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健康ダイジェスト

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■喫煙率21・1パーセント、17年連続で最低更新 JT発表

 日本たばこ産業(JT)が30日に発表した2012年の「全国たばこ喫煙者率調査」によると、成人男女でたばこを吸う人の割合を示す喫煙者率は、前年比0・6ポイント減の21・1パーセントとなり、17年連続で過去最低を更新しました。

 調査は5月、全国の成人男女約3万2000人を対象に実施し、1万9897人から回答を得ました。回収率は62パーセント。

 推計による喫煙人口は2216万人で、前年から63万人減少しました。男女別の喫煙率は、男性が前年比1・0ポイント減の32・7パーセント、女性が同0・2ポイント減の10・4パーセントで、男性は21年連続、女性は2年連続減少しました。「毎日吸う」人の1日当たりの平均本数は、男性が19・1本、女性が15・2本でした。

 JTは、高齢化の進行や健康意識の高まり、2010年10月のたばこ増税などが喫煙者率減少の要因とみています。

 政府が6月に喫煙率を今後10年間で12パーセントに下げる目標を初めて掲げるなど、喫煙への風当たりは強くなっています。

 2012年7月31日(火)

 

■インフルエンザ「冬場に流行」の常識覆る 沖縄県で新規患者が週1000人超す

 「冬場に流行する」とされてきたインフルエンザの常識が、沖縄県で覆っています。2005年以降、同県内で夏場の流行が続いています。

 真夏日が続く同県内ですが、7月中旬に1週間の新規患者数が1000人を突破。県内医療機関の調査研究で、気候の変動を受けにくいB型ウイルスが中心となっていることや、乳幼児や小中学生を中心にB型インフルエンザの流行が起きているなどの実態が明らかになりました。

 県感染症情報センターによると、第28週(7月9~15日)の患者報告数は927人、最新の第29週(7月16~22日)には1224人に上りました。第29週の定点当たりの患者数は、南部保健所地区が45人と警報基準の30人を大きく上回りました。那覇、浦添地区も29・6人と警報レベルの流行が続いています。

 今年の患者の半数が、1~14歳でした。

 例年、全国的には夏場の定点患者数はほぼゼロ。第29週の全国インフルエンザ患者報告の9割は、沖縄県でした。

 那覇市立病院では6月中旬~7月中旬の1カ月間に患者数が6・5倍に増加、第29週は20~40歳代の患者が急増しました。子供から親世代に感染が広がっている可能性があるといいます。

 感染管理担当師長の又吉慶看護師は、「数年前から夏場の流行が定着している。夏休みに入り、感染状況がどう変わるのか注視したい」と語っています。

 那覇市医師会は、2007年から四つの総合病院のインフルエンザ患者数とウイルス型を週ごとに独自に集計。琉球大学医学部付属病院の藤田次郎教授(第1内科)の研究グループは、このデータを気象台データと突き合わせ、A型インフルエンザが低温乾燥で流行するのに対し、B型インフルエンザは湿度・気温の変化を受けにくいことを突き止めました。

 琉大病院の職員や入院患者の感染調査では、37度台の微熱や風邪症状の鼻水が出る患者を多数確認しました。藤田教授は、「これまで夏風邪と診断され、感染が見逃されたケースも多いのではないか。県内の調査・統計で感染の実態が明らかになりつつある」と述べました。

 一方、同教授は「感染力は夏冬で変わらない」として、「幼児や高齢者は悪化すれば死亡する可能性がある。マスク・手洗い・うがいなどの予防が重要だ」と呼び掛けています。

 B型インフルエンザは、A型とは違い、人間にしか感染しません。流行の規模もそれほど大きくなく、症状もA型と同じですが、消化器症状が強く出る傾向にあります。合併症の危険性もありますので、B型だからといって油断は禁物です。特に小さな子供の場合、まれに重症化する場合もありますので注意が必要です。

 一般的には、11月下旬ころからA型インフルエンザが流行し出し、3月中旬になるとB型インフルエンザが流行し出します。A型インフルエンザにかかった後、B型インフルエンザにかかってしまう場合もありますので、しっかりと予防対策をしなければいけません。ただし、B型インフルエンザに1度かかると、その危険性は高いものの、再びB型に感染する確立が低くなります。

 2012年7月30日(月)

 

■清涼飲料水で発症するペットボトル症候群に要注意 突然倒れるケースも

 暑い夏には冷たい飲み物がおいしく感じますが、飲み過ぎることで起こる「ペットボトル症候群」が今、心配されています。最近では熱中症対策に糖分を含んだ清涼飲料水を持ち歩くケースも多くなったこともあり、10~30歳代の若い男性を中心に発症しており、年々増えています。

 ペットボトル症候群は、ペットボトルに入った清涼飲料水やスポーツドリンクなどを大量に飲み続けることによって、糖尿病の悪化した状態が起こる急性疾患。医学上の正式名称では、軽症の場合を清涼飲料水ケトーシス、重症の場合を清涼飲料水ケトアシドーシスと呼びます。

 継続して大量に、糖分の多いジュースなどの清涼飲料水を摂取することで、水に溶けている糖分は吸収されやすいために血糖値が上昇し、血糖値を一定に保つホルモンで、膵臓から分泌されるインスリンの働きが一時的に低下します。インスリンが欠乏すると、ブドウ糖をエネルギーとして使えなくなり、脂肪などを分解します。その際に、脂肪酸からできるケトン体と呼ばれる代謝成分が、血液中に過剰に増えます。ケトン体は酸性物質で、血液が酸性化(ケトーシス)したり、ひどく酸性化(ケトアシドーシス)したりして、ペットボトル症候群が発症します。

 症状としては、のどが異常に渇くことから多量の清涼飲料水を欲しがるようになり、上昇した血糖値によって尿量が増え、体重が急激に減少し、倦怠感を覚えます。週単位から1、2カ月の経過で発症し、意識の混濁や昏睡に陥るケースもあります。

 発症者の多くは10~30歳代の男性ですが、高齢者にも起こり得ます。発症する人には血縁者に糖尿病のある場合が多く、本人も糖尿病の遺伝素因を持っていると考えられます。 また、特に発症しやすいのは肥満体型の人で、この糖尿病予備軍と呼ばれる人はインスリンの働きが悪く、よりリスクが高まります。

 もともと糖尿病の遺伝素因を持っていたり、軽度の糖尿病の人が糖質を多量に摂取していると血糖値が高くなります。すると、高血糖によるのどの渇きから、さらに清涼飲料の摂取が進むという悪循環が形成されます。

 肥満が男性ほど多くなく、人前で清涼飲料水をあまりがぶ飲みしない女性より、男性の方が圧倒的に多くなっており、年々増えています。ペットボトル症候群が報告され始めたのは、ペットボトルと自動販売機が普及し、清涼飲料水を飲みやすくなった1980年代半ばからです。

 一般的な清涼飲料水は、1リットル当たり100グラム前後の糖分が含まれていると考えられます。角砂糖1個が5グラムとすると、1リットルの清涼飲料水をがぶ飲みすると、角砂糖20個をかじっているのと同じことになります。また、スポーツ飲料やフルーツ果汁の入った野菜ジュースなどにも、糖分は入っています。

 のどが非常に渇く、多量の水分を欲する、急激な体重減少といった異常に気付いたら、早めに医療機関を受診することです。医師による治療では、血液中の糖分を低下させるホルモンのインスリンを静脈に注射し、血糖値を下げます。この場合、回復までは通常1カ月程度かかります。

 熱中症対策から水分補給への意識が高まる中、ペットボトル症候群のような清涼飲料の飲み過ぎが体を危険にさらす可能性は、今後増えてくるといわれています。夏場の対策がなかなか難しいことにもなりますが、間違った水分補給には十分注意したいものです。

 2012年7月29日(日)

 

■安易な投薬に自制促す 日本うつ病学会、医師向けに初の指針

 日本うつ病学会は27日までに、多様化するうつ病を適切に治療するための医師向けの指針をまとめました。次々に開発されている抗うつ薬の有効性や副作用に関する最新の情報を盛り込み、軽症者の安易な薬物療法に警鐘を鳴らしたのが特徴。

 日本うつ病学会が指針を作るのは初めてで、学会として勧める診断、治療法を示しました。

 うつ病は、社会的に広く知られるようになった影響や、長引く不況などで患者数が急増。厚生労働省の推計によると、国内のうつ病の患者数は1999年の約24万人から、2008年には70万人を超え、約10年で3倍に増えたとされています。年間3万人を超える自殺の主な原因ともされています。同学会は最新の医学的知見を盛り込み、現在の医療体制や現場の実情を考慮した指針が必要と判断しました。

 指針は、急増している患者の多くは軽症か、うつ病の診断基準以下の「抑うつ状態」と推測されると指摘。臨床現場では「慎重な判断が求められる」としました。軽症者に抗うつ薬の使用を始めるには、焦燥感や不安感の増大などの副作用に注意して、少量から始めることを原則としています。

