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健康ダイジェスト

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■経営破綻の民間バンクから臍帯血流出 厚労省が無届け再生医療の実態調査

 東京都や大阪市、松山市、福岡市の12の医療機関が胎児のへその緒などに含まれる臍帯血(さいたいけつ)を、法律で定められた届け出をしないまま患者に投与していた問題で、使われた臍帯血は8年前に経営破綻した茨城県の民間業者から流出したものとみられることが29日、厚生労働省などの調査で明らかになりました。

 この問題は、計12カ所の内科や皮膚科などの民間クリニックが「がん治療」や「肌の若返り」などに効果があるとうたって、無届けのまま臍帯血を患者に投与する再生医療を行っていたとして、厚労省が先月から今月にかけて再生医療の一時停止を命じたものです。

 厚労省などの調査によりますと、これらの医療機関が使った臍帯血は、茨城県つくば市にあった民間の臍帯血バンク「つくばブレーンズ」が2009年に経営破綻した後、京都市の医療法人と福岡市の医療関連会社にわたり、さらに12の医療機関に販売されたとみられるということです。

 つくばブレーンズは、子供の将来の病気に備え、個人の臍帯血を有料で預かる事業を2002年から始めましたが、顧客が集まらず資金繰りが悪化し2009年に破産。当時保管していた臍帯血は約1500人分で、一部は別の民間臍帯血バンクに移されたもの、少なくとも約800人分が債権者側に流出したといいます。また、京都、福岡両市の2業者を通じて販売された臍帯血は、約300人分といいます。

 再生医療安全性確保法では、他人の臍帯血を患者に投与するなどの再生医療を行う場合、国に計画書を提出した上で安全性などの審査を受けるよう定められており、厚労省は12の医療機関について、この法律に違反した疑いで刑事告発を検討しています。

 厚労省は今後、警察と連携して臍帯血の流通ルートを詳しく調べるとともに、臍帯血を提供している民間臍帯血バンクがほかにないか全国で実態調査を進めています。

 2017年6月30日(金)

 

■青森県の胃がんと大腸がん検診で患者の4割見落としか 2万5000人を対象に追跡調査

 がんによる死亡率が12年連続で全国最悪の青森県は、がんの早期発見につなげようと県内の10の町と村で自治体のがん検診を受けた人を対象に調査し、胃がんと大腸がんについて検診の段階で患者の4割が見落とされていた可能性があることを示す分析結果をまとめました。

 がん検診の質を県が主体となって調べたのは、今回が全国で初めてです。

 人口10万人当たり何人ががんで死亡したかを示す2015年の年齢調整死亡率が96・9で、12年連続で全国最悪となった青森県は、胃がん、大腸がん、子宮頸がん、肺がん、乳がんの5つのがんについて、2011年度に自治体によるがん検診を受けた県内10の町と村の住民延べ2万5000人を対象に、その後の経過を調べました。

 がん検診を受けて異常なしと判定されたのに1年以内にがんと診断された人を見落としの可能性があると定義し、その割合を調べたところ、がん検診の段階でがんを見落とされた可能性がある人はバリウムによるX線検査を行った胃がんで40%、便に含まれる血を調べる便潜血検査を行った大腸がんで42・9%、子宮の入り口の細胞を調べた子宮頸がんで28・6%に上ることを示す分析結果がまとまりました。一方、肺がんは16・7%、乳がんは14・3%でした。

 専門家によりますと、一般にがん検診では20%程度の見落としは許容範囲と考えられているということです。がんの発見率を100%にしようとすると、がんでない多くの人に本来必要でない精密検査を行うことで結果として健康被害を引き起こす恐れがあるためで、20%程度の見落としであれば多くの場合、初期のがんでもあり、次回の検診で見付ければ影響も少ないためだということです。

 今回の調査結果は胃がんと大腸がんで20%を大きく上回っており、調査を行った弘前大学の松坂方士准教授は「4割というのは驚きでがんによる死亡率が高い原因の1つの可能性がある。がん検診は極めて重要な対策なので、今後は受診率を上げるとともに検診の質を高めていく取り組みを進める必要がある」と話しています。

 青森県は「4割捕捉できていないことは課題として受け止めたい。今回は町村部が対象でまだサンプル数が少ないので、今後、市部も含め複数年度調査を行いがん検診の質の向上に努めたい」と話しています。

 専門家によりますと、今回の調査は自治体が医療機関を通じてがん患者の情報を集める「地域がん登録」システムのデータが整ってきたことなどで可能になったもので、国立がん研究センター検診研究部の斎藤博部長は「検診の質をどう管理するかは全国共通の課題でほかの自治体でも同様の検証を行うべきだ」と指摘しています。

 2017年6月29日(木)

 

■原薬メーカーを22日間の業務停止に 和歌山県、薬の成分に無届けで中国製混合

 風邪薬の成分として使われる解熱鎮痛剤「アセトアミノフェン」を製造している国内大手の原薬メーカー「山本化学工業」(和歌山市)が、無届けで自社製品に中国製アセトアミノフェンを混ぜて製薬会社に出荷したなどとして、和歌山県は28日、医薬品医療機器法(薬機法)に基づき、22日間の業務停止命令と業務改善命令を出しました。

 医薬品の製造方法や原料を変更する場合、審査を担う独立行政法人「医薬品医療機器総合機構(PMDA)」に届け出なければなりませんが、山本化学工業は怠っていました。

 和歌山県によると、山本化学工業は2009年2月から、アメリカ産原料から製造したアセトアミノフェンに、輸入した安価な中国製を混ぜていたほか、原料にも中国産を無届けで使用。2015年11月からは抗てんかん薬の成分「ゾニサミド」の製造でも、使用材料を無届けで変更していました。

 和歌山県と厚生労働省が2015年11月と今年5月下旬に立ち入り検査した際、偽造した製造記録を提出していたことも判明。

 和歌山県薬務課によると、検査の聞き取りに対して山本隆造社長(65歳)は「違反は知らなかった」と答えたといいます。また、製造部門の責任者は「自分が担当になった時にはすでに(中国製を混ぜる)今の方法で製造されていたので、悪いことをしている認識はなかった」と話したといいます。

 この日、和歌山県庁で命令書を受け取った山本社長は取材に対し、「患者や関係者におわびしたい。全社一丸となって業務改善、企業風土の改革に取り組む」と頭を下げました。

 山本化学工業は5月24日から製品の出荷を停止していますが、厚労省は業務停止に伴う医薬品の供給への影響はないとみています。山本化学工業のアセトアミノフェンを使ってきた製薬会社には、今も消費者から問い合わせがあるなど混乱は続いています。

 2017年6月29日(木)

 

■「がんゲノム医療」で遺伝子一括検査、2018年度に保険適用 厚労省目標

 がんの遺伝情報に基づき最適な治療法を選択する「がんゲノム医療」について、厚生労働省は27日、実用化に向けた工程表を発表し、がんに関連した遺伝子の変異を一度に調べられる一括検査を2018年度中に保険診療で行うことなどを盛り込みました。

 工程表は、厚労省の有識者懇談会(座長=間野博行・国立がん研究センター研究所長)がまとめた報告書を踏まえて作成しました。

 それによると、2017年度中にがんゲノム医療の「中核拠点病院」を全国に7カ所程度指定。現在は一部医療機関で患者が費用を全額負担する自由診療として行われているがん関連遺伝子の一括検査について、2017年度中に一部で保険が使える「先進医療」制度を適用して有効性などを確かめ、2018年度中に中核拠点病院を実施医療機関として保険診療を導入します。

 がん関連遺伝子の一括検査の実施医療機関は2019年度以降、拡大していく方針。また、患者の遺伝情報などを集約する「がんゲノム情報管理センター」を2018年度前半に開設します。

 がん関連遺伝子の一括検査は、高速で大量の遺伝情報を読み解くことができる次世代シーケンサーと呼ばれる装置を使い、採取したがん細胞の遺伝子を網羅的に調べます。100種類以上の遺伝子を一度に調べ、その変異を検出することができ、がんの診断や治療薬の選定がより効率的に行えます。

 がん関連遺伝子の一括検査に保険を適応すれば、医療費増加も懸念されますが、受診する患者が増えて大量の遺伝情報を集めることができ、がんに関連する新たな遺伝子変異の発見など、ゲノム医療の研究が加速することが期待されます。

 2017年6月29日(木)

 

■成人の喫煙率、初めて2割切る 厚労省2016年調査

 厚生労働省が27日に発表した2016年の国民生活基礎調査によると、成人の喫煙者の割合は19・8%で、2001年に調査を始めてから初めて2割を切ったことが明らかになりました。2013年の前回調査と比べると、1・8ポイント減少しました。

 厚労省は、喫煙が肺がんの原因になるなど健康面の悪影響について理解が深まってきたとみています。

 喫煙者は、「毎日吸っている」と「時々吸う日がある」と答えた人の合計。男女別では、男性が31・1%(2・6ポイント減)、女性は9・5%(1・2ポイント減)と男女ともに喫煙者は減りました。

 年代別にみると、男性は30歳代が39・9%で最も割合が高く、40歳代が39・5%で続きました。女性は40歳代が14・7%で最も割合が高く、30歳代が12・8%で続きました。15年前の2001年調査と比べて減少幅が最も大きかったのは、男女とも20歳代でした。

 厚労省は受動喫煙対策に力を入れており、来日客の増加が見込まれる2020年東京五輪・パラリンピックまでに、飲食店や職場での受動喫煙をゼロにするために罰則付きのルールを適用しようと、健康増進法の改正を目指しています。

 2017年6月28日(水)

 

■11医療機関が無届けで臍帯血を投与 厚労省が再生医療の一時停止命令

 厚生労働省は28日、他人の臍帯血(さいたいけつ)を使った再生医療を無届けで行っていたとして、再生医療安全性確保法違反で、東京都、大阪市、福岡市の医療機関計11カ所に再生医療の一時停止を命じたことを発表しました。

 健康被害の情報はないものの、厚労省は「保健衛生上の危害の発生または拡大を防止する必要があると判断した」としています。

 厚労省医政局研究開発振興課によると、これら医療機関では「がん治療」や「肌の若返り」などを目的に臍帯血を投与。2014年11月に施行された再生医療安全性確保法では、他人の幹細胞を使った医療を行う場合、国が認定した専門委員会に計画書を提出し、安全性などの審査を受ける必要がありますが、いずれも届け出ていなかったといいます。

 厚労省は5月9日、愛媛県松山市のクリニックに立ち入り検査した結果、無届けの再生医療を行っていたとして一時停止を命じたことを公表。5月から全国的に本格調査した上で、5月16日~6月8日にかけて、東京都8、大阪市2、福岡市1の計11カ所の内科や皮膚科などのクリニックに一時停止命令を出しました。無届けの再生医療を受けた患者は、合わせて約100人に上る見通し。

 臍帯血は、へその緒や胎盤に残った少量の胎児の血液で、赤血球や白血球などの血液細胞のもとになる「造血幹細胞」が大量に含まれています。他人の臍帯血を使った治療は、白血病などで有効性が認められています。しかし、血液以外のがんや美容目的の利用については、有効性や安全性が実証されていません。

 保険が適応されない自由診療で、1人当たり300万円の治療費を受け取っている医療機関もあるといいます。また、各クリニックは京都市の医療法人と福岡市の医療関連会社から、臍帯血を1回分200万円程度で購入していたといいます。

 厚労省によりますと、再生医療の一時停止を命じられた医療機関の1つ、福岡市中央区にある「天神皮ふ科」は昨年2月から5月にかけ、4人の患者に対してアンチエイジングや動脈硬化、高血圧に効果があるとして、他人の臍帯血の一部を点滴で投与していたということです。これまでのところ、4人に健康被害は確認されていないということです。

 厚労省は、「がんなどに悩む患者につけ込む形で違法な再生医療が横行しないよう指導を徹底していきたい」としています。

 白血病や免疫機能が十分に働いていない患者など毎年10人前後に臍帯血を投与している国立成育医療研究センター(東京都世田谷区)の松本公一小児がんセンター長は、「臍帯血が、白血病以外の進行したがんの治療や、アンチエイジングなどの美容に効果があるとは、医学的に考えられていない。他人の細胞を体内に入れた場合感染症などのリスクもあり、少なくとも国の審査で認められた正式な治療なのかを確認することが不可欠だ」と指摘しています。

【再生医療安全性確保法違反で再生医療の一時停止を命じられた11の医療機関】

 東京都渋谷区の「表参道首藤クリニック」、港区の「クリニック真健庵」、「赤坂AAクリニック」、「六本木ドクターアンディーズクリニック」、「東京国際美容クリニック」、千代田区の「アベ・腫瘍内科・クリニック」、練馬区の「花岡由美子女性サンテクリニック」、品川区の「品川荏原ライフケアクリニック」。大阪市の「大阪タワークリニック」、「恵聖会クリニック心斎橋院」。福岡市の「天神皮ふ科」。

 2017年6月28日(水)

 

■脱毛などの美容医療、12月以降の契約から解約可能に 政令改正を閣議決定

 政府は27日、美容医療でもクーリングオフを可能とする特定商取引法の政令改正を閣議決定しました。これまでエステサロンによる類似サービスの長期契約は解約できましたが、医療機関による美容医療もトラブル相談が多発していたため規制対象に追加されました。

 今年12月1日以降に契約したものから適用されます。

 特定商取引法の政令改正により、契約期間が1カ月を超え、かつ金額が5万円を超える美容医療について、契約後8日までは無条件で解約できるクーリングオフや、中途解約が可能になります。対象となる施術は、「脱毛」「にきび・シミ・入れ墨などの除去」「シワ・たるみ取り」「脂肪の溶解」「歯の漂白」の5種類。中途解約の場合は、それまでに受けた施術分の料金の支払いは必要です。

 さらに、事業者には契約時に施術内容や料金、期間を明記した書面を患者へ渡すよう義務付けるほか、うそや強引な勧誘、誇大広告も禁じます。違反すれば、行政処分の対象となります。

 医療法では解約などのルールが定められておらず、これまでは美容医療の契約トラブルへの対応が難しかったため、全国の消費生活センターなどには美容医療に関する相談が年間2000件以上寄せられ、20歳代が最多。

 基本的に保険適用外の自由診療で高額になりやすく、「広告よりずっと高額の契約をさせられた」「期間限定料金と勧誘されて契約し、解約に応じてもらえない」といったトラブルが後を絶ちません。エステサロンを入り口に勧誘後、提携する美容医院で契約を結ばせて中途解約に応じない事業者も確認されており、改善が求められていました。

 こうした状況を受け、内閣府・消費者委員会は昨年1月、規制対象を美容医療に広げるよう答申しました。

 2017年6月28日(水)

 

■75歳以上同士の老老介護、初めて30%を超す 厚労省2016年調査

 厚生労働省が27日に発表した2016年の国民生活基礎調査によると、家族や親族による在宅介護のうち、介護が必要な65歳以上の高齢者を65歳以上の人が介護する「老老介護」の世帯の割合が54・7%に達しました。また、ともに75歳以上の老老介護の世帯の割合は30・2%に達し、2001年に調査を始めてから初めて3割を超えました。

 急速に高齢化が進んだことに加えて、世代をまたぐ同居が減った結果とみられます。介護する側の負担も重く、生活支援サービスの育成が課題になりそうです。

 国民生活基礎調査は、2016年4月に大きな地震があった熊本県を除く全国の世帯から、約30万世帯を選んで実施しました。世帯の人員構成などは、約22万4000世帯からの回答がありました。介護状況は、原則として自宅で介護する約6800人から回答を得ました。世帯人員は毎年調べ、介護状況は2001年から3年ごとに調べています。

 要介護認定された人と、介護する同居人がともに65歳以上の世帯の割合は、前回調査より3・5ポイント上昇し、過去最高の水準でした。ともに60歳以上同士の世帯の割合は、3年前の調査に比べて1・3ポイント上昇し、70・3%でした。

 このほか、高齢者らが介護が必要になった主な理由として、認知症が18・0%を占めて初めて1位になりました。高齢化の進行や、診断を受ける人の増加が要因とみられます。3年前の調査では15・8%で2位でした。前回調査でトップの脳卒中が2位(16・6%)になり、3位は高齢による衰弱(13・3%)でした。

 一方、生活意識については、「生活が苦しい」と答えた世帯は2年連続で減少しているものの、依然全体の6割近くを占め、特に母子家庭では8割以上を占めています。

 老老介護の場合、介護する側の精神的、肉体的な負担は大きく、介護者へのケアも重要になります。

 厚労省は、「高齢化や核家族化が進んでいる影響で、今後も老老介護は増えていくとみられる。高齢になっても在宅介護をできるだけ続けられるよう、介護保険制度で必要なサービスを提供するなど支援していく必要がある」としています。

 2017年6月27日(火)

 

■がんの予防効果をうたい水素水を販売 スーパー「ジャパンミート」の部長ら書類送検

 医薬品の承認を受けていない清涼飲料水の「水素水」を、「がんの予防に効果がある」などと医薬効能を記した広告を出して販売したなどとして、警視庁は首都圏を中心にスーパーを展開する会社の食品部長ら3人を書類送検しました。

 警視庁によると、水素水の効能をうたった広告の立件は全国でも珍しいといいます。

 書類送検されたのは、首都圏を中心に27店舗のスーパーを展開する「ジャパンミート」(本社・茨城県小美玉市)の41歳の食品部長ら3人で、法人としての会社も書類送検されました。

 警視庁の調べによると、昨年8月から11月にかけて、ジャパンミートの東村山店と瑞穂店で、医薬品の承認を受けていない清涼飲料水の水素水を、「がんや動脈硬化に効く」、「がんや生活習慣病の原因となる悪玉活性酸素を排出」などと医薬効能をうたって宣伝し販売したなどとして、医薬品医療機器法違反(承認前の医薬品の広告の禁止など)の疑いが持たれています。

 ジャパンミートは、昨年8月に水素水入り240ミリリットル缶23万本を仕入れていて、警視庁が捜索を行った11月までの間に、東村山店と瑞穂店を含む22店舗で税抜き1本98円で計約8万4000本を販売し、約830万円を売り上げ、約380万円の利益を上げていたということです。

 警視庁によると、調べに対し、3人はいずれも容疑を認め、このうち食品部長は「商品名と値段だけでは売り上げが伸ばせないと判断し、違法な広告をしてしまった」などと供述しているということです。

 ジャパンミートは、「多くの方に迷惑をかけてしまい、大変遺憾に思っている。社内コンプライアンスについて弁護士を交えて強化していきたい」としています。

 2017年6月27日(火)

 

■がん治療前の卵子凍結保存、要望は実績の10倍 厚労省研究班が推計

 不妊になる恐れがあるがん治療の前に、経済的な支援があれば将来の妊娠に備えて卵子の凍結保存を望む女性患者は、年間約2600人に上るとの推計を厚生労働省研究班が26日までにまとめました。

 2015年にがん治療前の凍結保存が実施されたのは256件で、実績の10倍ほどの潜在的な希望者がいる可能性が示されました。

 卵子や受精卵の凍結保存は、初期費用に少なくとも20万~40万円かかります。すべての患者の凍結保存に必要な費用は約8億8000万円と見込まれ、研究班は公的助成制度を設けるよう提言しています。

 がん治療では抗がん剤による化学療法、放射線治療、手術の影響で生殖能力を失って妊娠が難しくなる恐れがあり、あらかじめ卵子や卵巣などを採取し凍結保存することが、妊娠を目指す手段となっています。

 研究班は、患者の統計から15~39歳の未婚のがん患者は年間約5150人と見積もりました。全国で実施されている凍結保存の件数や、国が不妊治療への助成を始めたことで増えた件数を基に計算したところ、経済的に支障がなければ保存を希望する患者は2622人になると推計しました。

 研究班は、費用の問題のほか、治療前に卵子の保存に関する十分な情報を得られなかったり、身近に実施可能な施設がなかったりした患者もいるとみています。卵子を凍結保存する施設は日本産科婦人科学会に登録していますが、14県には登録施設がないといいます。

 研究班の代表である聖マリアンナ医科大学の鈴木直教授は、「治療前に凍結保存する件数は徐々に増えている。妊娠を希望する女性が機会を失うことがないよう、さらに環境を整えることが重要だ」と話しています。

 2017年6月27日(火)

 

■75歳以上のドライバー、1万人超が認知症の恐れ 検査強化した2か月半で

 75歳以上の高齢ドライバーの認知機能検査を強化した改正道路交通法が施行された3月12日から5月末までの約2カ月半で、運転免許更新時などに「認知症の恐れがある」と判定された人が1万1617人(暫定値)に上ることが23日、警察庁のまとめで明らかになりました。このうち8・5%の987人が医師のアドバイスなどで、運転免許を自主返納しました。

 警察庁が高齢ドライバー事故対策の有識者会議で、報告しました。

 改正道交法は、3年ごとの運転免許更新時などに行われる認知機能検査で「認知症の恐れがある」と判定された場合に、医師の診断を受けることを義務化。認知症とされると運転免許取り消しか、運転免許停止になります。逆走や信号無視などの違反をした際は更新とは関係なく、臨時検査が課されます。

 改正法施行後、5月末までに判断力や記憶力を測定する認知機能検査を受けたのは運転免許更新時の41万6608人と、臨時の1万4730人の合計43万1338人で、うち2・7%に当たる1万1617人が「認知症の恐れがある」と判定されました。1299人が新たに義務付けられた医師の診断を受け、14人が認知症とされて免許を取り消されました。

 自主返納は改正道交法の施行後から5月末までに10万2990件(暫定値)で、75歳以上が半数超の5万6488件を占めました。

 「認知症の恐れがある」と判定された人は公安委員会の命令から3カ月以内に診断書の提出義務があることから、警察庁は認知症と診断される高齢者はさらに増えるのではないかとして、自治体などと連携しながら処分を受けた高齢者の移動手段の確保などの取り組みに力を入れることにしています。

 認知機能検査は、当日の日付や曜日を答える「時間の見当識」、絵を見て簡単な質問に答える「手がかり再生」、時計の文字盤に時刻を書く「時計描画」の3項目。認知症の恐れ(第1分類)、認知機能低下の恐れ(第2分類)、問題なし(第3分類)に判定されます。

 2017年6月26日(月)

 

■医療ミスなど繰り返すリピーター医師、4年間で27人 日本医師会がまとめる

 医療ミスや不適切な医療行為を繰り返していたとして、2013~2016年度の4年間で、27人の医師に再発防止が指導・勧告されていたことが25日、日本医師会(日医)のまとめで明らかになりました。

 日医会員が医療事故に備えて加入する保険の支払い請求が多いケースについて、治療経過などを調べて判定しました。民事裁判などでも被害者が異なるミスの繰り返しが表面化することは少なく、実態の一端が初めて浮かび上がりました。

 医療ミスを繰り返す医師は「リピーター」と呼ばれ、重大な医療事故が相次いだ1999年ごろからたびたび問題視されてきました。昨年12月には、愛媛県内の産婦人科医院で2005年以降に死亡3件を含む6件の重大事故が起きていたことが発覚し、県が立ち入り検査を行いました。

 しかしながら、リピーター医師を見付け出す国の仕組みはなく、2015年10月に始まった「患者の予期せぬ死亡事故」があった医療機関に院内調査と第三者機関への報告を義務付ける医療事故調査制度でも、把握できません。

 国内の医師約31万人のうち、約12万人は日医と保険会社が共同で運営する「医師賠償責任保険」に加入しています。医療事故で患者や家族への支払い義務が生じた際の保険で、日医は会員医師から請求があれば治療内容や結果を調べ、査定しています。

 日医は2013年8月から、この仕組みを医師の倫理と資質の向上に活用。弁護士らで作る指導・改善委員会が、医師側に問題がある事故重複例をリピーターと判定しています。日医によると、2013年度に2人、2014年度に10人、2015年度に7人が該当し、25日に開かれた定例代議員会で、2016年度は8人と報告されました。医師の氏名やミスの内容は明らかにしていません。

 対象となった医師は、所属する都道府県医師会から、重い順に指導、改善勧告、厳重注意のいずれかを受けます。東京都医師会はこれまでに3件の指導をし、幹部が事故の経緯を聞き取った上で、危険性の高い手術を今後行わないと誓約する書面を提出させるなどしたといいます。

 損害保険の請求実績からリピーター医師をあぶり出す日本医師会の取り組みは、医療界自ら実態把握を進めるという点で評価できます。重要なのは、これを問題がある医師の再教育や排除に確実につなげ、医療安全の向上に役立てること。

 厚生労働相には医師の業務停止や免許取り消しの権限があり、年2回、医道審議会が厚労省から報告があった医師の審査をしています。しかしながら、対象になるのは、診療報酬の不正請求や医療行為と直接関係のない刑事処分を受けたものが大半。医道審議会は2002年、刑事罰を受けていなくても明白な注意義務違反がある医療事故は処分対象とする方針に改めたものの、ミスの繰り返しを理由とした処分は2012年の戒告1件しかなく、形骸化も指摘されています。

 日医の取り組みは、強制力を伴わな指導・勧告で、ミスの内容も公表しないため、再発防止に向けた実効性や透明性に課題も残ります。医療事故の遺族で「患者の視点で医療安全を考える連絡協議会」代表の永井裕之さんは、「せめて医療界の中だけでも情報共有して背景や深層を追究してほしい」と訴えています。

 2017年6月26日(月)

 

■てんかん薬成分でも無届けで材料変更 国内大手の原薬メーカー

 自社製の風邪薬の成分「アセトアミノフェン(AA)」に安価な中国製を無届けで混ぜ、製薬会社に出荷していた国内大手の原薬メーカー「山本化学工業」(和歌山市)が、てんかんなどの治療薬の成分「ゾニサミド」の製造でも、無届けで使用材料を変更していたことが26日、明らかになりました。

 厚生労働省と和歌山県が5月下旬に立ち入り調査した際に、原料を溶かす溶媒を国側に届け出ずに勝手に変更して、ゾニサミドを製造していたことが発覚しました。

 厚労省は、無断で変更することを禁じた医薬品医療機器法(薬機法)に違反しているとみています。成分の品質に問題はなく、すでに市場に出回っている治療薬の回収などは必要ないと判断しています。

 山本化学工業は自社製の解熱効果がある風邪薬の成分に、安価な中国製を1~2割混ぜて水増ししていたことが、すでに明らかになっています。一連の問題で、指導権限を持つ和歌山県が近く業務停止命令などの行政処分を出す見通し。

 2017年6月26日(月)

 

■山梨大、脳機能修復を促す細胞を発見 脳卒中の予後治療に期待

 山梨大学医学部薬理学講座の小泉修一教授(神経科学)らの研究チームは、脳卒中が起きた後、傷ついた細胞を「食べる」ことで脳の修復を促す新たな細胞を発見しました。慶応義塾大学、生理学研究所、新潟大学、群馬大学との共同研究。

 成果は22日付で、イギリスの電子科学誌「ネイチャー・コミュニケーションズ」に掲載されました。

 脳卒中は国内での死因として4番目に多い病気で、患者数も約120万人と多く、命を取り留めても、まひや言語障害などの重篤な後遺症が残ることが問題となっています。脳の血流が滞り、酸素や栄養が細胞に届かなくなることで、細胞が徐々に死滅していきます。

 研究チームは、脳に栄養を供給するなどの機能を持つことが知られている脳の細胞「アストロサイト」に注目。脳卒中モデルのマウスで観察すると、ダメージを受けて傷ついた細胞の切れ端や壊れた細胞から漏れ出した成分を、包み込んで「食べる」様子が観察されました。

 この食べる働きは、不要なものを脳から除去するための仕組みで「貪食(どんしょく)性」と呼ばれる。これまで別の脳細胞「ミクログリア」が貪食性を持つ細胞として知られてきましたが、アストロサイトも同様の機能を持つことが確認されました。

 また、ミクログリアとアストロサイトは活動する時期や場所が異なることもわかりました。ミクログリアは発病直後にダメージを受けた中心部に集まり、死んだ細胞をまるごと食べます。一方、アストロサイトは発病1週間後をピークに働き、周辺の傷ついているものの、まだ生きている細胞の傷ついた部分を選択的に食べていることがわかりました。

 小泉教授は、「2つの細胞で役割分担をして、特にアストロサイトは発病後の神経機能の回復に重要である可能性がある」と指摘しています。

 研究チームは、アストロサイトが貪食性を獲得するのにタンパク質「ABCA1」が必要であることも発見。小泉教授は、「ABCA1をコントロールできる薬が見付かれば、脳卒中の予後やリハビリのプログラム開発に役立つかもしれない」としています。

 2017年6月26日(月)

 

■産科婦人科学会、神戸の医師を会員資格停止に 受精卵検査違反で

 日本産科婦人科学会は24日、理事会を開き、体外受精させた受精卵のすべての染色体を調べ、異常がないものだけを子宮に戻す「着床前スクリーニング(PGS)」を学会指針に反して実施したとして、神戸市の大谷レディスクリニック院長の大谷徹郎医師に対し、会員資格と産婦人科専門医の資格を3年間停止する懲戒処分にしました。今後、会員として学会発表などが不可能になるほか、専門医を名乗ることができなくなります。

 学会の指針は、受精卵検査は重い遺伝性の病気などに限定しており、PGSについては「命の選別」や男女産み分けにつながるとの懸念から認めていません。

 しかし、大谷レディスクリニックは2011年以降、PGSを実施しているといいます。学会は昨年3月、大谷医師を譴責(けんせき)処分にし、PGSを中止する誓約書を出すよう求めました。その後、大谷医師側から誓約書が提出されなかったため、さらに重い処分にしました。大谷医師は2004年にも着床前検査の実施で学会を除名されましたが、指針を守る誓約書を出して復帰していました。

 学会は今年2月、PGSが妊娠率や流産率の改善効果があるか検証するため、一部の施設で100組の夫婦を対象に臨床研究として実施すると発表。大谷レディスクリニックは含まれていませんでした。

 日本産科婦人科学会の苛原(いらはら)稔・倫理委員長は、「(PGSが)出産率に寄与するか否か、まだ結論が出ておらず、学会の見解を守って欲しいと伝えてきたが守られなかった」と述べました。

 一方、大谷医師は処分に対し、「妊娠しやすくて流産しにくい治療を受けることは患者様の基本的人権です。学会の処分とは関係なく、治療を続ける」とする声明を出しました。

 また、母親の血液で胎児の染色体異常を調べる新型出生前診断を、学会指針に反して実施していた奥野病院(大阪市)について、学会は昨年12月に譴責処分にし、さらに重い処分も検討していましたが、奥野幸彦院長から学会の退会届が提出されたとして受理されました。

 2017年6月26日(月)

 

■血友病のマウス、ゲノム編集で治療成功 自治医大が発表

 遺伝子を効率よく改変できる技術「ゲノム編集」を使い、血友病のマウスを治療することに成功したと自治医科大学と東京大学の研究チームが発表しました。

 血が止まりにくい遺伝性の病気である血友病は現在、出血時に血小板を補強して血を固める凝固因子を定期的に補充する対症療法しかありませんが、根本治療につながる成果と期待されます。論文が23日、イギリスの科学誌に掲載されました。

 自治医大の大森司教授(病態生化学)らは、遺伝子を操作して、凝固因子が正常に働かないようにした血友病マウスを作製。異常な遺伝子を切断する酵素と正常な遺伝子を、ゲノム編集で最も普及している「 CRISPR・Cas9」(クリスパー・キャスナイン)」という技術を組み込んだ運び役のウイルスに入れて注射しました。

 その結果、運び役のウイルスは、凝固因子を作る肝臓の細胞に感染。凝固因子が正常に機能しないように変異した遺伝子を酵素が切断し、そこに正常な遺伝子が組み込まれました。

 血友病のマウスは凝固因子が全く機能していませんでしたが、この治療で10%から20%の凝固因子が働くようになりました。止血効果は、十分あるといいます。

 血友病を巡っては、アメリカなどで正常な遺伝子を体内に入れて治療する方法が患者に対して行われていますが、原因となっている異常な遺伝子を修復して根本的に治す動物実験に成功したのは、国内では初めてだということです。

 研究チームによると、人への応用が可能になれば、乳幼児期での根本治療が可能になります。凝固因子のタイプ別でAとBの2種類ある血友病のうち、血友病Bに有効だといいます。

 大森教授は、「大型動物での実験を進めるなどして安全性を十分に確認した上で、10年以内に人への臨床応用につなげたい」と話しています。

 鈴木隆史・荻窪病院血液凝固科部長は、「遺伝子変異は人それぞれなので、修復も個別の対応が必要になるかもしれないが、血友病の治療につながる一歩として期待できる」と話しています。

 2017年6月24日(土)

 

■肺の病気診断をAI支援で10分ほどに短縮 富士通が技術開発

 医師の診断に時間がかかるのが課題となっている肺炎などの肺の病気について、人工知能(AI)が支援することで診断時間を短縮できる技術を大手電機メーカーの富士通が開発しました。

 肺炎や肺気腫といった肺の病気の診断は、CTと呼ばれる医療装置で撮影した画像を医師が1枚1枚確認して過去の似た症例と比べることで行うのが一般的です。しかし、医師の高度な知識や過去の経験に頼るところが大きい上、CTの高性能化によって一度の検査で撮影する画像の枚数が1000枚を超えるようになったことから、病名の診断に時間がかかるのが課題となっているということです。

 今回、富士通が開発した技術では、撮影した複数のCTの画像をもとにAIが肺全体を立体的に認識し、学習した過去の症例のデータベースの中から類似した症例を選び出します。その上で、医師が最終的な診断を行うということです。

 大学と共同で行った実験では、この技術を使うことで従来1時間かかっていた診断が10分ほどに短縮できたということです。

 富士通では、将来は経験が浅い医師でも短時間で診断ができるようにさらに開発を続け、実用化を目指すとしています。富士通研究所の馬場孝之主任研究員は、「高齢化が進むにつれて患者も増えてくると思うので、医療現場の業務の効率化に貢献したい」と話しています。

 2017年6月23日(金)

 

■北陸コカ・コーラ、飲料水31万2000本を自主回収 カビ混入の恐れ

 富山県に本社がある飲料メーカー「北陸コカ・コーラボトリング」は、富山県など6つの県で販売されたペットボトル入りの飲料水にカビが混入した恐れがあるとして、約31万2000本を自主回収すると発表しました。

 発表によりますと、自主回収するのは北陸コカ・コーラボトリングが富山県、石川県、福井県、長野県、新潟県、山梨県の6県の自販機や小売店で販売したペットボトル入りの飲料水「い・ろ・は・す 塩れもん」555ミリリットル。

 キャップの部分に記載された賞味期限が「2018年1月21日」で、製造所固有記号が「180121ーHT」の商品、約31万2000本です。

 商品は19日に発売した新商品で、富山県砺波市の工場で製造されていましたが、19日に商品を購入した人から「異物が入っている」と連絡があり、調べたところ、カビが混入していたということです。

 北陸コカ・コーラボトリングによりますと、混入したカビに毒性はなく、今のところ健康被害の情報はないということですが、砺波市の工場で同じ時期に製造された商品の自主回収を決めました。回収した商品数十本や在庫からもカビが見付かっており、混入した原因は調査中。

 会社側に連絡すると、宅配業者が回収に訪れ、後日、代金相当のプリペイドカードを送ることにしています。問い合わせの電話番号は、0120-360509で、22日以降、午前9時から午後6時まで受け付けます。

 北陸コカ・コーラボトリングは、「お客様に多大なご心配をおかけし、おわび申し上げます。今後、このようなことがないよう一層の管理体制の向上に努めます」とコメントしています。

 2017年6月23日(金)

 

■一部のせき止め薬や風邪薬、12歳未満の使用制限へ 副作用を受けて厚労省が決定

 厚生労働省は22日、一部のせき止め薬や風邪薬について、12歳未満の使用を制限する方針を決めました。副作用があった海外での制限を受けたもので、2019年中には禁止とする方針といいます。

 7月上旬にも、都道府県を通じて各製薬会社に添付文書の改訂を指示します。

 厚労省がこの日開いた、有識者らでつくる安全対策調査会で了承されました。

 対象となるのは、呼吸を抑制する副作用がある「コデインリン酸塩」などのコデイン類を含む薬。医師が処方する医療用医薬品で約60製品、ドラッグストアで買える市販薬では風邪薬やせき止めシロップなど約600の製品で使われています。

 死亡例が報告されているアメリカでは、今年4月から12歳未満の使用を禁じています。国内で死亡例は確認されていないものの、約13年間で呼吸困難になるなどの副作用が4件報告されているといいます。

 医師が処方する医療用医薬品の添付文書には現状、小児の場合は少量から慎重に使うよう注意が書かれています。

 また、小児に使われることはあまりない鎮痛剤に含まれる「トラマドール塩酸塩」についても、呼吸抑制の副作用があるとして、同様の措置をとります。

 2017年6月22日(木)

 

■風邪薬成分に無届けで中国製混入 国内大手の原薬メーカーを処分へ

 解熱効果がある風邪薬に広く使われている成分「アセトアミノフェン(AA)」を製造している国内大手の原薬メーカー「山本化学工業」(和歌山市)が、国内でつくったAAに安価な中国製を無届けで混ぜ、製薬会社に出荷していたことが22日、明らかになりました。

 山本化学工業は医薬品の承認審査をする医薬品医療機器総合機構(PMDA)にAAの製造方法について、全量を国内で生産すると申告。輸入品を混合する場合は、改めて届け出る義務がありました。

 無届けの輸入品の混合は医薬品医療機器法(薬機法)違反に当たり、指導権限を持つ和歌山県が近く行政処分する方針。厚労省や和歌山県が5月下旬、立ち入り調査を行い、違反が判明しました。違反は遅くとも数年前から行われていたといい、薬機法で義務付けられている製造記録についても記入漏れなどが多く、ずさんでした。

 関係者は厚労省に、中国製のAAを1~2割混ぜていたと説明。厚労省によると、品質や安全性に問題はなく、副作用の報告も他社製品との差異はみられません。

 山本化学工業は厚労省などの立ち入り後、AAのほか全製品の出荷を自粛しており、「今はコメントできない」としています。

 山本化学工業はAAで約80%の国内シェアを占めているものの、風邪薬の需要が少ない時期に当たり、製薬各社は現在ある在庫で対応できるといいます。

 2017年6月22日(木)

 

■新たな不妊治療で5人の子供が誕生 ミトコンドリアを卵子に注入

 大阪市の不妊治療クリニックが21日、体外受精の際に、精子と一緒に母親本人の細胞内にあるミトコンドリアを卵子に注入する新たな手法で、4人の女性から5人の健康な子供が生まれたと発表しました。

 海外では2015年以降、カナダなど3カ国で270例以上実施され約30人の子供が生まれているものの、国内で子供が生まれたのは初めて。ただし、臨床研究で実際の効果が確かめられておらず、専門家からは有効性や安全性を疑問視する声が上がっています。

 実施した「HORACグランフロント大阪クリニック」の森本義晴院長によると、2016年2月から、過去に不妊治療を受けても妊娠しなかった27歳から46歳の21人の女性に、この「ミトコンドリア自家移植」と呼ばれる手法を実施。

 事前に摘出した卵巣組織の一部からエネルギーを作り出す細胞内器官のミトコンドリアを採取し、父親の精子と一緒に卵子に注入しました。ミトコンドリアを注入することで卵子を活性化し、若返らせることによって体外受精の成功率を高めるというものです。

 うち6人が妊娠し、今年になって27歳から36歳までの4人が出産し、5人の子供が生まれました。1組は双子とみられます。治療費は体外受精も含めて1人約200万円で、患者が負担しました。

 2015年12月に、日本産科婦人科学会が「科学的な効果は十分に検証されておらず、初期の研究や実験段階の治療法だと考えられる」との見解を示した上で、臨床研究としての実施を認めていました。

 森本院長は、「卵子の状態が悪く、出産をあきらめかけていた女性が出産できたことで、この治療法が新たな希望になったことをうれしく思っています」とコメントしています。

 2017年6月21日(水)

 

■75歳以上の交通死亡事故、14%減って過去10年で最少に 認知機能チェックの効果か

 75歳以上の高齢ドライバーが今年1~5月に起こした交通死亡事故は、過去10年で最少の151件で、前年1~5月に比べ14・2%減少したことが、警察庁の集計で明らかになりました。交通死亡事故全体に占める割合も12・2%で、前年1~5月の13%から0・8ポイント減少しました。

 3月に75歳以上の高齢ドライバーに対する認知機能のチェックなどが強化されたことが、背景にあるとみられます。警察庁の担当者は、「通年で減少するか注視する」としています。

 警察庁によると、今年1~5月に全国で発生した全体の交通死亡事故は1235件。前年1~5月に比べて8・9%減と大幅に減少しましたが、75歳以上の高齢ドライバーの事故は、これを上回るペースで減少していることになります。このまま推移すれば、75歳以上の高齢者ドライバーが起こす年間の交通死亡事故は360件程度となり、前年より約100件減少する見通しです。

 交通死亡事故全体に占める高齢ドライバーの割合は、2008年の8・7%から2010年に10%に達した後も右肩上がりが続き、2016年は13・5%になりましたが、今年は5月末時点で12・2%となっています。

 また、今年1~5月の交通事故死亡者数(加害者と被害者を合わせた数)は1399人で、前年1~5月に比べて10・5%減でした。このうち75歳以上は482人で、前年1~5月に比べて13・2%減っており、高齢者の減少が目立っています。

 警察庁は、高齢者が関係する事故が減少している要因として、今年3月の道路交通法改正で認知機能や認知症の有無をチェックする体制が強化された点を挙げています。認知症の疑いがあれば医師の診断が義務付けられ、それを切っ掛けに運転免許の更新をやめる人が増えているといいます。

 運転免許の自主返納も増加。昨年1年間の返納は約34万5000件でしたが、今年の返納は4月末で約16万件に達しており、前年の1・4倍のペースです。

 警察庁の担当者は、「道交法の改正や、高齢者の重大事故が報道などでクローズアップされ、安全運転への関心が高まっていることも影響しているのでは。事故抑止のため、対策を徹底したい」と話しています。

 2017年6月21日(水)

 

■酒に強い人は飲まなくても、痛風の発症リスクが2倍に 防衛医大が発表

 酒に強いタイプの遺伝子を持つ人は、たとえ酒を飲まなかったとしても、激しい関節痛を引き起こす痛風になるリスクが酒に弱い人より2倍近く高いとの研究成果を、防衛医科大学校(埼玉県所沢市)や名古屋大学などの研究チームがイギリスの科学誌に発表しました。

 飲酒は痛風を引き起こす原因の一つで、酒に強い人は飲酒量が多いため、痛風になりやすいと推測されていましたが、飲酒とはかかわりなく遺伝子の働きが影響していることが示されました。

 防衛医大の松尾洋孝(ひろたか)講師は、「酒を控えるだけでなく、食事にも気を付けて予防を」と話しています。

 この遺伝子は、体内でアルコールの分解にかかわる「ALDH2」で、人により酒に強いタイプと弱いタイプがあります。研究チームは、痛風患者1048人と健康な男性1334人の遺伝子を解析。酒に強いタイプのALDH2を持つ人は、酒に弱いタイプのALDH2を持つ人に比べて、2・27倍痛風を発症しやすい結果となりました。

 飲酒による影響を除くため、月に1回以下しか飲まない人同士で比べても、酒に強いタイプのALDH2を持つ人は1・93倍発症しやすい結果となりました。この型の人は、血中の値が高い状態が続くと痛風を発症させる尿酸ができやすい可能性があるといいます。

 2017年6月21日(水)

 

■九大、脊髄の再生促す手法を開発 タンパク質注射で「かさぶた」の形成を抑制

 九州大学の岡田誠司准教授(整形外科学)らの研究チームは、傷ついた脊髄(せきずい)の再生を促す手法を開発しました。損傷部に特殊なタンパク質を注射して神経回路を修復するもので、マウスを使った実験では運動機能が改善しました。

 成果は20日付で、アメリカの医学誌「ネイチャーメディシン」電子版に発表しました。

 ほ乳類の脳や脊髄などを走る中枢神経は手足などの末梢(まっしょう)神経と違って、事故などでいったん損傷するとほとんど再生せず、手足のまひなどの重い後遺症が残ります。損傷部の周りで、「かさぶた」のような組織ができて神経の再生を妨げることが知られていますが、詳しい仕組みはわかっていませんでした。

 研究チームは、わざと脊髄を傷つけたマウスの中枢神経を分析し、特定の型のコラーゲンが数十倍増えていることを発見。そのコラーゲンと、アストロサイトという細胞が反応して「かさぶた」ができることを突き止めました。細胞表面にくっ付く、ある種のタンパク質を注射して反応させないようにすると、「かさぶた」の形成が抑えられることを解明しました。

 岡田准教授らはマウスの脊髄を壊し、7日後、損傷部にタンパク質を3回注射。注射しないマウスは足を引きずったままでしたが、注射したマウスは足を引きずらなくなり、神経の再生効果が確認されました。

 脊髄損傷の根本的な治療法は、まだありません。岡田准教授は、「損傷しても『かさぶた』ができないようにする治療が、人でも可能になるかもしれない」と話しています。

 脊髄損傷の治療を巡っては、神経幹細胞などを移植して再生させる臨床研究が始まっていますが、受傷後時間がたつと「かさぶた」が厚くなり、効果が上がらない問題があるといいます。

 岡田准教授は、「『かさぶた』の形成を抑えられれば、幹細胞移植の効果がより高められるのではないか」と話しています。

 2017年6月20日(火)

 

■12~18日に熱中症搬送697人、2人死亡 消防庁の全国集計

 総務省消防庁は20日、全国で6月12~18日の1週間に697人が熱中症で救急搬送されたとの速報値を発表しました。前週の596人から101人増え、静岡県、岡山県で各1人が死亡しました。

 集計によると、3週間以上の入院が必要な重症は12人、短期の入院が必要な中等症は216人でした。65歳以上の高齢者が全体の50・8%を占めました。

 都道府県別では、大阪府の67人が最も多く、東京都と愛知県が40人で続きました。

 消防庁は、適度な休憩や小まめな水分補給といった予防策を取るよう呼び掛けています。

 また、総務省消防庁は19日、全国で5月の1カ月間に3401人が熱中症で救急搬送されたと発表しました。前年5月を613人上回りました。気温30度以上の真夏日を各地で記録した中旬以降に急増しました。

 本年度から、どこにいる時に発症したかを調べた結果も集計。庭を含む「住居」が最多の28・9%で、競技場や野外コンサート会場などの「公衆(屋外)」が16・9%、「道路」が15・7%でした。消防庁は「自宅にいても油断せずに予防を心掛けてほしい」と呼び掛けています。

 都道府県別では、埼玉県が215人と最も多く、東京都212人、愛知県190人と続きました。人口10万人当たりの搬送者数は佐賀県が5・76人で最多。次いで鳥取県5・75人、熊本県5・60人でした。

 搬送直後に死亡が確認されたのは山口県、熊本県で各1人。3週間以上の入院が必要な重症は71人、短期の入院が必要な中等症は978人。65歳以上の高齢者が全体の48・9%を占めました。

 2017年6月20日(火)

 

■がん患者が子供を産める治療へ学会が初の指針 卵子凍結も選択肢

 日本癌治療学会は19日、若いころにがんになっても治療後に子供を持つ可能性を残す具体的な方法を示した初の医師向けの指針(ガイドライン)をまとめました。

 がん患者に不妊となるリスクを正しく伝えるとともに、卵子の凍結保存など生殖能力を残す方法を治療の選択肢として普及させます。7月下旬から全国の一般の書店などで販売し、医師に活用を求めていきます。

 国内では40歳未満でがんと診断される人は、年間2万人に上ります。抗がん剤や手術などの治療が原因で生殖能力を失い、治療後に子供を持てなくなる恐れがありますが、患者に情報が十分に伝わっていないという問題があります。

 指針は、およそ180ページで、がんの治療を最優先としながらも、がんの治療後に子供を持てなくなるリスクがあることを患者に伝えることや、生殖機能に与える影響を考慮して治療を進めること、それに、患者が必要としたら、可能な限り速やかに生殖医療の専門医を紹介すべきだとしています。

 その上で、乳がんの場合には、摘出手術の後に行う抗がん剤治療の開始を最大で12週間遅らせ、その間に卵巣から卵子を取り出して凍結し、保存できるケースがあることや、子宮頸がんについては、腫瘍の直径が2センチ以下で子宮の頸部にとどまっていれば、子宮全体を摘出せず、治療後に妊娠できる可能性を残せることなど、がんごとに具体的な手順を盛り込んでいます。

 一方で、ほかの臓器に転移するなど最もがんが進行した状態のステージ4の患者やがんが再発した患者は、母体の安全が保証できないため、治療後も妊娠は勧められないとしています。

 若い患者が多い精巣がんについては、標準的な抗がん剤治療を行った場合、1年以上経過した時点で2割から4割の男性が精子が全くない無精子症になっているとする海外の研究データを示した上で、少なくとも全身を対象にした抗がん剤治療を行う場合は、可能な限り治療前に精子を採取して凍結保存することを推奨しています。

 日本癌治療学会の理事で、慶応大学の青木大輔教授は「治療法が進んで、がん患者の生存率が上がる中、治療後に子供を持つ可能性を考慮することが重要な課題となっていて、このガイドラインが広く共有されるようになってほしい」と話しています。

 晩婚化が進む中、健康な女性が将来の妊娠出産に備えて若い時に卵子を凍結保存する動きについて、日本産科婦人科学会は「基本的に推奨しない」としています。学会では、卵子の採取には卵巣の出血や感染症を引き起こすなどのリスクがあり、「妊娠や出産は適切な年齢で行われることが望ましく、その代替方法として用いるべき技術ではない」としています。

 2017年6月19日(月)

 

■iPS細胞から作製したミニ肝臓、実際の肝臓遺伝子と酷似 肝臓病の患者への移植に向けて前進

 横浜市立大学の研究チームは、肝臓病の治療に向け、人のiPS細胞(人工多能性幹細胞)から作製した小さな肝臓が遺伝子レベルでも実際の人の肝臓と非常に近いことを明らかにしました。研究チームでは、移植に向けて前進する成果だとしています。

 横浜市立大学の谷口英樹教授の研究チームは、人のiPS細胞を使って、大きさが1ミリ以下の立体的な「ミニ肝臓」を作製する技術を2013年に確立し、重い肝臓病の患者に移植する計画を進めています。

 研究チームはこれまで、このミニ肝臓について、アンモニアを分解する能力などを基に評価してきましたが、細胞1個からもすべての遺伝子を読み取ることができる最新の技術を応用して、1万以上の遺伝子の解析を行いました。

 その結果、ミニ肝臓の細胞は、実際の人の肝臓で働いている遺伝子のパターンと非常に近いことがわかったということです。また、肝臓の主な機能である糖や脂肪をエネルギーに替えることにかかわる遺伝子なども、実際の肝臓と同じように働いていたということです。

 また、研究チームによると、ミニ肝臓は肝臓病の患者に移植後、速やかに血流を有する血管網を再構成し、機能的な組織を自律的に形成することができるといいます。

 谷口教授は、「遺伝子でも安全性や機能性を確認でき、移植に向けて大きな前進だ」と話しています。

 2017年6月19日(月)

 

■妊婦の禁忌薬、免疫抑制剤3品目の処方容認へ 厚労省が難病女性に配慮

 妊娠中の女性には使用できないとされている医薬品が順次、使えるようになる見通しとなりました。患者からは、「難病女性の人生の選択肢が広がる」と期待の声が上がっています。

 妊娠中の一部の禁忌薬について、厚生労働省が初めて処方を公式に認める方針を固め、薬事・食品衛生審議会での検討をへて、薬の添付文書を改訂するよう製薬会社に通知します。第1弾として免疫抑制剤3品目の添付文書が改訂される見通しで、その後も対象は拡大する予定。

 妊婦は安全性の観点から薬の開発段階で臨床試験(治験)が困難なため、発売当初は動物実験の結果を根拠に禁忌を決めており、各社で差がありません。多くの薬が製薬会社の判断で「禁忌」とされ、医師は妊娠を希望する患者に、禁忌薬の使用を中止するか、妊娠を避けるよう指導するのが一般的です。

 添付文書の改訂が見込まれる3薬剤は、「タクロリムス(通称:プログラフ)」「シクロスポリン(通称:ネオーラル)」「アザチオプリン(通称:アザニン)」。臓器移植後の拒絶反応抑制のために処方されるほか、膠原(こうげん)病やネフローゼ症候群の治療薬としても使われています。処方されている15~44歳の女性は推計約3万人。改訂されれば、禁忌の項から妊婦が外されます。

 3薬剤は妊娠中に使用しても流産や奇形の自然発生率を超えないという研究もあり、日本産科婦人科学会が作成したガイドラインには「妊娠中でも必要があれば使用することが認められる」とされました。しかし、添付文書で禁忌とされ、現場の混乱を招きました。服薬を理由に妊娠をあきらめたり中絶したりした患者や、妊娠のため薬をやめて症状が悪化した事例も後を絶ちませんでした。

 厚労省は2005年10月、国立成育医療研究センター(東京都世田谷区)に「妊娠と薬情報センター」を設け、調査研究や相談事業を続け、3薬剤の安全性を確認。村島温子センター長は、「改訂で、難病患者の妊娠・出産の希望に配慮した治療の可能性を広げたい」と話しています。

 厚労省は、「胎児への影響について、正しい情報を伝えていきたい」としています。

 日本移植学会元理事で免疫抑制剤に詳しい剣持敬・藤田保健衛生大教授(移植・再生医学)は、「妊娠・出産における選択は人権にかかわる問題。患者の自己決定権を尊重するために、医師は正しい情報や選択肢を提示する責任がある。今回の3薬は妊娠・出産に臨む臓器移植後の女性にも使われ、現場の運用と矛盾する添付文書は以前から問題視されてきた。改訂は難病女性の妊娠・出産の希望に配慮した薬の処方を促す大きな一歩になるだろう」と話しています。

 患者団体「全国膠原病友の会」の森幸子代表理事は、「病気ゆえに結婚差別や離婚に遭ったという相談がたくさんある。選択肢が増えることを歓迎したい」と評価する一方、「どんな薬にもリスクはある。適切に情報提供した上で症状や希望に応じて処方できる専門医のもとで使われることが大前提」と注文しています。

 2017年6月18日(日)

 

■新抗生物質「シュードウリジマイシン」、薬剤耐性菌に高い効果  イタリアの土壌微生物から発見

 現在知られている抗生物質(抗菌薬)に耐性を持つ細菌に対し、高い効果が見込める新たな抗生物質が発見されたことが15日、アメリカの学術誌「セル」(電子版)に発表された論文で明らかになりました。

 この抗生物質はイタリアで採取した土のサンプルから発見された微生物によって作られ、「シュードウリジマイシン」と命名されました。

 シュードウリジマイシンは研究所の実験で20種類の菌の発育を阻害し、特に複数の抗生物質に耐性を持つ連鎖球菌やブドウ球菌への有効性が確認されました。A群β溶血性連鎖球菌の感染によって発症する猩紅(しょうこう)熱に感染したマウスの治療にも効果がありました。

 シュードウリジマイシンは「ポリメラーゼ」と呼ばれる酵素の作用を抑制するものの、同じ酵素を標的に用いられる「リファンピシン」とは作用が異なります。シュードウリジマイシンは現在販売されている抗生物質に比べて、薬剤耐性を引き起こす可能性が10倍低いともいいます。

 研究を行ったアメリカのニュージャージー州のラトガース大学とイタリアのバイオテクノロジー企業ナイコンスは、3年以内にシュードウリジマイシンの臨床試験に着手し、10年以内に発売できる可能性があるとしています。

 また、研究者らは、「新しい抗生物質を見付ける上で土壌微生物は最良の源であることが、シュードウリジマイシンの発見によって改めて示された」と述べています。

 2017年6月18日(日)

 

■認知症サポート医、1万人養成へ 早期診断のため国家戦略目標を倍増

 政府は17日、認知症対策の国家戦略(新オレンジプラン)で掲げた各取り組みの数値目標を引き上げる方針を固めました。2020年度末までに、地域の認知症医療の中核となる「サポート医」の養成目標を現行の2倍の1万人にするほか、患者や家族を支える市民「サポーター」を1200万人にすることを目指します。

 目標の引き上げは、2015年の新オレンジプラン策定以降、各自治体の取り組みが進み、2017年度末までとした現行の目標がおおむね達成できる見通しになったため。認知症患者が推計で高齢者の5人に1人に当たる約700万人に達する2025年を見据え、早期診断の体制や暮らしやすい社会づくりを加速させます。

 認知症サポート医は、各地域で一般の医師の相談に乗るなど中核的な役割が期待されており、国立長寿医療研究センター(愛知県大府市)による研修を受ける必要があります。当初5000人の養成を掲げていましたが、すでに6000人に達しているとみられます。

 このほか、認知症を早期に発見し専門の医療機関と連携できるよう、一般のかかりつけ医を対象にした研修の受講者数の目標を6万人から7万5000人に上積みし、認知症に対応する地域の医療体制を強化します。

 自治体や企業が実施する1時間半程度の講座を受けるとなれる認知症サポーターは、すでに当初目標を超える880万人に到達しており、新たに国民の約10人に1人がサポーターとなるよう目標を掲げました。

 患者や家族らが交流する「認知症カフェ」がある市区町村は2015年度時点で約4割にとどまりますが、全市区町村での設置を目指します。

 2017年6月18日(日)

 

■「茶のしずく石鹸」発症者2100人、4割超で呼吸困難 日本アレルギー学会が最終報告

 せっけん製造販売会社「悠香」(福岡県大野城市)が2004~2010年に販売した「茶のしずく石鹸(せっけん)」の旧製品を使って小麦アレルギー症状が相次いだ問題で、日本アレルギー学会は17日、症状が確認されたのは約2100人で、4割超で呼吸困難が起きるなど重い症状が多かったとする最終調査結果を発表しました。

 日本アレルギー学会の特別委員会(委員長、松永佳世子・藤田保健衛生大教授)は、2012~2014年に各地の医療機関を通じて調査。患者のうち約900人について詳しく分析したところ、43%は呼吸困難があり、25%でアナフィラキシーショックが起きていました。

 患者の多くは完治しましたが、治療を続けている患者は3割程度いるとみています。

 日本アレルギー学会は、茶のしずく石鹸の旧製品に含まれていた小麦由来の成分「グルパール19S」がアレルギーの原因としています。発症者はもともと小麦アレルギーの体質ではありませんでしたが、グルパール19Sが皮膚を通して体内に入り、小麦由来成分に反応する抗体ができました。旧製品を使っただけでは発症しにくいものの、パンやパスタなど小麦を原料とする食品を食べることなどで反応が促され、発症したと考えられるといいます。

 グルパール19Sは小麦のタンパク質を薬剤などで分解した成分で、保湿作用があり、毛髪のトリートメントなどに使われました。厚生労働省によると、茶のしずく石鹸など同成分を含む35製品が自主回収されており、現在は製造されていません。

 松永・藤田保健衛生大教授は、「症状が続いている人もおり、治療法の開発が必要だ」と話しています。

 2017年6月17日(土)

 

■厚労省、全医師データベースを構築し今年度中に運用開始へ 地域偏在解消に活用

 医師の地域偏在の解消に役立てるため、厚生労働省はすべての医師の出身大学や研修先、診療科などを登録したデータベースを構築し、今年度中の運用開始を目指すといいます。

 地方に比べ都市部に医師が集中している地域偏在対策を話し合う厚労省の医師需給分科会で15日、示されました。

 都道府県の担当者がデータベースを検索することを想定し、都道府県出身の医師の誘致や定着への活用を図ります。

 医師は2年に一度、氏名や就業先などを届け出ることが医師法で義務付けられています。データベースは、大学卒業後に初期臨床研修を受けた施設や、専門医制度で専攻しているプログラムなども一元化して管理します。

 データベースを使うと、大学を卒業してからの年数や、地元にゆかりがあるなど、条件に合う医師を探せるようになります。ビッグデータとして、初期臨床研修の内容と定着率の関係を解析し、研修プログラムの改善にも役立てていきます。

 医師需給分科会ではほかに、大学医学部の地域枠の出身医師を対象とする地域医療支援センターと、自治医大出身医師の派遣計画を担うへき地医療支援機構の機能が一部重複していると指摘されました。運営する都道府県に、統合も含めた一体的な医師確保対策を促すことを決めました。

 2017年6月17日(土)

 

■3カ所以上の医療機関に通院中の高齢者、9割が薬5種以上の多剤処方

 3カ所以上の医療機関に通院している高齢者の9割が、慢性疾患の薬を5種類以上処方されているとの調査結果を、東京都健康長寿医療センターなどの研究班がまとめました。

 16日に名古屋市で開かれている日本老年医学会で発表します。

 複数の持病を抱える高齢者は処方される薬の種類が増えがちですが、薬を分解する機能が低下して副作用が出やすくなります。5種類以上服用すると、転倒リスクが高まるとの報告もあります。

 調査は、自宅(介護施設も含む)で暮らす75歳以上の東京都民約130万人のレセプト(診療報酬明細書)を分析。2014年5月からの4カ月間について、糖尿病、高血圧、骨粗しょう症、不眠症、泌尿器疾患など約20疾患の薬127種類(約5000剤)の処方状況を調べました。

 5種類以上の薬を処方されている患者は、全体で35%でした。受診している医療機関数でみると、1施設では23%、2施設では60%、3施設では89%と、受診先の増加に伴い多剤処方の割合が高くなりました。

 2017年6月16日(金)

 

■卵アレルギー、生後6カ月から少量食べて発症予防に 日本小児アレルギー学会が提言

 日本小児アレルギー学会は16日、離乳食を始めるころの生後6カ月から乳児にごく少量の鶏卵を食べさせることで、卵アレルギー発症の予防になるとの提言を医療関係者向けに発表しました。

 家庭で独断で実施するのではなく、必ず専門医に相談してから始めてほしいと指摘しています。

 卵アレルギーは、乳幼児の食物アレルギーの中で最も多く、有症率は10 %といわれます。卵を口にした場合、湿疹や頭痛、呼吸困難などの症状が起きます。

 鶏卵を食べることで卵アレルギーの発症を抑える研究は、国立成育医療研究センターなどの研究チームが昨年末、生後6カ月の段階から固ゆで卵の粉末をごく少量ずつ食べさせると、1歳になった時には卵アレルギーの発症を80%抑えられたとして、その成果をイギリスの医学誌「ランセット」に発表。少量を食べ続けることで体が慣れ、免疫反応が抑えられたとみられます。

 医療関係者向けの日本小児アレルギー学会の提言では、生後6カ月の乳児が固ゆで卵約0・2グラムを食べ始めることを推奨。1歳の時点で固ゆで卵約32グラム(1個の半分の量)を食べてもアレルギー症状がないことが、予防ができている目安としました。ただし、摂取は予防のためであり、すでに卵アレルギーの発症が疑われる乳児に摂取を促すことは「極めて危険」と警告しています。

 食物アレルギーはかつて、離乳早期に原因となる食品は食べさせるべきではないとされていました。ただ最近の国内外の研究では、食べる時期を遅らせると体が慣れず、発症のリスクをかえって高めることがわかってきました。ピーナツアレルギーの発症の予防でも、乳児期から摂取を始めることで予防につながるとの海外の研究報告があります。

 日本小児アレルギー学会の海老沢元宏・食物アレルギー委員長は、「安易に卵を避けるのではなく、少しずつ安全に食べていけば発症を抑制できることを伝えたい」と話しています。

 2017年6月16日(金)

 

■認知症の行方不明者1万5432人 4年連続最多、警察庁まとめ

 認知症が原因で行方がわからなくなったとして、2016年に全国の警察に届け出があった行方不明者は前年比26・4%増の1万5432人だったことが15日、警察庁のまとめで明らかになりました。

 2012年の統計開始から4年連続で増加し、過去最多を更新し続けています。警察や家族などによって98・8%の1万5241人は年内に所在が確認されたものの、191人は見付かっておらず、早い段階の対応が重要になっています。

 認知症による不明者のうち55・8%が男性(8617人)で、女性(6815人)を上回りました。行方不明者の原因・動機は高齢層ほど認知症の割合が高まり、60歳代は人口10万人当たり7・3人だったのに対して、70歳代は48・1人、80歳代以上は74・3人となっています。

 都道府県警別では、大阪府警が1830人で全国最多、埼玉県警が1641人、警視庁が1487人、兵庫県警が1300人、愛知県警が1265人と、5都府県警で1000人を超えました。

 2015年以前に届け出を受けた73人を含め、2016年に所在が確認された行方不明者は計1万5314人。警察の捜索活動や第三者からの通報で発見されたケースが63・7%に当たる9756人と最も多く、行方不明者の自力帰宅や家族による発見は32・3%に当たる4950人。3・1%に当たる471人は、死亡した状態で見付かりました。

 所在が確認されるまでの期間は、届け出を受理した当日(72・5%)と2~7日(26・0%)の1週間以内がほとんどを占めました。それ以降は8~14日で0・4%、15日~1カ月で0・3%など。

 2016年の認知症以外の人を含む全体の行方不明者数は、前年比3・4%増の8万4850人。年代別では、10歳代と20歳代がそれぞれ1万7000人台、1万6000人台と多くなりました。80歳以上は1万118人、70歳代は9589人。9歳以下も1132人いました。全体の原因・動機別では、認知症や病気苦などの「疾病関係」が最多で、遊び癖などの「その他」や親子の不和などの「家庭関係」が続きました。

 警察庁の担当者は認知症高齢者に関する届け出数の増加について、「高齢化に加え、社会全体として認知症が周知され、家族が警察に病気を申告するケースが増えたためとみられる」とし、「冬場は凍死などの恐れもある。自治体などと連携して、素早い立ち上がりを徹底したい」と強調しました。

 2017年6月15日(木)

 

■腸管出血性大腸菌の感染者、1週間で45人に上る 肉類の生焼けに注意が必要

 食中毒などを引き起こす腸管出血性大腸菌の感染者が1週間で45人に上るなど感染が広がり始めました。気温上昇とともに流行が拡大し、7~8月にピークを迎えるため、国立感染症研究所は注意を呼び掛けています。

 感染すると、腹痛や下痢、血便のほか、 嘔吐(おうと)や発熱を伴うこともあります。抵抗力が弱い乳幼児や高齢者は、貧血や急性腎不全を起こして死に至る恐れもあります。

 国立感染症研究所によると、昨年は9人の死亡が報告されました。今年も6月7日に、群馬県伊勢崎市の高齢者施設で、腸管出血性大腸菌O(オー)157に感染した90歳代の女性が死亡しています。

 腸管出血性大腸菌はもともと牛などの腸に生息しており、生肉など食品を通じて人間に感染します。感染者の約3割は無症状で、気付かずに感染を広げる危険性もあります。

 トイレ後や調理前、食事前の手洗いの徹底で感染の拡大を防げます。

 国立感染症研究所感染症疫学センターの斉藤剛仁主任研究官は、「肉類の生焼けに注意して食中毒を予防してほしい」と話しています。

 2017年6月15日(木)

 

■無痛分娩の麻酔で脳障害、3件目が発覚 同じ京都の産婦人科医院

 麻酔で出産の痛みを和らげる無痛分娩(ぶんべん)を行う京都府京田辺市の産婦人科医院「ふるき産婦人科」で医療事故が2件発覚した問題で、2011年に無痛分娩で出産した別の夫婦の長女も脳に重度障害を負っていたことが13日、明らかになりました。

 夫婦によると、長女は意思疎通ができない寝たきりとなり、介護の末に2014年、3歳で亡くなったといいます。

 夫婦は2013年、ふるき産婦人科に対し、医療ミスが原因だとして介護費や慰謝料など計約1億円を求めて提訴。京都地方裁判所で係争しています。

 訴状などによると、京田辺市に住む30歳代の妻は妊娠中から、ふるき産婦人科で検診を受け、異常はなかったといいます。2011年4月、ふるき産婦人科は分娩監視装置を装着せず、無痛分娩のための硬膜外麻酔を実施し、さらに陣痛促進剤を注入しました。吸引分娩と腹部を強く押した後に、帝王切開で出産しましたが、長女は仮死状態で出生しました。ふるき産婦人科は約4時間後に、宇治市の総合病院に転院させました。

 夫婦側は、「産婦人科診療ガイドラインに定められた監視装置を装着せずに陣痛促進剤を使用し、硬膜外麻酔を実施した」と指摘した上で、「促進剤を過剰投与し、高濃度の麻酔を使用し、決められた妊婦の血圧測定もしなかった結果、低酸素脳症を発症させた」と主張しています。

 ふるき産婦人科は取材に対し、「裁判になっていることなので取材に応じられない」と話しました。

 ふるき産婦人科を巡っては、無痛分娩のための硬膜外麻酔ミスで京都市左京区の母子、京田辺市の母子の計4人が意思疎通や自発呼吸ができなくなるなど重度障害を負ったとして、2件の医療過誤訴訟が京都地裁に提訴されています。

 2017年6月14日(水)

 

■過去にアスベスト使用の公営住宅、全国に2万2000戸以上 民間団体が調査

 発がん性があるアスベスト(石綿)が過去に使われていた公営住宅が全国に少なくとも2万2000戸以上あることが、民間団体「中皮腫・アスベスト疾患・患者と家族の会」などの調査で明らかになりました。

 かつて公営住宅に長年住み、最近になってアスベスト特有のがんである中皮腫を発症したケースが出てきたため、中皮腫・アスベスト疾患・患者と家族の会などが今年3月から始めた全国の労働基準監督署への聞き取りや情報公開請求を通じて、国や全国の自治体が保管していた公営住宅の管理台帳などを詳しく分析しました。

 その結果、肺がんや中皮腫などの深刻な健康被害を引き起こすアスベストが過去に使われていた公営住宅が全国に2万2000戸以上あることが、初めて明らかになりました。内訳は32都道府県にある公営住宅約8700戸と、6都府県の都市再生機構(UR)の住宅や都営住宅など約1万3500戸で、その多くが1988年以前に建設されています。

 ただし、自治体などによっては、公営住宅を解体したり記録を廃棄したりして把握し切れていないところもあり、実際にアスベストが過去に使われた公営住宅はさらに増える見込みです。 

 公営住宅のアスベストを巡っては、危険性が明らかになった1988年以降、国が全国の自治体などに対策工事を行うよう通知しましたが、国は公営住宅での具体的なアスベストの使用実態を把握していなかったほか、自治体も対策工事が行われる前の住民への十分な注意喚起は行っていませんでした。

 さらに、公害などのリスク評価に詳しい東京工業大学の村山武彦教授が、アスベストが使われた2万2000戸の公営住宅のうち、対策工事が行われる前の住民について分析したところ、アスベストを吸い込んだ可能性のある人は、23万人余りに上ると試算されました。

 村山教授は、すべての住民に健康被害が生じるわけではないとした上で、「公営住宅に使われたアスベストによって、がんなどを発症する危険性は否定できない。国や自治体は過去の記録をもとに、対策工事が行われる前に住んでいた人を中心に、情報の提供や注意の呼び掛けを進める必要がある」と指摘しています。

 住宅の壁や天井を強くするために吹き付けて用いられたアスベストについて、国は1988年に空気中に飛び散る危険性が高く、肺がんなどの原因になるとして、全国の自治体に対し公営住宅での除去や封じ込めなどの対策工事を行うよう求める通知を出したほか、2005年からは国土交通省などが都道府県や市区町村に対し、対策工事がどの程度進んでいるか年に一度、報告を求め調査してきました。

 しかし、この調査では、国はアスベストが使われた公営住宅の件数などしか把握していなかったほか、都道府県や市区町村も一部を除いて住宅の名称や所在地を公表しておらず、対策工事が終わる前に住んでいた人への注意喚起もほとんど行っていませんでした。

 中皮腫・アスベスト疾患・患者と家族の会は、ホームページ(https://sites.google.com/site/tatemonosekimen/)で、アスベストが使用されていた公営住宅の名称のほか、住宅の建設年度や対策工事が行われた時期など、住民がアスベストを吸い込んだ可能性がある期間についての情報を掲載し、かつて住んでいた人たちに注意を呼び掛けています。

 2017年6月14日(水)

 

■2015年の死亡率、男女とも過去最低 厚労省が国勢調査を基に分析

 2015年の全国の「死亡率」は男女ともにこれまでで最も低くなったことがわかり、厚生労働省は「医療技術の向上や食生活の改善などが死亡率の低下につながったのではないか」と分析しています。

 厚労省は、人口10万人当たりの死亡した人の数を示す死亡率について、5年ごとに行われる国勢調査を基に年齢の偏りを調整して分析しています。

 それによりますと、2015年の死亡率は全国で男性が486・0、女性は255・0でした。前回の7年前の分析に比べて、男性が58・3ポイント、女性が20・0ポイント低下し、男女ともに1947年に分析を始めて以降、最も低くなっています。

 死亡した原因をみますと、男性では「がん」が最も高く人口10万人当たりの死亡率が165・3、次いで心筋梗塞などの「心疾患」が65・4、肺炎が38・3でした。一方、女性では「がん」が87・7、「心疾患」が34・2、脳卒中などの「脳血管疾患」が21・0で、死亡率はいずれも前回を下回っています。

 都道府県で死亡率が最も低かったのは、男性は長野県で434・1、次いで滋賀県が437・9、奈良県が452・9でした。女性でも長野県が227・7と最も低く、次いで島根県が236・9、岡山県が238・4などとなっています。逆に死亡率が高かったのは、男性が青森県で585・6、次いで秋田県が540・3、岩手県が522・5、女性は青森県で288・4、福島県が275・7、茨城県が273・8などとなりました。

 厚生労働省は、「医療技術の向上や、健康志向の高まりによる食生活の改善などが、死亡率の低下につながったとみられる。都道府県は今回のデータを参考に、健康づくりの取り組みを進めてほしい」としています。

 2017年6月14日(水)

 

■無痛分娩の麻酔で母子に重度障害 京都の産婦人科医院で事故続く

 麻酔で出産の痛みを和らげる無痛分娩(ぶんべん)をした女性(40歳)と長女(4歳)が脳に重い障害を負ったのは医療ミスが原因として、この母子と家族計4人が京都府内の産婦人科医院に介護費用や慰謝料など計約9億4000万円の損害賠償を求め、京都地方裁判所に提訴したことが明らかになりました。

 昨年も同じ産婦人科医院で麻酔後に母子が重度障害を負っており、同様の事故が2例続発していました。無痛分娩の重大事故について調査している日本産婦人科医会は、この事例も調べる方針。

 提訴されたのは、「ふるき産婦人科」(京都府京田辺市)。訴状によると、京都市左京区に住む女性はロシア国籍の元大学准教授で、2012年11月、この産婦人科医院で背中に細い管を差し込み麻酔薬を注入する「硬膜外麻酔」の直後に意識を失い、心肺停止となりました。救急搬送先の病院で帝王切開により長女を出産しましたが、母子とも低酸素脳症などになり、現在も意識不明といいます。

 原告側は、「差し込んだ管が硬膜を破り、くも膜下に入ったことと、高濃度の麻酔薬を一度に大量に投与したミスがあった」と主張しています。京都地裁への提訴は、昨年12月。

 ロシアの医師である女性の母親(62歳)は代理人を通じて手記を公表し 、「産婦人科医一人しかいない個人医院で出産する危険性を警告したい。出産は複数の医師の体制があるところですべきだ」と訴えています。

 ふるき産婦人科は、「取材は受けられない」としています。

 ふるき産婦人科では昨年5月にも、別の女性(38歳)が帝王切開の手術の際、硬膜外麻酔の後に呼吸などができなくなり、母子ともに重い障害を負ったとして、家族らが医院を相手に計約3億3000万円の損害賠償を求め、京都地裁に提訴しています。医院側は争う姿勢を示しています。

 日本産婦人科医会はこの事例のほか、大阪府や兵庫県で判明した妊産婦死亡例も調べており、産科麻酔の重大事故が4件相次いで発覚した形です。

 2017年6月14日(水)

 

■カフェイン急性中毒、5年間で101人搬送し3人死亡 眠気防止薬や清涼飲料水で

 カフェインを多く含んだ眠気防止薬や「エナジードリンク」などの清涼飲料水による急性中毒で、2011年度からの5年間に少なくとも101人が病院に救急搬送され、7人が心停止となり、うち3人は死亡したことが、日本中毒学会の実態調査で明らかになりました。

 ほかにも重大事故が起きており、若者を中心に「乱用」されている可能性があります。

 カフェインは興奮作用があり、短時間に大量摂取すると吐き気、めまい、心拍数の増加、興奮などの中毒症状が出現します。個人差が大きいものの、成人では1グラム以上で症状が出る可能性が指摘されています。

 文部科学省の日本食品標準成分表によると、コーヒーには100ミリリットル当たり0・06グラム、煎茶には0・02グラム含まれています。広く使われている市販の眠気防止薬には1錠当たり0・1グラムほど含まれ、風邪薬や若者を中心に人気の炭酸飲料エナジードリンクにも使われています。

 深夜勤務に就いていた九州地方の20代男性がエナジードリンクと眠気防止薬を一緒に長期間飲み続け、死亡する事故が、2015年に報告されました。その後も、急性中毒で病院に運ばれるケースが相次ぎ、日本中毒学会が初めて実態調査をしました。

 調査に協力した全国の38救急医療施設に搬送され、カフェイン中毒とわかったケースを集計しました。患者は2011年度10人、2012年度5人でしたが、2013年度は24人に急増。2015年度は37人でした。

 計101人中97人は眠気防止薬を使っており、7人が心停止、うち3人が死亡。心停止に至った人はいずれも、カフェインを6グラム以上摂取していました。エナジードリンクだけの中毒は、4人でした。患者の年齢の中央値は25歳で、18歳以下が16人いました。自殺目的の場合もありましたが、看護師などの深夜勤務の人が服用する例も多くありました。

 調査した埼玉医科大の上條吉人教授は、「カフェイン中毒の危険性が一般の人には十分知られておらず、行政も実態を把握できていない。激しい嘔吐(おうと)や動悸(どうき)で非常に苦しむ症例が多い。自殺目的の過量服用もあるが、眠気覚ましのために乱用しているケースもある。一度に購入できる眠気防止薬の量を制限すべきだ」と指摘しています。

 2017年6月14日(水)

 

■民間のエイズ郵送検査、年間9万件を突破 公的検査に迫る勢い

 エイズウイルス(HIV)の感染を調べる民間の検査会社の郵送検査が昨年9万件を突破し、保健所などの公的検査に迫る勢いであることが、厚生労働省研究班の調査で明らかになりました。

 人の目が気にならない手軽さからニーズは高まっているものの、陽性者が医療機関を受診したか不明という問題点があります。厚労省は近く策定する新予防指針に郵送検査の課題を初めて盛り込み、対策を検討します。

 HIVの公的検査は、保健所などで無料で受けられます。匿名ながら対面で、受付日時が限られます。検査件数は減少しており、昨年は約11万8000件(速報値)でした。

 郵送検査は、民間の検査会社からキットを購入し、自分で指先から採取した血液を返送すると、その会社や提携先での検査結果が郵便やメール、専用サイトでわかり、人に会わずにすみます。費用は数千円。

 研究班が13の検査会社に郵送でアンケートしたところ、11社が回答。11社の昨年の利用件数は計9万807件と、2001年の約3600件から急増して過去最高でした。

 しかし、郵送検査は精度や個人情報管理などの基準がなく、国の承認制度もない業者任せで行われています。過去2年間の陽性者248件のうち、検査会社が確定診断のため医療機関を紹介できたのは78件。実際に受診を確認していたのは1社の6件(2%)のみでした。

 研究班は、陽性者の受診を確認する方法の充実や定期的な精度管理など6点の留意事項をまとめ、検査会社に通知しました。

 研究を担当した木村哲・東京医療保健大学長は、「郵送検査は、公的検査をためらう人の受け皿になり得る。信頼できる検査体制の整備が必要だ」と話しています。

 2017年6月13日(火)

 

■身長が2センチ以上低下すると、転倒の発生率が2倍に 埼玉医大など中高年を調査

 若いころより身長が2センチ以上低くなった中高年は転倒する確率が2倍に高まるとの調査結果を、埼玉医科大学などの研究チームがまとめました。

 14日から名古屋市で開かれる日本老年医学会で発表します。

 研究チームは、要介護状態になっていない埼玉県内の60~70歳代の男女約460人を対象に、身長の変化や体力の調査を実施。2年後にアンケート調査を行い、過去1年間に転倒経験があったかどうかを聞きました。

 回答が得られた約380人について分析したところ、20~30歳代より身長が2センチ以上低下していた約150人では、20%が転倒を経験していました。一方、身長の低下が2センチ未満だった人の転倒経験は10%で、発生率に2倍の差が認められました。身長が2センチ以上低下していた人のほうが、片脚立ち時間が平均で20秒近く短いなど、体力テストの結果でも差が認められました。

 加齢に伴う身長の低下は、背骨の圧迫骨折だけでなく、筋力低下や軟骨のすり減りなどでも起きます。高齢者の場合、転倒による骨折を切っ掛けに寝たきりになりやすい傾向もあります。

 調査結果をまとめた新井智之・埼玉医大講師(理学療法学科)は、「2センチ以上身長が低下すると転倒リスクが高まる。自宅で簡便にリスクを確認する目安として役立ててほしい」と話しています。

 2017年6月12日(月)

 

■乳幼児のイオン飲料、飲みすぎに注意 栄養の偏りで健康悪化も

 水分補給によいとされるイオン飲料やスポーツ飲料などを多量に飲み続け、健康状態が悪化した乳幼児の報告が昨年までの10年間で少なくとも24例、31年間で33例あったことが、日本小児科学会などの調査で明らかになりました。

 栄養が偏ったためとみられます。専門家は、こうした飲み物を継続して多量にとらないよう注意を呼び掛けています。

 問題となっているイオン飲料とは、カリウムやナトリウムなどの電解質が入っている飲み物のことです。成分や使い方などによって、スポーツ飲料とか経口補水液などと呼ぶこともあります。

 これらの飲み物のほとんどは、糖やミネラルを含むものの、糖をエネルギーに変換するのに必要なビタミンB1が含まれていません。ビタミンB1を含むミルクや離乳食などをとらずに多く飲み続けると、ビタミンB1欠乏症になります。頻度はまれながら、脳症や脚気(かっけ)になることがあります。

 日本小児科学会などでつくる日本小児医療保健協議会の栄養委員会(位田忍委員長)が昨年、全国約400の学会専門医研修施設に郵送で調査しました。これらの飲料を多くとって健康状態が悪化したとみられる症例を尋ね、文献でも調べました。

 栄養委員会によると、1986年以降の報告で、7カ月~2歳11カ月の33人がビタミンB1不足のため、意識障害や浮腫などを起こし、1人が死亡していました。33人のうち24人は、2007年以降の報告でした。

 日本小児科学会は、報告のように深刻な例はなかなかないと思われるものの、体重が9〜12キログラムくらいの1〜2歳の乳幼児が日常的に多量のイオン飲料を飲むのは禁物で、1日に500ミリリットル以下に抑えるよう呼び掛けています。

 2017年6月12日(月)

 

■軽度認知障害の有無を簡易に判定 日大工学部、血液検査データのみで

 日本大学工学部(福島県郡山市)は、認知症に移行する前段階の「軽度認知障害(MCI)」の有無を一般の健康診断の血液検査結果を使って、簡易に高精度で判定する手法を開発しました。

 これまでは専門的な問診や画像診断などが必要でしたが、健康診断で実施する血液検査のデータのみを使って、9割を超す高い確率で推定できるといいます。高齢社会の課題である認知症のリスクを早期に発見し、症状悪化の予防につなげます。

 軽度認知障害は健康な状態と認知症の中間にあり、日常生活に支障はないものの、年齢などでは説明できない記憶障害がみられる段階。早期に把握すれば、予防に向けた生活習慣の見直しなどに早く取り組めるメリットがあります。

 認知症の診断は、記憶力、言語理解力などを調べる問診や、磁気共鳴画像装置(MRI)、陽電子放射断層撮影装置(PET)などを使った精密検査が必要で、時間と費用がかかります。受診の機会も限られるため、軽度認知障害から認知症に移行した後に診断されるケースが多くなっています。

 新たな手法は、人工知能(AI)の深層学習(ディープラーニング)を活用して、過去の膨大な症例から、タンパク質など血液の成分と認知症の進み具合の関連を分析。その結果を新たな受診者の血液のデータと突き合わせて判定します。通常の健康診断の結果をそのまま利用できるので、時間や経費の負担軽減につながります。

 日大工学部の酒谷薫教授と大山勝徳准教授が研究し、すでに特許を出願しています。個人が自分の健康診断の結果から判定を調べられるスマートフォン(スマホ)向けのアプリ開発も、福島県内のIT企業と連携して進めています。

 酒谷教授は、「超高齢化社会の中で認知症対策の大事な切り札になる」と語っています。

 2017年6月11日(日)

 

■創薬ベンチャーのアンジェスMG、遺伝子治療薬を申請へ 承認なら国内初

 創薬ベンチャーのアンジェスMG(大阪府茨木市)は、特別な機能を持つ遺伝子を使い血管の病気を治す遺伝子治療薬について、今年10月をめどに厚生労働省に製造販売の承認を申請します。

 承認されれば国内初の遺伝子治療薬となります。

 遺伝子治療薬は次世代医療の柱と期待されており、政府が日本での早期開発を支援しています。アンジェスMGは、早ければ2018年の発売を目指します。

 開発中の「ベペルミノゲン」は、血管が詰まり足が壊死(えし)する「重症虚血肢」を適応症として申請。患者の足に注射で投与すると、血管を新たに作り血行を促進する作用を有します。手術などを伴う従来の治療法よりも患者の負担が軽くすみます。

 1995年に大阪大学の森下竜一教授らの研究チームが開発し、アンジェスMGで実用化を目指してきました。

 虚血肢の患者は国内に10万人から20万人におり、その1割程度が投与対象になる見込み。販売は提携先の田辺三菱製薬が担います。

 政府は先進的な医薬品を世界に先駆けて国内で実用化するために、医薬品の審査制度を一部緩和しています。再生医療や遺伝子治療品について、優先的に審査し、承認までの期間を大幅に緩和する早期承認制度を2014年11月に導入しました。

 アンジェスMGの製造販売の申請は、2回目となります。2008年に申請した際は追加データが必要となり、申請を取り下げました。その後、早期承認制度が整備され、これを活用するための臨床試験を2014年から国内で実施してデータを集め、承認申請の準備を進めてきました。

 早期承認制度では市販後にデータを収集し、改めて正式承認を得る必要があるものの、欧米に先駆けて先進的な遺伝子治療薬が日本で実用化される道筋がついたことで、製薬会社の国内開発が加速する可能性があります。

 2017年6月11日(日)

 

■日本気象協会、熱中症セルフチェックを提供 年代や活動内容、現在地で危険度を診断

 日本気象協会は、個人ごとの熱中症の危険度を簡単に診断できるサービスの提供を始めました。年代や活動内容、現在地を選ぶと、その環境で1時間過ごした場合の危険度が4段階で表示されます。スマートフォンでも利用可能で、外出先で調べることもできます。

 サービス名は「熱中症セルフチェック」(https://www.netsuzero.jp/selfcheck)。名古屋工業大学、東北大学と共同で研究した熱中症リスクを評価する技術を応用しました。

 日本気象協会によると、これまでの熱中症予防の目安は、気温や湿度、日射・輻射などの環境条件を考慮して示すのが一般的でした。今回、個人ごとの年代や活動内容を取り入れることで、より個人差を考えた診断ができるようになったといいます。

 ホームページ上で乳幼児から高齢者までの4つから年代を選び、現在の活動内容を「静かに過ごす」(読書、デスクワークなど)、「日常生活」(車の運転、家事など)、「ちょっと汗ばむ作業」(自転車、ゴルフなど)、「激しいスポーツ」(サッカー、ランニングなど)から選択します。

 さらに、現在地の市区町村などを入力すると、気象条件をもとに発汗量や体温の上昇量が自動的に計算され、その環境で1時間活動した場合の熱中症の危険度がA~Dの4段階で表示されます。失われる水分量、水分摂取や休憩の目安も表示されます。

 日本気象協会の担当者は、「年齢や活動内容の違いなど、個人の状況に即した熱中症の危険度が表示されるので、役立ててほしい」と話しています。

 2017年6月10日(土)

 

■患者の予期せぬ死亡で23件届け出る 医療事故調査制度5月分

 患者の予期せぬ死亡事故があった医療機関に院内調査と第三者機関への報告を義務付ける「医療事故調査制度」 で、第三者機関の日本医療安全調査機構(東京都千代田区)は9日、「院内調査が必要」として5月に届け出があった事案は23件だったと発表しました。

 2015年10月の医療事故調査制度の開始以来の累計は、624件となりました。

 内訳は、病院(20床以上)が22件、診療所(20床未満)が1件。地域別では、関東信越が7件で最も多く、東海北陸6件、中国四国4件、近畿と九州が各2件、北海道と東北が各1件。診療科別では、脳神経外科と泌尿器科がそれぞれ3件で最多でした。

 5月に院内調査の結果報告書が提出されたのは30件で、累計は384件となりました。

 2017年6月10日(土)

 

■C型肝炎治療薬の偽造品流通で再発防止策を取りまとめ 取引相手の身元確認を義務化

 C型肝炎治療薬「ハーボニー配合錠」の偽造品が流通した問題を受けて、厚生労働省の有識者検討会は8日、再発防止策をまとめました。卸売業者が医薬品を仕入れる際、相手が医薬品の販売業許可証を持っているかどうか確認することを義務付けます。

 今夏にも省令を改正するなどし、偽造品の流通を防止します。

 ハーボニーの偽造品が流通した問題では、今年1月、東京都内の現金問屋と呼ばれる卸売業者が身元確認しないまま、偽造品を個人から合わせて15本仕入れ、奈良県内の薬局に流通しました。厚労省は再発防止策で、相手の身元確認の徹底に加え、確認手段の記録も義務化する方針。違反した場合は、業務停止命令や販売許可の取り消しなどの行政処分を科します。

 また、ハーボニーの偽造品が薬局で患者に処方されたことから、薬局は偽造品対策を業務手順書に定めるようにします。偽造品だと疑われる医薬品を見付けた場合、仕入れ経緯の確認方法や、行政への報告などについてあらかじめ定めておきます。

 さらに、通常より安く流通した偽造品を奈良県内の薬局や和歌山市内の病院が仕入れていたことについて、「不適切な取引を利用していたのは遺憾」と指摘。医療機関に対しても、偽造品の流通防止に取り組むよう、通知で求めることを検討します。

 有識者検討会では、引き続き偽造品対策を協議。卸売業者の許可基準の厳格化などを検討し、今年度中に最終的な報告書を取りまとめる予定です。

 この問題を巡っては、東京都などが卸売業者などに業務停止命令を出しました。健康被害は確認されていません。

 厚労省は、「医薬品の信頼を守るために流通の過程で偽造薬が紛れ込むことがないように対策を徹底したい」としています。

 2017年6月9日(金)

 

■ハーゲンダッツ、アイス274万個を自主回収 ゴム粒子が混入した恐れ

 アイスクリームメーカーの「ハーゲンダッツジャパン」(東京都目黒区)は8日、先月下旬に全国で販売を始めたカップアイスに生産設備に使用されている黒いゴム粒子が混入した恐れがあるとして、274万1616個を自主回収すると発表しました。

 自主回収するのは、5月23日から全国のコンビニやスーパーなどで期間限定の商品として販売していたアイス「ミニカップ ヨーグルト仕立て ピーチミルク」です。

 ハーゲンダッツジャパンによりますと、発売当日に消費者から「黒い細かな異物が入っている」という相談が寄せられたため調べたところ、群馬工場の生産設備に使用されているパッキンがアイスの成分が付着したことで擦り減って混入した恐れがあるということです。

 同様の問い合わせは、7日までにおよそ50件寄せられたということですが、今のところ健康被害の報告はないということです。

 ハーゲンダッツジャパンでは「お客様に多大なるご心配とご迷惑をおかけし深くおわび申し上げます」としており、商品を自主回収するとともに購入者が商品のふたを着払いで送れば、代金分のギフト券を送るとしています。

 問い合わせの電話番号は0120-190-821で、9日の午後2時以降は0120-223-078で受け付けるとしており、今週末は土日とも対応し、その後は土曜・日曜・祝日を除いて午前9時から午後5時まで相談などに応じるということです。

 <商品送付先>郵便番号153-0051 東京都目黒区上目黒 2-1-1 中目黒GTタワー ハーゲンダッツジャパン株式会社特別対応窓口

 2017年6月9日(金)

 

■消費者庁が課徴金5471万円の納付命令 トクホの不当表示で日本サプリメントに

 消費者庁は7日、大阪市の通販会社「日本サプリメント」が2016年9月17日まで販売していた特定保健用食品(トクホ)2品目の表示について景品表示法違反(優良誤認)があったとして、合計5471万円の課徴金の納付命令を行ったと発表しました。

 2016年9月17日にトクホの取り消しを受けた日本サプリメントの商品が対象となりました。2016年4月に課徴金制度が始まってから、今年1月の三菱自動車に続いて2例目の課徴金措置命令となりました。トクホ商品が課徴金措置命令を受けたのは初めて。

 日本サプリメントは2016年9月に、当該2品目を含むトクホ6品目について、表示したトクホの関与成分がトクホの許可条件を満たしていない疑義があるとして、制度開始以来初めてトクホとして販売する許可の取り消しを受けていました。2017年2月には、消費者庁が6品目について、景品表示法に基づき再発防止を求める措置命令を行いました。2月の時点で消費者庁は、「課徴金の納付命令の対象となるが、詳細は調査中」としていました。

 今回の課徴金納付命令の対象となったのは、錠剤型サプリ「ペプチドエースつぶタイプ」と「豆鼓(とうち)エキスつぶタイプ」の2品目のみ。トクホ取り消しとなっていたほかの4品目について、消費者庁は「売り上げ規模が小さかったため、納付命令の対象から外れた」としています。

 課徴金の金額は、課徴金制度が適用される2016年4月1日から、トクホの取り消しを受けた9月17日までの間に販売された当該2品目の売上額の3%。消費者庁の発表によると、当該2品目は、課徴金の適用期間の6カ月弱で約18億2000万円を売り上げていました。

 今回の課徴金納付命令では、課徴金制度にのっとった金額の減免は行われていません。消費者庁は、「日本サプリメントによる、消費者への返金計画の申請はされていないため、減免は行われていない」としています。

 2017年2月の措置命令から、約3カ月が経過してからの課徴金納付命令となりました。前回課徴金の納付命令を受けた三菱自動車の燃費データ表示の件に比べ、大きく時間がかかったことについて消費者庁では、「日本サプリメントの販路であった通販の仕組みや細かいポイント制度をしっかりと把握してから、当該商品の細かい売上高を算出したからだ」としています。

 日本サプリメントは、「今回の納付命令で、顧客に多大な影響を与えてしまっていることを改めて重く受け止め、今後再発防止と信頼回復に向けて全力を尽くす」としています。

 2017年6月8日(木)

 

■改正医療法が成立、医療機関サイトの誇大表示を規制  特定機能病院の安全管理も強化

 医療機関がウェブサイトで虚偽や誇大な表示をするのを規制する改正医療法が7日、参院本会議で全会一致で可決、成立しました。ウェブサイトも広告と同様に、虚偽や誇大な表示を罰則付きで禁止します。ほかに高度な医療を提供する特定機能病院の安全管理体制の強化も盛り込まれました。

 ウェブサイトは利用者が自ら検索して閲覧するため、チラシや看板のような一般人の目に入る広告と区別され、規制の対象外でした。国民生活センターによると、「ホームページ掲載の費用より実際の費用が高額になった」などの相談が、年間約1000件寄せられています。

 改正医療法では、美容整形手術を巡るトラブルが増えていることを踏まえ、虚偽や誇大な表示を禁止し、「絶対安全な手術を提供」などと表示するウェブサイトが規制の対象になります。施術効果の誇張などの恐れがあれば、自治体が医療機関への立ち入り検査などを実施し、違反があるのに改善しなければ罰金などを科します。

 一方、自由診療の広告はこれまで基本的に禁止されていましたが、改正医療法ではウェブサイトの利用者が知りたい情報として、治療内容などの表示を認める方針。今後具体的な基準を定めます。

 改正医療法には、群馬大病院や東京女子医大病院で重大な医療事故が相次いだことを受けて、特定機能病院の安全管理体制を強化することも盛り込みました。医療安全の責任を負う病院長の権限を明確化し、十分な能力と経験がある人物が病院長に選ばれるように、外部有識者を含む合議体で候補者を審査することなどを義務付けています。

 特定機能病院は4月時点で、全国に85施設。大半を大学病院が占めています。

 2017年6月8日(木)

 

