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健康ダイジェスト

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■葉と落ち葉除去で放射線量低下 農水省が森林の除染指針

 農林水産省は30日、東京電力福島第一原子力発電所の事故に伴う福島県内の住民の被曝を防ぐため、住宅街の近くにある森林では、放射性物質が蓄積しやすい落ち葉や葉などを取り除くことで、放射線量を最大でおよそ50パーセント引き下げられるとする具体的な除染方法の指針をまとめ、正式に発表しました。

 福島県内には、住宅街の近くにある森林から強い放射線が出ている地域があり、住民の被曝を防ぐ上で、こうした森林の除染をどのように進めるのかが大きな課題となっています。

 除染方法の指針では、住宅街の近くの森林は入り口から20メートル程度の範囲で落ち葉を取り除くほか、木の葉も木の高さに応じて一定程度取り除くと効果的だとしています。

 農水省の発表によると、原発から約60キロメートル離れた福島県大玉村の杉林のスギ3本について、木全体と地表から15センチの深さまでの土を合わせて調べたところ、木の葉に放射性セシウムの38パーセント、落ち葉に33パーセントが含まれていました。また、土壌からは17パーセント、枝から11パーセント、樹皮から1パーセントが検出されました。

 同県郡山市内の森林で実際に落ち葉や下草を取り除いたところ、高さ1メートル地点の放射線量が約2割下がりました。木の葉も合わせて取り除くことで、木を伐採したり土壌をはがしたりしなくても、放射線量をおよそ20パーセントから最大でおよそ50パーセント引き下げる効果が見込めるとしています。

 今後、この除染方法の指針に沿って、福島県内では、集めた落ち葉などの仮置き場を確保した上で、住宅街の近くにある森林での除染作業が本格的に始まる見通しです。

 2011年9月30日(金)

 

■大腸がんの予防に葉酸が効果 愛知がんセンター研究所

 ホウレンソウ、春菊、小松菜、レバーなどに含まれる「葉酸」を多くとって飲酒しない人ほど、大腸がんになりにくい――。そんな調査結果を、愛知県がんセンター研究所の研究チームがまとめました。

 葉酸は、緑色野菜や肝臓に含まれるビタミンBの一種。欧米人を対象とした研究で、大腸がん予防効果が知られていました。日本人に同じ効果があるのか、同研究所の疫学・予防部が検証しました。

 がんセンターを受診した4974人に、書き込み式で質問しました。内訳は大腸がん患者が829人、がんではない人が4145人でした。ふだんの食事を詳しく尋ね、回答から個人の1日当たり葉酸摂取量を推定。摂取量が少ない人から多い人までをほぼ同じ人数で4グループに分け、各グループのがん患者の割合などを分析しました。

 この結果、摂取が最も少なかったグループにおける大腸がんのなりやすさ(リスク)を指数で1とした場合、摂取が最も多いグループの大腸がんリスクは0・72になりました。

 さらに、大腸がんのリスクを上げるとされる飲酒との関連も調べました。日常的に酒を飲まないとした約2100人を同じ方法で分析したところ、葉酸の摂取が最も多い人のリスクは0・56に下がりました。葉酸を多く摂取し、かつ飲酒しない人が大腸がんになりにくい傾向がはっきりみられました。

 研究チームの細野覚代主任研究員によると、効果があると考えられる1日当たり葉酸摂取量は、葉っぱで換算すると約150グラム。「鍋料理なら1食分。とるのが不可能な量ではないので、意識して食べて予防につなげてほしい」と話しています。

 研究チームは、来月3〜5日に名古屋国際会議場(名古屋市熱田区)で開かれる日本癌学会学術総会で、調査結果を発表します。

 2011年9月29日(木)

 

■認知症の入院短縮、半数は2カ月で 厚労省が目標値

 厚生労働省は27日、認知症患者の精神科病棟への入院が長期化しているとして、2020年度までに入院患者の半数を2カ月以内に退院させるという目標値を決めました。厚労省の有識者検討会が報告書をまとめ、大筋で合意しました。

 08年の調査では、認知症で精神科に入院する患者の半数が退院するまで、6カ月かかっていました。しかし、入院が3カ月以上に及ぶと、入院前にいた施設に別の人が入所して戻れなくなることが増えたり、患者の心身の機能が低下したりして、再び地域や自宅で受け入れることが難しくなるといいます。また、問題行動の多くは、治療により1カ月程度で治まるとの意見もあります。

 有識者検討会の報告書は、「入院を前提とするのではなく、地域での生活を支えるための精神科医療とする」と明記。入院期間の目標値を設定し、病状が安定していて医療機関で対処する必要性が低い軽度患者で、入院期間の短縮を図ります。

 現状では、在宅介護を支援する体制が弱く、軽度患者でも退院が進まないため、訪問看護や訪問介護を強化し、老人保健施設の活用などで受け皿整備を進め、退院を促すとしています。

 アルツハイマー病などが原因の認知症で精神科に入院する患者は、08年に5万2000人。1996年の約2倍で、高齢化の進行で急増しています。

 厚労省などは、2030年の認知症高齢者数を350万人から420万人と推計しており、対策が急務になっています。

 2011年9月28日(水)

 

■乳幼児のRSウイルス感染が拡大 04年以来最多ペース

 冬場にかけて流行し、乳幼児に肺炎などを引き起こすRSウイルス感染症の患者が、この時期としては異例のペースで増えていることから、国立感染症研究所は、これまでで最も大きな流行になる恐れがあるとして、手洗いなどの対策を徹底するよう呼び掛けています。

 RSウイルス感染症は、毎年、秋から冬にかけての長い期間に渡って流行し、12~1月がピークとされます。主に乳幼児がかかり、発熱やせきなどの呼吸器症状を起こし、初めて感染した場合は肺炎や脳症を起こして重症化することがあります。

 国立感染症研究所によりますと、今月18日までの1週間に、全国およそ3000の小児科の医療機関から報告された患者の数は1414人で、去年の同じ時期の2倍近くになっています。9月のこの時期としては、2004年の調査開始以降で最多。都道府県別にみると、大阪府が205人で最も多く、宮崎県が160人、東京都が126人、福岡県が100人で、関西や九州などを中心に患者が多くなっています。

 国立感染症研究所の安井良則主任研究官は、「この病気は風邪と間違われやすいが、熱が下がってもせきが続き、悪化しているようであれば、早めに医療機関を受診して重症になるのを防いでほしい。また、手洗いのほか、せきやくしゃみを人に向けないようにするなど感染対策を徹底してほしい」と警鐘を鳴らしています。

 RSウイルスは呼吸器合胞体ウイルスともいわれ、風邪の原因となる一般的なウイルスの一つ。乳幼児が最も感染しやすいウイルスで、1歳の誕生日までに70パーセントの乳児が初感染し、2歳までにはほとんどの乳幼児が感染するとされます。通常、健康な乳幼児が感染した場合、38~39度程度の発熱、鼻水、せきなどの症状が出て、多くは8~15日ぐらいで治まります。発熱症状がないこともあります。

