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健康ダイジェスト

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■セシウム放出4京ベクレル、従来推計の2倍 気象庁気象研究所

 東京電力福島第一原子力発電所の事故によって大気中に放出された放射性セシウムの総量は、最大約4京(けい)ベクレル(京は兆の1万倍)に上るという試算結果を気象庁気象研究所などがまとめ、28日公表しました。

 旧ソ連のチェルノブイリ原発事故での放出量の約2割に相当し、従来の国内外の機関による推計値の約2倍。今回は北太平洋79地点で採った海水の放射能の実測値をもとに計算したのが特徴で、これまでの試算に比べ、より実態に近いと期待されます。

 原発事故で放出された放射性物質の3割は陸、7割は海に広がったとされるため、海のデータを考慮しないと、正確な放出量を試算することは難しいといいます。

 気象研究所の青山道夫主任研究官らは、昨年4〜5月時点の海水のセシウム濃度を測定。これをもとに、大気や海洋での拡散モデルを用いて、原発から大気中への放出量を計算したところ、セシウムの送料は3京から4京ベクレルとなりました。

 一方、第一原子力発電所の事故処理に当たっている東京電力は、放射能物質の拡散を阻止するため発電所近くの海底を厚さ60センチのセメントで覆うことを計画しており、28日、作業船から海底に試験的にセメントを流し込む工事を始めました。

 海底を覆い、たまった放射性セシウムが巻き上がって沖に広がるのを防ぎます。3〜4カ月で完了させる見込みで、覆われる海底は発電所にある6つの原子炉の取水口付近の約7万平方メートル。

 東京電力は、こうした措置によって、海底にまき散らされた放射能物質の拡散は少なくとも50年間抑えることができるとみている。

 2012年2月29日(水)

 

■健康食品の取りすぎに注意を呼び掛け 日本医師会

 日本医師会は、健康食品やサプリメントの取りすぎで思わぬ健康被害が発生することがあるとして、ホームページで注意を呼び掛けています。

 健康食品やサプリメントなどが流行していますが、日医によると、健康食品やサプリメントなどには、特定の成分を濃縮しているものや、医薬品の成分を含んでいるものが多いといいます。健康に良いかどうか、科学的な根拠は必ずしも十分ではなく、効果を期待して取りすぎると危険性が増します。また、効果を信じることにより治療を受ける機会を逃すことがあり、さらにはとてつもない高額の出費という被害もあります。

 アレルギー症状を起こしたり、服用している医薬品との相互作用で健康被害を起こしたりするものもあり、病人や子供、妊産婦、高齢者、アレルギー体質の人は、特に注意が必要だとしています。

 日医によると、健康食品には法律上の定義はありません。一般的には、通常の食品よりも「健康によい」、「健康に効果がある」、「健康の保持増進に役立つ」などの表現で、販売されているものをいいます。サプリメントのほうは、ある成分が濃縮されて、錠剤やカプセルなど、通常の食品とは違う形をして作られた製品をいいます。ただし、日本では、スナック菓子や飲料まで含むこともあります。

 日医は、体に不調を感じたら、すぐに掛かり付けの医師に相談し、医師に健康食品やサプリメントを取っていることをきちんと伝えることが大事で、また、3度の食事をきちんとバランスよく食べることが大事だ、としています。

 同会のホームページは、(http://www.med.or.jp/)。

 2012年2月28日(火)

 

■大量飲酒と喫煙習慣で塩分知覚低下 先端医療財団が調査

 日本酒換算で毎日1合以上のアルコールを摂取する男性は、1合未満の男性の3倍近い割合で、塩味を感じる機能(塩分知覚)が低下していることが、先端医療振興財団先端医療センター(神戸市中央区)などが神戸市民を対象にした調査でわかりました。

 喫煙習慣がある男性も、喫煙歴のない男性に比べて塩分知覚の低下が4・7倍で、久保田芳美研究員は「年齢のせいとあきらめていた塩分知覚の低下が、大量飲酒や喫煙を控えれば緩和できるかもしれない」と話しています。

 同センターと神戸市は2010年7月~2011年12月、生活習慣病と食事、運動などとの関係を探るため、40歳以上で循環器疾患などの持病がない市民を対象に調査を実施。塩分知覚は、濃度を変えたろ紙をなめてもらって調べました。

 2010年度に調査を受けた604人の結果を分析したところ、毎日日本酒1合(純アルコール換算で23グラム)以上のアルコールを摂取する男性72人の43パーセント、循環器疾患の危険性が低いとされる1合未満の男性77人の21パーセントがそれぞれ塩分知覚が低下。加齢の影響を除くため数値を調整した結果、1合以上の男性の割合は1合未満の男性に比べて2・9倍になりました。女性は1合以上を摂取する人が少なく、因果関係は不明。

 喫煙習慣がある男性も塩分知覚が低下している割合が高く、大量飲酒と同様、味を感じる細胞の修復に欠かせない亜鉛が大量消費されることが、関係している可能性があるといいます。同センターなどは今後最低5年間は追跡調査し、検証結果を神戸市の保健施策に反映させたい考え。

 2012年2月27日(月)

 

■有害な微小粒子状物質「PM2・5」、基準達成は3割

 環境省は24日、大気汚染物質の微小粒子状物質、いわゆる「PM2・5」について、国が2009年に環境基準を設けて以降初めて、2010年度の全国の測定結果を公表しました。

 全国46カ所の測定局のうち7割を超える34カ所で、年平均濃度が国の環境基準である1立方メートル当たり15マイクログラム(マイクロは100万分の1)を上回りました。基準値を超えたのは西日本に多く、京都や高知など数カ所では黄砂の影響で基準値を上回ったとみられます。

 環境省によると、住宅地域などの大気を測定する「一般局」34カ所のうち23カ所、幹線道路沿いの「自排局」12カ所のうち11カ所で、PM2・5の年平均濃度などが基準値を上回りました。

 PM2・5は、自動車の排ガスや工場の排煙などに含まれる微粒子のうち、直径2・5マイクロメートル以下の特に小さな粒子。吸い込むと肺の奥に届いて、肺がんなどの健康被害を引き起こす恐れもあるといいます。

 日本では、大気中に浮遊する粒子状物質のうち、人の健康に影響を及ぼす粒径10マイクロメートル以下のものを浮遊粒子状物質「SPM」と定義し、1973年にSPMについて環境基準を定めました。今日に至まで、その削減にかかわる各種対策が進められ、近年では幹線道路沿いも含めた全国の測定地点のうちおよそ9割において、その環境基準が達成されています。

 一方、近年において、SPMの中でも特に粒径が2・5マイクロメートル以下と小さいPM2・5が一定の健康影響を及ぼしていることを示す科学的知見が蓄積され、国外ではPM2・5について独立の項目として環境目標値を設定する動きがある状況を踏まえて、2009年に環境基準を設けられました。

 2012年2月26日(日)

 

■気温上昇に伴い、13府県で花粉シーズンに突入 「今年は例年並み」予想

 気象情報会社「ウェザーニューズ」(東京都港区)は24日、ある一定の花粉飛散が西・東日本の各地で確認され、今後も徐々に飛散数が増える見通しから、大阪府や愛知県など13の府県が花粉シーズンに入ったと発表しました。

 同社は全国の一般家庭や企業、病院など1000カ所に独自の花粉観測機を配置していますが、大阪府と愛知県のほか山梨県、静岡県、岐阜県、福井県、兵庫県、和歌山県、山口県、福岡県、佐賀県、長崎県、熊本県で、花粉に敏感な人に症状が出始める飛散量になっていると判断しました。

