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健康ダイジェスト

2019年7月〜 1月〜6月 2018年7月〜12月 1月〜6月 2017年7月〜12月 1月〜6月 2016年7月〜12月 1月〜6月 2015年7月〜12月 1月〜6月 2014年7月〜12月 1月〜6月 2013年6〜12月 5月 4月 3月 2月 1月 2012年12月 11 10月 9月 7月 6月 5月 4月 3月 2月 1月 2011年12月 11月 10月 9月 8月 7月 6月 5月 4月3月 2月 1月 2010年12月 11月 10月 9月 8月 7月 6月 5月 4月 3月 2月

 

■アメリカ、電子たばこ関連の肺損傷患者が1080人に 死者は18人に上る

 アメリカ疾病対策センター(CDC)は3日、電子たばこの使用と関連した肺損傷とみられる症状の患者が10月1日の時点で、1080人に増加したと明らかにしました。一連のアウトブレーク(集団発生)における死者は、18人に上っています。

 CDCのロバート・レッドフィールド局長は、「青少年を始め、アメリカ国民の健康にこのアウトブレークが及ぼす脅威は増大しており、残念ながら、これは氷山の一角にすぎない可能性がある」と述べました。

 CDCによると、先週初めからの2週間で新たに報告された患者は275人。この中には、新規の発症者と、すでに発症がわかっていたものの報告されていなかった患者が含まれます。

 患者578人からの聞き取り調査によれば、大麻の主要な精神活性成分であるテトラヒドロカンナビノールを使用した人の割合は、ニコチンを含む製品と含まない製品の合計で78%。また、テトラヒドロカンナビノール製品だけを使用した人は37%、ニコチンを含む製品だけを使用した人は17%でした。

 このほか、患者の約70%が男性で、80%が35歳未満だといいます。

 一方、アメリカやインドで電子たばこの販売を禁止する動きが出る中、電子たばこと関連がある呼吸器系の疾患と診断された患者の肺は、有毒な化学物質を吸い込んだ時に似た状態になっているという調査結果が、2日付けのアメリカの医学誌「ニュー・イングランド・ジャーナル・オブ・メディシン」に掲載されました。

 それによりますと、アメリカの医療機関が電子たばこと関連がある呼吸器系の疾患と診断された患者17人の肺や呼吸器の組織を検査した結果、すべての症例で、有毒な化学物質を吸い込んだ時に似た組織の損傷が見られたということです。ただ、どのような化学物質が原因かはわからないとしています。

 アメリカのミシガン州などは香り付き電子たばこの販売を禁止したほか、インドも電子たばこの販売や輸入を禁止するなど規制の動きが広がっています。

 2019年10月4日(金)

 

■潰瘍治療薬「ラニチジン錠」、製薬各社の自主回収相次ぐ 沢井製薬、東和薬品など

 後発薬各社が3日、胃潰瘍や十二指腸潰瘍の治療薬「ラニチジン錠」を相次ぎ自主回収しています。海外の規制当局が製剤や原薬ラニチジン塩酸塩から、Nーニトロソジメシルアミンと呼ばれる発がん性物質が見付かったと公表したのが発端。

 9月17日付で厚生労働省もラニチジン錠などを製造販売する製薬各社に、発がん性物質混入の有無を調査するよう事務連絡を出していました。

 自主回収を発表したのは、沢井製薬、鶴原製薬、東和薬品、ニプロ、マイラン製薬、武田テバファーマ、小林化工。

 各社は調査を進めており、東和薬品とマイラン製薬は、製品に使用されている原薬から管理指標を上回る発がん性物質が検出されたといいます。自主回収の要因は重要度に応じて3段階あり、今回は大きな健康被害や死亡につながる可能性があるとされる「クラス1」です。

 沢井製薬は製造工程を調査した結果、発がん性物質混入の可能性は低いとしているものの、「予防的措置として自主回収する」としています。

 日医工も2日、ラニチジン錠を「予防的な措置として自主回収する」と発表しました。

 2019年10月4日(金)

 

■胃潰瘍治療薬「ラニチジン錠」を自主回収 日医工が予防的な措置として

 日医工(富山県富山市)は10月2日、胃潰瘍や上部消化管出血などに用いる治療薬「ザンタック」の後発医薬品となる「ラニチジン錠」について、同日から自主回収を始めたと発表しました。

 海外で原薬ラニチジン塩酸塩を使用した製剤から、発がん性がある物質に分類されているNーニトロソジメシルアミンが検出されたことを受け、厚労省から出荷停止とNーニトロソジメシルアミン混入有無の分析が指示されました。日医工の流通在庫に、問題となった海外メーカーの原薬は使われていないものの、「予防的な措置として自主回収する」としています。

 回収のリスクの程度は、重篤な健康被害の恐れはまずないとされる「クラスⅡ」。これまでにラニチジン錠による重篤な健康被害などの報告はありません。

 グラクソ・スミスクラインが販売中の先発品ザンタックも、9月26日から自主回収を始めました。グラクソ・スミスクライン、日医工とも自主回収の理由は同じで、海外でNーニトロソジメシルアミンが検出されたことを受けたもの。

 なお、日医工は、安定供給に向けた原薬複数化により、セカンドソースとして問題となった海外メーカーの原薬を日本で使うことの承認を得ていましたが、問題が発覚したこともあって使用していませんでした。

 同社は、「問題となった海外メーカーの原薬を使用した本剤(ラニチジン錠)の市場在庫はない」と説明しています。ラニチジン錠の再出荷の時期は未定としています。

 2019年10月3日(木)

 

■風疹ワクチン、無料受診券の利用が1割に低迷 中高年男性対象

 風疹(三日ばしか)の拡大防止策として抗体検査やワクチン接種を無料で受けられる受診券の利用が、2019年度から配布している中高年の男性で1割程度に低迷していることが2日、厚生労働省の調査でわかりました。厚労省は、受診券の積極的な活用を呼び掛けています。

 風疹は、2018年に2917人、2019年に2195人の患者が報告され、妊婦が風疹ウイルスに感染したことで胎児も感染し障害が起きる「先天性風疹症候群」も3例確認されました。

 40~57歳の男性に免疫を持っていない人が多いことが流行の原因と考えられるため、厚労省はこの年代の男性を対象に抗体検査とワクチン接種を3年間原則無料にすることを決定。2019年度は特に患者が多い1972年4月2日~1979年4月1日生まれに絞り、受診券を配布しています。

 しかし、厚労省が調べた結果、今年7月までの4カ月間で抗体検査を受けたのは約16%、ワクチン接種を受けたのは約14%でした。大都市圏が流行の中心となっているものの、ワクチンを接種した割合は神奈川県と大阪府、福岡県で9%、東京都で12%にとどまりました。

 担当者は、「啓発ポスターを医療機関や薬局で張ってもらったり、企業向けの研修会を開いたりと情報発信に努めたい」と話しています。

 2019年10月3日(木)

 

■人工乳房でリンパ腫を発症、死亡 学会「別の再建含め検討を」

 乳がん手術後の乳房再建や豊胸のため、人工乳房(インプラント)を使った女性の一部に特殊なリンパ腫が起きている問題で、専門医でつくる日本乳房オンコプラスティックサージャリー学会など4学会は1日、乳房再建を希望する患者らに向けて文書を発表しました。「インプラント以外を使った再建を含めて検討を」などと呼び掛けています。

 このリンパ腫は、「乳房インプラント関連未分化大細胞型リンパ腫」(BIA―ALCL)と呼ばれます。アメリカの食品医薬品局(FDA)などによると、これまでにアイルランドの製薬大手アラガンのインプラント「ゲル充填人工乳房」を使った人のうち、世界で573例が発症し、33人が亡くなったとされます。表面がざらざらした「テクスチャード」というタイプで起きやすいといいます。

 国内でも承認を受けた、このタイプのインプラントと、インプラントを入れるまでに使う「ティッシュエキスパンダー」という胸の皮膚を伸ばす機器をアラガン社が自主回収。事実上、公的保険による乳房再建ができない状態になっています。

 4学会はこれから乳がんの手術を受け、再建を希望する患者に、「まず乳がん手術のみを受ける」「可能であれば乳房温存手術を選択する」「腹直筋など自家組織による再建をする」「乳房再建専用でなく、自主回収の対象ではないエキスパンダーを使う」といった選択肢を示しました。

 インプラントは、今回問題になったものと別の表面がつるつるしていて、リスクの低いものの販売が国内で再開され始めました。ただ、今の販売は緊急向けで、日本人の一般的な乳房と形が異なっているといいます。

 すでにインプラントによる再建を受けた人には、症状がなければインプラントを取り出す必要はないこと、発症時に早く発見できるよう、医療機関で定期検診を続けることなどを呼び掛けています。早めに対処できれば、手術によって治癒が期待できるといいます

 2019年10月2日(水)

 

■介護サービス8社、ベテラン職員の年収引き上げへ SOMPOは最大23%

 介護サービス大手8社が10月以降、ベテランの介護福祉士らを中心とした職員の賃上げに動くことがわかりました。対象者は約5万4000人に上る見通しです。深刻な人手不足で空きがあっても受け入れできない介護施設も出てきており、各社は経験を積んだ職員の賃上げで介護職の処遇改善をアピールして人材の確保を狙います。

 SOMPOホールディングスなど上場する介護大手10社を対象に聞き取ったところ、回答があった9社のうち、ウチヤマホールディングスを除く8社が10月からの賃上げを行うと答えました。

 政府は10月の介護報酬改定で、消費税の増税分を財源に年1000億円程度の公費を投入し、経験・技能がある現場のリーダー級の職員の処遇を改善した場合に介護報酬を上乗せする「特定処遇改善加算」を導入しました。介護大手各社はこの加算などを活用して、賃上げに動きます。

 SOMPOホールディングスは、人材確保が難しい地域などを対象に、リーダー職の年収を最大で約80万円、それ以外の介護福祉士などの職員は最大で約65万円引き上げます。地域や職種によって差はあるものの、2・4~23%の賃上げ率になります。2022年にはさらなる処遇改善を実施する予定で、リーダー職の処遇を看護師と同等水準(東京都で年収420万~475万円)まで上げます。

 ベネッセホールディングスも、10月から従業員の処遇改善に動きます。勤続10年以上のリーダー職のうち年収が500万円以上の人の割合は現在70%ですが、84%まで引き上げます。リーダー職ではない職員の70%も、年収440万円以上に引き上げます。学研ホールディングスは、ベテラン職員を中心に、介護報酬の加算額を上回る賃上げを実施する方針。

 介護職員の賃金は、介護報酬の改定などを反映する形でこれまで毎年0~2%程度改善してきました。SOMPOホールディングスなどは、これを大きく上回る水準の引き上げを予定しています。

 厚生労働省によると、2017年の介護職員の平均給与(賞与込み)は月27万4000円で、全産業平均の36万6000円を大きく下回ります。同じ福祉職である准看護師(33万8000円)やケアマネジャー(31万5000円)にも見劣りする水準で、処遇改善が大きな課題となっています。

 2018年度の介護関係者の有効求人倍率は、3・95倍に上ります。厚労省は、2025年度までに新たに55万人の介護人材が必要になると試算しています。

 介護施設には、高齢者1人当たりに対して配置すべき職員数の基準が定められています。クリアできない施設は高齢者を受け入れることはできないので、空きがあっても入居ができない老人ホームが出てきています。

 特定処遇改善加算は、リーダー職の介護職員の待遇を全産業の平均年収に見劣りしない水準まで引き上げるのが狙い。ウチヤマホールディングスは、「加算だけではすべての職員には還元できず、不公平感が出る」との理由で賃上げを見送る方針です。

 2019年10月2日(水)

 

■看護職員、2025年に27万人不足も 厚労省推計

 厚生労働省は9月30日、看護師や准看護師などの看護職員が2025年に6万~27万人程度不足するとの推計を発表しました。高齢者が今後急増する都市部での不足が目立ちます。厚労省は、看護師養成の在り方や復職支援、地域偏在の対策を検討します。

 2025年に必要とされる看護職員数は、ワーク・ライフ・バランスの改善を考慮し、残業時間の長さと有給休暇の日数で3つのシナリオに分類しました。2025年時点で必要な入院ベッドの数、将来の訪問看護や介護施設の利用者数をもとに計算すると、看護職員の必要数はワーク・ライフ・バランスの改善が進んだ順に①202万人、②190万人、③188万人でした。看護職員の供給数の推計は、175万~182万人でした。

 勤務環境が現状に近い②のシナリオで、供給数が175万人として都道府県別に結果をみると、不足数は東京都で4万2000人。必要数に対する供給は77%にとどまりました。大阪府は3万7000人(75%)、神奈川県は3万2000人(73%)でした。

 一方、人口減少が始まっている地域などでは供給が上回り、20県で看護職員が足りる結果でした。ただし、厚労省の担当者は「足りているとされる所でも山間部などの病院や、訪問看護、介護分野を担う看護師が不足するところがある」といいます。

 厚労省によると、保健師や助産師を含む看護職員は現在約167万人。年々増え続けているものの、すでに地域や医療機関によっては深刻な状況に陥っています。夜間救急を中止したり、入院患者の受け入れを制限したりしているケースもあります。

 神奈川県では、今年5月時点で県内14病院が「スタッフ(看護師)の不足」を理由の1つにして、休止や使っていない病棟がありました。不足する看護師は14病院で少なくとも計199人。平塚市民病院(410床)では2016年から稼働していない8床を稼働させるには9人の看護師が必要だといい、担当者は「看護師の就業環境をさらによくして看護師の確保に努めたい」と話しています。

 ただ、今回の厚労省の推計と自治体の見通しには、ずれもみられます。供給が約6000人上回るとされ熊本県は2017年度、独自に4000人近く不足すると推計。県の担当者は、国の計算では、2025年に必要な病床数が県の見積もりよりも少ないことなどを指摘し、「看護師が余るとは考えていない。政策には県独自の数字を使う」と話しています。

 4万人ほど不足するとされた東京都の担当者も、「今の右肩上がりの供給が続き、離職防止策や就業支援の強化をすれば、そこまで不足する状況にはならないと考えている」と話しています。

 2019年10月2日(水)

 

■長時間労働と自殺、建設業の現場監督で深刻 2019年版過労死白書

 政府は1日、2019年版の「過労死等防止対策白書」を閣議決定しました。重点業種として新たに定めた建設業とメディア業の実態調査をまとめました。

 特に労働時間が長かったのが建設業の現場監督で、6人に1人に当たる16・2%が週60時間以上。月換算すると、労災認定の目安である「過労死ライン」の残業80時間を超過する水準でした。

 政府は「過労死等防止対策大綱」で、長時間労働などの問題があり、特別調査をする業種を定めています。昨年7月の大綱改定で、建設業とメディア業を追加しました。

 大綱では、労働時間が週60時間以上の労働者の割合を2020年までに全体の5%以下にする目標を掲げており、2018年の全業種平均は6・9%でした。

 建設業への調査では、9・9%が労働時間が週60時間以上でした。職種別でみると、現場監督が16・2%、施工管理や設計士など「技術者」は7・1%、現場で作業する「技能労働者」は3・5%でした。

 現場監督の労働時間が長くなる理由(複数回答)は、「業務量が多い」が64・1%でトップ。「事務書類が多い」(49・3%)、「人員不足」(47・7%)、「顧客からの不規則な要望」(44・2%)が続きました。

 2010年からの約5年間に建設業では、脳・心臓疾患と精神疾患が計311件労災認定されました。現場監督は59件の精神疾患が労災認定され、未遂を含む自殺はうち30件で、原因は長時間労働が最多でした。

 メディア業は、労働時間が週60時間超が2・9%でした。放送業が最多の3・9%で、広告は2・5%。新聞では2%、出版で1・3%でした。

 2010年からの約5年間にメディア業で労災認定された精神障害の事案30件を分析すると、20歳代で11件、30歳代で8件と若い世代の発病が目立ちました。4件の自殺は、すべて20歳代でした。メディア業では、電通の新人女性社員の自殺が2016年に労災認定を受けています。

 労災認定された精神障害の要因も性別に分析したところ、男性は「仕事内容・仕事量の変化」が23・1%でトップ。「嫌がらせ、いじめ、暴力」(15・9%)、「上司とのトラブル」(15・3%)に続き、「2週間にわたって連続勤務」(14%)、「月80時間以上の時間外労働」(12・8%)が並んだ上位5つの内、3つが仕事量に関連する内容でした。

 一方、女性は看護師や介護士が担当者の自殺に直面するなど「悲惨な事故や災害の体験、目撃」が21・9%でトップとなり、性差が出る結果となりました。その他は「セクシュアルハラスメント」(19・7%)、「嫌がらせ、いじめ、暴力」(16・6%)、「上司とのトラブル」(15%)が多くなりました。

 2018年度の民間企業における過労死や未遂含む過労自殺は、計158件。2017年度の190件から17%減少したものの、厚労省の担当者は「いまだ高い水準にあり、一層の対策が必要」としています。

 2019年10月1日(火)

 

■植え込み型の補助人工心臓で不具合 患者1人死亡で自主回収

 重い心不全患者らの心臓の働きを助ける植え込み型補助人工心臓「エバハート」を製造販売する長野県諏訪市のサンメディカル技術研究所は9月30日、血液ポンプの一部に不具合があり患者1人が死亡した事例があったとして、2017年5月までに出荷し利用中の旧型23台を自主回収すると長野県に報告しました。同社では、対象者の機器を新型の機器と交換する方向で対応したいとしています。

 植え込み型補助人工心臓は血液を循環させる役割があり、血液を送るポンプを体内に取り付けます。エバハートはシンプルな構造の遠心ポンプで、従来品に比べ埋設部が「こぶし大」で重さは約400グラムと小型化。患者への負担の少ない機器として2011年4月から出荷が始まっています。

 同社によると、死亡事例は今年9月10日に発生。構成品の血液ポンプのモーター回転部が経年劣化により変形を起こして外装ケースに接触し、回転障害を起こし停止したことが原因としています。使用期間が耐用年数の6年を下回っており、製品に欠陥があったと判断したといいます。すでに13日から、回収は始まっています。

 対象となる旧型の機器は170台出荷されており、168人の患者に施術されています。このうち現在も使用している患者は22人。同社では主治医に情報を提供ずみで、状況に応じて自主回収した上で新型機器と交換をしていきたいとしています。

 現在製造販売している新型は変形する可能性のない材料を使用し、同社は「当該現象が発生する可能性はなく、今後も継続的に供給が可能」としています。

 サンメディカル技術研究所は、諏訪地方の地元企業が諏訪発の医療機器として「エヴァハート(旧名称)」を開発するために、1991年に設立。2005年から治験が始まり、2010年暮れに製造販売承認を取得し、翌2011年4月から販売を開始しました。

 しかし、承認の遅れなどで当初予定を大幅に下回り業績が低迷。取引先だった輸送関連機器製造のハイレックスコーポレーション(兵庫県宝塚市)が、新会社として事業を引き継いでいます。

 2019年10月1日(火)

 

■日本新薬、核酸医薬品を承認申請 国内製薬で初

 日本新薬は26日、筋肉の難病とされる「筋ジストロフィー」を対象とした新薬について、厚生労働省に製造販売の承認申請をしたと発表しました。次世代治療薬として注目される「核酸医薬品」の一種で、申請するのは国内メーカーとして初めて。

 厚労省は承認手続きを優先する先駆け審査指定制度の新薬として選定しており、承認されれば、2020年半ばにも販売が始まる見込みです。

 承認申請したのは筋ジストロフィーのうち、患者数の多い「デュシェンヌ型」を対象にした新薬「ビルトラルセン」。

 デュシェンヌ型筋ジストロフィーは、筋肉細胞の骨組みを支えるジストロフィンタンパク質の遺伝子変異が原因で、正常なジストロフィンタンパク質が産生されないことにより筋力が低下する遺伝性筋疾患。男児に発症する頻度が高く、国内に5000人、欧米に3万人ほどの患者がいるとされます。。進行を遅らせる治療法としては、ステロイド剤以外に確立されておらず、新たな治療法の開発が期待されています。

 ビルトラルセンは、日本新薬と国立精神・神経医療研究センターが共同で見いだした、モルフォリノ化合物で合成されたアンチセンス核酸と呼ばれる核酸医薬品。デュシェンヌ型筋ジストロフィー患者の筋肉中のジストロフィン遺伝子のエクソン53を遠回りして、機能のあるジストロフィンタンパク質を産生することによって、疾患の進行抑制と病態改善を期待します。

 日本新薬は、「難病・希少疾患治療薬の開発に使命感を持って取り組んでおり、デュシェンヌ型筋ジストロフィーの患者さんへ福音となるような治療薬を届けられるよう一日も早い製品化を目指す」としています。

 2019年9月30日(月)

 

■男性の尿漏れを防ぐ医療器具を開発 手術不要で取り外し簡単

 男性の尿漏れを防ぐ医療器具を石川県白山市にある病院などが開発し、今年11月から病院での取り扱いが始まることになりました。

 開発された医療器具は、内側に3つの突起のある樹脂製の輪で、外側に輪の大きさを調整する機能があり、圧迫感を減らして血流を保ったまま尿道だけを締め付けることで、男性の尿漏れを防ぎます。

 前立腺がんや前立腺肥大症の手術の影響などで尿漏れに悩む男性のため白山市の公立松任(まっとう)石川中央病院と能美(のみ)市の北陸先端科学技術大学院大学、金沢市の企業が共同開発しました。

 国内では従来、尿漏れを防ぐために手術で体内に新たな装置を埋め込む手法が一般的でしたが、開発された器具は男性器の外から尿道を押さえ、手術の必要がない上に取り外しが簡単だということです。

 医療器具の開発は尿漏れに悩む患者と協力して進められ、患者として開発に参加した男性は「つけた際の痛みや違和感がほとんどないので、使った方には喜んでもらえると思います」と話していました。

 公立松任石川中央病院泌尿器科の前田雄司医師は、「この製品を待っている多くの患者さんや医師の方々に届けられるのが楽しみです」と話していました。

 この医療器具はすでに特許を取得し、今年11月から公立松任石川中央病院が取り扱い、今後、泌尿器科の医師を通じて全国の患者が購入できるようにしたいとしています。

 2019年9月30日(月)

 

■がんゲノム医療、投薬拡大へ 10月から11病院で臨床研究

 国立がん研究センター中央病院(東京都中央区)は25日までに、患者の遺伝子を調べて最適な薬を探す「がんゲノム医療」で、薬の選択肢を増やして早期治療を目指す臨床研究を10月に始めると発表しました。まず最大で約700人を対象に実施し、がんゲノム医療の普及につなげます。

 がんゲノム医療では、国立がん研究センターがシスメックスと開発した「NCCオンコパネル」と、中外製薬が扱う「ファウンデーションワンCDx」という100以上の遺伝子を調べる2種類の検査法が、6月に公的な保険の対象となりました。保険診療と保険外の自費診療を併用する先進医療でも、検査があります。

 だが実際に検査を受けられるのは、すべてのがん患者の約1%。検査後に新薬開発の臨床試験(治験)に参加するなどして投薬まで至るのは、そのうちの約1割で、治療にどう役立てるかが課題となっています。

 臨床研究は、国立がん研究センター中央病院や北海道大学病院、京都大学医学部付属病院などの11病院で、10月に始めます。期間は5年間。保険診療との併用が認められる「患者申出療養制度」を利用します。治療で別のがんで承認されている抗がん剤を使いたい際、国に事前に承認を得ているため、従来半年程度かかっていた治療までの準備期間を大幅に短くできます。

 患者は公的保険の対象になる診療費のほか、約40万円の研究費を支払うものの、ノバルティスファーマが提供する「グリベック錠」などの9種類の分子標的薬を無料で使えます。分子標的薬は、がん細胞の増殖を引き起こす特定の分子だけを狙い撃ちするため、別の種類のがんでも同じ遺伝子変異があれば、効果を上げる可能性があります。

 今後は他の製薬企業とも交渉を進めて無償提供を求め、受け入れる患者を増やします。投薬を受ける患者が増えれば、がんゲノム医療の実効性を高められます。

 2019年9月29日(日)

 

■産婦人科・産科が過去最少更新 減少は28年連続

 厚生労働省は25日、2018年医療施設調査を公表しました。2018年10月時点で、全国の産婦人科や産科のある一般病院は前年比6減の1307施設で、統計を取り始めた1972年以降で最少を更新しました。減少は28年連続となりました。

 小児科のある一般病院も前年比25減の2567施設となり、25年連続で減りました。

 厚労省の担当者は、「出生数が減少する一方、一般病院の統廃合などで大病院に診療科が集約化していることが背景にあるのではないか」としています。

 調査によると、全国の医療施設(病院・診療所)は前年比598増の17万9090施設、内訳は一般病院が7314施設、精神科病院が1058施設、一般診療所が10万2105施設、歯科診療所が6万8613施設でした。

 厚労省は、2018年病院報告も公表。1日当たりの入院患者数は前年比0・4%減の124万6867人で、外来患者数は0・9%減の133万4097人。患者1人当たりの入院期間を表す平均在院日数は、前年より0・4日短い27・8日でした。

 2019年9月29日(日)

 

■周囲のたばこの煙、78%が「不快」 たばこ対策の世論調査

 内閣府は27日、たばこ対策について初めて行った世論調査の結果を発表しました。周りの人のたばこの煙を「不快に思う」「どちらかと言えば不快に思う」と答えた人は合計で78・4%に上り、「不快に思わない」の20・0%を大幅に上回りました。

 調査は、来年4月に職場や飲食店を原則禁煙とする改正健康増進法が全面施行されるのに合わせて実施されました。7月25日~8月4日、18歳以上の3000人を対象に行い、54・9%が答えました。

 不快に思った場所を複数回答で尋ねたところ、「食堂・レストランなど主に食事を提供する店舗」(62・4%)がトップで、「路上」(53・3%)、「居酒屋・バーなど主に酒類を提供する店舗」(38・6%)が続きました。

 政府へのたばこ対策の要望は、「未成年に対する健康被害教育の充実」(41・8%)、「受動喫煙対策の強化」(41・7%)、「たばこ税の引き上げ」(32・2%)の順でした。

 受動喫煙対策の具体例としては、「分煙」72・6%、「飲食店の禁煙」60・6%、「病院、学校、行政機関などの敷地内禁煙」57・9%が上位3つ。

 厚生労働省の担当者は、「調査を基に一層対策を強化したい」と話しています。

 2019年9月29日(日)

 

■2040年まで「国民皆保険続く」45・7% 20~40歳代が悲観的

 すべての国民が公的医療保険に加入し、医療費をカバーする「国民皆保険制度」が、現状のまま2040年まで続くと考えている人は45・7%にとどまることが17日、民間の調査でわかりました。

 2040年ごろに高齢者数がピークを迎え医療費が膨らむ一方、保険料や税金を支払う現役世代が激減するとされ、多くの人が不安を抱いている実態が浮かび上がりました。

 調査はシンクタンク「日本医療政策機構」が7月、インターネットで実施。全国の20歳以上の男女2434人にインターネットで調査票を送り、2000人から有効回答を得ました。

 国民皆保険制度が2040年まで続くか聞いたところ、「思う」「どちらかといえば思う」は計45・7%でした。これに対し、「思わない」「どちらかといえば思わない」は計33・4%、「わからない」は21・0%でした。

 年代別に見てみると、「思わない」「どちらかといえば思わない」が20歳代で計38・4%、30歳代で計40・6%、40歳代で計39・1%あり、若い人ほど悲観的な回答をしています。

 2019年9月28日(土)

 

■遅延損害金は「肺がん確定診断日」から アスベスト訴訟で初判断

 アスベスト(石綿)規制の遅れが原因で粉じんを吸って肺がんを患ったとして、石綿関連工場で働いていた北九州市門司区の70歳代男性が国に損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決が27日、福岡高裁でありました。西井和徒(かずと)裁判長は、1審の福岡地裁小倉支部判決と同様、国に請求通り1265万円の賠償を命じ、肺がんの診断日を起算日とする遅延損害金の支払いを命じました。

 ただ、1審判決が起算日を「肺がんの疑いと診断された日(2008年9月)」と判断した点については、「疑いにとどまっている」として、「肺がんの確定診断を受けた日(2008年11月)」に変更しました。

 賠償金の利息に当たる遅延損害金の起算日を肺がんの診断日とする司法判断は、今年3月の1審判決のほか、9月17日の神戸、広島両地裁判決でも示されましたが、高裁レベルでは初めて。

 石綿被害を巡っては、国が2014年、訴訟での和解成立を条件とした救済制度を創設し、これまで労災認定日など最も重い行政上の決定日などを遅延損害金の起算日として、元労働者と和解しています。

 1審判決によると、男性は1960~1996年、門司区の石綿工場で石綿スレートの製造に従事。2008年に肺がんと判明し、2010年に労災認定されました。1審判決は、「肺がん発症が損害であり、診断日から遅延損害金が発生する」としました。

 2019年9月28日(土)

 

■インフルエンザの流行、10都県に拡大 沖縄県は警報レベル

 厚生労働省は27日、九州や沖縄県を中心に10都県でインフルエンザの患者数が流行入りの目安を超えたと発表しました。特に沖縄県で患者数が突出しており、警報レベルに達しています。例年は12月上旬に全国的に流行入りしますが、今年は2カ月ほど早い可能性があり、感染拡大が懸念されています。

 厚労省によると、全国約5000の定点医療機関から22日までの1週間に報告された患者数は、1医療機関当たり1・16人で、流行開始の目安となる1人を超えました。

 ただ、沖縄県の患者数が52・22人と突出しており、1人以下の地域も多いため、厚労省の担当者は「まだ全国的な流行入りとは判断していない」としています。

 このほか佐賀県が2・03人、宮崎県が1・63人、福岡県が1・60人となるなど九州のほとんどが流行入りしています。東京都も1・06人に達しました。

 インフルエンザ警報発令中の沖縄県は、22日までの1週間に報告された患者数52・22人となり、前週の50・79人よりさらに増加。低年齢層を中心に流行しており、今シーズンの累計では1歳から14歳までの患者が54%を占めています。

 インフルエンザの主な感染経路は、せきやくしゃみに含まれるウイルスを吸い込むことによる「飛沫感染」と、ウイルスが付着した手で口や鼻を触ることで間接的にウイルスに接する「接触感染」。予防に有効な方法としては、ワクチン接種のほか、マスク着用などのせきエチケット、流水・せっけんによる手洗いなどが挙げられています。 

 2019年9月28日(土)

 

■エボラなど生きた病原体、国立感染研施設に初輸入 五輪控え、検査法確立へ

 国立感染症研究所は27日、エボラ出血熱など危険性が高い5種類の感染症の生きた病原体を村山庁舎(東京都武蔵村山市)のバイオセーフティーレベル(BSL)4施設に初めて輸入したと発表しました。

 輸入したのは、感染症法で最も危険性が高い1類の感染症に指定され、所持や輸入が禁じられているエボラ出血熱、ラッサ熱、クリミア・コンゴ出血熱、マールブルグ病、南米出血熱の5種類の病原体。病原体はこれまで国内にはなく、25、26の両日に海外から受け入れ、冷凍保管しました。輸入元の国は明らかにしていません。

 東京オリンピック・パラリンピックを来年に控え、訪日外国人も増える中、感染症の検査体制を強化することが目的です。感染が疑われる患者が出た場合、現在は人工的に合成した病原体の一部を使って検査していますが、この方法では診断が難しいケースがあります。生きた病原体を使えば、あらゆる場合で正確かつ迅速に検査を行えるといいます。患者が出た場合、治療後に血液と生きた病原体を反応させ、他人にうつす危険がなくなったかどうかを確かめる検査も新たにできるようになるとしています。

 これらの病原体は、安全管理の性能が最も高いBSL4施設でしか扱えず、国内には国立感染症研究所村山庁舎にしかありません。

 厚生労働省は2015年、村山庁舎のBSL4施設で病原体を扱うことを認め、今年7月に輸入する5種類の病原体を指定していました。

 2019年9月27日(金)

 

■マダニ感染症で宮崎県の男性死亡 今年に入って3人目の死者

 宮崎県は26日、県内の70歳代男性がマダニが媒介するウイルス感染症「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)」に感染し、死亡したと発表しました。宮崎県内の死者は、今年に入ってから3人目です。

 宮崎県によりますと、男性は下痢や食欲不振、発熱などの症状を訴えて18日に宮崎市内の医療機関を受診し、19日に検査で感染が確認されました。入院し、数日後に死亡しました。

 男性からはマダニの刺し口は確認できず、感染経路はわかっていませんが、日常的に農作業など屋外での活動を行っていたということです。宮崎県内でSFTSへの感染が確認されたのは今年8人目で、死亡した人は3人目です。

 SFTSへの感染は、例年、マダニの活動が活発になる5月から9月にかけて多くなる傾向がみられますが、宮崎県内では年間を通じて患者が発生しています。

 宮崎県は、野山や草むらなどに入る時には有効な成分の入った虫よけスプレーを利用することや、長袖や長ズボンなど肌の露出が少ない服装をすることなど対策を呼び掛けています。 

 2019年9月27日(金)

 

■再編統合を検討すべき公立・公的424病院を公表 厚労省

 厚生労働省は26日、市町村などが運営する公立病院と日本赤十字社などが運営する公的病院の25%超に相当する全国424の病院について、「再編統合について特に議論が必要」とする分析をまとめ、病院名を公表しました。

 診療実績が少なく、非効率な医療を招いているためです。ベッド数や診療機能の縮小なども含む再編を地域で検討し、2020年9月までに対応策を決めるよう求めました。

 全国1652の公立・公的病院(2017年度時点)のうち、人口100万人以上の区域に位置する病院などを除いた1455病院の診療実績をもとに分析しました。

 がんや救急など高度な医療の診療実績が少ない病院や近隣に機能を代替できる民間病院がある病院について、「再編統合について特に議論が必要」と位置付けました。

 424病院の内訳は、公立が257、公的が167でした。都道府県別にみますと、最も多いのが北海道で54病院、次いで新潟県が22病院、宮城県が19病院、長野県と兵庫県で15病院などとなっています。

 今後、厚労省は地域の医療計画をつくる各都道府県に対し、地域内の他の病院などと協議しながら2020年9月末までに対応方針を決めるよう求めます。他の病院への統合や病床数の削減、診療機能の縮小などを2025年までに終えるよう要請します。

 ただ罰則規定や強制力はなく、権限は各地域に委ねられています。特に公立病院の再編や縮小には、住民の反発も予想されます。改革が進むかは不透明で、実効性を高める施策が必要になりそうです。

 政府は団塊の世代の全員が75歳以上になる2025年度をターゲットに、病気が発症した直後の「急性期」の患者向けの病院ベッド数を現在の124万床より5万床少ない119万床に減らす「地域医療構想」を進めています。看護師などを手厚く配置するため医療費もかさむのに、病床数は過剰となっているためです。

 ただ各地域が医療計画で示した急性期病床の削減率は、公立病院全体で5%にとどまっています。このため厚労省は、縮小する余地のある過剰な医療の実態を明らかにするため、この春から分析を進めていました。

 2019年9月27日(金)

 

■ゲノム編集食品のトウモロコシが日本に アメリカ種子大手が2021年にも輸出

 アメリカの種子大手コルテバ・アグリサイエンス(元ダウ・デュポン)は、遺伝子を自在に改変できるゲノム編集で品種改良したトウモロコシを日本で流通できるように、厚生労働省に年内にも届け出ます。10月から厚労省が始める新制度に従って、手続きを進めます。早ければ2021年にも、アメリカで栽培したものが菓子や調味料の原料として輸入される見通しです。

 ゲノム編集食品で国際種子大手が国内進出を示したのは初めてで、普及への試金石になります。

 ゲノム編集は遺伝子を狙った場所で改変できる技術で、簡単に品種改良ができます。海外では、アメリカのバイオベンチャー、カリクストが2019年2月に植物油の成分、オレイン酸を多く含むように改良した大豆から作った植物油を発売するなど実用化が始まりました。国内では、筑波大学発ベンチャーが「GABA(ギャバ)」と呼ばれる血圧を下げる成分を多く含むトマトで、製品化を目指しています。

 厚労省は10月からゲノム編集を使った食品について、新たに遺伝子を加えない場合に届け出だけで販売できる新制度を始めます。輸入品も、安全性審査なしで販売できます。

 コルテバ・アグリサイエンスは、遺伝子組み換えしたトウモロコシや大豆の種子なども扱います。今回は、アメリカで農家にゲノム編集で品種改良した種子を販売し、育ったトウモロコシを商社などを通して日本に輸出します。主に、菓子やドレッシングに使うコーンスターチの原料になるといいます。

 同社のトウモロコシは、収量の多い品種をゲノム編集でもちもち感を増やすようにでんぷんの組成を変えました。食品会社への安定供給や加工食品の価格低下につながる可能性があります。

 2019年9月27日(金)

 

■がん治療と仕事、「両立困難」が57% 内閣府の世論調査

 がん対策に関する内閣府の世論調査で、がんの治療を受けながら働き続けるのは難しいと考えている人が、57%に上りました。3年前の調査よりは減ったものの、治療と仕事の両立が引き続き、課題となっている実態が浮き彫りになりました。

 内閣府は、今年7月から8月にかけて、全国の18歳以上の3000人を対象に、がん対策に関する世論調査を行い、55%に相当する1647人から回答を得ました。

 それによりますと、がんの治療や検査のために2週間に1度程度、病院に通う必要がある場合、働き続けられる環境だと思うか質問したところ、「そう思う」と答えた人が37%だったのに対し、「そう思わない」と答えた人は57%でした。

 「そう思わない」と答えた人に理由を尋ねたところ、「体力的に困難」が24%で最も多く、次いで「代わりに仕事をする人がいない、いても頼みにくい」が21%、「職場が休むことを許してくれるか、わからない」が19%などとなっています。

 がんの治療を受けながら働き続けるのは難しいと考える人の割合は、2016年の前回調査に比べて7ポイント減りましたが、依然として6割近くに上っており、厚生労働省の担当者は「企業の意識改革を後押しするとともに、医療機関などと連携しながら、治療と仕事の両立ができる環境整備を進めていきたい」と話しています。

 2019年9月27日(金)

 

■東京都、インフルエンザ流行開始を発表 昨シーズンよりも2か月以上早く

 東京都は東京都内のインフルエンザの患者が増えているとして、26日、インフルエンザの流行が始まったと発表しました。東京都内での流行の開始は昨シーズンより2カ月以上早く、東京都はこまめな手洗いなど対策を徹底するよう呼び掛けています。

 東京都によりますと、9月16日から22日までの1週間で東京都内419の定点医療機関から報告されたインフルエンザの患者数は、1つの医療機関当たりで1・06人となりました。

 東京都は流行開始の目安となる「1人」を超えたとして、26日、東京都内でインフルエンザの流行が始まったと発表しました。

 インフルエンザは例年12月から3月にかけて流行しており、昨シーズンは12月13日に流行が始まりましたが、今シーズンはこれよりも2カ月以上早く、2010年のシーズン以降で最も早いということです。 

 1つの医療機関当たりの患者報告数が1・0人を超えた保健所は、東京都内31カ所中12カ所で、報告数が高い順に、多摩小平(4・05人)、中央区(1・80人)、文京(1・57人)、渋谷区(1・57人)、杉並(1・53人)、世田谷(1・46人)、中野区(1・40人)、板橋区(1・38人)、江戸川(1・37人)、八王子市(1・33人)、北区(1・18人)、西多摩(1・14人)となっています。

 東京都内では9月2日以降、22日までに、学校や福祉施設などでインフルエンザとみられる集団感染が55件報告されています。

 今シーズンはインフルエンザに対して早めに注意することが必要だとして、東京都は、こまめな手洗いやせきなどの症状がある場合はマスクを着用するといった対策を徹底するよう求めています。

 2019年9月26日(木)

 

■乳児向けロタワクチン、原則無料の定期接種に 2020年10月1日から

 激しい下痢や嘔吐(おうと)を引き起こすロタウイルスの乳児向けのワクチンについて、厚生労働省は原則無料で受けられる定期接種に加える方針を決めました。

 ロタウイルスは幼い子供を中心に冬場から春先にかけて流行し、発症すると激しい下痢や嘔吐、発熱、腹痛などを引き起こし、脱水症状で点滴や入院が必要になることもあり、まれに死亡することもあります。

 重症化を防ぐための乳児向けのワクチンは8年前に国内で初めて承認され、任意で接種できるようになりましたが、費用が3万円ほどかかり、保護者などから公費での助成を求める声が上がっていました。

 厚労省は専門家会議でワクチンの効果や安全性、それに費用対効果などを検証した結果、26日、原則無料で受けられる定期接種に加える方針を決めました。

 対象となる子供は令和2年8月生まれ以降の乳児で、来年10月1日から定期接種に加えることにしています。

 ロタウイルスのワクチンが定期接種に加えられることに、保護者からは歓迎の声が聞かれました。このうち東京都内のクリニックには、ワクチン接種に年間約80人の乳児が訪れます。使用しているのは3回接種する必要があるワクチンで、自己負担は合計で3万6000円に上ります。

 この日も生後3カ月から4カ月の3人の乳児が、ワクチンの接種を受けていました。30歳の母親は、「自己負担は安くありませんが、ロタウイルスに感染すると症状が重たいと聞いて受けさせることにしました。定期接種になると次の子供ができた時に非常に助かります」と話していました。

 東京都立川市の「ナビタスクリニック」の久住英二医師は、「ワクチンの費用は決して安いものではないため早く何とかしてほしいと思っていました。家庭の経済力によってワクチンを打てる人と打てない人が出てしまうのは望ましくなく、定期接種になることはいいことだと思います」と話しています。

 2019年9月26日(木)

 

■世界初、iPS細胞から複数臓器を同時に作製 東京医科歯科大

 iPS細胞(人工多能性幹細胞)を使い、人の肝臓と胆管、膵臓(すいぞう)がつながったミニサイズの多臓器を作製することに東京医科歯科大学などの研究チームが、世界で初めて成功しました。イギリスの科学誌「ネイチャー」(電子版)に26日、発表しました。

 複数の臓器がかかわり合う病気の研究や創薬に役立ち、将来は患者への移植も目指します。

 iPS細胞による再生医療は目の病気などですでに移植が行われ、心臓病や肝臓病を治療する研究も進んでいます。だが、いずれも細胞や単独の臓器が対象で、複数の臓器がかかわる病気への応用は困難でした。

 肝臓、胆管、膵臓が関係する病気は胆管閉塞や肝硬変などがあり、患者も多くいます。今回のミニサイズの多臓器を使えば病態を再現でき、発症メカニズムの解明や治療薬の開発に役立ちます。

 東京医科歯科大の武部貴則教授などの研究チームは、人のiPS細胞から腸のもとになる前腸と中腸という器官の細胞を作製。これを混ぜて培養し肝臓と膵臓、それらをつなぐ胆管が一体化した約0・5ミリの大きさの多臓器を作りました。肝臓から液体が膵臓、胆管に流れるなど、一定程度機能しているのも確認できました。

 今後、血管なども同時に培養できれば、移植して治療に使えるようになる可能性が出てくるといいます。

 武部教授は、「単一の臓器を作るこれまでの方法とは全く異なる。移植するには1ミリ程度の大きさに育てる必要があり、課題は多いが10年以内に移植できる状態にまで研究を進めたい」と話しています。

 2019年9月26日(木)

 

■今世紀末までに漁獲可能な魚20%以上減少も 国連IPCC報告書

 世界各国の科学者で作る国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、地球温暖化によって海洋環境が変化することで、今世紀末までに世界の海の漁獲可能な魚の量が20%以上減少し得る、とする報告書をまとめました。

 IPCCは9月20日から24日にかけてモナコ公国で総会を行い、世界各国の科学者や政府の担当者など400人以上が参加して、地球温暖化が海洋や南極などの極域に与える影響をまとめた初めての報告書を承認しました。

 報告書では、温暖化によって世界の海面の平均水温が上昇し海の温度の分布が変化したり、海が酸性化したりするなどして、今世紀末までに世界の海全体の生物の量が最大で20%減るほか、漁獲可能な魚の量も最大で24%減少し得るとしています。

 その上で漁業に依存する地域では、食糧を巡る紛争や対立の引き金にもなり得ることなどを指摘しています。

 さらに、海洋保護区を設けるなどの個別の適応策では断片的で限界があるとして、世界全体で温室効果ガスの削減を進めることや、海洋に関するデータや予測などの情報の共有を国や地域を越えて進めること、またそうしたノウハウのない地域への支援の必要性を指摘しています。

 報告書では、温暖化によってグリーンランドや南極の氷が溶け続けることなどで、世界の平均海面水位が今世紀末までに、20世紀末と比べて最大で1・1メートル上昇し、氷河は40%以上が失われる可能性も指摘しています。

 海抜の低い沿岸部には、2050年までに世界で10億人以上が住むと予測されていますが、そのころまでには海面の上昇によって台風の高潮などによる「100年に1度」とされる大規模な災害が、人口の多い都市や島しょ国で毎年のように起こるようになると指摘し、警鐘を鳴らしています。

 2019年9月26日(木)

 

■サプリから微量の禁止物質3種類の成分を検出 プロ野球の巨人などに提供

 プロ野球の巨人などに提供されているサプリメントから微量の禁止物質が検出されたことが25日、わかりました。提供した会社によりますと、ドーピング検査で陽性反応が出る可能性は極めて低いということですが、この会社では謝罪するとともに摂取を控えるよう呼び掛けています。

 禁止物質が検出されたのは、スポーツ用品の製造販売などを手掛けるドーム社(東京都江東区)が今年6月に販売した「アイアンSP」です。

 ドーム社によりますと、イギリスの検査機関の検査で、世界アンチ・ドーピング機構(WADA)が禁止物質に指定し、筋力増強の効果がある3種類の成分が検出されたということです。

 アイアンSPは主に鉄分を補給するためのサプリメントで、今年6月に一般に販売されるとともにプロ野球の巨人やほかの球団の選手、それに別の競技の選手などにも提供されていたということです。

 検出された物質は本来商品に含まれない成分で、推定混入量は製品分析上の検出限界(100ナノ・グラム)以下または限界程度とみられ、ごく微量で、ドーピング検査で陽性反応が出る可能性は極めて低いということです。プロ野球を統括する日本野球機構(NPB)のドーピング検査でも、この3種類の成分に陽性反応を示した例はないということです。

 巨人が選手に聞き取り調査をしたところ、複数選手がアイアンSPを摂取した記憶があると回答しました。球団は今後専門機関に調査を依頼し、選手の体への影響について調べる方針といいます。

 今季のプロ野球ではドーピング検査で2選手が陽性反応を示したことが明らかになっていますが、NPBでは「25日現在で規定に違反した3例目は出てはいない」と説明しています。

 ドーム社によりますと、このアイアンSPは委託した工場で製造されたもので、すでに販売は中止されていますが、これまでに約2000個が流通し、そのうち1000個ほどがすでに購入されているということです。

 ドーム社は今後、さらに詳しく調べるため別の検査機関による検査も検討しているということで、「ご迷惑とご心配をかけていることを深くおわび申し上げます」と陳謝した上で、ドーピング検査を受ける可能性があるアスリートに対し、今後の摂取を控えるよう呼び掛けています。 

 2019年9月26日(木)

 

■乱用の恐れがある薬の複数販売、薬局の半数が不適切 厚労省が調査

 乱用の恐れがある薬を複数購入しようとした客に対し、使用目的の確認などをせずに販売していた薬局やドラッグストアが48・0%に上ることが、厚生労働省による2018年度の「医薬品販売制度実態把握調査」でわかりました。

 不適切な販売事業者の割合は2017年度の前回調査(38・8%)よりも増えており、厚労省は販売を許可する都道府県に対し、監視や指導を強化するよう求める通知を出しました。

 調査は、全国5000カ所の薬局(1754店)やドラッグストア等(3246店)を調査員が一般客として訪れる形で毎年実施しています。

 せきを鎮め、たんを取り除く作用があるものなど一部の一般薬は、乱用により依存状態が懸念される成分を含んでおり、注意が必要とされます。そのため、医薬品医療機器法では、複数購入しようとする客に対し、薬剤師らが使用目的や理由を確認することに加え、販売数量を制限することを義務付けています。

 乱用の恐れがある薬の複数購入の調査が行われたのは、1939店(薬局116店、ドラッグストア等1823店)。これらの中で、購入確認や販売数量の制限を伴うなど販売方法が「適切」とされたのは薬局で53・4%、ドラッグストア等では51・9%でした。2017年度の前回調査ではそれぞれ69・7%と61・0%、2016年度の前々回調査では76・6%と62・6%であり、いずれも右肩下がりの状況となっています。

 薬のインターネット販売をしている500のサイトを対象とした調査では、53・2%が不適切な販売方法でした。

 2019年9月25日(水)

 

■横浜市の介護施設、医師数を水増し 報酬7億5000万円を不正受給

 横浜市にある介護施設が医師の数を水増しして介護報酬を請求し不正に受け取っていたことが25日、判明しました。受け取った額は約7億5000万円に上るとみられ、横浜市は介護施設を運営する医療法人に対し、返還を求めるとともに、今後1年間、新規の利用者の受け入れを停止する処分を行いました。

 処分を受けたのは、横浜市旭区の介護老人保健施設「希望の森」を運営する医療法人「司命堂会」です。

 横浜市によりますと、希望の森は2013年4月~2017年7月まで、法律で決められた医師の数を満たしているように装って介護報酬を請求し、不正に受給していたということです。
 
 希望の森は、過去に勤務していた医師の名前を使って実態のないタイムカードや勤務表を偽造して、医師の数を水増しして報告していたということで、不正に受け取った報酬の総額は約7億5000万円に上るとみられます。

 横浜市は法律の時効が成立していない2017年6月~2018年7月分の約1億5000万円について、加算金を含めて返還を請求しているほか、それ以前についても自主的な返納を求めています。

 希望の森には現在およそ150人の利用者がいるということで、横浜市は事業者の指定取り消しはせず、10月1日から1年間、新たな利用者の受け入れを停止する処分を行いました。昨年5月、横浜市に通報があり、監査や聞き取りを進めていました。刑事告発はしない方針。

 処分を受けた医療法人、司命堂会は、「処分は重く受け止めており、市の方針には従いたい。利用者に極力影響が出ないよう、職員一丸となって対応していく」とコメントしています。

 2019年9月25日(水)

 

■RSウイルス感染症、1週間で患者1万人超 過去最多を記録

 国立感染症研究所は24日、9~15日の1週間に全国約3000の小児科から報告されたRSウイルス感染症の患者数が、過去最多の1万846人を記録したと発表しました。

 都道府県別では、大阪府が最多の889人で、福岡県724人、東京都646人、愛知県429人など。

 今年の患者数は8万7072人で、年間13万9557人と最も多かった2017年の同時期を上回るペースとなっています。以前は冬に患者が多かったものの、2011年以降は夏から患者報告が増え始める傾向がみられています。

 このRSウイルス感染症は、患者のくしゃみなどのしぶきを吸い込んだり、ウイルスが付着した物に触ったりすることでうつります。

 発熱など風邪に似た症状が出るものの、多くは軽症で数日で治ります。しかし、特に赤ちゃんがかかると、肺炎のほか気管支炎を引き起こすなど重症化することがあります。

 予防のためのワクチンや治療薬はなく、国立感染症研究所は手洗いの徹底を呼び掛けています。

 2019年9月25日(水)

 

■サバ、魚肉にも血栓予防成分 福井県立大が確認

 サバの魚肉のタンパク質が分解される際に生成されるペプチド(アミノ酸結合化合物)に、血栓を予防する効果が期待できることを福井県立大学海洋生物資源学部の伊藤光史講師と食品素材開発などのカワイマテリアル(福井県坂井市)が共同研究で確認しました。伊藤講師は「医薬品開発などへの展開や、サバの付加価値を高めることも考えられる」と意義を説明し、今後は医療機関と手を組み臨床試験へと段階を進めたいとしています。

 福井県立大学永平寺キャンパス(福井県永平寺町)で10日に開かれた日本水産学会で、発表しました。伊藤講師は長年、サバの伝統食「へしこ」について研究。へしこエキスの成分に、心筋梗塞や脳梗塞の原因となる血栓の形成を抑える作用があることを認め、それがペプチドだと推定しました。これを受け、福井県産の食材や食品の研究開発などに取り組むカワイマテリアルが共同研究を買って出ました。

 青魚の油に含まれるドコサヘキサエン酸(DHA)などが健康に効果のあることは知られていますが、今回は油以外の魚肉を用いたのがポイント。当初はサバのへしこを使いましたが、発酵させるなど手間もコストもかかるため、マサバとタイセイヨウサバの魚肉を使い、加水分解して得られる2種類のペプチドの働きを研究しました。

 試験管で作用が確認できたため、マウスでも実験。マウスに脂質の多い餌を与えると血を固まらせようとする物質の働きが上昇しましたが、サバ由来のペプチドを混ぜた飲み水を与えることでその働きは抑えられました。

 ペプチドは、サバの魚肉が消化される時に生じます。カワイマテリアルの担当者は、「福井の食文化に欠かせないサバに健康面での有効性が確認されることは大きなメリット」と話しました。 

