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健康ダイジェスト

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■認知症を日常会話で簡易検査へ 京都府立医大が技術開発

 京都府立医科大学の大庭輝特任助教らの研究チームは、日常会話で認知機能を簡単に検査する技術を開発しました。介護現場や家庭などで、アルツハイマー病などの認知症患者の早期発見につながります。高齢者の会話を促進し、認知症予防も見込めると期待しており、高齢者施設などで活用を広げる考えです。

 認知症は正常に発達した精神機能が失われ、日常生活や社会生活を営めない状態を指します。認知症の早期発見、治療に役立つ検査技術が求められていました。

 研究チームは高齢者見守りサービスの会話内容を分析したり、認知症患者に詳しい臨床心理士との意見交換などを実施し、認知症患者の会話の特徴35項目を抽出。さらに、認知症患者にかかわる医師や心理士、介護士にアンケートをとって項目を絞り込みました。最終的に、認知症に特徴的な「会話に広がりがない」や「先の予定がわからない」「話が過度にそれる」など15項目のリストを作成しました。

 次に、医師13人、心理士10人に平均78歳の認知症高齢者計45人と会話してもらい、15項目が当てはまるかどうかをそれぞれ3段階で評価して点数化しました。健康な人で実施した場合は平均1・4点でしたが、認知症患者では平均13点と高くなりました。点数から認知症かどうかを正しく推定する精度は、80~90%でした。大庭助教は「十分に臨床で使える精度だ」と評価しています。

 新技術は日常会話を記録するだけで、患者に不快な思いをさせなくてすみます。介護現場で簡易検査を使えば、介護士と利用者の会話を活性化する効果も期待できます。大庭助教は「会話は高齢者の満足度を高め、認知機能の維持につながる」と話しています。評価シートはウェブで公開しており、高齢者施設や家庭などで活用してもらう考えです。

 医療機関における一般的な認知症の検査は、患者自身の年齢や日付を聞いたり簡単な計算をさせたりして、認知機能を評価します。正解のある簡単な問いのため、患者が不快な思いをしたり不安になったりするケースが多くみられました。

 内閣府のデータによると、2012年は65歳以上の認知症患者数が462万人で約7人に1人でしたが、2025年には730万人で約5人に1人に増えるとされます。高齢化に伴って患者数は増加傾向にあり、労働力が減る中、介護の負担が重くなり、社会問題となっています。

 2017年12月31日(日)

 

■発汗計を使った診断、来年4月から保険適用に 信州大などが開発

 信州大学医学部(長野県松本市)の大橋俊夫特任教授らの研究チームは27日、汗の量を簡単に計測するために開発した「発汗計」が2018年4月から保険適用されると発表しました。

 医学部で開発された医療機器が保険適用されるのは全国初といい、病院で患者の診断と治療に幅広く使用されることになりそうです。

 開発した発汗計は22日付で、中央社会保険医療協議会(中医協、厚生労働相の諮問機関)が承認しました。

 汗の量の計測は従来、全身に特殊なセロハン用紙を巻いて加温し、写真撮影で調べていました。患者の負担も大きいため、大橋特任教授らは電子的に簡単に計測する機器の研究、開発を1981年から進めてきました。1991年に医療用具として認可を受けた後も改良を進め、現在は西沢電機計器製作所(長野県坂城町)が製造、販売しています。

 開発した発汗計は、直径2センチほどの装着部を手のひらなどに張り付け、装着面と空気中の湿度差から発汗量を計測する方式で、専用ソフトを入れたパソコンで発汗量の経時変化を観察し、既存の保険適用技術より容易に定量的な測定ができるといいます。保険適用により、パーキンソン病や膠原(こうげん)病など自律神経障害の患者を診断する際の発汗状態の検査などに利用できるようになります。

 大橋特任教授は、「医学部発の医療機器が保険適用まで到達したのは日本で初めて」とした上で、「保険適用で開業医も導入しやすくなる。医療機器は海外メーカー製が多く、開発した機器が輸出されれば地方大学の発展につながる。さらに研究する」と話しています。

 発汗計は医療分野だけでなく、衣料品や化粧品メーカーなどで汗の状況を調べる用途にも利用されています。ストレステストなどにも応用できる可能性もあります。

 2017年12月30日(土)

 

■小児用人工肺に不具合見付かる 医療機器メーカーが自主回収

 東京都の医療機器メーカーが製造し医療機関で使用されていた小児用人工肺の部品に不具合があることがわかり、メーカーが自主回収を進めています。メーカーによりますと、人口肺は手術の際に使うもので、これまでに健康被害の報告は寄せられていないということです。

 自主回収が行われているのは、東京都文京区に本社がある医療機器メーカー「泉工医科工業」が、埼玉県春日部市の工場で製造し2016年1月18日~2017年12月25日に病院を中心に出荷した小児用人工肺「メラHPエクセランプライム」と、同様の構造の「メラHPエクセランTPC」の計503台。これらを組み込んだ人工心肺用回路システム「メラエクセライン回路N2」、「メラエクセライン回路TPC」、ヘパリン使用人工心肺用回路システム「メラエクセライン回路HP2」の計300組も対象。

 泉工医科工業によりますと、これらの機器は心臓外科手術の際に血液中の二酸化炭素を取り除き、酸素を加えて体内に循環させるもので、購入した病院の一つから12日の手術前の準備中に不具合が見付かったという報告を受けて調べたところ、機器と体をつなぐチューブが外れる不具合が見付かったということです。

 これ以外に不具合や健康被害の報告は寄せられていないということで、泉工医科工業は全国の54の病院に納入した機器について、27日から自主回収を始めています。

 泉工医科工業は、「関係各位にご迷惑をおかけして大変申し訳ありません。再発防止を図っていきます」とコメントしています。

 2017年12月30日(土)

 

■世界初、振動波画像で乳がんを診断 群馬大が技術を開発

 群馬大学大学院理工学府(桐生市)の山越芳樹教授(医用工学)が、女性の乳腺に表面から機械的な振動波を与えて乳がんを画像診断し、患者の負担軽減が期待できる新しい技術を開発しました。国内の特許に加え、欧米で国際特許も出願している世界で初めての技術です。

 10月に台湾で開催された「世界超音波医学学術連合大会」で発表しました。すでに群馬大学病院(前橋市)で中島崇仁(たかひと)准教授が臨床評価を始めており、数年後の実用化を目指しています。

 乳がんの診断では、X線撮影による「マンモグラフィー」が一般的ですが、被ばくの問題や、乳腺の密度が高い高濃度乳房だと写った影はがん細胞なのか判別が難しい場合もある問題が指摘されています。

 新技術は、乳腺の表面から小型の加振器で周波数300Hz程度の振動波を与えて、乳腺内に伝わる振動波の様子を超音波(エコー)によって可視化し、小石を池に落とした際に水面に広がる波紋のような画像に約4秒間で映像化します。

 その波紋の状態に異常が現れているかによって組織の硬さが判断でき、硬いがん細胞なのか、単なるしこりなのかが形状を含めて診断できます。振動に伴う痛みはありません。

 新技術は、しこりの硬さなどを確認する「触診」や、乳房の中に医療器具を挿入して細胞を取り出し、がん細胞かを確認する診療を補強し、患者の負担軽減が期待できます。

 今年1月に開始した群馬大病院での臨床評価では、従来法に比べて乳がんが明瞭に画像化できるなどの成果が上がっているといいます。

 新技術は、一般的な開業医でも持っている通常の画像診断装置とパソコンが利用できるコストの安さが特長。健康診断にも有効活用できます。現在は乳腺に当てる小型加振器の開発に取り組んでいますが、技術的には難しくないといいます。

 新技術は将来的には、前立腺がんや甲状腺がんなどへの応用も期待できます。

 乳がんの死者数は世界で2012年に約50万人だったとの推計があり、国内では2016年に約1万4000人で、いずれも増加傾向にあります。

 山越教授は、「この技術を健診に有効活用し、乳がんの(死者を減らす)発見率向上につながってほしい。早期発見により、乳がんによる摘出手術も少なくなれば」と期待を込めています。

 2017年12月29日(金)

 

■髪の毛だけで健康診断する手法を共同開発へ 理研やヤフーら16企業・2団体

 ヤフーやアデランスなどは27日、理化学研究所など16企業・2団体が連携して髪の毛から健康状態の診断を目指す「毛髪診断コンソーシアム」を設立すると発表しました。髪の毛に含まれる物質を分析し、分析機器の開発や診断方法の研究などを進め、2年後をメドに実用化を目指します。

 毛髪診断コンソーシアムの幹事法人はアデランス、ヤフー、再生医療向け医薬品を製造・販売するオーガンテクノロジーズ(東京都港区)の3社で、事業化などを手掛けます。ヤフーは、2014年から手掛ける遺伝子解析サービスで培ったノウハウを活用するとしています。

 診断システムの確立に向けた研究開発は、島津製作所、シャンプー販売のアジュバンコスメジャパンが担い、三井物産などがデータ活用などをアドバイスします。

 毛髪診断コンソーシアムでは、髪の毛の形状や内部に含まれる遺伝子やタンパク質などを調べることによって、病気の発症を見付けたり、いつ発症したかを特定したりできる診断技術の確立を目指します。

 まず2年間かけて、約1万人分の髪の毛の分析データや、生活習慣にまつわるアンケート結果を収集。その後、得られたビッグデータを解析し、どの物質を調べれば何の病気が判明するかといった診断手法や、健康維持を目指す関連製品やサービスの開発につなげます。

 髪の毛を使った健康診断で確立した手法は、世界的にもまだありません。現在の健康診断では、採血や尿検査、血圧測定などが広く利用されていますが、直前の食事内容や水分摂取量によって変動してしまう欠点があり「不安定なデータ」ともいわれています。

 髪の毛の採取には痛みを伴わなず人手もかからないため、血液を使う従来の健康診断に置き換わるような診断技術が確立できれば健診を受ける人の負担は減らせると、毛髪診断コンソーシアムではみています。

 理化学研究所の辻孝チームリーダーは、「この方法だと痛みを伴わないことに加え、12センチの長さがあれば1年分の健康状態の推移もわかり、健康の維持による国民医療費の抑制や新しい産業の育成に貢献したい」と話しています。

 毛髪診断コンソーシアムに参画するのは、国立研究開発法人理化学研究所、オーガンテクノロジーズ、ヤフー、アデランス、アジュバンコスメジャパン、京セラ、コンピュータ技研、島津製作所、ダイキン工業、東ソー、NECソリューションイノベータ、公益財団法人先端医療振興財団、三井物産、アジュバンコスメティック、アデランスメディカルリサーチ、京セラオプテック、他2社(非公開)。

 2017年12月29日(金)

 

■新たに4人が確定し、甲状腺がん7人に 福島県民健康調査・3巡目

 東京電力福島第1原発事故の健康影響を調べる福島県の「県民健康調査」検討委員会が25日、福島市で開かれました。2016年度から始まった3巡目検査(9月末時点)で、前回報告(6月末)から新たに4人が甲状腺がんと確定し、がん確定は計7人となりました。

 福島県は原発事故時に18歳以下だった県内すべての子供を対象に、甲状腺検査を実施。2011年度から1巡目、2014年度から2巡目、2016年度から3巡目が始まっています。

 2巡目の検査では、前回報告からがんの確定が1人増えて51人になり、疑いは1人減って20人になったことも報告されました。1~3巡目を合わせるとがん確定は計159人(手術で良性と確認された1人を除く)、疑いは計34人になりました。

 検討委委員会は1巡目の結果を踏まえ、検査で見付かった甲状腺がんは「放射線の影響とは考えにくい」との中間報告をまとめています。

 一方、検討委員会では、委員を務める金地病院(東京都北区)の清水一雄名誉院長が、自身の病院で福島県から県外に避難した被災者1人の甲状腺がん手術を実施し、福島県に報告したと明らかにしました。

 清水氏の報告例などのように、県民健康調査の甲状腺検査で1巡目の先行検査を受診、1巡目以降の検査を受けていない被災者を、現在の調査の枠組みでは把握できる仕組みになっていません。このため星北斗座長(福島県医師会副会長)は、「把握の仕方については今後、継続的に検討していく」と語りました。

 2017年12月28日(木)

 

■健康器具販売のジャパンライフが倒産 負債総額は2405億円

 健康器具販売の預託商法を展開するジャパンライフ(東京都千代田区)が2度の不渡りを出して、26日に銀行から取引停止処分を受けて事実上倒産したことが明らかになりました。東京都内の本社は、連絡がつかない状態となっています。

 負債総額は2405億円で、今年の企業倒産では、エアバッグやシートベルトなど自動車用安全部品を製造すタカタに次ぐ2番目の規模といいます。

 ジャパンライフは、高いもので数百万円を支払ったオーナーから磁気治療器などを預かり、レンタル収入として1年間で商品価格の6%を支払う「レンタルオーナー契約」という預託商法を展開。このほか、商品を周囲に宣伝すれば活動費が得られるという契約を結び、消費者庁から連鎖販売取引(マルチ商法)と認定されていました。

 民間信用調査会社の東京商工リサーチによると、保管する商品数が契約数より大幅に不足していたり、会員の解約を妨害したなどとして、昨年12月以降、消費者庁から特定商取引法違反や預託法違反で、一部業務停止命令などの行政処分を計4度受けていました。

 7月末の会員数は6855人、預託残高は1714億円に上り、巨額の消費者被害になる可能性が指摘されています。

 ジャパンライフは1975年設立で、資本金4億7640万円、従業員746人。売上高は磁気治療器や化粧品などの販売で1500億円を超えた時期もありましたが、行政処分などを受けて2017年3月期は235億円余りにまで落ち込んでいました。 

 2017年12月28日(木)

 

■治療用装具で不正請求、3年間で724万円 安眠枕、眼鏡など相次ぎ発覚

 病気の治療で使うコルセットなどの「治療用装具」の製作を巡り、2014年4月~2017年9月に計324件、総額724万円の患者による不正な保険請求があったことが23日、厚生労働省の調査で明らかになりました。厚労省は保険請求の際に現物写真の添付を義務付けるなど防止策を検討します。

 治療用装具は、病気やけがをした部分が治るまで保護したり、機能を補ったりするために装着します。医師による作製指示があった場合、装具業者が患部の型を取るなどして作ります。加入する健康保険組合などに申請すれば、作製費の7~9割が医療保険から支給されます。

 ただ、病名・装具名を書いた医師の証明書や装具業者の領収書が必要ですが、装具の現物や写真を示す義務がないため、治療用装具を装って安眠枕や眼鏡を作るなどの不正請求が相次いで発覚し、厚労省が医療保険者を通じて実態を調べていました。

 「不正な請求を受けた」と回答したのは、全体の1・4%の46保険者。不正請求1件当たりの平均金額は、2万2354円でした。不要な付属品をつけて金額を水増ししたり、市販の靴を加工しただけのものを装具として請求したり、市販品の2~5倍など不当に高い金額で請求したり、悪質なケースも判明しました。

 保険者による治療用装具の年間支給額は約400億円となっており、不正な請求は全体の中ではごく一部ですが、装具業者に手引きされたとみられます。

 不正な請求があったのは、地域でみると8都府県。愛知県が206件で最も多く、次いで東京都が99件、静岡県、神奈川県がともに7件で続きました。

 2017年12月27日(水)

 

■希少がんの「軟部肉腫」を治療できる53病院をリスト化 国立がん研究センター

 国立がん研究センターは25日、患者数が極めて少ない希少がんの一種「軟部肉腫」の専門的な治療ができる全国53病院のリストを作り、同センターのホームページ「がん情報サービス」(https://ganjoho.jp)で公開を始めました。

 治療実績や病理診断の体制、専門医の経歴などの情報を載せ、質の高い治療が受けられる施設探しに役立ちます。今後、他の希少がんについても同様の情報公開を進めるといいます。

 年間の患者発生数が人口10万人当たり6人未満の希少がんは、脳腫瘍や小腸がんなど約200種類あるとされます。患者数が少ないため専門的な治療ができる病院が数少なく、診療体制の情報収集も難しいのが課題で、昨年12月に施行された改正がん対策基本法には研究促進についての必要な配慮が盛り込まれました。

 軟部肉腫は、手足や内臓などさまざまな部位の筋肉や脂肪、血管などにできるこぶ状のがんで、国内の患者は人口10万人当たり3・6人。

 ホームページでは全国から情報を募り、軟部肉腫が手足や胴体(体幹)の表面に近い部分などにできた場合に治療ができる31都道府県の53病院を載せています。過去3年間に新規患者の治療経験があることや専門医が常勤していることなど一定の条件に合致する病院に絞ったため、16県にはリスト記載の病院がありません。内臓や顔、頭など別の部位にできた肉腫は、専門的な治療ができる病院が異なるといいます。

 国立がん研究センターの川井章・希少がんセンター長は、「リストの公開で、患者さんが自然と集約されれば、治療の研究開発も促進される」と期待を込めています。

 ホームページで公開された53病院は以下の通り。

 北海道がんセンター▽札幌医科大病院▽弘前大病院▽岩手医科大病院▽山形大病院▽福島県立医大病院▽群馬大病院▽埼玉県立がんセンター▽埼玉医科大国際医療センター▽東京歯科大市川総合病院▽千葉県がんセンター▽国立がん研究センター中央病院▽東京都立駒込病院▽がん研有明病院▽東京大病院▽帝京大病院▽順天堂大順天堂医院▽慶応大病院▽東京医科大病院▽東京医療センター▽東京医科歯科大病院▽神奈川県立がんセンター▽横浜市大病院▽東海大病院▽新潟大病院▽富山大病院▽金沢大病院▽福井大病院▽信州大病院▽静岡県立静岡がんセンター▽愛知県がんセンター中央病院▽名古屋大病院▽藤田保健衛生大病院▽京都府立医大病院▽大阪国際がんセンター▽大阪市立総合医療センター▽大阪大病院▽近畿大病院▽大阪市大病院▽大阪医療センター▽兵庫県立がんセンター▽奈良県立医大病院▽鳥取大病院▽島根大病院▽岡山大病院▽呉医療センター・中国がんセンター▽香川大病院▽愛媛大病院▽九州大病院▽久留米大病院▽大分大病院▽宮崎大病院▽鹿児島大病院

 2017年12月27日(水)

 

家族申告でネット馬券の購入停止に JRA、ギャンブル依存症対策

 日本中央競馬会(JRA)がギャンブル依存症対策の一環として、家族からの申告に基づき、インターネットでの競馬の投票券販売を停止する制度を12月28日に導入することが明らかになりました。

 ギャンブル依存症の診断を受けた人か、疑いがある人が対象となります。カジノを中心とした統合型リゾート施設(IR)導入に備え対策強化を進める政府方針を踏まえました。

 来年4月には、地方競馬や競輪、オートレース、ボートレースへ対象が広がる予定。家族申告による公営ギャンブルへのアクセス制限は初めて。政府はギャンブル依存症対策をIR実施法案の国会提出への環境整備と位置付けています。

 JRAが導入する制度は同居家族が申請書や医師の診断書を提出し、JRAが「馬券購入が本人と家族の生活維持に重要な影響を及ぼしている」と判断すれば、本人の同意なしに会員IDが無効となり、馬券購入サイトに接続できなくなります。ギャンブル依存症の治癒を証明する医師の診断書が提出されるまで、接続停止を継続します。今後、インターネット販売に限らず、競馬場や場外馬券売り場への入場制限にも順次適用していく方向です。

 政府関係者によると、公営ギャンブルの年間売り上げ約4兆6000億円のうち、インターネット経由は競馬とボートレースだけでも2兆円前後に上ります。

 政府は家族の申告に基づく利用制限に関し指針案を策定。「ギャンブルへののめり込みによる被害から家族を守るため、サービス提供を拒否することは社会的な要請」として、制度の周知徹底や従業員教育を求めることを申し合わせる予定です。

 衆参両院は昨年のIRの審議で、ギャンブル依存症対策を政府に求める付帯決議を採択。政府は関係閣僚会議を設置し、検討に乗り出しています。今回の制度導入を通じ、来年の通常国会で予定するIR実施法案の国会提出に弾みをつけたい考えです。

 ギャンブル依存症は、病的にギャンブルにのめり込み、衝動を抑えられなくなる精神疾患。本人だけでなく家族にも影響が及び、金銭トラブルや人間関係の破綻を引き起こすこともあります。今年3月の政府発表によると、生涯で依存症の経験が疑われる人は2・7%。

 2017年12月26日(火)

 

■蛇紋岩に含まれる石綿で労災認定 肺がんの造園業男性、埼玉県

 庭石などに使われる蛇紋岩に含まれるアスベスト(石綿)を吸い込み肺がんになったとして、埼玉県の造園業の男性(71歳)が4月、熊谷労働基準監督署から労災認定されていたことが26日、男性が加入する労働組合の発表で明らかになりました。厚生労働省によると、蛇紋岩に含まれるアスベストで労災認定されるケースは非常にまれといいます。

 労働組合「建設埼玉」によると、男性は1970~1982年ごろ、静岡、愛知県境の採石場で蛇紋岩を仕入れ、庭石として販売。電動工具で岩を削り、加工することもありました。1992~2005年にも埼玉県などで、造園の仕事で蛇紋岩を切断したことがありました。2015年春に、肺がんと診断されました。

 労災申請を受けた熊谷労基署が、手術で摘出した肺の組織を調べたところ、労災認定基準の数倍のアスベストが検出され、仕事が原因として労災認定に至りました。

 採石場などの現場では粉塵(ふんじん)が舞っていましたが、男性は蛇紋岩にアスベストが含まれているとは知らず、マスクは着用していなかったといいます。肺がんと診断された当初は石綿が原因とは思いもよらなかったものの、偶然、個人で加入していた建設埼玉から紹介された医師らに蛇紋岩についての知識があり、作業歴を丁寧にたどることができたため労災認定につながりました。

 資源エネルギー庁によると、蛇紋岩は北海道から九州まで広く分布し、2015年の採掘量は約2万6000トン。セメントや肥料の原料、石材などとして使われています。労働安全衛生法でアスベストの使用は禁じられていますが、蛇紋岩は規制されていません。厚生労働省は、建築現場の作業員らのための「アスベスト分析マニュアル」で、蛇紋岩にも石綿が含まれていることを記しているものの、その危険性が現場に浸透しているとは言い難く、どの程度吸入したら健康被害が出るのかも不明です。

 石綿を吸い込んだ場合、数十年の潜伏期間を経て中皮腫や肺がんになる危険性があります。中皮腫の原因は石綿とほぼ特定できるため、診断の段階で労災や石綿健康被害救済法が適用されやすくなっています。一方、肺がんは喫煙など他の要因も考えられるため、患者や主治医が石綿が原因と疑わない場合も多く、中皮腫の2倍の患者がいるとの研究結果もあります。

 2017年12月26日(火)

 

■肺がん手術後の高齢者の日常生活を追跡調査 全国44の病院で850人を対象に

 肺がんの切除手術を受けた高齢者の中には、手術後に体力が落ちるなどして日常生活に影響が出るケースが少なくないことから、専門医らのチームが全国40余りの病院で、手術後の生活の追跡調査を行うことになりました。研究チームでは、患者が手術を受けるかなど、治療法を選択する際の参考にしてもらいたいとしています。

 この調査は、日本全国の約200の医療機関が参加している日本臨床腫瘍研究グループ(JCOG)の医師らが中心となって、来年から全国44の病院で実施します。肺がんの切除手術を受けた75歳以上の患者およそ850人を対象に、手術を受けて半年後や1年後に体力が低下するなどして、日常生活に影響が出ていないか調査します。

 具体的には、日用品の買い物や自分で食事を用意すること、またはバスや電車を使って1人で外出することができているかや、本や雑誌を読まなくなったり、友人の家を訪ねなくなったりしていないかを聞きます。また、認知機能が低下していないかも調べます。

 研究チームによりますと、高齢の人に肺がんが見付かった場合、医師は、手術だけでなく放射線治療や抗がん剤の投与など複数の治療方法を提示することが多く、この際、今回の調査結果を患者に示すことで、治療法を選ぶ際の参考にしてもらいたいとしています。

 研究チームのメンバーで日本赤十字社医療センターの國頭英夫医師は、「生存率だけでなく、手術後に自分の生活がどのように変わるかは治療法を選択する上で大変重要なポイントで、どんな患者にどのような影響が出るのかデータを集めていきたい」と話しています。

 研究チームでは今後、放射線治療や抗がん剤の投与などほかの治療方法による手術後の影響や、肺がん以外のがんでも同様の追跡調査を検討したいとしています。

 がんの手術を受ける患者は、高齢化が進んでいます。このうち、がんの中で最も死亡者数が多い肺がんの手術件数は、3年前に3万8085件ありましたが、このうち70歳以上の患者は2万355件と半数以上を占め、80歳以上でも4590件と全体の12%に上っています。

 高齢者の中には、体に負担がかかる手術を控える人も少なくありません。国立がん研究センターが一2015年の肺がん患者(非小細胞がん)5万人余りを対象に治療内容を調べた結果、ステージ1では、手術を受けなかった人の割合が40歳から64歳までで4・7%だったのに対し、75歳から84歳までは23・3%、85歳以上では63・2%に上りました。また、ステージ2の患者では、40歳から64歳までが9・9%だったのに対し、75歳から84歳までは36・0%、85歳以上では71・0%に上っています。

 2017年12月26日(火)

 

■iPS細胞を使って血液製剤を量産化 京都ベンチャーに37億円出資

 手術などで輸血に使われる血液製剤をiPS細胞(人工多能性幹細胞)を使って量産化することを目指す京都市のベンチャー企業が、官民ファンドの産業革新機構などから合わせて37億円の出資を受けたと発表しました。

 調達資金を使って来年以降、臨床試験に取り組むことにしています。

 京都市のベンチャー企業「メガカリオン」は、京都大学から提供されたiPS細胞から輸血に使われる血液製剤のうち止血に必要な血小板をつくり出すことで、血液製剤を製造する技術の開発を進めています。血小板は現在、献血によって確保されています。

 メガカリオンの発表によりますと、産業革新機構から11億円の出資を受けたほか、大手製薬会社からも初めて出資を受けるなど、総額で37億円の資金調達をしたということです。

 出資を受けて、メガカリオンでは来年以降に日本とアメリカで、血小板が減って輸血の必要のある患者に血液製剤を投与して効果を確かめる臨床試験を始めます。また、量産に向けて製造コストを下げる技術の開発を進め、2020年に国の承認を受けて事業化を目指すとしています。

 輸血に使われる血液製剤は、今は献血にすべてを依存していますが、血小板成分献血は最長で男性の69歳までしかできない基準になっています。今後、少子高齢化が一段と進めば血液製剤が不足することが懸念されており、安定供給につながるか注目されています。

 2017年12月25日(月)

 

■スマホのイヤホンも影響し、小中高生の耳疾患最多 文部科学省が学校保健統計調査

 中耳炎や外耳炎など耳の疾患にかかる子供の割合が、文部科学省の2017年度学校保健統計調査で過去最多となったことが明らかになりました。文部科学省は、「スマートフォン(スマホ)の普及でイヤホンを使用する頻度が増えていることが影響した可能性がある」と分析しています。

 この学校保健統計調査は子供の健康状態を把握するために、文部科学省が毎年実施しており、今年度は全国の幼稚園児から高校生までのおよそ340万人が対象となりました。

 このうち、中耳炎や外耳炎など耳の疾患にかかった子供の割合は幼稚園児が2・25%、小学生が6・24%、中学生が4・48%、高校生が2・59%で、小中高生の割合は調査を始めた1995年度以降で最も多くなりました。

 東京都中央区の診療所では、このところ耳の疾患にかかる子供の患者が1割から2割ほど増えているといいます。

 院長の大場俊彦さんによりますと、こうした子供の患者の中にはスマートフォンなどで音楽などを聴く際などに使用するイヤホンが原因で疾患にかかるケースもあるということです。

 文部科学省も、子供の耳の疾患が増えている背景に、スマートフォンなどの普及でイヤホンを使用する頻度が増えたことが影響している可能性があると分析しています。

 大場院長は、「他人とイヤホンを共有したり音楽などを長時間にわたって大きな音で聞いたりしないようしっかりと注意してほしい」と話しています。

 また、日本耳鼻咽喉科学会によりますと、近年、耳あかが詰まる「耳垢栓塞(じこうせんそく)」が増えているということで、「必要以上に耳掃除をすると、かえって耳あかを奥に押し込むこともあり、炎症を起こすこともある」として、専門医に相談するよう呼び掛けています。

 2017年12月25日(月)

 

■厚労省、高齢者の内服薬に関する指針案を作成 薬漬けの副作用を明記、国レベルで初

 高齢者が多くの薬を一緒に服用する「薬漬け」について、厚生労働省が、医師や薬剤師らを対象に服用の適正指針案(骨子)をまとめたことが23日、明らかになりました。国レベルで高齢者の内服薬に関する指針を作成するのは初めて。

 多種類の薬を服用する多剤併用は、副作用などのリスク増が指摘されています。日本では「患者がともかく薬をもらいたがる」といわれ、医療費の削減も期待されます。指針は来春にも完成し公表、一般国民向け指針も来年度に考案するといます。

 厚労省によると、60歳を超えると高血圧や骨粗鬆(こつそしょう)症など複数の疾患を抱えることから、服用する薬の種類が増加し、75歳以上でさらに多くなる傾向にあります。診療報酬明細書(レセプト)調査によると、70歳以上の患者で平均6種類以上服用しているという結果が出ています。

 東京大学などの患者調査では、薬を6種類以上服用している場合に副作用が出やすくなったりするケースが急増します。転倒の発生頻度が2倍近くに増え、認知機能低下のリスクが増加するというデータもあります。

 このため指針案では、「医療の質を向上させ、患者の健康に資すること」という目的を記載し、内臓機能が衰え薬の処理能力が落ちている高齢者が薬を服用することで生じる物忘れや目まい、失神など「有害事象」を列挙しました。

 また、安全性確保の観点から、単に薬の数を減らすのではなく、適正な処方内容への見直しが重要であることを明記。複数の医師にかかっている場合は「お薬手帳」を活用してかかりつけ薬剤師にチェックしてもらうことも念頭に、「医師、薬剤師、看護師などが一元的に情報を集約し、連携すること」としました。

 NPO法人「高齢社会をよくする女性の会」が今秋、約5000人の高齢者に調査したところ、処方された薬を飲み残す患者も多く、47%が飲み残しの経験があると答えました。

 同法人代表で東京家政大学の樋口恵子名誉教授(家族関係学)は、「服薬を不安に思う高齢者は増えている。『人生100歳時代』になり、いずれ自分で薬が管理できなくなる。薬は“命のもと”であり、薬の適正な在り方を考え直さなければならない」と話しています。

 2017年12月24日(日)

 

■エネファームで不眠、頭痛などの健康被害も 消費者事故調が関連性を指摘

 東京ガスなどが販売する家庭用ガス発電システム「エネファーム」「エコウィル」の低周波音により、不眠や頭痛、めまいなどの健康被害を受けたとする消費者の訴えについて、消費者安全調査委員会(消費者事故調)は21日、「関連性は否定できない」とする報告書をまとめました。複数のケースで「運転音が症状に影響を及ぼしていると考えられる」との見解を示しました。

 エネファームはガスの化学反応(燃料電池)で、エコウィルはガスをエンジンで燃やして、それぞれ電気を作る仕組み。消費者事故調によると、エネファームは約20万台、エコウィルは約14万台が販売されています。

 消費者事故調に寄せられた原因調査の申し出や消費者庁への相談は、8年間で73件。うち27件について消費者事故調が聞き取りを行った結果、消費者側はいずれも不眠や頭痛、めまいといった症状を訴えました。

 さらに、協力が得られた8件で現地調査したところ、エネファームで2件、エコウィルで3件は「断定できないが、被害者が認識できるレベルの運転音が部屋に伝わるなどしていた」として、運転音と症状に一定の関連性があると指摘しました。運転音の多くは低周波音でした。

 調査結果を受け消費者事故調は、ガス会社やメーカーに、運転音量や特定周波数の低減を要請。運転により症状が発生する可能性があることを消費者に周知することも求めました。

 環境省によると、低周波音は100ヘルツ以下を指し、エンジン音や滝の音などに多く含まれます。低周波音が大きくなると、不快感で眠れないなどの不調を訴える人が出るといいます。

 持丸正明・消費者事故調委員長代理は、「誰もが影響を受けるような音ではないが、音に敏感な人への配慮が必要だ」と話しています。

 2017年12月24日(日)

 

■「子宮頸がん予防ワクチン」から「HPVワクチン」に表記変更 厚労省

 子宮頸(けい)がんを予防するヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンについて、厚生労働省は22日、一般向けのリーフレットで「子宮頸がん予防ワクチン」と表記していたのを「HPVワクチン」に変更することを決めました。近く自治体に通知します。

 理由について厚労省は、ワクチンにがんそのものを予防する効果は証明されておらず、接種を考えている人に効果とリスクを正確に伝えるためとしています。

 女性の子宮頸部にできる子宮頸がんは、90%以上は性交渉でHPVに感染することが原因。ワクチンで感染を防ぐことで、がんを予防できると考えられおり、国と市町村が中学1年~高校1年の女子を対象にワクチン接種費用を公費で助成しています。

 予防接種法上はHPVワクチンで、これまでも国会答弁や審議会では正式名を使っていますが、一般向けにはわかりやすさを重視して子宮頸がん予防ワクチンと呼んできました。

 リーフレットには最新の知見も盛り込みます。アメリカなどではワクチン導入でがんになる一歩手前の状態(前がん病変)が減少。国内ではワクチン接種した場合、10万人当たり209~144人の死亡回避が期待できる一方、重篤な副反応疑い例は10万人当たり52・5人起きていることを記します。

 厚労省は2013年6月から勧奨を中止しており、「積極的にお勧めすることを一時的に止めています」との文言はこれまで通りとします。

 2017年12月24日(日)

 

■石綿疾患で労災認定された人の勤務先895事業所を公表 厚労省

 厚生労働省は20日、工場などでの作業中にアスベスト(石綿)を吸ったことが原因で肺がんや中皮腫、石綿肺などを発症し、2016年度に労災認定などを受けた従業員の勤務先895事業所を公表しました。このうち今回初めて発表されたのは648事業所。

 公表によると、労災認定された人は1057人、申請の時効5年を過ぎた遺族を対象とする石綿健康被害救済法で特別遺族給付金の支給認定を受けたのは13人。このうち、一人親方や勤務先不明を除く996人分の事業所名や作業状況、石綿取扱期間が公表されました。

 これまでに労災認定されたのは1万4124人、遺族給付は1540人で、事業所名の公表は延べ1万2324カ所に上りました。石綿による肺がん中皮腫は数十年といった長い潜伏期間を経て発症するため、厚労省はかつて働いていた人に注意を促し、周辺住民に健康状態を確認してもらおうと、事業所名を毎年公表しています。

 厚労省は21、22日の午前10時~午後5時、電話(03・3595・3402)で相談に応じました。期間外でも、各都道府県の労働局や労働基準監督署で相談を受け付けています。また、患者や家族でつくる市民団体「中皮腫・アスベスト疾患・患者と家族の会」も両日の午前10時~午後7時、ホットライン(0120・117・554)を設けました。

 厚労省は、石綿が原因の病気で労災認定されるなどして2005年7月~2014年12月に発表した従業員の勤務先のうち、12事業所の名称や住所などに誤りがあったとして訂正しました。過去の発表分と合わせて、同省のホームページに掲載しています。

 2017年12月24日(日)

 

■偽造薬の流通防止にガイドライン導入へ 厚労省

 高額なC型肝炎治療薬「ハーボニー配合錠」の偽造品が流通した問題で、厚生労働省の有識者会議は20日、薬品の適正な流通を確保するため、規制を強化したガイドラインを導入することなどの再発防止策をまとめました。

 厚労省によると、欧米で医薬品の流通規制が強化されていることを受け、現在、国内でもその国際的な基準「医薬品の適正流通基準」ガイドラインに沿った新たなガイドライン案を策定中。来年4月以降、通知できるよう作業を進めています。

 再発防止策では、個々の医薬品にシリアルナンバーを付けることや、不正取引をした薬局開設者への罰則の在り方を検討する必要性を指摘。不正取引につながりやすい薬局などでの医薬品の在庫の実態把握を進め、インターネット取引の実態も調査するとしています。

 ハーボニー配合錠の偽造品は、東京都内の卸売販売業者が身元確認をせずに個人から購入。そのまま流通し、奈良県の薬局チェーン店や和歌山市の病院で今年1月以降に見付かりました。

 ハーボニー配合錠は、C型肝炎の画期的な治療薬として2015年9月に発売され、1日1錠、12週間内服します。1錠5万5000円と高額で、偽造品と判明した28錠入りのボトルの価格は約153万4000円。

 2017年12月24日(日)

 

■トマトや果物の摂取が肺機能低下を緩和 とりわけ元喫煙者で効果

 1日に2個以上のトマトを食べた人は肺機能の低下率が緩和されるとの研究結果が21日、欧州呼吸協会が発行する「欧州呼吸誌」で発表されました。とりわけ元喫煙者に効果があり、リンゴなど果物を1日に3カット以上食べていた人にも、同様の傾向がみられたといいます。

 論文の共同執筆者で、アメリカのジョンズ・ホプキンス大学ブルームバーグ公衆衛生学部のバネッサ・ガルシアラーセン氏は声明で、「喫煙をやめた人の肺の損傷の回復に、食事が役立つかもしれないことを今回の研究は示している」と説明。「また喫煙の習慣がなかった人の場合でも、果物の豊富な食事が肺の自然な老化を遅らせる可能性も示唆している」と指摘しました。

 今回の研究では、2002年にも実施された健康調査に参加したドイツ、イギリス、ノルウェーの680人から取得したデータを分析。調査対象者には10年後に再び質問に答えてもらい、2種類の肺機能検査を受けてもらいました。

 また、食事と肺の健康の関連性を分析するに当たり、調査対象者の年齢、身長、体重、性別、収入、運動習慣のレベルといった別の要因も考慮しました。

 その結果、通常は30歳前後から始まるとされる肺機能の低下において、トマトや果物を多く摂取する人は低下率が減少することが判明。特に元喫煙者には、その相関性がさらに著しく現れたといいます。

 研究者らは、「トマトや果物をたくさん取る食事が喫煙でダメージを受けた肺の回復に一役買っていることを示唆する」と述べています。

 2017年12月23日(土)

 

■味の素冷凍食品、シューマイ6万4000袋を自主回収へ プラスチック片が混入

 食品メーカーの「味の素冷凍食品」(東京中央区)は22日、冷凍食品のシューマイの一部の商品にプラスチック片が混入していたとして、6万4000袋余りを自主回収すると発表しました。
 
 味の素冷凍食品が自主回収するのは、全国で販売されている冷凍食品の「ザ★シュウマイ」で、賞味期限が2018年10月4日と記載されている商品。

 顧客から、「食事した際に、プラスチック片が混入していた」との連絡が3件ありました。同社が群馬県大泉町の工場を調べたところ、生産ラインの計測機器が破損していました。この機器の欠けらが商品の一部に混入したとみて、6万4740袋を回収することを決めました。

 現時点で、健康被害は報告されていないということです。対象の商品を着払いで会社に送れば、商品の代金相当分のクオカードを返金するとしています。

 味の素冷凍食品は、「皆様に多大な迷惑をおかけし、深くおわびします。製品管理体制の一層の強化を図り、再発防止に努めます」としています。

 問い合わせ先の電話番号は、フリーダイヤル0120-772147で、午前9時から午後5時まで受け付けています。

 2017年12月23日(土)

 

■加熱式たばこも受動喫煙の規制対象へ 厚労省、年明けに改正案を公表

 他人のたばこの煙を吸い込む受動喫煙を防止するための健康増進法の改正で、厚生労働省は20日、近年急速に普及している「加熱式たばこ」についても原則禁煙の規制対象とし、分煙体制が整った飲食店でのみ喫煙を認める方針を決めました。年明けにも改正案を公表します。

 ただ、現時点で健康にどのような影響を与えるか十分な分析データがそろっていないことから、紙巻きたばこと比べると規制は緩いものになる見通し。

 加熱式たばこは、火を使わずに、電気式の専用器具でニコチンを含む蒸気を吸う新しいタイプのたばこ。たばこ各社は健康リスクが低いことをセールスポイントにしており、禁煙エリアでも喫煙を認める店も増えています。一方で、一定量の有害物質は含まれていることから、医師や禁煙推進派の中からは健康への影響を懸念する声が上がっています。

 計画では、当面、病院や学校では紙巻きと同様に加熱式たばこも禁煙とします。飲食店に関しても原則禁煙とするものの、空気が漏れない空間で換気設備を整えるなどの基準を満たした分煙用の「喫煙室」を設けた場合は、飲食中でも吸うことを認めます。

 紙巻きたばこは、飲食ができない「喫煙専用室」を作らなければ吸えないようにする方針で、加熱式たばこは紙巻きたばこよりは緩い規制となります。将来、健康への影響について科学的なデータが集まった時点で、改めて規制を検討するとしています。

 改正案ではこのほか、店舗面積が150平方メートル以下や資本金が一定額以下の店では、例外として喫煙を認める方向で自民党と調整中。新規開業や大手チェーンの店舗では、喫煙室や喫煙専用室を設けなければ、喫煙できなくなります。

 厚労省は、2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催までの施行を目指しており、来年の通常国会に健康増進法の改正案を提出し、早期に成立させたい考えです。

 2017年12月22日(金)

 

■チョコレート菓子212万袋、自主回収へ 正栄食品がゴム破片混入で

 コンビニなどで販売されたチョコレート菓子にゴムの破片が混入した恐れがあるとして、食材専門商社の「正栄食品工業」(東京都台東区)は、子会社の菓子メーカー「正栄デリシィ」(茨城県筑西市)がコンビニなどから委託されて製造した212万個余りを自主回収すると発表しました。

 発表によりますと、自主回収されるのは、正栄デリシィが製造し、コンビニやスーパーのプライベートブランド(PB)商品として販売された7種類の商品、合わせて212万1000個です。

 具体的には、コンビニのミニストップで販売された「きなこチョコクランチ 37g」、ローソンで販売された「いちごクランチチョコ 46g」、セブンーイレブンなどで販売された「ほうじ茶クランチチョコ 43g」と「フルーツクランチチョコ 35g」、西友で販売された「チョコクランチいちご 50g」、イオンで販売された「ホワイトクランチチョコ 52g」、デイリーヤマザキなどで販売された「ホワイトクランチチョコ 64g」です。

 正栄デリシィによりますと、今月上旬、消費者から店舗を通じて「1センチほどのゴムのような破片が入っている」という連絡があり、調べたところ、工場の設備で使われていたゴムの破片が確認されたということです。

 このため、正栄デリシィは今年の春以降、同じラインで製造された菓子をすべて回収することを決めたとしていますが、今のところ、健康被害の情報は入っていないということです。

 正栄食品工業は、「お客様に多大なご迷惑をおかけして深くおわび申し上げます。今後は一層の品質管理の徹底・強化に努めてまいります」と話しています。

 対象の商品を購入した人は、着払いで商品を返品すれば、代金相当のプリペイドカードを送るということで、問い合わせは正栄食品工業商品回収係(0120-041-865)で、平日の午前9時から午後5時までですが、今月の23日と24日は受け付けるとしています。

 2017年12月22日(金)

 

■救急車の出動、7年連続で過去最多を更新 高齢化が影響、半数は軽症で入院不要

 総務省消防庁は19日、2016年の救急車の出動件数が620万9964件(前年比2・6%増)に上り、7年連続で過去最多を更新したとの集計結果を発表しました。

 2015年より15万5149件増えました。搬送者数のうち65歳以上が57・2%を占めており、消防庁は高齢化の影響とみています。

 19日に閣議報告した2017年版消防白書に盛り込みました。集計によると、救急車は5・1秒に1回のペースで出動している計算。搬送者数も2015年より14万2848人増え、562万1218人(前年比2・6%増)で過去最多を更新しました。このうち入院の必要がない軽症が、49・3%とほぼ半数でした。

 119番通報を受けてから現場到着までの時間は平均8・5分、通報から病人やけが人が病院に入るまでの平均は39・3分。全国で救急隊を増やしており、過去最長だった前年よりそれぞれ0・1分短くなりました。都道府県別の病人やけが人が病院に入るまでの時間は、東京都が50・6分と最も長く、福島県44・5分、新潟県44・2分と続きました。

 消防白書は、「高齢化が進めば出動件数は今後増える可能性が高い」と指摘し、不要不急の出動をできる限り減らすなど、救急車の適正な利用を図る必要があるとしました。

 消防庁は、救急車を呼ぶべきか迷った際には、電話で医師や看護師らに相談できる「#7119」の利用を呼び掛けています。

 2017年12月21日(木)

 

■東京都民の48・8%、スギ花粉症患者 2016年の調査結果から推定

 東京都は18日、2016年度に実施した花粉症実態調査の結果をまとめ、都民のスギ花粉症患者の割合が48・8%に上るという推定結果を公表しました。調査方法は違うものの、前回の2006年度から約20ポイント増えており、東京都は若年層の患者の増加などを要因とみています。

 調査は2016年11~12月、大田区、あきる野市、調布市でアンケートを実施。回答を得た2116人から410人を抽出し、血液検査や問診で症状の有無を判定した結果から、スギ花粉を原因とした花粉症患者の東京都全体の割合を推定しました。

 1983年度から約10年おきに実施し、前回まで「自覚症状なし」との回答者を詳しい調査対象から外してきた違いはあるものの、患者の割合は、1983~1987年度が10・0%、1996年度が19・4%、2006年度が28・2%で、回を追って増えてきました。

 今回の調査結果によると、軽症の人も含めた年代別の患者の割合は、0~14歳が40・3%(前回26・3%)、15~29歳が61・6%(前回37・1%)、30~44歳が57・0%(前回32・2%)、45~59歳が47・9%(前回33・5%)、60歳以上が37・4%(前回14・2%)。

 若年層の患者の割合の高さについて、報告書は「乳幼児における食物アレルギーが増えており、花粉症の若年発症を加速させている可能性がある」と指摘しました。

 東京都は花粉症予防に向け、飛散状況を知らせるメール配信や花粉の少ない森づくりなどを進めています。

 2017年12月21日(木)

 

■赤ちゃんポストの病院、内密出産制度の導入検討を発表 出自知る権利を担保しつつ匿名で出産

 親が養育できない子供を匿名で託せる「こうのとりのゆりかご」(赤ちゃんポスト)を運営する熊本市の慈恵病院は16日、母親が周囲に知られずに匿名で出産して、子供は後に出自を知ることができる「内密出産制度」の導入を検討していることを正式に発表しました。今月11日に熊本市に実現への意向を伝え、来年1月をめどに同市と会合を持つ予定といいます。

 蓮田健副院長は記者会見で、内密出産制度について「過去10年間の経験で技術的には可能と思っている」と説明。懸念する点として子供の戸籍登録を挙げ、「法の解釈でできるのではないか。行政に問題点を聞き、打開の方法を探ることから始めたい」と語りました。10年前に設置した匿名で新生児を預かる「こうのとりのゆりかご」が法解釈で実現したことにも言及し、「内密出産のほうがハードルは低い」と述べました。

 自宅や車中で1人で産む「孤立出産」で母子が命の危険にさらされるケースがあるため、蓮田太二理事長は「早い段階で行えるようにしたい」とした上で、法解釈による運用では自治体によって判断が異なる可能性に触れて「国による法整備も必要」と訴えました。蓮田副院長は、出産時の家族の同意や出産費用の問題も課題として挙げました。

 また、「こうのとりのゆりかご」については、内密出産制度が実現した後も複数の選択肢を示せるように運用を続けるとしました。

 内密出産制度は、子供の出自を知る権利を担保しつつ、母親が匿名で出産できる仕組み。ドイツで法制化され、2014年から実施されています。母親は公的な承認を受けた妊娠相談所にだけ実名を明かし、医療機関では匿名で出産します。子供は育ての親と養子縁組し、16歳になると、生みの親の情報を閲覧することができます。

 「こうのとりのゆりかご」に預けられた子供は、2007年5月の開設から10年間で130人。うち62人が、自宅などで医師らの立ち会いがない状態で生まれていました。

 2017年12月20日(水)

 

■ボタン電池誤飲5年で939件、健康障害も15件 慈恵医大が初の実態調査

 玩具や体温計、時計、リモコンなど多くの製品に使われているボタン電池を乳幼児が誤飲する事故が、2011~2015 年の5年間に少なくとも939件あったことが、東京慈恵医大と一般社団法人「電池工業会」(東京都港区)による初の全国調査で明らかになりました。このうち15件で、排出されないまま食道に穴が開くなどの重い健康障害が出ました。

 調査は今年1月、子供の事故の救急対応を担う全国202病院にアンケートを行い、116病院から回答がありました(回答率57・4%)。ボタン電池の誤飲により小児外科や小児救急を受診した939件の内訳は、直径2センチ前後で薄い「コイン形」が133件、それより小さめの「ボタン形」が806件でした。

 誤飲したボタン電池は、先端に磁石が付いたチューブや、内視鏡などで取り出しますが、その後に手術が必要な重い健康障害が出た事例はコイン形で14件、ボタン形で1件ありました。いずれも食道に引っ掛かり、食道に穴が開いたり、食べ物がつかえたりするなどの障害が起きました。

 ボタン電池が食道や胃、十二指腸などにとどまると、化学反応や圧迫により、潰瘍ができやすくなります。特にコイン形は大きめなので食道に引っ掛かりやすく、電圧もボタン形より高いため、短時間でも深刻な損傷につながり、最悪の場合は死亡する恐れもあります。

 東京慈恵医大・小児外科の大橋伸介医師は、「ボタン電池の誤飲は、処置までの時間が勝負だ。子供がのんだと思ったら、確証がなくても、迷わず救急車を呼んでほしい」と呼び掛けています。

 電池工業会は、「子供の手の届かない所に保管する」、「電池部分のふたが外れやすくなっていないかを確認する」、「子供が見えない場所で交換する」などの予防策を呼び掛けています。また、誤飲時の危険を減らす電池の安全基準作りや、乳幼児が素手で開封できないパッケージの導入を進めています。

 2017年12月20日(水)

 

■高齢ドライバーの免許更新、視野全体を調べる検査導入へ 警察庁

 警察庁は来年度から、70歳以上の高齢ドライバーが運転免許更新時に受講する高齢者講習で、視野全体を調べる新たな検査を試験導入することを決めました。視野障害は高齢ドライバーによる事故原因の一つとされており、警察庁は正式導入についても検討を進めます。

 視野障害は、緑内障などにより視界の一部が見えなくなる症状で、自覚しないまま進行することが多くなっています。症状が進行すると、信号を認識できなくなるなどの影響が指摘されています。視野が狭くなる緑内障は、40歳以上の20人に1人が患っているとされます。

 現行の高齢者講習でも水平方向の視野検査が実施されていますが、新たに開発した視野検査器は上下方向も検査でき、精密な判定が可能といいます。新たな検査は、一部の教習所で約1000人を対象に試行します。視野障害と判定された場合でも、免許の更新はできます。

 警察庁は、眼科の医師や自動車教習所の関係者らで構成する有識者会議の分科会で試験結果を検証し、視野障害があったドライバーに対する安全指導についても議論を進めます。

 2017年12月20日(水)

 

■電子たばこを使っての禁煙、使わない人より成功率が4割低い 国立がん研究センターが調査

 禁煙の補助として電子たばこを使って、紙巻きたばこの禁煙に取り組んだ人は、電子たばこを使わなかった人に比べて禁煙成功率が低いことが、国立がん研究センターによるインターネット調査で明らかになりました。

 担当者は、「禁煙目的で売られているものもあるが、その手段として推奨すべきではない」と指摘しています。

 過去5年間に禁煙に取り組んだとする20~69歳の男女798人を対象に、2015年1~2月、インターネット上で調査しました。禁煙補助剤や禁煙外来など、どの禁煙方法を試したかと禁煙できたかを聞きました。

 その結果、電子たばこを使った159人のうち禁煙に成功したのは39人。喫煙開始年齢や婚姻状況などの影響を差し引いて計算すると、電子たばこを使った人の禁煙成功率は使わなかった人に比べて、37%低くなりました。

 これに対し、禁煙外来でニコチンを含まない治療薬の処方を受けた人は、受けていない人より禁煙成功率が86%高くなりました。また、既婚者と比べ、未婚者は40%、離婚や死別を経験した人は57%禁煙成功率が低くなりました。

 電子たばこは、ニコチンや香料などを含む溶液を加熱し、気化した蒸気を吸うもの。ニコチンの製造・販売は法律で規制されていますが、ニコチン入り溶液は個人輸入されています。禁煙ツールとして人気があるものの、その効果は証明されていません。

 厚生労働省の「たばこ白書」は、電子たばこの一部製品に発がん性物質が含まれるとし、「健康影響に懸念がある」と評価しています。

 国立がん研究センターの吉見逸郎主任研究員は、「電子たばこには禁煙を奨励する側面がある。一方で喫煙者を惑わし、より効果的な禁煙方法から遠ざけるという悪影響を及ぼす可能性もある。自力でたばこをやめられない時は、医師や薬剤師に相談してほしい」と話しています。

 2017年12月19日(火)

 

■がん診断に役立つ微小物質をわずかな尿から検出 名古屋大が技術を開発

 名古屋大学の馬場嘉信教授と安井隆雄助教らは、がんなどの診断に役立つ「マイクロRNA(リボ核酸)」と呼ぶ微小物質をわずかな尿から取り出す技術を開発しました。

 1ミリリットの尿から、1000種類のマイクロRNAを検出できました。中には、肺や膵臓(すいぞう)など5種類のがんを見分けられるマイクロRNAもありました。健康診断で採取し余った尿を使って、さまざまな病気を早期発見するのに役立つといいます。

 国立がん研究センターなどとの共同研究の成果で、10年後の実用化を目指します。

 マイクロRNAは、がんや正常な細胞から分泌され、細胞の種類によって特有のものが分泌されます。約2000種類が見付かっており、がんや心臓病、認知症などの診断に生かす研究が活発です。血液から検出する技術が進む一方、尿からは200種類ほどしか見分けられていませんでした。

 研究チームは、長さが2マイクロ(マイクロは100万分の1)メートルの酸化亜鉛でできた微細な針金を樹脂の表面に大量に敷き詰め、尿に含まれるマイクロRNAを静電気で引き寄せて集める装置を開発ました。

 この装置を用いて、肺や膵臓、肝臓、ぼうこう、前立腺のがん患者と健康な人の尿をそれぞれ3人ずつ調べたところ、がんに特有のマイクロRNAを見付けられました。今後、ほかのがんや病気についても調べます。

 研究成果は15日付けで、アメリカの科学誌「サイエンス・アドバンシズ」(電子版)に発表されました。

 2017年12月19日(火)

 

■抗がん剤治療に伴う脱毛、抗酸化物質配合のジェルで抑制 大分大とアデランス

 大分大学と総合毛髪企業のアデランス(東京都新宿区)は14日、抗がん剤治療に伴う脱毛を抑えるため共同で実施してきた臨床研究の結果を発表しました。抗酸化物質を配合したジェルを使用し、乳がん患者に脱毛抑制効果を確認できたといいます。

 大分大の北野正剛学長は、「化学療法を受けたがん患者にとって、日々の生活にかかわる外見は大変重要なファクターだ。今も脱毛は患者にとって苦痛のままであり、少しでも早く止めたい」と話しました。

 研究を主導した大分大医学部の猪股雅史教授によると、抗酸化・抗炎症作用を持つ「新規αリポ酸誘導体」を活用しました。抗がん剤投与の副作用で現れる毛根部分の炎症を抑える効果があり、脱毛抑制と発毛促進の両方を期待できるといいます。

 共同研究は2013年から進めており、2014年7月から2015年5月にかけて、20~80歳の女性患者100人を対象に臨床試験を実施しました。抗がん剤治療と併せて毎日、頭皮とまゆ毛にジェルを塗り続けたといいます。

 女性患者がジェルを塗った期間は、12週間と24週間の2パターン。抗がん剤をやめてから3カ月が経過した時点で、頭皮部分の50%以上が脱毛している人の割合を調べた結果は、いずれのパターンも2割以下で、何もしない場合は8割になったといいます。

 日本臨床毛髪学会常任理事で、今回の研究の橋渡しをした「別府ガーデンヒルクリニックくらた医院」(別府市)の倉田荘太郎院長は、「男性型脱毛でも炎症が起こっていることがわかっている。ほかの脱毛にも効果が得られる可能性がある」との見方を示しました。

 アデランスは同日、大分大と契約を締結し、抗酸化物質を配合したジェル製品の製造・販売権を取得。来年早々にも、頭皮ケア用の化粧品として製造・販売する方針を明らかにしました。女性患者を始め、髪の悩みを抱える消費者への浸透を目指します。

 当面、国内の医療機関に設けているアデランスのヘアサロンで販売します。通販サイトも含めたほかのルートでの販売も、検討していくといいます。

 2017年12月18日(月)

 

■ダニ媒介脳炎ウイルス、北海道だけではなく全国に存在か 北海道大学などが調査

 北海道特有の病気と考えられてきた「ダニ媒介脳炎」という感染症について、北海道大学などの研究チームが調査を行ったところ、本州などでも野生のイノシシなどが原因となるウイルスに感染していた可能性があることがわかりました。研究チームは、ウイルスが全国に広く存在する恐れがあることを示す結果だとして、さらに詳しい調査を行うことにしています。

 国立感染症研究所によりますと、ダニ媒介脳炎は、ウイルスを持ったマダニにかまれることで発症するウイルス性の感染症で、重症化すると脳に炎症が起き、発症した患者の死亡率は約30%とされています。

 国内ではこれまでに4人の患者が確認されていますが、いずれも北海道に住んでいたことなどから、これまでは北海道特有の感染症と考えられてきました。

 北海道大学と国立感染症研究所の研究チームは、昨年までの過去16年間に愛媛県や京都府など西日本を中心とする19の府県で捕獲された野生のイノシシやクマ合わせて299頭から採取した血液サンプルを分析したところ、全体の13%余りに当たる合わせて40頭から、ダニ媒介脳炎のウイルスに感染した可能性を示す抗体が検出されたということです。

 抗体が検出されたのは10の府県の血液サンプルで、このうちイノシシについて都道府県別でみると、広島県で4頭中3頭、愛媛県で41頭中6頭、高知県で6頭中2頭でした。

 北海道大学の好井健太朗准教授は、「北海道からウイルスが拡大しているというよりも、本州に古くから存在することに今、気付いているということかもしれず、さらに精度を高めた調査を行っていきたい」と話しています。

 また、国立感染症研究所の林昌宏室長は、「原因不明の感染症にこうした病気が含まれている可能性もあり、実態の解明を進める必要がある」と話しています。

 ダニ媒介脳炎は、蚊が媒介する日本脳炎と同じ分類のフラビウイルスによる感染症で、フラビウイルスを持つマダニにかまれることで感染します。マダニは民家など人の管理の行き届いた場所には、ほとんどおらず、森林や沢に沿った斜面、牧草地などに生息。

 感染すると1週間から2週間程度の潜伏期の後、発熱や頭痛、それに筋肉痛などのインフルエンザのような症状が現れ、その後、症状はいったんなくなります。2日から3日ほどして脳に炎症が起きて、マヒやけいれん、知覚異常などの症状が出て死亡するケースもあり、発症した患者の死亡率は約30%とされています。

 有効な治療法はなく、患者は痛みや炎症を抑える対症療法を受けることになりますが、脳炎が起きた場合には回復してもおよそ半数の患者に手足のマヒなどの重い後遺症が残るということです。

 厚生労働省と北海道によりますと、国内では1993年以降、昨年8月と今年7月にいずれも北海道に住む40歳代と70歳代の男性が相次いで死亡するなど、北海道で合わせて4人の患者が確認されています。

 一方、同じフラビウイルスによる感染症は海外では知られており、ロシアからヨーロッパまで広い範囲で患者が確認されています。海外ではワクチンが製造されていて、感染前に接種することで感染や重症化を予防することが可能だとされています。

 2017年12月18日(月)

 

■女性用レギンス「短期間で減量」と不当表示 通販会社に措置命令

 「はけば体重が落ちる」などと根拠のないダイエット効果をうたって、商品の女性用レギンスを宣伝したのは景品表示法違反(優良誤認)に当たるとして、消費者庁は14日、通信販売会社「SAKLIKIT(サクライキ)」(大阪市中央区)に対し、再発防止を求める措置命令を出しました。

 調査した公正取引委員会によると、商品はSAKLIKITが企画販売する「CC+ DOWN LEGGINGS(シーシープラスダウンレギンス)」(税抜き2980円)。

 SAKLIKITは自社サイトで2016年5月~2017年4月、商品を「異常なスピードで体重が落ちる。3日でマイナス5キロ」「14日以内に全身の脂肪を削(そ)ぎ落とす」などと宣伝。着用前後の体形を比べた写真や「一気にウエストが6センチ細くなった」との体験談を掲載していました。

 しかし、実際にはダイエット効果を裏付ける根拠はなく、写真は無関係の海外サイトから引用し、体験談も捏造(ねつぞう)していたことを認めたといいます。商品は期間中に少なくとも1万点以上販売されたとみられ、消費者庁は不当表示に伴う売上額が5000万円以上の場合に対象となる課徴金納付命令も視野に調査を続けています。

 SAKLIKITの担当者は、「景品表示法の理解が不十分だった。再発防止に向けて対応を検討したい」と話しました。購入者への返金などの対応は、検討中といいます。

 信用調査会社によると、2017年3月期の売上高は約6億円。

 2017年12月18日(月)

 

■渡航者の健康監視の徹底で、エボラ出血熱など防止を 総務省が厚労省に勧告

 総務省行政評価局は15日、エボラ出血熱や中東呼吸器症候群(MERS)といった感染症の侵入を防ぐための水際対策とまん延防止策に関し、行政評価の結果をまとめました。

 流行しているアフリカや中東の一部の国への渡航歴があり発熱などの症状が出ている入国者に対し、毎日体温を測って空港や港にある検疫所に報告するよう義務付ける「健康監視」について、罰則の適用を含め実施を徹底するよう厚生労働省に勧告しました。

 総務省は、2020年東京五輪・パラリンピックに向けて訪日客の増加が見込まれる中、感染症が国内に侵入するリスクも増していると判断。2015~2016年にエボラ出血熱とMERSの健康監視の対象者となった計911人について調べたところ、約6割の人が報告をしなかったり、報告が遅れたりしていたことが明らかになりました。

 総務省は、検疫所への報告の重要性が十分に認識されていないと分析。報告を怠った場合、懲役6月以下または罰金50万円以下の罰則を科すとの規定が2003年に検疫法に盛り込まれましたが、実際に適用された事例はなく、厚労省に徹底を求めました。

 厚労省は、「勧告の内容を真摯(しんし)に受け止めた上で、渡航歴の申告の周知徹底や感染症患者の搬送体制の総点検を行うなどして適切に対応していく」などとコメントしています。

 2017年12月18日(月)

 

■難治性小児がん、国内未承認新薬で最適な量を確認する臨床試験 東京医科歯科大

 東京医科歯科大学は、神経芽腫など治療が難しい一部の小児がんの患者に対し、遺伝性乳がん・卵巣がんの治療薬オラパリブを投与する臨床試験(治験)を始めたと発表しました。

 医師が責任者となって安全性を確認し、治療法の確立に向けた次の臨床試験につなげます。

 東京医科歯科大小児科准教授の高木正稔さんらは、神経芽腫の約半数で、染色体の欠損などからDNAを修復する仕組みが働かないことを解明。似たタイプのDNA修復異常がある遺伝性乳がん・卵巣がんの治療用に開発された新薬オラパリブで、神経芽腫が縮小することを動物実験などで確認しました。

 神経芽腫は、副腎や脊椎などの神経節に発症する小児がん。日本の年間発症は200~300人とされ、3~4割は既存の抗がん剤などで十分な効果がありません。このため効果が期待できる新規治療法の開発が重要です。

 オラパリブは国内未承認で、製造元のアストラゼネカから提供を受けました。すでに2人の患者に内服で投与しており、今後、3歳から18歳の最大で計12人に1カ月服用してもらい、最適な薬の量を確かめます。

 2017年12月16日(土)

 

凍結受精卵の無断移植で出産も、父子関係が存在 奈良家庭裁判所が判断を示す

 凍結保存していた夫婦の受精卵を妻が夫に無断で移植して出産したことを巡り、生まれた子供と夫との間に法律上の親子関係があるかどうかが争われた裁判で、奈良家庭裁判所は「夫の同意はなかったが、当時は婚姻中のため、法律上の親子関係がある」という判断を示しました。

 体外受精で生まれる子供が急増する中、夫婦間で同意なく受精卵を移植し生まれた子供を巡る判決は初めてだということで、専門家の間では法律の整備を求める意見も出ています。

 奈良県に住む外国籍の46歳の男性は、2004年に結婚した妻が奈良市内のクリニックに凍結保存していた夫婦の受精卵を使って、2015年に長女を出産したことを巡り、「別居中に自分の同意なく受精卵が移植されて生まれた子供で、夫婦関係は破綻していた」として、法律上の親子関係はないと訴えました。

 一方、子供と母親の弁護士は、「親子関係が否定されれば、扶養や相続などが認められず、子供に重大な不利益を負わせることになる」として争ってきました。

 15日の判決で奈良家庭裁判所の渡辺雅道裁判長は、「夫は移植に同意していないが、子供が生まれた当時は婚姻中で、別居中も旅行などの交流があったことからすれば夫婦の実態が失われていたとはいえず、民法の規定により、法律上の親子関係がある」として、男性の訴えを退けました。一方で、判決では生殖補助医療で産まれる子供について、「夫と妻との間の子供として受け入れることを同意していることが生殖補助医療を正当化するために必要だ」と指摘しました。

 日本産科婦人科学会によりますと、夫婦の同意がなく凍結受精卵を移植して生まれた子供を巡る判決は初めてだということです。日本産科婦人科学会の倫理規定では、受精卵を移植するごとに夫婦の同意を文書でとるようクリニック側に求めていますが、今回のケースでは文書での同意をとっていませんでした。

 凍結受精卵を巡っては、東京都内に住む男性も、妻が無断で移植して出産したとして同様の訴えを大阪家庭裁判所に起こしており、専門家の間では再発防止のため法律の整備を求める意見も出ています。

 判決について、原告の代理人を務める河野秀樹弁護士は「訴えが却下されたのは少し驚いた」と述べ、大阪高等裁判所に控訴する考えを示しました。一方で、「受精卵の移植には夫の同意が必要だと主張してきた部分は認められ、原告の男性も一定の評価をすると思う」と述べました。

 判決について、妻だった女性側の代理人の北條正崇弁護士は、「訴えが退けられほっとしています。子供の将来を考え、利益や福祉などが考慮された判決だと思います」と述べました。

 判決について、受精卵の移植を行った奈良市のクリニックは、「コメントできない」としています。

 今回の裁判は2016年10月、奈良県内に住む外国籍の46歳の男性が、奈良家庭裁判所に起こしました。男性は2004年に日本人の同い年の女性と結婚し、2010年、不妊治療のため奈良市内のクリニックで体外受精を行い、10個の受精卵を凍結保存しました。翌年、女性は受精卵の移植手術を受け、長男が生まれました。その後、夫婦関係が悪化して4年前から別居しましたが、クリニックには受精卵が残されたままでした。

 3年前、女性は男性に無断でクリニックに保存されていた受精卵の移植手術を受けました。男性はその後、妊娠を知らされたということで、女性は2015年、長女を出産しました。

 民法の規定では、結婚中に妻が妊娠した子は夫の子とするという「嫡出推定」と呼ばれる規定があり、これによって女の子の法律上の父親は男性とされました。その後、男性は女性と離婚し、受精卵が同意なく移植された経緯を考えれば法律上の親子関係はないとして奈良家庭裁判所に訴えました。

 今回の問題では、移植手術を行ったクリニックの対応も疑問視されました。日本産科婦人科学会の倫理規定では、医療機関は受精卵の移植の前に夫婦双方からの同意を得た上で同意書を保管することを求めていますが、今回の長女の出産のケースについて、クリニックは夫婦の同意書をとっていませんでした。

 理由についてクリニック側は、「夫婦が過去にも受精卵で長男を出産していて、受精卵の保存費用も妻が払っていたため、夫婦が第2子を希望していると思っていた」としています。

 男性は「移植への同意の有無を確認しなかった」として、昨年12月、今回の裁判とは別にクリニックなどに賠償を求める訴えを起こし、裁判が続いています。

 不妊治療のために精子と卵子を体の外で人工的に受精させる体外受精を行う夫婦は、晩婚化などを背景に年々、増え続けています。国内での体外受精は、34年前の1983年に初めて出産した例が報告され、日本産科婦人科学会がまとめた2015年の実施件数は42万4151件と、統計を取り始めた1985年以来、初めて40万件を超え、これまでで最も多くなりました。

 また、体外受精で生まれた子供の数は、前の年からおよそ3700人増えて5万1001人と過去最多になり、2015年に生まれた子供のおよそ20人に1人が体外受精で生まれた計算となります。1985年から2015年までに体外受精で生まれた子供の数は、合わせて48万2000人余りに達しています。

 2017年12月15日(金)

 

■医師数が最多更新、31万9480人 都道府県格差はやや改善し2倍切る

 人口10万人当たりの都道府県別の医師数の地域差が、2016年12月末時点で最大約2倍だったことが14日、厚生労働省の調査で明らかになりました。人口増減の差が地域によって大きいことや、医師がどこでも開業できる「自由開業」などが要因とみられます。

 調査は2年ごとに実施され、2014年からやや改善したとはいえ、地域差がある実態が改めて浮き彫りとなりました。厚労省は医師派遣などの対策をまとめ、医療法や医師法の改正案を来年の通常国会に提出する方針。

 厚労省が発表したのは「医師・歯科医師・薬剤師調査」で、2016年末時点の医師の総数は31万9480人で過去最多を更新し、前回比で8275人(2・7%)の増加。9人減の山形県、4人減の山口県を除く45都道府県で増加しました。このうち、医療施設で働くのは30万4759人(95・4%)でした。

 診療科別では、内科が6万855人と最多で、次いで整形外科2万1283人。医師不足が目立つ産婦人科は1万1349人、外科(消化器外科など含む)は2万8012人、小児科は1万6937人でした。

 また、歯科医師数は10万4533人(前回比561人増)、薬剤師数は30万1323人(前回比1万3172人増)で、いずれも過去最多を更新しました。

 人口10万人当たりの医療機関で従事する医師数の全国平均は、6・5人増の240・1人。都道府県別では、最も多かったのは徳島県(315・9人)。これに対し、最も少なかったのは埼玉県(160・1人)で、両県の地域差は1・97倍でした。2014年は2・02倍でした。

 厚労省は要因を分析していませんが、全国の医師数は増えているものの都市部の人口増加に追い付かず、地域格差が大きくなっているとみられます。

 医師数の地域差があると、特定の地域で医療が受けにくくなる恐れもあります。厚労省は一定規模の病院で院長になるための基準の一つとして、医師不足地域での勤務経験を有することを求めます。さらに、大学病院などから医師派遣などの偏在対策を勧める計画策定も、都道府県に義務付ける方針といいます。

 厚労省の担当者は、「住民が医療を受けられなくなる事態を防ぐため、地域差を解消する対策をまとめ、実行していきたい。格差は緩やかに縮まっていくと考えられる」としています。

 2017年12月14日(木)

 

■臍帯血の無届け移植事件、業者2人に有罪判決 松山地方裁判所

 東京都や大阪府のクリニックで臍帯血(さいたいけつ)が国に無届けで移植されていた事件で、再生医療安全性確保法違反の罪に問われた販売業者ら2被告の判決公判が14日、松山地方裁判所でありました。末弘陽一裁判長はいずれも、執行猶予の付いた有罪判決を言い渡しました。

 判決の内容は、臍帯血保管販売会社「ビー・ビー」(茨城県つくば市、解散)元社長の篠崎庸雄(つねお)被告(52 歳)=詐欺、横領罪でも起訴=に懲役2年4カ月執行猶予3年(求刑懲役2年6カ月)、仲介会社「レクラン」(福岡市、閉鎖)元社長の井上美奈子被告(59 歳)に懲役10カ月執行猶予2年(求刑懲役10カ月)。

 事件ではほかに2被告が起訴され、患者に臍帯血を投与していた表参道首藤クリニック(東京都渋谷区)の医師首藤紳介被告(40歳)は懲役1年を求刑されていて、判決は今月21日に言い渡されます。

 臍帯血はへその緒や胎盤に含まれ、公的バンクが産婦から無償提供を受け、白血病の治療などに使われています。再生医療安全性確保法により、2015年11月以降は他人の細胞の移植には、国への治療計画の提出が原則必要となりました。

 判決などによると、篠崎被告は8年前に経営破綻(はたん)した民間バンクから臍帯血を入手し、2016年2月~2017年4月、井上被告らと共謀し、東京都内や大阪市内のクリニックで計6人に無届けで臍帯血を移植しました。篠崎被告はさらに、自身が社長を務める会社に臍帯血の保管を委託した男女からその所有権をだまし取ったほか、家宅捜索を受けた際、保管を命じられた臍帯血をクリニックに譲渡し、横領しました。

 篠崎被告は約1000検体の臍帯血を入手。各地のクリニックに転売され、高額の自由診療として、有効性や安全性が未確立のがん治療や美容目的などで用いられていました。

 末弘裁判長は篠崎被告について、「研究用と偽って臍帯血をだまし取ったほか、販売によって多額の利益を得ていた行為は悪質だ。再生医療に対する信頼を著しく失墜させ、社会的影響も大きい」と指摘し、2被告が必要な前処置をせず臍帯血を移植していたことについて、「投与された細胞の性質が体内で変わり得る未知のリスクが含まれる。人命及び健康に重大な影響を与える恐れがあった」と述べました。

 篠崎被告が民間バンクから引き継いだことが切っ掛けで流出した臍帯血は、およそ100人に違法に移植され、厚生労働省は全国の12の医療機関に対し、行政処分を行うなど影響が広がりました。厚労省は今回の事件を受け、11月から国に届け出をして、再生医療を提供する医療機関について、一覧でホームページに掲載しており、治療を検討する際の参考にしてほしいとしています。

 2017年12月15日(金)

 

■東電社員、白血病発症で労災認定 原発事故の緊急作業などで被曝

 厚生労働省は13日、東京電力福島第一原子力発電所事故の緊急作業などで被曝(ひばく)し、白血病を発症した40歳代の東電の男性社員について、労災を認定しました。

 原発事故後の作業で被曝し、白血病を発症して労災認定されるのは、3人目。

 厚労省の発表によると、男性は1994年4月、東電に入社し、福島第一原発で原子炉の機器の保全業務を担当していました。2011年3月の東日本大震災の際は、津波による被害の確認や爆発した1、3号機の原子炉格納容器への注水作業などに9か月にわたり従事。2016年2月、白血病と診断され、労災を申請しました。男性の累積の被曝線量は約99・3ミリシーベルトで、厚労省が定めた労災認定の基準に達していました。

 福島第一原発では事故以降、今年の5月までに、およそ5万6000人の作業員が収束作業に当たっており、作業で被曝し白血病を含むがんで労災申請したのは、16人。このうち、労災認定されたのは、白血病で3人、甲状腺がんで1人の計4人。5人が調査中で、5人が不認定、2人が取り下げました。

 東電は、「労災認定は労働者への補償の観点から判断されたと認識している。引き続き、被曝管理を徹底する」とコメントしています。

 2017年12月14日(木)

 

■羊膜細胞を活用してクローン病を治療へ 兵庫医科大と北大が治験を開始

 兵庫医科大学病院(兵庫県西宮市)は、胎児の体を包み、出産後に捨てられる羊膜の細胞を使って、腸などの消化管で慢性の炎症が起きる難病「クローン病」などの治療を目指す臨床試験(治験)を始めると、12日発表しました。北海道大学病院と共同で、10人前後の患者に細胞を点滴して安全性や効果を調べます。

 羊膜には、骨や脂肪の細胞に変わることができ、免疫反応を抑える「間葉系幹細胞」が多く含まれます。研究チームは、北大病院で帝王切開を受ける妊婦から事前に同意を得て、出産時に羊膜を提供してもらい、細胞を採取します。羊膜の間葉系幹細胞を使う治験は初めてで、低コストの細胞移植治療につながる可能性があります。

 クローン病は、主に小腸や大腸に炎症や潰瘍が起き、腹痛や下痢、血便といった症状が出ます。医療費助成の対象となる指定難病で、国内の患者は約4万人。10歳代後半から30歳代前半に発症することが多く、免疫細胞の過剰な働きが一因とみられていますが、原因不明で根本的な治療法がありません。

 治験は、免疫や炎症を抑える薬が効かない患者が対象。来春以降、安全性を1年間調べ、有効性も評価します。並行して、骨髄移植後に免疫反応の異常で起きる急性移植片対宿主病(GVHD)への治験も進めます。

 研究チームの大西俊介・北大准教授(消化器内科)は、腸に炎症を起こしたラットに人の羊膜の間葉系幹細胞を注射し、炎症抑制などの効果をすでに確認しています。

 研究チームの山原研一・兵庫医科大准教授は、「安全性が確認できれば、製造販売の承認を目指す次の治験を始めたい」と話しています。

 間葉系幹細胞は、骨髄や脂肪組織にも含まれ、骨髄から採取した細胞は、国内でもGVHDの治療で製品化され、クローン病も海外で治験が進んでいます。ただ、骨髄は骨の中から採取するため、提供者の体に負担をかけ、採取できる細胞の数も限られます。

 山原准教授によると、羊膜では、妊婦1人当たり数百万~数千万個の細胞が効率的に採取でき、提供者の負担も少ない利点があるといいます。

 2017年12月14日(木)

 

■電気ケトルや炊飯器による子供のやけどに注意 過去7年間に375件

 消費者庁は13日、14歳以下の子供が電気ケトルや炊飯器でやけどを負う事故が、今年10 月までの過去約7年間に計375件あったと明らかにしました。うち重傷は12件で、2歳以下では重症化する傾向がありました。

 被害防止のため、消費者庁は安全に配慮した商品を選ぶよう注意を呼び掛けています。

 消費者庁が医療機関からの情報をまとめました。内訳は電気ケトルや電気ポットによる事故が241件、炊飯器による事故が134件。入院が必要な「中等症」か生命に危険が及ぶ可能性が高い「重症」の事故は、電気ケトルなどが約23%、炊飯器は約8%でした。

 これらで中等症や重症のやけどを負った子供の9割以上は、2歳以下でした。子供に電気ケトルのお湯がかかってしまったり、炊飯器の蒸気に触れてしまったりするなどのケースが起きているといいます。

 2010年には、床に置かれた電気ケトルが倒れ、こぼれた熱湯の上で腹ばいになっていた0歳児が重いやけどで入院。昨年には、高さ50センチの棚にあった炊飯器のふたが開いて中身がこぼれ落ち、炊飯器につかまり立ちをしたとみられる0歳児がやけどを負いました。

 消費者庁は、子供が触れない場所で保管、使用するよう注意を呼び掛けています。また、倒れてもお湯がこぼれにくい電気ケトルや、ふたをロックできたり蒸気が出ない炊飯器も販売されていることから、「安全に配慮された製品を選んで」と求めています。

 2017年12月14日(木)

 

■政府・与党、診察料や入院費0・55%引き上げを決定 6回連続で診療報酬プラス改定

 来年度予算編成の焦点の一つとなっている診療報酬改定について、政府・与党は12日、診察料や入院料などの「本体」部分を0・55%引き上げることを決めました。前回2016年度の診療報酬改定時の0・49%を超えることになります。

 薬代の「薬価」を大きく引き下げて全体の改定率はマイナスとし、捻出した財源を本体部分に回します。

 診療報酬は医療サービスの公定価格で、2年に1度見直されます。診療報酬の本体は、医師や看護師らの人件費や設備投資などに回ります。全体の改定率は2回連続でマイナスになる一方、本体は2008年度から6回連続でプラス改定が続くことになりました。国費で約600億円の負担増となり、原則1~3割の患者の窓口負担も増えますが、安倍政権を支持する日本医師会に配慮する狙いもありそうです。

 厚生労働省の直近の調査で病院全体の利益率がマイナス4・2%の赤字で、1967年の調査開始以来3番目に低かったことなどから、医療団体や与党の厚生労働族議員が前回を超すプラス改定を求めていました。日本医師会は、政権が財界に3%の賃上げを求めていることを引き合いに「全就業者の約1割を占める医療従事者にも手当てを」とも訴えていました。

 一方、財務省は、当初デフレでほかの産業の賃金水準が上がっていない時期も本体部分は増え続けているとして、引き下げを求めていた。攻防が続いた末、最終的に財務省もプラス改定を容認しました。首相官邸は、前回を超える改定が必要と判断しました。

 薬価を市場価格に引き下げる分で出る1千数百億円のほか、医療・介護の制度改正で数百億円の財源を確保します。来年度予算で社会保障費の自然増を1300億円削る政府目標のために使った上で、残った財源などを診療報酬本体の引き上げに回します。

 さらに、これらの財源で、政府・与党は介護報酬に加え、障害者支援サービスの公定価格となる「障害福祉サービス等報酬」も引き上げる方針。プラス幅については、診療報酬本体より低くします。

 介護報酬と障害福祉サービス等報酬は3年に1度見直され、来年度は診療報酬とともに、三つの報酬が同時に改定となります。政府・与党は週内にもそれぞれの改定率の大枠を固め、22日に予定される政府予算案の決定で正式に決めます。

 2017年12月14日(木)

 

■2015年の平均寿命、男性は滋賀県が初の首位 女性は長野県が僅差でトップ

 厚生労働省は13日、2015年の都道府県別の平均寿命を発表しました。男性は2010年の前回調査で2位だった滋賀県が81・78歳で初の首位となりました。女性は87・675歳の長野県がトップで、岡山県と0・002歳の僅差ながら前回に続き首位を維持しました。

 平均寿命が最も低かったのは前回と同様に男女とも青森県で、男性は78・67歳、女性は85・93歳でした。

 都道府県別生命表は1965年から5年ごとにまとめており、今回で11回目。全国平均は、男性が前回調査より1・18歳延びて80・77歳、女性は0・66歳延び87・01歳でした。

 男性の首位は前回まで5回連続で長野県が首位でしたが、今回は滋賀県が初めて1位となりました。厚労省は、「滋賀県は食塩の摂取量が少なく、喫煙者の割合も低い」と話しています。

 滋賀県の担当者は、「官民一体で栄養調査や運動などの取り組みを行ってきた。(2位の)長野県のように県を挙げて減塩に取り組むなどの対策はしていないが、地道に県民の健康づくりをバックアップしてきた結果だ」と受け止めています。

 滋賀県の次は長野県(81・75歳)で、京都府(81・40歳)、奈良県(81・36歳)、神奈川県(81・32歳)の順でした。

 女性はトップの長野県と0・002歳の僅差で岡山県(87・673歳)が続き、島根県(87・64歳)、滋賀県(87・57歳)、福井県(87・54歳)の順でした。4位の滋賀県の女性は、前回より順位を8つ上げました。1975年から2005年まで女性の1位だった沖縄県は、87・44歳で今回7位。沖縄県の女性は75歳の平均余命はトップでしたが、若い世代の平均余命の延びが小さく、前回の3位から順位を下げました。

 前回の2010年と比べて最も平均寿命が延びたのは、男性が長崎県(1・50歳増)、女性が鳥取県(1・19歳増)。男性の長崎県は自殺や肺炎の死亡率が大きく低下し、女性の鳥取県はがんによる死亡率が大きく改善し、平均寿命の延びに寄与しました。

 一方、平均寿命の延びが最も低かったのは、男性が山形県(0・54歳増)、女性が愛媛県(0・28歳増)。男性の山形県は心疾患、女性の愛媛県は脳血管疾患や自殺による死亡率が、ほかの都道府県と比べて改善幅が小さかったことが影響しました。

 全国の死因別の死亡確率のトップは男女とも「がん」で、男性は29・38%、女性は20・35%。がんに加え心疾患、脳血管疾患を合わせた死亡確率は、男性は51・72%と5割を超え、女性は47・16%という結果でした。

 2017年12月14日(木)

 

■加熱式たばこ、5年かけて段階的に増税へ 紙巻きの7~9割程度に

 政府・与党は12日に開いた与党税制協議会で、加熱式たばこを2018年度から段階的に増税することを決めました。2018年度から2022年度まで5年間かけ、最終的に税金の割合が紙巻きたばこの7~9割程度になるようにします。14日にまとめる2018年度税制改正大綱に盛り込みます。

 加熱式たばこは、紙巻きたばこより煙が少なく、受動喫煙の可能性が低くなるとして急速に普及が進んでいます。しかし、税法上「パイプたばこ」に分類され、紙巻きたばことは違う税額の算出基準を適用されているため、税額が低くなっています。また、製品ごとにたばこ葉の量が異なるため、大手たばこ3社が販売する加熱式は、1箱当たりの税額が34・28円~192・23円と大きな差が出ています。

 紙巻きたばこや加熱式たばこの製品間の税額の差を縮めるため、既存の算出方法を見直し、加熱式たばこの特徴を反映させた新たな税額の算出方法を導入します。新基準の導入で、加熱式たばこの税額は紙巻きの7~9割程度に増え、製品間の税額のばらつきも縮小する見込み。

 ただ、紙巻きたばこから急速に置き換えが進んでいるため、消費者への影響を考慮し、5年かけて少しずつ増税します。現在、加熱式たばこの中で最もたばこ税額の低い日本たばこ産業(JT)の製品「プルーム・テック」のたばこ税額は、増税が終わる2022年度には現在の6倍以上になる見通し。

 一方、紙巻きたばこは、2018年10月から4年間で1本当たり3円増税します。2018年10月に1円、消費税率が10 %に引き上げられる2019年は増税を見送り、2020年10月と2021年10月にそれぞれ1円増税します。その結果、紙巻きたばこは1箱(20本入り)60円の増税となります。

 2017年12月13日(水)

 

■生活保護費、厚労省が見直し案 最大13・7%減、母子加算2割カットも

 厚生労働省は8日、生活保護費に関し、食費や光熱費など生活費の受給額の見直し案を社会保障審議会の部会に示しました。大都市部では減額となる世帯が多く、カット幅は最大13・7%に上ります。母子家庭に対する加算(母子加算)については、平均2割カットになる可能性があるとしました。

 厚労省はカット幅の大きい世帯については、減額幅の縮小や段階的な実施などの緩和措置を取ることも検討した上で、2018年度から実施します。

 生活保護の生活費は最低限度の生活を営むのに必要な水準が支給され、生活保護を受けていない一般的な低所得世帯と同じ生活水準になるよう算出し、5年に1度見直しています。

 厚労省は、現在の受給額と低所得世帯の消費実態を比較し、統計処理の異なる2案を示しました。

 それによると、「40歳代夫婦と中学生、小学生」(大都市部)の4人家族の受給水準である約18万5000円は低所得世帯より最大13・7%高く、その分、引き下げて約16万円とします。65歳の単身者では、月約8万円から約7万3000円の約8%減少となります。共に65歳以上の夫婦の世帯も、10%超のカットになります。大都市部では多くは減額になりますが、地方都市では増額となるケースもあります。

 一方、母子加算については、両親のいる世帯の生活水準と比較し、差額を支給します。今回の試算では、子供1人の場合で差額は1万7000円で、現行の母子加算の平均2万1000円は2割高くなっています。

 中学生までの子供がいる世帯に支給する児童養育加算(子供が0~2歳の場合1万5000円、3歳以上は1万円)は、支給対象を現在の「中学生まで」から「高校生まで」に拡大しますが、金額は年齢によらず一律1万円とします。

 5年前の前回見直しでは、デフレなどを考慮して平均6・5%減とし、段階的に引き下げました。

 2017年12月13日(水)

 

■明治ホールディングス、化血研の新会社を連結子会社化へ グループで議決権の49%を保有

 明治ホールディングスは12日、一般財団法人「化学及血清療法研究所」(化血研、熊本市)が医薬品事業を譲渡する新会社を連結子会社にすると発表しました。

 明治ホールディングスグループで新会社の議決権の49%分を保有するほか、代表取締役も指名します。社会的インフラとして重要性が高く成長も見込める化血研のワクチン事業を取り込み、新たな収益の柱に育てます。

 12日に開いた取締役会で、決議しました。化血研の新会社が普通株式の発行を通じて調達するのは、200億円。明治ホールディングスが普通株式の29%、製薬子会社のMeijiSeikaファルマが20%を保有し、グループで筆頭株主となります。そのほかは、肥後銀行や再春館製薬所、テレビ熊本、熊本放送などの熊本県企業グループが49%、熊本県が2%を保有します。

 化血研が新会社に譲渡するワクチン事業、血漿分画製剤事業、動物薬事業の3事業の価値は、500億円。新会社は普通株式発行で得た200億円のほか、明治ホールディングスと化血研に無議決権株式を割り当て、それぞれ75億円を調達するなどして、買収の対価とします。明治ホールディングスによると、無議決権株式は普通株式への転換権を有しません。新会社の設立は、2018年度上半期の見込み。

 明治ホールディングスの医薬品事業は、抗生剤に強みを持ちます。化血研のワクチン事業を加えれば、予防から治療まで一貫して手掛けられるようになり、事業競争力が高まると判断しました。

 化血研は、およそ40年にわたって国の承認とは異なる方法で血液製剤などを製造し、不正を隠すために製造記録を偽造するなど組織的な隠蔽を図っていたことが2015年に明らかになり、厚生労働省から事業譲渡を含む抜本的な体制見直しが求められていました。当初、アステラス製薬と事業譲渡の交渉をしていましたが、協議は打ち切られていました。

 2017年12月12日(火

 

■京大、iPS細胞の作製に新技術の採用を検討 高い特許使用料を回避へ

 京都大学は、再生医療用で使うiPS細胞(人工多能性幹細胞)をあらかじめ備蓄する際に、新たな作製技術の採用を検討します。患者ごとに作製すると時間と費用がかさむため、京大は事前に備蓄したiPS細胞を研究機関や企業に配っています。

 現在の作製法は、富士フイルムのアメリカ子会社が保有する特許に触れる恐れがあり、紛争を回避するとともに使用料を安く抑える狙いもあります。

 採用を検討するのは、臨床試験(治験)支援大手のアイロムグループ子会社のIDファーマ(東京都千代田区)が特許を持つ作製法。iPS細胞の作製に必要な遺伝子を導入するのに「センダイウイルス」というウイルスの一種を使います。この技術を使って、京大がiPS細胞を作製し、安全性を確認して研究機関や企業に配ります。

 京大は現在、大腸菌のDNAを使っており、富士フイルム子会社のセルラー・ダイナミクス・インターナショナル(CDI)の特許に触れる恐れがあります。富士フイルムは企業とは交渉で特許使用料を決める考えですが、大学や研究機関に高額の使用料を課すことは避けたいといいます。

 山中伸弥iPS細胞研究所長は特許使用について、「紳士的な話し合いを進める」と説明しています。その上で、新しい作製法は「高い特許使用料が提示された場合の交渉材料になる」と話しました。

 アイロムグループのIR担当者は、「京大の内部的な話であり現状、当社がコメントする立場にない」としています。

 2017年12月12日(火

 

■膝軟骨修復の再生医療実用化へ向けて治験を開始 大阪大と中外製薬など

 大阪大学と中外製薬(東京都中央区)などの研究チームは、膝の軟骨を損傷した患者に、他人の細胞から作った組織を移植して治療する臨床試験(治験)を始めたと発表しました。

 膝の軟骨は、激しい運動や加齢に伴って損傷してもほとんど再生しないため、治療が難しいという課題がありました。治験では、別の患者の手術で出た不要な膝の組織から、軟骨などに変化する「間葉系幹細胞」を採取して培養。厚さ約3ミリの組織を作り、患者の軟骨に貼り付けます。

 これまでに患者自身の間葉系幹細胞から作った組織で5例の移植を行い、いずれも半年~1年後に膝の軟骨の再生を確認できたといいます。一部が軟骨になるほか、軟骨再生を促す物質を出しているとみられます。

  今回の治験では11月に、20歳代の男性患者1人に他人の間葉系幹細胞から作った組織の移植を行ったということです。うまくいけば数カ月で膝の軟骨が修復される見通しで、他人の間葉系幹細胞をあらかじめ培養することで、1人から提供された間葉系幹細胞で1000人から1万人程度の治療を行うことができるといいます。

 研究チームでは今後3年間で、大阪大病院など全国9施設の患者70人に移植を行い、安全性や効果が確かめられれば、実用化の手続きを進めることにしています。

 大阪大学大学院医学系研究科の中村憲正・ 招聘(しょうへい)教授(整形外科)は、悪化すると歩行困難になる変形性関節症の予防にもつながるとし、「この組織は損傷部に接着しやすく、高い効果が期待できる。他人の細胞を用いることで患者自身の負担が減り、治療コスト削減も期待できる。今後、本格的に再生医療の扉が開くことを期待したい」と話しています。

 東京医科歯科大学の関矢一郎教授(整形外科)は、「備蓄する他人の細胞を使えば必要な時に移植できる利点はあるが、感染症などのリスクには注意すべきだ」と話しています。

 2017年12月11日(月)

 

■インフルエンザ患者が大幅に増加 ワクチンの供給は一部地域で不足

 インフルエンザが11月下旬から全国的な流行期に入り、首都圏でも12月に入って患者数が大幅に増えています。

 今シーズンはインフルエンザワクチンの供給が例年のシーズンより遅れ、一部の地域で不足が指摘されていますが、厚生労働省は「ワクチンの出荷は今月中旬ごろまで継続され、順次、供給される見込みです」としています。

 厚労省や国立感染症研究所によりますと、インフルエンザは例年よりやや早いペースで11月下旬から全国的な流行期に入っており、12月3日までの1週間に、医療機関から報告されたインフルエンザの患者数は、東京都では前の週から500人あまり増えて1322人となり、全国で最も多くなっています。

 関東の1都6県では、1医療機関当たりの患者数は栃木県が4・88人と最も多く、次いで埼玉県が3・39人、東京都が3・17人、千葉県が3・15人、神奈川県が2・87人、群馬県が2・33人、茨城県が1・28人となっており、すべての都県で前の週から増えています。

 今シーズンはインフルエンザワクチンの供給が例年のシーズンより遅れ、一部の地域で供給が不足して接種希望者に対して在庫が間に合っていないため、医師などでつくる東京保険医協会は先週、厚労省に対しワクチン不足の解消を求める緊急の要望を行っていました。

 供給の遅れの原因について、厚労省は当初新しい種類のワクチンを製造しようとしたものの生産量が思うように伸びず、急きょ、昨シーズンと同じ種類のワクチンの製造に切り替えたことから、例年のシーズンより製造の開始が遅れたためだとしています。その上で、メーカー側が品質確認作業を急ぐなどしてワクチンの出荷を早める努力も重ね、13歳以上は原則1回のワクチン接種を徹底するよう呼び掛けるなど対策を講じたとしています。

 東京保険医協会は、「今後ワクチンを打っても効果が出るまでに2週間ほどかかるため、クリスマスや初もうでの時期に間に合わない場合もある。マスクやうがいをするほか、人混みを避けるなど十分に気を付けてほしい」としています。

 インフルエンザが流行期に入り、首都圏の学校などでも休校や学級閉鎖が相次いでいます。厚労省によりますと、休校や学級閉鎖の措置を取った保育所や幼稚園、それに学校は12月3日までの1週間で関東の1都6県で117施設に上り、前の週から74施設増えました。

 このうち、東京都が最も多い44施設、次いで千葉県が18施設、栃木県が16施設、埼玉県が14施設、神奈川県と群馬県が9施設、茨城県が7施設となっています。

 2017年12月11日(月)

 

■着床前スクリーニング、今年度にも臨床研究開始へ 日本産科婦人科学会

 体外受精による受精卵の全染色体を検査し、異常のないものだけを母胎に戻す「着床前スクリーニング(PGS)」について、日本産科婦人科学会は不妊治療の過程で流産を減らすなどの効果があるか調べる本格的な臨床研究を、早ければ今年度中に始めると発表しました。

 着床前スクリーニングは現在、日本産科婦人科学会が禁止しているほか、命の選別につながるとして倫理的な問題も指摘されていますが、学会では臨床研究の結果を踏まえて、方針を転換して実施を認めるか慎重に判断したいとしています。

 不妊治療で体外受精させた受精卵は、染色体の異常が起きることが原因となって子宮に着床しなかったり、流産したりすることが知られており、着床前スクリーニングは、受精卵の染色体を解析して異常がないものを選んで子宮に戻す技術です。

 日本産科婦人科学会はこれまで、国内では有効性が確認されていないとして認めてきませんでしたが、アメリカやヨーロッパで流産が減り、出生率が上がったとする報告が示されるなどしたため、国内でも実施できるよう方針の転換を求める声が学会の中からも上がり、今年2月から、学会が有効性を確かめる臨床研究を行う準備を始めていました。

 そして学会は9日、定例の会見の中で、着床前スクリーニングの本格的な臨床研究を、早ければ今年度中に開始すると発表しました。

 臨床研究は流産が2回以上起きたり、体外受精が複数回成功しなかったりした女性を対象に行い、流産が減って出生率が上がるか調べ、国内での実施を認めるか協議することにしています。

 着床前スクリーニングを巡っては、染色体の異常で起きるダウン症やターナー症候群などの受精卵は子宮に戻されず、生まれないことになるなど、命の選別につながるとして倫理的な問題が指摘されているほか、流産などを防ぐための染色体の異常を見付ける過程で受精卵の性別がわかってしまうために、男女の産み分けに使われることを懸念する指摘もあります。

 日本産科婦人科学会の倫理委員会の苛原稔委員長は、「まずは有効性を調べるが、倫理的な課題もあり、実施を認めるかは慎重に協議したい」と話しています。

 2017年12月10日(日)

 

■海外渡航の必要性がある臓器移植に保険給付 厚労省、来年度にも実施

 国内で臓器提供が受けられず、医療的緊急性から海外渡航して移植手術を受ける患者に関し、厚生労働省は9日、患者が全額自己負担している医療費のうち、日本で治療した場合と同等の保険給付を認める方向で検討に入りました。

 早ければ来年度にも実施したい考えで、海外での治療費を加入先の公的医療保険から払い戻す「海外療養費制度」を活用します。

 対象は、国内で移植手術をした場合に保険適用される手術費や入院・外来治療費に相当する1000万円程度になる見込み。渡航費や滞在費は、含まれません。該当する患者は、子供を中心に年間10人以内と見なされます。

 ただ、保険給付が実現すれば、渡航移植の促進にもつながりかねません。「移植手術に必要な臓器は自国内で確保すべきだ」という世界的な流れに反することになり、議論を呼びそうです。

 日本国内では、待機患者の数に比べて提供者数は少ないのが現状で、病状によって2億~3億円の費用がかかる渡航移植を選択しなければならない患者や家族の負担を少しでも軽減する狙いがあります。

 対象は、日本臓器移植ネットワークに登録し、待機状況から生命の維持が危ぶまれるなど一定の基準を満たす患者。海外療養費を申請する際には、臓器移植法が禁止する臓器売買に該当しない手術であることを証明する書類の提出を求めます。

 健康保険法では、治療目的で渡航した場合は通常、海外療養費は給付されませんが、公的医療保険の運営者が「やむを得ないと認める時」は可能としており、厚労省はこの規定に沿って給付するよう保険運営者に促す方針です。

 2017年12月10日(日)

 

■脂肪幹細胞で欠損した骨を治療 澁谷工業と金沢大が共同研究

 澁谷(しぶや)工業(金沢市)は、脂肪の幹細胞を使って骨の細胞を作り、骨の欠損治療に役立てるため、金沢大学と共同研究に乗り出しました。

 事故や加齢などで欠けた骨を人工骨で補うのではなく、生体に由来する脂肪幹細胞を活用することで治療後の人体への影響を抑えます。来年夏ごろの動物実験を経て、将来的に、人の整形外科や歯科分野での導入を目指します。

  澁谷工業によると、骨の欠損治療は一般的に、人工骨や凍結保存された他人の骨を移植する方法で行われていますが、骨の強度がもろかったり、アレルギーや感染症を引き起こしたりする課題が指摘されています。

  金沢大医薬保健研究域医学系整形外科学分野の土屋弘行教授らは、脂肪の幹細胞を基に平面状の骨の細胞シートを作製しています。ただ、治療に活用するには、立体的な3次元構造を持つ骨の作製が求められていました。澁谷工業は、再生医療用のバイオ3Dプリンターなど、無菌環境下で細胞の塊を培養して立体的な体内組織を作製する技術を持っています。

 土屋教授の基礎研究と澁谷工業の製造技術を組み合わせれば、3次元構造を持つ骨の作製などができると判断し、11月に双方が共同研究に合意し、契約を締結しました。すでに実施した検討実験では、脂肪の幹細胞から、新しい骨をつくる働きを持つ「骨芽(こつが)細胞」の塊の作製に成功したといいます。

  共同研究では、実験室レベルの微細な骨の細胞シートに澁谷工業の製造技術を活用し、多様な骨芽細胞の塊をつくる手順を確立する方針です。骨の欠損部分に粒状の骨の細胞を重ね、埋めるように補修する案も描いています。

 2017年12月10日(日)

 

■水晶体の被曝量限度、年間50ミリシーベルトに引き下げへ 原子力規制委員会が中間報告

 放射線を大量に浴びると目が白内障になる恐れがあることから、原子力規制委員会の専門家会合は中間の報告書を取りまとめ、医師や看護師などの目の水晶体の被曝(ひばく)量の限度をこれまでの3分の1の年間50ミリシーベルトに引き下げることなどが適当だとしました。

 原子力規制委員会によりますと、放射線を大量に浴びると目の中の水晶体が白く濁る白内障になる恐れがあるとされていて、水晶体に影響する放射線はX線を使った手術を行う医師や、CT検査にかかわる看護師など医療現場で浴びるケースが多いということです。

 国内では水晶体の被曝量の限度を年間150ミリシーベルトとしていますが、この基準値は世界的にみても非常に緩いことから、放射線から人や環境を守る仕組みを専門家の立場で勧告する国際学術組織「国際放射線防護委員会(ICRP)」の6年前に出した基準値の見直し勧告を受けて、原子力規制委員会の専門家会合が議論をしてきました。

 そして、8日の専門家会合で勧告に沿う形で、被曝量の限度をこれまでの3分の1の年間50ミリシーベルトに、5年間の平均で年間20ミリシーベルトに引き下げることが適当だとする中間の報告書を取りまとめました。

 一方、東京電力福島第一原子力発電所の廃炉作業では医療現場と同様に被曝するケースがあり、東京電力は来年度から自主的に水晶体の被曝量の限度を年間50ミリシーベルトに下げることを決めています。

 専門家会合では今年度中に正式に決定し、厚生労働省など関係機関に提言したいとしています。

 2017年12月10日(日)

 

■炎症を引き起こす活性酸素を除去できるマイクロマシンを開発 産業技術総合研究所 

 産業技術総合研究所(産総研、茨城県つくば市)は、3種類のタンパク質だけからなり、炎症を引き起こす過剰な活性酸素を除去できる高機能なマイクロマシン(微小機械)を開発したと発表しました。

 このマイクロマシン開発は、産総研バイオメディカル研究部門の山添泰宗主任研究員によるものです。

 血管や臓器の中で働くナノマシンやマイクロマシンを使って、病気の診断、病変部への薬の投与、有害物質の除去などを行う治療法が期待を集めています。体内で働くナノマシンやマイクロマシンは、安全性の高い素材で作られ、また、役割を終えた後には体内で分解されてなくなるのが理想的です。タンパク質は、生体適合性や生分解性があり、また、結合、触媒、伝達、輸送など多岐にわたる機能を持つので、素材として有望ですが、多くのタンパク質は非常に繊細であり、少しの刺激によって容易にその立体構造が壊れて機能も失われます。この取り扱いの困難さのために、複数のタンパク質を部品として、乾燥状態にも耐えられる強さと高度な機能を備えたナノマシンやマイクロマシンを組み立てることは困難でした。

 産総研では、今回、異なる機能を持つ血清アルブミン、スーパーオキシドディスムターゼ(SOD)、抗体という3種類のタンパク質を組み合わせて、過剰な活性酸素を除去できるタンパク質だけからなるマイクロマシンの開発に取り組みました。

 まず、抗原・抗体反応を利用して基板上に抗体を規則正しく並べ、これを血清アルブミンなどで構成されるマイクロマシンの本体部分に組み込みました。水に不溶性のマイクロマシンを作るために化学処理が必要ですが、タンパク質の構造が破壊されないように、架橋剤を用いた化学処理の反応条件を最適化しました。また、反応液に安定剤を加えて、乾燥工程でのタンパク質の構造破壊を防止しました。なお、安定剤はすべて、マイクロマシン作製後に溶出させて取り除くことができます。

 このマイクロマシンは、熱、pH変化、乾燥の外部刺激に対して高い安定性を示し、直径約100µm、中央部で約170nmと薄く、外周部で約740nmと厚い円形の薄いシート状となりました。

 このマイクロマシンを、活性酸素を分泌する細胞と混合したところ、マイクロマシンは、表面に組み込まれている抗体の働きにより良好に細胞を捕捉できることがわかりました。マイクロマシンに捕捉された細胞から周囲に分泌された活性酸素の量を測定したところ、フリーの状態の細胞に比べて70%減少することがわかりました。また、薬剤結合マイクロマシンは、薬剤を周囲に放出することで、捕捉していないものの近くにある細胞についても活性酸素の生成を著しく抑制できることもわかりました。

 今回、天然素材で安全性の高いタンパク質を使って、高度な機能を備えたマイクロマシンを構築できることが実証されたため、タンパク質を使った安全・安心・高機能な医療用デバイス(医療用具)の開発が進むと期待されます。

 産総研は今後、炎症性サイトカインに結合する抗体などを組み込んで、潰瘍性大腸炎やクローン病などの炎症性疾患の治療に役立つマイクロマシンを開発するとしています。また、今回開発した作製手法をバイオセンサーやウェアラブルデバイスなどのデバイス開発にも応用していくということです。

 2017年12月9日(土)

 

■目や耳に生まれ付き障害が出る難病の仕組みを解明 慶大の研究チーム

 生まれ付き目や耳、心臓などに障害が出る難病が起こる仕組みの一部を慶応大学の研究チームが解明し、専門誌で報告しました。iPS細胞(人工多能性幹細胞)を使って、病気の成り立ちを調べました。

 患者の症状を改善するための手掛かりになる可能性があり、治療薬の開発につなげたいといいます。

 調べたのは、新生児の約2万人に1人の割合で現れる「チャージ症候群」という病気で、視力や聴力の障害のほか、心臓や神経などさまざまな臓器や組織で問題が生じます。特定の遺伝子がうまく働かないことが原因とみられていますが、生まれた時にはすでに障害が生じており、どのようにして病気になるのかよくわかっていませんでした。

 慶大の奥野博庸(ひろのぶ)助教らは、胎児の時にどのように病気になるかを調べました。患者と健康な人から皮膚の細胞を提供してもらい、iPS細胞をそれぞれ作製し、目や耳といった感覚器などの基になる「神経堤(てい)細胞」という細胞にしました。これをニワトリの胚(はい)に移植して、様子を観察しました。

 この神経堤細胞は、胎児の体内で自ら動いて目や耳など目的の場所にゆき、そこで本来の組織に変化します。しかし、患者から作製した神経堤細胞の移動する能力は、健康な人から作製した神経堤細胞に比べて大幅に低くなりました。健康な人の細胞はバラバラに動き成長したのに対して、患者の細胞はくっついたままで動きが遅くなりました。

 奥野助教は、「胎児の時に神経堤細胞の動きが異常になり、目的の場所にきちんとたどり着けないことで、感覚器などがうまく働かなくなっているのではないか」とみています。神経堤細胞は骨や筋肉などにも育つことから、今回の成果はチャージ症候群以外の幅広い病気の解明にも役立つといいます。

 2017年12月9日(土)

 

■門前薬局や大型薬局の調剤報酬を引き下げ 厚労省が方針を示す

 厚生労働省は8日、来年4月の診療報酬改定で、病院前で営業する「門前薬局」や大型チェーン薬局の調剤報酬を引き下げる方針を示しました。患者への服薬管理・指導など薬局のかかりつけ機能を強化する狙いがあります。

 同日の中央社会保険医療協議会(中医協、厚労相の諮問機関)に提案しました。

 調剤報酬は薬剤師の技術料であり、患者は1~3割を負担します。厚労省は医療機関からの薬局の独立性を担保し、患者とのやり取り通じて薬の飲み方を指導し、重複投薬防止などに取り組むかかりつけ薬剤師の普及を推進。病院外の薬局で調剤する「院外処方」の報酬を、「院内処方」の約3倍と手厚くしてきました。

 この結果、病院前で営業し、特定の病院からの処方箋がほとんどを占める門前薬局が増加。病院帰りの患者が訪れることが多く、厚労省は薬の飲み残しの管理など、かかりつけ機能が十分できていないと判断。2016年度の報酬改定で、処方箋の受け付けが月計4万回を超える薬局グループで特定の病院からの処方箋が95%を超えるなどの場合は、調剤報酬を下げました。

 しかし、2016年度の厚労省の調査で、多店舗の大型チェーン薬局ほど利益率が高いことが判明。ほかの病院の処方箋を付け替え請求して報酬減を免れる不正も、問題になりました。

 そのため厚労省は、門前薬局や大型チェーン薬局の調剤報酬をさらに引き下げて、適正化を図る考えです。病院敷地内で営業する「門内薬局」の調剤報酬も引き下げます。

 具体的には、特定の病院からの処方箋が90%を超え、処方箋の受け付けが月計2500回を超える大型の門前薬局を対象に、調剤基本料を4割減らします。調剤基本料は来年4月から消費増税に併せて10円引き上げて410円としますが、大型の門前薬局は250円に引き下げます。施設基準を満たし届け出ている薬局に来年4月から認める「基準調剤加算」(120円など)も、大型の門前薬局には認めません。

 例外的に、24時間営業をして緊急の調剤ニーズに対応する場合は、引き下げの対象としません。また、病院や薬局の数が少ない過疎地域については、配慮を検討します。

 2017年12月9日(土)

 

■診療報酬改定で薬価1・3%前後下げへ 薬価と市場価格の9・1%差を解消 

 2018年度予算編成の焦点である診療報酬改定について、薬価部分で1・3%前後引き下げる見通しとなりました。

 厚生労働省が6日、薬の公定価格(薬価)が市場での実勢価格と比べ、平均9・1%上回っているとの医薬品価格調査の結果を公表。実勢に合わせるには、在庫管理コストなどを差し引いても7・1%下げる必要があります。薬剤費を9兆円規模と仮定した場合、単純計算で国費負担は1500億円程度、圧縮できます。

 6日の中央社会保険医療協議会(中医協、厚労相の諮問機関)に報告しました。市場の価格競争で、薬価と比べて実勢価格は下がることが多く、2年に1度、その差を解消する形で薬価を下げています。在庫管理のコストなど2%分を残して、差し引く決まりになっています。

 診療報酬は医療サービスの公定価格で、薬価部分と医師らの人件費などに充てる本体部分からなります。前回の2016年度改定では、最終的に薬価を1・33%下げました。本体部分を0・49%のプラス改定としたため、全体で0・84%のマイナス改定でした。

 2018年度改定の薬価部分の下げ幅は前回並みの見通しとなったことで、焦点は診療報酬本体や、同時に改定される介護報酬の改定率に移ります。厚労省は医療機関や介護事業者の経営状況は悪化しているとして、プラス改定としたい意向です。ただ、財務省は社会保障費の抑制に向けてマイナス改定を主張しており、政府・与党内で調整を続けます。

 診療報酬の本体部分がプラス改定になったとしても、薬価部分のマイナス幅を埋めるほどにはなりません。診療報酬全体ではマイナス改定とするため、全体の構図は前回改定とほぼ同じ。今回の改定では、薬価制度改革による薬価の削減分も加わります。通常の薬価改定分と合わせた正式な引き下げ幅や率は、12月下旬までに決まります。

 2017年12月8日(金)

 

■PM2・5、幼い子供の脳の発達を損なう恐れ ユニセフ報告書

 ユニセフ(国連児童基金)は6日、大気汚染物質PM2・5(微小粒子状物質)を幼い子供が吸い込むことで、脳の発達を損ない、生涯にわたって影響が残る恐れがあるとする報告書をまとめ、中でも、汚染がひどく危険にさらされる子供の数が多いインドなど南アジア地域に対し、早急な対策を呼び掛けました。

 報告書によりますと、大気汚染物質のPM2・5は粒子が極めて小さいため、血管を通って脳に到達し、脳細胞の炎症を引き起こしたり神経細胞の伝達にかかわる部分を破壊したりして、学習や脳の発達の基礎となる部分を損なう恐れがあるということです。

 とりわけ、脳が発達段階にある1歳未満の乳児など幼い子供は影響を受けやすく、PM2・5の影響が生涯にわたって残る恐れがあると指摘しています。

 報告書は衛星画像によるデータを基に、、WHO(世界保健機関)が定めたPM2・5の基準値(10μg/m3)の6倍以上に上る汚染レベルの地域に、現在、世界でおよそ1700万人の乳児が暮らしていると推計しており、このうち7割に当たる1220万人が経済発展が著しいインドなど南アジア地域に集中しているとしています。また、中国など東アジア・太平洋地域では、PM2・5の基準値を6倍以上に上る汚染レベルの地域に、430万人の乳児が暮らしているとしています。

 ユニセフはこうした地域の国々に対し、大気汚染濃度が低い時間帯での通学や、適切な空気清浄機能のあるマスクの提供、それに学校や病院の近くに汚染源が存在しないよう都市計画を推進することなど、対策を早急に実行するよう呼び掛けています。

 2017年12月7日(木)

 

■農水省、「ビワの種」を食べないよう注意喚起 天然の有害物質を含み健康被害の恐れ

 農林水産省は、インターネットなどで健康によいと紹介されている「ビワの種」について、天然の有害物質が含まれ、多量に摂取すると健康を害する恐れがあるとして、粉末にするなどして食べないよう注意を呼び掛けています。

 農水省によりますと、果物のビワの種に含まれている「アミグダリン」という物質について、インターネットなどで「ビタミンの一種で健康によい」とか「がんに効果がある」などと紹介されたり、ビワの種を使った料理のレシピが掲載されたりしているということです。

 しかし、農水省は、「アミグダリン」は青酸を含む天然の有害物質で、健康によいという科学的な根拠はなく、多量に摂取した場合、頭痛やめまいなどの中毒症状を起こす恐れがあるとしています。また、実際にビワの種を乾燥して粉末に加工などした食品から有害物質が高い濃度で検出され、回収されたケースが、今年度に4件あったということです。

 海外では、アミグダリンを含む、ビワと同じバラ科植物のアンズの生の種子を体によいとして大量に食べたことによる健康被害や死亡例が、複数報告されているといいます。

 農水省は、ビワの種を粉末にした食品を食べないよう注意を呼び掛けているほか、粉末にせず種のまま料理する場合も注意するよう呼び掛けています。

 一方、熟した果肉については、安全に食べることができるとしています。

 農水省の担当者は、「回収されたビワの種の粉末食品のうち、特に濃度が高いものは、小さじ1杯程度でも健康に影響がないとされる量を超えて青酸を摂取してしまう可能性があった。種を料理した場合も、これまでに健康被害の報告はないが、注意してほしい」と話しています。

 2017年12月7日(木)

 

■横浜市大、iPS細胞からミニ肝臓を大量作製 再生医療実現の足掛かりに

 人のiPS細胞(人工多能性幹細胞)から、肝臓の働きをする肝芽(かんが)を大量に作製する方法を開発したと、横浜市立大学などの研究チームが発表しました。

 肝機能に異常がある患者に、血管から「ミニ肝臓」として肝芽を移植する治療法につなげる足掛かりになる可能性があるといいます。アメリカの科学誌「セルリポーツ」電子版に6日、掲載されました。

 横浜市立大の谷口英樹教授(臓器再生医学)らの研究チームは2013年、すでに肝芽の作製に成功していましたが、iPS細胞以外に、血管の元になる細胞なども加える必要がありました。

 今回は、微細なくぼみをつけた特殊な培養プレートを民間企業のクラレ社と開発し、肝芽を構成する3種類の細胞をiPS細胞のみで作製し、立体的なミニ肝臓の形にすることに成功。直径を従来の10分の1程度の約0・1ミリに小さくして、一度に1枚の培養プレート上に2万個作製できるようになりました。2万個のミニ肝臓は、高品質で均質であり、タンパク質の分泌やアンモニア分解などの機能が従来より高まりました。

 この肝芽を拒絶反応を起きにくくした肝不全のマウスに移植したところ、正常な肝機能が確認されました。

 研究チームは、肝臓の機能異常でアンモニアが分解できない先天性の病気を対象に、今回の方法で培養したミニ肝臓を移植することを目指しています。

 谷口教授は、「今後、細胞のがん化などを調べる品質評価の手法を確立する必要があるが、ミニ肝臓を使う臨床研究に向けて一定のめどがついた。2019年度に国に臨床研究の承認申請をしたい」としています。

 小林英司・慶応大学特任教授(臓器再生医学)は、「iPS細胞単独で肝芽ができたことは大きな進歩だ。移植場所や定着させる方法などを含め人に近い大型動物で確かめる必要がある」と話しています。

 2017年12月7日(木)

 

■インフルエンザウイルスを減少させる肌着を発売 グンゼ

 グンゼ(大阪市北区)は11月下旬から、繊維に付着したインフルエンザウイルスを減少させる肌着「アンチウイルスインナー」を発売しました。インフルエンザの全国的な流行期に入ったことを受け、新しい対策法として提案しています。

 口腔内の治療などに用いられ、歯周病菌やカンジダ菌を除菌し続ける固定化抗菌成分「イータック」を肌着の繊維に浸透させており、インフルエンザウイルス、ノロウイルスなど特定のウイルスを減少させる効果があります。防臭効果や、部屋干し時に雑菌の増殖を防ぐ機能もあります。

 グンゼの広報IR室は、「毎日着る肌着で、満員電車やエレベーターなど人と密着する場面でのウイルス対策を習慣にしてほしい」としています。

 男女ともに半袖と長袖の2種類で、M~LLの3サイズを展開。白、黒、女性物のみピンクがあります。税抜き1404円~1836円。

 販売先は、イトーヨーカドー、セブン&アイのネットショッピングサイト「オムニ7」ほかです。

 2017年12月6日(水)

 

■東京医科歯科大など、非アルコール性脂肪肝炎の経過再現に成功 治療法確立へ前進

 東京医科歯科大学や九州大学、名古屋大学などの研究チームは、短期間で動物に「非アルコール性脂肪肝炎(NASH=ナッシュ)」を発症させる経過再現に成功しました。発症メカニズムが不明で治療も難しいNASHの病態解明を始め、検査や治療法の確立、創薬に向けての一歩として注目されています。

 アルコールを全く飲まない人や、少しだけ飲むという人にもアルコール性肝障害に類似した脂肪性肝障害がみられる非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)が進行し、肝臓に炎症や線維化がみられるNASHは、肥満や糖尿病、メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)などが背景にあります。脂肪肝の約10%がNASHに移行、さらに約10%が肝硬変や肝がんを発症すると考えられています。

 患者数は増加傾向にあり、国内に約100〜200万人の発症者がいると推定されている一方、脂肪肝からNASHへの進行過程は未解明で、確定診断には肝臓の一部を採取する肝生検が必要になるなど体の負担も大きくなります。早期発見の手掛かりとなるバイオマーカーもなく、治療法も確立されていません。

 NASHの病態解明に取り組むのは、九州大・小川佳宏教授(兼東京医科歯科大教授)と名古屋大・菅波孝祥教授らの研究チーム。研究では、約1週間でNASHを発症するマウスの開発に成功しました。その過程で、異物を捕食する白血球の一種である「マクロファージ」が作り出す微小環境が、肝臓の線維化を促進していることがわかりました。

 これまでのマウスでは、NASHの病変を見るためには約20週間が必要でした。今回は、脂肪肝を発症させたマウスに、肝臓の線維化を起こす少量の肝障害性薬剤を投与。すると、約1週間でNASHの病変を再現できたといいます。

 小川教授は、「NASHは5~10年をかけて進行する。その状態を研究で再現することは困難だった。短期間で病変を見ることができ、スピード感のある研究が可能になる」と指摘しています。

 一連の研究から、異物を捕食するマクロファージが作り出す環境が、脂肪肝からNASHに進行する分岐点になっている可能性も浮かび上がりました。肝臓に脂肪が蓄積することで肝細胞が細胞死に陥り、肝臓に常在しているマクロファージが周辺を取り囲みます。そして、死滅した細胞を処理するためにhCLS(王冠様構造)と呼ばれる正常な組織にはない特徴的な微小環境を作り出し、周辺を線維化していきます。

 小川教授は、「線維化は本来は細胞を再生させる修復反応だが、食生活や加齢など、さまざまな要因から線維化が収束しないとNASHにつながっていく」と分析しています。

 脂肪肝は生活習慣の見直しなどによって、健康な状態に戻していくことが可能ですが、NASHの進行が始まると現状では食い止めるのが困難。その分岐点として、hCLS形成という現象が注目されています。

 小川教授は、「NASHへの進行過程はブラックボックスだった。今回の発見は解明に向けた一つの手掛かり。病態を把握することで、早期発見や効果的治療方法の確立、薬の開発につなげていきたい」と話しています。

 研究成果は、国際科学誌「JCIインサイト」オンライン版で発表されています。

 2017年12月5日(火)

 

■厚労省、血液製剤の使用に注意喚起 輸血による女児死亡を受け

 急性白血病の治療で血液製剤の輸血を受けた10歳未満の女児が大腸菌に感染し、その後死亡した問題で、厚生労働省は、女児に使われた血小板濃厚液の使用について、患者に異常が現れた際には輸血を中止し、適切な処置を取ることを医療機関に周知するよう都道府県などに求める通知を出しました。通知は4日付け。

 通知によると、少なくとも輸血開始から約5分間は観察を十分に行い、15分経過した時点で再度観察するよう注意喚起。輸血する場合は、感染症のリスクについて患者や家族に文書で説明し、同意を得ることも求めています。

 女児は急性骨髄性白血病の治療で骨髄移植を受け、約1カ月後の今年8月に血液製剤の1つである血小板濃厚液20 ミリリットルの輸血を受けました。その直後、女児に悪寒などの症状が現れたため、いったん輸血を中断。再開後も嘔吐(おうと)や下痢の症状が出て、輸血を中止しました。数日後にはショック状態となり、約1カ月後に敗血症性ショックによる多臓器不全で死亡しました。