 ただ、RSウイルスは一度感染しても持続的な免疫ができにくく、予防ワクチンや特効薬もないのが現状。このため、RSウイルスに感染しないよう、手洗いを徹底し、接触感染を防ぐため流行期に子供が集まる場所になるべく行かないなど、ふだんの生活で対策を取ることが重要になります。

 特に重症化しやすいのは、生後6カ月以内の乳児や早産児、慢性肺疾患や先天性心疾患などの基礎疾患を持っている乳幼児とされます。重症化を防ぐ手段としては「シナジス」と呼ばれる抗体製剤の投与がありますが、100ミリグラムで約15万円と費用が高いのがネック。ただ、29~35週の早産で6カ月以下の新生児や乳児などは健康保険が適用され、重症化のリスクが高い早産児には投与が勧められます。

 2011年9月27日(火)

 

■10万ベクレル超も管理型処分場での埋め立て容認へ 環境省

 環境省の有識者検討会は25日、東京電力福島第一原発事故で放射性物質に汚染されたがれきやごみの焼却灰のうち、これまで一時保管するよう求めていた放射性セシウムが1キログラム当たり10万ベクレルを超えるものについて、外部に放射線が漏えいしない対策を取った上で管理型最終処分場での埋め立てを容認する方針で一致しました。

 10万ベクレル超の焼却灰について、環境省は有害な重金属などを含む産業廃棄物用に、周囲をコンクリート壁で覆って公共の水域および地下水と完全に遮断する遮断型最終処分場での埋め立てを軸に検討してきましたが、委員から「処分場の作業員や周辺住民の安全が確保できれば、管理型最終処分場での埋め立てでも問題ない」との指摘があったといいます。

 地下水への汚染防止策などを講じることで、安全な処理が可能と判断したもので、具体的には、焼却灰をセメントで固めたり、屋根付きの処分場を利用したりすることで水との接触を防ぎ、セシウムが流出しないようにします。埋め立て後は、処分場の排水や周辺の地下水の監視などを行います。

 コンクリート製の箱に詰め、全体を覆土する方法なども想定されており、来月の次回有識者検討会で詳細な埋め立て方法などを議論します。

 2011年9月26日(月)

 

■原発の汚染水、3月26日から流出 東電の推定より早く

 東京電力福島第一原発事故で発生した放射性セシウム137などの放射性物質を含む汚染水は、3月26日に海への流出が始まり、4月中旬ごろまで原発近くの沿岸に高濃度でとどまった後、海の渦に流されて拡散したとの解析結果を、電力中央研究所(東京都千代田区)の津旨大輔上席研究員らが25日までにまとめました。

 東電は「流出は4月1日から」としていますが、もっと早い段階から汚染水が漏れていた可能性が出てきました。また、津旨研究員らは海への流出量を3500テラベクレル(テラは1兆)と推計、東電発表の3倍以上となりました。

 東電による海水の測定データも含めて調べると、少なくとも5月末まで漏れ続けたと判断しました。ほかに、大気中へ放出された後に海に落ちた量が1万テラベクレル程度あるとみており、総量は1万3500テラベクレル。過去の核実験で北太平洋に残留している量の十数パーセントに当たるといいます。

 また、電力中央研究所と気象研究所(茨城県つくば市)の研究チームがまとめたところでは、福島第一原発事故で海に流出した放射性セシウム137は、黒潮に乗って東へ拡散した後、北太平洋を時計回りに循環し、20~30年かけて日本沿岸に戻ると予測されます。

 2011年9月25日(日)

 

■石巻市の被災者、4割に睡眠障害の疑い 厚労省の健康調査

 東日本大震災で被災した岩手、宮城、福島の3県の3万人を10年間追跡する健康調査で、厚生労働省は22日、先行していた宮城県石巻市沿岸部の結果を発表しました。

 被災者の43パーセントで睡眠障害が疑われたほか、30パーセント以上が「震災を思い出すと動揺する」などと回答し、不安や抑うつ症状が認められる割合も全国調査よりも高くなりました。看護師らの自宅訪問などの対策を講じる方針。

 調査は6月下旬から8月上旬にかけて実施。津波で深刻な被害を受けた石巻市の雄勝地区と牡鹿地区に住民票のある18歳以上の3009人のうち、健康診断やアンケートに応じた1399人分を集計しました。平均年齢は62・6歳で、40歳以上が9割を占めました。

 この結果、睡眠時間は6時間未満が35パーセントを占めました。過去1カ月間に少なくとも週3回以上経験したこととして、寝付きに時間がかかった人が53パーセント、夜間に目が覚めて困っている人が39パーセントでした。

 これら8つの設問への回答を数値化して判定すると、睡眠障害の疑いは43パーセントに達しました。同じ国際基準を使った別の全国調査の29パーセントに比べ、大きく上回りました。

 喫煙や飲酒についても、震災後に摂取量が増えた人がみられ、喫煙の本数が増えた人は95人で全体の6・8パーセント、飲酒量が増えた人は100人で全体の7・1パーセントでした。

 被災地では全国から派遣されていた心のケアチームが撤退の時期を迎えていますが、健康調査を担当した辻一郎東北大教授は「大規模災害は発生から3~6カ月が精神的に落ち込む時期。今後も心のケアが必要だ」と指摘しています。

 2011年9月24日(土)

 

■肥満人口が栄養不足人口を上回る 赤十字社2011年報告書

 国際赤十字社(本部・ジュネーブ)は22日、肥満人口が栄養不足人口を上回ったとする統計をまとめた2011年版「世界災害報告」を発表しました。食糧分配の不平等に焦点を当てた同報告書によると、2010年の肥満人口は15億人で、栄養不足人口は9億2500万人でした。

 赤十字社アジア太平洋支部ディレクターのジャガン・チャパガイン氏は、インド・ニューデリーで会見し「今や栄養過多による死者は栄養不足による死者を上回っている」と述べ、「栄養問題を両刃のスキャンダル」と表現しました。

 同氏によると、栄養不足の問題は、世界的な食糧不足だけでなく、分配の偏りや食料の廃棄、食糧価格の高騰などに起因しています。

 食糧価格は今年に入って世界的に高騰しており、08年の食糧危機時の暴動や政情不安の再燃が懸念されています。赤十字社は、価格高騰の背景には主に投機的取引と気候変動があるとみています。

 赤十字社は、新たな食糧価格の高騰が深刻な飢餓や栄養不足をもたらし、最貧層をさらに困窮させることになると警告を発しました。

 2011年9月23日(金)

 

■24時間巡回サービス、月単位で定額払い 厚労省方針

 厚生労働省は22日、高齢者の在宅介護を支援するため2012年度に新設する「24時間地域巡回型サービス」で、料金体系を1カ月単位の定額払い方式とする方針を社会保障審議会介護給付費分科会で示しました。12年度の介護報酬改定に盛り込みます。