 2019年9月24日(火)

 

健康食品1製品から医薬品成分 厚労省、2017年度買い上げ調査

 厚生労働省は24日、強壮や痩身効果をうたった健康食品やクリームなどに関する2017年度の「無承認無許可医薬品等買い上げ調査」の結果、1製品から医薬品の成分を検出したと発表しました。すでに業者に販売を停止させ、回収させる措置を取りました。同省は健康被害の恐れがあるとして、使用中止を呼び掛けています。

 厚労省によると、42道府県の協力で国内で販売されていた156製品を買い上げ、国立医薬品食品衛生研究所が分析。その結果、長崎県が買い上げた早漏防止クリーム「Super STUD 007」(1本5000ミリグラム)から、局所麻酔に使われる「リドカイン」(148ミリグラム)が検出されました。

 リドカインには、意識障害や不整脈、呼吸抑制などの副作用があるといいます。現時点で健康被害の報告はないとしています。

 2019年9月24日(火)

 

■新エボラワクチン、コンゴで10月から導入 アメリカ製薬大手が開発

 世界保健機関(WHO)は23日、エボラ出血熱の流行に見舞われているアフリカ中部のコンゴ民主共和国(旧ザイール)で10月から、アメリカの製薬・日用品大手ジョンソン・エンド・ジョンソンが開発した新たなエボラワクチンが導入されると発表しました。

 WHOに対しては緊急医療援助団体「国境なき医師団(MSF)」が、同国におけるワクチン支給が十分でないと非難したばかりでした。

 2018年8月に始まったコンゴ民主共和国のエボラ出血熱の流行では、死者数が2100人以上に達し、2014年から2016年にかけて発生した西アフリカでの流行に次ぐ過去2番目の感染規模となっています。

 これまでにエボラ出血熱の感染地域に暮らす22万3000人以上が、ドイツの医薬品大手メルク製のワクチンを接種していますが、WHOは感染地域外の住民の予防接種のために、ジョンソン・エンド・ジョンソンが開発し実験段階にある2種類目のワクチンの使用を許可するよう同国政府を説得していました。

 ジョンソン・エンド・ジョンソン製の新ワクチンについては、エボラ出血熱対応への不信感がはびこる地域で新ワクチンを導入するのはリスクを伴うとして、前保健相のオリ・イルンガ氏が拒否していました。しかしイルンガ氏が7月に辞任した後、2種類目のワクチン導入が承認される道筋が見えていました。

 同国保健省は23日の声明で、エボラ出血熱の流行が続いた場合、メルク製ワクチンの在庫が切れるリスクが想定される点を指摘し、ジョンソン・エンド・ジョンソンのワクチンは予防手段として使用されると述べました。

 ジョンソン・エンド・ジョンソンの新ワクチンは10月半ばに導入される見通しで、接種は56日間を隔てて2回に分けて行われるといいます。

 2019年9月24日(火)

 

■タンザニアでエボラ出血熱の患者か 政府は情報提供せず

 世界保健機関(WHO)は21日、アフリカ東部のタンザニアでエボラ出血熱が疑われる患者について情報があったものの、政府が確認を拒否していると発表しました。タンザニアはエボラウイルスの感染が拡大しているコンゴ民主共和国(旧ザイール)の隣国で、WHOは情報の提供と調査への協力をタンザニア政府に呼び掛けています。

 WHOによりますと、9月10日から11日にかけて、タンザニア最大の都市ダルエスサラームで、エボラ出血熱が疑われる患者が死亡し、その後、エボラウイルスの検査結果が陽性だったという情報があったということです。

 このほかにもエボラウイルスに感染した可能性がある患者2人について、情報があったということですが、タンザニア政府からは14日、「国内ではエボラ出血熱は確認されていない」との報告があっただけで、WHOによる再検査の申し出も拒否されたということです。

 タンザニアでエボラ出血熱の患者が確認されれば、初めてのケースで、WHOは感染の拡大を防止するために、政府からの十分な情報提供や協力が欠かせないとして、現状について「極めて危険な状況だ」としています。

 一方で、WHOは「現段階では感染が広がっている兆候はない」としています。

 タンザニアの隣国、コンゴ民主共和国では昨年8月以降、エボラウイルスの感染が拡大し、これまでに2100人以上が死亡しており、周辺国への拡大をいかに食い止めるかが課題になっています。

 一方、緊急医療援助団体「国境なき医師団(MSF)」は23日、エボラ出血熱が流行しているコンゴ民主共和国におけるワクチン支給が十分でないとして、WHOを非難しました。

 MSFオペレーション事務局のイザベル・デフォーニ局長は、「現在抱えている主な問題の一つは、WHOによってワクチンが支給されているが、危機的な状況にある患者のほんの一部しか保護されていないという事実だ」と指摘しました。

 2019年9月23日(月)

 

■今世紀末に平均気温が最大3・4度上昇も 国連が対策強化呼び掛け

 国連の温暖化対策サミットを前に温暖化の現状をまとめた報告書が発表され、世界の平均気温は、これまでに1・1度上昇したと指摘した上で現状のままでは、今世紀末には平均気温が最大で3・4度上昇するとして、各国に対策の強化を呼び掛けています。

 報告書は、世界気象機関(WMO)や国連環境計画(UNEP)などがニューヨークで23日に開かれる国連の温暖化対策サミットを前に22日、発表したものです。

 それによりますと、2015年から2019年までの5年間の世界の平均気温は、2011年から2015年までの5年間に比べて0・2度上昇し、産業革命前の1850年から1900年に比べると1・1度上昇したとしています。

 また、海水面の上昇が加速しているほか、海は二酸化炭素の吸収によって酸性度が26%増しており、生態系への影響が懸念されるとしています。

 一方で、石炭や石油などの化石燃料は今も主要なエネルギー源で、温室効果ガスの排出量は増え続けているとし、各国政府が約束した削減目標を達成しても、世界の平均気温は今世紀末には最大で3・4度上昇するとしています。

 報告書は気温の上昇を1・5度以内に抑え、温暖化による深刻な被害を防ぐためには、各国が大幅に取り組みを強化する必要があるとしており、国連のアントニオ・グテーレス事務総長(元ポルトガル首相)は各国の首脳にこうした事実に耳を傾け、行動に移すよう呼び掛けています。

 2019年9月23日(月)

 

■アメリカの「オピオイド」訴訟で製薬会社破たんも 鎮痛剤乱用で年5万人近く死亡

 アメリカでは、「オピオイド」と呼ばれる鎮痛剤の乱用による薬物中毒で年間5万人近い人が死亡し、深刻な社会問題になっています。この問題を巡り、製薬会社などを相手取った訴訟が2000件以上起きており、中には巨額の和解金のため、経営破たんする製薬会社も出てくるなど影響が広がっています。

 オピオイドはケシの成分などを使った鎮痛剤で、アメリカでは1990年代半ばから広く処方されるようになり、その結果、乱用によって中毒になる人が増え、深刻な社会問題になっています。

 過剰摂取による死者の数は、2007年は1万8515人でしたが、10年後の2017年には4万7600人へと急激に増えました。これは1日当たり130人がなくなる事態で、同じ2017年のアメリカでの交通事故による死者数3万7000人を大幅に上回ります。トランプ政権はこの年、「非常事態」を宣言しています。

 この問題を巡っては、製薬会社や医師が安易に販売したり処方したりしたとして、州政府などが製薬会社などを相手取って損害賠償を求める訴訟がアメリカ全土で2000件以上起きています。

 8月には医薬品大手の「ジョンソン・エンド・ジョンソン」が、日本円にして約606億円の賠償命令を受けたほか、9月15日には、「パーデュー・ファーマ」が、日本円で約1兆1000億円の和解金が必要になり経営破たんしました。

 10月21日には、各地の訴訟を一括した審理が100を超える企業を被告としてオハイオ州の裁判所で始まる予定で、影響はさらに広がるものとみられています。

 オピオイドは、がんなどの鎮痛剤として長く使われてきましたが、経済協力開発機構(OECD)によりますと、製薬会社が販売を促進し、医師が比較的簡単に処方し始めた1995年ごろから、消費量が大幅に増えたということです。中には、依存症のリスクを過小評価して販売を進めた製薬会社もあり、その結果、中毒になる人が増えて深刻な社会問題になりました。

 トランプ大統領が非常事態を宣言した直後の2017年11月に大統領経済諮問委員会がまとめたレポートによりますと、オピオイドの問題に伴って起きる生産性の低下や、医療費の増大といった経済的な負のコストは、2015年時点のアメリカの国内総生産(GDP)の2・8%に相当する5040億ドル、日本円で54兆円に上るとしています。

 9月15日に経営破たんした「パーデュー・ファーマ」は、積極的にオピオイドを販売していたとして、厳しい目が向けられていました。多くの損害賠償訴訟を抱え、このうち24の州などと和解することで合意しましたが、日本円にして1兆円余りの和解金を準備するため、日本の民事再生法に当たる連邦破産法11条の適用を申請し、経営破たんしました。しかし、依然として合意していない州もあるため、完全な和解には至っていません。

 また、パーデュー・ファーマのオーナーであるサックラー一家はアメリカ屈指の富豪ともいわれ、今回の約1兆1000億円の和解金のうち約3200億円を用意するとしていますが、「不十分だ」と指摘するメディアもあります。

 このほか、同じくオピオイドの製造で業績を伸ばしていた「マリンクロット」社は、2015年3月には132ドルあった株価が、今年に入って急落し、現在は2ドル前後と60分の1に下落するなど、厳しい経営環境に直面する関連企業も少なくありません。

 3年前に亡くなった世界的な歌手、プリンスさんの死因が、オピオイドの一種フェンタニルの過剰摂取だったことも、オピオイドが社会問題化する一因になりました。

 製薬業界について詳しいリサーチアナリストのデビッド・アムセレム氏は、「来月始まる審理では、一刻も早い救済が必要だとする原告側の要望もあり、被告となった企業が早期に原告と和解するため、各企業が資金を拠出する『基金』の創設のような話が出てくると考えられる。企業にとっては、長期間にわたって巨額の資金が必要になるため、財務状況が悪化するところも出てくるのではないか」と話しています。

 2019年9月22日(日)

 

■乳房再建治療の中断、3000人を超える 人工乳房の自主回収の影響

 乳がん患者の乳房再建で使う人工乳房が特殊な血液がんを発症するリスクがあるとして自主回収になった影響で、代替品がなく、予定していた手術が取りやめになり、治療の中断を余儀なくされた患者が3000人超いることが、関係学会の緊急調査で明らかになりました。自主回収が始まり間もなく2カ月たちますが、混乱が続いています。

 日本乳房オンコプラスティックサージャリー学会が8月上旬、人工乳房による再建手術を行う全603医療機関を調査。回答があった414カ所で、乳房再建のため、胸の皮膚を伸ばす拡張器を挿入中の患者が3493人いました。学会は、この9割以上が人工乳房による再建手術を予定していた患者とみています。

 3493人のうち、172人が拡張器から人工乳房への入れ替えなど緊急の手術が必要と報告されました。拡張器が挿入されていることで、磁気共鳴画像(MRI)検査や追加のがん治療が受けられないケースなどです。

 アメリカの食品医薬品局(FDA)が7月24日、人工乳房の挿入後に特殊な血液がんを発症した人が世界で573人おり、33人死亡していたと発表し、発症リスクが高い製品「ゲル充填人工乳房」の自主回収をアイルランドの製薬大手アラガンに要請しました。アラガンは8月末、日本で緊急の入れ替えが必要な患者に限り、別製品の先行受注を始めました。10月中旬から本格販売を始めます。

 ただ、この別製品は2013年に公的医療保険の適用になったものの、破損しやすいなどの問題があり、昨年、販売中止になりました。治療を中断した患者は、再販売されるアラガン社の別製品を使う、自分の脂肪などで乳房をつくる「自家再建」に変更する、他社製品の保険適用を待つなどの選択を迫られています。

 2019年9月22日(日)

 

■乳幼児の胃腸炎を予防、ロタワクチン定期接種化へ 早ければ2020年度にも

 乳幼児の重い胃腸炎の原因になるロタウイルスのワクチンについて、厚生労働省の専門部会は13日、公費で受けられる定期接種の対象とする方針を決めました。定期接種化に向けて課題だったワクチンの価格について、ワクチンメーカー側が値下げの要請に応じました。接種の時期や対象などについて引き続き検討し、早ければ2020年度中にも実施するといいます。

 ロタウイルスは感染力が強く、5歳までにほぼすべての子供が感染します。患者の便に触った手などから口に入り、下痢や嘔吐(おうと)、発熱、腹痛などを引き起こします。抗ウイルス薬なく、通常1~2週間で自然に治るものの、免疫がない子供は重症化しやすく、脱水症状で点滴や入院が必要になる場合もあります。

 ワクチンは、グラクソ・スミスクライン社の「ロタリックス」と、MSD社の「ロタテック」の2つが国内で承認されており、厚労省は定期接種の対象にするかを検討してきました。

 厚労省の小委員会は今年7月、ワクチン接種に伴う副反応と比べて予防の利益が上回ると評価。一方、費用対効果の面では、接種にかかる費用を1人当たり4000円ほど下げる必要があるとしました。

 このため、厚労省はワクチンメーカー2社に値下げを要請。13日の部会の非公開の聞き取りで2社が値下げに応じたため、予防接種法に基づき公費で賄う定期接種とすることを了承しました。

 2019年9月22日(日)

 

■「はくだけで痩せる下着」根拠なし 消費者庁が通販会社に措置命令

 効果を裏付ける根拠がないのに「はくだけで痩せる」などと宣伝して女性用の下着を販売していたとして、消費者庁は20日、東京都の通信販売会社に対し、表示を行わないことなどを求める措置命令を出しました。

 措置命令を受けたのは、東京都新宿区にある通信販売会社「トラスト」です。

 消費者庁によりますと、この会社では「ヴィーナスカーブ」(ガードル)と「ヴィーナスウォーク」(ソックス)という2種類の女性用下着を販売していますが、昨年5月以降「人間工学に基づいた設計により、はくだけでダイエットを実現」や「はくだけで憧れのモデルのようなスラッと美脚に!」などと着用するだけでダイエット効果があるような宣伝をしていたということです。

 これについて消費者庁が会社に資料の提供を求め調査したところ、いずれも効果を裏付ける合理的な根拠はなく、ウェブサイトで紹介されていた購入者の意見などはすべて架空のものだったということです。

 調査に対し会社側は。「法律に関する知識がないまま、ほかの会社の同じような商品の広告を参照したら過激になってしまった」などと説明したということです。

 このため消費者庁は景品表示法に基づいて、これらの表示を取りやめることや再発防止などを求める措置命令を行いました。

 消費者庁によりますと昨年5月の発売以降、全国の消費生活センターにはこれらの2つの商品について、使っても効果がないなどの相談が約300件寄せられているということです。

 2019年9月20日(金)

 

■名大の研究チームが夢の記憶を消す神経細胞を発見 PTSD治療に応用も

 寝ている時に見た夢は記憶に残りにくいものですが、こうしたことを引き起こす神経細胞のシステムが、脳の中にある可能性を名古屋大学の研究チームがマウスを使った実験で明らかにしました。

 名古屋大学の山中章弘教授(神経科学)らの研究チームは、脳の中で睡眠や食欲の調整をしている部分にだけ存在している、MCH神経細胞という特殊な神経細胞の働きをマウスを使って調べました。

 その結果、MCH神経細胞の一部が浅い眠りであるレム睡眠になると活発に働き、その結果として記憶をつかさどる部分の活動を抑えることがわかったということです。

 研究チームでは、MCH神経細胞を人為的に活性化させると、記憶力が低下することも確認できたとしており、この働きによってレム睡眠の間に見た夢が記憶に残りにくいのではないかとしています。

 MCH細胞は人間の脳にもあり、脳の視床下部に集まっています。人為的に働かせる手段がわかれば、つらい記憶が何度もよみがえる心的外傷後ストレス障害(PTSD)の治療に応用できる可能性があると、研究チームはみています。

 山中教授は、「夢が記憶に残りにくくする神経細胞のシステムが脳の中にある可能性があり、夢と現実が混同しないよう備わっているのではないか」と話しています。

 研究成果は、19日付のアメリカの科学誌「サイエンス」(電子版)に発表しました。

 2019年9月20日(金)

 

■インフルエンザの患者、9月なのに急増 沖縄県が過半数と突出

 インフルエンザの患者が増え始めています。厚生労働省は20日、9月9~15日までの1週間に報告された患者数が1医療機関当たり1・17人で、流行の目安となる1人を超えたと発表しました。

 沖縄県が50・79人と突出していることが主な要因とみられ、全国の大半で目安を下回っていることから、厚労省は全国で「流行入り」したという表現はしないことにしました。ただ、沖縄県以外でも例年に比べて患者は多く、警戒を強めています。

 発表によると、全国約5000の定点医療機関から、この1週間に報告があった患者数は5738人と、前年同期の約9倍でした。うち沖縄県の患者数は2895人と過半数に上り、前週から約1・5倍に増えました。

 沖縄県以外の都道府県では、長崎県2・60人、大分県1・57人、佐賀県1・56人など九州で多くなっています。このほか山梨県0・98人、東京都0・95人、千葉県0・94人なども目立っています。

 インフルエンザは例年、12月ころ、流行入りします。インフルエンザに詳しい、けいゆう病院(横浜市西区)の菅谷憲夫医師は、「この時期に患者が増えることは極めて異例で、今後の動向を注視する必要がある。症状が出た場合は早めに医療機関を受診してほしい」と話しています。

 2019年9月20日(金)

 

■地球温暖化の進行、従来想定より急速 フランスの新気候モデルで明らかに

 フランスの主要科学機関が新たに作成した2つの気候モデルにより、主に化石燃料の燃焼で大気中に排出された温室効果ガスによる地球表面温度の上昇が、これまで考えられていたより急速に進んでいるとの計算結果が示されました。

 両モデルはピエール・シモン・ラプラス研究所気候モデルセンターとフランス国立気象研究センターがそれぞれ作成したもので、パリで17日に発表されました。

 両モデルによると、炭素排出が現在の水準で続いた場合、産業革命以前の水準と比べた平均気温の上昇幅は2100年までに7・0度に達する可能性があります。この値は気候変動に関する政府間パネルが2014年に公表し、これまで指標とされてきた第5次評価報告書での同条件の予測よりも2度高くなっています。

 政府間パネルが2021年に発表する次回の主要報告は、「第6期結合モデル相互比較プロジェクト」と総称される30余りのモデルに基づき作成される予定で、今回発表された2つのモデルもここに含まれます。

 地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」は、産業革命以前からの気温上昇を2度よりも「十分低く」抑え、可能であれば1・5度以下にするとの目標を定めたものの、新たな計算結果から科学者らは、目標達成は楽観的に見ても困難だとしています。

 ピエール・シモン・ラプラス研究所気候モデルセンターのオリビエ・ブシェール所長は、「これまで気温上昇幅を2度以下に抑える目標の達成が可能とされてきたシナリオでは不十分であることが、2つのモデルで示された」と述べました。

 一連の改善点には、スーパーコンピューターの能力が向上したことや、気候システム、自然由来および人工の微粒子、温暖化に伴う雲の変化がより正確に表現されるようになったことなどがあります。

 ブシェール所長もモデルが改善されたと指摘。新モデルについて「より精密で、現在の気候の傾向をより正確に再現している」と述べました。

 今後、炭素排出の対策を取ったとしてもそれが十分でない場合は気温の上昇は止まらず、最高気温がパリで40度を超えたこの夏の熱波や2万人近くが亡くなった2003年の熱波のような厳しい暑さが、2050年の夏には当たり前になると、モデルを作成した研究者は指摘しています。

 2019年9月19日(木)

 

■横浜市の男性がはしかに感染し電車利用 さいたま市の男性も

 横浜市は17日、同市神奈川区の40歳代の男性が「はしか(麻疹)」に感染したと発表しました。周囲への感染の可能性がある時期に電車を利用しており、市が注意を呼び掛けています。

 市によると、海外への渡航歴はなく、感染経路は不明。8日から発熱し、11日に発疹が出たことから13日に市内の診療所に行き、感染が判明しました。快方に向かっているといいます。

 男性は、11日に横浜市営地下鉄で片倉町駅-横浜駅間を往復。12日にも同区間やJR京浜東北線横浜駅-大井町駅間を利用しました。同時期に電車を利用し、発疹など「はしか」と疑われる症状が出た場合、事前に医療機関に連絡してから受診するよう求めています。

 また、さいたま市は19日、同市に住む30歳代の男性が「はしか」に感染したと発表しました。

 男性は発熱や発疹などの症状を訴えて17日、医療機関を受診したところ、「はしか」に感染していたことがわかりました。回復に向かっているということですが、市によりますと発熱などの症状があった9月10日から13日の朝にかけて、JR京浜東北線の与野駅-王子駅の間、東京メトロ南北線の王子駅-王子神谷駅の間を利用していました。

 9月13日夕方には、東京メトロ南北線の王子神谷駅から駒込駅や池袋駅を経由して、西武狭山線の西武球場駅に向かい、メットライフドーム(西武ドーム)で西武対ロッテの試合を観戦したということです。

 「はしか」は高熱などが続き全身に赤い発疹が出るのが特徴で、空気感染で広がるなど感染力が非常に強く、妊婦が感染すると流産や早産となる恐れもあります。

 さいたま市は、発疹や発熱など「はしか」が疑われる症状が出た場合、医療機関に事前に連絡してから、公共交通機関の利用を避けマスクを着用して受診するよう呼び掛けています。

 2019年9月19日(木)

 

■ゲノム編集食品、届け出で年内にも販売可能に 厚労省がルール通知

 遺伝子を自在に操作できる「ゲノム編集」の技術が使われた食品を流通させる際のルールについて、厚生労働省は19日に通知を出し、10月1日以降、国に届け出れば「ゲノム編集食品」の販売が可能になりました。早ければ年内にも、国内での販売が始まる見通しです。

 ゲノム編集は特殊な酵素を使って遺伝子を自在に操作する技術で、現在、収穫量の多いイネや肉付きのよいタイ、毒性のあるソラニンをつくらないジャガイモなど、新たな農水産物を作り出す研究開発が各地で進められています。

 通知されたルールでは、開発した企業などに対し販売を始める前に遺伝子をどう改変したかや、アレルギーの原因物質や毒性がある物質が増えていないかなどの情報を厚労省に届け出ることを求めています。

 厚労省は、販売される品目や開発した企業名などをウェブサイトで公表します。届け出は任意のため罰則などはなりませんが、実効性を持たせるために、届け出をしない場合や虚偽の届け出をした場合はその事実を公表することがあるとしています。

 一方、ゲノム編集食品であることの表示について、消費者庁は義務とはせず、企業に対して消費者が選択できるよう自主的に表示したり、ウェブサイトなどで情報提供したりするよう求めています。

 アメリカではゲノム編集したダイズで作った食用油の販売が始まっているほか、日本国内でも血圧を下げるとされる成分を多く含むトマトの販売を計画している企業があり、早ければ年内にも販売が始まる見通しです。

 今回の通知を受けて、ゲノム編集食品を開発している企業などは10月1日以降、事前に厚労省に届け出をすれば販売できるようになります。

 現在開発が進められているゲノム編集食品は、もともとある遺伝子の一部を働かなくしたもので、厚労省は従来行われてきた品種改良によってできた食品と安全性は変わらないため、安全性審査を受ける必要はなく届け出のみで十分だとしました。

 一方、ゲノム編集技術を応用すると、外部から別の遺伝子を組み込むことも可能ですが、この場合は、「遺伝子組み換え食品」とみなされるため、安全性審査を受ける必要があります。

 2019年9月19日(木)

 

■100歳以上高齢者の人数訂正、島根県が3位から1位に 10万人当たり、7年連続

 敬老の日(16日)を前に13日、厚生労働省から発表された100歳以上の高齢者の人数について、島根県は18日、実際よりも40人近く少ない、誤った数字だったことを明らかにしました。これにより、100歳以上の高齢者の人口10万人当たりの人数は、7年連続で全国で最も高い割合となりました。

 島根県は先週、9月15日時点での県内の100歳以上の高齢者の数について、男性は80人、女性は599人で合わせて679人と発表していましたが、実際には、男性は81人、女性は634人で合わせて715人と、36人多かったということです。

 人数が大幅に違ったのは、浜田市が誤った数字を報告したのが原因で、実際は45人いたのに9人としていました。市の担当者は、4月から9月に100歳になった人数のみを報告し、101歳以上を省いていました。100歳になり、記念品を贈呈する人数と混同しており、係長、課長がチェックしても気付きませんでした。

 浜田市の別の課の職員が、例年より著しく数が少ないことを疑問に思い、再調査したところ、今回の誤りが発覚したということです。

 正しい人数で計算すると、島根県の人口10万人当たりの100歳以上の高齢者の人数は105・15人と、全国で初めて100を超えた昨年よりもさらに多くなっており、先週の発表では、この割合が99・85人と高知県(101・42人)、鹿児島県(100・87人)に次いで全国で3番目とされていましたが、今回の数字は全国で最も高く、7年連続だということです。

 これを受け厚労省は18日、15日時点で7万1238人としていた全国の100歳以上の高齢者数を、7万1274人に訂正しました。内訳は男性は8464人、女性は6万2810人となりました。また、15日時点で56・34人としていた全国の人口10万人当たりの100歳以上の高齢者数を、56・37人に訂正しました。

 島根県と浜田市は今後、数字を確認する担当者を増やしたり、前年度の数字と比較する作業をしたりして、再発防止を図りたいとしています。

 2019年9月18日(水)

 

■熱中症、1週間に4243人搬送 停電の千葉県が最多498人

 総務省消防庁は18日、熱中症で9~15日の1週間に全国で4243人が救急搬送されたとの速報値を発表しました。前週(2~8日)より745人増え、9月としては異例の多さ。

 直撃した台風15号の影響で停電が長引く千葉県が498人と最多で、前週より約3倍も増えました。千葉県や山形県、大阪府で計4人が、死亡しました。

 週の前半は猛暑日を記録するなど、全国的に厳しい暑さとなりました。千葉県は大規模な停電が長期化し、エアコンを使えない施設や住宅もあります。消防庁は気温が高くなくても熱中症の危険があるとして、こまめな水分補給や適切な休憩を呼び掛けています。

 集計によると、3週間以上の入院が必要な重症は68人、短期の入院が必要となる中等症は1307人。年齢別では、65歳以上が1972人と半数近くを占めました。

 発生場所は、庭などを含む「住居」が30・1%でトップ。照り返しが強くなりがちな「道路」が14・9%で続きました。

 都道府県別の搬送者数は千葉県に続き、愛知県が342人、大阪府が319人でした。

 消防庁によると、千葉県では熱中症により2人が死亡したほか、重症6人、中等症は201人、軽症289人に上りました。年齢別で最も多いのは65歳以上の高齢者で288人。次いで成人(18歳以上65歳未満)が190人、少年(7歳以上18歳未満)が16人、乳幼児が4人でした。

 搬送された時の場所別では、住居の敷地内が237人で最多。病院など施設の屋内が76人、工事現場や作業場などが57人となっています。

 気象庁によると、9~11日は千葉県内の11カ所の観測地点で連日、30度以上を観測。鴨川市や茂原市などでは、35度以上の猛暑日を記録した日もありました。

 東京電力パワーグリッドによると、同県内では18日午後8時29分現在、約3万9600戸で停電が続いています。山武市で約6900戸、南房総市で約4500戸、市原市で約4200戸、八街市で約4000戸など。

 千葉県内は19日明け方まで、急な強い雨や落雷の恐れがあります。朝方から曇りで、昼前から晴れる見込み。21日からの3連休は、停滞する前線などの影響で大雨が降る恐れがあります。

 2019年9月18日(水)

 

■HIV感染理由に内定取り消しは「違法」 札幌地裁が165万円賠償命令

 エイズウイルス(HIV)感染を理由に病院職員の内定を取り消されたとして、北海道内の30歳代の男性が病院を運営する社会福祉法人「北海道社会事業協会」を相手取り、約330万円の損害賠償を求めた訴訟があり、札幌地裁(武藤貴明裁判長)は17日、「内定取り消しは違法だ」として、同協会に約165万円の賠償を命じる判決を言い渡しました。

 男性は2018年7月に提訴していました。訴状によると、男性は2017年12月、道内の病院の求人に応募し、社会福祉士として内定を得ました。病院はその後、同院に受診歴があった男性のカルテを調査。2018年1月、男性が面接時に「持病はない」と虚偽説明したことを理由に、内定の取り消しを告げました。

 男性は2009年にHIV感染が判明したもののエイズ(後天性免疫不全症候群)は発症しておらず、訴訟で「エイズ患者への偏見による人権侵害だ」と主張していました。

 判決では、同協会がカルテを調査した点について「医療情報を採用活動に利用し、プライバシーを侵害した」として違法性を認定。男性には、HIV感染を同協会に伝える義務はなかったとして、「HIVは極めて例外的な状況においてのみ感染が想定されるもので、原告の男性についても主治医の所見などから、周囲に感染する危険は無視できるほど小さい。採用面接で感染の事実を告げる義務はなく内定の取り消しは違法だ」として、男性側の主張を認めました。

 判決後、男性は取材に対し「判決は就職面接の際にHIV感染の事実を伝えなくてもよいと明確に認めるもので、私と同じように普通に生活している感染者を勇気づける内容でした。差別や偏見がなくなるわけではないが、社会の認識が変わってくれればうれしい」と話しました。

 同協会は、「判決文が届いていないので現時点ではコメントできません。判決文が届き次第、明日にもホームページでコメントを発表します」としました。

 厚生労働省によりますと、国内のHIV感染者は一昨年の時点で1万9000人を超えています。同省は職場でのガイドラインを定めており、採用時にHIV検査を行うべきでないとしている上、雇用する側に対して感染を理由に不利益に扱ってはならないと定めています。

 2019年9月17日(火)

 

■老後の不安は「健康」よりも「お金」 40歳代以上の6000人を調査

 40~70歳代の人が老後に不安があるのは「健康」よりも「お金」と考えていることが、医療機器メーカーのオムロンヘルスケアの調査で明らかになりました。一方で、「不安を解消するために取り組んでいること」は食生活や運動など健康対策が上位に並び、貯蓄や資産運用といった取り組みは下位に沈みました。お金に不安を抱えつつ対応は後手に回っていることが、浮き彫りになりました。

 人生100年時代のシニアの健康をテーマに、40歳代から70歳代の男女6184人にインターネットで聞きました。調査期間は8月23日と24日で、同様の調査は今回が初めてです。

 老後に不安があるかを尋ねると、あると答えた人は全体の86%に上りました。何が不安か複数回答で聞くと、1位は「お金」(52%)で、2位「認知症」(45%)、3位「自分自身の介護」(40%)、4位「寝たきり」(33・3%)、5位「脳血管疾患や心疾患などの疾患」(26・7%)など健康に関する項目を上回りました。

 不安があると答えた人に具体的に取り組んでいることを複数回答で聞くと、「食生活」(37%)、「定期的な通院、健康診断」(36%)、「日常的な運動」(34%)と健康についての取り組みが並びました。お金についての対策は、「貯蓄」が26%、「財産運用」が13%にとどまりました。24%の人は、「何もしていない」と答えました。

 お金について最も不安な項目を尋ねると、1位は「医療費」(52・6%)で、2位「食費」(22・9%)、3位「老後の家計に不安はない」(8・1%)でした。

 調査では、健康に生活できる「健康寿命」について、男性のほうが女性より長く見積もる傾向があることもわかりました。

 何歳まで自分の足で立ち健康に生活できると思うかを尋ねると、「寿命まで」と答えた人は70歳代男性の54%でした。70歳代女性は40%で、14ポイント差が付きました。「寿命まで」と答えた人の割合は、40~60歳代でも男性が上回りました。

 2019年9月17日(火)

 

■呼吸器の感染症患者が多い状態が続く RSウイルス感染症、百日せきなど

 主に子供が感染し、激しいせきが続く「RSウイルス感染症」や、「百日せき」といった呼吸器の感染症の患者が多い状態が、続いています。特に赤ちゃんがかかると重症化する可能性があり、専門家は早めに医療機関を受診するよう呼び掛けて掛けています。

 RSウイルス感染症は主に子供が感染し、発熱やせきなど風邪に似た症状の出る病気で、肺炎のほか気管支炎を引き起こすなど重症化することがあります。 以前は冬に患者が多かったものの、2011年以降は夏から患者報告が増え始める傾向がみられています。

 国立感染症研究所によりますと、全国約3000の小児科の定点医療機関で、9月8日までの1週間にRSウイルス感染症と診断された患者は9842人と、前の週から2000人以上増えました。定点当たりの患者数が最も多い宮崎県や佐賀県などの九州地方を始め、全国各地で例年より早く患者が増えています。

 一方、百日せきは細菌が原因の感染症で、主に子供で激しいせきが続き、肺炎を引き起こすなどして重症化することもあります。今年、全国の定点医療機関から報告された患者数は1万1953人で、昨年1年間の数をすでに超え、都道府県では、東京都で995人、福岡県で756人、千葉県で710人などと、散発的に感染が続いています。

 国立感染症研究所によりますと、今年に入って生後6カ月未満の赤ちゃん、少なくとも100人が百日せきで入院したということです。

 感染症に詳しい群馬パース大学の木村博一教授は、「どちらの感染症も赤ちゃんがかかると重症化しやすいので、せきなどが続くようなら早めに医療機関にかかってほしい。手洗いやマスクの着用なども徹底してほしい」と話しています。

 2019年9月17日(火)

 

■「がんゲノム医療拠点病院」に全国34カ所指定へ 厚生労働省

 がん患者の遺伝子を調べて最適な治療薬を選ぶ「がんゲノム(全遺伝情報)医療」について、厚生労働省は全国34の医療機関を地域の拠点病院に指定し普及を図っていくことになりました。

 がんの「ゲノム医療」は患者のがん細胞の遺伝情報を解析して、最適な治療薬を選ぶ新しい医療で、国のがん対策の基本計画で柱の1つに掲げられています。

 厚生労働省の専門家会議はゲノム医療を普及させるため全国34の医療機関を地域の拠点病院に選びました。

 拠点病院ではがん患者の遺伝子検査を行って、その結果を医学的に解釈し最適な治療薬は何かを検討します。また地域にある別の医療機関で実施された遺伝子検査の結果も集約して検討を行い、拠点病院の役割を担います。

 選ばれたのは、北海道で1カ所、東北では青森県と山形県でそれぞれ1カ所、関東信越では東京都で4カ所、神奈川県で3カ所、埼玉県で2カ所、茨城県、千葉県、新潟県、長野県でそれぞれ1カ所、東海北陸では富山県、石川県、静岡県、愛知県、三重県でそれぞれ1カ所、近畿では大阪府で3カ所、兵庫県で3カ所、中国・四国では広島県、香川県、愛媛県でそれぞれ1カ所、九州では福岡県で2カ所、長崎県と鹿児島県でそれぞれ1カ所となっています。

 34の拠点病院は9月中に指定される見通しで、これによってすでに指定されている国立がん研究センター中央病院など11の中核拠点病院と合わせて全国45か所で、遺伝子検査を基にした治療薬の検討が可能になります。

 2019年9月16日(月)

 

■鎮痛剤オピオイド訴訟で和解金1兆円超 アメリカ製薬大手が破産申請

 アメリカの製薬大手パーデュー・ファーマは15日、破産を申請したと発表しました。これにより、麻薬性鎮痛薬オピオイドがもたらした危機的状況を巡る訴訟の和解に向け、100億ドル(約1兆1000億円)以上の充当を目指しています。

 アメリカにおけるオピオイド中毒のまん延の責任の大きな部分を負っているのが、パーデューの処方鎮痛剤「オキシコンチン」だとされ、同社は州や国レベルで数千件規模の訴訟を抱えています。  

 裁判所が和解を認めれば、パーデューの総資産が原告とアメリカ国民の利益のために設立された機関に移されます。

 パーデューのスティーブ・ミラー会長は、今回の提案により「アメリカ全土でオピオイド危機への対応に取り組む団体に、巨額の資金と重要なリソースが提供されることになる」と述べています。

 同社は、日本の民事再生法に当たる連邦破産法第11条の下で再建を目指し、原告側が新会社の取締役会を選任し、破産裁判所の承認を受けるとしています。

 ミラー会長は、会社再建により「訴訟を長引かせて巨額の資金や長い年月を無駄にする」ことが回避できるという見方を示しました。

 パーデューの破産に加え、同社創業一族の大富豪サックラー家が、和解に向け30億ドル(約3200億円)を支払う見通し。この金額はさらに増える可能性もあるとみられています。

 オピオイドは、過剰な摂取などで薬物中毒になる人が相次ぎ、一昨年には年間5万人が死亡するなど深刻な社会問題となっています。これに伴い、製薬会社などを相手取り損害賠償を求める裁判がアメリカ全土で起きていて、8月には製薬大手の「ジョンソン・エンド・ジョンソン」に対し5億7200万ドル(約606億円)の賠償が命ぜられており、同社は判決直後に上告の意向を示しました。

 2019年9月16日(月)

 

■世界最高齢の116歳女性をお祝い 明治から令和5時代を生き抜く

 敬老の日の16日、世界最高齢の女性としてギネス世界記録に認定されている福岡市の116歳の女性を福岡県の小川知事が訪ね、長寿を祝いました。

 福岡市の高齢者福祉施設で暮らす田中カ子(かね)さんは1903(明治36)年生まれの116歳で、今年3月、ギネスワールドレコーズ(イギリス)から男女を通じた「存命中の世界最高齢」と認定されました。

 16日は、敬老の日に合わせて福岡県の小川知事が明治から令和まで5つの時代を経験する田中さんを訪ね、「カ子さんの姿は県民に希望と喜びを与えています。おめでとうございます」と、お祝いの言葉を贈りました。

 この後、小川知事が花束と写真立てを贈って励まそうとすると、田中さんが「長生きしてください」と逆に知事を励まし、周りの笑いを誘っていました。

 施設の職員によりますと、田中さんは1日3食のほかにチョコレートや炭酸飲料を毎日欠かさず口にして、時間を見付けては、掛け算や割り算などの計算問題の解答にも励んでいるということです。

 田中さんは、「これまで元気をもらって生きてきたので、100年以上生きてきた今、持っている力をみんなに与えたい」と力強く話していました。

 2019年9月16日(月)

 

■高齢者3588万人で過去最多を更新 総人口に占める割合は世界最高

 総務省が15日に発表した人口推計によると、65歳以上の高齢者は同日時点で前年より32万人多い3588万人、総人口に占める割合は0・3ポイント増の28・4%と、いずれも過去最高を更新しました。16日の敬老の日を前に集計しました。

 2018年に仕事に就いていた65歳以上は最多の862万人で、就業者全体の12・9%を占め、空前の人手不足を支える重要な戦力になっています。

 世界的にみると、65歳以上の割合は2位のイタリア(23・0%)、3位のポルトガル(22・4%)を引き離し、突出して高齢化が進んでいます。国立社会保障・人口問題研究所の推計によると、この割合は今後も上昇し、2025年に30・0%、2040年には35・3%に達すると見込まれています。社会保障制度の見直し、買い物や移動といった生活の支援拡充が急務です。

 推計は2015年の国勢調査を基に、その後の出生・死亡者数、出入国者数を反映させました。総人口は1億2617万人で、うち65歳以上は男性が1560万人、女性は2028万人でした。

 年齢区分別では、70歳以上が2715万人で前年から98万人増えました。団塊の世代(1947~1949年生まれ)が含まれ、ほかの年齢区分に比べ増加数が多くなりました。80歳以上は1125万人、90歳以上は123万人、100歳以上は7万人いました。

 一方、2018年の労働力調査によると、65歳以上の就業者は15年連続で増加。男性は512万人(就業率33・2%)、女性は350万人(同17・4%)でした。

 65歳以上の就業者で、自営業主や会社役員を除き、雇用されて働くのは469万人。うちパート・アルバイトや契約社員、嘱託などの非正規が358万人と76・3%を占めました。非正規で働く高齢者は10年で200万人以上増加しました。

 2019年9月16日(月)

 

■結核患者、外国人が初めて1割超を占める 20歳代では7割

 結核患者に占める外国人の割合が2018年、初めて1割を超えたと厚生労働省が明らかにしました。医療の向上で全体の患者数が減る一方、結核が流行する東南アジア各国から多くの外国人労働者を受け入れているためとみられます。20歳代の患者に限ると、7割が外国人でした。

 厚労省によると、2018年の新規の結核患者数は、前年から1199人減って1万5590人でした。うち外国人患者は1667人で、全体の10・7%を占め、5年前の2013年の11・5倍に増えています。

 新規患者は、最多が80歳代の4534人(29・1%)で、70歳代2995人(19・2%)が続きました。死者は、前年比102人減の2204人でした。

 外国人患者の出身国は、フィリピン、ベトナム、中国の順に多く、結核が流行するアジア6カ国で8割を占めます。労働者として急速に受け入れが進むベトナム出身の患者は289人で、5年前の4倍になりました。

 外国人患者の職業は、日本語学校の留学生を含む「生徒・学生」が28%。技能実習生の患者統計はないものの、集団感染が近年多発しており、患者数も多いと見なされます。

 外国人患者の入国時期は、「5年以内」が半数。発病したまま入国するケースもあるものの、生活環境の変化などで来日後に発病することが多くなっています。

 公益財団法人「結核予防会」結核研究所の加藤誠也所長は、「外国人の居住・労働環境の厳しさが患者増に影響している」と指摘しています。

 厚労省は来年夏の東京オリンピック・パラリンピック開幕までに、患者数の多い「高まん延国」からの入国者へのビザ発給要件に結核の検査を加える方針です。

 結核は、結核菌という細菌が原因で起こる感染症。感染してもすぐに発病するとは限らず、発病するのは体力や免疫力などによるため「弱者の病」といわれます。戦後間もない時期まで日本人の死因1位でしたが、医療の進歩や生活環境の改善で患者数は大きく減少しました。ただ、現在も世界で年間160万人が死亡する世界最大の感染症です。

 2019年9月15日(日)

 

■5歳児の唾液量の計算にイグ・ノーベル賞 13年連続で日本人受賞

 ノーベル賞のパロディーで、ユニークな研究に贈られる「イグ・ノーベル賞」の授賞式がアメリカのマサチューセッツ州ケンブリッジのハーバード大学で行われ、5歳の子供に食べ物を吐き出させて1日に分泌する唾液の量を計算した千葉県の大学教授が「化学賞」を受賞しました。日本人の受賞は13年連続です。

 イグ・ノーベル賞は、1991年にノーベル賞のパロディーとしてアメリカの科学雑誌が始めた賞で、12日、アメリカのハーバード大学で授賞式が行われました。

 このうち化学賞は、千葉県浦安市の明海大学保健医療学部の渡部茂教授(小児歯科、68歳)らの研究チームが受賞しました。

 渡部教授は、北海道医療大学歯学部の助教授だった24年前の1995年に、子供の歯の健康に唾液が果たす役割の研究で、5歳の子供30人に食べ物をかませて飲み込む直前で吐き出させる方法で唾液の量を測りました。

 その結果、1日の分泌量は約500ミリリットルに上ると結論付けた論文を発表しました。当時の歯科では虫歯の治療の研究が主流でしたが、口の中の状態を調べて虫歯を予防しようという研究の先駆けになりました。

 渡部教授は実験に協力した3人の息子と授賞式に出席し、すでに大人になった息子たちにバナナを食べさせて当時の実験の様子を再現すると会場から大きな笑い声が上がっていました。

 渡部教授は、「まじめにやってきた研究ですが『イグ』・ノーベル賞として評価された意味をかみしめています。恩師と研究に協力してくれた子供たちに感謝しています。子供にとって唾液はオレンジジュースなどの酸から歯を守るとても大切なもの」と話していました。

 2019年9月14日(土)

 

■iPS細胞を供給する財団法人設立 京都大の山中教授ら

 再生医療に使う高い品質のiPS細胞(人工多能性幹細胞)を研究機関などに安定的に供給することを目的に、京都大学が今月、新たに一般財団法人を設立しました。iPS細胞は、これまで供給を担ってきた京都大学に代わり、今後、独立した法人が一定の収益を確保しながら供給することになります。

 新たに設立されたのは「京都大学iPS細胞研究財団」で、京都大学での研究を基礎に、再生医療に使うためのiPS細胞を製造し、供給することなどを目的にしています。

 法人は9月6日に設立され、代表理事には京都大学iPS細胞研究所の山中伸弥所長が就任しました。理化学研究所の松本紘理事長らで評議会を構成し、法人の運営状況のチェックに当たります。iPS細胞研究所に基礎研究部門を残し、製造や管理、供給部門を分離して法人に移すため、約100人の職員が移籍し、活動を始めました。

 再生医療に使うiPS細胞は、これまでは京都大学が国の支援を受けて「iPS細胞ストック」というプロジェクトで全国の研究機関に供給してきましたが、大学は、将来的に国の支援に頼らないで安定的に供給を続けるためには、独立した法人で一定の収益を確保することが必要だと2018年から訴えてきました。

 この方針について8月、文部科学省の専門部会も了承し、今回の法人設立に至りました。再生医療を実現するため、国の事業として進められてきた質の高いiPS細胞の供給は、今後、独立した法人が一定の収益をもとに、細胞の培養や管理など当たる優秀な人材を確保しながら行うことになります。

 2019年9月14日(土)

 

■ゲノム編集食品の届け出制度、10月開始へ 厚労省

 厚生労働省は13日、狙った遺伝子を効率よく改変する「ゲノム編集」技術で開発した食品の販売に向けた届け出制度について、10月1日から運用を始めると発表しました。ゲノム編集で狙った遺伝子を壊して特定の機能をなくした食品は、届け出のみで販売できるようになり、安全性審査は不要になります。早ければ年内に、一部のゲノム編集食品の流通が始まる見通しです。

 ゲノム編集食品の開発者らは、技術の詳細や、食品にアレルギーの原因物質や毒性がある物質が増えていないこと、外来遺伝子が残っていないことなどの情報を届け出ます。厚労省は、届け出があった情報をホームページで公表します。

 別の遺伝子を挿入して開発したゲノム編集食品については、これまでの遺伝子組み換え食品と同様の審査が必要となります。  

 開発者は、届け出の前に厚労省に事前相談を申し込み、開発した食品が届け出だけで販売できるか専門家の意見も踏まえた判断を仰ぎます。

 届け出は任意のため罰則などはなりませんが、実効性を持たせるために、厚労省は守らない場合に開発者に関する情報を公開します。

 ゲノム編集食品については、「GABA(ギャバ)」と呼ばれる血圧を下げる成分を多く含むトマトや、毒性のあるソラニンをつくらないジャガイモ、収量の多いイネ、身の量の多いタイなど、新たな農水産物を作り出す研究開発が各地で進められています。

 2019年9月14日(土)

 

■マイクロ波で乳がんを検知 神戸大学が新検査法開発

 神戸大学などの研究チームは13日、痛みも被曝(ひばく)もなく、ごく小さながんでも見付けられる乳がん検査機器「マイクロ波マンモグラフィー」を開発したと発表しました。医療機器の承認を目指しており、来年度中に数百人規模の臨床試験(治験)を始め、2021年秋以降の製品化を目指します。

 国の統計によると、年に約1万4000人が乳がんで亡くなっています。乳がん検査はX線を使うマンモグラフィー検査や、超音波のエコー検査が主流ですが、X線は放射線被曝に加え、乳房を強く挟んで検査するため痛みを感じる人が多くいます。エコー検査は痛みや被曝はないものの、検査をする人によって診断に差が出やすいという課題があります。

 神戸大の木村建次郎教授(40歳)によると、マイクロ波マンモグラフィーは、携帯電話の1000分の1程度の微弱な電波(マイクロ波)を使い、装置に接続された5センチほどの大きさのセンサーで乳房の表面をなぞって検査します。

 X線では、若い人に多い高濃度乳房は白く写ってがんと見分けにくいのに対して、マイクロ波はがんの形を高精度な3次元画像で示します。X線やエコーなどで診断された乳がん患者約300人で試したところ、全員マイクロ波でもがんを見分けられたといいます。

 マイクロ波マンモグラフィーは今年4月、医療機器としての承認審査を短くする国の「先駆け審査指定制度」に指定されました。また、凸版印刷、第一生命保険、旭化成、みやこキャピタル(京都市)など協力企業から20億円の出資を受けたということです。

 マイクロ波は乳房の主な成分である脂肪を通り抜けますが、筋肉は通り抜けないため乳房以外ではがんの検査に使えません。木村教授は、「乳房の中で、がんは鏡のようにマイクロ波を跳ね返す。女性の乳がん検査には理想的な方法。一人でも多くの人に装置を使ってもらって効果を確かめ、乳がんの早期発見に役立てたい」と話しています。

 マイクロ波を使う乳がん検査機器は、静岡大や関西大、広島大の研究チームなども開発を進めています。

 2019年9月14日(土)

 

■100歳以上の高齢者、初めて7万人を超す 厚労省調査

 「敬老の日」(16日)を前に、厚生労働省は13日、100歳以上となる高齢者数を発表しました。9月15日時点で、昨年より1453人増えて7万1238人となる予定で、49年連続で過去最多を更新しました。7万人を突破するのは初めてで、30年前の1989年(平成元年)から23・1倍となりました。

 厚労省によると、100歳以上の高齢者は老人福祉法が制定され、国による表彰が始まった1963年には全国で153人(女性133人、男性20人)でしたが、1998年には1万人を突破。今年について男女別にみると、女性が6万2775人(前年比1321人増)と88%を占め、男性は8463人(同132人増)でした。

 国内最高齢は、女性がギネスワールドレコーズ(イギリス)から男女を通じた「存命中の世界最高齢」と認定されている116歳の田中カ子(かね)さん(福岡県福岡市)。男性は112歳の渡辺智哲(ちてつ)さん(新潟県上越市)でした。

 人口10万人当たりの100歳以上の人数は、全国平均で56・34人。都道府県別のトップは高知県(101・42人)で7年ぶりに1位。鹿児島県(100・87人)が続き、前年まで6年連続1位だった島根県(99・85人)は3位でした。上位10位までに中国・四国・九州から8県が入りました。一方、最も少なかったのは埼玉県(33・74人)で、愛知県(37・15人)や千葉県(39・68人)、大阪府(41・39)など、都市部で少ない傾向がみられました。

 今年度中に100歳になった人と、100歳になる見込みの人を合わせた人数は9月1日現在3万7005人で、前年度と比べると4764人多くなっています。100歳を迎える人には、首相からのお祝い状と銀メッキ製の「銀杯」が贈られます。

 平成の30年をみると、7月に発表された2018年の平均寿命は女性が87・32歳、男性81・25歳で、平成元年(1989年)と比べてともに5歳以上、延びています。

 厚労省は、「医療技術の進歩と健康志向の高まりで、100歳以上の高齢者が年々増えている。令和は『人生100年時代』を迎えている」としています。

 2019年9月13日(金)

 

■アメリカ、風味付き電子たばこ販売を禁止へ 6人の死亡を確認

 アメリカのトランプ大統領は11日、若者の間で流行している電子たばこの販売の規制に乗り出す方針を明らかにしました。電子たばことの関連が疑われる健康被害が相次いだことを受けたもので、アメリカ食品医薬品局(FDA)が数週間以内に、香りや味が付いた電子たばこを対象とする新たな規制を策定します。

 トランプ大統領はホワイトハウスで記者団に、「人々が病気になり、若者が影響を受けるのを許すわけにはいかない。これは大きな問題だ」と語り、規制に取り組む考えを強調しました。

 AP通信などによると、アメリカ政府はミントなどの風味が付いた電子たばこの販売を全面的に禁止します。その上で、FDAが許可した製品のみ販売を認めるようにすることを検討しているといいます。

 アメリカ疾病対策センター(CDC)によると、電子たばことの関連性が疑われる深刻な肺疾患で、これまでにアメリカ全州で6人の死亡を確認。肺疾患の患者は9月6日までで450人おり、多くが大麻に含まれる成分の入った液体を使っていたといいます。

 ニコチンを含まないものが一般的な日本と違い、アメリカで販売されている電子たばこはニコチンを含む液体を専用の装置で加熱して蒸気を吸入するケースが多く、特に中高生など若者の間で風味付きの電子たばこが流行し、健康への影響が懸念されていました。このため、アメリカ国内ではミシガン州が今月に入って電子たばこの販売禁止を決めるなど、規制の動きが進んでいました。

 一方、電子たばこの推進団体からは、トランプ大統領の方針について「販売の禁止は、多くの喫煙者から禁煙という選択肢を失わせる」などと反論の声が上がっています。

 2019年9月13日(金)

 

■緊急避妊薬、医療機関検索サイトを開設 日本家族計画協会

 性犯罪や避妊の失敗などで望まない妊娠の可能性がある女性が緊急避妊薬(アフターピル)を手に入れやすいよう、日本家族計画協会は9月、処方する医療機関を検索できるウェブサイトを開設しました。日本で認められた薬は性行為から72時間以内に飲む必要があるため、速やかな入手をサポートします。