 女児の血液から大腸菌が検出されており、血液製剤に菌が混入していたとみられます。血小板濃厚液は、血液成分から白血球の大部分を除去した血液製剤で、黄色ないし黄褐色の液体。血小板減少を伴う疾患の治療に使われます。

 2017年12月5日(火)

 

■若年成人がん、年98万人が発症し36万人死亡 国際がん研究機関が初の推計

 世界保健機関(WHO)の専門組織、国際がん研究機関(IARC)は、20~39歳の若年成人のがんについて、世界の新規診断(発症)数と死亡数の年間推計を初めてまとめました。2012年には約98万人が発症し、約36万人が死亡。女性が発症の3分の2、死亡も過半数を占めることが、明らかになりました。

 がんの研究は従来、患者数が多い高齢者と、治ればその後の生存期間が長い子供のがんに重点が置かれ、働き盛りである若年成人の実態把握は遅れていました。

 IARCは、今回明らかになった実態に合わせ、効果的な対策を検討すべきだとしています。

 推計には、計27種類のがんについて、世界184カ国のデータを利用。発症数で最も多かったのは、女性の乳がんで約19万1000人。子宮頸(けい)がんの約11万1000人、甲状腺がんの約7万9000人、白血病の約4万9000人が続きました。

 死亡数でも乳がんが約4万9000人と最多で、白血病と肝臓がんの約3万6000人、子宮頸がんの約2万8000人と続きました。乳がんや子宮頸がんの多さを反映し、女性が占める割合は、発症数の65%、死亡数の54%に達していました。

 IARCは若年成人のがんの特徴について、喫煙や飲酒などの生活習慣と関係が深いがんは少ない一方、予防手段が取れるがんがいくつもあると分析。具体的には、子宮頸がんとB型肝炎ウイルスによる肝臓がんは、ワクチンによって大きな削減が期待できるとし、子宮頸がん検診のメリットにも言及しました。

 その上で、こうした実情を一般の人、専門家の双方に広く知らせることが大切だと指摘しました。

 若年成人のがんの傾向は、日本でも変わりません。特に30歳代に限ると、女性のがん患者は乳がんと子宮頸がんが比較的、若い世代に多いのを反映して、男性の2・6倍に上ります。

 乳がんは、女性ホルモンの影響を受けて増殖するため、ピークの40歳代後半にかけて患者数は右肩上がりですが、閉経後は減ります。一方、子宮頚がんは、ほぼ99%がセックスが媒介するヒトパピローマウイルスHPV)の感染が原因で、セックスの低年齢化により、若い世代に広がっています。

 子宮頚がんは、ワクチンの副反応問題がありますが、接種で予防できるのは事実です。乳がんは、毎月の自己触診と定期的に検診を受けていれば早期発見できます。ところが、子宮頚がんも乳がんも、女性のがんの検診は40%前後と受診率が低くくなっています。

 2017年12月5日(火)

 

■関東、東海、近畿の花粉飛散は2月上旬からで、飛散量は少なめ ウェザーニューズ予想 

 気象情報会社のウェザーニューズ(千葉市美浜区)は5日、スギやヒノキの花粉の飛散が来春始まる時期を発表しました。

 飛散の開始時期は全国的に平年並みの見通しですが、飛散量は東日本を中心に少なくなるといいます。

 ウェザーニューズによると来春のスギ・ヒノキ花粉の飛散開始は、関東、東海、近畿の太平洋側で2月上旬、九州や四国、山陽で2月中旬、山陰や北陸、東北南部の太平洋側で2月下旬、東北南部の日本海側で3月上旬、東北北部の日本海側で3月中旬の見込み。

 スギ・ヒノキ花粉の飛散パターンは、今春が 「ダラダラ継続型」だったのに対し、来春は短期集中の「メリハリ型」となる見通しです。そのため、スギ花粉の飛散ピークは、九州や四国、関東など早い所で2月下旬、西・東日本の広範囲で3月上旬、東北では3月中旬から下旬の予想ですが、3月が終わりに近付くと、スギ花粉のピークは越える見込みです。

 今年8月以降、長雨や台風による日照不足が続いた影響で、来春の全国のスギ・ヒノキ花粉飛散量は平年の65%と予想しています。特に、記録的な日照不足となった関東は、東京都で平年の50%、茨城県では平年の28%となる予想です。

 2017年12月5日(火)

 

■夏に多い手足口病が冬も流行し、患者数が過去10年で最多 病原性高く要注意

 子供に多い夏風邪、手足口病の流行が今も続き、1週間当たりの患者数が、この時期としては過去10年で最多となっていることが4日、国立感染症研究所の調べで明らかになりました。脳炎などを起こす病原性が高いウイルスが広がっており、専門家は警戒を呼び掛けています。同じく夏風邪として知られる咽頭(いんとう)結膜熱(プール熱)も最多で、注意が必要です。

 手足口病は、手足や口内などにできる発疹が主な症状で、熱が出ることもあります。ほとんどは後遺症もなく治るものの、まれに髄膜炎や急性脳炎を起こすことがあります。

 現在流行しているのは、夏に主流だったのとは異なるエンテロウイルスA71型と呼ばれるウイルス。このウイルスは中枢神経系での合併症を起こすことがほかのウイルスより多く、過去の流行時には死者も出ています。

 全国の小児科定点医療機関からの報告によると、11月13日から19日の1週間の1医療機関当たりの患者数は1・28人で、これまで最高だった2011年の同時期0・99人を上回りました。都道府県別では、佐賀県(5・14人)が多く、ほかには青森県(2・52人)、宮城県(2・37人)、福井県(2・18人)が目立ちました。エンテロウイルスA71型は、山形県や愛媛県、東京都、大阪府で多く検出されました。

 子供の発熱が2日以上続く、ぐったりするなどの症状があった場合は、注意が必要。国立感染症研究所の藤本嗣人室長は、「保育園など子供の多いところは特に警戒が必要。ノロウイルスと同様に、トイレ後の手洗いなどの予防策を徹底してほしい」としています。

 咽頭結膜熱(プール熱)も最高だった2013年に比べて、約1・6倍の1医療機関当た0・67人の患者が報告されています。都道府県別では、北海道(2・98人)、宮崎県(2・31人)、富山県(2・00人)が多くなりました。最近は冬に流行することが多く、年末にかけてさらに増えるとみられます。

 手足口病と咽頭結膜熱(プール熱)はいずれもウイルスが原因で、せきやくしゃみによる飛沫(ひまつ)感染や、接触感染が主な感染経路。特別な治療法はなく、予防には手洗いが重要。咽頭結膜熱(プール熱)は幼児から学童に多くみられ、夏に学校のプールを介して流行することが多いために、この病名が付けられましたが、最近は年間を通じて流行しています。

 2017年12月4日(月)

 

■脂肪組織由来の幹細胞移植で、脳内出血を治療 会津中央病院が臨床研究

 会津中央病院(福島県会津若松市)脳神経外科、福島県立医科大学(福島市)神経内科学教室と脳神経外科は、脳内出血患者の脳内に自身の皮下脂肪から採取した脂肪組織由来の幹細胞を直接投与し、治療する再生医療の共同研究を行っています。

 幹細胞が脳内出血で壊れた脳細胞に代わって脳に生着し、機能を代償すれば手足のまひの改善などが期待されます。脳内出血による後遺症は社会的課題でもあり、全国初の共同研究の成果に注目が集まっています。

 脳内出血は、主に高血圧が原因で発症する急性脳血管障害。今回の共同研究では、最も発生頻度が高い、被殻(ひかく)という部分の出血と診断された患者を対象としています。

 脳内出血でできた血腫を取り除く手術をした後、その部分にドレーン(管)を入れておき、術後1週間以内に細胞治療を行います。患者自身の腹部や太ももから皮下脂肪を吸引採取し、採取した皮下脂肪を細胞分離装置(遠心分離機)で処理。皮下脂肪組織から細胞溶液を取り出し、培養などの加工を経ず、すぐにドレーンから脳内に注入するといいます。

 皮下脂肪組織はほとんどが脂肪細胞であるものの、その透き間に幹細胞が含まれ、骨髄から採取する場合に比べて、10倍から100倍の幹細胞が含まれるといいます。

 細胞集団には、血管を新たに作る機能を促す、さまざまな成長因子を出す、炎症を調整するという3つの働きがあるとわかっており、脳内に移植した幹細胞がこれらの働きをすることで効果を出すと考えられます。

 脂肪組織由来の幹細胞は、単位細胞当たりの能力が骨髄由来幹細胞より高く、細胞数も元々多いため、培養などで数週間をかけて細胞数を増やす必要がないため、脳内出血の急性期の状態での治療が可能といいます。

 会津中央病院では、すでに1人の患者で臨床研究が行われ、効果を観察しています。現在、副作用はみられず、リハビリも順調に進んでいるといいます。

 臨床研究の責任者の前田佳一郎会津中央病院副院長・脳神経外科部長(51歳)は、「破壊された脳組織は手術では元に戻らない。リハビリだけでは限界があり、しっかりと効果を観察したい」と話しています。

 2017年12月4日(月)

 

■海の酸性化が地球全体で急速に進行し、温暖化に拍車も 気象庁が解析

 大気中の二酸化炭素が海に溶け込むことで起きる「海の酸性化」が地球全体で急速に進んでいることが、気象庁の解析で明らかになりました。

 生態系や地球温暖化に大きな影響を与えるとされ、気象庁は解析結果を公開するとともに、今後も注意深く監視を続けることにしています。

 気象庁などによりますと、海は大気中の二酸化炭素を吸収する性質があり地球温暖化の進行を抑える役割を担ってきました。しかし、長年にわたって二酸化炭素を吸収し蓄積してきたことで、本来は「弱アルカリ性」を示す海水が少しずつ酸性に変化する「海の酸性化」が各地で起きていると指摘されてきました。

 これについて気象庁が1990年から2016年までに世界各地で観測された海面のデータを集めて詳しく解析した結果、海の酸性化が地球全体で急速に進んでいることがわかりました。

 具体的には、値が低くなるほど酸性化していることを示す「pH」の地球全体の平均値が10年当たりで0・018低下していたということで、これは産業革命以降の約250年間の10年当たりの平均値に比べて4・5倍のペースで進行しているということです。

 海の酸性化が進むとサンゴやプランクトンなどの成長が妨げられ、生態系に大きな影響を及ぼす可能性があるほか、海の二酸化炭素を吸収する能力が低下し地球温暖化がさらに進行し、海水温の上昇や海面水位の上昇を引き起こす恐れがあります。

 気象庁は、解析結果をホームページで公開するとともに、今後も注意深く監視を続けることにしています。

 2017年12月4日(月)

 

■後期高齢者医療制度の保険料、高所得者の上限額引き上げへ 厚労省が4年ぶり

 厚生労働省は、75歳以上の人が加入する後期高齢者医療制度の保険料を4年ぶりに見直し、2018年度から、年金の収入が864万円以上の人が1年間に納める保険料の上限額を5万円引き上げて62万円にする方針を固めました。

 厚労省は、高齢化の進展に伴って増え続ける医療費の財源を確保する一環として、75歳以上の人が加入する後期高齢者医療制度について、所得の高い人たちの保険料を4年ぶりに見直すことになりました。

 具体的には、2018年度から、年金の収入が864万円以上の人が1年間に納める保険料の上限額を現行の57万円から5万円引き上げて62万円にする 方針です。

 また、自営業者らが加入する国民健康保険の保険料も2年ぶりに見直し、給与の収入が1078万円以上の単身世帯と、年金の収入が1062万円以上の単身世帯については、2018年度から、年間の保険料の上限額を現行の73万円から4万円引き上げて77万円にする方針です。

 ただ、40歳から64歳までの国民健康保険の加入者が健康保険料とともに納めている介護保険料の上限額は、年間16万円のまま据え置くことにしています。

 医療費の高騰を受け、各市町村は毎年保険料を引き上げています。年間上限額を高く設定することで、高所得者の保険料負担を増やし、中所得層の負担増を一定程度抑える狙いがあります。 

 2017年12月4日(月)

 

■優生保護法による不妊手術の強制、全国初の提訴へ 宮城県の60歳代女性

 1948年から1996年まで施行された「優生保護法」に基づき、知的障害を理由に同意のないまま不妊手術を強制されたのは憲法違反だとして、宮城県内の60歳代の女性が、国に損害賠償や謝罪を求めて2018年1月に仙台地方裁判所に提訴することが3日、明らかになりました。

 旧法に基づく不妊手術は同意がある約8500件を含め、全国で約2万5000件確認されていますが、国への提訴は初めて。

 関係者によると、女性は重い知的障害があり、10歳代で不妊手術を受けました。事前に医師側から手術の説明はなかったといいます。女性は手術後、腹部に痛みを訴えて入院。悪性の卵巣嚢腫(のうしゅ)が見付かり、右卵巣を摘出しました。

 不妊手術が原因で結婚も破談になり、現在も独身で、女性側は「旧法は個人の尊厳や幸福追求の権利を保障する憲法に違反する」と主張する見通し。

 女性の代理人を務める新里宏二弁護士は、「声を上げたくても、上げられない被害者は多い。訴訟を通じ、全国に問題提起したい」と述べました。損害賠償の請求額は、今後決めるといいます。

 女性は2017年6月、義理の姉とともに宮城県に対し、不妊手術について記録した「優生手術台帳」の情報開示を請求。7月に全国で初めて開示され、手術を受けたのが1972年12月で当時15歳だったことや、疾患が「遺伝性の知的障害」だったことが判明しました。

 旧優生保護法は、精神疾患や遺伝性疾患がある男女に対し、医師が必要と判断すれば、都道府県の審査会を経て人工妊娠中絶や、本人の同意がない不妊手術を認めました。1996年に障害者差別に該当する条文が削除され、母体保護法に改定されました。改定までに不妊手術約2万5000件のほか、人工妊娠中絶も約5万9000件に上ります。

 2016年には国連の女性差別撤廃委員会が、被害者が法的救済を受けられるよう日本政府に勧告。日弁連も2017年2月、国に実態調査や謝罪を求める意見書を出しましたが、国は「当時は適法だった」と応じていません。

 2017年12月3日(日)

 

■たばこ税、1本当たり3円増税へ 来年10月から3年間で段階的に

 来年度の税制改正を議論している自民党税制調査会は、「紙巻きたばこ」にかけられている「たばこ税」を来年10月から2021年度まで、段階的に1本当たり3円増税する方針を固めました。

 一般的な「紙巻きたばこ」にかけられている「たばこ税」は現在、一部を除いて、1本当たり12・2円となっていますが、自民党税制調査会は厳しい財政状況を踏まえ、社会保障などに充てる財源を確保するため、引き上げに向けて検討を進めてきました。

 その結果、増税によって消費が減少し、税収が落ち込むことを避けるため、来年10月から2021年度まで、段階的に1本当たり3円増税する方針を固めました。

 たばこ増税は、2010年度に1本3・5円(1箱で70円)引き上げられて以来、8年ぶりとなります。今回は一度に増税せず、来年10月に1本当たり1円増税し、2019年度は消費税率が10 %に引き上げられるため増税を見送り、2020年度と2021年度にそれぞれ1円ずつ増税するとしています。

 2015年度のたばこ税収は約2・2兆円で、1本当たり3円の増税が実現されれば、2000億円から3000億円程度の増収になると見込んでいます。
 
 自民党税制調査会は公明党とも調整を進めた上で、今月14日に取りまとめを予定している税制改正大綱に盛り込みたいとしています。

 自民党税制調査会は、通常のたばこより税金が安く設定されている「加熱式たばこ」も来年10月から増税する方針ですが、健康への悪影響が比較的小さいとして与党内には増税に慎重な声もあり、増税額などの調整を続けます。

 2017年12月3日(日)

 

■京大とアステラス製薬、iPS創薬分野で連携 企業の技術とノウハウを取り込み

 京都大学iPS細胞研究所(山中伸弥所長)はアステラス製薬と創薬分野で提携し、共同研究を開始しました。

 今後5年間のプロジェクトで、アステラス製薬が研究費用と創薬の候補物質を探し出すノウハウを提供。京大が持つiPS細胞を体の細胞に育てる技術などと組み合わせ、共同で効率的な医薬品開発を目指します。京大は製薬大手と組むことで、研究成果の早期実用化に弾みをつけます。

 京大iPS研が創薬研究を強化する目的で設置した創薬技術開発室に、アステラス製薬が研究者数人を派遣。同室にアステラス製薬の技術やノウハウを取り込み、創薬に欠かせない候補物質を探索する拠点として機能させる狙いがあります。京大iPS研の研究者全員が、アステラス製薬の創薬の基盤技術を広く活用できるようになります。

 研究対象は、アステラス製薬と京大iPS研がともに強みを持つ腎臓や免疫、神経、筋肉などとみられます。アステラス製薬が拠出する研究費は、明らかにしていません。

 京大は今年、患者由来のiPS細胞を用いた創薬で医師主導治験を始めるなど実績を積んできました。製薬大手のノウハウを取り込み、成果を量産する体制づくりを急ぎます。

 製薬企業が1つの新薬を開発する費用は1000億円を超え、今後も上昇傾向が続くとされます。動物実験をクリアしても人で効果が確かめられないなどの理由から治験の途中で開発を断念する場合もあり、開発効率を高めるのは喫緊の課題となっています。

 患者由来のiPS細胞などを使って培養皿上で病気を再現すれば、短期間に低コストで薬の候補物質を見付けられると期待されています。

 京大iPS研は2015年には、武田薬品工業と10年で200億円を拠出する共同研究契約を結びました。武田の湘南研究所(神奈川県藤沢市)に京大の主任研究者8人を派遣し、iPS細胞技術の医療応用を目指しています。

 2017年12月3日(日)

 

■他人の間葉系幹細胞を使う再生治療薬、膝の軟骨向け治験開始 ツーセルと中外製薬

 広島大学発の創薬ベンチャー、ツーセル(広島市南区)は、膝の軟骨を再生する細胞治療薬の臨床試験(治験)を始めました。別の人の細胞を使う中外製薬との共同開発で、患者の細胞を採取・培養するよりもコストや時間がかかりません。

 1年間かけて北海道や福岡県、大阪府、千葉県などの病院で70症例を手掛け、2019年中に国内での製造販売の承認を取得し、2020年の発売を目指します。

 新薬の製品化に向けた治験は、大きく3段階に分かれます。今回、ツーセルが行うのは第3相(フェーズ3)の治験で、多数の患者を対象にして、新薬の安全性や効用について既存の治療方法などと比較します。

 11月末に、膝の軟骨を再生する細胞治療薬の第3相治験で、最初の患者の手術が実施されました。今後、提携する各地の病院と連携し、新薬を使った手術と比較対象となる治療法を合わせて70症例実施します。治験の対象となるのは、外傷性軟骨損傷や離断性骨軟骨炎の患者。治療後、1年間の経過観察をして審査します。治験が順調に進めば、最短で2020年ごろに国内での販売にこぎ着けます。

 国内の再生医療製品の実用化例は現在、患者自身の細胞から培養した細胞を使う「自家移植」のものしかありません。ツーセルの再生医療製品は、他人の細胞から培養した間葉系幹細胞(MSC)を使う「他家移植」での実用化を目指しています。あらかじめ培養しておいた他人由来の細胞を使う場合、自家移植と比べ費用や手術にかかる時間も大幅に短縮できます。ツーセルの技術では、1人の細胞から1000人から1万人分のMSCを作製できる可能性があるといいます。

 一方、他人の細胞を移植した場合は、体内から取り除こうとする「拒絶反応」が懸念されます。ツーセルでは、血清を使わずにMSCを培養するなど研究を重ね、拒絶反応が起きにくいMSCを供給する技術を整えています。

 ツーセルは2003年の設立で、今回治験に入った膝の軟骨を再生する細胞治療薬は初の製品化となる可能性があります。製品化となった場合は、量産化のための工場を広島県内に建設する方針。

 MSCを活用した再生医療の裾野拡大も進めます。大塚製薬からも出資を受けており、脳梗塞を含む中枢神経疾患領域の研究開発にも着手しています。

 間葉系幹細胞(MSC)は、人の骨髄や脂肪、滑膜(関節周囲の膜)などに含まれる細胞で、骨、軟骨、脂肪、神経などへ分化する能力を持っていて、最近では神経や腎臓(じんぞう)、膵臓(すいぞう)などにも分化できる能力を持つことがわかってきました。ES細胞(胚性幹細胞)やiPS細胞(人工多能性幹細胞)のようにどんな細胞にも分化するわけではありませんが、細胞のがん化リスクが低いなどのメリットもあります。

 2017年12月3日(日)

 

■内視鏡で撮影した画像からAIがポリープ判別 会津大などが技術を開発

 会津大学(会津若松市)の朱欣上級准教授(40 歳)と福島県立医科大学会津医療センター(同)の冨樫一智教授(57歳)らの研究チームは、大腸内視鏡で撮影した画像から人工知能(AI)を使ってポリープがあるかどうかを判別する高精度な技術を開発しました。

 ポリープに関する症例の統計データと照らし合わせることで、識別の精度を約97%まで高めたといいます。1日に会津大で開かれた記者会見で発表されました。

 研究では、ポリープの形や色などのデータを学習したAIが大腸内を撮影した画像データから、ポリープの有無を瞬時に識別します。世界では現在、同様な仕組みで約90%の確率でポリープの有無を判断する技術は開発されているといいます。

 福島医大の冨樫教授によると、一般的に医師の診察では見落とすポリープが約25%あるといいます。今後は、大腸内視鏡で撮影しながら、その場でポリープの有無をリアルタイムに判断できるように改良したい考え。将来的には見付けたポリープに発がん性のリスクがあるかどうかまで、AIで判別できるような技術の確立を目指します。

 研究成果をまとめた論文は、11月8~10日に台湾で開かれたアメリカ電気電子学会(IEEE)の第8回認識科学技術国際会議で、最高賞の最優秀論文賞を受賞しました。

 会津大の朱上級准教授は「AIが医療技術を進歩させることを証明した」、福島医大の冨樫教授は「新しい技術を医療の現場に生かし、医師の精神的な負担軽減につなげたい」と語りました。

 2017年12月2日(土)

 

■日本初となる便秘のガイドラインがまとまる 「慢性便秘の診断・治療研究会」が作成

 消化器内科医らで組織する「慢性便秘の診断・治療研究会」が、日本初となる医療機関向けの「慢性便秘症診療ガイドライン(指針)」をまとめました。

 日本だけで用いられ、「ガラパゴス化」していた便秘の分類を、国際基準に合わせて変更しました。薬が有効でない便秘や、食物繊維の摂取で悪化する便秘などへの適切な対応が可能になります。

 現状で慢性便秘は、便を送り出す力が低下する「弛緩(しかん)性」と、ストレスが原因の「けいれん性」、肛門や直腸の働きに異常がある「直腸性」に分類されます。便の回数や量が少ないと医師が診ると、弛緩性と診断されることが多く、下剤の必要がない患者にも薬が処方され、副作用が問題になることもありました。

 今回作成されたガイドラインは、排便が少なくなる排便回数減少型と、肛門の動きや、肛門に近い直腸自体に原因がある排便困難型に分類。2つの型はさらに2つのタイプに分かれ、それぞれ治療法が異なります。

 まず、排便回数減少型は、食事の内容や量が便秘の要因になっている大腸通過正常型と、腸管の動きが悪く便が腸内に滞りがちな大腸通過遅延型があります。

 大腸通過正常型の多くは、食物繊維や食事の量を増やすと改善します。反対に大腸通過遅延型は、食物繊維を増やすとさらに便秘が悪化する恐れがあり、治療には排便を促す下剤を使います。

 どちらのタイプか正確に見極めるには、専門の検査が必要で、20個の小さなバリウムの粒を含む検査薬を服用し、5日後に腹部のエックス線検査を受けます。4個以上が大腸に残っていれば大腸通過遅延型、3個以下なら大腸通過正常型と診断します。ただし、この検査は健康保険が使えず、一部の医療機関が研究として、患者から料金を取らずに行っています。

 ガイドライン作成に携わった指扇(さしおうぎ)病院(さいたま市)の排便機能センター長、味村俊樹さんは、「この検査は正確な診断と適切な治療につながり、患者の体への負担も少ない。早急な保険適用を求めたい」と話しています。

 下剤の選択も、新しい指針で大きく変わりました。下剤は現状で、腸管を刺激して動きをよくする刺激性下剤が多く使われています。しかし、腹痛などの副作用が起こりやすく、島根大学第2内科教授の木下芳一さんは「指針では、高齢者に使いやすい非刺激性下剤の推奨度がより高くなっている」と話しています。

 非刺激性下剤は、水分で便を軟らかくして排出を促します。代表的な薬は酸化マグネシウムですが、腎機能低下があるとマグネシウムが十分に排出されず、体に悪影響が出ます。そこで、腎機能が低下した高齢者らには、近年発売されたマグネシウムを含まない非刺激性下剤の使用が推奨されています。

 排便困難型には、手術が必要なタイプがあります。器質性便排出障害は、直腸が女性器の膣(ちつ)側に膨らむ直腸瘤(りゅう)などが原因で、手術で直腸を元に近い形に戻します。

 もう一方のタイプの機能性便排出障害は、排便しようと息むと逆に肛門が締まったり、肛門近くの直腸の感覚が鈍ったりしているのが便秘の元になっています。これには、肛門の力の入り具合をモニターで見ながら締めたり緩めたりするバイオフィードバック療法や、直腸内で膨らませたバルーンを排出する訓練などの治療法が行われます。

 厚生労働省の国民生活基礎調査(2013年)によると、便秘に悩む人は60歳までは男性よりも女性が多いものの、加齢とともに男性の有病率も増加し、80歳以上では男性が女性を上回ります。高齢化が進む中、日本の便秘「患者」は1000万人以上いるとみられています。

 ガイドライン作成に携わった横浜市立大大学院医学研究科・肝胆膵消化器病学教室の中島淳教授は、「『便秘なんてたいしたことない』と思う人も多いが、とんでもない。中でも高齢者の便秘は、命にかかわることが最近の研究でわかってきた。また、ただの便秘と思っていたら、実際は大腸がんなどの病気が隠れていることもある。高齢化の進展で便秘患者はさらに増えるとみられるだけに、診断・治療体制を整える必要があった」と説明しています。

 特に最近、医療機関で問題となっているのが「宿便性腸穿孔(せんこう)」の患者の増加で、これは便秘で硬くなった便が原因で腸に穴が開く病気。かつてはごくまれにしかみられませんでしたが、高齢者の便秘の増加で多くの病院で対応を迫られるようになっているといいます。

 今回作成されたガイドラインは、「便秘」を「本来なら体外に排出すべき糞(ふん)便を、十分量かつ快適に排出できない状態」と定義。その上で、「大腸がんなどの病気による大腸の形態的変化を伴わないもので、排便困難や残便感があって困っている場合治療が必要だ」とし、「週に3回程度の排便でも、腹痛や腹部膨満感、残便感などがなければ問題はない」としています。

 2017年12月2日(土)

 

■千葉県こども病院で心臓手術を受けた新生児が死亡 MRSA検出、院内感染か

 千葉県こども病院(千葉市緑区)は1日、心臓手術を受けた県内の生後1カ月未満の男児がメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)に感染し、死亡したと発表しました。ほかに4人の0歳児からMRSAが検出され、別の1人は感染していました。

 発表によれば、亡くなった男児は先天性の心臓疾患があり、千葉県こども病院で11月上旬に心臓手術を受けた後、17日に発熱し、19日にMRSAが検出されました。血中の酸素が少なくなる低酸素血症を発症し21日に死亡しました。

 ほかの5人はいずれも県内在住で、0歳の男児2人と女児3人。うち生後10カ月の女児1人はMRSAに感染して発熱したものの、抗菌薬を投与して現在は快方に向かい、MRSAが検出された4人に発熱などはないといいます。

 6人は同じ時期に、新生児集中治療室(NICU)や新生児治療室(GCU)、集中治療室(ICU)などで治療を受けていました。亡くなった男児とほかの5人のMRSAの遺伝子型が一致しないケースがあり、感染経路が複数ある可能性があるといいます。

 千葉県こども病院は、病室に出入りした職員約80人の保菌検査を実施。院内感染とみて第三者を含めた調査委員会を設け、感染と死亡の因果関係や感染経路を調べます。

 同院では2013年にも、体重1000グラム未満の男児がMRSAに感染して亡くなっています。

 星岡明・病院長は1日夜、千葉県庁での記者会見で、「亡くなられた患者様とご遺族には深くおわび申し上げるとともに、ご心配をかけている患者様とご家族、県民の皆様におわび申し上げます」と頭を下げました。

 2017年12月2日(土)

 

■シワを改善する化粧品を1割値下げ ポーラ、売り上げ好調で実現

 ポーラ・オルビスホールディングス傘下のポーラ(東京都品川区)は1日、シワ改善効果のある薬用化粧品「リンクルショット メディカル セラム」を2018年1月に1割値下げすると発表しました。

 2017年1月1日の発売以降、好調な販売が続いており、量産効果などで製造コストが低減できたためとしています。

 2018年1月1日より、価格を従来の税別1万5000円から税別1万3500円に引き下げます。ポーラは、「好調な販売が続き、生産効率が飛躍的に向上したため」としています。

 リンクルショットは、厚生労働省の承認を得た医薬部外品。国内で初めて「シワ改善」をはっきりとアピールできる商品として、中高年女性らの支持を集めています。発売前から注目度が高く、単体商品としては異例の売り上げ目標となる年間100億円を掲げてデビューしましたが、反響の高さから5月には125億円に上方修整。9月までの累計販売実績は約80万個、売り上げ約112億円と好調に推移しています。

 ポーラは、約25%は新規購入者で、ほかの商品を併せて購入する比率も60%を超えるなど、ポーラブランドを牽引する商品に成長したリンクルショットの値下げにより、継続的に使っている顧客が購入しやすくすると同時に、新規客の獲得につなげたい考え。2018年も100億円の売り上げを目指すといいます。

 シワ関連化粧品の市場は、資生堂もシワ改善効果がうたえる薬用化粧品「リンクルリフト ディープレチノホワイト4」を2017年11月1日から、税別1万2000円で発売するなど拡大しています。

 2017年12月1日(金)

 

■水ぼうそう、予防接種の定期化で患者が激減 国立感染症研究所の調査

 毎年、9歳以下の子供を中心に100万人が発症し、4000人が入院、20人が亡くなっていた水ぼうそう(水痘)の患者が、大きく減ってきています。国立感染症研究所の調査によると、2016年の患者数は5年前の3分の1以下に減少し、特に1~4歳の子供の患者が減りました。

 2014年10月から定期接種になって、原則無料で受けられるようになった予防ワクチンの効果とみられます。

 国立感染症研究所によると、2011年の全国約3000の小児科にかかった水ぼうそう患者数は23万8645人でした。ワクチンが定期接種となった後の2015年は7万7614人、2016年には6万5353に減少しました。2017年も前年同時期を下回っています。

 2011年に患者全体の7割を占めていた1~4歳の幼児が、2016年には4割まで減っていました。国立感染症研究所感染症疫学センター第三室の多屋馨子室長は、「ワクチンの定期接種化の効果が大きい」と指摘しています。

 ワクチンは1回打つと重症化を、2回打つと発症を防げるとされています。定期接種の対象は1~2歳で、6カ月以上の間隔を空けて2回打つことになっています。国立感染症研究所の2016年度の調査では、2歳児のワクチン接種率(接種1回、回数不明を含む)は87・4%でした。

 水ぼうそうは、水痘帯状疱疹(ほうしん)ウイルスに感染して発症します。感染力が強く空気感染し、全身に発疹ができ、肺炎や脳炎などを起こすことがあります。大人になって感染すると重症化しやすく、死亡することもあります。また、妊婦が出産直前に感染すると、生まれた新生児は重症水ぼうそうになりやすいため、緊急の処置が必要になります。

 多屋室長は、「2歳までにしっかり2回接種してほしい。3歳以上でも接種を受けていない人やかかったことのない人は、費用はかかるが接種を検討してほしい」と話しています。

 2017年12月1日(金)

 

■病院で結核の集団感染、転院後に2人死亡 京都府宇治市の高齢男性患者

 京都府宇治市五ケ庄の宇治おうばく病院で結核の集団感染が発生し、京都府によると、6月から11月28日までに入院患者と職員など計56人の感染が確認され、入院患者16人が発病。うち2人が、ほかの医療機関に転院後に死亡しました。

 宇治おうばく病院と京都府は、患者や職員の健康診断を進め、二次感染の防止に努めます。

 京都府などによると、6月中旬、70歳代の入院患者の男性が結核と診断され、ほかの専門の医療機関に転院後の7月末に死亡。同じ病棟の患者や職員ら約260人を検査したところ、ほかに入院患者32人と職員23人の感染が判明しました。うち患者15人が発病し、80歳代の男性も転院後の10月に死亡しました。

 結核菌の遺伝子検査をしたところ、最初に結核と診断された70歳代の男性から感染が拡大した可能性が高いことが判明したといいます。

 この70歳代の男性は認知症で、京都府は男性が病院内を徘徊(はいかい)したことが感染拡大の原因とみています。  

 また、別の病棟の70歳代男性も、転院後の10月に結核で死亡しましたが、結核菌の遺伝子型がほかの患者らと異なっているため、集団感染には含めていません。

 2017年12月1日(金)

 

■インフルエンザ、全国的な流行期に入る 国立感染症研究所が発表

 インフルエンザの患者が全国的に増えており、国立感染症研究所は1日、インフルエンザが全国的な流行期に入ったと発表しました。昨シーズンより1週間遅い流行期入りで、専門家は手洗いなどの対策の徹底を呼び掛けています。

 国立感染症研究所によりますと、11月20日から26日までの1週間に、全国約5000の定点医療機関から報告されたインフルエンザの患者数は、前の週から約3400人増えて7280人となりました。この結果、1医療機関当たりの患者数は1・47人と、流行開始の目安とされる「1」を超え、国立感染症研究所はインフルエンザが全国的な流行期に入ったと発表しました。

 流行期入りの発表は、1999年の調査開始以来、過去2番目の早さとなった昨シーズンと比べて1週間遅く、例年より「やや早い」ということです。都道府県別では、沖縄県が4・88人と最も多く、次いで長崎県が4・47人、愛媛県が3・39人、宮崎県が3・20人、石川県が3・08人などとなっており、すべての都道府県で前の週より増加しました。1週間に全国で推定約7万人が医療機関を受診しました。

 また、今シーズン、これまでに検出されたウイルスは、8年前に「新型インフルエンザ」として流行したH1N1型ウイルスが全体の6割ほどと最も多くなっていますが、まだどのタイプのウイルスが主流になるかはわからないということです。

 国立感染症研究所の砂川富正室長は、「手洗いの徹底のほか、せきやくしゃみが出る場合にはマスクの着用を心掛けるとともに、65歳以上の高齢者などは特に予防接種を行ってほしい」と話しています。

 2017年12月1日(金)

 

■インフルエンザの流行始まる 東京都が発表

 東京都内でインフルエンザの患者が増えていることから、東京都福祉保健局は30日、「インフルエンザの流行が始まった」と発表し、こまめな手洗いの徹底など予防を呼び掛けています。

 福祉保健局によりますと、11月20日から11月26日までの1週間に都内419の定点医療機関から報告されたインフルエンザの患者は1つの医療機関当たり1・86人になりました。このため、流行開始の目安となる「1」を超えたとして30日、東京都内でインフルエンザの流行が始まったと発表しました。

 東京都内ではすでに、学校や福祉施設などでインフルエンザとみられる集団感染が合わせて95件発生し、58の幼稚園や学校で学級閉鎖などが行われたということです。

 また、1つの医療機関当たりの患者の報告数が最も多かった世田谷区は、流行注意報の基準となる「10」に近い9・64人となっています。

 インフルエンザは例年12月から3月にかけて流行し、これから本格的な流行が予想されることから、東京都福祉保健局はこまめな手洗いの徹底やせきなどの症状がある場合はマスクを着用するなど、予防を呼び掛けています。

 2017年11月30日(木)

 

■血液製剤の輸血で大腸菌に感染か 急性白血病の治療中の女児死亡

 急性白血病の治療で血液製剤の輸血を受けた10歳未満の女児が大腸菌に感染し、その後死亡したことがわかり、日本赤十字社は、血液製剤に大腸菌が混入し感染した可能性が高いとみて、医療機関に注意を呼び掛けることにしています。

 厚生労働省によりますと、白血病の治療で血液製剤の1つ「血小板濃厚液」の輸血を受けた10歳未満の女児が危篤状態に陥り、輸血から約1カ月後に敗血症性ショックによる多臓器不全で死亡しました。

 その後の検査で、女児と血液と保存されていた血液製剤から同一の遺伝子型の大腸菌が検出され、製造元の日本赤十字社は、血液製剤に大腸菌が混入していて女児が感染した可能性が高いとみて29日、厚労省に報告しました。

 厚労省によると、女児は急性骨髄性白血病の治療で骨髄移植を受け、約1カ月後の今年8月に血小板濃厚液20 ミリリットルの輸血を受けました。その直後、女児に悪寒などの症状が現れたため、いったん輸血を中断。再開後も嘔吐(おうと)や下痢の症状が出て、輸血を中止しました。数日後にはショック状態となり、約1カ月後に敗血症性ショックによる多臓器不全で死亡しました。

 血小板濃厚液は、血液成分から白血球の大部分を除去した血液製剤で、黄色ないし黄褐色の液体。血小板減少を伴う疾患の治療に使われます。

 日本赤十字社は、女児に輸血したものと同じ血液の提供者から作った血液製剤をすべて回収し、女児以外には使用例はなかったということです。また、女児が死亡したのは、大腸菌に感染したことが原因だったかどうかはわかっていないということです。女児の年齢や輸血を受けた日時、それに場所は明らかにされていません。

 2007~2016年の10年間で血小板濃厚液での細菌感染は10例報告されていますが、死亡例はありませんでした。過去20年間で、大腸菌に感染したケースもほかに1例しかないといいます。

 日本赤十字社は、「問診を徹底し、細菌感染の可能性がある人から採血しない」「凝固物などが発生し、外観が変化している製剤は輸血しない」などの対策をまとめるとともに、医療関係者に「感染症が広がるリスクは完全には排除できない。症状が現れた場合は投与を中止し、適切な処置を行うこと」と改めてリスクを周知し、注意を呼び掛けることにしています。

 2017年11月30日(木)

 

■「がんに効く」とうたい健康食品販売 無許可販売容疑で社長ら2人逮捕

 「がんに効く」と効能をうたい健康食品を販売したなどとして、警視庁生活環境課は30日までに、医薬品医療機器法違反(無許可販売・貯蔵)の疑いで、健康食品販売会社「東京ビジネスネットワーク」(東京都目黒区)社長鮫嶋純則容疑者(70歳)=目黒区青葉台2丁目=ら男女2人を逮捕しました。

 鮫嶋容疑者は、「健康食品として扱っていただけで、医薬品として扱われるとは知らなかった」と容疑を否認しているといいます。

 逮捕容疑は2015年7月2日~今年5月17日ごろ、医薬品販売業の許可を得ずに、がんに効くなどの効用をうたった健康食品「天彌(あまみ)」など47点を岐阜県関市の40歳代女性ら30~60歳代の男女7人に計約28万円で販売したほか、販売目的で81点を所持した疑い。

 生活環境課によると、天彌は大豆が主成分ですが、ホームページには「腸内のバランスを整え、免疫力を高める。変異したがん細胞に対しては、増殖抑制作用などをもつといわれる」「万病に効く」などと掲載し、ソフトカプセル(120粒、1万2000円)やエキス(50ミリリットル、1万2000円)として販売。女性らは親族のがん治療などのために購入していました。

 鮫嶋容疑者らは2010年~今年6月で、全国の約450人に販売し、計約4800万円を売り上げていました。健康被害は確認されていないといいます。 

 2017年11月30日(木)

 

■ファミリーマート、300店にスポーツジム併設へ 来年2月に24時間営業の1号店

 ファミリーマートは30 日、24時間営業のフィットネス事業に参入すると発表しました。1階がコンビニエンスストア、2階にスポーツジムといった併設店舗を全国展開します。

 2018年2月にも東京都大田区に1号店を出し、5年後をめどに300店に拡大します。コンビニ業界は20カ月連続で既存店の客数の減少が続き、セブン‐イレブン・ジャパンのシェア自転車など異業種サービスで店舗の集客力を底上げする動きが広がってきました。

 スポーツジムはファミマが事業主体となり、加盟店が運営します。12月上旬にも会員の募集を始めます。スマートフォン(スマホ)などから会員登録ができ、入会金なしで月の利用料金は税別7900円。24時間営業で、会員はIC式のバンドで入場します。シャワールームなども設置するので、出社前や帰宅途中などの短時間利用も可能だといいます。

 スポーツジムの従業員として、コンビニの店員とは別に3人程度採用し、夜間早朝はジムを無人運営します。

 都心部では、1階をコンビニ、2階をスポーツジムと一体化した店舗を中心に展開します。駐車場など敷地の広いコンビニでは、別の建屋を設けることも検討します。新店のほか既存店の加盟店からの要望や店舗スペースをみて、併設を進める計画です。スポーツジム設備の導入や改装で、1店当たり数千万円の投資を見込んでいます。

 スポーツジムを併設するコンビニでは、運動前後の利用を見込んでサプリメントやボディーソープなどの日用品の品ぞろえを充実します。コンビニと一体とすることで、夜間に女性が利用しやすくなるとみています。スポーツジムのメインの客層である20~40歳代を店舗に呼び込みたい考え。

 スポーツジム市場は伸びが続いており、2016年度のスポーツジムなどスポーツ施設の売上高は前年度比4・6%増の4040億円でした。特に24時間営業の店舗の人気が高く、仕事帰りや早朝など好きな時間に運動ができる点が支持を広げています。

 コンビニ各社が異業種サービスを導入する狙いは、店舗の集客力の向上にあります。ファミマでは、10月まで7カ月連続で既存店の来店客数が前年を下回っています。

 セブン‐イレブンは、店舗をソフトバンク系のシェア自転車の貸し出しや返却のサービス拠点にし、2918年度末までに1000店に自転車5000台を配置します。

 ファミマも、2019年度末までに駐車場のある店舗を中心に500店でコインランドリーを併設します。スポーツジムを併設する店舗に、コインランドリーを設置することも検討します。

 2017年11月30日(木)

 

■手術前後の写真は説明付きで掲載可、体験談は禁止 厚労省が医療広告の新規制

 医療機関のホームページやインターネット広告で紹介されている美容手術の前と後の写真について、厚生労働省は29日、詳細な説明を付ければ掲載を認めることを決めました。

 10月には原則禁止としましたが、治療をイメージできる長所もあるとして写真だけの掲載は禁止するものの、副作用のリスクや治療内容の詳しい説明を加えれば可能としました。一方で、患者の個人的な治療体験談や手記の掲載は禁じます。

 この日の検討会で、ガイドライン案が示されました。手術前後の写真を並べて差を示す、いわゆる「ビフォーアフター写真」について、がん治療後の乳房再建などを例に、情報提供が必要な側面があるとの意見を踏まえ、方針を変えたといいます。

 治療体験談や手記については、主観に基づき誤解を与える恐れがあるとしました。個人のブログや口コミサイトへの書き込みは、医療機関側から金銭を受けていなければ広告に該当せず可能といいます。

 ガイドライン案では、具体的な禁止広告も例示。「どんな難しい症例でも必ず成功します」「1日ですべての治療が終了します」などは虚偽広告としました。さらに、「著名人も推薦しています」など、ほかの医療機関より著しく優れているとの誤解を与える恐れのある宣伝は、比較優良広告に当たるとし、禁止としました。

 検討会は、ガイドライン案を大筋で了承しました。12月から一般の意見を募り、来年6月に改正医療法や関係省令を施行する見通し。

 医療機関の広告規制を巡っては、今年6月に改正医療法が成立。テレビCMや看板、チラシなどのほかに、新たに医療機関のサイトも規制対象とすることが盛り込まれたため、ガイドラインを策定しました。

 2017年11月30日(木)

 

■がん標準治療の実施率、平均72% 2013年、がん研究センター調査

 国立がん研究センターは29日、全国の病院でがんの標準治療を受けた患者は平均72%だったと発表しました。

 標準治療は、科学的な根拠に基づく現時点で最良とされる治療。2013年にがんと診断された約45万人のうち、胃がんや肺がん、大腸がんなど9項目の治療・検査を調べました。同様の調査結果が初めて公表された2012年分と比べて、4ポイント増えました。

 全国のがん診療連携拠点病院など297施設が協力。がんの種類やステージなどを集めたがん登録と、その患者が受けた治療や検査のデータをもとに分析しました。拠点病院の参加率は68%(前回55%)でした。

 分析した項目ごとの実施率を見ると、肝臓がんの手術前検査は92%、比較的早期の肺がんの手術・放射線療法は89%と高い一方、乳房の切除手術後に再発リスクが高い患者が受ける放射線療法は37%、肺がんの手術後化学療法は44%と低くなりました。

 国立がん研究センター東病院乳腺・腫瘍(しゅよう)内科の向井博文医長は、放射線療法の実施率の低さについて「施設ごとに病理検査の手法が違い、再発の危険性が高い患者でも放射線療法を不要と考える医師がいるためではないか」と話しています。

 この調査では、ほかの病院に移った患者の経過を把握できない点が課題です。向井さんは、乳がんの放射線療法について「ほかの病院での治療を考慮した別の統計を使った調査では、約60%の実施率のものもある」といいます。そのほか、患者側が治療を希望しない、別の病気がある、高齢であるといった理由から、標準治療に至らないケースがあります。これらを踏まえて補正すると、実施率は9項目中6項目で推計90%を超えました。

 調査をまとめた国立がん研究センターの東尚弘・がん登録センター長は、「標準治療をしないという判断が妥当かを各施設や地域で検証してほしい」と指摘し、「調査結果をもとにほかの病院や医師と比べ、自身の診療を振り返る材料にしてほしい」と話しています。

 全国どこでも標準的ながん医療を受けられる「均てん化(平均化)」は、がん対策基本法が掲げる基本的施策の一つ。標準治療の実施率も、均てん化を見る指標の一つとされています。

 国立がん研究センターの若尾文彦・がん対策情報センター長は、「調査にはすべての拠点病院に参加してもらい、標準治療の実施率の格差をなくしたい。調査への参加を拠点病院の指定要件に入れることも必要だろう」と話しています。

 2017年11月29日(水)

 

■血管内を高画質カラー画像で観察可能に パナソニックと大阪大が新型内視鏡を開発

 パナソニック(大阪府門真市)は28日、血管内を高画質のカラー画像で観察できる超小型カメラ付き内視鏡カテーテルを大阪大学などと共同で開発したと発表しました。血管用でカメラを先端に付けたタイプは世界で初めてといいます。

 開発にかかわった大阪大の岡山慶太・特任助教は、「治療が難しかった血管の病気も詳しく調べることができる。血管内治療の発展に貢献したい」と期待しています。

 開発した内視鏡カテーテルは、直径1・8ミリ、長さ5ミリの先端に画像センサーとレンズ、照明用ファイバーを組み込みました。血管内を映し出すモニターなどの装置がついた本体につないで使います。

 これまでの機器の約50倍となる約48万画素相当のカラー画像で、先端から前方を撮影できます。このため、手術の前後に血管内の動脈硬化や血栓の付き方、血管を広げる筒状の医療器具「ステント」をつけた後の状態などを詳しく観察できるようになりました。新薬やステントの開発にも役立ちそうです。

 これまでの機器は、血管断面の白黒画像を映し出すもので、医師が画像から血管内の状態を想像する必要がありました。

 パナソニックは約30年前から、医療機器用カメラを手掛けてきました。大阪大の研究チームとは2013年から、共同で研究開発を始めました。内視鏡向けカメラの技術や精密加工技術を活用し、血管に入れるため、先端を血管内部を傷付けない形に工夫しました。

 医療向けカメラ事業を担当する細矢雅彦さんは、「今後も大学や他の企業と一緒に医療機器に役立つカメラや部品を開発していきたい」と話しています。

 開発した内視鏡カテーテルは、医療機器メーカーの大正医科器械(大阪市大正区)が12月から病院向けに販売する予定。パナソニックは、2021年度には約8000本の出荷を目指します。

 2017年11月29日(水)

 

■がん拠点84病院で保険外の免疫療法を実施 厚労省調査

 がん診療の拠点病院の一部で、効果が確認されておらず保険診療が適用されていない免疫療法が実施されていたことを受けて、厚生労働省が実態調査した結果、全国の84の病院が実施していたことがわかりました。

 厚労省は、がんの拠点病院では効果が確認された標準治療を行うことが原則としていて、免疫療法を行う場合は効果を検証する臨床研究の枠組みで実施すべきだとしていますが、5つの病院はこれに該当せず、全国の拠点病院に対し臨床研究以外では原則、行わないよう求めることにしています。

 がん診療の拠点病院は地域の中核として質の高い診断や治療を行う医療機関として、厚労省が全国434の病院を指定しており、治療の診療報酬が加算されたり、国や都道府県から補助金を受けたりしています。

 この拠点病院の一部で、治療の効果が国によって確認されておらず、保険診療が適用されていない免疫療法が実施されていたことが明らかになり、厚労省が実態調査を行って、29日に開かれた検討会で結果を報告しました。

 報告によりますと、今年9月の時点で全国84の拠点病院が、保険診療が適用されていない免疫療法を自由診療として実施していました。うち79の病院は臨床研究の枠組みで行ったと回答していますが、残りの5つの病院は臨床研究ではなく、患者の依頼を受けたことなどから実施したとしています。

 厚労省は近く、全国の拠点病院に対し、効果を検証する臨床研究以外では原則、免疫療法を行わないよう求めることにしています。

 体の免疫機構を利用してがん細胞を攻撃する免疫療法は、手術や抗がん剤、放射線に続く第4の治療として注目され、研究が活発に行われています。一方で、一部の医療機関では、効果の期待できない免疫療法を研究以外の目的で高額で提供しているとの批判もあります。

 厚生労働省の検討会のメンバーで、国立がん研究センターの若尾文彦医師は、「がん診療の拠点病院では科学的根拠に基づいた医療を提供することが必要で、そうでないものはあくまで研究として行い、有効性が確認できたかどうか、結果をきちんと公表すべきだ。また、臨床研究であっても患者が高額な治療費を支払うケースがあり、それが妥当かどうか議論が必要ではないか」と話しています。

 2017年11月29日(水)

 

■性同一性障害者の適合手術、来年度から保険対象に 従来は治療に100万円以上も

 厚生労働省は、体と心の性が一致しない性同一性障害(GID)の人が体を心の性に合わせる「性別適合手術」を、来年度から公的医療保険の対象に含める方針を固めました。29日に開かれた中央社会保険医療協議会(厚労相の諮問機関)に提案し、大筋で了承されました。

 この手術は今、公的医療保険の対象外のため多額の費用がかかります。それが保険適用されれば、原則3~1割の自己負担額で済むようになります。高額療養費制度によって、自己負担額に上限も設けられます。

 医療機関で性同一性障害の診断を受けた人に対しては、カウンセリングなどの精神療法やホルモン療法のほか、子宮や卵巣、精巣を摘出したり陰茎を切断したりする性別適合手術の治療があります。ただ、精神療法以外は保険が適用されず、治療に100万円以上かかることも多くなっています。

 一方、2004年に施行された性同一性障害特例法では、戸籍の性別変更の条件として、「2人以上の医師による診断」「20歳以上」「婚姻していない」などに加え、性別適合手術を受けることを求めています。このため比較的費用が安い海外に渡航して手術を受ける人も多く、当事者へのアンケートでは国内と国外での手術件数がほぼ同数になっています。

 厚労省は性別適合手術を受けるための医療環境が整ったことや、性的少数者が社会的に認知されてきたことを踏まえて、保険適用の可否について議論が必要と判断していました。保険適用の範囲については、性別変更の条件を踏まえ、体を心の性に近付けるホルモン療法は対象から外す方向で検討します。

 性同一性障害は体と心の性が一致しない障害で、肉体的な性別に不快感を持ち、心の性別で日常生活を送ることを望みます。原因はわかっていません。

 厚労省などによると、性同一性障害で国内の医療機関を受診した人は、2015年末までに延べ約2万2000人。性別変更した人は、2016年末までに約6900人にとどまります。

 2017年11月29日(水)

 

■楽天、がん治療事業に参入へ アメリカの免疫ベンチャー企業に出資

 楽天はがん治療事業に参入します。新しいがん治療法として注目される「光免疫療法」の商業化を進めているアメリカのベンチャー企業、アスピリアン・セラピューティクス(カリフォルニア州)に2割超出資して持ち分法適用会社とします。楽天は電子商取引(EC)会員の健康データと組み合わせた医療サービスを検討し、新たな収益源に育てます。

 三木谷浩史会長兼社長が出資の意向を明らかにしました。光免疫療法は2011年にアメリカ国立衛生研究所(NIH)の小林久隆主任研究員らが開発。これまでのがん治療法と大きく異なる新しい治療法です。

 アメリカではすでに臨床試験(治験)が始まっており、数年後には認可される見通し。楽天は日本でも早期に手続きを進める方針です。

 アスピリアン社は、がん細胞だけが持つタンパク質に結び付く性質がある抗体とセットになる特定の色素を狙って近赤外線を照射し、がん細胞だけを選んで死滅させる光免疫療法を開発しています。近赤外線はテレビのリモコンなどに使われ、人体に当たっても害がないといわれ、正常な細胞には影響しないため副作用も出にくいといいます。

 アスピリアン社に三木谷氏自らが筆頭株主として出資し、取締役会長にも就いています。楽天としても成長が見込めるとみて出資し、日本での事業化を目指します。日本法人のアスピリアンジャパン社は設立済みで、商用化に向け100人規模の体制にします。大学などとの共同研究も検討します。

 楽天の主力であるEC事業は、国内外の競合企業が増え競争が激しくなっています。一方、医療分野は高齢者の急増などで成長が見込めます。主力の「楽天市場」での商品・サービスや個人会員の健康状態といった膨大なデータを組み合わせれば、がん治療などの医療サービスを効率的に提供できるとみています。

 楽天は2017年夏に、遺伝子検査サービスのジェネシスヘルスケア(東京都渋谷区)に約14億円を出資。今年9月には寝具メーカーのエアウィーヴ(東京都中央区)にも出資するなど、医療・健康分野に注力しています。

 2017年11月29日(水)

 

■インフルエンザ患者、全国で4万人に上る 12月上旬までに流行期入りか

 11月19日までの1週間に、全国の医療機関を受診したインフルエンザの患者数は推計4万人に上り、国立感染症研究所は「12月上旬までに全国的な流行期に入る可能性がある」として、手洗いなど予防策の徹底を呼び掛けています。

 国立感染症研究所によりますと、11月13日から19日までの1週間に全国約5000カ所の定点医療機関から報告を受けた1医療機関当たりのインフルエンザの患者の数は0・77人と、全国的な流行期の目安とされる「1」に迫っています。

 これを元に推計されるこの期間の全国のインフルエンザ患者数は4万人に上り、前の週から1万人増えたとみられます。1医療機関当たりの患者数を都道府県別にみますと、最も多いのが沖縄県で4・10人、次いで長崎県が3・31人、宮城県が1・87人、福井県が1・59人などとなっており、36の都道府県で前の週より増えています。

 また、厚生労働省によりますと、休校や学級閉鎖の措置を取った保育所や幼稚園、学校は、この1週間で65施設に上ったということです。

 国立感染症研究所の砂川富正室長は、「例年よりもやや早いペースで広がっていて、今月から来月上旬までに全国的な流行期に入る可能性がある。手洗いなどを徹底するほか、早めにワクチンを接種して十分に対策を取ってほしい」と話しています。

 2017年11月28日(火)

 

■インフルエンザ患者の異常行動404件 厚労省が窓や玄関の施錠呼び掛け

 厚生労働省は27日、子供がインフルエンザにかかると、治療薬の種類や服用の有無にかかわらず突然、走り出してマンションから転落するなどの異常行動を起こす恐れがあるとして、保護者に対して窓や玄関の施錠を徹底するなどの注意点をまとめ、全国の自治体に通知しました。

 厚労省によりますと、インフルエンザの患者が突然、走り出したり暴れたりする異常行動は、昨シーズン54件報告され、2009年以降のおよそ8年間では少なくとも404件に上っています。中でも未成年者の異常行動が目立ち、317件と全体の78%を占めています。

 また死亡した人は、今年2月に東京都品川区で治療薬「リレンザ」を服用後にマンションの4階から転落した男子中学生など、8年間で合わせて8人に上っています。

 異常行動を巡っては、治療薬「タミフル」を服用した子供の事故が続発したため、厚労省は2007年以降、10歳代への投与を原則中止とし、インフルエンザを発症した小児や未成年者は2日間1人にしないよう注意を促してきました。10歳代の患者への昨シーズンの治療薬の処方数は、いずれも推計で「イナビル」138万人、「リレンザ」72万人、「タミフル」10万人、「ラピアクタ」3万人。

 今回の通知は、治療薬の種類に関係なく、また治療薬の服用の有無にかかわらず異常行動がみられ、死亡例の報告も続くため、患者の事故を防ぐための具体的な注意点をまとめました。その中で、マンションやアパートの場合は窓や玄関を施錠し、ベランダに面していない部屋で寝かせる、窓に格子のある部屋で寝かせるよう呼び掛けています。また、一戸建て住宅の場合、できるだけ1階の部屋で療養してほしいと呼び掛けています。

 インフルエンザに詳しい川崎市健康安全研究所の岡部信彦所長は、「患者が窓から飛び出すなどの異常行動は、発熱して24時間から48時間以内に出ることが多い。特に10歳前後の男の子に多く出るという特徴はあるが、誰にでも起きる可能性はある。治療薬を服用したら危なくて、使わなければ大丈夫ということではないので、家族の中でインフルエンザにかかった人が出た場合は、窓の鍵をかけるなど事故を防ぐ対策を必ず取ってほしい」と話しています。

 今シーズンは、インフルエンザワクチンの製造開始が例年よりも遅れ、一部の医療機関からは「必要な数のワクチンが届いていない」という声が上がっています。

 厚労省によりますと、インフルエンザワクチンの製造量は当初、昨シーズンの使用量を100万本余り下回る恐れがありましたが、その後、各メーカーが製造量を増やし、昨シーズンとほぼ同じ量を供給できる見通しがたったということです。

 ただ、一部の地域では、希望者にインフルエンザワクチンが行き届くまでに時間がかかる恐れもあり、厚生労働省は多くの人が早めにワクチンを接種できるよう、13歳以上の人は原則、1回だけの接種にしてほしいと呼び掛けています。

 2017年11月28日(火)

 

■動脈硬化症、善玉コレステロールが悪玉になる仕組みを解明 神戸大学

 心臓病などの予防効果があり「善玉コレステロール」と呼ばれる脂質粒子「高比重リポ蛋白質(HDL)」が、動脈硬化症患者の体内では抗炎症機能が低下し、反対に「悪玉コレステロール」と呼ばれる脂質粒子「低比重リポ蛋白質(LDL)」となるメカニズムを、神戸大学大学院医学研究科疫学分野の篠原正和准教授らの研究チームが明らかにしました。

 動脈硬化症だけでなく、炎症が原因とされる生活習慣病やがんの新たな予防・治療法の開発につながると期待されます。研究成果は、イギリスの科学雑誌「サイエンティフィック・リポート」オンライン版に掲載されました。

 HDLは、体内から余ったコレステロールを肝臓に送り返します。コレステロールが血管の内壁にたまると心筋梗塞や脳卒中の恐れもあるため、HDLは「善玉コレステロール」と呼ばれています。

 研究チームは、健康な人と動脈硬化症患者の血液を比較分析。超遠心分離法でHDLを取り出し、免疫細胞「マクロファージ」に接触させました。

 その結果、健康な人のHDLはマクロファージに取り込まれ、炎症を起こす「炎症性物質」の発生を抑制。血管にコレステロールがたまりやすくする炎症を出にくくしていました。一方、動脈硬化症患者のHDLは、自らが生み出す炎症性物質が悪さをしてマクロファージに取り込まれなくなり、炎症性物質の発生が続いていました。

 篠原准教授は、「悪さをする炎症性物質がHDLから出てくることで、生体を防御する“掃除役”のマクロファージが、炎症を強くしてしまう悪循環」と解説し、「炎症性物質をブロックする薬を応用すれば、HDL本来の抗炎症作用が取り戻せるはず」としています。

 2017年11月28日(火)

 

■今年の梅毒患者、44年ぶりに5000人を超える 厚労省が受診を呼び掛け

 重症化すれば失明など深刻な障害につながる恐れもある性感染症の梅毒に感染した人が、今年1月から11月19日までの累計で5053人となったことが、国立感染症研究所のまとめで明らかになりました。

 国の伝染病統計などによると、感染者数が年間5000人を超えるのは1973年以来44年ぶり。

 感染者数は、東京都で1561人、大阪府で703人、愛知県で310人、神奈川県で286人、福岡県で202人など、都市部で多くなっています。国や専門家らは、検査による早期発見や、不特定多数との性行為を避けるなどの予防を呼び掛けています。

 梅毒の年間の患者数は1945年から1954年には20万人程度とされていましたが、抗生物質による治療の普及とともに減少傾向を示し、1997年には500人程度になりましたが、2010年から再び増加に転じています。年間の患者の報告数は2013年に1228人と1000人を超え、2015年には2690人となり、2016年には42年ぶりに4000人を超えて4559人と増えていました。女性は20歳代に多く、男性は20~40歳代に多くなっており、性産業に従事する若い女性やその客となる男性の間で感染が広がっている可能性が指摘されています。 

 梅毒に感染すると、3週間ほど後に陰部などに潰瘍(かいよう)ができ、1、2カ月後に全身に発疹の症状が現れ、放置すると失明したり、血管が破裂する原因になります。妊婦が感染すると、流産や死産になったり、生まれた子供の目や耳などに重い障害が出たりします。

 厚生労働省は、「早期発見すれば治療と感染拡大防止につなげられる。不特定多数との性行為など、気になる人は早めに受診してほしい」と呼び掛けています。

 2017年11月28日(火)

 

■12月1日に神戸アイセンターが開業 国内初の目の病気の研究、治療専門施設

 iPS細胞(人工多能性幹細胞)を使った網膜の再生医療から視覚障害者のリハビリまで、目の病気に関する取り組みを一体的に行う国内初の眼科施設「神戸アイセンター」が12月1日、神戸市中央区のポートアイランドにオープンします。治療だけでなく、視覚障害者らが体験できる料理コーナーやクライミング用の人工壁を整備。お笑い芸人が暗闇でネタを披露するイベントも企画し、患者を多角的に支援します。

 神戸アイセンターは7階建てで、同市の外郭団体などが昨年から、総工費約40億円をかけて建設。iPS細胞による網膜の難病治療を進める理化学研究所の研究施設と、同市立医療センター中央市民病院の眼科を移転した病院(30床)が入ります。医療用のiPS細胞を培養する施設なども完備し、再生医療の加速を図ります。

 このほか、目が見えなくても作りやすいよう、包丁をなるべく使わないレシピなどを利用者同士で考えて料理できるキッチンや、視野の狭い人が車を運転する際の注意点を学べるドライブシミュレーターなどを備えた「ロービジョンケア施設」を整備しました。

 クライミング用の人工壁(高さ約3・5メートル、幅約12メートル)は、手足をかける壁の突起物(ホールド)が点滅し、視力に不安がある人も光を頼りに壁を登ることができます。監修したのは視覚障害者のクライミングで世界的に活躍する小林幸一郎さん(49歳)。「クライミングは体の動きを全身で感じてイメージできる。上達すれば自信がつき、心身に良い影響がある」と話しています。

 厚生労働省によると、身体障害者手帳を持つ視覚障害者は33万7997人(2016年度現在)。施設設計にかかわった三宅琢・東京大学特任研究員は、「病院や福祉施設などが個別に取り組んでいた研究や治療、患者支援などを、まとめて提供できる画期的な施設。視覚障害者の社会復帰に大きく貢献できる」と期待しています。

 2017年11月27日(月)

 

■三井物産、サプリメントに参入 高齢化や認知症向け製品を中心に

 三井物産がサプリメント事業に参入することになりました。アメリカの中堅サプリメントメーカーで認知症や免疫、がん患者向けなど400種類の製品を手掛けるソーンリサーチ社に出資し、日本でも機能性表示食品などとして販売します。

 アメリカで普及している血液検査などと連動させたサプリメント摂取の個別指導も、検討します。

 ソーンリサーチ社の第三者割当増資を引き受け、約10億円を出資しました。ソーンリサーチ社はミネソタ州にあるアメリカ有数の病院と提携し、医薬品と同等レベルの臨床試験を実施しています。スイスの抗がん剤メーカー、ヘルシン社も出資します。

 三井物産は、日本での需要が見込める認知症や高齢化対策などの製品を中心に、アメリカでのデータを活用しながら、錠剤の形状や分量などを日本向けに改良します。約1年後の発売を目指して、販売・開発面で他企業との連携も目指します。

 ソーンリサーチ社は血液検査を手掛ける子会社を持ち、アメリカでは検査結果を基に医師の紹介やサプリメントの提供といったサービスを構築しています。三井物産は日本でも、体質などに合わせたサプリメントの提供などの可能性を探ります。

 2017年11月27日(月)

 

■原発事故後に甲状腺がん手術、8割が再発や将来に不安 福島県の子供と保護者を調査

 福島第一原発事故の後に甲状腺がんと診断され、手術を受けた福島県の子供やその保護者に支援団体などがアンケート調査を行ったところ、がんの再発や将来などへの不安を抱えている人が8割近くに上りました。支援団体は患者たちの不安の実態が明らかになったとして、十分な支援を国や県に求めることにしています。

 2011年3月11日の東京電力福島第一原子力発電所の事故を受けて、福島県が当時18歳以下だった約38万人を対象に行っている甲状腺検査では、これまでに190人余りが、がんやがんの疑いと診断され、このうち150人余りが甲状腺を切除する手術を受けました。検査を大規模に実施したことで多く見付かっている可能性が高いと指摘される一方、事故との因果関係を巡って専門家の間で議論が続いています。

 支援団体の「3・11甲状腺がん子ども基金」などは、今年8月、甲状腺がんの手術を受けた子供またはその保護者、合わせて67人に郵送でアンケート調査を行い、52人から回答を得ました。

 この中で、「今不安に感じていることがあるか」と尋ねたところ、「ある」という回答が77%に上りました。不安の内容としては、「がんの再発」が23人と最も多く、次いで「がんの転移」と「体調」がそれぞれ9人、「妊娠や出産」と「就職や仕事」がそれぞれ5人など、手術の後も健康面や将来などに、さまざまな不安を抱えていることがわかりました。

 自由記述には、「娘がひどく不安定になり、夜も眠れず学校にゆけず退学した」「甲状腺を全摘した息子は一生薬を服用しなければならず、親としては将来がとても心配」など、切実な声がつづられています。

 また、見付かった甲状腺がんについて、有識者で作る福島県の県民健康調査検討委員会が、現時点で放射線の影響とは考えにくいとする見解を示している一方、アンケート調査ではほぼ半数が「事故の影響はあると思う」と答えており、認識の違いも浮き彫りになりました。

 「3・11甲状腺がん子ども基金」は、これまで知られていなかった実態が明らかになったとして、患者への精神的なサポートや診療などにかかる費用など、国や県に十分な支援を求めることにしています。

 代表理事の崎山比早子さんは、「何が原因であろうと、原発事故がなければこのような状況にはならなかったことは確かで、継続的な患者のケアが必要だ」と話しています。

 甲状腺は首の前側にある成長などにかかわるホルモンを出す臓器で、原発事故で放出された放射性物質ヨウ素131は、甲状腺に蓄積しやすい性質を持っています。

 1986年4月26日に起きたチェルノブイリ原発事故の際、周辺地域で子供たちに甲状腺がんが多く見付かり、のちに被曝(ひばく)が原因と結論付けられたことから、福島第一原発事故の後、福島県は県民健康調査の一環として、子供の甲状腺検査を実施することにしました。

 検査の対象は事故当時、福島県内にいた18歳以下の子供たち約38万人で、事故から最初の3年で1巡目、その後、2年置きに2巡目、3巡目と対象者の検査を繰り返し行っています。

 2017年11月26日(日)

 

■289疾患のiPS細胞を保存し、指定難病の5割以上をカバー 理化学研究所バイオリソースセンター

 茨城県つくば市の理化学研究所バイオリソースセンター(BRC)は、有効な治療法が確立されていない病気に効く薬の開発などに役立てるため、国内の研究機関が患者の皮膚や血液から作製した289種類の病気のiPS細胞(人工多能性幹細胞)の寄託を受け、凍結保存しています。国が難病に指定している疾患の5割以上をカバーしています。

 京都大学の山中伸弥教授が人のiPS細胞の作製を発表してから今月で10年。治療薬の候補となる物質の特定につながる成果も上がり始めており、iPS細胞を用いた創薬研究が今後、加速しそうです。

 患者の組織から作製したiPS細胞を使って培養皿の上で病気を再現すれば、治療につながる物質の特定作業が容易になると考えられています。このため、BRCは国内の研究機関が患者の皮膚や血液から作製したiPS細胞を集めて凍結保存し、別の研究機関に提供して研究に役立ててもらう「疾患特異的iPS細胞バンク」を2010年12月から運営してきました。京都大学iPS細胞研究所など国内の公的研究機関が作製した患者由来のiPS細胞の寄託を受ける仕組みです。

 BRCによると、国内の11機関が昨年度末までに、786人の患者の組織から作製した289種類の病気のiPS細胞を疾患特異的iPS細胞バンクに提供しました。筋委縮性側索硬化症(ALS)やパーキンソン病などの国指定の難病が171種類含まれており、全部で331疾患ある指定難病の半数以上をカバーしています。指定難病以外にも、アルツハイマー病や統合失調症、てんかんなど、治療が難しく患者数が多い疾患もあります。また、疾患特異的iPS細胞バンクを通さずに進む研究もあります。

 BRCはこれまでに国内22機関、海外8機関にiPS細胞を提供しました。神経系の難病の研究に利用されているケースが多いといいます。BRC細胞材料開発室の中村幸夫室長は、「提供は今後増えていくと考えられる。たくさんの研究者に使ってもらい、一つでも多くの難治性疾患の治療に役立ててほしい」と話しています。

 iPS細胞を活用した創薬研究では、京大iPS細胞研究所の戸口田淳也教授らのチームが今年8月、筋肉などに骨ができる難病「進行性骨化性線維異形成症(FOP)」の治療薬の候補を特定したと発表。10月から本格的な臨床試験が始まっています。

 2017年11月26日(日)

 

■若年性認知症、診断から1年以内の大企業社員離職率14% 医療経済研究機構が調査

 若年性認知症と診断された大企業の社員のうち、14%が診断から1年以内に離職したとの調査結果を、医療経済研究機構(東京都港区)の研究チームが医学専門誌で発表しました。

 若年性認知症でない社員と比べ、2倍近い離職率となりました。仕事を継続できないと思い込んだり、職場に居づらくなったりしたことなどが、理由とみられます。働き盛りの年齢に当たるため、配置転換などで患者が仕事を続けられるよう企業などの理解と支援が求められます。

 若年性認知症は65歳未満での発症を指し、国内の患者は約3万7800人と推計されています。仕事の継続が課題とされてきましたが、離職の実態はほとんどわかっていませんでした。

 今回の調査では、大企業の社員が加入する健康保険組合の約300万人のレセプト(診療報酬明細書)データを利用。特に働き盛りの40~59歳について、2013年4月~2015年6月に若年性認知症と診断された社員143人と、そうではない社員で患者と年齢や性別などが適合する715人を2016 年 6 月まで観察して、比較しました。

 その結果、診断から1年以内に離職した社員は14%で、そうでない社員の7・3%の1・9倍に上りました。診断から2年以内に離職した社員は23・5%で、そうでない社員の12・8%の1・8倍でした。

 一方、配偶者など家族に患者がいる社員が1年以内に離職した割合は7・8%で、患者がいない社員の6・5%とほぼ同じでした。

 中小企業での離職率は、もっと高いとみられます。医療経済研究機構の佐方信夫・主任研究員(医療政策学)は、「職場の配置転換で仕事を続けられるケースもある。患者が社会で孤立しないためにも、仕事を続けられるよう企業が最大限支援してほしい」と求めています。

 2017年11月25日(土)

 

■10種類の医療検査画像を解析するAIを開発 東大関連のベンチャー企業

 東京大学に関係するベンチャー企業が、病院で行う複数の検査の画像などを人工知能(AI)で解析して、異常が疑われる部分を見付け出すことができる技術を開発しました。

 AIを使った画像データの解析技術は多くの会社や研究機関が開発を行っていますが、1種類の画像を解析するものがほとんどです。

 東京大学が関係するベンチャー企業「LPixel(エルピクセル)」(東京都文京区)は、CTやMRIのほか、X線や病気の組織の顕微鏡画像など10種類の画像などをAIで解析する技術を開発しました。

 このため患者それぞれの複数の画像を解析することができ、将来的には特に病気の原因がわからない患者が多くの検査を受けた際に、迅速に診断することに役立つということです。

 LPixelは、画像データの種類ごとに臨床研究を行い、順次、医療機器としての申請を行う方針で、数年以内の実用化を目指したいとしています。

 LPixelの島原佑基代表取締役は、「人工知能を使うことで医師の診断を支援し将来的には効率的な診断につながるようにしていきたい」と話しています。

 2017年11月25日(土)

 

■厚労省、重症患者向け急性期病床を削減へ 医療費の削減を目指す

 厚生労働省は24日の中央社会保険医療協議会(厚労相の諮問機関)で、患者7人に対し看護師1人など、手厚く看護師を配置している重症入院患者向けの急性期病床の仕組みについて、来年度からの診療報酬で見直す方針を示しました。看護師の配置基準だけでなく、手術の件数や重症患者の割合など、提供する医療の実績に応じて支払う形を加味します。

 患者7人に対し看護師1人を配置する「7対1病床」は、昼夜を問わず忙しい急性期病棟の看護師を増やし、看護の質を高める目的で2006年度に創設されましたが、患者1人につき病院が受け取れる「入院基本料」が高く設定されているため多くの病院が採り入れ、看護師の争奪戦が繰り広げられました。

 7対1病床は、2006年の約4万5000床から2017年には約35万床に急増。医療費が膨らんだため、厚労省は2014年度の診療報酬改定で算定基準を厳しくし、当時36万床あった病床を2年で約9万床減らす目標を立てましたがうまくいきませんでした。

 厚労省が今回考えたのは、7対1病床の次に診療報酬が高く、救急や重症者にも対応できる患者10人に対し看護師1人を配置する「10対1病床」への転換を促す仕組み。7対1病床の入院基本料は今、患者1人につき1日1万5910円。10対1病床は各種の加算を上積みしても1万3870円で、転換した場合の病院側の減収が大きくなります。例えば200床の病院が7対1病床から10対1病床に転換した場合、年間約1億2000万円の収入減となります。

 このため二つの基準は残しつつ、10対1病床と7対1病床との診療報酬差を縮められる仕組みを導入します。10対1病床の入院基本料をベースに、手術の実績や実際に受け入れている重症患者の割合などに応じて診療報酬を上乗せします。 

 また、7対1病床など急性期病床に軽症患者が入院している場合は、診療報酬を下げて、患者の自己負担を減らす考えです。厚労省は、高齢化で急性疾患の患者が減り、慢性疾患を持った患者が増えて病床の稼働率が低下傾向にあるため、医療ニーズに合うように医療費のかさむ急性期病床を削減し、リハビリ向けの回復期病床や在宅医療の受け皿を増やす方針を決めており、これに沿った変更となります。

 2017年11月25日(土)

 

■ハウス食品がレトルトカレー15万個余を回収 ポリエチレン片が混入した可能性

 大手食品メーカーのハウス食品は、全国で販売している3種類のレトルトカレーに、ポリエチレンの破片が混入している恐れがあるとして、合わせて15万個余りを回収すると発表しました。

 回収の対象となるのは、「3歳からの野菜カレー」のうち、賞味期限が再来年2月から5月までの商品、「カリー厨房 粗挽きスパイスのビーフカレー 辛口」は、賞味期限が再来年8月17日と25日の商品、「シェフラベル ビーフカレー 中辛(4個パック)」は、賞味期限が再来年2月25日の商品です。

 これらの商品は全国で販売され、合わせて15万1780個に上るということですが、今のところ、健康被害の情報はないということです。

 ハウス食品によりますと、22日、子会社で製造元の「サンハウス食品」の従業員がタマネギの量を計っていたところ、幅7ミリほどの白いポリエチレンの破片3つが混入しているのを見付けたため、同じタマネギを使っている3種類の商品の回収を決めたということです。ポリエチレンの破片は、タマネギを納入した業者が加工工場でスライスする際に洗浄用のホースの先端が破損し、混入したということです。

 これまでにポリエチレンの破片が混入した商品は見付かっていないものの、念のため同じラインで製造していた商品を回収します。ポリエチレンの破片に毒性はありませんが、口の中を傷付けたり、のどに引っ掛かったりする可能性があります。

 商品を購入した人は、愛知県江南市にある製造元の「サンハウス食品」に着払いで送れば、代金を返却するということです。問い合わせは平日午前9時~午後5時、ハウス食品お客様相談センター(0120・50・2461)。25日、26日も受け付けます。

 2017年11月25日(土)

 

■慈恵会医大、ラットで尿生成機能を持つ腎臓を再生 人への臨床応用に前進

 胎児の体内で行われている臓器の発生プログラムを活用し、腎臓を再生させることにラットで初めて成功したと、東京慈恵会医科大学の研究チームがイギリスの科学誌「ネイチャー・コミュニケーションズ」に発表しました。尿を生成するなど腎臓の機能を完全に備えているといい、人への臨床応用に向けて大きく前進しそうです。

 研究チームは、遺伝子を改変したマウスの胎児を作製。胎児の腎臓の「芽」に、ラットの腎臓になる前駆細胞を注入し、同じ遺伝情報を持った別のラットに芽ごと移植しました。その後、特殊な薬をラットに投与すると、芽に元々含まれていたマウスの前駆細胞が死滅。芽に周囲の組織から血管が入り込み、4週間後にはラットの細胞だけでできた腎臓が再生しました。腎臓内で尿が作られることも確認しました。

 研究チームは、再生した尿管を使って尿を体外に排出させる技術をラットで開発しています。さらに、人のiPS細胞(人工多能性幹細胞)から腎臓の前駆細胞を作製する技術も完成させています。マウスの代わりにブタの胎児の腎臓の芽を使い、ラットの代わりに腎不全患者のiPS細胞から作製した腎臓の前駆細胞を使えば、機能をすべて備えた人の腎臓を再生させることが可能になるといいます。

 研究チームの横尾隆・慈恵会医大教授(腎臓・高血圧内科)は、「再生した後は免疫抑制剤も要らなくなる。異種移植を利用した腎臓の再生医療実現に向け、人での研究を進めたい」と話しています。

 国内では人工透析を受ける腎臓病患者は約33万人に上り、医療費も年1兆円を超えています。腎移植の希望がかなわない患者が多く、腎臓再生に期待がかかります。

 一方、人への臨床応用には安全性の確保に加え、倫理面の議論も必要。具体的には、動物が持つ病気がうつらないか、動物の細胞が残らないかなど慎重な検討が欠かせません。

 人の臓器の再生に動物を利用することへの抵抗感も根強く、日本再生医療学会の八代嘉美幹事は「研究内容を公開し、国民との対話を深める必要がある」と指摘しています。

 2017年11月24日(金)

 

■インフルエンザで飛び降りなど異常行動54件 厚労省が事故防止対策を通知へ

 インフルエンザ治療薬を使った患者の異常行動が昨シーズン、未成年者を中心に計54件報告されていたことがわかりました。薬と異常行動との因果関係はわかっていないといいますが、厚生労働省はドアや窓を施錠するなどの具体的な事故防止対策を促す通知を都道府県などに出すことを決めました。

 インフルエンザ患者の異常行動は、治療薬「タミフル」服用後の患者の飛び降りが報告され、その後、別の治療薬や薬を服用していなくても「興奮して窓を開けて外に飛び出す」「意味のわからないことをいう」などの異常行動が起きることがわかっています。昨シーズンには、飛び降りや転落につながる異常行動が「タミフル」で38件、「リレンザ」11件、「イナビル」5件の計54件ありました。うち、リレンザとイナビルを使った10歳代の2人は、マンションから転落するなどして死亡しました。

 厚労省は毎年、インフルエンザにかかった10歳代以下の子供が自宅で療養する際は、発症から2日間は一人にしないよう保護者に呼び掛けるなどの予防策を自治体などを通じて通知。しかし、異常行動の報告が後を絶たないことから、より具体的な対策を呼び掛けるべきだとの意見が専門家から出ていました。

 新しい通知では、「家の窓や玄関にかぎをかける」「一戸建ての場合はなるべく1階に寝かせる」「高層階では窓に補助鍵を付ける」などの具体的な文言で事故防止対策を促す予定といいます。

 2017年11月24日(金)

 

■人の受精卵のゲノム編集、実施前に研究機関と国の審査を 生命倫理専門調査会が報告書

 内閣府の生命倫理専門調査会の作業部会は21日、遺伝子を精度よく改変できる「ゲノム編集」技術を人の受精卵に使う研究について、生殖補助医療を目的とする研究を指針で規制し、実施前に研究機関の倫理審査委員会と国による2段階の審査を受けるべきだとする報告書を大筋で取りまとめました。

 人の受精卵の遺伝子を改変する研究は、生命の始まりの解明などが期待される一方、子供が生まれた場合に改変の影響が世代を超えて受け継がれたり、改変で予期しない副作用が起こる恐れがあったり、親の好みの能力や容姿を持った「デザイナーベビー」の誕生につながる可能性があったりします。生殖補助医療大国と呼ばれる日本は600以上のクリニックで受精卵が作られており、臨床研究名目での乱用の恐れが指摘されていました。

 報告書では、指針の対象となる技術としてゲノム編集や、細胞の機能を補うためのミトコンドリアの移植など5項目を挙げ、研究目的でも改変した受精卵を人や動物の胎内に移植することは「現時点では容認できない」としました。研究内容の審査は、各研究機関内の倫理審査委員会と、国や学会による2段階で実施します。研究に利用できるのは不妊治療で余った受精卵に限り、新たに作ることは禁止します。

 ゲノム編集を使った受精卵改変研究を巡っては、生命倫理専門調査会が昨春に中間報告をまとめ、遺伝情報を操作した受精卵を母体に戻すことは認めない見解を示す一方で、基礎的な研究として受精卵の遺伝情報を書き換えること自体については、人の遺伝子の働きを解明したり、難病の治療などに役立つ可能性があったりするため、認められる場合があるとする見解を示していました。

 今回の生命倫理専門調査会の作業部会では、研究者が違反しないよう厳格な法規制を求める意見もありましたが、難病やがん予防目的の研究も含めた包括的な規制は今後の課題とし、年内に最終的な報告書をまとめ、文部科学省や厚生労働省が具体的な指針を検討します。

 2017年11月23日(木)

 

■無痛分娩、重大事故につながりかねない事例126件 産婦人科医会が調査

 麻酔を使って陣痛を和らげる無痛分娩(ぶんべん)を行った際に、妊婦が大量に出血するなどの重大な事故につながりかねない事例が昨年、全国の56の医療機関で126件起きたことが厚生労働省の研究班で報告され、研究班では無痛分娩特有のリスクについてさらに分析することにしています。

 無痛分娩は出産の際に、主に脊髄(せきずい)の外側にある硬膜外腔(がいくう)に麻酔薬を注入する「硬膜外麻酔」という方法で、陣痛を和らげます。疲労が少なく産後の回復が早いとされる一方、麻酔の副作用で重い合併症が起こるケースがまれにあり、妊婦が死亡するなどの重大な事故が起きたことから、厚労省の研究班が対策を協議しています。

 22日の会合では、日本産婦人科医会の調査結果が報告され、無痛分娩を実施していると回答した455の医療機関のうち、2016年1年間に重大な事故につながりかねない事例は56の施設で合わせて126件起きたことがわかりました。

 このうち、妊婦が大量に出血したりショック状態になったりしたことがあるとの回答が29施設と最も多く、新生児を母体から引き出す措置を行う際に母親がけがをしたとの回答が20施設、新生児がけがをしたとの回答が10施設ありました。

 研究班によりますと、この中には通常の出産でも起こることが含まれているため、さらに追加の調査を行って無痛分娩特有のリスクを分析することにしています。

 また、調査の中で、規模の小さい診療所では、無痛分娩の麻酔薬を助産師が注入している施設がおよそ3割あることもわかり、研究班の委員からは「麻酔の注入は原則として医師が実施すべきだ」などの意見が出されていました。

 研究班の代表の海野信也北里大学病院長は、「安全に無痛分娩を行う際の条件を今年度中にまとめたい」と話しています。

 2017年11月22日(水)

 

■循環器学会、心臓病患者1万人の治療実態を調査 情報のデータベース化へ

 心不全や心筋梗塞(こうそく)など全国的なデータが乏しい心臓病の治療実態を把握するため、日本循環器学会は患者約1万人の調査を始めました。

 病気の原因や合併症、治療内容と効果などの情報を集めたデータベースを来年度中に作成し、医師が治療法を選ぶ際の参考にしてもらう考えです。

 心臓病の死亡者数は2016年に19万3000人で、がんの37万4000人に次いで多くなっています。患者数も2014年で約173万人に上ります。しかし、がんのように全患者を登録する制度はなく、国の統計はすべて推計。日本循環器学会の指針通りに治療が行われているか、治療法による効果の違いはどれくらいかなどのデータもありません。

 調査は、同学会の専門医がいる全国約200の医療機関から入院患者約1万人を無作為に選び、2013~2017年の5年間に投与された薬などの治療内容、その後の症状の変化などの情報を集めます。一部の患者は今後2年間の経過も調べ、有効な治療法を探る手掛かりとします。

 日本循環器学会代表理事で東京大学教授の小室一成(いっせい)さんは、「将来的には心臓病の全患者登録を目指したい。まず1万人の詳細なデータを把握し、治療法の改善につなげていきたい」と話しています。

 2017年11月22日(水)

 

■iPS細胞で3種混合の認知症薬候補を発見 京大など、原因物質の減少を確認

 アルツハイマー型認知症の患者から作ったiPS細胞(人工多能性幹細胞)を使い、発症の原因物質を減らす薬の組み合わせを見付けたと、京都大学などの研究チームが発表しました。

 既存の3種類の薬を同時に使うと効果があることが、細胞の実験で確認できたといいます。iPS細胞を創薬に応用する新たな成果で、アメリカの科学誌「セル・リポーツ」電子版に22日、論文が掲載されました。

 認知症の5割以上を占め、国内の患者数は250万人を超えると推定されているアルツハイマー型認知症は、脳の神経細胞で「アミロイドβ(ベータ)」というタンパク質が作られ、過剰にたまることが主な原因で、脳が委縮し、日時や場所がわからなくなるなどの障害が起きるとされます。アミロイドβは発症の10年以上前からたまり、脳の神経細胞などが死滅します。すでに症状を緩和する薬はあるものの、アミロイドβそのものを減らす薬は研究段階で、実用化されていません。

 京大iPS細胞研究所の井上治久教授(幹細胞医学)らは、患者の皮膚からiPS細胞を作って増やし、脳の神経細胞に変化させて培養。既存の1258種類の薬を振りかけ、アミロイドβを減らす薬を探しました。

 その結果、パーキンソン病などの薬「ブロモクリプチン」、ぜんそくの薬「クロモリン」、てんかんの薬「トピラマート」の3種類の薬を同時に加えると、最も効果がありました。患者9人のiPS細胞から作った脳の神経細胞で試し、48時間後に調べると、アミロイドβの量が3~4割減少。8割減った神経細胞もありました。

 井上教授は、「患者での有効性や投与量はまだわからないが、アミロイドβの量が4割減れば、発症や症状の進行が止まると期待できる。臨床試験につなげたい」と話しています。

 福永浩司・東北大学教授(神経薬理学)は、「すでに使われている薬で効果を見付けた点に意義がある。長期間、安全に投与できる薬の量を調べる必要がある」とコメントしています。

 2017年11月22日(水)

 

■後方から乗り込める車椅子型ロボットを発売 ロボット開発のテムザック

 ロボットメーカーのテムザック(福岡県宗像市)は20日、車椅子(いす)の代わりに利用することを想定した車椅子型ロボット「RODEM(ロデム)」の販売受付を開始しました。利用者はスマートフォン(スマホ)でベッドのそばに呼び寄せられ、自力で簡単に乗り降りできるようにして入院患者や介助者のストレスを軽減します。

 一般的な車椅子は前から椅子に座る形式ですが、ロデムは立ち上がったり、体の向きを変えたりすることなく後ろから乗り込む形式で、電動で走行することが特徴。テムザックの高本陽一社長は、「まずは車椅子としての利用を想定しているが、将来的には若者も利用できるような小型の乗り物を作りたい」と話しています。

 ロデムは椅子が上下や前後に動き、乗り移る際にはベッドや椅子の高さにロデムの椅子の高さを調整して、車輪を固定した上で後方から腕の力で乗り込めます。ロデムで移動する際には前傾姿勢となり、テーブルや洗面台の高さにロデム椅子の高さを調整することで、介助者なしで食事や手洗、仕事などが可能です。

 操作はロデムの「ジョイスティック」と呼ぶ操縦かんか、近距離無線通信「ブルートゥース」で接続したスマートフォンで実施します。ロデム本体の大きさは、一般的な車椅子より幅は数ミリ大きく、長さは少し短い程度で、車椅子が通れる場所であれば利用可能。重さは約110キロで、可搬重量は150キロ。1回8時間の充電により、最高時速6キロで移動でき、15キロメートル以上走行できます。現状では室内での利用を想定し、自宅の庭などの屋外でも使える仕様になっています。

 価格は税別98万円。レンタルでの利用の場合は月額約5万円程度で、介護保険を適用した場合は約5000円~1万円を想定しています。ブルーメタリック、ピンクメタリック、ダークグレーメタリック、シルバー、ホワイトの5色用意しています。

 商社のCBC(東京都中央区)が総代理店となって、20日から販売受付を開始しましたが、最初の出荷は2018年5月ころを見込んでいます。

 高本社長は、「ロデムは発表から約8年経ってやっと発売にたどり着いた。AI(人工知能)や自動運転の研究は常に続けている。ロデムを発展させて、最終的には街の中心部などで利用するような、小型の乗り物に進化させていきたい」と説明しています。

 2017年11月22日(水)

 

■東京大、データヘルス・ポータルサイトを12月から運用 6773万人分のデータを統合

 東京大学が12月から、国内6773万人分の健康診断、医療費、生活習慣などのデータを集計した分析・支援ウェブサイトを運用することになりました。1399の健康保険組合(2946万人)と、中小企業の全国健康保険協会(協会けんぽ、3827万人)が持つデータを統合することで、業界別・地域別の健康状態の傾向や、どの健保組合がどれぐらい医療費を使い、どんな対策を取っているかを比較検討できます。

 病気の予防や医療費適正化のための政策立案への活用が期待されます。専門家によると、世界で初めての試み。

 この「データヘルス・ポータルサイト」は、厚生労働省の補助金で東京大政策ビジョン研究センターの「データヘルス研究ユニット」(仮称)が構築しました。がんや高血圧症など疾病別の医療費、年次や年齢による医療費の変化、血糖値やメタボなど健診の結果分析・実施率、運動や喫煙など生活習慣の調査結果といったデータが一つのサイトに統合されて一目でわかるようになり、男女別、年齢別、企業規模別、地域別など、特性に応じた逐次分析が可能になります。集合データを集計する仕組みのため、個々の加入者の個人情報が特定される恐れはなく、個人情報保護法制上の問題はありません。

 国は2015年度から健康保険組合などすべての医療保険者に、健診データやレセプト(診療報酬明細書)の分析をまとめた3年間の「データヘルス計画」を作るよう指示しています。しかし、計画書は主に紙で集められ、様式もバラバラで分析・比較が困難なため、対策も打ち出しにくいという問題がありました。データヘルス・ポータルサイトは、これを電子化し統合します。

 それぞれの医療保険者がデータをサイト上に入力し、来年度から3年間の健康対策(保健事業)の内容や数値目標を複数の選択肢から選ぶと、データヘルス計画ができ上がる仕組み。1880ある市町村国民健康保険(3294万人、国保組合含む)も加入を検討しています。将来は、属性を入力するだけで傾向と対策が出るよう進化させます。企業側からも職員の体調不良による仕事の能率低下などの情報を集め、関連を分析します。

 データヘルス研究ユニットの代表の古井祐司自治医科大学客員教授は、「健康に関する科学的証拠に基づく政策立案ができる。大きな社会実験になる」と話しています。

 2017年11月21日(火)

 

■妻6割「夫から介護されたくない」、夫7割「妻から介護されたい」 介護の日に合わせ全国調査

 有料老人ホームや高齢者住宅を全国で運営する「オリックス・リビング」(東京都港区)が、11月11日の「介護の日」に合わせ全国の中高年を対象に行った調査で、男性の7割は妻に介護されたいのに、女性の6割は夫に介護されたくないという男女間の介護に対する意識の違いが浮き彫りになりました。

 この介護に関する意識調査は、介護への理解を深めようと、オリックス・リビングが年に1回実施し、今年で10回目。40歳代以上の男女1238人が回答しました。

 配偶者の介護についての質問には、男性の67・9%が現状は難しい場合も含め、配偶者に介護されたい気持ちがあるとする一方で、女性の61・1%はやむを得ない場合を含め、配偶者に介護されたいとは思わないと回答。男性の82・9%が配偶者を介護したいとしましたが、女性は64・2%にとどまり、男女間で差が出ました。

 約半数の人は介護経験がない中、「家族の介護に不安を感じるか」と質問したところ、「不安を感じる」または「やや不安を感じる」と答えた人が84・3%に上りました。不安を感じる内容について、男性で最も多かったのが「費用負担」で62・7%。女性では「精神的な負担」とする回答が74・0%で最多でした。

 こうした男女差について、オリックス・リビングの広報担当者は「自身や配偶者の親を含めて、女性のほうが介護に直面することが多いぶん、介護の大変さを理解しており、家族に迷惑をかけたくないと考える人が多いのではないか」と分析しています。

 一方、介護のために退職する「介護離職」が社会問題になっている折、仕事と介護の両立が「できると思う」と答えたのはわずか8・6%で、「できないと思う」が約6割を占め、現実の厳しさをうかがわせました。介護休業制度を利用する際の障害として、収入減や休暇取得後の復帰のしづらさなどを挙げた人が目立ちました。

 また、外国人が介護業界で働くことへの意識を今回初めて質問したところ、「人材不足が解消されてよい」と半数以上が前向きにとらえていることがわかりました。

 2017年11月20日(月)

 

■野菜摂取1日133グラム、350グラム以上の目標達成は5% カゴメが調査

 食品メーカーのカゴメ(名古屋市中区)が20~60歳代の男女から食卓画像を収集し、野菜の摂取量を推計したところ、1日平均の野菜摂取量はわずか133グラムで、国が掲げる目標の半分にも届きませんでした。特に20~34歳の若い世代や、会社員やパートなどで働いている人の食生活の乱れが顕著でした。

 国が掲げる「21世紀における国民健康づくり運動(健康日本21)」では、成人の1日の野菜摂取量目標は350グラム以上。しかし、厚生労働省が発表した「2015年国民健康・栄養調査」では平均293・6グラムとなっており、目標を下回っています。

 カゴメは今年3月、20~69歳の男女410人から、3食3日間分の食卓画像3690枚を収集。管理栄養士3人が画像を見て、目測で野菜摂取量を推計しました。

 その結果、1日の平均野菜摂取量は133グラム。国の目標通り350グラム以上を摂取している人は、わずか5%しかいませんでした。年代別では、20~34歳が99グラム、35~49歳が122グラム、50~69歳は164グラムで、若い世代ほど摂取量が少なくなりました。

 職業別では、会社員やパート、アルバイトなど働いている人ほど野菜不足が目立ち、逆に専業主婦や無職の人は野菜摂取量が多くなっています。

 傾向を調べるため、平均に近い140グラムより多く摂取している人と摂取していない人に分け、朝食、昼食、夕食の別でみたところ、140グラム未満の人の食事はいずれも、1食当たりの皿数が1皿未満。140グラム以上の人は、生と加熱の野菜が半々など、調理方法がバラエティーに富んでいることがわかりました。

 1日の野菜摂取量が40グラム程度だった20~34歳の単身女性の食事例は、朝食がパンと飲み物、昼食がスープとサンドイッチ、夕食がフライ定食で、夕食でしか野菜を食べていませんでした。

 一方、1日210グラム食べていた例では、単身女性と同様、朝食と昼食ではほとんど野菜を食べていませんでしたが、夕食では200グラムの野菜を摂取。1日340グラムを摂取していた例では、一汁三菜の朝食に、サラダ付きワンプレートランチ、コロッケ定食と、食事ごとに100グラムから120グラムの野菜を食べていました。

 料理写真を分析した管理栄養士で、料理研究家でもある関口絢子さんは、「忙しい世代ほど食事にかける時間が少なく、野菜の摂取が難しい」と指摘。「野菜は洗浄、カット、調理が必要で、慣れていないと時間がかかる。ソースや缶詰といった野菜の加工品を上手に取り入れ、外食時には色の濃い野菜を選ぶなどの工夫を。さらに、難消化性デキストリンなど、食物繊維の代わりになる加工食品で補給するのも一案」とコメントしています。

 関口さんが、野菜不足に陥りやすいタイプを以下の4つに分類しました。

【帳尻合わせタイプ】夕食くらいはバランスよく食べようと野菜料理を意識するものの、1日の総量では350グラムに満たずに不足します。

【気まぐれ摂取タイプ】数日間のうち、意識的に野菜が豊富に並ぶ食事もあるものの、習慣化されていないため、不足するパターン。レタス、キュウリ、トマトのように品目が偏っていて、栄養素的にも足りていないケースが多くなっています。

【慢性不足タイプ】野菜摂取に対する意識が低く、付け合わせのキャベツの千切りや少量の野菜で食べた気になっているタイプ。野菜の適正量を自覚していないために不足状態から抜け出すことができません。

【糖質過多&インスタント食品タイプ】健康的な食事に対する意識が低く、菓子パンやインスタント食品などが食事のメイン。調理せずに簡易的に空腹を満たそうとすることから、炭水化物が中心で、カロリー過多でも栄養不足に陥ります。

 2017年11月20日(月)

 

■食物アレルギーの治療や検査で9人が重い症状を発症 小児アレルギー学会が調査

 アレルギーの専門の医師でつくる日本小児アレルギー学会は、全国の医療機関を対象に調査を行い、食物アレルギーの治療や検査に関連して、少なくとも9人が自力での呼吸が難しくなるなどの重い症状を起こしていたことが明らかになりました。

 この調査は、横浜市にある神奈川県立こども医療センターが行った食物アレルギーの臨床研究に参加した牛乳アレルギーの子供が、ぜんそくの発作の2日後、一時、心肺停止になるなどの重いアレルギー症状を発症していたことが先週明らかになったことなどから、日本小児アレルギー学会が緊急に行い、19日、宇都宮市で開かれた学会のシンポジウムで公表しました。

 調査は食物アレルギーの診療を行っている全国344の医療機関を対象に行い、83%に当たる287の施設から回答を得ました。

 その結果、食物アレルギーの患者が自力での呼吸が難しくなるなど重い症状が出た事例は、これまでに16施設で18件あったということです。この中では、アレルギーの原因となる食べ物を間違って口にしてしまう「誤食」が8人と最も多く、この中の2人は記憶障害などの後遺症が出たということです。

 また、治療や検査に関連して起きた事例についても初めて調査をしたところ、食べ物を口にしてアレルギーの診断を行う検査では5人、アレルギーの原因となる食べ物を少しずつ食べる「経口免疫療法」と呼ばれる治療では4人に重い症状が出たことがわかりました。この中には、気道に管を挿入するなどの緊急の対応を行ったケースもあったということです。

 日本小児アレルギー学会では追加の調査を行い、原因や対応策などを探りたいとしています。

 今回の調査結果で最も多かったのは、「誤食」でした。食物アレルギーの問題に詳しい国立病院機構相模原病院の海老澤元宏医師によりますと、自宅ではきちんと症状が出ないように食事ができていても、外食や宿泊先で提供された食事のほか、学校や保育園などでの給食で誤食が多く起きているということです。

 そのため、外食産業や教育現場に携わる人たちのさらなる知識の向上が必要になるほか、患者自身は緊急時の治療薬を常に携帯するよう改めて意識し、おう吐が続いたり、息がしにくかったりするなどの症状が一つでもあれば、注射薬を使うようにしてほしいということです。

 また、医師の指導のもとで行う治療や検査に関連して重いアレルギー症状が出ていることについては、風邪やぜんそくなど体調の悪化によって、通常よりも少ない量の摂取で強いアレルギー症状が出てしまうことがあるとしています。

 どのような状況や量で起きるかは患者それぞれによって違うということで、治療の継続や摂取できる量を自己判断することなく、少しでも悩んだら診療を受けている専門医に聞くことが重要だとしています。

 2017年11月19日(日)

 

■介護施設などの高齢入所者の救命、本人望めば蘇生中止へ 消防庁委託の研究班が提言

 増加する高齢者の救急搬送を受け、総務省消防庁から委託された研究班が、持病や老衰で終末期にある介護施設などの高齢入所者が心肺停止した場合の対応手順案をまとめました。本人の事前意思と医師の指示がセットで確認できた場合は蘇生処置の中止を認めており、研究班は高齢者の蘇生処置を巡る法整備をにらんだ議論の高まりを期待しています。

 近年は介護施設からの救急搬送依頼が増えていますが、救急隊員が駆け付けると、家族や職員など周囲の人から「本人は蘇生を望んでいない」と伝えられるなど現場対応が課題となっています。

 研究班は、北九州市立八幡病院の伊藤重彦・救命救急センター長を代表に、高齢化率の高い同市と山口県下関市の医師や介護施設代表者、弁護士ら約30人で構成。昨年夏から審議を重ねてきました。

 手順案では、持病や老衰による心肺停止が前提。救急車の要請、救急搬送などの段階に分け、入所者の蘇生を希望しない意思がわかる事前指示書と、担当医の蘇生中止指示を合わせて確認できた段階で、救急隊員は心臓マッサージなどの心肺蘇生を中止できるとしました。

 担当医は直近の入所者の状態などから、医学的見地で蘇生中止を判断。施設に常駐していないため、中止指示は職員らが電話などで確認します。

 また、医師の到着が心肺停止の数時間から半日後であっても「到着まで蘇生は行わず、救急車も呼ばずに待つように」などの指示が事前に医師から施設に出ている場合は、指示に従ってもいいと提言。指示の効力は「心肺停止前の2、3日以内」との考えを示しました。

 伊藤センター長は、「尊厳を保ちながら死にたいという本人の気持ちが置き去りにされていないか。本人、家族、医療関係者ら誰もが満足のいく終末期医療を考える必要がある」と話しています。

 研究班はすでに、全国の救命救急センターなど計約500カ所に手順案を配布。消防庁の担当者は、「国民的なコンセンサスが必要だが、研究成果は今後の政策の参考にしたい」としています。

 2017年11月19日(日)

 

■心身の活力が低下するフレイル、自立度低下リスクが約2・4倍 健康長寿医療センターが追跡調査

 東京都健康長寿医療センターの研究チームは、65歳以上の高齢者を平均7年追跡した結果、調査開始時に心身の活力や機能が低下した「フレイル」状態だった人が、要介護認定を受けるなど自立度に影響が出る危険性は、そうではない人よりも2・4倍高くなるとの分析結果をまとめ、「日本公衆衛生雑誌10月号」に発表しました。

 一方、国が推進する特定健康診査(特定健診、メタボ健診)で調べるメタボリック症候群(メタボリックシンドローム)の有無は、自立度の低下と関係ないことがわかったとしています。

 同じ集団を対象にフレイルとメタボリック症候群の影響を調べた調査は、初めてです。調査は、群馬県草津町で2002~2011年に高齢者健康診査を受診した65歳以上のうち、要介護認定を受けていない1453人を2014年まで平均7年、最大12年追跡しました。

 追跡終了時に要介護認定を受けたり亡くなったりした人は、計494人。健康診査時にフレイルと判定された161人を分析すると、フレイルではないと判定された人と比べ、要介護認定を受けたり死亡したりする危険性が約2・4倍高くなりました。また、74歳までの前期高齢者と75歳以上の後期高齢者に分けた場合、前期高齢者では約3・4倍高くなり、後期高齢者では約1・7倍で、特に前期高齢者で差がありました。

 メタボリック症候群は、自立度の低下との関連が認められませんでした。フレイルとメタボリック症候群の両方に当たる人もいましたが、統計学的に分析するとフレイルだけが要介護認定や死亡の発生率に影響を与えていました。

 メタボリック症候群を調べる特定健康診査は現在40~74歳を対象としており、75歳以上は腹囲測定を除く後期高齢者健康診査となります。

 研究チームの北村明彦・東京都健康長寿医療センター研究部長は、「若いころと同様に『太りたくない』と話す高齢者も多いが、健康寿命を延ばすには、高齢者は肥満対策よりも必要な栄養を取り、筋力を付けてフレイルを予防することが大切だ。前期高齢者の健診内容も検討すべきだろう」と話しています。

 フレイルは、加齢とともに筋力などの運動機能や日常の活動量、認知機能などが低下した状態。「虚弱」や「老衰」「脆弱」などを意味する英語「フレイルティー(frailty)」が語源。早く対処すれば、進行を防いだり健康な状態に戻したりすることが可能なことから、日本老年医学会が2014年5月に新しい呼び方として提唱しました。国内の75歳以上の1~2割がフレイルとの推計もあります。

 2017年11月19日(日)

 

■O157食中毒、15都県の91人が同一の遺伝子型 厚労省が調査結果を公表

 埼玉、群馬両県の総菜販売店で購入した総菜を食べた人らが腸管出血性大腸菌O157に相次ぎ感染した問題で、7~9月に発症した少なくとも15都県の91人が同じ遺伝子型の菌に感染していたことが17日、厚生労働省の調査で明らかになりました。共通の感染源があったと推測されるものの、調査開始の遅れもあり、特定できませんでした。

 この日に開かれた厚労省の有識者会議で、調査結果が報告されました。同じ遺伝子型の菌が確認されたのは東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県、長野県、群馬県、栃木県、福島県、三重県、愛知県、兵庫県、富山県、岐阜県、滋賀県、宮城県の計15都県。これまで公表してきた基準よりも詳細に分析しました。

 同じ遺伝子型の菌による食中毒は計4件、8月中旬に発生して41人が感染し、3歳の女児が死亡しました。それ以前の7月下旬から8月上旬に最初の感染のピークがあり、東京都や神奈川県など関東を中心とした11都県の50人が同じ遺伝子型に感染していました。

 しかし、集団発生でなかったため原因の特定が難しく、食品を介しての感染である食中毒と確認された例はなかったため、厚労省が広域発生として把握できず、総菜販売店の食中毒が起きるまで注意喚起や全国調査ができませんでした。患者の食事や行動の共通点を調べましたが、見付かりませんでした。

 今回のことを踏まえ、厚労省は全国の遺伝子型の検査を「MLVA(ムルバ)法」と呼ばれる方法に統一します。また、こうした広域発生を早期に把握し、感染拡大や食中毒を防げるよう、今後、地方ブロックごとに連携協議会を設置し、情報の管理手法を統一するなど、厚労省や自治体間の情報共有の迅速化を図ります。

 2017年11月19日(日)

 

■人類遺伝学会、ゲノム検査の予期せぬ変異判明で提言 患者への説明手順策定を

 難病やがんの診療で広がりつつある患者のゲノム(全遺伝情報)を網羅的に調べる検査について、日本人類遺伝学会は18日、予期しない重い病気にかかわる遺伝子変異が見付かった際の対応などをまとめた医療機関向けの提言を発表しました。

 結果を知らせるかどうか検査前に患者に説明して同意を得ることや、十分な遺伝カウンセリング体制が必須としました。

 患者の遺伝情報を幅広く調べるゲノム検査は、遺伝子の異常で起きる難病や原因不明の病気の診断などで急速に広がっています。約10年前に、患者の遺伝子配列を高速で解析できる「次世代シーケンサー」と呼ばれる機器を用いた検査が登場し、人に約2万3000ある全遺伝子を10万円ほどで調べられるようになりました。従来は患者の症状から狙いを付けた遺伝子を個別に調べる手法しかなかったものの、最初に全遺伝子を調べて病気の原因遺伝子を探れるようになりました。

 遺伝子の変異が原因のがんでも、特定の変異に効く抗がん剤が相次いで開発され、今後、治療法を選ぶためにゲノム検査が拡大するとみられています。

 一方、ゲノム検査では発症していない別の病気にかかわる遺伝子変異も見付かる可能性があります。治療、予防できるものもあれば、発症すると治療法がなかったり、発症するか不確実だったりするものもあり、患者に何をどう伝えるか混乱が予想されています。

 このため遺伝医学の専門家らでつくる日本人類遺伝学会は18日、神戸市内で会見して提言を発表。検査目的とは関係ない結果を知らせるかどうかを事前に患者に説明して同意を得ることや、知らせる場合は確認検査の仕方や健康管理の対応策を検討し、専門家による患者の遺伝カウンセリングを行い、説明することなどを求めました。

 同学会理事の高田史男・北里大学教授は、「ゲノム検査は一般的な医療にも必ず広がる。今から問題点を十分に議論しておくことが重要だ」と話しています。

 2017年11月19日(日)

 

■難病患者の体内でゲノム編集し、遺伝子を修復 アメリカで世界初の臨床試験

 遺伝子を精度よく改変できるゲノム編集技術を用い、難病患者の体内で遺伝子を直接修復して治療する世界初の臨床試験を開始したと、アメリカのサンガモ・セラピューティクス社が15日、発表しました。これまで、血液中の免疫細胞を体外に取り出し、その遺伝子をゲノム編集で修復する臨床研究は例がありますが、体内では初めて。

 同社によると、カリフォルニア州の病院で始まった臨床試験は、代謝物質「ムコ多糖」の分解に不可欠な酵素が肝臓で作られないために、骨や関節の変形、呼吸困難、臓器肥大などの症状が出る先天性難病「ムコ多糖症2型」が対象。ゲノム編集するための正常な遺伝子を組み込んだ「運び屋」のウイルスを、点滴で静脈から投与し患者の体内に送り込みます。ウイルスが肝臓の細胞にたどり着くと、まずゲノム編集の道具となる2種類のタンパク質が作られ、それらが肝細胞の遺伝子を修復して、必要な酵素が作られるようにします。

 今回のゲノム編集技術は、現在広く使われている「クリスパー・キャス9」より前に開発された「ジンクフィンガー・ヌクレアーゼ」。目的の遺伝子を探し出すタンパク質と、その部分を切断するタンパク質がセットになっています。

 難病患者は44歳の男性で、13日に投与を受けました。担当医は、「肝細胞の1%で遺伝子が修復されれば治療は成功する」とみているといいます。患者計9人に投与する予定で、同社は「血友病B」と「ムコ多糖症1型」でも体内でのゲノム編集による臨床試験の準備を進めています。いずれも肝細胞がターゲットといいます。

 ムコ多糖症では、ムコ多糖が分解されずにたまっていくことで、さまざまな臓器や組織に障害が起きます。分解酵素を定期的に点滴で投与する治療がありますが、効果は限定的といいます。  

 iPS細胞(人工多能性幹細胞)とゲノム編集を組み合わせ、遺伝性難病の治療法を研究する京都大学の堀田秋津講師は、「ゲノム編集による治療はこれまで、血液細胞など体外に取り出せるもので研究が進んでいた。今回は体外に取り出せない臓器を対象としており、新たな疾患の治療法確立に向けた第一歩だ。一方、ゲノム編集するタンパク質が狙っていない遺伝子を変えるリスクも考えられ、安全性を見極める必要がある」と話しています。

 2017年11月19日(日)

 

■後発医薬品の普及薬は大幅に値下げ、新薬は効果に応じ加算 厚労省の薬価制度改革案

 膨張する医療費の抑制に向け、厚生労働省が年末にまとめる薬価制度改革の原案が16日、判明しました。特許が切れ、安価な後発医薬品(ジェネリック医薬品)が普及している薬を大幅に値下げすることや、画期的な新薬への加算を厳格化することが柱。厚労省は来年4月の診療報酬改定に改革の内容を反映させる方針です。

 薬価は、公的医療保険で使われる薬の公定価格。高齢化に加えて近年、高額な新薬が次々に登場し、薬剤費が医療費を押し上げていることが問題になっています。

 厚労省は、2020年9月までに後発医薬品の使用割合を80%とする目標を掲げています。改革案では、特許切れにより後発医薬品が登場して10年が経過した薬について、後発医薬品の使用割合が80%以上の場合、価格を大幅に引き下げた上で、6年かけて段階的に後発医薬品と同じ価格にします。80%未満の場合でも、10年間で後発医薬品の1・5倍まで下げます。

 新薬については、新薬開発を評価する「新薬創出等加算」の要件を見直し、革新的な新薬を開発した「実績」ベースとします。製薬会社が世界に先駆けた新薬の開発に取り組める意欲を促す狙い。

 現在の加算は、厚労省の開発要請に応じた企業の新薬などが対象で、事実上、すべての新薬が加算されているとの指摘があります。見直し案は、治療効果の高い革新的な薬を開発したり、海外で使える薬が国内で使えない「ドラッグラグ」対策に取り組んだりした実績に基づき評価し、達成度などに応じ3段階に分け加算率を決めます。

 一方、実績評価の難しい医療系ベンチャー企業は、革新的な新薬創出への期待があるため、実績とは別に加算します。

 このほか、高額な新薬の薬価に費用対効果を反映させる仕組みを導入するとともに、高額ながん治療薬「オプジーボ」のように効能が追加され売り上げが増えた薬の価格については、引き下げ判断が年4回できるようにする方針も盛り込みました。来年度から順次、導入します。

 2017年11月17日(金)

 

■薬局の調剤報酬引き下げへ 厚労省、見直し要求受け

 予算の無駄遣いを有識者らが関係省庁にただす政府の「行政事業レビュー」公開検証の3日目が、16日に東京都内で開かれました。

 薬剤師に調剤などの対価として公的医療保険で支払われる診療報酬について、有識者は「患者目線の報酬設定を目指すべきだ」として、厚生労働省に引き下げの検討を求めました。

 患者に薬を処方する方法には、病院内で渡す「院内処方」と、病院外にある薬局で渡す「院外処方」がありますが、厚労省は医療機関から薬局の独立性を担保するため院外処方を推進。院外処方には薬剤師による調剤などの技術料が加算され、処方に関する報酬が院内処方の約3倍になるとされます。薬剤師の専門知識に対する対価との位置付けですが、患者負担も増えるため、有識者は「費用対効果の面で、それほどの価値があるのか」と疑問を呈し、見直しを要求しました。

 これに対し、厚労省の担当者は、「薬剤師と相談することで患者が正しく薬を服用できる」「薬剤師が安価な後発医薬品(ジェネリック)を勧め、薬代を院内処方より抑えている」と主張しました。

 調剤への報酬は財政を圧迫しているとの指摘を踏まえ、厚労省は来年4月の診療報酬改定で引き下げを実施する方針で、今後、政府・与党内の調整が本格化します。 

 2017年11月17日(金)

 

■紹介状なしに外来受診時の追加負担、対象病院を拡大へ 400床以上の大病院も5000円

 厚生労働省は16日までに、紹介状なしで大病院を外来受診した患者に5000円以上の追加負担を求める制度について、対象病院を広げる方針を固めました。

 現在の対象は500床以上(262病院)の大学病院などですが、400床以上の病院に範囲を拡大します。新たに約150病院増える見通し。5000円以上の追加負担額は変更しません。早ければ2018年度から実施します。

 紹介状なしで外来受診した患者に、1~3割の通常の窓口負担とは別に追加負担を求める制度は2016年度にスタートし、大病院への初診時に5000円以上、再診時に2500円以上の徴収を義務付けています。

 大病院は重症者向けの専門医療に専念し、診療所や中小病院で軽症者を診るという形で役割分担を明確にしています。

 ただ、追加負担の金額については、社会保障審議会(厚労相の諮問機関)で「引き上げによる効果が不明」との意見が相次いだため、現行の5000円以上に据え置くことにしました。また、救急患者らには引き続き追加負担を求めません。

 2017年11月17日(金)

 

■エボラ出血熱、膵臓損傷で重症化 東大など、患者の血液分析で解明

 致死率が5割前後とされるエボラ出血熱の重症化の仕組みの一部が、東京大学医科学研究所の河岡義裕教授やアメリカのウィスコンシン大学などの国際研究チームによる患者の血液の分析で明らかになりました。死亡する患者と回復する患者を見分けるのに役立ちそうなタンパク質なども見付かりました。

 16日付のアメリカの科学誌「セル・ホスト・アンド・マイクローブ」に、論文を発表しました。

 エボラ出血熱は突然の発熱や筋肉痛などの症状から始まり、嘔吐(おうと)や下痢、肝機能障害などを起こします。2013~16年に西アフリカで大流行し、患者は2万8000人を超え、約1万1000人が死亡しました。

 研究チームは2015年2月~8月にかけ、最もエボラウイルスへの感染者が多かったシエラレオネで、患者20人と感染していない成人10人の血液を分析しました。患者のうち9人は死亡し、11人は生き残りました。

 死亡した患者は回復した患者に比べ、血液中に漏れ出した膵臓(すいぞう)の消化酵素の量が約30倍多いことがわかりました。膵臓の酵素は通常は必要以上に膵臓の外に出ませんが、重症化した患者はエボラウイルスによって膵臓が損傷を受けて消化酵素が漏れ出し、全身の臓器を傷付けたり出血を起こしたりしたと考えられるといいます。

 また、死亡した患者は回復した患者に比べ、症状が出始めてから亡くなるまで、血液中の「ビタミンD結合タンパク質」とアミノ酸「L―スレオニン」の量が2分の1~4分の1しかありませんでした。

 河岡教授は、「重症化しそうな患者を見分けるのに役立つ可能性がある」と話しています。

 2017年11月17日(金)

 

■認知行動療法のスマホアプリ、うつ病患者4割で改善効果 京大などが開発

 うつ病などに対する「認知行動療法」に患者が一人で取り組めるスマートフォン版アプリを、京都大学などの研究チームが開発しました。薬が十分効かない患者の約4割で、改善効果が出たといいます。

 認知行動療法は、患者自身が物の見方や問題に対処する選択肢を増やし、ストレスの低減を目指す治療法で、本来は精神科医らが患者と面接して行います。うつ病や社交不安症などに効果があるものの、時間や手間がかかることから実施する医療機関は多くはありません。

 そこで京大などの研究チームは、患者が一人で認知行動療法を受けられるアプリを考案しました。

 患者は「予定の来客がなかった」「何もうまくいかないと思った」など、出来事とその時感じた不安などをアプリに記録し、自分の思考パターンを知ります。また、「鼻歌を歌う」「お風呂に入る」といった気分転換の方法を選択肢から選び、実際に試して自分に合うものを実感します。

 研究チームは、抗うつ薬の効果が不十分だった患者約160人を対象に、薬を変更するだけのグループと、薬を変更した上でアプリも使用するグループに分け、うつ病の重症度の変化を比較しました。

 8週間のプログラム終了後、重症度の点数が半分以下に改善した人は、アプリも用いたグループが42%で、薬変更のみのグループの21%の2倍に上りました。症状がなくなった割合も、アプリ使用では31%で、薬変更のみの18%より高くなりました。

 研究をまとめた古川壽亮(としあき)・京都大教授(精神医学)は、「今後は実際の医療現場で活用してもらえるよう、方策を考えたい」と話しています。

 2017年11月17日(金)

 

■加熱式たばこ、相次ぐ乳幼児の誤飲事故 国民生活センターが注意呼び掛け

 臭いや煙が少ないため人気となっている加熱式たばこを0~1歳の乳幼児が誤飲する事故が昨年4月以降に少なくとも10件発生したとして、国民生活センターは16日、子供の手の届く場所に保管や廃棄をしないよう注意を呼び掛けました。

 国民生活センターが大手3社の12製品を調査した結果、いずれも使用前の1本分には中毒や嘔吐を引き起こす量のニコチンが含まれていました。従来の紙巻きたばこに比べて長さが短い製品が多く、乳幼児が誤飲しやすい形状になっているといいます。

 6月には、1歳の女児が父親の加熱式たばこを口に入れました。急いで取り出したものの、1時間後にぐったりしたため救急搬送されました。昨年9月には、1歳の男児が加熱式たばこを2センチほど食べているのが見付かり、直後に吐きました。

 日本中毒情報センターは、「誤飲したら、すぐに受診してほしい。ニコチンが溶け出しやすくなるので、水や牛乳は飲ませないで」と求めています。

 2017年11月17日(金)

 

■受動喫煙防止の改正案、喫煙可は150平方メートル以下に 厚労省新案、面積規制を大幅緩和

 厚生労働省が受動喫煙対策を強化する健康増進法の改正について、焦点となっている飲食店は店舗面積150平方メートル以下なら喫煙を認める新たな案を検討していることが明らかになりました。

 当初の30平方メートル以下のバーやスナックに限る案から面積規制を大幅に緩める一方、新規出店や大手資本の店は認めないなどの要件も付ける方向。与党と調整した上で、2020年東京五輪・パラリンピックまでの全面施行を目指し来年の通常国会に法案提出する構えです。

 新たな案では、飲食店内は原則禁煙(喫煙専用室設置は可)ですが、店舗面積150平方メートル(客席面積100平方メートル)以下なら店側の判断で喫煙可とすることを認めます。ただし、施行時点で開業し、大手チェーン店などではない中小企業や個人事業主が運営する店に限るなど、一定の歯止めをかけます。面積による線引きは「臨時の措置」と位置付けますが、見直しの時期は明示しません。

 また、未成年の受動喫煙被害を防ぐため、20歳未満の客や従業員の喫煙スペースへの立ち入りを禁じます。人気が高まっている「加熱式たばこ」については、一定の健康被害が確認できるとして、当面の間は喫煙スペースでのみ認めます。

 厚労省は病院や学校などの禁煙を2019年9月開幕のラグビー・ワールドカップまでに先行実施し、2020年4月に飲食店を含めた全面施行を目指します。世界保健機関(WHO)の受動喫煙対策の格付けが最低ランクの4番目から3番目に上がるのは、当初案と変わりません。