■医療用ES細胞、今年中にも作製へ 京大の計画を厚労省専門委も了承

 再生医療に用いるため、体のさまざまな細胞に変化できる人のES細胞(胚性幹細胞)を作製する京都大学の研究チームの計画を7日、厚生労働省の専門委員会が了承しました。文部科学省の委員会の了承も得られており、医療用ES細胞の作製が国内で初めて動き出します。

 神経や筋肉などの細胞や組織になる能力と無限に増殖する能力を併せ持つES細胞は、人の受精卵を壊して取り出した細胞から作るため、倫理的に問題があると指摘され、国は2014年に受精卵を提供する人の同意を得ることなどを条件に、医療目的で作製することを認める指針を作りました。

 京都大は、不妊治療で使われなくなった受精卵を京都市内の医療機関から患者の同意を得た上で譲り受け、再生医療に使うためにES細胞を作製する計画を国に申請し、7日に開かれた厚労省の専門委員会で審査が行われた結果、指針に適合しているとして承認されました。

 京都大は今後、厚生労働大臣と文部科学大臣の了承を正式に得た上で、医療機関への提供に向けてES細胞の作成を進めていくことにしています。年内に1種類、10年間に約20種類のES細胞を作製するのが目標で、京都大は早ければ年度内にも国内の研究機関や企業への提供を始めます。

 京都大の末盛博文・准教授(幹細胞生物学)は、「再生医療の新たな選択肢が増えることには大きな意義があり、ES細胞は品質のばらつきが少ない利点がある。丁寧な説明を心掛け、新しい治療法の開発につなげていきたい」としています。

 2017年6月8日(木

 

■急性膵炎はオートファジーが止まると発症 秋田大などが解明

 重症化すると死に至ることもある急性膵炎(すいえん)は、膵臓の細胞内のタンパク質をリサイクルする「オートファジー」(自食作用)という機能が止まることによって起こるとの研究結果を、秋田大学や自治医科大学などの研究チームが6日付でイギリスの科学誌「サイエンティフィック・リポーツ」に発表しました。

 急性膵炎は国内で年間約6万人が発症し、増加傾向にあります。酒の飲みすぎや胆石などが発症する大きな要因になりますが、原因が不明なものも多く、根本的な治療法はありません。研究結果は、治療法開発の手掛かりになると期待されます。

 研究チームの秋田大消化器内科の高橋健一医師らは、発症初期の膵臓において、消化液である「膵液」を分泌する細胞内に、小さな袋が数多く現れることに着目。

 マウスを使った実験で、この小さな袋はオートファジー(自食作用)の前半にできる「オートファゴソーム」と呼ばれるもので、「Rab7」という遺伝子の機能不全のため、オートファジーが次の段階に進めなくなっていることを突き止めました。

 Rab7が働かないようにしたマウスに薬剤で急性膵炎を起こすと、本来膵臓ではほとんどないはずの消化酵素が正常なマウスに比べて、約60倍も多くできることを確認。これが原因で、重症化することもわかりました。

 研究チームを率いる前秋田大教授の大西洋英・労働者健康安全機構理事は、「Rab7の働きを制御する薬剤は、急性膵炎の治療に使える可能性がある」と話しています。今後は、Rab7の機能不全が起こる理由などの解明を進める方針。

 2017年6月7日(水)

 

■プール熱の患者、過去10年で最多 国立感染症研究所が集計

 子供に多い感染症「咽頭結膜熱」(プール熱)の患者が過去10年で最多となっていることが6日、国立感染症研究所の集計で明らかになりました。

 重症化することはまれながら、感染力が強いため、厚生労働省は「手洗いや目をこすらないなどの予防策をしっかりとってほしい」としています。

 国立感染症研究所によると、全国3000カ所の小児科医療機関から5月22日から28日までに報告された1医療機関当たりの患者数は0・91人で、前週の0・65人より4割増えました。昨年の同時期より0・18人多く、過去10年の同時期と比較して最多となっています。

 都道府県別では、鹿児島県が1・85人で最多となり、北海道1・84人、山梨県1・83人、奈良県1・59人、岩手県1・51人の順でした。

 東京都府中市の崎山小児科でも、例年と同じように咽頭結膜熱の患者が増えています。崎山弘院長は「昔はのどや目の症状から咽頭結膜熱と判断したが、最近はウイルス感染を迅速に検査できるようになり、報告数が増えている可能性もある」と指摘。せきやくしゃみなどのしぶきのほか、目やになどからも感染するため、手洗いの徹底やタオルを共有しないなどの対策を呼び掛けています。

 咽頭結膜熱は、夏風邪の原因として知られるアデノウイルスによる子供の代表的な急性感染症。発熱やのどの痛み、頭痛、だるさなどが主な症状で、目の充血や痛みなどを伴うことも多くみられます。ワクチンや治療薬はなく、乳幼児や高齢者ではまれに重症化することもあります。プールでの感染が多いことからプール熱と呼ばれ主に夏に流行しましたが、最近は年間を通じて流行しています。

 2017年6月7日(水)

 

■熱中症の救急搬送者、1週間で1086人 昨年同期の2倍近くに上る

 全国で5月29日から6月4日までの1週間に、熱中症の症状で救急搬送された人が1086人いたことが6日、総務省消防庁がまとめた速報値で明らかになりました。

 昨年の同時期の560人と比べて2倍近くに上る搬送者数で、都道府県別では東京都が最多でした。

 消防庁によると、この1週間の搬送者数は前週の745人から約46%増の1086人。

 都道府県別では、東京都が101人で最多となり、埼玉県85人、愛知県61人、福岡県55人、神奈川県と大阪府が51人、千葉県48人、兵庫県40人、京都府35人、福島県34人、岡山県33人の順でした。

 年齢別では、65歳以上の高齢者が537人で最も多く、全搬送者の半数近くを占めました。18歳以上65歳未満が333人、乳幼児を含む18歳未満が216人でした。

 初診時の傷病の程度別では、軽症が714人と6割超を占めましたが、短期の入院が必要な中等症が345人、3週間以上の入院が必要な重症も17人いました。死者はいませんでした。   

 また、日付別では、島根県で35度以上の猛暑日を記録し、各地で30度以上の真夏日を記録した5月30日が318人と最も多く、ほかの日の2倍から3倍近い人が搬送されています。

 消防庁は、体がまだ暑さに慣れていない人が多く、気温が急激に上がると熱中症になる危険性が高まるとして、適切に冷房を使い、こまめに水分を補給するなど熱中症に十分注意するよう呼び掛けています。

 2017年6月7日(水)

 

■乳がん見逃しリスクが高い体質の女性への通知、ガイドライン作成 厚労省が来年3月までに

 女性がなるがんで最も多い乳がんの検診で、がんが見逃されるリスクが比較的高い「高濃度乳房」という体質の女性にどのように通知するか自治体によって対応が異なり、患者団体などから批判が出ています。このため、厚生労働省はほかの検査を紹介するなど、きめ細かい対応を求めるガイドラインを作成することになりました。

 40歳以上の女性を対象にした自治体の乳がん検診では、国の指針で「マンモグラフィー」と呼ばれるエックス線の検査を行うことになっています。ただし、日本乳癌検診学会によりますと、日本人女性のおよそ4割は乳腺の密度が高い高濃度乳房だと推定されています。この場合、がんが乳腺に隠れて画像に写りにくく、検査の精度が最大で50%ほど下がるとされ、見逃しのリスクが指摘されるようになりました。

 しかし、国の指針では高濃度乳房を通知するかどうか定めがなく、8割を超える自治体が乳がん検診の結果として、「異常なし」などと伝えるにとどまっており、患者団体などから批判が出ています。

 厚労省は5日、専門家会議を開き、高濃度乳房の場合、マンモグラフィー検査ではがんの判別が難しいとした上で、がんが見逃されるリスクをきちんと説明したり、超音波の検査など乳腺の密度が影響しない検査を紹介したりして、通知を受けた人が不安にならないよう自治体側にきめ細かい対応を求める方針を決めました。

 厚労省は今後、自治体の対応をまとめたガイドラインを作成し、来年3月までに示したいとしています。

 厚労省は、「国としては有効性が確立しているマンモグラフィーを勧めているが、自治体には受診者に対し、体質を正しく理解してもらった上で、自費で受けられる別の検査などを丁寧に示してほしい」と話しています。

 マンモグラフィー検査は、乳房にエックス線を当てて作った画像を基に診断するもので、大部分を占める脂肪は黒く、がんの病巣は白く映り、がんが比較的小さな段階で見付けることができますが、乳腺も白く映るため、高濃度乳房の場合、全体に白いもやがかかってがんを発見しにくくなります。

 一方、超音波の検査は乳房に超音波を当てて、そのはね返りをモニターに映し出すもので、乳腺の密度に関係なく病巣を浮かび上がらせることができるということです。

 2017年6月6日(火)

 

■福島県の健康検査、新たに7人が甲状腺がん がんの確定は計152人に

 東京電力福島第1原発事故の影響を調べる福島県の「県民健康調査」検討委員会が5日に福島市内で開かれ、今年1〜3月末までに新たに7人が甲状腺がんと診断されたことが明らかになりました。

 2014年度から実施した2巡目の検査(本格調査)で5人、2016年度からの3巡目の検査(本格調査の2回目)で2人が加わり、がんの確定は1~3巡目で計152人となりました。

 福島県は、2011 年3月の原発事故時に18歳以下だったすべての子供約38万人を対象に甲状腺検査を実施。2011年秋から2013年度までの1巡目の検査(先行検査)、2014~2015年度の2巡目の検査が終わり、3巡目の検査に入っており、約3カ月おきに最新の検査結果を発表しています。

 検討委員会では、放射線の影響についての議論はなく、星北斗(ほしほくと)座長(福島県医師会副会長)は「事故による被曝(ひばく)の影響は考えにくい、というこれまでの考えは変わっていない」と説明しました。

 また、検討委員会は、「経過観察」と判断した症例にがんが見付かっていないかを把握していく方針を決めました。県の調査で経過観察とされた事故当時4歳の男児が、その後、医療機関で甲状腺がんと診断されていたことが、市民団体の調査で判明したため。これまで、経過観察中はフォローアップの対象から外れていました。

 星座長は、「委員からは調査の信用にかかわるとの意見もあった。今後は不可欠な情報として扱う」との見解を示しました。

 2017年6月6日(火)

 

■がん対策の新基本計画案、大筋でまとまる がん検診率50%に引き上げへ

 2人に1人がなるといわれるがんの対策について、厚生労働省の協議会は、「予防」と「医療の充実」、「がんとの共生」を柱とする新たな基本計画の案を大筋で取りまとめました。

 厚労省の有識者によるがん対策推進協議会では、今後6年間の国の取り組みを定める「第3期がん対策推進基本計画」について、見直しに向けた詰めの議論が行われました。

 2日に示された案では、「予防」と「医療の充実」、「がんとの共生」を柱として、がんの早期発見に向け、自治体が行うがん検診の受診率を50%に、検診で疑いがあった場合に進む精密検査の受診率を90%に引き上げるとともに、遺伝子情報を基づき最適な治療法を選択するゲノム医療を推進するとしています。

 また、患者の少ない希少がんや治療の難しい難治性がんのほか、子供から高齢者まで世代別のがん医療を充実させるとしています。

 さらに、患者の就学や就労、妊娠、それに認知症の患者への対応など、世代や性別に応じた支援の充実も盛り込み、大筋で了承されました。

 厚労省は東京五輪・パラリンピックが開催される3年後の2020年までに、飲食店や職場での受動喫煙をゼロにするという数値目標を新たな基本計画に盛り込みたいとしていますが、受動喫煙対策の法案を巡る自民党との協議は難航しています。

 これについて、2日の協議会では、患者団体や医療関係者の委員などから「受動喫煙の健康被害は明らかだ」という意見が相次ぎ、基本計画にすべての場所で受動喫煙をゼロにすると明記すべきだという意見で一致しました。

 厚労省は協議会の意見を基に、引き続き自民党などと調整して、どのような数値目標を盛り込むか最終的に判断した上で、この夏の閣議決定を目指すことにしています。

 2017年6月5日(月

 

■尿酸値が正常範囲内でも、腎機能低下に要注意 大阪市立大が解明

 激痛に見舞われる「痛風」を引き起こすことで知られる尿酸は、その値が正常範囲内であっても高めだったり低めだったりすると腎臓の機能低下を招く恐れがあると、大阪市立大学の津田昌宏講師(腎臓内科学)の研究チームが1日、アメリカの専門誌電子版に発表しました。

 津田講師は、「尿酸の数値が正常ならよいとするのではなく、より適正な状態に近付けることが重要」としています。

 日本痛風・核酸代謝学会の指針によると、尿酸値は血液成分の血清100ミリリットル当たり7ミリグラムを超えると高尿酸血症とされ、2ミリグラム以下だと低尿酸血症とするのが一般的。

 研究チームは、腎臓の提供者(ドナー)候補で、尿酸値が正常範囲内にある20~70歳代の約50人の検査データを分析しました。

 その結果、尿酸値が6ミリグラムを超えたり、3・5ミリグラム未満だったりする場合に、腎臓へとつながる微細な動脈で血液が流れる際の抵抗が高まり、腎臓の機能が低下するケースがあることがわかりました。

 尿酸値は、高いと痛風が起きやすく、高血圧や糖尿病などのリスクが高まり、低いと急性腎不全になる可能性があるとされます。痛風は、高尿酸血症が原因となって、足の親指の付け根の関節、時に足、ひざの関節が痛む発作症状で、「風が吹いても痛い」といわれるほど激しい痛みを感じます。痛みの発作は、尿酸が尿酸塩結晶となって関節にたまり、この結晶を異物と判断した白血球が攻撃して起こるといわれています。

 研究チームは今後、尿酸が血流の抵抗を高める仕組みの解明を進めるといいます。

 2017年6月4日(日)

 

■アレルギー疾患の拠点病院を各都道府県に選定 厚労省が方針

 厚生労働省は1日、アトピー性皮膚炎や花粉症などのアレルギー疾患の患者がどこに住んでいても適切な治療を受けられるよう、各都道府県に1~2カ所程度の拠点病院を選ぶとしたアレルギー医療に関する報告書案をまとめました。

 アトピー性皮膚炎や花粉症、アレルギー性気管支ぜん息、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、食物アレルギーなどのアレルギー疾患は、国民の約半数がかかっているといわれる国民病です。その一方で、医療施設や地域によって診断や治療方法に差があり、適切な治療を受ければ支障なく日常生活を送れるものが、誤った治療で状態が悪化するケースがあり問題になっています。

 拠点病院は、かかりつけ医となる診療所や一般病院と連携し、患者の紹介や情報提供を行います。報告書は6月末にまとめて、都道府県に通知し、拠点病院は来年度から整備される見通し。

 報告書案によると、拠点病院は標準的な診断や治療では病態が安定しない重症患者、難治性患者に対し、複数の診療科が連携して診断や治療、管理に当たるほか、医療従事者の人材育成、研究の推進を担います。

 この拠点病院に求められる要件として、内科や小児科、耳鼻科、眼科、皮膚科の専門医やアレルギー専門医が常勤していることが望ましいとしました。ただし、一部診療科で常勤の専門医が不在なら、近隣医療機関の診療科を併せた選定を認めるなど、一定の柔軟性を持たせます。

 現在、国の中心拠点病院としては、国立成育医療研究センター(東京都世田谷区)と国立病院機構相模原病院(神奈川県相模原市)があります。都道府県の拠点病院は、これらの病院とも連携し研修などを行います。

 2017年6月3日(土)

 

■動力不要の健常者向け歩行支援機を発売 今仙電機製作所

 自動車部品メーカーの今仙電機製作所(愛知県犬山市)は1日、電気やモーターを使わず、腰と両足の膝上に固定するだけで歩くことを楽にする無動力歩行支援機「aLQ(アルク)」の販売を東京や関西、東海地域の百貨店で開始しました。9月からは、全国の百貨店などやインターネットでも販売します。

 障害者やリハビリ用ではなく、筋力が落ちた高齢者を中心とする健常者が日常生活で使える歩行支援器具は、世界初といいます。

 二足歩行ロボットの研究に取り組む名古屋工業大学(名古屋市)の佐野明人教授が研究する、重力をうまく活用して歩くための足の構造原理「受動歩行理論」を元に、2014年に今仙電機製作所が発売したモーターなどの動力装置を不要にした介護向けの歩行支援機「ACSIVE(アクシブ)」の技術を基に、健常者が気軽に使える仕様にしました。

 アルクは簡単に着脱できるシンプルな構造で、動力装置がないため充電の必要がなく、歩行中も静か。重さは片足380グラム、両足760グラムと軽量で、足に合わせた長さ調整機能付きのフリーサイズ。

 腰骨の横に付ける「腰ユニット」のフックをベルトに掛け、腰ユニットから伸ばしたアルミパイプの先端を太ももに固定します。歩く際に足を交互に踏み出す動作で生まれる振り子の動きに合わせて、腰ユニットに入っているバネが伸び縮みし、その反動を利用して足運びをサポートする仕組みで、歩行効率が20%向上するといいます。

 坂道や階段の上り下りの負担を減らし、高齢者らがつまずきにくくする効果があるほか、健康作りのためにハイキングやウォーキングを楽しむ若者も使えます。

 佐野教授は、「歩く原理に着目し、自動車製造の技術を応用した産学連携の製品のため、最小限の介入で歩行が支援できる。機械に歩かされている気がしない」と話しています。

 今仙電機製作所によると、アルクを着けると、歩幅が広くなったり、歩行速度が速くなったりするものの、歩行時の心拍数上昇は抑えられ、疲労が軽減するといいます。

 価格は4万6000円(税別)。2019年度に2万7000台の販売を目指します。問い合わせは、今仙電機製作所0120・80・2721へ。

 2017年6月3日(土)

 

■80歳で歯が20本以上ある人、初めて5割超す 2016年、口腔ケア意識の高まりを反映

 厚生労働省は2日、80歳で自分の歯が20本以上ある人の割合が推計で51・2%に上り、初めて2人に1人以上になったとする2016年歯科疾患実態調査の結果を公表しました。40・2%だった2011年の前回調査から10ポイント以上増えました。

 厚労省の担当者は、「歯を強くする成分を配合した歯磨き粉が増えたほか、高齢者らの口腔(こうくう)ケア意識が高まった結果ではないか」としています。

 20本は入れ歯なしにほとんどのものを食べられる目安で、厚労省は「8020運動」として、高齢者の口腔ケアを推進しています。

 調査は昨年10~11月、全国から抽出した1歳以上の男女6278人を対象に実施し、うち3820人の口の中を歯科医が診察しました。

 20本以上の歯がある人の割合は、75~79歳で8・5ポイント増の56・1%、80~84歳で15・3ポイント増の44・2%でした。80歳時点での割合は、75~84歳の結果から推計しました。

 1日の歯磨き回数は、1回が18・3%で3・6ポイント減少。一方で、2回は1・5ポイント増の49・8%、3回以上は2・1ポイント増の27・3%となり、2回以上の割合は前回より増えました。

 調査は6年ごとに実施していましたが、今回から5年ごとに変更されました

 2017年6月3日(土)

 

■乳酸菌を使ったタブレットで虫歯を予防 三井物産、広島大が共同で開発し販売へ

 大手商社の三井物産は広島大学、製菓大手のUHA味覚糖(大阪市中央区)と共同で、虫歯や歯周病を抑える乳酸菌を使ったタブレット「UHAデンタクリア」を開発したと1日、発表しました。

 全国のコンビニエンスストアやドラッグストアで、順次販売を始めます。広島大の二川浩樹教授が発見した「L8020乳酸菌」に着目した三井物産が取引先のUHA味覚糖に持ち掛け、産学連携で商品化につなげました。

 UHAデンタクリアは、ヨーグルト味とクリアミント味の2種類。それぞれタブレットの形、硬さの違う2種類があり、価格は198~594円。

 L8020乳酸菌は、障がい者施設で歯科治療を手掛けていた二川教授が歯磨きをしなくても虫歯や歯周病になっていない患者に着目し、研究を始めました。患者の口腔内にあった乳酸菌に、ミュータンス菌(虫歯菌)や歯周病菌に対して高い抗菌性があり、歯周病菌が発する毒素を不活性化する機能があることを発見しました。

 三井物産は、2015年に立ち上げたビジネス推進部で知財ビジネスを進めています。L8020乳酸菌に着目し、広島大の特許ライセンス会社と共同事業契約を結びました。商品化に至ったのは今回が初めてで、深谷卓司部長は「L8020乳酸菌を使ったほかの商品開発や海外進出も検討していく」と話しています。

 UHA味覚糖は、グミタイプのサプリメントを販売するなどヘルスケア関連商品の開発に力を入れています。口腔内ケアの商品開発を検討していたところ、三井物産からの提案を受け、UHAデンタクリアの開発を始めました。発酵臭を抑えるなど味覚の改良を進め、安定性の高いタブレットとしてまず投入、松川泰治執行役員は「今後は市場の拡大しているグミや得意分野であるアメなどの展開も検討する」と話しています。

 2017年6月2日(金)

 

■角膜の細胞を人工培養し、水疱性角膜症の患者に移植 京都府立医科大が治験実施へ

 目の角膜の細胞を人工的に培養し、角膜が白く濁る重い目の病気の患者に移植する技術を、京都府立医科大学や同志社大学などの共同研究チームが開発しました。実用化を目指して、今年の秋以降、国の承認を得るための治験が行う予定です。

 京都府立医科大学の木下茂教授などの研究チームによりますと、目の角膜の中にある角膜内皮細胞は角膜の透明性を維持するために必須の細胞で、この数が減ると、角膜が白く濁る水疱性角膜症という病気を起こし、失明する恐れもあります。水疱性角膜症の患者は国内に約1万人いると見なされており、治療法は亡くなった人から提供を受ける角膜移植しかないものの、提供が不足しているのが実情。

 研究チームは、提供された角膜内皮細胞を人工的に培養し、注射器を使って複数の患者の目に注入し移植する再生医療技術を開発しました。

 より多くの患者に移植でき、体の負担も少ないということで、これまで臨床研究として30人の患者に移植した結果、全員で症状が改善したといいます。

 研究チームは実用化を目指して、国の承認を得るための治験を行う予定で、今年の秋以降、15人の患者に角膜内皮細胞を移植し、安全性や効果を確認することにしています。

 木下教授は、「従来のドナー由来の角膜移植より、治療後の見え方もよくなると期待できる。2年後の承認を目指したい」と話しています。

 2017年6月2日(金)

 

■介護保険料滞納、差し押さえ過去最多の1万3371人 厚労省が調査

 介護保険料を滞納し、市区町村から資産の差し押さえ処分を受けた65歳以上の高齢者が、2015年度に1万3371人で過去最多となったことが、1日までに厚生労働省の調査で明らかになりました。

 2015年度からは低所得者の保険料を軽減する仕組みが強化されたものの、保険料自体も上昇しているため、なお負担感が重く支払いに困る人が多くなっているとみられます。

 全1741市区町村のうち、3割の564市区町村で資産の差し押さえ処分が行われました。2014年度の1万118人から32%増加し、調査を始めた2012年度以降で最も多くなりました。長崎市の730人が最も多く、大阪市507人、広島市485人、横浜市452人、北九州市451人と続きました。

 大半の人は公的年金から天引きされていますが、年金が年18万円未満で自ら納める必要がある人たちが滞納者となっています。預貯金が少ないことも多く、処分を受けて実際に滞納分を回収できたのは6割強にとどまりました。

 滞納分の時効は2年。差し押さえまでの期間は自治体によって異なりますが、滞納から数カ月の場合もあります。2年以上の滞納があると、原則1割負担で利用できる介護サービスが3割負担となります。

 2015年度中に3割負担の措置を受けた人は、1万447人に上りました。2014年度までの2年分の滞納額は、591億円でした。

 滞納で差し押さえが増える背景には、介護保険料の高騰があります。高齢化で介護サービスの需要が増え、65歳以上の保険料は全国平均で、制度が始まった2000年度の月2911円から2015年度は5514円まで高騰しました。2025年度には、8165円まで跳ね上がる見込み。

 低所得者の保険料軽減策は、消費税の10%増税時に拡充する予定でしたが、増税延期で先送りされました。

 3割負担の措置を受けると、必要な介護サービスの利用をためらう要因になりかねず、厚労省は「制度の周知を図り、2年たつ前にできる限り、納めてもらいたい」としています。

 2017年6月1日(木)

 

■たばこ自販機の設置禁止、成人の7割支持 がん研究センターが調査

 世界保健機関(WHO)が定める世界禁煙デーの5月31日、たばこの自動販売機の設置を禁止すべきだと考える人が成人の約7割に上るとの調査結果を、国立がん研究センターが発表しました。

 5月9~12日にインターネットで調査し、喫煙者1000人を含む計2000人の成人から回答を得ました。喫煙者と非喫煙者の構成比率が、実際の比率と同じになるよう調整して集計しました。

 がん研究センターによると、日本も批准する、たばこ規制枠組み条約の指針では、たばこの自販機は広告や販売促進に当たるとして禁止を推奨。海外では多くの国が、設置を規制しています。

 国内でも自販機の設置を禁止すべきだと思うかを聞くと、約41%が「禁止すべき」、約27%が「どちらかというと禁止すべき」と答え、計約68%に上りました。「どちらともいえない」は約16%で、「禁止すべきでない」または「どちらかというと禁止すべきでない」は計約16%でした。

 たばこ規制枠組み条約の指針が同じく禁止を推奨するコンビニエンスストアなどでのたばこの陳列販売については、約31%が「禁止すべき」、約24%が「どちらかというと禁止すべき」と答え、計約55%に上りました。ただし、陳列販売については、喫煙者と非喫煙者で意識の隔たりが大きく、喫煙者で禁止を支持すると答えたのは17%にとどまりました。

 学校の近くや通学路沿いなど、未成年者が多く利用する店のたばこ販売についても聞くと、約68%が禁止に賛成していました。

 調査したがん研究センターの平野公康研究員は、「国内では、コンビニやスーパーなど多くの場所でたばこに接することができる。健康に害を及ぼすたばこに、未成年者らが容易に手を出さないための対策が必要だ」と話しています。

 2017年6月1日(木)

 

■救急車を呼ぶべき病気の緊急度、サイト「Q助」で判定 消防庁がアプリを無料提供

 総務省消防庁は、けがや病気の症状で緊急度を判定するサイトを開発しました。スマートフォンやパソコンでアクセスし、案内に従って病状や痛みの部位、強さなどを選んでいくと、救急車を呼ぶ必要があるかどうかの目安を教えてくれる仕組み。

 5月25日からスマートフォン用アプリの無料提供を始めました。ウェブ版も提供開始しています。増え続ける救急車の出動件数の「適正化」を図り、重症者を効率よく搬送できるようにするのが狙いです。

 消防庁によると、救急車の出動は2015年には約605万件あり、このうち搬送を実施したのは約547万件でした。また、搬送を実施した人の49・4%が「軽症」で、同庁では「搬送した結果軽症になったケースも多い」としながらも、実態からは適正化の余地が十分にあるとみています。

 サイト名は「Q助(きゅうすけ)」で、消防庁のホームページからたどれるようにしました。個人情報などの登録は不要で、起動させると画面上でまず、「反応がない」「声が出せない」など命にかかわる恐れのある症状から聞き、該当しない場合は、痛みのある部位や強さを問う設問などに進みます。

 その結果、緊急度が高いと判断されれば「今すぐ救急車を呼びましょう」、それ以外は「できるだけ早めに医療機関を受診しましょう」「様子を見て」といった4段階のメッセージが赤、黄、緑、白の色分けとともに表示されます。

 自身で受診する場合に地元の医療機関を検索できるように、厚生労働省のサイト情報も掲載しました。

 消防庁の担当者は、「救急車を呼ぶか判断を迷った時に使ってほしい」と呼び掛けています。

 2017年5月31日(水)

 

■喫煙で年間700万人以上が死亡、経済損失は155兆円 WHOが警告

 世界保健機関(WHO)は30日、喫煙による死者は世界で年間700万人以上に達し、その8割以上が低・中所得国に集中しているとの報告書を発表しました。

 喫煙は健康被害などをもたらし、貧困を生む原因になっていると警告しています。5月31日の世界禁煙デーに合わせ、たばこの害を訴えるのが目的。

 これまで喫煙による死者は年間約600万人としてきましたが、最新の統計に基づき年間700万人以上に増やしました。死者数はさらに上昇し続けると見込んでおり、今世紀に10億人以上が喫煙により死亡する可能性があるとも指摘。健康被害に伴う医療費、および生産性の喪失によって、1兆4000億ドル(約155兆円)の経済損失が生じているとしています。

 対策として、職場や屋内公共施設での禁煙、たばこ製品の宣伝の禁止、たばこの課税強化と値上げが有効としています。

 たばこが環境に与える影響に関する初の報告書も、発表しました。吸い殻には発がん性物質を含む7000以上の有毒化学物質が含まれるにもかかわrず、1日に販売される150億本のうち100億本以上がそのまま廃棄されているとしました。

 WHOによると、喫煙関連の医療費は1人当たり約56ドルで、家計や各国の財政に大きな負担になっているとしました。

 特に低・中所得国には約8億6000万人の喫煙者がいて、最貧家庭では喫煙の費用が家計の10%以上を占めることもあり、食料や教育などに十分お金が使えないと強調。喫煙が盛んな地域では、10%以上の住民が栄養不足だとしました。

 WHOのマーガレット・チャン事務局長は声明で、「たばこは貧困を深刻化させ、経済の生産性を低下させ、さらには家庭での食事における選択肢を狭め、室内の空気を汚染する」と指摘し、「たばこは私たち全員にとっての脅威だ」と訴えています。

 2017年5月31日(水)

 

■膵臓がんと診断された人の離職率、ほかのがんの2倍に 体力低下や副作用影響

 早期発見や治療が難しいとされる膵臓(すいぞう)がんと診断された患者は、離職率がほかのがん患者と比べて約2倍に上るとの調査結果を、がん患者の就労を支援する一般社団法人「CSRプロジェクト」(東京都千代田区)がまとめました。

 治療に専念するケースもありますが、自由回答では「治療費が必要なのに仕事を続けられなかった」との声もありました。

 調査は今年2~3月、膵臓がん患者団体「パンキャンジャパン」の会員を対象にインターネット上で行い、患者26人、家族や遺族26人の計52人から回答を得ました。

 診断後の就労状況は、以前と同じが54%、離職(依願退職と解雇)が23%、転職が4%。CSRプロジェクトが昨年実施した膵臓がん以外のがん患者300人に行った同様の調査では、離職は12%で、約2倍の差があり離職の多さが目立ちました。

 就労継続に影響を及ぼした要因としては、「体力の低下」「薬物療法に伴う副作用」が多くなりました。また、診断後の経済的な負担も、膵臓がん患者は84%が「とても負担」「やや負担」と答え、そのほかのがん患者の同じ回答の51%を大きく上回りました。

 膵臓がんは発見された時は進行して治療が難しくなっていることも多く、国立がん研究センターの分析による5年生存率は7・7%と、胃がんの約65%、乳がんの約92%などより低くなっています。国の次期がん対策推進基本計画では、こうした難治性がんへの対策が初めて盛り込まれる予定です。

 CSRプロジェクトの桜井なおみ代表理事は、「就労の継続は、社会とのつながりや経済的な支えなど、患者にとって重要な意味を持つ。本人が希望するなら、周囲も意思を尊重し仕事が続けられるよう支援することが必要だ」と訴えています。

 2017年5月30日(火)

 

■患者死亡率、若手医師のほうがベテラン医師より低い アメリカの大学が分析

 肺炎や心不全などで緊急入院した高齢患者の死亡率は若手の内科医が担当したほうが低いことが、アメリカのハーバード公衆衛生大学院の津川友介研究員(医療政策)らの研究で明らかになりました。

 研究チームは、若手の内科医が教育や研修で得た最新の知識や考え方を診療に用いているためとみています。成果は、イギリスの医学誌「BMJ」に掲載されました。

 研究チームは、アメリカ全土の病院に2011~2014年に内科系の病気で入院した65歳以上の延べ約74万人の診療記録を分析。シフト勤務中に緊急入院してきた患者を区別なく診ている「ホスピタリスト」と呼ばれる内科医約1万9000人について、年齢で治療成績に差があるかを調べました。患者の年齢、重症度などの要素を調整し、比較できるようにしました。

 その結果、緊急入院後30日以内の死亡率は、40歳未満の医師が担当した患者では10・8%でしたが、40歳代では11・1%、50歳代では11・3%と上がり、60歳以上では12・1%と高くなりました。ただし、多くの入院患者を診ている医師に絞ると、年齢による差はなく、全体の死亡率11・1%より低くなりました。

 ベテランの医師の治療を希望する患者は、少なくありません。今回の成果がほかの診療科や日本に当てはまるかどうかは検証が必要ですが、津川研究員は「若手の内科医をもっと信頼していいと考えられる。高齢の医師を受診する際は治療実績の情報を集めるとよいだろう」と話しています。

 医療制度に詳しい慶応大学の後藤励(れい)准教授(医療経済学)は、「ベテランは経験を積むことで技能はあるが、『最新の知識』の習得という側面では遅れているのではないかという視点を踏まえて検討した画期的な成果。国内でも検証を行う価値はある」と話しています。

 2017年5月30日(火)

 

■がん患者のゲノム調べ、最適の治療法選択 本年度中に中核拠点病院指定へ

 がん患者のゲノム(全遺伝情報)を調べて、個人の体質や病状に適した治療法を選ぶ最先端の「がんゲノム医療」で、全国展開に向けた実行計画をまとめた厚生労働省の報告書案が28日、明らかになりました。

 先行して本年度中に、7カ所程度の十分な体制が整った「中核拠点病院」を指定。2年以内に中核拠点病院と連携する実施病院をさらに増やし、数年後には全都道府県の病院で実施することを目指します。

 高い効果が期待される画期的な医療を地方でも受けられるようにし、がん死亡率のいっそうの低下を狙います。29日の専門家会議に報告書案を示し、厚労省が予算措置を検討します。

 がんゲノム医療は、原因となる遺伝子の変異を調べ、最適の薬や治療法を選びます。病気の原因に直接対処することで、従来の肺や胃など臓器別の治療より効果的とされます。現在は欧米が先行し、日本では一部病院が試験的に実施していますが、普及が進めば日本のがん治療の在り方を根本から変える可能性があります。

 実行計画では、100種類以上の遺伝子変異を一度に調べられる検査機器を、優先的に薬事承認して開発を後押しし、医療現場での検査を早期に可能にします。患者の負担を抑えるため、検査費には保険を適用します。

 全国の病院からデータを集める「情報管理センター」も新設。究極の個人情報とされる遺伝情報を長期間扱うため、国立がん研究センターでの運営を想定しています。

 現状では遺伝子を解読しても有効な薬は限られ、治療法の開発も課題です。情報管理センターでは、患者の遺伝子変異と治療成績、副作用の有無などの膨大なデータを人工知能(AI)で分析し、効果的な新薬や治療法の開発につなげます。

 中核病院の要件は、遺伝子検査の技術がある、結果を医学的に判定できる、患者への遺伝カウンセリングが可能など。中核病院の支援により、全国に約400ある「がん診療連携拠点病院」でも態勢が整えば、順次ゲノム医療を提供できるようにします。

 情報管理センターは、各地での臨床研究の情報を対象となる患者に提供し、治療法を選ぶ機会を増やします。検査での患者の負担を軽くするため、手術などではなく、血液や尿から遺伝子を検出する方法の開発も進めます。

 2017年5月29日(月)

 

■北大など皮膚に貼るインフルワクチン開発 マウスで注射より高い効果

 皮膚に貼って使う新しいタイプのインフルエンザワクチンを北海道大学などの研究チームが開発し、27日に長崎市で開かれた日本臨床ウイルス学会で発表しました。

 マウスを使った実験で注射より効果が高いことが確かめられ、新型インフルエンザとしての流行が懸念されるH5N1型の鳥インフルエンザウイルスにも効いたといいます。

 北大大学院獣医学研究院の迫田義博教授は、「人間への活用を目指したい」としています。実用化されれば、痛みが少なく負担の軽減につながりそうです

 皮膚から体内に吸収されて効果を発揮する貼り薬は、薬効成分の分子が比較的小さく吸収しやすい薬では実用化されています。しかし、ワクチンやペプチド医薬など分子量が大きい薬は、貼り薬にするのは困難とされていました。

 貼るインフルエンザワクチンは、迫田教授らと富士フイルムが共同で開発したもので、体内で溶ける糖の高分子にインフルエンザウイルスのタンパク質でできたワクチンを混ぜて長さ0・5ミリの微小な針を作り、シートの上に並べました。シートを皮膚に貼って数分後にはがすと、体内に針が残って徐々に溶けワクチンが放出される仕組み。

 研究チームはマウスを使い、毎年流行する季節性のA型インフルエンザとH5N1型で実験。マウスの背中にシートを5分間貼り付けた後にウイルスに感染させ、皮下注射でワクチンを投与した場合と効果を比較しました。

 この結果、季節性とH5N1型のどちらも、貼るワクチンを使ったマウスの生存率が皮下注射をおおむね上回りました。注射より少ない量のワクチンでも、効果がありました。

 富士フイルムの小山田孝嘉マネージャーは、「ウイルスを認識して抗体の産生を促す細胞は皮膚近くに多く存在するため、貼るほうが高い効果が得られる可能性がある」と話しています。

 2017年5月29日(月)

 

■運動の後の乳製品摂取、生活習慣病の改善や予防の可能性も 信州大学が研究

 運動をした後に牛乳やヨーグルトなどの乳製品を摂取すると、運動だけを行うより筋力が増加し、生活習慣病の改善や予防につながる可能性があるという研究結果を、中高年の健康づくりに取り組んできた信州大学の研究チームがまとめました。

 信州大学大学院医学系研究科の能勢博教授らの研究チームでは、汗ばむ程度の速歩きとゆっくりとした歩きを3分ごとに交互に行う「インターバル速歩」という運動を半年以上続けている55歳から75歳の女性37人を、「運動だけのグループ」、「運動の直後に6ピースのチーズ1個またはカップのヨーグルト1個を食べるグループ」「運動の直後にチーズ1個とヨーグルト2個を食べるグループ」という3グループに分け、それぞれ週4回、5カ月間、続けてもらい、運動の後に乳製品を摂取することで体にどのような効果が現れるか調べました。

 その結果、インターバル速歩の直後、チーズ1個とカップのヨーグルト2個を摂取したグループでは、5カ月後の筋力が平均で8%増加しました。一方、運動だけのグループと、乳製品の摂取が少なかったグループでは、大きな効果がみられず筋力はほとんど変わりませんでした。

 また、乳製品の摂取が多かったグループでは、生活習慣病につながる慢性の炎症反応を引き起こす「NFKB1」と「NFKB2」という2つの遺伝子の働きが、それぞれ平均で29%と44%抑えられていました。

 能勢教授は、「安くて誰にでも手に入る乳製品を運動の後に多めに摂取すれば、筋力がより上がって、生活習慣病のいろんな症状を改善したり予防したりできると考えられる。具体的には、ややきついと感じる運動を1日15分行った後にタンパク質を10〜12グラム程度摂取し、週に4日ほど2カ月くらい続ければ、効果が期待できる」と話しています。

 2017年5月28日(日)

 

■高所得者の介護自己負担、来年8月から3割に 大企業社員らの保険料も増

 所得の高い高齢者が介護保険サービスを利用する際の自己負担を来年8月から3割に引き上げることを盛り込んだ改正介護保険関連法が26日、参院本会議で自民党、公明党、日本維新の会などの賛成多数で可決、成立しました。

 介護保険サービスの自己負担は原則1割ですが、2015年8月から一定所得(単身で年金などの所得が年280万円以上)のある人は2割になりました。3割負担となる具体的な所得水準は今後政令で定めますが、厚生労働省は単身で年340万円以上(年金収入のみでは344万円)、夫婦世帯で年463万円以上を検討しています。

 ただし、介護サービスには自己負担の月額上限(単身で年383万円以上の人は4万4400円)を設ける「高額介護サービス費」の制度があり、サービス利用の多い人で負担が増えないケースもあります。厚労省の推計では、サービス利用者全体の3%に当たる約12万人が負担増の対象となります。

 これらの制度変更で厚労省は、年100億円ほどの介護費の抑制効果があるとみており、今後も比較的お金に余裕がある人を中心に負担が増える可能性があります。

 40~64歳が支払う介護保険料については、収入によって負担が増減する「総報酬割」という計算方法を導入。この結果、大企業の社員や公務員らを中心に約1300万人は負担が増え、中小企業の会社員を中心に約1700万人は負担が減ることになります。今年8月から保険料の2分の1に反映し、4段階で割合を増やして2020年度に全面実施します。全面実施となる2020年4月から、負担増となる人の保険料は今より平均月700円以上(事業者負担分を含む)増えます。これで国費を年約1600億円抑えられると、厚労省はみています。

 介護保険の費用は制度が始まった2000年度の3兆6000億円から膨らみ続け、今は10兆円を超します。団塊の世代が75歳以上となる2025年度には約20兆円に倍増するとの試算もあります。

 また、高齢者らが長期入院する介護療養病床の廃止時期を当初予定の2017年度末から2023年度末に6年延長し、新設する「介護医療院」への転換を促します。悪質な有料老人ホームの指導監督を強化し、「事業停止命令」措置を来年4月から創設します。

 2017年5月28日(日)

 

■バイエル薬品、副作用報告漏れ 血栓症治療薬「イグザレルト」の12件

 大手製薬会社「バイエル薬品」(大阪市)は26日、製造販売している血栓症の治療薬「イグザレルト」について、医薬品医療機器法(薬機法)で必要とされる国への副作用報告を怠った事例が12件確認されたと発表しました。

 厚生労働省によると、医薬品医療機器法に基づき15~30日以内に報告が義務付けられている重い副作用も7件含まれていました。

 バイエル薬品は2012年1月に、血液を固まりにくくするイグザレルトの販売承認を取得。同年2月から2013年まで、他社も販売している血栓症治療薬について、希望する医薬品の形状や服薬回数などを調べるため、血栓症の患者を対象に実施したアンケートで、「鼻血や皮下出血が起こりやすい」「胃腸が痛かったり、むかむかしたりする」など副作用の回答があったにもかかわらず、国に報告しませんでした。

 社員が社内の安全管理部門に伝えていませんでした。未報告の中に死亡例はないといいます。

 同社では先月、社員が宮崎県内の診療所の患者のカルテを無断閲覧していた問題が発覚し、社内調査の中で副作用の未報告も判明。今月24日までに国に届け出ました。ほかの薬でも未報告がないか調査する方針です。

 バイエル薬品は、「関係者にご迷惑とご心配をおかけしておりますことを心より深くおわび申し上げます」と謝罪しました。

 2017年5月27日(土)

 

■筋肉の難病ALSに白血病治療薬が有効 京大、患者iPS細胞を使い解明

 京都大学iPS細胞研究所の井上治久教授(神経内科学)らは24日、全身の筋肉が次第に衰えていく難病の筋委縮性側索硬化症(ALS)の治療につながる薬の候補物質を突き止めたと発表しました。

 マウスを使った実験で、慢性骨髄性白血病の治療薬の効果が高いことを確かめました。すぐに使えるわけではないものの、有効な治療法がない難病の克服に近付いたとみています。

 ALSは脊髄(せきずい)にある運動神経が徐々に機能を失って全身の筋肉が動かなくなる病気で、進行すると呼吸も難しくなります。50歳以上に多く、国内に約9000人の患者がいるとされますが、発病の詳細なメカニズムは不明で根本的な治療薬が見付かっていません。

 研究チームはまず、ALSの患者の皮膚からiPS細胞(人工多能性幹細胞)を作製し、運動神経細胞に変化させて調べました。健康な人から作った神経細胞と比べると、異常なタンパク質が蓄積して細胞死が起こりやすくなることを見付けました。さらに、処方薬など1416個の化合物について調べたところ、27個が細胞死を強く抑えていました。

 このうち慢性骨髄性白血病の治療薬「ボスチニブ」は、細胞内で不要なタンパク質を分解するオートファジーを促す機能があり、ALSの原因タンパク質を減らすとわかりました。ALSにかかっているマウスにボスチニブを投与すると、発症を平均10日遅らせて生存期間を平均8日延ばす効果を確認できました。

 いろいろなタイプのALSに効果が期待できるといいます。井上教授は、「投与する濃度や副作用、安全性など基礎的な研究に数年、新たな薬の開発には5~10年の時間がかかる。すぐに治療に使用できるわけではないが、治療薬研究の進展に貢献する成果だ」と話しています。

 2017年5月27日(土)

 

■肉やパン、乳製品の欧米型食事でも死亡リスク1割低減 国際医療研究センターなどが追跡調査

 国立国際医療研究センターと国立がん研究センターは24日、肉やパン、乳製品といった「欧米型」の食事を多くとる人は少ない人よりも死亡リスクが低くなる傾向があると発表しました。「欧米型」は高カロリーで健康に悪いとされますが、両センターは「欧米型でも日本人は欧米人より肉や塩分量が少ないことなどから死亡リスクが低くなった」とみています。

 岩手県、秋田県、茨城県、新潟県、長野県、大阪府、高知県、長崎県、沖縄県の9府県10地域の40~69歳の男女約8万人を1990年代から約15年間、追跡調査しました。

 食事のグループは5年後の食事調査で、計134項目の食品や飲料の摂取量から欧米型のほか、脂の多い魚や野菜、豆類などを多く食べる「健康型」、和食中心で漬物や味噌汁などを好む「伝統型」に分類。さらに、それぞれのグループを、関連する食品などをより多く摂取した順に高低の傾向で4つのグループに分けました。

 すべての死因で比較すると、欧米型は最も食事の傾向が低いグループを1とすると、傾向が高いほど死亡リスクは低くなり、最も摂取していたグループは1割リスクが低くなりました。がんと、心疾患や脳血管疾患など循環器疾患でも、同様の傾向がありました。いずれでも最も摂取していたグループは、2番目に高いグループより数値が上がったものの、統計的な差はないといいます。

 健康型の食事でも、最も傾向が高いグループは死亡全体のリスクは2割、循環器疾患の死亡では3割、脳血管疾患の死亡では4割リスクが低下しました。魚に多い多価不飽和脂肪酸のほか、マグネシウムやカリウムなどのミネラルの摂取が多いことによると考えられます。

 伝統型では、摂取量と死亡リスクとの関係はみられませんでした。

 肉などは、死亡のリスク上昇との関連が報告されています。両センターは、「欧米型といっても、日本人は欧米人に比べて肉類を食べる量が少なく、ヨーグルトやチーズなどの乳製品、コーヒーを好む」と指摘。塩分の摂取量も少ないことも加わって、死亡リスクが低減したとみています。

 分析に当たった国際医療研究センターの溝上哲也疫学予防研究部長は、「野菜や大豆類、きのこ、脂の多い魚などを多く取りながら、乳製品や肉類もほどよく食べることが長寿の秘訣。日本人の寿命が延びたのも、こうした食事のお陰」と話しています。

 2017年5月26日(金)

 

■失業や再就職で脳卒中リスクが上昇 4万人超の追跡調査で判明

 失業などで無職になった経験がある人は継続的な有職者に比べ、脳卒中の発症や、そのために死亡するリスクが高まる可能性があることが、国立がん研究センターや大阪大学などの研究チームの調査で明らかになりました。

 再就職すると、男性では脳卒中リスクが高まるものの、女性ではあまり変化は出ないといいます。

 就労状況は健康に影響を与える重要な要因となり、一般的に失業者は有職者に比べて健康状態が悪いことが報告されています。しかし、過去の研究の多くは、気分の低下や抑うつなどの精神的健康に焦点を当てた短期的な影響をみたもので、長期的な身体的健康への影響を調べた調査はあまりありません。

 今回の研究では、1990年と1993年に岩手県、秋田県、長野県、沖縄県、茨城県、新潟県、高知県、長崎県の9地域に在住していた45〜59歳の男女4万1728人を対象に、約15年間追跡。研究開始時の就労状況と5年後の調査時の就労状況から、就労状況の変化を「継続して有職」、「仕事を失った(有職から無職へ)」「再就職した(無職から有職へ)」「継続して無職」の4つに分類し、その後の脳卒中の発症リスクや脳卒中による死亡リスクを算定しました。

 その結果、継続的に就労していた対象者に比べて、失業したことのある対象者では脳卒中リスクが高いことが明らかになりました。失業すると、男性では脳卒中を発症するリスクは1・76倍、脳卒中による死亡リスクは3・00倍に上昇しました。女性でも失業すると同様に、脳卒中を発症するリスクは1・38倍、脳卒中による死亡リスクは1・98倍に上昇しました。

 また、再就職した男性でも、脳卒中を発症するリスクは2・96倍、脳卒中による死亡リスクは4・21倍にも上っていました。一方、再就職した女性では、脳卒中を発症するリスクは1・30倍、脳卒中による死亡リスクは1・28倍とあまり変わりませんでした。

 研究チームによると、失業の経験が脳卒中リスクを上昇させる理由として、失業による生活習慣や精神状態の変化が考えられるといいます。また、男性で再就職による脳卒中リスクの上昇がみられた理由としては、再び得た職業を失わないために無理をすることや、失職を恐れることによる精神的ストレスの増加などが考えられるといいます。

 国立がん研究センターは、「男性の再就職者や失職者での脳卒中リスクが、継続的に就労している人よりも高いので、健康管理にも注意する必要がある」と指摘しています。

 2017年5月25日(木)

 

■超音波で無痛の乳がん検診、日立が新技術を開発 2020年にも実用化へ

 日立製作所は24日、痛みを伴わずに乳がんを検診できる技術を開発したと発表しました。

 水を満たした検査容器に乳房を入れて超音波を360度の方向から照射、音波の速度などから腫瘍の有無や特性を判別できます。測定時間は1分ほどですみ、精度も高いといいます。

 4月から北海道大学病院と共同研究を始めており、3年後の2020年ごろの実用化を目指します。すでにイヌの臨床試験で、微小な腫瘍の検出に成功したといいます。

 開発した技術では、受診者はベッドにうつ伏せになり、穴が開いた部分から乳房を水に満たした容器に入れて検査を受けます。乳房を囲むようにリング状の装置が上下し、360度の方向から超音波を照射してスキャンし、その反応で腫瘍の硬さや粗さなどをとらえることで、良性か悪性かを総合的に診断します。放射線被曝(ひばく)の恐れもありません。

 乳がんは女性に最も多いがんで、治療は早期発見がカギとなります。現在の検診は乳房を押しつぶしてレントゲン撮影するマンモグラフィー(乳房X線撮影検査)が主流ですが、痛みを伴うほか、放射線被曝の問題があり、母乳をつくる乳腺の密度が高い人の場合は腫瘍が乳腺の陰に隠れて見付けにくいという課題もありました。マンモグラフィーと併用して、超音波(エコー)を使う検診では、1方向から照射するため、検査をする人の技量によって精度が違うという問題がありました。

 開発に当たっている日立製作所基礎研究センタの川畑健一さんは、「現状の検診よりも簡単に測れる上に精度がよく、誰がやっても同じ結果が出る検査を目指して開発した」と話しています。

 2017年5月25日(木)

 

■亀田製菓「ソフトサラダ」に金属片混入 宮城県の小学生が口にけが

 新潟市の大手菓子メーカー「亀田製菓」が製造したせんべいに金属片が混入し、このせんべいを食べた宮城県の小学生が口にけがをしていたことが24日、わかりました。亀田製菓はホームページで謝罪し、品質管理を強化していくとしています。

 亀田製菓によりますと、4月3日、宮城県の小学2年生の女児(7歳)が主力商品のせんべい「20枚ソフトサラダ」を仙台市の友人方で食べたところ、金属片が混入していて口にけがをしたと、女児の母親から連絡があったということです。

 会社が調べたところ、混入していたのは長さ12・3ミリ、直径0・3ミリの細い金属片で、新潟県阿賀野市にある水原工場で、製造ラインの給水配管内の異物を取り除く「ストレーナー」という部品を洗浄する金属ブラシの一部と確認されました。水原工場では、せんべいが作られる2週間ほど前に、製造ラインで年に1度の清掃が行われたということで、その際に割れるなどしてストレーナーに残り、商品に混入した可能性があるといいます。商品は金属探知機を通しているものの、そこでは発見されませんでした。

 亀田製菓は、小学生と母親に謝罪するとともに管轄の保健所に報告し、改善を指示されたということです。金属ブラシには、ほかに欠けている部分はなく、同様の被害の申し出が寄せられていないことなどを理由に、「この商品以外への混入はない」として、20枚ソフトサラダの回収は行いません。

 亀田製菓はホームページで、「ご迷惑をおかけしたお客様に心よりおわび申し上げます。品質管理の一層の強化に努める所存です」と謝罪しました。同社では今後、ストレーナーの金属ブラシ洗浄をやめて、ストレーナーを定期的に交換するようにするといいます。

 2017年5月25日(木)

 

■後発医薬品の普及8割以上、目標時期を2020年9月に前倒し 厚労省が表明

 厚生労働省は、後発医薬品(ジェネリック)の普及割合を80%に引き上げる目標時期について、2020年9月に半年前倒しする方針を固めました。薬剤費は増え続けており、価格の安い薬の普及を加速させて社会保障費の抑制を目指します。

 23日に開かれた政府の経済財政諮問会議で、塩崎恭久厚生労働相が表明しました。

 後発医薬品は特許が切れた先発医薬品と同じ成分で、公定価格(薬価)は先発医薬品の2~7割程度と安価。普及を早めて薬剤費を抑制させます。前倒しによる具体的な財政効果は試算していませんが、先発医薬品から後発医薬品にすべて置き換えた場合の効果額は9400億円程度との試算もあり、普及割合が80%に引き上がれば抑制効果は数千億円規模に上る見込みです。

 2015年に定めた普及目標は、「2020年度末までのなるべく早い時期に80%以上」。2017年の普及割合は推計で65・1%で、普及していない地域での取り組みを強化します。

 また、今はほとんど普及していない遺伝子組み換えや動物細胞などを使ってつくる「バイオ医薬品」の後発品の開発に向けた研究支援も進め、品目数を今の29から2020年度末までに倍増を目指します。

 さらに、特許期間中の新薬の価格を維持する加算制度については、対象とする医薬品の範囲や企業を見直す方針も打ち出しました。使われない残薬や重複投薬を減らすため、かかりつけ薬剤師の普及も表明しました。

 2017年5月24日(水)

 

■文科省がES細胞の作製を了承 京大が申請の臨床用計画

 文部科学省の専門家委員会は22日、京都大学の研究チームが申請していた再生医療に使うためのES細胞(胚性幹細胞)の作製計画を大筋で了承しました。

 厚生労働省の委員会でも同様の計画を審査中で、了承されれば国内で初めて臨床用のES細胞の作製が可能になります。

 ES細胞は、iPS細胞(人工多能性幹細胞)と同様にさまざまな臓器や組織に変化する能力を持った細胞で、受精卵から作られます。

 京大の計画では、人への臨床応用が可能な品質のES細胞を10年で約20種類作製し、治療や研究を実施する機関に提供します。

 受精卵は、不妊治療などで使わなくなったものを利用。文科省の専門家委員会では、受精卵提供者からの同意の取り方について、慎重にすべきだなどとの意見が出ました。

 日本では、受精卵を壊して作るES細胞は生命倫理上の議論があり、臨床研究など再生医療向けの作製が禁止されてきましたが、2014年に厚労省が改正した臨床研究指針で認められました。

 北米やイギリスでは、目の難病などを治療するためにES細胞を使う臨床試験(治験)が実施されています。血液などに遺伝子を導入して作製するiPS細胞はがん化の懸念があり、再生医療への応用ではES細胞のほうが安心と考える研究者もいます。

 2017年5月23日(火)

 

■自殺死亡率、日本は世界ワースト6位 若年層の死因1位は自殺

 厚生労働省は世界各国の自殺死亡率(人口10万人当たりの自殺者数)を比較し、日本は世界ワースト6位だとする分析結果をまとめました。先進国の最悪レベルで、特に女性は世界ワースト3位と高くなっています。

 今月下旬に閣議決定される「2017年版自殺対策白書」で公表されます。

 自殺死亡率は国によって統計の信頼性や更新頻度が異なるため単純な比較が難しく、世界保健機関(WHO)が2014年に初めてまとめた「世界自殺リポート」でも順位付けはしていません。

 厚労省はWHOのデータベースを使い、2013年以降の人口と自殺者数が把握できている中から上位国を抽出しました。

 日本の2014年の自殺死亡率は19・5で、アジアでは世界ワースト2位で28・5の韓国の次に高くなっており、主要8カ国(2011~2014年)との比較では、ロシアの21・8に次いで高くなっています。

 男性の自殺死亡率は27・7で、世界ワースト12位でした、女性の自殺死亡率は11・7で、韓国、スリナムに続き世界ワースト3位でした。

 警察庁の自殺統計によると、2016年の自殺者数は2万1897人(男性1万5121人、女性6776人)で、2003年の3万4427人をピークに減少傾向が続いています。しかし、自殺が最も多い中高年の男性に比べて若年層は減り幅が小さく、5歳ごとに区切った年齢階級別でみると、15歳から39歳までの5階級で、死因の1位が自殺でした。

 自殺対策白書は、「若い世代の自殺は深刻な状況にある。20~30歳代の自殺死亡率を低下させることが課題」と分析しています。

 2017年5月23日(火)

 

■突然死のブルガダ症候群、特定遺伝子変異で再発2倍に 日本医科大が解明

 30歳代から50歳代にかけての男性に多く、重篤な不整脈である心室細動により失神し、死に至る場合がある心疾患「ブルガダ症候群」で、ある特定の遺伝子に変異があると再発のリスクが高いことを、日本医科大学などの研究チームが明らかにしました。

 論文は、アメリカの心臓病学会誌「サーキュレーション 」電子版に発表されました。

 ブルガダ症候群は、心電図に特徴的な波形があり、日本では健康診断で1000人に1人程度で見付かります。心臓が細かくけいれんする心室細動を起こし、失神したり、突然死を起こしたりすることもあります。

 研究チームは、ブルガダ症候群の患者の2割弱で、心臓の電気信号を調節するSCN5Aという特定の遺伝子に変異がみられることに着目。心室細動になったり、健診で診断されたりした415人を7年間、全国14施設で追跡調査したところ、この遺伝子に変異があった患者は変異がない患者に比べて、致死性不整脈が2倍の頻度で起きていました。

 突然死を防ぐには、不整脈が起きた際に作動する植え込み型除細動器(ICD)を事前に胸に着ける方法が一般的です。

 研究チームの清水渉・日本医科大教授は、「今回の研究成果は、再発を防ぐために除細動器を使うかどうかを判断するための一つの材料になる」と話しています。

 2017年5月22日(月)

 

■がん治療前の卵子の凍結保存、1年間で256件 厚労省が初の実態調査

 がんの治療前に卵子の凍結保存をしておいた場合に将来、子供を作れる可能性のある未婚のがん患者の女性は、推計で年間およそ5000人に上るのに対し、実際に凍結保存をしているケースは年間およそ250件にとどまっているとする初の報告書を国の研究班がまとめました。

 専門家は、「地元に対応できる医療機関がないといった地域格差などによって、がん患者の女性が子供を持てる機会を失っている可能性があり、早急な対策が必要だ」と指摘しています。

 抗がん剤や放射線治療の副作用よって、卵巣の機能が失われて不妊になる恐れのある若いがん患者の女性にとって、治療前の卵子の凍結保存は将来子供を作る可能性を残せる重要な手段となっています。

 その一方で、実際にどの程度、卵子の凍結保存が行える態勢が整っているのか国内の実態はつかめておらず、厚生労働省の研究班が全国600の不妊治療を行う施設を対象に初の実態調査を行いました。

 その結果、15歳から39歳までの未婚のがん患者の女性は毎年、推計およそ5000人に上る一方、女性が実際に卵子を凍結保存したケースは、2015年1年間で256件にとどまっていました。

 また、がん患者の女性が卵子の凍結保存を行う施設は、日本産科婦人科学会に登録する仕組みになっていますが、14の県ではまだ登録施設がないということです。

 研究班の代表で、聖マリアンナ医科大学の鈴木直教授は、「がん治療を優先するため、卵子の凍結保存ができないという人もいると思うが、将来子供を作りたいと願うがんの女性が、地域の医療格差などによって、その機会を失っている可能性がある。自治体の枠を越えて、がんの治療医と不妊治療を行う医師が連携を取っていくなど、早急な対策が必要だ」と話しています。

 2017年5月22日(月)

 

■がん化の恐れあるiPS細胞、2時間で除去 京大が薬剤を開発

 京都大学の斉藤博英教授(生命工学)らの研究チームは18日、iPS細胞(人工多能性幹細胞)の中から、がんになる恐れのある不要な細胞を約2時間で除去できる薬剤を開発したと発表しました。

 iPS細胞を移植治療に使う再生医療の安全性を高められます。成果は、アメリカの科学誌「セル・ケミカルバイオロジー」(電子版)に掲載されました。

 iPS細胞から神経や心筋などの細胞を作って人に移植する場合、変化しないまま残ったiPS細胞はがんなどの腫瘍になる恐れがあります。現在は高額な機械を使って取り除く必要があり、より簡単で安価な手法が求められていました。

 開発した薬剤は、アミノ酸の集まりでできた「ペプチドD―3」と呼ぶ化合物。変化していないiPS細胞と心筋細胞に育ったものを混ぜた混合物に、ペプチドD―3を加えると、2時間ほどで変化していないiPS細胞がほぼ消えました。正常な心筋細胞には影響が出なかったといいます。

 混合物をマウス4匹の精巣に移植したところ、8つの精巣のうち7つでがんになる可能性がある腫瘍ができました。一方、混合物にペプチドD―3を約1時間加えてからマウス4匹の精巣に移植すると、どの個体にも腫瘍ができませんでした。

 研究チームは、「未分化のiPS細胞を短時間で簡便に除去できる。iPS細胞を利用する再生医療の安全性を高めるのに役立てたい」としています。

 2017年5月21日(日)

 

■医療サービスの質が高い国ランキング、日本は11位 トップ20のほとんどは欧州各国が占める

 世界195カ国を対象に医療サービスの質を比較したランキングが19日、イギリスの医学誌ランセットに発表され、日本はトップ10入りを逃し、11位に位置付けられました。

 発表したのは「ヘルスケア・アクセス・アンド・クオリティー(HAQ)インデックス」で、マイクロソフト会長だったビル・ゲイツ氏と妻メリンダさんによって2000年に創設された世界最大の慈善基金団体ビル&メリンダゲイツ財団がメインスポンサーとなっています。

 HAQインデックスのランキングは、適切な医療を受ければ予防や効果的な治療が可能な32疾患の死亡率に基づいたもので、2015年の状況を反映しています。

 1位は前回のランキング発表に引き続き、フランスとスペインに挟まれた小国のアンドラで、2位は北欧のアイスランド。人口100万人以上の国で最上位にランクインしたのはスイスで、3位でした。

 上位20カ国中、6位のオーストラリア、11位の日本、17位のカナダ以外はすべて欧州の国でした。欧州のほとんどの国は、何らかの形で国民皆医療保険制度を導入しています。ただし、イギリスは期待されるレベルに大きく届かず、30位にとどまりました。

 一方、多くの国民に初めて保険適用の恩恵をもたらした医療保険制度改革(通称オバマケア)の撤廃を与党・共和党が求めているアメリカは、35位に沈みました。最下位は中央アフリカ共和国、194位はアフガニスタン、193位はソマリアでした。

■医療サービスの質が高い国トップ20

 1位 アンドラ、2位 アイスランド、3位 スイス、4位 スウェーデン、5位 ノルウェー、6位 オーストラリア、7位 フィンランド、8位 スペイン、9位 オランダ、10位 ルクセンブルク、11位 日本、12位 イタリア、13位 アイルランド、14位 オーストリア、15位 フランス、16位 ベルギー、17位 カナダ、18位 スロベニア、19位 ギリシャ、20位 ドイツ

 2017年5月21日(日)

 

■「近隣住宅受動喫煙被害者の会」が会員500人で発足 「ベランダ喫煙禁止法」の制定を要求へ

 いわゆる「ホタル族」らがマンションのベランダなどで吸うたばこの煙が近隣住宅へ流れる受動喫煙に悩む被害者らが19日、「近隣住宅受動喫煙被害者の会」を正式に発足させました。

 東京都千代田区で開かれた設立総会で、埼玉県在住の荻野寿美子代表(49歳)は「受動喫煙で夜も眠れない人や、ぜんそく発作を起こした子供もいる。一人で立ち向かうのは難しい。協力して住みよい環境づくりを目指したい」とあいさつ。荻野代表自身も受動喫煙で健康被害を受け、マンションの管理会社や管理組合に働き掛け5年かかって住環境を改善したといいます。

 被害者の会では今後、日本弁護士連合会へ人権救済を申し立てたり、「ベランダ喫煙禁止法」と「ベランダ喫煙禁止条例」の制定を求め国や自治体へ申し入れをしたりする予定です。

 すでにホームページを開設している被害者の会には、近隣のホタル族による受動喫煙の被害者らから問い合わせがあり、19日までに約500人が会員登録しました。

 近隣住民による受動喫煙を巡っては、トラブルを避けるため苦情をいえない被害者が目立ちます。被害者の会役員の岡本光樹弁護士は、「住居での受動喫煙の相談を年間約40件受けてきた。個別に解決策を助言してきたが、法律や条例の制定による抜本的な解決を目指したい」と抱負を語りました。

 設立総会後は被害者相談会も行われ、「マンションの通気口からたばこの煙が入ってくるが、誰が吸っているか特定できない。近所の関係はよいので、良好なコミュニティーを維持したまま解決できないか」などの相談が寄せられました。

 荻野代表と岡本弁護士が、管理組合や管理会社などと連絡を取りながら、喫煙者を特定する方法などを助言していました。  

 家の中では家族に嫌がられたり煙で部屋が汚れたりするため、ベランダや庭に出てたばこを吸う人は多く、暗がりで火だけが見える姿からホタル族と呼ばれるようになりました。この近隣のホタル族に関するトラブルは、全国で多発しています。2007年~2008年にかけて東京、名古屋、大阪で行われた聞き取り調査では、「換気扇から煙が入ってくる」「ベランダなどに出られなくなった」「ベランダに布団や衣類を干せなくなった」などの問題が明らかになっています。

 国民生活センターによると、マンションの下の階のベランダからの煙が流れ込んで体調が悪化したとして、5万円の慰謝料支払いが命じられた判例もあるといいます。

 2017年5月20日(土)

 

■トクホ、有効成分の不足また判明 大正製薬などの粉末緑茶2商品

 消費者庁は17日、緑茶の粉末清涼飲料の2商品について、特定保健用食品(トクホ)の効果にかかわる有効成分が規定量を下回っていたと公表しました。

 健康被害は確認されていないといいます。製造元などは同日から、自主回収を始めました。

 消費者庁によると、2商品は大正製薬(東京都豊島区)の「ドゥファイバー粉末スティック〈グアーガム〉」と、通販サイトの佐藤園(静岡市葵区)の「緑の促茶(そくちゃ)」。いずれも佐藤園が製造しており、成分は同じ。

 食物繊維が便通を改善するとして、2010年にトクホの認可を受けました。消費者庁が昨年9月に2商品を買い上げて成分を分析したところ、1袋4グラムのうち、2・6グラムに食物繊維の成分が入っていると記載していましたが、実際は2割分が不足しており、別のメーカーから仕入れた原材料の時点で規定量が不足していたといいます。

 佐藤園によると、2商品の回収対象は2016年3月以降に製造された約2万4000箱(1箱120グラム)。消費者庁は、改善されればトクホの認可を取り消さない方針。大正製薬は、販売を中止する予定といいます。

 トクホを巡っては、昨年、通販会社の日本サプリメント(大阪市北区)が販売していた粉末清涼飲料「ペプチド茶」など6商品の有効成分不足が発覚。消費者庁は再発防止策として、商品の一部を店頭で買い上げて成分を調べる抜き打ち調査を導入したほか、メーカー側に年1回、トクホ商品の成分分析結果を提出させるようにしました。

 トクホは現在、1123商品が許可、承認されています。

 佐藤園は「原料の成分分析を厳格に行い、再発を防止する」、大正製薬は「原因を確認中なので、コメントできない」としています。

 2017年5月18日(木)

 

■めん類が食塩摂取量ランキングでツートップに 国立研究開発法人が公表

 国立研究開発法人の医薬基盤・健康・栄養研究所は17日、日本人が食塩を多く摂取している食品のランキングを公表しました。1位はカップめんで、1日当たり5・5グラムの食塩を摂取していました。

 食塩の過剰摂取は、高血圧につながる恐れがあります。研究担当者は、「上位の食品を食べすぎないようランキングを活用してほしい」と呼び掛けています。

 医薬基盤・健康・栄養研究所は、厚生労働省の国民健康・栄養調査(2012年)のデータを活用してランキングを作成し、日本高血圧学会などが定めた「高血圧の日」(5月17日)、「減塩の日」(毎月17日)に合わせて公表しました。

 1位のカップめんに続く2位はインスタントラーメンで、1日当たり5・4グラムの食塩を摂取していました。いずれもスープを飲み干した場合の数値。

 3位は梅干し、4位は高菜の漬物、5位はキュウリの漬物、6位は辛子めんたいこ、7位は塩さば、8位は白菜の漬け物、9位はマアジの開き干し、10位は塩ざけでした。

 厚労省の日本人の食事摂取基準では、食塩摂取量の目標値として、男性は1日当たり8グラム未満、女性は同7グラム未満としています。

 2017年5月18日(木)

 

■せき止め成分「コデイン」を含む薬、小児への使用制限へ 副作用で呼吸困難24件

 厚生労働省は16日、100万人規模の患者情報を登録した医療情報データベースで、せき止め作用のある成分「コデイン」が含まれる医薬品の使用状況を調べた結果、呼吸困難の副作用が疑われるケースが24件あったと発表しました。

 厚労省は6月にも有識者会議を開いて、副作用の頻度が多いと考えられる小児への使用を制限するよう製薬会社に添付文書の改訂などを指示することを決める方針。

 コデインはモルヒネに似た、せき止め作用のある成分で、医師による処方箋が必要な医療用医薬品で約60製品、市販薬では風邪薬など約600の製品で使われています。添付文書で、小児に対し慎重に投与するよう求めていました。

 特に小児でごくまれに、重篤な呼吸困難になる副作用が生じる恐れがあり、欧米など海外の一部では12歳未満への処方が禁じられています。

 医療情報データベースによると、2009~2015年に協力病院を受診した約98万人のうち約7300人にコデインが処方され、0・3%に当たる24人に副作用が疑われる呼吸困難の症状が出ていました。

 2017年5月18日(木)

 

■睡眠障害「ナルコレプシー」、覚醒物質で症状抑制 筑波大が開発

 日中に急激な眠気に襲われる深刻な睡眠障害「ナルコレプシー」の症状が、脳内の覚醒物質「オレキシン」に近い働きをする物質で抑制されることをマウスの実験で確かめたと、筑波大学の研究チームが発表しました。

 ナルコレプシーの治療は対症療法しかありませんが、根本的な治療薬の開発が期待されるといいます。論文が16日、アメリカの科学アカデミー紀要電子版に掲載されました。

 ナルコレプシーは日中、突然眠気に襲われたり、感情の高まりなどによって体の筋肉が脱力する発作を起こすなどの症状があります。1000人に1人が発症するといわれ、患者の生活全般に深刻な影響を及ぼしています。

 脳内の覚醒物質オレキシンの不足が原因とされますが、オレキシンは静脈注射などによって投与しても脳まで届かず、効果がない課題がありました。

 筑波大国際統合睡眠医科学研究機構の研究チームは、脳に到達し、オレキシンと同様の働きをする化合物を開発。ナルコレプシーの症状があるマウスに投与したところ、脱力する発作が抑えられ、連続投与しても効果が持続しました。

 一方、この化合物は経口投与では症状の抑制効果が弱いなどの課題もあるといいます。

 研究チームの柳沢正史教授は、「将来的に病院治療薬として使い、経口投与で強い効果がある物質を見付けたい」と話しています。

 うつ病症状による過眠症や、薬の副作用による過剰な眠気、時差ボケやシフトワークによる眠気などナルコレプシー以外の睡眠障害を改善する創薬にもつなげる狙いです。

 2017年5月17日(水)

 

■複数のワクチンを混ぜる方法で乳幼児に予防接種 東京都のクリニックが8年前から

 東京都品川区のクリニックが、水ぼうそうなどの複数のワクチンを混ぜる誤った方法で、少なくとも350人の乳幼児に予防接種を行っていた可能性があることがわかりました。

 今のところ健康被害の報告はないということで、品川区保健所は希望者には再接種を行うとしています。

 複数のワクチンを混ぜる誤った方法で予防接種を行っていたのは、東京都品川区東五反田にある「ケルビムこどもクリニック」。

 品川区によりますと、このケルビムこどもクリニックでは区からの委託で乳幼児に対する予防接種を行っていましたが、4月に保護者からの「混ぜて接種していたが大丈夫か」との問い合わせを受けて品川区保健所が調べたところ、水ぼうそうのワクチンや、はしかと風しんの混合ワクチン(MRワクチン)、おたふく風邪のワクチンなど5回に分けて行うよう定められている予防接種について、ワクチンを混ぜて2回で行う誤った方法を取っていたことがわかったということです。

 品川区保健所の調べに対し、担当の男性医師は8年前からこの方法を行っていたと話し、記録が残っている過去5年の間に358人が誤った方法の予防接種を受けていた可能性があることがわかったということです。

 ケルビムこどもクリニックの院長は、「注射の回数を少なくして子供の負担を減らそうとした。医学的には問題ないと認識していた」と話しています。

 品川区保健所によりますと、ケルビムこどもクリニックは2015年12月にも保護者からの問い合わせで誤った方法の予防接種を行っていたことがわかったということですが、この際、品川区では口頭で注意したものの、過去の実績については調査していなかったということです。 

 品川区保健予防課の舟木素子課長は、「保護者の皆様には、不安やご心配をかけて大変申し訳なく思っている。今後はこのような問題が二度とないよう、指導を徹底したい」と話しています。

 2017年5月17日(水)

 

■月80時間を超える過労死ライン以上の残業、4割の企業であり 最多業種は広告・出版・マスコミ

 過去1年間で、過労死ラインとされる月80時間を超える残業をした社員がいた企業は40%に上ったとするアンケート調査結果を、人材サービス会社「エン・ジャパン」(東京都新宿区)がまとめました。

 同社の担当者は、「業務分担の見直しに取り組む企業は多いが、それだけでは大きな改善は見込めない。人員増も含めた幅広い対応が必要だ」と分析しています。

 過重労働に関するアンケート調査は1~2月にインターネットを通じて実施し、月80時間(月に20日出勤とすると、1日4時間以上の残業・12時間労働)超の残業をした社員が1人でもいたかを尋ねました。408社の経営者や人事担当者が回答し、1人もいなかったと回答したのは55%、わからないは5%でした。

 業種別では、月80時間超の残業をした社員が1人でもいたのは広告・出版・マスコミ関連が64%と最も多く、次いでIT・情報・インターネット関連が48%、メーカーが45%、サービス関連が38%となっています。

 規模が大きくなるにつれ、その割合が多くなり、従業員数501人以上の企業では68%が月80時間超の残業をした社員が1人でもいたと回答しています。

 また、74%の企業が過重労働防止に取り組んでいることがわかりました。取り組み内容としては、「業務分担やフローの見直し」(58%)、「管理職への教育(時間管理)」(52%)、「残業を事前申請させる」(51%)が上位に挙げられました。

 長時間労働の背景として、職場に長くいることを評価する企業意識などの指摘や、過剰な顧客サービスの見直しを求める意見が挙がりました。問題が深刻化する運送業界からは、「荷主の都合で労働時間が延びている」として取引慣行の見直しを求める声が出ました。

 国は昨年末、違法な長時間労働を繰り返す企業名公表の基準を月80時間超に拡大する対策をまとめましたが、その内容を「知らない」「よく知らない」とした企業は計84%に上りました。

 2017年5月15日(月)

 

■受動喫煙でかかる医療費は年3200億円を超す 厚労省が推計

 喫煙しない人がたばこの煙を吸い込む受動喫煙で病気になり、余計にかかる医療費は年3000億円を超すという推計を厚生労働省の研究班がまとめました。

 対策強化を盛り込んだ健康増進法改正案の今国会への提出を厚労省が目指す折、受動喫煙による健康被害の大きさが浮き彫りとなりました。

 研究班は、国の検討会が昨年9月に発表した「たばこ白書」で受動喫煙との因果関係を「確実」とした肺がん、心筋梗塞(こうそく)や狭心症などの虚血性心疾患、脳卒中について分析。職場や家庭で長期にわたり間接的に煙を吸った40歳以上の患者数や喫煙の有無による病気のなりやすさの違いなどをもとに、2014年度に余計にかかった医療費を算出しました。

 その結果、医療費は肺がんが約340億円、虚血性心疾患が約960億円、脳卒中が約1900億円で、計約3200億円に上るとしました。患者数は肺がんが約1万1000人、虚血性心疾患が約10万1000人、脳卒中が約13万人でした。

 研究班は患者が治療で仕事を休むことによる経済損失も推計し、3つの病気の合計で損失は約820円に達するとしました。

 分担研究者の五十嵐中(いがらし・あたる)東京大学特任准教授(薬剤経済学)は、「職場や家庭で煙を吸った非喫煙者に、膨大な医療費がかかっていることがわかった。対策を急ぐべきだ」と話しています。

 2017年5月14日(日)

 

■コンゴ民主共和国、エボラ出血熱疑いで3人が死亡 WHOが感染を確認

 アフリカ中部に位置するコンゴ民主共和国(旧ザイール)でエボラ出血熱が新たに発生し、患者3人がエボラウイルスに感染して死亡したことが確認され、世界保健機関(WHO)や現地保健当局は感染拡大を防ぐための対策を急いでいます。

 エボラ出血熱が新たに発生したのは、コンゴ民主共和国の首都キンシャサから1300キロ以上北東に離れた森林地帯で、北部の中央アフリカ共和国との国境に近い地域に相当します。

 WHOなどによりますと、4月22日以降、9人の患者にエボラ出血熱が疑われる症状が見付かり、このうち3人が死亡しました。そして、これまでの検査で、死亡した患者のうち少なくとも1人がエボラウイルスに感染していたことが、確認されたということです。

 アフリカでは2014年から2年余りにわたって、ギニア、リベリア、シエラレオの西アフリカの3カ国でエボラ出血熱が爆発的に流行し、約1万1300人が死亡しました。

 さらに、この西アフリカの流行とは別に、コンゴ民主共和国でも2014年に、エボラウイルスの感染が拡大し49人が死亡しています。

 コンゴ民主共和国の政府は今回のエボラ出血熱の発生について、「国際的な公衆衛生上の危機となり得るこの感染症に、私たちは立ち向かわなければならない」としており、WHOと連携して感染者の特定など、感染拡大を防ぐための対策を急いでいます。

 コンゴ民主共和国でエボラ出血熱が新たに発生したことを受けて、厚生労働省は外務省と連携して患者が発生した地域への渡航を控えるよう呼び掛けています。

 その上で、患者が見付かった地域に滞在していた人が日本に入国する際には、空港などの検疫所で、発熱やおう吐などの症状が出ていたり、感染が疑われる患者や感染源とされるコウモリやサルなどの野生動物と接触したりした場合は申し出るよう呼び掛け、潜伏期間の上限とされる3週間、連絡を取って、健康状態に異常がないか確認することにしています。

 厚労省は、「患者が確認された地域は日本からの旅行者が一般に行き来する場所ではなく、現時点では範囲も限定されている。エボラ出血熱は主に患者の体液に直接触れることで感染するので、一般の旅行者が感染して日本にウイルスが持ち込まれるリスクは非常に低いが、万一に備えて現地への渡航はできるだけ避けてほしい」としています。

 2017年5月14日(日)

 

■脱毛施術、4分の1が皮膚のやけどや痛みの症状 国民生活センターが発表

 過去3年間にエステや医療機関で脱毛施術を受けた人の約4分の1が、皮膚のやけどや痛みなどの症状を経験していたことが明らかになりました。国民生活センターが11日、インターネットで実施したアンケートの結果を発表しました。

 うち7割以上が、脱毛による副作用のリスクについて説明を受けていませんでした。夏に向け利用者は増えるとみられ、専門家は「施術の内容やリスクを十分に理解して受けてほしい」と呼び掛けています。

 脱毛施術は、レーザー機器などを使って、毛根にある組織を破壊したり弱らせたりすることで毛を減らす行為。組織を完全に破壊するのは医療行為で医師しかできませんが、一時的な除毛効果を得る程度なら資格は不要で、エステサロンでも広く行われています。

 国民生活センターが3月にインターネットで実施したアンケートでは、回答した男女1000人のうち、255人(25・5%)が脱毛施術後に痛みなどの症状が出たと回答。このうち事前にリスクの説明を受けていたのは、67人にとどまりました。

 脱毛施術を巡っては、全国の消費生活センターなどに寄せられるトラブルの相談が後を絶ちません。国民生活センターのまとめでは、今年2月末までの約5年間に、やけどや炎症、痛みなどの症状が出たという相談が計964件寄せられました。治癒に1カ月以上かかる重症例も129件(13・4%)ありました。

 相談内容は、「脱毛エステを受けたら背中や腕など広範囲に発疹が出た」「美容外科でレーザー脱毛を受けたところ肌がはれてシミが残った」「エステで受けたひざ下の電気脱毛で足が赤くはれ上がり3年半経っても痕が残った」などで、「ひげのレーザー脱毛でやけどを負った」という男性もいました。施術を受けた場所は、エステが680件、医療機関が284件。

 西山美容・形成外科医院(東京都豊島区)の西山真一郎院長は、「脱毛の際は、患者の肌質によってレーザー照射時間を判断するなど慎重な対応が必要だが、それでも症状が出る場合もある。リスクについて事前に十分な説明を受けることが大切」と指摘しています。

 一方、消費者に誤解を与える広告は、多く見受けられます。施設によっては、「痛みゼロ」「トラブルの心配なし」などの表現で宣伝していました。

 完全に毛を生えなくする「永久脱毛」は医療行為のためエステではできないものの、「処理した毛はもう生えない」などと宣伝するエステもあり、国民生活センターは「医師法に抵触する可能性もある」としています。

 2017年5月14日(日)

 

■ブラジル、ジカ熱の緊急事態宣言を解除 感染者95%減少し、死者ゼロ

 ブラジル政府は11日、ジカウイルスの感染拡大を受けて約18カ月間にわたって出していたジカ熱(ジカウイルス感染症)に関する公衆衛生上の国家緊急事態宣言を解除しました。

 ブラジルでは2015年に蚊が媒介するジカウイルスに感染して起きるジカ熱が確認され、その後、世界的に感染の懸念が広がり、昨年のリオデジャネイロ五輪前には妊婦や選手らが渡航を控えるケースが相次ぎました。

 ブラジル保健省は声明で、世界保健機関(WHO)に対して「ジカウイルスの感染と小頭症の発症例が全国的に減少」したことを報告したと明らかにしました。ジカ熱は、妊婦が感染すると胎児に小頭症と呼ばれる先天異常を引き起こす恐れがあると指摘されています。

 ブラジル保健省によると、今年1月から4月15日までのジカウイルス感染者は7911人で、昨年同期の17万535人に比べて95・3%急減しました。昨年同期の死者が8人だったのに対し、今年同期はゼロでした。

 WHOはすでに昨年11月、ジカ熱に関する国際的な緊急事態宣言を解除しています。

 一方で、ブラジル保健省は「緊急事態宣言の解除は、警戒や支援提供が終わることを意味するものではない」と慎重な姿勢をみせています。

 2017年5月13日(土)

 

■国内初、小児がんにオプジーボを使う治験開始 国立がん研究センター

 国立がん研究センター中央病院は10日、小児や若い世代のがん患者を対象に、新しいタイプのがん免疫治療薬「オプジーボ」(一般名ニボルマブ)を使った医師主導の臨床試験(治験)を始めると発表しました。

 小児や若い世代のがんを対象としたオプジーボの治験は、国内初となります。

 乳幼児から思春期の若者の患者26人について、2年ほどかけて必要な投与量と安全性などを確かめます。その後、効果を調べる治験に移る予定。

 オプジーボはがん細胞によって弱められた、患者の免疫細胞の攻撃力を高めてがんを治すタイプのがん治療薬で、大人の患者に対しては、皮膚がんや肺がん、悪性リンパ腫など複数のがん治療に使われ、一部の患者に優れた効果があります。高額な治療薬ですが、小児や中高生でも安全性と効果を確認できれば、小児がん治療の有望な薬となる可能性があります。

 小児がんは子供がかかるがんの総称で、毎年2000~3000人の子供が発症するとされます。希少な疾患が多く、発症患者を集めにくいため、がんの種類ごとに抗がん剤を開発しにくいのが問題となっています。

 対象の病気は、子供に多い神経芽腫などの固形がんのほか、血液のがんの一種である悪性リンパ腫で、有効な治療法がない患者にオプジーボを投与します。

 国立がん研究センターの小川千登世・小児腫瘍科長は、「成人で有効な薬を、小児でも一日も早く使えるようにしたい」と話しています。

 2017年5月13日(土)

 

■妊産婦死亡など相次ぐ無痛分娩、全国実態調査へ 日本産婦人科医会

 麻酔を使って出産の痛みを和らげる「無痛分娩(ぶんべん)」で妊産婦が死亡するなど重大な事故が起きていることから、産婦人科の医師でつくる日本産婦人科医会は全国2400の分娩施設を対象に無痛分娩の実施件数や、重大な医療事故につながりかねない事例がどの程度起きているのかなど、初の実態調査に乗り出すことになりました。

 無痛分娩は、出産の際に麻酔をかけ、陣痛を和らげる分娩方法で、出産に伴う疲労を軽減する利点があり、アメリカやフランスでは広く普及しています。国内でも、高齢出産の増加でニーズが高まっています。ただ、息みづらくなって出産の時間が長引き、新生児を器具で吸引する処置が必要になるなどのリスクもあり、麻酔の投与の問題から妊産婦が死亡するなど重大な事故も起きています。

 このため日本産婦人科医会は、全国およそ2400の分娩施設を対象に、過去3年間の無痛分娩の実施件数や、どのような立場の医療従事者が麻酔薬を投与しているのかなど、実態調査をすることになりました。また、重大な医療事故につながりかねないいわゆる「ヒヤリ・ハット」の具体的な事例についても調査し、無痛分娩を実施する上での課題も明らかにしたいとしています。

 日本産婦人科医会の石渡勇常務理事は、「無痛分娩は、適切に行えば安全で大きなメリットがあるが麻酔薬を誤って投与すると呼吸ができなくなる可能性があり、緊急時には専門知識が必要だ。一方で、麻酔の専門医は少なく、一般の産科の医師が実施しているケースが多いのが現状で、調査を通じより安全な無痛分娩に向けた課題や注意点を浮き彫りにしたい」と話しています。

 日本産婦人科医会では、この夏にも調査結果を報告書にまとめ、関連学会と連携して産婦人科医の研修の実施や安全性向上のための指針策定を進めることにしています。

 無痛分娩を巡っては、厚生労働省研究班が2010年1月から2016年4月までに日本産婦人科医会が報告を受けた妊産婦死亡298例を調べたところ、無痛分娩だった出産が13例ありました。研究班は今年4月、無痛分娩を行う医療機関に対し、急変時の体制を十分整えるよう緊急提言を出しています。

 2017年5月13日(土)

 

■1歳女児への脳死両肺移植が終了 岡山大学病院、国内最年少の患者

 岡山大学病院(岡山市北区)で11日、肺の血管が狭まって心機能が低下する肺高血圧症を患う1歳女児への脳死両肺移植が行われ、無事終了しました。順調なら約2カ月で退院できる見込み。

 病院によると、生体間を含めて国内最年少の肺移植患者となります。

 臓器提供者(ドナー)は、広島県内の病院に小脳出血で入院し、10日に脳死判定された6歳未満の男児。手術は執刀医の大藤剛宏・臓器移植医療センター教授ら約20人のチームで11日朝に開始しました。技術的に難度が高いとされる未発達の血管や気管支の切開、吻合(ふんごう)などが慎重に進められ、約6時間半後の午後3時34分に終了しました。

 大藤教授は記者会見で、「手術は100パーセント成功した。ドナーの遺族の尊い気持ちを患者につなぐことができてほっとした」と語りました。

 女児の父親は手術後に、「(男児の)両親には大変感謝しています。いただいた肺は娘と一緒に生きていってくれると思います」とのコメントを出しました。

 肺高血圧症は、肺の血管が細くなり、肺に送る血液の圧が高くなります。肺動脈圧の高い状態が続くと心臓に負担がかかり、機能が低下して心不全になります。

 女児は生後間もなく呼吸状態が悪化したため、九州大学病院に入院し集中治療室に入りました。肺高血圧症が疑われ、薬物療法や人工呼吸器を用いるなどしたものの改善せず、今年2月に日本臓器移植ネットワークに登録して待機していました。大藤教授の診察を受けており、移植手術が決まった後、岡山大学病院に転院しました。

 15歳未満の脳死の子供からの臓器提供を可能にした2010年の改正臓器移植法施行後、6歳未満の脳死は7例目で、10歳未満の患者への肺移植は5例目。

 肺移植患者のこれまでの最年少は、岡山大学病院で2014年9月に生体移植を受けた2歳男児でした。同病院での脳死肺移植は82例目で、生体と合わせ166例目。

 2017年5月12日(金)

 

■軽い坂がある地域の高齢者、糖尿病のリスク減 東京医科歯科大が調査

 緩やかな坂がある地域に住む高齢者は平らな地域に比べ、中等度の糖尿病になるリスクが減るという研究結果を東京医科歯科大学などの研究チームがまとめました。国際的な学術誌に掲載し、8日に発表しました。

 研究は、高齢者の大規模調査プロジェクト「JAGES」(日本老年学的評価研究)の一環として行われました。

 健診データのそろった愛知県の常滑市や武豊町など6市町に住んでいる65歳以上の高齢者8904人を小学校の校区ごとに分けて、住んでいる46地域の坂の傾斜と、糖尿病との関連を調べました。

 各地域の坂の傾斜は約1~10度で、平均は約3度。1カ月の血糖値の状態を表すヘモグロビンA1cが7・5%以上である中等度の糖尿病だったのは223人でしたが、坂の傾斜が1・48度高くなる(100メートル進むと約3メートル上がる)と、中等度の糖尿病になる可能性が18%減ることがわかりました。

 軽度の糖尿病患者では、差がありませんでした。

 藤原武男・東京医科歯科大学大学院教授(公衆衛生学)によると、本人が気付かないうちに運動量と筋力が増え、血中のブドウ糖が消費されて血糖値の上昇が抑えられている可能性があり、症状が進まなくなったとみられます。

 ただし、急な坂だと逆に外出を控えたりするため、傾斜が高いほど効果があるかどうかはわかっていません。

 藤原教授は、「日常的に坂を歩くことで、運動と同じ効果が得られている可能性がある。高齢者が気付かぬうちに糖尿病のリスクが減るよう、自治体が運動用の道を造る際、軽い坂のあるコースを設けるなどしてもいいのでは」と話しています。

 2017年5月11日(木)

 

■熊本市の赤ちゃんポスト10年、125人を預かる 104人は生後1カ月未満の新生児

 熊本市にある民間病院の慈恵病院が、親が育てられない子供を匿名で受け入れる、いわゆる「赤ちゃんポスト」(こうのとりのゆりかご)を設けて、10日で10年になりました。これまでに預けられた125人の大半は新生児で、その多くは環境の整っていない自宅などで出産したとみられ、望まない妊娠が危険な出産に直結する深刻な実態を示しています。

 慈恵病院が2007年の5月10日に運用を始めた赤ちゃんポストには、2016年3月末までの9年間に125人が預けられ、生後1カ月未満の新生児が104人と大半を占めています。

 中でも、へその緒がついたままだったり、出産後に母親がへその緒を切ったりするなど、環境の整っていない自宅などで出産したとみられるケースは、2014年度には82%、2015年度には85%と増える傾向にあります。さらに、低体重など適切なケアを受けないまま預けられた新生児も増えており、2015年度には預けられた新生児の60%が治療が必要な状態でした。

 熊本市が設けた赤ちゃんポストの検証を行う専門部会の委員で、関西大学の山縣文治教授は、「自宅などで出産し、体力が回復しないまま母親が新生児とともに熊本にくるというケースがあとを絶たない状況は、母子ともに危険にさらされているといわざるをえない。出産や育児に悩む親たちの受け入れを1つの病院に任せるのではなく、自治体や国全体で真剣に考え、赤ちゃんポストの利用者を減らす努力を進める必要がある」と話しています。

 熊本市によりますと、2016年3月末までの9年間に赤ちゃんポストに預けられた子供125人を年齢別に見ると、生後1カ月未満の新生児が104人と80%以上を占め、1歳未満の乳児が15人、1歳以上の幼児が7人となっています。

 このうち、児童相談所の調査などで1年以内に親が判明したのは96人で、母親の年齢は10歳代が15人、20歳代が45人、30歳代が28人、40歳代が8人となっています。

 子供を預けた理由を複数回答で尋ねたところ、「生活の困窮」が最も多く32件に上っており、「未婚の出産」が27件、「世間体」「戸籍に入れたくない」が24件などとなっています。

 96人の親の住所は、九州が39人と最も多いほか、関東が22人、中部が11人、近畿が10人、中国8人、東北3人、北海道1人、四国1人と、全国から預け入れがあることがわかります。また、2015年度には初めて海外からの預け入れがありました。

 預けられた子供たちのその後の状況をみると、2013年度末までに預けられた101人のうち、特別養子縁組が成立したり、里親に預けられたりした子供が48人、乳児院などの施設で育てられている子供が30人、親元に引き取られた子供が18人などとなっています。

 熊本市の慈恵病院は10年前、赤ちゃんポストと同時に専用の電話相談窓口を開き、妊娠に関する悩みの相談に24時間体制で応じています。

 寄せられる相談は年々増えており、2016年度は6565件と、これまでで最も多かった2015年度より20%も増えました。中には、妊娠をしたことを周囲に知られたくないという中高生や不倫中の女性からの相談や、「出産後、赤ちゃんポストに預けたい」という相談が目立つということで、望まない妊娠を誰にも打ち明けられずに、不安を抱える女性たちの実態が浮き彫りになっています。

 熊本市は、児童福祉の専門家や医師など、外部の委員でつくる専門部会を設け、この10年間、赤ちゃんポストを巡る課題などについて検証を進めてきました。

 この中では、赤ちゃんポストに一定の意義はあるとした上で、妊娠中に病院を受診せず、自宅などで出産するケースがあとを絶たないことについて、「母子ともに命にかかわる事故が起きても不思議ではない事例が数多くみられる」として、安全性が確保されないまま運用が続いていることを問題視しています。

 特に、妊娠中から赤ちゃんポストに子供を預けることを前提として病院に行かず、危険な出産を自ら選択するケースが多いことが深刻だとしており、国や自治体に対し、妊娠中の相談に応じる窓口を充実させるよう、強く求めています。

 2017年5月11日(木)

 

■野生動物の1割、ダニ媒介脳炎ウイルスに感染 北海道大学が札幌市で調査

 マダニにかまれることで感染する「ダニ媒介脳炎」の国内で初めての死亡例が昨年8月、北海道で確認されたことを受けて、北海道大学の研究チームが調査したところ、札幌市内で捕獲された野ネズミなどの約1割がフラビウイルスに感染していたことが明らかになりました。

 国立感染症研究所によりますと、人口の多い大都市の近郊で、ダニ媒介脳炎の原因となるフラビウイルスに感染した野生動物が確認されたのは初めてだということです。

 ダニ媒介脳炎はマダニにかまれることで感染し、発熱や筋肉痛などのインフルエンザに似た症状の後、髄膜炎や脳炎を起こします。海外では多数の死亡例が報告されています。

 国内では、これまでに北海道で2人の感染が報告され、このうち昨年8月には、草やぶでマダニにかまれたとみられる40歳代男性が発熱や意識障害、けいれん、髄膜炎、脳炎などの症状が出た後、入院先の札幌市内の病院で死亡しました。

 これを受けて、北海道大学の研究チームが札幌市内の山林で捕獲された野ネズミやアライグマ84匹の血液を調べたところ、12%に当たる10匹がダニ媒介脳炎の原因となるフラビウイルスに感染していることがわかったということです。

 国立感染症研究所によりますと、これまでに北海道の南部や島根県で、このフラビウイルスに感染した野生動物が確認されていますが、札幌市のような人口の多い大都市の近郊で確認されたのは初めてだということです。