 西日本・東日本では2月初めから少しずつ花粉が飛び始めていて、今週になって強い寒気が去り、この寒さが緩んだタイミングで雨上がりに晴れて、気温が上がったため、広いエリアで花粉の飛散量が増え始めたといいます。

 今後、3月に入るころには一段と寒さが緩み、花粉の飛散量が増えていく見通しで、今シーズンの花粉の飛散量は例年並みになると予想しています。ただし、大量に観測された昨シーズンに比べると、3割程度にとどまる地点が多いと予想しています。

 2012年2月25日(土)

 

■食品中のセシウム新基準値を決定 4月から適用

 食品中の放射性セシウムの新基準値を話し合う厚生労働省の薬事・食品衛生審議会が24日開かれ、魚や野菜など「一般食品」の1キログラム当たり100ベクレルなど、現行の暫定基準値から4分の1から20分の1に大幅に厳格化する内容が正式に決まりました。コメや牛肉、加工食品など一部を除き、4月1日から適用し、出荷停止を決める目安となります。

 新基準値は食品を4区分し、「一般食品」のほか、「牛乳」と粉ミルクや市販のベビーフードなど「乳児用食品」が1キログラム当たり50ベクレル、水道水やペットボトル入りのお茶などの「飲料水」が同10ベクレル。

 設定に当たっては、食品からの被曝限度を現行の暫定規制値の年間5ミリシーベルトから1ミリシーベルトに引き下げ、各年代の平均的な摂取量などから食品区分ごとの基準値を算出しました。

 国の放射線防護に関する基準について意見を述べる文部科学省の放射線審議会は16日、新基準値を了承しつつも「必要以上に厳しい」という趣旨の答申をまとめていました。しかし、厚労省は国民からの意見募集で約8割が「厳しくすべきだ」との指摘だったことを踏まえ、より安心・安全に配慮しました。

 現行の暫定基準値では、「野菜類」「穀類」「肉・卵・魚・その他」が同500ベクレル、「牛乳・乳製品」「飲料水」が同200ベクレル。

 厚労省は、市場や消費者の混乱を避けるため一部食品に経過措置を設けました。コメは、2011年産は暫定値とし、12年産の収穫・流通が始まる時期に合わせて10月1日から新基準値とします。牛肉も冷凍保存されているものがあるため、10月1日から適用します。

 2012年2月24日(金)

 

■ギャンブルにはまる人、脳に特徴 京都大准教授らが発見

 ギャンブルにはまりやすい人の脳の特徴を、京都大の高橋英彦准教授(精神医学)らが見付けました。ストレスを受けた時に出て、ドキドキさせる脳内の情報伝達物質を回収してしまう「取り込み口」が多いというのが目立つ点で、ギャンブル依存症の予防などに役立つと期待されます。米神経科学誌で21日発表しました。

 高橋准教授らは、確率が五分五分のコイントスで、勝った場合の利益額と負けた場合の損失額を変えて、どの額なら参加するかを問う実験を男性19人で試しました。その結果、利益額が損失額の8倍でないと参加しない慎重な人から、同額に近くても参加する人まで差が出ました。

 次に、脳内の神経のつなぎ目(シナプス)から分泌された情報伝達物質「ノルアドレナリン」を回収する取り込み口の密度を、脳の画像診断装置で調べたところ、慎重でない人ほど高く、「同額ほどでも参加する人」は、「8倍でないと参加しない人」の約2倍でした。

 ノルアドレナリンはストレスを受けた時などに出て、心拍数や血圧を上げて覚醒や集中を促します。ところが、その取り込み口が多いと、ノルアドレナリンが分泌されてもすぐに減り、その効果が続かないと考えられるといいます。

 普通の人はギャンブルをする場合、損することにハッとしたり、 ドキドキしたりして慎重になりますが、取り込み口が多い人ではそうならないようです。高橋准教授は、「ギャンブル依存症になりやすいかの評価や治療薬開発に使えるのではないか」としています。

 ノルアドレナリンは、副腎からホルモンとして血液に放出され、また、シナプス伝達の間にノルアドレナリン作動性ニューロンから放出される神経伝達物質。交感神経との関係が深く、不安や恐怖を引き起こしたり、覚醒、集中、記憶、意欲、積極性をつかさどり、痛みを感じなくするなどの働きがあります。このノルアドレナリンの一部が変化したアドレナリンとともに、心拍数や血圧、血糖値を調節しています。

 ストレスとの関係も深く、神経を興奮させます。ストレス反応を引き起こすストレッサーに相対した緊急時には、自律神経の末端でノルアドレナリンが分泌され、闘争あるいは逃避反応を生じさせて、心拍数を直接増加させるよう交感神経系を動かし、脂肪からエネルギーを放出し、筋肉の素早さを増加させます。

 2012年2月23日(木)

 

■肥満の原因遺伝子の働きを特定、京大教授ら 予防・治療に期待も

 高脂肪の食事を取った場合に、脂肪を蓄積したり、肥満リスクを高めたりする遺伝子の働きを、京都大薬学研究科の辻本豪三教授(ゲノム創薬科学)の研究グループなどが突き止め、20日付の英科学誌「ネイチャー」電子版に発表しました。遺伝的に太りやすい人の診断や、肥満予防薬の開発につながるといいます。

 辻本教授らは、体内に入ってきた脂肪をセンサーのように感知する受容体「GPR120」に着目。このGPR120は腸管などに多くあり、インスリン分泌を促したり、食欲を抑えたりする働きに関係することが、すでに知られています。

 遺伝子異常でGPR120を持たない約40匹のマウスを、脂肪分が13パーセントの低脂肪食と、脂肪分が60パーセントの高脂肪食を与えるグループに分けて16週間飼育し、体重や脂肪量の変化を正常なマウスと比較しました。

 高脂肪食グループのGPR120がないマウスは、正常のマウスよりも体重や脂肪量が10~15パーセント程度増え、内臓の脂肪細胞も肥大化。GPR120の機能低下が、肥満や脂肪蓄積に大きく関係していると結論付けました。低脂肪食グループは、GPR120の有無による差は、ほぼなかったといいます。

 また、イギリスのグループと共同で、フランスの研究所が持つ欧州人約1万4600人の遺伝情報を肥満度別に解析。肥満グループの2・4パーセントにGPR120の変異(機能低下)がありましたが、非肥満グループでは変異は1・3パーセント。この遺伝子の変異が肥満リスクを高めることが明らかになりました。

 辻本教授は、「西洋型の高脂肪の食生活と遺伝子の機能低下が重なると、肥満や糖尿病のリスクが高まる。GPR120は代謝をコントロールする司令塔のような働きをしているのではないか。GPR120を刺激する薬を開発できれば、肥満の予防や治療が期待できる」と話しています。

 2012年2月22日(水)

 

■震災後の外部被曝、一般最高値は23ミリシーベルト 福島県1万人推計

 東京電力福島第一原発の事故を受け、福島県が全県民約200万人を対象に実施中の健康管理調査で、県と福島県立医大は20日、先行調査した浪江町と飯舘村、川俣町山木屋地区の住民について、東日本大震災後の4カ月間の外部被曝量(推計値)を発表しました。

 放射線業務従事経験者を除く一般住民の最高値は、23・0ミリシーベルトでした。最高値を記録したのは計画的避難区域に3か月以上住んでいた成人女性で、現在は区域外に避難中。今のところ健康への影響はみられないということですが、県は町村名を明らかにしていません。

 政府が今春に決める避難区域見直しで、年間被曝量基準の一つとなっている20ミリシーベルトを超えたのは、計2人。調査に当たった県立医大の山下俊一副学長は、「健康への影響が直ちにあるという数値ではないが、被曝量は長期に渡ってみていくことが重要だ」と説明しています。