 政府・与党は今年の通常国会で法改正する構えでしたが、自民党が「飲食店が廃業に追い込まれかねない」などと厚労省案に反発。店舗面積150平方メートル以下なら喫煙できるとの対案をまとめ、厚労省は法案提出を断念しました。

 法案作成を主導した塩崎恭久氏に代わって加藤勝信厚労相が就任したことで自民党案に近付きましたが、党内には規制賛成派と緩和派がおり、調整が難航する可能性もあります。受動喫煙対策の推進を求める医師会や患者団体などからも、反発が出そうです。

 2017年11月17日(金)

 

■薬害肝炎、給付金請求5年間延長へ 自民部会、法改正を了承

 ウイルスに汚染された血液製剤が原因でC型肝炎になった患者らを対象にした薬害肝炎救済法について、自民党の厚生労働部会は15日、来年1月に迫る被害者給付金の請求期限を2023年1月まで5年間延長する法改正を了承しました。

 公明党も了承済みで、両党は野党にも賛同を呼び掛けます。開会中の特別国会で成立する見通し。

 2008年1月に議員立法で成立・施行された薬害肝炎救済法は、止血に使われていた「フィブリノゲン」などの血液製剤投与でC型肝炎に感染した被害者に対し、国と製薬会社が症状に応じて1200万~4000万円の給付金を支払う内容。カルテや医師の証言などで投与経験を証明できれば、裁判所への提訴・和解を経て救済されます。

 しかし、当時の診療記録が破棄されていたり、患者が血液製剤投与を知らされていなかったりするケースも多く、推計感染者数1万人のうち給付金が支払われたのは今年10月末時点で2294人にとどまっています。

 薬害肝炎救済法の請求期限は来年1月15日で、薬害肝炎訴訟の原告・弁護団などが「救済されていない人がまだたくさんいる」として、延長を求めています。

 2017年11月17日(金)

 

■ユズ種子油にメタボリック症候群の抑制効果 高知大と馬路村農協がマウス実験で確認

 ユズの効用を共同研究している高知大学医学部の溝渕俊二教授と高知県安芸郡馬路(うまじ)村の馬路村農業協同組合(東谷望史組合長)は14日、非加熱のユズ種子油にメタボリック症候群を抑えるホルモン「アディポネクチン」の分泌を促す作用があることをマウス実験で確認したと発表しました。

 アディポネクチンは「長寿ホルモン」とも呼ばれ、人での有効性を来年度検証し活用策を探ります。

 溝渕教授と馬路村農協は2009年から、共同でユズ種子油の効用を研究。マウス実験でアトピー性皮膚炎の症状を抑制する効果があることなどを確認しています。

 溝渕教授によると、マウス14匹にユズ種子油1日100マイクロリットルを経口投与した実験では、28日後に血中のアディポネクチン濃度が平均で1・8倍程度に増えました。アディポネクチンは糖尿病や脂質異常症、動脈硬化などを改善するとされ、元気な高齢者の血中に多いという研究報告もあります。

 今回の成果を基に来年度、ユズ種子油を経口摂取することで人にもメタボ抑制効果があるかを、100人ほどを対象に検証するといいます。

 また、精製したユズ種子油を老人性乾皮症患者25人の患部に塗ると、大半に症状改善がみられ、被験者は少ないものの、アトピー性皮膚炎が緩和された患者がいたことも明らかにしました。今後、本格的な研究を進めるといいます。

 アディポネクチンの人での治験などは本年度、高知県の「産学官連携産業創出研究推進事業」に採択されました。事業は委託契約で、高知大と馬路村農協、非加熱ユズ種子油の効率的な製造方法を開発する高知工科大学が対象。三者は2019年度末まで研究する計画で、委託料は最大計約4400万円。

 馬路村農協は現在、非加熱ユズ種子油をゼラチンカプセル化した商品を、効能を示さずに販売しています。将来的には機能性表示食品の認可を目指します。

 東谷組合長は、「安全で健康に役立つ取り組みを続けたい」とし、溝渕教授は「ユズ種子にいろんな機能があると驚いている。種子以外の研究も進めたい」と話しています。

 2017年11月15日(水)

 

■アメリカで、大塚製薬が開発したチップ内蔵薬を初承認 体内から信号を発信し飲み忘れ防止

 アメリカの食品医薬品局(FDA)は14日までに、服用すると信号を発し、体に貼り付けた検出器で薬を飲んだことを記録・確認できる薬「エビリファイマイサイト」の販売を承認したと発表しました。マイクロチップが埋め込まれた世界初のデジタル薬といいます。

 統合失調症の治療などに使われる抗精神病薬で、飲み忘れや飲み過ぎを防止し、適切な服用を続けてもらうのが狙い。大塚製薬(東京都千代田区)が製造・販売する抗精神病薬「エビリファイ」(一般名・アリピプラゾール)に、アメリカカリフォルニア州のプロテウス・デジタル・ヘルス社が開発したマイクロチップを組み込んで、「エビリファイマイサイト」を共同開発しました。

 患者が望めば、医師や介護者、家族らと記録を共有することも可能で、効果的な治療につなげることができます。

 大塚製薬とプロテウス・デジタル・ヘルス社によると、薬の中に薄い銅や金、マグネシウムでできた約3ミリのマイクロチップが埋め込まれており、患者が飲んだ薬が胃液に触れると電気信号を発します。信号は細胞を伝わり、患者の脇腹に貼り付けたパッチ状の検出器でキャッチ。薬をいつ飲んだかという情報をスマートフォンやタブレット端末に転送します。

 マイクロチップは一定の時間がたてば、体内で消化・吸収されずに体外に排せつされるといいます。

 大塚製薬は、「アメリカで少数の患者に使用してもらい、製品の価値を確認していく」としています。

 2017年11月15日(水)

 

■血液製剤、余剰分に限り輸出解禁へ 厚労省が50年ぶりに政策転換

 献血から製造される血液製剤について、厚生労働省は国内メーカーが輸出・販売するのを解禁する方針を固めました。

 血液製剤は1960年代に本格化したベトナム戦争で、負傷者の治療に使われたとする疑惑が国会で追及され、1966年から輸出が禁じられていました。来年度に、余剰分に限り輸出を認める省令改正を目指しており、約50年ぶりの政策転換になります。

 海外の医療への貢献のほか、国内メーカーの海外展開を後押しする狙いもありますが、血液製剤の市場自由化が進む影響を懸念する声もあります。また、「国内の患者を救うため」という献血の前提が変わることに対し、無償で協力している提供者への説明も求められそうです。

 血液製剤は国の輸出貿易管理令の対象品目で、国内医療での使用を優先するとして全地域への輸出が禁じられています。輸入はできますが、1980年代にウイルスに汚染された輸入血液製剤で薬害エイズが起きた反省から、政府は国内自給を原則に掲げています。しかし、今でも一部の血液製剤は輸入に頼っています。

 国内で献血で採取された血液を扱っているのは日本赤十字社だけで、日赤から血液を購入した国内メーカー3社が特定の成分を抽出した複数の「血漿(けっしょう)分画製剤」を製造しています。このうち、やけどや肝硬変治療に使うアルブミン製剤は自給率56%にとどまりますが、血友病患者用の凝固製剤の一部は1994年以降、自給率100%に達し、消費されない余剰分は廃棄しています。

 余剰分が輸出できれば、少子化で需要が減りつつある国内市場に代わる新たな収益源になるとの期待があります。また、外資系メーカーも国内外の在庫調整がしやすくなる利点があり、国に規制緩和を要望しています。

 国内メーカー3社はいずれも輸出に向けた具体的な検討は始めておらず、うち1社の一般社団法人・日本血液製剤機構は、厚労省のヒアリングに「人道支援を目的に無償や低価格で輸出することは差し支えない」と答えています。

 2017年11月14日(火)

 

■北大、脳梗塞の再生医療で治験を始める 骨髄幹細胞を増殖し脳内に移植

 北海道大学は14日までに、脳梗塞の患者自身の幹細胞を使った再生医療の臨床試験(治験)を始めたと発表しました。患者の骨髄から採取した幹細胞を培養して移植することで、脳神経の再生を促し、まひした手足の機能を改善するのを目指します。

 脳梗塞は脳の血管が詰まって神経が損傷する病気。発症後すぐに治療しないと、手足のまひや言語障害といった後遺症が残りやすくなります。北大は2人の脳梗塞急性期の患者に再生医療を行い、最終的には6人に実施する計画です。

 1例目の患者は6月に脳梗塞を発症して入院し、2週間後に北大病院に転院しました。患者の腰の骨から骨髄幹細胞を取り出して増やした後、8月に脳内に直接注入しました。11月上旬には2例目の患者にも実施。幹細胞移植後、1年にわたって安全性や有効性を調べます。

 国内では年間約30万人が新たに脳梗塞を発症し、多くの患者で亡くなったり、重度の後遺症が残ったりしています。2025年には、脳梗塞による後遺症に悩む要介護者は520万人に上ると推定されています。

 発症から12時間以内程度の超急性期には点滴治療や血管内手術などがありますが、脳神経組織がいったん傷付いた後は、リハビリによる機能回復しかなく、新たな治療法の開発が求められています。

 2017年11月14日(火)

 

■横浜市立大の病院、がん疑い放置で患者死亡 医師が電子システムを確認せず

 横浜市南区の横浜市立大学付属市民総合医療センターで、がんの疑いを示す情報が5カ月間放置され患者が死亡した医療事故は、電子処理システムに潜む盲点を浮き彫りにしました。

 専門家は、「重大な病変を見付けたら、電話で直接連絡するなど、人間同士のコミュニケーションを大事にすべきだ」と警鐘を鳴らしています。

 亡くなったのは、コンピューター断層撮影(CT)検査を受けた神奈川県横須賀市の70歳代の男性患者。膵臓(すいぞう)の膨張に気付いた医師は今年1月、「膵臓がんの疑い」とする画像診断書を電子システムを通じて主治医に送りました。

 しかし、主治医が画像診断書を読んだのは6月でした。男性患者が別の病院で膵臓がんと指摘されたため、過去のデータを点検して気付きました。すでに手術できないほどがんが進行しており、男性患者は10月16日に死亡しました。

 10月30日の会見で、医療センターの後藤隆久病院長は「1月に適切に判断していれば外科的な治療が可能だったと考えている。医師・部門間の情報共有ができていなかった」と陳謝しました。

 医療事故に詳しい京都府立医科大学付属病院の佐和貞治医療安全管理部長は、「医療システムの電子化が進んだ2000年以降、同じような問題はあちこちで起きている」と明かしています。

 佐和部長によると、「がんの疑い」などの重要情報を目立たせたり、未読を防いだりする仕組みは、電子システムにもともと盛り込まれていないといいます。「たとえば郵便なら書留で、大事な現金が届いたと確認できる。しかし病院の電子システムのやりとりでは、おろそかになっている」と続けました。

 問題を起こした医療センターは、電子システム上の画像診断書を印刷して主治医に届けるよう改善しました。

 今回の問題は、ほかの医療現場でも深刻に受け止められています。神奈川県立足柄上病院(松田町)は、来年2月に稼働予定の電子カルテシステムに、未読の画像診断書にはアラームで知らせる機能を追加する検討を始めました。

 2012年以降、6人分の画像診断書を放置し、3人が死亡した東京慈恵会医大病院(東京都港区)も、画像診断書の未読をチェックする人員を配置するのに加え、患者に画像診断書のコピーを渡して、主治医に疑問をぶつけられる再発防止策を検討中です。

 佐和部長は、「今のところ電子システムだけでヒューマンエラーを防ぐのは難しい。医師は、システムの足りないところを補完する意識を持たなければならない」と話しています。

 2017年11月14日(火)

 

■食物アレルギー治療の臨床研究で、子供が一時心肺停止に 神奈川県立こども医療センター

 横浜市にある病院で、食物アレルギーを治療する臨床研究に参加していた子供が、重いアレルギー症状を起こして一時、心肺が停止し、現在も治療を受けていることがわかりました。

 病院は「最善の努力をもって対応していく」としており、専門の学会は同じような事例が起こっていないか、全国の医療機関を対象に緊急の調査を始めました。

 食物アレルギーでは、原因となる食べ物を少しずつ食べることで治す「経口免疫療法」という治療法があり、横浜市にある神奈川県立こども医療センターでは、患者200人に対して入院させて安全を管理した状態でアレルギーの原因の食べ物の摂取量を徐々に増やし、退院後も一定量の摂取を続ける「急速法」と呼ばれる臨床研究を行っていました。

 神奈川県立こども医療センターによりますと、今年、この臨床研究に参加していた牛乳アレルギーの子供が、入院を終え医師の指導のもと、自宅で牛乳を飲み続けていましたが、およそ3カ月が経過して牛乳を飲んだ直後に重いアレルギー症状が現れ、一時、心肺が停止して脳に障害が出て、現在も治療を続けているということです。

 神奈川県立こども医療センターは、臨床研究に参加しているほかの患者に対し、変化があればすぐに連絡するよう注意を促すとともに、緊急時の対処法も改めて周知した上で、「患者様・ご家族様のお心を察するに余りあるものがあります。この事態に取りうる最善の努力をもって対応してまいります」としています。

 また、専門医で作る日本小児アレルギー学会にも報告され、学会では、食物アレルギーの診療を行っている全国330の医療機関を対象に、治療や実際に食べ物を食べて行う検査などの過程で、呼吸困難になるなど気道を確保する緊急対応が必要になった事例や、集中治療室で治療を行った事例、それに脳の障害など重い症状が出た事例がないか緊急の調査を始めました。また、後遺症が残ったかどうかも調査し、それぞれのケースの共通点などから、原因を検討していくということです。

 調査を行う国立病院機構相模原病院の海老澤元宏医師は、「どれくらい重篤な事案が発生しているのかその実態はよくわかっておらず、調査を通じてどこに問題があったのかや避けられることなのかなどを検討したい。臨床研究を行う施設には改めて安全を担保した上で取り組んでもらいたい」と話しています。

 食物アレルギーは、卵や牛乳、小麦などの食べ物を摂取することで、皮膚や呼吸器などのさまざまなところにアレルギーの症状が現れるものです。発症する患者の数は年齢が0歳の時が最も多く、その後、成長に伴って低下するとされており、過去の研究では、乳児の5%から10%に食物アレルギーの症状が出たと報告されています。

 そして、成長するのに伴って自然によくなる人もおり、それまでの間、医師などによる「栄養食事指導」という方法が一般的に行われています。この方法では、アレルギーの原因となる食べ物を症状が出る量以上は摂取しないようにして、不足する栄養などについては、指導を受けて別な食材で補うようにします。

 一方、食物アレルギーを積極的に治療する方法として試みられているのが、経口免疫療法と呼ばれる治療法です。成長の過程でアレルギーの症状が早期によくなることが期待できない患者に対して行われるもので、少しずつ食べる量を増やしながら耐性をつけ、症状を出さずに上限を増やしていく方法です。

 専門家によりますと、経口免疫療法は世界でも日本が先進的に取り組んでいる治療法で、2年前の2015年の時点で全国でおよそ8000人の患者が治療を受けているという報告があります、この経口免疫療法の中には食べる量を増やす初めの段階で、ゆっくりと量を増やす「緩徐法」や、急激に増やす急速法など複数の方法があるとされています。

 日本小児アレルギー学会の診療ガイドラインでは、一部の症例に効果があるとする一方、治療中に全身に症状が出るアナフィラキシーなどの重篤な症状が出ることがあるほか、治療が終わった後に症状が出る場合もあるなどの問題があるとされ、一般診療としては推奨されていません。

 このため学会では、この経口免疫療法を行う場合は、食物アレルギー診療を熟知した専門医が行うことや、症状が出た場合の救急対応の準備をしっかりと行っていることなどを条件に、臨床研究として慎重に行うことを求めています。

 2017年11月13日(月)

 

■テルモ、インスリンポンプの製造販売承認を取得 国内初の貼り付け式製品を来夏に発売へ

 医療機器の製造・販売の国内最大手「テルモ」(東京都渋谷区)は13日、主に1型糖尿病患者に持続的にインスリンを投与するインスリンポンプで、国内初となる貼り付け(パッチ)式製品の製造販売承認を取得したと発表しました。

 2018年夏の発売を目指します。従来の製品では分離していたポンプと注入部を一体化させ、無線のリモコンで操作します。テルモがインスリンポンプを手掛けるのは初めてですが、使い勝手のよさでシェア獲得をねらいます。

 インスリンポンプの製品名は「メディセーフウィズ」。インスリンポンプは皮下に刺し込んだ針を通じて、インスリンを投与します。時間帯ごとに注入量を変更でき、膵臓(すいぞう)の働きに近い血糖値の調整が可能になるなどのメリットがあります。自己注射に比べて血糖値の変動が改善されるという報告もあります。

 ただ、これまで国内で販売されてきたインスリンポンプは注入部とポンプが別々の構造で、間をチューブでつないでいるため手や物にぶつかるトラブルも起きやすく、インスリン投与中断の原因になっているという問題がありました。

 メディセーフウィズはポンプ機能を注入部に集約し、日常生活の中での使いやすさを重視しました。リモコンはタッチパネル式で、食事の種類や食べ方に応じたインスリンの注入量を設定できます。インスリンを充填したカートリッジは3日に1回交換。針部分を貼り付けたままポンプを取り外して、入浴も可能です。

 2017年11月13日(月)

 

■キャッスルマン病、指定難病に追加へ 厚労省、来春から医療費を助成

 厚生労働省の検討委員会は13日、難病医療法に基づき来年度から医療費が助成される指定難病の第4次実施分に、特発性多中心性キャッスルマン病を新たに追加することで合意しました。

 検討委員会は9月以降、研究班や関係学会から出された61疾患が指定難病の要件を満たしているか検討してきました。2015年1月に助成が始まった指定難病はこれで計331疾患となり、計約100万人が対象になります。

 特発性多中心性キャッスルマン病は、リンパ節がはれて発熱や貧血、全身のだるさなど、さまざまな症状を引き起こす原因不明の病気で、国内の患者数は推計1500人。患者会の福島かおり代表は東京都内で記者会見し、「適切に診断されなかったり、薬代が高額で治療を受けられずに悪化したりする患者は多い。指定難病になることで認知度が上がって速やかな治療につながればうれしい」と話しました。

 この特発性多中心性キャッスルマン病の研究班は、大阪大学の吉崎和幸特任教授(73歳)らが2年前に立ち上げました。吉崎さんは1980年代に病気の原因分子を特定し、大阪大がこの分子の働きを抑える薬の開発に貢献してきました。ただ現状では、薬で症状を抑えることしかできません。吉崎さんは、「根本的な原因を解明して根治治療を目指したい」と話しています。

 検討委員会は同日、A20ハプロ不全症、関節型若年性特発性関節炎、自己免疫性後天性凝固第Ⅴ/5因子(F5)欠乏症、ジュベール症候群関連疾患、先天性声門下狭窄症の5疾患についても、すでに指定難病となっている疾病に統合することにしました。残りの疾患は、来年度以降に検討します。

 2017年11月13日(月)

 

■北朝鮮からの大量難民を想定し、マラリアなどの感染症対策を検討へ 厚労省研究班

 緊迫する北朝鮮情勢を受け、厚生労働省が有事に伴い大量の難民が日本にやってきた場合の感染症対策について検討を始めたことが13日、明らかになりました。

 今年度中をめどに研究班が対策案を取りまとめ、国は医療体制や医薬品の整備などにつなげる方針です。厚労省によると、北朝鮮からの難民を想定した感染症対策の研究は初めて。

 核開発やミサイル発射を繰り返す北朝鮮で有事が起きた場合、大量の難民が発生し、その一部が日本にやってくる可能性があります。研究班は、北朝鮮から数万人の難民が日本にやってくるとの想定で対応策を検討。研究対象として、北朝鮮で発生している感染症の把握、難民保護施設などで集団感染が起きた場合の対応、予防接種対策などが挙がっています。

 世界保健機関(WHO)の報告によると、北朝鮮では蚊が媒介する感染症「マラリア」など、日本では流行していない感染症が起きています。また、国民への予防接種が十分でない恐れがあり、はしか(麻疹)や風疹、ウイルス性肝炎など予防接種で防げる感染症が、難民保護施設などで流行する恐れもあります。そのため、研究班は国内であらかじめ準備すべき予防接種の種類や、医薬品と医療機器の量などを検討します。

 北朝鮮有事に備えた研究は、感染症などの発生を把握する「感染症サーベイランス」の改善や強化について2015年度から研究している厚労省研究班の新たなテーマとして今月、追加されました。

 研究班は国立感染症研究所の専門家、感染症に詳しい医師、保健所の職員などで構成され、世界で発生する新たな感染症や流行がぶり返した感染症などの把握の方法や対策を今年度末までの予定で検討しています。

 2017年11月13日(月)

 

■がん治療の光免疫療法、国内でも治験へ 舌がんなど対象、アメリカで実績

 光を当ててがん細胞を破壊する新たながん免疫療法について、アメリカのラッシュ大学などが同国内で実施した最初の臨床試験(治験)の結果がまとまり、頭頸(とうけい)部がんの患者8人中7人でがんが縮小したことが明らかになりました。ヨーロッパ臨床腫瘍学会で発表しました。

 これらの結果を踏まえ、日本でも今年中の治験開始を目指して、製薬会社のアスピリアンジャパン社(東京都港区)により準備が勧められています。

 この治療法は「光免疫療法」で、アメリカ国立衛生研究所(NIH)の小林久隆・主任研究員らが開発しました。がん細胞だけが持つタンパク質に結び付く性質がある「抗体」と、近赤外光を当てると化学反応を起こす化学物質を結合させた薬剤を患者に注射します。その後、体外からや内視鏡を使って近赤外光を患部に当てると、薬剤が結び付いたがん細胞の細胞膜が破壊され、これを切っ掛けに免疫細胞が活性化するといいます。近赤外光はテレビのリモコンなどに使われ、人体に当たっても害がありません。

 最初の治験は安全性確認が主な目的で、手術や放射線治療、抗がん剤などで治らなかった舌がん、咽頭(いんとう)がんなど頭頸部がん患者を対象としました。薬剤量を絞り、光も1回だけ当てる治療を実施しました。

 9人の患者が参加し、途中でやめた1人を除く8人について1カ月間、経過観察しました。その結果、3人はがんがなくなり、治療後1年以上たった現在も生存しています。残りの4人はがんが小さくなり、1人はがんの大きさに変化がなく、1カ月半~半年後にいずれも亡くなりました。治療自体による重い副作用はありませんでした。

 小林・主任研究員は、「今回は最低限の治療だったが、他に治療法がない3人の患者が完治したことは大きな成果だ。繰り返し光を当てたり、薬剤を再度投与したりすることで治療効果は改善できる」と話しています。

 日本での治験を準備しているアスピリアンジャパン社によると、頭頸部がん患者を対象にした治験の年内開始を目指し、関係機関が調整を進めています。他の部位のがんについても、実施に向けた検討をしているといいます。

 2017年11月12日(日)

 

■危険ドラッグの主成分に、けいれんを起こす有害作用 精神・神経医療研究センターが確認

 多くの危険ドラッグの主成分で、大麻に似た薬物「合成カンナビノイド」に、けいれんを引き起こす有害作用があることが確認できたとする論文を、国立精神・神経医療研究センターの研究チームがアメリカの専門誌に発表しました。

 けいれんは脳内の「海馬(かいば)」という記憶と関係の深い器官の異常で起き、繰り返すと記憶や学習機能の障害が出る恐れがあります。危険ドラッグ乱用の害を新たに示す成果といいます。

 大麻は体の動きや思考が鈍くなる「ダウナー系」の薬物で、通常けいれんは起きません。しかし、危険ドラッグ使用後に錯乱状態に陥り救急搬送される患者がいることから、研究チームはマウス実験で脳内の変化を調べました。

 その結果、合成カンナビノイドを投与されたマウスは、数分後から興奮をもたらす神経伝達物質のグルタミン酸が海馬で過剰放出され、けいれんを起こしやすくなりました。これが海馬の神経細胞を壊す原因になるといいます。放出は数分~十数分続き、その後に急激に下がると、今度はダウナー系の症状が現れます。

 大麻との作用の違いはグルタミン酸を放出させる毒性の強さの差と考えられ、薬物の濃度が高いほどけいれんの頻度は高くなりました。

 国立精神・神経医療研究センターの舩田(ふなだ)正彦・依存性薬物研究室長は、「合成カンナビノイドは大麻以上に危険といえる。ただ、最近は乾燥大麻を濃縮してワックス状にした効き目の強い大麻も出回っており、類似のリスクが懸念される」と指摘しています。

 危険ドラッグは、大麻取締法や覚せい剤取締法で規制できない有害な薬物の総称。「脱法ハーブ」と呼ばれていた2012年前後に、乱用者の自動車事故などが相次ぎました。医薬品医療機器法に基づく規制をしても、成分を一部変えて売買する堂々巡りが続いていましたが、2013年に大量の規制が可能な包括指定が始まり、流通量は大きく減りました。

 2017年11月12日(日)

 

■臓器提供に4割前向き、意思表示は1割程度 内閣府が調査

 脳死と判定されたり心停止で死亡判断されたりした場合の臓器提供について、約4割が「提供したい」などと前向きに回答したことが11日、移植医療に関する内閣府の世論調査で明らかになりました。一方、実際に「提供する」「しない」の意思を運転免許証などに記入している人は、約1割程度にとどまりました。

 いずれも2013年の前回調査から横ばいで、溝は埋まっていません。

 厚生労働省の担当者は、「提供の意思をいかに記入してもらうかの啓発が重要。 家族で話し合う機会も持ってほしい」と話しています。

 内閣府の調査は、8月24日~9月3日に全国の18歳以上の3000人を対象に行い、1911人から回答を得ました。

 このうち「臓器提供したい」と回答した人は19・7%で、「どちらかといえば提供したい」と回答した人はは22・1%でした。前向きに考えている人は約4割に達し、18~29歳だと約7割に上りました。

 一方、臓器提供の可否を運転免許証の裏面や意思表示カードなどに記入しているのは12・7%。記入していない人に複数回答で理由を尋ねたところ、「自分の意思が決まらない・後で記入しようと思っていた」が25・4%、「臓器提供に抵抗感がある」が19・9%、「臓器提供に関心がない」も17%ありました。

 家族が書面による意思表示をしていた場合に「尊重する」としたのは約9割に上る一方、意思表示がなかった場合には「提供を承諾しない」が約5割いました。2010年の臓器移植法改正で、書面での意思が不明でも家族の承諾で臓器提供できるようになっています。

 厚労省の担当者は、「教育現場で臓器移植について考える機会を作るなど、啓発に力を入れていきたい」と話しています。

 2017年11月12日(日)

 

■糖質制限、極端だと免疫力低下で健康被害も 専門家がブームに警鐘

 ダイエット目的で米やパンなどの摂取を極端に減らす糖質制限ブームが、「ご飯離れ」に拍車をかけています。飲食業界はご飯抜きメニューを次々と考案するなど対応を進めていますが、「極端な制限は栄養学的に問題」と警鐘を鳴らす専門家もいます。

 「ご飯は全くといっていいほど食べない」と、東京都内で働く会社員女性(26歳)は断言しています。ダイエットのため食事から米を含めた糖質を制限して以来、「明らかにやせた」と効果を実感しているといい、米からできた日本酒も抜くほどの徹底ぶり。

 カレーをご飯ではなく、おからやキャベツの千切りにかけて食べることもあるといいます。「ライスなしでも満腹感を得られる」と話していますが、実は女性の実家は山形県の米農家。実家からは定期的に自家生産した米が送られてくるものの、「実家には伝えていないが、ほとんど友達にあげている」と打ち明けています。

 糖質制限は、ご飯やパン、麺、芋、果物などの炭水化物に含まれる糖質の摂取量を1日130グラム以下に抑えることで体重を減らしたり、血糖値などの検査数値を改善したりすることをねらう民間療法の一種。数年前から雑誌やテレビなどが相次いで特集するなどし、広まりました。人気の秘密は、糖質さえ制限していれば、おかずは何でも好きなだけ食べていいという取り組みやすさと、目にみえて現れる効果にあります。

 飲食業界も流行に対応。回転ずし大手「くら寿司」は「野菜(831)の日」に当たる8月31日から、すしのシャリを大根の酢漬けに替える新商品「シャリ野菜」の販売を開始。シャリの量を半分にした「シャリプチ」も提供し、女性客を中心に好評だといいます。

 同社の担当者は、「ご飯は控えたいが、すしを楽しみたいお客様のニーズに合わせた商品」と説明。ほかに、弁当のご飯をブロッコリーや湯豆腐に変更できる飲食店も登場したほか、ご飯以外でも炭水化物である麺抜きで野菜たっぷりのラーメンなどを提供する店もあります。

 文教大学健康栄養学部の福永淑子教授(調理学)は、「健康な人でも極端に炭水化物を食習慣から取り除くなどの糖質制限は免疫力の低下を招き、さまざまな疾病につながりかねない」と強調。「健康被害の恐れもあり、極端な糖質制限の風潮が浸透するのは危険」と警鐘を鳴らしています。

 糖質制限ブームは、日本人の主食である米の消費にも影響を与えかねません。もともと食生活の多様化や人口減などを背景に、日本人の1人当たりの米消費量は1962年度の年118・3キロをピークに下落に転じ、2016年度には年54・4キロ(概算)に半減し、歯止めがかかっていません。

 こうした中、ご飯を食べてやせる「おにぎりダイエット」を提唱しているのが、全国農業協同組合連合会(JA全農)。

 おにぎり1個は約180キロカロリーで、これを基準に食事量をコントロールしてもらいます。2016年2月から、おにぎりを食べてトレーニングをするキャンペーンを始め、実践した人の7割が1カ月間で500グラム以上の減量に成功し、体重が戻るリバウンドも起こしにくいとしています。

 JA全農の担当者は、「極端な糖質制限の風潮は、米を含めた農業生産全体にかかわる問題」と危機感を抱いており、「ご飯を楽しみながら、バランスのよい食事を取ってほしい」と期待しています。

 2017年11月11日(土)

 

■OECD加盟国の平均寿命、健康的な生活で10年延長 最長は日本とスウェーデンの83・9歳

 経済協力開発機構(OECD)加盟35カ国の平均寿命はこの50年で10年程度延びており、中でも健康的な生活を送り、所得が高い国々ほどその傾向が強いことが10日、OECDが公表した2017年版の報告書で明らかになりました。

 OECDの「図表で見る医療2017年版」によると、アメリカ、カナダ、オーストラリア、日本、それに大半の欧州諸国を含む加盟国では、1970年以降、平均寿命が10年以上延び、80・6歳に達しています。

 平均寿命が最も長いのは、日本とスウェーデンでいずれも83・9歳。スペインとスイスの83歳が、それに続いています。最も短いのはラトビアの74・6歳、次いでメキシコの75歳でした。

 同報告書は、「より健康的な生活、より高い所得、より優れた教育はすべて、この数十年で寿命が延びている要因となっている」、「より良い医療もその一助となっている」と指摘し、「喫煙率の低下と医療費の支出増加も貢献している」としています。

 一方で、「肥満と有害なアルコール摂取への取り組みはほとんど成果を上げておらず、大気汚染が看過されることも多い」として、報告書は警鐘を鳴らしています。仮に喫煙率とアルコール消費量が半減すれば、平均寿命はさらに13カ月延びると予測しています。

 同報告書によれば、平均寿命が延びている主な要因は医療支出の増加ですが、10年前の世界金融危機以降、医療支出の伸びは鈍化しています。

 2017年11月11日(土)

 

■男性がん患者の2割、抗がん剤治療後に精子を凍結保存 厚労省研究班が全国調査

 男性のがん患者が治療後に子供を持てるようにする精子の凍結保存について、厚生労働省の研究班が初の全国調査の結果をまとめました。2015年度には少なくとも820人が凍結保存を希望し、うち約2割の158人は凍結保存の前に抗がん剤治療を受けていました。

 がん治療は精子をつくる機能を低下させるなど男性不妊の原因になることがあり、日本癌(がん)治療学会は指針で、抗がん剤治療を受ける前の精子凍結保存を推奨しています。厚労省の研究班は、治療する医師や国民への周知の必要性を指摘しています。

 調査は昨秋、全国の大学病院や不妊治療を行う医療機関695施設を対象に実施し、約半数から回答がありました。2015年度に施設に凍結保存を依頼した患者820人のがんの内訳は、白血病・リンパ腫が383人、精巣腫瘍が237人、肉腫・軟部腫瘍が46人など。73人は無精子症などのため、凍結保存ができませんでした。年齢は、10~30歳代が多くなりました。

 凍結保存の前に抗がん剤治療を受けていた患者は158人で、凍結を希望した人全体の19%を占めました。白血病・リンパ腫の患者では27%と高くなりました。

 日本癌治療学会が今夏にまとめた指針は、「治療医はがん治療を最優先する」とした上で、治療で子供が持てなくなる恐れがある場合、抗がん剤治療前の精子凍結保存を推奨しています。

 厚労省の研究班は、凍結保存の希望の多い白血病などの治療施設に詳細な調査も実施したところ、精子凍結について患者全員に説明している施設は約4割でした。

 時間が十分に取れず不妊の問題を患者と話すことが医師の負担になっていたり、医療現場で精子凍結についての情報が不足していたりする傾向がありました。

 調査を担当した横浜市立大学市民総合医療センター生殖医療センターの湯村寧(やすし)部長(泌尿器科)は、「医師が情報を入手しやすい環境を整えるとともに、患者への説明をサポートする仕組みが必要ではないか」と指摘しています。

 2017年11月11日(土)

 

■認知症患者の割合、OECD加盟国で日本1位 有病率は2・33%

 日本の認知症患者の割合(有病率)は、経済協力開発機構(OECD)加盟35カ国の中で最も高いことが10日、OECDが公表した2017年版の医療に関する報告書で明らかになりました。

 年齢が上がるほど認知症有病率は高まる傾向にあり、日本は世界で最も高齢化が進んでいるためとみられます。

 報告書によると、日本の人口に対する認知症有病率は2・33%で、OECDの平均1・48%を大きく上回り、最も高くなりました。2位はイタリアの2・25%、3位はドイツの2・02%でした。日本の有病率は20年後の2037年にはさらに上昇し、3・8%に達すると推定されています。

 OECDの担当者は、「日本は高齢化がほかの国より早く進んでいる。認知症を含め、加齢に関連した病気への対策が喫緊の課題だ」と指摘しています。

 2017年11月11日(土)

 

■無届け臍帯血移植、東京都の医師に懲役1年を求刑 4被告全員が結審

 東京都や大阪府のクリニックで臍帯血(さいたいけつ)が国に無届けで移植されたとして、販売業者や仲介役ら計4人が再生医療安全性確保法違反罪で起訴された事件で、表参道首藤クリニック(東京都渋谷区)の医師首藤紳介被告(40歳)の初公判が10日、松山地裁でありました。

 首藤被告は起訴内容を認め、検察側は懲役1年を求刑し、弁護側は執行猶予か罰金刑を求めて即日結審しました。判決は12月21日。この日で、一連の事件で起訴された4被告全員の公判が結審しました。いずれも起訴内容を認めています。

 起訴状によると、首藤被告は販売業者らと共謀し、2016~2017年、同クリニックで他人の臍帯血を患者4人に対し計6回、無届けで移植したとされます。

 検察側は論告で、首藤被告が事件で最も中核的な役割を担ったとし、首藤被告の施術方法は移植前後に必要な処置をしておらず、科学的根拠がないと指摘。2015年に同法で無届け移植に対する罰則の適用が始まってから、首藤被告は無届けで臍帯血移植を27回行い、約2800万円の利益を得ていたとも明らかにしました。また、違法性を認識後も「医師としてあってはならないカルテの偽装工作などを行って移植を続けた」と述べました。

 2017年11月11日(土)

 

■マウス胎児の腎臓組織再現に成功 熊本大学がES細胞を利用

 体のさまざまな組織に変化するES細胞(胚性幹細胞)を使って、マウスの胎児の腎臓の組織を再現することに熊本大学の研究チームが成功したと発表し、重い腎臓病の患者に対する再生医療につながる可能性がある技術として注目されています。

 熊本大学の西中村隆一教授らの研究チームは、マウスのES細胞から、血液をろ過して尿を作る機能を有する「ネフロン」と呼ばれる組織の元となる細胞を作り出していますが、今回さらに、尿を排出する管になる「尿管芽」と呼ばれる細胞を作ることに成功しました。

 研究チームは、この2つの細胞を混ぜ、さらにマウスの胎児から取り出した細胞同士を結び付ける細胞を加えて、およそ1週間培養したところ、細胞が組み合わさって直径1ミリ、厚さ数百マイクロほどの円盤状のマウスの胎児の腎臓の組織を再現することにも成功したということです。ただし、本来は腎臓の周囲に張り巡らされる血管は、備えていないといいます。

 今後、胎児の腎臓の組織がさらに成長する過程を調べるとともに、人のiPS細胞(人工多能性幹細胞)でも実験を行い、血液をろ過する機能があるか検証することにしています。

 研究チームによりますと、重い腎臓病で人工透析の治療を受けている患者は国内に30万人余りおり、将来、こうした患者を対象にした腎臓の正常な機能を取り戻す再生医療につながる可能性がある技術として期待されています。

 西中村教授は、「移植のためのドナーが不足する中、人の腎臓を作ることができれば、多くの患者を救える」と話しています。

 成果は10日、アメリカの科学誌「セル・ステムセル」(電子版)に掲載されました。

 2017年11月10日(金)

 

■抗インフルエンザ薬、マダニ感染症に効果 愛媛大などが治療法確立を目指す

 愛媛大学などは9日、マダニなどが媒介するウイルス感染症「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)」の治療に、抗インフルエンザ薬「アビガン」(一般名・ファビピラビル)が効果を示したと発表しました。

 臨床研究で患者10人に投与し、8人が回復したといいます。治療開始時に体内のウイルス量が多かった2人は、死亡しました。根本治療法がないSFTSの薬として使用できるとみて、今後も研究を続けて治療法の確立につなげたいとしています。

 SFTSは下痢、腹痛、意識障害などの症状を伴い、死に至ることもあります。愛媛大の安川正貴教授(内科)は長崎大学、国立感染症研究所とSFTSの治療法を見付けるための研究組織を作り、2016年5~12月に臨床研究を実施しました。

 アビガンは、ウイルスが遺伝子を複製し増殖するのを防ぐタイプの薬で、富士フイルムグループの富山化学工業(東京都新宿区)が開発しました。このアビガンを50~80歳代のSFTSの患者10人に5~14日投与し、症状が回復した8人は、血液からウイルスが検出されなくなり、減っていた白血球と血小板の数が回復しました。副作用も認められなかったといいます。

 体内のウイルス量が多く死亡した2人は、多臓器不全の状態だったため薬の効果がなかったと考えられるといいます。ウイルス量が多くても多臓器不全などに陥っていない患者は、回復したといいます。

 研究責任者の安川教授は、「有効性を証明するため症例数を増やしたい。早めの治療ができれば重症化を防ぎ救命できるはずだ」と話しています。

 SFTSは2013年に山口県で、国内初の患者が確認されました。これまでに西日本中心に300人以上の患者が報告され、このうち約2割に当たる約60人が亡くなっています。SFTSウイルスを保有するマダニにかまれて感染すると知られてきましたが、最近では、飼い犬から人に感染した例も判明しました。

 2017年11月9日(木)

 

■京都市、宝ヘルスケアに改善指導 無承認でサプリの効能を表示

 宝酒造グループの健康食品会社「宝ヘルスケア」(京都市中京区)の販売するサプリメント「フコイダン」シリーズについて、承認を得ていないのに効能をホームページ(HP)に掲載していたとして、京都市が同社に対し、医薬品医療機器法に違反する可能性が高いとして改善を指導していたことが8日、明らかになりました。同社は、HPから効能の記述を削除しました。

 持ち株会社の宝ホールディングスによると、宝ヘルスケアは海藻などに含まれる粘り成分のもとの「フコイダン」を用いたサプリメント商品について、同法の承認を得ていないのに「抵抗力を引き出す」との効能をHPに掲載していました。

 京都市は10月19日、宝ヘルスケアに立ち入り調査。この記述について、健康食品では表示が認められていない「免疫機能の向上を暗示する表現で望ましくない」と指摘し、変更するよう指導しました。同社は、記述を「昆布(こんぶ)のネバリの力」という表現に改めました。

 また、宝ヘルスケアの「お客さまセンター」担当者が商品を問い合わせてきた消費者に対し、「花粉症が楽になった」「がん治療中の人の検査数値がよくなった」といった商品使用者の体験談も伝えていました。この点も京都市は「専門の医師や薬剤師ではない人が効能を示している」と指摘し、同社は中止しました。

 宝ホールディングスの担当者は、「法に抵触するかどうか微妙な表現だったが、商品の特性を伝えるため掲載した」とした上で、「真摯(しんし)に反省し、再発防止を徹底したい」と話しています。

 2017年11月9日(木)

 

■京都大iPS細胞備蓄、日本人の5割カバーへ 19番目までの血液提供者見付かる

 健康な提供者の血液から医療用のiPS細胞(人工多能性幹細胞)を作製する「iPS細胞ストック事業」で、京都大学iPS細胞研究所の山中伸弥所長は8日、日本人の5割と免疫の型が合う19番目までの血液の提供者を見付けたと、京都市での国際シンポジウムで発表しました。

 ストック事業は、他人に移植しても拒絶反応が起きにくい特殊な免疫の型を持つ健康な人から血液の提供を受け、医療用のiPS細胞を作って備蓄する取り組み。ただ、提供者が見付かっていても、「実際にiPS細胞を作るかどうかは費用などの面も踏まえて検討していく」と同研究所の広報担当者は説明しています。

 同研究所は最も多くの日本人が持つ免疫の型から順にiPS細胞を備蓄、今年度中に3番目をストックして提供を始める予定で、最終的な検査を進めています。実現すると日本人の3割に相当する3千数百万人をカバーできるようになり、今年度末までに日本人の3~5割をカバーするという目標を達成できる見通し。

 再生医療などへの応用が期待されているiPS細胞は、患者本人の組織から作るより、他人からあらかじめ作って備蓄するほうが費用や時間で有利とされます。

 iPS細胞研究所は今年1月、iPS細胞の作製過程の品質管理に不備があり、試薬取り違えの可能性が生じたため、大学や研究機関、企業向けの提供を一部停止。管理体制を見直して10月に提供を再開しました。提供を再開したのは、新生児のへその緒に含まれる「臍帯血(さいたいけつ)」から作ったiPS細胞で、改めて拒絶反応が起きにくい免疫の型を持った臍帯血からiPS細胞を作り、品質検査もやり直しました。この臍帯血から作ったiPS細胞は、日本人の17%をカバーできる見込みとしています。

 2017年11月9日(木)

 

■ALS抑制薬、徳島大が治験を開始 2021年の製造販売承認を目指す

 徳島大学は7日、全身の筋肉が衰えて呼吸などが難しくなる難病「筋委縮性側索硬化症」(ALS)の患者に、手足のしびれや腰痛の治療などに使われる薬「メコバラミン」を投与する臨床試験(治験)を開始した、と発表しました。

 病気の進行が抑制できるか確認し、2021年初頭の製造販売承認を目指します。

 ALSは運動神経が侵されて徐々に減ることで、体を動かすことができなくなり、筋肉が衰える病気。2種類の治療薬が承認されていますが、長期的に延命できるかはっきりしていません。

 全国19医療機関でALSの患者に、手足のしびれなどに使う量の100倍のメコバラミンを週2回、16週間にわたって筋肉注射します。目標とする発症1年以内の患者数は128人で、2つのグループに分け、一方を偽薬にして症状の進み方を比べます。16週以降は、希望者全員が2020年3月までメコバラミンの注射を受けることができます。

 メコバラミンでは、開発元のエーザイによる臨床試験が2006年から7年半にわたり、患者370人が参加して行われ、発症後1年以内のALS患者に限ると、呼吸補助装置を装着するまで、または亡くなるまでの期間を600日以上伸ばす効果が確認されました。しかし、国側から「試験のやり方に不備がある」などと指摘され、承認申請をエーザイが取り下げた経緯があります。今回の治験は、徳島大の医師が責任者となって行います。

 徳島大の梶龍児(かじりゅうじ)教授(神経内科)は、「副作用も少なく、大きな延命効果が期待できる」と話しています。

 2017年11月9日(木)

 

■WHO、家畜への抗生物質の使用抑制を訴え 多剤耐性菌の発生を懸念

 世界保健機関(WHO)は、抗生物質(抗菌薬)がほとんど効かない「多剤耐性菌」の感染拡大を防ぐためには、畜産の現場でも抗生物質の使用を必要最小限に抑えるべきだとする指針をまとめました。

 指針をまとめた責任者は、世界規模で対策に取り組む必要があると強調しています。

 多剤耐性菌は、人の病気の治療に使われる抗生物質がほとんど効かなくなった細菌で、世界各国の医療機関で免疫力の低い入院患者が感染して死亡するケースが相次いで報告されていることから、大きな問題となっています。

 ただ、畜産の現場では、抗生物質が家畜の病気の予防や治療、さらに成長促進のために幅広く使われており、使い方次第では、さらなる多剤耐性菌の発生につながると指摘されています。

 このため、WHOは、畜産の現場での抗生物質の使用を必要最小限に抑えるべきだとする新たな指針をまとめ、7日、スイスのジュネーブで発表しました。

 新たな指針では、人の病気の治療にも使われる重要な抗生物質については、家畜の成長促進や病気の予防のための使用をやめるべきだとしたほか、家畜が病気の場合でも、カルバペネムなど、人に使われる抗生物質の中でも極めて重要なものは原則、使用を禁じるべきだとしています。

 WHOによると、一部の国では医学的に重要な抗生物質の約80%が動物に対して使用されていますが、家畜の病気予防には衛生状態を改善したり、ワクチンをうまく活用したりするなど他に多くの選択肢があるといいます。

 指針をまとめた責任者であるWHOの宮城島一明食品安全部長は、「多剤耐性菌を抑えるためには、抗生物質の適正な使用が不可欠で、保健医療と畜産農業の現場が連携して世界規模で対策に取り組む必要がある」と話しています。

 2017年11月8日(水)

 

■やせる効果の過大表示、太田胃散など16社に措置命令 消費者庁

 葛の花から抽出した成分を含むお茶やタブレットなどについて、明確な根拠がないのに運動や食事制限もせずにやせられるかのように効果を過大にうたって販売したとして、消費者庁は全国の16社に対して、再発防止などを命じる措置命令を行いました。

 措置命令を受けたのは、東京都文京区の製薬会社「太田胃散」や、京都市のカタログ通販大手「ニッセン」など全国の16社。

 消費者庁によりますと、16社は2015~2017年の間、葛の花から抽出した「イソフラボン」と呼ばれる成分を含むお茶やタブレット19商品ついて、業者の責任で機能性を表示する「機能性表示食品」として、「飲むだけで体重や脂肪を減らす!」「きつい運動やつらい食事制限は不要」などと、摂取するだけで誰でも簡単に内臓脂肪が減り、見た目でわかる痩身(そうしん)効果が得られるかのように宣伝して販売していました。

 これに対して消費者庁は、各社に資料の提出を求めた結果、これほどの効果を裏付ける合理的な根拠は確認できず、同庁表示対策課は「あきらかな痩身効果はデータから読み取れなかった」として、景品表示法(優良誤認)に基づき、こうした表示を行わないことや、再発防止を命じる措置命令を行いました。

 1社は「予想を上回る注文を頂いており、生産が間に合わない」などと表示していましたが、具体的な販売予想は元々なく、注文もわずかでした。

 すでにニッセンなど12社は、実際より効果が大きいようにうたっていたとする消費者向けの通知を出したということで、消費者庁は、まだ通知を出していない太田胃散など4社に対し、早急に対応するよう求めています。

 太田胃散は、「処分を真摯(しんし)に受け止め、再発防止に努めていきたい」と話しています。ニッセンは、「すでに対象となる商品の購入者全員に全額を返金した。処分を真摯に受け止め、全従業員に周知し再発防止を徹底します」としています。

 2017年11月8日(水)

 

■免疫抑制剤使う子供へのワクチン接種、安全な手法を検討へ 国立成育医療研究センター

 免疫を抑える薬を使っているために、水ぼうそうなどのワクチンを接種できない子供たちについて、接種を見送った後に感染症で死亡した事例が報告されていることから、国立成育医療研究センターは全国の医療機関の協力を得てワクチンを接種しながら安全に健康を管理する手法を検討することになりました。

 子供が接種するワクチンには、毒性を弱めたウイルスや細菌を接種する「生ワクチン」と呼ばれるタイプがあり、水ぼうそう、はしか、風疹などのワクチンとして使われていますが、難病の治療や移植手術などで免疫抑制剤を使っている場合には、ワクチンによってその感染症を発症してしまう恐れがあるため、原則、使用できないことになっています。

 しかし、2012年までの10年間に全国で、ワクチンを接種できなかった3人の患者が水ぼうそうを発症して死亡したことがわかり、国立成育医療研究センターの研究チームは免疫抑制剤などを使っている子供もワクチンが接種できる手法を検討することになりました。

 研究チームは、今月から全国300の小児科のある医療機関を対象に、免疫抑制剤などを使っている子供の実態調査を行い、医師の判断で例外的にワクチンを接種している患者がどれくらいいるかや副作用の発生状況、それに、どのような安全管理の元で実施したかなどについて調べるということです。

 対象となるのは、年間1000人程度が発症するネフローゼ症候群と呼ばれる腎臓の病気や臓器移植後の患者、それに下痢や激しい腹痛などを伴う潰瘍性大腸炎などの子供たちです。

 研究チームでは来年度末までに結果をまとめた上で、国や関連する学会などとワクチン接種の必要性やどのような安全管理をすれば接種できるかなどについて検討したいとしています。

 調査を取りまとめる国立成育医療研究センターの亀井宏一医師は、「免疫抑制剤を服用している患者は感染症のリスクが健康な人より高く、本来最もワクチンで守る必要のある患者だ。ワクチン接種の需要が高く、有害事象がほとんどないことがわかれば、学会などの意見を聞きつつ、薬の使用方法を説明している添付文書の文言の修正などを相談していきたい」と話しています。

 ワクチンの問題に詳しい川崎市健康安全研究所の岡部信彦所長は、「今回の取り組みは非常に有意義だ」と評価した上で、「感染症のリスクが高いということは生ワクチンそのもので発症するリスクもあり、安易に『免疫が低下している人も生ワクチンを接種して問題ない』と誤解されないように慎重に進めてほしい」と指摘しています。

 2017年11月8日(水)

 

■梅毒患者、2年連続で4000人を超す 全国に広がり、注意が必要に

 性行為などで感染する梅毒の患者数が2年連続で4000人を超え、昨年の患者数をすでに上回ったことが7日、国立感染症研究所の集計で明らかになりました。

 現行の集計方式となった1999年以降では過去最多で、国立感染症研究所・感染症疫学センター第2室の砂川富正室長は、「昨年は大都市に患者が集中していたが、今年は全国に広まってきており注意が必要」としています。

 10月29日までに報告された患者数は4711人で、都道府県別では東京都(1466人)や大阪府(651人)など大都市圏のほか、岡山県(138人)、広島県(110人)が目立ちました。直近3カ月における人口100万人当たりの届け出数は、西日本で高い傾向がみられました。

 梅毒は、梅毒トレポネーマという細菌が原因で起きる感染症。抗菌薬で早期に治療をすれば完治しますが、放置して進行すると脳や心臓に大きな合併症を引き起こします。また、妊婦が感染すると、胎盤を通じて胎児に感染する「先天梅毒」になり、流産や死産になったり、生まれた子供の目や耳などに重い障害が出たりします。

 2017年11月8日(水)

 

■一般病院の平均赤字、人件費が膨らみ1億5707万円 厚労省が2016年度医療経済実態調査

 厚生労働省は8日午前、厚労相の諮問機関である中央社会保険医療協議会(中医協)で、病院や診療所など医療機関の経営状況を調べた2016年度の医療経済実態調査を報告しました。

 精神科を除く一般病院全体の平均収支は、2016年度は1億5707万円の赤字となり、前年度より赤字幅が1807万円拡大しました。利益率はマイナス4・2%の赤字で、前年度より0・5ポイント悪化。統計を取り始めた1967年以降、3番目に低くなりました。

 医療経済実態調査は、医療サービスの価格を決める来年4月の診療報酬改定の基礎資料。厚労省は、「医療従事者の増加や賃金アップで人件費が膨らみ、経営悪化につながった」と分析しています。

 政府は診療報酬改定で医師の収入に直結する「本体部分」を小幅プラス、薬などの「薬価部分」を合わせた全体ではマイナスとする方向で検討中ですが、日本医師会(日医)などによる本体部分の引き上げ圧力はさらに強まりそうです。

 医療経済実態調査は、2年に1度実施。赤字体質の国公立を除いた民間病院だけをみると、0・1%の黒字でした。病院以外の利益率は、一般診療所が13・8%、歯科診療所が21・6%、薬局が7・8%の黒字を確保しました。

 2017年11月8日(水)

 

■ソニー、首掛けイヤホン型の集音器を発売へ 60歳代以上のシニア層向け

 ソニーは7日、テレビ音声や人の話し声など聞きたい音を大きくできる首掛けイヤホン型の集音器を25日に発売すると発表しました。

 医療機器である補聴器とは異なり、主に60歳代以上のシニア層に家電量販店などで販売します。ICレコーダーの集音技術やヘッドホンの装着性などの技術を活用し、高齢者向け市場に参入します。

 イヤホンに内蔵したマイクで人の話し声や周囲の音を拾い、利用者の耳に増幅して届ける仕組み。充電台を接続すれば、テレビの音声をワイヤレスで転送することもできます。電話や旅行、家族とのだんらんなど幅広い利用を想定しています。価格はオープンですが、市場想定は3万5000円前後。カラーはブラックとホワイトの2色。集音器本体の重量は約90グラム。

 高い集音性能を持つほか、ビデオカメラ「ハンディカム」に搭載している技術を生かし、自分の声の音量を抑制して聞きやすくする機能もあります。使用しない時は折り畳み、小さく持ち運べます。利用者に使ってもらう試験を繰り返し、ボタン操作をしやすくするなど、シニアでも使いやすいように設計しました。

 補聴器は医療機器のため医師の診断などが必要ですが、新製品はそうした診断をしなくても購入できます。

 シニア以外にも、深夜や、小さな子供が寝ている時、家事などをしながらテレビの音を聞きたいという30~50歳代のニーズも想定。家族などへのプレゼントとしての購入も見込んでいます。

 2017年11月7日(火)

 

■山形大、パーキンソン病の新しい関連遺伝子を発見 薬の開発に結び付く可能性も

 山形大学医学部は6日、根本的な治療法が確立されていない神経変性疾患パーキンソン病について、「midnolin(ミドノリン)」という遺伝子の欠損が病因の一つと推定されることがわかったと発表しました。

 同学部は発症メカニズムを分子的に解明し、治療のための薬の開発に結び付けたいとしています。

 6日、県コホート研究主任研究者の嘉山孝正同学部参与、山下英俊学部長、薬理学講座の石井邦明教授と小原祐太郎准教授が山形市の同学部で記者会見を開き、薬理学、第3内科などによる共同研究の成果として報告しました。

 パーキンソン病は脳の神経伝達物質「ドーパミン」を出す神経細胞が減り、手足の震えや体のこわばりなどが起こる難病。およそ1000人に1人の割合で発症するとされます。同学部の説明では、発症の約1割が遺伝性(家族性)で、大多数の約9割は孤発性(非遺伝性)によります。遺伝性では、約20種類の原因遺伝子がすでに判明しているといいます。

 同学部は、病気発症の遺伝的要素と生活習慣の関係を解明する「コホート研究」に協力した山形県高畠町内の健常者100人と、同県内の孤発性患者86人から血液サンプルの提供を受け、遺伝子解析を行いました。その結果、孤発性患者86人の10・5%に当たる9人にミドノリンの欠損の異常が認められましたが、健常者100人にはミドノリンの異常が認められませんでした。欠損がみられた患者9人のうち、女性は8人、男性は1人でした。

 こうした分子疫学的な結果から、ミドノリンがパーキンソン病の関連遺伝子であることが判明。小原准教授は記者会見で、「10・5%は非常に大きな数値」と説明しました。

 神経モデル細胞を使い、遺伝子を効率よく改変できる「ゲノム編集」などでミドノリンを欠損させた場合、神経突起の伸展が抑制されたり、パーキンソン病の原因遺伝子「Parkin(パーキン)」の発現が減少する一方で、不良タンパク質の蓄積によって発症が進行したりする可能性も示唆されました。嘉山参与は記者会見で、「将来的に創薬に結び付けばと思う。その第一歩の発表」と強調しました。

 山形大学医学部の説明によると、ミドノリンは体のさまざまな細胞になれるES細胞(胚性幹細胞)から2000年に発見され、胎生期の中脳に多く発現します。知見の報告例が乏しく、詳しい役割や機能などは解明されていません。

 研究結果は、イギリスの電子ジャーナル「サイエンティフィック・リポート」に掲載されました。

 2017年11月7日(火)

 

■血液のがん「多発性骨髄腫」、免疫力を高めて治療 大阪大が新たな手法を開発

 血液のがんの一種「多発性骨髄腫」に効果的な新型のがん免疫療法を、大阪大学の保仙(ほせん)直毅准教授(腫瘍免疫学)らの研究チームが開発しました。

 骨髄腫の細胞表面にあるタンパク質の構造を生かした手法で、人の培養細胞やマウスの実験で効果を確認しました。成果はアメリカの科学誌「ネイチャー・メディシン」の電子版に7日、掲載されました。研究チームは2019年度にも、人での治験を始めたいとしています。

 開発した治療法は、免疫細胞のT細胞を遺伝子操作してがんへの攻撃力を高め、患者に戻す「CAR-T(カーティー)細胞療法」の一つ。アメリカでは、急性リンパ性白血病への治療法として今夏に承認されています。

 研究チームは多発性骨髄腫の細胞に結合する1万種以上の抗体を作り、その中から正常な細胞には結合しないものを選択。この抗体を持ったCAR-T細胞を培養し、骨髄腫のマウス16匹に注射すると、12匹は60日間生き延びました。注射しなかった16匹はすべて、40日以内に死んでしまいました。

 抗体は、骨髄腫細胞の表面に存在する特定のタンパク質に結合していました。同種のタンパク質は正常な細胞の表面にもありますが、抗体が結合する部分が隠れる構造になっていました。これに対し、骨髄腫の細胞ではタンパク質の立体構造が変化して、抗体が結合しやすい形になっていることがわかりました。

 保仙准教授は、「タンパク質の構造を標的にした新たな免疫療法の可能性が示された」と話しています。

 多発性骨髄腫は、正常な血液細胞を作れなくなる病気で、国内の患者数は高齢者を中心に約1万8000人とされます。近年は新薬の登場で生存期間は延びていますが、再発して薬が効かなくなることが多いのが課題となっています。

 2017年11月7日(火)

 

■2017年の世界の平均気温、上位3位に入る見通し ドイツで開幕のCOP23で発表

 今年の世界全体の平均気温は、観測史上、上位3位に入る高い気温になる見通しだとドイツで開かれている国連の会議「COP23」で報告され、調査を行った国際機関は、世界規模の温暖化対策を強化しなければ気温上昇の傾向は今後50年は続く恐れがあるとしています。

 これは世界気象機関(WMO)が6日、ドイツのボンで開幕した地球温暖化対策について話し合う国際会議、COP23の会場で発表しました。

 WMOによりますと、今年1月から9月までの世界全体の平均気温はおよそ14・8度で、産業革命前と比べて1・1度高く、観測史上、上位3位に入る高い気温になる見通しだということです。

 平均気温が最も高かったのは昨年で、2番目に高かったのは一昨年だったことから、WMOは地球温暖化による気温の上昇傾向がこの3年間でより顕著になっているとしています。

 また、今や世界人口の約3割が、毎年少なくとも数日間「極度の高温」を経験しており、命を奪う可能性があるほどの熱波にさらされる人の数は2000年以降、1億2500万人増加したといいます。

 今年は、勢力の強い3つのハリケーンがアメリカ南部やカリブ海で大きな被害をもたらすなど、世界で異常気象とみられる災害が相次ぎました。

 WMOは地球温暖化と異常気象の頻度との因果関係については断定できないとしていますが、「世界規模の温暖化対策を強化しなければ、気温上昇の傾向は今後50年は続く恐れがある」と指摘し、警鐘を鳴らしています。

 2017年11月7日(火)

 

■食品リコール報告をメーカーに義務付け、情報を一元管理 厚労省が法改正へ

 厚生労働省は6日までに、異物混入や誤表示があった食品をメーカーなどが自主回収する「食品リコール」に関して、メーカー側に自治体への報告を義務付ける方針を固めました。

 現状では、食品リコールの発生状況を国が把握する仕組みがありませんが、自治体を通じ、情報を一元管理できるようにします。

 食品衛生法改正案を来年の通常国会に提出する見込みで、メーカー側が報告を怠った場合に罰則を科すことも検討します。

 また、メーカー側がインターネット上でリコールを報告できるシステムを開発する方針で、必要な3億円余の軽費を来年度予算の概算要求に盛り込みました。消費者が食品リコールに関する情報をまとめて閲覧できるホームページも作成し、回収対象の商品名や写真、回収理由と健康被害の可能性、問い合わせ先を公表する方針。

 食品リコールは、異物混入や誤表示などのほか、加熱殺菌やアレルギー表示が不十分だった食品などが対象となります。厚労省は、情報を一元化して実態把握を進めることで、メーカー側や消費者に注意喚起を促すとともに、自治体間で問題のある食品などの情報を確実に共有できるようにします。

 厚労省によると、都道府県や政令指定都市、中核市、中核市以外の保健所設置市などに、食品リコールの報告をメーカー側に求めているかどうか尋ねたところ、回答した140自治体のうち4分の3に当たる108自治体は条例などで独自に報告を求めていましたが、残りの4分の1は報告を求めていませんでした。

 独自に報告義務を課している自治体に限ると、2016年度の1年間で食品リコールは計967件確認されていますが、実際は、さらに多いとみられます。

 毎年、多数発生している食品リコールは、消費者が口にしても問題がないケースが大半を占める一方で、健康被害が出る深刻な事例も起きています。

 神奈川県平塚市の食品会社などが昨年、販売した冷凍メンチカツを食べた人が腸管出血性大腸菌O157に感染。自主回収を進めたものの、健康被害は数十人に及びました。

 大手メーカーの製品で食品リコールが発生することもあり、マルハニチロは今年10月、輸入したムール貝の冷凍食品で、原材料表示などが一部不鮮明だったとして5800個を回収すると公表。伊藤ハムも同月、腐敗した商品が見付かったとして、総菜食品計3570パックの回収を発表しました。

 製品そのものに問題がなくても、表示の記載ミスがあれば、食品リコールの対象となります。外食チェーン大手のリンガーハットは9月、持ち帰り用のチャーハンで、アレルギー物質の卵の記載が漏れるなどしたとして約3万個を回収するとしました。

 厚生労働省によると、アメリカやヨーロッパ連合(EU)ではすでに、メーカー側が食品リコールを届け出る制度があります。

 2017年11月6日(月)

 

■慢性的炎症抑える薬での心筋梗塞予防、臨床試験で成功 ノバルティスファーマや東北大学病院など

 日本人の死亡原因として2番目に多い心臓病の中で多くを占める心筋梗塞の患者に、慢性的な炎症を抑える薬を投与する大規模な臨床試験を大手製薬会社と世界各国の病院などが行ったところ、心筋梗塞の再発を20%余り少なくすることに成功したとする結果を公表しました。慢性的な炎症を抑えることが心筋梗塞の予防につながることを示した初めての成果とされ、今後、治療法を変える可能性があると注目されています。

 心筋梗塞はコレステロールや血の塊などで血管が詰まり心臓が働かなくなる病気で、国内では毎年およそ4万人が亡くなるなど、日本人の死亡原因として2番目に多い心臓病の中でも多くを占めています。

 治療は主にコレステロールや血圧を下げる薬が使われていますが、大手製薬会社ノバルティスファーマや東北大学病院、アメリカのハーバード大学医学大学院、ワシントン大学医学大学院などは、肥満の人などの体内で起きている慢性的な炎症が心筋梗塞の発症に関係している可能性があるという研究に注目しました。

 そして、日本を含む世界39カ国で慢性炎症のある心筋梗塞の患者およそ1万人に対し、炎症を抑える薬を使って心筋梗塞の再発をどれくらい抑えられるか臨床試験を行いました。その結果、炎症を抑える薬を投与したグループでは再発を24%少なくできたということです。

 慢性的な炎症は、体内の過剰な脂などで免疫細胞が活性化されて起き、この炎症で血管が傷付き、血の塊ができるなどして心臓の血管を詰まらせると考えられるということです。

 今回の結果は慢性的な炎症を抑えることが心筋梗塞の予防につながることを示した初めての成果とされ、今後、炎症をターゲットにした薬の開発が加速するとみられています。

 臨床試験の日本の責任者で東北大学病院循環器内科の下川宏明教授は、「今後、慢性炎症があるかどうかが心筋梗塞の治療の大きなポイントになる可能性がある」と話しています。

 慢性的な炎症と心筋梗塞のかかわりについては、炎症を抑える治療を受けているリウマチ患者の中で心筋梗塞を起こす人が少ないなど、一部の研究では関連が示唆されてきました。その後の研究で、肥満が原因で起きる慢性的な炎症によって心筋梗塞が引き起こされるメカニズムが解明され始めています。

 ハーバード大学医学大学院のゴーカン教授らによりますと、肥満の人の体内では、脂を大量に蓄積した脂肪細胞が限界まで大きくなると、脂などを異物として攻撃するよう警告するメッセージ物質を放出し始めます。このメッセージ物質は全身に届けられて免疫細胞は活性化し、分裂するなどしてさらに警告メッセージを放出します。こうして慢性的な炎症が引き起こされます。

 活性化した免疫細胞はその後、血管の壁に入り込み、余分な脂を取り込みますが、大きく膨れ上がり、やがて破裂します。その際、免疫細胞が持っていた攻撃用の有害物質が放出され血管の壁を傷付けます。こうした傷によって血管の壁には血の塊ができ、大きくなると血液の流れに乗って移動し、心臓の血管に詰まることで心筋梗塞が起こっていると考えられています。

 2017年11月6日(月)

 

■生活保護受給者、後発薬の使用を原則に 厚労省と財務省が医療費削減方針

 厚生労働省と財務省は生活保護世帯の医療費(医療扶助)削減に向け、受給者には医薬品の特許が切れた後に販売される価格の安い後発医薬品、いわゆるジェネリック医薬品の使用を原則とする方針を固めました。

 現在は受給者が希望すればまず先発薬を処方して、その後、後発薬への切り替えを促しています。ただし、なかなか切り替えが進んでいないため、医師が問題ないと判断すれば、後発薬からの提供を徹底します。

 生活保護の医療扶助は全額が公的負担で、2015年度の国と地方を合わせた生活保護費のうち、医療扶助は48%の約1兆8000億円。高齢化を背景に5年間で1割以上増え、削減が課題です。

 両省は後発薬を使用しても問題ない人について、在庫がない場合などの例外を除き、最初から後発薬を処方します。現在の生活保護法では、後発薬の使用を「可能な限り促す」としていますが、より踏み込んだ表現とするかどうか議論し、来年の国会での法改正を視野に検討を急ぎます。

 生活保護受給者の後発薬の使用割合は、現状では7割。福祉事務所の指導により、毎年割合は上昇していますが、自治体の取り組みだけでは限界との強い声も出ています。現在は医師の判断より受給者本人の希望が優先されています。財務省によると、後発薬を調剤しなかった理由の約7割が患者の意向といいます。

 財務省は医療扶助の削減策として、医療機関の受診回数が多い人に償還払いによる一時的な自己負担を求めています。一時的でも自己負担することで回数を抑える効果があるとみるものの、厚労省は必要な診療までためらう人が出るとしています。

 来年度は5年に1度の生活保護の生活費(生活扶助)の支給水準の見直しを控えており、厚労省の審議会で年末に向けて議論が進んでいます。また、今年度から全国を都市部と地方部で6段階に分類し、生活扶助の支給額を分ける「級地制度」の見直しに向けた調査研究も、始める方針。見直しは1987年以降、1度も実施されていません。

 2017年11月5日(日)

 

■医療機関の虚偽や誇大な広告、279件を把握 厚労省がネットでパトロール

 医療機関によるホームページ(HP)上での「絶対に安全な手術を提供します」といった虚偽や誇大な広告の取り締まりに向け、厚生労働省が8月下旬からインターネット上でパトロールを始めたことが4日、明らかになりました。

 こうした広告は特に脱毛や脂肪吸引などを行う美容医療の分野で目立ち、施術効果を誇張したり、安価な料金を掲載したりするケースが多いといい、不適切な記載があるとして把握できたのは9月末までに279件でした。厚労省は、当該の医療機関に改善を求めます。

 今年6月、医療機関のHPを「広告」とみなして、虚偽や誇大な広告を罰則付きで禁止する改正医療法が成立しており、来年6月までに施行されることになっています。施術効果の誇張などの恐れがあれば、自治体が医療機関への立ち入り検査などを実施し、違反があるのに改善しなければ罰金などを科します。

 インターネット上でのパトロールは、厚労省が改正医療法の施行に先立って策定し、公表していたガイドラインに基づき実施。委託を受けた日本消費者協会が、医療機関のHPを監視しています。

 2017年11月5日(日)

 

■医療用保湿剤「ヒルドイド」、がん患者が広く使用 患者団体が調査

 美容目的の不適切な使用が横行しているとして医師の処方を制限する議論が始まった医療用保湿剤は、抗がん剤や放射線治療の副作用の治療に広く使われていることが、患者団体の調査で明らかになりました。

 制限が設けられるとがん患者が処方を受けられなくなる恐れがあるとして、6日に厚生労働省に配慮を求める要望書を提出します。

 問題になっているのは、マルホ(大阪市)の医療用保湿剤「ヒルドイド」。主に皮膚科や小児科でアトピー性皮膚炎、乾燥肌、ケロイドなどの治療に使われていますが、患者団体「卵巣がん体験者の会スマイリー」が患者や医師に調査したところ、抗がん剤や放射線治療に伴う皮膚の乾燥や炎症、かゆみのほか、手のひらや足の裏が痛んだり水膨れができたりする「手足症候群」と呼ばれる副作用の治療にも使われていました。

 このヒルドイドは雑誌やインターネットで「美肌になれる」「高額な乳液より保湿力がある」と紹介され、医療保険を使って安く入手できるため処方を求める女性が急増。今月1日、厚生労働相の諮問機関である中央社会保険医療協議会(中医協)で問題提起され、委員からアトピー性皮膚炎などの治療を伴わず単独で処方する場合は保険適用外とすべきだとする意見も出ました。

 スマイリーの片木美穂代表は、「副作用の治療薬だけを近所の医療機関で処方してもらうケースも多く、単独処方が制限されると患者が困る。副作用への適切な対応ができないと患者の生活の質が低下するだけでなく、治療への意欲が妨げられてしまう」と訴えています。

 2017年11月4日(土)

 

■がんゲノム医療の専門外来を開設へ  慶大病院が11月中にも

 慶応義塾大学病院は、がん患者のゲノム(全遺伝情報)を調べて効果の高い治療薬を投与する専門外来を11月中にも開設します。がんにかかわる160種類の遺伝子を調べ、変異に合う薬を選びます。

 従来のがん治療は肺や胃、大腸などの臓器別に施されていますが、がんゲノム医療はがん細胞に生じた遺伝子の変異を検査で特定し、その変異に合った最適の薬や治療法を選びます。これまでより効果的で副作用も少ないと期待されています。

 がんゲノム医療は現在、欧米が先行し、日本では一部病院が試験的に実施していますが、普及が進めば日本のがん治療の在り方を根本から変える可能性があり、厚生労働省は2017年度から始める第3期がん対策推進基本計画の柱に位置付けています。

 開設される慶大病院のがんゲノム医療の専門外来では、手術時に取ったがん組織や受診時に採取した血液から、北海道大学発ベンチャーのジェネティックラボ(札幌市)や三菱スペース・ソフトウエア(東京都港区)が遺伝子を解析します。最短3週間で結果がわかり、症状などをみて慶大病院の医師が治療法を決めます。

 検査費用は公的医療保険が使えず、全額自己負担で80万円弱の見込み。まず、通常の治療薬が効かなくなった患者などが、対象となります。

 国内のがんゲノム医療は、国立がん研究センターや京都大学などが100種類前後の遺伝子で始めています。

 2017年11月4日(土)

 

■B型肝炎への偏見防止の教育、4割未満 厚労省、医療従事者の養成施設に実施を要請

 集団予防接種の注射器使い回しによるB型肝炎感染被害を巡り、看護師、歯科衛生士、保健師、助産師など医療従事者の養成課程で、患者らへの偏見や差別を防ぐための講義を実施している医療関係技術者養成学校が4割に満たないことが3日、厚生労働省研究班の調査で明らかになりました。

 厚労省は、教育の推進を求める通知を47都道府県に出しました。

 B型肝炎は日常生活ではほとんど感染せず、適切な対応を取れば防げますが、依然として医療機関で診療の順番を後回しにされるなど不当な扱いを受ける患者らもおり、医療従事者への教育徹底が急務です。

 研究班は2016年度、看護師、准看護師など4職種を教育する都道府県指定の約1100校を調査。約6割から回答があったうち、偏見防止の講義を実施したのは36・5%で、患者や家族の話を直接聞く機会を設けたのは9校だけでした。

 2017年11月4日(土)

 

■世界の主要温室効果ガス濃度、観測史上最高を更新 世界気象機関が解析

 地球温暖化をもたらす3種類の温室効果ガスの世界の平均濃度が、2016年はいずれも解析を始めてから最も高い値になり、このうち二酸化炭素(CO2)は、2015年からの増加量も過去最多となったことが、世界気象機関(WMO)の解析で明らかになりました。

 WMOは、地球温暖化の原因となる主要な3種類の温室効果ガスについて、世界の気象当局や研究機関が観測しているデータを解析し、2016年のデータを発表しました。

 発表によりますと、二酸化炭素の世界の平均濃度は、年々上昇を続け、2016年は403・3ppm(ppmは100万分の1、体積比)と、世界各地で観測を始めた1984年以降、最も高くなりました。

 また、2015年からの増加量も3・3ppmと過去最も多くなり、最近10年間の1年当たりの平均増加量の1・5倍近くに達しています。

 このほかの温室効果ガスの世界の平均濃度は、メタン(CH4)が1853ppb、一酸化二窒素(N2O)が328・9ppbと、いずれも2015年を上回り、観測史上、最も高くなりました。

 WMOの解析で中心的な役割を果たした気象庁は、「短時間に大雨が降るケースが徐々に増えるなど、地球温暖化による災害のリスクが高まりつつあると考えられ、引き続き温暖化対策に取り組む必要がある」と話しています。

 2017年11月4日(土)

 

■ほくろ消しに新手法、色素作る細胞を高圧処理で破壊 関西医科大が臨床研究

 関西医科大学(大阪府枚方市)などの研究チームは2日、黒い色素を作る細胞を死滅させることで、ほくろを消す手法を開発したと発表しました。生まれ付き大きなほくろを持つ人を対象に、この手法を使ってほくろを消す臨床研究を始めました。

 ほとんどのほくろは、皮膚にある母斑(ぼはん)細胞が作るメラニン色素によって黒く見えます。研究チームは、母斑細胞をなくせば色素が作られず、すでにある色素も体内に吸収されて、ほくろが消えると仮定。大きさが20センチ以上のほくろを持つ「先天性巨大色素性母斑」の人のほくろを使って検証しました。

 1センチ四方のほくろの組織を2000気圧の高圧に10分間さらし、皮膚の主要成分のコラーゲンなどを損傷することなく自然のまま残し、母斑細胞を含む細胞を破壊。その後、拒絶反応が起きないマウスに移植して様子を見ると、半年後から白っぽくなり、1年後にはほぼ黒い色素が消えました。高圧処理をせずに移植した組織は、1年後も色が変わりませんでした。

 関西医科大の森本尚樹准教授(形成外科学)によると、母斑細胞がメラニン色素をつくることは知られていましたが、どうすればほくろを消せるかは十分検証されてこなかったといいます。

 ほくろを消すためによく用いられるレーザーは、メラニン色素が標的で、生き残った母斑細胞で再発することが少なくないため、森本准教授らは今回の手法で、2万人に1人ほどの割合でいるとされる先天性巨大色素性母斑の人のほくろを消す臨床研究を開始。切り取ったほくろの組織を高圧処理して元に戻し、自家培養表皮と組み合わせて皮膚を再生する手法を昨年から10人に実施し、経過を調べています。

 森本准教授は、「人では3カ月後ぐらいから色素が消え始める。先進医療で使えるように、来年から新たな臨床研究を始めたい」と話しています。

 研究成果は、アメリカの科学誌「プロスワン」に掲載されました。

 2017年11月3日(金)

 

■今冬のインフルエンザワクチン、医師の65%が「足りない」 東京保険医協会が調査

 インフルエンザは例年、11月末から全国的な流行が始まりますが、東京都内5500人の医師で構成する東京保険医協会では、会員からインフルエンザワクチンの入荷が遅れているなどの連絡を受け、10月17~27日に小児科と内科の医師3510人に緊急アンケートを実施し、744人の医師から回答を得ました。回収率は21%。

 それによると回答した小児科の75%、内科の64%が「インフルエンザワクチンが足りない」としており、全体では65%が不足を認識していました。67%の医師が前年に比べインフルエンザワクチンの納入量が少ないとしており、具体的には「2割減」とする声が27%、「3割減」が21%、「5割減」も14%だといいます。

 対策としては、「ふだん診ている患者を優先し、新規希望者は断っている」が21%、「定期接種の高齢者を優先している」が14%、「1回目を優先して2回目を待たせている」が8%、「大人の接種は見合わせている」が3%、「全面的に対応不能」が4%。「例年通り接種できている」は、33%でした。

 東京保険医協会は、インフルエンザワクチンの不足の背景として、今シーズンに製薬メーカー4社が製造するインフルエンザワクチンの本数は約2528万本と、昨シーズンより製造本数が265万本少なく、昨シーズンに実際に使用された約2642万本を114万本下回る水準にあることを挙げています。ワクチンの製造株を決定する厚生労働省の通知が遅れたのが一因としています。なお、インフルエンザワクチンの不足は過去にも起きているといいます。

 また、東京保険医協会では11月1日付で、厚労省に供給不足の実態調査や、不足の解消を求める要望書を送っています。

 厚労省は、11月から出荷量が徐々に増える見通しであるほか、一部のインフルエンザワクチンの検査を前倒しして製薬メーカーが出荷を早められるよう対策をしているとしています。また、厚労省は医療機関に対し、13歳以上の人へは1回の接種を徹底することや、必要以上のインフルエンザワクチンの発注をしないようすでに通知しています。

 2017年11月3日(金)

 

■がんの緩和ケア、医師の知識が7年間で14%増 厚労省研究班が調査

 厚生労働省の研究班は2日、がん患者の苦痛を和らげる緩和ケアについて、医師の知識が2015年までの7年間で14%増えたとする調査結果を発表しました。

 厚労省は2008年から緩和ケア研修会を開催するなど、医師の技能向上に取り組んできました。研究班は、「一定の成果が出ている」と分析しています。

 2015年に無作為で選ばれた全国のがん治療に携わる2720人の医師が、痛みの管理の仕方など緩和ケアの問題に解答。研究班が同じ調査をした2008年と正答率を比較した結果、100点満点に換算すると、平均点は68点から78点に上がっていました。緩和ケアを行う医師の困難感も点数化したところ、同期間に6%減少していました。

 研究班は2015年の分析対象の医師のうち、厚労省が推進する緩和ケア研修会の受講の有無で、医師の知識レベルを比較。受講した619人の医師の平均点は86点に対し、受講していない619人の医師は74点にとどまりました。

 厚労省は2007年度に始まったがん対策の指針「がん対策推進基本計画」に基づき、緩和ケアの提供体制の構築に取り組んできました。研究班は、「今後は患者や家族への効果を明らかにする必要がある」と話しています。

 2017年11月3日(金)

 

■明星食品、カップ麺67万4000食を自主回収へ 無許可の施設で具材を加工

 明星食品(東京都渋谷区)は3日、カップ麺約67万4000食を自主回収すると発表しました。

 回収対象は、「明星一平ちゃんしょうゆ味」、「明星一平ちゃんとんこつ味」、「明星チャルメラカップバリカタ豚骨」、それに「セブンプレミアムスープが決め手の中華そば」の4商品の一部。

 カップ麺の具材のチャーシューを作っている福島県の会社が、食肉製品製造業に関する保健所の営業許可がない工場や施設で加工を行っていた疑いがあるため、回収します。

 明星食品は、「食べても健康に影響を及ぼすことはない」と説明しています。

 問い合わせは明星食品お客さまセンター(電話0120-917-056)。

 2017年11月3日(金)

 

■医療用保湿剤「ヒルドイド」、中医協で適正使用を議論 美肌目的の女性利用に対処へ

 雑誌やインターネットで「美肌になれる」「高額な乳液より保湿力がある」との情報が広まり、化粧品代わりの不適切な使用が指摘されている「ヒルドイド」などの医療用保湿剤について、1回の受診で25グラム51本分以上と大量に処方された例が2016年度に1000回以上あったことが1日、厚生労働省の調査で明らかになりました。

 厚労相の諮問機関である中央社会保険医療協議会(中医協)は、医師の処方の上限設定など適正使用の在り方の議論を始めました。

 調査は、ヒルドイドの軟こうやクリーム、同様成分の後発薬などの医療用保湿剤について、1回の処方量を2016年度のレセプト(診療報酬明細書)から集計。その結果、多くは1回に4本分(100グラム)以内の処方でしたが、10本分(250グラム)以上の処方も100万回以上あり、中には51本分以上の処方もありました。

 厚労省は、「500グラムのボトルを処方されると25グラムチューブ20本分となる。必ずしも多量の本数を処方された例だけではない」としています。

 ヒルドイドは25グラム入り軟こうやクリームが1本約590円で、公的医療保険を適用すれば患者の支払額は3割負担で約180円となります。

 ヒルドイドは医師の診断と処方せんが必要な薬で、薬局などで直接購入することはできません。主に皮膚科や小児科でアトピー性皮膚炎、乾燥肌、ケロイドなどの治療に活用され、かゆみ止めの薬などと一緒に処方されるケースが多くなっています。しかし、健康保険組合連合会が124健保組合の加入者のレセプト(診療報酬明細書)で調べたところ、25~54歳における単独での処方額は2016年9月までの2年間で、男性の1・1億円に対し、女性が約5倍の5・6億円に上りました。

 中医協では、1回の処方量に上限を設けたり、単独での処方を保険から外したりする案が検討されています。健康保険組合連合会は「保険適用外とすべきだ」と提言し、日本皮膚科学会や製造元のマルホは適正な使用を呼び掛けています。

 2017年11月2日(木)

 

■75歳以上の高齢ドライバー、「認知症の恐れ」が3万170人 改正道交法施行後、警察庁まとめ

 75歳以上の高齢ドライバーの認知機能検査を強化した改正道路交通法が3月12日に施行されてから9月末までの約6カ月半で、検査を受けた全国の111万7876人のうち、2・7%に当たる3万170人が認知症の恐れがある「第1分類」と判定されたことが2日、警察庁のまとめ(暫定値)で明らかになりました。

 第1分類は、医師による診断を受けることが義務付けられています。これまでに7673人が受診し、697人が免許取り消し、停止などの行政処分を受けました。ほかに、925人が免許取り消しなどに向けた手続き中といいます。都道府県別の免許取り消し、停止などの行政処分数は、神奈川県65人、福岡県62人、茨城県51人、北海道50人、長野県と愛知県47人の順に多くなっています。

 警察庁は、認知症の診断による免許取り消し、停止が年間1万5000人程度に上ると見込んでいました。人数が同庁の予想を下回っているのは、免許取り消しなどの処分を受ける前に自主返納する高齢者が多いことが要因。

 第1分類とされた人のうち、6391人が医師のアドバイスなどで自主返納しました。有効期限切れで免許が失効した人も1267人いました。

 自主返納した場合、身分証明書として使える「運転経歴証明書」を申請でき、商店などで優遇サービスを受けられるメリットがあります。75歳以上の自主返納は認知機能検査を受けていない人も含めて、今年1~9月に18万4897人と、年間で最多だった2016年の16万2341件をすでに超えています。

 認知機能検査で、認知機能低下の恐れがある「第2分類」は30万165人、問題がない「第3分類」は78万7541人。検査の機会は、105万6779人が免許の更新時、6万1097人は信号無視などの交通違反をした際の臨時検査でした。

 2017年11月2日(木)

 

■筋強直性ジストロフィー、筋肉委縮の仕組みを解明 大阪大の研究チーム

 全身の筋肉が徐々に衰える難病・筋ジストロフィーの中で、最も患者数が多い「筋強直性ジストロフィー」が発症する仕組みを解明したと、大阪大学の中森雅之助教(神経内科)らの研究チームが発表しました。

 免疫にかかわるタンパク質が異常に分泌され、筋肉を委縮させていました。治療薬の開発につながる可能性があるといいます。論文は1日付で、アメリカの科学誌「セル・リポーツ」電子版に掲載されました。

 筋強直性ジストロフィーは成人後に発症し、全身の筋肉が委縮するほか、白内障などにもなることが多い難病で、患者数は国内で1万人以上とされますが、根本的な治療法はありません。患者からは、共通するDMPKという遺伝子の特徴が見付かっていましたが、筋肉が委縮する仕組みは不明でした。

 中森助教らは、重症患者10人から採取した筋肉の細胞を詳しく調べた結果、インターロイキン6(IL6)というタンパク質が大量に作られていることがわかりました。IL6には激しい免疫反応を引き起こす作用があり、筋肉を維持するバランスを崩していると見なされます。IL6の働きを抑える薬は、関節リウマチの治療で広く使われており、応用が期待できるといいます。

 国立精神・神経医療研究センターの木村円(えん)室長は、「難病のメカニズムを明らかにした重要な研究だ。ただ、一般的に難病については不明な点も多く、治療法の確立には時間がかかるだろう。産官学が協力して取り組むべきだ」と話しています。

 2017年11月2日(木)

 

■薬害C型肝炎被害者救済法を延長へ 与党が議員改正法案を提出

 血液製剤の投与でC型肝炎ウイルスに感染した患者などに国が給付金を支払う薬害C型肝炎被害者救済法が来年1月15日に給付金の請求期限を迎えることから、自民、公明両党は1日、議員立法で期限を延長する改正法案を特別国会に上程する方針を明らかにしました。患者や支援団体が延長を求めていました。

 薬害C型肝炎被害者救済法は、1994年以前に手術や出産の際、止血のための血液製剤「フィブリノゲン」などを投与されたことが原因でC型肝炎ウイルスに感染した患者や遺族を救済する内容。肝硬変・肝がん(死亡を含む)4000万円、慢性肝炎2000万円、未発症者1200万円の給付金を支払います。

 患者は1万人以上いるとされますが、厚生労働省によると、9月末時点で給付金が支給されたのは2293人で、2割程度にとどまっています。

 2017年11月2日(木)

 

■臍帯血の無届け移植、松山地裁で公判始まる 仲介役が起訴内容認める

 東京都や大阪府のクリニックで臍帯血(さいたいけつ)が国に無届けで移植されたとして、臍帯血を扱う会社社長や医師らが再生医療安全性確保法違反の罪で起訴された事件の公判が2日午前、松山地裁で始まりました。

 福岡市の臍帯血仲介会社「レクラン」(閉鎖)元社長の井上美奈子被告(59歳)は、「間違いありません」と起訴内容を認めました。検察側は懲役10カ月を求刑し、井上被告についてはこの日で結審しました。判決は12月14日。

 起訴されたのは計4人で、井上被告のほか、茨城県つくば市の臍帯血保管販売会社「ビー・ビー」(解散)社長で事件の中心的な役割をしたとされる篠崎庸雄被告(52歳)、東京都渋谷区の「表参道首藤クリニック」院長の首藤紳介被告(40歳)、大阪市の一般社団法人「さい帯血協会」理事の坪秀祐被告(60歳)。篠崎被告と坪両被告は、横領罪などでも起訴されています。残る3被告の初公判は、2日午後以降の予定。

 臍帯血は、へその緒や胎盤に含まれる血液。血液細胞の元になる幹細胞が多く含まれており、法律に基づく公的バンクが産婦から無償提供を受け、白血病の治療などに使われています。2014年に再生医療安全性確保法が施行され、2015年11月以降は他人の細胞を移植する場合は国に治療計画を提出することが原則、必要になりました。

 愛媛県など4府県警の合同捜査本部が摘発し、計4人が起訴された一連の事件で最初の公判では、検察側は冒頭陳述や論告で、実施された臍帯血の移植が国への治療計画の提出が必要なアンチエイジングや脳性まひなどの治療目的だったと指摘。井上被告は取引先のクリニックなどに対し、提出が不要な疾病の疑いがあるとカルテに書くよう助言して販売を続けたとして、「危険、悪質な犯行で再生医療の信頼を損ねた」と述べました。弁護側は「今後は再生医療にかかわらない」として、執行猶予付きの判決を求めました。

 起訴状によると、2016年7月28日~2017年4月12日の間、6回にわたり、篠崎庸雄被告や首藤被告らと共謀し、他人の臍帯血を患者3人に移植したとされます。

 2017年11月2日(木)

 

■臍帯血の民間バンク2社、厚労省のHPで情報公開を開始 4社は廃業を決める

 厚生労働省は1日、民間の臍帯血(さいたいけつ)バンク2社について、同省のホームページ(HP)で情報公開を始めました。「赤ちゃんを出産予定のお母さんへ」というタイトルで、臍帯血移植の説明や公的バンクと民間バンクの違いとともに、2社が同省に提出した書類を掲載しています。

 厚労省は東京都や大阪府のクリニックで臍帯血が国に無届けで移植された事件を機に、民間バンクの実態調査を実施。親が生まれた子供の病気に備え、臍帯血を有料で保管して凍結保存する民間バンクが9月時点で、少なくとも7社あることが判明しました。

 同省はこのうち、ステムセル研究所(東京都港区)とアイル(東京都板橋区)について、事業の届け出書類や契約書などの公開を始めました。同省は、届け出内容の審査や承認はしていません。

 ほかの民間バンク5社のうち1社は届け出準備中で、4社は廃業ずみか廃業予定だといいます。厚労省は4社に対して、廃業に当たり、保管中の臍帯血の取り扱いは契約者の意向に沿って決めるよう指導しています。 

 稼働中の民間バンクは3社になり、すでに2社の情報は利用希望者が厚労省のHPで確認できるようになり、もう1社の情報も届け出があり次第、確認できるようになります。

 2017年11月2日(木)

 

■他人のiPS細胞移植、5人への手術を終える 理研などが目の難病で臨床研究

 他人由来のiPS細胞(人工多能性幹細胞)を目の難病の治療に用いる世界初の臨床研究を進めている理化学研究所などの研究チームは1日、当初の計画通り5人の患者への移植手術を終えたと発表しました。

 患者の経過などは「研究に支障が出る恐れがあり、現段階では公表を控えたい」としています。早ければ2018年度中にも、研究結果をまとめる方針。

 臨床研究は、網膜の細胞の異常によって視野の中心が暗くなり、悪化すれば失明の恐れもある「滲出型加齢黄斑変性(しんしゅつがたかれいおうはんへんせい)」の患者が対象。京都大学iPS細胞研究所がストックしている他人に移植しても拒絶反応を起こしにくい特殊なiPS細胞から網膜の細胞を作製し、今年3月の兵庫県在住の男性から順次、神戸市立医療センター中央市民病院と大阪大学病院で移植手術を実施しました。

 術後1年間の経過観察で、大きな拒絶反応がないかなどの安全性を確かめます。今後の患者募集は終了しました。

 iPS細胞を使う目の難病治療は、理化学研究所の高橋政代プロジェクトリーダーが研究を率いています。2014年には患者本人の細胞からできたiPS細胞で、世界初の手術をしました。

 患者本人の細胞は拒絶反応の心配が少ないものの、細胞ががんにならないかを調べる検査などに約1億円かかったとされます。あらかじめ安全性を確かめた他人のストックiPS細胞を使えば、1人当たりの費用を大幅に削減できます。

 2017年11月1日(水)

 

■梅毒患者、現行統計で年間最多の4568人に 岡山県などの地方でも患者が増加

 梅毒の感染が全国的に広がっています。性感染症の梅毒について今年、全国の医療機関から国立感染症研究所に報告された患者の数は10月22日までに4568人と、現行の統計を取り始めた1999年以来、年間の患者数として最も多くなりました。

 専門の医師は、「不特定多数との性交渉を避け、不安に思ったら医療機関を受診してほしい」と呼び掛けています。

 梅毒は細菌による感染症で、性的な接触などによって感染します。感染して3週間ほど後に陰部などに潰瘍(かいよう)ができ、1、2カ月後に全身に発疹の症状が現れ、放置すると血管が破裂する原因になります。妊婦が感染すると、流産や死産になったり、生まれた子供の目や耳などに重い障害が出たりします。コンドームを使うことで感染のリスクを減らすことができ、治療にはペニシリンが有効です。

 都道府県別の患者数はみると、東京都が1423人と最も多く、次いで大阪府が624人、愛知県が277人、神奈川県が258人、福岡県が190人などとなっています。昨年の同じ時期と比べて患者数が大幅に増えた地方もあり、昨年38人だった岡山県は4・3倍の135人、15人だった熊本県は3・9倍の55人に急増。広島県109人、香川県59人、青森県57人、山口県21人と、いずれも昨年の2倍を超えました。

 梅毒の年間の患者数は1945年から1954年には20万人程度とされていましたが、抗生物質の普及とともに減少傾向を示し、1997年には500人程度になりましたが、2010年から再び増加に転じています。年間の患者の報告数は2013年に1228人と1000人を超え、2015年には2690人となり、2016年には42年ぶりに4000人を超えて4559人と増えていました。女性は20歳代に多く、男性は20~40歳代に多くなっており、性産業に従事する若い女性やその客となる男性の間で感染が広がっている可能性が指摘されています。

 国立感染症研究所の大西真・細菌第一部長は、「感染が各地に広がってきている。感染の恐れがある人は早く医療機関を受診してほしい」と話しています。

 東京都新宿区で梅毒の診療を長く続けているプライベートケアクリニック東京の尾上泰彦医師は、「風俗産業にかかわる人で増加し、最近では一般の若い女性や主婦でも増えている。梅毒は感染の初期は症状に気付きにくい特徴があり、不特定多数との性交渉を避けるとともに、不安に思ったら医療機関を受診してほしい」と話しています。

 2017年11月1日(水)

 

■心不全、末期の症状ではなく予防可能 循環器学会などが定義を公表

 心臓の機能に障害が起き、体にさまざまな症状が出る「心不全」について、日本循環器学会と日本心不全学会は31日、医学的な意味を一般向けにまとめた定義を公表しました。

 心不全は悲報記事などで死因として書かれることが多く、人間の最期を表すような末期の病気だと誤解される場合が少なくありません。実際は予防や症状の改善が可能であり、正確な意味を広く伝えていきたいとしています。

 両学会は、心不全を「心臓が悪いために、息切れやむくみが起こり、だんだん悪くなり、生命を縮める病気」と定義しました。

 高血圧や心筋梗塞(こうそく)、不整脈などの病気によって引き起こされます。高齢化に伴い、心不全は増加傾向にあり、国内の患者数は推計年間100万人。発症すると5年間で、半数が亡くなります。発症後は完治しないため、治療や生活習慣の見直しで心臓の機能を維持し悪化を防ぐことが重要になります。

 東京都内で記者会見した日本循環器学会の小室一成代表理事(東京大学教授)は、「医師が心不全を患者に説明するのはなかなか難しい」と指摘した上で、「心不全の原因となる病気は、喫煙や肥満、食塩の取りすぎ、大量飲酒など生活習慣の悪化によって起きる。これらに注意すれば心不全になりにくいので、予防が大変有効だ。発症後の再発予防も大事だ」と呼び掛けました。

 両学会は市民公開講座などを通じて、予防に取り組むよう啓発し、死者数の減少につなげる考えです。

 2017年11月1日(水)

 

■フィリピン産バナナに針金状の金属片混入 ドール、9000パックを自主回収へ

 国内で青果物の販売を手掛けるドール(東京千代田区)は1日、金属の異物が混入している可能性があるとして、フィリピン産レギュラーバナナの一部商品「シンプルラインバナナ」と「ボビーバナナ」計約9000パックを自主回収すると発表しました。

 対象は、パックに貼り付けた8ケタの管理番号が「××982×××」の商品。

 ドールによると、10月27日に川崎市の倉庫でバナナを自主検査したところ、実の中に長さ3センチ程度の針金状の金属が入っているのを発見したほか、30日には購入客から「皮の中に針金のようなものが入っていた」という訴えが寄せられました。現時点で健康被害の報告はありません。産地のフィリピンで混入した可能性があるといいます。

 ドールは、「多大なご迷惑とご心配をおかけし、深くおわび申し上げます」としています。

 商品やパックを着払いで送れば、代金の2倍相当のクオカードを返送します。問い合わせは、「ドールお客様相談室のフリーダイヤル(0120・500・439)」まで。平日の午前9時~正午と午後1~5時に受け付けます。3日からの3連休も受け付けるといいます。

 2017年11月1日(水)

 

■薬害C型肝炎被害者ら、給付金の支払い求め一斉提訴 請求期限の延長を求める

 「薬害C型肝炎被害者救済法」に基づく給付金の請求期限が来年1月15日に迫っていることを受け、被害者や遺族40人が30日、国に給付金の支払いなどを求め、東京や大阪、福岡など全国5地裁に一斉提訴しました。

 同法は、血液製剤フィブリノゲンなどの投与でC型肝炎ウイルスに感染した被害者を救済するため、2008年1月に施行。当初の請求期限は2013年1月でしたが、法改正で5年延長されました。被害者側が提訴した上で血液製剤の投与と症状の因果関係などが裁判で認められれば和解が成立するなどし、国と製薬企業から1人当たり計1200万~4000万円の給付金が支給されます。

 原告側は被害者は1万人以上とみていますが、厚生労働省によると、今年9月末時点で和解などをした人数は2293人にとどまります。

 提訴後に都内で記者会見した原告側弁護団は、「被害者は相当数いる。未請求の患者や遺族は病院や弁護団に問い合わせてほしい」と呼び掛け、「請求期限を延長して一人でも多く救済してほしい」と法改正して請求期限を延長するよう訴えました。

 2017年10月31日(火)

 

■訪問介護、短期間の研修ヘルパー新設 厚労省、生活援助サービス費を抑制へ

 厚生労働省は30日、介護保険の訪問介護で掃除や選択、調理などを行う「生活援助サービス」の費用を抑制する方針を固めました。

 専門性の高い人材に限ってきたヘルパーの資格要件を緩和し、新設する受講期間の短い研修を受けた人材が担えるようにして、介護報酬は切り下げたい考え。利用者は安くサービスを使えるものの、低い報酬で担い手が集まらず、必要なサービスが提供できなくなる恐れもあるため、調整が難航する可能性もあります。

 2018年度の介護報酬改定を議論している社会保障審議会分科会に11月1日、見直し案を提示します。

 生活援助サービスは1時間300円程度の自己負担で利用できるため、「家政婦代わりに安易に使われている」との指摘があります。利用者はこの5年で3割増え、約50万人。高齢化で今後も介護費用が増加することから、費用抑制のターゲットとして見直しが検討されてきました。

 一方、介護業界からは「認知症の兆しに気付くなど、家政婦とは専門性が異なる」「介護の質の低下を招きかねない」との反発があります。このため、新たな短期間の研修案では、高齢者の体調観察や認知症の知識の習得を重点的に行います。さらに、同じ掃除でも、高齢者が自分でできるようにヘルパーが手助けするなど「自立支援」に役立つサービスの介護報酬は維持する考えです。

 現在、訪問介護が提供できるのは国家資格の介護福祉士か、130時間以上の研修を受けた人材に限られています。

 厚労省は、ヘルパーの資格要件を緩和することで、生活援助サービスを中心に提供する人材については元気なシニア層にも担い手になってもらう狙いもあります。

 2017年10月31日(火)

 

■医薬品広告、女性やシニア向けの表示が可能に 厚労省が基準を15年ぶりに見直し

 厚生労働省は、医薬品などの広告基準を15年ぶりに見直しました。特定の性別や年齢をターゲットにする表現を認め、例えば生理痛に効果がある医薬品の効能をアピールしたい場合に「女性向け」といった表現が可能になりました。

 厚労省は9月下旬に、新しい広告基準を都道府県に通知。医薬品メーカーなどの販売戦略を尊重する以外に、保険適用外の市販薬の市場を広げ、国の医療費抑制につなげる狙いもあります。

 うそや大げさな広告を防ぐため、厚労省は医薬品医療機器法に基づき、医薬品や医薬部外品などの広告基準を定めています。都道府県の薬事監視員が同基準に基づき、不適切な広告を取り締まっています。

 新しい広告基準では、特定の性別や年齢をターゲットにする広告表現を、医薬品の安全性に問題がない範囲で認めます。生理痛、頭痛、関節痛などに効く薬で、企業側が生理痛の効果を消費者に訴えたい場合に「女性向け」という広告表現が可能になり、肩凝りに効く薬で「40歳代・50歳代のシニア向け」などといった表現もできるようになりました。

 医薬品の承認を得るための治験では、幅広い年代の男女が参加し、効能を確認しています。このため、厚労省は特定の性別や年齢を対象とする表現を規制してきましたが、企業側が訴求対象を絞ることによって消費者が不利益を被るケースは想定しにくいとして、解禁することを決めました。

 広告基準による規制の対象となる媒体はこれまで明記されていませんでしたが、見直しに合わせて「全媒体が対象」と明確化しました。動画投稿サイトやスマートフォン向けアプリなど新たな広告媒体が続々と誕生しており、あらかじめすべて対象と明記することで取り締まりの漏れをなくします。

 広告では、「頭痛・生理痛に」「水虫・たむしに」といった表現をよく見掛けます。従来の基準では1症状だけに大きな効果があると誤解されないよう、原則2つ以上の効果や効能を併記しなければならなかったためですが、新しい広告基準では、説明を読めば消費者は理解できるとして「特定の1つの効能効果などを広告することは差し支えない」としました。

 カフェインやステロイドなどの成分が「含まれていない」と書ける要件も緩和され、花粉症薬などで「眠くなりにくい」といった表示も可能としました。一方、目薬の「すっとする」というような使用感は、使用目的を誤らせるとして、強調するのを禁じました。

 このほか、2020年東京オリンピック・パラリンピックを控えて訪日外国人の増加が予想されることから、医薬品名のアルファベット併記を認めました。すでに併記している医薬品もありますが、問題ないことを明確にしました。さらに、「新発売」という表現の使用可能期間は、製品発売後6カ月間から12カ月間に延長しました。

 総合感冒薬の「ルル」などを販売する第一三共ヘルスケアの担当者は、「効能をわかりやすく、明確に伝えられるので、利用者が適切に商品を選択できるよう検討したい」と話しています。

 2017年10月31日(火)

 

■地球温暖化、健康にも悪影響 国際研究チームが警告

 地球温暖化は環境だけでなく人々の健康にも世界規模で悪影響を及ぼしているとする研究結果を、イギリスなどを中心とした国際研究チームが発表し、各国政府に対し早急に温暖化対策に取り組むべきだと警告しています。

 この研究は、イギリスやアメリカを中心とした気候変動の研究者や医師などの専門家でつくる国際研究チームが、気象や健康などに関する世界各国のデータを解析してまとめたもので、30日イギリスの医学雑誌「ランセット」に発表しました。

 それによりますと、地球温暖化の影響で記録的な熱波に襲われる高齢者は、2000年に比べ2016年は世界全体でおよそ1億2500万人増えたと指摘しています。

 また、主に熱帯地域にいる「ネッタイシマカ」の生息範囲が広がり、この蚊が多く媒介するデング熱に感染した人は2013年には1990年の4倍以上のおよそ5840万人となり、1万人以上が死亡したと分析しています。

 さらに、気温の上昇で小麦や米の収量が下がり、栄養不足になっている人が発展途上国を中心に増え、2016年はおよそ4億2200万人に上ったとしています。

 研究チームは、「温暖化は世界規模で人々の健康に大きな影響を及ぼしている。各国政府は健康のためにも早急に化石燃料を減らすなど温暖化対策に取り組むべきだ」と警告しています。

 一方、国連(UN)は30日、大気中の二酸化炭素(CO2)濃度が最高記録を更新したとの報告書を発表し、地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」が設定した目標の実現には思い切った行動が必要だと警鐘を鳴らしました。

 国連の世界気象機関(WMO)は年次報告書「温室効果ガス年報」において、「大気中のCO2濃度は2016年、記録的なスピードで上昇した」と指摘。

 また、「2016年におけるCO2濃度の世界平均は、2015年の400ppmを上回る403・3ppmに達した」と明らかにし、その原因は人間の活動と強力なエルニーニョ現象の組み合わせにあるとしています。

 さらに、地球のCO2濃度が過去において同じレベルだったのは、海面が現在より最大で20メートル高かった300万~500万年前にまで逆上るとしています。

 WMOのペッテリ・ターラス事務局長は声明を発表し、「CO2や温室効果ガス排出における急激な削減がない限り、今世紀の終わりまで危険な気温上昇に向かい、パリ協定の設定目標を優に上回ってしまう」と指摘しました。

 2017年10月31日(火)

 

■健康診断の際に無料でHIV検査 厚労省がモデル事業を開始へ

 厚生労働省は2018年度から、健康診断を受ける際に無料でエイズウイルス(HIV)検査を受けられるモデル事業を始めます。

 症状が出て初めて感染がわかるケースが30~50歳代の現役世代に多いため、検査を受けやすくし、早期発見や発症防止を通じて感染拡大の防止に取り組みます。本人以外に結果が伝わらないようプライバシーにも配慮します。

 HIVに感染すると数年から10年ほどエイズを発症し、同時に体の免疫機能が弱くなります。しかし、発症前に感染がわかれば治療で発症を抑えることができ、感染の拡大を防ぐことが可能です。

 2018年度から東京都や大阪府などの都市部で、病院などに併設される「健診センター」にHIV検査を委託。健康診断のメニューに関係なく、誰でも無料でHIV感染の有無を調べる血液検査を受けられるようにします。健診センターは健康診断や人間ドックなどが受けられ、30~50歳代の現役世代が多く利用しています。

 厚労省は2018年度予算の概算要求に約2840万円計上しており、検査費用は自治体を通じて検診センターに支払います。試験的に数カ所で始め、HIV検査の実施状況をみながら他都市にも広げます。

 現状でも、保健所でHIV検査を無料で受けることができます。しかし、土日の検査日が少なく、平日に働く人にとって利用しにくいことが課題でした。健康診断と一緒に受けることで心理的な抵抗感も薄くなり、検査を受ける人が増えるとみています。

 プライバシーに配慮し、健康診断の結果とは別の形で、本人にHIVの検査結果を通知する仕組みを検討しています。

 厚労省のエイズ動向委員会によると、2016年に新たに報告されたHIVの感染者数は1011人、エイズの新規患者は437人でした。

 新規のHIV感染者、エイズ患者ともに、感染経路は性的接触によるものがほとんど。HIV感染者のうち、全体の約73%に当たる735人が同性間の性的接触によります。感染者の年齢別では、特に20歳代や30歳代の若年層が目立ちます。エイズの場合、患者は30歳代以上が多く、50歳代以上が全体の約29%を占めました。

 2017年10月30日(月)

 

■無痛分娩で母子に重い障害、医師不起訴 京都地検「証拠足りず」

 出産時に麻酔で痛みを和らげる無痛分娩(ぶんべん)の際に母子が意思疎通のできない重度の障害を負ったとして、京都府京田辺市の産婦人科の男性院長が業務上過失傷害容疑で京都地検に書類送検された事件で、地検は30日、院長を嫌疑不十分で不起訴処分としたと発表しました。

 処分は27日付。京都地検は理由について、「過失を認定するに足りる十分な証拠の収集には至らなかった」と説明しています。

 京都市左京区に住み、無痛分娩を希望したロシア国籍で元大学准教授のエブセエバ・エレナさん(40歳)は2012年11月、「ふるき産婦人科」の男性院長により、脊髄を保護する硬膜の外側(硬膜外腔)に腰から局所麻酔薬を注射する「硬膜外麻酔」の処置を受けました。この際、男性院長は注意義務を怠り麻酔の針を本来より深い位置にまで刺して麻酔薬を過剰に投与し、エレナさんと、出産した長女みゆきさん(4歳)に寝たきりになる重度の障害を負わせたといいます。

 エレナさんの夫(55歳)ら家族が今年8月下旬、男性院長を京都府警に告訴。府警が10月13日、適切な処置を怠ったとして業務上過失傷害容疑で男性院長を京都地検に書類送検していました。公訴時効の成立が11月上旬に迫っていました。

 エレナさんの夫ら家族は昨年12月、ふるき産婦人科に約9億4000万円の損害賠償を求める訴訟を京都地裁に起こしています。

 2017年10月30日(月)

 

■厚労省、心不全患者1万人の治療実績を調査 有効な治療法のデータベース化へ

 心臓病の一つで年間7万人が死亡する心不全は、どのような治療法が効果を上げているのかを示す全国的なデータがないことから、厚生労働省の研究班は1万人の患者を対象に治療実績を調べる実態調査を11月から実施します。研究班は来年にもデータベースを作成し、医師が治療法を選ぶ際の参考にしてもらう考えです。

 心不全は、心臓の筋肉や血管、弁などが正常に働かなくなり、全身に血液を送り出す機能が低下する病気です。高齢化に伴って患者の数は年々増え、2015年には心不全が原因で死亡した人は7万1860人と、5年間で5000人余り増え、国内の患者数は現在およそ100万人に上ると推計されています。患者は40歳代から増え始め、80歳代が最も多く、高齢化に伴って今後も増える見通しで、2030年には130万人に達するとみられています。

 日本循環器学会によりますと、心不全の治療は薬を投与して症状の悪化を防ぐのが一般的ですが、どんな症状の患者にどの薬が効いたかなど過去の治療実績をまとめた全国的なデータがないということです。

 医師が治療法を選ぶ際の参考になる情報が少なく、中でも心不全のおよそ半数を占め心臓が膨らみにくくなる「拡張不全」の患者は、年齢や症状別にどの薬が最も有効かわかっていないため、医師がどの薬を投与するか判断に迷うケースが少なくないということです。

 このため厚生労働省の研究班は、心不全で入院を経験した患者およそ1万人を対象に、どのような治療で効果が得られたのか実態調査を行うことになりました。過去5年間に処方された薬の種類や量、投薬後の症状の変化などについて調べ、来年にもデータベース化します。

 研究班のメンバーで、心不全の内科治療を専門とする東京大学医学部附属病院の波多野将(まさる)医師は、「拡張不全は確実に治療できるという薬のデータがなく、選択が難しい。どのような患者にどの薬が効くのかガイドラインを作成し、全国の医師に周知する必要がある」と指摘しています。

 2017年10月30日(月)

 

■脳に血液中から薬を届ける超小型カプセルを開発 東大と東京医科歯科大

 血液脳関門の働きにより薬を届けるのが難しい人の脳に、血液中から薬を届ける超小型のカプセルを東京大学などの研究チームが開発し、 将来的にアルツハイマー病などの難治性脳神経系疾患の治療法の開発に役立つ可能性があるとして注目されています。

 人の脳は、血液と脳の間にある組織である血液脳関門の働きにより、栄養源となるブドウ糖などを除き、血液中の物質はほとんど入らないようになっており、アルツハイマー病などの治療ではどのようにして脳に薬を届けるのかが大きな課題になっています。

 東京大学と東京医科歯科大学の研究チームは、アミノ酸を使って直径が1ミリの3万分の1ほどのごく小さなカプセル(血液脳関門通過型ナノマシン)を開発しました。このカプセルの表面をブドウ糖で覆うと、脳の血管にある特定のタンパク質がカプセル内のブドウ糖と結び付いて脳の中の神経細胞に届けることができるということです。

 さらに、研究チームは、血中グルコース濃度(血糖値)が変化する空腹の状態だと、この特定のタンパク質が積極的にブドウ糖を届けることに注目し、空腹のマウスにこのカプセルを注射してこれまでの薬の100倍ほどの効率で脳の中の神経細胞に取り込ませることにも成功したということです。

 研究チームでは、カプセルの中に抗体医薬や核酸医薬など、高分子物質でできている先端医薬を入れれば、これまでにない治療効果が期待できるとしています。  

 東京医科歯科大の横田隆徳教授は、「認知症のほか、神経の難病や精神疾患の治療にも大きな武器になると思う」と話しています。また、東大の片岡一則特任教授は、「将来は体中の必要な場所に薬を送り届けるナノテクノロジーを開発したい」と話しています。

 2017年10月29日(日)

 

■保湿用塗り薬「ヒルドイド」、医療機関での処方が急増 美肌目的の女性が利用

 アトピー性皮膚炎、乾燥肌、ケロイドなどの治療に使われる保湿用塗り薬「ヒルドイド」の医療機関での処方が急増していることが、健康保険組合連合会(健保連)の調査で明らかになりました。

 雑誌やインターネットで「美肌になれる」「高額な乳液より保湿力がある」「高級ブランドの美容液より効果がある」などと紹介されて広まり、公的医療保険の適用により低料金で入手できることから、化粧品代わりに求める女性が増えたことが背景にあるとみられます。

 ヒルドイドは医師の診断と処方せんが必要な薬で、薬局などで直接購入することはできません。主に皮膚科や小児科でアトピー性皮膚炎などの治療に活用され、乳幼児や高齢者にも処方されている低刺激の薬なので、敏感肌や荒れ性の人にも安心して使え、目元の小じわ対策や毛穴対策にも効果がある薬として、雑誌やインターネットなどで最近、紹介されています。

 健康保険を適用すると約200円~300円程度で、ヒルドイドを手に入れることができるといいます。初診であれば、薬代以外にも診察料、処方せん代、薬剤情報などの点数が加算されるので、トータルの支払額としては医療機関にもよりますが、約1500円~2000円ほどになるといいます。

 治療以外でのこうした処方は薬剤費を押し上げ、税金や保険料で賄う医療財政を圧迫。年間約93億円が無駄に支出されている可能性があり、厚生労働省は来年4月の診療報酬改定で処方量の制限など対策を講じる方針を固めました。近く、中央社会保険医療協議会で議論を求めます。

 2017年10月29日(日)

 

■東大、iPS細胞から運動神経の束作製に成功 ALSの治療薬開発に可能性

 東京大学生産技術研究所などの研究チームは、人のiPS細胞(人工多能性幹細胞)を使って、運動神経が束状になった組織を作製したと発表しました。

 運動神経が損なわれる筋委縮性側索硬化症(ALS)などの治療薬開発に生かせる可能性があるといいます。論文が27日付で、アメリカの科学誌「ステムセル・リポーツ」(電子版)に掲載されました。

 研究チームは、1辺150マイクロメートルの通路を備えた小型装置を開発。iPS細胞を運動神経細胞に変えた上で、約1万個を装置の中で培養したところ、球状に集まった運動神経の半数が電気信号を伝える「軸索」を通路へ伸ばし、軸索同士が集まって1本の束になりました。束の直径は50~150マイクロメートル、長さは最長2センチでした。

 体内では、多数の運動神経細胞の軸索が束状になっています。これまでもiPS細胞から運動神経細胞が作製されていますが、軸索を束にする試みはありませんでした。

 作製した束状組織を傷付けて病気の状態に近付けた上で、化合物を加えて傷が治るかを調べることなどで、治療薬の開発に生かせるといいます。今後は研究チームの一員が設立したベンチャー企業が、薬の開発支援に取り組みます。 

 研究チーム代表の池内与志穂講師(分子細胞工学)は、「体内により近い状態の軸索の束ができたことで、ALS発症のメカニズムの解明や治療薬の開発が期待できる」と話しています。

 2017年10月28日(土)

 

■遺伝性乳がん、予防のための切除手術を選択肢に 厚労省研究班が初の診療指針

 遺伝性乳がんの原因となる遺伝子変異が見付かった場合に、将来がんになるリスクを減らすための予防的な乳房切除手術を「考慮してもよい」と明記した診療指針を、厚生労働省研究班(代表=新井正美・がん研究会有明病院遺伝子診療部長)がまとめたことが明らかになりました。

 予防切除は、アメリカの人気女優、アンジェリーナ・ジョリーさんが手術を受けたことを2013年に公表し、話題となりました。健康な体にメスを入れるという大きな負担もあるものの、厚労省の研究班が診療指針を作ったことで、予防のための遺伝子検査や切除手術が治療の選択肢の一つとして国内に広がる可能性があります。

 日本で推計年間9万人が発症する乳がんの5~10%は遺伝性とされ、中でもBRCA1、BRCA2という遺伝子のいずれかに変異があるために発症するケースが多くみられます。これらの遺伝子に変異があると、乳がんや卵巣がんのリスクが格段に高くなるとされています。

 診療指針では、この遺伝子の変異が見付かった場合の両乳房予防切除について、「乳がん発症のリスクを低下させることは確実だが、死亡率改善のデータはない。細心の注意のもと、行うことを考慮してもよい」と指摘しました。

 ただ、手術は医師の側から勧めるのではなく、患者自らの意思で選択することが原則としました。

 乳房を切除しても乳がんを完全に防げる保証はなく、保険適用外の自費診療となります。診療指針では、ほかにも乳房の磁気共鳴画像化装置(MRI)などの検査法があり、遺伝カウンセリングを受け、十分な説明を受けて理解した上で、遺伝子検査を行う必要があると強調しました。

 また、30歳未満で遺伝子変異がある場合、マンモグラフィー(乳房エックス線撮影)は、被ばくによるがん発症の危険性が高まるため「推奨されない」としました。

 卵巣がんについては、がんの発症を予防する目的の卵管・卵巣摘出を推奨するとしました。

 遺伝性乳がん・卵巣がんは、親から子供に受け継がれるがんで、遺伝子の変異が原因で起きます。遺伝子検査で変異があると判明した場合、定期的な検診で早期発見を目指すことや、がんを発症していない乳房の切除や卵巣摘出などの措置が予防策となります。乳房を失う喪失感も指摘され、乳房の切除後に体の一部を移植したり、人工物を入れたりして乳房を再建することもあります。国内では、片方の乳房にがんができた際に、反対側を予防切除した例があるほか、発症前の切除に備えた環境を整える病院も増えています。

 2017年10月28日(土)

 

■はしかの年間死者数、初めて10万人下回る 2016年、WHO報告

 世界保健機関(WHO)は26日、はしか(麻疹)による全世界の年間死者数が2016年に初めて10万人を下回ったと発表しました。一方で、全世界のワクチン普及率の引き上げは「行き詰まり」状態になっているといいます。

 WHOは麻疹ウイルスに関する年次報告書の中で、2016年のはしかによる死者数を9万人と推計しています。年次報告書は「世界のはしか死者数が年間10万人を下回ったのは、これが初めてだ」と述べ、はしか死者数は2000年以降で84%減少したとしています。

 はしかは感染力が強く、空気感染します。高熱やせき、全身の発疹の症状を起こすほか、重い肺炎や脳炎を起こすこともあります。1980年にワクチン接種が本格的に始まる前には、全世界で年間約260万人の死者を出しており、2000年の年間死者数は55万人以上でした。

 WHOの年次報告書は、「2000年以降に予防接種55億回分のワクチンを配置したことが死者数減少の最大の要因となっているが、今後もさらにワクチンの普及を拡大する必要がある」と指摘。「世界は、はしかの地域的根絶という目標の達成にはまだほど遠い」としています。

 さらに、「2回接種が必要な麻疹ワクチンの1回目分の普及率は2009年以降、約85%で行き詰まりとなっており、はしか感染の阻止に必要な普及率95%にははるかに及んでいない。2回目分の普及率は、近年上昇しているものの、2016年は64%にとどまった」と続けました。

 ワクチン未接種の子供の数が最も多い国は、ナイジェリア、インド、パキスタンとなっています。

 2017年10月28日(土)

 

■増える健康食品による健康被害やトラブル 薬物性肝障害で入院のケースも

 サプリメントなどの健康食品による健康被害や、購入を巡るトラブルが急増しており、健康被害では薬物性肝障害で入院したケースもありました。専門家は「購入前に、今の自分に本当に必要かどうか考えて」と注意を呼び掛けています。

 国民生活センターによると、全国の消費生活センターなどに寄せられた健康食品による健康被害の訴えは、2016年度は1866件で、2015年度の898件の2倍、2014年度の583件と比べると3倍に急増しています。被害内容で多いのは、皮膚障害や体調不良、消化器障害。

 一方、国民生活センターが2014年8月に開設した医師からの情報を直接受け付ける「ドクターメール箱」には、今年7月20日までに179件の情報が寄せられました。このうち9件が、健康食品の摂取による薬物性肝障害と診断された事例でした。

 薬物性肝障害は、医薬品などの服用によって肝臓の機能に障害が出る疾患。健康食品の摂取でも、肝臓への大きな負荷やアレルギー反応などが原因で、薬物性肝障害を発症することがあるといいます。

 事例によると、今年1月、50歳代の女性が特定保健用食品(通称:トクホ)の粉末青汁を飲み、約2週間後に頭痛や寒気が出て34日間入院。青汁の飲用は1回だけだったといいます。2015年には70歳代の女性が3種類のサプリメントを2~3カ月摂取後、倦怠(けんたい)感や黄疸(おうだん)の症状が出て1カ月以上入院していました。健康食品自体に問題はなく、摂取した人の体質が原因とみられる。

 日本肝臓学会副理事長の滝川一・帝京大学医学部長は、「医薬品や健康食品が原因で発症する薬物性肝障害は、年齢や性別を問わず誰でも発症する可能性がある。多くの場合、使用を中止すると快方に向かうが、中には劇症化し死に至った症例もある」と指摘しています。

 事例のように1回の飲用で肝障害になる人もいますが、肝障害の症状があっても健康食品が原因と気付かずに飲み続け、重症化する人もいます。

 初期症状には、倦怠感、食欲不振、発熱、黄疸、発疹、吐き気、嘔吐(おうと)、かゆみなどがあります。

 滝川医学部長は、「症状が持続する場合は直ちに使用を中止し、医療機関を受診してほしい」と注意を呼び掛けています。受診の際は、医師に健康食品を飲んでいることを伝え、商品やパッケージを持参するなどして商品の情報を正確に伝えることも必要です。