 一方で、乱用や転売目的で抗不安薬や睡眠薬を入手するための受診が社会問題化しているとして、「大量処方や漫然とした処方は避けるべきだ」と明記しています。

 軽症の場合、抗うつ薬を使った治療の有効性について、科学的根拠が不十分として「安易に薬物療法を行うことは厳に慎まなければならない」と強調しています。中等症、重症の場合、1種類の抗うつ薬を十分な量と期間で使うことを基本として、合理的な理由なく複数の抗うつ薬を使うべきではないとしました。

 うつ病か診断する際に、患者に聞くべき情報の目安も示しました。そううつ病、不安障害、発達障害などを誤診しないよう、受診時の症状や睡眠の状態だけでなく、病気になる前の性格の傾向、職場や学校での状態を、本人だけでなく家族などにも確認することが望ましいとしました。

 若者に多くみられ、仕事ではうつ状態になるものの余暇は楽しく過ごせるような、いわゆる「新型(現代型)うつ病」については、今回の指針の対象外としました。「マスコミ用語であり、精神医学的に深く考察されたものではない」「医学的知見の明確な裏打ちはない」と記述し、何らかのケアが必要な場合もあるものの、現時点で明確な分類、定義はできず、科学的に根拠のある治療法はないと判断し取り上げませんでした。

 うつ病の治療に関する指針は、厚生労働省の研究グループが20003年に策定しましたが、その後改訂されていません。

 2012年7月28日(土)

 

■ヤマイモの成分がアルツハイマー病を改善 富山大

 「ヤマイモ」などに含まれる成分に、アルツハイマー病の原因とされるタンパク質を減少させるなどの効果があるとする研究結果を、富山大学のグループがまとめ、新たな治療の手掛かりになると注目されています。

 研究を行ったのは、富山大学和漢医薬学総合研究所の東田千尋准教授らのグループ。グループでは、神経細胞を活性化する働きがあるさまざまな生薬を調べ、このうち、ヤマイモなどに豊富に含まれる「ジオスゲニン」を、アルツハイマー病の症状が出るようにしたマウス6匹に1日に1回0・12ミリグラムずつ、20日間に渡って投与しました。

 その結果、マウスの脳に蓄積されていた、アルツハイマー病の原因とされる「ベータアミロイド」というタンパク質が平均で70パーセント減少したほか、記憶や情報伝達をつかさどる「軸索」と呼ばれる神経細胞の突起の形が正常に近い状態に戻り、記憶力の改善も確認できたということです。

 東田准教授は、「病変した神経細胞を回復させる効果も確認され、アルツハイマー病の新たな治療薬の開発につながる手掛かりになる 」と話しています。

 アルツハイマー病に詳しい名古屋大学の永津俊治名誉教授は、「日常的に食べるヤマイモに含まれる成分が、アルツハイマー病の症状の改善に有効だという科学的データが得られたことは、たいへん興味深い。人にも有効か、今後の研究に期待したい」と話しています。

 イギリスの電子版科学誌に26日、富山大学の研究結果が掲載されました。

 ジオスゲニンは、植物ステロールに分類されるファイトケミカル(フィトケミカル)の一種で、ホルモンの一種であるデヒドロエピアンドロステロン(DHEA)と同じ構造を持っています。そのため、DHEAと同じように若返りやダイエット効果、滋養強壮を促すサプリメントなどにも多数配合されています。このジオスゲニンは、日本特産のヤマイモ、中国原産のナガイモ、ネギやアロエなどのユリ科の植物に多く含まれています。

 2012年7月27日(金)

 

■女性の平均寿命、世界一を香港に譲る 男性も8位に後退

 2011年の日本人の平均寿命は女性が85・90歳、男性が79・44歳だったことが26日、厚生労働省が発表した簡易生命表でわかりました。女性は26年連続世界一位だった前年を0・40歳下回り、86・7歳の香港に次いで2位となりました。

 男性も前年の世界4位から、シンガポールやスウェーデンなどを下回って8位に後退しました。

 平均寿命は、その年に生まれた0歳の子供が平均で何歳まで生きられるかを予測した数値。国際比較は、厚労省が国連の人口統計年鑑に掲載されている国や地域を対象に、各国政府の最新統計などを基に実施しています。

 男性は前年と比べて0・11歳下回り、女性は前年と比べて0・40歳下回り、夏場に猛烈な暑さが続いた2010年に続いて男女とも2年連続の減少となりました。男女双方が2年連続で前年を下回るのは、初めて。

 国によって計算方法が異なるため厳密な比較はできないものの、諸外国・地域でみると、女性は香港、日本、84・91歳のスペイン(2010年)の順。男性も香港がトップの80・5歳で、スイス(2010年)が80・2歳、アイスランドが79・9歳と続きました。

 2011年3月に発生した東日本大震災の死者は7月25日現在、1万5867人。厚労省は、震災がなかったと仮定した場合の平均寿命は女性が86・24歳、男性が79・70歳と試算しました。それでも女性は2010年を下回って香港には及ばず、男性は例年並みの世界5位になっていたとみられます。

 厚労省は、「多数が死亡した東日本大震災の発生が、平均寿命を縮める大きな要因となった」と説明。女性については、20歳代後半の自殺率の増加や、肺炎など呼吸器系疾患による死亡の上昇も影響したといいます。

 2012年7月27日(金)

 

■慶応大、健康長寿者からiPS細胞 アルツハイマー病早期診断に光

 健康で長生きした105歳以上の「健康長寿者」の死後の皮膚から、体のあらゆる組織や臓器になるとされる人工多能性幹細胞(iPS細胞)を作ることに、慶応大の鈴木則宏教授(神経内科)らの研究チームが成功しました。病気にならない「正常細胞」の指標として利用でき、アルツハイマー病などの早期診断に役立つといいます。

 米科学誌プロスワンに26日、発表しました。

 死者からiPS細胞を作製した例は海外で報告されていますが、日本では初めて。長寿者の生前に家族から同意を得た上で、学内倫理委員会の承認を得て実施しました。

 アルツハイマー病やパーキンソン病は、患者の神経細胞を研究に使えないことが診断や治療法開発の壁になっています。iPS細胞で患者由来の神経細胞が作製可能になりましたが、異常を詳しく調べるには、生涯に渡って健康だった人の細胞と比較する必要がありました。

 研究チームは皮膚細胞が人の死後も2日ほど生き続け、培養・増殖できることに着目。重い病気をせず極めて健康に老後を過ごし、105歳以上で死亡した2人の皮膚細胞を死後に採取。特定の遺伝子を加えて、病気の性質を持たない正常なiPS細胞を作り、神経細胞に分化させました。

 これをアルツハイマー病患者のiPS細胞から作った神経細胞と比較した結果、患者由来の細胞は正常細胞と比べ、脳にみられる異常なタンパク質「ベータアミロイド」が2倍近くあることが判明。パーキンソン病患者でも同様に、異常なタンパク質「アルファシヌクレイン」が2倍近くあることが判明しました。

 異常なタンパク質は高齢になってからではなく、生まれた時から作られている可能性が高いことを示す成果で、発症前の早期診断が期待されます。

 研究チームの伊東大介専任講師は、「正常なiPS細胞は高齢者に多いがんや糖尿病、心臓病などの研究でも役立つ。死後の組織採取は病理解剖で普通に行われており、倫理的な問題はない」と話しています。

 2012年7月26日(木)

 

■10都県でストロンチウムを検出 原発事故後、福島、宮城以外で初

 東京電力福島第一原子力発電所の事故で放出された可能性がある放射性物質ストロンチウム90が、茨城や東京など10の都県でも検出されたことが、文部科学省の調査でわかりました。

 こうしたストロンチウムが調査で検出されたのは、福島、宮城両県以外では原発事故後初めてですが、文科省によると「濃度は非常に低く、健康への影響はほとんどない」ということです。

 この調査は、文科省が全国の都道府県で原発事故の前から毎月、大気中からの降下物に含まれる放射性物質の測定を行っていたもので、直径2メートルの水盤を1カ月間屋外に置き、たまったちりなどを採取して放射性物質の量を調べました。

 今回は原発事故の影響もあって、2010年4月~2011年12月までのデータが24日、公表されました。ただし、津波や原発事故の影響で観測できていない福島、宮城両県のデータは含まれていません。

 それによりますと、原発事故で放出された可能性があるストロンチウム90は、すでに土壌を採取した別の調査で検出された福島、宮城両県以外にも、秋田、岩手、山形、茨城、神奈川、群馬、埼玉、千葉、東京、栃木の10の都県の観測場所で検出されました。10都県のいずれでも、2000年から原発事故までの最大値で2006年2月に北海道で観測された1平方メートル当たり0・3ベクレルに比べて、高い数値になっています。

 このうち最も数値が高かったのは、茨城県ひたちなか市の2011年3月のサンプルで、1平方メートル当たり6・0ベクレルでしたが、同じサンプルに含まれた放射性セシウムの2850分の1程度だったということです。10都県で原発から最も遠い神奈川県茅ケ崎市のサンプルでは、1平方メートル当たり0・47ベクレルでした。

 ストロンチウムは、人間の骨の中にたまって白血病やがんを引き起こす可能性があるとされていますが、文科省は「濃度は、放射性セシウムに比べて非常に低く、今回検出のストロンチウム90による健康への影響はほとんどないと考えられる」としています。

 2012年7月25日(水)