 地域巡回型サービスは、一人暮らしや重度の要介護者でも住み慣れた地域で暮らせるよう、定期的に介護や看護のサービスを提供するシステム。心身の状態に応じて電話で相談し、追加サービスを求めることもできます。

 サービスを受けるたびに料金を支払う仕組みだと、費用がかさむのを恐れて利用を控える可能性もあることから、定額払いを採用することにしました。

 また、24時間地域巡回型サービスでは、原則として医師や看護師にしか認められていないたんの吸引や経管栄養は、研修を受けた介護職員が実施できるようにします。

 2011年9月22日(木)

 

■NASAの人工衛星、23日落下へ 破片532キロが燃え尽きぬ見込み

 米航空宇宙局(NASA)は21日、落下が見込まれる長さ約10メートル、重さ約6トンの古い人工衛星について、落下が米時間で23日になるとの見通しを発表しました。落下地域は依然としてわからないとしています。

 1991年9月にスペースシャトル「ディスカバリー」で宇宙に運ばれ、高度約580キロの軌道に投入された大気観測衛星「UARS」で、2005年に運用を終え、21日時点では高度200キロ付近を周回し、少しずつ落ちてきています。

 NASAでは、これまで9月下旬から10月上旬としていましたが、観測結果から時期を絞り込みました。落下予測地域は、赤道を挟んだ北緯57度~南緯57度の間という日本を含んだ広い範囲で、大気圏突入の2時間前でも予測に相当な誤差が見込まれます。

 大気圏突入時の摩擦熱で大部分は燃え尽きますが、金属破片26個、計532キロが約800キロ四方の範囲に落ちると試算。世界の誰かに当たる確率は3200分の1で、「自分に当たる確率」は21兆分の1になるとされます。

 NASAの研究者は、「破片が有害である可能性はほとんどないが、絶対に触らないで」と呼び掛けています。

 2011年9月21日(水)

 

■下水処理施設の汚泥の放射性物質測定を代行 下水道事業団

 東京電力福島第一原発事故の影響で各地の下水処理施設の汚泥から放射性物質が検出されたのを受け、日本下水道事業団(東京都新宿区)は19日までに、高額な測定機器がない自治体に対する代行測定業務をスタートさせました。

 同事業団が自治体に専用容器を送り、300ミリリットル程度の汚泥を入れて返送してもらいます。放射性セシウムやヨウ素の濃度を測定し、ファクスで結果を通知します。費用は1検体当たり2万円といいます。

 測定機器は、1台当たり1000万円以上と高額なものが主流となっており、自治体や国土交通省から、測定の代行を求める要望が事業団に寄せられていました。

 国土交通省によると、下水処理施設の汚泥は平成20年度で全国で220万トンあまり発生し、汚泥のおよそ40パーセントはセメントの原料に、23パーセントはタイルやレンガなどの建築資材に、14パーセントは肥料などの原料にというふうに、およそ80パーセントが再利用されています。

 汚泥からの放射性物質の検出が明らかになったのは5月1日で、福島県郡山市の下水処理施設で、汚泥を焼き固めた溶融スラグから、33万4000ベクレルという高濃度の放射性セシウムを検出。その後、千葉県、茨城県など関東を中心に放射性物質の検出が相次ぎ、汚泥のセメントなどへの再利用が難しくなり、施設にたまり続けています。

 政府の原子力災害対策本部は、放射性物質の濃度が1キログラム当たり10万ベクレルを超えるものは、焼却処理などをした上で容器に保管すべきとし、10万ベクレル以下の場合は当面、地下水などの監視を行えば下水処理施設や埋め立て型の処分場で保管しても差し支えないとしています。しかし、保管した汚泥などの最終的な処分方法については引き続き検討するとして、明確な方針は示されていません。

 現在、実際に放射性物質が検出されているのは、北海道、青森県、山形県、福島県、栃木県、群馬県、茨城県、千葉県、埼玉県、東京都、神奈川県、山梨県、新潟県、長野県、静岡県、大阪府の16の都道府県。

 この中で、1キログラム当たりの放射性セシウムの濃度が最も高かったのは、福島市の44万7000ベクレル、東京都の5万5000ベクレル、前橋市の4万2800ベクレル、宇都宮市の2万6000ベクレルでした。各地の自治体では国に対し、汚泥などの処分法について、早急に指針を示すよう求めています。

 2011年9月20日(火)

 

■夫婦間の腎移植、拒絶反応抑え3例成功 兵庫県立西宮病院

 兵庫県立西宮病院腎疾患総合医療センター(西宮市)が、夫から出産経験のある妻への生体腎移植で、特有の拒絶反応を避けるための処置を手術前に施し、3例続けて成功させました。

 出産経験のある妻には夫に対する強い抗体ができることがありますが、同センターは手術前に抗体量を調べ、それを免疫抑制処置で危険量より少なくして拒絶反応を起こさせないようにしました。夫婦間の腎移植の拡大につながる成果といい、25日から韓国・ソウルで開かれるアジア移植学会で報告します。

 西宮病院では1973年以来、これまでに実施した腎移植件数が兵庫県内で初めて500例に達しました。全国でも8番目に多く、内訳は生体が381例、死後に腎臓提供を受ける献腎は119例。

 生体腎移植のうち夫婦間は増加傾向にあり、現在、全体の3割近いとされます。しかし、出産経験のある妻の2~3割程度に、夫の遺伝子を受け継ぐ子供を妊娠することで、夫に対する抗体が作られるといい、激しい拒絶反応を心配して移植を断念することがあるとされます。

 同センターは2008年、米国で開発された抗体量測定装置を、国内で初めて夫婦間の生体腎移植で抗体検査に導入。一方、1991年以降に同センターで生体腎移植を受けた100人以上の保存血を調べ、激しい拒絶反応が起きる抗体の危険量を特定しました。

 成功した3例は2009年9月~2011年5月、出産経験がある兵庫県と大阪府、和歌山県内の60~65歳女性に実施しました。抗体は3人とも危険量の10倍以上でしたが、移植前に免疫抑制剤の投与や血漿(けっしょう)交換で抗体を危険量より少なく抑えました。

 同センターの岸川英史研究・検査室長は、「この方法を広げ、夫婦間の安全な生体腎移植につなげたい」と話しています。今後は、他の医療機関と協力しながら抗体の危険量の正確さを確認し、移植の安全性を高めていきたいといいます。

 同センターは西日本の基幹移植検査センターに指定されており、腎移植の適合性検査で指導的な役割を担っています。国内の基幹移植検査センターは東日本2カ所、中部1カ所と同センターの計4カ所。

 2011年9月19日(月

 

■ED薬、偽造品に注意 インターネット購入で健康被害

 男性のED(勃起不全)治療薬は、医療機関を受診する抵抗感からインターネットなどを通じて購入されるケースが多くみられます。しかし、正規の流通ルート以外での購入には、偽造品による健康被害の危険が潜んでいます。

