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2019年1月〜 20187月〜12月 1月〜6月 2017年7月〜12月 1月〜6月 2016年7月〜12月 1月〜6月 2015年7月〜12月 1月〜6月 2014年7月〜12月 1〜6月 2013年6〜12月 5月 4月 3月 2月 1月 2012年12月 11月 10月 9月 8月 7月 6月 5月 4月 3月 2月 1月 2011年12月 11月 10月 9月 8月 7月 6月 5月 4月 3月 2月 1月 2010年12月 11月 10月 9月 8月 7月 6月 5月 4月 3月 2月 1月
■脳動脈瘤のステント治療を予測、映像化 東北大
脳にできた動脈瘤(りゅう)の血管内治療をコンピューターでシミュレーションする新技術を、東北大客員教授でニューヨーク州立大バッファーロー校のフイ・メング教授(医工学)らが確立しました。
治療に使われる金属製の筒状器具「ステント」が血管内で広がる様子や、治療後の血の流れを予測。メング教授は、「患者の血管データを使うため、個人の症状に合わせて最適な治療法を見付けられる」としています。
脳動脈瘤が破裂すると、くも膜下出血を引き起こします。検診で動脈瘤が見付かった場合、瘤に血液が流れ込むのを防ぐ治療が行われます。ステントを使う治療法では、カテーテルから出たステントが血管内で広がって、動脈瘤に血流を流れ込みにくくします。
この血管内治療に着目したメング教授らは、これまでの研究でコンピューター断層撮影(CT)や磁気共鳴画像装置(MRI)で得られた患者の血管データを基に、コンピューターで3次元の血管を再現。流体力学などの理論を応用して動脈瘤周辺の血流を計算し、映像化しました。
ステントが血管内で広がる様子も、今回初めて計算で予測。ステントを設置する最適な場所や、使用後の効果を確認するのに役立ちます。米国で約20人の患者を対象に治験をしたところ、予測の信頼度はかなり高かったといいます。
日本国内では、開頭手術で頭蓋(ずがい)骨を開き、動脈瘤の根元をクリップで挟む治療が主流。この手術は患者の心身への負担が大きいほか、手術の判断は医者の経験則に基づく場合も少なくありません。
今回確立した技術を使えば、治療後の血の流れの予測が可視化でき、すぐに手術が必要かどうか、開頭手術が最適かどうかを判断する有効な手掛かりになります。メング教授は、「工学的な手法で診断と治療がより一体化する。患者に合った形状のステントを作ることも可能になる」と話しています。
脳動脈瘤のステント治療は、日本では今年7月に保険認可されたばかりですが、ヨーロッパでは2001年に保険認可され、脳動脈瘤の治療の8割に使われています。
メング教授らの成果は11月2日、仙台市青葉区の仙台国際センターで開かれる国際流動ダイナミクス学会で発表されます。
2010年10月31日(日)
■アレルギー対応を名乗る卵に注意を 根拠なし、と消費者庁
「卵アレルギーの人でも大丈夫」などとうたい、インターネットサイトなどで販売されている卵には科学的根拠がなく、アレルギー患者が食べると健康被害が出る恐れがあるとして、消費者庁は29日、消費者に注意を呼び掛けました。販売業者に対しては、表示や広告を見直すように各地の保健所を通じて求めました。
卵アレルギーは食物アレルギーの中で最も患者が多いとされ、アレルギーの人が卵を摂取するとじんましんや呼吸障害などの症状を起こします。卵に含まれる「オボムコイド」などのたんぱく質が体の免疫に作用することが、その原因とみられています。
消費者庁は今年1月、「卵アレルギーの人が食べても大丈夫な卵」という印象を与える表示や広告のあるインターネットサイトを持つ販売業者が、少なくとも約20あることをつかみ、うち10業者について各保健所に指導を頼みました。9月に改めて調べると、さらに6業者が同様の表示をしていました。全容の把握は難しく、保健所の指導にきちんと従わない業者もいたため、注意喚起を決めました。
「アレルギーの原因は臭み。臭みのない当社の卵は大丈夫」、「特別に手を掛けて鶏を育てているので心配ない」、「えさや鶏の育て方に工夫した」などと記していても、科学的根拠を明示した業者は確認できなかったといいます。中には、卵1個が100円以上と高価な販売例もありました。
アレルギー患者も食べることができたとする体験談を載せた業者もあり、消費者庁は「たとえ事実でも、すべての患者に当てはまるわけではない」としています。今のところ、健康被害が出たという情報は入っていないといいます。
しかし、同庁が専門家に確認したところ、原因物質の科学的な除去は困難で、反応を抑える仕組みも未解明のため、宣伝を信じて摂取すれば健康被害の恐れがあると指摘されたといいます。
国立病院機構相模原病院の海老沢元宏・アレルギー性疾患研究部長は、「卵アレルギーは卵のたんぱく質に反応するもので、どんな卵を食べても変わらない。(激しいアレルギー反応の)アナフィラキシーショックも起こり得るので、どう表示されていても卵アレルギーの人は食べるべきではない」と話しています。
2010年10月30日(土)
■B型肝炎の4タイプを判定する検査薬、厚労省が初承認
国内の患者・感染者が100万人を超えるとされるB型肝炎で、ウイルスの遺伝子タイプを判定する検査薬が初めて、厚生労働省の製造販売の承認を受けました。年内にも医療関係機関向けの販売が始まります。
B型肝炎はタイプごとに症状や治療効果に違いがありますが、国が承認する検査薬はありませんでした。患者に最適の治療法選びに役立つと期待されます。
メーカーは特殊免疫研究所(本社・東京)。この検査薬では、患者の血液からB型肝炎の4つのタイプを判定できます。4タイプは、がんになりやすい年齢や治療方法、治療薬の効果にも違いがあります。
これまで検査薬は研究用しかなく、医師の診断用には使えませんでした。一方、厚労省研究班の治療指針では「タイプを測定して治療法を決定することが望ましい」とされ、ちぐはぐな状態でした。診療現場では検査薬が使えないため、一般的な治療を重ねるしかありませんでした。
今後、公的医療保険の適用を申請する予定。国立国際医療研究センター国府台病院の溝上雅史肝炎・免疫研究センター長は、「承認は専門家の間で待ち望まれていた」といいます。
B型肝炎ウイルスは、遺伝子配列の違いにより、A〜Jまで10のタイプがあります。今回承認された検査薬を診断に使えば、A〜Dの4つのタイプが判定できます。日本国内の感染の大半は、この4タイプが占めています。
まず患者に役立つとされているのは、急性肝炎の治療。近年、B型急性肝炎でタイプAの患者の割合が急増しており、全国の国立病院の共同研究によると、1990年代前半にはタイプAは数パーセントでしたが、2007年に52パーセント、08年に55パーセントに。日本では少なかったタイプAが海外から持ち込まれ、性感染症になっているとみられます。
日本に多いタイプBやCは、成人が感染しても一過性で慢性化しません。しかし、タイプAに感染すると一部は慢性化して持続感染者になり、他の人にも感染を広げる可能性があります。
ただし、抗ウイルス薬で適切に治療すれば慢性化を防ぐことができます。専門家はタイプAの感染の広がりを警戒しており、検査は慢性化防止や感染実態の把握につながります。
B型慢性肝炎の患者にとっても、治療の改善につながります。タイプAとBは治療薬のインターフェロンの効果が比較的高く、タイプに応じて効きやすい治療を選ぶことができます。
日本でB型慢性肝炎の8割はタイプCですが、東北地方と沖縄県はタイプBも目立ちます。タイプCは、40〜50歳代から肝がんが起きる傾向があります。タイプBはタイプCに比べて肝がんが起きにくく、起きても60〜70歳代と高年齢者に多くみられます。肝がんを早期発見して治療するためにも、タイプの診断が役立ちます。
2010年10月29日(金)
■肺がん治療、9割に効果 がん化を妨げる新薬へ期待
がんでは最多の年間7万人が日本国内で亡くなる肺がんの治療に、有望な新薬が生まれそうです。がんの原因となる遺伝子の働きを妨げる薬を飲んだ6割近くの患者の腫瘍が小さくなったことが、治療薬の承認に向けた米韓豪での臨床試験(治験)で確かめられ、大きさが変わらなかった例も加えると9割に効果がありました。試験には日本人の患者も参加しました。
