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健康ダイジェスト

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■鎮痛剤「リリカ」を服用後、交通事故2年で10人

 厚生労働省は30日までに、帯状疱疹(ほうしん)や線維筋痛症の鎮痛剤「リリカ」を飲んで自動車を運転し、意識を失うなどして交通事故を起こした人が過去2年で10人いたことを明らかにしました。リリカにはめまいや眠気、意識消失の副作用があり、飲んでいる間は運転をしないよう注意を呼び掛けています。

 厚労省によると、ファイザー製薬から国内発売された2010年6月から今年6月までに、薬との直接の因果関係が不明な事例も含め、32人にめまいや意識を失うなどの副作用がみられました。うち50~80歳代の10人が交通事故を起こし、少なくとも3人がけがをしました。人身事故はありませんでした。

 リリカは帯状疱疹後神経痛の治療薬として、ファイザー製薬から2010年6月に日本国内で発売され、年間約26万人が使用。医師の診断で処方され、カプセル状の飲み薬になっています。

 発売当初は帯状疱疹後神経痛にのみ使用可能でしたが、2010年10月27日に帯状疱疹後神経痛を含む末梢性神経障害性疼痛に使用可能となったため、リリカは幅広く使用できるようになり、後に線維筋痛症に伴う疼痛の治療にも使用できるようになりました。

 ファイザー製薬によると、リリカは中枢神経系においてカルシウム流入を抑制し、グルタミン酸などの興奮性神経伝達物質の遊離を抑制することにより、過剰に興奮した神経を鎮め、痛みを和らげるといいます。リリカの主な副作用は、めまいや眠気、ふらつきで、リリカを服用した後は、車の運転のほか、危険を伴う機械の操作は避けるべきで、特に高齢者は転倒の可能性があり注意が必要といいます。

 2012年8月31日(金)

 

■移植せずに心筋を再生へ 慶大チーム、マウスで成功

 心筋梗塞を起こしたマウスの心臓に特定の遺伝子を注射し、心筋細胞の一部を再生させることに慶応大学の研究チームが成功しました。心筋梗塞を始めとする心臓疾患に対する新たな治療法につながる可能性があるとみられています。

 慶応大学循環器内科の研究チームは、人工的に心筋梗塞を起こしたマウス10匹の心臓に、これまでの研究で皮膚の細胞を心筋細胞に変化させることを突き止めた3つの遺伝子を注射しました。その結果、2週間後には心筋梗塞で動かなくなった部分の1パーセント程度で、心筋細胞が再生していることを確認したということです。

 心臓の血管が詰まる心筋梗塞になると、血液が流れなくなった心臓の一部が壊死(えし)して皮膚の細胞に似た線維芽(せんいが)細胞に置き換わりますが、この線維芽細胞が3つの遺伝子の働きによって心筋細胞に変化したと考えられるということです。

 海外でも報告例がありますが、慶応大の研究チームは、3つの遺伝子を同時に細胞に入れる工夫をし、心筋に変える効率を高めました。さらに効率よく心筋を再生させることができれば、心筋梗塞などの心臓疾患の新たな治療法につながるとしています。

 研究チームの家田真樹特任講師は、「これまで培養皿の中でしかできなかったことが体の中でもできた意義は大きい。今後、ヒトの細胞でも同じような実験を行い、安全性を高めて新たな治療の実現につなげたい」と話しています。

 皮膚の細胞などからiPS(人工多能性幹)細胞を作り、それをさらに心筋細胞にして移植する研究が進められています。しかし、移植した細胞の一部しか働かず、がん化の恐れがあるなどの課題があります。そうした課題を克服するために、研究チームはiPS細胞を介さずに直接、目的の細胞に変える方法を開発しました。

 この研究は科学技術振興機構(JST)の戦略的創造研究推進事業・チーム型研究(CREST)の一環として行われたもので、研究結果は29日、米国科学雑誌「サーキュレーション・リサーチ」のオンライン版に公開されました。

 2012年8月30日(木)

 

■ダウン症、妊婦血液で出生前検査 精度99パーセント

 妊婦の血液から胎児のDNAを調べるだけで胎児にダウン症などの染色体の異常がないかどうか99パーセントの確率でわかるとされる新たな出生前検査が、来月、国内の2つの病院で始まることになりました。新たな出生前検査を始めるのは、いずれも東京都にある昭和大学病院と国立成育医療研究センター。

 検査は、アメリカの検査会社が昨年10月から行っているもので、妊娠10週目以降の妊婦の血液を調べるだけで、ダウン症など3種類の染色体の異常がないかどうか99パーセントの確率でわかるとされています。

 現在、出生前検査として行われている「羊水検査」は、妊婦のおなかに針を刺すため0・3パーセントの割合で流産の危険性があり、受けられる時期も妊娠15〜17週に限られましたが、新たな検査は採血だけで済むため流産の危険性がなく、同様の検査はアメリカやヨーロッパなどで広がりつつあります。

 2つの病院のほか、今後、導入を検討している病院の医師らが31日、研究組織を立ち上げ、検査を行う際の共通のルールを作ることにしています。

 この中では、検査の対象は、胎児の染色体異常のリスクが高まる35歳以上の高齢出産の妊婦などとした上で、検査の前に専門の医師らが30分以上カウンセリングを行うことや、検査後も小児科医らが妊婦のサポートを続けていくことなどを検討しています。

 費用は保険が適用されないため約21万円かかりますが、高齢出産の妊婦が増えていることなどから、検査を希望する人は大幅に増えることが予想されます。異常が見付かれば人工妊娠中絶にもつながることから、正しい情報に基づいて妊婦が判断できるよう検査前後のカウンセリングなどの態勢を整えていくことが、導入に当たっての課題です。

 子供が生まれる前に病気などがあるかどうか調べる出生前検査は、現在、国内では「羊水検査」のほか、「絨毛検査」、「母体血清マーカー検査」などが行われています。専門家によりますと、こうした検査を受ける妊婦は、年間の出産数およそ100万件のうち3パーセント前後に当たる3万人と推計されています。

 このうち、羊水や絨毛といわれる組織を採取して調べる羊水検査と絨毛検査は、胎児にダウン症などの染色体の異常がないかどうか確定診断ができますが、母親のおなかに針を刺すため、羊水検査は0・3パーセント、絨毛検査は1パーセントほど流産の危険性があるほか、破水や出血の恐れもあり、母体への負担もあります。費用は保険が適用されていないため、10万円から15万円かかります。

 母体血清マーカー検査は、今回の新たな検査と同じように妊婦の血液を調べるもので、流産などのリスクはありませんが、ダウン症などの確率がわかるだけで確定診断はできません

 新たな検査が始まることについて、日本ダウン症協会の玉井邦夫理事長は「海外の動向からいずれ日本でも検査が必ず始まると思っていた。新しい技術ができ、それによってわかることを知りたいと思うのは個人の権利なので、検査の導入は否定できないが、ダウン症の子供たちや家族を否定するような世の中につながることは絶対にあってはならない。検査が簡単になっても結果の重みは変わらないので、安易な気持ちで検査を受ける妊婦が増え、混乱が広がることが懸念される」と話しています。

 その上で、「今回、検査を始める病院が共通のルールを作ることは評価できるが、今後、導入するすべての病院がルールを守るようチェックしていくべきだ。妊婦やその家族が正しい情報に基づいて考えられるよう、元気に暮らしているダウン症の子供をよく知る小児科の医師らが、十分な情報を提供できる態勢を整えてほしい」と話しています。

 2012年8月29日(水)

 

■青森県のマダラ、出荷制限へ 国の基準値を超えるセシウムを検出

 青森県の八戸港で水揚げされたマダラから2回にわたって国の基準値を超える放射性セシウムが検出されたことを受けて、国の原子力災害対策本部(本部長・野田佳彦首相)は27日、県の太平洋の海域で捕れるマダラを出荷しないよう県に指示しました。東京電力福島第一原子力発電所の事故の後、青森県内の農作物や水産物の出荷が制限されるのは、初めてです。

 青森県では今年6月に、三沢市沖で捕れたマダラから国の基準の1キロ当たり100ベクレルを超える116ベクレルの放射性セシウムが検出されたのに続き、今月9日にも八戸港に水揚げされたマダラから132・7ベクレルの放射性セシウムが検出されました。