 検索サイトには、緊急避妊薬を処方し、同協会の調査に応じた全国約1500医療機関が登録されています。都道府県ごとに検索でき、スマートフォンなどの位置情報を利用して、現在地から近い20カ所が挙がります。休診の可能性があれば「!」マークが表示されます。

 その上で、医療機関に直接電話し、予約が必要かどうかや処方できるかを確かめてから受診します。

 緊急避妊薬は対面診療での処方が原則ですが、医師が少ない地方など受診しづらい環境では、服用時間に間に合わない場合もあります。国は今年、スマホなどを通して診察するオンライン診療での処方を認めたものの、実用化はされていません。

 緊急避妊薬は、レボノルゲストレルを有効成分とする薬で、服用することによって、受精卵の着床を防ぎます。原則的には、避妊できなかった性交後、72時間以内に1回飲み、その12時間後にもう1度薬を服用します。主な副作用は吐き気、嘔吐(おうと)、頭痛ですが、これらは通常24時間以内に収まります。

 中絶手術に比べて、麻酔に伴うリスクや身体的リスク、経済的、精神的な負担は低いといえますが、緊急避妊薬はあくまでも「緊急的な」避妊に用いる薬です。普段から経口避妊薬や、コンドームなどの方法で避妊することが大切です。

 日本家族計画協会の北村邦夫理事長は、「不安で必死に医療機関を探す女性も多い。少しでも早く安心でき、その後の正しい避妊行動につながれば」と話しています。

 検索サイトは、https://www.jfpa-clinic.org/s/から見られる。

 2019年9月13日(金)

 

■第一三共、新型抗がん剤の販売を申請 イギリス大手と提携

 第一三共(東京都中央区)は9日、開発中の新型抗がん剤について、日本での製造販売を厚生労働省に承認申請したと発表しました。がんを効果的に攻撃できる新型で、まずは乳がんに対する画期的な新薬として期待されています。

 グローバルでイギリスの大手アストラゼネカと臨床試験(治験)や販売を共同で実施し、第一三共は対価として約7600億円を受け取る予定です。 

 厚労省に承認申請したのは、新型抗がん剤「トラスツズマブ・デルクステカン(開発名DS-8201)」。抗体に低分子薬を結び付けた抗体薬物複合体(ADC)という新型の抗がん剤で、従来の薬より高い確率でがんを狙い撃ちできるといいます。今回の申請は、乳がんを対象にしました。

 トラスツズマブ・デルクステカンは第一三共が開発し、がん領域に強く世界に販売網を持つアストラゼネカと提携しました。日本での販売は第一三共が単独で手掛け、ロイヤルティーをアストラゼネカに支払います。その他の地域では両社が共同で販売促進し、第一三共はアストラゼネカから開発や販売の状況に応じて、対価を受け取ります。

 トラスツズマブ・デルクステカンは、乳がんのほか、肺がんや胃がんでの治験も実施中です。

 2019年9月10日(火)

 

■日本酒「獺祭」26万本を自主回収へ アルコール度数にばらつき

 山口県岩国市のメーカーが製造し、海外でも人気が高い日本酒「獺祭(だっさい)」で規定のアルコール度数と異なる商品が出荷されたことがわかり、メーカーは10日から約26万本余りを自主回収することになりました。

 自主回収されるのは岩国市の酒造メーカー「旭酒造」が、今年4月から5月末までと、7月中の2つの時期に第2蔵で製造した「獺祭」のうち「純米大吟醸磨き三割九分」「純米大吟醸45」「等外」「等外23」の4種類の商品の1升瓶と4合瓶、合わせて26万本余りです。4~8月に全国で販売されました。

 旭酒造によりますと、獺祭のアルコール度数は通常16%で出荷されますが、自主回収する商品は約12~17%の間と、規定のアルコール度数と異なり、ばらつきがあったということです。

 今月8日、社内の担当者が品質を確認しようと口に含んだ際に異常に気付き、詳しく調べたところ、獺祭の原酒に水を加えてアルコール度数を調整する工程の一部で、かき混ぜる作業が行われなかったということです。

 旭酒造は10日から、全国の販売店などを通じて回収を始めることにしています。回収対象の瓶に記載されたロット番号などは、11日から同社ホームページや新聞広告で告知します。問い合わせは同社(0827・86・0120)へ。

 旭酒造の桜井一宏社長は、「きちんと製造できておらず、消費者に大変申し訳なく思います。信頼回復のためこれまで以上に品質向上に努めたい」と話しています。

 2019年9月9日(月)

 

■5歳未満の肥満、早めに生活習慣の改善を 学会が対策の手引作成

 幼児期の肥満は将来の糖尿病や心臓病のリスクを高めるため、小児関連の学会などでつくる協議会は、小学校に上がる前の子供を対象とした肥満対策の手引をまとめ、予防と改善に向けた取り組みを紹介しています。

 幼児期に太っていると、思春期にさらに肥満が進行しやすいことが、国内外の研究でわかってきました。このため、5歳未満の幼児期から始められる対策の手引として、日本小児科学会、日本小児保健協会、日本小児科医会、日本小児期外科系関連学会協議会の4団体から構成される「日本小児医療保健協議会」が今春、「幼児肥満ガイド」を新たに作りました。

 日本肥満学会は子供の肥満に関する診療指針を作成していますが、現行版は5歳以下を対象にしていないことも背景にあります。

 幼児肥満ガイドでは、肥満かどうかを「標準体重」という指標を使って判定します。厚生労働省が2000年に行った「乳幼児身体発育調査」に基づき、身長に一定の係数を当てはめて男女別に算出。肥満度が15%以上で「肥満」とされます。

 成人の場合、体重(キロ・グラム)を身長(メートル)で2回割ったBMI(体格指数)で判定します。日本肥満学会は25以上を肥満と定めますが、子供はBMIが目まぐるしく変わるため、肥満判定には使いません。

 幼児肥満ガイドでは、食事や運動と並んで、睡眠の重要性を強調しています。就寝時間が遅く睡眠時間が短い子供ほど、肥満になりやすいという研究結果を紹介。朝食を抜き夜食をとるなど、肥満の原因となる食生活を防ぐためにも、睡眠習慣を整えることが大切だとしています。

 また、スマートフォンやタブレットなどの電子メディアとの接触は、運動不足や睡眠にも影響することから、1日1時間までに制限することも提案しています。

 子供の肥満の兆候を見極める目安として、BMIが有用であることも紹介しています。乳幼児のBMIは通常、生後半年ほどまでにピークに達すると、その後は徐々に下がり、6歳前後で最も低くなります。

 乳幼児期に体重が増えるのは、一般的には好ましいことですが、身長の伸びに比べて、体重が過度に増加しているケースは要注意。乳幼児健診でBMIが1歳半の時よりも3歳時のほうが高ければ、生活習慣を改善し、体重の推移を注意深く見守る必要があるといいます。

 幼児肥満ガイド作成委員会の委員長を務めた、小児科医で東京家政学院大教授の原光彦さんは、「この時期に適切な対応をしなければ、その後も肥満となるリスクが高い」と指摘しています。

 東北地方在住の女子中学生(12歳)は、小学1年時の健康診断で、肥満度が40%を超えました。血糖値もやや高く、東京都内の総合病院にある小児生活習慣病外来を受診しました。

 女子中学生は3歳のころから肥満で、外でほとんど遊ばなくなっていました。主治医の原さんは魚を主菜にした和食を勧め、体を動かし体重を毎日記録するよう指導。女子中学生は現在、肥満から脱しつつあります。

 原さんは、「共働き世帯が増えているが、子供と触れ合う時間を少しでも増やし、幼児肥満ガイドを参考にして、生活習慣のことも気に掛けてほしい」と話しています。

 幼児肥満ガイドは、日本小児科学会のウェブサイトからダウンロードできます。

 2019年9月8日(日)

 

■RSウイルス感染症、患者が増加 乳幼児の感染には特に注意を

 RSウイルス感染症の患者が、全国で増えています。大人がかかっても鼻風邪程度の症状がほとんどですが、乳幼児が初めて感染すると重い症状を引き起こすことがあります。

 RSウイルス感染症は従来は秋から冬にかけて流行するとされていましたが、ここ数年、夏から患者数が増える傾向にあります。

 今年もすでに大流行している宮崎県を始め、九州を中心に流行している状態で、全国約3000の小児科の定点医療機関で、8月25日までの1週間に新たにRSウイルス感染症と診断された患者は4290人となっています。

 医療機関の間では、対応を早める動きがあります。東京都世田谷区の国立成育医療研究センターでは、早産で生まれたり、心臓などに病気があったりする乳幼児の重症化を防ぐために、RSウイルス感染症の流行期間中に毎月投与する抗体注射の投与時期を今年は従来の9月から8月に前倒しして対応しています。

 感染症科診療部長の宮入烈医師は、「ここ数年、夏から患者が増え、8月、9月にはすでに流行していると感じます。他の医療機関でも前倒しして投与するケースも出ています」と話しています。

 また大人は感染しても軽い症状が多いため、気付かないまま赤ちゃんにうつして重症化させてしまうことがあり、特に注意が必要だということです。

 家庭での感染を広げないための注意点として宮入医師は、家族がくしゃみやせき、鼻水が出ている時は、こまめに手を洗う、マスクを付ける、兄弟姉妹と共有のおもちゃなどをきちんと消毒するといった対応が有効だとしています。

 また乳幼児が医療機関をすぐに受診する目安は、鼻水や発熱などの症状に加え、母乳やミルクの飲みが悪い、ぐったりして機嫌が悪い、呼吸が苦しそうだったり、ゼイゼイと音が聞こえたりする、胸やおなかをペコペコとへこませて息をしている時などを挙げています。

 特に、生まれてまもない生後1カ月から2カ月の赤ちゃんは、感染すると呼吸を止めてしまう無呼吸の症状につながる恐れもあるため、RSウイルスの流行時期に鼻水の症状が出たら、よく様子をみてほしいと話しています。

 2019年9月8日(日)

 

■環境危機時計、「極めて不安」の9時46分 最多回答は「気候変動」

 地球環境の悪化に伴う人類存続への危機感を研究者らが時刻で示す「環境危機時計」について、旭硝子財団は6日、今年の全世界の時刻を「極めて不安」に相当する9時46分だったと発表しました。1992年の調査開始以来最悪だった昨2018年の9時47分とほぼ同水準で、旭硝子財団は「世界全体で危機感が非常に高い状態が続いている」としています。

 旭硝子財団が4~6月、環境問題の研究者や有識者らに調査し、143カ国2072人の回答をまとめました。

 環境危機時計は深刻さを0時1分から12時までで示し、9時以降は「極めて不安」に分類されます。地域別では、北米が10時30分と最も深刻で、日本は9時39分となり、2018年に比べ8分進みました。アジアは9時38分、オセアニアは10時31分、西欧は10時06分、アフリカは8時59分、中米は9時36分、中東は9時45分、南米は9時38分、東欧・旧ソ連は9時13分となりました。

 世界全体の環境危機時刻を決定する際に最も多く選ばれた「地球環境の変化を示す項目」 は、2018年と同じく「気候変動」が最多数を占め、次いで、「生物圏保全性(生物多様性)」、「社会、経済と環境、政策、施策」、「水資源」、「生物化学フロー(環境汚染)」、「人口」、「ライフスタイル」、「陸域系の変化(土地利用)」と続きました。

 同じく世界全体の「地球環境の変化を示す項目」を危機時刻順に並べると、「生物圏保全性 (生物多様性)」が高く、続いて「人口」と「ライフスタイル」、「気候変動」、それから「社会、経済と環境、政策、施策」、「水資源」、「生物化学フロー(環境汚染)」の順となりました。

 2016年から特に危機感が高い状態が進んでいた「食糧危機時計」は9時39分となり、2018年から33分戻りました。

 2019年9月7日(土)

 

■メタボの危険性、指先からの微量採血で検査 徳島大がキットを開発

 徳島大学病院糖尿病対策センターは、検体検査機器・試薬の研究開発会社「シスメックス」(神戸市)などと共同で、メタボリック症候群(メタボ)となる危険性を調べる検査キットを開発しました。場所を選ばず、自分の指先からの採血で簡単に検査できます。

 徳島県内のフィットネスクラブ「ハッピー」(徳島市)が検査結果を踏まえ、症状の改善を目指す個々の運動プログラムを考案することも可能といい、企業や団体向けに9月から併せて売り込んでいます。

 船木真理(まこと)センター長の研究チームなどは、約1400人を対象に血液検査や身体測定などによる追跡調査を実施。血中ホルモンの「アディポネクチン」の値によって、メタボの危険性を判定することができるとわかりました。血液1ミリリットル当たり男性で6・2マイクログラム以下、女性で6・5マイクログラム以下だと、すでにメタボになっているか、4~5年以内にメタボになる危険性が高いといいます。

 検査キットは自分で指先に細い針を刺して微量の血液をろ紙に付着させ、検査機関に郵送します。アディポネクチンは、食事や運動による影響を受けないため、どの時間帯に採血しても測定可能といい、職場や自宅で空いた時間で簡単に検査できます。費用は1回7000円で、2~3日で検査結果がわかります。

 ハッピーが策定する運動プログラムは、検査結果を前提に、アディポネクチンの値を増加させるような筋肉トレーニングやウオーキングを組み合わせた特別メニューを月10回程度こなします。費用は月1万円程度を予定しています。

 当面は企業や団体向けに販売し、将来的には個人への販売も検討します。すでに徳島県内の企業や、健康指導プログラム向けに自治体との契約が成立しているといいます。

 船木センター長は、「年間で1000人の利用を目指したい」としています。

 2019年9月7日(土)

 

■風邪に対する抗菌薬処方に大きな地域差 協会けんぽ調査

 全国健康保険協会(協会けんぽ)は、全国に約4000万人いる加入者のレセプト(診療報酬明細書)データなどを活用し、急性上気道炎(風邪症候群)に対する抗菌薬の処方割合が毎年減少していることを明らかにしました。ただし、地域差は大きく、2人に1人に処方されている都道府県がある一方で、4人に1人程度の処方にとどまっている都道府県も存在していました。

 また、急性上気道炎に対して抗菌薬投与を検討する場合に厚生労働省が推奨しているアモキシシリンの処方割合にも、大きな地域差が存在することも明らかになりました。

 協会けんぽは、今回明らかになった抗菌薬使用における地域差が今後どうなるか使用動向に注視していく考えです。

 今回の解析は、協会けんぽが2018年4月に策定した「保険者機能強化アクションプラン(第4期)」に沿ったもの。医療費適正化などのための情報発信を目的に、都道府県単位(支部ごと)の地域差を解析しました。今回は、抗菌薬の使用状況、人工透析、診療時間外受診の3つをテーマに地域差を解析していますが、今後、異なるテーマでも調査を実施する計画です。

 急性上気道炎に対する抗菌薬の使用状況は、全加入者の2016年6月~2018年5月受付レセプト(一部2015年6月~2019年5月)の中で「急性上気道炎」の疾病名(疑いは除く)が存在するレセプトを対象に解析しました。

 急性上気道炎に対する抗菌薬使用は、2015年度には43・6%でしたが、年々減少し、2018年度は31・4%となっていました。  

 抗菌薬の適正使用として、厚労省は2016年4月に「薬剤耐性(AMR)対策アクションプラン」を策定。また、厚労省は2017年6月に、風邪に対して抗菌薬処方は不要とする「抗微生物薬適正使用の手引き」を公開しています。

 このような動きが今回の処方割合の減少に影響したものと、協会けんぽは分析しています。今回の結果は、国内における抗菌薬販売量の減少とも相関するものです。

 今回、協会けんぽは、細菌検査(A群β溶連菌迅速試験)の実施状況と抗菌薬処方の関連も解析しています。その結果、細菌検査の実施割合が高い地域ほど抗菌薬の使用割合が低いという相関も確認しました。ただし、細菌検査の実施は全体的に少なく、高い地域でも6%程度にとどまっていたといいます。

 このように抗菌薬の使用割合が全国的に減少してきているものの、地域差が残っていることも明らかになりました。最も使用割合が大きい奈良県(48・9%)と、最も低い福井県(26・6%)では22・3ポイントの差がありました。ちなみに、抗菌薬の処方割合は、奈良県に次いで、宮崎県(47・6%)、和歌山県(46・6%)が多くなりました。一方、福井県に次いで北海道(30・0%)、沖縄県(30・9%)の処方割合が少なくなりました。

 処方する抗菌薬の種類にも、差が見られました。抗微生物薬適正使用の手引きでは、急性気道感染症に対して抗菌薬投与を検討する場合はアモキシシリンを推奨していますが、アモキシシリンの処方率が最も高い沖縄県の24・6%に比べて、最も低い徳島県では2・8%となっていました。

 2019年9月6日(金)

 

■運転やめた高齢者、要介護リスク2倍に 活動量減って健康に悪影響

 高齢になって自動車の運転をやめた人は運転を続けた人に比べて、要介護となる可能性が約2倍高くなるとの調査結果を、筑波大などの研究チームが公表しました。高齢ドライバーによる事故が問題になる一方、「移動の手段を失うと、活動量が減って健康度が下がる」といわれており、指摘が裏付けられた形です。

 愛知県に住む65歳以上の男女約2800人に協力してもらいました。2006~2007年時点で要介護の認定を受けておらず、運転をしている人に、2010年8月の時点で運転を続けているか改めて尋ね、認知機能を含めた健康状態を調べました。さらに2016年11月まで追跡し、運転継続の有無と要介護認定との関係を分析しました。

 身体能力や認知機能が落ちれば運転も難しくなりやすいため、こうした事例が結果に混じらないよう、2010年の調査後すぐに要介護となった人は除き、健康状態の違いが影響しないよう統計学的に調整して分析しました。

 その結果、2010年時点で運転をやめていた人は、運転を続けた人に比べて要介護となるリスクが2・09倍ありました。このうち、運転はやめても移動に電車やバスなどの公共交通機関や自転車を利用していた人では、同様のリスクは1・69倍にとどまっていました。一方、運転をやめて移動には家族による送迎などを利用していた人だと2・16倍でした。

 公共交通機関が十分にない地域では、運転ができなくなることで移動の手段が限定されます。活動的な生活が送りにくくなることで健康に悪影響が及んだと考えられるといいます。

 結果をまとめた筑波大の市川政雄教授(公衆衛生学)は、「事故の予防はもちろん大切だが、高齢者に対する安全運転の支援や、運転をしなくても移動がしやすい街づくりといった対策も急ぐべきだ」と話しています。

 2019年9月6日(金)

 

■ダイエット食品「ケトジェンヌ」で下痢 消費者庁、商品名を公表し注意喚起

 「ダイエットをサポートする」などとうたった健康食品「ケトジェンヌ」を飲んで下痢などの健康被害が起きたという事例が短期間で急増しているとして、消費者庁は6日、消費者安全法に基づき注意喚起を出しました。

 また、東京都渋谷区にある販売会社「e.Cycle(イーサイクル)」に対して行政指導をしました。健康食品に関して、消費者安全法に基づいて食品名と事業者名を公表するのは初めて。消費者庁消費者安全課は、「被害拡大防止の観点から公表に踏み切った」としています。

 消費者庁によると、ケトジェンヌは中鎖脂肪酸油などを含むカプセル状の健康食品で、今年3月から主にインターネット上で販売されています。「ケトジェンヌで不足になりがちな栄養素を補いながらダイエットを継続することで、無理せず健康的にスリムなボディーになれる」などと宣伝されています。

 消費者庁の事故情報データバンクには、4~8月に89件の被害情報が登録されており、うち7月以降が78件でした。下痢やおなかの調子が悪くなったなどの消化器障害が72%、じんましんが出たなどの皮膚障害が17%で、女性の被害が約7割でした。

 1袋あたり7500円前後で、定期購入だと割引があります。消費者庁の調査に対し、e.Cycleの担当者は「6、7月で3万件ずつ新規顧客を得た」と話したといいます。

 消費者庁の担当者は、「体調不良が生じた場合は速やかに使用を控え、医療機関や保健所に相談してほしい」と話しています。契約に関する相談は、消費者ホットライン「188(いやや)」へ。

 e.Cycleは6日、ホームページに「弊社商品は適正・安全性を保持していると認識しています」とのコメントを出しました。

 2019年9月6日(金)

 

■筋肉増強剤で健康被害が広がっている恐れ 厚労省が調査へ

 筋トレ(筋力トレーニング)愛好家に健康被害が広まっている恐れがあるとして、厚生労働省が筋肉増強剤「アナボリックステロイド」の利用状況や流通経路などの実態調査に乗り出したことが5日、わかりました。同剤は肝機能障害や生殖機能低下などの副作用があり、実際に被害も報告されています。

 厚労省によると、アナボリックステロイドは骨粗しょう症の治療に用いられ、胃炎や吐血、けいれんなどの副作用があります。治療で使う場合は医師の処方が必要ですが、個人輸入する場合は不要。

 筋肉増強などの目的で、インターネットを通じて簡単に海外から購入できる状況になっています。厚労省は危険性が高いと確認した場合、輸入規制も行う考えです。

 「薬に頼った結果、障害を抱えてしまった」。岡山県の男性(27歳)は、アナボリックステロイドを使って筋トレを続けた3年間を悔やみます。

 体を鍛えようとジムに通うようになった17歳の時、雑誌で知って使い始めました。同剤の服用と連日の筋トレで、体重は1カ月で10キロ増加し、100キロが限界だったベンチプレスは150キロまで挙げられるようになりました。筋肉が大きくなるのがうれしく、より強力とされるものに手を伸ばしました。

 異変が生じたのは使用から半年後。イライラすることが増え、胸部が女性のように膨らみ、急激な筋肉量の増加で肌には亀裂が現れました。幻覚も現れるようになり、統合失調症と強迫性障害と診断されました。

 その後、使用をやめたものの、障害の影響で仕事が続けられず、皮膚には今も亀裂の痕が残ります。ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)で同剤が好意的に紹介されている最近の状況に危機感を抱き、ブログで体験談をつづって安易に使用しないよう訴えています。

 2019年9月5日(木)

 

■ぜんそく治療薬が抗がん剤の副作用を軽減 九州大などが確認

 九州大学大学院薬学研究院、静岡県立大学、大阪府立大学、東京大学などの共同研究グループは、ぜんそくの治療薬が抗がん剤の副作用の一つである筋肉の委縮の軽減に効果があることを突き止めました。今後は、加齢による筋力低下や難病の筋ジストロフィー症の治療などにも応用を進めていきます。

 研究グループの西田基宏・九州大教授(薬学)は、「既存薬は安全性が確立されており、開発にかかる時間や費用が抑えられる。海外のベンチャー企業と連携するなどして、実用化を急ぎたい」と話しています。

 ぜんそく治療薬は「イブジラスト」。今回の研究では、「ドキソルビシン」と「シスプラチン」という2種類の抗がん剤で心筋や骨格筋、臓器が委縮する副作用が、イブジラストの投与で軽減されることを動物実験で確認しました。この副作用は患者の疲労感や痛みなどにつながり、生活に与える影響は大きいものの、有効な治療法は確立されていませんでした。

 研究グループは、心筋委縮の原因となる物質の生成を阻む働きがある薬剤を、すでに承認されている薬の中から探索。その有効性の検証を行い、イブジラストが阻害することを発見しました。抗がん剤を投与したマウスを使った実験では、イブジラストの投与により、体重減少が軽減。心臓や骨格筋の筋肉量の低下が抑えられていることがわかりました。

 既存薬はすでに安全性が確立されているので、今後は患者らへの臨床試験を進め、5~10年程度での実用化を目指すといいます。

 研究結果は8月末、イギリスの薬理学会誌に掲載されました。

 2019年9月5日(木)

 

■フライドポテトを食べ続けた偏食の少年が失明 イギリスで症例報告

 小学生のころからフライドポテトや白パンばかり食べ続けてきた10歳代の少年が失明したという症例を、イギリス南西部のブリストル医科大学の研究チームが発表しました。極端な偏食が失明につながったとみて、偏った食生活に警鐘を鳴らしています。

 この症例は2日、アメリカの医学誌に発表されました。医師によると、少年は小学生の時からフィッシュ&チップス店のフライドポテト、市販のポテトチップス、白パン、ハム、ソーセージしか食べていなかったと話しているといいます。

 疲労感を訴えて初めて医師を受診したのは14歳の時で、診察の結果、ビタミンB12不足と貧血の症状があることが判明。医師はビタミンB12を投与して、食生活についてアドバイスしました。1年後には聴覚障害や視覚障害の兆候が現れましたが、医師にも原因はわかりませんでした。

 視覚障害は悪化を続け、17歳までには失明状態になりました。医師はビタミンB12の欠乏と銅およびセレンの不足、亜鉛過多、ビタミンDと骨密度の低下が原因と判断したものの、この時点で視覚障害は回復不可能な段階に入っていました。

 この症例について調べたブリストル医科大学とブリストル眼科病院の研究チームは、栄養障害によって視神経が機能不全に陥る視神経症と診断しています。

 途上国では貧困や戦争、干ばつなどに起因する栄養不良が、こうした症状につながることがあります。しかし先進国では、偏った食生活による視神経症の症例は極めてまれだといいます。

 今回の症例では、偏った食生活とミネラル不足が失明の原因になったと研究チームは指摘。今後はジャンクフードの消費に起因する視神経症が増える可能性もあると予想しています。

 また、ヴィーガン食(完全菜食主義者向けの食事メニュー)についても、欠乏症を避けるためにビタミンB12のサプリメントを服用するよう促しました。

 この症例報告について、栄養学を専門とするイギリスのキングス・カレッジ・ロンドンのトム・サンダース教授は、食習慣の報告が患者本人の記憶のみに基づいていることや、遺伝性の疾患や環境に起因する問題が考慮されていないことを理由に、批判的な見方を示しています。

 今回の研究にはかかわっていないイギリスのインペリアル・カレッジ・ロンドンのギャリー・フロスト教授は、「極めて極端な事例ではあるが、幅広い多様な食事をとることの大切さが改めて示された」と指摘しています。

 2019年9月4日(水)

 

■高所得国の死亡原因、がんがトップに 世界規模の健康動向を調査

 高所得国において、がんが心疾患を抜いて死亡原因のトップとなったことが3日、イギリスの医学誌『ランセット』に発表された2つの研究論文によって明らかになりました。論文は10年に及ぶ世界規模の健康動向調査に基づいています。

 全体では中年期の死亡原因のトップは依然として心疾患で、全死亡者の40%以上を占めていました。2017年の心疾患による死亡数は、約1770万人に上るとみられます。

 カナダのケベック州にあるラバル大学のジル・ダジュネ名誉教授は、「高所得国では、心疾患はもはや死亡原因トップではなくなった。世界は種々の非感染性疾患において、新たな疫学転換に直面している」と述べました。

 ダジュネ氏の研究チームによる今回の研究では、がんは2017年における世界の死因第2位で、死亡者数全体の26%を占めたことが明らかになっています。心疾患の罹患(りかん)率は世界的に低下しており、がんは「ほんの数十年以内に」世界の死因トップになる可能性があると、ダジュネ氏は指摘しました。

 今回の研究は、高・中・低所得の国、計21カ国の成人16万人以上を10年間にわたり追跡調査しました。この結果、低所得国の人は高所得国の人に比べ、心疾患が原因で死亡する確率が平均で2・5倍だったこともわかりました。逆に低所得国では、がんや肺炎など非感染性疾患が高所得国に比べて少なかったといいます。

 また、同じくカナダの研究チームによる2つ目の研究では、同じ21か国の患者のデータを調査した結果、いわゆる「修正可能な危険因子」が世界の心疾患原因の70%を占めていることが明らかになりました。修正可能な危険因子には、食事、行動、社会経済に関する因子が含まれるといいます。

 高所得国では、高コレステロール、肥満、糖尿病などメタボリック危険因子が心疾患の原因の40%以上を占めており、疾患決定要因の理由として抜きんでていました。一方、発展途上国では心疾患と家庭大気汚染、偏った食生活、教育水準の低さの間に強い関連性が認められました。

 カナダ・マクマスター大学のサリム・ユスフ教授(医学)は、「低および中所得国の政府は、感染症対策に大きく焦点を合わせるよりも、心疾患を含む非感染性疾患の予防と管理に多くの国内総生産(GDP)を割くようにすべきだ」と述べました。

 2019年9月4日(水)

 

■「着床前診断」の審査体制を見直しへ 産科婦人科学会が18年ぶり諮問

 体外受精させた受精卵の特定の遺伝子などを調べ、異常がないものを子宮に戻す「着床前診断」について、日本産科婦人科学会は8月31日の理事会で、医療機関の申請を受け、学会がすべての審査を担う体制を見直し、法律や倫理など外部の有識者を交えた倫理審議会に諮問することを決めました。厚生労働省にも公的な審査の場や法整備の必要性などを働き掛けていきます。

 産科婦人科学会が倫理審議会に諮問するのは、代理出産の是非を検討した2001年以来18年ぶり。これまで審査対象を「命が危ぶまれる重篤な症例」や流産を繰り返す「習慣流産」に限っていましたが、昨年から「日常生活を強く損なう症例」にも拡大しました。

 ただ、「日常生活を強く損なう」との定義が医師ら関係者の間で異なるため、学会だけでの対応に限界があると判断。学会への医療機関の申請は、累計で500件を超えており、調べる病気が多様化していることも背景にあります。

 理事会後に記者会見した学会倫理委員会の三上幹男委員長は、「着床前診断の施設の認定や症例の認可などの判断は学会が行ってきたが、医療や人々の考え方が進歩してきている中で、審査方法を見直す時期にきている」と述べました。

 新たな審査体制については、倫理審議会のほか、日本人類遺伝学会など遺伝医学関連の10学会や患者団体などからも話を聞いてまとめます。学会内では、患者と接する医療機関の倫理委員会に審査を任せるなどの意見も出ているといいます。

 日常生活を強く損なう症例を巡っては昨年、遺伝性の悪性腫瘍(しゅよう)である「網膜芽細胞腫(もうまくがさいぼうしゅ)」の申請があり、一度は承認しませんでしたが、再申請を受けて審査を継続しています。この病気は失明の恐れがあるものの、命にかかわる危険はありません。

 新たな審査体制が確立するまでの間、命が危ぶまれる重篤な症例や習慣流産については引き続き、産科婦人科学会で審査を行います。

 着床前診断の審査は、遺伝性疾患に対して2015年度までに138件の申請があり、デュシェンヌ型筋ジストロフィーなど成人までに死亡することが多い125件を承認。習慣流産は411件の申請中359件を認めました。審査対象の拡大で、申請件数が大幅に増えることを懸念する声もあります。

 2019年9月3日(火)

 

■皮膚がんを遺伝子操作したウイルスで治療 東大と信州大が臨床試験を開始へ

 信州大病院と東京大医科学研究所病院は8月27日、がん細胞を狙い撃ちするよう遺伝子操作したウイルスを使って、皮膚がん治療の治験(臨床試験)を9月にも始めると発表しました。切除ができなかったり転移があったりする皮膚がん患者を対象に、安全性と治療効果を確かめます。

 臨床試験が始まるのは、口の周りに水膨れなどを起こす「単純ヘルペスウイルスI型」の遺伝子を改変した「T―hIL12」を使う治療。がん細胞の中だけで増え、増える時にがん細胞を破壊するよう遺伝子操作してあります。免疫細胞を活性化するタンパク質の遺伝子も加えてあるため、患者自身の免疫によるがん細胞の攻撃を強化する効果があると期待されます。

 臨床試験は、皮膚がんの一種、悪性黒色腫(メラノーマ)の患者計24人を対象に2病院で行う予定で、臨床試験に参加する患者を募集しています。

 第1段階(第1相試験)は、標準的治療の効かなかった患者6人が対象。開発したウイルスを2週間おきに2~4回、がんができている部分に注射します。

 第2段階(第2相試験)は、標準治療の1つである免疫チェックポイント阻害剤・オプジーボによる治療が予定されている患者18人を対象に、オプジーボとウイルス療法を併用します。研究チームは、ウイルスとオプジーボの相乗効果に期待しており、他のがんの治療にも応用できるとみています。

 今回の治療用ウイルスの土台となる遺伝子改変ウイルスは、脳腫瘍(しゅよう)患者を対象にした臨床試験がすでに終わっており、安全性と効果が確認されています。

 治療用ウイルスを開発した東大医科学研究所の藤堂具紀(ともき)教授は、「皮膚がんは、患者自身の免疫による攻撃が比較的功を奏しやすいので、体内でウイルスが増殖するたびに免疫を活性化するタンパク質が作られる今回のウイルスは効果があると考えられる。土台となる治療用ウイルスにさまざまな遺伝子を加えることで、異なる性質のがんに合った治療用ウイルスを開発していきたい」と話しています。

 2019年9月3日(火)

 

■iPS細胞を使う視細胞移植、大阪大に申請へ 理研・高橋氏が2つ目の臨床研究

 iPS細胞(人工多能性幹細胞)を使って、目が感じた光を脳に伝える「視細胞」のもとになる細胞を作り、「網膜色素変性症」という難病の患者に移植する臨床研究について、理化学研究所の高橋政代・客員主管研究員は8月31日、大阪大学の有識者委員会に計画の審査を申請する意向を明らかにしました。

 時期は未定で、準備が整い次第、審査機能を持つ大阪大の委員会に申請するといいます。計画が妥当と認められれば、厚生労働省に実施の承認を申請します。

 網膜色素変性症は、網膜の内部にあり、光を電気信号に変えて脳に送る視細胞に異常が起きる病気。視野が狭くなり、視力の低下や失明につながります。患部は視細胞がなくなってしまうことから、iPS細胞から視細胞のもとになる細胞を作って患者の目に移植し、視細胞に成長させて視力の回復など症状の改善を目指します。

 高橋氏らの研究チームは2014年、別の目の重い病気である「加齢黄斑(おうはん)変性」の患者に、同様の方法で作った網膜細胞を移植する世界初の臨床研究を実施しており、iPS細胞を使った2つ目の臨床研究となります。

 iPS細胞を使う再生医療研究は、ほかに京都大がパーキンソン病、大阪大が目の角膜の病気でそれぞれ移植を実施。大阪大の心不全治療、京都大の再生不良性貧血への輸血、慶応大の脊髄損傷治療も厚労省に計画が承認され、実施の準備を進めています。

 2019年9月2日(月)

 

■子宮頸がんワクチン接種「決めかねる」約4割 厚労省調査

 厚生労働省は8月30日、子宮頸(けい)がんの原因となるヒトパピローマウイルス(HPV)の感染を予防するワクチンの情報の認知度について調査した結果を発表しました。ワクチン接種については、「決めかねている」「わからない」と答えた人が合わせて6割近くに上りました。

 昨年10月、全国の12~69歳の男女2400人にインターネットで調査しました。12~16歳には母親が横にいる状態で回答してもらいました。

 このうち、HPVワクチンの定期接種の対象となっている12~16歳の女性と、同居する家族計235人に、ワクチン接種への考えを尋ねたところ、「わからないことが多いため、決めかねている」が41・3%、「わからない」が17・0%に上りました。「接種したい(してほしい)と思っているが、まだ接種をしていない」は17・4%、「すでに接種をした」は2・6%でした。

 厚労省が昨年、ワクチンの効果やリスクの理解を深めてもらうために改訂したリーフレットについては、回答者全体の86・3%が「見たことはない」と回答しました。「ワクチンの意義・効果」と「接種後に起こりえる症状」については、「知らない、聞いたこともない」と答えた人がそれぞれ34・2%、45・5%でした。

 厚労省の担当者は、「情報が伝わっていないことは残念だ。ワクチンの接種対象者やその保護者に対し、より確実に情報を届ける方法を検討する必要がある」としています。

 HPVワクチンは、2013年4月から小6~高1の女子を対象とした定期接種が始まりました。だが、接種後に長期的な痛みやしびれなどを訴える声が相次ぎ、国は同年6月、積極的な勧奨を中止しました。

 2019年9月2日(月)

 

■再生医療の新しい研究指針を策定 iPS細胞の産業化を見据える

 文部科学省は8月に、iPS細胞(人工多能性幹細胞)に代表される幹細胞を使った再生医療の実用化へ向けた新しい研究指針を策定しました。これまでは主に細胞移植の効果や安全性を調べる研究に軸足を置いていましたが、新指針はiPS細胞の備蓄事業の公益法人化や、安価なiPS細胞の作製など産業化を見据えた戦略に書き換えました。

 日本は臨床研究では一歩リードするものの、産業応用の面では欧米に後れをとる面もあり、再生医療の普及に向けた実効性のある戦略が求められています。

 文科省が8月に新指針をまとめたのは、幹細胞や再生医療に関する研究の指針。政府が関連する研究を支援する際の方針に当たるもので、文科省の専門部会で検討されてきました。2012年に初めて作成してから今回が2回目の改正で、産業応用を見据えた研究の方向性を示しました。

 大きな変更は、京都大学iPS細胞研究所の「iPS細胞ストック」と呼ぶ事業を公益法人に移すことです。この事業では、再生医療で使うのに適したiPS細胞をあらかじめ備蓄しています。2012年度から年間約10億円の公的資金を充ててきましたが、国の再生医療関連予算は約3年で期限を迎えます。

 そこにiPS細胞研究所所長の山中伸弥さんが危機感を抱き、民間資金を入れて運営できるように考えたのが公益法人化です。公益法人は高品質なiPS細胞を製造し、企業や研究機関に供給します。受け取った企業が高品質のまま移植直前の状態に育てたり、管理したりしやすいようにする役割です。

 iPS細胞研究所で、iPS細胞の製造や供給を担う約100人を異動させます。プロジェクトごとの任期付きという不安定な身分から、公益法人の正規職員にし、優秀な人材を維持できるようにします。新指針がまとまった8月の専門部会で山中さんは、「実用化で欧米の後じんを拝しないよう、適正なコストで供給できる取り組みを前に進めたい」と安堵の表情をみせました。

 もう一つ山中さんが構想を示していた「マイiPS細胞」も、指針に初めて盛り込まれました。自分専用のiPS細胞を安価に作るというもので、再生医療の普及を見据えます。製造コストを現在の10分の1以下の約100万円にし、製造期間を今の約1年から数週間にします。山中さんは、「2025年までには実用化したい」と話しています。

 新指針には、遺伝子を自在に改変できるゲノム編集を活用することも、新たに盛り込みました。人によって免疫の型の種類は異なるため、型を合わせずに細胞を移植すると拒絶反応が起こります。ゲノム編集で免疫の型に左右されずに使えるiPS細胞を作る研究などを推進する狙いです。マイiPS細胞とともに、再生医療の普及の鍵になる研究です。

 一方、新指針は再生医療の課題も指摘しました。1つは論文数や特許数の低迷で、1998~2017年の論文数では首位のアメリカが他国を圧倒。日本は5位にとどまります。2006~2018年に公開された特許の出願数をみると、iPS細胞に関してはアメリカに次ぐ2位と高いものの、分野別でみると、患者に移植する段階の「細胞療法」ではスイスに次ぐ3位でした。この要因は、ゲノム編集技術を使って細胞を作る技術の特許取得を進める企業がスイスにあるためで、今後競争が激しくなる可能性を指摘しました。

 幹細胞を取り巻く環境は、国際的に変化しています。特にアメリカでは研究などに使う幹細胞を備蓄、供給する専門機関が続々と設立され、企業が研究用試料の作製などに利用しています。今後は企業などが参入しやすいように、いかに低コストで高品質な細胞を作れるかが重要となります。

 2019年9月2日(月)

 

■生活の関心、健康が貯蓄や余暇の2倍超 国民生活世論調査

 内閣府が8月30日に発表した「国民生活に関する世論調査」によると、今後の生活で力を入れたい点(複数回答)は「健康」が66・5%と最多で、続く「資産・貯蓄」30・9%や「レジャー・余暇生活」28・0%の2倍以上でした。

 「健康」は今回から回答の選択肢に加わり、男女別では女性(70・7%)が男性(61・7%)を上回りました。

 日常生活に「悩みや不安を感じる」とした人は、昨年の前回調査から0・2ポイント増の63・2%。その具体的な内容(複数回答)を聞くと、「老後の生活設計」56・7%、「自分の健康」54・2%が多くなりました。

 調査は6月に18歳以上の男女1万人を対象に実施。

 2019年9月1日(日)

 

■培養したミニ脳から人の脳と類似した脳波を検出 アメリカの大学が研究

 実験室で培養したミニ脳から、人のものに似た電気的活動を初めて検出したとする研究論文が8月29日、アメリカで発表されました。この研究結果は、神経学的状態のモデル化、さらには人の大脳皮質(灰白質)の発達に関する根本的理解への道を開くものだといいます。

 豆粒大の「培養脳」に意識があるかどうかは、まだ明らかになっていません。今回の革新的進展をもたらした研究チームは、検出された電気的活動が早産児のものに似ていることから意識はないとの見方を示していますが、確かなことはいえないといいます。

 成体幹細胞から作製されるいわゆる「脳オルガノイド(細胞集合体)」が登場してから約10年となるものの、機能的な神経細胞ネットワークを発達させたのは今回が初めてです。

 アメリカのカリフォルニア大学サンディエゴ校の生物学者アリソン・ムオトリ氏と研究チームが医学誌「セル・プレス」で発表した論文によると、今回の飛躍的進歩は2つの要因によって可能となったといいます。

 1つ目の要因は、培地製法の最適化などを含む幹細胞培養過程の向上です。2つ目は、子宮の中で胎児の脳が発達するのと同じように、神経細胞に発達のための十分な時間を単に与えることです。これについてムオトリ氏は、「人間の最初期の神経発達はゲノム(全遺伝情報)に符号化されている」と説明しています。

 研究チームがオルガノイドから突発的に放出される脳波を検出し始めたのは、約2カ月が経過してからでした。

 脳波信号は最初まばらで、みな同じ周波数で発せられました。これは非常に未成熟な人の脳にみられるパターンです。だが成長するにつれて、異なる周波数で脳波が発せられ、信号がより定期的に出現するようになりました。これはオルガノイドの神経細胞ネットワークの発達が進んだことを示唆しています。

 研究チームは次に、この脳波パターンを初期発達段階にある人の脳の脳波パターンと比較。比較作業には、早産児39人から記録した脳波活動を使い訓練した機械学習アルゴリズムが用いられました。

 その結果、脳オルガノイドがペトリ皿(シャーレ)の中で発達した期間についての予測を正確に行うことができました。これは自然環境の脳と同様の成長軌跡を脳オルガノイドもたどることを示唆するものです。

 新生児がどの発達段階で意識を獲得するのか、そして意識の定義については、どちらも科学者らの間で論争の的となっています。

 新生児の脳活動を調査した2013年のフランスの研究では、新生児が見せられた顔の画像について考え始めるのは生後5カ月からであり、その映像を一時的な「作業記憶」に保存するとみられることが明らかになりました。研究では、この能力を知覚的意識と関連付けています。

 脳オルガノイドの応用範囲として考えられるのは、てんかんや自閉症などの神経学的疾患患者の幹細胞から脳オルガノイドを作製することにより、疾患のモデル化を向上させられることであり、治療法の発見につながるかもしれません。

 研究チームは、より基本的な問題も解明したいとしています。ムオトリ氏によると、脳オルガノイドの発達が約9~10カ月で止まる理由がまだ明らかになっていないのだといいます。

 内部への栄養物の供給を可能にする血管新生系がないからなのか、それとも(感覚入力の形での)刺激が単に欠けているだけなのか、ムオトリ氏は両方の仮説を検証したいとしています。

 そして今後は、脳オルガノイドが人の脳に近付くにつれ、あらゆる種類の倫理的問題が浮上するのは避けられないとしながら、この研究分野を合意された制限と規制の対象とすることを提案しています。

 2019年9月1日(日)

 

■人の体を構成するタンパク質ほぼすべてを合成 愛媛大が世界に先駆けて成功

 人の体内で病気を引き起こすタンパク質など生命活動に関係するほぼすべてとされる2万4000種類あまりのタンパク質を人工的に合成することに、愛媛大学が世界に先駆けて成功しました。副作用の少ない薬に関する研究も始まっており、医療への応用が期待されます。

 愛媛大学の「プロテオサイエンスセンター」では、16年前の2003年に解読された全遺伝情報(ヒトゲノム)をもとに、小麦の胚芽を使って世界で初めて開発した反応液に遺伝子を入れて合成することで、人の体を構成するタンパク質を人工的に作り出す研究を進めています。

 その結果、人のタンパク質のほぼすべてとされる2万4000種類あまりの合成に成功したということです。この中には、病気を引き起こすタンパク質や、薬の標的となるものもあり、現在、がん医療に関するほかの研究機関との共同研究や、製薬企業からの依頼で薬の副作用の原因を探し出す研究などが始まっているということです。

 愛媛大学のプロテオサイエンスセンターのプロテオ創薬科学部門長、竹田浩之准教授は、「人のタンパク質の働きをこれまでにない規模で研究できるようになった。網羅的な研究を進めることで、病気のメカニズムを解明し、新しい治療方法の開発につなげていきたい」と話しています。

 また、タンパク質レベルからがん研究を進めている東京大学医科学研究所の井上純一郎教授は、「2万4000種類の人タンパク質の合成は世界に例がない。今後は病気の予防や治療薬の開発などにも応用が期待できる」としています。

 2019年9月1日(日)

 

■HIV感染者とエイズ患者、計1317人 2年連続減少

 厚生労働省は29日、2018年に新たにわかったエイズウイルス(HIV)感染者とエイズ患者が計1317人だったとする確定値を発表しました。前年より72人減り、2年連続の減少となりました。

 厚労省のエイズ動向委員会は、「HIV感染症は予防が可能。保健所での相談や検査の機会を積極的に利用して」と訴えています。

 内訳は、感染者が前年比36人減の940人、すでに発症していた患者が36人減の377人。患者が400人を切るのは、2005年以来です。

 年代別では、感染者は20~30歳代が多く6割を超えました。患者は40歳以上が多くなりました。合計の国籍別では、日本国籍が50人減の1143人、外国籍が22人減の174人でした。 

 全国の保健所で今年上半期に行われたHIV抗体検査は、前年同期比24%増の5万3680件(速報値)でした。

 2019年8月31日(土)

 

■コンゴのエボラ出血熱死者、2000人超える 隣国ウガンダでも4人死亡

 アフリカ中部のコンゴ民主共和国(旧ザイール)で昨年8月から続くエボラ出血熱の流行による死者が2000人を超えたことが、わかりました。また隣国ウガンダでは新たに1人が死亡しており、国連のアントニオ・グテレス事務総長によるコンゴ訪問を9月1日に控える中、エボラ出血熱の流行は衰えをみせていません。

 ウガンダで新たに死亡したのは、コンゴから入国した9歳の女児。ウガンダでエボラ出血熱の感染が確認され死亡した犠牲者は4人目で、容易に行き来が可能なコンゴ国境を越えて感染が拡大する恐れが再燃しています。 

 コンゴの保健当局が29日夜に行った発表によると、昨年の8月以降の死者は2006人(うちエボラ出血熱の感染が確認された患者は1901人、感染の可能性が高い患者は105人)で、902人が治癒しました。

 この死者数は、エボラ出血熱対策の直接評価を目的としたグテレス国連事務総長の3日間の日程でのコンゴ入りを直前に控えた中で、エボラ対策の後退を示す形となりました。

 感染封じ込めの取り組みは、コンゴ東部での紛争と、感染地域でエボラ出血熱と闘う医療従事者に対する攻撃によって阻害されています。グテレス事務総長が訪れる予定の北キブ州ベニの市長は、エボラ治療センターが一部の人々から「死の落とし穴」として見られていると語りました。

 2019年8月31日(土)

 

■類l鼻疽で千葉県の男性死亡 熱帯で流行の感染症

 千葉県は28日、同県鴨川市の無職の男性(75歳)が熱帯地域で流行する細菌感染症の「類鼻疽(るいびそ)」で亡くなったと発表しました。類鼻疽が保健所への報告を義務付ける「4類感染症」として指定された2007年4月以降、同県内での患者発生は初めてといいます。

 県疾病対策課によると、男性は今年5月15日からタイに滞在。同30日に意識不明の重体となって同国の病院に入院しましたが、6月23日に症状が軽快し、同26日に帰国していました。

 8月上旬になり発熱などの症状が出て、6日に鴨川市の病院を受診し肺炎のために入院、敗血症、ショック症状などを示し、同日死亡しました。県安房保健所が男性の遺体を調べたところ、類鼻疽菌が検出されました。

 類鼻疽は人獣共通感染症で、類鼻疽菌に汚染された土壌の粉じんや水の飛沫などの吸引や、皮膚の傷が土壌などに汚染されて感染しますが、人から人への感染はないといいます。

 類鼻疽の流行地域は、オーストラリア北部と東南アジア、南アジアで、アフリカなどの熱帯地域でも発生がみられます。日本ではこれまでに海外で感染し帰国してから発症した事例が報告されていますが、日本国内で感染し、発症した症例の報告はありません。

 潜伏期間は通常、3~21日で、1年以上に及ぶこともあります。症状は発熱を主とし、気管支炎や肺炎、胸痛、乾性咳嗽(がいそう)といった呼吸器症状や、リンパ節炎を伴う小結節形成などがみられます。腎不全や糖尿病などの基礎疾患を有していると重症化しやすく、敗血症性ショックを生じることがあります。抗菌薬により治療しますが、再発することもあるため長期間の薬物投与が行われます。

 流行地域では、土壌、水などとの直接接触を避け、生水を飲まないなどの予防が必要。流行地域でケガややけどをし、傷口が土壌や水で汚染された場合には、直ちに傷口を完全に洗浄することが必要です。

 2019年8月30日(金)

 

■iPS細胞で世界初の角膜移植手術を実施 大阪大学など、患者の経過は順調

 iPS細胞(人工多能性幹細胞)から作製した目の角膜の組織を患者に移植して視力を回復させようと、大阪大学などの研究チームが先月、世界で初めての移植手術を行ったと明らかにしました。これまでのところ、患者の術後の経過は順調だということです。

 これは大阪大学の西田幸二教授などの研究チームが、29日会見を開いて明らかにしました。

 それによりますと、7月25日、「角膜上皮幹細胞疲弊症」という重い目の角膜の病気を患う40歳代の女性患者の左目に、iPS細胞から作製したシート状の角膜の組織を移植する手術を臨床研究として行ったということです。これまでのところ拒絶反応はなく、視力も日常生活に支障がない程度にまで回復しているということで、患者は8月23日に退院したということです。

 iPS細胞の再生医療への臨床応用では、目の網膜の細胞を患者に移植する手術などがこれまでに行われていますが、角膜の移植は世界で初めてです。
  
 研究チームでは、年内をめどに2人目の移植手術を行い安全性と有効性を確認することにしており、来年にはさらに患者2人に対して移植を行う計画です。

 西田教授は、「ほぼ見えなかった状態だった患者の視力が、文字が読める程度まで回復している。iPS細胞を用いた角膜の治療には未知の部分がたくさんあるので、慎重に安全性や有効性を見極め、5年後をめどに一般的な治療に発展させたい」と話しています。

 今回の臨床研究は、角膜上皮幹細胞疲弊症という重い角膜の病気に対して、iPS細胞を使って治療することが目的です。角膜上皮幹細胞疲弊症は、角膜の表面にある角膜上皮と呼ばれる組織が病気やけがなどで傷付いて白く濁り、視力が大きく低下し、失明することもあります。

 今回の手術では、京都大学iPS細胞研究所から提供を受けた、他人に移植しても拒絶反応が起きにくい特殊なiPS細胞を使って角膜上皮のもとになる細胞を作りシート状に培養したものが使われています。

 シートは、直径およそ3センチ、厚さ0・05ミリで、数百万個の細胞が含まれています。患者の角膜の濁った部分を取り除き、代わりにシートを移植して、視力の回復を目指しています。

 角膜の病気の治療には移植手術が最も有効な治療法とされていますが、国内ではドナーが少なく、すぐに移植を受けられないほか、拒絶反応の問題から病気が再発するケースも少なくないのが現状で、iPS細胞を使った新たな治療法の開発により、これらの課題を克服することが期待されています。

 京都大学の山中伸弥教授が開発した人iPS細胞を使った再生医療の臨床応用は5年前、世界で初めて神戸市の理化学研究所などの研究チームが「加齢黄斑変性」という重い目の病気を対象に行い、現在は安全性や効果などの評価が行われています。

 また、2018年11月には京都大学の研究チームが体が動かなくなる難病のパーキンソン病の患者の脳にiPS細胞から作製した細胞を移植する手術を実施しています。

 このほか、国の審査の手続きが終わり、臨床研究を実施する準備が進められているものもあります。大阪大学の研究チームは、iPS細胞から作製した心臓の筋肉の細胞をシート状にして重い心臓病の患者に移植する臨床研究を行う予定です。京都大学の別の研究チームは、血液の病気の患者にiPS細胞から作製した血小板を投与する臨床研究を行うことにしています。