 国内でED治療薬を製造・販売するファイザー、バイエル薬品、日本新薬、日本イーライリリーの4社が今年実施した合同調査では、インターネット購入者の大半が偽造品の横行を認識しながら、9割の人が「自分が買った薬は本物だと思う」と回答し、「自分だけは大丈夫」という甘い考えが浮き彫りになりました。偽造品のリスクに対しての認識も低く、副作用が出ても放置するなど、健康被害の原因ともいえるような利用実態が明らかになっています。

 合同調査は、ED治療薬をネットで購入した経験がある276人と、医療機関を受診してED治療薬を購入した経験がある288人、計564人を対象に実施。ネット上にED治療薬の偽造品が出回っていると思うか尋ねたところ、ネット購入者の97・5パーセント(269人)、医療機関受診者の97・2パーセント(280人)が「はい」と回答し、認識に差はみられませんでした。

 出回っている偽造品の割合については、医療機関受診者の73・6パーセント(212人)が半分以上を偽造品だと考えているのに対して、ネット購入者では52・5パーセント(145人)にとどまっており、認識に差がみられました。

 また、ED治療薬の偽造品と本物を区別できると思うか尋ねたところ、ネット購入者の75・4パーセント(208人)、医療機関受診者の95・1パーセント(274人)が「区別できない」と回答しました。多くの人が識別の困難さを認識している一方で、ネット購入者の24・6パーセント(68人)、4人に1人は「区別できる」と回答しました。

 実際には、流通しているED治療薬の偽造品は外観で識別することは極めて困難なものが多く、一部のネット購入者の中には自分で偽造品を区別できるという誤った認識が浸透している状況がみてとれます。

 さらに、ネット購入者に対して、直近で自身が購入したED治療薬が本物だと思うか尋ねたところ、87・7パーセント(242人)が「はい」と回答しました。ネット上に偽造品が出回っていることを認識しながらも、そのほとんどが自分の購入しているED治療薬は本物と考えており、自身が購入しているサイトの安全性に対して過信している状況がうかがえます。

 偽造品が持つリスクに対する認識を尋ねたところ、「健康被害が出る可能性がある」に対して、医療機関受診者の87・9パーセント(253人)が「そう思う」と回答した一方で、ネット購入者では半数以下の48・6パーセント(134人)と、健康被害のリスクを十分に自覚せずに治療薬を使用している状況がわかりました。

 ネットで購入したED治療薬を使用して副作用と思われる症状が出た経験があるか尋ねたところ、症状が出たことがあるネット購入者は42・8パーセント(118人)に上りました。また、その際の対応を尋ねたところ、9割が「ほっておいた」と回答しました。

 今回の調査結果について、昭和大学藤が丘病院(神奈川県横浜市)泌尿器科の佐々木春明准教授は、「リスクに対する認識が甘い」と分析。「EDは加齢とともに誰にでも起こる疾患で、恥ずかしいものではない。医療機関を受診して、自分の症状に合った治療を受けることが最も重要だ」と話しています。

 佐々木准教授によると、海外では偽造ED治療薬に血糖降下剤が含まれていたために、服用した人が低血糖による意識障害を起こし、死亡する事件も発生しています。「薬の成分は一体何なのか、特定できない不純物が非常に多い。内容物がわからないと、副作用が出ても適切な処置ができず、重症化する危険がある」と警告しています。

 2011年9月18日(日)

 

■妊婦の有機水銀摂取、胎児のセロトニン神経に影響 三重大教授ら解明

 妊婦が魚を食べ体内に摂取することで胎児への影響が懸念される有機水銀が、胎児の脳神経のうち感情や行動をつかさどるセロトニン神経に発達異常を起こす可能性のあることが、厚生労働省研究班(班長・成田正明三重大大学院医学系研究科教授)の研究でわかりました。

 有機水銀による胎児内の反応メカニズムを解明したのは初めて。論文は米神経科学誌「ニューロサイエンスレター電子版」に掲載されました。

 有機水銀は、自然界の魚介類に微量含まれ、食事により体内へ摂取されます。大人に害はありませんが、厚労省は胎児への悪影響を考慮し妊婦に対し、食物連鎖をへて水銀濃度が高くなった一部大型魚を食べすぎないよう注意を促しています。

 研究班の江藤みちる同研究科助教らは、人間でいえば妊娠2カ月のラットに高濃度の有機水銀を注射し、6日後の胎児で発育の違いを調べました。有機水銀を与えたラットの胎児は脳幹で発達中のセロトニン神経の量が2倍になり、本来は神経がない場所にも見付かりました。

 セロトニン神経は大脳全体に指示を与え、感覚や行動、精神までコントロール。この神経の働きの不具合が、うつ病や神経症などの精神疾患と関連することもわかっています。

 実験では魚食で摂取する有機水銀をはるかにしのぐ量を投与しており、実際には魚を食べた程度では影響はありません。成田教授は、「有機水銀がセロトニン神経に異常を起こせば、生後の認知や行動に影響が出る恐れがあり、有機水銀の危険性が一層明らかになった」と指摘しています。

 日本周産期新生児医学会理事を務める名古屋市立大の戸苅創(はじめ)学長は、「有機水銀が中枢神経に影響を及ぼすことは知られているが、胎児への影響やどの神経に異常を及ぼすかなどは不明な点が多く、今回の動物実験での証明は意義深い。衛生行政の観点からも、有機水銀の摂取をめぐる基礎データになるはずだ」と話しています。

 2011年9月17日(土)

 

■年収300万円以下の人の高額医療費を軽減 厚労省 

 厚生労働省は16日、医療費の自己負担を一定額に抑える「高額療養費制度」で、年収200万~300万円程度の人の負担を軽減する方針を社会保障審議会(厚労相の諮問機関)の医療保険部会に示しました。

 現在は、70歳未満で年収約200万~約800万円の層の上限額が同じで、年収200万円台の人にとって相対的に負担が重いため。非正規労働者の増加や景気の低迷で、この所得層が増えていることもあり、社会保障と税の一体改革の政府与党案に盛り込まれていました。

 負担軽減には財源が数千億円必要ですが、外来を受診するたびに100円程度を支払う「受診時定額負担制度」を創設して賄う構想。

 高額療養費制度は、70歳未満では所得に応じて低中高の3段階で窓口負担の上限額を設定。がん治療などで高額の医療費がかかっても患者の負担が重くなりすぎないよう、上限額を超えたぶんは払い戻されます。ただ、年収約800万円以下の人はすべて中所得層に分類されるため、その層の年収200万円台の人の負担が重く、がん患者団体などが負担軽減を強く要望していました。

 2011年9月16日(金)

 

■アルツハイマー病、歯に注意 かみ合わせが悪いと影響 

 歯のかみ合わせが悪いと、アルツハイマー病の原因とされる「アミロイドベータ」と呼ばれる蛋白質が脳の中の記憶に関係する部位である海馬に増えることを、岡山大大学院医歯薬学総合研究科の森田学教授のチームがラットで突き止め、15日発表しました。