 これを受けて原子力災害対策本部は27日、原子力災害対策特別措置法に基づいて青森県の太平洋の海域で捕れるマダラを当面、出荷しないよう県に指示しました。県は同日、太平洋沿岸の17漁協と関係市町村、市場開設者、遊漁船業者に国の指示内容を通知しました。

 青森県はすでに今月9日、太平洋沖の海域で捕れるマダラの出荷を自粛するよう関係する漁協などに要請しているため、市場には出回っていないということです。

 出荷制限となった海域は、東通村尻屋崎と北海道恵山岬を結んだ中間点から東側、岩手県境から東側、北海道襟裳岬の南側に囲まれた青森県太平洋海域。

 回遊性のマダラの出荷制限はすでに、福島、宮城両県と、岩手県南部の一部太平洋沖に出されています。青森県太平洋海域にも出荷制限が出たことで、岩手県の一部海域を飛び越す形となりますが、所管する厚生労働省は「岩手県の同海域で基準を超えたマダラは漁獲されておらず、対象にならない」と説明しました。

 また、「1カ月以上にわたり、検査結果が安定的に基準値を下回ること」などとされている解除要件について、厚労省は「青森県が2回目の出荷自粛を実施した8月9日を起点とする」と述べ、今回の国の指示からではなく、期間を逆上って解除要件を適用する方針を示しました。

 9日のマダラ出荷自粛後、県と国は21日に同海域で漁獲された4検体を調べ、いずれも基準値は大きく下回っています。

 県水産局の宝多森夫局長は、「本県で初めてなだけに、国の出荷制限指示は極めて残念」とし「現在も出荷自粛中だが、改めてマダラが一切流通しないよう万全を期す」と強調。風評被害の恐れについて、「本県の海域が放射性物質で汚染されているのではなく、マダラ以外の魚介類や農産物の安全性に問題はない。周辺で汚染されたマダラのモニタリング調査をさらに密にし、結果を消費者、県民、国民にしっかり伝えて県産農林水産物の信頼を確保したい」と話しました。

 2012年8月28日(火)

 

■メタボの人の医療費、年12万円割高も 厚労省調査

 メタボリック症候群(内臓脂肪症候群)の人の医療費が、そうでない人よりも年8万~12万円多いことが27日、厚生労働省の調査でわかりました。医療費を増やす原因となった病名は調べていませんが、高血圧などの生活習慣病が医療費を押し上げた可能性があります。

 中高年が対象の「メタボ健診(特定健康診査)」の受診率は、40パーセント台前半と低迷しています。医療費の差が具体的に示されたことで、生活習慣を改善してメタボ脱却を目指す人が増えそうです。

 医療費のうち患者が医療機関で支払う自己負担額は、70歳以上が原則として医療費の1割、70歳未満が3割。自己負担が3割の場合、医療費の差が10万円なら自己負担額の差は3万円になります。

 厚労省の調査では、メタボ男性はそうでない人より40~49歳で医療費が年10万円程度多く、メタボ女性ではそうでない人より70~74歳で年9万円程度多くなりました。

 40~54歳の女性は医療費の差が17万~18万円程度でしたが、厚労省は「この年齢層の女性にはメタボが少ないので、一部の医療費の高い人が平均を押し上げた可能性がある」とみて、差額は年8万~12万円との説明からは除外しています。

 調査は、2009年度に健康保険組合など保険者が実施したメタボ健診を受けた40~74歳の人のうち、2010年度の医療費が判明した約269万人が対象。男女別に40歳から5歳ごとに、年間の医療費の平均を算出しました。

 メタボ健診は、内臓脂肪型肥満の腹囲基準(男性85センチ以上、女性90センチ以上)に加え、脂質異常、高血圧、高血糖のうち2つ以上が重なった人をメタボリック症候群としています。

 腹囲基準に対しては、効果を疑問視する声があります。厚労省の有識者検討会は今年7月、2013年度から5年間は基準を維持した上で「改めて検討する」としました。

 メタボリック症候群を放置すると動脈硬化が進み、脳卒中や心筋梗塞、糖尿病の危険性が高まります。中高年の男性に多く、40~74歳ではメタボが強く疑われる人が約940万人、メタボ予備軍が約1020万人と推計されています。

 2012年8月27日(月)

 

■2011年度医療費、37・8兆円 9年連続で過去最高を更新

 厚生労働省は24日、2011年度の概算医療費が前年度に比べて1・1兆円増加し、37兆8000億円になったと発表しました。前年度に比べて3・1パーセントの増加で、9年連続で過去最高の金額を更新しました。

 高齢化の進展や医療技術の高度化が医療費を押し上げた一方、伸び率は人口減少の影響で前年度の3・9パーセントから0・8ポイント縮小しました。70歳以上の医療費は、17兆円と全体の45パーセントを占めます。後期高齢者医療制度の対象となる75歳以上は、13兆3000億円と全体の35パーセントを占めます。

 この日発表された概算医療費は、公的医療保険・公費から払われた額と患者の窓口負担の集計で、医療費の動向を迅速に把握するための速報値。医療費全体を示す国民医療費の98パーセント程度をカバーしています。

 増加した分の内訳は、70歳以上の医療費が0・8兆円、70歳未満の医療費が0・3兆円でした。また、東日本大震災で被災した宮城県の医療費の伸び率は全国最高の4・3パーセントだった一方、福島県は原発事故の影響などで県外に避難した人が多かったことから最低の0・4パーセントでした。

 1人当たりの医療費は、前年度比1万円増の29万6000円でした。年代別では、70歳未満は17万9000円だった一方、70歳以上は約4・5倍の80万6000円と、初めて80万円を上回りました。75歳以上は91万6000円でした。

 診療の種類別では、「医科の入院」が最も多く15・2兆円(全体の40・3パーセント)。「医科の入院外」は13・3兆円(35・1パーセント)、「調剤」(薬代)は6・6兆円(17・4パーセント)、「歯科」は2・7兆円(7・0パーセント)でした。

 医療費が増加した一つの要因は、長寿化で高齢者の人数が増えたことです。70歳以上の医療費が全体に占める割合は、2001年度が38パーセントだったのに対し、2011年度は45パーセントまで高まりました。高齢化で膨らみ続ける医療費をどのように抑制するかが、今後の課題となります。

 医療費が増加したもう一つの要因は、医療技術の進歩によって、お金はかかるが効果も高い治療方法や新薬が出てきたことです。特にがん治療では新薬の開発や新しい手術方法の確立が目覚ましく、厚労省保険局は「医療費の単価が上がっている。どの年齢層でみても毎年2パーセント程度伸びている」と指摘しています。

 厚労省は際限なく増え続ける医療費を抑えるために、入院日数の短縮や価格が安い後発医薬品の使用促進策を打ち出していますが、医療費の抑制には結び付いていません。

 例えば、1回の入院当たりの平均日数は34・7日で、前年度より0・4日短縮しています。一方、入院費は前年度比2・1パーセント増でした。医療費の単価が上がっているため、入院日数の短縮が医療費の削減につながっていないのが現状。

 後発医薬品については、2012年度に数量ベースで医薬品全体の30パーセントにする目標を掲げていますが、2011年度の実績は23・3パーセントにとどまっています。後発医薬品は先発薬と効き目は同じとされますが、効果を疑問視する一部の医師が積極的に後発薬を処方しないケースがあり、使用促進策に改善の余地が残ります。

 医療費が増えれば、保険料を払う現役世代の負担がさらに増すことになります。特に75歳以上の高齢者の医療費は、税金が5割、会社員など現役世代が払う保険料が4割、高齢者が1割を負担します。医療費の抑制ができなければ、高齢者の自己負担割合を増やすなどの抜本改革を検討する必要が出てきそうです。

 2012年8月26日(日)

 

■認知症の高齢者、305万人 10年間で倍増

 認知症の高齢者が300万人を超えたことが24日、厚生労働省の新たな推計でわかりました。149万人だった2002年から10年間で倍増しており、65歳以上の人口に占める割合は約10パーセントになりました。