 健康食品を巡っては、内閣府食品安全委員会が2015年、「食品であっても安全とは限らない」「過剰摂取のリスクがある」など消費者に知ってほしいことをまとめたメッセージを公表。健康を害することもあるとして、「今の自分に本当に必要か考えて」と注意喚起しています。また、消費者庁は今年10月、健康食品を利用する際の注意事項をまとめたパンフレット「健康食品Q&A」を作成。パンフレットの最後には、健康食品の品目と摂取量、体調の変化を書き込む「健康食品手帳」の欄を設け、利用状況を意識しながら使うように勧めています。

 利用による健康被害だけでなく、購入を巡るトラブルも増加。中でも消費者が「お試し」のつもりで購入したのに、実際は定期購入契約になっていたというトラブルが急増しています。

 国民生活センターによると、健康食品の定期購入トラブルは2016年度は1万85件で、2015年度の4352件の2・3倍になりました。「解約しようとしても電話がつながらない」「1回だけのつもりだったのに毎月商品が届き、通常価格を請求された」などの相談が多いといいます。

 国民生活センターは、「商品を注文する前に、契約内容や解約条件についてしっかり確認した上で、慎重に判断してほしい」としています。

 2017年10月28日(土)

 

■建設現場でのアスベスト被害、国とメーカー4社に賠償命じる 高裁初判断

 建設現場で建材に含まれるアスベスト(石綿)を吸い込んで、肺がんなどの健康被害を受けたとして、神奈川県の元建設労働者と遺族計89人が国と建材メーカー43社に約28億8000万円の損害賠償を求めた集団訴訟の控訴審判決が27日、東京高等裁判所でありました。永野厚郎裁判長は原告敗訴の一審判決を変更し、国とメーカー4社に対し、原告62人に総額約3億7000万円を支払うよう命じました。

 全国14件の同種の集団訴訟で初の高裁判決。国とメーカーのいずれにも賠償を命じる判決は2016年1月の京都地裁、10月24日の横浜地裁(第2陣)に続いて3件目で、双方の責任を認める流れが定着する可能性もあります。

 永野裁判長は判決理由で、1980年前後には医学的知見が集積し、国が重大な健康被害のリスクを把握できたと指摘。「遅くとも1981年までに防じんマスクの着用を義務付けなかったのは違法」と結論付け、原告44人に対し約2億3000万円を支払うよう国に命じました。

 メーカーの賠償対象は、大工や塗装工などとして働いていた元労働者、その遺族ら39人。判決は「メーカーにはマスクの使用を警告する義務があった」とし、4社に計約1億4000万円の賠償を命じました。国、メーカー双方の賠償対象となった原告は21人。

 建設労働者は現場を次々と移るため、健康被害が生じた原因の特定が難しいものの、永野裁判長は「的確な証拠で建材を特定できない場合、建材の市場シェアなどから推定することに合理性がある」と判断。個々の原告について、建材のシェアや作業回数から実際に現場でアスベストが使われた確率を推定し、メーカーの責任を認めました。

 4社はエーアンドエーマテリアル(横浜市鶴見区)、ニチアス(東京都中央区)、エム・エム・ケイ(東京都千代田区)、神島化学工業(大阪市西区)。

 個人事業主の「一人親方」については、法律上の労働者に当たらないとして国の責任を否定。国の責任が生じるよりも前に働いていた原告や、建材と発症との因果関係が不明な原告を含め、27人の請求を退けました。

 厚生労働省は、「厳しい判決と認識している。判決内容を十分検討し、対応したい」と説明。エーアンドエーマテリアルは、「主張が認められなかったことは誠に遺憾だ。上告する方向で検討している」とコメントしました。

 原告らは2008年に提訴。2012年5月の一審・横浜地裁判決は「当時の知見に照らせば国の対応は適法」とし、原告側が全面敗訴しました。その後の地裁判決6件はすべて国の責任を認めましたが、メーカーの責任を巡る判断は分かれていました。

 控訴審はほかに札幌、大阪、福岡などの各高裁でも争われており、今後の結論が注目されます。

 アスベストの健康被害を巡っては、アスベスト工場の元労働者が起こした訴訟が先に進みました。2014年、最高裁が大阪・泉南アスベスト訴訟で「工場に排気装置の設置を義務付ける規制が遅かった」と指摘して国の責任を認め、原告側の勝訴が確定しました。国は最高裁の判断に従って、訴訟を起こした人との和解を進めています。9月末時点で236人との和解が成立し、約21億円を支払いました。

 2017年10月28日(土)

 

■血液中の微量元素でがん5種を早期診断へ 千葉県がんセンターが検査法を開発

 千葉県がんセンター(千葉市中央区)は27日、5ミリリットル前後の血液から90%近い的中率で5種類のがんの有無を診断できる新しい検査法を開発したと発表しました。

 金属などの微量元素の血中濃度を測定するのが特徴。国の承認を得て、2019年度の実用化を目指します。

 現在主流の「腫瘍マーカー」を使う血液検査と比べ的中率が高いといい、記者会見した同センターの三上春夫・がん予防センター部長は「人間ドックなどの際に採取した血液も使える。安価で初期のがんにも対応できる検査になる」と話しています。

 千葉県がんセンターによると、5種類は膵臓がん、大腸がん、前立腺がん、乳がん、子宮体がん。神奈川県立がんセンター(横浜市旭区)などとの共同研究で、診断的中率は前立腺がんが最も高い89・7%、男性の大腸がんが最も低い83・9%でした。さらに研究が進めば、胃がん、肺がん、卵巣がんの3種類も診断できる可能性があります。

 がんがある人とない人では、血中にある金属などの微量元素の濃度が異なるという報告に基づき、研究を続けていました。がんの種類ごとに、ナトリウムやマグネシウム、リン、鉄など17種類の元素濃度の組み合わせやバランスを特定しました。

 腫瘍マーカー検査は、主にがん細胞が死ぬ時に出るタンパク質を検出するもので、正確性などに課題があるとされます。

 国立がん研究センター(東京都中央区)などは、すでに1滴の血液から13種類のがんの有無を95%程度の確率で診断できる検査法を開発し、実用化を進めています。

 2017年10月28日(土)

 

■iPS細胞と微細繊維で生体並み心筋シート ラットに移植し回復、京大と阪大

 京都大学の劉莉(りゅうり)特定准教授と大阪大学の南一成特任准教授、澤芳樹教授らは、人のiPS細胞(人工多能性幹細胞)から実際の心臓組織に構造が似たシート状の心筋細胞を作る手法を開発しました。

 繊維状の材料を用いて培養し、収縮力を高めました。心筋細胞を移植すれば、心筋梗塞などの患者の治療に役立つとみています。今後2年をかけて、動物実験で安全性や治療効果などを詳しく調べる方針。

 成果は、アメリカの科学誌「ステムセル・リポーツ」(電子版)に27日掲載されました。心臓では向きのそろった心筋細胞が協調して働き、ポンプとして機能します。従来の培養法で作った心筋細胞シートは細胞の向きがそろわず、収縮力が弱いなどの課題があったといいます。

 研究チームは、生体内で分解される高分子化合物を使った繊維状の「ナノファイバー(微細繊維)」を活用。一方向に並べたナノファイバーの上で、iPS細胞から作った心筋細胞を培養すると、向きがそろって生体の心筋に近い構造を持ち、弾力性や強度がある心筋細胞シートができました。

 これを心筋梗塞を起こしたラットに移植したところ、心臓が送り出す血液量が増え、1カ月後には心機能が回復しました。細胞の向きがそろうことで収縮を助ける働きが高まるとみており、今後、ブタを用いた実験で詳しく調べます。ナノファイバーは2~3カ月で分解され、安全といいます。

 劉莉准教授は、「大型動物で実験し、次世代の心臓病治療として応用を目指す」としています。

 大阪大はiPS細胞から心筋細胞シートを作り、重症心不全患者に移植する臨床研究を2018年度にも始める計画ですが、今回の心筋細胞シートをすぐ採用するわけではないといいます。

 2017年10月27日(金)

 

■産婦人科・産科、病院数が26年連続で減少 小児科も23年連続で減少

 厚生労働省は、2016年の医療施設調査・病院報告の結果を発表しました。産婦人科・産科を設置している病院数は2016年10月1日時点で、前年より21施設少ない1332施設となりました。

 減少は26年連続で、比較可能な1972年以降で最少を更新しました。内訳は産婦人科が1136施設、産科が196施設。

 生まれる子供の数(出生数)の減少などが、背景にあるとみられます。厚労省は、「夜間や休日の対応が多いという勤務環境の厳しさも影響している。今後も減少が続くのではないか」としています。

 小児科がある病院も、前年より24施設少ない2618施設で、23年連続で減少しました。

 全国の医療施設は17万8911施設で、前年に比べ699施設増加しています。病院は8442施設で、前年に比べ38施設減少しており、一般診療所は10万1529施設で534施設増加、歯科診療所は6万8940施設で203施設増加しています。

 一方、人口10万人当たりの病院の勤務医数は、前年より2・6人多い171・5人でした。都道府県別で最も多いのは、高知県のの252・3人で、次いで徳島県の231・2人、岡山県の216・7人。最も少ないのは、埼玉県の121・4人で、岐阜県の137・8人、新潟県の138・0人が続きました。

 2017年10月27日(金)

 

■財務省、診療報酬2%台半ば以上の引き下げを提案 日本医師会、強く反発

 財務省は25日、2018年度の予算編成に向けて、高齢化で膨らみ続ける医療や介護などの社会保障費を抑える見直し案を明らかにしました。医師の収入などになる「診療報酬」について、一般の賃金や物価の伸びを上回る上昇が続いてきたとして引き下げを提案し、今後、厚生労働省などと調整を進めることになりました。

 見直し案は、25日開かれた財務大臣の諮問機関、財政制度等審議会で財務省が示しました。2018年度の予算編成では歳出の3分の1、32兆円余りを占める医療や介護などの社会保障の伸びを抑えることが引き続き最大の課題になっています。

 このため、医療分野では病院などに支払われる診療報酬を2018年度、2%台半ば以上、金額に換算して1兆円以上引き下げるよう提案しました。民間企業の賃金や物価の水準がほぼ横ばいで伸び悩む中、医師の収入などになる診療報酬は上昇が続いてきたと指摘し、引き下げが必要だとしています。

 また、2019年度以降に行う見直し案として、75歳以上の高齢者の追加の負担を打ち出しました。病院にかかった際窓口で支払う自己負担を、今の原則1割から段階的に2割に引き上げるべきだとしています。介護の分野でも、介護サービスを提供する事業者に支払われる「介護報酬」について、引き下げを提案。

 子育て支援の分野では、中学生までの子供がいる世帯に支給される「児童手当」について、所得が高い世帯への支給を廃止するよう提案しました。さらに、2020年度末までに32万人分の保育の受け皿を新たに整備するため、企業が負担している拠出金の引き上げも提案しました。

 財務省は、これから年末にかけて厚労省などとの調整を進めますが、診療報酬の引き下げは日本医師会などが強く反発しており、来年度の予算編成の大きな焦点になる見通しです。

 財務省が示した社会保障費の見直し案の柱になるのは、2018年度、2年に1度の改定が行われる診療報酬です。診療報酬は、医療機関や薬局が受け取る収入に当たります。患者が窓口で支払う自己負担や、国民健康保険や健康保険組合が徴収する保険料、それに税金で賄われています。

 財務省によりますと、デフレの影響などで賃金や物価水準が、この20年余りの間、ほぼ横ばいで伸び悩む中、医師の収入などになる診療報酬の「本体部分」は15%程度、上昇しており、医療制度を持続させるためには是正が必要だと指摘しています。

 高齢化や高度な医療機器の導入などで医療費は、毎年2・6%程度、金額にして1兆1700億円の増加が見込まれることから、財務省は来年度の診療報酬改定で1兆円以上引き下げたいと提案しています。このとおり決まれば3・16%引き下げた2006年度以来、12年ぶりの大幅な引き下げとなります。

 また、薬の部分では、新しく開発された薬については価格を高めに設定しているのが医療費の増加につながっているとして、薬の効き目などをみて価格を決める新たな仕組みを作るべきだとしています。

 2017年10月27日(金)

 

■塩野義製薬、新規インフルエンザ治療薬を厚労省に申請 1回の経口服用で翌日から効果

 塩野義製薬(大阪市中央区)は25日、インフルエンザを1回の経口服用で治療できる新規インフルエンザ治療薬「Sー033188」の製造販売承認を厚生労働省に申請しました。

 1日2回、5日間服用するタミフルなどと比べて、患者が使いやすいのが特徴です。タミフルと比べて効果が高く、臨床試験では服用の翌日には患者の半数の体内でウイルス濃度が低下していました。他人への感染を抑える効果も期待できるといい、家庭や職場での感染拡大を抑制できる可能性があります。

 タミフルなど従来の治療薬は、増殖したウイルスが細胞の外に出ないよう阻害する仕組みで、5日間は治療を継続する必要があります。塩野義製薬の新薬は、ウイルスが細胞内で増殖するために必要な酵素を阻害する仕組みで、1回の服用で治療が完結します。

 世界初の仕組みで、海外からも注目を集めています。強毒性の鳥インフルエンザにも効果が見込まれ、海外ではスイスの製薬大手ロシュと提携し開発、販売することが決まっています。大型化が期待されており、イギリスの調査会社エバリュエートファーマは、新薬の2022年の世界売上高を5億9700万ドル(約794億円)と予測しています。

 新薬はすでに、2015年10月に厚労省が新設した「先駆け審査指定制度」の第1弾の対象品目に指定されており、1年近くかかる審査期間が最短で6カ月に短縮される可能性があります。

 塩野義製薬は、早期の承認取得で2018年春の医療機関向けの販売を目指します。

 同社は、「(ウイルスの消失が早いことで)家庭内や学校、職場などでのウイルスの伝播、飛沫感染や空気感染の拡大にも一定の抑制効果を示すと期待。安全性も従来の治療と同等以上と考えられる」とコメントしています。

 2017年10月26日(木)

 

■美容手術「前」と「後」の写真掲載禁止へ 厚労省、医療機関HPで

 厚生労働省は25日、美容手術の前と後でこう変わったと示す、医療機関のホームページ(HP)などに掲載されている写真の掲載を原則禁止とする方針を決めました。

 国民から意見を募り、来年6月からの禁止を目指します。脱毛や脂肪吸引、二重まぶたにする手術などが想定されています。

 今年6月成立の改正医療法は、広告規制の対象外だった医療機関のHPについて、看板やチラシと同様に対象としました。虚偽や誇大、他の施設より優れているといった表現を罰則付きで禁止します。

 どこで線をひくか、この日の有識者検討会で議論しました。美容医療の手術前後の「ビフォー」「アフター」の写真は、虚偽や誇大でなくても個人で結果が異なり、患者の選択に大きな影響を与えます。「情報の遮断になる」と反対意見もありましたが、「一般の人は安易に飛び付きやすい」「加工や修正を加えた写真もある」などの意見が出て、原則禁止と決まりました。

 国民生活センターよると、美容医療の広告に問題があるとみられる健康被害や契約トラブルなどの相談件数は、年1000件以上といいます。

 こうした美容手術とは別に、がん手術後の乳房再建や、先天性の口やあごの形の異常など、患者側が手術の前と後のイメージを知りたい例があります。厚労省は、学会などが手術前後の写真を示し、医療機関のHPから学会のHPを紹介する場合は受診を誘引しないとして認めることなどを検討。今後、省令や指針(ガイドライン)で詳細を定めます。

 2017年10月26日(木)

 

■文科省、動物体内での人の臓器作製を容認 基礎研究に限定

 文部科学省の専門委員会は24日、動物の受精卵に人の細胞を注入した細胞の塊(胚)を動物の子宮へ移植し、人の臓器を持つ動物を作製する研究を条件付きで容認する方針をまとめました。

 国の現行指針は、子宮に戻す行為も禁じています。子ブタの体内で育てた人の膵臓(すいぞう)が移植に使えるかを確かめたり、人の細胞を備えたマウスを創薬に生かしたりする基礎研究に道を開きます。

 専門委員会の方針では、研究計画を実施機関と国がそれぞれ審査し、科学的合理性と社会的妥当性が認められれば「基礎研究に限って容認することがあり得る」としました。年内に指針改正に関する報告書をまとめ、内閣府の了解を得て、来年度中に指針を改正する予定です。

 現行指針は、動物と人の細胞が混ざった「動物性集合胚」の培養は最大14日に限定し、子宮に戻すことを禁じています。人の臓器を持つ動物の誕生は、想定していません。

 ただ専門委員会は、国内外の科学的な知見などから、人の手足などを持った極端な動物が生まれる可能性は極めて低いと考えられると判断。薬の開発や病気の原因解明などに利用できる可能性があるとして、臓器の一部を人の臓器に置き換えた動物などの作製を認める方針に傾きました。

 膵臓ができないようにしたブタの受精卵に、人のiPS細胞(人工多能性幹細胞)やES細胞(胚性幹細胞)などを注入して、人の膵臓を持った子ブタを産ませ、1型糖尿病の治療に使う研究などが、可能になるとみられます。

 当面、安全性などの観点から、作製した臓器の人への移植は認めません。今後、脳や神経細胞、生殖細胞の作製や、霊長類を使った研究の是非を慎重に検討します。

 2017年10月25日(水)

 

■1年間の延命に差額500万円以上で下げ 厚労省、高額新薬と既存薬を比較へ

 厚生労働省は25日、高額な新薬の公定価格(薬価)に「費用対効果」を反映させる新たな制度で、既存の薬と比べ1年間の延命に500万円以上多くかかる場合は薬価の引き下げ対象とする方針を固めました。

 医療費抑制策の一環で2016年度から試行的に導入しており、効果に見合わず割高だと評価された薬については、2018年度の薬価改定で価格を引き下げます。具体的な引き下げ幅など詳細は、年末に公表します。

 25日に開かれた中央社会保険医療協議会(厚労相の諮問機関)で提案しました。医療保険財政が改善され国民負担の伸びを抑えることにつながりますが、製薬業界からは「新薬開発が遅れる恐れがある」「導入は限定的にすべきだ」などの反発が予想されます。

 高額な新薬が医療費を押し上げている現状を踏まえ、厚労省は2018年度から、費用対効果を薬価に反映する制度の本格導入を目指しています。2016年度からは、がん治療薬「オプジーボ」やC型肝炎治療薬の「ソバルディ」、「ハーボニー」、「ヴィキラックス」など13品目に限り、試行的に導入しています。

 費用対効果の評価は、新薬を使って完全に健康な状態で1年間延命するためのコストを、同じ病気の治療で使う既存薬と比べ価格に反映させる仕組み。例えば、オプジーボでは医療費が患者1人で年間約1400万円に上るとされますが、これまで使われてきた他の肺がんの薬と価格や効果を比較します。

 厚労省は、1年延命に支払える金額に関する過去の意識調査(2010年実施)で、半数の人が485万円と回答した点に着目。すでに同様の制度を導入し、日本と生活水準が近いイギリスの評価基準も参考にして、比較対照する既存薬よりも500万円以上多くかかったら新薬の価格を引き下げることとしました。逆に、既存薬より効果が高く、費用も低く抑えられる新薬の価格は引き上げることを検討します。 

 2017年10月25日(水)

 

■西日本を中心にインフルエンザ患者が増加 ワクチン接種時期の相談を呼び掛け

 インフルエンザの流行期を前に、西日本を中心にインフルエンザの患者が増え始めており、今年はワクチンの製造量が昨年の使用量を下回る見通しであることから、各医療機関では子供や高齢者などに対して、接種する時期をかかりつけの医師などと早めに相談するよう呼び掛けています。

 国立感染症研究所によりますと、10月15日までの1週間に全国およそ5000カ所の医療機関から報告を受けた1医療機関当たりのインフルエンザの患者数は、沖縄県で4・14人と夏場から高い状態が続いているほか、長崎県で0・50人、山口県で0・35人などと西日本を中心に増え始めており、全国の平均は0・17人となっています。

 また、保育園や幼稚園、それに学校の学級閉鎖は9月4日から10月15日までに、沖縄県で12、東京都で10、千葉県で6となるなど全国の学級閉鎖は73となっています。

 厚生労働省によりますと、今シーズン、国内で製造するインフルエンザワクチンは合わせて2528万本と、昨シーズンに実際に使用された2642万本よりも114万本少なくなる見通しで、ワクチンの供給が需要を下回る時期があると予測されていることから、製薬会社の製造作業の一部を前倒しで行うなどして需要に追い付かない事態を避ける方針です。

 インフルエンザは例年、11月末から全国的な流行が始まるため、厚労省は医療機関に対し、13歳以上の人へは1回の接種を徹底することや必要以上のワクチンの発注をしないよう通知したほか、各医療機関は子供と高齢者、それに呼吸器などに病気がある人を中心に、早めにかかりつけの医師と相談して接種する時期を相談するよう呼び掛けています。

 東京都足立区の和田小児科医院では、インフルエンザワクチンの接種についての問い合わせが昨シーズンより多くなっているということです。25日は、診療時間が始まるとともに子供を連れた母親などが次々と訪れて、嫌がる子供をなだめながらインフルエンザのワクチンを注射器で肩に接種していました。

 医院では当面、予約されたワクチン接種の希望に対しては不足することはないということですが、発注した量がすべて納品されていないため、希望する人には必要性が高いかどうかを聞いた上で、緊急性の高くない人には「ワクチンが十分に入荷する時期まで接種を待ってほしい」と呼び掛けています。

 また、13歳未満の子供は1カ月以上の間隔を空けて2回の接種が必要とされていますが、保護者に対しては2回目の接種をワクチンの在庫がそろう12月にしても、例年の流行のピークには間に合うため必要以上に心配する必要はないとしています。

 和田小児科医院の和田紀之院長は、「子供への2回接種の間隔は4週間ピッタリである必要はなく、それ以上、期間を空けても問題はない。また、高齢者は免疫の持続期間が若い人に比べて短いとされているので焦って早く接種するのではなく、流行がピークを迎える1カ月程前に接種するほうが効果は高いと考えられる」と話しています。その上で、「万が一ワクチンを求めて複数の医療機関に重複して予約をすると、ワクチンの見掛けの需要が実際よりも高くなってしまい、結果的に必要な人に届かなくなる恐れもあるので重複した予約は絶対にせず、健康な成人については落ち着いてワクチンの供給が安定するのを待ってほしい」と呼び掛けています。

 インフルエンザのワクチンは、インフルエンザの予防と重症化を防ぐためのもので、60歳以上の一定の病気がある人と65歳以上の高齢者に対しては費用の一部を国が負担して受けることができるほか、そのほかの人も任意で接種を受けることができます。また、免疫が十分に発達していない生後6カ月から13歳未満の子供に対しては、2回接種することになっています。

 ワクチンは、国がさまざまなタイプのウイルスの中から4つのタイプを決め、製薬会社が混合したものを製造しますが、このうち1種類のタイプのワクチンで十分な量が製造できないことがわかり、厚労省は急きょ、別のタイプに切り替えました。このため製造が遅れ、製薬会社4社が製造するインフルエンザワクチンの本数はおよそ2528万本と、昨シーズンより製造数が265万本少なく、昨シーズンに実際に使用された数を114万本下回る予測です。

 厚労省の見通しでは、11月にかけて出荷量が徐々に増えますが、11月下旬から12月の上旬にかけて、供給が需要を下回るという予測があることから、製薬会社の安全性の検査を前倒しで行うなどして、需要に見合う量が出荷できるよう対策を始めているとしています。

 2017年10月25日(水)

 

■建設現場でのアスベスト被害、建材メーカー2社に責任 国と合わせ3億6800万円賠償命令

 神奈川県の元建設作業員などが建設現場でアスベスト(石綿)を吸い込み健康被害を受けたとして、国と建材メーカーに賠償を求めた裁判で、横浜地方裁判所は国と一部の建材メーカーの責任を認め、原告の一部に対して合わせて約3億6800円を支払うよう命じました。建設現場での被害を巡ってメーカーの責任を認めたのは、全国で2例目です。

 神奈川県などの建設現場で働いていた元建設作業員やその遺族合わせて61人は、建設現場でアスベストを吸い込んで肺がんや中皮腫などの健康被害を受けたのは対策の遅れが原因だったとして、国と建材メーカー43社に対し、総額約16億7000万円の賠償を求めました。

 24日の判決で、横浜地方裁判所の大竹優子裁判長は「国は遅くとも1974年ごろには建設現場で大量のアスベスト粉じんが発生し、被害が出ることを予測できた」と指摘しました。その上で「遅くとも1976年までには事業者に対し、作業員が粉じんを吸い込まないようにするための保護具の使用などを義務付けるべきだったのに行わなかった」として、国の責任を認めました。

 また、建材メーカーについては「国と同じ時期には被害を予測できた」とし、このうちニチアス(東京都中央区)とノザワ(神戸市中央区)の2社については、原告のうち10人について「働いていた建設現場でアスベストを含む2社の建材が使われていたと認められる」として責任を認め、国と2社に総額約3億6800万円を原告39人に対して支払うよう命じました。

 建設現場でのアスベスト被害を巡っては全国で裁判が起こされており、国に賠償を命じたのは6例目で、メーカーの責任を認めたのは京都地方裁判所に続き2例目です。

  24日の判決について弁護団は会見を開き、「国の責任が6度にわたって認められたことで、司法の判断が確立されたといえるのではないか。またメーカーの責任についても今回、認めたことは非常に意義が大きい」と話しました。

 原告の1人でタイル工として働いていた中山博道さんは、「国とメーカーの責任を認めてくれた、うれしい判決です。原告の中には病気で亡くなる人もいるので少しでも早く解決してほしいし、国には被害を補償する基金を創設してもらいたいです」と話していました。

  判決について厚生労働省は、「国の主張が認められなかった点もあり、厳しい判決だ。判決内容を十分に検討し関係省庁と協議して対応したい」とコメントしています。また、賠償を命じられたニチアスは「主張が一部認められなかったことは遺憾です」と、ノザワは「判決で企業の責任を認めたのは残念です」と、それぞれコメントしています。

 アスベストを巡る裁判では、工場の元労働者については国の責任を認める判決が確定している一方、建設現場の元作業員については裁判所の判断が分かれ、各地で争われています。

 2017年10月24日(火)

 

■甲状腺がん診断、2人増えて154人に 福島県の18歳以下甲状腺検査

 福島医大は23日の福島県民健康調査検討委員会で、甲状腺検査の6月末時点の結果を公表しました。2016年度から始まった3巡目の検査では、3月末の前回報告から新たに1人ががんと確定、2人ががんの疑いと診断されました。3巡目でのがんの確定は3人、がんの疑いは4人になりました。

 福島県は東京電力福島第1原発事故時に18歳以下だった県内すべての子供を対象に、甲状腺検査を実施。2011年度から1巡目、2014年度から2巡目、2016年度から3巡目が始まっています。

 2巡目の検査では、前回報告からがんの確定が1人増えて50人になり、がんの疑いは1人減って21人になったと報告されました。1~3巡目を合わせると、がんの確定は2人増えて計154人、がんの疑いは計39人になりました。

 検討委員会は1巡目の結果を踏まえ、検査で見付かった甲状腺がんは「放射線の影響とは考えにくい」との中間報告をまとめています。

 また、福島医大は23日の福島県民健康調査検討委員会で、東京電力福島第1原発事故後4カ月間の外部被ばく線量を推計する基本調査の6月末時点の結果を公表しました。

 放射線業務従事経験者を除く46万4420人のうち62・2%が1ミリシーベルト未満となり、前回の調査結果とほとんど変化はありませんでした。

 福島医大は、「放射線による健康影響があるとは考えにくい」と評価しています。

 2017年10月24日(火)

 

■第3期がん対策推進基本計画を閣議決定 がん検診率50%の目標を盛り込む

 政府は24日、がん対策の国の指針となる「第3期がん対策推進基本計画」を閣議決定しました。がんの予防や検診の充実、最先端医療の提供体制の構築などを掲げました。

 飲食店などに受動喫煙対策を義務付ける健康増進法改正案の国会提出のめどがついていないことから、受動喫煙に関する数値目標は先送りし、法案提出後に反映させます。

 基本計画は、2007年施行のがん対策基本法に基づき政府が策定します。今回は、2017年から2022年度の6年間が対象となります。

 新計画では、がんを早期発見し治療につなげるため、現在は30~40%のがん検診の受診率を50%に引き上げる目標を設定。さらに、検診でがんの疑いがあった場合に受ける精密検査の受診率を90%に高める目標を掲げ、がんによる死亡者を減らします。市町村には、がん検診の受診手続きの簡素化や効果的な受診勧奨への取り組みを促します。

 国は最先端の医療を提供すべく、ゲノム(全遺伝情報)を調べて最適な治療法を選ぶ「がんゲノム医療」の拠点病院を整備します。患者や家族の理解を深める普及啓発にも取り組みます。

 世代ごとに異なる課題の解決も急ぎます。新計画では、高齢のがん患者に標準的な治療を提供すべきかどうか、現状の診療ガイドラインにおいて、明確な判断基準は示されていないと指摘。国が関係学会などに協力を依頼し、高齢者向けの診療ガイドラインを作成することを明記しました。

 一方、小児がんについては新薬の開発などを推進。10歳代後半~30歳代のがん患者に関しては、進学や就労などの相談体制を整備していきます。  

 2017年10月24日(火)

 

■バセドー病の再発、血液検査で予測 東京医科歯科大など

 甲状腺のホルモンが過剰に分泌されて起きるバセドー病で、治療後に再発しやすいかどうかを血液検査で予測する手法を開発したと東京医科歯科大学などの研究チームが18日、アメリカの専門誌「サイロイド」(オンライン版)に発表しました。

 バセドー病は再発率が高いことが問題とされており、投薬や手術など再発を防ぐための治療法を選ぶのに役立つ成果といいます。

 バセドー病は喉の甲状腺がはれるほか、動悸(どうき)や発汗などが主な症状。女性に多く、再発したり治療中に薬の効きが悪くなったりする患者が20~75%を占めます。

 研究チームは、再発を繰り返す患者の血液を調べ、白血球で特定の遺伝子の働きが増しているのを発見。群馬大学病院などの患者約360人で、再発する人は同じ遺伝子が多く働いているのを確かめました。

 2017年10月24日(火)

 

■iPS細胞から心臓の組織モデルを作製し、不整脈を再現 新薬開発に期待、京大

 京都大学iPS細胞研究所の山下潤教授(幹細胞生物学)らの研究チームが23日、健康な人のiPS細胞(人工多能性幹細胞)から作製した心臓組織モデルに薬剤を加え、突然死の原因となる不整脈の一種の症状を体外で再現することに初めて成功したと発表しました。研究成果は、イギリスの科学誌「ネイチャーコミュニケーションズ」(電子版)に掲載されました。

 再現したのは、国内で年間数万人に上る心臓突然死の原因となる不整脈の一種「トルサード・ド・ポアント(TdP)」。数秒で失神し、10分以内に死に至ることもあるといいます。

 これまで、iPS細胞やES細胞(胚性幹細胞)を用いた不整脈の再現は研究されてきましたが、心筋細胞だけが使われてきたため、複雑な心臓の動きを出現させることは難しかったといいます。

 研究チームは、人のiPS細胞から心筋細胞と、細胞間を埋める線維芽細胞を作製。この2種類の細胞を1対1の割合で混ぜて培養し、シート状の心臓組織モデルを作製しました。シートは直径約8ミリで、細胞5~6層からなるため、約60マイクロメートル(マイクロは100万分の1)の厚みがある3次元構造になっています。このシートに不整脈を引き起こす薬剤を加えて電流を流したところ、TdPと同様の波形が確認されました。

 製薬会社は新薬候補を絞り込む際、心臓にTdPなどの不整脈を起こす可能性の有無を詳しく調べます。従来は培養したネズミの心筋細胞に薬剤を加える手法が一般的で、人への影響が正確にわからない例もありました。iPS細胞を用いる手法も使われ始めていますが、再現できるのは不整脈の前段階の異常で、突然死の原因となる不整脈は難しかったといいます。

 今回の心臓組織モデルを使う手法を活用すれば、薬剤の心臓への影響をより正確に評価できるとみられます。

 山下教授は、「TdPの詳細なメカニズムを解明することで、新薬開発や治療につながる可能性がある」と話しています。

 2017年10月24日(火)

 

■AI活用で患者の不穏行動を防止し入院期間を短縮 NECなど発表

 大手電機メーカーのNECなどは23日、病院で人工知能(AI)の技術を活用することで、患者の入院期間の短縮に役立つ可能性があると発表しました。

 これは、NECと東京都八王子市にある北原国際病院を運営する医療法人社団KNIが発表しました。病気やけがなどで入院している患者の中には、無意識に点滴の管を外してしまったり、ベッドから転落したり、院内を徘徊(はいかい)したりして、入院期間が長くなる人もおり、こうした「不穏行動」と呼ばれる症状を防ぐことが病院側の課題になっているということです。

 このため、NECと病院側は事前に不穏行動の兆しをつかもうと、患者に体温や心拍数などを収集する時計型の端末を装着して、AIの技術でデータを分析しました。

 およそ1年間の実証実験の結果、不穏行動を71%の精度で事前にとらえることができ、患者の入院期間を短くすることが可能になったとしています。

 また、事前にわかったケースでは、平均で40分前には兆しをとらえることができたということで、北原国際病院の森口真由美看護科統括は「事前にわかるようになればスタッフの負担が軽くなる。できるだけ早く使いたい」と話しています。

 NECデータサイエンス研究所の久保雅洋主任研究員は、「AI技術を活用すれば、看護師が事前に対処ができるし、患者にとっても入院期間が長引くことなどを回避できる」と話しています。

 2017年10月23日(月)

 

■機能性表示食品の届け出件数、トクホ品目数を上回る 20日時点で1090品に

 食品の健康効果を消費者にアピールできる機能性表示食品制度の利用が活発で、2015年4月の制度開始後、届け出が受理された商品は1000を超え、特定保健用食品(トクホ)の許可・承認品目数を上回りました。

 トクホに比べ手続きが簡易なため、今後も増加基調が続く見通しで、消費者は本当に価値がある商品かを見極める必要があります。

 機能性表示食品制度は、事業者が特定の食品の健康維持・増進効果を自身の責任で表示する制度。成分の効果を研究した学術論文など一定の科学的根拠を消費者庁に届け出れば、食品のパッケージに健康効果を表示できます。類似するトクホのように国の審査・許可を得る必要がありません。成長戦略の一環として、規制緩和を通じた食品産業の活性化を目的に導入されました。

 消費者庁が届け出を受理・公開した商品は20日時点で、1090品(撤回された約50品を除く)。約300社から届け出があり、毎月数十件のペースで受理されています。1991年に始まったトクホの許可・承認品目数は10日時点で、1086品となっています。

 トクホは整腸や体脂肪低減など内臓機能の改善をうたうものが9割を占める一方、機能性表示食品は効果が幅広くなっています。中でも市場を広げたのが、「アイケア食品」です。代表格がファンケルが2015年に発売したサプリメント「えんきん」で、ホウレンソウに含まれるルテインなどを配合し、目のピント調節機能を助けるとし、2018年3月期にシリーズで65億円の売り上げを見込んでいます。

 歩行機能に効く商品も人気で、ライオンや味の素などが、膝関節の痛み軽減や脚の筋肉維持効果をうたう商品を販売しています。

 メーカーが販売済みの定番商品を機能性表示食品としてリニューアルする例も、多くみられます。数億円の研究・開発費と1~2年の審査期間を要するトクホは大手食品メーカーの商品が大半ですが、機能性表示食品は地方の中小企業の利用も多くなっています。東京都、大阪府、愛知県以外に本社を置く企業の届け出が3分の1を占め、静岡県の農協のミカンなど、トクホにはない生鮮食品の事例もあります。

 臨床試験が必ずしも必要でない機能性表示食品は表示する健康効果の信頼性が低い商品も混在し、科学的根拠が乏しいとの第三者の指摘で、届け出が撤回された事例もあります。消費者保護の観点から制度の不備を指摘する声もあります。メーカーには、商品を監視する仕組みに加え、効果をホームページなどで丁寧に説明する努力が求められます。

 2017年10月23日(月)

 

■環境汚染が原因の死亡、世界で900万人に上る 環境問題の専門家ら発表

 アメリカやイギリスなどの環境問題の専門家およそ50人で作る研究チームが19日、2015年に環境汚染が原因で死亡した人の数は世界中で900万人に上るとする調査結果をまとめ、イギリスの医学雑誌「ランセット」に発表しました。

 環境汚染による死亡はほぼすべてが低・中所得国で起きており、こうした地域では最大4分の1の死因が環境汚染が原因になっている可能性があります。また、環境汚染の中で最も影響が大きいのは大気汚染で、環境汚染を死因とする死亡件数の3分の2を占めました。

 環境汚染の悪影響を最も受けていたのはバングラデシュとソマリアで、環境汚染関連の死者数が最も少なかったのはブルネイとスウェーデンでした。

 環境汚染による死亡のうち最も多かったのは、心臓病や脳卒中、肺がんなど、汚染との関連が指摘されている非感染性の疾患によるものでした。

 調査を行ったアメリカ・ニューヨークのマウントサイナイ医科大学のフィリップ・ランドリガン教授は、「環境汚染は単なる環境問題ではなく、人間の健康に多くの面で影響を与える、まん延している深刻な脅威だ」と話しています。

 環境汚染の中で最大のリスク要因の空気汚染は、650万人の早期死亡の一因となっています。これには、ガスなど屋外を発生源とするものや、屋内での木材や炭の燃焼など家屋で発生するものが含まれます。

 次にリスク要因として大きなものは水質汚染で、180万人の死因となっています。一方で、職場での汚染は、世界中で80万人の死亡との関連が指摘されています。

 こうした死亡件数の約92%は、より貧しいアジアやアフリカの国で起きており、インドや中国など急速な経済発展を遂げている国も、最も大きな影響を受けていました。汚染による死亡者数の多さで、インドは5位の約250万人、中国は16位の約180万人でした。

 イギリスでは、約5万人の死亡が環境汚染と関連し、死因の約8%を占めているとみられています。イギリスは、調査対象の188カ国のうち55位で、アメリカやドイツ、フランス、スペイン、イタリア、デンマークなどの多くの欧州諸国よりも、死因に占める環境汚染の割合が高くなっています。

 イギリスの肺財団のペニー・ウッズ博士は、「大気汚染は世界中で危機的な水準に達しており、イギリスは西ヨーロッパの多くの国やアメリカよりも状況が悪い」と延べ、「大量の有毒な粒子やガスを排出することで知られるディーゼル車への依存が、要因の一つかもしれない。これが肺に病気のある人や子供、お年寄りに最も影響を与えている」と分析しています。

 アメリカでは、約15万5000人の死亡が環境汚染と関連し、死因の約5・8%を占めているとみられています。

 研究チームは、「エイズや自然災害などに比べ環境汚染は死を引き起こすものとして注目されてこなかったが、これは重大な問題だ」として、国際社会に対策を急ぐよう呼び掛けています。

 2017年10月22日(日)

 

■厚労省、カルテ開示の手数料を調査へ 5000円以上の高額徴収に批判

 医師が患者ごとに作成する診療録であるカルテ開示の際、病院側が患者に請求するコピー代や手数料、開示の条件について、厚生労働省が全国の主要な病院を対象に実態調査を始めたことが、明らかになりました。

 カルテ開示の手数料を巡っては、市民団体が5000円以上の請求をしている病院があるとして、個人情報保護法の規定に反すると指摘していました。高額な手数料は開示請求の権利を制限することになりかねず、厚労省は現状を把握し、今後、法令に抵触していないかを調べます。対象は高度な医療技術を提供する「特定機能病院」(85施設)で、10月中にまとめる方針。

 「医療情報の公開・開示を求める市民の会」(大阪市天王寺区)によると、私立病院ではカルテのコピー代とは別に、手数料を徴収している所が多く、5000円以上のケースも少なくありません。一方、国立大学病院では手数料は無料といいます。

 個人情報保護法は手数料について、「実費を勘案して合理的であると認められる範囲内において、その手数料の額を定めなければならない」と規定。明確な金額の線引きをしていないものの、同会は特に5000円以上の金額は、合理的な範囲を超えていることは明らかとして、引き下げを病院に指導するよう厚労省に求めていました。

 厚労省医事課は、「手数料の金額に大きな差があるとの指摘を受け現在、実態を調査している」としています。

 2017年10月22日(日)

 

■iPS細胞の作製技術、九州大から独占的実施権を取得 タカラバイオ

 タカラバイオ(滋賀県草津市)は19日、九州大学が特許を持つ高品質なiPS細胞(人工多能性幹細胞)の作製技術について、同大から独占的実施権を取得しました。

 同社は創薬などに活用されるiPS細胞などの需要を見込んで、細胞の受託作製事業を強化しています。九州大が保有する高度な技術を囲い込み、競争力を高めます。

 権利取得の金額は明らかにしていません。この作製技術は、iPS細胞を作製する際に使う「ベクター」と呼ばれる遺伝子の運び手に、病原性と伝染性をなくした麻疹ウイルスを使います。導入した遺伝子が細胞内の染色体に組み込まれないため、iPS細胞ががん化するリスクを抑えられるといいます。さらに、複数の遺伝子を入れられる利点があり、特に血液から採取する免疫細胞や造血幹細胞などに効率よく遺伝子を導入できるといいます。

 現在は作製の成功率が0・1%以下と低いため、ほかのベクターと同様の0・1~1%に向上させようと、発明者で九州大の元研究者である東京大学医科学研究所の谷憲三朗特任教授、国立感染症研究所の竹田誠部長らと共同研究を進めています。

 タカラバイオ広報・IR部は、「新しいベクターは遺伝子医療や再生医療分野の注目技術の一つ。大量製造法などの開発を進め、実用化したい」としています。

 タカラバイオは、滋賀県草津市の拠点に製造受託や開発支援に必要な細胞の培養・加工事業を集約、細胞作製の関連事業を強化しています。

 2017年10月22日(日)

 

■再使用禁止の使い捨て医療機器、患者1600人に使い回し 大阪市立大病院

 再使用が禁じられている使い捨て用の医療機器を、大阪市立大学医学部附属病院(大阪市阿倍野区)が滅菌処理して再使用していた問題で、同病院は20日、調査結果を公表し、外科手術や歯の治療などを受けた患者約1600人に機器の使い回しをしていたと明らかにしました。健康被害を訴えている人はいないといいます。

 同病院によると、2015年8月から今年8月にかけて、骨に穴を開ける「ドリルバー」42種類のほか、骨を切断する「ブレード」7種類、手術時に血管を挟むチタン脳動脈瘤(りゅう)クリップ53種類を洗浄、滅菌し、整形外科や耳鼻咽喉科など7診療科の患者84人に再使用していました。

 このほか、2015年10月に開設された歯科口腔(こうくう)外科で、歯の研磨や虫歯治療に使うシリコーン製の器材4種類について、1531人に使い回しがありました。

 厚生労働省は2004年以降、感染防止の観点から使い捨ての医療機器を再使用しないよう都道府県に通知していましが、大阪市立大病院は「(滅菌して再使用していた)過去の運用を改めていないケースがあった」と説明しています。

 今年8月29日に兵庫医科大学病院(兵庫県西宮市)での医療機器の再使用が発覚したのを受け、大阪市立大病院は院内調査をしていました。

 兵庫医科大病院は、昨年12月から今年7月にかけて、整形外科と脳神経外科の手術で計130人(135件)に再使用し、近畿厚生局と西宮市保健所から不適切な使用などと指導を受けたといいます。

 同病院によると、再使用していたのは、骨に穴を開ける際に使う「ドリルバー」4種類。昨年11月、医療機器を洗浄する手術センター中央滅菌室の女性看護師が「適切な洗浄・滅菌をすれば、再使用も可能では」と提案しました。同室は洗浄テストの結果、安全性が確認できたと判断。医療安全管理部など関係部署に相談することなく、翌12月から再使用を始めたといいます。

 兵庫医科大病院は対象の患者におわびの文書を郵送し、専用の電話窓口0120・456・613(平日午前9時~午後4時45分)を設置しました。感染症など患者の健康被害は確認されていないものの、手術後1年間は経過観察を行うといいます。

 2017年10月21日(土)

 

■中国の鳥インフル、哺乳類感染で強毒化 東大など実験で確認

 中国で人への感染が続いている鳥インフルエンザウイルスの一部が今年2月に変化し、少量のウイルスでも感染した哺乳類が高い割合で死ぬことを、東京大学などの研究チームが動物実験で確かめました。

 19日付のアメリカの科学誌「セル・ホスト&マイクローブ」電子版に論文を発表しました。人も感染すると死亡する恐れがあるといいます。

 動物実験で確認したのは、鳥インフルエンザA(H7N9)。2013年から中国で人への感染が毎年報告され、世界保健機関(WHO)によると今年9月27日までに1564人が感染、612人が亡くなりました。当初は低病原性だったものの、高病原性に変異したことがわかっています。日本国内での人への感染は、確認されていません。

 研究チームは、新たな変異株の哺乳類への影響を確認するため、中国の患者から取ったウイルスをインフルエンザウイルスに対して人と似た反応を示すフェレットに感染させて実験したところ、変化したウイルスはせきやくしゃみなどの飛沫〈ひまつ〉で感染が広がり、7割近くが死にました。遺伝子を調べたところ、人の気道などにくっつきやすいタイプに変わり、抗ウイルス薬の効果を弱める変化も起きていました。

 鳥インフルエンザウイルスは、鳥類との接触で感染します。哺乳類同士で飛沫感染して少量でも個体が死ぬほど病原性の強いウイルスの報告は、今回が初めて。今のところは起きていませんが、同じ哺乳類の人同士でも感染が広がる可能性があるといいます。

 東京大医科学研究所の河岡義裕教授(ウイルス学)は、「動物実験では一般的な抗ウイルス薬がこのウイルスには有効ではなく、ワクチンの備蓄なども検討すべきだ。人への感染が増える季節になるので、流行状況をより注意深く監視する必要がある」と話しています。

 2017年10月21日(土)

 

■小学館、毒キノコを食用と誤記載 図鑑1万6000部を無料回収

 大手出版社の小学館は20日、6月23日に刊行した「小学館の図鑑NEO きのこ」で紹介した毒キノコの「ヒョウモンクロシメジ」を、説明文中で誤って「食用」と記していたと発表しました。初版5万部中1万6000部がすでに売れていますが、誤記載による健康被害の報告はないといいます。

 無料で回収し、改訂版ができ次第返送します。 

 小学館によると、同書は児童向けの図鑑シリーズの一冊で、20日に読者からの指摘があり、誤記載が判明しました。同書の25ページ左下の説明文で、「毒」と記載すべきところを「食用」としていました。ヒョウモンクロシメジは少量でも食べると、下痢や吐き気、嘔吐などの胃腸系の中毒症状を引き起こします。

 編集の段階で監修者が誤記に気付いて修正を指示しましたが、担当編集者が見落としたのが原因といいます。同社は、書店の在庫を引き揚げるとともに、購入した読者に、このヒョウモンクロシメジを食べないよう呼び掛けています。

 小学館広報室は、「多大なご心配とご迷惑をおかけして深くおわびする。今後は、編集、校了体制を一層強化し、このような事態を二度と招かないよう努めます」としています。

 回収の問い合わせ先は、小学館フリーダイヤル0120・852・569。

 2017年10月20日(金)

 

■口の中の細菌、腸の難病の原因か 慶応大など発表

 ふだんは口の中にいる細菌が腸の中で増えると、腸に慢性の炎症が起きる潰瘍性大腸炎やクローン病といった難病の原因となる可能性があると、慶応大学などの研究チームが20日付のアメリカの科学誌「サイエンス」に発表しました。

 研究チームの本田賢也・慶応大教授は、「口の中を清潔にすれば、腸の難病の治療や予防につながるかもしれない」と話しています。

 腸の粘膜に慢性の炎症や潰瘍が起き、腹痛や下痢の症状が出る潰瘍性大腸炎やクローン病は、原因不明で完全に治療する薬は今のところありません。

 研究チームは、クローン病患者の唾液を無菌状態で育てたマウスの口に入れると、腸内で炎症を引き起こす免疫の細胞が増える例があることを発見。マウスのふんの細菌を調べると、普通は口の中にいて腸にはいない「肺炎桿菌(かんきん)」という細菌が腸で増えたのが原因だとわかりました。

 2017年10月20日(金)

 

■世界最小で、心臓内に装着するペースメーカーの販売開始 日本メドトロニック

 リード(導線)がなく、心臓内に直接装着するタイプのペースメーカー「Micra(マイクラ)」が日本で初めて承認され、アイルランドの医療機器大手メドトロニックの日本法人、日本メドトロニック(東京都港区)が9月から販売を開始しました。

 マイクラは長さ2・6センチ、直径約7ミリの円筒形で、重さは1・75グラムと世界最小サイズ。脚の付け根から静脈に入れたカテーテルで直接心臓の右心室まで運び、形状記憶合金の小さなフックを心筋に食い込ませて直接、装着します。

 患者の脈を検知して、脈が途切れた時に補助的な電気信号を発して拍動を促す仕組み。電池の寿命は12・5年を見込んでいます。

 従来のペースメーカーは、外科手術で鎖骨下などの皮下に本体を埋め込み、リードを血管に通して心臓まで伸ばしていたが、一定の割合で断線やリードによる静脈の詰まり、本体埋め込み部分の感染症などの症状が起きていました。

 世界19カ国の医療機関が参加した臨床試験では、従来型と同等の機能が発揮された一方、装着後1年で心筋損傷や感染症などの合併症が起きる割合は、日本メドトロニックの従来型より48%減りました。医薬品医療機器総合機構(PMDA)の審査では、日本での長期の安全性、有効性を確認するデータが乏しいと指摘され、承認後も装着患者の長期成績を報告し、適切な措置を講じるよう条件を付けました。

 装着手術は、日本不整脈心電学会の基準を満たした施設と実施医が行い、時間は1~2時間程度。

 費用は、手術や入院を含めて150万~250万円で、公的医療保険の高額療養費制度が利用できます。装着には患者の活動レベルや年齢などを含めて医学的にさまざまな条件があり、希望者は主治医と相談してほしいとしています。

 マイクラは2015年4月に欧州で、2016年4月に米国で薬事承認を取得しており、全世界で7000人超の患者に使われています。日本でも、ペースメーカーを初めて使う患者を中心に対象者が年間6000人程度になると、日本メドトロニックはみています。

 2017年10月20日(金)

 

■病気腎移植、先進医療として条件付きで承認 厚労省部会、徳洲会病院申請に

 厚生労働省の先進医療技術審査部会は19日、腎臓がんなどの患者から摘出した腎臓の病巣を取り除いて別の患者に移植する「病気腎移植(修復腎移植)」を、先進医療として認めることを決めました。

 これまで原則禁止とされていましたが、今後は入院や投薬など医療費の一部に公的医療保険が適用されることになります。ただ、治療がうまくいかなかった患者が4件出た場合は中止するなど厳しい条件が付きました。

 病気腎移植は、東京西徳洲会病院(東京都昭島市)が申請していました。先進医療は同病院と、臨床研究として病気腎移植を実施してきた宇和島徳洲会病院(愛媛県宇和島市)が担当。試験として9年間(うち5年間は観察期間)で、42例実施する計画です。

 直径7センチメートル以下のがんがある腎臓を患者から摘出後、病巣を切除し、腎臓透析などで移植を希望している別の患者に移植します。治療後は腎臓の定着率のほか、臓器提供者や移植を受けた患者でがんが発症するかどうか、副作用の件数、生存率などを調べます。

 19日の審査部会では、この治療がうまくいかなかった患者が4件出た時は中止するとの条件を付けた上、治療がしっかり実施されているかなどをチェックする移植検討委員会に、日本移植学会など第三者的な立場の医師を加えることも求めました。

 病気腎移植は約25年前から、宇和島徳洲会病院の万波誠医師らが独自の判断で実施してきました。病気になった臓器を別の患者に移植することから、倫理的問題などが指摘され、厚労省は2007年に原則禁止としました。日本移植学会も同年、「医学的な妥当性はない」との見解を発表しました。

 これを受け、宇和島徳洲会病院は2009年から臨床研究として病気腎移植を再開。これまで他人からの腎移植を13件実施し、うち7人が手術後5年時点で腎臓の定着が確認できているといいます。

 2011年に同病院が先進医療の申請をしましたが、厚労省の審査部会は3度にわたり継続審議としていました。現在、小さな腎臓がんの外科治療は、全摘出ではなく部分切除が基本。申請内容は、全摘出の対象とする患者の条件が不明瞭でした。医療機関の実施体制や有効性・安全性の評価方法、患者への説明同意文書の内容なども不十分とされました。

 今回の東京西徳洲会病院の申請は内容を修正したため、厳しい条件を付けることで先進医療として認めました。結果が良好だった場合は、他の病院でも実施される可能性があります。

 国内では腎臓透析患者が30万人以上おり、移植を希望する患者も1万人を超えます。ただ、提供数は慢性的に不足しており、臓器提供者が現れるまで10年以上待つケースも多くなっています。

 2017年10月19日(木)

 

■名古屋大病院、がん疑い見落とし患者死亡 検査報告書を7カ月放置

 名古屋大学医学部附属病院(名古屋市昭和区)は19日、コンピューター断層撮影(CT)検査で大腸がんの兆候が見られたのに、医師の間で情報が共有されなかった結果、治療が約7カ月遅れて50歳代の男性が死亡する医療ミスがあったことを発表しました。

 男性は2014年1月、全身の倦怠感を訴えて自宅近くの医療機関を受診。高度の貧血が見られたため、名古屋大病院に救急搬送され、胸腹部のCT検査を実施しました。CT画像を見た放射線科の医師が「大腸がんの疑いがある」とする画像診断報告書を作成しましたが、担当医は報告書を読みませんでした。症状が治まったため改善したと判断し、男性は退院しました。

 男性は8月に再び倦怠感などを訴え、名古屋大病院を受診。その際、過去に大腸がんの疑いが指摘されていたことが判明しました。すでに他の臓器にがんが転移しており、男性は2016年9月に自宅で死亡しました。

 名古屋大病院は医療ミスの可能性があるとして、院内に外部の専門家を交えた第三者委員会を設置。今年9月、情報が共有されないなどのミスがあったとする報告書をまとめ、男性の家族に謝罪しました。

 名古屋大病院では2015年6月から、画像診断報告書を一元管理し、担当医などが報告書を読んでいない場合は警告が出るシステムを導入しています。

 2017年10月19日(木)

 

■がんゲノム医療、中核拠点病院12カ所指定へ がん患者の遺伝子調べ薬や治療法を選択

 厚生労働省は18日、がん患者のゲノム(全遺伝情報)を調べて、個人の体質や病状に適した治療法を選ぶ最先端の「がんゲノム医療」を提供する病院の指定要件を大筋で決めました。

 近く中心的な役割を担う「中核拠点病院」の公募を開始し、条件に合う12カ所程度を来年3月までに指定します。各中核病院は、直接患者を診る数カ所の連携病院と協力することになっており、来年度から全国で治療が受けられるようになります。

 従来のがん治療は肺や胃、大腸などの臓器別に施されていますが、がんゲノム医療はがん細胞に生じた遺伝子の変異を検査で特定し、その変異に合った最適の薬や治療法を選びます。これまでより効果的で副作用も少ないと期待されています。

 がんゲノム医療は現在、欧米が先行し、日本では一部病院が試験的に実施していますが、普及が進めば日本のがん治療の在り方を根本から変える可能性があります。

 厚労省の全国展開に向けた実行計画では、100種類以上の遺伝子変異を一度に調べられる検査機器を、優先的に薬事承認して開発を後押しし、医療現場での検査を早期に可能にします。患者の負担を抑えるため、検査費には保険を適用します。

 全国の病院からデータを集める「情報管理センター」も新設。究極の個人情報とされる遺伝情報を長期間扱うため、国立がん研究センターでの運営を想定しています。

 現状では遺伝子を解読しても有効な薬は限られ、治療法の開発も課題です。情報管理センターでは、患者の遺伝子変異と治療成績、副作用の有無などの膨大なデータを人工知能(AI)で分析し、効果的な新薬や治療法の開発につなげます。

 中核拠点病院の要件は、遺伝子検査の技術がある、結果を医学的に判定できる、患者への遺伝カウンセリングが可能など。中核拠点病院の支援により、全国に約400ある「がん診療連携拠点病院」でも態勢が整えば、順次ゲノム医療を提供できるようにします。

 情報管理センターは、各地での臨床研究の情報を対象となる患者に提供し、治療法を選ぶ機会を増やします。検査での患者の負担を軽くするため、手術などではなく、血液や尿から遺伝子を検出する方法の開発も進めます。

 2017年10月19日(木)

 

■5~9月の熱中症搬送5万2984人、48人死亡 消防庁まとめ

 今年5月から9月に全国で熱中症により救急搬送されたのは5万2984人だったことが18日、総務省消防庁のまとめで明らかになりました。昨年の同じ期間に比べ2572人多くなりました。

 搬送先で死亡が確認されたのは48人で、昨年より11人少なくなりました。

 8月は曇りや雨の日が続いた東北の太平洋側、関東甲信の日照時間が記録的に少なかった一方で、6月から8月の平均気温は東日本と西日本で平年より高く、搬送者が増えたとみられます。

 月別に搬送者数をみると、最多の7月が2万6702人と前年比8031人の増加で31人が死亡、8月は前年比4081人減の1万7302人で14人が死亡しました。

 搬送者全体の48・9%は、65歳以上が占めました。

 3週間以上の入院を必要とする重症は1096人で、短期の入院が必要な中等症は1万7199人。発症場所は、庭を含む「住居」が最多の37・0%で、競技場や野外コンサート会場など「公衆(屋外)」が13・9%、「道路」が13・5%でした。

 都道府県別では大阪府が3590人と最も多く、次いで東京都3345人、愛知県3062人。人口10万人当たりでは沖縄県の90・26人が最多で、鹿児島県89・67人、宮崎県78・35人と続きました。

 2017年10月18日(水)

 

■ソフトコンタクトレンズに不具合、自主回収へ ジョンソン・エンド・ジョンソンの4製品

 使い捨てコンタクトレンズの輸入販売を行うジョンソン・エンド・ジョンソン「ビジョンケア カンパニー」(東京都千代田区)は18日、ソフトコンタクトレンズ「アキュビュー」シリーズの4製品にブラシの毛の混入などの不具合が見付かったとして、自主回収すると発表しました。

 これまでのところいずれの製品についても、治療が必要な健康被害は確認されていないということです。

 同社によると、自主回収するのは、1日使い捨てタイプの「ワンデーアキュビューモイスト」(30枚、90枚パック)のロット番号283684、2週間交換タイプの「アキュビューオアシス」のL002NCS・L002QH9、2週間交換タイプの「アキュビューアドバンス」のL002FNL・B00DHLP・L002V94、2週間交換タイプの「アキュビューオアシス乱視用」のB00GW4Z・B00HRMGの4製品8ロット。

 2013年3月~2017年6月にアメリカなどで製造され、これまでに3万673箱が出回っています。

 同社によりますと、購入客から「保存液が目にしみる」、「容器に金属製のブラシの毛が入っている」などといった苦情が複数、寄せられたということです。調べた結果、保存液の濃度が通常と異なっていたり、長さ2センチほどの金属製のブラシの毛が混入していたり、装着しても見えにくさがあったりする製品が確認され、同じ製造ラインで作られた製品を自主回収することになりました。

 同社は、「対象製品が手元にある場合は使用を中止し、回収受付センターに連絡してほしい」と呼び掛けています。

 問い合わせは、ジョンソン・エンド・ジョンソン「ビジョンケア カンパニー」回収受付センター フリーダイヤル0120・235016 月~土・午前9時~午後5時半。

 2017年10月18日(水)

 

■麻疹患者数、感染の拡大が続き185人に 外国人発症者が9月に広範囲移動

 国立感染症研究所は17日、今年の麻疹(はしか)の患者数が10月8日までの集計で185人となったと発表しました。7月23日までの集計で168人となり、すでに昨年1年間の患者数159人を超えていましたが、さらに感染が拡大しています。

 日本は2015年、世界保健機関(WHO)から国内に土着のウイルスが存在しない「排除国」に認定され、同年には患者数が過去最低の35人となったものの、一転して2年連続の増加となっています。

 厚労省によると、海外で感染し、帰国後に発症するケースが多く、欧州や中国、インド、東南アジアなどで、感染に注意する必要があるといいます。9月には、成田空港から入国した外国籍の20歳代女性2人が、観光などで東京都、富山県、宮城県など13都府県を回っている間に麻疹を発症していたことから、国立感染症研究所は「感染が拡大している可能性がある」として注意を呼び掛けています。

 発表によると、都道府県別では、今春に自動車教習所で集団発生があった山形県が53人で最も多く、東京都が28人、三重県が22人で続きます。

 麻疹は「麻疹ウイルス」によって起こる感染症で、その感染力はウイルスの中で最も強く、発症している人と同じ部屋にいるだけで空気感染することがあります。ワクチン接種を受けていない人は、海外旅行の際にかかる可能性が高くなります。潜伏期間は10~12日間。主な症状は発熱や発疹で、先進国においては滅多に死亡することはありませんが、まれに肺炎や脳炎を合併すると死亡することもあります。

 国立感染症研究所は10月に入って、医療機関に「発熱や発疹などで受診した症例には、麻疹の可能性も考慮して感染拡大の予防を徹底して」と注意を促しました。

 同研究所・感染症疫学センターの砂川富正・第二室長は、「中国や東南アジアなどの流行地域を訪れる人は、ワクチン接種を徹底してほしい」と話しています。

 2017年10月18日(水)

 

■拡張型心筋症の女児に、本人の幹細胞を移植 岡山大学病院が臨床研究

 岡山大学病院は17日、心筋になる能力を持つ「幹細胞」を心臓から取り出し、培養後に本人に戻して機能を回復させる手術を、「拡張型心筋症」の熊本県に住む8歳の女児に実施しました。女児は、数日以内に退院する予定といいます。

 同病院によると、この手術はすでに他の種類の心臓病では行っていますが、拡張型心筋症への適用は初めて。提供が不足している心臓の移植に代わる再生医療として期待されます。

 王英正(おうひでまさ)教授(循環器内科学)などの医療チームが、臨床研究として実施。17日は、8歳の女児から今年7月に取り出した幹細胞を培養した上で、カテーテル(細い管)を使い心臓の周りの血管に流し込んで戻す手術が行われました。他人の臓器を移植するのと違い、拒絶反応の恐れがないということです。また、幹細胞を取り出したり、培養した細胞を戻したりする時はカテーテルを使い、胸を開く必要がないため、体への負担が少ないということです。

 拡張型心筋症は心臓がうまく収縮せず、全身に血液を送り出す心臓の機能が弱まる難病。2015年度末現在で国から医療費の助成を受けている患者数は約2万8000人。この拡張型心筋症は症状が進むと心臓移植しか助かる方法がありませんが、脳死からの臓器提供を認める臓器移植法が施行されてからの20年間で脳死になった15歳未満の子供からの臓器提供は15例にとどまっており、多くの患者が移植を受けられない状況が続いています。

  17日、岡山大学病院で手術を受けた熊本県に住む小学2年生の8歳の女児は、以前は他の子供と同じように生活し、5歳ごろまではダンスを楽しむなど体を動かすことが大好きだったということです。しかし、拡張型心筋症を患い、最近は心臓の機能が少しずつ弱まって運動を制限せざるを得なくなったということです。

 王教授は、「今のところ、治療法としては心臓移植が最も効果が高いとされているが、国内では臓器提供が非常に少ないのが現状だ。新たな方法は、患者の体の負担が少ないことも特徴で、移植医療に代わる治療法となるよう研究を進めていきたい。心臓病の患者は生活や運動の面で制限があったり、学校に行けなくなったりするので、元気な子供と同じような生活が送れるよう期待している」と話しています。

 医療チームは今後、臨床研究として18歳未満の7人に行い、安全性と効果を確認できれば臨床試験(治験)を行い、3年後の保険適用を目指すといいます。

 2017年10月17日(火)

 

■一般病院の2割で入院患者の自殺が発生 半数ががん患者

 精神科病床のない一般病院の約2割で入院患者の自殺が発生し、約半数ががん患者だったことが、日本医療安全調査機構(東京都千代田区)の認定病院患者安全推進協議会の調査で明らかになりました。

 協議会は「入院患者の自殺は病院内の主要な医療事故の一つ」とし、精神面の不調のチェックやケア、自殺が起こりやすい場所の施錠や研修の実施など、予防や対応の提言を公表しました。

 調査は2015年秋、同協議会の会員1376病院を対象に調査票を郵送で送り、38%の529病院から回答がありました。

 その結果、同年3月までの過去3年間に自殺が発生したのは、432の精神科のベッドがない一般病院のうち、19%に当たる83病院で、外出中や外泊中を含めて計107人が自殺していました。主な病気別ではがんが52人で約半数を占め、消化器や脳神経の病気がともに8人で続きました。自殺した患者のうち、46人でがんの痛みなど身体症状の悪化などがみられ、31人で「死にたい」など自殺に関連する発言がありました。

 一方、精神疾患がある患者の自殺リスクは高く、63の精神科病床のある一般病院のうち、67%当たる42病院で、34の精神科病院のうち、79%当たる27病院で、それぞれ計74人、計81人が自殺していました。

 自殺の場所は、一般病院では病棟内が半数以上を占め、病室や高所のほか、トイレなどの人目のつきにくいところでも多く起こっていました。また、自殺の直前に、痛みや呼吸のしにくさが増したり、抑うつや興奮、不安などの精神症状が悪化したりしていました。

 精神科病床のない一般病院で、自殺予防対策を実施しているのは53%にとどまり、自殺予防対策を学ぶ講習会を開いているのは約1割でした。一方、精神科病床のある一般病院は83%、精神科病院は91%が自殺予防対策を実施していました。

 協議会の提言では、多くの患者が自殺の直前に「死にたい」と口にするなど、助けを求めるサインを発しており、患者の苦しみに傾聴し、具体的な支援を開始すべきだとし、がん患者は告知後の自殺率が高いため、自殺予防を念頭に置いた対応が必要としています。

 調査や提言作成にかかわった河西千秋・札幌医科大学主任教授(精神医学)は、「一般病院でも相当数の自殺が起こっている。特にがん患者はさまざまな診療科で診ており、自殺予防対策はすべての診療科にかかわる問題だ」と話しています。

 2017年10月17日(火)

 

■大塚製薬、アルコール依存症治療の新薬を発売へ 断酒ではなく減酒治療を想定

 大塚製薬(東京都千代田区)は年内に、アルコール依存症治療の新薬の製造販売承認を厚生労働省に申請します。承認を得れば、断酒治療ではなく欧米で普及する減酒治療を目的とした日本初の新薬が2018年度中にも、発売できる見通しとなります。

 成功率が低いアルコール依存症の治療を変える新たな手法が、登場しそうです。

 大塚製薬のアルコール依存症治療の新薬は「ナルメフェン」で、飲酒要求時に服用し、脳内の分泌物に作用して飲酒したい欲求を抑えます。従来の治療薬は飲酒時に不快感を与えて断酒させるなど患者の負担が重かったのに対して、直ちに断酒するのではなく、まずは多量の飲酒を減らす減酒治療を想定しています。

 すでに国内で660人の患者を対象に、最終段階の第3相臨床試験(治験)を終えました。多量飲酒(ビール中瓶3本相当以上)した日数は、ナルメフェンの服用前の月間23日から、服用後約半年で月間11日まで減ったといいます。

 国内では治療が必要なアルコール依存症の患者数が100万人とされますが、医療機関の受診率は10%未満と低くなっています。受診しても、治療から1年後の断酒率は3割ほどとされています。

 大塚製薬では、内科や精神科など併発疾患が多い診療科への啓発活動を行い、受診を促すといいます。

 減酒治療が普及する海外では、抗てんかん薬「トピラマート」や筋肉けいれん治療薬「バクロフェン」に飲酒への衝動を軽減する効果があるとの報告があり、バクロフェンはフランスで製品化の動きが出ています。日本では、国立病院機構の久里浜医療センター(神奈川県横須賀市)が4月に、飲酒量を減らして治療する減酒外来を新設しました。

 アルコール依存症の治療は、依存源から強制的に引き離すのではなく、患者が脱却に向けて自ら継続して取り組むことを重視する傾向が強まりつつあります。

 2017年10月16日(月)

 

■中高年の大腿骨骨折、沖縄県の発生率は男性1位女性2位 近畿大などが都道府県別に調査

 高齢者に多い大腿(だいたい)骨近位部骨折について、近畿大学や大阪医科大学の研究チームが人口10万人当たりの発生率を都道府県別に調べた結果、沖縄県は男性が全国一高く、女性は全国で2番目に高かったことが14日、明らかになりました。

 また、発生率は全国の中部から関西、九州など西日本で高い傾向がみられ、都道府県の比較での最大差は約2倍。研究チームは、明確な要因は不明としながら「食生活の違いが影響している可能性もある」との見方を示しています。

 大腿骨近位部は、足の付け根の股関節に接する部分を指し、骨折すると寝たきりなど介護が必要な状態になる原因となることが多いといいます。

 調査は、公的医療保険を使った医療の受診記録に当たる診療報酬明細書(レセプト)の情報を全国で集めた厚生労働省のナショナルデータベースを活用。2015年の40歳以上の患者15万2000人(男性3万2000人、女性12万人)を都道府県ごとに振り分け、人口10万人当たりの発生率を算出しました。

 全国平均を100とすると、患者数が多い女性の場合、最高は兵庫県の120。次いで和歌山県と沖縄県が118、奈良県と大分県が116でした。一方、男性の場合、最も発生率が高いのは沖縄県の144。和歌山県と長崎県が126、佐賀県が124、兵庫県と鳥取県が121で続きました。

 これに対し男女とも低いのは秋田県(男性63、女性65)、青森県(男性65、女性68)。主に関西や九州で100以上、東北や北海道で100未満となる「西高東低」の傾向が確認されました。最も低い秋田県の男性と、最高値だった沖縄県の男性では2・3倍近い開きがありました。

 この大腿骨近位部の骨折は、骨量が減る骨粗鬆症(こつそしょうしょう)になると起きやすいとされます。研究チームの玉置淳子・大阪医科大学教授(疫学)は、「肥満度を示す体格指数(BMI)や飲酒・喫煙、ビタミンD不足が要因として考えられる」と指摘しました。

 大腿骨近位部骨折は、骨がもろくなった高齢者に目立っており、比較的軽度なつまずきでも起きるとされています。さらに、それまでどおりのようには歩けず、介護を受ける切っ掛けとなるなど、生活の質に大きな影響を与えることも多くなります。医療関係者は、「高齢化が進む中、健康で自立した生活を送るためにも食事や運動などの面で日常的な予防を心掛けてほしい」と話しています。

 厚生労働省によると、日本人の平均寿命は男女とも80歳を超え、日常生活に制限のない「健康寿命」は2013年時点で男性が71歳、女性74歳となっています。2016年国民生活基礎調査では、介護が必要となった主な要因として「骨折・転倒」を挙げたのは男性の6・7%、女性14・9%。「関節疾患」は男性5・2%、女性12・8%で、骨や関節など運動器の重要性が際立ちます。

 こうした状況を踏まえ、厚労省は、運動器の機能が衰える「ロコモティブシンドローム」の予防に向け、適度な運動や食生活の見直しを提唱。市町村による骨粗鬆症検診に補助金も出しており、現在は全市町村の約6割が検診を実施しているといいます。厚労省の担当者は、「健康に長生きするために、まずはふだんの生活でできることから始めてもらいたい」としています。

 2017年10月16日(月)

 

■予防接種のミス、2016度は6602件 半数が接種間隔の間違い、厚労省が公表

 麻疹(ましん)や風疹、日本脳炎などのワクチンの定期接種で起きたミスが2016年度に、前年度比434件増の6602件(10万回当たりの率15・14)あったと厚生労働省が10日までに、発表しました。

 報告制度が始まった2013年度には4596件(10万回当たりの率11・7)でしたが、その後は3年連続で増えています。報告制度の定着が背景にあると厚労省はみています。

 医療機関内や集団接種の会場で起きたケースをまとめたもので、厚労省が有識者会議で報告しました。最も多かったのは、次の接種までに空けねばならない「接種間隔の間違い」で3475件。接種回数の誤りや予定と違うワクチンを接種した「不必要な接種」が797件、兄弟を取り違えるなど「対象者の誤認」が549件と続きました。

 「接種量の間違い」は203件、「期限切れワクチンの使用」は193件、「ワクチンの種類の間違い」は136件、「その他(対象年齢外の接種、溶解液のみの接種など)」は1212件ありました。

 使用ずみの注射器・注射針を使ったり、医師の指に注射針が触れて傷ができたことに気付かず、その針で乳児に接種したりするなど「血液感染を起こし得るもの」は11件ありました。いずれも健康被害は報告されていないといいます。

 厚労省は、予防接種法に基づき、重大な健康被害につながる恐れがあったミスのほか、健康被害の可能性が低いミスも報告するよう自治体に求めています。一方、予防接種の注意点をまとめたリーフレット「予防接種における間違いを防ぐために」を作って自治体や医療機関に配布したり、医師や看護師向けの予防接種従事者研修を行って、再発防止を図っています。

 2017年10月15日(日)

 

■果物の適量摂取が動脈硬化のリスクを低減 日本動脈硬化学会が指針で推奨

 日本動脈硬化学会が動脈硬化による疾患の予防や診断についてまとめる「動脈硬化性疾患予防ガイドライン」は、今年6月に5年ぶりの改訂が行われました。このガイドラインの中には、果物の適量摂取が冠動脈疾患などのリスクを低減させる可能性が記され、国内外の研究や解析結果の蓄積から、果物の健康効果の見直しが進んでいます。

 専門家らは、「健康なら、気軽に果物を食べてほしい」と呼び掛けています。

 果物の摂取は以前から推奨されていましたが、疾患予防との関連は明らかにされていませんでした。改訂されたガイドラインでは、「果物の摂取量を増加させることは動脈硬化性疾患予防に推奨できるか」との問いを記載し、「果物の摂取は冠動脈疾患および脳卒中リスクを低減させる可能性があり、糖質含有量の少ない果物を適度に摂取することが勧められる」と明記し、強く勧められる推奨レベルAに分類しました。

 国立循環器病研究センター予防健診部の小久保喜弘医長は、「果物のよい研究成果が蓄積されてきた結果」と評価した上で、「果物を食べると太るといった誤解があるが、果糖と通常の砂糖は代謝メカニズムも違う。健康であれば、適量の果物が肥満や糖尿病を引き起こすとはいいにくい」と指摘しています。

 ガイドラインによると、果物の摂取量が多いほど心血管疾患や冠動脈疾患、脳卒中などのリスクが低下。特にナシやかんきつ類、リンゴとの関連性が強いといいます。グレープフルーツやキウイ、ベリー類で、動脈硬化の要因となる悪玉コレステロールと中性脂肪が減少したとの結果も紹介しています。

 小久保医長は「日本には“こたつにミカン”という風景がある。手軽に手を伸ばせる環境を作ったり、料理に加えたりしてほしい」と呼び掛けます。

 厚生労働省の食事バランスガイドでは、活動量「ふつう」の成人女性と「低い」成人男性の場合、1日に必要な果物は1つ(100グラム)を単位として2つ(200グラム)で、ミカン2個、リンゴ1個、ナシ1個、ブドウ1房、キウイ2個程度に相当します。イギリスの研究機関の解析では、1日200グラムで、冠動脈疾患リスクが10%、脳卒中リスクが18%、全がんリスクが4%低くなったといいます。

 女子栄養大学栄養学部の林芙美准教授は、「栄養指導に使ってきた200グラムという数字が、適量と裏付けされるようになってきた」と分析しています。

 果物の摂取を心血管疾患などの予防に推奨する一方、ガイドラインは、トウモロコシから作った果糖ぶどう糖液糖などを使った炭酸飲料やスポーツドリンク、ゼリー、アイスクリーム、シリアルといった加工食品のとりすぎは肥満につながるとし、生鮮果物と混同しないよう呼び掛けています。

 林准教授は、「皮をむくのが面倒という理由で敬遠する人も多いが、切ってスプーンですくってすぐに食べられるキウイや皮ごと食べられるブドウなど手軽な果物も多い。旬の果物を甘いもの代わりにしたり、お土産にしてもいいのでは。果物を見直してほしい」と話しています。

 厚労省の国民健康・栄養調査では、2013年の1人当たりの果実摂取量は1日112グラム。10年前に比べると全世代で減少し、最も少ない30~39歳では60グラムでした。生鮮果実を毎日とらない理由は「日持ちせず買い置きできない」「値段が高い」などに続き、「太る」が挙げられていました。

 2017年10月14日(土)

 

■「雪見だいふく」にプラスチック片混入、ロッテが自主回収へ 伊藤ハムも「グリルチキン」を自主回収

 大手菓子メーカーのロッテは14日、アイス商品「雪見だいふく クッキー&クリーム」にプラスチック片が混入している可能性があるとして、約3万2000個を自主回収すると発表しました。

 自主回収するのは、パッケージの側面に印字されている製造番号の上段の先頭6ケタが「9KA057」の商品で、9月5日に九州工場(福岡県筑後市)で製造されたものだといいます。

 ロッテによりますと、10月10日に「商品にプラスチック片が入っている」と中国地方の顧客から苦情があり、調べたところ、九州工場のアイスの製造工程で、機械の中に入ったアイスの状態を外から確認するプラスチック製の小窓が割れるなどしていたということです。その一部の長さ1センチ程度の破片が混入したとみられ、これまで3件を確認しましたが、けが人はいないといいます。

 対象の商品は兵庫県、岡山県、広島県、山口県、鳥取県、島根県のスーパーやコンビニで販売されていて、購入した人は商品を食べずに九州工場まで送るよう呼び掛けています。

 問い合わせはロッテアイスお客様相談室(0120・531・610)。

 一方、大手食品メーカーの伊藤ハムは13日、鶏肉を使ったパック詰めの総菜商品が腐敗していたことがわかったとして、全国で販売された3570パックを自主的に回収すると発表しました。

 発表によりますと、回収するのは「レンジでごちそう グリルチキン ガーリック・完熟トマト仕立て 200g」。佐賀県にある伊藤ハムの子会社、伊藤ハムウエストの九州工場で先月、製造され、賞味期限が今年12月10日と12月12日の商品、合わせて3570パックです。

 商品は全国で販売され、伊藤ハムによりますと、10月7日に商品を購入した人から「商品が膨らんでいて腐敗しているのではないか」という連絡を受けて調べたところ、腐敗を確認したということです。

 連絡はこれまでのところ、この1件のみで、健康被害は報告されていないということです。原因は調査中だといいます。

 伊藤ハムは「回収でご心配をおかけすることをおわび申し上げます。万が一のことを考えて自主回収することにしました」とコメントしています。

 2017年10月14日(土)

 

■中高年の大腿骨骨折、発生率は西高東低 沖縄県と秋田県では2・3倍の開き

 骨粗鬆症(こつそしょうしょう)で起こりやすくなる中高年の大腿(だいたい)骨骨折の人口10万人当たりの発生率は西日本で高く、北海道や東北地方で低いという調査結果を、骨粗鬆症財団や近畿大学などの研究チームがまとめました。食生活の違いなどが関係している可能性もあるといいます。

 調査は、公的医療保険を使った医療の受診記録に当たる診療報酬明細書(レセプト)の情報を全国で集めた厚生労働省のナショナルデータベースを利用し、脚の付け根付近の大腿骨を骨折して手術を受けた40歳以上の男女の割合を年齢の偏りを調整した上で、都道府県別に比べました。

 2015年に大腿骨を骨折した人は男性3万2000人、女性12万人。全国の発生率は、男性が10万人当たり89人、女性が10万人当たり299人でした。女性が多いのは、骨の細さと骨形成にかかわるホルモンが閉経により減少するため。また、高齢者ほど大腿骨を骨折しやすく、75歳以上が男性で76%、女性で87%を占めました。

 都道府県別に比較すると、「西高東低」の傾向が浮かび上がりました。全国平均を100とした骨折の発生率は、女性では兵庫県や和歌山県、沖縄県などが120前後と西日本で高く、秋田県や青森県など東北以北で低くなりました。120で最も高い兵庫県と65で最も低い秋田県とでは、1・8倍の差がありました。男性も同じ傾向で、144で最も高い沖縄県と63で最も低い秋田県では、2・3倍の開きがありました。

 今回の調査では地域間の偏りの原因は、はっきりしていないといいます。過去にはカルシウムの骨への取り込みを助けるビタミンKの血中濃度は東日本で高く、ビタミンKを多く含む納豆の消費量が関係するといった報告があります。研究チームは、食生活が影響する可能性も考えられるとしていいます。

 研究チームの玉置淳子・大阪医科大学教授(疫学)は、「気になる人は骨検診の受診、カルシウムやビタミンD、ビタミンKの摂取、運動の習慣付けや、リスクになるやせすぎへの注意などを心掛けてほしい」と話しています。ビタミンDは、シラス干し、サンマ、干しシイタケ、イクラ、あん肝などに多く含まれます。

 調査結果は、20日から大阪市で開かれる日本骨粗鬆症学会で報告されます。

 2017年10月13日(金)

 

■山形大、皮膚の傷を早く、安価に治す粉末を発見 3~5年での製薬化を目指す

 山形大学は11日、皮膚の傷を治癒する効果のある物質を発見したと発表しました。半導体としての性質を持つ酸化亜鉛粉末を製造する過程で生じる「シモンコライト」という粉末で、傷口を覆う医療用被覆剤に比べ、癒着も起きず深い傷でも早く正常な皮膚に再生させることを動物実験で確認しました。

 今後3~5年かけて医療現場などでの実用化を目指します。

 シモンコライトに皮膚の傷を治す効果があることを発見したのは、山形大学大学院理工学研究科の山本修教授(生体機能修復学、医工学)。機能素材の開発・製造メーカーJFEミネラル(東京都港区)との共同研究の過程で、発見しました。

 ラットを使った実験では、シモンコライトが亜鉛イオンを徐々に放出してタンパク質分解酵素を活性化させ、新たな血管をつくり出して皮膚を再生させることを確認しました。毛を生む毛包という器官もでき、実際に体毛も生えました。現在、より人体に近いブタでの実証を進めています。

 通常、軽い傷なら自然に治癒するものの、表皮の下にある真皮や皮下組織におよぶ深い傷には、湿潤ゲルやポリマー製の医療用創傷被覆剤を使って治療するのが一般的。ただ、治療は長期におよんで、完全に治すことは難しく、傷跡や引きつれが残るなどの課題もあります。

 シモンコライトは、生体とほぼ同じpH値で、水に溶かして軟こう状になるため使いやすく、ごく微量ですみ、治癒後、皮膚にも残りません。長期間同じ姿勢で寝たきりになってできる床擦れ治療には直ちには難しいものの、切り傷、すり傷、裂傷には効果があるとみています。

 シモンコライトは、太陽電池やタッチパネル、抗菌剤などに幅広く使われる酸化亜鉛をつくる前段階で生じる物質で、すでに工業生産されて家畜飼料やpH調整剤などに用いられているため、製造法は確立しています。新たな設備投資が不要なため、製造コストが安価ですむメリットもあります。

 研究成果は、11月20日から東京都で開かれる日本バイオマテリアル学会や、11月30日から岡山市で開かれる国際会議「アジアン・バイオセラミックス・シンポジウム2017」で発表します。

 創傷治癒剤として特許5件を出願、新規治療薬としての承認・製造・販売に向けて、医薬品医療機器総合機構(PMDA)と事前相談なども進めています。ばんそうこうなどとして製品化が可能といい、医療現場での使用のほか、将来は家庭でも使われることも視野に研究開発を進めます。

 2017年10月13日(金)

 

■高価な薬の成分を含む卵、ニワトリに産ませることに成功 安価な薬の開発に期待

 遺伝子を自在に改変できるゲノム編集の技術を利用し、がんや肝炎の治療にも使われる高価な薬の成分を含む卵をニワトリに産ませることに、産業技術総合研究所関西センター(大阪府池田市)などが成功しました。

 薬を安価に作る新手法で、共同研究する企業が来年中にも、まず研究用試薬として従来の半額程度の値段で販売する予定。将来は、薬を現在の1割以下の価格に抑えることを目指します。

 この成分は、免疫に関係するタンパク質の一種「インターフェロンベータ」。悪性皮膚がんや肝炎の治療薬のほか、ウイルス研究用の試薬としても使われています。ただ、生産には大規模な培養施設が必要で、成分自体の価格も数マイクロ・グラム(マイクロは100万分の1)当たり3万~10万円と高価です。

 産業技術総合研究所関西センターと農業・食品産業技術総合研究機構(茨城県つくば市)、試薬輸入販売商社「コスモ・バイオ」(東京都江東区)の研究チームは、雄ニワトリの精子のもとになる細胞に、このインターフェロンベータを作る遺伝子をゲノム編集で導入し、卵に移植。生まれた雄を複数の雌と交配させ、遺伝子を受け継いだヒナを育てました。

 7月下旬、北海道小樽市にあるコスモ・バイオの鶏舎で、ゲノム編集した遺伝子を持つ雌が産卵し、卵白にインターフェロンベータが含まれることを確認しました。現在、3羽の雌が1~2日に1個ずつ産卵しているといいます。

 将来は卵1個から数十~100ミリ・グラムのインターフェロンベータを安定的に作り、大幅な低コスト化を図ります。ただ、医薬品は安全面などのハードルが高いため、まず研究用試薬の生産に乗り出すといいます。

 北條裕信・大阪大学教授(天然物化学)は、「安価な薬の開発が期待できる成果だ。今後、卵に含まれる成分の性質を詳しく調べ、医薬品としての安全性を見極める必要がある」と話しています。

 2017年10月13日(金)

 

■血液検査で腎臓がんを判別するタンパク質を発見  がん研究会、年内にも治験を開始へ

 血液検査で腎臓がんを判別できるタンパク質を発見したと、公益財団法人がん研究会(東京都江東区)と大阪大学の研究チームが発表しました。

 検査での目印となる精度の高い腫瘍マーカーとして実用化されれば、腎臓がんの早期発見につながる可能性があるとしています。

 研究チームは、腎臓がんの細胞から分泌され、がん細胞の情報を血液中などにばらまく微粒子「エクソソーム」に着目して、その中の約4000種類のタンパク質を調べました。その結果、「アズロシディン」というタンパク質が、正常な腎臓細胞の30倍以上ありました。

 さらに、腎臓がん患者20人、健常者10人の血液を調べたところ、感度(腎臓病患者を発見する割合)52・6%、特異度(健常者を発見する割合)100%を示し、とりわけ早期の腎臓がん患者からも健常者より高値のアズロシディンを検出できました。

 研究チームは、総合化学メーカーの東ソーと共同で、少量の血液でこのアズロシディンの濃度を測る簡易検査キットの開発を始めています。早ければ年内にも、100人以上の患者を対象に医師主導の臨床試験(治験)を始める予定で、2~3年後の実用化を目指すとしています。

 研究チームの植田幸嗣(こうじ)・がん研究会プロジェクトリーダーは、「腎臓がんの5年生存率は、早期に見付かれば高いが、最も進行した状態だと大きく下がる。早期発見によって、治療成績の向上が期待できる」と話しています。

 腎臓がんは世界的にも患者数、死亡数が年々増加の一途をたどっており、日本では年間約2万5000人が発症し、約9000人が亡くなっています。

 2017年10月13日(金)

 

■民間バンクの臍帯血、厚労省の通知後も廃棄進まず 対象は2100人ぶん、廃棄決定は131人ぶん

 希望者から臍帯血(さいたいけつ)を有料で預かる民間バンク7社が、契約終了後も保管していて流用可能な約2100人ぶんの臍帯血のうち、厚生労働省の廃棄通知を受けて廃棄が決まったのは131人ぶんにとどまっていることが明らかになりました。

 1472人ぶんについては契約者と連絡がつかず、処分のめどが立っていないといいます。

 東京都や大阪府などのクリニックで他人の臍帯血を使った再生医療が無届けで行われ、臍帯血業者や医師らが逮捕された事件では、過去に破産した茨城県の民間バンクから臍帯血が流出。効果が未確立で拒絶反応や感染症を引き起こすリスクもある、がん治療や美容などの名目で、患者に投与されていた経緯があります。

 厚労省は契約切れの臍帯血の保管が続けば同様の問題につながる恐れがあるとして、速やかに廃棄するよう求めています。

 厚労省が9月に発表した実態調査で、全国の民間バンク7社で計約2100人ぶんの臍帯血が保管されていることが判明。厚労省は臍帯血を契約者に返還するか、廃棄するよう7社に通知を出しました。これまでの契約は、契約終了後に自動的に廃棄する仕組みになっておらず、多くは所有権が民間バンクに移るとされていました。

 大半の臍帯血を保管し、厚労省の実態調査に企業名を公表したステムセル研究所、アイル、ときわメディックスの民間バンク3社が保管している契約期限切れの臍帯血は計2020人ぶん。うち、契約者との連絡が取れたことを受けて廃棄を決めたのは131人ぶん(6%)でした。研究用として譲渡するため再度、契約者の同意を得て保管することを決めたのは417人ぶん(21%)。残りの1472人ぶん(73%)については契約者と連絡がつかず、宙に浮いたままになっています。

 3社の中で最も多い1941人ぶんの契約が切れた臍帯血を保管するステムセル研究所の担当者は、「今年度末をめどに契約者に確認がとれなければ廃棄する。第三者に渡すことはない」と話しています。

 民間バンクは、提供者や家族が将来治療に使うため、新生児のへその緒などに含まれる臍帯血を有償で預かる事業。善意の提供で白血病などの治療に役立てるため、厚生労働大臣の許可を得た公的バンクとは異なります。

 2017年10月12日(木)

 

■京都府立医大、再生医療の臨床試験を開始 血管が詰まるバージャー病が対象

 手足の血管が詰まって痛みなどが起き、切断に至ることもある難病「バージャー病」の患者に、血管再生作用がある自分の骨髄細胞を移植する再生医療の臨床試験を開始すると、京都府立医科大学(京都市上京区)が12日、発表しました。数年後の普及を目指します。

 京都府立医科大学附属病院のほかに、横浜市立大学附属病院、信州大学医学部附属病院、名古屋大学医学部附属病院、広島大学病院、久留米大学医学部附属病院で実施する予定。

 府立医大によると、バージャー病の国内患者は約9000人。うち1、2割ほどが重症といいます。臨床試験は20~70歳代の25人の重症患者が対象で、患者の腰から骨髄細胞を採取し、足の筋肉に注射して、血管ができるのを促します。

 約10年前から実施されたほかの病気も含めた重症虚血肢の臨床試験で、特にバージャー病や膠原病に伴う血管炎などの非動脈硬化症例の患者で治療効果が認められたため、普及に向けてバージャー病に特化した試験を始めることになりました。

 府立医大の的場聖明教授(循環器内科学)は、「臨床試験により、患者が保険診療で今回の移植を受けられるようになり、足の切断を回避できれば」と話しています。

 2017年10月12日(木)

 

■医療事故調査制度の開始2年で、届け出751件 当初予定の2~3割にとどまる

 患者の予期せぬ死亡を対象とする医療事故調査制度で、第三者機関の日本医療安全調査機構(東京都千代田区)は10日、「院内調査が必要」として9月に医療機関から届け出があった事案は35件と発表しました。

 2015年10月の制度開始から2年間の累計は751件、院内調査結果報告は累計476件となりました。

 日本医療安全調査機構は医療事故調査制度の開始前、院内調査件数は年に1300~2000件と推計しており、実際の件数は当初の想定を大きく下回る2割弱から3割弱にとどまっており、制度の周知などが依然として大きな課題として指摘されています。

 9月に届け出があった35件の内訳は、病院(20床以上)が34件、診療所(20床未満)が1件。地域別では関東信越で14件、東海北陸と近畿でそれぞれ7件、東北3件、九州2件、北海道と中国四国が1件ずつでした。診療科別では内科が7件、循環器内科が4件と続き、外科と消化器科、産婦人科、泌尿器科、呼吸器内科ではそれぞれ3件でした。

 2年間に届け出があった751件の内訳は、病院(20床以上)が704件、診療所(20床未満)が47件。地域別では関東信越で281件、近畿で120件、東海北陸で112件、九州で101件、中国四国で54件、北海道で44件、東北で39件でした。診療科別では外科が127件、内科が96件、消化器科が64件、整形外科が59件、循環器内科が51件、心臓血管外科と産婦人科が44件、脳神経外科が43件、精神科が28件、泌尿器科が27件、呼吸器内科を含むその他が168件でした。

 2017年10月12日(木)

 

■妊婦への早産予防薬、子供にぜんそくリスク 成育医療センターが長期使用に注意を呼び掛け

 国立成育医療研究センター(東京都世田谷区)は11日、早産予防薬として広く使用される子宮収縮抑制剤「塩酸リトドリン」を妊婦に投与すると、その子供が5歳になった時にぜんそくを発症するリスクが高まるとの研究結果を発表しました。

 研究では、投与日数が20日以上の場合の有症率は、19日以下の場合よりも高いとする結果も示されました。

 成育医療研究センター・アレルギー科の大矢幸弘医長や、産科の小川浩平医師らの研究チームは、2003年から2005年に受診した妊婦を登録し、継続的な調査を実施。塩酸リトドリンを投与されたことがある女性94人と、投与されたことがない女性1064人を比較しました。

 その結果、塩酸リトドリンを投与されたことがある女性の子供の4歳でのぜんそくの有症率は13・8%だったのに対し、投与されなかった女性の子供の有症率は9・2%で、4・6%の差が出ました。また、投与されたことがある94人のうち、投与日数が20日以上の場合は子供の有症率は17・4%で、19日以下の場合は10・3%でした。

 ぜんそくは就学後に自然治癒することも多いため、研究チームはさらに長期間、塩酸リトドリンとぜんそくの関連を調べるとしています。

 成育医療研究センターは、「塩酸リトドリンは新生児死亡の大きな要因である早産予防の有効な薬だが、使用が長期にわたる場合は注意すべきだ」と指摘しています。

 2017年10月12日(木)

 

■肥満の子供は世界で1億2400万人 過去40年間で10倍に増加

 5歳の幼児から10歳代までの未成年者で肥満とされる人の数が世界で1億2400万人に上り、過去40年間で10倍になったことが新たな研究で明らかになりました。2億1000万人は肥満ではないものの、太りすぎとみられるとしています。

 11日の「世界肥満デー」に合わせて、イギリスの医学誌「ランセット」に掲載された研究論文は、世界保健機関(WHO)とイギリスのインペリアル・カレッジ・ロンドンの共同調査に基づくもので、肥満に関する研究の中で最も大規模なもので、世界200カ国の肥満の傾向について調査。イギリスでは、5歳から19歳の未成年者の10人に1人が肥満でした。

 専門家らは、肥満の子供は肥満な大人になりやすく、深刻な健康問題のリスクがあると指摘しています。また、世界肥満連盟は、肥満による健康問題の治療にかかる費用は2025年以降、世界で毎年合計9200億ポンド(約136兆円)超になるとの推計を示しました。

 今回の研究を主導したインペリアル・コレッジ・ロンドンのマジド・エズアティ教授は、イギリスを含め所得水準が高い多くのヨーロッパ各国や日本では子供の肥満率は安定する傾向にあるものの、アメリカは依然として高く、ほかの多くの国で肥満率は危険なペースで上昇していると指摘しました。

 研究者らは、砂糖を多く含む清涼飲料水や高脂肪の食品が安価で手軽に手に入り、宣伝されていることが肥満増加の主な要因だとみて、各国政府に子供を不健康な食事から守る対策を呼び掛けています。

 肥満の子供が最も増加した地域は、東アジアでした。中国とインドでは近年、肥満率が「急増」しているといいます。肥満率が最も高い地域は、太平洋島しょ国地域で、ポリネシアやミクロネシアでは未成年人口の約半数が太りすぎか肥満でした。

 研究者たちは現在の世界的な傾向が続けば、近いうちに「肥満」のほうが「低体重」よりも一般的になると指摘しました。世界の低体重の子供の数は、2000年をピークに減少が続いています。2016年時点の低体重の子供の数は1億9200万人で、肥満の子供の数をかなり上回っていましたが、状況は変化しつつあります。東アジアや中南米、カリブ海では、数十年間のうちに主流は低体重から肥満に転じました。世界的にみると、肥満ではないものの太りすぎとされる未成年者が2016年時点で、2億1300万人いました。

 論文の共同著者でロンドン大学衛生熱帯医学大学院のハリー・ラッター博士は、「これからさらに悪化する非常に大きな問題だ。やせた人でさえ、10年前に比べると体重が増えている。意志薄弱や怠け者、あるいは欲張りになったわけではない。我々を取り巻く世界が変化しているというのが現実だ」と語りました。

 世界保健機関(WHO)のフィオナ・ブル博士は、「高カロリーで低栄養の食品」をなくすための厳しい措置と運動を人々に促すことを呼び掛けました。砂糖の含有量が多い飲み物への課税を実施しているのは、世界で20カ国あまりにとどまるといいます。

 イギリス公衆衛生サービス(PHE)の主任栄養士を務めるアリソン・テッドストーン博士は、「我々の砂糖摂取を減らす取り組みと政府の砂糖税は世界のトップレベルにあるが、非常に大きな課題に挑む長い旅はまだ始まったばかりだ。人々にただ命令するのではうまくいかないのは、明確な証拠が示されている。教育や情報提供は重要だが、カロリー摂取を減らし、より健康的な食事を実現するのを助けるために、より踏み込んだ行動が必要だ」と述べました。

 2017年10月12日(木)

 

■医療機関予約の情報、59万人ぶん流出か サーバーに不正アクセス

 北海道を地盤とする医薬品・医療機器卸売りなどを手掛けるほくやく・竹山ホールディングスは11日、子会社のアドウイック(札幌市)が提供する医療機関向け診察予約システムのサーバーが不正アクセスされ、患者の個人情報59万7452人ぶんが流出した可能性があると発表しました。

 この診療予約システムは、全国82の医療機関が利用。北海道内が66施設、大阪府や京都府、広島県など2府6県の医療機関も導入しています。

 流出した恐れがあるのは、昨年7月6日から今年10月10日までに診療予約システム「シマフクロウ・シリーズ」に登録した患者の氏名や電話番号、メールアドレス、予約した医療機関名と日時、診察券番号。

 5日から9日にかけて、ヨーロッパからの不法侵入があったといいます。10日の定期点検の際に発覚し、問題のアクセスを遮断しました。翌11日には、海外からのアクセスをすべて遮断しました。個人情報を悪用した被害は、確認されていないといいます。

 個人情報が流出した可能性のある患者へは、メールで連絡します。

 2017年10月11日(水)

 

■マダニ感染症、ペットの犬から人に感染 世界で初確認、徳島県

 マダニが媒介する感染症として知られる重症熱性血小板減少症候群(SFTS)について、厚生労働省は10日、徳島県で飼い犬を介して人に感染し、発症したと発表しました。人と犬は発熱などの症状が出ましたが、いずれも現在は回復しています。

 ペットから人への感染が確認されたのは、世界で初めてといいます。

 厚労省などによると、徳島県内の40歳代男性は今年6月3日、飼っている4歳の中型犬(雌、雑種)の体調が優れないため、動物病院を受診。軟便や血便、発熱などの症状があり、山口大学の検査を経て6月下旬、SFTSと診断されました。

 男性も6月中旬に38度台の発熱や嘔吐、下痢の症状が出ましたが、1週間の点滴治療を受けて回復。動物病院と山口大学が因果関係を疑い、9月に入って国立感染症研究所が男性の血液を調べた結果、SFTSウイルスに感染していたことが9月下旬に判明しました。

 男性にマダニにかまれた痕跡はなく、国立感染症研究所は男性が犬の世話をする中で唾液(だえき)が手に付着し、目などの粘膜を通じて感染した可能性が高いとみています。犬は室内で飼育しており、散歩で外出した際にマダニにかまれたとみられます。徳島県によると、犬の発症が確認されたのは国内初。

 厚労省は体調不良のペットを世話する際に体液に触れた場合は、手をよく洗うよう呼び掛けています。

 国立感染症研究所の西條政幸・ウイルス第一部長はペットのSFTS感染はまれだとして、「健康なペットでは過剰に心配する必要はない」と話しています。

 SFTSの多くは、春から夏、秋にかけて発生します。国内では2013年以降今年9月27日現在で303人が発症し、うち59人が死亡。徳島県内でも23人が発症し、うち7人が死亡しています。死亡例はすべて50歳代以上で、高齢者が重症化しやすいと考えられています。

 多くはマダニにかまれて発症したとみられますが、衰弱した野良猫を動物病院に連れてゆこうとして手をかまれた西日本在住の50歳代女性が昨年、死亡していたことが、今年7月に明らかになりました。

 2017年10月11日(水)

 

■消費者庁、健康食品の適切な利用を呼び掛け パンフで「あくまで栄養補助食品」

 消費者庁は10日までに、健康食品を利用する際の注意事項をまとめたパンフレット「健康食品Q&A」を作りました。国民生活センターに寄せられる健康食品関連の相談件数は増えており、「食べるだけで健康になる」などと誤解している消費者も多くいます。

 消費者庁の担当者は、「あくまでも栄養補助食品と理解して」と呼び掛けています。

 パンフレットはB5判15ページで、国民生活センターへの相談などの中から20の疑問についてQ&A形式でまとめました。

 「簡単にやせるのは可能か」「病気を治せるか」などについて、健康維持には食事や運動が重要で、健康食品に病気の治療などの効果は期待できないと指摘。パンフレットの最後には、健康食品の品目と摂取量、体調の変化を書き込む「健康食品手帳」の欄を設けました。

 パンフレットの要点をまとめたA3判のリーフレット「健康食品5つの問題」と合わせて計8万5000部を作成し、全国の自治体施設や保健所などで配布します。

 消費者庁の担当者は、「食事と運動、休養の3つに代われるだけの健康食品はない。健康食品には適切な使い方があるので、うまく使ってほしい」と話しています。

 健康食品の中には、国が安全性や効能を審査して保健機能の表示を許可した「特定保健用食品」などもある一方で、サプリメントや自然食品など国の認可がなく、機能を表示できない製品もあります。

 近年の健康ブームで、健康食品の市場は拡大。国民生活センターに寄せられた相談件数も2007年は約1万6000件でしたが、2016年には約2万9000件と約1・8倍に増えました。腹痛や下痢など健康被害を訴えるケースもあるといいます。

 2017年10月11日(水)

 

■40歳代独身男性の23%がメタボで、既婚者の2倍 東京慈恵医大が調査

 独身中年男性のメタボリックシンドローム(メタボ)の割合は既婚者に比べて約2倍に上っているとする調査結果を、東京慈恵会医科大学の和田高士教授(健康科学)らのチームがまとめました。大阪市で7日から始まった日本肥満学会で発表しました。

 調査は東京慈恵会医科大学附属病院(東京都港区)で人間ドックを受けた40歳代の男性2113人を対象に、既婚1672人、単身赴任131人、独身(離婚も含む)310人を質問票の回答と検査結果から比較しました。

 この結果、メタボの人の割合は独身が23%で、既婚の11%の約2倍でした。メタボの予備軍は独身が17%で、既婚の18%とほぼ変わりませんでした。単身赴任では、メタボの割合は10%にとどまる一方、予備軍は22%と最も多くなりました。独身は、メタボの診断基準となる腹囲や血中の中性脂肪、血糖値、血圧の平均値がいずれも既婚より高くなりました。

 生活習慣をみると、独身は朝食を抜くことや外食が多く、運動不足傾向で喫煙率も高くなりました。単身赴任も外食が多いものの、3者の中では最も運動をしていました。

 独身は、「生活習慣の改善に取り組んでいる」や「保健指導を希望する」との回答率も、3者の中で最も低くなりました。

 和田教授は、「独身の中年男性は既婚者より、糖尿病や心筋梗塞、脳卒中のリスクが高まる」と警告しています。

 和田教授はホームページ上で、「メタボリックシンドローム対策は、内臓脂肪を減らすこと。タバコは吸わない、食事・酒の量を少なくする、たくさん動き・たくさん休む、多くの人に接して心配ごと・悩みごとを相談する、趣味を楽しむなどの生活習慣を続けていれば、メタボリックシンドロームにはならない」と述べています。

 2017年10月10日(火)

 

■マウスの体内で造血幹細胞を効率よく作製 東大チームが成功

 東京大学の中内啓光教授(幹細胞生物学)と山崎聡特任准教授らはさまざまな細胞に育つiPS細胞(人工多能性幹細胞)を使い、動物の体内で血液のもととなる「造血幹細胞」を効率よく作る基盤技術を開発しました。

 マウスの実験で、赤血球やリンパ球などの血液細胞を生み出すもとになる造血幹細胞が体内で生まれる仕組みを再現しました。応用すれば、人の造血幹細胞をブタなど別の動物の体内で作り出す「血液工場」の実現につながります。

 研究チームはiPS細胞をマウスに移植すると、さまざまな組織の細胞が混ざったテラトーマ(奇形腫)と呼ぶ塊ができることを利用しました。iPS細胞に3種類の遺伝子を入れておくとテラトーマの中で血管に似た構造ができ、血管の細胞から造血幹細胞が育ちます。

 遺伝子操作で貧血にしたマウスに、別のマウスから作ったiPS細胞を移植する実験をしました。造血幹細胞ができる効率が向上し、複雑で効率の低かった従来の手法に比べて10倍以上の数の造血幹細胞を作ることができました。

 骨髄にある造血幹細胞の移植はドナー不足が問題となっており、iPS細胞から造血幹細胞を作る技術開発が期待されています。

 新技術で作った造血幹細胞をマウスに移植すると、血液や免疫の細胞を作ることを確認しており、移植治療に利用できるとみています。

 中内教授らは人のiPS細胞を利用し、ブタなどの体内で人の臓器を作る研究にも取り組んでいます。今回の手法を応用し、人のiPS細胞をブタに移植して人の造血幹細胞や血液を生み出すことも視野に入ります。

 山崎特任准教授は、「iPS細胞から臓器を作るよりも仕組みが簡単なため、実用化のハードルは低い」と語っています。

 2017年10月9日(月)

 

■日本カビが世界的流行を起こし死者も 欧米やアジアで抗菌薬への耐性を獲得

 2009年に日本人研究者が「新種」として世界で初めて報告した真菌(カビの一種)「カンジダ・アウリス(カンジダ・オーリス)」(通称・日本カビ)が、欧米やアジアで真菌感染症として初めてのパンデミック(世界的流行)を引き起こしていることが明らかになりました。抵抗力の弱い入院患者が死亡する事例も報告され、警戒が必要です。

 日本カビは、帝京大学大学院医学研究科の槇村浩一教授が2005年に、東京都内の帝京大学医学部附属病院に入院していた70歳の女性患者の耳漏(耳だれ)から初めて発見しました。この時に見付かったカンジダ・アウリスは病原性が低く、抗菌薬に対する耐性も示しませんでした。

 ところがその後、イギリス、コロンビア、インド、イスラエル、ケニア、クウェート、パキスタン、南アフリカ、韓国、アメリカなど世界各国でも同じカンジダ・アウリスが病院や医療現場で外耳道や尿、血液などから発見され、2011年には韓国で感染した患者が敗血症で死亡する事例が報告されました。

 アメリカでも疾病対策センター(CDC)が2016年11月4日に、初めての患者が確認されたと明らかにして、年内に7例の感染が報告されました。今年も122例の感染が報告され、死者も多く出ています。イギリスでも今年の8月までに、200例以上の感染が確認されました。日本から広がったのではなく、もともと各国に同種のカンジダ・アウリスが存在したとみられます。

 懸念されるのが、治療薬が効かない耐性化。アメリカでは9割以上の株が、最優先で選択される抗菌薬であるエキノカンジン系抗真菌薬への耐性を獲得。半分の株は、エキノカンジン系抗真菌薬やアゾール系抗真菌薬など2種類以上の抗菌薬に耐性を持っていました。すべての抗菌薬が効かない株も4%あったといいます。韓国やインドでも、耐性化が確認されています。

 槇村教授は、「日本では明らかな耐性化は認められていないが、海外で強毒耐性化した真菌が、健康な人の体にすみ着いて日本に持ち込まれる可能性は高い」と話しています。

 通常の健康状態で通常通りの生活をしている限り、カンジダ・アウリスに感染することはまずありません。これまでに世界各国で確認されている感染者は、すべてほかの深刻な病気で入院治療を長期間受けていた患者たちです。感染者が見付かっている国に渡り、感染者が入院している病院に何らかの疾患で長期入院したり、手術を受けるような場合は、感染する可能性が出てきます。

 2017年10月8日(日)

 

■幼児期の外遊びで体力向上、育児世代は体力が低落 スポーツ庁2016年度調査

 体育の日の9日に合わせ、スポーツ庁が発表した「体力・運動能力調査」で、幼児期によく外遊びをしていた子供ほど小学校に入ってからも体力があることが、明らかになりました。同庁は「幼児期に体を動かすことは、小学校での運動やスポーツの習慣につながっている」とみています。

 調査は国民全体の基本的な体力や運動能力の状況を把握し、政策に反映させるため毎年実施しており、今回は2016年5月~10月、6歳から79歳まで約6万4600人が受けました。

 小学生(6~11歳)については、入学前の外遊びの頻度と今の体力の関係を初めて調査。その結果、例えば外遊びが「週6日以上」だった10歳女子は50メートル走や握力などの体力テストの合計点が59・1点で、「週1日以下」だった10歳女子より8点ほど高くなりました。10歳男子でも「週6日以上」の層は、体力テストの点数が「週1日以下」の層より5点ほど高くなりました。

 入学前の外遊びの頻度を男女で比べると、「週6日以上」はいずれの年齢でも男子のほうが女子より数ポイント高くなりました。育て方の影響などで、男女の運動習慣の差が幼いころから現れているといえそうです。 

 一方、30歳代後半女性については、握力や上体起こしなどの体力テストの合計点が、現行調査が始まった1998年度以降で過去最低となったことが、明らかになりました。育児で忙しい世代や働き盛りの運動離れが、背景にあるとみられます。

 調査結果によると、成人(20~64歳)の合計点(60点満点)では、30歳代後半から40歳代前半の男性、30歳代前半から40歳代後半の女性を除き、おおむね横ばいか向上傾向を示しました。このうち35~39歳の女性の合計点は35・48点で、これまで最も低かった2012年度の35・77点を下回りました。1998〜2003年度までは37点台で推移していたが、それ以降は低落傾向にあります。

 逆に、高齢者(65~79歳)の合計点は上昇傾向にあり、特に75~79歳の女性は35・45点で、3年連続で過去最高を更新しました。1998年度からは6点近く上がっており、体力と運動能力の確実な増進が確認されました。

 青少年(6~19歳)の合計点では、ほとんどの年代で緩やかな向上傾向を示しましたが、項目別では男性の握力と男女のボール投げが依然低下傾向にありました。特に19歳男性の握力は、1998年度以降で過去最低の41・65キロで、ピークから3キロ以上落ちていました。

 また、20~79歳に運動やスポーツによるストレス解消の効果を尋ねたところ、いずれの年代も9割程度が「大いに感じる」「まあ感じる」と答えました。週1日以上の運動をしている人は、していない人よりもストレス解消効果を「大いに感じる」と答える割合も高くなりました。

 スポーツ庁は、「ストレス解消や充実した生活のためには、運動する習慣が重要だと考えている。多くの人に運動してもらえるような政策に積極的に取り組んでいきたい」としています。

 2017年10月8日(日)

 

■交通事故後の一貫病床に藤田保健衛生大病院を選定  自動車事故対策機構

 交通事故の被害者対策を担う国土交通省所管の独立行政法人「自動車事故対策機構」(東京都墨田区)は6日、事故による脳損傷で最重度の障害を負った患者を治療する新しいタイプの専門病床(5床)を、藤田保健衛生大学病院(愛知県豊明市)に委託すると発表しました。

 これにより、自動車事故対策機構の専門病床は全国9カ所計295床になります。事故直後から患者を受け入れ、リハビリまで一貫して行う新しいタイプの専門病床(一貫症例研究型)で、来年1月から患者を受け入れる予定。

 自動車事故対策機構は、自賠責保険の資金を活用し、50~80床の「療護センター」4カ所と、一般病院に委託してセンターに準じた治療を行う「委託病床」(12~20床)4カ所を運営。「遷延(せんえん)性意識障害」と呼ばれる最重度の患者が、手厚い治療とリハビリを最長3年間受けられます。

 従来の専門病床は、複数の病院で治療を受け、病状が安定した患者を受け入れており、事故から入院まで通常1年程度かかります。だが、自動車事故対策機構の調査によると、専門病床に入るまでの期間が短いほど改善する傾向があります。

 藤田保健衛生大学病院に開設される一貫症例研究型の委託病床は、入院までの期間を短縮するねらいがあります。事故直後から同病院の救命救急センターで受け入れ、急性期治療をした後、併設の専門病床で同じ医師らがリハビリを一貫して行います。効果が確認されれば、自動車事故対策機構は委託先を拡大する方針です。

 記者会見した自動車事故対策機構の浜隆司理事長は、「早期に一貫した治療を始めることで回復が期待できる」と話しました。湯沢由紀夫・藤田保健衛生大学病院長は、「しっかりとした医療チームを作って、最重度の後遺障害者に対する医療モデルを確立し、成果を日本中に発信していきたい」と抱負を語りました。

 2017年10月8日(日)

 

■京大研究所、備蓄iPS細胞の提供を再開 試薬取り違え疑惑で1月に停止

 京都大学iPS細胞研究所は6日、再生医療向けに作製したiPS細胞(人工多能性幹細胞)の提供を再開したと発表しました。細胞の作製過程の品質管理に不備があり、試薬取り違えの可能性が生じたため、今年1月に大学や研究機関、企業向けの供給を一部停止していました。

 停止の影響で、京大や大阪大学がそれぞれ計画する臨床研究が最大1年遅れることが判明しています。iPS細胞研究所の広報によると、「提供再開でも現時点で遅れは解消しない」といいます。

 iPS細胞研究所は再生医療向けに高品質のiPS細胞を作製し、備蓄する「ストック事業」を進めています。供給を再開したのは、新生児のへその緒に含まれる「臍帯血(さいたいけつ)」から作ったiPS細胞で、改めて拒絶反応が起きにくい免疫の型を持った臍帯血からiPS細胞を作り、品質検査もやり直しました。この臍帯血から作ったiPS細胞は、日本人の17%をカバーできる見込みです。

 管理不備が判明したのを機に、iPS細胞研究所はiPS細胞を作る施設に不要な物を持ち込まない、作業の記録を徹底するなどの再発防止策をまとめました。タカラバイオ(滋賀県草津市)と協力し、細胞の品質管理基準を作るなどの対策も進めています。

 iPS細胞研究所の広報は、「製造管理体制を見直し、再発防止策を実施した上で開始に至った」と説明しています。

 2017年10月7日(土)

 

■今季のインフルワクチン、原則1回摂取に 不足懸念で厚労省が通知

 厚生労働省は6日、今季の流行に備えたインフルエンザワクチンの今年度の製造量が2528万本で、昨年度の使用量2642万本を下回る見通しだと明らかにしました。ワクチンに使うウイルス株を選び直した影響で、過去5年間で最も少なくなっています。

 厚労省は対策として、「1回または2回」としている13歳以上の任意接種について、「13歳以上の人は1回接種が原則」とすることを徹底して効率的に使い、2回接種を控えるよう都道府県などに通知しました。

 今年度のインフルエンザワクチンの製造量は、昨年度を256万本下回る見通し。今年度のインフルエンザの流行予測を基に製造に使うウイルス株を決めましたが、メーカーの指摘で製造効率が悪いことが判明。昨年度と同じウイルス株に変更したため、各メーカーの製造に遅れが生じているといいます。

 厚労省はインフルエンザワクチンの任意接種について、13歳未満は「2回」、13歳以上は「1回または2回」を推奨しています。

 同省は昨年度の使用量をベースに、仮に13歳以上が全員1回接種だった場合の使用量を昨年度に比べて8%減の約2430万本と試算。1回接種を徹底すれば昨年度と同程度の人数分は確保できるとして、医療機関などに1回接種を周知します。

 ただ製造の遅れからインフルエンザワクチン出荷は出足が鈍く、予防接種の希望者が多くなる11~12月に不足感が出る可能性があるといいます。

 厚労省は、「前倒しで出荷できるよう対策をとりたい」としています。

 気温の低下とともに、今年もインフルエンザの患者がじわりと出始めています。厚労省は6日、全国約5000の定点医療機関から報告されたインフルエンザの新規患者数が、10月1日までの1週間に1医療機関当たり0・21人になったと発表しました。同期間に、小学校など10校が学年閉鎖や学級閉鎖をしました。

 2017年10月7日(土)

 

■千葉大病院、死亡の入院患者4人から緑膿菌を検出 院内感染の疑いも

 千葉大学医学部附属病院(千葉市中央区)6日までに、今年8月下旬から9月下旬にかけて死亡した入院患者4人から、抗生物質などの抗菌薬が効きにくい「多剤耐性緑膿菌(りょくのうきん)」が検出されたとホームページで発表しました。

 病院は「患者は重篤な状態で治療していた」としていますが、4人がいずれも同じフロアに入院していたことから院内感染の疑いもあるとみて調査を進めるとともに、4人から検出された菌を千葉市環境保健研究所に送って遺伝子の型が同じかどうか分析を進めています。

 多剤耐性緑膿菌は、抗生物質などの抗菌薬が効きにくく、病気などで免疫力が低下した患者が感染すると肺炎や尿路感染症を引き起こし、悪化すると敗血症などを引き起こして死亡するケースもあるということです。

 これまでに4人のほかに感染は確認されていないということで、病院は感染の拡大防止対策を進めるとともに、死亡との関連を調べるため調査委員会を立ち上げたということです。

 山本修一病院長は、「このような事態となったことを重く受け止め、原因究明と再発防止に取り組んでいる。ご心配をおかけし、心よりおわび申し上げる」とのコメントをホームページに掲載しました。

 多剤耐性緑膿菌は、身の回りに広く存在する細菌の一種である緑膿菌のうち、複数の抗生物質などの抗菌薬が効きにくい多剤耐性になったものです。1970年代までに存在が知られるようになり、その後、さまざまな抗菌薬に耐性を持つ緑膿菌が発見され、各地の病院で院内感染の原因として報告されて問題となっています。

 国立感染症研究所によりますと、約500の病院から報告を受けた患者の数は2003年に759人と多かったものの、その後は減少傾向にあり、2015年までの5年間は年間の患者数は200人から400人余りで推移しています。

 2017年10月7日(土)

 

■ストレスチェック義務化後の実施率は平均82・9% 職場の環境改善に活用は37%

 2015年12月から従業員50人以上の事業所に義務付けられた「ストレスチェック制度」の実施率は今年6月末時点で8割にとどまっていることが、厚生労働省の調査で明らかになりました。

 大手広告会社・電通(東京都港区)の女性新入社員が過労自殺した事件などを機に、従業員の心のケアに関心が高まっていますが、実施結果を職場の環境改善に生かしている事業所も4割を下回るなど、課題が浮き彫りになっています。

 厚労省によると、全国約14万カ所の事業所のうち、ストレスチェックを実施したのは82・9%で、50~99人の事業所では78・9%でした。また、同省研究班が制度導入から1年間に実施した約270事業所を追跡調査した結果、職場の環境改善に生かしている事業所は37%で、従業員が参加して改善策に取り組んだのは、わずか4%でした。

 昨年からストレスチェック制度を本格導入している電気通信工事大手の「ミライト」(東京都江東区)の人事担当者は、「ストレスチェックの結果、各職場では上司と部下の意思疎通がうまくいってなかったり、仕事と家庭のバランスが取れていなかったり、さまざまな課題が明らかになった」と評価しています。

 同社では、個人が特定されないよう実施結果を40人以上の集団に分けて分析し、勤務体制の見直しなどの改善につなげています。

 一方、美容関連会社の人事担当者は、「300人程度の事業所では、日々の様子で従業員の状況は把握できる。制度を職場改善にどう生かせばいいのかわからない」と戸惑いの声を上げています。

 厚労省研究班の代表を務めた東京大学の川上憲人(のりと)教授(精神保健学)は、「実施率を高めるだけでなく、業務の見直しや職場でコミュニケーションを取りやすくする仕組みなど企業にどう対策を促していくかも大きな課題だ」と指摘しています。

 ストレスチェック制度は、2014年の労働安全衛生法の改正で50人以上の事業所に義務付けられました。従業員の精神的ストレスを早期に発見し、悪化を防ぐことが目的で、「非常にたくさんの仕事をしなければならない」「時間内に仕事が処理しきれない」「私の部署内で意見のくい違いがある」「仕事に満足だ」といった57項目を尋ね、ストレスの度合いを数値化して示します。

 解答結果から「高ストレス」と判断された従業員は、医師との面談ができ、診断結果によっては事業者に対して、従業員の働く時間の短縮や配置換えといった対応が求められます。また、ストレスチェック結果を活用して職場改善に取り組むことが、事業所の努力義務になっています。

 2017年10月7日(土)

 

■慶応大、iPS細胞から心筋細胞の量産に成功 来年度にも臨床研究を実施へ

 人のiPS細胞(人工多能性幹細胞)から、品質が均一な大量の心筋細胞を作ることに成功したと、慶応大学の福田恵一教授(循環器内科)らの研究チームが発表しました。

 収縮機能が低下した心筋に移植し、回復を図ることが期待され、重い心不全の患者に移植して心臓の機能を回復させる臨床研究を、早ければ来年にも実施したいとしています。論文が6日、アメリカの科学誌電子版に掲載されました。

 研究チームは、酸素や二酸化炭素を通す特殊なプレートでiPS細胞を培養し、一度に約10億個の心筋細胞を作製。細胞の代謝が促進されたためとみられます。心筋細胞に変化しきれなかった細胞のエネルギー源であるブドウ糖とアミノ酸を培養液から除去し、乳酸を加えることで均質な心筋細胞を作ることもできました。

 従来の方法では、iPS細胞から心筋細胞に変化しきれなかった細胞を取り除きながら大量培養することは難しく、心筋細胞に変化しきれなかった細胞はがん化の恐れもありました。

 福田教授は、「心臓など、大きな臓器の治療にはよりたくさんのiPS細胞が必要だ。大量に培養できるこの方法は再生医療の産業化にもつながる」と話しています。 

 一方、iPS細胞から作製した重症心臓病患者治療用の心筋シートの事業化を目指すと、大阪大学などが発表しました。5年後の製品化を目標にしています。

 心筋シートは、大阪大の澤芳樹教授(心臓血管外科)らの研究チームが、患者に移植する臨床研究を来年度にも始める計画です。ベンチャー企業「クオリプス」(横浜市)と共同研究を行い、製品化後は第一三共(東京都中央区)が販売に当たります。