 北海道大学大学院の好井健太朗准教授(ウイルス学)は、「少なくとも、調査した地域の山林では、このウイルスが常に存在していると考える必要がある。ただ、マダニにかまれなければ感染はしないので、野山に入る際は長袖、長ズボンを着用して肌の露出を避け、予防に努めてほしい」と話しています。

 2017年5月11日(木)

 

■月曜午前は心疾患や脳血管疾患に注意を 休み明けの仕事が心臓に負担

 旭労災病院(愛知県尾張旭市)の研究チームが、全国で働く男女207人を調べたところ、月曜日の午前は他の曜日と比べ、心臓にかかる負荷が高まっていることが明らかになりました。休み明けの仕事のストレスが原因とみられます。

 月曜日の午前中は労働者の心筋梗塞や脳卒中の発症が多いとされており、木村玄次郎病院長は「心疾患などを減らすためには、月曜の仕事量を減らすべきだ」としています。

 調査対象は、主に全国の労災病院で働く男女で、平均年齢は約51歳。平日に働く人たちで、夜勤従事者や既往症のある人は含んでいません。

 研究チームは2015~2016年、月曜日と金曜日、休日(土曜か日曜)の起床時、午前10時、午後4時、就寝前のそれぞれ4回、血圧や脈拍を測定しました。いわゆる上の血圧である最高血圧に心拍数を掛けた「ダブル・プロダクト」の変化を調べた結果、月曜日午前10時の数値が、金曜日や休日の同じ時間帯よりも際立って高くなりました。起床時や就寝前の数値は、曜日による大きな違いがありませんでした。

 木村病院長によると、月曜日の午前中に労働者の心疾患や脳血管疾患が多いことは知られていましたが、原因は不明だったといいます。研究チームは今後、仕事のストレスが心臓に及ぼす影響を調べます。

 2017年5月10日(水)

 

■京大、iPS細胞で拡張型心筋症の治療へ 来夏にも臨床研究を申請

 他人のiPS細胞(人工多能性幹細胞)から作製した心臓組織を貼り付けて「拡張型心筋症」を治療する研究を、京都大学iPS細胞研究所の山下潤教授(再生医学)らのチームが進めています。

 来年の夏にも、患者に対して効果と安全性を確かめる臨床研究の実施を国に申請するといいます。

 山下教授らは、iPS細胞を心筋や血管など3種類の細胞に変え、薄いシートに加工。シートを最大で15枚重ねて、厚さ1ミリ弱の心臓組織を作製しました。シートの間にゼラチンの微粒子で酸素が通る透き間を作り、中間層の細胞が死なないように工夫を凝らしました。

 拡張型心筋症のハムスターを使った実験では、心臓の細胞死や変質が減り、病気の進行が抑えられました。臨床研究が認められれば、京大病院で移植が必要な成人の患者数人の治療を行うといいます。

 拡張型心筋症は、心臓の収縮力が弱くなり、膨らんだ状態になる原因不明の国指定の難病で、厚生労働省によると、2014年に国から医療費の助成を受けた患者は約2万8000人。主な症状は、呼吸困難や全身の倦怠(けんたい)感、不整脈などで、突然死するケースもあります。薬などで治療できない場合は、心臓移植が必要となります。

 iPS細胞を利用する心臓病治療では、心筋の細胞だけで作った厚さ0・1ミリ程度のシートを心臓に貼り付ける研究も進んでいます。

 山下教授は、「今回作製した組織には、血管になる細胞も含まれているため心臓に定着しやすく、心臓移植が受けられない人にも有効な治療になると期待している。将来的には、手術がより困難な小児への応用も検討したい」と話しています。

 柴祐司・信州大学教授(再生医科学)は、「移植した組織が心臓と同じリズムで拍動するかなどを慎重に確認する必要があるが、多くの細胞を必要とする心臓の再生で、厚い組織を使うのは理にかなっている」とコメントしています。

 2017年5月10日(水)

 

■アニサキス食中毒、海産魚介類の生食で急増 2016年に124件

 種々の海産魚介類の生食を介して、回虫類の一種であるアニサキスの幼虫が胃腸に寄生することによる食中毒の報告件数が、急増しています。

 厚生労働省の統計によると、2007年は6件だった報告件数は2016年に20倍以上の124件に増え、食中毒の原因物質としてはノロウイルスとカンピロバクター菌に次いで、アニサキスが3番目に多くなっています。「報告は氷山の一角」との指摘もあり、専門家が注意を呼び掛けています。

 アニサキスは、体長2~3センチの幼虫が魚介類の内臓に寄生し、鮮度が落ちると筋肉に移動しやすくなります。人がそれを生で食べると、数時間後から激しい腹痛や嘔吐(おうと)などの症状が現れます。

 原因食品はサバが最も多く、サンマやサケ、アジ、イカなどでも起こります。シメサバによる報告も目立つように、酢では予防できません。

 ここ10年ほどの報告件数の急増は、2013年から法令改正でアニサキスによる食中毒が届け出対象に明示されたのも一因ですが、背景にあるのが生の海産魚介類の流通の多様化。大手の量販店や鮮魚専門店が市場の競りを介さずに産地の業者から直接買い付ける「相対取引」などが盛んになり、消費者の口に入るまでの経路が複雑になっています。

 国立感染症研究所の杉山広・前寄生動物部第二室長が約33万人の診療報酬明細書(レセプト)のデータを使って推計したところ、年間発生数は約7000件に上りました。杉山さんは「アニサキスの食中毒を防ぐには加熱するか、マイナス20度以下で24時間以上冷凍すること」と管理の徹底を訴えています。

 海外では、生食用の魚の冷凍保存を義務付ける国もあるといいます。

 厚労省などは消費者に対して、鮮度のよいものを選ぶ、速やかに内臓を取り除く、内臓を生で食べないといった対策を呼び掛けています。刺し身を食べる時は、細かく砕くようによくかむことも大事だといいます。

 2017年5月9日(火)

 

■難病の医療ロボット治療に初の保険商品  大同生命が7月から販売

 生命保険会社の大同生命は、難病の患者が特殊な医療ロボットを装着して歩行機能の改善を目指す際、治療費を保障する保険を国内で初めて販売すると、8日に発表しました。

 大同生命が今年7月3日から販売するのは、装着型の医療ロボットで歩行機能の改善を目指す際の治療費を保障する保険商品です。

 この装着型の医療ロボットは、茨城県つくば市のベンチャー企業が開発し、全身の筋力が低下する筋委縮性側索硬化症(ALS)など8つの難病の治療に限って、公的な医療保険が適用されていますが、治療が長期にわたるため患者の負担は重くなっています。

 このため大同生命は、医療ロボットによる治療を支援する特約を盛り込んだ国内で初めての保険商品を開発し、難病の患者を対象に100万円を給付します。

 大同生命の工藤稔社長は、「難病患者やその家族が経済的な負担を感じることなく、最先端の治療に専念できる環境を作るとともに、医療ロボットを使った治療が一層普及していくことを後押ししたい」と話しています。

 生命保険業界では、最大手の日本生命が不妊治療を受けた人に給付金を支払う保険を販売するなど、契約者の長寿化に伴って需要の増加が見込まれる医療保険の分野で、特徴のある商品を打ち出す動きが広がっています。

 2017年5月8日(月)

 

■交通事故による重い脳障害を治療する専門病床を充実へ 国交省所管の自動車事故対策機構

 交通事故の被害者対策を担う国土交通省所管の独立行政法人「自動車事故対策機構」は、事故による脳損傷で意思疎通ができない「遷延(せんえん)性意識障害者」を治療する専門病床の充実を図る方針を決めました。

 全く反応がなかった最重度の患者の26%が専門病床での治療で何らかの意思疎通ができるまでに回復するなど有効性が確認されており、今年度、事故直後から患者を受け入れる新型病床を導入します。また、従来よりも小規模な病床を展開し、専門治療の空白地域を減らす検討も始めました。

 近年、救命医療の進歩などで交通事故死者は減っていますが、重度後遺障害者は毎年2000人弱で横ばいの傾向にあります。在宅の重度後遺障害者に支給される「介護料」の受給者も増えていることから、国交省関係者からも「対策の充実は急務」との声が上がっています。

 自動車事故対策機構は、自動車損害賠償責任(自賠責)保険制度の資金を活用して、「療護センター」(50~80床)を宮城県、千葉県、岐阜県、岡山県の4県で運営しています。一般病院に委託して療護センターに準じた治療を行う「委託病床」(12~20床)も北海道、神奈川県、大阪府、福岡県の4道府県にあります。

 療護センターと委託病床を合わせた専門病床数は8カ所で計290床。最長3年間入院でき、同じ看護師が1人の患者を退院まで継続して受け持つため、頻繁に声をかけて刺激を与えるなど手厚く、先駆的なリハビリができます。

 療護センターが初めて開設された1984年から今年3月までの入院患者は1415人で、うち26%の372人が自動車事故対策機構独自の評価基準で、遷延性意識障害を脱却したと判定されました。自分で食事や車いすによる移動ができる段階まで回復した人は少ないものの、家族は「声掛けに笑顔を見せたり、握手をしたりといった意思疎通ができるだけで大きな喜びとなる」と話しています。

 専門病床では、複数の病院で治療を受け病状が安定した患者を受け入れており、通常、事故から入院まで1年程度かかります。自動車事故対策機構の調査では、専門病床に入るまでの期間が短いほど脱却率が高い傾向がありました。

 自動車事故対策機構が1カ所で試験導入する「一貫症例研究型」という新型の委託病床(5床)は、専門病床に入るまでの期間を短縮するのが狙い。大学病院などの高度医療機関への委託を想定しており、交通事故直後の患者に急性期治療をした後、併設する委託病床で同じ医師らがリハビリを一貫して行うことで効率的な治療ができます。効果が確認されれば委託先を順次拡大し、専門治療の機会を増やす方針。

 また、自宅から専門病床が遠くて利用できないという家族の不満に応えるため、5床程度の「ミニ委託病床」を導入することも検討しています。

 「全国遷延性意識障害者・家族の会」(約300家族)は、各都道府県に1カ所は専門病床を開設するよう、国土交通省や自動車事故対策機構に要望を続けています。

 2017年5月8日(月)

 

■生活保護受給者の利用する調剤薬局を1カ所に集約へ 厚労省が検討

 厚生労働省は、生活保護受給者の利用する調剤薬局を1カ所に集約する方針を固め、検討に入りました。受給者は決められた薬局でしか、薬を受け取れなくなります。

 複数の医療機関にかかって同じ薬を重複して処方されるのを防ぎ、生活保護費を節減するのが狙い。受給者数が全国最多の大阪市などで6月にも試行し、効果や課題を検証します。

 病院で処方箋を受け取った患者は、病院近くの調剤薬局で薬を受け取ることが多いため、複数の医療機関を受診すると、通う薬局も増えます。向精神薬に限ってみると、2015年度には全国で4650人の受給者が同じ病気で複数の医療機関を受診し、重複して薬を受け取っていました。

 利用する薬局が1カ所に集約されれば、受給者にとっては重複処方や併用禁忌薬の使用による健康被害を避けられるメリットがあるものの、利便性の低下も予想されます。

 厚労省は、生活保護受給者が自己負担なしで薬を受け取れる「調剤券」を、自宅近くなど決められた調剤薬局でしか使えないようにすることを想定しています。市販薬などを購入する場合の薬局は対象外。

 必要な薬がすべて1カ所で手に入るかなどの課題を秋までに検証し、来年度以降は全国に広げることを検討します。

 生活保護受給者数は約216万5000人(約161万2000世帯)で、高齢者世帯がおよそ半数を占めています。医療費(医療扶助費)は2015年度実績で1・8兆円かかっており、生活保護費全体3・7兆円の半分を占めています。

 2017年5月7日(日)

 

■今年初めて黄砂を観測、今夜からは広範囲に飛来か 気象庁が車の運転に注意を呼び掛け

 大陸からの西寄りの風が強まっている影響で、西日本の広い範囲で、今年初めての黄砂が観測されました。

 1967年の統計開始以来、最も遅い記録といいます。これまでに最も遅かったのは1972年の4月16日で、初観測が5月になったのは初めて。昨年は4月9日に、青森市などの4地点で観測されました。

 6日夜から7日にかけては西日本から北日本の広い範囲で黄砂が観測されると予想されており、気象庁は視界が悪い中での車の運転などに注意を呼び掛けています。

 気象庁によりますと、大陸にある低気圧の影響で西寄りの風が強まっているため、中国の内モンゴル自治区の砂漠地帯で巻き上げられた黄砂が日本付近に流れてきています。

 このため、6日午前10時ごろに、松江市で全国で今年初めてとなる黄砂が観測されたほか、午後に入って、広島市や福岡市、神戸市など中国地方や九州地方を中心に、西日本の広い範囲で観測されました。

 気象庁によりますと、この後も西寄りの風が続くため、6日夜から7日にかけては西日本から北日本の広い範囲で黄砂が観測される見込みです。

 視界は10キロを下回り、5キロ未満となるところもある見込み。気象庁は、車の運転や洗濯物などの汚れなどに注意するよう呼び掛けています。

 2017年5月6日(土)

 

■東京都が作成したヘルプマーク、JIS登録へ 義足、内部障害、妊娠初期など対象

 外見からでは障害があるとわかりづらい人が周囲から手助けを得られやすいよう東京都が作った「ヘルプマーク」のデザインが、7月に日本工業規格(JIS)に登録される見込みとなりました。障害者のためのマークにはさまざまな種類がありますが、統一化が進むことで全国的な広がりが期待されます。

 ヘルプマークは、義足や人工関節を使用している人、内部障害や難病の人、または妊娠初期の人など、外見からわからなくても援助や配慮を必要としている人々が、周囲の人に配慮を必要としていることを知らせることで、援助を得やすくなるよう、作成されたマークです。マークは、赤地に白色の十字とハート形がデザインされています。

 2012年、東京都が足に人工股関節を入れている都議の提案で、樹脂製のカードを作成。裏面には、障害の内容や必要な助けなどを記入したシールを貼り、かばんなどに付けられます。

 東京都福祉保健局は、ヘルプマークを身に着けた人を見掛けた場合は、周囲の人が電車やバス内で席を譲る、困っているようであれば声を掛けるなど、思いやりのある行動を示すよう呼び掛けています。

 2017年5月6日(土)

 

■黄砂、6~7日に全国の広い範囲に飛来か 気象庁が注意を呼び掛け

 中国の内モンゴル自治区方面から飛来する黄砂が、6日から7日にかけて日本全国の広い範囲で観測される可能性があるとして、気象庁が注意を呼び掛けています。国内で観測されれば、今年初となります。

 気象庁によると、6日午後に九州北部や山陰の一部に到達し、徐々に全国に拡大。7日未明から午前には、北海道から九州南部の広い範囲で観測されることが予想されています。

 黄砂が飛来した地域は、洗濯物や屋外の車に砂が付着するなどの被害が出るほか、西日本を中心に比較的濃度が高い地域では、視界が悪化し、交通機関に影響が出ることもあるといいます。

 中国の北京市は4日、内モンゴル自治区方面から飛来した黄砂に覆われ、北京市気象台が同日早朝、今年初となる黄砂に関する警報を発令。中国メディアによると、北京市は2015年4月以降で最も深刻な砂ぼこりに見舞われたといいます。

 北京市内は黄色がかった霧に覆われたような状態が続き、視界が悪くなりました。黄砂は大気汚染を引き起こし、市内では粒子状物質「PM10」の濃度が1立方メートル当たり2000マイクログラムを超える観測地点が続出。世界保健機関(WHO)が定める環境基準値(年平均)の100倍に達し、街中ではマスクをした人の姿が目立ちました。

 2017年5月5日(金)

 

■iPS細胞、作製の効率化に成功 京大、マウス実験で成功率5割に

 さまざまな細胞に変化する能力を持つiPS細胞(人工多能性幹細胞)を効率的に作製する方法を発見したと、京都大学iPS細胞研究所の山本拓也講師(分子生物学)らの研究チームが発表しました。

 作製に必要な遺伝子の組み合わせを替えることで、マウスの細胞を使った実験では、iPS細胞に変化する割合を従来の数%から50%程度まで向上させることができました。論文は3日、アメリカの科学誌「セル・メタボリズム」(電子版)に掲載されました。

 iPS細胞は数種類の遺伝子を皮膚や血液などの細胞に導入し、受精卵に近い状態に「初期化」して作製しますが、効率は低く、遺伝子を導入した細胞の数%しかiPS細胞にならず、異常な細胞が多くできます。

 研究チームは効率化を図るため、16種類の候補遺伝子を選定。これまで使用していた4種類のうち、1種類を「Zic3」と「Esrrb」という2種類の遺伝子に替えました。

 計5種類を導入することで、マウス実験では高品質のiPS細胞を高い効率で作製できました。2種類の遺伝子が細胞の状態をバランスよく制御し、さまざまな細胞になれる状態に戻す初期化を相乗的に促したとみられます。

 山本講師は、「作製効率を上げることで、将来的により高品質なヒトiPS細胞の作製につなげたい」と話しています。

 2017年5月5日(金)

 

■20歳代の勤務医は週50時間を超えて労働 厚労省が医師の働き方を調査

 病院や診療所に勤務する20歳代医師の1週間の勤務時間は男女とも平均50時間を超え、ほかに救急搬送など緊急の呼び出しに備えた待機時間も12時間以上に及ぶことが4日、厚生労働省研究班の調査で明らかになりました。

 厚労省は、「若手を中心とする医師の過酷な長時間労働の実態が示された」と指摘。医師の地域偏在を解消し、看護師や事務職に仕事を分担させるなど、医師の労働環境改善に向けた検討を進めます。

 専門家からは、「仕事の振り分けなどにより個々人の負荷を減らすべきだ」との意見も出ています。

 厚労省は昨年12月、全国約1万2000の医療機関に勤務する医師約10万人を対象に、働き方の実態を尋ねる調査票を送付。昨年12月の1週間に、何時間働いたかなどの記入を依頼し、1万5677人が郵送で回答しました。

 その結果、男性の常勤医師の平均勤務時間は、20歳代が週に57・3時間だったことが判明。30歳代も56・4時間だったほか、40歳代は55・2時間、50歳代は51・8時間で、60歳代は45・5時間でした。

 女性の常勤医師の場合は20歳代が53・5時間で、30歳代が45・2時間、40歳代41・4時間、50歳代44・2時間、60歳代が39・3時間でした。

 年代にかかわらず週60時間を超えて勤務していた常勤医師は、男性27・7%、女性17・3%に上りました。診療科別では、救急科が最長の55・9時間で、精神科は43・6時間と差がみられました。  

 医師の地域偏在の解消が課題となる中、政令指定都市、県庁所在地などの都市部以外の地方勤務の意思を問うと、20歳代の60%、全体の44%が「ある」と回答しました。「ない」と答えた人にその理由を聞くと、「労働環境への不安」が各年代で上位でした。

 厚労省の担当者は、「休みを確保できるなど環境を整えれば偏在は解消できる」と話しています。

 2017年5月5日(金)

 

■ロタウイルス患者数、過去最多に 乳幼児の胃腸炎に注意を

 乳幼児を中心に急性の胃腸炎を引き起こす「ロタウイルス」の感染が広がっており、最新の1週間の患者数が過去最多になったことがわかりました。

 ロタウイルスによる急性の胃腸炎は0~6歳の乳幼児がかかりやすい病気で、下痢や嘔吐、発熱、腹痛などを伴い、特に初めての感染時には症状が強く出て、入院が必要になることもあります。大人は何度も感染しているため、多くは症状が出ません。

 国立感染症研究所によりますと、4月23日までの1週間に全国の医療機関から報告された患者数は1医療機関当たり0・84人で、4週連続で増加しました。1週間の患者の数としては、調査を始めた2013年以降で、最も多くなっています。

 都道府県別の報告数では、群馬県が3・88人で最も多く、次いで香川県3・0人、福井県2・0人の順でした。

 厚生労働省は、手洗いなどを徹底して感染を予防するよう呼び掛けています。 

 2017年5月4日(木)

 

■マダニ媒介のウイルス性感染症、90歳代女性が死亡 鹿児島県で今年初めて

 鹿児島県内の90歳代の女性が5月1日、マダニが媒介するウイルス性感染症「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)」で死亡しました。鹿児島県内での患者の死亡は、今年初めてです。

 鹿児島県によりますと、死亡したのは90歳代の女性で、4月23日に全身の痛みや寒気を感じて医療機関を受診し、5月1日の環境保健センターの検査でマダニにかまれて発症する重症熱性血小板減少症候群の陽性と判明しました。

 女性は肝機能障害などを発症して1日に死亡しましたが、患者の確認は鹿児島県内で今年2例目で、死亡したのは今年初めて。鹿児島県内での死亡例は、一昨年11月以来で、今回が6例目になります。

 女性は医療機関を受診する前日、山林に入ったことが確認されており、右ひじにはマダニにかまれた跡があったということです。

 マダニは主に山林や草むらに生息し、5月から10月にかけて活動が活発になるということで、鹿児島県では山林に入る時は長袖、長ズボンを着用するなどし、できるだけ肌を露出しないよう注意を呼び掛けています。

 2017年5月4日(木)

 

■循環器系疾患の発症や重症化リスク、人工知能で予測 国立循環器病研究センターが計画

 国立循環器病研究センター(大阪府吹田市)は、アメリカのIBMの「ワトソン」などの人工知能(AI)を使って、脳卒中や心筋梗塞などの循環器系疾患の発症や重症化のリスクを正確に予測する研究を始めたと発表しました。

 同センターはこの研究結果を基に、患者の治療に役立てたいとしています。

 医師がカルテに自由に書き込む患者の具体的な症状は、同じ症状でも「胸痛」「胸が痛い」などと異なる表現があり、自動的に集計するには難点がありました。今回日本IBMの協力を得て、言葉の意味や文脈を理解し、データの関連性などを分析できるワトソンを活用。脳卒中や心筋梗塞など脳や心臓の血管疾患の症状を示した患者で、治療の経過や結果がわかっている約1500人分の電子カルテを読み込ませ、自由記述を正確に識別できるようにしました。

 試しにワトソンで識別した「胸の痛み」や「呼吸の苦しさ」「むくみ」といった具体的な症状の情報を、既存のリスク評価基準と組み合わせて人間が分析したところ、脳卒中や心筋梗塞が起こる確率の予測精度を10~15%上げることができました。

 半年後をめどに約3000人分の電子カルテを読み込ませて、識別の正確さをさらに検証し、別のAIがどの症状が脳や心臓の血管疾患と関係しているのか関連性を調べます。将来的にはAIで自動的により高い精度でのリスク予測を目指します。

 同センターの安田聡副院長は、「予後の早期の診断や治療に役立てたい」と話しています。

 2017年5月3日(水)

 

■キリンビバレッジ、ボルヴィック370万本を自主回収 フランス工場で部品混入

 大手飲料メーカーの「キリンビバレッジ」は2日、ミネラルウォーター「ボルヴィック」の一部の商品に、プラスチックの破片が混入した恐れがあるとして、約370万本を自主的に回収すると発表しました。

 回収の対象となるのは、キリンビバレッジがフランスから輸入して販売しているペットボトル入りミネラルウォーターの「ボルヴィック 500ミリリットル」で、賞味期限が「2019年10月」と記された約370万本です。出荷地域は九州・沖縄を除く全国ですが、九州・沖縄でも販売されている可能性があります。

 キリンビバレッジによりますと、今年3月以降、商品を購入した人から「厚さ約1ミリメートル、縦横各2センチメートル程度の黒い異物が入っている」という連絡が合わせて2回あったため、フランスの工場を調べたところ、水の充填(じゅうてん)機のプラスチックの部品が破損しているのが見付かり、商品に破片が混入した恐れがあることがわかったということです。

 プラスチックの破片は、大きいものでは長さが2センチ近くある可能性があり、同じ期間に製造した商品をすべて回収することにしたということです。気付かずに口に入れた場合、口腔(こうこう)内を傷付ける可能性がありますが、今のところ、健康被害などの報告は入っていないといいます。

 330ミリリットル、1リットル、1・5リットルのペットボトルは自主回収の対象外。500ミリリットルでも、賞味期限が違う商品は対象にならないといいます。

 対象商品の回収を申し出たい人は、対象の商品をキリンビバレッジの専用窓口がある神奈川県の湘南工場に着払いで送れば、買い物などに使える500円分のプリペイドカードを返送するとしています。

 問い合わせの電話番号は、フリーダイヤル0120-253ー324で、平日の午前9時から午後5時まで受け付けています。また、3日から7日までの連休期間中も受け付けるということです。

 キリンビバレッジは、「お客様と販売店の皆様に多大なご心配とご迷惑をおかけし、深くおわび申し上げます」としています。

 2017年5月3日(水)

 

■耳鳴り、抑制系聴神経の機能低下が一因か 客観的な診断法に期待

 多くの人が悩まされている慢性的な耳鳴りについて、自然科学研究機構生理学研究所(愛知県岡崎市)と名古屋市立大学の共同研究チームが、必要な音を聞き分ける聴神経の機能低下が一因とみられるとの研究結果を明らかにしました。

 耳鳴りは外部からではない音の知覚で、ほとんどの場合、難聴を伴います。日本人の1200万人以上が何らかの耳鳴りがあり、そのうち約20パーセントの人は苦痛を伴う耳鳴りがあるといわれていますが、耳鳴りの診断は本人の主観的な訴えに基づいており、客観的に耳鳴りを診断することもできません。

 研究チームは、「現在では困難である耳鳴りの客観的な診断法や、治療法の開発につながる」と期待しています。

 研究チームは、聴神経には、周りの音とのコントラストをはっきりさせて、聞きたい音を聞きやすくする働きがあることに着目。脳活動に伴う磁場を計測する脳磁計を使い、聴力に左右差はないが、片方の耳だけに耳鳴りがするという患者7人が、静かな状況と雑音がする状況で、耳鳴りと同じ周波数の音を聞いた時の反応を調べました。

 その結果、耳鳴りがある耳もそうでない耳も、静かな状況よりも雑音がしている状況のほうが耳鳴りと同じ周波数の音に対する反応が鈍いことが示され、耳鳴りがある耳のほうがより鈍くなっていました。

 研究チームは、正常な耳では、聴神経の聞き分け機能が働き、雑音をある程度シャットアウトしたのに対し、耳鳴りがある耳では、聞き分け機能がうまく働かず、抑制系聴神経の活動が低下して雑音を排除できなかったとみています。

 自然科学研究機構生理学研究所の岡本秀彦准教授(脳科学)は、「聞き分ける力は、訓練すれば向上する。会話や音楽など、さまざまな周波数を含む音をしっかり聞くと、耳鳴りの改善につながるのでは」と話しています。

 2017年5月2日(火)

 

■最先端のリハビリ施設、11月に開設へ 慶大など19団体が参加

 脳波から意思を読み取り体を動かす装置などを使い、治療が難しい重いまひの回復を目指す次世代リハビリテーション施設「スマートリハ室」の開設に、慶応大学などが乗り出します。日本医療研究開発機構の支援で、脳卒中リハビリの研究拠点となるモデル施設作りに取り組みます。

 開設には、大阪大学や国内7企業など計19団体が参加。神奈川県藤沢市の慶大キャンパスの隣に11月開業予定の民間病院、湘南慶育病院を拠点にして、研究を進めます。

 目玉となるのは、脳と機械をつなぐ「BMI(ブレーン・マシン・インターフェース)」と呼ばれる技術を応用したリハビリ装置。脳波や脳血流などから動作の意思を読み取り、まひした部位を機械で動かす訓練を繰り返し、傷付いた神経回路の修復を図ります。

 慶大の臨床研究では、手の指に付けた装置で1日約40分間、10日間続けてリハビリを行ったところ、指が全く動かせなかった患者42人中29人が動かせるようになりました。

 スマートリハ室にはこのほか、脊髄に電気刺激を与えて歩行を支援する装置や、足首の動きを補助する装着型ロボットなどをそろえます。

 こうした次世代リハビリを研究する企業や大学は増えていますが、大きな研究拠点は初めて。パナソニックなど参加企業は、各装置の5年以内の実用化を目指して臨床研究を行います。

 2017年5月2日(火)

 

■生活習慣病の予防・改善に熟成ニンニク抽出液が有用 湧永製薬が研究発表

  湧永製薬(大阪市淀川区)は、このほど熟成ニンニク抽出液が生活習慣病の予防・改善に有用であるとする研究成果を発表しました。

 糖尿病や脂質異常症などの生活習慣病が進行すると、大動脈に脂質が沈着し、動脈が狭く硬くなり動脈硬化症につながります。そこで血管への脂質沈着について、熟成ニンニク抽出液が及ぼす作用をマウスを使って実験しました。

 実験期間は12週間。対象を普通食を与えた正常マウスのグループ、普通食を与えた動脈硬化マウスのグループ、熟成ニンニク抽出液を混ぜた餌を与えた動脈硬化マウスのグループという3グループ(1グループ当たり6~7匹)に分けました。

 結果は、動脈全体に対する脂質沈着面積が正常マウスのグループに比べ、普通食を与えた動脈硬化マウスのグループは約90倍の広さになっていました。一方、熟成ニンニク抽出液を混ぜた餌を与えた動脈硬化マウスのグループは、普通食を与えた動脈硬化マウスのグループより22%の減少がみられました。

 熟成ニンニク抽出液が動脈への脂質沈着を抑制し、動脈が硬くなりにくいことを示唆しています。

 次に、糖尿病に関与する血中タンパク質の糖化と肥満抑制因子についても実験しました。血中タンパク質は高血糖が続くと糖化し合併症を引き起こすものであり、肥満抑制因子は糖尿病が進行すると減っていきます。

 実験期間は19週間。対象を普通食を与えた糖尿病マウスのグループ、熟成ニンニク抽出液を混ぜた餌を与えた糖尿病マウスのグループという2グループに分けました。

 結果は、熟成ニンニク抽出液を混ぜた餌を与えた糖尿病マウスのグループが、普通食を与えた糖尿病マウスのグループに比べ20%の糖化タンパク質の減少となりました。肥満抑制因子は、熟成ニンニク抽出液を混ぜた餌を与えた糖尿病マウスのグループが、普通食の糖尿病マウスのグループより93%の増加となりました。

 高血糖で起きる障害を防ぐ働きを示唆しています。

 湧永製薬の主幹研究員、森原直明さんは、「熟成ニンニク抽出液だけで複数の働きを持つため医薬品とは異なる薬効の可能性があり、今後も研究を進める」と話しています。

 熟成ニンニク抽出液は、生ニンニクを長期抽出・熟成したエキス(液体)。生ニンニクを熟成させることにより、その刺激性や臭いが低減されるとともに、生ニンニクにはほとんど含まれないSーアリルシステインなどの有用成分が含まれます。

 また、湧永製薬は1月から、熟成ニンニク抽出液を配合したサプリメント「キョーリック」の国内販売を開始しています。キョーリックは海外子会社のワクナガ・オブ・アメリカを通じて、世界50カ国以上で販売実績のあるブランドで、年間20億から30億円規模と推定されているアメリカのニンニクサプリメント市場で6割の市場占有率(シェア)を持っているといいます。

 2017年5月1日(月)

 

■花粉症を起こすマスト細胞が結核感染を防ぐ 福井大が免疫の仕組み解明

 福井大学医学部の研究チームは27日、花粉症などのアレルギー症状を引き起こすことで知られる免疫細胞「マスト細胞」が、結核菌の感染から体を守る働きを持っていることを突き止めたと発表しました。結核に対する新たな予防法や治療法の開発などにつながる成果といいます。

 福井大の学術研究院医学系部門の定(さだ)清直教授(ゲノム科学・微生物学)と医学部附属病院呼吸器内科の本定千知(ほんじょう・ちさと)医師らによる共同研究。論文は、イギリスの科学雑誌に4月10日付けで掲載されました。

 今回の研究では、結核菌の細胞壁の成分にマスト細胞の培養液を加えた際の反応を確認。マスト細胞が「ヒスタミン」と呼ばれる物質などを放出し、免疫機能を高めて結核菌感染を防御する働きをすることが明らかになりました。マスト細胞はもともとは寄生虫の感染を予防する働きを持っていますが、寄生虫が減った先進国では、花粉症を引き起こす厄介な存在と位置付けられていました。

 結核は世界で19億人が感染しているとされ、国内でも毎年約1万8000人が発症し、約2000人が死亡しています。福井県のまとめでは、同県内で毎年約100人が新規に発症し、死者も約10人となっています。

 研究チームはマスト細胞を研究する中で、2013年から結核菌との関係に着目し、成果につなげました。マスト細胞内のタンパク質を薬で活性化できれば、新たな結核予防法などの開発が期待できるといい、すでに国内の製薬会社から問い合わせがきているといいます。

 定教授は、「結核は世界最大の感染症の一つ。決して過去の病気ではなく、根絶に向けた新たな展開を可能にする」と話しました。今後は、マスト細胞が結核菌に作用するメカニズムについて研究を進める予定。

 2017年4月30日(日)

 

■毎月17日は「減塩の日」 日本高血圧学会が制定を発表

 日本高血圧学会(伊藤貞嘉理事長)は28日、毎月17日を「減塩の日」にすると発表しました。

 日本高血圧学会などは2008年以降、世界高血圧デーの5月17日を「高血圧の日」と定め、啓発に取り組んできました。この高血圧の治療や予防に効果がある減塩を推進するために、新たに毎月17日を「減塩の日」と制定することを日本記念日協会に申請し、3月6日付で認定登録されました。

 日本高血圧学会は、「減塩の日の制定によって、高血圧患者はもとより、一般市民においても減塩に対する意識が高まり、健康寿命延伸の一助となることを期待している」とし、今後は、市民公開講座などを通じて減塩の啓発に取り組み、調理法の紹介や減塩食品売り場の設置呼び掛けなどを行っていきます。

 高血圧(140/90mmHg以上)は、日本人の3大死因のうちの2大疾患である脳卒中や心臓病など、生命にかかわる病気を引き起こす最も主要な原因となっています。しかし、高血圧はサイレント・キラーと呼ばれるように自覚症状がないために、現在、日本に約4300万人と推定されている高血圧患者のうち、実際に治療を受けているのは約1010万人(2014年)といわれています。

 1日の食塩摂取量(2015年)は、男性11・0グラム、女性9・2グラムで、日本高血圧学会が推奨する6・0グラム未満を大幅に超えています。

 2017年4月30日(日)

 

■インフルエンザ患者数、前週より増加 B型が増加し再びかかる可能性も

 厚生労働省は28日、全国約5000カ所の医療機関から17~23日に報告されたインフルエンザの患者数が1医療機関当たり4・06人となり、前週の3・98人より0・08人増加したと発表しました。

 通常はインフルエンザの流行が収まっていく時期で、前週より増えるのは珍しいこと。ただ、昨年同期の患者数は4・22人で、厚労省は「新年度に入り集団に接する機会が増えるなどして一時的に増えたとみられる。例年に比べて流行しているとはいえず、このまま終息していくだろう」としています。

 国立感染症研究所によると、17~23日に全国の医療機関を受診した患者は約20万人と推計されます。年代別では、5~9歳が最多で約4万人、次いで10~14歳が約3万人と推定され、小中学生の患者が目立ちました。都道府県別では、新潟県9・96人、沖縄県9・55人、福島県8・42人、北海道7・35人、福井県6・88人などとなっています。

 検出されたウイルスの割合は、3月ごろから多くなっていたB型がA香港型と同程度にまで増えました。インフルエンザが通常多く発生する1、2月はA型ウイルスの検出が多いものの、4月のこの時期はB型が多いとされます。

 専門家は、「この冬にA型に一度かかった人でも、B型を発症する可能性がある。引き続き手洗いうがいを徹底し、十分に休養を取ってほしい」と感染予防を呼び掛けています。

 幼稚園や小学校で学級閉鎖や休校などの措置を取ったのは510施設で、前年比345施設増。調査期間中の18日には、小学6年と中学3年を対象に2017年度全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)が行われましたが、休校などのため実施できない学校もありました。

 2017年4月29日(土)

 

■化学工場で6人が肺疾患、有機粉じん吸引が原因か 厚労省調査へ

 厚生労働省は28日、整髪料や医薬品などの原料となる粉末状の有機化学物質を製造する化学工場で、請負業者の男性作業員6人が間質性肺炎などの肺疾患を発症したと発表しました。

 作業場で高濃度の有機粉じんが発生しており、作業員が吸引したとみられます。厚労省は今後、発症原因の究明を進めます。

 厚労省によると、化学工場が製造していたのは、アクリル酸系ポリマーの一種で、整髪料などの増粘剤として使われる粉末状の有機化学物質「架橋型アクリル酸系水溶性高分子化合物」。発症した6人は、袋詰めや運搬などを担当する請負業者の20~40歳代の男性社員で、勤務歴は1~5年。請負業者による2012年4月~2016年3月の健康診断で、間質性肺炎や肺気腫、気胸などの肺疾患が相次いで見付かったといいます。

 作業員にはマスクが配布されていましたが、着用が不十分だったために吸引した可能性があります。6人以外に少なくとも19人が働いており、厚労省は健康診断を実施するよう請負業者に要請しました。

 ただし、化学工場ではこの化学物質を30年以上前から製造し、これまでに問題は報告されていませんでした。厚労省は「注意喚起が目的」として、企業名や所在地を明らかにしませんでした。

 また、厚労省は化学物質の有害性は確認されていないものの、健康被害を引き起こす恐れもあるとして、問題が起きた企業を含む、同様の化学物質を製造、輸入する国内の4社に対して、作業員のマスク着用など粉じんの吸入を防ぐ対策の徹底を要請しました。

 2017年4月28日(金)

 

■抗がん剤の効果を大規模調査 厚労省など、高齢者の治療指針作成へ

 高齢のがん患者に対する抗がん剤の使用を巡って、厚生労働省は27日、患者によっては負担が大きく、効果が見込まれないケースもあるとして、抗がん剤を使用した患者と使用しなかった患者の生存期間などを比較する大規模な調査を行う方針を固めました。

 厚労省によりますと、抗がん剤を使ったがんの治療は効果が見込まれる一方で、患者によっては副作用の負担が大きいほか、高齢の患者はほかの病気を併発していることも多く、効果が見込まれないケースもあるということです。

 国立がん研究センターが2008年までの2年間に同センター中央病院を受診した末期の肺がんの患者約200人を対象に、抗がん剤治療を受けた患者と受けなかった患者の生存期間を調査したところ、75歳未満では抗がん剤治療を受けたほうが生存期間が長い一方で、75歳以上では差が認められなかったということです。

 しかし、75歳以上の調査は対象が19人と少なく、統計的に意味のある結果は得られていないとして、厚労省と国立がん研究センターはさらに大規模な調査を行う方針を固めました。具体的には、全国の病院でがん患者の情報を登録している「がん登録」を活用して、より多くの患者の治療データを分析します。

 厚労省はまた、高額な抗がん剤の使用拡大や高齢化などによって医療費の増大が課題となっていることも踏まえ、新たな調査結果を基に、高齢の進行がん患者に対する抗がん剤治療の指針(ガイドライン)を作成する方針です。延命効果と痛みなどの副作用や、患者が生活の質(QOL)を維持できるかなどの面を併せて検討し、指針に反映させます。

 日本の人口は、2025年に65歳以上が3割を超えるとされ、がん患者の高齢化も進みます。国立がん研究センターによると、2012年に新たにがんと診断された約86万人のうち、75歳以上は約36万人と推計されています。

 2017年4月28日(金)

 

■自殺者を10年で30%以上減らす目標を設定 厚労省が自殺対策を見直し

 厚生労働省の有識者検討会は26日、自殺対策の国の指針となる「自殺総合対策大綱」の5年に1度の見直しに向けた報告書を大筋で了承しました。

 今後10年間で、人口10万人当たりの自殺者数を示す「自殺死亡率」を2015年と比べて30%以上減らす目標を掲げ、過労自殺対策などの推進を盛り込みました。今夏に新たな自殺総合対策大綱を閣議決定します。

 国内の自殺者数は、2012年に3万人を切り、2016年が2万1897人と7年連続で減少しました。しかし、報告書は「年間2万人を超える深刻な状況がいまだ続いており、楽観できない。主要先進7カ国の中で日本の自殺死亡率は最も高い」と国内の現状を問題視。

 世界保健機関(WHO)の調査によると、アメリカの自殺死亡率は2014年に13・4人、イギリスは2013年に7・5人。日本は2015年が18・5人だったため、2026年までに13・0人以下へと2015年と比べて30%以上減らし、自殺者数を1万4000~1万5000人以下とすべきだとする新たな目標を掲げました。

 現在の自殺総合対策大綱に基づく目標は、2016年までの10年間で自殺死亡率を20%以上減少させるとしていました。2005年の24・2人と2015年の18・5人を比べると23・6%減少しており、報告書は「目標が十分に達成されている」とした上で、新たな目標の達成に向けてさらなる取り組みの推進が必要だとしています。

 今後の重点テーマとしては、電通の違法残業事件などを踏まえ、過労自殺や職場での人間関係による自殺の対策に取り組むことを挙げました。長時間労働の是正に加え、企業のメンタルヘルス対策を充実させていく方針を明記しました。

 自殺者が減らない若者対策では、学校へのカウンセラー配置のほか「SOSの出し方教育」の推進、インターネットなどを使った若者への支援強化、居場所づくりの支援などを盛り込みます。

 また、妊産婦の自殺対策では、産後うつの早期発見や、乳幼児健診を通じて育児に悩みを抱える母親への支援強化を充実させるべきだとしています。

 このほか、報告書は地域で自殺対策を推進していく中で、都道府県や市区町村には独自の数値目標を掲げ、目標を達成できたかどうか検証するよう求めます。

 自殺総合対策大綱は、2006年施行の自殺対策基本法に基づき、2007年に初めて策定。2012年に現在の自殺総合対策大綱を閣議決定しました。

 2017年4月28日(金)

 

■超未熟児向け人工子宮でヒツジ胎児が正常に発育 アメリカの病院チーム

 透明な液体を満たした人工子宮で、ヒツジの胎児を最長で4週間正常に発育させる実験に成功したとの研究論文が25日、発表されました。超未熟児の死亡や生涯にわたる身体障害を回避する助けになる可能性のある成果だといいます。

 イギリスの科学誌「ネイチャー・コミュニケーションズ」に発表された研究論文の主執筆者で、アメリカのペンシルベニア州のフィラデルフィア小児病院の胎児外科医のアラン・フレイク氏は、「このシステムは子宮内での胎児の自然な発育が継続するように設計されている」と話しています。

 フレイク氏は電話記者会見で、「それが、このシステムの優れた点であり、超未熟児に現在行われている対応策の改良につながると楽観している理由でもある」と語りました。

 現在、妊娠期間が40週ではなく22~23週程度で生まれる新生児は、生存率が50%で、生存した場合でも90%の確率で重度の長期的な健康問題が発生するとされています。

 子宮内の生活を再現する今回の最新システムは、人への使用が承認されれば、これらの確率を大幅に改善するかもしれません。

 研究チームはアメリカの食品医薬品局(FDA)と協力して、人の新生児への臨床試験の準備を進めており、安全性と有効性が証明されれば、人工子宮システムは3年以内に利用できる可能性があるといいます。

 今回の研究では、ヒツジの胎児6匹を妊娠105~112日(人の妊娠23~24週目に相当)の時点で、母親の子宮内から人工子宮に移して、最大28日間発育させる実験を行いました。

 合成羊水で満たした透明なポリエチレン袋で作った人工子宮内で、胎児は機械式のポンプを使わずに合成羊水を呼吸。へその緒が管を通して袋の外部の機械につながれており、この機械が内部を通る血液に対して二酸化炭素(CO2)の除去と酸素の供給を行いました。

 ヒツジの胎児は人工子宮内で、「正常な呼吸と嚥下(えんげ)を示し、目を開け、毛が生え、動きがさらに活発になり、成長、神経機能、臓器の成熟のすべてが正常だった」といいます。

 実験に使われたヒツジのほとんどは人道的に殺して、脳、肺、そのほかの臓器を調べました。数頭は哺乳瓶で栄養を与えて育てたところ、あらゆる面で普通に発育し、そのうちの1頭はペンシルベニア州の農場で暮らしています。

 研究チームによると、人工子宮の研究は50年以上の歴史があり、これまでの発育記録は、東京大学が1990年代にヤギの胎児で達成した3週間が最長。ヒツジは、特に肺の発達が人と非常に良く似ているという理由から、出生前治療の実験に長年用いられているといいます。

 2017年4月27日(木)

 

■臓器移植ネットワーク、患者選定の専任部門新設へ ミスの再発防止策

 移植患者を選ぶ検索システムに不具合があり、脳死臓器提供者から提供を受けるはずだった2人が心臓移植を受けられなかった問題で、日本臓器移植ネットワークは25日、再発防止策を発表しました。患者の選定業務だけをする専任部門と、検索システムの正確さを検証し管理運営を担う情報統括部門を新設します。

 臓器提供を受ける患者の優先順位を決める業務はこれまで、病院間の調整などをするコーディネーターが兼務してきました。5月からは患者選定に特化する部門を設け、責任者を置きます。7月設置を目指す情報統括部門には、外部から責任者を招き、より精度の高いシステムの構築を目指すといいます。

 選定ミスは、昨年10月に導入したシステムのプログラムミスのために起き、本来は優先順位が高く、心臓移植を受けるはずだった患者2人が手術を受けられませんでした。

 門田守人理事長は、「態勢づくりが追い付いていなかった。しっかりしたシステムをつくっていきたい」と話しました。

 2017年4月27日(木)

 

■大阪大、うつ病改善物質を特定 難治性の新薬開発に期待

 脳内で作られる特定の物質が、うつ病の改善に効果があることを大阪大学大学院医学系研究科の近藤誠准教授(神経科学)らの研究チームが明らかにし、25日発表しました。

 研究成果は、アメリカの科学誌「モレキュラー・サイキアトリー」(電子版)に掲載されました。

 研究チームは、マウスの脳の海馬を調べ、感情の動きなどにかかわる脳内の神経伝達物質「セロトニン」の刺激を受け取る複数の受容体のうち、「セロトニン3型受容体」を持つ神経細胞から、神経細胞の新生を促す「インスリン様成長因子1(IGF1)」という物質が分泌されていることを発見。

 このセロトニン3型受容体に働き掛ける化合物をうつ状態で活動量が低下したマウスに投与すると、IGF1の分泌量が増えて神経細胞の新生が促され、翌日にはうつ状態が改善しました。

 世界保健機関(WHO)の発表では、2015年時点でうつ病を抱える人は世界で推計3億人を超えます。近藤准教授によると、最も広く使われている既存の抗うつ薬でも、十分な効果がない難治性の患者が多いといいます。

 近藤准教授は、「今回の発見で、難治性うつ病の新しい治療薬の開発が期待できる。今回投与した化合物は実験用だが、人で使えるよう研究を進めたい」と話しています。

 2017年4月26日(水)

 

■マラリアワクチンの大規模接種を開始 WHO、アフリカ3カ国で

 世界で毎年、数十万人が命を落としている感染症、マラリアへの対策として、世界保健機関(WHO)はイギリスの製薬会社が開発した世界初のワクチンを各国に推奨するかどうか判断するため、来年からアフリカで大規模な接種を実施してデータを集めることになりました。

 マラリアは蚊が媒介する感染症で、2015年には世界で2億1200万人が感染し、約43万人が死亡しました。かつては世界各地にみられましたが、治療薬の普及などに伴い、現在は感染者の90%がアフリカ大陸のサハラ砂漠以南に集中。特に5歳未満の子供の死亡率が高く、国連は2040年までの制圧を目指していますが、感染しないように予防するワクチンの開発と実用化が鍵となります。

 マラリアへの対策としてWHOは24日、イギリスの大手製薬会社、グラクソ・スミスクラインが開発したワクチンを各国に推奨するかどうか判断するため、来年からアフリカで大規模な接種を実施し、データを集めると発表しました。

 このワクチンで効果を高めるためには4回の接種が必要となるため、医療や保健が不足している地域でどれだけ接種が達成できたかや、ワクチンの予防的効果などについて調べるということです。

 対象となるのは、ケニアとガーナ、マラウイの3カ国の生後5カ月から17カ月の子供で、合わせて30万人以上が接種を受ける見通し。

 WHOは接種の開始から5年をめどに、推奨に向けた結論を出したいとしており、予防に成功すれば人類を長年苦しめてきたマラリア制圧へ大きな一歩となります。ワクチンの効果については欧州連合(EU)の専門機関が2015年、肯定的な評価を示しています。

 WHOのアフリカ地域担当者は、「マラリアのほかの対策と合わせれば、アフリカで何万人もの命を救えるかもしれない」と話しています。

 2017年4月25日(火)

 

■偽造C型肝炎薬、和歌山市内の病院も購入 患者には処方されず

 高額のC型肝炎治療薬「ハーボニー配合錠」の偽造品15本が流通した問題で、和歌山市内の病院が今年1月、医薬品の卸売販売業の許可を持たない大阪市内の業者から偽造品2本を仕入れていたことが、厚生労働省などの調査で明らかになりました。

 病院の運営者と無許可業者は家族関係にあり、厚労省などは、病院側が家族経営の会社を介して正規ルートよりも安く医薬品を購入していたとみて調べています。一連の問題で、偽造品が医療機関に納入されたことが明らかになるのは初めて。

 厚労省や和歌山県、大阪府によると、東京都千代田区の医薬品卸売販売業者「大興薬品」から、大阪市東住吉区で介護サービス事業を展開する無許可業者が今年1月、正規品を含む3本を購入。このうち外箱や添付文書(説明書)のない偽造品2本を和歌山県内の病院が購入していました。この直後、奈良県内の薬局チェーン「関西メディコ」でハーボニーの偽造品が見付かったため、病院は患者に処方する前に大興薬品に返品したといいます。

 今回の販売ルートは、大興薬品を東京都などが調査する過程で判明したといいます。東京都は12日、無許可業者に販売したとして、大興薬品に医薬品医療機器法に基づく8日間の業務停止命令を出しました。

 大阪府は今年2月、東住吉区の業者に立ち入り調査し、行政指導を行いました。和歌山県も2月、厚労省などからの情報提供を受けて和歌山市内の病院に4回、立ち入り調査を実施。県の調査に対し、病院の薬局長は「(大阪市の業者が)許可がないという認識はなかった」という趣旨の話をしているといいます。

 2017年4月25日(火)

 

■はしかの集団発生が各地で相次ぎ、患者114人 海外で感染し国内に持ち込む

 海外への旅行者が増える大型連休を前に、厚生労働省ははしか(麻疹)などの感染症への注意を呼び掛けています。国内で感染が広がるはしかは、今年に入り4月9日までに21都道府県で計114人の患者が報告され、患者が多い東南アジアで感染した人が国内にウイルスを持ち込み、地域で患者が集団発生する例が相次いでいます。

 国立感染症研究所などによると、35人と最も多い山形県では3月、インドネシアのバリ島から帰国した男性の感染が判明。男性の宿泊したホテルの従業員らにも、感染が広がりました。山形県に次いで多いのが三重県の20人。東京都の13人、広島県の11人と続きます。

 せきやくしゃみで移るはしかの潜伏期間は、10日~12日。高熱やせき、鼻水などの症状が出て、肺炎や中耳炎、脳炎になることもあります。日本は世界保健機関(WHO)によって2015年3月、はしかウイルスが「排除状態」と認定されましたが、今年は3カ月余で114人と、関西空港での33人の集団感染を含め約160人の感染者があった昨年1年間を上回るペースで感染が広がっています。

 アジアやアフリカ諸国では、今も流行しており多くの患者が出ています。厚労省は、有効な対策としてワクチンの接種を挙げており、抗体ができるまで時間がかかるため、海外に出発する1週間以上前に受けたほうがよいといいます。

 厚労省の担当者は、「帰国後に思い当たる症状があれば、人の多い所は避けて、電話で症状や渡航先を伝えてから医療機関を受診してほしい」と話しています。

 厚労省は、食べ物や水が感染源となるE型肝炎や赤痢、コレラのほか、アジアや中南米、アフリカなどの熱帯・亜熱帯地域で流行し、蚊に刺されることで感染するマラリアやデング熱への警戒も呼び掛けています。

 2017年4月24日(月)

 

■人工甘味料入りの清涼飲料水、摂取で脳卒中・認知症リスク3倍 アメリカで研究

 人工甘味料入りのダイエットソーダなどの清涼飲料水を毎日飲んでいた人は、脳卒中や認知症を発症する確率が高いとする調査結果が20日、アメリカの心臓協会の学会誌「ストローク」に掲載されました。

 一方、糖分の多い飲料水でも、人工甘味料を使わない清涼飲料水やフルーツジュースなどでは、脳卒中や認知症を発症するリスクが増大する傾向はみられませんでした。

 ボストン大学医学校の研究チームが、マサチューセッツ州フレミンガムに住む45歳以上の2888人と、60歳以上の1484人を対象に、1991年~2001年にかけて糖分の多い飲料水と人工甘味料入りの清涼飲料水を摂取した量を調査。このデータと比較して、45歳以上のグループでは以後10年間の脳卒中の発症率を調べ、60歳以上のグループでは認知症の発症率を調べました。

 その結果、人口甘味料入りの清涼飲料水を1日1回の頻度で飲んでいた人は、全く飲まなかった人に比べて、虚血性脳梗塞(こうそく)を発症する確率がほぼ3倍に上ることがわかりました。同様に、認知症と診断される確率もほぼ3倍に上っていました。

 人工甘味料入り清涼飲料水の摂取頻度が週に1~6回だった人の場合、虚血性脳梗塞の発症率は2・6倍だったものの、認知症については人工甘味料入り清涼飲料を全く飲まなかった人と変わりませんでした。

 人工甘味料の摂取が脳卒中や認知症の発症リスクを高めるのか、発症しやすい体質や生活習慣の人が人工甘味料入りの清涼飲料水を好んで飲んでいるのかは、現時点でわからないといいます。

 ボストン大学の研究者は、「毎日飲むなら水を勧める」とした上で、「消費者が情報に基づいて選択できるよう、人工甘味料入り清涼飲料水が健康に及ぼす影響についてはさらに研究を進める必要がある」と解説しています。

 これに対しアメリカの飲料業界団体は反発し、「低カロリーの甘味料については世界各国の政府機関が安全性を保証している」と強調する声明を発表しました。

 2017年4月24日(月)

 

■埼玉県で10歳未満の男児が脳死判定 心臓など提供、15歳未満は13例目

 日本臓器移植ネットワークは22日、埼玉県川越市の埼玉医科大学総合医療センターに入院していた6歳以上10歳未満の男児が、21日午後7時22分に臓器移植法に基づく脳死と判定されたと発表しました。

 15歳未満の脳死判定は2010年の改正臓器移植法施行後、13例目。

 男児は、頭部の外傷で入院。主治医から回復が難しいとの説明を受け、家族が20日に脳死段階での臓器提供を承諾し、21日に脳死と判定されました。

 日本臓器移植ネットワークによると、家族は「息子から生きる意味を学び、そして生きたいと思う意志を強く感じ、家族で話し合った結果、臓器提供を決断しました」と話しているといいます。

 提供された臓器は、心臓が国立循環器病研究センターで10歳代の男の子に、肺が福岡大学病院と東京大学医学部附属病院でいずれも50歳代女性に、肝臓が国立成育医療研究センターで10歳未満の女児に、膵(すい)臓と片方の腎(じん)臓が藤田保健衛生大学病院で30歳代女性に、もう片方の腎臓が防衛医科大学校病院で60歳代男性に、それぞれ移植される予定です。

 小腸は医学的な理由で、移植を断念しました。

 2017年4月23日(日)

 

■睡眠薬など44種類、服用を繰り返すと副作用も 厚労省が医療機関に注意を呼び掛け

 睡眠薬や抗不安薬、抗てんかん薬として精神障害の治療で広く使われている「ベンゾジアゼピン(BZ)系」の44種類の薬について、厚生労働省は承認された用量でも、服用を繰り返すと依存性が高まり、副作用が出る恐れがあるとして全国の医療機関に注意を呼び掛けています。

 厚労省によりますと、ベンゾジアゼピン系の44種類の薬は短期の使用では高い効果を得られる一方、承認された用量でも服用を繰り返すと依存性が高まり、服用をやめた時に不安、不眠の症状が悪化したり、けいれんや頭痛などの副作用が起きたりする恐れがあり、こうした報告が昨年6月末までに470件余り寄せられたということです。

 このため、厚労省は全国の医療機関に対し、医師が安易に継続して処方することがないように注意するよう呼び掛けています。

 また、製薬会社に対しても添付文書を改訂し、長期間にわたって継続的に使用する場合は治療上の必要性を十分に検討するとともに、使用を中止する際も症状が悪化しないよう徐々に量を減らすなどして、慎重を期すことを医療機関に呼び掛けるよう指示しました。

 厚労省は、「不眠症や不安障害などの治療は難しく、薬の使用が長期間に及ぶことも多いが、医師には処方が適切かどうか、慎重に見極めてほしい」と話しています。

 注意を呼び掛けている薬の製品名は、エチゾラム、アルプラゾラム、デパス、ソラナックス、メイラックス、アモバン、マイスリー、ハルシオン、ベンザリン、サイレース、レキソタン、レンドルミン、ワイパックスなど。

 2017年4月22日(土)

 

■使い捨て医療機器の再製造、販売が可能に 厚労省が基準新設

 厚生労働省は、体内に挿入するカテーテル(細い管)や、血管を切るメスといった使い捨て医療機器を再利用する仕組みをつくります。

 再利用する際の有効性や安全性を確保する基準を新たに設けて、従来は一度使えば廃棄してきた医療機器を業者が集めて分解、洗浄、消毒、滅菌、組み立て直して販売できるようになります。その使用量の増加に伴い、医療廃棄物として処理する場合の問題が起きている使い捨て医療機器の値段が下がると期待されます。

 厚労省の医療機器・体外診断薬部会で21日に了承され、一般の意見を聞いた後、7月をめどに導入を予定します。

 部会の現在の案では、再利用できる医療機器は国内の医療機関で使用されたものに限ります。感染症患者への治療や検査に使われた医療機器や、人の体に埋め込まれた医療機器の再利用は、認められていません。

 医療機器の再製造・販売に際しては、厚労相の許可が必要になります。許可された後も、年に1回程度は、医薬品の審査や安全対策を担う医薬品医療機器総合機構が、安全性などに問題がないかを確認します。

 2017年4月20日(木)

 

■不妊治療費の助成、事実婚も対象に 厚労省が年度内にも支給要件を改正

 厚生労働省は早ければ2016年度中に、法律上の婚姻関係にない事実婚のカップルに対し、一定の年収制限の下で、体外受精などの不妊治療にかかる費用の一部助成を始めます。

 現行は法律上結婚していないと助成してもらえませんが、法律婚の縛りをなくして、多様化が進むカップルの形態に合わせて不妊治療支援の在り方を見直し、今度中にも助成金の支給要件を改正します。

 現行の助成金は、「女性が43歳未満の夫婦」など一定の要件を満たせば、1回の治療ごとに受け取れます。助成額は初回が最大30万円、2回目以降は最大15万円で6回まで受けられます。男性の治療も対象で、一部の自治体は助成金に上乗せして補助しています。

 近年は助成件数が増加傾向にあり、2014年度には15万2000件強に上りました。

 新制度では助成金の要件から「結婚していること」をなくし、事実婚のカップルでも同じ金額を受け取れるようにします。法律婚の場合と同じ年収制限を適用し、男女合算の所得が年730万円未満のカップルが支給の対象。

 不妊治療を望むカップルがどれくらいいるかは不明で、厚労省は実態把握のための調査に乗り出しており、申請の状況などをみながら一般会計で予算措置を講じます。

 こうした事実婚への支援拡大に続き、厚労省は2017年度に不妊治療と仕事の両立を後押しするための対策も検討します。

 日本では職場には告げずに不妊治療を続ける人が相当数いるとみられ、仕事と両立できずに離職するケースもあります。

 厚労省はまず、来年度に不妊治療に対する企業の取り組みなどを調査。この結果を踏まえ、不妊治療者への配慮など企業が順守すべきガイドライン(指針)を作成したり、雇用保険の特別会計を財源とする国の新たな助成金を創設するといった具体案を検討します。

 不妊治療は1回に約30万~40万円かかるといわれ、1度で終わる人もいれば子供ができるまで何回も続ける人もいます。治療を受ける本人にとっては経済的な負担だけでなく、精神的な重荷になっていることも多く、支援強化を求める声が上がっています。

 2017年4月20日(木)

 

■アマゾン、第1類医薬品のネット直販を開始 リアップ、ガスター、婦人薬など

 インターネット通販大手のアマゾンジャパンは、通販カテゴリの一つ「アマゾンファーマシー」において、第1類医薬品の販売を開始しました。4月19日現在、発毛剤リアップ、胃薬ガスター10、鎮痛剤ロキソニンS、婦人薬フェミニーナ、排卵検査薬ドゥーテストLH、女性用発毛剤リアップリジェンヌなど約70品目を取り扱っています。

 一般用医薬品のうち、第1類医薬品は副作用などのリスクがあるため、販売の際に薬剤師が医薬品に関する情報提供をすることが義務付けられています。インターネットでの販売には、改正薬事法の基準を満たした実店舗を持つ薬局・薬店であること、薬剤師が常時配置されていることなどの条件があり、インターネット販売でも適切な情報提供がされるようにルールが定められています。

 アマゾンジャパンの場合、第1類医薬品をカートに入れてレジへ進むと、薬を使用する人の年齢・性別やアレルギー経験などを聞かれる「ご使用者状態チェック」への回答が求められ、続いて表示される「お薬の説明と確認」の内容を確認した上で、薬剤師への質問の有無を選択。その後、通常商品と同じ配送先や支払い方法の選択画面へと進みます。注文手続きが完了した後に、薬剤師が適正使用の確認を行ってから薬が発送されます。適正でないと判断した場合には、注文はキャンセルされます。

 アマゾンジャパンは2015年9月に、通販カテゴリの一つアマゾンファーマシーを開設。副作用のリスクが比較的少ない第2類医薬品、第3類医薬品の直販を手掛けています。今回、蓄積したノウハウを生かし、第1類医薬品へ進出しました。

 アマゾンジャパンは今回の第1類医薬品の販売について、「普段薬局が開いていて、薬剤師がいる時間に店を利用できない方には利便性が高まると考えている。また育毛剤やデリケートケア薬など、恥ずかしくてリアル店舗では買いにくい医薬品を手に入れるのにも役立つと思う」とコメントしています。

 2017年4月20日(木)

 

■男性のサービス職、がん死するリスクが最も高い職業に 管理職、農林漁業職が続く

 勤労世代の男性の肺、胃、大腸がんによる死亡率は、飲食店員や美容師などサービス職や、企業・役所の管理職などで比較的高いとする研究結果を、北里大学の江口尚・助教、国立国際医療研究センターの和田耕治医師(いずれも産業保健学)らがまとめました。

 これらのがんは男性のがん死原因の1~3位で、国が推奨する有効な検診があります。江口助教は、「死亡率が高いとされた職業では特に、雇用者や業界団体が検診を受けやすい体制を整え、職場環境を見直すなどの対策に力を入れるべきだ」と話しています。

 研究は、厚生労働省による人口動態職業・産業別統計のデータ(2010年)を利用し、25~64歳の男性の死因と、死亡時の職業を解析しました。

 その結果、健康管理が比較的進んでいるとされる工場労働者ら「生産工程職」に比べ、飲食店員や美容師、介護職員、看護助手、旅行ガイドなどの「サービス職」では3種のがんの死亡率は3~4倍、「管理職」は2~3倍。「農林漁業職」のほか、ITや医療関係などを含む「専門技術職」も約2倍と高くなりました。

 江口助教によると、これらの職業で死亡率が高い原因は、いくつか推定できます。例えば、夜間のシフト制勤務は過去の研究でがん発症との関係が指摘されており、飲食関係などでは夜間勤務が多い業態も珍しくありません。管理職は1人当たりの部下が増え、現場と管理を両方任される「プレーイングマネジャー」化が進みストレスが高まっており、農林漁業職では個人事業主が多く、大企業のように健康管理が行き届かないなど、職業に固有の事情がありそうだといいます。

 2017年4月19日(水)

 

■線虫による自動がん検査装置、日立が量産へ 2019年めどに実用化

 線虫と呼ばれる小さな生物が、人の尿の成分の臭いを嗅ぎ分けて、がんを早期に発見するという研究を、大手電機メーカーの日立製作所とベンチャー企業が共同で進めることになり、2年後の実用化を目指します。

 日立製作所は、がんの早期発見に向けた研究をしている九州大学の広津崇亮助教が立ち上げたベンチャー企業「HIROTSU(ヒロツ)バイオサイエンス」と共同研究を進めることになりました。

 線虫と呼ばれる体長1ミリ程度の小さな生物が、犬を超える嗅覚を持つという特性を生かして、人の尿の成分の臭いを嗅ぎ分ける検査方法で、がんの早期発見を目指します。

 研究チームによりますと、線虫はがん患者に特有の尿の臭いに集まる習性があり、プレートに置かれた少量の尿に線虫が、どれくらい集まったかを数える方法で、がんかどうかを約9割の精度で判定できるとしています。

 これまでは、人による目視で線虫を数えていましたが、日立製作所が新たに開発した装置を使うと自動化できるとしています。特殊な光を当てて線虫の集まり具合を撮影し、多く集まった箇所を白く光らせて表示することで、線虫の分布の様子が一目でわかるということです。

 両社は、病院での臨床試験を続けた上で、早ければ2年後の2019年をめどに装置の量産化を目指しており、この方法を使えば、数千円程度で体への負担が少ないがん検査ができ、早期のがんの発見にもつながると説明しています。

 日立製作所の久野範人主任研究員は、「検査の過程での線虫の状態を安定的に保つとともに、作業のスピードを上げるなどして、研究チームと協力して実用化を目指したい」と話していました。

 2017年4月19日(水)

 

■iPS細胞、日本人に2番目に多い白血球型の提供始める 京都大iPS細胞研究所

 再生医療に使うiPS細胞(人工多能性幹細胞)を備蓄する「iPS細胞ストック事業」を展開する京都大学iPS細胞研究所は18日、日本人に2番目に多い白血球型(HLA型)の細胞の提供を始めました。

 iPS細胞からさまざまな細胞を作り患者に移植する際に、HLA型が一致していれば拒絶反応が起きにくくなります。この日本人に2番目に多いHLA型の細胞は日本人の約7%をカバーでき、すでに提供している日本人に最も多いHLA型の細胞が日本人の約17%をカバーできるのと合わせて、日本人の約24%をカバーできるようになります。

 患者本人の細胞から作製したiPS細胞を移植すれば、拒絶反応はないものの、コストと時間がかかります。このため、iPS細胞研究所は他人由来の細胞を使った治療を念頭に、日本人に多いHLA型のiPS細胞の備蓄を進めており、目の難病を対象にした臨床研究も始まりました。

 2022年度末までに、日本人の大半をカバーできる備蓄体制を目指します。

 2017年4月19日(水)

 

■厚労省、高齢者の適正な薬服用へ指針策定 危ない薬の飲み合わせを調査へ

 高齢者に多くの種類の薬が処方され、副作用で体調が悪化するケースが少なくないことから、厚生労働省は、薬の処方を適正化するための指針(ガイドライン)を策定する方針を固めました。

 医療ビッグデータを活用して全国規模で実態を分析し、副作用を招きやすい危ない薬の飲み合わせなどを調べます。17日夕、有識者検討会の初会合を開きました。

 高齢者は薬を分解する機能が低下しているために、副作用が出やすくなっています。複数の持病を抱えることが多く、薬の種類が増えがち。高血圧症や糖尿病など2つ以上の慢性疾患を持つ高齢者が6種類以上の薬を併用すると、一層副作用が出やすくなり、転倒などを招く恐れが高まるというデータがあります。医療機関からは副作用が原因で入院した高齢患者の報告が相次いでいるものの、実態は明らかではありません。

 厚労省は有識者検討会で薬の専門家らから意見を聞いて、問題点を整理。その後、患者が医療機関でどんな治療を受けたのかがわかる診療報酬明細書のデータベースの情報や、医薬品医療機器総合機構に寄せられた副作用報告などを分析し、服用する薬が増えた際に起きやすい副作用や、危ない薬の飲み合わせなどについて調べます。

 指針の策定は、分析結果なども踏まえ、2018年度末をめどにまとめることを目指します。持病が多い高齢者は複数の医師から薬の処方を受け、結果的に多くの薬を服用しているケースも多くなっています。そのため医師、薬剤師が、高齢者の服薬状況を積極的に共有して薬の処方を減らす体制作りも進めます。

 高齢者の薬の副作用は、ふらつき、転倒による骨折、意識障害など、心身に大きなダメージを与えるものも少なくありません。過去には、日本老年医学会が2015年に「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン」を改訂し、慎重な投与が求められる薬のリストをまとめ、注意を促しています。

 厚労省も昨年度の診療報酬改定で、不必要な薬を減らすことを促す仕組みを導入しましたが、効果は十分上がっているとはいえない現状です。厚労省はまず実態解明を進め、科学的な根拠を基に危ない薬の組み合わせなどを医師や薬剤師に示し、対策を一層強化する考え。

 2017年4月18日(火)

 

■日本郵便、高齢者見守りを自治体から受託 茨城県大子町と契約

 日本郵政グループの日本郵便は17日、一人暮らしの高齢者向け見守りサービスを茨城県大子町から全面的に受託したと発表しました。郵便局員が訪問して高齢者の体調を把握し、家族らに状況を伝えます。

 自治体が料金を負担し、利用者には無料で提供します。日本郵便は個人客にサービスを提供してきましたが、自治体が担っていた行政サービスの見守り事業を全面的に受託するのは初めて。

 毎月1回、郵便局員が高齢者の自宅を訪問して安否を確認し、体調や運動の頻度など10項目を質問。報告書をまとめ、遠方にいる家族や町役場に送ります。

 大子町では4月から、町に住む75歳以上の一人暮らし高齢者116人に提供を始めました。5月からは毎日1回、希望の時間に電話をして自動メッセージで体調を質問し、その結果を家族や町役場にメールで伝えるサービスも始めます。

 大子町はこれまで役場の嘱託員による見守りサービスを提供してきましたが、これを日本郵便に全面的に委託します。

 日本郵便は2013年、「郵便局のみまもりサービス」を開始。現在では13都道県で、個人客に有料で提供しています。ただ利用客が190人弱にとどまっており、今後は自治体からの受託も広げたい考え。

 2017年4月17日(月)

 

■117歳で世界最高齢のイタリア人女性が死去 世界長寿の上位10人の半数は日本人女性に

 世界最高齢の117歳だったイタリア人女性エマ・モラノさんが15日、北部ベルバニアにある自宅で死去しました。モラノさんは1899年11月29日生まれで、1800年代生まれの唯一の存命者として知られていました。

 モラノさんは初恋の男性が第1次世界大戦で戦死した後に、結婚。夫が暴力を振るう人物だったため、第2次世界大戦前に幼い一人息子が亡くなって間もなく別居しました。別居してからは一人暮らしを続け、フルタイムで介護を受けるようになったのはわずか数年前のこと。この20年間は2部屋の小さな自宅アパートから出ることもなくなり、最晩年の数年間は寝たきりの生活でした。

 アメリカに拠点を置く老人学研究グループによると、モラノさんの死去により、世界最高齢者は1900年3月10日生まれで117歳のジャマイカ人女性バイオレット・ブラウンさんになりました。

 老人学研究グループによると、現在の世界長寿の上位10人は下記のとおり。全員女性で、うち5人は日本人、3人はイタリア人です。

 男性の最高齢者は1903年9月15日にポーランドで産まれた113歳のイスラエル人男性イスラエル・クリスタルさんで、16位となっています。

1位、バイオレット・ブラウンさん、117歳、ジャマイカ

2位、田島ナビさん、116歳、日本

3位、都千代さん、115歳、日本

4位、アナ・ベラ・ルビオさん、115歳、スペイン

5位、マリー・ジョセフィーヌ・ガウデットさん、115歳、イタリア(アメリカ生まれ)

6位、ジュゼッピーナ・プロジェット・フラウさん、114歳、イタリア

7位、田中カ子(かね)さん、114歳、日本

8位、マリア・ジュゼッパ・ロブッチ・ナルチーゾさん、114歳、イタリア

9位、中村いそさん、113歳、日本

10位、伊藤タエさん、113歳、日本

 2017年4月17日(月)

 

■無痛分べんを行う医療機関に十分な管理体制を要望 厚労省が初の緊急提言

 出産時の痛みを麻酔を使って緩和する「無痛分べん」について、麻酔によって死亡した例があるなど通常の分べんと異なる管理が求められるとして、厚生労働省の研究班は医療機関に対して、実施する際には十分な医療体制を整えることを求める緊急提言を行いました。

 無痛分べんについて、こうした提言が出されるのは初めてです。

 この緊急提言は16日、広島市中区で行われた日本産科婦人科学会で、厚労省の研究班の班長を務める三重大学の池田智明教授が発表しました。

 研究班では、昨年4月までの7年間に報告された妊産婦の死亡例298人を分析したところ、脊椎への注射で麻酔をかけて無痛分べんを行っていた死亡例が13人あり、このうち1人が麻酔による中毒症状で死亡していたということです。また、羊水が血液に入る症状や大量の出血が起きたケースもありました。

 このため緊急提言では、無痛分べんは麻酔によってまれに重大な合併症が出るほか、新生児を引っ張って出す処置が必要なケースが増えるなど通常の分べんとは違った管理が求められると指摘し、無痛分べんを行う施設に対して麻酔による合併症や出血などに確実に対応できる体制を整えることを求めました。

 研究班では今後、産科医や麻酔科医と共同で無痛分べんを実施する際のチェックリストを作り、産科医に対し講習などを行っていく方針です。

 池田教授は、「無痛分べんを望む妊婦が増えているが、実施の際には緊急の状況に対応できる技術と体制を整えることが重要だ」と話しています。

 2017年4月16日(日)

 

■たばこ1日30本以上の男性、急性骨髄性白血病リスク2・2倍 大規模調査で判明

 たばこを1日30本以上吸う男性は、吸わない男性に比べ急性骨髄性白血病になるリスクが2・2倍になるとの研究結果を愛知県がんセンター研究所と国立がん研究センターの研究チームがまとめ、専門誌に発表しました。

 急性骨髄性白血病は年間、10万人に約2人が発症し、高齢者になるにつれて増えるとされます。愛知県がんセンター研究所の松尾恵太郎・遺伝子医療研究部長によると、海外では喫煙が急性骨髄性白血病のリスクを上昇させるとの報告が国際がん研究機関(IARC)よりありましたが、国内では関連がはっきりしていませんでした。

 研究チームは、岩手県や秋田県、新潟県、長野県、茨城県、大阪府、高知県、長崎県、沖縄県の9府県に住む40~69歳の男女約9万7000人の生活習慣や健康状態を、1990年代から2012年まで平均約18年間にわたって追跡調査。90人(男性55人、女性35人)が急性骨髄性白血病、19人が急性リンパ性白血病、28人が慢性骨髄性白血病を発症していました。

 年齢や性別などによる偏りが出ないよう調整して喫煙との関連を調べると、1日30本以上たばこを吸う男性が急性骨髄性白血病になるリスクが、吸わない人に比べ2・2倍高くなっていました。1日30本未満の男性では、明らかな差はみられませんでした。

 急性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病や女性は、喫煙者や患者が少ないなどのため、喫煙の影響ははっきりしなかったといいます。

 急性骨髄性白血病は、ほかのがんに比べると頻度は低いものの、発症すると治療が難しい病気の一つです。たばこに含まれるベンゼンや放射性物質による発がんを背景に、喫煙が急性骨髄性白血病のリスクを上昇させることが国際がん研究機関の研究で示されていましたが、今回の研究結果から、これまでの国際的評価は日本人においても当てはまることが明らかになりました。

 松尾さんは、「多くのがん、循環器や呼吸器の病気と同様に、急性骨髄性白血病の発症を防ぐためにも禁煙を広めることが重要だとわかった」と話しています。

 2017年4月16日(日)

 

■診療・介護報酬の改定でオンライン診療を優遇 介護ロボットやセンサーの活用も優遇対象

 厚生労働省は2018年度の診療報酬・介護報酬の同時改定で、情報通信技術(ICT)を使って遠隔からデータを集めるオンライン診療を優遇することを決めました。介護現場にロボットやセンサーの導入を促す仕組みも作り、高齢化と人手不足に対応します。

 診療報酬では、かかりつけ医がICTを使って患者からのデータを定期的に受け取り、日常的な健康指導や疾病管理の質を高めるオンライン診療を優遇します。

 中でも、重症化すると医療費が高額となる糖尿病患者が、遠隔でかかりつけ医の指導を受けられるようにすることが目玉。糖尿病は血圧や血糖などの値を適切に管理すれば、人工透析が必要な状態になりにくく、それらを遠隔でモニタリングして重症化を予防します。

 オンライン診療は現在、再診に限って医師が電話で患者に指示した場合や、診療所から専門医のいる病院に画像データを送って診療支援をすることなどを認めていますが、現状では対面診療と比べて診療報酬の加算が少なく、普及を阻む課題となっています。

 2018年度に予定する診療・介護の両報酬の改定を機に、オンライン診療の評価方法や報酬体系を見直して、医師不足が深刻な地域でも適切な医療を提供できるようにし、遠隔での服薬指導も可能としたい考え。対面診療を重視する医師からはICT活用を慎重視する向きもあり、外来や訪問診療を補完する形での位置付けを模索します。

 介護報酬でも、データ活用に力を入れ、どんなリハビリや介助で症状が改善したかのデータを集め、効果の高い介護モデルを作ります。介護現場の負担軽減と介護モデル作りの両面で効率化につながるとみて、ケア記録を自動で取る機器の導入を促します。効果が裏付けられたサービスを提供する事業所は、厚労省のウェブサイトで公表し、事業者間の競争で質の向上につなげます。

 人手不足の解消につながる介護ロボットや見守りセンサーの活用も、介護報酬や人員配置基準の優遇対象とします。

 団塊世代が全員75歳以上の後期高齢者となる2025年には、介護費が20兆円と2014年度比でほぼ倍増するほか、介護人材が37万人不足する見込み。ICTによる現場負担の軽減や介護ロボットなどを通じた自立支援の取り組みを加速させるため、現在の要介護度の高さに応じた介護報酬制度の見直しや、介護事業者の意識改革の必要性についても模索します。

 2017年4月15日(土)

 

■偽造C型肝炎薬、病院にも納入 東京都が卸売2社を業務停止に

 高額なC型肝炎治療薬「ハーボニー配合錠」の偽造品が流通した問題で、和歌山県内の病院も偽造品2本を仕入れていたことが、厚生労働省などの調査で判明しました。患者には使用されませんでした。

 東京都は12日、相手の身元や許可を確認せずに売買し、偽造品を流通させたとして、いずれも東京都千代田区の医薬品卸売業者「エール薬品」と「大興薬品」を、それぞれ13日~24日までの12日間と13日~20日までの8日間の業務停止処分にしたと発表しました。

 東京都などによると、エール薬品は昨年11月以降、偽造品15本を個人から買い取った際、医薬品医療機器法に基づき、相手の名前を帳簿に記録する義務があるのに、架空の会社名を記していました。エール薬品は「秘密厳守」をうたっていて、名前を尋ねず、偽造品と気付かなかったといいます。

 エール薬品は同業3社に転売し、このうち大興薬品は今年1月、許可を確認せず偽造品2本を大阪府内の無許可業者に売り渡し、和歌山県内の病院に納入されました。偽造品情報を知った大興薬品が、すぐに返品を求めたといいます。

 偽造品は奈良県の薬局チェーン「関西メディコ」(奈良県平群町)も仕入れて、今年1月、患者に販売。患者が正規品ではないと気付いて、問題が発覚しました。

 ハーボニー配合錠は、C型肝炎の画期的な治療薬として2015年9月に発売され、1日1錠、12週間内服します。1錠5万5000円と高額で、偽造品と判明した28錠入りのボトルの価格は約153万4000円。

 2017年4月14日(金)

 

■ビタミンD、肺炎などの呼吸器感染症予防に有効 国際チームが研究、発症2割減

 ビタミンDを継続的にとると、肺炎やインフルエンザなどの感染症の発症を2割減らせることが、東京慈恵会医科大学などの国際共同研究チームの大規模なデータ解析で明らかになりました。血中のビタミンDが欠乏している人がとると、発症が7割減ったといいます。

 16日に東京都内で開かれる日本小児科学会で発表されます。

 ビタミンDは日光を浴びると体内で作られるほか、食品からもとれますが、極端に不足すると骨が変形する「くる病」を起こします。また最近、ビタミンDが不足すると、体を守る免疫細胞が分泌する抗菌物質が減り、結核菌を増やすことが報告されるなど、感染症との関係が注目されています。

 国際共同研究チームは、ビタミンDの投与と呼吸器の感染症との関係を調べた世界の25の報告(2009~2016年)を統合し、0~95歳の約1万1321人のデータを分析。この結果、ビタミンDの錠剤を飲んだグループは、飲んでいないグループに比べ、インフルエンザや気管支炎、肺炎などの急性の呼吸器感染症の発症が2割少ないことがわかりました。

 ビタミンDの錠剤の効果は、毎日もしくは毎週摂取したほうが、1カ月に一度大量に摂取するよりも高くなりました。また、血中のビタミンD濃度がもともと欠乏状態にある人では、ビタミンDを飲んでいたグループは発症が7割少なく、不足している人に予防効果が高いことがわかりました。

 研究に参加した浦島充佳・東京慈恵会医科大教授(小児科)によると、日照時間の短い冬場は血中ビタミンD濃度は夏の半分程度で、冬にインフルエンザが流行する理由の一つと考えられるといいます。

 浦島教授は、「ビタミンD不足が、これらの感染症の原因にもなっているとみられる。適度に外を散歩したり、ビタミンDが豊富なサケやイワシなどの食品から補ったりしてほしい」と話しています。

 2017年4月13日(木)

 

■歩行のリハビリを支援するロボット、トヨタが開発 9月から医療機関へ貸し出し

 トヨタ自動車は12日、脳卒中などで足がまひした人のリハビリを支援するロボット「ウェルウォーク WW―1000」の有料貸し出しを、医療機関向けに9月から始めると発表しました。

 貸し出し料金は月額35万円で、別途100万円の初期費用がかかります。

 「ウェルウォーク」は箱形で、幅1・2メートル、奥行き2・7メートル、高さ2・4メートル、本体の重さは約800キロ、脚部につけるロボットアームの重さは約6キロ。

 脳卒中の患者らに、まひしたほうの脚部にロボットアームをつけてもらい、動く床の上を歩いてもらいます。機器のセンサーやモーターで、ひざの曲げ伸ばし動作を補助。前方のモニター画面に映像を表示し、歩く姿勢を確認してもらいます。

 患者の状態に合わせて補助の程度を調節できるようにしており、重度の患者でも使えるのが特長。

 トヨタ自動車は、産業用ロボットや自動車の開発技術を生かし、人間の活動をサポートする「パートナーロボット」を開発しています。医療の分野では、2007年末から藤田保健衛生大学(愛知県豊明市)と「ウェルウォーク」を共同開発し、3月時点で全国23の医療機関で臨床的研究に活用されており、医療機器として承認されました。

 共同開発した藤田保健衛生大学によりますと、脳卒中などで足がまひした人の中には、歩く練習を始める段階で思うように足を動かせず転倒してしまうケースもあるということで、この「ウェルウォーク」を活用することで安全に自力で歩く感覚を身に着けることができ、回復が早まるといいます。

 トヨタ自動車の磯部利行常務は、「モーターを小型化する技術や、車の走行の安定性を保つセンサー技術を応用して、人に寄り添うロボットをつくっていきたい」と話しています。3年で100台の有料貸し出しを目指すといいます。

 2017年4月13日(木)

 

■バイエル薬品社員、アンケート回答患者のカルテを無断閲覧 厚労省、行政処分も検討

 大手製薬会社「バイエル薬品」(大阪市)の複数の社員が、薬に関する自社アンケートを実施した中で、患者の個人情報が記載されたカルテを無断で閲覧していたことが11日、明らかになりました。

 バイエル薬品は、外部有識者を交えて詳しい事実関係を調査しています。厚生労働省は、個人情報保護法などに違反する可能性もあるとみて調べ、行政処分も検討しています。

 厚労省などによると、バイエル薬品は2012年1月に、血液を固まりにくくする血栓症治療薬「イグザレルト」の販売承認を取得。同年2月から2013年まで、他社も販売している血栓症治療薬について、希望する医薬品の形状や服薬回数などを調べるため、宮崎県内にある診療所の医師の協力を得て患者へのアンケートを実施しました。

 その際、営業社員3人が、アンケートに答えた患者約200人分のカルテの一部を、患者側の同意があるかどうか確認しないまま医師から閲覧させてもらい、エクセルシートに転記していました。カルテには、がんや認知症などアンケートと関係のない個人の病歴に関する情報も含まれていたといいます。

 この情報を使った調査結果を国内の医学誌に掲載しましたが、不適切な手法があったことや、調査の実施主体が明記されていなかったことから、昨年1月に取り下げられました。

 厚労省は昨年7月末、バイエル薬品の社員からの内部告発を受けて事態を把握。この日の閣議後の会見で、塩崎恭久厚労相は「極めて遺憾なことだ。事実関係を確認し、必要に応じてしかるべき対応を取らなければならない」と述べました。

 バイエル薬品は、「患者に深くおわびします。社員教育を一層強化します」とコメントしました。

 臨床研究の不正に詳しい医療ガバナンス研究所の上昌広理事長は、「血栓症治療薬はライバルの多い熾烈(しれつ)な業界。だが、医師には患者の情報を守る守秘義務があり、カルテを見せるなどあってはならない」と話しています。

 2017年4月12日(水)

 

■予期せぬ死亡で22件届け出る 医療事故調査制度3月分

 患者の予期せぬ死亡を対象とした医療事故調査制度で、第三者機関の日本医療安全調査機構(東京都港区)は11日、医療機関が「院内調査が必要」と届け出た件数が3月は22件あったと発表しました。

 2015年10月の医療事故調査制度の開始以来の累計は、568件となりました。

 内訳は、病院(20床以上)19件、診療所(20床未満)3件。地域別では、関東信越が7件で最多で、東海北陸と近畿がそれぞれ4件ずつ、中国四国が3件、九州が2件、北海道と東北がそれぞれ1件ずつ。診療科別では、産婦人科で5件、消化器科3件など。

 3月に院内調査の結果報告書が提出されたのは41件で、累計は330件となりました。

 3月の相談件数は168件で、相談者の内訳は医療機関が77件、遺族などが81件、その他・不明が10 件で、累計は2807件となりました。

 また、日本医療安全調査機構は、医療事故調査制度開始の2015年10月から昨年12月までに「患者の予期せぬ死亡で院内調査が必要」として届け出があった487件の分析した結果、5割超の255件は「手術(分娩を含む)」に起因した事案でした。死亡から届け出までの平均日数は、33・1日。277日かかった事案もあり、院内調査が必要かどうかの判断に医療現場が苦慮する状況もうかがえました。

 一方、医療機関約2800施設へのアンケートでは、医療事故調査制度の理解に関し「全体的に進んでいない」「一部職員は進んでいない」との回答が8割を超えました。

 2017年4月12日(水)

 

■人畜共通感染症のオウム病、2人目の妊婦の死亡を確認 厚労省が発表

 厚生労働省は10日、オウムやインコなど鳥類のふんを介して感染する「オウム病」(クラミジア肺炎)を発症した妊婦の死亡例が国内で初めて確認されたのに続いて、新たに妊婦1人の死亡が報告されたと明らかにしました。

 オウム病はウイルスに近いクラミジア・シッタシという微生物に感染した鳥のふんなどを吸い込むことで、人にも移る可能性がある人畜(人獣)共通の感染症で、年間数十例の患者が出ています。高齢者などで数年に1度、死亡例が報告されていますが、国内ではこれまで、妊婦の死亡例は報告されていませんでした。

 日本医療研究開発機構の妊婦の感染症に関する研究班が3月7日、オウム病に感染した妊婦が死亡していたことを厚労省に情報提供。厚労省は日本医師会を通じて、産婦人科医らに注意を呼び掛けていました。

 厚労省によると、研究班は4月10日、新たに1人の妊婦の死亡例を報告。死亡例が相次いで報告されたことから、厚労省は国民に向けて注意喚起を行うかどうか検討しています。

 2017年4月11日(火)

 

■子宮頸がんワクチン、因果関係の結論変わらず 厚労省が追加解析

 子宮頸(けい)がんワクチンの副作用を調べた厚生労働省研究班(代表・祖父江友孝大阪大学教授)は10日、昨年末に公表した調査データに対する追加解析結果を発表しました。新たな解析を加えても、ワクチン接種と副作用発症の因果関係は判断できず、「接種しなくても副作用と同様の症状を示す人が一定数いる」という結論は変わらないとしています。

 研究班は、感覚や運動の障害などで通学に支障があった全国の12~18歳の103人について、ワクチン接種から発症までの期間を詳しく解析。

 それによりますと、ワクチン接種から症状を訴えるまでの期間が1カ月以内だった人は全体の31・1%となる32人だった一方で、1年を超えた人は36・9%となる38人で、中には症状を訴えたのが4年後だったという人もいたということです。

 これを受けて、厚生労働省の専門家会議は「症状が出るまでの期間にばらつきがあり、今回の調査だけでは接種との因果関係は判断できない」としました。

 その上で、これまでの調査で、ワクチン未接種者の中にも感覚や運動、自律神経の障害など複数の症状を訴える人がおり、症状が10種類以上ある人が一定数いることも確認されていることから、今後は専門の医師から聞き取るなど詳しく分析した上で最終的な判断を示すことにしています。

 専門家会議の座長を務める国際医療福祉大学の桃井眞里子副学長は、「不安で予防接種を受けられない人たちのことを考えると、可能な限り早く医学的な評価を示さなくてはならない。実際に症状が出ている人への治療などの在り方も示した上で、議論を決着させたい」と話しています。

 子宮の入り口にできる子宮頸がんは、主にヒトパピローマウイルスと呼ばれるウイルスの感染が原因で起き、高齢者を中心に年間およそ3000人が亡くなり、若い女性の間でも増えています。子宮頸がんワクチンは、このヒトパピローマウイルスの感染を防ぐ効果があるとして、8年前、日本でも承認されました。

 4年前の2013年4月には、小学6年生から高校1年生までの女子を対象に国と自治体が費用を負担する定期接種に追加され、これまでに推計340万人が接種を受けています。しかし、接種後に原因不明の体の痛みなどを訴える患者が相次ぎ、厚労省は定期接種となったわずか2カ月後に、「接種との因果関係が否定できない」として積極的な接種の呼び掛けを中止。

 その後、厚生労働省の専門家会議は「ワクチンそのものが原因ではなく、接種の際の不安などの心理的な要因によって症状が出た可能性がある」とする見解をまとめましたが、詳しい原因は解明されておらず、全国でワクチン接種を見合わせる動きが広がりました。

 また、一昨年10月には症状が回復しないままの人が若い女性を中心に少なくとも186人いることがわかり、接種との因果関係が否定できない患者については医療費などの救済も始まっています。

 厚労省は、積極的な接種の呼び掛けを再開するかどうか判断するため、専門家に依頼しておよそ1年間かけて調査を行い、昨年12月、接種していなくても同様の症状がある人が一定数いることがわかりましたが、集まったデータに偏りがあることなどから因果関係については判断できないとしていました。

 現在も、最終的な判断をいつ行うのか見通しは立っておらず、ワクチン接種の積極的な呼び掛けを4年近く中止する異例の事態が今も続いています。

 2017年4月11日(火)

 

■野草のアザミの成分にアルツハイマー病の改善効果 国立循環器病研究センター

 野草のアザミから取れる物質に、アルツハイマー病の症状を改善させる効果があると、国立循環器病研究センター(大阪府吹田市)の斉藤聡医師(脳神経内科)や京都大などの研究チームが4日、イギリスの神経疾患専門誌に発表しました。マウスを使った実験で確認しました。

 人の場合、軽度の患者で効果が期待できるとしており、今年度内に新たな薬の開発へ向けた臨床試験(治験)を開始し、2025年ごろをめどに臨床応用を目指します。

 アルツハイマー病の患者の多くは、異常タンパク質の「アミロイドベータ」が脳内の血管周辺で結び付き、塊となって蓄積することで神経細胞が死滅し、認知機能や血流が低下します。

 野草のマリアアザミなどの成分で、ポリフェノールの一種である「タキシフォリン」と呼ばれる物質には、アミロイドベータ同士が結び付くのを防ぐ働きのあることが知られています。ポリフェノールは植物に含まれる抗酸化物質で、タキシフォリンは赤ワインに含まれるポリフェノールとは異なります。

 実験で、アルツハイマー病を発症させたマウスに、このタキシフォリンを混ぜた餌(えさ)を食べさせたところ、何もしないマウスに比べ、塊となったアミロイドベータの量が約4分の1に減少しました。記憶力を調べるテストでも、通常のマウスと同等の成績を保ちました。

 研究チームは2014年から、異常タンパク質のアミロイドベータの除去を促す別の医薬品「シロスタゾール」を使ってアルツハイマー病の進行を抑える治験を進めています。これとタキシフォリンを併用すれば、より大きな治療効果が得られるとみています。

 斉藤医師は、「アルツハイマー病の有効な治療法になり得る。2025年度中に併用治療の臨床応用を目指したい」としています。

 脳血管障害に詳しい星ヶ丘医療センター(大阪府枚方市)の松本昌泰病院長は、「人でも有効であれば、血管周辺の異常タンパク質の蓄積を防ぐことで、アルツハイマー病の予防や進行を防ぐことも期待できる」と話しています。

 2017年4月10日(月)

 

■ゲノム編集による遺伝子治療、臨床研究禁止へ 厚労省が方針

 ゲノム編集と呼ばれる生命の設計図に当たる遺伝子を自在に改変できる技術で、異常がある受精卵の遺伝子を修復し、子供を出産する臨床研究について、厚生労働省は、遺伝子治療の指針で禁止する方針を固めました。

 12日に専門委員会の初会合を開き、1年以内の指針の改正を目指します。

 指針がまとまれば、生物の姿や形、特性などを決めるゲノム(全遺伝情報)を人為的に改変するゲノム編集による受精卵の研究を対象にした初の国内規制になります。

 現行の厚労省の指針は、受精卵に別の遺伝子を導入するなどして改変することを禁止していますが、受精卵にタンパク質などを投与して改変するゲノム編集については定めがありませんでした。

 ゲノム編集で受精卵の遺伝子を改変する研究について、政府の生命倫理専門調査会は昨年4月、基礎研究は容認するものの、出産に向けた臨床応用は安全性や倫理面での課題が多いため「容認できない」としており、この方針に沿って指針を見直すことにしました。

 ただ、この指針には罰則がないため、厚労省から研究費を受けていない民間病院には禁止の効果が期待できないとの指摘もあります。

 ゲノム編集で遺伝子を改変した子供を作る治療を巡っては、アメリカの科学アカデミーが今年2月、遺伝性の深刻な病気を防ぐ目的に限り、条件付きで容認する報告書を発表。中国ではすでに、病気の原因となる遺伝子を修復するなどの目的で、受精卵にゲノム編集を行う基礎研究の実施例が計3件報告されており、影響が子孫へと受け継がれる受精卵へのゲノム編集応用の是非が、国際的な議論となっています。

 2017年4月10日(月)

 

■国内初、人畜共通感染症のオウム病で妊婦が死亡 厚労省が発表

 厚生労働省は9日までに、オウムやインコなど鳥類のふんを介して感染する「オウム病」(クラミジア肺炎)を発症した妊婦が死亡していたことを明らかにしました。オウム病は高齢者などで数年に1度、死亡例が報告されていますが、妊婦の死亡例は初めてとみられます。

 厚労省は日本医師会を通じて、産婦人科医らに情報を提供しました。

 オウム病は本来、動物の疾患であり、人はウイルスに近いクラミジア・シッタシという微生物に感染したオウムやインコなどの鳥類から感染する人畜(人獣)共通の感染症の1つです。病原体がオウムから初めて分離されたことからオウム病と名付けられましたが、インコ、ハト、ニワトリ、ガチョウ、シチメンチョウ、アヒルなどオウム以外のペット鳥、家禽(かきん)類、野鳥でもクラミジア・シッタシに感染した鳥が確認されています。

 感染した鳥はふん中にクラミジア・シッタシを排出し、この乾燥したふんがホコリや羽毛などとともに舞い上がり、人はそれを吸入することで感染します。一般的には、1~2週間の潜伏期間の後、急な発熱や頭痛、せきなど風邪やインフルエンザに似た症状が出て、気管支炎や肺炎を発症。重症化して死亡することもあります。