 

■老化の自覚症状、30歳代は疲れがトップ 40歳代は白髪、60歳代は物忘れ

 株式会社エバーライフが設立した年齢研究所 (福岡市中央区、所長:板倉弘重・茨城キリスト教大学名誉教授)が実施した老化に関する意識調査で、30歳代は「疲れ」で老化を自覚するなど、年代ごとの意識の特徴が浮き彫りになりました。

 30歳代から60歳代の男女計2000人に、インターネットを通じて質問。老化の自覚症状を複数回答で挙げてもらうと、最も多かったのは、30歳代では「疲れが取れにくくなった」(52・2パーセント)、40歳代では「白髪が目立つようになった」(60・2パーセント)、50歳代では「細かいものが見えにくくなった」(68・2パーセント)、60歳代では「物忘れが増えてきた」(62・8パーセント)となりました。

 「物忘れが増えてきた」は、50歳代で3位(54・2パーセント)、40歳代で2位(51・2パーセント)、さらに30歳代でも3位(40・2パーセント)にランクインし約4割が自覚しています。

 既婚男女に「自分の夫・妻が昔と比べて老化したと思うこと」を挙げてもらうと、夫が妻に感じる老化症状は、白髪(29・4パーセント)、太ってきた(25・4パーセント)、老眼になった(21・5パーセント)、物忘れが増えてきた(21・2パーセント)の順。一方、妻が夫に感じる老化症状は、白髪(38・0パーセント)、加齢臭(33・6パーセント)、薄毛(27・5パーセント)、太ってきた(27・3パーセント)、 物忘れが増えてきた(25・8パーセント)の順でした。

 すなわち、白髪、肥満、老眼、物忘れが、妻や夫に感じる男女共通の4大老化症状となっています。

 次に、既婚男女に「自分の夫・妻に対策を講じてほしい(できれば治してほしい)老化症状」を挙げてもらうと、夫が妻に対策を求める老化症状は、太った(17・0パーセント)、怒りっぽくなった(11・6パーセント)、記憶力が落ちた(10・9パーセント)、シワ・たるみ(8・7パーセント)、自分の考えを曲げなくなった(7・9パーセント)の順。一方、妻が夫に対策を求める老化症状は、加齢臭(23・9パーセント)、怒りっぽくなった(16・9パーセント)、太った(16・0パーセント)、口臭(15・3パーセント)、自分の考えを曲げなくなった(9・4パーセント)の順でした。

 このうち、夫が妻に対策を求める「太った」はすべての年代を通じてトップで、妻が夫に対策を求める「加齢臭」も同様にすべての年代を通じてトップで、夫は妻の崩れた体形を、妻は夫の加齢臭を気にしていることが浮き彫りになりました。

 既婚男女に「老化防止のために心掛けていること」を挙げてもらうと、野菜中心の食事(40・5パーセント)、よく歩く(37・0パーセント)がいずれも4割前後でトップ2。次いで、サプリメント(24・4パーセント)、和食(24・0パーセント)もそれぞれ4人に1人が心掛けています。男女の違いをみると、既婚男性では酒量を減らす(11・9パーセント)が5位に、既婚女性では紫外線対策(36・7パーセント)がよく歩く(33・2パーセント)を抑えて2位に入っています。

 「老けたね」と言われたくない相手をを挙げてもらうと、男性は妻(32・1パーセント)、同性の友人(24・3パーセント)の順でした。一方、女性は6割近く(57・1パーセント)が同性の友人を挙げてトップで、夫(40・4パーセント)よりも同性の目を意識していることがわかりました。

 さまざまな病名を列挙して、その病気に「なりやすいと思われる年齢」と「気を付け始めたほうがいい年齢」を挙げてもらうと、「気を付け始めたほうがいい年齢」は「なりやすいと思われる年齢」からマイナス3~6歳しか開きがないことがわかりました。一般に、生活習慣病の発症リスクは長い年月の間に少しずつ高まりますので、もっと早くから予防対策の意識を持つ必要があり、啓発の必要性が示唆されました。

 自分の「見た目年齢」を聞いたところ、実年齢より「若い」と答えた人が4人に3人(75・9パーセント)を占め、3割(32・1パーセント)は「6歳以上若い」と回答しました。性別では女性(79・0パーセント)、年代別では50〜60歳代(82・0〜83・0パーセント)で、実年齢より「若い」と回答した率が高くなっています。

 病気に気を付け始めたほうがいい年齢との相関を見ると、実年齢より「若い」と回答した人ほど、病気の予防対策が先延ばしになる傾向がみられますので、注意喚起が必要とみられます。

 2012年7月24日(火)

 

■ウーロン茶ポリフェノールに虫歯予防効果 人でも確認、大阪大

 食事中と就寝前にウーロン茶を飲むと虫歯予防につながることが、大阪大大学院歯学研究科が行った試験で明らかになりました。ネズミを使った動物実験でウーロン茶特有のポリフェノール(苦味成分)が歯垢の発生を抑えることはわかっていましたが、人への効果は確認されていませんでした。

 虫歯は、ミュータンスレンサ球菌という細菌が口の中に感染した結果起こります。このミュータンスレンサ球菌は、グルコシトランフェラーゼ(GTase)という酵素によって、砂糖からグルカンという物質を作り出します。このグルカンと虫歯菌が一体となって歯の表面に付いたものが歯垢で、これが虫歯の原因になるのです。 

 ウーロン茶ポリフェノールには、グルカンを作り出すGTaseの酵素作用を抑えて、歯垢のもとになるグルカンを減らす働きがあると考えられています。こうしたウーロン茶ポリフェノールの虫歯予防効果は、ネズミを使った実験などで立証されていました。

 大阪大の試験は18歳から43歳までの男女31人を対象に実施。ウーロン茶とミネラルウオーターを朝・昼・晩の食事中と就寝前に3日間飲用し、4日目の朝に染色剤を用いてプラークスコア(歯垢の沈着度)を検査したところ、平均でウーロン茶が104、ミネラルウオーターが126と差が認められました。対象者は試験の間、歯磨きとうがい、ほかのお茶を飲むことが禁止されていました。

 大阪大の大嶋隆名誉教授は、「お茶は虫歯予防に有効なのではないかという話は以前からあり、真偽をデータで明らかにしようと調査した。人でこれほど明確な作用が認められるとは思ってもみなかった」としています。

 同じお茶でも発酵しない緑茶のポリフェノールはほとんどカテキン類なのに対し、発酵を途中で止めるウーロン茶にはカテキン類が重合してできる特有のポリフェノールが含まれます。緑茶でも試験を行いましたが、それほど結果が出なかったといいます。

 大嶋名誉教授は、「虫歯の予防法として、規則正しい食生活、砂糖を含む食品の制限、口腔清掃の励行、歯科医師による定期診査を受ける、などが挙げられる。これらを実践するとともに、ウーロン茶ポリフェノールを生活の中に取り入れてほしい」と話しています。

 2012年7月23日(月)

 

■熱中症の危険を知らせる携帯型の温湿度計 リズム時計が発売へ

 これから始まる猛暑シーズンに向けて、リズム時計工業は7月27日に、熱中症への注意を知らせる携帯型の温湿度計「ライフナビピコ」を発売します。

 温度と湿度を高精度センサーで計測し、熱中症などへの注意が必要な環境になると、液晶部分の「注意報」欄に注意を表示。同時に警報音が鳴り、警告ライトが点滅し、熱中症の危険性をユーザーに知らせる仕組みとなっています。

 大きさは縦50ミリメートル、横71ミリ、高さ23ミリとコンパクトサイズで、重量は約30グラム。付属のストラップを使い、ベルトやカバンに装着して利用します。

 警告機能としては熱中症のほかに、インフルエンザや食中毒、カビ・ダニが発生しやすい環境になった時にも、液晶部分に注意を表示して知らせます。インフルエンザ注意では、熱中症と同様、音と光による警告機能が利用できます。

 測定範囲は温度がマイナス10℃~50℃で、湿度が20~95%。電源はコイン型のリチウム電池「CR2032」が2本で、電池寿命は約1年。時刻・カレンダー表示機能も用意されます。本体カラーは白、青、赤の3色。

 希望小売価格は3150円で、全国の量販店やホームセンターなどで販売。赤ちゃんを連れての外出時や、熱中症に気付きにくい高齢者などの利用を見込み、年間2万5000個の販売を計画しています。

 リズム時計工業では、「熱中症への予防としては、お部屋や外出先での温度と湿度を知ることが大切なポイントとなります。温度や湿度は時間や場所で違いますが、体感ではなかなか判断できません。屋外での仕事や、ペットとの散歩時などでも心強い味方になってくれることでしょう」としています。

 2012年7月22日(日)

 

■ポリオの不活化ワクチン 4種混合タイプの2種類承認へ

 厚生労働省の薬事・食品衛生審議会の医薬品第2部会は20日、国内2社が開発したポリオ(小児まひ)の不活化ワクチンと、DPTワクチン(ジフテリア、百日ぜき、破傷風)の4種混合ワクチンの製造販売を承認してよいとする意見をまとめました。