がんの原因となる遺伝子は、間野(まの)博行自治医科大学・分子病態治療研究センター教授(東京大学・大学院医学系研究科・特任教授を兼務)が発見したEML4―ALK。これは細胞の骨格たんぱくを作るEML4という遺伝子と、キナーゼと呼ばれる蛋白質リン酸化酵素を作るALK遺伝子の一部が入れ替わってできたものです。EML4―ALKができることで、がん化した酵素が作られ、ますますがんが増殖します。
臨床試験では、EML4―ALKを持つ82人の患者を対象に1日2回、がん化を促す酵素の働きを抑えるALK阻害剤という薬を飲んでもらいました。その結果、57パーセントの患者の腫瘍が消えるか小さくなり、33パーセントは腫瘍の大きさが変わらず安定していました。副作用の多くは軽い吐き気や下痢。
治験は昨年末から、日本でも行われています。
間野教授によると、この遺伝子を持つのは肺がん患者全体の約5パーセントですが、50歳以下の若年層に限ると、患者の3人に1人が持っています。たばこを吸わない人に多いのも、特徴といいます。
また、間野教授は、治療を始めてから6カ月後に、ALK阻害剤が効かなくなった患者のがん細胞の遺伝子を解析し、薬剤耐性の原因とみられる変異を2カ所見付けました。変異を起こすEML4-ALKに対しても働きを妨げ得る構造を持ったALK阻害剤を開発すれば、今後の肺がん治療において薬剤耐性を誘導しにくい分子標的治療法が実現すると考えられます。
「今回の発見で、薬に耐性ができた患者向けの薬の開発もスタートできる」と、間野教授は話しています。
成果は28日付で、米医学誌「ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン」で発表されました。
2010年10月28日(木)
■ミルクアレルギーの赤ちゃんが急増 治療用ミルクで回復
体に合わないミルクを飲むことで、赤ちゃんが血便や嘔吐などの症状を起こす「新生児・乳児消化管アレルギー」が増加し、少なくとも500人に1人の割合で、毎年全国で2000人以上が発症している可能性のあることが、厚生労働省研究班の調査でわかりました。
このアレルギーの半数は生後1~7日で起こります。症状は嘔吐や下痢、血便が中心で、多くはミルクの中のたんぱく質に反応して起こるようです。原因は牛乳から作ったミルクが4割、母乳と人工乳との混合も4割、母乳だけも1割以上ありました。食後まもなく、じんましんや呼吸困難になることで知られる食物アレルギーと違い、食後数時間でじわじわ症状が出るのが特徴。体重が増えなくなるこケースが多くみられます。
日本小児科学会など関連学会での報告例は、1980年代~95年ごろは年に0~5例程度でしたが、2000年ごろから10~60例ほどに増加。03年に埼玉で死亡例、08年には愛知で腸が壊死した重症例が報告されました。
研究班(主任研究者=国立成育医療研究センターの野村伊知郎医師)は東京都内すべての産科、小児科、総合病院、計約1085施設にアンケート(回答率約47パーセント)したところ、08年9月~09年8月に103例の発症例が確認されました。
この数字をもとに出生数から試算すると、発症率は0.21パーセントで、全国では毎年生まれる赤ちゃん約100万人のうち、2000人以上が発症している可能性のあることがわかりました。急患患者の受診が多い大学病院などの回答が少なく、実際の発症率はさらに高い恐れがあるとされます。
原因は不明ですが、子供に重症のアトピー性皮膚炎などのアレルギーも増えていることから、研究班は発症者の実数が増えているとみています。
まれに重症になる危険はあるものの、アレルギーの原因となるたんぱく質を分解したミルクなどに切り替えれば、7~8割が回復します。これらは、じんましんなどを起こすミルクアレルギー用に、粉末で850グラム3000円程度で一般に広く売られています。
このアレルギー用の市販ミルクで治らない赤ちゃんには、たんぱく質をさらに細かくした特殊なミルクを使えば、大半は治療できるといいます。これは医師が処方するほか、340グラム3000円程度で市販もされています。
研究班は治療に役立てるため、診療指針を作って公開、異常があれば、医師への受診を呼び掛けています。野村医師は、「すぐに命にかかわることは少なく、勝手に母乳をやめたり、素人考えでアレルギー用のミルクを使ったりすると、栄養不足などから発育不良になりかねない。適切に診断、治療すれば大丈夫なので、まずは医師に相談してほしい」と話しています。
2010年10月27日(水)
■アルミを含む膨らし粉に幼児は用心を ホットケーキ1枚で基準超
東京都健康安全研究センターの調べで、ホットケーキやパウンドケーキを週に1個食べるだけで、幼児ではアルミニウムの取りすぎになってしまう場合があることがわかりました。アルミを含む膨らし粉(ベーキングパウダー)が原因と見なされ、神経系などに影響を与える可能性があるため、摂取量を減らす対策が必要としています。
同センターの植松洋子食品添加物研究科長らは、市販されているホットケーキミックス粉6種、クッキー、ドーナツなどの焼き菓子57種など107の製品を検査。ミックス粉3種、焼き菓子27種からアルミを検出しました。これらの製品には、膨張剤やベーキングパウダー使用と表示がありました。
ミックス粉では1グラム当たり最大0.53ミリグラム、焼き菓子ではパウンドケーキやスコーンで最大0.37ミリグラムでした。この場合、ホットケーキ1枚(粉で約50グラム)にアルミ約27ミリグラム、パウンドケーキ一切れ(粉で約50グラム)でアルミ約19ミリグラム含まれる計算になります。
世界保健機関(WHO)などが定める1週間の暫定耐容摂取量(PTWI)は、体重1キロ当たり1ミリグラムで、体重16キロの幼児では16ミリグラムになり、ホットケーキ1枚で1.7倍になります。ただし、似たような製品でも含有量に大きな差があり、検出されないものもありました。使っている膨張剤の成分の違いによると見なされます。
アルミの人間への影響はまだわかっていませんが、動物実験では生殖器や発達中の神経に変化が現れるなどの影響が出ています。
WHOなどは2006年に、これまでの想定より少ない量で影響が生じるかもしれないという調査結果に基づき、PTWIを7ミリグラムから現行の1ミリグラムに引き下げています。
アルミは食品衛生法で食品添加物として認められています。国内では、水道水で1リットル中0.2ミリグラム以下とする基準がありますが、食品にはありません。食品安全委員会が今年3月から、審議するためのデータ集めをしています。
食品衛生法では、膨張剤の成分やアルミ含有量の表示は義務づけられていません。しかし、最近は「アルミフリー(不使用)」と明記した膨張剤やミックス粉も販売されており、通販や自然食品を扱う店などで買えます。
健康安全研究センターは、「表示の見直しが、摂取量を減らすには有効」としています。
2010年10月26日(火)
■抗菌薬「コリスチン」早期導入へ 多剤耐性菌に効果
多くの抗生剤が効かない細菌による感染症に効果が期待される薬「コリスチン(コリスチンメタンスルホン酸ナトリウム)」を、承認申請があった際の優先審査などの優遇措置を受けられる「希少疾病用医薬品」とすることを、厚生労働省薬事・食品衛生審議会医薬品第2部会が25日、認めました。
英グラクソ・スミスクライン社が、健常者を対象に使用量などを確認する数カ月程度の臨床試験を開始。同社は、「終了後は、一日も早く製造販売の承認申請をしたい」としています。
院内感染で注目された多剤耐性アシネトバクターや、NDM1という酵素を作る遺伝子を持った腸内細菌は、現在使われている主力の抗生剤を分解してしまいます。日本化学療法学会など感染症関連の4学会は、海外ですでに承認されているコリスチンを早く日本に導入するよう訴えていました。
医療施設では、個人輸入でコリスチンをすでに備蓄したり、備蓄の準備する動きも出ています。
2010年10月25日(月)
■救急車、半年で262万件出動 全都道府県で増える
今年1~6月に救急車が出動した件数は約262万件に上り、全都道府県で前年同期より増えたことが25日、総務省消防庁がまとめた速報値でわかりました。