 2017年10月6日(金)

 

■日本人、尿を作る組織少なく腎臓病になりやすい 日豪などの国際研究チーム

 日本人は欧米人より腎臓の機能が弱く、慢性腎臓病になりやすいとする研究結果を日豪などの国際研究チームがまとめ、5日付のアメリカの科学誌に発表しました。

 研究チームの神崎剛・東京慈恵会医科大学助教は、「塩分のとりすぎや肥満に注意してほしい」と話しています。

 日本腎臓学会の2008年の推計によると、国内の慢性腎臓病患者は1300万人。悪化して腎不全になる人も多く、2015年末時点で32万人以上が人工透析を受けており、その医療費は年間計1兆4000億円以上になります。

 血液中の老廃物を濾過(ろか)して尿を作る組織「ネフロン」の数は、腎臓1個当たり約100万個あるとされてきました。しかし研究チームによると、その数は20万~200万個と人種などで差が大きいとわかってきたといいます。

 研究チームは、50~80歳代で死亡した日本人男性で、腎臓病も高血圧もない人9人、高血圧患者9人、中程度の慢性腎臓病患者9人、計27人の腎臓を病理解剖してネフロンの数を調べました。その結果、腎臓病も高血圧もない人は平均64万個。高血圧患者は平均39万2000個、中程度の慢性腎臓病患者は平均26万8000個でした。欧米人の平均90万個と比べ、大幅に少なくなりました。

 ネフロンの数が少ないと慢性腎臓病や高血圧になるリスクが高まるといい、日本人に慢性腎臓病患者が多いことと関連しているとみられます。日本人のネフロンの数が少なく、腎臓の機能が弱いのは、体格、腎臓ともに小さいためとみられます。塩分の多い食事などでネフロンは消失するため、より負担がかかります。

 神崎助教は、「ネフロンの数は出生時に決まっている。近年増加傾向の低体重で生まれる赤ちゃんが特に心配だ。生活習慣に気を付け、腎臓の機能を継続的に調べる必要がある」と話しています。

 2017年10月6日(金)

 

■無痛分娩で31歳死亡、院長を書類送検 麻酔後の観察を怠った疑い

 大阪府和泉市の産婦人科医院「老木(おいき)レディスクリニック」で今年1月、麻酔で痛みを和らげる無痛分娩(ぶんべん)で出産中の女性(当時31歳)が意識不明になり、その後死亡した事故で、大阪府警は6日、クリニックの老木正彰院長(59歳)を業務上過失致死容疑で書類送検し、発表しました。

 捜査関係者によると、検察に起訴を求める「厳重処分」の意見を付けました。医療ミスを巡る捜査では、医師の行為と被害との因果関係を立証するのが難しく、無痛分娩でも医師が刑事責任を問われるのは異例。

 府警和泉署によると、院長は1月10日、同府枚方市の長村千恵さんが次女を出産中に呼吸困難に陥った際、呼吸を回復させる適切な処置を怠り、搬送先の病院で10日後に低酸素脳症により死亡させた疑いがあります。容体急変後、人工呼吸器を使って強制的に酸素を送り込む「強制換気」や気管挿管といった呼吸回復措置をしていなかったといいます。

 院長は分娩の際、脊髄(せきずい)を保護する硬膜の外側に細い管を入れて麻酔薬を注入する硬膜外麻酔を行いました。だが、司法解剖の結果、管が硬膜を貫通していたことが判明。麻酔が効きすぎ、長村さんは呼吸困難になったといいます。当初、院長と看護師の2人がおり、長村さんが呼吸困難を訴えた後は小児科医や助産師らが駆け付けましたが、麻酔科医はその場に立ち会っていなかったといいます。

 また、無痛分娩中に麻酔の効き具合の確認や血圧の定期的な計測が実施されていなかったといい、院長は府警の調べに対し、これを認めているといいます。府警は、異変に気付くのが遅れた可能性があるとみています。

 院長は府警の調べに対して容疑を認め、「容体の変化が早くて人工呼吸器を装着するなどの対応が追い付かなかった」と説明しているといいます。

 2017年10月6日(金)

 

■iPS細胞を使って見付けた薬、世界初の臨床試験を開始 京都大学

 京都大学の研究チームが、患者のiPS細胞(人工多能性幹細胞)を使って見付け出した骨の難病の治療薬候補を、難病の患者に実際に投与する臨床試験を始めました。iPS細胞を応用した薬の臨床試験は世界で初めてで、半年間、効果を検証した上で、薬として国に申請したいとしています。

 京都大学iPS細胞研究所の戸口田淳也教授の研究チームは、タンパク質の一種「アクチビンA」が異常に働くことで、筋肉や腱(けん)、靱帯(じんたい)などの組織の中に骨ができる進行性骨化性線維異形成症(FOP)という難病の患者から作製したiPS細胞を使って、約7000種の物質の中から、免疫抑制剤として使われている既存薬の「ラパマイシン」に病気の進行を抑える効果があることを見付け出しました。

 研究チームは、進行性骨化性線維異形成症の薬として国の承認を受けるための臨床試験を始め、5日に診察の様子が公開されました。京都大学医学部附属病院では、iPS細胞のもととなる細胞を提供した患者の1人で、兵庫県明石市の山本育海さん(19歳)が診察を受け、ラパマイシンを受け取りました。

 今回投与されるラパマイシンには、筋肉などの組織の中に骨ができるのを抑える効果があることが、動物実験などでわかっています。臨床試験は京都大学と東京大学、それに名古屋大学と九州大学で、合わせて20人の患者を対象に半年間行われることになっています。

 主治医で臨床試験の責任者の戸口田教授は「研究を始めて8年という短い期間で臨床試験を開始できたのは、まさにiPS細胞の力だと思う。この病気は非常にまれで、iPS細胞を使って繰り返し同じ実験ができたことで初めて病気が進むプロセスを確認できるようになった。今回の薬は病気を治す治療薬ではなく進行を食い止める予防薬としての効果が期待されている。試験の前と後で患者の症状が進行していないかどうかを慎重に確認していきたい」と話していました。

 臨床試験が始まった山本さんは、「まだまだ先のことだと思っていたので、ここまで早く受けることができるとは思いませんでした。頑張ってくれた研究者に感謝しています」と話していました。

 京都大学iPS細胞研究所では、パーキンソン病や筋委縮性側索硬化症(ALS)といった国が指定する300種類以上の難病のうち、およそ半数の病気でiPS細胞を作製することに成功しています。また、こうしたiPS細胞を使って、世界中で治療薬の候補となる物質が報告されています。

 ただ、実際の治療薬として実用化できるかどうかについては安全性や効果などを慎重に調べる必要があり、これまでは実際の患者への投与は行われていませんでした。今回、京都大学の研究チームが国の承認を得るための臨床試験を始めたラパマイシンは、すでに臓器移植後の拒絶反応を抑える免疫抑制剤として使われているものです。初めての臨床試験が始まることで、iPS細胞の医療への応用にさらに弾みがつくと期待されています。

 2017年10月5日(木)

 

■再生医療、治療内容の公表も義務付け 無届け臍帯血事件で厚労省

 他人の臍帯血(さいたいけつ)を使った再生医療が無届けで行われていた事件を受けて、厚生労働省は4日、再生医療の計画を国に届けた医療機関に対して、同省のホームページ上で治療内容や認定を受けた委員会の名称の公表を義務付けることを決めました。

 11月中にも、再生医療安全性確保法の施行規則を定めた省令を改正する方針。厚労省はこれまで、再生医療を提供する医療機関の名称や所在地、実施責任者などをホームページ上の「再生医療等提供機関の一覧」で公表していましたが、治療内容などは記載していませんでした。医療機関の名称の公表も、医療機関側の同意が必要でした。

 今回の事件で逮捕された医師が院長を務める「表参道首藤クリニック」(東京都渋谷区)や、厚労省が臍帯血移植を一時停止するよう緊急命令を出したクリニックも、臍帯血とは別の再生医療の計画を届け出ていたため名称がホームページに掲載されていましたが、厚労省は「合法的に(他人の臍帯血を使った)再生医療が行われているような誤解を与える」として今年8月、医療機関の名称などの公表を一時停止。情報提供の在り方を検討していました。

 2017年10月5日(木)

 

■東京都の受動喫煙防止条例が成立 2018年4月に施行

 東京都議会で5日、小池百合子知事が実質的に率いる地域政党「都民ファーストの会」と公明党が共同提出した「東京都子どもを受動喫煙から守る条例」が賛成多数で可決、成立しました。

 家庭内での受動喫煙防止が柱で、施行は来年4月1日。国に先行して受動喫煙対策に取り組むことで、改革姿勢を示すねらいもありそうです。

 受動喫煙防止条例は、「子供は自らの意思で受動喫煙を避けることが困難で、保護の必要性が高い」と明記し、「18歳未満の子供に受動喫煙をさせないよう努めることは都民の責務」と規定。

 保護者に対し、「家庭で子供と同じ部屋で喫煙しない」「受動喫煙の対策を講じていない施設、喫煙専用室に子供を立ち入らせない」「子供が同乗する自動車内で喫煙しない」「公園や学校周辺の路上などで子供の受動喫煙防止に努める」などを求めました。いずれも努力義務で、罰則規定はありません。

 私的な生活空間に踏み込む内容に、条例が審議された東京都議会厚生委員会では「家庭内の規制は慎重にすべきだ」との意見も出ました。厚生労働省によると、私的な生活空間で子供の受動喫煙防止を図る都道府県条例は例がないといいます。

 東京都は今回の条例とは別に、飲食店などの屋内を原則禁煙として罰則を設ける条例を制定する方針で、来年2~3月の東京都議会に提出される見込みです。

 小池知事は今回の定例会の所信表明演説で、「都民の健康を確保する観点から、受動喫煙防止対策をより一層推進しなくてはならない」としました。

 受動喫煙を巡っては、国際オリンピック委員会(IOC)が「たばこのない五輪」を目指していることから、東京都や国は2020年東京オリンピック・パラリンピックの開催までの対応を目指しています。

 2017年10月5日(木)

 

■がん診療拠点病院の免疫療法、近く実態調査を実施へ 厚労省

 厚生労働省が指定するがん診療の拠点病院のうち、少なくとも12カ所で治療の効果が国によって確認されていない免疫療法を実施していたことについて、厚生労働省は4日開かれた検討会で、全国の拠点病院でどこまで行われているか近く実態調査を始めることを報告しました。

 がん診療の拠点病院は、質の高い診断や治療を行う医療機関として厚労省が全国434の病院を指定しており、治療の診療報酬が加算されたり国や都道府県から補助金を受けたりしています。

 この拠点病院のうち全国の少なくとも12の病院で、がん治療の効果が国によって確認されておらず保険診療が適用されていない免疫療法を2015年に実施していたことが、明らかになりました。

 がん治療には、抗がん剤を用いる「化学療法」、放射線を照射する「放射線療法」、患部を手術で取り除く「外科療法」の3つがあります。一方で免疫療法は、患者自身の免疫機能を高めて、がん細胞を退治することを目指す治療法。オプジーボなど国が承認した新薬も登場し「第4の治療」として注目されていますが、一部の拠点病院はがん患者の血液から特定の細胞を取り出して薬剤などを加えて培養し、再び患者の体に戻すといった、十分に科学的根拠の蓄積のない免疫療法を行っているとの指摘があるといいます。

 4日、厚労省の拠点病院の指定条件を話し合う検討会が開かれ、厚労省の担当者は、全国の拠点病院で実施されている免疫療法について近く実態調査を始めることを報告しました。

 これについて委員からは「拠点病院で行うことは認められないのではないか」といった意見のほか、「新たな医療を確立させるため効果を確認することも必要ではないか」などの意見が出されました。

 その上で実態調査では、倫理委員会で承認を受けた治験や臨床研究以外に、自由診療として免疫療法がどれぐらい行われているかのほか、免疫療法の内容や患者が負担している費用などについて調べることになりました。

 厚労省は、年内にも実態調査をまとめ、免疫療法を拠点病院で実施すべきかどうかなどについて来年春ごろまでに意見を取りまとめ、再来年4月からの拠点病院の指定に反映することにしています。

 一部のがんの拠点病院が国が効果を確認していない免疫療法を実施していることについて、拠点病院の指定を議論する厚労省の検討会のメンバーで国立がん研究センターの若尾文彦医師は「拠点病院は有効性や安全性が確認された標準治療を提供することになっていて、科学的な根拠が確認されていない免疫療法は、臨床研究として行う以外、実施するべきではない」と指摘し、こうした免疫療法を受けたいと考えている患者がいることについては「がんを治したいという強い気持ちはわかるが、効果が認められていないことを正しく理解し、治療を受けるかどうか冷静に判断してほしい」と話しています。

 2017年10月4日(水)

 

■成分の誤表示で、シャンプーや化粧水を自主回収 ジョンマスターオーガニック

 有機栽培の植物を使ったアメリカ発祥の化粧品ブランド「ジョンマスターオーガニック」が、国内で販売している全商品の4割に相当する38商品121万個を9月21日から自主回収していることが、明らかになりました。

 「植物由来100%」を売りにしていましたが、実際にはシリコーンなどの化合物が入っていました。健康被害の報告はないといいます。

 自主回収の対象は、2016年9月8日~2017年9月21日に製造されたシャンプーやコンディショナー、ヘアミルク、化粧水など。商品の成分表示ラベルに、使っていない植物由来の成分が書いてあったり、化合物が入っているのに書いていなかったりしました。人気の「イブニングPシャンプー」では、「ラベンダーエキス」や「セイヨウシロヤナギ樹皮エキス」が入っていると書かれていましたが、実際には入っていませんでした。

 販売元のジョンマスターオーガニックグループ(東京都渋谷区)の担当者は、「天然由来100%をうたってきたのに、申し訳ない」と話しました。対象商品はすべてアメリカの工場で製造されたもので、成分表示の不備の原因を調査中だといいます。

 ジョンマスターオーガニックは、「地球に敬意を払うラグジュアリーブランド」というコンセプトのもと、ニューヨークのヘアサロンで誕生。日本では、236ミリリットルで税込み2700円など、市販のシャンプーやコンディショナーより価格帯が高いことで知られ、美容に関心の高い女性を中心に人気を集めています。

 問い合わせは平日の午前10時~午後6時、ジョンマスターオーガニックグループ製品自主回収窓口(0120・744・030)。

 2017年10月4日(水)

 

■京大病院、濃度700倍の薬を調剤 60歳代の女性患者が死亡

 京都大学医学部付属病院(京都市左京区)は3日、薬剤師が通常の約700倍の高濃度の注射薬を調剤し、自宅で投与した60歳代の女性患者が死亡したと発表しました。

 誤って調剤した可能性が高いとしており、稲垣暢也(のぶや)病院長は「このような事態を招き、患者と遺族、関係者に心よりおわび申し上げる」と謝罪しました。

 京大病院によると、薬剤師2人が8月28日、患者が自宅で使用するための注射薬「セレン注製剤」を、医師の処方箋より高濃度で調剤。女性患者は点滴による注射薬投与を自ら行った後の9月26日夜、背中に痛みを訴え、翌朝に同病院を受診して処置を受けましたが、間もなく死亡しました。

 保管していた注射薬の残りや亡くなった女性患者の血液を京大病院が調べると、738倍の濃度の薬が投与されていたことが判明しました。また、別の10歳代の男性患者に8月28日に用意されたセレン注製剤でも、点滴の色が違う異常に気付いて京大病院に連絡があったと報告されており、同じミスがあったのではないかとみています。

 京大病院は外部委員を含む調査委員会を立ち上げ、京都府警や厚生労働省などに届け出て、死因や原因を調べています。

 セレン注製剤の既製品はなく、病院が作った薬を処方しています。日本臨床栄養学会によると、ミネラルの一種であるセレンは体内に微量に存在し、欠乏すると心筋症などさまざまな症状を引き起こします。一方、過剰だと神経性の障害などが起きる恐れがあります。

 2017年10月3日(火)

 

■前橋市の40歳代男性、O157で死亡 感染経路は不明 

 前橋市は3日、市内に住む40歳代の男性が腸管出血性大腸菌O157に感染し、1日に死亡したと発表しました。家族ら周辺への感染や入院先での院内感染は、確認されていません。

 前橋市の保健所によると、男性は8月30日に下痢、血便などを発症し、医療機関で診察を受けました。改善せず9月2日に入院し、4日にO157への感染が確認され、5日に溶血性尿毒症症候群(HUS)を発症、悪化して10月1日に死亡したといいます。

 群馬、埼玉両県では系列総菜店「でりしゃす」(閉店)のポテトサラダなどによるO157感染の集団食中毒が発生し、3歳の女児が死亡しましたが、男性は店の総菜を食べておらず、検出された菌の遺伝子型も異なるということで関連はないとみられます。

 前橋市の保健所は、発症の2週間ほど前まで逆上って男性が食べた物を調べるなどしましたが、これまでのところ、感染経路はわかっていないということです。保健所は引き続き感染経路を調べるとともに、手洗いなど予防策の徹底を呼び掛けています。

 2017年10月3日(火)

 

■65歳以上の男性の半数、女性の25%が飲みすぎ 厚労省研究班が適正量を呼び掛け

 酒を飲む65歳以上の男性の半数、女性の4分の1は、健康を保つための「節度ある適度な飲酒(適正量)」の目安とされる「1日当たり日本酒1合」以上のアルコールを摂取していることが、厚生労働省研究班(代表・田宮菜奈子筑波大教授)の分析で1日、明らかになりました。

 このうち適正量の3倍を日常的に飲む「多量飲酒」は、65歳以上の男性の約5%に達しており、適正量が十分に知られていないことが浮き彫りになった。

 退職や配偶者の死などが飲酒の切っ掛けになる例もあるとされ、太刀川弘和筑波大准教授(精神医学)は「高齢者の飲酒をいけないとはいえないが、くれぐれも飲みすぎに注意してほしい」と呼び掛けています。

 健康づくりの目標を定めた厚労省の「健康日本21」は、成人の適度な飲酒量として、1日のアルコール量を20グラム程度(日本酒1合、ビール500ミリリットル缶1本程度)と設定し、一般に少量の飲酒で顔が赤くなる人や高齢者、女性は飲酒量を減らすべきだとしています。高齢者に明確な基準はありませんが、飲みすぎると健康や人間関係への悪影響が出やすいとされます。

 実態を明らかにするため、研究班の翠川晴彦医師(有朋会栗田病院)らは、厚労省による2014年度の国民生活基礎調査のデータを解析し、全国の約15万人の高齢者の飲酒量などを調べました。

 月1日以上飲酒する高齢者は約4万8000人で、男性の56・4%、女性の24・9%が適正量以上を飲んでいました。

 このうち「節酒」を意識していると答えた人をみると、1日の飲酒量は1~3合が42%、3合以上が2%と、適正量が十分に理解されていませんでした。

 また、「認知症」の人では、7分の1は飲酒の習慣があり、1日の飲酒量1~3合が29%、3合以上が5%でした。「高血圧」「脳卒中」「狭心症」「心筋梗塞(こうそく)」の人では、3分の1が酒を飲み、1~3合が46%、3合以上が4%を占めるなど、病気があっても飲酒し続ける傾向がありました。

 厚労省の国民生活基礎調査によると、男性の飲酒率は40~60歳代で60%を超え、70歳代は55・5%、80歳代以上は39・9%と低くなっています。近年、定年退職後に飲酒習慣が悪化する「定年後アルコール依存症」など高齢者の飲酒問題が注目されています。

 2017年10月3日(火)

 

■スマホの治療用アプリを通じて禁煙治療 慶応大などが国内初の治験入り

 慶応大学と医療ベンチャー「キュア・アップ」(東京都中央区)は2日、ニコチン依存症の治療用アプリ「CureApp 禁煙」の保険適用に向け、月内に臨床試験(治験)を始めると発表しました。

 医師が対面で患者を指導する認知行動療法の内容をスマートフォン(スマホ)を通じて提供します。

 国内で治療用アプリの治験が始まるのは、初めて。アメリカでは医療費を減らす流れの中、治療用アプリの利用が広がっています。

 キュア・アップの佐竹晃太社長は2日、東京都内で記者会見し、「医師や看護師の代わりにソフトウエアが患者に寄り添うようになる」と話しました。

 治験は、2019年3月までを予定。慶応義塾大学病院やさいたま市立病院など全国約30の病院で実施し、2年後の実用化を目指します。

 医師が禁煙補助薬とともに患者に合わせた治療用アプリを処方し、患者は「日々の体調」や「禁煙できたか」「どのくらい喫煙したいか」「禁断症状が出たか」などの情報を毎日スマホに入力していきます。入力データをもとに、治療用アプリ側で認知行動療法に基づいて、「ガムを用意してすぐかめるようにしましょう」などと指示を通知します。

 禁煙外来の効果は高いとはいえず、7割の患者が治療1年後に再び喫煙してしまうといいます。通院していない期間に挫折しやすいといいます。禁煙ガイドラインや論文を基に開発した治療用アプリの臨床研究の段階では、治療を始めて半年後に67・9%が禁煙を継続できていました。

 2014年に施行された医薬品医療機器法(旧薬事法)で、医学的データを示せば、ソフトウエアが承認を得られるようになりました。ただし、患者の治療に用いるソフトウエアで承認を取得した事例は、国内ではまだありません。

 アメリカでは先んじて、治療用アプリの利用が広がっています。アメリカのウェルドック(ペンシルベニア州)が開発した糖尿病治療アプリでは、血糖の状態を示す値を下げる効果も示されています。

 2017年10月2日(月)

 

■体内時計の仕組み発見にノーベル医学・生理学賞 アメリカの研究者3人

 2017年のノーベル医学・生理学賞に、地球上の生物がどのようにして24時間のサイクルを把握し、体内のリズムを作り出しているかという「体内時計」の仕組みを明らかにしたアメリカの3人の研究者が選ばれました。日本の研究者によるノーベル医学・生理学賞の3年連続受賞は、なりませんでした。

 スウェーデンのストックホルムにあるノーベル賞の選考委員会は日本時間の2日午後6時半ごろ記者会見し、今年のノーベル医学・生理学賞に、いずれもアメリカの、メーン大学のジェフリー・ホール博士、ブランダイス大学のマイケル・ロスバッシュ教授、それにロックフェラー大学のマイケル・ヤング教授の3人を選んだと発表しました。

 3人は1980年代に、植物や動物、それに人などの生物が、どのようにして24時間のサイクルを把握し、体内のリズムを作り出しているのか、その仕組みを調べようと、ショウジョウバエを使った実験を行って、体内のリズムを制御している遺伝子を発見しました。

 この遺伝子は「時計遺伝子」と呼ばれ、太陽の光を浴びることで時間を把握し、夕方になると発現して、タンパク質を作り始めることがわかりました。

 さらに、このタンパク質が増えることで、人などの昼間に行動する生物は眠気を感じるようになり、逆に、タンパク質が減ると目が覚めることがわかり、この遺伝子が、いわば「体内時計」の役割を果たしていることを突き止めました。

 体内時計の仕組みは、ホルモンや代謝、体温の変化なども制御しており、このリズムに逆らって生活を送ると、体に大きな負担がかかり、睡眠障害などさまざまな病気を引き起こすリスクが高まると考えられています。

 ノーベル賞の選考委員会は授賞理由について、「3人は、生物が持つ体内時計に関する遺伝子を発見し、その遺伝子が光によって調節されていることを見付けた。この発見は、健康維持に重要な、体内時計という新たな研究分野を切り開いた」と評価しています。

 体内時計の仕組みに詳しい京都府立医科大学統合生理学部門の八木田和弘教授は、「この3人は、時計遺伝子を見付け、なぜ、この遺伝子で生物が24時間のリズムを作り出せるのかを明らかにした伝説的な研究者です。体内時計は、今では、すべての生物で、共通のメカニズムで備わっていることがわかっています。不規則な生活を送ることでさまざまな病気のリスクが増えることと、体内時計の仕組みとが、どのようにかかわっているのか、これから明らかにしていく必要があります。3人の研究は、体内時計の重要さを示すとともに、関連した研究の発展に大きく貢献しています」と話していました。

 ノーベル医学・生理学賞の授賞式は12月10日にストックホルムで開かれ、賞金900万クローナ(約1億2500万円)が3氏に贈られます。

 2017年10月2日(月)

 

■アスベスト健康被害、賠償訴訟を促す異例の通知 厚労省が2314人対象に

 厚生労働省は2日、アスベスト(石綿)を扱う工場に勤務し、健康被害により国家賠償を受けられる可能性のある2314人を対象に、10月上旬以降、国賠訴訟を促す通知を送ると発表しました。

 国の賠償責任が確定した2014年の「泉南アスベスト訴訟」の最高裁判決を受け、国は元労働者らと和解する方針を示しています。損害賠償金の受領に必要な提訴が増えず、周知を進め、被害者の救済につなげます。国が個別に国家賠償を促すのは異例。

 対象となるのは、最高裁で国の責任があると判断された1958年5月~1971年4月に石綿工場で働き、中皮腫などの石綿関連疾患で労災認定されるなどしたものの、いまだ訴訟を起こしていない2314人。

 このうち氏名、住所の確認が取れている756人の被害者については、今週中に本人や遺族に賠償の要件などを記した通知を送ります。残りの人については、住所などを引き続き調査し判明次第、送ります。

 厚労省によると、今年9月末までに被害者本人など原告236人について、総額約21億円の賠償が確定しています。さらに、現在197人(請求金額は約15億円)と訴訟を継続しています。

 2017年10月2日(月)

 

■小型軽量の短期用補助人工心臓を開発し、治験へ 循環器病研究センターなど

 重い心不全患者の心臓の働きを短期間助ける新型の補助人工心臓を、国立循環器病研究センター(大阪府吹田市)が医療機器メーカー・ニプロ(大阪市北区)と共同で開発し、10月から治験を始めると、29日発表しました。

 血液ポンプを体外に置く体外設置型で、従来より大幅に小型、軽量化し、30日間使えます。治験では、9人の患者で安全性や効果を確認します。

 心筋梗塞(こうそく)や劇症型心筋炎などで急速に全身状態が悪化し、治療をしても回復がみられない場合、1カ月間の使用を前提とした短期用の補助人工心臓が使われることがあります。それでも回復しない場合は、心臓移植の登録をして長期使用可能な補助人工心臓を装着します。

 現在の体外設置型の短期用補助人工心臓は、20年以上前に開発されました。制御装置は95キロと大型で、脳梗塞の原因となる血の塊ができやすいことが問題になっています。

 今回開発した制御装置は8キロ、血液ポンプのモーターは650グラムと小型化に成功しました。循環させられる血液量は約3倍になり、血液ポンプ内部に特殊なコーティングをするなど血の塊ができにくいよう工夫を施しました。

 研究チームは、「重い心不全患者の救命率を上げる装置になるだろう」と期待しています。

 2017年10月1日(日)

 

■凍結精子の無断処分、大阪府の夫妻と病院が和解へ 病院側が100万円支払い

 大阪府の医療センターが凍結保存していた精子を無断で処分し、「事前に了承していない」とする夫妻が損害賠償を求めていた裁判で、和解が成立する見通しであることが明らかになりました。

 大阪府池田市の北村哲也さん(32歳)は2003年11月、血液を正常につくれない骨髄異形成症候群のため大阪市都島区の大阪市立総合医療センターに入院。放射線治療の副作用で精子細胞が壊れて精子がつくれなくなる可能性があったため、医療センターは精子を液体窒素で凍結させ、12月から無償で保存を始めました。

 ところが、北村さんが結婚した3カ月後の2015年4月、精子を引き取るため医療センターに問い合わせ、精子の保存が中止され、使えなくなっていたことを知りました。

 2012年4月に医療センターの体外受精の担当医が別の病院に異動することなどから、医療センターは1年後をめどに凍結精子の移管や廃棄を検討。当時、交際中だった北村さん夫妻は同年12月に別の医師と面会し、「結婚するまで待ってほしい」と依頼し、「勝手に廃棄することはない」と回答があったといいます。ところが2014年9月ごろ、医療センターは元担当医の意見も聞いて液体窒素の補充を打ち切り、保存中の精子は機能を失いました。事前に北村さんへの連絡はありませんでした。

 北村さんと妻(30歳)は2015年4月、「保存期限は伝えられておらず、無断で廃棄はしないといわれた」と主張。医療センター側に調査・説明を求める民事調停が不成立となったため、2016年6月、医療センターを運営する大阪市民病院機構と当時の担当医を相手取り、計1000万円の賠償を求めて裁判を起こしました。

 医療センター側は「北村さんに保存期限(2013年3月末)を伝えたのに、引き取りに来なかった」と主張し、「了解したという同意書をもらっておくべきだった。説明不足だったとは思うが、謝罪ということになるという認識ではない」として争う姿勢でしたが、その後、北村さん夫妻との話し合いが進み、医療センター側が解決金100万円を支払うことで、10月4日にも和解する見通しとなりました。

 また、和解の条件には、医療センター側が今後、凍結精子の保存依頼者に対してリスクなどを十分に説明し、同意書を得ることなどを確約する内容も盛り込まれる見込みです。

 2017年10月1日(日)

 

■川崎病の患者、初めて1万6000人を超える 2015年に過去最多、2016年はやや減少

 乳幼児がかかる原因不明の難病で、心臓の後遺症の恐れがある「川崎病」の患者が、2015年に初めて1万6000人を超えて過去最多となったことが30日、NPO法人「日本川崎病研究センター」(東京都千代田区)の全国調査で明らかになりました。

 2016年はやや減少しましたが、依然高水準にあり、日本川崎病研究センターは「推移を注視する必要がある」と指摘。専門家は「発疹などの症状があればまずは小児科を受診し、必要に応じて専門病院を紹介してもらってほしい」と呼び掛けています。

 川崎病は、小児科医の川崎富作氏が1967年に世界で初めて報告した原因不明の疾患で、主に4歳以下の乳幼児がかかります。全身の血管が炎症を起こし、高い熱が出るとともに体全体に赤い発疹が現れ、目が充血したり、舌がイチゴのように赤くはれるといった症状が現れます。重症化した場合は心臓の冠動脈に「こぶ」ができるなどの重い合併症が起こるため、重症化をどう防ぐかが大きな課題となっています。しかし、原因が未解明のために予防法はなく、治療はそれぞれの症状を鎮めるための対症療法が中心のまま。

 1990年ごろから患者が増加傾向にあり、2005年以降は患者が1万人を超えて、長期的な流行になっている可能性がありますが、理由はわかっていません。  

 日本川崎病研究センターによると、2015年の患者数は1万6323人で、0~4歳の10万人当たり発症者数(罹患(りかん)率)は330人。患者数、罹患率ともに1982年、1986年の大流行を上回り、全国調査が始まった1970年以降で最多でした。

 2016年の患者数は1万5272人、罹患率は309人と、やや減少しました。2015年、2016年に1人ずつが死亡し、死因は心筋梗塞と急性硬膜下血腫といいます。

 都道府県別でみると、2015年、2016年の2年間で患者が多かったのは東京都、神奈川県、愛知県、大阪府。

 全国調査は2年に1度、全国の医療機関の小児科を対象に実施し、結果を公表しています。

 2017年9月30日(土)

 

■8Kカメラ搭載の内視鏡を開発、販売へ ベンチャー企業のカイロス

 今のハイビジョンの16倍という鮮明な画質の映像を撮影できる「8K」のカメラを搭載した内視鏡をベンチャー企業が開発し、医療機関に販売を始めると発表しました。

 医療機器のベンチャー企業「カイロス」(東京都千代田区)が開発したのは、8Kのカメラを搭載し、最大3300万画素の鮮明な映像で人間の体内を撮影できる内視鏡のシステムです。

 8Kの内視鏡では、今のハイビジョンの16倍という鮮明な画質で体の内部を調べることができ、赤血球や髪の毛の10分の1以下の細さの手術用の糸もはっきりとらえることができます。また、大型の専用モニターを通して、これまでの内視鏡では見ることができなかった細かな血管や神経を映し出すこともできます。

 カイロスでは、細かな神経を傷付けることができない手術などに用いることができ、内視鏡手術の安全性を高めたり、手術時間を短縮したりする効果が期待されると説明しており、29日から大学病院などの医療機関に販売を始めます。

 2020年開催の東京オリンピック・パラリンピックに向けて8Kのテレビの普及が期待されていますが、今後、医療分野での活用も活発になりそうです。

 腹部に小さな穴を開けて器具を挿入する腹腔(ふくくう)鏡手術向けで、価格はシステム全体で6000万円。製造はJVCケンウッドに委託し、3年後に国内で年300台の販売をねらうといいます。

 29日に東京都内で記者会見したカイロスの千葉敏雄会長は、「8Kで従来見えなかったような細かい組織の違いも見える」と強調し、「外科医の方に実際に体験してもらい、活用できる手術領域を広げてもらいたい」と話しています。

 2017年9月30日(土)

 

■生涯でのギャンブル依存症疑い320万人 パチンコ・パチスロが突出

 厚生労働省は29日、全国の20~74歳の約320万人(3・6%)が生涯で、パチンコや競馬などのギャンブル依存症が疑われる状態になったことがある、とする2017年度調査結果を発表しました。

 2016年度調査と比べ、0・9ポイント増加。前回は都市部に限った調査でしたが、今回は地方も含み国内の実態をより正確に反映しています。諸外国と比べ日本の割合は高く、統合型リゾート施設(IR)整備推進法施行によるカジノ解禁に向け、ギャンブル依存症への対策が急務になっています。

 今年度の調査は5~6月、全国300地点の住民基本台帳から無作為に対象者を抽出。2016年度調査の4・5倍となる1万人に対象を広げて面接を行い、4685人ぶんの有効回答を得ました。

 その結果、過去にギャンブル依存症となった疑いがある人は158人(3・6%)でした。男女でみると、男性は6.7%に対して女性は0・6%でした。最もお金を使ったのはパチンコ・パチスロが最多で、123人(2・9%)でした。

 直近1年で、ギャンブル依存症が疑われたのは32人(0・8%)で、2016年度調査と比べ0・2ポイント増加し、日本全体では約70万人と推計されます。男性1・5%に対し、女性は0・1%でした。平均年齢は46・5歳で、掛け金は1カ月平均で約5万8000円。最もお金を使ったのは、パチンコ・パチスロの26人が突出して多くなっていました。

 ギャンブル依存症が疑われる人の割合を諸外国と比較すると、生涯でみた場合は、オランダが1・9%(2006年)、フランスが1・2%(2011年)、スイスが1・1%(2008年)であり、日本の割合の高さが目立ちます。

 一方、直近1年の依存症が疑われる人の割合では、アメリカは1・9%(2001年)と日本よりも高く、日本はイギリスの0・8%(2000年)と同水準でした。

 調査を担当した久里浜医療センターの松下幸生・副院長は諸外国のこれまでの研究結果と比べて高いことについて、「単純比較はできないが、パチンコなどギャンブルが身近にあり、いつでも利用できる環境が影響している可能性がある」としています。

 2017年9月30日(土)

 

■厚労省がバイエル薬品に業務改善求める指導 86件の副作用報告漏れで

 大手製薬会社「バイエル薬品」(大阪市北区)が2012年に、血栓症の治療薬「イグザレルト」を発売した際、副作用を把握していたにもかかわらず、国に報告を怠っていたことについて、厚生労働省は29日、医薬品医療機器法違反に当たるとして、業務の改善を求める指導を行いました。

 バイエル薬品はイグザレルトを発売した後、患者へのアンケートを実施した結果、「皮下出血」や「湿疹などの症状」といった副作用を把握したにもかかわらず、法律で定められた期間内に国に報告していませんでした。厚労省によりますと、報告を怠っていた副作用はイグザレルトや血栓治療薬「バイアスピリン」、抗がん剤の「スチバーガ」と「ネクサバール」の4つの医薬品に関する合わせて86件に上り、最長で4年11カ月報告を怠っていたということです。

 理由は、社員がアンケート情報を報告すべき対象だと認識していなかったことや、ほかの社員がすでに報告したと思い込んでいたことなどがあったということです。

 厚労省は医薬品医療機器法に違反するとして、バイエル薬品に対し副作用の報告漏れがないか社内で定期的に点検することなどの業務の改善を求め、1カ月以内に再発防止策を提出するよう文書で指導しました。また、厚労省はイグザレルトの販売促進に活用した論文内容に誤りがあったとして、プロモーション活動についても口頭で改善を指導しました。

 バイエル薬品は、「今回の改善指導を真摯(しんし)に受け止め、信頼回復に努めたい」とコメントしています。

 2017年9月29日(金)

 

■スギ花粉症薬、錠剤で国内販売の承認を取得 鳥居薬品5歳から服用可能に

 鳥居薬品(東京都中央区)は27日、スギ花粉症向けのアレルゲン免疫療法薬「シダキュア スギ花粉舌下錠」の国内製造販売の承認を取得したと発表しました。

 シダキュアは、舌下から吸収して服用する錠剤で、アレルギー疾患の原因になるアレルゲンを低濃度で取り込み、花粉に対する過敏性を減少させる薬。対象患者の制限がなくなり、5歳以上の小児から服用できます。

 服用方法は1日1回1錠、舌下に1分間錠剤を保持した後に飲み込みます。3~5年にわたって服用を続ける必要があります。 

 液剤の従来薬に比べて剤形を工夫して保管しやすくし、利便性を高めました。従来の液剤型の薬は冷蔵保存する必要がありましたが、錠剤にすることで室温保管できるようになり、持ち運びやすくしました。

 鳥居薬品は2014年10月から、国内で初めて成人や小児に対し使用可能となった舌下錠として「シダトレン スギ花粉舌下液」を販売していますが、対象年齢を12歳以上に限っていました。シダキュアは、より幅広い年齢に適応でき、より有効性が高い製剤といいます。販売時期は、決まり次第発表するといいます。

 スギ花粉症は、スギ花粉によって生じるアレルギー疾患の総称で、体の免疫機構が花粉に過剰に反応し、くしゃみ、鼻汁、鼻詰まり、目のかゆみ、涙目などの症状が現れます。全国調査によると、国民のおよそ 25%が花粉症に罹患していると考えられており、そのうち約70%はスギ花粉症であると推察されています。また、スギ花粉症は若年から中年層に幅広く認められますが、近年では発症年齢が低年齢化していると指摘されています。

 2017年9月29日(金)

 

■腎性貧血、iPS細胞由来の細胞で改善 京大と香川大がマウス実験で成功

 赤血球が増えるのを助ける細胞を人のiPS細胞(人工多能性幹細胞)から作製し、移植することで腎臓機能の低下によって起きる腎性貧血を改善することに、京都大学iPS細胞研究所と香川大学の研究チームがマウスの実験で成功しました。

 細胞移植による新たな治療法の開発につながる可能性があります。28日、アメリカの科学誌「サイエンス・トランスレーショナル・メディシン」に発表しました。

 京都大iPS細胞研究所の長船健二教授(腎臓内科、再生医学)らの研究チームは、人の皮膚の細胞から作ったiPS細胞に、さまざまな薬剤などを加えて3週間培養し、「エリスロポエチン」(赤血球生成促進因子)というホルモンを作る細胞を作製。このエリスロポエチンは、腎臓で分泌されて骨髄に赤血球を作るよう促します。慢性の腎臓病などで腎臓の働きが下がると、エリスロポエチンが分泌されず貧血状態になります。

 腎性貧血を起こしたマウス6匹に、約1000万個ずつエリスロポエチンを作る細胞を注射で移植すると、4週間後には赤血球が正常値まで改善し、7カ月間にわたって治療効果が続きました。がん化や、赤血球が異常に増える副作用が起きないことも、確認しました。

 国内には約1300万人の慢性腎臓病の患者がいるとされるほか、腎性貧血の患者も約30万人いるとみられ、人工のホルモン剤を定期的に注射する治療を受けていますが、血液中の濃度を一定に保つことが難しく、心筋梗塞(こうそく)などを起こす恐れもあります。治療は高額で、年間1000億円ほどの医療費がかかっているといいます。

 人での研究はまだ先の段階ですが、長船教授は「1回の細胞移植で赤血球の量を一定に制御、心筋梗塞などのリスクを減らせると期待できる。腎臓病患者にこの細胞を移植する再生医療の実現を目指したい」と話しています。   

 熊本大の西中村隆一教授(腎臓発生学)は、「動物で長期間の治療効果が出ており、評価できる。人に使うには、細胞から分泌されるホルモンの量が十分なのかなどを検証する必要がある」と話しています。

 2017年9月28日(木)

 

■世界最小の10円玉大で、カプセル型のペースメーカーを発売 日本メドトロニック

 アイルランドの医療機器大手メドトロニックの日本法人、日本メドトロニック(東京都港区)が9月から、不整脈を監視し制御するペースメーカーの世界最小サイズ製品の販売を始めました。

 体積わずか1立方センチメートルの10円玉サイズで、重さ1・75グラム、水泳やゴルフなどのスポーツを楽しむ場合に煩わしいリード(導線)もありません。患者の生活の質(QOL)の向上に寄与しそうです。

 発売した「マイクラ経カテーテルぺーシングシステム」は、カプセル型で、従来モデルに比べ体積を9割小さくしました。足の付け根からカテーテルを使って直接心臓の右心室に送り込み、小さなフックで心壁に引っ掛けます。心臓内にカプセルをとどまらせるための新たな固定方法の開発や、バッテリーや省電力回路の開発により、製品化にこぎ着けました。

 現在の一般的なペースメーカーは、外科手術で鎖骨下などの皮下に埋め込み、静脈を通じて心臓とリードでつなぐタイプ。日本でリードのないペースメーカーが販売されるのは、初めてだといいます。今回の製品は主に脈の遅い心房細動向けで、心臓を24時間監視しながら必要に応じて微弱な電気刺激を送り、心臓の働きを助けます。

 同製品は2015年4月に欧州で、2016年4月に米国で薬事承認を取得しており、全世界で7000人超の患者に使われています。日本でも2月に薬事承認を取得し保険適用できる準備が整ったため、今回の発売となりました。

 国内では36例の治験がすんでいます。国際共同治験の運営委員会のメンバーで、杏林大学医学部付属病院・循環器内科の副島京子臨床教授は、「当院を含む治験施設での植込み経験により,安全性と有効性が確認された。従来4週間は手を肩より上に上げないでと患者にいっていたが、それが必要なくなり喜ばれている」と話しています。

 電池の予測寿命は約12・5年。手術時間は1~2時間程度。日本メドトロニックでは、ペースメーカーを初めて使う患者を中心に対象者が年間6000人程度になるとみています。

 2017年9月28日(木)

 

■うつ病のリスク、魚介類を適度に食べると半減 がん研究センターなどが分析

 青魚などの魚介類を1日に110グラムほど食べると、うつ病のリスクが下がるとの調査結果を国立がん研究センターと慶応大学の研究チームがまとめ、イギリスの科学誌「ネイチャー」の関連誌(電子版)に26日、発表しました。青魚に多く含まれるエイコサペンタエン酸(EPA)などの脂肪酸の影響とみられます。

 研究チームは、1990年に長野県佐久市に住んでいた40~59歳の男女約1万2000人を25年間追跡調査し、2014~2015年に実施した「こころの検診」を受けた1181人について、魚介類の摂取量や病歴、生活状況を調べました。1181人のうち、95人(8%)が精神科医にうつ病と診断されていました。

 加工品も含め19種類の魚介類の1日の摂取量に応じて4グループに分けて分析すると、最も少ないグループ(中央値57グラム)に比べ、2番目に多いグループ(中央値111グラム)は、うつ病のリスクが56%低くなりました。統計的に意味のある差は出ませんでしたが、3番目に多いグループ(中央値84グラム)と1番目に多いグループ(中央値153グラム)も、最も少ないグループよりリスクは下がりました。

 エイコサペンタエン酸やドコサペンタエン酸(DPA)といったオメガ3系脂肪酸(n―3系脂肪酸)の摂取量でも同様に分析すると、最も少ないグループ(中央値200ミリグラム)に比べ、2番目に少ないグループ(中央値307ミリグラム)は、うつ病のリスクが46%低くなりました。ただし、ある程度以上の量を摂取するとリスクが上がりました。

 調査を担当した国立がん研究センター・社会と健康研究センター健康支援研究部の松岡豊部長によると、魚介類をたくさん食べる人は野菜を食べる量も多く、揚げたり炒めたりでサラダ油を多く使う傾向があります。サラダ油に含まれるオメガ6系脂肪酸(n―6系脂肪酸)は炎症を起こす作用があり、オメガ3系脂肪酸(n―3系脂肪酸)の効果を打ち消した可能性があるといいます。

 松岡部長は、「心の健康を保つために1日100グラムほどの魚介類を食べてほしい」と話しています。

 一般的にサバの切り身は80グラム程度、イワシは1匹80~100グラムといいます。

 2017年9月27日(水)

 

■産婦人科と産科、全国の病院数過去最少 26年連続減、出生数の減少が影響

 厚生労働省は26日、2016年医療施設調査を公表しました。2016年10月1日現在における全国の医療施設総数は18万1052施設で、このうち「休止・1年以上休診中」の施設を除いた「活動中の施設」は17万8911施設で、医療施設総数の98・8%となっています。

 また、産婦人科と産科を掲げていた全国の病院は1332施設(一般病院総数の18・0%)で、前年比21施設減となり、現在の形で統計を取り始めた1972年以降の過去最少を更新しました。26年連続の減少で、内訳は産婦人科が1136施設(一般病院総数の15・4%)、産科が196施設(一般病院総数の2・7%)。

 小児科も前年より24施設少ない2618施設(一般病院総数の35・5%)で、23年連続減となりました。

 厚労省は、「出生数の減少や少子化が影響した。夜間や休日対応が多いなど就業環境の厳しさから医師が不足している状況もある」と分析。産婦人科と産科に関しては、「施術を巡り患者から訴えられる訴訟リスクへの懸念もある」としています。

 2017年9月27日(水)

 

■受動喫煙でも、大動脈疾患で死ぬリスク2・35倍に 筑波大が4万8000人を追跡調査

 タバコの煙や他人が吐き出した煙を吸い込む受動喫煙の頻度が高い人は、ほとんどない人に比べ、大動脈解離など大動脈の疾患によって死亡するリスクが2・35倍になるとの調査結果を、筑波大学などの研究チームがアメリカの専門誌オンライン版に公開しました。

 受動喫煙と大動脈の疾患との関係を研究したのは、世界で初めてといいます。受動喫煙が肺がんや心筋梗塞、脳卒中などのリスクを高めることはすでに指摘されていますが、大動脈の疾患との関係性については、これまで解明されてこなかったといいます。

 研究チームは1988~1990年当時に、40~79歳だった全国45地区の4万8677人に喫煙や受動喫煙の頻度、生活習慣や健康状態について聞き、その後、94%の人を平均16年にわたって追跡調査を行いました。調査対象者のうち、大動脈の内側が突然裂ける大動脈解離で66人、大動脈がこぶのように膨らんで破裂すると大量出血する大動脈瘤(りゅう)が原因で75人、計141人が死亡しました。

 非喫煙者を受動喫煙の頻度に応じて3つのグループに分けて調べると、大動脈の疾患による死亡リスクは、家庭で毎日2時間以上か、職場や飲食店などでほぼ毎日受動喫煙している頻度が高いグループが、受動喫煙のほとんどない低頻度のグループの2・35倍でした。高頻度よりも少ないが受動喫煙の環境にいる中頻度のグループと、低頻度のグループとではほとんど変わりませんでした。

 また、受動喫煙の程度を家庭内と家庭外に分けて調べると、家庭内での受動喫煙の影響よりも、家庭外での受動喫煙の影響が大きいとみられることもわかりました。家庭外での受動喫煙は、主に職場や飲食店での受動喫煙であることから、家庭内よりも多くの喫煙者の煙にさらされると考えられ、影響の違いにつながった可能性が示唆されるといいます。

 厚生労働省の調査によると、非喫煙者の約3〜4割が職場や飲食店で受動喫煙に遭遇していることが明らかになっています。厚労省は2019年9月のラグビーワールドカップの開催に向けて、広さ30平方メートル以下のバーやスナックを除く飲食店や公共施設については原則禁煙として、受動喫煙対策を強化する健康増進法改正案を公表していますが、自民党の一部の議員の猛反発にあって、先の通常国会への提出自体が見送られた経緯があります。

 調査を担当したした山岸良匡(かずまさ)・筑波大准教授(社会健康医学)は、「日本は諸外国と比べて、明らかに受動喫煙対策が遅れをとっている。今回の研究を機に、受動喫煙の有害性が国民の間に広まることを期待している」と話しています。

 2017年9月26日(火)

 

■出産可能年齢の女性の42%、基準値を上回る水銀を検出 国際NGOが25カ国の女性毛髪を調査

 水銀の汚染防止に取り組む国際NGOが東南アジアやアフリカなど25カ国の女性の毛髪を調べたところ、半数近くから基準値を上回る水銀が検出され、NGOは健康に深刻な影響が出る恐れがあるとして、早急に対策を講じるよう求めています。

 この調査は、水銀の汚染防止に取り組む国際NGO「IPEN」が、水銀による被害が広がっているとみられる東南アジアやアフリカを中心に昨年までの2年間行ったもので、25カ国の18歳から44歳の出産可能年齢の女性1044人の毛髪の中の水銀濃度を調べました。

 その結果、全体の42%の人から、アメリカの環境保護局(EPA)が定めた脳や腎臓に影響を及ぼす恐れがあるとされる基準値1ppmを上回る水銀が検出されたということです。

 特に、トンガやマーシャル諸島などの太平洋の島国では86%が基準値を上回り、調査を行ったIPENは、石炭火力発電所や小規模な金採掘場、工場などから海に排出され、食物連鎖を通じて水銀の濃度が高くなった魚を食べる食生活が影響している可能性が高いとしています。

 また、全体の13%の人は自身の健康についての基準値1ppmは下回ったものの、妊娠した場合、胎児の健康に影響が出るとされる基準値0・58ppmを上回りました。

 IPENよりますと、水銀による被害について広い範囲で調査が行われたのは初めてだということで、各国に対して、健康に深刻な影響が出る恐れがあるとして早急に対策を講じるよう求めています。

 2017年9月26日(火)

 

■赤ちゃんポスト利用の母親、86%が孤立出産 過去3年間で割合高まる

 熊本市にある民間病院の慈恵病院が親が育てられない子供を匿名で預け入れる、いわゆる「赤ちゃんポスト」(こうのとりのゆりかご)に、この3年間に子供を預けた母親29人のうち、少なくとも25人(86・2%)が医療機関でなく1人で出産した「孤立出産」でした。大学教授や医師らでつくる熊本市の専門部会が23日、利用実態を公表しました。

 公表されたのは、2014年4月~2017年3月の状況。それによると、利用した母親は29人で、直接または手紙などで状況が確認できた人のうち25人が、自宅や車中などで医療的ケアを受けないまま1人で出産した孤立出産でした。

 赤ちゃんポストは2007年5月に開設され、熊本市の専門部会などが2~3年ごとに、利用実態や課題を検証しています。孤立出産の割合は、3~6割で推移してきましたが、今回は開設当初の3倍近い割合になりましたた。

 専門部会長の山縣文治・関西大教授(子供家庭福祉学)は、「出産を誰にも知られたくない母親に対する公的支援が行き届いていないことが原因」とみています。

 また、今回は預けられた子供に低体温症などで治療が必要だったケースが14件(48・2%)あり、増加傾向にあります。山縣教授は「孤立出産の割合が高いことが影響しているのでは」と分析し、「預け入れを前提に自宅出産し、直後に長距離移動する危険なケースが近年増えている」として、病院や国に対し子育てや妊娠に悩む母親の相談・支援の充実を求めています。

 熊本市の大西一史市長は孤立出産の割合が高くなっていることに関して、「母子ともに生命の危険に陥らないよう努める必要がある。熊本市だけでなく日本社会全体の問題として具体的なアクションを起こすよう国への働き掛けを続けていく」と話しました。

 2017年9月25日(月)

 

■顔のしわ取り機を医療機関に違法販売・貸与 大阪府警、業者を逮捕

 高周波で顔のしわを取り、たるみをなくす国内未承認のアメリカ製の美容医療機器「サーマクール」を不正に輸入・販売するなどしたとして、大阪府警は25日、大阪市住之江区の医療機器販売会社「セイルインターナショナル」社長、坂口時彦容疑者(62歳)(大阪市中央区)と、元同社販売課長、田中聡容疑者(47歳)(大阪市福島区)を医薬品医療機器法違反(未承認医療機器販売・貸与)の疑いで逮捕しました。

 大阪府警生活環境課などは、セイルインターナショナルが全国のクリニックに販売や貸与していたとみています。

 逮捕容疑は昨年10月〜今年1月、サーマクール1台を名古屋市中区の医療機関に395万円で販売したほか、東京都豊島区と横浜市西区の2医療機関に1台月額13万〜16万円で貸したとしています。

 坂口容疑者は「サーマクールが未承認であることは理解しているが当社は輸入事務の代行をしているだけで、販売は別会社がした」と否認し、田中容疑者は認めているといいます。

 サーマクールは棒状の先端部分を顔に当て、電磁波による刺激でコラーゲンを増やして、しわやたるみを取る効果があるとされるアメリカ製の美容機器。医薬品医療機器法では、未承認医療機器の国内販売を禁じていますが、国が許可すれば医師が治療目的で個人輸入することができます。

 坂口容疑者らは、この制度を悪用。セイルインターナショナルは2010年に医療機器の輸入や販売を始めていましたが、取引先の複数の医師の医師免許証のコピーを本人に無断で厚生労働省近畿厚生局に提出して通関用の証明書をだまし取り、サーマクールをアメリカから輸入して、関東を中心に全国の医療機関に販売していたとみられます。大阪府警は今後、詐欺や有印私文書偽造・同行使容疑での立件も視野に調べます。

 クリニックでは、安全のため使用回数制限があるチップを、肌に当てる部分の先端に付けて施術します。厚労省によると、セイルインターナショナルは本体と合わせて、チップの回数制限を解除する不正機器を123の医療機関に販売していました。

 厚労省は今年1〜2月に計2回、セイルインターナショナルに立ち入り調査を行い、不正改造したチップによるやけどや水膨れの被害が9件あったことを確認。2月16日に、改造品の使用の中止を医療機関に対して呼び掛けるよう都道府県などに通知していました。

 2017年9月25日(月)

 

■がん患者の疲弊した免疫細胞、若返らせる技術を開発 慶大医学部

 がん細胞との闘いで疲弊した免疫細胞を若返らせる技術を開発したと、慶応大学医学部の吉村昭彦教授(微生物・免疫学)の研究チームが、イギリスの科学誌「ネイチャー・コミュニケーションズ」に発表しました。

 がん患者の免疫細胞を体外で増やして戻す細胞移入療法と呼ばれる治療はすでに一部で行われていますが、疲弊した免疫細胞では十分な治療効果は得られません。免疫細胞が若返ることで、治療効果がより高まることが期待されます。

 免疫細胞であるキラーT細胞は、がんやウイルスなどの外敵が現れると増殖して攻撃し、敵の情報を記憶した一部のキラーT細胞を残して死滅します。残ったキラーT細胞はまた同じ敵が現れると、すぐに増えて攻撃します。

 しかし、がんとの闘いが長く続くと、キラーT細胞は疲弊して攻撃力や増殖力が弱まります。培養しても、虚弱な細胞しかできません。

 研究チームは、がん患者の腫瘍組織などから疲弊したキラーT細胞を分離し、免疫細胞の発生を助ける作用のある間質細胞(ストローマ細胞)と一緒に培養。疲弊したキラーT細胞は、敵の情報を記憶したばかりの増殖前の状態に戻りました。寿命が延び、外敵が現れた際の増殖能力も高まりました。

 この若返ったキラーT細胞を、人のリンパ腫を移植したマウスに注入すると、リンパ腫の成長を抑えられ、生存期間が延びました。

 今回の成果は、遺伝子導入技術を用いずに、がんに特異的に反応するキラーT細胞を増やすことを可能にするもので、早期にがん治療へ応用できることが期待されます。また、免疫細胞に限らず神経細胞や生殖細胞など一般的な細胞の若返りの方法の開発とメカニズムの解明につながることも期待されます。

 北海道大学の清野研一郎教授(免疫生物学)は、「キラーT細胞の質を高める簡易な方法として意義がある。がんを認識したキラーT細胞を確実に採取して培養することが課題になる」と話しています。

 2017年9月24日(日)

 

■サルモネラ菌で80歳代の女性死亡 山形県鶴岡市、男女14人の感染を確認

 山形県は23日、鶴岡市内の80歳代の女性1人が9月16日に、サルモネラ菌が原因の菌血症で死亡したと発表しました。

 鶴岡市内ではこの女性を含め、幼児から90歳代以上の男女14人の感染が確認されましたが、共通した食品や訪問先などは確認されていません。原因の特定には至っておらず、山形県は食中毒か、それ以外の感染によるものかを調べています。山形県が把握しているサルモネラ菌による同県内での死亡例は、食中毒によるケースで、1996年以来となります。

 山形県食品安全衛生課によると、女性は9月12日に下痢や腹痛、発熱などの症状を訴えて医療機関を受診し、16日に入院先で死亡しました。死因は、サルモネラ菌による菌血症でした。

 さらに発症者は、女性が10人で内訳は幼児2人、小学生2人、高校生2人、40歳代1人、50歳代1人、80歳代1人、90歳代以上1人、男性は3人で40~80歳代。女性の中には、50歳代と80歳代の1家族と、幼児と小学生の2人の姉妹が含まれます。それぞれ6日から18日までに発症し、医療機関を受診しました。

 検査の結果、全員の便からサルモネラ菌(O9群)が検出され、21日に庄内保健所に連絡が入りました。女子高校生1人を除く全員が一時入院し、現在も7人が入院中となっています。

 サルモネラ菌の感染は食品を介した食中毒が多いものの、カメなどの保菌動物との接触や菌で汚染された川、湖の水による経路も考えられます。ただ、今回発症した14人には、共通する食品の摂取や飲食店の利用、レジャーでの行動や訪問先などがないといいます。食品安全衛生課は発症者からの聴き取り調査を進め、原因特定を急いでいます。

 山形県内でサルモネラ菌感染で死亡が確認されるのは1996年5月に、上山市内で発生した集団食中毒以来で、21年ぶり。5月12日に会食した当時80歳の女性が発症し、4日後に敗血症でショック死しています。

 サルモネラ菌は動物の腸管、川や湖などの自然界に広く分布し、食品では鶏肉と卵を中心に汚染されることが多いといいます。幼児や高齢者に感染した場合、症状が重くなる傾向があるため、山形県は手洗いの徹底や食品の冷蔵保管、十分な加熱など、注意を呼び掛けています。

 2017年9月24日(日)

 

■熊本市の赤ちゃんポスト10年、2割が施設で養育 家庭的養育への橋渡しが課題

 熊本市にある民間病院の慈恵病院が親が育てられない子供を匿名で預け入れる、 いわゆる「赤ちゃんポスト」(こうのとりのゆりかご)を設けて10年で、全国から預けられた130人のうち28人が、里親や特別養子縁組ではなく、乳児院や児童養護施設といった施設で養育されていることが23日、熊本市専門部会が公表した検証報告書で明らかになりました。

 2007年5月の運用開始後、検証報告書の公表は4回目。元の家庭に戻ったり、特別養子縁組につながったりするケースも多い一方、約2割が施設で暮らす実態が判明し、家庭的な養育にどうつなげるかという課題が改めて浮かび上がりました。

 報告書によると、2017年3月末時点で、預け入れ後の行き先は、特別養子縁組47人、乳児院など施設28人、里親26人、元の家庭23人、その他6人でした。里親から特別養子縁組につながったケースも増えています。

 乳児院など施設で暮らす28人のうち、4人は運用開始の2007年度に預けられた子供でした。

 また、130人のうち身元不明が26人で、日本も批准する「子供の権利条約」が規定する「出自を知る権利」の問題も、報告書は改めて指摘。

 匿名での預け入れの弊害を「親子再統合の機会が失われている」「子が遺伝性疾患のリスクを知ることができない」などと列挙し、「親の援助や子の養育環境を整えるために、実名化を前提とした上で秘密を守る手法が必要だ」と強調しました。

 その上で、ドイツの「内密出産制度」に言及。相談機関に実名で相談し、医療機関では匿名で出産できる仕組みで、16歳になった子供は母親の名前を知ることができます。報告書は「解決策として国に働き掛けるべきだ」として、熊本市に求めました。

 2017年9月24日(日)

 

■男性喫煙率、群馬県が37・3%で全国1位 地域差が大きく、滋賀県は20・6%

 厚生労働省が実施した「2016年国民健康・栄養調査」で、都道府県別の成人男性の喫煙率は群馬県が37・3%でトップだったことが21日、明らかになりました。最も低かった滋賀県は20・6%で、大きな地域差があります。

 厚労省の担当者は、「理由ははっきりしないが、各自治体は調査結果を参考に、禁煙指導などのたばこ対策を進めてほしい」としています。

 現在習慣的に喫煙している人の割合は18・3%で、男女別にみると男性30・2%、女性8・2%でした。この10年間でみると、いずれも有意に減少しています。年齢別にみると、30〜50歳代男性では他の年代よりもその割合が高く、約4割が現在習慣的に喫煙しています。

 都道府県で比較できるよう年齢調整した上で、成人男性の喫煙率を地域別にみると、最も高かった群馬県の37・3%に続いたのは福井県の36・6%、北海道の35・9%、長崎県の35・3%、栃木県 の35・3で、低かったのは滋賀県の20・6%に続き奈良県の22・0%、大分県の25・3%、兵庫県の25・8%、徳島県の26・3%の順でした。熊本県は地震の影響で、調査を実施できませんでした。

 現在習慣的に喫煙している人のうち、たばこをやめたいと思う人の割合は27・7%で、男女別にみると男性25・4%、女性35・0%でした。2007年以降でみると、男性では2010年までたばこをやめたいと思う人の割合の増加傾向がみられ、その後有意に減少しています。女性でも同様の推移ですが、有意な増減はみられません。

 自分以外の人が吸っているたばこの煙を吸う受動喫煙の機会を有する人の割合について場所別にみると、「飲食店」では 42・2%と4割を超えて最も高く、次いで「遊技場」では 34・4%、「職場」では 30・9%、「路上」では 30・5%といずれも3割を超えています。

 喫煙を巡っては、受動喫煙の防止の動きが進んでいます。神奈川県が2010年度に受動喫煙防止条例を導入。2020年開催の東京オリンピック・パラリンピックに向けて、厚労省や東京都も法整備や条例制定を目指しています。

 2017年9月22日(金)

 

■がん患者の凍結卵子、産婦人科学会が一元管理へ 2020年の運用開始を検討

 若い女性ががんの治療の過程で不妊になることを防ぐために、治療前に卵子を凍結保存するケースが増えていることを受けて、日本産科婦人科学会は全国の保存状況などを一元的に管理するシステムの導入を検討していることが、明らかになりました。

 がん患者の若い女性が、抗がん剤や放射線治療によって卵巣などにダメージを受けて不妊になる事態を防ぐため、治療前に将来の妊娠に備えて卵子を凍結保存するケースが増えていますが、全国のクリニックで行われ、実態がわからないことが課題となっていました。

 日本産科婦人科学会は、それぞれの医療機関ががん患者の卵子の保存状況を入力し、全国の状況を一元的に管理する新たなシステムをつくる方向で検討していることがわかりました。新たなシステムでは、患者の年齢のほか、がんの種類や進行度、それに凍結保存している卵子や受精卵の個数や状態などを入力することを検討しているということです。

 小児がんの場合などでは、卵子を凍結保存してから妊娠するために使うまで10年以上の長期間保存するケースもあり、システムが整備されると、医療機関が急な事情で閉鎖された際にも別の医療機関に移管することなどが可能になるということです。

 日本産科婦人科学会は、さらに検討を重ねて、3年後の2020年にも運用を始めたいとしています。

 日本産科婦人科学会の生殖・内分泌委員会の委員長で、東京大学の大須賀穣教授は、「卵子などの適切な保存とともに凍結保存の有効性を検証することにもつながる」と話しています。

 2017年9月22日(金)

 

■糖尿病が強く疑われる成人、初めて1000万人に達す 厚労省推計、予備軍も1000万人

 糖尿病が強く疑われる成人男女が全国で約1000万人に上ると推計されることが21日、厚生労働省の「2016年国民健康・栄養調査」で明らかになりました。1000万人に達するのは調査開始以来初めてで、厚労省は早期発見や予防につなげるために、いわゆるメタボ健診などを積極的に受診してほしいと呼び掛けています。

 厚労省は、2016年10月から11月にかけて、全国から無作為に抽出した約1万1000人を対象に血液検査を実施しました。

 対象者の血液検査の値から、20歳以上の男女のうち、「糖尿病が強く疑われる」とされた人は男性で16・3%、女性で9・3%に上り、人数にすると推計で男女合わせて約1000万人に上ることがわかりました。これは前回調査の2012年時に比べて50万人多くなり、1997年の調査開始以来初めて1000万人に達しました。

 また、糖尿病の可能性が否定できない「予備群」とされる人も男性で12・2%、女性で12・1%に上り、人数にすると前回調査の2012年時より100万人減ったものの、約1000万人に上ると推計されています。

 一方で、糖尿病が強く疑われる人のうち、現在治療を受けている人の割合は76・6%にとどまっています。

 厚労省によりますと、糖尿病は悪化すると合併症によって失明したり、最悪の場合、死亡したりすることもあり、早期に発見して治療を受けることが重要とされています。しかし、初期の糖尿病は痛みなどの自覚症状がないため病気に気付かない人も多いとみられていて、厚労省は早期発見や予防につなげるため通常の健康診断に加えて、「特定健診」、いわゆるメタボ健診などを積極的に受診してほしいと呼び掛けています。

 メタボ健診は、内臓に脂肪が付いて生活習慣病の危険性が高まるメタボリックシンドロームに着目した健診で、腹部周りの長さの測定や血液検査を行い、病気になる危険性が高い人を見付けます。危険性が高いとされた人は、食事や運動など生活習慣の改善をサポートする「特定保健指導」を受けられます。病気の人を見付けるだけでなく、病気になる手前の段階の人を見付け、健康作りにつなげるのが、メタボ健診の狙いです。 

 2008年度から、40歳から74歳までの人を対象に実施することが、健康保険組合など公的医療保険の運営者に義務付けられています。厚労省によりますと、メタボ健診を受診した人は年々増加しており、2015年度は約2700万人となっています。

 国立健康・栄養研究所の瀧本秀美部長は、「糖尿病のリスクとなる肥満には特に中高年の人がなりやすく、高齢化が進み、この世代の人が増えていることから、糖尿病が強く疑われる人も増加している。特に男性は女性よりも肥満の割合が高く、50歳代から糖尿病が増えてくるので、若いうちからバランスのよい食事や運動を心掛ける必要がある。夜中まで仕事をして夜遅くに食事を取り、朝食を食べないという人も珍しくなく、長時間労働の是正や社員の健康管理など企業側の取り組みも求められる」と話しています。

 2017年9月22日(金)

 

■人工知能で糖尿病合併症の発症を予測 藤田保健衛生大などがシステムを開発

 人間では処理し切れない膨大なデータを人工知能(AI)を使って分析し、糖尿病の合併症の一つ「腎症」の発症などを予測するシステムを、藤田保健衛生大学(愛知県豊明市)と日本IBM、第一生命保険が共同開発しました。

 医療分野でもAIの活用は進んでいますが、藤田保健衛生大によると、日本人の生活習慣病に関する予測システムは初めてといいます。糖尿病の治療や診断はもちろん、今後の「AI医療」の進展にも期待が高まります。

 糖尿病は国内で300万人の患者がいる代表的な生活習慣病で、悪化すると腎臓の機能が低下し心筋梗塞などのリスクを高める腎症や、網膜症、脳梗塞といった重い合併症を引き起こすリスクがあります。

 共同研究では、藤田保健衛生大病院が、糖尿病患者6万4000人と、それ以外の患者6万8000人の約13万人ぶんの電子カルテのデータを匿名化して提供。合併症のうち「糖尿病性腎症」に着目し、日本IBMのAIシステム「ワトソン」が、人間の脳の神経回路をモデルにしたディープラーニング(深層学習)によって、自ら学習し解析しました。

 腎機能を示す検査データ「eGFR」値や血糖値はもちろん、因果関係が薄いとされがちな検査データも含め24項目の数値を分析。時間経過による変化や既往症の有無も踏まえました。

 その結果、現時点では腎症の予兆がない初期の糖尿病患者でも、近い将来の見通しとして180日後に発症するかどうか、高い精度で予測することができるようになったといいます。

 ワトソンは数値化されたデータだけでなく、電子カルテに記載された医療スタッフと患者とのやり取りなども解読できます。医療スタッフが患者の治療への取り組みを「褒めた」場合、患者の血糖値の改善傾向が強まることもわかり、心理面での治療支援にも活用できる可能性が出てきました。

 開発にかかわった藤田保健衛生大の鈴木敦詞(あつし)教授は、「あらゆるデータを把握して、病気の進行を極めて早い段階から予測することはこれまで不可能だった。症状が出る前から予測に基づいた指導や対策を始めることができこれまでの医療が変わり、医療費の削減にもつながる可能性がある」と話しました。

 藤田保健衛生大などが開発した糖尿病の合併症などの予測システムは、囲碁の名人を打ち負かしたり、車を自動運転したりと進化が著しいAIが医療分野でも不可欠となりつつあることを改めて示しました。

 AIの活用では東京大学が2015年、日本IBMと連携してがん治療の研究を開始。がんに関連する2000万件の論文や患者の遺伝子情報をAIシステムに学習させ、診療に役立てようとしています。2016年には血液のがん「急性骨髄性白血病」の女性患者について、AIが適切な治療法を助言し、回復に貢献するという成果を上げました。

 国立がん研究センターも、がん治療のAI活用を進めています。血液中に含まれる微小物質をAIを使って分析することで、ごく初期のがんを高い精度で発見できる可能性があります。このほか認知症や心疾患の診断にAIを生かそうという研究も、国内外で始まっています。

 国民病ともいわれる糖尿病での今回の活用は、AI開発で世界の先頭を走るIBMと、病院の病床数が国内最大級で、豊富な患者データを持つ藤田保健衛生大との協力で実現しました。同大は将来のAI活用をにらみ、5年前からカルテなどの電子処理にIBMのシステムを導入していました。

 同様のシステムは今後、他の病気でも開発が可能で、藤田保健衛生大の星長清隆学長は、「AIは医療の新しい可能性を開く。患者に、よりよい医療を提供していきたい」と話しています。

 2017年9月21日(木)

 

■がん新規患者86万2452人、2013年推計 微減も2017年は最多101万4000人予測

 国立がん研究センター(東京都中央区)は19日、2013年に新たにがんと診断された患者は86万2452人(男性49万8720人、女性36万3732人)との推計値をまとめました。前年の86万5238人より微減したものの、2017年に新たにがんと診断される人は過去最多の101万4000人と予測しました。

 患者数が減ったのはデータの処理方法を国際基準に合わせたためで、がん研究センターは「より実態に近い数値であり、高齢化に伴い患者数も増える傾向は変わらない」としています。

 がん研究センターでは、協力医療機関が新たにがんと診断した患者数を都道府県に報告する「地域がん登録」のデータを収集し、全国のがん患者数を推計。2012年から全47都道府県のデータが出そろい、より高精度な集計ができるようになりました。

 2013年の新規患者を部位別にみると、男性は胃、肺、大腸、前立腺、肝臓の順で、前年3位の肺と2位の大腸が入れ替わりました。女性は乳房、大腸、胃、肺、子宮の順で前年と同じでした。

 がんが見付かった時の進行度は皮膚、喉頭、子宮体部などは早期が多く、膵臓(すいぞう)、肺、悪性リンパ腫は転移した状態が多くなっていました。

 地域別では日本海側で多く、部位別でも胃がんが日本海側、肝臓がんは西日本に多いなどの地域差が明らかになりました。

 さらに、がん研究センターは厚生労働省の人口動態統計のがん死者数や、がん研究センターがまとめた全国のがん患者数の推計値などを基に、従来の傾向が続いた場合を前提に2017年のがん患者数を算出。101万4000人(男性57万5900人、女性43万8100人)と予測され、2016年より3800人増えました。

 男性は胃(9万400人)、肺(8万6700人)、前立腺(8万6100人)、大腸(8万5500人)、肝臓(2万7000人)の順で、女性は乳房(8万9100人)、大腸(6万4000人)、胃(4万2400人)、肺(4万2000人)、子宮(2万8100人)の順でした。

 一方、2017年にがんで死亡する人数の予測は37万8000人(男性22万2000人、女性15万6000人)で、前年より4000人増加。男性は減りましたが、女性は増加しました。2人に1人が一生のうちにがんと診断され、男性は4人に1人が、女性は6人に1人ががんで死亡する計算となります。

 死亡者の部位別は肺、大腸、胃、膵臓、肝臓の順。男性は肺、胃、大腸、肝臓、膵臓、女性は大腸、肺、膵臓、胃、乳房の順でした。

 国立がん研究センターがん統計・総合解析研究部の片野田耕太部長は、「去年の予測では男性で最も多かった前立腺がんの患者数が3番目になるなど変化していて、がん対策を強化するために国や自治体は参考にしてほしい」と話しています。

 集計結果は、国立がん研究センターの運営サイト「がん情報サービス」で20日から公開されます。

 2017年9月21日(木)

 

■O157感染、総菜「でりしゃす」全17店を閉店 感染で3歳女児死亡

 群馬、埼玉両県の総菜店「でりしゃす」の総菜を食べた男女計22人が腸管出血性大腸菌O157に感染し、東京都の3歳の女児が死亡した問題で、同店を運営する「フレッシュコーポレーション」(群馬県太田市)は20日、でりしゃす全17店舗を閉店したと発表しました。

 フレッシュコーポレーションによると、群馬県の12店舗、埼玉県の2店舗、栃木県の3店舗の全17店舗を19日付で閉店し、営業を終了しました。従業員は、同社が運営する他のスーパーなどで雇用の場を確保するといいます。

 群馬県食品・生活衛生課などは、女児の死亡が13日に明らかになってから、同県内の12店舗への立ち入り検査を続けています。19日までに8店舗の検査を終え、20日以降に残りの店舗を回る予定だったといいます。感染ルートはまだ特定されていませんが、でりしゃすの閉店に伴い立ち入り調査は打ち切るといいます。

 一連の問題は、埼玉県熊谷市の店舗でポテトサラダを買って食べた人から、8月21日にO157が検出されて発覚しました。でりしゃすは、8月24日から全店舗を自主休業していましたが、衛生管理態勢を見直して9月7日に営業を再開していました。女児が食べたタケノコやエビの炒め物などの総菜を販売した前橋市の「六供(ろっく)店」は、女児の死亡がわかった後に再び自主休業をしていました。

 フレッシュコーポレーションの広報担当者は、「感染者がたくさん出て、イメージや信用も含めて、総合的に営業の継続は難しいと判断した」と閉店の理由を説明し、「感染源の特定に向け、引き続き保健所の調査に全面的に協力していく」としています。

 2017年9月20日(水)

 

■ブドウやリンゴ含有の化合物に、がん細胞の増殖抑える効果 信州大農学部が確認

 信州大学農学部(長野県上伊那郡南箕輪村)の真壁秀文教授(生物有機化学)らの研究チームが18日までに、ブドウやリンゴなどに含まれる化合物「エピカテキンオリゴマー」にがん細胞の増殖や臓器への転移を抑制する効果があることを確認しました。研究チームは、がんの抑制効果がある化合物を特定した例はほとんどなく、がん治療への応用が期待できるとしています。

 研究チームは、真壁教授と信州大バイオメディカル研究所の藤井博教授(分子生物学)、同大農学部の梅沢公二助教(構造生物学)らで、2012年から共同で研究に取り掛かりました。藤井教授が当時、ブドウの抽出物に、がん細胞の増殖や臓器への転移を抑制する効果がある物質が含まれていることを突き止めていましたが、物質の特定には至っていなかったといいます。

 研究チームで分析を進めた結果、物質はブドウに含まれる渋味成分で、ポリフェノール化合物の一種「エピカテキン」が複数連結したエピカテキンオリゴマーと判明しました。エピカテキンオリゴマーはリンゴや小豆、カカオなどにも含まれているといいます。

 研究チームは、エピカテキンオリゴマーの効果を検証。真壁教授がエピカテキンを2つから6つ連結したエピカテキンオリゴマーを合成し、梅沢助教が分子構造を確認。藤井教授が、前立腺がんの細胞にエピカテキンオリゴマーを混ぜ、人工的に作った細胞組織にがん細胞がどれだけ転移するかを調べました。

 共同作業の結果、エピカテキンを4つつなげたエピカテキンオリゴマーでは転移したがん細胞の数が減り、連結数が5つ、6つのエピカテキンオリゴマーではさらに減ることが明らかになりました。

 研究チームの論文は8月、国際学術誌「サイエンティフィック・リポーツ」に掲載されました。

 藤井教授は「いろんな分野の研究を組み合わせたからこそ得られた成果」とし、真壁教授は「食べ物を研究対象とする農学部らしさを示せたのではないか」としています。

 2017年9月19日(火)

 

■無痛分娩で第1子を死産、夫婦が順天堂医院を提訴 一時心肺停止に陥り子宮破裂

 麻酔でお産の痛みを和らげる無痛分娩(ぶんべん)で子供が死産したのは医師らの過失が原因だとして、順天堂大学医学部附属順天堂医院 (東京都文京区)に入院していた女性と夫が、運営する学校法人と医師らに計約1億4000万円の損害賠償を求めて東京地裁に提訴していたことが19日、明らかになりました。

 提訴を起こしたのは15日で、訴状によると、女性は無痛分娩で第1子の女児を出産するため順天堂医院に予約し、陣痛が始まった2015年2月4日に入院。5日から陣痛促進剤の投与が始まり、その後、吐き気や下腹部の痛みなどが生じ、6日午後7時ごろから約30分間心肺停止に陥りました。胎児は死産となり、病院側からは子宮破裂と説明されました。

 原告側は、陣痛の痛みを和らげる無痛分娩では、医師や助産師が妊婦の状態を厳重に監視しなければならなかったのに、子宮破裂の兆候を見逃したと主張しています。女性に事前説明のないまま陣痛促進剤を連続投与し、子宮破裂を引き起こした可能性があり、帝王切開のタイミングも逸したとして、胎児の命や母体を守る注意義務に違反したと訴えました。女性は子宮を全摘し、妊娠できない状態になったといいます。

 19日に東京都内で会見した原告側代理人の貞友義典弁護士は、「無痛分娩では先駆け的な病院で被害が生じた。世間への警告の意味もあって提訴した」と説明しました。順天堂医院は高度な医療を提供する「特定機能病院」に指定されていますが、貞友弁護士は同日、「無痛分娩に欠陥があった」などとして、厚生労働省に指定を取り消すよう書面で申し入れました。

 順天堂医院管理課は、「訴状が届いておらず、コメントは差し控えたい」としています。

 無痛分娩を巡っては、今春以降、大阪府、兵庫県、京都府、愛知県の5医療機関(うち1医療機関は閉院)で計7件の産科麻酔を巡る事故が発覚。兵庫県と愛知県の事故の2遺族から厚労省などに対し、再発防止を求める要望書が提出されており、厚労省が実態把握を進めています。

 2017年9月19日(火)

 

■コーヒーを多く飲む人、欧州でも死亡リスク低下を確認 45万人を調査

 コーヒーは世界で最も多く飲まれている飲料の1つで、さまざまな成分を含んでいます。これまでにも、コーヒーの摂取は健康によい影響を及ぼすという報告は複数ありましたが、それらは主にアメリカ人を対象に行われた研究の結果でした。

 そこで、フランスに本部を置く国際がん研究機関(IARC)は、コーヒー摂取と死亡の関係がほかの地域に住む人々にもみられるのかどうか、そして、コーヒーの摂取が特定の死因による死亡リスクを減らしたり高めたりするのかどうかを明らかにしようと考え、欧州10カ国の市民を対象に研究を行いました。

 研究対象にしたのは、デンマーク、フランス、ドイツ、ギリシャ、イタリア、オランダ、ノルウェー、スペイン、スウェーデン、イギリスの一般市民で、主に35歳以上の45万1743人(男性13万662人と女性32万1081人)。

 コーヒーの摂取量は食物摂取頻度調査の中で尋ね、ライフスタイル質問票を用いて、学歴、喫煙、飲酒習慣、運動量などに関する情報も収集しました。

 当初のコーヒーの摂取量に基づいて、国ごとに対象者を分類。まず、全く飲まないグループを参照群として設定し、残りの人々を摂取量が最も少ないグループから最も多いグループまで4等分しました。主に比較したのは、参照群と、最もコーヒーの摂取量が多いグループで、このグループの1日当たり摂取量の中央値は男性が855ミリリットル、女性が684ミリリットル。

 コーヒーの摂取量調査から平均16・4年追跡したところ、4万1693人(男性1万8302人、女性2万3391人)が死亡していました。うち1万8003人ががん、9106人が循環器疾患、2380人が脳血管疾患(脳梗塞、脳出血など)、3536人が虚血性心疾患(心筋梗塞など)、1213人が消化器疾患、1589人が呼吸器疾患で死亡しており、1571人が外傷性の死亡、418人は自殺による死亡でした。

 これらの死亡とコーヒーの摂取量との関係を分析したところ、コーヒーを全く飲まないグループに比べ、コーヒーを最も多く飲むグループのあらゆる原因による死亡(総死亡)のリスクは、男性で12%、女性では7%低下していました。これらの差は、統計学的に意味のあるレベルでした。

 また、コーヒーを飲む量が多い人ほど総死亡リスクが低いことも、示唆されました。コーヒー1杯を237ミリリットとすると、1日の摂取量が1杯増加するごとに、総死亡リスクは男性が3%、女性は1%低下していました。

 欧州では国ごとに、好まれるコーヒーの抽出方法が違っています。しかし、各国のコーヒーの摂取量と死亡との関係に差はなく、抽出方法にかかわらず、より多く飲む人の死亡リスクが低い現象が一貫して認められました。

 コーヒーの摂取は、消化器疾患による死亡リスクの低減とも関係していました。1日の摂取量が1杯増加するごとのリスク低下は、男性が23%、女性は14%でした。

 消化器疾患による死亡の3分の1強は、肝臓の病気による死亡でした。男女合わせて分析したところ、コーヒーを全く飲まないグループと比較して、最も多く飲むグループの肝臓病による死亡リスクは80%低いことが明らかになりました。肝硬変による死亡リスは79%低く、肝臓がんによる死亡リスクは40%前後低くなっていました。一方で、肝臓病以外の消化器疾患による死亡リスクは、統計学的に意味のある低下を示しませんでした。

 男女に差がみられた項目もありました。循環器疾患による死亡と脳血管疾患による死亡では、女性においてのみ、コーヒー摂取量が最も多いグループでリスク低下が認められました。一方で、がんによる死亡、および卵巣がんによる死亡は、いずれも女性においてのみ、コーヒー摂取量が最も多いグループでリスクが上昇していました。

 以上のような関係は、カフェインを含むコーヒーと含まないコーヒーの摂取量を別々に分析しても同様に認められました。

 研究を行った国際がん研究機関のマーク・グンター博士は、「重要なことは、コーヒーを飲む文化や伝統が多様な欧州10カ国すべてで、コーヒーを毎日飲むことで健康を得られるという同じ結果が出たことだ。これはコーヒーに含まれる成分に余命を延ばす効果があることを示している」と述べています。

 2017年9月18日(月)

 

■光で操作してiPS細胞を神経細胞に分化 東大、制御技術を開発

 東京大学大学院総合文化研究科の佐藤守俊教授らの研究チームは、さまざまな組織に育つiPS細胞(人工多能性幹細胞)を光で刺激して神経細胞に変える手法を開発しました。

 光を当てると特定の遺伝子が働くような仕掛けをiPS細胞に組み込みました。同じ原理で、iPS細胞を神経細胞以外に変えるのも簡単だといいます。細胞の機能を光で制御する技術に道を開く成果で、生命現象の解明や病気の研究に役立ちます。

 研究チームは「クリスパー・キャス9」というゲノム(全遺伝情報)編集技術を応用して、光に反応するタンパク質などをiPS細胞に送り込み、神経細胞へ変えるタンパク質の生産を促しました。

 実験では、iPS細胞に青色の光を当てると特定の遺伝子の働きが高まり、iPS細胞が神経細胞に変化しました。

 これまでも、薬剤を投与してiPS細胞を神経細胞に変える手法はありましたが、今回の手法は光を当てた時に遺伝子の働きが高まり、iPS細胞の変化を自由に制御できます。

 今後は同じ原理を応用して、神経細胞以外の細胞への変化も光で制御できるようにしたいといいます。

 光の刺激で遺伝子の働きを調節する手法は、「光遺伝学」として注目されています。ゲノム編集技術も、従来の遺伝子組み換え技術に比べて桁違いに高い精度で遺伝子を改変できるとして、研究が盛り上がっています。

 2017年9月18日(月)

 

■厚労省、食品業者にO157感染や食中毒の注意喚起 今年の感染者は2568人に上る

 O157などの腸管出血性大腸菌による食中毒は例年、菌が繁殖しやすい夏場に増加し、強いベロ毒素により高齢者や子供などを中心に死者も出ています。厚生労働省は13日、都道府県などを通じ、感染や食中毒について食品業者への注意喚起の通知を出しました。

 国立感染症研究所によると、8月28日~9月3日までに報告された腸管出血性大腸菌の感染者は210人で、今年に入ってからの感染者は計2568人となりました。7月下旬からは週200人を超える患者が連続して報告されています。

 東京都健康安全研究センターの石井健課長は「O157は、菌が出すベロ毒素により出血性の大腸炎が起きるのが特徴。健康な成人は下痢で終わることも多いが、抵抗力の弱い乳幼児や高齢者などでは、まれに溶血性尿毒症症候群(HUS)が引き起こされることがある」と解説しています。

 大阪府堺市で1996年、学校給食などで約9500人が感染したO157集団食中毒では、小学生3人が死亡し、2015年に至って後遺症で1人が死亡しました。昨年、厚労省に報告があったO157の食中毒14件でも、患者252人のうち10人が死亡しています。

 石井課長は「細菌を『つけない』『増やさない』『やっつける』の3つが食中毒予防の大原則」とし、「食品を扱う時は手を洗い、調理器具を殺菌するなどして食べ物に菌がつかないようにした上で、食品の常温保存を避けて菌を増やさないこと、75度で1分以上の加熱で菌を死滅させることなどが重要」と解説しています。

 2017年9月18日(月)

 

■90歳以上の高齢者、初めて200万人を突破 働く高齢者は770万人に

 総務省が18日の「敬老の日」に合わせ17日に発表した人口推計によると、90歳以上の高齢者人口が9月15日時点で1年前より14万人増えて206万人となり、データをとり始めた1980年以降、初めて200万人を突破しました。

 65歳以上の高齢者人口は3514万人となり、総人口に占める割合が27・7%に上りました。前年より57万人、率にして0・5ポイント増え、いずれも過去最高を更新。65歳以上の男性は1525万人で男性人口の24・7%、女性は1988万人で女性人口の30・6%に上りました。

 総人口に占める65歳以上の高齢者の割合は1950年以降増え続け、1985年に10%、2005年に20%を超えました。国立社会保障・人口問題研究所の推計では、第2次ベビーブームに当たる1971~1974年生まれの世代が65歳以上になる2040年には、総人口の35・3%が高齢者となる見通し。2011年以降日本の総人口が減少する一方で、高齢者の人口は一貫して増え続けており、高齢者を支える社会の仕組み作りが大きな課題です。

 90歳以上の高齢者が総人口に占める割合は1・6%で、前年より0・1ポイント上昇しました。90歳以上の人口は1980年の12万人から年々増加し、2004年に102万人となった後は13年間で倍増し、206万人となりました。医療技術が進歩し、老齢人口が増えるのみならず、個人の長寿化が目立ってきました。

 80歳以上の高齢者人口でみると、1950年には37万人だったのが2017年には1074万人となり、総人口の8・5%になりました。国立社会保障・人口問題研究所は、2040年には80歳以上の高齢者人口が1578万人となり、総人口の14%を超えると試算しています。

 長寿化は、医療や介護に使う社会保障費の増加につながり、政府の財政運営に影響を及ぼします。個人にとっては、老後の期間が長くなることへの備えが必要になります。

 労働力調査によると、65歳以上の就業者数は2016年、770万人と13年連続で増加して過去最多となったほか、15歳以上の就業者総数に占める割合も11・9%で過去最高となりました。65~69歳では男性の53・0%、女性の33・3%が就業していました。

 総務省は「高齢者の働く意欲が高いことが背景」と説明していますが、長生きに備えて老後資金を蓄えておきたいとの考えもありそうです。

 2017年9月17日(日)

 

■遠隔での死亡診断、看護師が送るデータで可能に 厚労省が新たな指針を作成

 自宅や施設で亡くなる人の死亡診断について、厚生労働省は過疎地や離島などで医師が駆け付けるまでに時間がかかる場合、スマートフォンなどで看護師から情報を受け取り、離れた場所でも診断できるとする新たな指針(ガイドライン)を作り12日、全国の都道府県や関係団体に通知しました。

 医師法では、死亡診断書の交付に医師自らの診察を義務付けており、埋葬や火葬にも死亡診断書が必要です。しかし、過疎地や離島では医師が少なく、すぐには患者のもとに駆け付けられないケースがあり、住み慣れた自宅で最期を迎えたいと希望していた患者が亡くなる直前に入院を余儀なくされるなどして、自宅での「みとり」が困難になることもありました。

 その方法は、看護師が患者の自宅や施設を訪問して、心臓や呼吸の停止、瞳孔の開きを2度確認した上で、外傷の有無なども観察し、遺体の写真やデータをスマートフォン、タブレット端末などを使って医師に送ります。医師は集めた情報を基に患者の死亡を診断し、テレビ電話などを通じて遺族に説明し、看護師が死亡診断書を代筆して遺族に手渡すとしています。

 厚労省は遠隔での死亡診断を行う条件について、医師が到着するまで12時間以上かかり、患者や家族が事前に同意し、死期が近付いている場合などとしています。

 厚労省は今年度中に、実務経験5年以上などを要件とする看護師を対象にした研修を行った上で、遠隔での死亡診断の運用を始める予定です。

 厚労省が遠隔による死亡診断の指針を作った背景には、希望する患者ができるだけ住み慣れた自宅で最期を迎えられるようにしようという考えがあります。

 内閣府が2012年に55歳以上の2000人近くに行った調査では、「治る見込みのない病気にかかった場合、どこで最期を迎えたいか」という質問に対し、「自宅」と答えた人は55%と、「病院などの医療施設」と答えた人の28%を大幅に上回りました。

 しかし実際には、病院など医療機関で亡くなる人が多く、厚生労働省によりますと、一昨年は全体の77%に上りました。高齢化が進み、昨年の年間死亡者は130万人に上り、ピーク時とされる2039年には167万人まで増えると予測されています。自宅や介護施設でみとりができる体制を整えないと、病院のベッドが足りなくなることも懸念されています。

 今回の指針について厚生労働省医事課の武井貞治課長は、「高齢化が進む中、1人でも多くの人が住み慣れた土地で家族にみとられながら最期を迎えられるようにする初めての取り組みで、適切な診断を下せるよう研修などに力を入れていきたい」と話しています。

 2017年9月17日(日)

 

■ビールの苦味成分に、肥満による認知症の改善効果 キリンが解明

 ビールの醸造過程で原料のホップから出る苦味成分に、肥満でリスクが高まる認知機能低下を改善する効果があることを、飲料大手のキリンホールディングス傘下の健康技術研究所が解明しました。

 7月にロンドンで開催した国際アルツハイマー病学会で、発表しました。

 この成分は「イソα酸」と呼ばれ、ビール1リットルに10~30ミリグラム程度含まれます。コクや苦味が強いビールのほうが多いといい、キリンは将来的に飲料やサプリメントなどの商品化を目指します。

 最近の研究では、肥満によって認知症のリスクが高まるとされています。健康技術研究所では今回、イソα酸入りの高脂肪の餌を与える認知症モデルマウスと、イソα酸なしの認知症モデルマウスに分けて実験。イソα酸入りの餌を食べたマウスには、老廃物の蓄積による脳内炎症や肥満の抑制作用、認知機能の改善が示されたといいます。

 これまでの疫学などの研究では、適度な量の酒類の摂取は認知症の防御因子として報告されています。特に赤ワインのポリフェノールは認知症への効果に関して多く研究報告がありますが、ビールの成分についてはあまり研究が進んでいませんでした。

 健康技術研究所の担当者は、「健康によくないイメージがあるビールだが、逆によい効果があることがわかった」と話しています。

 2017年9月16日(土)

 

■2016年度の概算医療費、41兆2865億円 高額薬値下げで14年ぶりに減少

 2016年度に医療機関に支払われた医療費の速報値となる「概算医療費」は前年度より1762億円少ない41兆2865億円で、2002年度以来14年ぶりに減少に転じました。

 国民1人当たりの医療費も、全体の平均が2000円減って、32万5000円になりました。75歳未満では21万8000円、75歳以上は93万円となっています。

 前年度に利用が急増した高額薬の価格引き下げなどが要因です。ただし、75歳以上の医療費は伸び続けており、減少は一時的とみられます。

 厚生労働省が15日、公表しました。概算医療費は、医療保険給付と公費、患者の自己負担分の合計。労災や全額自己負担の治療費は含まず、約1年後に確定値として公表する「国民医療費」の約98%に相当します。

 主な要因が薬局調剤医療費の減少で、2015年度はC型肝炎治療薬「ソバルディ」と「ハーボニー」が相次いで公的保険の対象になりました。1錠約6万~8万円と高額で、同年度の薬局調剤医療費は前年度より9・4%伸びました。

 このため政府は、年間販売額が極めて大きい薬の価格を引き下げるルールを適用し、2016年度はこれらの価格が3割ほど下がりました。こうした薬は長期投薬の必要がなく、完治が見込めることもあり、薬局調剤医療費が前年度より4・8%減の7兆5000億円になりました。

 また、厚労省が使用の推進に取り組んでいる価格の安い後発医薬品、いわゆるジェネリックの2016年度の使用割合は、数量ベースで66・8%と、前の年度より6・8ポイント増えました。

 一方、75歳以上の医療費は伸び続け、前年度から1・2%増えました。厚労省の担当者は、「全体の医療費の減少は一時的なもので、高齢化や医療技術の高度化で費用が増える傾向に変わりはない」とみています。

 来年度は、医療の公定価格となる「診療報酬」の2年に1度の改定期を迎えます。改定率は、来年度以降の医療費の増減を大きく左右します。日本医師会など診療側は人件費確保のためプラス改定を求めているのに対して、保険者側は医療保険の持続のためマイナス改定を求めており、政府が改定率を決める年末にかけて議論が激しくなりそうです。改定作業では高額薬に対処するため、費用対効果によって価格を調整する仕組みなども検討されています。

 2017年9月16日(土)

 

■100歳以上の高齢者、6万7824人 47年連続で過去最多を更新

 全国の100歳以上の高齢者は「老人の日」の9月15日の時点で約6万7000人と、昨年より約2000人増え、過去最多となったことが、厚生労働省の調査でわかりました。

 厚生労働省は毎年、「敬老の日」を前に、住民基本台帳を基に100歳以上の高齢者を調査しています。

 それによりますと、9月15日の時点で100歳以上の高齢者は全国で6万7824人に上り、昨年より2132人増え、339人だった1971年から47年連続で過去最多を更新しました。このうち男性は8197人、女性は5万9627人で、女性が全体の87・9%を占めています。医療の進歩や健康志向の高まりで、100歳以上の高齢者の人口は10年前の約2倍、20年前の約8倍に増えました。

 人口10万人当たりの100歳以上の人数は、全国で53・43人。都道府県別にみますと、島根県が97・54人と5年連続で最も多くなり、次いで鳥取県が92・11人、高知県が91・26人、鹿児島県が91・20人と続き、上位7県は西日本が占めました。一方、最も少ないのは28年連続で埼玉県で32・09人、次いで愛知県が35・01人、千葉県が37・83人、大阪府40・29人など人口の多い都市部では人数が少ない傾向にありました。

 最高齢は、2年連続で鹿児島県喜界町に住む女性の田島ナビさんで、明治33年(1900年)8月生まれの117歳です。男性の最高齢は、北海道足寄(あしょろ)町の野中正造(まさぞう)さんで、明治38年(1905年)7月生まれの112歳です。

 また、今年度中にちょうど100歳になる人は、9月15日時点で3万2097人(男性4636人、女性2万7461人)で、昨年度より350人増加しています。100歳になる人には政府が銀杯を贈りますが、税金の無駄遣いを点検する「行政事業レビュー」で廃止を求められたのを切っ掛けに昨年、純銀製から合金に銀めっきしたものに変えました。お祝いを伝達する自治体に聞き取ったところ、変更に特に反応はなく、当面この銀杯を続けるといいます。

 厚生労働省は、「医療技術の進歩や健康意識の高まりなどから長生きする人が増えている。100歳以上の高齢者の増加は今後も続くのではないか」と話しています。

 国立社会保障・人口問題研究所の推計によると、100歳以上の高齢者は2050年には約53万2000人になります。政府は長寿社会を見据え、有識者を集め教育や雇用、社会保障制度の在り方などを議論する「人生100年時代構想会議」を9月11日にスタートさせています。

 2017年9月15日(金)

 

■肥満に影響、DNA193カ所を特定 予防につながる可能性も

 理化学研究所などの研究チームは、人のDNA(デオキシリボ核酸)の中で、肥満に関係する部分を統計学的な手法で分析した結果、これまでに知られていない112カ所を含む193カ所を特定したと発表し、肥満や病気の予防につながる可能性がある新たな成果だとしています。

 理化学研究所統合生命医科学研究センターなどの研究チームは、日本人や欧米人合わせて49万人のデータを使って、DNAの配列と肥満の関係をゲノムワイド関連解析という統計学的な手法で分析しました。

 その結果、肥満に関係する部分が193カ所あることがわかり、このうち112カ所はこれまで知られていなかったということです。多くは脂肪組織や免疫に関係する細胞などで特に働いているとみられることがわかったということです。

 さらに、研究チームは病気との関係を調べたところ、肥満に関係する部分は2型糖尿病や心血管疾患(脳梗塞、心筋梗塞、閉塞性動脈硬化症)だけでなく、後縦靱帯(じんたい)骨化症、気管支ぜんそくなどと関連し、やせやすい体質に特有の部分では関節リウマチや思春期特発性側弯(わん)症、統合失調症などと関連していることがわかったということです。

 研究チームでは、生まれ付き太りやすかったり、やせやすかったりする人は、こうした病気を発症するリスクがあることが遺伝的に明らかになったとしています。

 研究チームの理化学研究所の秋山雅人さんは、「肥満とはどういうものなのか明らかにし、病気の予防などにつなげていきたい」と話しています。

 研究成果は、アメリカの科学誌「ネイチャー・ジェネティクス」(電子版)に9月12日付けで発表されました。

 2017年9月15日(金)

 

■2015年度医療費、3・8%増の42・3兆円 高額薬の影響で9年連続過去最高を更新

 厚生労働省は13日、2015年度に病気やけがの治療で全国の医療機関に支払われた医療費の総額(国民医療費)は、前年度比1兆5573億円増の42兆3644億円だったと発表しました。

 国民1人当たりは、前年度比1万2200円増の33万3300円。いずれも9年連続で過去最高を更新しました。40兆円を超えるのは、3年連続です。

 増加率はここ数年、前年度比1~2%台で推移してきましたが、2015年度は3・8%の大幅増となりました。薬局調剤医療費が6985億円増えており、同年度に保険が適用されたC型肝炎治療薬「ハーボニー配合錠」、がん治療薬「オプジーボ」などの高額薬剤の使用が増えた影響が大きいとみられます。国民所得に対する国民医療費の割合は10・91%で、7年連続で10%を上回りました。

 高齢化の影響もあり、75歳以上が入る後期高齢者医療制度の給付は前年度比4・7%増の14兆255億円となりました。国民1人当たりの医療費は、65歳未満が18万4900円なのに対し、75歳以上は92万9000円と約5倍。

 都道府県別の国民1人当たりの医療費では、高知県が44万4000円と最も高く、次いで長崎県が41万1100円、鹿児島県が40万6900円。最も低いのは埼玉県の29万900円で、次いで千葉県29万1100円、神奈川県29万7900円でした。

 医療費の財源は、国民や企業が負担する保険料が20兆6746億円で全体の48・8%を占め、国と地方自治体を合わせた公費は16兆4715億円で38・9%、患者の自己負担分は4兆9161億円で11・6%でした。

 国民医療費は、保険診療の対象になる治療費の推計で、健康診断や予防接種、正常な出産などの費用は含まれません。1990年度に20兆円を突破し、2013年度に40兆円を超えました。

 2017年9月15日(金)

 

■梅毒の患者、全国で3728人に上る 増加ペースは過去19年間で最速

 性感染症の「梅毒」について、全国の医療機関から今年報告された患者の数は9月3日までに約3700人と、最近19年間でこの時期としては最も多くなっていることがわかりました。専門の医師は「薬で治るので気になる症状があれば速やかに受診してほしい」と呼び掛けています。

 梅毒は、性的な接触などによって起きる細菌性の感染症で、早期に抗生物質などで治療すれば治ります。しかし、発疹などの症状を長年、放置していると血管の大動脈が破裂したり、神経がまひして体が思うように動かなくなる恐れがあるほか、妊娠中の母親が感染すると、死産や子供に重い障害が残る可能性もあります。

 国立感染症研究所によりますと、今年に入って9月3日までに全国の医療機関から報告された梅毒の患者数は3728人に上ることが、明らかになりました。

 現在の方法で統計を取り始めた1999年以降の19年間では、患者数が最も多かった昨年の同時期を約850人上回り、最も多くなっています。都道府県別にみると、東京都が1185人と最も多く、次いで大阪府が497人、愛知県が208人、神奈川県が207人、福岡県が170人、埼玉県が139人、兵庫県が128人、岡山県が103人などとなっています。

 梅毒の年間の患者数は、1945年から1954年には20万人が報告され、症状が進行して死亡するケースも少なくありませんでしたが、抗生物質のペニシリンの普及とともに減少傾向を示し、1997年には500人程度になりました。こうした状況は10年以上続いたものの、2011年ころから再び増加に転じ、2013年に1228人と1000人を超え、2015年には2690人、2016年は4559人と大幅に増えています。

 梅毒に詳しい、プライベートケアクリニック東京の尾上泰彦医師は、「ここ数年梅毒の患者が増えているが、今年はさらに多くの人が診察に訪れていて、その多くが梅毒とわかり、治療を行っている。患者の比率は男性がおよそ7割程度で女性は3割程度だが、最近は20歳代の若い女性に増えているのが特徴で、原因ははっきりしていないが不特定多数の人物との性行為が感染のリスクを高めていると考えられる。薬の治療で治るので気になる症状があれば、早めに受診してほしい」と話しています。

 感染を防ぐためには不特定多数の人と性的な接触をしないほか、感染していないか検査を受けることやコンドームを正しく使うなどして予防することが大切だとされています。

 2017年9月14日(木)

 

■資生堂、アイライナー2度目の自主回収 プラスチック破片の混入で販売中止に

 大手化粧品メーカーの資生堂は13日、目元に化粧をする際に使う「アイライナー」の一部の商品で、芯の部分にプラスチックの破片が混入した商品が見付かり、使用するとけがをする恐れがあるとして、約40万本を自主回収すると発表しました。

 資生堂が自主回収するのは、目元に化粧をする際に使うアイライナー「インテグレート キラーウインクジェルライナー」。

 会社によりますと、今年7月と8月、購入した人から連絡があり、一部の商品で目元に線を描く芯の部分にプラスチックの破片が混入したものがあることがわかりました。

 資生堂は2月にも、同じ商品で不良品が発覚。自主回収して商品交換を進めてきましたが、すでに交換した商品にも欠陥の恐れがあります。

 このため、交換ずみの商品を含め、2011年9月21日以降に販売したすべての商品約40万本を自主回収し、購入した顧客に代金を返却することを決めました。今後、この商品の製造と販売も中止するとしています。

 資生堂によると、生産委託先のドイツの工場で芯の部分を詰める際、加工する機械と本体のプラスチック部分が接触してプラスチックが削れ、芯の部分に混入しました。今のところ健康被害は報告されていませんが、使用すると目の周りにけがをする恐れがあるといいます。

 資生堂は、「多大なご心配とご迷惑をおかけし、深くおわび申し上げます」とコメントしています。

 回収はホームページでは13日から、電話では14日午前9時から受け付けます。電話番号は0120ー636ー087です。

 2017年9月14日(木)

 

■総菜店の炒め物を食べた東京都の3歳女児死亡 O157問題の系列店で購入

 群馬県と埼玉県にある総菜店で販売された総菜を食べた人から相次いでO157が検出された問題で、前橋市の同じ系列店で購入したタケノコやエビの炒め物などを食べた東京都の3歳の女児からO157が検出され、死亡していたことがわかりました。

 一連の問題で死者が出たのは初めてで、前橋市保健所は、今回の総菜は加熱されていたことなどから、不特定多数が利用する店内で販売中にO157が混入し、2次的に感染した可能性があるという見解を示しました。

 8月、群馬県と埼玉県にある総菜店「でりしゃす」の4つの店舗で加工販売されたポテトサラダやコールスローサラダなどを食べた23人が腹痛などを訴え、このうち20人から腸管出血性大腸菌O157が検出されました。

 このうち、前橋市の六供(ろっく)店では、これまでにポテトサラダ、コールスローサラダ、マリネなど数種のサラダ類を食べた9人からO157が検出されていましたが、前橋市によりますと、新たにこの店の総菜を食べた東京都内の3歳の女児からO157が検出され、死亡していたことがわかりました。

 前橋市によりますと、女児が食べたのはタケノコやエビの炒め物など加熱した総菜で、ポテトサラダなどのサラダ類は食べていないということです。

 また、ほかの患者と同様に、8月11日に販売されたものをその日に食べ、その後、体調の異常を訴えて、O157による溶血性尿毒症症候群を発症し、9月8日に東京都内の病院で死亡したということです。

 厚生労働省によりますと、女児から検出されたO157の遺伝子の型は、一連の問題でこれまでに感染した人たちから検出された「VT2」と呼ばれるベロ毒素を出すタイプの一種の型と一致したということです。

 前橋市保健所の渡邉直行所長は、「この店では、消費者が好きなものを好きな量、自分で取り分けるスタイルで、不特定多数が利用する。食の安全のためにより適切な対応が求められる」と述べました。

 前橋市保健所は、女児の親戚で同じ総菜を食べた前橋市の60歳代の女性も感染したことを明らかにし、一連の問題で感染した人は、亡くなった女児を含め22人となりました。

 食中毒に詳しい東京医科大学の中村明子兼任教授は、「O157は、感染した時の菌の量によって症状が出るまでの時間が異なることは十分にあり得る。今回、死亡した女の子は東京都に住んでいて、発生の時期が夏休みということで人の動きが多い時期であったことも、一連の食中毒との関連がわかるまで時間がかかった原因になったのではないか」と分析し、「店側は、客が使うトングを1回ごとに交換できるようにしておくことや、特に夏の時期はあらかじめパック詰めにするなどの対策も考えてほしい。また、消費者は食品に何らかの菌があることも常に考慮して購入したらすぐに冷蔵庫に入れるほか速やかに食べきることを勧めたい」と指摘しています。

 厚生労働省によりますと、全国の自治体から報告のあったO157の感染者は、9月3日までに合わせて1320人に上っています。8月は感染者が特に多く、8月20日までの1週間で193人、8月27日までの1週間で203人に上っています。

 9月に入って感染者は減少していますが、O157に感染した東京都内の3歳の女児が死亡したことを受けて、厚労省は13日、全国の自治体に通知を出し、感染への注意を広く呼び掛けるよう求めました。

 2017年9月14日(木)

 

■がん治療法、血液の遺伝子検査で探る 東京医科歯科大病院が臨床試験スタート

 東京医科歯科大学医学部附属病院は13日、血液20ミリリットルを使い、がんの遺伝子変異を調べる臨床試験を始めたと発表しました。患者の遺伝情報(ゲノム)から治療法を探る「ゲノム医療」の一つで、遺伝子変異を特定して患者に合った最適な治療法や薬を導き出す狙いがあります。

 血液からがんの遺伝子変異を特定する臨床試験は、国内で初めて。

 臨床試験は、8月28日に始まりました。対象は標準治療の手術療法、化学(薬物)療法、放射線療法が効かず、症状が進行したがん患者や難治性のがん患者らで、2年間で500人に実施予定。検査費用39万円は、患者が負担します。採取した血液をアメリカの検査会社に送ると、約2週間で結果がわかります。

 東京医科歯科大病院腫瘍(しゅよう)センターの池田貞勝特任講師によると、死んだがん細胞から血液中に出されたDNAを調べることで、肺がんや大腸がんなどにかかわる73の遺伝子変異を見付けられるといいます。

 がんの遺伝子検査では、がん組織の一部を採取する方法もありますが、血液検査は患者への体の負担が少なく、繰り返し実施できる利点があります。治療を続ける中で、新たな遺伝子変異が現れて治療効果が低下していないかも確認できます。

 アメリカで約1万人がこの検査を受けたところ、平均85%で遺伝子変異を検出できたといいます。ただ現在は、遺伝子変異を特定できても、治療薬の開発や承認がされていないなどの理由で、日本で治療を受けられる人は1割程度とみられるといいます。

 池田特任講師は、「アメリカでは遺伝子変異が見付かった患者さんが参加できる臨床試験が日本よりも多い。日本でも早くそうなってほしい」と話しています。

 2017年9月13日(水)

 

■臍帯血バンク5社、契約終了後も2100人分廃棄せず 厚労省の調査で判明

 東京都や大阪府などのクリニックで他人の臍帯血(さいたいけつ)を使った再生医療が無届けで行われていた事件で、臍帯血を保管する民間バンク5社に、バンクと預けた人との契約終了後も廃棄されずに流用可能な臍帯血が計約2100人分保管されていることが12日、厚生労働省が実施した調査結果を公表して明らかになりました。

 事件では、8年前に破産した茨城県の民間バンクに残った臍帯血が売買され、効果が未確立のがん治療や美容目的で移植されました。再発防止のため厚労省は近く、契約終了や経営破綻時には、臍帯血の返還か廃棄を原則とする通知を民間バンクに出す方針。

 加藤勝信厚生労働大臣は12日の閣議後会見で、「対応可能な措置を速やかにとり、再生医療の信頼回復に努めたい」と述べました。民間バンクの臍帯血の取り扱いに関する法規制などについては、「これからの議論の推移による」として、当面は見送る考えを示しました。

 民間バンクは、提供者や家族が将来治療に使うため、新生児のへその緒などに含まれる臍帯血を有償で預かる事業。善意の提供で白血病などの治療に役立てるため、厚生労働大臣の許可を得た公的バンクとは異なります。

 厚労省の調査では、存在が確認できた民間バンク7社のうち6社から、保管件数や契約内容、管理体制などについて回答を得ました。

 6社のうち1社は保管業務をしておらず、約160人分の臍帯血を第三者に引き渡したと回答。関係者によると、これらの臍帯血が無届け移植の事件に使われたと見なされます。

 残る5社で計約4万5800人分が保管され、このうち廃棄されず流用可能な臍帯血が計約2100人分ありました。契約者の意思が確認できなかったり、廃棄に伴い凍結保存用タンクを開くと他の臍帯血の品質に影響が出ることを懸念したりしたためとみられます。病気治療のために使われたのは18人分。

 厚労省は今後、民間バンクに業務内容の届け出を求め、臍帯血の保管状況などを厚労省のウェブサイトで公開する方針。再生医療の専門家らで構成する委員会を新設し、対策の有効性を検証するといいます。

 東京都港区にある民間の臍帯血バンク「ステムセル研究所」は1990年の設立後、臍帯血を預けたいという依頼が年々増えており、現在は4万1720人分を保管しています。

 臍帯血は子供を出産した病院で採取された後、48時間以内に臍帯血バンクに持ち込まれます。必要な幹細胞を分離する作業を行った上で凍結保存用タンクに入れ、液体窒素でマイナス190度まで冷やし、保管します。料金は、分離作業が14万円、検査費が3万円、初期登録費が2万円、それに保管料は年間で5000円となっています。

 このバンクでは、臍帯血の利用はあくまでも本人やその家族に限り、第三者への提供は行っていないということです。保管する臍帯血が実際に白血病や脳神経障害などの治療目的で本人や家族に移植されたケースは、これまでに12件あったということです。

 一方で、このバンクでは依頼者との契約が切れた1941人分の臍帯血を廃棄せずに保管していました。これについてバンクでは契約終了後に再度、依頼者から問い合わせがあった場合に備えて一定期間、保管するようにしていると説明しています。

 ステムセル研究所の清水崇文社長は、「臍帯血は子供が生まれた時にしか採取できない貴重なものなので、猶予期間を設けた上で廃棄することにしていたが、厚生労働省の求めに従って、廃棄を進めていきたい」と話しています。

 がんの治療に詳しい日本医科大学武蔵小杉病院の勝俣範之医師は、「臍帯血は白血病などに使うもので、それ以外のがん治療や美容では、医学的な効果が立証されていない。それを第三者に投与することは拒絶反応や感染症を引き起こすリスクもあり、危険な医療行為だ」と指摘しています。その上で、がん患者などに対して、「患者からすると何かよい治療があれば受けたいと思ってしまうが、効果が立証されていないものは怪しいと思って、慎重に考えてほしい」と話しています。

 2017年9月13日(水)

 

■2016年度、1カ月の医療費最高額は1億694万円 1000万円以上は過去最多の484件に

 大企業の会社員らが入る健康保険組合連合会(健保連)の集計によると、患者1人当たりの医療費が1カ月で1000万円以上だった例が、2016年度は484件となりました。2015年度に比べて件数は3割以上増え、過去最多になりました。

 医療費が1カ月で1億円を超えた治療も、2件ありました。医療の技術が高度になっていることが背景にあり、財政負担と両立できるかが課題です。

 健保連によると、フォンウィルブランド病と呼ばれる血液疾患の医療費が月1億694万1690円で、最も高額でした。2番目は血友病で、月1億237万9460円。いずれも症状の悪化を防ぐために、高額な治療薬を使います。月1億円を超える医療費が記録されたのは、2011年度以来。

 また、医療費が1カ月で2000万円以上だった件数が、2015年度に比べて22件増えて69件となり、゙過去最多を更新しました。上位100件が、1600万円以上でした。

 上位100件を疾患別に見ると、循環器系疾患が41件で最も多く、血液疾患の34件、先天性疾患の8件が続きます。1000万円以上の件数は2006年度で116件だったため、10年で約4倍に増えました。C型肝炎の治療薬や補助人工心臓など高額な治療法や医療機器の保険適用が相次いだことが、背景にあります。

 日本の医療保険制度では患者の負担が一定額を超えると、超えた分を保険で賄う「高額療養費制度」があります。患者負担が抑えられる一方で、保険や公費などを合わせた医療費は、この10年で約9兆円増えています。

 厚生労働省は医療費の膨張を受けて、医薬品や医療機器の費用対効果を価格に反映するための議論を始めています。効果の高い薬でも費用があまりにも高い場合、薬価を下げる検討に入ります。他方、製薬会社などの開発への意欲をそぐ懸念も指摘されており、慎重な議論が求められそうです。

 2017年9月12日(火)

 

■不妊治療の体外受精、過去最多の42万件を超える 産科婦人科学会のまとめ

 不妊治療のために精子と卵子を体外で人工的に受精させる体外受精の2015年の国内実施件数は42万件を超え、これまでで最も多くなったことが日本産科婦人科学会のまとめで明らかになりました。

 体外受精を行った女性の約4割は40歳以上が占めており、専門家は「若い年齢で子供を産める環境作りを急ぐ必要がある」と指摘しています。

 子宮内から取り出した卵子と精子を体外で人工的に受精させ、その受精卵を培養した後に子宮に戻す体外受精について、日本産科婦人科学会が全国の医療機関から報告された2015年の実施件数をまとめた結果、顕微鏡を使って精子を卵子に注入する顕微授精も含めると42万4151件と、2014年から3万件以上増え、これまでで最も多くなりました。

 この体外受精で生まれた子供の数は、2015年に生まれた子供全体の約20人に1人に当たる5万1000人余りで、2014年から約3700人増えて過去最多となりました。一方で、体外受精の実施件数のうち出産に至った割合は11・7%と低い水準にとどまっています。

 体外受精を行った女性を年齢別でみると、40歳が最も多く3万8000件余りで、40歳以上が全体の約4割を占めています。このうち50歳以上で行ったケースも、470件余りありました。イギリスやフランスなど多くの国では、40歳以上で体外受精を行う人は全体の2割程度にとどまっており、多くは30歳代までに実施しています。

 国内での体外受精は、34年前の1983年に初めて出産した例が報告され、その後、晩婚化などを背景に年々増加してきました。

 体外受精を行った女性のうち、出産に至った割合を年齢別にみると、20歳代では20%前後ですが年齢とともに減少して、34歳で18・9%と20%を下回り、40歳になると9・1%と10%を下回ります。

 また、体外受精で妊娠してもその後、流産した割合は年齢とともに上昇し、39歳で30%、41歳で約40%となっています。

 埼玉医科大学の石原理教授は、「日本は、理想的な年齢より高い年齢で不妊治療を始めているために、結果としてなかなか子供ができず繰り返し治療を受けなければいけない状況になっている。さまざまな啓発活動をしてより早い時期に治療を開始できるようにする必要がある」と話しています。

 2017年9月11日(月)

 

■乳がん患者の遺伝子特定で手術不要タイプを選別 がん研究センターが4年後実用化へ

 乳がん患者のうち、外科手術をせずに治療できるタイプの人を選別できる遺伝子のマーカーが判明したことが9日、明らかになりました。研究を進めてきたのは、国立がん研究センター東病院(千葉県柏市)の向井博文医師らのチームです。

 乳がん患者に対する臨床試験が、9月内にも開始されます。初期の乳がんは手術でがん細胞を摘出することが標準治療として奨励されており、タイプによって摘出手術が回避できる治療法が確立すれば、世界初の事例となります。

 乳がんは、がん細胞の特徴などから「ルミナルA型」「ルミナルB型」「HER2型」「基底細胞様型」の4つのタイプに分けられます。このうち向井医師らが着目したのは、がん細胞にみられるタンパク質「HER2」が陽性で、かつホルモンが陰性のタイプのがん。このタイプの乳がん患者は、患者全体の10~15%を占めます。

 向井医師らは、別の臨床試験で同タイプの患者に対し、HER2陽性に効くとされる分子標的薬と抗がん剤などの投与を実施。手術で細胞を調べたところ、半数の患者でがんが完全に消失していました。がんが消えた理由を科学的に立証する過程で、人間が持つ全遺伝子約2万3000から関連する遺伝子「HSD17B4」を特定。この遺伝子が活性化していない人はがんが消失したことも、突き止めました。

 臨床試験では、特定した遺伝子HSD17B4をマーカーとして用い、手術が不要になるタイプの患者を選別します。9月から東病院など全国の医療機関30~40カ所でステージ1~3の乳がん患者200人を登録し、遺伝子検査を実施。分子標的薬などを3~6カ月投与し、1カ月間の放射線治療を行います。その後、がんが消えた人について、遺伝子HSD17Bが活性化していたかどうかを調べ、マーカーによる選別の有効性を検証します。

 詳細は、9月28日から横浜市で開かれる日本癌学会学術総会で発表されます。

 日本では毎年、約7万人が新たに乳がんと診断されています。データ通りならば、10~15%の年間3000~5000人は手術不要になるとみられ、がん細胞の摘出手術をためらっていた女性患者には朗報になります。

 向井医師は4年後の実用化を目指しており、「手法を応用すればほかのタイプの乳がんや別の部位のがんにも拡大していくことが可能になる」と話しています。

 2017年9月10日(日)

 

■RSウイルス感染症、東京都で患者が過去最多に 最新の1週間の新規患者は820人

 乳幼児に重い肺炎などを引き起こす一因になる「RSウイルス感染症」の定点医療機関当たりの患者報告数が、東京都で過去最多の3・18人に到達したことが10日、東京都の集計で明らかになりました。

 この時期としては異例の流行が続いており、国立感染症研究所なども「乳幼児はもちろん、高齢者もマスクの着用や手洗いなどの対策を徹底してほしい」と呼び掛けています。

 東京都感染症情報センターによると、8月28日から9月3日までの最新の1週間の患者報告数は820人。都内に264ある小児科定点医療機関当たりの患者報告数は前週比27%増の3・18人に上り、調査を開始した2003年以降では最も多くなりました。例年9月ごろから増加する患者数が今年は7月10日から増えており、依然として増加傾向にあります。

 保健所別では、荒川区が9・50人で最も多く、八王子市8・73人、台東7・00人、墨田区5・80人、多摩小平4・73人、南多摩4・67人、池袋4・50人、新宿区4・43人、世田谷4・25人、目黒区4・00人、江東区3・63人、中野区3・50人、大田区3・33人と続いています。最少は葛飾区の0・88人。

 国立感染症研究所によると、8月21日から27日までの1週間の全国の患者報告数は昨年同時期の1632人の約4倍に当たる6601人で、この時期としてはこの10年間で最も多くなっています。

 都道府県の小児科定点医療機関当たりの報告数では、徳島県の4・61人や山形県の4・27人、新潟県の4・25人が特に多くなっています。

 例年は9月ごろ九州地方から流行が始まり、南・西日本から東日本に推移するのが、今年は7月上旬から全国同時に流行期に入ったといいます。

 RSウイルス感染症は、発熱やせきなど風邪に似た呼吸器症状を起こす病気で、通常は秋から冬にかけて乳幼児を中心に流行し、初めての感染では肺炎や気管支炎を引き起こし重症化することがあります。RSウイルスの付いた物を触ったり、せき、くしゃみなどの飛まつを吸い込んだりして移ります。治療薬などがなく、予防が中心。

 2017年9月10日(日)

 

■発達障害の相談、2016年度は7万4024件 全国91カ所の支援センターは人員不足に

 発達障害を抱える人やその家族への支援を行う専門機関「発達障害者支援センター」に寄せられた相談件数が2016年度、7万4000件を超え、過去最多となったことが厚生労働省のまとめで明らかになりました。

 障害への理解や支援の不足は、本人の不登校や仕事上のトラブル、親による虐待などにつながりかねないとされますが、相談件数の増加に伴って支援の担い手不足が目立ってきており、各自治体は対策を急いでいます。