 厚労省によると、毎年数十人ほどの感染報告があるといいます。

 今回感染が確認された妊婦は、妊娠24週に発熱のため入院。意識障害などがみられ、その後死亡しました。日本医療研究開発機構の妊婦の感染症に関する研究班が死後、体内からオウム病の原因となるクラミジア・シッタシを検出し、厚労省に報告しました。

 海外ではオウム病による妊婦の死亡例が報告されていますが、国内ではこれまで報告はありませんでした。

 厚労省は、「妊娠中は抵抗力が弱くなる。胎児に影響を与える場合もあるので、ペットなど動物との密接な接触は控えてほしい」と呼び掛けています。

 2017年4月10日(月

 

■本人が望まぬ蘇生処置、書面で意思を示せば中止可能 臨床救急医学会が提言

 末期がんや高齢などで終末期にある人が心肺停止になって救急隊員が運ぶ際に、本人が蘇生処置を望んでいない場合の対応について、日本臨床救急医学会は手順をまとめ、7日発表しました。

 本人が書面で「蘇生中止」の意思を示し、連絡を受けた主治医が指示すれば処置を中止します。日本臨床救急医学会は、地域の行政、消防、医療関係者らでつくる協議会で対応を決める際に今回の提言を生かしてほしいとしています。

 蘇生を望んでいない人の容体が急変し、家族や老人ホームの職員など周囲の人が状況がわからずに119番通報することがあり、救急現場では蘇生処置をすべきかどうか対応に苦慮していました。

 日本臨床救急医学会が提言した手順では、そうした人の元に救急隊員が到着した場合、まずは心臓マッサージなどの蘇生処置をします。その後、書面で本人の意思が確認でき、主治医の指示があれば蘇生処置をやめるとしました。

 主治医に連絡が取れなくても、救急隊に医学的な助言や指導をする医師の判断で中止できます。一方、事故や事件によるけがや家族からの要望があれば、蘇生処置を続けます。

 今回、救急隊員に蘇生処置をしないように求める書面のひな型も作成。日本臨床救急医学会の坂本哲也代表理事は、「提言は強制的なものではなく、終末期にある本人の意思が尊重されるよう、今後の体制作りの議論の切っ掛けにしてほしい。人生の最終段階をどう迎えるか一人一人が向き合う時期にきている」と話しています。

 2017年4月9日(日)

 

■世界の喫煙者9億3000万人、死者640万人 国際的な研究グループが調査

 2015年の日常的にたばこを吸う人の総数は世界全体で10億人近くに上り、640万人がたばこが原因で死亡したとみられることが、国際的な研究グループの調査でわかりました。

 この調査は、アメリカやイギリス、それに日本などの研究者で作る研究グループが、世界保健機関(WHO)などから得られる健康や喫煙に関する2800以上のデータを分析して行い、イギリスの医学雑誌「ランセット」に5日付けで発表しました。

 それによりますと、2015年に195の国や地域で、たばこを日常的に吸う人はおよそ9億3300万人に上り、1990年の8億7000万人から7%増加しました。

 喫煙率は、男性が25・0%、女性は5・4%となっています。1990年には、喫煙率は男性が34・9%、女性は8・2%でしたが、たばこの値上げや若者への教育などの対策が進められた結果、多くの国で男女ともに喫煙率が下がったと指摘しています。

 一方で、2015年に心臓の病気や肺がんなど、たばこが原因で死亡したとみられる人は、1990年より4・7%増加し、およそ640万人に上るということです。世界人口の増加が原因とみられています。

 国別では、たばこが原因で死亡したとみられる人は中国が最も多い177万人、続いてインドが74万人、アメリカが47万人などとなっており、日本は6番目に多い16万6000人となっています。世界の死者のうち、10人に1人がたばこが原因で死亡しており、その半数を中国、インド、アメリカ、ロシアのわずか4カ国が占めています。

 この4カ国にインドネシア、バングラデシュ、フィリピン、日本、ブラジル、ドイツを加えた国々が、世界のたばこ消費量の3分の2を占めています。

 WHOは、サハラ以南のアフリカでたばこを吸う人の数について、2025年までに2010年比で50%増加するとの見通しを示しています。

 研究グループは、「喫煙率が高いままの国もあり、多くの人の死を防ぐために、より効果的な政策や法制度の整備などの対策を進める必要がある」としています。

 WHOは、「たばこは製造者が意図した通りの用法で使用したとしても、大勢の命を奪う唯一の合法ドラッグ」と指摘し、「禁煙しなければ、毎日たばこを吸う人の半数が早死にする」と推定しています。

 2017年4月9日(日)

 

■心不全患者、がん発症リスク3・8倍に 循環器病研究センターが解明

 心不全の患者は、がんを発症するリスクが3・8倍高くなることが診療データの解析で判明したと、国立循環器病研究センター(大阪府吹田市)の研究チームが7日、日本高血圧学会誌電子版に発表しました。

 北風政史臨床研究部長は、「心不全になったら、がんを疑うという意識を医師や患者が持ち、がんの早期発見に努めることが大事」と話しています。

 研究チームは2001~13年に同センター病院に心不全で入院した患者5238人のカルテから、がんと診断されていたり、その後がんになった人数と、国内全体のがん罹患率のデータを統計処理して解析。

 心不全の患者は2・27%ががんになっていましたが、国内の一般的ながん罹患率は0・59%で、3・8倍高くなりました。このうち心不全と診断された後にがんになった人は0・99%で、1・7倍高くなりました。

 研究チームは、心不全になるとさまざまな細胞が増殖しやすくなるため、がんの発症や進行につながるとみています。こうした研究結果はアメリカなどで報告されているものの、日本では初めてといいます。

 2017年4月8日(土)

 

■乳児ボツリヌス症で全国初の死亡、東京都の6カ月男児 離乳食にハチミツ

 東京都は7日、足立区の生後6カ月の男児が3月、ハチミツが原因の食中毒で死亡したと発表しました。家庭で離乳食として与えた市販のハチミツにボツリヌス菌が含まれ、乳児ボツリヌス症を発症したとみられます。

 国立感染症研究所に記録が残る1986年以降、国内で発症が確認されたのは36例目で、死亡したのは初めて。

 乳児ボツリヌス症は1986年に千葉県で初めて確認され、厚生省(当時)は1987年、1歳未満の乳児にハチミツを与えないよう通知を出し、注意喚起を続けてきました。

 東京都の発表によると、男児は今年1月から、ジュースに市販のハチミツを混ぜたものを離乳食として、1日平均2回ほど家族から与えられていました。男児は2月16日にせきなどを発症し、20日にけいれんと呼吸不全で病院に救急搬送されましたが、3月30日に死亡しました。男児の便と自宅に保管していたハチミツから、ボツリヌス菌が検出されました。東京都の調べでは、1日当たり約10グラムのハチミツを摂取していた可能性があるといいます。

 ボツリヌス菌は自然界に常在する菌で、ハチミツに含まれていることがあります。消化器官が未熟な1歳未満の乳児がハチミツを摂取すると、腸管内でボツリヌス菌が増殖し、毒素で呼吸困難、便秘などの症状を引き起こす危険があります。

 死亡した男児が摂取した製品にはメーカーの注意書きがありましたが、家族が見逃していた可能性が高いといい、厚生労働省の担当者は「改めて注意を促したい」としています。

 東京都も以前から注意を促してきましたが、今回の事故を把握した後の3月中旬、食品安全情報サイト「食品衛生の窓」に改めて注意情報を掲載しました。

 食品安全に詳しい唐木英明・東京大学名誉教授(薬理学)は、「乳児はまだボツリヌス菌に免疫を持っていないので、ハチミツを与えてはいけないのは常識だと思っていたが、最近は知らない人がいる。ボツリヌス菌は芽胞の形で何年も生き残る。ごくまれとはいえ、これを機に乳児に摂取させてはいけないとの表示を徹底すべきだ」と話しています。

 2017年4月8日(土)

 

■ローソン、「からあげクン」を店頭から撤去 ビニール片が混入

 ローソンは7日、「からあげクン 北海道チーズ味」の一部に、ポリエチレンのシートの一部が混入していたと発表しました。

 大阪市の店舗で商品を買った客から6日、「ビニールが入っている」などと苦情があり、混入の可能性がある商品は同日、店頭から撤去しました。

 ニチレイフーズ関西工場(大阪府高槻市)で2月10日に製造された約2万袋が対象。

 工場のビデオカメラに、作業員が誤って、乾燥防止のため肉にかぶせているポリエチレンのシート1枚をはがさずに成型機に入れたのが録画されていたといいます。出荷先は大阪、京都の2府と石川、富山、福井、三重、兵庫、奈良、滋賀、和歌山、鳥取、島根、岡山、広島、山口、徳島、香川、愛媛、高知の17県の4201店で、3月26日~4月6日に売られた可能性があります。

 健康被害の報告はないといいます。4201店の店頭では当該商品はすべて撤去し、商品がまだ手元にある場合はレシートと引き換えに返金します。

 問い合わせは購入店か、ローソンお客様相談窓口(0120・07・3963)、またはニチレイフーズお客様相談センター(0120・12・4099)。

 2017年4月7日(金)

 

■医師の4割、地方勤務OK 厚労省、偏在対策強化へ

 厚生労働省は6日、全国の医師約10万人に勤務実態や働き方の意向調査を初めて実施したところ、地方に勤務する意思がある医師が約44%に上ったことを明らかにしました。

 このうち「10年以上」の期間を希望する医師が3割でした。全国的に都市部に医師が集中する中、地方や僻地(へきち)では医師不足が問題になっていますが、厚労省は人材の需給ギャップを埋める方策の推進を検討しています。

 この日、有識者検討会が、調査を基にした医師らの働き方改革の提案書を塩崎恭久厚労相に提出。検討会座長の渋谷健司・東京大学大学院教授は、「若い人ほど地方勤務の意思が高い傾向にある。働きやすい環境を整備し、若い人が根を張るような土壌をつくる必要がある」と話しました。

 調査は昨年12月、全国の医療施設約1万2000カ所にアンケート配布の形で実施し、約1万6000人から回答がありました。

 政令指定都市、県庁所在地などの都市部以外で勤務する意思があるかという項目では、20歳代の勤務医が60%、30歳代で52%に上りました。そのうち「10年以上」勤務の希望が27%と最多で、「2~4年」(12・3%)、「5~9年」(9・1%)が続きました。

 一方、地方に勤務する意思がない医師は51%とおよそ半数を占め、その理由として、「大量の業務を1人で負担させられるのではないか」という労働環境への不安の声のほか、「希望する仕事ができない」とか、「専門医などの資格の取得が困難だ」という声や、「子供の教育環境が整っていない」といった回答もあったということです。

 2017年4月6日(木)

 

■ジカ熱、小頭症など先天異常は10人に1人 アメリカで妊婦調査

 妊娠中の女性がジカ熱(ジカウイルス感染症)に感染した場合、先天的に頭部が小さい小頭症などの新生児が生まれる割合は、およそ10人に1人に上るという調査結果を、アメリカの疾病対策センター(CDC)がまとめ、妊娠中の女性に対して、予防対策の徹底を呼び掛けています。

 CDCは昨年、中南米などのアメリカ国外やアメリカ国内でジカ熱に感染したとみられる女性で、アメリカで出産まで至ったケースを調べた調査結果を4日、発表しました。

 それによりますと、ジカ熱への感染が確認された妊婦250人のうち、新生児に小頭症や視覚などの異常があったのは24人で、およそ10人に1人に上ったということです。特に妊娠の初期3カ月間にジカ熱に感染した場合、小頭症などの新生児が生まれる割合は15%に上ったとしています。

 ジカ熱は、2015年半ば以降、ブラジルなどの中南米諸国を中心に150万人以上が感染し、アメリカ国内でも妊娠中の女性1600人以上が感染したとみられていますが、まとまったデータが示されるのは初めてだということです。

 CDCは、「ジカ熱の脅威を改めて示すデータだ。ジカ熱は今も近くにある。特に妊娠中の女性は、虫よけを使う感染が広がっている地域に行かないといった予防対策を徹底してほしい」とし、ウイルスを媒介する蚊の活動が活発になる季節を前に注意を呼び掛けています。

 世界保健機関(WHO)は、2020年までジカ熱ワクチンの準備が難しいとの見通しを示しています。

 2017年4月6日(木)

 

■梅毒の感染者、すでに1013人 過去最速ペースで感染拡大

 国立感染症研究所は4日、今年の梅毒の感染者が3月26日までに1013人(速報値)となったと発表しました。42年ぶりに感染者が4000人を超えた昨年同時期の796人を上回り、現行の統計方法になった1999年以降、最も速いペースで感染が広がっています。

 厚生労働省は、体の不調があったら早めに受診するよう呼び掛けています。

 国立感染症研究所によると、感染者は東京都323人、大阪府147人、神奈川県61人、福岡県55人、愛知県45人、埼玉県39人、兵庫県37人など都市部に多く、鳥取県、島根県、徳島県では感染報告がありません。

 梅毒の感染者は戦後間もない1940年代後半には年間20万人を超えましたが、抗菌薬治療が普及して激減。再流行した1967年の約1万2000人をピークに減少を続け、2010年は621人でした。しかし、2011年以降、再び増加し、昨年は1974年以来となる4000人を超え4559人(男性3174人、女性1385人)と激増しました。特に20歳代前半の女性での感染増加が目立っています。

 急増する梅毒の感染者を減らそうと、厚生労働省は人気アニメ「セーラームーン」を起用したポスターを作成するなど啓発に力を入れています。ただ、なぜ患者が増加しているかが判明していないため、適切な感染防止策を打ち出すのは難しい状況です。厚労省は研究班を立ち上げ、原因究明を進めています。

 梅毒は梅毒トレポネーマという細菌が皮膚や粘膜から入り込むことで起きる感染症で、主に性行為によって感染します。感染すると皮膚や性器にしこりができ、その後、赤い発疹が出ます。発熱や倦怠感などの症状が出ることもあるものの、数週間で消えることもあり、患者だけでなく医師も梅毒と気付かないことがあります。

 しかし、治療しないと脳や心臓に重い合併症を起こすこともあるほか、周囲に感染を広げる恐れもあります。

 性感染症に詳しい日本家族計画協会の北村邦夫理事長は、「梅毒を疑って検査しないと見逃してしまう。実際の感染者数はもっと多い可能性もある」とし、「口の中の粘膜などからも感染するため、避妊具だけでは感染を防げない」と指摘しています。

 治療するにはペニシリン系の抗菌薬を4週間から8週間、血液による抗体検査で体内の菌が消滅したことを確認できるまで服用する必要があり、治っても再度、感染することもあります。

 厚労省結核感染症課は、「20歳代前半の女性が増えている。妊婦が感染すると流産や胎児に感染する恐れがあるため注意が必要だ」として、気になる症状があれば早期の受診を勧めています。

 2017年4月5日(水)

 

■アナフィラキシー治療剤、1万本を追加で自主回収 ファイザー

 製薬大手ファイザー(東京都渋谷区)は3日、食物や薬剤などに起因する急性アレルギー症状のアナフィラキシーになった際に使う注射薬「エピペン注射液0・3ミリグラム」1万103本を、追加で自主回収すると発表しました。

 エピペンは患者や家族などが自己注射してショック症状を和らげる治療剤で、太ももに押し当てると内蔵された針が出てくる仕組みですが、海外で針が出ずに正常に接種できなかった例が2件報告されため、ファイザーは3月13日、約6000本の回収を始めました。

 同様の不具合が起こる可能性が否定できないとして、今回の追加回収を決めました。対象は、昨年6月6日~7月26日に国内で出荷された製造番号「PS00025A」で、使用期限が今年10月末。

 これまでに健康被害の報告は、日本ではありません。

 ファイザーは、回収対象製品を持っている人に、処方された医療機関や薬局で代替製品と交換するよう呼び掛けています。問い合わせは通話無料のエピペン回収特設窓口、電話0120・665766。受付時間は平日午前9時〜午後5時30分。

 2017年4月3日(月)

 

■電気コンセント感電注意、子供の事故が6年で30件 消費者庁が対策を呼び掛け

 子供が家庭内の電気コンセントに金属片などを差し込んで感電し、やけどなどを負った事故が今年2月までの約6年間に約30件起きていることを3日、消費者庁が明らかにしました。

 死亡例はないものの、消費者庁は保護者に対し、専用キャップで対策を取るよう呼び掛けています。

 各地の30医療機関からの情報を分析したところ、5歳児が電気コンセントの両穴に鍵2本をそれぞれ差し込んで感電し両手指にやけどを負うなど、鍵やヘアピン、クリップの金属を差し込んだ事故が多く見受けられました。未就学児の事故が目立つといいます。

 消費者庁は専門家の見解を踏まえ、「家庭用の100Vの電圧でも子供が感電すると心臓まひを起こす恐れもある」とし、「心臓まひになったら、処置のタイムリミットは約3分とされる。保護者は念のため自治体などが行う救命講座を受けてほしい」としています。

 専用キャップは子供が誤飲しにくいデザインを選ぶなど、注意が必要です。

 2017年4月3日(月)

 

■京大、医療用のES細胞を作製へ 厚労省に計画を申請

 臨床研究など再生医療用に使うためのES細胞(胚性幹細胞)を人の受精卵から作製する計画を、京都大学の研究チームが2日までに厚生労働省に申請しました。不妊治療で使わなかった受精卵の提供を受けて、10年で約20種類の細胞株を作製します。

 受精卵を壊して作るES細胞は生命倫理上の議論があり、臨床研究など再生医療向けの作製が国の指針で禁止されてきましたが、2014年に厚労省が改正した臨床研究指針で認められました。4月19日に開く厚労省の専門家委員会で審査し、承認されれば国内初となり、臨床応用に向けた研究が本格化します。

 ES細胞はiPS細胞(人工多能性幹細胞)と同様に、さまざまな臓器や組織に変化する能力を持つ万能細胞で、すでに京大や国立成育医療研究センターが作製しているものの、主に動物実験など基礎研究用に限っていました。

 北米やイギリスでは、目の難病などを治療するためにES細胞を使う臨床試験(治験)が実施されています。血液などに遺伝子を導入して作製するiPS細胞はがん化の懸念があり、再生医療への応用ではES細胞のほうが安心と考える研究者もいます。

 医療用のES細胞は国立成育医療研究センターが作製したことがありますが、臨床研究指針が改正されてやり直しになりました。同センターも近く、計画を申請する見通しです。

 2017年4月3日(月)

 

■金型入ったまま菓子パンを販売 男性が歯にひび

 パン製造大手フジパンのグループ会社「フジパンストアー」(名古屋市瑞穂区)は2日、昨年12月5日に愛知県みよし市の商業施設「イオン三好店」内にあるパン販売店で、金属製の金型が入ったまま菓子パンのチョココルネ1個を販売したと明らかにしました。

 購入して食べたという男性から「治療中のセラミックの歯にひびが入った」と12月6日に苦情が寄せられ、判明したといいます。

 フジパンストアーはすでに男性に謝罪しており、「作業上のミスで、お客さまに迷惑をかけ申し訳ない。治療費を支払うなど今後も誠実に対応したい」としています。

 フジパンストアーによると、店舗の調理場で長さ約13センチの円すい状の金型にパン生地を巻き付けて、10~20個を焼き上げましたが、うち1個から金型を取り外し忘れたままチョコレートクリームを注入、販売していました。

 取り外した後の金型の個数の確認を怠ったのが原因で、苦情を受けて確認したところ金型が1つ足りなかったといいます。再発防止に確認作業を徹底するとともに、金型をシリコーン製に変更するなどの対策を取るといいます。

 2017年4月3日(月)

 

■福島原発事故の時に4歳の男児、甲状腺がんと確定 甲状腺検査で経過観察後に

 2011年3月11日に東京電力福島第一原発事故が起きた当時18歳以下だった約38万人を対象にした福島県の甲状腺検査で、経過観察となった事故当時4歳の男児(10歳)が昨年、甲状腺がんと診断されていたことが3月31日、明らかになりました。

 昨年6月の福島県の検討委員会の発表で、事故当時5歳だった1人ががんと診断されており、5歳以下では2人目。

 甲状腺がんを発症した子供を支援する民間の「3・11甲状腺がん子ども基金」(東京都品川区)が、記者会見で明らかにしました。男児は2014年に受けた甲状腺検査の2次検査で経過観察とされた後、福島県立医科大学で2015年にがんの疑いが明らかになり、2016年前半に甲状腺の摘出手術を受けてがんが確定したといいます。同基金側は男児に療養費として10万円を給付し、男児は現在、通院治療中です。

 甲状腺検査では昨年末時点で、全体で145人ががんと確定。検討委員会では「被曝(ひばく)の影響は考えにくい」として、その理由の一つに、チェルノブイリ原発事故後にがんが多発した5歳以下で、ほとんど患者が見付かっていないことを挙げています。

 検討委員会には2次検査でがんの疑いが見付かったケースが報告される仕組みで、男児は報告対象ではありませんでした。

 福島県立医科大学は「一般の診療情報なので報告しなかった」と説明していますが、同基金は「経過観察の結果がわからなくなり、報告に入らないのは問題だ。原発事故の影響がないというこれまでの説明の根拠が揺らいでいる」と指摘しています。

 検討委員会の成井香苗委員(臨床心理士)は「事故影響を正しく判断できない」と指摘し、複数の委員が「報告対象に加えるべきだ」と話しています。

 福島県の県民健康調査の担当者は、「2次検査で経過観察とされた後に、がんと診断されたり、別の医療機関に移って、がんが見付かったりした患者たちを網羅的に把握することは困難なため報告していない」とした上で、「検討委員会で現在の仕組みを見直して報告すべき対象を広げるか議論があると思う」と話しています。

 甲状腺は、のどの下にある重さ10〜20グラム程度の小さな臓器で、成長の促進にかかわるホルモンを分泌する働きがあります。原発事故後に懸念されたのが、この甲状腺が事故で放出された放射性ヨウ素を取り込んで引き起こす甲状腺がん。特に成長過程の子供は体内で細胞が活発に分裂を繰り返しているため、傷付いた細胞の遺伝子の修復が進みにくく、影響を受けやすいとされています。

 旧ソビエトのチェルノブイリ原発事故では、周辺地域の住民が主に牛乳や乳製品などを通じて放射性ヨウ素を取り込んだとされており、国連の専門委員会は、約6000人が甲状腺がんになり、2006年までに15人が死亡したという報告書をまとめています。

 2017年4月2日(日)

 

■ギャンブル依存症疑い、成人の2・7% 最多はパチンコ・パチスロ

 国内の成人のうち2・7%はギャンブル依存症が疑われるという調査結果を厚生労働省が31日、発表しました。2013年の調査では4・8%でしたが、政府内から「実感と合わない」との指摘があり、昨年秋に改めて調査していました。

 調査は国立病院機構久里浜医療センター(神奈川県横須賀市)が実施。カジノを含むIR(統合型リゾート施設)の整備推進法が成立したことを受けて、東京23区や大阪市、名古屋市、福岡市など全国11都市に住む20歳から74歳までの男女2200人を選び、協力が得られた993人に対し国際的な診断基準による約100問の調査項目を使って面接調査しました。

 その結果、生涯を通じてギャンブル経験があり、依存していた疑いがある人は2・7%(26人)。「パチンコ・パチスロ」に最もお金を使った人が1・9%(16人)を占め、そのほかは「賭けマージャン・賭け将棋」、「競馬」、「競輪」でした。

 直近1年では、依存症が疑われるのは0・6%(5人)でした。割合は年齢ごとの人口分布に合わせて補正しています。

 2013年調査はアンケート方式。今回は面談で実施し、今夏にまとめる1万人を対象にした大規模な調査の予備調査と位置付けています。

 調査を担当した久里浜医療センターの樋口進院長は記者会見で、「ギャンブルなどに特化した依存症の実態が明らかになったのは初めてで、より詳細な実態が把握できるよう調査を続けたい。パチンコ・パチスロは店舗数が多く店が身近にあるといったアクセスのよさや、競馬や競輪などと異なり、いつでも遊べるのが原因ではないか」としています。

 2017年4月1日(土)

 

■エイズウイルス感染に気付いていない人、推計5800人 厚労省が検査体制を強化へ

 エイズウイルス(HIV)に感染しながら気付いていない人が、昨年末の時点でおよそ5800人に上るという初めての推計を、厚生労働省の研究班がまとめました。厚労省は、感染の拡大が進む恐れがあるとして、検査体制を強化する方針です。

 厚労省によりますと、保健所や医療機関などでエイズウイルスの感染が確認された日本人は、昨年までにおよそ2万2971人に上っています。これに対し研究班は、感染の広がり方や過去のデータなどを詳しく分析して、実際に感染している日本人は、昨年末の時点でおよそ2万8300人に上るという初めての推計をまとめました。

 このうち、5人に1人に当たるおよそ5800人は、検査を受けていないためにエイズウイルスへの感染に気付いていないとみられるということです。

 研究代表者で、北海道大学大学院医学研究科の西浦博教授(理論疫学)は、「感染に気付いていない人は、予防をせずに性行為などをしてしまうため、他人を感染させてしまうリスクが高い。早急に対策をとらないと、感染の拡大が進む恐れがある」と指摘しています。

 厚労省は、検査体制を強化するとともに、感染に心当たりがある場合は定期的に検査を受けるよう呼び掛けています。

 エイズウイルスは、性行為によって感染するケースがほとんどです。厚労省によりますと、昨年末までのおよそ1年間に感染が確認された1440人のうち、エイズ(後天性免疫不全症候群)を発症して初めて感染が判明したのは437人で約3割。また、同性間の性行為による感染が67%を占めた一方、異性間の性行為による感染も20%に上りました。

 エイズウイルスに感染してからエイズを発症するまでは数年から10年ほどの潜伏期間があり、自覚症状がほとんどないため、その間に感染が広がる恐れがあると指摘されています。

 エイズ治療の拠点となっている、東京都の国立国際医療研究センター病院の照屋勝治医師によりますと、エイズを発症すると、重い肺炎などになり、治療が遅れると死亡することもある一方、発症前であれば、ウイルスの増殖を抑える薬を毎日服用することで、ほとんどの患者は健康な人と変わらない生活を送ることができます。

 照屋医師は、「HIVは、同性愛者に限らず、性行為を通じて誰にでも感染する恐れがある上、最近は感染のリスクを高める梅毒が流行しているため、これまでよりも感染が広がる恐れもある。避妊具を使わずに不特定多数と性行為をした経験がある人など、少しでも心当たりがあれば、定期的に検査を受けてほしい」と指摘しています。

 保健所などが実施した検査は減少傾向が続き、昨年は11万7800件と、ピークだった10年前より6万件ほど減っています。

 検査が普及しない背景には、医師や保健師との対面での検査に心理的な抵抗を感じる人が多いことに加え、検査できる日と時間が限られるため、利用しにくいという指摘もあります。

 こうした中、インターネットで申し込んで検査キットを購入し、検体を民間の検査機関に送る「郵送検査」の利用が広がり、厚労省の研究班によりますと、一昨年1年間の検査件数はおよそ8万6000件に上っています。

 しかし、利用者が自分で採血することなどから、保健所などでの検査に比べると精度が高いとはいえない上、陽性と診断された患者を確実に医療機関への受診につなげる仕組みがないことが課題となっており、厚労省は今後、民間の検査機関向けの指針を作るなどして、検査の精度向上やプライバシー保護など態勢整備を提言することにしています。

 2017年3月31日(金)

 

■エイズウイルス感染、前年から微増の1440人 厚労省委員会が速報値を発表

 厚生労働省のエイズ動向委員会は29日、2016年に新たにエイズウイルス(HIV)への感染が判明した人は1440人だったとの速報値を発表しました。前年の1434人から微増し、高止まりの状態が続いています。

 このうち、エイズ(後天性免疫不全症候群)を発症して初めて感染が判明したのは437人で約3割。年齢別では、30歳代が429人と最多で、40歳代の381人が続きました。性別では、男性が95%。感染ルートでは、同性間の性的接触によるものが67%を占めた一方、異性間の性行為による感染も20%に上りました。

 年間のエイズウイルスへの感染者数は、10年前にピークとなった後も毎年1500人前後と高止まりの状態が続いています。

 保健所などが実施した抗体検査は約11万8000件で、2年連続減少しました。

 エイズ動向委員会の委員長の岩本愛吉・日本医療研究開発機構科学技術顧問は記者会見で、「HIVへの社会の意識が低くなったことなどから、保健所などでの検査件数が減っている。性別を問わず、幅広い年齢で感染が確認されており、早期発見に結び付くよう、検査を普及させる必要がある。治療や予防には早期発見が一番大事だ」と述べ、リスクのある人は保健所が無料で実施する匿名の相談や検査を積極的に利用するよう呼び掛けました。

 2017年3月30日(木)

 

■難病の潰瘍性大腸炎、再生医療での完治を目指す 東京医科歯科大が臨床研究を計画

 国内の患者数が16万人以上と難病の中で最も多い潰瘍性大腸炎を、再生医療の技術によって大腸の働きを再生し完治できるようにしようという世界初の臨床研究の計画を、東京医科歯科大学の研究チームが、国の研究予算を統括する日本医療研究開発機構に提出しました。

 来年春にも第1例目の手術を実施したいとしています。

 潰瘍性大腸炎は、大腸の粘膜が炎症を起こし、激しい腹痛や下痢を繰り返す難病。患者数は20歳代、30歳代を中心に16万人以上と難病の中で最も多く、症状が悪化すると大腸がんのリスクが高まり、患者の約5%は重症化により大腸そのものを摘出しなければならなくなります。手術を行えば、腹痛などの症状は改善されますが、余分な水分を吸収する大腸がないため、トイレの回数が多くなり術後も日常生活での支障が続くことになります。

 東京医科歯科大の計画では、患者5人の大腸からそれぞれ大腸の粘膜をつくる「大腸上皮幹細胞」を取り出し、1カ月間、培養しておよそ100万個に増やした後、再び内視鏡で大腸の傷付いた部分に移植すると、移植された細胞が傷を覆います。

 マウスを使った実験では症状を完治させることに成功しており、研究チームでは今後、法律に基づく委員会の審査を経て来年春にも第1例目の手術を実施したいとしています。

 計画を提出した渡辺守教授は、「今回の方法を使えば手術をせずに症状を完全に治すことが期待できる。多くの患者が悩む難病であり成功させたい」と話しています。

 2017年3月30日(木)

 

■世界初、他人由来のiPS細胞で移植手術 理研など目の難病の60歳代男性に

 他人に移植しても拒絶反応が起きにくい特殊なiPS細胞(人工多能性幹細胞)を使って、重い目の病気の患者を治療する世界初の手術を、理化学研究所などの研究チームが28日に実施したと発表しました。

 世界初となる他人由来のiPS細胞の移植手術を行ったのは、神戸市にある理化学研究所の高橋政代プロジェクトリーダーと、神戸市立医療センター中央市民病院、大阪大学、京都大学の研究チームです。

 手術を受けたのは、網膜の細胞の異常によって視野の中心が暗くなり、悪化すれば失明の恐れもある「滲出型加齢黄斑変性」の患者である兵庫県に住む60歳代男性。これまでの治療では、症状の悪化が抑えられなくなっていました。

 手術は28日午後2時前、中央市民病院で行われ、京都大学の山中伸弥教授らが作製した、拒絶反応が起きにくい特殊なiPS細胞から目の網膜の組織を作り出し、注射器を使って男性の右目に移植しました。手術は、1時間ほどで無事終了したということです。

 今回使われたiPS細胞は、特殊な免疫のタイプを持つ人から京都大学が作り出し、凍結保存しているもので、拒絶反応を起こしにくい上、解凍して培養すれば、ほぼ無限に増やせます。

 このため、同様の症状に苦しむ多くの患者に使うことが可能で、2014年9月の患者本人のiPS細胞を使った移植手術の際には、費用がおよそ1億円かかったのに比べ、10分の1程度にまで抑えられると期待されています。

 研究チームは、今回の男性を含めて5人を目標に同様の手術を行い、細胞のがん化や拒絶反応が起こらないかなどを慎重に確認することにしており、成功すれば再生医療の普及につながると期待されています。

 手術後に記者会見した理化学研究所の高橋政代プロジェクトリーダーは、「手術の後の拒絶反応があるかなどが大事なので、手術が終わっただけで成功したとはまだいえないが、今日の手術は今後、実用的な治療にしていくための重要なステップとなる」と話しました。

 2017年3月29日(水)

 

■マンモグラフィー検診に不向きな「高濃度乳房」、通知2割 厚労省が全国調査

 自治体が実施する乳がん検診のマンモグラフィー(乳房エックス線撮影)で異常が見えにくい「高濃度乳房」の問題で、厚生労働省は27日、自治体の通知に関する初の全国調査結果を公表しました。

 約1700市区町村のうち、乳房のタイプを通知しているのは230自治体で、通知予定の115自治体と合わせて2割が対策に動いていました。厚労省は今後、適切な通知法の検討を始める方針です。

 高濃度乳房は、乳腺組織の密度が高いために乳房全体が白く写り、乳がんが見えにくいため、高濃度乳房のタイプであることを受診者に通知すべきだとの指摘が上がっていました。自治体が実施する乳がん検診の対象である40歳以上では、約4割に高濃度乳房がみられるというデータもあります。

 同日開かれた「がん検診のあり方検討会」で報告されました。「通知」2割という結果について、厚労省の担当者は「低い数字ではない」と説明しました。

 一方、乳がん検診の受診者に、がんの有無を判別しづらいマンモグラフィーの弱点をカバーする超音波検査があると補足して伝えるなど、その後の対処法を示す自治体は半数にとどまり、情報提供の方法など課題も浮き彫りとなりました。

 がん検診のあり方検討会では、高濃度乳房を含む乳房のタイプについて受診者の86%が「知りたい」とした川崎市の調査(回答者約1000人)の結果も紹介されました。

 座長の大内憲明・東北大学教授は、「国として何らかの提言をまとめる必要がある」と強調。厚労省は、設置が検討されている高濃度乳房に関する研究班の議論を踏まえ、通知のあり方を模索していくとしました。

 2017年3月29日(水)

 

■親の喫煙、子供の肥満に影響 厚労省「一定の関連性裏付け」

 厚生労働省は28日、乳児期に受動喫煙があった子供は成長後の肥満の確率が高いという調査結果を公表しました。

 2001年生まれの子供約5万人の成長や子育ての状況を把握し、データを少子化対策などの施策に生かすのが目的の「21世紀出生児縦断調査」を基に、13歳になるまでの計11回分のデータを分析。生後6カ月の時点で両親とも非喫煙者か、少なくともいずれかが喫煙者かで比べたデータを分析しました。

 その結果、親が屋内で喫煙していた子供が肥満になる確率は、非喫煙者の子供と比べて男児が4歳以降に20~58%、女児が2歳以降に21~71%高くなりました。

 親が屋外で喫煙していた場合では、男児が5歳以降に15~29%、女児が5歳以降に18~33%高くなりました。

 母親に間食や夜食の習慣があったり、子供が朝食を食べていなかったりするなど肥満に影響する可能性のある要因を排除して推計しても、有意な差が残ったといいます。

 厚労省の担当者は、「受動喫煙と子供の肥満の因果関係はこれまでも指摘されていたが、調査で一定の関連性が裏付けられた」と指摘。受動喫煙の防止策強化の必要性を訴えました。

 2017年3月29日(水)

 

■家族同居で孤食の高齢男性、死亡リスク5割高 東京医科歯科大などが調査

 家族などと同居しているにもかかわらず、1人で食事をする高齢男性の死亡リスクが、家族と一緒に食事をする男性に比べ約1・5倍に上ることが、東京医科歯科大学などの調査で明らかになりました。

 同大学の谷友香子研究員は、「家族と一緒に住んでいれば食生活は安心とはいえない。対策を検討する必要がある」と話しています。

 調査では、介助を必要としない65歳以上の高齢者3万3100人を約3年間追跡しました。配偶者や子供、孫などと同居して、一緒に食事をしている男性は2万9182人で、3年間に1759人(6・0%)が亡くなりました。

 一方、同居はしているものの、家族などと生活時間が合わないなど何らかの理由で1人で食事をしている男性は1645人で、うち156人(9・5%)が亡くなりました。

 年齢や健康状態、経済状況の影響を除いて解析したところ、誰かと同居して一緒に食事をしている男性より、死亡リスクが1・5倍高くなりました。高齢女性については、こうした差はありませんでした。

 また、独り暮らしで食事も1人でする高齢男性の死亡リスクは、家族と一緒に食事をする男性に比べ約1・2倍高くなりました。

 家族などと同居しているにもかかわらず、1人で食事をしている人は家族とのトラブルを抱え、自殺に追い込まれるケースもあるとみられます。

 谷研究員は、「家族や近隣の人と一緒に食事をとることを勧める、自治体が会食を開催するといった対策が、高齢者の健康維持に効果があるかもしれない」と話しています。

 2017年3月28日(火)

 

■酒が弱い女性、年を取ると骨折リスク大 慶応大など調査

 酒が弱く、飲むと赤くなりやすい女性は、年を取ると骨が折れやすくなることが、慶応大学などの研究チームの調査で明らかになりました。女性は閉経後に骨粗鬆(そしょう)症になりやすい上に、アルコールの分解にかかわる遺伝子の働きが弱いと、さらに骨がもろくなる可能性があるといいます。

 研究成果は、27日付のイギリスの科学誌「サイエンティフィック・リポーツ」電子版で発表しました。

 慶応大医学部の宮本健史・特任准教授(整形外科)らは、アルコールを分解する時に働く酵素をつくる遺伝子「ALDH2」に着目。この遺伝子の働きが生まれ付き弱い人は、悪酔いの原因となるアセトアルデヒドをうまく分解できず、酒に弱くなります。

 中高年の女性で大腿(だいたい)骨骨折した92人と骨折していない48人の遺伝子を調べて比較したところ、骨折した人の中でALDH2の働きが弱い人は58%でしたが、骨折していない人では35%でした。年齢などの影響を除いて比べると、ALDH2の働きが弱い人の骨折リスクは、弱くない人の2・3倍高くなりました。

 研究チームは、マウスの細胞でも実験。骨を作る骨芽細胞にアセトアルデヒドを加えると働きが弱まりましが、ビタミンEを補うと機能が回復しました。アセトアルデヒドが骨をもろくする可能性があるとみられます。

 宮本特任准教授は、「お酒に強いか弱いかは生まれ付きで変えられない。だが、骨折のリスクをあらかじめ自覚し、ビタミンEの適度な摂取で予防できる可能性がある。遺伝子検査をしなくても、酒を飲んだ際の赤くなりやすさを、骨折リスクを測る上での指標の一つにできる」と話しています。

 2017年3月28日(火)

 

■HTLVー1母子感染対策でマニュアル作成 厚労省

 主に母乳を介して感染し、白血病などを引き起こすウイルス「HTLVー1」(ヒトTリンパ球向性ウイルス1型)について、厚生労働省の研究班は感染予防のマニュアルを作成し、感染がわかった場合は、原則として子供に粉ミルクなどを与えるよう医療機関などを通じて呼び掛ける方針です。

 HTLVー1は、国内で最大およそ80万人が感染しているとされています。

 主に母乳を通じて感染し、大人になってから白血病や重い歩行障害などを発症する恐れがあります。また、妊婦健診で行われている抗体検査で感染がわかっても母乳を与え続け、子供が感染するケースも報告されています。

 このため、厚生労働省の研究班は感染予防に関するマニュアルを作成し、医療機関などを通じて母親に呼び掛けていくことを決めました。

 マニュアルでは、感染がわかった場合、原則として子供に粉ミルクなどの人工栄養を与えるほか、感染がわかっても母乳で育てることを強く希望する母親には、感染のリスクを伝えた上で、授乳は満3カ月までの短期間に限ることや、いったん母乳を凍らせてから与えることも選択肢の1つとして呼び掛けるということです。

 厚労省は近く、全国の医療機関などにこのマニュアルを公表するということで、「感染すると、現時点では白血病などの発症を抑える有効な方法がないため、なるべく母子感染のリスクをなくすことが重要だ」としています。

 2017年3月28日(火)

 

■うつ病患者の35%、症状の自覚から半年以上を要して受診 製薬会社が調査

 うつ病の症状を最初に感じた人の35%は医療機関を受診するまでに半年以上を要したことが、製薬会社の日本イーライリリー(神戸市中央区)の調査で明らかになりました。

 受診までに半年以上を要した理由は「自分の頑張りや気持ちの持ちようで不調を解決できると思ったから」がトップで、うつ病に対する理解の不足が受診を遅らせている実態が浮き彫りになりました。

 うつ病と診断され、現在は社会生活に復帰しているか、復帰に向けて準備をしている20~60歳代の男女に昨年11月、インターネットを通じて質問し、計517人から回答を得ました。設問や分析は、精神科医と、精神疾患がある当事者・家族を支援するNPO法人「地域精神保健福祉機構」(千葉県市川市)が監修しました。

 うつ病の症状を最初に感じてから医療機関の受診までにどれくらいの期間を要したかを尋ねると、「1年以上 」が27・3%、「6カ月〜1年未満 」が7・7%、「3カ月〜6カ月未満」が12・8%、「1カ月〜3カ月未満 」が24・8%、「2週間〜1カ月未満」が16・4%、「2週間未満」が11・0%となりました。

 受診までに半年以上を要した181人に理由を複数回答で尋ねると、「自分の頑張りや気持ちの持ちようで不調を解決できると思ったから」が45・9%で、「性格の問題で病気ではないと思ったから」が35・4%、「疲労が原因で、少し休めば解決すると思ったから」が31・5%、「病気かもしれないとは思ったが、受診に抵抗があったから」が28・2%、「病気かもしれないとは思ったが、時間的余裕がなかったから」が6・6%でした。

 診断前の病気に対する認識については、回答者の59・8%が「自分がうつ病になる可能性があるとは思っていなかった」と回答。うつ病の症状として「気分の落ち込み、眠れない、食べられない」は72・3%が理解していましたが、「だるい、重い、さまざまなところが痛い」も症状であると理解していた人は50・3%でした。

 うつ病を周囲に伝えたかについては、配偶者にも伝えなかった人が10・5%、親に伝えなかった人が30・5%いました。知らせた後に、回復に役立った周囲の人の行動では「普段通りに接してくれた」ことがトップでした。

 2017年3月27日(月)

 

■温泉施設で40人がレジオネラ菌に感染、男性1人が死亡 広島県三原市

 広島県三原市にある日帰りの温泉施設でレジオネラ菌の集団感染が発生し、このうち50歳代の男性1人が25日、レジオネラ菌が原因の肺炎で死亡しました。

 広島県によりますと、三原市にある日帰りの温泉施設「みはらし温泉」を今月初旬から中旬にかけて利用した30歳代から80歳代までの男性34人、女性6人の合わせて40人がレジオネラ菌に感染し、三原市が20日に立ち入り調査をしたところ、浴槽の湯からレジオネラ菌が検出されました。

 このうち県東部に住む50歳代の男性1人が25日、レジオネラ菌が原因の肺炎で死亡したということです。男性は今月上旬に「みはらし温泉」を利用した後、高熱や肺炎、呼吸困難などの症状が出て今月21日から入院して治療を受けていたということです。広島県によりますと、これまでに感染が確認された人のうち、ほかに2人が重い症状で入院しています。

 広島県と三原市は、「みはらし温泉」の浴槽の湯が感染の原因とみて詳しく調べるとともに、営業停止も含めた処分を検討するとしています。また、「みはらし温泉」は今月21日から営業を自粛していますが、別館の宿泊施設「夢の宿」では患者発生の届け出はないといいます。

 広島県などは、「みはらし温泉」を利用した後、せきや高熱、悪寒などの症状が出た人には速やかに医療機関を受診するよう呼び掛けています。

 2017年3月26日(日)

 

■白血病検査の結果に不備、最大手の検査会社が発表 過去に10万件受託

 医療機関から検査業務を受託する最大手の医療検査会社、エスアールエル(東京都新宿区)は24日、白血病の遺伝子検査で不備が見付かったと発表しました。

 実際より治療効果があったことを示す数値が出て、医師の判断に影響を与えた可能性があります。これまでに10万件以上の検査を受託しており、今後影響を調査します。

 エスアールエルによると、不備があったのは患者の骨髄液から遺伝子を調べて白血病の類型を調べる検査工程と、遺伝子の量を測定して抗がん剤の一つである「分子標的薬」の治療効果を確かめる検査工程の2種。測定に用いる試料の作製で不具合があったといいます。

 昨年10月、医療機関から「院内で行った検査との値に開きがある」との指摘があり、調査の結果、今年3月に治療効果の上がった場合に低くなる数値が医療機関の検査の100分の1以下だったことが明らかになり、24日に厚生労働省に報告し、公表しました。本来は別の治療法を検討すべきであるにもかかわらず、そうした検討がなされなかったなど、治療に影響を与えた可能性があります。

 エスアールエルの東俊一社長は記者会見で、「第三者による調査を行っており、全社を挙げて原因究明と対策に取り組む」と述べました。

 検査を始めた2002年以降の10万件以上のデータを検証するとともに、検査工程で起きた不備の原因究明を進めます。患者への連絡は、医療機関と相談しながら対応を今後決めます。

 2017年3月25日(土)

 

■がんの6割、遺伝子の複製ミスが主因 肺がん、胃がんは予防が有効

 肺がんや胃がんは、たばこや食事などの環境要因で起きやすく予防が有効なものの、脳腫瘍や乳がん、前立腺がんなど多くのがんは、細胞分裂の際に誰にでも起きる遺伝子の複製ミスが主な原因だとする研究結果をアメリカのジョンズ・ホプキンズ大学の研究チームが24日、アメリカの科学誌サイエンスに発表しました。

 がん全体でみると、6割が遺伝子の「不運」な複製ミスによるものだといいます。

 研究チームは、「遺伝子の複製ミスは、タイプミスと同じで一定の割合で必ず起きる。がんとの戦いに勝つには、予防だけでなく、早期発見が重要だ」と訴えています。

 がんの原因には大きく分けて、大気汚染、紫外線、喫煙、食事、ウイルス感染といった環境要因、親から受け継いだ遺伝要因、自然に起き、防ぐことの難しい遺伝子の複製ミスの3つに分けられます。研究チームは国際がん研究機関に登録された世界69カ国のがん患者のデータベースやイギリスののデータなどを使って、32種のがんについて3つの原因の寄与度がどの程度になるか調べました。

 この結果、全体ではがんを引き起こす遺伝子変異の66%は複製ミスが原因なのに対し、環境要因は29%、遺伝要因は5%であることが明らかになりました。複数の遺伝子変異がなければがんを発症しないことを考慮すると、環境や生活スタイルを改善することでがんの42%は防げると見積もりました。

 種類別では、肺がん、胃がんは環境要因の寄与する度合いがそれぞれ66%、55%と高いことが明らかになりました。一方、前立腺がんや乳がんは環境要因の割合が低かったのに対し、遺伝子の複製ミスが96%、83%と高くなりました。

 2017年3月25日(土)

 

■ブラジル産鶏肉、364トンが国内に 厚労省が確認

 ブラジルの食肉加工業者が衛生基準を満たさない鶏肉や加工品を販売していた問題で、問題のある21社のうち1社から日本国内に輸入した鶏肉で、在庫として確認できたのは現時点で364トンだったことを24日、厚生労働省が明らかにしました。

 厚労省は全国の検疫所に対し、このぶんの販売見合わせを輸入業者や小売業者に指導するよう求める通知を出しました。

 厚労省によると、ブラジル国内で賞味期限切れなどをごまかし、国内外で販売していたとして、ブラジル当局の強制捜査対象となったのは21社。このうち鶏肉の輸入実績があったのは1社で、2015年度に8900トン、2016年度に8700トンが輸入されています。

 ほかの1社からは、2015年度にはちみつとプロポリス計7・3トンが輸入されていました。

 厚労省は問題のある21社からの輸入手続きを検疫段階でいったん止める「保留」の措置を21日から取り、日本国内に流通しないようにしていますが、「ブラジル当局から食肉加工業者の環境改善が報告されるまで続ける」と説明しています。また、21社以外にブラジルで処理、加工された畜産食品について輸入時の検査を強化することにしました。

 2017年3月24日(金)

 

■匿名で提供の卵子を使った初の子供が誕生 NPOが仲介

 病気などで自分の卵子で妊娠できない女性に対し、第三者からの卵子提供を仲介する神戸市のNPO法人「卵子提供登録支援団体(OD―NET)」は22日、匿名の女性がボランティアで提供した卵子を体外受精させて移植した不妊の女性が1月に出産したと発表しました。

 国内では姉妹や友人が提供した卵子での出産例はありますが、見ず知らずの第三者が匿名で提供した卵子を使った出産が公表されたのは、初めてのことです。

 厚生労働省によると、同省の部会が2003年に第三者の卵子や精子の提供を認める報告書をまとめていますが、法制化はされていないといいます。

 OD―NETは不妊治療専門医やカウンセラー、卵子がない患者の家族らで構成しており、病気などのため卵子はないが出産可能な夫婦に対して、無償で卵子を提供するボランティアの募集を2013年に開始。卵子の提供者は35歳未満で、すでに子供がいることなどを条件としています。

 OD―NETによると、昨年、40歳代の夫の精子と30歳代半ばの女性から提供された卵子を体外受精させて受精卵をつくり、感染症がないことを確認して、若い時期に卵巣の機能が低下する早発閉経で不妊の妻に移植。今年1月に生まれたのは女の子で、母子ともに健康だということです。

 現行の民法では新生児の母親は妊娠・出産した妻となりますが、遺伝子は夫と、卵子を提供した女性から引き継ぐことになります。

 OD―NETの岸本佐智子理事長は、「長年の希望がかない子供が生まれたことがうれしくて涙が出た。その一方で、日本では法律がなく、子供の福祉が守られない可能性があることを危惧している。現実をみて親子関係を明確に定める法律の整備を急いでほしい」と訴えています。

 親子関係の法律に詳しい東洋大学の中村恵教授は、「最近は体外受精の技術が発達し、第三者から提供を受けた卵子で妊娠するなど、出産した人と子供との間に遺伝上のつながりがないという、法律をつくる際には想定していなかった事態が生じている。今は、法律の解釈だけで親子関係が決められているにすぎず、将来的には相続などを巡り、子供が不利益を背負わされる可能性もある」と指摘しています。 

 卵子提供による体外受精では、不妊治療クリニックでつくる「日本生殖補助医療標準化機関(JISART)」が、独自のガイドラインを作成。今年1月末時点でJISARTの倫理委員会の承認数は73件で、37人の新生児が生まれました。JISARTによると、匿名の第三者からの卵子提供で生まれた新生児は、この37人の中に含まれているといいます。

 OD―NETによると、ほかにも別の第三者の女性から卵子の提供を受けた2人が妊娠中で、年内に出産予定といいます。

 2017年3月24日(金)

 

■ノルウェー1位、日本51位、ブータン97位 国連が世界幸福度ランキングを発表

 世界各国の「幸福度」のランキングをまとめた報告書を国連が発表し、ノルウェーが1位となったのを始め、福祉や教育に力を入れている北欧諸国が上位を占めました。日本は51位、ブータンは97位でした。

 国連は毎年、世界各国の幸福度を、1人当たりのGDP(国内総生産)や健康に生きられる年数(健康寿命)、行動や表現の自由、社会の相互支援体制などの指標で数値化し、ランキングをまとめています。

 今年は155カ国・地域を対象に、2014年から2016年の「幸福度」の調査結果を20日の「国際幸福デー」に合わせ、発表しました。

 それによりますと、ノルウェーが昨年の4位から順位を上げて1位となったほか、2位がデンマーク、3位がアイスランド、5位がフィンランド、10位がスウェーデンと、今年も福祉や教育に力を入れている北欧諸国が上位を占めました。

 ノルウェーが「最も幸せな国」となった理由について、国連は「将来への投資を着実に行っていて、政府などの腐敗も少ない」としています。

 一方、武装勢力同士の衝突が続く中央アフリカは最下位、内戦下のシリアは152位など、紛争が絶えないアフリカや中東の国々が下位を占めました。

 GNH(国民総幸福)という指標を導入し、経済成長にとらわれず、国民の幸福度の充実を目指しているブータンは、この調査では97位に低迷しました。国連のランキングは物質的な豊かさに重点が置かれ、ブータンが重視する心の豊かさが反映されにくいためとみらます。

 日本は、「社会の相互支援体制」などの数値が低く、昨年よりも2つ順位を上げたものの51位にとどまり、G7(主要7カ国)では幸福度が最も低くなりました。

 このほか、スイスは4位、オランダは6位、カナダは7位、ニュージーランドは8位、オーストラリアは9位、ドイツは16位、イギリスは19位、フランスは31位、アメリカは1つ順位を下げて14位、シンガポールは26位、タイは32位、台湾は33位などとなりました。

 国の実態が不明な北朝鮮は、対象に含まれませんでした。

 2017年3月23日(木)

 

■自殺したいと考えたことのある成人、4人に1人 厚労省調査で増加傾向が判明

 「本気で自殺したいと考えたことがある」と答えた人が成人の4人に1人の割合だったことが、厚生労働省が3月21日に公表した意識調査で判明しました。過去に実施した2008年と2012年の調査と比べて、最も高い割合となりました。

 調査は今回が3回目。2016年10月に全国の20歳以上の男女3000人を対象に実施し、回収率は67・3%(2019人)でした。

 調査結果によると、成人の23・6%が「本気で自殺したいと考えたことがある」と答えました。2008年の19・1%、2012年の23・4%から増え続けています。

 自殺を考えた経験がある人を男女別でみると、女性が25・6%で、男性の21・4%を上回りました。特に女性の30歳代(32・3%)、50歳代(31・0%)が高い傾向にありました。

 自殺を考えた経験がある人を年齢別にみると、50歳代が30・1%で最多。30歳代が28・7%、40歳代が24・3%と続きました。20歳代は23・0%、60歳代は20・2%と2割を超えました。70歳代は19・1%でした。

 また、自殺を考えた時、どのように乗り越えたかを複数回答で聞いたところ、「趣味や仕事などで気を紛らわせるように努めた」が36・7%で最も多く、次いで「家族や友人、職場の同僚ら身近な人に悩みを聞いてもらった」が32・1%でした。悩みやストレスを感じた時、相談や助けを求めることにためらいを感じる人は46・9%いました。

 今後必要な自殺対策としては、「子供の自殺予防」(59・9%)、「相談窓口の設置」(51・2%)、「職場におけるメンタルヘルス対策の推進」(47・2%)とする回答が多く挙がりました。

 また、児童生徒が自殺予防について学ぶ機会があったほうがよいと思うか聞いたところ、「そう思う」と答えた人の割合は83・1%に上りました。具体的に自殺予防のためどのようなことを学ぶべきか聞いたところ、「周囲の人に助けを求めることが恥ずかしくないこと」が71・2%で最も多く、「ストレスへの対処方法を知ること」が51・4%で続きました。

 一方、自殺防止の対策として自治体が実施している電話相談「こころの健康相談統一ダイヤル」は47・6%、厚労省の補助事業で運営されている電話相談「よりそいホットライン」は71・8%が、「知らない」と回答し、自殺対策の認知度不足が浮き彫りになりました。

 警察庁の自殺統計(速報値)によると2016年の自殺者数は2万1764人で、7年連続で減少しています。政府は今回の調査結果を踏まえ、今夏に新しい自殺総合対策大綱を閣議決定して、対策を強化する方針。

 2017年3月23日(木)

 

■ブラジル、食肉不正販売で輸出禁止 日本など各国に影響

 ブラジルの食肉加工業者が衛生基準を満たしていない食肉などを販売していたとされる問題で、農林水産省と厚生労働省は、ブラジルの捜査当局から捜索を受けた2社からの食肉の輸入手続きを21日から検疫の段階でいったん止める「保留」の措置を取り、日本国内に流通しないようにしています。

 農水省によりますと、ブラジルは日本にとって鶏肉の主な輸入先で2015年度の輸入量は42万6000トンで鶏肉の輸入量全体のおよそ8割を占めています。

 日本では鶏肉の消費量のおよそ3割を輸入に頼っているということで、農水省は「今のところ鶏肉は国内に在庫があるため、直ちに大きな影響が出ることはないとみている。ただ、今後、影響が広がらないかどうかブラジルでの捜査の状況など情報収集を進めていきたい」としています。

 一方、大手商社の三菱商事によりますと、食肉の輸入手続きで「保留」の措置を受けたブラジルの2社のうち、1社と取り引きがあるということです。このため三菱商事は現在、現地からの情報収集を進めるとともに、輸入量や国内の流通に対する影響などについて調査しているとしています。

 ブラジルの捜査当局は今月17日、政府の検査官に賄賂を払って検査を免れ、衛生基準を満たしていない食肉や加工品を国内外で販売していたとして、大手食肉加工業者2社を含む21の食肉加工業者を捜索し、業者の担当者や検査官など合わせて30人以上を拘束して調べています。

 捜査当局は2年前から捜査を進めていたとしていますが、衛生基準を満たしていない食肉などが、どれくらいの期間、どれだけの量で、国内外で販売されていたかなど、詳しい内容は明らかにしていません。

 当局は食肉加工場を閉鎖したり、スーパーの棚から製品を撤去したりしているほか、捜査対象となった21社の食肉や加工品の輸出を一時的に禁止する措置を取っています。

 ブラジルは世界有数の食肉の輸出国で、日本を含む約150カ国と取引しています。

 テメル大統領は各国の大使を呼んで冷静な対応を呼び掛けていますが、中国や南米チリがブラジル産のすべての食肉製品の輸入を一時停止したほか、欧州連合(EU)や韓国は捜査対象の21社からの輸入を停止するなど、影響が広がっています。

 2017年3月22日(水)

 

■高齢者施設での虐待、最多の408件 職員の知識不足やストレスが要因

 厚生労働省は21日、2015年度に特別養護老人ホームなどの介護施設で発覚した職員による高齢者への虐待は408件だったと発表しました。前年度に比べて36・0%増え、過去最多を更新しました。

 家族や親族などによる虐待は前年度に比べて1・5%増の1万5976件で、3年連続の増加。問題意識の高まりで相談・通報件数が増えており、表面化するケースが増えています。

 調査は2006年度に施行した高齢者虐待防止法に基づき、47都道府県と全市区町村が相談や通報を受けて把握した件数をまとめました。

 介護施設の職員による虐待の被害者は、前年度に比べて12・6%多い778人で、1人が死亡しました。職員による虐待で死亡したのは、2006年度分の調査を開始して以来初めて。広島市の認知症グループホームで2015年5月、施設2階の窓から入所者が転落し、職員が救命措置を怠ったとされる事例で、介護放棄と判断されました。

 虐待を受けた高齢者の状況をみると、要介護度3以上が622人と、79・9%を占めました。施設別では、特別養護老人ホームが125件と最多。以前に虐待が起きていたケースも28件ありました。

 虐待の種類別(複数回答)では、暴力や拘束などの「身体的虐待」が最も多く478人(61・4%)。暴言を吐くなどの「心理的虐待」は215人(27・6%)、食事を与えないなどの「介護放棄」は100人(12・9%)でした。

 虐待の要因(複数回答)は、認知症への理解不足といった「教育・知識・介護技術などに関する問題」が246件(65・6%)と最多。「職員のストレスや感情コントロールの問題」が101件(26・9%)で続きました。

 一方、家族や親族などから虐待を受けた被害者は1万6423人で、このうち20人が死亡しました。虐待の要因(複数回答)は、「介護疲れ・介護ストレス」が1320件(25・0%)、「虐待者の障害・疾病」が1217件(23・1%)、「被虐待者の認知症の症状」が852件(16・1%)の順番でした。

 厚労省は、介護を巡る家族間の殺人や心中などを防ぐため、過去数年に起きた死亡事例の分析や検証に乗り出す考えです。

 2017年3月21日(火)

 

■精神科で隔離、2014年度に初の1万人を超す 身体拘束も過去最多

 精神科病院で綿入り帯や衣類などを使用して手足をベッドにくくり付けるなどの身体拘束や、施錠された保護室への隔離を受けた入院患者が2014年度にいずれも過去最多を更新したことが、厚生労働省の集計で明らかになりました。

 隔離は調査が始まった1998年度以来、初めて1万人を突破しました。

 精神保健福祉法では、患者が自らを傷付ける恐れがある場合などに精神保健指定医が必要と判断すると、身体拘束や隔離が認められていますが、人権侵害を懸念する声も上がっています。激しい症状を示す場合がある入院3カ月未満の患者の増加が背景にあるとの指摘もあり、厚労省は定例調査の質問項目を増やして、より詳細な実態把握に努めます。

 2014年度の保護室への隔離は1万94人で、前年度に比べ211人増えました。都道府県別では、東京都が683人と最も多く、大阪府が652人と続きました。

 身体拘束は1万682人で、前年度に比べ453人増えました。最多は北海道の1067人、次いで東京都の1035人でした。調査項目に身体拘束の状況が加わった2003年度以降、増加の一途をたどっています。

 身体拘束を受けた入院患者を形態別にみると、ほとんどが医療保護入院で、2014年度は8977人でした。複数の精神保健指定医が「自傷他害の恐れあり」と判断し、入院を強制された措置入院の患者は232人にとどまります。

 医療保護入院は、自傷他害の恐れはないものの、入院治療が必要と精神保健指定医が判断したのに、本人が同意しない場合に、家族らの同意を得て強制的に実行されます。

 厚労省は毎年度、精神科病院の6月末時点の状況を聞き、2014年度は1599カ所について入院患者数や病床数などを調べました。入院患者全体は減少傾向で、2014年度は29万406人で、前年度に比べ7030人減りました。

 厚労省は今後の調査で、患者の年齢や疾患の内容なども聞いて、身体拘束や隔離が増えている要因を分析したい考えです。

 杏林大学保健学部教授の長谷川利夫さんは、「身体拘束や隔離は患者の人権侵害につながる恐れがあるので、可能な限り減らそうと考えるのが当然だ。しかし、身体を簡単な操作で縛る拘束具の普及もあってか、安易な方向に流れる医療者が増えているように思う。拘束や隔離で治まる症状ばかりではないのに、これを治療と考えているかのような医療者もいる。患者の人権について、もう一度考え直さないといけない」と指摘しています。

 2017年3月20日(月)

 

■血液脳関門通過技術を使ったハンター症候群の治験、3月末から開始へ JCRファーマ

 全身の細胞に不要になった物質がたまり、さまざまな症状が現れる難病「ハンター症候群」で、これまで治療法がなかった知的障害の改善を試みる薬の治験を、製薬会社JCRファーマ(兵庫県芦屋市)が3月末から始めます。

 薬を点滴で投与し、脳の血管の「血液脳関門」を通過させて神経細胞に届ける技術を開発した成果で、今後、アルツハイマー病など他の脳神経疾患の治療薬への応用が期待できます。

 ハンター症候群は、ライソゾーム病の一種であるムコ多糖症という遺伝性難病の一つ。ムコ多糖は細胞同士の接着に使われ、常に合成と酵素による分解が繰り返されています。しかし、このイズロン酸2スルファターゼという酵素が生まれ付きできないか働きが弱いハンター症候群の患者は、不要物が全身の細胞内に蓄積する結果、気管支や心臓の病気、肝臓などの肥大、関節のこわばり、知的障害など全身に症状が出ます。

 多くの患者を診療する国立成育医療研究センター(東京都世田谷区)の奥山虎之・ライソゾーム病センター長によると、ハンター症候群は男児にのみ現れるのが特徴で、国内では年間5~10人が病気を持って生まれ、現在は200人弱の患者がいると推計されます。患者の7割ほどが重度の知的障害を伴っており、4~5歳ごろから障害が進行し、最終的には意思疎通ができなくなります。

 かつては未成年で死亡する患者が多かったものの、現在は必要な酵素を供給する点滴薬のお陰で、体の症状は改善できるようになりました。しかし、脳への有害物質の流入を防ぐため、決まった物質以外は血管の壁を通さない血液脳関門を通過できないため、脳内で薬効を発揮できず、中枢神経症状に効果が期待できないという課題がありました。

 JCRファーマは、決まった物質と一緒に必要な酵素を通過させる技術を適用した酵素製剤を開発。動物実験では効果が確かめられたといいます。マウスでは1カ所だけ足の着く場所があるプールに放って泳がせる実験をした結果、病気を発症させたマウスは足の着く場所を全く覚えられなかったものの、薬を投与すると正常なマウスと同等の記憶・学習能力が回復しました。サルの実験では、投与後に脳内に酵素が届いていることが画像検査で確認されました。

 奥山センター長は、「初期に投薬を始められれば、症状が改善する可能性がある」と話す。

 2017年3月20日(月)

 

■B型肝炎給付金、受給1割未満 特措法5年、被害者の救済に遅れ

 集団予防接種の注射器使い回しによるB型肝炎ウイルス(HBV)感染者のうち、救済目的の特別措置法施行から5年が経過した今年1月末時点で、国との和解手続きを経て給付金の受給資格を得た人は約2万6000人だったことが18日、明らかになりました。

 推計による給付対象者は45万人で、1割にも満たない現状が判明。症状がなく感染に気付かない人が多いほか、和解手続きに時間がかかるケースも増えており、国は検査費助成や担当職員の増員など対応を急ぎます。

 集団予防接種での注射器使い回しは国が禁じた1988年まで40年続けられ、この間にB型肝炎ウイルスへの感染が拡大。被害者による集団訴訟で2011年、国の責任を明記した基本合意書が取り交わされ、2012年1月に救済を目的とする特措法が施行されました。

 給付金は、未発症者も含め症状に応じて50万~3600万円。受給には、被害者が提訴し、母子手帳やカルテによって予防接種との因果関係の認定を受け、和解する手続きが必要。被害者が亡くなっている場合、遺族の提訴も認められます。

 厚生労働省などによると、今年1月時点で提訴した被害者は4万3487人(遺族提訴も含む)で、このうち和解が成立し給付金の受け取りが認められたのは2万6206人。推計による対象者約45万人の6%程度にとどまっています。

 厚労省などは、「症状がないため感染に気付かず、そもそも提訴していない人が多い」と説明。母子手帳やカルテを見付けられず、提訴手続きを取ることができない人もいるといいます。

 一方、提訴したが和解に至っていない人は約1万7000人。B型肝炎訴訟の弁護団によると、提訴者は増加傾向にあり、以前は平均3~5カ月だった和解成立までの期間が、2015年秋以降は1年程度に延びていることも影響しています。

 厚労省は、制度から漏れる被害者がいないよう、ウイルス検査を呼び掛けるホームページの作成や検査費の助成で対応。提訴後の長期化を解消するため、カルテの審査などを担当する職員を4月以降増やす方針です。

 原告側は、2022年1月とされる給付金の請求期限について、全被害者が救済されるまで延長するよう求めています。

 2017年3月19日(日)

 

■性同一性障害、延べ2万2000人が医療機関を受診 日本精神神経学会が調査

 心と体の性が一致しない性同一性障害(GID)で国内の医療機関を受診した人が、2015年末までに延べ約2万2000人に上ったとの調査結果を日本精神神経学会の研究グループがまとめ、札幌市で18日に始まったGID学会総会で公表しました。

 2012年末時点の前回調査と比べ、3年で約5割に当たる7000人増加しました。実際のGID当事者はさらに多いとの見方が強く、受け皿の整備が求められそうです。

 障害への社会の認知が広がり、当事者の意識も変化したことが、増加理由とみられます。GID当事者は国内に数万人いるとされますが、受診者数で改めて裏付けられました。

 専門家は、「児童、生徒や高齢者を中心に、まだ医療機関を受診できていない人もいる」とし、今後も受診者数が増えると指摘しました。

 研究グループの針間克己医師らが、GID当事者が受診しているとみられる各地の26医療機関にアンケートを実施。医師がGIDと診断した人数を集計したところ、2015年末までに延べ2万2435人でした。

 2014年にも同様の調査を行い、2012年末までの受診者数を集計した際は、延べ1万5105人でした。

 今回調査で、体が女性で心は男性の受診者が1万4747人だったのに対し、逆のケースは7688人でした。

 GID学会理事長の中塚幹也・岡山大学大学院教授(生殖医学)は、「障害への理解を深め、いじめや差別などの二次被害をなくすためにも、当事者の数を示すことは重要だ。性別適合手術などの治療に対し保険適用を新たに認めるかどうか議論する際のデータにもなる」と指摘。行政や医療機関の態勢づくりで、議論を促したいと話しました。

 GID当事者数を巡っては、全国で4万6000人いるとの推計を北海道文教大学の池田官司教授(精神医学)らが2013年にまとめています。

 2017年3月19日(日)

 

■トクホ、有効成分量などが変わった際の報告を義務化 消費者庁

 消費者庁は17日、特定保健用食品(トクホ)の表示許可に関する内閣府令を改正し、トクホの健康増進効果にかかわる有効成分について事業者が効果や副作用など新たな知見を得た場合、30日以内に消費者庁へ報告することを義務付けました。

 また、次長通知を改正し、第三者機関による定期的な成分分析と結果報告なども義務化しました。

 消費者庁はこれまで、トクホの有効成分が許可条件どおり販売されているかを把握しておらず、事業者が新たな知見を得た際の報告も、法的に義務化していませんでした。

 昨年9月には、大阪市の通販会社「日本サプリメント」が、トクホの許可条件を満たしていない粉末清涼飲料「ペプチド茶」など8商品を販売していたことが判明。1991年に特定保健用食品制度が発足し、1993年6月に初めて2商品が許可されて以来、消費者庁が初めて許可を取り消しました。

 今後は事業者に対し、年に1回、定期的に第三者機関による成分分析を受けさせ、結果の報告を義務付けるほか、消費者庁が買い上げ調査を実施。トクホの正確な情報発信に努めます。

 トクホの許可数は約1120商品で、うち約360商品が市販されています。

 2017年3月18日(土)

 

■子供の花粉症、3割を超える高水準 口腔アレルギー症候群の併発も

 ロート製薬(大阪市)は、2935人の子供について花粉症の有無を親に聞いたところ、「花粉症だと思う」との回答が31・5%に上ったという調査結果をまとめました。特定の果物や野菜を食べた時に出ることがある口腔アレルギー症候群も併発しやすいとして、対策を呼び掛けています。

 調査は2016年11月にインターネットで実施し、0~16歳の子供2935人の実態について親1872人から回答を得ました。前回調査に続いて、3割を超える高水準でした。

 また、花粉症の症状が出る季節について聞いたところ、春が85・8%、秋が39・0%、冬が12・9%、夏が10・7%との回答が得られました。

 花粉症との関連性が指摘されている口腔アレルギー症候群の症状である「果物を食べて口や唇、喉にかゆみやピリピリ感・イガイガ感を感じたことがある」と答えたのは、子供全体でみると13・5%でしたが、花粉症の実感があるという子供に限ると20・6%に達しました。

 花粉症の実感があるという子供が口腔アレルギー症候群の症状が出た時に食べていたのは、「リンゴ・桃・キウイ」が50・0%、「メロン・スイカ」が38・9%、「その他の果物」が35・8%という結果となりました。

 花粉症に口腔アレルギー症候群を併発しやすいのは、リンゴ・桃・キウイの中に、ハンノキやシラカバなどによる花粉症の原因物質(アレルゲン)と似た物質が含まれ、メロン・スイカの中に、カモガヤやブタクサなどによる花粉症の原因物質と似た物質が含まれているためだといいます。

 ロート製薬は、「子供の症状は気付きにくいので見逃さないことが大事だ」と説明し、「屋外ではマスクを着用させるなど、親による対策が重要だ」としています。

 2017年3月18日(土)

 

■iPS細胞の網膜移植、2年後も経過良好 理研など安全性確認

 iPS細胞(人工多能性幹細胞)から作った目の組織を、世界で初めて患者に移植した2014年9月の臨床研究の手術について、理化学研究所などの研究チームは16日、術後1年間、がん化などの問題はなく、「安全性を確認した」とする論文をアメリカの医学誌ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシンに発表しました。

 手術から2年以上たった現在も、経過は良好といいます。

 手術は、失明の恐れのある難病「滲出型(しんしゅつがた)加齢黄斑変性」を患う兵庫県の70歳代女性に実施。女性の皮膚の細胞から作ったiPS細胞を網膜の組織に変え、病気のため傷付いた網膜の一部を取り出した後、右目に移植しました。拒絶反応や移植組織が異常に増えてがん化するなどの問題はありませんでした。

 女性は術前、注射での治療を繰り返しても視力が低下していました。術後は一度も注射をしていませんが、視力は維持されているといいます。

 2例目の移植は、予定していた患者のiPS細胞に遺伝子変異が見付かり、手術を見送りました。その後理研は、期間やコストが大幅に減らせる他人のiPS細胞から作った細胞を移植する方法に切り替え、神戸市立医療センター中央市民病院、京都大学、大阪大学と新たな臨床研究を進めています。

 2017年3月17日(金)

 

■おたふく風邪、全国的な流行の兆し 2シーズン連続の流行入りの恐れ

 流行性耳下腺炎、いわゆる、おたふく風邪の患者が増えており、国立感染症研究所は「全国的な流行の兆しがある」として、手洗いやうがいの徹底に加えワクチン接種を検討するよう促しています。

 昨シーズンの全国的な流行はいまだ収束しておらず、2シーズン連続での流行入りを迎えそうです。

 おたふく風邪は子供を中心に流行するムンプスウイルスによる急性ウイルス感染症で、2〜3週間の潜伏期間後、発熱や耳の下のはれなどを引き起こし、物をかむ時にあごが痛むことが多いのが特徴ですが、無菌性髄膜炎や脳炎などを伴ったりすることがあるほか、1000人に1人ほどの割合で難聴になるとする報告もあります。

 国立感染症研究所の発表によりますと、2月20日から26日までの1週間に全国およそ3000の小児科の定点医療機関から報告された患者数は、1979人となっています。流行していない年の同時期と比べて、2倍ほどの多さで推移しています。昨年夏の最も多い時期は、4128人に上りました。

 発熱には鎮痛解熱剤の投与を行うなど、治療は基本的に対症療法で、ワクチンの接種が有効な予防方法とされています。

 おたふく風邪は4年から5年の周期で大きな流行を繰り返す傾向にあり、春先から夏にかけて比較的多く発生します。ワクチンが定期接種から任意接種に変わった1993年以降、全国およそ3000の小児科の定点医療機関から報告された患者数が最も多かったのは、2001年の25万人余りで、2016年は15万9000人ほどとなっています。

 2017年3月17日(金)

 

■正露丸、半世紀ぶりの新タイプ製品 カプセル化でにおい抑制

 大幸薬品(大阪市)は15日、ラッパのマークで知られる胃腸薬「正露丸」のカプセル型の新製品を4月3日に発売すると発表しました。

 正露丸の新タイプ製品の投入は1966年以来、約半世紀ぶり。従来の丸剤や錠剤などに比べ、飲みやすく、成分が素早く溶け出すのが特長。若者など新たな顧客層の獲得を目指し、縮む市場の活性化をねらいます。

 新製品は「正露丸クイックC」。1箱16個入りで希望小売価格は税込み1080円。1回の用量は11歳以上が2カプセル、5歳以上11歳未満が1カプセル。

 ブナやマツなどの樹木から得られる主成分「木(もく)クレオソート」を液体のままカプセルに閉じ込めることで、独特のにおいを抑え、胃に溶ける時間を錠剤の正露丸の45分から6分に縮めたといいます。

 柴田高社長は東京都内で開いた発表会で、「新商品で正露丸全体の浸透を進めたい」と強調しました。

 大幸薬品によると、正露丸は1902年に大阪の薬商人が免許を得たのが始まりで、大幸薬品が1946年に製造販売権を取得しました。

 2017年3月15日(水)

 

■血液がん治療薬、海外の死亡例4573件を報告せず 厚労省が業務改善命令

 アメリカ系のバイオ医薬品会社のセルジーン(東京都千代田区)が販売する血液がん治療薬について、海外で起きた原因不明の死亡事例4573件を副作用として報告しなかったとして、厚生労働省は14日、医薬品医療機器法(副作用報告義務違反)に基づく業務改善命令を出しました。

 厚労省によると、報告漏れがあったのはセルジーンの血液がん治療薬「レナリドミド」「ポマリドミド」「デキサメタゾン」の3種で、日本国内の利用者は約2万5000人。

 国内で販売された2010年以降、2015年までに把握した死亡原因が特定できないアメリカなど海外での死亡事例について、副作用として国に報告しませんでした。

 「原因が特定できない死亡例は報告対象でないと思っていた」とセルジーンは説明したといいますが、医薬品医療機器法では、死亡事例は15日以内に報告することと定めています。

 2015年12月に他社から移ってきた安全対策部門の社員が指摘し、社内調査を行った上、2016年9月に厚労省に報告。厚労省は、報告漏れの事例を「基本的にがんの進行による死亡」とみており、現時点で製品の回収などは必要ないとしています。

 厚労省はセルジーンに対し、副作用の報告が適切になされる社内体制を構築し、法令の理解を深めるよう社内教育の徹底を指示し、1カ月以内に再発防止策を提出するよう命じました。

 セルジーンは、「業務改善命令を厳粛に受け止め、心よりおわび申し上げます」とのコメントを出しました。

 2017年3月14日(火)

 

■中国からの渡航者が持ち込みの生肉、鳥インフル検出 家禽に感染する恐れも

 中国からの渡航者が許可なく持ち込もうとして空港で見付かったニワトリやアヒルの生肉から、高病原性鳥インフルエンザウイルスが検出されていたことが13日、農林水産省動物検疫所(横浜市)の調査で明らかになりました。

 人に感染する可能性は低いものの、野鳥などを介してニワトリなどの家禽(かきん)に感染する恐れがあります。検疫で没収される畜産物は全体の一部とみられ、専門家は対策強化の必要性を訴えています。

 調査は世界的に鳥インフルエンザの流行が近年続いていることから、動物検疫所と北海道大学が共同で初めて実施。2015年6月~今年2月に羽田空港など全国9カ所の空港や港で渡航者の荷物から没収されたニワトリやアヒルの肉や卵など228検体を調べました。その結果、中国の上海、アモイ、香港から成田、中部の各空港に持ち込まれたニワトリとアヒルの生肉3点から、高病原性鳥インフルエンザのH5N1亜型とH5N6亜型のウイルスが見付かりました。両ウイルスは中国などで人への感染が確認され死者も出ていますが、死んだニワトリなどに濃厚接触したことが原因とみられています。

 また、中国や台湾、ベトナムから成田、羽田、関西、中部の4空港に持ち込まれたニワトリやアヒルの生肉9点からも、低病原性のウイルスが検出されました。

 検出されたH5N6とH5N1のウイルスをニワトリとアヒルに感染させると、約9割のニワトリが3日目までに死亡。死んだニワトリの血液を調べると、全身でウイルスが増殖しており、強毒性と確かめられました。遺伝子解析により、中国で流行するウイルスと近縁であることが判明しました。

 海外からの肉類の持ち込みは家畜伝染病予防法に基づき、検査証明書がない限り認められていませんが、日本で生活する人がルールを知らず帰省した際に本国から持ち帰ったり、土産で持ち込まれたりすることがあるといいます。加えて日本は現在、中国やベトナム、台湾など鳥インフルエンザの発生が報告される国・地域からの家禽の肉、卵などの輸入を停止中。

 大槻公一・京都産業大学鳥インフルエンザ研究センター長によると、国内で流行する鳥インフルエンザは渡り鳥によって運ばれると考えられており、「携行品で持ち込まれる可能性は想定されていない」と指摘。持ち込まれた肉が屋外に捨てられ、野鳥が触れたり、生肉に触れた人が農場や動物園に行ったりして感染が広がる恐れがあるといいます。

 一方、海外から渡航者は急増しており、検疫所で没収された畜産物は、中国からを中心に2015年は約6万2700件(約83トン)に上り、2011年と比べほぼ倍増。

 調査に当たった北海道大学の迫田義博教授(ウイルス学)は、「すべてを検疫で見付けるのは難しく、今回見付かったのは氷山の一角とみられる。季節に限らず常に持ち込まれているという前提で、防疫対策を進める必要がある」とし、「東京五輪に向けて訪日客が増えることが予想されており、水際対策は重要性を増している。厳しい手荷物検査や探知犬の拡充など検疫を徹底すべきだ」と話しています。

 2017年3月13日(月)

 

■ファイザー、アナフィラキシー治療剤を自主回収 注射針が出ない恐れ

 食物、薬剤、蜂の毒などによる急性アレルギー症状(アナフィラキシー)の治療剤「エピペン」の一部製品に不具合があったとして、製薬大手ファイザー(東京都渋谷区)は13日、自主回収すると発表しました。

 エピペンは患者や家族などが自己注射してショック症状を和らげる治療剤で、太ももに押し当てると内蔵された針が出てくる仕組みですが、海外で針が出ずに正常に接種できなかった例が2件報告されたといいます。

 自主回収するのは、エピペン注射液0・3ミリグラムのうち製造番号が「PS00019A」となっているもので、使用期限は今年4月末。アメリカで製造されて世界で8万1694本販売され、日本においては昨年1月28日~3月24日までに5974本が出荷されました。

 これまでに不具合の報告は、日本ではありません。

 回収対象製品を持っている人は、処方された医療機関や薬局で代替製品と交換できます。問い合わせは、ファイザーのエピペン回収特設窓口0120・665・766。受付時間は平日午前9時〜午後5時30分。

 2017年3月13日(月)

 

■iPS細胞、難病の8割をカバー 京大がパーキンソン病など231種類を作製

 京都大学iPS細胞研究所は、国が指定する306種類の難病の約8割に当たる231種類の難病について、iPS細胞(人工多能性幹細胞)を作製したことを明らかにしました。

 それぞれの難病の遺伝情報を持つ患者の血液などを用いて、2012年度から約5年かけて作製しました。研究機関に提供し、難病の原因解明や薬の開発に役立ててもらいます。

 作製したのは、パーキンソン病やALS(筋委縮性側索硬化症)、腸に潰瘍(かいよう)や炎症が起きるクローン病などのiPS細胞。

 患者が少ない難病は、薬の利益が見込めず、製薬企業が新薬開発を行いにくいのが実情です。難病患者のiPS細胞を使えば、試験管内で病気を再現でき、薬の候補物質を試す研究が進むと期待されます。

 難病のiPS細胞は、理化学研究所バイオリソースセンター(茨城県つくば市)の細胞バンクに保存し、大学や製薬企業に順次提供します。欧米でも同様の取り組みはありますが、保存する難病の細胞の種類としては最多といいます。

 京大iPS細胞研究所の大沢光次郎・特定助教(幹細胞生物学)は、「多くの難病のiPS細胞を作製できたが、活用されなければ意味がない。原因解明などの研究に積極的に使ってほしい」と話しています。

 仙台市で開催された日本再生医療学会で8日、発表しました。

 2017年3月12日(日)

 

■美容医療の誇大表現を禁止、医療法改正案を閣議決定 特定機能病院の安全強化も盛り込む

 政府は10日、医療法などの改正案を閣議決定しました。脱毛や脂肪吸引などの美容医療を巡るトラブルが続出する状況を踏まえ、医療機関のホームページでの虚偽や誇大な表現を規制します。また、重大な医療事故を受けて、特定機能病院の医療安全体制を強化することも盛り込みました。今国会での成立を目指します。

 現行の医療法は、医師名、診療科名、提供する医療の内容などを除いて広告を禁止しています。しかし、医療機関のホームページに関しては、「利用者が自ら検索して閲覧するため広告には当たらない」として規制の対象外となっています。

 改正案は医療機関のホームページについても、虚偽や誇大な表現を禁止します。施術効果の誇張や、「絶対安全な手術を提供」「著名人も推薦する医師」などの表現が規制の対象になります。違反した場合は、6月以下の懲役か30万円以下の罰金が科されることになります。

 改正案には、東京女子医科大学病院や群馬大学病院で患者が亡くなる重大な医療事故が起きたことを踏まえ、高度な医療を提供する特定機能病院の安全管理体制を強化することも盛り込みました。

 群馬大学病院では、2014年11月に肝臓の腹腔(ふくくう)鏡手術を受けた患者8人の死亡が発覚したのを切っ掛けに、日本外科学会が手術後死亡の50例について検証を行い、多くの不備を指摘。第三者調査委員会が昨年7月、報告書を発表し、人材不足の中で二つの外科が手術数を増やし続け、患者の安全を置き去りにした組織管理の問題を指摘していました。

 改正案では、特定機能病院の要件に、高度な医療安全を確保する能力を新たに加え、医療安全に関する監査委員会の設置を義務付けます。群馬大学病院問題の後、厚生労働省は省令を改正し、問題があるケースを分析し、再発防止につなげる仕組みを整えることが必要としていましたが、法律で明文化し徹底を図ります。

 トップの病院長の組織管理における権限も明確化するよう求め、外部から見えにくいと指摘がある病院長の選考については、外部有識者を含む委員会で厳正に候補者の審査を行うよう定め、医療安全に指導力を発揮する人材が適切に選ばれる体制作りを進めます。

 このほか、個人に合った最適な医療を提供する「ゲノム医療」の実用化に向け、遺伝子関連検査の精度を確保するための規定も盛り込みました。 

 2017年3月12日(日)

 

■厚労省、小じわ取り機の輸入業者を告発 全国で9件のやけど被害

 高周波で顔の小じわを取り、たるみをなくす国内未承認の美容医療機器「サーマクール」を不正に輸入・販売したとして、厚生労働省は10日、大阪市住之江区の輸入代行業者「セイルインターナショナル」を医薬品医療機器法違反(未承認医療機器販売)などの疑いで、大阪府警に刑事告発しました。

 厚労省の発表によると、セイルインターナショナルは2015年9月〜2017年1月、医師や患者本人が未承認機器を個人輸入できる制度を悪用。医師から以前に取得した医師免許証のコピーを本人に無断で、厚労省の出先機関である近畿厚生局に提出して通関用の証明書をだまし取り、サーマクールをアメリカから輸入して全国の美容クリニックに販売しました。さらに、サーマクール本体とともに、安全のために設定された使用回数制限を解除できる不正機器も販売した疑いがあります。

 サーマクールは棒状の先端部分を顔に当て、電磁波による刺激でコラーゲンを増やして肌を活性化させる美容機器で、輸入価格は約890万円。不正機器により回数制限が解除されたため、皮膚に直接当てる先端部分が劣化し、施術を受けた患者にやけど被害が出る事例が確認されていました。

 今年1月、情報提供を受けた厚労省がセイルインターナショナルの立ち入り調査を実施。全国から9件のやけど被害の情報が寄せられ、不正機器は全国123の美容クリニックへ販売していたことが判明しました。不正販売したサーマクールの台数は不明。

 厚労省の立ち入り調査に対し、セイルインターナショナルの社長は「法律に不勉強だった」と弁明したといいます。

 厚生労働省は2月16日、「違法に改造され、その使用でやけどの健康被害が出ている」として、不正機器の使用を直ちに中止するよう医療機関に呼び掛けることを都道府県などに通知していました。

 2017年3月12日(日)

 

■「5年生存率50%超」を7割知らず 内閣府ががん対策に関する世論調査

 がんと診断されてから5年後に生存している患者の割合を示す「5年生存率」が50%を超えていることについて、7割強の人が知らないことが、内閣府の世論調査で明らかになりました。調査では、約2人に1人が将来がんにかかる恐れがあることについて、7割近くの人が認識していないとの結果も示され、がんに対する理解が十分に広まっていない実情が浮き彫りとなりました。

 内閣府は昨年11月17日から27日にかけて、全国の18歳以上の男女3000人を対象に「がん対策に関する世論調査」を実施。面接調査により、1815人から有効回答を得ました。

 調査では、がんに関する質問の中から、知っていることを複数挙げてもらいました。がん治療の種類や、たばこの有害性、若い世代でもがんが増えているなどの知識がある人は、60%を超えていました。しかし、「がん全体の5年生存率は50%を超えている」ことについては、「知っている」と回答した人の割合は29・5%にとどまり、がんは短命とのイメージが根強いことを示しました。

 年代別にみると、知っている人の割合が最も高いのは60歳代で39・3%。最も少ないのは18~29歳の15・3%で、30歳代は21・4%、40歳代は20・8%でした。

 実情は、国立がん研究センターが2006~2008年にがんと診断された約64万人のデータを分析した結果によると、がん以外の死亡の影響を除いた5年生存率は62・1%。今後は、さらに改善が見込まれています。

 また、「日本では約3人に1人が、がんで死亡している」ことについては、43・4%が認識していました。さらに、「日本で約2人に1人が、将来がんにかかると推測されている」ことに関して、認識している人の割合は31・3%。これも年代別に差があり、60歳代の認知度が40・3%と最も高く、50歳代の34・2%、70歳以上の32・3%が続きますが、18~29歳は20・8%、30歳代は21・9%と、若い世代の認知度の低さが目立ちました。

 がんと診断された場合、治療を受ける病院を選ぶ際に重視する点を複数挙げてもらったところ、「専門的な治療を提供する機器や施設の有無」(60・2%)が最多でした。次いで、「医師や看護師の技術の優秀さ」(56・7%)、「自宅からの距離」(50・5%)、「受診にかかる経済的負担」(32・3%)などと続きました。

 調査では、がん診療連携拠点病院などにある「がん相談支援センター」で聞きたいことも複数回答で挙げてもらいました。その結果、最も多かったのは「治療費・保険など経済面について」(75・4%)で、「がんの治療内容に関する一般的な情報」(74・4%)がこれに次ぎ、「他の専門的な医療機関の情報」(40・2%)、「退院後の生活など療養上の注意点」(39・5%)といった答えもありました。

 2017年3月12日(日)

 

■目の手術に使える人工硝子体を開発、網膜治療での負担を軽減 東京大と筑波大の研究チーム

 東京大学と筑波大学の共同研究チームは、眼球の中を満たす「硝子体」に代わる人工組織を世界で初めて開発したと発表しました。

 この人工硝子体を使えば、網膜の手術後1週間程度は下を向いて過ごさなければいけない不便を解消できるといいます。ウサギで有効性を確かめており、2、3年後には人で治験を始めたいとしています。

 東京大の酒井崇匡(たかまさ)准教授(高分子科学)らが9日付で、イギリスの科学誌「ネイチャー・バイオメディカル・エンジニアリング」(電子版)に発表しました。

 硝子体は眼球の内容の大部分を占めるゼリー状の透明な組織で、眼球の丸みのある形を保ち、外力に抵抗する働きがあります。国内で年間約10万人が受けていると推計される網膜の手術では、硝子体を取り除き、最後に代わりのガスかシリコンオイルなどを眼球内に入れて患部を固定します。

 これらは、後に眼球内に染み出てくる水分より軽いため、目を正面に向けていると眼球上部に集まり、奥にある網膜の最も重要な部分である黄斑(おうはん)を確実に固定することができません。このため、患部が安定するまでの約1週間は黄斑にガスやオイルがきちんと当たるよう、うつむいて過ごす必要があります。オイルを入れた場合は後日、抜き取る手術も必要です。

 人工硝子体はゼリー状の特殊な有機化合物で99・5%は水分。眼球に染み出てくる水分となじみ、むらができないため下を向いている必要がありません。自然に分解されて体外に排出されるため、除去手術も不要です。

 筑波大の岡本史樹(ふみき)講師(眼科学)は、「無害で副作用はない。ウサギの眼球に1年間入れておいたが、視神経など周辺組織に異常はなかった」と話しています。

 2017年3月11日(土)

 

■中国、正常な受精卵で世界初のゲノム編集 遺伝子異常の修復に成功

 生命の設計図に当たる遺伝子を自由に改変できる「ゲノム編集」の技術を人の正常な受精卵に対して使い、血液の遺伝病を引き起こす原因となる遺伝子の修復に成功したと、中国・北京放射医学研究所などの研究チームが9日までに国際科学誌に発表しました。

 人の受精卵のゲノムを編集することは、影響が子孫へと受け継がれるため倫理的に否定的な意見が強くあります。2015年4月に中国の別の研究チームが、染色体数に異常があり人にならない受精卵で実施しましたが、実際に人として誕生し得る正常な受精卵では世界初とみられ、議論を呼びそうです。受精卵は解析に使い、子宮には戻していません。

 研究チームは、不妊治療で不要となった卵子に精子を注入して授精させ6個の受精卵を作製。精子は血液の遺伝病を患う男性患者から提供されたもので、いずれも精子に病気の原因となる遺伝子がありました。受精卵に対して、ゲノム編集で最も普及している「CRISPRーCas9」(クリスパー・キャス9)という技術を使い、2日間培養したところ、3個で原因となる遺伝子が修復できていました。

 研究チームは実験のねらいを、正常な受精卵でのゲノム編集の成功率を調べることと説明。染色体数に異常がある受精卵では、ねらいどおりに遺伝子を修復できたのは10個に1個程度だったため、「正常な受精卵のほうが改変の成功率が高いようだ」としています。

 遺伝子の間違った箇所を変えてしまうミスも確認されませんでした。ただ、3個の受精卵のうち2個は、細胞分裂を繰り返した後に修復できた細胞と、修復できていない細胞がモザイク状に混在するという問題が見付かりました。

 ゲノム編集の問題に詳しい北海道大学の石井哲也教授は、「今回の研究では、これまでの例より正確に、遺伝子の異常を修復できたとしていて、ゲノム編集による遺伝子治療が現実に可能になりつつあることを示している。この技術が乱用されないよう日本でも法整備や社会的な議論を急ぐ必要がある」と話しています。

 ゲノム編集は、生物の姿や形、特性などを決めるゲノム(全遺伝情報)を人為的に改変する技術。ゲノムはDNA(デオキシリボ核酸)で構成され、生命活動に必要なタンパク質を作る情報はDNA内の遺伝子が持っています。特殊な物質を使ってDNAの一部を切り取ったり、その部分に新たなDNAを組み込んだりすることで、遺伝子の働きを改変させます。従来の技術より効率よく遺伝子を組み換えられ、低コストで時間も短縮できます。

 2017年3月11日(土)

 

■新タイプの補助人工心臓で心不全患者を治療へ 大阪大、3月中にも実施

 重い糖尿病を患うために心臓移植を受けられない心不全患者に、耳の後ろから電気ケーブルを出すタイプの補助人工心臓を埋め込む治療を、国内で初めて3月中にも実施すると、大阪大学の澤芳樹教授(心臓血管外科)の研究チームが10日までに発表しました。

 補助人工心臓は小型の血流ポンプを心臓に装着し、耳の後ろから出したケーブルを通して体外の装置から電気を送ってポンプを動かすなどして、心臓の働きを助けます。

 ケーブルを腹部から出す従来のものより感染症のリスクが低く、風呂やプールに入りやすくなるなど生活の質も向上するといいます。

 研究チームによると、この治療法は海外では実施されていますが、国内では未承認。昨年始まった患者申し出療養制度の2例目で、保険診療との併用が認められます。

 研究チームは3月にも、重い糖尿病を患う30歳代の男性に手術する予定。さらに5人に実施する計画で、今後、保険適用を目指します。

 研究チームの堂前圭太郎医師は、「心臓移植を受けられない患者にとって人工心臓を入れた後の感染症リスクを抑えることは重要」と話しました。

 2017年3月10日(金)

 

■認知症疑いの高齢運転者、医師の診断へ手引き 日本医師会が公表

 日本医師会は8日、認知症の疑いがある高齢者が運転免許を更新する際に、一般の医師が診断書を作成するための手引きをホームページで公表しました。

 運転免許証の更新で、認知症の疑いがある75歳以上の高齢者に医師の診断が義務付けられる改正道路交通法が12日に施行され、専門医でなくても診断書を書く機会が増えると予想されるため、具体的な診断書の書き方を例示したほか、運転をやめた高齢者への心のケアなど、かかりつけ医が果たす役割を盛り込んでいます。

 改正道交法では、75歳以上のドライバーに対して、3年に1度の運転免許証の更新時に加え、信号無視など18項目の違反をした際に、認知機能検査を実施。「認知症の疑いがある」と判定された高齢者には医師の受診を義務付け、かかりつけ医がいない場合は都道府県公安委員会が医療機関を紹介します。

 2015年に約4000人だった受診者は、年間約5万人に拡大するとみられています。日本医師会によると、「認知症の疑いがある」と判定された高齢者の受診は保険診療の対象になり、診断書の発行は自費になります。

 手引きは、定期的に受診している患者とそうではない患者に分け、診断の流れや診断書の記載方法を示しました。少なくとも1年以上定期的に診察した患者で、心身の状態や生活状況を家族からも含めよく把握できていれば、認知機能検査をした上で診断書を書きますが、診断が難しい場合は専門の医療機関の受診を勧めます。初めての患者で、家族らから全く情報が得られない場合も専門医療機関の受診を勧めます。

 明らかに認知症が進み、車の運転に危険が予想される場合には、運転の断念を説得することも求めました。認知症ではないと診断した高齢者が後で事故を起こして認知症だったとわかった場合については、「通常、医師の刑事責任が問われることはない」としています。