特に高齢者が急病で搬送されるケースが増加。7月以降は熱中症による搬送者が急増するため、消防庁は「1年間の出動数は過去最高になる可能性が高い」とみています。
出動件数は前年同期比で6・1パーセント増。都道府県別では宮崎県の9・3パーセント増、宮城県と埼玉県の8・6パーセント増などが目立ちました。東京都と政令指定都市の計20消防本部でも、出動件数が前年同期より増加。仙台市は10・2パーセントの大幅増でした。
消防庁が各消防本部に行った調査では、増加の要因として急病や高齢者が増えたことが挙がったほか、「交通手段がないために救急車を要請する傷病者の増加」などが挙がりました。
2010年10月25日(月)
■アルツハイマー病で解明 脳血管内にも原因物質
福島医大生化学講座の橋本康弘教授(56歳)は理化学研究所(本所・埼玉県和光市)との共同研究で、アルツハイマー病の原因物質が脳の血管内部の血管内皮細胞でも作り出されていることを世界で初めて突き止めました。併せて、この原因物質を検出する抗体も開発しました。
研究が進めば、血液検査など簡易な方法での病気の早期発見や早期治療、新たな治療法の確立が期待できます。研究成果は来年1月にも、生化学分野で世界的権威のある米国の科学雑誌「ジャーナル・オブ・バイオロジカルケミストリー」に掲載されます。同誌のオンライン版では、11月23日までに発表されました。
アルツハイマー病は、脳内にある「アミロイドβ前駆体タンパク質(APP)」という物質から、何らかの要因で神経毒性ペプチド(アミロイドβ)と呼ばれる物質が分離して残り、脳内に蓄積されることが原因とされます。アミロイドβは、これまで脳の神経細胞でのみ生成、蓄積されると考えられていました。今回の発見は、脳の血管内皮細胞という全く別ルートの生成、蓄積過程があることを解明した点で画期的。
現在、日本全国に患者が60万人いるとされるアルツハイマー病の診断は、患者への問診のほか、脳を磁気共鳴画像装置(MRI)、髄液検査などで調べる方法が中心です。しかし、この方法では患者の負担が大きく、費用も高額な上、脳の委縮が始まっていたり、神経細胞が死滅したりして、診断時にはすでに回復が極めて難しい状態になっているケースがほとんど。
原因物質を検出する新たな抗体は、血管内皮細胞のアミロイドβが分離した後のAPPに反応します。このAPPは血液中に溶け込む性質があり、血液中の濃度を調べれば、アミロイドβがどの程度分離し、脳内に蓄積されているかを把握できる可能性があります。研究や技術開発が進み、一般の血液検査で調べられるようになれば、自覚症状がない段階での早期発見、治療の道が開けます。
研究には、橋本教授とともに福島医大看護学部生命科学部門の本多たかし教授も参加。理化学研究所で平成13年から9年に渡って研究を進めてきました。同研究所の基幹研究所・システム糖鎖研究グループ疾患糖鎖研究チーム(谷口直之チームリーダー)が、研究成果をまとめました。
橋本教授は、「さらに研究を進め、アルツハイマー病の早期診断を実現し、治療につなげていきたい」と意欲を示しています。同教授は福島県棚倉町出身、東京・日比谷高、福島医大卒。マサチューセッツ大客員助教授などを経て平成11年から理化学研究所に勤務。今回の研究のチームリーダーを務め、19年に福島医大に移り、現職。
アルツハイマー病研究の第一人者、同志社大生命医科学部の井原康夫教授は、「アルツハイマー病の研究を全く別の視点から進めた成果。今後の研究に大きな影響を与える可能性もある」としています。
2010年10月24日(日)
■国民医療費、2025年度は52兆円 伸び率2・2パーセントに鈍化
厚生労働省が将来の国民医療費を推計したところ、2010年(平成22年)度の37兆5000億円が2025年(平成37年)度には1・4倍の52兆3000億円に達することが22日、わかりました。15年間で14兆8000億円膨らむことになります。
医療機関への報酬改定などの影響を除くと医療費は例年3パーセント台で伸びていますが、今後は高齢化による増加が鈍り、25年度までの伸び率は年平均2・2パーセントにとどまるとしています。推計には13年(平成25年)度に導入予定の新たな高齢者医療制度の影響を織り込んでおり、25日の高齢者医療制度改革会議に示します。
厚労省は06年(平成18年)時点では、25年度の国民医療費を約56兆円と推計しており、「医療費を抑えたい政府が過大に試算している」との指摘が続出しました。前回の推計を大幅に下回る結果となったことで、政府、与党が進めている税制と社会保障の一体改革の議論にも影響を与えそうです。
国民医療費は、病気やけがの治療で全国の医療機関に支払われる1年間の総医療費。15年(平成27年)度では10年度比約5兆円増の42兆3000億円、20年(平成32年)度では47兆2000億円と推計しました。
2010年10月23日(土)
■多剤耐性菌で4学会が提言 対策に未承認薬の導入を
帝京大病院を始め全国の医療機関で、複数の抗生剤が効かない多剤耐性の細菌アシネトバクターの院内感染が広がっていることを受け、日本化学療法学会など感染症関連の4学会が21日、国内で未承認の抗生剤を早期導入するよう国に求める提言を発表しました。
医療施設では個人輸入で備蓄する動きも出ており、日本化学療法学会のアンケートでは7割の施設が治療に未承認薬が必要だと回答しています。
未承認薬では、「コリスチン」という抗生剤が欧米で多剤耐性菌に効果があるとして注目されてきました。帝京大病院などで院内感染を起こした多剤耐性の細菌アシネトバクターに、コリスチンは効くといいます。抗生剤が効かない酵素「NDM1」の遺伝子を持つ大腸菌にも、効果を示すという報告があります。
アンケートは昨年末に実施し、752施設が回答しました。501施設が「耐性菌の治療にコリスチンが必要だ」としました。すでに14施設が個人輸入で備蓄し、31施設が備蓄の準備をしています。提言を中心的に取りまとめた二木芳人・昭和大教授(臨床感染症学)は、「(備蓄を検討する病院が)倍増しているようだ」といいます。
帝京大病院の院内感染が広く知られるようになった9月以降、複数の輸入業者に医療施設から「購入したい」という問い合わせが増えています。
また、日本化学療法学会、日本感染症学会など4学会の提言は、「多剤耐性菌の検査や院内感染対策はやればやるほど赤字」として、院内感染対策への財政支援を国に求めました。
「1施設で短期間に2例の感染が確認された場合は、院内感染を考えて対応することが必要」と初期対策の重要性も強調。感染状況把握のための疫学調査には、院内の感染制御部や各診療科の担当医、感染の有無を検査する微生物検査室など横の連携が不可欠としました。さらに、各医療機関に院内感染対策に従事する人材の適正な配置と、その育成を求めました。
2010年10月22日(金)
■70~74歳の医療費負担増 13年度から段階的に増額、厚労省方針
厚生労働省は20日、2013年度に導入予定の新たな高齢者医療制度で、医療機関の窓口で支払う患者の自己負担割合について、現在は暫定的に1割となっている70~74歳の負担を見直し、早ければ13年度から段階的に2割負担に引き上げる方針を固めました。
新制度では現役世代の負担増が避けられない見通しとなったことから、厚労省は高齢者にも応分の負担を求める考え。高齢者の窓口負担は総額で1700億円増える一方、公費投入は同程度減ると試算しています。ただ、負担増には政府、与党内にも慎重な意見があり、調整は難航しそう。
厚労省の方針では、早ければ13年度に70歳を迎えた人(10年度に67歳)から引き上げを開始。5年間かけて年度経過ごとに順次、70歳になる人へ対象を広げ、70~74歳の全体が2割負担となるのは17年度の見通しです。12年度に70歳を迎えた人(10年度に68歳)以上の人は、1割負担のまま。
方針通り見直されれば、高齢者の窓口負担は、一般的な所得の人で(1)75歳以上が1割(2)70~74歳が2割(3)69歳以下は3割、と整理されます。
ただ、70歳以上でも課税所得が145万円以上で、かつ夫婦の合計年収が520万円以上(単身は年収383万円以上)の世帯は「現役並み所得」と扱われ、現行通り3割負担。
70~74歳の窓口負担は本来、自公政権の法改正に基づき08年度から2割になる予定でした。だが、同年度の後期高齢者医療制度開始に伴う高齢者の負担軽減策の一環で、それまでの1割を維持し引き上げを凍結していました。