 従来の予測を上回って急増しており、厚労省は来年度から5カ年計画で新たな認知症対策に乗り出すとしています。

 調査は2010年時点の介護保険の要介護認定のデータから、日常生活で何らかの介護や支援が必要な認知症の高齢者の現時点の人数を新たに推計しました。

 2010年時点の人数は280万人で、65歳以上の人口に占める割合は9・5パーセントでしたが、2012年現在は305万人に達したとみられます。さらに2015年に345万人(65歳以上人口の10・2パーセント)、2020年に410万人(同11・3パーセント)、2025年に470万人(同12・8パーセント)と、人数・割合ともに今後も上昇が続くと見込んでいます。

 2002年データに基づく前回推計では2010年に208万人、2015年に250万人、2025年に323万人としていましたが、大幅に上回りました。2010年時点の認知症の高齢者280万人のうち、在宅の人は140万人、特別養護老人ホームは41万人、医療機関に38万人、介護老人保健施設などには36万人となっています。

 推計の大幅増について、厚労省は「高齢化が一段と加速したほか、介護保険制度スタート直後だった前回推計時より介護サービスが定着し、要介護認定を受ける人が増え、認知症が確認しやすくなったため」と説明しています。

 認知症は脳の病気で記憶や言語などに障害が生じる状態。原因の病気によってアルツハイマー型や脳血管性など症状が異なっています。

 厚労省は6月、新たな認知症対策を発表し、初期段階から専門職で作る支援チームが家庭訪問したり、全国300カ所に早期診断できる診療所を新たに整備したりするとしていました。同省は、今回の推計を踏まえて体制整備を急ぐ必要があると判断し、近く5カ年計画をまとめる方針。

 2012年8月24日(金)

 

■がん患者、退職や異動が3人に1人 厚労省調査

 がんと診断された時に働いていた人のうち、勤めていた会社を辞めたり、別の部署に異動したりした人は3人に1人に上ることが、厚生労働省の研究班のアンケート調査でわかりました。

 調査は、2011年12月~2012年2月の3カ月間に、乳がんや悪性リンパ腫などを患った全国のがん患者を対象にインターネットなどを通じて行ったもので、がんの治療と仕事について、20歳代から70歳代の男女427人から回答を得ました。

 その結果、がんと診断された時に勤めていた会社を辞めた人は23・6パーセント、別の部署に異動した人は13・1パーセントで、3人に1人は働き方に変化が生じていたことがわかりました。

 退職や異動のいきさつは、「自分から希望」が52・2パーセントだった一方で、「会社からの指示」も40パーセントを占めていました。また、全体の45パーセントが「がんと診断される前より収入が減った」と答えていました。全体の47パーセントが「世帯収入についても減った」と答え、がん患者の家族67人のうち28パーセントが退職していました。

 自由記述欄には、「体調不良で退職せざるを得ず収入が絶たれた」「解雇が怖くて体調の悪い時にも働いている」「『通院のため遅刻する』と言うと叱られた」などの声がつづられていた一方で、「できる範囲でやろうと開き直った」「始発電車の利用と定時退社で体調管理した」など治療との両立に向けた工夫も寄せられました。「社長の家族にがん患者がいたため、理解のある対応をしてもらえた」といった内容もあり、職場によって対応に差があることも浮き彫りになっています。

 研究班の代表を務める独協医科大学の高橋都准教授は、「職場から理解を得るためさまざまな工夫もされているが、まだ孤軍奮闘している人が多いようだ。がんへの理解を深め、患者を支援する態勢をそれぞれの職場で作る必要がある。本人・家族と職場、医療者をつなぐ情報を集めた冊子や相談窓口も必要」と話しています。

 働く世代のがん患者の治療と仕事の両立は大きな課題。6月8日に閣議決定された国の「がん対策推進基本計画」にも、働く世代の支援充実が新たに盛り込まれました。

 2012年8月23日(木)

 

■小林製薬、中高年をターゲットに医薬品の通販開始へ 2億円の売り上げを計画

 小林製薬(大阪市中央区)は21日、医薬品(市販薬)の通信販売を9月1日から始めると発表しました。発売するのは高コレステロール改善薬、関節痛緩和薬、大腸整腸剤、ビタミン剤の4製品で、いずれも副作用の危険が少なく、薬事法で通販が認められていて、処方箋や販売時の説明などが不要な「第3類医薬品」。

 大手製薬メーカーがほとんど通販を手掛けてこなかった中で、小林製薬は1993年に通販事業を開始。これまで栄養補助食品や育毛剤、化粧品などを販売し、2012年3月期で103億円の売上高を計上し、売上高全体の1割弱を占めました。同社では海外事業とともに通販を成長分野と位置付けており、医薬品の通販は事業拡大の新たな柱として設定しました。

 発売する4製品は、高コレステロール改善薬「コレスチトールa」を始め、腰痛や肩凝りなどに効く関節痛緩和薬「アンメルシンコンドロパワー錠」、大腸整腸剤「コバガード」、ビタミン剤「コバラミンEX」。いずれも通販限定商品で、価格は税込み3045〜6090円。

 患者数が多く、継続的に買ってもらえるタイプの医薬品に絞ったといい、主なターゲットは店に買いに出掛けるのが難しい高齢者など中高年。競合を避けるため、4製品は店頭では販売しない方針。

 今後、取り扱い精神は順次増やしていきますが、ドラッグストアなど同社の主力販売ルートである量販店、小売店での販売商品は「販売サイドの反発も予想される」として、通販では取り扱わないといいます。

 販売対象は同社の通販会員(48万人)で、案内冊子を送付の上、電話やファクス、インターネットで注文を受け付けます。

 同社は初年度2億円の売り上げを計画しています。

 2012年8月22日(水)

 

■熱中症の救急搬送者数、週4138人に 前週から3割増

 総務省消防庁の集計(速報値)によると、13〜19日の1週間に熱中症とみられる症状で救急搬送された人の数は4138人で、前週の3186人から3割増えました。

 救急搬送された人は先月、統計があるこの5年間で最も多い2万1082人(確定値)に達していました。今月に入ってからは、いったん減っていましたが、先週から再び増加に転じ、全国的に気温35度以上の猛暑日となった17日に1274人が搬送されるなど、19日までの1週間だけで4138人に上りました。

 4138人を年齢別にみると、18〜64歳の「成人」が最多の2021人(48・8パーセント)で、以下は65歳以上の「高齢者」が1601人(38・7パーセント)、7〜17歳の「少年」が491人(11・9パーセント)、生後28日〜6歳の「乳幼児」が25人(0・6パーセント。生後28日未満の新生児はゼロでした。

 症状の程度別では、入院の必要がない「軽症」が2680人(64・8パーセント)、3週間未満の入院が必要な「中等症」が1306人(31・6パーセント)など。「死亡」は4人(0・1パーセント)でした。

 都道府県別の搬送者数は、東京都(332人)が最も多く、以下は愛知県(266人)、埼玉県(261人)、兵庫県(239人)、大阪府(232人)、福岡県(189人)、神奈川県(176人)、新潟県(139人)、鹿児島県(117人)、茨城県(102人)など。各都道府県の居住者数そのものの違いもありますが、上位には常連の都道府県の名前が連なっています。

 今年の集計を始めた5月28日以降の累計(速報値)では、3万5215人が救急搬送され、そのうち63人が亡くなっています。

 消防庁は「猛暑日が減るこれからの時期でも、気温が急激に上がる日は特に注意が必要だ」として、こまめに水分を補給したり、室温が28度を超えないようにエアコンや扇風機をうまく使ったりして、予防を心掛けてほしいと呼び掛けています。

 2012年8月21日(火)

 

■世界の海の「健全度」指数、平均60点、日本は69点 米などの国際研究チーム発表

 漁獲や水の汚れ、生物多様性などから総合評価した「海の健全度指数」を計算すると、日本は11位。こんな結果を、米カリフォルニア大学などの国際研究チームがまとめ、16日付英科学誌ネイチャー電子版で発表しました。