 県によると、3町村の対象者は2万9103人で、1月末までに調査票を回収できた1万5158人のうち、今回は推計値がまとまった1万468人分(放射線業務従事経験者を含む)の結果を公表しました。内訳は、一般住民が1年間に受けても差し支えないとされる1ミリシーベルト以上が42・0パーセント、1ミリシーベルト未満が58・0パーセント、10ミリシーベルト未満が99・1パーセントでした。

 一般住民で10ミリシーベルトを超えたのは71人で、20歳未満の最高値は18・1ミリシーベルト。一方、放射線業務従事経験者の最高値は、47・2ミリシーベルトでした。

 県は昨年6月から健康管理調査を開始し、原発事故後の住民の行動記録や放射線量率マップなどを基に、放射線医学総合研究所が開発した独自のソフトを使って外部被曝量を算定しています。自然放射線量は含まれません。

 昨年12月にも、先行調査3町村の1727人分の結果を公表しており、この時の一般住民の被曝量は最高14・5ミリシーベルトでした。

 2012年2月21日(火)

 

■「無保険」など受診遅れで67人死亡 民医連「氷山の一角」

 全日本民主医療機関連合会(民医連)は20日、経済的事情で国民健康保険料を滞納して「無保険」状態になるなどの理由で受診が遅れ、死亡した人が2011年、22都道府県の加盟病院・診療所で67人いたと発表しました。

 調査は6回目で、最多の71人だった2010年に次ぐ人数。民医連は、「調査対象が限定されているので全体から見れば氷山の一角。早急な対策が求められる」としています。

 2011年は計663施設を対象に調査。受診遅れで死亡した67人のうち無保険は25人、滞納で有効期間が短くなる「短期保険証」が10人、さらに滞納が続き保険証を返して医療費全額をいったん払わなければならない「資格証明書」が7人いました。残る25人は、保険証はあっても医療費が払えなかったりした人。死因の半数余りはがんでした。

 また、同じ民医連の調査では、病院でソーシャルワーカーに「医療費の支払いが難しい」と相談した外来・入院患者のうち、20~64歳の働ける世代が57パーセントに上ったことがわかりました。

 支払い困難な理由を「働いているが低収入のため」とした人のうち67パーセントは非正規労働者で、厳しい雇用環境の影響がうかがえます。民医連は、「支払いへの不安が、病院での受診をためらうことにつながっている」と指摘しています。

 調査は2010年4月から2011年3月、民医連加盟の各地の病院や診療所など189カ所で実施。医療費相談の際、ソーシャルワーカーが3029人から聞き取った内容をまとめました。

 2012年2月20日(月)

 

■体内にチップを埋め込み、自動で投薬 米チーム成功、注射不要に

 自動的に薬を放出するマイクロチップを体内に埋め込み、骨粗鬆症患者に安全な治療をすることに、米ハーバード大などの研究チームが成功しました。16日付の米医学誌サイエンス・トランスレーショナル・メディシン電子版で発表しました。

 注射が不要になり、患者の生活の質を重視したがん治療などへの応用も期待されます。

 このチップ(13ミリ×5ミリ)は、一種の小型コンピューター。外部からの無線通信か内部のプログラムの指示で、チップの穴から薬を体内に放出する機能を持ちます。今回は骨粗鬆症の治療に応用し、骨を作る働きを活発にする注射薬テリパラチド20日分を1日分ずつ放出できるように工夫。複数のチップがUSBメモリーほどの大きさの容器に入れてあります。

 65~70歳の女性患者7人の腰回りに埋め込み、様子をみたところ、薬は想定通り放出され、副作用もみられませんでした。注射と同様に、骨を作る働きを活発にする働きがみられたといいます。

 骨粗鬆症は女性の高齢者を中心に日本国内に1000万人以上の患者がおり、近年、重症者に効果が期待される新薬テリパラチド(商品名:フォルテオ)が発売されました。しかし、ペン型の注射器を使って自分で毎日1回、皮下に注射したりする必要があります。

 日本骨粗鬆症学会理事の荻野浩・鳥取大教授は、「感染症や誤作動のリスクが抑えられるならば、埋め込みチップの技術は画期的だ」と話しています。

 米のチームは、今回の技術が抗がん剤を少しずつ投与し続けるがんの治療や、痛みを抑える緩和ケアなどにも使えるとみています。

 2012年2月19日(日)

 

■20歳代女性のやせすぎ、改善目標に 国民健康づくり運動

 厚生労働省は15日、今後10年間の健康対策となる「国民健康づくり運動」の数値目標に、20歳代女性でやせすぎている人の減少を盛り込むことを決めました。若い女性のやせすぎは、ホルモンのバランスを崩すなど健康上の問題を起こす可能性もあるため、対策が必要と判断しました。

 厚労省は同日、国民健康づくり運動の素案を専門委員会に示しました。やせている20歳代女性の割合の減少は「適正体重を維持している人の増加」という項目の中に新しく設けられます。

 2010年の国民健康・栄養調査によると、やせすぎている20歳代女性の割合は29・0パーセントで、調査を始めた1980年の13・1パーセント以降最悪でした。やせすぎとするのは、肥満の指標である体格指数(BMI)が18・5未満の女性としています。10年後までに減らす具体的な数値目標は、今後検討します。

 肥満は、メタボリックシンドロームや生活習慣病につながるため関心が高まっていますが、やせすぎもまた問題です。やせる必要がないにもかかわらず、偏った食事や極端に食べないような無理なダイエットで栄養のバランスが偏ると、病気とまではいえなくてもさまざまな症状が出てきます。

 例えば、深刻なやせすぎ状態が長期間続くと、貧血や疲労感、冷えからくる頭痛や月経不順、精神的ストレスに弱くなることにもつながります。また最近は、思春期のダイエット志向も強くなり、やせ願望から食べることを拒否し、精神的な疾患として治療が必要になる神経性食欲不振症にまで進むと、抑うつ症状や低体温、その他の深刻な合併症などが問題となっています。治療も困難なため、厚生労働省研究班は予防、早期発見などの指針を作成し、早期の発見と治療を呼び掛けています。

 無理なダイエットは、今の若い時期だけではなく、年を重ねたり、出産した子供の将来にも影響します。閉経後の女性は骨密度が低下していき、骨粗鬆症になりやすくなります。骨密度は思春期に最も増加し、それ以降はほとんど増加しませんので、若い間にしっかり骨密度を蓄えておくのが理想です。

 カルシウムやマグネシウム、ビタミンDなどが欠乏すると骨密度などに影響し、さらに女性ホルモンのエストロゲンもかかわっています。女性ホルモンのエストロゲンは骨密度を維持する働きあり、急に体重を落とすなど無理なダイエットや栄養障害があると、女性ホルモンの分泌が悪くなります。このため月経不順になること以外にも、骨密度にも影響します。

 やせの女性が妊娠した場合、妊娠中も体重が増加せず、出生時体重が2500グラム未満の低出生体重児の出生率が高いといわれています。さらに、胎児期の低栄養が将来の肥満、糖尿病、高脂血症、高血圧などにつながるリスクが高いことは、現在、広く認められています。

 2012年2月18日(土)

 

■インフル流行入り後、患者数が初めて減少 前週より10万人減も、まだ高水準

 2011年10月中旬以降、増加が続いていたインフルエンザの患者報告数が、12年2月6日〜12日の週に減少に転じました。国立感染症研究所感染症情報センターのまとめによると、この週の全国約5000カ所のインフルエンザ定点医療機関当たりの患者報告数は40・34人で、前週の42・62人を下回りました。