 ポリオ単独の不活化ワクチンが4月に承認されましたが、4種混合は今回の2種類が初めて。

 厚労省は「できるだけ速やかに手続きをしたい」として、2種類を近く正式に承認し、11月から予防接種法に基づく乳幼児の定期接種に導入することを目指します。

 ポリオの予防接種はこれまで、ごくまれに深刻な手足のまひを引き起こす生ワクチンが使われてきました。厚労省は8月で生ワクチンをやめ、9月にまずウイルスの病原性をなくしたフランスの製薬会社・サノフィパスツールの単独不活化ワクチン「イモバックス」に切り替えることを決めています。

 新たに承認されるのは、阪大微生物病研究会(大阪府吹田市)の「テトラビック」と、化学及血清療法研究所(熊本市)の「クアトロバック」。

 厚労省案によると、ポリオ単独の不活化ワクチンと4種混合ワクチンはいずれも、初回免疫として3回、追加免疫として1回接種が必要になります。

 対象年齢は、現在使われている生ワクチンと同様、生後3カ月以上90カ月未満と設定。定期接種として実施するには、この間に4回の接種を終えなければなりません。

 一方、接種間隔や標準的な接種年齢は、DPTワクチンに合わせて定めます。初回接種(3回)はそれぞれ20〜56日、追加接種(1回)は初回接種から6カ月以上の間隔を置かなければなりません。

 標準的な接種年齢は、初回接種が生後3カ月以上12カ月未満、追加接種が初回接種終了後12カ月以上18カ月未満。ただ、経過措置として導入後3年程度の間は、56日以上の間隔が空いても単独不活化ワクチンの接種を受けられます。

 ポリオワクチン、DPTワクチンともに1回も接種していない乳幼児は、4種混合ワクチン導入までの間は、単独不活化ワクチンと既存のDPTワクチンを接種します。4種混合ワクチン導入後は、4種混合ワクチンを接種します。DPTワクチンを1回でも接種したことがあり、ポリオワクチンの接種歴がない乳幼児は、単独不活化ワクチンを4回接種します。

 生ポリオワクチンを1回接種している乳幼児は、計4回となるよう単独不活化ワクチンを接種します。国内未承認の単独不活化ワクチンを輸入した医療機関や海外で接種した乳幼児も、計4回になるように単独不活化ワクチンを接種します。

 これらの乳幼児については、すでにDPTワクチンを1回以上接種しているケースがほとんどだと考えられるため、原則として単独不活化ワクチンを使用します。

 生ワクチンの定期接種(2回)を終えている乳幼児への、不活化ワクチンでの追加接種は不要とされます。

 2012年7月21日(土)

 

■臍帯血の一部、iPS用に備蓄 厚労省専門委が容認

 新生児のへその緒から採取した臍帯(さいたい)血のうち、白血病などの治療に使わなかったものは、体のあらゆる組織や臓器になるとされるiPS細胞の研究に利用できるとする見解を、厚生労働省の造血幹細胞移植に関する専門委員会がまとめました。

 新生児のへその緒に含まれる臍帯血は、血液などの元になる細胞を多く含むため、全国に8か所ある臍帯血バンクが、出産した女性から提供を受け白血病などの患者への移植用として保存しています。

 しかし、多くが提供から10年以上たつなどして廃棄されていることから、厚生労働省の専門委員会は、治療に使わなかった臍帯血をiPS細胞を作り出す元として利用する場合の問題点について検討しました。その結果、提供の同意書では「治療と研究」を目的として示していることから、改めて同意を得なくともiPS細胞の研究に利用できるとする見解をまとめました。

 実際に研究機関に譲渡するかどうかは、臍帯血バンクが個別に審査して判断するとしています。

 iPS細胞を巡っては、京都大学が将来、患者に移植しても拒絶反応が起きないよう、さまざまな白血球の型のものを作って備蓄する計画で、白血球の型の登録制度がある臍帯血バンクに協力を求めていました。

 厚生労働省は、来月、専門委員会の見解をそれぞれの臍帯血バンクに通知することにしています。

 委員会の見解が普及すれば、臍帯血が別の組織や臓器に姿を変えられて移植に使われる可能性が出てきます。このため今後については、「法整備が必要」としています。

 2012年7月20日(金)

 

■風疹、この5年で最悪の流行に 妊婦の家族はワクチン接種を

 風疹がこの5年で最悪の流行となっていることから、厚生労働省は妊婦の家族や妊娠を望んでいる女性に対して、ワクチンの接種を検討するよう呼び掛けることになりました。

 風疹はせきやくしゃみなどを通じて感染し、発症すると主に発熱や発疹の症状が出ます。妊娠中の女性が感染すると、生まれてくる赤ちゃんの心臓や目、耳などに障害が出る恐れがあります。

 国立感染症研究所によりますと、この5年で最悪の流行になっていて、実際に妊娠中の女性が感染したケースが出始めていることから、厚生労働省は妊婦への感染を防ぐため、妊婦の夫や同居する家族で風疹にかかったことがない人や、予防接種(MRワクチン)を受けていない人は、予防接種を検討するよう呼び掛けることになりました。

 また、妊娠を望んでいる女性や出産直後の女性についても、予防接種を受けることを検討するよう呼び掛けることにしています。

 国立感染症研究所によりますと、全国の医療機関から今月8日までに報告された患者は594人と、すでに去年1年間の1・6倍に上り、この5年で最悪となっています。8日までの1週間に、新たに風疹と診断された患者は75人で、都道府県別では、東京都が34人で最も多く、神奈川県が15人、兵庫県が11人と、首都圏と関西で感染の拡大が続いています。

 患者の8割近くは男性で、その多くが子供のころ予防接種の対象外だった20歳代から40歳代です。この世代の男性は風疹の予防接種を受けていないことが多く、30歳代から50歳代前半の5人に1人は風疹に対する免疫がないという調査結果があります。

 埼玉県内に住む妊娠中の29歳の女性は、先月下旬に熱が出て、2日後に顔などに発疹が出始めました。翌日、全身に発疹が広がったため、受診すると風疹と診断され、血液検査で感染が確認されました。女性の周りには風疹に感染している人はおらず、どこで感染したかはわからないということです。

 女性は、「関西で風疹がはやっていることは知っていたが、まさか自分が感染するとは思っていなかった。妊娠前に予防接種を受けておけばよかった。羊水検査でウイルスは見付からなかったと聞きましたが、生まれてくる赤ちゃんに障害がないか不安です」と話しています。

 女性を診察した三井記念病院産婦人科の小島俊行部長は、「妊娠中の女性は風疹の予防接種はできないので、かかったことがない人は人混みを避けてほしい。そして、一緒に暮らしている夫は、妊娠している妻に移さないよう、予防接種を受けてほしい」と話しています。

 感染の拡大が続いている東京都福祉保健局では、せきやくしゃみなど飛まつにより風疹が感染することから、外出後は手洗いやうがいをしっかり行うこと、せきなどの症状がある場合は、受診の際など外出時にはマスクを着用すること、風疹と診断された場合は、感染性を持つとされる期間(発疹出現後では5日間)は出勤や登校、外出を控えるようにして周囲に配慮することを呼び掛けています。

 2012年7月19日(木)

 

■臓器提供の意思表示1割、改正法で増加か 移植ネット調査

 10人に1人が脳死や心停止後に臓器を提供するかしないかの意思を示していることが3日、日本臓器移植ネットワークの調査でわかりました。内閣府の2008年調査では、4パーセントでした。

 両者の調査方法に違いがあり単純比較できないものの、改正臓器移植法の全面施行で、専用カードのほかに、運転免許証や健康保険証などにも意思表示欄が設けられたことが増加要因とみられます。

 移植ネットの調査は、2010年の改正臓器移植法の全面施行から7月で2年を迎えるのに合わせ、3月22~28日にインターネットを通じて行ったもので、10歳以上70歳未満の男女1000人から回答がありました。

 「意思表示をしている」人は11パーセント、「意思表示をしたい」人は30パーセント。このうち、「臓器を提供してもよい」人が91パーセントを占めており、「臓器を提供したくない」人が残りの9パーセントでした。

 一方、「意思表示したいと思わない・わからない」人は59パーセント。理由は「抵抗がある」が40パーセント、「自分の意思がわからない」が30パーセント、「家族が反対しそう」が19パーセントと続きました。

 全体の少なくとも3人に1人は臓器を提供してもよいと考えており、臓器提供について家族と話し合ったことがあるとしたのは39パーセントでした。

 改正臓器移植法の施行で、本人が生前に提供しない意思を示していない限り、家族の承諾があれば脳死臓器提供が可能になりました。1997年の同法施行から改正前の2010年7月までの提供者は86人でしたが、改正後は今年6月末までに2年間で92人に増加。うち8割は本人の同意はなく、家族の承諾でした。

 移植ネットワークは、「本人の意思表示があれば、家族はより確実に(承諾するかどうかを)決断できる。免許証や保険証に専用の欄が設けられ、意思を示す方法は増えている。もしもの時に家族が困らないためにも明記してほしい」と話しています。

 免許証や保険証の裏面に設けられた意思表示欄に、「意思を記入している」としたのは免許証で6パーセント、保険証では8パーセントと、あまり浸透していない実態も浮かび上がっています。