 さらに、慶応大学の研究チームは、事故などで脊髄を損傷し、体が動かせなくなった患者に、iPS細胞から作製した神経のもとになる細胞を移植し機能を回復させることを目指す臨床研究を計画しています。

 2019年8月29日(木)

 

■スペイン、乳児ら17人に「狼男症候群」を確認  原因は脱毛症治療薬入り胃薬

 スペインの厚生・消費・社会福祉省は29日、医薬品の取り違えが原因で、乳児を含む子供少なくとも17人に、いわゆる「狼(おおかみ)男症候群」(多毛症)の症状が確認されたと発表しました。親が我が子に飲ませた胃薬の中身が、男性型脱毛症の治療薬だったといいます。

 多毛症は、全身の体毛が過剰に成長する身体症状。今年6月、保護者らが子供たちの全身に体毛が生え始めたことに気付きました。

 症状の出た子供たちには、保護者が胃酸の逆流や消化不良を抑える医薬品オメプラゾールを飲ませていました。ところが、当局の調査で、実は子供たちが飲んでいたのは男性型脱毛症の治療薬ミノキシジルだったことが明らかになりました。

 マリア・ルイサ・カルセド厚生相は記者団に、製薬会社の施設でミノキシジルがオメプラゾールと記載されたケースに誤って梱包され、そのまま薬局に届けられたことがわかったと説明しました。梱包ミスを起こしたのは、南部マラガにある活性成分や医薬品の製造会社「ファルマキミカスル」で、ミスが起きた経緯は現在のところ不明。

 厚生・消費・社会福祉省によると、子供たちはすでに問題の薬の服用を中止しており、症状は今後回復するとみられています。取り違えの起きたオメプラゾールはすべて回収され、ファルマキミカスルはライセンスを停止され、医薬品の製造、輸入、販売ができない状態だといいます。

 2019年8月29日(木)

 

■「筋肉が付く」加圧シャツの販売会社に課徴金 消費者庁

 消費者庁は28日、「加圧シャツ」を販売した東京都渋谷区の「GLANd」(清算中)に対し、4807万円の課徴金を納付するよう命じました。シャツを着るだけで圧力によって体が「やせる」「筋肉が付く」とうたう広告は科学的根拠がなく、景品表示法違反(優良誤認)に当たると指摘していました。

 同庁表示対策課によると、2017年12月~2018年6月、自社のサイトで、「金剛筋シャツ」「金剛筋レギンス」と呼ばれる商品について「着るだけで筋力アップをサポート」「史上最速で激モテ細マッチョになれる」などと表示しました。

 GLANdは、商品のアンバサダーにお笑いコンビ「品川庄司」の庄司智春さんを起用。昨年12月までに2商品で16億円以上を売り上げました。

 消費者庁は3月、同社を含む加圧シャツ販売会社9社に再発防止命令を出しました。関係者によると、2017年~2018年の2年間に20億円超を売り上げた会社もあったといいいます。

 近年は「筋肉ブーム」ともいわれ、引き締まった体にあこがれる人たち向けに同種の商品が多く流通し、他社との差別化を図ろうと過激な表示が増えたとみています。    

 2019年8月28日(水)

 

■鎮痛剤「オピオイド」訴訟、1兆円超で和解提案か アメリカ医薬品大手パーデュー

 医療用に使われる麻薬「オピオイド」入り鎮痛剤の販売手法を巡る集団訴訟に直面するアメリカの製薬大手パーデュー・ファーマが原告側に和解条件を提示していたことが27日、わかりました。同社による支払額は、最大120億ドル(約1兆3000億円)に上る可能性があるといいます。

 パーデューは、同社の鎮痛剤「オキシコンチン」の不適切な販売手法がアメリカでオピオイド中毒のまん延を引き起こしたとして、2000を超える自治体に訴えられています。パーデュー創業家のデビッド・サックラー氏が20日にオハイオ州クリーブランドで集団訴訟の弁護団と会合を開き、和解案を提示したといいます。

 具体的には、パーデューはアメリカ連邦破産法11条を申請した上で「公益信託」に再編。薬物の過剰摂取の治療薬などの販売を通して得た収益を、オピオイド中毒患者の支援や治療費として集団訴訟に参加する各自治体に振り分けるといいます。パーデュー側の弁護士は、公益信託の10年間の活動による支払総額を最大120億ドル規模と見積もっています。

 パーデューは、「何年もの年月を法廷闘争に無駄に費やすことは、何もよい結果を生まない。オピオイド危機に苦しむ患者やコミュニティーは今すぐ助ける必要があり、パーデューは建設的で全面的な解決が最善の道だと信じている」とコメントしました。

 オピオイド系鎮痛剤は従来薬に比べ依存症の危険が少ないとのうたい文句で1990年代に売り出され、急速に使用が拡大しました。だが、その後同薬の乱用による中毒患者が急増。危険性の周知を怠ったなどとして、製薬各社の責任を問う声が高まりました。

 パーデューは同鎮痛薬が主力商品で市場シェアが大きく、過去の積極的な販拡手法が明るみに出たことで批判を集めていました。

 アメリカの自治体はパーデューに加え、イスラエルのテバ・ファーマシューティカル・インダストリーズ、アメリカのジョンソン・エンド・ジョンソンなど複数の鎮痛剤大手メーカーを訴えています。大部分は、類似の案件を取り扱う「広域係属訴訟」としてまとめられ、オハイオ州で10月に審理開始が予定されています。

 26日にはオクラホマ州の地方裁判所が中毒問題に製薬会社の責任を認める最初の判決を下し、ジョンソン・エンド・ジョンソンに5億7200万ドル、日本円にして約606億円の支払いを命じ、同社は判決直後に上告の意向を示しました。パーデューは3月時点で、オクラホマ州と2億7000万ドル、日本円にして約300億円で和解ずみでした。

 2019年8月28日(水)

 

■遺伝子治療薬、初の医療保険適用 血管再生1回60万円

 厚生労働省は28日、体内に遺伝子を入れて病気を治す「遺伝子治療薬」の初の公的医療保険適用を決めました。足の血管を再生する薬「コラテジェン」で、投与1回の公定価格(薬価)は60万円としました。

 遺伝子治療薬は製薬大手やベンチャーが開発に注力しており、今後も保険適用が進む見通し。一方、研究開発や生産に費用がかかり、薬価は高額になりやすいため、財政を圧迫する懸念があります。

 28日午前に中央社会保険医療協議会(厚労相の諮問機関)の総会を開き、9月4日にコラテジェンを保険適用することが了承されました。

 コラテジェンは、大阪大学発ベンチャーのアンジェスが開発した遺伝子治療薬。重度の動脈硬化で足の血管が詰まり、脚などが壊死(えし)する「慢性動脈閉塞(へいそく)症」の患者に対し、新しい血管を作るための遺伝子を2~3回注射して治療します。

 薬価は60万360円。保険適用により患者の負担は原則3割となります。医療費負担に月額上限を定める高額療養費制度があるので、多くのケースでは実際の患者負担はさらに軽くなります。ピーク時の患者数は年1000人弱、販売額は年12億円規模と見込まれています。今年3月に厚労省が5年間の期限付きで製造販売を承認していました。正式承認には、5年以内に有効性を確認し再度申請することが必要。

 「究極の医療」と期待される遺伝子治療薬は、有効な治療方法が確立されていない難病への治療薬として注目されています。保険適用が相次げば、患者は利用しやすくなります。

 一方、高コストになりやすいため、薬価は高額になることが多くなりそうです。ノバルティスが日本での製造販売を目指している脊髄性筋委縮症の遺伝子治療薬「ゾルゲンスマ」は、アメリカでは2億円を超す値段がつきました。早ければ年内に承認される可能性があります。

 5月に公的医療保険適用されたノバルティスの白血病治療薬「キムリア」は、1回3349万円と国内最高の薬価となって注目されました。医療技術の進歩により高額な薬が相次いで登場しており、公的医療保険の財政を圧迫する懸念が強まっています。

 2019年8月28日(水)

 

■年金、現状水準には68歳まで就労必要 5年に1度の財政検証

 公的年金の財政状況をチェックし、将来の給付水準の見通しを示す「財政検証」は5年に1度行われることになっており、厚生労働省は27日、検証結果を公表しました。

 経済成長率が最も高いシナリオでも将来の給付水準(所得代替率)は今より16%下がり、成長率の横ばいが続くケースでは3割弱も低下します。60歳まで働いて65歳で年金をもらう今の高齢者と同水準の年金を現在20歳の人がもらうには68歳まで働く必要があるとの試算も示しました。年金制度の改革が急務であることが、改めて浮き彫りになりました。

 財政検証は公的年金の「定期健診」に相当し、経済や人口に一定の前提を置き、年金財政への影響や給付水準の変化を試算します。今回は6つの経済前提を想定して2115年までを見通しました。

 試算では、夫が会社員で60歳まで厚生年金に加入し、妻が専業主婦の世帯をモデルに、現役世代の手取り収入に対する年金額の割合である「所得代替率」が将来どう推移するかをはじき出しました。政府は、長期にわたって所得代替率50%以上を確保することを目標にしています。

 2019年度は、現役の手取り平均額35万7000円に対して年金額は約22万円で、所得代替率は61・7%でした。

 物価や賃金の上昇率や就業率などに応じ、中長期の実質経済成長率が0・9%からマイナス0・5%までの6つのシナリオのうち、経済成長と労働参加が進む3つのケースでは、将来の所得代替率が50%超を維持できます。2014年の前回財政検証と比べると、将来の所得代替率はわずかに上昇しました。女性や高齢者の就業率が想定よりも上昇し、年金制度の支え手が増えたためです。積立金の運用が想定を上回ったことも寄与しました。

 ただ2029年度以降の賃金上昇率が1・6%、実質経済成長率が0・9%という最もよいシナリオでも、今と比べた所得代替率は16%下がります。

 成長率が横ばい圏で推移する2つのシナリオでは、2050年までに所得代替率が50%を割り込みます。最も厳しいマイナス成長の場合には、国民年金の積立金が枯渇し、代替率が4割超も低下。これらの場合、50%の給付水準を維持するために、現役世代の保険料率の引き上げなどの対策が必要になります。

 今の年金制度に抜本改革された2004年当時の見通しに比べると、年金財政のバランスをとるために給付抑制が必要な期間は長期化しています。2004年の想定では、基準となる経済前提のケースで2023年度までの19年間で給付抑制は終了する計画でした。今回の財政検証では、最も経済状況がよいケースでも、今後27年間は給付の抑制を続けなければならないとの結果でした。

 2004年改革は、現役世代の保険料負担の増加と引退世代の年金給付抑制が改革の両輪でした。だが実際には、保険料の引き上げは進んだものの、少子化の進展に併せて年金額を抑える「マクロ経済スライド」はデフレなどを理由に、2回しか発動されていません。そのことで、将来世代の給付水準を押し下げています。

 今回の検証では、若い世代が何歳まで働けば、今年65歳で年金受給が始まる高齢者と同じ水準の年金をもらうことができるかを試算しました。それによると成長率が横ばいの場合、現在20歳は68歳9カ月まで働いて保険料を納め、年金の開始年齢も同様に遅らせる必要があります。働く期間は今よりも8年9カ月長くなります。

 同様に現在の30歳は68歳4カ月、40歳なら67歳2カ月まで働いて、ようやく今の65歳と同水準をもらうことができます。

 厚労省は今回の財政検証を踏まえ、年末までに年金改革の具体案をまとめる方針。支え手拡大と給付抑制に取り組む必要がありそうです。

 2019年8月27日(火)

 

■鎮痛剤「オピオイド」で5万人死亡 アメリカ医薬品大手に606億円の賠償命令

 アメリカで「オピオイド」と呼ばれる鎮痛剤の乱用で年間約5万人の死者が出ている問題を巡り、南部オクラホマ州の地方裁判所は26日、医薬品大手の「ジョンソン・エンド・ジョンソン」に対し日本円で約606億円の賠償金の支払いを命じました。

 アメリカでは、オピオイドと呼ばれる麻薬入り鎮痛剤の乱用で薬物中毒になる人が急増し、2017年には年間約5万人の死者が出ており、トランプ大統領が緊急事態を宣言するなど大きな社会問題となっています。

 こうした事態を受けて、多くの州が製薬会社などの責任を問う裁判を2000件以上起こしていますが、オクラホマ州の地方裁判所は26日、オピオイドの製造、販売をしていた製薬会社の親会社で医薬品大手のジョンソン・エンド・ジョンソンに対し、5億7200万ドル、日本円にして約606億円の賠償金を支払うよう命じました。

 判決で裁判所は、「製薬会社などがオピオイドの処方量を増やすために、危険性を十分警告せずに医師らに働き掛けたことが原因だ」とする主張を認め、被害の拡大に責任があると指摘しています。

 これに対して、ジョンソン・エンド・ジョンソンは判決を不服として、上訴する方針を発表しました。

 オクラホマ州はこの裁判の前に、アメリカのパーデュー・ファーマ、イスラエルのテバ・ファーマシューティカル・インダストリーズという2つの製薬会社と日本円で合わせて約380億円の和解金を受け取ることで訴訟の取り下げに合意していましたが、ジョンソン・エンド・ジョンソンは「不法行為はなかった」と主張して、訴訟が続いていました。

 2019年8月27日(火

 

■ストレスの度合いを計測する指標物質を発見 大阪大学

 人がストレスを感じると、血液中の濃度が高くなる物質を大阪大学の研究チームが発見し、ストレスの度合いを客観的に計測するための指標になるのではないかと注目されています。

 大阪大学キャンパスライフ健康支援センターの中西香織助教、瀧原圭子教授らの研究チームは、人が感じているストレスの度合いを示す物質を探そうと、動脈硬化や皮膚の委縮など老化にかかわる物質として知られる「αクロトー」に注目しました。

 実験では、健康な40歳代から60歳代の男性約100人を対象としてストレスの程度を聞き取り、同時に血液の中に含まれるαクロトーの濃度を測りました。

 その結果、「ストレスへの対応ができていない」「睡眠で十分な休養がとれていない」と回答したグループは、そうでないグループと比べてαクロトーの濃度が2割から3割ほど高かったということで、ストレスの度合いによって濃度が変化していると考えられるということです。

 これまでストレスの度合いはアンケート方式で調べるのが中心で、この物質は客観的に計測するための指標になるのではないかと、注目されています。

 中西助教は、「倒れてしまうまで自分のストレスに自覚がない人もいるので、客観的に計測する技術を確立して、より健康な社会作りにつなげたい」と話しています。

 2019年8月26日(月)

 

■バイオ3Dプリンターで人工血管を作り移植へ 佐賀大が研究計画

 佐賀大学医学部の中山功一教授(臓器再生医工学)らの研究チームが、人間の細胞から立体的な構造体をつくる「バイオ3Dプリンター」を使い、人工透析を受けている患者の皮膚から人工血管を作製し、患者に移植する臨床研究を始める見通しとなりました。

 国から認可された審査委員会に研究計画を申請ずみで、計画が受理されれば患者を募り、今年秋にも臨床研究に着手することにしています。

 中山教授によると、人工素材を使わずに人の細胞から人工血管を作るため、アレルギー反応や細菌の感染リスクを抑制する効果が期待できるといいます。

 バイオ3Dプリンターは、患者の脇や脚の皮膚から採取した細胞を培養し、約1万個の細胞の塊(直径約0・5ミリ)をつくり、その塊を剣山のように並べた針に刺して積み重ね、3次元データの設定通りに形成します。複数の串刺し状の塊がくっ付き、直径約5ミリ、長さ約5センチのチューブ状の人工血管ができるといいます。本物の血管と同じような弾力があり、血管の内側に血圧のおよそ10倍の圧力をかけても耐えられるということです。

 人工血管をブタに移植した実験では、通常の血管と同じように血液が通り、半年にわたって機能することが確認され、研究チームは人に移植する臨床研究に向け準備を進めてきました。

 人工透析は、腎不全の患者の体内から血液を取り出し、機械で浄化して戻す治療法。血液を取り出しやすくする血管(シャント)が必要になるものの、樹脂製の血管は内部が詰まる場合があるといいます。このため、シャントの代わりにバイオ3Dプリンターでつくった人工血管を3〜4人の患者に移植し、半年ほどかけて安全性や効果を確認します。

 中山教授は、「バイオ3Dプリンターで作製した人工血管の移植は世界でも珍しい。他の臓器の作製にも応用できるだろう」としています。

 アメリカの調査会社マーケッツアンドマーケッツによると、1台当たり数百万から数千万円で販売されているバイオ3Dプリンターの世界市場は、2021年に13億3260万ドル(約1400億円)となり2016年の3倍を超しています。

 バイオ3Dプリンターが普及する上では、安全性の確認に加え製造コストを引き下げる工夫が必要です。製薬会社や患者のニーズはあり、欧米や中国でスタートアップが生まれるなど関連企業が増えています。実用化を巡って競争が一層激しくなりそうだ。

 2019年8月26日(月)

 

■肥満治療も可能にするワクチン技術を開発 大阪市立大など

 大阪市立大学や東京大学などの研究チームが23日、肥満に関連する腸内細菌をワクチン注射で減らしたところ、高脂肪食を与えたマウスの体重増加を抑えられたと発表しました。食べても太りにくい「肥満ワクチン」につながる可能性があるといいます。論文は、アメリカの消化器病学会誌に掲載されました。

 研究チームは、肥満や糖尿病との関連が報告されている腸内細菌(クロストリジウム・ラモーサム)に注目。腸の粘膜で免疫を活性化させるワクチンをつくりました。

 実験では、無菌マウスに人の肥満患者の腸内細菌を移植し、高カロリーのえさを与えました。ワクチンを注射したマウス9匹は、腸内細菌がふんとして排出されて減り、ワクチンを注射しないマウス7匹と比べて、体重増加が約12%抑制されました。

 腸内細菌が減少したマウスの体内では、小腸などで体内にブドウ糖を吸収する働きが活発化せず、肥満や糖尿病を抑える効果が期待できるといいます。

 大阪市立大の植松智(さとし)教授(ゲノム免疫学)は、「これまでと全く異なる新しいタイプのワクチンができた。特定の腸内細菌を減らすことで、将来的に食べても太りにくい肥満ワクチンにつながる可能性がある」と話しています。

 このワクチンは、腸や消化器などの粘膜で免疫の働きを高める仕組み。あらかじめ注射しておくと、体内の細胞が免疫の働きを記憶。病原体や、免疫反応を引き起こす物質(抗原)に反応して、抗体タンパク質を活性化させることができます。この仕組みは特許化し、製薬会社と共同研究しているといいます。

 研究チームはこの仕組みが、肺炎球菌の感染を抑制したり、コレラ毒素による下痢を抑制したりすることも確認しました。

 2019年8月25日(日)

 

■家庭のCO2排出削減分の取引開始へ 東電系などの企業

 個人による二酸化炭素(CO2)の排出量削減分を取引する仕組みが、8月下旬から国内で始まります。東京電力ホールディングスやソフトバンクなどが出資する企業が主導し、暗号資産(仮想通貨)の基盤技術であるブロックチェーンを介して、家庭の太陽光発電などで削減した排出量をクラウド上で販売します。これまで埋もれていた家庭のCO2削減分に価値を付け、再生可能エネルギーの普及を後押ししそうです。

 太陽光や風力、地熱、バイオマスなど再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度(FIT)による買い取りが、11月から順次終わります。家庭で生んだ再生可能エネルギー由来の電力の売電が減り、自家消費が増えるとみられます。個人によるCO2削減分の売買インフラを通じ、11月以降の家庭の売電収入の落ち込み分を補う効果も見込みます。買い手として、再生可能エネルギー由来の電力を事業に生かしたい中小企業などが参加します。こうした小口の排出量取引は、世界でも珍しいといいます。

 東電子会社とLIXILの共同出資会社や、ソフトバンクが出資するユビ電(東京都港区)、電力取引仲介を手掛ける電力シェアリング(東京都品川区)などが、共同で取り組みます。2018年から環境省の支援を受けて実証実験を進め、商用化のメドが立ちました。

 各社は家庭で自家消費した電力のうち、CO2を削減した量を売買できるようにします。各家庭で、太陽光の発電量のうち自家消費分をスマートメーターなどで常時計測します。ブロックチェーンを使い個人にひも付け、誰のCO2の削減価値かわかるようにします。

 売る側は、CO2削減量を再生可能エネルギーの発電量に置き換えて取引します。買う側は、電気自動車のレンタル会社や小売業などを想定し、CO2排出削減をサービスに活用してもらいます。取引価格にもよるものの、1キロワット時当たり約5円で価値を取引した場合、4人家族の一般的な家庭で蓄電池がある場合は年約2万円、蓄電池がない場合は年約4000円の収入になる見込みです。

 売買は、専用のスマートフォンアプリで相対で行います。アプリ上では、誰がどの地域で自家発電してCO2を削減したかもわかるようにします。まず2020年に1万人の利用を目指し、同年からは収入の1割程度を手数料として徴収する見込み。

 再生可能エネルギーのCO2削減分を売買する制度には、国が運営するJ―クレジットや非化石証書などがあります。ただ現在の制度は手続きが煩雑で時間がかかり、使い勝手が悪いとの声がありました。

 企業の間では、イオンや富士通など事業で使う電力をすべて再生可能エネルギーで賄い、実質的にCO2排出量ゼロを目指す例が広がりつつあります。再生可能エネルギー由来の電気は、通常の電気よりも割高で、中小企業や個人事業主には手が出しづらい面があります。小口の家庭のCO2の削減価値の取引が増えれば、再生可能エネルギー活用の裾野が広がる可能性があります。

 2019年8月25日(日)

 

■花粉症薬の一部、医療保険の対象外に 健保連が提言

 薬は医療機関を受診して入手したほうが安いという「定説」を覆す分析を健康保険組合連合会(健保連)が23日、発表しました。花粉症では、市販薬をドラッグストアなどで購入した場合と医療機関で類似薬を処方してもらう場合の患者負担に、ほとんど差がありませんでした。

 「大差がない」とするカラクリは、患者負担の定義にあります。処方薬の場合、医療機関に払う初診料や薬局に払う調剤料がかかります。薬代に加え、薬を処方してもらうためにかかる費用も加えた患者負担で比べると、薬代だけの市販薬と「大差がない」と健保連は分析しました。

 花粉症の治療薬は近年、医師から処方されなければ入手できなかった医療用の薬から転用された市販薬が相次いで登場しています。久光製薬の「アレグラ」や、エスエス製薬の「アレジオン」などです。

 健保連の分析では、例えば「アレグラ」14日分を医療機関で受け取る場合、自己負担3割の現役世代でかかる費用は総額2003円。薬だけなら482円ですが、医療機関に支払う初診料や薬局に支払う調剤料が1500円以上かかります。

 一方、市販薬の場合は、税込みで1554円~2036円でした。市販薬のほうが高い場合でも、差額は33円で収まります。

 「アレジオン」も同様で、24日分を医療機関で受け取ると、合計2210円になります。市販薬は税込みで2138~3866円。市販薬のほうが安いこともあるという結果でした。

 患者負担だけみれば、費用に大きな差はありません。健保連が問題視するのは、医療機関でかかる費用の7割は公的医療保険で賄っている点です。軽症の患者が薬目的で医療機関を受診すると、医療費が膨らみ企業健保の財政を圧迫してしまいます。

 健保連の幸野庄司理事は23日に開いた記者会見で、「財政が厳しくなれば保険料が上がって負担増になる」と述べ、医療の必要性を見極めて市販薬を活用する意義を強調しました。

 健保連は、市販薬と同じ成分の花粉症治療薬を公的医療保険の適用から外せば、最大で年597億円の医療費削減効果があるとの試算も示しました。1種類だけの処方ですむ軽症向けに限って保険適用を除外しても、36億円程度の節減になります。

 幸野理事は、「まず軽症向け患者への処方から保険適用外にすべきだ」と話しています。厚労相の諮問機関である中央社会保険医療協議会や社会保障審議会で、制度改革の検討を求める考えです。

 ほかにも医療費の節減につながる改革案を提言し、生活習慣病の治療では、比較的薬剤費の高い先発薬より安価なジェネリック医薬品(後発薬)の利用促進を求め、薬剤費を年3141億円削減できる見込みがあるとしています。

 症状が安定した患者に向け、反復使用できる処方箋を導入すれば、医療機関を受診せずに薬を受け取れるようになり、年362億円の医療費を節減できるとしました。

 医療費は年40兆円を超し、高齢化の進行でさらに増える見通し。制度改革は避けられないものの、負担増や給付抑制には反発が強く、思うように進んでいません。

 2019年8月23日(金)

 

■唾液でがん検査の企業に保険大手が出資へ 安くなる保険商品の開発も

 わずかな唾液から、がんのリスクを調べられる検査技術を開発したベンチャー企業に、大手の生命保険会社と損害保険会社が出資することになりました。検査を受けた人には保険料を安くする新しい保険商品の開発などを検討する見通しです。

 生命保険大手の日本生命と損害保険大手のSOMPOホールディングスは8月中にも、慶応大学の研究所が設立した山形県鶴岡市のベンチャー企業、サリバテックにそれぞれ数億円、出資する方針です。

 サリバテックの検査は、がん細胞から染み出す物質を数滴の唾液中から見付けて解析します。肺や大腸、乳がんなどの早期発見につながるほか、がんにかかるリスクもわかるといいます。検査は現在、全国の病院やクリニックで受けられるようになっています。

 日本生命とSOMPOホールディングスでは、定期的にサリバテックの検査を受けると保険料が安くなる新しい生命保険や医療保険の開発などを検討する見通しです。

 検査でがんを早期に発見できれば契約者のためにもなる上、保険会社にとっても保険金の支払いが減って収益の拡大が期待できます。

 最近では、健康診断を受けたり運動したりして、病気の予防に取り組んでいる人の保険料を割り引く「健康増進型」の保険が人気で、保険会社も商品開発に力を入れています。

 2019年8月23日(金)

 

■7月の熱中症搬送者1万6431人 降雨で気温低く、前年の3割

 総務省消防庁は23日、7月に熱中症で救急搬送されたのは全国で1万6431人だったと発表しました。記録的な猛暑に見舞われたため、過去最多の約5万4220人が運ばれた前年同月の3割程度となりました。雨が多く、気温が比較的、低い日が多かったのが影響したとみられます。

 ただ今後も注意が必要で、消防庁はエアコンの適切な利用や、こまめな水分補給を呼び掛けています。

 集計によると、青森県や長崎県など19府県の計25人が搬送先で死亡しました。3週間以上の入院が必要な重症は446人、短期の入院が必要な中等症は5549人でした。年齢別では、65歳以上の高齢者が8772人で全体の53・4%を占めました。熱中症の発生場所は住居が37・4%で最多でした。

 都道府県別の搬送者数は、愛知県が最多で1195人でした。大阪府1172人、東京都1052人が続きました。都道府県別の人口10万人当たりの搬送者は、鹿児島県が24・75人で最も多く、鳥取県21・8人、沖縄県21・2人と続きました。

 2019年8月23日(金)

 

■飲料水中のマイクロプラスチック、人体影響は確認できず WHOが調査

 世界保健機関(WHO)は22日、飲料水に含まれるマイクロプラスチック(プラスチック微粒子)について、現状では人体への明確な影響は確認できなかったと発表しました。ただし、将来的な潜在リスクに関してさらなる研究が必要だとしています。マイクロプラスチックの人体への影響に関するWHOの調査報告は、これが初めて。

 今回の調査では、水道水とボトル入り飲料水に含まれるマイクロプラスチックの影響に焦点を当てました。

 WHOのブルース・ゴードン水・公衆衛生担当調整官は、「世界中の飲料水利用者を安心させるメッセージだ。我々の分析結果に基づけば、リスクは低い」と述べています。

 WHOによると、飲料水のマイクロプラスチック含有量に関するデータは現状では限られており、信頼できる研究も少ないため、リスク分析は困難だといいます。

 WHOは、マイクロプラスチックの健康への影響についてより詳細な評価を行うよう研究者に呼び掛けるとともに、プラスチック汚染対策の強化が環境保護と人体へのマイクロプラスチックの脅威軽減になると訴えています。

 2019年8月22日(木)

 

■アフターピルのネット診療での処方を条件が付きで解禁 入手になお高いハードル

 厚生労働省は7月末、条件付きで緊急避妊薬(アフターピル)のインターネット診療での処方を解禁しました。アフターピルは72時間以内に飲めば8割以上の確率で妊娠を阻止できるとされ、性交渉で避妊できなかった時に、望まない妊娠を防ぐ最後の手段です。

 ネット上で不正取引が横行したのを切っ掛けに、入手ルールを見直すことになりました。ただ、女性の知識不足から安易な利用を招くとの慎重意見も根強く、かえって入手のハードルは上がった面もあります。

 アフターピルは、性交渉後に妊娠を防ぐため服用する薬。早く飲むほど効果は高く、原則72時間以内に服用し、タイミングが遅れると効果はありません。数日間、受精を防ぐとされ、すでに服用時に受精していれば妊娠を防げないものの、健康への被害はありません。公的保険は効かないので費用は全額本人負担で、価格も自由。国内では2011年に承認された「ノルレボ」(あすか製薬)と今年発売された後発薬の「レボノルゲストレル」(富士製薬工業)があります。120時間効果がある国内未承認薬を海外から個人輸入する人も多くいます。

 日本では、アフターピルの入手には医師の対面診療が必要。だが、「婦人科の内診を受けたくない」「それでは避妊に間に合わない」として女性がネットで購入するケースが増えています。個人輸入した薬をフリーマーケット(フリマ)アプリで無許可転売した男が2月に逮捕されたのを受け、厚労省は検討会で医師法に基づくネット診療の指針改定の議論を進めてきました。 

 厚労省は当初、ネット診療の本格解禁を検討しました。パソコンやスマホの画面上で行うネット診療では、医師が院内処方した薬を患者に直接送ることができます。指針で初診は対面診療を義務付けているものの、禁煙外来は例外的に初診からネット診療を認めています。同じくアフターピルも、対面診療なしで受け取れるようにする案が有力でした。

 だが、厚労省の検討会では慎重意見が大勢を占めました。日本産婦人科医会と日本産科婦人科学会の2団体は意見書で、「患者が風俗産業や犯罪組織にかかわっている可能性がある」「性感染症を予防する効果はないなど丹念に説明する必要がある」などと懸念を表明し、対面診療の担保を求めました。

 確かに不安はあり、利用者が成功確率100%と勘違いすれば、妊娠に気付くのがかえって遅れる恐れがあります。入手が容易になることで、適切な避妊がおろそかになるとの心配も出ました。「いかに他の国々で簡単に入手できるといっても、日本は若い女性に性の知識がない状況で、それはできない」と、開業医中心の日本産婦人科医会の前田津紀夫副会長は検討会で強調しました。

 こうした慎重意見を踏まえ、厚労省が7月末に改訂した指針にはさまざまな条件が付きました。一つは通常のネット診療と異なり、医師が薬を院内処方して患者に直接送ることを認めないことにした点。医師は処方箋を郵送し、受け取った本人が薬局に行き薬剤師の前で飲まなくてはなりません。避妊の成否を確認するため、服用3週間後に産婦人科医への受診も義務付けました。

 条件付き解禁となったことで、現場の医師からは戸惑いの声も出ています。ネット診療でアフターピルを処方した経験のある医師は、「かえって時間がかかり避妊が間に合わなくなる」と指摘しています。服用3週間後の対面受診も、薬局で買える妊娠検査薬の利用で十分とみています。医師情報サイトのコメント欄には、「避妊教育は学校でやるべき」「市販を認めて薬剤師が説明すればよい」といったさまざまな意見が書き込まれています。

 国際産婦人科連合は、「繰り返し飲んでも安全」「服用前の検査は不要」「服用後の受診予定は不要」などとする国際指針を公表しています。国際産婦人科連合のメンバーである日本産科婦人科学会は、国内指針との差について「国際指針は医療資源の少ない国々も対応できるようにしており、日本の実情と異なる」と説明しています。ただ、産婦人科医の間でも意見は割れ、産婦人科医を含む日本女性医療者連合など3団体は5月、「3週間後の産婦人科受診は必須ではなく推奨に」などの修正を求める要望書を厚生労働省に出しました。

 アフターピルは、2000年ごろに欧州各国で承認されました。現在、欧米アジアなど95カ国で処方箋なしで薬局で買えます。アメリカにはキャンパスに自動販売機を置く大学もあります。日本は2011年にアフターピルを処方薬として認めたものの、その当時で非承認国は北朝鮮、イラン、アフガニスタン、チリなどごく少数でした。その後、チリとイランは薬局で購入できるようになっています。

 日本では人工中絶手術が年間16万件行われ、費用は1件15万~20万円。アフターピルの費用は1回800円~1万5000円程度。アフターピルの年間処方数は、中絶件数より少ないと見なされます。女性の心身の負担が大きい中絶手術を減らすには、アフターピルの普及が一助になります。地方では医療機関が遠いとか見付けにくいケースもあるだろうし、レイプなど性暴力の被害者はすぐに対面受診しにくいとの事情も考えられます。

 産婦人科医の遠見才希子氏は、「72時間以内というタイムリミットがあるアフターピルを必要とする日本中の女性すべてに産婦人科医が対面診療で処方するのは困難。薬局での販売も含め、アクセスの選択肢は複数あることが望ましい」と話しています。

 実は日本では2年前に市販化が検討され、医療団体が「時期尚早」と反対して見送られました。薬の市販化では主に副作用が問題になるものの、アフターピルの反対理由は副作用ではなく、「米欧と比べ性教育が浸透していない」と「薬剤師が説明できると思えない」です。

 入手が簡単になると乱用や転売が広がり、売春に悪用されたり、本来とるべき避妊手段や性感染症の予防が後回しになったりする懸念はあります。中学・高校生への性教育の充実が重要です。ただ、現実に日本で人工妊娠中絶が多いのは10歳代よりも20~30歳代で、その中にはアフターピルが間に合えば防げた中絶もあります。

 2019年8月22日(木)

 

■パキスタンで日本人4人が腎臓移植を受ける 違法売買の臓器を使用か

 違法な臓器売買が問題となっているパキスタンで腎臓移植を受けた日本人が今年少なくとも4人いたことが20日、患者ら関係者の説明で明らかになりました。東海地方に住む60歳代男性は手術後に状態が悪化し、命が危険な状態で帰国していました。

 いずれも東京都の業者が仲介。患者が受けた説明などから、違法に売買された腎臓が使われた可能性があります。パキスタンでも臓器売買は違法で、患者が摘発される恐れがあるほか、安全性にも問題があり、専門家は注意を呼び掛けています。

 日本の臓器移植法は、海外であっても臓器提供の対価としてお金を払うことや、無許可のあっせんを禁じています。厚生労働省は情報収集を始めるとともに、対応を検討しています。東京都の業者は、「話すことはない」と答えています。

 いずれの患者も帰国後は、腎臓移植手術の経験が多い愛媛県の宇和島徳洲会病院の万波誠医師に診療してもらうよう伝えられており、実際に訪れました。万波医師は、「業者と面識はない。勝手に名前を使われて許せない」と話しています。

 パキスタンでは年間2000件の腎臓移植が行われ、うち500件は患者が国立病院で家族から生体腎移植を受けるケース、残る1500件が私立病院で他人の臓器を移植されるケースで、このうち約900から1000件を中東、北米、欧州、南アジアの20カ国以上から来る患者が占めているといわれていました。

 しかし、最貧層を狙った違法臓器取引の取り締まりを目的として、2017年8月に新法が制定され、パキスタン人が外国人に臓器を販売することを禁止し、許可なく人の臓器を売買した者に対し禁固10年と多額の罰金を科すよう定められています。

 2019年8月21日(水)

 

■RSウイルス感染症の患者、1週間で5000人超え 流行となる恐れ

 乳幼児に肺炎などを引き起こすRSウイルス感染症の8月5〜11日までの1週間の患者の報告数が、初めて5000人を超えました。専門家は、「今後、大きな流行となる恐れがあるため、こまめな手洗いを行うなど、感染に注意してほしい」と話しています。

 RSウイルス感染症は、発熱やせきなど、風邪に似た症状の出る病気で、通常は秋から冬にかけて乳幼児を中心に流行し、場合によっては肺炎や気管支炎を引き起こし、重症化することがあります。

 国立感染症研究所によりますと、全国約3000の小児科の医療機関で、8月11日までの1週間に新たにRSウイルス感染症と診断された患者は5033人と、今年初めて5000人を超えました。

 都道府県別では、最も多いのが東京都で513人、次いで神奈川県で348人、大阪府と福岡県で276人、埼玉県で267人などとなっています。

 全国の1医療機関当たりの患者報告数は、前週比約19%増の1・67人で、38都府県で前週よりも増えています。都道府県別では、宮崎県が6・64人で最も多く、以下は福島県(4・26人)、山形県(3・5人)、新潟県(3・28人)、鹿児島県(3・15人)、沖縄県(3・12人)、長崎県(3・1人)、宮城県(2・48人)、徳島県(2・39人)、熊本県(2・32人)、福岡県(2・3人)、東京都(2・28人)、福井県(2・22人)、埼玉県(1・99人)、佐賀県(1・87人)、神奈川県(1・83人)、千葉県(1・72人)などの順でした。

 感染症に詳しい川崎市健康安全研究所の岡部信彦所長は、「RSウイルス感染症は、従来秋から冬にかけて流行するといわれていたが、最近は、流行が早まっているという指摘があり、今年もその傾向が出ているのだと思う。今後、大きな流行となる恐れもあるため、特に乳幼児のいる家庭などではこまめな手洗いを行うなど、感染に注意してほしい」と話しています。

 2019年8月21日(水)

 

■熱中症で7338人搬送、死者7人 12~18日、前週より大きく減少

 総務省消防庁は20日、熱中症でお盆期間中の12~18日の1週間に救急搬送されたのは、全国で7338人だったとの速報値を発表しました。台風の影響で曇りや雨の日が増えたこともあり、5~11日の前週の1万2751人から大きく減少しましたが、前年同期の4432人と比べ高い水準が続いています。

 搬送者のうち、山形県や大阪府など7府県の計7人が死亡しました。

 集計によると、3週間以上の入院が必要な重症は131人、短期入院が必要な中等症は2425人でした。年齢別では、65歳以上の高齢者が3859人で全体の52・6%を占めました。熱中症の発生場所は、住居が44・3%と最も多くなりました。

 都道府県別の搬送者数は、東京都が633人と最多で、大阪府576人、埼玉県457人と続きました。

 今週も多くの地域で最高気温が30度を超える真夏日が続いており、消防庁はこまめな水分補給や涼しい場所での休憩を呼び掛けています。

 2019年8月20日(月)

 

■東京23区の熱中症死者、2年連続100人超え 9割が65歳以上

 東京23区内の熱中症による死者数が7月以降、101人に達したことが19日、東京都監察医務院の発表で明らかになりました。死者が100人を超えたのは、2018年の164人に続き2年連続。このうち65歳以上の高齢者が9割を占め、同院は適切なクーラーの使用や水分、塩分の補給を呼び掛けています。

 同院によると、7月1日から8月18日までに、熱中症で40〜90歳代の男性53人、女性48人の計101人が死亡しました。このうち65歳以上は91人でした。

 年代別では、70歳代が42人と最多、次いで80歳代が31人。65歳以下も10人いました。

 時間別では、午前5時~午後5時の日中が28人、午後5時~午前5時の夜間が32人。94人が屋内で死亡していました。40人はクーラーが設置された部屋にいましたが、うち38人は使用していませんでした。

 気象庁によると、東京都心の最低気温は24日連続(7月26日~8月18日)で25度以上。1876年の統計開始以来、2番目に長くなりました。同庁は今後2週間の最高気温は30度台前半で推移すると予測。「これまでのような猛暑は一段落した」とみるものの、引き続き熱中症対策を呼び掛けています。

 2019年8月19日(月)

 

■新型出生前診断、美容外科など認定外施設で広がる カウンセリング不十分

 学会の認定を受けずに新型出生前診断を実施する医療機関の9割は、普段妊婦を診察することのない産婦人科以外の診療施設でした。ここ1年で急増したとみられ、「カウンセリングもなく手軽に検査できる」と利用を呼び掛けています。背景には「命の選別につながる」との議論もある検査を巡る規制が、学会の指針だけという不十分な実態があります。

 妊婦の血液から胎児のダウン症など染色体の異常を調べる新型出生前診断の在り方について、厚生労働省が検討する方針を打ち出しました。背景には、学会が認定しない施設での実施が増えるなど、命の選別につながる診断を強制力のない学術団体の指針だけで進める限界があります。

 新型出生前診断には、産むか産まないかという重い決断が伴います。これまでダウン症などの疑いが指摘された人の8割近くは中絶を選びました。このため本来は、検査の前後に十分なカウンセリングが欠かせません。当初は臨床研究として、日本産科婦人科学会や日本小児科学会、日本人類遺伝学会など関連5団体の議論を経て、産婦人科医と小児科医が常勤するなどの条件を満たし、日本医学会が認定する施設だけで実施する形で始まりました。

 一方、血液の分析は検査会社が担うため、カウンセリングを除けば、医療機関では採血するだけ。自費診療なので価格も自由に決められます。「検査会社との契約を安く抑え、カウンセリングを手抜きすれば、利益率が上がる」とある認定施設の産婦人科医は話しています。

 認定外で新型出生前診断を実施しても罰則はないため、一部の民間クリニックなどは、2016年ごろから参入。今年7月末時点で、少なくとも40カ所ありました。費用は15万~20万円程度。美容外科や皮膚科、形成外科医、精神科医など産科や産婦人科以外の医師が、「年齢制限なし」「来院は1度だけ」「土日も検査可能」「紹介状不要」「夫婦で来なくてもいい」などとインターネットに広告を出し、現在の指針で対象外の35歳未満も対象にしたり、安さを売りにしたりするところも現れています。

 認定施設での実施数は2016年以降減少傾向で、認定外施設に相当数が流れているとみられます。

 2019年8月18日(日)

 

■コンゴのエボラ出血熱流行、南キブ州で初確認 2人感染、1人死亡

 アフリカ中部のコンゴ民主共和国(旧ザイール)東部の南キブ州当局は16日、同州で女性1人がエボラ出血熱で死亡し、生後7カ月の息子もエボラウイルスへの感染が確認されたと発表しました。南ギブ州でエボラ出血熱患者が確認されたのは初めてで、感染力の強い同ウイルスが周辺地域に広がる恐れが高まっています。

 コンゴ民主共和国では昨年8月1日に発生したエボラ出血熱の流行により、これまでに北キブ州とイトゥリ州で1900人以上が死亡しています。当局の発表によると、死亡した女性は約700キロ離れた流行の中心地となっている北キブ州の主要都市ベニの一家を訪れていて、エボラ出血熱に感染した家族構成員の1人との「高リスク接触者」と特定されていました。

 女性はその後、自分の身元を4度にわたり偽り、移動制限を回避。ベニを出発し、北キブ州のブテンボとゴーマを経由して、隣接する南キブ州のブカブとムウェンガへ移動したといいます。女性は14日に死亡しました。

 アメリカの国立アレルギー・感染症研究所などが試験的に導入した薬剤で、患者の生存率が約9割に達したとの研究結果が12日に発表されましたが、紛争による治安悪化で封じ込めが難航しています。

 南キブ州は、ルワンダ、ブルンジ、タンザニアとの国境に接しています。当局は発表で、「入国地点の監視と衛生管理を強化するためにあらゆる手段を講じていることを、隣接諸国に保証する」と述べました。

 2019年8月17日(土)

 

■抗生物質が効かない緑膿菌、新手法で殺菌 名大が技術開発

 抗生物質への耐性を持つ緑膿(りょくのう)菌を殺菌する新手法を、名古屋大学大学院理学研究科などの研究チームが開発したと発表しました。緑膿菌が生存するのに必須な鉄を取り込む仕組みを利用し、薬剤を菌内に注入。薬剤に近赤外光を当てて活性酸素を出し、菌を死滅させるといいます。

 緑膿菌は肺炎や敗血症など感染症の原因で、院内感染が問題となっており、今後、肺や目などの感染に対する治療を目指していくといいます。

 緑膿菌は水や土の中に存在しており、免疫力が低下した時に感染します。細胞壁を作らせない攻撃法を持つ抗生物質などに対して耐性を持つようになり、治療できない状況だとして、世界保健機関(WHO)は、新たな抗菌薬の開発の緊急性が最も高いものの一つとしています。

 名古屋大学大学院生の四坂勇磨さんらは、緑膿菌が増えるために鉄が必須で、人間の体内で血液の鉄分を吸収して増殖することに着目。鉄を菌内に運ぶタンパク質に、色素の一種「ガリウムフタロシアニン」がくっ付くことを突き止めました。鉄の代わりにこの色素を取り込ませ、色素に近赤外光を当てると、菌にとって有害な活性酸素が発生するといいます。

 この色素は、道路標識、新幹線の塗料などに使われています。研究チームの荘司長三・名古屋大教授(生物無機化学)は、「緑膿菌は、自ら増えるために鉄を必要とする。その鉄を取り込む経路を止める方法は、耐性化されにくいと考えている」と話しています。

 研究成果は、アメリカの化学会の専門誌の電子版に論文として掲載されました。

 2019年8月17日(土)

 

■子宮体がん、閉経後の肥満がリスクに 発生数が10年で2倍に増加

 婦人科がんの中で一番多い子宮体がんの発生数が、この10年の間に約2倍に増加しました。子宮体がんは、月経が起こったり、妊娠の場所となったりする子宮内膜から発生するがんです。子宮体がんのすべてではありませんが、その多くは肥満が大きな要因になっています。

 子宮体がんは、エストロゲン依存性です。すなわち、エストロゲンが発がんに関与しており、全体の8割は閉経後の50歳以上で発症します。

 閉経すると卵巣からエストロゲンが分泌しないのに、閉経後の発症が多いのは、脂肪、特に内臓脂肪がエストロゲンを作っているからです。女性でも年齢にかかわらず、副腎から男性ホルモンであるアンドロゲンが分泌されています。脂肪中には、アロマターゼというアンドロゲンからエストロゲンに変換する酵素が豊富に存在し、加えて閉経後の子宮内膜は微量のエストロゲンにも敏感に反応してしまう性質を持っています。

 エストロゲンに敏感な子宮内膜が、長い時間エストロゲンにさらされてがんになっていくのです。卵巣が働いている間は黄体ホルモン(プロゲステロン)が子宮内膜を保護してくれるので、閉経前には子宮体がんの発症が少ないのです。

 BMI(肥満指数)30以上の肥満が、明らかな危険域になります。疫学調査では、BMI30以上の女性はそれ未満の女性に比べて、4倍子宮体がんになりやすいという結果が出ています。150センチの女性では68キロ、160センチの女性だと78キロが、BMI30に相当します。

 BMI30を超す肥満であっても、子宮体がんになる人とならない人がいるのは、環境因子や遺伝因子という理由も存在しますが、運動や嗜好(しこう)品が子宮体がんになるかならないかの重要な分かれ目になります。

 座りっ放しの生活スタイルは、危険です。座っている時間が1日の6割を超えると肥満、糖尿病、心臓病、がんが増えるといわれています。ジムなどで1~2時間毎日運動しているからあとは寝ていても大丈夫という考えは、禁物です。

 こまめに体を動かしたほうが、脂肪が燃えやすいといわれています。肥満予防にはジム通いよりも掃除、洗濯などの家事や散歩が有効のようです。

 子宮体がんの予防食品としては、大豆イソフラボンが有名です。最近の嗜好品調査では、閉経後でコーヒーを毎日1杯以上飲む習慣のある女性はその習慣のない女性に比べ、子宮体がんのなりやすさが60%減少したことがわかりました。

 コーヒーには、適度なカリウムが含まれています。体内のカリウムが過剰だと心臓に負担がかかり、逆に不足すると手足のしびれ、腸閉塞が起こります。コーヒーに含まれている適度な量のカリウムには、腎臓から尿に塩分を排出する利尿があるため、血圧が安定し体調がよくなります。

 最も適度なカリウムは、インスタントコーヒーに含まれているようです。納豆の朝食をとり、食後にインスタントコーヒーを飲んでからこまめに体を動かすような生活スタイルが、理想の一例かもしれません。

 子宮体がんにならないためには、食生活に気を付け適度な運動をして適正な体重を保ちましょうと、まさに高血圧、糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病と同じ指導をすることになるのです。子宮体がん検診は、残念ながら法律で定められておらず検診事業には入っていません。

 子宮体がんの代表的な症状は不正性器出血で、早期からほとんどの人に現れます。閉経後もし不正性器出血を自覚したら早めに医療機関を受診することが勧められます。子宮体がんを完全に治すためには、手術が基本となります。早期に発見されれば、手術によって8~9割の患者は治癒します。再発の心配がある場合は、手術後に抗がん剤による治療や放射線治療を行うこともあります。

 2019年8月17日(土)

 

■富士化学工業、有効成分5%の発毛剤を発売 インターネットで販売

 医薬品製造の富士化学工業(富山県上市町)は発毛剤『ミノキシジル配合外用液5%「FCI」』を発売しました。発毛成分であるミノキシジルの濃度を国内の商品で最大に高め、頭皮の炎症や過剰な皮脂を防ぐ成分も配合しました。

 ミノキシジルは、頭皮に使用することで毛包に直接作用し、発毛・育毛・脱毛予防効果を発揮する有効成分で、世界90カ国以上で承認され使用されています。壮年性脱毛症向けの新商品は、このミノキシジルの濃度を高くすることで効果をより高めたといいます。

 価格は、60ミリリットル入りで6800円(税別)。成人男性(20歳以上)が1日2回、1回1ミリリットルを脱毛している頭皮に塗布します。

 処方せんのいらない一般用医薬品(OTC)で、インターネット通販で販売します。薬価の引き下げ圧力が高まる中、薬価改定の影響を受けない一般用医薬品の投入で、収益確保を目指します。

 同社は、サプリメントや食品に使う抗酸化物質「アスタキサンチン」も製造しています。

 2019年8月17日(土)

 

■北極圏の雪からマイクロプラスチックを検出 大気に乗って長距離を移動

 北極圏とアルプス山脈に積もった雪の中からマイクロプラスチック(プラスチック微粒子)が検出されたことが14日、アメリカの科学誌「サイエンス・アドバンシズ」(電子版)に掲載された論文で明らかになりました。風に運ばれ、雪に混じって降ったものだといいます。

 研究チームは、大気中のマイクロプラスチック吸入による健康上のリスクについて、研究調査を急ぐよう呼び掛けています。

 ドイツのアルフレート・ウェゲナー研究所とスイス連邦森林・氷雪・景観研究所の共同研究では、大きさ5ミリ未満と定義されるマイクロプラスチックが大気に乗ってすさまじい長距離を移動した後、雪を始めとする降水に伴って大気中から洗い流されている可能性があることがわかりました。

 「雪中のマイクロプラスチックの大半が大気由来だということは、見てすぐわかった」と、主執筆者のメラニー・バーグマン氏は語っています。

 研究チームは2015~2017年、デンマーク領グリーンランドとノルウェーの間にあるフラム海峡に浮かぶ氷盤5カ所でサンプルを採取し、赤外線撮像で分析。スイスのアルプス山脈とドイツ北西部ブレーメンでそれぞれ採取したサンプルと比較しました。

 北極圏で採取したサンプルのマイクロプラスチック濃度は、スイスやドイツのサンプルと比べればずっと低かったものの、それでも1リットルの雪から1万個以上のマイクロプラスチックが検出されたといいます。

 研究チームは、赤道近くで風に巻き上げられた花粉が北極圏にまで運ばれていることを確認した過去の研究に基づき、マイクロプラスチックが大気中を移動しているとの仮説を主張しています。

 「大量のマイクロプラスチックが大気に運ばれていることが確認されれば、私たちはそれを吸い込んでいるのか、いるとすればどうやって、どれだけの量を吸い込んでいるのかという疑問が自然と浮かぶ」とバーグマン氏は述べ、人や動物の健康への影響について研究調査を急がなければならないと強調しました。

 2019年8月16日(金)

 

■海外で抗菌薬を使うと耐性菌を持ち帰る恐れ 病院が注意呼び掛け

 国立国際医療研究センター病院(東京都新宿区)は、海外旅行中の下痢や腹痛で安易に抗菌薬(抗生物質)を服用すると、薬が効かない耐性菌を国内に持ち込む恐れがあるとして注意を呼び掛けています。

 同病院が6月にインターネットでアンケートしたところ、東南アジアや南アジアに旅行した経験がある20~60歳代の男女331人のうち63%が、旅行中に下痢や腹痛になったことがありました。予防のために日本から抗菌薬を持参・服用していた人も、43%に上りました。

 特に、バックパッカーが多い20歳代男性では、85%が下痢・腹痛を経験。抗菌薬を持参・服用した割合も、79%と高くなりました。

 抗菌薬の入手は、国内では医師の処方せんが必要で、海外旅行に持参したという抗菌薬は、過去に治療で処方されたり、家族が使ったりした残りが考えられます。

 同病院によると、抗菌薬は薬ごとに効く細菌が決まっており、タイプが違うと効果がないだけでなく、腸内の細菌バランスが崩れるなどして、耐性菌を増やす危険があります。下痢の原因がマラリアや腸チフスなどであれば、診断が遅れ、命にかかわる恐れもあります。