 アルツハイマー病はアミロイドベータが脳内に蓄積し、海馬では神経細胞に影響して記憶障害を起こすのが一因とされます。チームは「歯が抜けたり、入れ歯が合わなかったりする人は、治療をすることでアルツハイマー病の予防や進行を抑えられる可能性がある」としています。

 実験では上の奥歯を削ってかみ合わせを悪くしたラットは8週間後、血中のストレスホルモンが増えたことにより、歯を削っていないラットに比べ、アミロイドベータが4~5倍多く蓄積しました。

 また、削った奥歯を治療してかみ合わせを治したラットは4週間後、ストレスホルモンとアミロイドベータがほとんど増えず、歯を削っていないラットとほぼ同じ数値にとどまりました。

 同チームは、「かみ合わせが悪いと脳に刺激が伝わりにくくなり、ストレスを感じて、アミロイドベータが増えるのではないか」と分析しています。

 成果は、米神経科学雑誌に掲載されました。

 アルツハイマー病は、認知症の中で最も頻度が高く根本的治療法のない難治性疾患。記憶障害で発症し、進行すると人格障害を来し、高度な介護を必要とする疾患です。

 2011年9月15日(木)

 

■日本人の8割が非伝染性疾患で死亡 WHO、運動不足が原因

 世界保健機関(WHO)は14日、心臓病や、がん、糖尿病など慢性的な非伝染性疾患による死者に関する国別の統計を発表、日本は2008年の死者全体の約8割に当たる計90万8700人が非伝染性疾患による死者でした。

 WHOでは、15歳以上の約65パーセントが「運動不足」となっていることが要因と分析しています。

 中国でも、同年の死者全体の8割を超える約800万人が非伝染性疾患により死亡。ただ、運動不足人口は3割にとどまっています。

 世界全体では、同年の死者全体の63パーセント、3610万人が非伝染性疾患により死亡しました。

 統計では、ジョギングなど適度な運動が1週間に30分未満といった基準に当てはまる場合に運動不足と定めています。WHOは運動不足に加え、喫煙習慣が非伝染性疾患の主な原因としています。

 2011年9月14日(水)

 

■100歳以上の高齢者、最多4万7756人 女性の割合最大に

 全国の100歳以上の高齢者が9月15日時点で前年比3307人増の4万7756人となり、41年連続で過去最多を更新することが13日、厚生労働省の調査でわかりました。

 15日の「老人の日」に合わせて毎年公表されているもので、男性は前年比293人増の6162人、女性は同3014人増の4万1594人。女性の占める割合は87・1パーセントとなり、昭和38(1963)年の86・9パーセントを抜いて最も割合が高くなりました。

 ただ、調査は住民基本台帳による自治体の報告をまとめたもので、東日本大震災で発生した津波などで行方不明になった高齢者も含まれている可能性があります。大震災で大きな被害を受けた3県のうち、岩手県は前年比15人増の539人、宮城県は同6人増の691人、福島県は同82人増の780人。厚労省は、行方不明者数を「調べていない」としています。

 調査によると、人口10万人当たりの100歳以上の高齢者数は37・29人。都道府県別では、昨年沖縄県を抜き初の「長寿日本一」となった島根県が75・70人で2年連続トップ。2位は高知県の67・58人、平成21年まで37年連続1位で昨年2位だった沖縄県は66・04人で3位。

 最も少ないのは埼玉県の21・13人、次いで愛知県の23・80人、千葉県の25・49で、埼玉県は22年連続で最下位となりました。

 厚労省は、「島根県と高知県は県全体の人口が減少し、相対的に高齢者の割合が増加する一方、沖縄県は若干人口増となっていることが影響している可能性がある」としています。

 国内最高齢は佐賀県基山町の長谷川チヨノさんで、明治29(1896)年11月20日生まれの114歳。男性の最高齢は京都府京丹後市の木村次郎右衛門さんで、明治30(1897)年4月19日生まれの114歳。木村さんは今年4月に、ギネス社の男性世界最高齢者に認定されています。

 調査を始めた昭和38(1963)年は100歳以上の高齢者は153人でしたが、平成10(1998)年に1万人を突破。このころから増加に拍車がかかり、平成21(2009)年に4万人台に乗せました。

 一方、今年度中に100歳になる高齢者は、海外在留邦人、永住在日外国人を含め9月1日現在で前年度比1683人増の2万4952人でした。昨年は高齢者不明問題が発覚し、所在確認の在り方が問題となりました。厚労省は、「自治体が面接や医療保険・介護保険の利用状況で生存を確認した」と説明しています。

 2011年9月13日(火)

 

■禁煙学会「たばこ1箱1000円に」 厚労省に要請書

 医師らで作る日本禁煙学会は12日、たばこの価格を現在より600円程度引き上げ、1箱1000円にするよう求める要請書を厚生労働省に提出しました。

 会見した理事長の作田学・杏林大医学部客員教授は、「先進国の多くは1箱700~1200円で、1000円なら平均的な値段といえる。未成年者の喫煙防止にも効果がある」と説明。小宮山洋子厚労相がたばこ税を引き上げて1箱約700円にすべきだと発言したことについては、「それでも不十分」として、消費抑制のための大幅値上げを求めました。

 同席した同学会の渡辺文学理事は、1日2箱吸う愛煙家として知られる野田佳彦首相に対して、「国際会議ではたばこを吸えない場面が多いので、今のうちから禁煙してほしい。ドジョウはたばこを吸わない」と注文しました。

 野田首相は財務相当時の7月、たばこ増税について「税制を通じた『おやじ狩り』みたいなもの」と発言したことがあります。

 一方、厚生労働省は12日、受動喫煙による労働者の健康被害を防ぐため、事業所や工場などで、全面禁煙か、一定の基準を満たす喫煙室を作ることによる分煙を事業主に義務付ける労働安全衛生法の改正案を、2011年度第3次補正予算案を審議する臨時国会に提出することを決めました。12年度中にも施行を目指します。

 日本は04年に「たばこ規制枠組み条約」を批准、受動喫煙防止対策を進めています。しかし、厚労省の07年の調査では、全面禁煙と喫煙室を作っての分煙のいずれも実施していない事業所は全体の約54パーセント。喫煙対策の改善を職場に望む労働者の割合も90パーセントを超えるなど、対策の強化が求められていました。

 2011年9月12日(月)

 

■SPEEDI、文科省が毎時公表へ 福島県民の指摘で

 文部科学省は9日、緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム「SPEEDI(スピーディ)」を使った放射性物質の拡散予測を、12日から計算終了後に速やかに公表すると発表しました。福島県民からの指摘に対応しました。

 文科省によると、SPEEDIは毎時にその時点から3時間後までの拡散予測を計算。これまでは1日分の計算結果を翌朝まとめて公表していましたが、福島県の住民などから「過去のデータが公開されても避難などの参考にならず、意味がない」と指摘を受け、改善したといいます。