 2012年7月18日(水)

 

■米FDA、HIV感染予防薬を世界で初めて承認

 米食品医薬品局(FDA)は16日、抗レトロウイルス薬「ツルバダ」について、エイズウイルス(HIV)感染予防薬として使用することを世界で初めて承認しました。FDAは、本薬の処方前に服用者がHIVに感染していないことの確認が必要だと警告するとともに、本薬を他の安全策と組み合わせて使用するように注意を促しています。

 ツルバダは米カリフォルニア州の製薬会社ギリアド・サイエンシズが開発した医薬品で、2004年にエイズ治療薬としてFDAに承認され、ほかの治療薬と組み合わせて服用されています。同社によると、HIV感染予防薬の承認は世界初。

 エイズの死者は治療薬の普及により減少していますが、米国ではHIV感染者数が年間5万人増加しています。FDAのハンバーグ局長は、「エイズに対する戦いの中で、今日の承認は重要な節目となるものだ」との声明を発表しました。

 ツルバダは日本でもエイズ治療薬として販売されていますが、ギリアド社によると、米国以外で予防薬としての申請はしていません。

 予防効果については、HIV感染者をパートナーに持つ非感染者がツルバダを服用すれば、最大96パーセントの確率で感染を予防できることが大学などの研究で示されていました。FDAによると、片方がHIV感染者の男性同性愛者や異性愛カップルを対象とした調査の結果、非感染者がツルバダを毎日服用した場合に、HIVに感染する危険が4分の1に減りました。

 予防薬としての利用は、パートナーがHIV感染者の場合など、感染リスクの高い人が対象。毎日の服用が必要で、年間約1万4000ドル(約110万円)かかるといいます。

 しかし、エイズ専門家の中には、HIV感染を防ぐためにはツルバダだけでなく、コンドーム使用などの安全策も組み合わせる必要があると強調する人もいます。FDAの関係者も、セーフセックス、リスク軽減のカウンセリング、定期的なHIV検査といった他の安全策との組み合わせにより、「エイズやHIVに感染するリスクを低減できる」と語りました。予防薬としての処方に際しては、HIVに感染していないことの確認を求める方針。

 一方、米国のエイズ団体「エイズヘルスケア財団」は今回の決定について、「FDAはHIV検査を実際に求めておらず、検査の必要性を単に警告欄に表示しただけだ」「結果としてこれまでのHIV感染予防の取り組みが台無しになりかねない」と指摘。「新たに感染したり、薬に対する耐性ができたり、深刻な副作用に見舞われる人が大量に発生することになる」と危機感を示しています。

 2012年7月17日(火)

 

■重い熱性けいれんは、てんかんの原因に 脳の一部で神経回路が未発達

 幼い時に風邪やインフルエンザなどで重い熱性けいれんになると、脳の一部で神経回路が発達せず、てんかん(無熱性けいれん)を発症しやすくなるとする研究結果を、東京大学のグループがネズミを使った実験を基にまとめました。

 東京大学薬学系研究科のグループは、てんかんのうち、脳の海馬と呼ばれる部分で神経回路に異常が生じているタイプの「側頭葉てんかん」に着目し、ネズミを使って発症の仕組みを調べました。

 神経回路が発達するのは、風邪やインフルエンザなどで熱性けいれんになりやすい幼い時期のため、人間の乳幼児期に当たる生後11日目のネズミ16匹の体温を40~42度まで上げ、人工的に重い熱性けいれんを起こしたところ、成長後、いずれも脳波に異常が現れ、半数で側頭葉てんかんの発作を確認しました。

 さらに、海馬では、成長とともに移動する神経細胞が特定の神経伝達物質に過剰に反応し、本来の場所に到達できていないことがわかったとしています。

 研究グループでは、人間でも乳幼児期に重い熱性けいれん経験すれば、成人になってから同様の現象が生じる可能性もあると指摘。「重い熱性けいれんになると海馬で神経回路が発達せず、てんかんを発症しやすくなる。海馬の障害を防ぐことが、てんかん予防につながるかもしれない」と結論付けています。

 その上で、重い熱性けいれんの治療で使う薬の大半に、この神経伝達物質の働きを強める作用があることから、薬の投与でてんかんのリスクが高まる恐れがあると指摘しています。

 研究を行った池谷裕二准教授は、「熱性けいれんの患者の追跡調査を行い、治療法の見直しを検討することも必要ではないか」と話しています。

 今回の研究について脳神経外科が専門で、てんかんに詳しい東北大学の中里信和教授は、「てんかんが起きる仕組みを解明しただけでなく、熱性けいれんと治療薬の関連についても分析を進めた点で、画期的といえる。研究の進展によっては、熱性けいれんの治療を見直さなければならない可能性があるので、よりよい治療法の開発に向け、患者の追跡調査や別の薬を使った臨床研究を進める必要がある」と話しています。

 グループの研究結果は、15日付の米医学誌ネイチャーメディシン電子版に発表されました。

 2012年7月16日(月)

 

■夏休みを利用した海外旅行者が増加 厚労省、感染症に注意を呼び掛け

 厚生労働省は、夏休みで海外旅行者が増加することから、鳥インフルエンザやデング熱、マラリアなど海外で流行している感染症に注意するよう呼び掛けています。

 病気の予防には、まず出発前に体調を整え抵抗力を保つことが大切で、また出発前に渡航する地域の衛生状況や感染症の流行情報を入手し、予防接種が受けられる感染症についてはあらかじめ接種を受けておくなど、適切な感染予防に心掛けることが大切としています。

 毒性の強い「H5N1」型の鳥インフルエンザは、東南アジアを中心に人への感染が確認されています。このため厚生労働省は、これらの国を旅行で訪れる人に、生きた鳥が売られている市場や養鶏場に近付かないことや、鳥の死骸やふんには絶対触らないこと、それに手洗いやうがいを徹底するよう呼び掛けています。

 H5N1型の鳥インフルエンザでは、2003年11月から2012年4月5日までに世界15カ国で601人の発症者が報告されており、そのうち354人が死亡しています。2012年も、新たな患者がエジプト、ベトナム、インドネシア、カンボジア、中国、バングラディシュで確認されています。

 また、デング熱やマラリアなど蚊を介して広がる感染症も、アジアや中南米、アフリカなど熱帯・亜熱帯地域で流行しています。このうちデング熱は、ウイルスを保有した蚊(ヤブカ)に吸血された際に感染し、突然の発熱や関節の痛みなどの症状が出て、重症化すると死亡する恐れもあります。日本では、海外で感染して帰国する人が毎年、約100人報告されています。

 マラリアは、マラリア原虫を保有した蚊(ハマダラカ)に吸血された際に感染し、特徴的な発熱のほか、悪寒、頭痛、吐き気などの症状が現れます。毎年、世界中で約2億5000万人の患者が発生し、80万人以上の死者がいると報告されています。日本でも、海外で感染して帰国する人が毎年、50人以上報告されています。

 デング熱やマラリアの予防には、長袖の上着や長ズボンの着用、防虫スプレーなどの利用、素足でのサンダル履きを避けるなどで、蚊に刺されないようにすることが有効といいます。

 厚生労働省は、海外の感染症に関する情報をホームページで公開しているほか、帰国時に体調が悪かったり不安に思うことがあったり人は空港や港の検疫所に相談し、帰国後に体調が悪くなった人は医療機関を受診するよう呼び掛けています。

 2012年7月15日(日)

 

■16日にかけて厳しい暑さが続く見込み 熱中症に注意を

 気象庁によりますと、梅雨前線の影響で九州を中心に雨が降っていますが、南から温かく湿った空気が流れ込んでいるため、14日は各地で午前中から気温が上がり、蒸し暑くなりました。

 日中の最高気温は、鹿児島市と宮崎市の青島で34度7分、東京都練馬区と埼玉県越谷市で34度4分などと35度近くまで上がったほか、さいたま市で33度7分、東京都心で33度ちょうど、名古屋市で32度4分など、西日本と東日本の太平洋側を中心に厳しい暑さとなりました。

 16日にかけての連休は、太平洋高気圧が本州付近に張り出すため、関東を中心に晴れ間が広がり、各地で厳しい暑さが続く見込みです。

 15日の最高気温は、鳥取市で34度、福岡市と京都市と水戸市で33度、東京都心と大阪市で32度などと予想されています。また、16日にかけては関東地方などで局地的に35度の猛暑日になると予想されています。

 さらに、夜になっても気温があまり下がらず、東日本や西日本では各地で最低気温が25度以上の熱帯夜が続く見込みです。

 気象庁はこまめに水分や塩分をとったり、冷房を適切に使ったりして熱中症に十分気を付けるよう呼び掛けています。

 熱中症の症状や対処の仕方を知るには、救急医療や高齢者医療、小児医療などの専門家で作る委員会が作ったホームページが役に立ちます。このホームページでは、熱中症は体の中の水分や塩分などが失われる「脱水」から起こるとして、脱水の症状や対処の仕方を詳しく紹介しています。

 初めに現れる症状は、立ちくらみ、めまい、足がつる、汗が止まらないなどで、すぐに体を冷やし、水分や塩分、糖分を補給しないと、短時間で悪化する恐れがあるとしています。