 世界人口の4割以上が沿岸部に住み、人口増で海への依存が高まるとの見通しを念頭に、171の国・地域の海(排他的経済水域)について、「食料供給」「零細漁業の可能性」 「海洋生産物」「炭素貯蔵量」「海岸保護」「生計手段および経済」「観光およびリクリエーション」「場所のイメージ」「きれいな水」「生物多様性」 の10項目を100点満点で採点。世界の海の状態を総合評価し、政策決定に役立ててもらう初の試みで、点数が高いほど海洋資源の維持と人間の活動が持続可能な形で両立していることを示しているといいます。

 世界の海全体の総合点は60点で、評価した研究チームは「大きく改善の余地がある」と警告しています。

 最も点数が高かったのは、南太平洋のハワイ南方、赤道付近にあるサンゴ礁の無人島、米国領ジャービス島の86点で、豊かな生物多様性が評価されました。ほかにも上位には、太平洋の無人島が並びました。

 人間が住んでいる地域で最も点数が高かったのは、4位で73点のドイツ、次いで9位で70点のカナダ。一方、最も点数が低かったのは、西アフリカのシエラレオネ共和国の36点。

 日本は11位で、全体の60点を上回る69点でした。小規模な漁業が将来も続けられる可能性や、大気中の二酸化炭素の吸収につながる沿岸の植生保全などの得点が高くなりました。観光およびレクリエーションの活用は不十分と評価されました。

 開発途上国で上位に入ったのはセーシェルとスリナムのみで、開発途上国は西アフリカ、中東、中央アメリカなど概して点数が低く、ドイツやカナダ、日本、北欧、オーストラリアなど政治・経済が安定し、保護政策が充実する先進国は点数が高い傾向がみられました。

 研究にかかわった米カリフォルニア大学海洋評価計画センターのベンジャミン・ハルパーン氏は、「海の健康度を左右する、非常に異なるさまざまな側面――環境、社会、経済、政治などを定量的に、しかも直接的に比較して、全体を合わせることができたのは初めてで、海を適切に管理する判断の手助けになる」と述べ、「ただし、この指数は、各国が自国の海(排他的経済水域)をどのように管理しているかという点だけに絞ったもので、他国の海(排他的経済水域)に及ぼしている影響については考慮していない」と補足しています。

 2012年8月20日(月)

 

■国内初、肉腫の専門診療センターを開設 がん研有明病院

 骨や筋肉にできる珍しいがん「肉腫(サルコーマ)」の治療を進めるため、東京のがん治療の専門病院が肉腫を専門とする診療センターを開設し、新しい薬や治療方法の開発を目指すことになりました。

 肉腫(サルコーマ)は、骨や筋肉、脂肪などにできるがんであり、1年間におよそ7000人が発症しています。しかし、患者数はがん患者全体のおよそ1パーセントと少ない上、整形外科や消化器外科など臓器別の診療科に分散してしまうため、胃がんや肺がんなど臓器を覆う上皮にできる他のがんに比べて治療や研究が遅れているとされています。

 このため、東京都江東区にあるがん治療の専門病院「がん研有明病院」は、肉腫を専門とする診療センター(サルコーマセンター)を開設し、全国の病院から患者を受け入れることになりました。

 診療センターには、整形外科の医師を中心に、肉腫の抗がん剤治療や病理診断に詳しい消化器外科、婦人科の医師など合わせて17人が所属し、診断から治療までを一貫して行います。

 がん研有明病院は、がん患者の数が全国で最も多い病院で、肉腫の患者を積極的に受け入れることで、さらにデータやノウハウを蓄積し新しい薬や治療方法の開発、それに専門医の育成にもつなげたいとしています。

 診療センター長を務める松本誠一整形外科部長は、「これまでどこに行けばいいのかわからなかった患者に、専門の治療を提供するとともに、院内外の医師らと情報交換を密にして新たな治療方法の開発にも取り組みたい」と話しています。

 自身も肉腫の患者で「日本に『サルコーマセンターを設立する会』」代表の吉野ゆりえさんは、「患者にとって、まず相談できるところがあるというのが大切なこと。一つの診療科だけでは難しい治療でも、連携してやってもらえると期待している」と話しています。

 2012年8月19日(日)

 

■男性用避妊薬の開発に道 精子数減らす化合物を発見

 がん治療のために作られた化合物を男性が服用すると女性の妊娠の確率を大きく下げることができると、アメリカなどの研究チームが発表し、男性用の避妊薬の開発につながるのではと注目を集めています。

 これは、アメリカのベイラー医科大学やハーバード大学とイギリス、カナダの研究チームが16日、アメリカの科学雑誌「セル」電子版に発表したものです。

 研究チームは、がんの治療のために作られた「JQ1」という化合物に、精巣で精子ができる際に必要なブロモドメインタンパク質(BRDT)の働きを抑制する作用があることを発見し、オスのマウスに注射してその効果や影響を観察しました。

 その結果、3~6週間JQ1を注射されたマウスは、精子の数は通常の28~11パーセントに減り、卵子に受精する際に必要な精子の動きも通常の22~5パーセントに減りました。

 精子を詳しく調べると、十分に成熟しておらず、受精卵を作る能力がないものが大半でした。

 JQ1を注射されたオスのマウスをメスのマウスと一緒に飼うと、性行動は通常通りでした。男性ホルモンの量にも変化はありませんでした。

 マウスに副作用などの影響はなく、JQ1を与えるのをやめたおよそ1カ月半後には精子の数や運動能力は回復し、誕生した子供も健康だったといいます。

 JQ1は効き目が素早く、男性ホルモンの働きや性衝動に影響しないのが特長。研究チームは、「人間でも似た仕組みが働いており同様の効果が期待できる。今後、臨床試験を目指したい」としています。

 今回の研究について、欧米のメディアは「画期的な成果だ」としてこぞって取り上げており、コンドームかパイプカット(精管切除術)しか選択肢がなかった男性の避妊手段に、経口避妊薬(ピル)が加わる日も遠くないかもしれないと論評しています。

 2012年8月18日(土)

 

■7月の熱中症搬送者数2万1082人 7月の最多を更新、歴代では2位

 総務省消防庁は17日、熱中症とみられる症状で7月に全国で救急搬送された人の数が2万1082人(確定値)だったと発表しました。7月としては昨年の1万7963人を17・4パーセント上回り、集計を始めた2008年7月以降で最多となりました。猛暑が続いたためで、月間搬送者数でも2010年8月の2万8448人に次ぎ歴代2位を記録。

 同庁の担当者は、熱中症の普及啓発が進んだことで、これまで救急搬送を利用しなかった人の搬送が増えている可能性があるとみています。

 2012年7月の搬送者数を、医療機関の初診時の傷病程度別にみると、入院を必要としない「軽症」1万3397人(63・5パーセント)が6割以上を占め、3週間未満の入院が必要な「中等症」6930人(32・9パーセント)、3週間以上の入院が必要な「重症」476人(2・3パーセント)と続きました。「死亡」は37人(0・2パーセント)でした。

 年齢区分ごとでは、65歳以上の「高齢者」の9531人(45・2パーセント)が最多で、以下は18〜64歳の「成人」8276人(39・3パーセント)、7〜17歳の「少年」3087人(14・6パーセント)などの順でした。

 都道府県別では、1483人の愛知県が最も多く、埼玉県1459人、東京都1433人と続きました。

 人口10万人当たりの搬送者数が最も多かった都道府県は、鳥取県の30・07人で、以下は岡山県(27・50人)、香川県(25・31人)、島根県(25・09人)、和歌山県(24・85人)、京都府(24・70人)、三重県(24・69人)など。

 同庁は引き続き、こまめな水分補給などの熱中症対策を取るよう呼び掛けています。

 2012年8月17日(金)

 

■難病の医療費助成、対象を拡大 厚労省、年内めどに結論

 症例が少なく治療法が見付かっていない難病の患者支援制度の改革を議論している厚生労働省の専門家委員会は16日、現在は56の難病に限られている医療費助成の対象を拡大することを柱とした中間報告をまとめました。

 これまで対象から漏れ、多額の医療費負担を強いられてきた患者を救済するのが狙いで、年内をめどに、新たに助成対象とする難病の種類や数などを決定します。

 難病は現在、国が治療法の研究を推奨しているものなどを含めて約400種類あり、国内の患者は少なくとも750万人に上ると推計されています。しかし、医療費助成の対象は、特に治療が難しいパーキンソン病や潰瘍性大腸炎など56にとどまっており、不十分だと指摘されてきました。