 30都府県で前週より減少しましたが、感染研では、流行がピークを過ぎたかどうかは、次週以降の動きを見極める必要があるとしています。

 定点医療機関以外も含む全医療機関を受診した推計患者数は約201万人で、約211万人だった前週より約10万人減りました。

 都道府県別では、大分県の60・88人が最も多く、石川県53・92人、岩手県52・63人、宮崎県52・15人、鹿児島県52・09人、埼玉県50・04人、秋田県50・00人などの順で、7県が50人以上でした。

 推計患者数を年齢層別に見ると、5〜9歳が最も多い25・9パーセントだったほか、0〜4歳と10〜14歳が15・4パーセントと、小児科が担当する14歳以下が半数以上を占めました。このほか、30歳代が10・9パーセント、60歳以上が8・5パーセント、40歳代が8・0パーセントなどとなっています。

 警報レベルを超えている保健所地域は、前週の369カ所から409カ所へと増加。注意報レベルのみ超えている保健所地域は、110カ所でした。

 1月2日〜2月5日の5週間に検出されたインフルエンザウイルスは、A香港型が8割強で、B型が1割強。2009年当時に新型として扱われ、今は季節性のウイルスの一つになったA09年型は0・1パーセント程度でした。

 一方、小中高生や大学生がインフルエンザを発症した際の学校の出席停止期間について、文部科学省は現行基準の「解熱後2日間」から「発症後5日を経過し、かつ解熱後2日間」に改める方針を決めました。タミフルやリレンザなど抗インフル薬の普及で解熱が早くなり、感染力が残ったまま登校するケースが増えているためといいます。

 発症後5日を過ぎれば、ウイルスがほとんど検出されなくなるという研究報告を踏まえました。幼稚園児は「発症後5日を経過し、かつ解熱した後3日間」とします。

 また、おたふく風邪、百日ぜきについては、症状などによって出席停止期間を細かく規定するよう見直します。関係省令を改正し、4月1日から実施する方針。

 2012年2月17日(金)

 

■厚労省、石綿労災で新基準 大量飛散職場5年で認定へ

 厚生労働省の検討会は15日までに、石綿(アスベスト)による肺がんの労災認定基準について、大量に石綿が飛散する職場で5年以上働いていた人は医学的な証拠を求めずに認定するとの報告書をまとめました。

 これまで患者団体側が、肺がんの認定者が極めて少ないと訴え、認定基準の改正を求めてきました。同省は年度内にも通達で基準を改正する予定で、今後、患者救済が進むとみています。

 肺がんは、たばこの影響も考えられるため、石綿労災として認定されるには大量の石綿を吸った証拠が求められます。現行は「石綿肺(じん肺の一種)の発症」か「石綿を吸ったことを示す胸膜プラーク(肺の外側の膜が厚くなる病変)があり、かつ石綿にさらされる作業に10年従事」などを認定基準としています。

 検討会では、現行基準を残した上で、1)胸膜プラークがなくても、石綿吹き付け作業、石綿紡織製品製造、石綿セメント製品製造といった大量に石綿が飛散する3作業の場合、従事歴が5年あれば、それだけで認定、2)広範囲の胸膜プラークが確認されれば、従事期間が1年でも認定、3)胸膜の内側が連続して厚く硬い状態になる「びまん性胸膜肥厚」を併発すれば認定、などの新たな基準をまとめました。作業従事歴だけで認定基準を明確化するのは、初めてとなります。

 労働組合や患者団体などでつくる「石綿対策全国連絡会議」によると、1995~2010年の中皮腫死者に対する認定・救済率は57・3パーセントだったのに対し、石綿による肺がん死者の認定率は約10パーセント、高く見積もっても約20パーセントにとどまるとみられるといいます。

 2012年2月15日(水)

 

■胃ろう中止も選択肢に 高齢者の終末期医療の原則、学会が改定

 日本老年医学会は高齢者の終末期医療とケアについて、胃に管で栄養を送る胃ろうなどの人工栄養や人工呼吸器の装着は慎重に検討し、差し控えや中止も選択肢として考慮するとの立場表明をまとめた。

 学会の立場表明の改定は11年ぶりで、最新、高度な医療をすべて注ぎ込むことは必ずしも最善の選択ではないと判断しました。

 終末期医療の手続きなどを定めた法的ルールはありません。この立場表明にも拘束力はありませんが、高齢者医療に携わる医師が治療方針を考える際の基本原則とするもの。具体的な手順などを定めたガイドライン(指針)を作る際のもとになります。

 まず、高齢者の終末期における「最善の医療およびケア」を「必ずしも最新もしくは高度の医療やケアの技術すべてを注ぎ込むことを意味するものではない」と明記。高齢者の心身の特性に配慮し「残された期間の生活の質(QOL)を大切にするものだ」との考えを示しました。

 その上で、高齢者が最善の医療およびケアを受ける権利の一環として「(おなかに穴を開け、管を通して水分や栄養剤を胃に送る)胃ろう造設を含む経管栄養や気管切開、人工呼吸器装着などの適用は慎重に検討されるべきだ」と指摘しました。具体的には、「本人の尊厳を損ねたり、苦痛が増えたりする可能性がある時は、差し控えや撤退を考慮する必要がある」と記しました。

 患者本人の意思表示、確認が難しい場合は、以前の言動などを家族などからよく聞いて十分に話し合い、可能な限り尊重することが重要と指摘。

 また、苦痛を緩和したり、死への恐れを軽減したりして、残された期間のQOLを高めるためにも、がんで用いられる緩和医療やケアの技術が用いられるべきだとしました。痛みや苦しみを和らげるための麻薬や最低限度の点滴の使用などを想定しています。高齢者はがん以外に、認知症、心不全、呼吸不全などの病気を患うことが多く、「死の最終局面では、がんと同じように苦痛を伴うことが少なくない」からです。

 学会は、終末期の考え方、定義についても整理しました。終末期は従来通り「病状が不可逆的かつ進行性で、近い将来の死が不可避となった状態」としています。ただし、「高齢者は複数の病気や障害を併せ持つことが多く、余命の予測が困難」として、期間は設けていません。加齢による心身の変化は個人差が大きいため、年齢による高齢者の定義もしていません。

 2012年2月14日(火)

 

■水俣病特措法の救済申請、5万件突破 1年9カ月間に

 水俣病特別措置法に基づく未認定患者の救済措置の申請件数が、2010年5月の受け付け開始から今年1月末までの1年9カ月間で、計5万160件に上ることが10日、熊本、鹿児島、新潟3県の集計で明らかになりました。

 環境省が当初予想していた2万~3万件を大きく上回り、5万件を突破しました。

 県別の累計は、熊本県3万3372件(うち手帳切り替えのみの申請1万4797件)、鹿児島県1万5584件(同1998件)、新潟県1204件(同29件)。

 熊本県が受け付けた1月の申請件数は335件、鹿児島県は154件、新潟県は35件でした。3県を合わせた1月の申請件数は計524件で、減少の兆しはみえません。申請のうち、被害者がすでに亡くなり、一時金210万円のみが遺族らに支給される死亡者申請は、熊本県16件、鹿児島県1人で、3県の累計は268件となりました。

 熊本県で月300件、3県を合わせて月500件以上を超える申請が依然として続く中で、細野豪志環境相は今月3日、申請受け付けを7月末で締め切ると発表。この申請期限の設定後、熊本県には問い合わせが全国から通常の1・5倍ほどあるといい、同県は申請をしていない被害者への救済制度の周知を強化する方針です。

 申請期限を明記したポスター約3000枚を新たに作成。県内全市町村の役場や病院、郵便局、コンビニエンスストアなどに近く掲示します。水俣市内を走るバス18台にも10日、同様のポスターを張りました。