後期医療制度廃止後の新制度では、75歳以上は国民健康保険か、健康保険組合など被用者保険に移る予定。高齢者医療の枠組みが変わるのに合わせ、厚労省は現在の負担軽減策を見直し、本来の規定に戻すことにしました。
2010年10月21日(木)
■今季2300万人分のインフル治療薬を供給 製薬4社
インフルエンザ治療薬を販売する製薬4社の今季向けの供給計画が19日に出そろい、本格的な流行期を前に、治療薬が計約2300万人分準備されていることが明らかになりました。
厚生労働省の推計によると、昨年夏から今年春までの昨季のインフルエンザ患者数は約2000万人。計画上の治療薬の供給量はこれを上回っており、医療関係者は「昨季並みの大流行が起きても対応できる水準」としています。治療薬の面では、新型を含めたインフルエンザ対策は、一段と進んだといえそうです。
第一三共は19日、自社で研究開発段階から手掛けた、初の純国産のインフル治療薬「イナビル」の販売を開始しました。粉末を口から吸い込んで摂取する吸入薬で、同社は「1回の吸入で済むため患者の負担を軽減できる」としています。来年春までの今季向けに、約400万人分を用意。第一三共は純国産薬の発売によって、「インフル対策の基盤強化につながる」としています。
また、塩野義製薬は1月に、米ベンチャー企業から国内での開発・販売権を取得した点滴薬で重症者にも有効な「ラピアクタ」を発売しました。
このため、今季国内のインフル治療薬は、以前から販売されていた中外製薬の飲み薬「タミフル」(スイス・ロシュ製)、グラクソ・スミスクラインの吸入薬「リレンザ」と合わせて計4剤から選べます。ラピアクタは約65万人分、タミフルは約1240万人分、リレンザは約600万人分、準備されています。今年の流行が例年通りであれば、供給過剰になる可能性もあります。
第一三共のイナビルは、1回の投与で済むことが最大の特徴。対して、リレンザやタミフルの場合は1日2回で5日間の投与が必要。「健康日本21推進フォーラム」の調査では、過去1年間にインフルエンザにかかった子供を持つ母親1000人のうち、34歳以下の33.3パーセントが「1回の投薬で済む」ことを治療薬に期待。
イナビルは昨年流行した新型インフルエンザにも効果がある上、タミフル耐性ウイルスへの有効性もあるとされるため、注目度には大きいものがあります。また、イナビルとラピアクタは国内生産が可能。インフルエンザが大流行した場合、タミフルなどの追加輸入には時間がかかる可能性があるだけに、自国で迅速に対応できる点は大きな売り物となりそうです。
ただ、昨年の新型インフルエンザの流行で緊急輸入されたタミフルとリレンザは、流行の終息が早かったため在庫は大量。
厚労省は、「それぞれの薬に投与法や効き方などの特徴があり、それを医師がどう選ぶかだ。一番の意義は患者にとって選択肢が増えること」としています。
2010年10月20日(水)
■年金記録の全件照合スタート 約7億2000万件が対象
年金記録の原簿となる紙台帳とコンピューター上の記録を突き合わせる作業が、12日から日本年金機構で始まっています。今後3年半かけて、2013年(平成25年)
度末までに約7億2000万件の記録の照合を進めていきます。
かつて市町村や旧社会保険事務所が管理していた紙台帳は主に手書きで、1980年代にオンライン化され、コンピューターで管理されました。その際に氏名や納付期間などの記録を入力ミスしたことから、5000万件の「宙に浮いた年金」や「消えた記録」などの記録問題が発生。解決のため、紙台帳の記録をすべて調べ直すことになりました。
紙台帳の記録は、重複分を除き約7億2千万件に上ります。紙台帳というのはかなり古く判読が困難なものも多いため、基礎年金番号などが一致して持ち主がわかっている約6億件を先行して照合し、特定が難しそうな残る約1億2000万件については、国民からの情報を募って着手するという二段構えの手順を描いています。
日本年金機構の作業拠点は全国29カ所に設け、委託を含めて約1万8000人の態勢で臨むといい、記録内容が合わなかった人には早ければ年内に通知されます。
作業の完了目標は2013年(平成25年)ですが、どの程度のペースで作業を進められるのかについては、日本年金機構は「やってみないとわからない」とコメントしています。
照合作業には今年度予算で427億円が充てられ、来年度予算の概算要求では876億円が計上されており、全体では約3000億円かかると見積もられています。
専門家からは「効果がどこまで見込めるかわからない作業に3000億円もの予算をつぎ込むくらいなら、被害者救済の財源に回すべきだ」といった意見も出ています。
2010年10月19日(火)
■味も見た目も同じなのに舌でとろける イーエヌ大塚製薬が病院食を市販
味も見た目も「すき焼き」や「焼き魚」なのに、舌の上で崩すとマシュマロのように滑らかに溶ける――。病気の後遺症や高齢により、咀嚼力の低下など口腔に何らかの問題を抱えて普通の食事が取れない人向けに、画期的な食事が誕生しました。
酵素の力で、通常の食事の1000分の1に軟らかくなりました。病院の臨床研究で口にした患者から「家でも食べたい」との声が相次ぎ、今月22日からの市販が決まりました。
この商品は、イーエヌ大塚製薬(岩手県花巻市)が開発した摂食回復支援食「あいーと」。「I eat」(私は食べる)から名付けられました。愛知県の藤田保健衛生大の東口高志教授(消化器外科)らと開発し、現在、17医療機関で臨床研究中。
軟らかさの秘密は、細胞を切り離す酵素。食材ごとに最適な酵素を選び、圧力を変えながら注入する技術を開発し、形が崩れないギリギリの軟らかさで食感も残しました。筑前煮の場合、100~1000分の1に軟らかくなりました。栄養素もほぼ変わりません。
イーエヌ大塚製薬では主に病院での販売を考えていましたが、臨床研究に参加した患者や家族から「売って欲しい」との声が50件近く寄せられ、「さばの塩焼き」「チキンカレー」「酢豚風甘酢煮 」「 ホタテと野菜のあんかけ」「 ぶりの照焼き」「 鮭の照焼き 柚子風味」「ごはん」など15品の販売が決まりました。東口教授は、「口から食べることで、患者の回復が早まったり、命が延びたりすることもある」と話しています。
調理は蒸し器または電子レンジで温めるだけ の手軽さ。また、おかず2品とごはん1品を1食の目安として、3食でおよそ1200kcal のエネルギーを無理なく摂取できる設計です。
当初は地域限定販売となり、岩手県、神奈川県、大阪府、広島県、山口県の全国病院用食材卸売業協同組合の加盟店より求められます。また、個人向けにも通信販売で全国発送されます。価格帯は 221 円から 473 円(税込み希望小売価格)。
商品に関すお問合せは、 イーエヌ大塚製薬 問合せ窓口(03・3515・0170)
2010年10月18日(月)
■患者から多剤耐性緑膿菌を検出 2人死亡、三重の県立病院
三重県四日市市の県立総合医療センターは16日、入院患者2人が抗生物質に抵抗力を持つ多剤耐性緑膿菌に感染し、死亡したと発表しました。高瀬幸次郎院長は、「院内感染の可能性を否定できない」と話しています。
病院によると、9月17日に三重県桑名市の病院から移ってきた肺炎の70歳代の男性から、入院時の検査で多剤耐性緑膿菌を検出。男性患者はこの間、救命救急センターに入院していましたが、隣の病室に入院していた70歳代の女性患者からも10月14日に同菌が検出されました。
三重大学医学部で検査した結果、2人から検出された菌が同じものである可能性が高いことが15日夜に判明しました。
男性は10月4日に肺炎で死亡。女性も15日夜、敗血症による多臓器不全で死亡しました。院長は、「感染が死亡の直接の原因ではないが、何らかの悪影響を与えたことは考えられる」と説明しています。
また、この間に救命救急センターに入院し、担当の看護師が同じなど、間接的に男性患者と接触した可能性がある患者は15人いるといい、そのうち1人がたんやせきなどの呼吸器症状があるため、感染を調べているといいます。
病院は16日に、院長を本部長とする「院内感染防止対策本部」を設置。18日には院内感染防止対策委員会を開き、今後の対策について話し合うといいます。
