誌「ネイチャー・コミュニケーションズ」(電子版)に掲載されました。
2018年10月12日(金)
海の生態系への影響が懸念されている小さなプラスチックのごみ「マイクロプラスチック」について、環境調査を行う企業「ピリカ」(東京都渋谷区)が東京湾や大阪湾に流れ込む11の河川を調べたところ、すべての河川から見付かりました。
マイクロプラスチックは、主に海に流れ出たプラスチックが波の力などで砕けてできると考えられていますが、調査を行っピリカでは、すでに一部は川に流れ込む段階で発生していて実態を解明する必要があるとしています。
マイクロプラスチックは直径5ミリ以下の小さなプラスチックで、主に海に流れ出たペットボトルやレジ袋などのプラスチック製品が、波の力や紫外線で細かく砕けてできると考えられていて、有害な化学物質を吸着しやすく、誤って食べた魚や水鳥などに蓄積され、影響が懸念されています。
これについて、ピリカは大学の専門家の協力を得て、東京都の荒川や神奈川県の鶴見川など東京湾や大阪湾に流れ込む11の河川で、2018年5月から調査を行いました。
3分間に10立方メートルほどの水を吸い込んでネットでこし、残ったゴミなどを調べた結果、いずれの河川からもマイクロプラスチックが見付かりました。東京都と埼玉県を流れる綾瀬川で1立方メートル当たり平均で約9個、大阪府を流れる大川では同19個ありました。
これらのマイクロプラスチックを分析したところ、およそ2割が人工芝の破片だったほか、農業用の肥料を入れた微細なカプセルとみられるものも確認されたということです。
ピリカでは、下水処理施設を通らない雨水などに混じってマイクロプラスチックが川に流れ込んでいるとみています。
代表の小嶌(こじま)不二夫さんは、「川に流れ込む段階で、すでに微細な状態になっているプラスチックが一定量あることがわかった。さまざまな製品が排出源となっている恐れがあり、さらに調査を進めて実態の解明と対策につなげる必要がある」と話しています。
2018年10月12日(金)
風疹の感染が拡大する中、千葉市は抗体があるかどうかを無料で検査する対象を拡大し、新たに妊婦の配偶者と、妊娠を希望する女性の配偶者を加えることになりました。
風疹は、発熱や発疹などの症状が出るウイルス性の感染症で、妊娠中の女性が感染すると、生まれてくる赤ちゃんの目や耳、それに心臓などに障害が起きる恐れがあります。
今年7月以降、首都圏を中心に感染が拡大していて、千葉県は患者の数が全国で2番目に多くなっています。
このうち、千葉県内で最も患者が多い千葉市は、患者の9割が20歳以上の男性であることを踏まえて、これまで妊娠を希望する女性に限っていた無料の抗体検査の対象を拡大し、10月15日から抗体の値が低いと確認された妊婦の配偶者と、妊娠を希望する女性の配偶者を新たに加えることを決めました。配偶者は事実婚などの場合も含みます。
いずれも、これまでに風疹にかかったことがない人や、抗体検査や予防接種を受けたことがない人が対象となります。
千葉市の熊谷俊人市長は12日の定例の記者会見で、「再来年の東京オリンピック・パラリンピックを安心して迎えられるようにするためにもこの機会に検査を受け、十分な抗体がなかった場合はワクチン接種を検討してほしい」と呼び掛けました。
2018年10月12日(金)
厚生労働省は10日、社会保障審議会の年金部会に「人生100年時代」を象徴するデータを示しました。今年満48歳となる1990年生まれ以降の女性は、65歳を迎える2055年まで生きれば3人に2人が90歳まで長生きするというデータで、高齢期の就労と年金制度の姿を議論する参考資料と位置付けました。
厚労省や国立社会保障・人口問題研究所のデータを基に推計しました。1990年生まれで65歳を迎える2055年まで生きた男性が90歳まで生きる確率は44%、女性は69%。1950年生まれは、65歳をすぎると男性で35%、女性で60%が90歳まで長生きします。
男女とも年齢が若くなるほど長生きする確率は増すとしています。女性が100歳まで生きる確率は、1980年生まれと1990年生まれが最も高く、ともに20%でした。
年金部会では、「今の75歳は昔の65歳と同じくらい元気だ」「高齢者を65歳ではなく75歳ととらえてもいいのではないか」などの意見が委員から出る一幕もありました。
2018年10月11日(木)
致死率が高いエボラ出血熱など公衆衛生上で特に重要な感染症について、厚生労働省が、国内で感染者が出た場合の情報公表に関する基本方針や基準の策定を検討していることが7日、明らかになりました。国内でエボラ出血熱の感染例はないものの、今年はアフリカ中部のコンゴ民主共和国で「破滅的な事態になる可能性」が警告されており、日本でも患者保護や感染拡大防止の観点で情報公表の基準策定が急務となっています。
検討されている基本方針では、情報の公表に当たって「公衆衛生上の対策の必要性」と「個人情報保護の必要性」を比較し、「公衆衛生上の対策の必要性が高い」と判断した情報が公表されることになる見込み。併せてエボラ出血熱に感染した個人情報の公表基準も作成します。
具体的な案として、患者の居住国、年代、性別などは「公表」、氏名、国籍、基礎疾患などは「非公表」に分類。搭乗した飛行機の情報、受診に至る経路などは「原則非公表」。中東呼吸器症候群(MERS)、鳥インフルエンザ、新型インフルエンザなどの情報の公表基準も作成する方針です。
国立国際医療研究センターの大曲貴夫副院長は、「個人が特定されかねない情報が公表されれば、医者との信頼関係に溝が生じ、患者とのコミュニケーションは成り立たず、公衆衛生のほころびにもつながりかねない」と指摘する一方で、「感染症にかかった患者に接触した人を把握しきれていない場合、発症の可能性がある人にリスクを呼び掛けていくためにも、『(発症した)患者がどこにいたか』といった情報は公表していく必要がある」と訴えています。
エボラ出血熱を巡っては、西アフリカで流行のあった2014年、国内でも感染疑い例が相次ぎました。今年も海外で発生が確認されており、厚労省は5月、都道府県などに対し、「発生地域から帰国し、疑わしい症状がある場合には、早期に医療機関を受診し、適切な診断および治療を受けることが重要」との注意喚起を通達しました。
コンゴ民主共和国の保健省は8月1日に「流行」を宣言。コンゴ国内では武装勢力の活動で十分な治療が行えず、世界保健機関(WHO)は9月、「破滅的な事態になる可能性がある」との懸念を表明しています。
コンゴ保健省は9日、同国北東部で再び流行しているエボラ出血熱による感染疑いを含めた死者の数について、今年8月1日に最初の感染者が見付かって以降118人に達したと発表しました。新たな死者には子供3人も含まれているといいます。
保健省の最新の発表によると新たに7人の感染者が判明しており、うち6人はウガンダ国境にほど近い北キブ州のベニ地域で確認されました。また、これまでに1万5000人以上が予防接種を受けたといいます。
コンゴでのエボラ出血熱の流行は1976年以降10度目で、今回流行している同国北東部はウガンダ、ルワンダ、南スーダンとの国境に近く、武装勢力の活動が活発な地域で、患者の対応に当たる医療チームが襲撃される事件が相次いだことを受け、ベニ当局は医療関係者を保護するための措置を講じると発表しています。
2018年10月11日(木)
繊維大手のグンゼ(大阪市北区)は、再生医療事業に本格参入します。膝の軟骨の再生を促す医療用シートを開発し、10月中にもヨーロッパで売り出します。将来的に年間10億円の売り上げを見込み、日本やアメリカ、中国での発売も検討します。
膝の軟骨は、激しい運動や加齢に伴ってすり減ったり、欠けたりしても自然にはほとんど再生しないため、手術が必要となります。手術で軟骨に微少な穴を開けて、グンゼが開発したシート「CHONDROVEIL(コンドロベール)」を貼り付けると、しみ出した骨髄液に含まれる「間葉系幹細胞」を吸着し、軟骨が再生する足場となるといいます。
このシートは、人体に無害なプラスチックの一種「ポリグリコール酸」を、細胞が定着しやすいように独自技術で布状に加工したもの。術後約3カ月で分解して人体に吸収されます。患者は約半年で自転車をこぐ運動ができるまでに回復するといいます。
シートの価格は1枚(縦3センチ、横3センチ)10万円程度で、別部位から採取した軟骨組織を約4週間培養して移植する従来の治療に比べて費用が約10分の1に抑えられ、患者の負担減が期待されるといいます。
ヨーロッパでは販売に必要な認証取得がすんでおり、日本やアメリカ、中国でも取得を目指すとしています。
グンゼは本業の繊維事業で培った技術を応用し、1985年から外科手術に使われる縫合糸や骨の接合剤などの医療品を手掛けています。今後、人体に吸収される素材を活用して治療できる分野を広げ、再生医療事業を新たな収益源にしたい考えです。
2018年10月11日(木)
国立感染症研究所は10日、異性間の性行為などで感染する梅毒の感染報告者数が、今年1月から9月30日までの累計で5081人になったと発表しました。年間の感染者数は、昨年の5824人(暫定値)に続いて5000人を超えました。
今年は、44年ぶりに5000人台を記録した昨年を上回る勢いで増えています。都道府県別では、東京都1284人、大阪府874人、愛知県338人、神奈川280人、福岡229人など、都市部で多くなっています。
女性は20歳代前半の若い世代に極端に患者が多く、男性は20~40歳代を中心に幅広い年代で報告があります。性感染症の治療を行うプライベートケアクリニック東京(東京都新宿区)の尾上泰彦院長は、「性風俗にかかわる職業の女性や客の男性が多い。夫が感染し、妻にうつしたケースもある」と説明しています。
梅毒はスピロヘータ (梅毒トレポネーマ) という細菌が原因で起きる感染症で、3週間程度で感染した部分にしこりができるなどし、その後、手足など全身に発疹が出ます。症状は、治まったり再発したりを繰り返します。抗菌薬で早期に治療すれば完治するものの、放置すると脳や心臓に大きな合併症を引き起こす恐れがあります。また、妊娠中に感染すると、流産したり、生まれてくる子が「先天梅毒」になったりすることがあります。
予防するには、コンドームを使用し、粘膜や皮膚が直接接触するのを避けます。それでも完全に防げるわけではなく、感染が疑われる場合、早めに医療機関を受診します。
2018年10月10日(水)
心臓移植を待つ人が今夏に700人を超え、9月末で714人になりました。日本臓器移植ネットワークによると、近年は毎年約100人ずつ増えています。脳死の人からの臓器移植は増えてきたものの、昨年は1年間で76件にとどまり、待機者の増加に追い付いていない現状があります。
2010年中に日本臓器移植ネットワークに登録した心臓移植の待機者は162人でしたが、2016年には556人、2017年には663人となっていました。
植え込み型の補助人工心臓に保険が適用され、多くの人が自宅で生活しながら待てるようになったことが待機者数の急増につながり、待機期間も平均3年に延びています。
東京都小金井市の上原旺典(おうすけ)ちゃん(3歳)は、重い心臓病の拡張型心筋症を患っており、アメリカで心臓移植手術を受けることにしました。9月28日に東京都内で記者会見を開いた両親らは、移植の機会が少ない国内の現状や旺典ちゃんへの支援を訴えました。
旺典ちゃんは生後9カ月で拡張型心筋症が判明。移植以外に根本的な治療はなく、1歳3カ月ごろ、心臓のポンプの役割をする補助人工心臓を着けました。移植までの「つなぎ」の処置ですが、約2年たっても国内で移植のめどが立たないため、渡航移植を決めました。
ただ、移植には原則、自国民から提供された臓器を使うことが、世界保健機関(WHO)の指針などに盛り込まれています。国内移植の場合、自己負担は数十万~数百万円なのに対し、近年では渡航移植にかかる費用は高騰、病院側に支払う保証金や飛行機のチャーター費などを合わせると、約3億円にも上るといいます。旺典ちゃんの場合も、3億5000万円の費用を見込んでいます。海外で移植を行うハードルは以前と比べて高くなっています。
補助人工心臓は、機器の故障や細菌感染などの可能性があります。旺典ちゃんは病室からほとんど出られないものの、普段はアニメの曲に合わせて踊ったり、いたずらしたりする普通の子だといいます。母親の歩さんは記者会見で、「家族で食卓を囲んだり、一緒に寝たりして、普通の生活をさせてあげたい」と語りました。
補助人工心臓の手術を担当した国立成育医療研究センター心臓血管外科の金子幸裕さんは、「亡くなるかもしれないという心配が常にある。この病気や心臓移植の現状を多くの人に知ってもらいたい」と話しています。
2018年10月10日(水)
女性が妊娠中に感染すれば、乳児の障害を引き起こしかねない風疹の流行に歯止めがかかっていません。抗ウイルス薬がないことから感染後の有効な治療法は見付かっておらず、ワクチンの予防接種が対策の柱で、風疹の感染拡大を防ぐには、30歳代から50歳代の男性にワクチンの接種を促すことが課題となっています。
こうした中、企業の間では、独自の制度で従業員にワクチンの接種を後押しする動きが出ています。
今年7月以降、首都圏を中心に患者が増え続けている風疹は、子供のころにワクチンの接種の機会がなかった30歳代から50歳代の男性が感染の中心となっています。しかし、いわゆる「働き盛り」の世代に当たり、感染した本人の重症化がほぼないことが利用を鈍らせ、ワクチン接種が十分に進んでいないことが課題となっています。
こうした中、従業員のワクチン接種を後押ししようと独自の対策をとる企業が出てきています。インターネットを通じて独自のニュース配信などを行っている東京都千代田区の「バズフィードジャパン」は、この夏からワクチン接種1回分の費用を全額助成し、近くのクリニックと提携して勤務時間中の接種も認めることにしました。
すべての社員に希望を募ったところ、36人から申し込みがあったということです。担当の小島聡子ディレクターは、「風疹に関するニュースも配信しており、メディアとして自分たちの足元からワクチン接種の啓発活動を進めたい」と話していました。
一方、IT大手の「ヤフー」は、前回、風疹が流行した5年前にワクチンを接種する費用の助成制度を設けました。しかし、その後に入社し、制度を知らない社員も増えたことから、今回改めて制度の利用を呼び掛けたところ、これまでに83人が接種を受けたということです。
グッドコンディション推進部の小野寺麻未さんは、「企業で助成があれば、『自分も対象なのか』と一歩関心が進むと思う。風疹が社内で流行することが決してないようにしたい」と話していました。
感染症に詳しい国立国際医療研究センター病院の大曲貴夫副院長は、「5年前に大流行した際から、30歳代から50歳代の男性のワクチン接種の必要性がいわれていたにもかかわらず、進んでいないのが現実だ。企業の取り組みは効果が期待されるのでぜひ広がってほしい」と話しています。
2018年10月10日(水)
風疹の患者数は9月30日までの1週間に新たに134人報告され、今年の患者は累計952人と、すでに昨年1年間の10倍以上に上っています。新たな患者は4週連続で100人を超えており、国立感染症研究所は、必要な人はワクチンの接種を検討するよう呼び掛けています。
風疹は発熱や発疹などの症状が出るウイルス性の感染症で、妊娠中の女性が感染すると生まれてくる赤ちゃんの目や耳、それに心臓などに障害が出る恐れがあります。
国立感染症研究所によりますと、9月24~30日の1週間に全国の医療機関から報告された風疹の患者数は134人で、4週連続で新たな患者が100人を超えました。
都道府県別では、東京都が前の週から新たに40人増えて307人、神奈川県が21人増えて108人、千葉県が16人増えて195人、埼玉県が16人増えて70人、愛知県が8人増えて55人などとなっており、首都圏の患者が全体の7割以上を占めています。
国立感染症研究所は、今後、妊娠する可能性のある女性は2回のワクチン接種を受けておくとともに、妊婦の周りにいる人も接種が必要か検討するよう呼び掛けています。
根本匠厚生労働大臣は閣議の後の記者会見で、「まずは赤ちゃんの先天性風疹症候群を防ぐため、患者の多い首都圏や愛知で、妊娠中の女性の家族や妊娠を希望する女性を対象に重点的な対策を進める。中長期的な対策は、風疹の感染状況や抗体検査の実施状況などを勘案しながら、引き続き検討していきたい」と述べました。
2018年10月10日(水)
ロート製薬は9日、年内に男性向け発毛剤事業に参入する方針を明らかにしました。発毛成分「ミノキシジル」が毛の根元部分だけでなく周辺組織の脂肪幹細胞にも働き掛けることを発見し、研究成果を踏まえて開発を進めます。
同成分はこれまで20年間、大衆薬の発毛剤市場を独占してきた大正製薬の「リアップ」にも含まれており、男性用シャンプー大手アンファー(東京都千代田)の「メディカルミノキ5」に次ぐ2品目の後発薬となる見通し。
ミノキシジルは毛の根元にある「毛乳頭」に作用し、毛が生え替わる周期に関与するとの研究が進んでいました。ロート製薬は周辺組織の脂肪幹細胞にも作用し、発毛にかかわる遺伝子が増えることを発見しました。同社は育毛剤シリーズ「50の恵」を手掛けていたものの、発毛剤は初めて。価格などは未定。
ロート製薬は2011年から再生医療事業に取り組んでおり、脂肪幹細胞に着目した研究を進めています。研究の過程で得た知見を化粧品など一般的な商品に活用する取り組みも、並行して行っています。発毛剤のほかに、年内にも肌の老化を抑える成分を活用した化粧品も発売する方針。
2018年10月9日(火)
勃起不全(ED)の一部要因とみられる遺伝子変異を特定したとする研究論文が8日、発表されました。勃起不全の治療の向上につながる可能性もあります。
アメリカの「科学アカデミー紀要」に掲載された研究論文は、この変異複製を持つ男性の勃起不全の発症リスクについて、一般男性よりも26%高いと指摘しています。また、論文の主執筆者である遺伝学者のエリック・ヨーゲンソン氏によると、この変異複製が2つある場合では、リスクが同59%高まるとされました。
今回の研究結果は、アメリカの医療サービス団体「カイザー・パーマネンテ」に加入する北カリフォルニア地区の3万6649人分の患者データベースを基にしています。2007年にアメリカで実施された研究によると、男性約5人に1人に勃起不全のリスクがあるとされ、その割合については年齢とともに急激に高まるとされていました。
勃起不全リスクの約3分の1は、遺伝的な要因と関係しています。今回、研究チームが特定した遺伝子変異は、こうしたリスクの2パーセントを占めるといいます。また、肥満や糖尿病、循環器疾患などにはすべて遺伝的な要素があり、勃起不全とも関係があります。
ヨーゲンソン氏は、「私たちがヒトゲノムの中で特定した領域は、こうした(肥満や糖尿病などの)リスク要因からは独立して作用しているとみられる。そのためこの遺伝子座にある変異をターゲットにした新たな治療法を開発することにより、現在の治療法では効果を得られない患者にも治療を提供できる可能性がある」と説明しました。
同氏によると、勃起不全の男性の約半数は、現在使用可能な治療法から効果を得られていないといいます。
2018年10月9日(火)
8日の「体育の日」に合わせ、運動に関する複数の調査結果が公表されました。スポーツ庁の体力・運動能力調査では、「運動頻度が高いほど、体力年齢が実年齢より若い人が多い」という傾向が明らかになりました。また、シンクタンクが子供の運動の傾向を調べたところ、4~11歳の子供が最もよく行った運動種目は「鬼ごっこ」でした。
スポーツ庁の調査は毎年実施しており、今回は6~79歳の約6万4600人を対象に、昨年5~10月に実施。その結果、「ほとんど毎日運動をする」と回答した25~29歳の男女の約5割は体力年齢が実年齢より若くなりました。一方、この年代で「運動をしない」と答えた人で体力年齢が実年齢より若かった人は約1~2割で、約7~8割は体力年齢のほうが上でした。
45~49歳の男女も、「ほとんど毎日運動をする」人の約6~7割は体力年齢のほうが若く、「運動をしない」人の約6割は、体力年齢のほうが上でした。スポーツ庁は「この傾向はすべての年齢で確認できる。運動習慣をつくることが大切」としています。
一方、公益財団法人・笹川スポーツ財団は子供が日常的に行っている運動種目について調査し、昨年6~7月に約2900人から回答を得ました。その結果、4~11歳では「鬼ごっこ」と答えた子供が47・3%で最も多く、水泳が34・2%、自転車とドッジボールがそれぞれ30・4%と続きました。12~21歳の人は、バスケットボールが21・9%、ジョギング・ランニングが20・7%、サッカーが20・4%でした。鬼ごっこが多い理由について同財団は、「道具が要らず、ルールも単純で気軽にできる。ほかのスポーツの準備運動としても活用されている」と分析しています。
2020年東京オリンピック・パラリンピックの観戦したい種目について、直接観戦を希望する12~21歳の男女約1600人に尋ねたところ、オリンピックは1位「バレーボール」、2位「開会式」、3位「サッカー」、パラリンピックは1位「車いすバスケットボール」、2位「車いすテニス」、3位「開会式」でした。
2018年10月8日(月)
全国の警察が今年上半期(1~6月)、児童虐待の疑いがあるとして児童相談所に通告した18歳未満の子供の数が、前年同期比6851人増の3万7113人と過去最多になったことが4日、警察庁のまとめで明らかになりました。半期ごとの統計を取り始めた2011年以降、7年連続の増加。
警察庁は、児童虐待への意識の高まりを背景に警察への通報や相談が増えたためとみています。
通告内容の内訳では、言葉による脅しや無視など子供の心を傷付ける「心理的虐待」が2万6415人と最も多く、うち6割超が子供の前で妻や夫ら配偶者に暴力を振るったり、「殺すぞ」などと暴力的発言をしたりする「面前DV」でした。「身体的虐待」の通告は6792人で、「育児放棄(ネグレクト)」は3795人、「性的虐待」は111人でした。
生命の危険があるなどとして緊急で警察が保護した子供の数は、前年同期比340人増の2127人と半期で初めて2000人を超えました。2012年上半期の3倍以上になりました。
児童虐待事件の摘発件数、被害に遭った子供の数も641件、645人といずれも過去最多を更新。被害者は0歳児が43人、1~10歳が計254人、11~17歳が計348人でした。
死者は19人で、被害者数全体に占める割合は半期ごとの統計が残る過去15年間で最も低くなりました。19人中6人は0歳児でした。
警察庁は、「虐待の早期発見や安全確保のため、現場の警察官の対応力を高めるとともに、児童相談所との連携を一層強化していきたい」としています。
2018年10月8日(月)
厚生労働省は、再生医療など細胞を用いる治療の監視体制を強める方針を決めました。効果がはっきりと確認されていない多くの「がん免疫療法」も対象となります。
医療機関が事前審査の内容と大きく異なる治療をした場合、国が把握できる仕組みにして、審査の議事録などをウェブ上に公開させて透明性を高めます。
がん免疫療法を巡っては、今年のノーベル医学・生理学賞の受賞が決まった、京都大学の本庶佑(ほんじょ・たすく)特別教授の研究を基に開発された「オプジーボ」などの免疫チェックポイント阻害剤と呼ばれる薬による治療が近年、登場。一部のがんに公的医療保険が適用されています。免疫チェックポイント阻害剤は細胞を用いないため、再生医療安全性確保法が規制する免疫細胞を用いた治療法とは別の手法ながら、ひとくくりで「免疫療法」と混同されることもあります。
細胞を用いる治療は、2014年施行の再生医療安全性確保法で規制されました。iPS細胞の登場を契機に、患者の安全を確保しながら再生医療を発展させる目的に加え、患者自身の細胞を使う根拠が不明瞭な免疫療法や美容分野の医療に網をかける狙いもありました。
同法のもと、医療機関は治療の計画をつくり、病院や民間団体が設ける第三者の審査委員会に審査させます。ただし、審査の狙いは安全性の確保で、効果は保証していません。iPS細胞などを用いる「第1種」と比べ、患者の細胞を集めて使うがん免疫療法などの「第3種」は、審査委員会の要件が緩く、国のチェックを受けずに実施できます。
東海大学の佐藤正人教授(整形外科)の調査によると、第3種のがん免疫療法の届け出は、今年3月までに民間クリニックなどで1279件に上っています。公的医療保険が適用されない自由診療で行われているため、高額な治療費を請求する施設もあり、問題視されています。
同法の省令改正案では、計画に反する事態が起きた時の対応手順を新たに設け、治療に携わる医師に、医療機関の管理者への報告を義務付けます。重大なケースは速やかに審査委員会の意見を聞き、審査委員会で出た意見を厚労省に報告させます。これまで努力義務だった苦情を受け付ける窓口の設置は、義務とします。また、審査委員会の要件を厳しくし、第3種では、計画審査を頼んだ医療機関と利害関係のない委員の出席数を現在の2人以上から過半数とします。審査の議事録などはウェブ上に公開させる方針。
厚労省は19日に専門家会合を開き、早ければ省令を今月中にも改正、公布します。
2018年10月8日(月)
週に1回も運動しない10歳代後半~40歳代後半の女性が増えていることが7日、スポーツ庁が8日の体育の日を前に結果を公表した2017年度体力・運動能力調査でわかりました。とりわけ18~19歳女性の運動離れが顕著で、20年前に比べ、週1回以上の運動実施率が10ポイント以上低下して30%台になりました。
体力・運動能力は昨年5~10月に実施。6~79歳の男女を対象に、握力や上体起こしなど6~9項目の体力・運動能力を調べるとともに、運動習慣などを聞きました。また、2017年度は現行方式となって20回目に当たるため、運動実施率も調べました。
それによると、「週1日以上運動する」割合は、男女とも10歳代前半は80%前後と高いものの、10歳代後半から低下し、女性は30歳代から、男性は50歳代から再び上昇する傾向がみられました。
ただし20年前の1998年度調査に比べると、男性はほとんどの年代で「運動する」割合が増えましたが、女性は小学生と50歳以上を除く年代で減少しました。とりわけ18歳女性は、20年前は46・1%が週1日以上運動していたのに、今回は35・7%に減少。19歳女性も、45・8%から33・8%に減少しました。
10歳代の女性の運動離れについて、放送大学の関根紀子准教授(運動生理学)は「要因はさまざま考えられる」としつつ、「最近の女性は運動後に汗臭いままでいることを嫌がるなど、においを気にする傾向がある。公共の運動施設にシャワーを整備するなどの対策も必要では」と話しています。
体力などの調査では、65歳以上の女性と70歳以上の男性の各項目の合計点が過去最高を更新するなど、前年に続き高齢者の体力向上が目立ちました。一方、30歳代後半~40歳代前半の男性と30歳代前半~40歳代後半の女性の体力は、低下傾向を示しました。
スポーツ庁は、「高齢者が健康を強く意識し、ウオーキングなどの運動を実施する機運が高まっている」と分析、若い女性の運動離れの要因は「はっきりしたことはわからないが、働く世代については社会進出が進み時間がなくなったことなどが考えられる」としました。
2018年10月7日(日)
長野県内でキノコを採りに山に入った人が遭難や滑落して死亡する事故が、相次いでいます。6日までに発生した今シーズンの遭難は16件で、すでに昨季を5件上回りました。
確認された死者は6日現在で、同8人増の10人となり、「キノコ採りでこれだけの人が亡くなったことは異常」と長野県警山岳安全対策課。死者のうち、茅野市の72歳男性と岡谷市の50歳男性を含む7人が滑落して死亡しており、同課は急斜面に近付かないなどの十分な注意を求めています。
同課によると、今季の遭難者は16人。6日までに16人とも発見、救助され、死者10人、けが人3人、無事救出3人となりました。70歳代が7人、80歳代が3人と高齢者が多くなっています。増加の背景には「今季はマツタケなどが豊作とされ、入山者が増えていることが考えられる」(同課)としています。
雨や曇りの日が多かったことも、要因に挙がります。長野地方気象台によると、台風や前線の影響により中南信で9月の観測史上最多の雨量を記録した地点が多くありました。
6日も上田市の山林でキノコ採りをしていた30歳代の女性が滑落して死亡しました。長野県上田市西内の山林で6日夕方、キノコ採りをしていた女性が山の斜面から滑落した、と一緒に山に入っていた母親から消防に通報がありました。
警察が調べたところ、上田市に住む大塚智美さん(34歳)が頭から血を流して倒れているのが見付かり、病院に運ばれましたが、その後、死亡が確認されました。
警察によりますと、大塚さんは6日午前中から母親と2人で山に入り、キノコ採りをしていたということです。
長野県警山岳遭難救助隊の櫛引知弘隊長は、「キノコ採りは登山と違って道なきところを行くため、滑落と道迷いによる遭難事故が多くなっています。できる限り1人での入山は控え、家族に告げてから行くことや携帯電話を必ず持参すること、そして山では危険な斜面に立ち入るのを避けるなど注意してほしい」と話しています。その上で、「今年は、これまでのところ遭難者の平均年齢は70歳を超えているので、慣れたところと思わずに無理のない範囲で入山し、自分の命を大事にしてほしい」としています。
2018年10月7日(日)
「最初は無料で受けていたことを考えると実費は重いですね」。佐賀県唐津市の中1男子(12歳)の母(41歳)がこぼしました。幼稚園年長の時に悪性リンパ腫と診断され、2度の臍帯血(さいたいけつ)移植の手術や療養を経て回復しました。発症前に定期予防接種は順調に終えていたものの、医師からは「移植の影響で完全に(ワクチンの)抗体はなくなった」と指摘されていました。
この夏、四種混合を接種すると1回で1万260円かかりました。今後、間隔を置いて受ける3回分の接種もそれぞれ1万円かかります。他にも今年感染が急増した風疹に対応する予防接種も考えているため、大きな負担感があります。
日常生活に戻った子供たちにとって、感染症を防ぐには予防接種を再び受けることが有効。定期予防接種は予防接種法に基づき市町村が費用を負担しますが、再接種は対象ではありません。このため、1本当たり1万円程度することもあるワクチンの費用は自己負担となり、すべて接種し直すと10万円前後になります。
こうした状況に独自に費用の助成制度を設ける自治体が広がっています。全国の政令市では、新潟、浜松、名古屋、京都、大阪、堺の6市が実施。九州では、熊本県阿蘇市が昨年7月から費用の7割を助成し、すでにに1人の利用があったといいます。佐賀県鳥栖市も昨年8月から助成を始めた。
また、大阪府では今年度、再接種助成に取り組む市町村へ費用の全額を補助。担当者は「抗体が失われてしまう事情を考え、取り組むべきだと考えた」と全国初で後押しし、現在、府内自治体のほぼ半数で導入されました。
小児がん患者や家族の支援団体「がんの子どもを守る会」(東京都)もこの夏、厚生労働省や都道府県に小児がん治療に伴う再接種希望者への助成を要望しました。厚生労働省は、「要望は承知しており、予防接種法に基づく接種に位置づけるかどうか、今後審議会で検討していく」としています。
「がんの子どもを守る会」によると、小児がんと診断を受けて治療を始める子供たちは全国で毎年2500~3000人いるといいます。多くが抗がん剤治療などの化学療法を受け、患者の状態に応じて骨髄移植による治療も選択肢の一つとなります。
予防接種法の施行令で、小児がんによる長期療養などで定期予防接種を対象年齢内に受けていない場合は、回復後2年以内は接種時の助成が可能となっています。しかし、一度接種を受けた後の再接種は、1種類のワクチンにつき1人1回の助成の原則を超えるために対象外となってしまいます。
各地の自治体で広がる独自の助成は、がん闘病に伴う出費に続いて再接種の経済的負担に直面する親らの声を切っ掛けに、徐々に広がっています。治療を終えて学校などの集団生活に戻る子供たちのことを考えれば、免疫を確実に身に着けてもらう環境整備は感染拡大を防ぐ観点からも重要です。
2018年10月7日(日)
軽い症状で救急車を使うなど患者による不適切な医療のかかり方を見直そうと、厚生労働省が患者の在り方について議論する初めての有識者会議を立ち上げました。
これは長時間労働が常態化している医師の働き方改革に関連して行われる議論で、厚生労働省は5日、医療関係者や大学教授などをメンバーとする有識者会議を立ち上げました。
有識者会議では、軽い症状にもかかわらず救急車を使ったり、休日や夜間に安易に病院にかかる「コンビニ受診」をしたりするなど、患者の不適切な医療のかかり方が医師の長時間労働を助長しているとして、上手な医療のかかり方が議論されました。
メンバーからは、「インターネット上には真偽を問わず医療の情報があふれているため、病院に行くべきか迷っている人はどうしたらよいかわからず、医師を頼ってしまう」といった意見が上がりました。その上で、「さまざまな病気についての正確な情報を見やすく一元的に掲載した国の公式なサイトがあれば、患者の行動は変わるのではないか」という意見も出されました。
厚労省は、対策を進めなければ患者にとっても、診察の待ち時間が長くなったり医師の疲労による医療事故が起きたりして、適切な医療が受けられなくなる恐れがあるとしています。
厚労省が患者の在り方について有識者会議を立ち上げて議論するのは初めてで、年内に議論の結果をとりまとめることにしています。
会議終了後、メンバーの1人で企業に働き方の見直しを提案する「ワーク・ライフバランス」の小室淑恵社長は、「長時間労働の影響で自殺について考える医師がいるという衝撃的なデータまであり、早急に対策を考えないといけないと感じた。働き方改革はこれまで取り組んだことのない分野で、始めようとすると拒否反応が強いことがあるが、患者にとっても医師にとってもよい方法は必ずあると思う」と話していました。
同じく会議のメンバーの1人でアーティストのデーモン閣下は初会合後、記者団に「(医師の働き過ぎの要因に)軽症で時間外に来る患者の診療があまりに多い。それを知ってもらいたい」と述べ、医師の労働環境改善のための受診の在り方の見直しに理解を示しました。
医師法には「正当な理由なく患者を断ってはならない」との「応招義務」の規定があり、患者がいれば診なければならず長時間労働になりやすい面があります。医師の働き方の見直しには、不要不急の受診を減らすことがカギになります。
ただし、患者が「不要不急」を判断するのは難しく、特に子供の場合、親は不安。会議では、「知ろう小児医療守ろう子ども達の会」(東京都杉並区)の阿真(あま)京子代表が、「親の不安を解消しなければ、結果的に軽症の受診が減ったとしても、ただ我慢を強いているだけだ」と発言。患者が必要な医療を受けなくなり、健康に影響を与えかねないとの懸念を示しました。
2018年10月6日(土)
火を使わず、電子デバイスで専用たばこを加熱してその蒸気を吸引する「加熱式たばこ」が中高生の間に広がりつつあることが、厚生労働省研究班の調査でわかりました。紙巻きたばこの使用が近年大きく減少する一方、加熱式たばこが新たな喫煙習慣につながりかねないと専門家は指摘しています。
研究班は2017年12月~2018年2月、無作為に抽出した中学と高校の計184校に調査票を配り、103校の約6万4000人から有効回答を得ました。
調査によると、加熱式たばこを吸った経験があると答えたのは、高校男子2・9%、高校女子1・4%、中学生1・1%。最も高い高3男子では4%でした。
香料などの液体を加熱して蒸気を吸う「電子たばこ」の使用経験も、高校男子で4・9%、高校女子2・1%、中学生で2・1%ありました。
一方、紙巻きたばこを経験した中高生の比率は近年大幅に低下しており、高校男子で2008年度25%、2012年度15・1%だったのに対し、今回は6・9%でした。
研究班の代表である尾崎米厚・鳥取大学教授は、「加熱式たばこは葉たばこを原料とするれっきとしたたばこ製品なのに、中高生は健康に害がないと勘違いしている可能性がある。加熱式たばこなどが、中高生の喫煙率の低下に水を差しかねない」と話しています。
日本のたばこ市場は紙巻きたばこが、折からの受動喫煙対策や嫌煙ムードの高まりによって縮小する一方、煙が少なく紙巻きたばこに比べて受動喫煙による有害性が低いとのデータも示されている加熱式たばこは、「周囲に迷惑をかけずに吸える」と、紙巻きたばこから乗り換える喫煙者が急増して伸びています。
日本たばこ協会(東京都港区)によると、2017年度の紙巻きたばこの販売本数は前年度比13・4%減の1455億本。5年前から約3割減りました。イギリスの調査会社のユーロモニターによると、加熱式たばこの国内の2017年の市場規模は前年比2・8倍の約53億ドル(約6000億円)に拡大。2022年には23%増える見通しです。
2018年10月6日(土)
筑波大学などの研究チームが、わずか10分程度の軽い運動をするだけで、人の脳の海馬が刺激され、記憶能力が向上することを実験で確かめました。アメリカの「科学アカデミー紀要」に論文が掲載されました。
運動によって記憶をつかさどる海馬が刺激されて、活性化することはわかっていましたが、軽い運動を短時間するだけでも効果があることが明らかになりました。
同大の征矢(そや)英昭ヒューマン・ハイ・パフォーマンス先端研究センター長らによると、学生ら20歳代の健康な男女36人に10分間自転車のペダルをこぐ極めて軽い運動をしてもらった後、食べ物や植物などが写った画像を600枚ほど見てもらい、同じものを判別するテストを実施。テスト中の脳をMRIで撮影し、記憶や学習機能を担う海馬の活動レベルを測定しました。
正答率を運動した時と運動しなかった時で比べると、運動した直後が平均36・9%で、安静時の平均31・4%より5・5ポイント増加していました。同時に、海馬の「歯状回(しじょうかい)」と呼ばれる情報の入り口に当たり、画像の細かい違いなど似ているようで異なる記憶を区別する部位をMRIで測定したところ、目立って活発になり、頻繁に情報のやりとりをしていることが確かめられたといいます。
運動が脳に好影響を与えるとする研究成果はこれまでもありましたが、ランニングなどのハードな運動を長期間続けた場合が多かったといいます。
征矢さんは、「動物実験では軽い運動が記憶によいとわかっていたが、人でも証明できた。ヨガや太極拳などで軽い運動をするだけで十分な効果がありそうで、海馬の機能低下と関係しているとされる認知症やうつ病の新たな運動療法に発展させたい」と話しています。
2018年10月6日(土)
■消費者庁、補正下着通販2社に課徴金 「脚が細くなる」効果なし
消費者庁は5日、根拠なく痩身効果などをうたい補正下着の通販を手掛けていた「SAKLIKIT(サクライキ)」(大阪市中央区)とギミックパターン(東京都渋谷区)の2社に対し、景品表示法に基づく課徴金を納付するよう命じました。
命令の対象となったのは、2017年12月~2018年3月にすでに措置命令権限主体から景品表示の措置命令を受けている会社。課徴金額の調査が終了し、納付命令が出されました。
今回、納付命令が出されたSAKLIKITは、2017年12月24日に公正取引委員会(事務総局近畿中国四国事務所)と消費者庁から措置命令を受けていました。ギミックパターンは今年3月26日に東京都から措置命令を受けていました。ギミックパターンは東京都の案件ですが、課徴金の納付命令権限は消費者庁のみが持つため、同社は消費者庁から課徴金納付命令を受けました。
課徴金額は、課徴金制度施行後に措置命令を受けた商品などを違反行為期間中に販売した額の3%としています。SAKLIKITが255万円(違反認定商品の推定販売額約8500万円)、ギミックパターンが計8480万円(同28億円)となっています。
ギミックパターンについては、「ストッキング(課徴金額2387万円)」「ブラジャー(同892万円)」「ショーツ(同2892万円)」「ブラ付きタンクトップ(同2309万円)」の4商品について、違反認定を受けています。
SAKLIKITは、スマートフォン向けサイトで「はくだけで短期間で痩せる」「異常なスピードで体重が落ちる」などと宣伝し、根拠なく対象の下着「CC+ DOWN LEGGINGS(シーシープラスダウンレギンス)」を販売。消費者庁は同社に根拠を示すよう求めたものの、応じませんでした。
ギミックパターンは、スマートフォン向けサイトで「はくだけで脚が細くなる」とストッキングを宣伝したり、裏付けとなる効果がないにもかかわらず、下着類に豊胸効果などをうたっていました。また、根拠のない「通常価格」を挙げた上で「特別価格」を表示し、不当に安値に見せ掛けようとしました。
2社は2019年5月7日までに、課徴金を国家に納付しなければなりません。
2018年10月5日(金)
■がん免疫薬「オプジーボ」、5カ月以上作用が継続 併用薬選びや副作用減少が容易に
今年のノーベル医学・生理学賞の受賞が決まった、京都大学特別教授の本庶佑(ほんじょ・たすく)氏の研究を基に開発されたがん免疫薬「オプジーボ」について、投与すると5カ月以上作用が継続することが大阪大学などの研究でわかり、使用方法の改良などにつなげたいとしています。
本庶氏の研究成果を基に小野薬品工業が実用化したオプジーボは、保険診療の対象となるがんが急速に増えています。ほかの抗がん剤と一緒に投与すると効果が高まるとされますが、患者の特徴に合わせて抗がん剤を選ぶ技術は確立していませんでした。
大阪大学大学院医学系研究科の小山正平特任助教(呼吸器内科学)らの研究チームは、効果がなかったり副作用が出るなどしてオプジーボ投与を中止した非小細胞肺がん患者8人の血液を分析装置で調べ、オプジーボと免疫をつかさどる細胞にある「PD-1」との結合状態を詳細に解析しました。
その結果、投与されたオプジーボは5カ月以上、PD-1と結合し、その間、免疫細胞を活性化する作用が継続していたということです。
研究によりますと、投与を中止しても約半年にわたって免疫細胞が活性化した患者では、ほかの抗がん剤の治療効果が高くなりました。今後、患者の免疫細胞が活性化しているかどうか調べれば、併用する抗がん剤によって治療効果が高められる可能性があるといいます。一方で、副作用が起きた場合には投与を中止しても症状が継続する恐れがあり、さらに詳しく分析してオプジーボの使用方法の改良などにつなげたいとしています。
小山特任助教は、「オプジーボの体内での動きを詳しく知ることで、より効果を高めたり副作用を減らしたりする第一歩になる」と話しています。
研究チーム4日、成果をアメリカの科学誌電子版に発表しました。
2018年10月5日(金)
■ノーベル受賞でがん免疫薬への問い合わせ多数 注意が必要な免疫治療も
今年のノーベル医学・生理学賞に京都大学特別教授の本庶佑(ほんじょ・たすく)氏が選ばれた後、病院のがん相談窓口などには受賞理由となったがんの治療薬を使いたいという問い合わせが多くなっていて、スタッフは、保険診療となるのは胃がんや肺がんなど特定のがんのうち、一定の条件の患者に限られることなどを説明しています。
全国にあるがんの拠点病院には、患者や家族から治療などの相談に応じる窓口が設けられています。このうち東京都中央区の国立がん研究センター中央病院の相談窓口では、ノーベル医学・生理学賞の発表があった10月1日以降、寄せられる相談の8割以上が本庶氏の受賞理由となったがんの治療薬「オプジーボ」に関するものだということです。
その多くは、がん患者が「自分もオプジーボを使いたいがどうすればよいか」というもので、スタッフは、がんの状態などを聞き取りながら、「オプジーボの投与で保険診療となるのは、皮膚がんのうちの悪性黒色腫のほか、胃がんや肺がんの一種など特定のがんの一部で、さらに手術ができず、再発した患者などに限られる」と説明していました。