 また、ホームページでは、脱水になりかけている状態を「かくれ脱水」と名付けて注意を呼び掛けています。例えば、「夏バテ」と感じる症状も「かくれ脱水」であることが多く、脱水によって胃や腸への血流が減るために消化機能が低下し、食欲が落ちて疲れやすくなるということです。

 「かくれ脱水」は、子供や高齢者、病気の人などがなりやすく、暑い日の屋外だけでなく、室内や夜間、運転中にも起きるため、水分をこまめに補給してほしいと呼び掛けています。

 ホームページを作成した委員会の副委員長で、神奈川県立保健福祉大学の谷口英喜教授は、「熱中症というと暑いところで運動して倒れるイメージがあるが、熱中症に至る前にはさまざまな症状がある。ホームページを見て熱中症の予防や対応に役立ててほしい」と話しています。

 ホームページのアドレスは(http://www.kakuredassui.jp/)。

 2012年7月14日(土)

 

■大腸がん、1滴の血液で早期に発見 神戸大などが成功

 神戸大は13日、同大学院医学研究科の吉田優准教授(消化器内科学)らの研究グループが、1滴の血液で大腸がんを早期に診断できる「バイオマーカー(生物学的指標)」を発見したと発表しました。

 これまで使われている腫瘍マーカーなどは、初期の大腸がん患者への感度が低く、早い段階で正確に診断できませんでした。研究グループでは、「5年以内の実用化を目指したい」としています。

 バイオマーカーは、病気を発症した際や薬を飲んだ際、体内に現れる生物学的変化を定量的に把握するための指標。特定の病気や体の状態に相関して変化する量を測定し、治療の効果を確かめたり、疾患の予防などに活用したりします。

 研究グループでは、混ざり合った複数の成分を分離する高精度の質量分析装置を使い、大腸がん患者60人と健常者60人の各血液中の代謝物質「メタボローム」の解析を実施。アミノ酸の一種「アスパラギン酸」など4種類の物質について、いずれも大腸がん患者のほうが平均2~3倍多いことを発見しました。

 この4種類のバイオマーカーに基づいて大腸がんの診断予測式を作成し、別の大腸がん患者60人と健常者60人で、がんの有無の確率を見ました。その結果、既存の腫瘍マーカーでは診断が困難だった切除可能な早期大腸がんでも、80パーセント以上の確率で大腸がんと診断することができました。1~2時間かかっていた検査時間も、30分に短縮できるといいいます。

 大腸がんは食事の欧米化などに伴って増加傾向で、国内では年間約4万5000人(2010年)が死亡。肺がん、胃がんに続き、がんによる死因の3位となっています。

 吉田准教授は、「従来の血液検査より正確に診断できる。今後、4種類の物質を使ってさらに簡単に診断できる機器を医療メーカーとともに作り、実用化させたい」とし、「必要な代謝物質の組み合わせにより、胃がんや膵臓がん、うつ病や糖尿病などさまざまな疾患の診断に応用できる可能性がある」と話しています。

 検査に必要な血液量は1滴ほどと少量で、患者の負担は軽くなります。費用や診断に必要な時間も、これまでより半分以下に抑えられる見込みです。

 2012年7月13日(金)

 

■風疹患者が急増 東京都が注意を呼び掛ける

 発熱や発疹の症状が出る風疹(三日ばしか)の感染が東京都内で広がり、今月に入って患者が急激に増えていることがわかりました。東京都は、予防接種やうがいを行うなどして感染に注意するよう呼び掛けています。

 今年は春以降、兵庫県、大阪府、京都府など近畿地方を中心に感染が広がり、東京都によりますと、都内でも先月上旬から感染が広がり始めました。そして、今月8日までの1週間に確認された都内の患者の数は39人で、前の週の3倍近くに増えています。

 風疹はかつて子供の病気とされていましたが、近年目立つ風疹の患者は成人、特に男性だとされており、今回の患者も30歳代の男性が多いということです。

 風疹の予防接種は現在、幼児期のほか中学1年と高校3年の男女を対象に行われていますが、1994年まで中学生の予防接種は女子だけに限られたため、30歳代から40歳代の男性は接種の対象外だった人が多く、こうした免疫がない人を中心に感染が広がっているとみられています。

 風疹は、せきやくしゃみなどを通じて感染し、発症すると主に発熱や発疹、リンパ節がはれるといった症状が出ます。例年、春から初夏にかけて患者が増え、妊娠初期の女性が感染すると、流産したり、風疹ウイルスが胎盤を介して胎児に感染し、生まれた新生児に先天性風疹症候群と呼ばれる形態異常を起こす確率が高くなります。症状や重さは感染時期によって異なり、妊娠2カ月以内だと白内障、心臓の形態異常、聴力障害のうち2つ以上を抱えて生まれることが多くなります。妊娠3~5カ月でも聴力障害がみられます。

 東京都は、予防接種やうがいなどを行うよう呼び掛けるとともに、特に妊娠している女性は感染に注意するよう呼び掛けています。

 国立感染症研究所感染症情報センターの多屋馨子室長は、「予防接種の対象外だった30歳代、40歳代の男性の間で患者が増えているが、この年代は子育て世代でもあるので、家族や同僚など周囲に妊娠している女性がいる場合は注意が必要だ。風疹はワクチンの接種で予防できるが、妊娠中は接種が受けられないので、妊娠を希望していて、過去に接種を受けていない人は受けるようにしてほしい」と話しています。

 2012年7月12日(木)

 

■今夏、エルニーニョ現象が発生し気温が上がらない可能性

 世界の天候に影響を及ぼすエルニーニョ現象について、気象庁は「この夏のうちに発生する可能性が高い」と発表しました。エルニーニョ現象が発生すると、日本国内では夏の気温が上がりにくくなることから厳しい残暑にはならない可能性が出ています。

 エルニーニョ現象は、南米ペルー沖の赤道付近の東太平洋で海面の温度が平年よりも高くなる現象。気象庁によりますと、先月、この海域の平均海面温度が基準値(過去30年の平均)より0・5度高い27・0度となっているのが観測され、この状態は冬にかけて続くという予想になり、「この夏のうちにエルニーニョ現象が発生する可能性が高い」と発表しました。

 エルニーニョ現象が発生すると、日本では夏は太平洋高気圧の張り出しが弱まって気温が上がりにくく、秋から冬にかけては気温が高く暖冬になる傾向があるとされています。

 最近では、3年前の2009年夏の初めから2010年の春にかけて、エルニーニョ現象が発生。2009年夏は太平洋高気圧の日本への張り出しが弱く、北日本から西日本にかけて平均気温が平年より0・1~0・4度低く日照時間も少なかったほか、冬は全国的に気温が高くなりました。

 気象庁は「直ちに冷夏になるとまではいえない」とし、「この後、エルニーニョ現象が発生すると、9月はここ数年間のように厳しい残暑にはならない可能性がある。今後の天候への影響を注意深く監視したい」と話しています。

 2012年7月11日(水)

 

■ヒートアイランド現象、夜間に気温が上昇 気象庁分析

 ヒートアイランド現象の影響で気温が上昇するのは主に夜から明け方にかけてで、周辺よりも推定で3度以上高くなっていることが、気象庁の分析でわかりました。

 ヒートアイランド現象は、舗装された道路やコンクリートの建物などに熱がたまったり、建物や自動車などから熱が排出されたりして、都市部の気温がその周囲より高くなる現象です。

 気象庁がヒートアイランド現象の影響で気温がどの程度上がっているのか、東京、大阪、名古屋の大都市圏の去年8月の1カ月間を対象に分析したところ、平均気温が推定で1度から2度あまり高くなっていることが、わかりました。

 東京で時間帯別に分析したところ、気温は日中の午後3時には新宿区や練馬区など内陸部で推定で1度程度の上昇でしたが、夜の8時や明け方の午前5時には23区を含む広い範囲で2度以上上昇していました。中には、推定で3度以上高くなっているところもありました。

 気象庁気候情報課は、「昼間にたまった地表の熱が、ビルなどに阻まれて上空に放出されずに滞留し、夜間の気温が下がりにくくなっている」として、「日中だけでなく夜も熱中症の恐れがあるので十分注意してほしい」と話しています。

 その熱中症で病院に救急搬送された人は7月2日~8日の1週間に882人で、前の週に比べ1・5倍に増えたことが10日、総務省消防庁の全国集計(速報値)でわかりました。死亡者は、富山県の1人でした。

 速報値によると、3週間以上の入院が必要な重症者は20人、入院が必要な中等症は267人でした。都道府県別では、愛知県の74人が最多で、埼玉県73人、大阪府と鹿児島県がともに55人と続きました。

 救急搬送者数は、猛暑だった昨年の7月4日~10日の4862人に比べると少なくなっています。今年は6月18日~24日の週は405人で、6月25日~7月1日の週は589人と増え、記録的な暑さとなった北海道で2人、静岡県で1人の死者が出ました。

 2012年7月10日(火)

 

■やけどを治すラップ療法でトラブル 日本熱傷学会が注意喚起へ

 やけどを食品用ラップなどで覆って治す「ラップ療法」で、傷口が腐って足を切断したり、重い感染症を起こしたりするケースが相次いでいることが、日本熱傷学会の調査で判明しました。