多剤耐性緑膿菌は抵抗力が落ちている人に、接触などで感染。多くの抗生物質に耐性を持っており、治療が難しくなることがあります。
2010年10月17日(日)
■来春の花粉、今年の2〜10倍 日本気象協会が予測
民間の気象情報会社である日本気象協会(東京都豊島区)は15日、2011年春のスギ・ヒノキの花粉(北海道はシラカバの花粉)の飛散量は例年より多く、少なかった今年と比べると2〜10倍になるとの予測を発表しました。
猛暑の翌春は花粉の飛散量が多くなるとされており、記録的な猛暑となった今年は花芽が多く形成される条件が整っています。
同協会によると、九州から東北にかけての広い範囲で例年並みかやや多くなりますが、日照時間が少なかった九州南部のほか、東北の一部と北海道は例年よりやや少なくなる見込み。
前年夏の天候不順などで飛散量が少なかった今春と比べると2〜10倍で、静岡、岐阜両県と京都府では10倍以上になり、関東でも2~5倍になる見通しといいます。ただし、記録的猛暑だった04年の翌年で、過去最高の飛散量とされる05年春よりは少ないとみられます。
その理由について、04年より10年の日射量が少なかったこと、10年の気温が高すぎて花芽の形成が抑えられたことが考えられるとしています。
同じく民間の気象情報会社であるウェザーニューズ(東京都港区)の予測でも、今春と比べ、近畿10倍、関東、甲信、東海、北陸7~8倍、四国6~7倍、山陽、東北北部5~6倍となっています。過去最高とされる05年と同程度か、それを上回る地域も出るとみられます。
NPO花粉情報協会(千葉県習志野市)も、東北南部から近畿にかけて非常に多くなるとの予測ですが、過去最高にはならないとの見方。
2010年10月16日(土)
■ワクチン被験者の出血情報を伝えず 東京大学医科学研究所
東京大学医科学研究所(東京都港区)が開発したがんペプチドワクチンを巡り、医科研付属病院での臨床試験中に消化管から出血した男性の事例を、ペプチドワクチンを提供しているほかの医療機関に伝えていなかったことが15日、わかりました。
医科研病院では「重篤な有害事象」としていました。厚生労働省は事実関係を調査しています。
ペプチドワクチンは未承認で、医科研は安全性の確認などを目的にした臨床試験を2008年から実施。医科研から同種のペプチドワクチンの提供を受けて、臨床試験を行う大学病院が少なくとも11あり、そのすべてに医科研病院での消化管出血は伝えられていませんでした。
こうした臨床試験では、被験者の安全や人権保護のため、予想されるリスクの十分な説明が必要。ほかの医療機関の研究者は、「患者に知らせるべき情報だ」と指摘しています。
記者会見した医科研の清木元治所長らによると、医科研病院の膵臓がんの男性患者がペプチドワクチン投与後の08年12月、以前に受けた膵臓がん手術の傷跡から出血しました。輸血治療で回復しましたが、入院期間が約1週間延びました。
出血の原因はペプチドワクチンではなく原疾患と考えられましたが、因果関係も否定できないとして08年12月に、同種のペプチドワクチンを使う9件の臨床試験で被験者を選ぶ基準を変更し、消化管の大量出血の恐れがある患者を除くことにしました。被験者の同意を得るための説明文書にも消化管出血が起きたことを追加しましたが、しばらくして臨床試験をすべて中止しました。
ただ、このケースより前に、別の医療機関でペプチドワクチン投与を受けた患者でも消化管からの出血があり、情報は関係者の会合で報告されていました。2つのケース以外に出血の報告はないといいます。
2010年10月15日(金)
■出産費の全国平均は47万3000円 厚労省が実態調査
赤ちゃん1人当たりにかかる出産費用は今年8月、全国の医療機関で平均47万3626円だったことが13日、厚生労働省の実態調査でわかりました。同省による出産費用の調査は初めてで、同日の社会保障審議会部会で示しました。
出産費用を巡っては、公的医療保険から妊産婦に支給される出産育児一時金が昨年10月に38万円から42万円へ増額されましたが、来年3月までの暫定措置となっています。今回判明した平均費用が38万円を大きく上回っていたことから、厚労省は来年4月以降も現在の支給額を維持したい考えで、同部会で調整を進め年末までに結論を出します。
ただ、増額分4万円の財源は3~5割程度を国庫補助、残りは保険料などで賄っており、財政悪化に苦しむ健康保険組合などは、国庫補助の充実なしには42万円の維持は困難と主張しています。
調査は8月、出産一時金を医療機関に直接支払う制度を利用した正常分娩について、病院と診療所、助産所から申請された請求書約5万3000件を集計。出産費用には入院料や検査・薬剤費、差額ベッド代などを含み、全国平均額47万3626円のうち分娩料が約22万2000円で、入院料が約10万8000円かかりました。病院と診療所の47万円台に対し、助産所は約44万8000円と割安でした。
同省が研究班に委託調査した昨年1月分の集計では、全国平均約42万4000円。出産育児一時金の上乗せに伴い、費用も引き上げられた形でした。
都道府県別では、東京都の約56万円が最も高く、最も低いのは鳥取県の約39万円。
2010年10月14日(木)
■期限切れの輸入新型ワクチン 厚労省が214億円分廃棄
新型の豚インフルエンザの輸入ワクチンについて、厚生労働省は12日、ノバルティス社(スイス)から今年2~3月に購入した約214億円分(健康な成人換算で約1660万人分)のワクチンを有効期限切れで廃棄したと発表しました。廃棄作業はノバルティス社が実施したため、廃棄の実費について国の負担はなかったといいます。
厚労省は昨年10月、新型インフルエンザの流行に備えてノバルティス社やグラクソ・スミスクライン社(イギリス)と計約9900万人分の輸入契約を結びましたが、感染が下火になるなどワクチンの需要が低下。一部を解約したものの、使われずに余っていました。ノバルティス社から購入した分の医療機関への出荷は、約2500人分にとどまりました。
昨シーズンに調達された新型インフルエンザのワクチンは、グラクソ・スミスクライン社製と国産合わせてまだ約7900万人分が残っています。グラクソ・スミスクライン社製のワクチンの有効期限は1年半で、現在約5030万人分の在庫があり、2011年6月までに順次、有効期限を迎えるといいます。
これとは別に、使われないまま全国の医療機関で在庫として残っていた国産ワクチン239万人分(約37億円)については、9月に卸売り販売業者が費用を負担して引き揚げました。最終的にはメーカーが買い戻す予定で、すべて廃棄されるといいます。
厚労省は「今回のワクチン供給における問題を内部で検証し、今後の体制構築に生かしていく」とコメントしている。
一方、押谷仁・東北大教授(微生物学)は、「輸入した場合、接種できるようにするための承認手続きをどうするか、議論が不十分で、実際に使えるのが2月と遅れた。その意味では大きな対価を支払ってしまった。今後、新たなタイプのインフルエンザが発生、流行した時に備えて、態勢を作る必要がある」と話しています。
2010年10月13日(水)
■禁煙補助薬の販売を一時中止 製薬大手ファイザーが供給不足で
製薬大手ファイザー(東京都渋谷区)は12日、ニコチン依存症の喫煙者に対する経口禁煙補助薬「チャンピックス」の新規患者向け販売を、一時中止すると発表しました。10月からの大幅なたばこ増税を機に禁煙外来を受診し、禁煙治療を受ける人が増えた影響で、供給が需要に追いつかないのが背景。
ファイザーによると、チャンピックスは脳のニコチンを受け取る部分をブロックし、たばこを吸ってもおいしく感じなくなる効果があるといいます。少量で1日1回から始め、次第に回数と量を増やし、3カ月間続けます。
8月までは毎月約7万人分を供給していましたが、たばこの値上げ前の9月は約17万人、10月は6日時点ですでに約8万人分を供給するなど、予測を超える売り上げになっているといいます。
同社は、新規の治療希望者への処方を延期するよう医療機関などに要請。ドイツの生産拠点で増産に努めていますが、新規患者に供給できるのは来年1月ごろになる見込み。すでに処方している患者には、優先的にチャンピックスを回します。