 かかりつけ医が果たす役割としては、車の運転の中止による本人や家族の状態の変化への注意、運転をやめた高齢者への心のケア、代替の交通手段や生きがいを一緒に考える大切さなどを挙げています。本人が納得して運転をやめるためには本人・家族や周囲との協議が大切で、「信頼関係ができているかかりつけ医からの説明は大きな役割を果たす」と指摘しています。

 日本医師会の松原謙二副会長は、「かかりつけ医が本人や家族とよく相談して、自主返納に導く方法もある。車がないと生活できない地域もあり、免許を失った人を支援していくことも重要な役割だ」と話しています。

 手引きは日本医師会のウェブサイトは(http://www.med.or.jp)の「医師のみなさまへ」に掲載されています。

 2017年3月10日(金)

 

■目の症状を改善するサプリに根拠なし 消費者庁、販売会社に再発防止命令

 消費者庁は9日、「クリアでスッキリ」など目の症状が改善されるかのように宣伝していたサプリメントの販売業者に対し、景品表示法違反で措置命令を出しました。

 消費者庁によると、長野県安曇野市の健康食品販売会社「だいにち堂」は昨年6月27~30日、「アスタキサンチン アイ&アイ」という粒状のサプリに関して全国紙に新聞広告を出し、合理的な根拠が示されないにもかかわらず、1日1粒を目安にサプリを飲むだけで「ぼんやり・濁った感じ」の目の症状が「クリアでスッキリ」と改善され、「新聞・読書が楽しめる」ようになるかのような表示したということです。

 消費者庁は、この表示が実際よりも著しく優良であるかのように示す「優良誤認」に当たるとし、景品表示法違反でだいにち堂に対し、再発防止策などを求める措置命令を出しました。

 だいにち堂は消費者庁の調査に対し、目の症状の改善に効果がある根拠を示す資料を提出しませんでした。1袋31粒入りで通常価格は2160円、初めての購入者には1袋1000円で販売していたといいます。

 一方、だいにち堂は、「広告の表現は社会通念を逸脱したものではなく、誤認表示には該当しない」「法的に対処することを検討している」などと反論しています。

 2017年3月10日(金)

 

■20~40歳代は運動不足、週1回以上は3割台 スポーツ庁が調査結果を発表

 20~40歳代は運動不足で、週1回以上運動、スポーツをする人の割合は3割台。そんな実態が、スポーツ庁がこのほど発表した2016年度の「スポーツの実施状況等に関する世論調査」から明らかになりました。

 スポーツ庁は2021年度末までに週1回以上運動、スポーツをする成人を65%、週3回以上を30%まで増やすことを目指しており、運動に関心がない層への働き掛けにも力を入れていくといいます。

 調査はインターネットを通じて、2万人を対象に実施しました。「週1回以上運動、スポーツをする」と答えた成人は42・5%。年代別では70歳代の65・7%が最も多く、最も少なかったのは40歳代の31・6%でした。30歳代は32・5%、20歳代は34・5%でした。

 「週3回以上運動、スポーツをする」と答えた成人は19・7%。実施した運動、スポーツは散歩を含む「ウオーキング」がトップで、「体操」「トレーニング」が続いています。運動、スポーツに取り組む理由は「健康のため」が77・4%でトップで、「体力増進・維持のため」が53・0%、「楽しみ、気晴らしとして」が45・1%で続いています。

 また、全体の67・0%が「運動不足を感じる」、現在の実施頻度に対しては46・6%の人が「もっとやりたい」と答えました。

 「1年前より運動する頻度が減った、またはこれ以上増やせない理由」を尋ねたところ、「仕事や家事が忙しい」が32・8%でトップ。特に働き盛りの世代では忙しさがネックになっていることがうかがわれます。「職場を拠点として運動を習慣化する取り組みがあれば今より頻度が増えるか」を尋ねたところ、43・9%が「増えると思う」と答えました。

 一方で、「1年間運動、スポーツをしておらず、今後もするつもりがない」人は27・2%。理由は多い順に、「面倒くさい」「忙しい」「運動が嫌い」でした。

 スポーツ庁は新年度、スポーツ無関心層とやりたくても忙しくてできない人のために、通勤時間や仕事の休憩時間を活用した運動の習慣づくりなどを目指す官民連携プロジェクトを設け、9000万円の予算をつけました。

 調査ではスポーツ観戦についても尋ねました。この1年間で、現地で直接観戦した人は24・7%。半数近くはプロ野球を観戦し、2番目に多いサッカーのJリーグの2倍以上でした。テレビなどによる観戦はプロ野球、高校野球、サッカー日本代表、マラソン・駅伝、フィギュアスケートの順に多くなりました。

 2017年3月9日(木)

 

■抗生物質の投与、風邪や下痢には控えることを推奨 厚労省が医療機関向けのマニュアル

 厚生労働省の有識者委員会は6日、軽い風邪や下痢の患者に対する抗生物質(抗菌薬)の投与を控えるよう呼び掛ける医療機関向けのマニュアルをまとめました。

 抗生物質を使いすぎると薬剤耐性菌が増え、治療に有効な抗生物質が将来なくなる事態が懸念されているため。早ければ今月中にも、日本医師会などを通じて全国の医療機関にマニュアルを配ります。

 薬剤耐性菌は、抗生物質を服用した人や動物の体内で増えていく薬への耐性を得た細菌で、対策を取らずに流行した場合、2050年には世界で年間およそ1000万人が死亡すると、イギリスの研究機関が推計しています。

 マニュアルでは、外来の患者を受け持つ医療従事者を対象に、日常的に診察する主な病気の治療法を解説。また、風邪や下痢の症状がみられる「急性気道感染症」や「急性下痢症」の患者への対応を想定し、抗生物質が必要ないと判断した場合は、使用を控えるほか、抗生物質の処方を求める患者や家族に対して理解を求めるなど、具体的な対応の手順を示しています。

 一般的な風邪の症状がみられる急性気道感染症は、原因となるウイルスに抗生物質が効かないことから、「投与を行わないことを推奨する」としました。医師が患者に説明する際には、「抗生物質は効かない」と告げた上で、症状が悪化する場合は再受診するよう指示しておくことが重要だとしています。

 一方、ふだんより排便回数が1日3回以上増える急性下痢症は、ウイルス性、細菌性にかかわらず自然とよくなることが多いため、安易に抗生物質を使わないよう呼び掛けています。

 厚労省は、「国際的な取り組みが急務になっているので、医療機関には抗生物質の適切な使用を徹底するよう求めていきたい」と話しています。

 抗生物質が効きにくい薬剤耐性菌は、不適切な薬の使用などを背景に広がり、世界的に深刻な問題となっています。イギリス政府からの委託を受け調査を行ったシンクタンクなどによりますと、世界全体では2013年現在、年間で推計70万人が薬剤耐性菌が原因で死亡しているということです。また、このまま何も手を打たなければ、死者は2050年までに世界全体で年間推計1000万人に上り、現在のがんによる死者数を上回ると警鐘を鳴らしています。

 2017年3月7日(火)

 

■iPS細胞移植で血糖値低下、糖尿病のサルで成功 東大など5年後の臨床目指す

 糖尿病治療のため、iPS細胞(人工多能性幹細胞)から作製した膵島(すいとう)をサルに移植し、血糖値を下げることに成功したとする研究成果を東京大学などがまとめました。

 5年後に患者に移植する臨床研究を始めることを目指しており、7日に仙台市で始まった日本再生医療学会で発表しました。

 膵島は、膵臓にある細胞の集まりで、血糖値を下げるインスリンを分泌します。宮島篤・東大教授(分子細胞生物学)らは、人のiPS細胞から作製した膵島数万個を極細のチューブに封入し、糖尿病のマーモセットという小型のサル3匹の腹部に移植。数日後に血糖値が正常値に下がり、20日後まで持続したことを確認しました。また、マーモセットの血液中からは、人に由来するインスリンも確認できました。

 糖尿病治療では、脳死した人からの膵島移植が行われていますが、提供者が不足しています。iPS細胞を使えば、人工の膵島を大量に作れる可能性があり、うまくインスリンが分泌されない1型糖尿病の治療法につながる可能性もあるといいます。

 宮島教授は、「必要がなくなれば後から取り除くこともできる。細胞を入れる方法や培養にかかる費用など課題もあるが、効果が持続する期間などをさらに調べていきたい」と話しています。

 京都大学iPS細胞研究所の長船健二教授は、「人間に近い霊長類で治療効果がみられたのは意義がある。実用化に向け、長期間の効果の検証や製造コストの低減が必要だ」としています。

 また、大阪大学の水口裕之教授(分子生物学)らのチームは、人のiPS細胞から作製した肝細胞を移植し、肝障害を起こしたマウスの症状を改善することに成功したとする研究成果をまとめ、日本再生医療学会で発表しました。肝硬変などの肝臓病の再生医療への応用が期待できます。

 2017年3月7日(火)

 

■法律違反の再生医療に注意呼び掛け 日本再生医療学会が非難声明

 日本再生医療学会は6日、アンチエイジングなどをうたい、法律に基づく安全性の確認を経ずに再生医療を施す民間クリニックがあるとして、「極めて遺憾で断固容認しない」とする声明を発表し、患者に注意を呼び掛けました。

 声明では「触法行為や不誠実な医療の排除には、国民の厳しい視線が欠かせない」として、細胞の移植などの治療法を勧められた場合は、法律に基づいた対応をしているか、日本再生医療学会の認定医であるかを医師に確認し、治療を慎重に検討するよう呼び掛けています。

 2014年11月に施行された「再生医療安全性確保法」では、細胞や組織を移植する再生医療を実施する医療機関に対して、国への治療計画の提出を義務付け、細胞加工施設の要件などを定めました。

 しかし、昨年10月、法律で定められた安全確保のための構造上の基準を満たさない無許可施設で患者からの細胞を加工し、治療を行ったなどとして、厚生労働省は東京都港区で、がん免疫療法を提供している「アクティクリニック」と、運営する「医療法人社団慈涌会」に再生医療の一時停止と細胞製造の停止を命じました。

 また、今年2月には、法律で義務付けられた計画書を提出して安全性の確認を受けないまま、美容や健康増進などに効果があると宣伝し、男女8人に1回ずつ他人の臍帯(さいたい)血幹細胞を使った再生医療を行っていたとして、厚労省は埼玉県所沢市の「埼玉メディカルクリニック」に治療の一時停止を命じました。

 2017年3月7日(火)

 

■ピロリ菌の自治体検診と除菌治療、中高生にも拡大 将来的な胃がんを予防

 将来の胃がん予防のため、中高生を対象にピロリ菌の検診、除菌治療に乗り出す自治体が出てきました。専門家は除菌治療が胃がん予防につながる意義を強調しつつ、除菌治療に伴う副作用への対処を始め、より安全な実施方法の検討などを進める必要があると指摘しています。

 佐賀県が2016年度から全国の都道府県で初めて中学生への検診事業を始め、鹿児島県も2017年度から高校生を対象に計画しているほか、大分県内や北海道内などの自治体でも実施中や計画中のところがあります。

 佐賀大学医学部附属病院(佐賀市)小児科で、ピロリ菌の検査と除菌治療に取り組む垣内俊彦医師は、「日本人の胃がんの多くはピロリ菌感染が原因とみられており、中高生への検診、除菌治療は将来的な胃がん予防の面から必要だと考えている」と説明しています。

 佐賀県は胃がんによる死亡率が全国的にみても高く、今年度、県内の中学3年生を対象に、ピロリ菌の検診、除菌治療を始めました。昨年7月に早期胃がんの手術を受けた経験を持つ山口祥義知事の肝いりで、県では胃がん予防という「子供たちの将来への贈り物」としています。

 受診は任意で、保護者の了解が得られた生徒について学校健診で採取した尿を調べ、感染の疑いがある陽性であれば検便で確定検査を行います。感染がわかった生徒は、希望すれば無料で除菌治療を受けることができます。

 除菌まで行うと1人2万円ほどかかるという費用は、県が負担します。中学3年生は体格が大人に近付き、15歳以上で成人と同じ用量で除菌薬が服用できます。

 垣内医師によると、佐賀県内の中学3年生8912人のうち、2月3日現在で6994人(78・5%)から同意が得られ検査を行いました。確定検査で感染がわかったのは、243人だったといいます。

 感染が見付かった佐賀市内のある男子生徒(15歳)は、すでに除菌治療を終了。自身も数年前に会社の健康診断でピロリ菌の感染が見付かり、除菌を行った父親(41歳)は、「早い段階で感染の有無がわかり、親の責任として治療を受けさせることができるのでありがたい」と、県の取り組みを歓迎しています。

 ピロリ菌は人間の胃にすむ細菌で、1980年代にオーストラリア人医師によって発見されました。食物などを通じて口から感染し、胃炎や胃潰瘍、胃がんを引き起こす原因となります。除菌には、抗生物質2種類と胃酸を抑える薬を約1週間服用します。

 中高生へのピロリ菌の検診は、北海道や秋田県、山形県、長野県、大阪府、兵庫県、岡山県などの自治体で実施されるなど近年拡大しています。

 世界保健機関(WHO)が2014年の報告書で、胃がんの約8割はピロリ菌の感染が原因であると発表。ほとんどが5歳までに感染し、若いうちに除菌を行うことが効果的とされることや、感染者数の減少、がん教育につながる面などが背景にあるとみられます。

 中でも北海道は北海道大学によるピロリ菌研究が盛んなことを背景に、北海道庁の2016年末時点の調べでは37自治体が実施、8自治体が実施予定で、道内の約4分の1に拡大しています。

 九州では大分県別府市が2016年度から中学2年生を対象に検査、除菌の助成事業を始めました。同市が行っている任意の生活習慣病予防検診で、ピロリ菌検査も希望すれば受けられるようにしました。また、同県臼杵市も2017年度から中学2年生を対象に、導入を検討しています。

 鹿児島県も2017年度から、高校1年生約1万6000人を対象に計画。保護者の同意を得た生徒について調べます。予算案に約3900万円を盛り込みました。

 厚労省研究班で調査を行った兵庫医科大ささやま医療センター(兵庫県篠山市)の奥田真珠美教授は、「中学生の感染率は5%前後で、自治体の予算や医療機関の体制の面でも受け入れ可能だと思われる。除菌治療に伴う下痢などの副作用の対処を始め、より安全な実施方法の検討などを進める必要がある」としています。

 一方、ピロリ菌感染者が必ずしも将来、胃がんになるわけではなく、若い世代への除菌が胃がんを減らす効果はまだ実証されていません。また、除菌薬には下痢や味覚異常などの副作用が報告されており、胃炎などの症状が出ていない段階での除菌には慎重な見方もあります。

 国立がん研究センターの斎藤博・検診研究部長は、「除菌する人が増えれば、確率的には重い副作用を発症する人も出てくる可能性が否定できない。感染しているが無症状の健康な人への積極的な除菌が、無用な害を与える恐れがある」と指摘しています。

 佐賀県では今のところ大きな副作用の報告はないといいますが、除菌する医療機関を24時間対応可能な県内23施設に絞り、異常があれば施設へ問い合わせするよう呼び掛けています。

2017年3月6日(月)

 

■喫煙が原因の肺疾患、運動で予防 大阪市立大、ホルモンが作用

 主に喫煙が原因で肺機能が低下し呼吸が困難になる慢性閉塞性肺疾患(COPD)が、運動をした際に分泌されるホルモンの働きで予防できることがわかったと大阪市立大学の研究チームが6日、国際専門誌電子版に発表しました。

 運動を取り入れた予防法や、このホルモンを利用した治療薬の開発につながる可能性があるといいます。

 研究チームによると、COPDはたばこの煙によって、酸素を取り込んだりする肺胞の破壊や、気道の炎症が生じ、息切れやせきが起こります。世界的には、がんや心疾患などに次ぐ死因の4位で、2020年には第3位になると予測されており、国内の推定患者数は500万人以上とされます。

 研究チームは、運動によって骨格筋から分泌されるホルモン「アイリシン」に着目。COPDの患者40人(平均73歳)の血中アイリシン濃度や、肺の状態を調べ、濃度が高いほど肺胞の破壊が少ないことを突き止めました。

 さらに、人の肺胞上皮細胞を使った体外の実験で、アイリシンを加えると、酸化を防ぐタンパク質が増加し、たばこの煙に含まれる酸化力の強い物質による細胞死が抑えられることも判明しました。

 研究チームの浅井一久講師(呼吸器内科学)は、「COPDは息切れのため動くのが面倒になり、運動不足になって運動機能が低下し、呼吸困難がさらに悪化するという悪循環になりがちだが、体を動かせば悪化を防げる可能性が示された。研究を進め臨床応用につなげたい」と話しました。

 2017年3月6日(月)

 

■受精卵の移植、夫婦の同意取得徹底を 無断移植で産科婦人科学会

 奈良市の婦人科クリニックで凍結保存されていた受精卵を使って、妻が別居中の夫に無断で出産した問題を受け、日本産科婦人科学会は、受精卵を移植する際には夫婦それぞれの同意を取得するよう会員の医師に注意喚起しました。4日の理事会後の記者会見で明らかにしました。

 体外受精での受精卵の移植に関し、手続きを定めた法律はありません。日本産科婦人科学会は倫理規定で、移植の際に夫婦それぞれの同意を取得するよう定めていますが、強制力はありません。

 学会は、奈良市の婦人科クリニックの男性院長から事情を聴取。院長は、妻が自身の婦人科クリニックで以前も受精卵を移植されて子供を産んでいたことや、夫の欄に署名のある同意書を示したことから、「夫の同意もあると思ってしまった」などと話したといい、口答で注意したといいます。

 学会の倫理委員長の苛原(いらはら)稔・徳島大教授は、「女性のみならず男性側からも同意書をとるよう指導しているが、それが十分でなかった。改めて学会の見解順守を」と話しました。

 この奈良市のケースでは、別居前に凍結保存していた受精卵を妻が2014年に移植し、2015年4月に出産、2016年10月に離婚しました。40歳代の元の夫は同12月に、元の妻と婦人科クリニックに対して計2000万円の損害賠償を求め奈良地裁に提訴しました。

 このケースとは別に、東京都に住む40歳代の男性が2016年12月、別居中で大阪市内に住む40歳代の妻が夫の同意書を偽造して凍結保存中の受精卵の移植を受け、子供を産んだのは苦痛だとして、子供との法的な親子関係を認めないよう求め大阪家裁に提訴したことも、今年2月に明らかになりました。

 2017年3月5日(日)

 

■一般用医薬品購入の新税制、消費者混乱 似た商品が対象外に

 厚生労働省が指定する一般用医薬品(OTC医薬品)を年に1万2000円超10万円以下購入した場合、確定申告すれば所得税や住民税の負担が軽くなる「セルフメディケーション(自主服薬)税制」が始まって、2カ月余りが経過しました。

 しかし、「パブロン」(大正製薬)や「ルル」(第一三共ヘルスケア)、「ベンザブロック」(武田薬品工業)など同じシリーズの風邪薬の中にも、新税制の対象になる商品と、対象にならない商品が混在しているため、厚労省には「見分けにくい」など消費者からの声が今も相次ぎ寄せられています。

 パブロンシリーズでは、たんを出しやすくし、のどの炎症を抑える成分「アンブロキソール」が入る「SゴールドW」は新税制の対象品。一方、パッケージの箱のデザインが似ていても「ゴールドA」のほうは対象外。虫刺され薬「ムヒ」(池田模範堂)でも、対象外の商品があります。

 1月1日の導入直後から、厚労省には「分かりにくい」との電話が殺到。最近でも多い日は、1日10件超の問い合わせがあるといいます。対象になるのは、厚労省が定めた83の有効成分を含む約1600の医薬品。有効成分を含むかどうかで線引きするため、同じシリーズの薬でも対象外の商品が出てきます。

 見極めるポイントはいくつかあり、対象品は医師が処方する医療用医薬品と同等の効き目がある有効成分が入っているため、同じシリーズの対象外の薬より価格は高めで、箱のデザインにも高級感があります。目立たず見付けにくいこともありますが、「セルフメディケーション税 税控除対象」と表示したマークを箱に印字した商品が薬局、薬店、ドラッグストアの店頭に並んでいます。

 新税制には、市販薬で風邪などを治す人に恩恵を与えて病院の利用回数を抑えてもらい、国の医療費を減らすねらいがあるものの、対象品の見極めが難しい上、税制上の優遇も大きくなく、利用が進むかどうかは見通せない状況です。

 厚生労働省は、税控除対象の風邪薬、胃腸薬、解熱鎮痛薬、便秘薬、湿布薬などをホームページに掲載しています。

 2017年3月5日(日)

 

■国内2例目の赤ちゃんポスト、神戸市の助産院が設置を見送り 相談に限定した業務を開始へ

 親が育てられない子供を匿名で受け入れる「赤ちゃんポスト」(こうのとりのゆりかご)の国内2例目の設置を目指していたNPO法人「こうのとりのゆりかごin関西」(大阪府箕面市)が、運用開始を当面見送る方針であることが4日、明らかになりました。

 設置を検討していたマナ助産院(神戸市北区)に常勤の医師がおらず、安全面などから神戸市側が慎重な姿勢をみせていました。

 ただ、赤ちゃんポスト設置と並行して模索していたマナ助産院での相談業務は、24時間態勢の電話や面談で望まない妊娠や出産をした母親ら向けに、9月にも始めるとしています。

 3日に厚生労働省や神戸市の担当者と市役所で面会し、こうのとりのゆりかごin関西が「相談に限定した業務のみを行う」と書面で伝えたといいます。

 赤ちゃんポスト設置を巡っては、匿名で健康状態が不明の子供を医師不在の助産院で扱う懸念が指摘されていました。こうのとりのゆりかごin関西は、産後の子供をケアしてきた経験豊富な助産師がいる上、必要に応じて顧問契約を結んだ嘱託医の助言を電話で得ることで対応していくとしていました。

 しかし、久元喜造市長が「新生児の対応には医師の介在が必要。医師法上の違反がないかどうか注意深く見守る」と述べるなど、神戸市は慎重な姿勢を崩さなかったといいます。

 こうのとりのゆりかごin関西の事務局は「6月の理事会まではコメントできない」としていますが、関係者はマナ助産院での当面の赤ちゃんポスト開設見送りについて「常勤医の問題がネックとなった」と理由を説明しました。

 赤ちゃんポストは2007年、熊本市の慈恵病院で国内初の運用が始まり、2015年度までに計125人の乳幼児を受け入れ、年間約6000件の相談を受けています。

 2017年3月4日(土)

 

■がん免疫治療薬「オプジーボ」、頭頸部がんも治療対象に 高額薬の適用拡大続く

 がん細胞によって弱められた、患者の免疫細胞の攻撃力を高めてがんを治す新しいタイプのがん治療薬「オプジーボ」(一般名ニボルマブ)について、厚生労働省の部会は3日、治療に使う対象を新たに頭頸(けい)部のがんにも拡大することを了承しました。

 約1カ月後に正式承認され、保険適用されます。

 対象は、顔面から頸部までの部分にできる頭頸部がんのうち、再発や遠隔転移のある症例。頭頸部がんの患者は、年間約2万5000人とされます。

 オプジーボはまず皮膚がんで認められ、非小細胞肺がんや腎細胞がん、悪性リンパ腫に適用が拡大してきました。患者本人の免疫の働きを利用する仕組みの薬剤で、患者の一部に優れた効果が期待されます。

 オプジーボは、小野薬品工業が2014年9月に発売。高額な薬価が問題視され、今年2月に、従来の100ミリグラム1瓶約73万円から半額の約36万5000円に引き下げられました。

 2017年3月4日(土)

 

■水素水や水素サプリ、健康効果の合理的な根拠なし 消費者庁、不当表示で通販3社を処分

 運動や食事制限をしなくてもダイエット効果があるなどと商品パッケージの表示や広告でうたい、水素を溶かしたとする水素水と水素入りサプリメントを販売したのは景品表示法違反(優良誤認)に当たるとして、消費者庁は3日、東京都と大阪府の通信販売会社計3社に再発防止と消費者への周知を求める措置命令を出しました。数年前からブームになっている水素関連商品について、消費者庁が同法で行政処分をするのは初めて。

 不当表示を指摘されたのは、メロディアンハーモニーファイン(大阪府八尾市)の飲料水「水素たっぷりのおいしい水」、マハロ(東京都港区)の飲料水「ビガーブライトEX」、千代田薬品工業(東京都千代田区)のサプリ「ナチュラ水素」の3商品。少なくとも計7億2000万円を売り上げていました。

 3社は2013年6月~2016年3月、商品を摂取するだけで著しくやせたり、血糖値上昇抑制や炎症解消の効果が得られたりするかのようにウェブサイトで表示。「エネルギー生成の役割をするミトコンドリアの働きを活性化する」「水素のパワーでダイエット」「1年で25キロやせた」「カラダをメラメラ」「肩こりや筋肉痛、ニキビの悩みを軽減」などとうたっていました。

 消費者庁は3社に対し、こうした表示の根拠となる資料を提出するよう要求。うち2社が出したのは、病気の人や動物、細胞に水素を与えた場合の効果に関する論文で、健康な人は含まれていませんでした。

 このため消費者庁は、表示の裏付けとなる合理的な根拠がないと判断。再発防止策を講じ、景品表示法違反を消費者に周知するよう3社に命じました。3社は問題の表示を中止し、現在も商品を販売しているといいます。

 食品で健康への効果を表示できるのは、健康増進法などに基づき、特定保健用食品(トクホ)や機能性表示食品、栄養機能食品に限られています。こうした食品として許可されたり、届け出があったりしたものは、水素水など水素関連商品ではこれまでありません。

 水素水は、水素が溶け込んだ水を示すものの、公的な定義はありません。2007年に「有害な活性酸素を効率よく取り除く」という内容の論文が発表され、臨床研究と並行して水素水の名称を使った商品が出てきました。芸能人やスポーツ選手がブログで紹介したこともあってブームになり、コンビニにも商品が並ぶようになっています。

 一方で、国民生活センターが昨年12月16日、禁じられた健康効果をうたう表示や広告が目立つ上、溶存水素濃度が表示より低かったり、水素自体が検出されなかった商品もあったとして、注意を呼び掛けていました。また、全国の消費生活センターに寄せられる相談は年々増加し、2015年度は705件でした。

 水素水を巡っては、栄養と健康についての調査研究を行う国立研究開発法人「医薬基盤・健康・栄養研究所」(大阪府)が、水素水を「水素分子(水素ガス)の濃度を高めた水」と定義し、「ヒトに対する有効性については信頼できる十分なデータが見当たらない」とする見解を示しています。また、「水素分子(水素ガス)は腸内細菌によって体内でも産生されており、その産生量は食物繊維などの摂取によって高まるとの報告もある」としています。

 2017年3月3日(金)

 

■エステサロン、超音波機器の施術でやけど多発 4年で相談20件

 国民生活センターは2日、エステサロンが美顔や痩身(そうしん)の効果をうたい体に超音波を当てる機器による施術で、「やけどをした」「はれた」「顔の神経が損傷した」などと被害を訴える相談が今年2月までの約4年間に約20件寄せられているとして、注意を呼び掛けました。

 国民生活センターによると、施術は「HIFU(ハイフ)(高密度焦点式超音波)」と呼ばれる機器を用いて、高密度の超音波を特定の部位に集中的に当てて体の表面を傷付けず皮下組織を直接加熱する技術によるもので、本来は前立腺肥大や子宮筋腫の治療などで使われています。

 医師資格のないエステティシャンが使うと医師法に違反する恐れがありますが、ウェブサイトなどでHIFU機器を使い「脂肪細胞を溶かし、顔を引き締める。やせる」とうたうエステサロンが少なくとも20事業者あり、1回数千円程度の料金で施術しているといいます。

 神奈川県の30歳代女性は、腹部に施術を受け、約6カ月のやけどを負ったとして、国民生活センターに相談。愛知県の30歳代女性は、顔の左半分がやけどではれ、水膨れができたため病院で治療したものの傷が残り「これ以上改善しない」と告げられたとして、国民生活センターに相談しました。

 「安全な施術」と強調し、やけどなどのリスクを事前に説明しなかったエステサロンもありました。

 国民生活センターは、「医師以外からの施術は違法の恐れがあり危険。宣伝内容をうのみにせず、リスクの情報を自ら集めて慎重に検討し、エステでHIFU機器の施術を受けるのを控えてほしい」としています。

 2017年3月3日(金)

 

■例外なき屋内禁煙に賛成7割を超す 禁煙学会が1万人を対象に調査

 医師らでつくる日本禁煙学会は2日、非喫煙者が他人のたばこの煙を吸わされる受動喫煙の防止対策として、すべての飲食店で例外なく屋内禁煙とする健康増進法改正案の原案に7割以上が賛成で、他人のたばこの煙は喫煙者でも2人に1人が不快に思っている、というインターネット調査の結果を発表しました。

 日本禁煙学会は、「国民の意識は向上し、禁煙反対は少数派だと、国会議員にも訴えていきたい」としています。

 調査は、九州看護福祉大学の川俣幹雄教授らが2月15日~20日、居住地の偏りなどに配慮する方法でインターネットで実施し、全国の20歳代~70歳代の男女約1万人から回答がありました。

 例外なき屋内禁煙に、「大いに賛成」と「やや賛成」は73%で、「大いに反対」と「やや反対」の9%を大きく上回りました。他人のたばこの煙を不快に思う人は、非喫煙者では90%に上り、喫煙者でも45%に上りました。

 料理や接客が優れている店が喫煙可から禁煙になったらどうするかを尋ねた質問では、行く回数が「増える」が42%(4230人)で、「減る」とした12・6%(1272人)の3倍以上でした。

 川俣教授は、「飲食店に収益減の危惧があると聞くが、収益は増える可能性がある」と話しました。

 厚生労働省は1日、受動喫煙の防止対策として、飲食店は原則、建物内を禁煙とする一方、30平方メートル以下の小規模なバーやスナックを規制の例外として、建物内での喫煙を認める原案を発表しましたが、作田学・日本禁煙学会理事長は「受動喫煙で最も多いのは飲食店だ。例外を作れば被害はなくならない」と指摘しました。

 2017年3月3日(金)

 

■禁煙違反者に30万円、施設管理者に50万円過料も 厚労省が健康増進法改正原案を公表

 厚生労働省は3月1日、非喫煙者が他人のたばこの煙を吸わされる教授今国会に提出する健康増進法改正案の原案を公表しました。

 違反者には都道府県知事らが勧告や命令を出し、従わない場合は、喫煙者に最大30万円の過料を科します。施設管理者には禁止場所で喫煙する人を制止する義務を課し、違反した場合は、最大50万円の過料を科します。

 原案は、未成年や患者が利用する医療機関や小中学校は敷地内、大学や官公庁、運動施設などは建物内をそれぞれ禁煙とし、喫煙室の設置は認めません。ただし、スタジアムや体育館などの運動施設がコンサートなどの興行に使用される場合には、喫煙室の設置を認めます。

 居酒屋や焼き鳥屋、レストラン、ラーメン店などの飲食店は原則、建物内を禁煙とし、喫煙室での喫煙は認めます。喫煙室を新設する場合は、新基準の下で煙が漏れ出ないかなど審査した上で、都道府県知事らが指定します。

 一方、旅館やホテルなどの客室、老人福祉施設の個室、歌舞伎の演目でキセルを使うなど演劇の舞台、愛煙家が集うシガーバー、小規模なバーやスナックでは、建物内での喫煙を認めます。

 煙の出ない電気加熱式たばこや電子たばこなどの新型たばこは、健康影響を判断し、影響が明らかになれば規制対象に加えます。

 2017年3月3日(金)

 

■アトピー性皮膚炎に新薬、注射で強いかゆみを抑制 京大などが治験で確認

 アトピー性皮膚炎の治療に、新しいタイプの薬が有効であることを臨床試験(治験)で確認したと、京都大学や九州大学などの国際研究チームが発表しました。

 国内に数百万人の患者がいるとされるアトピー性皮膚炎は、ステロイドなどの塗り薬で皮膚の炎症を抑える治療が主流ですが、今回の薬は、注射で体内のかゆみを起こすタンパク質に働き掛け、かゆみを軽減させるといいます。今後、治験を重ね、2年後にも新薬として承認申請したいとしています。

 論文は2日、アメリカの医学誌「ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン」電子版に掲載されました。

 新しいタイプの薬は、製薬会社「マルホ」(大阪市)が開発中の「ネモリズマブ」という注射薬。アトピー性皮膚炎は、患者のリンパ球の一種から分泌されるタンパク質「インターロイキン31」が過剰に作られ、神経細胞にある受け手のタンパク質と結合することで、かゆみが生じるとされます。ネモリズマブは先に神経細胞にあるタンパク質に結合して、インターロイキン31の結合を防ぎ、かゆみを抑えるといいます。

 治験は、 椛島(かばしま)健治・京大教授(皮膚科学)らの研究チームが、日本、ドイツ、アメリカ、イギリス、ポーランドの5カ国の7病院で実施。18歳以上の患者計264人を4つのグループに分け、それぞれに偽薬(プラセボ)や異なる量のネモリズマブを与えました。

 3カ月後の症状を調べると、偽薬を投与したり、ごくわずかしか投与しなかったりしたグループでは、ほとんど変化がなかった一方で、体重1キロ当たり0・5ミリ・グラムを投与したグループの43人では、患者の6割でかゆみが半減し、皮膚炎も改善しました。かゆみが治まった患者は、熟睡できる時間が2~3週間後には40~50分増え、重い副作用もありませんでした。今後、ほかの薬と併用した際の安全性などを調べます。

 椛島教授は、「かゆみを抑えることで、グッスリと眠れるようになるなど、生活の質の改善につながることが期待できる」と話しています。

 東京医科歯科大学の倉石泰特任教授(薬理学)は、「臨床試験で有効性が確認された意義は大きい。アトピー性皮膚炎のすべてのタイプに有効なのか、今後の臨床試験で解明してほしい」と話しています。

 2017年3月3日(金)

 

■子宮内膜症の治療薬をうたい未承認商品を販売 健康食品会社社長を逮捕、釈放

 「子宮内膜症の治療薬」とうたって未承認の商品を販売したとして、警視庁は、健康食品販売会社「サイエンス・サプリ」(東京都中央区)の社長、松下昌裕容疑者(43歳)を医薬品医療機器法違反(販売など)の疑いで2月28日に逮捕し、3月1日に発表しました。容疑を認めているといいます。

 松下容疑者は2012年4月以降、この商品を約2000人の顧客に販売し、1億3000万円以上を売り上げていたとみられるといいます。

 警視庁生活環境課によると、逮捕容疑は昨年5月〜11月、インターネットのホームページ上で、厚生労働相の承認を受けていない「ピクノジェノールスーパーピーディーアール」という商品が子宮内膜症や月経困難症の治療薬と宣伝。120粒入りのボトル1本を約1万3000円で販売したなどしたというもの。

 生活環境課によると、スイスから輸入した商品の原価は1本当たり1500円程度で、服用した人の中には「出血した」と話す人もいるといいます。

 警視庁によりますと、その後検察が松下容疑者の勾留を請求したのに対して、裁判所は「事実関係を認め証拠隠滅や逃亡の恐れがない」などとして勾留を認めない決定をしたということです。

 このため、松下容疑者社長は2日、釈放される予定で、警視庁は今後、任意で調べを進めるということです。

 2017年3月3日(金)

 

■吉野家、外食チェーン初の機能性表示食品を発売 通販専用のサラシア入り牛丼の具

 外食チェーン店を展開する吉野家は1日、食後の血糖値の上昇を緩やかにする成分が含まれた通販専用商品「サラシア入り牛丼の具」を6日から販売すると発表しました。

 外食チェーンが販売する商品としては、初めての機能性表示食品となります。機能性表示食品は、事業者の責任において、科学的根拠に基づき、特定の保健の目的が期待できるという機能性を表示した食品です。

 レトルトパック入りの「サラシア入り牛丼の具」は、湯せんしてご飯の上にのせます。価格は5袋入りが2980円、10袋入りが5000円(税込み)で、月間20万食の販売を見込んでいます。

 吉野家の公式通販サイトで限定販売します。南アジアや東南アジアに自生する、つる性の植物であるサラシアから抽出したサラシノールという成分を煮汁に配合しており、このサラシノールに食事から摂取した糖の吸収を穏やかにする働きがあるといいます。同社が販売している通販用の「牛丼の具」と「サラシア入り牛丼の具」の味は、ほとんど変わらないといいます。血糖値が高い人などの需要を見込んでいます。

 同社は、牛丼店「吉野家」で免疫力を高めるとされるシールド乳酸菌配合の豚汁を発売するなど、健康関連のメニュー開発を進めています。今回の外食チェーン業界で初めての機能性表示食品の発売で、ブランドイメージの向上にもつなげるねらいです。

 2017年3月2日(木)

 

日本人の平均寿命、男女とも過去最高を更新 厚労省が2015年の確定値を公表

 2015年の日本人の平均寿命は女性が86・99歳、男性が80・75歳と確定したことが1日、厚生労働省が5年ごとに公表している「完全生命表」で明らかになりました。前回調査の2010年の平均寿命に比べ、女性は0・69歳、男性は1・20歳延び、いずれも過去最長を更新しました。

 厚労省は毎年、推計人口から計算した「簡易生命表」を公表。5年に1度実施される国勢調査のデータを反映させ、確定版の「完全生命表」を作成しています。

 昨年7月27日公表の簡易生命表では2015年の平均寿命は女性87・05歳、男性80・79歳でしたが、今回の完全生命表では女性が0・06歳、男性が0・04歳それぞれ少し低く補正されました。

 平均寿命の確定値は、最初の調査が行われた1891~1898年分(当時は国勢調査に基づかない)で女性が44・3歳、男性が42・8歳でした。第2次世界大戦後は、延び続けています。

 平均寿命について諸外国と比べると、アメリカの女性81・2歳、男性76・4歳、カナダの女性83・6歳、男性79・4歳、フランスの女性85・1歳、男性79・0歳、ドイツの女性83・06歳、男性78・18歳、イタリアの女性84・606歳、男性80・115歳、スイスの女性84・9歳、男性80・7歳、イギリスの女性82・82歳、男性79・09歳より、男女とも日本のほうが勝っています。

 厚労省は「平均寿命は保健福祉水準を総合的に示す指標である」としており、日本の保健福祉水準は依然として世界トップレベルにあることがわかります。

 死亡率について5年前と比較すると、男女ともほとんどの年齢で低下しています。年次推移をみると、1975年から2015年にかけて、男女とも「0歳から10歳代」「70歳代」の低下が大きいことがわかります。衛生状態の向上や医療制度・技術の向上などによって、乳幼児と高齢者の死亡が減っている格好です。

 また、「10万人の出生者が年齢別死亡率に従って死亡していく」とした場合の死亡数をみると、男女とも70歳代から急激に増加し、男性では87歳、女性では92歳でピークを迎えた後、急激に減少しています。生命表における死亡数のピークは、回を追うごとに高齢に移動しており、ここからも「高齢化の進展」が改めて確認できます。

 2017年3月2日(木)

 

■京大、iPS細胞で血液難病を治療 2019年春にも治験開始

 京都大学iPS細胞研究所の江藤浩之教授は2月28日、体のさまざまな組織になるiPS細胞(人工多能性幹細胞)を使って、血が止まりにくい難病患者に輸血する臨床試験(治験)を2019年春にも始めると発表しました。

 止血に必要な血小板と呼ぶ血液の成分をiPS細胞から大量に作り、患者が出血した際に輸血して症状がひどくなるのを防ぎます。

 治験は、血液のがんといわれる白血病や骨髄異形成症候群、重い貧血の再生不良性貧血の患者を対象にします。いずれの疾患の患者も、血液成分が体内でうまく作れなくなり、いったん出血すると血が止まりにくくなっています。現在は献血によって集めた血液成分を輸血していますが、外敵から身を守る免疫の働きで4割の患者は、輸血直後に細胞が壊れてしまっています。

 計画では、京大iPS細胞研究所がこうした免疫反応を起こしにくいタイプの健康な人から作製して、再生医療用に備蓄しているiPS細胞を使います。

 江藤教授らは当初、2017年秋の治験開始を目指していました。しかし1月、同研究所が新生児の臍帯(さいたい)血から医療用のiPS細胞を作製する過程で、本来は使用しない試薬が使われていた可能性があるとして、人への使用を目的とした臨床用のものの提供を停止したため、治験の開始は1年半遅れます。

 今後は、治験に使うiPS細胞を選ぶ作業などをやり直します。江藤教授は、「遅れるのは非常に残念だが、治験を行うための技術はすでに確立しており、待っている患者さんのために当初より品質がよいものを提供したい」と話しています。

 iPS細胞の提供停止を巡っては、大阪大学などが進めている角膜を移植する臨床研究も1年程度、遅れる見通しとなっています。

 2017年3月1日(水)

 

■損傷した神経に埋め込んで手足のしびれを治療 大阪大などがビタミンB12含む繊維を開発

 手首やひじの神経が圧迫され、指がしびれる病気などの治療に使われるビタミンB12の一種を新開発の繊維メッシュに含ませ、患部に埋め込んで治療効果を上げる動物実験に成功したと、物質・材料研究機構(茨城県つくば市)と大阪大学の研究チームが27日発表しました。

 B12の一種「メチルコバラミン」は、神経の再生を促す作用があります。大阪大学大学院医学系研究科の田中啓之助教(整形外科)は、「飲み薬や注射では効果が薄い。患部付近でメチルコバラミンを徐々に放出し、高濃度の状態を数カ月間維持できれば、治療効果が上がる」と説明しています。

 この繊維メッシュは「ナノファイバーメッシュ」と呼ばれ、物質・材料研究機構の荏原充宏准主任研究者らが開発しました。

 体内で自然に分解するプラスチックの構造を工夫して、直径が髪の毛の約1000分の1に当たる数百ナノメートル(ナノは10億分の1)の極細の繊維を作製し、メチルコバラミンを含ませて柔軟なメッシュに加工しました。ラットを使った実験では、座骨神経が損傷した部分の周囲に繊維メッシュを埋め込んで、6週間後に運動機能や感覚を調べたところ、正常なラットと同程度まで回復したといいます。

 田中助教によると、埋め込む繊維メッシュは2センチ角程度でよく、神経の修復後は自然に分解するといいます。

 手首の神経が圧迫される「手根管症候群」や、ひじの神経が圧迫される「肘部管症候群」など、中年以上の患者が多く指がしびれてうまく動かせなくなる圧迫による神経損傷に有効と考えられ、研究チームでは製薬会社とともに、2年後の臨床研究開始を目指すといいます。

 この研究成果は、生体材料科学の国際誌の2017年4月号にオンライン掲載されました。

 2017年3月1日(水)

 

■子宮頸がんワクチンの接種後に身体障害、名古屋市が初の補償 女性1人に2160万円

 名古屋市は、子宮頸(けい)がんワクチンの接種後に体の障害を訴えた女性1人について、2160万円を支払うことを決めました。2016年度補正予算案に補償費を計上し、開会中の2月市議会に提出しました。

 この女性は2010~2011年度に、市の助成を受け任意の予防接種を3回受け、予防接種法に定める身体障害3級相当の障害が残ったといいます。このほか数人が、補償を求めているといいます。

 市が加入する全国市長会予防接種事故賠償補償保険制度を利用します。予防接種と健康被害との因果関係が認められた場合、国や製薬会社の過失の有無にかかわらず金銭的な補償をする同制度を使って、名古屋市が救済するのは初めて。市によると、広島市、宮崎市に予防接種事故賠償補償保険を適用した同様の支給例があるといいます。

 子宮頸がん予防接種については、各地で副作用の訴えが相次ぎ、市は国の通知を受けて2013年6月以降は積極的に接種を勧めていません。

 子宮頸がんワクチンを巡っては、名古屋市は2015年、ワクチンの接種後に出た全身の痛みやしびれ、記憶力の低下はワクチンによるものかどうか、全国で初めて独自に大規模調査を行いました。体の痛みや記憶力の低下など24の症状の有無をアンケート調査で尋ね、名古屋市内のおおむね14~21歳の女性およそ3万人から得た回答を受けて12月に、子宮頸がんワクチンを接種したグループとしなかったグループとで症状の出方に有意な差はなかったとする見解を発表しました。

 しかし、2016年6月27日に出した最終報告書では、先の見解を事実上撤回して調査の生データを示すにとどまり、今後、データの分析は行わない方針であることを表明しました。データの分析方法に、市民団体などから疑問の声が寄せられたためとしています。

 その際の会見で河村たかし市長は、「名古屋の中だけで判断、分析し、医学的見地から因果関係がどうだというのはなかなか難しい。逃げた言い方をすれば、国がやる仕事」と述べていました。

 2017年3月1日(水)

 

■NHK「ガッテン!」、番組内容に厚労省が口頭で注意 睡眠学会も放送内容に異議申し立て

 NHK総合テレビの健康番組「ガッテン!」が糖尿病の治療に睡眠薬を直接使えるかのような表現をしたとして、厚生労働省がNHKに口頭で注意したことが27日、明らかになりました。日本睡眠学会と日本神経精神薬理学会も、放送内容に異議を申し立てる見解を発表しました。

 NHKは27日までに、行き過ぎた表現で視聴者に誤解を与えたとして、番組ホームページで謝罪。NHK広報局は、「番組内容にさまざまな指摘があり、自主的な対応を取った」とコメントしました。

 22日放送の番組は、「最新報告!血糖値を下げるデルタパワーの謎」と題し、製薬会社のMSD(東京都千代田区)が2014年に発売した「ベルソムラ」(オレキシン受容体拮抗薬)という特定の睡眠薬を使って睡眠障害を改善したところ、血糖値も改善したというデータを伝え、「睡眠薬で糖尿病の治療や予防ができる」としました。放送終了後、「睡眠薬の不適切な使用を助長しかねない」「悪夢や頭痛などの副作用を軽視している」などの批判が寄せられたといいます。

 厚労省医薬・生活衛生局によると、「薬の不適正な使用を助長し、医療現場に混乱を来す恐れがある」として口頭で注意しました。

 27日発表した両学会の見解によると、糖尿病に対する睡眠薬の処方は認められておらず、番組が取り上げた睡眠薬は血糖の降下作用が確認されていません。両学会は、「患者に過大な期待を持たせ、医療現場の混乱を招いた」と批判しました。

 また、睡眠不足を解消することで脳波の指標の1つ「デルタパワー」が増えるかのような番組の説明は、引用された科学研究論文の内容とは全く異なっており、「完全な誤用か捏造(ねつぞう)といわざるを得ない」としています。デルタパワーが何らかの治療効果を持った生体現象(治癒能力)であるように表現するのも不適当であり、「現段階ではデルタパワーと血糖低下作用の関連について医科学的に確立されているとはいえない」ともしています。

 NHKは3月1日の「ガッテン!」の放送中にも、改めておわびと説明を行う予定としています。

 2017年2月28日(火)

 

■WHO、最も危険な細菌を初めて公表 多剤耐性菌の12種類

 スイスのジュネーブに本部があり、健康状態を向上させるための国際協力組織である世界保健機関(WHO)は27日、抗生物質(抗菌薬)がほとんど効かない多剤耐性菌の中でも、特に警戒が必要な12の菌のリストを初めて公表しました。新たな抗生物質の開発を急ぐとともに、人や家畜に対し抗生物質を必要以上に使わないよう呼び掛けています。

 WHOが公表したリストは、特に警戒と対策が急がれる12の多剤耐性菌を挙げ、危険性の度合いに応じて「重大」「高度」「中位」の3段階に分類しています。

 最も危険性が高い「重大」には、アシネトバクター、緑膿(りょくのう)菌、エンテロバクターの3つの菌が挙げられ、病院などで感染が広がると死亡する患者が出る可能性があることや、耐性菌にも効くとされる最新の抗生物質さえ効かなくなりつつあると指摘しています。

 次に危険性が高い「高度」には、エンテロコッカス、黄色ブドウ球菌、ヘリコバクター・ピロリ、カンピロバクター、サルモネラ、淋(りん)菌の6つの菌が挙げられ、感染した場合、治療が難しくなる恐れを指摘しています。

 さらに、「中位」の区分には、肺炎レンサ球菌、インフルエンザ菌、赤痢菌の3つの菌が挙げられています。

 12の菌はすべて、新たな抗生物質への耐性を比較的、容易に獲得できることや、耐性をほかの菌に遺伝情報として伝える能力を持っていて、抗生物質が使われれば使われるほど、より速いペースで耐性を獲得するということです。

 WHOは、「これらの菌の抗生物質への抵抗は強くなっており、治療の手段は尽きつつある」と警告しています。

 2017年2月28日(火)

 

■資生堂、アイライナー25万本を自主回収 先端の破損でけがの恐れ

 大手化粧品メーカーの資生堂(東京都港区)は27日、破損した商品が流通しけがをする恐れがあるとして、目元のメイクに使うアイライナー25万8000本を自主回収すると発表しました。

 自主回収するのは、ドラッグストアやコンビニエンスストアなどで販売する「インテグレート キラーウインクジェルライナー」というアイライナーのうち、昨年2月から10月にかけて製造された黒色の「BK999」と茶色の「BR610」という2種類の商品で、合わせて25万8000本です。回収対象の製造番号は「BK999」が6049、6125、6176、6218、6244、「BR610」が6104、6119、6176、6217、6299。

 資生堂によりますと、1月中旬から2月中旬にかけて、利用客から、アイライナーを囲むプラスチック本体の先端部分が破損して目の回りをけがをしたという連絡が3件寄せられたということです。この商品は、生産を委託しているドイツの工場で生産されていますが、製造時に生産のための機器が商品に当たり、破損したということです。工場に残されている複数の在庫商品でも、破損が確認されたとしています。

 資生堂では、該当する期間に製造された商品の使用をやめるよう呼び掛けるとともに、安全な商品に取り替えることにしており、問い合わせ窓口への連絡を呼び掛けています。

 資生堂では、「お客様に多大なご心配とご迷惑をおかけし深くおわびします。より一層、品質管理に努めてまいります」とコメントしています。

 問い合わせの電話番号は、フリーダイヤル 0120-636-087で、来週金曜日(3月10日)までは土曜、日曜も午前9時から午後5時まで受け付けています。インターネットでも商品交換を受け付けています。

 2017年2月28日(火)

 

■厚労省、若年性認知症の全国調査を初実施へ 患者と家族の支援策検討 

 厚生労働省は、働き盛りの65歳未満の世代で多く発症する「若年性認知症」の全国実態調査を初めて実施する方針を決めました。

 2017年度から3年かけて、患者とその家族約1万人の就労状況や生活実態を調査する意向です。高齢者の認知症と比べて遅れがちな、若年性認知症への支援策を検討します。

 全国調査は、国立研究開発法人「日本医療研究開発機構」(東京都千代田区)が国の予算約6000万円で行います。認知症グループホーム約1万3000カ所や、認知症専門の医療施設約360カ所などを対象に、アンケート用紙を配布し、患者数、性別、年齢などを尋ねます。また、これらの関係施設を通して、患者本人や家族に、発症に伴う就労形態や収入の変化、職場が行った配慮などの質問に答えてもらいます。

 厚労省は現在、若年性認知症を発症した人は全国で3万7800人に上ると推計しています。同省の研究班が2006年~2008年度に茨城、群馬、富山、愛媛、熊本の5県と徳島市など2市で、認知症の人が利用する可能性がある保健、医療関係施設など約1万2000カ所を対象に実施した調査を基にしたものですが、利用者や家族の生活実態を詳しく調べていませんでした。

 子供の教育費や住宅ローンなどで出費のかさむ働き盛りが認知症になり、突然仕事を失うケースも多くあります。「認知症介護研究・研修大府センター」(愛知県大府市)が、大阪府など15府県の介護施設などで行った2014年度の調査では、発症に伴って約8割が仕事を辞めたり、休職したりしていました。

 また、「認知症は高齢になってから発症するもの」と思い込んで受診が遅れたり、受診をしても、うつ病などと間違われたりするケースもあります。介護保険サービスは高齢者を想定したものが多く、若年性認知症に特化した支援が遅れていました。

 適切な治療が受けられず、症状が悪化したために経済的に困窮するケースもあり、高齢者の認知症と比べて、家族への影響が深刻な事例も多いとの指摘も出ていました。

 2017年2月27日(月

 

■マンモグラフィーで判別しづらい高濃度乳房、一部自治体が通知 乳がん検診で超音波検査の併用も

 日本女性の乳がん発症は40~50歳代がピークという実態を踏まえ、乳がん検診は40歳以上の女性が2年に1度受けるように、国によって推奨されています。そして、自治体が行う乳がん検診に関する国の指針は、マンモグラフィー(乳房エックス線撮影)のみを推奨する検診法として実施項目に定めています。

 手に触れない微小ながんや、がんとの関連を否定できないカルシウム沈着(石灰化)の発見に威力を発揮し、受診によって死亡率を減らせることが判明している唯一の検診法だからです。

 ただし、マンモグラフィーには弱点もあり、日本女性にはこの方法だけではがんの有無を判別しづらい、乳腺の密度の濃い「高濃度」の乳房が目立ちますが、異常が見えにくい乳房でも「異常なし」とだけ受診者に通知する自治体が多数です。

 乳房は乳腺の密度が濃い順に、高濃度、不均一高濃度、乳腺散在、脂肪性の4つに分類されます。乳腺の密度が濃いとマンモグラフィー画像では全体が白く映り、同じく白く映るがんを見付けにくいため、マンモグラフィー単独では、異常の有無を完全に判定するのが難しくなります。

 専門家によって見解は分かれるものの、マンモグラフィーに不向きとされる高濃度乳房と不均一高濃度乳房は、日本女性の5~8割に上るとの指摘があります。

 この弱点をカバーするのが、超音波検査。超音波では、がんのしこりが黒く乳腺が白く映ります。国の大規模研究で、マンモグラフィーと併用することで早期発見率が1・5倍に高まることがわかりました。

 一部自治体は、40歳代以降の乳がん検診に超音波を組み込み、両方を受けられる制度を整えています。30歳代にも乳がん検診を行う自治体が増えてきましたが、若年層は乳腺が発達していてマンモグラフィーに不向きなため、超音波で対応しています。

 しかし、超音波は、受診による死亡率の減少効果がまだ明らかではなく、国が推奨する検診法になっていません。形や大きさの違う乳房に手動の機器を当て、撮影部位をその場で判断する手法のため、技師の技量に左右されます。がんの疑いを多く見付けてしまい、精密検査で異常がないとわかるケースが増え、受診者の心身に負担をかけることがあるとの指摘もあります。超音波を追加で希望する人は医療機関で、自費で受けることになります。

 国の乳がん検診の指針では、結果を「異常なし」か「要精密検査」のいずれかで返すよう定めています。自治体検診では、乳腺のタイプや密度は必ず判定され、詳細な結果票には記録されていますが、本人にはほとんど知らされていません。

 受診者に、「高濃度で見えづらいこと」、「超音波検査を加える選択肢があること」を文書や口頭などで通知している自治体もありますが、実態はよくわかっていませんでした。問題視した乳がん体験者らは、「結果の詳細を知る権利がある」と改善を求め、声を上げました。

 現状を調べるため、マスコミが今月、全国の政令指定都市、県庁所在地など主要131自治体を対象に調査したところ、対策として通知や超音波検査などを実施しているのは、予定も含めると40自治体と明らかになりました。

 和歌山市は医師会と議論し、昨年夏ごろから通知を始めました。神奈川県大和市は市民の要望を受け、来年度から通知し、超音波検査の追加の希望者には、市が費用を負担する方針です。

 多くの自治体の担当者は、「本来は伝えるべき情報」と認める一方で、「県から通知を止められている」「専門医に、通知すべきでないといわれた」などの嘆きも漏らしています。国が方針を示さないために、自治体が板挟みになっている状態です。

 高濃度乳房と不均一高濃度乳房の全員に通知すると、超音波の追加希望者は膨大な数になります。専門医らは、「外来に女性が殺到すると、診るべきがん患者を診られない」と懸念しています。ただ、実際に通知を始めたある自治体の担当者は、「超音波を加えたことによる医療機関の混乱は見られない」と話しています。

 仮に、自治体検診に超音波検査を加えるとなれば、結果的にがんではない多くの人を再検査対象に拾い上げるなどの不利益があります。検査を行える熟練した技師の数もまだ十分でなく、環境整備に多額の費用もかかります。

 高濃度乳房への対応を巡り、日本乳癌(がん)学会などは、昨年設置した作業部会で課題の整理を行っており、近く、提言をまとめる予定です。

 2017年2月27日(月

 

■大阪大、ロタウイルスの人工合成に成功 新ワクチン開発に期待

 乳幼児を中心に下痢や嘔吐(おうと)、発熱を引き起こすロタウイルスを人工的に合成することに初めて成功したと、大阪大学の小林剛准教授(ウイルス学)の研究チームが27日までに、アメリカの科学アカデミー紀要電子版に発表しました。藤田保健衛生大学(愛知県豊明市)との共同研究。

 遺伝子を改変して、増殖しにくいロタウイルスの作製にも成功しており、新たなワクチンや特効薬の開発につながる可能性があります。

 ロタウイルスは感染力が非常に強く、5歳までにほぼすべての子供が感染し、発症者は国内で年間約80万人と推定されています。免疫がない子供は重症化しやすく、世界では年間約50万人が死亡しているとされます。

 病原性が低下したウイルスを投与して免疫反応を誘導するワクチンはすでに普及していますが、乳児向けのワクチンは腸への副作用の可能性が指摘され、無料で受けられる定期接種化は検討が続いています。また、ロタウイルスは遺伝情報が変わりやすく、ワクチンが効かないタイプの出現も懸念されています。

 ウイルスの人工合成はこれまで、薬やワクチンの開発のためにポリオウイルスやインフルエンザウイルスなどで成功していますが、ロタウイルスは設計図となる11個の遺伝情報の塊を細胞に入れても、うまく作ることができませんでした。

 小林准教授らは、さまざまなウイルスの研究を進める中で、ウイルスの増殖を促す働きを持つ2種類のタンパク質に着目。これらをロタウイルスの遺伝情報と一緒に細胞に加えて4、5日培養すると、ロタウイルスが効率的に合成できることを突き止めました。

 研究チームの金井祐太・特任講師は、「人工合成によって遺伝子を変えたり、働きを細かく調べたりできる。より安全で効果的なワクチン開発の後押しになる」と話しています。

 2017年2月27日(月

 

■子供の外部被曝線量、推定より早く半減 福島県の医師が研究を発表

 東京電力福島第一原発の事故が3月11日に起きた2011年〜2015年までに測定された福島県相馬市の16歳未満の子供の外部被曝(ひばく)線量を分析した結果、2011年11月の被曝線量が半分になるのに要した日数は、放射性物質の物理的半減期から推定される日数の約3分の1の395日だったとの研究結果を、東京大学医科学研究所や相馬中央病院などに勤務する坪倉正治医師らがまとめました。

 環境中の放射線量は、風雨などの効果で放射性物質の物理的半減期よりも早く低減することが指摘されていますが、ガラスバッジ(個人線量計)による実測値を根拠にして具体的に示した形です。研究結果は、アメリカの医学雑誌「プロスワン」に発表します。

 研究では、子供5363人を対象に年1回ずつ行われた外部被曝測定の結果データ1万4405件を分析。それぞれ3カ月間計測した値を、年間の追加外部被曝線量に換算しました。

 その結果、2015年時点ですべての子供が平常時の年間限度に相当する1ミリシーベルト未満になりました。2011年11月の被曝線量の中央値が半減するのにかかった日数は395日で、放射性物質の放射線を出す力が自然に減っていく物理的減衰から推定される日数の1170日よりも、短期間でした。

 研究ではこのほか、除染による被曝線量の低減効果を調べようと、相馬市内の除染を行った地域の住民の線量を分析。その結果、除染を行った4地域のうち3地域で除染による低減効果が見られましたが、年間0・04ミリ~0・24ミリシーベルトの低減効果にとどまりました。残り1地域では、除染前後で有意な差はありませんでした。

 専門家の立場から放射線防護に関する勧告を行う民間の国際学術組織である国際放射線防護委員会が勧告する平常時の市民の年間被曝限度は、自然由来と医療被曝を除き1ミリシーベルト。環境省も国の予算で除染する基準を年間1ミリシーベルト以上に定めています。

 2017年2月26日(日

 

■小規模居酒屋、家族連れに配慮し例外とせず 受動喫煙規制で厚労省が調整

 厚生労働省は非喫煙者がたばこの煙を吸い込む「受動喫煙」対策に関し、すべての居酒屋や焼き鳥屋は建物内を禁煙とする方向で調整に入りました。

 家族連れや外国人客の利用に配慮し、小規模店舗の例外を認めない方針です。

 政府は2020年に開催される東京五輪・パラリンピックに向け、受動喫煙対策の強化を盛り込んだ健康増進法改正案を今国会に提出する予定。飲食店内は原則禁煙(喫煙室は設置可)とする一方、客離れを懸念する飲食業界などからの反発を踏まえ、一部の小規模店舗は例外とすることを検討しています。

 小規模店舗のうち、主に酒類を提供するバーやスナックは店頭に「喫煙可能」と表示することなどを条件に、例外とする方向です。酒類を提供する一方、食事もとれる居酒屋や焼き鳥屋の扱いが焦点となっていますが、こうした店舗は子供を含めた家族連れや外国人観光客の利用が少なくなく、例外対象から外すべきだと判断しました。

 例外の範囲を広げ過ぎると、喫煙規制の実効性が失われることも考慮したほか、24日に肺がん患者会や学術・医療関係などの約150団体が塩崎恭久厚生労働相に「例外なき禁煙」を求める要望書を手渡すなど、受動喫煙ゼロを求める声が広がっていることも配慮しました。

 厚労省は今国会に健康増進法改正案を提出する予定ですが、自民党内で「小規模な飲食店はやっていけない」などの反対意見が根強く、最終調整が難航する可能性もあります。 

 2017年2月25日(土

 

■iPS細胞から脳の血管内皮細胞を作製 京大チーム、中枢神経薬の効果予測へ

 人のiPS細胞(人工多能性幹細胞)から脳の血管の特徴を持つモデルを作製することに、京都大学iPS細胞研究所の山下潤教授や山水康平助教らの研究チームが成功しました。中枢神経に作用する薬剤の効果を予測するのに役立つ成果で、アメリカの科学誌ステムセル・リポーツで24日発表しました。

 脳の血管は「血液脳関門」とも呼ばれ、血液に含まれる病原体や異物が脳に悪影響を及ぼさないようにするため、血管の内部から外部に物質が出にくい構造をしています。このため、脳の中枢神経に作用する薬剤は神経に届きにくく、新薬の開発では、その薬剤が脳関門を通過できるかどうかを予測することが重要となっています。

 研究チームは、健康な人の皮膚の細胞から作ったiPS細胞を元に、通常の血管内皮細胞や周皮細胞、神経細胞の機能を維持する役割のある「アストロサイト」、ニューロン(神経細胞)という4種類の細胞を作製し、一緒に培養しました。その結果、通常の血管内皮細胞が脳の血管内皮細胞に似た特徴を獲得し、この細胞をさらにアストロサイトと一緒に培養することで、脳の血管の特徴を持つモデルを作ることができました。

 この脳血管のモデルは、実際の脳血管と同様の薬物の透過性を持っていることを確かめました。

 山下教授は、「中枢神経薬は多くが、脳関門を通らないために治験で失敗している。このモデルを使うことで事前に効果を予測できるので、薬剤開発費の節減につながる。脳の血管の病気などのメカニズムの解明にも活用できる」と話しています。

 2017年2月25日(土

 

■おたふく風邪で難聴、後を絶たず 専門家、ワクチンの定期接種を要望

 おたふく風邪にかかった子供が難聴になるケースが後を絶たず、専門医で作る日本耳鼻咽喉科学会が今月、全国的な被害の実態調査を始めましたが、おたふく風邪のワクチンは任意接種のため、対象者の3割から4割ほどしか受けておらず、専門家は「難聴から子供を守るために定期接種化すべきだ」と指摘しています。

 流行性耳下腺(じかせん)炎、いわゆる、おたふく風邪は、子供を中心に流行し、発熱や耳の前から下にかけてのはれを引き起こすムンプスウイルスによる急性感染症で、例年に比べて患者が多い状況が続いています。おたふく風邪を発症しても、通常1~2週間で症状は改善しますが、合併症の多い感染症であるため、1000人に1人ほどの割合で難聴になるとする報告もあり、日本耳鼻咽喉科学会が今月、健康被害の実態調査を始めました。

 その一方で、健康被害を防ぐためのワクチンは副反応の「無菌性髄膜炎」が相次いで報告されたため、1993年に定期接種から外されたままで、現在は対象者の3割から4割程度しかワクチン接種を受けていません。

 日本医師会などが2011年までの3年間に全国1万9000の病院を対象に行った調査では、全体の2割弱の病院からの回答で、おたふく風邪の影響で117人が音が聞こえにくくなったと訴えて入院し、このうち61人に難聴の後遺症が残りました。

 ムンプスウイルスが体中を回って、耳の奥にある内耳と呼ばれる部分にダメージを与え、その結果、鼓膜で聞いた音が電気信号に変換されなくなり、脳が音を認識できなくなるとされています。子供が難聴になった場合、補聴器をつけたり、両耳に症状があれば手術で人工内耳を埋め込んだりする対処法があるということです。

 しかし、元の状態に戻るわけではなく、耳で新しい言葉を聞いて覚えることが難しくなり、学校での学習についていけなくなったり、友人とコミュニケーションをしづらくなり、疎外感やストレスを感じたりする問題も残るということです。

 国立感染症研究所によりますと、おたふく風邪は4年から5年の周期で大きな流行を繰り返す傾向にあります。ワクチンが定期接種から任意接種に変わった1993年以降、全国3000の小児科の医療機関から報告された患者数が最も多かったのは、2001年の25万人余りで、2016年は15万9000人ほどとなっています。

 ワクチン問題に詳しい岡部信彦川崎市健康安全研究所所長は、「難聴になる子供が、思ったよりも多いのではないかということがわかり始めてきた。ワクチンで防ぐことができる病気なので、副反応の少ない新しいワクチンを開発し、定期接種にすべきだ」と指摘し、「今のワクチンで報告されている無菌性髄膜炎も、通常、回復する。医師から副反応のリスクと難聴になるリスクについて適切に説明を受け、ワクチン接種することを勧める」と話しています。

 2017年2月25日(土

 

世界のうつ病患者3億2200万人、全人口の約4%に WHOが早急な対策を求める

 スイスのジュネーブに本部があり、健康状態を向上させるための国際協力組織である世界保健機関(WHO)は23日、世界でうつ病に苦しむ人が2015年に推計で3億2200万人に増加したと発表し、早急な対策が必要だと警告しました。

 WHOが発表した報告書によりますと、世界でうつ病に苦しむ人は2015年に推計で3億2200万人に上り、2005年からおよそ18%増加しました。

 これは世界の全人口の約4パーセントに当たり、WHOは、うつ病が世界的に一般的な精神疾患になりつつあると指摘しています。地域別では、中国、インドを抱えるアジア・太平洋地域で全体のおよそ48%を占め、日本にはおよそ506万人いると推計しています。厚生労働省によると、うつ病など気分障害で医療機関を受診している人は2014年に約112万人ですが、WHOの統計は専門家による推計値のため、医師にうつ病と診断された人以外も含んでいます。

 また、うつ病は、男性より1・5倍、女性に多くみられ、年齢別では55歳から74歳の発症率が高いほか、15歳未満の子供の発症もみられるということです。

 このほか、WHOは、2015年の世界の自殺者は推計で78万8000人とし、そのうち、うつ病を死因とするのはおよそ1・5パーセントで、15歳から29歳の若年層の2番目の死因となっていると明らかにしました。

 WHOは、うつ病が人々の生産性を失わせることなどから、1年当たり10億ドルの経済的損失を生じさせているとも指摘。うつ病は治療や予防が可能だとした上で、早急な対策が必要だと警告し、発症が疑われる人々に対しては、信頼できる人に自分の症状を話すことをうながしています。

 2017年2月24日(金

 

■増えない小児からの臓器提供、7年間で12例 目立つのは心臓移植のための海外渡航

 脳死段階の子供から臓器の提供を可能にする法律が施行されて今年で7年になりますが、臓器の提供は年間数例にとどまり、移植を待つ間に亡くなる子供も少なくないことから、厚生労働省は改善策を提言するための専門家会議を設けて、検討を始めました。

 この専門家会議は、子供からの臓器の提供がなかなか増えない原因を分析し、解決策を検討しようと厚労省が新たに設けたもので、24日の初会合には小児科や救急の医師、法律の専門家など13人が出席しました。

 15歳未満の子供からの臓器の提供は、7年前の2010年の改正臓器移植法の施行によって可能になりましたが、提供はこれまで合わせて12例と、各臓器の合計で常に100人ほどいるとされる移植を希望する子供の数を大幅に下回り、待機中に亡くなる子供は少なくありません。

 専門家会議では、こうした背景に、脳死段階の子供からの臓器提供を行う体制が整備された医療機関が限られることや、虐待を受けた疑いがないか医療機関が判断するための基準が明確でないことなど複数の課題があり、家族が希望しても提供に至らないケースがたびたびあるといった意見が出されました。

 専門家会議では今後、挙げられた課題を元に専門家にヒアリングを行うなどして、改善に向けた提言をまとめる方針です。

 子供からの臓器の提供件数がなかなか増えないため、今も心臓移植のため海外に渡航する子供は少なくありません。国立循環器病研究センター(大阪府吹田市)の福嶌教偉(ふくしまのりひで)移植医療部長の調査では、国内で小児への心臓移植は9例なのに対し、改正臓器移植法の施行後、海外で10歳未満の23人が移植を受けています。

 脳死段階の小児から提供された肺や心臓は、その大きさが合う小児に移植されるのが一般的です。腎臓は移植を長く待つ大人への提供が多かったものの、国は優先的に小児に移植するよう基準を設けます。特に重い心臓病の小児は、体に合う心臓が提供されるまで待つのは難しく、腎臓や肝臓と違って親などからの生体移植もできません。

 2008年、国際移植学会は、「移植が必要な患者の命は自国で救える努力をすること」とするイスタンブール宣言を出しました。アメリカなどを除き、外国人への臓器提供を認めない国は多く、そもそも海外での移植には億円単位の資金も必要。

 埼玉県立小児医療センター(さいたま市)の植田育也・集中治療科長がかつて在籍した静岡県立こども病院(静岡市)の小児集中治療室(PICU)には、静岡県全域から重症患者が運ばれ、脳死とされ得るケースは年2例ほどありました。植田科長は、「人口比で考えると、小児の脳死は全国で年70例ほどでは」と話しています。

 それでも小児からの臓器提供は、年1~4例。植田科長が静岡県立こども病院で意思を確認した9家族は、いずれも臓器提供を希望しなかったといいます。日本は臓器提供する場合に限って脳死を人の死と認めており、承諾する家族は結果として子の死を選ぶことになり、つらい決断を迫られます。

 救急現場などでは悲嘆に暮れる家族に配慮し、臓器提供を切り出さないことも多いといいます。国立循環器病研究センターの福嶌部長は、「家族が提供できることを知らず、後で『移植できたのでは?』と聞かれる例もある」と指摘しています。

 国民の理解を深めるとともに、移植を巡る体制整備も課題です。日本臓器移植ネットワークの調査では、2010年7月~2015年3月に18歳未満で「提供の可能性がある」と連絡を受けた中で、83例が提供に至りませんでした。その理由は「施設の体制未整備」が最多で、17・5%でした。

 臓器移植では、まず脳死とされ得る状態かを判断し、虐待による死でないことも確認しなければなりません。家族の意向を確認し、実際の脳死判定は2度行う必要があります。ハードルは高く、病院は重い責任を負います。

 日本臓器移植ネットワークは病院に担当者を派遣し、移植に必要な手術室や機材確保などを担う院内担当者の配置やマニュアル整備などを支援しています。2011年度から本格化させており、2016年度は対象を全国66病院に広げました。

 2017年2月24日(金

 

■子供がいる家庭の2割が生活困難層に相当 東京都が初の実態調査

 家庭の経済的な困窮が、子供の生活にどのような影響を与えているかを把握する東京都の初めての調査結果がまとまり、親の年収だけでなく、食生活や学習環境などから「生活困難」に当たるとされる家庭が、全体のおよそ20%に上ることがわかりました。

 東京都は、昨年8月から9月にかけて、墨田区、豊島区、調布市、日野市に住む小学5年生、中学2年生、高校2年生の子供がいる家庭、およそ2万世帯を対象に調査を行い、このうち42%から回答を得ました。

 調査では家庭の経済的な困窮について、世帯年収のほか、過去1年で水道や電気など公共料金が支払えなかった経験があったり、子供を家族旅行や学習塾に行かせることができなかったりした場合は「生活困難層」と定義し、結果をまとめました。

 それによりますと、全体のおよそ20%が生活困難層に当たることがわかり、小学5年生がいる家庭では20・5%、中学2年生がいる家庭では21・6%、高校2年生の16歳から17歳がいる家庭では24・0%に上りました。

 また、生活困難層のうち、特に度合いが高い世帯を「困窮層」と定義し、小学5年生がいる家庭では5・7%、中学2年生がいる家庭では7・1%、高校2年生がいる家庭では6・9%に上り、子供の食生活や学習環境、それに放課後や休日の過ごし方などに影響がみられるとしています。

 具体的には、1日の食事の回数について、「2食がほぼ毎日」と回答した高校2年生は困窮層で21・9%で、「一般層」に比べて10ポイント余り高くなっています。「欲しいが持っていないもの」を小学5年生に尋ねると、「自宅で宿題できる場所」と回答したのは困窮層で11・9%で、一般層より9ポイント余り高くなっています。このほか、「経済的な理由で、キャンプや海水浴などを体験させることができない」と答えた保護者の割合が、困窮層では20%台後半から40%台半ばだったのに対し、一般層は1%未満と大きな開きがみられました。

 結果について、調査を行った首都大学東京の子ども・若者貧困研究センターの阿部彩センター長は、「困窮層の子供は、生活のあらゆる面で不利な状況に置かれていることが浮き彫りになった。貧困の連鎖を防ぐためにも、子供だけでなく保護者も含めた早期の支援が求められる」と話しています。

 調査では、子供たちが自分自身や将来をどのように感じているか、「自己肯定感」についても尋ねています。

 年齢別にみますと、小学5年生と中学2年生では、困窮層と一般層で大きな差はありませんでしたが、高校2年生では自分を否定的にとらえる割合が困窮層で高くなっています。例えば、「自分は価値のある人間だと思うか」と尋ねたことろ、「そう思わない」と否定した割合は、一般層では7・6%だったのに対し、困窮層では13・1%でした。

 このほか、保護者の健康や精神状態についても尋ねたところ、困窮層では肉体的・精神的に負担を感じている割合が高いことがわかりました。このうち健康状態が「あまりよくない」、「よくない」と回答した割合は、困窮層の保護者で20%前後に上り、一般層の5%前後を大きく上回っています。

 また、困窮層では、60%前後の保護者が「心理的なストレスを感じている」と回答し、20%前後の保護者がより深刻な状態にあることがわかりました。

 子供の貧困対策を巡っては、4年前の2013年、国や自治体に対策を義務付ける法律が成立し、各地で実態調査や支援の取り組みが始まっています。

 東京都では、今年度から学習支援や食事の提供など、子供の居場所作りに取り組む自治体に対する財政支援や、父子家庭や母子家庭に専門の職員を派遣して生活をサポートする取り組みなど支援を本格化させています。

 一方、今回の調査では、こうした支援サービスが困窮層の家庭に十分に認知されていないことも明らかになっています。このため東京都は、専任の職員を配置して、貧困対策に取り組む都内の市区町村への財政支援を新年度から新たに始めることにしており、困窮する家庭を早期に発見し、必要とする支援を確実に届けられる仕組み作りを急ぐことにしています。

 2017年2月24日(金

 

■2030年の平均寿命、男女とも韓国がトップ 女性は世界初の90歳超と予測、イギリスで研究

 イギリスの大学のインペリアル・カレッジ・ロンドンと世界保健機関(WHO)の研究チームは22日までに、日本や欧米諸国、新興国など35カ国を対象にして、2030年時点に予想される平均寿命の国別ランキングをイギリスの医学誌ランセットに発表しました。

 それによると、トップは男女ともに韓国で、女性90・82歳、男性84・07歳。韓国の女性が世界で初めて、平均寿命で90歳を超えるとみられることが、明らかになりました。研究を主導したインペリアル・カレッジ・ロンドンのマジド・エザーティ教授は、「かつては90歳が平均寿命の上限と考えられていたが、その壁を越えられることが示された」と指摘しました。

 今回の研究は、35カ国の将来の平均寿命を予測するために、それぞれ異なる21種類の数学モデルを組み合わせ、過去の傾向を分析しました。この方法だと、乳幼児死亡率、喫煙率、医療面での進展度、肥満のパターンなど、平均寿命に影響するさまざまな要素をすべて間接的に考慮できるといいます。

 女性のトップ5カ国は韓国、フランス、日本、スペイン、スイス。男性のトップ5カ国は韓国、オーストラリア、スイス、カナダ、オランダ。

 日本は女性が88・41歳で3位、男性は82・75歳で11位。女性の平均寿命は現在世界トップとなっていますが、研究によると韓国とフランスに抜かれるといいます。一方、男性の平均寿命は現在世界第4位ですが、11位になる見込みで、他国の順位上昇や食生活の変化などを理由に順位を下げると予測されています。

 研究によると、韓国の長寿は喫煙率の低さや保健医療へのアクセスの高さ、幼少時の十分な栄養摂取、肥満率の低さなどが要因となって、順位上昇につながりました。

 アメリカは韓国とほぼ逆で、2030年時点に予想される平均寿命は、先進国中で最も短い女性83歳、男性80歳で、女性87歳、男性81歳のチリに抜かれ、メキシコやクロアチアと同水準。国民皆保険が達成されていないことや肥満率の高さなどが背景にあるとみられ、エザーティ教授は、「アメリカ社会は国全体の平均寿命が影響を受けるほど非常に不平等で、国民皆保険制度がない唯一の国でもある。さらに、身長の伸びが最初に止まった国でもあり、それはつまり幼年期の栄養について何かを物語っている」と指摘しました。

 イギリスの平均寿命は、2015年から2030年の間に、女性が83歳から85歳へ、男性が79歳から82歳へ、それぞれ延びるとみられています。

 また、研究では、2030年には人はより長生きするようになり、平均寿命の男女差はほとんどの国で縮み始めるだろうと予測しています。

 エザーティ教授は、「平均寿命が長くなる理由の多くは、幼年期の死亡件数の減少というより、65歳以上の人たちの生活の改善によるものだ」と説明し、男女差の縮小については「昔から男性の生活スタイルはより不健康で、喫煙や飲酒をしたし、交通事故や殺人も多かったため寿命がより短くなった。しかし生活スタイルが男女ともに近いものになるにつれ、平均寿命も同様に近くなる」と述べています。

 2017年2月23日(木

 

■インフルエンザウイルス抑制、梅酢ポリフェノールで特許取得 和歌山県田辺市など

 梅産地の和歌山県田辺市とJA紀南は22日、梅干しを作る際に出る梅酢から抽出した「梅酢ポリフェノール」の抗インフルエンザウイルス作用を生かした医薬品や食品の製造について、特許を取得したと発表しました。商品化を視野に、臨床試験も始まっています。

 22日、研究を主導したメンバーである和歌山大学食農総合研究所の三谷隆彦客員教授と和歌山県立医科大学の小山一・博士研究員が、田辺市役所で特許内容を説明しました。

 梅酢ポリフェノールは微量で、A型インフルエンザウイルスの増殖を抑制し、感染力を弱める作用があります。人体への安全性も高く、すでに工業レベルで大量に製造する方法が確立されており、うがい薬、消毒薬、機能性食品、食品添加物、化粧品などへの利用が考えられるといいます。

 三谷客員教授らは、渋味や苦味がある梅酢ポリフェノールをうがい薬に活用するため、摂取しやすいように改良を加えて、2015年11月に顆粒(かりゅう)剤に加工。2015年12月~2016年4月に16歳以上65歳までの約30人を対象に、人体への安全性を調査し、異常は出ませんでした。

 臨床試験は、昨年12月から始めました。約300人に1日3~5回、60日間、顆粒剤を水で溶かしてうがい液として使用したり、そのまま口で溶かしたりしてもらい、インフルエンザやかぜ症候群をどの程度予防できるか調べています。

 臨床試験は、和歌山県みなべ町の東冬彦医師の主導で進められており、試験結果は今秋に判明する見通し。

 2017年2月23日(木

 

■海外からの患者に推奨する28病院を選定 東京都内が最多の13カ所

 2011年に経済産業省の支援を受けて設置され、国内の医療機関への外国人患者の受け入れ支援や日本の先進医療の認知度向上などを進める一般社団法人「メディカル・エクセレンス・ジャパン」(東京都千代田区)は、日本への渡航受診を希望する海外の患者に推奨する「ジャパン・インターナショナル・ホスピタルズ」(日本国際病院)に、28病院を選んだと発表しました。

 東京大学医学部付属病院など東京都内が最多で、13カ所。地方からは北斗病院(北海道)、仙台厚生病院(宮城県)、千葉大学医学部附属病院(千葉県)、聖隷浜松病院(静岡県)、藤田保健衛生大学病院(愛知県)、福岡記念病院(福岡県)、米盛(よねもり)病院(鹿児島県)などが選ばれました。

 昨年7月から公募し、渡航受診患者の受け入れ実績や担当部署の設置などを基準に選定しました。外国人患者が28病院のリストから診療科など、希望の条件に応じて検索できる英語のウェブサイトも開設しました。このウェブサイトでは、ビザの取得や通訳の手配をする渡航支援企業も案内し、スムーズな受け入れを図っています。

 政府は、富裕層を中心に「医療ツーリズム」の訪日客を中国やロシアなどから呼び込み、日本の医療の国際的な評価を高めて経済成長につなげたい考え。メディカル・エクセレンス・ジャパンは、ジャパン・インターナショナル・ホスピタルズの公募を現在も継続しており、推奨病院は追加していきます。

 2017年2月23日(木

 

■まつげのエクステや付け爪の接着剤で皮膚炎の恐れ 東京都が注意呼び掛け

 人工のまつげを付け足す「エクステンション(エクステ)」や「付け爪」で使う市販の接着剤の一部から、皮膚炎などの原因となる化学物質のホルムアルデヒドが検出されたとして、東京都が注意を呼び掛けています。

 業務用や海外製品をインターネットなどで手軽に入手できるようになり、知識がないまま自己流で施術すると健康被害の恐れもあるとしています。

 東京都によると、接着剤から検出されるホルムアルデヒドの量などを規制する法律は「付けまつげ」用には家庭用品規制法があるものの、エクステンションや付け爪用にはありません。体に使用する接着剤全般では、成分表示への法規制もないといいます。

 東京都消費生活総合センターにはエクステンションに関して、「接着剤の揮発成分が目に染みて充血した」「涙が止まらなくなった」との相談が寄せられました。付け爪に関しては、「爪の周りがはれ、白いカビ状のものが出た」「爪が黄ばんだ」との相談がありました。

 このため、エクステンション用と付け爪用の接着剤を10商品ずつ購入し、揮発成分を調べた結果、すべての商品からホルムアルデヒドを検出。接着剤に水分などが付いた時に溶出したり、接着剤が固まる時などに空気中に放散したりするホルムアルデヒドを始めとする化学物質が、目や爪、その周辺の皮膚に接触したり、吸い込まれることによって影響を与え、危害の一因となる恐れがあるとわかりました。

 また、ホルムアルデヒドを放出する化学物質など含有成分の表示が全くない商品も、ありました。東京都は、エクステンション用と付け爪用の接着剤を始めとした体に使用する接着剤について、法規制によって成分などの表示の適正化を図るよう消費者庁に要望しました。

 東京都は皮膚科医、眼科医の見解や調査結果を踏まえ、「何か異常を感じたら、直ちに使用を中止して、接触した部分を水で洗い流し、医療機関を受診して、エクステやつけ爪などを行ったことを医師に告げてほしい」と指摘し、「成分の表示がない商品の購入は控え、エクステは美容師の施術を受けるように」と促しています。

 2017年2月22日(水

 

■ウオーキングでポイントためて、トクホ飲料と交換 自販機のスマホ連動が増加

 サントリー食品インターナショナルは、同社の飲料の自動販売機を設置している企業で専用のスマートフォンアプリと自販機を連動させ、社員の健康増進に役立ててもらうサービス「グリーンプラス」を昨夏から展開しています。毎日歩くなど健康的な生活をするとポイントがたまり、自販機でサントリーの特定保健用食品(トクホ)飲料に交換できます。

 社員の健康に経営者が責任を持つ「健康経営」に関心が高まる中で、「多くの企業に自販機を設置し、トクホ飲料のラインアップが多い当社として貢献したいと考えた」と、システムを開発したサントリービバレッジソリューションの岡本宏之事業開発部課長は狙いを説明しています。

 専用のスマートフォンアプリをダウンロードすると、歩いた歩数をスマホが感知。健康増進に効果があるとされる1週間の目標歩数である男性約6万4000歩、女性約5万8000歩を達成すると、5ポイントたまります。また、対象の自販機でトクホ飲料を1本買うと5ポイント、それ以外の商品なら1ポイントが付きます。

 1ポイントを1円として、トクホ飲料に交換できます。自販機の商品の価格は設置している企業によって違う場合がありますが、190ポイントためれば190円の商品を1本飲めます。

 専門メーカーが開発した近距離通信用の無線機器を自販機に組み込んでいて、昨年夏にIT大手のSCSKに先行導入。トクホ飲料をよく飲む人ほど、日常的に多く歩いている傾向がうかがえました。

 1月末時点で首都圏中心に約80社の約1000台にシステムを導入しており、今夏までに500社の自販機にシステムを導入する計画です。

 日本コカ・コーラも、専用のスマートフォンアプリをダウンロードして飲料を購入すると、ポイントがたまるスマホ連動自販機を開発して、繁華街や企業内を中心に設置しています。キリンビバレッジも、飲料を購入すると自分を撮影でき、写真をLINEで受け取れるカメラ付き自販機を開発し、設置を進めています。

 コンビニエンスストアで飲料を買う人が増え、自販機の設置台数は頭打ちですが、飲料各社は1台当たりの販売量を増加させるため、スマホを活用して集客力を高める考えです。

 2017年2月22日(水

 

■中国で鳥インフルエンザの人への感染が拡大 1月に79人が死亡し、2月も8人が死亡

 中国で鳥インフルエンザウイルスの人への感染が拡大しています。中国の衛生当局によると、今年1月にH7N9型の鳥インフルエンザウイルスへの感染が確認された人は192人に上り、そのうち79人が死亡しました。2月も17日の段階で77人が感染し、8人が死亡したといいます。

 人における鳥インフルエンザウイルスへの爆発的感染は、2013年に中国で初めて確認されて以降、毎年冬から春にかけて新たな感染者が出る状況です。今年は鳥インフルエンザウイルスによる死者数が、この4年間で最高となるペースで増えており、香港衛生署衛生防護センターによると、昨年11月以降で少なくとも355人の感染が確認されたといいます。

 鳥インフルエンザウイルスは、生きている鳥や殺処理したばかりの鳥と密接に接触することで、人に感染する可能性が生じます。専門家からは、鳥インフルエンザウイルスが突然変異を起こし、人から人への接触で感染しやすくなる可能性が指摘されています。

 中国の農村や小都市では、多くの家庭でニワトリやカモ、ガチョウを飼育しており、近ごろ死亡した20歳代の女性とその娘も、生きている鳥に接触していたといいます。中国の国家衛生・計画生育委員会は、すでに中国東部、南部、南西部の一部地域で生きた家禽(かきん)類の販売を禁止し、東部の浙江省ではすべての家禽市場の閉鎖を命じました。

 中国では2003年に重症急性呼吸器症候群(SARS)が流行した際に、当局による爆発的感染の隠匿が発覚、市民の政府に対する信用を著しく損ねて以降、政府が伝染病の監視体制を強化しています。重慶市では2月17日に「鳥インフルエンザが見付かった」とのデマを流布した3人が、湖北省でも同様のデマを流したことで女性1人が、それぞれ警察に逮捕されています。

 こうした中、世界保健機関(WHO)は「現時点では人から人への持続的な感染が起きているという証拠はない」として、渡航の制限などを求めていませんが、各国に対し監視の徹底を呼び掛けるとともに、渡航者に対しても、感染が報告された地域で生きている鳥を扱う市場などにできるだけ近付かないことや、手洗いなどの対策を徹底するよう呼び掛けています。

 2017年2月22日(水

 

■アンチエイジング目的、臍帯血幹細胞を無届け投与 埼玉のクリニックに停止命令

 国への届け出をせず、アンチエイジングなどを目的に他人の臍帯(さいたい)血幹細胞を投与する治療を行ったとして、厚生労働省は20日、埼玉県所沢市の「埼玉メディカルクリニック」に対し、再生医療安全性確保法に基づき投与の一時停止を命じました。2014年の法施行後、停止命令は2回目。

 出産時のへその緒に含まれる臍帯血には、さまざまな種類の細胞の元になる幹細胞が含まれています。美容などを目的にした自由診療で、他人のこうした細胞を投与する場合は、再生医療安全性確保法で最もリスクの高い「第1種」に位置付けられ、国に計画を届け出て安全性の確認を受けた後に実施できます。

 厚労省には以前から、同様の治療が無届けで各地で行われているとの情報が寄せられていました。実際に確認されたのは、今回が初めて。

 厚労省は、外部からの情報提供を受け、今月17日、埼玉メディカルクリニックへの立ち入り検査を実施。2015年12月から現在までに、美容や健康増進などに効果があると宣伝し、男女8人に1回ずつ治療を行ったことがカルテなどから確認されました。

 副作用による健康被害の有無や、使用した臍帯血幹細胞の入手先は確認できなかったため、2週間以内に報告するよう求めました。

 厚労省によると、臍帯血幹細胞の静脈注射によるアンチエイジング効果は、科学的に証明されていません。

 2017年2月22日(水

 

■温熱敷布団の未回収品が発火し、男性がやけど 厚労省が注意呼び掛け

 発火の恐れがあるとして回収対象となっている家庭用温熱・電位治療器(温熱敷布団)から火が出て男性がやけどを負ったとして、厚生労働省は21日、使用者に注意を呼び掛けました。製品による出火でけが人が出たのは初めてといいます。

 厚労省によると、昨年12月末、東北地方の住宅で高齢女性が就寝中に使用中していた温熱敷布団「BLさわやかヘルシー」(一般的名称:組合せ家庭用電気治療器)から出火し、火を消そうとした家人の男性が手足にやけどを負いました。同製品を販売していたブリヂストン化成品(東京都中央区)は2010年から、発煙、発火の恐れがあるとして類似9製品とともに製品の自主回収を行っています。

 ブリヂストン化成品によると、「BLさわやかヘルシー」や「モアヘルス」「バランス」などの温熱敷布団10製品は、敷き布団の中にシート状の発熱体が入っており、頭痛や肩凝りに効くとして、1987年から1998年にかけて、計約2万5500枚が販売されました。

 しかし、間違った使い方を続けたり経年劣化したりするなどによって、本体内部の発熱体にシワやずれが生じてしまいがちで、異常発熱して発煙、発火に至る恐れがありました。2008年までに小さな焦げが製品にできるといった苦情が34件寄せられたため、2009年12月からウエブサイトや新聞広告を通じて注意を呼び掛けていましたが、2010年3月に茨城県常陸太田市内で内部の発熱体の異常により製品の一部が焼けるという事故が発生したことから、火災につながる危険も出てきたと判断し、同年4月から自主回収を進めていました。

 約85%は回収済みといい、未回収品は約1300枚とみられます。販売以降これまでに61件の異常発熱が報告されており、現在、「BLさわやかヘルシー」など10製品は販売されていません。

 問い合わせは平日午前9時~午後5時、ブリヂストン化成品フリーダイヤル(0120)557998。

 2017年2月21日(火

 

■「健幸都市連合」発足、全国80自治体が参加 健康増進を進める取り組みを共有

 東京都荒川区や新潟県見附市など全国80の自治体は20日、住民の健康づくりで協力し合う初めての全国的な組織「日本健幸(けんこう)都市連合」を発足させました。後発医薬品の普及や医療機関と連携した糖尿病の重症化予防などで、効果的な取り組みを共有し、高齢化などで増え続ける医療費の抑制を目指します。

 80自治体はほかに、茨城県取手市、さいたま市、岐阜市、大阪府枚方市、岡山市、広島市などで、同日、東京都内で発足式を開催。超高齢化社会の到来を前に、住民が健やかで幸せに暮らせる地域社会の実現を重要な政策課題と位置付け「健幸都市」を目指すとしました。

 同連合の代表幹事の一人である西川太一郎・東京都荒川区長が、「健康寿命の延伸を軸に、住民の暮らしを支える持続可能な社会保障制度が必要」とあいさつ。加藤勝信・1億総活躍相は、「勤労世代の健康増進、健康な高齢者の社会参加が、医療費抑制や経済成長につながる」と期待しました。

 また、代表幹事の一人である取手市の藤井信吾市長は、「科学的に裏付けがある健康増進施策をスピーディーに展開していく」と意気込みを語りました。

 同連合は具体的な取り組みとして、住民の健康づくりを目的とした自治体の先進的な施策を集め、7月に「健幸取り組み100選」を公表します。各自治体のリーダーを集めた勉強会なども開いて意見交換して、新たな施策を検討します。さらに、リーダー的な役割を果たす職員同士の交流会や研修会を開いて、歩きやすい街づくりなどのノウハウを共有します。

 背景には、超高齢化社会で医療費の増大が課題となる一方、2020年東京大会・パラリンピックが決まりスポーツへの関心が高まる中、健康づくりによる医療費の抑制効果が、最近の調査で実証されたこともあり、さまざまな取り組みを自治体が連携しながら全国に広げようという狙いがあります。

 同連合によると、80自治体に加えて現在、40~50の自治体が参加を検討しているといい、内閣官房や厚生労働省、国土交通省、スポーツ庁、専門家などとも連携します。

 2017年2月21日(火

 

■コエンザイムQ10の効能解明、運動機能や記憶を活性化 福井県立大学が確認

 老化防止や疲労回復に効果があるとされる物質「還元型コエンザイムQ10(CoQ10)」をマウスに与えると、脳の記憶や運動に関係する部位に還元型CoQ10が増えることを、福井県永平寺町の福井県立大学の研究チームが実験で確認し20日、永平寺キャンパスで発表しました。

 還元型CoQ10は、サプリメント(健康補助食品)の成分として使われていますが、摂取後の具体的な作用はわかっていませんでした。アルツハイマー病やパーキンソン病などの治療薬研究に、応用が期待できる成果といいます。

 福井県立大学生物資源学部の平修准教授(41歳)、同学部4年の龍田幸奈さん(22歳)を中心とする研究チームで、龍田さんは成果を卒業論文にまとめました。すで日本質量分析学会などで発表しており、海外の化学誌にも今後投稿します。

 分子の重さ(分子量)から、特定の物質がどの場所にどの程度あるかを視覚的に調べる「イメージング質量分析」という手法を活用。1匹当たり20ミリグラム程度の還元型CoQ10を2週間与えたマウスと、与えていないマウスを比較しました。運動機能に関する小脳や前脳基底部、情報や記憶に関する脳梁、生命維持に関する脳幹などで、還元型CoQ10が増えており、脳全体では約8倍の差がありました。

 還元型CoQ10が増えた部位の機能の活性化が、期待できるといいます。

 今回は比較的若いマウスを使っており、今後は老齢のマウスやパーキンソン病のマウスでの検証を進めます。平准教授は、「脳内で還元型CoQ10が存在する場所はこれまでわかっていなかった。今回の実験で明らかにできたのは非常に大きな発見」と強調しました。

 龍田さんは4月から、福井県立大学の大学院で研究を続けるといい、「創薬の可能性につながる成果が出てうれしい。小さな発見かもしれないが、脳の病気で困っている多くの人に生きる希望を持ってほしい」と話しました。

 2017年2月21日(火

 

■別居中の妻、凍結受精卵を無断で移植し出産 東京都の夫、親子関係で大阪家裁に提訴

 夫婦関係が事実上、破局していたのに、妻が夫の同意書を偽造して凍結保存中の受精卵の移植を受け、子供を産んだのは苦痛だとして、夫が昨年12月20日付で、子供との法的な親子関係を認めないよう求める訴えを大阪家庭裁判所に起こしたことが明らかになりました。