 やけどの治療に不慣れな医師が用いて悪化させているケースもあり、同学会は今後、注意を呼び掛ける声明を出すといいます。

 ラップ療法は、傷口からの体液で湿らせて、傷を早く治す「湿潤療法(閉鎖療法)」の一つ。この療法で使う医療用シートが、認可されています。傷口の細菌感染による化膿には注意が必要ですが、1990年代後半から床擦れの治療に食品用ラップなどが使われ始め、その後、やけどや傷にも効き、治りが早いと、ネットなどで広まりました。

 日本熱傷学会は「ラップ療法対策特別委員会」を設け、今春、やけど治療の実態を会員からの報告や文献で調査。この結果、回復の遅れや症状の悪化などのトラブルが48例、確認されました。このうち10例は傷口で増えた細菌が全身に回り、高熱や意識障害を起こす敗血症になっていました。

 左足の低温やけどで、ラップ療法を受けた糖尿病の60歳代男性は、医師から「絶対に2、3日、交換してはいけない」といわれ、患部が腐って足を切断しました。本来なら皮膚の移植が必要なほど大きなやけどに、医師がラップを張って重症化させたケースもありました。床擦れのラップ療法を参考に、自己治療して感染を生じたケースもありました。一方、54例では、やけどが治る効果が確認されました。

 同学会は、食品ラップなどの日用品は基本的に使わないよう求める声明を出します。調査委員会の安田浩・産業医大病院准教授(形成外科)は、「やけどは症状の軽重で、それぞれ適した治療法がある。湿潤療法の効果は確かめられているが、正しい知識を持つ医師が医療用シートでやらないと危険だ」と注意を呼び掛けています。

 安田准教授は、湿潤療法の注意点として、△感染症を起こしている傷には基本的に使わない、△傷口や周りに皮膚がふやけたり、乾いたりし過ぎないよう、適度な湿り気を保つ医療用シートが望ましい、△傷の痛み、うみが出たり、赤くなったりするなど感染の兆候があれば、他の治療法を考える、を挙げています。

 2012年7月9日(月)

 

■アスベスト、労災認定1105人 2011年度、厚労省集計

 職場でアスベスト(石綿)を吸い込んで中皮腫や肺がんなどの健康被害を受けたとして、2011年度に労災認定されたのは1105人で、前年度より111人増えたことが、厚生労働省の集計でわかりました。

 集計によると、石綿被害で2011年度に労災申請したのは1141人で、前年度から1人減りました。

 認定された疾病別の内訳は、石綿特有のがんの一種である中皮腫が546人、肺がんが399人、びまん性胸膜肥厚が50人、良性石綿胸水が42人。これとは別に、これまで石綿関連の労災に含められていなかった石綿肺が68人認定されました。

 業種別では、アスベストを使った断熱材などを扱う建設業で働いていた人が567人と半数以上を占めたほか、アスベストの製造工場などで働いていた人が433人、アスベストを運搬するなどの仕事をしていた人が32人などとなっています。

 都道府県別では、東京都が144人で最も多く、次いで神奈川県が96人、大阪府が94人、兵庫県が90人などとなっています。

 死亡後5年の時効を過ぎたため労災を申請できない遺族に、石綿健康被害救済法(石綿新法)に基づいて支給される特別遺族給付金は、前年度比7・1パーセント減の39人に支給されました。

 アスベストは、2006年に使用が全面的に禁止されましたが、健康被害が現れるまでに長期間に渡る潜伏期間があるとされていることから、厚生労働省は「不安がある人は医療機関や労働基準監督署に相談してほしい」と呼び掛けています。

 アスベスト症により引き起こされる病気として、長い期間アスベストに曝露されると、特殊な肺がんを発症することが知られています。アスベストは劣化しにくいため、長期間に渡って空気中や水中に存在し、人間の体内に入るとほとんど分解されず、肺などに蓄積して、がん化するのです。大量のアスベストを日常的に吸った際に起こる石綿肺、より少ない曝露でも起きる肺がん、肺を取り囲む胸膜などに悪性の腫瘍ができる中皮腫が、主な病気です。

 息切れ、胸痛、咳などの初期症状があり、吸い込んでから約15~50年の潜伏期間をへて、発症します。また、アスベスト症の罹患者で喫煙した場合には、肺がんによって死亡するリスクが50倍以上になるといわれています。

 2012年7月8日(日)

 

■不妊治療を受けての出産、リスク高め 日本医大などが妊婦24万人を調査

 人工授精や体外受精など不妊治療を受けて出産した場合、胎盤の位置の異常や早産、新生児の低体重などのリスクが1・2~2・7倍高いことが、妊婦約24万3000人の調査でわかりました。不妊治療が必要な人は治療の種類にかかわらず、ある程度リスクが高くなりました。妊娠中は体調の管理がより大切なことを示す結果です。

 調査したのは日本医大や東京女子医大などのチームで、日本産科婦人科学会に登録された妊婦約24万3000人(単胎出産)を分析。このうち、約4100人が排卵数を増やす薬である排卵誘発剤を使って出産、約2400人が精子を子宮などに注入する人工授精で出産、約4600人は卵子と精子を体外で受精させた後、子宮に戻す体外受精で出産しました。

 分析の結果、不妊治療を受けたグループは、胎盤の異常が起こるリスクが1・5~2・7倍、妊娠34週未満の早産で生まれるリスクは1・2~1・3倍、体重1000グラム未満の超低体重児が生まれるリスクが1・4~1・8倍高くなりました。

 胎盤が癒着するリスクを除いて、不妊治療の種類による大きな差はなく、不妊治療が必要な女性はもともとリスクが高めとわかりました。

 リスクの分析では、年齢、体格、初産かどうか、喫煙率、飲酒率、子宮筋腫や糖尿病などの持病の有無など、不妊治療以外の条件が同じグループを選んで比較し、治療以外の影響を除外しました。

 一方、24万3000人全体の分析では、不妊治療を受けた妊婦は、受けなかった妊婦より平均年齢が1〜4歳高く、持病がある率も数パーセント高くなりました。

 日本人カップルの10組に1組は不妊に悩み、体外受精で生まれる新生児は年間に約2万7000人と、40人に1人おり、人工授精や排卵誘発剤を合わせるとその2倍以上になっています。

 チームの中井章人・日本医大教授(産婦人科)は、「不妊治療を受けていれば、糖尿病や高血圧などの持病の治療や栄養バランスのとれた食事など、妊娠中の生活習慣の改善や健康管理をより心掛けてほしい」と話しています。

 2012年7月7日(土)

 

■肥満による脂肪肝炎発症のメカニズムを解明 横浜市立大など

 横浜市立大や大阪大などの研究チームは4日、飲酒しなくても肥満者が発症する脂肪肝である「脂肪肝炎(非アルコール性脂肪肝炎)」について、太っている人の肝臓が腸内細菌に過敏に反応することで慢性肝炎を発症するメカニズムを初めて突き止めたと発表しました。

 非アルコール性脂肪肝炎の患者はメタボリック症候群に該当する人を中心に全国で200万人以上に上りますが、原因などがわからず、有効な治療法がありませんでした。今回の研究成果で、治療薬開発などが進みそうです。

 非アルコール性脂肪肝炎では、腸内細菌による影響が指摘されていました。研究チームの中島淳横浜市立大教授(消化器内科)らは、太っていると、肝臓の細胞がごくわずかな腸内細菌の毒素にも過敏に反応して、肝炎になっていると考えました。

 そこで、普通食で育てたマウスと、高脂肪食で脂肪肝にした肥満マウスに、大腸菌などに含まれる毒素をごく少量ずつ注射。普通食で育てたマウスに変化はありませんでしたが、肥満マウスでは肝臓は機能が落ち、長期投与で肝臓の明らかな線維化が進みました。その原因は、肥満により脂肪組織から多量に分泌されるホルモンである「レプチン」によるものといい、肝臓では炎症を起こすタンパク質が増えていました。

 最近の研究では、非アルコール性脂肪肝炎から慢性肝炎になり、肝硬変や肝臓がんになることが明らかになってきており、欧米を中心とした肥満大国では非アルコール性脂肪肝炎が医療現場の問題となっています。

 研究チームは炎症を起こすタンパク質を抑えることができれば、新たな治療法の開発につながるとみており、中島教授は「花粉症患者のように肥満者が細菌に過敏反応することがわかった。治療法や診断法の開発に役立てたい」と話しています。

 研究の詳細な内容は、4日付の米科学専門誌「セル・メタボリズム」に発表されました。

 2012年7月6日(金)

 

■国民年金、納付率58・6パーセント 過去最低を更新

 自営業者などが加入する国民年金保険料の2011年度の納付率が58・6パーセントで過去最低を更新したことが、わかりました。厚生労働省が5日、記者会見をして明らかにしました。

 納付率の低下は6年連続で、60パーセントを下回るのは3年連続。前の年度の59・3パーセントを0・7ポイント下回りました。

 国民年金は、会社員や公務員以外の人が加入する公的年金制度の一つ。かつては自営業者を中心とした制度でしたが、最近は経済状況の悪化で、比較的所得が低いパートなど非正規労働者や無職の人の加入割合が増えています。