 一方、県外へ移住した被害者に対する周知は、県人会や同窓会を通じた活動などに限られていて、いまだに救済制度を知らない人もいると見なされます。同県水俣病保健課は、「おそらく締め切りに向け申請者数は増える。点在する被害者への周知徹底は難しいが、今後はもっと広報に力を入れていく。政府も広報をしっかりやると言っている」と話しています。

 細野環境相は申請期限を7月末と発表した際、「期限を知らなかったという人が出ないよう、省を挙げて周知活動を徹底する」と発言。ポスターやチラシ配布など広報活動に取り組むほか、原因企業チッソなどに申請を社内報で呼び掛けるよう要請しており、申請件数は2月から一気に増える見込みです。

 2012年2月13日(月)

 

■東京、埼玉、鹿児島の3都県、花粉シーズンに突入

 気象情報会社「ウェザーニューズ」(東京都港区)は9日、東京、埼玉、鹿児島の3都県で花粉症に敏感な人に症状が出始める花粉飛散量を観測したとして、「花粉シーズン」に入ったと発表しました。東京都と埼玉県では、昨年より約1週間遅い花粉シーズン入りとなりました。

 2月1日ころに東京都内59カ所(都内総数66カ所)の観測地点において、花粉に敏感な人に症状が出始める花粉飛散量(10個)を越えるレベルに達し、9日の夕方にかけてもそのレベルに達すると予想しました。また、24時間以内の都内に在住する花粉症の人の症状報告を見ても、41人中の約2割の人が「ややつらい」、またはそれ以上の症状を感じ始めているといいます。埼玉県と鹿児島県でも10個以上の花粉飛散量が2月1日以降に確認され、9日もそのレベルに達すると予想しました。

 2月初めにかけて強い寒気が流れ込み、日本海側を中心に大雪になり、全国的に非常に寒い日が続きました。ただ、関東地方では2月1日ころに一時的に暖かくなったタイミングで、花粉が飛散し始めた模様です。さらに、週初めの雨がやみ、次第に天気が回復してきた関東地方では早くもスギ雄花の開花が増え始め、花粉シーズンに突入したものと思われます。

 また、2月初めまでの寒気は非常に強かったため、昨年より花粉シーズンインが1週間程度遅くなりました。ここ数日は寒さが続くため、すぐに大量飛散することはなさそうですが、スギ花粉は徐々に増加し、飛散のピークは関東地方で3月上旬、九州南部では3月中旬となる見通し。その後、ヒノキ花粉が飛散し始め、5月初めころまで花粉の飛散が続く見通しです。

 西日本においても少しずつ花粉症の症状が出始めており、寒さのピークがすぎる2月中旬には花粉シーズンに突入するエリアが増えてくる可能性が高くなってきたといいます。また、飛散量は大量飛散となった昨年よりは少なくなりますが、東北、関東、四国では例年並みとみられます。

 ウェザーニューズ社は、「油断せず、マスクの着用など早めに対策を取って欲しい」と呼び掛けています。

 2012年2月12日(日)

 

■肥満体質の改善にトマトの成分が有効 京大など発見

 トマトに脂肪燃焼効果がある成分が含まれていることを、京都大農学研究科の河田照雄教授や金英一研究員、日本デルモンテなどの研究グループが見付けました。ジュースに多く含まれているといい、メタボリック症候群の予防に トマトの新たな効能が注目されそうです。米科学誌プロスワンで10日に発表しました。

 トマトは「赤くなると医者が青くなる」といわれ、カロチンやリコピンなど抗酸化機能のある成分が含まれています。脂質異常症や糖尿病にも効くといわれており、研究グループがトマトの実とジュースの成分を精密に分析し、有効成分を探したところ、脂肪燃焼を最も促進する不飽和脂肪酸の一種(リノール酸誘導体)「13―oxo―ODA」を見付けました。

 この有効成分の粉末を高脂肪食とともに肥満体質のマウスに1カ月間与えると、与えないマウスと比べ血中や肝臓の中性脂肪量が約3割減りました。有効成分の摂取によって肝臓で脂肪燃焼に働くたんぱく質が多く作られ、血糖値が低下することを確かめました。

 人間にも同じ効果があるかどうかは現時点ではわかりませんが、実験でマウスに毎日与えた有効成分量は、人に換算すると生食用のトマトなら毎食2つから4つ、トマトジュースであれば毎食200ミリリットル中の含有量に相当するといいます。

 河田教授は、「この成分は、脂肪燃焼のスイッチをオンにする働きがあると考えられる。ジュースに多く、製造時の加熱で成分が増えるのではないか」、「脂肪をドーッと燃やしてくれるものではなく、すごくスリムになることを期待してもらっては困る」と話しています。

 2012年2月11日(土)

 

■インフルエンザの流行、長引く恐れ 1月はA香港型、2月はB型も

 国立感染症研究所は10日、1月30日~2月5日までの1週間で、全国に約5000ある医療機関から報告のあったインフルエンザの患者数は1医療機関当たり42・62人となり、前週の35・95人の報告数を大きく上回ったと発表しました。この時期では、2002年以降で最高になりました。

 例年、インフルエンザは1月下旬から2月上旬にピークを迎える傾向にあり、厚生労働省では、「関東で患者が増加しており、流行はピークを迎えつつある。手洗いやマスクなど予防対策をしてほしい」と注意を呼び掛けています。

 感染研は、この1週間で全国の医療機関を受診した患者数は約211万人に上ると推計。5~9歳が約57万人(27パーセント)、10~14歳が約37万人(17・5パーセント)、0~4歳が約32万人(15・2パーセント)、30歳代が約22万人(10・4パーセント)、40歳代、60歳以上はそれぞれ約16万人(7・6パーセント)となっています。

 14歳以下の子供がおよそ6割と、流行の中心を占めました。厚労省によると、休校や学級・学年閉鎖をした全国の幼稚園や小中高校などは8578校に上り、前の週の1・2倍になりました。

 都道府県別では、最も多かったのが福井県で64・41人。以下、岩手県58・98人、石川県55・65人、宮崎県55・36人、高知県54・21人となっています。埼玉県50・94人、千葉県50・84人、東京都45・20人、神奈川県48・86人と首都圏で急増している上、大阪府44・81人や兵庫県42・46人など近畿地方では前週に続き40人前後の状態が続いています。中国・九州地方では山口県51・64人や宮崎県55・36人、大分県45・67人など高水準が続いている。

 36都道府県で前週よりも報告数の増加がみられましたが、11県で減少に転じました。27の都道府県で、報告数が40人を上回りました。

 保健所単位の流行の目安で、大きな流行の発生・継続を示す「警報」レベル(30人)を超えている保健所地域は369カ所(47都道府県)。流行が継続している可能性を示す注意報レベル(10人)のみを超えている保健所地域は142カ所(41都道府県)になりました。

 今季は、5季ぶりにA香港型が流行しているのが特徴。1月までは、検出されたウイルスの約9割をA香港型が占めました。しかし、2月に入ってB型の割合が増えている地域もあり、流行が長引く恐れもあります。また、2009年当時に新型として扱われ、今は季節性のウイルスの一つになったA09年型も検出されています。

 感染研の長谷川秀樹・感染病理部長は、「感染でできた抗体は一定期間保たれるが、時間がたてば効力が薄れる。A香港型は久しぶりの流行で、免疫がなくなっているのではないか」と分析しています。

 2012年2月10日(金)

 

■西洋フキ食品に肝障害の恐れ 厚労省が摂取控えを呼び掛け

 花粉症対策などの健康食品に含まれる西洋フキ(バターバー)について、厚生労働省は8日、肝障害を起こす疑いがあるとして摂取を控えるよう注意を呼び掛けました。

 西洋フキを含む製品の摂取との関連が疑われる肝障害が報告されたとして、英国医薬品庁が事業者に自主回収を依頼したことを踏まえました。西洋フキには重篤な肝障害を起こす疑いのあるピロリジジンアルカロイドが含有されていますが、同庁には、ピロリジジンアルカロイドがほとんど除去されている製品との関連が疑われる急性肝炎や肝不全などが40例報告されているといいます。