また、医療機関の中には、有効性が科学的に証明されていない免疫治療を行っているところもあり、相談窓口では、標準的な治療の選択肢がなくなり自由診療の免疫療法を検討する時は、公的制度に基づく臨床試験などを熟知したがん拠点病院の医師にセカンドオピニオンを求めるよう呼び掛けています。
国立がん研究センターがん対策情報センターの若尾文彦センター長は、「オプジーボにも副作用の恐れはあるほか、効果が出るのは投与した患者の2割から3割で、誰にでも効果があるものではない。治療法の選択は、信頼できるがんの専門医とよく相談することが重要だ」と話していました。
オプジーボを投与する際に保険診療として認められるのは、皮膚がんのうち悪性黒色腫の患者、肺がんのうち非小細胞肺がんで手術することができず、進行性で再発した患者、腎臓がんのうち腎細胞がんで手術することができないか、転移した患者、悪性リンパ腫のうち古典的ホジキンリンパ腫で、難治性か再発した患者、咽頭がんや舌がんなどの頭けい部がんで、再発したかほかの臓器に転移した患者、胃がんで化学療法を受けた後に悪化し、手術が難しく進行性で再発した患者、胸膜や腹膜にできるがんのうち悪性胸膜中皮腫で抗がん剤などの化学療法を受けた後に悪化し、手術が難しく進行性で再発した患者です。
また、薬の添付文書で、この薬の成分で過敏症を経験した人は投与できないとされ、ほかにも自己免疫疾患がある人や高齢の人などでは慎重に使う必要があるとされています。
このようながんの免疫治療の薬は今年3月の時点で10種類あまりあり、いずれもがんの種類や患者の状態によって保険診療の対象が決められています。
さらに、医療機関の中には有効性が科学的に証明されていない免疫療法を行っているところもあるとしており、相談窓口では、標準的な治療の選択肢がなくなり、保険が適用されない自由診療の免疫治療を検討する時は、公的制度に基づく臨床試験などを熟知した医師ががん拠点病院などにいるので、まずは相談してほしいとしています。
2018年10月5日(金)
■医療事故調査制度、3年目の死亡事例報告は378件 当初試算の2~3割にとどまる
「日本医療安全調査機構」は3日、医療機関から報告のあった死亡事故件数を公表しました。それによると、2017年10月~2018年9月の1年間の報告総数は378件でした。
2015年10月の医療事故調査制度の開始に際し、国は「年間最大2000件」と見込んでいましたが、3年連続で年間400件にも届いていません。医療界の一部は消極姿勢を示しているためです。
東京都立広尾病院で点滴ミスによって患者が死亡するなど、医療事故の頻発が社会問題化したことを受け、国は医療法を改正し、予期せぬ死亡事故が起きた場合に日本医療安全調査機構に報告し、院内調査をするようすべての病院・診療所・助産所に義務付けました。
国は、これまでの事故発生頻度から、届け出は年間1300~2000件と試算していました。だが、1年目は388件、2年目は363件にとどまりました。国などが制度の浸透を図ってきたものの、3年目になっても一向に増えず、総計で1129件となっています。当初の試算の2~3割しかありません。
届け出が増えない背景には、「予期せぬ死亡事故」の判断が医療機関に委ねられている上、無届けに対する罰則もないことがあります。病院側が民事や刑事での責任追及に報告が使われるのを恐れて、届け出を避けていると指摘されます。
厚生労働省は、「届け出が少ないという声もあり、引き続き制度の周知が課題だ」としています。
2018年10月4日(木)
■囲碁の次はAIによる早期乳がん診断 ディープマインド社が開発へ
アメリカのグーグル系列のイギリスのディープマインド社と東京慈恵会医大付属病院(東京都港区)は4日、日本人女性約3万人分の乳房のエックス線撮影画像から早期に乳がんを見付け出す人工知能(AI)の開発に乗り出すと発表しました。
ディープマインド社は、囲碁の盤面の画像で学習させたAI「アルファ碁」を開発し、2016年に人間の世界トップ棋士に勝った実績を持ちます。この技術を乳がんの早期診断に生かしたい考えです。
乳がんは通常、マンモグラフィー(乳房エックス線撮影)などの画像を医師が見て診断するものの、世界全体で毎年数千例以上の見落としがあるといわれています。日本人女性は特に、体格や乳腺密度の特徴などから、画像診断が難しいとされます。
ディープマインド社は現在、イギリスで約3万人分の画像を基に乳がんの早期診断AIの開発を始めていますが、日本人のデータも必要と判断しました。東京慈恵会医大付属病院で2007~2018年にマンモグラフィーを受けた約3万人分の匿名の画像を学習させます。
超音波診断の画像約3万人分と、磁気共鳴画像(MRI)約3500枚も合わせて学習し、人間の目が見落としてしまうような兆候も見付けることを目指します。診断精度の検証なども必要なため、実用化の時期はまだ見通せません。同社と同病院の共同研究は、5年間を予定しています。
同病院放射線科医の中田典生准教授は、「日本は世界の中でも放射線科医の数が少ない。診断の精度を高めるツールとして利用できれば、医療の質は飛躍的に高まる」と期待しています。
日本人の乳がんによる死亡率は年々高まっており、厚生労働省によると2016年には年間で約1万4000人が死亡しています。
2018年10月4日(木)
■豊作で毒きのこ食中毒が多発、死亡例も 消費者庁と新潟県が注意喚起
今年はきのこが豊作になると予想されている一方で、9月には三重県で誤って毒きのこを食べたとみられる男性が死亡していることから、消費者庁は、間違えやすい毒きのこを集めて異例の注意の呼び掛けを行いました。
先月、三重県桑名市で食用の「クロハツ」と間違えて「ニセクロハツ」という毒きのこを食べたとみられる75歳の男性が、嘔吐や下痢などの症状を訴えて死亡しました。
この夏は高温で雨が多く、きのこが多く発生する条件が整っているものの、毒きのこによる食中毒は、死亡したケースも含めてこの1カ月余りで全国で12件起きていることから、消費者庁は、食用のきのこと間違えやすい毒きのこを実際に集めて異例の注意の呼び掛けを行いました。
このうち「ツキヨタケ」は、食用のヒラタケやシイタケなどと間違えやすく、昨年までの10年間に約650人が食中毒を起こしています。「ドクツルタケ」は強い毒があり、2013年には女性が死亡する事故が起きているということです。
消費者庁の岡村和美長官は、「食用のきのこと毒きのこは専門家でも判断が付かないほど似ている場合がある。生息条件によっては色や形が異なることもあり、少しでも不安がある場合は専門家や保健所に相談してほしい」と話しています。
一方、キノコ狩りのシーズンに入った新潟県は、急性脳症との因果関係が懸念される「スギヒラタケ」を食べないよう注意を呼び掛けています。
かつて食用とされていたスギヒラタケは近年、食べた人が意識障害、けいれんなど急性脳症を発症したとする報告が相次いでいます。新潟県内では2003年以降、スギヒラタケを食した22人が急性脳症となり、うち6人が死亡しました。
当初は、腎臓機能が低下している人が食べた場合に急性脳症になると考えられていましたが、腎臓に異常がない人にも、発症する事例が報告されました。因果関係は解明されていないものの、農林水産省などにより、急性脳症の原因につながるとした研究結果も出ています。
スギヒラタケはキシメジ科のキノコで、夏から秋にかけて杉などの切り株や倒木に生えます。白色で2~6センチほどのかさが、重なり合って群生するのが特徴といいます。
新潟県は医療機関に対し、原因不明の脳炎や脳症患者が出た場合は、最寄りの県地域振興局などに連絡するよう求めています。県健康対策課は、「安全が確認されていないキノコなので、絶対に食べないでほしい」としています。
2018年10月4日(木)
■資生堂、「ストレス臭」を発見 緊張で皮膚からネギに似た臭いが発生
大手化粧品メーカーの資生堂は2日、人が緊張やストレスを感じた時に、皮膚からネギの臭いに似た特徴的な臭いを持つ「ストレス臭」が発生することを発見したと発表しました。
資生堂は、20年以上にわたって香りに関する研究を行っており、1999年には中高年の体臭の主な原因物質である「加齢臭」を発見しました。今回発見したストレス臭は「加齢臭に次ぐ大きな発見」と、同社は位置付けています。
今回の発見は、体の中の状態が肌の調子を左右すると考えた研究員らが、皮膚から発生する気体である「皮膚ガス」に着目したことが切っ掛けでした。皮膚ガスにはさまざまな成分が含まれており、体調や食事内容によって変化します。過去の研究から、糖尿病患者の皮膚からはアセトンが多く検出されることなどが知られています。
研究員は、人の手から発生する皮膚ガスを採取し、体調や食生活によって特徴があるかを調べているうちに、「ラーメンにトッピングされたネギのような臭いを発見した」といい、その臭いがする人の状態を調査したところ、緊張状態にあることが示唆されました。
そこで、緊張によるストレス状態を再現するために、女性40人に対して、初対面の人が20分間インタビューを実施。その後、40人の皮膚から出る皮膚ガスを採取して臭気判定士が嗅ぐ実験で、ネギやタマネギの臭いに似ている硫黄化合物のような特有の臭いがあることを確認しました。ストレス臭を2~3分嗅ぐと、疲労や混乱を感じやすいこともわかったといいます。
今回発見したストレス臭の主要成分は、「ジメチルトリスルフィド」と「アリルメルカプタン」の2つの化合物であるといいます。同社はこの2成分を「STチオジメタン」と名付けました。
ストレス臭の発生メカニズムなどについては、今後研究を進めていきたいとしています。現在、ストレスの程度は主観的なテストによるチェックツールがほとんどで、ストレス臭のメカニズムが明らかになれば、臭いからストレスの程度を客観的に判定するチェックツールとしての展開も可能になるかもしれません。
資生堂はストレス臭の対策として、臭い成分を包み込んで目立たなくさせる独自の「STアンセンティッド技術」を開発。この技術を用いたストレス臭専用のにおいケア製品を2019年春に発売する予定としています。
2018年10月3日(水)
■オプジーボ開発の小野薬品、今年最高値の株価を更新 ノーベル賞受賞決定から一夜明け
ノーベル医学・生理学賞受賞が決まった本庶佑(ほんじょ・たすく)・京都大学特別教授の研究成果を応用した大阪市の製薬会社「小野薬品工業」は、20年以上の長い時間と多くの資金を投じ、画期的ながん免疫薬「オプジーボ」の開発に至りました。時間と資金を費やし、大学と二人三脚で新薬創出を目指す手法は古典的といえますが、世界の製薬大手は巨額買収で新薬をそろえる戦略に軸足を移しており、小野薬品のような開発モデルは少数派となっています。
本庶氏の受賞決定を受けた2日の東京株式市場で、小野薬品の株価は午前の取り引き開始直後に1日の終値より220円高い3430円まで上昇し、3月につけた今年の最高値を更新。2日の終値は98円高の3308円でした。小野薬品はオプジーボの販売が好調で、今年4月から6月までの3カ月間のグループ全体の決算は、売り上げが712億円余りと、昨年の同じ時期より17%増加しています。
小野薬品は関西を地盤とする中堅製薬会社。かつては血流改善薬「オパルモン」やアレルギー性疾患治療薬「オノン」などで高収益を維持してきましたが、特許切れや後発薬の攻勢で陰りが出てきていました。2014年9月にがん治療に高い効果を持つオプジーボを発売し、売上高は約1400億円から約2600億円に、営業利益は約260億円から約600億円に上向きました。
小野薬品は、アメリカのブリストル・マイヤーズスクイブと共同開発したオプジーボに多くの経営資源を投じてきました。研究開始から発売までは22年間。売上高に占める割合で1~2割が平均とされる研究開発費も、3割を振り向け続けました。
同社が本格的に開発を始めた1999年ごろは、遺伝子の異常を調べ、そこに狙いすまして働き掛ける「分子標的薬」と呼ばれる医薬品の開発が花盛りでした。体内の免疫を利用してがんを治療するという考え方は、製薬会社で全くといっていいほど注目を集めてきませんでした。
それでも小野薬品が京大と粘り強く共同研究を続けたのは、1960年代に京大との共同研究の成功体験があったからです。血管を広げて血圧を下げるなどの作用が知られていた体内物質を世界で初めて化合物として合成し、1974年に陣痛誘発剤として実用化に成功。20年以上の開発期間があっても、投資を回収できるとの想像力につながりました。
大学と企業による強力なタッグを長期間続けたことが、画期的な医薬品を生み出せた理由です。エーザイのアルツハイマー病治療薬「アリセプト」、第一三共の高脂血症治療薬「メバロチン」など日本発の画期的新薬のほとんどはこうした創薬モデルで誕生しました。ただ創薬の成功確率は3万分の1とされ、1つの薬ができるまでに2000億円近くかかるといいます。時間がかかり、失敗するリスクも大きい上、すでに多くの薬が開発され、新たな薬を開発する難易度は上がっています。
世界の製薬大手は、有望な新薬の種を持つスタートアップ企業を買収し、新薬候補をそろえる戦略に転換しています。アメリカのギリアド・サイエンシズは2017年、がん免疫薬を開発するアメリカの会社を1兆3000億円で買収しました。フランスのサノフィも2018年、血友病治療薬を手掛けるアメリカの会社を約1兆2000億円で買収しています。
本庶氏の研究成果を花開かせた小野薬品の開発モデルが基礎研究に希望を与えたのは確かなものの、世界の製薬の潮流が同社のような開発モデルに回帰する動きは今のところありません。国内製薬会社の幹部は「小野薬品のケースは極めてまれ。莫大な投資と失敗リスクはもうとれない」と指摘しています。
2018年10月3日(水)
■来春の花粉は大量飛散の予想 猛暑も影響、今年の3倍、平年の6割増
気象情報会社「ウェザーニューズ」(千葉市)は1日、来年春は花粉(スギ、ヒノキ、北海道はシラカバ)が広い範囲で大量に飛散する恐れがあると発表しました。今年夏に「災害級」の猛暑となった影響もあり、同社は現時点で全国平均の飛散量は平年(2009~2018年の平均)より6割以上多いとみられ、今年の3倍近くの大量飛散になると見通しています。
同社によると、花粉の大量飛散は2013年以来、6年ぶり。大量飛散が予想されるのは、東北南部、関東甲信、北陸、東海、近畿、山陰。山陽と九州北部は平年よりやや多く、北海道と東北北部、四国、九州南部は平年並みの予想。特に関東で飛散量が多く、埼玉県は約3倍、東京都、神奈川県、栃木県などは2倍以上とみています。
ウェザーニューズは、独自の観測や花粉のもととなる雄花の生育状況調査などから飛散量を予想。猛暑で雄花の生育が活発だったことや、飛散量は隔年で増減を繰り返す傾向がある中で今年春が少なかったため、大量飛散を予想しているといいます。
2018年10月2日(火)
■風疹患者が3週連続で100人超 東京都や千葉県などで流行続く
国立感染症研究所は2日、9月23日までの1週間で新たに104人の風疹患者が報告され、今年の累計は770人になったと発表しました。報告数は3週連続で100人以上で、累計患者は昨年1年間の8倍を超しました。
都道府県別で新たな患者が多かったのは、東京都26人、千葉県19人、神奈川県15人、埼玉県12人、愛知県と茨城県6人の順。岩手県と石川県で今年初めて患者が確認され、患者の報告がないのは7県となりました。患者の内訳は、30~50歳代の男性が多くなっています。
都道府県別で累計患者が多かったのは、東京都239人、千葉県179人、神奈川県80人、埼玉県54人、愛知県44人の順になっています。患者の内訳は、30~50歳代の男性が多くなっています。
こうした状況を受けて厚生労働省は2日、患者数の多い5都県に通知を出す方針。妊娠を希望する女性や同居する家族に、免疫の有無を調べる抗体検査を受けるよう求めます。検査で抗体がないとわかれば、ワクチン接種を促します。
妊婦が風疹に感染すると、赤ちゃんの心臓や目、耳などに障害が起きる「先天性風疹症候群(CRS)」が発生する恐れがあります。国立感染症研究所によると、2012~2014年の前回大流行時、感染した妊婦から生まれた先天性風疹症候群の赤ちゃん45人のうち、11人が亡くなりました。
多くの自治体では、妊娠を希望する女性や妊婦の家族に検査費用を助成しています。
2018年10月2日(火)
総務省消防庁は2日、熱中症のため4月30日~9月30日の約5カ月間に全国で9万5073人が救急搬送されたとの速報値を発表しました。2008年の調査開始以降、過去最多を更新し、死者は160人で2番目に多くなりました。
7~8月に各地の最高気温が35度を超え、記録的な猛暑に見舞われたことが影響しました。
集計期間は異なるものの、搬送者数は2013年(6月1日~9月30日)の5万8729人を約3万6000人上回り、死者数は2010年(同)の171人に迫りました。
今年の搬送者数は、都道府県別で東京都が最多の7845人。大阪府7128人、愛知県6637人が続きました。死者数は愛知県14人、埼玉県13人、大阪府12人の順でした。搬送者のうち、65歳以上の高齢者が48・1%を占めました。
2018年10月2日(火)
スウェーデンのカロリンスカ研究所は1日、2018年のノーベル医学・生理学賞を、がんの治療法に革命的な変化をもたらした功績により、京都大学の本庶佑(ほんじょ・たすく)特別教授、およびアメリカのテキサス州立大学のジェームズ・アリソン教授の2氏に授与すると発表しました。
受賞理由は、「免疫の働きを抑えるブレーキ役となる物質を発見し、がんに対して免疫が働くようにする新たな治療薬の開発など」。
授賞式は、1896年に死去し遺言でノーベル賞を創設したアルフレッド・ノーベルの命日である12月10日に、スウェーデンの首都ストックホルムで開催され、2氏は同国のカール16世グスタフ国王から賞を授与されます。
賞金900万スウェーデンクローナ(約1億1500万円)は、2氏で分け合うことになります。
日本人がノーベル賞を受賞するのはアメリカ国籍を取得した人を含めて26人目で、医学・生理学賞では、一昨年の東京工業大学の大隅良典特任教授に続いて5人目となります。
本庶特別教授は、京都市生まれの76歳。京都大学医学部を卒業後、1971年にアメリカに渡り、カーネギー研究所や国立衛生研究所で免疫学の研究に当たりました。そして、大阪大学医学部の教授をへて1982年からは京都大学の教授となり、医学部長などを務めたほか、現在は京都大学高等研究院の特別教授として副院長を務めています。
本庶特別教授は、免疫をつかさどる細胞にある「PD-1」という新たな物質を発見し、その後、体の中で免疫が働くのを抑えるブレーキの役割を果たしていることを突き止めました。この発見によって再び免疫が働くようにして、人の体が本来持っている免疫でがん細胞を攻撃させる新しいタイプの治療薬、「オプジーボ」という薬の開発につながりました。
「オプジーボ」は、がんの免疫療法を医療として確立し、本庶特別教授は同じくがんの免疫療法で貢献したジェームズ・アリソン教授とともに共同で受賞しました。
カロリンスカ研究所は会見の中で、「これまでがん治療の手段は、外科手術や放射線治療、抗がん剤があった。しかし本庶氏とアリソン氏は、がんそのものを対象とするのではなく、私たちの体に備わった免疫細胞を利用して、特定の腫瘍だけでなくあらゆるタイプの腫瘍の治療に応用できる新しい治療法を開発した。がんとの戦いに新しい道を切り開いた画期的な発見だ」と指摘しました。
アリソン教授は、人の免疫細胞の表面にある「CTLA-4」というタンパク質が免疫細胞の活動を抑えるブレーキ役を担っていることを突き止め、このタンパク質が働くとがんを攻撃する働きが弱まることを初めて発見しました。「CTLA-4」は本庶特別教授が発見した「PD-1」と同様に、このタンパク質が働かないようにすることで、免疫細胞に再びがんを攻撃させるようにする「免疫チェックポイント阻害剤」という新たな薬の開発につながり、2011年から皮膚がんの一種である「悪性黒色腫」の治療薬としてアメリカなどで広く使われるようになりました。
「免疫チェックポイント阻害剤」は、外科手術や放射線など従来の治療法に続く新たながんの治療法として世界的に注目を集め、現在は他のがんでも開発が進んでいます。
2018年10月2日(火)
骨粗しょう症の予防や早期治療のために市町村が40~70歳の女性を対象に行っている検診の受診率は、全国平均で5・2%と低迷しているとの集計結果を9月28日、啓発に取り組む骨粗鬆症財団が発表しました。最も高い栃木県は14%、最も低い島根県で0・3%と、都道府県間の差も大きくなりました。
財団は、周知不足や手間がかかると思われていることが低迷の原因だと分析。「高齢になってからの予防や治療には限界がある。若いうちからの受診を促すべきだ」と訴えています。
検診は国の健康増進事業に盛り込まれており、40~70歳の女性が5年ごとに対象になります。超音波で骨の量を調べたり、問診をしたりします。
2018年10月1日(月)
食道がんを内視鏡の画像から8割近い確率で判別できる人工知能(AI)診断支援システムを開発したと、がん研有明病院(東京都江東区)と医療ベンチャー企業・AIメディカルサービス(東京都豊島区)の研究チームがアメリカの医学誌に発表しました。
研究チームは、同病院の内視鏡検査で撮影した食道がん患者の画像8428枚を人工知能に学習させ、大きさが1センチ未満で、赤みや凹凸がわずかながんを判別できるシステムを開発しました。判別速度は画像1枚当たり0・02秒と短いのも特徴です。
このシステムを使い、がんの画像162枚を含む別の1118枚について、がんの有無を判別したところ、がん画像の約77%に当たる125枚をがんと正しく識別しました。がんの進行度(ステージ)は98%の精度で判定しました。
飲酒や喫煙を危険因子として発生し、男性では6番目に死亡率の高い食道がんは、早期での発見は内視鏡検査でも難しい場合があるとされます。人工知能は学習データが多いほど精度が上がるため、さらにデータを蓄積すれば、識別の精度向上が期待できるといいます。
研究チームは、「いずれは動画でも即時に判別できる精度に高めたい」としています。
2018年10月1日(月)
健康機器メーカーのタニタ(東京都板橋区)は9月28日、健康診断や働き方などのデータを集め、企業向けの新たな健康増進サービスの提供を始めると発表しました。子会社のタニタヘルスリンク(東京都文京区)が中核となって、他社や東京大学、岡山市の医療機関などと連携します。
事業化に当たり、産業革新機構から改組した官民ファンド「INCJ」などから計35億円の資金を調達する予定。
タニタが持つ80万人分の体脂肪率などの計測データや食事データなどを本人の同意を得た上で、全国健康増進協議会(東京都文京区)の健康診断のデータと統合します。生活習慣病の原因となるメタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)の発症リスクを予測できるようになります。
第1弾として、2019年度に岡山市で実証実験を始めます。同意を得られた国民保険などの加入者を対象に、健診結果から東京大学の研究チームが疾患リスクを分析。これに基づいてタニタヘルスリンクが各個人に合わせた情報を提供し、健康意識の向上を促します。病気のリスクをデータで示し、健康に関心の薄い層にも危機感を持ってもらう狙いがあります。
タニタ以外に、オフィス家具大手のイトーキやSBI生命保険、日立システムズが参加します。イトーキが持つ働き方関連データとタニタの生活習慣のデータをまとめて解析するなど、各社の強みを生かして事業化します。
日立システムズは、健康プログラムの作成で協力します。SBI生命保険は、解析したデータを生活習慣と連動した保険商品の開発に生かすといいます。
同日に東京都内で記者会見したタニタの谷田千里社長は、「我々は『日本を健康に』を掲げて事業に取り組んできたが、1社では限界だ。他社を巻き込み、健康サービスを1つの産業として自立させたい」と語りました。
2018年10月1日(月)
親が育てられない子供を匿名で預かる「こうのとりのゆりかご」(赤ちゃんポスト)を運営する熊本市西区の慈恵病院は9月30日、原則6歳未満を対象とする特別養子縁組のあっせん事業に乗り出すことを明らかにしました。すでに事業に必要な許可を熊本市から受けており、蓮田健副院長は「来年1月にも始めたい」としています。
特別養子縁組は、実の父母との関係を断って、養父母と子供が戸籍上も完全に親子となるもので、原則6歳未満の児童が対象。児童相談所や民間のあっせん団体を通じて、養父母に引き取られます。しかし、営利目的であっせんするケースも過去にあったことなどから、民間の事業者は従来の届け出制が今年度から都道府県・政令指定都市の許可制になり、経営状況を示す書類を毎年提出する必要などがあります。
厚生労働省によると、今年4月1日現在、NPOや医療法人など全国で計29団体が登録されています。九州・山口では、慈恵病院のほか3団体があります。
蓮田副院長によると、「ゆりかご」に預けられた場合は、熊本市の児童相談所に特別養子縁組を含めて養育先を探してもらっています。慈恵病院で生まれて実親が育てられない場合は、主に埼玉県内の団体にあっせんしてもらっていました。この団体は、養親に経済的負担をかけず、実親が出産後に自分で育てると翻意した場合もその決断に寄り添う姿勢があったといい、300人以上の特別養子縁組が成立しました。
しかし、この団体が活動をやめることを決めたため、「思いを継ぎたい」と自らあっせんに乗り出すことを決断したといいます。当面は、慈恵病院で生まれ、実親が育てられない子供のみを対象とします。「ゆりかご」に預けられた子供は、引き続き児童相談所が養育先を決めます。
2018年10月1日(月)
がん治療の分野で、患者一人ひとりに対応した究極の個別医療に向けたサービスを提供する「カスタマイズ型」の道が開けてきました。中外製薬は、究極の個人情報ともいえる遺伝子を解析して抗がん剤を選ぶサービスを2018年度内にも始めます。
中外製薬が始めるのは、がんに関連する遺伝子を一度に複数調べる「がん遺伝子パネル検査」と呼ばれるサービス。がんは遺伝子の変異で発症する場合があり、例えば同じ肺がんでも変異した遺伝子の種類によって効く薬が異なります。患者のがん組織から約320種類の遺伝子変異を調べ、最適な薬の情報を医師に伝えます。
解析手法は親会社であるスイス製薬大手ロシュの子会社、アメリカのファウンデーション・メディシンが開発しました。遺伝子の解析は同社に委託します。同社は2017年、アメリカの食品医薬品局(FDA)からゲノム(全遺伝情報)解析サービスとして初の承認を取得。すでに20万人以上の実績があります。
国内では中外製薬が3月に承認を申請し、2018年内にも認可が下りる見通し。遺伝子パネル検査はすでに大学病院や国立がん研究センターが自由診療で始めていますが、中外製薬の新サービスは初めて保険適用を受ける見通し。自己負担額は国立がん研究センターの約47万円から、数万円に下がるとみられます。
これまで抗がん剤の選択は学会が決める指針に沿って医師が判断し、投与してみて効かなければ薬を切り替えることもありました。遺伝子レベルで最適な薬を選ぶことができるようになれば、患者にとっては治療の確実性や安全性が高まります。不要な投薬を減らせるため、医療費の削減にもつながります。
中外製薬の小坂達朗社長は、「これまでのがん治療はすべての患者を対象にしていた。一人ひとりに合った抗がん剤を選べるようにすることで患者中心の医療を実現できる」と話しています。
医療に遺伝子を活用する動きは、他にも相次ぎます。コニカミノルタは、遺伝子やタンパク質の分析を通じてカスタマイズ型の医療を支援する新会社を10月に設立します。買収したアメリカの会社の技術を活用し、親から子へ遺伝するタイプのがんの発症リスクを予想するサービスを計画するほか、データを活用し製薬会社の創薬を支援する事業も手掛けます。
2018年9月30日(日)
花粉症やアトピー性皮膚炎、ぜんそくなど国民の2人に1人が持つとされるアレルギー疾患に対し、厚生労働省の有識者検討会は28日、今後10年間の研究や治療などの方策を示す初めてのアレルギー戦略を了承しました。目指すべき目標として「防ぎ得る死の根絶」、「革新的医療技術による治療の実現」などを掲げました。
厚労省は来年度予算に研究開発費を盛り込み、来春から取り組みを始める方針です。
アレルギー戦略では、「現在の治療法では患者の満足度が低く、実際のニーズの収集や評価も不十分」と強調。治療法に対し患者の満足度を示す「見える化」を打ち出しました。
アレルギー疾患の多くは慢性的症状ですが、アナフィラキシー(急性アレルギー反応)や薬剤アレルギーなどで重篤になったり、死に至ることもあります。このため目標として「防ぎ得る死の根絶」を掲げました。目標の実現に向け、各疾患が持つ特徴に基づく治療法などを示し、患者や周囲に向けた教育資材を開発するといいます。
さらに目標達成に向け、アレルギー疾患の基礎研究などを促進し、患者数減少と生活の質の改善を目指すなどと明示。遺伝情報を調べて患者の特性にあった治療法を開発するなど、各疾患の特徴に基づく予防法や治療法を広く社会に普及させていくことなども盛り込みました。
アレルギー疾患は、食物や花粉など体に無害な物を異物として認識する免疫反応に伴って起こります。食物アレルギーがある公立小中高校の児童・生徒は、文部科学省の2013年の調査によると、約45万4000人(全体の4・5%)で、2004年の調査より約12万4000人増えました。
花粉症患者の全国的な人数は明らかではないものの、東京都が今年まとめた調査では、都民の48・8%がスギ花粉症で、10年前から17・4ポイント増加。花粉症は今や「国民病」とも称されます。厚労省によると、気管支ぜんそくなどアレルギー疾患による死亡者も2014年に約1500人に上りました。
2018年9月30日(日)
乳がんの手術で摘出したがん細胞の遺伝子を人工知能(AI)を使って解析したところ、手術後の生存率には23の遺伝子が関係していると見なされることを九州大学の研究チームが発見し、詳しいメカニズムを解明して新たな治療法の開発にも役立てたいとしています。
研究を行ったのは、九州大学生体防御医学研究所の中山敬一主幹教授らの研究チームで、27日から大阪市で始まる日本癌学会で成果を発表します。
海外のデータベースに登録されている乳がんで亡くなった約7000人の患者について、がん細胞の中で働く184の遺伝子と手術後の生存率の関係を人工知能を使って詳しく解析しました。
その結果、23の遺伝子が活発に働いているかどうかの組み合わせが手術後の生存率に深くかかわっていると見なされることがわかったということです。
比較的進行したがんでも、長期間にわたって高い生存率を保つことに関係していると見なされる遺伝子の組み合わせもあったということです。
研究チームでは、これらの遺伝子を調べることで乳がんの手術後の生存率を予測できる可能性があるとしており、メカニズムを解明して新たな治療法の開発にも役立てたいとしています。
中山主幹教授は、「23の遺伝子はこれまで乳がんとのかかわりは知られていなかったが、人工知能を使うことで見付けることができた。がんの本質をつかむ大きな一歩になるはずだ」と話しています。
2018年9月30日(日)
皮膚に貼って曲げ伸ばしできるほど薄い有機太陽電池を開発し、長時間身に着けて使える心電計を作ったと、理化学研究所と東京大学の研究チームが27日、イギリスの科学誌「ネイチャー」に発表しました。
身に着けるタイプの測定機器は電源の確保が難点でしたが、この外部からの電力供給が不要な太陽電池を使えば、電力消費や装着する不快感を気にせずにさまざまな生体情報を計測するデバイス開発につながるといいます。
開発した太陽電池は、金属酸化物や高分子化合物を6層重ねた構造で、厚さは0・003ミリ。層の内部に凹凸をつけることで光の反射によるロスを防ぎ、曲げ伸ばしできる太陽電池では世界最高のエネルギー変換効率(10・5%)を実現しました。この太陽電池を使った心電計は手の指に貼れるほどの小ささで、体の微弱な電気信号を計測できました。
今後は測定したデータを蓄積、送信する仕組みも開発し、実用化を目指します。
開発した理研の福田憲二郎専任研究員は、「血圧や気温なども測れるようにして、長時間の測定で初めてわかる疾患の発見や、高齢者の見守りなどへ活用したい」と話しています。
時任静士(しずお)・山形大有機エレクトロニクス研究センター長は、「光を効率よく電気に変換する太陽電池を使い、薄型センサーの電源の問題を解決した価値ある研究だ」と話しています。
2018年9月29日(土)
美容医療を行う医療機関が、ウェブページで医療法で認められていない不適切な表示をしているケースが多数あることが、医療機関向けのコンプライアンス講習会などを行う一般社団法人eヘルス協議会(東京都港区)の調査で明らかになりました。
今年6月1日施行の改正医療法では、美容医療などでトラブルが相次いだことを踏まえ、医療機関のウェブページでの情報発信も看板やチラシと同じ「広告」とみなし、内容が規制される対象になりました。
eヘルス協議会が7~8月、ウェブページを持つ全国の美容医療機関から無作為に101件を選んで調べたところ、外国製のレーザー脱毛機など、情報発信が認められていない「国内未承認の医療機器を用いた治療の広告」と見なされる表示が、78件(77・2%)で見付かりました。未承認であることなどを明示すれば表示できる規定もあるものの、そうした記述もありませんでした。
承認ずみであっても認められていない「医療機器の販売名の表示」も22件(21・8%)で、AGA(男性型脱毛症)治療薬やED(勃起不全)治療薬などでの「医薬品の販売名の記載」も17件(16・8%)で見付かりました。
厚生労働省医政局総務課の担当者は、「医療広告のガイドラインなどを作り周知してきたが、わかりにくいとの指摘もあった。今後は学会などでも説明を行っていきたい」と話しました。
eヘルス協議会の三谷博明代表理事は、「法律への対応が遅れていることが浮き彫りになった。第三者がウェブページの表示を認証する仕組みづくりなども検討すべきだ」としています。
2018年9月29日(土)
環境省は28日、一般家庭を対象とした二酸化炭素(CO2)排出量調査の結果を発表し、高齢者の世帯は若者や中年の世帯に比べて、二酸化炭素の排出量がやや多い傾向がみられることがわかりました。
調査は、昨年4月から今年3月にかけて、全国1万3000世帯を対象に、家族構成や月ごとの電気やガスの使用量、省エネに対する心掛けなど496項目のアンケートを実施。約9505世帯から回答を得ました。
調査結果によると、世帯当たりの年間の二酸化炭素排出量(電気、ガス、灯油の合計)は3・3トン。電気の使用に伴う排出が68・2%、都市ガスの使用に伴う排出が13・0%、LPガスの使用に伴う排出が5・5%、灯油の使用に伴う排出が13・0%を占めていました。
家族が多く、自宅が広い家庭ほど排出量は多くなりました。世帯主の年齢別では、60~64歳の世帯の排出量が最も多くなりました。年間世帯収入別では、2000万円以上を除き、年間世帯収入の増加に伴い、二酸化炭素排出量が増加する傾向がみられました。地域別では、冬場に暖房を多く利用する北海道や東北、北陸の世帯で排出量が多い傾向がみられました。
一人暮らしの高齢者の世帯からの排出量は2・19トンで、若年・中年の一人暮らしより約3割多くなりました。夫婦でも高齢者の世帯では1割多くなりました。
環境省低炭素社会推進室は、「高齢者は戸建てに住んでいる人が多く、自宅で過ごす時間も長いことなどが影響しているのではないか」と分析しています。
また、省エネ意識が高い家庭ほど二酸化炭素排出量が少ない傾向も確認されました。炊飯器の保温機能を極力使わない家庭はそうでない家庭よりも23%、家族が続けて入浴することを心掛ける家庭はそうではない家庭より7%、二酸化炭素排出量が少なかったといいます。
2018年9月29日(土)
名古屋市は27日、中川区に住む20歳代の女子大学生が、はしか(麻疹)に感染したと発表しました。愛知県内では4~6月に25人の感染が確認されましたが、7月9日に県が終息を宣言していました。市は再流行を警戒しています。
名古屋市によると、女子大学生は今月10~14日に友人と2人でタイに旅行し、後に感染が判明した静岡市の40歳代男性と同じ便で、愛知県の中部国際空港に戻りました。23日に発熱し、26日に発疹が出たことから熱田区の医療機関を受診し、遺伝子検査で27日にはしかと判明しました。
22~23日に電車に乗ったり、中村区の飲食店を利用したりしていたといいます。名古屋市は、タイ現地か静岡市の男性のどちらかから感染した可能性が高いとみています。
愛知県では9月に入ってこれで4人の感染が確認され、愛知県や名古屋市は疑われる症状が出た場合には、事前に医療機関に連絡した上で、受診するよう呼び掛けています。
一方、静岡市保健所は15日、同市葵区の40歳代男性がはしかを発症したと発表しました。タイで感染したとみられます。発熱などの症状があり、自宅で療養しています。静岡市内での感染確認は今年初めて。
同保健所によると男性は10日、仕事で滞在していたタイで発熱。14日午前に帰国し、愛知県の中部国際空港から新幹線などを利用して帰宅。翌日に同市内の医療機関を受診し、同市環境保健研究所による遺伝子検査で感染が確認されたといいます。
2018年9月28日(金)
2種類の抗体を組み合わせて投与することで、患者の体内にあるHIV(ヒト免疫不全ウイルス)を1回の治療で数カ月間にわたって抑える方法を発見したとの研究結果を、アメリカの研究チームが26日、発表しました。HIV感染症のエイズ(AIDS、後天性免疫不全症候群)の治療法に大変革をもたらす可能性のある成果だといいます。
HIVを制御するための抗レトロウイルス薬による治療を受けている患者数が世界で過去最多となっていますが、患者は健康を維持するために、厳格な服薬計画を守る必要があり、通常は毎日の服薬を一生続けなければなりません。
アメリカのロックフェラー大学などの研究チームは、HIVの影響を弱めることが知られているタンパク質2種の組み合わせにより、患者の体内のHIVを1回の治療で最大30週間にわたって抑えることに成功、毎日の服薬に代わる治療法が登場する可能性があるとの希望がもたらされるとしました。
国立アレルギー感染症研究所のアンソニー・フォーシ所長は、「安全で信頼できる抗体ベースの治療計画により、HIVを抱えて生活する人々に新たな可能性が開けると考えられる」と述べ、「今回の結果は、その目標に向けた重要な初めの一歩となる」と続けました。
26日のイギリスの科学誌「ネイチャー」と医学誌「ネイチャー・メディスン」にそれぞれ掲載された2件の研究論文によると、研究チームは抗レトロウイルス薬でHIVを治療していたボランティア被験者15人を採用しました。
被験者には投薬治療を中断させた後、2種類の抗体を点滴で投与しました。抗体は薬剤なしでHIVの抑制が可能な体質の人々の体内に、自然に存在するものです。HIVの外殻にあるタンパク質を標的とするこれらの抗体は、感染に対抗するために、患者自身の免疫系を利用します。
2種類の抗体タンパク質を同時投与したのは、HIVの耐性発現を防ぐためです。抗体を基盤とする過去の研究は、この耐性発現によって妨げられてきました。
被験者にはさらに、3週間後と6週間後に2種類の抗体を点滴で投与しました。その結果、被験者はHIV濃度が「安全な」レベルに抑制された状態を平均15週間維持したことがわかりました。中でも2人の被験者はその期間が30週にも及びました。
ロックフェラー大学のミシェル・ヌセンツワイグ教授(分子免疫学)は、「過去の研究では作用がはるかに弱い抗体を用いてこれを試みたが、うまくいかなかった」とし、「研究の目的は、今よりさらに長持ちするように抗体を改良することだ。そうすれば、患者は毎日服薬する代わりに、年に数回の治療を受ければすむ」と指摘しています。
現在の治療法で、通常3種類以上を組み合わせて服用する抗レトロウイルス薬は、HIVの増殖を防ぐことで病をコントロールするものであり、感染した細胞を直接的に全滅させるわけではありません。薬を決められた通りに服用し続けなければHIVを抑制できなくなり、他の人々をHIVに感染させるリスクが増大します。また、薬の服用の多くには不快な副作用が伴います。
今回の研究には参加していないオレゴン健康科学大学のナンシー・ヘイグウッド氏は、「最新の治療法がもたらす最大の潜在的恩恵は、数カ月の間、抗レトロウイルス薬から離れる「休薬日」をHIV感染患者に与えることだと思われる」とし、「これまでにない安全な治療法として抗体を利用できる可能性がある」と述べました。
エイズ関連の死者数はピーク時に比べてほぼ半減したものの、2017年には180万人(1996年ピーク時:340万人)が新たにHIVに感染したことを国連のデータは示しています。2017年のエイズ関連の死者数は94万人(2004年ピーク時:190万人)でした。
2018年9月28日(金)
国立がん研究センターは27日、患者が極めて少ない希少がんの一つの眼腫瘍について、専門的な診断・治療ができる52の医療機関名と診療実績をホームページに公開しました。希少がんは治療に関する情報も少なく、適切な治療を受けることが難しいため、患者の速やかな受診につながることが期待されます。
眼腫瘍は網膜や角膜、まぶたなど目にできるさまざまながんの総称で、網膜芽細胞腫や悪性黒色腫などがあります。これらのがんになる割合は、国内では10万人当たり3・1人と、まれです。
国立がん研究センターは今回、がん診療連携拠点病院を中心に全国30都道府県の52病院をリスト化。がんの種類別に、診断や治療の可否、治療件数のほか、治療内容や診療連携している病院も掲載しました。
例えば、子供にみられる網膜芽細胞腫では、診断や治療した患者数(2013~2015年の年平均)が多かったのは、国立がん研究センター中央病院(東京都中央区)76人、名古屋医療センター(名古屋市中区)19人、兵庫県立こども病院(神戸市中央区)11人などでした。
52病院は、ホームページの「がん情報サービス」(https://hospdb.ganjoho.jp/rare/)のサイトに公開されていて、がんの種類別、地域別などで検索できます。
希少がんの患者数は、がん全体の15~22%とされます。専門施設の情報公開は、昨年の手足などの筋肉や皮下組織にできる軟部肉腫に続いて2回目。国立がん研究センターでは、他の種類のがんについても施設の情報公開をしていく予定といいます。
2018年9月27日(木)
ジョンソン・エンド・ジョンソン(東京都千代田区)は27日、洗口液「リステリン」の一部に虫が混入したため自主回収すると発表しました。現時点で健康被害は報告されていないといいます。
回収の対象は、サンプル配布した「リステリン ムシバケア」の100ミリリットル入りで、ボトル側面に「C8152A8062」と刻印のあるものと、通常に販売した「リステリン トータルケア ゼロ プラス」250ミリリットル入りで、同様に「H8201L8099」と記されたもの計約3万8000個。
サンプルを使った消費者からの指摘で発覚し、製造したタイの工場を調べたところ、サンプルと倉庫の在庫それぞれ1本から体長1~2ミリの虫1匹が見付かりました。
サンプルは回収し、販売したものは返金対応します。問い合わせは、28日午後1時に開設する通話無料の回収受付センター(0120)301063。
2018年9月27日(木)
■風疹ワクチンの数に限り 予防接種前の抗体検査を呼び掛け