俳優の舘ひろしさん出演のテレビCMを前倒しで終了し、禁煙啓発ウェブサイトも「工事中」として一時閉鎖するなど、薬のPRを含んだ活動も当面は自粛します。同社は、「多大なるご迷惑をおかけし、心よりおわび申し上げます」としています。
突然の欠品発表に、一部の医療機関が禁煙外来を中止するなど波紋が広がっており、飲む補助薬で禁煙を決めた人には「たばこ絶ち」と「治療待ち」の二重の我慢が続きそうな様子です。
医療機関で処方される禁煙補助薬としては、スイス系のノバルティスファーマ(東京都港区)が輸入販売する「ニコチネル」もあります。チャンピックスの処方停止で禁煙治療ができなくなるわけではありませんが、ノバルティスファーマによるとニコチネルもフル生産中で「品薄状態」。過去の販売実績に応じて医薬品卸を通じ出荷制限しています。チャンピックスの代替分が増えれば、供給能力を超える可能性もありますが、11月中旬には出荷制限を解除できる見通し。
禁煙したい人には、禁煙処方がいらない薬局で買える補助薬を使う選択肢もあり、大正製薬、ノバルティスファーマ、武田薬品工業などが販売しています。ただ、ニコチンへの依存度が高い場合は、医療保険が適用されるため、医療機関に行ったほうが1~4割程度安くなります。
2010年10月12日(火)
■小中高生の体力が向上 13歳男子の50メートル走はピークに迫る
小中高生の体力や運動能力が3年連続で向上したことが、10日公表された文部科学省の平成21年度「体力・運動能力調査」でわかりました。13歳男子の50メートル走の成績では、子供の体力がピークだった昭和60年度と同水準に戻っていました。
問題になっている子供の体力低下ですが、文科省では「運動能力低下が止まり、緩やかではあるが、復調に向かっている」と分析しています。
調査は21年5~10月に、小中高校生の約3万1000人を対象に実施。50メートル走や立ち幅とび、ボール投げなど小学生男女は各8種目、中高生男女各9種目の計52種目で体力・運動能力テストを行い、記録をそれぞれポイント化しました。
ポイントの総合得点は、小中高の男女ともに3年連続向上傾向。種目別でも上体起こしと反復横とび、20メートルシャトルランでいずれも向上するなど、52種目のうち28種目で向上傾向。低下は3種目でした。
特に中学生男子の50メートル走の平均記録は平成10年度より0・09秒速くなって7秒91。昭和60度年の7秒90に肉薄する結果となりました。文科省は「体力作りの事業など、学校の地道な活動の成果」と分析しています。
ただ、中学生男子の50メートル走以外は昭和60年度の水準に戻った種目はなく、立ち幅とびではほぼすべての年代で10年度と比べて横ばいか低下など、向上傾向のない種目もありました。
調査に携わった順天堂大スポーツ健康科学部の内藤久士教授は、「小さいころから外で遊ぶ機会が少ないため、複雑な一連の動きが不得意なのではないか」と分析しています。
運動能力について、20年度から実施の国の教育振興基本計画では「5年間で60年度の水準へ回復」としていますが、文科省は実現困難とみています。新学習指導要領では、小中学校の体育の授業も増えることになっていますが、内藤教授は「学校だけでは限界がある。交通機関も発達し、便利な現代社会では、体を動かす機会は減っている。週末や放課後に、体を動かす自由な時間が持てるようにするべき」と指摘しています。
2010年10月11日(月)
■健康ブームで、シニア世代の体力が右肩上がり
体育の日に合わせて文部科学省が10日に公表した「体力・運動能力調査」で、この10年ほど高齢者の体力が向上を続けているという結果が出ました。健康ブームで60歳代以上で定期的に運動する人が増えているのが、要因とみられます。
調査は2009年5~10月に実施。65歳以上の高齢者は調査を始めた1998年度以降、握力や脚力など大半の項目が右肩上がりになっています。
98年度と09年度を比べると、腹筋回数は65~69歳男性が11.97回→14.05回、女性は7.41回→8.13回。70~74歳男性は10.44回→12.12回、女性が5.99回→7.00回。
6分間の歩行距離も65~69歳男性が588メートル→612メートル、女性は548メートル→572メートル。70~74歳男性は567メートル→581メートル、女性が519メートル→539メートルに伸びました。
バランスや柔軟性の数値も良くなっており、若い世代より体力アップ傾向が顕著。
また、週に1回以上何らかの運動をする人の割合は60~64歳の男性が98年度の46.04パーセントから59.16パーセントに、女性が51.1パーセントから64.81パーセントに急増。いずれも20~64歳の全体平均を上回りました。
文科省の調査に当たった順天堂大スポーツ健康科学部の内藤久士教授は、「健康ブームが根付いている上、昔はなかったスポーツジムなどが身近にでき、生活の中で運動を楽しむ習慣が広がっている」とみています。今の中高年は戦後育ちで、戦前より栄養や体格面で恵まれていることも、体力データ向上の一因と指摘しています。
実際、運動好きな高齢者は、スポーツ市場のけん引役になりつつあります。平日の日中に、ランニングや筋トレのマシン、水泳、スカッシュ、フラダンス教室、太極拳、ヨガ教室などで汗を流すのは、大半が中高年。定年退職した団塊の世代の入会が目立ち、首都圏を中心に24店舗展開するスポーツジム・メガロスの会員の60歳以上の割合は、この3年で17.7%から22.4%に上がりました。
コナミスポーツクラブは退職後の高齢者が増えるのを見越し、平日の昼間に限定した60歳以上向け割引会員制度を2007年に導入。3年前に約14パーセントだった60歳以上の会員は今、2割ほどを占めます。米国発の女性限定フィットネスクラブ・カーブスでは、会員32万人の約4割が60歳以上だといいます。
全国でゴルフ場を展開するPGMグループによると、現役時代に接待ゴルフをしていた元会社員らが退職後も余暇として楽しんでいるといいます。東京・上野の靴販売店によると、履いて歩くだけで足の筋トレになるとうたう靴が中高年以上にもよく売れています。
2010年10月11日(月)
■ロボットで前立腺全摘手術に成功 神戸大病院が関西初
神戸大医学部付属病院(神戸市中央区)は8日、内視鏡手術の支援ロボット「ダ・ヴィンチ」を使った前立腺の全摘手術に関西で初めて成功した、と発表しました。患者は前立腺がんの70歳代の男性で、容体は安定しています。
ダ・ヴィンチは、米国の医療機器会社インテューティブ・サージカル社が開発。4本のロボットアームがあり、うち3本の先端には体の組織を挟んだり引き出したりする器具である鉗子(かんし)やメスが付き、残りの1本には小型カメラが付いています。
執刀医は手術台から離れた場所にある「コンソール」と呼ぶ装置を操作し、患者の体内に挿入したカメラから送られる立体映像を見ながら、4本のロボットアームを遠隔操作し、鉗子やメスを動かして手術します。鉗子は可動域が540度と広く、人間の関節では不可能な動きもでき、手ぶれも補正。手術の精度アップにつながり、前立腺近くの神経を傷つけずに患部だけを摘出したり、骨盤の奥にある膀胱と尿道の精密な縫合をスムーズにできたりするといいます。
手術は7日に3時間半かけて行われました。執刀した藤澤正人副院長(50歳)は、「尿漏れなどの後遺症を減らせる上、医師も座って手術ができるので負担が軽い」と説明。手術時間や入院期間も、通常の内視鏡手術と大差はありません。
ただし、公的医療保険が使えず費用は全体で100~120万円。藤澤副院長は、「症例を重ね、入院費などが保険適用になる厚生労働省の先進医療に申請したい」と話しています。
ダ・ヴィンチは1台約3億円で、大学病院などで導入し、全国では約300例の前立腺全摘手術に使われています。
2010年10月10日(日)
■食品の栄養成分表示を義務化へ 消費者庁が検討会
健康的な食生活を送るための手掛かりを増やそうと、消費者庁は、脂質や塩分といった食品の栄養成分についてメーカーに表示を義務づける方針を固めました。
従来、表示はメーカー各社の判断に任せていましたが、国際的な義務化の流れを踏まえました。たくさんとると動脈硬化のリスクが高まるとされる「トランス脂肪酸」を対象に含めることも視野に入れています。来年夏をめどに制度の中身を詰め、2012年の通常国会への法案提出を目指します。