 予防・対応策として、こまめに手洗いをすること、生の野菜や果物、屋台での食事は避けること、軽い下痢なら整腸剤で様子をみること、重い場合は現地の医療機関にかかること、自己判断で抗菌薬を服用しないことなどを挙げています。

 2019年8月15日(木)

 

■ココカラ、マツキヨと経営統合協議を開始 統合すれば売上高で1兆円規模に

 ドラッグストア業界7位のココカラファインは14日、5位のマツモトキヨシホールディングスと経営統合に向けた協議を始めると発表しました。統合が実現すれば売上高で1兆円規模となり、業界首位に立ちます。

 ココカラは、6位のスギホールディングスからも経営統合の提案を受け、どちらと協議を進めるか検討していました。

 ココカラは、マツモトキヨシを選んだ理由として、「店舗作業の効率性やプライベートブランド商品の開発などについて、大きなシナジー効果が生じる可能性がある」と説明しています。

 ココカラは調剤事業や健康相談などに強みを持ち、関東や関西を中心に出店していまうs。マツモトキヨシはプライベートブランド商品の開発力が高く、東日本中心に都市型の店舗を展開しています。

 ココカラとマツモトキヨシは今年4月、資本・業務提携に向けて交渉入りをすることで合意。直後にスギホールディングスがココカラに経営統合を提案し、マツモトキヨシも一歩踏み込んで経営統合を求めていました。

 ドラッグストアは、安定した利益を稼げる医薬品や化粧品のもうけで飲料や食料品の価格を抑え、集客するビジネスモデルを展開してきました。統合によってメーカー側への価格交渉力が強まり、物流コストの削減も期待できます。

 2019年8月14日(水)

 

■熱中症1万2751人搬送、死者は23人 前週に次いで多く

 総務省消防庁は14日、8月5~11日の1週間に熱中症で救急搬送された人が全国で1万2751人(速報値)に上り、うち20道府県の23人が死亡したと発表しました。今年最多を記録した前週(7月29日~8月4日)の搬送者1万8347人、死者57人に次ぐ多さとなりました。

 搬送者のうち、3週間以上の入院が必要な重症は400人、短期入院が必要な中等症は4554人でした。65歳以上が54・9%を占めました。熱中症の発生場所で最も多かったのは住居で44・6%でした。

 都道府県別の搬送者数では、東京都が1465人と最も多く、埼玉県977人、大阪府897人、愛知県782人、神奈川県698人、千葉県623人と続きました。

 今後も厳しい暑さが予想されることから、消防庁は引き続き熱中症への警戒を呼び掛けています。

 2019年8月14日(水)

 

■百日ぜき患者が1万人を超える 早めの受診呼び掛け

 乳児が感染すると死亡する恐れもある百日ぜきの患者が、増え続けています。国立感染症研究所が13日、4日までの1週間に新たに231人の患者が報告され、今年の累積報告数は1万110人に達したと発表しました。成人がかかった場合は風邪などと見分けることが難しく、感染を広げる可能性もあるため、早めの受診が大切です。

 感染症研究所によると、都道府県別の累積報告数は、東京都の885人が最も多く、福岡県の652人、千葉県の628人、鹿児島県の594人、大阪府の555人などが続いています。

 百日ぜきは百日ぜき菌によって起きる急性の気道感染症で、せきやくしゃみで感染します。通常、感染後7~16日間の潜伏期間を経て、せきや鼻水などの普通の風邪症状で始まります。やがて、せきの回数が増えて程度も激しくなります。典型的なせき発作では、5~15回かそれ以上の回数の連続したせきが出て、その後に長くて高い音のする深い吸気があります。発作の後は、呼吸は正常に戻りますが、その後すぐに新たなせき発作が始まります。

 多くの場合、熱はないのですが、途切れなく続く、短い連続的なせき込みによる嘔吐(おうと)やチアノーゼ、顔面の浮腫(ふしゅ)、結膜充血などが見られます。せき発作は夜間のほうが起こりやすいため、不眠の原因になることもあります。

 2歳未満の乳幼児が発症すると、息苦しさと呼吸の一時的な停止が起こり、皮膚が青くなることがあります。約4分の1は肺炎を発症し、呼吸困難に陥ります。百日ぜきの結果として、中耳炎もしばしば発症します。まれに、乳児の脳に影響を与えることもあります。脳の出血、はれ、炎症などにより、けいれん、錯乱、脳の損傷、精神遅滞などが生じます。

 ワクチンは定期接種の対象となっており、予防のためにはワクチン接種が重要。

 百日ぜきは2017年までは、約3000の小児科医療機関からの定点報告対象でしたが、2018年からは成人を含む発生動向を正確に把握するため、すべての医師が報告する全数報告対象となりました。昨年は1万1190人(暫定値)が報告され、うち23%が20歳以上の患者でした。

 2019年8月13日(火)

 

■クラミジア感染症の初ワクチン、予備臨床試験で有望な反応 国際研究チームが発表

 クラミジア感染症の世界初となるワクチン開発の予備臨床試験で、被験者の女性らに有望な免疫反応が認められ、安全性も確認されたといいます。国際研究チームが13日、発表しました。

 医学誌「ランセット」に掲載された論文によると、年内に予定されているさらなる臨床試験で、このワクチンに実際にクラミジアの感染予防効果があるかどうかが判明します。

 クラミジアは、膣性交、肛門性交、オーラルセックスなどの性的接触で感染します。世界保健機関(WHO)によると、細菌性の性感染症の中では最も一般的で、世界中で毎年1億3000万人が感染しているといいます。

 女性の6人に1人がこの細菌に悩まされているとされ、不妊の原因になることもある骨盤内炎症性疾患と呼ばれる痛みを伴う感染症を引き起こすことで知られます。また、妊娠中にクラミジアに感染すると、流産や死産、または早産などのリスクが高まります。

 世界的には15~49歳の女性の4・2%、男性の2・7%が感染しているとみられています。また、クラミジアに感染していると、淋病やHIVにも感染しやすくなるとされます。

 これまで各国のクラミジア感染症対策は、安価な簡易検査と効果の高い抗生物質治療が存在するにもかかわらず、国際的流行の抑制におおむね失敗しています。

 論文の主著者で、デンマークの国立血清学研究所のヘレネ・ユエル氏は、「このワクチンが市場に出るまでには、まだ何年も研究を重ねなければならないが、我々は研究の次の段階を計画している」と話しました。

 2019年8月13日(火)

 

■エボラ出血熱、2種類の薬が治療に効果 WHOが発表

 アフリカ中部のコンゴ民主共和国(旧ザイール)で流行が続くエボラ出血熱について、世界保健機関(WHO)は開発中の2種類の薬が臨床試験で治療に効果があることを示したと発表し、流行の収束につながるか注目されています。

 コンゴ民主共和国では、東部の北キブ州などで昨年8月からエボラ出血熱が流行し、これまでに約2800人の患者が確認され、約1900人が死亡しています。

 WHOは昨年11月からエボラ出血熱の治療に効果がある可能性のある薬の臨床試験を行っていましたが、12日、2種類の薬が優れた効果を示したと発表しました。

 研究チームによりますと、臨床試験は4種の薬で約700人の患者を対象に行われ、アメリカの製薬大手リジェネロン・ファーマシューティカルズが開発した「REGNーEB3」を投与された患者の死亡率は29%、アメリカの国立アレルギー・感染症研究所(NIAID)が開発した「mAb114」では34%で、ほかの2種類の薬と比べて顕著な違いを示したということです。

 また、感染の初期で血液中のエボラウイルス濃度が低い段階で投与を受けた患者の場合、90%が生存したということです。

 2種類の薬は、エボラウイルスの糖タンパク質と結合し、ほかの細胞に感染する能力を中和するモノクローナル抗体。2種類の薬の効果を比べた初期結果では有意な差がみられませんでしたが、今後それぞれの薬を投与するグループを比較し、どちらがより有効かをさらに研究するといいます。

 臨床試験に携わったNIAIDのアンソニー・フォーシ所長は、「科学的根拠に基づいた研究で初めて、エボラウイルスに感染した患者の致死率を著しく下げることが明らかになった薬だ。どちらの薬も高い効果を示していて、患者の治療に向けた大きな前進だ」と述べており、流行の収束につながることが期待されるとともに、今後、新たな流行の発生を防げるか、注目されています。

 2019年8月13日(火)

 

■子供の医療費の伸び、75歳以上の4倍に 2000年度からの16年間で

 若い世代の医療費が伸びており、1人当たりの年間費用の変化を2000年度から16年間でみると、65歳以上の高齢者は10%増だった一方、65歳未満は24%増えました。特に子供は4割伸びており、地方自治体の助成によって受診回数が増えたとみられます。

 自己負担を含む医療費を年齢層別に示した厚生労働省の統計によると、最新の2016年度時点で75歳以上の後期高齢者は1人当たり年90万9600円で、65歳未満の18万3900円の5倍でした。

 しかし、2000年度からの増加率は、若い世代ほど高くなりました。75歳以上は9%増えたのに対し、45~64歳は16%増、15~44歳は25%増でした。14歳までの子供は42%増と、75歳以上の4倍の伸びでした。前期高齢者に当たる65~74歳は、少なくとも2000年度以降で区分の記載がありません。

 厚労省が3年ごとにまとめる患者調査の「受療率」では、1日に人口10万人当たり何人が入院や通院をしたかが年齢層別にわかります。0~14歳の外来は2017年に4536人で、2002年から29%増えました。15~34歳は4%増。これに対し、35~64歳、75歳以上は3~5%のマイナスでした。

 病院で受診する子供が増え、医療費を押し上げた構図が見えてきます。背景にあるのは、子供向けの自己負担の軽減。医療保険制度では、子供の自己負担の割合は2000年度時点で3割でしたが、2002年度に3歳未満は2割となり、2割負担の対象は2008年度から就学前の子供に拡大されました。

 一方、75歳以上では外来で1日530円、入院で1日1200円だった自己負担が、2001年に1割負担となり、現在もこの原則が維持されています。

 子供の医療費では、2000年以降に自治体が独自に助成する動きも広がりました。厚労省によると、2009年4月時点で通院費を15歳まで助成する市区町村は345でしたが、2018年4月には1007と3倍に増えました。18歳までが対象の市区町村は、2から541に急増しました。

 こうした助成は子育て世帯を支え、少子化対策にもつながる半面、過剰な受診の要因となることも否定できません。足元では助成を見直す動きも出てきました。

 兵庫県の三田市は中学生までの医療費を無償化していた政策を2018年7月から改め、小中学生の外来には1日400円までの自己負担を求めることにしました。

 医療費の伸びの抑制を巡る議論は、高齢者向けに集中しやすく、金額で若い世代を大幅に上回っているほか、高齢化も急速に進んでいるためです。

 ただ、大和総研の神田慶司シニアエコノミストは、「医療費の伸びのおよそ半分は高齢化以外が要因」と指摘します。厚労省によると、2015年度の医療費の前年度比増加率3・8%のうち、高齢化の影響は1・0%分でした。

 厚労省が高齢化以外の要因の一つに挙げるのは、「医療の高度化」です。例えばインフルエンザの治療薬では、2001年発売の「タミフル」は1日2回で5日間服用し、自己負担を含む薬剤費は2720円だった一方、2018年に発売された「ゾフルーザ」は1回の服用ですむものの、薬剤費は4789円(体重80キログラム未満の成人)とタミフルの2倍近くになっています。

 こうした高価な医薬や医療機器が現役世代の医療費を押し上げ、もともとの絶対額が大きい高齢者に比べて高い伸び率となった可能性があります。

 もっとも、医療の高度化が医療費の増加に対し、実際にどの程度の影響を与えているのかは、厚労省も把握し切れていないのが実情。医療費の公的負担の膨張を抑えるには、自治体の助成の影響とともに、高齢化以外の要因についての詳しい分析も必要です。

 2019年8月12日(月)

 

■重度の障害がある人の就労支援 公費負担の対象拡大など検討へ

 重度の障害がある人が働く際には、公費による介護サービスが受けられないことから、厚生労働省は障害者の就労を支援するため、公費負担の対象を拡大するかどうか検討を本格化させることにしています。

 重度の障害がある人は障害者総合支援法に基づいて、入浴や食事など自宅での生活全般の介護サービスを最大1割の自己負担で受けることができ、それ以外の費用は公費で賄われます。

 しかし、利用者が働く場合、職業の種類を問わず、個人の経済活動に公的な補助を行うことはなじまないとして、通勤や就労に対する介助は公費負担の対象外となります。

 先の参議院選挙で当選した、れいわ新選組の舩後(ふなご)靖彦、木村英子両参院議員も、議員活動は経済活動に当たるとして対象外となり、当面は介助費用を参議院が特例として負担することになりました。

 このため2人の議員や障害者の支援団体は、国会議員に限らず、働く意欲のある障害者が社会参加しやすいように、通勤と就労の介助も公費負担の対象に加えるよう制度の見直しを求めています。

 これを受けて、厚労省は障害者の就労を支援するため、省内の作業チームで公費負担の対象を拡大するかどうか検討を本格化させることにしています。

 作業チームでは、個人の経済活動を公費で支援することの是非や、雇用する事業者側の受け入れ態勢、支援拡大に伴う財源などの課題を巡って議論が行われる見通しです。

 2019年8月12日(月)

 

■遺伝子改変ラットを簡単に効率よく作出 京大が技術開発

 遺伝子改変したラットをより簡単に、効率よく作出する技術を開発したと、京都大学の本多新(あらた)特定准教授(実験動物学)らの研究チームが、9日付のイギリスの科学誌「サイエンティフィック・リポーツ」(電子版)に発表しました。ラットを用いた研究が容易になり、マウスで再現できない生命現象や病気の研究促進につながると期待されます。

 マウスやラットは、生命科学の実験で哺乳類のモデル生物として一般的に用いられていますが、ラットはマウスより記憶・学習能力が高く、糖尿病を自然発症するなど人間との類似点も多いことで知られます。一方、実験用のラットを作るにはマウスと比べても技術的なハードルが高く、現在も一部の研究者が作出できるのみだといいます。

 研究チームは、多くの卵子が採取できる方法を開発するため、生後3・5~5・5週の若いメスの個体に排卵周期をコントロールするホルモンなどを投与。その結果、1頭当たり平均2・2個しか採卵できないラットから平均42個の卵子が得られたほか、ラットを麻酔で眠らせてから採卵することで、高い確率で体外受精できることも発見しました。

 さらに、体外受精した受精卵に電気やウイルスを加えることで、特定の遺伝子を破壊したり置き換えたりするゲノム編集について遺伝子破壊は100%、遺伝子置換は約33~47%という高効率で実現。実験用のラットとしての高い効果が期待できるといいます。

 本多特定准教授は、「ラットを使った研究が活発になれば、マウスでは再現できない生命現象や病気の研究が進展する。多くの研究者にこの技術を知ってもらえるよう、積極的に普及したい」と話しています。

 2019年8月12日(月)

 

■iPS細胞から脂肪肝になったミニ肝臓を作製 九州大などが成功

 脂肪が細胞の中に過剰にたまる「脂肪肝」になったミニ肝臓を、さまざまな細胞に変化できる人のiPS細胞(人工多能性幹細胞)から作製することに、九州大学とアメリカのピッツバーグ大学などの研究チームが成功しました。脂肪肝は有効な治療薬がなく、新薬開発に活用できるといいます。

 7日付のアメリカの専門誌「セル・メタボリズム」(電子版)に論文を発表しました。

 肝臓の細胞は、Sirt(サート)―1という遺伝子の働きが落ちると、脂肪がたまりやすくなることが細胞や動物の実験でわかっています。

 九州大学病院の武石一樹助教(肝臓外科)らは、人の皮膚細胞を初期化したiPS細胞からSirt―1が働かないようにした肝臓の細胞を作製。さらに、ラットの肝臓をベースに、2~4センチ四方のミニ肝臓を作ることに成功しました。内部を詳しく調べると、実際の脂肪肝のように脂肪が分解されずに蓄積されていたといいます。

 脂肪肝は、過度の飲酒や食事、運動不足などが原因とされ、肝硬変や肝臓がんに進行するケースもあります。治療薬はなく、減量や適度な運動、生活習慣の改善などが必要とされています。

 新薬の開発は、細胞や動物レベルで効果を確認し、人間で安全性を確認しながら進められるため、時間や費用がかかります。武石助教は、人間の細胞でできたミニ肝臓なら実験で薬の効果を確認しやすいとして、「新薬の臨床試験の短縮化につながる」と話しています。

 論文の筆頭著者でピッツバーグ大学医学部のアレハンドロ・ソト・グティエレス氏は、「人間の肝臓を人工的に作れれば、組織のゲノムを自由に操作して疾患を再現し、研究できる。これが、これからの医学になると思う」と述べています。

 2019年8月12日(月

 

■まつ毛美容液で健康被害相次ぐ 角膜が傷付き手術も

 まつ毛美容液で目の周りがはれるなどの相談が相次いでおり、国民生活センターが注意を呼び掛けています。

 国民生活センターによると、まつ毛の生え際に塗る化粧品であるまつ毛美容液を使い、皮膚に痛みやかゆみを生じたり、目がはれるなどの健康被害の相談が2015年度以降、381件寄せられました。中には、スーパーで購入したまつ毛美容液が目に入って角膜潰瘍を発症し、手術したという北日本の50歳代女性のケースもあったといいます。

 まつ毛美容液は張りや艶などの効能をうたうことはできるものの、育毛効果をうたうことはできません。相談の多くがインターネット通販で購入した製品だったため、国民生活センターが5~7月に18社の計20製品を調べたところ、5製品は化粧品であるにもかかわらず「育毛効果」をうたっており、別の9製品は頭髪への使用を目的に医薬部外品として承認された育毛剤を、まつ毛美容液として販売していたといいます。

 厚生労働省は8日、医薬部外品の製造・販売を規定した医薬品医療機器法に違反しているとして、事業者の監視指導を徹底するよう都道府県に通知しました。

 皮膚科の専門医は、目の周りは皮膚が薄くトラブルが起こりやすいと指摘しており、国民生活センターは、まつげ美容液の使用中や使用後に肌に赤みやかゆみ、はれなどの異常が現れた時には、直ちに使用を中止するよう呼び掛けています。

 2019年8月11日(日)

 

■東南アジアやバングラデシュでデング熱流行 フィリピンでは死者600人以上に

 蚊が媒介し、高熱などの症状を引き起こす「デング熱」の感染が東南アジアを中心に拡大し、このうちフィリピンでは、600人以上が死亡する事態となっており、フィリピンの保健当局は、全国的な流行を宣言して警戒するよう呼び掛けています。

 デング熱は蚊が媒介する感染症で、発症すると高熱や頭痛、それに関節の痛みなどを引き起こし、症状が重くなると死亡することもあります。

 世界保健機関(WHO)によりますと、デング熱は今年、ベトナム、マレーシア、シンガポールなど東南アジアを中心に、フィリピン、バングラデシュでも感染が拡大し、昨年より患者の数が増えているということです。

 特に感染が深刻なフィリピンでは、7月20日までに約14万6000人の患者が確認され、622人が死亡する事態となり、フィリピンの保健省は6日、全国的な流行を宣言して警戒するよう呼び掛けています。

 首都マニラの周辺から南部にかけての広い地域で流行しており、観光などで多くの日本人が訪れるセブ島を含む地域も、警戒が必要だとしています。

 現地の日本大使館は、長袖や長ズボンを着用し、虫よけスプレーなどを使って蚊に刺されないよう注意するとともに、発症した場合は早めに医療機関を受診するよう呼び掛けています。

 一方、バングラデシュでも、蚊が媒介する感染症のデング熱が過去最悪のペースで流行していることから、現地の日本大使館は、外出の際は肌の露出を控えるなど注意を呼び掛けています。

 バングラデシュの保健当局によりますと、今年にに入ってから7月までに約1万7000人がデング熱に感染し、少なくとも14人が死亡したということです。

 バングラデシュでは例年、7月から11月にかけて感染が増えていますが、今年は2000年に統計を取り始めてから最悪のペースで流行しているということです。

 特に首都ダッカでは感染が広がっており、病院には次々に患者が運び込まれて治療を受けており、医師は、「今年は特に患者が多く、病院側の負担が増えている」と話していました。

 また、子供が治療を受けているという男性は、「子供は6日間も苦しみ、妻はきのう亡くなりました。政府は対策が十分取れていない」と話していました。

 ダッカにある日本大使館は、観光客や現地に住む日本人に対し、外出する際には長袖や長ズボンを着て肌の露出を減らし、虫よけスプレーを使うなどの対策を取るともに、帰国後に発熱などの症状がある場合は検疫所や保健所に相談するよう呼び掛けています。

 2019年8月11日(日)

 

■iPS細胞、供給の担い手が代わる見通し 京大が新法人を設立へ

 京都大学の山中伸弥教授らは、再生医療の切り札とされるiPS細胞(人工多能性幹細胞)の製造や供給を担う新法人を今夏にも設立します。iPS細胞を使う再生医療では、治療が難しかった目の難病や脳の病気を治す臨床研究が始まっています。脊髄損傷などの治療も計画されており、iPS細胞を着実に治療現場へ届ける仕組みが必要だと判断しました。再生医療が研究段階から、普及期を目指す新たな局面に入ります。

 山中教授が所長を務める京大iPS細胞研究所からiPS細胞の製造などを担う約100人を分離し、公益法人を立ち上げます。名前は「京都大学iPS細胞研究財団」を軸に、調整しています。

 まずは一般財団法人として今夏にも国に設立を申請し、有識者による審議を受けて、2019年度中の認定を目指します。山中教授が非常勤の会長に就く予定で、オムロンなどの幹部らも加わる見通し。骨髄バンクのような公的な役割があるとみて、当面は国の予算を運営に充てる方針。

 iPS細胞を使う再生医療は、2014年に世界で初めて理化学研究所が目の難病「加齢黄斑変性」の患者で移植を試みました。その後、ほかの5人でも安全性を確かめました。

 2018年には、京大がiPS細胞から作製した神経細胞をパーキンソン病の患者の脳に移植しました。脊髄損傷や心臓病でも、国が臨床研究を認めています。

 いずれのiPS細胞も、京大iPS細胞研究所が製造などでかかわっています。さまざまな患者で免疫拒絶を防ぐため、相性のいいiPS細胞をそろえ、厳しく管理しているからです。

 ただ、再生医療の普及にあたり、京大がiPS細胞の安定供給にいつまでも責任を持つのは難しいため、iPS細胞研究所に基礎研究部門を残し、製造や管理の部門を分離して新法人に移す判断をしました。

 新法人は、品質のそろったiPS細胞を保管し、患者ら一人一人の体からそれぞれの再生医療に役立つiPS細胞を作製するなどの技術開発にも取り組みます。臨床研究を手掛ける大学や研究機関、企業に配るほか、再生医療製品の販売を目指す企業の求めにこたえた細胞の開発も視野に入れます。

 新法人の設立は、国の意向でもあります。一つは京大の負担を軽くする狙いであり、もう一つは再生医療を一般の医療に近付けて法人の自立を促し、国の予算負担を減らす思惑です。

 山中教授がノーベル生理学・医学賞を受賞した2012年度以降、国は再生医療の実用化を目指す予算として10年間で1100億円の拠出を決めました。少なくとも年間10億円程度を、移植できる高品質のiPS細胞を広く配るための備蓄事業などに充ててきました。

 当時、政府は再生医療が実用化できるまでの10年程度は支える考えを示しました。2014年には関連の法律を施行し、新しい治療法を条件付きで患者に提供するなどして普及を後押ししてきました。10年程度の支援期間の終わりが近付き、京大に代わる担い手が必要になりました。

 再生医療の実用化は過渡期にあり、世界は必ずしもiPS細胞にこだわっていません。さまざまな組織に育つES細胞(胚性幹細胞)を脊髄損傷患者に使う臨床研究などが始まっており、再生能力は限られるものの体にもともと備わる細胞を治療に使う方法も知られています。

 新法人の設立を切っ掛けに、日本で再生医療が広く普及するかどうかは、なお見通せません。富士フイルムホールディングスなどがiPS細胞を使うがん免疫薬の開発を始めると発表し、企業の独自の動きも目に付きます。再生医療が前に進む期待はあるものの、新法人は難しいかじ取りを迫られます。

 山中教授は、「iPS細胞研究は世界的な競争の真っただ中にあり、実用化で欧米の後じんを拝することのないよう、ベストなiPS細胞を適正なコストで供給できる取り組みを前に進めたい」と話しています。

 2019年8月9日(金)

 

■がん患者の5年生存率は66・1% 国立がん研究センターが発表

 国立がん研究センターは8日、質の高いがん診療を行う全国の「がん診療連携拠点病院」の大半が参加した調査で、2009~2010年にがんと診断された患者の5年後の生存率が66・1%だったと発表しました。2008~2009年に比べて0・3ポイント向上しました。2012年にがんと診断された患者の3年後の生存率は72・1%で、2011年に比べ0・8ポイント改善しました。

 ほかの統計データを含めて見ると、生存率は1990年代後半から伸び続けており、治療の進歩や検診の普及などが貢献したとみられます。ただ膵臓(すいぞう)がんの5年生存率は9・6%にとどまるなど、難治性がんの対策が改めて課題として浮き彫りになりました。

 今回は比較的患者が少ない胆のうがんなど4種類について初めて3年生存率を集計。難治性とされる胆のうがんは33・4%でしたが、切除が可能な比較的早期の場合、大幅に向上することがわかりました。喉頭がんは84・4%、腎臓がんは85・6%、腎盂(じんう)尿管がんは55・6%でした。

 5年生存率は、がん診療連携拠点病院のうち277施設の患者約56万8000人を分析。がん以外の死亡の影響を取り除いた「相対生存率」を算出しました。

 部位別で最も高かったのは、前立腺がんの98・6%で、乳がんも92・5%と比較的良好でした。このほか子宮体がん(82・1%)、子宮頸(けい)がん(75・3%)、大腸がん(72・9%)、胃がん(71・6%)が70%を超えました。比較的低いのは、食道がん(44・4%)、肺がん(40・6%)、肝臓がん(40・0%)でした。

 進行度別に見た場合、早期の「1期」に比べてほかの部位に転移した「4期」の生存率が低く、早期に発見し治療を始める重要性が確認できました。

 データはウェブサイト「がん情報サービス」で公開。病院選びに役立てるのが目的で、施設や治療法ごとに患者数などを閲覧できます。患者の年齢や状態が病院ごとに異なるため、治療成績の比較はできないとしています。

 国立がん研究センターの東尚弘がん登録センター長は、「データは単純には比較できないが、患者が病院の特徴を把握し、主治医と相談する際の参考にはできる。データの精度が高まり、調査態勢が確立しつつあるので、今後のがん治療の評価や改善につなげたい」と話しています。

 2019年8月8日(木)

 

■熱中症の疑い、東京都内で1週間に45人死亡 半数が1人暮らしの高齢者

 熱中症の疑いで8月に入って1週間に東京都内で45人が亡くなっていることが、警視庁などのまとめで明らかになりました。

 1人暮らしの高齢者が誰にも気付かれず亡くなっていたり、家に閉じこもって周囲から孤立しがちな家庭で起きたりしている実態が、浮かび上がってきました。

 警視庁や東京都監察医務院によりますと、8月1日から7日までの1週間に、40歳代から90歳代の男女45人が熱中症の疑いで亡くなっていました。

 このうち生活実態がわかった26人のうち、半数に相当する13人が1人暮らしの高齢者で、葛飾区の住宅ではエアコンが壊れたままの部屋で70歳代の女性が亡くなっていました。

 一方で、家族と同居していても、家に閉じこもって周囲から孤立しがちな家庭で起きていることや、認知症の影響で被害が広がりかねない実態があることがわかりました。

 7日、西東京市の住宅で、親子とみられる90歳代の女性と60歳代の女性がそれぞれ別々の部屋で亡くなっていたケースでは、娘とみられる女性が見付かった部屋はエアコンが動いていて病死の可能性がありますが、母親とみられる女性が見付かった部屋ではエアコンが動いておらず、室温が38度近くになっていました。

 警視庁や周辺住民によりますと、親子は行政の支援を拒んだり、地域との交流を断ったりしていたということです。近所の男性は、「少しでも交流があれば役に立てることもあったのではないかと思うと残念でならない」と話していました。

 さらに、5日、杉並区のアパートで83歳の女性が亡くなっているのが見付かったケースでは、部屋のエアコンは動いておらず、女性が世話をしていた認知症の88歳の夫だけが残されました。夫は数時間前のことも忘れてしまい、エアコンの使い方もままならず、このままだと熱中症の危険があるとして、息子夫婦が仕事の合間を縫って自宅を訪れ支えることにしています。

 息子は、「父の認知症は進んでいて、母が亡くなったことは寂しく悲しいですが、それ以上に父が心配です。もし2人ともということになっていたらと想像すると言葉がありません。家族みんなで支えていくしかない」と話しています。

 東京都監察医務院によりますと、2014年から2018年までの5年間、6月から9月までの間に熱中症の疑いで東京都内で死亡した人は396人に上っています。2014年が51人、2015年が117人、2016年が29人、2017年が35人、そして2018年は164人でした。

 死亡した396人のうち、屋内で死亡した人は359人と全体の9割を占めており、炎天下にさらされる屋外よりも多くなっています。また、屋内で死亡した359人のうち、エアコンが部屋になかったのが120件、エアコンがあっても使われていなかったのが157件で、全体の8割近くは冷房の使用実態がありませんでした。

 今年は6月から8月までにすでに57人が死亡していて、7月は平年を下回る気温が続いたにもかかわらず2014年や2016年、2017年の死者数をすでに上回っています。

 警視庁などは、高齢者は体が冷えすぎるといった理由で冷房の使用を控える傾向がみられるものの、熱中症にならないようにこまめにエアコンを使うなど注意を呼び掛けています。

 熱中症の疑いで亡くなる人が8月に入って急増していることについて、熱中症に詳しい帝京大学医学部附属病院高度救命救急センターの三宅康史センター長は、「梅雨明けが遅く、今月になって初めて本格的な夏になり、猛暑日と熱帯夜が続くようになってしまった。高齢者も室温の高い部屋で何日も過ごすことで熱中症も重くなってしまう。エアコンを使わないと屋内でも危険だ」と話しています。

 一方で、認知症の影響でエアコンの使い方がわからなかったり、家に閉じこもって周囲から孤立しがちで体調の異変などを伝えることができなかったりするケースについては、「本人たちに熱中症の危険性があるという自覚を促すとか、エアコンのスイッチを入れてもらうのは難しい」とした上で、「夏の1カ月や2カ月の短い期間だけでも、近所の人たちや家族が毎日見守りに行ったり、逆に集会場などで開くイベントに本人たちを招いて涼しい環境で過ごしてもらうなど、地域の広がりで対応していくことが必要だ」と話しています。

 2019年8月8日(木)

 

■ロッテがチョコレート40万個を自主回収 乳成分で健康被害7人

 大手菓子メーカーのロッテは7日、アレルギー物質のうち「乳成分」が自社基準値を超えて検出されたため、チョコレート2種類を自主回収すると発表しました。現在までに、チョコレートを食べた7人からアレルギー反応が出たという連絡があったということです。

 自主回収するのは、ロッテが製造・販売している賞味期限が来年6月までの「ポリフェノールショコラ<カカオ70%>」と、「乳酸菌ショコラカカオ70」の2種類で合わせて約40万個です。

 いずれも原材料にアレルギー物質である乳成分は含まれませんが、基準値を超えた乳成分が検出されました。

 商品は乳成分を含むほかの商品と同じラインで製造していますが、ラインの洗浄作業が不十分だったことが原因だということです。

 これまでにチョコレートを食べた7人から、アレルギー反応が出たという連絡がありましたが、ロッテではいずれも「症状は落ち着いている」と話しています。

 ロッテによりますと、最初に健康被害の連絡が入ったのは2018年11月でしたが、社内の連絡が不十分で調査が行われず、今年4月の商品の定期検査で乳成分が含まれていることがわかったということです。

 ロッテは謝罪するとともに、「いっそう管理体制を強化し、再発防止に努めてまいります」とコメントしています。

 問い合わせの電話番号は、0120-808-262で、平日の午前9時から午後5時まで対応しています。

 2019年8月7日(水)

 

■手足口病の患者、最多を更新 38都道県で警報レベル

 主に子供の手足や口の中に発疹ができる手足口病の流行が続いています。7月28日までの1週間の患者数が1医療機関当たり13・42人になったと、国立感染症研究所が6日発表しました。1981年の統計開始以来、最多となった7月8~14日の12・67人を上回り、38都道県で流行の警報を出す基準の5人を超えました。

 発表によると、全国約3000の小児科から7月22~28日の1週間に報告があった患者数は4万2489人。

 都道府県別の1医療機関当たりの患者数は、宮城県が最も多く31・31人で、山形県29・28人、群馬県26・42人、埼玉県25・39人と続きました。

 手足口病は、ウイルスを含んだ唾液や排せつ物を触った手などから感染します。3~5日の潜伏期の後に、手のひら、足の裏や口の中などに2~3ミリの水膨れのような発疹ができます。38度くらいまでの軽い発熱を伴うこともあります。

 予防するには、せっけんを使ってこまめに手を洗うことと、タオルをほかの人と共有しないことが大切です。

 2019年8月6日(火)

 

■熱中症の死者、1週間で57人 搬送1万8347人

 総務省消防庁は6日、7月29日~8月4日の1週間に熱中症で救急搬送された人が全国で1万8347人に上り、このうち24都道府県で57人が死亡したと発表しました。いずれも速報値。

 7月22~28日の前週は搬送者5664人、死者11人で、大幅に増えました。消防庁の集計によると、熱中症の搬送者数は集計を始めた2008年以降、週間単位では過去2番目に多くなりました。重症者は729人に上り、搬送者のうち65歳以上は9963人(54・3%)でした。

 都道府県別では、東京都が最も多い1857人で、愛知県1342人、埼玉県1307人と続きました。

 日本列島が高気圧に覆われ、最高気温が35度以上の猛暑日が各地で続いたためとみられます。消防庁は、こまめな水分補給や涼しい場所での休憩を呼び掛けています。

 2019年8月6日(火

 

■熱中症、4日間で東京都区部の19人が死亡 全員がエアコン未使用の屋内で

 8月に入ってわずか4日間に、東京23区内の高齢の男女19人が熱中症の疑いで死亡していたことが、明らかになりました。いずれもエアコンが使われていなかったとみられ、冷房を適切に使用するよう注意を呼び掛けています。

 警視庁や東京都監察医務院によりますと、8月1日から4日までのわずか4日間に、60~90歳代の男女19人が熱中症の疑いで死亡していました。

 大田区と北区でそれぞれ4人、中野区で3人、江戸川区で2人、千代田区、世田谷区、杉並区、豊島区、足立区、葛飾区でそれぞれ1人が死亡していたということです。

 19人はいずれも屋内で死亡し、エアコンが部屋になかったのが14件、エアコンがあっても使われていなかったとみられるケースが5件でした。

 杉並区宮前のアパートでは8月2日、宅配業者が訪ねたところ、この部屋に住む60歳代の男性の反応がなく、警察官が掛け付け、遺体を発見したということです。
部屋にエアコンはありませんでした。

 大田区山王の住宅では8月2日、90歳代の女性が死亡しているのを同居する50歳代の娘が見付けました。エアコンは使われていなかったということです。

 5日も熱中症の疑いで病院に搬送された人は午後3時までに9歳~95歳の男女89人に上っており、警視庁などは冷房を適切に使用するよう呼び掛けています。

 2019年8月5日(月)

 

■在留外国人の結核患者が1・4倍に増加 入国前検査を義務付けへ

 アジア出身を中心に外国人が結核の症状に気付かないまま来日し、発病が確認されるケースが相次いでいます。最近の5年間で、在留外国人の患者数は1・4倍に増加。

 2020年東京オリンピック・パラリンピック開催を控え、政府は国内外の人が大勢集まる会場周辺が集団感染の発生源となるリスクを抑えるため、来年にも患者数が多いアジア6カ国から来日する長期滞在予定の外国人に対して対して、入国前検査を義務付ける方針です。

 厚生労働省などによると、2017年の外国出身者の新規結核患者は1530人で、2012年の1069人から1・4倍となりました。国別では、フィリピン321人、中国258人、ベトナム257人、ネパール164人、インドネシア121人、ミャンマー80人と、6カ国で全体の約8割を占めます。

 2018年8月には香川県で、20~30歳代の外国人技能実習生12人の集団感染を確認。感染源となった20歳代のラオス人女性には来日前、せきやたんなどの症状がありました。今年3月にも福岡市の日本語学校で、外国籍の学生と日本人職員の計26人の集団感染が発覚しました。

 国内の結核患者は医療や生活水準の向上で減少傾向にありますが、2017年の新規患者は1万6789人、罹患(りかん)率(人口10万人当たりの新規患者数)は13・3で、先進国の中では高水準にとどまっています。4月の改正入管難民法施行で、これまで高度な専門人材に限定されていた外国人労働者の受け入れが事実上の単純労働にも認められたため、外国人労働者の増加が見込まれ、東京オリンピック・パラリンピックも来年に開催されることから、感染拡大のリスクは高まっています。

 外国人に結核の症状があれば入国を拒否できるものの、結核の初期症状は風邪と似ているため、すべての患者を把握することは困難とされます。これらを踏まえ、患者数の多いフィリピンや中国などアジア6カ国からの3カ月以上の長期滞在予定者に対し、入国前の結核検査を義務付けます。

 日本政府が指定する現地の医療機関でX線検査などを受けてもらい、罹患の有無を確認。結核を発病していない証明書の提出をビザ発給の条件とします。発病が判明した場合、治癒したとの証明書が必要となります。

 ただ、結核は感染から発病まで数カ月~数年かかることが多く、感染者が入国後に発病するリスクは残ります。

 結核予防会結核研究所(東京都清瀬市)の加藤誠也所長は、「外国人留学生や実習生らは狭い部屋で集団生活を行うなど、感染が広がりやすい環境に身を置くことも多い。定期健診の実施など早期発見や確実な治癒に向けた施策を強化していく必要がある」と話しています。

 2019年8月5日(月)

 

■埼玉県の70歳代女性、エボラウイルス検出されず 8カ月コンゴに滞在

 厚生労働省は4日、アフリカ中部のコンゴ民主共和国(旧ザイール)に滞在歴のある埼玉県の70歳代女性が帰国後に発熱し、エボラ出血熱の疑いがあるとして検査した結果、エボラウイルスは検出されなかったと発表しました。

 女性は仕事のため、エボラ出血熱の感染が拡大しているコンゴ民主共和国に少なくとも8カ月以上にわたって滞在。7月31日に成田国際空港に到着した時に異状はなかったものの、8月3日に38・2~39・2度の発熱があり、女性は4日未明から、東京都内の病院に隔離入院となっていました。

 厚労省が念のため、採取した血液を東京武蔵村山市の国立感染症研究所村山庁舎に送り、エボラ出血熱に感染していないかどうか詳しい検査を行った結果、エボラウイルスは検出されなかったということです。厚労省によると、女性は現地でエボラ出血熱患者と接触していないと説明しています。

 厚労省は女性はインフルエンザA型にかかり、発熱した可能性が高いとみています。東京都内の病院への入院を続け、健康状態を監視するといいます。

 世界保健機関(WHO)は7月17日、アフリカでのエボラ出血熱の流行を受け、「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」を宣言しました。エボラウイルスは血液や排せつ物などを通して感染し、空気感染はしません。患者は発熱や頭痛、下痢、吐血などの症状が出ます。

 厚労省は引き続き、海外渡航者にエボラ出血熱の発生地域に近付かないよう注意を呼び掛け、検疫対応を強化します。

 2019年8月4日(日)

 

■ケーブルテレビを活用してオンライン診療 今秋から実証実験を開始

 ケーブルテレビ最大手のジュピターテレコムは、遠隔で医師の診察を受けるオンライン診療事業に参入します。スタートアップ企業と連携して個人宅のテレビに接続するシステムの開発を進め、2021年度の商用化を目指します。スマートフォンを使う既存のシステムに比べて、高齢者にも使いやすくして普及を後押しします。

 今秋から東京都と福岡市で、高血圧や糖尿病などの慢性疾患を抱える高齢者ら約30人を対象に、実証実験します。スタッフが患者宅のケーブルテレビにカメラなど専用機器を設置。予約日に、患者がリモコンを使って問診票に答えます。診察時間前に、テレビが自動的に起動して診察を受けます。

 ケーブルテレビのインフラとテレビ画面を使った実証実験は国内初で、高齢者でも、スマホによる従来のオンライン診療より手軽に受けられます。

 実験では、スタートアップ企業2社が医療機関に提供する既存のオンライン診療システムと連携します。福岡市では、インテグリティ・ヘルスケア(東京都中央区)と組み、9月から在宅患者を対象にオンラインで診療と服薬指導をします。東京都では、MICIN(マイシン、東京都千代田区)と組み、10月から生活習慣病で通院中の60歳代以上の患者を対象とします。

 ジュピターテレコムは全国の拠点網を使い、テレビとつなぐカメラの設置に加え、診療の初期設定や利用方法をサポートし、約550万世帯が加入する既存の顧客基盤やインフラを活用してヘルスケア事業に注力します。

 2019年8月4日(日)

 

■マダニにかまれ日本紅斑熱 北九州市の78歳女性死亡

 北九州市に住む70歳代の女性がマダニにかまれたことによる感染症で死亡していたことが1日、わかりました。日本紅斑熱という感染症で、福岡県内での死亡例は確認できる2006年以降では初めてです。

 感染症で死亡したのは、北九州市門司区に住む78歳の女性。北九州市によりますと、女性は7月4日に腕に発疹ができ、翌5日に高熱が出て病院に入院しましたが、その後、昏睡(こんすい)状態となり7月26日に死亡しました。

 鹿児島県環境保健センターが血液検査したところ、死因はマダニにかまれたことによる日本紅斑熱と31日に確認されました。日本紅斑熱は、病原体「リケッチア」を持つマダニにかまれてから2~8日後に、頭痛や発熱の症状が出て、重症化すると死亡することもあります。

 福岡県内で日本紅斑熱で死亡が確認されたのは、データが残っている2006年以降で初めてですが、2015年にマダニによる別の感染症で2人が死亡しています。

 北九州市は、マダニが生息する山林や草地に行く際はマダニにかまれないよう長袖、長ズボンを着用し肌の露出を減らすように、注意を呼び掛けています。

 2019年8月3日(土)

 

■熱中症の疑いで死亡、今日も相次ぐ 北海道で死者3人発生

 全国的に厳しい暑さが続く中、熱中症の疑いで死亡する人が相次いでいます。2日だけでも、北海道、山形県河北町、茨城県つくば市、富山市、兵庫県市川町で、生後11カ月から80歳代の男女少なくとも7人が熱中症の疑いで死亡しました。

 いずれも家の中や車の中で倒れていたということです。このうち北海道では、3人が死亡しています。

 三笠市では2日午前0時15分ごろ、自宅のベッドで寝ていた60歳代の男性が、意識不明の状態で見付かりました。男性は病院に運ばれましたが死亡が確認され、消防によりますと、搬送先の病院で熱中症による死亡だと診断されたということです。

 登別市では2日朝4時20分ごろ、60歳代の女性が住宅のトイレで倒れているのを家族が見付け、消防に通報しました。救急隊が駆け付けたところ女性はすでに意識がなく、その場で死亡が確認されました。女性の体温は40度を超えていたということで、消防は熱中症による死亡とみています。

 美幌町の住宅でも2日午前11時すぎ、80歳代の女性が倒れているのが見付かり、搬送された病院で死亡しました。消防によりますと、女性は熱中症の疑いと診断されたということです。

 茨城県つくば市では、80歳の女性が自宅の廊下に倒れているところを家族に発見され、病院で死亡が確認されました。

 富山市では午前9時半ごろ、アパート駐車場の乗用車内で、このアパートに住む生後11カ月の野畑心湊(のばた・ここみ)ちゃんがぐったりしているのを母親が見付け、病院で死亡が確認されました。

 また、山形県河北町では自宅にいた54歳の男性、兵庫県市川町ではトラック内で仮眠していたとみられる50歳代男性が死亡しました。

 今後1週間程度は全国的に猛烈な暑さが続くとみられ、気象庁は熱中症などへの注意を呼び掛けています。

 2019年8月2日(金)

■コンゴのエボラ出血熱流行、感染地域が拡大 発生1年で死者1800人超え

 アフリカ中部のコンゴ民主共和国(旧ザイール)東部でエボラ出血熱が流行している問題で7月31日、大都市で新たな死者が出るとともに、これまで感染がなかった州で15人が隔離されました。エボラ出血熱発生から1年となる8月1日を翌日に控え、感染地域が急拡大した形です。

 今回のエボラ出血熱流行は史上2番目の規模に拡大しており、31日に発表された統計によると、これまで感染が確認された患者は2600人以上で、死者数は1803人に上っています。患者3人のうち約1人が子供だといいます。

 同国のエボラ出血熱対策を率いるジャンジャック・ムエンベ氏は、東部の大都市ゴーマでエボラ出血熱による2人目の死者が出たと述べました。

 ゴーマは北キブ州の州都で、ルワンダとの国境に接し、東アフリカ各地と交通網で結ばれています。北キブ州は、昨年8月1日に発生した今回のエボラ出血熱流行で大きな被害を受けてきました。

 人口200万人以上を抱える湖畔都市のゴーマには、同国首都のキンシャサやウガンダのエンテベ、エチオピアの首都アディスアベバとの間を結ぶ航空便が発着する空港や、ブカブを含む南キブ州との間を結ぶ港もあります。

 大都市では地方と比べ人口密度が高いのに加え、人の移動も多く、患者を隔離し接触の経緯を追跡することが困難であるため、医療専門家らは大都市での流行発生を懸念しています。

 国際NGO「国境なき医師団」によると、ゴーマでの2人目の死者は医師団が支援するエボラ出血熱治療センターに運び込まれたものの、約26時間後に亡くなりました。世界保健機関(WHO)によると、46歳の男性で、ゴーマ北部のイトゥリ州の鉱山で働いていたといいます。

 治療センターに搬送された時の症状はすでに重く、死去前に事情も聞けなかったといいます。この男性の感染場所や接触した人間を特定するため、移動経路などを調べています。

 WHOは7月17日、コンゴのエボラ出血熱の流行について「国際的に懸念される公衆衛生の緊急事態」を宣言。前日には、ゴーマで初の感染者が死亡しました。WHOのテドロス・アダノム・ゲブレイェスス事務局長によると、ゴーマ市での死者2人の間に関連性がある形跡はありません。

 同事務局長によると、ゴーマ市では医療従事者5000人以上にエボラ出血熱のワクチンを接種し、医療施設では感染拡大のための訓練や関連備品の供与が行われています。

 一方、北キブ州と隣接する南キブ州ビラバの当局は、15人が隔離されたことを明らかにしました。同州ではこれまで感染者が出ていませんでした。当局によると、隔離された人々の中には、ゴーマからやってきた女性とその子供6人、この親子に会いに来た親族が含まれます。

 2019年8月2日(金)

■モバイルバッテリー、突然の発火に注意を 消費者庁

 外出先でもスマートフォンやタブレットなどを充電できるモバイルバッテリーは、使い方を誤ると発熱してやけどを負う危険があります。夏休みの旅行や帰省で持ち運びの機会が増えることから、消費者庁は7月31日、炎天下の車内など高温の場所に放置しないよう注意を呼び掛けました。

 モバイルバッテリーの事故情報は、2013年6月から今年6月末までに162件寄せられています。そのうち、発煙・発火・過熱は78件で、建物などに延焼した火災も39件ありました。やけどなどけがをした人は、18人でした。

 事故情報は増加傾向にあり、2013年は3件でしたが、2018年は過去最多の76件と大幅に増えています。2019年に入ってからの6カ月間だけでも、29件の事故が報告されています。

 消費者庁は、電車の中で胸ポケットに入れていたモバイルバッテリーが突然火を吹き、電車が停車し消防が駆け付けた事例や、新幹線に乗車中、スマホにつながないでかばんに入れていたモバイルバッテリーが破裂し、両足にやけどを負った事例などを紹介しています。

 消費者庁によると、モバイルバッテリーのほとんどは、リチウムイオン電池が使われています。モバイルバッテリーを落としたりポケットの中で押されたりすると、内部の電池が変形するなどして発煙や発火につながる場合があります。充電用コネクターがぬれていると、端子部がショートする場合もあります。

 消費者庁消費者安全課の鮎澤良史課長は、「水にぬれないよう、プールや海ではかばんの中へ。膨らみや発熱、異臭などいつもと違うことに気付いたらすぐに使用を中止してほしい」と話しています。

 モバイルバッテリーは、電気用品安全法の規制対象になり、今年2月からは技術基準を満たしたことを示す「PSEマーク」付きの製品しか販売できなくなりました。消費者庁は、新たに購入する際はPSEマークを確認し、すでに持っている製品についてはリコールの対象となっていないかを確認するよう求めています。

 2019年8月1日(木)

 

■熱中症で1週間に11人死亡 救急搬送は3倍の5664人に

 総務省消防庁は30日、熱中症で22~28日の1週間に救急搬送された人が全国で5664人に上り、このうち11府県の11人が死亡したと発表しました。いずれも速報値。

 死者は前週(15~21日)、前々週(8~14日)ともに0人で、搬送者は前週の1948人から約3倍に急増しました。

 発表によると、3週間以上の入院を必要とする重症者は119人。1週間当たりの搬送者、死者、重症者はいずれも今年最多でした。多くの地域が梅雨明けし、各地で最高気温が30度以上となった真夏日が多かったためとみられます。ただ、昨年の同じ時期の搬送者1万6449人に比べると約3分の1で、今後、さらに増える恐れがあります。

 搬送者の52・6%は65歳以上。都道府県別では、愛知県が最も多い392人で、大阪府の388人と続きました。  

 消防庁では、適切な室温調整やこまめな水分補給を呼び掛けています。

 2019年7月31日(水)

 

■エーザイ、てんかん薬の治験で健康な男性死亡 厚労省が調査

 大手製薬会社のエーザイ(東京都文京区)が「てんかん」の薬を開発するために行っていた臨床試験(治験)で、薬を投与された健康な成人男性の被験者が先月死亡していたことが30日、判明しました。薬の投与と死亡との因果関係はわかっておらず、厚生労働省は臨床試験に問題がなかったか調査しています。

 エーザイによりますと、新しい抗てんかん薬を開発するための臨床試験で、試験に参加していた健康な成人男性が治験薬を投与された4日後、医療機関を退院。この時点で副作用などの異常はなかったものの、その後、神経が過敏になる症状を訴え、6月25日に亡くなったということです。

 エーザイは、死因などについてはプライバシー保護のため明らかにできないとした上で、投薬と死亡の因果関係はわかっていないとしています。

 臨床試験は2017年12月から今年6月まで行われており、ほかにも20~85歳の117人の男性が参加していましたが、これまでのところ重い副作用は報告されていないということです。

 今回の臨床試験は、薬の安全性を確認するために報酬を払う形で原則、健康な人に投与してその影響を調べるもので、厚労省によりますと、健康な成人を対象にした臨床試験で死亡者が出るのは、確認できる2013年度以降、初めてということです。

 厚労省は医薬品医療機器法に基づき、同社や治験が行われた医療機関を対象に、臨床試験が計画通りに行われていたかや、安全対策に問題はなかったかなどについて調査を進めています。

 エーザイは現在、治験薬の投与をすべて中断しており、「被験者が亡くなったことは極めて重く受け止め、引き続き安全性に十分配慮し医薬品の研究開発を行ってまいります」とコメントしています。

 2019年7月31日(水)

 

■肥満が聴力低下のリスクを上昇させる 国際医療研究センター、5万人を8年追跡

 肥満に高血圧、代謝異常などが加わったメタボリック症候群は、多様な生活習慣病を引き起こすことが知られていますが、聴力の低下にも関係していることが国立国際医療研究センターなどの大規模疫学研究で判明しました。

 同センター疫学・予防研究部の溝上哲也部長らの研究チームが、関東・東海地方に本社のある企業十数社の従業員計約10万人を対象としたJ-ECOHという研究の一環として実施。2008~2011年度の健康診断で聴力が正常だった20~64歳の約5万人を最大8年間追跡調査しました。

 対象者を「体格指数(BMI)が25以上の肥満か」と「血圧・血糖・中性脂肪・善玉コレステロールの値が2項目以上メタボリック症候群の基準に該当するか」との条件で4グループに分け、1000ヘルツ未満の低音域と4000ヘルツ超の高音域で、聴力低下が起きるリスクを比較しました。

 その結果、BMI25未満の非肥満のグループを1とした時の25以上30未満のリスクは低音域で1・22倍、30以上では1・72倍になりました。高音域でも、同じく太っているほどリスクが高くなりました。