 医療費助成は、患者が比較的少ない疾患などに対し公費で助成することで研究への参加を促すのが目的ですが、実際には患者への福祉的な意味合いが強くなっています。患者の所得に応じて自己負担額の上限が定められ、重症患者は自己負担なしで治療を受けられます。

 中間報告では、助成対象の難病について、1)症例が比較的少なく、全国規模の研究でなければ対策が進まない、2)原因不明、3)効果的な治療法が確立されていない、4)患者は長期療養が必要――の4要素に当てはまるものとし、「対象範囲の拡大を含めた見直しには、より公平に対象を選定する必要がある」としました。治療成績が向上した疾患は、助成対象の難病指定から外すことも視野に入れて検討します。

 また、難病の専門的な診断や治療が受けられる拠点病院を都道府県ごとに整備するとともに、全国に患者が数人しかいない極めてまれな難病に対応できる病院も国が設置するとしています。さらに、薬や治療法の開発に役立てるため、こうした病院に難病患者の情報を集めてデータベース化する仕組みを新たに設けるとしています。厚労省は年内にも、拠点病院の条件なども決定します。

 厚労省は予算を確保するために、法整備も検討するといいます。

 このほか、昨年の障害者基本法改正で、新たに難病患者が障害者に加えられたことを受け、難病の証明書となる手帳制度の創設も検討します。さらに、疾患ごとに生活面での支障などを考慮した重症度基準を作成し、重症度に応じて医療費助成額に差を付けることや、重症患者でも高所得者の場合には一定の自己負担を求めることなども検討します。

 すでに医療費助成を受けている患者からは、対象から外されたり助成額が削減されたりすることへの懸念が出そうです。

 2012年8月16日(木)

 

■世界の健康度ランク、日本5位 首位はシンガポール

 米国の大手総合情報サービス会社ブルームバーグは13日、平均寿命や喫煙率など健康に関する各種指標を基にした「世界で最も健康な国々」ランキングを発表しました。1位はシンガポールで、日本は5位、アフリカ南部のスワジランドが最下位の145位でした。

 ブルームバーグは人口100万人以上の国・地域について、国連、世界保健機関(WHO)、世界銀行の今年5月時点のデータを使い、「総合健康度スコア」から「リスクスコア」を引いた数値を「国の健康度」として算定して比べました。

 総合健康度スコアには、平均寿命、乳幼児死亡率、死因、年代別(14歳以下、15~64歳、65歳以上)の死亡率、65歳時平均余命が含まれ、リスクスコアには、15歳以上の喫煙率、15歳以上の一人当たりアルコール消費量、20歳以上の肥満者率、運動不足者率、高コレステロール血症者率、高血圧症者率、高血糖者率、エイズ罹患率、空気や水の汚染度、予防接種カバー率、5歳以下の低体重児率、母体死亡率が含まれています。

 なお、十分なデータが得られない国は除外されています。

 2位はイタリア、3位オーストラリア、4位スイス、6位イスラエル、7位スペイン、8位オランダ、9位スウェーデン、10位ドイツなどの順。上位は欧米諸国、下位はアフリカ諸国が目立つ傾向にありますが、米国が33位と先進国の中では低順位にとどまりました。

 男女とも平均寿命で世界一になった香港は17位。韓国は29位、中国は55位、ロシアは97位でした。

 2012年8月15日(水)

 

■ハンドソープや制汗剤の成分で筋力低下の恐れ 米大が動物で実験

 ハンドソープや制汗剤などの有効成分として広く使われている殺菌剤に、筋肉の活動性を低下させる恐れがあることが、米カリフォルニア大デービス校などのマウスや魚を使った実験でわかりました。

 今週の米科学アカデミー紀要(電子版)に発表します。

 成分はトリクロサン(TCS)という物質。医薬部外品などで承認されている濃度では、安全性が高いとされています。また、化学物質審査規制法では、リスク評価の優先度が低い一般化学物質になっています。

 研究チームはマウスやヒメハヤという魚の仲間にトリクロサンを与えて、心臓の活動や運動能力を与えていない場合と比較。マウスでは心臓が送り出す血液が最大で25パーセント減り、ワイヤーの網目を握る握力が18パーセント下がりました。ヒメハヤでも遊泳能力が落ちていました。

 トリクロサンが筋肉を収縮させる仕組みの働きを悪くしていることも確かめました。

 研究を率いたアイザック・ペッサ教授は、「人間の健康問題や環境問題にとってトリクロサンは注意を要する物質に違いない。心臓に持病がある人には大きな影響がある可能性がある」としつつ、「病気の進行とトリクロサンの影響を区別するにはさらなる研究が必要」と指摘しました。

 トリクロサン(TCS) は、広く一般細菌に対する殺菌剤として、薬用石鹸など医薬部外品、口紅など化粧品に使用され、特にブドウ球菌などグラム陽性菌に対して静菌力が強く、真菌類に対してはやや弱いという特徴があります。 石鹸、シャンプー、歯磨きなど、医薬部外品で殺菌作用をうたっている商品に、多く使用されています。

 トリクロサン自身は常温で毒性を持つダイオキシンに化学変化することはないと考えられていますが、ダイオキシンの発生が懸念されるような低温焼却炉ではトリクロサンがダイオキシン類に転化する可能性が示唆されています。

 2012年8月14日(火)

 

■難病ALS、進行抑えるタンパク質特定 新薬の開発に期待

 岐阜薬科大学薬効解析学研究室の原英彰教授らの研究グループは、タンパク質の一種「膜貫通糖タンパク質nmb(GPNMB)」に、筋肉の委縮で全身の運動まひを起こす難病「筋委縮性側索硬化症(ALS)」の進行を遅らせる効果があることを突き止めました。

 岐阜薬科大学、名古屋大学など6大学を含む8つの研究グループの共同研究として、13日付の英国科学誌「サイエンティフィック・リポーツ」の電子版で発表しました。

 GPNMBがどのようにALSの症状に作用するかは解明されていないものの、作用のメカニズムの研究が進めば、GPNMBを使った新薬の開発なども期待されます。

 研究グループによると、ALSのおよそ1割にみられる遺伝性のALSを人工的に発症させたマウスと正常なマウスを比較したところ、ALSのマウスのGPNMB量が増加していることを発見。GPNMBがALSの症状にどのような作用をしているのか調べるため、GPNMBをALSのマウスに過剰に発現させると、1~2週間の延命効果がありました。人間に換算すると、10カ月程度の延命効果といいます。

 さらに、患者などの協力を得て調べたところ、GPNMBは遺伝性ではないALSの患者では健康な人に比べて量が2倍に増えていたということです。研究グループでは、GPNMBが運動神経の細胞の破壊を防ぐために増え、ALSの進行を遅らせる役割を果たしていると結論付けています。

 原教授は、「このGPNMBの研究を進めればALSの治療薬の開発につながることが期待できる。さらに、現在1年間もかかるALSの診断が、患者のGPNMBが増加することを応用すれば早くできるようになる」と説明しています。

 研究の中心的な役割を果たした同研究室の大学院生田中彦孝さんは、「今回の発見がALS治療に少しでも役立てばうれしい」と話していました。

 筋委縮性側索硬化症(ALS)は、運動神経の細胞が選択的に障害を受けることで、思考能力が保たれたまま全身の筋肉が徐々に動かなくなる神経難病。国内の患者はおよそ8500人と見なされ、年間で10万人に1~2人が発症するとされています。ALS患者のおよそ1割を占める遺伝性のALSは、SOD1遺伝子の変異が原因の一つとされていますが、明確な病因は解明されておらず、有効な治療法も見付かっていません。

 2012年8月13日(月)

 

■皮膚細胞から直接、血小板を作製 輸血への利用に期待

 慶応大医学部などの研究チームは10日までに、人間やマウスの皮膚に含まれる線維芽細胞に3つの遺伝子を組み込み、出血を抑える血液の成分である血小板を作り出すことに成功しました。