岡崎トミ子消費者担当相が8日、表示の義務化に向けて、学識経験者や業界関係者による検討会を立ち上げるよう指示。11月上旬にも議論を始め、どの栄養成分を義務化の対象とするかなどを話し合います。
日本では現在、カロリーカットなどをうたう製品以外の食品の栄養成分を商品に表示するかどうかは、メーカーの判断に任されています。表示する場合に限って、健康増進法に基づいて熱量、たんぱく質、脂質、炭水化物、ナトリウムの主要5項目を載せることになっています。
海外では、アメリカ、カナダ、ブラジル、オーストラリアで表示を義務化しているほか、02年に台湾、06年に韓国、08年に中国、09年にインドで義務化されるなどアジアにも広がっています。1994年に義務づけたアメリカの場合、現在の表示対象は日本でいう主要5項目のほか、トランス脂肪酸やコレステロール、糖類、食物繊維など計14項目に及んでいます。
マーガリンや、パン・菓子づくりに使われるショートニングなどの加工油脂に含まれるトランス脂肪酸について、消費者庁は「最近のさまざまな研究でリスクがはっきりしてきた」とみており、義務化の対象とする方向で検討します。
また、消費者庁では、食品表示についての規定がJAS法や食品衛生法、健康増進法など複数の法律にまたがっているのを見直し、一元化した法案をまとめる準備を始めています。法案には、今回の検討会の結論を盛り込む考えですが、表示の範囲を広げれば食品業界の反対も予想されます。
2010年10月9日(土)
■子宮頸がんワクチン無料化 細菌性髄膜炎も、年内実施
桜井充財務副大臣は7日、臨時国会に提出する予定の2010年度補正予算案に、女性の子宮頸がんワクチンの無料接種を年内に始めるための費用を計上する方針を示しました。
乳幼児の細菌性髄膜炎の原因となるインフルエンザ菌b型(Hib・ヒブ)と肺炎球菌のワクチンについても、同様の措置を講じる考えも表明しました。医師不足対策などのための「地域医療再生基金」も約2000億円積み増す方針。同日、開かれた民主党の議員連盟で明らかにしました。
子宮頸がんは、性交渉によるヒトパピローマウイルス(HPV)感染が主な原因とされ、年間約3500人の女性が亡くなるとされます。性交渉を経験する前の11~14歳を中心とした女性へのワクチン接種で予防が期待できますが、ワクチンは半年の間に3回接種する必要があり、保険の適応外なので費用が計4万~5万円と高額で普及が進んでいません。
ヒブや肺炎球菌による細菌性髄膜炎は、5歳未満の子供で年500〜700人がかかり、重い後遺症になったり、死亡したりすることもあります。
3つのワクチンは、世界的に有効性や安全性が確認されており、世界保健機関(WHO)が摂取を勧めています。
桜井氏は、「補正予算で基金を作り、10年度後半から11年度まで国と地方が半分ずつ負担する形で、本人負担なしで接種できるようにしたい」と表明。ただ、年収800万円程度で所得制限を設ける考えも示しました。
2010年10月8日(金)
■日本脳炎ワクチン、中止世代の子供にも摂取へ
厚生労働省の予防接種部会は6日、日本脳炎ワクチンの定期接種が2005年5月から事実上中止されていた影響で、対象年齢なのに接種しそびれた世代の子供について、来年度以降、段階的に接種を勧めることを了承しました。
日本脳炎ワクチンは、標準的な計画では3歳で2回、4歳で追加の1回、9歳から12歳の間にさらに1回接種することになっています。
ワクチン接種が止まったのは、接種後にけいれんなどの症状が出る急性散在性脳脊髄炎(ADEM)の発生例が報告されたためで、今年度に4~8歳になる世代は免疫を持っていない子供が多くみられます。
昨年6月、新たに開発された乾燥細胞培養日本脳炎ワクチン(商品名:ジェービックV)が発売となりました。供給量をみながら、勧める接種対象者を増やしていくといいます。
日本脳炎は、蚊(コガタアカイエカ)が媒体する日本脳炎ウイルスによって起こる感染症。感染した場合には、250人に1人程度発症するとされ、感染後1〜2週間の潜伏期を経て、急激な発熱、頭痛を主訴として発症し、項部硬直、光線過敏、意識障害、筋硬直、不随意運動などの脳炎症状が発現します。
日本脳炎の治療法はないため、ワクチン接種での予防が重要となります。従来から日本脳炎ワクチン(北京株)が使用されていましたが、接種後に重症のADEMが報告された事例と、ワクチンの材料にマウスの脳を使っていることとの因果関係が否定できなかったため、厚生労働省は2005年5月、このワクチンによる定期予防接種の積極的勧奨を行わないよう、全国の市町村に勧告しました。
しかし、専門家などからは、最近でも日本脳炎の罹患患者がゼロではないことを考え、接種によるADEMなどのリスクがより低い新しいワクチンの開発が熱望されて、乾燥細胞培養日本脳炎ワクチンが開発、発売されました。
欧米において不活化ポリオワクチンや狂犬病ワクチンの製造用細胞として実績のあるVero細胞(アフリカミドリザル腎臓由来の株化細胞)を材料とすることで、マウスの脳由来物質によるADEM発症の理論的リスクを排除した製剤です。
2010年10月7日(木)
■移植ネット登録で「臓器提供しない」が急増 9月は3割近く
自分が脳死になったり、心臓が止まって死亡したりした場合に臓器を提供したいかどうかを、日本臓器移植ネットワーク(移植ネット)の意思登録システムに登録している人のうち、「提供しない」という人が急増し、9月に登録した人では3割近くに上ったことがわかりました。4日に開かれた厚生労働省の作業班会議で、同省が報告しました。
臓器移植法では、臓器を提供する意思と提供を拒否する意思は同様に尊重されます。7月の改正法施行前は、脳死下の提供は本人が提供の意思を書面で残し、家族が同意した場合しかできませんでしたが、施行後は、本人が何らかの形で拒否の意思を残していない場合には、家族の承諾で脳死提供できるようになりました。
この制度変更が拒否の意思の登録急増に影響しているとみられます。移植ネットによると、提供しない意思を登録する人は施行前は月に2パーセントを超えたことがなく、施行後の8月は10パーセント、9月は29パーセントでしや。昨年度は月約2000人だった登録者総数も、今年8月は7280人、9月6302人と増えています。
移植ネットでは、「法改正で拒否の意思表明の大切さが増したことが、増加につながったのではないか」とみています。
移植ネットのシステムは、名前などを記入し、提供への同意や提供する臓器を選べるほか、提供しない意思の登録もできます。同システムのほか、意思表示カードに記入したり、意思表示欄がある健康保険証や運転免許証に記入したりすることでも意思表示できます。
意思表示カードでは、(1)脳死後および心停止後のいずれでも提供、(2)心停止後に限り提供、(3)臓器を提供しない――のいずれかに「◯」を付けます。(2)ならば改正臓器移植法に基づく脳死判定を受けず、心停止後の提供となります。(3)ならば「拒否」の意思表示となり、法改正で認められた家族の承諾による脳死判定や臓器提供は実施されません。拒否の意思表示は、家族に口頭で伝える方法でも有効。
2010年10月6日(水)
■インプラントで患者4人が提訴 愛知の歯科医院側に賠償を求める
愛知県豊橋市の歯科医院「関歯科クリニック」が使用済みインプラント(人工歯根)を使い回したと指摘された問題に絡み、不適切なインプラント手術で症状が悪化したとして、患者4人が5日、歯科医院側に計約3400万円の損害賠償を求める訴えを名古屋地裁に起こしました。
患者は同県内に住む30~73歳の男女4人。訴状によると、4人は2007~09年、この歯科医院であごの骨に長さ2~3センチの金属を埋め込んで人工の歯根を作り、その上に歯を作るインプラント手術を受けました。
しかし、直後から、かみ合わせが悪くなり、口内のしびれや違和感、頭痛、めまいに悩まされたり、食事や会話が困難になったりしたとして、「術前の診断不足と術後の不適切な処置が原因」と主張しています。
この歯科医院は、06年に不正な診療報酬請求をしたとして、5年間の保険医取り消し処分などを受けました。
男性院長(39歳)は今年1月、豊橋市歯科医師会が使い回しの疑いがあることを指摘した直後、自宅で自殺を図りました。命を取り留めましたが、原告弁護団によると現在は休業中。