 一方、妻側は大阪家庭裁判所に出した書面で、「夫には受精卵の移植を受けると伝えていて同意書は代筆した」と主張し、訴えを退けるよう求めています。

 訴えを起こしたのは、東京都内に住む40歳代の会社員の男性で20日、男性の代理人の弁護士が大阪市内で記者会見しました。

 訴状などによりますと、男性は現在、大阪市内に住む40歳代の妻と、事実上、夫婦関係が破局し2014年4月ごろに別居しましたが、その前から妻に「夫として子供をつくる責任を果たしていない」と責められ続けたということです。

 男性は、体外授精を行っても受精卵の移植に同意しなければ子供は生まれないと考え、妻の気持ちを治めようと2013年から東京都内のクリニックで不妊治療を始め、体外授精に協力して受精卵は凍結保存されましたが、妻は夫の同意書を偽造して2015年4月に医師に提出したということで、受精卵の移植後、2016年1月に女の子が生まれたということです。

 民法では「婚姻中に妊娠した子は夫の子と推定される」と規定されており、女の子は男性の長女として戸籍に記載されています。

 男性は、同意なく出産され、養育費などを強要されるのは苦痛だとして、子供が嫡出(ちゃくしゅつ)子でないことを確認するよう、大阪家庭裁判所に訴えたということです。

 男性の代理人の若松陽子弁護士は、「同意書の偽造は言語道断で、医師も男性に直接、確認せずに移植を進めていて重大な責任がある。かわいそうなのは生まれてきた子供だ」と述べ、東京都内のクリニックに対して裁判を起こすことも検討していると明らかにしました。

 一方、夫婦の受精卵の移植手術を行った東京都内のクリニックは、「裁判が始まっている以上、こちらからはコメントできない」と話しています。

 生命倫理に詳しい東京財団の橳島(ぬでしま)次郎研究員は、「これまで国の委員会などでは、第三者からの卵子や精子提供について、問題が議論がされてきたが、夫婦間でも問題は起こり得る。一番不利益を被るのは生まれてきた子供で夫婦関係に問題がある場合、生殖補助医療をどうするのか法整備を含めて検討していく必要があるのではないか」と話しています。  

 受精卵の移植手術では、ほかにも裁判になるケースが出ています。奈良県では40歳代の男性が、別居中の妻が無断で受精卵の移植を受けて出産したのは納得できないとして、子供との親子関係を認めないよう求める裁判を起こし、移植手術を行ったクリニックに対しても移植への同意の有無を確認しなかったとして裁判を起こしています。

 2017年2月20日(月

 

■マルコメ、即席みそ汁145万袋を自主回収 外袋に異物混入

 長野市に本社がある食品メーカー「マルコメ」が製造・販売する即席みそ汁の外袋の中に、製造過程で使うシリコンゴム製の吸盤が混入している可能性があることがわかり、マルコメは20日、対象商品約145万個の自主回収を始めました。

 自主回収を始めたのは、マルコメが製造・販売している即席みそ汁で、「料亭の味みそ汁12食」、「料亭の味みそ汁減塩12食」、「料亭の味みそ汁減塩60食(12食×5袋入り)」、「料亭の味みそ汁12食輸出用」、「料亭の味みそ汁減塩12食輸出用」の約138万個と、ローソンで販売している「ローソンセレクト減塩みそ汁12食」の約7万個の6商品・計約145万個です。

 いずれも2016年12月26日~2017年2月17日に製造されたもので、輸出用の2商品は賞味期限が2017年12月24日〜2018年2月4日のものが、それ以外の商品は2017年6月24日〜2017年8月12日のものが対象となります。

 マルコメによりますと、19日夕方、製造工程で使われる直径2センチ、厚さ5ミリの乳白色のシリコンゴム製の吸盤16個がなくなっているのが見付かり、商品の外袋の中に混入した可能性があるということです。みそや具材の入った小袋に混入した可能性はなく、品質に影響はないとしています。

 これまでに健康被害の報告はないということです。

 マルコメは対象商品を店舗などから回収するとともに、すでに消費者が購入した分も商品を着払いで送付すれば、後日商品の代金を返金するということです。問い合わせは「マルコメお客様相談室」で受け付けており、電話番号は0120ー003ー576です。 

 2017年2月20日(月

 

■食物アレルギーの新しい治療法に注目集まる 医師の指導で行う経口免疫療法

 20日は、日本アレルギー協会が1995年から制定している「アレルギーの日」です。子供に多い食物アレルギーでは、専門の医師の指導の下で行う新しい治療法が注目されています。

 食物アレルギーは、アレルギーのある食べ物を食べた時に発症し、湿疹やおう吐、呼吸困難などを引き起こして、最悪の場合は、死亡することもあります。専門家によりますと、患者数は、1歳未満の子供の10人に1人に上ると見なされています。

 最近注目されている新しい治療法は、アレルギーのある食べ物をあえて食べさせることで、耐性を身に着けさせる「経口免疫療法」(経口減感作療法)です。子供がアレルギー反応を起こさない量を見極めた上で、症状に合わせて1グラムに満たないようなわずかな量を毎日決まった時間に食べさせ、定期的に検査で耐性が着いたかどうか確認しながら、食べる量を徐々に増やしていきます。

 子供が誤って耐性を超える量を口にすると、激しいアレルギー反応を起こしてしまうため、必ず専門知識を持った医師の指導の下で行わなければなりません。

 日本国内では2008年、神奈川県立こども医療センター(横浜市南区)が、卵アレルギー患者に経口免疫療法を行った成功例を日本アレルギー学会で発表し、注目が集まりました。前後して、海外でも成功例が多く報告されました。

 この経口免疫療法に取り組んでいる国立病院機構相模原病院(神奈川県相模原市)の海老澤元宏医師によりますと、全国の医療機関のうち、およそ100施設で行われているということで、食べる量を増やすペースなど手法は各施設によって違います。

 海老澤医師は、「インターネットのさまざまな情報をうのみにして、誤った対応をしてしまう保護者も多いので、専門の医療機関を受診するよう呼び掛けるとともに、かかりつけ医と連携して、適切な治療に結び付ける仕組みを作る必要がある」と指摘しています。

 15歳の娘が専門の医師の下で経口免疫療法を受けている東京都内に住む40歳代の母親によると、娘は生後3カ月の時に体調を崩して近所のかかりつけ医を受診し、卵や肉、魚など、さまざまな食べ物のアレルギーがあると診断されました。この際、医師からはアレルギーのある食材を避けるよう指導されましたが、検査では、どの食材にアレルギー反応が出るのか、すべては特定できなかったということです。

 このため娘が食べた食材を毎日記録して、どの食材にアレルギー反応が出るのかを調べた上で、それを娘が口にしないよう細心の注意を払ったといいます。しかし、目を離したすきに、自分で口に入れてしまうなどしてたびたびショック状態に陥り、呼吸困難になって救急車で搬送されたこともあったということです。

 現在は、経口免疫療法を受けて、食べられる食材が徐々に増えてきているということです。

 母親は、「当時は、治療ができる医療機関があることもわかっていなかった。どれだけ気を付けても子供がアレルギーを起こしてしまうので、精神的に疲れ果ててしまい、『もうこの子は食べられなくてもいい、こういう人生なんだから』と諦めてしまっていた。娘の食物アレルギーが、さらに改善することを願うとともに、こうした治療法がどの医療機関でも受けられるようになってほしい」と話しています。

 2017年2月20日(月

 

■東京23区内の妊産婦自殺、10年間で63人 政府が支援へ乗り出す

 政府は、産後うつなどによる妊産婦自殺の対策に本腰を入れて乗り出します。現在見直し中の「自殺総合対策大綱」に妊産婦に対する支援を新たに盛り込み、実態把握も進めます。

 出産時の出血による死亡などよりも自殺が多いという調査もあり、対策を求める声が上がっていました。

 妊娠出産時は、ホルモンバランスや環境が急激に変化する時期に相当し、精神面の不調を来しやすくなります。不眠や意欲の低下が起こる産後うつは、産後女性の10%~15%に起こるというデータもあります。精神疾患を持つ女性も、胎児や乳児への影響を懸念し、自己判断で服薬を中止するなどして、再発や悪化の恐れがあります。

 日本産科婦人科学会などの調査依頼に基づき、東京都監察医務院と順天堂大学が行った調査で、2005年〜2014年までの10年間で妊娠から産後1年以内に自殺で亡くなった女性は、東京23区内だけで63人いたことが判明。このうち産後は40人で、5割が産後うつなど精神疾患の診断を受けていました。

 出生10万人当たりの妊産婦の自殺数は8・7人で、東京23区内の出血などによる産後42日未満の死亡数3・9人を上回っていました。

 ただ、これまで全国的な調査はなく、詳しい実態は把握されていませんでした。

 厚生労働省は妊産婦死亡に関する今年分の統計から、産後うつなどによる自殺者も加えます。医師が記載する死体検案書などから、自殺者数を把握します。

 妊産婦自殺対策を巡っては、心の不調を訴える妊産婦専用の大阪府の電話相談、産後の母の心の状態を確かめる長野市の家庭訪問など、自治体レベルの支援が始まっています。

 政府は、こうした先進的な取り組みに着目し、今夏にまとめる新しい自殺総合対策大綱に、母子保健事業と連携した妊産婦支援の重要性を初めて盛り込みます。

 日本産科婦人科学会周産期委員長の竹田省(さとる)順天堂大教授(産婦人科学)は、「産後うつなどの精神疾患は、放っておくと本人の自殺や児童虐待につながる。リスクのある人を早く見付け、行政などを交えて支援することが大切だ」と話しています。

 2017年2月20日(月

 

■ゲノム編集の特許はハーバード大などの側に アメリカの特許商標庁が決定

 アメリカの特許商標庁は16日までに、遺伝情報を持つDNAを自在に書き換えられる「ゲノム編集」の新技術について、ハーバード大学とマサチューセッツ工科大学が共同で設立したブロード研究所が特許権を持つとする決定を出しました。

 先に論文を発表したカリフォルニア大学バークリー校のジェニファー・ダウドナ教授らが特許を認めた特許商標庁に異議を申し立て、再審査されていましたが、認められませんでした。

 この特許は、2012年にダウドナ教授と共同研究者のエマニュエル・シャルパンティエ博士(現、ドイツのマックス・プランク感染生物学研究所長)らが論文で発表し、ゲノム編集で最も普及している「CRISPRーCas9」(クリスパー・キャス9)という技術に関するもの。科学的な発見は基本的な仕組みを最初に開発した2人によるものと見なされているものの、巨額の利益につながる特許競争では先を越された形となりました。

 アメリカのメディアによると、ダウドナ教授側は連邦控訴裁判所に訴えることを検討しているといい、ゲノム編集の特許を巡るアメリカを代表する研究機関同士の争いは今後も続く見通しです。

 ダウドナ教授らは、論文発表に併せて特許申請をしましたが、2014年に特許を取得したのはライバル研究者だったブロード研究所のフェン・ジャン博士ら。ダウドナ教授らが細菌のDNAを対象にした研究だったのに対し、ジャン博士らは2013年に発表した論文で、マウスやヒトの細胞にもクリスパー・キャス9が使えることを示し、特許を申請していました。

 クリスパー・キャス9は、従来の技術より簡単で精度が高く、コストも安いことから急速に広まっています。農作物の品種改良や創薬、医療などに幅広く応用でき、特許を持つ大学や研究所は、数百億ドル規模の収入が見込めるという報道もあります。

 2017年2月20日(月

 

■iPS細胞やES細胞から1週間で神経細胞を作製 慶大が成功   

 慶應義塾大学は2月14日、iPS細胞(人工多能性幹細胞)やES細胞(胚性幹細胞)から1週間で、90%以上という高い効率で神経細胞を分化させる「細胞分化カクテル」の開発に成功したと発表しました。

 成果は、慶大医学部システム医学教室の洪実(こう・みのる) 教授、生理学教室の柚崎通介(ゆざき・みちすけ)教授の研究チームによるもので、2月13日付けのイギリスのオンライン科学雑誌「サイエンティフィック・リポーツ」に掲載されました。

 現在、体細胞に由来するiPS細胞や、胚盤胞に由来するES細胞から、人の体を構成するさまざまな細胞を培養皿の上で分化させ、それを再生医療での細胞移植の材料にすることや、病気や個人に合う薬の探索に活用することが試みられています。従来は、iPS細胞やES細胞から胚様体と呼ばれる細胞塊を作り、培養条件を順次変えていくことで、徐々に細胞を分化させていく方法が主流でした。このような方法は、手間やコストがかかるだけでなく、場合によっては1カ月以上という長期の複雑な培養が必要であるといった課題がありました。

 今回、研究チームが開発したのは、神経細胞の遺伝子発現調節にかかわる5つの転写因子が試験管内で合成された伝令RNA(リボ核酸)の形で入っている細胞分化カクテルで、単層培養されているiPS細胞やES細胞に数回添加するだけで、神経細胞の分化を1週間で誘導できるというもの。

 実験では、1週間目に培養皿上の90%以上の細胞が神経突起の密なネットワークを形成し、電気刺激に反応できる機能的な神経細胞となっていました。また、運動神経に特異的なマーカーを発現しており、運動神経への分化が強く示唆されていたといいます。

 研究チームは、細胞分化カクテルについて、細胞のゲノムDNAに傷を付けないことに加え、人為的な細胞操作の跡を残さないという点で、より安全な細胞分化方法として将来の治療への展開が期待されるほか、量産可能なため、再生医療での細胞移植や新薬の探索に必要とされる大量の神経細胞を簡単に作ることができるものと説明しています。

 具体的には、神経細胞の異常で起こるさまざまな病気、特に全身の筋肉が衰える筋委縮性側索硬化症(ALS)などの運動神経病の患者から作製されたiPS細胞を、培養皿の上で神経細胞に分化させることで、新薬の開発、病態解明に役立つことが期待されます。また、簡単に高品質の神経細胞を作ることができるので、神経生物学の研究にも役立つことが期待されます。

 2017年2月19日(日

 

■医薬品買い取り時の身分確認、卸売り販売業者に義務化 厚労省、偽のC型肝炎治療薬の流通を受け

 高額なC型肝炎治療薬「ハーボニー配合錠」の偽造品が奈良県や東京都内で見付かった問題を受け、厚生労働省は16日、医薬品の卸売り販売業者に対して、買い取りの際の身分確認と連絡先などの記録を義務付ける通知を出しました。今後、罰則のある医薬品医療機器法(薬機法)の改正も検討します。

 こうした規制強化で、今回の問題発覚前から確立されていて、出所が不透明な薬が売り買いされる「裏ルート」の一掃を図ります。

 薬機法には、薬局開設者と医薬品販売許可を受けた者以外の医薬品の販売を禁じ、違反には懲役3年以下または罰金300万円以下の罰則があるものの、買うことを禁じる直接の規定はありません。また、薬機法施行規則には、卸売り販売業者や薬局に取引相手の氏名の記録を義務付けているものの、身分確認までは求めていません。

 こうした法令の透き間を縫って、販売許可を持たない医師や患者ら個人から薬を「秘密厳守」で安価で買い取り、市場に乗せて利ざやを稼ぐ商売が成り立っており、医師の横流しによる医療機関の裏金作りの温床になっていると指摘されてきました。

 ボトル15本が見付かっているハーボニーの偽造品も、医薬品を即金で買い取る「現金問屋」と呼ばれる卸売り販売業者が面識のない取引相手から仕入れ、相手が名乗る名前を台帳にそのまま記入していました。本名でなかったとみられ、警視庁などが店舗に持ち込んだ複数の男女の行方を追っています。

 厚労省の通知は、継続した取引実績のある相手以外から買い取る際、身分証明書の提示を求めて本人確認すること、販売業の許可番号や連絡先なども記録に残すことを求めました。現金問屋による「秘密厳守」などをうたったネット広告の規制や、個人から買った側の罰則などは、今後、薬機法の改正を含めた議論の中で検討します。

 なお、ハーボニーを販売するギリアド・サイエンシズ(東京千代田区)は、3月1日から新パッケージ製品での出荷に切り替えます。従来の中身が見えないボトル包装から透明なシート包装に変わり、偽造品対策に有効だといいます。

 ハーボニーは、完治する可能性が極めて高いC型肝炎の画期的な治療薬として2015年9月に発売され、1日1錠、12週間内服します。1錠5万5000円と高額で、偽造品が流通した28錠入りのボトルの価格は約153万4000円。

 2017年2月19日(日

 

■トクホ許可後の品質管理を怠った日本サプリメントに、景表法違反で措置命令 消費者庁

 国から特定保健用食品(トクホ)の許可を受けながら、その後の品質管理を行わずにトクホと表示していたのは景品表示法違反(優良誤認)に当たるとして、消費者庁は14日、健康食品会社「日本サプリメント」(大阪市)に対し、再発防止策などを求める措置命令を出しました。

 トクホについて、景品表示法違反で処分するのは初めて。昨年4月施行の改正景品表示法に基づく課徴金制度の対象になるかどうかは、引き続き調査を続けます。

 消費者庁によると、日本サプリメントは遅くとも2011年8月以降、「ペプチドエースつぶタイプ」「豆鼓エキスつぶタイプ」など8商品について、有効成分に関する検査を行わずに、トクホとして新聞広告などで「血圧が高めの方に適した食品」と宣伝していました。いずれの商品も2001年~2005年にトクホの許可を受けていましたが、表示通りの有効成分が入っていないことも判明し、消費者庁はトクホの許可要件を満たしていなかったと判断しました。

 日本サプリメントは、「使用する原材料は許可申請事と同じ。成分に影響を与える変更は行っていない。品質管理も原材料の全ロットで有効性、安全性を確認しており、主張が認められなかったのは遺憾。命令の内容を精査して対応を検討する」と話しています。親会社のキューサイも、「処分は厳粛に受け止め、日本サプリメントをサポートする」とコメントしています。

 日本サプリメントに対しては昨年9月、トクホで有効成分が表示を大幅に下回っていたとして、1991年にトクホ制度が始まって以来初の許可取り消し処分を消費者庁が出しました。この処分を切っ掛けにトクホ全1271商品(当時)の調査を実施したところ、許可の取り下げが相次ぎ、1154商品にまで減っているといいます。

 一連の処分で、トクホ制度ではいったん許可すれば商品をチェックする仕組みがないことが、問題になっています。消費者庁は、第三者機関による有効成分の分析結果を年1回提出させるように改めたほか、店頭で一部の商品を買い上げて調べる抜き打ち調査も年度内に始め、違反行為があった場合は厳正に対処する方針。

 日本健康・栄養食品協会によると、トクホの年間の市場規模は2015年度で、6400億円に上ります。

 2017年2月17日(金

 

■インフルエンザ、流行のピークを過ぎる 46の都道府県で患者が減少

 今月6日~12日までの1週間に、全国の医療機関を受診したインフルエンザの患者は推計で151万人と2週連続で減少したことが、国立感染症研究所の調査で明らかになりました。

 専門家は「流行のピークは過ぎたとみられるが、依然、患者は多い。受験生や高齢者は特に対策を徹底してほしい」と注意を呼び掛けています。

 国立感染症研究所によりますと、今月12日までの直近の1週間に全国およそ5000の定点医療機関を受診したインフルエンザの患者は、1医療機関当たり28・57人で、これを基にした推計の患者数は151万人と前の週から48万人減り、2週連続の減少となりました。

 各地の流行状況を表す1医療機関当たりの患者数を都道府県別にみますと、高知県が最も多く41・63人、次いで福岡県が39・77人、大分県が38・55人、鹿児島県が38・31人、愛知県が38・03人、埼玉県が35・14人などとなっていて、秋田県を除く46の都道府県で前の週より報告が減少しています。年齢別にみますと、5歳~9歳が約26万人で最多、10歳~14歳が約20万人、0~4歳が約17万人。

 患者数の多い状態は依然、続いており、大きな流行が起きている恐れを示す警報レベルの「30人」を超える患者数の地域も、45の都道府県で出ています。

 国立感染症研究所の砂川富正室長は、「全国的な流行のピークは過ぎたとみられるが、依然、患者数の多い状態が続いている。シーズンの後半には、これまで主流のA型とは異なるB型のウイルスが増える傾向にあるので、受験生や高齢者などは特に手洗いやうがいを徹底してほしい」と話しています。

 一方、今月14日、東京都品川区のマンションの敷地で、インフルエンザを発症した中学2年の男子生徒が寝間着姿で倒れているのが見付かり、その後、死亡が確認されました。警察によりますと、男子生徒は4階の自宅の部屋から転落したとみられていますが、治療薬のリレンザを服用していたということです。

 これについて医薬品医療機器総合機構(PMDA)は、小児や未成年がインフルエンザにかかった場合には、少なくとも2日間は1人にしないよう注意を呼び掛けました。

 リレンザやタミフルなどインフルエンザの治療薬を巡っては、患者が服用後に走り出したり、暴れたりしたという報告がありますが、薬との因果関係はわかっていません。また、薬を服用していない患者でも、同じような行動が報告されています。

 この問題に詳しい川崎市健康安全研究所の岡部信彦所長は、「治療薬の種類や服用したかどうかにかかわらず、インフルエンザの患者が突然走り出したり、飛び降りたりする異常行動は毎シーズン確認され、昨シーズンも50件以上が報告されている。インフルエンザはそのような症状が起こり得る病気であることを理解し、子供を1人にしないよう注意を徹底してほしい」と呼び掛けています。

 2017年2月17日(金

 

■過度のスマホ使用を警告するポスター、全国の診療所で掲示へ 小児科医会と医師会 

 日本小児科医会と日本医師会は15日、「スマホを使うほど学力が下がります」と訴えて、過度のスマートフォンの使用を警告する「スマホ依存に対する啓発ポスター」を作製したと発表しました。

 約17万人の会員に送付し、全国の診療所などで掲示します。

 ポスターは、「スマホの時間 わたしは何を失うか」と問い掛け、「睡眠時間」「学力」「脳機能」「体力」「視力」「コミュニケーション能力」の6つを挙げて、それぞれ文部科学省のデータやイラストなどを使って解説。

 睡眠時間に関しては、「夜使うと睡眠不足になり、体内時計が狂います(脳が昼と夜の区別ができなくなります)」、学力に関しては、「スマホを使うほど、学力が下がります」、脳機能に関しては、「脳にもダメージが‼ 長時間使うと、記憶や判断を司る部分の脳の発達に遅れが出ます」、体力に関しては、「体を動かさないと、骨も筋肉も育ちません」、視力に関しては、「視力が落ちます(外遊びが目の働きを育てます)」、コミュニケーション能力に関しては、「人と直接話す時間が減ります」と警告しています。

 日本小児科医会は2004年にテレビや携帯用ゲーム、携帯電話などについて、「2歳までのテレビ・ビデオ視聴は控える」「メディアへの接触は合計1日2時間まで」「テレビゲームは1日30分まで」などの提言をまとめています。

 スマホもこれに準じて、過度な使用を控えるよう呼び掛けています。

  2017年2月17日(金

 

■がん患者全体の10年生存率は58%、5年生存率69%に上昇 国立がん研究センターが発表

 国立がん研究センター(東京都中央区)は、2000年~2003年にがんと診断された人の10年後の生存率は58・5%だったと16日付で発表しました。10年生存率の算出は昨年に続き2回目で、0・3ポイント上昇しました。

 2006年~2008年にがんと診断された人では、5年後の生存率が69・4%と判明。統計を取り始めた1997年の患者よりも、約7ポイント高くなりました。

 検診などによる早期発見の取り組みや、抗がん剤や放射線治療などがん医療の進歩が、生存率の向上につながったとみられます。

 国立がん研究センターは、「約10年以上前にがんにかかった人の生存率で、現在はさらに治療成績は向上している」と指摘。調査を担当した猿木信裕・群馬県衛生環境研究所長は、「10年生存率は今後も改善していくと期待できる」と話しています。

 10年生存率は、全国のがん専門病院など20施設で診断された4万5359人のデータを分析し、18種類のがんについてまとめました。患者の多い主ながんでは、胃がんの10年生存率は67・3%、大腸がんは69・2%、肝臓がんは16・4%、肺がんは32・6%でした。前立腺がんは94・5%、甲状腺がん89・3%と経過がよい一方、自覚症状がほとんどなく早期発見が難しい膵臓(すいぞう)がんは5・1%と低くなりました。

 がんの進行度を示すステージ別では、早期の「1期」と診断された人の生存率はすべてのがんを合わせ85・3%でしたが、リンパ節に転移するなど進んだ「3期」では40・9%に低下。早期に発見し治療を始めるほど経過のよいことが、改めて確認されました。

 部位別の生存率を5年後と10年後で比べると、胃がんや大腸がんはほぼ横ばいでしたが、肝臓がんは34・1%から16・4%に大きく低下。肝機能が悪化している患者が多く、がん以外にも長期の療養が必要となります。乳がんも89・3%から81・7%に下がっており、再発が背景にあるとみられます。

 部位別やステージ別、治療法別などの生存率は、「全国がん(成人病)センター協議会」(全がん協)のホームページhttp://www.zengankyo.ncc.go.jp/で公開されています。

 猿木所長は、「単純に生存率が高いか低いかだけではなく、診断から5年をすぎて生存率が顕著に下がるのは、どういったがんなのかもデータからわかる。医療機関や患者さんには、治療後のフォローを考える際などに参考にしてほしい」と話しています。

 2017年2月17日(金

 

■インフルエンザ発症から2日間の異常行動に注意呼び掛け 「リレンザ」吸入の中学生転落死を受け

 インフルエンザ治療薬「リレンザ」を吸入した中学2年の男子生徒(14歳)が転落死したことを受け、医薬品医療機器総合機構(PMDA)は16日、医薬品服用の有無にかかわらず、インフルエンザの発症から2日間は小児や未成年者を一人にしないよう注意を呼び掛けました。

 インフルエンザ治療薬を巡っては、「タミフル」服用後の異常行動が報告されたことから厚生労働省が調査し、薬を服用しなくても異常行動が起きることや、解熱剤などでも異常行動が起きることが報告されています。

 そのため厚労省は、インフルエンザのため自宅療養する小児や未成年者を一人にしないよう昨年11月に注意喚起。医薬品医療機器総合機構は、この通知を徹底するよう改めて呼び掛けました。

 中学2年の男子生徒は14日午後1時ごろ、東京都品川区のマンションの敷地でフェンスに引っ掛かっているのが見付かり、病院に運ばれましたが、まもなく死亡しました。男子生徒は4階の自宅の部屋から転落したとみられていますが、インフルエンザにかかって、治療薬を服用していたということです。

 警視庁によりますと、現場の状況などから、男子生徒はマンションの4階にある自宅の部屋の窓から寝間着姿で転落したとみられるということです。男子生徒は、この日の午前中に病院でインフルエンザと診断され、治療薬のリレンザを服用し、室内で寝ていたということです。

 厚生労働省によりますと、未成年の患者が「リレンザ」を服用した後に、走り出したり、暴れたりするケースがこれまでにも報告されていますが、薬との因果関係はわかっていないとしています。

 また、薬を服用していなくてもインフルエンザの患者が暴れるケースも報告されているということです。警視庁が当時の詳しい状況を調べています。

 リレンザを製造するグラクソ・スミスクライン(東京都渋谷区)はホームページで、関連は不明とした上で「使用後に異常行動などを発現した例が報告されている」として、小児や未成年者について、服用後、少なくとも2日間は1人にならないよう呼び掛けています。

 2017年2月16日(木)

 

■オフィス外勤務でストレスや不眠症が増加する恐れも 国際労働機関が報告書

 IT(情報技術)機器を使ってオフィス以外の場所で仕事をする「オフィス外勤務」では、通勤時間を節約でき、仕事に集中しやすい環境も整う一方で、サービス残業やストレスが増加するほか、不眠症のリスクも生じる恐れがあるとの報告書が15日、発表されました。

 報告書を発表したのは、国連(UN)の専門機関である国際労働機関(ILO)。国際労働機関は、技術の進歩によって可能となったリモートワークの影響について15カ国から集めたデータを基に調査し、報告書をまとめました。

 国際労働機関はオフィス外で働くことによるメリットとして、生産性の向上を挙げました。その一方で、「長時間労働、労働の高密度化、仕事とプライベートとの混在」といったリスクが伴うことも指摘しました。

 今回の調査では、常に在宅勤務している人、モバイル機器などを使ってさまざまな場所で仕事をする人、オフィス内外の両方で仕事をする人の3グループに分類。調査の結果、常にオフィスで勤務している人に比べて、3グループすべてで、高ストレスと不眠症の高い発症率がみられ、また全体的に「通常は私生活のために確保されているスペースと時間に仕事が侵入」するリスクが広く確認されました。

 同僚との対面での接触もある程度は必要とのデータも示されてはいますが、時には、物理的に隔離し、自主性に任せることが業務の完了への最善策ともなり得ます。しかし、インドなど一部の国では、経営者がリモートワークに消極的であるケースも多くみられました。その背景にあるのは「管理」の難しさで、経営側に「脅威」を感じさせるのだといいます。

 今回の報告書は、欧州連合(EU)加盟10カ国のほか、アルゼンチン、ブラジル、インド、日本、アメリカのデータを基に、国際労働機関がアイルランドの首都ダブリンに拠点を置く研究機関「欧州生活労働条件改善財団」と共同で作成しました。

 2017年2月16日(木)

 

■アメリカで受精卵のゲノム編集、条件付きで臨床容認へ 将来、人為的に遺伝子操作された子供も

 生物のゲノム(全遺伝情報)を自由に改変できる「ゲノム編集」の技術を使って子供をもうけることについて、アメリカの科学アカデミー(NAS)は14日、将来技術的な課題が解決されれば、遺伝性の深刻な病気を防ぐ目的に限り、条件付きで容認できるとする報告書をまとめました。

 有力な科学者らでつくるNASは、遺伝子をねらった通りに改変できる「ゲノム編集」の技術を利用して、遺伝性の病気の患者の受精卵や、生殖細胞である精子や卵子の遺伝子異常を修復し、子供に病気が伝わるのを防ぐ治療を認める方針を決めました。子孫に受け継がれる受精卵や生殖細胞の遺伝子改変は、子供が生まれた場合に改変の影響が世代を超えて受け継がれたり、改変で予期しない副作用が起こり得るなど、安全性や倫理面から認めてこなかったものの、技術の進歩などを受けて将来の導入に道を開くよう世界で初めて提言しました。

 NASを含めたアメリカ、イギリス、中国の3カ国の科学者団体は2015年、妊娠させないことを前提にした基礎研究に限り受精卵や生殖細胞のゲノム編集を容認する声明を発表しましたが、今回は条件付きながら臨床応用に踏み込みました。20年以上の歴史がある遺伝子治療では、安全性や子孫に与える未知の影響、倫理面などを考慮して、次世代に影響を残さない体細胞でのみ臨床応用が認められてきましたが、その一線を越えることになります。

 ただ、現時点で具体的な計画はなく、実施に当たってはアメリカ連邦政府の承認が必要となります。

 報告書では、受精卵や生殖細胞のゲノム編集は「研究が必要で時期尚早」としながらも、「真剣に考慮する現実的な可能性になり得る」としました。臨床応用の前には国民による活発な議論が必要とした上で、合理的な治療法がない、病気の原因遺伝子に限る、数世代にわたる長期的な影響の評価などを条件に挙げました。

 一方、親が望んだ容姿や知的な能力やを持った「デザイナーベビー」誕生への懸念も考慮して、体細胞であっても、身長や容姿など体の特徴や知能を操作する目的での利用は禁止しました。

 今回認めた臨床応用が実現すれば、人為的に遺伝子が操作された子供が生まれてくることになります。

 報告書をまとめたアルタ・チャロ委員長は、「影響が次世代に引き継がれる技術の実用化には、さらに多くの研究が必要だ。社会と対話しながら進めることが欠かせない」と話しています。

 日本では、ゲノム編集の技術を使って人の受精卵の遺伝情報を操作する研究を巡っては、昨年4月に、国の生命倫理専門調査会が、遺伝情報を操作した受精卵を母体に戻すことは認めない見解を示しています。

 その一方で、基礎的な研究として受精卵の遺伝情報を書き換えること自体については、人の遺伝子の働きを解明したり、難病の治療などに役立つ可能性があったりするため、認められる場合があるとする見解を示しており、現在も、国の生命倫理専門調査会が、認められる研究の条件などについて協議を続けています。

 今回の報告書について、生命倫理に詳しい北海道大学の石井哲也教授は、「ゲノム編集の技術を人の受精卵に使えば、目や髪の色といった遺伝情報を自在に操作できる。さらに遺伝子を操作した影響は、世代を超えて受け継がれると考えられ、さまざまな倫理的な懸念が生じる。今回の報告書は、人への応用の可能性を示しつつも、法整備や市民との十分な対話、研究の透明性の確保といった高いハードルを社会に課すしている。日本では、ゲノム編集に関する法の規制がなく、市民と対話する機会も十分設けられていないので、今後そうした対応を急ぐ必要がある」と話しています。

 2017年2月15日(水)

 

■着床前検査、日本産科婦人科学会が今春研究に着手へ 流産予防を検証

 体外受精による受精卵の全染色体を検査し、異常のないものだけを母胎に戻す「着床前スクリーニング(PGS)」の臨床研究について、日本産科婦人科学会(日産婦)が、計画の中心を担う慶応大学が不参加のまま始めることが明らかになりました。

 日産婦はすでに患者登録を始め、近く今春の研究開始を公表する方針。PGSは「命の選別」の懸念から現在禁止され、慶大では学内倫理委員会の承認が得られていません。

 臨床研究では、不妊や不育症に悩む女性の妊娠率や流産率の改善効果を調べます。対象は35~42歳で、体外受精で3回以上妊娠しなかった女性と、流産を2回以上経験した反復流産の女性。50人ずつ計100人で先行実施し、今後行う本研究に必要な症例数を決定します。

 全染色体をコンピューターで網羅的に調べる「アレイCGH」という解析技術を採用し、通常は計46本ある染色体の本数の過不足を調べて「適」「不適」「判定不能」に分け、原則「適」だけを母胎に戻して通常の体外受精と効果を比べます。

 日産婦は臨床研究に参加する医療機関の名前や数を公表していませんが、この分野をリードしてきた慶大は体外受精と受精卵検査の両方を担当し、研究の重要な取りまとめをする予定でしたが、慶大の学内倫理委員会は研究計画や倫理面を問題視。このため、日産婦は検査の担当に別の大学を加えるなど計画を変更し、体外受精は名古屋市立大学のほか大阪府などの大手民間クリニックの計4施設で実施し、受精卵検査は3大学が分担することにしました。

 日産婦はこれまで、夫婦のいずれかが重い遺伝病を持つ場合などに限り、受精卵を調べる限定的な「着床前診断」を認め、PGSは禁じてきました。受精卵段階での排除や、男女の産み分けにつながるためですが、不妊に悩む夫婦の増加などを理由に2015年2月に臨床研究の実施を決定しました。しかし、検査する試料の輸送や患者の費用も含め2年近く調整が難航しました。

 臨床研究の中心施設がそろわないまま日産婦が開始に踏み切る背景には、不妊に悩む夫婦からの期待があります。不妊治療を受ける30~40歳代女性は年々増えていて、新たな技術を求める声が大きく、不妊治療施設も競争が激化していて、差別化のために解禁を求める声が強くなっています。

 それでも、本来生まれ得る受精卵が「不適」とされ、排除されるのは、生命の選別につながりかねません。21番染色体が1本多い「ダウン症候群」や性染色体が1本少ない「ターナー症候群」などでは、社会で活躍する人も多く見受けられます。

 生殖技術と倫理問題に詳しい柘植あづみ・明治学院大教授(医療人類学)は、「なぜ急ぐ必要があるのか疑問だ。産むための技術という理由付けをして、生まれる可能性がある受精卵をも排除する。差別と見えづらいからこそ余計に危険性を感じる。一学会が決める問題ではなく、国のガイドラインなどで規制が必要だ」と語っています。

 2017年2月15日(水)

 

■目の難病、人工網膜で視力回復に光 大阪大、2021年をめどに実用化

 遺伝性の目の難病「網膜色素変性症」で失明した患者に電子機器の「人工網膜」を植え込み、視力を回復させる研究が、大阪大学の不二門尚(ふじかど・たかし)教授(医用工学)らによって進められています。すでに臨床研究として失明患者への手術を実施し、効果を確認。来年度に本格的な臨床試験(治験)を申請し、医療機器として2021年の承認取得を目指します。

 網膜色素変性症は、日本人のおよそ3000人に1人の割合で起こるといわれ、患者は少なくとも約2万2000人。遺伝子の変異が原因で、一般的に幼年期から思春期ごろ両眼性に発症します。初期は、夜間や暗い場所での視力、視野が著しく衰え、目がよく見えなくなる夜盲、俗に呼ばれる鳥目が主です。進行はゆっくりですが、40〜50歳ごろになると、視野狭窄(きょうさく)が顕著なため、竹の筒から外を見るような感じになり、一人で歩くことが困難になり、失明の原因にもなります。iPS細胞(人工多能性幹細胞)を用いた再生医療も検討されていますが、現時点では根治する手立てがありません。

 患者に植え込む人工網膜は、主に電荷結合素子(CCD)カメラ付きの眼鏡、カメラの画像情報を受け取り送信する電子機器、そして画像情報を電気信号で再現する5ミリ四方の電極チップで構成されています。電子機器は側頭部、電極チップは眼球後部にそれぞれ手術で装着し、電子機器と電極チップをケーブルでつなぎます。

 使用の際は、側頭部の外側に出た電子機器と、眼鏡フレームとをケーブルで接続します。カメラのスイッチを入れると、画像情報が眼鏡のフレームから首からぶら下げた電子機器を介して電極チップに届く仕組み。電極チップは視細胞のような役割を果たし、視神経を通して脳に視覚情報を伝え、脳内で白黒の画像が再現され、物体は黒い背景に白い点の集合体として認知されます。

 不二門教授は、「現在はボヤッと見える程度。改良しても、視力0・1程度、視野は15度までが理論的な限界」としています。それでも、2014~2015年に実施した失明患者3人を対象とした臨床研究では、2人が床の白線に沿って真っすぐ歩いたり、テーブルにある箸(はし)と茶わんを見分けたりする能力が向上しました。

 人工網膜のスイッチを切った場合でも、ある程度視力が回復したという患者もいました。電気刺激を受け、残っていた視細胞などが活性化し、裸眼の視力が上がった可能性があるといいます。

 本格的な治験は、失明した網膜色素変性症の患者6人を対象に2018年から実施する方針。不二門教授は、「有効性を詳しく確認し、将来的には日常生活で自立した生活ができる人工網膜技術を確立したい」と話しています。

 電極チップを目に植え込む人工網膜の開発は、アメリカやドイツが先行しており、すでに治験まで進み、一定の視力回復効果が確認されています。

 2017年2月14日(火)

 

■妊娠中のうつ症状、大豆と魚とヨーグルトで抑制 愛媛大が調査

 大豆製品や魚介類、ヨーグルトを多く食べた妊婦は、少ない妊婦に比べ、妊娠中にうつ症状になる割合が6~7割に抑えられることが、愛媛大の三宅吉博教授(疫学)らの研究で明らかになりました。

 一方、牛肉や豚肉などに含まれる飽和脂肪酸の摂取量が多い妊婦は、うつ症状になりやすい傾向がみられました。三宅教授は、「妊婦のうつ症状の予防につなげたい」と話しています。

 2007年4月から1年間、九州地方と沖縄県の産婦人科に協力を求め、妊婦約1700人にアンケートを実施。肉や魚、豆腐、ヨーグルトなど約150種類の食品の摂取量や精神状態などを聞きました。

 食品の種類ごとに、摂取量を4グループに分類して、うつ症状との関連を解析。豆腐、納豆など大豆製品の摂取量が最も多かったグループは、最も少なかったグループに比べ、うつ症状を抱えている妊婦の割合が6割に抑えられていました。魚介類でも6割、ヨーグルトでは7割でした。逆に、牛肉や豚肉に多く含まれる飽和脂肪酸の摂取量で見ると、最多のグループが最少のグループの1・7倍となっていました。

 牛乳では、妊婦のうつ症状との関連性はみられませんでした。ただ、出産4カ月後の追跡調査では、妊娠中に牛乳を多く飲んだ人はあまり飲まなかった人に比べ、産後うつの発症割合が下がる傾向がみられました。

 女性は、出産前後や閉経期の卵巣ホルモンが大きく変動する時期に、うつ症状を発症しやすくなります。

 食品が精神に与える影響を研究している国立精神・神経医療研究センター疾病研究第三部の 功刀(くぬぎ)浩部長は、「一般的に、女性ホルモンのエストロゲンと構造が似ているイソフラボンなどが豊富な大豆製品はうつの予防に効果があるとされ、今回の成果もうなずける」と話しています。

 2017年2月14日(火)

 

■東京都に花粉シーズン到来 平年より5日早く、飛散量は昨年と同程度

 東京都に花粉のシーズンが到来しました。東京都は13日、都内でスギの花粉が飛び始めたと発表しました。過去10年の平均より5日早く、東京都は先月の気温が高くスギの花の開花が早まったことが影響しているものとみています。

 東京都は先月から都内の12カ所で花粉の観測をしていて、このうち、杉並区や大田区、北区、青梅市など5カ所で、11日から2日続けて基準を超える数のスギ花粉が観測されたとして、13日に「都内でスギ花粉が飛び始めた」と発表しました。

 これは昨年に比べて2日早く、過去10年の平均と比べても5日早いということで、東京都は先月気温の高い日が続いたことで、スギの花の開花が早まったことが影響しているとみています。

 都内の今年のスギ花粉の量は昨年と同じ程度で、例年と比べて0・7倍から1倍程度とやや少ない予測となっています。飛散する花粉の数が「多い」と分類される日は都内平均で28日程度で、例年とほぼ同じと見込まれています。

 スギ花粉は、晴れて気温が高い日や、風が強く乾燥した日に多く飛散します。東京都はホームページで都内各地の観測結果などを掲載するとともに、飛散の多い日にはマスクやメガネを使ったり、帰宅時には衣服をよく払ってから部屋に入ったり、洗濯物を室内に干したりなど、花粉との接触をなるべく少なくするよう呼び掛けています。

 2017年2月13日(月)

 

■聖マリアンナ医大 、6件の臨床研究に不備 神経精神科に中止を勧告へ

 川崎市にある聖マリアンナ医科大学は、精神疾患の患者を対象にした臨床研究6件について計画の手順を守らないなどの不備が見付かったとして、研究を中止するよう付属病院の准教授らに勧告することを決め、関係者の処分を検討することになりました。

 大学によりますと、中止の勧告を決めたのは神経精神科の准教授2人と講師1人が進めていた合わせて6件の臨床研究です。

 大学では、不正の疑いがあるという患者の訴えなどを受けて、外部の専門家を含めた調査委員会を立ち上げ、3人がかかわっていた計22件の臨床研究について調べました。

 その結果、7件の臨床研究で、計画では薬の効果の比較が的確にできるよう患者を無作為に2つのグループに分けることになっていたのに、実際には意図的に割り振っていたことがわかったということです。これでは、よく回復しそうな患者ばかりを、効果を得たい薬に集中的に割り振ることもできるので、公正な比較試験になりません。さらに、このうちの1件では、一部の患者に同意を取っていなかったこともわかりました。

 大学では、問題が見付かった7件の臨床研究のうち、まだ進行中の6件の臨床研究について中止の勧告を決めるとともに関係者の処分を検討するということです。

 また、聖マリアンナ医科大学附属病院では2015年、重い精神障害がある患者について強制的な入院が必要かどうかなどを判定する精神保健指定医資格を不正に取得したり、それにかかわったりしたとして合わせて医師23人が資格を取り消されています。

 厚生労働省の指示を受けて大学は、これらの医師が担当した臨床研究に不正がなかったか、外部有識者を交えた調査委員会を設置して調べていました。調査委員会の報告書を近く公表する予定。

 2017年2月13日(月)

 

■子宮頸がんワクチン訴訟、東京地裁でも争う姿勢 国と製薬2社

 国が接種を勧めた子宮頸(けい)がんワクチンの副作用で健康被害が生じたとして、女性28人が国と製薬会社2社に4億2000万円の損害賠償を求めた訴訟の第1回口頭弁論が13日、東京地裁(原克也裁判長)でありました。国と2社はいずれも健康被害とワクチン接種の因果関係を否定して、請求棄却を求め、全面的に争う方針を示しました。

 子宮頸がんワクチンを巡る集団訴訟は、全国の15~22歳の女性119人が東京、大阪、名古屋、福岡各地裁に起こしました。今回ですべての地裁で審理が始まり、当事者の主張が出そろいました。

 東京地裁に訴えを起こしているのは、関東地方などに住む女性53人で、子宮頸がんワクチンの接種後に激しい痛みやけいれん、記憶力の低下などの症状が現れたとして、国と製薬会社2社に対し、1人当たり1500万円、合計およそ8億円の損害賠償を求めています。

 13日は、原告のうち、一次提訴した9都道県の15~22歳の女性28人について第1回弁論が行われ、原告側代理人の水口真寿美弁護士は、「健康被害はワクチンが引き起こした免疫の強力な活性化と、炎症反応によるもの」と述べました。

 原告の千葉県白井市の通信制大学1年、園田絵里菜さん(20歳)は車椅子で出廷し、「ワクチン接種後の痛みから歩行困難となり、転校や進路変更を強いられた。内臓を握りつぶされるような激しい痛みを感じ、今もめまいや生理痛に苦しんでいる。痛い、苦しいと訴えても医師や教師にも理解してもらえず、傷付いた。私たちを人間として見て下さい」と訴えました。

 製薬会社グラクソ・スミスクライン(東京都渋谷区)の弁護士は、「原告の主張は医学界のコンセンサスとは懸け離れている」と反論。国が2013年6月に積極的な勧奨を差し控えた結果、接種率が1%程度に下がったことで「多くの女性が子宮頸がんのリスクにさらされている」と法廷で訴えました。

 また、MSD(東京都千代田区)の弁護士も、「170万人を対象とした15件を超える試験で、健康被害とワクチン接種は関連しないと示されている」と意見を述べ、「原告側の主張に医学的根拠はない」と反論しました。

 国側は、提出した答弁書で健康被害とワクチン接種の因果関係を否定し、ワクチンの有効性の評価についても争う方針を示しました。

 2017年2月13日(月)

 

■若年層で激しい献血離れ 厚労省、「はたちの献血」の名称変更も検討

 40年以上続いてきた厚生労働省などの若者向けの献血キャンペーン「はたちの献血」が、2018年をめどに幕を下ろす見通しになりました。

 成人になるのを機に献血の意義を考えてもらおうという趣旨ですが、法令上は16歳から献血できるため、「20歳からと誤解が広がっていないか」との指摘が出ていました。選挙権年齢の引き下げなどで「成人」の社会的なイメージも変わりつつあるとして、名称変更を検討することになりました。

 献血キャンペーン「はたちの献血」は1975年から始まり、現在は厚労省、都道府県、日本赤十字社が主催。毎年成人式のある1月を中心に、ポスターやCMで啓発活動をしています。

 20歳前後の著名人がイメージキャラクターに起用され、2010年~2012年はプロゴルファーの石川遼選手(25歳)、2013年~2014年は女優の武井咲さん(22歳)、昨年と今年は「僕たちの一歩は、だれかの一生。」をスローガンに、フィギュアスケートの羽生結弦選手(22歳)が務めています。今年は若年層へのPRのため、ポスターを全国の中学校に約3万4000枚配布、高校には献血の副読本を117万部用意しました。

 背景にあるのが、深刻な献血離れです。日本は安全性の観点から、すべての輸血を国内の献血で賄っていますが、20年前に600万人だった献血者数は昨年度488万人にまで減りました。このままでは高齢化に伴い血液需要が最も高くなると見込まれる2027年には、約101万人の献血者不足に陥るとの予測もあります。

 中でも落ち込みが激しいのが若者層で、20歳代は198万人から81万人へと半分以下、16歳~19歳は78万人から26万人へと約3分の1に減りました。

 献血キャンペーンの効果が数字に表れていないばかりか、20歳未満は対象外との誤解を招いている可能性もあり、昨年12月15日にあった厚労省の献血推進調査会では「『はたち』をうたったままでいいのか」との疑問も出ました。

 委員の中には「40年以上続いて認知度は高く、活動する人たちの思い入れも強い」との声もありましたが、選挙権年齢の18歳への引き下げなどを機に、10歳代を巻き込む新しい効果的な啓発方法を探る方向でまとまりました。

 ただし、2018年までの献血キャンペーンはすでに準備が進んでおり、従来通り続けます。厚労省は来年度内に、名称を刷新した後継キャンペーンの内容を詰める予定。

 200ミリリットルの献血は男女とも16歳からでき、男性は17歳から、女性は18歳から、体重が50キロ以上であれば成人と同じ400ミリリットルの献血が可能となっています。

 厚労省は、「血液の安定的な確保には、若いころから継続して献血してもらうことが欠かせない」と強調しています。

 2017年2月12日(日)

 

■赤ちゃんポスト、神戸の助産院が設置を準備 熊本の病院に続き全国で2番目

 実親が育てられない子供を匿名で預かる「こうのとりのゆりかご」(赤ちゃんポスト)を関西で設立しようとしている市民団体が9日、神戸市内の助産院に設置する計画を発表しました。実現すれば、熊本市の病院に続き全国で2例目。

 これに対し神戸市は、助産院には医師がいないため、「医師でなければ医業をしてはいけない」とする医師法に抵触する可能性を指摘し、慎重に進めるよう求めています。

 市民団体は、関西の医師や弁護士らでつくる「こうのとりのゆりかごin関西」(大阪府箕面市)。計画によると、赤ちゃんポストは神戸市北区の「マナ助産院」(3床)の敷地内につくる予定。窓口の内側に保育器を設置し、赤ちゃんが置かれるとブザーが鳴って看護師らがすぐに駆け付ける仕組み。今年中の開設を目指しているといいます。

 同日、「こうのとりのゆりかごin関西」が大阪市内で開いた理事会では、設置費を約800万円、運営費を年1000万円以上と見積もり、寄付金や会費などで、マナ助産院を支援することなどを決めました。

 マナ助産院には、助産師や看護師ら計12人が勤務しています。理事会終了後の記者会見で、理事長の人見滋樹・京都大名誉教授(80歳)は、「新生児の蘇生技術も身に着けたベテラン助産師が対応に当たる。嘱託医と契約できれば、問題ない」と話しました。マナ助産院の永原郁子院長は、「二つ目のゆりかごができれば、各地で開設する動きが加速するはずだ。宿った命を大事にする社会にしたい」と語りました。

 一方、神戸市は9日夜に記者会見。甲本博幸・予防衛生課薬務担当課長は、「子供の命を救いたいという思いは十分理解はできる。ただ、赤ちゃんの安全を確保できるのか、預かった後の処遇をどうしていくのかという点が大事。医療機関やこども家庭センターなどの関係機関と十分に協議を重ねていただきたい」と要望しました。

 また、神戸市の延原尚司・こども家庭支援課長は、「受け入れた赤ちゃんを医療機関に搬送するかどうかの判断は、医師法に基づき、医師が行わなければならない。医師の配置など法律上の要件をクリアできるのであれば、設置に向けた相談には乗っていきたい」とした上で、「(嘱託医で)OKなのか違反なのかどうかはわかりかねる。相談があれば、必要に応じて厚生労働省に確認したい」と話しました。

 赤ちゃんポストは、2007年に全国で初めて熊本市の慈恵病院で設立されました。2015年度末までに125人の子供たちを預かり、年間約6000件の相談を受けてきました。その大半が熊本県外からで、関西からの相談は約2000件に上るといいます。

 日本国外でも、赤ちゃんポストのようなシステムを採用している国や地域が、多数存在します。

 2017年2月12日(日)

 

■アイドルが急死した致死性不整脈、AEDで救命例も 兆候が現れにくい若者では予知困難

 女性アイドルグループ「私立恵比寿中学(エビ中)」のメンバーで8日未明に死去した松野莉奈(りな)さん(当時18歳)について、所属事務所のスターダストプロモーションは10日、致死性不整脈の疑いで亡くなった可能性が高いと公表しました。

 松野さんは体調不良のため、7日に大阪で開かれたコンサートへの出演を取りやめ、自宅で療養していました。8日未明に容体が急変、東京都内の自宅から救急車で搬送されましたが、病院で死亡が確認されました。

 私立恵比寿中学は女性8人組で、「ももいろクローバーZ」の姉妹グループとして、架空の学校「私立恵比寿中学1年B組」として「永遠に中学生」というコンセプトを掲げて活動していました。

 致死性不整脈は、心臓の拍動が速くなるタイプの不整脈によって起こる心室細動や心室頻拍を指します。心臓の拍動は心臓が作る電気刺激によって起き、何らかの原因で刺激がうまく伝わらないと脈が乱れる不整脈になります。刺激が速くなるタイプの不整脈では、刺激に心臓の反応が追い付かず拍動が弱まり、血液が脳に届かなくなります。この状態が長く続くと、脳死に至るとされます。

 日本AED財団のホームページによると、国内では心臓が原因の突然死が年間7万人を超え、そのうち最も重大な直接原因が致死性不整脈と考えられています。

 遺伝的に致死性不整脈を起こしやすいタイプもあるものの、原因がわからないことのほうが多く、若い現役のスポーツ選手が亡くなるケースもあります。運動中に起こることもあれば、睡眠中などの安静時に起こることもあります。

 若者の場合、持病がなければ致死性不整脈の兆候も現れにくく、たとえ不整脈で倒れても軽度で回復して、それに気付かない場合があって予知が難しく、突然死の原因になりやすいという特徴があります。

 致死性不整脈を起こすと、救命は難しいのですが、近くに人がいて自動体外式除細動器(AED)を用いて電気ショックを与えて、すぐに心臓を正常なリズムに戻せれば救命できる場合もあります。家庭など自動体外式除細動器(AED)が近くにない場所で起きた場合は、心臓マッサージと人工呼吸を行って救急車を待つことが対処法になります。

 2017年2月11日(土)

 

■2万円程度で乳がんを起こす遺伝子異常の検査可能に 遺伝学研究所が新手法開発

 乳がんや卵巣がんを発症する可能性が高まるとされる遺伝子の異常を低コストで調べることができる新たな検査法を、国立遺伝学研究所(静岡県三島市)の井ノ上逸朗教授(人類遺伝学)らが開発し、国内の特許を出願したことが11日、明らかになりました。

 新たな手法は、一度に多人数を調べるため1人当たりのコストを下げることができ、現在1人当たり約20万~30万円の検査費用を2万円程度にまで抑えられます。

 井ノ上教授は、「費用が安ければ多くの人が検査を受けられる」と話しており、2年をめどに実用化し、保険適用も目指します。

 ただし、遺伝子に異常が見付かっても、発症のリスクは人によって異なるため、専門家による丁寧な検査結果の説明が必要となります。

 検査で調べるのは、BRCA1、BRCA2という遺伝子。本来はがんを抑制する働きをしますが、異常があると十分に機能せず、遺伝性乳がん・卵巣がん(HBOC)を発症するリスクが高まるとされます。

 2つの遺伝子の異常を調べる検査は現在、アメリカの検査会社が医療機関を通じて提供していますが、1人当たり約20万~30万円と費用が高額で、検査を受ける女性は限られていました。

 新たな手法は、検査を受ける人の血液からDNAを採取し、特殊な処理で一人一人のDNAに目印を付けます。96人分を1つの容器にまとめ、遺伝子の塩基配列を高速で調べることができる次世代シークエンサーという装置を使うクリニカルシーケンス検査で、同時に解析。目印をもとに、一人一人の異常を調べる仕組み。

 2017年2月11日(土)

 

■札幌医大病院、白血病などの臨床研究で不正疑い 患者の血液を無断使用か

 札幌医科大学付属病院(札幌市中央区)は10日、腫瘍・血液内科で実施した臨床研究について、安全性を審査する院内の臨床研究審査委員会(IRB)の承認を受けていないとする不正の疑いを厚生労働省から指摘され、調査していると明らかにしました。

 病院によると、同科の男性准教授らのチームが2011年から実施し、2012年にイギリスの医療雑誌に論文を発表した白血病などの血液疾患に関する臨床研究について、昨年8月に厚労省から指摘があり、内部調査を求められました。

 病院にも昨年6月に、同様の不正を指摘する匿名の告発文が届いており、厚労省の指摘を受け詳細な内部調査を始めました。

 内部調査を進める中で、IRBの承認を受けていたことは確認しましたが、臨床研究で血液の提供を受けた13人分の患者に対し、同意書を得ていなかった疑いが浮上。臨床研究が研究計画書に沿っていない疑いも出て、現在も調査を継続しています。

 病院は同科の他の臨床研究でも問題がなかったかどうか、記録が残る2010年以降に実施または実施中の約150件についても、内部調査を始めたといいます。

 2017年2月11日(土)

 

■高いといわれる再生医療の治療コスト、初の調査 京大を中心としたチーム

 iPS細胞(人工多能性幹細胞)などを用いる再生医療の治療コストについて、京都大iPS細胞研究所を中心としたチームが初の実態調査を始めました。

 治療に取り組む大学や企業の約10グループに聞き取り、3年かけて報告書をまとめます。再生医療は実用化が進む一方、治療に多額の費用がかかる点が懸念されており、実態を明らかにし、今後の研究開発に役立てます。

 再生医療は2000年代に入り、導入が本格化しています。ただ、細胞の培養や加工などで従来の治療法より費用や手間がかかり、理化学研究所などが2014年、患者本人から作ったiPS細胞を使い、目の難病「加齢黄斑変性」に対して行った移植手術では、患者1人に約1億円かかりました。

 全体のコストの詳細なデータはなく、将来、国の保険財政を圧迫しかねないとの指摘もあり、実態把握を求める声が高まっていました。

 調査は今年1月に開始。チームのメンバーが、対象となる大学や企業の担当者らに、治療に使う細胞の培養費や品質検査費、移植手術費など、どんな治療にどれだけの費用がかかっているのか項目ごとに細かく聞き取ります。

 対象には、脊髄損傷の治療準備を進めている慶応義塾大学、食道や歯周の再生を手掛ける東京女子医科大学、がんなどの免疫細胞による治療に取り組む京都大学などが含まれています。

 調査ではまた、日本再生医療学会の会員計約5600人へのアンケートも行い、どんな治療にいくらかかっているのか明らかにします。

 聞き取りとアンケートで実態を把握した上で、既存の治療法とコストを比較し、今後、どの病気に再生医療の研究開発予算を配分することが適切なのか、検討材料を示します。

 再生医療に使われている製品では、現在4種類が保険適用の対象となっています。ただ、シート状の細胞を心臓に貼って治す「ハートシート」は1476万円、骨髄移植の副作用の治療に培養した幹細胞を使う「テムセル」は1390万円などいずれも高額。

 チームの八代嘉美・iPS細胞研究所特定准教授(幹細胞学)は、「コストを明確にすることによって、再生医療が社会に受け入れられるよう調査を進めたい」と話しています。

 経済産業省の試算では、再生医療の市場規模は国内で2020年に950億円、2030年に1兆円、2050年に2・5兆円に伸びると見込まれています。

 2017年2月11日(土)

 

■飲食店内禁煙、新型たばこは対象外に 受動喫煙規制で厚労省方針

 塩崎恭久厚生労働相は10日の閣議後の記者会見で、飲食店などに受動喫煙防止対策を義務付ける健康増進法改正案に関し、煙の出ない電気加熱式たばこや電子たばこなどの新型たばこについて、3月上旬に予定する通常国会への提出段階では、法案に盛り込まない方針を明らかにしました。

 飲食店などでの禁煙の対象とするかどうかは、今後安全性に関する研究などを調べ、健康増進法の施行段階までに判断します。 

 電気加熱式たばこは、葉タバコを火で燃やさずに専用器具で電気的に加熱し、発生した蒸気を吸引します。昨年、フィリップモリスジャパン社のアイコスが全国で発売され、人気を集めました。

 電子たばこは、紙巻きたばこに似せて作られた電子製品で、カートリッジの中のバニラ味、ストロベリー味、ミント味、マルボロ味などの香料の含まれる液体を電気で加熱し、気化した蒸気を吸引します。カートリッジは商品によって異なりますが、数十~数百回吸えます。欧米で急速に利用が広がっており、日本でも2010年の増税による紙巻きたばこの値上げを切っ掛けに、注目されています。

 これらの新型たばこは、タールは発生しないもののニコチンは含まれるため、健康リスクや蒸気が周囲に与える健康影響などが、科学的に明らかになっていません。

 塩崎厚労相は、「健康リスクや健康影響に関する今後の研究結果を踏まえた上で検討したい。世界でも研究が始まったばかりなので知見の収集に鋭意努めている」と述べました。

 厚労省は通常国会に飲食店など人が集まる場所での原則禁煙を盛り込んだ健康増進法改正案を提出する方針。当初はすべての店舗を原則禁煙とする方針でしたが、飲食業界などから反発を受けて主に酒類を提供するバーやスナック、キャバレーなどの小規模店は除外する方向で調整を進めています。

 2017年2月11日(土)

 

■慶応大、iPS細胞で脊髄損傷を治療へ 倫理委に臨床研究を申請

 脊髄(せきずい)損傷や神経難病など、再生医療の本命と期待されていた病気の治療に向けて、iPS細胞(人工多能性幹細胞)を使った臨床研究が動き出します。これまで脳や脊髄の傷付いた神経細胞を再生させる有効な治療法はありませんでしたが、iPS細胞がその可能性を開くと期待されています。

 慶応義塾大学が2018年前半にも、脊髄損傷に対する臨床研究を始めます。岡野栄之教授と中村雅也教授らの研究チームは10日、学内の倫理委員会に臨床研究の実施を申請しました。了承を受けた後、国などの委員会への届け出を行い、最初の移植手術の実施を目指すといいます。

 脊髄損傷は、交通事故やスポーツ事故などで背骨の中の神経が傷付き、体がまひする疾患。国内では毎年約5000人が発症しますが、有効な治療法はありません。

 臨床研究は、脊髄を損傷してから2~4週間が経過した18歳以上の患者7人が対象。iPS細胞から神経細胞の基になる「神経前駆細胞」を作製し、脊髄に移植します。iPS細胞は、京都大iPS細胞研究所が拒絶反応の起きにくいタイプの健康な人から作り、備蓄を進めているものを使います。ただし、他人由来の細胞を移植するため、免疫抑制剤を使用するといいます。

 岡野教授らは2010年、脊髄損傷によって手足がまひしたサルに、iPS細胞から作った神経の基になる細胞を移植する研究を実施。運動機能が改善し、後ろ脚で立つことができるようになり、手の握力の改善にも成功しました。また、iPS細胞は腫瘍化が懸念されていますが、約3カ月後でも腫瘍はできませんでした。

 岡野教授は、「(iPS細胞ができる以前の)約20年前から幹細胞を使った基礎研究に取り組み、ようやく臨床の段階まできた。まずは安全性を確認することが第一。脊髄損傷の治療にiPS細胞を使う世界初の臨床研究なので成功させたい」と話しています。

 iPS細胞を使った臨床研究は、理化学研究所などが2014年、患者本人から作ったiPS細胞を使い、目の難病「加齢黄斑変性」の患者への移植手術を行いました。また、今年前半にも、他人由来のiPS細胞を使って同じ加齢黄斑変性の患者への移植手術を行う予定。

 2017年2月11日(土)

 

■インフルエンザ、なお全国で広く流行 患者やや減少も、1週間で推計199万人

 インフルエンザが依然として全国で広く流行しています。厚生労働省は10日、全国約5000の定点医療機関から直近1週間の1月30日~2月5日に報告されたインフルエンザの患者数が1医療機関当たり38・14人となったと、発表しました。

 前週は39・41人で、昨年11月中旬の流行入り後、初めて減少に転じました。19道府県で前週よりも報告数が増加しましたが、28都府県で減少しました。推計患者数は、前週よりも約2万人減の約199万人となりました。

 依然として大流行の発生を示す警報レベルの30人を上回っています。厚生労働省は、「前週より微減とはいえ引き続き高い水準にあるので、うがいや手洗いなどの感染症防止対策を徹底してほしい」と呼び掛けています。

 都道府県別の1医療機関当たりの患者数が最も多かったのは、福岡県の55・03人。宮崎県54・02人、愛知県51・44人、高知県50・60人、大分県49・62人、山口県49・22人、埼玉県47・06人、千葉県45・27人、福井県44・46人、三重県44・19人、鹿児島県44・14人、長野県42・21人、神奈川県41・37人、愛媛県40・08人、静岡県40・58人、熊本県40・46人、山梨県40・12人と続きました。

 厚労省によると、直近の1週間にインフルエンザで休校や学年・学級閉鎖になった保育所、幼稚園、小中高校などの合計は7154施設。前週の7182施設からは微減しました。また、インフルエンザで入院した患者数は1505人で、前週から105人減りました。

 2017年2月11日(土)

 

■セックスレス夫婦、過去最高の47・2% 家族計画協会が調査

 配偶者がいても性交渉が1カ月以上ない、いわゆるセックスレス夫婦の増加傾向が続いていることが、一般社団法人・日本家族計画協会が10日に発表した「男女の生活と意識に関する調査」で明らかになりました。

 2016年は過去最多の半数近くに上り、専門家は「特に男性で、仕事の疲れが影響している」と分析しています。

 調査は2002年から1年おきで8回目。2016年10~11月、無作為抽出した16~49歳の男女3000人を対象に調査票を手渡す方法で実施し、1263人から回答を得ました。有効回答率は46・8%。

 その結果、セックスレスの夫婦は2004年の31・9%から増加が続き、2016年は前回調査の2014年を2・6ポイント上回る過去最高の47・2%でした。男女別では男性47・3%、女性47・1%と差はなく、年齢別では男女とも45~49歳が最も高くなりました。

 「セックスに積極的になれない理由」を尋ねると、男性では「仕事で疲れている」(35・2%)、「家族(肉親)のように思えるから」(12・8%)、「出産後何となく」(12%)の順で多くなりました。一方、女性では「面倒くさい」(22・3%)、「出産後何となく」(20・1%)、「仕事で疲れている」(17・4%)の順でした。

 男性のセックスレスの理由1位の「仕事で疲れている」は、前回調査の2014年の21・3%から急増し、13・9ポイント上昇しました。

 18~34歳の未婚男女では、男性の42%、女性の46%が、性交渉経験がないと回答しました。

 医師の北村邦夫・日本家族計画協会理事長は、「共働き世帯の増加などの要因が背景にあるのかもしれないが、男性の『仕事で疲れている』が3割を超えたのは初めて。労働時間の見直しだけでなく、仕事の在り方を含めた見直しも必要だろう」と話しています。

 2017年2月10日(金)

 

■iPS培養、ナノファイバーを使った布で10倍に増産 京大とグンゼが新素材開発

 特殊な繊維で開発した布を使って、iPS細胞(人工多能性幹細胞)を大量に培養することに成功したと、京都大学と肌着メーカー「グンゼ」(大阪市北区)の研究チームが発表しました。

 従来の培養法と比べ、細胞の数を約10倍増やせたといい、再生医療のコスト削減につながるといいます。研究論文が8日、国際科学誌「バイオマテリアルズ」(電子版)に掲載されました。

 人のiPS細胞を心臓や肝臓などの臓器の再生医療に利用する場合、大量の細胞が必要になります。現在は、容器に入った培養液に細胞を浮かせて増やす方法がありますが、少量しか作れず、容器に多くの培養液を入れてかき回すと一部の細胞が傷付くなどして増えにくいといった課題がありました。

 研究チームは、細胞を接着させる働きを持つゼラチンから、髪の毛の約3000分の1の細さの「ナノファイバー」(ナノは10億分の1)と呼ばれる繊維素材を作り、これより少し太い合成繊維素材を組み合わせて厚さ1ミリ以下の布を開発。iPS細胞を接着させた布(約2センチ四方)60枚で培養した結果、1週間で従来の培養法より約10倍増えたといいます。

 京大の亀井謙一郎・特定准教授(幹細胞工学)は、「布は安価に製造できる。培養期間を5~10分の1に短縮でき、培養コストも5分の1以下にできる可能性がある。今後、素材の面積を大きくするなどして、実用化につなげたい」と話しています。

 2017年2月9日(木)

 

■C型肝炎の治療後に肝臓がんになるリスク高める遺伝子特定 名古屋市立大学など

 「TLL1」という遺伝子に変異があると、C型肝炎の治療後に肝臓がんになるリスクが2・37倍になることを、名古屋市立大学や東京大学などの研究チームが8日までに突き止め、アメリカの学会誌「ガストロエンテロロジー」(電子版)に発表しました。

 リスクの高い患者を絞り込んで、がんの早期発見や治療につながると期待されます。

 C型肝炎はC型肝炎ウイルスの感染によって発症し、悪化すると肝硬変や肝臓がんになります。研究チームによると、国内には150万人の患者がいるとされ、薬剤でウイルスを体内から取り除く治療後も、一部の人は肝臓がんになることが知られ、リスクの高い患者を見分けるのが課題となっていました。

 研究チームは、C型肝炎の治療後にがんになった253人を含む患者942人の遺伝子を解析。その結果、TLL1に変異があるとがんになるリスクが2・37倍高まり、高齢の人ではリスクがさらに高まりました。

 肝臓は過食や炎症などの刺激でコラーゲン線維を作り、線維が蓄積するとがんになりやすくなります。人間の細胞やラットを使った実験から、TLL1が線維の生成に深くかかわっていることも明らかになりました。

 名古屋市立大学の田中靖人教授(ウイルス学・肝臓学)は、「C型肝炎ウイルスを排除できた患者は年々増えている。肝臓がんになりやすい人がわかれば、医師も患者もより注意深く経過をみていくことができる。TLL1は糖尿病など他の疾患が原因の肝臓がんにも関係しているかもしれない。メカニズム解明や治療法の開発につなげたい」と話しています。

 2017年2月9日(木)

 

■がんや難病の患者の遺伝子を解析し、最適な治療方法を選択 東大がゲノム医療の臨床研究へ

 がん患者や難病の患者一人一人の遺伝子を治療前に詳しく解析し、最も適した治療方法を選べるようにするゲノム医療の臨床研究を東京大学の研究チームが始めることになりました。これは9日に東京大学の研究チームが会見し、明らかにしたものです。

 患者ごとに最適な治療法を選ぶオーダーメード医療を巡っては、乳がんなどの一部の病気で薬を選ぶ際に検査キットが使われていますが、対象となる遺伝子が限られるため、病気の治療法にかかわる遺伝子に変異があっても、詳しく調べられないまま治療が行われていることも少なくありません。

 研究チームでは、肺がん、肉腫などの特定のがんの患者と、希少性疾患を含む難病の患者をそれぞれ年間数百人ずつ選び、次世代シークエンサーという装置を使うクリニカルシーケンス検査で、患者一人一人のゲノム情報(DNAに含まれる遺伝情報)を解析することで、複数の遺伝子の変異や融合・増幅を詳しく調べます。

 そして、そのデータを元に最適な抗がん剤や治療法を選んだり、従来の検査では難しかった難病の診断に役立てたりするということです。

 東京大学大学院医学系研究科の間野博行教授は、「網羅的に遺伝子解析すれば、例えば、肺がんでは70%近い患者で、原因となるがん遺伝子がわかり、最適な薬を選べるようになる。この取り組みが広まれば、診療現場を大きく変える可能性がある」と話しています。

 2017年2月9日(木)

 

■がん免疫治療薬「キイトルーダ」、薬価は年1427万円に 2月15日から保険適用

 厚生労働相の諮問機関、中央社会保険医療協議会(中医協)は8日、アメリカの製薬大手メルクが開発したがん免疫治療薬「キイトルーダ」(一般名・ペムブロリズマブ)の保険適用を承認しました。

 皮膚がんの一種である悪性黒色腫(メラノーマ)と肺がんに対し、15日から保険が使えます。薬価は100ミリグラム1瓶約41万円、1日当たりでは3万9099円。仮に1年間使い続けたとすると、年1427万円に上る計算です。

 免疫の働きを利用するがん免疫治療薬の保険適用は、国内で2例目。類似作用のある先行薬である小野薬品工業の「オプジーボ」(一般名・ニボルマブ)の100ミリグラム1瓶約36万5000円を参照し、1日当たり薬価が同水準になるように決められました。

 キイトルーダは昨年9月に製造販売承認を得ていましたが、オプジーボの薬価が2月から従来の約73万円の半額に引き下げられるのを待って、ようやく薬価が付けられました。

 キイトルーダの薬価は、体重50キログラムの患者にオプジーボを使用した場合と同額となります。ただ、患者の体重によって投与量が異なるオプジーボに対し、キイトルーダは体重にかかわらず投与量は同じですみます。このため、例えば体重60キログラムの肺がん患者がオプジーボを使うと年約1700万円かかりますが、キイトルーダは約1400万円ですみます。

 逆に、オプジーボは体重40キログラムの肺がん患者なら1100万円と、キイトルーダより安くなります。日本人の平均体重は50キログラムを超えるため、キイトルーダのほうが安くすむケースが多くなりそうです。

 メルクの日本法人日本法人であるMSDは、キイトルーダがオプジーボよりも有用性が高いとして厚労省に薬価の加算を求めていましたが、これは却下されました。

 MSDは、ピーク時の売上高を年544億円、使用患者数を年7300人と予測しています。仮に使用実績が上振れした場合は現行ルール上、薬価を大幅に引き下げることが、中央社会保険医療協議会で確認されました。

 2017年2月9日(木)

 

■京大、脳動脈瘤の進行の仕組みを解明 治療薬開発に期待

 脳の血管にこぶができ、破裂するとくも膜下出血を起こす「脳動脈瘤(りゅう)」は、特定のタンパク質が働くことで症状が進むとみられることを動物実験で突き止めたと、京都大学の研究チームが発表しました。

 治療薬の開発につながるのではないかと期待されています。

 脳動脈瘤は、脳の血管が膨らんでこぶができ、大きくなって破裂すると、脳卒中の1つ、くも膜下出血を起こす病気で、患者は国内に330万~550万人いると見なされています。多くの脳動脈瘤は脳ドックなどにより未破裂の状態で発見されるため、破裂を防ぐには、開頭してこぶの根元をクリップで留めたり、カテーテル(細管)を血管に入れてコイルでこぶをふさいだりします。

 京都大学大学院医学研究科の成宮周特任教授と、青木友浩特定准教授(脳神経外科)などの研究チームは、脳動脈瘤を起こしたラットを使い、病気の原因を詳しく調べました。

 その結果、膨らんだ血管には「マクロファージ」と呼ばれる白血球の1種が集まり、この細胞の表面で、炎症を強める働きを持つ「EP2」というタンパク質が作用していることがわかったということです。

 このタンパク質の働きを抑える薬をラットに投与したところ、血管の膨らみが半分以下に減ったということで、研究チームは、このタンパク質が症状の進行を招いているとみています。

 青木特定准教授は、「現在は手術以外に効果的な治療法がないが、このタンパク質の働きを抑えることで治療できる飲み薬の開発を目指したい」と話しています。

 研究論文は8日、アメリカの科学誌「サイエンス・シグナリング」に掲載されました。

 2017年2月8日(水)

 

■飲食店原則禁煙を修正し、小規模店を例外に 厚労省、業界の反対で後退

 他人のたばこの煙を吸い込んでしまう受動喫煙の防止強化策を検討している厚生労働省は、原則建物内禁煙を目指していた飲食店のうち、小規模店を例外にして喫煙を認める方向で調整していることが8日、明らかになりました。

 厚労省は2020年東京五輪・パラリンピックに向けて、受動喫煙対策を強化する健康増進法改正案を3月上旬の通常国会に提出する予定です。当初はすべての飲食店を建物内禁煙とし、喫煙室の設置を認める方向でしたが、客離れを懸念する飲食業界から強い反対があり、厚労省が修正案を検討していました。

 厚労省は、修正案を2つまとめました。案1は、受動喫煙による健康被害が大きい子供や妊娠中の女性の利用が少ないバーやスナック、キャバレーなど、主に酒類を提供する延べ床面積30平方メートル以下の小規模店が対象で、店頭で注意を表示し、換気設備の設置を条件に喫煙を認めます。 

 案2は、バーなどに加え、小規模な居酒屋や焼き鳥屋、おでん屋についても喫煙を認めます。居酒屋などは家族連れで訪れるケースもあることから、今後、慎重に詳細を調整します。

 いずれの案でも、未成年を含む幅広い層が利用するラーメン屋やそば屋、すし屋、レストランは、喫煙室以外では禁煙とします。

 2017年2月8日(水)

 

■不妊治療の助成を拡大し、対象年齢を引き下げて上乗せ 埼玉県が全国で初めて

 埼玉県は少子化対策の一環として不妊治療にかかる費用への助成を拡大し、現在43歳未満の女性に行っている助成に加え、35歳未満の女性には初回の不妊治療に限り、さらに最大で10万円を上乗せする方針を固めました。

 埼玉県によりますと、助成の上乗せは13の都と県ですでに行われているということですが、対象年齢を引き下げて上乗せを行うのは、全国で初めてだということです。

 埼玉県は少子化に歯止めがかからない現状を改善しようと、新年度から不妊に悩む夫婦への支援を強化する方針を固めました。具体的にはまず、不妊検査にかかる2万円の費用を県が負担するということです。そして、不妊治療にかかる費用への助成を拡大し、現在43歳未満の女性に行っている助成に加え、35歳未満の女性には初回の不妊治療に限り最大で10万円を上乗せするということです。

 このほか、3人以上の子供が生まれた家庭に最大で10万円分のクーポン券などを配布する事業も行う方針で、少子化対策を強化することにしています。

 埼玉県が新年度の予算案に不妊治療の公的助成の拡大を盛り込んだことについて、埼玉医科大学の石原理教授は、「日本では海外と比べて不妊治療を受けている人の平均年齢が高く、女性の年齢が上がるとともに治療が出産につながる割合が大きく下がる現実がある。不妊に悩む人は早いうちに治療することが必要だ。しかし、若いと収入が少なく、不妊治療に取りかかれないという声も聞いていたので今回の助成がこうした人への手助けになるのではないか」と話しています。

 2017年2月8日(水)

 

目など全身に炎症引き起こすベーチェット病、遺伝子を解明 治療薬開発に道

 厚生労働省が指定する難病の一つで、目の炎症や口内炎、皮膚症状などを繰り返し、失明に至ることもある難病「ベーチェット病」のなりやすさにかかわるDNA配列を見付けたと、横浜市立大学などの国際研究チームが発表しました。治療薬の開発につながる可能性があるといいます。

 アメリカの専門誌「ネイチャー・ジェネティクス」(電子版)に7日、研究論文が掲載されました。

 人のDNA配列はほとんど共通していますが、わずかに個人差(SNP)があり、薬の効き方や病気のなりやすさなどにかかわります。ベーチェット病については、これまで11カ所のSNPが報告されてきましたが、他にもあると考えられていました。

 横浜市立大学の水木信久教授(眼科学)ら国際研究チームは、日本、トルコ、イランなどのベーチェット病患者3477人と、健康な人3342人のSNP20万個を比較。その結果、新たに6カ所のDNA配列の領域のSNPが、病気のなりやすさにかかわることがわかりました。今回の発見で主要なSNPはほぼ出そろったといいます。

 ベーチェット病は、遺伝子変異のある人に、細菌の感染など外的な刺激が加わって発症すると考えられています。今回見付けられたSNPは、病原体が皮膚から体に入るのを防いだり、炎症を起こしたりする遺伝子にかかわるものでした。体が反応する仕組みがわかれば、治療薬の開発につながるといいます。

 水木教授は、「主要な遺伝子が出そろったことで、発症する仕組みの解明に迫ることができる。治療薬の開発を加速させたい」と話しています。

 ベーチェット病の国内の患者数は約2万人。地域的には、中近東諸国や地中海沿岸諸国、日本、韓国、中国に多くみられるため、シルクロード病ともいわれています。日本においては北海道、東北に多くて、北高南低の分布を示し、男女比は1対1、20歳代後半から40歳代にかけての働き盛りに、多く発症しています。

 疾患の原因は不明ですが、遺伝子変異など何らかの内因と、虫歯菌を含む細菌やウイルスなどの感染病原体やそのほかの環境因子など何らかの外因が関与して、白血球の異常が生じるために発症すると考えられています。単純な遺伝性疾患ととらえられるのは、妥当ではありません。

 2017年2月7日(火)

 

■微量血液を調べて膵臓がんを早期に診断 アメリカなどのチームが検査法を開発

 1滴足らずの微量血液で、発見が困難な膵臓(すいぞう)がんの徴候を検出する画期的な検査法を開発したとの研究論文が6日、発表されました。膵臓がんは、死亡率が最も高いがんの一つです。

 イギリスの科学誌「ネイチャー・バイオメディカル・エンジニアリング」(電子版)に掲載された論文によると、この検査法は結果が出るのが早く、安価かつ超高感度で、血液で徴候を検出できるその他の病気の検査にも適用できるといいます。

 ヒューストンメソジスト研究所などアメリカと中国の研究チームは、膵臓の腫瘍に存在する「EphA2」と呼ばれるタンパク質を特定。次に、血液の液体成分である血漿(けっしょう)わずか0・001ミリリットル中のEphA2を検出する方法を開発しました。

 膵臓がんは特に悪性度が高く、一般的には症状が現れるのは末期の段階で、診断が下された時点でがんがすでに他の臓器に広がっていることが多いのが特徴です。有効な治療法はなく、患者の約80%が診断から1年以内に死亡します。国立がん研究センターによると、日本国内の年間死亡者数は約3万人で、診断手法の開発が課題となっています。

 今回の研究論文の共同執筆者で、アメリカ・アリゾナ州立大学のトニー・フー氏は、「膵臓がんは、腫瘍の存在を示す早期の血液バイオマーカー(生体指標)が切実に必要とされているがんの一種だ」と述べました。

 研究チームによれば、血液中のがんマーカーを検出するための既存の検査法では、多量のサンプルが必要な上、時間と費用がかかるといいます。

 今回の検査法を用いた予備実験では、膵臓がん患者と健常者、および非がん性炎症の膵炎の患者を85%以上の精度で識別できました。これは既存の血漿検査法より高精度だと、研究チームは論文に記しています。

 研究結果については研究の規模を拡大して検証する必要がありますが、今回の発見は「膵臓がんや他のがんおよび感染症の早期発見、治療、経過観察を向上させる可能性を秘めている」と、ネイチャー誌に掲載された報道向けの要約記事は主張しています。

 フー氏によると、この検査法の認可を得るには2~3年かかる可能性があるといいます。

 2017年2月7日(火)

 

■キユーピー、ごまドレッシング21万本を自主回収へ 金属混入の恐れ

 食品メーカーのキユーピーは7日、東海、北陸、近畿、山口県を除く中国、四国の21府県で販売したドレッシングに、製造工程で微細な金属繊維などが混入した恐れがあるとして、およそ21万本を自主回収すると発表しました。

 自主回収するのは、キユーピーが西日本を中心とする21府県で販売したドレッシングの主力商品「深煎りごまドレッシング」の380ミリリットルのうち、賞味期限が2017年8月22日、8月23日、8月24日、それに8月27日と記載されたおよそ21万本です。

 キユーピーによりますと、昨年12月から稼働を始めた神戸工場(神戸市東灘区)の6日の定期点検で、原料のごまを投入するホース内側の金属や合成樹脂が破損しているのが見付かり、工場にあった未出荷の商品1本に0・15ミリ×約3ミリの金属繊維が混入していたということです。

 このため、点検で製造設備に問題のなかった1月24日の翌日以降に製造された商品を自主回収することを決めました。

 これまでのところ、健康被害の情報は入っておらず、異物が小さいことから「誤って食べても排出されるため、健康被害の可能性は低いと考えている」ということです。

 また、商品を着払いで送付してもらうと、代金分に相当する商品券を返すとしています。

 問い合わせは通話無料のお客様相談室、電話0120・811・399。来週金曜日までは、毎日午前9時から午後5時半まで受け付けています。それ以降は平日だけ受け付けます。

 キユーピーでは、「お客様には多大なるご心配とご迷惑をおかけしますことを深くおわび申し上げます。今後は品質管理体制をより一層強化し、再発防止に努めていきます」と話しています。

 2017年2月7日(火)

 

■自宅などで死を迎える看取り率に大きな地域差 人口3万人以上20万人未満で13倍の開き

 病院ではなく自宅や老人ホームなど生活の場で亡くなる人の割合に、自治体間で大きな差があることが、厚生労働省研究班の調査で明らかになりました。

 2014年の全死亡者から事故や自殺などを除き、「 看取(みと)り率」として算出したもので、人口20万人以上は約3倍、3万人以上20万人未満では約13倍の開きがありました。背景に在宅医療や介護体制の違いがあるとみられ、「最期は自宅で迎えたい」という希望がかなうかどうかは、住む場所によって左右される実態がうかがえます。

 2014年に実施された人口動態調査の全死亡例を基に、自治体ごとに病院や自宅など、どこで亡くなったのかを分析。孤立死などを除外できなかったものの、より看取りの実態に近い数値だといいます。

 データがしっかりしていた全国1504市区町村の集計では、病院の看取り率が78・6%、自宅や老人ホームなどでの「地域看取り率」は21・4%でした。2012年度の内閣府調査で、最期を迎える場所に自宅や老人ホームなどを希望した人が6割を超えているのと比べると、希望と現実に違いがあります。

 市区町村別の地域看取り率をみると、人口20万人以上では神奈川県横須賀市が35・4%で最も高く、最も低い愛知県豊田市は11・6%でした。人口3万人以上20万人未満では兵庫県豊岡市が43・5%で最も高く、最も低い福岡県岡垣町は3・3%でした。

 人口約40万人の横須賀市に316ある診療所が2014年9月に行った訪問診療は4336件。これに対し、人口約42万人と規模がほぼ同じ豊田市で、218の診療所が同時期に行った訪問診療は673件にとどまっています。

 厚労省研究班は看取り率の差の背景に、「往診を行う診療所の比率」など、在宅医療体制の違いがあるとみています。研究班メンバーで医療法人「アスムス」理事長の太田秀樹医師は、「自宅などで生活を続けた先に、穏やかな死を迎えられるよう、自治体は取り組んでほしい」と話しています。

 終末期に延命治療を望まない人が増え、自宅など住み慣れた場所で最期まで過ごしたいと願う人が多くなっています。厚労省は病院の病床数を削減する方針で、2025年までに、自宅や介護施設で長期療養する高齢者らが約30万人増えるとの見通しもあり、安心して死を迎えられる体制作りは急務。

 厚労省研究班の調査では、病院の看取り率が90%以上の自治体も、全体の7%ありました。自宅や老人ホームなどで看取りを行うには、苦痛を軽減する緩和ケアなど医療処置ができることが前提ですが、全国に約1万4000カ所ある24時間態勢の「在宅療養支援診療所」には、往診に手が回らず、実績に乏しい所もあります。自宅での看取りを担う開業医の高齢化も進んでいます。

 診療所だけに頼らず、地域の病院、介護事業所などとの連携を強化することが必要で、先進地域に学んだ各自治体の取り組みが求められています。

 2017年2月6日(月)

 

■他人のiPS細胞移植、理研が患者募集 目の病気「加齢黄斑変性」を再生治療

 他人のiPS細胞(人工多能性幹細胞)から作製した網膜の細胞を、重い目の病気の患者に移植する臨床研究を厚生労働省が了承したのを受け、理化学研究所などのチームが6日、神戸市で記者会見し、5人を目標に対象となる患者の募集を始めたと明らかにしました。

 対象は視力低下や視野のゆがみが起き、進行すると失明の恐れもある「滲出型加齢黄斑変性」の患者で、理研などは2014年、患者本人から作ったiPS細胞を使った移植を初めて実施しています。

 今回の計画では、京都大学が備蓄し、他人に移植しても拒絶反応が少ないとされる特殊な免疫の型の細胞から作ったiPS細胞を使います。

 本人のiPS細胞を使う場合は移植まで11カ月かかっていましたが、最短1カ月に短縮でき、約1億円かかっていた費用も5分の1以下になると見込まれ、iPS細胞を使った医療の普及につながると期待されています。

 記者会見で、iPS細胞を目の網膜細胞に変える理化学研究所の高橋政代プロジェクトリーダーは、「将来の治療の形がどうなるかが決まる重要な研究で、短い期間で実施するため、気持ちを引き締めていきたい」と述べ意気込みを語りました。

 また、移植手術を担当する神戸市立医療センター中央市民病院の栗本康夫眼科部長は、「今回は、実用化に向けた大きなステップなので身が引き締まる思いだ」と話しました。

 チームでは、5人を目標に患者の募集を始めたということで、他人のiPS細胞を使って重い目の病気を治す世界初の手術は、早ければ今年前半にも行われる見通しです。

 2017年2月6日(月)

 

■慈恵医大病院、疑い例も直接連絡する改善策を公表 肺がん疑い報告書を1年放置

 東京慈恵会医科大学付属病院(東京都港区)が、肺がんの疑いがあると指摘された男性患者(72歳)の画像診断報告書を約1年間放置していた問題で、病院は4日、院内で検討した原因分析と改善策をホームページで公表しました。

 患者は肝臓の病気のため、慈恵医大病院の消化器肝臓内科で長年治療を続けており、肺がんの疑いが最初に指摘された画像検査は激しい消化管出血で救急外来を受診した際に撮影されました。慈恵医大病院は検査結果が1年にわたって患者の主治医や外来の担当医に伝えられなかった理由について、主治医らが肝臓や消化管出血の治療に気を取られたことや、医師間の連絡体制が十分でなかったことを挙げました。  

 件数や詳細は不明ながら、慈恵医大病院は過去にも同様の見落とし事例があったと説明。2013~2015年に画像診断部の医師が「早急な対応が必要」と判断した場合、主治医らに直接口頭で結果を伝える仕組みを導入し、画像診断を依頼した医師が報告書を確認したかどうかチェックする電子システムも取り入れていました。

 新たな改善策としては、医師の間で確実に情報を共有するため、画像診断部の医師から患者の主治医や外来の担当医に直接口頭で連絡する基準を引き下げて、「がんの疑い」などの例も確実に伝えることや、画像診断報告を印刷して複数で共有する体制を構築することを明らかにしました。

 2017年2月5日(日)

 

■無資格アートメーク、全国各地で横行 容疑のエステサロン経営者を逮捕

 医師免許を持たずに、札幌市中央区で経営するエステサロンで、「アートメイク」と呼ばれる眉(まゆ)の部分の皮膚に針のついた器具で色を入れる医療行為をしたとして、58歳の女性経営者が医師法違反(無資格医業)の疑いで逮捕されました。

 1月30日に逮捕されたのは、札幌市中央区のエステサロン「アクアミスティ」を経営する白鳥雪代容疑者です。

 警察によりますと、白鳥容疑者は医師免許を持っていないのに昨年1月から12月にかけて、経営するエステサロンで札幌市と岩見沢市の30歳代から60歳代の女性3人に、眉やまぶたの皮膚に針がついた器具で色を付けるアートメイクと呼ばれる医療行為を行ったとして、医師法違反の疑いがもたれています。施術料金は初回1万500円、2回目以降が5250円だったといいます。

 「化粧の手間が省ける」「水にぬれても落ちない」などと若い女性や中高年女性に人気のアートメークを巡っては、医療行為にもかかわらず全国各地でエステサロンによる無資格施術が横行し、健康被害の相談も相次いでいますが、警察によりますと、白鳥容疑者は14年前から無資格で行い、客の一部からは施術後に眉がはれたという被害も報告されているということです。

 調べに対し、白鳥容疑者は容疑を認め、「生活費を稼ぐためだった」と供述しているということです。

 警察は、白鳥容疑者が施術した客はおよそ1000人に上り、年に数百万円の利益を得ていたとみて詳しい営業の実態を調べています。

 国民生活センターや、皮膚科や形成外科の医師らが立ち上げた専門の学会は、アートメイクで無資格業者を利用しないよう注意を促す一方、 顧客側に対しても「医師免許が必要と知らずに利用する傾向がある」と認識不足を指摘しています。

 国民生活センターによると、2006年~2011年に「まぶたがはれた」などアートメークの被害相談は121件に上り、 大半は医療機関ではないエステサロンで発生していたといいます。

 医療機関でのアートメーク普及を提唱する日本メディカルアートメイク協会(東京都中央区)は 、「施術には一般に流通していない塗る麻酔薬を使用するが、 医療を提供していないエステサロンがどこで入手しているのか不明だ」と危うさを指摘。「針を使うアートメークはエイズウイルス(HIV)やB型肝炎など感染症の恐れもあり、 メークやエステ感覚の安易な利用は慎重にしたほうがいい」としています。

 2017年2月5日(日)

 

■納豆の定期的摂取で、循環器疾患の死亡リスクが25%低下 3万人の追跡調査で判明

 日本の伝統食の1つである納豆を定期的に食べる人は、ほとんど食べない人に比べて循環器疾患で死亡するリスクが25%低いことが、約3万人の日本人を16年間追跡した研究で明らかになりました。

 納豆を含むさまざまな大豆製品の摂取は、脳卒中や心筋梗塞(こうそく)など循環器疾患の予防に役立つのではないかと考えられていますが、大豆製品全般と循環器疾患の関係について検討したこれまでの研究では、一貫した結果は得られていません。

 一方、大豆由来の発酵食品である納豆は、ほかの大豆製品とは異なり、血栓を溶かす作用を持つ酵素であるナットウキナーゼを含んでいます。血栓の形成はさまざまな循環器疾患を引き起こすことが知られているため、納豆こそが循環器疾患のリスクを下げると期待されていますが、納豆と循環器疾患の関係について検討した大規模な研究はありませんでした。

 今回、岐阜大学医学系研究科の永田知里教授らは、納豆、大豆タンパク質、大豆イソフラボンの摂取と循環器疾患による死亡の関係を調べるため、岐阜県高山市の住民を対象とした疫学研究「高山スタディ」に参加した人々のデータを分析しました。高山スタディは、食事の内容やそれ以外の生活習慣と、がんや慢性疾患の関係を調べる目的で、1992年に岐阜県高山市に住んでいた35歳以上の男女を対象に行われた研究です。

 1992年の時点で質問票を用いて、対象者の年齢、性別、配偶者の有無、学歴、身長、体重、飲酒も含む過去1年間の食事の内容、喫煙習慣、運動習慣、病歴など、さまざまな情報を収集。大豆製品については、豆腐、味噌、大豆、納豆、豆乳、高野豆腐、油揚げ、厚揚げ、五目厚揚げなどを過去1年間にどの程度摂取したのかを尋ねました。

 そして、1992年から2008年10月1日までの16年間、男性1万3355人と女性1万5724人について、死亡の有無と死因を調査しました。追跡期間中に高山市から転出したのは、1912人でした。

 調査の結果、1678人が循環器疾患で死亡していました。うち677人は脳卒中、308人は虚血性心疾患(心筋梗塞、狭心症、虚血性心不全など)による死亡でした。

 納豆の摂取量については、最も多かった人から最も少なかった人までを順番に並べて、4等分しました。最も摂取量が多かった上位25%群(7269人)の納豆摂取量の中央値は1日に7・3グラム(市販されている40グラムから50グラムの四角い容器に入っているタイプの納豆を2〜4個)、続いて摂取量が多かった25%群(7270人)では2・7グラム、次の25%群(7270人)では1・4グラム、最も摂取量が少なかった下位25%群(7270人)では0グラムでした。

 納豆摂取量の下位25%群と比較して、残り3群の循環器疾患による死亡のリスクを検討したところ、上位25%群では25%低いことが明らかになりました。大豆タンパク質の摂取量、大豆イソフラボンの摂取量についても、同様に分析しましたが、循環器疾患による死亡に対する影響はみられませんでした。

 循環器疾患による死亡のうち、脳卒中による死亡のリスクは、納豆の摂取量と大豆タンパク質の摂取量が多いほど低く、下位25%と比較した上位25%群の脳卒中死亡リスクは、納豆では32%、大豆タンパク質では25%低くなっていました。

 脳卒中の内訳をさらに詳しくみると、血栓が詰まって起こる虚血性脳卒中(脳梗塞と一過性脳虚血発作)による死亡が393人、血管が破れて起こる出血性脳卒中(脳内出血とくも膜下出血)による死亡が242人でしたが、納豆を多く摂取する上位25%群では、虚血性脳卒中による死亡のリスクも33%低下していましたが、出血性脳卒中による死亡については、納豆との関係は明確にはなりませんでした。ただし、大豆タンパク質の摂取が多いほど、出血性脳卒中による死亡のリスクが低下する傾向が認められました。

 今回の分析結果は、納豆の摂取が循環器疾患死亡のリスクを下げる可能性を世界で初めて示しましたが、永田教授らは、ほかの集団を対象に、納豆、大豆タンパク質などの摂取量と循環器疾患の関係を調べて、今回の結果を確認する必要があると述べています。

 2017年2月4日(土)

 