 保険料(現在は月額1万4980円)を支払えないケースが増えたことが、納付率の低下の背景にあるようです。公的年金制度への不信も影響しているとみられ、特に若い世代の納付率が低くなっています。納付率が高かった団塊世代が保険料を払う側ではなく受け取る側に回っていることも、要因となっています。

 団塊世代が保険料納付を終えたことなどにより年齢構成が変化し、2011年度は20~24歳が全体の20・0パーセントを占め最多となりました。また、納付率の最低は、25~29歳の46・1パーセントでした。保険料未納が続くと将来の年金受給額が減るだけでなく、25年以上納付しなければ年金を受け取れなくなります。

 厚生労働省は、保険料の納付率の低下が続くと、将来、年金額が低くなったり、年金を受け取れない人が増え、結果として社会保障費がかさんでしまう恐れがあるとして、保険料を納付できるのに長期間滞納している人などへの強制徴収を強化するとともに、所得が低くて保険料を支払えない人には免除手続きがあることを周知するなどの対策を講じていきたいとしています。

 2012年7月5日(木)

 

■就寝中に装用して裸眼視力を改善するコンタクト 東レなど発売

 近視および近視性乱視の人が日中に裸眼で生活できるよう角膜を矯正する治療用のコンタクトレンズ「ブレスオーコレクト」を、東レ(東京都中央区)などが発売しました。就寝時にコンタクトレンズを装用すると角膜の形状が変化し、起床後にレンズを外しても一時的に裸眼視力が改善された状態になるといいます。

 医療機器開発のベンチャー企業、ユニバーサルビュー(東京都千代田区)が開発して今年3月に製造販売承認を取得し、東レが販売元となります。東レの高分子技術で開発した、酸素を通しやすくて丈夫なレンズ素材を採用したほか、日本人の角膜の形状に適したデザインとしました。

 東レによると、厚生労働省から国内使用を承認された同種のレンズとしては3例目。レンズ素材も含めた純国産の商品は初めてだといいます。

 近視度数の軽い人の場合、夜間の装用を2週間ほど続ければ、朝レンズを外してから2日間ほどは裸眼視力が改善された状態を維持できます。レンズを日々手入れすれば、2年程度は使用可能。眼科専門医向けに販売し、初年度に10億円、2~3年後には30億円程度の売上高を目指します。

 眼科専門医による治療は保険適用外で、標準的な初期費用は20万~30万円程度。こうした治療法は「オルソケラトロジー」と呼ばれ、米国や中国では普及しているといいます。日本人の角膜に合った矯正用コンタクトレンズの開発が遅れていたことなどから、国内では2~3万人に処方されている程度といいます。

 日本人の角膜の形状は欧米人と比較して、中心部に突出の少ない球形が多いといわれており、ブレスオーコレクトではレンズの内面カーブを調整し、球形角膜に処方しやすいように設計されています。

 東レはブレスオーコレクトで、レーシックなどの視力回復手術に抵抗がある人の需要を取り込めるとしており、「これから認知度を高め、将来的にはレーシックを上回る市場に拡大させたい」と話しています。現在、レーシックは日本で約40万人に処方されています。

 また、東レはユニバーサルビューと組み、アジアなど海外での展開も視野に入れています。

 2012年7月4日(水)

 

■川魚から最高2600ベクレル 福島県周辺でセシウム調査、環境省

 環境省は2日、東京電力福島第1原発事故を受けて実施した福島県周辺の河川や湖、海域の魚類や昆虫に含まれる放射性セシウム濃度の測定結果を発表しました。

 福島県南相馬市の真野川で採取したハゼ科の魚、シマヨシノボリから1キログラム当たり最高2600ベクレルを検出し、海よりも河川や湖の魚類のほうがセシウムの濃度が全般的に高い傾向がみられました。

 魚類を含む一般食品の国の新基準値は1キログラム当たり100ベクレルで、2600ベクレルはそれを大幅に上回る数値。

 調査は昆虫や藻などが魚類の汚染とどう関連しているかを探ることが目的で、環境省は「海の生き物は、摂取する塩分と一緒にセシウムが早く排出されると考えられる。冬場の調査で採取した数が少なく、はっきりした傾向はわからなかったが、淡水の環境では今後も生物にセシウムが残る可能性もあり、推移を注視したい」と話しています。

 調査は昨年12月~今年2月に実施。河川と湖では、福島県内の計5カ所で、コイなど延べ23種の魚類から1キログラム当たり61~2600ベクレルを検出。カゲロウ、カワゲラなど延べ15種の水生昆虫から同330~670ベクレルを検出しました。

 海域では、福島県いわき市や宮城県亘理町沖の計3カ所で、延べ31種の魚類から同2・15~260ベクレルを検出しました。260ベクレルを検出のは、いわき市沖で採れたババガレイとスズキ。

 一部の魚介類で放射性ストロンチウムも測定し、いわき市沖のツガルウニから最高10ベクレルを検出しました。環境省は、「原発事故の影響と考えられるが、殻ごと測ったため特に値が高くなった可能性がある」としています。

 このほか、スズキやイワナなどから0・028~1・6ベクレルのストロンチウムを検出しました

 2012年7月3日(火)

 

■米、13年ぶりに肥満症治療薬を承認 エーザイ販売のロルカセリン

 米食品医薬品局(FDA)は6月下旬、日本の製薬大手エーザイが米国での販売権を持つ肥満症治療薬「ベルビーク(一般名ロルカセリン)」を承認したと発表しました。米国で成人の肥満症治療薬が承認されるのは13年ぶり。

 過去に副作用で死者が出たこともあることから、FDAは肥満症治療薬の承認に高いハードルを設けてきました。しかし、米国の成人の3分の1が肥満とされるなど問題が深刻化する中で、FDAは承認を増やす方向に方針転換したとの見方もあります。米国疾病対策予防センターによると、米国の成人の3分の2以上は肥満または過体重であるとされ、肥満の割合は1980年から2010年にかけて約15パーセントから約36パーセントと、2倍以上に増加しています。

 米国カリフォルニア州の製薬会社アリーナ・ファーマシューティカルズが開発、製造し、エーザイの米国子会社エーザイ・インクが販売します。

 臨床試験では、平均で年間5パーセント以上の減量効果が確認されました。肥満度を表す体格指数(BMI)が30以上(高血圧、2型糖尿病、高脂血症がある場合はBMI27以上)の成人向けに、食事療法や運動療法と組み合わせて服用する補助的な治療薬として承認されました。

 このロルカセリンは、脳内の神経伝達物資に働き掛け、食欲や満腹中枢を調整する作用があります。

 ただし、FDAは、妊娠中や授乳中の女性は服用しないよう警告しているほか、うつ病などの治療薬との併用は注意が必要だとし、薬の潜在リスクを調べるため長期的な市販後調査を行う必要があるとも指摘しました。製品ラベルにも、3カ月服用しても5パーセント以上の体重減少がみられない場合は服用を止めるようにとの注意書きが、添付されます。

 また、小児の肥満患者における有効性・安全性に関する臨床試験、および長期投与による心疾患、または複数の心疾患リスクを持つ過体重または肥満の患者における心血管系副作用の発症頻度に関する臨床試験を実施することが義務付けられています。

 2012年7月2日(月)

 

■世界最小らせん針開発、痛みない注射も可能に 千葉大

 千葉大学は、世界最小のらせん状の金属針を開発することに成功したと発表しました。長さ0・01ミリ、太さ2万5000~1万分の1ミリという極小の針で、らせん状の光の渦を照射する「光渦(ひかりうず)レーザー」を独自に開発して製造しました。

 低コストな上、1秒間に1万本以上の大量生産も可能となり、痛みを伴わない注射や低電力の液晶ディスプレー開発など、さまざまな分野で応用できるといいます。千葉大大学院融合科学研究所の尾松孝茂教授と北海道大学大学院の森田隆二教授の共同研究で、成果は世界的な学術誌である米国の「ナノレターズ」に掲載されました。

 千葉大学によると、レーザーに使った「光渦」は人工的に作り出した特殊な光で、進行方向に対してらせん状にエネルギーが降りていく現象。従来、理論物理学の分野で研究が進んでいましたが、研究チームは物質加工に使えるよう改良しました。

 実験では、レアメタルとして知られる「タンタル」の金属板に光渦レーザーを照射。ねじ山やソフトクリームのようにらせん状にタンタルが巻き上げられ、目に見えなかった光渦の構造を世界で初めて金属に転写させることに成功、世界最小の極小針ができ上がりました。

 これまでの技術で小さな金属の針を作るには、真空状態や化学薬品が必要でした。新技術は、大気がある室温下で製造でき、大型施設が不要。省エネルギーで薬品を使わないため環境に優しく、大量生産も可能とあって、各分野での応用が期待されます。

 医療分野では、細胞に針を当てて活性化させる実験が行われていますが、尾松教授は「従来使っている針と比べ、太さ(直径)を20分の1から30分の1に抑えられた。レーザー照射という比較的簡単な方法で量産もでき、応用の期待もかかる」と話しています。

 2012年7月1日(日)

 

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