 皮膚細胞から人工多能性幹細胞(iPS細胞)を作り、それから血小板を作った例はありますが、皮膚細胞から直接作ったのは初めて。

 慶応大学などの研究チームは、比較的小さい負担で採取でき、短期間で増やせる皮膚の線維芽細胞に注目し、この細胞を基に出血を抑える血液の成分である血小板を作り出す研究を行いました。そして、別の細胞との比較から血小板に変化させるには特定の3つの遺伝子の組み合わせが必要なことを発見し、繊維芽細胞に加えた結果、12日後に50パーセントの割合で血小板になることを確認したということです。

 この血小板をマウスに投与したところ、実際に、出血を抑える働きがあったとしています。

 血小板は、白血病などの治療で繰り返し大量に必要になることがありますが、輸血用血小板は献血に頼るしかない上、保存期間も4日と短いため、供給が不安定なのが現状です。さまざまな細胞に成長できるiPS細胞を皮膚細胞から作り、血小板に成長させると50日以上かかります。

 今回の方法は増殖力の高い線維芽細胞から効率よく血小板を作り出すもので、遺伝子を入れた細胞の凍結保存も可能。iPS細胞を使う場合に比べ3分の1以下の時間で作ることができ、がん化する恐れもないとみられることから、研究チームは輸血用の血小板を確保する技術につながるとしています。

 研究に当たった慶応大学の松原由美子特任講師(臨床検査医学)は、「安全性を確認する研究を進め、白血病などの患者が自分の皮膚から血小板の基を作って保存しておくシステムを一日も早く実用化したい」と話しています。

 研究チームの成果は、米血液学会誌「ブラッド」の速報版に掲載されました。

 2012年8月12日(日)

 

■青ジソから老化やがん抑制成分を発見 予防薬開発の可能性も

 京都大大学院薬学研究科の久米利明准教授(薬理学)らの研究グループは6日、青ジソに老化やがんの発生などを予防する「DDC」と呼ばれる、ポリフェノール系の成分が含まれていると発表しました。予防薬開発の可能性も期待されています。

 体内では活性酸素が過剰にならないように、抗酸化酵素やビタミンなどの働きでバランスが取られています。しかし、これが崩れると酸化ストレス状態となって、活性酸素が過剰に体内に蓄積され、遺伝子や細胞を傷付け、老化やがん、動脈硬化などの一因になると考えられています。

 研究グループは、体によいとされるセロリやパセリ、リンゴなど果物や野菜など12種類について成分を調査。その結果、青ジソにはDDCが含まれていることが判明。DDCをラットの細胞に加えると、活性酸素を除去する抗酸化酵素が増加することが確認されました。また、細胞の生存率が、通常よりも2倍程度になりました。今後、生きたラットがDDCを摂取して効果があるかどうかの実験を進めるといいます。

 久米准教授は、「効果をさらに検証する必要があるが、青ジソの成分を凝縮させたサプリメントや予防薬開発につなげたい」と話しています。 

 DDCは、青ジソ100グラムに11ミリグラムしか含まれていません。口にした青ジソの有用成分がすべて体内に吸収されたと仮定しても、効果を期待するには1回に数キログラム摂取する必要があります。このため有用成分だけを抽出したサプリメントなどにできないかを探ります。

 研究成果は、15日付の米科学誌に掲載されます。

 2012年8月11日(土)

 

■認知症の入院患者の半数が2カ月で退院できる体制に 国、都道府県に通知へ

 厚生労働省がまとめた「認知症に関する医療体制の構築に係る指針」が8日、明らかになりました。急増している認知症患者の長期入院を改善するため、在宅での治療を重視し、新規入院患者のうち50パーセントが2カ月で退院できるような医療体制の整備を求めており、都道府県に近く通知する方針を決めました。

 都道府県は通知に沿って、2013~2017年度の医療計画を策定します。

 厚労省によると、2008年の調査では精神科に入院した認知症患者の半数が、退院までに6カ月以上かかっていました。症状が改善しても地域の受け入れ態勢が不十分などの理由で、支援があれば自宅で生活できる人でも入院し、その入院期間が長期化する人も少なくありません。

 このため同省は、住み慣れた地域で生活できるよう退院を促すとともに、自宅や施設で医療や介護を受けられる環境を整備し、入院期間の短縮を図ることにしました。

 また、症状が疑われる初期の段階で認知症を発見して重症化を防ぐため、専門的な診断ができる中小病院や診療所を新たに「身近型認知症疾患医療センター」に指定し、地域の認知症治療の拠点にできるよう「認知症疾患医療センター」を高齢者6万人に1カ所の割合で整備する目標も掲げました。

 認知症の掛かり付け医となれる診療所・病院は、介護支援専門員(ケアマネジャー)などと連携し日常的な診察を行うことや、認知症と判断した場合に速やかに専門医療機関に紹介を行えることを条件にしました。入院医療機関については退院支援部署を有することを打ち出し、在宅治療への移行を促します。

 厚労省は職場でのうつ病や高齢化に伴う認知症の増加を踏まえ、医療計画に盛り込む疾病(がん、脳卒中、急性心筋梗塞、糖尿病)に新たに精神疾患を加えることを決めています。介護を必要とする65歳以上の認知症患者は、2030(平成42)年に現在の約208万人から約353万人に増えると予測され、指針の内容が焦点となっていました。

 これに対し医療現場には、受け皿が不十分なまま退院が促されかねないと懸念する声もあります。

 2012年8月10日(金)

 

■走行距離が計測できる腕時計型GPS機能付きランニング機器 セイコーエプソンが発売

 セイコーエプソンは8日、GPS(全地球測位システム)機能付きの腕時計型ランニング機器「Wristable(リスタブル)GPS」3機種4モデルを発表しました。PCおよび専用のWebアプリ「NeoRun(ネオラン)」と連携し、位置情報を始め、ランニングの走行距離やペース、心拍数データなどを簡単に記録、分析できるほか、twitterやFacebookへの投稿機能も備えています。

 同社がスポーツ機器市場に参入する第1弾の商品で、健康志向を背景にしたランニング人口の増加に対応します。

 3機種4モデルはいずれもオープン価格で、心拍数計や10気圧防水機能などを搭載した最上位の「SS-700S」が店頭予想価格で3万5000円前後、5気圧防水の「SS-500R」が3万円前後、心拍数計などを省いた5気圧防水の「SS-300R(レッド)」「SS-300G(ライムグリーン)」が2万5000円前後。発売はいずれも8月23日。

 同社が独自に開発したGPSモジュールで低消費電力化を図り、最大14時間駆動しながらも、薄く軽量かつ通気性にも配慮し、装着時の違和感や重さをほとんど感じることなくスポーツに集中できるといいます。

 GPS機能として、位置・距離情報の計測に加え、信号や踏切などで止まっている間に自動で計測を一時中断する「オートポーズ」、任意のラップ距離を自動計測する「オートラップ」を搭載。また、時計機能、移動量と速度から消費カロリーを計測・表示できる「エクササイズ」、ペースメイク機能、各種アラーム機能なども標準で備えています。

 最上位のマルチスポーツモデル「SS-700S」では、心拍トレーニングや有酸素運動に役立つハートレートセンサー(心拍数計)に標準対応。また、実速度と体振動周波数から歩幅を自動学習することで、トンネル内などGPS衛星からの信号を受信できない場所でも、距離とペースが計測できる「ストライドセンサー」を搭載しています。10気圧の防水性能を備え、ハイキングやトレッキング時の急な天候の変化や、ヨットやカヌーなど水上スポーツ時にも利用できます。本体厚は15.7mmで、重量は61g。

 アスリートモデルの「SS-500R」は、「SS-700S」の機能からハートレートセンサーを別売りのオプションとしたモデル。本体厚は13mmで、重量は49g。

 FUNランナーモデル「SS-300R」「SS-300G」は、「SS-700S」の機能からハートレートセンサーとストライドセンサー、ピッチ計測機能を省いたモデル。本体厚は14.7mm、重量は59g。

 販売目標台数は初年度2万台といいます。

 2012年8月9日(木)

 

■脳動脈瘤破裂の予測技術を開発 東大とトヨタ関連会社

 トヨタ自動車グループのIT(情報技術)関連企業、トヨタコミュニケーションシステム(TCS、名古屋市)は7日、東京大学と共同で、脳動脈瘤の破裂の可能性を短期間で予測するシミュレーション(模擬実験)プログラムを開発したと発表しました。