 その他のメタボ基準を加味すると、非肥満でその他基準に該当しないグループのリスクを1とした時、低音域では非肥満・その他該当のグループは1・19倍、肥満・その他非該当は1・27倍、肥満・その他該当は1・48倍となり、高音域でも同じ順番でリスクが高まることがわかりました。

 研究チームは、高血圧や代謝異常による動脈硬化で血管が狭まったりふさがったりし、耳への血流が減少すること、肥満に伴う酸化ストレスや炎症、低酸素などで聴覚細胞が損傷することなどが影響するとみています。

 2019年7月31日(水)

 

■平均寿命、最高を更新 女性87・32歳 男性81・25歳

 2018年の日本人の平均寿命は女性が87・32歳、男性が81・25歳で、ともに過去最高を更新しました。厚生労働省が30日に発表したまとめでわかりました。

 2017年に比べて女性は0・05歳、男性は0・16歳延びました。過去最高の更新は、女性が6年連続、男性は7年連続。男女ともに平成の30年間で、平均寿命が5歳あまり延びました。

 平均寿命が公表されている主な国や地域との比較では、女性は香港に次いで4年連続の2位、男性は香港、スイスに次いで、2年連続で3位となっています。

 厚労省は、「平成の時代に薬の開発や医療技術が進歩し、健康意識も高まったことが平均寿命が延びた要因になったのではないか。今後もしばらくは延び続けるとみられることから健康に過ごせるような施策に取り組んでいきたい」と分析しました。

 平均寿命は死亡率が今後も変わらないと仮定し、その年に生まれた0歳児があと何年生きられるかを表す数値。将来の社会保障、経済政策の方向を決める指標になります。

 2018年生まれの日本人が75歳まで生きる割合は、女性が88・1%、男性が75・6%。90歳まで生きる割合は、女性が50・5%、男性が26・5%。半数が生存していると推定される「寿命中位数」は、女性で90・11歳、男性は84・23歳でした。

 がん、心疾患、脳血管疾患で死亡する確率は、女性で45・52%、男性で50・06%。仮にこれらの病気で亡くなる人がゼロになれば、女性は5・55歳、男性は6・7歳、平均寿命が延びるといいます

 平均寿命が延び続ける一方、2018年の合計特殊出生率(1人の女性が生涯に産む子の推計数)は1・42にとどまり、同年に生まれた子供の数は91万8397人で過去最低を記録しました。今月に総務省が発表した人口動態調査でも、日本人の人口は10年連続で減少しています。

 また、自立して生活できる年齢を指す「健康寿命」は2016年時点で、女性は74・79歳、男性は72・14歳。平均寿命とは大きな開きがあり、高齢者が健康で暮らせる長寿社会を実現するためには多くの課題があります。

 社会保障制度に詳しい法政大学の小黒一正教授は、「社会保障の改革が急務だ。現状のままでは医療費や介護費の国庫負担が増えるだけでなく、1人当たりの年金受給額も実質的に下がる。高齢者に貧困が広がるだろう」と指摘。その上で「社会保障の支え手を増やす必要がある。高齢でも働ける労働市場の整備や、貯蓄や投資など老後を見据えた資産形成の促進が大切だ」としています。

 2019年7月31日(水)

 

■厳しい暑さ、熱中症搬送者400人超 東京都で121人、愛知県で94人

 各地で35度以上の猛暑日になる地点が相次いだ29日、熱中症とみられる救急搬送者は少なくとも400人を超えました。

 熱中症とみられる救急搬送者の内訳は、東京消防庁管内121人、愛知県94人、神奈川県49人、千葉県37人、宮城県33人、群馬県と岐阜県が29人、岩手県と三重県23人、静岡県19人、石川県15人。長野県の諏訪市や富士見町でもそれぞれ1人が搬送されました。

 東京消防庁管内では、70歳代と80歳代の男性2人が重症。千葉県船橋市では、男性(74歳)が自宅で倒れ、重体となりました。愛知県では、東郷町の女性(84歳)ら2人が重症。岐阜県輪之内町では、女性(92歳)が路上に倒れており意識不明の重体といいます。

 大阪府枚方市の遊園地「ひらかたパーク」では28日、同市のアルバイト、山口陽平さん(28歳)が重さ15キロの妖精の着ぐるみを着てダンスの練習をした後に意識を失い、搬送先の病院で死亡したことが29日、わかりました。司法解剖の結果、熱中症が原因と判明しました。遊園地は事故を受け、8月に予定していた着ぐるみショーの中止を決定しました。

 2019年7月31日(水)

 

■今年の風疹患者2004人に上る 流行の中心は40~57歳男性

 今年、風疹と診断された患者は7月21日までに2000人を超え、引き続き増加しています。流行の中心は免疫が十分にない一部の年代の男性で、専門家は原則無料で受けられるワクチンを接種するよう呼び掛けています。

 国立感染症研究所の30日の発表によりますと、7月21日までの1週間に、全国の医療機関から報告された風疹の患者は22人で増加の伸びは鈍っているものの、今年の患者数は2004人となっています。

 この時期までに2000人を超えるのは大きな流行になった2013年以来で、昨年夏から続く流行による患者数は5000人近くに上っています。

 都道府県別の今年の患者数は、東京都が736人、神奈川県が246人、千葉県が176人、埼玉県が173人、大阪府が120人などと、首都圏が中心となっています。

 風疹は発熱や発疹などの症状が出るウイルス性の感染症で、妊娠中の女性が感染すると生まれてくる赤ちゃんの目や耳、それに心臓などに障害が起きる「先天性風疹症候群」になる可能性があり、今年に入ってからも全国で合わせて3人が、先天性風疹症候群と診断されています。

 流行の中心となっているのは免疫が十分にない40歳から57歳の男性で、こうした人たちは原則無料で、免疫があるかどうか調べる検査やワクチンを受けることができます。

 厚生労働省は3年間掛けて、抗体検査やワクチンの接種などを進める計画で、ワクチン不足を防ぐため、今年度は1962年4月生まれから1979年4月生まれの男性約646万人を対象に原則、無料で受けられるクーポンを順次、配布しています。

 しかし、4月と5月の2カ月間にクーポンを使用して抗体検査を受けた人は12万5800人余り、ワクチンを接種した人は1万6600人余りとまだ一部にとどまっています。

 クーポンを使って抗体検査を受けた人を都道府県別にみると、最も多いのが愛知県で1万4500人余り、次いで埼玉県で1万4400人余り、東京都で8500人余りなどとなっています。

 また、ワクチンを接種した人を都道府県別にみますと、最も多いのが愛知県で2100人余り、埼玉県で1900人余り、東京都で1200人余りなどとなっています。

 来年度以降にクーポンが配布される人でも、市町村に希望すれば、早めに受け取ることができるということで、厚生労働省はクーポンを利用して検査や接種を受けるよう呼び掛けています。

 感染症に詳しい川崎市健康安全研究所の岡部信彦所長は、風疹の現状について「爆発的に増えているわけではないが、特に免疫を持っていない大人の男性たちの間で、じわじわと感染が続いている状況だ。大人は行動範囲も広いので、人口が多い首都圏を中心に患者が増えている。ウイルスが地域に存在し続けると、今後また流行が拡大する恐れもあるので、注意が必要だ」と話しています。

 また、注意すべき風疹の特徴として岡部所長は、「症状がはっきり出ないこともあるほか、症状が出る1週間ほど前から感染力を持つため、自覚がないまま、周りに感染させてしまうことがある」とした上で、「ワクチンで防げるので、妊娠の可能性がある女性だけでなく、流行の中心となっている男性も次の世代の子供たちを守るために、無料の制度を活用するなどしてワクチンを接種してほしい」と話しています。

 2019年7月30日(火)

 

■シャープ、ゲームで認知機能を刺激 8月から介護施設向け

 シャープは8月1日から、高齢者の認知機能をゲームで改善するプログラムの提供を、全国の介護施設を対象に始めます。タッチ式液晶ディスプレーを使って楽しむことで、認知機能を刺激する20種類のゲームを開発しました。

 個々の利用者の状態に対応した訓練計画やプログラムを簡単に作成し、結果の記録や管理もできます。人手が不足する介護業界の業務効率化にもつなげます。

 開始するのは「頭の健康管理サービス」。事前に利用者から聞き取った情報をもとに、記憶力や計算力といった項目ごとの訓練計画を自動で作成し、お勧めのゲームを提案します。メニューには、「脳トレ」で知られる東北大学加齢医学研究所の川島隆太所長が監修したゲームなどを用意しました。「あとだしジャンケン」や簡単な計算などを通して、認知機能の改善につなげます。訓練結果や履歴はクラウド上で管理し、グラフなどで表示することもできるといいます。

 最低限のディスプレーなどの機器と基本ライセンスを合わせた年間利用料は、5年リースで25万円程度(税別)を想定。これに人数に応じて生活機能訓練の業務を支援するサービスのライセンス料や、付随する機器の使用料が追加で必要となります。

 ビジュアルソリューション事業部の山本信介事業部長は、「全国にある通所サービス施設の5%に当たる2800施設への納入を目指したい」と話しています。

 従来は利用者ごとに施設の担当者が訓練計画の作成したり、結果を集計したりする必要がありました。新サービスを導入すれば、業務負担の大幅な軽減につながるといいます。試験導入した施設からは、「業務の手間を3~4割削減できそうだ」との声も上がったといいます。

 2019年7月29日(月)

 

■各地で厳しい暑さ、熱中症疑いで相次ぎ搬送 東京都で63人、埼玉県で77人

 列島の広い範囲で晴れ渡った29日、各地で夏本番の厳しい暑さとなり、岐阜県揖斐川町で37・2度、岩手県釜石市で37度を観測するなど35度以上の猛暑日になる地点が相次ぎました。

 気象庁によると、ほかに兵庫県豊岡市で36・6度、埼玉県鳩山町や京都市で36・5度、名古屋市で35・3度、大阪市で35・2度を観測。札幌市や仙台市、福岡市でも30度を超えました。全国926観測点の8割近くが30度以上の真夏日となり、うち70地点が猛暑日となりました。今週は夏空が続く見込みで、気象庁は水分・塩分補給など熱中症対策を呼び掛けました。 

 東京消防庁によりますと、東京都内で29日午後3時までに熱中症の疑いで病院に搬送された人は、12歳から93歳までの男女合わせて63人に上っているということです。このうち、70歳代と80歳代の男性2人が重症だということです。

 埼玉県消防防災課のまとめによりますと、29日午後4時までに熱中症の疑いで病院に搬送された人は、13歳から103歳までの男女合わせて77人に上っているということです。このうち3週間以上の入院が必要な重症の人はいないということです。

 千葉県が各地の消防を通じて午後4時現在でまとめたところ、県内で熱中症や熱中症の疑いで病院に搬送された人は男女合わせて37人に上り、このうち70歳代から80歳代の4人が重症だということです。

 船橋市では29日午後1時40分ごろ、74歳の男性が自宅で倒れているのを帰宅した家族が見付け消防に通報しました。救急隊員が駆け付けると、男性は呼吸はしていたものの意識不明の重体で病院に運ばれ、倒れていた状況などから熱中症とみられるということです。

 神奈川県によりますと、29日午後3時までに県内各地の消防が熱中症として搬送した人は合わせて34人で、このうち横浜市の82歳の男性は症状が重いということです。また。65歳以上が25人と搬送者全体のおよそ74%を占めたということです。

 群馬県消防保安課のまとめによりますと、29日午後3時までに県内で29人が熱中症の疑いで病院に搬送され、このうち1人が重症、18人が軽症と診断されたということです。重症と診断されたのは前橋市に住む73歳の男性で、今朝8時ごろ、自宅で「発熱やふらつきなどの症状がある」と家族から消防に通報があったということです。

 茨城県によりますと、この暑さの影響で県内では29日午後5時までに合わせて27人が熱中症の疑いで病院などに運ばれたということです。このうち常陸太田市では,80歳の男性が田んぼの側溝の近くで倒れているのが見付かって病院に運ばれ、熱中症と診断されましたが、意識はあるということです。

 栃木県消防防災課のまとめなどによりますと、県内では29日午後4時までに13歳から94歳までの男女合わせて12人が熱中症の疑いで病院に搬送されました。このうち4人が中等症、8人が軽症とみられ、重症の人はいないということです。

 当面は高気圧に覆われ晴れる日が多く、日中は強い日差しで気温が上昇、夜も気温が下がりにくい状態が続くとみられます。

 2019年7月29日(月)

 

■暑さに負けない水分補給に経口補水液を 熱中症の治療や予防効果

 私たちの体は6割ほどが水で、体内の水分が減ると「脱水」状態になり、血液がドロドロになって栄養分や老廃物を運びづらくなるほか、汗をかきづらくなって体温調節が難しくなります。熱中症にもなりかねません。

 体重の2%の水分が失われると、のどが渇き始めます。5%を超すと、嘔吐(おうと)や意識障害を起こします。高齢者は体内の水分量が少ない上、のどの渇きも感じづらくなるとされるので、水分補給にはより気を使いたいところです。

 激しいスポーツや炎天下での作業をしないような日常生活の水分補給には、「まずは食事が大事」と早稲田大学の永島計教授(環境生理学)はいいます。私たちの体は1日に2・0~2・5リットルの水分が出入りしており、しっかり3食をとれば、このうち0・5~1・0リットルを補えるといいます。

 ご飯やパン、汁物、おかずをバランスよく食べることで、さまざまな栄養も一緒に体に入ります。人の体は就寝時も呼吸や皮膚からの蒸発、発汗によって水分が失われるので、「朝食を抜くことは特に危ない」と永島教授は指摘します。

 では、食事以外の1・5~2・0リットルの水分は、どうとればいいのか。人には大量の水をためる機能はないので、こまめに飲むことが大事です。コーヒーは「カフェインの利尿作用で、尿の量が増える」ともいわれるものの、実は科学的根拠はないといいます。「1日に5杯程度までなら、カフェイン中毒の心配はない」。アルコールには利尿作用があるほか、体内で分解される時に脱水作用が起きます。「ビールをゴクゴク飲むのは最初の1杯までにして、2杯目からは水と交互に飲みましょう」。

 水分や塩分が汗として大量に失われる激しい運動時や、屋外で活動をする時は、スポーツドリンクや経口補水液がよいといいます。ナトリウムなどの電解質や糖質を補給できて小腸からの吸収効率もよく、体内で水分が保持されます。ただ「通常の日常生活ではそこまで意識しなくても心配ない」といいます。

 とはいえ、最近はスーパーやドラッグストアの店頭にも経口補水液が並び、つい手に取りたくなります。経口補水製品の市場規模は、2015年度の71億円から2018年度には113億円に伸びました。

 2014年から経口補水製品「アクアソリタ」を販売する味の素(東京中央区)家庭用事業本部の郷家(ごうけ)敏・ニュートリションケアグループ長は、「猛暑だった昨夏は、多くの問い合わせをいただいた」と振り返ります。熱中症の治療や予防効果が知られるようになり、関心が高まったとみています。

 スポーツドリンクは電解質も含みますが、運動時のエネルギー補給が主な目的で、糖質が多めなのが特徴です。一方、経口補水液は体液の成分に近い電解質と糖質を補給でき、もともとは発展途上国で感染症による脱水の治療に使われていました。

 経口補水液の電解質や糖質の量は、メーカーによって異なります。味の素の場合、電解質の濃度は体液よりやや低く、糖質との割合によって吸収効率を上げています。塩分量の多いものほど深刻な脱水などの緊急時に向くものの、同社のものは日常でも飲みやすいのが特徴といいます。

 市販の経口補水液は、500ミリリットルのペットボトルで180~200円程度。ほかの飲料に比べてやや高価ですが、「経済性も考慮しながら、必要に応じて日常の水分補給の一助にしてもらえれば」と同グループの福山晶美(てるみ)さん。夏バテで食欲が落ちた時や、お酒を飲んで寝る前などがお勧めだといいます。血圧が高く塩分制限が必要な人は、「成分表で塩分量を確認して飲んでほしい」としています。

 2019年7月28日(日)

 

■肺がん、新たな治療法が続々生まれる 死亡リスク低減に期待

 日本人のがんの死者数で最も多い肺がんは、次々と新たな治療法が生まれており、生存率の改善に期待が高まっています。

 患者数が多い病院では、外科手術による切除だけでなく、体に備わる免疫の仕組みを生かす「免疫チェックポイント阻害剤」と抗がん剤の併用や、抗がん剤による全身治療後の外科手術など、複数の手法を組み合わせる治療法に力を入れています。

 2017年の肺がんによる死者数は、男女合わせて約7万4000人を数えています。たばこを吸わない人も発症しており、過去10年間で13%増加し、がん全体の2割を占めます。

 肺がんの8割を占めるのが「非小細胞がん」というタイプで、早期の場合は、手術で切除するのが標準的な治療法。進行して切除できない場合は、抗がん剤や放射線治療で対応します。

 全体の2割程度を占める「小細胞がん」というタイプは、手術が可能な早期に発見されることは少なく、抗がん剤治療が中心となり、放射線治療を併用することもあります。

 肺がんの化学療法では、がんの増殖にかかわる分子に狙いを定めて増殖を阻害する分子標的薬のほか、免疫チェックポイント阻害剤「オプジーボ」や「キイトルーダ」などが開発され、効果を上げています。

 肺がんの診療を中心とした医療を行っていることで知られる札幌南三条病院(札幌市中央区)が取り組んでいる試みの一つは、キイトルーダと抗がん剤の併用療法です。

 厚生労働省は昨年12月、進行した非小細胞がんの最初の治療法として、キイトルーダと2種類の抗がん剤の併用療法を承認。臨床試験では、肺がんで最も多い「腺がん」と増殖が速い「大細胞がん」で、通常の抗がん剤治療より死亡リスクが51%低減しました。喫煙との関連が大きいとされる「扁平上皮がん」のリスクも36%低くする効果がありました。

 キイトルーダは外来で投与するのが一般的ですが、札幌南三条病院では抗がん剤の副作用に対応するため患者は入院して治療を受けます。点滴を3週間ごとに4回実施し、その後は抗がん剤の種類を2種類から1種類に減らし、外来治療に移ります。

 対象は最も進行した4期の患者が中心で、放射線治療ができない3期の患者を対象にすることもあります。副作用を警戒し、全身状態の悪い患者などは対象としていないといいます。

 藤田昭久副院長は、「現在までに併用による新たな副作用はなく、これまでの化学療法で見たことがないような劇的な効果が出ている」といいます。同病院では、化学療法を受ける新規患者の2割程度が対象となっていますが、藤田副院長は「徐々に対象を拡大すれば、5割程度が治療対象になるかもしれない」と話しています。

 一方、がんが進行して切除できない患者も切除する研究が進んでおり、国立がん研究センター東病院(千葉県柏市)で取り組んでいるのが「サルベージ手術」です。

 坪井正博・呼吸器外科長は、「進行がんの患者では目に見える腫瘍だけ切除しても早期に再発するだけと考えられていた。化学療法が進歩した現在では、薬の効果がある時に手術することで、生存期間がより延びる可能性がある」といいます。

 現在は標準治療ではないため、同病院は臨床研究の準備を進めています。アメリカで進行中の研究で、同種の治療法により約4割のがん患者に再発リスクを減らす効果があったといいます。

 同病院で対象としているのは、腫瘍が手術だけで取り切れない3期の患者と、転移が3カ所以内の4期の患者。3~4週間に1回の抗がん剤治療を4~6回繰り返した後に手術をします。抗がん剤だけでなく免疫チェックポイント阻害剤を使ったり、外科手術の代わりに放射線治療をしたりするケースもあります。

 肺周囲の器官にがんが広がっている場合、同病院では他院と連携した複合的な手術にも取り組んでいます。

 昨年1月には、肺上部から背骨の円柱部分(椎体)にがんが広がった患者の手術を実施し、人工の椎体に置き換える全置換手術は国際医療福祉大三田病院(東京都港区)の整形外科が担当しました。心臓などの太い血管に浸潤した場合は、近隣の新東京病院(千葉県松戸市)などと連携しています。

 国立がん研究センター東病院の坪井・呼吸器外科長は「その道のトップクラスの医師を集めて最大限の治療をする。がんセンターは地域のがん治療の最後のとりで。リスクがある手術でも、患者に十分に説明した上で取り組んでいく」としています。

 肺がんの外科手術では、患者の負担を和らげるための手法が定着しています。その代表例が、内視鏡の一つ「胸腔(きょうくう)鏡」を使った手術。数センチの小さな穴を切開し、カメラを差し入れて、モニター画面を確認しながら手術を行います。

 坪井・呼吸器外科長は、「通常の開胸手術をする場合も、事前に胸腔鏡で患部の様子を探る。もはや胸腔鏡を用いない手術はない」と語ります。患部に手指を入れずに行う完全胸腔鏡下手術は、全体の2~3割を占めるといいます。

 開胸手術も、患者の負担を減らす工夫が進んでいます。国立がん研究センター東病院のがん情報サービスによると、胸部の皮膚を15~20センチほど切開して肋骨の間を開く方法が一般的でしたが、10センチ以下の切開で、体の負担が少ない方法が行われるようになっています。

 2019年7月28日(日)

 

■加熱式たばこ、健康リスク軽減につながらず WHOが規制を呼び掛け

 世界保健機関(WHO)は、近年普及している火を使わない「加熱式たばこ」について、有害物質が少ないことが強調されているものの、必ずしも健康上のリスクを軽減させることにはつながらないと指摘し、従来のたばこと同じように規制をするよう呼び掛けました。

 WHOは26日、喫煙に関する世界各国の規制状況についての報告書を公表しました。

 この中で、公共の場での喫煙の禁止、他人のたばこの煙を吸い込む受動喫煙対策、たばこ税の導入など、何らかの喫煙規制対策を導入する国は2年間で15カ国増えて136カ国になり、規制への意識が高まっていると評価しました。

 加熱式たばこについては、従来のたばこに比べ有害性が少ないことが強調されているものの、従来のたばこと同じ有害物質が含まれることには変わりなく、必ずしも健康上のリスクを軽減させることにはつながらないほか、受動喫煙の有害性も否定できないと指摘しました。

 その上で、国ごとに加熱式たばこへの規制状況が異なるとして、従来のたばこと同じように規制するよう呼び掛けました。

 たばこ大手は近年、新たな顧客を開拓するため電子たばこや加熱式たばこ製品を積極的に売り込んできました。各社はこうした新製品について、従来のたばこよりも格段に危険性が低く、一部の喫煙者については「より安全な」代替品への完全な切り替えを促せると主張しています。

 しかし、スイスのジュネーブで会見したWHOの専門家は、「たばこ業界は加熱式たばこは禁煙促進効果があるとも主張しているが科学的証拠は示されていない。若者が『これなら安全だ』とたばこに手をする切っ掛けにもなっている」と述べ、広告の在り方にも警鐘を鳴らしました。

 2019年7月27日(土)

 

■本庶氏が小野薬品を提訴へ オプジーボ特許使用料を巡り

 がん免疫治療薬「オプジーボ」の特許使用料などを巡り、本庶佑(ほんじょ・たすく)京都大学特別教授が製造販売元の小野薬品工業(大阪市中央区)に分配金150億円の支払いを求めて、大阪地裁に提訴する方針を固めたことが27日、明らかになりました。

 小野薬品側の再提案を待って、9月にも最終判断します。特許使用料を巡る両者の対立は、法廷闘争に発展する可能性が強まりました。本庶氏は、「一日も早く良好な産学連携関係を取り戻したい」などとコメントしました。

 本庶氏の代理人弁護士によると、本庶氏が問題にするのは、小野薬品とアメリカでオプジーボを販売するブリストル・マイヤーズスクイブが、アメリカ製薬大手メルクに起こした特許侵害訴訟で、2017年の和解時にメルクと決めた対価の支払い配分について。

 弁護士によると、小野薬品は本庶氏に訴訟への協力を求めた際、メルクから受け取る金額の10%を対価に支払うと提案。その後撤回したといいます。

 小野薬品は現在、本庶氏に支払う対価26億円を法務局に供託しているものの、本庶氏はメルク支払い分の対価が今年3月末時点で、当初の提案より150億円少ないとし、差額を求める意向です。

 これとは別に本庶氏は、小野薬品が販売するオプジーボの売り上げから得る対価も不当に低いと主張。提訴の可能性もあるとしています。

 小野薬品は昨年11月、対価は見直さず、新たに京都大へ寄付する方針を本庶氏に伝え、「寄付の枠組みの中で、株主の意見も踏まえながら新しい提案を行い、交渉したい」と話しました。

 本庶氏は弁護士を通じて、「大学と企業が対立状態にあると社会も株主も損失を被る。小野から再提案がなく訴訟になれば、裁判所の判断を仰ぎつつ、一日も早く良好な産学連携関係を取り戻したい」とコメントしました。

 オプジーボは、患者自身の免疫の力を使う新しいメカニズムで作用するがん治療薬。1992年に本庶氏らが基となる物質を発見し、小野薬品工業と共同で関連特許を取得。2014年、皮膚がんの一種「悪性黒色腫(メラノーマ)」の治療薬として、世界に先駆けて日本で製造販売が承認されました。その後、患者数の多い肺がんなどに保険適用が拡大。世界では65カ国以上で製造販売が承認されています。本庶氏は2018年、オプジーボ開発につながった研究成果でノーベル医学・生理学賞を受賞。

 2019年7月27日(土)

 

■ツルハドラッグ小樽店、処方箋なしで医薬品を販売 対応マニュアル化も

 ドラッグストア大手ツルハの「ツルハドラッグ小樽店」(小樽市稲穂2)が、2004年9月ごろから少なくとも8年にわたり、医師の処方箋(せん)が必要な医薬品を処方箋なしで販売していたことが26日、明らかになりました 。

 小樽市保健所は医薬品医療機器法(旧薬事法)に違反すると認定。29日にも同店に対し文書で指導を行う方針を固めました。

 親会社のツルハホールディングス(札幌市東区)は26日、「処方箋なしで医薬品を販売したという事実を確認した」とホームページで発表。同様の事例がないか全国の調剤薬局約260店舗を調査しています。

 医薬品医療機器法は、処方箋が必要な医療用医薬品を処方箋がないまま薬局などが販売する行為を禁止。処方箋が必要な医薬品は効き目が強い物が多く、副作用の危険性も高くなります。勝手に販売できれば、健康被害につながる恐れもあるからです。罰則は3年以下の懲役か、300万円以下の罰金など。

 小樽市保健所やツルハなどによると、小樽店は2004年9月ごろから少なくとも2012年5月ごろにかけ、処方箋がない患者に脳梗塞(こうそく)を予防する薬や血糖値を下げる薬などを販売していました。処方箋なしで販売を行う際のマニュアルとみられる文書も作成し、薬局内で共有していました。  

 同じビルにあるクリニックが休診の際、診察が受けられない患者の求めに応じていたといいます。どれだけの回数販売していたかは不明ですが、クリニックの休診日に小樽店も休むようになったため、処方箋のない患者に販売しなくなったとしています。

 2019年7月26日(金)

 

■海外の未承認薬を詰め替え偽装して処方 医師2人と医療法人を書類送検

 国内で未承認のインド製勃起不全(ED)治療薬などを、別の容器に詰め替えて傘下の医院に引き渡したとして、大阪府警は25日、東京都内の医師2人と、それぞれが理事長を務める医療法人2法人を医薬品医療機器法違反(未承認医薬品の授与)の疑いで書類送検しました。

 薬は海外から輸入した格安品でしたが、海外製とわからないように偽装されていたといいます。

 書類送検されたのは、東京都台東区の医療法人「淳康会」の理事長(44歳)と、豊島区の医療法人「康英会」の理事長(43歳)。「ユナイテッドクリニック」の名称で、男性向け医院を東京都や大阪市、福岡市など全国に展開しています。

 書類送検の容疑は昨年11~12月、厚生労働相の承認を受けていないインド製ED治療薬とタイ製の男性型脱毛症(AGA)治療薬計436錠を、福岡市と東京都港区の医院に渡したとしています。2人は、いずれも容疑を認めています。

 大阪府警生活環境課によると、2法人は医院で勤務する医師の名前を使って取得された輸入許可証「薬監証明」を使い、ED治療薬などを個人輸入。「ユナイテッドクリニック」などと記載された別の容器に入れ替え、グループ傘下の14医院に引き渡していました。ED治療薬は1錠29円で仕入れ、患者には約40倍の1150円で処方されていたといいます。

 ユナイテッドクリニックのホームページでは、「海外製薬も正規の手続きをへて処方している」「他院と比べ治療薬の種類、容量を豊富に取りそろえている」などとうたっていました。

 厚労省は、海外製の未承認薬が医師により不正に輸入・販売されるケースなどが相次いでいるとして、医師が薬監証明を不正取得した場合には罰則を設ける法改正を目指しています。

 2019年7月25日(木)

 

■製薬アラガン、人工乳房を世界的にリコール 33人死亡で安全性に懸念

 アイルランドの製薬大手アラガンは24日、一部の人工乳房製品について全販売地域で自主回収(リコール)し、販売停止すると発表しました。同製品の使用者にがんの発生率が高く、アメリカ・食品医薬品局(FDA)が同日、リコール勧告を出したため。

 リコール対象は「バイオセル・テクスチャード・ブレスト・インプラント」ブランド名で販売する一連の製品。表面がざらざらしたタイプのゲル充填人工乳房で、がんで切除した乳房の再建や豊胸手術などで使われます。

 FDAによると、人工乳房が原因で悪性のリンパ腫(がん)を発症したと見なされる患者が世界で573人確認され、そのうち481人がアラガン製品を使用し、33人が亡くなっていました。2011年に病気のリスクが指摘され調査していました。このリンパ腫は、「ブレスト・インプラント関連未分化大細胞型リンパ腫」と呼ばれます。

 FDAは、すでにインプラント手術を受け、がん発症が確認されていない場合について、摘出手術を推奨していません。

 アラガンはしわ取り薬「ボトックス」が主力で、今年6月、アメリカ・製薬大手アッヴィによる7兆円での買収に合意しました。人工乳房関連製品が売上高に占める割合は3%程度で、業績への影響は少ないとみられます。ただ、リコールにより集団訴訟リスクを抱えることになります。

 FDAによると、表面がざらざらしたタイプの人工乳房の使用率は、アメリカでは5%程度。カナダやオーストラリア、フランスなどで使用率が高いといいます。

 日本では、日本法人のアラガン・ジャパン(東京都渋谷区)の製品が承認されています。関連学会が国内初のアラガン製の人工乳房によるリンパ腫の患者を確認したのを受けて、厚生労働省が6月、病気のリスクを患者に十分説明することを添付文書に記載するよう指示していました。

 2019年7月25日(木)

 

■マダニ媒介の日本紅斑熱で女性死亡 静岡県伊豆の国市

 静岡県は24日、伊豆の国市内の70歳代の女性がマダニが媒介する感染症「日本紅斑熱」で23日に死亡したと発表しました。県内で報告があった今年の感染者は現在4人で、死亡は初めて。感染者は、2017年の6人に次いで多くなっています。

 県によると、女性は7月22日、意識不明となって県東部保健所管内の医療機関に緊急搬送され、医師が診断したところ発熱や体に赤い斑が出る症状があり、翌23日深夜に、多臓器不全で死亡しました。県が女性の血液の検査を行ったところ、日本紅斑熱の病原体が検出されました。マダニにかまれた時期、場所などは、不明。

 日本紅斑熱は病原体の日本紅斑熱リケッチアを保有するマダニにかまれることで感染し、かまれて2日から8日間で高熱、発疹が出て、重症化すると死亡するという感染症。人から人へは二次感染しません。県内では2017年に、日本紅斑熱で2人が死亡しています。

 マダニは、山や森の草むらなどに生息し、春から秋にかけた暖かい季節に活動が盛んになることから、静岡県は県民に対して、山などに入る場合は長袖や長ズボンを着用するなど肌の露出を少なくすることや、屋外での活動の後に発熱や発疹といった症状がみられた場合は速やかに医療機関を受診するよう注意を呼び掛けています。

 2019年7月25日(木)

 

■ネズミ体内で人の臓器を作製 文科省、東大のiPS細胞研究を了承

 文部科学省の専門委員会は24日、東京大学の研究チームが申請をしている動物の体内で人の臓器を作る国内初の研究計画について、実施することを大筋で了承しました。同省は、動物の体内で人の臓器を育てる研究を禁止していましたが、3月に関連指針を改正し条件付きで解禁しました。

 ネズミなどの小型動物の体内で人の細胞の臓器が正常にできれば、将来は人間の臓器の大きさに近いブタやサルを使い、実際の移植に使える可能性があります。糖尿病など向けに新たな移植治療への道が広がる見通しです。

 脳死からの臓器提供が不足する状況の下、動物の体内で作った人の臓器を移植に使う手法は、海外では新たな治療として研究が進んでいます。

 研究を進めるには、人と動物の細胞が混ざった「動物性集合胚」を扱う必要があります。国内ではこれまで、倫理的観点や感染症の懸念などから動物の胎内に入れることが禁止されていたものの、文科省が3月に指針を改正し、同省などの審査をへれば研究できるようになりました。

 東京大学の中内啓光特任教授らの研究チームの計画では、人のiPS細胞(人工多能性幹細胞)を使います。遺伝子を操作して膵臓(すいぞう)を作る能力をなくしたマウスやラットの受精卵に、人のiPS細胞を注入。人と動物の細胞が混ざった動物性集合胚と呼ばれる受精卵を、代理母である動物の子宮に入れます。

 生きた体の中で起こる妊娠や胎児の発育過程に沿って育てることで、人の細胞でできた膵臓などを持つ動物の胎児が育つとしています。この胎児の臓器を移植に使えば、他人の臓器を使う脳死移植のような拒絶反応が起こりにくく治療が可能になるといいます。

 今回、人のiPS細胞を含んだ受精卵を子宮に戻すことが認められたのは、マウスとラット。人間とサイズが近い臓器を持つサルやブタの動物性集合胚は、体外での培養に限定されます。研究チームでは、マウスなどの研究を進めて、大型の動物での臓器作製につなげていきます。

 24日の専門委員会の議論では、「(研究実施状況について)こまめな報告を求めるべきだ」などの慎重な意見が出たものの、大きな反対意見はなかったといいます。

 中内特任教授はスタンフォード大学教授を兼任し、研究規制がないアメリカで人間の膵臓を持つ羊を作製する研究を進めてきた実績を有しています。東大の研究チームは、同大内の倫理委員会に計画を申請して承認され、6月下旬に文科省に計画を申請していました。

 今回の専門委員会の了承を受け、文科省は8月下旬までに東大の研究実施を正式に認める見通し。東大は、認められ次第、研究に着手します。

 中内特任教授は、「人と動物の細胞が混じった生き物を作ることに不安を感じる方がいることもわかっているので、慎重に進めるよう心掛けたい」と話しています。

 2019年7月25日(木)

 

■子宮収縮薬、基準量を超える使用が118件 新生児が重い脳性まひに 

 出産時に新生児が重い脳性まひになった事例を医師などでつくる委員会が詳しく調べたところ、人工的に子宮を収縮させる「子宮収縮薬(陣痛促進剤)」を基準量を超えて使用した事例が2013年までの5年間に全国で118件あったことが、わかりました。

 出産時に自然に陣痛が始まらなかったり、陣痛が弱かったりした場合、点滴や飲み薬の子宮収縮薬が使われます。効き具合の個人差が大きく、まれに子宮の筋肉の一部が裂ける子宮破裂が起こったり、陣痛が強くなりすぎて新生児が低酸素状態になることがあります。日本産科婦人科学会などの指針は、胎児の心拍数や陣痛の強さを連続的に調べながら、基準量の範囲内で子宮収縮薬を使うことを強く勧めています。

 産科を専門にした医師などでつくる委員会は、2013年までの5年間に出産時に新生児が重い脳性まひになった事例のうち、子宮収縮薬が使用された214人のケースを分析しました。

 その結果、使用量が基準を超えていた事例が全国で118件あったということです。また、子宮収縮薬を投与した時に実施が求められている、胎児の心拍数などの連続的な監視をしていなかった事例も85件あったということです。

 この委員会は、子宮収縮薬の適切な使用を8年前と6年前にも呼び掛けています。

 委員長を務める大阪大学医学部の木村正教授は、「使用量が基準を超えることは例外的にはあり得るが、基本的には守ることが必要だ」と話しています。

 2019年7月24日(水)

 

■福島県の甲状腺検査、がん・疑い17人が報告漏れか 民間が調査

 2011年3月の東京電力福島第1原発事故の後、福島県が当時18歳以下の子供を対象に行っている甲状腺検査で、がんやその疑いがあるという報告に含まれていない可能性がある患者が少なくとも17人いることが、民間の調査でわかりました。

 福島県は原発事故の後、被爆(ひばく)の影響を受けやすいとされる事故当時18歳以下の子供約38万人を対象に、甲状腺の検査を実施しています。

 県は専門家で作る検討委員会に、がんやその疑いと診断された患者の人数を報告しており、今年3月末時点で218人としています。

 しかし、患者や家族を支援するNPO「3・11甲状腺がん子ども基金」によりますと、支援を依頼してきた患者の中に、報告に含まれていない可能性がある人が少なくとも17人いることがわかりました。このうち16人は、県外などで自主的に受けた検査でがんやその疑いと診断されたということで、県は、把握が難しいことから報告には含まれていないとしています。

 もう1人は、事故当時4歳だった子供で、県が3年ごとに行っている検査のうち、昨年行われた3巡目の検査でがんと診断され、今年3月に県立医科大学で手術を受けましたが、県の報告には4歳の子供は含まれていないということです。

 甲状腺検査を巡っては、一昨年にも報告から漏れた4歳の子供がいることがわかり、県が調査した結果、一昨年6月末までに報告に含まれない患者が12人いたことがわかっています。

 専門家の検討委員会は県の報告を元に、がんと原発事故による被爆の関係を調べていますが、今回、新たに報告に含まれていない患者がいる可能性が明らかになったことで、正確な把握が難しいことが改めて浮き彫りになった形です。

 NPOの崎山比早子代表理事は、「正確な人数を把握しないまま、被爆の影響について検討しているのは大きな問題だ。県には集計から外れる人をなくし、信頼できる解析を行った結果を報告してもらいたい」と話しています。

 2019年7月24日(水)

 

■夏風邪のヘルパンギーナが流行 38都道府県で患者増加

 乳幼児に多い夏風邪「ヘルパンギーナ」が、全国的に流行しています。23日の国立感染症研究所の発表によると、7月8〜14日の直近1週間の患者報告数は、全国38都道府県で前週よりも増えました。

 国立感染症研究所によると、全国約3000の小児科定点医療機関が報告した患者報告数は、前週比約36%増の1医療機関当たり2・88人で、10週連続で増加しました。

 都道府県別では、山口県が6・09人で最も多く、以下は石川県(5・07人)、栃木県(4・85人)、三重県(4・64人)、茨城県と東京都(4・53人)、香川県(4・39人)、埼玉県(4・27人)、群馬県(4・08人)、富山県(3・76人)、愛媛県(3・73人)、福井県(3・57人)、熊本県(3・56人)、新潟県(3・37人)、福岡県(3・34人)、神奈川県(3・31人)、佐賀県(3・3人)、愛知県(3・19人)、高知県(3・17人)、静岡県(3・09人)などの順でした。

 山口県では警報基準値(6・0人)を上回っており、同県は「これから流行期である夏季にかけて、さらなる感染の拡大が予想される」などとしています。

 ヘルパンギーナは、ウイルスを介した感染症。乳幼児が罹患するケースが多く、2~7日の潜伏期間をへて、38度以上の発熱後にのどの痛みが出ます。口の中に水疱(すいほう)ができ、破れると潰瘍(かいよう)になり、強い痛みを生じます。のどの痛みにより、食事や水分がとれずに脱水症状に陥ることがあるため注意が必要。まれに熱性けいれんや髄膜炎、急性心筋炎を合併することがあります。

 患者のせきや、つばなどに含まれるウイルスによって感染します。予防には手洗い、うがいの徹底と、タオルの共用を避けることなどが大切です。

 2019年7月24日(水)

 

■手足口病の患者が今年累計15万人に 来週にかけピークか

 主に幼い子供が感染し、手足や口に発疹ができる「手足口病」の流行が拡大し、全国の医療機関から報告された患者数が、過去10年で最も多くなっています。国立感染症研究所は今から来週ごろが流行のピークになる可能性が高いということで、手洗いなど、予防を徹底してほしいと呼び掛けています。

 手足口病は、手や足、口の中などに発疹ができるウイルス性の感染症で、幼い子供ではまれに髄膜炎や脳炎などの重い症状を引き起こすことがあります。

 国立感染症研究所によりますと、7月8〜14日の1週間に、全国約3000の小児科の定点医療機関から報告された患者数は3万9913人で、今年の累計患者数は計15万人に達しました。1医療機関当たりでは12・64人で、過去10年で最も流行した2011年のピークの10・97人を超えて最も多くなり、最大の流行となっています。

 都道府県別では、石川県で28・52人、福井県で26・39人、福島県で22・4人、富山県で21・59人、香川県で21・29人などとなっていて、国の警報レベルの5人を大幅に超えました。34都道県で、前週よりも患者数が増加しました。

 今から来週ごろが流行のピークになる可能性が高いということで、国立感染症研究所の藤本嗣人室長は、「患者が多い状態はしばらく続くため、注意が必要だ。特に幼い子供がいる家庭や保育園などでは、オムツの適切な処理や、こまめな手洗い、それにタオルを共有しないなど予防を徹底してほしい」と呼び掛けています。

 2019年7月23日(火)

 

■アフリカ豚コレラ感染肉を密輸か ベトナム人留学生を逮捕

 ベトナムからの輸入が禁止されている品目の肉と鳥の卵を密輸したとして、警視庁は、同国籍で埼玉県川口市並木3丁目の留学生ハック・ティ・フオン・リン容疑者(23歳)を家畜伝染病予防法違反(輸入禁止)の疑いで逮捕し、23日発表しました。肉の一部から、アフリカ豚(とん)コレラウイルスの遺伝子が検出されました。

 生活環境課によると、ハック容疑者は6月13日、ベトナム発の旅客機に搭乗する際、香辛料をかけてバナナの葉で包んだ動物の肉350本(約10キロ)と鳥の卵360個(約25キロ)を段ボールなどに詰めて荷物として預け、羽田空港で受け取って密輸した疑いがあります。これらは同国から無許可での輸入が禁じられています。

 「豚肉とアヒルの卵で、自分で食べるために持ち込んだ。卵は親戚からもらい、豚肉の加工品は母の手作りだ」と供述しているといいます。量が多いことから、警視庁は販売目的だったとみて、21日に逮捕しました。

 家畜伝染病予防法は伝染病の蔓延(まんえん)などを防ぐため、一定の国・地域から特定の肉や卵を輸入することを禁じています。今回、遺伝子が検出されたアフリカ豚コレラは中国やベトナムで流行しており、人に感染する恐れはないものの、家畜への感染力が強く、ワクチンがないといいます。

 農林水産省によると、国内では昨年10月にウイルスの遺伝子が初めて確認され、以降も中国から持ち込まれた豚のソーセージなどから検出される例が54件あり、4月から検疫を強化していました。

 2019年7月23日(火)

 

■強制不妊手術、記録なし被害者22人に一時金支給 厚労省審査会が初認定

 旧優生保護法(1948~1996年)下の強制不妊手術問題で、厚生労働省は22日、4月に施行された被害者救済法に基づき、手術記録が残っていない人に一時金320万円を支給するかを判断する第三者機関「認定審査会」の初会合を開きました。手術痕や本人の説明、家族の証言などを基に27人を審査し、7道県22人への支給を認め、5人の判断を保留としました。

 一時金の支給が認められたのは、男性6人、女性16人。都道府県別では、茨城県10人、北海道と宮城県各3人、秋田県と岡山県各2人、山形県と広島県各1人でした。年代別では、70歳代の10人が最も多く、60歳代9人、80歳代3人が続きました。判断が保留となった5人は次回以降の継続審議とし、追加書類の提出などを求めていきます。

 認定審査会は、学識経験者ら8人で構成。会長には、広島高裁長官を務めた弁護士の菊池洋一氏が選ばれました。審査会後に記者会見した菊池氏は。「できるだけ迅速に対応し、関係者の皆さんの理解が得られるような審査の在り方に努めていきたい」と述べました。審査会は今後、月1回程度のペースで開催していく予定といいます。

 国の統計によると、旧優生保護法下で不妊手術を受けたのは約2万5000人に上りますが、個人が特定できる手術記録が残っているのは約3000人にとどまります。被害者救済法により、記録の有無で被害を線引きしないよう厚労省に審査会が設置されました。

 手術記録がある人に対しては、本人からの申請を各都道府県で受け付けており、6月末時点で321人が申請し、そのうち一時金の支給が認定されたのは26人にとどまっています。

 2019年7月23日(火)

 

■高校駅伝大会後5日以内に血液検査 陸連が鉄剤注射対策

 陸上の中長距離選手に競技力向上を目的として鉄剤注射が使用されている問題で、日本陸上競技連盟は19日、今年12月に京都市で開かれる全国高校駅伝大会での血液検査の義務化を正式に決め、実施要項を発表しました。全出場選手に大会終了後5日以内の検査を義務付け、血液データの利用や公表に対する同意も求めます。

 実施要項によると、対象者は出場選手全員(男子7人、女子5人)で、検査項目は血中で酸素を運ぶ「ヘモグロビン」や体内の鉄分貯蔵量の指標となる「血清フェリチン」の値など5項目。身長と体重の計測も義務付けます。

 各選手が医療機関で検査し、結果を陸連に送付。陸連は集積した血液データを基に、鉄剤注射の実態把握や抑止を目指します。大会の登録時には、注射使用の有無などを記した申告書に加え、検査への同意書の提出も求めます。検査費用は陸連が負担します。

 鉄剤注射は本来、貧血治療に用いられます。ドーピングではないものの、鉄分の過剰摂取が内臓疾患などを招く恐れがあり、陸連は5月、不適切な鉄剤注射の防止に関する指針を公表。血液検査で異常値や虚偽申告があった場合、高校駅伝の出場停止や順位の剥奪(はくだつ)などの処分を科す可能性があるとしました。

 2019年7月22日(月)

 

■ハンバーガーや牛丼を病院・介護給食に提供へ モスフードと吉野家

 モスフードサービスと吉野家ホールディングスは、病院や介護施設の給食向けのメニュー提供を始めます。7月末から給食大手の日清医療食品(東京都千代田区)を通じて、塩分を抑え、食べやすくしたハンバーガーや牛丼を提供します。少子高齢化が進む中で、店舗以外の新たな販売ルートを開拓します。

 日清医療食品は約5300件の病院や介護施設向けに、1日に約42万人の約130万食を提供しています。7月末からモスフードと吉野家から商品の供給を受けて、提供できる施設や入居者、患者に月に数回のペースで、日曜日の昼食の特別メニューとして出します。

 モスフードが病院や介護施設向けの商品を販売するのは、初めて。塩分の量を抑え、パンや肉などを軟らかくしたハンバーガーを提供します。吉野家は、通信販売で扱っている減塩牛丼やきざみ牛丼を供給します。

 日本フードサービス協会によると、病院給食の市場規模は年間8000億円超で堅調に推移しています。来店者の争奪戦が激しくなる中で、外食企業にとっては新たな成長市場になりそうです。

 「モスバーガー」や「吉野家」がチェーン展開を始めてから半世紀近くがたち、高齢者にもなじみの深いメニューになっています。

 2019年7月22日(月)

 

■子宮頸がんワクチン訴訟、12人が3次提訴 18~25歳の女性

 国が一時、接種を積極的に勧奨していた子宮頸(けい)がんワクチン(HPVワクチン)で神経障害などの重い副反応が出たとして、18~25歳の女性12人が19日、国と製薬企業2社に計1億8000万円の損害賠償を求め、大阪地裁と東京地裁に3次提訴しました。

 子宮頸がんワクチンを巡る訴訟は2016年以降、女性計120人が大阪や東京など4地裁に相次いで提訴。原告は4地裁で計132人となりました。

 新たな原告12人は、中高生だった2010年9月~2013年4月に接種したワクチンで免疫系に異常が生じ、激しい体の痛みや記憶障害などの被害を受けたと主張しています。

 訴訟で国や製薬企業は「ワクチンと原告らが訴える症状に関連はない」などと反論し、請求棄却を求めています。

 大阪市内で会見した大阪弁護団共同代表の幸永裕美弁護士は、「2013年に中止された積極的勧奨を再開すべきという声が一部から出ているが、現在も苦しんでいる被害者に向き合わずに進めることには断固反対する」と強調。今回、提訴した女性の1人は、「ワクチンを打ち8年がたつが、元気な時を思い出せない。治療法を研究して早く助けてほしい」とコメントしました。

 2019年7月21日(日)

 

■健康被害の恐れのある野菜「コンフリー」を紹介 講談社が書籍回収・交換へ

 講談社は19日、2013年発行の「からだにやさしい旬の食材 野菜の本」と、2004年3月発行の「旬の食材 春・夏の野菜」で、健康被害をもたらす恐れがある植物「コンフリー」を食べられる野菜として紹介していたと発表しました。希望があれば本を回収し、改訂版と交換します。

 1週間ほど前に社外から指摘を受け、判明したといいます。

 当該の野菜は英名の「コンフリー」で知られる、ムラサキ科のヒレハリソウ。これを含む食品を摂取して肝障害を起こす例が海外で多数報告されていたとして、厚生労働省は2004年6月に食品としての販売を禁止していました。なお、これまで国内で健康被害の報告はないとのこと。

 「からだにやさしい旬の食材 野菜の本」は、コンフリーが掲載されていた「旬の食材 春・夏の野菜」などを再編集したもので、不備はその際の確認不足に起因するとのこと。コンフリーが販売禁止になる前の内容を新しい本に転用したものと思われ、「からだにやさしい旬の食材 野菜の本」はこれまでに約5万5000部、「旬の食材 春・夏の野菜」は約3万6000部を発行しました。

 講談社は両書の所有者に、送料着払いで講談社エディトリアルへ送るよう呼び掛けました。改訂版の返送時期は、近日中に案内するとのことです。

 2019年7月21日(日)

 

■手術用抗菌薬が不足、医療機関4割以上に影響 厚労省調査

 手術で感染症を防ぐために広く使われている抗菌薬「セファゾリン」の供給が不足している問題で、4割以上の医療機関で使用を制限したり、使えなくなったりしていることが明らかになりました。厚生労働省が17日、全国約1000の医療機関に対して行ったアンケート結果を発表しました。

 セファゾリンは、日医工(富山市)が国内シェアの約6割を占めます。昨年末からイタリアから輸入する原薬に異物が混入するようになり、生産を停止し、今年3月上旬には在庫がなくなりました。医療機関では、他社製のセファゾリンや別の抗菌薬で対応しています。

 厚労省のアンケートでは、特に病床数が300以上の医療機関では5割以上で使用を制限したり、使えなくなったりしていました。しかし、手術を延期した医療機関は、整形外科など4つにとどまったといいます。

 セファゾリンは世界保健機関(WHO)が必要不可欠な医薬品に挙げる薬の一つで、黄色ブドウ球菌などに効果が高く、多くの手術で感染症を防ぐ第一選択薬になっています。厚労省によると、他社は生産体制に余裕がなく大幅な増産が難しい状況といいます。日医工によると、異物のない原薬が供給できつつあり、年末までにセファゾリンの出荷を再開できる予定といいます。

 2019年7月21日(日)

 

■乳化剤「不使用」「無添加」の表示を自粛へ 日本パン公正取引協議会

 全国の製パン会社などが加盟する日本パン公正取引協議会は、食品添加物の乳化剤やイーストフードについて、「不使用」「無添加」とパンの袋に表示することをやめる自主基準を設けました。

 業界大手の山崎製パンが3月、市販されているパンの袋に「乳化剤は使用しておりません」「乳化剤不使用」などと表示された他社製品から、乳化剤と同じ成分が検出されたという調査結果を公表し、「不適切な表示であり、直ちに取りやめるべきだ」と訴えていました。

 パンの保水性を高めて長く柔らかさを保ったり、機械による生地の傷を減らしたりするため、山崎製パンは乳化剤を製パン工程で使っていて、食品表示法に基づき、商品に食品添加物として表示しています。

 一方、乳化剤をそのまま添加する代わりに、卵黄油や酵素を使って乳化剤と同様の成分を製品中に生成する製法があります。山崎製パンが他3社の3製品を科学的に分析したところ、こうした代替技術を使っていると推測でき、乳化剤を使った場合と品質面で大きな差はないとし、「表示義務を回避する加工方法を採っている」と指摘していました。

 厚生労働省や消費者庁によると、卵黄油は「食品」扱い。酵素は食品添加物に相当するものの、最終的に商品に残らないかわずかに残っても影響がないため、表示は免除されています。

 しかし、パン業界内外から「不使用」「無添加」表示は不適切で、消費者に誤認を与えるとの声が上がったため、日本パン公正取引協議会に加盟する製パン会社は現在使用している包装がなくなり次第、順次、表示を自粛する見通しです。

 2019年7月19日(金)