■世界全体で1年間に880万人ががんで死亡 WHO、早期診断を促す

 2月4日はがんに対する啓発を行い、予防などの行動を呼び掛ける「世界対がんデー」です。世界保健機関(WHO)は、世界全体で1年間におよそ880万人ががんで亡くなっているとして、早期の診断などを促す新しいガイダンスを発表しました。

 WHOによりますと、2015年にがんで亡くなった人は世界全体でおよそ880万人で、このうち3人に2人は所得が高くない国で亡くなっています。

 WHOは30%から50%のがんは防げる可能性があるとして、予防対策や早期の診断などを促す新たなガイダンスを「世界対がんデー」に合わせて3日、発表しました。

 新たなガイダンスは、各国政府や医療関係者などに活用してもらおうというもので、この中では、一般の人たちに初期のがんの症状についての意識を持ってもらい、すぐに医療機関にかかるよう促すとともに、適切な診断ができるよう医療関係者の教育などに投資するよう求めています。

 そして、がんになった場合でも、金銭的な負担が少なく、安全で効果的な治療を受けられるよう、取り組むべきだとしています。

 WHOによると、現在がんと診断される人は年間およそ1400万人おり、2030年には年間2100万人を超えると予想しており、今回のガイダンスを活用し、防ぐことができるがんによる死者を減らすよう呼び掛けています。

 がんは2011年に心疾患を抜いて、世界の死因の第1位となっています。

 2017年2月4日(土)

 

■初期のアルツハイマー病、原因物質の除去で回復の可能性 精神・神経医療研究センターが発表

 アルツハイマー病のごく初期の段階で、病気の原因とされるタンパク質の集合体を取り除けば、脳の神経細胞に起きた異常を回復できる可能性があるとする研究成果を、国立精神・神経医療研究センターなどの研究チームが発表しました。

 この研究を行ったのは、国立精神・神経医療研究センター神経研究所の荒木亘室長(神経科学)らです。

 研究チームではまず、ラットの脳の神経細胞にアルツハイマー病の原因とされ、細胞にダメージを与える「アミロイドベータ」というタンパク質が2~30個ほど集合した「オリゴマー」を加え、病気の初期に観察される脳の状態を再現しました。

 そして、ラットの脳の神経細胞を2つのグループに分け、一方は最初に加えたアミロイドベータの集合体であるオリゴマーを取り除かないまま培養、もう一方は、オリゴマーを取り除いた上で2日間培養しました。

 その結果、オリゴマーを取り除かないままだった脳の神経細胞では、病気の症状が悪化していましたが、オリゴマーを取り除いた脳の神経細胞では、病気の初期に観察された細胞のダメージが正常に近い状態に回復していたということです。

 アルツハイマー病では、これまでにも早い段階でアミロイドベータの蓄積を抑える治療の重要性が指摘されていましたが、オリゴマーを取り除けば、初期の症状を改善させられる可能性が実証的に示されたのは初めてだということです。

 人の脳でも、蓄積し始めたごく初期の段階でオリゴマーを除去できれば、治療や予防ができる可能性があります。国内のアルツハイマー病患者は、250万人以上と推定されています。

 現在、オリゴマーの蓄積を防ぐ薬の開発や、蓄積具合を把握して治療開始のタイミングを解明する研究が、世界中で進められています。

 荒木室長は、「認知症は早期発見が重要だ。できるだけ早期に治療を始めれば、病気の進行を防ぎ、回復が見込まれるかもしれない。アミロイドベータの毒性を低減することも治療につながると考えられ、新しい薬の開発を目指したい」と話しています。

 2017年2月4日(土)

 

■パーキンソン病、他人のiPS細胞で移植手術 京大、2018年度実施へ

 京都大学iPS細胞研究所の高橋淳教授は3日、さまざまな細胞に育つiPS細胞(人工多能性幹細胞)で神経難病のパーキンソン病を治療する医師主導の臨床試験(治験)を2018年度に始めると明らかにしました。

 パーキンソン病の患者に、健康な人の血液からあらかじめ作製したiPS細胞を移植します。iPS細胞を患者自身から作製するよりも治療にかかる費用と期間が10分の1になる見通しで、大日本住友製薬と協力し、国の承認を目指します。

 パーキンソン病を発症すると、手足が震えたり、筋肉がこわ張ったり、運動能力が下がったりします。脳の神経細胞が減って神経伝達物質のドーパミンが不足するのが原因で、主に50歳以上で発症し、国内に約16万人の患者がいます。

 神経伝達物質を補う薬を投与する治療法があるものの、神経細胞が減ると効かなくなります。

 高橋教授らの計画によると、神経伝達物質のドーパミンを出す神経のもととなる細胞をiPS細胞から数百万個作り、患者の脳に注射。2018年度に国に計画を届け出て、同年度に最初の移植を目指します。症状が中程度の患者が対象で、人数は未定といいます。

 iPS細胞研究所は当初、患者自身の血液などから作ったiPS細胞を使う臨床研究を計画していましたが、治療に1年の期間と数千万円の費用がかかるとされました。

 拒絶反応が起きにくい特殊な免疫の型を持つ人に協力してもらい、iPS細胞を前もって作製して、備蓄したiPS細胞を使えば、治療期間は6週間、費用は数百万円にできるといいます。現在は、治療の効果や安全性を動物で調べています。

 高橋教授は、「新しい治療法を一日も早く患者に届けたい」と話しています。

 iPS細胞研究所は2015年から、拒絶反が起きにくいiPS細胞を作製、備蓄する「iPS細胞ストック事業」を進めています。治験がうまくいけば、大日本住友製薬が医薬品医療機器法に基づく国の承認を得た上で、再生医療製品として実用化します。

 2017年2月4日(土)

 

■乾いた豆やナッツ類、3歳ころまで食べさせないで 消費者庁が注意喚起

 乳幼児が豆を食べて窒息するケースがあることから、消費者庁は3日の節分に合わせ、「3歳ごろまでは乾いた豆やナッツ類は食べさせないでほしい」と注意を促しています。小さな子供が豆まきが終わった後、床などに落ちた豆を食べるなどして窒息するケースが毎年相次いでいるためです。

 消費者庁が昨年末時点で30の医療機関から得た情報によると、0~3歳が豆やナッツ類を食べたことで起きた事故は、2010年12月からの6年間で29件発生。半数以上のケースで、入院治療が必要となるなど、症状が重くなるのが特徴です。

 そのうち1歳児のケースでは、節分の豆を食べた後に息がゼイゼイし始めました。病院で診察したところ、気道に豆の破片が入っており、全身麻酔をして摘出し5日間入院したといいます。別の1歳児は家族と一緒にピーナツを食べていたところ、のどに詰まって顔色が悪くなったため、親が慌てて背中をたたいたり、指を口に入れたりしてピーナツ1個を吐き出させましたが、せき込んで息がゼイゼイするため救急要請したといいます。

 消費者庁によると、豆やナッツ類は形や大きさ、硬さからほかの食品よりも気管に入りやすく窒息の危険があるだけでなく、気道に入った小さな破片をそのまま放置していると、気管支炎や肺炎を起こすこともあります。

 消費者庁の担当者は、「特に乳幼児ののどは未発達で気管に入りやすい。節分の豆まきでは、親の目の届かないところで子供が豆に近付かないように注意し、誤って口に入れないように後片付けも徹底してほしい。また、節分に限らずふだんから、歯が生えそろう3歳ごろまでは乾いた豆・ナッツ類を食べさせないようにしてほしい」としています。

 小林製菓(東京都江戸川区)は2010年から、豆による事故を防ぐため小分け包装し、袋のまま豆まきができる節分用商品の販売を始め、今年の売り上げは当初の約5倍に伸びたといいます。小林義明社長は、「袋のまままけば掃除も楽」と話しています。

 2017年2月4日(土)

 

■新たなiPS細胞を提供、日本人の3割カバーへ 京大iPS細胞研究所

 健康な提供者の血液から医療用のiPS細胞(人工多能性幹細胞)を作製する「iPS細胞ストック事業」で、京都大学iPS細胞研究所の山中伸弥所長は2日、4月から2種類目の細胞提供を始めることを明らかにしました。都内で開かれた日本医療研究開発機構のシンポジウムで発表しました。

 4月から提供されるiPS細胞は、日本人の13%の免疫の型をカバーします。すでに提供され、日本人の17%の免疫の型をカバーしている1種類と合わせ、日本人の3割に相当する3千数百万人の免疫の型をカバーできる見込み。

 計画では、その後さらに種類を増やし、2022年度末までには75~150種類のiPS細胞を提供。日本人の8~9割の免疫の型をカバーして、拒絶反応が起きにくい移植ができるようにするといいます。

 iPS細胞ストック事業は、拒絶反応が起きにくい特殊な免疫の型を持つ人に協力してもらい、iPS細胞を前もって作製して、再生医療用に保管し、外部の研究機関に提供します。現在提供しているiPS細胞を網膜の細胞に変え、目の病気の患者に移植する臨床研究が1日、厚生労働省の再生医療等評価部会で了承されました。

 一方、iPS細胞研究所では昨年11月、新生児のへその緒に含まれる臍帯(さいたい)血から医療用のiPS細胞を作製する過程で、本来は使用しない試薬が使われていた可能性があるとして、1月23日に人への使用を目的とした臨床応用を前提にしたケースについては、iPS細胞の提供を停止しました。

 山中所長によると、再発防止のため民間企業タカラバイオと連携して管理体制を強化し、1月末に作製を再開したということで、9月ごろの提供の再開を目指しています。

 2017年2月4日(土

 

■インフルエンザ、全国的に警報レベル 推計患者200万人を超す

 1月29日までの1週間に全国の医療機関を受診したインフルエンザの患者は推計201万人に上り、昨年9月以降の今シーズンで初めて200万人を超えたことが、国立感染症研究所の調査で明らかになりました。

 専門家は流行のピークに差し掛かり、しばらく患者の多い状態が続くとして、手洗いなどの対策の徹底を呼び掛けています。

 国立感染症研究所によりますと、1月23日~29日までの直近の1週間に全国およそ5000の医療機関を受診したインフルエンザの患者は、1医療機関当たり39・41人で、これを基に推計した患者数は201万人と前の週に比べて40万人増え、今シーズン初めて200万人を超えました。

 各地の流行状況を表す1医療機関当たりの患者数を都道府県別にみますと、宮崎県が59・08人と最も多く、次いで福岡県が55・10人、愛知県が54・68人、埼玉県が51・68人、千葉県と山口県が51・40人、大分県が51・12人、神奈川県が49・49人などとなっており、2週連続ですべての都道府県で前の週より患者数の報告が増えました。東京都38・73人、大阪府39・80人など計33都府県で、大流行の発生を示す警報レベルの「30人」に達しています。

 冬休みから学校が再開した年明け以降は、子供を中心に感染が拡大。学級閉鎖や病院などでの集団感染も相次いでいます。また、流行のほとんどは高齢者が重症化しやすいとされるA香港型と呼ばれるウイルスのタイプで、入院患者の報告では60歳代以上が全体の7割近くを占めています。

 国立感染症研究所の砂川富正室長は、「全国的に急激に患者が増えていて、流行のピークに差し掛かっていると考えられる。しばらく患者の多い状態が続くので、手洗いやうがいなどの対策を徹底するとともに、発症したら自宅で安静にするなどして感染拡大を防ぐ対策をとってほしい。また、水分がとりづらかったり、息が苦しくなったりするなど重症化のサインがみられたら、速やかに医療機関を受診してほしい」と話しています。

 感染の予防には、ワクチン接種が推奨されています。しかし、ワクチンを接種したのにインフルエンザにかかる人もいます。インフルエンザワクチンの最大の目的は肺炎や脳症といった重症化を防ぐことで、熱やせきなどの症状が出るのを必ずしも防げるものではないため、専門家は「接種後も油断せず、手洗いやうがいなどの対策を徹底してほしい」と注意を呼び掛けています。

 インフルエンザウイルスは口や鼻から体内に侵入し、主にのどや鼻の奥の細胞で増殖します。これが感染と呼ばれる段階で、ウイルスがさらに増殖し、細胞にダメージを与え始めると体の免疫反応などに伴って高熱やせきなどの症状が出て発症します。

 専門家によりますと、ワクチン接種を受けると体内でウイルスを攻撃する抗体と呼ばれる物質が作られ血液を通じて全身に行き渡りますが、インフルエンザウイルスが感染するのどや鼻の奥の粘膜などでは十分な量の抗体ができません。このため、ワクチン接種では、ウイルスの感染を完全に防ぐことはできず、高熱やせきなどが出る発症を抑える効果も一定程度だということです。

 一方、インフルエンザワクチンの効果が大きいとされるのは、ウイルスがさらに体内で増殖を続け、肺炎や脳症といった重い症状を引き起こすのを防ぐ効果で、特にさまざまな病気を抱える高齢者ではワクチン接種が重要となります。実際、高齢者を対象とした研究で、ワクチンの接種を受けるとインフルエンザで死亡するのを80%防げたとする報告もあります。

 このため、法律に基づく定期接種の対象も、65歳以上の高齢者と、60歳から65歳未満の人で心臓や腎臓などに慢性の病気を抱える人となっています。

 感染症の問題に詳しい川崎市健康安全研究所の岡部信彦所長は、「これから流行のピークを迎えるに当たって、ワクチンを打った人でも発症する可能性があることを自覚してほしい。せっけんを使った手洗いやうがいなどの対策を徹底するとともに、発症してしまったらマスクを着用したり家で安静にするなどして、周りに広げない配慮をしてほしい」と話しています。

 2017年2月3日(金)

 

■ファストフード包装紙、人体に有害の恐れも 半分で発がん性疑いの物質を使用

 ハンバーガーやフライドポテトなどファストフードを提供する際に使用される油をはじく包装紙や紙容器には、食べ物に染み込む恐れのある化学物質が使われていることが多いとした調査結果を、アメリカの研究者らが1日、学術誌に発表しました。

 この化学物質が人体にどのような影響を及ぼすかには触れていませんが、過去の研究ではがんや甲状腺疾患の発症との関連性が疑われると警鐘を鳴らしています。

 アメリカの学術誌「エンバイロメンタル・サイエンス・アンド・テクノロジー・アンド・レター」に掲載された論文によると、アメリカ全土の27のファストフードチェーンから集めた400余りのサンプルを検査した結果、包装紙のほぼ半分と、フライドポテトやピザなどを入れる紙容器の20%から、フッ素化合物の一種、パーフルオロアルキル化合物(PFAS)が検出されました。

 フッ素加工は、染みが付きにくいカーペット、汚れがこびりつかない調理器具、アウトドア用に防水性を高めたウエアなどにも活用されています。論文では、「テキサス風メキシコ料理や、デザート、パンの包みではフッ素が使われている可能性が最も高い」と指摘しています。

 ただし、この論文では、人体が包装紙や紙容器に含まれるPFASにさらされると具体的にどのような影響を受けるのかについては言及していません。その一方で、一部のPFASについては、生体蓄積性があり、がんや甲状腺疾患、免疫機能や出生率、生殖能力の低下と関連があることが過去の研究で指摘されている、と警告しています。

 論文の筆頭執筆者であるNPO「サイレント・スプリング・インスティチュート」の環境化学者、ローレル・シャイダー氏は、「これらの化学物質(PFAS)はさまざまな健康障害と関連があるので、人々が食品を通じてそれにさらされている可能性があるというのは心配だ」と述べています。

 2017年2月2日(木)

 

■他人のiPS細胞を使い網膜細胞移植、今年前半にも実施 厚労省部会が世界初の臨床研究を了承

 目の難病の患者に他人のiPS細胞(人工多能性幹細胞)から作製した目の網膜細胞を移植する、理化学研究所などによる世界初の臨床研究計画を1日、厚生労働省厚生科学審議会の再生医療等評価部会が了承しました。

 本人のiPS細胞を使う場合に比べ、コストと時間を大幅に削減でき、iPS細胞の本格的な医療応用への一歩となります。今月中に厚労相が正式に承認し、今年前半にも実施されます。

 iPS細胞は、がん化のリスクの低減が大きな課題となっています。厚労省によると、同部会は臨床研究に使う細胞の615種類のがん関連遺伝子に異常がないとする理研などのデータを確認し、計画を了承しました。

 臨床研究は、理研のほか、京都大学iPS細胞研究所、神戸市立医療センター中央市民病院、大阪大学医学部付属病院の計4機関が、進行すると失明の恐れもある目の難病「加齢黄斑変性」の患者5人を対象に計画しています。京都大学iPS細胞研究所があらかじめ健康な人から作製して備蓄したiPS細胞を、理研が目の網膜細胞に変え、両病院で患者の目に注射して移植します。

 理研などは2014年9月、女性患者本人のiPS細胞で作った網膜細胞のシートを移植する臨床研究1例を実施。経過は良好ですが、手術の同意から移植までに約1年かかり、コストも約1億円に上りました。他人のiPS細胞を使えば移植までの時間は1カ月程度、費用は1人当たり2000万~数百万円にできるといいます。

 他人の細胞を移植に使うため、京都大学では拒絶反応が起きにくい特殊な免疫の型を持つ人の血液からiPS細胞を作製しています。

 理研などは昨年10月、今回の計画を厚労省に提出していました。

 審査終了後、部会長の福井次矢・聖路加国際大学長は、「動物実験などのデータから、移植による利益を上回るリスクはないだろうと判断した」と説明しました。

 日本再生医療学会の理事長で、自身も他人のiPS細胞から作った心臓の筋肉の細胞を患者に移植する研究を進めている大阪大学の澤芳樹教授は、「他人のiPS細胞を使った臨床研究のスタートは今後、再生医療が発展していくための大きな一歩だ」とした上で、「今後、研究者らが議論を続け、安全性についての情報を共有し、患者にとって最もよい有効性と安全性のバランスを考えていく必要がある。より迅速に患者の元に新しい再生医療を届けられるよう、我々も続いていきたい」と話しています。

 加齢黄斑変性は、網膜の中心にある黄斑という部分が傷付いて、働きが低下し、視野がゆがみ、視力が低下する目の病気で、症状が進行すると視力が失われます。日本では失明原因の第4位で、50歳以上の人の約1%にみられて、国内の患者はおよそ70万人と推計され、多くが進行の早いタイプだとされています。

 患者に対しては従来、薬剤を注射するなどの治療が行われてきました。しかし、症状が進むのを抑えることはできても、傷付いた黄斑を修復する効果はあまり期待できず、根本的な治療法にはなっていません。

 2017年2月2日(木)

 

■偽のC型肝炎治療薬、成分はビタミン剤や漢方薬など 厚労省が分析

 奈良県や東京都内で見付かった高額なC型肝炎治療薬「ハーボニー配合錠」の偽造品について、厚生労働省は1日、ドラッグストアなどで市販されているビタミンのサプリメントや風邪の時に服用する漢方薬などだったとの成分分析結果を公表しました。

 厚労省は、国内で何者かが正規品のボトルに詰め替え、東京都内の卸売り販売業者2社に売ったとみています。偽造品は、卸売り販売業者の在庫からさらに1本発見され、計15本になりました。

 国立医薬品食品衛生研究所などが成分を分析したのは、ボトル6本分。錠剤は4種類あり、サプリメントと漢方薬は、国内で簡単に入手できることから国内で詰めたとみられます。それ以外の2種類は、ギリアド・サイエンシズ(東京千代田区)が製造販売する正規品のハーボニー(1錠約5万5000円)と、同じ成分を含むC型肝炎治療薬「ソバルディ」(1錠約4万2000円)でした。ボトルの中身を詰め替えて、わざわざ高額な薬を混ぜたりした意図は不明といいます。

 新たに見付かった1本の中身もサプリメントとみられ、一部は割れていました。

 また、偽造品は15本とも、東京都千代田区神田の卸売り販売業者2社が昨年11月以降に購入し、うち5本が翌日までにさらに複数の卸売り販売業者を経由して、薬局チェーンの「関西メディコ」(奈良県平群町)に納入されたことが確認されたといいます。

 卸売り販売業者は「現金問屋」と呼ばれ、面識のない複数の個人から28錠入りボトル1本を90万~100万円(薬価は約153万4000円)で買ったと説明しています。奈良県の調査では、最初に偽造に気付いた患者1人を除き、偽造品を渡された患者はいませんでした。

 現金問屋が記録を残していないため、偽造品を持ち込んだ人物の特定はできていません。東京都などは医薬品管理がずさんだったとして、医薬品医療機器法(薬機法)に基づく行政処分を検討しています。

 2017年2月2日(木)

 

■コカ・コーラ、トクホ製品を3月発売へ 食物繊維を含み脂肪吸収を抑える効果

 日本コカ・コーラ(東京都渋谷区)は1日、主力炭酸飲料「コカ・コーラ」で特定保健用食品(トクホ)の許可を受けた製品を開発し、3月27日に発売すると発表しました。

 日本は世界でも特に健康への意識が高いことから、アメリカのコカ・コーラ本社の研究開発部門が、日本市場専用に開発しました。高付加価値製品を投入し、激化する清涼飲料の安売り競争から抜け出す考えです。

 新製品「コカ・コーラ プラス」は470ミリリットル入りで、希望小売価格は税抜き158円。全国の自動販売機やスーパーで販売。パッケージは白を基調としたバックに赤字でコカ・コーラの字が描かれており、従来とは大きくイメージが異なります。スーパーの店頭で見掛けた時、一目で見分けがつくようにデザインされています。

 カロリーゼロで、食物繊維の難消化性デキストリンを1本当たり約5グラム含み、食事後の脂肪の吸収を抑え、血中中性脂肪の上昇を穏やかにする効果があり、健康意識が高まる40歳代以上の消費者をターゲットとします。

 コーラ系のトクホ飲料では、2012年にキリンビバレッジが「メッツコーラ」、サントリー食品インターナショナルが「ペプシ スペシャル」を相次いで発売しています。

 日本コカ・コーラのティム・ブレット社長は、「130年間続くコカ・コーラの味やブランドを変えずに、日本ならではの消費者のニーズにこたえる製品を作るのに時間がかかった」と説明。アメリカ本社が味や原料を吟味し、約6年かけて発売にこぎ着けたといいます。

 ただし、世界共通のブランド戦略を進めるコカ・コーラが、日本向けの製品開発に初めて踏み切った背景にはもう一つ訳があり、「20年間飲料の価格が下がり続けているという日本ならではの状況がある。抜け出すためには革新的な製品が必要」とブレット社長は語っています。

 価格にとらわれない付加価値を備えた製品の投入は急務で、安売りで激化する競争の中で、日本向けのカスタマイズが必要になりました。

 2017年2月2日(木)

 

■画像診断報告書の放置など5年で30件 大病院で医療ミスが相次ぐ

 医療事故の情報を収集している「日本医療機能評価機構」(東京都千代田区)が、がんの疑いなどが記された画像診断報告書の放置や確認不足に関する事案を調べた結果、2011年~2015年の5年間に全国の医療機関から30件の報告があったことが1月31日、明らかになりました。

 同じ日には、東京慈恵会医科大学付属病院(東京都港区)で、肺がんの疑いがあると指摘された男性(72歳)の画像診断報告書を主治医が確認せず、約1年間放置された事案が判明。相次ぐ医療ミスの背景には、検査技術の発達に伴う情報量増加や電子カルテの導入、医師の専門分野の細分化が影響しているとの指摘もあります。

 男性は肺がんの治療を受けられないまま、昨年12月に容体が悪化して入院。がんは進行して手術や抗がん剤治療できない状態となり、現在も重篤な状態が続いています。慈恵医大病院は医療ミスを認めて、男性側に謝罪しました。

 男性の長男(30歳)は、「1年前であれば父は手術を受けていた。再発防止に向け病院全体で取り組んでほしい」と話しています。慈恵医大病院側は、「今回の事実を大変遺憾に思います。現在、全力で対応し治療に当たっております。改善策を検討し、再発防止に努めたいと思います」としています。

 男性側や慈恵医大病院の説明資料によると、男性は肝臓に持病があり、慈恵医大病院の消化器肝臓内科で治療を続けていました。2015年10月下旬、消化管出血で救急外来を受診し、胸部と腹部のCT(コンピューター断層撮影)検査を受けました。画像を読影した放射線科医は、肺がんの疑いがあると画像診断報告書に記載。救急外来で当直していた医師も、報告書を確認していました。

 しかし、入院後に担当となった消化器肝臓内科の主治医は、CT画像や画像診断報告書を確認しませんでした。当直医から主治医への口頭での引き継ぎもなかったといいます。男性は2015年11月上旬に退院。2016年10月中旬に男性が再入院した際、改めてCT検査を受け、肺に異常な影があるのが確認されました。

 検査で異常が見付かりながらも、結果が患者に伝えられずに適切な治療を受けられなかった例は、過去にも度々起きています。

 名古屋大学医学部付属病院(名古屋市)は2016年12月、肺がんの疑いがあると指摘された検査結果を主治医が確認しなかったため、80歳代の女性が3年にわたって放置され、死亡したと発表しました。

 名古屋大病院は2016年9月にも、肺の画像診断で肺がんを見付けたとの情報が担当医に伝わらず、50歳代の男性患者が約2年後に死亡したと発表したばかり。2008年にも、口腔(こうくう)がんの疑いがあると診断した30歳代患者を約3年間放置していたことを公表しています。

 相次ぐ伝達ミスに、名古屋大病院は院内で患者の情報を共有できるようなシステムの導入など再発防止策を検討中。しかし、患者の病歴などの情報は慎重に扱われるもので、多数での共有は難しいといいます。

 医療事故に詳しい「医療過誤原告の会」(東京都東村山市)の宮脇正和会長は、「今回、慈恵医大病院は自ら見落としがあったことを患者に説明し、謝罪したが、同様のミスは全国の大病院で起きているだろう」として、「伝達ミスを防ぐには、個人の頑張りでは限界がある。大学病院など大規模な病院がシステムの改善など再発防止策を共有していくことが必要だ」と語っています。

 2017年2月1日(水)

 

■緑内障診断、ゴーグル型の視野検査装置で簡易に早期発見 関西大などが開発

 視神経が傷付いて視野が徐々に欠ける目の病気で、失明原因として国内最多の「緑内障」を簡易に診断できるゴーグル型の視野検査装置を、関西大学と大阪医科大学などの研究チームが開発しました。

 4月から診療現場などで検証を始め、2018年秋の製品化を目指します。会社などの健康診断の場でも使え、早期発見につながると期待されます。

 視野欠損の有無は一般的に、専用の暗室を備えた眼科で、視野測定装置に顔を固定して診断する必要があります。このため、健康診断などで患者を見分ける検査はほとんど行われず、治療が遅れる原因にもなっていました。

 関西大学の小谷賢太郎教授(生体情報工学)らは、目の前に暗室を再現できるゴーグル型ディスプレーに着目。眼球の動きをとらえるセンサーと組み合わせ、画面に現れる灰色の光点を左右の目で各5分ずつ、約60回追うだけで、視野欠損の有無や位置を精度よく検出できる小型の装置を開発しました。

 患者、健康な人、それぞれ約10人に対して行った試験では、暗室での診断に見劣りしないデータが出たといいます。

 現在、量産に向けた新型装置を部品加工メーカー「昭和」(宮崎県延岡市)と開発中で、4月からは新型装置5台を使い、大阪医科大学病院で患者50人、関西大学で健康な人50人を対象に検証作業を実施して、販売の認証に必要なデータを取得し、来年10月ころの製品化を目指します。

 小谷教授は、「暗室が不要で、どこでも簡易に検査を行える。検査を活用すれば、交通事故の防止にも役立つ」と話しています。

 厚生労働省などによると、緑内障は40歳以上の日本人の20人に1人が患い、失明原因の2割以上を占めるとされます。一度失った視野は元に戻らないため、早期発見で進行を抑える治療が重要になるものの、視野は一部欠けても自覚しにくいため、欠損部が広がって初めて気付く人が多く、交通事故の原因にもなっているといいます。治療は眼圧を下げる点眼薬が基本で、効果が十分でない場合は、レーザー治療や切開手術などが必要になります。

 2017年2月1日(水)

 

■京大、iPS細胞の簡単な培養法を新開発 費用は10分の1に

 iPS細胞(人工多能性幹細胞)などの培養にかかる手間を減らし、費用も抑えられる新たな手法を見付けたと、京都大学の研究チームが発表しました。材料費の一部を10分の1程度に減らせる可能性があるといいます。

 iPS細胞などを使った創薬研究や治療には細胞の大量生産が必要で、新たな培養法の貢献が期待されます。

 iPS細胞やES細胞(胚性幹細胞)を培養する際には、細胞を接着させる「のり」の役割を持つ材料を、事前に培養容器に付着させておく必要があり、この処理に1時間以上かかります。

 研究チームは、複数ある材料のうち「ラミニン511」というタンパク質の断片を使えば、細胞に混ぜるだけで培養容器に細胞が接着することを確認しました。材料の量も、従来の10分の1ですみました。

 研究チームの宮崎隆道・京大助教(幹細胞生物学)は、「再生医療には大量の細胞を使うため、今回の手法がコスト削減につながると期待できる。心筋細胞の移植に使う場合、数百万円かかる材料費が、数十万円程度に抑えられる可能性がある」と話しています。

 研究チームの論文は30日、イギリスの電子版科学誌サイエンティフィック・リポーツに掲載されました。

 2017年2月1日(水)

 

■喫煙による世界経済の損失、年間160兆円以上 60歳代での禁煙で死亡リスクが2割低下

 喫煙が世界経済に与える損失が2012年に年間1兆4000億ドル(約160兆円)以上に達し、また医療費の20分の1が喫煙の影響によるものだとする研究結果が1月31日、発表されました。

 世界保健機関(WHO)とアメリカがん協会(ACS)の専門家らによると、喫煙による損失は世界のGDP(国内総生産)の2%近くに相当し、そのうちの約40%は発展途上国が負っているといいます。

 損失額のうち治療費や入院費が4220億ドル(約48兆円)を占め、疾病や死亡で労働力が失われることなどによる間接的なコストも含まれています。

 イギリスの医学誌BMJを発行するグループの専門誌「タバコ・コントロール」に掲載された論文は、「喫煙は全世界に大きな経済的負担を課しており、特にたばこが最も普及している欧州と北米で顕著だ」と指摘し、さらに「これらの損失に取り組むため、各国による強力なたばこ規制策の実施が急務であることを、今回の研究は浮き彫りにしている」と述べました。

 論文の執筆者らによると、今回の研究では喫煙による世界の総損失額をより正確に推計するため、従来の富裕国に加え、初めて低・中所得国も対象に含みました。世界の喫煙者の97%を占めるアフリカ、南北アメリカ大陸、地中海東岸、欧州、東南アジア、西太平洋地域の152カ国のデータを分析したといいます。

 一方、アメリカ国立がん研究所などの研究チームは、60歳代になってから禁煙しても死亡リスクは下がるという研究結果を、アメリカの医学誌に発表しました。高年齢層での禁煙の効果を調べた研究は、珍しいといいます。

 アメリカでの大規模な健康調査のデータから、70歳以上の約16万人分を解析した結果、喫煙者の死亡リスクは吸ったことがない人の約3倍でした。禁煙の効果を年代別に調べると、喫煙者に比べ、30歳代で禁煙した場合の死亡リスクは約6割低かったほか、40歳代の禁煙で約5割、50歳代で約4割、60歳代で約2割と、いずれもリスクが低くなっていました。

 研究チームは、「年齢に関係なくすべての喫煙者に禁煙を勧めるべきだ」と指摘しています。

 2017年2月1日(水)

 

■関東地方と九州地方の一部で花粉シーズン入り 関東のピーク予想は3月上旬から中旬

 一般家庭の協力を得て全国各地で飛散する花粉の量を観測している民間の気象会社「ウェザーニューズ」は、関東地方の1都4県と九州地方の2県で花粉シーズンに入ったと31日、発表しました。

 千葉市美浜区にあるウェザーニューズは、一般家庭の協力を得て、沖縄を除く全国1000カ所に、飛散する花粉の量を観測する直径15センチほどの装置「ポールンロボ」を設置しています。

 発表によりますと、関東地方の東京都、神奈川県、千葉県、茨城県、埼玉県の1都4県と九州地方の大分県、宮崎県の2県は、ポールンロボを置いている3割以上の地点で一部の人に症状が出始めるレベルの花粉が観測され、今後も飛散の量が徐々に増える見込みであることから、花粉シーズン突入を発表しました。

 東京都は、昨年より11日早いシーズ入りといいます。

 シーズン入りは、スギ花粉に敏感な人に症状が出る花粉飛散量を観測した日で判断します。今年は1月30日に東京都、神奈川県、千葉県、茨城県と大分県、宮崎県で観測され、31日に埼玉県でも観測されました。

 スギの雄花は暖かくなると、花を開いて花粉を飛ばし始めます。今シーズンは、1月初めまでは平年よりも気温が高めの日が多くなりましたが、1月中旬から寒気の影響を受けて各地で厳しい寒さとなりました。その後、1月終わりになって寒気が緩んで気温が上がり、27日以降は関東南部や九州で15度を超えて、20度前後まで達するなど、春の気配を感じる暖かさとなりました。加えて、27日と30日は風も強まったため、スギの雄花が開き、スギ花粉の飛散シーズンに突入したものと思われます。

 今後も、西日本から東日本の太平洋側では、2月上旬にかけて花粉シーズン入りのエリアが拡大していく見通し。今年予想されるスギとヒノキの花粉飛散量は平年の1・2倍で、昨年の4・4倍。関東地方での花粉のピークは、スギが3月上旬から中旬、ヒノキが3月終わりから4月上旬と予測されます。

 ポールンロボで観測されたデータは、ウェザーニューズのホームページの「花粉Ch.」で公開されており、花粉の量が特に多い場合などに自動で情報が提供されるスマートフォンのアプリ「ウェザーニュースタッチ」も導入されています。

 ウェザーニューズ広報担当の須田浩子さんは、「インターネットなどの情報が花粉対策を決めるための手段になればうれしいです」と話していました。

 2017年1月31日(火)

 

■人工知能で患者ごとに最適な治療法を提案へ がん研究会、4年後の実用化を目指す

 がんの手術数が国内で最も多いがん研有明病院を運営する、公益財団法人がん研究会(東京都江東区)は31日、人工知能(AI)に医師が選んだ最新のがん治療に関する論文を読み込ませ、患者一人一人に最適な手術法や抗がん剤治療を提案するプロジェクトを始めると発表しました。

 4年後の2021年までに肺がんと乳がんで実用化を目指すということです。

 これは、がん研究会と、AIの開発を手掛ける「FRONTEOヘルスケア」(東京都港区)が、会見で明らかにしたものです。

 プロジェクトでは、がん研究会の専門の医師が、信頼度が高いと選び出したがん治療の最新の研究成果などに関する論文をAIに読み込ませます。その上で、患者のゲノム(全遺伝情報)や血液検査、画像診断の結果の解析にAIを活用し、患者一人一人に最適な手術法や抗がん剤治療などを提案させるということです。

 がん治療では、肺や大腸などの部位による違いだけではなく、原因となった遺伝子変異により治療法を決める手法が有効とみられている。

 がん研究会の野田哲生所長は、「最新の知見が次々と発表される中、1人の医師がすべての情報を把握して治療に生かすのは難しくなってきている。人工知能の支援を活用して個人に合った治療が受けられる患者の数を増やしたい」と話しています。

 人工知能(AI)を医療に応用する動きは、各地で進んでいます。東京大学医科学研究所では、診断が難しかった白血病をAIが見抜き、救命に役立つケースが出てきました。国立がん研究センター(東京都中央区)は昨年11月、がん患者の一人一人に最適な治療を施すため、を活用したシステムの開発を産業技術総合研究所(茨城県つくば市)などと共同で開始し、5年後の実用化を目指すと発表しました。

 2017年1月31日(火)

 

■受動喫煙防止、飲食店やホテルは原則禁煙 3月の通常国会に法案提出

  他人のたばこの煙を吸い込んでしまう受動喫煙対策を盛り込んだ健康増進法改正案の概要が30日、明らかになりました。

 政府は3月上旬の通常国会に法案を提出する方針で、多くの人が使う場所を「敷地内禁煙」「屋内禁煙」「喫煙室設置可の屋内禁煙」と3段階で規制し、悪質な違反には過料を科します。喫煙室には排煙性能などの基準を設け、自治体が適合性を判断する制度も盛り込みます。

 最も厳しい「敷地内禁煙」の対象は、未成年者や患者が利用する小中高校や医療機関。社会福祉施設、大学、官公庁、バス、タクシーなどは「屋内禁煙」とします。飲食店やホテル内、駅・ビルの共用部分、鉄道の車内も屋内禁煙としますが、喫煙室の設置は認めます。喫煙室については、室内を密閉したり外部に煙を排出したりする設備などの基準を定めます。

 施設管理者には、喫煙禁止場所の位置の掲示、灰皿などの設置禁止などを義務付けます。施設の管理者や喫煙者の違反に対しては、都道府県などが勧告・命令を出し、改まらなければ過料を科します。現行法では罰則なしの努力義務しかありません。

 厚生労働省は事業所内も規制対象にする考えで、受動喫煙対策を事業主の努力義務とする労働安全衛生法が別にあるため、今後調整します。

 受動喫煙対策の法制化は、過去にも議員立法などの動きがあったものの、実現していませんでした。政府が本腰を入れる背景には、2020年東京五輪・パラリンピックを控え、国際オリンピック委員会(IOC)と世界保健機関(WHO)が開催都市に「たばこのない五輪」を求めている事情があります。2004年以降のロンドンやリオデジャネイロなどすべての開催都市は罰則を伴う防止策を導入しているため、厚労省が昨年10月12日に制度案を示し、これに沿って法案がまとめられました。

 ただし、飲食店やホテル旅館業界は「経営に悪影響を及ぼす」として、一律の屋内禁煙に強く反対しているほか、自民党内でも小規模飲食店への配慮を求める声があります。

 2017年1月31日(火)

 

■ノロウイルスなどが原因の感染性胃腸炎、また増加 集団食中毒も発生

 国立感染症研究所は31日、ノロウイルスなどが原因の感染性胃腸炎の患者数が、1月16日から22日までの直近1週間で1医療機関当たり7・00人だったと発表しました。

 再び増え始めた前週の6・48人から、さらに増加しました。

 和歌山県や北海道の幼稚園や保育園、小学校、中学校、高校などでノロウイルスが原因とみられる食中毒も発生しており、国立感染症研究所は「手洗いによる予防や給食などの調理担当者の健康管理を徹底してほしい」としています。

 全国に約3000ある定点医療機関から報告された患者数は、22日までの1週間で2万2140人に上り、前週より約1600人増加しました。

 都道府県別では、1医療機関当たりの患者数が最も多かったのは大分県の25・44人で、福井県の15・73人、宮崎県の15・22人と続きました。

 今季は12月12日から18日の1週間で、感染性胃腸炎の1医療機関当たりの患者数が20・89人になり、現行の統計を始めた1999年以降、大流行した2006年の22・81人以来の水準となりました。ウイル遺伝子が変化したタイプ(変異型)のノロウイルスが広がり、大規模な食中毒などが続発したためとみられます。

 ノロウイルスは感染すると、1~2日の潜伏期間の後、激しい嘔吐(おうと)や下痢を繰り返します。乳幼児や高齢者の場合、脱水症状などを起こして入院治療が必要になることもあります。

 2017年1月31日(火)

 

■子宮残せるか画像で診断する新検査法を開発 福井大が子宮体がんに応用

 女性に多い子宮がんの一種、子宮体がんの治療の際、がん細胞が残っているかどうかを画像で診断できる検査法を福井大学の医療チームが開発し、治療を終えた女性が今月、出産したと発表しました。

 子宮を傷付ける恐れのある従来の検査法と比べて、患者の体の負担が少なく、妊娠の可能性を残すことにつながるとして注目されています。

 子宮の内膜にがんができる子宮体がんの患者には、早期に発見されて妊娠を希望する場合、子宮を取り出さず、ホルモンの量を調節する治療が行われることがありますが、効果を確かめるため、麻酔をかけて子宮の内膜を取り出す検査を原則として3回以上受ける必要があり、血栓症のリスクがあるなど体の大きな負担になっていました。

 そこで、福井大学医学部産科婦人科学の吉田好雄教授などの医療チームは、がん細胞があるかどうかを画像で診断する「PET(ポジトロン断層撮影法)」と呼ばれる検査法を応用し、女性ホルモンのエストロゲンと結合する受容体に集まる放射性薬剤を使うことで、子宮体がんについても診断できるようにしました。この画像検査は乳がんの診断に使われていますが、子宮体がんに応用したのは世界初といいます。

 その上で、20歳代の女性患者に画像検査を行った結果、負担の大きい検査の回数を減らすことができ、子宮体がんの治療を終えた女性は今月、第1子に当たる女児を無事出産し、30日に退院したということです。

 記者会見に出席した女性患者は、「がんと診断された時はショックでしたが、子供が好きなので治療を受けました。出産できてうれしい」と話していました。

 吉田教授は、「患者の負担を減らすとともに、子宮を傷付けないことで妊娠の可能性を残すことにつながると考えられる。研究を進め、より多くの患者にこの検査を行いたい」と話しています。

 2017年1月31日(火)

 

■がん患者の病院内オフィス、厚労省が整備へ 仕事の継続を後押し

 がんと診断されると、治療などで長期間職場を離れ、依願退職や解雇を余儀なくされるケースが依然多いことから、 厚生労働省は、病院内に共用オフィスを整備し、仕事が継続できるよう後押しすることを決めました。

 政府が掲げる「働き方改革」の一環で、治療と仕事を両立させて離職を防ぐのが狙い。来年度、希望する全国5カ所程度の病院に設置し、効果を検証します。

 がんなどで治療が長期にわたる場合、3割以上の人が離職しているといい、その理由としては「休みを取るのが難しい」「会社や同僚に迷惑がかかる」などが挙げられています。

 そのため、厚労省では来年度、病院に委託して会議室や空き部屋に無線LANのほか、パソコンやファックス、プリンターなどを設置し、無料で利用できる病院内オフィスを整備します。所属する事業所以外で働けるほか、取引先や自宅に近い病院内オフィスを使うことで通勤時間の短縮にもつながり、在宅勤務よりも労働環境が整うメリットがあります。

 がん患者の就労を支援する一般社団法人「CSRプロジェクト」代表理事の桜井なおみさん(49歳)は、「がん患者は安定期に入って体調がよくなると、仕事への焦りや疎外感が、病気の不安と重なって押し寄せる。働く環境があれば、社会復帰への自信につながるはず」と話し、病院内オフィスを設置する取り組みを評価しています。

 桜井さんは設計事務所で働いていた13年前、乳がんの手術で約3週間入院。手術の痛みが治まると、職場とのメールのやり取りや、簡単な書類を作成する必要が生じましたが、同室の入院患者への気兼ねから断念した経験があるといいます。「退院後、スムーズに職場復帰する段取りができなかった。病院内にオフィスがあれば利用したと思う」と振り返っています。

 厚労省によると、働きながら通院するがん患者は約32万5000人と推計されますが、就労の継続は容易ではありません。

 静岡がんセンター(静岡県長泉町)が2013年に行ったがん体験者に対する実態調査では、会社などで働いていた人のうち、「依願退職した」「解雇された」のは計34・6%。2003年に同センターと厚労省が合同で調査した際の34・7%とほぼ同じで、状況は改善されていませんでした。

 このほか、辞めるように促されたり、辞めざるを得ないような配置転換をさせられたという意見もあり、がんになると仕事を続けられない背景としては、治療に対する周囲の理解不足が指摘されます。

 一方、がんや難病患者の社会復帰に取り組むNPO法人「みんなでサポートちば」の理事長で、社会保険労務士の岩崎真弓さん(66歳)は、今回の取り組みに一定の評価はするものの、「労働時間の管理など、留意すべき点も多い」と訴えています。

 がんなどの治療で職場を離脱している人は、会社との接点が減ることで、労務管理の目が行き届かない恐れがあると指摘。パソコンの使用履歴や病院内オフィスへの入退室時間を把握し、長時間労働にならない仕組み作りなどが必要だといいます。

 岩崎さんは、「患者は遅れを取り戻そうと、無理して働きすぎてしまうことがある。利用の際には、健康回復が最優先であると会社側が患者に意識付けることが大切」と話しています。

 厚労省も、会社以外で働く「テレワーク」を行う際の注意点などが記載された資料を、委託先の病院に提供して、運営者としての注意点などについて周知し、働きすぎ対策を行う方針です。

 2017年1月30日(月)

 

■がん免疫治療薬「オプジーボ」、2月から半額に 開発する製薬業界は反発

 夢の新薬といわれる半面、肺がん患者1人当たり年間3500万円相当という高額が問題となっていたがん免疫治療薬「オプジーボ」(一般名・ニボルマブ)の価格が、2月1日に50%引き下げられます。保険医療財政を圧迫するとの理由から、緊急的な対応として特例で決められたためです。

 今回の値下げを切っ掛けに、政府内では薬価制度の抜本改革の動きも本格化する一方で、製薬業界は「新薬開発の意欲がそがれる」と反発するなど、影響は広がっています。

 2014年9月の発売当初は、皮膚がんの一種である悪性黒色腫(メラノーマ)の治療薬として承認され、年470人程度の患者で採算がとれるように、100ミリグラム約73万円と価格が高めに設定されました。その後、患者数の多い肺がんの一種である非小細胞肺がんや、腎臓がんの一種である腎細胞がんにも使えるようになって、対象患者が約1万5000人に広がり、販売額が急増しました。

 オプジーボの価格は2016年4月の薬価改定時に維持され、薬価改定は原則2年に1度となっているため、次回の薬価改定は2018年4月の予定でしたが、厚生労働大臣の諮問機関である中央社会保険医療協議会(中医協)は2016年11月の総会で、当初の予測より販売額が拡大した場合の「市場拡大再算定」というルールを適用して、引き下げを了承。

 しかも、当初は引き下げ率が25%とみられていましたが、政府の経済財政諮問会議の主導で50%に決定しました。アメリカが100ミリグラム約30万円、イギリスは約15万円という内外価格差も理由となりました。

 日本製薬工業協会(製薬協)は、「現行ルールを大きく逸脱したものだ。今後二度とあってはならない」と不満を示しました。

 新薬の開発には9~16年かかるとされます。開発費が数百億円に上ることも珍しくない上、製品になる確率は3万分の1ともいわれます。製品化の直後に薬価が引き下げられるようなら、投資回収がますます困難になりかねないといいます。

 中医協はさらに今年から、薬価改定を毎年行う方向で議論を進めます。製薬協の畑中好彦会長(アステラス製薬社長)は、毎年改定について「事業の予見性を損なう」と警戒しています。

 オプジーボを販売する小野薬品工業(大阪市)は、2017年度3月期のオプジーボの売り上げ予想を当初の1260億円から1050億円に下方修正しました。高額を理由に控えていた医師が使用し始めるケースが増える可能性もありますが、同社は売り上げへの効果は限定的とみており、適応がん種を拡大して数量を増やしていく方針です。

 小野薬品工業は、薬価の抜本改革について「適応拡大にも開発費をかけており、そういった過程も考慮されたルール策定をしてほしい」と求めています。

 2017年1月30日(月)

 

■おたふく風邪で1000人に1人が難聴に 学会が患者の実態調査へ

 子供を中心に流行し、難聴になる危険性があるおたふく風邪について、日本耳鼻咽喉科学会は難聴になった人数や症状の重さなど、実態を具体的に把握して国に対策を促していこうと、2月から全国すべての耳鼻科の医療機関を対象に大規模な調査を行うことを決めました。

 流行性耳下腺(じかせん)炎、いわゆる、おたふく風邪は、子供を中心に流行し、発熱や耳の前から下にかけてのはれを引き起こすムンプスウイルスによる急性感染症で、例年に比べて患者が多い状況が続いています。おたふく風邪を発症しても、通常1~2週間で症状は改善しますが、合併症の多い感染症であるため、1000人に1人ほどの割合で難聴になるとする報告もあります。日本耳鼻咽喉科学会によりますと、発生の詳しい実態はわかっていないということです。

 このため学会は、29日に東京都内で開いた会議で、過去2年ほどの間におたふく風邪の影響で難聴になったとみられる患者について、大規模な調査を行うことを決めました。

 2月から、耳鼻科のある全国すべてのおよそ8000の医療機関に調査票を送って、患者の年齢や性別のほか、難聴の程度、聞こえないのは片耳か両耳か、どのような処置をしたかなどを尋ね、難聴になった人数や症状の重さなど実態を具体的に把握したいとしています。

 学会では調査結果を踏まえ、おたふく風邪の影響で難聴になる危険性を広く知ってもらうとともに、ワクチン接種が現在の任意のままでいいのか、厚生労働省に検討を求めたいとしています。

 日本耳鼻咽喉科学会の守本倫子乳幼児委員長は、「おたふく風邪で難聴になることが社会の中で十分に認識されていない。一度難聴になると回復は非常に難しいので、調査を通じて予防接種の重要性を訴え、予防接種を定期化してほしいと訴えかけたいと思っている」と話しています。

 日本医師会などが2011年までの3年間に全国1万9000の病院を対象に行った調査では、全体の2割弱の病院からの回答で、117人が音が聞こえにくくなったと訴えて入院し、このうち61人に難聴の後遺症が残りました。

 ムンプスウイルスが体中を回って、耳の奥にある内耳と呼ばれる部分にダメージを与え、その結果、鼓膜で聞いた音が電気信号に変換されなくなり、脳が音を認識できなくなるとされています。子供が難聴になった場合、補聴器をつけたり、両耳に症状があれば手術で人工内耳を埋め込んだりする対処法があるということです。

 しかし、元の状態に戻るわけではなく、耳で新しい言葉を聞いて覚えることが難しくなり、学校での学習についていけなくなったり、友人とコミュニケーションをしづらくなり、疎外感やストレスを感じたりする問題も残るということです。

 国立感染症研究所によりますと、おたふく風邪は4年から5年の周期で大きな流行を繰り返す傾向にあります。ワクチンが定期接種から任意接種に変わった1993年以降、全国3000の小児科の医療機関から報告された患者数が最も多かったのは、2001年の25万人余りで、2016年は15万9000人ほどとなっています。

 2017年1月30日(月)

 

■99%以上の精度で乳がんを早期発見する技術を開発 人工知能開発ベンチャー

 人工知能(AI)開発ベンチャー、プリファード・ネットワークス(東京都千代田)は、AIの進化を急激に加速させている開発手法「深層学習(ディープラーニング)」を使い、乳がんの早期発見精度を99%以上に高める技術を開発しました。

 アメリカのサンフランシスコで26日に開催されたAIの著名技術者が集まるイベント「ディープラーニング・サミット」で、同社が発表しました。

 現状の8割程度から、発見精度の大幅な改善に成功。国立がん研究センターに蓄積されている乳がん患者の血中の物質やゲノム(全遺伝情報)などの解析データを総合的にAIに学習させ、5000症例で高い精度を確認できました。わずかな血液を採取するだけで従来より安く、格段に高い精度の検査が可能になるといいます。

 数十種類のガン種に応用できるめどが立っており、今年中にも臨床試験を始め早期実用化を目指すといいます。実現すれば、AIの応用により医療費の大幅な削減につながる先行事例となります。

 また、AIに学習させるデータをさらに増やし、日本やアメリカなどで医療機器として認可を取得していく計画といいます。

 プリファード・ネットワークスは日本を代表するAIベンチャーで、トヨタ自動車やファナックなどと自動車やロボットに応用できるAIの開発で提携しています。

 2017年1月29日(日)

 

■がん治療と仕事の両立に「環境整わず」64%超 内閣府調査

 内閣府が行った「がん対策に関する世論調査」によりますと、治療や検査を受けながら仕事を続けられる環境が整っていると感じている人が30%足らずだったのに対し、その倍の60%余りの人が整っていないと感じていると答えました。

 内閣府は、昨年11月、全国の18歳以上の3000人を対象に世論調査を行い、60・5%に当たる1815人が回答しました。

 内閣府が28日に発表した調査結果によりますと、「現在の日本の社会では、がんの治療や検査のために2週間に一度程度、病院に通う必要がある場合、働き続けられる環境だと思うか」という質問に対し、「そう思う」、「どちらかといえばそう思う」と答えた人は合わせて27・9%、「そう思わない」、「どちらかといえばそう思わない」と答えた人は合わせて64・5%で、2014年調査に比べ1・2ポイント減少しました。

 治療と仕事を両立できる環境と思わない、どちらかといえば思わないとした理由は、「代わりがいないか、頼みにくい」が21・7%、「職場が休みを許してくれるかわからない」が21・3%、「体力的に困難」が19・9%、「休むと収入が減る」が15・9%などとなりました。

 また、「働く意欲のあるがん患者が働き続けられるために必要な取り組み」を複数回答で尋ねたところ、「病気の治療や通院のために短時間勤務が活用できること」が最多の52・6%、「1時間単位の休暇や長期の休暇が取れるなど柔軟な休暇制度」が46・0%、「在宅勤務を取り入れること」が38・6%などとなっています。

 がん検診を「2年以内に受診した」割合は52・6%で、「今まで検診を受けたことがない」との回答も33・4%ありました。検診を受けていない理由を複数回答で尋ねたところ、「時間がないから」が30・6%でトップとなり、「健康状態に自信があり、必要性を感じないから」が29・2%で2番目に多くなりました。

 がん患者の治療と仕事の両立を巡っては、昨年12月9日成立の改正がん対策基本法で、企業などの事業主に対してがん患者の雇用継続に配慮するよう求めました。

 厚生労働省は、仕事を続けているがん患者を32万5000人と推計しています。一方で、がんと診断されると3割超が依願退職や解雇を余儀なくされているとの調査もあります。

 厚労省の担当者は、「仕事と治療を両立するためには、企業文化の抜本的な改革が必要だ。政府の働き方改革の中で検討するとともに、労働局と連携しながら患者の支援を行っていきたい」と話しています。

 2017年1月29日(日)

 

■脳の仕組みを解明し、恐怖記憶の分離に成功 富山大学など

 脳の中には、異なる時間や場所での記憶を互いに結び付ける細胞の働きがあり、この働きを抑えると、記憶のつながりをなくすことができるとする研究成果を富山大学などの研究チームが発表しました。

 日常のささいな記憶が引き金になって、体験した衝撃的な出来事を突然思い出す心的外傷後ストレス障害(PTSD)など、記憶にかかわる病気の新たな治療法の開発につながる可能性があるとしています。

 富山大学の井ノ口馨教授などの研究チームは、マウスにブザー音を鳴らしながら電気刺激を与え、恐怖の記憶を植え付けた後、続いてブザー音を鳴らしながら、甘い水を与える実験を繰り返し、マウスが甘い水を飲むだけでブザー音の記憶を介して、電気刺激の恐怖を思い出し、身をすくめる行動を取るようにしました。

 そして、一連の実験中に、脳の中でどのように記憶が作られたのか観察したところ、電気刺激の恐怖の記憶と甘い水の記憶はそれぞれ、好き嫌いの判断にかかわる脳の扁桃体(へんとうたい)と呼ばれる部分で異なる神経細胞の集団に蓄えられましたが、2つの細胞の集団が一部で重なり合うと、両方の記憶がつながることがわかったということです。

 また、マウスの脳に光ファイバーの光を当てて、重なった部分の細胞の働きを抑え込むと、マウスは甘い水を飲んでも、電気刺激の恐怖を思い出さなくなり、2つの記憶が分離されることもわかったということです。

 井ノ口教授は、「人がどのように記憶を関連付けて、知識や概念を手に入れるのか、メカニズムに迫る成果だ。心的外傷後ストレス障害(PTSD)のような病気の新たな治療につながる可能性がある」と話しています。

 2017年1月29日(日)

 

■移植ネット、脳死の心臓移植で患者の選定ミス 2人が移植受けられず

 日本臓器移植ネットワーク(移植ネット)は、脳死からの臓器提供があった際、どの患者に臓器を提供するかを選ぶ検索システムに不具合が見付かり、本来、心臓移植を受けるはずだった患者2人が手術を受けられないミスが起きていたと明らかにしました。

 移植ネットでは、これまでにも患者の選定を誤るミスが相次いでいて、検索システムは、その改善のために昨年10月に新たに導入したものでした。

 27日、会見した移植ネットによりますと、NECネクサソリューションズが開発した検索システムにミスがあり、患者の情報が修正された場合の待機日数の再計算が正しく行われない不具合が見付かり、昨年10月以降に行われた21例の脳死からの臓器提供のうち3例で、移植手術を受ける患者の選定を誤っていたことがわかりました。

 その結果、本来心臓移植を受けるはずだった患者2人が、移植を受けられない事態となっているということです。2人の患者は、いずれも1000日以上移植を待っており、移植ネットでは患者と家族に謝罪するため連絡を取ろうとしているということです。心臓移植での選定ミスは初めて。

 移植ネットでは、2014年と2015年に腎臓移植で選定ミスが相次ぎ、厚生労働省の指示を受け当時の理事長ら責任者の処分を行うとともに、再発防止に向けて取り組んでいたところで、不具合が見付かった検索システムもその取り組みで導入したものでした。

 厚労省は27日、臓器移植法に基づき、検索システムの利用を中止し、専門家を交えた第三者調査チームで検証するよう指示しました。移植ネットは、ほかの臓器でも選定ミスがなかったか検証中で、当面、複数の職員が手作業で患者を選定するといいます。

 会見した門田守人理事長は、「ミスを受けて導入した新システムで新たな誤りが発生した。臓器のあっせんにかかわる唯一の団体として、社会の信頼を損なう事態となったことを深くおわびしたい。臓器提供される方、遺族の善意を尊重し、一刻も早く正常化したい」と話しています。

 2017年1月29日(日)

 

■インフルエンザ患者、前週の99万人から161万人に急増 警報レベルに近付く

 九州地方や東海地方、首都圏を中心に、インフルエンザが猛威を奮っています。厚生労働省は27日、1月16日~22日の直近1週間の推計患者数が約161万人に上ったと発表しました。前週の約99万人から、約6割増えました。

 受験シーズンが本格化する中、専門家は手洗いやマスク着用などを呼び掛けています。

 厚労省や国立感染症研究所によると、直近1週間の全国約5000カ所の定点医療機関からの患者報告数は、1カ所当たり28・66人で、大流行の発生を示す警報レベルの「30人」に迫っています。

 都道府県別では、宮崎県(42・53人)、愛知県(42・46人)、埼玉県(38・51人)、千葉県(37・90人)、大分県(35・60人)、福井県(34・94人)、福岡県(34・29人)、岡山県(34・18人)、山梨県(34・00人)、広島県(33・90人)、神奈川県(33・64人)、静岡県(33・20人)、佐賀県(32・10人)、長野県(32・02人)、三重県(31・86人)、山口県(30・75人)、徳島県(30・05人)など、30人を超えたのは17県に上ります。東京都は28・58人でしたが、患者が急増しており、30人を超えた保健所地域に住む人口の合計が東京都全体の30%を超えたため、26日に今冬初めて流行警報を出しました。

 全国的に若年層を中心に感染が広がっており、保育所や幼稚園、小中高校などで休校・休園が46施設、学年閉鎖は761施設でありました。学級閉鎖は前週の約17倍の2958施設。

 国立感染症研究所のまとめでは、今季に全国で検出されたウイルスはA香港型が約9割を占めました。A香港型は高齢者が重症化しやすいとされ、入院報告があった1219人のうち約6割が70歳以上でした。

 国立感染症研究所は、集団感染につながる恐れがあるとして、感染した人は高齢者施設などへ出入りするのを控えるよう呼び掛けています。

 2017年1月29日(日)

 

■iPS細胞、京都大と大阪大の臨床研究に遅れ 京都大の提供停止の影響で

 京都大学iPS細胞研究所がiPS細胞(人工多能性幹細胞)のストック事業で、外部の研究機関へのiPS細胞の提供を一部停止した影響で、少なくとも京都大学と大阪大学で計画中の2つの臨床研究が遅れることが27日、明らかになりました。

 遅れるのは、iPS細胞から輸血用の血小板を作製する京都大学と、角膜を作る大阪大学の臨床研究。

 慶応大学と横浜市立大学もiPS細胞を利用した臨床研究を計画中ですが、「実害はない」としています。

 京都大学iPS細胞研究所は今月23日、新生児のへその緒に含まれる臍帯(さいたい)血からiPS細胞を作る過程で、本来は使用しない試薬が使われていた可能性があるとして、人への使用を目的とした臨床応用を前提にしたケースについては提供を停止しました。

 同研究所は、移植後に拒絶反応が起きにくい特殊なiPS細胞を前もって作製して、再生医療用に保管し、外部の研究機関に提供するストック事業を2013年度に始め、2015年に血液、2016年に臍帯血からiPS細胞を作製、提供していました。

 理化学研究所などが目の難病患者への臨床研究で使う予定のiPS細胞は、血液から作製しており、影響はないといいます。

 2017年1月28日(土)

 

■京都大学、ビタミンDが脂質を抑えるメカニズム解明 メタボやがんに効く新薬の実用化視野に

 魚などに多く含まれるビタミンDが体内の脂質量を抑制するメカニズムをハムスターの細胞を使って解明したと、京都大学の研究チームが27日、アメリカの科学誌「セル・ケミカル・バイオロジー」電子版で発表しました。

 将来的には、メタボリックシンドロームや脂質が影響するがんなどの予防に効果がある人工的なビタミンDの開発や、新薬の実用化につなげたいとしています。

 研究チームによると、ハムスターの細胞内でビタミンDが存在する場合、脂質を合成する「指令塔」のタンパク質「SREBP」と、同タンパク質と複合している別のタンパク質「SCAP」の量がそれぞれ減少していることが、わかりました。

 詳しく調べると、ビタミンDの作用で2つのタンパク質の複合体が壊れてSCAPが分解されるとともに、SREBPも分解されていました。この結果、SREBPが指令を出せないようになり、脂質の合成が抑制されたといいます。

 これまでビタミンDと脂質の合成が関連する高脂血症やがんの予防効果の関連性はわかっていましたが、メカニズムは不明でした。

 一方、一般的にビタミンDは体内へのカルシウムの吸収を促して骨を強くする働きもありますが、サプリメントなどでビタミンDを摂取しすぎると、腎臓(じんぞう)などに結石ができる可能性もあるといいます。

 研究チームの京都大学の上杉志成(もとなり)教授(化学生物学)は、「メカニズムがわかったことにより、過剰摂取の症状が起こらない安全な人工ビタミンDを開発し、代謝疾患やがんの新薬開発につなげたい」と話しています。

 2017年1月27日(金)

 

■人の細胞を持つブタ胎児を作製 アメリカの研究所がiPS細胞で

 あらゆる臓器や組織に変化する人のiPS細胞(人工多能性幹細胞)をブタの受精卵に注入し、人の細胞が混じったブタの胎児を作ることに初めて成功したと、アメリカ・カリフォルニア州にあるソーク研究所などの研究チームが26日、アメリカの科学誌「セル」に発表しました。

 将来的にブタの体内で人の臓器を作り、人に移植する再生医療につなげることを目指す技術ですが、倫理的に問題だとする根強い指摘もあります。

 研究チームは人の皮膚から作ったiPS細胞を、1466個のブタの受精卵に注入して、双方の遺伝子が入った受精卵を作ることに初めて成功し、41匹の母ブタの子宮に戻しました。

 ブタの妊娠期間は人の3分の1ほどで、受精卵の成長のスピードが異なるため、双方の遺伝子が入った受精卵を作るのは難しいと考えられていましたが、培養の方法が異なる複数のiPS細胞を注入することで、初めて成功したということです。

 その後、186個の受精卵が母ブタの体内で最長4週間育って胎児となり、うち67匹が人の肝臓や心臓などのもとになる細胞を持っていることを確認したということです。一方、人の脳のもとになる細胞を持っていることは確認できなかったということです。

 ただ、人の細胞が含まれる割合は、ブタの細胞10万個に対して1個以下と少なく、受精卵に注入するiPS細胞は、やや分化の進んだタイプのものが成功率が高かったといいます。

 こうした研究は、人と動物が混じるため、倫理的な問題があるとして、日本国内では人のiPS細胞を動物の受精卵に注入することは認められていますが、それを動物の子宮に戻すことは禁止されています。

 カリフォルニア州では、受精卵を子宮に戻して4週間まで培養することが認められているということで、研究チームでは「倫理のガイドラインに従って研究を重ね、思うように人の臓器を作れるようにしたい」としています。

 動物の体内で人の臓器を作り出す研究を巡っては、4年前の2013年に国の専門委員会が条件付きで認める見解をまとめており、現在、文部科学省の委員会が動物の受精卵に人の細胞を加えた「動物性集合胚」を動物の子宮に戻すことを認めるかどうか、研究指針の改定を協議しています。

 国内では、すでに東京大学の研究チームが、人のiPS細胞が入ったマウスの受精卵を作ることに成功しており、より規制が緩やかなアメリカで、ブタやヒツジの体内で人の膵臓(すいぞう)を作る研究を進めています。

 東京大学の正木英樹助教は、「人と臓器の大きさがほぼ同じブタで、人の細胞が入ったブタの胎児ができたということは、将来、動物の体内で作った臓器を移植する研究に向けた大きな一歩だ」と話しています。

 2017年1月27日(金)

 

■東京都、インフルエンザ流行警報を発表 昨年より2週間早まる

 東京都は26日、インフルエンザ患者が急速に増えているとして、これまでの「注意報」を切り替え、今シーズン初めて「流行警報」を発表しました。流行警報が出るのは、昨年より2週間ほど早くなりました。

 東京都の福祉保健局によると、今月16日から22日までの1週間で419の定点医療機関から報告があったインフルエンザ患者数は、1医療機関当たり平均して28・6人で、前週の15・2人から急増しました。

 患者報告数は警報レベルの目安となる「30人」を超えていませんが、都内31カ所の保健所のうち11カ所で目安となる30人を超え、保健所管内の人口を合計すると、東京都全体の34・4%になるといいます。東京都では、警報レベルを超えた保健所地域に住む人口の合計が、東京都全体の30%を超えた場合に、流行警報を発表しています。

 昨年9月以降の今シーズンに入って、東京都内の幼稚園や学校でインフルエンザが原因とみられる学級閉鎖は延べ610件に上っていますが、このうち半数以上に当たる319件が今月16日から22日までの1週間に発生しています。

 東京都は、予防にはこまめな手洗いやマスクの着用、室内の加湿や換気のほか、予防接種が有効だとするとともに、感染が疑われる場合には早めに医療機関を受診して体調管理にも十分気を付けるよう呼び掛けています。

 2017年1月27日(金)

 

■今年4月からの年金支給額、0・1%引き下げ 厚労省が発表

 厚生労働省は27日、今年4月からの年金支給額について、昨年1年間の物価水準が下落したのに合わせて0・1%引き下げ、1カ月当たりの国民年金の支給額は満額で6万4941円になると発表しました。

 年金の支給額は、物価や賃金の変動に応じて毎年決められることになっており、昨年は生鮮食品を含む消費者物価指数が前年比0・1%マイナス、賃金は前々年度以前の3年間の平均などから算出する変動率がマイナス1・1%だったことを踏まえ、今年4月からの新年度の支給額は0・1%引き下げられます。

 年金の支給額が引き下げられるのは、2014年度以来、3年ぶりになります。

 これによって、1カ月当たりの支給額は、国民年金が満額で67円減って6万4941円、厚生年金が40年間会社員だった夫の現役時代の月収(賞与含む)が平均42万8000円で、妻が専業主婦という夫婦2人の標準的な世帯で227円減って22万1277円となります。

 今回は支給額が引き下げられるため、支給額の伸び率を物価や賃金の伸び率よりも低く抑える「マクロ経済スライド」は適用されません。

 一方、1カ月当たりの国民年金の保険料について、厚労省は新年度は230円上がって1万6490円、2018年度は2017年度より150円下がって1万6340円になるとしています。

 2017年1月27日(金)

 

■スマホで視覚障害者を目的地に案内 音声案内の実証実験、東京・日本橋で公開

 きめ細かい音声案内で、視覚障害者などがスムーズに目的地までたどり着けるよう、新たに開発されたスマートフォン(スマホ)のアプリの実証実験が、東京都中央区日本橋の室町地区で行われました。

 このアプリは、日本IBMと清水建設、三井不動産の3社が共同で開発し、26日は、室町地区の地下道や商業施設で行われた実証実験が、報道陣に公開されました。

 実験では、視覚障害者の女性が、スマートフォンに向かって訪れたい店の名前などを話すと、「右斜めの方向に曲がってください」とか、「点字ブロックがあります」など、必要な情報が音声できめ細かく伝えられました。転倒や衝突などを防ぐため、音声は通常に比べて、早口の設定となっています。

 アプリでは、このほか、車いすの人向けに階段やエスカレーターを避けた経路を音声案内と地図を使って案内したり、外国人向けに英語で道案内を行ったりすることもできます。

 実験が行われた地区は、三井不動産の商業施設「コレド室町」3棟の低層階と、東京メトロ銀座線三越前駅の地下道の延べ床面積2万1000平方メートル。天井に5~10メートルの間隔で設置したビーコン(電磁波を発信して移動体の位置を調べるための通信設備)からの電波などをもとに、スマートフォンを持つ人の位置を把握。目的地まで音声と地図で案内しました。

 開発した3社によりますと、現在、アプリで案内できるのは、中央区の一部の地下道と商業施設に限られていますが、3年後の東京オリンピック・パラリンピックまでには、都内全域に広げていきたいとしています。

 実験に参加した視覚障害者で、アプリの開発に携わった日本IBMの浅川智恵子フェローは、「視覚障害者が1人で出掛けるのは難しいが、アプリがあると安全なルートで移動できるので心強い。3年後の東京大会で都内を訪れる障害者が、買い物などを楽しむことができるよう、改良を進めていきたい」と話していました。

 2017年1月27日(金)

 

■移植臓器を異種間で作り、糖尿病治療に成功 東京大学がiPS細胞を利用

 東京大学の中内啓光教授(アメリカ・スタンフォード大学教授を兼務)と山口智之特任准教授(幹細胞生物学)らは、ラットの体内でマウスのiPS細胞(人工多能性幹細胞)やES細胞(胚性幹細胞)から膵臓(すいぞう)を作り、この膵臓の細胞を移植して糖尿病のマウスを治療することに成功しました。

 異種の動物で臓器を作り、病気の治療効果を確かめたのは世界で初めてといいます。人の臓器をブタなどの体内で作って移植する再生医療の実現の足掛かりになります。

 研究成果は26日、イギリスの科学誌ネイチャー(電子版)に掲載されました。実験には膵臓を作れないように遺伝子操作したラットを利用し、ラットの受精卵を分割が進んだ胚盤胞(はいばんほう)という状態まで成長させ、マウスのiPS細胞やES細胞を注入。この胚をラットの子宮に着床させると、誕生したラットにはマウスの細胞から育った膵臓ができました。

 この膵臓を取り出し、インスリンなどを分泌する膵島という組織を、糖尿病のモデルマウスに移植しました。移植後1年間、血糖値が正常な値を維持し、膵島の働きにより、糖尿病の症状が改善したと確認できました。膵島はラットの血管などの細胞をわずかに含みますが、免疫抑制剤をほとんど使わなくても強い拒絶反応は見られなかったといいます。

 研究チームは2010年にも、同様の手法で今回とは逆となるマウスの体内でラットの膵臓を作りました。ただ、できた膵臓のサイズが小さく、十分な量の膵島を確保できませんでした。今回、大きさがマウスの10倍程度あるラットの体内でできたマウスの膵臓は、ラット並みの大きさの膵臓に育ちました。

 マウスとラットは、種としては人とチンパンジー、ウシとヒツジ程度に遠い関係にあるといいます。山口特任准教授は「異種の動物で作った臓器を治療に使う有効性を示せた」と話しています。

 今後は人での応用を目指し、ブタの体内でサルの臓器を作らせるなどの研究を進める方針。ただ、動物によって細胞の性質は異なり、山口特任准教授は「技術的に可能かどうかは試してみないとわからない」と話しています。

 順調に進めば人への応用も視野に入るものの、日本では現在、倫理的な問題があり、動物が持っているウイルスに感染する恐れも否定できないとして、国の指針で動物の体内で人の臓器を作る実験は禁止されているため、中内教授らはアメリカで人の臓器を作る研究を実施することも検討しています。

 2017年1月26日(木)

 

■「笑い」のがん免疫効果、実証研究へ 大阪国際がんセンターが5月から

 大阪府のがん拠点病院として3月27日から外来診療を始める大阪府立病院機構「大阪国際がんセンター」(大阪市中央区)が、「笑い」によるがん予防や治療効果を検証する実証研究を始めます。

 研究には、吉本興業や松竹芸能、落語家・桂米朝(故人)ゆかりの米朝事務所が協力。5月から約4カ月間、継続的に参加できる数十人の外来患者らに漫才や落語で笑いを提供し、がんに対する免疫細胞の活性状況などを調べます。

 大阪国際がんセンターを運営する大阪府立病院機構によると、全国初の取り組みで、漫才や落語は月2回、病院内に設けたホールで鑑賞してもらいます。鑑賞の前後に被験者の血液や唾液(だえき)の検査で免疫細胞やストレスの状況を調べ、気持ちの変化なども尋ねます。鑑賞の頻度による免疫細胞の活性化の違いも調べます。

 研究結果は2017年度にも論文にまとめる計画で、研究の費用は民間の助成金や寄付金で賄うといいます。

 笑いと免疫力の関係を示した研究は過去にもありますが、大阪府立病院機構の担当者は「がん患者を対象に、ここまで長期で継続的に実証する例はないのではないか」と話しています。

 大阪府は、2025年の国際博覧会(万博)の誘致で「健康」をテーマに掲げています。松井一郎知事は25日の定例会見で、「笑いの効果が示せれば万博でもアピールできる」と期待を示しました。

 大阪国際がんセンターは、地下2階地上13階で500床。大阪市東成区の府立成人病センターの老朽化に伴い、3月25日に建て替え移転し、名称も変更します。

 2017年1月26日(木)

 

■毎年2月4日を「風疹の日」に 学会が風疹ゼロプロジェクトを立ち上げ

 妊娠初期の女性が感染すると、産まれてくる新生児の目や耳、心臓などに障害が出る恐れがある風疹(ふうしん)を2020年までになくそうと、日本産婦人科医会は毎年2月4日を「風疹の日」と定め、東南アジアなど患者が多い地域へ渡航する人に予防接種を呼び掛ける取り組みを始めることになりました。

 取り組みを始めるのは、全国の産婦人科医で作る日本産婦人科医会で、25日に記者会見し、毎年2月4日を「風疹の日」と定めて2月を強化月間として、東京オリンピック・パラリンピックが開かれる2020年までに風疹をなくすための啓発活動「風疹ゼロプロジェクト」を立ち上げたことを明らかにしました。

 風疹は、海外の流行地でかかった人が国内にウイルスを持ち込んで広げるケースが多いことから、風疹ゼロプロジェクトでは、出張などで流行地の東南アジアやアフリカに行く人などを対象に予防接種を呼び掛ける取り組みを行うことにしています。

 中でも30歳代から50歳代の男性は、定期の予防接種を受ける機会がなかったために免疫のない人が多いため、感染の危険性が高いということで、予防接種を徹底してほしいとしています。

 風疹は、2012年から2013年にかけて国内で大きな流行を起こし、2014年までの3年間に45人の新生児が、先天性風疹症候群と診断されています。

 日本産婦人科医会の平原史樹常務理事は、「免疫を十分持っていない働き盛りの男性が依然多く、海外出張などを切っ掛けに、国内でまた、いつ大流行になってもおかしくない状況だ。一人一人が自覚して予防接種をしてほしい」と話しています。

 2017年1月25日(水)

 

■肺炎球菌予防ワクチン、65歳以上接種なら年10万人患者減 長崎大学が解明

 高齢者に多い肺炎球菌が引き起こす肺炎に有効な予防ワクチン(シニア用の23価肺炎球菌ワクチン)を接種した65歳以上の人は、肺炎球菌による肺炎が27%減少するとの効果を、長崎大学熱帯医学研究所の有吉紅也教授(臨床感染症学)らの研究チームが解析しました。

 研究チームは、国内の65歳以上の人全員が23価肺炎球菌ワクチンを接種すれば、年間に約10万人の肺炎患者を減らせると試算しています。

 世界中で使用され、国内でも2014年に65歳以上を対象に定期接種が始まった23価肺炎球菌ワクチンの予防効果を詳しく解明したのは初めて。研究成果は24日(日本時間)、イギリスの医学誌「ランセット・インフェクシャス・ディジージズ」電子版で発表しました。

 2015年、国内では肺炎で約12万人が死亡し、死因の第3位で、死者の約95%が65歳以上。肺炎の原因微生物は、肺炎球菌が最多で約3割を占めます。肺炎球菌は血清の型で分類すると約90種類あり、23価肺炎球菌ワクチンは特に肺炎を引き起こすことが多い23種類に対応します。

 研究チームは2011年から3年間、北海道、千葉県、高知県、長崎県の4病院で受診した65歳以上の肺炎患者約2000人から検体を採取。熱帯医学研究所が開発したシステムで肺炎球菌の種類を迅速に分類することに成功し、23価肺炎球菌ワクチンを接種していた人の割合から予防効果を算定しました。

 その結果、23価肺炎球菌ワクチンを接種すれば23種類の肺炎球菌による肺炎は34%減少し、ほかの血清の型を含めた全種類の肺炎球菌による肺炎も27%減少すると判明しました。

 研究チームの鈴木基助教は、「ワクチンの効果は患者数や費用とのバランスなどさまざまな指標を考慮して評価するが、23価ワクチンは大きな効果を上げていると考えていい」と話しています。

 2017年1月25日(水)

 

■躁鬱病の発症に関連する遺伝子を発見 藤田保健衛生大学などの共同研究チーム

 脂質の代謝にかかわる酵素の遺伝子に変異があると、躁鬱(そううつ)病(双極性障害)の発症リスク上がることを突き止めたと、藤田保健衛生大学(愛知県豊明市)などの共同研究チームが発表しました。

 コレステロールや青魚などに含まれる不飽和脂肪酸などの代謝にも影響を与える遺伝子で、脂質代謝異常との関連性を初めて確認したといいます。因果関係の解明などが進めば、食生活の改善などによる予防や治療効果も期待できるとしています。

 研究成果は24日、国際科学誌「モレキュラー・サイカイアトリー」電子版に掲載されました。

 藤田保健衛生大学によると、躁鬱病は100人に1~2人の割合で発症しますが、詳しい原因はわかっていませんでした。共同研究には東京大学、大阪大学、理化学研究所など全国32の大学や施設などが参加。躁鬱病患者2964人と、それ以外の6万1887人のゲノム(全遺伝情報)を比較し、病気のかかりやすさに影響する遺伝子の塩基配列の違いを約90万カ所にわたって分析しました。

 その結果、躁鬱病患者の血中の脂質濃度にかかわる遺伝子「FADS遺伝子」の場所に、わずかに高い確率で決まった塩基が現れることを確認。この塩基配列の場合、発症リスクは1・18倍に高まるとしています。

 海外では、躁鬱病のリスクとなる遺伝子は昨年末時点で20個弱、特定されているといいます。

 藤田保健衛生大学の岩田仲生医学部長(精神医学)は、「臨床研究などを続けて発症の仕組みの解明につなげたい。因果関係がわかれば、食事の工夫などで発症の予防や治療につながる可能性がある」と話しています。   

 躁鬱病は、鬱状態と躁状態を繰り返す精神疾患であり、気分障害の一つです。国内の患者は数十万人とされ、発症年齢は20歳代にピークがあります。遺伝的要因が関与するとみられますが、原因は解明されておらず、一度回復しても、再発を繰り返すことが多く、生涯にわたる薬物投与による予防が必要となることが普通です。

 2017年1月25日(水)

 

■梅毒感染者、42年ぶり4000人超 厚労省が研究班を設置し原因解明へ

 梅毒感染者の増加が止まりません。特に若い女性で目立ち、異性間の性交渉によって広がっていることがわかってきました。

 厚生労働省は人気アニメ「美少女戦士セーラームーン」のキャラクターを使ったキャンペーンを展開するなど啓発に力を入れていますが、具体的にどういった人たちがハイリスクで、誰に注意を促したらいいのかは実はよくわかっていません。同省は専門家の研究班を設置して実態把握を急ぐとともに、「不特定多数との性交渉など感染の可能性がある人は早期に検査を」と呼び掛けています。

 昨年1年間の全国の医療機関からの梅毒患者届け出数は4518人(速報値)。4000人を超えたのは1974年以来、42年ぶりのことで、2015年の2697人より2000人近く増え、2010年の621人の約7倍に達しました。

 感染者は戦後間もない1940年代後半に20万人を超えていましたが、1967年以降、治療薬の普及などで減少。2012年までの20年間は1000人未満と落ち着いていましたが、2013年以降、急増しています。

 昨年の患者を都道府県別でみると、東京都1661人、大阪府583人、神奈川県284人、愛知県255人、埼玉県190人、兵庫県181人、千葉県139人、北海道117人、福岡県107人などと都市部で多くなっています。

 全体の約7割を占める男性は各年齢層から偏り少なく報告されている一方、女性は20歳代が女性全体の5割超を占め、感染増加が目立ちます。

 梅毒は、梅毒トレポネーマという病原菌により、ゆっくり進行する感染症です。感染して3週間ほどで梅毒トレポネーマが体に入った部分に小豆、または指先ほどの大きさの硬いしこりが生じますが、自然と消えるので気付かないこともあります。感染して3カ月をすぎたころより、皮膚や粘膜に発疹(はっしん)症状が出ます。

 治療はペニシリン系の抗菌薬を4週間から8週間、血液による抗体検査で体内の菌が消滅したことを確認できるまで服用することが重要。発疹などの症状を放置して重症化すると、脳や心臓に重い合併症を起こす危険があります。また、梅毒に感染した妊婦から胎盤を通じて胎児が感染すると先天性梅毒を生じ、流産や死産の原因になるだけでなく、学童期に難聴、リンパ節や肝臓のはれといった重い症状も起こります。

 男性の同性間の性的接触による感染だけでなく、近年は異性間の性交渉による感染も広がり、患者増加に拍車がかかっているとみられますが、原因ははっきりしません。

 若年層の性行動の変化、風俗業の業態の変化、流行国からの観光客の増加などが原因として指摘されるものの、どれも十分な根拠はありません。感染症法に基づく届け出では性別と年齢のほか、性的接触の内容を「性交・経口」「同性間・異性間・不明」などに区別して尋ねますが、国籍や職業などは問わないからです。

 東京都新宿区では2015年の届け出が東京都内の4割、全国の2割を占めました。受診医療機関による届け出であるため、区外居住者が受診したケースも多くみられます。2016年に実施したアンケートでは、多くの医師が「患者は増えている」と回答しています。

 新宿区保健所では、病気の特徴や注意点をまとめたパンフレットを作成して啓発に力を入れています。また、2017年度からは、発生状況などを明らかにするために自治体が必要な調査ができるとする感染症法の条文に基づき、患者の匿名性を保ったまま「性風俗への従事歴」や「国籍」などを医師に追加で患者に質問してもらい、対策に生かす方針。

 厚労省が原因解明のために設けた研究班で班長を務める国立感染症研究所の大西真細菌第1部長によると、届け出の多い東京都の医療機関に協力を求め、検査を受けた人を陽性、陰性の2グループに分けて比較する予定。患者のより詳しい属性を明らかにした上で、特に異性間の性交渉でどのように感染が広がったかを2017年度末までに明らかにします。菌が採取できれば、地域や感染経路を解明する特徴の有無も確かめます。

 2017年1月24日(火)

 

■がん免疫治療薬「オプジーボ」の治験、超希少がん2種類で開始 全国4病院で

 国立がん研究センター(東京都中央区)は23日、代表的な希少がんである肉腫(にくしゅ)の中でも発症頻度が極めて少ない2種類の肉腫の患者を対象に、新しいタイプのがん免疫治療薬「オプジーボ」(一般名ニボルマブ)を使う臨床試験(治験)を開始したと発表しました。

 対象の病気は、脚などにできる明細胞(めいさいぼうにくしゅ)肉腫と胞巣状(ほうそうじょう)軟部肉腫。2つの肉腫とも、現時点で効果が確認されている治療薬がありません。

 治験では、進行して手術で切除し切れない18歳以上の患者にオプジーボを投与し、効果をみます。似た特徴を持つ皮膚がんの悪性黒色腫(メラノーマ)にオプジーボがよく効くことから、効果が期待されるといいます。

 明細胞肉腫と胞巣状軟部肉腫は、いずれも発症が国内で年10人程度と少なく、患者を集めるのが難しいため、国立がん研究センター中央病院のほか、愛知県がんセンター中央病院、国立病院機構大阪医療センター、岡山大学病院で、医師が治験の責任者となる形で実施します。

 オプジーボについては、製造販売する小野薬品工業から治験薬として無償提供されるといいます。

 2017年1月24日(火)

 

■脳卒中のまひに新治療、リハビリ機器で神経回路を形成 3年後発売へ

 脳卒中患者の意思を脳波の変化から読み取って、まひした手の指を機械で動かし、新たな神経回路の形成を図るリハビリ機器の製品化に向け、慶応大学とパナソニックが医師主導の臨床試験(治験)を3月にも始めます。3年後の発売を目指します。

 重い脳卒中では、脳からの神経回路が損傷し、体のまひが起きます。国内の脳卒中患者は約120万人で、うち約2割は発症から90日以上経過しても手の指を動かせない重度のまひを持ち、これまで有効な治療法がありませんでした。そのため、従来のリハビリテーションでは、 まひした手の指の回復そのものを指向した治療よりも、利き手を変える、片手の動作を覚えるなどの代償的治療が中心になっていました。

 慶応大学の里宇明元(りうめいげん)教授(リハビリテーション医学)と牛場潤一准教授(理工学)らの研究チームは、手の指を伸ばそうと考えた時の脳波の変化を解析。頭に着けた脳波ホルダーがこの変化を検出すると、電動装具(ロボット)が指を伸ばし、同時に腕の手指伸筋へ刺激を加える電気刺激装置を開発しました。脳波と連動した動作や電気刺激を繰り返すことで、新たな運動指令の神経回路の形成が促されます。

 これまでの研究で、手の指が全く動かせなかった患者42人に、このリハビリ機器による1日40分の訓練を通常のリハビリと合わせて10日間行ってもらうと、29人が指を動かせるようになりました。

 2010年に脳出血で左半身がまひし、このリハビリで手の指を動かせるようになった第一生命経済研究所主任研究員の後藤博さん(54歳)は、「ほかのリハビリを重ねても全く動かず絶望的だったが、希望が生まれた」と話しています。

 治験は、慶応大学病院や東京都リハビリテーション病院など4病院で、約20人の患者にリハビリ機器を使ってもらい、効果と安全性を検証します。そして、パナソニックが医師主導の治験終了後の2019年に、製品化したリハビリ機器の発売を目指します。

 大阪大学の吉峰俊樹特任教授(脳神経外科)は、「脳卒中のリハビリは、筋肉だけではなく、脳の訓練が重要。画期的な手法で、期待が持てる」と話しています。

 2017年1月24日(火)

 

■ノロウイルスなどによる感染性胃腸炎、新学期で再び増加 手洗いなどの予防徹底を呼び掛け

 国立感染症研究所は24日、年末年始に大流行が収まっていたノロウイルスなどによる感染性胃腸炎の患者が、1月15日までの1週間に再び増え始めたと発表しました。

 全国に約3000ある定点医療機関から新たに報告された患者数は、1週間に2万506人で、前週より約4000人増加しました。

 患者は昨年末に1医療機関当たりの患者数が20・89人となり、22・81人を記録した2006年以来の大流行となっていましたが、1月15日までの1週間の1医療機関当たりの患者数は6・48人となり、前の週から1・17人増えました。

 新学期で幼稚園や保育園、学校などが再開したことが、背景にあるとみられます。

 1医療機関当たりの患者数は、大分県(18・25人)、福井県(16・05人)、宮崎県(15・25人)、熊本県(12・92人)、愛媛県(12・84人)などで多くなりましたが、いずれも流行警報の基準となる20人を下回りました。

 ノロウイルスは感染すると、1~2日の潜伏期間の後、激しい嘔吐(おうと)や下痢を繰り返します。乳幼児や高齢者の場合、脱水症状などを起こして入院治療が必要になることもあります。

 国立感染症研究所は、「高い水準の地域もあり、引き続き手洗いなどで予防を」と呼び掛けています。

 2017年1月24日(火)

 

■京都大、iPS細胞1種類の研究機関への提供停止 試薬取り違えの恐れ

 体のさまざまな組織になるiPS細胞(人工多能性幹細胞)を外部の研究機関に提供している京都大学iPS細胞研究所は、細胞の作製過程で誤った試薬を使った可能性があるとして、一部のiPS細胞について研究機関への提供を停止すると発表しました。

 京都大学iPS細胞研究所の山中伸弥所長らが23 日、記者会見をして明らかにしました。

 研究所では、拒絶反応が起きにくい特殊なiPS細胞を前もって作製して、再生医療用に保管し、外部の研究機関に提供する「iPS細胞ストック」という取り組みを進めています。この中で、新生児のさい帯血から作製したiPS細胞1種類を昨年の夏から提供していましたが、昨年11月下旬になってこのiPS細胞を作る過程で本来は使用しない試薬が使われていた可能性があることがわかったということで、このiPS細胞の提供を停止しました。

 iPS細胞は、血液の細胞に遺伝子や試薬を入れて作製します。試薬は3本入りのセットで入荷し、このうち透明なふたの2本には、番号や使用期限を書き込むためのラベルを貼って使用。残る緑色のふたの1本は、反応が進んだかどうかを確認する蛍光タンパク質の遺伝子が入った「GFPベクター」と呼ばれる試薬で、作製時には使わないこととなっています。

 ところが昨年11月下旬、緑色のふたにラベルを貼ったものが見付かり、誤った試薬を使った可能性が浮上。作製したiPS細胞を調べたり、研究員に聞き取りを行ったりしましたが、「誤使用がなかった明確な証拠は得られず、万一、人に使用した際の安全性にも確証が持てない」として、提供の停止に踏み切ることにしました。

 今後、ラベルの管理の厳格化、記録の徹底などの再発防止策をまとめ、今夏をめどに作製し直すといいます。

 これまでに、さい帯血から作製したiPS細胞は国内の13研究機関の23プロジェクトに提供されていましたが、トラブルなどは報告されておらず、人に使われたことはないということです。提供を停止するのは人への臨床応用を前提にしたケースで、研究用としては引き続きそのまま提供するといいます。ただ、一部のプロジェクトでは、人への臨床応用にこのiPS細胞を使う計画を立てていたということで、最大で1年遅れるなど計画に影響が出ることが懸念されるということです。

 山中所長は、「多くの研究費を使って作った細胞が提供できなくなり深くおわびしたい。今後、再発防止を進めていきたい」と話しています。

 2017年1月24日(火)

 

■偽のC型肝炎治療薬、新たに東京都内で発見 卸売り販売業者2社からボトル計9本

 厚生労働省は23日、高額なC型肝炎治療薬「ハーボニー配合錠」の偽造品が東京都内の卸売り販売業者2社で、新たにボトル計9本分見付かったと発表しました。

 奈良県の薬局チェーン店で偽造品5本分が見付かっていたのを受け、東京都などが流通経路を調べ、判明しました。9本は店頭には並んでおらず、奈良県の場合も含めて健康被害の訴えはありませんが、厚労省が注意を呼び掛けています。

 厚労省によると、1月10日に偽造品が見付かった薬局チェーンの関西メディコ(奈良県平群町)や、関西メディコに偽造品を卸した可能性がある卸売り販売業者らを対象に、奈良県や東京都などが立ち入り調査を実施。東京都内の1社から6本、同社が納入したもう1社から3本の計9本が見付かりました。

 奈良県内で見付かった5本を含め偽造品の流通経路上には、少なくとも東京都と大阪府の9社があったことも判明。うち3社は、販売許可のない複数の個人から仕入れたとみられます。厚労省は偽造品が全国に流通している恐れがあるとみて調査を続けるとともに、医薬品医療機器法(薬機法)違反の疑いで個人や卸売り販売業者の告発を検討しています。

 また、薬を製造・販売するギリアド・サイエンシズ(東京千代田区)や東京都は、偽造品の成分を調査しています。

 厚労省によると、これまで見付かった計14本の偽造品は正規品のボトルに入って流通していますが、正規品にある紙箱や添付文書はありませんでした。正規品の中身はだいだい色のひし形で、表面に「GSI」の刻印がありますが、東京都内で見付かった偽造品は黄色い楕円(だえん)形で、奈良県内では薄紫色の錠剤も見付かっています。

 ハーボニー配合錠は、C型肝炎の画期的な治療薬として2015年9月に発売され、1日1錠、12週間内服します。1錠約5万5000円と高額で、28錠入りのボトルの価格は約153万4000円。昨年12月までに約7万6000人が利用しています。

 ギリアド・サイエンシズは、24時間対応の専用ホットライン(0120・631・042)を設けています。

 2017年1月24日(火)

 

■生活保護の不正受給数が過去最多 2015年度4万3938件で金額は減少

 厚生労働省は21日までに、2015年度の生活保護費の不正受給数が4万3938件となり、過去最多を更新したとの集計結果を公表しました。

 不正受給数は、前年度から917件(2・1%)増加しました。一方、不正受給金額は、4億8495万円減(2・8%減)の169億9408万2000円でした。1件当たりの不正受給金額は、1万9000円減の38万7000円で、厚労省が把握する1997年度以降で最低でした。

 厚労省は、「自治体が積極的に収入調査に取り組んだため、不正の早期発見につながり、不正額を抑制できた」と分析しています。

 生活保護費の不正受給を巡っては、収入を隠して保護費をだまし取るといった例もある一方、子供のアルバイト収入を申告し忘れるなど悪質といい切れないケースもあります。

 不正受給の内訳は、「働いて得た収入の無申告・過少申告」が合計58・9%を占め、ほかに「年金受給の無申告」が19・0%、「預貯金などの無申告」が1・3%ありました。不正発覚の経緯は、福祉事務所による照会や調査が89・2%を占め、通報や投書が5・0%でした。

 不正受給対策の強化では、2014年7月に改正生活保護法が施行され、罰金の上限を引き上げたほか、不正をした際の返還金にペナルティーを上乗せすることなどが盛り込まれました。

 生活保護受給者は2016年10月時点で、全国で214万4759人(163万7866世帯)で、その約半数が高齢者(65歳以上)。生活保護受給者数は年々増えていますが、その背景には深刻化する高齢者の貧困問題があります。

 2017年1月24日(火)

 

■乾燥しがちな冬は熱中症に注意を 水分補給と運動に効果あり

 大阪市で昨年12月下旬、高齢夫婦が入浴中に溺死(できし)し、その原因として熱中症が指摘されています。熱中症は夏特有の症状と思われがちですが、水分補給が不十分になる冬もリスクは高いといいます。

 専門家は、「夏と同じくらいの意識で警戒してほしい」と呼び掛けています。

 大阪市の夫婦はいずれも80歳代で、昨年12月29日、大阪市西淀川区の集合住宅で、湯船につかってグッタリしているのを同居する58歳の次男が見付けましたが、すでに死亡していました。大阪府警西淀川署によると、司法解剖の結果、死因は溺死。入浴中に熱中症を起こして意識を失い、溺(おぼ)れたとみられます。捜査関係者によると、1人が気を失った後、もう1人も狭い浴槽で身動きがとれなくなったと考えられるといいます。

 次男によると、夫婦とも足腰が弱く、約15年前から助け合って一緒に入浴していました。熱い風呂が好みで、日ごろから1時間ほど入浴していたといい、「まさか冬に熱中症で亡くなるとは思わなかった」と驚いていました。

 入浴中の死亡事故は、後を絶ちません。厚生労働省の人口動態統計によると、2015年に家庭の浴槽で溺死したのは4804人。10年間で約4割増えており、約9割を65歳以上の高齢者が占めます。

 大阪市消防局が2015年に浴槽で溺れた人数を月別で集計したところ、最多は1月の17人で、3月13人、2月11人と続いて冬に集中し、8月はゼロでした。

 冬の事故でこれまで原因とよくいわれてきたのは「ヒートショック」。冷えた体のまま熱い湯船に入ることで血圧が激しく変動する現象をいい、心筋梗塞(こうそく)や脳卒中につながる危険な状態。脱衣所や浴室を暖めておくことで予防します。

 今回の夫婦は、熱中症とみられています。

 済生会横浜市東部病院・周術期支援センター長の谷口英喜医師によると、空気が乾きやすい冬は、暖房の使用で室内の乾燥も進む上、汗をかいても気付きにくく、皮膚から多くの水分や塩分を失います。水分補給も怠りがちで、脱水症に近付きます。この状態で熱い湯に長時間入ると、脳内の血流が悪くなって血液がドロドロになり、失神を起こしたり、体温の上昇で意識障害を招いたりする熱中症となって、湯船で溺れる危険性が高まるといいます。