2010年10月5日(火)
■さいたま市で新型耐性菌2例目を確認 最近渡航歴のない女性
厚生労働省は4日、「NDM1」という酵素を作る遺伝子を持ち、ほとんどの抗菌薬が効かない多剤耐性の肺炎桿菌が、さいたま市のさいたま市民医療センターで見付かったと発表しました。NDM1を作る菌の検出は国内2例目。
厚労省によると、8月下旬に同センターに肺炎のため入院した90歳代の女性患者の尿から検出されました。女性は現在も入院中ですが、症状は回復。同センターのほかの患者から、多剤耐性の肺炎桿菌は検出されていないといいます。
こうした新耐性菌はインドやパキスタン周辺で医療行為を受け、欧米に帰国した人などから検出されていますが、今回の患者は最近の海外への渡航歴がなく、厚労省は国内での広がりをさらに調べる方針。
国内で初めて見付かったのは、NDM1を作る大腸菌。昨年4月にインドから帰国し、栃木県の独協医科大学病院に入院した50歳代の日本人男性からで、今年8月に保存していた検体を調べて判明。厚労省は9月、こうした耐性菌の報告を全国の医療機関に求めていました。
厚労省によると、こうした菌でも健康な人の体内では基本的に無害。
NDM1は大腸菌や肺炎桿菌などの「腸内細菌科」の細菌間で受け渡され、耐性菌が市中に広がることが懸念されています。
2010年10月4日(月)
■乳がん「切らずに治す」は限定的に 乳癌学会が警鐘
乳がんを「切らずに治せる」と広まっている「ラジオ波(電磁波)」でがんを焼く手術について、日本乳癌(にゅうがん)学会は対象患者を限定するなど、研究段階の治療である臨床試験として実施するように、会員に通知しました。
学会は、「がんが取り切れない恐れがあり、長期的な成績もわからない」としています。通知に強制力はありませんが、悪質例は対応を検討するといいます。
療法は「ラジオ波熱凝固療法」と呼ばれ、7~8年前から広がっています。公的医療保険は適用されていません。直径数ミリの針を乳輪付近から刺し、高周波電流を流して患部を熱してがんを焼きます。治療は通常30分以内で済み、日帰り手術が可能。
しかし、現在の早期乳がんの標準治療は切除手術。ラジオ波だと、切ったがんの周囲の細胞を調べ、取り切れたかどうかの確認検査ができません。
ラジオ波手術後、再発した患者を診た会員からの指摘が相次ぎ、日本乳癌学会は今年、一定の治療水準にある認定施設831カ所にアンケートしました。その結果、29カ所で約1000人が治療を受けていました。うち9カ所は臨床試験以外の自由診療で行っていました。
国立がん研究センター中央病院など5施設は臨床試験として、乳がんの大きさが3センチ以下の患者にラジオ波手術をしました。その結果、38人中6人に取り残しが確認され、今年度から対象を1センチ以下のがんの患者に絞り、定期的に再発の確認などをしています。
一方、症例数が約600人と最も多い東京都内のクリニックでは32万円の自由診療で、希望があれば腫瘍が3センチ以上でも手術しています。「臨床試験だと症例が限られ、今後も自由診療で続ける」といいます。再発率は通常の手術と同じ5~10パーセント程度とされますが、2割近い患者については術後の経過が把握できていません。
ラジオ波手術後、再発した患者を診た東京都の虎の門病院乳腺・内分泌外科の三浦大周部長は、「手術後は超音波検査など画像で確認するしかなく、再発の発見が遅れる可能性がある」と指摘。学会には、「再発し、今度は無料にするといわれ不信感から患者が(大学病院に)転院してきた」などの例も会員から寄せられています。
乳がんの患者は年間約5万人に上り、年々増えています。学会調査を担当した東北大の大内憲明教授は、「がんが再発や進行した患者が他施設に駆け込むという報告が複数あり、看過できないと判断した」と話しています。
2010年10月3日(日)
■たばこ値上げ 女性の喫煙は減らず依存が重症化
増税に伴うたばこの値段が1日、大幅に引き上げられました。4年ぶりの値上げで、幅は過去最大。前日まで駆け込み需要に沸いた小売店やコンビニでは、買い求める客の姿も少なく、一転して閑散としました。
禁煙者が増え、長期的には医療費の減少が期待される一方、葉タバコ農家やたばこ各社からは悲鳴も上がり、値上げを機にたばこ離れが一層進みそうです。
たばこ各社は、値上げした1日以降、大幅な販売減を見込んでいます。1箱(20本入り)当たり110~140円という大幅な値上げショックに伴うたばこ離れに歯止めをかけようと、人気銘柄のブランドイメージや味、香りを向上させる取り組みを急いでいます。
国内たばこ首位の日本たばこ産業(JT)は、「値上げ後の価格水準でも納得して吸ってもらえるように味に磨きをかける」と説明。500億円以上を投資して生産設備を充実、たばこの風味を向上させたり、パッケージを高級感があるデザインに変更するなど、さまざまな工夫を凝らす計画です。
同時に、都市部を中心に屋外など公共の場での喫煙スペースを確保し、愛煙家が一服しやすい環境を整えたいとしています。
嫌煙の風潮が強まる中で、健康への害の指摘や相次ぐ値上げで禁煙する男性が増え、喫煙率が減少する一方で、女性の喫煙率は横ばい状態です。最近10年間は10パーセント強で推移。
JTが8月に発表した調査では、男性の喫煙率は36・6パーセントと前年比2・3ポイント減でしたが、女性は12・1パーセントと前年比0・2ポイント増えました。
30~40歳代が約16パーセント、20歳代が約15パーセント。女性の喫煙の背景には、社会進出に伴うストレス増加が指摘されていますが、最近はピンクや花柄など、女性を意識したようなパッケージの銘柄も数多く出回っています。
東京都足立区の「竹の塚保健総合センター」では2日、「アンチ・ニコチンで女子力UP↑」というタイトルの公開講座が始まりました。主に30歳代までの女性喫煙者が対象で、幼児連れの主婦を含め約20人が参加しました。
禁煙外来の医師でもある阿部眞弓・東京農工大准教授が講師を務め、「喫煙は周囲の人、胎児の健康を脅かすだけでなく、しわやシミを増やし皮膚も老化させる」と美容面の悪影響も警告。「ベランダで吸っても呼気に有害物質が残り、周囲の人に影響する」との説明に、参加した30歳代の女性は「仕事と子育てに追われ、つい吸いたくなる。軽い気持ちでは禁煙できないと指導されたので、じっくり計画したい」と話しました。
女性の喫煙率が下がらない理由について、阿部医師は出産年齢の高齢化を挙げています。「妊娠を機にやめる人は多いが、その年齢が高くなると喫煙歴が長くなる。その間にニコチン依存が重症化しやすくなる」と指摘しています。
2010年10月2日(土)
■猛暑日、全国46地点で新記録 9月、スーパー残暑裏付け
前半を中心に厳しい残暑となった9月、全国154の気象台や測候所などのうち46地点で、気温35度以上の「猛暑日」数が1961年の統計開始以来の最多記録を更新しました。1日、気象庁のまとめでわかりました。過去最多タイも9地点。
札幌市や岐阜市など9地点は、月平均気温が観測史上最高(過去タイを含む)。歴史的な酷暑だった今夏(6~8月)に続く「スーパー残暑」がデータで裏付けられました。
猛暑日数が最多となった主な地点は、甲府市と埼玉県熊谷市の10日、名古屋市の9日、奈良市と広島県福山市の8日など。熊谷市の場合、9月の猛暑日数は2002年の3日が過去最高でした。
青森県八戸市や福島県会津若松市、長野県松本市、同飯田市、広島県呉市など、「9月として初の猛暑日」を記録した地点もありました。
30度以上の「真夏日」数は宮崎県の延岡市(21日)など42地点で、最低気温25度以上の「熱帯夜」数は熊本県の牛深市(15日)など65地点で、それぞれ統計史上最多(いずれも過去タイを含む)でした。
気象庁は、夏に異常高温をもたらした太平洋高気圧の勢力が、9月に入っても強いままだったことなどが原因と分析しています。
9月上旬は北日本から西日本にかけて太平洋高気圧の勢力が強く、過去最高だった1961年の平均気温を東日本では1・4度、北日本では1・0度、西日本でも0・4度上回り、それぞれ過去最高になりました。
2010年10月1日(金)
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