首都圏を中心に患者が増えている風疹について厚生労働省は、ワクチンの数に限りがあることから、予防接種の前に、免疫があるか調べる抗体検査を受けるよう呼び掛けることを決めました。
風疹は発熱や発疹などの症状が出るウイルス性の感染症で、妊娠中の女性が感染すると、生まれてくる赤ちゃんの目や耳、心臓などに障害が起きる恐れがあります。
今年7月以降、首都圏を中心に患者が増えており、27日に開かれた厚労省の専門家会議で、感染の拡大を防ぐ対策が話し合われました。
その結果、妊娠を希望する女性やワクチンの定期接種がなかった世代の30歳代から50歳代の男性に対し、風疹の免疫があるかを調べる抗体検査を受けるよう呼び掛けることを決めました。
ワクチンの数に限りがあることから、先に抗体検査を受けてもらい、免疫がない人に限って予防接種を行うようにするのが狙いです。
厚労省によりますと、抗体検査は多くの自治体で補助があり、妊娠を希望する女性のほか妊婦の夫などが無料で受けられるということで、詳しい対象については地域の保健所に問い合わせてほしいとしています。
厚労省は、抗体検査で免疫がないと確認された人については、確実に予防接種を受けられるようワクチンの供給を首都圏に集中させるなどの調整を行うとしています。
厚労省はまた、風疹の免疫があるかを調べる抗体検査の費用について、感染リスクの高い30歳代から50歳代の男性を対象に、来年度から全額補助する方針を決めました。首都圏を中心に風疹は流行し、9月中旬までの累計患者数は642人で、30歳代から50歳代の男性患者が約7割を占めます。免疫がないと検査でわかれば、予防接種を促します。
1977年から1995年は女子中学生のみを対象に、学校で予防接種が行われました。1995年度からは男子中学生も対象になりましたが、医療機関での個別接種だったため接種率は低めでした。男性の風疹ウイルスの抗体保有率は2017年度調査で、30歳代後半84%、40歳代77~82%、50歳代前半76%と女性より低くなっています。
厚労省は2014年度から、妊娠を希望する女性やそのパートナーを対象に抗体検査費用を補助していますが、その対象を30歳代から50歳代の男性にも拡大し、住んでいる自治体にある医療機関で無料で検査を受けられるようになります。来年度予算の概算要求に、関連費用など4兆1000億円を盛り込みました。抗体検査は自費の場合、5000円程度、予防接種は麻疹・風疹混合ワクチン(MRワクチン)で1回約1万円かかります。
2018年9月27日(木)
他人のたばこの煙を吸い込む受動喫煙を職場で経験するという人が約4割いることが、厚生労働省の調査で明らかになりました。今年7月に改正健康増進法が成立し、2020年4月から大半の職場は原則屋内禁煙となりますが、十分な対策が進んでいない現状が浮かび上がりました。
昨年11月、宿泊・飲食サービス業や製造業など民間の約1万4000事業所に約1万8000人分の調査票を送り、約1万人の回答を得ました。有効回答率は55%。
改正前の健康増進法では、対策をとるかどうかは事業者任せでした。改正健康増進法では、喫煙専用室からたばこの煙が漏れないようにするといった受動喫煙に遭わないような対策を事業者に義務付けます。客席面積100平方メートル以下の小規模な飲食店などは例外として喫煙が認められますが、大半は原則屋内禁煙(喫煙専用室は設置可)となります。
調査によると、職場での受動喫煙について「ほとんど毎日ある」13・5%、「時々」23・8%で、計37・3%があるとしました。このうち受動喫煙を不快に感じたり体調が悪くなったりすることがあると答えたのは38・8%に上りました。一方、受動喫煙が「ない」は62%でした。
受動喫煙防止対策の課題についても聞いたところ、回答した8674事業所のうち、42・6%が「課題あり」としました。二つまで選択可で内容を聞くと、「顧客に喫煙をやめさせるのが難しい」34・3%、「喫煙室からたばこの煙の漏洩(ろうえい)を完全に防ぐことが困難」28・5%、「喫煙室などを設けるスペースがない」25・7%と続きました。
受動喫煙防止対策で、「特に問題がない」とする事業所は55・0%。無回答・不明が2・5%でした。
2018年9月27日(木)
厚生労働省は25日、あすか製薬(東京都港区)が製造・販売していた高血圧治療薬「バルサルタン錠『AA』」(20mg、40mg、80mg、160mg)の中国で製造された原材料から、発がん性物質が2種類検出されたことを明らかにしました。
最も濃度が高い原材料から作られた製品を最大用量服用しても、発症するのは1万5000人から3万人に1人といい、厚労省は「リスクは相当低い」としています。
同日開かれた有識者らの会合で、厚労省が報告しました。国内では2014~2017年、あすか製薬と外資系製薬のアクタビスの合弁会社がバルサルタン錠を製造し、病院や薬局約1300カ所に計1300万錠を販売。
あすか製薬はアクタビスが他社に買収された後に国内販売を中止しましたが、今年7月に2つの発がん性物質のうちの1種類である「Nーニトロソジメチルアミン」が混入しているとのヨーロッパの規制当局の情報を基に、販売中止後も市中に残っている可能性があった製品の自主回収を発表、すでに回収を終えています。
発がん性物質は、他社の中国工場におけるバルサルタン錠原薬の合成過程で副生成物として生成されたと推定されています。バルサルタン錠の服用者は全国で、約1万9000人いたとみられます。
厚労省によると、問題の中国工場の原薬が使われた薬は国内ではほかにはないといいます。同省の担当者は、「健康への影響は発がん性物質の混入量によって違う。なぜ混入したかやどれだけの量が混入したか調査結果を報告してもらい、必要があれば対応していく」としています。
2018年9月26日(水)
宇宙の物質の大半を占める正体不明の「暗黒物質」の分布を調べ、宇宙が今後1400億年以上は存在し続けることがわかったと、東京大学や国立天文台などの研究チームが26日、発表しました。数百億年で最期を迎えるという従来の説は否定された形です。
ビッグバンにより宇宙が誕生したのは138億年前で、少なくとも後10倍の「余命」がある計算になります。論文をインターネット上で公開しました。
現在の宇宙は加速しながら膨張していますが、将来の姿は宇宙を膨張させる「ダークエネルギー」と、宇宙を収縮させる暗黒物質の力関係で決まるとされます。
ダークエネルギーの力が強ければ宇宙は膨張し続け、すべての物質を構成する原子がばらばらに崩壊して最期を迎えます。一方で暗黒物質が強ければ、ある時点で宇宙は収縮に転じて消滅すると考えられています。
研究チームは、アメリカのハワイ島のすばる望遠鏡で2014~2016年に観測した約1000万個の銀河を分析。強い重力で光の進む方向が曲げられる「重力レンズ効果」がどのように現れているかを調べ、強い重力の源である暗黒物質の分布状況を明らかにした。
このデータとダークエネルギーの推定量などを基に、世界最高レベルの精度で宇宙の将来像を予測。その結果、今後少なくとも1400億年は最期を迎えないことが95%の確率でわかりました。この時点でも星雲や恒星などは存在し、宇宙は加速膨張を続けているといいます。
しかし、今回判明した暗黒物質の分布状況は、アインシュタインの一般相対性理論などで構築された宇宙論の「標準模型」と一致しませんでした。素粒子「ニュートリノ」の質量やダークエネルギーの性質を解明すれば説明できるかもしれないものの、標準模型の訂正が求められる可能性もあります。
今回の結果は観測データの約1割を用いたにすぎないため、東京大カブリ数物連携宇宙研究機構の村山斉機構長は「今後データを10倍にして、はっきりさせることが楽しみだ」と指摘しています。
2018年9月26日(水)
■風疹患者、昨年の6・9倍 関東地方を中心に642人
関東地方を中心にした風疹の流行が続いています。国立感染症研究所は26日、9月10日から16日までの1週間で新たに127人の風疹患者が報告されたと発表しました。
1週間の報告数が100人を超えたのは2週連続。今年に入ってからの累計患者数は642人となり、昨年1年間の患者数93人の6・9倍に達しています。
都道府県別にみると、東京都が前週から39人増え196人と最多。次いで千葉県161人(前週比38人増)、神奈川県68人(同14人増)、埼玉県42人(同7人増)と続きました。
関東地方以外では、愛知県の36人(同8人増)が目立ちます。また、感染が確認されていなかった滋賀県と愛媛県で新たに2人の報告がありました。
患者は大半が成人で、特に30歳代以上の男性が多くなっています。国立感染症研究所は、国の制度変更の影響で免疫が十分ではない可能性があるとして、30~50歳代の男性を中心に免疫の有無を調べる抗体検査やワクチン接種を呼び掛けています。
ワクチン接種の効果が現れるまで約3週間かかります。ウイルスは小さいためマスクの予防効果は低く、2~3週間の潜伏期間にも感染は広がります。くしゃみやせきで風疹は感染し、発熱や発疹などの症状が出ます。
2018年9月26日(水)
■未承認の「しわ取り薬」を不正に輸入販売の疑い 大阪市の業者を書類送検へ
大阪市淀川区の医薬品輸入代行会社「エスエムディグローバル」が、国内未承認のしわ取り注射用の薬を不正に輸入して販売した疑いが強まり、大阪府警が近く同社の男性社長(47歳)や社員ら5人を医薬品医療機器法違反容疑と有印私文書偽造・同行使容疑で書類送検することがわかりました。
生活環境課は、法人としての同社も医薬品医療機器法違反容疑で書類送検する方針。同課によると、社長らは2017年8~11月、過去に取引があった医師の免許証のコピーを無断で使うなどして申請書類を偽造し、近畿厚生局に申請して韓国から輸入した未承認薬「ニューロノックス」10本を東京都目黒区の美容クリニックに約9万2000円で売った疑いが持たれています。押収資料などから、同社は2012年1月~2017年11月、美容関係の未承認薬の不正輸入と販売を繰り返し、約6億円を売り上げた疑いもあるとみられています。
ニューロノックスは、みけんや目尻などに注射することで、しわを取る目的で使われます。国内では未承認ながら、医師ならば治療目的で個人輸入できます。ニューロノックスは承認薬に比べて安価といい、メスを使わない「プチ整形」の人気を背景に、不正に輸入された未承認薬が美容業界で流通しているとの指摘があります。
厚生労働省によると、医師による未承認薬の個人輸入は2010年度が約4万3000品目でしたが、2016年度は約8万2000品目とほぼ倍増。不正な転売目的のものが含まれるとみられ、同省は昨年3月、不正輸入防止のため確認の徹底を求める通知を各厚生局に出しました。
厚労省近畿厚生局が今年3月、医師免許証が無断で使われていることに気付き、刑事告発。大阪府警は4月にエスエムディグローバルや関連先を家宅捜索して実態解明を進めていました。
2018年9月25日(火)
■世界の気温、2040年に平均1・5度上昇 IPCC予測
国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が、世界の平均気温について、温室効果ガスの排出が現在の水準で続けば、約20年後の2040年ごろには産業革命前と比べて1・5度上昇し、海面上昇や北極海の氷が解けるなど環境への悪影響が深刻化するとの予測を出す方向で検討していることが、26日明らかになりました。
IPCCは各国政府や専門家から意見を聴いた上で、10月1~5日に韓国・仁川で開く総会で、地球温暖化予測の特別報告書として公表します。
報告書草案によると、2017年時点の世界の平均気温は19世紀後半に比べ、すでに約1度上昇していると指摘。現在のペースで温室ガスを排出し続ければ、今後10年ごとに約0・2度ずつ上昇すると分析しました。
地球温暖化対策の国際的な枠組み「パリ協定」は、21世紀末までに世界の平均気温の上昇を2度以内に抑えることを目標とし、1・5度を努力目標にしました。それでも、猛暑や豪雨などの異常気象が増え、動植物の絶滅は避けられないと予想します。
1・5度未満にするには、今世紀半ばまでにCO2排出を実質ゼロにする必要があるといいます。対策として再生可能エネルギーやCO2の地下貯留(CCS)の普及、経済活動の抜本的な改革を挙げています。
IPCCは韓国で開く総会で、温室効果ガスの排出削減の強化など早急な対策を各国に求める方針です。
2018年9月25日(火)
■合わせて208歳夫婦、ギネスで最長寿に認定 香川県高松市
年齢を合わせと208歳になる香川県高松市の夫妻が「存命中の最長寿夫婦(合計年齢)」としてギネス世界記録に認定され25日、大西秀人市長の表敬訪問を受けました。
高松市の老人ホームに入居する松本政雄さん(108歳)とミヤ子さん(100歳)は7月、ギネス世界記録に認定されました。
政雄さんは、大西市長から長寿の秘訣(ひけつ)や夫婦仲を問われ「運動が好きなので、体が丈夫なのだと思います。結婚して80何年、けんかもしましたけど今は仲良くやっています」と答えました。ミヤ子さんは、「高松は幸せな土地です。言うことありません」と笑顔を見せました。
2人は大分県出身で、1937年に結婚。5人の娘を育て上げ、孫が13人、ひ孫は25人います。
政雄さんは結婚の半年後に旧日本陸軍の兵士として、中国やシンガポールに出征。戦後は旧運輸省の港湾職員となり、退職後の再就職を機に高松市に移住しました。
2018年9月25日(火)
■「乳がん後も今の仕事を続けたい」女性は約半数 不安要素は年代で相違
乳がんになった場合、今の仕事を続けたいと回答した有職女性は約半数にとどまることが、民間のアンケート調査で明らかになりました。今の仕事を続けたくない理由には、長時間労働や仕事量の多さなどが挙がり、職場の労働環境を不安視する声が多くなりました。損保ジャパン日本興亜ひまわり生命保険が7月20〜26日に、「乳がんと就労に関するアンケート」を実施。20~50歳代の働く女性1091人に、インターネットで尋ねました。
乳がんになった後も「今の仕事を続けたい」と答えたのは51%で、「続けたくない」28%、「わからない」21%の合計とほぼ同じでした。続けたくない理由では、「通院などで休みが取りづらい」32%、「仕事量が多い」29%、「労働時間が長い」25%の順に多くなりました。
仕事を続ける際の仕事面での不安を尋ねると、20歳代は「仕事量」、30歳代は「人間関係」、40歳代は「家庭との両立」、50歳代は「精神面」を挙げた人が最も多くなりました。生活面での不安を尋ねると、20歳代、30歳代、50歳代は「子育て」や「介護」などを挙げた人が目立ち、40歳代は「金銭面」を挙げた人が目立つ結果となりました。
がん患者の就労を支援する「CSRプロジェクト」代表理事の桜井なおみさんは、「労働環境・仕事量を変えたいと思っていても、変えられないとあきらめて辞めてしまっている人が多いのではないでしょうか。病気になっても仕事を辞める必要はありません。会社の労務担当や患者会に相談するなど、一人で即断即決せず、どうすれば仕事を続けられるかを考えてほしい」とコメントしています。
2018年9月24日(月)
■受精卵へのゲノム編集、来年4月にも解禁へ 基礎研究だけに限定
生命の設計図に当たる遺伝子を自在に改変できる「ゲノム編集」を人の受精卵に行う基礎研究が、日本でも来春、解禁される見通しとなりました。文部科学省と厚生労働省は28日に開かれる有識者会議で、研究に関する指針案を示します。
今回解禁されるのは、生殖補助医療に役立つ基礎研究に限られます。研究で使う受精卵は、不妊治療で使われなかった受精卵(余剰胚)だけで、遺伝子改変した受精卵を人や動物の胎内に戻すことは認めません。両省は一般市民の意見も聞くなどした上で、来年4月の指針施行を目指します。
人の受精卵にゲノム編集を行う研究は、生殖補助医療のほか、遺伝性疾患などの難病治療にも役立つと期待されており、中国やアメリカでは病気の原因となる遺伝子を修復するなどの目的で、受精卵にゲノム編集を行う基礎研究の実施例が報告されています。
しかし、日本にはルールがなく、政府の総合科学技術・イノベーション会議が今年3月、研究に関する指針を整備するよう国に求める報告書をまとめていました。遺伝性の病気やがんなどの治療を目的とした基礎研究については、引き続き同会議のもとで議論します。
2018年9月24日(月)
■京大、関節リウマチの悪化遺伝子を特定 新しい治療薬の開発に期待
全身の関節に炎症が起きる「関節リウマチ」で、炎症悪化の鍵となる遺伝子を特定したと、京都大学の研究チームが発表しました。既存薬が効かない患者への治療法開発につながることが、期待されます。
論文が、国際科学誌「ネイチャー・コミュニケーションズ」に掲載されました。
関節リウマチは、免疫が過剰に働いて手や指などの関節がはれ、関節や骨が変形する原因不明の病気。国内に70万~100万人の患者がいるとされ、免疫を抑える抗リウマチ薬などが治療に使われているものの、患者の2~3割は薬が効きにくいという課題がありました。
研究チームは、炎症を促すタンパク質を分泌する免疫細胞の一つ「ヘルパーT細胞」で、特定の遺伝子が強く働いていることを解明。炎症を起こしている患者の関節でもこの特定の遺伝子が働いており、研究チームの吉富啓之・京大准教授は「この遺伝子が働くことが炎症の源流といえ、新しいタイプの治療薬が開発できる可能性がある」としています。
熊ノ郷淳・大阪大学教授(免疫学)は、「すぐに治療につながるわけではないが、病気の仕組みを理解する上で重要な成果だ。局所に効く薬ができるかもしれない」と話しています。
2018年9月24日(月)
■島津製作所、血液による大腸がん検査を開始 9割発見、費用2万円
島津製作所は患者の血液に含まれるアミノ酸や脂肪酸など8種類の物質を測定し、大腸がんを9割以上の確率で見付ける診断サービスを10月から開始します。自由診療で検査費用は約2万円。
国内では新たにがんと診断される患者の中で大腸がんが最多。島津はがん検査などの先端医療事業を成長戦略の中核と位置付け、主力の研究機関向け分析機器に続く事業に育てます。
新しい診断サービスは神戸大学や国立がん研究センターと共同開発した技術で、島津製作所の高精度の分析計を活用します。採取する血液はわずかですみます。
血液に含まれる物質が一定の量を超えた場合、がんの可能性が高いと判断し精密検査を受けるように促します。これまでの研究で、早期段階を含む大腸がん患者の9割以上で正確に判定できました。
診断サービスはまず京都市内の病院で始め、数年以内に全国に拡大する見込み。検査対象も大腸がんだけでなく、乳がんや膵臓(すいぞう)がんにも広げる方針です。国に健康保険の対象として認めてもらう準備も進める考えです。
現在の大腸がん検査は便の中に血液が混じっているかを調べる方法が一般的で、安くて負担が少ない半面、痔(じ)などでも陽性と判定されるなど精度に課題があります。
国立がん研究センターによると、2014年にがんと新たに診断された患者は86万7408人。部位別では男女全体で大腸がんが胃がんを上回って、初めて最多となりました。
がんを早期に見付ける技術は他の大手企業も相次ぎ開発しています。日立製作所は尿で乳がんや大腸がんを見付ける技術を確立し、実証実験を始めました。東レも血液から13種類のがんを検出する検査薬を発売する予定です。
2018年9月24日(月)
■人事院、障害者のみを対象に臨時採用試験へ 雇用率の水増し問題受け
中央省庁の障害者雇用率の水増し問題で、人事院は21日、障害者のみを対象として今年度内に臨時の一括採用試験を行う方針を示しました。人事院によると、中央省庁で障害者に限定した採用試験を行うのは初めて。
21日に開かれた関係府省連絡会議で、人事院の担当者が明らかにしました。
この問題では8月、多くの省庁で、障害者手帳を持っていないなど本来は対象外の職員を不適切に障害者に算入していたことが発覚。法定雇用率(昨年6月時点で2・3%)を満たすためには、国の行政機関全体で計3396人分の不足が明らかになり、早急な人材確保が課題となっていました。
人事院などによると、地方自治体では採用試験に「障害者枠」を設けるケースもあるものの、中央省庁にはこうした枠はなく、障害者に限定した試験は今回が初めてとなります。各省庁の採用希望数を取りまとめた上で募集人数を確定し、人事院が一括して筆記試験を行った後、各省庁ごとの面接を受けて採用が決定します。今年度内の法定雇用率の達成が難しい場合、各省庁が今後の採用計画を作成する必要があるといいます。
常勤の国家公務員は省庁ごとに定員が決まっており、定員を増やすかどうかは今後検討するといいます。
関係府省連絡会議では、非常勤職員を常勤の職員に切り替える「ステップアップ制度」の導入方針も示されました。勤務実績などを考慮し、筆記試験なしで常勤に切り替えることなどを検討します。
2018年9月23日(日)
■製紙大手で紙製の新商品の開発相次ぐ 脱プラスチックで商機到来
海洋汚染の原因になるプラスチックごみを減らそうという取り組みが世界的に広がる中、日本の大手製紙会社の間では、プラスチック製品に代わる紙製の新商品を開発する動きが広がっています。
日本製紙は2018年中をめどに、紙製ストローを実用化します。王子ホールディングスは2019年に、湿気を防ぎやすい食品包装紙を投入します。量産によりプラスチック製品に比べ割高な生産コストを引き下げ、素材の置き換えを後押しします。
日本製紙はこのほど、紙製ストローの試作品を作りました。紙のにおいで風味を損なったり、強度が不足したりする一般的な紙製ストローの弱点を独自技術で克服。プラスチック製のストローは1本当たり1円以下なのに対して、紙製は5円程度とされます。スイスの紙容器大手テトラパックなど海外勢も代替素材開発を目指しているものの、日本製紙はプラスチックに迫る機能を実現する加工技術で先行しています。
また、日本製紙は果物や野菜などを使った飲み物「スムージー」などを紙の容器に詰めるための専用の機械を開発し、キャップ付きの紙の容器とともに、2019年から飲料メーカーに売り込むことにしています。
馬城文雄社長は9月に開いた新商品発表の記者会見で、「紙製のパッケージの開発は、『脱プラスチック』の潮流の中で、企業の強みになってくる。スピーディーに対応したい」と述べました。
王子ホールディングスは、家庭用ラップに使うプラスチックフィルムに匹敵する機能を持ち、スナック菓子の袋などにも使える食品包装紙を開発しました。表面に特殊な薬品を塗ることで、湿気や空気を通しにくくしました。量産によりプラスチックとの価格差を縮め、食品メーカーなどの採用を目指します。紙コップに使う紙製のフタも開発済みで、近く売り込みを始めます。
既存設備を拡充する動きもあり、北越コーポレーションは10月に、紙容器をつくる原紙の印刷能力を1割強増やすとしています。
国内の製紙業界は人口減少に加えて、なるべく紙を使わない「ペーパーレス化」などにより、厳しい経営環境が続いており、各社はプラスチック製品の代わりとなる紙製品を開発することで、新たな収益源にしたい考えです。
国際連合(UN)などによると、プラスチックの世界生産量は年約4億トン。用途は包装容器が最も多く、3分の1強を占めます。
プラスチックは投棄されたごみなどによる海洋汚染が問題となっており、削減に向けた取り組みが世界的に広がっています。フランスは法律で2020年にプラスチック製の使い捨て食器の禁止を決定。イギリスもプラスチック製ストローやマドラー、綿棒の販売を禁止する計画です。アメリカのスターバックスはプラスチック製ストロー使用を2020年までに、全世界の店舗で廃止します。アメリカのマクドナルドはイギリスとアイルランドで紙製に切り替えます。
2018年9月23日(日)
■iPS移植医療、富士フイルムが初の企業治験へ 2019年に開始
富士フイルムは2018年度にも、iPS細胞(人工多能性幹細胞)を使った移植医療について臨床試験(治験)を国に申請します。白血病の治療に伴って重い合併症になった患者が対象で、2022年の製造・販売承認を目指します。
iPS細胞の臨床応用は大学や研究機関などで進み始めましたが、富士フイルムは初の企業による治験を狙います。iPS移植医療は、薬や医療機器と同様に企業が事業化を目指す新たな段階に入ります。
すでに、医薬品医療機器法(薬機法)に基づき、国の審査機関との事前交渉をほぼ終えました。治験は骨髄移植した人の約4割がかかる「急性移植片対宿主病」の患者数十人を対象に、2019年に始めます。皮膚炎や肝炎のほか、下痢や嘔吐(おうと)を繰り返し、命を落とすこともあります。国内では年間1000人ほどが発症し、欧米主要国も含めると1万人が発症します。
富士フイルムが出資するオーストラリアのベンチャー、サイナータ・セラピューティクスがイギリスで治験を実施しており、途中段階で15人中14人で完治したり、症状が改善したりしています。国内治験はサイナータ・セラピューティクスのノウハウなどを引き継ぐ形で進めます。
他人のiPS細胞から軟骨や脂肪などに変化する間葉系幹細胞という特殊な細胞を作製して患者に注射。移植した骨髄に含まれる免疫細胞が患者の体を攻撃するのを抑え、症状を改善させます。
富士フイルムはアメリカでも治験を申請し、世界で実施する計画です。承認が得られれば、iPS細胞から間葉系幹細胞を量産し、製剤にして医療機関に販売します。間葉系幹細胞の移植は激しい下痢や血便の症状が出る潰瘍性大腸炎、動脈硬化や糖尿病がひどくなって発症する重症虚血肢、脳梗塞などの治療に効果が期待され、国内外で研究が進んでいます。
iPS細胞を使った難病の治療では、理化学研究所などが目の難病患者への移植を実施し、大阪大学が重症の心不全患者への計画を進めています。また、京都大学が難病のパーキンソン病で医師主導の治験を始めました。
企業による治験は、大日本住友製薬やベンチャー企業のヘリオスなども計画しています。企業治験が本格化すれば、iPS移植医療の実用化に向けた取り組みが一段と加速します。
2018年9月23日(日)
■メタボの該当者と予備軍、微増の1412万人 目標達成時期を先送り
厚生労働省は、2013~2022年度の国民の健康づくり計画「健康日本21」の中間評価を公表しました。メタボリック症候群の該当者と予備軍は2015年度時点で約1412万人となり、同年度に約1050万人まで減らす目標を達成できませんでした。このため厚労省は、目標の達成時期を2022年度まで先送りします。
健康日本21は、適正体重や運動習慣、食生活などについて2022年度までの10年間の数値目標を定めた計画。中間評価では、全53項目のうち健康上の問題がなく、介護を受けたり寝たきりになったりせずに日常生活を送れる「健康寿命」など約6割の項目で改善がみられました。
健康寿命は、策定した2008年度の男性70・42歳、女性73・62歳から、男性72・14歳、女性74・79歳と延伸。厚労省が「8020(ハチマルニイマル)運動」として推進する、80歳で自分の歯が20本以上ある人の割合は51・20%で「2022年度までに50%」とする目標をすでに達成しています。
一方で、メタボ該当者と予備軍については2008年度(約1400万人)よりも25%減らす目標に届きませんでした。体格指数(BMI)が25以上の「肥満」の人の割合も、20~60歳代男性では31・2%から32・4%と微増していました。
肥満傾向にある子供の割合は、小学5年生をみると、男子4・60%、女子3・39%から、男子4・55%、女子3・75%とあまり変わっていませんでした。
成人の喫煙率は19・50%から、18・30%と微減にとどまりました。また、進行した歯周病の人の割合は、2016年度時点で40歳代が44・7%、60歳代が62・0%で、2022年度までにそれぞれ25%、45%とする目標値を大きく下回っています。
2018年9月23日(日)
■WHO、飲酒が原因で年間300万人死亡 飲酒量の伸びアジアで顕著
世界保健機関(WHO)は21日、飲酒が原因で年間300万人が死亡しており、その数はエイズ(AIDS、後天性免疫不全症候群)や暴力、 交通事故による死者数の合計を上回るとする報告書を発表しました。このうち4分の3以上が男性だといいます。
WHOが発表した500ページ近い報告書によると、飲酒運転、飲酒によって引き起こされた暴力や虐待、さまざまな疾患といったアルコールが原因で死亡する人は世界の全死亡者の5%を超えています。
最新の統計によると、2016年に世界で死亡した人のうち約300万人が飲酒関連の死因で亡くなっていました。この年の世界の全死亡者に占める死因別の割合は飲酒関連が約5・3%、交通事故が2・5%、HIV(ヒト免疫不全ウイルス)およびエイズが1・8%、暴力が0・8%でした。一方で、WHOは世界的には「好ましい傾向」もみられると指摘。2010年以降、大量機会飲酒(WHOの定義によると純アルコール換算で60グラム以上の飲酒を30日に1回以上すること)や飲酒に起因する死亡事例は減少傾向にあるとしています。
WHOによれば、世界的にはアルコール使用障害の推計患者数は男性2億3700万人、女性4600万人に上ります。とりわけヨーロッパやアメリカなどの先進国で、アルコール使用障害の患者の割合が高いとしています。
アルコール消費量は世界的に偏りがみられ、世界人口のうち15歳を越える人の過半数はアルコールを一切摂取していません。1人当たりの飲酒量が最も多いのはヨーロッパで、2010年以降10%以上減ったものの、純アルコール換算で年間約10リットルとなっています。
しかし、WHOヨーロッパ地域事務所管轄の国のうち4分の3で飲酒量は減少しており、最も減少幅が大きかったのはロシア、モルドバ、ベラルーシでした。ロシアの15歳を越える人の年間平均飲酒量(純アルコール換算)は、2005年は18・7リットルだったのに対し、2016年には11・7リットルでした。
WHOの薬物乱用対策部門のウラジーミル・ポズニアック氏は報道陣に対し、ロシアの飲酒量の「劇的な減少」は、ロシア政府が打ち出したウオッカの最低小売価格の引き上げやアルコール広告の禁止といった「積極的な政策」の成果だと指摘しました。
しかし、WHOはヨーロッパ以外でのアルコール消費量は増え続けており、特に顕著な伸びをみせている中国とインドを抱えるアジアでその傾向が強いと指摘し、世界のアルコール消費量を2010年から2025年までの間に10%削減する目標に向けてさらなる対策を取るよう各国に求めています。
2018年9月22日(土)
■眼科や歯科もまとめて健康診断 新型人間ドックがオープンへ
一般的な人間ドックのメニューと比べて、より詳細な眼科検査・血液検査、さらには通常は行われない歯科検査ができる新型人間ドックのクリニック「KRD日本橋」が、10月中旬に東京都内にオープンします。
KRD日本橋は9月19日、内覧会を開きました。特徴的なのは、一般的な人間ドックや健康診断に含まれない眼や歯の状態をチェックできる点。眼科では視力検査のほか、眼底や網膜の断層写真の撮影などが受けられます。視野の広さを測るものまで含め、目だけで5種類の検査機器をそろえました。
健診の問診票や検査結果をクラウド上で管理する仕組みも採用しました。自宅などからオンラインで入力する問診票の項目は300を超え、食生活やライフスタイルまで網羅。受診者の幅広いデータを保存し、日常の健康管理にも役立てられます。
及川孝光理事長は、「個人の体の状態を詳しく調べることで、かかりつけ医のようにいろいろな相談ができるようにするのが理想だ」と語っています。
価格は検査項目により、税抜きで9万5000円、11万円、12万5000円。検査項目が多く、健康相談にも応じる考えのため、1日の受け入れ人数は50人ほどに抑える方針です。
クリニックの場所は、東京・日本橋の駅から歩いてすぐのビルの2階。白と黒を基調にした明るい色合いの内装で、病院のような重苦しい雰囲気は感じにくく、1階にはセミナースタジオ、クッキングスタジオも備えます。
2018年9月22日(土)
■人材派遣健保が来年4月に解散へ 51万人加入の国内第2位規模
全国の派遣社員とその家族約51万人が加入し、国内2位の規模となる健康保険組合の「人材派遣健康保険組合」(東京都文京区)が21日に臨時の組合会を開き、来年4月1日付で解散することを決めました。企業と従業員が折半する保険料率が9・7%まで上昇、今後見込まれるさらなる負担増を避ける狙いがあります。
関係者が明らかにしました。加入者の大半は、主に中小企業の社員らで構成する「協会けんぽ(全国健康保険協会)」に移行する見通し。移行人数としては、2008年の協会けんぽ発足以来最大。協会けんぽの平均保険料率は10%で、それを超える保険料率の組合は解散して移行したほうが負担軽減となります。
解散を決めたのは、加入者の高齢化と65歳以上の医療費を賄うための支出の重さから。高齢者の医療費は健康保険組合の拠出金で一部を賄う仕組みになっており、高齢化の進展に伴って拠出額は伸び続けています。人材派遣健康保険組合の2018年度予算は12億円の赤字で、積立金を取り崩して穴埋めしています。
生活協同組合の従業員とその家族約16万4000人が加入する「日生協健康保険組合」も、7月に解散を決めました。2つの健康保険組合が解散を決めたことは、医療費の増加などに苦しむ他の健保組合にも影響を与えそうです。
国は、協会けんぽが加入者の医療費として払った額の16・4%を補助します。今年度は1兆1745億円で、加入者が増えれば国費負担も増加します。
厚生労働省は、2つの健康保険組合の加入者が協会けんぽに移った場合、国費負担は年120億円増えると試算しています。
2018年9月22日(土)
■iPS血小板の再生医療、厚労省が了承 京大、年明けにも初の実施へ
iPS細胞(人工多能性幹細胞)から血液の成分である血小板を作り、難病の「再生不良性貧血」の患者に輸血する京都大学の研究チームの臨床研究について厚生労働省の専門部会は21日、計画の実施を了承しました。近く厚労相が正式承認します。
京大によるとiPS細胞を使った再生不良性貧血の臨床研究は世界初で、来年初めにも輸血を実施します。
再生不良性貧血は止血作用のある血小板などが減少する病気で、出血しやすくなるほか、感染症にかかりやすくなったり頭痛が起きたりします。治療は献血による血小板の輸血などで行いますが、特殊な免疫型を持つ患者は拒絶反応が起きるため通常の輸血ができません。
臨床研究は、こうした患者1人を対象に実施。患者自身の血液を採取してiPS細胞を作り、血小板に分化させて輸血することで拒絶反応を抑えた治療法の確立につなげます。
輸血は血小板の数を徐々に増やしながら、計3回行います。輸血終了から1年間、副作用などの悪影響が生じないか経過観察します。
iPS細胞を使う再生医療の研究は2014年に初めて網膜で移植が行われ、今年に入って心臓病や、脳の神経細胞が減るパーキンソン病でも国が計画を承認しました。これらは局所的な細胞移植ですが、輸血は全身に行き渡ることから、より慎重な実施が求められます。
研究チームを指揮する江藤浩之教授(幹細胞生物学)は21日、東京都内で開いた記者会見で「注意深い審議を経て了承いただいた。安全に注意しながら着々と準備を進めていきたい。今回の臨床研究で成果を上げることができれば、輸血用の血小板の開発も実現にむけて一歩進むことになると思う」と語りました。
再生不良性貧血の国内患者数は約5000人で、輸血用血小板は献血で集められているものの、安定供給に懸念もあります。このため研究チームは、京大で備蓄する健康な人のiPS細胞から血小板を作り患者に輸血する手法も研究しており、今回の臨床研究で得た知見を役立てます。
2018年9月21日(金)
人のiPS細胞(人工多能性幹細胞)から卵子のもとになる「卵原(らんげん)細胞」を作製することに、京都大学などの研究チームが世界で初めて成功しました。研究チームは、iPS細胞から人の卵子を作製する技術の確立に近付く成果だとしており、将来的に不妊症の原因の解明などに役立つとしています。
京都大学大学院医学研究科の斎藤通紀(みちのり)教授(細胞生物学)らの研究チームは、学内の倫理委員会の承認を得て、人のiPS細胞から生殖細胞のもとなる「始原生殖細胞」を作製し、さらにマウスの胎児から取り出した卵巣の細胞と一緒に容器の中で約3カ月培養しました。
すると、核が大きく、形が丸い細胞に変化し、形態や遺伝子の発現の特徴などから卵子のもとになる卵原細胞を作製することに初めて成功したということです。
卵原細胞は「卵母(らんぼ)細胞」と呼ばれる段階を経て卵子になるとされており、研究チームはiPS細胞から人の卵子を作製する技術の確立に近付く成果だとしています。
国の指針ではiPS細胞から作製した卵子を精子と受精させることは倫理的な問題があるとして禁止していますが、研究チームでは卵子ができる過程を明らかにすることで、将来的に不妊症の原因の解明などに役立つとしています。
斎藤教授は、「さらに改良してマウスの細胞を使うことなく、人の卵子を作る技術を確立したい。不妊症の女性のiPS細胞から卵子を作ることができれば、詳しい原因を探る研究が可能になる」と話しています。
2018年9月21日(金)
■2017年度の医療費、過去最高42・2兆円 2年ぶりの増加
厚生労働省は21日、2017年度に病気やけがの治療で全国の医療機関に支払われた医療費の速報値「概算医療費」を発表しました。前年度より9500億円増え、42兆2316億円となり、過去最高を記録しました。
国民1人当たりの医療費も、8000円増の33万3000円で過去最高となりました。いずれも2年ぶりの増加となります。
概算医療費は、医療保険給付費と公費、患者の自己負担分の合計。労災や全額自己負担となる治療費は含みません。約1年後に確定値として公表する「国民医療費」の約98%に相当します。
医療費の内訳は、「入院」が16兆9674億円で全体の40・2%を占めます。「入院外」は14兆4123億円で34・1%、医薬品の「調剤」が7兆7129億円で18・3%と続きました。
医療費増加の主な要因は、75歳以上の後期高齢者の医療費が伸びたこと。75歳以上の医療費は前年度から6800億円増の16兆円で、全体の増加分の7割超を占めました。3年前と比較すると1兆5000億円増えており、国民1人当たりで比較しても75歳未満の22万1000円に対し、75歳以上は94万2000円と4倍以上の金額となります。
厚労省の担当者は、「高齢化や医療の高度化を要因とした医療費の増加傾向は、しばらく続く」と分析しています。
また、厚労省は21日、2016年度の確定値の国民医療費も公表。保険診療の対象となる治療費の推計で、健康診断や予防接種などの費用は含みません。
2015年度から2263億円減り、42兆1381億円で、国民1人当たりでも1300円減の33万2000円でした。C型肝炎治療薬「ソバルディ」といった高額な医薬品の価格引き下げなどで、いずれも2006度以来10年ぶりの減少となりました。
年齢別では、65歳以上が25兆1584億円で全体の59・7%を占めました。そのうち75歳以上が15兆3796億円で、2015年度から2167億円増加しました。
2018年9月21日(金)
■心不全の入院患者26万人、毎年1万人ペースで増加 急速な高齢化が影響
心臓が血液を送り出す機能が低下する心臓病の1つ、心不全のために入院する患者が毎年約1万人ずつ増えていることが、国立循環器病研究センターなどの全国調査で明らかになりました。背景には急速に進む高齢化があるとみられています。
大阪府吹田市の国立循環器病研究センターは日本循環器学会と共同で、循環器の専門医がいる全国1353の施設を調査しています。循環器の病気で入院する患者のほぼすべてが、調査対象に含まれるといいます。
心不全はさまざまな原因により心臓の機能が低下して、全身に十分な血液を送り出すことができなくなる病気で、国内では毎年7万人以上が死亡するとされています。
19日に発表された調査結果によると、2012年に約21万人だった心不全の入院患者の数は毎年、1万人のぺースで増え続け、2016年には26万157人と5年間で約5万人増えていました。
さらに、このうちの約10万8000人を調べたところ、男性患者の平均年齢は75歳だったのに対して、女性患者は81歳で、高齢の女性では高血圧が原因の心不全が多かったということです。
国立循環器病研究センター循環器病統合情報センターの宮本恵宏センター長は、「急性心筋梗塞の治療態勢が進歩し、命を落とす患者が減ったが、心臓に後遺症を抱えて暮らす人が増えていることが心不全の1万人増加につながっている」と分析しています。高血圧などが増え、40歳代などの比較的若年で心筋梗塞を起こす人が増えていることも要因といいます。
調査によると、2016年の急性心筋梗塞での入院は7万3421人でした。
国立循環器病研究センターの安田聡副院長は、「心不全の中には、十分に治療法が確立されていないものもあり、死亡率も増えている。予防に力を入れるとともに、病院同士が連携して専門的な治療を提供できる体制作りが不可欠だ」と話しています。
心不全は、心臓の力が弱まってしまい、全身に十分な血液を送り出すことができなくなる状態。心筋梗塞や不整脈といったさまざまな心臓の病気や、高血圧などで引き起こされるとされています。心不全になると軽い運動をしたりするだけで息切れをするようになり、悪化すると安静にしていても息苦しくなることもあります。2018年9月21日(金)
■慶大病院、新規の不妊治療受け入れ停止 第三者からの精子提供が減少
匿名で提供された第三者の精子を使った不妊治療について、国内の実施件数の約半数を行ってきた慶応大学病院が、必要な精子の量を確保できなくなったため、8月から新規患者の受け入れを停止したことが明らかになりました。
第三者から匿名で提供された精子を使って人工授精する不妊治療は、病気で精子がないなどの理由で不妊となっている夫婦を対象に実施されており、慶大病院はこの治療を国内の実施件数の約半数に当たる年間1500件程度実施してきました。
慶大病院では1年間に10人以上の男性から精子の提供を受けてこの不妊治療を実施してきましたが、昨年から精子を提供する人が少なくなり、今年は8月の時点で1人もいないということです。このため病院では8月に、この方法による不妊治療の新たな患者の受け入れを停止しました。
この状況が続けば、1年後に治療そのものを続けられなくなる可能性があるとして、10月にも有識者を交えた会議を開き、どのように継続するか対策を検討することにしています。
精子の提供を巡っては、生まれた子供が匿名の精子の提供者に関する情報の開示を求めるなど、「出自を知る権利」が広く認識されるようになり、匿名を希望する提供者側にためらいが広がっていることがあると慶大病院ではみています。
国内では「出自を知る権利」は法律などで整備されておらず、慶大病院産婦人科の田中守教授は「1つの病院で対応するには限界があり、法律や制度を国が中心となって整備し、治療が続けられるようにしてほしい」と話しています。
海外では、スウェーデンやオーストリアなどで「出自を知る権利」を認める法律が整備されています。日本では厚生労働省の部会で制度を整備すれば、15歳以上の子供が精子提供者の氏名や住所などの情報の開示を請求できるとした報告書をまとめているほか、この治療で生まれた人たちで作る団体が「出自を知る権利」を保障すべきだと活動するなど、広く認識されるようになってきていますが、法律や制度の整備は行われていません。
一方、精子提供を巡っては、医療機関を介さず、インターネットなどを通じて個人的に精子の受け渡しを行うケースがあり、感染症の予防策が十分でないなど、医学的なリスクがあると指摘されています。
慶大病院の田中教授はこのまま治療が続けられない場合、リスクのある精子のやり取りが行われる可能性があると指摘しています。そして、治療を継続するためにも、新たに「出自を知る権利」を尊重した公的な精子提供者の登録システムを検討すべきでないかとしています。
2018年9月19日(水)