 日本国内での健康被害は現時点で報告されていませんが、厚労省は近く事業者に対し、当面販売を中止するよう指導します。主に外国産のカプセル状のものが流通しており、インターネット上では「花粉症を和らげる」などと宣伝されています。

 キク科フキ属の西洋フキはヨーロッパ、北アジア、西アジアが原産で、日本国内で自生しているフキとは同属別種の植物。ヨーロッパではハーブとして扱われ、花粉症や片頭痛などに効果があるとされるものの、英国では医薬品として未承認です。

 日本では規制はなく、主に花粉症対策の健康食品として販売されています。厚労省によると、食品衛生法に基づき平成23年に事業者から輸入の届け出があった西洋フキは、カプセル剤や粉末剤などの製品で計115キロ。個人輸入分は含まれていません。

 厚労省の担当者は、「英国医薬品庁は『急性肝炎を引き起こした例もある』としている。詳細は調査中だが、西洋フキまたは西洋フキを含む食品の摂取を念のため控えてほしい」と話しています。

 2012年2月9日(木)

 

■風疹・はしか、海外型急増 旅行・出張前にはワクチン接種を

 国内の風疹やはしか(麻疹)の感染者で、海外で流行するタイプのウイルスが急増していることが、厚生労働省研究班の調べでわかりました。

 妊婦が風疹に感染すると、子供に障害が出る危険があるほか、麻疹では流産や死産につながりかねません。30~40歳代の男性は風疹の予防接種を受けていない人が多く、専門家は「海外旅行や出張前にはワクチン接種を」と呼び掛けています。

 国立感染症研究所や地方衛生研究所が2011年に国内の患者からとった麻疹ウイルス約120検体、風疹ウイルス約20検体の遺伝子の特徴を調べました。この結果、麻疹は東南アジア、欧州など海外で流行しているタイプがほぼ100パーセントを占めました。海外タイプは3年前から急増しています。風疹も大半がタイやフィリピン、ベトナムなどで流行しているタイプの可能性が高くなりました。

 風疹も麻疹も、全身の発疹や高熱などが主な症状。妊娠初期の女性が風疹に感染すると、子供に心臓病や白内障、難聴などの障害が出る危険があります。妊娠中に麻疹に感染すると、3分の1が流産・死産したという報告もあります。

 風疹は、現在は男女ともにワクチンの定期接種が求められていますが、1977年から1994年までは女子中学生のみを対象とした集団接種でした。このため、30~40歳代の男性で風疹への抗体を持っている人は7~8割にとどまります。麻疹も定期接種の接種率は90パーセント台で、30~40歳代で抗体がない人もいます。

 国立感染症研究所によると、昨年の風疹感染者は369人、麻疹感染者は434人でしたが、数年おきに流行を繰り返しています。2004年には推定約3万9000人の風疹、2008年には約1万1000人の麻疹が報告されました。2008~2011年前半に風疹に感染した792人のうち、男性の58パーセント、女性の45パーセントが20~40歳代でした。

 厚労省研究班の国立感染症研究所ウイルス第三部の駒瀬勝啓室長は、「過去に予防接種を受けても、抗体の程度が下がっている場合もある。麻疹や風疹は輸入感染症とも言え、海外に行く前や、妊娠を希望する人は、男女ともにワクチン接種を勧める」と話しています。

 2012年2月8日(水)

 

■目の難病の網膜色素変性症、原因遺伝子特定 国立成育医療研究センターなど

 視野や視力が悪化していく難病「網膜色素変性症」の日本人の患者では、7人に1人に相当する高頻度で特定の遺伝子に異常があることを、(東京都世田谷区)と浜松医科大(静岡県浜松市)の研究チームが発見し、7日までに発表しました。近く、米科学誌プロスワン電子版に論文が掲載されます。

 欧米人の患者ではほとんど異常がないことがわかっており、チームの東範行・同研究センター細胞医療研究室長(眼科学)は、「早期発見のための検査や新しい治療法につながる」と話しています。

 研究チームによると、網膜色素変性症は早ければ幼児期に発症。通常はゆっくりと症状が進行し、数十年で失明に至ります。国内では4000~8000人に1人が発症するとされ、遺伝性の疾患といわれていますが、根本的な治療法は見付かっていません。

 研究チームは網膜色素変性症を発症した国内の患者と健康な人の計数百人からDNAの提供を受け、視覚に関係するさまざまな遺伝子の配列を比較。患者の約15パーセントで、視細胞を作る働きのある「EYS」という遺伝子が変異していることが判明し、主要な原因遺伝子とみられるといいます。

 このEYS遺伝子は多くの動物が持ち、網膜の視細胞の構造に関与しています。変異によって正常な細胞ができなくなり、網膜色素変性症になるとみられます。

 欧米の患者では、EYS遺伝子の変異が多いという報告はないといいます。アメリカとイギリスでは2007年から、常染色体劣性遺伝を示す原因遺伝子の一つであるRPE65の変化で起こり、子供のころから発症する重症な網膜色素変性症の遺伝子治療が、少数の患者で試みられています。安全性の確認とその効果について検討されていて、有効性が期待できそうであるという報告がされています。

 日本でも原因遺伝子の候補はほかにも知られていますが、実際に変異がある患者の割合は1パーセントに満たず決め手に欠けていました。

 なお、網膜色素変性症は、厚生労働省の事業の一つである医療費助成制度の適応疾患です。矯正視力が0・6以下で視野の障害がある場合、本人の申請があれば医師が難病患者診断書、網膜色素変性臨床調査個人表を記載します。それを管轄の保健所に提出し、基準を満たすと判断されれば、医療費の助成を受けることができます。

 2012年2月7日(火)

 

■歯の再生に光、iPS細胞から歯の構成細胞を作る技術を開発

  岩手医大解剖学講座発生生物・再生医学分野の原田英光教授(50歳)と同大歯学部先進歯科医療研究センターの大津圭史研究員(38歳)は、万能細胞と呼ばれる人工多能性幹細胞(iPS細胞)から、歯を構成する象牙質のもととなる「象牙芽細胞」を作り出す技術を開発しました。研究成果は、米国の学術雑誌(オンライン版)に発表されました。

 iPS細胞は皮膚などの体細胞に少数の遺伝子を導入し、さまざまな細胞に分化する能力を獲得した細胞で、再生医療や創薬への応用が期待されています。さらに岩手医大の研究が進めば、患者自身の細胞から作ったiPS細胞を用いて歯を再生するなど新たな治療法の確立につながる可能性もあり、注目を集めそうです。

 歯は表面のエナメル質と内側の象牙質で成り立ち、それぞれエナメル芽細胞、象牙芽細胞から作られます。原田教授らは2007年ごろから、iPS細胞から象牙芽細胞を作ることに取り組み、2011年12月に技術を世界で初めて確立しました。

 同様にエナメル芽細胞を作る技術開発に取り組む東北大歯学研究科の福本敏教授との共同研究で、使用したiPS細胞は開発者の山中伸弥教授がいる京都大が作りました。

 原田教授らは、iPS細胞に成長を促す各種組み合わせの栄養素を与えて培養し、象牙芽細胞へと性質を変える分化を図りました。試行錯誤の末、いったん前段階に当たる「神経堤細胞」へ分化させ、さらに象牙芽細胞へ分化する2段階方式を取って成功。