 従来は血液の流れなどの影響を計算して予測結果を出すまでに約1カ月かかっていましたが、5分の1の6日への短縮を実現しました。TCSが開発した自動車の振動や騒音などを予測するプログラム技術を応用し、計算時間の大幅な短縮を可能にしたといいます。

 シミュレーションでは、磁気共鳴画像装置(MRI)などで集めた患者の脳動脈瘤の画像データ100~150枚を入力し、コンピューター上で立体的に映像化。検査した患者の血流の速さや血圧を入力して計算すると、動脈瘤に流れ込む血液の様子を示すことができます。

 脳動脈の一部がこぶ状に膨れる脳動脈瘤は、日本人の平均2~3パーセントが発症し、うち約2パーセントは破裂してくも膜下出血を引き起こします。破裂の危険性が予測できれば治療方針を立てる際に役立ちますが、これまでシミュレーションに時間が必要という課題がありました。

 共同開発した東大大学院情報学環の大島まり教授は、「計算時間を2~3時間にまで短縮することが理想。いち早く計算できれば実用化につながり、脳動脈瘤の破裂を未然に防げるようになる。実証試験を増やし、5年後をめどに実用化を目指したい」と話しています。

 2012年8月8日(水)

 

■風疹、流行が各地に広がる兆し 妊婦の家族はワクチン接種を

 妊娠初期の女性が感染すると赤ちゃんに障害を引き起こす恐れのある風疹は、さらに患者の数が増え、首都圏や関西以外でも流行の兆しがあることから、専門家はワクチンの接種など対策の徹底を呼び掛けています。

 風疹はせきやくしゃみなどを通じて感染し、発症すると主に発熱や発疹の症状が出ます。妊娠中の女性が感染すると、生まれてくる赤ちゃんの心臓や目、耳などに障害が出る場合もあります。 

 国立感染症研究所によりますと、新たに風疹と診断される患者は2週連続で減少していたものの、再び増加に転じ、先月29日までの1週間では、これまでで最も多い108人に上りました。

 都道府県別では、東京都が28人、大阪府が19人、兵庫県が14人と、引き続き首都圏と関西で多くなっていますが、新潟県と沖縄県で3人、長野県、愛知県、広島県でそれぞれ2人など、流行は各地に広がる兆しがあるということです。

 また、今年に入ってからの患者は、去年1年間の2・5倍の917人に達し、この5年で最悪の状況が続いています。

 流行の中心は20歳代から40歳代で、全体の76パーセントを占めているということです。

 国立感染症研究所の多屋馨子室長は、「多くの人が旅行や帰省で移動する時期なので、流行が全国に広がる恐れがある。また、流行の中心となっている世代は、周りに妊娠中の女性がいる可能性が高く、赤ちゃんへの影響が懸念される。予防接種を受けていない人や妊娠を希望する女性は、ワクチンの接種をしてほしい」と話しています。

 感染の拡大が続いている東京都福祉保健局では、せきやくしゃみなど飛まつにより風疹が感染することから、外出後は手洗いやうがいをしっかり行うこと、せきなどの症状がある場合は、受診の際など外出時にはマスクを着用すること、風疹と診断された場合は、感染性を持つとされる期間(発疹出現後では5日間)は出勤や登校、外出を控えるようにして周囲に配慮することを呼び掛けています。

 2012年8月7日(火)

 

■アジアから飛来した粉じんが北米を汚染 NASA研究

 アジアから太平洋を越えて北米に届いた塵(ちり)やエアロゾル(煙霧質)が米国やカナダの大気を汚染しており、おそらく気候変動の悪影響にも拍車をかけているとする米航空宇宙局(NASA)の研究が2日、米科学誌サイエンスに発表されました。

 自然の塵と汚染物質とを区別できる米仏の地球観測衛星カリプソのデータに基づいて行われた研究によると、北米では自然界の過程に加え、運輸や工業から生じるものを合わせて毎年約6900万トンのエアロゾルが発生しています。さらに、気候や人体に影響する可能性のある塵や微粒子約6400万トンが毎年、太平洋を渡って到達しているといいます。

 アジアから飛来したエアロゾルは太陽放射線を吸収し、雲の形成や降雨降雪のパターンを変え、北米西部の山地の雪解けを早めるなど、環境に悪影響を与えている恐れがあるといいます。

 また、エアロゾルは太陽光を宇宙に反射し返すため、地球を冷却する効果もあります。研究チームは今回、北米で起こっている太陽放射エネルギーや日射の減少の3分の1は、北米以外から運ばれた塵や微粒子などが主な原因であることを発見しました。

 論文の共著者であるメリーランド大学のロレイン・リーマー氏(大気学)は、「地球の各地で、(こうした塵や微粒子によって)我々が予測する温室効果ガスの影響が覆い隠されている可能性がある」と指摘。論文では、エアロゾルの発生は日照りや干ばつ、砂漠化などによって増えるため、1つの国や北米地域だけが汚染を削減する努力をしても十分ではなく、世界が一体となって取り組む必要があるとも述べています。

 今後は、実際どのように塵や微粒子が気候に影響を与えているのかを研究する必要があります。論文は、「塵の放出は風や降水、植生といった気候の変化に反応し得る。従って、塵と気候の間の相互作用についてさらによく理解することが不可欠だ」と指摘しています。

 2012年8月6日(月)

 

■女子も「草食化」、性交経験率下がる 日本性教育協会調査

 1974年の調査開始以来、一貫して上昇傾向にあった女子大学生・女子高校生の性交渉の経験率が下落に転じたと、日本性教育協会(東京都文京区)が4日、公表しました。調査委員会の片瀬一男・東北学院大教授(教育社会学)は、「草食化の傾向が、若い男性だけでなく、女性でも進んでいることが見て取れる」としています。

 日本性教育協会は、若い世代の性に対する意識などを探るために、ほぼ6年に1度「青少年の性行動全国調査」を実施。今回の調査は昨年10月から今年2月にかけて、全国11地点の中学、高校、大学生計約7700人を対象に行いました。

 その結果、性交の経験率は男子大学生が54パーセント、女子が47パーセント。前回の2005年と比べると、男子は7ポイント、女子は14ポイント減り、女子の減り幅が大きくなりました。高校生も男子が前回の27パーセントから15パーセントに、女子が30パーセントから24パーセントに減少。大学生・高校生とも男子は1993年、女子は1999年の水準に下がりました。

 一方、中学生の経験率は男子4パーセント(前回4パーセント)、女子5パーセント(同4パーセント)で、あまり変わりませんでした。

 キスの経験率は男子大学生が66パーセント(前回72パーセント)、女子が63パーセント(同72パーセント)、高校生の男子は37パーセント(同48パーセント)、女子は44パーセント(同52パーセント)で、いずれも上昇傾向にあったのが今回の調査で減少しました。

 片瀬教授は、「大学・高校男子の性交経験率の上昇には、2005年の前回調査時に歯止めがかかったが、女子は一貫して伸びてきた。今回調査では男女ともに減り、特に大学女子の減り方が顕著だ。2000年代後半から、恋愛や性行動に消極的な男子を草食系と表現するようになったが、女子も同じ傾向にある。理由は今後、分析したい。一方、1993〜1999年の生まれは男女とも、他の世代に比べ、キスや性交渉を経験した人の平均年齢が下がっている」と話しています。

 2012年8月5日(日)

 

■アスベストで中皮腫発症、鉄が体内で過剰状態 名古屋大が解明

 アスベスト(石綿)によって中皮腫を発症する過程で、体内で鉄が過剰な状態になっていることを、名古屋大学大学院医学系研究科の豊国伸哉教授(生体反応病理学)らの研究チームが、ラットを使った実験で発見しました。

 建材などに含まれるアスベストは劣化しにくいため、長期間に渡って空気中や水中に存在し、人間の体内に入るとほとんど分解されず、肺などに蓄積して、がん化します。大量のアスベストを日常的に吸った際に起こる石綿肺、より少ない曝露でも起きる肺がん、肺を取り囲む胸膜などに悪性の腫瘍ができる中皮腫が、主な病気です。