国立感染症研究所は19日、今年の風疹患者数が昨年1年間の5倍を超える496人になったと発表しました。関東地方を中心に感染が拡大し、患者が1万人を超えた2013年の大流行年前の状況に酷似しており、増加傾向が続けば2年後の東京オリンピック・パラリンピックへの影響が懸念されます。
国立感染症研究所によると、9月3~9日の1週間に新たに報告された全国の患者数は計127人で、1週間の患者数が今シーズン初めて100人を超えました。都道府県別では東京都が32人と最も多く、次いで、千葉県(27人)、神奈川県(19人)、埼玉県、愛知県(11人)、長野県(5人)が続きました。首都圏の患者が全体の7割以上を占めています。
流行はすでに34都道府県に及び、全患者数のうち男性が401人、女性は95人。30~40歳代の男性が目立ち、ワクチンの接種歴が「なし」や「不明」が多くなっています。
政府は東京オリンピック・パラリンピック開催年度までに風疹の「排除」を目指していますが。風疹は複数年にわたって流行が続くことがあり、排除は困難になる恐れもあります。
風疹は妊娠中の女性が感染すると、生まれてくる赤ちゃんの目や耳、それに心臓などに障害が起きる可能性もあります。風疹の症状は主に発熱や発疹など。症状のない患者の唾液が、くしゃみなどで飛散して感染を広げることもあります。
国立感染症研究所は今後、妊娠する可能性がある女性は2回のワクチン接種を受けておくとともに、妊婦の家族など周りにいる人で、風疹に感染した経験がなく、ワクチンを2回接種した記録がない人も接種を検討するよう呼び掛けています。また、ワクチンの定期接種がなかった世代の30歳代から50歳代の男性も抗体検査を受けるなどして、ワクチンが必要か十分に検討してほしいとしています。
2018年9月19日(水)
■インフルワクチン接種、13歳以上は原則1回に 安定した供給確保のため
厚生労働省は13日までに、今年度のインフルエンザワクチンの製造量は例年より多い約2650万本(1本で大人2回分)で、ワクチンの供給が遅れた2017年度の使用量2491万本を上回る見通しだと明らかにしました。
一方、全国で安定したワクチン供給を確保するため、2017年度から引き続き13歳以上の任意接種について原則として1回接種とするように周知する方針で、都道府県を通じて医療機関に通知しました。
厚労省によると、接種が2回必要と考えられるのは13歳未満の小児で、13歳以上は1回接種でも、ワクチンの効果が期待できます。ただ、ワクチンメーカーは従来、13歳以上に対しても接種回数を「1~2回」としてきたため、健康な大人でも2回接種を受ける人がいます。
インフルエンザが記録的な大流行となった昨季は、ワクチンの製造過程でウイルス株を変更したためシーズンの序盤に供給が遅れ、ワクチンを予定通り入荷できない医療機関が続出しました。今年度は例年のワクチン使用量と照らし合わせて、ワクチンを適切に使用すれば不足は生じない見通し。
2018年9月19日(水)
中高年の4割近くが認知症になるのが怖いと考えているとする調査結果を、日本医師会総合政策研究機構の主任研究員の坂口一樹さんらが発表しました。健康への不安では、体力の衰えに次いで高く、がんなど他の病気を大きく上回りました。
調査は、太陽生命保険が2017年3~4月に実施しました。無作為に抽出した被保険者5000人(40~70歳代)のうち、有効回答を得た1557人(男性336人、女性1221人)のデータを分析しました。
健康への不安に関する設問では、「体力が衰えてきた」が50・9%でトップ。次いで「認知症になるのが怖い」が37・6%で、「心筋梗塞や脳卒中」26・5%や「がん」26・1%より多いのが目立ちました。
認知症に関する不安や心配事では、「現在の介護保険制度がどうなるか心配」が82・9%に上りました。費用や相談先、受けられる介護サービスも選べる設問でしたが、それらへの不安を上回りました。
政府は認知症対策として国家戦略「新オレンジプラン(認知症施策推進総合戦略)」を掲げ、団塊の世代が75歳以上となる2025年に向けて適切な医療・介護の提供、支援のための地域づくりなどを推進しています。しかし、新オレンジプランを知っていると答えたのは5・8%にとどまりました。
坂口さんは、「経済力のあるシニア女性層が回答者に多い点を考慮する必要はあるが、認知症への不安ばかりが先行している状況がみて取れる結果となった。国は不安解消を政策の最優先課題にして取り組むべきだ」と話しています。
2018年9月18日(火)
全国の100歳以上の高齢者が9月1日現在、前年比2014人増の6万9785人に上り、1971年から48年連続で過去最多を更新したことが、14日公表された厚生労働省の調査で明らかになりました。20年前の6・9倍、10年前の1・9倍に達しました。
女性は6万1454人で全体の88・1%を占め、男性は8331人でした。厚労省は、「出生数の多い世代が100歳を迎えていることや医療技術の進歩などが要因と考えられる」と分析しています。
調査は敬老の日(今年は17日)を前に、毎年公表されています。国内最高齢は、福岡市で暮らす女性の田中カ子(かね)さんで115歳。今年7月22日から国内最高齢者となっています。男性は北海道足寄町の野中正造(まさぞう)さんで113歳。ギネスワールドレコーズ社は4月、野中さんを世界最高齢の男性と認定しています。
調査によると、人口10万人当たりの100歳以上の高齢者数は55・08人。都道府県別では島根県が101・02人で、6年連続で最多となりました。次いで、鳥取県(97・88人)、高知県(96・50人)、鹿児島県(95・76人)の順。
100歳以上が少ないのは埼玉県(32・90人)で、29年連続で最少となりました。次いで、愛知県(36・78人)、千葉県(39・34人)、大阪府(40・09人)の順となりました。
今年度中に100歳になった人と、100歳になる予定の人を合わせた人数は9月1日現在、3万2241人で、前年度と比べると144人多くなっています。
100歳を迎える人には、お祝い状と銀メッキ製の「銀杯」が贈られます。
老人福祉法が制定された1963年は100歳以上の人は153人でしたが、1998年に1万人を超え、2012年に5万人を突破しています。厚労省は昨年9月、100歳以上の人数を6万7824人と発表しましたが、一部自治体の集計に誤りがあったとして、6万7771人に訂正しました。
2018年9月18日(火)
酒を飲んだ翌日、アルコールが残った状態で車を運転して事故を起こす人が、後を絶ちません。警視庁によると、飲酒事故の約3割は朝から昼にかけての時間帯に発生しており、「一晩寝たから大丈夫」と過信してハンドルを握っているケースも少なくないとみられます。
人気アイドルグループ「モーニング娘。」元メンバーでタレントの吉沢ひとみ容疑者(33歳)が、9月6日午前7時ごろ、東京都中野区東中野2丁目の交差点で、酒気帯び状態で車を運転して赤信号を無視し、2人に軽傷を負わせたが、そのまま現場を離れた疑いがあるとして、警視庁中野署に逮捕されました。供述では、「前日に自宅で夫と午前0時ごろまで、缶酎ハイを3缶飲んだ」とのこと。
呼気検査で1リットル当たりの基準値0・15ミリグラムの約4倍、0・58ミリグラムのアルコールを検出。捜査関係者は、「検出量が多いので直前まで飲んでいた疑いも否定できないが、前夜に大量に飲んでから就寝し、二日酔い状態だった可能性もある」と話しています。
警視庁によると、東京都内で発生した飲酒運転事故は近年200件前後で推移し、午前6時~正午が約3割を占めます。「この時間帯の事故の多くは二日酔い運転とみられる」と捜査関係者は説明しています。
厚生労働省によると、肝臓のアルコール分解能力は、個人差はあるものの成人の男性で1時間に9グラム、女性で6・5グラム程度。ビールを500ミリリットル(アルコール約20グラム)飲めば、完全に分解されるのに2~3時間かかります。
全日本空輸の場合、航空機のパイロットについて搭乗前12時間以内の飲酒を禁止。飲酒量も「ビールは1リットル、日本酒は2合、焼酎は200ミリリットルまで」と制限しています。
アルコールなどの依存症患者を支援するNPO法人「ASK」(東京都中央区)の今成知美代表は、「アルコールが完全に抜けるには時間がかかる。前夜ある程度の飲酒をしたら翌朝はまだ残っていると考えたほうがよい」と注意を促しています。
多くの人は酒を飲んだすぐに運転するのが飲酒運転と思っているケースが多いようですが、体の中にアルコールが残っている二日酔い状態で運転するのも飲酒運転だと認識を改める必要ありそうです。
2018年9月18日(火)
敬老の日の17日、国内最高齢の115歳となる福岡市の田中カ子(かね)さんのもとを知事が訪ね、田中さんは「まだまだ勉強の身。長寿で世界一を目指す」と話しました。
福岡市東区の老人ホームで暮らす国内最高齢の田中さんは明治36(1903)年1月2日に、9人きょうだいの7人目として生まれ、米穀店に嫁ぎました。115歳で迎えた敬老の日の17日は、福岡県の小川洋知事が田中さんのもとを訪れ、「日本一のご長寿おめでとうございます」と声を掛け、長寿を祝う表彰状を贈りました。
田中さんは普段、買い物用の歩行器を押して老人ホーム内を歩き、一日3度の食事のほかにまんじゅう、チョコレートなどのおやつを欠かさず食べ、最近は炭酸飲料や缶コーヒーのカフェオレが好きだということです。
ほかの入所者と毎日オセロ風ゲームを楽しんだり、足し算や割り算など算数の問題集を解いたり、習字をしたりなどして、健康の維持に努めているといいます。
約10年前に大腸がんを患ったものの、その後の経過は良好。「みんなのお陰です」が口癖で、周囲への感謝を忘れず、「お母さん」と慕われています。田中さんは、「まだ死ぬ気がしません。せっかくここまで生きたから、まだどうもないです」と知事に話していました。
福岡県によりますと現在、同県内の100歳以上の高齢者は3071人で、来年3月には4000人を上回る見通しです。
2018年9月17日(月)
■青魚に含まれるオメガ3脂肪酸、不安を軽減 国立がん研究センター発表
サンマやサバ、イワシなどの青魚に多く含まれるオメガ3脂肪酸を摂取すると、患者の不安を和らげる効果があると国立がん研究センターなどの研究チームが発表しました。アメリカの医師会雑誌の関連誌に14日付で掲載されました。
研究チームは、サプリなどでオメガ3脂肪酸を摂取した人と摂取しなかった人を比べた、日本を含む11カ国の19研究、不安症状を抱える計2240人ぶんのデータを分析しました。うつ病や心的外傷後ストレス障害、心筋梗塞(こうそく)などさまざまな患者を含んでいます。その結果、オメガ3脂肪酸を1日2グラム以上摂取した人は摂取しなかった人に比べて、不安症状が和らいでいました。
オメガ3脂肪酸は、人間の体内でつくることができない必須脂肪酸の一つで、青魚に多いDHA(ドコサヘキサエン酸)、EPA(エイコサペンタエン酸)などに多く含まれています。2グラムはサンマ1・5匹ほどに相当するといいます。
データを分析した国立がん研究センターの松岡豊・健康支援研究部長によると、不安を軽減する仕組みはわかっていないものの、マウスの研究ではオメガ3脂肪酸の比率が高い餌を習慣的に食べさせると、脳の恐怖をつかさどる部分の働きを抑えることが指摘されており、「今後、大規模な臨床試験などで詳しく調べ、患者が抱える不安を薬を使わずに和らげられるようにしたい」と話しています。
2018年9月17日(月)
■モスバーガー、食中毒でさらに1店を営業停止 長野県茅野市
諏訪保健所(長野県諏訪市)は16日、「モスバーガー茅野沖田店」(長野県茅野市)が食中毒の原因施設だったとして、18日まで3日間の営業停止処分にしたと発表しました。
8月18日に同店の商品を食べた20歳代の男女2人が下痢や腹痛などの食中毒の症状を訴え、うち1人が入院。長野県環境保全研究所の検査で、2人の便から検出された腸管出血性大腸菌O121は同じ遺伝子型でした。2人は快方へ向かっているといいます。
長野県内では、「モスバーガー アリオ上田店」(上田市)を8月20日に利用した長野、小諸両市などの10~20歳代の男女計4人が下痢や腹痛などの食中毒の症状を訴え、同店は3日間の営業停止処分を受けました。
ハンバーガーチェーンを営むモスフードサービスによると、茅野沖田店やアリオ上田店を含む関東甲信地方8都県にある19店を8月10~23日に利用した計28人が腸管出血性大腸菌O121に感染。チェーン本部から各店に納めた食材が原因の可能性が高いとしています。
モスフードサービスは、厚生労働省や自治体が調査中のため、他の店舗名の公表を「差し控えたい」としています。
2018年9月17日(月)
■本気で自殺を考えた人の67%は1年後も同じ心境 日本財団調査
2016年の調査時に「本気で自殺したいと考えている」と答えた人の67%が、1年後の2017年の調査でも同じ考えを抱き続けているとの調査結果を、公益・福祉事業を手掛ける公益財団法人「日本財団」が13日に公表しました。自殺未遂をした人の55%が繰り返していたとの調査結果も出たといいます。調査に携わった専門家は、継続的な支援体制の必要性を訴えています。
日本財団は2016年8月、全国の20歳以上の男女を対象に自殺に関する意識調査をインターネット上で実施。得られた約4万人の回答を分析し、「25%が過去に本気で自殺を考えたことがある」と発表しました。今回は2017年7月、2016年調査の回答者に質問する「追跡調査」をインターネット上で行い、2万1142人の回答を分析しました。
2016年調査で「1年以内に本気で自殺を考えた」と回答したのは3%。その中で2017年調査に応じた人の67%が、再び「1年以内に本気で自殺を考えた」と回答しました。同様に2016年調査で「1年以内に自殺未遂をした」とした人のうち、55%が今回も過去1年以内に自殺未遂をしたと答えたといいます。
自殺念慮の原因を調査したところ、「家庭の問題・健康問題・経済的な問題」を抱えている人が19%で最多。「経済的な問題・仕事上の問題・健康問題」(8%)、「家庭の問題のみ」(7%)、「仕事上の問題、家庭の問題、健康問題」(5%)という結果でした。
健康問題が自殺念慮につながっている人の多くは、心身に持病を抱えていました。また、家庭の問題を抱えている人の多くは、「離婚」「死別」が自殺念慮の原因になっていました。
一方、この1年間で「自殺念慮がなくなった」と答えた人は、不和など家庭の問題が解消されているケースが多数でした。
また、調査では、自殺や自殺未遂を防ぐには「地域社会との程よい関係性」「地域への愛着」が重要な役割を果たすことが判明しました。
調査対象者と近隣住民との関係性を調べたところ、「あいさつ程度の付き合いがある」「日常的に立ち話をする」と答えた人は、自殺念慮が軽減されるケースが多くなりました。
ただ、相談や日用品の貸し借りをするなど、「生活面で近隣住民に協力してもらっている」と答えた人には、自殺念慮を軽減する効果がみられないことがあり、日本財団は「親密すぎるよりも、適度な距離感があるほうが自殺念慮を抱かなくなる」と分析いsています。
また、住んでいる地域への愛着を聞いたところ、「引っ越したい(住み続けたくない)」と答えた人よりも、「どちらかといえば住み続けたい」「住み続けたい」と答えた人のほうが自殺念慮が抑えられていることもわかりました。
調査対象者がスポーツや趣味・娯楽活動に取り組んでいる場合は、「年に数回」「週1日程度」の頻度であれば自殺念慮が軽減される効果があったものの、「週に2~3日以上」と多い場合は逆に悪化させることもわかりました。
睡眠時間については、働く女性は7時間、男性は8時間程度の睡眠が自殺念慮の軽減効果があるものの、それより長い場合と短い場合は逆効果であることもわかりました。
調査の中心を担った世界平和研究所の高橋義明主任研究員は、「一度自殺を本気で考えると、その気持ちは簡単には消えない。一人一人の事情を踏まえた継続的な支援が求められる」と話しています。日本財団は、「本調査の実施を通して、自殺対策の必要性について社会の機運を醸成し、自殺対策を実施する自治体や民間団体が、施策や事業をより促進していくことを目指す」としています。
2018年9月16日(日)
■イグ・ノーベル賞、日本人医師が受賞 自分自身で大腸内視鏡検査
ノーベル賞のパロディーで、ユニークな研究に贈られる第28回「イグ・ノーベル賞」の授賞式がアメリカのハーバード大学で行われ、座った姿勢で自分で尻から内視鏡を入れ大腸の状態を調べる研究を行った長野県の医師が「医学教育賞」を受賞し、日本人の受賞は2007年から12年連続となりました。
イグ・ノーベル賞は1991年にノーベル賞のパロディーとして、アメリカの科学誌「風変わりな研究の年報」が始めた賞で、ハーバード大学で13日、授賞式が行われました。
このうち医学教育賞は、長野県駒ヶ根市の昭和伊南総合病院の消化器病センター長、堀内朗(あきら)医師が受賞しました。堀内医師は、座った姿勢で自分自身で尻から内視鏡を入れて大腸の状態を診ることが可能か調べ、個人的な経験としては簡単に効率的にできたと論文にまとめました。
授賞式では、白衣姿の堀内医師が実際にどのように内視鏡を入れるか身ぶりで示しながら、「左手で動かして右手で入れる」などと説明すると、会場は大きな笑いに包まれました。
堀内医師は、内視鏡の検診が楽になる方法を試行錯誤する中、研究を行ったということで、少量の麻酔を使うことで、不快感が少なく手軽な大腸内視鏡検査法を2006年に実現。この手法は全国の医療機関から注目され、「駒ヶ根方式」と呼ばれているといいます。
受賞スピーチで堀内医師は、「受賞に戸惑っていますが、これを切っ掛けに多くの人が検診を受け、大腸がんで亡くなる人が減ってほしいと思います。内視鏡検査を受けてくださいね」と話していました。
観客の男性は、「自分で内視鏡検査をするのは面白そうですが、私なら医師にやってもらうのを選ぶでしょうね」などと話していました。
イグ・ノーベル賞の主催者のマーク・エイブラハムズさんは、「多くの医師が堀内さんから学ぶことになると思います。日本の研究者は豊かな想像力があり、突飛で、素晴らしいと思います」と述べました。
その上で、「誰もわかっていないことを理解しようとするのが本当の研究で、それによって利益が上がるかどうかは関係ありません。自分の研究に没頭できる研究者がいることは希望になると思います」と話していました。
今年のイグ・ノーベル賞は、世界で最も名誉ある賞とされる本物のノーベル賞と同様、合わせて10の分野で、まず人々を笑わせ、それから考えさせるような個性的な研究を行った研究者が受賞しました。
このうち「医学賞」は、ジェットコースターに乗ることで腎臓にできた結石を早く排出できるかどうか調べたアメリカの研究者2人が受賞しました。「栄養学賞」は、人肉は他のほとんどの肉よりも著しく低カロリーであることを突き止めたイギリスとタンザニア、ジンバブエの研究チームに贈られました。
また、「人類学賞」は動物園にいるチンパンジーが、見学に訪れた人がチンパンジーのものまねをするのと同じくらいの頻度で、人間のものまねをしていると突き止めたスウェーデンやルーマニア、インドネシアなどの研究チームが受賞し、「化学賞」は絵画などの表面についた汚れを唾液を塗って、きれいにできるか調べたポルトガルの研究チームが受賞しています。
人間の日常の行動をユニークな視点で分析した研究も受賞しており、複雑な製品を使う人のほとんどは取扱説明書を読まないことを証明したオーストラリアやセルビアなどの研究チームが「文学賞」、車を運転している時に叫んだり、悪態をついたりすることの頻度や効果などを調べたスペインとコロンビアの研究者が「平和賞」を受賞しました。
2018年9月16日(日)
■今年のがん患者、101万人と予測 国立がん研究センター
国立がん研究センターは15日、2018年に新たにがんと診断される患者は前年比400人減の約101万3600人との予測を発表しました。
ピロリ菌感染率や喫煙率の低下を背景に、患者数の横ばい傾向がみられるといいます。
国立がん研究センターによると、予測患者数は高齢化などにより2016年に100万人を超え、高い水準で推移しているものの、大幅な増加はみられなくなっています。
胃がんの危険性を高めるピロリ菌の感染率が世代が若くなるほど下がり、胃がん患者が減っていることや、男性の喫煙率が下がり、がん全体が減っていることが背景にあります。女性のがんも増加傾向が緩やかになってきました。
患者数は男性57万4800人、女性43万8700人。部位別では、大腸がんの15万2100人、胃がんの12万8700人、肺がんの12万5100人、女性乳房がんの8万6500人の順に多くなりました。
さらに、今年のがんによる死亡者数は、男性が22万3000人、女性が15万7000人の合わせて37万9900人と予測され、昨年の予測に比べ、約2000人増加するとしています。
国立がん研究センターがん統計・総合解析研究部の片野田耕太部長は、「喫煙率の低下などによる肺がん患者などの減少と高齢化による患者の増加とが相殺され、患者数はしばらく横ばいが続くだろう。がん検診の徹底などできることはまだ多く、国や自治体は対策や評価に役立ててほしい」と話しています。
国立がん研究センターはまた、2014年に全国でがんと診断された患者は86万7408人で、過去最多を更新したと発表しました。前年推計から約5000人増え、部位別では大腸がんが胃がんを上回って2年ぶりに最多となりました。日本人に多い胃がんは2年連続で患者数が減り、戦後の衛生状態の改善により原因となるピロリ菌の保有者が減った影響と考えられます。
例年のがん患者数は、精度の高い、複数の県のデータを基に全国値を推計していましたが、全国で精度が上がり、初めて実際の値を公表しました。
新規患者数の内訳は、男性50万1527人、女性36万5881人。部位別では、男性は胃がん、肺がん、大腸がん、前立腺がん、肝臓がんで全体の68・0%、女性は乳房がん、大腸がん、胃がん、肺がん、子宮がんで64・1%を占めました。近年は特に、男性の前立腺がんや大腸がん、女性の乳房がんや大腸がんの増加が目立ちます。
片野田部長は、「細菌やウイルス感染が原因になる胃や肝臓のがんが減少傾向にある一方、大腸がんは増えている。生活習慣の影響が大きいのではないか」と話しています。
一方、人口10万人当たりの患者数(罹患(りかん)率)は、354・6人(男性429・4人、女性300・7人)。都道府県別でみると、最多の富山県と最少の千葉県で約140人の差があります。ただし、データの精度や検診の普及の度合いに左右されるため、罹患率の高い地域の住人ががんになりやすいとはいえないといいます。
2016年のがんによる死亡者数も発表され、男性が21万9785人、女性が15万3201人の合わせて37万2986人で過去最多でした。部位別では、肺がん、大腸がん、胃がん、膵臓(すいぞう)がん、肝臓がんの順に多くなりました。
2018年9月15日(土)
ハンバーガーチェーン「モスバーガー」の関東地方などの19の店舗を8月に利用した客28人が、食中毒の症状を訴えていたことがわかりました。モスバーガーの運営会社では、「チェーン本部から納入した食材が原因となった可能性が極めて高い」として謝罪しています。
モスバーガーでは、長野県上田市にある「モスバーガー アリオ上田店」を8月20日に利用した長野、小諸両市などの10~20歳代の男女計4人が腹痛や下痢などの食中毒の症状を訴え、保健所は9月10日、腸管出血性大腸菌O121による食中毒と断定し、3日間の営業停止処分としました。
厚生労働省によりますと、このケースを含め、8月10日から23日にかけてモスバーガーの19の店舗を利用した客合わせて28人が同じ症状を訴えて、医療機関を受診していました。
このうち9つの店舗を利用した12人から検出した腸管出血性大腸菌O121の遺伝子の型が一致したということです。
入院した患者もいましたが、いずれも重症ではなく、快方に向かっているということです。
モスバーガーを運営する「モスフードサービス」によりますと、食中毒の症状を訴えた患者が利用していたのは栃木県、群馬県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、山梨県、長野県の8つの都県の店舗だということです。
モスフードサービスは、「発症されたお客様とご家族の方々には、多大なる苦痛とご迷惑をお掛けしましたことを心よりおわび申し上げます。考えられるすべての要因に対して対策を講じ、再発防止に取り組んでまいります」などとするコメントを発表しました。
再発防止策として、肉と野菜について店舗への納入前の検査項目に、新たに腸管出血性大腸菌O121などを追加することを決めたということです。
2018年9月15日(土)
■胃がんによる死者数、5年連続で減少傾向が続く ピロリ菌除菌治療の普及も一因に
肺がん、大腸がんと並ぶ日本人の3大がんである胃がんによる死者数の減少傾向が5年連続で続き、医療関係者からは「画期的だ」という声も上がっています。胃がんの原因となる菌の除菌治療が、保険適用で普及したことが一因とみられます。胃がんのリスクを見極める検査を導入する自治体も増えており、減少傾向がさらに続くことが期待されています。
胃がんは日本人最多のがんで、国立がん研究センターの2013年の統計によると、年間に新たに胃がんと診断された患者数は13万1893人。大腸がんの13万1389人、肺がんの11万1837人を上回っています。
しかし、国立がん研究センターの2016年の統計によると、胃がんによる年間の死者数は4万5531人。これは、大腸がんの5万99人、肺がんの7万3838人より少なくなっています。
一貫して死者数の増加傾向が続く大腸がんや2016年に初めて減少に転じた肺がんに対し、胃がんは1973年に初めて5万人超えて以降、40年間ほぼ5万人弱で推移してきたものが、2011年以降は減り続け、2016年までの5年でおよそ1割減となりました。
この胃がんの死者数の減少傾向について、胃の粘膜に生息するピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)研究の第一人者でもある北海道医療大学の浅香正博(あさか・まさひろ)学長は、「画期的です。保険適用の拡大で、ピロリ菌除菌治療を受ける人が増えた成果と思われる」と話しています。
胃がんについては、世界保健機関(WHO)の専門組織「国際がん研究機関(IARC)」が2014年、「胃がん対策はピロリ菌除菌治療を中心とすべき」とする報告書をまとめています。IARCによると、胃がんの8割はピロリ菌感染が原因で、除菌によって発症は3~4割減ります。
日本は2013年2月、それまでの胃・十二指腸潰瘍に加え、慢性胃炎にもピロリ菌除菌治療の保険適用を拡大。その結果、除菌治療を受ける人が増えました。除菌が必要か調べる際の内視鏡検査で早期胃がんが発見される頻度が増す効果もあり、相乗効果的に死者数の減少につながったというのが、浅香学長の見解です。
もっとも、厚生労働省がん疾病対策課は、死者数ではなく「年齢構成を補正した年齢調整死亡率」を基準とした上で、「胃がんの死亡率は50年前から減少している。検診の普及や治療技術の進歩、ピロリ菌感染者の減少などさまざまな理由が考えられる」とし、除菌治療の成果とする考えには否定的です。
厚労省のがん検診の指針では、胃がん対策として50歳以上に2年に1回のバリウムか内視鏡の検査を推奨している一方、ピロリ菌検査は推奨していません。
それでも、ピロリ菌検査の導入は、自治体や企業で独自に進んでいます。中でも、血液検査でピロリ菌感染と胃粘膜委縮の有無を調べ、胃がん発症の危険度合いを調べる「胃がんリスク層別化検査(胃がんリスク検診)」を導入する自治体は2017年度で277を数え、全自治体の16%に上ります。
NPO法人「日本胃がん予知・診断・治療研究機構」事務局長の笹島雅彦医師は、「リスク検診で高リスクに分類された人が確実に内視鏡による検診を受ける。これが、胃がんの早期発見・治療につながり、さらなる胃がんの死者減が期待できる」と話しています。
すでに2008年度からリスク検診を導入している東京都目黒区では、2017年度までに約4万6000人が受け、10年間で100人に胃がんが見付かりました。目黒区健康推進課は「導入前の検診による発見は年1~2人だったが、導入後は平均年10人。7割が早期がんで、早期治療につながった」と評価しています。
北海道医療大学では4月から学生にピロリ菌検査を義務付け、感染者には同意を得た上で内視鏡検査とピロリ菌除菌治療を実施。検査と治療にかかる費用は大学が負担しています。来年4月からは職員のバリウム検診を廃止し、リスク検診に切り替える予定です。
浅香学長は、「胃がんで命を落とすのは“もったいない”時代に入った。ピロリ菌感染の有無が不明の人はぜひ一度検査を受け、感染がわかったら除菌治療や定期的な内視鏡検査を受けてほしい」と呼び掛けています。
2018年9月14日(金)
■飲食店で受動喫煙、4割が経験 厚労省調査
飲食店で普段たばこを吸わない人の4割が受動喫煙を経験したことが、厚生労働省が11日に発表した昨年の国民健康・栄養調査で明らかになりました。東京オリンピック・パラリンピックを控え、受動喫煙防止が十分に進まない実態が改めて浮かび上がりました。
調査は昨年11月、全国の保健所を通じて行われ、喫煙など生活習慣に関する質問は、20歳以上の約6600人から回答を得ました。
非喫煙者のうち、1カ月以内に飲食店にゆき、他人のたばこの煙を吸ったと答えたのは42%でした。パチンコ店など遊技場に出掛けて受動喫煙を経験したのは37%。同様に路上32%、職場30%、公共交通機関13%、医療機関7%でした。こうした割合は、ここ数年、ほぼ横ばいで推移しています。
喫煙者の比率は減少が続き、男性は29・4%と初めて30%を切りました。女性は7・2%で、男女を合わせた比率は17・7%と、いずれも調査を始めた1986年以来、最低を更新しました。
7月に健康増進法が改正され、学校や病院などの屋内は全面禁煙になります。しかし、客席の面積100平方メートル以下の小規模な飲食店などは、例外として喫煙が認められます。国際的な水準と比べると、日本の規制は不十分と指摘されています。
2018年9月13日(木)
■体外受精で18人に1人誕生 2016年、5万4110人で最多更新
日本産科婦人科学会は12日、2016年に国内で行われた体外受精によって5万4110人の子供が生まれたとの調査結果をまとめました。2015年に比べて3109人増え、過去最多を更新しました。
厚生労働省の統計では2016年の総出生数は97万6978人で、18人に1人が体外受精で生まれた計算になります。
晩婚化を背景に不妊に悩む夫婦が増える中、費用の一部を公費助成する制度が知られるようになり、治療を受ける人が増加したとみられます。国は比較的成功率が高いとされる42歳までの女性を対象に公費助成しています。
体外受精は取り出した精子と卵子を体外で受精させて子宮に戻す不妊治療。卵子に針を刺して精子を注入する方法や受精卵を凍結保存する技術が開発されるなど、進歩してきました。特に凍結保存は妊娠時期を調整できることから利用者が多く、2016年の体外受精で生まれた子供の8割を超える4万4678人がこの方法でした。
日本産科婦人科学会によると、2016年は過去最多の44万7790件の体外受精が行われ、妊娠後に5万4110人の子供が生まれました。体外受精で生まれる子供の割合は、2000年には97人に1人でしたが、十数年間で急速に増えたことになります。
東北大学で国内で初めて体外受精児が誕生した1983年以降、累計で53万6737人となり、50万人を突破しました。
調査にかかわった埼玉医科大学の石原理教授(産婦人科)は、「体外受精で生まれる子供の割合が増えているのは、晩婚化と出産年齢の高齢化が背景にあるが、それだけでは説明ができなくなってきた。経済的支援の体制が少しずつ整ってきて、体外受精をすることが、金銭的問題でこれまで受けられなかった若い世代にまで広がったのではないか。また分母となる出生数が減っているのも原因となっている可能性がある」と話しています。
2018年9月13日(木)
■国立がん研究センター、がんの3年生存率を初公表 膵臓15%、前立腺99%
国立がん研究センターは11日、2011年に全国のがん診療連携拠点病院でがんと診断された患者の3年後の生存率は、がん全体で71・3%だったと発表しました。3年生存率をまとめるのは初めて。継続的に分析することで、新しい薬や治療の効果を早く把握できるようになり、がん対策に活用できるとしています。
早期発見が難しい膵臓(すいぞう)がんの3年生存率が15・1%にとどまるなど、5年生存率が低いがんは3年でも低い傾向がみられ、新たな治療法開発など、難治性がん対策の必要性が改めて浮き彫りになった。高齢がん患者では、持病などがん以外の病気で死亡する例が多いと考えられることも判明しました。
拠点病院のうち268施設の患者約30万6000人を分析。主要な11種類のがんについて、がん以外の死亡の影響を取り除いた「相対生存率」を算出しました。治療成績を評価する指標として国立がん研究センターはこれまでに5年や10年生存率を発表していますが、3年生存率は短期間で集計できる利点があります。
種類別では、肺がんが49・4%、食道がんが52・0%、肝臓がんが53・6%と比較的低い結果になった一方で、前立腺がんは99・0%、乳がんは95・2%、子宮体がんは85・5%と比較的高い結果になりました。
これとは別に、2008年から2009年に診断されたがん患者の5年生存率も、全国230の病院名とともにステージ(病期)別に初めて公表。全体の生存率は65・8%で、2008年単独集計の65・2%と比べるとほぼ横ばいでした。
2018年9月12日(水)
■がん5年生存率、ステージ別に初公表 国立がん研究センター
全国のがんの拠点病院などで治療が行われたがん患者を各がんのステージ(病期)別に5年生存率を集計し、国立がん研究センターが初めて公表しました。国立がん研究センターでは、患者側が病院を選ぶ際の参考材料の1つになるのではないかとしています。
国立がん研究センターでは2008年から2009年までの2年間にがんの拠点病院など全国251の医療機関で治療した約50万人のがん患者のデータを集計し、大腸、胃、肺、乳房、肝臓の各がんの進行度合いを示すステージ別に、診断から5年後に生きている人の割合を示した5年生存率を初めて公表しました。
すべてのがんでの5年生存率は65・8%。このうち、国立がん研究センター中央病院が治療した胃がんの患者では、最も早期に当たるステージ1で91・8%、ステージ2で71・5%、ステージ3で64・6%、ステージ4で14・5%などとなっています。肺がんの患者では、ステージ1で85・5%、ステージ4で10・3%、全体で60・6%。一方、がん研有明病院が治療した肺がんの患者では、ステージ1で84・2%、ステージ4で4・5%、全体で52・2%となっています。
こうしたデータは公表を見送った病院を除く全国230の医療機関について、国立がん研究センターのホームページで見ることができます。
国立がん研究センターは生存率の単純な比較はできないとしていますが、公表データには医療機関ごとに症例数や患者の年代、手術の有無など生存率に影響する患者の背景などが詳しく示されており、患者が主治医と相談して病院を選ぶ際に参考材料の1つになるのではないかとしています。
集計を行った国立がん研究センターの東尚弘・がん登録センター長は、「こうしたデータで患者側が病院の特徴を知り選ぶ参考にするとともに、病院側が改善する努力にもつなげてほしい」と話しています。
一般に、各医療機関の5年生存率は治療成績を測る指標とされています。
今回公表された東京都内の11の医療機関のデータを例にみてみると、胃がんのステージ3では生存率が最も低いところは11・7%で、最も高いところの40・4%と比べると30%近い差がありました。大腸がんのステージ3でも最も低いところは41・0%で、最も高いところの85・7%とは約40%の差がありました。
ただし、国立がん研究センターは今回公表した5年生存率について、医療機関の間で単純な比較はできないとしています。その理由として、ステージ別にみると症例数が少なくなり、精度が低い数字が含まれていることを挙げています。
さらに、同じステージでも比較的難しい症例やがん以外の合併症のある患者、それに高齢の患者などそもそも治療が難しいケースでも受け入れて治療をする医療機関は5年生存率が低くなる傾向になります。一方で、若い患者が多く、手術を妨げる要因が少ない患者を増やせば5年生存率も高くなり、治療成績が高い医療機関のようにみえます。
集計を行った国立がん研究センターでは、5年生存率のデータ以外にも症例数や年齢、それに医療機関側のコメントなどを含め総合的に判断することが重要だとしています。
2018年9月12日(水)
■1日の平均睡眠時間、40歳代の半数が6時間未満 厚労省の国民健康・栄養調査
日本人の40歳代の約半数が1日の平均睡眠時間が6時間未満であることが、厚生労働省が11日に公表した2017年の「国民健康・栄養調査」でわかりました。
厚労省は、睡眠不足になると精神的な病気や高血圧などにつながる恐れがあるとして、注意を呼び掛けています。
厚労省は昨年11月、全国の20歳以上の男女約6500人を対象に睡眠時間などの生活習慣について調査しました。
1日の平均睡眠時間は6時間以上7時間未満の割合が最も高く、全体で男性が35・0%、女性が33・4%でした。1日の平均睡眠時間が6時間未満(5時間以上6時間未満と5時間未満の合計)だった人は、全体で男性が36・1%、女性が42・1%に上りました。中でも40歳代が最も多く、男性が48・5%、女性は52・4%と約半数に上りました。
また、平均の睡眠時間が5時間未満という人は、全体では男性が7・5%、女性が9・2%で、40歳代では男性が11・3%、女性は10・6%でした。仕事や家事の負担が、睡眠不足の主な原因とみられています。
さらに、直近の1カ月間に睡眠で休養が十分に取れたか尋ねたところ、「あまり取れていない」や「全く取れていない」と答えた人は、全体では20・2%に上り、40歳代男女では30・9%に達しました。続いて、50歳代男女では28・4%、30歳代男女では27・6%でした。
休養が十分に取れていないと答える人の割合は、2009年の調査以降、徐々に増えており、厚労省は「睡眠不足になると精神的な病気や肥満、それに高血圧などにつながる恐れがあり、働く時間を短くしたり、家事を家族で分担したりして適切な睡眠時間を確保してほしい」と呼び掛けています。
同時に、日本人の栄養素等摂取量の状況について尋ねたところ、1日当たりのカロリー摂取量は、60歳代が男女とも最も多く、男性が2218kcal、女性が1794kcalでした。エネルギー摂取量に占める脂質摂取量の割合(脂肪エネルギー比率)は、年齢が高いほど低 く、炭水化物摂取量の割合(炭水化物エネルギー比率)は、年齢が高いほど高い傾向にありました。たんぱく質の食品群別摂取構成は、年齢が高いほど肉類からの摂取割合が低く、魚介類からの摂取割合は高い傾向にありました。また、炭水化物の食品群別摂取構成は、すべての年齢階級で穀類からの摂取割合が最も高いものの、その割合は年齢が高いほど低い傾向にありました。
厚労省は、「今の60歳代は元々食事をよく取っていた世代で、若い世代はカロリー摂取の低い傾向が続いている」と分析しています。
2018年9月12日(水)
■習慣的な喫煙者、男性で初めて3割下回る 厚労省調査
たばこを習慣的に吸っている人の割合は昨年、男性が29%と初めて3割を下回ったことが、2017年の国民健康・栄養調査でわかりました。厚生労働省は、たばこによる健康被害が広く知られたほか、受動喫煙対策が進んでいることも要因ではないかと分析しています。
厚労省は昨年11月、全国の20歳以上の男女約6500人を対象に喫煙の状況などについて調査しました。
厚労省は合計100本以上か6カ月間以上たばこを吸った経験があり、直近の1カ月間に毎日または時々たばこを吸っている人を「習慣的な喫煙者」と定義。その割合(喫煙率)は男性が29・4%となり、調査を始めた1986年以降で初めて3割を下回りました。
一方、女性は7・2%で男女を合わせた喫煙率は17・7%と、こちらも最も少なくなりました。
喫煙率は10年間で男性が10ポイント、女性は3・8ポイント、全体では6・4ポイント低下しています。
さらに、たばこを吸っている人のうち、喫煙をやめたいと思っている人は男性が26・1%、女性は39%に上っています。
喫煙率が低下したことについて厚労省は、「たばこによる健康被害が広く知られるようになったほか、受動喫煙対策が進み、喫煙できる場所が減っていることなども要因ではないか」と分析しています。
厚労省は4年後までに喫煙率を今の17・7%から12%まで引き下げる目標を掲げており、たばこをやめたい人には禁煙外来の受診を呼び掛ける取り組みなどを進めています。
2018年9月11日(火)
■回転寿司「魚屋路」で食中毒が相次ぐ 全24店舗の営業を自粛
外食チェーン大手の「すかいらーくグループ」が展開する回転寿司「魚屋路(ととやみち)」で食中毒が相次いで発生し、東京都や埼玉県などにある24の全店舗で営業自粛を行いました。
埼玉県によりますと、8月31日から9月2日にかけて、三郷市と所沢市にある回転寿司「魚屋路」の店舗で、持ち帰り用の寿司を購入した10歳代から70歳代の男女11人が、下痢や嘔吐などの症状を訴えました。症状を訴えた11人は、いずれも快方に向かっているということです。
保健所が検査したところ、症状を訴えた3人と店舗にあった商品の生ウニから、感染すると下痢や嘔吐を引き起こす「腸炎ビブリオ菌」が検出され、保健所は食中毒と判断したということです。埼玉県は食中毒が発生した2つの店舗を、10日から12日までの3日間、営業停止処分としました。
また、横浜市にある「魚屋路」2店舗でも8月31日から9月2日にかけて、宅配商品や持ち帰り商品で提供された寿司を食べた28人が下痢や嘔吐の症状を訴え、保健所の指導による社内検査で生ウニから腸炎ビブリオ菌が検出されました。2店舗は4日から営業を自粛し、保健所から7日までに営業停止処分を受けました。
店舗を運営する「すかいらーく」は他の店舗にも被害が出ている恐れがあるとして、東京都、神奈川県、埼玉県、山梨県の4都県で展開する「魚屋路」の全24店舗で、10日から営業を自粛しました。
「すかいらーく」は、「発生原因の特定に取り組むとともに、店の衛生管理を徹底し、食品の安全・安心に取り組んでまいります」とコメントしています。
2018年9月11日(火)
■風疹患者75人増、今年に入り全国で362人に すでに昨年の4倍
国立感染症研究所は11日、今年の風疹の患者数が9月2日までの集計で362人になったと発表しました。すでに昨年1年間の約4倍に上り、大規模な流行があった2013年の後の5年間で最多となりました。
東京都や千葉県など関東の患者数が7割を超えますが、愛知県や広島県などでも増えており、全国に飛び火しています。
9月2日までの1週間の患者数は75人。報告数の多かった都道府県から順に、東京都28人、千葉県11人、神奈川県8人、愛知県7人、茨城県と埼玉県がそれぞれ5人。前週の患者数の97人からは減少した一方で、東京都や愛知県など患者数が増えているところもあります。累計患者数でみると、東京都111人、千葉県95人、神奈川県33人、埼玉県23人、愛知県16人、広島県13人など。
風疹は、患者のせきやくしゃみなどの飛沫(ひまつ)を吸い込むことで感染し、14~21日(平均16~18日)の潜伏期間を経て、発熱、発疹、耳の下から首にかけてのリンパのはれなどが現れます。一度感染すると、大部分の人は生涯風疹にかかることはありません。ほとんどは数日で回復するため、「三日ばしか」と呼ばれることもあります。