 

■歯科機器をインターネットで無許可販売 20年前製造の中古品も

 インターネットを通じて、歯を削る医療機器を無許可で歯科医に売ったとして、大阪府警生活環境課は18日、歯科技工士の浜田徹(61歳)(大阪府池田市)、知人で医療機器販売会社員の瀬尾隆昭(60歳)(大阪市淀川区)両容疑者を医薬品医療機器法違反(無許可販売)容疑で逮捕しました。

 2人は、約20年前に作られ、すでに製造が終了した中古品を販売しており、府警は入手経路などを調べています。

 発表では、2人は今年3~5月、同法に基づく都道府県などの販売許可を得ずに、先端のドリルで歯を削る「ハンドピース」2点と、滅菌器1点をネットオークションで、大阪府、兵庫県、愛知県の歯科医3人に1万~約5万円で売った疑い。新品のハンドピースは、約20万円するものもあります。

 浜田容疑者は「副業としていた」と供述する一方、容疑を一部否認し、瀬尾容疑者は認めているといいます。

 府警によると、2人が販売した3点のうち2点は、約20年前に製造された中古品でした。いずれも同法に基づき、故障すれば治療に重大な影響を及ぼす「特定保守管理医療機器」に指定され、定期点検など適切な保守管理を受ける必要があります。だが、すでに製造が終わっているため、メンテナンスが十分に受けられない状態でした。

 2人は約10年間にわたり、多数の医師らにハンドピースなど約1000点以上を販売し、1000万円以上を売り上げていたとみられ、「治療に使って壊れた」と府警に説明する医師もいました。

 医療機器を巡っては近年、厚生労働省にインターネットで中古品が売られているとの報告が多数寄せられていました。医療関係者によると、安価で手に入るため、一部の医師らが許可の有無を確認せず、購入しているとみられます。

 2019年7月19日(金)

 

■一般用医薬品、グラクソ・スミスクライン首位 2018年世界シェア

 一般用医薬品の2018年の世界シェアが、明らかになりました。2017年に1位だったアメリカのジョンソン・エンド・ジョンソンが2位に後退し、ごくわずかな差でイギリスのグラクソ・スミスクラインが1位に浮上しました。

 大型M&A(合併・買収)を繰り返すグラクソ・スミスクラインが、世界で販売を伸ばしました。2019年には、ジョンソン・エンド・ジョンソンを引き離す可能性が高そうです。

 グラクソ・スミスクラインは2018年6月までに、スイスのノバルティスから1兆3700億円で大衆薬事業を買収しました。2018年の大衆薬事業の売り上げは77億ポンド(約1兆1350億円)で、医療用医薬品の173億ポンドに次ぐ規模となりました。売上高全体の25%を占めています。

 ウォルムズリー最高経営責任者(CEO)の出身母体でもある大衆薬事業は、グラクソ・スミスクラインにとって注力事業の位置付けです。2017年に17・7%だった同事業の売上高営業利益率を、2022年までに20%台半ばに引き上げる目標を掲げています。

 目標達成に向け、2018年12月にアメリカのファイザーとの事業統合を発表。2019年中に合弁会社が設立される予定です。

 M&Aの狙いは、規模の利益を生み出すことです。グラクソ・スミスクラインの大衆薬の主力製品は、歯磨きの「センソダイン」(日本名シュミテクト)、抗炎症剤「ボルタレン」、風邪薬「コンタック」などがあります。

 その中で「コンタック」は、イブプロフェンなど特許切れの成分が中心。他社品と効能で違いを出すことが難しいぶん、ブランド戦略に頼り、宣伝費用がかさみやすい構造があります。

 製造については、大衆薬企業の多くは外部委託しています。グラクソ・スミスクラインなどは統合により発注量を増やすことで取引価格を引き下げ、収益力を高める戦略です。

 一方、2位となったジョンソン・エンド・ジョンソン。2018年に化粧品ブランド「ドクターシーラボ」を手掛けるシーズ・ホールディングスを子会社化したものの、大規模な買収はありませんでした。北米地域での売り上げが全体の47%を占めるため、為替レートの影響を受けて首位交代となりました。

 世界の大手製薬会社の間では、創薬に注力するために大衆薬事業を切り離す動きもみられます。世界の大衆薬市場は、販売金額が1157億ドル(約12兆4000億円)で前年比4・3%増。成長が見込まれる中、今後も上位の大衆薬メーカーが主導するM&Aは続きそうです。

 一方、日本企業の存在感は薄く、日本最大手の大正製薬でも販売金額が10億8700万ドル(約1200億円)にとどまります。同社の大衆薬の海外売上比率は17%と、国内偏重となっています。日本の大衆薬市場は人口減少を背景に、長期的には縮小傾向にあり、国内各社も海外事業の拡大が今後の成長には欠かせません。

 2019年7月19日(金)

 

■尿酸値が高い人、痛風になる前に薬を 治療指針、8年ぶり改定

 病気の疑いがある人も含めると、日本人の10人に1人が関係する痛風の治療について、日本痛風・尿酸核酸学会は約8年ぶりに指針を改訂しました。これまでと違い、発作の痛みがなくても尿酸値が高い患者に対し、腎障害があれば薬を勧めることを明確にしました。

 東京都墨田区で薬局を営む若林茂雄さん(82歳)は、約6年前に左足親指の付け根に痛みがあったため、区内の痛風専門病院を訪ねました。心当たりはお酒で、晩酌で毎日3合ほどを飲んでいました。道場で長く柔道を教える師範でもあり、関係者との宴会も多かったといいます。

 「診察の2、3年前から親指が時々はれ、痛みがあった」と若林さん。診察時は、親指の付け根が真っ赤にはれていました。両足のひざ下はむくみ、指で皮膚を押してもなかなか戻らない状態でした。

 診察した両国東口クリニックの医師、大山博司さん(61歳)は、「痛風結節(けっせつ)というしこりが左足の親指の付け根だけでなく、右中指の関節にもあった」と話しています。結節は長期間、痛風の発作が起きていたことを示します。検査すると、血液1デシリットル中に尿酸が8・5ミリグラムと、治療の目安となる7ミリグラムを上回っていました。

 尿酸は、食事に含まれる「プリン体」が分解されてできます。尿酸が体内にたまり、結晶化します。この結晶を白血球が異物とみなして攻撃すると炎症が起き、激しい痛みが生じるのが、痛風です。

 大山さんは、若林さんが重度の痛風で、慢性的な腎障害が起きていると診断し、薬での治療を開始。若林さんの場合、痛風発作による痛みがない段階でも、尿酸値が高く腎障害があることがわかれば、薬で尿酸値を下げる治療の対象となった可能性があります。

 日本痛風・尿酸核酸学会は昨年末、8年ぶりに痛風治療の指針を改訂。高い尿酸値が腎臓に悪影響を及ぼす場合、早めに薬を使った治療を勧めることにしました。

 腎臓は、痛風と密接な関係があります。尿酸値が高い状態が続くと、尿酸の結晶が腎臓にたまって炎症を起こし、「痛風腎」になることもあります。

 治療を始めてしばらくすると、若林さんの手足からむくみが消え、息切れもなくなりました。現在は、プリン体の多い干物や魚卵を控えて禁酒し、プリン体を1日400ミリグラムに制限する食事療法をしています。薬と合わせ、尿酸は結晶ができにくい6ミリグラム以下にコントロールされ、腎臓機能の数値も少し改善しました。

 大山さんは、「今は発作もずっとなく、よくコントロールされた状態。痛風は薬をのんだら治まるので、繰り返し発作が起きても放置する方は多い。慢性的になって結節ができて、腎機能が悪くなる方もいるので尿酸値が高い場合は、早めのコントロールが大切」と話しています。

 女性ホルモンに尿酸の排出を促す働きがあるため女性患者は少ないものの、痛風患者は右肩上がりで増えています。日本痛風・尿酸核酸学会の推定では2013年に100万人を超えました。血液1デシリットル中の尿酸が7ミリグラムを上回る高尿酸血症の患者は、その10倍と推定されます。かつて50歳代が多かった発症年齢は低下傾向で、20歳~30歳代の患者も増えました。

 増加の背景には、尿酸につながるプリン体が多い肉類や、尿酸値を上げる働きがあるアルコールが増えた食生活の変化があります。

 日本痛風・尿酸核酸学会の新指針は、尿酸値が高くても痛風発作が起きていない高尿酸血症患者に対し、薬物療法を「条件付きで推奨」としました。

 対象は、腎臓機能に障害がある患者。指針作成にかかわった帝京平成大学の内田俊也教授(腎臓病学)は、「薬を使えば慢性腎臓病の進行の抑制に効果があることなどから、新しい指針では一歩踏み込むことができた」といいます。一方、腎臓機能に障害がない患者には、薬を勧めないとしました。

 大阪大学の守山敏樹教授(腎臓内科専門医)は、「欧米では痛風で関節の炎症がなければ、薬による治療は認められていない。尿酸降下薬は先行する薬だけでなく、国産新薬も出てきたが、まだ論文が少ない。今回の指針は研究結果を精査し、そこを慎重に評価している」と話しています。

 2019年7月18日(木)

 

■WHOのエボラ緊急事態宣言を受けて注意喚起 厚労省

 アフリカ中部のコンゴ民主共和国(旧ザイール)の東部でエボラ出血熱の患者が増え続け、世界保健機関(WHO)が緊急事態を宣言したことを受けて、厚生労働省は海外に出国する人に対し患者の発生地域に近付かないよう注意を呼び掛けています。

 エボラ出血熱は致死率が高く大きな流行になると多数の死者が出る感染症で、患者の血液や体液に接触することで人から人へ感染します。

 コンゴ民主共和国では東部の北キブ州などで2018年8月以降、エボラ出血熱の患者が増え続けこれまでに1676人が死亡し、今月には隣国のウガンダを訪れた女性の感染も明らかになりました。

 WHOは17日、感染が周辺国にも広がる恐れがあるとして「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」を宣言しました。

 これを受けて厚労省はコンゴ民主共和国やウガンダに出国する人に対して、患者の発生地域や動物の死体に近付かないこと、生肉を食べないことなど感染に注意して行動するよう呼び掛けています。

 また、これらの国から日本に入国した人に対しては21日間、体温や健康状態を検疫所に報告するよう求めています。

 日本国内ではこれまでにエボラ出血熱の患者は発生していませんが、厚労省は「注意喚起や検疫の対応を強化したい」としています。

 エボラ出血熱などウイルスによる感染症に詳しい長崎大学熱帯医学研究所の森田公一所長は、「これまでは比較的、ほかの地域から隔離された場所で発生していたが、今回はコンゴ民主共和国の中でもルワンダとの国境沿いで、かなり人口の多い町で発生したと聞いている。日本で発生する可能性はまだ低いと考えるが、リスクは確実に上がったといえるのではないか」と話しています。

 エボラ出血熱など海外の感染症の現状に詳しい東京医科大学渡航者医療センターの濱田篤郎教授は、「患者が確認されたのはルワンダの国境に近いコンゴ民主共和国側の町で、1日に1万人以上が国境を越えて行き来するとされているため、周辺の国に感染が拡大するリスクが高まったとして、WHOが緊急事態を宣言したものとみられる」と指摘しています。

 現在、発生している地域やこれからルワンダなどを訪れる予定がある場合は、現地では病気の人には不用意に近付かないことや、けがや病気で現地の病院を受診する場合は、設備の整った衛生状態のよい病院を選ぶこと、それに、ふだんから手洗いを徹底するなど感染症の予防に努めることの3つの点を挙げて注意を呼び掛けています。

 ただし、コンゴ民主共和国以外のルワンダやその周辺の国は、政治的に安定していて公衆衛生の意識も高いため、感染の拡大が急激に進む状況ではなく、そうした国への渡航をすぐに中止しなくてはいけない状態とまではいえないとしています。

 濱田教授は、「発生地域周辺に渡航する際には、外務省や厚生労働省が出す現地の最新の情報を常にチェックしてほしい」と話しています。

 2019年7月18日(木)

 

■エボラ出血熱、WHOが緊急事態を宣言 1676人が死亡し感染拡大の恐れ

 アフリカ中部のコンゴ民主共和国(旧ザイール)の東部で患者が増え続けているエボラ出血熱について、世界保健機関(WHO)は専門家による緊急の会合を開き、感染が周辺国にも広がる恐れがあるとして、「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」を宣言しました。

 アフリカ中部のコンゴ民主共和国では、東部の北キブ州などで2018年8月以降、エボラ出血熱の患者が増え続けており、これまでに1676人が死亡しました。

 今月には国境を越えて隣国ウガンダを訪れた女性の感染が明らかになったほか、別の隣国であるルワンダとの国境近くの町でも患者が確認されました。

 こうした事態を受けてWHOは17日、スイスのジュネーブで専門家による緊急の会合を開きました。会合の後、記者会見を行ったWHOのテドロス事務局長は、感染が周辺国にも広がる恐れがあるとして、「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」を宣言しました。

 宣言ではコンゴ民主共和国とその周辺国に対して、国境などで感染の疑いがある人の検査を強化することや、感染の拡大を防ぐため、国民への正確な情報提供を行うことなどを勧告しています。

 WHOによる緊急事態宣言は2016年2月のジカ熱以来。エボラ出血熱では2014年8月に西アフリカでの流行で宣言しており、今回が2回目となります。

 記者会見でテドロス事務局長は、「感染が広がる地域の人達を孤立させてはならない。今こそ支援を強める時だ」と述べて、国際社会に支援を呼び掛けました。しかし、「現時点では国際的な脅威にはなっていない」と指摘し、渡航や貿易の制限措置は取らないとしました。

 エボラ出血熱は、エボラウイルスよる感染症で、患者の血液や体液に接触することで人から人へ感染します。致死率が高く、大きな流行になると多数の死者を伴います。

 2014年から約2年にわたって、西アフリカのギニア、リベリア、シエラレオネの3カ国で過去最悪の規模で流行し、1万1000人以上が犠牲となりました。

 2019年7月18日(木)

 

■エイズ関連の2018年の死者数約77万人で、2010年比で3割減 国連報告

 国連(UN)は16日、昨年のエイズウイルス(HIV)関連の死者数は約77万人で、2010年に比べると3割以上減少したと報告しました。一方で、新規感染の予防に向けた世界的な取り組みは、資金の枯渇に伴い失速していると警告しています。

 国連合同エイズ計画(UNAIDS)の年次報告によると、現在HIVに感染している人は推定3790万人で、うち抗レトロウイルス療法(ART)を受けている人は過去最多の2330万人に上ったといいます。

 報告では、2018年のエイズ関連の死者数が約77万人で、2010年の120万人に比べて30%以上減少したとして、2005年の190万人をピークに2017年時点で94万人にまで減少するなど、状況が大きく改善されてきていることを強調しました。

 一方で、世界のエイズ対策の弱点も指摘。流行規模が最大のアフリカ東部および南部では、エイズ関連の死者数がここ10年間で大きく減っているのに対し、東ヨーロッパおよび中央アジアで5%、中東および北アフリカでは9%増えたとしています。

 さらに、政治的意志の欠如が資金の減少とあいまって、これまでの状況改善を後退させかねないとの懸念も示しています。2018年はエイズ対策に190億ドル(約2兆円)が充当されたものの、2020年までに必要とされる262億ドル(約2兆8000億円)には届いていません。

 2019年7月18日(木)

 

■がん検診で「要検査」、岐阜市が「異常なし」と誤通知 女性1人が死亡

 岐阜市が行ったがん検診で、「要精密検査」などとされた5人に、市が誤って「異常なし」とする通知書を送り、このうち50歳代の女性1人が16日、胃がんで死亡していたことがわかりました。市は「通知ミスが発見の遅れにつながった可能性は否定できない」として、遺族に謝罪しました。

 岐阜市によりますと、2017年7月から今年2月までに肺がん、胃がん、乳がんの検診を受けた50歳代から70歳代の女性合わせて5人に対し、検診結果が「要精密検査」や「要注意」だったにもかかわらず、誤って「異常なし」と通知していたということです。

 市によりますと、このうち50歳代の女性1人は今年1月に胃がん検診を受け、委託先の検診機関が「要精密検査」と判定したにもかかわらず、市の職員が誤って「異常なし」とする通知書を送ったということで、この女性は4月に病院を受診して胃がんと肺がんが見付かり、16日、胃がんのため死亡したということです。

 岐阜市の柴橋正直市長は、「市民のがん検診に対する信用を損なったことは誠に遺憾で、再発防止策を徹底させます」としています。

 岐阜市によりますと、今回のミスは16日に死亡した50歳代の女性の家族が今月10日、「以前受けたがん検診の検診票を見せてほしい」と市に問い合わせたことからわかりました。

 問い合わせを受けて確認したところ、この女性は今年1月10日に胃がん検診を受け、市は1月28日「異常なし」という通知書を作成して送っていましたが、通知書のもととなる委託先の検診機関の検診票には「要精密検査」と記されていました。

 このため市が過去5年間に行ったがん検診、約16万件について通知書の内容と検診票を照らし合わせて調べた結果、5件の通知書で誤って「異常なし」としたミスが見付かったということです。死亡した女性以外の4人にがんの自覚症状はないといい、市は精密検査などの受診を促しています。

 通知書は検診機関が記入する検診票をもとに岐阜市が市内の4カ所で作成していますが、5件のミスはいずれも「岐阜市中市民健康センター」で起き、すでに退職した市の職員が2件を、別の市の職員が3件をそれぞれ担当していたということです。

 市はマニュアルで、通知書を作成する際には2人1組で読み合わせるよう定めていますが、今回ミスをした職員は読み合わせをしていなかったということです。

 市は今後、読み合わせを徹底するとともに、上司が通知書をチェックすることで再発を防止したいとしています。

 岐阜市によりますと、市内では市民を対象に毎年度、7月から2月にかけてがん検診が行われ、年間約4万5000人が受診しています。

 このうち大腸がんと子宮がんについては、市から委託を受けた医療機関がそれぞれの施設で検診から通知書の作成と送付まで行いますが、肺がんと胃がん、乳がんは、医療機関が公民館などに検診車を向かわせて検診を行い、結果を検診票に記入した後、市が通知書を作成して送っています。

 2019年7月17日(水)

 

■10~30歳代の死因1位は自殺 G7で日本のみが1位

 厚生労働省は16日、自殺対策白書(2019年版)を公表しました。自殺者数は全体として減る傾向にあるものの、10~30歳代の死因の第1位は依然として自殺となっています。

 白書では、15〜34歳の死因順位の第1位が自殺となっているのは「主要7カ国(G7)の中でも日本のみである」と指摘しています。

 若年層の自殺を巡る状況について、2018年までの10年ぶんを分析したところ、10歳代では学業不振や進路の悩みなど学校問題の割合が最も高くなりました。また、家庭問題の割合が増え、健康問題は減る傾向にありました。
 
 このほか、小中学生・高校生における自殺の原因・動機も記載しています。小学生の男子は「家族からのしつけ・叱責」、女子は「親子関係の不和」、中学生の男子は「学業不振」、女子は「親子関係の不和」、高校生の男子は「学業不振」、女子は「うつ」の比率が最も高くなっていることに触れ、「自殺は『特別な家庭』で起こるものではなく、誰にでも起こり得るものであることを改めて認識する必要がある」としています。

 10歳代の自殺の手段については、「男女とも、他の年代に比べ、飛び降りや飛び込みといった、突発的に行われ得る手段による自殺が多くなっている」と説明しています。

 20~30歳代では、自殺の原因として健康問題の割合が減っているものの一番高く、経済と生活、勤務の問題も大きくなりました。20〜30歳代の女性に関しては、自殺未遂歴のある自殺者が4割を超えているといいます。自殺者全体の減少には「健康問題の減少」が寄与しているとし、その主な要因として、うつ病と統合失調症の減少を挙げています。

 厚労省も、自殺防止のために会員制交流サイト(SNS)を活用した相談事業をしていて、2018年度の相談件数は延べ2万2725件。20歳未満が43・9%と最多で、次いで20歳代の41・3%と、若年層が多くなりました。性別では、女性が92・1%を占めました。相談内容でみると、「メンタル不調」が最も多く、「自殺念慮」や「家族」「学校」などと続きました。

 SNSの相談について、厚労省は「支援につながりにくかった人からの相談の受け皿になっている」と評価。今後の課題として「多数の相談が寄せられていて、どの相談を優先すべきか意識し、効果的に実施する必要がある」としています。

 2019年7月17日(水)

 

■市販のベビーフードに過剰な糖分 WHOが報告書で警告

 国連(UN)は15日、市販されているベビーフードの多くには糖分が過剰に含まれており、その原材料リストも混乱を招くような表示になっているとする報告書を発表しました。報告書では、幼児期の食事を向上させるための新たなガイドラインが提案されています。

 世界保健機関(WHO)は2017年11月~2018年1月の期間に、オーストリア、ブルガリア、イスラエル、ハンガリーの小売店516カ所で販売されていた製品7955品目を調べました。

 「調査対象製品の約半数では(中略)カロリーの30%以上が全糖類に由来しており、また約3分の1の製品に添加の糖類や他の甘味料が含まれていた」と、WHO欧州地域事務局は述べています。

 果物や野菜などの糖類を天然に含む食品は幼児期の食事にふさわしいものとなり得る一方で、「市販の製品に含まれる多量の糖質は懸念される部分となっている」とWHOは指摘しました。

 また、糖分摂取量が多いと、過体重や虫歯のリスクが高くなる恐れがあり、幼児期にこうした製品に接することで、生涯にわたって糖分の多い食べ物を好むようになる恐れもあります。

 WHO欧州地域事務局のジュジャンナ・ヤカブ局長は声明で、「やはり幼児期と小児期早期の良好な栄養状態が、子供の最善の成長と発達を促し、将来の健康状態を向上させる鍵(かぎ)となる」と述べています。

 報告書は他方で、調査対象となったベビーフードの最大60%において、生後6カ月未満の乳児向けとの表示を確認したとしています。しかし、WHOは2016年の世界的なガイドラインで「乳児は生後6カ月まで母乳のみで育てる」と勧告しているため、こうした表示はWHOの考えとは相反するものです。

 WHOは現在、糖分摂取に関するガイドラインの更新作業を進めており、加盟国にとっては、糖分の取りすぎを抑制する新規制導入の指針となります。

 母乳代替品の推進に歯止めをかけたいWHOは、生後6カ月から2歳までの子供について、家庭で用意した栄養価の高い食品で育てるよう推奨しています。また、ベビーフードでの添加糖類と甘味料の使用禁止を呼び掛けるとともに、砂糖菓子と果汁や濃縮ミルクを含む甘味飲料には3歳未満の子供向けの製品ではない旨を表示すべきだとも主張しています。

 2019年7月17日(水)

 

■世界の人口の9人に1人が栄養不足 北朝鮮では半数近く

 国連食糧農業機関(FAO)は15日、世界の食料安全保障と栄養摂取に関する報告書を発表し、2018年に世界の人口の9人に1人に相当する8億2000万人が栄養不足に陥っていると指摘しました。北朝鮮では人口の半数近くが栄養不足で、北朝鮮の食糧事情が悪化している状況が浮き彫りとなりました。

 報告書によると、世界の栄養不足人口比率は2004~2006年の14・4%から、2016~2018年は10・7%に減少し、改善がみられました。一方、北朝鮮では、2004~2006年の35・4%から2016~2018年は47・8%と大幅に増加しているといいます。

 2016〜2018年の北朝鮮の栄養不良人口は、推定1220万人。各国の全人口に占める栄養不良人口比(推定)で、中央アフリカ(59・6%)、ジンバブエ(51・3%)、ハイチ(49・3%)に次ぎ4番目に高くなりました。

 国連が今年3月に公表した報告書でも、北朝鮮の2018年の食糧生産量が自然災害などによって過去10年で最低水準まで落ち込み、特に農村部で食糧不足が深刻になっていることが指摘されています。

 2019年7月16日(火)

 

■手足口病の流行、九州から東へ拡大 患者数が過去10年で最多に

 主に幼い子供が感染し、手足や口に発疹ができる「手足口病」の流行が拡大しています。患者数はこの時期としては過去10年で最も多くなっており、国立感染症研究所は今後ピークを迎える可能性が高いとして、手洗いなど、予防を徹底してほしいと呼び掛けています。

 手足口病は、手や足、口の中などに発疹ができるウイルス性の感染症で、幼い子供ではまれに脳炎などの重い症状を引き起こすことがあります。

 国立感染症研究所によりますと、7月1日から7日までの1週間に、全国の約3000の小児科の医療機関から報告された患者数は3万1065人で、1医療機関当たりでは9・79人となりました。

 この時期としては、過去10年で2011年の9・72人を上回り最も大きな流行となっています。

 都道府県別では、福井県で31・13人、石川県で26・76人、香川県で17・11人、三重県で17・05人、滋賀県で16・41人、鳥取県で16・21人などとなっていて、流行の中心が6月時点で最も多かった九州地方から、中部地方など東に移ってきています。

 流行は、今後1週間から2週間でピークを迎える可能性が高いということで、国立感染症研究所の藤本嗣人室長は「特に幼い子供がいる家庭や保育園などでは、オムツの適切な処理やこまめな手洗い、それにタオルを共有しないなど予防を徹底してほしい」と呼び掛けています。

 各都道府県ごとの1医療機関当たりの患者数は次のとおりです。

 北海道1・86人、青森県3・83人、岩手県1・83人、宮城県2・64人、秋田県0・43人、山形県6・27人、福島県15・66人、茨城県12・41人、栃木県5・83人、群馬県4・83人、埼玉県11・03人、千葉県14・22人、東京都9・72人、神奈川県10・31人、新潟県11・11人、富山県13・28人、石川県26・76人、福井県31・13人、山梨県4・08人、長野県3人、岐阜県8・08人、静岡県7・7人、愛知県9・76人、三重県17・05人、滋賀県16・41人、京都府11・21人、大阪府8・78人、兵庫県15・19人、奈良県9・32人、和歌山県10・3人、鳥取県16・21人、島根県9・91人、岡山県9・65人、広島県7・92人、山口県15・57人、徳島県5・09人、香川県17・11人、愛媛県10・84人、高知県16・07人、福岡県13・1人、佐賀県12・35人、長崎県8・93人、熊本県10・42人、大分県6・39人、宮崎県2・33人、鹿児島県5人、沖縄県1・38人

 2019年7月16日(火)

 

■ノバルティス、1億円以上の遺伝性疾患治療薬を発売へ 医療保険財政圧迫も

 1億円を超える超高額薬が、年内にも登場します。スイスの製薬大手ノバルティスがアメリカで約2億3000万円で発売し、日本でも製造販売を申請している乳幼児の難病治療薬「ゾルゲンスマ」を厚生労働省が承認する見通しとなりました。

 白血病治療薬「キムリア」の公定価格(薬価)が5月、過去最高の3349万円に決まり注目されていました。相次ぐ高額薬の登場は、日本の医療保険財政を揺さぶる可能性があります。

 医療費の大半は、国民健康保険や会社員が加入する健康保険組合が支払います。会社員の子供に投薬する場合、親の収入によって月間の医療費に上限を設ける高額療養費制度もあります。ゾルゲンスマの対象疾患は国が難病に指定しており、費用の大部分は国が負担します。

 ゾルゲンスマは、遺伝性疾患で筋肉が委縮する脊髄性筋委縮症(SMA)の2歳以下の乳幼児に対する治療薬。SMAは乳幼児の10万人に1~2人が発症する希少疾患で患者数は国内で数百人程度だといいます。重症の場合は呼吸不全に陥り死亡率が高くなるため、乳幼児の遺伝性疾患の死因の第1位とされています。

 アメリカでの価格は、独立機関の助言を受けてノバルティスが5月に決めました。ゾルゲンスマなしで治療を10年続ける場合にかかるとされる費用の半分強の約2億3000万円に設定しました。アメリカでは、効果があった場合にだけ医療保険会社が製薬会社に薬剤費を支払う仕組みなどが検討されています。

 ノバルティスは、日本では2018年11月にゾルゲンスマの製造販売の承認を申請しました。厚生労働省は通常1年~1年半かかる審査を半年~1年程度に短縮する「先駆け審査指定制度」の対象に指定。早ければ年内にも承認される可能性が高くなっています。

 薬価は、厚生労働相の諮問機関の中央社会保険医療協議会(中医協)が決めます。海外での販売価格を参考にするため、ゾルゲンスマは1億円以上が確実視されています。

 高額薬の扱いは、政策課題になっています。小野薬品工業などのがん免疫薬「オプジーボ」は、年換算の価格が当初は約3500万円だったものの、財務省が高額を問題視し、2017年に半分に下げられました。

 ゾルゲンスマは、化学物質を合成してつくる従来の医薬品とは違い、特殊なウイルスで病気の原因となる患者の遺伝子を書き換えます。1回限りの投薬で治療できるといいます。

 2019年7月16日(火)

 

■マイナンバーカードに障害者手帳、お薬手帳など一体化 2021年以降に

 政府はマイナンバーカードと、求人紹介や雇用保険の手続きでハローワークを利用する時に必要な「ハローワークカード」など各種証明書類を一体化します。「障害者手帳」や処方薬の履歴を記録する「お薬手帳」は、2021年中にも統合します。マイナンバーカード1枚でさまざまな用途に使えるようにし、利便性向上とカードの普及につなげます。

 政府はカードが全国民に普及すれば、行政手続きや金融サービスなど官民の手続きのデジタル化が進むとみています。カードの交付実績は5月末時点で約1702万枚で、3年後をメドに1億枚以上を目標とします。

 ハローワークカードや教員免許状は、2022年度以降に一体化します。職業訓練を受ける人などが求職の際に利用する「ジョブ・カード」も、同時期にマイナンバーカードで代用できるようにします。

 お薬手帳は2021年10月から、カードに搭載されICチップで個人認証すれば、インターネット上で自分が過去に服薬した薬を確認できるようになります。複数の医療機関から薬を処方されても一括して管理することで、二重投薬や薬の副作用を防ぎます。政府はお薬手帳の取得を促しており、現在は薬局に手帳を持参して薬剤師らに記入してもらう必要があります。

 政府は今年6月に、2021年3月から健康保険証の代用を可能にするなどのマイナンバーカードの普及策をまとめました。8月をめどに、各種証明書類との一体化も盛り込んだ詳細な工程表をまとめる予定。政府はカードを紛失したり盗まれたりしても、ICチップは外部から読み取られる恐れがなく、パスワードなどが漏れない限り情報が外部に流出することはないと説明しています。

 2019年7月15日(月)

 

■「妊婦加算」再開に向けて検討進む 厚労省、加算要件の厳格化も

 妊婦が医療機関を受診した際に自己負担が上乗せされる「妊婦加算」の再開に向けた検討が、活発化しています。制度は妊婦側からの反発で凍結されたものの、医療関係者からは「妊婦に配慮した診療を評価する仕組みは必要」との根強い意見があります。厚生労働省は2020年度からの再開も視野に入れ、加算要件の厳格化など制度の見直しも模索します。

 妊産婦への医療の在り方を検討してきた厚労省の有識者会議は先月、「妊産婦の診療には、通常より慎重な対応や、胎児や乳児への配慮が必要」との意見を取りまとめました。妊婦加算については「質の高い診療やこれまで十分に行われてこなかった取り組みを評価・推進することは必要」との見解を示し、事実上、加算の必要性を認めた形です。

 妊婦加算は、妊婦の診療に一律で診療報酬を上乗せする仕組み。昨年4月に導入されたものの、投薬を伴わないコンタクトレンズの処方など。妊娠とは直接関係ない場合にも加算が適用されていたことが発覚。支払い時に初めて自己負担の発生を知る人もいるなど批判が相次いだため、今年1月、凍結に追い込まれました。

 制度には、リスクを恐れて妊婦の診療を医療機関が敬遠しないよう促す狙いもありました。厚労省が3月に実施した調査では、妊娠中に産婦人科以外の診療科にかかろうとした736人のうち約15%が「他の病院・診療所にかかるよう勧められたことがある」と回答。妊婦への診療体制の在り方が課題として残されているのも事実です。

 再開を巡る議論は今秋から、厚労相の諮問機関である中央社会保険医療協議会(中医協)で本格化します。有識者会議は妊婦加算について「そのままの形で再開されることは適当でない」と注文を付けており、委員からは「妊産婦にとって自己負担に見合う内容だと実感できるかがポイント」との指摘もありました。こうした上で、加算要件について中医協で協議することも求めており、制度は名称が変更されるなど新たな形で再スタートを切る可能性もあります。

 厚労省は6月12日に開かれた中医協の総会で、有識者会議の意見を報告。委員からは、加算の取り扱いだけでなく、妊産婦に対する診療体制の在り方についても「議論を深めていかなければいけない」など再開へ前向きな意見も出ました。

 ただ、少子化対策が進められる中、与党からは「妊婦に自己負担が生じるのは容認できない」との反発も上がってきました。公費助成を求める声もあり、妊婦の負担軽減が議論の焦点となっていくことも予想されます。

 妊婦加算は、胎児の影響を考慮した薬の処方などが必要な妊婦に対し、「丁寧な診療の強化」を目的に新設されました。妊婦を診療した場合、初診で750円、再診で380円が上乗せされて医療機関に入ります。妊婦の自己負担(原則3割)は初診で約230円、再診で約110円増えます。深夜や休日、診療時間外はさらに上乗せされます。通常の妊婦健診では、加算されません。

 2019年7月15日(月)

 

■腸内細菌を病気の治療に生かす研究開発が加速 動脈硬化治療薬や予防技術も 

 人の糞便(ふんべん)に含まれる100兆個の細菌を病気の治療に生かす研究開発が、加速し始めました。解析技術が進化し、腸にすむ腸内細菌が体のさまざまな機能や病気に影響していることが詳しくわかってきたためで、菌の力で炎症を抑える薬の開発や、健康な人の便にいる菌を腸の難病患者に移植する便微生物移植など、医療への応用が加速しています。

 中堅製薬の日東薬品工業(京都府向日市)は、動脈硬化の治療薬の開発に着手。人工知能(AI)を活用した予防技術の開発も進んでいます。

 日東薬品は5月に、国内で初めてとされる腸内細菌を使った創薬の重点研究施設を新設し、先進的な解析・培養装置がずらりと並んでいます。同社は神戸大学の山下智也准教授と共同で、動脈硬化を抑制する働きがある腸内細菌を発見。2027年ごろの臨床試験(治験)入りをへて、医薬品としての承認申請を目指します。

 腸内細菌は人の体内にいる細菌(マイクロバイオーム)の代表格で、人の大腸は長さ約1・5メートル、小腸は6~7メートルもあり、併せて1000種類、100兆個以上もの菌がすむとされ、人体の細胞の数を大きく上回ります。腸内細菌の群れを「腸内細菌叢(そう)(腸内フローラ)」といい、ビフィズス菌や乳酸菌が知られています。

 近年は次世代シーケンサー(遺伝子解析装置)の登場により、細菌の解析が進展。腸内細菌叢のバランスが崩れると病気になり得ることがわかってきました。創薬では、特定の疾患に作用する細菌を腸内から抽出して、有効な菌のみを培養し、錠剤などの薬剤にして患者の腸内に届けます。

 1947年設立の日東薬品は乳酸菌や納豆菌に強く、培養技術では国内トップクラスとされます。これらの菌を配合した総合胃腸薬を国内で先駆けて開発。興和(名古屋市)の「ザ・ガードコーワ整腸錠」などを製造するほか、ロッテのチョコレート菓子などにも乳酸菌を供給しています。

 腸内細菌でも地道にノウハウを蓄積してきており、創薬の共同研究先は神戸大学など4機関、細菌の代謝物などを対象とした共同研究は11機関に及びます。日東薬品の北尾浩平常務は、「ハードルは高いが創薬シーズの製品化を進めたい」と意気込んでいます。

 製薬大手も動いています。2017年発足の企業連合、日本マイクロバイオームコンソーシアム(大阪市)には、武田薬品工業や小野薬品工業、塩野義製薬など計35社が参加。腸内細菌などを使った製品・サービスの商用化を目指します。

 課題は、腸内細菌を解析したデータベースの構築。日本マイクロバイオームコンソーシアムの運営委員長を務める寺内淳氏は、「平均寿命が長い日本人の腸内細菌のデータは『宝の山』。治療や早期発見につながるポテンシャルがある」と語ります。

 実は日本は腸内細菌の研究で、欧米に引けを取らない優位性があります。ヤクルトなど細菌に着目した製品や菌の培養技術で実績があり、欧米人に比べて肥満になりにくいなど特徴的な体質を生かした細菌の用途開発も可能だと期待されています。

 医薬基盤・健康・栄養研究所(大阪府茨木市)の国沢純ワクチン・アジュバント研究センター長は、「(腸内細菌を生かした医療は)日本にとって大きな産業になる可能性がある」とみています。

 腸内細菌と重大疾病の関係を巡る研究成果も、相次いでいます。6月には大阪大学と東京工業大学などが共同で、大腸がん患者に特有の腸内細菌を発見したと発表。約8割の精度でがんを発見できるといいます。国立長寿医療研究センター(愛知県大府市)も1月、認知症との関係を指摘。東北大学や慶応大学などは、腸内細菌の代謝物が慢性腎臓病の原因物質の一つになると明らかにしました。

 調査会社シード・プランニング(東京都文京区)によると、体内の細菌を使った医薬品の世界市場は、2018年の60億円程度から2024年には8450億円になる見通し。疾病の特定や検査でも活用が広がるとみています。

 実際、腸内細菌の分析技術を持つメタジェン(山形県鶴岡市)は、SOMPOへルスサポート(東京都千代田区)と連携。どのような生活習慣を改善すれば病気の予防に役立つのか、腸内環境の変化から予測するAIの開発を進めています。

 2019年7月14日(日)

 

■製薬会社、精神・心臓疾患向けの貼り薬を開発 高齢者がターゲット

 飲み薬から貼り薬(経皮吸収薬)へと、製薬会社で新たな需要開拓が始まりました。大日本住友製薬は今夏にも、世界初となる統合失調症の貼り薬を国内で発売します。アステラス製薬は6月に、心房細動の貼り薬を売り出しました。協和キリンは、パーキンソン病向けの事業化に乗り出します。高齢者が増え、効能と同時に利用しやすさが、製薬業界のターゲットになっています。

 精神疾患や認知症の患者は飲み薬を処方通りに正しく服用することが難しい場合もあり、治療の中断などにつながりやすいという課題がありました。貼り薬の需要が高まる背景には、認知症や精神疾患の患者の増加があります。2015年に約520万人だった国内の認知症患者数は、2025年に約700万人に達する見込み。

 貼り薬は錠剤に比べ、治療効果や患者の生活の質を高めやすいという利点があります。錠剤で問題になる飲み忘れや飲みすぎを防ぎやすく、医師や介助者にも服薬の状況が一目でわかります。薬の有効成分が切れにくく、副作用が抑えやすくなります。

 さらに、飲み込む力が衰えた高齢者も、安全に使うことができます。薬が胃や腸を通らないため、食事の影響も受けにくく、誤嚥(ごえん)による事故を防いだり、食事の内容や時間の制約を減らしたりできます。高齢者の間では、薬を包装シートごと飲み込んでしまう事故も報告されています。

 大日本住友製薬は錠剤タイプの統合失調症治療薬「ロナセン」を貼り薬にしたものについて、6月に製造販売承認を取得。90日以内に保険が適用される見通しで、今夏にも発売します。

 貼り薬の技術を持つフィルムメーカーの日東電工と共同開発しました。錠剤タイプのピーク時売上高は年間128億円でしたが、6月に登場したロナセンの後発薬に対応した貼り薬ではこれを超える売り上げを目指します。

 日東電工は液晶用フィルムの大手ですが、テープなどの技術を経皮吸収薬に応用し、製薬会社との共同開発のほか、自社ブランドでもぜんそくや狭心症の経皮吸収薬を販売中。

 アステラス製薬は6月、トーアエイヨー(東京都中央区)と共同で心房細動の貼り薬を発売しました。神経の働きを抑え心拍数を調整する薬で、貼るタイプは世界初となります。心房細動の場合、錠剤の長期服用が負担になることも多く、負担を軽減します。

 協和キリンは鎮痛消炎剤「サロンパス」などを手掛ける久光製薬と組み、パーキンソン病の貼り薬を事業化します。久光製薬はパーキンソン病の貼り薬を2018年9月に厚生労働省に承認申請しており、2020年2月までの承認取得を目指しています。この薬について、協和キリンが2019年2月に国内販売契約を結びました。

 パーキンソン病では、薬が切れると足がすくむなど体が動きにくくなることがあり、服薬の時間管理が重要になります。血中濃度を一定に保つのにも貼り薬は有用だといいます。

 貼り薬にすると、製薬会社にとってはすでに商品にした有効成分を形を変えて長く販売し続けることができます。新薬の開発には、1000億円を超える資金と10年以上の時間がかかります。形を変えるだけならどちらも大幅に削減でき、患者への配慮や使いやすさが新たな市場を作り出します。

 2019年7月13日(土)

 

■市販薬がありながら、病院処方される医薬品が5000億円 医療費膨張の一因に

 湿布薬や鼻炎薬などの市販薬があるのに、利用者が病院に通って処方される医薬品の総額が5000億円を超すことが、明らかになりました。処方薬は自己負担が原則3割と安いからですが、残りは税金や保険料で賄います。一律に保険を使う制度を改め、代えが利かない新薬に財源を振り向ける必要があります。

 2016年度の医療費は42兆円で、うち薬の費用は10兆円。公定価格(薬価)が3349万円の白血病治療薬「キムリア」が今年5月に保険適用となり、今後も高価な薬が相次ぐ見通し。症状が軽い人が進んで市販薬を利用すれば、そのぶん保険を使う費用を抑えられ、医療費抑制につながります。

 もともとは医師の処方が必要だったものの副作用の心配が少ないとして、一般用で認めた市販薬を「スイッチOTC」と呼び、これ以外にうがい薬や保湿剤など古くから市販薬と処方薬の両方があったものもあります。

 処方薬に頼る人が多いのは、自己負担が軽いからです。今年6月中旬の段階で、ある湿布薬を通販サイトで買うと598円ですが、病院で同量をもらうと3割負担は105円。アトピー性皮膚炎に使う薬を肌荒れを防ぐ保湿剤として使う人もおり、その薬は市販の4分の1以下の負担で手に入るため不必要な受診が相次ぎました。

 厚生労働省が2014年度から公表している診療報酬明細書(レセプト)データを活用して、市販薬と同じ成分を含む医療用医薬品の処方額を調べたところ、最新の2016年度は5469億円でした。金額が最大だったのは主に湿布薬に使われる成分の702億円、2位はアトピー性皮膚炎や肌荒れに使う保湿剤成分の591億円で、鼻炎薬も上位でした。

 集計方法を比較できる2015年度からは5%減ったものの、これは診療報酬改定で薬価が下がったことが一因。同じ薬価で比べると、2016年度は2%増えた計算となり、市販薬への切り替えが進んでいません。

 アメリカの医薬品調査会社IQVIAによると、がん免疫薬「オプジーボ」の2018年度の国内売上高(薬価ベース)は1014億円でした。仮に代替可能な処方薬を市販薬にすべて転換すれば、オプジーボ級の高額薬を5種類ぶんカバーできる計算になります。

 市販薬の承認ペースも鈍く、日本OTC医薬品協会(東京都千代田区)は海外を参考に120種類の成分を市販できるよう国に求めていますが、現在は86種で2017年の市販薬出荷額は約6500億円でした。普及を促すため、市販薬の購入費の一部を控除する税優遇が2017年に始まりましたが、2018年の利用者は2万6000人と当初見込みの100分の1にとどまっています。

 市販の可否を決める国の検討会メンバーは、医師が過半を占めています。調査会社の富士経済(東京都中央区)で医療に詳しい小倉敏雄主任は、「市販品が増えれば病院にくる人が減り、病院経営に響きかねない。あまり広めたくないのが医者の本音」と指摘しています。病院に来てもらえば、検査や処置、処方などで幅広く診療報酬を得られるからです。製薬会社などの国への市販化要望は2018年度に3件と、2016年度の18件から急減しました。

 法政大学の小黒一正教授は、「すべての医薬品を一律で保険適用する仕組みを維持するのは難しい。使われ方に応じて自己負担を見直すべきだ」と訴えています。

 参考になるのはフランスで、薬の重要性に応じて自己負担比率をゼロから100%まで5段階に分けています。抗がん剤など代えの利かない薬は全額を公費で賄い、市販品がある薬の自己負担を重くしています。

 医療費の膨張にブレーキをかけるため、国や自治体が必要性の薄い通院を繰り返す人に対して、自制を促すような取り組みも求められます。

 2019年7月13日(土)

 

■交通死傷事故、75歳以上が加害者は3万1935件 全体の7・9%を占める

 高齢者による自動車事故が相次ぐ中、2018年に全国で起きた死傷事故のうち75歳以上のドライバーが加害者だった割合が7・9%に達し、5年間で2・1ポイント上昇したことが、公益財団法人・交通事故総合分析センター(東京都千代田区)の調査で明らかになりました。

 加齢とともにアクセルとブレーキの踏み間違いが増える傾向を示すデータもあり、交通政策の専門家は「自動ブレーキ」など安全技術の普及を促す施策の必要性を訴えています。

 交通事故総合分析センターによると、原付きバイクを含む自動車が2018年に起こした死傷事故は、ひき逃げなど加害者を特定できない事故を除き、全国で40万6755件ありました。このうち3万1935件が、運転免許証の更新時に認知機能検査の受検が義務付けられている75歳以上のドライバーによる事故で、全体の7・9%を占めました。

 道路整備の拡充や車の安全技術の進歩などで死傷事故数そのものは減少傾向にあり、2013年の59万6656件に比べると昨年は31・8%の大幅減でした。一方、一般に高齢になるほど運転頻度が減り、運転距離も短くなるにもかかわらず、75歳以上が加害者の死傷事故数は同期間に8・1%の減少にとどまりました。この結果、相対的に75歳以上が加害者になる割合が増えることになりました。

 交通事故総合分析センターの調査では、高年齢のドライバーほどアクセルとブレーキを踏み間違える可能性が高まることも判明。2012~2016年に全国で起きた事故を分析したところ、年代別の事故数に占める踏み間違いが理由の事故の割合は、初心者の多い24歳以下が1・5%、25~54歳0・8%、55~64歳0・9%、65~74歳1・5%、75歳以上3・1%でした。

 安部誠治・関西大学教授(交通政策論)は、現在の高齢ドライバーの多くがモータリゼーションが一気に進んだ高度成長期に免許を取得した世代で、その後、店舗が郊外に進出する中、車を手放せない生活環境になっていると指摘。その上で「加齢に伴う注意力低下は避けられない。国レベルでメーカーの安全技術開発を支援したり、そうした車の普及を後押ししたりすることも必要ではないか」と指摘しました。

 2019年7月12日(金)

 

■誤嚥を防ぐとろみ付き飲料自販機、全国50カ所に設置へ アペックス

 筋力の衰えなどから、食道に送られるはずの飲食物が気管などに入り込んでしまう「嚥下(えんげ)障害」は、死につながる可能性もあり、この障害の対処法の一つとして、飲食物に「とろみ」を付ける方法があります。

 自動販売機運営管理会社のアペックス(愛知県大府市)は、2018年10月に発表した「とろみ自動調理機」に続き、医療・介護施設などで提供する「とろみ付き飲料専用サーバー」を開発し、その第1号を東京都内の病院に2018年11月に設置したのを皮切りに、全国約50カ所への設置を予定しており、今年10月には施設向けの大型サーバーも展開する予定です。

 現在展開している紙コップ式の自動販売機には、コーヒーや緑茶、抹茶ラテなど多種の味があり、温冷にも対応しています。自販機の「とろみありボタン」を押すと、とろみを「薄い」「中間」「濃い」と選ぶことができます。とろみを付けないこともでき、どちらでも飲み物の値段は同じです。

 飲料にとろみを付けてみても味は変わらないものの、しっかりと飲み物がのどを通る感覚がわかります。コーヒーでも抹茶ラテでも、温かくても冷たくても、3段階のとろみは均一にしています。例えば、コーヒーではミルクや砂糖の有無によって、とろみ材の調整の仕方をそれぞれ変えています。

 とろみ付き飲料は、飲み込みが難しい人の誤嚥を予防する目的で、医療機関や介護保険施設を始め、サービス付き高齢者向け住宅や有料老人ホームなどで提供されています。通常各施設では、飲料にとろみ材を加えスプーンなどで撹拌(かくはん)し、とろみの程度を調整する調理を手作業で行っています。短時間で一度に大量のとろみ付き飲料を作らなければならず、職員の負担が大きいのが現状です。

 アペックスは、慢性的な人手不足が深刻化している医療・介護施設での作業負担を軽減するため、とろみ作りに人的労力を必要としない「とろみ付き飲料専用サーバー」の開発に至りました。10月には、施設などで使用できる2リットルの大型サーバーも展開する予定で、こちらも要望に合わせて8種類の飲料を準備することができます。

 アペックスの担当者は、「災害時でも避難所などにとろみ付き飲料があれば、嚥下障害を持つ高齢者も安心できる」と話し、災害時の活用方法も検討していくとしています。

 嚥下障害のため、気管に飲食物などが入ってしまうことを切っ掛けに発症する誤嚥性肺炎。厚生労働省の2018年人口動態統計月報年計によると、誤嚥性肺炎の死因順位は7位となっています。

 東京都健康安全研究センターによると、1979年には423人ほどだった誤嚥性肺炎による死者数は2016年には3万8650人にまで増加。2030年には12万9000人程度にまで急上昇すると予測しています。日本歯科大学口腔(こうくう)リハビリテーション多摩クリニックの菊谷武院長は、「とろみ剤など対応策は普及しているが、それを追い越すほどに高齢者が増えている」としています。

 誤嚥性肺炎の起因となる嚥下障害について、菊谷院長は原因として、気管に蓋(ふた)をして飲食物の侵入を防ぐ喉頭蓋の「気管に蓋をするタイミングのズレ」「蓋をするための筋力の低下」の2つを挙げます。

 タイミングが合わない場合は、「意識して飲み込むことが大切」といいます。また、上手に飲み込むためには、まず歯できちんと食べ物をかみ砕く必要があるため、歯を磨いて大切にすることが第一歩となります。

 筋力が低下している場合は、口を最大限に開き、その状態を10秒保持する運動などによって嚥下機能を鍛えることができます。

 菊谷院長は、「筋力は30歳をピークに1年で1%低下するといわれている。つまり70歳だと40%も低下していることになる。嚥下機能の衰えは60歳ごろから意識したほうがいいだろう」と警鐘を鳴らしています。

 2019年7月12日(金)

 

■「笑い」で感情や気分が改善 近畿大など医学的に検証

 医学的に「笑い」が緊張や不安といった感情や気分の改善につながるとの研究結果を、近畿大学や吉本興業などの研究チームが11日発表しました。

 2017年2~3月、20~60歳代の男女20人に2週間ごとに計3回、吉本新喜劇や漫才、落語などを見てもらい、表情の判別機器で笑顔になった回数を測定。観賞前後に実際に医療現場で使用されている心理検査やアンケートを実施し、感情や気分の変化を調べました。

 その結果、観賞中に笑顔になった回数が多いほど、参加者の「緊張・不安」「怒り・敵意」「疲労」の数値が改善。さらに、アンケートで「日常生活で心から笑えている」と回答した数値が観賞後に高くなった参加者ほど、より感情や気分の改善がみられたといいます。

 研究チームの阪本亮・近畿大医学部助教(心療内科部門)は、「ただ表情が笑顔になるだけではなく、心から『笑い』を楽しめることが気分の改善に効果的だということがわかった」と話しています。

 2019年7月11日(木)

 

■糖質制限食を食べ続けると老化が早まる恐れ マウス実験で判明

 東北大学大学院農学研究科の都築毅准教授(食品機能学)らは、糖質を抑えた糖質制限食を食べ続けると、体の老化を促し、健康に影響をもたらす恐れがあることをマウスを使った実験で示しました。米やパンといった炭水化物を与えずにマウスを約1年間育てたところ、寿命や記憶力で老化を促進させていました。

 マウスでの成果とはいえ、適切な糖質の摂取の重要性や食生活の見直しなど、昨今の糖質制限ブームに警鐘を鳴らす内容といえそうです。

 糖質制限は、短期間行うと内臓脂肪を減らしたり、血糖値を下げたりする効果が報告されています。

 都築准教授らは寿命が約1年のマウスを3グループに分け、合計のカロリーは同じで内訳を糖質・脂質・タンパク質のバランスが日本食に近い「標準的」、「低糖質・高脂肪」、「低糖質・高タンパク」にした飼料をそれぞれ与えました。「低糖質・高タンパク」の飼料は、糖質によるカロリーは2割に抑え、残りを乳タンパクで補いました。人間が3食すべて主食を抜いた状態に相当する厳しい糖質制限です。

 その結果、「低糖質・高タンパク」のマウスは、「標準的」と比べて寿命が約2割(8~9週間)短くなりました。腸内で乳酸をつくる細菌が減っており、腸内環境が悪化してがんなどになりやすかったとみられます。短期の記憶力を測ると、「標準的」のマウスに比べ半分程度でした。