 文科省のホームページで、毎時の予測結果を20~30分後には閲覧できるようになります。

 SPEEDIは、文部科学省、経済産業省、原子力安全委員会、関係道府県、オフサイトセンターおよび日本気象協会とが、原子力安全技術センターに設置された中央情報処理計算機を中心にネットワークで結ばれていて、関係道府県からの気象観測点データとモニタリングポストからの放射線データ、および日本気象協会からのGPVデータ、アメダスデータを常時収集し、緊急時に防災対策を講じるための重要な情報として活用されます。

 2011年9月11日(日)

 

■NASAの人工衛星落下へ 破片が人に当たる確率3200分の1

 今月下旬から10月上旬にかけて、人工衛星の金属破片が空から降ってくるかもしれません。そして、世界のだれかに当たる確率は3200分の1――米航空宇宙局(NASA)は9日、大気圏への落下が見込まれる重さ約6トンの人工衛星について「注意報」を発表しました。

 1991年に打ち上げられた大気観測衛星「UARS」で、2005年に運用を終え、現在は高度約259キロ付近を周回しています。高度は徐々に下がっており、この秋に大気圏に突入する見通し。

 軌道の角度からみて、金属破片が落ちるのは赤道を挟んだ北緯57度~南緯57度の間で、日本を含む世界の広い範囲が対象地域になります。

 試算では、大部分は大気圏突入時に燃え尽きますが、最大で26個の金属破片(重さ計532キロ)が燃え尽きずに、地上800キロ四方の範囲に落下する可能性があります。この一つが、世界のだれかに当たる確率は3200分の1で、「自分に当たる確率」にすると、21兆分の1になるとされます。

 記者会見したNASAの研究者は、「破片が有害である可能性はほとんどないが、絶対に触らないで」と呼び掛けました。

 米メディアによると、人工衛星やロケットの部品などの落下は年間約400件ありますが、5トンを超えるものは少ないとされます。

 NASAは落下の数日前から予報を出す予定ですが、大気圏に突入後でないと詳しい落下地域はわからないとしています。

 2011年9月10日(土)

 

■アルツハイマー病の発症の仕組み、iPS細胞で確認 慶応大

 慶応大の研究チームがiPS細胞(人工多能性幹細胞)技術を使い、アルツハイマー病が発症する仕組みの確認に成功しました。生きたヒトの細胞による薬の効果の確認につながり、新薬開発に役立ちそうです。

 論文は7日付で、英医学誌ヒューマン・モレキュラー・ジェネティクス(電子版)に掲載されました。

 アルツハイマー病は、ベータアミロイドという毒性の高いたんぱく質が脳の中の記憶に関係する部位である海馬や側頭葉、頭頂葉にたまり、神経細胞を傷付けて起きるとする「アミロイド仮説」が提唱されています。

 慶応大医学部の鈴木則宏教授らの研究チームは、遺伝的な要因でアルツハイマー病を発症した患者2人の皮膚の細胞からiPS細胞を作って、さらに神経細胞に変化させました。すると、いずれの患者由来の神経細胞でもベータアミロイドが通常の約2倍作られており、病気の一部を再現できました。

 また、ベータアミロイドができるのに必要な酵素の働きを止める新薬の候補を使ったところ、ベータアミロイドのできる量が抑えられるのも確認しました。

 アルツハイマー病は、認知症の中で最も頻度が高く根本的治療法のない難治性疾患。記憶障害で発症し、進行すると人格障害を来し、高度な介護を必要とする疾患です。

 2011年9月9日(金)

 

■救急車、通報から収容まで37分 過去最悪を更新

 救急車が通報を受けてから患者を医療機関に運び込むまでの時間が、2010年は全国平均で37分24秒だったことが8日、総務省消防庁がほぼ全国のデータに基づいて作成した集計でわかりました。前年より1分18秒遅く、1985年以降の最悪を更新しました。

 救急車の現場到着時間も、前年より12秒遅い8分6秒でした。搬送された人のうち51パーセントが、65歳以上の高齢者。救急車の出動件数は前年比7パーセント増の546万2848件、搬送数は6パーセント増の497万8701人と、いずれも2年連続で増加しました。

 消防庁は、「高齢化に伴って搬送患者が急増している」と分析しています。また、通報から医療機関に着くまでの応急処置が重度傷病者の命の明暗を分けるといってもよいため、救急救命士を含む救急隊員の増強などに努め、重度傷病者の搬送中に、高度な救急救命処置を施すことができる救急救命士の処置範囲の拡大を推進していくとしています。

 2011年9月8日(木)

 

■放射線で発光するプラスチックを帝人が開発 測定器の低価格化に一役

 帝人は7日、放射線に反応して青く光るプラスチックを9月下旬に発売すると発表しました。ペットボトルの原料を使い、製造方法が単純なのが特徴。

 放射線測定器に組み込む検出素材として、従来品よりも価格を10分の1に抑えられるといいます。東京電力福島第1原子力発電所の事故を機に放射線に対する懸念が強まる中、安価な測定器の開発につながりそうです。

 発売する「シンチレックス」は京都大学、放射線医学総合研究所と共同で開発しました。通常は無色透明で、当たった放射線の強さに応じて光ります。射出成型など一般的なプラスチックの量産手法で生産できます。価格は販売数量などによりますが、一般的な測定器に使う大きさで1万円以下の水準になるとみられます。

 これまでも放射線に反応するプラスチックはあったものの、材料や製造工程が特殊なことから生産コストが高いため、60センチ四方で10万円ほどしました。

 従来のプラスチックは主に水素と炭素で構成されていますが、シンチレックスは水素と炭素に加え酸素を主要な構成要素としており、従来のプラスチックと同等以上の性能があることが示されています。シンチレックスは個人で使う線量計や、人や自動車が通る放射線測定ゲートなどに組み込んで使います。また、放射線分野以外にも、通信事業の分野に応用することにより、低価格な光ファイバーの実用化も検討されています。

 帝人は9月末から、測定器メーカーや研究機関に販売し、2012年度に数億円の売り上げを目指します。

 2011年9月7日(水)

 

■宮城県などの6河川で、基準超すダイオキシンを検出 環境省調査

 環境省は6日、東日本大震災の被災地の河川水質調査で、宮城、福島、茨城3県の計6地点で基準値の1・1~2・7倍のダイオキシンが検出されたと発表しました。地下水の水質調査でも、福島県いわき市の1地点で基準の28倍のダイオキシンを検出しました。

 環境省は「河川や海の底に沈んでいたダイオキシンが震災による津波で巻き上げられた可能性はあるが、詳しい原因は不明」としています。今後、継続調査や周辺の追加調査を行い監視を強化します。

 調査は青森、岩手、宮城、福島、茨城5県で5~7月に実施。河川計82地点、海域計152地点で水質や底の土壌を調べ、宮城4地点、福島、茨城各1地点の河川の水が基準を超えました。地下水の水質調査は計86地点が対象で、いわき市の1地点以外に基準超過はありませんでした。