しかし、妊娠中の女性が風疹にかかると胎児に感染し、先天性風疹症候群と呼ばれる障害を引き起こすことがあります。厚生労働省によると、風疹に対する免疫が不十分な妊娠20週ごろまでの女性が感染すると、先天性風疹症候群の子供が生まれる確率は、妊娠1カ月でかかった場合は50%以上、妊娠2カ月の場合は35%など、高い確率で影響を及ぼす可能性があります。
近年では、2013年に患者数が1万4000人を超える流行があり、この流行に関連して、先天性風疹症候群の患者45人が報告されました。
予防には、ワクチン接種が最も有効。主には麻疹・風疹混合ワクチン(MRワクチン)の接種で95%以上の人が免疫を獲得できるとされ、時間の経過とともに免疫が低下してきた人には、追加のワクチンを接種することで免疫を増強させる効果があります。
ただし、妊娠中は接種を受けられません。妊婦への感染を防止するためには、家族など周りの人が予防することで妊婦を感染から守る必要があります。また、接種後2カ月間は避妊する必要があります。
2018年9月11日(火)
■新規の結核患者、7割の1万2000人が60歳以上 厚労省が検査を呼び掛け
結核に感染する高齢者が多いとして厚生労働省は、通所介護施設(デイサービスセンター)などの高齢者施設に、結核の検査を利用者に呼び掛ける通知を出しました。早期発見をして感染拡大の防止を図ります。
昨2017年の新規患者全体の約7割の1万1937人が60歳以上で、このうち90歳以上は1900人を超し、過去最多を更新しました。
厚労省によると、全体の患者数は減少傾向で、2017年新たに登録された結核患者は前年比836人減の1万6789人。結核罹患(りかん)率(人口10万人対)は13・3となり、前年と比べ0・6ポイント低下しました。日本の罹患率は近隣アジア諸国に比べて低い水準で、先進国の水準に年々近付いています。
ただし、高齢者の罹患率は高く、年代別患者数は80歳代が4822人(29%)と最多。70歳代3187人(19%)、60歳代2024人(12%)、90歳以上1904人(11%)と続きます。
結核は、結核菌がせきやくしゃみで空気感染し、主に肺で増えて発病します。約1~2割は2年以内に発病しますが、抑え込まれた結核菌は肺の中で、「冬眠状態」に入るといいます。高齢の患者は、戦後の結核が多かった時代に感染して発症しなかった人が、加齢などで免疫力が低下し、発症するケースが多くなっています。
森亨(とおる)・結核予防会結核研究所名誉所長は、「高齢の方は結核発病のリスクが高い。気付かないうちに子供や若者への感染源にもなるので、検査を受けてほしい」と話しています。
2018年9月10日(月)
■岐阜市の豚コレラ、すべての豚の殺処分完了 感染拡大確認されず
岐阜市の養豚場で国内では1992年以来となる家畜伝染病の豚コレラの発生が確認された問題で、岐阜県は10日朝までにこの養豚場のすべての豚の殺処分を終えました。岐阜県によりますと、今のところ感染の拡大は確認されていないということです。
岐阜市の養豚場で9月3日から8日にかけて、約80頭の豚が死んでいるのが見付かり、検査の結果、国内では熊本県で1992年に5頭への感染が確認されて以降、確認されていなかった豚コレラウイルスの陽性反応が出ました。
岐阜県は9日朝から、この養豚場で豚の殺処分を続けてきましたが、10日朝までに処分を終えたということです。
また、岐阜県内のほかの養豚施設で飼育されている豚に異常がないか聞き取り調査を行ったところ、51あるすべての施設が「異常は確認されていない」と回答したということです。
岐阜県は引き続き、養豚場から半径10キロ以内を「搬出制限区域」に指定し、5カ所で、畜産関係の施設に出入りする車の消毒作業を行うとともに、殺処分した豚を敷地内に埋める作業や養豚場の消毒作業を進めることにしています。
2018年9月10日(月)
■岐阜市の養豚場で豚コレラ、610頭処分へ 国内26年ぶり、農水省が輸出停止
岐阜県は9日、岐阜市の養豚場で死んだ豚を検査し、豚コレラのウイルスが検出されたと発表しました。国内での感染確認は1992年以来、26年ぶり。
豚やイノシシ特有の病気で人には感染せず、感染した豚の肉を食べても影響はありません。養豚場内の他の豚の殺処分を進めます。農林水産省は豚肉の輸出を停止しました。
豚コレラはアジアを中心に発生していますが、国内での発生は熊本県で1992年に5頭への感染が確認されて以来。農水省のホームページによると、国内では2007年に「清浄化」を達成したとされます。今回の感染ルートはわかっておらず、岐阜県が調べます。野生のイノシシや飼料が原因の可能性があるといいます。
農水省は防疫対策本部の会議を開き、対応を協議。斎藤健農水相は「まん延防止には初動対応が大事だ」と述べ、封じ込めに取り組む考えを示しました。輸出停止は、発生の確認で日本が豚コレラの清浄国ではなくなったため。再び清浄国になるには少なくとも3カ月かかる見込みで、輸出相手国が了承した場合は輸出できる可能性があるといいます。
岐阜県によると、養豚場では3日に1頭が急死。県の中央家畜保健衛生所の簡易検査では感染が確認できなかったものの、国の機関の農研機構動物衛生研究部門の精密検査で9日早朝、感染が判明したといいます。
すでに養豚場内では4~8日に、約80頭が相次いで死にました。残る610頭は殺処分を進め、12日までに埋却や場内の消毒を終える見通し。現場の養豚場には9日朝、白い防護服やマスク、ゴーグル姿の県職員が到着。ショベルカーで敷地内の空き地に埋却用の穴を掘るなど防疫作業を進めました。
また、岐阜県は、この養豚場から半径10キロ以内を「搬出制限区域」に指定し、区域内にある岐阜市や各務原市の別の3カ所の養豚場に対して豚の出荷や移動を禁止するよう指示するとともに、周辺に感染が広がっていないか調べています。
豚コレラは家畜伝染病に指定され、発熱や食欲減退、歩行困難などの症状が現れます。感染力が強く、高い致死率が特徴で、多くの場合、数日のうちに死ぬということです。
一方、8月にアジアで初めて中国で感染が確認され、国内でも警戒を強めている「アフリカ豚コレラ」は、豚コレラと症状が似ているもののウイルスの形が違う別の伝染病で、今回はこのアフリカ豚コレラではないことを確認しているということです。
2018年9月9日(日)
■韓国で3年ぶり、MERS感染者を確認 中東出張帰りの男性
韓国で中東・クウェートへの出張から戻った男性が、中東呼吸器症候群(MERS)コロナウイルスに感染していることがわかりました。男性は現在、隔離病棟に入院し、治療を受けています。
韓国保健福祉省の疾病管理本部によると、MERSの感染が確認されたのはソウルに住む61歳の男性。男性は8月16日からクウェートに出張し、9月7日に韓国に戻りましたが、下痢や発熱などの症状があるため検査を受けたところ、感染が確認されたといいます。
8日現在は、ソウル大病院の隔離病棟で治療を受けています。
また、疾病管理本部は、航空機の乗員や病院のスタッフなど、男性と接触して感染の恐れのある20人について、2週間の自宅隔離の措置をとるなど対策を進めています。
MERSは2012年以降、主に中東地域で広く発生している感染症。発熱やせき、呼吸困難などを起こし、重症化することもあります。韓国では2015年5月に初のMERS感染者が確認され、患者が治療を受けた医療施設で医師や入院患者に感染が広がるなどして、38人が死亡しています。同年12月に終息が宣言されて以降、新たな感染者は約3年ぶり
MERS感染者が約3年ぶりに確認されたことを受け、韓国政府は9日、緊急関係閣僚会議を開き、対応を協議しました。
会議を主宰した李洛淵首相は、「(感染拡大で)38人が死亡した2015年の失敗を反面教師とし、迅速かつ透明性ある形で対処していく」と強調しました。
2018年9月9日(日)
■原因不明の不妊症、内膜炎が影響の可能性も 治療後に妊娠率向上
子宮の内側の粘膜に炎症が続く慢性子宮内膜炎(内膜炎)の女性について、抗菌薬での治療によって妊娠率が向上することが、東京大学などの調査でわかりました。内膜炎の女性の妊娠率や出産率は、内膜炎がない女性より大幅に低いことも判明しました。原因不明の不妊の一部には内膜炎が影響している可能性があり、治療の可能性が開けてきました。
東京大学医学部付属病院の着床外来を2006年6月~2008年7月に受診した女性128人のうち80人(約63%)に内膜炎がありましたが、抗菌薬を2週間服用する治療で9割は治りました。よくなった後の状況が把握できている49人中29人(59%)が妊娠しました。これは同病院の着床外来の患者で、内膜炎のない女性の妊娠率44%より高くなりました。同様の結果は、国内外の他の病院からも報告されています。
着床外来の患者は、他の不妊クリニックで問題の在りかが判明しなかった女性が多いといいます。東大の広田泰講師(女性診療科・産科)は、「内膜炎は自覚症状がほとんどなく、原因不明の不妊症の多くは内膜炎が原因の可能性がある」と指摘し、不妊原因が不明の場合、専門外来での内膜炎の検査を勧めています。
内膜炎と不妊を巡っては、滋賀医科大学の医師が、同大付属病院の母子・女性診療科を2014~2016年に受診した不妊症の女性114人の体外受精の結果を比べました。内膜炎のない女性の妊娠率が7割弱に対し、内膜炎がある女性は3割強でした。出産率も、ない女性が4割強、ある女性が1割強で、約3倍の差がありました。不妊症患者の42%が、内膜炎の女性でした。
滋賀医科大学の木村文則准教授(産婦人科)は、「内膜炎があると体外受精した受精卵に問題がないのになかなか着床しなかったり、流産したりしてしまうことが多い」と説明しています。
ただし、内膜炎の多くは症状に乏しいことが特徴で、わからないことも多々あります。抗菌薬での治療にはまれに、皮膚や肝臓などに障害が起きる副作用もあります。木村准教授は、「現時点では抗菌薬が最も有効な治療だと考えられるが、使う抗菌薬の種類や期間はさらに検討が必要だ。治らない人もおり、安易に抗菌薬治療をするべきではない」と話しています。
2018年9月8日(土)
■入院患者の3割、自宅からの通院を希望 増加傾向続く、厚労省調査
医療機関に入院する患者の約3割が自宅からの通院を希望していることが4日、厚生労働省の2017年受療行動調査で明らかになりました。国は地域一体で医療や介護を切れ目なく提供する「地域包括ケアシステム」を推進しており、通院や在宅医療を望む人は増加傾向にあります。一方、実際に自宅で療養ができると考えている患者は6割にとどまり、体制づくりが課題となっています。
調査は3年に1回実施し、今回は2017年10月、全国490医療機関の入院・外来患者計約14万6000人が回答。このうち入院患者約5万人の回答結果を分析しました。
今後の治療や療養について入院患者に希望を聞いたところ、「完治するまでこの病院に入院したい」(47%)が最多だったものの、前回調査から約4ポイント減少。一方、「自宅から病院や診療所に通院しながら治療・療養したい」(30%)は、前回調査から約5ポイント増えました。在宅での治療や療養を希望する人は、4%でした。
高齢化が進む中で、国は地域包括ケアシステムや在宅医療を推進。厚労省の担当者は、「病院ではなく自宅で療養をする方向に患者の意識も変わってきているのでは」と分析しています。
ただ、実際に医療機関から退院の許可が出た場合に「自宅で療養できる」と答えたのは57%にとどまります。「自宅療養できない」(22%)と回答した人に自宅療養を可能とする条件(複数回答)を聞くと、「入浴や食事などの介護が受けられるサービス」(39%)や「家族の協力」(32%)などが目立ち、実現には依然課題が多そうです。
一方、外来患者の回答結果を分析したところ、病院に満足している外来患者は全体の6割に上り、過去最高を更新したことが明らかになりました。
病院全般については、外来患者の59・1%が「満足」と回答。前回調査より0・8ポイント高く、1996年の調査開始以降、最高でした。項目別にみると、「医師以外の病院スタッフの対応」、「診療・治療内容」では6割近くが満足していました。ただ、「診察までの待ち時間」では「満足」が29・0%にとどまり、「不満」が26・3%を占めました。
2018年9月8日(土)
■消防本部の半数超、心肺蘇生拒否を経験 終末期患者らの救急搬送時に
救急現場で終末期の患者側から心肺蘇生を拒否する意思を示されたケースが昨年、全国の728消防本部のうち、55・4%に当たる403消防本部であったことが、総務省消防庁の調査で明らかになりました。高齢者の在宅医療が広がる中、救急隊員が難しい判断を迫られている現状が浮かびました。
消防庁は5月、心肺蘇生を望まないと伝えられた際の対応について検討部会を設置。全消防本部に初めてアンケートを実施し、すべてから回答を得ました。消防法は、救急搬送や心肺蘇生などを救急隊の業務と定めていますが、蘇生中止に関する規定はなく、来年1月ごろまでに検討部会の意見をまとめる方針です。
アンケート結果によると、心肺蘇生を拒否する意思を示されたケースは昨年、全体の半数超の403消防本部であり、少なくとも計2015件に上りました。
拒否の意思が示された場合、「対応方針を定めている」と回答したのは45・6%に当たる332消防本部。内訳は「心肺蘇生を実施しながら医療機関に搬送する」が60・5%、「医師からの指示など一定の条件の下、蘇生を実施しない、または中断できる」が30・1%と分かれました。
対応方針を定めていない396消防本部の理由では、「国が統一的な方針を定めるべきだから」、「どのような方針とするべきか、現状では判断できないから」が目立ちました。
終末期の患者の意思を伝えたのは家族、介護施設の職員、医師の順で多く、本人の意思を示した書面で把握するケースは3割に満ちませんでした。
検討部会長を務める樋口範雄・武蔵野大学特任教授(医療倫理)は、「延命治療が難しい人生の最終段階で、自分の死をどう迎えたいか考える時代に、救急隊員が困惑している実態が明らかになった。部会で一定の方向性を示したい」と述べました。
2018年9月8日(土)
■環境危機時計9時47分、過去最悪 温暖化を懸念し14分進む
地球環境の悪化に伴う人類存続の危機感を世界の研究者らに尋ねて時刻で表す「環境危機時計」が、昨年から14分進んで今年は9時47分になり、1992年の調査開始以来最も懸念が強まっていると旭硝子財団(東京都千代田区)が7日、発表しました。
トランプ・アメリカ大統領が昨年就任し、地球温暖化対策の「パリ協定」からの離脱を表明するなど、アメリカの環境政策の大幅な後退が鮮明になっていることが要因とみられます。
旭硝子財団が今年4~6月、世界139カ国の政府関係者や大学の専門家ら1866人にアンケートした結果をまとめました。回答の際に重視した分野は、地球温暖化や大雨や洪水、干ばつなどの増加といった「気候変動」が約3割で最も多く、絶滅する生き物が増える「生物多様性」、「水資源」が続きました。また、これまで環境問題への意識が比較的低かった20歳代と30歳代の若い世代で環境悪化への危機感が高まっていることも、時刻が進んだ要因の1つだということです。
環境危機時計は深刻さを0時1分から12時までで示し、9時以降は「極めて不安」に分類され、時計が12時をさすと「環境問題で地球に人類が住めなくなる」となります。地域別では、北米が10時11分と最も深刻で、西欧は10時4分、日本は9時31分、東欧・旧ソ連が8時42分と最も危機感が低くなりました。
環境危機時計の取り組みを行っている旭硝子財団の清水潤一顕彰事業部長は、「昨年と比べて14分も進み、驚いている。時計の針が戻るよう、生活習慣や自然保護に対する意識を改めてほしい」と話していました。
2018年9月7日(金)
■甲状腺機能低下の検査、7割で行われず 「治る認知症」を見逃しの恐れ
認知症と診断されて抗認知症薬が処方されたケースのうち、7割は学会が推奨している甲状腺の機能低下の検査を事前にしていなかったことが、医療経済研究機構などの調査で明らかになりました。認知機能の低下が甲状腺機能の問題であれば、抗認知症薬なしで改善が望めます。検査をしなかったことで、本来は必要ない人に薬が処方された可能性があります。
アリセプトなど4種類の抗認知症薬は、アルツハイマー病などに処方されます。ただし、病気自体は治せず、症状の進行を抑えるだけ。一方、認知症の中には脳の一部が圧迫を受けているなど、対処すれば大きく改善する例もあり、「治る認知症」と呼ばれています。
甲状腺の機能低下もその「治る認知症」の一つで、一般的な血液検査で判別でき、ホルモン薬で治療できます。日本神経学会は指針で、治療可能な認知症を見逃さないよう、診断に際して検査を推奨しています。
医療経済研究機構の佐方信夫(さかた・のぶお)主任研究員らは、2015年4月から2016年3月にかけて認知症と診断され、抗認知症薬を新たに処方された65歳以上の約26万2000人を調べました。処方前に甲状腺の機能低下の検査がどの程度されていたかを厚生労働省の保険診療データベースでみたところ、32・6%にとどまっていました。施設別にみると、都道府県が指定する専門施設の認知症疾患医療センターでは57%だったのに対し、病院は38%、診療所では26%でした。また、高齢の患者ほど検査を受けていない傾向がありました。
認知症とされた人の2・6%が甲状腺の機能が低下していたという海外の報告があります。こうした人は、本来なら不必要な抗認知症薬による吐き気などの副作用を受ける恐れがあります。佐方主任研究員は、「甲状腺の機能が落ちると、疲労感や筋力の低下を招くこともある。検査をしなければ対処する機会も失われてしまう。認知症の増加により、専門でない医師が診る機会が増え、すぐに薬を処方する傾向があるのではないか。」と話しています。
相模原市認知症疾患医療センター長代理の大石智(さとる)・北里大診療講師(精神科)は、「本来なら、この検査は可能な限り全例で実施されるべきだ。いわゆる『治る認知症』かどうかの鑑別が不十分なまま、抗認知症薬が安易に処方されたと思われる例を多く経験するが、今回のデータはその実態を示しているのではないか」と話しています。
2018年9月7日(金)
■強制不妊手術、被害者特定は3033人のみ 記録がない人も救済検討
旧優生保護法(1948~1996年)下で障害のある人らに不妊手術が行われた問題で、厚生労働省は6日、自治体の記録で強制手術を受けた個人名が特定できたのは計3033人になったとの調査結果を、国会内で開かれた与党ワーキングチームの会合で報告しました。
与党ワーキングチームは来年の通常国会への提出に向け救済法案の作成を目指しますが、記録が残っていない人も救済できる仕組みを検討するといいます。
調査は与党ワーキングチームの意向を受け、厚労省が4~6月、都道府県や保健所設置市など150自治体に依頼し実施しました。
不妊手術は約2万5000人が受けたとされます。旧厚生省の資料では、そのうち本人の同意のない強制手術が確認されているのは1万6475人。今回の調査で個人特定は2割弱にとどまり、全員救済は困難であることが判明しました。
調査結果によると、都道府県別で最も多かったのは宮城県の900人で、次いで北海道830人、埼玉県330人、千葉県318人が多くなっています。旧厚生省の記録よりも人数が多い自治体がありましたが、原因は不明といいます。20歳未満が849人で3割に上り、最年少は宮城県の9歳とみられます。
一方、20府県は個人名が特定できた記録がゼロで、うち栃木県、大阪府、熊本県など8府県では、不妊手術の申請数や実施件数がわかる資料も残っていないとしました。条例などで定められた行政文書の保存期間を過ぎて廃棄されたとみられます。
与党ワーキングチーム座長の田村憲久元厚労相は、「把握できている手術件数からすると非常に少なく残念だが、これをもとになるべく多くの人を救済できるように考えていく」と述べ、個人を特定する資料がない人の救済も検討する考えを明らかにしました。
2018年9月7日(金)
■梅毒患者、半年で3236人に上る 日本医師会「特異的」と注意喚起
性行為などで感染する梅毒の6月までの患者数が3236人に上り、昨年同期の2613人を大きく上回ったことが、国立感染症研究所の集計で明らかになりました。日本医師会は5日、「近年の患者の急増は特異的だ」と注意を呼び掛けました。
今年4~6月は1735人で、1~3月の1501人から増加。このままいくと今年1年間の患者数は6000人を超え、現行の集計方式となった1999年以降最多だった昨年の5820人を上回るのは確実とみられます。
今年4~6月の都道府県別の患者数は、東京都の445人が最多。昨年同期の491人よりは減少しました。一方、2番目に多い大阪府は302人で昨年同期の192人から大幅に増えました。さらに、愛知県、神奈川県、兵庫県、福岡県の大都市圏が続きました。
女性は20歳代前半の若い世代に極端に患者が多く、男性は20~40歳代を中心に幅広い年代で報告があります。
梅毒はスピロヘータ (梅毒トレポネーマ) という細菌が原因で起きる感染症で、近年増加傾向。抗菌薬で早期に治療すれば完治するものの、放置すると脳や心臓に大きな合併症を引き起こします。また、妊娠中に感染すると、流産したり、生まれてくる子が「先天梅毒」になったりすることがあります。
厚生労働省は、疑わしい症状がある人や、過去に性感染症になったことがある人は検査を受けるよう呼び掛けています。
梅毒患者が急増していることを受けて、日本医師会は、梅毒診療ガイド(ダイジェスト版)を作成し、会員の開業医らに配布しました。日本医師会が5日に開いた定例記者会見で平川俊夫常任理事は、2018年度末には「7000人に達するのではないか」「近年の梅毒患者の増加は特異的」などと述べました。
梅毒診療ガイドは、日本性感染症学会などと協力して作成したもので、梅毒が疑われる場合の症状を記載したチャートや、治療方法などをまとめました。平川常任理事は、「あらゆる診療科が常に梅毒の増加を念頭に入れて、疑わしい症状があれば、まず検査をして梅毒でないことを確かめる」ことが必要だと注意喚起しました。
国立感染症研究所の集計によると、性器クラミジア感染症などの性感染症は2009年以降、軒並み減少傾向か横ばいなのに対し、梅毒は2010年以降増え、特に2014年ごろから急増しています。平川常任理事は「近年の梅毒患者の増加は特異的」と指摘し、「研究段階」と断った上で、スピロヘータの株が20世紀の後半から変化してきているという説もあることを明らかにしました。
梅毒は、異性間性交渉で感染するケースが多いため、平川常任理事は、患者本人だけでなく、パートナーの医療機関への受診を医療関係者が促したり、検査項目に「梅毒」がある妊婦健康診査の受診を徹底したりするよう医療機関に呼び掛けました。
2018年9月6日(木)
■WHO、世界的な運動不足に警鐘 14億人に健康リスク
世界保健機関(WHO)は5日、世界の18歳以上の成人の4人に1人に当たる14億人以上が運動不足とみられるとの研究結果を発表しました。世界的な運動不足の改善努力はほとんど成果を挙げていないとして、WHOの専門家は警鐘を鳴らしています。
推計14億人以上という運動不足の人の数は、2001年調査からほとんど改善していません。運動不足は、心臓疾患や2型糖尿病、複数のがんなどさまざまな健康問題にかかるリスクを悪化させます。
イギリスを含む高所得国では特に、運動不足の割合が高くなりました。また、アジアの2地域を除く世界的な傾向として、男性に比べて女性のほうが運動不足の割合が多くなりました。
イギリスの医学誌「ランセット・パブリック・ヘルス」で発表された研究結果によると、WHOの研究者は世界168カ国における人口調査358件で得た自己申告データを調べました。調査対象者は190万人に上ったといいます。
調査は週に150分の緩い運動、もしくは75分の激しい運動をしない人を、運動不足と定義しました。
イギリスやアメリカを含む高所得国では、運動不足の人の割合が、2001年の32%から2016年は37%に上昇。ドイツ、ニュージーランド、アメリカでも、運動不足の割合は増えていました。一方で、低所得国での運動不足の人の割合は、16%と変化がありませんでした。
東アジアと東南アジアを除く地域では、女性のほうが男性より運動不足でした。男女差が特に大きかったのは、南アジア、中央アジア、中東と、北米、西欧の高所得国でした。女性のほうが育児負担が大きい、あるいはその土地の風習で女性が運動しにくいなど、さまざまな複合的な要因が関係しているだろうと、研究チームは指摘しています。
2016年調査によると、イギリスにおける運動不足の割合は、男性が32%、女性が40%で、全体で36%でした。富裕国では、仕事も趣味も座って行うものへの移行が進み、かつ自動車移動の利用も増えています。これらの要因が、運動不足の割合を高くしているかもしれないと、研究チームは指摘しています。
一方、低所得国の人は、仕事で体を動かす機会が多かったり、公共交通機関を使う度合いが多かったりするとみられています。
調査報告書の筆者は、運動不足を2025年までに10%減らすとのWHOの目標がこのままでは達成されないと警告しています。
WHOの調査報告書で筆頭著者を務めたレジーナ・グートルト博士は、「他の主要な国際的健康リスクと異なり、運動不足の程度は平均して世界全体で改善されていない。また、全成人の4分の1以上が、健康のために推奨される身体運動の水準を満たしていない」、「運動不足が増えている地域は、公衆衛生や、非感染性疾患の予防と制御について重大な懸念となっている」と述べました。
調査報告書の共著者を務めたフィオナ・ブル博士は、「国際的な運動目標を達成するには、身体運動の量に関する男女差への対策が極めて重要になる。そのためには、安全、安価で文化的に許容される運動の機会を女性が利用しやすくなるよう、介入が求められる」と話しました。
WHOは成人に対して、早歩きや水泳、軽いサイクリングなどの「中程度の運動」を少なくとも週150分、またはランニングやチームスポーツなどの「激しい運動」を少なくとも週75分行うことを推奨しています。
2018年9月6日(木)
■出産後1年未満に死亡した女性の死因、自殺が最多 産後うつでメンタルの悪化の疑い
出産した後1年未満の間に自殺した女性は2015~2016年の2年間に少なくとも92人に上ることが、国立成育医療研究センターの調査で初めてわかりました。出産後1年未満の女性の死因では最も多く、専門家は、多くが産後のうつが関係しているとみて、母親の支援体制を充実させることが必要だとしています。
出産した後の女性は体調や生活リズムが大きく変化することなどで、10人に1人の割合でうつになると指摘されていますが、自殺にまで至るケースがどれくらいあるのか、実態はわかっていませんでした。
国立成育医療研究センターの研究チームは、2015~2016年の2年間のデータを使って、出産後1年未満に死亡した女性の死因を調べた結果、自殺が92人と最も多く、次いで、がんが70人、心疾患が24人と続きました。
自殺のあった時期では、出産後1カ月ですでに10人に上り、1年を通して起きていたほか、年齢別にみると、35歳以上で自殺に至る割合が高くなっていました。
研究チームによりますと、出産後の女性の自殺の実態が明らかになるのは初めてで、多くが産後のうつなどメンタルの悪化が関係しているとみています。
産後のうつの対策を巡っては、厚生労働省は昨年度から、出産まもない母親の心の問題を含めた健康状態を把握する取り組みを支援する制度を始めましたが、初年度に実施した自治体は4%にとどまっています。
国立成育医療研究センター研究所の森臨太郎部長は、「自殺の背景にある産後のうつのリスクの高い人を早期に見付けて、産科施設や行政の連携といった支援につなげることが必要で、早急に対策を実施していくことが大切だ」と話しています。
2018年9月5日(水)
総務省消防庁は4日、4月30日~9月2日の熱中症による救急搬送者数(速報値)が全国で9万2099人になったと発表しました。年間の搬送者数が9万人を超えたのは、統計を取り始めた2008年以降で初めて。
このうち死者は157人。これまでの救急搬送者数は、2013年(6~9月)の5万8729人が最多でした。
8月の救急搬送者数は2万9795人に上り、7月の5万4220人に続き、月間での過去最多を更新しました。このうち死者は18人でした。
8月27日から9月2日の一週間における熱中症による救急搬送者数(速報値)は、全国で2794人でした。前週の5890人に比べて3096人減少、前年同期の1672人と比べて1122人増加しました。
症状の程度別では、初診時において死亡が確認された人は2人で、前週の2人と同数。また、3週間以上の入院加療を必要とする重症者は53人で、前週の91人に比べて38人減少しました。
年齢別では、満65歳以上の高齢者が1427人で、全体の51・1%を占めています。発生場所別では、住居が1093人と最も多く、全体の39・1%を占めています。
また、都道府県別では、東京都が286人と全国で最も多く、次いで愛知県が226人、大阪府が202人となっています。
気温や室内の温度が高い状況下では、体内の水分や塩分のバランスが崩れ、体温の調節機能が働かなくなることによって、体温の上昇、めまい、立ちくらみ、体のだるさ、頭痛、吐き気などの症状を呈し、重症化すると、けいれんや意識の異常など、さまざまな障害を引き起こします。こまめな水分と塩分の補給、扇風機やエアコンの利用などにより、熱中症の予防に努めましょう。
2018年9月5日(水)
厚生労働省は4日、東京電力福島第一原発事故後に放射線量の測定作業などに従事し、肺がんで死亡した50歳代男性について労災認定したと発表しました。第一原発事故対応に当たった作業員が被曝によるがんで労災認定されたのは5人目。肺がんでは初めてで、亡くなったケースの認定も初めてとなりました。
認定は8月31日付。厚労省によると、男性は東京電力の協力会社の社員で、1980年6月~2015年9月のうち約28年第一原発を中心に全国の原発で作業に従事し、累積の被曝線量は約195ミリシーベルトでした。このうち2011年3月の事故後の被曝線量は、同年12月までが約34ミリシーベルトで、2015年9月には約74ミリシーベルトに達しました。主に第一原発の構内外で収束作業の一環として放射線量を測定し、作業中は防護服や全面マスクを着用していたといいます。
男性は2016年2月に肺がんを発症し、その後死亡。厚労省は遺族の意向として、死亡時期などを明らかにしていません。
肺がんに関する原発労働者の労災認定の基準は、被曝線量が100ミリシーベルト以上、被曝から5年以上経過して発症など。放射線医学の専門家らで作る厚労省の検討会の意見を踏まえ、認定しました。
厚労省によると、これまでに作業員17人が福島第一原発事故による被曝でがんを発症したとして労災を申請し、今回の男性のほかに白血病の3人、甲状腺がんの1人が認められました。5人は不支給が決まり、2人は請求を取り下げ、残る5人については調査中といいます。
福島第一原発では、現在も1日当たりの平均で約5000人が収束作業に当たっています。
東京電力ホールディングス広報室は、「引き続き、発電所の安全確保、労働環境の改善に努めたい」としています。
2018年9月5日(水)
福岡市博多区の「トリニティクリニック福岡」が4月に実施したアルツハイマー病治療のための自由診療の再生医療が、国に届け出た計画から外れた方法で患者4人に実施されていたことが明らかになりました。健康被害は出ていないものの、クリニックは「認識が甘かった」として治療を一時中断しました。
クリニックや厚生労働省によると、この再生医療は、アルツハイマー病患者の脂肪から採取した幹細胞を数週間かけて培養し、患者の静脈に点滴するもの。マウスで症状が改善した報告があり、アメリカで治験が行われていますが、人での効果は確立していません。2週間に1回の頻度での計10回の静脈内投与により、患者負担は1000万円以上かかるといいます。
実施するには、医療機関が計画をつくり、厚労省が認定した専門家委員会で安全性審査を受けた上で厚労省に届け出るよう、再生医療安全性確保法で定められています。
クリニックは、計画が4月11日に厚労省に受理されたことを受け、翌12日に韓国人患者4人に培養した幹細胞を2億個ずつ投与しました。「数週間培養する」とした計画との食い違いに気付いた専門家委員会が問い合わせ、数年前に韓国で別目的のために採取・保管していた患者自身の幹細胞を転用していたことが判明しました。治療を審査・監督する専門家委員会が問題を指摘し、直後に医療を一時中断したといいます。
その後、計画を修正するなどして新規患者の治療を再開。これまでに約20人が治療を受けているといいます。
トリニティクリニック福岡の梁昌熙(りょうまさき)院長は、「治療に関する見解の相違があったが、我々の認識が甘かったと深く反省している。治療を望む患者の声にこたえたかった」と話しました。
専門家委員会の委員長を務める米満吉和・九州大教授(バイオ創薬)は、「法令順守に対する考え方が甘く、同様の事例が二度と起きないよう指導していきたい」と話しています。
2018年9月4日(火)
市販薬を取り扱うインターネットサイトの63%で、乱用の恐れがある薬が違法な方法で販売されていたことが、厚生労働省による2017年度の調査でわかりました。調査を始めた2014年度以降、最悪の結果で、厚労省は自治体と連携し、監視を強める方針です。
薬のネット販売は2014年6月に解禁され、現在は約1900サイトが届け出ています。調査は昨年11~12月、薬を販売する507のサイトを対象に、厚労省が委託した民間会社の調査員が実際に購入して実施しました。
乱用の恐れのある成分を含み、医薬品医療機器法で原則1度に一つしか購入できないせき止め薬などについて、正当な理由の確認もなく複数買えたサイトは63%で、前年度より9ポイント上昇しました。調査を始めた2014年度は46%、2015年度は62%と、悪化の傾向にあります。
市販薬の中で副作用リスクが高い第1類医薬品を販売するサイトのうち、医薬品医療機器法で義務付けられている副作用などの情報提供を購入者に実施していなかったのは24%で、前年度より1ポイント上昇しました。
2018年9月4日(火)
国立感染症研究所は4日、今年になって報告された風疹の全国の患者数が273人になったと発表しました。昨年1年間の約3倍に当たります。
今年の患者数は7月下旬から急増し、8月上旬に昨年の93人を超え、首都圏の千葉県や東京都、神奈川県を中心に感染が広がりました。
8月20~26日の増加分は84人で、うち千葉県は前の週よりも23人増えて84人、東京都は19人増えて72人、神奈川県は15人増えて24人、埼玉県は7人増えて18人、広島県は6人増えて10人などとなっており、首都圏の患者数が全体の7割以上を占めています。また、全患者のうち男性が215人を占め、女性の58人の4倍近くに上ります。特に30~40歳代の男性に多く、ワクチンの接種歴がない人や不明の人が大半。 風疹はくしゃみやせきなどで広がり感染力が強いのが特徴で、発熱や発疹などの症状が出ます。妊娠中の女性が感染すると、生まれてくる赤ちゃんの目や耳、それに心臓などに障害が起きるリスクがあります。 加藤勝信厚生労働相は4日の閣議後の記者会見で、「今年7月以降、30歳代から50歳代の男性を中心に関東地方で風疹の患者が例年になく増えていて、今後、全国に拡大する可能性もある。妊婦が感染すると胎児に障害が起きる恐れが指摘されており、妊婦を守る観点からも予防接種を検討してほしい」と述べました。 2018年9月4日(火) 世界13カ国の水道水のほかヨーロッパやアジア産の食塩、アメリカ産のビールに、地球規模の汚染が問題になっている微小な「マイクロプラスチック」が広く含まれていることを、アメリカのミネソタ大学などの研究チームが2日までに突き止めました。水道水の検出率は81%と高く、ほとんどは繊維状で繊維製品由来とみられます。日本の水道水は調査していません。 マイクロプラスチックが人間の健康に与える影響はわかっていませんが、研究チームは「日常生活で避けられない水道水の汚染が世界に広がっていることは大きな懸念材料だ」と警告しています。 アメリカやイギリス、キューバ、インドなど14カ国で集めた水道水159サンプルを分析しました。イタリアを除く13カ国でマイクロプラスチックが見付かりました。アメリカのサンプルからは最多となる1リットル中約60個を検出。インドやレバノンのサンプルからも多数を検出しました。形状は98%が繊維状で、平均の長さは0・96ミリ。0・10ミリのものもあり、フィルターで完全に除去するのは難しいとみられます。ほかに小さな破片やフィルム状のものもありました。 ヨーロッパ、アジア、アメリカなどの産地表示がある市販の食塩12種と、アメリカで醸造されたビール12種のすべてからもマイクロプラスチックを検出。アメリカのボトル入りの水3サンプルにも含まれていました。 アメリカ人の標準的な消費量に基づくと、水道水と食塩、ビールから年間5800個のマイクロプラスチックを摂取する計算になります。水道水由来が全体の88%を占めました。 汚染がどう広がったかは明確ではないものの、繊維状のものは化学繊維製の衣服からの飛散、洗濯時の乾燥での飛散などを通じて大気を汚染した可能性も指摘されています。マイクロプラスチックはプラスチックごみなどが壊れてできる直径5ミリ以下のもので、海洋汚染が問題になっています。 研究チームのマリー・コスース博士は、「人が口にするもののマイクロプラスチック汚染が深刻化している。プラスチックに含まれたり吸着したりした有害な化学物質が人体に与える影響などを詳しく調べる必要がある」とし、使い捨てプラスチック製品の削減が重要だと指摘しました。 2018年9月3日(月) 大分県佐伯市の70歳代の男性が、マダニが媒介するウイルスに感染し、死亡していたことが3日、わかりました。 大分県内では今年7月にも、同じウイルスに感染した大分市の70歳代の男性が死亡しており、大分県は、野山に入る際には肌を隠す服を身に着けるなど感染防止の対策を心掛けるよう呼び掛けています。 2018年9月3日(月) 三菱ケミカルホールディングス傘下のバイオ企業「生命科学インスティテュート」(東京都千代田区)は3日、開発中の再生医療製品「Muse(ミューズ)細胞」の新たな臨床試験(治験)を始めると発表しました。すでに急性心筋梗塞の治験が1月からスタートしており、今回は2つ目の治験として脳梗塞治療を狙います。 治験で有効性と安全性が確認されれば、2021年度以降に国から医薬品として承認を受けることを目指すとしています。 Muse細胞は東北大学の出沢真理教授らの研究チームが発見した多能性細胞の1つで、さまざまな細胞に分化する性質が知られています。点滴で静脈に送り込むと体内の傷付いた部位に集まり、組織や細胞を再生する性質があります。この性質を使ったさまざまな研究が進んでいます。 生命科学インスティテュートは、仙台市にある東北大学病院で9月から脳梗塞患者を対象にした治験を始めます。脳梗塞による年間死亡者数は6万人以上とされ、脳梗塞を含む脳血管障害は日本における入院原因の第2位。発症後に運動機能障害や言語障害などの後遺症も起きるため、要介護になる可能性も高くなります。 これまでのラットを使った治療実験では、運動機能の改善効果が確認されており、今回、実際の脳梗塞患者を対象に、点滴で静脈に送り込むMuse細胞が脳の損傷部位にたどり着いて修復し運動機能を改善することを目指す治験で有効性や安全性を確かめます。 生命科学インスティテュートの木曽誠一社長は、「今ある医療現場の他の治療法に比べて製造コストも低く、使い勝手もいい治療法となるだろう」と強調。研究代表の東北大学の冨永悌二教授は、「脳梗塞の後遺症は生活の質を落とす原因だが、Muse細胞で介助不要な状況に改善できる可能性がある」と話しました。 今回の治験は脳梗塞発症後2週間以上が経過した20歳以上80歳以下の患者が対象で、身体機能の障害などを起こしていることが治験に参加できる患者の条件となります。約35人を対象に治験を進め、2020年1月の終了を見込んでいます。 2018年9月3日(月) 厚生労働省は8月29日、2019年度予算の概算要求をまとめました。要求額は31兆8956億円と今年度の当初予算と比べて7694億円(2・5%)の増額とし、過去最大の予算規模を求めました。 高齢化に伴い医療や介護、年金など社会保障費の増加が続いており、厚労省の予算は大半を社会保障費が占めます。2015年度から児童手当などを内閣府の所管に移したため見掛け上の金額は減っているものの、実質的には過去最高を更新し続けています。2019年度の概算要求では31兆8956億円の要求額のうち、29兆8241億円が年金や医療、介護などにかかる経費で、2018年度予算と比べて2・1%増を見込みます。 そのうち公的医療保険への国からの支出は2018年度当初予算比2・0%増の約11兆8746億円、介護保険関連では3・7%増の3兆1866億円を見込みました。介護は年齢を重ねるほど費用がかさむようになるため、高齢化が進む近年では特に伸びが大きくなっています。年金は団塊の世代向けの支給がすでに始まっているため、医療や介護ほどの伸びを見込んでおらず、1・4%増の11兆7822億円を求めました。 政府は高齢化などによる社会保障費の自然増を2019年度は6000億円と見込んでいます。5000億円まで圧縮する目標を掲げていた2018年度までと異なり、2019年度は圧縮の数値目標を設定せず、高齢化による増加分に収めるとしています。具体的にどこまで自然増を圧縮できるかが、年末の予算編成の大きな焦点となります。 概算要求では、働き方改革の推進が柱の一つに位置付けられました。同一労働同一賃金や残業時間の上限規制を盛り込んだ働き方改革関連法は来年4月から順次施行されます。中小企業は同一賃金と残業規制の施行が1年遅れルものの、勤務間インターバル制度の導入支援や相談体制の整備などに1222億円を求めます。働き方改革全体で、2018年度当初予算比で2割弱増える約3800億円を計上しました。 効率的な社会保障の提供体制の整備も重点テーマで、地域の病床再編、医療・介護連携の推進などに645億円を求めました。また、健康保険組合の解散の動きが相次いでいることを受けて、健保への新たな財政支援策として31億円を計上しました。 介護離職ゼロに向けた人材の処遇改善や受け皿整備には543億円を求めました。また、児童相談所の体制強化、保護が必要な児童の情報を共有する新たなシステムの構築といった児童虐待の防止対策などには1655億円を計上しました。さらに今後、増加が見込まれる外国人材の受け入れ環境を整えるため、ハローワークの体制を充実する経費などとして、100億円を盛り込みました。 2018年9月2日(日) 大気中の二酸化炭素(CO2)濃度の上昇が原因で小麦や米といった主要穀物から有益な栄養素が徐々に失われる恐れがあるとの研究論文が8月27日、発表されました。研究結果は、世界で多くの人々が栄養不足に陥ることへの懸念を高めるものだと、論文は警告しています。 イギリスの科学誌「ネイチャー・クライメート・チェンジ」に掲載された研究論文によると、現在の傾向が続けば、世界の主要穀物に含まれる鉄、亜鉛、タンパク質などの濃度がCO2濃度の上昇によって今世紀半ばまでに最大で17%低下することが考えられるといいます。 論文の主要執筆者で、アメリカのハーバード大学公衆衛生大学院の研究者のマシュー・スミス氏は、「主にアフリカ、東南アジア、インド、中東などの地域で、栄養不足の状態に陥る人が数億人増える恐れがある」と語りました。また、現在すでに栄養不足の問題に直面している数十億人については、その状況がさらに悪化するとしました。 全世界で供給されるタンパク質、亜鉛、鉄の約40%は、小麦、米、トウモロコシの世界3大穀物によってもたらされています。