 厚労省によると、乳児期から幼児期にかけての発達過程が何らかの原因によって阻害され、認知、言語、社会性、運動などの機能の獲得が障害された発達障害の人は、その疑いがある人も含めると全国に約700万人いると推定されます。小中学生の6・5%程度に発達障害の可能性があるとの調査結果もあります。

 厚労省のまとめでは、2016年度に全国に91カ所ある発達障害者支援センターに寄せられた相談は計7万4024件で、47カ所でスタートした2005年度から4倍以上に増えました。相談の多くは親から寄せられた子供に関するもので、発達障害への認知度の高まりが影響しているとみられます。

 それぞれの支援センターでは、障害の検査や生活に関する助言、就労支援、病院など関係機関の紹介、啓発活動などを行っていますが、急増する相談に伴い、臨床心理士などの専門家を十分確保できない地域も出ています。

 関東地方のある支援センターでは、来所による相談が数カ月待ちの状態が続いているほか、電話相談も多く、受話器を取れないことも珍しくないといいます。支援センター長は、「病院などと連携して対応できれば効果的だが、連携先が少なく、支援センターで抱え込まざるを得ない。人員も不十分で、迅速で丁寧な対応が難しくなっている」と話しています。

 四国のある支援センター幹部も、「相談件数は右肩上がりだが、職員の人数は増えず、負担が大きくなっている」といい、啓発活動や就労支援まで手が回らないのが実情だと明かしています。

 支援センターを中心とする対応が「ニーズ」に十分応えられなくなっている中で、自治体が新たな支援策に乗り出すケースも増えています。

 その一つが「ペアレント・プログラム」と呼ばれる取り組みで、専門知識がない市町村などの職員でも、専門家の研修を受けることで助言などを担当できるのが特徴。子供の障害などに悩む親らに、自分や子供の「できる」ことに着目し、これを褒めることで前向きに生活できるよう促します。

 厚労省も、都道府県や市区町村に補助金を出して後押ししており、毎年250~300の自治体が利用。昨年度から導入した千葉県柏市では、研修を受けた児童センター職員が助言役となる会合が毎月数回のペースで開かれており、3歳と1歳の娘の育児に悩んで今年4~7月に参加した母親(36歳)は「褒めると子供が自信を持って動いてくれることがわかり、心に余裕ができました」と語っています。

 このほか、発達障害の子供を育てた経験者が、同じ悩みを抱える子育て家庭に助言をする「ペアレントメンター」を育成する取り組みも広がっています。昨年度は全国で計41の都道府県や政令指定都市が導入し、事業が始まった2010年度と比べて約2倍になりました。

 発達障害者の支援に詳しい杉山登志郎・福井大客員教授(児童青年精神医学)は、「発達障害への支援の必要性は年々高まっているが、拠点となるべき支援センターの態勢は脆弱(ぜいじゃく)だ」と指摘。「国や自治体は、地域の実情に合わせて支援センターの態勢強化を進めるとともに、支援の裾野を広げる取り組みにも力を入れる必要がある」と話しています。

 2017年9月9日(土)

 

■がん患者の卵子凍結保存、5年間に1211件実施  東京大学が初の全国調査

 がん患者の若い女性が抗がん剤などの治療によって不妊になるのを防ぐため、卵子や受精卵を凍結して保存するケースがどのくらいあるのか東京大学の研究チームが調査したところ、2015年までの5年間に全国の少なくとも126の医療機関で、合わせて1200件以上行われていたことがわかりました。

 卵子や受精卵の凍結保存は、がん患者の若い女性が抗がん剤や放射線治療によって卵子がダメージを受けて不妊になるのを防ぐため、治療前に行うものですが、全国でどのくらい行われているのか実態はわかっていませんでした。

 東京大学の研究チームが、生殖補助医療を行う全国の約600の医療機関を対象にアンケート調査を行い、およそ8割の施設から回答を得ました。

 その結果、2015年までの5年間に少なくとも全国の126の医療機関で行われ、未婚の女性が行う卵子の凍結保存は580件、既婚の女性が行う受精卵の凍結保存は631件で、合わせて1211件行われていることが初めて明らかになりました。この中では、100人を超えるがん患者の卵子や受精卵を凍結保存している医療機関もありましたが、多くは2人から4人の卵子や受精卵を凍結保存しており、分散して保管している実態も明らかになりました。

 調査を行った東京大学の大須賀穣教授は、「小児がんの場合などには10年以上の長期間保管するケースも考えられ、責任ある保管態勢が必要だ」と話しています。

 2017年9月9日(土)

 

■東京都、飲食店など原則屋内禁煙を表明 2019年の罰則付き条例施行を目指す

 東京都の小池百合子知事は8日の記者会見で、罰則付きの受動喫煙防止条例を制定する方針を正式に表明しました。

 近年の五輪・パラリンピックにおける屋内禁煙の流れを踏まえ、2020年の開催都市として「スモークフリー」を打ち出します。自民党などの反対により法整備が遅れている国に先駆け、ラグビー・ワールドカップ(W杯)日本大会のある2019年の施行を目指します。

 10月6日まで東京都民らの意見を募集した上で、来年2~3月の都議会に受動喫煙防止条例案を提出。条例の制定に向け8日発表した「基本的な考え方」では、不特定多数の人が利用する施設を原則として屋内禁煙とします。対象外とするのは、個人の住宅や福祉施設の個室、演劇の舞台などに限定します。

 禁煙の範囲は3段階で明確に区分けし、違反した喫煙者や施設管理者には罰則として5万円以下の過料を科します。

 医療施設、小中学校、高校、児童福祉施設などは、未成年や患者など健康への配慮が特に必要な人が集まるため、敷地内から全面的に禁煙にします。

 官公庁や老人福祉施設、大学などは、屋内を禁煙にし、喫煙室の設置も認めません。

 ホテルや職場、娯楽施設、飲食店などは、屋内を禁煙にし、喫煙室の設置は認めます。それでも喫煙スペースは専用で独立させる必要があり、飲食などと一緒にたばこを楽しむことは禁じます。

 例外となるのは、面積30平方メートル以下の小規模なバーやスナックなどで対応が難しい場合。ただし、従業員全員の同意や未成年が立ち入らないことなどが条件となるため、都内の大半の飲食店が禁煙の対象になります。

 受動喫煙防止の条例は、兵庫県や神奈川県で先例があります。ただ、兵庫県の場合は例外措置となる基準の面積が100平方メートル以下などとなっており、東京都の素案は格段に厳しくなっています。国では30平方メートルとする厚生労働省案に自民党が反発し、100平方メートルで線引きする案などが浮上し、法整備は先送りとなっています。

 小池知事は国に先駆けることについては、2019年のラグビーW杯や2020年の五輪を念頭に、「屋内を全面禁煙とするのが五輪開催都市の基本的な流れだ。国の法制化を待っていると、世界の多くの方を受け入れるのに間に合わない」と説明しました。

 この受動喫煙防止条例とは別に、小池知事が事実上率いる「都民ファーストの会」と公明党は、子供を受動喫煙から守る罰則なしの条例案を9月20日開会予定の都議会に提案する予定。

 2017年9月9日(土)

 

■がん免疫治療薬「オプジーボ」、胃がんも適用 厚労省の部会が了承

 高い治療効果が期待できるがん免疫治療薬「オプジーボ」(一般名ニボルマブ)について、厚生労働省は新たに胃がんにも有効性が認められるとして、近く承認する方針を決めました。

 オプジーボは、体の免疫機能を高めてがん細胞を攻撃する新しいタイプのがん免疫治療薬で、2014年、皮膚がんの治療薬として承認され、現在は肺がんや腎細胞がん、悪性リンパ腫など合わせて5種類のがんに対象が拡大されています。

 8日に開かれた厚生労働省の薬事・食品衛生審議会の部会で、胃がんの患者に対しても有効性と安全性が認められるとして、承認すべきだとする意見がまとまりました。

 国立がん研究センターによりますと、年間の胃がんの患者数は約13万2000人と推計されていますが、新たな使用の対象となるのは、2種類のがん治療薬による治療を行ったのに効かず、再発や遠隔転移が起きて切除手術ができない状態に悪化した患者らに限られます。製造元の小野薬品工業(大阪市中央区)は、年間4000~5000人程度の利用を見込んでいます。

 オプジーボは高い治療効果が期待できる一方、価格が高く、国の健康保険財政を圧迫しているとして今年2月、価格が半額に引き下げられ、現在は体重50キロの患者1人当たり1日換算で約3万9000円、年間約1400万円かかると試算されています。

 厚生労働省は、適切に使用するためのガイドラインをまとめ、1カ月後をめどに胃がんの治療薬としても正式承認し保険適用することにしています。

 2017年9月9日(土)

 

■心筋梗塞、魚や大豆で予防 マグネシウムでリスク3割低下

 魚や豆類、海藻類などに多く含まれるマグネシウムを多く摂取すると、心筋梗塞(こうそく)のリスクが下がるとの調査結果を国立がん研究センターや国立循環器病研究センターなどの研究チームがまとめ、専門誌に発表しました。

 循環器疾患やがんを発症したことがない岩手や茨城、高知、沖縄など8県に住む45~74歳の男女約8万5000人の食事の内容や量を調べ、摂取したマグネシウムの量を推計。量に応じて5グループにわけて15年間追跡し、期間中に1283人が心筋梗塞を発症しました。

 カルシウムなど他のミネラルの量が与える影響が出ないよう分析すると、男性では最も多く摂取するグループは、最も少ないグループに比べ、心筋梗塞のリスクが34%低くなりました。

 同様に女性も、リスクが29%低くなりました。女性で関連が弱まったのは、心筋梗塞の発症者が少なく、他のミネラルも多く摂取していることが一因とみられるといいます。

 マグネシウムは骨の形成や筋肉の収縮などにかかわり、マグネシウムの不足は血圧上昇や動脈硬化などにつながるとされます。国は成人男性に320~370ミリグラム、成人女性に270~290ミリグラムの摂取を推奨していますが、2015年の調査では平均摂取量は約250ミリグラムでした。

 国立循環器病研究センター予防健診部の小久保喜弘医長は、「心筋梗塞の予防が期待できるので、マグネシウムの多い魚や豆腐、海藻、野菜、果物を積極的に取り入れた食生活を心掛けてほしい」と話しています。

 2017年9月8日(金)

 

■世界の水道水の8割、微細なプラスチック繊維を含有 アメリカの研究者ら警告

 マイクロプラスチックの海洋汚染への懸念が世界的に広がっている中、海だけではなく世界の水道水から人の体内に入ってくる微細なプラスチック繊維は、年間3000~4000個に上る恐れがあるとする研究結果が6日、発表されました。14カ国で収集した水道水サンプルに基づく結果だといいます。

 プラスチック繊維を体内に取り込むことによる健康リスクは不明ですが、過去には、害を及ぼす可能性のある化学物質や細菌がプラスチック繊維に吸収、放出される可能性があるとの研究結果も発表されています。

 アメリカのミネソタ大学やニューヨーク州立大学などが参加した研究チームは、「目に見えないもの:人体内のプラスチック」と題した報告書で、対象となった水道水サンプル159のうち、「83%にプラスチック繊維が含まれていることがわかった」と明らかにしています。

 飲料水に含まれる5ミリ以下のプラスチック繊維の大規模な調査は今回の研究が世界で初めてであると、研究チームは主張しています。

 研究チームによる水道水サンプルの収集期間は今年の1~3月で、採取した場所はウガンダのカンパラ、インドのニューデリー、インドネシアのジャカルタ、レバノンのベイルート、エクアドルのキトの各首都およびアメリカとヨーロッパ7カ国の複数の都市。

 すべての水道水サンプルは、アメリカのミネソタ州ミネアポリスにあるミネソタ大学で分析されました。

 分析の結果、見付かったプラスチック繊維の大半は、長さが0・1~5ミリのプラスチック繊維でした。水道水1リットルに含まれる繊維は0~57個で、平均すると1リットル当たり4・34個でした。

 「水道水の単位体積当たりのプラスチック繊維密度が最も高かったのはアメリカで、最も低かったのは、総合的にヨーロッパ7カ国だった」と、研究チームは報告書に記しています。

 国別でみると、アメリカが94%と最も高く、収集した水道水サンプルは、ワシントンの連邦議会ビル、環境保護庁本部ビル、ニューヨークのトランプタワーなど。次いで汚染率が高かったのは、アメリカと同率94%のレバノンのベイルート、82%のインドのニューデリー。

 ヨーロッパ7カ国ではイギリス、ドイツ、フランスなどが水道水サンプル調査の対象となり、平均72%でした。アジアでは日本は対象外なものの、インドのニューデリーのほか、インドネシアのジャカルタで76%でした。

 男性の場合、1日の飲料水摂取量として推奨されている3リットルを基準とし、飲み物をすべて水道水か水道水で作ったものとすると、毎日14個のプラスチック繊維を摂取する可能性があると、報告書は説明しています。女性では、2・2リットルの基準摂取で1日当たり約10個のプラスチック繊維を体内に取り込むことになります。

 「この日々のプラスチック繊維摂取量は、1年間では、男性で4000個以上、女性では3000個以上となる」と、研究チームは報告書に記しています。

 さらに、「これらのプラスチック繊維は、海塩、ビール、シーフード、その他の食品によって摂取される可能性のあるプラスチックに追加される」ことも、指摘しています。

 1月に発表された研究では、ヨーロッパで甲殻類を食べている人の場合、それだけで年間最大1万1000個のマイクロプラスチックを体内に摂取している恐れがあるとされました。

 研究チームは、潜在的な汚染源および汚染経路、そして人の健康リスクなどに関するデータをさらに収集するために、調査を重ねるといいます。

 プラスチック繊維が水道水に含有される経路についてはまだ解明されていませんが、洋服やカーペット類などから大気中に粉塵として舞ったプラスチック繊維や破片が降雨などで落下し、水道水に含まれた可能性が高いと想定されます。また、再生可能エネルギーと見なされているゴミ発電でプラスチック類も合わせて焼却することで、大気中に排出され、それが降下している可能性もあります。

 家庭も発生源で、ヘアドライヤーで髪を乾かす際に、付着したプラスチック粒子を大気中に拡散させていたり、洗濯機では一回当たりの洗濯で70万本ものプラスチック繊維を環境中に放出しているとの調査結果もあります。生活のあらゆる場で、プラスチックを使うと同時に、プラスチックを環境中に放出、拡散していることにもなります。

 世界中で生産されるプラスチックは、年間3億トンに上ります。このうち20%がリサイクルされるか焼却されますが、それ以外の多くは大気中、土壌、海洋などに投棄されています。1950年代から製造されたプラスチックの量は83億トンに達しており、その多くが環境中に拡散され、砕かれ、微細化され、水や空気を介して、自然界を循環していることになります。

 人間の存在が引き起こしている国際的な地球環境問題は、温暖化問題だけではありません。自然界を静かに侵害し続け、やがては自らの健康をもむしばむ可能性のあるプラスチック汚染は、より深刻かもしれません。

 2017年9月8日(金)

 

■おたふく風邪による難聴、2年間に336人 耳鼻咽喉学会がワクチン定期化を要望

 子供を中心に流行するおたふく風邪(流行性耳下腺炎)にかかり、一時的なものも含め、難聴となった人が2年間で少なくとも336人に上ることが5日、日本耳鼻咽喉科学会の調べで明らかになりました。

 これまでも難聴になる危険性は指摘されてきましたが、全国調査で規模が明らかになるのは初めて。

 耳鼻咽喉科学会は「静観すべきではない」として、現在は任意接種で接種率が低いワクチンの定期接種化を厚生労働省に要望する意向を示しました。

 学会は今年2月から、全国の耳鼻科約5600施設を対象に、2015年から2年間のおたふく風邪の難聴への影響について調べました。回答を寄せた3536施設で難聴と診断された336人のうち、314人ぶんについて、最終的な聴力や治療内容など詳細な回答を得ました。

 その結果、314人の約8割に当たる261人が日常生活にかなり支障を来す高度難聴以上でした。両耳とも難聴となった14人中11人が日常生活に支障が出たため、補聴器を使ったり、人工内耳を埋め込む手術を受けたりしていました。

 年代別では、10歳未満が151人、10歳代が69人で、未成年者が65%を占めました。一方で、子育て世代の30歳代も47人と比較的多くなっていました。

 おたふく風邪は、ムンプスウイルスがせきやくしゃみ、接触で移り、2~3週間の潜伏期間後に耳の下の唾液腺の一種である耳下腺がはれ、痛みや熱を伴うことも多い感染症。合併症には難聴のほか、無菌性髄膜炎、膵(すい)炎、精巣炎などがあります。

 予防のためのワクチンは、1989年から風疹、はしか(麻疹)と合わせた三種混合(MMR)ワクチンとして、原則無料の定期接種になりました。しかし、副反応の無菌性髄膜炎が問題になり、1993年に定期接種が中止になりました。現在はおたふく風邪ワクチン単独の任意接種で、接種率は30~40%ほどとされています。

 乳幼児委員長として調査を担当した守本倫子(のりこ)・国立成育医療研究センター耳鼻咽喉科医長は、「先進国で定期接種でないのは日本だけだ。おたふく風邪による難聴になると治療は難しく、日常生活に非常に支障を来してしまう。予防できる難聴であることを知ってほしい」と話しています。

 2017年9月7日(木)

 

■iPS創薬、世界初の治験を7日に開始 京大病院が骨の難病で

 患者のiPS細胞(人工多能性幹細胞)を使って京都大学の研究チームが見付けた骨の難病の治療薬候補について、京都大学医学部附属病院が7日から臨床試験(治験)を始めることが6日、明らかになりました。

 京大によると、iPS細胞を使って発見した創薬の治験は世界初。京大病院は現場の医師が主体となって進める「医師主導治験」で取り組み、実際の患者に治療薬候補の投与を始めて、安全性や効果を確かめます。7日から対象患者の登録が可能になります。

 この難病は、タンパク質の一種「アクチビンA」が異常に働くことで、筋肉や腱(けん)、靱帯(じんたい)などの組織の中に骨ができる進行性骨化性線維異形成症(FOP)で、200万人に1人の割合で発症し、国内の患者は約80人とされます。今まで、根本的な治療薬がありませんでした。

 投与するのは既存薬の「ラパマイシン」で、臓器移植後の拒絶反応を抑える免疫抑制剤として使われています。京大の研究チームが、進行性骨化性線維異形成症の患者の細胞から作ったiPS細胞をさまざまな細胞に変えて病態を再現。そこに治療薬候補を投与する実験などをして、約7000種の物質の中からラパマイシンに絞り込みました。マウスに投与する実験では、病気の進行を遅らせる効果がありました。

 iPS細胞の応用では、体の組織を作って移植する再生医療と創薬が二本柱として期待されています。再生医療では理化学研究所などがiPS細胞から目の細胞を作り、目の疾病の患者に移植する研究をすでに進めています。心臓病や脊髄損傷でも、人での再生医療を目指す研究が進んでいます。

 もう一方の創薬応用では、今回が初めて人に投与する治験となります。iPS細胞が開発されてから約10年がたち、創薬でも人に投与する段階に達しました。患者の細胞をもとに作ったiPS細胞からは、病気を引き起こす細胞を実際に作り出すことが可能で、患者の体内を再現できることで、新薬を試す実験が進みます。

 2017年9月7日(木)

 

■黄砂飛来の翌日、急性心筋梗塞のリスク1・46倍に 熊本大などが調査

 春を中心にアジア大陸の砂が季節風で日本に運ばれてくる黄砂が観測された翌日に、急性心筋梗塞(こうそく)を発症するリスクが高まることが、熊本大学と国立環境研究所などの研究で明らかになりました。研究チームが4日、ヨーロッパの循環器専門誌で発表しました。

 急性心筋梗塞は、心臓の筋肉に酸素を送る冠動脈が詰まり、突然胸などに激しい痛みが起きます。研究チームは、2010年4月から2015年3月末までに熊本県内で発症した急性心筋梗塞の患者3713人のデータと、その間に熊本地方気象台で黄砂を観測した計41日間との関連を調べました。

 その結果、黄砂が観測された日の翌日に急性心筋梗塞を発症した人数は、黄砂がなかった日の翌日に発症した人の数と比べて1・46倍でした。また、急性心筋梗塞を発症しやすい要因と併せてみると、慢性腎臓病が持病の人が黄砂観測の翌日に発症するリスクは2・07倍、糖尿病が持病の人で1・79倍、75歳以上の人で1・71倍でした。

 黄砂が急性心筋梗塞の原因となっているかは不明ですが、発症の引き金になっている可能性があるといいます。

 熊本大の小島淳(すなお)特任准教授は、「黄砂やそれに付着した汚染物質を吸い込むことで、体内で酸化ストレスや炎症を起こすと推定される。もともと心筋梗塞を起こすリスクの高い人は黄砂が発症を引き起こす切っ掛けになっている可能性がある」と話し、今後、黄砂に付着した大気汚染物質による影響などを詳しく調べるといいます。

 2017年9月6日(水)

 

■アルツハイマー病、腕から採取した血液で診断 京都府立医大が開発

 認知症の7割を占めるとされるアルツハイマー病を腕から採取した血液を使って診断できる方法を開発したと、京都府立医科大(京都市上京区)の徳田隆彦教授(神経内科学)らの研究チームが発表しました。

 実用化されれば、患者の早期発見につながるといいます。4日付でイギリスの科学誌電子版に掲載されました。

 アルツハイマー病は、脳内の神経細胞に「リン酸化タウ」などのタンパク質が蓄積して、神経細胞を壊していくことで発症するとされます。診断には、脳脊髄液を背中に針を刺して採取する方法などがありますが、患者に大きな負担がかかります。

 今回、研究チームはアメリカで開発された高感度の装置を使い、タンパク質をとらえる免疫物質や試薬の組み合わせを検討することで、微量の血液からタンパク質を検出する方法を開発。この方法で60~80歳代の患者20人と症状が出ていない15人の血液を比較したところ、患者側の血液からタンパク質が平均で4倍程度多く検出する傾向がみられました。

 研究チームでは今後、ほかの大学と共同で大規模な検証を実施する予定。徳田教授は「新手法は体への負担が少なく簡便で、正確、迅速に判別できる。健康診断で患者を早期に見付けたり、数値の変化に基づいて将来の発症を予測したりできる可能性がある」としています。

 東京大学の岩坪威教授(神経病理学)は、「アルツハイマー病は薬や生活習慣の改善で進行を遅らせることが期待できるため、簡単な手法で検査できれば意義は大きい。検証を重ね、診断の精度を上げることが期待される」と話しています。

 2017年9月6日(水)

 

■石綿被害広がり、中皮腫死者が世界で年3万8400人 産業医大など国際チームが推計

 かつて建築資材などに用いた石綿(アスベスト)が主な原因となるがん「中皮腫」で死亡する人は世界で年約3万8400人に上るとの新たな推計を、産業医科大学(福岡県北九州市)などの国際研究チームが4日、シンガポールで開催中の世界労働安全衛生会議で発表しました。

 日本では、2012~2014年の平均で年1357人が死亡。中国などデータが乏しい国や地域もあるため、現状では世界の死者数は明確になっていません。今回はデータ不足の国や地域の実態も加えており、中皮腫の主な原因である石綿被害の広がりを改めて印象付ける形となりました。

 国際研究チーム代表でオーストラリアのシドニー大学石綿疾患研究所の高橋謙所長(環境疫学)は、「最新のデータを使って精度の高い推計ができた。これほど多くの被害をもたらす石綿は、世界中のどこでも使用を禁止すべきだ」と訴えています。

 今回は、信頼できるデータのある日本など59カ国での中皮腫死者の性別や年齢を基に、データの乏しい国や地域の石綿の使用状況も踏まえて、2012~2014年における世界の年平均死者数を推計しました。

 中皮腫は、石綿を吸い込んでから数十年を経て発症します。日本では1970年代から1990年代にかけて年間30万トン前後の石綿が輸入され、建築資材、電気製品、自動車、船舶、家庭用品などで3000とも5000を超えるともされる種類の製品に、石綿が使用されていました。2012年に石綿の製造販売が禁止されましたが、死者数は増加傾向にあります。

 石綿の製造加工に従事した労働者が吸引する労災被害のほか、阪神淡路大震災や東日本大震災などで、石綿含有の建材で建てられた住居などが崩壊し、大気中に飛散した石綿粉塵(ふんじん)を一般の人が吸い込んで発症するケースもあります。吸い込んだ時期と、中皮腫の発症時期が大きくずれるケースが多いことから、被害の把握は遅れます。

 世界保健機関(WHO)は、世界中で1億2500万人が職場で石綿にさらされており、中皮腫を始めとして肺がん、喉頭がん、卵巣がん、塵肺の一種「石綿肺」など関連疾患のため、年間約20万人が亡くなっているという大まかな見積もりを公表しています。

 2017年9月5日(火)

 

■胎児期にダウン症改善、化合物「アルジャーノン」発見 マウス実験で学習能力向上、京大

 ダウン症の胎児を妊娠したマウスに投与すると、生まれた子の脳の構造が変化して学習能力が向上する化合物を発見したと、京都大学の萩原正敏教授(化学生物学)らの研究チームが、5日付のアメリカの「科学アカデミー紀要」(電子版)に発表しました。化合物の作用で神経細胞の増殖が促され、ダウン症の症状が改善されるといいます。

 将来、出生前診断をした人の胎児を対象とした薬剤の開発につながる可能性があります。ただ、人の胎児で臨床研究を行うことの是非など、早期の実現には倫理面で課題があります。

 ダウン症は、人間だと23対ある染色体のうち21番目の染色体が1本多い3本になることで起き、知的な発達の遅れや、心臓疾患などの合併症を伴うこともあります。日本では現在、出生約1000人に1人の確率で発生するとされ、母親が高齢、特に35歳以上の場合は、若い母親よりも過剰な染色体が生じる原因となるため、ダウン症の新生児を産む確率が高くなります。妊娠中、胎児がダウン症かどうかは調べられるものの、現状では根本的な改善方法はありません。

 研究チームは、神経の元になる細胞(神経前駆細胞)が増えないことがダウン症の原因の一つと考え、717種類の化合物をふるい分けし、神経幹細胞が前駆細胞を増殖するのを促進する化合物を発見。「アルジャーノン」と名付けました。

 ダウン症の胎児を妊娠したマウスに1日1回、アルジャーノンを経口投与すると、胎児の前駆細胞が増えるなど、投与しなかったダウン症の胎児とは脳の構造が異なりました。迷路を使った実験で学習能力を比較した結果、アルジャーノンを経口投与して生まれたマウスのほうが好成績で、正常なマウスとも変わりませんでした。

 研究チームは、ダウン症患者から作製したiPS細胞(人工多能性幹細胞)にアルジャーノンを加える実験でも、神経細胞が増えることを確認。

 このアルジャーノンを投与しても染色体の異常自体は変化しませんが、ダウン症の出生前治療につながる可能性があります。萩原教授はそれを期待しつつ、「臨床で妊婦に使うには安全性や、社会的な合意を得る上でハードルが高い。まずは脳梗塞(こうそく)などの治療薬として開発を目指したい」と話し、脳神経が関係するアルツハイマー病や鬱(うつ)病、パーキンソン病などにも役立てたいとしています。

 妊婦の血液でダウン症など胎児の染色体異常を調べる新型の出生前診断では、染色体異常が確定した人の9割以上が人工妊娠中絶しています。一方、知的な発達の遅れが出る可能性があっても出産を望む人もいます。

 胎児の出生前治療が可能になれば、妊娠の継続、人工妊娠中絶のほかに選択肢が増えることになりますが、国立成育医療研究センター遺伝診療科の小崎里華医長は「マウスや細胞での研究段階で、母体への影響や薬の投与の量、時期、長期的な効果など課題は多い」と話しています。

 2017年9月5日(火)

 

■RSウイルス感染症、異例の流行続く 最新の1週間の新規患者が6601人に

 乳幼児に重い肺炎などを引き起こす一因になるRSウイルス感染症の患者の報告数が最新の1週間で6601人と、この時期としては異例の流行が続いており、専門家は対策の徹底を呼び掛けています。

 RSウイルス感染症は、発熱やせきなど風邪に似た呼吸器症状を起こす病気で、通常は秋から冬にかけて乳幼児を中心に流行し、初めての感染では肺炎や気管支炎を引き起こし重症化することがあります。

 国立感染症研究所によりますと、全国約3000の小児科定点医療機関で8月21日から27日までの1週間に新たにRSウイルス感染症と診断された患者は6601人と、例年ピークを迎える冬の時期とすでに同じ水準に達するなど、異例の流行が続いています。

 都道府県別では、最も多いのが東京都で597人、次いで大阪府で534人、神奈川県で425人などとなっています。また、例年であれば秋に九州地方から本州に北上するように広がりますが、今年はすでに新潟県で242人、宮城県で175人、福島県で153人などと東日本でも感染が広がっています。

 RSウイルスに感染する患者数は、例年11月から12月にピークになり、5月前後に最も少なくなる変動を毎年繰り返しています。今年も冬の流行が収まっていく3月から4月にかけては、例年と同じように患者数は1000人を下回る水準となりました。

 しかし、4月中旬ころから患者数は増加に転じ、例年であれば最も患者数が少なくなる5月から6月にかけて、多い週では800人の患者が報告されるなど、この時期としては異例の流行となりました。さらに、7月に入って患者数が1000人を上回るとさらに急激に増加し、8月上旬の1週間はおよそ5000人の患者が報告され、8月27日までの1週間の最新の数字では患者数が6601人に達しました。

 このため、今年の患者の累計はすでに約5万2000人に達しており、この時期としてはこの10年間で最も多くなっています。   

 RSウイルスの付いた物を触ったり、せき、くしゃみなどの飛まつを吸い込んだりして移ります。RSウイルス感染症は治療薬などがなく、予防が中心。

 RSウイルス感染症に詳しい群馬パース大学の木村博一教授は、「今年は例年よりも2カ月程度早く流行しているが、その理由はよくわかっていない。今後、さらに冬に向けて感染が拡大するのか、それとも例年よりも早く終息に向かうのかは予想ができないが、乳幼児はもちろん、高齢者もマスクの着用や手洗いなどの対策を徹底してほしい」と話しています。

 2017年9月5日(火)

 

■病院の入院患者8人、ベッドでのエコノミークラス症候群で死亡 医療事故調査で判明 

 医療死亡事故を再発防止に生かす医療事故調査制度で、今年3月までに原因調査を終えた330件のうち、入院中にベッドで寝ていたことによるエコノミークラス症候群(急性肺血栓塞栓〔そくせん〕症)が原因のものが8件あったことが、第三者機関「日本医療安全調査機構」のまとめで明らかになりました。

 日本医療安全調査機構は、患者自身も予防に努めることが重要として、ベッド上で足首を動かすよう呼び掛ける「患者参加型」の提言をまとめました。

 エコノミークラス症候群は、足などの静脈にできた血の塊(血栓)が肺の血管に詰まり、呼吸困難や動悸(どうき)を起こす病気で、死亡する確率が高いとされています。狭い機内や車内で同じ姿勢を長時間続けると発症することで知られます。

 日本医療安全調査機構の分析部会(部会長=佐藤徹・杏林大学教授)が8件の死亡事故の院内報告書を分析したところ、骨折(整形外科)や脳腫瘍摘出(脳神経外科)、統合失調症(精神科)、肺炎・胸膜炎(循環器内科)など領域が広く、入院中に誰にでも起こり得るとして予防法を探りました。

 医療現場では、足に圧力を加える医療用ストッキングの着用などの予防法がとられています。しかし、今回の調査対象の中には、骨折による痛みで着用できない例がありました。また、初期の症状が「息苦しい」「胸が痛い」など他の病気と区別しにくく、重症化してからや死亡後の解剖で判明することが多いことがわかりました。

 このため分析部会は、医療従事者は発症の可能性を認識するとともに、患者自身もリスクを知り、早い段階で気付くことがポイントだと判断。予防の効果を高めるため、患者自ら足首を動かすことを勧める提言をまとめました。

 日本医療安全調査機構の木村壮介・常務理事は、「これまで突然起きる病気とみられていたが早期の特徴がある。患者は我慢しないで看護師らに伝えてほしい」と呼び掛けています。

 医療事故調査制度は2015年10月に始まり、すべての予期せぬ死亡事故について日本医療安全調査機構への報告と、院内調査を義務付けています。

◆エコノミークラス症候群の特徴と予防法

・入院したベッドで、足の血の流れが悪くなり、血の塊ができやすくなる。その塊が肺の血管に詰まって、突然、呼吸困難などを起こす。

・予防には、足首を前後に動かして、ふくらはぎの血流をよくする。足の筋肉が動き、血の巡りがよくなる。

・息苦しさ、胸痛、動悸、足の痛みなど、いつもと違う症状があった時は、医師や看護師に伝える。

 2017年9月4日(月)

 

■島津製作所、新型の乳房専用検査装置を発売 乳がん検診での負担を大幅に軽減

 精密機器大手の島津製作所(京都市中京区)は、乳がん検査に伴う負担が少なく、精度の高い乳房専用PET装置(乳房専用陽電子断層撮影装置)を4日に発売しました。

 島津製作所は女性をマンモグラフィー(乳房エックス線撮影検査)の痛みから解放する取り組みを続けており、4日に発売した新型の乳房専用PET装置は、女性の乳がん検査の負担を大幅に軽減したのが特徴です。被検者はベッド型の装置の上にうつぶせになり、検出器ホールに片側ずつ乳房を入れて撮影します。マンモグラフィー装置のように乳房を挟まず、圧迫による痛みがありません。

 新型の製品の名称は、「エルマンモ アヴァン クラス」。2014年9月に発売した乳房専用PET装置「エルマンモ」の後継機となります。乳房を入れる検出ホールの周りには小型の検出素子を配置し、近距離から乳がんを検出。全身用PET装置に比べて、約2倍の解像度で撮影できることも強みです。両胸の検査は、15分程度で終わります。

 検出部分を上面に近付けるなど改良を加え、前機種より乳房の根元部分まで正確に検査できるようになったといいます。検査時に顔を乗せる部分のくぼみを深くするなどの工夫もあり、楽な姿勢で検査を受けられるといいます。日本人女性には高濃度乳房が多いといわれ、検査方法によっては乳がんの発見が難しくなることも認知され始めていますが、前機種の「エルマンモ」が高濃度乳房の検査にも有効という報告もあるといいます。

 価格は3億5000万円(税別)からと、システム構成により異なり、発売から3年間で国内の医療機関に50台を販売する目標です。

 島津製作所の医用機器事業部で同製品を担当する高橋宗尊グループ長は、「女性への負担が少ない検査装置で乳がんの検診率を高めて、がんの早期発見に貢献したい」と話しています。

 新型の製品への女性の期待も大きく、東京都港区在住の40歳代の会社員は、「マンモグラフィーの痛みが嫌で、ここ数年は超音波検査ばかりだった。痛みや体の負担の少ない機器があれば検査を受けてみたい」。

 国立がん研究センターによると、女性のがんの罹患(りかん)数の部位別では乳がんが1位、死亡数は5位でした。罹患者は30歳代から増加を始め、40歳代後半から50歳代前半でピークを迎えます。がんは早期に発見して適切な治療を施せば、死亡率を下げられます。

 2017年9月4日(月)

 

■心臓ペースメーカー46万5000台、アメリカでリコール セキュリティの脆弱性から患者保護のため

 アメリカの食品医薬品局(FDA)は8月29日、医療機器メーカーのアボット(旧セント・ジュード・メディカル)の植え込み型心臓ペースメーカーについて、患者に危害を加えられる恐れもある脆弱(ぜいじゃく)性が見付かったとして、リコールを発表しました。

 機器のファームウェアを更新して、一連の深刻な脆弱性から保護する必要があるとし、心臓ペースメーカーが胸に植え込まれている患者や医師に対し、次回診察の際にファームウェアの更新について相談するよう呼び掛けています。

 影響を受けるのは、アボットのRF(無線)対応植え込み型心臓ペースメーカー、および心臓再同期治療ペースメーカー(CRT-P)で、アメリカ国内で46万5000台が対象になります。日本などアメリカ国外で使われている機器の台数は、不明です。一方、植え込み型除細動器(ICD)や両室ペーシング機能付き植え込み型除細動器(CRT-D)は、影響を受けないとしています。

 脆弱性を悪用された場合、他人が市販の機器を使って患者の心臓ペースメーカーに不正アクセスし、バッテリーを急激に消耗させたり、プログラムされた設定を変更したり、機器の心拍数および心拍リズムを不適切に変更したりすれば、患者に危害が及びかねません。

 アボットは、ファームウェアのアップデートでこの脆弱性を修正し、食品医薬品局の承認を8月23日に受けて29日からアメリカで提供を開始しました。8月28日以降に製造された心臓ペースメーカーには、すでに脆弱性を修正したセキュリティパッチが適用されているといいます。

 アップデートは自宅では適用できず、患者が医療機関を受診し、約3分間にわたりバックアップモードにしている間に、ダウンロードとインストールを行う必要があります。ただし、アップデートの適用は、確率は非常に低いもののリスクを伴うことから、食品医薬品局は患者に対し、掛かり付けの医師を受診して、アップデートを適用すべきかどうか相談するよう助言しています。

 セント・ジュード・メディカルの心臓ペースメーカーは、過去にも脆弱性が発覚したことがあります。この時は、自動的に適用されるソフトウェアパッチの配信で対処していました。

 食品医薬品局はペースメーカーなどの医療機器について、「インターネットや病院のネットワーク、ほかの医療機器、スマートフォンなどを経由して相互接続される医療機器が増える中、サイバーセキュリティ脆弱性を悪用されるリスクも増大する」と警鐘を鳴らしています。

 2017年9月3日(日)

 

■交通事故による脳障害に小規模委託病床を展開 国交省、専門病院がない空白地域に

 交通事故による脳損傷で最重度の障害を負った患者のため、国土交通省所管の独立行政法人・自動車事故対策機構は来年度から、全国8カ所で運営する専門病院のない地域に5床程度の小規模な委託病床を展開することを決めました。

 また、グループホームなどの福祉施設が交通事故の後遺症を抱える人を受け入れやすくするため、介護の専門機器の購入費などを補助する制度を新設します。

 自動車事故対策機構は現在、自動車損害賠償責任(自賠責)保険制度の資金を活用して、50~80床の「療護センター」を宮城、千葉、岐阜、岡山の4県で運営。一般病院に委託して療護センターに準じた治療を行う12~20床の「委託病床」も、北海道、神奈川、大阪、福岡の4道府県にあります。この8カ所の専門病院の計290床では、意識不明の重体になった最重度の「遷延性意識障害者」が入院して治療とリハビリを最長3年間受けられ、同じ看護師が1人の患者を退院まで継続して受け持つため、頻繁に声を掛けて刺激を与えるなど手厚いリハビリができます。

 救命医療の進歩で交通事故死者は減っていて、2016年で3904人と1949年以来67年ぶりに4000人を下回りましたが、遷延性意識障害者を含めた重度後遺障害者は毎年、新たに2000人程度生まれており、横ばい傾向にあります。

 専門病院は日本海側など空白地域もあることが問題になっていたため、自動車事故対策機構は5床程度の小規模委託病床を空白地域で順次運営する方向で、2018年度中にまず1カ所を選定する方針。国土交通省は2018年度概算要求に、2017年度比約6億円増の計約74億円の関連予算を計上しました。これとは別に、大学病院などの高度医療機関へ委託して、専門治療の機会を増やす新しいタイプの委託病床も展開する計画で、2017年度中に5床の1カ所が開設される予定。

 また、概算要求には専門病院での医療の充実にとどまらず、グループホームなどの福祉施設への助成制度として1億4900万円を計上。重度後遺障害者を介護する家族間で「介護者亡き後」が大きな課題となっているため、国土交通省は全国10カ所のグループホームなどを対象に、たん吸引装置の購入やヘルパー研修の費用などを補助します。

 「全国遷延性意識障害者・家族の会」(約300家族)の桑山雄次代表は、「介護している会員は高齢化が進んでおり介護者亡き後の問題は切実だ。国交省が患者の治療だけでなく、社会生活支援の強化に乗り出したことは意義がある」と話しています。

 2017年9月3日(日)

 

■OTC欠損症、新生児検査で発見可能に 島根大病院が世界で初めて開発

 島根県出雲市の島根大学医学部付属病院は1日、生後間もない新生児に先天性の病気がないかを調べる血液検査「新生児マススクリーニング」で、従来は事前に見付けることが難しいとされていた先天性疾患の「オルニチントランスカルバミラーゼ(OTC)欠損症」の検査方法を見付け、新たに検査対象にしたと発表しました。

 新生児マススクリーニングでOTC欠損症の検査は、世界初といいます。

 島根大病院によると、OTC欠損症はアミノ酸を分解する酵素の一つがうまく働かず、肝臓で有害なアンモニアの解毒が阻害される生まれ付きの代謝異常。アンモニア濃度が高くなると、新生児はミルクの嘔吐(おうと)やけいれん、意識障害を引き起こす可能性があり、発達の遅れや突然死の原因にもなるといいます。国内では8万人に1人の確率で、発症するといいます。

 新生児マススクリーニングは、1977年から始まりました。2014年からは新たな検査法で、20以上の先天性の病気が一度にわかるようになりました。検査は生後5日前後の新生児の少量の血液を、ろ紙に染み込ませて、検査機器で調べます。

 しかし、現在、全国の病院で広く採用されている「タンデムマス・スクリーニング」という検査では、OTC欠損症の新生児に多くみられるアミノ酸の一種を測定できませんでしたが、島根大病院は検査を改良し血液中のアミノ酸の分析方法を変えることで測定が可能になりました。症状が出る前に治療をすることにつながる一方、新生児の体への新たな負担はないといいます。

 島根県の委託を受けて今年度からは、同県内で生まれた新生児が島根大病院で無料検査を受けられます。OTC欠損症の検査は、島根大病院で生まれた新生児を対象に8月21日から始め、すでに数人を検査しました。

 検査方法を見付けた島根大医学部の研究グループの一人、小児科の小林弘典助教(42歳)は記者会見で、「OTC欠損症は、薬や肝臓移植で元気に成長できる。早い段階で見付け、適切な治療をしたい」と語っています。

 希望する県内の病院にも順次広げる方針で、ほかの9病院の新生児も検査する準備をしています。

 2017年9月3日(日)

 

■相次ぐO157感染、11都県で同じ遺伝子型の菌を検出 共通汚染源が広域に流通か

 埼玉、群馬両県の系列総菜店で購入したポテトサラダなどを食べた人が腸管出血性大腸菌O157に相次いで感染し発症した問題で、両県や関西を含めて計11都県の患者から、同じ遺伝子型のO157が検出されていたことを2日、厚生労働省が明らかにしました。

 共通の汚染源の食物などが広域に流通し、患者からの二次感染でさらに拡大している可能性があるとみて、厚労省は都道府県などに情報収集を呼び掛けています。

 東京、千葉、神奈川、栃木、新潟、三重、長野、滋賀、香川の各都県でも、この夏、同じ遺伝子型のO157が確認されたといいます。

 この遺伝子型のO157は、「VT2」と呼ばれるベロ毒素を出すタイプの一種。このタイプが検出された患者は、8月14〜20日までの1週間で144人に上り、直近5年間で最も流行したピーク時の週当たりの報告数を上回りました。このタイプのうち、遺伝子型まで一致したO157が11都県で検出されました。

 厚労省は広域的な調査が必要と判断し、このタイプのO157の患者が判明した際には、発症1週間以内に食べた食事の内容や、旅行・プールの利用・動物との接触の有無、家族の健康状態などを詳細に聞き取り調査し、国立感染症研究所に報告するよう都道府県などに1日、通知しました。夏休みが終わり学校給食が再開されるため、調理業者への感染予防の指導を徹底することも求めています。

 O157に感染しても、下痢や腹痛などの症状が出ない場合もあります。厚労省は、「自覚症状がなくても、手洗いの徹底などで予防をしてほしい」と注意しています。

 腸管出血性大腸菌O157は元々、牛、羊、豚などの家畜の腸にいる大腸菌の一種。食肉処理などの際に、肉の表面に付着することがあります。毒性が強く、重症化して溶血性尿毒症症候群(HUS)や脳症を起こすと死に至ることもあります。食中毒の発生は、菌が増殖しやすい初夏から初秋にかけてが多く、菌が人の手足などを介して二次感染する恐れがあります。対策としては、加熱(75度で1分以上)と、食材についた菌を洗い流すことなどが挙げられます。

 2017年9月2日(土)

 

■慶大先端研など、大腸がんの代謝が変化する仕組みを解明 原因の遺伝子特定

 慶應義塾大学先端生命科学研究所(山形県鶴岡市)は8月29日、曽我朋義教授を中心とする研究チームが大腸がんのメカニズムを解明したと発表しました。

 100年来の謎とされてきた、がん細胞特有のエネルギー代謝の仕組みをメタボローム(代謝物質)解析技術で調べ、原因となるがん遺伝子「MYC」を特定しました。MYCの抑制による治療への応用が期待されます。

 がん細胞は正常細胞と異なる代謝を使って生存に必要なエネルギーを産生していることが知られており、この現象は1920年代にドイツの生理学者オットー・ワールブルグが発見し、1931年にノーベル生理学・医学賞を受賞しました。近年、この代謝以外にも、がんに特異的な代謝がいくつか見付かり、がん細胞はこれらの代謝を使って増殖に必要な生体分子をつくり出していることがわかっています。

 現在では、がんが示す代謝を阻害してがん細胞を死滅させようとする抗がん剤の開発が世界中で行われていますが、がん細胞がどのような仕組みで代謝を変化させるかについては、よくわかっていませんでした。

 今回、研究チームは、曽我教授が開発を主導したメタボローム解析装置「キャピラリー電気泳動質量分析計」で、香川大学医学部を通じて採取した大腸がん患者275人のがん細胞と正常細胞に存在する代謝物質を網羅的に調べました。

 その結果、正常細胞に比べ、がん細胞内で約8倍に増えるMYCが、215の代謝反応を介して大腸がんの代謝を変化させていることを突き止めました。MYCの発現を抑えることで、ほかのがん遺伝子も抑制できることが臨床検体を通じてわかり、曽我教授は「MYCがほかの代謝反応をコントロールしている」と説明し、MYCの制御が今後の大腸がんの治療法の開発に有用としています。

 また、大腸がん細胞の代謝は良性腫瘍の段階でも変化し、がんの進行に連動しないこともわかりました。

 曽我教授は、「がんが進めば、代謝も変化していくというのが一般的な見方。大腸がんになる以前から変化することがわかった。また、がんの謎であったがんが代謝を変化させるメカニズムを、臨床検体を用いて初めて解き明かすことができた。この成果によって大腸がんの予防法や治療法の開発が進展すればうれしい」と強調しています。

 研究成果は8月29日付で、アメリカの学術誌「米国科学アカデミー紀要」(電子版)に掲載されました。

 2017年9月2日(土)

 

■介護の費用額9・7兆円、利用者数は614万人に ともに過去最多を更新

 厚生労働省は8月31日、2016年度の「介護給付費等実態調査」の結果を公表しました。年度単位では最新のデータとなります。

 それによると、利用者の自己負担を含め介護サービスと介護予防サービスを合計した全体の費用額は、9兆6924億円。これまでで最も多くなりましたが、前年度からの伸び率は1・9%と小幅にとどまっています。

 これをサービスごとにみると、特養の1兆6922億円、通所介護の1兆5504億円、訪問介護の8454億円などが目立っています。相対的に伸び幅が大きいのは通所介護で、前年度から4・1%増え、初めて1兆5000億円を超えています。

 介護サービスと介護予防サービスを利用した人数は、613万8100人。前年度から8万7100人増、率にして1・4%増で、こちらも過去最多を更新しました。高齢化の進行を背景に過去最多の更新を続け、本格的に調査を開始した2003年度の利用者数の1・6倍を超えました。

 介護サービスの利用者は、前年度から13万5600人増、率にして2・8%増の497万5500人。一方、介護予防サービスの利用者は、前年度から5万9400人減、率にして3・8%減の150万100人で、2006年度の開始以来初めて減少に転じました。

 全体の費用額の伸びが小幅にとどまり、介護予防サービスの利用者が減少したのは、要介護度の軽い要支援1、2の人向けのサービスが2015年度以降、段階的に介護保険から切り離され、市町村運営の事業に移行したことが要因とみられます。

 介護サービスの利用者のうち、居宅サービスは前年度から0・8%増の373万5200人、居宅介護支援は前年度から2・8%増の344万5700人、施設サービスは前年度から1・5%増の125万700人、地域密着型サービスは前年度から約2倍増の111万9300人でした。

 居宅サービスのうち、利用者数が最も多かったのは福祉用具貸与の前年度から4・8%増の223万2200人。訪問介護も前年度から1・1%増の144万500人となった一方、通所介護(デイサービス)は前年度から20・2%減の153万300人となりました。

 厚生労働省の担当者は、「小規模な通所介護事業所の地域密着型サービスへの移行策として、2016年度に地域密着型通所介護が創設されたことにより、通所介護の受給者数が減少した」としています。

 施設サービスの利用者は、介護福祉施設サービス(特別養護老人ホーム)が前年度から2・6%増の65万6600人、介護保健施設サービス(介護老人保健施設)が前年度から0・8%増の55万2200人となったのに対し、介護療養施設サービス(介護療養型医療施設)は前年度から5・7%減の9万1600人でした。

 地域密着型サービスの利用者は、地域密着型通所介護が58万5500人、短期利用を除いた認知症対応型共同生活介護が前年度から2・6%増の24万700人、小規模多機能型居宅介護が前年度から6・0%増の12万7500人などとなりました。

 介護サービスと介護予防サービスを合計した利用者1人当たりの費用額(今年3月分)は、前年度より3300円高い16万400円で、介護サービスで19万1200円、介護予防サービスで3万5100円。

 利用者1人当たりの介護サービスの費用額を都道府県別にみると、最も多かったのが沖縄県の20万9400円で、石川県の20万4200円、鳥取県の20万3900円と続きました。介護予防サービスでは、佐賀県の3万9800円が最も多くなりました。

 2017年9月2日(土)

 

■ノバルティスの新型がん免疫薬、アメリカで世界初の承認 小児の難治性白血病が対象

 スイス製薬大手のノバルティスは8月30日、自社で開発していた新型のがん免疫薬が世界で初めてアメリカで承認されたと発表しました。

 臨床試験をもとに算出された、がんを縮小させる奏効率が高く、がん治療の新たな手段として世界的に注目を集めている薬で、7月にアメリカの食品医薬品局(FDA)の諮問委員会で審査を通過し、承認の期待が高まっていました。

 承認された新薬の名前は「キムリア」で、キメラ抗原受容体T細胞(CAR―T、カーティー)と呼ばれる新しいカテゴリーの薬剤。特殊な血液ろ過処理で採取した患者の免疫細胞の一種であるT細胞を遺伝子操作することで、がん細胞を見付けやすく加工してキムリアとし、患者の体内に戻します。キムリアががん細胞に結合すると攻撃を加えて死滅させ、がんを治します。

 今回承認されたキムリアは、25歳以下の小児や若者の急性リンパ性白血病の患者が対象となります。アメリカなどで行われた臨床試験では、ほかの治療法が無効あるいは骨髄移植ができない患者群に対し83%の確率で効果を示しました。試験結果を受け、食品医薬品局はキムリアを優先審査の対象とし、スピード審査を実施していました。ノバルティスは日本でも臨床試験を行っていますが、承認申請には至っていません。

 薬価は、治療1回当たり47万5000ドル(約5200万円)と設定されました。患者から取り出したT細胞のリンパ球に遺伝子操作を行うほか、細胞の培養が必要なため、50万ドルに上ると一部で試算されていましたが、ほぼ予想の通りになりました。ただし、ノバルティスは、キムリアを投与して1カ月経っても治療への反応が出なかった患者には、治療費を請求しないとしています。

 アメリカではまず、医療施設20数カ所でキムリアを希望する患者への治療が可能になるとみられ、年内には35カ所が稼働する見通しです。

 キムリアと同様のキメラ抗原受容体T細胞と呼ばれる新しいカテゴリーの薬剤の開発には、多数の企業が参入しています。8月28日にアメリカのギリアド・サイエンシズがおよそ119億ドル(1兆3000億円)で買収すると発表したアメリカのカイト・ファーマも、食品医薬品局に承認申請を行っています。第一三共はカイト・ファーマと提携し、2019年までに日本で承認を得る計画で開発を進めています。また、血液がん以外のがんに応用するための研究も、国内外で進んでいます。

 東京大学医科学研究所・小澤敬也教授は、「期待されていたCAR―Tがアメリカで承認されたことは非常に喜ばしい。ただ、約5000万円の薬価はがんの治療費として非常に高額だ。今後の医療経済に与える影響が深刻になるのではないか。このような新しい治療法の医療費の在り方について、真剣な議論が必要になるだろう」と話しています。

 2017年9月1日(金)

 

■iPS細胞でパーキンソン病の症状を改善 京大がサルで確認

 人のiPS細胞(人工多能性幹細胞)から作製したドーパミン神経細胞を、パーキンソン病のカニクイザルの脳に移植し、1年以上の長期にわたって有効性と安全性を確認したと、京都大学iPS細胞研究所の高橋淳教授らの研究チームが31日、イギリスの科学誌ネイチャー(電子版)で発表しました。

 今回の成果などをもとに、2018年度中にもパーキンソン病患者を対象にした再生医療の臨床試験(治験)を申請する方針を示しました。

 パーキンソン病は、脳の神経伝達物質ドーパミンを作る神経細胞の変性が主な病因で、手足の震えから進行し、体の運動機能が失われていきます。国内には約16万人の患者がいるとされ、既存薬や電極を脳に埋め込む治療法などでは症状の改善はできても、根治はできていません。

 高橋教授らは、これまでにも人のiPS細胞由来のドーパミン神経細胞を、パーキンソン病の症状を再現したカニクイザルの脳に移植する実験を行ってきましたが、今回は移植する細胞の作製法や量などを治験での計画と同一にして、詳細に評価しました。

 実験では、パーキンソン病患者などのiPS細胞から作製したドーパミン神経細胞を、8匹のカニクイザルの脳に移植。移植が原因とは考えられない病気を発症した1匹を除いて移植後約1年にわたり、徐々に手足の震えが減り、表情が豊かになったり、行動が活発になったりすることが確認できました。また、カニクイザルの脳の組織を磁気共鳴画像装置(MRI)などを使って調べ、移植した細胞の一定量が生着してドーパミンを作り出していることや、1年半から2年は脳内に腫瘍を作らないことも確かめました。

 高橋教授は理化学研究所などとの別の研究で、パーキンソン病患者以外の健康な人のiPS細胞から作製したドーパミン神経細胞について、拒絶反応が起きにくいiPS細胞の型から作ったドーパミン神経細胞を、カニクイザルの脳に移植すると生着率が高く、炎症がほとんど起きないことも確かめました。

 2018年度中に申請する予定の治験では、拒絶反応が起きにくい人のiPS細胞を備蓄した「iPS細胞ストック」を使った移植を行う予定で、その有用性も確認できたとしています。

 高橋教授は、「基礎研究を実際の医療に応用するためには、そのプロセスが重要となる。治験の前に、人と同じ霊長類で有効性と安全性をしっかりと確認することができたと考える」と話しています。

 2017年9月1日(金)

 

■ポテトサラダ食中毒、前橋市の総菜店を営業停止処分に 計9人からO157を検出

 埼玉、群馬両県の総菜店で販売されたポテトサラダを食べた客から腸管出血性大腸菌O157が相次いで検出された問題で、前橋市は30日、4人の感染者を出していた「でりしゃす六供(ろっく)店」(同市六供町)から新たに5人の感染者を確認し、30日付で3日間の営業停止処分とすると発表しました。

 前橋市はでりしゃす六供店のずさんな衛生管理体制も指摘し、それが原因でO157に感染した可能性もあるとみて調査を進めています。

 感染者9人は前橋市、高崎市、玉村町に住む1歳から84歳の男女。すでに判明していた4人は11日に販売されたポテトサラダを食べ、新たに確認した5人はコールスローサラダ、マリネなど数種のサラダ類を食べていました。でりしゃす六供店では11日、238人にサラダ類を販売しており、今後さらに感染者が増加する可能性もあります。

 発生当初は高崎市の食品加工工場で製造されたポテトサラダが感染源とみられていたものの、26日にサンプルが陰性と確認されたため、前橋市は埼玉県熊谷市で発生した食中毒事件とは関連が薄いと判断。9人については、でりしゃす六供店に感染源があるとみて、23日に立ち入り調査を行い聞き取りも実施していました。

 その結果、量り売りのトングを複数の総菜で使い回していたことが判明。感染源の特定には至っていないものの、不衛生な道具が原因の可能性もあるとみています。調理場には使用期限が2012年の塩素系消毒剤が置かれており、日常的に調理器具の消毒を行っていなかった恐れもあるとしています。さらに、同一のまな板や包丁を多くの食品に使用、アルバイトを多く雇っているチェーン店でありながらマニュアルもありませんでした。

 前橋市はずさんな衛生管理により店内の調理場、売り場のいずれかがO157に汚染されたとみて、調査を進めています。

 でりしゃす六供店を経営するフレッシュコーポレーション(群馬県太田市)は系列の全17店舗で24日から営業を自粛していますが、前橋市内にあるほかの系列店でO157に感染したという届け出はありません。

 前橋市は「安全への注意が十分ではなかった」として、調理器具の洗浄消毒や用途分けなどを指導し、改善を求めています。

 2017年9月1日(金)

 

■脊髄性筋委縮症の治療薬「スピンラザ」発売を開始 高額で画期的な初の核酸医薬

 製薬会社バイオジェン・ジャパン(東京都中央区)は30日、全身の筋力が低下する難病の脊髄性筋委縮症(SMA)の初の治療薬「スピンラザ」(一般名・ヌシネルセンナトリウム)の発売を開始しました。

 脊髄性筋委縮症は、主に小児期に現れる病気で、先天性の遺伝子変異のため、筋肉を動かすのに必要なタンパク質が正常に作られないために生じます。生後半年以内に発症する最も重いタイプは、寝たきりで体を動かすのが困難で、人工呼吸器などが生涯必要となります。発症した患者の約6割が最も重いタイプで、出生2万人に1人前後の割合とされます。

 新治療薬のスピンラザは、DNAやRNAといった遺伝情報をつかさどる物質を利用する「核酸医薬」で遺伝子に作用する画期的なタイプで、脊髄性筋委縮症と診断された最重症の乳児が対象。

 投与は4カ月ごとで、費用は1回約932万円。ただし、使い始めは9週までに4回投与します。バイオジェン・ジャパンの予測では、新規患者のピークは2024年度の294人。薬は高額ですが、指定難病の医療費助成を受ければ、患者の自己負担は最大で月3万円ですみます。

 日本人を含む国際共同治験では、約4割の患者が寝返りを打てるようになったり、自力で座れるようになったりするなどの改善がみられました。スピンラザが異常のある遺伝子とは別の似たRNAに結合して、このRNAが筋肉を動かすタンパク質になるためと見なされています。12歳までの小児を対象とした別の治験でも、症状の改善が報告されており、厚生労働省は9月に、最重症の乳児以外にも対象を広げ、治療で保険が使えるようにする方針。

 スピンラザは、アメリカやヨーロッパ連合(EU)、カナダでは先行して承認されています。アメリカでは2016年9月に申請し、わずか3カ月の速さで承認が下りたことが話題となりました。日本でも2016年12月に承認申請が行われ、今年の7月に通常よりも大幅に速い7カ月で承認されました。アメリカではスピンラザ1瓶1400万円の値段が付いており、最初の1年は8400万円、2年目以降は年4200万円の薬剤費となっています。

 核酸医薬は、第一三共や大日本住友製薬、日東電工など、多くの国内企業が開発に参入しています。スピンラザの発売で、開発に弾みが付きそうです。

 2017年8月31日(木)

 

■ポテトサラダ食中毒、感染者15人に 新たに4歳男児からO157検出

 埼玉、群馬両県の総菜販売「でりしゃす」の系列店でポテトサラダを購入した人から、腸管出血性大腸菌O157が検出された問題で、4歳の男児の感染が新たに確認され、感染者は15人となりました。

 新たに感染が確認されたのは、これまでに8人の感染が確認されていた埼玉県熊谷市の「でりしゃす籠原店」を7~8日に利用し、ポテトサラダを購入して食べた埼玉県外に住む4歳の男児。当初、男児は下痢などの食中毒症状を訴えていたものの、入院はしていないといいます。

 これで感染者は埼玉県の店舗で10人、群馬県の店舗で5人の計15人になり、埼玉、群馬両県は感染源の特定を急いでいます。   

 一方、埼玉県によると、腎臓の機能が低下する溶血性尿毒症症候群(HUS)を発症して一時意識不明の重体となっていた埼玉県内の5歳の女児は、通常の会話ができるまでに回復したといいます。

 また、でりしゃす籠原店などがポテトサラダに加えたハムやリンゴなどの製造元に立ち入り調査した結果、衛生状況に問題はなかったといいます。

 2017年8月30日(水)

 

■無痛分娩の女性死亡事故、1歳長男も死亡 神戸市の産婦人科医院

 神戸市の産婦人科医院で2015年9月、麻酔でお産の痛みを和らげる無痛分娩(ぶんべん)をした女性と生まれた長男が重い障害を負い、女性が今年5月に死亡した事故で、長男も今月15日に死亡しました。1歳11カ月でした。

 遺族によると、女性は神戸市西区の「おかざきマタニティクリニック」で、男性院長により無痛分娩のため、背中から脊髄近くに細い管を入れて麻酔薬を注入する「硬膜外麻酔」を受けた直後に、体調が急変。意識不明のまま約1年8カ月後の今年5月に、35歳で亡くなりました。

 搬送先の大学病院で帝王切開で生まれた長男も、重い脳性まひとなり、意識不明の状態で別の病院に入院していました。長男の症状は重く、肺炎にかかるなどしていたといいます。

 遺族への院長の説明や診療の記録では、女性に麻酔薬を少し入れた後に院長は離席、戻ってきて麻酔薬を追加後も再び外来診療のために部屋を離れたといいます。女性は追加麻酔後に、呼吸困難となりました。

 遺族側の代理人弁護士は、医師が麻酔の管を本来と違う部分に誤って入れたことで麻酔が効きすぎて、呼吸などができなくなる「全脊椎(せきつい)麻酔」になった上、母子の状態の確認も不十分だったと主張。おかざきマタニティクリニック側は昨年12月、院長の過失を認め、遺族に示談金を支払ったといいます。

 女性の夫は今夏、厚生労働相や関連する学会にあてて、安全対策を設けることや、体制が整っていない施設での無痛分娩の実施制限の検討などを求める文書を出しています。

 おかざきマタニティクリニックの院長は8日、「改善を積み重ね、外部の専門医に、十分な再発防止策は講じられていると判断された」などとするコメントを出しています。

 2017年8月30日(水)

 

■厚労省、肝がんの治療費助成制度を創設 肝炎ウイルス性の患者、月1万円負担に

 厚生労働省は肝炎ウイルスが原因で発症した肝がん患者を支援するため、2018年度から医療費の助成制度を新設します。

 B型やC型の肝炎患者には国から治療費の一部がすでに助成されていますが、より状態が厳しい肝がん患者への助成制度はありませんでした。このため、高額な医療費の自己負担で生活に困難を来しているなどとして、患者団体が国に助成制度の創設を求めていました。

 厚労省は28日、肝炎対策推進議員連盟の総会で、2018年度予算の概算要求に約13億円を計上したことを報告しました。

 新制度では、年収が370万円未満など一定の要件を満たした肝がん患者を支援。4カ月目以降の入院医療費が対象で、自己負担を1万円に軽減します。現在は年収が370万円未満で、高額療養費制度が適用されると4万4400円の自己負担となっています。

 厚労省によると、2015年度の肝がん患者のうち、B型肝炎によるものが2万2000人、C型肝炎によるものが8万人に上るといいます。このうち所得要件などを満たすと想定される患者は、B型肝炎とC型肝炎を合わせて約1万人と試算しています。

 B型、C型肝炎ウイルスに感染すると、慢性肝炎、肝硬変をへて最終的に肝がんとなる恐れがあります。国内の肝炎ウイルス感染者の多くは、輸血や血液製剤の投与、集団予防接種での注射器使い回しなどが原因とみられています。感染者は300万人に上ると推定され、持続的な感染が肝がんの主要な原因とされている。肝がんは5年以内の再発率が70~80%と高く、治療費はがんの中でも高額で、年間3万人が亡くなっています。

 全国B型肝炎訴訟原告団の田中義信代表は、「大きな救済の道になるが、対象外になった肝硬変患者にも今後広げてほしい」と話しました。

 2017年8月29日(火)

 

■再生医療施設のホームページ上での公表停止 厚労省、臍帯血事件を受け

 新生児のへその緒などに含まれる臍帯血(さいたいけつ)の無届け投与を巡る再生医療安全性確保法違反事件を受け、厚生労働省は29日までに、ホームページ上での再生医療を提供する医療機関の公表を一時停止しました。

 提供機関の一覧には、医療機関名や住所、実施責任者などを掲載。今回の事件で逮捕された医師が院長を務める「表参道首藤クリニック」(東京都渋谷区)や、厚労省が臍帯血移植を一時停止するよう緊急命令を出したクリニックも含まれていました。再生医療安全性確保法に基づき、臍帯血移植とは別の再生医療の計画を届け出ていたため、掲載していたといいます。

 しかし一覧には、再生医療の内容が記載されておらず、厚労省は「臍帯血移植も国から認められているという誤解を与える恐れがある」と判断。現状では適切な医療機関を見分けるのが困難だとして、提供機関一覧のページの削除に踏み切りました。

 厚労省は、再生医療を医療機関が実施する場合は審査を義務付け、適切と認められれば施設側の同意を得て公表していました。今後は、外部の有識者の意見も踏まえて掲載基準を早急に見直し、公表を再開する方針だといいます。

 加藤勝信厚生労働大臣は、「誤解を与えないよう、公表の在り方を早急に検討していきたい」と話しています。

 2017年8月29日(火)

 

■慢性痛の患者の7割近くは我慢、3割は通院歴なし  製薬大手ファイザーが全国調査

 日本人の5人に1人は慢性的な痛みを抱えるとされますが、がんや精神疾患と比べて実態調査が進んでいません。このほど製薬大手のファイザー(東京都渋谷区)が全国の8924人を対象に実施した調査では、長く続く痛みを抱える人の7割近くが「痛みがあっても我慢すべきだ」と答え、3割が通院歴を持たないことが明らかになりました。「我慢は美徳」という価値観は根深いようです。

  6月2日から19日かけてインターネット上で、週2回以上の頻度で痛みが起こったり、3カ月以上痛みが続いたりするなど慢性的な痛みを抱える人にアンケート調査を行い、20歳代以上の8924人から回答を得ました。

 「痛みがあっても我慢すべきだ」と答えた人は67%、「慢性的な痛みの完治をあきらめている」との回答も69%でした。

 長期の痛みで通院した経験を聞くと、33%が「通院した経験がない」と答えました。通院しない理由では、「通院するほどでないと思う」が37%と最多で、次いで「通院しても治らない気がする」が34%でした。

 スクリーニングテストを実施したところ、27・4%に神経障害性疼痛(とうつう)の疑いがあることが判明。また、神経障害性疼痛の疑いがある人に通院した経験を聞くと、27%が「通院した経験がない」と答えました。

 痛みを感じた時の対処法を聞くと、最多は「病院・医院で処方された薬」(52%)で、「自己対処している(柔軟体操、マッサージ、冷やす・温めるなど)」(32・6%)、「整体、鍼灸(しんきゅう)、接骨院、マッサージなど(病院・医院以外)で治療を受けている」(27・3%)が続きました。

 医療機関を受診する切っ掛けは、「日常生活に大きな支障が出た時」(62・2%)、「あまりにも症状がつらいと感じた時」(56・3%)、「具体的な疾患の可能性があるとわかった時」(27・7%)と続きました。

 長く続く痛みを我慢しているかどうかを都道府県別にみてみると、我慢していると回答した割合が最も高かったのは栃木県(81・6%)で、最も低かったのは神奈川県(68・3%)でした。長く続く痛みを我慢するべきかどうかを都道府県別にみてみると、我慢するべきと回答した割合が最も多かったのは栃木県(74・7%)で、最も少なかった秋田県(60・2%)と14・5ポイントの開きがありました。

 慶応義塾大学医学部で整形外科学を専門とする中村雅也教授は、「特に運動器の痛みは甘くみられがちだが、慢性化すると対処できなくなる。まずは医療機関で診断して根本治療をしてほしい」と話しています。

 一方で、厚生労働省の疫学調査からは、医療機関側の問題も浮き彫りになっています。2010年度からの調査では、痛みの程度に大差はないにもかかわらず、最初に医療機関に行った人の満足度が整体・マッサージなど民間療法より低くなりました。痛みが持続した人では、医療機関の受診後に民間療法へ流れた人が3割いました。

 背景には、炎症や外因的な痛みでなく、糖尿病などの疾患による神経性の痛みや心理的な原因による痛みを十分に見分けられていない実態があるようです。これらの痛みは診療前の簡易アンケートなどで患者群の絞り込みが可能ですが、中村教授は「十分な検査をしきれていない医療機関も多い。治療する側の認識の甘さは否めない」と指摘しています。

 日本整形外科学会などでは、画像診断や血液による高精度の診断法の確立や診療前アンケートの再考が進んでいます。

 アメリカでは慢性的な痛みの治療の遅れにより、年60億ドル(約6500億円)の損失が生まれるとの調査もあります。経済・社会的な影響も大きく、医療機関、患者の双方が痛みに対する認識を改める必要がありそうです。

 慢性疼痛は、炎症や刺激による痛み(=侵害受容性疼痛、外傷やリウマチなど)、神経の痛み(=神経障害性疼痛、帯状疱疹後疼痛、糖尿病性神経障害に伴う痛みやしびれなど)、心理的な要因の痛み(=心因性疼痛)の大きく3つに分かれ、しばしば混在します。

 2017年8月29日(火)

 

■群馬大病院の執刀医らの医療行為停止を要望へ 手術死の遺族らに謝罪なし

 群馬大学医学部付属病院で手術後に患者が相次いで死亡した問題で、執刀医の須納瀬(すのせ)豊医師と、上司で旧第二外科診療科長の竹吉泉元教授による遺族への説明会が26日終了し、遺族会と弁護団が群馬県庁で記者会見しました。遺族会は「反省の色がない」とし、早ければ今週にも、2人に対し医療行為停止などの行政処分を求める要望書を厚生労働省に提出すると発表しました。

 説明会は7月30日に始まり、出席した8組の遺族に対する全体的な説明の後、計3日間で各遺族に対する個別説明が行われました。

 須納瀬医師(退職、懲戒解雇相当)や竹吉元教授(諭旨解雇)との直接の面会は、遺族と弁護団が求め続け、約2年越しで実現。そのこと自体は「高く評価する」としましたが、個々の診療行為や上司としての監督の在り方について明確な謝罪はなく、全体的な内容には「失望した」と遺族会代表が発言しています。

 遺族らによると、2人ともカルテの記載が不十分だったことだけは認めたものの、患者への説明や、手術後の管理などには落ち度を認めず、当時の病院の体制ではできる限りの努力をしたという説明でした。

 弁護団の独自調査や日本外科学会による検証では、「手術が性急」「手術自体の意図が不明」などとした須納瀬医師の技術上の問題が指摘されていましたが、このことについては「元教授らはむしろ技術が高いという認識だった」と弁護団の梶浦明裕事務局長が発言しています。

 指摘されてきた問題点を認める姿勢がみられなかったことで、遺族会と弁護団は、「再発防止の観点から、行政処分を受けて再教育する必要がある」と判断しました。

 また、問題を認めて謝罪し、補償の意向を示している大学側とは今後、前向きに交渉を進めることを表明。刑事告訴についても、引き続き検討する意向を示しました。

 遺族会代表の30歳代男性は、「しっかりした謝罪があれば処分を求めたくはなかったが、執刀医や元教授の態度や発言から、そうせざるを得ないというのが遺族会の結論だ」と話しました。

 群馬大病院を巡っては、旧第二外科で肝臓の腹腔鏡(ふくくうきょう)手術を受けた患者8人が、術後約3カ月以内に死亡していたことが2014年に発覚しました。その後、肝臓や膵臓(すいぞう)の開腹手術でも、患者の死亡が相次いだことがわかり、外部有識者による事故調査委員会は昨年7月、カルテの記載や手術前のリスク評価などの不足を指摘し、診療体制が極めて脆弱(ぜいじゃく)だったなどとする報告書をまとめました。

 2017年8月28日(月)

 

■成育医療研究センター、ES細胞で国内初の治験申請へ 肝臓病の乳児に移植

 国立成育医療研究センター(東京都世田谷区)の研究チームが今年度、ES細胞(胚性幹細胞)から作製した肝細胞を、肝臓の病気の乳児に移植する医師主導の臨床試験(治験)を国に申請する方針であることが27日、明らかになりました。

 認められれば、再生医療で期待されてきたES細胞を使った国内初の臨床応用となり、2020年ころに再生医療用の肝細胞を製品化することを目指しています。

 ES細胞は、不妊治療で使われなかった受精卵の一部の細胞を取り出し、培養して作製します。無限に増える特徴を持ち、目的の細胞に変化させて患部に移植し、失った機能を回復させる再生医療に利用できます。

 治験は、生まれ付き肝臓で特定の酵素が働かないため、アンモニアが分解されず血中にたまる「高アンモニア血症」の乳児が対象。患者は国内で年間10人程度とみられ、意識障害や呼吸障害が起き、体重が6キロ程度になる生後3カ月以降なら肝臓移植で治療できる一方、その前に亡くなるケースがあります。

 成育医療研究センターの梅澤明弘研究所副所長や笠原群生(むれお)臓器移植センター長らは、作製済みのES細胞を正常な肝細胞に変え、生後数週間以内に数千万個を腹部から血管を通じて肝臓に送る計画。ES細胞由来の肝細胞がアンモニアを分解することで、容体を安定させ、数カ月後の肝臓移植につなげます。

 治験では、5人の乳児に実施し、血中のアンモニア濃度が適正に下がるか、肝細胞が肝臓に定着するかなどを調べます。肝細胞の製品化については、企業との連携を検討しています。

 ES細胞と同様にさまざまな細胞に変化できるiPS細胞(人工多能性幹細胞)は、人の皮膚や血液などの細胞に特殊な遺伝子を加えて作製します。受精卵を使わずに作製できるものの、品質にばらつきが出やすく選別が必要になります。

 海外では米英仏韓などで2010年以降、ES細胞を使う目の難病や糖尿病、脊髄損傷の治験が行われ、成育医療研究センターはES細胞のほうが安心して使えると判断し、これまでの研究の経験も踏まえ今回の治験を計画しました。倫理面などを審査する同センター内の審査委員会の承認は、すでに得ています。

 人間のES細胞は1998年にアメリカで初めて作製され、同じ万能細胞で2007年に日本で開発されたiPS細胞より長い歴史がありますが、国内では受精卵を使うことへの倫理的議論から、医療への応用は実施されていませんでした。成育医療研究センターの研究チームが治験を始めることで、これまで海外と比べて遅れてきたES細胞の再生医療への応用が大きな一歩を踏み出します。

 ES細胞を使う国内初の治験の計画に対し、小林英司・慶応大学特任教授(臓器再生医学)は、「製品化するには費用も課題となる。ES細胞を使っての効果などを分析し、さまざまな治療法の展開を考えていくことが重要」と話しています。

 2017年8月28日(月)

 

■他人のiPS細胞の移植、遺伝子改変で拒絶反応回避に成功 京大が発表

 京都大学ウイルス・再生医科学研究所の河本宏教授(免疫学)らの研究チームは、他人のiPS細胞(人工多能性幹細胞)から作製した組織を患者に移植する際に起こる拒絶反応を回避する手法を開発しました。iPS細胞の遺伝子を操作し、異物とみなして攻撃する免疫の働きを抑えます。

 備蓄したiPS細胞を利用した再生医療の進歩につながる研究成果で、論文がアメリカの科学誌「ステムセル・リポーツ」(電子版)に25日掲載されました。

 研究チームはiPS細胞から作った血管の細胞を使い、免疫細胞の一種で拒絶反応に関係するナチュラルキラー細胞(NK細胞)の働きを調べました。

 免疫細胞はタンパク質「HLA」を目印に自分の細胞と異物を見分けていますが、血管の細胞のHLAに「C1」と「C2」という遺伝子が含まれると、ナチュラルキラー細胞は異物と見なさないことがわかりました。C1だけだとナチュラルキラー細胞は攻撃しましたが、iPS細胞にC1、C2の両方を組み込むと、拒絶反応を回避できました。

 再生医療を受ける患者本人の細胞からiPS細胞を作製すると、拒絶反応は起きないものの、準備に時間がかかり費用もかさみます。このため、他人のiPS細胞を備蓄して必要な時に供給する体制づくりが進んでいます。現在はHLAのタイプを調べ、拒絶反応を起こしにくい特殊な免疫タイプの人から細胞の提供を受けています。

 河本教授は、「再生医療を進める上で大きな課題を解決できる一歩だ」と話しています。

 2017年8月28日(月)

 

■薬害ヤコブ病、訴訟136件がすべて和解で終了 1996年の初提訴から21年

 病原体に汚染された輸入硬膜の移植でクロイツフェルト・ヤコブ病に感染した患者や家族が国や製薬会社などに損害賠償を求めた訴訟で、原告弁護団は24日、大津地裁で係争中だった原告が7月に和解し、初提訴から21年で一連の訴訟136件がすべて終了したと発表しました。

 福岡県の男性(2014年に死亡、当時77歳)に関する最後の和解が7月21日に成立後、弁護団が記録を取りまとめていました。

 原告弁護団によると、136件の訴訟は大津、東京の両地裁に提訴され、いずれも和解が成立。被告側は患者1人当たり平均5500万円を支払い、賠償総額は計約75億円に上ります。訴訟の対象になった患者は136人で、療養中の女性(39歳)を除き死亡しています。

 患者や遺族は、交通事故や病気で脳外科手術を受けた際の縫合で、汚染された硬膜(ドイツのビー・ブラウン社製造のクロイツフェルト・ヤコブ病で亡くなった患者由来のヒト死体乾燥硬膜製品「ライオデュラ」)を移植され、医原性のクロイツフェルト・ヤコブ病になったとして1996年から大津地裁、1997年から東京地裁に順次提訴。

 2002年に国とビー・ブラウン社が薬害発生の責任を認め、原告との和解が進みましたが、その後も長期の潜伏期間を経て発症したケースでの提訴が続いていました。

 厚生労働省によると、硬膜移植後のクロイツフェルト・ヤコブ病の発症者は152人に上ります。弁護団は、薬害被害患者の約9割が訴訟で救済されたと指摘しています。

 東京訴訟弁護団の阿部哲二事務局長は、「患者救済に一つの区切りがつくが、新たな発症の可能性もあり、支援は続けたい」と話しています。

 クロイツフェルト・ヤコブ病は、プリオンと呼ばれるタンパク性感染因子により、脳が委縮して海綿状の病変が出現する中枢神経疾患。全身の不随意運動と急速に進行する認知症を主症状とし、発病後1~2年以内に全身衰弱、肺炎などで死に至るといわれています。日本では、厚労省の特定疾患(難病)に指定されています。1996年、ビー・ブラウン社はライオデュラの製造を中止し、1997年、厚生省はヒト死体乾燥硬膜製品の使用禁止を発表しました。

 2017年8月27日(日)

 

■臍帯血の無届け投与で医師ら6人逮捕 愛媛、京都など4府県警

 がん治療や肌の若返りなどの名目で、全国のクリニックが他人の臍帯血(さいたいけつ)を国に無届けで投与していた問題で、愛媛、高知、茨城、京都の4府県警の合同捜査本部は27日、臍帯血をクリニックに販売した業者や実際に治療に当たった医師ら計6人を、再生医療安全性確保法違反容疑で逮捕しました。同法違反容疑での逮捕は、全国で初めて。

 逮捕されたのは、臍帯血保管販売会社「ビー・ビー」代表の篠崎庸雄(つねお)容疑者(52歳)=茨城県つくば市、篠崎容疑者の妻の信子容疑者(50歳)=同、臍帯血卸売会社「レクラン」(解散)元代表の井上美奈子容疑者(59歳)=福岡市西区、レクラン元社員の小谷治貴容疑者(36歳)=同、「表参道首藤クリニック」(東京都渋谷区)院長で医師の首藤紳介容疑者(40歳)=東京都品川区、医療法人「愛幸会」(京都市)の実質運営者で一般社団法人「さい帯血協会」理事の坪秀祐(しゅうすけ)容疑者(60歳)=大津市の計6人。

 臍帯血は、へその緒や胎盤に残った少量の胎児の血液で、赤血球や白血球などの血液細胞のもとになる「造血幹細胞」が大量に含まれています。2014年に施行された同法で、2015年11月以降に他人の細胞を移植する際に国へ治療計画を提出することが必要になりました。違反した場合は、1年以下の懲役または100万円以下の罰金が科せられます。

 合同捜査本部は、昨年7月ごろから今年4月ごろにかけ、6回にわたり患者4人に無届けで治療したとして首藤容疑者を逮捕し、昨年2月から今年4月にかけ、大阪市内のクリニックなどで4回にわたり患者3人に無届けで治療したとして坪容疑者を逮捕するとともに、販売業者が全国のクリニックの無届け治療にかかわったとして、同法違反の共犯で立件したといいます。

 捜査関係者によると、無届けで移植された臍帯血は、2009年に破産した民間臍帯血バンク「つくばブレーンズ」(茨城県つくば市)が保管していたもの。バンクの株主だった篠崎容疑者が代表を務める「ビー・ビー」が約800人分の臍帯血を入手し、坪容疑者側に約200人分、井上容疑者側に約100人分を販売。坪、井上容疑者はさらに、東京都や大阪府などのクリニックに臍帯血を転売していたといいます。

 この問題では、厚生労働省が5~6月、東京都、大阪市、松山市、福岡市の民間クリニック12施設が2015年11月~2017年4月、がん治療や肌の若返りなどの目的で他人の臍帯血を無届けで移植していたとして、再生医療を一時停止する緊急命令を出しました。緊急命令前に計画を届け出るよう指導したものの無届けのまま治療を続けていたクリニックもあり、厚労省は今月25日に複数のクリニックを同法違反容疑で合同捜査本部に刑事告発していました。

 2017年8月27日(日)

 

■パチンコ出玉、上限3分の2に規制へ ギャンブル依存症対策、来年2月から

 警察庁は24日、カジノを合法化する「統合型リゾート(IR)整備推進法」が昨年12月に成立したことを受け、パチンコの出玉やパチスロのメダル獲得数の上限を従来の約3分の2に規制する改正風俗営業法施行規則を決定しました。ギャンブル依存症対策の一環で、来年2月1日から施行し、3年間の経過措置期間を設けます。

 7月に公表した風営法施行規則の改正案への意見公募(パブリックコメント)には、約1万4000件の意見が寄せられました。

 新ルールでは、パチンコの標準的な遊技時間を4時間と想定。4時間内でパチンコ玉の獲得総数を発射総数の1・5倍未満とする新基準を設け、大当たりの上限も現行の2400個(1玉4円換算で9600円)から1500個(1玉4円換算で6000円)に引き下げます。

 これにより、4時間の客のもうけを現行の十数万円から5万円(1玉4円換算)を下回るよう上限を定めました。これは、従来の基準の約3分の2に相当します。パチスロも、パチンコと同様の水準で規制します。

 パチンコ店は、現行の基準で警察の認定を受けた機器を最大3年間、設置することができますが、2021年までに新ルールに基づいた機器に入れ替えなければなりません。

 警察庁が7月中旬から8月上旬まで行った改正案への意見公募では、規制強化に対して、「昔ながらの健全な大衆娯楽になる」「(賛成の立場から)より厳しい内容とするべきだ」という賛成の意見があった一方、「遊技としての魅力が損なわれる」「1日に使える遊技料金を規制するべき」「遊技の長時間化を招く。依存症対策として逆効果では」「客離れが進み、パチンコ屋、遊技機製造業者などの経営が苦しくなる」などの反対意見も寄せられました。

 警察庁はほぼ当初案通り改正し、「もうけが減ることで、負けたぶんを一度に取り戻そうとのめり込むリスクも減る」「依存症問題を踏まえて過度の射幸性を抑え、適正な遊技を促したい」と説明しています。また、パチンコ店の店長ら管理者について風営法施行規則で定める業務に、依存問題に関する客への情報提供などを追加します。

 警察庁によると、パチンコホールは1995年は1万8244店舗ありましたが、2016年は1万986店舗まで減少。市場規模は2005年の34兆9000億円をピークに、2015年は23兆2000億円に減っています。

 2017年8月27日(日)

 

■過去1年のパチンコ・パチスロ依存疑い、全国で推計40万人 過去の依存疑いは推計90万人

 パチンコやパチスロへの依存が疑われる人は全国に約39万9000人いるという調査に基づく推計結果を、業界団体がつくった公益財団法人・日工組社会安全研究財団が24日に発表しました。

 依存が疑われる人は、預貯金がない人の割合が48%と回答者全体の12%を大きく上回り、離婚経験者も38%と回答者全体の11%より高くなりました。一方、男女や年代、学歴、職業、居住地、店舗の遠近との関連はみられませんでした。

 調査は1~2月、住民基本台帳から無作為で選んだ全国の18~79歳の男女9000人に訪問や郵送などで実施し、56・2%の5060人が回答しました。過去1年間にパチンコなどをしたと答えた582人(男性439人、女性143人)に、精神面や家計、仕事、人間関係などに影響が出たかなど27項目を聞き、点数化。

 その結果、軽度を含め依存が疑われる人は、0・4%の21人(男性19人、女性2人)いました。この比率を調査対象年齢の人口に当てはめて、人数を約40万人と推計しました。

 一方、直近の過去1年間に限らず、過去に依存が疑われる状態になったことがある人は、0・9%の47人(男性41人、女性6人)で、この比率を調査対象年齢の人口に当てはめると、全国に約90万人いると推計されました。

 日工組社会安全研究財団の担当者は、「今後は依存状態となる原因を研究し、予防や治療法などの検討につなげたい」としています。

 厚生労働省が3月に発表した調査では、過去1年間で競馬・競輪・競艇なども含むギャンブル依存症の疑いがある人は成人の0・6%で、今回の調査とほぼ同じ割合でした。

 2017年8月26日(土)

 

■茨城県つくば市の臍帯血販売業者など逮捕へ 無届けの治療に加担疑い

 全国のクリニックががん治療や肌の若返りなどの名目で、他人の臍帯血(さいたいけつ)を無届けで投与していた問題で、臍帯血の流出ルートの解明を進めている愛媛、茨城、京都、高知の4府県警の合同捜査本部は、無届け治療に加担したとして臍帯血販売会社の代表らを再生医療安全性確保法違反容疑で27日にも逮捕する方針を固めました。

 逮捕の方針を固めたのは、茨城県つくば市の臍帯血販売会社の代表(52歳)や、同社から臍帯血を購入しクリニックに転売していた福岡市の医療関連会社(解散)の代表(59歳)、京都市の医療法人の実質運営者(60歳)ら数人。2014年に施行された再生医療安全性確保法違反で刑事事件が立件されるのは、全国で初めて。

 一方、厚生労働省も、複数のクリニックが臍帯血を無届けで投与していたと認定し、刑事告発する方針を固めました。

 捜査関係者によると、無届けで投与された臍帯血は、2009年に破産した茨城県つくば市の民間臍帯血バンク「つくばブレーンズ」が保管していたもの。元社長の女性(64歳)は、筑波大教授(故人)らの協力を受け、1998年に親族とともに会社を設立。2002年11月から、子供の将来の病気に備え個人の臍帯血を有料で預かる保管事業を開始し、1人分当たり10年間で30万~36万円の保管料を受け取りました。

 しかし、液体窒素を使った凍結設備の購入や施設建設に多額の費用がかかり、投資ファンドなどから出資を受けるようになりました。それでも経営は好転せず、債権者の申し立てを受けた水戸地裁土浦支部は2009年10月、破産手続きの開始を決定。当時、病院から無償提供を受けた約500人分と、預かった約1000人分の計約1500人分の臍帯血を保管していました。

 液体窒素で凍結して保管する臍帯血は返還しても一般家庭では保管ができないため、2010年初め、一部の債権者が設立した臍帯血販売会社が保管先に選定されました。病院の無償提供分は1人分3万円ほどで譲渡され、預かり分も1人分10万~20万円の追加保管料を徴収し計約1000人分が移されたといいます。その後、この臍帯血販売会社が京都市の医療法人に約200人分、福岡市の医療関連会社に約100人分を販売したといいます。

 臍帯血はさらに東京都や大阪府などの複数のクリニックに転売され、京都市の医療法人は自らもがん治療などの目的で臍帯血の投与を無届けで行っていたといいます。

 合同捜査本部は今年4月には、再生医療安全性確保法違反容疑で関係先を家宅捜索。厚労省も同法に基づき今年6月、がん治療や美容を名目に、患者から百数十万~数百万円を受け取り、無届けで臍帯血を投与したとして、全国12のクリニックに対し治療を一時停止させる緊急命令を出していました。

 臍帯血は、へその緒や胎盤に残った少量の胎児の血液で、赤血球や白血球などの血液細胞のもとになる「造血幹細胞」が大量に含まれています。他人の臍帯血を使った治療は、白血病などで有効性が認められています。しかし、血液以外のがんや美容目的の利用については、有効性や安全性が実証されていません。

 2017年8月26日(土)

 

■パスタやピザで7人がO157感染 埼玉県川越市のレストランで

 埼玉県川越市のレストランでパスタやピザなどを食べた男女7人が腸管出血性大腸菌O157に感染したことがわかり、川越市はレストランを25日から3日間の営業停止処分としました。

 川越市保健所によりますと、8月11日から12日にかけて市内のレストラン「ナポリの食卓パスタとピッツァ川越店」でパスタやピザ、サラダなどを食べた川越など5市の5グループ計13人中、男女7人が13日から17日にかけて下痢や腹痛を訴え、7人の便からO157が検出されたということです。

 川越市によりますと、このうち18歳から77歳の4人が入院して手当てを受けていますが、今のところ命に別状はありません。

 川越市保健所は22日午後、レストランを立ち入り検査。従業員18人の検便をしたところ、25日夕現在、1人からO157を検出しましたが、症状などは出ていないといいます。

 レストランで飲食した別の3グループでも体調不良を訴えた人からO157が検出されたとの情報が医療機関などから寄せられており、川越市保健所は今後、レストランの衛生管理の状況を調べるとともに感染源の特定を急ぐことにしています。

 このレストランを運営する「ボストンハウス」(群馬県桐生市)はホームページ上で、「発症されたお客様とご家族には多大なる苦痛とご迷惑をおかけし、心よりおわび申し上げます」と謝罪しています。

 2017年8月26日(土)

 

■プエラリア含む豊胸サプリ、健康被害の相談が増加 生理不順など5年で223件

 豊胸や美容効果をうたう「プエラリア・ミリフィカ」という植物の成分を含む健康食品について、厚生労働省は24日、2012年4月から今夏までの5年間で製造販売業者に寄せられた健康被害の情報が223件あったことを明らかにしました。

 厚労省は、業者に原材料の成分分析を求めるなどの対策を検討しています。

 プエラリア・ミリフィカは、タイやミャンマーに自生するマメ科クズ属の植物で、プエラリア、ガウクルア、白ガウクルアとも呼ばれるプエラリア・ミリフィカの根から抽出した成分「デオキシミロエストロール」を含んでいます。デオキシミロエストロールは、エストロゲン(女性ホルモン)と同様の作用が体に働くといいます。

 大豆などに含まれるイソフラボンもエストロゲン(女性ホルモン)と同じ作用があるものの、デオキシミロエストロールに含まれる成分の作用は、イソフラボンより1000~1万倍強いという報告があります。

 消費生活センターなどに、この成分入りの食品をとって「生理が止まった」「大量の不正出血が起きた」など健康被害の相談が相次いだことから厚労省は7月、都道府県などに健康被害や販売状況の調査を依頼していました。

 健康被害の内訳は、生理不順が67件で最も多く、アレルギー症状66件、不正出血42件と続きました。また、含有する成分量を計っていた健康食品は、4分の1の18製品にとどまっていました。

 国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所によると、プエラリア・ミリフィカに含まれるデオキシミロエストロールは、産地や収穫時期、植物の年齢によってかなり幅があるそうで、現時点で安全な摂取量はわかっていないということです。

 国民生活センターの担当者は、「因果関係は証明されていないが、ホルモンバランスを崩す恐れがある。安易な摂取は避けたほうがいい」と話し、体調に異常を感じたら使用をやめ、医師の診断を受けるよう呼び掛けています。

 国民生活センターの資料によると、海外では国によってプエラリア・ミリフィカに対する規制はさまざまで、EUや韓国では食品への使用が禁止されているほか、香港では健康被害への注意を呼び掛けており、タイでは健康食品などにより摂取する場合には1日の摂取量がプエラリア・ミリフィカ末として100ミリグラムを超えないこととされています。

 2017年8月25日(金)

 

■iPS細胞自動培養装置、京大とパナソニックが販売開始へ 価格は約5000万円

 京都大学とパナソニックがiPS細胞(人工多能性幹細胞)を安定的に作製する自動培養装置を開発し、製薬会社や研究機関向けに23日、販売の受注を開始しました。

 開発した京大の岩田博夫名誉教授(再生医学)は、「高品質なiPS細胞を安定的に供給することが可能。過重労働など研究者の負担が軽減され、創薬の基礎研究分野に貢献できる」と話しています。

 岩田名誉教授らは熟練培養者の作業を解析し、ロボット技術で再現。パソコン入力で培養条件を変更できるようにしました。培養液の毎日の交換や、増殖した細胞が一定の大きさになれば一部を別の培養皿に移して新たな株として培養する「継代(けいだい)」など、一連の作業を完全に機械で自動化しました。

 実証試験で20回の継代ができ、高い精度で培養できたといいます。これまでにも同様の装置はあったものの、継代作業まで自動化する装置は初めてです。

 自動培養装置は横2・7メートル、高さ2・4メートル、奥行き1・1メートルで、価格は約5000万円。ほかの装置よりも小型化し、価格も安価に抑えたといい、パナソニックが受注生産します。

 当初は年間5台の販売を予想し、5年後には15台の販売を目指します。

 2017年8月25日(金)

 

■無痛分娩は全体の6%、半数以上が診療所で 産婦人科医会が調査

 2016年度に全国の医療施設が取り扱った分娩(ぶんべん)のうち、出産時の痛みを麻酔で和らげる「無痛分娩」が行われたのは6・1%に上ることが23日、日本産婦人科医会の調査で明らかになりました。

 無痛分娩後の死亡事例などが相次いで発覚したことを受け、安全体制構築のため発足した厚生労働省研究班の初会合で報告されました。無痛分娩についての大規模な調査は初めて。

 調査は6月、過去3年間の無痛分娩の実態を調べる目的で、全国の分娩取り扱い施設2391カ所(病院1044カ所、診療所1347カ所)を対象に行われました。無痛分娩の実施件数や麻酔の管理などについて尋ね、現時点で約6割の施設から回答を得ました。

 その結果、回答があった施設で2016年度に行われた分娩60万8450件のうち、無痛分娩は3万6849件。このうち診療所が扱ったのは、53%に当たる1万9539件でした。

 無痛分娩の割合は2014年度4・6%、2015年度5・5%、2016年度6・1%と上昇傾向。厚労省研究班代表の海野信也北里大学病院長は、「思ったより多い印象だ。お産の数も産科医も減る中、安全性確保のため課題を明らかにしていきたい」と述べました。

 研究班の初会合では、無痛分娩を行う場合、合併症などに適切に対応できる体制を整えることを呼び掛ける日本産婦人科医会の「母体安全への提言」も公表されました。提言によると、2010年以降2017年2月までに報告が出された妊婦死亡271件のうち、無痛分娩を選んでいたのは14件(5・2%)でした。また、14件すべてで子宮収縮薬(陣痛促進剤)が投与されていました。

 無痛分娩を巡っては、今春以降、大阪府、兵庫県、京都府、愛知県の5医療機関(うち1医療機関は閉院)で計7件の産科麻酔を巡る事故が発覚。兵庫県と愛知県の事故の2遺族から厚労省などに対し、再発防止を求める要望書が提出されています。

 研究班は今後、無痛分娩での「ヒヤリハット」事案の発生状況も詳しく調べ、安全に行うための標準的方法の提示、研修体制などについて検討。年度内にも、リスク評価や安全管理体制の構築に関する提言をまとめるといいます。

 2017年8月24日(木)

 

■ポテトサラダ食中毒、食品加工工場からO157検出せず 高崎市が調査

 埼玉県や群馬県にある同じ系列の総菜店で販売されたポテトサラダを食べた10人から腸管出血性大腸菌O157が検出された問題で、高崎市保健所がポテトサラダを製造・納入した群馬県高崎市の食品加工工場から回収したサンプルを検査したところ、サンプルからはO157は検出されなかったと、23日夕方の会見で明らかにしました。

 この問題は、8月7日から8日にかけて同じ系列の総菜店、埼玉県熊谷市にある「でりしゃす」籠原店と熊谷店、群馬県前橋市にある六供店で加工・販売されたポテトサラダを食べた女児(5歳)が一時意識不明の重体となったのを含め、14人が下痢や腹痛などを訴えたもので、このうち10人から腸管出血性大腸菌O157が検出され、埼玉県はポテトサラダが原因の食中毒と断定しました。

 さらに、前橋市保健所によりますと、六供店で8月11日に販売されたポテトサラダを食べた人から新たにO157が検出され、これで感染した人は合わせて11人になりました。

 ポテトサラダは高崎市の食品加工工場が5日から7日にかけて製造したもので、合わせて580キロ余りが34店舗に配送され、それぞれの店でハムやリンゴなどを混ぜて販売していたということです。

 このため高崎市保健所は21日、食品加工工場に立ち入り調査を行い、10人が食べたポテトサラダが製造された8月5日と7日のサンプルを回収して検査したところ、サンプルからはO157は検出されなかったと23日夕方開いた会見で明らかにしました。

 高崎市保健所は、23日も食品加工工場に立ち入り調査を行うなどして、工場での製造過程や総菜店での加工・販売の過程でO157が混入した可能性もあるとみて、引き続き調べています。

 高崎市生活衛生課の武井祥一課長は23日夕方、ポテトサラダを製造した食品加工工場への立ち入り検査の調査結果を受けて、「工場内で衛生管理上、明らかに不適切なところは確認できなかった。しかし、工場での製造の過程で菌が混入した可能性も否定できないので、工場の従業員に検便を行うほか、関係者から聞き取りをするなどして、引き続き調査を続けていきたい」と話していました。

 店で販売されたポテトサラダを食べた人からO157が検出された埼玉県熊谷市の総菜店、でりしゃす籠原店が入った大型スーパー「食彩館マルシェ籠原店」の周辺では、買い物客から不安の声が上がっていました。

 この総菜店でサラダを買ったことがあるという30歳代の男性は、「籠原店以外の店でも見付かったと聞いて、とても心配です。一刻も早く原因を突き止めてほしいです」と話していました。また、この店でよくサラダを買っていたという40歳代の女性は、「身近なお店でO157が発生していて怖いです。衛生管理をしっかりしてもらいたいです」と話していました。

 店で販売されたポテトサラダを食べた人からO157が検出された前橋市の総菜店、でりしゃす六供店は23日も営業を続けており、店を訪れた人からは「菌は見えないので怖い」とか「安全なものを提供してほしい」といった声が聞かれました。

 系列の総菜店を運営するフレッシュコーポレーション(本社・群馬県太田市)によりますと、ポテトサラダを始め野菜などの生ものは、すべての系列店で販売を取りやめ、総菜は加熱したものを提供しているということです。

 2017年8月23日(水)

 

■動物体内での人間の臓器作製、文科省専門委が容認方針 現行指針を改正へ

 ブタなどの動物の受精卵が少し育った状態である胚に人の細胞を入れ、動物の子宮に戻して妊娠させる研究について、文部科学省の専門委員会は21日、容認する方針を決めた。

 研究の必要性を科学的、合理的に説明できることなどを条件に、研究を禁止する現行指針を見直します。文科省は年内にも、人の細胞が混じった胎児の出産まで認めるかどうかを最終判断し、来年度中の指針改正を目指します。

 文科省は、移植に使う人の臓器をブタなどの動物の体内で作製する研究の実施について、4年前から指針の見直しを議論してきました。この日の会合では、過去の研究から、人と動物の細胞が混じった個体が人のような高い認知機能を持つ可能性は極めて低いなどとして、動物の子宮へ戻すことを認めました。

 一方、人の神経細胞や生殖細胞の作製を目的とする研究や、人に近いチンパンジーなどの霊長類を使った実験の是非については、引き続き議論することになりました。

 新たな指針では、各研究機関から申請された研究計画を国が個別に審査し、研究の妥当性や透明性を確認します。東京大学などの研究チームが、特定の臓器ができないよう遺伝子操作した動物の胚に、人のiPS細胞(人工多能性幹細胞)を入れて、動物の体内で人の臓器を作る技術を開発していますが、国内では研究が禁止されていました。

 2017年8月23日(水)

 

■再生医療用ES細胞の作製、成育センターの計画を了承 京大に続いて2例目

 文部科学省の専門委員会は、さまざまな細胞や組織に変化する能力を持つES細胞(胚性幹細胞)を、医療用に作製する国立成育医療研究センター研究所(東京都世田谷区)の計画を了承しました。

 承認に必要な厚生労働省の専門委員会の了承も9月に得られる見通しで、早ければ今年度内にES細胞の作製を始めます。医療用のES細胞作製が認められるのは、今年6月の京都大学に続き2例目。

 計画では、埼玉医科大学で不妊治療で使われなかった受精卵を患者の同意を得て譲り受け、医療用のES細胞を作製。ES細胞を使った再生医療や創薬を行う研究機関などに提供します。

 ES細胞は、iPS細胞(人工多能性幹細胞)と同様に、神経や筋肉などの細胞や組織になる能力と無限に増殖する能力を併せ持ちますが、受精卵を壊すため倫理的な課題から、これまで基礎研究に利用が限られ、臨床研究など再生医療向けの作製が禁止されてきましたが、2014年に厚労省が改正した臨床研究指針で認められました。

 北米やイギリスでは、ES細胞を使って網膜の変性症や脊髄損傷、パーキンソン病、糖尿病、心疾患の臨床試験(治験)が実施されています。血液などに遺伝子を導入して作製するiPS細胞はがん化の懸念があり、再生医療への応用ではES細胞のほうが安心と考える研究者もいます。

 国立成育医療研究センター研究所の阿久津英憲部長は、「iPS細胞とES細胞の両方を治療に活用できる環境を整えるのが望ましい」と話しています。

 2017年8月23日(水)

 

■重い精神疾患の人、薬の副作用と自殺で22年短命に 東大病院が追跡調査

 重い精神疾患の人は一般の人と比べて心筋梗塞(こうそく)などの心血管疾患と自殺で亡くなるリスクが高く、平均で22年短命になっているとの調査結果を、東京大学医学部附属病院精神神経科の近藤伸介助教(精神神経科)らの研究チームが、イギリスの精神医学専門誌に論文発表しました。

 日本国内でのこうした調査は初めてで、イギリスや北欧の調査結果と傾向が一致しているといいます。

 研究チームは、精神科病院の長期入院を経て退院し、地域生活に移行した後に、近藤助教が顧問医を務める社会福祉法人「巣立ち会」(東京都三鷹市)のグループホームなどを利用した254人を追跡調査。1992年以降の24年間に45人が死亡しており、全員が統合失調症や双極性障害など重い精神疾患のほか、うつ病といった慢性精神疾患を有していました。

 45人の死因や年齢を、国の人口動態統計と比較した結果、平均入院年数は15・6年、死亡時の平均年齢は63歳で、一般の人の平均より22・2年早くなっていました。死因を分析すると、心筋梗塞などの心血管疾患が5・09倍、自殺が7・38倍、それぞれ一般の人より死亡する可能性が高くなっていました。

 心血管疾患の多さの要因は、喫煙率の高さや経済的困窮に伴う食生活の乱れ、薬の長期服用による血糖値上昇といった副作用などが考えられるといいます。自殺については、統合失調症の幻覚や妄想などが関係する可能性があるとしています。

 近藤助教は、「医療者側の支援も重要で、生活習慣や治療薬の量を改善していく必要がある」と話しています。

 2017年8月22日(火)

 

■ポテトサラダでO157食中毒、系列2店の客も感染 食品加工工場が汚染源か

 埼玉県熊谷市のスーパー「食彩館マルシェ籠原店」に入る総菜店「でりしゃす籠原店」で販売されたポテトサラダを食べた客が腸管出血性大腸菌O157による食中毒を訴えた問題で埼玉県は22日、新たに5人の発症が判明したと発表しました。同店のほか、熊谷市内の別の系列店と前橋市内の系列店でもO157による食中毒が確認されました。

 埼玉県食品安全課や同店を経営する「フレッシュコーポレーション」(群馬県太田市)によると、食中毒の原因とされるポテトサラダの食材は群馬県高崎市内の食品加工工場から仕入れ、ハムやリンゴを混ぜて販売していました。7~8日に同店などが販売したポテトサラダを食べた客のうち、埼玉県内の4~69歳の男女計13人が下痢や腹痛などを訴え、うち9人の便からO157が検出されたといいます。

 このうち、女児(5歳)が腎臓の機能が低下する溶血性尿毒症症候群(HUS)を発症し、意識不明の重体。女児を含めた3人が入院しており、男児(4歳)と女性(60歳)は回復に向かっているものの、3人とも退院のめどは立っていません。埼玉県食品安全課によると、群馬県の系列店でもO157の発症を確認したといいます。

 これまで、同じ食品加工工場から仕入れたポテトサラダを販売していた、でりしゃす籠原店以外の系列16店では食中毒の訴えがないとされてきたため、同店での調理、販売の過程で汚染されたとみられていましたが、埼玉県食品安全課は各店舗がポテトサラダを仕入れていた食品加工工場が汚染源の可能性もあるとみて、さらに調べます。

 フレッシュコーポレーションは、1976年に群馬県薮塚本町(現・太田市)でスーパー、フジマートを創業し、1978年に会社設立。1995年に社名をフジタコーポレーションとし、群馬県、埼玉県、栃木県でスーパーなどを展開してきました。昨年11月に牛丼チェーン「すき家」を展開するゼンショーホールディングスが約124億円で買収し、今年5月に現社名に変更しました。3県でスーパー27店舗、総菜専門店17店舗を運営しています。

 2017年8月22日(火)

 

■難病のクローン病に羊膜由来の幹細胞を投与、11月にも治験開始へ 北大と兵庫医大

 大腸や小腸などの消化管に慢性の炎症が起きる難病のクローン病の患者に、胎児を包む羊膜から採取した幹細胞を投与する再生医療の臨床試験(治験)を、北海道大学と兵庫医科大学が11月にも開始します。

 薬が効かない患者の症状改善を期待しています。再生医療製品として5年後の製造販売承認を取得することを目指します。

 対象は、大腸に炎症があり、既存の薬が効かないクローン病の患者。北大病院で第三者が出産した際に提供された羊膜から、炎症を抑える作用がある「間葉系幹細胞」を抽出して培養し、北大、兵庫医大病院で患者に点滴します。2年間で最大12人に実施、投与1年後まで経過を見守ります。9月に、治験計画を北大の倫理委員会に申請します。

 北大の大西俊介准教授(消化器内科)の研究チームは、腸に炎症を起こしたラットに人の羊膜由来の間葉系幹細胞を注射したところ、炎症抑制などの効果を確認しました。

 羊膜由来の間葉系幹細胞は、妊婦の羊膜に存在する未分化の細胞で、筋肉、骨、軟骨、脂肪など間葉系に属するさまざまな細胞に分化する能力や自己複製の能力を持ち、免疫抑制作用があります。また、増殖性が高く、拒絶反応が起こりにくいため、他人に移植しやすく、羊膜は出産後不要となり倫理的にも問題となりにくいといった特長があります。

 大西准教授は、「羊膜には間葉系幹細胞が豊富にあり、効果が望める」と話しています。

 国立がん研究センター研究所の落谷孝広・分子細胞治療研究分野長は、「間葉系幹細胞が炎症を抑える仕組みには不明な点もあり、治験で明らかになるのを期待したい」と話しています。

 クローン病は、主に小腸や大腸に炎症や潰瘍が起きます。10歳代後半から30歳代前半に発症することが多く、国内患者は約4万人。原因は不明で根本的な治療法はありませんが、食生活の欧米化によって日本でも発症者数が増えていることから、食物中の物質や微生物が抗原となって異常反応を引き起こすことが原因の1つと考えられています。いわゆる難病として厚生労働省特定疾患に指定されており、申請すると医療費の補助が受けられます。

 2017年8月21日(月)

 

■O157で埼玉県の5歳女児重体、2人も重症 総菜店のポテトサラダが原因

 埼玉県は21日、同県熊谷市のスーパー「食彩館マルシェ籠原店」に入る総菜店「でりしゃす籠原店」で買ったポテトサラダを食べた8人が腸管出血性大腸菌O157に感染し、うち女児(5歳)が溶血性尿毒症症候群(HUS)で意識不明の重体、男児(4歳)と女性(60歳)が重症になったと発表しました。

 現在も3人が入院中で、退院のめどは立っていません。

 埼玉県によると、ポテトサラダは、でりしゃす籠原店が県外の食品加工工場から仕入れ、ハムやリンゴを混ぜて販売していました。熊谷保健所は、同店を21日から3日間の営業停止処分としました。原因となった食材や、ポテトサラダの流通経路などを調べています。

 男児が入院した病院のある群馬県から14日、「群馬県内の医療機関に入院中の埼玉県内在住の患者からO157が検出された」と連絡があり、熊谷保健所が調べていました。

 7日に販売された「ハムいっぱいポテトサラダ」と、8日に販売された「リンゴいっぱいポテトサラダ」を食べた埼玉県内居住の4~60歳の8人(男性4人、女性4人)が腹痛や下痢などの症状を訴えたことがわかりました。うち7〜12歳の子供3人も下痢などの症状で一時入院しましたが、すでに退院しています。

 食彩館マルシェ籠原店と、でりしゃす籠原店を経営するフレッシュコーポレーション(群馬県太田市)によると、ほかの店舗で食中毒の訴えはありません。同社は、「発症された皆様とそのご家族の方々、また日ごろよりご利用いただいているお客様や関係者皆様に、多大なご迷惑とご心配をおかけいたしましたこと、心より深くお詫び申し上げます」とするコメントを発表しました。

 O157は、腸管出血性大腸菌の一種で、少量でも食中毒の原因となります。発熱や下痢、血便を引き起こし、溶血性尿毒症症候群(HUS)や脳症を併発して死亡することもあります。生または加熱が不十分な肉、野菜など幅広い食品で感染例があります。

 1982年、アメリカでハンバーガーによる集団食中毒が世界で初めて発生し、その後、世界各地で報告されました。日本では1990年、埼玉県浦和市(当時)の幼稚園で、井戸水汚染により2人が死亡したのが最初。1996年には全国で爆発的発生がみられ、特に大阪府堺市では小学校給食がO157に汚染したため、9000人以上が発症し、3人が死亡しました。

 2017年8月21日(月)

 

■「近隣住宅受動喫煙被害者の会」の会員が820人に増加 5月19日に発足し7月末時点で

 いわゆる「ホタル族」らがマンションのベランダなどで吸うたばこの煙が近隣住宅へ流れる受動喫煙に悩む被害者らが5月19日、「近隣住宅受動喫煙被害者の会」(事務局・横浜市中区)を正式に発足させたところ、7月末までの約2カ月半で会員登録が全国の約820人に上り、受動喫煙への不満が高まっていることが浮き彫りになりました。

 事務局は、「会員がここまで増えるとは想定外だった」と驚いています。公共スペースや店舗などでの喫煙の在り方が長らく議論になっていますが、ホタル族らによるプライベート空間での喫煙についても、ルール作りなどを巡って議論を呼びそうです。

 被害者の会は、自身も受動喫煙で健康被害を受けた埼玉県在住の荻野寿美子代表(49歳)が「受動喫煙で夜も眠れない人や、ぜんそく発作を起こした子供もいる。一人で立ち向かうのは難しい。協力して住みよい環境づくりを目指したい」として発足させ、各地で被害者相談会を開いています。

 被害者の会では今後、日本弁護士連合会へ人権救済を申し立てたり、「ベランダ喫煙禁止法」と「ベランダ喫煙禁止条例」の制定を求め国や自治体へ申し入れをしたりする予定です。広報担当者は、「ベランダというプライベートな空間での喫煙を一斉に禁じるのは難しいと思うが、近隣から苦情が出た時に、喫煙者や管理会社に対応を取ることを義務付けたい」と語っています。

 近隣住民による受動喫煙を巡っては、トラブルを避けるため苦情をいえない被害者が目立ちます。被害者の会役員の岡本光樹弁護士(第二東京弁護士会)は、「住居での受動喫煙の相談を年間約40件受けてきた。個別に解決策を助言してきたが、法律や条例の制定による抜本的な解決を目指したい」と語っています。

 家の中では家族に嫌がられたり煙で部屋が汚れたりするため、ベランダや庭に出てたばこを吸う人は多く、暗がりで火だけが見える姿からホタル族と呼ばれるようになりました。この近隣のホタル族に関するトラブルは、全国で多発しています。2007年~2008年にかけて東京、名古屋、大阪で行われた聞き取り調査では、「換気扇から煙が入ってくる」「ベランダなどに出られなくなった」「ベランダに布団や衣類を干せなくなった」などの問題が明らかになっています。

 福岡市中央区港には今年3月、全面禁煙の新築賃貸マンションが登場しました。昨年12月から入居者を募集し、入居開始前に全48戸が埋まりました。不動産管理会社の担当者は、「この早さで埋まるのは珍しい。関心の高さを感じた」と話しています。

 受動喫煙問題に取り組む山村行弘弁護士(第一東京弁護士会)は、「当事者同士で話をするとトラブルに発展する恐れもあるので、まずは管理会社に相談するほうがいい。苦情が出た場合に備え、管理会社はベランダでの喫煙禁止を明文化するなどの対応を検討すべきだ」と話しています。

 2017年8月20日(日)

 

■児童虐待12万2578件、過去最悪を更新 厚労省まとめ、2016年度

 全国に210カ所ある児童相談所が2016年度に児童虐待の相談・通報を受けて対応した件数は12万2578件(速報値)となり、過去最悪を更新したことが17日、厚生労働省のまとめで明らかになりました。

 集計を始めた1990年度から26年連続の増加。初めて10万件を超えた2015年度と比べ、1万9292件(18・7%)増えました。

 暴言や無視などの「心理的虐待」への対応が増加したことに加え、警察が児童相談所などへの通告を徹底したことが要因で、国は自治体に児童相談所職員の増員を促すなど体制強化を急いでいます。

 児童虐待の内容別では、心理的虐待が最多の6万3187件(51・5%)で前年度より1万4487件増加しました。身体的虐待は3万1927件(26・0%)、ネグレクト(育児放棄)は2万5842件(21・1%)、性的虐待は1622件(1・3%)でした。

 心理的虐待には、配偶者らへの暴力で子供が心理的ストレスを受ける「面前DV(ドメスティック・バイオレンス)」も含まれます。心理的虐待の増加について、厚労省は「面前DVが虐待に当たるとの認識が浸透してきたため」とみています。

 児童相談所への通告件数が最も多かったのは、警察など捜査機関の5万4813件で、前年度より1万6289件増加。これは警察庁が昨年4月、児童虐待の疑いを把握した場合、迅速に児童相談所に通告するよう全国の警察本部に通達した影響が大きいとみられます。

 都道府県別では、大阪府が1万7743件で最も多く、東京都1万2494件、神奈川県1万2194件と続きました。最も少なかったのは鳥取県で84件、島根県214件、佐賀県275件の順でした。

 前年度からの増加率で見ると、福島県(1・81倍、956件)、富山県(1・76倍、629件)、福岡県(1・75倍、4194件)などが高くなりました。一方、宮城県など7県では減少しました。

 2015年度に発生または表面化した子供の虐待死事例は、72例84人。このうち、心中以外の虐待死は48例52人で、0歳児が30人(57・7%)と最も多く、虐待の種類では身体的虐待が35人(67・3%)、ネグレクト12人(23・1%)の順に多くなりました。

 急増する児童虐待に対応するため、厚労省は昨年4月、児童相談所に勤務する児童福祉司などの専門職を2015年度の4310人から2019年度までに1120人増やす方針を決定。今年4月に施行された改正児童福祉法では、東京23区に児童相談所の設置が認められ、各区で設置に向けた準備が進められています。

 松原康雄・明治学院大学長(児童福祉論)は、「対応件数の増加は、家庭の養育能力の低下などで虐待自体が増えたことと、自治体や警察などが情報共有を進め、これまで見えなかった虐待を把握できるようになったという二つの側面がある。国や自治体は、地域や民間団体との連携を強化する必要がある」と話しています。

 2017年8月20日(日)

 

■新型がん治療薬「オプジーボ」の副作用で2人死亡 12人が重症筋無力症を発症

 皮膚がんや肺がんなどの新しいタイプの治療薬「オプジーボ」(一般名ニボルマブ)を投与された患者約1万人のうち12人が重症筋無力症を発症し、うち2人が死亡していたことを慶応大学などの研究チームが確認しました。19日、アメリカの神経学会誌「ニューロロジー」電子版に発表しました。

 慶応大の鈴木重明専任講師らは、2014年9月からの2年間に医療機関や製薬会社から医薬品医療機器総合機構(PMDA)に寄せられた副作用報告を分析。国内でオプジーボを投与された9869人のがん患者のうち、12人(0・12%)が重症筋無力症を発症し、このうち9人は投与直後に発症していました。

 重症筋無力症は免疫の異常で全身または一部の筋肉が動かなくなる難病で、国内には推計約2万5000人の患者がいます。全身型のほか、目だけに症状が出る眼筋型、呼吸ができなくなる最重症のクリーゼがあります。

 オプジーボ投与後に発症した12人中6人(50%)がクリーゼで、うち2人が死亡していました。一方、薬とは関係なく重症筋無力症を発症した105人では、クリーゼは7人(7%)でした。

 鈴木専任講師は、「オプジーボによる重症筋無力症の発症頻度は低いが、筋肉の炎症を起こすなど重くなる確率が高く、進行も早い。より迅速な対応が必要だ。発症を予測する検査法の開発を目指している」と話しています。

 2017年8月20日(日)

 

■レーザー光を当てるだけで血糖値測定 採血要らずの小型装置実用化へ

 指先にレーザー光を当てるだけで血糖値を高精度に測定できる小型装置を開発したと、量子科学技術研究開発機構(千葉市)が18日発表しました。糖尿病の患者が針を刺す採血の痛みを感じることなく、手軽に血糖値を調べる測定器の実現につながるといいます。

 国から医療機器の承認を受ける必要があり、5年後の一般向け販売を目指して、ベンチャー企業も設立しました。

 同機構・関西光科学研究所(京都府木津川市)の山川考一さんによると、現在は指に小さな針を刺してわずかな血を採り、小型センサーで血糖値を測る測定器が主流。感染症の危険もあるほか、使い捨て針の交換などで年間約20万円かかります。このため患者の負担が軽く、簡単に測る方法が望まれています。

 今回開発した小型装置で用いるレーザーの波長は中赤外線で、指先に当てて反射光を分析すると、毛細血管を流れるブドウ糖の濃度を高精度に測定できます。これまでは高精度に測定できるほど明るいレーザーを小型装置で生み出すことができていませんでした。

 山川さんが社長を務めるベンチャー企業「ライトタッチテクノロジー」で、より小さい血糖値測定器を試作し、医療機器メーカーとの協力や臨床試験を経て、厚生労働省の承認を目指すといいます。

 2017年8月18日(金)

 

■iPS細胞で無精子症の雄マウスから子が誕生 京大が正常な精子を作製

 性染色体の異常で起きる「無精子症」の雄マウスのiPS細胞(人工多能性幹細胞)から精子を作り、通常の卵子と体外受精させて、異常のない子を誕生させることに成功したと、京都大学大学院医学研究科やイギリスの研究所などの共同研究チームが17日、発表しました。

 不妊の治療法開発の可能性を示す成果で、論文がアメリカの科学誌「サイエンス」オンライン版で公開されました。

 一般的に哺乳類の性染色体は2本で、雄がXY、雌がXXという型をしています。ただ、まれにXXYやXYYといった3本の性染色体を持つ雄が生まれ、精子が作れず、子供ができません。

 共同研究チームは今回、3本の性染色体を持つ無精子症の雄マウスを作製。この雄マウスからiPS細胞を作ると12%程度、余分な1本が抜け落ち、正常な性染色体XYを持った細胞ができたため、精子のもとになる生殖細胞に変化させました。この生殖細胞を、自身の精子は作れないようにした別の雄マウスの精巣に移植すると精子に変化し、通常の雌マウスの卵子と体外受精させると、子が誕生しました。生まれた子の性染色体は、通常の2本でした。

 さらに共同研究チームは、性染色体にXが一つ多く、男性の500~1000人に1人の割合で発症する「クラインフェルター症候群」の人から細胞を採取してiPS細胞にすると、数%の細胞で異常がなくなっていました。21番染色体に異常のあるダウン症の人の細胞からも、異常のないiPS細胞ができました。

 京都大学大学院医学研究科の斎藤通紀(みちのり)教授(細胞生物学)は、「iPS細胞の作製過程における細胞が初期化する段階で遺伝子全体にストレスがかかり、余分な染色体が欠落するのではないか。染色体や遺伝子異常が原因の不妊の治療法開発につながる可能性がある」としています。

 2017年8月18日(金)

 

■尋常性白斑、本人の皮膚細胞で再生医療 名古屋市立大が臨床研究で実施

 紫外線から皮膚を守るメラニン色素を作る機能が失われ、皮膚の色が白く抜けていく「尋常性白斑」の患者に対し、本人の皮膚細胞を培養して作った表皮シートを移植する再生医療の初めての臨床研究に、名古屋市立大学病院が7月から取り組んでいます。

 病院は「(白斑は)生活の質に大きくかかわる」とし、移植の有効性を確認して保険適用を目指します。

 尋常性白斑は、皮膚の色素であるメラニンを作るメラノサイトの働きが止まるために、皮膚に白いまだらができる病気で、全身どこでも突然、皮膚の一部の色が抜けて、その部分が白いまだらとなります。形状は木の葉状や類円形のものから、不規則な地図の形を示すものまでいろいろで、周囲に広がっていく傾向があります。痛み、かゆみはありませんが、広範囲に広がったり、顔面など見える部位にできると著しく生活の質(QOL)を下げます。