 都築准教授は、「人間でも糖質制限を20~30年程度続けると、老化を促進する可能性がある。医師や管理栄養士などの指導で行ってほしい」と話しています。

 2019年7月11日(木)

 

■緑内障の人、普通の人より夜間血圧が上昇 奈良県立医科大が解明

 奈良県立医科大学は2日、緑内障患者では睡眠中の血圧である夜間血圧が上昇していることを見付けたと発表しました。この研究は、同大眼科学講座の吉川匡宣(ただのぶ)講師、緒方奈保子教授、同大疫学予防医学講座の佐伯圭吾教授、大林賢史准教授が共同で行ったもの。研究成果は、「Ophthalmology」に掲載されています。

 緑内障は目における慢性の神経変性疾患で、日本人での有病率は40歳以上の5%(20人に1人)と頻度の高い疾患。眼圧が上がって目の神経が傷付くことで視野・視力障害を引き起こすものの、自覚症状に乏しいことや、視神経障害を改善する治療がないことなどから、日本の中途失明原因の第1位となっています。

 その一方、血圧には1日のうちで変動(生体リズム)があり、生理的には夜間の睡眠中に血圧が下降することが知られています。睡眠中の夜間血圧は、日中活動時の血圧よりも心血管系疾患の発症予測能が高く、臨床的にとても重要な指標とされています。

 睡眠や血圧などの生体内のリズム調整には、目、特に網膜神経節細胞への光刺激が最も重要とされています。また、緑内障では網膜神経節細胞が障害されることから、生体リズムに関連するさまざまな疾患が生じやすいことが知られており、研究チームは、光を浴びる量とは独立して、緑内障がうつ病と関連していることを報告しています。

 研究チームは今回、奈良県立医科大眼科へ通院中の緑内障患者109名(平均年齢71・0歳)と、地域住民対象の疫学研究参加者のうち緑内障でない708名(平均年齢70・8歳)の「24時間連続血圧データ」を比較し、睡眠中の血圧が緑内障患者で平均119・3mmHg、緑内障でない人で平均114・8mmHgと、緑内障患者で有意に睡眠中血圧が上昇していることを明らかにしました。また、緑内障患者では、睡眠中の血圧が下降しないタイプが1・96倍多いという結果を得ました。

 今回の研究成果により、緑内障患者では年齢・肥満・糖尿病などとは独立して夜間血圧の上昇が認められることから、それを原因とした心血管系疾患や死亡が生じやすい可能性が示唆されました。

 吉川匡宣講師は、「緑内障の人は、普段から血圧により気を付けたほうがいいと考えられる」と話しています。

 2019年7月10日(水)

 

■自己免疫性膵炎に、腸内細菌の変化が関与 近畿大がマウスで確認

 体内の免疫システムが誤って自分自身の膵臓(すいぞう)を攻撃して起きる難病「自己免疫性膵炎(すいえん)」の発症に、大腸内の細菌の変化が関与していることを、近畿大学の研究チームが明らかにしました。発症のメカニズムの一端がわかってきたことで、新たな治療法の開発につながると期待されます。10日、免疫学の国際専門誌に論文が掲載されました。

 この自己免疫性膵炎は、ウイルスや細菌など外から入り込んだ敵を攻撃する免疫システムが、自分自身の組織を攻撃してしまう自己免疫疾患の一つ。高齢男性に多い指定難病で、国内の患者は約6000人と推定されます。膵臓が炎症を起こしてはれ、黄疸(おうだん)などの症状が出るほか、糖尿病を起こします。しかし、詳しい発症メカニズムは不明で、根本的な治療法も見付かっていませんでした。

 近畿大医学部の渡辺智裕准教授(消化器内科学)らの研究チームは、腸内の細菌の群れ「腸内細菌叢(そう)(腸内フローラ)」に注目。自己免疫性膵炎のマウスの腸内細菌を調べると、正常なマウスに比べ細菌の種類が減り、多様性がなくなっていることがわかりました。また、軽い膵炎のマウスに重症のマウスの便を移植して腸内細菌を入れ替えると、症状が重くなりました。

 膵炎マウスの便を移植されたマウスの膵臓では、免疫細胞の一種「形質細胞様樹状細胞」が増えていました。この形質細胞様樹状細胞により産生され、ウイルスなどの免疫防御に重要な役割を果たすタンパク質「Ⅰ型インターフェロン」などの増加も確認。ウイルス感染がないのにこうしたタンパク質が産生された結果、膵臓が攻撃されているとみられます。

 渡辺准教授は、「将来的には自己免疫性膵炎の治療に腸内フローラの制御が有効ではないか」と話しました。

 2019年7月10日(水)

 

■「卵巣年齢」チェックキットを発売 約2万円で10日後に結果

 医療系スタートアップのF Treatment(エフトリートメント、東京都港区)は10日、卵巣年齢チェックキット「F check(エフチェック)」の販売を開始しました。税別価格は1万9880円。自宅で血液を採取して郵送するだけで結果がわかるキットを展開し、多忙な女性の「妊活」を支援します。

 キットでは卵子の周りの細胞から出る「AMH(アンチミューラリアンホルモン)」の値を測定し、卵巣に残っている卵子の数が何歳相当であるを示す卵巣年齢を算出します。卵巣年齢が高い場合は残りの卵子の数が少なく、不妊治療ができる期間が限られていることがわかります。逆に卵巣年齢が低く月経不順の場合は、不妊原因となる「多嚢胞(のうほう)性卵巣症候群」が疑われることもあるといいます。

 同社によると、卵巣に残っている卵子の数は母親の中にいる時が最も多く、思春期には約20万〜30万個に減少していきます。その後増えることはなく、閉経時にはゼロに近付きます。平均の閉経年齢は50歳程度といわれており、医学的には10年前の40歳前後から妊娠しづらくなってくるといいます。しかし実際には、卵巣年齢は個人差が非常に大きいとのことで、25歳でも49歳と同じ卵子量の人がいたり、その逆もあります。妊娠を希望するカップルは、卵巣年齢を知ることで自然妊娠を選ぶのか、人工授精、体外受精を選ぶのかを判断できるようになります。

 キットは同社のサイトで販売し、購入者は指先に針を刺して0・1ミリリットルの血液を採って郵送。届いた血液はアメリカの疾病対策センター(CDC)の承認を受けている検査センターで分析し、結果は約10日間後にパソコンやスマートフォンで専用のウェブサイトにアクセスすることで確認できます。

 検査結果のほか、19種類の設問に回答すれば不妊の兆候を把握できる自己診断ツールも用意しています。今秋には、専門家への相談サービスも始める予定。

 2019年7月10日(水)

 

■ハンセン病家族訴訟、政府控訴せず 首相が表明

 国が続けたハンセン病患者の隔離政策によって家族も差別を受けたとして家族らが国に損害賠償を求めた訴訟で、安倍晋三首相は9日、国の責任を認め、計約3億7000万円の賠償を命じた熊本地裁判決を受け入れ、控訴しないと表明しました。元患者の家族を巡り、国の立法不作為や対策義務違反を初めて認めた判決が、一審で確定します。

 首相は9日午前の閣議に先立ち、根本匠厚生労働相と山下貴司法相と対応を協議し、控訴しないことを指示しました。首相は協議後、記者団に「判決内容の一部に受け入れがたい点があるのは事実。しかし筆舌に尽くしがたい経験をした家族のご苦労をこれ以上長引かせてはいけない。異例のことだが控訴しない」と述べました。

 菅義偉官房長官は9日の閣議後記者会見で、「法相、厚労相からの説明を受け、首相が判断した」と説明。政府は今回の判決の問題点などを検討した上で、近く控訴断念に至った経緯について政府声明を発表する方針。根本厚労相は9日の閣議後会見で、「これから早急に具体的な対応を検討したい」と述べました。

 6月28日の熊本地裁判決は隔離政策によって患者家族に就学・就労の拒否、結婚差別などの被害が生じたなどと判断。遅くとも1960年には隔離政策を廃止する義務があったのに怠ったとして、国の立法不作為も認定しました。

 また、原告が差別被害の加害者が国であると認識することの難しさを認め、時効で賠償請求権が消滅していたとする国の主張も退けました。

 その上で原告561人のうち、身内が元患者だと知ったのが最近だったなどの理由で20人の請求を棄却したものの、原告541人について国の責任を認め、1人当たり33万~143万円の支払いを命じていました。

 控訴期限は7月12日で、厚労省や法務省などが対応を検討していました。元患者家族による同種訴訟では、鳥取地裁や広島高裁松江支部で原告の請求を退ける判決が出ており、最高裁で係争中。司法判断が定まっていない中、「今回の地裁判決を確定させることは難しい」との声が強くありました。

 一方、原告側は「家族の尊厳回復につながる」と熊本地裁判決を高く評価し、国に控訴断念を強く要請。首相は3日、日本記者クラブ主催の党首討論会で「患者、家族の皆さんは人権が侵害され、大変つらい思いをしてこられた。どういう対応をとるか真剣に検討し判断したい」と述べていました。

 元患者本人の訴訟では2001年、熊本地裁判決が隔離政策を違憲として国に賠償を命じ、当時の小泉純一郎首相が控訴を見送り確定。「極めて異例の判断だが、早期に全面的な解決を図ることが必要」との首相談話を公表しました。その後、2009年施行のハンセン病問題基本法で、患者本人の被害を補償する制度が創設されたものの、家族は対象外とされました。

 2019年7月9日(火)

 

■オプジーボの使用で小腸炎を発症し死亡 重大な副作用に追加

 厚生労働省は9日、免疫の働きを利用したがん治療薬「オプジーボ」を使用した患者が副作用とみられる小腸炎を発症して、死亡したと公表しました。重大な副作用として薬の添付文書に追記するよう、製造元の小野薬品工業(大阪市中央区)に指示しました。

 似た仕組みを用いる「キイトルーダ」の製造元であるMSD(東京都千代田区)にも、同様に指示しました。

 腸炎から、腸に穴が開く「穿孔」や、腸がふさがる「イレウス」となる例があることも、添付文書に追記します。下痢や腹痛、血便が続く場合は投与の中止などを求めます。

 厚労省によると、キイトルーダでは死亡例はありません。

 2019年7月9日(火)

 

■手足口病が大流行、患者が2万1000人 31都府県で警戒レベル

 乳幼児を中心に手足や口の中に発疹ができる「手足口病」が、全国的に流行しています。全国約3000の小児科定点医療機関が報告した6月24~30日の直近1週間の小児患者数は、計2万1000人。今シーズン初めて2万人を超えました。厚生労働省は手洗いを徹底し、子供同士でタオルを共用しないなど注意を呼び掛けています。

 国立感染症研究所によると、1医療機関当たりの患者数は6・7人で、過去10年で2011年に次ぐ勢いとなっています。

 都道府県別では、福井県(21・78人)、福岡県(16・09人)、鳥取県(14・26人)で多く、31都府県で警報レベルの5人を超えました。

 専門家によると、今シーズンの流行の理由は、ウイルスの種類の違いだといいます。手足口病の原因となるウイルスは、エンテロウイルスなど100種類以上。その中でも主に3種類のウイルスが、年によって周期的に発生します。今シーズンは、この3種類のウイルスではなく別の「コクサッキーA6」という型のウイルスが多く検出されており、このウイルスが流行すると患者数が多くなる傾向がみられるということです。

 手足口病は、くしゃみなどの飛沫で感染したり、接触で移る可能性があります。この感染経路を断つための予防としては、手洗い・うがいをすることと、タオルを共有しないことが大切です。手足口病に特効薬はなく、感染してしまったら3日から1週間、回復するまで待つしかなく、まれに髄膜炎や脳炎になることもあります。

 治った後も2~4週間にわたり便にウイルスが排出されるため、排便後の手洗いが不十分だと他人にうつす恐れがあります。

 手足口病の流行は、8月中旬まで続くとみられています。

 2019年7月9日(火)

 

■ストレスによる交感神経の刺激で乳がん悪化 岡山大などがマウスで解明

 岡山大学の神谷厚範教授(細胞生理学)や国立がん研究センターなどの研究で、患者がストレスにさらされると乳がんが悪化するとの関係性が、細胞レベルで解明されました。ストレスで活発になった神経の活動を遺伝子操作で止めて、乳がんの進行を抑える治療法につながる可能性があるといいます。

 8日、専門誌「ネイチャーニューロサイエンス」(電子版)に発表しました。

 不安や恐怖、怒りといったストレスが生じると、交感神経の活動が高まります。交感神経とがん進行のかかわりは以前から疫学調査の結果などから指摘されてきましたが、詳細は不明でした。

 神谷教授らは、乳がん組織内の交感神経に着目。国立がん研究センターで手術を受けた乳がん患者29人のがん組織を調べたところ、がん組織内の交感神経の密度が高い人は再発しやすいことがわかりました。

 さらに、マウスに人の乳がん組織を移植し、乳がん組織内の交感神経を刺激し続けました。60日後、刺激しないマウスと比較すると、がんの面積は2倍近く大きくなり、転移数も多くなりました。一方、遺伝子治療で交感神経の活性化を止めると、60日経ってもがんの大きさはほとんど変わらず、転移もありませんでした。

 神谷教授は、「不安や怒りなどをうまくコントロールし、交感神経を刺激しすぎないようにすることで、よい影響を与えられるかもしれない」と話しています。

 また、これまでのがん治療は手術や薬物治療、放射線治療が中心でしたが、がん組織内の局所の交感神経の活動を抑制する遺伝子治療が使えるようになれば、「がん治療に『神経医療』という新たな選択肢ができるかもしれない」と指摘しています。

 2019年7月9日(火)

 

■高齢者入浴中の事故、熱中症と疑いが8割超 ヒートショックは1割未満

 入浴中に浴槽で体調を崩した高齢者のうち、8割以上が熱中症かその疑いのあることが7日、千葉科学大学の黒木尚長(ひさなが)教授(法医学・救急救命学)の調査で明らかになりました。急激な温度差が体に悪影響をもたらす「ヒートショック」は1割未満だったことも判明。死亡事故の場合も同じ傾向があるとみられます。入浴の際にはヒートショックの危険性が指摘されてきましたが、定説が覆る可能性が出てきました。

 厚生労働省の人口動態統計によると、2016年に不慮の事故で溺死した高齢者は6759人。病死だったケースも含め入浴中の事故死は1万7000人との推計もあるものの、詳細を分析した調査はほとんどありませんでした。

 黒木教授は2017年12月、65歳以上の男女3000人を対象にインターネットで入浴に関するアンケートを実施。入浴中に具合が悪くなった人は10・8%に上り、症状などから熱中症が62・2%、熱中症の疑いが22・0%でした。ヒートショックの疑いは入浴前後を合わせても7・1%にとどまりました。

 黒木教授によると、体温37度の人が全身浴をした場合、湯温が41度だと33分、42度だと26分で体温が40度に達します。この結果、入浴中であっても重度の熱中症の症状が出て、意識障害を生じるリスクが高まります。そのまま入浴を続け、体温が42・5度を超えれば突然死することもあります。

 黒木教授は「高齢者は神経系の老化で熱さを感じにくく、長時間浴槽につかる傾向にあり、熱中症の初期症状が出ないまま意識障害に陥ることも多い」と説明。予防には湯温41度以下、入浴時間10分以内を目安とするほか、こまめに体温を測ることも有効だとしています。

 一方、黒木教授は2011~2015年に大阪市内で起きた入浴中の事故死のうち、大阪府監察医事務所が取り扱った2063人の死因を分析。心臓や脳の疾患を含む病死が74・8%、溺死が17・1%で、熱中症は2・2%でした。

 入浴中の突然死の場合、解剖しても慢性疾患以外の所見を見付けることは困難だといい、黒木教授は「病死と判断せざるを得ないのも仕方なく、ヒートショックの症状と結び付けて語られてきた。こうしたケースも大半が熱中症だった可能性が高い」と訴えています。

 2016年に大阪市の住宅の浴室で80歳代の夫婦が死亡していたケースでは、大阪府警の司法解剖の結果、死因は溺死だったが、熱中症による体温の上昇で意識を失った可能性が指摘されていました。

 2019年7月8日(月)

 

■微量の血液で糖尿病や感染症を検査 堀場製作所が機器開発

 堀場製作所(京都市南区)は一般内科や小児科などの医療機関で使える検査機器を開発したと発表しました。従来の同様の製品より小型で、血液一滴で糖尿病や感染症の検査が可能になります。

 2018年12月にロームから取得した電子部品の微細加工技術を活用しました。糖尿病の患者数などが増加傾向にあり、小型で利便性の高い機器のラインアップを増やし対応します。

 販売を始めたのは「Yumizen M100 Banalyst」。ロームから取得した「マイクロタス」技術を応用しました。液状試薬が入った使い捨てのプラスチック製チップを使用し、4マイクロリットルの血液を遠心力で血球分離したのち、試薬反応から光学測定までを行い、ヘモグロビンやタンパク質の一種など、疾病のマーカーとなる項目を即時検査できます。価格は税別200万円。

 堀場製作所は計測機器大手。2018年12月期の医用機器関連の売上高は260億円でした。

 2019年7月8日(月)

 

■遺伝子の「優性・劣性」を「顕性・潜性」に 学術会議が高校教科書での表現変更を提案

 遺伝子の特徴を示す「優性」や「劣性」という用語について、日本の科学者でつくる「日本学術会議」は、一方が劣っているかのような誤解を与えるとして、今後、高校の教科書では別の表現を使うことを提案する報告書をまとめました。

 学校の生物の授業では、遺伝子が関係する特徴の現れやすさを示す用語として、「優性」と「劣性」の遺伝という表現が使われていますが、一方が劣っているかのような誤解につながりかねないと関係する学会などが指摘していました。

 こうした指摘を受け、日本の科学者で作る日本学術会議は、高校の生物で学ぶ重要な用語を検討する委員会の中で報告書をまとめ、今後、高校の生物の教科書では、「優性」は「顕性」に、「劣性」は「潜性」に替えるとする考え方を示しました。

 一方、中学校では今も「優性」と「劣性」として教えている現状があり、混乱を防ぐために「優性」と「劣性」は別名として残すとしています。

 日本学術会議の報告は文部科学省の学習指導要領の見直しでも参考にされるなど、一定の影響力があり、今後、教科書が変わる切っ掛けとなるか注目されます。

 報告を取りまとめた委員会の中野明彦委員長は、「用語は、本来の意味で適切に使われることを願っており、教科書にも取り入れられることを期待している」と話しています。

 「優性」と「劣性」という用語は、初めから使われていたわけではありません。日本医学会のワーキンググループが調べたところ、「現在性」とか「潜伏性」などさまざまな用語が使われてきましたが、1910年に出された論文以降、「優性」と「劣性」に統一されたようだということです。

 しかし、すでに1945年の時点では、「優劣」の意味ではないのでほかの用語に替えたほうがよいとの指摘があったことが確認されています。また、近年では2年前の9月に日本遺伝学会が「顕性」と「潜性」に改めることを公表しています。

 一方、この用語の変更については、日本学術会議とは別に日本医学会のワーキンググループでも検討が進められており、今回の日本学術会議の報告書に対して、医療の現場ですでに浸透している言葉であり、検討の歩調を合わせて慎重に議論すべきだという指摘もあります。

 2019年7月8日(月)

 

■無痛分娩、被害者の会を結成 国に安全対策の強化を求める

 麻酔を使って出産時の痛みを和らげる無痛分娩(ぶんべん)で事故に遭った被害者の家族が8日、被害者の会を立ち上げました。代表の安東雄志(ゆうじ)さん(70歳)=大阪府富田林市=と男性(57歳)=京都市=が大阪府富田林市で記者会見し、安全対策の法整備などを目指す考えを明らかにしました。

 被害者の会では、出産に携わる医師・看護師に対する麻酔と救急蘇生(そせい)の講習会受講などの義務化や、無痛分娩を実施できる医師の認定制度の実現を、署名活動などを通じて求めていきます。被害者が体験を語り合う勉強会などの場も設けるといいます。

 厚生労働省は昨年3月に講習会の受講などを提言していますが、法的拘束力はないといいます。

 記者会見で、娘を無痛分娩の事故で2017年に亡くした安東さんは、「娘は帰ってきませんが、1人でも事故に遭う人をなくしたい」と話しました。三女の長村千恵さん(当時31歳)は大阪府和泉市の医院で無痛分娩に臨み、脊髄(せきずい)付近への麻酔を受けた後、呼吸困難に。帝王切開で生まれた次女(2歳)は無事でしたが、千恵さんは10日後に亡くなりました。

 ロシア国籍の妻エブセエバ・エレナさん(42歳)が寝たきりになり、帝王切開で生まれた6歳の娘を昨年12月に亡くした大学教授の男性は、「できれば事故前に戻してほしい。難しいならば、せめて同じ事故を繰り返さないでほしい」と語りました。

 無痛分娩では重大事故が相次いでおり、被害者の会では、ほかの被害者にも参加を呼び掛けて国に安全対策の強化を求めていくとしています。

 被害者の会への参加希望や問い合わせは、メールアドレス(mutuubunben.jiko@gmail.com)まで。

 2019年7月8日(月)

 

■エボラ出血熱などの原因ウイルス、輸入手続き完了 厚労省が5種を指定

 エボラ出血熱など致死率の高い1類感染症の原因ウイルスの輸入を巡り、厚生労働省は5日、感染症法に基づき、輸入対象の5種類の原因ウイルスを正式に指定しました。国立感染症研究所村山庁舎にあるバイオセーフティーレベル(BSL)4と呼ばれる高度な安全設備を備えた施設で、受け入れるための手続きが整いました。

 指定されたのは、エボラ出血熱、南米出血熱、ラッサ熱、クリミア・コンゴ出血熱、マールブルグ病の1類感染症の原因ウイルス。「最も危険」と分類されるウイルスが初めて海外の研究機関から国内に持ち込まれることになり、東京オリンピック・パラリンピックを控え、海外から持ち込まれる恐れがある感染症を素早く正確に検査できるようになります。

 原因ウイルスは早ければ夏ごろにも国内に持ち込まれる見込みですが、危機管理上の理由で輸入時期や経路などは事前に公表しません。

 また、厚労省は同日、感染研村山庁舎がある東京都武蔵村山市から受けた要望について、同市に回答。バイオセーフティーレベル(BSL)4の事故・災害対策の強化のほか、事故時の速やかな情報提供や施設運営のチェック体制の確保などに対応するとしました。

 2019年7月7日(日)

 

肥満は聴力低下のリスクを上昇させる 国際医療研究センターが調査

 肥満の人ほど聴力が低下するリスクが高いとする研究結果を、国立国際医療研究センターなどの研究チームが、ヨーロッパの臨床栄養学会誌に発表しました。肥満により聴覚の細胞が壊れるためとみられます。

 肥満はさまざまな生活習慣病の危険因子として知られていますが、近年、肥満は聴力にも影響することが示唆されています。しかしながら、肥満と聴力低下との関連についての前向きな研究は少なく、一致した結果も得られていませんでした。また、代謝異常を伴う不健康な肥満と、代謝異常を伴わない健康的な肥満とで聴力低下との関連が異なるかどうかも明らかではありませんでした。

 そこで研究チームは、肥満と聴力低下との関連、さらに代謝異常を伴う肥満と聴力低下への影響を検証。2008~2011年度の健康診断で聴力が正常だった20~64歳の4万8549人について、肥満(BMI25以上)と代謝異常(高血圧、糖尿病、脂質異常のうち2つ以上に該当)から、肥満でなく代謝異常でもないグループ、肥満でないが代謝異常があるグループ、肥満であるが代謝異常はないグループ、肥満であり代謝異常もあるグループの4つのグループに分類して比較し、最大8年間にわたって追跡調査しました。

 その結果、肥満と聴力低下との関連では、肥満により聴力低下のリスクが上昇し、そのリスク上昇は人との会話と同程度の1000ヘルツの低音域聴力において顕著でした。

 また、肥満と代謝異常の有無による4つのグループで比較したところ、聴力低下のリスクは、代謝異常を伴う肥満者で最も高く、次いで代謝異常を伴わない肥満者、代謝異常を伴う非肥満者の順でした。

 聴力は加齢により低下しますが、肥満や代謝異常はそれを加速させる可能性があります。肥満が聴力低下を引き起こすメカニズムとしては、動脈硬化によって内耳動脈が狭窄(きょうさく)・閉塞(へいそく)し、音の受容器官である蝸牛(かぎゅう)の血流量が減少することや、肥満に伴って酸化ストレス・炎症・低酸素が引き起こされることで聴覚細胞が損傷すると想定しています。

 研究チームは、「聴覚の健康にとっても肥満やメタボリックシンドロームにならない生活習慣が推奨される」としています。

 2019年7月7日(日)

 

■脳脊髄液減少症の診断対象を拡大 厚労省研究班が診療指針を公表へ

 外傷などを切っ掛けに激しい頭痛やめまいを引き起こす「脳脊髄(せきずい)液減少症」について、厚生労働省の研究班は5日、診療指針の概要を発表しました。現行の診断基準に当てはまらない程度の小さな髄液の漏れを診断対象に含める上、指針を使うことで症例に詳しくない医師も診断できるようになります。

 研究班代表で山形大学医学部の嘉山孝正参与は、「この指針により診断される患者はさらに増える」と説明しました。

 診療指針は、12年間に及ぶ研究成果の集大成。少量の髄液漏れを示すと考えられるMRI(磁気共鳴画像化装置)の画像を新たに紹介し、対象を拡大します。発症原因や症状、治療法も掲載して今秋に公表します。

 脳脊髄液減少症は未解明な点も多く、患者が正確な診断を受けられないケースがあるとされます。一部の医師が2000年ごろから治療に取り組むようになったものの、「髄液が漏れることはあり得ない」との反対意見が強く、医学界で論争が起きました。さらに、こうした見解の相違が原因で、交通事故などの治療費を巡る裁判も相次いできました。

 研究班は日本脳神経外科学会など関連8学会の代表らが参加し、2007年に発足。2014年に、外傷で髄液が漏れ脳脊髄液減少症が発症すると認めた診断基準を公表しました。厚労省は2016年、この基準に該当する症例について、漏れを自分の血液で止める治療法「ブラッドパッチ」の保険適用を認めました。

 しかし、漏れが少ないと画像による判断がしづらく、医師によって診断にばらつきがあるとの指摘がありました。

 今回の指針では、詳細な解説や検査の画像例を盛り込むなどして、2014年の基準を具体化します。

 一方で、漏れ以外の理由で髄液が減少する可能性も指摘されており、これらの症例は別の研究班が調査しています。

 脳脊髄液減少症患者・家族支援協会の中井宏代表は、嘉山氏らの成果に謝意を述べる一方、「この病気は完全には解明されていない」としてさらなる調査に期待を示しました。

 2019年7月6日(土)

 

■小細胞肺がんの増殖抑制物質を開発 大阪大研究チーム

 肺がんの中でも進行が早くて治りづらく、再発率も高い「小細胞肺がん」で、増殖にかかわるタンパク質の合成を抑制する物質を開発したと、大阪大学などの研究チームがイギリスの科学誌で発表しました。人の肺がん細胞を移植したマウスに投与し、がん細胞が死滅することを確認しました。研究チームは治療薬開発に向け、大型のラットで効果と安全性を確認するといいます。

 2018年に新たに肺がんと診断された患者は世界で200万人を数え、同年に180万人が死亡したと推定されています。肺がん患者の約15~20%を占める小細胞肺がんは手術が困難で、日本での5年生存率は10%未満と低くなっています。発症リスクは、喫煙や微小粒子状物質「PM2・5」で高まります。

 タンパク質の「SRRM4」がかかわってがん細胞が増殖し、抗がん剤に対する耐性を持つなど悪性化することが知られています。耐性を持つと治療法がなく、完治が困難になります。

 そこで研究チームは、このタンパク質の合成の前に作られる伝令RNA(mRNA)に結合し、分解を促す物質(核酸)を作製。マウスの実験では、がん細胞を8割程度死滅させられました。

 研究チームは、投与量を増やせば「すべてのがん細胞を死滅させることも可能だ」としています。

 大阪大の下條正仁特任准教授(創薬科学)は、「大気汚染がひどい地域などで、早期発見をして投薬治療できれば、高い確率での完治が期待できるだろう。一部の乳がんや前立腺がんでも、同じ効果が見込める」と話しています。

 2019年7月6日(土)

 

■プロ野球のロッテ、12球団初の紙巻きたばこ禁止へ 加熱式たばこのみOK

 プロ野球のロッテは5日、本拠地球場のZOZOマリンスタジアム(千葉市美浜区)で7月26日から紙巻きたばこの喫煙を原則的に禁止し、球場内8カ所の決められた場所で、加熱式たばこのみを可能とすると発表しました。

 プロ野球12球団の本拠地では初の「煙の出ないスタジアム」への取り組みは、来年の東京オリンピック・パラリンピック会場の敷地内が全面禁煙になるといった流れを受けての対応。既存の喫煙所はすべて、煙が出ない加熱式たばこ専用に改装します。加熱式たばこは、周囲に受動喫煙被害を及ぼす有害物質を紙巻きたばこに比べて95%低減できるとの研究データがあるといいます。

 山室晋也球団社長は加熱式たばこを認める理由として、「ファンの中には喫煙者もいる。ファーストステップとしてクリーンな環境を整えるということだ」と説明。将来的な全面禁煙実施については「利用者らの意見を聞いて総合的に判断したい」としました。

 2019年7月6日(土)

 

■前田・国際協力銀行総裁、風疹と診断 G20関連会議に出席後

 6月末にG20大阪サミットに合わせて開かれた会議に出席していた政府系金融機関、「国際協力銀行」の前田匡史総裁が、3日に風疹と診断されていたことがわかりました。

 関係者によりますと、前田総裁はG20閉幕後の7月1日に発疹が出て、医療機関を受診し、3日に風疹と診断されたということです。

 風疹はウイルスに感染してから2週間から3週間の潜伏期間があり、その後、発疹や発熱などの症状が出ます。発疹が出る前後およそ1週間にウイルスを排せつし、飛まつ感染などによって他人にうつす恐れがあるとされています。

 関係者によりますと、前田総裁は6月27日から28日にかけてG20に合わせて開かれた会議にロシアの閣僚などと一緒に出席したほか、29日には日本とロシアのビジネス界の代表による会合にも参加していました。

 また、G20閉幕後の7月1日には、中国の大使などと一緒に東京都で開かれたフォーラムに出席していたということです。

 国際協力銀行は、「前田総裁が風疹と診断されたかや個別に対応しているかどうかも含めてコメントできない」としています。

 風疹は発熱や発疹などの症状が出るウイルス性の感染症で、妊娠中の女性が感染すると生まれてくる赤ちゃんの目や耳、それに心臓などに障害が出る「先天性風疹症候群」になる恐れもあります。

 国立感染症研究所によりますと、今年に入って6月23日までに全国の医療機関から報告された風疹の患者数は1848人と、例年より患者が多くなっています。また、今年に入って先天性風疹症候群と診断された子供が埼玉県、東京都、大阪府で各1人、計3人報告されているということです。

 女性だけでなく男性も十分な免疫を持つ必要があるとして、厚生労働省は子供のころにワクチンの定期接種の機会がなく流行の中心となっている1962年4月2日から1979年4月1日生まれの男性を対象に、今年3月からおよそ3年間にわたって原則、無料で予防接種を受けられるようにしています。

 2019年7月5日(金)

 

■協会けんぽの黒字が過去最高の5948億円 2018年度、加入者増で

 中小企業の従業員や家族約3920万人が加入する全国健康保険協会(協会けんぽ)は5日、2018年度の決算見込みが5948億円の黒字と発表しました。黒字は9年連続で、黒字額は過去最高。協会けんぽによると、保険料を負担する加入者数の伸びや、景気回復による賃金上昇で保険料収入が増えたのが主な要因。

 収入は10兆3461億円(前年度比4%増)で、内訳は主力の保険料が9兆1429億円(同3・9%増)、国庫補助が1兆1850億円など。保険料を負担している加入者数は2361万人(同2・7%増)で、加入者の平均賃金は2008年度以降で最も高い1・2%の伸び、医療費などの支出は9兆7513億円(同2・6%増)。2018年4月に診療報酬がマイナス改定され、収入に比べて支出の伸びが抑えられました。

 積立金に当たる準備金の残高は2兆8521億円となります。黒字とともに、協会けんぽの前身組織の時代を含め記録が残る1992年度以降で最高でした。

 ただ、藤井康弘理事は「高齢者医療費の増加で2023年ごろには急速な収支悪化が見込まれる。政府に医療の給付と負担の見直しを求めたい」と話しています。

 2019年7月5日(金)

 

■マスクが「花粉を分解」に根拠なし 消費者庁が4社に措置命令

 着用すれば「花粉を分解する」などと宣伝して販売されていたマスクについて、消費者庁は、表示のような効果を示す合理的な根拠は認められないとして、東京都や仙台市の4つの会社に対し、現在の表示を速やかにやめ、再発を防止することなどを命じる措置命令を出しました。

 措置命令を受けたのは、東京都新宿区の「DR.C医薬」、仙台市青葉区の「アイリスオーヤマ」、東京都豊島区の「大正製薬」、東京都千代田区の「玉川衛材」の4社です。

 消費者庁によりますと、4社は光を当てるとタンパク質などを分解するという「光触媒」の物質をマスクの素材に混ぜた上、2013年10月以降、販売するマスク計約20商品のパッケージに、「花粉を水に変える」「光で分解」などと表示して販売していました。

 しかし、消費者庁が表示の裏付けとなる資料の提出を会社に求めたところ、そのような効果を示す合理的な根拠は認められなかったということです。

 このため消費者庁は、これらの表示が消費者に誤解を与えるとして、景品表示法(優良誤認)に基づいて4つの会社に対し、現在の表示を速やかにやめることや、再発防止などを命じる行政処分を行いました。

 「DR.C医薬」は、新規の出荷を取りやめたとした上で、「表示上の問題で、効果を否定するものではないと認識している。今後は表示の在り方について検討し、より一層適正な表示に努めたい」と話しています。

 「アイリスオーヤマ」は、該当する製品はすでに販売を終了しているとした上で、「購入されたお客様や、関係者の皆様に心よりおわび申し上げます。今回の命令を重く受け止め、再発防止に努めます」と話しています。

 「大正製薬」は、「科学的根拠に基づいて開発を行い、合理的な根拠により表示していると認識していて、命令は誠に遺憾です。命令は、提出した科学的根拠を全く無視した内容で、合理的なものでないと考えています。今後、法的に取り得る対応や措置を検討中です」とコメントしています。

 「玉川衛材」は、「命令は合理的な根拠が十分でなかったというもので、効果自体が否定されたものではありません。今後は文言の追加や修正をするなど適正に対応します」とコメントしています。

 2019年7月4日(木)

 

■首都圏で手足口病の患者が増加 4都県が警報レベルに

 手や足などに水疱(すいほう)性の発疹が現れる手足口病の流行が、首都圏で拡大しています。6月24日から30日までの週の1医療機関当たりの患者報告数は、東京や千葉など4都県で警報基準値を上回っています。

 この週の1医療機関当たりの患者報告数は、千葉県が前週比約1・5倍の7・74人、埼玉県が約2・3倍の5・48人、神奈川県が約2倍の5・23人、東京都が約1・9倍の5・1人となり、いずれも警報基準値の5人を超えています。

 千葉県では、県内の16保健所管内のうち、14保健所管内で前週より報告が増加。船橋市の20・09人が最も多く、警報基準値の4倍となっています。年齢別では、0〜3歳が全体の9割近くを占めています。

 埼玉県では、保健所管内の南部が13・5人と最も多く、川口市が10・38人、東松山が10・0人、朝霞が8・93人、春日部と草加が7・67人などと警報基準値を上回っています。同県は、外出後の手洗いなどの感染防止策を行うことに加え、子供の体調が優れない時は医療機関に電話で相談の上、早めに受診するよう呼び掛けています。

 東京都では、都内の31保健所管内のうち、10保健所管内で警報基準値の5人を超えています。このうち江東区が15・33人と最も多く、次いで中央区が13人、目黒区が10・8人などとなっています。

 手足口病は、水疱性の発疹を主な症状とした急性ウイルス性感染症で、乳幼児を中心に夏季に患者数が最も多くなります。原因病原体はコクサッキーウイルスやエコーウイルス、エンテロウイルスなどで、感染から3〜5日の潜伏期間後、口腔粘膜や手のひら、足の甲・裏などに2〜3ミリの水疱性発疹が現れます。まれに脳炎などの重い症状を引き起こすことがあります。せきやくしゃみのほか、手についたウイルスが口に入ることで感染します。

 2019年7月4日(木)

 

■糖尿病の予防、内臓脂肪よりも脂肪肝が重要 順天堂大が研究

 順天堂大学大学院医学研究科の研究チームは、非肥満者が糖尿病のような生活習慣病(代謝異常)になる原因を究明し、非肥満者では内臓脂肪の蓄積よりも、肝臓に脂肪がたまる脂肪肝が筋肉の代謝障害と強く関連することを明らかにしました。太っていなくても生活習慣病にならないように、肝機能の検査も重視するよう呼び掛けています。

 糖尿病は、血糖値を抑えるホルモン「インスリン」が効きにくくなって血糖値が高くなる病気。脳卒中や心筋梗塞(こうそく)を引き起こしたり、重症化すると人工透析を余儀なくされたりします。原因の一つが肥満ですが、日本人を始めアジア人では、太っていなくても発症することが多く、早期発見が課題でした。

 研究チームは、肥満度を示すBMIが正常(21以上25未満)の範囲に収まっている太っていない男性87人を対象に、MRIで内臓脂肪や肝脂肪の量を調べ、インスリンの効き方との関係を分析しました。すると、内臓脂肪の蓄積がなくても、脂肪肝があるとインスリン感受性の低下(インスリン抵抗性)を認め、これとは逆に内臓脂肪の蓄積があっても脂肪肝がなければインスリン感受性は良好であること、内臓脂肪の蓄積と脂肪肝が両方あっても脂肪肝単独とインスリン感受性は同程度であることがわかり、内臓脂肪よりも脂肪肝かどうかのほうが大きく影響していました。

 研究の成果は、非肥満者の生活習慣病予防において、内臓脂肪だけでなく脂肪肝に着目した取り組みが必要であることを示しています。脂肪肝というと「酒を飲む人」のイメージですが、飲まない人でもなるほか、肝硬変や肝臓がんの原因にもなります。ウエストサイズ以上にチェックが必要そうです。

 論文は、アメリカの内分泌学会雑誌「Journal of the Endocrine Society」(電子版)で公開されました。

 2019年7月4日(木)

 

■がんのある臓器を問わない治療薬が登場へ 国内で2種類目

 がんのある臓器を問わず、特定の遺伝子異常があるがんに対する治療薬が登場します。中外製薬(東京都中央区)は6月18日、ロズリートレク(一般名:エヌトレクチニブ)の製造販売承認を取得しました。

 がん治療薬はこれまで、臓器の種類別に使用範囲が認められてきました。がんのある臓器に軸を置かずに、使用を認める薬は国内では2種類目。こうした承認により、患者が少ないがんでも早く薬が使えるようになることが期待されています。

 今回の薬は、服用するタイプの分子標的薬。がん細胞の遺伝子変異を調べ、「NTRK融合遺伝子」という、ちぎれた2つの遺伝子がくっ付いてできた異常な遺伝子があると使えます。進行・再発の固形がんの患者が対象で、子供にも使えます。

 日本人も含めた成人の臨床試験では、57%でがんが小さくなっていました。味覚異常や疲労、めまい、認知障害や心臓障害などの副作用がみられたといいます。

 NTRK融合遺伝子のあるがんの患者は、非小細胞肺がんや大腸がんなど主要ながんでは1%未満とわずか。他方、患者数の少ない神経内分泌腫瘍(しゅよう)、唾液腺(だえきせん)がんでは多く認められるといいます。

 臓器を問わずに使えるがん治療薬の1種目は、MSD(東京都千代田区)のキイトルーダ(一般名:ペムブロリズマブ)で、傷付いた遺伝子の修復機能を見る「マイクロサテライト不安定性(MSI)」を見て使用が可能になります。2018年12月に承認されました。

 2019年7月4日(木)

 

■がん新薬の臨床試験の情報検索が可能に がん研究センターがHP作成

 がんの新しい治療薬を開発するために、医療機関などが患者を募集して行われている臨床試験について、全国の情報を集めたホームページができました。

 国内の製薬会社や医療機関は、がんの新薬を開発するために一定の条件の患者を募集し、薬の有効性や安全性などを調べる臨床試験を行っていますが、これまで、一般の人が網羅的に情報を見ることはできませんでした。

 国立がん研究センターが作成した新しいホームページでは、国内で実施されているがん治療の臨床試験の情報が集められており、年齢やがんの種類などを入力すると、患者が参加できる可能性のある臨床試験を検索できるほか、さらに詳しい情報がほしい時はホームページ上から問い合わせができる仕組みになっています。

 今年4月の時点で31件の臨床試験の情報を集めており、情報は定期的に更新されるということです。

 国立がん研究センター先端医療科の山本昇科長は、「がん患者が、希望する臨床試験に参加できることにつながればと思う」と話しています。

 2019年7月3日(水)

 

■パーキンソン病を血液検査で診断し、早期発見も 順天堂大が開発

 順天堂大学の研究チームは、血液検査でパーキンソン病かどうかを診断する手法を開発しました。2日、アメリカの神経学会誌「ニューロロジー」に論文を発表しました。

 研究チームは2年後の実用化を目指すといい、手足の震えなどの症状が出る前に発症するかがわかる可能性があり、治療薬の開発にもつながる成果としています。

 パーキンソン病は高齢者に多い進行性の神経変性疾患で、国内に患者は約15万人いるとされます。脳内の神経伝達物質ドーパミンが減ることで、手足の震えなどが起きて体が動かしにくくなります。症状が出るまでに数年かかり、早期発見は難しく、治療はドーパミンを薬で補うなど対症療法しかありません。

 順天堂大学の服部信孝教授らは、健常者49人とパーキンソン病患者186人の血液をとって調べました。患者では「スペルミン」という物質が血液中に大幅に少なくなっていることを見付けました。また、「ジアセチルスペルミジン」という別の物質の濃度にも着目。健常者に比べて患者での濃度が高く、重症者ほど高くなりました。

 これまでは手足の震えなどの症状から診断していたが、この物質を使えば正確で簡単に診断できるほか、重症度をきちんと判別できます。また、症状が出る前に調べて発症のリスクがわかる可能性があるといいます。

 研究チームは今後、スペルミンを生み出す物質を体内に摂取して症状が出るのを遅らせたり、改善したりする治療薬の開発を進めます。

 服部教授は、「パーキンソン病は脳の病気だが、血液中にある代謝産物にも変化が出ていたことがわかった」と話しています。

 2019年7月3日(水)

 

■その日最適な化粧液、8万通りから自宅で自動調合 資生堂が本格展開

 資生堂は1日、天候やその日の肌の状態に応じて最適な化粧液を調合する肌ケアシステム「オプチューン」を7月から本格展開すると発表しました。自宅でスマートフォンアプリと専用機器を使って8万通りの組み合わせから最適な化粧液を選べます。月に一定額払えば継続利用できるサブスクリプション型モデルを同社で初めて導入。軌道に乗れば、商品の拡充も視野に入れます。

 月額利用料金は税別で1万円。利用には5種類の化粧液のもとが入った機器と専用のスマホアプリを用意。洗顔後にアプリを通じて肌を撮影し、皮脂量や水分量を測定。その日の天候や花粉の飛散量、寝返りの回数などから導き出した睡眠の質や量などのデータを組み合わせて、その時々の肌に合った化粧液を必要な量だけ自動で調合します。

 化粧液の調合は数秒で完了します。専用機器は同社ブランドサイトで申し込みます。機器の中にある化粧液のもとはインターネット網を通じて管理されており、なくなる直前に自動で送られてきます。オプチューンは2018年春にベータ版のテスト販売を始めましたが、商品の改良などにメドがついたことから、本格的な販売に踏み切ります。

 資生堂ジャパンの杉山繁和社長は、「ソフトウエアのサービス化SaaS(サース)を美容分野でも進め、新市場をつくりたい」と意気込みます。テスト販売では数百人の顧客に対して提供してきましたが、本格展開では30~40歳代の多忙な女性を主要ターゲットにして数千人以上の顧客の獲得を目指します。本格展開で得た顧客のデータは同社の今後の商品開発に生かします。

 2019年7月2日(火)

 

■無痛分娩死で検察審査会に申し立て 院長不起訴に遺族が不服

 大阪府和泉市の産婦人科医院「老木レディスクリニック」で2017年1月、麻酔で痛みを和らげる「無痛分娩」で出産した長村千恵さん=当時(31歳)=が死亡した事故で、業務上過失致死容疑で書類送検された男性院長(61歳)の不起訴処分を不服とし、遺族が大阪第4検察審査会に申し立てを行い2日までに受理されました。

 申立書によると、院長は長村さんの脊髄近くにカテーテルを入れ、麻酔薬を注入する硬膜外麻酔を行う際、適切な位置に挿入されているかどうか確認を怠りました。麻酔の効き具合の確認などを十分にせず、死亡させた過失は重大だとしています。

 2日に大阪市内で記者会見した長村さんの父、安東雄志さん(70歳)は「起訴すべきものは起訴にして裁判で決着をつけるのが正しいやり方」と訴えました。

 院長は2017年10月、大阪府警に書類送検されましたが、今年4月に大阪地検が嫌疑不十分で不起訴としました。

 2019年7月2日(火)

 

■手足口病の患者が警報レベルを超す 過去10年で最多

 乳幼児を中心に口内や手足に発疹ができる「手足口病」の患者数が6月23日までの1週間で1医療機関当たり5・18人となり、警報レベルの5人を超えたことが2日、国立感染症研究所の調べで明らかになりました。この時期としては過去10年で最多。西日本で感染拡大が目立ち、厚生労働省などが注意を呼び掛けています。

 感染研によると、6月17〜23日までの1週間に、全国およそ3000の小児科の定点医療機関から報告された患者数は1万6417人。

 都道府県別では、1医療機関当たり福岡県の17・33人が最多で、福井県15・26人、佐賀県13・17人、鳥取県11・84人、高知県10・07人が続きました。警報レベルを超えたのは24府県で、大阪府は9・15人、東京都は2・73人でした。

 手足口病は例年夏に流行のピークを迎え、5歳以下の患者報告数が多くを占めます。口内や手足にできる水疱(すいほう)性の発疹が主な症状で、熱が出ることもあります。通常は数日のうちに治るものの、まれに髄膜炎や脳炎などを引き起こすこともあります。

 くしゃみなどの飛沫(ひまつ)や便を通じて感染するため、保育施設などで集団感染が起こりやすいため、厚労省は予防として、こまめな手洗い、排泄(はいせつ)物の適切な処理のほか、タオルを共有しないことが重要としています。

 2019年7月2日(火)

 

■富士フイルム、がん免疫薬を開発へ ドイツ製薬大手とiPS細胞を活用

 富士フイルムホールディングスは1日、iPS細胞(人工多能性幹細胞)を使っがん免疫治療薬の開発を加速させると発表しました。患者以外の第三者のiPS細胞を製造に使い、費用を安くできる可能性があるといいます。

 アメリカ子会社のフジフイルム・セルラー・ダイナミクスと、アメリカの医療分野におけるベンチャー企業が、共同で新会社を設立し、第三者のiPS細胞を使った新たながん免疫治療薬の開発を開始しました。

 また、設立した新会社に、ドイツ製薬大手バイエルが出資。開発費は2億5000万ドル(約270億円)を見込み、バイエルが9割弱を負担する計画です。新会社が製造を担当し、数年後にアメリカで臨床試験を始める方向です。

 患者自身のCAR-T(カーティー)細胞を用いた従来のがん免疫治療薬は、患者自身のT細胞を採取・培養して作製するため、患者ごとに細胞の品質にバラつきが発生したり、製造コストが非常に高いといった課題があります。第三者のiPS細胞を用いることで、均一な品質と製造コストの大幅な低減が期待できるとしています。

 日本では1回の投与で数千万円する高額ながん免疫治療薬のコストが下がる可能性があり、治療の選択肢が広がりそうです。

 2019年7月2日(火)

 

■今日から「屋内全面禁煙」施行 学校、病院、行政機関など

 学校や病院、薬局、児童福祉施設、中央省庁や自治体の庁舎などの屋内が1日、全面禁煙になりました。9月のラグビーワールドカップ(W杯)に間に合わせるため、受動喫煙対策を強化した改正健康増進法を一部先んじて施行。悪質な違反者には罰則の適用(過料50万円以下)も始まりました。病院などでは比較的対策が進んでいるものの、行政機関では慌てて屋外に喫煙所を設置したため、近隣住民と対立している所もあります。

 文部科学省では1日、省内の喫煙所から灰皿がすべて撤去され、喫煙者は近くの民間ビルなどに出向かざるを得なくなりました。40歳代男性職員は「息抜きに出るには遠い。今更たばこはやめられないし、肩身が狭くなるばかりだ」と嘆いています。

 東京都庁でも6月28日、庁内にある全6カ所の喫煙所を一斉撤去しました。屋外喫煙所も検討したものの、「条件に当てはまる場所がなかった」(庁舎管理課)と設置を断念。埼玉県庁では、庁舎内に5カ所ある喫煙所を撤去した上で、屋上にある1カ所は維持します。神奈川県庁は2005年、千葉県庁は2011年、庁舎内の喫煙所をすべて撤去したといいます。

 東京都板橋区は庁舎内の喫煙所を撤廃する代わりに、屋外に公衆喫煙所(約10平方メートル)を設置。だが近隣からの苦情が相次ぎ、反対署名2000筆以上が区に届きました。7月1日の開設を目指していましたが、9月以降の延期に追い込まれました。

 「お年寄りや幼児も近くを通る。勝手に喫煙所の設置が進められており、健康被害が心配だ」。近隣の女性(54歳)は憤りをあらわにしています。反発が強まっていることに対し、区の担当者は「問題点があれば検証しながら運用を考えていきたい」と話しています。

 大学も、7月1日から規制対象です。早稲田大学は6月28日、早稲田キャンパス(新宿区)の4カ所の屋内喫煙所をすべて閉鎖。屋外喫煙所が5カ所あるものの、「すべて閉鎖すると、路上喫煙で迷惑をかける」(総務課)と恐れています。実際に、中央大学は昨年秋、多摩キャンパス(八王子市)にある13カ所の喫煙所を撤廃する計画を立てましたが、現在まで2カ所を維持。多くを撤廃したことで、「ポイ捨てや路上喫煙が増えて近隣から苦情が出たため」(学生課)といいます。

 慶応大学では「すべてのキャンパスで全面禁煙を目指す」(広報室)としており、屋外にある喫煙所27カ所についても計8カ所に削減していくとしています。

 一方、飲食店や企業などの規制は、来年4月1日から始まり、規模の大きな店舗や新たに営業を始める店、それに企業のオフィスは喫煙室以外は禁煙となるほか、規模の小さい店舗も喫煙できることを店先などに表示しなければならなくなります。

 2019年7月1日(月)

 

■エボラ出血熱など輸入ウイルス、感染研に保管で合意 厚労省と武蔵村山市

 エボラ出血熱など致死率の高い1類感染症の原因ウイルスの輸入を巡り、根本匠厚生労働相は1日、保管先として予定する国立感染症研究所村山庁舎のある東京都武蔵村山市を訪れ、藤野勝市長と会談しました。根本厚労相は改めて輸入方針を説明し、「一定の理解を得た」として、輸入に向けた手続きを進める意向を示しました。

 厚労省が輸入方針を示しているのは、エボラ出血熱、南米出血熱、ラッサ熱、クリミア・コンゴ出血熱、マールブルグ病の5種類の感染症の原因ウイルス。東京オリンピック・パラリンピックを控え、海外から持ち込まれる恐れがある感染症を素早く正確に検査できるようにするのが目的。「最も危険」と分類されるウイルスが初めて海外の研究機関から持ち込まれることになります。

 根本厚労相は会談に先立ち、輸入ウイルスが保管されることになる感染研村山庁舎のバイオセーフティーレベル(BSL)4と呼ばれる高度な安全設備を備えた施設を視察。その後、同市役所で藤野市長と会談し、施設の安全対策や防災対策の強化など5項目の要望を受けました。

 根本厚労相は会談後、報道陣の取材に応じ、原因ウイルスの輸入について「一定のご理解をいただいた。大きな一歩を踏み出せた。要望された5項目については、厚労省としてしっかり取り組んで参りたい」と述べました。

 原因ウイルスは早ければ夏ごろにも国内に持ち込まれる見込みですが、輸入経路や日時は事前に公表されません。

 厚労省や感染研は昨年11月、同市側に輸入に向けた考えを示し、住民向け説明会などを繰り返し実施。5月末には、一定の理解が得られたとして、地元関係者らが集まる会議で輸入方針を表明していました。

 2019年7月1日(月)

 

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