 中皮腫の治療法は確立されておらず、早期発見でなければ治癒は難しいと見なされています。豊国教授は、「中皮腫になると平均で7カ月余りで死亡するといわれているが、将来的には、何らかの方法で鉄分を取り除くことできれば、新たな予防や治療につながると期待できる」と話しています。

 鉄は成人1人の体内に4グラムほどあり、うち60パーセントは赤血球で酸素を運ぶ役割があるタンパク質「ヘモグロビン」の構成成分で、量が過剰になるとがん細胞や細菌などを攻撃する「活性酸素」を発生する化学反応の触媒になるといいます。

 研究チームは、商業用に使われた3種類のアスベストを腹腔内に投与したラットに、触媒作用を強める薬剤をさらに投与。その結果、どのアスベストでも中皮腫の発生が何もしない時より約2カ月早くなりました。

 この中皮腫を特殊な方法で解析すると、ほとんどの腫瘍で人間の中皮腫でも60パーセントの頻度でみられるがん抑制遺伝子の欠損がみられました。この欠損は、鉄が過剰にある状態による発がんとの関連が指摘されているといいます。さらに周辺の臓器に含まれる鉄の量を測定すると、3種類のアスベストすべてで鉄が沈着していることを確認しました。

 アスベストは2006年に使用が全面的に禁止されたものの、健康被害が現れるまでに長期間に渡る潜伏期間があるとされていることから、日本では今後40年で10万人以上の人が中皮腫で死亡するという専門家の試算もあります。

 研究成果は4日、英科学誌「ジャーナル・オブ・パソロジー」の電子版に掲載されました。

 2012年8月4日(土)

 

■筋萎縮性側索硬化症の治療に有効物質 iPS細胞使い京大など発見

 全身の筋肉が委縮し、動かなくなる筋委縮性側索硬化症(ALS)の患者からiPS細胞を作り、発症のメカニズムの一部を解明することに、京都大学のiPS細胞研究所の井上治久准教授らの研究グループが成功しました。研究グループでは、病気の進行を抑える効果がある物質も見付け出したとしており、新たな治療薬の開発に結び付くと期待されています。

 ALSは、遺伝子変異で生じる遺伝性と原因がわからない弧発性があります。研究グループは遺伝子TDP43に変異がある50歳代の遺伝性ALS患者3人の皮膚細胞から人工多能性幹細胞(iPS細胞)を作製、運動神経細胞に分化させて実験しました。

 作られた運動神経細胞は突起が通常より短く、変異のあるTDP43が作るタンパク質の塊が細胞内にたまり、死滅しやすいなどのALSの病態を再現しました。この細胞にタンパク質の合成で働くリボ核酸(RNA)の代謝を調節するアナカルジン酸を投与すると、突起が約2倍に伸び、タンパク質の塊ができにくくなることを確認しました。

 ALSは運動神経細胞が働かなくなることで、50~60歳代を中心発症することがわかっていますが、これまで病態を再現することは難しく、新薬の開発は進んでいませんでした。

 多くの弧発性患者の運動神経細胞でもタンパク質の塊ができることから、井上准教授は「アナカルジン酸を治療薬に応用できるか、今後、安全性や人への効果について慎重に調べていきたい」と話していました。

 難病の代表的なものといえるALSを1年間で新たに発症する人は、人口10万人当たり約1人で、男女比は約2:1と男性に多く認めます。一般的には、手指の筋肉が次第に委縮し、力が入らなくなります。時には、足先から委縮が始まります。委縮は次第に体の上のほうに進んで全身に及び、ついには舌の筋肉も委縮して、嚥下困難、発語困難となり、さらに進行すると呼吸筋もまひして、呼吸も十分にできなくなります。

 進行性に悪化するために、多くは平均3〜5年で死亡します。時には、数十年に渡って徐々に進行するものもあります。

 研究成果は、米医学誌サイエンス・トランスレーショナル・メディシン(電子版)で2日に発表されました。

 2012年8月3日(金)

 

■熱中症で搬送、先週は8686人、死者16人 7月累計は過去最高

 総務省消防庁は7月31日、23日から29日までの1週間に熱中症で救急搬送された人の数(速報値)を発表しました。16日から22日までの前週より約3000人増えて8686人が搬送され、1週間ごとの集計では今夏最多で、死者も3人増えて16人になりました。

 各地で猛暑日となった26日から搬送者数が急増し、1日1000人を突破。28日には1896人が搬送されました。7月の累計搬送者数は1万8070人で、2008年の集計開始以来最多といいます。

 消防庁が今年の調査を開始した5月28日以降では、累計搬送者数は2万41人、死者は39人。

 発表によると、23日から29日までの1週間に熱中症で救急搬送された65歳以上の高齢者は3717人で、全体の42・8パーセントを占めます。3週間以上の入院が必要な重症者は163人。都道府県別では愛知県が最多で668人。東京都646人、埼玉県632人と続きました。

 気象庁によると、全国927の観測地点中、23日から29日までの1日平均で、最高気温30度以上の真夏日になった地点は615。広範囲で厳しい暑さが記録されました。

 今後も各地で気温が高い状態が続くとみられ、気象庁は高温注意情報を出して熱中症への警戒を呼び掛けています。

 なお、真夏の猛暑日のような環境にいる幼児と高齢者は、若者よりも2倍以上体温が上昇し、熱中症になる危険性が高いことが、名古屋工業大学の平田晃正准教授らの研究チームによるシミュレーション実験でわかりました。

 研究チームは、3歳の幼児、25歳の若者、65歳の高齢者が気温37・5度、湿度60パーセントの環境に90分間いた場合の体温や発汗量の変化を調べ、コンピューターグラフィックで示しました。

 その結果、若者の体温上昇は約0・2度にとどまったのに対し、幼児の体温上昇は約0・4度、高齢者は約0・5度でした。発汗量は若者の約250グラムに対し、幼児は2倍超の約600グラム。一方、高齢者は若者の7割程度の約170グラムしか汗をかきませんでした。

 2012年8月2日(木)

 

■暑い夏には脳梗塞にも注意が必要 熱中症だけではない危険性

 連日各地で、猛烈な暑さが続いています。先月31日は、気温が35度以上の猛暑日となったところが全国927の観測点の20パーセント近くに当たる170地点に達し、この夏で最も多くなりました。1日も日本海側を中心に暑さが続く見込みで、熱中症による救急搬送も連日続いていますが、気温の上がる夏には、脳の血管が詰まって発症する脳梗塞にも注意が必要です。 

 大量に汗をかく夏場は脳梗塞を発症する人が多いことから、専門家はこまめな補給を心掛けて水分を多めに飲むなどの予防策を呼び掛けています。

 脳梗塞といえば冬のイメージが強い病気ですが、国立循環器病研究センターが去年までの4年間に脳梗塞で受診した患者を発症の時期ごとに集計したところ、6月から8月の夏場は529人と12月から2月の冬場を上回り、年間を通じて最も多くなっていました。

 夏場は、じっとしていても大量に汗をかくため血液から水分が失われ、血液の粘度が増して血の塊ができやすくなります。その塊が脳の血管に詰まって脳梗塞、とりわけ脳血栓を発症しやすくなるということです。

 脳血管障害が専門の東京都済生会中央病院の高木誠院長によりますと、夏場の脳梗塞の予防には、汗として失われた水分や塩分をこまめに補給することが重要です。また、血圧やコレステロールの値が高かったり糖尿病があったりして動脈硬化が疑われる人や、自覚症状がないまま脱水が進むことの多い高齢者は、特に注意が必要だといいます。

 脳梗塞になると体の片側のマヒやしびれが起きることが多く、手足に力が入らない、ろれつが回らない、言葉が出ない、他人のいうことが理解できない、物が二重に見える、激しいめまいがする、激しい頭痛がするといった症状が現れることもあるということです。

 高木院長は、「片側のしびれやマヒなどの症状が1時間続いたら自然に治ることはなく、脳梗塞を起こしていると考えていい。症状に気が付いたら、すぐに119番して専門の病院に行くことが重要だ」と注意を呼び掛けています。

 2012年8月1日(水)

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