 本人の体の一部から切手大の皮膚を採取し、それを培養して作ったシート状の皮膚を患部に移植する治療は、すでに重症熱傷や先天性巨大色素性母斑に対して行われ、保険が適応されています。名古屋市立大病院は今回、尋常性白斑のほか、難治性皮膚潰瘍、改善が困難な瘢痕に対しても、この治療が有効であると考え、臨床研究として7月から実施しています。

 皮膚細胞の培養は、富士フイルムグループのジャパン・ティッシュ・エンジニアリング(愛知県蒲郡市)が受託し、約 4 週間かけフラスコ内でシート状に皮膚を培養しています。

 最低約50万円の一連の治療にかかる費用は患者負担となりますが、名古屋市立大病院は約20件の治療を実施した後、 費用の一部に保険が適用される先進医療として厚生労働省に申請する予定。

 2017年8月17日(木)

 

■現役世代の2割に心不全リスク 佐賀大医学部が調査

 心臓の機能が低下して必要な血液を全身へ送ることが難しくなる心不全について、30~60歳代の約20%が軽度の心不全か予備軍とみられることが、佐賀大学医学部循環器内科の調査で明らかになりました。

 高齢者の病気と思われがちな心不全のリスクが現役世代にもあることを示す結果で、早期発見につながるように定期的な健診の受診を促しています。

 調査は、野出孝一教授(56歳)が2008年から佐賀県伊万里市の浦之崎病院(現・伊万里松浦病院)の協力で実施。職場で健診を受けた30~60歳代の2140人(男性1332人、女性808人)を対象に、心臓に負荷が加わった時に心臓から分泌されて、心不全を判断する指標になるホルモン「NT-proBNP」の血中量を調べました。約1年かけてデータを集めた後、田中敦史博士研究員(36歳)らと分析を続けてきました。

 その結果、心不全が疑われる血液1ミリリットル当たり55ピコグラム(ピコグラムは1ミリグラムの10億分の1)以上のホルモン量が検出された人が、約2割に上りました。男女別では、男性よりも女性に数値が高い傾向がうかがえました。

 野出教授は、「心不全は高齢者に多いが、今回の調査で若い世代にも一定のリスクがあることがわかった」と話しています。

 調査では、問診の結果も踏まえて、不眠や寝付きが悪いなど睡眠障害があると認められた人はホルモン量が多い傾向にあり、特に女性で顕著なこともわかりました。

 調査チームは、「睡眠障害と心不全との関連など、まだわからない点も多い。今回の分析結果を心不全の予防や治療に結び付ける研究をさらに進めたい」と話しています。

 2017年8月17日(木)

 

■小麦、米などの主要農作物の収穫量減、温暖化で不可避 海外で研究

 地球温暖化による気候変動によって、小麦、米、トウモロコシなどの主要農作物の収穫量が減るのは避けられないとする研究結果が15日、アメリカの総合学術雑誌「科学アカデミー紀要(PNAS)」で発表されました。これまでに行われた地球温暖化と農業に関する研究70件を再検証した結果だといいます。

 専門家チームは、さまざまな手法が取られた過去の研究を対象に再検証を行いました。これらの研究には、気温の変化が世界的・局地的規模で農作物に与える影響のシミュレーション、天候と収穫量の過去データに基づく統計モデル、人工的に温暖化を発生させる実証実験などが含まれていました。

 その結果、「気温上昇が、小麦、米、トウモロコシなどの世界の収穫量に悪影響を及ぼす可能性が高いことが示唆された」といいます。

 論文は、「世界の平均気温が1度上昇するごとに、小麦の収穫量が平均6%減少すると推定される」と指摘。米では平均3・2%、トウモロコシも平均7・4%の減少となるといいます。一方で、大豆では有意な変化はみられませんでした。

 人類が生き延びる上で極めて重要なこれら4種の農作物は、人が摂取するカロリーの約3分の2を占めます。

 研究によると、一部地域では気温の変化により収穫量の増加が見込めますが、地球規模では減少することが考えられるといいます。そのため、増え続ける世界人口の食糧供給を確保する上で、温暖化への対策は必須としています。

 2017年8月16日(水)

 

■水銀に関する水俣条約が16日に発効 健康被害の防止へ国際的に水銀製品を規制

 水銀による健康被害や環境汚染を防ぐため、一定量以上の水銀を使った製品の取り引きなどを国際的に規制する「水銀に関する水俣条約」が16日、発効しました。

 「水俣条約」は1950年代、工場から海に排出された水銀によって周辺住民に手足のしびれや感覚障害などの健康被害を生じさせた公害の原点「水俣病」の教訓として、採択されました。日本での水俣病の認定患者数は2014年3月末までで2978人に上り、このうち生存者は624人となっています。

 16日発効した水俣条約は、日本が主導して4年前に熊本県で開かれた国連の会議で採択されたもので、これまでに74の国と地域が締結しており、水銀被害の根絶に向けた国際的な規制が始まります。

 水俣条約では、新しい鉱山からの水銀の産出が禁止されるほか、2020年までに一定量以上の水銀を使った電池や蛍光灯、体温計などの製品の製造や輸出入が原則禁止されます。

 これを受けて日本でも水銀を含む製品の輸出が原則できなくなるほか、一定量以上の水銀を使った製品の製造については水俣病の深刻な被害を経験した国として、水俣条約が定める2020年よりも前倒しして来年から順次禁止するなど、対策を強化します。また、今も発展途上国を中心に水銀を含む製品が適切に処理されず環境汚染などが引き起こしていることから、水俣条約には適切な処理を行うための人材育成や施設整備を資金面で支援する制度を作ることも盛り込まれています。

 9月24日からはスイスのジュネーブで締結国による初めての会合が開かれ、水銀の適切な処理を進めるための技術や支援の在り方などが話し合われるほか、水俣病の患者が参加し、水銀が引き起こす病気の恐ろしさなどについて発表することになっています。

 水俣条約の発効について中川雅治環境大臣は15日の記者会見で、「世界各国が協調して水銀による環境や健康へのリスクを削減しようとする大変意義深い条約で、発効に至ったことを喜ばしく思う」と述べました。その上で、「国内の対策を着実に実施するとともに世界各国と連携して水銀対策を推進すべくリーダーシップを発揮していく」と述べ、国内での対策に加え、発展途上国に対する技術支援なども積極的に行う考えを示しました。

 水俣条約で取り引きが規制される水銀は先進国では使用量が減っていますが、途上国では依然、適切な管理がされないままさまざまな用途に利用されています。

 水銀の大気への最大の排出源となっているのは、アジアやアフリカ、南米などで広く行われている水銀を使った金の採掘。鉱山で採取した砂や鉱石に水銀を混ぜて合金にし、加熱して水銀を蒸発させると金だけを取り出すことができます。国連環境計画(UNEP)の報告書によると、水銀の大気への排出量の37%を占めると推定されています。

 2017年8月16日(水)

 

■マダニ媒介の感染症SFTSの発症者64人 統計がある5年間で最多に

 国立感染症研究所は、マダニが媒介する重症熱性血小板減少症候群(SFTS)を発症したという報告数が今月6日までに64人を数え、統計があるここ5年間で最も多くなっていることを公表しました。

 SFTSは主に、原因となるSFTSウイルスを持つマダニにかまれることで感染し、発熱や下痢などの症状が起きて、国内での致死率は約20%に上っています。

 国立感染症研究所によりますと、SFTSを発症したとして全国から寄せられた今年の報告数は、8月6日までに64人と、統計をとっているここ5年間で、最も多かった2014年の61人をすでに上回っていることがわかりました。

 都道府県別では、長崎県で10人と最も多く、次いで山口県と宮崎県で9人、鹿児島県で8人などと九州や中国地方で多く、西日本を中心に17府県から報告されています。このうち、大阪府と福井県では今年初めて患者が報告されました。

 報告数が最も多くなったことについて、国立感染症研究所の西條政幸部長は「SFTSへの認識が広がり、感染を疑うケースが増えたことが背景にあるとみられる。一方で、マダニが増えている可能性もあり、11月ころまでは草むらや林の中に入る時に長袖と長ズボンを着用するなど対策は十分にしてほしい」と話しています。

 SFTSとは主に、原因となるSFTSウイルスを持ったマダニにかまれることで感染します。SFTSは、6日から2週間の潜伏期間の後、発熱やせき、それにおう吐や下痢など、風邪のような症状が現れ、重症の場合は、血液中の血小板が減少して出血が止まらなくなったり、腎臓の機能が低下したりして死亡することがあるとされています。対症療法のみでワクチンなど有効な治療法はありません。

 感染を媒介するマダニはフタトゲチマダニやオウシマダニなどで、主に屋外の草むらや畑、森の中などに生息しており、農作業中や山の中を歩いている時にかまれることがあるとされています。食品に発生するコナダニや衣類や寝具に発生するヒョウヒダニなどの家庭にいるダニとは種類が異なり、こうしたダニでSFTSに感染することはありません。

 2011年に中国でウイルスが特定され、新しく見付かった感染症で、国内では2012年の秋に山口県内で死亡した女性が初めて確認された感染例で、その後、西日本を中心に毎年、患者が報告されています。

 国立感染症研究所によりますと、SFTSは西日本で認識が広がり医療機関で感染を疑うケースが増えたため、報告される件数が増加する傾向にあるということです。一方で、国立感染症研究所などの調査では、ウイルスを持ったマダニは青森県以南の東日本にもいることがわかっており、感染者が東日本にいないとはいい切れないとしています。

 また、マダニだけではなく、動物から人に感染したとみられる例もあります。昨年夏ごろに感染したとみられる野良猫にかみつかれた西日本在住の50歳代の女性がSFTSを発症して死亡した例が報告されており、国立感染症研究所はペットの犬や猫も感染しないよう気を付けてほしいとしています。

 2017年8月15日(火)

 

■RSウイルス感染症の患者4934人で昨年の5倍に 夏に異例の流行入り

 乳幼児に重い肺炎などを引き起こす一因になり、通常は冬を中心に流行する「RSウイルス感染症」の患者が大幅に増加し、7月31日から8月6日までの1週間の患者数が昨年同時期の約5倍となっていることが15日、国立感染症研究所の調べで明らかになりました。

 RSウイルス感染症は、発熱やせきなど風邪に似た呼吸器症状を起こす病気で、初めて感染した乳幼児や高齢者を中心に気管支炎や肺炎を起こしやすくなります。生後6カ月以内の乳児や早産児、慢性肺疾患や先天性心疾患などの基礎疾患を持っている乳幼児は重症化しやすいとされ、さらに生後4週未満では突然死(乳幼児突然死症候群)につながる無呼吸が起きやすく、注意が必要です。

 例年、秋から冬に患者が増え、夏期は患者が少ない状態が続いていましたが、近年、7月ころから増加傾向がみられるなど、流行の立ち上がりが早まってきている傾向がみられています。今年はすでに流行期に入っているとみられ、専門家は注意を呼び掛けています。

 全国約3000カ所の小児科定点医療機関からの報告によると、今年の7月31日から8月6日までの第31週の患者数は4934人で、昨年同時期の1082人を大幅に上回りました。

 都道府県別では、東京都(583人)、神奈川県(519人)、大阪府(400人)、福岡県(374人)など人口の多い大都市圏のほかに、岩手県(100人)や福島県(189人)、新潟県(152人)などで患者が目立ちました。

 RSウイルスの付いた物を触ったり、せき、くしゃみなどの飛まつを吸い込んだりして移ります。RSウイルス感染症は治療薬などがなく、予防が中心。

 国立感染症研究所の木村博一室長は、「今年は春から患者数が多かったが、今の水準を考えると、前倒しで流行が始まっていると考えられる。大都市圏でも、特定の保健所の管内で突出して多いところがあり、感染の拡大に注意が必要だ」として、マスクの着用や手洗いなどの対策を徹底するよう呼び掛けています。

 2017年8月15日(火)

 

■保険外診療での、がん遺伝子治療でトラブル相次ぐ 学会が患者や家族に注意喚起

 がん細胞の増殖を防ぐとされる抑制遺伝子を注入する国内未承認の「がん遺伝子治療」を行うクリニックで、期待した効果を得られなかったとする患者側とのトラブルが相次いでいます。

 効果や安全性が立証されないまま、保険適用外の高額な自由診療で実施するクリニックが問題となっており、日本遺伝子細胞治療学会(東京都港区)が患者や家族に注意を喚起するとともに、国に対策を求めています。

 東京都内のクリニックでがん遺伝子治療を受け、その後に亡くなった男性患者の妻(49歳)は「生きられると喜んでいた夫は、裏切られた思いに突き落とされました」と話しています。男性は2014年6月、舌がんが再発し、入院先の大学病院で余命半年と告げられたといいます。息子が何か治療法はないかとインターネットで探し、クリニックを見付けました。面談した妻に、クリニックの院長(当時)は「ここで命が助かります。遺伝子が変異した状態では抗がん剤や放射線は効かないので、すぐに中止してください」などと説明しました。

 男性は大学病院での治療を中止。がんを抑える遺伝子が入っているとする点滴を8回受けましたが、大学病院での検査で、がんは逆に大きくなっていたことがわかりました。しかし、クリニックの院長はさらに点滴を促し、再点滴後に震えが止まらず、全身から汗が噴き出しました。疑念を持ち、それ以降の治療をやめましたが、すでに546万円の治療費を払っていました。その後、男性はがん専門病院に転院し、2014年9月に亡くなりました。

 2016年3月、妻は治療費や慰謝料など1150万円の損害賠償を求めて提訴し、クリニック側は訴えを全面的に受け入れました。「クリニックを見付けた息子や家族も傷付いた。同じ思いをする人が出ないように、正しい情報が行き渡ってほしい」と妻は訴えています。このクリニックはほかにも患者側との訴訟が2件ありましたが、いずれも和解しました。

 ほかにも多くのクリニックが、がん遺伝子治療の案内をホームページに掲載。東京都渋谷区のクリニックは、「代表的ながん抑制遺伝子であるp53、PTEN、p16とCDC6kdRNAを最も有効的なベクター(運び役)を用いて導入します。これらの治療タンパクは、点滴投与によって全身のがん細胞に効果を発揮します」と説明しています。

 日本遺伝子細胞治療学会には、がん遺伝子治療に関する相談が寄せられています。専門家などは、患者が治療に疑問を抱くとクリニックが治療費を返還することもあり、トラブルが表面化するのはごく一部とみています。

 日本遺伝子細胞治療学会の金田安史理事長は、「どのような治療が行われ、安全が確保されているのか不透明。有効性が立証されていない治療は制限されるべきだ」と話しています。

 がん遺伝子治療は、がん細胞の増殖を抑える遺伝子をベクター(運び役)となる体に無害なウイルスなどに入れて、体内に注入します。アメリカや中国、ロシア、フィリピンで医薬品として承認された遺伝子治療製剤はありますが、日本国内では千葉大学病院、九州大学病院、岡山大学病院などの研究機関で有効性を確認する臨床研究が進められている段階で、医薬品として承認された遺伝子治療製剤はありません。

 2017年8月15日(火)

 

■喫煙可の飲食店、面積による線引き先送り 健康増進法改正案が判明

 政府が受動喫煙防止に向けて策定した健康増進法改正案の概要が13日、明らかになりました。喫煙を例外的に認める飲食店の広さが焦点でしたが、改正案に線引きは盛り込まず、内閣が制定して出す政令で規定することにしました。

 健康増進法の施行日は公布から2年以内とし、線引きはそれまでに決着させたい考えです。政権内の対立点はいったん先送りし、2020年東京オリンピック・パラリンピックに向け、法整備を優先させるべきだと判断しました。

 秋の臨時国会への提出を目指し、9月にも改正案を自民党厚生労働部会に示します。施行後5年をめどに「制度全般について検討を行う」との見直し規定も盛り込みました。

 受動喫煙対策を巡っては、店舗面積30平方メートル以下のバーやスナックを除いて原則禁煙とする厚労省と、「分煙」「喫煙」を店頭に掲げれば面積150平方メートル以下の店には喫煙を認めるよう求める自民党が対立し、政府は先の通常国会への法案提出を断念した経緯があります。自民党も受動喫煙防止対策の必要性は認めており、今回の政府案への対応が注目されます。

 政府としては、原則禁煙にこだわった塩崎恭久前厚労相が内閣改造で交代。外国人旅行客が増える東京オリンピック・パラリンピックを控え、国際オリンピック委員会(IOC)と世界保健機関(WHO)が開催都市に「たばこのない五輪」を求めている事情もあり、態勢を仕切り直して法改正を急ぎたい意向です。

 政府の改正案は、多くの人が利用する施設での喫煙を原則禁止。施設管理者には灰皿の設置を禁じ、喫煙中止を求める努力義務を課しました。施設の管理者や喫煙者の違反に対しては、都道府県知事が勧告や命令を出し、さらに違反を重ねた場合は罰金を科します。現行法では罰則なしの努力義務しかありません。

 患者や未成年者が利用する医療施設や小中高校は敷地内を全面禁煙とし、大学や老人福祉施設、体育館、官公庁は屋内禁煙としました。ただし、法の施行時にすでに設置されている喫煙室は5年間、存続を認めます。

 これ以外の飲食店や事務所、集会場などは屋内禁煙としつつ喫煙室の設置を認めます。喫煙室については、室内を密閉したり外部に煙を排出したりする設備などの基準を定めます。個人の住宅や旅館・ホテルの客室は喫煙可能としました。

 2017年8月14日(月)

 

■DHAが不足すると視覚機能不全や男性不妊を招く 国際医療研究センター研究所が解明

 サバやイワシなど青魚に豊富に含まれるドコサヘキサエン酸(DHA)は脳の記憶学習中枢の働きを活性化したり、中性脂肪やコレステロールの値を下げたり、動脈硬化を予防したりするなどの効果が明らかになっていますが、それだけではなく、DHAがなくなると視覚機能や男性の生殖機能が失われることが新たに明らかになりました。

 国立国際医療研究センター研究所(東京都新宿区)や秋田大学、東京大学、千葉大学などの共同研究チームがマウスの実験で明らかにし、6月3日にアメリカの科学誌「ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー」に発表しました。

 動物の体を作る細胞には、外側を包む細胞膜のほか、内側にあるミトコンドリアや小胞体、ゴルジ体などの「細胞小器官」にも膜があり、リン脂質という脂質が集まってできています。リン脂質は1000~1500種類あり、各組織の役割などによって異なる分子構造を持っています。眼球の内側にあって光を感じる網膜の視細胞や精子の膜には、DHAを含んだリン脂質が豊富に存在しています。

 DHAは、人を含む動物の体内で作り出すことができないため、食べ物から摂取しなくてはなりません。食べ物から体内に取り込まれたDHAは、血液中で脂質の分解を促進したり、動脈硬化や血栓の原因となる血小板の凝集を防いだり、LPAAT3という酵素の働きでリン脂質の一部になって細胞の膜の構成要素になったりします。このうち、膜に関しては、DHAがどんな働きをしているか解明されていませんでした。

 そこで、膜に含まれるDHAの働きを解明するため、研究チームは遺伝子操作により、酵素LPAAT3を作ることができないマウスを作製。DHAを含む膜が作られない場合、網膜の視細胞と精子にどのような影響が出るのかを調べました。

 その結果、網膜では、目に入った光を電気信号に変える視細胞の一部の形が崩れていることが判明。網膜に光を当てても電気信号が発生せず無反応で、ほぼ視力を失っている状態でした。研究所の進藤英雄・脂質シグナリングプロジェクト副プロジェクト長は、「DHAを含むリン脂質はほかのリン脂質よりも軟らかく、その性質が視細胞の形を維持するのに適しているのだろう」と分析しています。

 一方の精子では、採取した精子の90%が奇形で、頭部に余分な物質が付着し、卵子に侵入するための先端部分が折れ曲がっていました。さらに、通常のマウスではほぼ100%成功する方法で5匹のマウスについて人工授精を試みたところ、すべて失敗しました。

 研究所の菱川佳子・脂質シグナリングプロジェクト研究員によると、精子のもとになる細胞は精巣で周囲の細胞に栄養を供給されながら成長し、最終的に周囲の細胞から切り離されて精子となります。DHAが含まれている膜の軟らかさが、切り離される際に余分な物質を除去するのに適していると考えられるといいます。DHAが含まれていない膜では、余分な物質の除去が正常にできなくなり、重篤な不妊を伴う奇形の精子になるとみられます。

 研究チームは、「人でも同様のことが起こると考えられ、体内でDHAが不足すると、視力低下や男性不妊の原因になる可能性がある」と指摘しています。

 研究所の菱川大介・脂質シグナリングプロジェクト上級研究員によると、DHAが含まれている膜を持つ人の視細胞の一部は常に新しいものに作り替えられ、さらに、DHAは最終的に細胞のエネルギー源として使われるため、DHAを摂取し続けないと体内で必要量が維持できないといいます。

 DHAは植物に含まれるαリノレン酸という物質からも体内で合成することはできるものの、摂取したαリノレン酸が生体で機能できるDHAにどの程度変換されるかは不明。菱川上級研究員は、「魚やサプリメントからDHAを直接取ることが効果的だと思われる」と話しています。

 また、研究チームは今後の目標について、「DHAを補うことや、酵素LPAAT3にかかわる遺伝子をコントロールすることが、視覚機能や生殖機能を改善する治療方法の開発につながる可能性があり、研究を進めていきたい」としています。

 2017年8月13日(日)

 

■がん13種を血液1滴で早期発見、8月中に新検査の臨床研究へ 国立がん研究センター

 国立がん研究センター(東京都中央区)や東レ(東京都中央区)などは、血液1滴で乳がんや胃がんなど13種類のがんを早期発見する新しい検査法を開発し、8月中に臨床研究を始めることになりました。

 国立がん研究センターの研究倫理審査委員会が7月中旬、実施を許可しました。早ければ3年以内に、国に事業化の申請を行うといいます。

 一度に複数の種類のがんを早期発見できる検査法はこれまでなく、人間ドックなどに導入されれば、がんによる死亡を減らせる可能性があります。

 新しい検査法では、細胞から血液中に分泌され、遺伝子の働きを調節する微小物質「マイクロRNA(リボ核酸)」を活用。がん細胞と正常な細胞ではマイクロRNAの種類が異なり、一定期間分解されません。

 国立がん研究センターや検査技術を持つ東レなどは、がん患者ら約4万人の保存血液から、乳房、肺、胃、大腸、食道、肝臓、 膵臓(すいぞう)、胆道、卵巣、前立腺、膀胱、肉腫(にくしゅ)、神経膠腫(こうしゅ)の13種類のがんで、それぞれ固有のマイクロRNAを特定しました。

 血液1滴で、がんの「病期(ステージ)」が比較的早い「1期」を含め、すべてのがんで95%以上の確率で診断できました。乳がんは97%で、触診やマンモグラフィーでは見付けられないような初期の乳がんでも診断可能になっています。

 ただ、保存血液ではマイクロRNAが変質している可能性もあります。臨床研究では、患者や健康な人約3000人から提供してもらった新しい血液を使います。

 乳房や胃、肺、胃、大腸などのがんの早期発見では、エックス線や内視鏡などによる検診が有効とされますが、がんの種類ごとに検査を受ける必要があり、自費で検診を受けると費用もかかります。

 新しい検査法では、診断の確定に精密検査が必要になるものの、国立がん研究センター研究所の落谷孝広分野長は「簡単にがん検診を受けることができるようになるため、がん患者の生存率を上げることができる可能性がある。いずれは、がんのステージや特徴もわかるようになるだろう」と話しています。

 2017年8月13日(日)

 

■安全基準を策定して抗がん剤の残薬活用へ 医療費削減で厚労省

 厚生労働省は11日、使い切れなかった抗がん剤の残薬をほかの患者にも有効活用できるよう安全基準づくりに乗り出す方針を固めました。免疫に働き掛ける「オプジーボ」「キイトルーダ」など高額な抗がん剤が相次いで登場しており、薬の廃棄ロスを減らせば数百億円単位の医療費削減も期待できるといいます。

 厚労省は9月にも、医療機関が残薬を活用した場合の安全性や医療費削減の効果について、多角的な調査研究を始めます。研究結果を踏まえ、今年度中に残薬の活用策を検討していきます。

 液状の抗がん剤は「バイアル」というガラスの瓶に入っており、オプジーボの場合、1瓶100ミリグラム約36万5000円で、患者の体重に応じて使用量を調整します。しかし、例えば30ミリグラム残っても、細菌汚染の恐れがあるとしてメーカー側は使用しないよう注意喚起しています。廃棄すると10万円以上が無駄になる計算です。

 ただ、1瓶から同時に複数の患者へ投与することは、認められています。残薬を活用できるケースはあるものの、今のところ安全基準がなく、多くはそのまま廃棄されます。医療費は廃棄分も含め1瓶単位で請求されるのが一般的で、実際の使用量に見合わない過大な医療費の負担となっています。

 厚労省が始める調査研究では、残薬の活用に関し、1)細菌汚染防止の観点から安全性確保に必要な条件、2)実際に廃棄率が減るかどうか、3)作業が煩雑になり医療過誤に影響しないか、4)廃棄ロス減少のための小瓶の開発可能性、5)複数回の使用を前提とした薬剤開発の在り方などを探ります。研究の成果は残薬活用の安全基準に反映させる方針です。

 残薬を巡っては、別の患者に残薬を使用しても1人に1瓶ずつ使ったことにして医療費を請求しているケースが、確認されています。日本病院薬剤師会の調査では、こうした事案で過大に医療費を受け取っている医療機関が18%にも上りました。

 厚労省は7月末、別の患者に残薬を使用した場合、使用量に応じた医療費の請求を徹底するよう、関係団体や都道府県などに向け通知を出しています。

 2017年8月12日(土)

 

■マダニ感染症を予防するワクチン開発が進行 国立感染症研究所

 草地や野山に生息するマダニにかまれることで主に感染し、致死率が20%ほどとされる重症熱性血小板減少症候群(SFTS)について、国立感染症研究所はワクチンの開発に取り組んでおり、動物での有効性を確認するなど開発を急いでいます。

 重症熱性血小板減少症候群は、ブニヤウイルス科フレボウイルス属に分類されるSFTSウイルスを持つマダニにかまれることで主に発症する感染症で、ワクチンや有効な治療法はなく、昨年は全国で57人の患者が報告されうち8人が死亡、今年は7月26日までに西日本を中心に51人の患者が報告されうち少なくとも8人が死亡しています。

 国立感染症研究所の西條政幸部長のチームは、遺伝子を操作したSFTSウイルスを使ったワクチンと、感染しないよう処理したSFTSウイルスを使ったワクチンの2種類の方法で開発を進めています。

 今後はマウスなどの動物を使い、免疫力が高まるか実験を行うということで、チームでは動物での有効性を確認し、人のワクチンの開発につなげたいとしています。

 西條部長は、「このウイルスをなくすことはできないので、患者を救うために早急にワクチンの実用化を目指したい」と話しています。

 重症熱性血小板減少症候群を媒介するマダニは、フタトゲチマダニやオウシマダニなどのマダニで、固い外皮に覆われた体長3~4ミリと比較的大型の種類。食品などに発生するコナダニや、衣類や寝具に発生するヒョウヒダニなど、家庭内に生息するイエダニとでは種類が異なります。広くアジアやオセアニアに分布し、日本国内でも青森県以南の主に森林や草地などの屋外に生息しており、市街地周辺でも見られます。

 このマダニにかまれることで、重症熱性血小板減少症候群は主に感染し、6日から2週間とされる潜伏期間を経て、発症します。

 発症すると、発熱や、食欲低下、吐き気、嘔吐(おうと)、下痢、腹痛といった消化器症状が現れます。時に、頭痛、筋肉痛や、意識障害、けいれん、昏睡(こんすい)といった神経症状、リンパ節腫脹(しゅちょう)、せきといった呼吸器症状、紫斑(しはん)、下血といった出血症状を起こします。重症の場合は、血液中の血小板が減少して出血が止まらなくなったり、腎臓(じんぞう)の機能が低下したりして死亡することもあります。

 発症時期は、マダニの活動が活発になる4月中旬から11月下旬の春から晩秋にかけて。

 重症熱性血小板減少症候群の予防ワクチンはないため、マダニに刺されないことが、唯一の感染予防法です。

 ポイントは、レジャーや農作業などで、草むらややぶなどマダニが多く生息する場所に入る時は、肌をできるだけ出さないように、長袖(ながそで)、長ズボン、手袋、足を完全に覆う靴などを着用すること。また、肌が出る部分には、人用の防虫スプレーを噴霧し、地面に直接寝転んだり、腰を下ろしたりしないように、敷物を敷くこと。帰宅後は衣類を家の外で脱ぎ、すぐに入浴し体をよく洗って、新しい服に着替えることです。

 万が一マダニにかまれた時は、マダニをつぶしたり、無理に引き抜こうとせず、できるだけ病院で処置してもらうことが大切です。マダニの多くは、人や動物に取り付くと、皮膚にしっかりと口器を突き刺し、数日から長いもので10日間、吸血します。無理に引き抜こうとするとマダニの一部が皮膚内に残ってしまうことがあるので、吸血中のマダニに気が付いた時は、病院で処置してもらって下さい。

 2017年8月12日(土)

 

■半月板損傷、切除せず幹細胞移植で再生へ 東京医科歯科大で治験開始

 東京医科歯科大学は、重い半月板損傷の患者自身の膝関節から幹細胞を採取して培養した後、損傷部分に移植して再生させる臨床試験(治験)を8月から始めたと発表しました。

 半月板損傷の患者は国内に400万人以上いるとみられますが、半月板の損傷が激しいと手術で切除するしか有効な治療法がありませんでした。東京医科歯科大は5年後にも、国の再生医療等製品としての承認を目指すといいます。

 半月板は膝関節の間に挟まる三日月形をした軟骨で、クッションの役割を果たしています。強い衝撃や加齢などによって損傷すると、膝の曲げ伸ばしの際に痛みを感じたり、関節に水がたまったりします。年間約3万5000人の半月板損傷の新規患者のうち、8割が損傷部分を手術で切除していますが、広範囲に切除した場合は関節の軟骨が擦り減る変形性膝関節症の発症リスクがありました。

 治験では、切除が必要なほど半月板の損傷が激しい20歳以上の患者10人を選び、膝関節を包む滑膜の一部を抜き取り、そこに含まれる幹細胞を2週間ほど培養した後、切除せずに半月板の形を修復して縫い合わせた部分に注射で注入。その後は約1年間、MRI(磁気共鳴画像化装置)による検査などで経過観察し、有効性と安全性を確かめます。

 治験を主導する関矢一郎教授(応用再生医学)は2013~2015年、半月板損傷の34~57歳の患者5人に対し、自身の滑膜の幹細胞を培養して膝関節に注入し、経過観察する同様の臨床研究を実施。術後1年で半月板の再生がみられ、関節痛などの症状が改善したといいます。

 関矢教授は、「再生医療製品として承認され、変形性膝関節症を予防する治療につなげたい」と話しています。

 治験への参加希望者は、東京医科歯科大学臨床試験管理センター(03・5803・5612)へ。

 2017年8月12日(土)

 

■昨年の地球の気温、二酸化炭素濃度、海面高が過去最高に アメリカ政府機関が年次報告

  世界の気候に関する年次報告書「気候の状態」が10日に発表され、2016年の地球では気温や海面の高さ、二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガス排出量といった一連の指標で、近代史上最高を記録したことが明らかになりました。

 アメリカの海洋大気局(NOAA)と気象学会(AMS)が毎年発表する年次報告書「気候の状態」の作成には、世界60カ国余りの科学者500人近くが協力。発表された2016年版では、地球温暖化が引き続き進行し、そのペースが緩む兆しもみられないことが一連の主要気候指標から示されたと指摘しています。

 報告書では、「昨年の記録的な暑さの原因は、長期にわたる地球温暖化と、年初に起きた強いエルニーニョ現象が重なったことにある」としています。

 地球表面の平均気温は、これまでで最も高かった2015年よりもおよそ0・1度上がり、3年連続で観測史上、最も暑い1年になったということです。北極の地表面の平均気温は、1981~2010年の年間平均を2度上回っり、1900年の観測開始時から3・5度高くなりました。

 世界の海面の高さは、北極や南極の氷が溶けるなどして上昇。平均海水面は人工衛星での観測が始まった1993年と比較して、8・2センチ上昇し、過去最高を更新しました。

 大気中の二酸化炭素(CO2)濃度は、平均で402・9ppmに達し、近代観測史上で初めて400ppmを突破しました。そのほか、陸地の12%で深刻な干ばつになるなど異常気象が起きています。

 報告書は、「温暖化は人類とすべての生命が直面する最大の問題の1つだ」として、警鐘を鳴らしています。

 2017年8月11日(金)

 

■国内初の慢性便秘症診療ガイドライン、今秋に完成へ 日本消化器病学会

 日本消化器病学会による国内初の「慢性便秘症診療ガイドライン(指針)」が、今秋まとまる予定です。

 日本だけで用いられ、ガラパゴス化していた便秘の分類を、国際基準に合わせて変更します。薬が有効でない便秘や、食物繊維の摂取で悪化する便秘などへの適切な対応が可能になります。

 現状で慢性便秘は、便を送り出す力が低下する「 弛緩(しかん)性」と、ストレスが原因の「けいれん性」、肛門や直腸の働きに異常がある「直腸性」に分類されます。便の回数や量が少ないと、医師は弛緩性と診断することが多く、下剤が必要でない患者にも薬が処方され、副作用が問題になることもありました。

 今回作成された指針は、排便が少なくなる排便回数減少型と、肛門の動きや肛門に近い直腸自体に原因がある排便困難型に分類。2つの型はさらに、2つのタイプに分かれ、それぞれ治療法が異なります。

 まず、排便回数減少型は、食事の内容や量が便秘の要因になっている大腸通過正常型と、腸管の動きが悪く便が腸内に滞りがちな大腸通過遅延型の2つのタイプがあります。

 大腸通過正常型は、多くは食物繊維や食事の量を増やすと改善します。反対に大腸通過遅延型は、食物繊維を増やすとさらに便秘が悪化する恐れがあり、こちらの治療は排便を促す下剤を使います。

 どちらのタイプか正確に見極めるには、専門の検査が必要。20個の小さなバリウムの粒を含む検査薬を服用し、5日後に腹部のエックス線検査を受けます。

 4個以上が大腸に残っていれば大腸通過遅延型、3個以下なら大腸通過正常型と診断します。ただ、この検査は健康保険が使えず、一部の医療機関が研究として、患者から料金を取らず行っています。

 ガイドライン作成に携わった 指扇(さしおうぎ)病院(さいたま市)の排便機能センター長、味村俊樹さんは、「この検査は正確な診断と適切な治療につながり、患者の体への負担も少ない。早急な保険適用を求めたい」と話しています。

 下剤の選択も、新しい指針で大きく変わります。下剤は現状、腸管を刺激して動きをよくする刺激性下剤が多く使われています。しかし、腹痛などの副作用が起こりやすく、島根大学第2内科の木下芳一教授は、「指針では、高齢者に使いやすい非刺激性下剤の推奨度がより高くなっている」と話しています。

 非刺激性下剤は、体に吸収されにくく、大腸にとどまる薬で浸透圧によって腸の中に水分を引き入れ、便を軟らかくして排出を促します。代表的な薬は酸化マグネシウムで、腎機能低下があるとマグネシウムが十分に排出されず、体に悪影響が出ます。そこで、腎機能が低下した高齢者らには、近年発売されたマグネシウムを含まない非刺激性下剤の使用が推奨されます。

 もう一方の排便困難型は、器質性便排出障害と機能性便排出障害の2つのタイプがあります。

 器質性便排出障害は手術が必要なタイプで、直腸が女性器の膣(ちつ)側に膨らむ直腸瘤(りゅう)などが原因で起こり、手術で直腸を元に近い形に戻します。

 機能性便排出障害は、排便しようと息むと逆に肛門が締まったり、肛門近くの直腸の感覚が鈍ったりしているのが便秘の元になっています。これには、肛門の力の入り具合をモニターで見ながら締めたり緩めたりするバイオフィードバック療法や、直腸内で膨らませたバルーンを排出する訓練などの治療法が行われます。

 2017年8月11日(金)

 

■重症低血糖で救急搬送、年2万件に上る可能性 日本糖尿病学会が実態調査

 薬で治療中に血糖値が下がりすぎる糖尿病患者の「重症低血糖」で、年間の救急搬送数が約2万件に上る可能性があることが、日本糖尿病学会による初の実態調査で明らかになりました。

 日本糖尿病学会は、高齢などで低血糖を起こしやすい患者の重症化予防に力を入れるといいます。

 重症低血糖は、集中力の低下や、けいれん、意識消失などを引き起こします。認知症や心臓病、脳梗塞(こうそく)の発症リスクを高め、命にかかわる危険な状態。高齢者は、冷や汗や手指の震え、動悸(どうき)などの軽~中等度の低血糖症状が出にくく、本人も気付かないまま重症化することがあります。

 日本糖尿病学会は2015年7月、糖尿病の診療体制が充実した631施設にアンケートを送付。救急部がある149施設の回答を分析したところ、2014年4月から2015年3月までの1年間の救急搬送数は、1施設当たり4962件で、このうち重症低血糖は0・34%に当たる17件でした。これを全国の救急搬送件数に当てはめるなどして、国内全体で年間約2万件と推計しました。

 調査結果をまとめた兵庫医科大学病院の難波光義院長は、「重症低血糖の原因として、インスリンを注射で補充するタイミングや使用量の誤り、薬の飲み間違いなどが多い。高齢などで発症リスクが高い患者には、服薬指導に加え、生活面も含めた指導を行う必要がある」と話しています。

 2017年8月11日(金)

 

■北九州市の病院で耐性菌に感染し3人死亡 院内感染の可能性

 北九州市の病院で昨年10月以降、ほとんどの抗生物質が効かないとされるカルバペネム耐性腸内細菌科細菌(CRE)と呼ばれる耐性菌に、入院患者4人が感染しているのが確認され、このうち3人が死亡しました。

 北九州市は、院内感染の可能性もあるとみて調べています。

 北九州市八幡西区の東筑病院の10日の発表によりますと、昨年10月から今年7月15日までの間に、入院患者4人がカルバペネム耐性腸内細菌科細菌に感染しているのが確認されたということです。

 このうち、90歳代の女性と、80歳代の男性2人の合わせて3人が今年7月に肺炎で相次ぎ死亡したほか、90歳代の男性が入院して治療を受けていますが、容体は安定しているということです。

 このカルバペネム耐性腸内細菌科細菌は、感染症治療の最後の切り札として使われている抗生物質の「カルバペネム」が効きにくいため、患者の血液や肺に入り敗血症や肺炎などの感染症を引き起こすと、治療が非常に難しくなります。

 北九州市の保健所は、死亡した3人のうち男性2人は東筑病院での院内感染の可能性があるとみて、8月4日に立ち入り検査を行うとともに、感染拡大の防止のため、感染者を個室に移し、約190人の入院患者全員の検査を進めています。

 2017年8月10日(木)

 

■がん治療、75歳以上の高齢者には控える傾向 国立がん研究センターが報告

 国立がん研究センター(東京都中央区)は8日、75歳以上の高齢がん患者に関する報告書をまとめました。がんの種類や進行度によっては、若い世代に比べて治療を受けていない割合が高いことが明らかになりました。

 高齢者の体への負担に配慮して治療法を選んでいるとみられますが、医師の判断に左右される面もあり、高齢者向けの診療指針が求められそうです。

 専門のがん医療を提供する全国の「がん診療連携拠点病院」427施設で、2015年にがんと診断された約70万件の診療情報を調べました。75歳以上が36・5%を占め、平均年齢は68・5歳でした。

 胃、大腸、肝臓、肺、乳がんなどで75歳以上の患者が増加傾向にあり、治療実態が若い世代とは違っていました。

 がんは、ステージ0から4にかけて進行します。例えば早期の状態であるステージ1の大腸がんと診断された40~64歳の患者では、9割以上で手術や内視鏡、抗がん剤などの薬物療法を組み合わせた治療が行われ、治療が行われなかったのは1・6%でした。しかし、75歳以上では3倍近い4・6%、85歳以上では18・1%で治療が行われませんでした。

 大腸がんのステージ3では、75~84歳の約52%、85歳以上の約80%は手術のみでした。40~64歳の約16%とは、大きな差がありました。がんがほかの臓器に転移したステージ4になると、85歳以上は手術のみが約39%で、治療なしが約36%でした。40~64歳は手術のみが約11%、治療なしは約5%で、手術や内視鏡、抗がん剤などの薬物療法を組み合わせた治療が約57%でした。

 肺がん(非小細胞がん)は、85歳以上ではステージ4で見付かる割合が約40%で、治療なしが約58%でした。40~64歳では治療なしは約9%で、薬物療法のみが約49%でした。

 高齢がん患者は糖尿病や高血圧などの持病があったり全身の状態が悪かったりして、若い患者と同じ治療を行うのが難しいとされ、体に負担がかかる手術や抗がん剤の投与などの積極的な治療を控える傾向がうかがわれました。

 調査を行った国立がん研究センターの東尚弘がん登録センターは、「高齢のがん患者にどのような治療を行うかは医師の判断に任されていて、判断を支援するための診療指針の作成が求められる」としています。

 2017年8月10日(木)

 

■がん5年生存率、平均65・2% 国立がん研究センター集計

 国立がん研究センターは9日、2008年に全国のがん診療連携拠点病院209施設でがんと診断された患者の5年生存率は平均で65・2%だったと発表しました。うち188施設については、胃、大腸、肝臓、肺、乳房(女性のみ)の5大がんの施設ごとの生存率をホームページ上に初めて掲載しました。

 集計対象は、厚生労働省が指定する拠点病院(2015年時点で425施設)のうち、90%以上の患者の生死を把握できたなどの条件を満たす209施設。

 2008年に診断を受けた患者延べ約21万4500人が、5年後に生存していた率をまとめたところ、がん以外の原因での死亡の影響を除いた「相対生存率」は65・2%でした。

 がんの部位別の生存率は、高い順に前立腺97・7%、乳房92・7%、子宮体部82・8%、子宮頸部(けいぶ)75・6%、大腸72・6%、膀胱(ぼうこう)71・2%、胃70・4%、食道43・4%、肺39・1%、肝臓38・5%、膵臓(すいぞう)9・9%でした。

 拠点病院の生存率集計が発表されるのは、2007年に診断されたがん全体と5大がんの値に続いて2回目。

 患者から公表の要望が強い施設別生存率について、国立がん研究センターは「がんが進行した患者を多く受け入れているなどの要因で大きく変わる。治療成績そのものを示すわけではない」と指摘し、各施設による見解や進行度別の患者数を併せて紹介しました。

 また、全国の427の拠点施設で2015年にがんと診断された約70万件の診療情報も集計しました。院内がん登録として毎年集計しますが、今回特別に高齢者についての分析もしました。75歳以上は、それ未満の年代と比べてがんと診断されても治療をしない割合が高くなりました。2015年のステージ4の大腸がんでみると、40~64歳で「治療なし」の割合は4・6%、65~74歳は6・7%だったのに対し、75~84歳は14・7%、85歳以上は36・1%と高くなりました。

 がんの部位別で登録数が最も多かったのが大腸で、肺、胃、乳房、前立腺の順でした。

 2017年8月10日(木)

 

■1週間に熱中症で9人死亡、搬送は5681人 9日の搬送は626人

 総務省消防庁は8日、全国で7月31日~8月6日の1週間に9人が熱中症で搬送され死亡したとの速報値を発表しました。搬送者数は5681人で、前週から366人増えました。

 集計によると、死亡したのは山形県、群馬県、新潟県、愛知県、京都府、兵庫県、岡山県、広島県、佐賀県の各1人。3週間以上の入院が必要な重症者は118人、短期の入院が必要な中等症は1786人でした。65歳以上の高齢者は50・7%を占めました。

 都道府県別では、大阪府の525人が最も多く、兵庫県365人、愛知県338人と続きました。

 また、9日は台風5号が伴った暖気の影響で、東日本から西日本の太平洋側では広い範囲で気温が上昇し、各地で今年の最高気温を記録し、熱中症の症状を訴えて搬送された人は夕方までの集計で、626人に上りました。

 気温や湿度などを基に環境省が公表している熱中症の起こりやすさを示した「暑さ指数」を見ると、9日午後1時時点で、関東のほとんどの地点で「危険」「厳重警戒」となっています。環境省は、暑さ指数が「危険」になっている場合、外出はなるべく避けるよう呼び掛けています。

 今年の夏は、部活動中などに熱中症になるケースも相次いでいて、死亡事故も起きています。6日には、北海道札幌市にある北海学園大学の男子学生がアメリカンフットボールの練習中に倒れ、意識不明の状態で病院に搬送されましたが、間もなく熱中症の疑いで死亡しました。気象庁によると、6日の札幌市の最高気温は29・2度でした。

 熱中症のサインとしては、「めまいや顔のほてり」「筋肉のけいれん、筋肉痛」「体のだるさや吐き気」といった症状があるので、まずは、これを見逃さないことが大切。こうした症状が出た場合、涼しい場所で体を冷やしたり、水分とともに塩分を補給したりするなどの対応が必要となってきます。

 ただ、これらの症状が出たとしても、病院に行ったり、救急車を呼んだりするほどなのか、自分では判断が難しい場合もあります。例えば東京都では、「#7119」に電話すると、東京消防庁の救急相談センターにつながり、相談に乗ってもらえるので、こうした機関を利用してみるのもいいでしょう。

 近くに熱中症の症状を訴える人がいた場合、まずは意識がしっかりしているかどうかを確認し、言動がおかしかったり、意識がなかったりした場合は、すぐに救急車を呼ぶことです。その上で涼しい場所に運び、ベルトや衣服を緩めて寝かせ、救急車が来るまでの間は、太い血管がある首筋や脇の下、足の付け根などを氷や冷たいペットボトルなどで冷やすと、より体を早く冷やすことができます。

 熱中症は外だけでなく、屋内でも注意が必要。東京都監察医務院によると、昨年、東京23区で熱中症で死亡した25人のうち、19人が室内で死亡しています。室内でも、水分や塩分をこまめに補給することや、暑さを我慢せず、冷房を使うことが大事。

 熱中症対策は昼間のことだけではないので、夜も油断せず、寝る前に水分をとるなどして、対策を万全にすることが大事です。

 2017年8月9日(水)

 

■受動喫煙、大動脈疾患で死ぬリスク2・35倍に 筑波大が4万8000人を追跡調査

 タバコの煙や他人が吐き出した煙を吸い込む受動喫煙の頻度が高い人は、ほとんどない人に比べ、大動脈解離など大動脈の疾患によって死亡するリスクが2・35倍になるとの調査結果を、筑波大学などの研究チームがアメリカの専門誌オンライン版に公開しました。

 受動喫煙と大動脈の疾患との関係を研究したのは、世界で初めてといいます。受動喫煙が肺がんや心筋梗塞、脳卒中などのリスクを高めることはすでに指摘されていますが、大動脈の疾患との関係性については、これまで解明されてこなかったといいます。

 研究チームは1988~1990年当時に、40~79歳だった全国45地区の4万8677人に喫煙や受動喫煙などについて聞き、その後、平均16年にわたって追跡調査を行いました。調査対象者のうち、大動脈が突然裂ける大動脈解離や、こぶのように膨らんで破裂すると大量出血する大動脈瘤(りゅう)で141人が死亡しました。

 非喫煙者を受動喫煙の頻度に応じて3つのグループに分けて調べると、大動脈の疾患による死亡リスクは、家庭で毎日2時間以上か、職場や飲食店などでほぼ毎日受動喫煙している頻度が高いグループが、受動喫煙のほとんどない低頻度のグループの2・35倍でした。高頻度よりも少ないが受動喫煙の環境にいる中頻度のグループと、低頻度のグループとではほとんど変わりませんでした。

 また、受動喫煙の程度を家庭内と家庭外に分けて調べると、家庭内での受動喫煙の影響よりも、家庭外での受動喫煙の影響が大きいとみられることもわかりました。家庭外での受動喫煙は、主に職場や飲食店での受動喫煙であることから、家庭内よりも多くの喫煙者の煙にさらされると考えられ、影響の違いにつながった可能性が示唆されるといいます。

 厚生労働省の調査によると、非喫煙者の約3〜4割が職場や飲食店で受動喫煙に遭遇していることが明らかになっています。厚労省は2019年9月のラグビーワールドカップの開催に向けて、広さ30平方メートル以下のバーやスナックを除く飲食店や公共施設については原則禁煙として、受動喫煙対策を強化する健康増進法改正案を公表していますが、自民党の一部の議員の猛反発にあって、先の通常国会への提出自体が見送られた経緯があります。

 調査を担当したした山岸良匡(かずまさ)・筑波大准教授(社会健康医学)は、「日本は諸外国と比べて、明らかに受動喫煙対策が遅れをとっている。今回の研究を機に、受動喫煙の有害性が国民の間に広まることを期待している」と話しています。

 2017年8月9日(水)

 

■遺伝性卵巣がんの初の治療薬、来年にも承認へ アストラゼネカ社が開発

 イギリスの製薬大手「アストラゼネカ」の日本法人(大阪市北区)は8日、開発を進めている遺伝性卵巣がんの治療薬について、医薬品を承認審査する独立行政法人、医薬品医療機器総合機構に承認申請したことを明らかにしました。早ければ来年前半にも承認を得て、治療薬の販売を開始することを見込んでいます。

 親から受け継いだ遺伝子が原因で発症する「遺伝性がん」の治療薬の申請は国内では初めて。患者にとって治療の選択肢が広がる一方、家族の発症リスクもわかる可能性があるため、関係学会は家族のケアを含めた適切な診療体制の検討を始めました。

 遺伝性卵巣がんは、生まれ付き「BRCA1」「BRCA2」という遺伝子に変異がある人が発症する卵巣がんで、年に約1万人が新たに患う卵巣がん全体の約10%を占め、悪性度が高く進行も速いのが特徴。遺伝子に変異がある人の発症リスクは、変異がない人に比べて最大で40倍高いとされます。遺伝性がん(腫瘍)にはほかに、大腸や子宮などさまざまな臓器にがんが出る「リンチ症候群」、乳がん、白血病などを発症する「リ・フラウメニ症候群」などがあります。

 遺伝性卵巣がんの治療薬は、「オラパリブ」(製品名:リンパルザ)。遺伝性卵巣がんの再発患者が対象の飲み薬で、欧米では2014年末に承認されました。アストラゼネカの日本法人によると、日本国内の承認申請は7月末までに出されました。

 オラパリブは、がん細胞のみを標的にするため、従来の抗がん剤より副作用が少ないとされます。日本の患者も参加して2013年から同社が行った国際共同臨床試験(治験)では、再発患者のうちオラパリブを服用したグループの196人は、がんが大きくならなかった期間が平均19・1カ月。服用しなかったグループの99人より4倍近く長く、目立った副作用も確認されませんでした。

 患者は薬の使用前に、投薬対象となるか判定するための遺伝子検査を受けます。結果が陽性なら、患者だけでなく家族も同じ遺伝子変異を持つ可能性が生じます。

 日本婦人科腫瘍学会の青木大輔・副理事長は、「婦人科腫瘍専門医への研修を通じ、遺伝を考慮した適切な説明方法を周知し、遺伝カウンセリングの体制の充実を呼び掛けていきたい」としています。

 オラパリブが国内で使えるようになれば、患者にとっては朗報である一方、薬の効き目を調べる遺伝子検査の結果次第では、家族もがん発症の恐れに直面することになり、画期的な薬の登場が新たな課題を突き付けることになります。

 がんになるリスクが事前にわかれば、早めの対策につなげられます。アメリカの女優、アンジェリーナ・ジョリーさんは、母を卵巣がん、叔母を乳がんで亡くし、自ら遺伝子検査を受けBRCA1の変異が見付かりました。この変異は卵巣がんのほか乳がんの原因にもなるため、乳房と卵巣を予防的に手術で切除し、世界で話題を呼びました。

 しかし、がんの発症確率が高いと知ることのダメージは大きく、手術には重い決断も迫られます。日本医学会は指針で、未発症の家族に、丁寧な「遺伝カウンセリング」を行うことなどを医療現場に求めています。

 そのためには患者を支える「認定遺伝カウンセラー」の役割が重要ながら、国内には200人ほどで、3分の1が首都圏に集中。患者と家族が適切なフォローを受けられる診療体制の整備を急ぐ必要があります。

 オラパリブは、遺伝性の乳がんや前立腺がんにも有効な可能性があり、海外では遺伝性がんに効く別の薬も出ています。

 2017年8月9日(水)

 

■手足口病、1週間の患者数が3万人超える 東日本を中心に流行が拡大

 乳幼児を中心に大きな流行になっている「手足口病」は、全国から報告された1週間の患者数が3万人を超え、さらに流行が拡大していることが国立感染症研究所の調査でわかりました。

 専門家は、手洗いなどの対策の徹底を呼び掛けています。

 手足口病は幼い子どもを中心に手や足、それに口の中に発疹ができるウイルス性の感染症で、まれに脳炎などの重い症状を引き起こすことがあり、この夏は全国的に大きな流行になっています。

 国立感染症研究所によると、7月30日までの1週間に、全国約3000の小児科定点医療機関から報告された患者の数は3万1009人で、今シーズン初めて3万人を超えました。

 1医療機関当たりの患者数は9・82人で、過去10年の同じ時期と比べて最も多く、流行が拡大しています。

 都道府県別では、福井県が25・5人と最も多く、次いで新潟県が20・61人、石川県が18・69人などとなっており、東日本を中心に患者の増加が続いています。

 東京都足立区の小児科の診療所では先月以降、毎週10人以上の患者が受診し、昨年の2倍ほどになっているということで、8日も、兄弟そろって感染したり親子で感染したりした患者などが訪れていました。

 3歳と5歳の子供が発症した母親は、「高熱が出た2日後から手や足に発疹ができて痛みとかゆみで眠れず、かわいそうです」と話していました。

 小児科診療所の和田紀之院長は、「手洗いの徹底やおもちゃの共用を避けるなどして、予防に努めてほしい。また、子供がよだれが多くなったり、機嫌が悪くなったりするなどしたら、手足口病を疑って早めに受診してほしい」と話しています。

 2017年8月8日(火)

 

■iPS細胞から輸血用血小板を量産する技術を確立 国内16社が2020年の製品化目指す

 京都大学の研究者らが設立したベンチャー企業「メガカリオン」(京都市下京区)は7日、iPS細胞(人工多能性幹細胞)から止血作用のある輸血用の血小板製剤を大量に作る技術を、ほかの医療関連企業などと共同開発したと発表しました。

 2018年にも、血液中の血小板が減る血小板減少症の患者を対象に、人での安全性や効果を確かめる臨床試験(治験)を日本とアメリカで始め、再生医療製品として2020年の製造販売承認を目指します。

 メガカリオンはすでに、京都大から提供されたiPS細胞から、血小板のもととなる細胞を作って凍結保存し、解凍して培養し、止血作用がある血小板に変化させ、輸血用バッグに詰めて製剤にする技術を持っています。ただし、治療として普及させるのに必要な大量製造の技術を有していませんでした。

 そこで、メガカリオンは大塚製薬工場(徳島県鳴門市)、シスメックス(神戸市中央区)、京都製作所(京都市伏見区)など15社と提携。血小板のもとになる細胞を一度に大量培養する容器や、培養した血小板から不純物を取り除くフィルターを作るなどして、1週間に2000~3000の輸血用バッグを製造する技術を開発できたといいます。

 承認後は、15社以外の別の企業に委託し、血小板製剤の製造工場を建設します。

 国内の血小板の輸血は、年間80万人が受けています。一方で、人口減などで献血者は年々減っており、今後は少子高齢化によって、献血では供給が間に合わなくなると懸念されています。

 メガカリオンによると、iPS細胞を使って血小板を作るコストは献血を使うよりも大幅に安いといいます。冷蔵保存できず4日しか持たない献血由来の血小板に比べ、iPS細胞から作れば無菌化により2週間ほど保存できるため保管コストも安くなります。

 ウイルスなど病原体の混入も防げます。献血に混入したウイルスが薬害エイズ事件やC型肝炎の感染拡大などを引き起こしましたが、iPS細胞で作ればこのリスクを回避できるようになります。

 メガカリオンの三輪玄二郎社長は、「献血不足を補う新たな技術として普及させたい」と話しています。

 2017年8月8日(火)

 

■はしか患者数、昨年1年間を上回る168人に 6割以上は20歳代と30歳代

 はしか(麻疹)の今年の患者数は7月23日までに168人と、関西空港で集団発生があった昨年1年間の159人をすでに上回ったことが6日、国立感染症研究所の調べで明らかになりました。日本は2015年、世界保健機関(WHO)から土着ウイルスが存在しない「排除国」に指定されており、患者は海外で感染したとみられます。

 夏休み中で海外旅行も増えており、厚生労働省は「帰国後は体調の変化に気を配り、不明の場合は検査を受けてほしい」と呼び掛けています。

 国立感染症研究所によると、都道府県別では、山形県53人、三重県22人、東京都19人、広島県11人、大阪府9人の順に患者数が多くなっています。

 山形県では3月、インドネシアのバリ島から帰国した横浜市の20歳代男性が県内の自動車教習所に通っている時に感染が判明し、その後、自動車教習所や男性が滞在していたホテルを中心に感染が広がり、5月に終息するまで患者が相次いで発生しました。三重県では2月に、集団発生を確認。広島県でも2月に発生し、保育園児などに患者が出ました。

 年齢別では、30歳代が33%で最も多く、20歳代が31%、40歳代が12%、10歳代12%の順でした。

 日本はかつて患者数が約20万人に上り、他国から「はしか輸出国」との批判を受けました。2006年に十分な免疫が得られる「予防接種2回」の導入が奏功し、2009年には患者数が732人に激減。患者数が過去最低の35人になった2015年には、世界保健機関(WHO)から「排除状態」と認定を受けていました。

 一方で現在、東南アジアの複数の国ではしかが流行。日本の患者の推定感染地域は今年、インドネシアが最も多く、タイやマレーシア、シンガポールなども報告されています。

 欧州でも流行しており、今年に入りイタリアで3842人の患者が報告され3人の死者も出たほか、ルーマニアでも昨年1月以降、8246人の患者が報告され32人が亡くなりました。

 はしかは「麻疹ウイルス」によって起こる感染症で、その感染力はウイルスの中で最も強く、はしかを発症している人と同じ部屋にいるだけで空気感染することがあります。ワクチン接種を受けていない人は、海外旅行の際にかかる可能性が高くなります。潜伏期間は10~12日間。主な症状は発熱や発疹で、先進国においては滅多に死亡することはありませんが、まれに肺炎や脳炎を合併すると死亡することもあります。

 厚労省は、予防接種を2回受けるよう勧めています。接種歴がわからない人は、医療機関で抗体検査を受けるのが望ましいとしています。日本国内では26~39歳の世代が、ワクチン接種数を1回しか受けていないためにワクチンの効果が十分ではなく、海外ではしかに感染するリスクが高くなります。

 2017年8月7日(月)

 

■幹細胞を使った再生医療で脊髄損傷を治療へ ニプロが2018年の実現を目指す

 医療機器大手のニプロ(大阪市北区)は、神経や軟骨に変化する幹細胞を使った脊髄の再生医療を2018年にも実現することを目指しています。

 患者の骨髄から取り出して増やした幹細胞を体内に戻す治療の試験に、このほど成功し、今秋にも厚生労働省に再生医療製品として承認申請します。これまで損傷した脊髄を治す方法はありませんでしたが、再生医療ならある程度の回復が見込めるため、実用化が加速しそうです。

 ニプロは2014年から、札幌医科大学(札幌市中央区)と共同で研究してきました。幹細胞は体内の傷付いた部分に集まる性質を有し、体内に戻した幹細胞は脊髄の損傷した部分に自然と集まり、神経を再生します。その結果、脊髄損傷により歩けなくなった患者が歩けるようになると期待されています。

 交通事故やけが、スポーツ事故などで脊髄を損傷した場合、手足のまひなど深刻な障害が残ります。リハビリで一部の運動機能が戻ることもありますが、現在、有効な治療法はありません。国内には約20万人の患者がいるとみられ、毎年5000人ほど増えています。今回の治療法は、歩けないなど比較的重症の患者が対象になりそうです。

 ニプロの今後の課題は量産技術の確立で、今のところ技術者が手作業で幹細胞(骨髄由来間葉系幹細胞)を増やしているため、年間100人ぶん程度しか作製できないといいます。生産や検査を自動化する技術の開発を進めているものの、人材をさらに育成できるかが焦点です。

 同じ中枢神経系である脳の疾患への応用も、札幌医科大と共同で研究してきており、すでに脳梗塞の患者で臨床試験を進めています。

 傷付いた神経を再生医療で治療する動きは、国内外で活発になっています。慶応義塾大学の岡野栄之教授と中村雅也教授らは、2018年前半にもiPS細胞(人工多能性幹細胞)を使った脊髄の治療で臨床研究を始めます。バイオベンチャーのサンバイオ(東京都中央区)は、2016年からアメリカで脳梗塞治療の臨床試験を大日本住友製薬と共同で進めています。

 2017年8月6日(日)

 

■無痛分娩、体制を整備して実施すべき 日本産婦人科医会が提言

 日本産婦人科医会は、麻酔を使って陣痛を和らげる無痛分娩(ぶんべん)を実施する医療機関に対し、出血や麻酔合併症などに適切に対応できる体制整備をするよう提言することを決めました。

 同医会が毎年まとめる、産婦人科医らに向けた妊産婦の安全なお産に関する提言に盛り込みます。提言で無痛分娩に言及するのは初めてで、8月末までに正式にまとめる予定。

 全国の産婦人科の医師でつくる日本産婦人科医会は、全国で起きた出産前後の女性が死亡した事例などを検証し、毎年、防止策を提言しており、5日、大阪府吹田市で会合を開いて今年の提言をまとめました。

 提言案では、無痛分娩は陣痛促進剤(子宮収縮薬)や器具を使って新生児を引き出す方法が必要となることが多く、通常の出産とは異なる管理が必要だと指摘。麻酔薬を使うことによる局所麻酔薬中毒など、まれではあるが起こり得る命にかかわる合併症に適切に対応できる体制が必要だとしました。

 お産全体の中で無痛分娩の事故率が高いというデータはありません。ただ、大阪府、兵庫県、京都府などで、無痛分娩による出産で妊婦に麻酔したところ、中毒症状とみられるけいれんが起き、急いで帝王切開を行った新生児が重い障害を負ったり、妊婦が呼吸困難になって死亡したりした事故事例が報告されたため、提言の中で安全策の重要性に言及することにしました。

 日本産婦人科医会の石渡勇常務理事は、「無痛分娩は、通常の分娩とは異なる安全管理が求められ、認識を新たにして体制を整えてもらいたい。異常が発生した時にすぐに蘇生できる体制を整えておくことや、助産師や看護師らも必要な留意点を普段から把握しておくことが必要だ」と話しています。

 2017年8月6日(日)

 

■介護職員の離職率16・7%、人手不足が常態化 平均賃金は上昇

 厚生労働省所管の公益財団法人「介護労働安定センター」は5日までに、2015年10月からの1年間に全国の介護職員の16・7%が退職したとの調査結果を公表しました。

 前年に比べ離職率は0・2ポイント悪化、2015年の全産業平均の15%も上回り、人手不足が常態化している状況が裏付けられました。

 調査は2016年10月に実施し、8993事業所、2万1661人から回答がありました。

 介護職員が介護関係の仕事をやめた理由は、「職場の人間関係に問題があったため」が23・9%、「結婚・出産・妊娠・育児のため」が20・5%、「法人や施設・事業所の理念や運営のあり方に不満があったため」が18・6でした。

 介護職員の過不足を事業所に尋ねたところ、「大いに不足」「不足」「やや不足」を合わせると62・6%で、前年に比べ1・3ポイント増えました。理由は「採用が困難」が73・1%と最も高く、介護労働安定センターは「高齢化に伴う利用者増に、職員の確保が追い付いていない」と説明しています。

 施設長を除く職員の2016年9月時点の平均賃金(月給)は22万4848円で、前年の21万7753円から7095円上がりました。  

 2017年8月5日(土)

 

■医薬品のネット販売サイト、2割以上は副作用情報の提供なし 厚労省が調査

 厚生労働省は4日、一般用医薬品のうち、副作用リスクが比較的高い第一類医薬品を販売するインターネットサイトの23・2%が、販売時に副作用などの情報提供を実施していなかったとする2016年度の調査結果を公表しました。

 2015年度と比べ5・4ポイント改善しましたが、まだ店舗販売での非実施率10・6%の2倍以上となります。厚労省は依然として「ネット販売におけるルールが徹底されていない」とみて、引き続き事業者への改善指導などを行うとしています。

 副作用のリスクが高い第一類医薬品は対面で販売する際、薬剤師が書面を使って、副作用の説明をすることが法律で義務付けられています。ネット販売でも、薬剤師がメールなどで情報提供をする必要があります。

 調査は昨年10~12月に実施。地域や業者が偏らないよう抽出した販売サイトを対象に、厚労省の委託を受けた民間会社の調査員が実際に購入を試みる覆面調査をしました。

 厚労省によると、508の販売サイトのうち、販売時に年齢や、ほかの医薬品の使用状況などの入力を求めていたのは96・3%で、前年度と比べ6・3ポイント増えました。一方、副作用や使用上の注意などに関する情報を提供していたのは、76・8%にとどまりました。店舗販売での情報の提供は、89・4%でした。

 厚労省の担当者は、「情報提供をせずに販売するのは問題だ。ルールを守っていない事業者を都道府県などに伝え、改善させていきたい」と話しています。

 2017年8月5日(土)

 

■新生児の聴覚検査、約10万人が受けず 産婦人科医会が全国調査

 新生児に耳が聞こえないなどの聴覚障害がないか調べるため、国が自治体にすべての新生児を対象に実施を求めている検査について、日本産婦人科医会が全国調査を行った結果、昨年度、回答があった施設だけでも約10万人が検査を受けていなかったことが明らかになりました。

 聴覚の障害は早期に見付けて治療を始めれば影響を小さくできることから、日本産婦人科医会は自治体に対し早急な対応を求めています。

 生まれたばかりの新生児に聴覚の障害があるか調べるため、国は全国の市町村に対して、原則として生後3日以内のすべての新生児を対象に聴覚検査を実施するよう求めています。

 聴覚検査は、新生児にヘッドホンから数分間、小さな音を聞かせ、額やほおに貼った電極で脳波の変化を見て耳が聞こえているか調べます。基本的に出産した施設で実施され、異常が疑われる場合は耳鼻科で精密検査が行われます。

 日本産婦人科医会は全国およそ2400の分娩(ぶんべん)を扱う医療機関を対象に、2016年度の聴覚検査の実施状況を調査し、約76%の施設から回答がありました。

 その結果、回答があった施設で生まれた新生児約73万4000人のうち13・5%に当たる約10万人が検査を受けていなかったことがわかりました。特に北海道、神奈川県、京都府、香川県、千葉県、東京都では、20%を超える新生児が検査を受けていませんでした。

 国は全国の市町村に対して2007年に新生児の聴覚検査を行うよう通知し、聴覚検査の費用は公費で補助できるよう地方交付税交付金として渡しています。しかし実際には、2015年度の時点で費用を補助している市町村はわずか6・8%にとどまっていました。9割以上の市町村では、聴覚検査の費用約5000円を自己負担して受けています。

 日本産婦人科医会は、聴覚検査の重要性を広く認識していないことが背景にあり、検査費用を補助している市町村が1割に満たないという実態が、すべての新生児に聴覚検査が実施されていない状況に影響していると指摘しています。

 日本耳鼻咽喉科学会によりますと、聴覚に障害がある新生児は1000人に1人から2人の割合でおり、遺伝子の変異やウイルスの感染などが原因とされています。早期に発見して治療を開始すれば言葉の発達の遅れが最小限に抑えられ、生活への影響が小さくできることから、新生児の時の検査が非常に重要になるということです。

 聴覚障害がある場合には、生後半年以内に補聴器をつけるほか、症状が重い場合は、耳の中に音声を電気信号に変換する人工内耳を取り付ける手術などが行われます。

 日本耳鼻咽喉科学会の理事で東京大学の山岨(やまそば)達也教授によりますと、声を言葉として認識する脳の神経回路は5歳ごろまでに基礎が形成されるため、聴覚障害の発見が遅れてよく聞こえないまま成長すると、その後に音が聞こえるようになっても言葉を聞き取ったり話したりすることがうまくできず、ふだんの生活への影響が大きくなることがわかっています。

 調査を行った日本産婦人科医会の関沢明彦常務理事は、「およそ10万人の赤ちゃんが検査を受けていない深刻な実態が初めてわかった。検査費用が補助されている自治体では実施率が高い傾向があり、市町村は検査の意義を理解し早急にすべての赤ちゃんが検査を受けられるよう制度を整えるなど対策を行うべきだ」と話しています。

 2017年8月5日(土)

 

■マダニ感染症の患者が前年の1・5倍に急増 51人が感染し、8人が死亡

 マダニなどを介して発症する重症熱性血小板減少症候群(SFTS)の感染が、西日本を中心に急増しています。

 7月26日までに国立感染症研究所に報告があった今年の感染者数は計51人で、前年同期の約1・5倍に上っています。特に九州地方と山口県は、前年同期の約2・8倍の34人に達しており、うち少なくとも8人が死亡しています。

 マダニは体長数ミリ程度で草地や野山に生息し、血を吸うと1センチ以上まで大きくなります。重症熱性血小板減少症候群はウイルスを持つマダニにかまれることで移ると考えられてきたが、昨年夏ごろに発症したとみられる野良猫にかまれて感染し、西日本在住の50歳代の女性が死亡した事例も確認されています。

 8月1日には、大阪府内で初めて60歳代の女性が重症熱性血小板減少症候群に感染したこともわかりました。

 女性は7月14日から4日間、和歌山県の山などに行き、24日、発熱や嘔吐などを訴えて医療機関を受診、現在も入院しているということです。

 国立感染症研究所によりますと、2013年1月に山口県で国内初確認されて以降、今年7月26日までに西日本を中心に21府県で280人の患者が確認され、高齢者を中心に58人が死亡していますが、大阪府内で感染が確認されたのは初めてです。

 大阪府は、野山に出掛ける時は長そで、長ズボンを着用し、虫よけスプレーを使うことなどを呼び掛けています。

 2017年8月4日(金)

 

■厚労省呼び掛け、海外旅行でのはしか感染に注意を 欧州で流行中で死者も

 夏休みを利用した海外旅行が本格化するのを前に、厚生労働省は海外でのはしかの感染に注意するよう呼び掛けを始めました。

 日本人に人気の旅行先である欧州では現在、はしかが流行。厚労省は、「予防接種歴を確認し、不明の場合は抗体検査を受けてほしい」と呼び掛けています。

 厚労省は、人気キャラクター「マジンガーZ」をポスターとリーフレットに採用。はしかは「麻疹(ましん)」とも呼ばれることから、キャラクター名を「麻しんがゼロ」ともじって、海外渡航者に注意喚起します。ポスターは、全国の自治体や検疫所、パスポートセンターなどに配布します。

 国立感染症研究所によると、今年の国内患者数は7月23日までに168人と、昨年1年間の159人を早くも上回りました。日本は2015年、世界保健機関(WHO)から国内に土着のウイルスが存在しない「排除国」に認定され、同年には患者数が過去最低の35人となりましたが、一転し2年連続の増加となります。

 厚労省によると、海外で感染し、帰国後に発症するケースが多く、欧州や中国、インドなどで、感染に注意する必要があるといいます。イタリアでは今年に入り3842人の患者が報告され、3人の死者も出ています。ルーマニアでは昨年1月以降、8246人の患者が報告され、32人が亡くなりました。

 はしかは「麻疹ウイルス」によって起こる感染症で、その感染力はウイルスの中で最も強く、はしかを発症している人と同じ部屋にいるだけで空気感染することがあります。ワクチン接種を受けていない人は、海外旅行の際にかかる可能性が高くなります。潜伏期間は10~12日間。主な症状は発熱や発疹で、先進国においては滅多に死亡することはありませんが、まれに肺炎や脳炎を合併すると死亡することもあります。

 厚労省は、予防接種を2回受けるよう勧めています。接種歴がわからない人は、医療機関で抗体検査を受けるのが望ましいとしています。日本国内では26~39歳の世代が、ワクチン接種数を1回しか受けていないためにワクチンの効果が十分ではなく、海外ではしかに感染するリスクが高くなります。

 2017年8月4日(金)

 

■健康食品摂取で肝障害、過去3年で9件 国民生活センターが注意呼び掛け

 特定保健用食品(トクホ)などの健康食品を飲んだり食べたりしたことで、体質によって重篤な肝障害を起こす場合があるとして、国民生活センターが3日、注意を呼び掛けました。

 「発症はまれだが、倦怠(けんたい)感や発熱、発疹などの症状が続く人はすぐに摂取をやめ、医療機関を受診してほしい」としています。

 国民生活センターが2014年8月から設置している「医師からの事故情報受付窓口」(愛称:ドクターメール箱)に、医師が「健康食品による薬物性肝障害」と診断した事例の報告が今年7月20日までに計9件ありました。すべてが重症で、うち3件は入院。健康食品と医薬品を併用していた人もいました。

 事例によると、今年1月、50歳代の女性は持病の脂質異常症の改善を目的にトクホの粉末青汁を飲んだところ、寒気や頭痛を覚え、肝障害と診断されて34日間入院しました。また、2015年5月、3種のサプリメントを2~3カ月間摂取していた70歳代の女性は、倦怠感や皮膚の変色が現れ、薬物性肝障害で1カ月以上入院しました。

 薬物性肝障害には、中毒性のものと、人の体質によるものがあります。国民生活センターによると、9件はいずれも体質が原因と診断され、健康食品に含まれる成分が肝臓でアレルギー反応などを引き起こして発症したとみられます。9件にかかわった健康食品はそれぞれ異なり、各製品の品質に問題はなく、有害物質や異物の混入も確認されませんでした。

 日本肝臓学会の滝川一副理事長は、「薬や健康食品による薬物性肝障害の多くは、体質が原因。アレルギーや肝臓疾患がある人に起きやすいともいわれるが、年齢や性別を問わず、誰でも発症する可能性があり、重症化し死に至る例もある」としています。

 2017年8月4日(金)

 

■大腸がんの増大、抗がん剤併用で7割に抑制効果 国立がんセンターが確認

 国立がん研究センター(東京都中央区)は2日までに、既存の2種類の抗がん剤を併用する治療法が進行した大腸がん患者で高い効果を示すことを確認しました。医師らによる治験を行い、7割でがんの増大が抑えられたといいます。

 今年度中に大規模な臨床試験を実施し、早期の実用化を目指します。

 大腸がんは、国内で年に13万人ほどが発症し、約5万人が亡くなっています。発症数はがんの中で最も多く、死者は2番目。

 この治療法は、進行した大腸がんの治療に使われる「TAS―102(一般名)」と、がん細胞への栄養供給を絶つ効果があるとされる「ベバシズマブ(一般名)」を併用します。がんが転移して標準的な治療法の効果がなくなった25人の患者で実施し、がんの増大を抑制する効果が約7割の患者に認められ、その効果は中央値で5・6カ月間続きました。

 TAS―102だけを投与する治療では、がんが大きくならなかった患者は約4割で、効果の持続は中央値で約2カ月でした。

 この研究成果は、日本時間7月29日付けでイギリスの学術雑誌「ランセットオンコロジー」に掲載されました。

 今年度中に国内約50施設と協力し、100人の患者を対象にした臨床試験を始める計画です。

 2017年8月3日(木)

 

■人の受精卵のゲノム編集で心臓病遺伝子を修復 アメリカの大学が初成功

 生物の遺伝子を自在に改変できる「ゲノム編集」の技術で人の受精卵の遺伝子を操作し、心臓病の原因となる遺伝子の修復に成功したと、アメリカのオレゴン健康科学大学の研究チームが2日付けのイギリスの科学雑誌「ネイチャー」に発表しました。

 ゲノム編集を人の受精卵に応用する報告は、中国以外では初めてです。

 研究チームは、突然の心臓不全と死亡につながることのある心臓の病気「肥大型心筋症」を引き起こす特定の遺伝子に変異がある精子を、正常な卵子に入れて受精させました。この時、遺伝情報を書き換える特殊な物質を精子と同時に入れたところ、58個の受精卵のうち約72%に当たる42個の受精卵で、異常な遺伝子が修復されたということです。

 片方のみに遺伝子変異のあるカップルの自然妊娠の場合、受精卵が変異を受け継がない確率は50%であることから、今回の手法は変異が生じる確率を大幅に軽減できることになります。

 受精後、5日間にわたって観察した結果、ねらった部位以外での改変はなかったということで、研究チームの代表は、「遺伝性の病気がある人の家族や社会の負担を減らすことができる」と話しています。

 中国の事例では、受精卵が細胞分裂を繰り返した後に、遺伝子を修復できた細胞とできていない細胞がモザイク状に混在する問題が高い確率で見付かりましたが、研究チームの関係者は「大幅に改善した」と話したといいます。改変した受精卵を子宮に戻すことはしませんでした。

 オレゴン健康科学大の研究チームは、2013年に世界で初めて人のクローン胚から胚性幹細胞(ES細胞)を作製したシュークラト・ミタリポフ博士が率いています。

 今回の研究は、ゲノム編集の倫理的な課題などについて、アメリカを代表する科学者でつくるアメリカ科学アカデミーがまとめた勧告に従っているとしていますが、今回の成果は、人の受精卵の改変がどういう条件なら認められるのか、改めて議論を呼びそうです。

 ゲノム編集は5年前に、従来よりもはるかに簡単で正確に遺伝情報を書き換えられる「クリスパー・キャス9」という技術が開発されて以降、幅広い分野で研究が進んでいます。

 この技術を人の受精卵などに応用すると、遺伝性の病気の治療につながると期待される一方、子供が生まれた場合、遺伝子を改変した影響が世代を超えて受け継がれたり、改変で予期しない副作用が起こり得るなど、倫理的な問題があると指摘されています。

 一昨年には中国の大学の研究チームが人の受精卵で遺伝子の改変を行ったと報告し、国際的な議論を呼ぶ中、アメリカ科学アカデミーで中国の研究者なども加わって人の遺伝子にどこまで応用すべきかについて、議論が進められてきました。

 そして、アメリカ科学アカデミーは今年2月、2年近くにわたる科学的な意義や倫理的な問題など幅広い議論の結果をまとめた報告書を発表し、将来的には、ほかに治療の選択肢がなく、その病気にかかわる遺伝子だけを操作することや、数世代にわたる追跡調査や透明性の確保など、厳しい条件のもとで実施を容認し得るとしました。

 今回の研究について、生命倫理に詳しい北海道大学の石井哲也教授は、「アメリカでは受精卵の遺伝子を調べ異常がないものだけを選んで子宮に戻す着床前診断が広く行われている上、第三者から健康な精子や卵子を提供してもらう体制も整っているので、今回の研究が実際の現場で必要とされる可能性は低く、研究の目的に疑問がある。また、今回の研究は、高い確率で遺伝子を改変できる事実を示しているが、ゲノム編集で目や髪の色といったことも自在に操作できるという倫理的に問題がある利用を助長する恐れもある。ゲノム編集は難病の治療に有効な技術になり得るからこそ使い方は慎重になる必要がある。人の受精卵をゲノム編集する研究について、日本には法の規制がないので、国は早急に対応すべきだ」と話しています。

 2017年8月3日(木)

 

■妊娠出産目的の子宮移植、検討チームを設置 名古屋第二赤十字病院

 名古屋第二赤十字病院(名古屋市昭和区)は2日、生まれ付き子宮がなかったり、がんで摘出したりした女性に、妊娠・出産目的で第三者から子宮を移植する「子宮移植」の検討プロジェクトチームを院内に設置したと発表しました。

 国内で子宮移植の実施例はなく、安全面や倫理面で専門家の間では慎重な議論が続いています。

 プロジェクトチームは、5月に発足。産婦人科医や移植外科医、移植コーディネーターの看護師ら8人を中心に構成しています。名古屋第二赤十字病院は、腎移植後に免疫抑制剤を使いながら出産した例が70例以上あり、臓器移植後の妊娠管理に実績があるといいます。

 子宮移植を巡っては、慶応大学が中心となって同様の研究チームを発足させているほか、スウェーデンなど海外で複数の成功例があります。

 一方、手術は提供者(ドナー)への負担が大きいほか、移植後の拒絶反応を防ぐ免疫抑制剤による胎児への影響や、生命維持に必要な臓器ではない子宮を移植してよいかといった課題もあります。

 プロジェクトチームでは今後、こうした安全面や倫理面について協議。サルの子宮移植実験に成功した済生会川口総合病院(埼玉県川口市)の三原誠主任医長をアドバイザーに招いたり、海外の成功事例や現地での研修などについて検討を進めていきます。

 がんによる摘出などで子宮がない出産適齢期の女性は、国内に6万~7万人程度いるとみられます。手術は肉親を含む提供者(ドナー)から子宮を摘出し、患者の女性に移植。女性の卵子と夫の精子を体外受精させ、できた受精卵を子宮に入れて妊娠、出産に導きます。

 山室理・第一産婦人科部長は、「子宮性不妊の方は今まで全く治療法がなかったので、選択肢が増えれば意義深い。移植するだけでなく、胎児に異常がなく、出産後も無事に育つことが目標だ」、「まだ検討を始めたばかりで、臨床研究実施計画書の倫理委員会や日本産科婦人科学会への提出は何年も先になる可能性もある。国内の学会でも慎重論が多く、検討すべき課題が山積みだ」と話しました。

 日本子宮移植研究会の理事長で京都大学の菅沼信彦教授(生殖医療)は、「自分の体で産みたいという女性は多い。希望が実現するよう議論を盛り上げていきたい」と話しています

 2017年8月3日(木)

 

■外国人患者受け入れ8割、入院受け入れ6割に 2015年度の全国医療機関

 2015年度に在日外国人や外国人旅行者を患者として受け入れた医療機関は79・7%に上り、入院患者として扱った医療機関も58・5%に上ることが2日までに、厚生労働省が初めて実施した全国調査で明らかになりました。

 医療通訳を利用した医療機関は一部にとどまっており、訪日外国人が大幅に増える中、体制整備が課題として浮かび上がりました。

 外国人が安心して医療サービスを受けられる体制をつくるため、救急患者を受け付ける病院など3761の医療機関や医療通訳サービス業者、自治体などを対象に調査を実施しました。

 1710の医療機関が寄せた回答によると、2015年度に外国人の外来患者が受診したのは1363カ所、入院患者がいたのも1001カ所に上りました。

 受け入れ人数を把握していた医療機関のうち、半数以上は年間20人以下の受け入れでしたが、500人超のところも9・8%ありました。35・8%の医療機関は、医療費が未収となったことがあったといいます。

 65・3%の医療機関が、日本語でのコミュニケーションが難しい外国人患者がいたと答えましたが、「医療通訳を利用した経験がある」と答えた医療機関は全体の12・7%にとどまりました。現実的には、外国人患者に通訳を自ら確保するよう頼むところが多いといいます。

 医療通訳サービス業者に課題を聞くと、半数以上が「人材確保」を挙げました。また、都道府県や政令指定都市など188自治体のうち、8割以上が受け入れ可能な医療機関数などを把握していませんでした。

 2017年8月2日(水)

 

■手足口病が全国で大流行し、累積患者12万人に 2015年の同時期に次ぐ勢い

 乳幼児を中心に、手足や口の中に発疹ができる「手足口病」が全国的に大流行し、全国約3000の小児科定点医療機関からの報告で、今年の累積患者数が12万5000人に達したことが1日、国立感染症研究所のまとめで明らかになりました。

 7月23日までの1週間で、1医療機関当たりの患者数は8・93人となり、大流行した2015年の同時期に次ぐ勢いとなっています。

 都道府県別では、福井県(21・64人)、大分県(17・6人)、三重県(16・84人)、新潟県(13・14人)で多いのが目立ちました。

 6月下旬では高知県や鳥取県など西日本を中心に流行していましたが、北海道や新潟県など東日本にも大きく広がりました。国立感染症研究所の藤本嗣人室長は、「ピークの時期だと思われるが、患者数が非常に多いので引き続き注意が必要だ」としています。

 手足口病はコクサッキーA6やエンテロウイルス71などのウイルスが原因の感染症で、主にウイルスの付着した手を口元にもっていったり、感染者のせきやくしゃみを吸い込んだりすることで感染します。大人は感染しても発症しないケースが多いとされていますが、5歳以下の子供では夏場に発症することが多く、特に免疫を持っていない2歳以下の小さな子供の間で流行する傾向があります。

 ウイルスに感染すると3日から5日ほどの潜伏期間を経て、手や足、口の中に2ミリほどの発疹が現れるのが特徴で、38度以下の軽い熱が出ることもあります。通常は1週間ほどで回復しますが、まれに髄膜炎や脳炎などを引き起こすこともあり、死亡例も報告されています。

 専門家によりますと、まずはほかの感染症と同じように、トイレの後や食事前など、せっけんと流水でしっかりと手を洗うことが重要だとしています。また、感染者の便からもウイルスが排出されるので、オムツを処理する際には使い捨ての手袋を使うなどしてウイルスを周囲に広げないよう適切に処理することが必要だとしています。

 一方、手足口病にはウイルスに効果のある治療方法やワクチンはなく、症状に合わせた対症療法が中心となります。安静にして治るのを待つことになりますが、注意したいのは脱水症状。

 子供は口にできた発疹の痛みで、食べたり飲んだりすることを嫌がるようになり、脱水状態になることもあるので、十分な水分補給を心掛ける必要があります。食事を軟らかくしたり薄味にしたりと工夫し、ゼリーなど喉ごしのよいものを与えるのがいいでしょう。脱水症状は自覚しにくいので、小さな子供の場合、より注意が必要となります。

 2017年8月2日(水)

 

■足裏用マッサージ器で北海道の女性が窒息死  厚労省が使用中止呼び掛け

 先月、北海道で埼玉県の電機メーカーが製造した足裏用のマッサージ器を首に当てて使っていた女性が、衣服を巻き込まれて窒息死する事故があり、このメーカーの類似の製品でも過去に同様の死亡事故が5件起きていることから、厚生労働省はこのマッサージ器を使わないよう呼び掛けています。

 このマッサージ器は、埼玉県川越市の的場電機製作所が製造した「シェイプアップローラー2」という製品で、突起が付いたローラーが回転し、足裏の凝りをほぐす効果があるとうたっています。

 厚労省によりますと、7月26日、北海道斜里町の77歳の女性がこのマッサージ器のローラーを覆うカバーを外して首に当てて使っていたところ、衣服が巻き込まれて窒息死したということです。

 この的場電機製作所が製造した別の足裏用のマッサージ器「アルビシェイプアップローラー」でも、2014年までの15年間に同様の死亡事故が5件起きており、これまで2種類のマッサージ器について足裏を含めて一切の使用の中止を呼び掛けるとともに、安全装置が付いた製品と有償での交換を進めていました。

 的場電機製作所によりますと、事故が起きた2種類のマッサージ器は、1996年までの13年間に、合わせておよそ78万台が販売されており、このうち交換できたのは1270台にとどまっているということです。この的場電機製作所が現在、販売しているマッサージ器は、カバーを外して使うと停止する装置が付いているということです。

 厚生労働省は流通している製品で事故が起こる可能性があるとして、2種類の製品を使用しないよう呼び掛けています。今回の事故について厚生労働省安全使用推進室の上野清美室長は、「死亡事故が起きているので絶対に使用しないでほしい。もし使う場合でも誤った使い方はせずに、安全に利用してもらいたい」と話しています。

 事故を受けてマッサージ器を製造した的場電機製作所は1日、マッサージ器がどのようにして布を巻き込むのか再現しました。ローラ-を覆う布製のカバーを外した状態で作動させて、エプロンを近付けると、ローラーの軸の部分にエプロンのひもが引っ掛かり、数秒でエプロン全体が巻き込まれました。巻き込まれたエプロンは、電源を切って両手で引っ張ってもなかなか取り出すことはできませんでした。

 的場電機製作所では、5件目の死亡事故が起きた2014年から、2種類のマッサージ器について足裏を含めて一切の使用中止を呼び掛けてきましたが、さらに周知する必要があるとして、1日に会社のホームページを更新して改めて使用中止を呼び掛けています。今後、自治体の広報や掲示板などでも周知していきたいとしています。

 的場電機製作所の原田尚弘常務取締役は、「誤った使い方をせず、使用も中止するよう呼び掛けてきたが、再び事故が起きたことは大変残念だ。周知が不十分で、まだ使い続けている人がいる可能性もあり、今後はより広く、周知を進めて行きたい」と話しています。

 連絡先は、的場電機製作所のフリーダイヤル0120・012251。

 2017年8月2日(水)

 

■iPS細胞を使った創薬、京大が世界初の治験へ 骨の難病が対象

 京都大学iPS細胞研究所の戸口田(とぐちだ)淳也教授らの研究チームは1日、筋肉の中に骨ができる難病「進行性骨化性線維異形成症(FOP)」の治療薬の候補をiPS細胞(人工多能性幹細胞)を使って発見し、近く臨床試験(治験)を始めると発表しました。

 iPS細胞を使った創薬の治験は、世界で初めてとなります。再生医療と並んでiPS細胞の柱の一つである創薬の分野が、本格的に動き出します。

 対象となるのは、タンパク質の一種「アクチビンA」が異常に働くことで、筋肉や腱(けん)、靱帯(じんたい)などの組織の中に骨ができる進行性骨化性線維異形成症で、200万人に1人の割合で発症し、国内の患者は約80人とされます。今まで、根本的な治療薬がありませんでした。

 治験は、京大付属病院などで実施する予定で、同病院の審査委員会は計画をすでに承認。近く実際の患者に候補薬の投与を始めて、安全性や効果を確かめます。

 投与するのは、既存薬の「ラパマイシン」で、臓器移植後の拒絶反応を抑える免疫抑制剤として使われています。研究チームは、進行性骨化性線維異形成症の患者の細胞から作ったiPS細胞をさまざまな細胞に変えて病態を再現し、そこに候補薬を投与する実験などをして、約7000種の物質の中からラパマイシンに絞り込みました。マウスに投与する実験では、病気の進行を遅らせる効果がありました。

 戸口田教授は、「すでにできてしまった骨を取り除くことはできないが、症状をこれ以上悪化させないという効果を確認したい。ラパマイシンはすでに使われている薬。患者に大変喜んでいただけるのではないか」と話しています。

 iPS細胞の応用では、体の組織を作って移植する再生医療と創薬が二本柱として期待されています。再生医療では理化学研究所などがiPS細胞から目の細胞を作り、目の疾病の患者に移植する研究をすでに進めています。心臓病や脊髄損傷でも、人での再生医療を目指す研究が進んでいます。

 もう一方の創薬応用では、今回が初めて人に投与する治験となります。iPS細胞が開発されてから約10年がたち、創薬でも人に投与する段階に達しました。

 京大の別の研究チームは、難病の筋委縮性側索硬化症(ALS)に慢性骨髄性白血病の薬が効果を発揮することを見付けています。京大iPS細胞研究所は武田薬品工業と筋委縮性側索硬化症や糖尿病、がん、心不全、筋ジストロフィーなどの分野で、iPS細胞を使う創薬の共同研究をするなど企業を巻き込んだ動きも進んでいます。

 患者の細胞をもとに作ったiPS細胞からは、病気を引き起こす細胞を実際に作り出すことが可能で、患者の体内を再現できることで、新薬を試す実験が進みます。

 京大iPS細胞研究所長の山中伸弥教授は、「ヒトiPS細胞ができて10年の節目に治験開始の発表をできることをうれしく思う。治験を切っ掛けに創薬研究がますます活発に行われ、ほかの難病に対する治療法の開発につながることを期待している」とコメントしました。

 2017年8月1日(火)

 

■副作用報告漏れ、死亡例含む85例 バイエル薬品、血栓症治療薬などで

  大手製薬会社のバイエル薬品(大阪市北区)は1日までに、血栓症治療薬「イグザレルト」など4製品の副作用に関して、計85件の報告漏れがあったとする最終調査結果を公表しました。

 73件は入院が必要になるなど症状が重く、うち3件は副作用で患者が死亡した可能性がありました。社員が報告義務を理解していなかったケースが多いといい、厚生労働省は業務改善命令などの行政処分を検討します。

 バイエル薬品や厚労省によると、副作用により患者が死亡した可能性があるのは、イグザレルトが2件、抗がん剤「スチバーガ」が1件。ただし、添付文書で注意喚起していた症状などであり、製品の評価に影響はなく回収などは必要ないとしています。

 バイエル薬品がイグザレルトを服用する患者に行ったアンケートで把握した、「鼻血や皮下出血が起こりやすい」など副作用計12件を国に報告していなかったことを受けて、厚労省が5月末に、ほかにも未報告の症例がないか全製品に関する調査を命じていました。

 最終調査で報告漏れが判明したのは、イグザレルトが77件と大半を占め、血栓治療薬「バイアスピリン」が4件、スチバーガが5件、同じく抗がん剤の「ネクサバール」が1件でした。イグザレルトとバイアスピリンを併用していたケースが2件ありました。

 バイエル薬品は、「今回の事態を真摯に受け止め、社員への再教育の徹底など再発防止策を講じる」としています。

 2017年8月1日(火)

 

■コレステロール血症の新診断法を開発 アキレス腱の厚さを超音波で測定

 悪玉コレステロール値が生まれ付き高くなる「家族性高コレステロール血症(FH)」かどうかを、アキレス腱の厚さを超音波で調べて診断できる手法を開発したと、国立循環器病研究センター(大阪府吹田市)などの研究チームが7月31日、明らかにしました。

 エックス線撮影や触診で厚さを診る方法がありますが、腱と皮膚の境界が不明確で測定しにくいほか、開業医などでは撮影装置を備えるところが少ないという問題がありました。超音波検査の機器は設置されていることが多く、家族性高コレステロール血症の早期発見、治療が期待されます。

 家族性高コレステロール血症は、遺伝によって、血液の中を流れる脂質成分である悪玉コレステロール(LDLコレステロール)が異常に増え、高コレステロール血症を発症する疾患で、発症者総数は25万人以上と推定されています。幼い時から動脈硬化が進行して、大動脈弁や冠動脈に動脈硬化が進行すると、階段を上がると胸が痛い、苦しいという症状が出ることがあります。小児期に狭心症、心筋梗塞などの命にかかわる疾患を発症することもあります。

 研究では、家族性高コレステロール血症の患者130人と、糖尿病や高血圧症、脂質異常症の患者計155人のアキレス腱の厚さを超音波で調べて比較、解析し、男性は6ミリ以上、女性は5・5ミリ以上ある場合、家族性高コレステロール血症の可能性が高いとする基準を国内で初めて作りました。

 日本動脈硬化学会指針の次回の改定で、新たな診断法として盛り込みたいといいます。

 2017年8月1日(火)

 

■熱中症で8人死亡、搬送者は5315人 消防庁が集計

 総務省消防庁は1日、全国で7月24~30日の1週間に8人が熱中症で病院に搬送され死亡したとの速報値を発表しました。搬送者数は5315人で、前週の6369人から1054人減少しました。

 集計によると、死亡したのは静岡県、兵庫県、奈良県、岡山県、福岡県、長崎県、熊本県、鹿児島県の各1人。3週間以上の入院が必要な重症は93人、短期の入院が必要な中等症は1789人、軽症は3359人でした。

 年齢別の搬送者数は、65歳以上の高齢者が最多の2673人で、全体の50・3%を占めました。

 都道府県別の搬送者数は、大阪府の458人が最も多く、福岡県388人、兵庫県314人、愛知県287人、東京都250人、熊本県233人、鹿児島県230人、広島県194人、神奈川県193人と続きました。

 発症した場所は、庭を含む「住居」が最多の2087人で39・3%を占め、競技場や野外コンサート会場などの「公衆(屋外)」が721人で13・3%、「道路」が661人で12・4%を占めました。

 消防庁は、適度な休憩や小まめな水分補給といった予防策を呼び掛けています。

 2017年8月1日(火)

 

■国立がん研究センター、希少がんの治療薬を開発へ 中外製薬など製薬11社と共同で

 国立がん研究センター中央病院(東京都中央区)は中外製薬や小野薬品工業など製薬11社と共同で、脳腫瘍の一種を始めとして有効な薬がない希少がんの治療薬を開発します。

 今秋から患者のゲノム(全遺伝情報)を網羅的に解析し、遺伝子などの異常に合わせて最適な薬を探ります。患者数が極端に少ないといった理由で新薬の開発が遅れていますが、遺伝子変異が多くのがんで共通するとの見方があります。幅広く使える新薬の実現も見据えて、産学が連携します。

 新薬の開発には、アステラス製薬や武田薬品工業、エーザイ、杏林製薬、第一三共、大鵬薬品工業、ノバルティスファーマ、ファイザー、ブリストル・マイヤーズスクイブも加わります。

 希少がんは脳腫瘍の一種のグリオーマや軟部肉腫のほか、肺がんや乳がんなどのうち特殊な組織のタイプ、原因不明がんを含み、約200種類あります。それぞれ年間の発症者数が10万人当たり6人未満といいます。

 国立がん研究センター中央病院は今秋から、年間100人の希少がん患者の遺伝子を調査。特定の遺伝子やタンパク質に異常がある人を対象に、10種類程度の治療薬候補をもとに臨床試験(治験)を始めます。今年度内に、西日本の研究施設として京都大学医学部附属病院も参加する予定です。

 希少がんの治療薬は開発に力を入れるだけの市場がないとされ、製薬会社も積極的ではありませんでしたが、ゲノム解析の技術が進歩し、がんの種類にかかわらず、その原因となる遺伝子変異が見付かる例も出てきました。

 複数の希少がんに共通する遺伝子変異に効く薬ができれば、対象の患者数は増えます。すべての希少がんを合わせると、患者数はがん全体の約15%を占めるといいます。希少がん以外のがんにも有効ならば、市場はさらに広がります。

 こうしたことから、製薬各社は国立がん研究センター中央病院と前向きに連携します。同センターは2014年、「希少がんセンター」を立ち上げ、年間1000~1500人の希少がん患者を診ています。2015年からは遺伝子検査室を設け、ゲノムをもとに患者一人ひとりに合う医療に取り組んでいます。

 同センターの中釜斉理事長は、「希少がん患者の全体的把握は困難を極め、薬の開発も遅れている。積極的に新しい薬を開発していきたい」としています。

 2017年7月31日(月)

 

■乳がん検診、高濃度乳房の見逃しリスク通知へ 厚労省が体制整備

 厚生労働省は乳がん検診で異常を見付けにくい「高濃度乳房」と判定された場合、受診者に知らせる体制を整備する方針を決めました。病気ではないが、がんの見逃しリスクが高くなることを伝え、注意を促すのがねらいい。

 本年度中にも通知方法を定めた指針をまとめ、自治体が行う乳がん検診で活用してもらいます。

 高濃度乳房は、日本人女性の約4割を占めるとされ、特に30~40歳代の若い女性に多くみられます。乳がんが検診で見逃される一因となっているため、患者団体から通知するよう要望が出ていました。

 乳房は乳腺濃度が高い順に、「高濃度」「不均一高濃度」「乳腺散在」「脂肪性」の4タイプに分けられます。乳がん検診で標準的に使われているマンモグラフィー検査(乳房エックス線撮影検査)では、乳腺もがんも白く写るため、高濃度だと見分けにくくなります。

 国の現在の乳がん検診指針は、本人に知らせるのは「要精密検査」か「異常なし」という結果のみで、乳房タイプの通知までは求めていません。一部市町村は独自に、乳がん検診の受診者に高濃度など乳房タイプを通知しています。

 2017年7月31日(月)

 

■メタボ検診、初めて受診率が50%を超す 約2706万人が2015年度に受診

 40~74歳を対象とした特定健康診査(メタボ健診)の2015年度の受診率が50・1%となり、2008年度の開始以来、初めて50%を超えたことが30日、厚生労働省のまとめで明らかになりました。

 ただ、国は生活習慣病の予防に向け受診率70%を目標に掲げており、達成にはなお遠い状況です。

 メタボ健診では腹囲が男性なら85センチ、女性なら90センチ以上で、血圧や血糖などの値が基準を超えるとメタボリック症候群と判定します。2015年度の対象者は約5396万人で、このうち受診したのは約2706万人。受診率は前年度の48・6%から1・5ポイント増えました。

 公務員らが加入する共済組合では75・8%、大企業の社員ら向けの健康保険組合では73・9%と、目標の受診率70%を超えました。

 一方で、中小企業の従業員らが加入する協会けんぽは45.6%、市町村が運営し自営業や無職の人らが入る国民健康保険は36・3%で、いずれも前年度より上昇したものの、低迷しています。

 受診率の高い共済組合や健保組合でも、加入者のうち配偶者ら家族の受診率は40%台にとどまっています。

 健診の結果、心筋梗塞や脳卒中の危険性が高まるとされるメタボリック症候群やメタボ予備軍と指摘され、特定保健指導が必要となったのは約453万人。このうち実際に指導を受けたのは約79万人の17・5%で、こちらも目標の45%に届きませんでした。

 2017年7月31日(月)

 

■生殖補助医療研究での受精卵作製を国に初申請 大阪市内の民間クリニック

 大阪市内の民間クリニックが不妊治療のため、未成熟の卵子を体外培養して受精卵を作り、どの条件なら受精率が向上するかを調べる基礎研究を国に申請していることが明らかになりました。国は生殖補助医療などに限定して、人の受精卵を作ることを認める倫理指針を策定しており、今回は指針に沿った初の申請となります。

 関係者によると、大阪市内の民間クリニックが今年1月、厚生労働省と文部科学省に申請しました。両省は31日の審議会で、研究内容が倫理指針に適合しているかどうかの審査を始めます。

 未成熟の卵子を特殊な培養液に入れて受精できる段階まで育て、顕微授精させる技術は「体外成熟培養(IVM)」と呼ばれ、卵子が卵巣内で育ちにくい多嚢胞(たのうほう)性卵巣症候群などの患者を対象に多くの不妊治療クリニックが実施しています。しかし、卵巣内で成熟した卵子よりも受精率や妊娠率が低いといった課題が指摘されています。

 今回の研究では、培養液などの異なる条件で複数の卵子を育て、受精率が高い方法を探る目的があります。

 人の受精卵は倫理的な問題から、研究目的に作ったり実験に使ったりすることは原則禁止されていますが、政府の総合科学技術会議(当時)は2004年、生殖補助医療研究などに限っては容認しました。これを受け、厚労省と文科省は2010年、精子や卵子は無償提供、作った受精卵を人や動物の子宮に戻さない、受精卵は受精後14日以内に原則廃棄するなどとする倫理指針をまとめました。

 31日から始まる審議会では、研究に協力するカップルのインフォームドコンセント(十分な説明に基づく同意)や、クリニックの研究態勢が妥当かどうかについて検討します。

 不妊治療クリニックで広く実施されている体外成熟培養は、自由診療のため1回当たり10万円程度の費用がかかる一方、妊娠率は通常の顕微授精より低いとされています。今回の研究によって、より効果的な培養手法が確立されれば、不妊に悩むカップルにとっては朗報になります。

 しかし、生命の萌芽(ほうが)とされる受精卵を、生殖目的ではなく研究目的で作ることは、倫理問題をはらみます。国の指針では受精後14日以内に受精卵を廃棄することが定められており、命の可能性を絶ってしまうことになります。

 人の受精卵を研究材料として扱うことが許されるのは、余った受精卵から再生医療に使う胚性幹細胞(ES細胞)を作る研究と、生殖補助医療研究の2つに限られています。前者はすでに多くの研究機関で進められていますが、生殖補助医療研究での申請は今回が初のケース。国民の理解を得るためにも審査の透明性を図る必要がありますが、31日の審議会は非公開で、情報公開の課題も抱えます。

 生殖補助医療に詳しい北海道大の石井哲也教授(生命倫理)は、「生命倫理の問題があり得る研究にもかかわらず、審議を非公開とするのは問題だ」と指摘しています。

 2017年7月30日(日)

 

■ダニ媒介感染症、今年すでに258人が発症 国立感染症研究所が集計

 草むら、やぶ、森林など野外に生息するダニが媒介する感染症のうち、国内で確認されている6疾患の患者が今年7月9日までに、昨年同期の約1・3倍となる計258人に上っていることが、国立感染症研究所の集計などで明らかになりました。

 南アメリカ原産で強い毒を持つ「ヒアリ」が問題となっていますが、野外での活動が増え、薄着となる夏はダニにかまれやすい季節。厚生労働省は自治体に通知を出し、注意を喚起しています。

 北海道南部に住む70歳代男性は6月中旬、発熱や意識障害などのため函館市の医療機関を受診、意識障害などのため入院しましたが、7月初旬に死亡しました。男性の体にダニにかまれた痕(あと)は確認できなかったものの、血液検査の結果、「ダニ媒介脳炎」だったことがわかりました。ダニ媒介脳炎の患者が確認されたのは1993年、2016年に続き3人目で、死亡は2人目。いずれも国内でマダニにかまれたとみられます。

 厚労省によると、ダニが媒介する感染症のうち、国内で患者が確認された6疾患は回帰熱、重症熱性血小板減少症候群(SFTS)、ダニ媒介脳炎、日本紅斑熱、ツツガムシ病、ライム病で、患者数は日本紅斑熱が107人、ツツガムシ病が98人、重症熱性血小板減少症候群が44人、ライム病が6人、回帰熱が2人、ダニ媒介脳炎が1人。

 いずれの疾患も病原体を保有するダニにかまれることで感染し、発熱や頭痛などの症状が出ます。高熱や発疹を伴うものもあり、放置すると死亡することもあります。

 厚労省は、「ダニにかまれてから数日~2週間ほどで発熱などの症状が出た場合は、早めに医療機関を受診してほしい」と呼び掛けています。

 2017年7月30日(日)

 

■アメリカの大学が人の受精卵にゲノム編集 「国内初」と科学誌が報じる

 アメリカのマサチューセッツ工科大(MIT)が発行する科学誌「テクノロジー・レビュー」は27日までに、オレゴン健康科学大学の研究チームがアメリカ国内で初めて、生物の遺伝子を自由に改変できる「ゲノム編集」の技術を人の受精卵に対して使ったと報じました。

 同様の研究は、中国で複数の実施例がありますが、受精卵段階で遺伝子を改変して子宮に戻すと、子供に異常が起こる可能性があるほか、改変の影響が子孫に受け継がれます。特に、ねらった遺伝子だけを置き換えることができるゲノム編集の技術を使うことについては、安全や倫理問題から、問題視する見方が世界で広がっています。

 アメリカ科学アカデミーは「技術的課題がある」として、現時点での実施には否定的です。アメリカ政府も、公的研究費を配分していません。

 テクノロジー・レビューによると、研究チームは「クリスパー・キャス9」という技術を数十個の受精卵に対して使い、病気の原因となる遺伝子を安全に、効率よく修復できるかどうかを確かめました。だが、どの遺伝子に修復を加えたかなど、詳細は不明としています。

 中国の事例では、受精卵が細胞分裂を繰り返した後に、遺伝子を修復できた細胞とできていない細胞がモザイク状に混在する問題が高い確率で見付かりましたが、研究チームの関係者は「大幅に改善した」と話したといいます。今回の研究では、改変した受精卵を子宮に戻すことはしなかったといいます。

 オレゴン健康科学大の研究チームは、2013年に世界で初めて人のクローン胚から胚性幹細胞(ES細胞)を作製したシュークラト・ミタリポフ博士が率いています。

 日本では、政府の生命倫理専門調査会が昨春、ゲノム編集技術を一部の基礎研究に限るとする報告書をまとめました。包括的な研究規制のルール作りに向けて、今月から専門家による検討を始めました。

 ゲノム編集は、生物の姿や形、特性などを決めるゲノム(全遺伝情報)を人為的に改変する技術。ゲノムはDNA(デオキシリボ核酸)で構成され、生命活動に必要なタンパク質を作る情報はDNA内の遺伝子が持っています。特殊な物質を使ってDNAの一部を切り取ったり、その部分に新たなDNAを組み込んだりすることで、遺伝子の働きを改変させます。従来の技術より効率よく遺伝子を組み換えられ、低コストで時間も短縮できます。

 2017年7月29日(土)

 

■子宮頸がんワクチン未接種でも、副作用と同じ症状15例 厚労省の部会で報告 

 子宮頸(けい)がんワクチンを接種した女性の一部が全身の痛みや記憶力の低下など副作用とみられる症状を訴えている問題について議論している、厚生労働省の有識者検討部会は28日、こうした症状に詳しい小児科医4人からの聞き取りをしました。

 聞き取りでは、ワクチンを接種していなくても同様の症状があったとする計15例の報告があり、回復の経過などを検討しましたが、ワクチン接種と症状の因果関係などの議論は進みませんでした。

 検討部会は今後、2013年6月からワクチン接種が推奨されなくなったことの影響を、データや論文から調べるとしています。

 この日の部会で、国立障害者リハビリテーションセンター病院の田島世貴・小児科医長は、過度の眠気や痛み、まぶしさを訴えた事例を紹介。原因について「身体・物理的なストレスだけでは症状は出ない。発達の特性、免疫、代謝の弱さなどがあると、ストレスがスイッチになっていろいろな機能が破綻するのではないか」との見方を示しました。

 また、心身両面での治療に取り組んでいるという岡田あゆみ・岡山大准教授は、「治療は日常生活の質を上げることが中心。原因を知ろうと検査を繰り返すと治療期間が長引いてしまうので、どこかで転換が必要だ」と指摘しました。

 子宮頸がんワクチンを巡っては、国は2013年4月に定期接種化しましたが、副作用とみられる被害を訴える女性が相次ぎ、6月に「積極的勧奨」を中止。一方、世界保健機関(WHO)は子宮頸がんワクチンの接種を推奨。日本産科婦人科学会などの学術団体は、「確固たる有効性が示されている」として積極的勧奨の再開を求めています。

 2017年7月29日(土)

 

■ヒアリで国内初被害、福岡市で作業員が刺され発疹 中国からのコンテナに30匹

 環境省は27日、福岡市東区の博多港から博多区の倉庫に運ばれたコンテナ内で南アメリカ原産の強毒アリ「ヒアリ」が新たに見付かり、30歳代の男性作業員が左腕を刺されたと明らかにしました。

 病院で診察を受けたところ、刺された周囲に赤い発疹が確認されましたが、軽症。「クラゲに刺されたような痛みを感じた」と話しているといいます。

 環境省によると、国内で人がヒアリに刺される被害が確認されたのは今回が初めてだということです。

 福岡市によると、男性は27日午前、中国から貨物船で運ばれてきたコンテナから積み荷を取り出す作業中、段ボール箱を持っていた左腕に痛みを感じ、ヒアリに気付きました。手で払いのけた後、コンテナ内の床の上を調べ、約30匹のヒアリを発見しました。

 運送事業者がコンテナを密封し、殺虫剤でヒアリを駆除した後、専門家が死骸を調べ、ヒアリと同定しました。2匹のサナギを含む約30匹はすべて働きアリで、繁殖につながる女王アリは確認されませんでした。

 コンテナを載せた貨物船は18日に中国・広東省の蛇口港を出発し、23日に博多港に入りました。コンテナは24日に福岡市東区のコンテナターミナルに陸揚げされた後、東区の運送事業者の敷地内に置かれ、27日に博多区の倉庫へ移されていました。

 博多港では、今月21日に約40匹のヒアリを初めて確認。その後も100匹以上が見付かっています。

 ヒアリには体の末端に毒針があり、刺されると激しい痛みとともに皮膚がはれ上がります。まれに急性のアレルギー反応「アナフィラキシー」で死亡する例もあります。

 2017年7月28日(金)

 

■JT発表、2017年の喫煙者率18・2% 推計喫煙人口は1917万人に

 日本たばこ産業(JT)は27日、1965年以降毎年実施している「全国たばこ喫煙者率調査」について、2017年の結果を公表しました。

 この調査は、全国の成年男女を対象に約3万2000人に依頼したもの。有効回答は1万9875人(有効回答率61・9%)で、男性は9804人、女性10071人でした。

 その結果、2017年5月時点の全国の喫煙者率は、男女計で18・2%(前年比1・1ポイント減)になり、2年連続で過去最低を更新しました。健康意識の高まりや、喫煙を巡る規制の強化、製品の値上げなどで、喫煙者率の下落は続いています。

 男女別では、男性は28・2%(前年比1・5ポイント減)、女性は9・0%(前年比0・7ポイント減)でした。

 地域別の喫煙者率では、男性は東北(35・4%)がトップで、北海道(32・5%)、関東(28・2%)の順、女性は北海道(16・9%)がトップで、近畿(10・1%)、関東(9・2%)の順でした。

 喫煙者率から全国の喫煙人口を推計すると、男女計で1917万人(前年比110万人減)になり、男性は1426万人(前年比72万人減)、女性は491万人(前年比37万人)でした。

 また、毎日たばこを吸う人の1日当たりの平均喫煙本数は、男性が18・1本、女性が14・7本となっています。

 2017年7月28日(金)

 

■他人の脂肪から抽出した幹細胞を投与し、肝硬変治療 新潟大学など初治験へ

 新潟大学とロート製薬(大阪市生野区)は27日、他人の脂肪の間葉系幹細胞を使って肝硬変を改善させる、国内初の臨床試験(治験)を9月にも始めると発表しました。

 2年間で15人に実施、肝硬変治療薬として2020年度の国の承認を目指します。

 肝硬変は、C型肝炎ウイルスの感染や栄養過多による脂肪肝などで組織が線維化して硬くなり、肝機能が低下します。国内の患者数は、推定40万人。治療法はなく、悪化すれば肝移植が必要です。

 治験対象は、中等度の肝硬変の患者。ロート製薬が、提携する医療機関から患者の同意を得て脂肪の提供を受け、間葉系幹細胞を抽出して培養します。新潟大学は、この間葉系幹細胞を患者の静脈に点滴で投与します。5カ月後まで4回検査を行い、改善度合いを確認します。

 治験責任者の寺井崇二・新潟大学教授(消化器内科)によると、肝硬変のマウスに行った実験では、線維化した組織が溶け、肝臓の修復が確認されたといいます。

 寺井教授は、「この治療は患者の負担が少なく、肝移植に替わる治療につなげたい」と期待しています。

 小林英司・慶応大学特任教授(臓器再生医学)は、「肝移植以外に根治療法のない病気に挑むことは意義がある。透明性をもって治験を進めることが大切だ」と話しています。

 投与する間葉系幹細胞は、脂肪のほか骨髄などに含まれていて、骨や軟骨、脂肪に変化するほか、体の組織を修復する機能もあるとみられており、幹細胞が分泌するタンパク質などの働きで肝臓が軟らかくなり再生するとみられます。

 2017年7月28日(金)

 

■RSウイルス感染症の流行、例年より早く始まる 1週間の患者1778人

 乳幼児に重い肺炎などを引き起こす可能性がある「RSウイルス感染症」の流行が例年より早く始まり、専門家が感染予防を呼び掛けています。

 RSウイルス感染症は、発熱やせきなど風邪に似た呼吸器症状を起こす病気で、初めて感染した乳幼児や高齢者を中心に気管支炎や肺炎を起こしやすくなります。生後6カ月以内の乳児や早産児、慢性肺疾患や先天性心疾患などの基礎疾患を持っている乳幼児は重症化しやすいとされ、さらに生後4週未満では突然死(乳幼児突然死症候群)につながる無呼吸が起きやすく、注意が必要です。

 例年、秋から冬に患者が増え、夏期は患者が少ない状態が続いていましたが、近年、7月ころから増加傾向がみられるなど、流行の立ち上がりが早まってきている傾向がみられています。

 国立感染症研究所によると、7月16日までの1週間に、全国約3000の小児科定点医療機関から報告があった患者数は1778人で、同じ時期を比較すると過去10年間で最多。北海道で251人、神奈川県で235人、沖縄県で134人と多く、道や県はホームページなどを通じて注意喚起を行いました。

 RSウイルスの付いた物を触ったり、せき、くしゃみなどの飛まつを吸い込んだりして移ります。RSウイルス感染症は治療薬などがなく、予防が中心。

 国立感染症研究所感染症疫学センターの木村博一・第6室長は、「今は地域的だが、全国に広がる可能性があるため、手洗いやマスクの着用で予防してほしい」と話しています。

 2017年7月27日(木)

 

■平均寿命、男性80・98歳、女性87・14歳で過去最高更新 男女とも世界2位

 2016年の日本人の平均寿命は男性が80・98歳、女性が87・14歳で、ともに過去最高を更新したことが27日、厚生労働省の調査で明らかになりました。前年からの延びは男性0・23歳、女性0・15歳でした。

 過去最高の更新は、男性が5年連続、女性が4年連続。男女差は、前年から0・08歳縮まり6・16歳になりました。

 「3大死因」と呼ばれるがん、心疾患、脳血管疾患に加え、肺炎などで亡くなる人が減少傾向にあるためで、厚労省は「医療技術の進歩や健康志向の高まりで寿命はまだ延びる余地がある」と分析しています。

 厚労省が情報を把握する50カ国・地域の平均寿命をみると、男女とも1位は香港、2位は日本でした。香港の平均寿命は男性が81・32歳、女性が87・34歳。日本の男性は前年2位だったアイスランド、3位だったスイスを抜いて、4位から2位に上がり、女性は2位を維持しました。

 厚労省は毎年、各年齢の人が平均何年生きられるかを表す「平均余命」の見込みを計算。平均寿命は、その年に生まれた0歳の子供が何年生きられるかを示しています。 

 統計を取り始めた1947年の平均寿命は男性50・06歳、女性53・96歳でしたが、医療技術の進歩や公衆衛生の向上などに伴い、右肩上がりで延びました。今年4月公表の将来推計人口では、平均寿命のさらなる上昇が見込まれ、2065年に男性で84・95歳、女性で91・35歳に達する可能性が示されました。

 2016年生まれの日本人では、75歳まで生きる人の割合は男性75・1%、女性87・8%。90歳まで生きる人の割合は男性25・6%、女性は49・9%で、いずれも過去最高でした。

 将来どの死因で亡くなるかをみた場合、がんの死亡割合が男性29・14%、女性20・35%と最も高く、平均余命を男性で3・71歳、女性で2・91歳縮めています。ほかの死亡率は老衰を除き、男女とも心疾患、肺炎、脳血管疾患の順。大半は年々低下していますが、女性のがんは微増傾向にあります。

 2017年7月27日(木)

 

■職場での障害者虐待972人、給料搾取や暴言 2016年度、前年度より13%減る

 2016年度に雇用主や職場の上司から給料の搾取や暴言、わいせつ行為などの虐待を受けた障害者は972人に上ったことが27日までに、厚生労働省の調査で明らかになりました。前年度に比べ151人(13・4%)減少しました。

 調査結果は障害者虐待防止法に基づいて公表されており、今年で5回目(1回目は2012年10月~2013年3月の半年間)。厚労省労働紛争処理業務室は、「障害者虐待防止法の周知により、適切な労働管理が進んでいる」とした上で、「規模の小さい事業所では障害者の雇用経験が乏しく、理解が進んでいない。雇用管理に周知啓発を行っていく」としています。

 調査は、虐待の通報や情報提供があった全国の1316事業所について、都道府県の労働局が事業所に出向くなどして事実確認を行いました。

 虐待の事実を確認し、是正指導などを行ったのは、全国の581事業所。賃金未払いや最低賃金を下回る額で働かせるなどの「経済的虐待」を受けたのが852人と最も多く、暴言や差別的言動などの「心理的虐待」が115人、「身体的虐待」が57人、性的虐待が6人でした。

 障害の種別では、知的障害が530人と最も多く、精神障害は234人、身体障害は209人、発達障害は20人でした。

 虐待例では、飲食サービス業に勤めていた知的障害のある九州地方の20歳代男性が上司から暴言や物を投げつけるなどの暴力を受けたり、聴覚障害のある東北地方の60歳代男性が上司から「下手くそ」「辞めろ」などと手話で示されたり、卸売り業で働く知的障害のある20歳代女性がプレゼントと引き換えに、上司ら複数の男性から性的関係を強いられたりしました。

 事業所を業種別でみると、製造、医療・福祉、卸売り・小売りの順に多くなっています。規模は従業員50人未満が8割を占め、1000人以上も2カ所ありました。 

 2017年7月27日(木)

 

■ウコンの成分を利用し、がんの進行を大きく抑制 京都大がマウス実験で成功

 カレーの香辛料ターメリックとしても知られる「ウコン」の成分を利用し、がんの進行を大きく抑えることにマウスの実験で成功したとする研究結果を、京都大学の研究チームがまとめました。

 抗がん作用は以前から知られていましたが、効果を強める方法を開発したといいます。新たながん治療薬の開発が期待される成果で、神戸市で開かれる日本臨床腫瘍学会で27日に発表します。

 このウコンの成分は「クルクミン」と呼ばれるポリフェノール化合物で、大腸がんや膵臓(すいぞう)がんの患者に服用してもらう臨床試験が国内外で行われています。ただし、有効成分の大半が排せつされるため血液中の濃度が高まらず、効果があまり出ないという課題がありました。

 研究チームの掛谷秀昭教授(天然物化学)らは、排せつされにくく、体内で有効成分に変わるクルクミンの化合物を合成。有効成分の血中濃度を従来の約1000倍に高めることに成功しました。

 人の大腸がんを移植したマウス8匹に化合物を注射したところ、3週間後の腫瘍の大きさが、治療しない8匹のマウスの半分以下に抑えられました。目立った副作用も、確認されませんでした。

 掛谷教授は「安全性が高く、既存の抗がん剤と遜色(そんしょく)ない効果も期待できる」とし、京大発のベンチャー企業と組んで抗がん剤としての開発を目指す方針。

 柴田浩行・秋田大学教授(臨床腫瘍学)は、「これまで難しかった血中濃度を高め、効果を示したのは画期的な成果だ。今後は、注射で投与する方法の安全性を検証する必要がある」と話しています。

 2017年7月26日(水)

 

■セブンーイレブン、麦茶5400本を自主回収 中四国で販売、乳成分混入

 大手コンビニチェーンのセブンーイレブン・ジャパンは25日、中国地方と四国地方の一部の店舗で販売した麦茶に、パッケージに表示していないアレルギー物質の乳成分が混入していた恐れがあるとして、約5400本を自主回収すると発表しました。