一般に、人が食事から摂取するタンパク質の約60%、鉄の約80%、亜鉛の約70%は、植物性食物からのもの。 大気中の過剰なCO2が、2050年までに世界の人々の健康に与える影響について調べるため、スミス氏と共同研究者のサミュエル・マイヤーズ氏の研究チームは、151の国々で栽培されている小麦、米、トウモロコシ、モロコシ、エンドウ豆、大豆などさまざまな種類の食用植物225種についてモデル計算を行いました。 人類が現在の水準で石炭、石油、天然ガスなどの燃焼による温室効果ガスを放出し続けると、大気中のCO2濃度は2050年までに550ppmに達すると考えられます。現在の大気中CO2濃度は400ppm超となっています。 モデルを使った計算の結果、この条件の下では、世界人口の2%近くに当たる1億7500万人が新たに亜鉛欠乏に陥り、1億2200万人が十分なタンパク質を摂取できなくなる可能性があることがわかりました。 鉄に関しては、女性と5歳未満の子供約14億人に摂取量4%超の減少に直面する恐れがあり、そのうちの5億人には鉄欠乏に関連する病気発症のリスクがあるとされました。 研究チームによると、最も大きな影響が及ぶ国はインドで、約5000万人が亜鉛の欠乏状態となり、最小必要量のタンパク質を取れない人も3800万人に上ることが考えられるといいます。その他、中国、インドネシア、バングラデシュ、ブラジル、ケニアや他の新興国と発展途上国でも、影響を受ける人々の数が劇的に増加するとされました。 世界保健機関(WHO)によると、現状でも全世界の20億人あまりが、何らかの栄養素が不足した状態にあるといいます。 2018年9月2日(日) インターネットの利用をやめられない、いわゆる「インターネット依存」が疑われる中学生と高校生が、全国で90万人を超えるという推計を厚生労働省の研究班が8月31日、公表しました。5年間で2倍近くに増え、研究班は「問題が深刻化していて、早急に対策に取り組むべきだ」としています。 厚労省の研究班は昨年度、全国の中学生と高校生を対象に、学校を通じてアンケート調査を行い、103校の約6万4000人から回答を得ました。 内閣府が昨年度行った調査によりますと、中学生の58%、高校生の96%がスマートフォン(スマホ)を利用しています。1日の平均利用時間は中学生で2時間7分、高校生で2時間57分となっており、高校生の4人に1人は4時間以上利用しているということです。利用はSNS(交流サイト)や動画・音楽の視聴、それにゲームが主な内容となっています。 2018年9月1日(土) 日本でも人気のカフェイン入り清涼飲料「エナジードリンク」について、イギリス政府はイングランド地域での未成年への販売を禁止する方針を明らかにしました。対象年齢を16歳未満とするか18歳未満とするかなどについて、ウェブサイトを通じて11月まで一般から広く意見を募り、その結果を踏まえて制度設計を進めるとしています。 エナジードリンクは、砂糖やカフェインを多く含んでいます。子供が大量に飲んだ場合、肥満や頭痛、睡眠障害など健康に影響が出ると指摘されています。 このためイギリス政府は子供による過剰摂取を防ぐためとして、コーヒーや紅茶を除く1リットル当たり150ミリグラム以上のカフェインを含む飲料について、未成年への販売を禁止するかどうか検討を始めました。対象地域はイングランドのみ。スコットランド、ウェールズなどは、地域政府が健康に関する政策を独自に決めるためです。 日本で販売されているエナジードリンクのうち、レッドブルの250ミリリットル缶には80ミリグラムのカフェインが含まれています。 ヨーロッパ内の16カ国を対象にした調査では、エナジードリンクの消費は、10~18歳の未成年者が他の年齢層より多くなっています。特にイギリスの若者は平均で月3・1リットルを飲んでいるとされ、これはヨーロッパ全体の平均の1・5倍に相当します。イギリス国内で売り上げが増え続けている一方、大手スーパーでは16歳未満への販売自粛が広がっています。 政府の販売禁止の方針について、子供の肥満撲滅を目指す団体などは歓迎しています。イギリス紙タイムズによると、食育に熱心なシェフのジェイミー・オリバーさん(43歳)は「こうした飲み物のせいで、子供たちに落ち着きがなくなり、教室が荒れるという先生たちの話を聞いてきた。販売規制は必要な一歩だ」と歓迎しています。 逆に、与党・保守党内には「子供たちの健康には親が責任を持つべきだ」と否定的な見方もあります。「エナジードリンク」を生産するメーカーなどで作る団体も、ふだんの食事からとるカフェインと糖分のほうがはるかに多いとして、「販売禁止は差別的で、効果的ではない」と反発しているということです。 2018年9月1日(土) 全国の児童相談所(児相)が2017年度に対応した児童虐待件数は過去最多の13万3778件(速報値)に上り、調査を始めた1990年度から27年連続で増え続けていることが8月30日、厚生労働省のまとめで明らかになりました。一方、2016年度に虐待で死亡したと確認された18歳未満の子供は77人に上り、関係機関の連携強化が急務となっています。 2017年度の虐待対応件数は、前年度より1万1203件増加。内容別では、子供の前で親が家族らに暴力をふるう「面前DV(ドメスティック・バイオレンス)」や暴言などの心理的虐待が最多の7万2197件(54%)に上りました。身体的虐待は3万3223件、ネグレクト(育児放棄)は2万6818件でした。 2016年度に虐待死した子供の内訳は無理心中が28人で、心中以外は49人。心中以外を年齢別でみると、0歳が最多の32人(65%)で、3歳以下が8割を占めました。虐待死をした子供の実母のうち、妊婦健診の未受診者は23人(47%)に上り、14人(29%)は育児不安を抱えていました。 児相や市町村が関与していたのに虐待死を防げなかったケースも目立ち、関係機関の連携強化の重要性が改めて浮かび上がった形です。 「県の児相から虐待通告の連絡を受けたのに、緊急性なしと判断してしまった」。2016年4月、奈良県生駒市で男児(当時2歳)が虐待死した事案の対応について、市の担当者はこう振り返りました。男児は父親(41歳)(監禁致死罪などで実刑確定)にプラスチック製のケースに閉じこめられて死亡しました。 男児が死亡する約4カ月前には、県の児相が「子供の泣き声がする」と虐待通告を受け、市に確認を依頼していました。しかし、市は家庭訪問をして母親と男児に面会した結果、虐待のリスクは高くないと判断。この家庭は、以前に乳児訪問を受け入れるなど市に協力的な態度を見せていたことから、市は「母親とは関係が築けている」と考えたといいます。 だが、県の検証部会がまとめた報告書は、この時期、母親は周囲に暴力を肯定する発言をしたり、男児にあざなどが確認されたりしていたと指摘しています。 男児の死を防げなかったことについて、生駒市の担当者は「家庭訪問で虐待のリスクが高まっていることを感じ取ることができなかった」と悔やみました。 厚労省のまとめでは、2016年度の虐待死のうち無理心中を除いた49人をみると、約3割に当たる14人は市町村や児相が関与していました。 大阪府松原市では2015年12月、男児(当時3歳)が父親(37歳)(傷害致死罪などで実刑確定)から暴行を受けて死亡。男児の遺体は2016年11月に山中で見付かりました。 この男児について、市は乳幼児健診を受けていないことを把握していました。しかし、親から受診延期の連絡を受けていたことなどを理由に、一度も家庭訪問をしていませんでした。 また、府の児相は男児の両親が過去に別の刑事事件で書類送検されていたことを市に伝えていませんでした。この刑事事件が不起訴となったことが理由だとしていますが、府担当者は「きちんと情報を伝えていれば、市も違う対応ができたかもしれない」と振り返っています。府の専門家部会の検証では、市と児相、警察との情報共有の強化の必要性が指摘されました。 一方、虐待死した0歳児32人を月齢別にみると、生後1カ月未満が半数の16人を占めています。このうち12人は実母による加害で死亡しました。厚労省によると、実母が加害者となるケースでは妊娠を周囲に相談できず、出産後に放置するケースがあるといいます。 松原康雄・明治学院大学長(児童福祉論)は、「転居など環境の変化によって虐待のリスクは刻々と変わる。危険な兆候を察知して子供を守るためには、児相や市町村、警察などの関係機関が連携し、情報共有を徹底することが欠かせない」と話しています。 虐待死を検証した厚労省の専門委員会は、「支援が必要な母親を早期に把握し、妊娠期からの継続的な対応が必要」と提言しました。 2018年9月1日(土) ニホンザルの細胞から、体のあらゆる組織になれるiPS細胞(人工多能性幹細胞)の作製に成功したと、京都大学霊長類研究所の今村公紀助教らの研究チームが30日、発表しました。他のサルや人から作製したiPS細胞と比較することで、脳機能や人の進化の解明につながります。 研究成果は、イギリスの科学誌「サイエンティフィック・リポーツ」に発表しました。 人に近い霊長類は、進化などの研究に有用な半面、傷や苦痛を与える実験をするには倫理的に高いハードルがあります。iPS細胞を作製することで、発生の仕組みなどを容易に調べることができるようになるといいます。 iPS細胞は京都大学の山中伸弥教授が2006年にマウスで、2007年に人で作製に成功。それ以降、医学研究に使われることの多いチンパンジーやカニクイザルでも作製できましたが、ニホンザルではまだ作製されていませんでした。 霊長類研究所で飼育するメスのニホンザル2頭の耳の皮膚の細胞を採取し、人のiPS細胞を作製するための4種類の遺伝子をウイルスを用いて導入しました。25日間培養すると、iPS細胞ができました。体のさまざまな細胞に成長できることや増殖することを確認し、神経幹細胞や神経細胞にも育てられました。 ニホンザルは知能が高く、社会生活や脳の働きの研究の蓄積があります。研究チームはiPS細胞から神経細胞や脳の組織などを育てて詳細に解析することで、霊長類の脳の機能の解明に役立てます。将来は多くの個体のiPS細胞を凍結保存し種の保存につなげます。iPS細胞から生殖細胞を作製する実験にも取り組みます。 2018年8月31日(金) 人のiPS細胞(人工多能性幹細胞)を使って、血液中のタンパク質が尿に大量に漏れる腎臓の難病「先天性ネフローゼ症候群」の初期症状を再現することに、熊本大学発生医学研究所などの研究チームが成功しました。 腎臓の機能をつかさどる細胞の異常が、遺伝子操作で正常化することも確かめました。発病の仕組みの解明と有効な治療法の開発につながる可能性があるといいます。 アメリカの科学誌「ステム・セル・リポーツ」(電子版)に31日、論文が掲載されました。 先天性ネフローゼ症候群は、腎臓の中で血液から尿をこし取る細胞の濾過(ろか)膜が十分形成されていないために起こります。熊本大の西中村隆一教授(腎臓発生学)らの研究チームは、小児患者の皮膚から作製したiPS細胞で腎臓の組織を作り、濾過膜の形成が進まない状態を初めて再現しました。実際に、腎臓の組織になる途中の細胞をマウスに移植したところ、先天性ネフローゼの初期段階の症状が確認されたといいます。 この小児患者は、濾過膜を構成する主要なタンパク質「ネフリン」の一部に異常があるものの、細胞の遺伝子操作で修復したところ、濾過膜の形成が進みました。このため、ネフリンの異常が病気の原因であると特定できました。 先天性ネフローゼ症候群は根治が難しく、生後3カ月以内に血液中のタンパク質が大量に尿の中に漏れ出し、多くは2、3歳のうちに腎不全に至り、人工透析や腎臓の移植手術が必要となります。濾過膜の人工的な再現方法がないことが、研究の課題でした。 熊本大によると、小児のネフローゼ症候群患者のうち2%程度は先天性とみられ、全国で100人弱の患者がいると推定されます。濾過膜の障害は、成人の腎臓病との関連も指摘されており、西中村教授は「濾過機能を持つ細胞に直接作用する薬を見付けられれば、他の種類の腎臓病治療でも効果が得られる可能性が出てくる」としています。 2018年8月31日(金) 昨年新たに結核を発症した患者について、厚生労働省は28日、90歳以上の患者数が1900人を超えて過去最多を更新したと発表しました。新規患者全体の7割が60歳以上で、厚労省は近く、高齢者施設に対し、検査などを呼び掛ける初の通知を出す方針。 発表によると、2017年に新たに登録された結核患者は前年比836人減の1万6789人。年代別では80歳代が4822人(29%)と最も多く、70歳代3187人(19%)、60歳代2024人(12%)、90歳以上1904人(11%)と続きました。 厚労省によると、結核が流行していた戦後の混乱期に感染して発症しなかった人が、高齢になって免疫力が低下し、発症するケースが多くなっています。厚労省結核感染症課の担当者は、「薬を飲めば治るので、検査を受けてほしい」と話しています。 国内での外国人の結核患者も前年比192人増えて、1530人と過去最多となりました。2012年より461人増え、5年間で1・4倍になりました。アジア諸国からの外国人が多く、年代別では20歳代が774人と最も多く前年比62人増でした。 外国人の占める割合は、この20年で2%から9%に拡大しました。結核の多いアジア諸国から仕事や留学で来日する人の増加が背景にあるとみられ、専門家は診療体制の整備の重要性を指摘しています。 結核は、結核菌がせきやくしゃみで空気感染し、主に肺で増えて発病します。世界保健機関(WHO)によると、世界の死亡原因のトップ10の一つで、2016年は新たに1040万人が発症し、170万人が死亡しています。 国内の外国人患者は、結核が広がるフィリピンや中国、ベトナム生まれが多くなっています。これらの国から技能実習や留学で日本に入国する人が増えており、結核予防会結核研究所の加藤誠也所長は「発症した状態で入国したり、劣悪な環境で生活する中で発症して感染が広がったりするケースがある」と語っています。 また、言葉や経済的な問題から適切な医療が受けられていないという課題もあります。医療通訳派遣に協力するNGOシェア(東京都台東区)副代表の沢田貴志・港町診療所長は「早期発見できれば、通院しながら治療できる。受け入れる以上、外国人への診療体制の整備も進めていく必要がある」と話しています。 国内での感染拡大を防ぐため、厚労省は今年2月、日本の長期滞在ビザを申請する人に、母国で結核検査をしてもらう「入国前スクリーニング」の導入を決めました。出入国管理法は結核患者の入国を認めておらず、発病していないか治癒している証明がなければ、ビザを出さない仕組みにします。 留学や就労などの3カ月超の滞在者を対象とし、検査や診療の質を保つため、証明書を出す医療機関は日本政府が指定します。日本で患者が多いフィリピン、中国、ベトナム、ネパール、インドネシア、ミャンマーの6カ国を優先し、早ければ今年度にも始めます。人口10万人当たりの新登録患者が年50人以上の約100カ国にも順次広げる方針といいます。 2018年8月30日(木) 民間シンクタンクの「日本医療政策機構」が29日、「喫煙できる飲食店は58%の人が入店を避ける」との調査結果を発表しました。受動喫煙対策を強化する改正健康増進法は7月に成立し、2020年4月に施行される予定で、日本医療政策機構は「この結果をみて、飲食店は対応を考えてほしい」としています。 調査は6月、全国の20歳以上の男女計1000人にインターネットで実施しました。回答した人のうち、現在喫煙している人の割合は21%でした。 「行こうとしたお店が喫煙可だったら入るのを避けると思うか」との問いに58・1%が「思う」と答えました。特に女性で嫌煙傾向が強く、63%が「思う」と答えました。分煙の店についても25・1%が「思う」と回答。逆に、「禁煙の店を避けると思うか」と尋ねると15・1%が「思う」としました。「加熱式たばこによる受動喫煙の健康への影響が気になる」と答えた人も36%いました。 改正健康増進法では、資本金が5000万円以下で、客席面積100平方メートル以下の既存の飲食店は、「喫煙可」と店頭に表示などをすれば経過措置として店内での喫煙が認められます。加熱式たばこも専用の喫煙室を設けて分煙すれば、飲食しながらでも喫煙できます。飲食店経営者の中には「禁煙にすると来店者が減る」と懸念する声がありますが、国民の嫌煙志向が色濃く出た調査結果といえ、対応を迫られそうです。 日本医療政策機構シニアアソシエイトの今村優子さんは、「飲食店ではたばこを避けたいと思う人が多いことを結果は表しており、店側は禁煙対策を一層推し進める必要がある」と指摘しています。 日本医療政策機構は、「自分や身近な人の終末期(人生の最終段階)に受ける医療」についても調査。「身近な人と話し合いたい」と回答した人が66・4%いる一方、「具体的に話し合ったことがある」とする人は25・4%にとどまりました。 「身近な人と話し合いたい」と回答した人の割合を年代別にみると、50歳代以上では7割を超え、自分や身近な人の「死」を明確に意識していることが窺えます。一方、「死」を身近に感じる機会の少ない20歳代でも半数を超えています。「具体的に話し合ったことがある」とした人の割合を年代別にみると、60歳代以上では3割を超えている一方、40歳代以下では2割に届いていません。 厚生労働省は終末期の治療方針をまとめた「人生の最終段階における医療の決定プロセスに関するガイドライン」を公表していますが、89・2%が「知らない」と答えました。 2018年8月30日(木) 全国各地で厳しい暑さとなり、熱中症で体調を崩す人や亡くなる人が続出しています。テレビや新聞、インターネットなどさまざまなメディアに医師が登場し、エアコンをつけるように」と注意喚起していますが、一方でエアコンの冷房が効いた部屋などにいると、せきが止まらないという症状を訴える人が増えています。 東京都豊島区の呼吸器科がある池袋大谷クリニックでは、7月からエアコンの冷房の効いた部屋に入ったり電車に乗ったりした時に、せき込んでしまうという症状を訴える患者が昨年に比べて1・3倍に増えているということです。 2018年8月30日(木) ■性別適合手術、ホルモン療法と併用は保険適用外 適用を求める声も 体の性と心の性が一致しない「性同一性障害(GID)」の治療として、子宮や精巣を摘出するなどの性別適合手術が、4月から公的医療保険の対象となり、手術代の自己負担が原則1~3割になりました。高額療養費制度の対象にもなり、一定の負担ですみます。 GID学会理事長で岡山大学の中塚幹也教授(産婦人科)は10年ほど前から、厚生労働省に保険適用を要望し続けてきており、「やっと風穴が開いた」と喜んでいます。「就職前に性別を変えておきたい」と願う若者もいますが、経済的に余裕がなく、断念する人も多いといいます。手術代は医療機関ごとに異なるものの、岡山大学病院なら、女性から男性に体の性を変えるため乳房を切除し子宮や卵巣も摘出すると、入院費も含めて約140万円かかります。 厚労省が方針を変えたのは、性的マイノリティーへの社会的認知が広がってきたことや、GIDの治療を手掛ける認定医が増えてきたことがあります。2015年にGID学会が治療の安全性を確保するために「診療実績が20人以上」などを要件に認定医制度を創設。2017年9月時点で10都道府県に計18人います。GID学会は2020年ごろまでに都道府県ごとに診療拠点をつくれるよう、認定医を50人程度養成したい考えです。 しかし、性別適合手術と自由診療のホルモン療法を併用すると、保険が効かなくなります。専門家からはホルモン療法にも保険適用を求める声が出ています。 四国に住む飲食店店長(38歳)は、女性という性別に違和感を持ちながら生活してきました。ただ、家族が理解してくれるのを待ち、治療はしてきませんでした。女性の制服を着る職業を避けるなど、できるだけストレスがかからないように暮らしてきました。 だが、「40歳を前に、このまま治療せず後悔したくない」と考え、性ホルモン製剤を使い、心の性に体の性を近付けるホルモン療法を始めると昨年、決めました。 いざ治療を開始しようとした時、2018年度から性別適合手術が保険適用になると知りました。ただし、ホルモン療法は自由診療のまま。ホルモン療法を受けてしまうと、保険診療と自由診療を併用する「混合診療」となり、手術代も自己負担になってしまう、と医師から聞かされました。 このため、ホルモン療法は後回しにし、岡山大学病院で8月中旬、まず保険が効く乳房切除手術から受けました。保険適用によって約60万円の費用は、約20万円に抑えられました。胸を押さえ付ける服を着る必要もなくなり、今後、ホルモン療法を始めるといいます。 法務省などによると、これまでに国内で戸籍上の性別を変えた人は約7000人。半数以上はタイなど国外で性別適合手術を受けたと見込まれていいます。 今年4月から性別適合手術が公的医療保険の対象となったといえど、すでにホルモン療法を受けている性同一性障害の人が大半とみられ、飲食店店長のように保険が効くケースはごく一部の人に限られます。 岡山大の難波祐三郎・ジェンダーセンター長(形成外科)によると、卵巣や精巣をとったり、膣(ちつ)や陰茎をつくったりする手術では、手術後に継続的に使うことになる性ホルモン製剤によって、副作用などの問題が起きないか、あらかじめ使ってみて調べることが一般的。混合診療になってしまい、手術に保険が効かなくなるといいます。 中塚教授は、「学会としても引き続き、ホルモン療法の保険適用に向けても訴えていきたい」としています。 2018年8月29日(水) ■千葉県で典型的な症状がない風疹感染例も 感染はさらに拡大の恐れ 首都圏を中心に風疹(三日ばしか)の患者の増加が続く中、全国で患者数が最も多い千葉県で、発熱などの典型的な症状が出ない感染例が確認され、千葉県保険医協会は医師らに対し見逃しがないよう慎重な診断を求める緊急の呼び掛けを行うことになりました。
風疹の患者は7月下旬以降、首都圏を中心に患者が増えており、千葉県で8月19日までに報告された今年の患者数は62人と全国最多となっています。
こうした中、千葉県内の医療関係者によりますと、今月発疹が出て千葉市内の診療所を訪れた男性について、発熱や首の後ろのリンパ節のはれといった典型的な症状はなかったものの、診療所が風疹を疑って保健所に検査を依頼したところ、感染が確認されたということです。
男性は69歳で、感染しやすい世代とされている30歳代から50歳代にも該当していませんでした。
これを受けて千葉県保険医協会は、県内の医師に対し風疹を見逃すことがないよう慎重な診断を求める緊急の文書を送ることを決めました。 その上で、「感染を防ぐためには何よりワクチンが有効だ。特に、妊娠する前の女性は自分が2回ワクチンの接種を受けた記録があるかどうか、すぐに確認してはっきりとしない場合にはワクチン接種をしてほしい。また、妊娠中の女性はワクチンを接種できないので、家族や職場の同僚など妊婦の周りにいる人は風疹に感染した経験がなくワクチンを2回接種した記録もない場合は、ワクチン接種が必要か検討するとともに特に30歳代から50歳代までの男性は免疫がない人が多いので、積極的に検討してほしい」と話しています。 2018年8月29日(水) ■虐待入院の長期化、厚労省が受け皿確保を求める 施設整備・里親確保など 親からの虐待を受けて病院に入院した子供が、治療が終わっても受け入れ先がないなどの理由で退院できなくなる問題について、厚生労働省は近く、全国の児童相談所に通知を出し、受け皿確保の対策を求めることになりました。 施設に空きがなく受け入れ先がなかったことが主な理由で、必要のない入院の期間は、半数あまりが1か月以上に上り、中には1年以上続いた子供もいました。また、虐待入院を経験した年齢については、生後間もない乳児から中学生以上の幅広い層に広がっていました。 これを受けて厚労省は、29日にも全国の自治体や児童相談所に対して通知を出し、対策を求めることになりました。 具体的には、受け皿となる施設の整備や里親の確保を進めるとともに、病院と連携して入院初期の段階から受け入れ先を探すことなどを求めることにしています。 また、治療のために入院の長期化が避けられない場合でも、生活環境の改善が必要だとして、子供の身の回りの世話をする児童相談所の職員を病院に派遣するよう求め、自治体が補助金を利用できるようにしました。 厚労省は、「必要のない入院をなくし、子供たち1人1人に適した家庭的な環境での生活を退院後すぐ始められるようきめ細かに支援したい」と話しています。 2018年8月29日(水) ■特定の筋ジストロフィー、酸化ストレスで悪化 iPS細胞使い解明、京大 顔や肩などを中心に筋肉が徐々に衰える難病「顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー(FSHD)」の原因遺伝子は、酸化ストレスにより活発に働くようになることが、患者から作製したiPS細胞(人工多能性幹細胞)を用いた研究でわかったと、京都大学の桜井英俊准教授(再生医学)らの研究チームが27日、発表しました。 酸化ストレスは、過剰な運動や筋損傷、炎症により生じた活性酸素が細胞を傷付けます。この反応が病状進行を早めることに関与しているとみており、病気のメカニズム解明や治療薬開発に生かしたいとしています。 研究チームによると、この顔面肩甲上腕型筋ジストロフィーは、骨格筋の細胞を死滅させるなど毒性をもたらす遺伝子「DUX4」が働くのが原因となって筋力が低下する遺伝性疾患で、根本的な治療法はありません。国内患者は推計6000人。患者ごとに症状の進行具合に違いがあるため、DUX4の働きの活発化には運動や紫外線など外的要因もかかわっているとみられていました。 研究チームは、外的要因として酸化ストレスに注目しました。患者2人の皮膚や血液の細胞から作製したiPS細胞から骨格筋細胞を育成。患者から作ったiPS細胞は病気の特徴を持つことを利用し、体外の実験で、この骨格筋細胞に活性酸素として過酸化水素を加えて酸化ストレスを与えた結果、DUX4の働きが活発化することが判明しました。 酸化ストレスはさまざまな病気で影響が指摘されていますが、筋ジストロフィーの悪化にかかわることを突き止めたのは初めてといいます。 研究成果は、イギリスの科学誌電子版に掲載されました。 2018年8月28日(火) ■エイズウイルス感染・発症、2017年は1389人 11年ぶりに1400人を下回る 厚生労働省は27日、2017年1年間に新たにわかったエイズウイルス(HIV)感染者とエイズ患者が計1389人だったとする確定値を発表しました。前年より59人減少し、11年ぶりに1400人を下回りました。 厚労省のエイズ動向委員会は、「各保健所による無料の検査などで早期発見が進み、感染拡大を防げているのではないか」と分析しています。 内訳は、エイズウイルス感染者が前年比35人減の976人、すでに発症していたエイズ患者が24人減の413人。若い世代の感染も目立ち、20歳代から30歳代が感染者全体の半数以上を占めているということです。合計の国籍別では、日本国籍が86人減の1193人となった一方、外国籍が27人増の196人となりました。 エイズウイルスに感染してからエイズが発症するまではおよそ10年の潜伏期間があり、自覚症状がほとんどないため、この間に感染が広がる恐れがあると指摘されています。しかし、エイズウイルスに感染しても、現在は治療で発症を抑えられます。 エイズ動向委員会は、「早期の発見と治療が周囲への感染拡大を防ぐ。保健所などで無料で匿名の検査が受けられるので、積極的に利用してほしい」と呼び掛けています。 2018年8月28日(火) ■障害者雇用の水増し、計3460人 中央省庁の8割で 中央省庁が雇用する障害者数を水増ししていた問題で、厚生労働省は28日、各省庁を再点検した結果、計3460人分が国のガイドラインに反して不正に算入されていたと発表しました。障害者数の約半分が水増しだったことになります。雇用の旗振り役である中央省庁自らが数値を偽っていたことになり、制度の信頼が大きく揺らいでいます。 障害者数の水増しは、内閣府や総務省、国土交通省など全体の約8割に当たる27の機関で発覚しました。法務省や財務省、外務省、気象庁、公正取引委員会などでも見付かりました。実際の雇用率は大きく減少し、公表していた2・49%から1・19%に落ち込みます。 障害者数の水増しが最も多かったのは国税庁で約1020人、次いで、国土交通省の約600人、法務省の約540人などとなっています。雇用率が0%台なのは、総務省や法務省、文部科学省など計18機関になりました。 加藤勝信厚生労働相は28日の閣議後の記者会見で。「障害者施策を推進する立場として深くおわびを申し上げる」と頭を下げました。水増しの原因は「故意か理解不足によるものか、今回の調査では判断し切れない」と述べました。 障害者雇用促進法は、企業や公的機関に一定割合の障害者を雇うよう義務付けています。現在の国の法定雇用率は2・5%。厚労省は国の33行政機関の障害者雇用数について昨年6月時点で約6900人とし、当時の法定雇用率2・3%を達成したとしていました。 厚労省のガイドラインでは、障害者手帳などの確認を算定条件にしています。しかし、多くの省庁が手帳などを確認せず障害者として組み入れていた実態が明らかになりました。就業できるはずだった障害者の雇用機会を奪っていた可能性があります。 企業の場合は法定雇用率を下回ると、不足数1人当たり月額5万円の納付金を求められます。ペナルティーがない行政機関が不適切な算定をしていたことに対し、民間などからの批判が高まるのは必至。水増しは全国の自治体でも、相次いで発覚しています。 政府は28日午前、障害者雇用の水増し問題を巡り、関係閣僚会議を首相官邸で開きました。菅義偉官房長官は、加藤厚生労働相を議長として再発防止策などを検討する関係府省連絡会議を設置すると表明。関係府省連絡会議のもとに、弁護士など第三者も参加する検証チームを設置するとともに、地方公共団体にも点検を要請して、10月をめどに、チェック機能の強化や法定雇用率の達成に向けた政府一体の計画を取りまとめる考えを示しました。 2018年8月28日(火) ■風疹患者が首都圏中心に急増 千葉県・東京都が群を抜く 国立感染症研究所は28日、今月13~19日までの1週間で新たに43人増え、今年に入り全国で計184人になったと発表しました。数十人規模で患者が急増するのは、国内では大流行した2012~2013年以来。 国立感染症研究所は、妊娠中の女性が感染すると赤ちゃんに障害が出る恐れがあるため、特に、今後、妊娠する可能性のある女性や妊婦の家族などはワクチン接種が必要か検討してほしいとしています。 都道府県別の患者数は、千葉県62人(前週比20人増)と東京都47人(同8人増)が群を抜いて多く、埼玉県で11人、神奈川県と福岡県で9人などとなっており、首都圏の患者が全体のおよそ7割を占めています。予防接種の機会が少なく、免疫がない30~50歳代の男性が多くなっています。 風疹の症状は発熱や発疹などですが、症状が出ない人も3割程度います。くしゃみやせきなどで感染し、潜伏期間は2~3週間。妊娠初期の女性が感染すると、先天性風疹症候群の赤ちゃんが生まれ、心疾患や難聴、白内障などの障害が出る恐れがあります。 予防には2回のワクチン接種が有効ですが、妊娠している人は受けられません。国立感染症研究所の多屋馨子(けいこ)・感染症疫学センター第3室長は、「妊婦の周囲の人、パートナーはワクチン接種など予防策をとってほしい」としています。 2018年8月28日(火) ■不妊治療の費用をサポートする民間保険が拡大 男性を対象にした商品も 不妊治療の費用を支援する民間保険の商品が拡大しつつあります。公的医療保険制度が適用されない体外受精や顕微授精といった「特定不妊治療」を受診した時などに、給付金を受け取れます。高額な治療費の負担を軽減する一助になりそうです。 不妊治療は、一部を除き公的医療保険が適用されずに費用が高額となるため、国や自治体が助成制度を導入しています。 三井住友海上あいおい生命保険は今年4月、医療保険「新医療保険A(エース)プレミア」に付加する女性向け特約を新たに販売しました。16~40歳が対象となります。 日本国内の病院や診療所での特定不妊治療が対象。体外受精や顕微鏡下で精子を卵子の中に送る顕微授精の治療の過程で、受精卵を子宮に戻す胚(はい)移植の費用を12回まで保障します。6回までは1回につき2万5000円、7回目からは1回5万円を給付します。 一般に体外受精などは1回30万~40万円といった高額な費用がかかります。自治体などの公的助成と合わせて活用することで、負担を軽減できそうです。三井住友海上あいおい生命保険の担当者は、「治療を経験する人が増えており、社会的な課題の解決に役立てれば」と話しています。 保険料はどの年代も、特約のみでほぼ月5000円台。出産時やがんと診断された際にも、給付金を受け取ることができます。 アクサ生命保険が2017年9月に発売した日帰り手術後の通院も保障する医療保険「スマート・ケア」は、手術給付金としてサポートします。胚移植などに加えて、男性の精巣や精巣上体からの採精も対象となるのが特長。給付金は1回のみで、契約内容によって異なるものの、最大5万円が支払われます。保険料は、通院治療の基本給付金が1万円のコースで30歳代の男性の場合は月3000円台。 アクサ生命保険の担当者は「治療は女性だけではなく男性も受けるので基本保障に組み込んだ」と説明しています。 業界で先駆けて2016年10月、16~40歳の女性を対象とした医療保険「シュシュ」を発売したのは、日本生命保険です。がんなど三大疾病や出産時のほか、特定不妊治療を受けた際に給付金が受け取れることが特長で話題となりました。 採卵や胚移植の費用を12回まで保障。6回目までは1回につき5万円、7回目からは1回10万円を給付します。保険料はどの年代も月1万円前後。日本生命保険の担当者は「問い合わせも増え、順調に販売数が伸びている」としています。 2018年8月27日(月) ■学校給食が思春期男子の過体重や肥満抑制に効果 東大チームが調査 日本の学校給食プログラムは、思春期男子の過体重や肥満を低減させる可能性があると、東京大学の小林廉毅(やすき)教授(公衆衛生学)らの研究チームがイギリスの学術誌に発表しました。一方で、思春期女子では過体重などの有意な低減効果はみられなかったといいます。 2018年8月27日(月) ■プラスチック製ストローの使用中止広がる 紙製や金属製の販売が増加 海洋汚染対策としてプラスチック製ストローの使用をやめる動きが広がる中、代替品として紙製ストローや金属製ストローの販売が伸びています。生活雑貨店のロフト(東京都千代田区)では、紙製ストローの売れ行きが前年の2・5倍になりました。食器の産地である新潟県燕市のメーカーも、金属製のストローの生産を増やしています。マイ箸に続き、マイストローのブームが来れば金属製の需要はさらに伸びそうです。 ロフトでは、7月の紙製ストローの売り上げが全店で前年同月と比べ2・5倍となりました。環境意識の高い30~40歳代の女性や、インバウンド(訪日外国人)などからの人気が高いといいます。 このうち渋谷ロフト(東京都渋谷区)では、7月下旬から紙製ストローとアルミ製ストローを取り扱い始めました。プラスチック製ストロー撤廃の動きを受け、「今後、プラスチックではない、異素材のストローの種類をさらに増やすことを検討している」といいます。 金属加工が盛んで食器の産地でもある新潟県燕市のメーカーも、マイストローブームに沸いています。チタン加工のホリエでは、5年前から販売する「チタン ストラー」が再注目されていて、月1万本の注文に対して、現在は月産2000本しか生産できていないため、販売を一時止めています。 この商品はストローとマドラー両方に使えるほか、チタン製でさびにくい点も支持を集めているようです。価格は1本700円で、グリーンやパープルなどカラフルな色が特徴です。同社の堀江拓尓会長は、「年内には販売を再開したい」と語っています。 アイデアセキカワは来月に、ステンレス製ストローを発売します。これまでもアルミ製ストローを販売していましたが、プラスチック製ストロー撤廃の動きを受け、7月に開発を始めたといいます。アルミ製ストローの受注も7月に入り増え始めました。受注数は「肌感覚では2倍ぐらい」になっているといいます。 アメリカの宝飾品大手のティファニーも、2017年11月から異素材ストローを販売しています。価格は3万8340円~5万3460円で、シルバー製や金メッキ製3種類をそろえています。ギフトとして購入していく人が多いといいます。 プラスチック製ストローを巡っては、アメリカのコーヒーチェーン大手のスターバックスが2020年までに全世界で廃止の方針を示すなど、使用取りやめが世界的潮流です。日本でもファミリーレストラン「ガスト」全店で2020年までに原則廃止する方針を示し、今後も同様の動きが広がる模様。代替素材のストローの需要は、さらに増える可能性があります。 一方、代替素材のストローは,、課題もあります。紙製ストローは、プラスチック製ストローに比べて液体に弱く、硬度を失いやすいとされます。金属製ストローは、洗浄に手間がかかります。 2018年8月27日(月) ■厚労省、医師限定の残業規制を導入へ 緩く設定し、救急救命や産科は上限見送りも 厚生労働省は、医師に限定した残業規制を2024年度に導入する方針です。残業時間の上限を一般の労働者に2019年4月から順次適用される年720時間よりも緩く設定し、救急救命や産科など長時間の対応が必要な診療科にはさらに例外規定をつくります。 一般労働者と同じ規制だと医師不足などで医療現場が混乱しかねないため、独自のルールが必要だと判断しました。 医師の長時間労働は他産業に比べても深刻で、労働環境の改善が必要。しかし、一般労働者向けの残業上限規制をそのまま適用すると、現場の医師不足に拍車がかかるなど、医療の質が保てなくなる懸念がありました。 正当な理由なく患者の診療を拒めない「応召義務」が医師法で定められるなど医師という職業の特殊性もあり、政府は残業規制の制度設計の過程で医師への適用を2024年度まで延期。残業抑制策の在り方を別途検討し、今年度中に結論を出すことにしていました。 厚労省は医師の残業上限を一般労働者の年720時間よりも緩くする方向で、厚労省内では「最大でも年960時間」との意見があります。 さらに、業務の性質上、長時間労働になりがちな救急救命や産科などで働く医師には例外規定を設け、規制を一段と緩める方向です。こうした診療科には、上限そのものの設定を見送る可能性があります。ただ、例外扱いになる場合でも、産業医との面談など健康確保措置を義務付け、労働時間の正確な把握など長時間労働を抑える仕組みを整えます。 医師の働き方改革を進める観点から、「応召義務」は見直します。今は医師個人の義務と規定されているので、診療時間外の対応なども当然視される一因になっていました。厚労省は応召義務を「組織として果たすべき義務」に改め、複数の医師や看護師などが連携して対応するチーム医療を想定し、医師個人への負担を和らげます。 一般労働者向けの枠組みでは努力義務となっている勤務間インターバル制度の導入も、積極的に促します。医療界の一部が要望している医師向けの裁量労働制などの仕組みの創設は、見送る方向です。 2018年8月26日(日) ■介護職員の2017年度の離職率は16・2% 前年度より0・5ポイント改善 介護職員の2017年度の離職率は16・2%で、前年度より0・5ポイント改善したことが、厚生労働省所管の公益財団法人「介護労働安定センター」が公表した介護労働実態調査で明らかになりました。 調査は2017年10月、全国の介護事業所を対象に無作為抽出で行い、8782事業所(回答率49・8%)が回答しました。 1年間に辞めた職員の割合を示す離職率は、利用者宅を訪問する訪問介護員では14・8%、高齢者施設などで働く介護職員は16・7%でした。 一方、1年間で新たに採用した職員の割合を示す採用率は17・8%で、前年度より1・6ポイント減少。 従業員が「大いに不足」「不足」「やや不足」していると感じている介護事業所は66・6%で、前年度より4・0ポイント増加し、4年連続の上昇となりました。 不足の理由を複数回答で尋ねたところ、「採用が困難」が88・5%(前年度73・1%)で最多、次いで「離職率が高い」が18・4%(前年度15・3%)、「事業拡大によって必要人数が増大」は10・8%(前年度19・8%)でした。採用が困難な原因を複数回答で尋ねると、「同業他社との人材獲得競争が厳しい」「他産業に比べて、労働条件などがよくない」がそれぞれ半数以上を占めました。 今回の調査は、外国人労働者の活用についても初めて質問。すでに働く外国人が「いる」としたのはわずか5・4%で、「活用する予定はある」が15・9%でした。このうち受け入れ方法を複数回答で尋ねたところ、介護が新たに対象職種となった「技能実習生」が51 ・9%と最も多く、「経済連携協定(EPA)」が39・5%でした。 2018年8月24日(金) ■iPS細胞による角膜移植の臨床研究を申請、審査 大阪大学 目の角膜が傷付いた患者にiPS細胞(人工多能性幹細胞)から作製した角膜の組織を移植し、視力を回復させる臨床研究の計画を、大阪大学の研究チームが学内の委員会に申請し、初めての審査が行われました。承認されれば今後さらに国に申請し、今年度中に1例目の実施を目指したいとしています。 この臨床研究は大阪大学大学院医学系研究科の西田幸二教授(眼科学)などの研究チームが学内の専門家委員会に申請したもので、22日初めての審査が行われました。 今回大阪大学の研究チームが目指すのは、目の黒目の部分を覆う角膜の最も表面の組織である「角膜上皮」の病気「角膜上皮幹細胞疲弊症」の治療です。 iPS細胞を使った臨床研究は、理化学研究所などが目の難病ですでに実施しています。大阪大学の別の研究チームが今年度中にも重い心臓病で行う準備を進めているほか、慶応大学が脊髄損傷などで学内の委員会に申請しました。また、京都大学はパーキンソン病で、臨床研究より実用化に近い段階で行う臨床試験(治験)の患者募集を始めています。 2018年8月23日(木) ■7月の熱中症搬送、過去最多5万4220人に上る 総務省消防庁が発表 総務省消防庁は22日、7月に熱中症で救急搬送された人が全国で5万4220人に上ったとの確定値を発表しました。前年7月の2万6702人の2倍を超え、1カ月間の搬送人数では2008年の調査開始以降、過去最多。搬送者のうち133人が死亡し、これも過去最多でした。 7月中旬以降、40度以上の気温となる地点が相次ぎ、猛烈な暑さが続いたことが影響しました。 また、7月16日~22日の1週間に熱中症で救急搬送された人は2万3191人、死亡者は67人を数え、1週間ごとの搬送人数および死亡者数として2008年の調査開始以降、過去最多となりました。 今年の累計搬送人数は7月が大きく膨らんだことで8月19日までに、すでに8万人以上となり、過去最多だった2013年の約5万9000人を超えています。 2018年8月23日(木) ■イオン、輸入ワイン1万2000本を自主回収 ボルト破損の恐れ 流通大手のイオンは23日、イタリア産の輸入ワイン「セッテソリ フリザンティーノ」と「セッテソリ フリザンティーノ セミスウィート」の計1万2000本を自主回収すると発表しました。 コルク栓を抜く時にボトルが破損し、購入客2人が足にけがをした事例があり、発泡性のワインのためボトルに圧力がかかり、割れやすくなっている可能性があるといいます。 商品は6月24日から8月16日まで、全国のイオンやダイエー、マックスバリュなど390店舗で販売しました。ワインの中身の品質に問題はなく、飲んでも健康への影響はないと説明しています。 購入した店舗に商品を持参するなどすれば、代金を返却します。