 2段階の分化の際に与える栄養素は、全く別な組み合わせでした。大津研究員は、「適した栄養素の組み合わせを見付けるのに最も時間がかかった」と苦労を振り返っています。

 また、この象牙芽細胞はマウスに移植しても、がん化しないことから、再生医療に用いる際の安全性も示唆されました。

 現在は、原田教授らの知人で歯の研究家として知られるフランス・ストラスブルグ大のハーブ・ルソー教授の下、この象牙芽細胞と既存のエナメル芽細胞を組み合わせて歯を作る実験もスタートしています。

 今後、エナメル質も含めてiPS細胞から歯を作り出す技術が完成すれば、iPS細胞から身体器管を作る世界的にも例のない成果となります。

 原田教授は、「iPS細胞で本物の歯を再生できれば、人工物を使うインプラントなどと違い血管や神経が通じ、遺伝的に歯ができない患者の治療法などにも結び付けられるだろう」と意義を語っています。

 2012年2月6日(月)

 

■猛威のインフルエンザ 感染の機会を減らし、流行の拡大を防ぐ工夫を

 インフルエンザが猛威を奮っています。患者の報告が比較的少なかった首都圏でも、東京都と神奈川県が警報を発令するなど一気に広がっており、学級閉鎖を行う小中学校も増えています。

 国立感染症研究所によると、1月29日までの1週間で全国約5000の定点医療機関からの患者報告数が1医療機関当たり35・95人となり、3週連続して全都道府県で患者報告数が増加している状態で、すでに警報レベルの30人を超え、人口の多い首都圏や近畿圏ではさらに拡大する恐れもあります。

 今シーズンの流行の中心はA香港型ウイルスで、患者の9割からウイルスが検出されており、その患者6割超は14歳以下といいます。1968年に香港を中心に大流行したことから名付けられたA香港型ウイルスはほかのウイルスに比べて、乳幼児や高齢者を中心に重症化しやすいといわれています。通常は約1週間で軽快しますが、重症化すると子供はまれに急性脳症を、高齢者や免疫力が低下している人は肺炎を起こし、死に至ることもあります。

 日本では過去5年ほどA香港型の大きな流行がなく、とりわけワクチンの予防接種を受けていない5歳以下の乳幼児には免疫がないので、注意する必要があります。

 ワクチンを接種しておくと重症化を防ぐのに有効とされるものの、ウイルスの侵入を防ぐことはできないので、かからなくなるわけではありません。接種から効果が現れるまで通常約2週間程度かかり、その後は約5カ月間に渡って効果が持続しますが、まだ打っていない人の当面の対策には間に合いません。

 飛沫や接触で感染するため、こまめに手洗いをする、人込みはできるだけ避ける、外出時にはマスクをするといった予防策で感染の機会を減らすことが大切です。のどの粘膜の防御機能が低下しないよう加湿器などを使って、適切な50~60パーセントの湿度を保つことも効果的。体の抵抗力を高めるため、十分な休養とバランスのとれた栄養摂取を日ごろから心掛けることも大切です。

 また、急な発熱や体がだるいといった症状がある人は、早めに医療機関で診てもらえば、適切な治療が受けられます。無理をせず仕事を休むなど、休養を取ることも重要で、本人の苦痛を和らげるだけでなく、職場や通勤の電車の中で、他の人に感染する機会を減らし、結果として流行の拡大を防ぐことにもなるからです。

 やむを得ず外出したとしても、咳やくしゃみをする時にはハンカチや衣服の袖で口を押さえるといった咳エチケットは守りたいもの。手のひらで直接、口を押さえ、ウイルスの付いた手で他のところに触ると、かえって感染を広げてしまうので、注意する必要があります。

 病院などの施設には、体が弱っていたり、高齢、年少といった、インフルエンザによって重症化するリスクが高い人が多いため、見舞いに行こうとする人が熱やせきが出るなど、具合が悪ければ、控えるべきです。周囲にインフルエンザ患者がいる場合も、自分には症状が出ていなくても、すでに感染していて、潜伏期の可能性があるので同様です。

 2012年2月5日(日)

 

■アルツハイマー治療に光 米研究チーム、原因物質拡散の仕組みを確認

 アルツハイマー病の原因の一つとされる異常なたんぱく質が脳内で感染症のように拡散していることが、米コロンビア大などによるマウスの実験でわかりました。この挙動を止める物質ができれば、治療法の開発につながる可能性があります。1日付米科学誌「プロスワン」の電子板に論文が掲載されました。

 このアルツハイマー病は、ベータアミロイドやタウと呼ばれるたんぱく質の異常なものが、脳の中の記憶に関係する部位である海馬や側頭葉、頭頂葉するようになり、神経細胞を壊していくことが原因と考えられています。

 論文によると研究チームは、人間のタウを持つマウスを遺伝子操作でつくって脳を観察。生後10~11カ月の若いマウスでは情報の通り道である嗅内野(きゅうないや)と呼ばれるところの神経細胞にタウがたまっていましたが、22カ月以上のマウスでは、嗅内野だけでなく、神経細胞から神経細胞へ「ジャンプ」しながら脳回路を移動し、記憶に関係する海馬の神経細胞にもタウが広がっていることを確認しました。

 論文を共同執筆したコロンビア大のスコット・スモール教授(神経学)は、「アルツハイマー病の最も効果的な治療法は、がんと同様に対処することかもしれない。つまり早期発見、早期治療によって拡散のチャンスを与えないことだ」と述べ、タウが神経細胞から神経細胞へと伝わるのを早期に止められれば、進行を止めることができるとしています。

 現在、このアルツハイマー病の治療法には、進行を遅らせる医薬品の使用しかありません。2種類のたんぱく質を壊すワクチンを作る研究も進んでいますが、効果は確認されていません。

 国立長寿医療研究センター分子基盤研究部の高島明彦部長は、「ヒトの脳内でタウがどのように広がっているかまだわからないが、タウの抗体を使って脳内のタウの量を減らせば治療が可能になるかもしれない」としています。

 アルツハイマー病は、加齢、老化と深い関係があり、65~69歳での発症はわずかですが、70歳以降、年を加えるとともに出現する頻度が高まっていきます。男女比は1:3で、女性に多くみられます。大脳皮質という知能活動の中核が第一義的に侵されることから、すべての認知機能が一様に低下し、その程度も大きくなります。加えて、自分が病気であるという病識が早くからなくなり、多幸性、多弁であることが多くみられます。

 もう一つ重要なことは、人格の崩壊といって、全く人柄が変わってしまうことが多い点です。いつかわからないほど発症はゆっくりで、進み方も徐々であり、かつ絶えず進行性であるのが、特徴といってよいでしょう。 

 2012年2月4日(土)

 

■インフルエンザ猛威、過去10年で最悪の地域も 大都市圏で拡大懸念 

 国立感染症研究所がまとめた全国約5000の定点医療機関のインフルエンザ患者調査で、1月23~29日の1週間に報告された患者数は全都道府県で3週連続で増え、1医療機関当たり35・95人と、昨シーズンの最高値だった31・88人を超えたことが3日、わかりました。地域によっては、過去10年で最悪の状況になっています。

 厚生労働省によると、現時点までの報告数は過去10年の傾向と大きく変わっておらず「例年並み」といいます。ただ、流行が遅れていた関東も増えており、今後東京などの大都市圏での拡大も懸念されるなど、患者数の増加は続くとみられます。

 この1週間に全国の医療機関を受診した患者数は、推計で約173万人に上り、前の週の約111万人よりも62万人増加しました。

 都道府県別では、1医療機関当たりの患者数は福井県が74・88人、高知県が66・69人、愛知県が60・48人などとなっていて、高知県のほか、岐阜県と大阪府では過去10年で最悪の状況になっています。