 ダイオキシンは、ポリ塩化ジベンゾダイオキシンの通称。2個のベンゼン環が2個の酸素原子で結び付けられた構造を骨格とする塩素化合物で、多くの異性体がありますが、特に四塩素ジベンゾダイオキシンを指します。猛毒で、強い催奇形性、発がん性を有します。昭和40年(1965)ごろから除草剤として使われましたが、同46年使用禁止。

 2011年9月6日(火)

 

■腰痛にストレスが関与 再発、慢性化の要因に

 大多数の人が経験する腰痛は、再発や慢性化も多く、厄介な症状です。従来は背骨に問題があるとして、腰にできるだけ負担を掛けずに安静を保つことが大事だとされてきましたが、最近は、痛みに対する不安や仕事上のストレスといった心理的な影響が注目され、ストレスを解消しながら、できるだけ日常活動を維持するほうがよいとの考えに変わってきたといいます。

 「欧米では、腰痛の再発や慢性化には心理的、社会的な要因が非常に重要だとされている」と、関東労災病院(川崎市)で勤労者筋・骨格系疾患研究センター長を務める松平浩医師。

 腰痛といえば、骨の間の椎間板が飛び出して神経を刺激する椎間板ヘルニアなどを思い浮かべますが、松平医師によると、エックス線や磁気共鳴画像装置(MRI)による画像検査で異常があっても腰痛のない人や、逆に異常がないのに痛みが強い人もいて、画像所見で痛みの原因を説明できるとは限りません。

 腰痛で病院を受診する人のうち、診察や画像検査で原因が特定できるのは15パーセント。残り85パーセントは原因が特定しきれない「非特異的腰痛」に分類され、いわゆる「ぎっくり腰」もこれに含まれます。

 このタイプの腰痛の多くは、放っておいても痛みは消えます。しかし、心理的な問題から腰を動かさずにいると筋肉が硬直、気がめいってうつ傾向が強まり、さらに体を動かさなくなるという痛みの悪循環に陥ることがあります。

 医師から「椎間板が減っている」「骨が変形している」などといわれたために、腰痛に対する不安や恐れが募るケースもあります。松平医師の研究によると、ぎっくり腰で受診した患者のうち、治るまで安静にするよう指導された68人と、できるだけ普段の生活を続けるよう指導された32人を比較すると、翌年にぎっくり腰を再発するリスクは安静を指導された患者のほうが3・65倍も高くなりました。

 ストレスから起こる腰痛は、腰部の骨などには異常がないことがほとんどです。症状としては、出勤前などの午前中に痛みが起こり、夕方ごろに痛みがなくなるなど、時間帯による変化があり
ます。さらに、痛みの出る部位が変わったり、日によって痛みの程度が違ったりします。また、腰痛とともに、疲労感、不安感、睡眠不足、頭痛や胃腸障害などの症状を伴うこともあります。

 悪い姿勢、運動不足や運動のしすぎ、肥満、加齢など、非特異的腰痛の他の要因がなければ、ストレスと疲労が疑われます。日常生活でのストレスをゼロにするのは難しいことですが、日々のストレスを軽減し、翌日の疲れをためないようにコントロールすることはできます。ストレス解消は、腰痛の改善と予防に加え、生活習慣病など、さまざまな病気を予防するためにも大切なことです。

 2011年9月5日(月)

 

■心臓など8人に臓器移植へ 脳死の15~17歳の少年から

 日本臓器移植ネットワーク(移植ネット)は3日、関東甲信越地方の病院に入院していた15歳以上17歳未満の少年が脳死と診断されたと発表しました。本人の意思表示はありませんでしたが、家族が脳死判定と臓器提供を承諾しました。

 18歳未満で家族承諾で脳死と判定されたのは、今年4月の10歳代前半の男児に続いて2例目。昨年7月施行の改正臓器移植法では、本人の意思表示がなくても家族承諾で脳死移植が可能となりました。

 ただし18歳未満の場合は、入院先の病院に対して、児童虐待を受けた可能性の有無を確認することが義務付けられました。同ネットワークは、「入院先の病院が適切な手続きで虐待がなかったことを確認した」としました。

 少年は頭部外傷で入院。主治医は8月30日に脳死とされる状態と判断、家族に病状と臓器提供の機会があることを伝えました。同ネットワークには1日夜に正式に連絡が入り、2日夕方に家族の承諾を得たため脳死判定を実施、3日午後7時37分に、2回目の脳死判定で法的に脳死と診断されました。

 脳死移植は1997年の法施行後146例目で、改正法を適用した家族承諾のみは52例目。改正法施行前は本人の意思表示があったケースで、15歳以上20歳未満の年齢区分で2例の脳死移植がありました。

 同ネットワークは、心臓、肺、肝臓、腎臓、膵臓、小腸の臓器が8人に移植されると発表。同ネットワークが扱う臓器で、1人から移植を受ける人数としては昨年9月の事例と並び、過去最多となります。心臓は、提供者が18歳未満の場合に18歳未満の患者を優先する選択基準が適用され、国立循環器病研究センター(大阪府)の18歳未満の10歳代少年に移植されます。

 4日午後、提供者の少年から臓器が摘出され、その後、各地で移植手術が実施されます。

 少年の家族は、「本人が元気な時に臓器提供関連のテレビを見て『死んでも人の役に立つなんてすごいよな』と話していた。本人は意思表示していなかったけれど、希望したと思う」とコメントしています。

 2011年9月4日(日)

 

■世界初、秋田大が急性膵炎遺伝子特定 治療・予防法開発に期待

 重症化すると治療が難しく、致死率が6割に達する急性膵(すい)炎の発症に関わる遺伝子を、秋田大の真嶋浩聡講師、大西洋英教授らの研究チームがマウスを使った実験で特定し、2日付の米医学誌に発表しました。大西教授によると、この遺伝子が異常を来すと急性膵炎を発症するといいます。原因遺伝子の特定は世界で初めて。

 急性膵炎は飲酒や胆石が主な原因とされ、重症化した場合、多臓器不全や敗血症を引き起こします。原因遺伝子の特定により、治療法や予防法の開発が期待できそうです。

 研究チームは、免疫機能を調整する遺伝子「インターフェロン抑制因子2」に着目。このインターフェロン抑制因子2が欠落したマウスを作って解析したところ、本来膵臓から外部に分泌される消化酵素が排出されずに膵臓を痛め、初期の急性膵炎と同じ症状になることを突き止めました。急性膵炎は膵液中の消化酵素の働きが異常に高まって、自己の膵臓組織を消化してしまうために起こると考えられています。これを自己消化といいますが、ほかの病気にはみられない現象です。

 また、このインターフェロン抑制因子2が膵臓だけに作用し、他の臓器に影響がないこともマウスを使った実験で判明。治療に活用した際に、副作用の抑制が期待できるといいます。

 大西教授は、「急性膵炎に対する効果的な治療法は確立されていない。異常を来した遺伝子に作用する薬の開発など、新しい治療法が考えられると思う」と話しました。

 厚生労働省では、原因不明の難病の一種で、難病対策推進の調査研究の対象となる特定疾患に、重症急性膵炎を指定しています。発症頻度は男性が女性の2倍で、男性では30~60歳代に多くみられ、女性では50~70歳代に発症しやすい傾向がみられます。