問い合わせは、イオンお客さまセンター(0120・937・898)へ。平日と8月25、26日の午前10時~午後5時に対応します。 2018年8月23日(木) ■風疹、首都圏を中心に流行の兆し 妊婦の家族、ワクチン接種を ウイルスで感染する風疹の患者が、首都圏を中心に増えています。国立感染症研究所は21日、「流行が始まっている可能性が高い」として注意を呼び掛ける緊急情報を出しました。 今年に入ってからの患者数は12日現在で139人で、昨年の年間患者数93人を大幅に上回っています。風疹は妊娠初期の女性が感染すると、赤ちゃんに障害が出る恐れがあります。 国立感染症研究所によると、7月下旬から患者が急増し、千葉県41人、東京都39人、埼玉県9人と首都圏に患者が集中していますが、福岡県7人、北海道6人など地方でも発生しています。過去のワクチン接種方法の変更の影響で接種率が低い30~50歳代の男性が、特に多くなっています。 風疹は主に、くしゃみやせきなどのしぶきによって感染します。14~21日間の潜伏期間を経て、発熱や発疹、リンパ節のはれが出ます。人への感染は、発疹が出る1週間前から起こります。 妊娠20週ごろまでの妊婦が感染すると、赤ちゃんが心臓病や難聴になる恐れがあります。妊婦はワクチン接種を受けられないため、家族や周囲の人の注意が欠かせません。大流行した2012~2013年は2年間で1万6000人超の患者が出て、45人の赤ちゃんの障害が報告され、少なくとも11人が肺炎などで死亡しました。自治体によっては、妊婦やパートナー向けに風疹の抗体検査や予防接種の費用を助成しているところもあります。 国立感染症研究所感染症疫学センターの多屋馨子(けいこ)室長は、「風疹は流行すると2~3年続くことが多い。患者が増えている地域に住む人や勤める人で、罹患(りかん)歴や予防接種暦がないか不明の場合、ワクチンを検討して欲しい。女性は妊娠前に2回受けたほうがいい」と話しています。 2018年8月22日(水) ■がん治療薬「オプジーボ」、薬価38%値下げ 3度目、11月から適用 厚生労働省は22日、小野薬品工業のがん治療薬「オプジーボ」の薬価を下げると発表しました。今年度から導入された新ルールに基づくもので、現行の薬価と比べて38%の引き下げになります。11月から新価格を適用します。 厚労相の諮問機関である中央社会保険医療協議会に、厚労省が報告しました。厚労省は今年度から市場規模が350億円を超える薬について、市場拡大や、用法用量の変更があった場合、年4回の新薬の収載の機会に価格を調整するルールを設けました。 オプジーボは高額薬剤の象徴としてやり玉に挙げられ昨年2月に50%引き下げられ、今年4月にも24%下がりました。今回、用量をこれまでの体重1キログラム当たり3ミリグラムから、体重に関係なく1回240ミリグラムの固定容量に変更しました。100ミリグラム入り2瓶と20ミリグラム入り2瓶を使い切ることができ、問題となっていた残薬が出なくなります。 100ミリグラム入り1瓶の薬価は、現行の27万8029円から17万3768円に引き下げられます。 体重が軽い人には負担増となるものの、体重が重い人は負担が減ります。そのため今回の新ルール適用による小野薬品工業の業績への影響は、軽微とみられます。 オプジーボは、小野薬品工業とBMSが開発した新規医薬品。がん細胞が持つ免疫抑制機能を解除し、異物を排除する免疫細胞の能力を高めることができます。すでに皮膚がんや肺がん、腎細胞がんなどさまざまながん治療に使用されています。 2018年8月22日(水) ■7月の熱中症搬送、1万5775人 関東地方の1都6県で 先月7月の1カ月間に熱中症で病院に搬送された人は、関東地方の1都6県で1万5700人余りに上り、昨年7月と比べて2倍以上に増えたことがわかりました。 総務省消防庁のまとめによりますと、全国的に記録的な暑さとなった先月1カ月間に関東地方で熱中症で病院に搬送された人は合わせて1万5775人で、昨年7月の約2・4倍となりました。 都県別では、東京都が最も多く4430人、次いで埼玉県が3316人、神奈川県が2419人、千葉県が2256人、群馬県が1266人、茨城県が1230人、栃木県が858人となっています。 症状の程度は、死亡した人が24人、入院が必要な人が6438人で、このうち3週間以上の入院が必要な重症は552人、軽症が9311人でした。 年齢別では、65歳以上が7277人とほぼ半数を占めたほか、18歳から64歳が6201人、新生児と乳幼児を含む18歳未満が2297人でした。 一方、最新のまとめによりますと、今月8月13日から19日までの1週間に搬送された人は1075人で、前の週に比べて半分ほどに減ったものの、今年4月30日からの搬送者数は合わせて2万4900人余りに達しています。 気象庁によりますと、この先1カ月も、関東地方は暖かい空気に覆われて晴れる日が多く、平年より気温が高くなる見込みで、総務省消防庁は適切に冷房を使いこまめに水分をとるなど、引き続き熱中症に十分注意するよう呼び掛けています。 2018年8月22日(水) ■中国で「アフリカ豚コレラ」相次ぎ確認 国内でも警戒を 感染力が強いため警戒が必要な豚の伝染病「アフリカ豚コレラ」に感染した豚が中国で相次いで確認されており、農林水産省は国内の畜産関係者に対して警戒を呼び掛けています。 アフリカ豚コレラは、感染した動物との接触やダニが媒介して豚や猪が感染するウイルス性の伝染病で、感染力が強い上、豚はほぼすべて死ぬため、畜産関係者から強く警戒されています。予防や治療法はなく非常に致死率が高いものの、人間への感染の恐れはありません。 これを受けて農林水産省は、国内の養豚業者に対して飼育場への人の出入りを最低限に抑えることや、餌の加熱処理の徹底など警戒を呼び掛けています。また、全国の空港や港では海外への渡航者に対して畜産施設に立ち寄ったり、家畜と接触したりしないほか、ウイルスに感染した肉はハムや餃子などに加工されても感染力が残ることがあるため、お土産だけでなく食べ残しも持ち帰らないよう呼び掛けています。 感染が確認された中国の地域からの直行便がある空港では、検疫体制を強化しているということです。農水省動物検疫所・関西空港支所・立崎昌子次長は、「日本には今まで発生したことのない病気です。中国から入ってしまうと、日本の養豚業も壊滅的な打撃を受けます」と話しています。 農林水産省国際衛生対策室の担当者は、「今後の中国での発生動向を注視しながら国内での発生を何としても防ぎたい」と話しています。 2018年8月21日(火) ■軽度認知障害、女性のほうが速く悪化 東大教授らのチームが分析 認知症の前段階とされる軽度認知障害(MCI)の女性は、男性に比べて症状が速く悪化しやすいとの研究結果を東京大学教授の岩坪威さんらの研究チームがまとめ、アメリカの科学誌に発表しました。認知障害の悪化が速い女性には腎機能の低下がみられるという特徴もあり、生活習慣病の影響がうかがわれました。 研究の対象は、全国の38医療機関で診療を受け、物忘れなどがみられた軽度認知障害の男女234人(平均年齢72歳)。認知機能や脳の画像の検査を続けて3年間追跡調査し、悪化の原因などを分析しました。 その結果、期間内に認知症へ移行したのは女性が60%で、男性の44%より高くなりました。女性の場合、腎機能がわずかに下がると、認知機能も悪化していることがわかりました。男性の場合、教育を受けた期間が長いほど認知機能が悪化しにくかったといいます。 認知症発症の主な原因とされるアルツハイマー病にかかっている人の割合は、研究に参加した男女間で大きな差はありませんでした。同じ方法で実施された北アメリカの研究では、認知機能の悪化に男女差はなかったといいます。 データ解析を担当した東大講師の岩田淳さんは、「糖尿病や高血圧などの生活習慣病は腎機能を低下させるほか、動脈硬化を引き起こして神経細胞が壊され、認知機能の悪化を招く」と説明しています。その上で、男女差が生じた理由について、「女性は男性より体が小さいため血管も細く、生活習慣病で血管がダメージを受けやすいためではないか」とし、体格が影響しているとの見方を示しました。 女性で腎機能の低下が認知機能にかかわっていることがわかった報告は初めてといい、研究チームは今後、認知機能の低下を進める他の要因も探します。 2018年8月21日(火) ■国立感染症研究所、初の薬剤耐性菌バンク設置へ 約600の病院と提携 薬が効きにくい薬剤耐性菌による感染が問題となっていることから、病院で検出された薬剤耐性菌を集めて菌の特性や全国的な分布の状況を解析する初めての拠点を国立感染症研究所が整備することになりました。 抗生物質などの抗菌薬がほとんど効かない多剤耐性菌に感染した人は、昨年、報告されただけで1700人以上に上るなど、薬剤耐性菌による感染が全国で問題になっています。 2018年8月20日(月) ■京大、血液難病の臨床研究を厚労省に申請 iPS細胞から大量の血小板を製造 京都大学iPS細胞研究所の江藤浩之(こうじ )教授(血液学)らが患者から作製したiPS細胞(人工多能性幹細胞)を用いる血小板の再生医療の臨床研究計画を厚生労働省に届け出ていたことが19日、明らかになりました。他人の血小板を輸血できない血液の難病になった患者が対象。 29日に厚労省が計画を審議する予定。iPS細胞による再生医療は目の網膜と心臓などに続いて、治療の対象が広がってきました。 京大が近く、計画を公表します。江藤教授らは、再生不良性貧血などで出血を止める血小板をうまく作れない「血小板減少症」の再生医療を目指します。この病気は皮膚で内出血しやすく、鼻血などが止まりにくくなります。病気が進行すれば、内臓や脳で大量出血し命にかかわります。 通常は血小板製剤を輸血し治療しますが、今回の計画はまれな血小板の型の患者1人が対象。すでに候補者がおり患者募集はしない予定です。血小板製剤は、型の不適合で免疫が排除するため治療に使えません。ES細胞(胚性幹細胞)や他人のiPS細胞から作製した血小板も使えません。 このため臨床研究では、患者自身の血液から作ったiPS細胞を元に血小板を大量に育てて治療します。患者のiPS細胞から育てた血小板を3回にわけて徐々に量を増やしながら投与する計画で、最も量が多い3回目には血小板約1000億個を投与して、1~2年かけて安全性を確認します。 実現すれば、患者自身のiPS細胞を使う計画は、神戸市にある理化学研究所などのチームが2014年に実施した目の難病に続き2例目となります。 iPS再生医療は先行する目の網膜のほか、心臓、脳、角膜などの計画が続きます。これらの計画では他人の細胞を用いるものの、今回の患者では使えないため、患者自身から作製できるiPS細胞の強みが生かせます。 臨床研究では、輸血する前に放射線を照射し、がんのもとになる危険な細胞が混ざり込むのを防ぎます。iPSによる再生医療では患者から高品質なiPS細胞を作製するコストが課題ですが、血小板は低コストで安全性を高めやすいとみられます。 血小板は、手術やけがの治療などでも使用します。現在は、日本赤十字社が製造する血小板製剤を使っていますが、使用期限が4日で備蓄できません。今後、高齢化などで献血者が減るとともに血小板を必要とする人が増え、将来的に不足が深刻化することが懸念されています。 江藤教授は、病気やケガの治療などに使う血小板を他人のiPS細胞から製造する研究開発も進めており、企業のメガカリオン(京都市)が今後、アメリカと日本国内で臨床試験(治験)を始める計画を立てています。 2018年8月19日(日) ■RSウイルス感染症、すでに流行期に入る 1週間の患者数が4180人 主に2歳以下の乳幼児に多い呼吸器疾患で、鼻水やせき、38~39度の発熱が特徴の「RSウイルス感染症」が、今年はすでに流行期に入っているとみられます。従来、秋から冬に流行していましたが、近年は時期が早まり夏から患者の増えるパターンが多くなっています。 重症になると肺炎や気管支炎になる恐れもあり、専門家は、乳幼児に症状が出た時は早めに受診させるのが望ましいと注意喚起しています。 国立感染症研究所は、全国約3000カ所の小児科定点医療機関から報告を受け、週ごとに患者数の統計をまとめています。それによると6月から、近年で最も大きな流行だった昨年と似たペースで患者が増えています。7月30日から8月5日までの直近1週間の患者数は4180人(1医療機関当たり1・33人)で、前の週より約1100人多くなりました。 都道府県別では、宮崎県が1医療機関当たりの患者数が3・09人で最も多く、以下多い順に徳島県(2・83人)、福岡県(2・81人)、新潟県(2・58人)、大分県(2・56人)と続いています。 RSウイルスは身近にいるウイルスで、感染力は非常に強く、ほとんどの子供は2歳までに感染し、その後も何度もかかるといわれています。子供が感染すると、鼻水、せき、発熱などの症状が出ますが、多くは軽症で、2日から1週間ほどで治癒します。 しかし、特に新生児や出生体重が小さかった乳児が感染すると、重症化して気管支炎や肺炎に陥る可能性があります。また、呼吸器にぜんそくなどの持病のある高齢者も要注意で、介護施設などで集団感染・入院が時折起きています。 接触感染や、くしゃみなどによる飛沫(ひまつ)感染で広がるため、予防には手洗いやマスクの着用が役立ちます。 この病気に詳しい群馬パース大学大学院の木村博一教授(感染症学)は、「健康な大人はかかっても軽い風邪程度ですむが、その人が周りの乳幼児や高齢者に移す感染源になることもある。風邪症状のある人は手洗いやマスクで感染拡大を防いでほしい」と呼び掛けています。 2018年8月19日(日) ■たばこの害による総損失2兆円超、喫煙者の医療費1兆2600億円 厚労省研究班が推計 たばこの害による2015年度の総損失額は医療費を含めて2兆500億円に上ることが8日、厚生労働省研究班の推計で明らかになりました。たばこが原因で病気になり、そのために生じた介護費用は2600億円で、火災による損失は980億円だったことも判明しました。 2014年度も直接喫煙や受動喫煙による医療費を算出していましたが、2015年度は介護や火災に関する費用を加えました。厚労省研究班の五十嵐中(あたる)・東京大学特任准教授は「たばこの損失は医療費だけでなく、介護など多くの面に影響が及ぶことが改めてわかった。さらなる対策が必要だ」としています。 推計は、厚労省の検討会がたばこと病気の因果関係が「十分ある」、もしくは「示唆される」と判定したがんや脳卒中、心筋梗塞、認知症の治療で生じた医療費を国の統計資料を基に分析。こうした病気に伴って必要になった介護費用や、たばこが原因で起きた火災の消防費用、吸い殻の処理などの清掃費用も算出しました。 最も多かったのは、喫煙者の医療費1兆2600億円で、損失額の半分以上を占めました。中でもがんの医療費は、5000億円を超えました。受動喫煙が原因の医療費は3300億円で、多くを占めたのは脳血管疾患でした。歯の治療費には、1000億円かかっていました。 介護費用は、男性で1780億円、女性で840億円に上りました。原因となった病気別でみると、認知症が男女合わせて780億円と最も多く、次いで脳卒中などの脳血管疾患が約715億円となりました。 都道府県別では、東京都が2000億円となるなど、人口の多い都市部で金額が膨らむ傾向がありました。 2014年度は、たばこと病気の因果関係が「十分ある」とされる脳卒中やがんなどに絞って推計。喫煙者の医療費が1兆1700億円、受動喫煙が原因の医療費は3200億円でした。 たばこ対策に詳しい産業医科大学の大和浩教授は、「たばこが健康に悪影響を与えているだけではなく、社会全体に大きな損失をもたらしていることを示した貴重な研究だ。喫煙はがんや心筋梗塞、慢性閉塞(へいそく)性肺疾患(COPD)だけでなく、介護の原因となる脳梗塞や認知症のリスクも高める。つまり医療費だけでなく介護費にも負荷をかけていることになる。また、たばこは火災の原因になるほか、ホテルや賃貸アパートでは部屋の壁紙を頻繁に替える必要が出てくるなど清掃費用も増大させる。より厳しい規制を考えるべきだ」と話しています。 2018年8月19日(日) ■関東地方で風疹患者が急増 全国に拡大する恐れも 風疹の患者数が千葉県など関東地方で急増しており、厚生労働省は都道府県などに対し14日、予防接種の徹底などを呼び掛ける通知を5年ぶりに出しました。人の行き来が多い夏休み期間中のため、感染が全国に広がる恐れがあるとしています。 国立感染症研究所の集計では、8月8日時点での今年の風疹の患者数は96人で、昨年1年間の93人を上回りました。7月23日から8月5日までの2週間だけで、38人に達しました。 都道府県別では、千葉県が26人で最も多く、東京都が19人で続いています。男性が7割を占めていて30~50歳代が多く、ワクチン接種の割合が低い年代のためとみられます。 風疹は、感染から2~3週間で発症し、発熱や発疹、リンパ節のはれなどの症状が出ます。妊娠初期に感染すると、生まれてくる赤ちゃんに難聴や白内障、心臓の障害などが起こる恐れがあり、特に注意が必要。 厚労省の通知は、患者数が約1万4000人と大流行した2013年以来。医療機関に対し、発熱や発疹で患者が受診した場合、風疹の可能性を考慮して診療するよう注意を促しています。また、妊婦と同居する人などに対し、予防接種を受けるよう呼び掛けていますが、30歳代から50歳代の男性については、感染の広がりを抑えるため、周囲に妊婦がいなくても予防接種を自主的に受けてほしいとしています。 2018年8月18日(土) ■ファミレス「ガスト」、プラスチック製ストロー全廃へ 外食大手で初 ファミリーレストラン最大手のすかいらーくホールディングス(HD)が2020年までに、国内外3200店すべてでプラスチック製ストローの利用をやめることが8月16日、明らかになりました。 環境破壊や健康への影響からプラスチックの大量使用に懸念が高まっており、国内外で規制が強まる見通し。アメリカのコーヒーチェーン大手のスターバックスなどに続き、日本の外食大手で初めて廃止に踏み切ります。
すかいらーくHDは日本と台湾に店舗を持っており、まず年内に、日本のファミレス「ガスト」の全1370店で廃止します。来店客が自由に飲み物を取れるドリンクバーにストローを置くのをやめ、グラスだけ提供します。 幼児や障害者などストローが必要な来店客や、スムージーなどストローを使うメニューには提供するものの、既存のプラスチックは使わない代替品を検討しています。 すかいらーくグループは年間1億500万本、「ガスト」で6000万本のプラスチック製ストローを使っており、使用後は地域の分別方針に則して処理しています。 経済協力開発機構(OECD)によると、世界のプラスチックごみ発生量は2015年に3億200万トンで、1980年の6倍に増えました。海に流出して生態系を脅かすほか、プラスチックの化学物質が食品を介して人体に入り、健康に悪影響を及ぼす懸念があります。 欧州連合(EU)がストローなど使い捨てプラスチック製品を規制する方針で、日本政府もプラスチックごみの削減に向け議論を始めています。 企業では、スターバックスが2020年までにプラスチック製ストローを世界で廃止します。アメリカのマクドナルドは、イギリスとアイルランドで紙製に切り替える方針。日本のスターバックスやマクドナルドでは、具体的な取り組みはまだありません。ファミレス最大手のすかいらーくHDが全廃を決めたことで、同様の流れが日本で進む公算が大きくなりました。 2018年8月18日(土) ■メタボリック症候群の該当者と予備軍は約1412万人 厚労省が公表 厚生労働省は8月2日、2013~2022年度の10年間にわたる国民の健康づくり計画「健康日本21」で定めた、肥満度や生活習慣に関する数値目標の達成状況を公表しました。全53項目のうち、介護を受けたり寝たきりになったりせずに日常生活を送れる「健康寿命」など約6割の項目で改善がみられたものの、メタボリック症候群の人数など横ばいの項目もありました。
厚労省は近く中間報告書をまとめ、残りの期間での目標達成を目指しています。
メタボリック症候群の該当者と予備軍は、計画策定時の約1400万人から約1412万人とやや増加。体格指数(BMI)が25以上の「肥満」の人の割合も、20~60歳代男性では31・2%から32・4%と微増していましたた。
肥満傾向の子供は、小学5年生をみると、男子4・60%、女子3・39%から、男子4・55%、女子3・75%とあまり変わっていませんでした。
成人の喫煙率は、19・50%から18・30%と微減にとどまりました。
一方、健康寿命は、計画策定時の男性70・42歳、女性73・62歳から、男性72・14歳、女性74・74歳と延びました。厚労省が「8020運動」として推進する80歳で自分の歯が20本以上ある人の割合は51・20%で、「2020年度までに50%」とする目標をすでに達成しています。
2018年8月18日(土) ■京大、パーキンソン病患者にiPS細胞移植へ 患者7人が参加予定 京都大は8月1日、人のiPS細胞(人工多能性幹細胞)から作製した神経細胞を神経難病のパーキンソン病の患者の脳に移植する世界初の臨床試験(治験)を始めました。治験は、iPS細胞を使った目の難病や心臓病患者に対する臨床研究に比べて実用化により近い点が特徴で、早期の治療法確立と保険適用を実現させる狙いがあります。 パーキンソン病は手足の震えや筋肉のこわ張りといった症状が出る難病で、脳内で神経伝達物質のドーパミンを作る神経細胞が徐々に減ることが原因。国内の患者数は16万人とされ、根本的な治療法はまだありません。 治験では、他人由来のiPS細胞iPS細胞(人工多能性幹細胞から作製した神経前駆細胞を患者の左右の脳に計約500万個注射。移植細胞が神経細胞になってドーパミンを出すことで症状の改善や服用薬の減量が期待されますが、移植後1年間は拒絶反応を抑えるために免疫抑制剤を投与します。2年間の経過観察で、移植細胞のがん化の有無や改善効果などを確認します。 京大病院によると、8月1日からパーキンソン病患者の選定作業を始めました。治験には50~69歳の患者7人が参加予定で、神経細胞を移植する1例目の患者は京大病院の患者から選びます。残り6人は全国から募集し、中程度の症状で、認知症を発症していないなどの条件を満たした応募者から絞り、京大病院の医師などでつくる患者選定委員会で決定。1例目の移植は年内にも実施し、7人の治験は2022年度までに終了予定です。 先行する理化学研究所などによる目の難病や大阪大の心臓病患者に対する臨床研究はいずれも治療の実施に向けた研究段階で、再生医療安全性確保法に基づいて国から承認されました。iPS細胞から作製した目の網膜や心筋細胞を医療製品と認可してもらうには、改めて医薬品医療機器法(薬機法)に基づく治験をする必要があります。 一方、治験は臨床研究の一つであるものの、国から医薬品や再生医療製品としての承認を受けることを目的に薬機法が定める厳しい基準で実施されます。京大チームは治験の審査を担当する国の機関と事前相談を重ねるなどし、7人の治験で有効データが得られれば条件付きで早期に承認を受けることができ、より早く一般医療として保険適用が認められます。 京大チームは2020~2023年度ごろの早期承認を目指しており、チームの高橋淳・京大iPS細胞研究所教授は「7例のデータを基に治療法の承認を得たい。他の治療法と組み合わせることで根治に近付けられる」と話しています。 2018年8月17日(金) ■月45時間を超える残業、企業に健康対策を義務付け 厚生労働省 厚生労働省は2019年春から導入する残業時間の上限規制で、原則の上限である月45時間を超えて残業させる場合、社員の健康を守る対策を定めることを企業に義務付けます。内容は限定しないものの、深夜勤務の制限や、退社から出社まで一定の時間を空ける制度の導入などを求め、企業が安易に残業時間を延ばせないようにします。 労働政策審議会(厚労相の諮問機関)で決定して、労働基準法に基づく省令で定める労使協定(36協定)の必須記載事項に、月45時間超の残業をした人に対する健康確保の対策の内容を規定します。記載がない労使協定は、労働基準監督署が受け付けません。 対策の内容は企業の労使に委ねるものの、労働基準法の指針で望ましい項目を示します。特別休暇を与えるほか、連続した年次有給休暇の取得を促す施策や、深夜勤務の回数の制限、退社から出社まで一定の時間を設ける勤務間インターバルの導入などを盛り込む方針。 6月末に成立した働き方改革関連法で、日本の労働法制で初めて残業時間の上限規制の導入が決まりました。36協定で認める残業の上限は、原則「月45時間・年360時間」に設定。特別条項付きの協定を結んでも、年720時間以内、2〜6カ月平均で80時間以内、単月で100時間未満に抑えなければなりません。 現在は特別条項付きの36協定を結べば、事実上、青天井で残業の上限を延ばせます。残業時間の上限規制は、大企業は2019年4月、中小企業は2020年4月から適用し、違反企業には懲役や罰金が科せられます。 残業時間の上限規制は長時間労働の削減につながるものの、単月で100時間未満という基準は脳・心臓疾患の労災認定基準と重なるぎりぎりのライン。厚労省は特別条項付きの協定を結ぶ際に健康対策を設けさせることで、働きすぎや過労死を抑制します。 従業員が月45時間を超える残業をする企業は多いとみられています。業務には季節ごとに繁閑があり、忙しい時期には残業を延ばさざるを得ないためです。厚労省は特定の対策を求めるわけではないものの、望ましい対策として例示される施策は幅広く、労使のトラブルを避けるためにも、多くの企業が対応を迫られそうです。 2018年7月15日(日) ■熱中症、全国で1535人搬送 富山など6県で6人死亡 全国的に高気圧に覆われ厳しい暑さとなった14日、熱中症とみられる症状で救急搬送された人が全国で1535人に上ったことが明らかになりました。富山、静岡、鳥取、広島、大分、熊本各県で計6人が死亡しました。 都道府県別では、搬送者が最も多かったのは大阪府の156人。次いで、愛知県が125人、千葉県と東京都がそれぞれ102人、埼玉県89人、福岡県の84人などでした。 総務省消防庁によると、静岡県南伊豆町で90歳代の男性が自宅の外で倒れているのが見付かり、病院で死亡を確認。富山県射水市では自宅裏で男性(86歳)が倒れており、病院で死亡しました。大分県津久見市では家にいた70歳代男性が病院で死亡しました。 鳥取県日野町では畑で倒れていた女性(80歳)が病院で死亡した。広島県三原市では自宅付近に倒れていた農作業中の女性(90歳)が死亡しました。熊本県菊陽町でも住宅で80歳代女性が倒れており、病院で死亡が確認されました。 厳しい暑さは15日以降も続くため、気象庁が注意を呼び掛けています。関東甲信や近畿では、光化学スモッグへの警戒も必要になります。 2018年7月15日(日) ■パーキンソン病とALSの遺伝子治療、来年にも治験開始へ 自治医科大など 運動障害などを引き起こす難病「パーキンソン病」と、全身の筋肉が衰える難病「筋委縮性側索硬化症(ALS)」の患者に、正常な遺伝子を投与する遺伝子治療の臨床試験(治験)を、来年にも自治医科大学などの研究チームがそれぞれ始めます。1回の治療で長期間、症状改善や病気の進行を抑えられる可能性があり、数年後の治療薬の実用化を目指しています。 遺伝子治療は、人工的に作った正常な遺伝子を患者の細胞に組み入れ、病気を治療します。遺伝子を細胞に送り込む「運び役」として、安全性の高い医療用ウイルスなどが使われます。 パーキンソン病は、脳内で運動の指令を伝える物質「ドーパミン」が十分に作れなくなり、体が震えたり動きが鈍くなったりします。治験では、複数の正常な遺伝子をウイルスに入れて作った治療薬を、患者の脳に注入します。一部の遺伝子を患者の細胞に注入する臨床研究では、目立った副作用はなく、運動障害の改善もみられたといいます。 また、ALSは特定の酵素の減少が筋肉の委縮にかかわっているとされ、治験ではこの酵素を作る遺伝子を入れた治療薬を脊髄周辺に注入します。世界初の試みですが、マウスでは、病気の進行を抑える効果が確認されたといいます。 いずれの治療薬も、研究チームの村松慎一・自治医科大特命教授らが設立したベンチャー「遺伝子治療研究所」(川崎市)で製造します。 村松特命教授は、「どちらの病気も遺伝子治療薬はまだなく、なるべく早く実用化したい」と話しています。 日本遺伝子細胞治療学会理事長の金田安史・大阪大学教授は、「遺伝子治療は、1回の治療で長期的な効果が期待できる。国際競争が激しく、国内でも取り組みを強化する必要がある」と話しています パーキンソン病は50歳以降の発症が多く、国内患者数は推定約16万人。薬での治療が一般的で、病気が進むと効きにくくなります。ALSは50〜60歳代の発症が多く、国内患者数は約9500人。進行すると、歩行や呼吸が困難になります。 2018年7月15日(日) ■iPS細胞から大量の血小板の作製に成功 京都大iPS細胞研究所 人のiPS細胞(人工多能性幹細胞)から、止血作用のある血液成分の「血小板」を大量に作製する方法を開発したと、京都大学iPS細胞研究所の江藤浩之(こうじ )教授(血液学)らの研究チームが発表しました。慢性的に不足している輸血用血小板の製造につながると期待されます。 論文は13日、アメリカの科学誌「セル」電子版に掲載されました。 江藤教授らは4年前、人のiPS細胞から、血小板を生み出す「巨核球」という血液細胞を作ることに成功しましたが、1回の輸血に必要な1000億個以上の血小板を得ることはかないませんでした。 研究チームは、血管が分岐し、血液が不規則な流れ(乱流)を起こす部位ほど、巨核球が多くの血小板を生み出すことを発見。乱流を再現する培養装置を開発しました。装置の中で2枚の円形の板を上下動させ、培養液に乱流を起こさせます。 この装置で巨核球を培養した結果、約5日間で高品質な血小板を1000億個以上、作製できました。この血小板が正常に機能することも、マウスとウサギの動物実験で確かめました。 江藤教授は、「今後は、いかに低価格で血小板を製造できるかが課題になる」と話しています。 2018年7月14日(土) ■「カレーを鍋のまま保存」する人が半数近く 食中毒への理解不足、調査で判明 暑い季節は食中毒の発生が懸念されますが、東京都が行った実態調査で、回答者の半数近くがカレーを鍋のまま冷蔵や常温で保存するなど、食中毒対策への理解不足が明らかになりました。東京都は「日々の食事に食中毒の危険があることを認識してほしい」と注意を呼び掛けています。 調査は年明けに、東京都内に住む20~79歳の男女を対象に実施し、週1回以上自宅で調理する1000人から回答を得ました。 調査では、食中毒予防について6割強の人が生肉の水洗いや常温での解凍、解凍後でも再凍結すれば「効果がある」と答えましたが、東京都によるといずれも誤り。生の鶏肉はカンピロバクター菌が付着している場合、水洗いで菌を周囲に飛び散らせてしまう可能性があります。肉や魚を常温で解凍するケースでは、中心部の解凍を待つ間に表面の菌が増殖する恐れがあり、再凍結しても菌は死滅しないといいます。 8割を超える人が酢や梅干し、わさびに殺菌効果があると考えていましたが、菌増殖を防ぐには食べ切れぬほどの量が必要。調理前の手洗いは基本なものの、実施しているのは女性8割、男性6割にとどまりました。 気温の高い夏場は一晩寝かせたカレーも要注意。カレーやシチューなどとろみがあって冷めるのに時間がかかる料理は、腹痛や下痢を引き起こすウェルシュ菌が増殖しやすくなります。温度12~50度で増殖し、臭いなどの変化はなく、菌の一部は再加熱しても死滅しません。予防には底の浅い容器に小分けにして素早く粗熱をとり、冷蔵や冷凍で10度以下に急冷する必要があります。 東京都健康安全研究センターの実験によりますと、調理したカレーに1グラム当たり1000個のウェルシュ菌が残っていると、室温のまま冷ました場合は、5時間後に100万個以上に菌が増えた一方、2時間で急速に温度を下げた場合は、5時間も菌は増殖しなかったということです。 また、一晩寝かせたカレーを温め直す場合には、ウェルシュ菌が空気を嫌うため、電子レンジではなく、鍋でしっかり混ぜ、空気中の酸素を加えながら、むらがないように加熱することが大切だとしています。 東京都民3000人から回答を得た昨年11月の予備調査では、普段の食事で気を使っていることについて、半数が「栄養バランス」と回答し、「食中毒予防」と答えた人は22%でした。食中毒の経験者は25%でした。 東京都健康安全研究センターでは、「食中毒発生の危険が身近にあることを理解し、正しい知識を身に着けてほしい。実践することでリスクは回避できる」と呼び掛けています。 2018年7月13日(金) ■介護施設の3割、保証人のいない高齢者の入所拒否 厚労省の委託調査で判明 高齢者が介護施設に入所する際、身元保証人がいない場合は受け入れを拒否する施設が約3割に上ることが、厚生労働省の委託調査で明らかになりました。単身者や身寄りのない人などが保証人を用意できないケースが増える中、厚労省は入所を拒否しないよう求めていますが、介護施設側には費用の支払いや死亡時の引き取りなどへの根強い不安があります。 調査は委託先のみずほ情報総研が昨年12月、全国の特別養護老人ホームや老人保健施設、グループホーム、有料老人ホームなど4900カ所を対象に実施し、2387カ所から回答を得ました。 95・9%の介護施設が身元保証人や身元引受人などとして、入所時の契約書に本人以外の署名を求めており、このうち30・7%は「署名がないと受け入れない」と回答。成年後見制度の申請など「条件付きで受け入れる」が33・7%で、署名がなくても受け入れる施設は13・4%にとどまりました。 身元保証人に求める役割としては、「緊急時の連絡先」「遺体や遺品の引き取り」「入院時の手続き」「利用料の支払いや滞納時の保証」「医療行為への同意」「医療費の支払い」との回答が多くなりました。受け入れを拒否する割合は、別の民間団体による2013年の調査と変わっていません。 厚労省は介護施設の運営基準に基づき「身元保証人がいないことは拒否の正当な理由にならず、拒否した施設は指導対象になる」としています。実際の対応は自治体が判断し、口頭での指導にとどまることが多いとみられます。 今回の調査では、市区町村や成年後見人に身元保証人としての役割を求める意見が多くなりました。厚労省は、成年後見人は葬儀など死後の対応ができないため、権限の拡大などを検討しています。 2018年7月12日(木) ■医療機関の65%が入院患者に保証人を要求 病院や診療所へのアンケートで判明 医療機関の3分の2が入院患者に対して身元保証人を用意するよう求めていることが、厚生労働省研究班のアンケートで判明しました。そのうち1割弱の医療機関が、身元保証人のいない患者の入院拒否という違法の可能性がある対応を取っていました。 医師法は正当な理由なく診察を拒むことを禁じています。 厚労省は「正当な理由」は医師の不在や病気に限られるため、身元保証人の不在が理由の入院拒否は医師法に抵触するとして、都道府県に医療機関を指導するよう4月に通知しました。 調査は山縣然太朗(ぜんたろう)・山梨大学教授(公衆衛生学)が代表を務める研究班が昨年9~10月に全国の病院・診療所約6000カ所を対象に実施実し、1291カ所から回答を得ました。有効回答率は21%。 病院では90%超、診療所を含めた全体では65・0%の医療機関が患者の入院時に身元保証人を求め、「求めない」と回答した23・9%を大きく上回りました。身元保証に求める役割(複数回答)を尋ねると、最多が「入院費の支払い」(87・8%)で、緊急連絡先(84・9%)、身柄の引き取り(67・2%)、医療行為の同意(55・8%)が続きました。 身元保証人を求める医療機関の8・2%が、身元保証人を用意できない患者の入院を拒否していると回答。75・7%が入院を認め、10・7%が社会福祉協議会などが提供する身元保証サービスを利用していると回答しました。身元保証人を用意できない患者に対応する規定や手順書があるとの回答は、全体の7・3%にとどまりました。 身元保証人を用意できない単身者は未婚化などで今後も増え続ける見通しで、対策が求められそうです。 山縣教授は、「保証人を求めることが慣習になっており、いない場合は病院が医療費を肩代わりする例もある。実態を調べて、医療機関が心配せずにすむ対策を考える必要がある」としています。 厚労省の別の調査では、身元保証人がいない場合、特別養護老人ホームや老人保健施設などの介護施設でも約30%が入所を拒否することがわかっています。 2018年7月12日(木) ■愛知県と名古屋市、はしか流行の終息宣言 4週間で新たな患者が確認されず 今年4月から愛知県内で感染が拡大したはしか(麻疹)について、愛知県と名古屋市はこの4週間で新たな患者が出ていないことから、流行の終息を宣言しました。 愛知県内では、今年4月にはしかが流行していた沖縄県を旅行した名古屋市の10歳代男性が4月11日、名古屋市内の病院ではしかと診断されて以降、感染が広がり、計25人の感染が確認されました。うち20人は、沖縄県を旅行した10歳代男性から広がったとみられます。 愛知県によると、10歳代男性が受診した名古屋市と同県東郷町の医療機関を訪れた人が次々と感染し、学校や家庭で広まりました。このほか1人はタイから帰国後に発症し、3人は感染経路を特定できませんでした。 年齢別では、30歳代と20歳代がそれぞれ8人で、10歳代が7人、10歳未満が2人でした。ワクチンの接種回数では、未接種7人、1回が10人。2回以上は3人で、このうち1人は2回目が患者との接触から数日後でした。残る5人は接種したか不明でした。 こうした中、愛知県と名古屋市は、6月8日に確認した最後の感染者から、はしかの潜伏期間の2倍となる4週間が経過しても新たな患者が出ていないことから、国立感染症研究所の指針に基づいて、9日、流行の終息を宣言しました。 愛知県や名古屋市は、はしかの予防には、2回のワクチン接種が有効だとして、1歳と小学校入学前の年度の定期予防接種を忘れずに実施して欲しいと呼び掛けています。 2018年7月11日(水) ■頭に磁気刺激を加えるTMS治療を国内で承認 薬が効かないうつ病患者向け 頭部に磁気の刺激を加え、うつの症状を改善する新しい治療が、国内でも導入されます。東京都内の男性会社員(59歳)は、薬を飲んでも意欲の減退や体のだるさなどが続いていましたが、このTMS(Transcranial Magnetic Stimulation:経頭蓋磁気刺激法)治療を受けたところ、体調が回復しました。現在、復職に向けた訓練に取り組んでいます。 この男性会社員は、気分が落ち込むうつ状態と、調子のよいそう状態を繰り返す双極性障害(そううつ病)を患っています。15年ほど前から症状が出始め、寝付きが悪くなっていましたが、当初は診断がつかず、しばらくして、うつ病と診断され、抗うつ薬を飲み始めたが、良くなったり悪くなったりを繰り返しました。 6年前に転院したメディカルケア虎ノ門(東京都港区)で双極性障害と判明。しかし、状態は変わらず、休職しては復職し、また休職という生活が続きました。 昨年8月、院長の五十嵐良雄さんからTMS治療の臨床研究に参加することを提案されました。TMS治療は、頭部に当てると磁場が発生し、それに伴って脳内に微弱な渦状の電流が走る医療機器を使い、神経細胞を刺激することで効果を発現するというもの。 男性会社員は12月から治療を始め、1日20分間の治療を今年4月までに計30回受けました。最初は頭をたたかれるような衝撃と、こめかみや歯が震える不快感に驚きました。その後は慣れて刺激の強さも上げ、20回続けたところで体調の改善を実感しました。 男性会社員は、「磁気を当てることで何か副作用が出るのではないかと不安もあったが、やってよかった」と振り返ります。 気分が落ち込むうつ状態の時、患者の脳内ではセロトニンなどの神経伝達物質の働きが低下していたり、量が異常に減ったりしています。TMS治療の臨床研究をしてきた東京慈恵会医科大学の鬼頭(きとう)伸輔・准教授(精神科)は、効果の仕組みについて、渦状の電流の刺激が神経伝達物質の働きを回復させるとみています。 TMS治療は2008年、薬の効果が得られないうつ病患者を対象にアメリカで承認され、ヨーロッパやアジアにも広がりました。双極性障害に対してはまだ研究段階なものの、薬が効かないうつ病の患者向けには、日本でも昨年9月、承認され、保険適用となる見込みです。 これを受けて、日本精神神経学会は今年4月、TMS治療の適正使用指針を作成し、治療の目安は1日約40分を週5回のペースで計20〜30回実施するとしました。 ただし、磁気で誤作動の恐れがある心臓のペースメーカーなど体内埋め込み型の装置を装着している患者は、対象外。アメリカでけいれん発作を起こしたケースがあることから、てんかんやけいれん発作の経験がある患者は、脳神経外科や神経内科などの専門医と相談して実施を判断するよう求めています。 鬼頭・准教授は、「連日治療に通わなければならない大変さはあるが、比較的副作用が少なく、効果も期待できる」と話しています。 今のところ、国内でこの治療が承認されたのはうつ病に限られていますが、五十嵐さんは「うつ病での実績が重なり、治療法として根付けば、双極性障害へも適応が拡大されるのではないか」と話しています。 2018年7月10日(火) ■通気性25倍の女性用ナプキンを開発 信州大、ナノファイバーを使用 信州大学国際ファイバー工学研究所の金翼水准教授は9日、ナノファイバーを使った世界最高レベルの通気性を持つ女性用ナプキンを開発したと発表しました。ナノファイバーの量産設備を持つ韓国企業などと連携して研究してきました。通気性は最も性能が高い市販品の25倍で、人体には無害で優れた抗菌性を示します。 直径200ナノメートル(ナノは10億分の1)の繊維でできたナノファイバーを通常の不織布に貼り付けました。厚さは4マイクロメートル(マイクロは100万分の1)。既存品の衛生パッドフィルムと比べて非常に細かい穴が空いているため、通気性が高く、水分は通しません。通気性が高いと、臭いやかゆみ、炎症といった問題が起きにくくなります。 金准教授は、「具体的な企業名は出せないが、(商品化に向けて)手を挙げている会社はある」と話しています。女性用ナプキンやおむつなどのほかに、耐水性と通気性からアウトドア用品への応用も見込めるとしています。 2018年7月9日(月) ■18歳以下の甲状腺がん、福島県の集計漏れ11人 福島県立医大が調査 東京電力福島第一原発事故当時18歳以下だった約38万人を対象にした福島県の甲状腺検査を巡り、検査でがんと把握されていないがん患者が少なくとも11人いることが、8日、福島市であった県の検討委員会の甲状腺評価部会で報告されました。 県の検査を受託する福島県立医大によると、同大付属病院で2011年10月〜2017年6月に甲状腺がんの手術を受けた人を調べたところ、県の検査で「がんまたはがんの疑い」としては集計されていない人が11人いました。検査で経過観察と判断された人が7人いたほか、検査を受けていなかった人などもいました。 内訳は男性4人、女性7人。事故当時0〜4歳1人、5〜9歳1人、10〜14歳4人、15〜19歳5人となっています。 県の甲状腺検査では、2011年10月〜今年3月に計162人ががんと診断されています。しかし、検査で経過観察と判断され、その後がんが判明した患者が集計から漏れているとの指摘が昨春、小児甲状腺がん患者を経済支援する市民団体からあり、検討委員会が調べるとしていました。 検討委員会甲状腺評価部会長の鈴木元(げん)・国際医療福祉大クリニック院長は、「いろいろな方法で全数を把握していくのが重要だ」と話しました。 