 発表によりますと、セブンーイレブン・ジャパンが回収するのは、7月21日から24日にかけて中国地方と四国地方の岡山、広島、島根、鳥取、山口、徳島、香川、愛媛、高知の9県にある約1600の店舗で販売した自主企画商品「セブンプレミアム 麦茶 1L」(紙容器)のうち、賞味期限が8月4日の商品、約5400本。

 この商品を購入した広島県内の客から24日、「麦茶が濁っている」という連絡があり調査した結果、パッケージには表示していないアレルギー物質の乳成分が混入していたことがわかったということです。

 この麦茶を製造委託した協同乳業の広島県内の工場で、麦茶の製造ラインと牛乳の製造ラインをつなぐ、配管のバルブが緩んでいたことが原因とみられるということです。今のところ、健康被害の情報はないということですが、乳成分に対するアレルギーのある人は飲まないよう注意を呼び掛けています。

 商品を購入した人は、麦茶を製造した「広島協同乳業」(広島県北広島町)に着払いで送れば、代金を返すということです。問い合わせの電話番号は、親会社の協同乳業(東京都中央区)のお客様相談室、0120-369-817と0120-186-258で、午前9時から午後5時まで受け付けています。

 2017年7月26日(水)

 

■収入に関係なく高学歴ほど循環器疾患リスクが低率 アメリカの調査で判明

 アメリカの約1万4000人を20年以上追跡した大規模調査を、ミネソタ大学の久保田康彦・客員研究員(公衆衛生学)が分析したところ、生涯で心筋梗塞(こうそく)や脳卒中になるリスクは収入に関係なく高学歴の人ほど低いという結果が導き出され、収入よりも学歴が健康格差を生む可能性が浮かび上がりました。

 分析結果は、アメリカの医学専門誌電子版で発表されました。

 45~64歳の男女1万3948人を学歴や収入でグループ分けし、45~85歳までに心筋梗塞、心不全、脳卒中といった循環器疾患を発症するリスクを算出しました。

 学歴別にみると、最終学歴が高いほど循環器疾患の発症リスクは下がり、大学院卒また専門職大学院卒が36・1%と最も低くなりました。高校中退の発症リスクは50・5%と2人に1人。高卒の41・7%に比べ約10ポイントも高く、高校教育を終えたかが健康格差の分かれ目となることがうかがわれました。小中学校卒は55%、専門学校卒は39・7%、大学卒または中退は39・2%でした。

 高校以上を卒業しているかどうかと収入の高低による循環器疾患の発症リスクを比べると、高卒以上で低収入のほうが、高卒未満で高収入よりもリスクが低くなりました。

 大阪医科大学の本庄かおり教授(社会疫学)は、「今後、教育が健康に影響を与えるメカニズムの解明が必要になる」と話しています。

 2017年7月26日(水)

 

■拡張型心筋症の再生医療で臨床研究を開始  岡山大学病院

 「拡張型心筋症」という重い心臓病の子供から心臓の筋肉の元になる特殊な細胞を取り出し、培養した後に体に戻して治療しようという再生医療について、岡山大学病院の王英正教授などの医療チームが患者を対象にした臨床研究を始めました。

 正常な心臓と比べて心筋が薄く伸び心臓全体が拡張し、全身に血液を送り出す機能が弱まる拡張型心筋症という重い心臓病の子供が対象で、カテーテルという細い管を使って患者本人の心臓からわずかな組織を取り出して、中に含まれる心臓の筋肉の元になる「幹細胞」を培養し、体に戻して治療しようというものです。

 安全性や効果を確かめる、患者を対象にした臨床研究が始まり、25日岡山大学病院で熊本県の7歳の女児から組織を取り出す手術が行われました。約1カ月半をかけて細胞を培養した後、心臓の周りの冠動脈に流し込んで戻すということです。

 拡張型心筋症は、症状が進むと心臓移植しか助かる方法がありませんが、国内では特に子供が移植を受けられる機会が少なく、新たな治療法が求められています。動物を使った実験では、血液を送り出す力が約5%改善したということです。

 医療チームは18歳未満の31人の患者を対象に臨床研究を行い、早ければ4年後の保険適用を目指したいとしています。

 この拡張型心筋症の子供に対しては、大阪大学の医療チームが足から取り出した筋肉の元になる細胞を培養し、シート状にした上で心臓に貼り付ける再生医療の研究を行っていますが、今回の方法は、細胞を取り出す時も戻す時もカテーテルを使い、胸を開く手術が必要ないため体の負担が少ないということです。

 岡山大学病院の王教授は、「国内で心臓移植を必要とする子供の4人に3人はこの病気とみられる。再生医療で症状が進むのを抑えたり、移植を受けなくても普通の生活を送れるようにしたい」と話しています。

 2017年7月25日(火)

 

■うつ病や糖尿病の高齢者、7割超が多剤処方を受ける 東京都民130万人を分析

 うつ病や糖尿病と診断された75歳以上の人の7割超が、5種類以上の薬の「多剤処方」を受けているとの調査結果を、東京都健康長寿医療センター研究所(東京都板橋区)などの研究チームがまとめました。

 23日からアメリカのサンフランシスコで開かれている国際老年学会議で、発表する予定です。

 調査は、長期入院していない75歳以上の東京都民約130万人の診療報酬明細書(レセプト)のデータを分析。2014年5~8月に処方された慢性疾患の薬128種類(約5000剤)と、高齢者に多い7種類の病気の関係を調べました。

 5種類以上の多剤処方を受けた人の割合は、うつ病で76%、糖尿病で73%に上りました。関節症・脊椎障害は66%、不眠症は65%、脂質異常は58%、認知症は54%、高血圧は52%の割合でした。

 糖尿病の人は72%が高血圧、50%が脂質異常を合併し、うつ病の人は高血圧や不眠症を抱える割合が6割でした。

 加齢で体の不調が増えると処方薬も増えがちですが、高齢者は薬を分解する機能が低下して副作用が出やすくなります。5種類以上の薬を服用すると転倒の危険性が高まるとの研究報告もあります。

 東京都健康長寿医療センター研究所の石崎達郎研究部長は、「うつ病では睡眠薬や抗不安薬が追加されやすく、糖尿病はほかの病気の合併が多いと考えられる。定期的な処方の見直しや、必要な薬の飲み忘れ対策も大切だ」と話しています。

 2017年7月25日(火)

 

■京都薬科大など、iPS細胞から大量の脳免疫細胞を作製 アルツハイマー治療に応用も

 人のiPS細胞(人工多能性幹細胞)から、脳内の不要物を取り除く免疫細胞を一度に大量に作製することに成功したと、京都薬科大学とシンガポール科学技術研究庁の国際研究チームが発表しました。アルツハイマー病などの治療に役立つ可能性があるといいます。

 この免疫細胞は、脳内の「掃除細胞」として知られるミクログリア。アルツハイマー病の原因とされる「アミロイド β(ベータ)」などの異常タンパク質を食べ、発症や進行を抑える働きがあると考えられています。しかし、誕生前の一時期しか作られないため、研究に利用するのが難しいという問題がありました。

 京都薬科大の高田和幸准教授(病態生理学)らは、人のiPS細胞から、ミクログリアのもとになる免疫細胞と、神経細胞の2種類を作製。これらの細胞を混ぜて培養するとミクログリアに変化し、試験管内でアミロイドβを食べることも確認しました。論文は、アメリカの科学誌「イミュニティ」電子版に掲載されました。

 高田准教授は、「アルツハイマー病などの研究開発への応用が期待される」と話しています。

 河本宏・京都大学教授(免疫学)は、「さまざまな病気の治療が期待できる重要な成果だ。人の体内で正常に機能するかどうかは、さらに検証する必要がある」と話しています。

 2017年7月25日(火)

 

■熱中症、先週全国で6369人搬送 先々週より1311人減、死者は6人

 総務省消防庁は25日、各地で梅雨明けし西日本や東日本を中心に猛暑となった17~23日の先週1週間に、熱中症で全国の6369人が病院に搬送されたとの速報値を発表しました。各地で真夏日や猛暑日を観測するなど、気温が高い日が続いた10~16日の先々週1週間の7680人から、1311人減りました。

 北海道、宮城県、滋賀県、奈良県、岡山県、沖縄県の6道県で計6人が死亡しました。

 集計によると、3週間以上の入院が必要な重症者は142人、短期の入院が必要な中等症は2177人、軽症は3969人でした。

 年齢別では、65歳以上の高齢者が3199人で50・2%を占めたほか、18歳から64歳が2192人、新生児や乳幼児を含む18歳未満が978人でした。

 都道府県別では、福岡県が485人で最も多く、大阪府423人、東京都417人、埼玉県360人と続きました。発症した場所は、庭を含む「住居」が最多の41・9%に上りました。

 5月1日からの累計では、搬送された人は2万6441人(速報値)に達し、前年同期より約3割多くなっています。

 消防庁は、「気温が上がらない日でも熱中症になる恐れがある」と指摘し、小まめな休憩や水分補給などの予防策を取るよう呼び掛けています。

 2017年7月25日(火)

 

■マダニ感染症、猫から感染し西日本の女性死亡 ほ乳類を介しての死亡は初

 厚生労働省は24日、野良猫にかまれた50歳代の女性がマダニが媒介するウイルスによる感染症「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)」を発症し、10日後に死亡していたと発表しました。かまれたことが原因とみられ、ほ乳類を介して人が死亡したことが判明した世界初のケースとしています。

 厚労省や国立感染症研究所によると、女性は西日本に在住。昨年、衰弱した野良猫を動物病院に連れて行こうとして手をかまれました。数日後に、SFTSを発症したといいます。女性がダニにかまれた形跡はなく、国立感染症研究所は野良猫が最初に感染し、女性に移したとみています。

 厚労省は今年6月以降、SFTSウイルスに感染し、発症した飼い猫と飼い犬も確認しました。同省の担当者は、「ペットへの感染はまれで屋内だけで飼育する猫にリスクはないが、ペットにダニ駆除剤を施すと予防につながる」と話しました。

 厚労省は、弱った動物と接する際は手袋などの感染防止策を講じるよう呼び掛けています。

 SFTSウイルスを媒介するのは、草むらなど野外に生息するマダニで、屋内にいるイエダニなどからは感染しません。SFTSの初期症状は、発熱やだるさなど。5~6日後に意識障害や出血などが起きることがあります。死亡することもあり、致死率は約20%とされています。特効薬はなく、熱を下げるなどの対症療法が中心となります。

 国内では4年前に初めて確認され、これまで西日本を中心に266人の患者が報告され、このうち57人が死亡しています。死亡例はすべて50歳代以上で、高齢者が重症化しやすいと考えられています。シカやイノシシなどからも、SFTSウイルスに感染していたことを示す抗体が見付かっています。

 2017年7月25日(火)

 

■6月の熱中症搬送3481人、高齢者が半数 発症場所は自宅が約3割で最多

 総務省消防庁は24日、熱中症により6月に全国で3481人が病院に救急搬送されたと発表しました。前年の6月より77人少なくなりました。

 昨年よりやや減ったのは、梅雨入りで天候の悪い地域があったほか、西日本は平年より気温が低かったためとみられます。

 集計によると、静岡県で1人が死亡したほか、3週間以上の入院が必要な重症は59人、短期の入院が必要となる中等症は1146人。発症場所は、庭を含む「自宅」が32・3%で最も多く、「道路」が15・1%、競技場や野外コンサート会場などの「公衆(屋外)」が13・3%でした。

 都道府県別では、東京都の232人が最多。大阪府の224人、沖縄県の200人が続きました。人口10万人当たりでは、沖縄県の13・95人が最も多く、次いで奈良県の5・57人、岡山県の5・15人でした。年齢別では、ほぼ半数を65歳以上の高齢者が占めました。

 今後は全国的に暑い日が続く見込みで、消防庁は涼しい場所での休憩や、小まめな水分補給を呼び掛けています。

 2017年7月25日(火)

 

■国立がん研究センター、8月から新検査の臨床研究 がん13種を血液1滴で早期発見

 国立がん研究センター(東京都中央区)や東レなどは、血液1滴で胃がんや乳がんなど13種類のがんを早期発見する新しい検査法を開発し、8月から臨床研究を始めます。

 国立がん研究センターの研究倫理審査委員会が7月中旬、実施を許可しました。早ければ3年以内に、国に事業化の申請を行うといいます。

 一度に複数の種類のがんを早期発見できる検査法はこれまでなく、人間ドックなどに導入されれば、がんによる死亡を減らせる可能性があります。

 新しい検査法では、細胞から血液中に分泌され、遺伝子の働きを調節する微小物質「マイクロRNA(リボ核酸)」を活用。がん細胞と正常な細胞ではマイクロRNAの種類が異なり、一定期間分解されません。

 国立がん研究センターや検査技術を持つ東レなどは、がん患者ら約4万人の保存血液から、乳房、肺、胃、大腸、食道、肝臓、 膵臓(すいぞう)、胆道、卵巣、前立腺、膀胱、肉腫(にくしゅ)、神経膠腫(こうしゅ)の13種類のがんで、それぞれ固有のマイクロRNAを特定しました。

 血液1滴で、がんの「病期(ステージ)」が比較的早い「1期」を含め、すべてのがんで95%以上の確率で診断できました。乳がんは97%で、触診やマンモグラフィーでは見付けられないような初期の乳がんでも診断可能になっています。

 ただ、保存血液ではマイクロRNAが変質している可能性もあります。臨床研究では、患者や健康な人約3000人から提供してもらった新しい血液を使います。

 乳房や胃、肺、大腸などのがんの早期発見では、エックス線や内視鏡などによる検診が有効とされますが、がんの種類ごとに検査を受ける必要があり、自費で検診を受けると費用もかかります。

 新しい検査法では、診断の確定に精密検査が必要になるものの、国立がん研究センター研究所の落谷孝広分野長は「いくつものがん検診を受けなくてすむ。いずれは、がんのステージや特徴もわかるようになるだろう」と話しています。

 黒田雅彦・東京医科大学主任教授(分子病理学)は、「欧米でもマイクロRNAを使った病気の早期発見を目指す研究が盛んだが、今回ほど多数の患者で解析した例はなく、非常に有用だ」と話しています。

 2017年7月25日(火)

 

■ヒアリ発見相次ぎ、殺虫剤の販売急増 メーカーも増産対応

 強い毒を持つ南アメリカ原産のヒアリが各地の港湾などで相次いで見付かり、定着が心配される中、アリを対象とした殺虫剤の販売が急増し、メーカーも生産態勢を強化しています。

 東京都品川区にあるホームセンターでは、7月に入って近くにある大井ふ頭でヒアリが確認されたことを受け、アリを対象とした殺虫剤の売り場を増やしました。

 この店舗では、アリ用の殺虫剤の売り上げが7月10日からの1週間で昨年の同じ時期より10倍以上になったほか、グループ全体でも例年の2倍近くに上っているということです。

 ホームセンターの店長は、「当初は業務用での購入が多かったが、最近では一般の人の購入も増えている」と話していました。また、訪れた客は、「子供が夏休みに入ったばかりなので、しっかり対策をとりたい」と話していました。

 こうした状況を受けて、アリ用の殺虫スプレー「アリアース」や巣を丸ごと駆除する設置型殺虫剤「アリの巣コロリ」を手掛けるアース製薬では、7月の出荷量は前年同月の2倍に増え、工場では勤務シフトを工夫するなどして増産対応をとっています。

 また、消費者の関心が高いとして、ホームページでヒアリへの殺虫剤の効果を示す台湾で行った試験の動画も公開しています。

 ヒアリへの対策について、環境省は「むやみに殺虫剤を使うと在来種のアリを減らし、ヒアリが侵入しやすくなる恐れもある」と指摘していて、ヒアリのようなアリを見付けたら、触ったり、自分で駆除したりせず、環境省や自治体などに通報するよう呼び掛けています。

 2017年7月23日(日)

 

■中年期までの体重増、5キロ程度でも重大な慢性病リスクに ハーバード大学などが研究

 成人の多くは、年齢を重ねるごとに体重の増加を経験しますが、中年期までの5キロ程度の体重増で重病リスクが大きく跳ね上がるとの研究論文が18日、発表されました。

 ハーバード大学の科学者らによると、成人期の少しの体重増加でも「2型糖尿病、循環器疾患、がん、非外傷性死といった重大慢性疾患の複合指標における罹患(りかん)率の大幅上昇と関連付けられた」ことが示されたといいます。論文は、アメリカの医師会雑誌「ジャーナル・オブ・ザ・アメリカン・メディカル・アソシエーション」に掲載されました。

 研究は、1976年から2012年まで9万2000人以上を対象に追跡調査したデータに基づいています。対象者らは、女性では18歳、男性では21歳から、それぞれ55歳までの体重増加について自己申告しました。期間中、大半の人で体重の増加がみられ、女性では平均10キロ、男性では平均8・6キロ増えていました。

 論文によると、若年成人期から55歳までの体重増が2・26キロ以内の人との比較で、5キロ以上体重が増えた人には、心臓疾患といった健康問題の著しい増大に直面していることが確認できました。論文は、「体重が5キロ増えるごとに、2型糖尿病リスクは30%増大した」と指摘しています。

 そのほかにも、高血圧が14%、心血管疾患が8%と、それぞれで健康リスクは上昇していました。さらに、肥満に関連したがんの罹患率リスクも6%の増加を示しました。たばこを一切吸ったことがない人でも、早死にのリスクは5%高くなりました。

 これらの結果を受け、論文は「体重増加の値と慢性病リスクの増大には関連性がみられた」と記しています。

 2017年7月23日(日)

 

■受け入れ先が見付からず、治療後も入院継続の虐待児356人 小児科医が全国調査

 親から暴行や育児放棄などの虐待を受けて医療機関に入院した子供のうち、医学的な問題がないにもかかわらず入院の継続を余儀なくされた子供が2016年までの2年間に356人いたことが、小児科医の研究チームの調査で明らかになりました。

 21日までに前橋赤十字病院小児科の溝口史剛医師ら3人が調査の報告書を公表し、入院中に保護者から新たな虐待を受けた子供が28人いたことも、明らかになりました。

 虐待や養育力の不足などを理由に、子供が治療後も退院できない「社会的入院」については、厚生労働省も十分に実態を把握できていないため、退院後のゆき先を決める全国の児童相談所への調査を今年度中に進め、対策を検討します。

 研究チームの調査では、社会的入院などの現状を調べるため、全国の963医療機関を対象にアンケート調査を行い、454施設が回答しました。

 その結果、2015~2016年に虐待を受けた子供計2363人の入院が確認されました。このうち治療が終わったにもかかわらず5日間以上、退院できなかった子供が509人(21・5%)いました。

 さらに詳しく調べると、医学的に何ら問題がないにもかかわらず、親元に帰せず、受け入れ先の乳児院や児童養護施設、里親が見付からずに入院を続けた子供が356人に上ることが判明。頭部の外傷などにより退院後も医療ケアが必要で、受け入れ先がないため退院させられない子供も143人いました。

 研究チームは、詳細な報告があった126人ぶんの状況を分析。退院できなかった期間は、2週間未満が58人、2週間以上1カ月未満が31人、1カ月以上が37人で、中には9カ月近く、退院できなかった子供もいました。また、子供の年齢は、1歳未満の乳児が71人で過半数の56%を占めたほか、小学校入学前の幼児が30人(24%)、小学生が14人(11%)、中学生以上が11人(9%)となっています。

 報告書では、「2週間を超えて社会的入院が続くことは、大いに問題。病院に長く居続けると、心や体の発達に悪影響を及ぼす恐れがあり、早急に受け入れ先の施設などを拡充すべきだ」と指摘しています。

 一方、今回の調査では、入院時に付き添った保護者による新たな虐待の発生状況も調べました。その結果、2015~2016年に28人が院内で虐待を受けていました。期限を設けず保護者による院内虐待について調べたところでは、65人の事例が確認されました。このうち35人は、死亡につながりかねない重度の虐待でした。

 治療の終わった子供が退院できない大きな理由の1つに、児童相談所が扱う虐待の件数が急増し、受け入れ施設がなかなか見付からない現状があります。

 厚労省によりますと、児童相談所が対応した虐待の件数は、2015年度には過去最多の10万3000件余りに達し、5年前のおよそ1・8倍に増加しています。虐待を理由に、子供を親元から一時的に引き離す「一時保護」の件数も、1万7800件余りに上り、子供が多い都市部を中心に、虐待を受けた子供を預かる一時保護所や児童養護施設などの空きがなくなるケースが増えています。2015年度には、全国8カ所の一時保護所で平均の入所率が100%を上回り、19カ所で80%を超えています。

 児童相談所の職員の負担が年々大きくなっていることも、退院できない子供がいる要因の1つです。虐待の対応件数は、2015年度までの10年間で3倍に急増した一方、現場で対応に当たる児童福祉司の人数は、およそ1・5倍の増加にとどまっています。

 2017年7月23日(日)

 

■資生堂、ボディーソープ136万個を自主回収 香りに異常

 資生堂は21日、香りに異常が見付かったとして、国内外で販売しているボディーソープなど23商品の一部、計約136万個を自主回収すると発表しました。使用しても安全性や洗浄機能に問題はないといいます。

 対象となるのは「クユラ ボディーケアソープ」や「専科 パーフェクトバブル フォーボディー」、「ばら園 ローズボディーソープRX」など一般向けに販売した16商品と、ホテル向けなど業務用7商品で、今年1月から7月にかけ久喜工場(埼玉県久喜市)で製造した商品の一部。

 「通常と違う香りがする」と消費者から指摘があり、発覚しました。工場の管理体制に不備があり、製造工程で原料に空気が入って酸化し、通常とは異なる香りになったとみられます。健康被害の報告は受けていないといいます。

 該当する商品名と製造番号は、専用の電話窓口や資生堂のウェブサイトから確認できます。国内販売ぶんの99万個のほか、中国や香港、台湾、韓国で販売したぶんについても回収します。

 製造番号や氏名、住所などを伝え、商品を送付すると返金されます。問い合わせは、ボディー用洗浄料回収窓口0120・20335

 2017年7月21日(金)

 

■エイズ死者数100万人、ピーク時のほぼ半数に 国連合同エイズ計画が報告

 AIDS(エイズ、後天性免疫不全症候群)による世界中での昨年の死者数は約100万人で、ピークだった2005年のほぼ半数に減ったとする国連合同エイズ計画(UNAIDS)の報告が20日、発表されました。

 エイズ関連死は2005年には190万件でしたが、2016年はその約半数の100万人でした。また、HIV(エイズウイルス、ヒト免疫不全ウイルス)の新規感染者数も、最多だった1997年の約350万人から、昨年は180万人とほぼ半減しています。かつて世界有数のエイズまん延地域とされたアフリカ東・南部での感染者の減少が、顕著だといいます。

 フランスのパリで23日に開幕するエイズ関連の学術会議を前に発表されたデータによると、HIVの新たな感染者とエイズによる死者数が減っていることに加え、生命維持治療を行っている患者の数がかつてなく増えています。

 国連合同エイズ計画によると、2016年は世界のHIV感染者3670万人のうち、約53%の1950万人が治療を受けることができていました。HIV感染者の半数以上が抗ウイルス薬を複数組み合わせて飲む抗レトロウイルス療法を受けていたのは、初めて。抗レトロウイルス療法ではHIVを死滅させるのではなく、その増殖を抑えます。

 国連合同エイズ計画のミシェル・シディベ事務局長は、「2020年までに3000万人に治療を施すとの目標達成が軌道に乗りつつある。エイズを制御することができるようになり、保健衛生面での効果も改善し、各国も以前より強くなっている」と述べました。

 国連は、2030年までにエイズの流行を終わらせるとの計画を掲げ、全患者に抗レトロウイルス療法を行うことを目指しています。

 1980年代にエイズの発症例が拡大し始めて以来、これまでに計7610万人がHIVに感染し、約3500万人がエイズにより死亡しています。

 2017年7月21日(金)

 

■無痛分娩の6割近くが診療所で実施 欧米は大病院主流

 麻酔を使って出産の痛み和らげる無痛分娩(ぶんべん)について、昨年度実施された約2万1000件のうちの6割近くが「病院」より規模の小さな「診療所」で行われているという調査結果を、日本産婦人科医会がまとめました。

 産婦人科医会は、「状態が急変した際に、地域の医療機関と連携する態勢づくりが必要だ」としています。

 無痛分娩は、出産の際に麻酔をかけ陣痛を和らげる分娩方法で、近年、産後の回復が早いなどの利点から高齢妊婦の多い都市部を中心に人気が高まっています。一方で、背中に入れた細い管から麻酔薬を注入する硬膜外麻酔という手法が多い問題から、妊婦が死亡するなど重大な事故も起きています。

 このため、日本産婦人科医会は今年6月に初めての実態調査を行い、対象となった約2400の施設の約4割から回答を得て、中間的なまとめを行いました。その結果、2016年度、約40万6000件の出産に占める無痛分娩の割合は5・2%とここ数年増加傾向にあり、その6割近くが病院よりも規模の小さい診療所で行われていたということです。

 無痛分娩が普及する欧米では、産科医、麻酔科医、新生児科医がそろった大病院で行うのが主流ですが、国内では小規模の医療機関に広がっていました。

 無痛分娩を巡っては、最近、大阪府、兵庫県、京都府の4医療機関で計6件の産科麻酔を巡る事故が発覚しましたが、6件のうち5件が診療所での事例でした。

 日本産婦人科医会の石渡勇常務理事は、「無痛分娩は適切に行えば安全だが、麻酔による中毒症状や合併症を引き起こす可能性がある。診療所では対応しきれないケースがあるので、地域の医療機関と連携する態勢づくりが必要だ」と話しています。

 日本産婦人科医会ではさらに詳しい分析などを加えて、最終的な報告書をまとめることにしています。

 2017年7月21日(金)

 

■都道府県の健康格差が拡大、平均寿命に最大3・1歳の隔たり 全体の平均寿命は4・2歳延伸

 2015年までの25年間で平均寿命は4・2歳延びた一方で、平均寿命が最も長い県と短い県の差が0・6歳広がったことが20日、東京大学の研究成果で明らかになりました。

 健康で過ごせる期間である健康寿命の地域間の差も0・4歳拡大しました。こうした健康格差の拡大の原因は解明できておらず、東大の渋谷健司教授(国際保健政策学)は「医療の質や生活習慣など詳細な研究が必要」と指摘しています。

 研究は、東京大学大学院の国際保健政策学教室がアメリカのワシントン大の保健指標・保健評価研究所と共同で、実施しました。成果は20日、イギリスの医学誌ランセットに掲載されました。

 厚生労働省などのデータを使って分析したところ、男女合わせた日本人の平均寿命は1990年の79・0歳から2015年の83・2歳まで4・2歳上昇しました。

 ところが、都道府県別では1990年に最も平均寿命が長い長野県(80・2歳)と短い青森県(77・7歳)の差は2・5歳でしたが、2015年には最も長い滋賀県(84・7歳)と最も短い青森県(81・6歳)の差は3・1歳で、25年間で差は0・6歳広がっていました。

 健康で過ごす期間を示す健康寿命も、1990年の70・4歳から2015年の73・9歳まで延びました。ところが、都道府県別では1990年に最も長い長野県(71・5歳)と最も短い高知県(69・2歳)の差は2・3歳でしたが、2015年には最も長い滋賀県(75・3歳)と最も短い青森県(72・6歳)の差は2・7歳で、0・4歳拡大しました。

 こうした健康格差について、1人当たりの医療費や人口当たりの医師数などのほか、生活習慣などのリスク要因との関係を分析しましたが、関係性は見いだせませんでした。

 一方、年齢調整した人口10万人当たりの死亡率は、1990年の584・1人から2015年の414・8人まで29%減少。心臓病やがんの死亡率が下がったためですが、2005年以降は低下率が鈍化しているといいます。

 病気になる要因は、2015年でみると食習慣や喫煙など生活習慣が最も高く、次いで高血圧や高コレステロールなどメタボリック症候群関連でした。

 特に男性は喫煙が死亡の18・9%に関係し、塩分が高いなど不健康な食事が死亡の18・8%に関係していました。女性は不健康な食事が死亡の18・0%に関係していました。

 渋谷教授は、「喫煙対策は喫緊の課題。男女とも食生活の見直しも不可欠」と指摘し、「今後、こうした都道府県間の格差をさらに詳しく分析し、実態を踏まえた対策を打ち出すことが必要」と訴えています。

 2017年7月21日(金)

 

■塩分過多は高血圧と糖尿病のリスク 山形大が研究

 山形大学医学部が18日、塩分摂取量が多いと、高血圧だけでなく糖尿病にもかかりやすい傾向があるという研究結果を発表しました。

 山形県民約2万人の疾病などを追跡調査する山形大の「コホート研究」の一環で、米沢市民を対象とした調査で明らかになりました。今後、塩分摂取量と糖尿病発症リスクの因果関係を詳しく調べます。

 調査では、2015年に健康診断を受けた30~70歳代の男女2130人の尿を分析。1日の推定塩分摂取量は12・1グラムで、全国平均10・0グラムを2・1グラム上回りました。

 塩分摂取量と高血圧の有病率の関係は、摂取量6グラム未満は22・6%でしたが、摂取量の増加とともに上昇傾向を示し、22グラム以上は65・4%でした。塩分摂取量と糖尿病の有病率の関係も同様に、摂取量6グラム未満は3・2%でしたが、22グラム以上はおよそ10倍に当たる30・8%に上昇しました。

 研究を担当した山形大学医学部メディカルサイエンス推進研究所の冨樫整データ管理部長は、「塩分の取り過ぎによる高血圧や腎機能への影響はよく知られるが、糖尿病との相関関係が示されるのは初めてではないか」と話しています。

 今後は、塩分摂取が生物学的に糖尿病を誘発するのか、塩気の強い物を食べるとご飯が進んだり、甘い物が食べたくなったりすることに由来するのか、食事の好みを記した問診データなどから分析する方針。

 一般的にラーメン1杯をスープまで飲み干すと、4~5グラムの塩分を摂取するといわれます。米沢市の中川勝市長は、「実態を市民に知らせ、大学と連携して減塩運動など食生活の改善と健康づくりを進めたい」と話しています。

 2017年7月20日(木

 

■国立循環器病研究センター、心臓移植100例を達成 全国の医療機関で初

 脳死になった人から臓器の提供を受けて、国立循環器病研究センター(大阪府吹田市)が行った心臓移植の件数が、全国の医療機関の中で最も多い100例を超えました。

 国立循環器病研究センターは、脳死段階での臓器提供を認める臓器移植法が施行された2年後の1999年に国内2例目、3例目となる心臓移植を実施。その後、2度にわたる2例同日移植や、6歳未満の小児への移植を行い、今年の7月12日に、重い心臓病の40歳代の男性患者に100例目となる心臓移植を行って成功したということです。男性患者の経過は順調といいます。13日には、101例目の心臓移植も行いました。

 日本臓器移植ネットワークによりますと、臓器移植法に基づいてこれまでに460例を超える脳死からの臓器提供が行われ、心臓移植は340例余り行われましたが、国立循環器病研究センターの心臓移植の件数は国内で最も多いということです。

 これまで、国立循環器病研究センターで心臓移植を受けた患者の10年後の生存率は、今年5月時点で95・2%で、世界でもトップクラスです。

 一方、心臓移植を必要とする患者が移植を受けるまでの待機日数は、平均で1000日を超えているということで、医師は臓器提供の増加が求められると指摘しています。

 国立循環器病研究センターの福嶌教偉(ふくしま のりひで)移植医療部長は、「ようやく100例に達したという気持ちだ。国内で脳死からの臓器移植ができるようになってから今年で20年になるが、多くの患者が早く移植を受けられるよう、臓器提供の増加が求められる」と話しています。

 2017年7月19日(水)

 

■人工知能を使う腕時計型端末で熱中症予防 富士通などが開発

 真夏の炎天下でも屋外での作業が必要な職場で、熱中症の対策に役立ててもらおうと、危険性が高まっていると判断すると振動などで知らせる、腕時計型の端末が開発されました。

 熱中症を防ぐという腕時計型の端末は、建設工事や警備、それに農作業など、真夏の炎天下でも屋外で作業をする職場向けに、大手電機メーカー「富士通」などが開発しました。

 この端末を前腕に着けると、心拍数や運動量、歩数、発汗量、それに周辺の気温や湿度などを7つのセンサーで感知してデータとして蓄積します。そして、熱中症にかかる危険性が高まっていると判断すると、内蔵のバイブレーターが振動して本人に知らせます。

 さらに、オフィスにいる上司のパソコンやスマートフォンなどにも危険の度合いを4段階に分けて通知し、休憩や水分補給などの迅速な対応を促すことができる仕組みです。

 このシステムには人工知能(AI)が使われ、事前に学習した危険性と端末で集めた個人ごとのデータを掛け合わせることで判断の精度を高めているということです。

 端末を開発した富士通の川崎市の工場では、6月から警備員の熱中症対策にこの端末を導入しており、7月末から企業向けに販売する予定だということです。1個の価格は数万円を見込み、初年度は1万個の売り上げを目標とします。2020年東京五輪・パラリンピックに向け、選手だけでなく観客にもニーズがあるとみており、販促に力を入れる考えです。 

 工場で警備員を務める63歳の男性は、「午前中は日陰がなく暑いので、端末を着けていれば何かあった時にすぐにわかるので安心です」と話していました。

 富士通の北村卓也さんは、「端末を使ってデータを集めることで一人ひとりに合った熱中症対策を取ることができるようになると思う」と話しています。

 2017年7月19日(水)

 

■熱中症、前週の1・8倍の7680人搬送 北海道などで6人が死亡 

 総務省消防庁は19日、10~16日の1週間に7680人が熱中症で病院に搬送されたとの速報値を発表しました。

 前週の4241人から1・8倍に増え、北海道、山形県、埼玉県、新潟県、和歌山県、佐賀県の計6人が搬送先で死亡しました。各地で真夏日や猛暑日を観測するなど、気温が高い日が続いたためとみられます。

 集計によると、3週間以上の入院が必要な重症者は173人、短期の入院が必要な中等症は2586人、軽症は4816人でした。

 年齢別では、65歳以上の高齢者が3803人と49・5%を占めたほか、18歳以上65歳未満が2649人、新生児や乳幼児を含む18歳未満が1228人でした。

 都道府県別では、東京都の627人が最も多く、埼玉県488人、大阪府453人と続きました。7月としては記録的な暑さだった北海道が4位の439人。

 総務省消防庁は、適切に冷房を使い、こまめに水分をとるなど熱中症に十分注意するよう呼び掛けています。

 2017年7月19日(水)

 

■大阪大、iPS細胞を使い初の心臓病治療 臨床試験を申請へ

 重い心臓病の患者に、iPS細胞(人工多能性幹細胞)から作製した心臓の筋肉の細胞をシート状にして貼り付けて治療を行う世界初の臨床試験(治験)を、大阪大学の研究チームが学内の倫理委員会に今週中にも申請する方針を固めたことが明らかになりました。

 早ければ来年3月までに、1例目の患者の手術を実施したいとしています。

 大阪大の澤芳樹教授(心臓血管外科)らの研究チームは、他人に移植しても拒絶反応が起きにくい特殊なiPS細胞を使って心臓の筋肉の細胞を作製し、シート状の「心筋シート」にして重い心臓病の患者の心臓に直接貼り付け、心臓と一体化させて機能を回復させる治療法の開発を行っています。動物を使った実験では、効果が確認されているといいます。

 研究チームは今週中にも、学内の倫理委員会に対してこの臨床試験を申請することになりました。

 計画では18歳以上の3人に実施し、安全性や効果について検証するということで、今後、国などの委員会の了承も得て、早ければ来年3月までに1例目の患者の手術を実施したいとしています。また、2020年ごろには、心筋シートの販売を開始したいとしています。

 研究チームはすでに、iPS細胞ではなく脚の筋肉の細胞から作ったシートによる治療に成功し、昨年、再生医療製品として条件付きで早期承認されました。心筋とは性質が異なる筋肉のため重症度が進んだ患者には効きにくく、今回の心筋シートはより大きな効果が期待できます。

 iPS細胞を使った治療は、国内では目の網膜の治療が理化学研究所などにより2例行われているほか、脊髄損傷に対する臨床研究が慶応大学の倫理委員会に申請されていますが、心臓の病気を治療する臨床試験は世界で初めてです。

 澤教授は、「iPS細胞を使うことでこれまでは移植しかなかった患者でも回復が期待できる。安全性に注意し慎重に進めたい」と話しています。

 2017年7月18日(火)

 

■夏場に発症する手足口病、大流行の兆し 1週間の患者は1万8151人

 幼い子供を中心に夏場に流行する「手足口病」について、7月9日までの1週間に全国から報告された患者数は1万8151人に上り、国立感染症研究所は6年前の大きな流行と同じ規模になる兆しもあるとして、特に子供のいる家庭では手洗いなどの対策を徹底するよう呼び掛けています。

 手足口病は、幼い子供を中心に手や足、口の中に発疹ができるウイルス性の感染症で、まれに脳炎などの重い症状を引き起こすことがあります。  

 国立感染症研究所によりますと、1週間に全国約3000の小児科の医療機関から報告された患者の数は1万8151人に上り、前の週から約7000人増えました。

 1医療機関当たりの患者数は5・74人で、この10年の同じ時期と比べると最大の患者数となった2011年に次ぐ大きな流行になっています。

 都道府県別に1医療機関当たりの患者数をみますと、高知県が19・1人と最も多く、次いで鳥取県が14・84人、滋賀県が13・66人、宮崎県が13・64人などとなっており、すべての都道府県で前の週より増加しています。

 国立感染症研究所の藤本嗣人室長は、「この後2週間から3週間でピークを迎え、2011年の大きな流行と同じ規模になる恐れもある。特に2歳以下の報告が多く、子供のいる家庭ではせっけんでしっかり手を洗うほか、子供が集まる保育園などの施設では複数の子供が使うものは消毒するなどの対策が必要だ」と話しています。

 手足口病はウイルスが原因の感染症で、主にウイルスの付着した手を口元にもっていったり、感染者のせきやくしゃみを吸い込んだりすることで感染します。大人は感染しても発症しないケースが多いとされていますが、5歳以下の子供では夏場に発症することが多く、特に免疫を持っていない2歳以下の小さな子供の間で流行する傾向があります。

 ウイルスに感染すると3日から5日ほどの潜伏期間を経て、手や足、口の中に2ミリほどの発疹が現れるのが特徴で、38度以下の軽い熱が出ることもあります。通常は1週間ほどで回復しますが、まれに髄膜炎や脳炎などを引き起こすこともあり、死亡例も報告されています。

 今シーズン流行の主流のウイルスは、2011年の大流行の時と同じ「コクサッキーA6」と呼ばれるタイプで、症状が収まった後も数週間した後に手足の指の爪がはがれることがあります。

 一方、患者の中で割合は少ないものの、ほかのタイプと比べて脳炎などを引き起こしやすいとされる「エンテロウイルス71」と呼ばれるタイプも、検出されています。20年前の1997年にはこのウイルスとの関連が指摘される子供の死亡例が3件報告されるなどしており、専門家は注意が必要だとしています。

 専門家によりますと、まずはほかの感染症と同じように、トイレの後や食事前など、せっけんと流水でしっかりと手を洗うことが重要だとしています。また、感染者の便からもウイルスが排出されるので、オムツを処理する際には使い捨ての手袋を使うなどしてウイルスを周囲に広げないよう適切に処理することが必要だとしています。

 一方、手足口病にはウイルスに効果のある治療方法やワクチンはなく、症状に合わせた対症療法が中心となります。安静にして治るのを待つことになりますが、注意したいのは脱水症状。

 子供は口にできた発疹の痛みで、食べたり飲んだりすることを嫌がるようになり、脱水状態になることもあるので、十分な水分補給を心掛ける必要があります。食事を軟らかくしたり薄味にしたりと工夫し、ゼリーなど喉ごしのよいものを与えるのがいいでしょう。脱水症状は自覚しにくいので、小さな子供の場合、より注意が必要となります。

 2017年7月18日(火)

 

■小児科の患者数、10年間で4分の3に減少 地方では診療維持も困難に

 全国の病院の小児科を受診する患者数が、最近10年間で4分の3に減ったとの調査結果を、厚生労働省研究班(代表者=市川光太郎・北九州市立八幡病院長)がまとめました。ぜんそく治療の進歩や予防接種の普及に加え、子供の数の減少も理由とみられます。

 特に地方での患者数の減り方が大きく、調査を担当した医師は「小児科の診療を続けるのが難しくなっている地域もある」と警鐘を鳴らしています。

 調査は、日本小児科学会に登録されている大学病院や小児専門病院、一般病院など924施設を対象に郵送で実施。2005~2014年の外来患者数と入院患者数を尋ね、658施設(71・2%)から回答を得ました。その結果、外来患者数は10年間で23・6%、入院患者数は15・9%それぞれ減少していました。この間の小児人口(0~14歳)は7・4%減で、これを上回る減り方でした。

 地域別にみると、外来患者の減少率は、県庁所在地の病院が16・8%だったのに対し、県庁所在地以外の病院は27%でした。特に、大学病院など規模の大きい病院から車で1時間以上かかるような地域の病院(63施設)では41・8%も減っていました。

 調査に当たった藤沢市民病院(神奈川県)の船曳哲典・こども診療センター長は、「医療の進歩で子供が病気になりにくくなったのはよいこと」とした上で、「地域によっては患者が減り、そうした地域の勤務を希望する医師は少なく、小児科の診療を維持するのが難しくなっている。いくつかの地域の小児科を一つにまとめることや、都会への医師の集中を防ぐなどの対策が必要になるだろう」と指摘しています。

 2017年7月17日(月)

 

■新型出生前診断の受診者、4年で4万4645人 異常が確定した94%が中絶

 妊婦の血液から胎児のダウン症など3種類の染色体異常を調べる新型出生前診断を受診した人は、検査を始めた4年間で計4万4645人だったとする集計結果を、各地の病院でつくる研究チームが16日、発表しました。

 4年目は1万4030人で、前年より1215人増えました。高齢出産の増加などを背景に、受診者は毎年増え続けています。1年目は7740人、2年目は1万60人、3年目は1万2815人でした。

 染色体異常の疑いがある「陽性」と判定され、さらに別の羊水検査に進んで異常が確定した妊婦の94%が、人工妊娠中絶を選んでいました。

 新型出生前診断は、遺伝情報の解析技術の進展により海外で開発され、妊婦の対象者や施設を限定する臨床研究として2013年4月に日本国内に導入されました。安易に広がると「命の選別」につながる恐れがあるとして、夫婦らの意思決定を支える遺伝カウンセリング体制を整備することが、日本医学会が認定する施設の要件となっています。

 日本産科婦人科学会は昨年12月、東京都や大阪府で指針に反して受診条件を設けない検査を宣伝していた医師をけん責や厳重注意処分にしました。

 2017年7月17日(月)

 

■難病のCPT2欠損症、新生児スクリーニング検査に追加 厚労省、突然死防止で

 生まれてすぐのすべての新生児に行う新生児マススクリーニング検査(先天性代謝異常等検査)に、体内で脂肪を分解できない難病の検査を追加することになり、厚生労働省は速やかに実施するよう全国の自治体に通知しました。

 新生児マススクリーニング検査は、先天性代謝異常などの疾患を早期に発見し、発病前から治療ができるようにすることが目的で、「フェニルケトン尿症」や「メチルマロン酸血症」といったホルモンと代謝機能の異常など合わせて19の疾患を対象に行われていますが、厚生労働省は「CPT2欠損症」と呼ばれる難病を新たに加えるよう都道府県および政令指定都市に通知しました。

 このCPT2欠損症は、遺伝子の異常で起き、体内で脂肪を分解できないため、風邪などをひいた時に血糖値が急激に下がり、けいれんや意識障害を起こして死亡することがあります。

 厚生労働省の研究班は、3歳未満の乳幼児が突然死したケースを分析したところ、CPT2欠損症が原因となっている事例を複数確認し、適切に対処することで死亡を防げると報告していました。

 通知は7月7日付けで、全国の自治体に対して速やかに行うよう求めており、この通知で、生まれてすぐのすべての新生児を対象に血液検査で調べる疾患は20に増えることになります。

 厚生労働省の研究班の代表で、島根大学の山口清次特任教授は、「CPT2欠損症は新生児の段階で判明していれば、命を救える可能性が高い。自治体には速やかに検査項目に追加してもらいたい」と話しています。

 2017年7月16日(日)

 

■再生医療用の細胞を無許可で製造し、18施設に提供 厚労省が一時停止命令

 厚生労働省は14日、再生医療に使用する「特定細胞加工物」を国の許可を得ずに製造していたとして、東京都内の医療関連会社に対し、再生医療安全性確保法違反で製造の一時停止を命令したと発表しました。

 厚労省は14日までに、医療関連会社が製造した細胞を使ってがん治療をしていた全国の民間クリニック18施設に対し、健康被害が生じていないか確認し、報告するよう求めました。患者は100人以上に上るとみられますが、今のところ健康被害の情報はないといいます。

 再生医療安全性確保法に基づき、細胞の無許可製造で停止命令が出されたのは今回で2件目。

 一時停止命令を受けたのは、「生命科学研究所」(東京都千代田区)で、6月12日付。厚労省によると、生命科学研究所では、がん患者から採取された血液を使い、3種類の免疫細胞を培養するなどしていました。再生医療安全性確保法で義務付けられた国の許可を受けておらず、安全性などの検査も受けていませんでした。

 「アベ・腫瘍内科・クリニック」(東京都千代田区)にある細胞培養加工施設が、生命科学研究所に業務を委託。厚労省が6月に立ち入り検査をし、無許可で細胞の製造を行っていたことが発覚しました。

 生命科学研究所は、アベ・腫瘍内科・クリニックを経由して、14都道府県の民間クリニック18施設でがん患者から採取した血液から、ナチュラルキラー細胞(NK細胞)などを培養。培養後、再びアベ・腫瘍内科・クリニック経由で各施設に送られ、がん患者本人に投与されていました。

 本人の細胞を加工して使う治療は「第3種」の再生医療に該当し、治療や細胞の製造には国の許可が必要となります。18施設のいずれも、国に治療の計画を届け出ていませんでした。

 なお、アベ・腫瘍内科・クリニックは、他人の臍帯血(さいたいけつ)を使った再生医療を無届けで行っていたとして6月28日、再生医療安全性確保法違反でその治療を一時停止する緊急命令を受けています。

 2017年7月15日(土)

 

■家畜の飼料に混ぜる抗菌薬、コリスチンなど2種を禁止に 農水省、薬剤耐性を懸念

 家畜の成長を促進させるため、飼料に混ぜて使うことが認められているコリスチンなど2種類の抗菌薬について、農林水産省が飼料添加物としての指定を取り消し、使用を禁止する方針を固めたことが13日、明らかになりました。

 薬の効かない薬剤耐性菌が家畜の体内で発生し、食品や環境を介して人に感染することで、健康に悪影響が出るリスクが無視できないと判断しました。

 薬剤耐性菌による死者は、世界で年間70万人に上るとの試算もあり、2016年の伊勢志摩サミットで各国は原因となる抗菌薬の適切な使用を進めることに合意しました。日本での禁止は合意後初めて。

 抗菌薬を健康な牛や豚、鶏の餌に少量加えて与えると、成長が早くなることがあります。はっきりとしたメカニズムは不明なものの、国内外ではこうした成長促進目的の利用が認められてきました。しかし、最近は使い過ぎで薬剤耐性菌が生まれ、食品や環境を介して人にも広がる懸念が指摘され、欧州を中心に禁止する動きが広がっています。

 今回、飼料添加物としての指定を取り消すのは、コリスチンとバージニアマイシンの2種。農水省の審議会での検討を経て、本年度中にも正式に決めます。

 コリスチンは、人や家畜の感染症治療薬としても承認されており、治療目的の使用は引き続き認めます。

 食品安全委員会は農水省の検討に先立ち、家畜に抗菌薬を与えた場合のリスク評価を実施。いずれの薬剤も、家畜の体内で薬剤耐性菌ができる恐れがあるとしました。薬剤耐性菌が人に感染すると、抗菌薬治療を受けても効果が弱まる可能性が否定できないなど、中程度のリスクがあります。

 飼料添加物として国内に流通するコリスチンの量は、2015年度で約23トン。国が流通量を把握している中では、全体の12%を占めます。バージニアマイシンは、ゼロでした。農水省は畜産農家への影響が小さくなるよう、代替物の開発などを進めたいとしています。

 コリスチンは、多剤耐性菌に感染した患者を治療する際、医師が頼りにする「最後のとりで」として使われています。しかし、すでに人の体内から薬剤耐性菌が見付かり、近い将来、あらゆる抗菌薬が効かない細菌が出現するのではないかとの懸念が出ています。

 動物用に販売される抗菌薬の量は、飼料添加物と医薬品を合わせると国内全体の約6割を占め、人の医薬品を大きく上回ります。動物への使用で現れた薬剤耐性菌が人に伝わった例も報告されており、拡大を防ぐため、動物も含めた総合的な対策を進めることが重要。

 薬剤耐性菌は自然の状態でも一定の割合で発生しますが、抗菌薬を安易に使うと普通の細菌が死に絶え、薬剤耐性菌のみが生き残って増えやすくなります。

 国内では1980年代以降、免疫が低下した重症患者が多い病院での薬剤耐性菌への感染が深刻な問題となってきましたが、最近は中耳炎など、抗菌薬で簡単に治療できていた有り触れた病気が、治りにくくなる例が増えています。

 動物への使用で人に影響が出た例には、抗菌薬のバンコマイシンがあります。院内感染などで問題になるメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)の治療に使われる重要な薬剤ですが、似た構造を持つアボパルシンが、家畜の成長促進に使われたことが一因となり、薬剤耐性菌が発生し、人にも広まったとされます。

 飼料添加物として認められている抗菌薬は、2016年3月時点で23種類に上ります。政府は薬剤耐性菌対策の行動計画で、人と動物の保健衛生を一体的に進めることを決めており、飼料添加物のリスク評価を順次進めます。農水省は人への悪影響を減らすことを最優先として、リスクがあると評価された場合、原則として指定を取り消すとしています。

 2017年7月15日(土)

 

■プエラリア含むバストアップサプリ、健康被害の相談が増加 国民生活センターが注意呼び掛け

 国民生活センターは13日、バストアップなどを目的とするサプリメントをのんで月経不順になったり、湿疹が出たりしたとの相談が2012年4月〜2017年4月の約5年間で209件寄せられたと発表しました。

 製品に含まれる女性ホルモンと同様の作用のある成分が、原因となった可能性があります。2015年は97件、2016年は94件と近年は副作用による被害が急増しているとして、注意を呼び掛けています。

 サプリメントはカプセルや錠剤で販売されており、国民生活センターが調査した12商品のうち11商品は、タイやミャンマーに自生するマメ科クズ属の植物で、プエラリア、ガウクルア、白ガウクルアとも呼ばれる「プエラリア・ミリフィカ」の根から抽出した成分「デオキシミロエストロール」を含んでいました。

 デオキシミロエストロールは、エストロゲン(女性ホルモン)と同様の作用が体に働くといいます。11商品のうちナチュラルプランツ(東京都中央区)の「プエラリア・ハーバルサプリメント」は、特にデオキシミロエストロールを多く含有していました。各商品によってデオキシミロエストロールの含有量に差があり、1日の摂取目安量にも幅があるといいます。

 国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所によると、プエラリア・ミリフィカに含まれるデオキシミロエストロールは、産地や収穫時期、植物の年齢によってかなり幅があるそうで、現時点で安全な摂取量はわかっていないということです。

 国民生活センターの担当者は、「因果関係は証明されていないが、ホルモンバランスを崩す恐れがある。安易な摂取は避けたほうがいい」と話し、体調に異常を感じたら使用をやめ、医師の診断を受けるよう呼び掛けています。

 これまで国民生活センターには、「のんだら大量に不正出血した。子宮内膜が厚くなっているといわれた」(福岡県の30歳代女性)、「胸に発疹が出た。ホルモンが増え、乳腺症と診断された」(長野県の20歳代女性)などの相談が寄せられています。相談を寄せたのは、ほぼ全員が女性で、20歳代が69件と全体の3割を占めており、40歳代、30歳代、10歳代が40件前後で続いています。

 国民生活センターの資料によると、海外では国によってプエラリア・ミリフィカに対する規制はさまざまで、EUや韓国では食品への使用が禁止されているほか、香港では健康被害への注意を呼び掛けており、タイでは健康食品などにより摂取する場合には1日の摂取量がプエラリア・ミリフィカ末として100ミリグラムを超えないこととされています。

 2017年7月15日(土)

 

■百日ぜきを早期診断する新しい検査法が登場 10歳代以上の患者増に対応

 急性の呼吸器系の感染症で、1カ月近く激しいせきが続く百日ぜきは予防ワクチンで乳幼児の患者は減りましたが、免疫効果の弱まる10歳代から上の世代で増えており、厚生労働省は来年から、全医療機関に患者の届け出を義務付ける予定です。

 百日ぜきを早期診断できる新しい検査法が昨年11月、保険適用され、流行の防止が期待されています。

 百日ぜきは、百日ぜき菌の感染によって起こり、症状は鼻水、くしゃみ、せき、微熱など。発症から1~2週間でせきが徐々にひどくなり、「コンコンコンコン」と連続する短いせきと、息を吸い込む時の「ヒューッ」と笛のような音が特徴です。

 感染症の中でも伝染率は高く、1人の患者が感染期間中に病気を移す平均患者数をみると、百日ぜきは12~21人。インフルエンザの1~3人、ノロウイルスの3~4人、風疹の6~9人より高く、麻疹(はしか)と同レベル。

 予防ワクチンは、4種混合ワクチンとして生後3カ月から接種できます。その免疫効果は一生続くと思われがちですが、中学生までに約半数で効果がなくなるという研究報告もあり、10歳代から上の世代になってかかる人が出てくるわけです。

 初めての感染なら、連続する短いせきなど特徴的な症状からわかりやすいものの、2回目の感染ではその特徴がなく発熱もないため、感染の自覚がない人が周囲に移す恐れもあります。

 感染しても、マクロライド系抗生物質で治せます。ただし、乳児では、手足のまひなど後遺症や死亡の恐れもあります。

 川崎医科大学小児科教授の尾内一信さんは、「成人の場合は長引くせきですむが、ワクチン接種前の乳幼児がかかると重症化の危険がある。保菌者として無意識に病原菌を拡散させないよう注意が必要だ」と話しています。

 感染拡大を食い止めると期待されているのが、最近、登場した新しい検査法です。これまでの診断は主に、症状から医師の主観で判定していたのに対し、新しい検査法は症状がはっきりする前に客観的データから診断でき、正確な患者数をつかむのに役立ち、潜在的な流行を防げるといいます。

 この新しい検査法は、感染後に体の中で増える百日ぜき菌の遺伝子(DNA)や、菌に対抗して体の中に作られる抗体の量を調べるもの。それぞれ発症後、増加のピークを迎える時期が違うので、検査を組み合わせて患者の状態を推測できます。

 発症初期に有効なLAMP法は、鼻の奥の粘膜に百日ぜき菌のDNAがあるか調べます。このほか、百日ぜき菌の増殖時期より遅れて増加する抗体量を調べる血液検査があります。最近、百日ぜき菌自体に反応する抗体IgMとIgAを調べるキットが登場。抗体量のピークは、IgMが発症から約2週間後、IgAが約3週間後となります。

 抗体を使う検査法は、百日ぜき菌の毒素に反応するIgGを調べる方法が一部で行われてきたが、増加ピークが発症後3~4週間なので、初期診断には使えませんでした。

 新しい検査キットの実用化に伴い、日本小児感染症学会、日本小児呼吸器学会は、百日ぜきの診断基準や検査の手順について診療指針の見直しを行いました。

 2017年7月14日(金)

 

■若年がん治療、将来の出産へ生殖医と連携を 学会が初の指針を作成

 日本癌(がん)治療学会は13日、若くしてがんになっても、治療後に子供を持つ可能性を残すための方法を示した初の診療ガイドライン(指針)を作成し発表しました。

 がん治療を担当する医師らが、治療による不妊のリスクや治療前の卵子や精子の保存などについて患者に情報を正しく伝え、生殖医療の専門医との連携を進めるのがねらいです。

 がん治療では抗がん剤による化学療法、放射線治療、手術によって、男女ともに生殖機能が悪影響を受け、妊娠できる能力が失われる可能性があります。最近では、治療前にあらかじめ卵子や精子を凍結保存することで生殖能力を温存する方法が注目されています。しかし、こうした情報が医師から患者に適切に伝わっていないことが課題となっていました。

 指針では、「治療医はがん治療を最優先する」としつつ、治療で子供が持てなくなる恐れがある場合、治療前に適切に情報を伝え、患者が希望すれば早期に生殖医療の専門医を紹介するなどとしています。対象は小児や思春期・若年がん患者で、40歳未満で治療を始めた患者を想定。女性生殖器や泌尿器など分野横断的に取り扱っています。

 また、乳がんや子宮頸(けい)がん、精巣がん、白血病など8つのがんの種類別に生殖機能の温存の対象となる患者や、具体的な治療法を紹介。例えば、乳がんの場合の対象は、標準治療を実施して長期の予後が期待できるステージ(進行度)0から3までの患者としました。さらに、乳がん患者が生殖機能の温存を希望した場合、手術後の抗がん剤治療の開始を最大12週間遅らせ、その間に卵巣から卵子を取り出して凍結して保存できるケースがあるとしました。

 指針を作成した鈴木直・聖マリアンナ医科大学教授は、「治療優先という中でも子供を望む患者もいるが、情報がないために自己決定できない場合があった。指針は患者が将来を考え、自己決定を促すためのものとなる」と説明しています。

 指針は医療者向けですが、7月下旬から全国の一般の書店でも販売されます。

 2017年7月14日(金)

 

■3大体臭を「見える化」できる測定器をネットで先行販売 コニカミノルタ

 コニカミノルタ(東京都千代田区)は13日、人工知能(AI)により体臭を「見える化」できる測定器「Kunkun body(クンクンボディー)」の先行販売を始めたと発表しました。

 臭いの種類や強さを測定し、スマートフォン(スマホ)上の専用アプリに結果を表示します。先行販売は、インターネットを通じて資金を集めるクラウドファンディングサイトの「Makuake(マクアケ)」で始まりました。価格は30000円(税込み)を予定していますが、先行販売では22500円(税込み)から購入できます。

 4つのセンサーで測定したデータをAIが認識・解析し、「汗臭」「加齢臭」「ミドル脂臭」の3大体臭をチェック。頭や耳の後ろ、脇、足などに機器をかざすと、20秒ほど待つだけで、総合値と3大体臭の状態が専用アプリに表示されます。種類別では10段階、総合値では最大100点までの点数で結果を示し、「臭っている」「まだ大丈夫ですが要注意」などの文言で対応を促します。

 臭いを種類ごとにかぎ分けて、強さを測定できる技術は世界初といい、大阪工業大学と共同開発した技術を活用しました。先行販売の結果を見極めた上で、一般販売を検討します。

 コニカミノルタの開発担当者は、「近年、(オフィスや電車などで)体臭が周囲に不快感を与える『スメルハラスメント(スメハラ)』が話題になっている」とし、「臭いの悩みから解放される社会を提供したい」と話しています。

 2017年7月13日(木)

 

■日本語表記のB型肝炎治療薬の偽造品、中国国内で流通 厚労省が注意喚起

 厚生労働省は12日、中国国内でB型肝炎治療薬「ベムリディ錠」の偽造品が見付かったと発表しました。

 現状、日本では偽造品は見付かっておらず、偽造品の服用に起因すると思われる健康被害も確認されていませんが、偽造品のボトルに日本語の説明文があったことから、都道府県などに注意喚起しました。

 製造販売するアメリカの製薬会社「ギリアド・サイエンシズ」によると、ベムリディは中国で承認されていません。インターネットを通じて手に入れた中国在住の購入者が4月、同社の日本法人のホームページ上に、本物かどうかメールで問い合わせ、発覚しました。6月以降、同様の問い合わせが中国から数件寄せられているといいます。

 厚労省監視指導・麻薬対策課は、日本語表記にすることで本物に見せ掛けた可能性が高いとして、中国人が中国国内での偽造品流通を狙ったとの見方を強めています。

 偽造品はボトルのふたの色がオレンジで、正規品の青色と異なるほか、外箱も粗雑なつくりでした。錠剤の外観も偽造品は白色で、正規品の黄色と違いがあり、錠剤からはビタミンB群の一つである葉酸の成分が検出されました。

 厚労省は別の形態の偽造品が発見される恐れもあるとして、医療機関や保険薬局に対し「偽造品を発見した場合には、決して流通させたり、調剤したり、服用したりすることなく、保健所や都道府県に相談する」よう注意喚起しました。

 ギリアド・サイエンシズの製品を巡っては1月、C型肝炎治療薬「ハーボニー配合錠」の偽造品が奈良県内の薬局チェーン店や東京都内の卸売業者から見付かりました。

 2017年7月13日(木)

 

■適度な睡眠、毎日の歩行など生活改善で健康寿命に2年の差も 厚労省が調査

 適度な睡眠や毎日の歩行、多めの野菜摂取などの健康的な生活習慣を数多く取り入れている人ほど、日常的に介護を必要とせず、心身ともに自立して暮らすことができる「健康寿命」が長いとの調査結果を厚生労働省の研究班が発表しました。

 約1万人の高齢者を対象に調査したところ、健康的な生活習慣を多く取り入れている人とそうでない人では、最大2年余りの差がみられました。

 国は、生活習慣の改善によって健康寿命を延ばすことを目標に掲げています。研究班は2006年12月、宮城県大崎市で65歳以上の住民に生活習慣などに関するアンケートを行い、9746人について9年間追跡調査しました。

 調査で「健康的な生活習慣」としたのは、非喫煙または禁煙して5年以上、1日の平均歩行時間が30分以上、1日の平均睡眠時間が6~8時間、多めの野菜摂取、多めの果物摂取の5項目。これらの生活習慣の実践数と、死亡または要介護認定を受けるまでの期間の関係を調べました。

 その結果、実践数が0~1項目だった人と比べた健康寿命の差は、2項目ある人は11・5カ月、3項目ある人だと17・4カ月、4項目ある人だと23・9カ月それぞれ長くなりました。5項目すべて行っている人では25・4カ月にまで差が開いていました。

 調査をまとめた辻一郎・東北大学教授(公衆衛生学)は、「健康的なライフスタイルを取り入れれば、健康寿命の延伸が期待できることを示唆する結果だ」としています。

 2017年7月12日(水)

 

■ダニ媒介脳炎で北海道の男性死亡 死亡は2例目、感染確認は3例目

 北海道は11日、ウイルスを持ったマダニにかまれて「ダニ媒介脳炎」を発症した道内の70歳代男性が死亡したと発表しました。国内での感染確認はいずれも道内で今回が3例目、死者は2人目となります。

 北海道保健福祉部によると、男性は6月中旬に発熱や意識障害などの症状が出たため函館市の病院に入院し、7月7日までに死亡しました。マダニにかまれた痕(あと)は確認できず、血液検査で感染が判明しました。道内でかまれた可能性があり、場所などを調べます。

 北海道では2016年8月に、40歳代男性がダニ媒介脳炎を発症して死亡。これが全国初の死亡例でした。北海道大学の研究チームが今年、札幌市内に生息するアライグマやネズミなどの野生動物84匹の血液を調査したところ、1割を超える10匹がダニ媒介脳炎のウイルスに感染していたことが判明しました。

 北海道保健福祉部は、山や草やぶなどに入る時はサンダル履きを避け長袖、長ズボンを着用して肌の露出を少なくするよう呼び掛けています。マダニにかまれた場合は無理に引っ張らず、医療機関で除去する必要があるといいます。

 ダニ媒介脳炎は、蚊が媒介する日本脳炎と同じ分類のフラビウイルスによる感染症。北海道の一部地域でウイルスが見付かっているほか、西日本でもウイルスの抗体を持ったネズミが確認されています。ウイルスを持つマダニがいない地域では感染が起きず、人から人への感染はないといいます。

 2017年7月12日(水)

 

■貼るだけで筋肉を引き締める女性向け機器を発売 エレコムが7月中旬より

 コンピュータ周辺機器メーカーのエレコムは、女性をターゲットにした筋力トレーニング機器を7月中旬に発売します。電流を流して筋肉を刺激するEMS(エレクトリカル・マッスル・スティミュレーション)機器で、二の腕や腹部などそれぞれの部位で最適な周波数に調整でき、貼るだけで引き締められます。

 12日に東京都内で記者会見した葉田順治社長は、「売上高2000億円に向けてヘルスケア分野を成長のけん引役の一つにしたい」と話しました。

 商品名は、「エクリア リーン」。筋肉を外部からの電気刺激で動かす筋力トレーニング機器であるEMS機器は従来、多くは筋肉を肥大させるために速筋を刺激するものでしたが、今回は女性をターゲットに有酸素運動時に鍛えられる遅筋に注目。

 そこで遅筋向けに1秒間に20~30回と、速筋向けに比べゆっくりした電気刺激を与えるプログラムを「エクリア リーン」に搭載。また、皮下脂肪の厚さにより効果のある周波数が異なるため、皮下脂肪が厚めの腹部には5000ヘルツの中周波数を、薄めの二の腕には2000ヘルツの低周波数と4つ部位に合わせて調整できるようにしました。本体は軽量20グラム、直径48ミリとコンパクトサイズで、コードレスのため使う場所も選びません。

 「EMS機器がなぜ効くのか」という素朴な疑問から始まり、関連する英語の論文を商品開発部の岩井眞琴さんら社員で調べるなど研究開発に時間を費やし、約1年かけて商品化につなげました。「女性向けや周波数を調整できるものは珍しい。人それぞれ脂肪量なども違う中、多くの人が効果に納得できる商品を作りたかった」と岩井さんは振り返り、「筋肉隆々ではなく女性が目指す細く引き締まった体には遅筋を鍛えるのが効果的だ」と話しています。

 「エクリア リーン」は、女性に人気の雑貨店や家電量販店で発売します。価格はセット個数により、8305円と1万5250円の2種類。

 エレコムは低周波治療器を発売するなどヘルスケア分野を強化しています。同分野の売り上げはまだ全体の数%ですが、葉田社長は「主力のパソコンやスマートフォン関連商品だけでなく新領域を拡大したい」と話しています。

 2017年7月12日(水)

 

■統合失調症、脳のしわの入り組みが複雑だと高リスクに 富山大などが共同研究で発見

 脳のしわが複雑に入り組みすぎていると統合失調症の発症リスクが高い可能性があることを明らかにしたと、富山大学病院の鈴木道雄教授(精神神経科学)らの研究チームが11日付のアメリカの医学誌「Biological Psychiatry」(電子版)に発表しました。東京大学、東北大学などとの共同研究。

 統合失調症は、幻聴を主とした幻覚、妄想、思考障害、奇異な行動、感情の鈍麻、意欲の欠乏、社会性の低下などさまざまな症状を伴う精神疾患で、以前は精神分裂病と呼ばれていた病。早期の発見、治療が有効とされ、研究チームは「統合失調症の早期診断につながる一歩になれば」と期待しています。

 研究チームは、軽度の幻覚や幻聴などがあり、典型的な統合失調症の発症リスクが高いとされる104人と、健常者104人について、脳の磁気共鳴画像装置(MRI)のデータを収集。脳の外側の表面積と、内側に入り組んだ部分の表面積から、しわの入り組み具合を計算して比較しました。

 その結果、発症リスクが高いとされる人のほうが健常者に比べ、大脳皮質の広い範囲でしわが複雑に入り組んでいることがわかりました。

 さらに、発症リスクが高いとされる人の経過を観察。2年以上追跡できた90人のうち、発症した21人と発症しなかった69人を比較したところ、発症した人では左の後頭葉で、しわがより複雑になっていました。

 2017年7月12日(火)

 

■先天性障害の発症を防ぐため、妊婦は葉酸摂取を 先天異常学会が声明

 妊婦の葉酸不足でリスクが高まる先天性の障害が、2000年に厚生省(現厚生労働省)が都道府県などに通知で摂取を推奨して以降も、発症率が改善していません。

 そのため、日本先天異常学会は妊娠を希望している女性に対して、サプリメント(栄養補助食品)での葉酸摂取を呼び掛ける声明をまとめ、関係学会に周知への協力を求めています。

 葉酸はビタミンBの1種で、ほうれん草やブロッコリーなどの緑黄色野菜、果物、レバー、卵黄、胚芽、牛乳などに含まれます。妊娠初期に不足すると胎児の脳や脊髄(せきずい)の発育に影響し、運動機能や知覚がまひする二分脊椎や無脳症、脳瘤(のうりゅう)などの神経管閉鎖障害になる恐れがあります。

 食事からの摂取では十分ではない場合があり、2000年の厚生省通知は「葉酸の摂取ですべての神経管閉鎖障害を防げるわけではない」とした上で、妊娠の1カ月前から妊娠3カ月までバランスの取れた食事に加え、サプリメントで1日0・4ミリグラムの葉酸を取ることを推奨しました。

 しかし、2000年以降、神経管閉鎖障害の発症率は出産1万人当たり5~6人で推移しており、年間500~600人が発症している計算になります。

 熱田リハビリテーション病院(名古屋市)の近藤厚生副院長らの調査では、2001~2012年に出産した女性で葉酸サプリメントを取っていたのは23%。二分脊椎の子を出産した女性では10%と低くなりました。

 近藤副院長は、「海外では小麦粉などの穀類に葉酸を添加する国が約80あり、二分脊椎などの障害が3~5割減ったという報告も出ている」と指摘しています。

 日本先天異常学会の大谷浩理事長は、「葉酸の重要性が広く認識されていない。学校教育で妊娠中の栄養摂取の大切さが伝えられるようにするべきだ」と話しています。

 2017年7月12日(火)

 

■ギャンブル依存症対策でパチンコ出玉規制強化へ 警察庁が基準を見直し

 カジノを合法化する「統合型リゾート(IR)整備推進法」が昨年12月に成立したことを受け、警察庁はギャンブル依存症対策の一環として、パチンコの出玉規制基準を定めている風俗営業法施行規則の改正案をまとめました。

 出玉数を現在の3分の2程度に抑えることが主な柱。11日から8月9日まで改正案に対する意見を一般から募り、来年2月の施行を目指します。

 警察庁はギャンブル依存症対策の強化には、射幸性を抑えることが不可欠とし、全日本遊技事業協同組合連合会など業界団体の意見を聞きながら、規制の在り方について議論してきました。

 パチンコは1玉4円で借りて発射し、「大当たり」などで出玉を得る遊び。最近では1玉1円で貸すパチンコ店も増えています。現行の施行規則は、「1時間の出玉は発射させた玉の3倍未満」「10時間では2倍未満」などと定めています。

 警察庁は標準的な遊技時間を4時間程度とみて、遊技中に純増する出玉が5万円(1玉4円換算)を下回るよう基準を見直しました。「1時間の出玉は発射した玉の2・2倍未満」「4時間では1・5倍未満」「10時間では1・3倍未満」として射幸性を抑えます。

 大当たり1回の出玉の上限は、現在の2400個(1玉4円換算で9600円)から、1500個(同6000円)に減らします。パチスロも、パチンコと同様の水準で規制します。

 また、改正案は利用者が玉を触らず、パチンコ台内で玉が循環する「封入式遊技機」の導入も認めました。利用者は持ち玉などを液晶画面で確認します。持ち玉数などがデジタル管理されるため、店側や警察は出玉数のチェックが容易になるといいます。

 警察幹部は基準の見直しについて、「依存症問題を踏まえて過度の射幸性を抑え、適正な遊技を促したい」と話しています。

 警察庁によると、パチンコホールは1995年は1万8244店舗ありましたが、2016年は1万986店舗まで減少。市場規模は2005年の34兆9000億円をピークに、2015年は23兆2000億円に減っています。

 2017年7月10日(月)

 

■大腸がん内視鏡検査、人工知能で見逃し防止 国立がんセンターなどが開発

 国立がん研究センターと大手電機メーカーのNECは、大腸がんを検査中の内視鏡画像から病変をリアルタイムで判別して医師に伝える人工知能(AI)を開発しました。

 腸内を撮影した画像をパソコンで高速処理し、がんやがんになる前のポリープを98%の認識率で見分けます。画像に異常があると人工知能が判定した場合、警告音を鳴らした上で、モニター上でその場所を囲んで示し、医師に伝える仕組み。

 医師に匹敵する精度の高さで、その場で切除の判断に役立ちます。人が見落とす恐れのある小さくて平らなポリープも発見できました。医師を支援するシステムとして、数年後の実用化を目指すといいます。

 国立がん研究センター中央病院で診断した約5000例の内視鏡画像などをもとに、ディープラーニング(深層学習)と呼ぶ最新技術で病変の特徴を人工知能に学ばせました。新たな内視鏡画像約5000例を使って評価したところ、がんやがんにつながるポリープを画像上で示し、認識率は98%に達しました。

 今後、さらに同病院で記録している見分けにくい1600例以上のポリープなどの画像を人工知能に学習させます。

 病変を認識する精度がいちだんと上がれば、経験が浅い医師の検査を支援できます。ベテラン医師にとっても、人工知能の助言を参考に気になる部分をじっくりと観察する機会がつくれます。

 大腸がんと診断される患者は、毎年15万人前後いるとみられます。早期発見や予防につながると期待されます。

 アメリカの研究では、ポリープの段階で取り除けば大腸がんの発症を約8~9割抑えたという報告があるといいます。ただし、医師の目だけに頼った検査では、見付けにくい小さくて平らなポリープがあったり、技量にばらつきがあったりして、24%が見逃されているとの報告もあります。

 国立がん研究センター中央病院内視鏡科の斎藤豊科長は、「大腸がんは検査で見落としが多いとされ、人工知能で補うことで死亡率の低下につなげたい」と話していました。

 2017年7月10日(月)

 

■WHO、抗インフルエンザ薬のタミフルを格下げ 必須医薬品モデルリストで「補足的」に

 抗インフルエンザ薬のタミフルが、6月に公表された世界保健機関(WHO)の新しい「必須医薬品モデルリスト」で「保健システムに最低限必要な薬」から「補足的な薬」に格下げされたと、イギリスの医学誌「BMJ」が9日までに報じました。

 同誌によると、タミフルは2009年にリスト入りしました。その後、大人で症状のある期間を約1日短縮するだけで、入院や合併症を減らす効果はないとの研究が発表されるなど、以前考えられていたよりも効果は限定的との報告が出たため格下げになったといいます。

 リストを検討したWHOの専門家委員会は、「タミフルの使用は、入院患者が重症となっている場合に限るべきだ」と指摘し、効果を示す新たな情報が出てこなければ、リストから外す可能性も示唆しました。

 必須医薬品モデルリストは、医薬品の入手が困難な開発途上国で最小限必要な医薬品として、入手しやすさなども考慮して選定されており、医療援助の際の指標ともされています。

 日本でタミフルは治療に広く使われているほか、新型インフルエンザの流行(パンデミック)に備えて国が備蓄しています。

 東北大学の押谷仁教授は、「今回の格下げは、日本に直接影響するものではない」とした上で、「抗インフル薬は万能薬ではなく、パンデミックが起きた時に死亡率をどの程度下げるかは未知数の部分も多いのに、日本の備蓄量は多すぎるのではないか。備蓄量を減らし地域対策に予算を回すなどの見直しを検討すべきではないか」と話しています。

 タミフルの製造販売は、中外製薬が手掛けています。

 2017年7月10日(月)

 

■緑茶や納豆、キウイの成分に寿命延ばす効果 名古屋大学などが発見

 緑茶やウーロン茶、納豆、豆腐、キウイ、パセリ、ピーマンなどに多く含まれる「ピロロキノリンキノン(PQQ)」という成分に、寿命を延ばす効果があることが小型動物を使った実験でわかったと、名古屋大学大学院理学研究科の森郁恵教授や、久留米大学医学部、愛知医科大学医学部、三菱ガス化学などの共同研究チームが発表しました。

 研究成果は、4日付のイギリスの科学誌「Journal of Cell Science」に掲載されました。

 ピロロキノリンキノンは、1970年ころに発見された化合物。その後の研究で、抗酸化作用や神経の保護に効果のあることがわかっており、サプリメントや化粧品などに活用されています。また、栄養学的にも重要な物質であることがわかり、1989年には、ピロロキノリンキノンを餌(えさ)から除いたマウスは、発達不全、 生殖能力低下、骨不全などの早期老化を現すような症状を示すことが報告されています。しかし、動物の寿命への効果は不明でした。

 実験では、人間と似たDNA配列を持つ体長約1ミリの線虫を使用。ピロロキノリンキノンを成虫に成長した後の線虫に与えて経過を観察したところ、平均寿命が12・8日から16・8日に3割程度延びたのが確認されました。ピロロキノリンキノンの効果で、細胞に低濃度の活性酸素が発生することにより、生体の防御機能が強化されたといいます。

 また、人の培養細胞を用いた実験でも、ピロロキノリンキノンの効果で、細胞に低濃度の活性酸素が発生することが確認されたといいます。

 森教授は、「寿命が延びる効果だけでなく、メカニズムにも踏み込めたことが大きい。人間の健康寿命を延ばすための研究にも応用が期待できる」としています。

 2017年7月9日(日)

 

■乳がんの発見率、マンモとエコー検査併用で約2倍に 東北大など分析

 乳腺の密度が高いために乳がんがあっても見付かりにくい「高濃度乳房」の女性でも、マンモグラフィー検査(乳房エックス線撮影検査)と超音波(エコー)検査を併用するとがんの発見率が大きく改善することが、東北大学などの分析で明らかになりました。

 分析結果は13日に、福岡市で開かれる日本乳癌(にゅうがん)学会で発表されます。

 乳房をエックス線で撮影するマンモグラフィーは40歳以上の人の乳がん検診で有効性が確認されていますが、高濃度乳房では乳房全体が画像に白く写り、がんのしこりも白く写るため異常が見落とされやすい場合があり、課題となっています。一方、超音波検査はまだ有効性が確認されていません。

 東北大などの研究チームは2007年、マンモグラフィーのみと、超音波検査との併用を比較する大規模調査「J-START」を開始。症状のない40歳代女性約7万6000人を調べ、併用したほうが乳がんの発見率が約1・5倍高まることを明らかにしました。

 東北大などは、このうち宮城県で検診を受けた約1万1000人のデータを使い、分析。約6割を占める高濃度乳房の女性だけを検査別に比べると、「マンモグラフィーのみ」のがん発見率が0・37%だったのに対し、「超音波検査併用」では0・71%と約2倍でした。

 がんの人をがんと正しく判断できた割合(感度)も、マンモグラフィーのみだと59%だったのが、超音波も加えると96%に上がりました。高濃度乳房ではない女性の感度は、マンモグラフィーのみ77%、超音波検査併用94%でした。

 鈴木昭彦・東北医科薬科大教授(乳腺内分泌外科)は、「特に高濃度乳房では、超音波検査がマンモグラフィーの弱点を補えることが示された。超音波検査の追加で乳がんによる死亡率を減らせるのか、追跡調査による検証が必要だ」と話しています。

 高濃度乳房を巡っては、一部市町村が検診受診者に「高濃度」など乳房のタイプを独自に通知。患者団体からも通知を求める声が上がっています。これに対し、厚生労働省は「一律通知はまだ早い」とした上で、高濃度乳房を理解できるよう通知内容のひな型を今年度にも作成する方針。

 2017年7月9日(日)

 

■中年以上を対象にした物忘れ改善薬、販売が相次ぐ 主成分は生薬のオンジエキス   

 中年期以降の物忘れの改善をうたい、漢方薬に使われる生薬のオンジ(遠志)エキスを主成分とする市販の医薬品の発売が、相次いでいます。

 複数の生薬を組み合わせた漢方薬は普及していますが、1種類の生薬をエキスに濃縮した医薬品は国の審査基準の整備が遅れていました。厚生労働省が2015年末、一般用医薬品向けの単味生薬製剤の製造や効能に関するガイダンスを策定し、オンジを有効成分とした医薬品に「加齢による中年期以降の物忘れの改善」という効能効果を定めたことを受け、製薬各社が物忘れ改善薬の販売を開始しました。

 ただ、物忘れ改善薬が効能をPRする「加齢による中年期以降の物忘れ」と認知症は異なり、厚労省は販売時に注意喚起するようメーカーに求めています。

 市販の漢方薬でシェア1位のクラシエ薬品は、「アレデル顆粒(かりゅう)」(税抜き1900円)を3日から売り出した。思い出せなかった「アレが出てくる」という意味で商品名を付けました。商品の外箱には「物忘れを改善する」と表記してアピールしています。

 小林製薬は、錠剤タイプの「ワスノン」(税抜き3700円)を発売。含まれる成分が「脳内の情報伝達を活性化する」といいます。

 ロート製薬も、「キオグッド顆粒」(税抜き1800円)を売り出しました。森下仁丹とのコラボによって生み出された商品で、売れ行きは好調といいます。

 各社の薬の主成分であるオンジ(遠志)エキスとは、植物のイトヒメハギの根の部分を使った生薬で、心を落ち着ける作用があるため、東洋医学で「健忘」や「不眠」に効く薬として使われてきました。「志が遠大になる」とのいわれがオンジ(遠志)の由来です。最近の研究により、記憶のメカニズムに働き掛けて活性化を促し、記憶機能を向上させることがわかってきています。

 しかし、物忘れでも、日常生活に支障が出るなど、認知症が疑われる場合は、早期に医療機関を受診する必要があります。クラシエ薬品は商品紹介のホームページに、「物忘れの内容によって、病気(認知症)の前兆を疑うことも重要」と記載しています。

 厚労省はメーカーに対し、「適切な医療を受ける機会が失われないよう、注意喚起を含めた配慮を求めている」としています。

 2017年7月9日(日)

 

■ファミリーマート、加盟店の店長や店員の健康診断料を補助 8月から開始

 ファミリーマート(東京都豊島区)は7日、加盟店の継続的で安定した店舗運営を健康面からサポートするため、主に店長や店員などを対象に健康診断や人間ドックの受診料の一部を補助する制度「健康診断支援サービス」を8月から開始すると、発表しました。

 コンビニ業界で人手不足対応が課題になる中、福利厚生を拡充し人員定着を目指します。

 受診は、加盟店向け商品セミナー会場で実施する会場型と、約3000の提携医療機関において実施する施設型の2パターンで実施します。

 受診対象者は、ファミリーマート・サークルK・サンクスの加盟者自身、加盟者の雇用社員、週30時間以上勤務している店員など全従業員の4割に当たる約8万人で、利用する場合は1店当たり利用料が発生するものの、受診人数に制限はなく、受診料の一部を補助します。

 ファミリーマートでは、今年3月より社長直轄組織の改革推進室を設立し、店舗オペレーションの抜本的な改革に着手しています。

 4月より「ファミマスクール」と称して、池袋本社や地区本部から、各地方へ教育トレーナー(本部社員)を派遣し、アルバイトに直接研修を行う制度を実施するなど、さまざまな店舗支援活動を行っています。

 2017年7月8日(土)

 

■10~30歳代で発症する歯周病、遺伝子異常が原因か 東京医科歯科大が発見

 若い人が発症する歯周病は、遺伝子の異常が原因になっている可能性があることを、東京医科歯科大学(東京都文京区)の和泉雄一教授(歯周病学)らの研究チームが6日付の国際歯学誌に発表しました。

 免疫に関する遺伝子の異常が一部の患者に共通することを発見しました。

 歯周病は高齢者に多いとみられていますが、最近は若者の患者も増えており、侵襲性(しんしゅうせい)歯周炎(若年性歯周炎)と呼ばれます。歯を支える骨が急速に溶けるなどの症状があります。10~30歳代で発症することが多く、国内で数万人の患者がいるとみられます。生活習慣病などが原因となる高齢者の慢性歯周炎とは異なり、原因が不明で治療が難しいという問題がありました。

 研究チームは、侵襲性歯周炎の患者99人のゲノム(遺伝情報)を解析。うち10人に、細菌感染時に免疫を発動するNOD2遺伝子に異常が見付かりました。10人のうち、3人と2人はそれぞれ同じ家系で、遺伝する可能性があることもわかりました。

 歯周炎は細菌感染による過剰な免疫で起こることが知られており、このNOD2遺伝子の異常が免疫をより過剰にし、急速に症状を進行させている可能性があるといいます。

 和泉教授は、「遺伝子検査などで、早期の発見や予防につながる可能性がある」と話しています。

 2017年7月8日(土)

 

■企業のがん検診、厚労省が初の指針策定へ 実施すべき検査法や手順を推奨

 企業が従業員らを対象に実施するがん検診は、精密検査の受診率が低かったり、死亡率減少の効果が確認されていない手法が採用されたりするなど問題が多いとして、厚生労働省は6日までに、死者数を減らすために職場で実施すべき検査や手順を定めた初の指針を定める方針を決めました。専門家会合で議論し、1年以内にまとめます。

 職場でのがん検診は、企業や健康保険組合が従業員の福利厚生の一環として任意で行っています。地方自治体が健康増進法に基づいて地域住民を対象に実施する公的がん検診よりも、受診者数は多く、がん対策で重要な役割を担うと期待されている一方で、根拠法がなく、やり方はまちまちで数多くの問題点が指摘されています。

 例えば、厚労省が健保組合を対象に実施した調査では、83%が未受診者への受診を促すことをせず、96%が要精密検査とされた受診者数を把握していませんでした。また、中小企業では、乳がんや子宮頸(けい)がんといった女性特有の検診実施率は3分の2にとどまるとの報告もありました。

 厚労省は公的がん検診用に、胃がん、肺がん、大腸がん、乳がん、子宮頸がんの5種について、死亡率が減ることが確認された検査法を推奨する指針を作っています。

 しかし、8割の健保組合が公的がん検診では対象外となる若い人にも検診を勧めていたほか、推奨されていない肺の胸部CT検査が21%、前立腺のPSA検査(血液による検査)が55%で実施対象となっていました。

 厚労省は、企業が従業員のプライバシーに配慮しながら受診率向上に取り組めるような体制づくりを検討。公的がん検診用の指針を参考に、企業ががん検診を実施する場合の基準となる指針をまとめ、がんの死亡率減少につながる科学的根拠に基づいた検診の普及を図ります。

 2017年7月7日(金)

 

■事実婚夫婦にも不妊治療の助成を拡大 厚労省、来年度にも

 公的医療保険が適用されない体外受精などの不妊治療にかかる費用への助成について、厚生労働省は5日、有識者会議を開き、事実婚の夫婦への適用拡大を議論しました。厚労省は意見を踏まえ、来年度にも助成を拡大する方針を固めました。

 厚労省によると、体外受精や手術での精子採取などの特定不妊治療は現在、公的医療保険の対象外となっています。国と各都道府県が初回治療で最大30万円、2回目以降は15万円までを助成していますが、対象は法律上の婚姻をしている夫婦に限られています。2015年度は約16万件の利用があり、年々増えています。

 この日の有識者会議では、産婦人科医や法学者、不妊治療の経験者、事実婚の当事者団体関係者などが参加して議論。「家族の在り方が多様化し、少子化が進む中助成拡大は必要だ」などと賛成意見が大勢を占めました。「生まれてくる子供が父との親子関係を成立させるには父の認知が必要。認知を確保する方法を考えるべきだ」などの意見も出ました。

 結婚届を出さないで、事実上の結婚生活を送る事実婚の夫婦は、年金や健康保険、児童手当といった社会保障給付に関しては対象に含まれています。不妊治療の助成費は社会保障給付ではないものの、厚労省は家族の在り方の多様化も踏まえ、社会保障給付に準じた扱いが望ましいと判断しました。

 2017年7月7日(金)

 

■膝のポキポキ鳴る音は、将来の膝痛への警告 アメリカの医科大学が研究

 しゃがんだり、立ち上がったりした時に膝がポキポキ鳴る頻度の高い人ほど、将来、膝の痛みを伴い、ひどい場合は歩くのが困難になる変形性膝関節症のリスクが高まるという論文を、アメリカのテキサス州にあるベイラー医科大学などの研究チームがまとめ、5月4日発行の医学誌「関節炎ケアと研究(Arthritis Care & Research)」(電子版)に発表しました。

 論文によると、膝がポキポキ鳴ることと変形性膝関節症の発症リスクについては、これまでほとんど注目されてきませんでした。患者から「膝から音がするのですが」と訴えられても、医師は膝を検査して異常がなかった場合、ポキポキ鳴ることの意味についてどう評価すればいいかわかりませんでした。

 そこで研究チームは、変形性膝関節症にかかっていない3495人の男女(平均年齢61歳)を対象に、4年間にわたって毎年行われる健康診断の際に、「膝がポキポキ鳴る頻度」や「膝の痛みの有無」を聞き取り調査し、併せてエックス線写真で膝関節の状態を調べました。対象者の肥満度を表す体格指数「BMI」の平均は28・2で、「やや肥満」に当たりました。

 「膝がポキポキ鳴る頻度」については、「膝を動かした時に、音が鳴ったり、きしみを感じたりすることがあるか」を尋ね、「全くない」「まれにある」「時々ある」「しばしばある」「いつもある」の5つから回答を選んでもらいました。そして、4年後の変形性膝関節症の発症リスクを比較すると、「全くない」人に比べ、「まれにある」人は1・5倍、「時々ある」人は1・8倍、「しばしばある」人は2・2倍、「いつもある」人は3・0倍と、膝がポキポキ鳴る頻度が多い人ほど、発症リスクが高くなりました。

 研究チームは論文の中で、「たとえ膝の痛みという自覚症状がなくても、ポキポキと音が鳴ることは、膝関節の内部で何らかの異常がある可能性があり、変形性膝関節症のリスクを持つ人の識別、発症の予測に有用であることが示された」とコメントしています。

 変形性膝関節症は、関節の軟骨が傷んで擦り減り、歩く際に痛みが生じる疾患。中高年齢者に多く、50歳代で発症し65歳以上で急増しますが、関節に過度の負担がかかったり、関節機構に異常があったりすると、軟骨の摩耗が加速されて、必ずしも中高年齢者でなくても発症します。

 症状としては、膝関節のはれや、こわばっている感じがし、正座ができなくなります。歩き始めに膝が痛みますが、少し歩いているうちに楽になり、また歩きすぎると痛みが出てきます。片側の膝だけに発症することもありますが、両側性のこともしばしばあります。症状が進行すると、膝関節を完全に伸ばすことができなくなり、屈曲も制限され、関節が側方にぐらつくようになることもあり、日常生活や動作が大きく制限されることになります。

 2017年7月6日(木)

 

■P&Gがリンス1万4184個を自主回収 髪質を整える成分の配合量が規格から外れる

 家庭用品大手のP&G(プロクター・アンド・ギャンブル・ジャパン)は6日、ヘアケア製品のリンスで一部の成分の配合量が規格から外れていたことがわかったとして、約1万4000個の製品を自主回収すると発表しました。

 自主回収するのは、P&Gが今年4月24日から6月21日にかけて出荷した「パンテーン エクストラダメージケア トリートメントコンディショナー(ポンプタイプ)」の一部の製品です。

 発表によりますと、これらの製品は工場での製造工程で不具合が見付かり、髪質を整える成分の配合量が規格から外れているか、全く配合されていないということです。

 今のところ、健康上の被害の報告は受けていないということですが、P&Gでは品質基準を満たさず、十分なコンディショニング効果が得られないなどの可能性がある製品だとして自主的に回収することを決めました。

 対象となるのは、ボトルの底に記載されている製造ロット番号が「70894811E5」、もしくは「70894811E6」とされている製品で、1万4184個に上るということです。

 P&Gでは、「このたびの件を厳粛に受け止め、製品の回収を速やかに進め、今後の再発防止に向け万全の対策を講じてまいります」とコメントしています。

 着払いで製品を送れば、代替品に交換します。住所は、〒651ー0088 神戸市中央区小野柄通7−1−18 P&Gパンテーン返品係。問い合わせは、お客様相談室(0120・330812)。

 2017年7月6日(木)

 

■手足口病が西日本を中心に拡大 患者数は昨年同時期の6倍

 エンテロウイルスなどが原因の急性ウイルス感染症の手足口病の流行が、西日本を中心に広がっています。

 国立感染症研究所が7月4日に発表した6月19日から25日までの速報データによると、全国約3000カ所の小児科定点医療機関当たりの患者報告数は2・41人となり、過去10年間で2011年、2015年、2010年に次いで4番目に多い数字となりました。昨年と同じ時期と比べると、約6倍と大幅に増えています。

 都道府県別では、高知県が11・7人で最多、鳥取県が8・89人、香川県が7・14人、滋賀県が6・91人と西日本を中心に患者が多く、東日本では秋田県が1・89人、東京都が1・72人と患者が比較的多くなっています。昨年の同じ時期は全国で0・41人でした。

 国立感染症研究所はウェブサイトのトップで、手足口病を「注目すべき感染症」として取り上げています。乳幼児を中心に、文字通り手足や口に水疱性の発疹が現れ、約3分の1で熱が出ます。基本的には数日のうちに治りますが、時には髄膜炎など深刻な病気に発展するケースがあります。今年流行している種類のウイルスでは、手足の爪が浮き上がってはがれ落ちる例もありますが、自然に治るとされます。

 くしゃみなどの飛沫や便を通じて感染し、保育施設などで集団感染が起こりやすくなります。予防には手洗いや排せつ物の処理をしっかり行うほか、おもちゃやタオルは共用せず、個人別にすることがよいといいます。

 国立感染症研究所の藤本嗣人室長は、「すでに全国に広まって流行期に入っている。これからさらに患者が増える可能性がある」と注意を呼び掛けています。

 2017年7月5日(水)

 

■先天梅毒で新生児5人死亡 妊婦の未検診、母子感染の要因に

 2011年~2015年の5年間に、21人の新生児が妊婦からの母子感染による「先天梅毒」と診断され、うち5人が死亡、4人に後遺症があったとの調査結果を、日本産科婦人科学会が4日までにまとめました。

 梅毒は発見すれば投薬で治せるものの、妊婦健診を適切に受けなかったため、母子感染につながったとみられます。

 調査に参加した日本大学の川名敬教授(産婦人科学)は、「経済的な事情で健診を受けられない人がいる。費用の免除など社会的な支援が必要だ」と強調し、「望まない妊娠のため健診を受けない人がいることも、先天梅毒の発生の要因になっている」と指摘しています。

 産婦人科の高度な医療を提供できる全国257病院を調査。妊婦166人の感染者がいたことがわかり、うち4分の1は定期的に健診を受けておらず、胎盤を通じて新生児に感染した可能性があります。

 梅毒はトレポネーマという微生物による性感染症で、大人では初期は性器や唇などに、しこりやリンパ節のはれが出て、進行すると全身に赤い発疹ができます。新生児が先天梅毒になると死産または早産になるほか、心臓や目、耳の障害を引き起こすことがあります。

 昨年1年間に報告された梅毒の患者数は約40年ぶりに4000人を超え、20歳代女性の感染が急増しています。

 2017年7月5日(水)

 

■再生医療用ES細胞、来年2月にも研究機関に提供へ 京都大学

 京都大学は4日、厚生労働省と文部科学省の承認を受けた再生医療用のES細胞(胚性幹細胞)について、今年10月にも作製を始め、2018年2月には希望する研究機関に提供できるとの見通しを発表しました。医療用のES細胞の作製は国内初。

 京都大ウイルス・再生医科学研究所の末盛博文准教授によると、不妊治療などを手掛ける京都市中京区の足立病院から、不妊治療の患者に説明と同意を得る手続きを行った上で、破棄が決まった受精卵を提供してもらい、今後10年間に約20種類のES細胞株を作る計画。研究機関などに提供し、患者の治療の研究や薬剤の開発などに利用してもらいます。今年6月に、厚労省と文科省から再生医療用ES細胞の作製が認められました。

 ES細胞は、iPS細胞(人工多能性幹細胞)と同様に、さまざまな細胞や組織に変化する能力を持ちますが、受精卵を壊すため倫理的な課題から、これまで基礎研究に利用が限られていました。一方、欧米では、ES細胞を使って網膜の変性症や脊髄損傷、パーキンソン病、糖尿病、心疾患の臨床試験(治験)が進められています。

 末盛准教授は、「海外ではES細胞を使った治験が先行している。日本でもES細胞を使った再生医療の研究を進める必要がある」、「ES細胞もiPS細胞も似ているが違いもある。どちらが臨床利用に向いているか安全性や有効性を比較検討しながら研究を進めていくべきだ」としています。

 足立病院の畑山博院長は、「(受精卵を)捨てることに悩む患者はたくさんいる。ES細胞の臨床応用に使うことができる道筋がついて、一つの選択肢を示すことができる」と述べました。

 2017年7月5日(水)

 

■脊髄性筋委縮症の治療薬、厚労省が初めて承認 核酸医薬「スピンラザ」

 全身の筋力が低下する難病の脊髄性筋委縮症(SMA)の初の治療薬「スピンラザ」(一般名・ヌシネルセンナトリウム)について、製薬会社バイオジェン・ジャパンは3日、厚生労働省から製造販売の承認を取得したと発表しました。

 8月中にも保険適用される見通し。脊髄性筋委縮症は主に小児期に現れる病気で、10万人に1、2人の割合で発症します。生後半年以内に発症する最も重いタイプは、寝たきりで体を動かすのが困難で、人工呼吸器などが生涯必要となります。病気の原因は遺伝子の異常で、筋肉を動かすのに必要なタンパク質が正常に作られないために生じます。

 新薬のスピンラザは、DNAやRNAといった遺伝情報をつかさどる物質を利用する「核酸医薬」で遺伝子に作用する画期的なタイプで、脊髄性筋委縮症と診断された重症の乳児が対象。日本人を含む国際共同治験では、約4割の患者が寝返りを打てるようになったり、自力で座れるようになったりしました。スピンラザが異常のある遺伝子とは別の似たRNAに結合して、このRNAが筋肉を動かすタンパク質になるためと見なされています。

 スピンラザは、アメリカやヨーロッパ連合(EU)、カナダでは先行して承認されています。アメリカでは2016年9月に申請し、わずか3カ月の速さで承認が下りたことが話題となりました。日本では2016年12月に承認申請が行われ、通常よりも大幅に速い7カ月での承認となりました。

 患者団体の「SMA家族の会」副会長の女性は、「早く承認され非常にうれしい。乳児型以外の患者にも早く使えるようになってくれれば」と期待を込めます。

 核酸医薬は、第一三共や大日本住友製薬、日東電工など、多くの国内企業が開発に参入しています。スピンラザの承認で、開発に弾みが付きそうです。

 なお、スピンラザの薬価は通常なら8月に決まります。高額薬剤が問題となる中、薬価には注目が集まっていますが、アメリカでは1瓶1400万円の値段が付いており、最初の1年は8400万円、2年目以降は年4200万円の薬剤費となります。昨年、アメリカで承認された筋ジストロフィーの核酸医薬「エクソンディス」も、小児で年8400万円の価格設定であり、スピンラザが異常とはいえません。

 2017年7月4日(火)

 

■高濃度乳房の女性への通知体制を整備 乳がん検診で厚労省方針

 厚生労働省は、自治体が行う乳がん検診のマンモグラフィー(乳房エックス線撮影)で異常が見えにくい「高濃度乳房」の女性への通知体制を整備します。現在は国の規定がなく、多くの自治体は診断結果を「異常なし」とだけ通知しています。

 厚労省は自治体に対して、がんを見落とすリスクや別の検査の案内などを記した通知を出すように促し、地域によって受診者が得られる情報に差が出ないようにします。

 神奈川県川崎市の会社員、風間沙織さん(52歳)は3年前、初期の乳がんと診断されて衝撃を受けたといいます。それまで約20年間、マンモグラフィーを受け、毎年「異常なし」と通知されていたからです。しかし、妹の乳がん発覚を機に超音波検査を受けたところ、自分にも乳がんが見付かり、その後に参加した講演会で、自分がマンモグラフィーではがんが判別しにくい高濃度乳房で、異常が見落とされてきたと知りました。

 女性の乳房は乳腺の密度によって4分類あり、1~2番目に高い高濃度乳房はマンモグラフィーの画像で乳房全体が白く写ります。がんのしこりも白く写るため異常が見落とされやすいといい、一部自治体のデータでは40歳以上の女性の約4割が高濃度乳房に該当すると推定されています。

 ただ、国は自治体に乳房の4分類を受診者に伝えるよう定めていません。厚労省によると、本人に分類を通知している自治体は全体の13%。マンモグラフィー以外の検査を勧めるなど通知を受けた後の対応を決めている自治体は、その半分にとどまっています。

 がん見落としのリスクなどを知り、自らの分類を気にする女性は少なくありません。聖マリアンナ医科大ブレスト&イメージングセンター(川崎市)が2016~2017年に検診受診者約1000人に行った調査で「自分の乳腺密度を知りたい」と答えた女性は85%に上りました。

 昨年10月には、乳がん患者団体などが厚労省に通知体制の整備を要望。今年3月には、日本乳癌(がん)検診学会が、国に適切な通知の在り方を検討するよう求めました。

 厚労省は6月の有識者検討会で、受診者に通知する場合の標準的な内容を市町村に提示する方針を表明しました。地域によって対応に差が出ないよう「マンモグラフィーですべてのがんが見付かるわけではない」といった説明や超音波検査の案内などを盛り込み、今年度にも示すといいます。

 医師や患者らで構成するNPO法人「乳がん画像診断ネットワーク」(東京都中央区)の増田美加副理事長は、「マンモグラフィーは意味がないと誤解を招いたり、乳がんが見落とされたりしないよう、正しい通知内容を早急にまとめてほしい」と求めています。

 2017年7月4日(火)

 

■熱中症搬送は全国で1914人、前週から倍増 熊本県で1人が死亡

 総務省消防庁は4日、6月26日~7月2日の1週間に1914人が熱中症で搬送され、前週の946人から倍増したとの速報値を発表しました。熊本県で1人が死亡しました。

 高気圧が広がって各地で気温が上昇した7月2日に、搬送者が815人と集中しました。消防庁は今後も気温の上昇が見込まれるとして、適度な休憩や小まめな水分補給といった対策を取るよう呼び掛けています。

 初診時の傷病の程度別では、軽症が1275人と6割超を占めましたが、3週間以上の入院が必要な重症は25人、短期の入院が必要な中等症は584人いました。年齢別では、65歳以上の高齢者が936人で、最多の49・1%を占めました。

 発生場所で最も多かったのは住居の664人で、全体の3割超を占めました。

 都道府県別では、福岡県の137人が最も多く、大阪府133人、愛知県120人、兵庫県93人、鹿児島県79人、沖縄県71人、愛媛県64人、岡山県62人、東京都59人、京都府と熊本県57人と続きました。

 2017年7月4日(火)

 

■医師の死亡診断、看護師が送る診療データで可能に 今年度内にも運用開始へ

 医師による対面が原則の死亡診断について、厚生労働省は今年度内に規制を緩めます。医師がすぐに駆け付けることができない場合に、スマートフォンなどを通じて患者の状況を把握することなどを条件に死亡診断書を出せるようにします。

 高齢化に伴い死亡者が増える多死時代を迎える中、自宅や介護施設、医師不在の離島などでのみとりがしやすくなります。

 医師法は、死亡診断書の交付に医師の診察を義務付けており、埋葬や火葬にも死亡診断書が必要です。現状では、医師の診察を受けられない患者は、亡くなる直前に救急搬送されたり、死亡後に「異状死」として届け出て遺族らが警察に事情を聴かれたりすることがあります。

 こうした現状を改善する運用の流れは、自宅療養する患者宅などを看護師が訪問し、心停止や呼吸の停止、瞳孔の開きを間隔をおいて2回確認。外傷の有無なども観察し、スマートフォンやタブレット端末で遺体の写真などとともに医師に送ります。医師は「死亡」と確認すれば、看護師に死亡診断書の代筆を指示し、医師はテレビ電話などを通じて遺族に口頭で説明します。

 代筆を指示できるのは、患者が死亡する2週間以内に診療していた医師。出張や当直業務中などですぐに対応できないなど、到着までに12時間以上かかる場合を想定します。ほかに生前にICT(情報通信技術)を活用した死亡診断に患者と家族が同意している、死期が予測されている、診察した病気以外での死亡の場合は警察に届けるなどを条件とします。

 政府は昨年6月、みとりを円滑に進めようと、一定の条件を満たせば医師が対面診察しなくても死亡診断できるようにする見直しを盛り込んだ規制改革計画を閣議決定しました。

 これを受けて厚労省研究班(研究代表者=大沢資樹(もとき)・東海大学教授)は、20年ほど前から看護師が死亡診断できるイギリスの状況などを調査し、ICTを活用した指針案をまとめました。厚労省は今後、自治体や関係団体に指針を通知し、通信機器の整備や看護師の育成を進め、今年度内にも遠隔での死亡診断を始める方針。指針案は、遠隔での死亡診断を全例把握し、検証していくことを求めています。

 大沢教授は、「死という機微に触れるデータが流出していかないような仕組みづくりが大きな課題だ」と話しています。遺体を撮影する手順について、「家族の心情に配慮して進めるとともに、社会が受け入れる土壌をつくっていかなければならない」とも指摘しています。これらの仕組みが犯罪に悪用されないようにすることも、重要です。

 2015年に約130万人だった死亡者は、ピークの2039年には36万人ほど多くなると見込まれます。現状では8割が病院など医療機関で亡くなっていますが、自宅や介護施設でみとりができる体制を整えないと、病院のベッドが足りなくなることが懸念されています。

 2017年7月3日(月)

 

■歯科医療機関の半数、歯を削る医療機器を使い回し 厚労省の調査で判明

 全国の歯科医療機関の半数近くが、歯を削る医療機器を患者ごとに交換せずに使い回している可能性があることが、厚生労働省研究班(代表=江草宏・東北大学歯学部教授)が2017年に実施した調査で明らかになりました。

 滅菌しない使い回しが7割弱だった5年前の調査に比べて改善したものの、院内感染のリスクが根強く残る現状が浮き彫りになりました。

 調査は、歯を削るドリルを取り付ける「ハンドピース」と呼ばれる柄の部分の管理について尋ねたもの。治療時に患者の口に入れるため唾液や血液が付着しやすく、使い回せば細菌やウイルスを次の患者に感染させるリスクがあります。日本歯科医学会の指針は、患者ごとに機器を交換し、高温の蒸気発生装置で滅菌するよう定めています。

 調査は日本歯科医師会の会員1000人に郵送で行い、2017年2月までに700人から回答を得ました。機器について「患者ごとに交換」と答えたのは52%。5年前の2012年調査の31%に比べて、21ポイント増えました。

 一方、指針に沿わずに「感染症患者とわかった場合」「血液が付いた場合など」に交換するとしたのは、それぞれ17%、16%。13%は滅菌せずに「消毒薬でふく」と回答しました。

 厚生労働省歯科保健課は、「改善傾向にあるが満足できる水準ではない。講習会などを通じ、院内感染対策の重要性を知ってもらう必要がある」と話しています。

 2017年7月3日(月)

 

■両肺の一部を合体した片肺移植手術に成功 岡山大病院が世界初、50歳代女性に

 岡山大学病院(岡山市北区)は、鹿児島県で脳死と判定された50歳代の女性が提供した両肺の一部を使い、一つの左肺に作り直した上で、岡山県在住の50歳代の女性に移植したと2日、発表しました。両方の肺の一部を一つの片肺に加工して移植する手術は、世界で前例がないといいます。

 執刀した臓器移植医療センターの大藤剛宏教授によると、移植を受けた女性は肺胞が壊れて息切れやせきなどの呼吸器障害を引き起こす肺気腫を2007年に発症し、2011年に右肺の脳死臓器移植を受けていました。その後、残った左肺の症状が進行し、人工呼吸器を使いながら移植の機会を待っていました。

 今回提供された肺は下葉と呼ばれる下半分の状態が悪く、移植に適しませんでしたが、上半分の上葉は両側とも良好な状態だったため、右肺の上葉を左肺の上葉の下部につなぎ、一つの左肺として作り替え、移植しました。手術は1日昼から約9時間かけ、午後10時半ごろ無事終了したということで、女性の容体は安定し、約3カ月で退院できる見込み。

 大藤教授は、「脳死臓器提供が少ない現状で、上葉は良好なのに下葉が傷んでいるため使えないという状況が多く、残念に思っていた。今回、新たな術式で提供していただいた貴重な肺を生かすことができ、うれしく思う」と話しています。

 大藤教授らの移植チームはこのような状況を想定し、ブタを使って経験を重ね、4年前に術式をアメリカの医学誌に発表していました。

 2017年7月2日(日)

 

■厚労省、完全な遠隔禁煙外来を認可へ 医師の面談なし、禁煙薬を配送

 厚生労働省は、禁煙外来で医師の直接面談が必要ない「完全遠隔診療」を近く認める方針を固めました。企業の健康保険組合など信頼できる実施主体が情報通信技術(ICT)を使う場合に限定する見通しで、9月までに通知を出します。

 遠隔禁煙外来を導入する企業が増えれば、たばこをやめたい人が通院や順番待ちで時間を浪費することがなくなり、国民の健康増進につながると期待されます。

 医師法が「自ら診察しないで治療をしてはならない」と定めているため、遠隔診療の対象は従来、対面診療が物理的に困難な離島やへき地の人、がんや難病で在宅治療に移行した人らに限られてきました。患者側からの拡大の要望もあり、厚労省は2015年の通達で、遠隔診療を離島やへき地の患者に限らず、病気の種類も限定しないことを明確化。ただし、一度は対面で診療するよう定めていました。

 今回、通信技術の進展や健康志向の高まりを受け、対面診療のない完全な遠隔禁煙外来を認めることになりました。患者の安全確保のため禁煙外来以外の遠隔診療では、医師が必ず一度は対面で診察する原則を堅持します。

 禁煙外来は、12週間で最大5回の通院に健康保険が適用されるものの、多忙な人は通院の継続が難しく、厚労省の調査で64%の患者が途中で脱落していました。

 これに対し、医師がスマホやパソコンのビデオ通信を通じて患者を診察する遠隔診療は、時間短縮やコスト削減が可能で、処方された禁煙薬は自宅や職場に送られます。継続が容易とされ、大企業の健康保険組合を中心に近年、導入例が相次いでいます。さらに対面診療の必要がなくなることで、禁煙外来のない地域に住む社員も利用しやすくなり、健康格差の解消につながるとみられます。

 遠隔診療でも診療報酬は発生しますが、遠隔禁煙外来サービスを提供する民間企業「リンケージ」によると、通常の通院に比べて総費用を1割以上安くできるといいます。健康保険組合などの医療保険者が健康診断と連動して実施すれば、従業員とその家族を合わせて1000万人以上が対象になり得るともいいます。

 遠隔禁煙外来は、1~2週間ごとに4回程度実施し、1回当たり数十分間医師が診察して治療法を指示します。保健師が助言するケースもあり、サービスを提供する民間企業の職員が数十週間にわたってメールで様子を聞き、脱落を防ぐ例もあります。

 日本禁煙学会理事の吉井千春・産業医科大学若松病院呼吸器内科診療教授は、「通院の禁煙外来は日中に限られ、治療が必要なのに来られない人は多い。完全遠隔外来で治療のチャンスが広がるのはよいことだ。ただ、薬を送って終わりというのではなく、禁煙治療がうまくいかなかった時にしっかりフォローする仕組みも必要で、よりよい形をさらに模索すべきだ」と話しています。

 2017年7月2日(日)

 

■はしか患者163人、2年連続の増加 海外で感染し、各地で集団発生

 はしか(麻疹)の今年の患者数が163人となり、関西空港で集団発生があった昨年1年間の159人をすでに上回ったことが1日、国立感染症研究所の調査で明らかになりました。

 海外で感染した人を起点とした集団発生が、各地で起きています。ワクチン接種の徹底によって過去最低の35人だった2015年から一転し、2年連続の増加となっています。

 東南アジアやヨーロッパで患者が増えており、海外に行く人が増える夏休みを控え、国立感染症研究所の多屋馨子(けいこ)室長は「ワクチンを2回受けていない人は、今のうちにぜひ接種をしてほしい」と呼び掛けています。

 国立感染症研究所感染研によると、6月18日現在で最も多いのは山形県の53人。続いて三重県の22人、東京都の17人、広島県の11人となっています。感染したとみられる国はインドネシアが最多で、タイやマレーシア、シンガポールなども報告されています。

 山形県では3月、インドネシアのバリ島から帰国した横浜市の20歳代男性が県内の自動車教習所に通っている時に感染が判明し、その後、自動車教習所や男性が滞在していたホテルを中心に感染が広がり、5月に終息するまで患者が相次いで発生しました。三重県では2月に、集団発生を確認。広島県でも2月に発生し、保育園児などに患者が出ました。

 日本は2008年に1万人以上のはしか患者が報告されるなど、かつては「はしか輸出国」との批判を受けました。しかし、その後の対策が功を奏し、2015年に世界保健機関(WHO)から土着のウイルスによる感染がない「排除状態」と認定されました。

 ただし、東京医科大学の浜田篤郎(あつお)教授は、「対応を怠ると、日本も再びはしか流行国になるだろう」と懸念を示しています。浜田教授によると、20歳代後半から30歳代の人は過去に1度しかワクチンを受けていない人が多く、免疫が不十分な可能性があります。

 はしかは、麻疹ウイルスを原因とする感染症。主な症状は発熱や発疹で、肺炎や脳炎などの合併症を起こして死亡することもあります。空気感染するなど感染力が非常に強いため、マスクで防ぐことは難しく、ワクチンの予防接種が有効な手段で、確実に免疫をつけるために2回の接種が望ましいとされ、現在は2回の定期接種が行われています。

 2017年7月2日(日)

 

■医薬品の宣伝、39製品で不適切な表現の疑い 厚労省が初調査

 製薬会社が医療用医薬品の営業・宣伝をする際に、2016年12月から今年2月の3カ月間に39製品で不適切な表現を使っていた疑いがあることが1日までに、厚生労働省の初めての調査で明らかになりました。

 このうち23製品については、安全性の軽視などが特に問題だとして、厚労省は今後、自治体と連携して行政指導を行う予定です。

 調査は、全国の複数の医療機関に依頼して実施。製薬会社の医薬情報担当者(MR)が営業で医療機関を訪問した際、誇大な表現や事実誤認の恐れがある表現を使って医薬品の効果などを説明した場合、報告してもらいました。製薬会社のホームページなども調べました。

 その結果、抗がん剤など39製品で、「誇大な表現」など法律や通知に違反する不適切な表現を使っていた疑い事例が64件あることが判明。健康被害などの観点から、直ちに取り締まりを必要とする明確な違反事例はなかったといいます。

 厚労省によると、ある製薬会社の医薬情報担当者は統合失調症の治療薬を医療機関で説明した際に、医薬品を審査する「医薬品医療機器総合機構」の審査報告書に記載のない効能効果を説明していました。また、試験結果のグラフを加工し、効果を誇張していた事例もあったといいます。

 製薬大手ノバルティスファーマの降圧剤「ディオバン」を巡る研究論文データ改ざん事件などを受けて、医療用医薬品の営業・宣伝を監視する制度が導入され、厚労省が初めて調査しました。

 2017年7月1日(土)

 

■無痛分娩の女性死亡、出産長男も重い障害 神戸の医院、過失認める

 麻酔で出産の痛みを和らげる無痛分娩(ぶんべん)を巡り母子の重大事故が相次ぐ中、神戸市の産婦人科医院で2015年9月、無痛分娩をした女性が出産時に呼吸困難に陥り、出産した長男とともに重い障害を負ったことが5月29日、明らかになりました。

 女性はこの障害の影響で、約1年8カ月後の今年5月に35歳で亡くなりました。遺族側は、無痛分娩の際の麻酔が原因だと主張しています。

 遺族側の代理人弁護士によると、産婦人科医院は神戸市西区の「おかざきマタニティクリニック」。産婦人科医の男性院長は、背中に細い管を通して麻酔薬を注入する「硬膜外麻酔」で、女性に無痛分娩を実施しました。その後、女性は呼吸困難となり、別の大学病院に搬送されて緊急帝王切開で長男を出産しましたが、低酸素脳症のため女性は意識が戻らないまま今年5月12日に大学病院で死亡しました。低酸素脳症が原因の多臓器不全だったといいます。

 長男も脳に重い障害を負い、現在も別の病院に入院しているといいます。

 遺族への院長の説明や診療の記録では、女性に麻酔薬を少し入れた後に院長は離席、戻ってきて麻酔薬を追加後も再び外来診療のために部屋を離れたといいます。女性は追加麻酔後に、呼吸困難となりました。

 弁護士は、医師が麻酔の管を本来と違う部分に誤って入れたことで麻酔が効きすぎて、呼吸などができなくなる「全脊椎(せきつい)麻酔」になった上、母子の状態の確認も不十分だったと主張しています。産婦人科医院側は昨年12月、院長の過失を認め、遺族に示談金を支払ったといいます。

 事故当時、産婦人科医院内に医師は院長一人だったといいます。弁護士は、「麻酔をかけた後は急変の可能性があり、しばらく経過を見守る必要があるのに、すぐにその場を立ち去ったのは明らかなミス。外来の片手間に麻酔の処置を行うことはあり得ない」と話しています。

 医院側は取材に、「患者の個人情報なので答えられない」としています。

 この事故については、無痛分娩を巡る事故について調査している日本産婦人科医会も情報を把握し報告を求めていましたが、産婦人科医院は応じていませんでした。

 無痛分娩を巡っては、今年に入り、大阪府和泉市や神戸市、京都府京田辺市などで、麻酔などにより母子が死亡したり、重い障害を負ったりした事例が相次いで明らかになっています。

 2017年7月1日(土)

 

■精神疾患の労災認定、2016年度は最多の498人 過労死、過労自殺も高止まり

 仕事が原因でうつ病などの精神疾患を発症し、2016年度に労災認定を受けたのは498人で、1983年度の調査開始以降、最多を更新したことが5月30日、厚生労働省のまとめで明らかになりました。前年度と比べて26人増えました。

 498人のうち3割超は、月平均で100時間以上の時間外労働をしていました。いじめや嫌がらせも後を絶たず、職場の環境改善が必要なことが改めて浮き彫りになりました。

 うつ病などの精神疾患による労災申請は、前年度から71人増え1586人で、こちらも過去最多となりました。労災認定を受けた498人のうち、過労自殺(未遂を含む)は9人減って84人。

 今回の過労自殺の中には、電通の新入社員、高橋まつりさん(当時24歳)が含まれています。母親の幸美さん(54歳)は、「長時間労働という原因をなくすことで大切な命や健康を守ることができます」とコメントしました。

 労災認定を受けた人の月平均の時間外労働をみると、100時間以上は158人で、このうち160時間以上は52人でした。一方で、20時間未満でも84人が労災認定を受けていました。

 労災認定を受けた人を年代別にみると、30~50歳代は前年度と比べて減ったものの、20歳代が107人と20人増えました。業種別では、製造業(91人)、医療・福祉(80人)、卸売・小売業(57人)の順番でした。

 一方、仕事が原因で脳梗塞や心筋梗塞などの「脳・心臓疾患」を発症して労災申請したのは、30人増えて825人。労災認定を受けたのは260人(9人増)で、このうち過労死したのは107人(11人増)でした。

 脳・心臓疾患による労災認定は中高年に多く、50歳代が99人、40歳代が90人で、過労死の多くも40~50歳代で起きています。業種別にみると、「道路貨物運送業」が89人で最多でした。

 労災認定件数の発表を受け、過労死弁護団全国連絡会議の幹事長、川人博弁護士は「過労死の疑いがあっても労災申請をしていないケースが多い。今回の数字は氷山の一角だ」としています。

 政府は今年3月、電通の違法残業事件を受け、残業を「原則月45時間、年間で360時間」とし、労使で協定を結べば年間720時間まで認め、特に忙しい月は特例として100時間未満の残業を容認するとした働き方改革の実行計画をまとめ、関連法の改正案を秋の臨時国会に提出する方針で、2019年度からの実現を目指します。

 2017年7月1日(土)

 

■抗がん剤、同じ効果なら安価なほうを使用 日赤医療センターが昨年に続いて決定

 がん治療薬「オプジーボ」など高額薬による国の医療費増大が問題となる中、日本赤十字社医療センター(東京都渋谷区)が30日までに、5月に保険適用が決まった抗がん剤「ザルトラップ」(一般名:アフリベルセプト)について、治療で原則使用しない方針を決めました。

 同じ効果で約半額の既存類似薬「アバスチン」(一般名:ベバシズマブ)があり、割高な新薬を使うメリットはないと判断しました。薬価が高いことを理由に医療機関が使用を差し控える決定をするのは、国内では異例とみられます。

 高額な新薬が保険財政に与える影響が問題化したことから、厚生労働省は薬価制度の見直しを進めています。日赤医療センターは医療費の抑制につなげるねらいで、昨年に続く今回の決定は国の薬価制度見直し議論に一石を投じそうです。

 化学療法科の国頭英夫部長によると、日赤医療センター化学療法委員会が昨年5月下旬に、「同じ効果、同じ副作用なら価格が安い抗がん剤を使う」との院内方針を決定。大腸がんの抗がん剤「サイラムザ」(一般名:ラムシルマブ)と「アバスチン」を比較し、価格が高いサイラムザについて、大腸がんの治療に使用しないことも決めました。

 2剤はがん細胞が栄養を得るため血管を引っ張る動きを妨げる効果があり、ほかの抗がん剤と併用します。サイラムザは胃がん用に2015年に発売され、昨年4月、大腸がんに適応拡大。アバスチンは大腸がん用に2007年に承認されており、国頭部長によると「大腸がんに対し、2剤は効果も副作用も変わらない」といいます。

 2剤の価格は体重60キロの患者が半年間使用するとアバスチンが150万円なのに対して、サイラムザは427万円と約2・8倍。そのため、日赤医療センターは「国民皆保険制度のもと、日本では高額薬であっても医師は価格を気にせず処方してきた」と指摘し、「ほかに薬がない胃がんにはサイラムザを使っても、大腸がんでは使わない」としました。

 アメリカではニューヨーク・タイムズ紙が2012年10月、ニューヨークのスローンケタリング記念がんセンターが、アバスチンと効果や副作用がほとんど変わらない高額な新薬ザルトラップを使わない方針を示したことを報じました。同紙は翌月、「製薬企業がこの1カ月使用すると約100万円の新薬を50%引きして、医療機関に販売する」と報道。新薬ザルトラップの価格はその後、実際に下がりました。

 日本では上限を超えた医療費が医療保険から支給される「高額療養費制度」で患者負担が抑えられることもあり、同じ効果なら安価な薬剤を使うという考えは浸透していません。

 国立がん研究センター前理事長の堀田知光・国立病院機構名古屋医療センター名誉院長は、「高額薬は増えており、医師も患者も保険財政の負担を考える時期に入ったのではないか」と話しています。

 2017年7月1日(土)

 

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