 特に高齢者は、暑さを感じる神経の働きが弱く、のどの渇きも自覚しにくいため水分補給が不十分で、脱水症や熱中症に陥りやすくなります。

 谷口医師は、「冬は脱水症が忍び寄る季節。入浴だけでなく、エアコンや床暖房、ストーブも熱中症の引き金になる」と話しています。

 谷口医師らの研究では、高齢者の約2割は常に脱水症の前段階「かくれ脱水」の状態にあります。体調や気候のわずかな変化で脱水症や熱中症になりやすく、谷口医師らはホームページ「かくれ脱水JOURNAL」で注意を促しています。

 予防で必須なのは、水分の摂取。起床や就寝、入浴の前後などに補給することを習慣にすると効果的だといいます。冬は水分が少ない根菜類を食べることが多く、ホウレンソウや小松菜などの緑黄色野菜や季節の果物を意識して食べるのも効果的。さらに、加齢により水分を蓄える筋肉量が減るため、適度な運動で保つよう心掛けることも重要といいます。

 脱水が疑われる場合は、ナトリウムやカリウムなどの電解質と糖分を含む経口補水液が勧められます。「経口補水液は点滴と同程度の改善効果が期待できる」と谷口医師。うまく飲み込めない高齢者向けに、飲み込みやすいゼリータイプの商品もあります。

 2017年1月23日(月)

 

■脳梗塞発症リスク、ゲノム解析から予測 新手法開発、岩手医大

 岩手医科大学などの研究チームは20日までに、一人一人のゲノム(全遺伝情報)を調べ、遺伝子の塩基配列の個人による変異の違いによって、脳梗塞(こうそく)を発症する危険性を予測する手法を開発したと発表しました。

 危険性の高い塩基配列の人は、低い人に比べ2倍程度発症しやすいといいます。

 岩手医科大学の清水厚志特命教授は、「脳梗塞になりやすい遺伝情報を持つ人でも、一人一人が発症リスクを知った上で生活習慣も改善すれば、体質に合った脳梗塞の予防につながる」と話しています。

 研究チームは脳梗塞の患者約1万3214人と、健康な人約2万6470人のゲノムを解析。配列が一つだけ違い「多型」と呼ばれる変異を1人ごとに約36万カ所調べ、脳梗塞の発症リスクの大きさで5つのグループに分けることができました。

 約2000人の別のデータで検証したところ、最も発症リスクが高いグループは、最も発症リスクが低いグループに比べて、脳梗塞になるリスクが1・8~2倍高いという結果となりました。血圧が高い人は発症しやすいことが知られていますが、遺伝子の塩基配列も危険性が高ければ、さらに発症しやすくなるといいます。

 研究チームは、さらに精度を高める研究を進める計画。この解析法は、がんや生活習慣病、うつ病などの予測にも応用できるとしています。

 2017年1月23日(月)

 

■小野薬品工業、アメリカの製薬大手メルクと和解 オプジーボの特許巡る訴訟

 小野薬品工業(大阪市)は21日、がん免疫治療薬「オプジーボ」に絡む特許を侵害されたとして、国内外で提訴していたアメリカの製薬大手メルクと和解したと発表しました。

 特許の有効性を確認し、小野薬品工業と共同開発先のアメリカの製薬会社ブリストル・マイヤーズスクイブに対し、メルクが6億2500万ドル(約715億円)を支払います。また、メルクは今後、同社が販売するがん免疫治療薬「キイトルーダ」の売り上げに応じて、小野薬品工業とブリストル・マイヤーズスクイブにロイヤルティーを支払います。

 小野薬品工業は、メルクのキイトルーダがオプジーボと同じく、体の免疫機能を弱めるタンパク質「PD1」に作用する有効成分を用いており、特許侵害に当たると主張。ブリストル・マイヤーズスクイブとともに、アメリカやヨーロッパなど世界各国で損害賠償や販売の差し止めを求めていました。日本ではメルクの日本法人MSD(東京都千代田区)を訴えていました。

 今回の和解は、小野薬品工業とブリストル・マイヤーズスクイブの実質的な勝訴とみられます。

 オプジーボは、体の免疫機能を高めて、がん細胞を攻撃する新しいタイプのがん治療薬。手術ができないほど進行したがんを縮小させるなど、これまでの抗がん剤にはなかった治療効果が確認されています。遺伝子組み換え技術などを応用し、微生物や細胞が持つタンパク質を作る力を利用して製造されるバイオ医薬品です。

 2017年1月22日(日)

 

■インフルエンザ患者、1週間で99万人増 今季の患者は400万人に迫る

 厚生労働省は20日、今月9日から15日の1週間で推計約99万人のインフルエンザ患者が全国の医療機関を受診したと発表しました。1週間当たりの推計患者数は、昨年9月以降の今シーズンで最も多くなりました。

 インフルエンザ患者が急増している地域の自治体は、急な発熱やせきなどの症状がある場合、早めに医療機関を受診するよう呼び掛けています。

 厚労省によると、9日から15日までの1週間に医療機関を受診した推計患者数は、前週比約18万人増の約99万人に上り、年齢別では、20歳代が約14万人で最も多くなりましたが、患者は10歳未満から70歳以上まで幅広い世代に広がっています。

 今シーズンの累計患者数は、約386万人となり、400万人に迫っています。

 1週間の全国約5000カ所の定点医療機関からの患者報告数は、1医療機関当たり15・25人で、前週比約44%増。44都府県で前週の患者報告数を上回りました。

 都道府県別では、愛知県が24・74人で最も多く、以下は岐阜県21・0人、埼玉県20・21人、千葉県20・04人、福井県19・5人、茨城県18・48人、静岡県18・26人、三重県17・93人、山梨県17・54人、群馬県17・36人、岡山県17・15人、宮崎県17・0人、沖縄県16・93人、広島県と大分県が16・83人、神奈川県16・67人、秋田県16・37人、愛媛県16・2人の順でした。

 インフルエンザウイルスの検出状況について、厚労省は「直近の5週間ではAH3(A香港)亜型の検出割合が最も多く、次いでB型、AH1pdm09の順であった」と説明しています。

 厚労省の担当者は、「流行が拡大している。1~2月のピークに備え、引き続き、予防と感染拡大の防止に努めてほしい」と呼び掛けています。

 2017年1月21日(土)

 

■自殺者、22年ぶりに2万1000人台 女性は過去最少

 厚生労働省は20日、2016年の自殺者数(速報値)が前年比2261人減の2万1764人だったと発表しました。減少率は9・4%で、統計を取り始めた1978年以降最大。

 減少は7年連続。2万2000人を下回ったのは1994年以来22年ぶりで、最多だった2003年と比べると36・8%減少しています。女性の自殺者数は6747人で、統計を取り始めた1978年以降最も少なくなりました。

 厚労省は、自治体などが相談やメンタルヘルス(心の健康)対策を進めた結果とみており、さらに拡充を促す方針です。

 自殺者数統計は、警察庁の調べを基に厚労省が分析。自殺者数はバブル崩壊後に増加し、1998年から2011年まで14年連続で3万人を超えていましたが、2016年は1994年以来22年ぶりに2万2000人を下回りました。

 男女別では、男性は前年比1664人減の1万5017人、女性は前年比597人減の6747人で、これまで最少だった1994年の7119人を下回りました。男性は7年連続減、女性は5年連続減。

 都道府県別では、40都道府県で前年に比べて減少しましたが、岩手県、福井県、和歌山県、徳島県、香川県、高知県、大分県の7県は増加しました。人口10万人当たりでは秋田県(25・7人)が最も多く、岩手県と和歌山県(いずれも24・6人)が続きました。

 東日本大震災に関連する自殺者数(11月まで)は19人で、内訳は岩手県5人、宮城県7人、福島県7人でした。

 一方、11月までの累計2万193人について年代別にみると、40歳代が最多の3442人、50歳代3345人、60歳代3323人と中高年が多くなりました。前年同期に比べると、全世代で減少しました。

 原因や動機(3つまで計上)では、「健康問題」が最多の1万63人(前年同期比10・1%減)、生活苦や失業などの「経済・生活問題」は3234人(前年同期比14・3%減)でした。過労自殺を含む「勤務問題」は8・0%減でしたが、50歳代は410人で前年同期より9・6%増えました。

 確定値は3月に公表します。昨年4月に施行された改正自殺対策基本法は、各自治体に自殺防止計画の策定を義務付けています。

 2017年1月20日(金)

 

■花粉飛散、例年並みの2月上旬から 日本気象協会が早めの対策呼び掛け

 日本気象協会は17日、2017年春のスギ、ヒノキ花粉の飛散が例年並みの2月上旬から始まるとの予測を発表しました。飛散開始が早い地域では、1月から花粉症対策をするよう呼び掛けています。

 2月上旬には九州北部と中国、四国、東海の一部で、スギ花粉の飛散が始まる見込みといいます。関東甲信では、2月中旬には花粉シーズンへ突入する見込みです。

 日本気象協会は、スギ花粉は飛散開始と認められる前からわずかな量が飛び始めるため、「花粉飛散開始」という言葉を待たずに、花粉対策を始める必要があるとして、2月上旬に飛散開始が予測される九州北部などの地域では、1月のうちから花粉対策を始めるよう呼び掛けています。

 スギ花粉のピークは、福岡市が2月下旬~3月上旬、東京23区と名古屋市、大阪市、広島市、高松市が3月上旬~中旬、金沢市と仙台市が3月中旬~下旬。

 ヒノキ花粉のピークは、福岡市が3月中旬~4月上旬、大阪市と高松市が3月下旬~4月中旬、東京23区と広島市が4月上旬~中旬、名古屋市は4月中旬。金沢市と仙台市は4月にヒノキ花粉が飛散しますが、飛散数が比較的少なく、前シーズンに引き続き今シーズンもはっきりとしたピークはない見込みです。

 スギ、ヒノキ花粉の飛散量は、九州、四国、近畿、東海では、例年に比べやや多く、前シーズンよりも非常に多い予想です。北陸、中国地方では、前シーズンより多く、例年並みの飛散量の見込みです。一方、関東甲信、東北では、飛散量は前シーズンより少なめで、例年よりやや少なくなる見込みです。

 また、北海道のシラカバ花粉の飛散量は、前シーズンより少なく、例年に比べて非常に少ない見込みです。

 2017年1月19日(木)

 

■3人の親を持つ子、ウクライナで誕生 体外受精技術のミトコンドリア置換で

 遺伝的に3人の親を持つ子供が生まれる「ミトコンドリア置換(前核移植)」と呼ばれる体外受精技術を使い、不妊治療目的では世界初とみられる男児が、ウクライナの首都キエフの不妊治療施設で生まれたことが明らかになりました。複数の欧米メディアが報じました。

 イギリスのBBCによると、第三者の健康な卵子を使った受精卵から核を取り除き、両親の受精卵の核を移植するミトコンドリア置換で妊娠に成功し、今月5日に生まれたといいます。この男児は、両親と卵子を提供した女性の遺伝子を受け継ぐことになります。

 キエフにある私立医療施設「ナディア不妊治療院」の声明によると、34歳の母親は1月5日に健康な男児を出産。母親はそれまで15年以上にわたり、子供をもうけるための努力を続け、体外受精を何度か受けてきましたが、いずれも妊娠には至らなかったといいます。

 今回の出産は、ミトコンドリア置換によって実現しました。この技術で形成された受精卵は、卵子を提供した女性のDNAがごく少量(約0・15%)含まれるだけで、両親の遺伝物質でほぼ完全に構成されました。

 今回の男児は、2016年にメキシコでアメリカの医師らによって生まれた男児に次いで、2人目の「遺伝的に3人の親を持つ」子供と考えられています。メキシコの男児は今回のケースとよく似ていますが、ミトコンドリア置換とは別の核移植技術を用いて誕生しました。

 キエフでは、同じミトコンドリア置換を施した2組目の子が3月初めにも産まれるといいます。

 3人の親による体外受精を用いたミトコンドリア置換を巡っては、イギリスの上下両院が2015年2月、これを可能とする法案を世界で初めて可決しました。昨年12月にはイギリスの受精胎生認可庁が正式に認可し、早ければ今春にも実施されるとみられています。

 ミトコンドリア置換は本来、母性遺伝するミトコンドリア異常から子供を守る目的で開発されたもので、今回の不妊治療への適用について、イギリスの専門家は「科学的に十分に検証されておらず非常に実験的だ」と警鐘を鳴らしています。

 2017年1月20日(金)

 

■カカオの多いチョコレート、毎日食べると脳が若返る可能性も 内閣府が共同研究

 内閣府の挑戦的な研究開発を行うプロジェクトチームと食品メーカーの明治は18日、カカオを多く含むチョコレートを中高年の男女30人に4週間にわたり毎日食べてもらったところ、学習などにかかわる大脳皮質の量が6割の人で増えたと発表しました。

 脳の機能が平均1~2歳若返った可能性があるといい、今後は対象者を増やした長期的な実験を行う計画です。

 内閣府と明治の共同研究チームは今回、脳の構造を画像化する磁気共鳴画像装置(MRI)を使って、大脳皮質の量を数値化する手法を開発。試験的にカカオを70%以上含むチョコレートを1日25グラムずつ、45~68歳の男女30人に食べてもらいました。その結果、18人で学習機能を高めるとされ、年齢を重ねるとともに小さくなる大脳皮質の量が平均で1・1ポイント増え、特に女性でその傾向が強かったといいます。

 大阪市立大健康科学イノベーションセンターの渡辺恭良所長(神経科学)は、「抗酸化作用のあるカカオが、脳の若返りに寄与している可能性はあるが、さらにデータを集めてメカニズムを調べる必要がある」と話しています。

 2017年1月19日(木)

 

■カロリー制限、寿命を延ばす効果ありとの結論を発表 アメリカの2研究所、サルで実験

 カロリー制限は健康を向上させて寿命を延ばす効果があるとする研究結果をアメリカのの2つの研究チームがまとめ、17日付のイギリスの科学誌ネイチャー・コミュニケーションズに発表しました。

 2つの研究チームは1980年代後半から200匹近いアカゲザルで実験を続け、効果を巡って相反する結果を発表していましたが、共同で実験データを再解析し、「寿命を延ばす効果あり」で結論が一致したといいます。

 2つの研究チームは、アメリカのウィスコンシン大学と国立加齢研究所。いずれも、好きなだけ食べさせる集団と、それよりも摂取カロリー量を3割減らした集団で生存年数などを比較する実験をしていますが、ウィスコンシン大学は2009年と2014年に「効果あり」、国立加齢研究所は2012年に「効果はなかった」と発表していました。

 今回、2つの研究チームで2015年7月までの互いの実験を比べると、カロリー制限を始めた年齢がウィスコンシン大学は大人の7~15歳なのに対し、国立加齢研究所は1~23歳と幅広くなっていました。このため、国立加齢研究所のデータについて、実験開始時の年齢を若年(1~14歳)と中高年(16~23歳)に分けて改めて解析すると、若年でカロリー制限を始めた場合は寿命が延びる効果はみられませんでしたが、中高年で始めた場合は効果がみられ、特にオスは平均寿命の推計が全体よりも9歳ほど長い約35歳だったといいます。

 また、2つの研究チームの解剖データを調べたところ、開始年齢や性別にかかわらず、カロリー制限をした集団のほうが、がんの発生率が15~20%ほど低くなりました。糖尿病や脳卒中など加齢に伴う病気も、より遅く発症していました。

 東京都健康長寿医療センター研究所の石神昭人研究部長(老化制御)は、「論争に一つの終止符が打たれた。約30年に及ぶカロリー制限の研究データは、人間にも置き換えることができそうだ」と話しています。

 2017年1月19日(木)

 

■指定難病に24疾患を追加し、計330疾患に 4月から無虹彩症などに医療費を助成

 難病医療法に基づき医療費助成の対象になる指定難病として、目に入る光の量を調節する虹彩がほとんどなく、大半が視覚障害児となる「無虹彩症」、日本で約3000人の患者がいる「進行性ミオクローヌスてんかん」、呼吸困難に陥る「先天性気管狭窄(きょうさく)症」など24疾患が追加されることが18日、決まりました。

 同日に開かれた厚生労働省の疾病対策部会が、了承しました。3月中に指定難病の告知を終え、4月から医療費助成を開始する予定です。

 厚労省は2015年1月施行の難病医療法に基づき、指定難病の拡大を進めています。施行前は56疾患でしたが、これまで2度の選定で306疾患が指定され、今回の追加で計330疾患と施行前の約6倍となります。医療費助成で、指定難病の患者の自己負担は3割から2割に引き下げられ、負担上限も1000円~3万円になります。

 厚労省は、難病を「発病の機構が明らかでなく」「治療方法が確立せず」「希少な疾病で」「長期の療養を必要とする」ものと定義。そのうち、患者数が人口の0・1%未満で、診断基準が確立しているものだけが、指定難病の対象となります。

 厚労省が発表している衛生行政報告例によると、2015年末の時点で指定難病にかかっていて医療費助成を受けている患者は、延べ約94万人に上ります。しかし、潰瘍(かいよう)性大腸炎やパーキンソン病のようなよく知られた疾患は10万人以上が医療費助成を受けているのに対し、1人も助成を受けていない疾病もあります。

 指定難病に追加され、4月から医療費助成の対象になる24の疾患は、以下の通り。

 「先天性GPI欠損症」、「βケトチオラーゼ欠損症」、「三頭酵素欠損症」、「シトリン欠損症」、「セピアプテリン還元酵素欠損症」、「非ケトーシス型高グリシン血症」、「芳香族アミノ酸脱炭酸酵素欠損症」、「メチルグルタコン酸尿症」、「大理石骨病」、「進行性ミオクローヌスてんかん」、「先天性三尖弁(さんせんべん)狭窄症」、「先天性僧帽弁狭窄症」、「先天性肺静脈狭窄症」、「左肺動脈右肺動脈起始症」、「カルニチン回路異常症」、「前眼部形成異常」、「無虹彩症」、「カナバン病」、「進行性白質脳症」、「先天異常症候群」、「爪膝蓋骨(そうしつがいこつ)症候群/LMX1B関連腎症」、「先天性気管狭窄症」、「特発性血栓症」、「遺伝性自己炎症性疾患」

 2017年1月18日(水)

 

■偽のC型肝炎治療薬、奈良の薬局チェーンで販売 厚労省、注意を呼び掛け

 厚生労働省は17日、高額なC型肝炎治療薬「ハーボニー配合錠」の偽造品が奈良県内の薬局チェーン店で見付かったとして、薬の形などが通常と異なる場合には販売しないよう医療機関や販売業者に指導するよう求める通知を都道府県などに出しました。

 健康被害は、現在のところ確認されていません。

 厚労省や、薬を販売するギリアド・サイエンシズ(東京千代田区)によると、今年1月9日、この薬局チェーン店で薬を購入した患者から「医療機関で以前処方された錠剤と色が違う」などと薬局に相談があり、発覚。10日に薬局からギリアド・サイエンシズに連絡があり、同社が調べたところ、この患者が処方を受けた薬局チェーン店と本部、別の薬局チェーン店の、いずれも奈良県内にある計3カ所から計5個の偽造品が確認されました。

 このうち4個は正規のボトルで、1個は類似したラベルが貼られていました。ボトルの中には、ハーボニー配合錠と明らかに外見の異なる錠剤が単独、またはハーボニー配合錠と外見が類似した錠剤と混在した形で入っていました。

 販売ルートについて、ギリアド・サイエンシズは「偽造品は正規の取引先以外の経路から入手されたことが判明している」と説明し、偽造品の中身の成分について「調査中」などとしています。

 都道府県などへの通知では、本来のボトルに収められているかや、薬の譲渡人が必要な販売許可などを持ち、適正な流通経路から入手しているかを確認することを求めています。また、厚労省は他の薬局でも同様の事案がないか調査しています。

 ハーボニー配合錠は、C型肝炎の画期的な治療薬として2015年9月に発売され、1日1錠、12週間内服します。1錠5万5000円と高額で、偽造品と判明した28錠入りのボトルの価格は約153万4000円。

 2017年1月18日(水)

 

■がん免疫治療薬「オプジーボ」、高脂血症薬と併用で効果アップ マウス実験で確認

 がん細胞によって弱められた、患者の免疫細胞の攻撃力を高めてがんを治す新しいタイプのがん治療薬「オプジーボ」(一般名ニボルマブ)と同じ働きのある薬を、高脂血症の薬と併用すると治療効果が大幅に高まることを、マウスを使った実験で確認したと京都大学の研究チームが発表しました。

 治療薬オプジーボは、患者によっては全く効果がみられないことがありますが、そうした問題を解決できる可能性があるとしています。

 これは、京都大学大学院医学研究科の本庶佑(ほんじょたすく)客員教授らの研究チームが発表したものです。治療薬オプジーボは、進行したがんを治す画期的な効果が2、3割の患者で確認されている一方、患者によっては全く効果がみられないケースも少なくなく、課題となっています。

 研究チームでは、大腸がんのマウスにオプジーボと同じく、免疫細胞の攻撃力を高める働きのある「PDーL1抗体」という薬を、別のさまざまな薬と一緒に投与し効果を調べました。その結果、高脂血症の治療に使われる「ベザフィブラート」という薬と一緒に使うと、がんのマウスの生存率がおよそ40%上がり、5匹のうち2匹でがんが完治したということです。

 研究チームでは、人でも同じような効果が確認できれば、現在、オプジーボが全く効かない患者にも有効な治療法の開発につながるとしています。

 ベザフィブラートは、血中のコレステロールを減らす薬で、200ミリグラム当たり数十円と安価。免疫細胞のエネルギーを作るミトコンドリアを活性化させ、免疫細胞を増やす働きがあるとみられています。

 本庶客員教授は、「来年度中には臨床試験(治験)を開始して、副作用を確認したい。順調に進めば、数年後には医療現場で使えるようになるのではないか」と話しており、肺がん患者に2つの薬を投与する臨床試験を2017年度に九州大学や先端医療振興財団(神戸市)と共同で始めるといいます。

 研究論文は17日、アメリカの科学アカデミー紀要電子版に掲載されました。

 2017年1月17日(火)

 

■睡眠不足は肥満のもと、レム睡眠の不足が関係 筑波大学が証明

 睡眠不足は体重増加をもたらす要因の一つといわれてきましたが、筑波大学の研究チームは、浅い眠りであるレム睡眠が足りないと、脳の前頭葉が砂糖や脂質など高カロリーの食べ物が欲しくなるよう指令を出していることを、マウスの実験で確かめました。

 睡眠は、ノンレム睡眠とレム睡眠が交互に現れて、1セット約90分で一夜に4、5回繰り返すことで構成されています。ノンレム睡眠は脳も体も眠っている深い眠りで、入眠直後に現れる状態である一方、レム睡眠は体は眠っているのに、脳は活動している浅い眠りの状態を指していて、この時に夢を見ることが判明しています。

 筑波大学・国際統合睡眠医科学研究機構のミハイル・ラザルス准教授らの研究チームは、飼育ケースの底に金網を敷いた不安定な環境にマウスをおくと、レム睡眠だけが極端に減る現象を応用。この状態でレム睡眠不足に陥ったマウスの摂食行動を観察したところ、砂糖の成分であるショ糖や脂質を食べる量が増えました。

 次に、味や香りなどを判断する役割を担う脳の「前頭前皮質」と呼ばれる、前頭葉の前側部分の働きを遺伝子改変技術で抑えて同じ実験をすると、レム睡眠が不足してもショ糖を食べる量は増えませんでしたが、脂質を食べる量は増加したといいます。

 これにより、レム睡眠不足になると前頭前皮質の活動によって、ショ糖を多く含み体重を増加させる、いわゆる太りやすい食べ物を摂取したくなる欲求が現れる、という可能性が明らかになりました。

 レム睡眠は、加齢とともに減少することが知られています。また、高齢化に合わせて、2型糖尿病や心血管疾患など、肥満と密接に関連する疾患は増加しています。

 研究チームは、「実験で得られた知見をもとに、糖尿病や心血管疾患など肥満とつながりのある生活習慣病に対して、神経薬理学的なアプローチで新たな治療方法を開発したい」と話しています。

 この研究成果は、イギリスの学術雑誌「イー・ライフ」に発表されました。

 2017年1月16日(月)

 

■がん患者の遺族2万人を対象に大規模調査へ 厚労省が初、終末期ケアの実態把握

 がん患者の終末期の療養実態を把握するため、厚生労働省が約2万人の遺族を対象とした初の大規模調査を2017年度から始めます。終末期の患者・家族が適切なケアを受けたかどうかや、医療や介護サービスの利用状況などを把握し、がん患者の療養環境の改善につなげます。

 調査は、厚労省が国立がん研究センターに委託して実施。対象は全国のがん患者の遺族約2万人を想定し、死亡診断書に基づいて作成される人口動態統計の詳細データから選びます。

 国は、がんを抱える患者が体や精神的なつらさを和らげる「緩和ケア」を受け、医療だけではなく介護サービスも活用することによって、療養生活に伴う苦痛や困難を減らす体制整備を目指しています。

 終末期は病院から自宅へ帰る患者も増え、治療の選択に迷ったり、痛み・不安を軽くする緩和ケアや在宅療養生活を支えるサービスが十分に提供されていなかったりするケースもあります。厚労省研究班が実施した2014年度の調査によると、身体的苦痛や精神的苦痛の緩和が十分にされていない患者が3~4割を占めました。

 これまでも、がん患者が終末期に適切な緩和ケアを受けたかどうかを尋ねる遺族調査はありましたが、規模が小さく、対象も一部の病院に限定されており、国のがん政策を検討するがん対策推進協議会から「実態を把握できていない」と指摘されていました。

 今回の調査項目は、「緩和ケアが適切に患者・家族に提供されたか」、「どんな治療を受けたか」、「医療者とのコミュニケーション」、「治療・療養について患者本人の意思が尊重されたか」、「利用した医療・介護サービス」、「サービスに満足できたか」などからなります。

 厚労省は、調査結果をもとに、患者が住み慣れた地域で質の高い療養を受けられるようにする対策の検討に生かす方針です。

 遺族調査の実施を求めてきた患者支援団体「HOPEプロジェクト」の桜井なおみ理事長は、「患者や家族にとって一番大切な最終段階の実態はほとんどわかっていない。緩和ケアを十分に受けられずに亡くなる患者は多いとみられ、遺族の体験を知る意義は大きい」と話しています。

 2017年1月16日(月)

 

■介護と障害に共通のサービスを創設 厚労省、2018年度実施を目指す

 厚生労働省は、介護保険と障害福祉両制度に共通のサービス創設の方針を固めました。高齢の障害者が、一つの事業所で一括してサービスを受けられるようにするなど、利用者の利便性を高めるのが狙い。

 2018年度の実施を目指し、20日に開会する通常国会に関連法案を提出します。

 介護保険と障害福祉の両制度は、サービスを提供するのに、それぞれ指定を受ける必要があります。このため、65歳以上の高齢の障害者が、障害福祉事業所で介護サービスを受けられないなどの課題が指摘されています。そこで厚労省は、通所や訪問など、いずれの制度にもあるサービスについて、事業者が両方の指定を受けやすくするよう制度を見直します。

 厚労省は、高齢者や障害者、児童といった福祉分野に関し、地域住民とも協力して包括的にサービスを展開する「地域共生社会」を目指しています。高齢化がさらに進む中、地域内の限られた施設や人材の有効活用を促します。

 実施には介護保険法や障害者総合支援法などの改正が必要で、関連法案を一括し、「地域包括ケアシステム構築推進法案」として提出する方針です。

 この地域包括ケアシステム構築推進法案には、介護サービス利用時の自己負担について、特に所得の高い人は、現在の2割から3割に引き上げることも盛り込みます。対象は、単身の場合で年収340万円(年金収入のみの場合は344万円)以上、夫婦世帯は年収460万円以上。当初は単身で年収383万円以上を想定していたものの、見直しました。

 負担増になるのは、原則65歳以上の利用者の3%に当たる12万人で、2018年8月実施を目指します。

 一方、40~64歳の介護保険料について、年収の高い会社員らの負担が増える「総報酬割り」の導入も盛り込みます。2017年8月分からの適用を想定しています。

 2017年1月15日(日)

 

■住宅の断熱化による室温上昇で血圧低下 国交省、リフォームを呼び掛け

 国土交通省は14日までに、冬の起床時に室温が低いほど高齢者を中心に血圧が高くなる一方、住宅の壁や窓を断熱化して室温を上げると血圧が低下する傾向がみられたとの調査結果を発表しました。

 血圧の上昇は心筋梗塞(こうそく)や脳卒中などのリスクにつながることから、国交省は、壁に断熱材を入れたり窓を2重化したりする住宅リフォームの推進を呼び掛けています。

 調査は、住宅の断熱性能と居住者の健康との関連を探ることを目的に、2014年度から4年間の予定で実施。中間報告と位置付ける今回は、冬の2週間、2759人(平均年齢57歳)を対象に、住宅の室温や居住者の血圧を連日測定しました。

 その結果、起床時の室温が低いほど血圧が高くなる傾向が認められ、高齢になるほど血圧の上昇幅が大きくなる傾向も確認されました。

 対象者のうち165人について、国の補助で住宅を断熱改修したところ、断熱化で室温が平均2・7度上昇したのに対し、最高血圧は平均1・0mmHg低下。室温が上がるほど、居住者の血圧は下がる傾向が確認されたといいます。

 調査委員会の村上周三委員長(建築環境・省エネルギー機構理事長)は、「高齢者ほど住宅の室温低下に注意が必要」と指摘し、「断熱化が居住者の健康に効果があることは明らかだ」と強調しました。

 2017年1月15日(日)

 

■骨に効くミカンジュース、機能性表示食品に認定 和歌山県で初めて

 ミカンの生産、加工販売を行う農業生産法人「早和果樹園」(和歌山県有田市)の果汁100%のミカンジュース「味一しぼり」(720ミリリットル)が、骨の健康維持に役立つとして、効能を商品に表示できる「機能性表示食品」に和歌山県内で初めて、消費者庁から認定されました。

 早和果樹園の秋竹新吾社長は、「ミカンの皮を使った商品の認定も目指し、濃厚な味が魅力の有田みかんの付加価値を高めたい」と意欲をみせています。

 機能性表示食品は、科学的根拠に基づいて、健康の維持・増進などの効果を商品パッケージに表示できる制度で、消費者庁が2015年4月に導入しました。

 同じく効果を表示できる「特定保健用食品」(トクホ)は安全性などについて国が審査しますが、機能性表示食品は、自社や他の機関が行った研究結果をもとに、企業が自己の責任で効能などを評価することが必要となります。

 秋竹社長によると、和歌山県が出資する「わかやま産業振興財団」が、果樹の付加価値を高めようと昨年、開いた講演会を聴講し、機能性表示食品について詳しく学んだことが認定を目指す切っ掛けとなりました。

 早和果樹園は、国立研究開発法人「農業・食品産業技術研究機構」が行った研究を踏まえ、有田みかんに含まれるオレンジ色の成分「β―クリプトキサンチン」が骨代謝の働きを助け、骨粗しょう症の発症リスクを低減させることに着目しました。

 1日当たり、β―クリプトキサンチンを3ミリグラム以上摂取すると有効とされていることから、早和果樹園は「日本食品分析センター」に依頼してジュースの成分を調査。ジュース180ミリリットル当たり3ミリグラムの成分が含まれていることを突き止め、昨年9月に消費者庁に申請し、12月28日付で認定されました。

 1本1300円(税込み)で、和歌山県内の小売店で購入できます。問い合わせは早和果樹園(0120・043・052)。

 2017年1月14日(土)

 

■介護報酬1・14%引き上げ、職員給与1万円増へ 厚労省、4月から

 厚生労働省は13日、介護職員の給与を平均で月1万円程度増やすため、介護保険サービス事業者に支払う介護報酬を4月に臨時改定し、1・14%引き上げる方針を決めました。

 人材不足が続く介護職員の処遇改善は、安倍政権が掲げる「1億総活躍プラン」の目玉の一つ。介護報酬の改定は3年に1度で次回は2018年度ですが、臨時で実施します。 

 18日に開く社会保障審議会(厚労相の諮問機関)の分科会に示します。

 介護報酬は、利用者の自己負担(1~2割)、保険料、税金で賄われています。今回の改定は利用者負担の金額に跳ね返るほか、40~64歳が支払う保険料も月60円ほど高くなるとみられます。65歳以上の保険料は変わらない見通し。

 介護事業所が(1)勤続年数(2)介護福祉士など資格の有無(3)実技試験や人事評価の結果のいずれかに応じた昇給の仕組みを就業規則で設けた場合、月額1万円相当の報酬を加算します。全国の介護事業所の7割が条件を満たすとみられます。介護職員以外の調理担当者や理学療法士などは、対象外です。

 介護職員の平均給与(賞与込み)は、月26万2000円で、全産業平均の36万2000円を10万円下回ります。

 2017年1月14日(土)

 

■インフルエンザ、注意報レベルを超え流行本格化 1週間で患者数81万人に

 インフルエンザの流行が、全国的に本格化しています。国立感染症研究所は13日、1月2~8日までの直近の1週間に全国約5000の定点医療機関から報告された患者数が1カ所当たり10・58人に上ったと発表し、4週間以内に大流行が発生する可能性がある「注意報レベル」の10人を今季初めて超えました。

 流行のピークは例年1月下旬から2月上旬であり、国立感染症研究所は手洗いの徹底などの対策を呼び掛けています。

 国立感染症研究所によると、全国約5000の定点医療機関からの患者報告数は、前週より約1万人増えて約5万2000人。1カ所当たりの患者数を都道府県別にみると、岐阜県(19・87人)、秋田県(18・30人)、愛知県(18・25人)、沖縄県(17・93人)、茨城県(17・30人)、滋賀県(15・15人)、福井県(13・69人)などと、25道府県で10人を超え、42都府県で前週より患者が増えました。

 全国の患者数は、前週より約20万人多い約81万人に上ると推計されました。

 検出されたウイルスは、直近の5週間ではAH3(A香港)亜型が最も多くなりました。この型は高齢者が重症化しやすいとされ、1月の入院患者は約6割が70歳以上。

 国立感染症研究所感染症疫学センターの砂川富正室長は、「高齢者が入所する施設では集団感染を引き起こし、重症化を招く恐れがある。体調が悪い人は見舞いを控えるなど注意してほしい」としています。

 また、砂川室長は、「今は受験シーズンにも当たる。大学入試センター試験などを控えている受験生はもちろん、一緒に暮らす家族も、手洗いの徹底や外出時のマスク着用、無用な人混みへの外出を避けるなど、予防を心掛けてほしい。また、受験生の子供を持つ親世代の患者が多いので、発症した家族は別室で休んだり、タオルの共用を避けたりして感染の拡大を防ぐほか、受験生自身も睡眠をしっかり取るなど体調を整えてほしい」と話しています。

 2017年1月13日(金)

 

■世界初、生体と同様の働きをするミニ腸 万能細胞から作製に成功

 国立成育医療研究センター(東京都世田谷区)や東北大などの研究チームが、体のさまざまな組織になる万能細胞である人のES細胞(胚性幹細胞)やiPS細胞(人工多能性幹細胞)を使って、生体とほぼ同様の働きをする1~2センチメートルの立体的な腸(ミニ腸)を作製することに世界で初めて成功したと、12日付のアメリカの科学誌「JCIインサイト」で発表しました。

 潰瘍(かいよう)性大腸炎やクローン病などの難病の治療や、創薬の開発につながり、将来的には移植治療への応用も目指しているといいます。

 成育医療研究センターの阿久津英憲・生殖医療研究部長によると、研究は約10年前から着手しました。腸は消化、吸収、蠕動(ぜんどう)運動など複雑な構造や機能を有し、その再現は極めて困難だとされていました。

 研究チームは、細胞を培養する容器の形状に着目。微細加工技術を容器の底に施し、細胞が自己組織化する能力を引き出す空間作りに成功しました。その中に人のES細胞を入れ、3種類の特殊なタンパク質を加えて培養すると、細胞が集まって風船状の複雑な立体構造をしたミニ腸ができました。

 作製期間は平均2カ月ほどで、早ければ1カ月でできるといいます。ミニ腸はiPS細胞からも作製できますが、作製効率や組織の成熟度はES細胞のほうが優れているといいます。

 ミニ腸の内部には、生体の小腸と同じように栄養を吸収する「柔毛」と呼ばれる突起があり、収縮運動をしてタンパク質や水分を取り込む様子が確認できました。また、医療現場で使われている液体の便秘薬をかけると、生体の腸が便を排出する際に行うのと同じ収縮運動を始め、反対に下痢止めをかけると、収縮運動をしなくなるなどの反応も確認できたということです。

 ミニ腸は培養容器の中で1年以上生存するため、創薬にも応用しやすく、開発中の薬剤の吸収能力や下痢などの副作用を評価する用途などを見込んでいます。病気の発症の仕組みを解明する研究も期待できます。

 培養液は動物の成分を含んでおらず、細菌感染などの恐れも少ないため、将来、ミニ腸で作った細胞を移植したり、通常の小腸の大きさにして移植したりする治療法が実現する可能性もあります。アメリカなどではすでに、人のES細胞から作った目や神経などの細胞を移植する臨床試験が実施されています。

 阿久津部長は、「腸の病気は治療に難渋する患者が多い。ミニ腸を使って病気の症状を再現できれば、腸の難病の発症のメカニズムの解明や薬の開発につながる成果で、今後も研究を続けていきたい。将来的にはミニ腸を人に移植する再生医療にもつなげたい」と話しています。

 2017年1月13日(金)

 

■歯磨きから基準超の微生物を検出 サンスターが4万7760個を自主回収へ

 大阪府高槻市に本社がある「サンスター」は12日、チューブ入りのホワイトニング用歯磨きの一部に、自社の基準値を超える微生物が検出されたとして、4万7760個を自主回収すると発表しました。

 これまでのところ健康被害は報告されていないといいます。

 自主回収の対象となるのは、昨年11月15日~12月22日にかけて製造・出荷された「セッチマはみがき スペシャル(スタンディングタイプ)80g」で、製造ロット番号が「20161115」「20161116」「20161221」「20161222」の計4万7760個。

 出荷後の工場保管品を追跡調査した結果、社内基準値を上回る数の微生物が検出され、原因を調べたところ、歯磨き粉を注入するチューブが洗浄後に乾き切っていなかったために、微生物が付着していたことが判明しました。

 検出された微生物は、海水など自然界に広く存在するもので、自主回収の対象製品で歯を磨いても、深刻な健康被害が起こる可能性はないといいます。

 サンスターは、「深くおわびします。再発防止と品質向上に一層の努力を重ねます」としています。

 13日以降、問い合わせ窓口か、インターネットで連絡すると、後日、製品代金相当のQUOカードが送られてきます。

【この件に関する問い合わせ先】

 フリーダイヤル(0120ー578020) 受付時間:平日午前9時半~午後5時

 インターネット受付 https://uketsuke-form.jp/modules/uketsuke_si/

 2017年1月13日(金)

 

■介護事業者倒産、昨年は最多の108件 介護報酬の引き下げが影響

 2016年1~12月の介護事業者の倒産が108件に上り、過去最多だった2015年の年間倒産件数の76件を上回りました。信用調査会社の東京商工リサーチが11日、発表しました。

 介護分野への相次ぐ参入による競争激化のほか、事業者に支払われる介護報酬が2015年4月に2・27%引き下げられたことや、慢性的な人手不足による賃金の高騰が主な要因とみられます。全産業の倒産件数はバブル期以来の低水準で推移しており、小規模事業者を中心に経営が立ちゆかなくなっている介護事業の厳しい現状が浮かび上がりました。

 東京商工リサーチによると、介護事業者の倒産件数は2012年から増加傾向にあり、76件と介護保険制度が始まった2000年以来過去最多を記録していた2015年に続き、2年連続で過去最多を更新しました。

 108件の業種別内訳では、訪問介護が最多の48件。次いで、デイサービスを含む通所・短期入所介護38件、有料老人ホーム11件でした。規模別では、従業員が5人未満の小規模事業者が79件と、全体の約7割を占めました。

 また、新規参入5年以内の事業者が54件と、全体の半数を占めました。負債10億円以上の大型倒産も、特別養護老人ホームと有料老人ホームでそれぞれ1件ありました。その影響もあり、2016年の負債総額は94億600万円と、2015年の63億8600万円から大幅に増えました。

 東京商工リサーチの担当者は、「介護報酬の引き下げや深刻な人手不足が影響しているのではないか」と分析しています。

 2017年1月12日(木)

 

■角膜再生iPSを凍結保存し、自前の細胞バンク  大阪大学など2017年度にも設立

 目の角膜が傷付いた患者の治療法として、将来iPS細胞(人工多能性幹細胞)を使った再生医療が行われる場合に備え、大阪大学などの研究チームは、他人に移植しても拒絶反応が起きにくい特殊なiPS細胞からあらかじめ角膜の元になる細胞を作って凍結保存しておく「細胞バンク」を2017年度にも設立することを決めました。

 大阪大学大学院医学系研究科の西田幸二教授(眼科学)などの研究チームは、けがや病気で角膜が傷付いたり濁ったりした患者に、iPS細胞から作った角膜の組織を移植する再生医療の研究を進めています。

 京都大学が保管を進めている、他人に移植しても拒絶反応が起きにくい特殊なタイプのiPS細胞を使う計画ですが、移植する組織を作るのに半年近くかかることなど、将来的に一般医療として普及させるには課題がありました。

 そこで研究チームは企業と協力して、iPS細胞から角膜の元になる細胞を作り、凍結保存しておく自前の細胞バンクを設立することを決めました。あらかじめ遺伝子検査し、保存する細胞の品質も確かめるといいます。

 移植に使う組織を1カ月から2カ月ほどで作れるようになるほか、費用も抑えられる見込みで、医療機関から要請があった場合はそれぞれの患者に適した細胞を提供するということです。

 研究チームは、角膜の組織を移植する再生医療について、数年以内に臨床研究を行いたいとしています。

 西田教授は、「臨床研究で安全性と効果を確認するとともに、広く行われるようにするための環境整備も進めていきたい」と話しています。

 2017年1月12日(木

 

■運転認知症診断、実際の技能テストも必要 日本認知症学会などが提言

 日本認知症学会や日本老年医学会、日本神経学会など4学会は11日、3月施行の改正道路交通法で認知症かどうかの診断を受けることを求められる高齢ドライバーが増えるのを受け、医学的診断以外に運転能力を判断する基準づくりや、運転中止後の生活支援などを求める提言を公表しました。

 改正道路交通法では、運転免許更新時の検査で「認知症の恐れがある」と判定された75歳以上のドライバー全員に医師への受診が義務付けられ、認知症と診断されれば運転免許停止や取り消しとなります。ただ、医師の間には、診断が運転免許取り消しなどにつながることに、戸惑う声もあります。

 4学会の提言は6日付で、高齢者の事故防止策を検討している国のワーキングチームにも送られており、認知症の進行で運転リスクは増加するとしながら、初期の認知症の人や軽度認知障害の人と一般の高齢者の間では、運転行動の違いは必ずしも明らかではないと指摘。「運転不適格者かどうかの判断は、医学的な診断に基づくのではなく、実際の技能を実車テストなどで運転の専門家が判断する必要がある」としました。

 また、高齢者、特に認知症の人の尊厳を守り、運転中止後の本人や家族の生活の質を保証することが重要だとした上で、社会から孤立しないよう公共交通システムを整備し直すなどして、可能な限り強制的な手段ではなく、運転免許証の自主返納を促進する必要があるとしています。

 日本認知症学会の秋山治彦理事長は、「社会の高齢化が進む中、高齢者が運転をやめても生活の質を保てるような社会基盤づくりを、さまざまな分野の人が協力して、早期に進める必要がある」と話しています。

 2017年1月12日(木

 

■重い眼病「網膜色素変性症」、iPS細胞で再び光感知 世界で初めてマウスで成功 

 iPS細胞(人工多能性幹細胞)から作った目の網膜の組織を「網膜色素変性症」という重い目の病気のマウスに移植し、目で光を感じ取れるようにすることに世界で初めて成功したと、神戸市の理化学研究所のチームが発表しました。

 この研究を行ったのは、理化学研究所多細胞システム形成研究センターの万代道子副プロジェクトリーダーらのチームです。チームではiPS細胞から目の網膜の組織を作り出し、網膜色素変性症のため、光を感じ取れなくなったマウス21匹の目に移植しました。

 その結果、網膜組織の移植を受けたマウスのうち、およそ4割に当たる9匹が光を再び感じ取れるようになり、移植した網膜組織が光の刺激に反応して、脳につながる神経に信号を送っていることも確認できたということです。

 iPS細胞から作った網膜組織を使って、光を再び感じ取れるようにする効果が確認できたのは、世界で初めてだということです。

 網膜色素変性症は、日本人のおよそ3000人に1人の割合で起こるといわれ、患者は少なくとも約2万2000人。遺伝子の変異が原因で、一般的に幼年期から思春期ごろ両眼性に発症します。初期は、夜間や暗い場所での視力、視野が著しく衰え、目がよく見えなくなる夜盲、俗に呼ばれる鳥目が主です。進行はゆっくりですが、40~50歳ごろになると、視野狭窄(きょうさく)が顕著なため、竹の筒から外を見るような感じになり、一人で歩くことが困難になり、失明の原因にもなります。

 現段階では移植部分は網膜全体の5%未満で、「少し光がわかり、視野が少し広がる程度だと思う」と、万代副プロジェクトリーダーは説明。人のiPS細胞でも検証し、臨床研究を2年以内に申請したいとしており、「この網膜色素変性症で視野の真ん中しか見えなくなったような患者でも、iPS細胞の移植によって視野が開けるように研究を進めたい」と話しています。

 研究成果は、10日付でアメリカの科学誌「ステムセル・リポーツ」電子版に発表されました。

 2017年1月11日(水

 

■インフルエンザ、1月中旬に本格化する恐れ 直近の週の推定患者は42万5809人

 2017年に入り、インフルエンザの推定受診者数は増加がみられました。学校の冬季休暇が終了する1月中旬以降はさらに急増し、流行は本格化していくものと予想されます。今後ともインフルエンザの患者発生の推移には注意が必要です。

 薬局での調剤情報を集計することでインフルエンザ患者数を推計する調査である薬局サーベイランスによると、2017年1月2日〜8日の全国のインフルエンザ推定受診者数は42万5809人であり、前の週の推定受診者数の33万1971人よりも増加しました。

 1月9日の推定受診者数は休日の影響もあって3万2709人と少ないですが、全国の大半の学校で冬休みが終わる1月10日以降は患者数が急増し、流行は本格化していくものと予想されます。

 都道府県別では、人口1万人当たりの1週間の推定受診者数は、福井県、北海道、徳島県、秋田県、広島県、栃木県、岐阜県、大分県、静岡県、東京都、三重県、富山県、岡山県の順となっています。

 今シーズン累積の推定患者数は175万5373人で、日本の人口推計値1億2695万人(2016年11月1日現在)で換算すると、累積の罹患率は1・38%となります。

 累積の罹患率の年齢群別では、10〜14歳(3・72%)、5〜9歳(3・52%)、15〜19歳(2・72%)、0〜4歳(2・36%)、20〜29歳(1・75%)、30〜39歳(1・45%)、40〜49歳(1・27%)、50〜59歳(1・10%)の順となっています。

 冬休みの影響によって1月2日〜8日の週は5〜14歳の年齢群の割合が低下していますが、学校などの再開によって今後は急増していくものと予想されます。

 国立感染症研究所によると、今シーズンのこれまでのインフルエンザ患者由来検体から検出されたインフルエンザウイルスは、AH3(A香港)亜型が89・3%と大半を占めており、次いでAH1pdm09が7・8%、B型が2・9%の順となっています。

 2017年1月11日(水

 

■梅毒患者が4000人を超える、昨年度 5年で5倍に増加

 性感染症の梅毒と診断された患者数が昨年は4000人を超え、約40年前の1974年と同水準になったことが、国立感染症研究所のまとめで明らかになりました。

 2011年と比べ、患者数は5倍に増えました。妊婦を通じ胎児が感染すると死産などを起こす恐れがあり、専門家は注意を呼び掛けています。

 国立感染症研究所によると、昨年11月27日までの患者数は4077人で、1974年の4165人に迫りました。年間の集計では、1974年を上回る見込み。

 男性が2848人、女性が1229人で、男性は各年齢層から偏り少なく報告されているのに対して、女性は20歳代が半数を占めました。都道府県別でみると、東京都、大阪府、神奈川県、愛知県、埼玉県、兵庫県など都市部で多くなっています。

 梅毒は、戦後間もない1940年代後半に患者が20万人を超えていましたが、抗菌薬治療の普及で激減。再流行した1967年の約1万2000人をピークに減少を続け、一時は500人を切りました。しかし、2011年以降、再び増加。

 男性の同性間の性的接触による感染だけでなく、近年は異性間での感染も広がり、患者の増加に拍車がかかっているとみられますが、国立感染症研究所は「増加のはっきりした要因はわからない」としています。

 梅毒は、梅毒トレポネーマという病原菌により、ゆっくり進行する感染症です。感染して3週間ほどで梅毒トレポネーマが体に入った部分に小豆、または指先ほどの大きさの硬いしこりが生じますが、自然と消えるので気付かないこともあります。感染して3カ月をすぎたころより、皮膚や粘膜に発疹(はっしん)症状が出ます。

 治療はペニシリン系の抗菌薬を4週間から8週間、血液による抗体検査で体内の菌が消滅したことを確認できるまで服用することが重要。発疹などの症状を放置して重症化すると、脳や心臓に重い合併症を起こす危険があります。また、梅毒に感染した妊婦から胎盤を通じて胎児が感染すると先天性梅毒を生じ、流産や死産の原因になるだけでなく、学童期に難聴、リンパ節や肝臓のはれといった重い症状も起こります。

 日本性感染症学会の荒川創一理事長は、「不特定多数との性接触を避け、妊娠の可能性のある女性は必ず妊婦健診を受けてほしい」と話しています。

 2017年1月11日(水

 

■デング熱の海外感染、昨年330人で過去最多 東南アジアでの感染が7割超

 ネッタイシマカ、ヒトスジシマカなどの蚊が媒介するデング熱に海外で感染した2016年12月18日時点での患者報告数が330人に上り、1999年の調査開始以降、最多となったことが国立感染症研究所の集計で明らかになりました。

 インドネシアやタイなど日本人観光客が多い東南アジア地域での感染が目立ち、国立感染症研究所が渡航者へ注意を呼び掛けています。

 国内にはデング熱のウイルスは常在しておらず、海外で感染して帰国後、発症するケースがほとんどです。しかし、2014年8月下旬には、およそ70年ぶりに日本人女性が国内感染でデング熱を発症したのを皮切りに流行し、10月初旬には155人が発症しました。

 国立感染症研究所の集計によると、海外でのデング熱への感染が疑われる患者報告数は年々増加傾向にあり、統計を取り始めた1999年の患者報告数は9人でしたが、近年は年間200人ほど報告され、2016年は過去最多を記録した2015年の報告数292人を大きく上回りました。

 報告数が増加した背景について、国立感染症研究所感染症疫学センターの大石和徳センター長は、「海外旅行者の増加に加え、国内での流行を経験して認知が高まり、多くの医療機関で検査ができるようになったことなどが考えられる」と説明しています。

 2016年1~11月までの報告数を地域別に分類したところ、インドネシア109人、フィリピン59人、ベトナム27人、タイ24人、マレーシア16人、シンガポール6人の東南アジアの6カ国で全体の74%を占めました。

 デング熱はヒトスジシマカなどの蚊がウイルスを媒介する感染症で、発症すると38度を超える高熱や激しい頭痛などを引き起こします。特効薬はなく、粘膜や消化管から出血するなど重症化すれば死亡する恐れもあります。

 大石センター長は、「渡航先でも長袖(ながそで)や虫よけ剤の活用などを心掛け、急な発熱時には早期に医療機関を受診してもらいたい」と注意を呼び掛けています。

 2017年1月11日(水

 

■アトピー性皮膚炎、かゆみを起こすタンパク質を特定 九州大学が発表

 アトピー性皮膚炎のかゆみを引き起こす源となるタンパク質を、九州大学生体防御医学研究所の研究チームがマウス実験で突き止め、9日付のイギリスの科学誌「ネイチャー・コミュニケーションズ」電子版に発表しました。

 研究チームは、「将来、かゆみを根本から断つ治療薬の実現も期待できる」としています。

 従来の研究で、かゆみを直接引き起こすのはリンパ球の一種から分泌される「IL(インターロイキン)31」というタンパク質で、アトピー性皮膚炎患者の血中では健常者と比べて10倍以上多いことが知られていました。血中の免疫細胞が刺激されると大量に生じますが、その詳しい仕組みは解明されていませんでした。

 研究チームは今回、皮膚炎を発症したマウスと健常なマウスで、免疫細胞のタンパク質を詳しく解析。皮膚炎を患うマウスでは、タンパク質「EPAS(イーパス)1」の量が5~10倍でした。

 EPAS1を健常なマウスの免疫細胞に注入してみると、IL―31が増えました。逆に、皮膚炎のあるマウスを遺伝子操作してEPAS1を抑制すると、IL―31も減りました。アトピー性皮膚炎患者の免疫細胞を培養して行った実験でも、同様の結果だったといいます。

 こうした解析や実験により、EPAS1がIL―31の増減を左右し、かゆみを引き起こす源となっている、とチームは結論付けました。

 研究チームの福井宣規(よしのり)教授(免疫遺伝学)は、「これまでは対症療法しかなかったが、EPAS1をつくらせないような薬剤を開発し、新しい治療法の選択肢を示したい」としています。

 アトピー性皮膚炎は現在、国民の1割前後が患っているといわれていますが、厚生労働省が3年に1度行っている調査によると、2014年度に医療機関を受診した患者数は過去最高の45万人に上り、約30年前に比べて2倍にまで増えています。

 2017年1月10日(火

 

■週末だけの運動、毎日の運動並みの健康効果も 6万4000人を対象に調査

 主に週末に運動をする人は、毎日規則的に運動している人と同程度の大きな健康・寿命延伸効果が得られる可能性があるとの研究論文が9日、アメリカの医学誌「JAMAインターナル・メディシン」に発表されました。

 運動の専門家らは現在、1週間につき150分間の適度な運動、または75分間の激しい運動を推奨しています。しかし、運動を毎日行うべきなのか、それとも短期間にまとめて行ってよいのかという頻度については、これまで意見の一致に至っていませんでした。

 今回発表された研究結果は、しばしば「週末戦士」と称され、1週間の1日か2日の短期間に運動をまとめて行う人の死亡リスク低下の度合いが、1週間に3日以上運動を行っている人とほぼ同程度である可能性を示したものです。

 研究では、イギリスの運動に関する調査の約6万4000人分の回答を分析。運動について「全くしない」「不十分」「週末戦士」「規則的」の4つのグループに回答者を分類したところ、内訳は「全くしない」グループが最も多い63%近くに上り、「不十分」は22%、「週末戦士」は3・7%、「規則的」グループは11%となりました。

 うち40歳以上の回答者を対象に、平均9年間の追跡調査を実施したところ、運動をすると回答した3グループでは、運動を「全くしない」グループに比べてはるかによい結果がみられました。

 「週末戦士」グループの死亡リスクは、「全くしない」グループよりも約30%低いことが明らかになりました。心血管系では40%、がんでは18%のリスクの低減がみられました。

 運動量が推奨水準に達していない「不十分」グループと、週に3日以上運動する「規則的」グループでも同様の効果が認められ、全死因リスクは「全くしない」グループに比べて、「不十分」グループが31%、「規則的」グループが35%低くなりました。

 研究論文の主執筆者で、オーストラリアのシドニー大学のエマニュエル・スタマタキス准教授は、「何らかの運動はしているが、運動量が推奨される水準に満たない人々の間でさえも、体を動かす機会を1週間に1回か2回だけ持つことが、死亡リスクの低下に関連するというのは、非常に励みになる知らせだ」とコメント。その一方で、「運動から最善の健康効果を得るためには、身体活動量の推奨水準を満たすか超過することが常に望まれる」と付け加えています。

 研究論文によると、「週末戦士」は男性であるケースが多く、毎週平均300分の運動を1日か2日で行っている傾向がみられました。運動をすると回答した人々が行っている運動の種類には、ガーデニング、ウォーキング、サイクリング、ランニング、団体で行うスポーツなどが含まれていました。

 運動の専門家らによると、運動はコレステロールの低下、体重増加の抑制、睡眠パターンの向上、心疾患、がん、糖尿病などのリスク低下などをもたらすことで、健康を促進するといいます。 

 2017年1月10日(火

 

■子宮移植、慶応大学が国内初の申請へ 3年間で5人に臨床研究

 病気などで子宮がない女性に、妊娠と出産を目的に第三者の子宮を移植する子宮移植の臨床研究を、慶応大学の研究チームが2017年内に学内の倫理委員会に申請する方針であることが9日、明らかになりました。

 海外ではスウェーデンで出産例もありますが、国内で実施されれば初めてのケースになります。

 子宮移植は新生児をもうけることが目的で、心臓や肝臓の移植のように本人の生命維持のためではありません。

 このため、倫理委員会や関連する日本産科婦人科学会、日本移植学会の承認を得て、先天的に膣(ちつ)全部が欠損し、機能性子宮を持たない「ロキタンスキー症候群」という病気の女性を対象に、3年間で5人に移植する計画。

 子宮は、母親や姉妹など親族から提供を受けます。移植を受けた女性は、体外受精させた受精卵を子宮に入れることで妊娠と出産が期待できます。

 将来は、子宮頸(けい)がんなどで子宮を失った人も対象になる可能性があります。

 慶応大学は、第三者の子宮を移植する研究を続けており、2013年にはサルで移植と出産に成功し、2014年には「子宮提供者の自発的な意思決定や安全を確保する」などとした指針を策定するなど、実施に向けた準備を進めていました。

 ただし、健康な提供者にリスクを伴う子宮摘出手術を受けてもらうという倫理的問題があるのに加え、安全な妊娠が成立するか、新生児にどのような影響があるか不明な点も多く、倫理委員会に申請が出されたとしても、承認までには曲折が予想されます。

 2017年1月9日(月)

 

■約600駅への新型点字ブロック設置が完了へ JR東日本、西日本、東海

 JR東日本、西日本、東海のJR3社の1日1万人以上が利用する計約600駅における、国が視覚障害者の転落防止策としてホームへの設置を求めていた新型の点字ブロックの設置が、2018年度末までに完了することが明らかになりました。

 600駅は、JR3社の全駅の2割近くに相当します。多額の費用がかかるホームドアの設置が進まない中、各社は「目の不自由な人の転落事故が相次ぎ、さらなる対策が必要」などと設置を加速させています。

 設置が進むのは「内方線付き点状ブロック」で、従来の点字ブロックのホーム内側に、線路と平行になる線状の突起が1本付いています。視覚障害者がホームの方向がわからなくなった際、 白杖(はくじょう)や足で触れることで、ホーム内側の安全な方向を確認できます。

 通常の点字ブロックと比べて転落防止の効果が高く、2011年1月に東京都のJR目白駅で視覚障がい者の男性が誤ってホームから転落し、電車にはねられて死亡した事故を切っ掛けに、国土交通省が8月、鉄道事業者に対し、1日の乗降10万人以上の駅にホームドアの設置を求める一方、利用が比較的多い1日の乗降1万人以上の駅には、内方線付き点状ブロックを5年以内をめどに整備するよう要請していました。

 2017年1月9日(月)

 

■うつ病による病気休暇、復帰後2年で約4割が再取得 厚労省研究班が35社を調査

 うつ病になって病気休暇を取った大企業の社員の約4割が、復帰後2年以内で再発し、病気休暇を再取得していたとする調査結果を、厚生労働省の研究班(代表者、横山和仁・順天堂大教授)がまとめました。

 約半数は、復帰後5年以内で再取得していました。仕事への精神的な負担が大きな職場ほど再取得のリスクが高いことも、裏付けられました。専門家は社員の職場復帰について、企業が慎重に取り組むよう訴えています。

 調査は、社員1000人以上の大企業など35社を対象に、2002年4月からの6年間にうつ病と診断され、病気休暇を取得した後に復帰した社員540人の経過を調べました。その結果、うつ病を再発して病気休暇を再取得した人の割合は、復帰から1年で全体の28・3%、2年で37・7%と高く、5年以内で47・1%に達していました。

 職場環境について、仕事への精神的な負担を調べる検査「ストレスチェック」を職場メンバーに実施した結果、負担が大きいと感じる人の多い職場ではそうでない職場に比べ、病気休暇の再取得のリスクが約1・5倍高くなりました。

 病気休暇の期間では、1回目の平均107日に対し、2回目は同157日と1・47倍に長くなっていました。1回目の病気休暇の期間が長い場合や、入社歴が高くなるほど、2回目の病気休暇の期間が長くなる傾向もみられました。

 調査した東京女子医大の遠藤源樹助教(公衆衛生学)は、「うつ病は元々再発しやすい。企業は、病気休暇の再取得が多い復帰後2年間は、特に注意を払い、時短勤務などを取り入れながら、再発防止に努めてほしい」と指摘しています。

 2017年1月8日(日)

 

■脳血流の変化に連動して、手指動作をリハビリ 九州大学が小型ロボットを開発

 九州大学医学部、工学部などの共同研究チームは、脳の血流の変化を測定する検査装置と手指の繊細な動作を支援するリハビリテーション機器を連動させ、脳卒中患者の手指のまひを改善する小型リハビリテーションロボットの開発を進めています。1月中に患者を対象にした本格的な臨床試験を開始し、いっそうの精度の向上や装置の小型・軽量化を図った上で、2019年にも製品化したい考えです。

 研究チームは、体を動かす命令を出した際に脳に生じる血流の変化が、脳卒中まひで体を動かせない患者でも起きることに着目。頭に装着するだけで脳内のヘモグロビン量を測定できる簡便な検査装置を用い、独自に開発した手指動作リハビリテーション機器をコンピューターで連動して動かすシステムを考案しました。

 脚のリハビリテーションに比べて手は関節の動きが複雑で、より繊細な動きが求められることから再現が難しく、脳の動きと連動した手のリハビリテーションロボットの開発は世界的に遅れています。

 研究チームが開発した手指動作リハビリテーション機器は、1本の指に対して長さの異なる複数のバネを使い、バネが前後にスライドして関節ごとに滑らかに曲がります。ネジを使用しておらず、約170グラムと軽いのが特長。「Smooth(滑らかな)」と「Move(動く)」、「Improve(改善する)」の英語を組み合わせ、「SMOVE(スムーブ)」と命名しました。

 試作器を用いて40~70歳代の脳卒中患者に手を握るイメージをしてもらった実験では、24人中18人で脳血流の変化をとらえ、約8割の確率で手を握るイメージに合わせてスムーブが作動しました。1月中に始める臨床試験では、患者約20人を対象に約2カ月間、週1、2回使用してもらい、実際にどの程度リハビリテーション効果があるのかを調べます。

 その後も改良を進めながら臨床試験を重ね、スムーブを使うグループと使わないグループでリハビリ効果の違いを比べるなどして実用化を目指すといいます。患者が自宅で手軽に行えるよう、スイスのチューリヒ工科大学と提携して装置の小型・軽量化、低消費電力化の研究も進めています。

 厚生労働省の2014年の調査によると、脳卒中患者は国内だけで約120万人に上ります。死者は年11万人に上り、死因第4位の国民病。

 九州大学脳神経外科の迎(むかえ)伸孝助教は、「脳からの指令と連動してまひした手指を動かすことで、重度の患者でも効果的なリハビリが期待できる。海外での普及も視野に開発を進めたい」と話しています。

 2017年1月8日(日)

 

■ピーナツアレルギー、生後4~6カ月で摂取し予防 アメリカ国立保健研究所が指針

 アメリカの国立保健研究所(NIH)は5日、ピーナツアレルギーを防ぐため、医師に相談した上で生後4~6カ月からピーナツを含む食品を食べさせたほうがよいとする指針を発表しました。

 指針によると、強い卵アレルギーや皮膚炎がある乳児には、医療機関で検査を受けて問題がなければ、生後4~6カ月にピーナツ成分を含む食品を与え始めます。軽い皮膚炎のある乳児には、生後6カ月ごろから与え、特にアレルギー体質でない乳児は自由に食べてよいとしました。

 イギリスやアメリカの国際研究チームが2015年に発表したアレルギー体質の乳児600人以上を対象にした調査で、ピーナツを含む食品を早めに食べさせて慣らすことで5歳時での発症が約8割抑えられることを示し、今回の指針の策定につながりました。

 アメリカでは小児科学会が2000年に出した指針で、食物アレルギーの恐れが高い乳児は3歳までピーナツなどを避けるよう勧めていましたが、その後研究が進み、指針は2008年に撤回されていました。

 日本でも国立成育医療研究センターが昨年12月、アトピー性皮膚炎の乳児に6カ月から硬くゆでた卵の粉末をごく少量ずつ食べさせると、1歳になった時には卵アレルギーの発症を約8割減らせたとの研究結果を発表し、アレルギーの原因となり得る食品でも、早期からの摂取で発症予防につながる可能性を示しました。

 2017年1月7日(土)

 

■厚労省、医療や介護の全情報集約へ ビッグデータ活用し予防法など分析

 厚生労働省は6日、国内で実施する健康診断を始めとして医療や介護の全情報を集約した「保健医療データプラットフォーム」を創設する方向で検討に入りました。集めた情報をビッグデータとして活用して、病気の最適な予防法などを分析し、医療や介護の質を向上させ効率化も図る狙いです。

 2020年度の本格稼働を目指し、来週にも省内に「データヘルス改革推進本部」(本部長・塩崎恭久厚労相)を設置します。

 個人の医療や介護の情報は現在、その時々に受診した診療報酬明細書(レセプト)の審査機関である社会保険診療報酬支払基金などを通じて、厚労省内で別々に管理しています。

 新しい仕組みでは、健康診断を受けた時期や結果に加え、その後、病気にかかって受けた治療や、介護状態になって受けたケアの情報を追跡してまとめます。個人を特定できないよう匿名化して蓄積し、社会保険診療報酬支払基金などが分析します。情報を民間に提供して研究に生かしてもらうことも検討し、電子カルテのデータベース化なども進めていきます。

 厚労省は、過剰な医療の見直しや効果的な介護予防に生かすことで社会保障費の抑制を見込んでいますが、個人情報の保護やデータベースを連結する仕組みの開発など多くの課題もあります。

 データヘルス改革推進本部は、こうした課題への対応も議論し、夏までに中間報告をまとめる予定。

 2017年1月7日(土)

 

■全国のインフルエンザ患者、1週間で推計51万人に 前週の28万人からほぼ倍増

 国立感染症研究所によりますと、昨年12月19~25日までの直近の1週間に、全国の医療機関を受診したインフルエンザ患者は推計でおよそ51万人でした。前の週の28万人からほぼ倍増しています。

 年齢別では、10~14歳がおよそ8万人で最も多く、5~9歳がおよそ7万人、40歳代がおよそ6万人と続き、15~19歳、20歳代、30歳代がそれぞれおよそ5万人、0~4歳、50歳代、70歳以上がそれぞれおよそ4万人、60歳代がおよそ3万人となっています。

 全国約5000カ所の定点医療機関の患者数は、1カ所当たり8・38人(前週5・02人)に上り、注意報レベルの「10人」に迫っています。

 都道府県別で、定点医療機関1カ所当たりの患者の数が多かったのは、富山県(14・31人)、群馬県(14・09人)、秋田県(13・76人)、埼玉県(13・37人)、福井県(12・97人)、北海道(12・22人)、栃木県(12・00人)、福島県(11・40人)、神奈川県(11・01人)、東京都(10・58人)、茨城県(10・08人)の順となっています。45都道府県で前週の患者報告数よりも増加がみられましたが、2県では前週の患者報告数よりも減少がみられました。

 全国で警報レベルの30人を超えている保健所地域は4カ所(1道1県)で、注意報レベルの10人を超えている保健所地域は149カ所(1都1道1府30県)でした。

 国内のインフルエンザウイルスの検出状況をみると、12月25日までの直近の5週間ではAH3亜型の検出割合が最も多く、次いでB型、AH1pdm09の順でした。

 国立感染症研究所は、マスクの着用や手洗いなどの感染予防を呼び掛けています。

 2017年1月6日(金)

 

■有効成分が足りない強壮剤を販売 ロート製薬子会社に業務停止命令

 有効成分の分量を偽って医薬品の強壮剤を製造、販売したなどとして、兵庫県は5日、医薬品医療機器法(旧薬事法)に基づき、ロート製薬の子会社である製薬会社「摩耶堂(まやどう)製薬」(神戸市西区)に1月6日から22日までの17日間の業務停止命令を出しました。

 健康被害は出ていないといい、摩耶堂製薬は販売した約19万3000箱をすでに自主回収しました。

 兵庫県の発表によると、強壮剤は摩耶堂製薬の主力製品で、男性の更年期障害の改善などに効果があるとうたった糖衣錠「金蛇精」とカプセル「マヤ金蛇精」。マムシの肉と骨を乾燥させて製品に配合した「ハンピ」の成分が、国の認めた分量よりそれぞれ40%、25%少なく、県による5年に1度の立ち入り調査の際は、正しい量を記した虚偽の製造記録などを示し、事実を隠ぺいしていたといいます。

 10年以上前から同様の製造方法を続けていたとみられます。

 摩耶堂製薬は、2015年10月に経営難から大手製薬会社のロート製薬の子会社となりました。新経営陣の下で製造工程などを点検する過程で不正が判明し、昨年2月、兵庫県に自己申告しました。

 糖衣錠「金蛇精」は正しい有効成分量に変えて販売し、カプセル「マヤ金蛇精」は販売をやめたといいます。

 2017年1月6日(金)

 

■死んだ脳細胞を再生するiSC細胞を発見 兵庫医科大学、定説覆す

 兵庫医科大学(兵庫県西宮市)の研究チームが、脳梗塞(こうそく)の組織の中に神経細胞を作る細胞があることを発見し、それを採取、培養して移植することで、脳梗塞で死んでしまった脳細胞を再生させる研究を開始しました。

 死んだ神経細胞は再生しないという定説を覆す発見で、研究チームは「今後2年余りで、臨床試験の前段階まで持っていきたい」と話しています。

 脳梗塞は脳の血管が詰まり、脳の神経細胞が死んでしまう病気で、後遺症が出ることも多くなっています。その脳梗塞の組織の中に神経細胞を作る細胞があることを、兵庫医科大学先端医学研究所の松山知弘教授、中込隆之准教授らが2009年、マウスの実験で発見。2015年には、脳の血管の周囲の細胞が脳の一大事を受け、神経細胞などに変化できる「多能性」を獲得していることが明らかになりました。

 体のさまざまな細胞を作れる多能性幹細胞といえばiPS細胞が有名で、それに比べると発見された細胞は多能性が低いと考えられますが、体内で自然に生まれます。研究チームは重症の脳梗塞を起こした人の脳でも存在を確認し、「iSC細胞(虚血誘導性多能性幹細胞)」と名付けました。

 このiSC細胞の移植によって脳の再生も期待できることから、すでに培養したマウスのiSC細胞をマウスの脳に移植し、ある程度、正常に機能している状態を確認。さらに昨年11月、日本医療研究開発機構(AMED)の支援を受けて始めた研究では、人のiSC細胞をマウスに移植した場合の効果を確かめます。マウスで効果があれば、人への応用の可能性も開けるといいます。

 中込准教授は、「iSC細胞はもともと体内で作られるもので、移植しても、がんなどの危険性は低い」と話しています。研究責任者で、脳神経外科の高木俊範助教は、「脳梗塞の脳には再生させようとする働きがある。そのメカニズムを生かした治療につなげたい」と話しています。

 2017年1月6日(金)

 

■乳酸菌200億個入りのカップめんが登場 明星食品が全国で新発売

 明星食品(東京都渋谷区)は1月16日から、タテ型カップめん「明星 いまどき菌活(きんかつ)らーめん ヨーグルトカレー味」「明星 いまどき菌活らーめん ヨーグルトトマト味」を全国で新発売します。希望小売価格は各税抜き180円で、内容量は各77グラム(めん60グラム)。

  若い女性を中心に、ヨーグルトなどの発酵食品やきのこなどを積極的に摂取する「菌活」が話題になり、乳酸菌を配合した菓子や加工食品が発売され、注目を集めている折、カロリーオフ、糖質オフなどとは異なり、話題の素材をプラスするオン発想の新しい切り口の新商品が、いまどき菌活らーめんです。

 いまどき菌活らーめんは、仕込み時に乳酸菌をスナックタイプのめんに100億個、スープに100億個で合計200億個を配合。乳酸菌にはフェカリス菌「EC-12」を採用してます。

 ヨーグルトカレー味は、ビーフエキスをベースにスパイスを効かせ、ヨーグルトでクリーミーに仕上げたカレースープが特徴。加薬にヨーグルト風味キューブ、ダイス肉、キャベツ、タマゴ、赤ピーマン、ネギを組み合わせています。

 ヨーグルトトマト味は、チキンとポークのうまみをベースにトマトを加え、ヨーグルトでクリーミーに仕上げたトマトスープが特徴。加薬にヨーグルト風味キューブ、ダイス肉、トマト、タマゴ、ネギを組み合わせています。

 ラーメンのおいしさはそのままに、話題の菌活もできる一石二鳥の新商品を店頭で見掛けたら、試してみてはいかがでしょうか。

 本件に関するお問い合わせは、明星食品株式会社 お客様サービス室 TEL0120-585-328へ。

 2017年1月6日(金)

 

■75歳以上から高齢者、65〜74歳は准高齢者 老年学会が定義見直しを提言

 日本老年学会などは5日、現在は65歳以上と定義されている「高齢者」を75歳以上に見直すよう求める国などへの提言を、東京都内で発表しました。医療の進歩や生活環境の改善により、現代人は10~20年前と比較して、体の働きや知的能力が5~10歳は若返っていると判断しました。

 日本老年学会は、高齢者の定義について医師や大学教授などのグループで見直しを進めてきており、高齢者とする年齢を体力的な面などからも75歳以上に引き上げるべきだとする提言の発表に至りました。

 今回の提言では、現在は高齢者とされている65歳から74歳までの人たちについては、活発に活動できる人が多数を占め、社会一般の意識としても高齢者とすることに否定的な意見が強いとして、新たに「准高齢者」と位置付け、健康な間は仕事を続けたり、経験を生かしてボランティアに参加するといった活動ができるよう後押しし、「社会の支え手」としてとらえ直すべきだとしています。

 その一方で、提言を年金の支給年齢の引き上げなど、今の社会保障の枠組みに直接結び付けることには、慎重な態度を示しました。また、平均寿命を超える90歳以上は、「超高齢者」と位置付けました。

 日本老年学会のワーキンググループの座長を務める大内尉義(やすよし)医師は、「この20年ほどで老化のスピードが遅くなり、今、高齢者と呼ばれる人は生物学的に5歳から10歳ほど若返っているとみられる。若い労働者が減る中、現在、高齢者とされている人たちの意識を変えて、社会を支える側に回ってもらう必要があるのではないか」と話しています。

 総務省などによりますと、高齢者の年齢に法律上の定義はありません。1956年に国連の報告書が当時の欧米の平均寿命などをもとに、65歳以上を高齢と表現したことを受けて、日本でも事実上、65歳以上の人を高齢者と位置付けてきました。1956年当時、日本人の平均寿命は男性が63・59歳、女性が67・54歳でしたが、その後、食生活の改善や医療の進歩などで延び続け、2015年には、男性が80・79歳、女性が87・05歳となりました。

 また、介護の必要がなく、健康的に生活できる「健康寿命」も、2013年の時点の推計で、男性が平均で71・19歳、女性が74・21歳で、いずれも70歳を上回りました。

 こうした中、2016年に厚生労働省が行った意識調査で、「自身について何歳から高齢者になると思うか」を尋ねたところ、全体で最も多かったのが70歳以上という回答で41%、次いで現在と同じ65歳以上が20%、75歳以上が16%などとなりました。

 また、2013年に内閣府が60歳以上の男女を対象に行った意識調査で、「何歳ごろまで仕事をしたいか」を尋ねたところ、「働けるうちはいつまでも働きたい」という回答が30%と最も多く、次いで「70歳くらいまで」が24%で、「65歳くらいまで」は21%でした。65歳を超えて働きたいという人は合わせて66%となり、3人に2人の割合でした。

 高齢者の健康と生活支援に詳しい国立長寿医療研究センターの鳥羽研二理事長は、「海外では定年がない国もあり、高齢者の社会貢献の促進が進められているが、日本はそうした施策が遅れている。企業も高齢とされている人たちが、知識や技術を社会で生かせるよう、積極的に取り組んでいくことが期待される」と話しています。

 2016年9月の総務省の推計によると、65歳以上は約3400万人で人口の約27%。高齢者を75歳以上とした場合は、約13%に半減する格好です。

 2017年1月5日(木)

 

■高齢者の薬による副作用を防止する手引書を作成 日本老年医学会など

 高齢者の中には複数の薬を日常的に飲んでいる人が少なからずおり、薬の副作用とみられる症状を起こす人が後を絶たないことから、日本老年医学会などが注意点をまとめた手引書を作成しました。

 この「高齢者が気を付けたい多すぎる薬と副作用」と題した手引書を作成したのは、日本老年医学会と日本医療研究開発機構のグループです。それによりますと、75歳以上の高齢者のおよそ4人に1人が7種類以上の薬を飲んでいますが、高齢者は若い人に比べ薬が体内にとどまりやすいため薬が6種類以上になると副作用を起こす人が増えるということです。

 副作用で多いのはふらつきや転倒で、転倒による骨折を切っ掛けにして寝たきりになって、認知症を発症したりする恐れがあると指摘しています。

 こうしたリスクを下げるために手引書では、まず自己判断で薬を中断しないこと、かかりつけの医師に薬の量や数について相談し優先順位をつけることなどを呼び掛けた上で、不眠症やうつ病の薬など17タイプの薬をふらつきや転倒を起こしやすく、特に注意が必要な薬として挙げています。

 手引書を作成した東京大学病院老年病科の秋下雅弘教授は、「高齢者ほど気を付けなくてはいけない薬が多い。かかりつけの医師と相談し、自分に合った薬物療法を見付けてほしい」と話しています。

 この手引き書はインターネット上でも見ることができます。URLはhttp://www.jpn-geriat-soc.or.jp/info/topics/pdf/20161117_01_01.pdf。

 2017年1月5日(木)

 

■女性医師が担当の入院患者、死亡率と再入院率より低い アメリカで内科調査

 医療施設での治療で女性の内科医が担当した入院患者は、男性の内科医が担当した入院患者よりも死亡率が低く、再入院の割合も低いというアメリカでの分析結果を、ハーバード大学THチャン公衆衛生大学院の津川友介研究員(医療政策学)らがまとめました。

 男女の医師の診察方法の違いを調べることで、医療の質向上につながると期待されます。アメリカの医師会雑誌「JAMAインターナル・メディシン」に発表しました。

 2011年から2014年にアメリカで医療施設に入院した65歳以上の患者約150万人分の診療記録などを使い、男女の医師で患者の経過に違いがあるかを調査。約5万8000人の内科医が対象となりました。

 女性の医師が担当して診た患者が入院から30日以内に亡くなった割合は11・07%でしたが、男性の医師の場合は11・49%でした。男性の医師が担当した患者の死亡率が女性の医師の患者並みに下がれば、アメリカの65歳以上の高齢者を含むメディケア(高齢者・障害者向け医療保険制度)対象者だけでも、死亡数を年間約3万2000人減らせるといいます。

 退院後30日以内に再入院する割合も、男性の医師が担当した患者の場合は15・6%だったのに対して、女性の医師のほうの患者は15・0%と低くなりました。

 女性の医師の場合は、診療ガイドライン(指針)により詳細に沿うなど慎重に治療している傾向があること、さらにはより患者中心のコミュニケーションを図っていることなどが、分析結果に影響したと見なされています。

 橋本英樹・東京大学教授(保健社会行動学)は、「アメリカで医師の性別でなぜ差が出たのか、調べる必要がある。日本でも同様の分析を試みる価値はある」と話しています。

 2017年1月5日(木)

 

■重度肝硬変に回復の道の可能性 大阪大学病院などが新薬治験へ

 C型肝炎の進行で肝臓の機能が著しく低下し、肝移植以外に治療法がない重度の肝硬変患者を対象とした国内初の治療薬「ソバルディ」(一般名:ソホスブビル)の臨床試験(治験)が今月、大阪大学病院などで始まります。欧米ではすでに承認されており、日本で治る見込みがないとされた患者に回復の道を開く可能性があります。2018年の製造販売承認を目指しています。

 C型肝炎による重度の肝硬変は、非代償性肝硬変と呼ばれ、肝臓が炎症を繰り返して硬くなり、本来備わっている再生能力を失った状態に陥る病気です。腹水、黄疸(おうだん)、脳症などを生じて意識障害が出るため生活に支障を来し、肝がんにもなりやすくなります。患者は国内に2万人とも推計されており、1年以内に約2割が死亡し、3年以内に半数が命を落とすとされます。

 C型肝炎の治療は現在、飲み薬が主流ですが、肝硬変に進行すると軽度な患者にしか処方が認められていません。

 今回の治験はギリアド・サイエンシズ社(本社・アメリカ合衆国カリフォルニア州フォスターシティ)が実施。各地の肝臓病の専門医療機関で、腹水などの症状がある重症患者約100人にウイルスの増殖を妨げる経口タイプの新薬「ソバルディ」を処方。12週間服用し、ウイルスが除去できるかなどを調べます。

 B型肝炎ウイルス感染による重い肝硬変患者には、同様の作用を持つ別の経口薬が使われていますが、ウイルスを消すことで生存期間が延びた事例が多数確認されています。

 主任研究者の竹原徹郎・大阪大学教授は、「個人差はあるだろうが、C型肝炎が進んだ肝硬変でも、薬の治療で肝臓がよみがえる患者が出てくるのではないか」と話しています。

 患者からは、国内でも治験実施を望む声が上がっていました。米沢敦子・東京肝臓友の会事務局長は、「死を恐れながら苦しんでいる患者たちのためにも、一刻も早く薬が使えるようにしてほしい」と求めています。

 2017年1月5日(木)

 

■長期喫煙が原因の慢性閉塞性肺疾患、認知度の低下続く 啓発団体が対応を呼び掛け

 たばこ病ともいわれて、長期の喫煙などにより肺に慢性的な炎症ができる慢性閉塞(へいそく)性肺疾患(COPD)の認知度が下がり続けており、病気の知識の普及に取り組む啓発団体が早急な対応を呼び掛けています。

 禁煙で予防でき、認知度を上げれば発症者を減らせるとして、厚生労働省は2012年に慢性閉塞性肺疾患の認知度80%を目標に掲げて対策に乗り出しましたが、2016年12月時点での認知度は25・0%と3年連続で低下しました。

 慢性閉塞性肺疾患の知識の普及に取り組んでいる世界的ネットワークの日本法人、一般社団法人「GOLD日本委員会」(代表理事・長瀬隆英東京大教授)が毎年12月に、インターネットで男女1万人を対象に調査を実施。慢性閉塞性肺疾患について「どんな病気か知っている」か「名前は聞いたことがある」と回答した人の割合を合計して、認知度としています。

 その認知度は2011年に25・2%でしたが、厚労省が2012年に国民的な健康作り運動「健康日本21(第2次)」で、がん、循環器疾患、糖尿病に次ぐ第4の生活習慣病に位置づけ、啓発に取り組んだことなどから、2013年には30・5%まで向上しました。

 しかし、その後は年々低下し、2016年には「どんな病気か知っている」と回答した人は9・0%、「名前は聞いたことがある」と回答した人は16・0%の計25・0%にとどまりました。2022年までに80%に向上させるとしている健康日本21の目標には、遠く及びません。

 慢性閉塞性肺疾患は、せきやたん、息切れなどが主な症状で、徐々に呼吸障害が進行し重症化します。通常の呼吸では十分な酸素を得られなくなると、呼吸チューブとボンベの酸素吸入療法なしには日常生活が送れなくなってしまいます。人口動態統計によると、2015年には1万5749人が死亡しており、日本人の死亡原因の第10位になっています。

 原因の約9割は長期の喫煙で、喫煙者の約2割が発症するとされます。また、副流煙による受動喫煙により、非喫煙者も発症しています。

 GOLD日本委員会は、「重症化すると日常生活にも著しい障害を及ぼすため、早期に発見して治療を始めることが重要だ。早急に国を挙げて新たなアプローチで認知度向上に取り組むことが必要だ」と訴えています。

 2017年1月4日(水)

 

■医療・介護情報の共有は「かかりつけ連携手帳」で 日本医師会が活用を呼び掛け

 患者の持病や要介護度、受けた医療・介護サービスの内容などを1冊の手帳に記録し、本人や家族と地域の医療介護専門職がスムーズに情報共有できるようにする「かかりつけ連携手帳」の活用を、日本医師会が呼び掛けています。かかりつけ連携手帳は、日本医師会が日本歯科医師会、日本薬剤師会と共同で考案しました。

 厚生労働省は、団塊の世代が75歳以上になる2025年をめどに、高齢者が住み慣れた地域で医療や介護、生活の支援を切れ目なく受けられる地域包括ケアシステムの構築を目指しています。

 この地域包括ケアシステムを効果的に運用するには、患者の医療や介護に関する電子情報をさまざまな専門職が参照し共有できるのが有効とされますが、全国レベルで実現するにはまだ相当の時間がかかると見込まれます。そこで、「今から使える情報共有ツールを提案したいと考えた」と日本医師会の石川広己常任理事。

 処方薬を記録する「お薬手帳」と同様、患者が持ち歩いて専門職に見せる使い方を想定しています。

 かかりつけ連携手帳は縦21センチ、横10・5センチで、患者の氏名や生年月日、血液型などの基本情報と要介護度、かかりつけ医療機関、持病、薬のアレルギーや副作用歴などを書く欄が印刷された基本ページに加え、リハビリ計画や予防接種歴、歯の治療経過などを記録できる追加ページも作成しました。

 石川常任理事は、「地域の実情に合わせてバージョンアップし活用してほしい」と話しています。

 基本ページと追加ページの様式は、日本医師会のホームページでフリー素材として公開しています。URLはhttp://www.med.or.jp/people/info/people_info/003808.html。

 2017年1月4日(水)

 

■交通事故死67年ぶりの3000人台で、ピーク時の4分の1 高齢者の割合は過去最高

 2016年に全国で発生した交通事故の死者数は前年より213人(5・2%)少ない3904人で、1949年以来67年ぶりに4000人を切り、3000人台となったことが4日、警察庁のまとめで明らかになりました。歩行者や自転車運転中の事故死の減少などが、要因とみられます。

 統計を開始した1948年以降では、3番目の少なさ。「交通戦争」と呼ばれ最も多かった1970年の1万6765人と比べると、車の安全性向上や飲酒運転の厳罰化などで4分の1以下となりました。

 このうち、65歳以上の高齢者の死者数は2138人で、全体に占める割合は54・8%に達し、この分類での統計を始めた1967年以降で過去最高となりました。1995年は約3割、2005年は約4割でしたが、2010年に50%を超え、高齢者の人口増に伴い高止まりしています。

 死者数が減少した理由について、警察庁の担当者は「交通安全教育の普及や車の性能向上、信号機や道路の改良などが進んだ結果と考えられる」と分析しています。

 2016年11月末までの死亡事故を形態別にみると、自動車乗車中1208人(前年同期比20人増)、自動二輪車乗車中422人(同11人増)、原付乗車中212人(同11人増)、自転車乗車中448人(同73人減)、歩行中1183人(同158人減)などで、自動車乗車中と歩行中が多数を占めました。

 飲酒運転による死亡事故件数は、2008年以降300件を切り減少傾向にあったものの、2016年は213件で前年より12件(6・0%)増えました。

 都道府県別の死者は、愛知県の212人が最多。千葉県が185人、大阪府が161人で続き、東京都は159人でした。ただ、人口当たりでみると地方部のほうが死者数は多い傾向にあります。

 死亡事故以外も含めた交通事故の発生件数は前年比7・1%減の49万9232件、負傷者数は同7・3%減の61万7931人で、いずれも12年連続で減少しました。

 政府は2020年までに交通事故の死者数を年間2500人以下とする目標を掲げており、死者数の半分を占める高齢者への対策や自動運転技術の開発などを推し進めます。

 2017年1月4日(水)

 

■マイナンバーカード、病院で健康保険証代わりに 2018年度から

 政府は、社会保障と税の共通番号制度で使う個人番号カード(マイナンバーカード)について、2018年度に健康保険証として利用できるようにする方針を固めました。

 患者の本人確認を迅速にし、医療事務の負担を軽減するとともに、マイナンバーカードの普及の促進を図ります。厚生労働省が2017年度当初予算案に、システム構築の関連費用などとして243億円を計上しました。

 マイナンバーカードへの対応が整った医療機関では、専用機にマイナンバーカードを通せば、健康保険証がなくても診察や薬の処方を受けられるようになります。医療機関から診療報酬の請求を受ける「審査支払機関」が、健康保険組合などの委託を受け、システム上で健康保険の資格確認ができるようにしておき、医療機関からの照会に答える仕組みです。

 医療機関は、転職や離職などに伴って失効した健康保険証が示されてもすぐにわからず、後で失効が判明するケースも少なくありません。患者が加入している健康保険の種類が瞬時に確認できれば、こうした事態を防ぐことができるようになります。

 マイナンバーカードは、交付開始から1月で1年となりました。政府は3000万枚を交付できる予算を確保していますが、この1年間で住民が受け取ったマイナンバーカードは1000万枚弱と、普及の遅れが課題となっています。

 昨年1月の交付開始以降、マイナンバーカード作製を担う地方公共団体情報システム機構のシステム不具合が相次いだことなどが影響し、交付が大幅に滞る事態となりました。政府は、住民にマイナンバーカードを交付する市区町村の支援策を打ち出すなどして対応。昨年11月末までに全市区町村で遅れが解消しました。

 ただし、マイナンバーカードの申請件数は、最近では1日当たり約1万件程度にとどまり、普及に向けた歩みは依然として遅れています。現状は用途が限られるため、マイナンバーカードを持つメリットに乏しいことが背景にあるとみられる。

 こうした中、マイナンバーカードの用途は、2017年から拡大が予定されます。政府は夏から図書館カードとして使えたり、商店街の買い物に利用したりできる実証実験を実施し、昨年10月時点で270市区町村が導入しているコンビニエンスストアでの住民票の交付サービスについても、全国での導入に向け自治体への支援を強化します。 

 2017年1月3日(火)

 

■餅をのどに詰まらせ男性2人死亡、14人緊急搬送 元日の東京都内

 東京都内では1日、餅(もち)をのどに詰まらせて合わせて14人が病院に緊急搬送され、このうち81歳と60歳の男性2人が死亡しました。東京消防庁は、餅は小さく切って食べるなど注意を呼び掛けています。

 東京消防庁によりますと、1日午後1時すぎ、板橋区の81歳の男性が自宅で雑煮の餅を食べた際にのどに詰まらせ、心肺停止の状態で病院に運ばれましたが、間もなく死亡しました。また、北区でも60歳の男性が自宅で餅を食べた際にのどに詰まらせて窒息し、搬送先の病院で死亡が確認されました。

 1日だけで、東京都内で餅をのどに詰まらせて病院に運ばれた人は、28歳から89歳までの14人に上るということで、東京消防庁は、「小さく餅を切り、ゆっくりとよくかんで食べてほしい。もしもの時はすぐ119番を」と注意を呼び掛けています。

 また、もし、のどに詰まらせた場合は、意識があるか周りの人が確かめた上で反応があれば、せきをさせたりあごを支えてうつむかせ、背中を強くたたいて吐き出させるなどの対応をとるよう呼び掛けています。

 総務省の家計調査によると、2015年の日本人の餅の購入量は一人当たり平均で約800グラム。約50グラムの一般的な切り餅に換算すると、16個食べている計算です。高齢者のほうが購入量が多く、70歳以上では一人当たり平均約1350グラムで、27個に上ります。

 2017年1月2日(月)

 

■餅による窒息事故への対処法 正月は高齢者の救急搬送が急増

 毎年、正月は、餅(もち)をのどに詰まらせる窒息事故が急増します。トラブル回避のポイントや、万が一の時の対処法をまとめました。

 餅による窒息事故は、食べる機会が多い年末年始に相次ぎます。東京消防庁管内では2011~2015年、餅などを詰まらせて562人が救急搬送され、このうち45人は病院に搬送された時には死亡していました。搬送された人の9割が65歳以上で、月別では12月と1月で全体の半数を占めました。

 昭和大学の向井美恵(よしはる)名誉教授(口腔〔こうくう〕衛生学)によると、窒息事故は、食道を通るはずの食品が気道をふさいで呼吸ができなくなることで起こります。のどに詰め込んで食べたり、食べている途中に急に上を向いたり、会話をしていて息継ぎしたりすることで生じます。

 特に高齢者の場合は一般的に、筋力低下や歯の欠損などで、かむ力やのみ込む力、詰まりかけた時にせきをする力が弱いため、注意が必要。

 なぜ餅はのどに詰まりやすいのか。和洋女子大学の柳沢幸江教授(調理学)によると、餅は弱い力で変形はしやすいものの、かみ切って小さくするには「生のニンジンをかむ力に匹敵する」かなりの力が必要といいます。かむ回数が不十分だと、塊のままのみ込んで詰まらせかねず、のどの粘膜などにくっ付く付着性も大きくなります。また、誤嚥(ごえん)といって餅が気管に入ってしまう危険もあります。

 一工夫でトラブルが生じるリスクは下げられます。あらかじめ一口大に切っておくことが第一。次に、水分があると餅の付着性が下がってのみ込みやすくなるため、よくかんで唾液(だえき)と十分に混ぜ、こまめにのみ込みようにし、食べる前には汁物などで口を潤します。その点で、磯辺焼きより、大根おろしであえるなど水分と一緒に食べたほうがいいといいます。

 食べる時は会話を控え、いすの奥に腰掛けて体を安定させます。特に高齢者や子供は、周囲の人が見守るのが望ましく、乳児は控えます。

 もし餅を詰まらせたら、周囲の人はどう対処したらいいのでしょう。自力で強いせきをしている時は、続けるように促すとともに、119番通報して救急車を呼ぶこと。せきができない、あるいは初めはせきをしていたのに、できなくなってきた場合には、背部叩打(こうだ)という応急処置を行います。

 救助者が患者の背後から、片手で胸または下あごを支えてうつむかせます。もう片方の手のひらの付け根で、肩甲骨の間を何度も強く迅速にたたいて餅を吐き出させます。この背部叩打に、腹部突き上げという応急処置を組み合わせることも有効。まず救助者が患者の背後から、両腕を腹部に回します。片方の手で握り拳を作り、親指側を患者のへその上、みぞおちより下に当てます。その握り拳をもう一方の手で握り、素早く手前上方に向かって圧迫するように突き上げます。

 救急車の到着まで、背部叩打と腹部突き上げの2つを繰り返すといいといいます。119番通報でも応急処置の指導をしてくれます。

 2017年1月1日(日)

 

■未就学児の医療費助成、補助金減額を廃止へ 独自助成の市区町村に朗報

 子供の医療費を独自に助成する市区町村に対し、国が国民健康保険(国保)への支出を減らす制度について、就学前の子供への助成分は2018年度から減額しないことになりました。厚生労働省は、見直しによって浮いた財源をさらなる医療費の助成拡大ではなく、ほかの少子化対策に活用するよう市区町村に求めます。

 子供の医療費は、法律では小学校入学前は2割、入学後は3割を自己負担することになっていますが、実際は全市区町村が自己負担分の全額や一部を助成しています。

 国は国保運営を支えるため、医療費の一部を受け持つ「補助金」を市区町村へ支出しています。市区町村が独自に子供の医療費の自己負担を軽くすると、安易な受診が増えて医療費の増加を招くとの考えから、国は独自に助成する市区町村への補助金から医療費の増加分を減額しています。これに対して、市区町村側は「少子化対策に逆行する」と廃止を要望していました。

 子供の医療費への助成は、自治体によって対象年齢が異なるため、全市区町村が助成している未就学児に限って無条件で減額を取りやめることにしました。2014年度の補助金減額は計113億円で、未就学児分は75億円でした。

 厚労省は当初、一部助成にとどめていたり、子供の保護者に所得制限を設けたりしている自治体に限定した減額廃止案も同省の社会保障審議会に示していましたが、委員の間で一律見直しを支持する意見が多数を占めました。

 2017年1月1日(日)

 

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