2018年7月9日(月) ■日本ハム、ウインナー1万3040パックを自主回収 樹脂片混入の可能性あり 日本ハムは8日、ウインナーソーセージ「小さなシャウエッセン85g(2個束)」の製造過程で黒い樹脂片が混入した可能性があるとして、6520束に当たる1万3040パックを自主回収すると発表しました。 今のところ健康被害は確認されていないといいます。 回収対象となるのは、子会社の東北日本ハム(山形県酒田市)の工場で6月25日に製造され、パッケージ表面の右下にある賞味期限欄に「18・7・24・NH」と記載された商品。2パックを1束にまとめて6520束が出荷され、関東を中心に販売されました。 ウインナーの原料などを置くパレット(台)の樹脂片が混入したとみられます。7月2~5日、購入した客から「異物が混入していた」との問い合わせが3件あり、発覚しました。 商品を着払いで東北日本ハムに郵送すれば、商品代金相当のクオカード(1束当たり500円)で返金します。問い合わせは平日午前9時~午後5時、日本ハムお客様サービス室、電話(0120)276380へ。 2018年7月9日(月) ■新薬にアルツハイマー型認知症の進行を抑制する効果 エーザイが治験で確認 製薬企業のエーザイ(東京都文京区)は6日、開発中のアルツハイマー型認知症治療薬について、症状の進行を抑える効果が第2相臨床試験(治験)の大規模試験で確認できたと発表しました。アルツハイマー型認知症の原因物質の一つとされる「アミロイドベータ」というタンパク質が脳内で減ることも示しました。 新薬はアメリカの製薬企業バイオジェンと共同開発する抗体医薬品「BAN2401(開発名)」。アミロイドベータが脳に沈着する前段階の集合体に結合して除去します。2020年代早期の発売を目指しています。 第2相治験は2012年~2018年に、日米欧などで856人を対象に実施。投与18カ月間の解析で、症状の評価指標に基づく悪化の抑制と、陽電子放射断層撮影装置(PET)による脳内のアミロイドベータ蓄積量減少を確かめました。 アミロイドベータは脳に蓄積すると神経細胞が機能障害を起こし、細胞死をもたらすとされます。エーザイはこれまでも認知症の症状悪化を遅らせる薬「アリセプト」を販売してきました。新薬ではアミロイドベータを減らすことで、認知症を根本から治療することを目指しています。 世界の製薬大手がアミロイドベータを標的とする薬の開発に取り組んでいますが、実用化された例はありません。6月には、アメリカのイーライ・リリーとイギリスのアストラゼネカが共同開発した「ラナベセスタット」が、最終段階の第3相治験で十分な治療効果を証明できないとして中止を発表しました。 エーザイは現在、アミロイドベータを標的にした薬を3品目開発しています。BAN2401のほか、アミロイドベータの発生段階を狙う「エレンベセスタット」と、沈着する直前や沈着後を狙う「アデュカヌマブ」で、いずれも第3相治験に入っています。 2018年7月9日(月) ■あすか製薬、高血圧症治療薬を自主回収 発がん性物質が混入 あすか製薬(東京都港区)は6日、2016年12月まで製造・販売していた高血圧症治療薬のジェネリック医薬品(後発薬)「バルサルタン錠『AA』」の4製品を自主回収すると発表しました。薬の原材料に、発がん性があるとされる物質「N―ニトロソジメチルアミン」が混入しているとして、海外の規制当局から情報が寄せられ、ヨーロッパで7月上旬から自主回収が始まったため。 服用した場合、重い健康被害が出る可能性があるものの、現時点で被害の情報はないといいます。 薬の原材料となる「原薬」をつくる中国企業の工場の製造過程で、問題の物質が発生したとみられます。 「バルサルタン錠『AA』」は、国内では2014年5月から2016年12月にかけて、あすか製薬と外資系製薬のアクタビスの合弁会社「あすかActavis製薬」が製造し、病院や薬局1315カ所に約11万箱(約1250万錠)を販売しました。すでに大半が服用されているといいます。 あすか製薬は、アクタビスが他社に買収された後に国内販売を中止したが、まだ市中に残っている可能性があるといいます。 あすか製薬は、「服用し続けると重篤な健康被害に至る可能性は否定できない」としています。 厚生労働省によると、問題の中国企業の工場の原薬が使われた薬は、国内ではほかにはないといいます。同省の担当者は、「健康への影響は発がん性物質の混入量によって違う。なぜ混入したかやどれだけの量が混入したか調査結果を報告してもらい、必要があれば対応していく」としています。 2018年7月9日(月) 福島県は6日、県南部に住む20〜40歳代の男女3人がはしか(麻疹)と診断されたと発表しました。6月29日に感染が確認された外国人女性と同じ建物で暮らしたり、受診に付き添ったりしていました。 これで6月以降の感染者は6人となりましたが、重症者はいません。 福島県によると、20歳代の女性2人は就業目的で東南アジアから入国していました。40歳代の日本人男性は女性たちと同じ会社に勤務し、最初に感染した女性を通訳するため、6月22日に医療機関に同行していました。 男性は発症前の7月1日、栃木県那須町にある道の駅「東山道伊王野」を利用していたため、福島県は栃木県に情報を提供し、「感染拡大の可能性もある」として注意を呼び掛けています。 栃木県は6日、はしかを発症した福島県の40歳代の男性が那須町伊王野の道の駅「東山道伊王野」を利用し、不特定多数と接触した可能性があると福島県側から情報提供があったことを明らかにしました。栃木県は、同施設を利用し、発熱などはしかを疑う症状が現れた場合は医療機関に事前連絡の上、受診するよう呼び掛けています。 はしかを発症した男性は7月1日午後1時~2時半ごろ、同施設を利用しました。麻疹ウイルスの空気中での生存期間は2時間以下とされており、現時点で同施設を利用しても感染することはありません。仮に、はしか患者と接触した場合、潜伏期間を考慮して最大21日間の健康観察が必要といいます。 2018年7月8日(日) 調剤薬局チェーンの日本調剤(東京都千代田区)は、病院向けに薬剤師を派遣するサービスを始めます。産休・育休を取得する薬剤師の代わりとして、全国47都道府県の日本調剤の店舗で働く薬剤師らを派遣します。 薬剤師は女性の比率が高く、人材の一時的な不足を補いたい需要は高いとみており、日本調剤にとっては自社の薬剤師に病院勤務を経験させることでスキルアップも狙います。 7月中にもサービスを始める予定で、4月1日に東京本社で労働者派遣事業許可を取得しました。日帰りで通勤できる範囲の病院で契約を受け付け、日本調剤の店舗勤務に就いている薬剤師らを派遣します。派遣期間は1〜2年を想定しています。 日本調剤は全国で約3000人の薬剤師を抱えています。派遣する人数は未定ですが、現場のニーズに応じて対応を検討します。今後は東京本社以外の事業所でも、労働者派遣事業許可を順次取得していく考え。 自社の無期雇用の社員を派遣する「常用型派遣」である点が特徴で、希望者から登録を受け付けて派遣先の契約期間と同じ長さの雇用契約を結ぶ「登録型派遣」ではありません。病院が登録型派遣で薬剤師を雇うケースはあるものの、今回のようなモデルは珍しいことです。薬剤師は日本調剤の店舗で実務に従事しており、病院にとっては一定のスキルが担保される利点もあります。 日本調剤は子会社メディカルリソース(東京都千代田区)を通じ、薬局向けの薬剤師の登録型派遣はすでに実施しています。 資格を持っていながら活用されていない薬剤師は、業界で「たんす薬剤師」と呼ばれることもあります。厚生労働省によると2016年12月末時点で、約30万人の薬剤師全体のうち無職の者は3・5%。約61%を女性が占める薬剤師の場合、出産や育児を機に仕事から離れてしまうケースもあるといいます。 大手の日本調剤の場合、店舗で勤める正社員の薬剤師のうち5・5%が産休・育休を取得しているといい、業界全体でも同程度のニーズがあると判断しました。病院が派遣を受け入れ、産休・育休を取りやすくすることで、女性薬剤師のつなぎ留めや新規獲得につながることを期待しています。 日本調剤にとっても、自社の薬剤師に病院内での勤務経験を積ませられる利点は大きく、病院では医師の処方箋に基づき医療用医薬品を提供する調剤以外にも、入院患者向けに薬を提供したり、服薬指導をしたりする業務があります。医師の近くで服薬についての考えを知ることは、薬剤師のキャリアにプラスになるとみています。 厚労省は2015年、薬局の将来像を示す「患者のための薬局ビジョン」を策定。患者の服薬情報を一元管理する「かかりつけ機能」に加え、抗がん剤の副作用が起きた時の助言など「高度薬学管理機能」も求めています。 日本調剤は全国47都道府県で展開する約590店のうち、7割以上が病院などに近接する「門前薬局」。高度医療を手掛ける大学病院前などの立地も多く、大学病院内での実務研修も行っています。2018年度からは専門性を高めるため、知識や技能などに応じて薬剤師を4段階で評価する制度も導入しました。 日本調剤は高度医療に対応できる専門性が強みで、新たな派遣事業を始めることで病院との連携を深め、幅広いニーズに対応します。 2018年7月7日(土) がん患者から摘出した腎臓を別の腎不全の患者に移植する「病気腎移植」について、厚生労働省の先進医療会議は5日、健康保険外の治療ながら、入院や投薬の費用に健康保険が適用される「先進医療」に条件付きで承認しました。倫理的な課題が解消されたと判断しました。 申請したのは徳洲会グループの東京西徳洲会病院(東京都昭島市)で、宇和島徳洲会病院(愛媛県宇和島市)とともに、重症の腎不全患者を対象に移植手術を実施します。ドナー(臓器提供者)は、直径7センチ以下のがんが腎臓にあり、がんの部分だけを切除するのが難しく、全摘出した腎臓の提供に同意した人がなります。 2病院の計画では、有効性や安全性を確認するため、4年間で42例の移植手術を実施する予定で、移植後の5年間の生存率やがん発生がないかどうかなどを調べます。ただし、21例目までに4例で腎臓が機能しなければ中止します。 先進医療会議は承認に当たり、移植のためにドナーのがん治療に不利益がないよう「細心の配慮が必要」とし、移植を受ける腎不全患者の選定にも「客観性と公平性を担保する必要がある」と指摘。「ドナーの適格性だけでなく患者の選定にも日本移植学会などの関係学会が推薦する外部委員が2人以上参加すべきだ」と条件を付けました。 病気腎移植は、宇和島徳洲会病院の万波誠医師らが1990年ごろから実施していたことが2006年に発覚。日本移植学会などが安全性や倫理面に問題があると指摘するなど、議論を巻き起こしました。病院を運営する徳洲会グループも一時中止していましたが、腎臓移植を待つ人が1万人以上いるため病気腎移植を進めるべきだとして、2009年に臨床研究として再開。その後、医療費の一部に健康保険が適用される先進医療への承認を申請していました。 厚労省の先進医療技術審査部会が2017年10月、条件付きで承認し、この日の先進医療会議で正式決定しました。厚労省は8月以降、病院内での手続きなどが適切に進んだことを確認した上で、先進医療として告示し、移植手術が実施されます。 東京西徳洲会病院の小川由英・腎臓病総合医療センター長は、「我々には相当に責任があるので、慎重にやっていかなければならない」と話しました。 先進医療会議座長の宮坂信之・東京医科歯科大名誉教授は、「病気腎移植にもろ手を挙げて賛成ではない。保険適用をするかどうかを評価するスタート地点についたにすぎない」と話しました。 2018年7月6日(金) ■男性喫煙者に交通事故死のリスクが高まる傾向 東北大学が調査 たばこを吸う男性は、全く吸わない男性より交通事故死のリスクが高まる傾向にあることが4日、東北大学大学院歯学研究科の相田潤准教授らの調査で明らかになりました。 調査では、1993年当時、茨城県内38市町村で健康診断を受けた40〜79歳の9万7078人を対象とし、2013年までの死亡状況を住民基本台帳や人口動態調査死亡票を用いて追跡しました。そのうち、追跡可能だった9万6384人の喫煙と死亡状況を分析しました。 喫煙状況については、「非喫煙者」「過去喫煙者」「1日20本未満吸う現在喫煙者」「1日20本以上吸う現在喫煙者」に分類し、それぞれのグループでどれほど交通事故死があったかを調べました。 その結果、男性では、非喫煙者7335人中31人が、過去喫煙者9115人中46人が、1日20本未満吸う現在喫煙者5125人中29人が、1日20本以上吸う現在喫煙者1万1403人中62人が交通事故により死亡していました。 このリスクを、年齢や飲酒状況の影響を除いた上でそれぞれのグループ間で比較したところ、厳密には有意差(統計上意味のある差)はみられなかったものの、1日20本以上吸う男性では、非喫煙者の男性より交通事故死のリスクが1・54倍高まっていました。 また、やはり有意差はないものの、非喫煙者の男性と比べ、過去喫煙者や1日20本未満吸う現在喫煙者の男性のほうが、交通事故死のリスクは高まる傾向がみられました。 女性は喫煙者の人数自体が少なく、観察期間中に交通事故による死亡がありませんでした。 喫煙がどのように交通事故に関連するのか。喫煙者が運転手だった場合のリスクについて、相田准教授は「例えば、たばこを吸いながらの運転は、火をつけたり、たばこを落とすなどしたりした時によそ見や不注意運転につながる可能性がある」「ニコチン依存症は吸っていない時にストレスが高まるので、そのイライラが運転に影響したり、たばこによる心疾患や呼吸器疾患の不調も運転に影響したりする可能性がある」と推測しています。 また、今回の調査では、運転中の喫煙ではなく普段の喫煙習慣を聞いているため、運転中の喫煙による不注意事故が少なく見積もられている可能性があります。さらに、交通事故死の中には、直接喫煙がかかわらなそうな鉄道事故や飛行機事故、歩行者や同乗者としての事故も含まれています。 相田准教授は、「そうした喫煙との因果関係が低そうな交通事故死を除いたとすれば、実際の喫煙と運転事故の関連はもっと強固であることが予想される」と話しています。その上で、「たばこの煙は、肺がんなどの病気をもたらすだけでなく、喫煙者自身の安全を損ない、巻き込まれる人がいる可能性を重く受け止め、喫煙しながらの運転禁止など命を守る法的規制につなげてほしい」としています。 海外では、運転中の喫煙は子供への受動喫煙を防止する観点から禁止されていることがありますが、台湾やイタリアなどでは、運転中の喫煙は運転者の注意が散漫になるとして法律で禁止しています。日本では運転中の携帯電話の使用は、注意散漫や運転操作不適による交通事故を増やす可能性があることから道路交通法で規制されています。しかし、運転中の喫煙は規制されていません。 2018年7月6日(金) 産業医科大学(福岡県北九州市)などの研究チームは4日、約2万人の妊婦を対象とした調査で、血液中のカドミウム濃度が最も高いグループは、最も低いグループに比べて妊娠早期に早産となる頻度が1・9倍高いことがわかったと発表しまた。たばこや食品、環境中に含まれるカドミウムが原因となっている可能性があるといいます。 環境省と国立環境研究所が2011年から始めた全国の約10万組の親子を対象とした「子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査)」のうち、化学物質と健康に関する成果の第1弾。 産業医科大学医学部の辻真弓・准教授らの研究チームは、約2万人の妊婦を対象に妊娠22〜33週を「早期早産」、34〜36週を「後期早産」、37週~42週未満を「正期産」として分類。体格指数「BMI」や喫煙・飲酒歴、妊娠・出産回数などの影響を考慮して分析しました。 カドミウムと鉛、水銀、セレン、マンガンの5種類の金属の血中濃度を4つのグループに分けて、それぞれ早産との関係を解析したところ、妊婦の血液中のカドミウム濃度が最も低いグループに比べて、最も高いグループでは早期早産の頻度が1・9倍高いという関係がみられました。妊婦の血中カドミウム濃度と後期早産の間には、統計学的に有意な関係は認められませんでした。また、鉛、水銀、セレン、マンガンと早期・後期早産の間には、関係が認められませんでした。 今後は約10万人のデータを使って再度分析したり、金属以外の因子と早産との関係を検討したりする方針です。成果は6月28日、海外の環境科学・疫学関連の専門誌「エンバイロメント・リサーチ」に掲載されました。 2018年7月5日(木) 線虫という小さな生物を使って、人の尿の臭いからがんを発見する検査方法の研究が進められています。日立製作所と、九州大学発のベンチャー企業「HIROTSU(ヒロツ)バイオサイエンス」が4日、共同で本格的な臨床試験に乗り出し、2020年1月の実用化を目指すと発表しました。 2018年7月3日(火) 西日本から東日本を中心に猛烈な暑さが続いた先週1週間に熱中症で搬送された人は全国で3473人に上り、前の週に比べて5倍以上に急増したことが3日、総務省消防庁のまとめでわかりました。 総務省消防庁によりますと、6月25日から7月1日までの1週間に熱中症により病院に搬送された人は、全国で3473人に上りました。これは、その前の6月18日から24日までの1週間の667人と比べて5倍以上、また、昨年の同じ時期と比べて3倍近くにそれぞれ増えました。 関東甲信地方を中心に今後も厳しい暑さが予想されるほか、梅雨が明けていない地域でも湿度が高いと熱中症の危険性が高まるため、総務省消防庁は「適切に冷房を使い、こまめに休憩して水分を取るなど予防をしっかりしてほしい」と呼び掛けています。 2018年7月3日(火) 性行為などで感染し、重症化すれば失明など深刻な障害につながる恐れもある性感染症の梅毒の増加が続いています。昨年は1973年以来44年ぶりに梅毒感染者が5000人を超え、暫定値で5820人(男性3925人、女性1895人)となりましたが、今年も昨年を上回るペースで、地方都市や若い女性にも広がっています。 感染に気付きにくく他人に移しやすいため、自分とは無関係と思わずに予防を心掛け、心当たりがあれば検査を受けることが大切です。 梅毒は、感染から数週間後に性器や口の感染部位に、しこりや潰瘍(かいよう)ができます。ただ、治療しなくても症状が軽くなるため見過ごされやすく、数カ月後には全身の皮膚や粘膜に赤い発疹が出現。この時も治療せずに消えることがあるため、知らずに他人に移したり、治療が遅れて失明したり、記憶障害やまひなどの神経障害につながったりする恐れがあります。 予防には、不特定多数の人との性行為を避けることが重要。性行為の際は最初からコンドームをつけると、感染リスクを減らせます。 日本性感染症学会副理事長の石地尚興(いしじたかおき)・東京慈恵会医大教授(皮膚科)は、「リスクのある性行為は避け、感染が心配な時は検査してほしい」と訴えています。感染の有無は血液検査でわかり、地域によっては保健所で無料で受けられます。 治療には抗菌薬が有効。ただし最長で12週間飲み続ける必要があり、「途中で断念してしまう患者もいる」と性感染症に詳しい産婦人科医の北村邦夫・日本家族計画協会理事長は指摘しています。厚生労働省によると、海外では1度の注射ですむ薬が使え、世界的に標準治療となっているといいます。現在、厚労省はメーカーに開発を要請しています。 今回の流行では、女性は20〜30歳代に感染者が多く、男性は20~40歳代に多くなっており、性風俗に従事する若い女性やその客となる男性の間で感染が広がっている可能性が指摘されています。妊娠した女性が感染すると流産や死産したり、生まれた子供の肝臓や目、耳に障害が起こったりする「先天梅毒」になる恐れがあります。 厚労省によると、先天梅毒の新生児は2013年には4人でしたが、2016年は14人。厚労省研究班の報告書によると、2011〜2015年の間に新生児20人が先天梅毒になり、うち3人が死亡、3人に後遺症があったといいます。 厚労省は4月、梅毒に感染した妊婦の早期治療につなげようと、診断した際に医師に義務付けている保健所への届け出の項目に「妊娠の有無」を加える方針を決めました。また、風俗業の従事歴なども項目に加え、感染経路を分析する方針です。 2018年7月3日(火) 風邪の治療の際に、60%を超える医師が患者が希望すれば、抗生物質などの抗菌薬を処方しているという調査結果がまとまりました。抗菌薬は使用量が多くなるほど、薬が効かない「耐性菌」を増やすことにつながり、専門家は「風邪には抗菌薬が効かないことを広く知ってもらう必要がある」と話しています。 この調査は今年2月、感染症の専門学会である日本化学療法学会と日本感染症学会の合同調査委員会が抗菌薬の処方の実態を調べるために行い、全国の269の診療所の医師が回答して、先月結果がまとまりました。 また、「過去1年間でウイルスが原因の風邪と診断した患者にどれくらいの割合で抗菌薬を出したか」を尋ねたところ、「4割超」と答えた医師が20・2%、「2割以下」と答えた医師は62%でした。処方した理由は、「重症化予防」(29・8%)や「二次感染の予防」(25・8%)などで、医学的根拠が乏しいと思われる理由でした。 厚生労働省も2020年までに抗菌薬の使用量を3分の2に減らす方針を打ち出していて、普通の風邪で受診した子供に対して抗菌薬は不要と説明して、処方しない場合、診療報酬を加算する試みを今年4月から始めています。 2018年7月2日(月) 世界保健機関(WHO)は6月29日までに、アフリカやアジアの途上国を中心に、出産時に多くの女性が死亡する原因となっている大量出血の防止に向け、輸送・保管が容易で世界中で利用しやすい薬が開発されたと発表しました。 世界では毎年、分娩後出血で約7万人が死亡。母親の死亡後1カ月以内に乳児も亡くなるリスクが高く、テドロスWHO事務局長は新薬について、出産後の母子を生かすための医療技術に「大変革をもたらすことになる」と評価するコメントを発表しました。 WHOはこれまで大量出血の防止薬として「オキシトシン」を推奨してきましたが、セ氏2度から8度でしか輸送・保管できない上、高湿度に弱くて熱帯地方などで利用しにくい欠点がありました。 別の防止薬の「カルベトシン」を改良したところ、セ氏30度、高湿度でも3年間の保管が可能な薬の開発に成功。アルゼンチン、インド、タイなど10カ国の約3万人の妊婦で試したところ、オキシトシンと同様の効果を確認しました。 2018年7月2日(月) 認知症の治療に日本でも使われている4種類の薬が、フランスで8月から医療保険の適用対象から外されることになりました。さまざまな副作用が懸念される一方で、期待するような効果を示す有用性が十分に得られなかったとして、「医療保険でカバーするのは適切ではない」と保健省が判断しました。 日本で適用対象から外される動きはありませんが、効果の限界を指摘する声は国内でもあり、論議を呼びそうです。 フランス保健省の発表によると、対象はドネペジル(日本での商品名アリセプト)、ガランタミン(同レミニール)、リバスチグミン(同イクセロン、リバスタッチ)、メマンチン(同メマリー)。アルツハイマー型認知症の治療薬として、これまで薬剤費の15%が医療保険で支払われていましたが、8月1日からは全額が自己負担になります。 東京大学の五十嵐中(あたる)特任准教授(医薬政策学)によると、フランスは薬の有用性に応じて価格や保険で支払われる割合を随時見直しています。今回の薬は7年前にも、医療保険でカバーする薬や医療技術などの臨床効果を評価している高等保健機構から「薬を使わない場合と比べた有用性が低い」との評価を受け、保険で支払われる割合が引き下げられました。高等保健機構は2016年にさらに低い「不十分」と評価し、今回の決定につながりました。 4種類の抗認知症薬は、病気の症状が進むのを抑えるものの、病気自体は食い止められません。効果は各国で実施された臨床研究で科学的に確認されているとはいえ、薬から得られる恩恵は「控えめ」であり、下痢や吐き気、めまいといった副作用があります。 日本でアリセプトに続いて実施された3種類の薬の治験では、認知機能の指標では効果があったものの、日常生活動作を含む指標では効果が確認されませんでした。それでも承認されたのは、アリセプトだけでは薬の選択肢が限られるなどの理由から。 東京都医学総合研究所の奥村泰之主席研究員らの調査では、日本では2015年4月から2016年3月にかけて、85歳以上の高齢者の17%が抗認知症薬の処方を受けました。処方された量はオーストラリアと比べ、少なくとも5倍多いといいます。 兵庫県立ひょうごこころの医療センターの小田陽彦(はるひこ)・認知症疾患医療センター長は、「欧米はケアやリハビリをより重視する。日本では安易に抗認知症薬が使われている印象だ」と話しています。 ただし、薬を自己判断でやめると症状が悪化する恐れがあります。日本老年精神医学会理事長の新井平伊(へいい)・順天堂大教授は、「抗認知症薬は病気の進行を1年ほど遅らせることができ、薬がなかった以前と比べればそれなりの価値はある。薬をどう使うかは主治医とよく相談してほしい」としています。 2018年7月1日(日) 受精卵の段階で遺伝子や染色体を調べる「着床前診断」の実施を認めるかどうかの審査を、日本産科婦人科学会が迅速化します。審査が長引き、受けるのをあきらめる患者もいたためです。 学会のルールでは、着床前診断の対象は、重い遺伝病があったり、染色体異常で流産を繰り返したりした夫婦やカップルに限られており、診断で異常がなかった受精卵を子宮に戻します。 医療機関から申請を受けて学会が一例ずつ審査し、2015年度までの17年間で申請は549件で、うち484件が承認されました。 従来は医療機関の倫理委員会の許可を受けてから、学会に申請させていました。しかし、学会と施設の倫理委員会で遺伝病の重篤さの考え方が違うなどして、両者で議論になり、審査が長期化することがありました。 今後は、施設からの申請に基づいて学会がまず審査し、その考え方を施設側に示した上で施設の倫理委にかけて、速やかな審査を目指します。また、申請ごとに施設の体制が十分かどうかも審査していましたが、施設の認可は5年間の更新制として簡略化します。 同学会の苛原稔・倫理委員長は、「9~12月は施設認定の審査を集中的に進め、来年には認可された施設から症例を受け付けたい」と話しています。 2018年7月1日(日) 2019年7月〜 1月〜6月 2018年7月〜12月 1月〜6月 2017年7月〜12月 1月〜6月 2016年7月〜12月 1月〜6月 2015年7月〜12月 1月〜6月 2014年7月〜12月 1月〜6月 2013年6〜12月 5月 4月 3月 2月 1月 2012年12月 11月 10月 9月 8月 7月 6月 5月 4月 3月 2月 1月 2011年12月 11月 10月 9月 8月 7月 6月 5月 4月3月 2月 1月 2010年12月 11月 10月 9月 8月 7月 6月 5月 4月 3月 2月 1月 ホームへ戻ります
健康実用辞典へ寄り道します
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国立感染症研究所は、今後、妊娠の可能性がある女性や妊婦の家族など周りにいる人で、風疹に感染した経験がなくワクチンを2回接種した記録もない人は、特にワクチン接種を検討してほしいとしています。また、ワクチンの定期接種が行われていなかった世代などに当たる30歳代から50歳代の男性もワクチンが必要か十分に検討してほしいとしています。■マイクロプラスチック、世界の水道水から検出 食塩、アメリカ産ビールからも
■マダニ媒介の感染症で70歳代男性が死亡 大分県佐伯市
マダニが媒介するウイルスに感染し死亡したのは、佐伯市に住む70歳代の男性です。
大分県によりますと、この男性は8月21日に、発熱や筋肉痛、食欲不振といった風邪のような症状を訴え病院を受診しました。その後、症状が悪化し病院に運ばれましたが、意識障害や肝機能障害により8月28日に死亡しました。男性は日ごろから農作業をしていたらしいものの、マダニにかまれたような痕は体になかったといいます。
大分県の衛生環境研究センターで男性の血液の遺伝子を9月3日に検査したところ、マダニが媒介する重症熱性血小板減少症候群(SFTS)を引き起こすウイルスに感染していたことが確認されたということです。
重症熱性血小板減少症候群は、症状が重い場合は死亡することもあり、大分県によりますと、2014年からこれまでに同県内でウイルスの感染で死亡した人は4人に上っているということです。
マダニは春から秋にかけて活動が活発になることから、大分県では、野山に入る場合には長袖や長ズボンを着用して肌の露出を少なくするなど、マダニにかまれないよう注意するとともに、かまれた場合には速やかに医療機関を受診するよう呼び掛けています。
■Muse細胞で脳梗塞を治療へ バイオ企業が9月中に臨床試験
■厚労省の概算要求、過去最大の31兆8956億円に 働き方改革の実現費用の拡充も
■二酸化炭素濃度の上昇で穀物の栄養素が低下 世界が栄養不足に陥る恐れ
■インターネット依存、中高生93万人に疑い スマホ普及で5年前の2倍近くに
インターネット依存に明確な定義はありませんが、研究班は「ネットの使用時間を減らそうとしてもできないことがたびたびあるか」や「ネットのために大切な人間関係を台なしにしたり危うくしたりすることがあったか」など8つの質問を行い、5つ以上当てはまるかどうかを判定しました。
その結果、いわゆる「インターネット依存」が疑われるのは、中学生では12・4%(男子11%、女子14%)、高校生では16・0%(男子13%、女子19%)に上りました。
2012年度に行われた前回の調査と比べると、割合は5年間でいずれも2倍前後に増加しています。
インターネット依存が疑われる中高生は、前回の調査で約51万人と推計されましたが、今回の調査では約93万人に上るとされました。授業中の居眠りや遅刻、成績低下など学校生活にも支障が出ていました。
研究班のメンバーで、国立病院機構久里浜医療センターの樋口進院長は「わずかな期間で問題が深刻化していることに驚いている。早急に対策に取り組む必要がある」と話しています。 ■エナジードリンク、未成年への販売禁止へ イギリス政府
■虐待死77人、8割は3歳以下 児相と行政が連携不足
■京大がニホンザルのiPS細胞の作製に成功 脳機能や人の進化の解明に道
■iPS細胞で腎臓病の初期症状を再現 治療法の開発に光
■90歳以上の結核患者、過去最多の1904人 外国人の結核患者も、1530人と過去最多
■「喫煙可の飲食店は入るのを避ける」が58% 民間シンクタンクが調査
■エアコンせきに注意が必要 猛暑で症状訴える人増える
池袋大谷クリニックの医師によりますと、風邪とは異なり、2週間以上せきが止まらなくなる、いわゆる「エアコンせき」という症状で、エアコンの冷たい空気が気道を刺激してせきが出やすくなるほか、エアコン内部のカビやほこりが引き金になることもあるということです。
処置をしないでいると、激しいせきで眠れなくなったり、ろっ骨を折ったりするほか、悪化させれば気管支ぜんそくや肺炎になることもあるため、早めに医療機関で受診するよう呼び掛けています。
また、自宅でできる対処としては、エアコンを定期的に掃除することや、内部のカビの繁殖を防ぐため、外出の際などにタイマー設定をした上で、15分程度送風モードで運転しエアコン本体を乾燥させること、さらに、外気と室内の寒暖差が激しいと気道を刺激してせきが出やすくなるため、エアコンの温度をあまり下げすぎないように心掛けてほしいとしています。
池袋大谷クリニックの院長の大谷義夫医師は、「厳しい暑さで、一日中エアコンをつけている人も多い。効率よく涼もうとして風を人に向けがちですが、冷気が当たれば気道を刺激するだけでなく、体が冷えすぎて血流障害を起こします。『人を冷やすのではなく部屋の温度を下げる』ことを心掛けてください。ほとんどのエアコンは風向きの調節ができますが、空気は暖ければ上、冷たければ下にたまる性質があるので、サーキュレーターや扇風機を併用して部屋全体の温度を均一に保つようにしてみるのも一つの方法です」と話しています。
千葉県保険医協会副会長の細山公子医師は、「症状が軽くても人に感染する可能性があるので拡大を防ぐため、今は風疹の可能性があると意識して診断しなくてはならない。また風疹にかかったことがない人やワクチンを打ったことがない人は、妊婦や赤ちゃんを守るために、ぜひ予防接種を受けてほしい」と話しています。
一方、国立感染症研究所の多屋馨子(けいこ)・感染症疫学センター第3室長は、「風疹は2013年に大きな流行があった時も、その2年前から患者数が増えていて、今年も同じように来年や再来年にさらに患者が増加する恐れがある状況だとみている。今月19日までのまとめでは感染は首都圏が中心だが、お盆や夏休みで人の移動が多い時期だったので今後はほかの地域にも広がる恐れがあり、十分に注意してほしい」と分析しています。
厚労省の調査によりますと、昨年3月までの1年間に虐待を受けて保護され、1カ月以上病院に入院した子供のうち3割に当たる63人が、治療が終わった後も退院できませんでした。
小児や思春期の若者における肥満増加は世界的な問題とされていますが、世界各国に比べて日本の肥満率は低いとされています。その要因の一つに学校給食プログラムの影響が指摘されていますが、明確な証明は得られていませんでした。研究チームは今回、過去10年間で中学校の給食の実施率が上昇した点に着目。政府統計の公開データを用いて、主食とおかずがセットになった完全給食が思春期男女の肥満に及ぼす影響を調べました。
研究チームは、文部科学省による学校給食実施状況等調査・学校保健統計調査の公表データを用いて、2006~2015年の都道府県ごとの給食実施率と栄養状態の指標(過体重と肥満、やせの生徒の割合)、平均身長、平均体重のデータを性および年齢別(中学2年~高校1年の13~15歳)に抽出。パネルデータ分析の手法を用いて、都道府県レベルにおける給食実施率の前年からの変化が栄養状態の指標などに及ぼす影響について調べました。なお、調査によると、学校給食の実施率が90%以上の都道府県の割合は、2006年の約半数から2010年には5分の3、2015年には3分の2を占めるまでに増加したといいます。
解析の結果、都道府県レベルの学校給食の実施率が10%増えると、男子では翌年の過体重(標準体重プラス20%以上30%未満)の割合は0・37%、肥満(標準体重プラス30%以上)の割合は0・23%低下することがわかりました。2015年の学校保健統計調査の報告(中学生男子の約10%が過体重、約5%が肥満)を踏まえると、学校給食の実施率の10%増加は1年間で過体重の男子の3・7%、肥満の男子の4・6%が減少することを意味するといいます。
一方で、男子に比べて食べる量が少ない女子では、学校給食の実施率の向上により過体重や肥満の減少傾向はみられましたが、統計学的に有意な結果ではありませんでした。また、学校給食の実施率によるやせの割合や平均体重、平均身長への影響は、男女ともにみられませんでした。
これらの結果を踏まえ、研究チームは「日本の思春期の生徒を対象とした大規模データを用いて、学校給食プログラムによる過体重や肥満の低減効果を実証した研究は今回が初めて。学校給食を介して適切な栄養基準に基づいた食事を提供することは、思春期の肥満を減らす有効な施策の一つになると思われる」と話しています。
角膜は目の黒目の部分を覆う透明な膜で、病気やけがなどで傷付くと視力が低下し、症状が重い場合は亡くなった人から提供された角膜を移植する治療が行われています。一方で、アイバンクから提供される角膜は慢性的に不足しているため、約2000人の患者が移植の順番を待っています。
今回の計画は移植しても拒絶反応が起きにくい特殊なiPS細胞から角膜の基になる細胞を作り、直径3・5ミリ、厚さ0・05ミリの円形のシート状にして数人の患者に移植するもので、1年間かけて安全性や効果を検証するということです。
研究チームによりますと、今回の審査では患者への説明文書の改善などを求める意見があって結論が出ずに、次の専門家委員会でさらに議論が行われるということで、学内の承認が得られればさらに国の審査をうけた上で、今年度中に1例目の手術の実施を目指したいとしています。
西田教授は、「およそ10年かけて今回の手法を作り上げてきた。よりよい治療法を患者に届けるためにじっくりと計画を進めたい」と話しています。
角膜上皮は厚さ0・05ミリで、けがや病気によって角膜上皮を作り出す細胞が傷付くと組織の再生能力が失われ、移植による治療が必要となります。
研究チームは一昨年、人のiPS細胞に特殊なタンパク質を加えて培養することで、目のさまざまな組織の基になる細胞を効率よく作ることに成功しており、これを基にシート状の細胞組織を作りました。
シートには数百万個の細胞が含まれ、ウサギの目に移植した研究では拒絶反応などはみられなかったということです。
研究チームでは、これまでも口の粘膜の細胞を基に角膜上皮シートを開発してきましたが、iPS細胞を使うことで、より高い効果が得られることが期待できるとしています。
年齢別の搬送人数では、高齢者(65歳以上)が48・4%と最も多く、成人(18歳以上65歳未満)が36・2%、少年(7歳以上18歳未満)が14・3%、乳幼児(生後28日以上7歳未満)が1・0%。発生場所は、住居が42・8%を占め、道路が12・6%、公衆(屋外)が11・8%と多かったほか、教育機関も7・2%ありました。
都道府県別の搬送人数では、大阪府の4432人が最も多く、東京都4430人、愛知県4064人、埼玉県3316人、兵庫県2809人と続きました。人口10万人当たりの搬送人数は、岡山県が74・94人と最多で、次いで岐阜県67・13人、京都府66・08人、奈良県65・31人、群馬県64・16人の順でした。
消防庁では、「熱中症は正しい知識を身に着け、適切に予防することで、未然に防ぐことが可能」として、予防の大切さを強調。今後も引き続き、厳しい暑さが続く見込みであることから、「日陰や涼しいところで休憩をとる」「こまめに水分補給を行う」「屋外では帽子をかぶる」など、予防対策を心掛けるよう呼び掛けています。
従来はアフリカでの発生が中心でしたが、2007年ころから東ヨーロッパなどでも確認され、今月に入ってから中国の4つの養豚場などでアジアでは初めてとなる感染が確認されました。中国政府は警戒を強め、全国各地の養豚場などで監視を徹底するよう指示するとともに、感染が確認された養豚場などに指導員を派遣して、消毒や豚の処分それに人の出入りを制限するなど、感染の拡大防止に当たっています。
このため国立感染症研究所は、病院で感染を引き起こした薬剤耐性菌を集めた「薬剤耐性菌バンク」を初めて設けることになりました。
薬剤耐性菌バンクでは、およそ600の病院と提携して検出された薬剤耐性菌を集めて保管し、遺伝子を解析して菌の特性や全国的な分布状況を調べることにしています。また、薬剤耐性菌バンクでは、それぞれの薬剤耐性菌について有効な対処法を探し出して情報を共有し、病院の支援も行います。さらに、アメリカのCDC(疾病対策センター)が保管するおよそ400種類の薬剤耐性菌を譲り受け、国内から集めた菌とともに新しい薬の開発に活用することにしています。
国立感染症研究所は、来年1月の運用開始を目指して3億円余りの費用をかけ、東京都東村山市の支所に専用の冷凍設備などを整備する方針です。
国立感染症研究所薬剤耐性研究センターの菅井基行センター長は、「バンクができれば国内の薬剤耐性菌対策に大きく貢献できる」と話しています。■福島県ではしか、新たに男女3人 感染者計6人、道の駅利用者も
■日本調剤、病院向けに薬剤師を派遣へ 病院勤務を経験しスキルアップ
■厚労省、病気腎移植を条件付きで先進医療に承認 入院費などに保険適用
■血中カドミウム濃度が高いと早産の頻度1・9倍に 産業医科大などが調査
■線虫を使ったがん検査、本格的な臨床試験へ 日立など2020年の実用化目指す
両社が3年前から研究している検査方法は、犬に匹敵する嗅覚を持つという体長1ミリ程度の生物である線虫が、がん患者の尿には近付き、健康な人の尿からは遠ざかる動きをするのを利用し、ステージ0からステージ1という早期がんを発見できる確率をおよそ90%まで高められるのが特徴だとしています。
これまでは顕微鏡を使って線虫の動きを人が1つずつ数えて、がん患者かどうかを判定していたため、検査に時間がかかるのが課題でしたが、今回新たに、線虫の分布を画像で解析して自動で調べる装置を開発し、検査時間を大幅に短縮できるようになったということです。
両社は国内外の17の医療機関や大学と本格的な臨床試験に乗り出し、2020年の実用化を目指すとしています。
HIROTSUバイオサイエンスの広津崇亮代表取締役は、「検査費用は数千円のレベルですむ。早期発見できる確率が飛躍的に上がるとみている」と話しています。
ステージ0からステージ1という早期がんの場合、腫瘍マーカーと呼ばれる血液を使ったがんの検査では発見できる確率が10%程度ですが、線虫を使った検査ではおよそ90%まで飛躍的に高まるのが特徴だとしています。ただ、線虫を使ったがん検査は、顕微鏡を使って担当者が一つ一つ線虫を数えていく作業が必要で、一人当たり一日3件から5件が限界でした。
今回、日立が開発した自動撮像装置は、光を当てながらカメラで撮影し、その画像を解析して線虫の動きを自動で調べる仕組みで、一日に100件以上の検査が可能になるということです。
装置を開発した日立製作所の久野範人主任研究員は、「線虫のがん検査は早期の発見ができそうで、世の中に貢献できるところが非常に大きい。ベンチャー企業と日立の技術を組み合わせれば早期の実用化ができる」と話しています。
■熱中症で搬送、全国で3473人に上る 前週の5倍以上に急増
都道府県別にみますと、先週金曜日の6月29日に統計史上最も早く梅雨明けが発表された関東甲信の各地で特に多くなっており、埼玉県が334人と最も多く、次いで東京都が278人、大阪府が248人などとなっています。
症状の程度は、死亡が3人、入院が必要な中等症から重症が1251人、軽症が2196人で、年齢別では、65歳以上が1848人と全体の半数以上を占めたほか、18歳以上65歳未満が1197人、乳幼児を含む18歳未満が428人でした。
また、日付別では、7月1日が885人と最も多く、次いで3日前の6月30日が656人で、広い範囲で猛暑日となった週末に搬送された人が多くなりました。
熱中症で搬送された人が急増したことについて、総務省消防庁は、急激な暑さに体が慣れていない人が多いためと分析しています。■梅毒感染者、昨年を上回るペースで増加の一途 女性は20〜30歳代に増加
■ウイルス性の風邪に効かない抗菌薬、6割を超える医師が処方 専門学会が全国調査
抗菌薬はウイルスが原因の普通の風邪には効きませんが、患者側が効くと誤解し、処方を求めるケースがあります。
調査では「患者や家族が抗菌薬の処方を希望した時」の対応について聞いていて、12・7%の医師が「希望どおり処方する」と答え、「説明しても納得しなければ処方する」と答えた医師も50・4%に上りました。一方、「説明して処方しない」と答えた医師は32・9%にとどまりました。
抗菌薬は使えば使うほど、薬が効かない「耐性菌」が増え、イギリスの研究機関では、何も対策が取られなければ、2050年には世界で年間1000万人が耐性菌によって死亡するという推計まとめています。
調査をまとめた国立国際医療研究センターの大曲貴夫副院長は、「風邪には抗菌薬が効かないと患者に広く知ってもらう必要がある。また抗菌薬が必要な感染症もあり、医師が適切に判断できるよう風邪と見分ける検査法も普及させたい」と話しています。
■途上国の出産女性の命救う新薬開発 WHO、大量出血防止に向け
■フランス保健省、4種類の認知症薬を保険適用外に 効果を示す十分な有用性なし
■着床前診断の実施の可否、審査迅速化へ 産科婦人科学会が決定