 2011年9月3日(土)

 

■乳幼児のRSウイルス感染に注意 今年は7月から入院者が増加

 2歳までに乳幼児のほとんどが感染するとされ、例年は秋から春にかけて流行するRSウイルス感染症が、今年は7月から増えています。ただ、インフルエンザなどに比べて認知度は低く、予防するためにも、専門家は認知度の向上を課題に挙げています。

 昭和大学医学部小児科の水野克己准教授によると、今年は7、8月にRSウイルス感染症で入院する乳幼児が非常に増えているといいます。RSウイルス感染症は秋から冬にかけての長い期間に渡って流行し、12~1月がピークとされてきました。昨年までは、7、8月にRSウイルスに感染した乳幼児はそれほど多くなかったといいます。

 RSウイルスは呼吸器合胞体ウイルスともいわれ、風邪の原因となる一般的なウイルスの一つ。乳幼児が最も感染しやすいウイルスで、1歳の誕生日までに70パーセントの乳児が初感染し、2歳までにはほとんどの乳幼児が感染するとされます。通常、健康な乳幼児が感染した場合、38~39度程度の発熱、鼻水、せきなどの症状が出て、多くは8~15日ぐらいで治まります。発熱症状がないこともあります。

 このRSウイルスについて、水野准教授は「以前に比べると増えたが、10人のお母さんに話して1人ぐらいが知っている程度です」と認知度の低さを懸念しています。

 事実、医薬品大手のアボットジャパン(東京都港区)が7月に実施した調査によると、妊娠8カ月以上の妊婦でRSウイルス感染症がどのような病気かを知っていたのはわずか2・4パーセント、名前は聞いたことがあるのは27・1パーセントで、7割は名前すら知りませんでした。2歳未満の乳幼児を持つ母親でも同様で、どのような病気かを知っているのは3割以下。インフルエンザについては妊婦の83・7パーセント、母親の91・2パーセントがどのような病気かを知っており、大きく差が開いています。

 こうした現状について、水野准教授は「RSウイルスは1カ月未満の子供でもかかる。妊婦さんが知っておかなければいけないウイルス感染症の一番はRSウイルスです」と警鐘を鳴らしています。

 RSウイルス感染症は、なぜ乳幼児にとって危険なのか。RSウイルスは何度も感染し、悪化すると肺炎などを起こし、最悪の場合は死に至ることもあるからです。特に重症化しやすいのは、生後6カ月以内の乳児や早産児、慢性肺疾患や先天性心疾患などの基礎疾患を持っている乳幼児とされます。

 幼い頃にRSウイルス感染症が重症化し、肺などの下気道感染症になった場合は、将来的な不安もあるといいます。「長期に渡って、呼吸時にゼーゼーというような音がする喘鳴(ぜんめい)、ぜんそくになるリスクが高くなる。小さい時にRSウイルス感染症が重症化しないようにすることが大事だ」と、水野准教授は話しています。

 ただ、RSウイルスは一度感染しても持続的な免疫ができにくく、予防ワクチンや特効薬もないのが現状。このため、RSウイルスに感染しないよう、手洗い・うがいを徹底し、接触感染を防ぐため流行期に子供が集まる場所になるべく行かないなど、ふだんの生活で対策を取ることが重要になります。

 また、母乳で育てることや、妊娠中は魚・キノコなどに多く含まれるビタミンDを積極的に摂取することも有効です。重症化を防ぐ手段としては「シナジス」と呼ばれる抗体製剤の投与がありますが、100ミリグラムで約15万円と費用が高いのがネック。ただ、29~35週の早産で6カ月以下の新生児や乳児などは健康保険が適用され、重症化のリスクが高い早産児には投与が勧められます。

 2011年9月2日(金)

 

■長寿世界一の日本に警鐘 英医学誌、喫煙・高血圧・自殺を懸念

 世界的に知られる英医学誌ランセットは9月1日、日本の「国民皆保険制度」達成から50年を記念する日本特集号を発刊しました。国内で「医療崩壊」が叫ばれる中、低水準の医療費で世界一の長寿を達成した日本の医療制度を高く評価する内容。その一方で、急速な高齢化や財政難、改革の先送り、男性の喫煙率の高さや自殺の増加などから、長寿国の地位の持続性が危ぶまれているとも指摘しています。

 同誌は日本の教訓を世界各国の保健医療政策に生かす狙いで特集を作り、渋谷健司東京大教授、武見敬三日本国際交流センターシニアフェローら日米欧などの専門家66人が協力しました。

 2008年時点で国内総生産(GDP)比の医療費は、経済協力開発機構(OECD)加盟国中20位と低水準でありながら、良好な健康状態を達成したと指摘。世界に教訓を提供できるとしています。

 また、日本が長寿世界一になった理由について、1950年以降、病気別の死亡率の国際比較などで分析しました。50~60年代前半には感染症対策、60年代後半からは減塩や降圧薬の普及による脳卒中死亡率の低下が貢献したとしています。

 その上で、東日本大震災で医療分野の人材不足など現行制度の課題が浮き彫りになり、「低い経済成長と不安定な政治状況が構造改革を困難にしている」と分析。国から都道府県への権限移譲、保健・医療分野での国際交流の活発化など4つの改革を提案しました。

 今の日本での死亡の危険因子は、喫煙と高血圧と自殺と指摘。全成人が禁煙すれば平均寿命は男性が1・8年、女性は0・6年延び、血圧を下げれば男女とも0・9年延びると推定しています。だが、現状は対策が不十分としています。

 日本の自殺率は人口10万人当たり24・4人(2009年)で、米国の11・0人(05年)などに比べて高くなっています。自殺者数は3万1690人(2010年)で前年より減ったものの、13年連続して3万人を超えています。若い世代の自殺者数が増える傾向にあり、人口10万人当たりの自殺者数は、20~24歳が1998年の16人から09年に22人まで増加。25~29歳も19人から24人まで増えています。50歳代と60歳代が98年以降は減少傾向にあるのと対照的。

 ランセット誌のコメント欄でクリストファー・マレー米ワシントン大教授は、日本の経済停滞、政治の混乱、高齢化、たばこ規制の不十分さを指摘し、「対策をとらなければ世界での平均寿命の順位が落ちていくかもしれない」と警鐘を鳴らしています。

 2011年9月1日(木)

2019年1月〜 20187月〜12月 1月〜6月 2017年7月〜12月 1月〜6月 2016年7月〜12月 1月〜6月 2015年7月〜12月 1月〜6月 2014年7月〜12月 〜6月 2013年6〜12月 5月 4月 3月 2月 1月 2012年12月 11 10月 9月 7月 6月 5月 4月 3月 2月 1月 2011年12月 11月 10月 9月 8月 7月 6月 5月 4月 3月 2月 1月 2010年12月 11月 10月 9月 8月 7月 6月 5月 4月 3月 2月 1月

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