 また、インフルエンザの患者数は関東地方でも前の週の2倍以上に増え、群馬県を除く全域で大きな流行の発生が疑われる「警報レベル」の地域が拡大しています。国立感染症研究所によりますと関東1都6県に1400ある定点医療機関から報告された患者数は、この1週間で4万8092人と前の週の2万2240人の2・2倍に増えました。

 1医療機関当たりの患者数は千葉県が38・06人、埼玉県が37・38人、神奈川県が34・24人、東京都が32・23人、栃木県が24・97人、茨城県が24・42人、群馬県が12・21人となっています。

 全国のデータでは、流行の中心は引き続き14歳以下の子供ですが、60歳以上の患者も11万人に上るとみられ、去年の同じ時期に比べ1・4倍に増加しています。

 今シーズン、インフルエンザの集団感染で患者が死亡したケースは、茨城県や山梨県など5つの県の合わせて6カ所の病院や老人福祉施設で起きており、80歳代から90歳代の8人が死亡しています。今シーズンのように、A香港型のウイルスでインフルエンザが大きな流行になると、ふだんより高齢者の死亡が増える傾向にあることから、十分な注意が必要とされます。

 国立感染症研究所の安井良則主任研究官は、「高齢者の場合、インフルエンザが引き金になって、肺炎になったり、持病が悪化したりすることが多く、感染が広がると死亡する人が増える恐れがある。病院や高齢者施設では、職員や見舞いに訪れる家族からウイルスが持ち込まれるので、症状のある人は施設に立ち入らないなど、感染防止対策を徹底してほしい」と話しています。

 2012年2月3日(金)

 

■血圧測定は両腕で測るほうが有効 左右の差、血管の病気発見に有効 

 血圧は片腕より左右の腕でそれぞれ測ったほうが、心臓病ひいては死亡リスクを正確に測定できるという研究結果を、英ペニンシュラ医科歯科大などのチームが30日付で、英医学誌ランセット(電子版)に発表しました。左右で差が大きいと、手足や脳などの血管の病気の危険が高いことがわかるといいます。

 世界保健機関(WHO)は、最高血圧(心臓が収縮する時の血圧)が140以上、最低血圧(心臓が拡張する時の血圧)が90以上を高血圧と定義しています。これまでの研究で、高血圧は心臓病、脳卒中、腎臓病、認知症のリスクを高めることが判明しています。

 英国の研究チームは、両腕間の最高血圧の差異のデータがある28の医学文献を調査し、この差異は心臓病などのリスクの有効な指標になり得ることを見いだしました。

 左右の最高血圧の差が15ミリHg以上あると、手足に血液を供給する動脈が狭くなったり、動脈硬化が進んだりする危険が2・5倍になり、認知症などにつながる脳血管障害が起きている危険も1・6倍になっていました。また、心臓などの循環器の病気で死亡する危険も1・7倍でした。重要なのは血圧の差で、左右の腕のどちらが高いかは人によって異なるといいます。

 研究チームは「臨床的に意味がある左右の差の理由はよくわからない」としつつ、今回の結果は、左右の血圧の差は手足の血管の病気によるとする欧州高血圧学会と欧州心臓学会の見解を裏付けるとしています。

 現在、動脈硬化を調べる方法として足首で測った血圧と腕で測った血圧の比較が行われていますが、研究チームは両腕の血圧測定を標準にすべきだとして、検診などに取り入れることを勧めています。

 日本では、足首と腕の血圧を比べて算出するABI検査に関心が集まっています。動脈硬化の危険度がわかるといい、無料測定会を開いている神奈川県の川崎医科大付属病院の種本和雄副院長(心臓血管外科)によると、足首の血圧は通常、腕の血圧と同じか少し高いくらい。しかし、心臓から足首までの血管で動脈硬化が進むと、血液の流れが悪くなり、血圧が下がります。これが閉塞性動脈硬化症で、足にしびれや冷え、歩行による痛みといった症状が出やすくなるといいます。

 ABI検査は、ベッドに横になり腕と足首の血圧を同時に測るだけで、痛みもなく5分程度で終わります。足の血圧値を腕の血圧値で割って計算し、0・9以下だと動脈硬化が進んでいると診断されます。高齢者や喫煙者のほか、コレステロールや尿酸値が高い人などは、動脈硬化になりやすいといいます。

 ABIを測る機器は、心臓などの循環器を診察する医療機関に多く準備されており、神奈川県内では約700の医療機関にあります。検査を希望する場合はまず、掛かり付け医や健康診断の受付で問い合わせます。

 種本医師は、「動脈硬化は心筋梗塞や脳梗塞も引き起こす。ABIで動脈硬化を早く見付け、生活習慣を見直してほしい」と話しています。

 2012年2月2日(木)

 

■受動喫煙を削減する数値目標を設定 飲食店で被害15パーセントへ

 厚生労働省は1月31日、がん予防や健康対策として、2022年度までに受動喫煙を削減する数値目標を初めて決めました。飲食店で月に1回以上、受動喫煙をしたと回答した成人の割合は現在、50・1パーセントで、これを15パーセントに減らすことを目指します。

 受動喫煙の削減目標値は、この日に発表した2010年の国民健康・栄養調査の結果をもとに設定しました。受動喫煙の被害に遭った人の割合から、喫煙者の中でたばこをやめたいと考えている人の割合を考慮して目標値を定めました。家庭では、受動喫煙の被害が「ほぼ毎日」と答えた10・7パーセントを3パーセントに減らします。行政機関や医療機関では、0パーセントとします。

 厚労省は、職場での受動喫煙の防止策として、飲食店などを営む中小企業に喫煙室の設置費用の一部を助成しています。今後も喫煙率を減らすとともに、飲食店の全面禁煙を後押しするなどして、目標達成を目指します。

 また、成人の喫煙率は、男性32・2パーセント、女性8・4パーセント。全体で19・5パーセントと初めて20パーセントを割りました。このうち、37・6パーセントがたばこをやめたいと考えていることから、これを差し引いて、2022年度までの喫煙率の削減目標値を12・2パーセントとしました。未成年の喫煙は、継続して「なくす」ことを目標としました。

 喫煙率の目標値を定めることについて、小宮山洋子厚労相は「健康を預かる厚労省として盛り込むべき数値。各省と調整したい」と必要性を強調し、「無理がない数値で、ご理解いただけると思う」と述べています。

 また、同省はすでに、子供の患者や、呼吸器疾患や生活習慣病などの大人が通う病院・診療所について、屋内を全面禁煙にしていない場合は診療報酬を減額する方針を固めています。禁煙化を徹底するための誘導策で、時期は検討中ですが、2012年度中にも実施する見通し。

 屋内が全面禁煙の病院は2008年時点で、全体の63・8パーセント。残る35パーセントは、喫煙室などを設ける分煙で対応しています。成人19・5パーセントを占める喫煙者にも、一定の配慮をしているとみられます。

 同省は2010年2月、「受動喫煙の健康への悪影響は明らか。公共の場は原則、全面禁煙であるべきだ」との通知を自治体に出しました。昨年には同省の補助を受けた研究報告でも、「人の出入り時に喫煙室から煙が漏れる」「喫煙者の肺に残った煙が徐々に吐き出される」といった理由から、「分煙では受動喫煙を防げない」との指摘があり、特に患者が集まる医療機関には、診療報酬を使って全面禁煙を促すことにしました。

 具体的には、今年4月の診療報酬改定に合わせて、施設基準に屋内全面禁煙を盛り込み、これを満たしていない施設は報酬を減らします。対象は内科や小児科、呼吸器内科など幅広く、大半の医療機関が含まれる見込み。

 2012年2月1日(水)

 

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