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健康ダイジェスト

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■歯が少ない高齢者、引きこもりリスクが2倍に 東北大などが調査

 歯の数が少なく入れ歯を使わないい高齢者は、歯の数が20本以上ある高齢者に比べ、週1回も外出しない閉じこもりになるリスクが2倍程度高いとの調査結果を、東北大の相田潤・准教授(歯科公衆衛生学)らが発表しました。

 歯の健康状態が悪いと、人との会話や食事をためらいがちになり、外出機会が減ってしまう可能性があるといいます。

 2006年に65歳以上の愛知県の高齢者に、歯の本数と外出回数などをアンケート調査。2006年時点で閉じこもりではない4390人を4年間追跡し、歯が19本以下で入れ歯を使う人と、19本以下で入れ歯を使わない人、20本以上ある人の3つのグループで、閉じこもりになった人の割合を算出しました。

 その結果、20本以上ある人で4年後に閉じこもりになったのは4・4パーセントだったのに対し、19本以下で入れ歯を使う人は8・8パーセント、19本以下で入れ歯を使わない人は9・7パーセントと、閉じこもりの割合がより高くなりました。

 所得などを考慮し調整すると、入れ歯を使わない65~74歳の高齢者が閉じこもりになるリスクは、20本以上の人の1・8倍でした。

 相田准教授は、「高齢者にとっては歯が少なく、入れ歯を使わないことが引きこもり状態へのリスクを高める。歯が少ない人は、入れ歯をつけて外出する生活を心掛けてほしい」と話しています。

 2016年6月30日(木)

 

■がん患者最多、年間86万人 高齢化進み1万4000人増

 国立がん研究センターは29日、2012年に新たにがんと診断された患者数などの推計値を発表しました。47都道府県すべてのデータがそろい、地域別の比較が可能になりました。

 がんと診断された人の割合(発症率)は、日本海側で高い傾向が示されました。 がんの種類によって患者の割合に地域差があり、胃がんは東北地方や日本海側で高い傾向にあることもわかりました。

 がん拠点病院などでがんと診断された患者のデータを都道府県から集め、がん研究センターが全国や各都道府県ごとに患者数や発症率などを推計。

 2012年は埼玉県、東京都、福岡県など大都市から初めてデータが提出され、推計の精度が高まりました。この年に新たにがんと診断された患者数は86万5238人で、2011年と比べて1万4000人増え、2003年に算出を始めて以来、過去最多になりました。高齢化の進行が原因とみられます。

 男女別では、男性が50万3970人、女性は36万1268人でした。

 都道府県別のデータは患者の住所ではなく、診察した病院の所在地でまとめました。大都市には周辺から患者が集まるなど実態とずれる面もあります。

 地域住民の年齢構成の差を調整した上で、都道府県ごとの発症率を全国平均と比較すると、男性では秋田県、和歌山県、石川県の順で高く、女性では東京都、福岡県、石川県の順で高くなりました。東京都は男女とも高く、特に女性の乳がんが目立っていました。

 がん研究センターによると、発症率は塩分の摂取や飲酒、喫煙といった生活習慣のほか、肝がんにつながる肝炎ウイルスの感染者の多さなどが反映されているといいます。東京都で女性の乳がんが高い理由については、リスクが高いとされる出産経験がない女性が多いことや、初産年齢が高くなっていることが影響している可能性があるといいます。

 2012年に診断された患者数を部位別でみると、男性が胃がん、大腸がん、肺がんの順で多く、女性は乳がん、大腸がん、胃がんの順でした。男性では、前立腺がんの増加が頭打ちになり、大腸がんが増加しています。

 門田守人・大阪大名誉教授は、「がんにかかる傾向で地域の特徴がはっきり出たことで、地域で日常生活の何に気を付ければいいかがわかる。食事の塩分を減らしたり、ウイルス感染対策をしたりするなど、行政や医療関係者らもかかわって積極的にがん予防に役立ててほしい」と話しています。

 2016年6月30日(木)

 

■ジカ熱ワクチン、マウスで作製に成功 ハーバード大など

 ブラジルなど中南米を中心に流行するジカ熱のウイルスがマウスに感染するのを防ぐワクチンの作製に成功したと、アメリカのハーバード大やブラジルのサンパウロ大学などの研究チームが28日付のイギリスの科学誌ネイチャー電子版に発表しました。

 研究チームは、「安全で効果的な人のジカウイルスワクチン開発の期待が高まった。人を対象にした臨床研究も急ぐべきだ」としています。

 研究チームは、ブラジルで分離されたウイルスの遺伝子の一部を組み込んだDNAワクチンと、病原性をなくした不活化ワクチンの2種類を開発。

 ジカ熱ウイルスを感染させる実験では、ワクチンを投与しなかったマウスでは血液中でウイルスが増加しましたが、いずれかのワクチンを1回接種したマウスではウイルスが増殖せず、感染防御効果が確認できました。

 ジカ熱の問題に詳しい神奈川県衛生研究所の高崎智彦所長は、「マウスのモデルでワクチンの効果を確かめられたのは初めてで、実用化に向けた第一歩だ。世界中の研究機関がこうした成果を共有し、ワクチンの開発を急ぐ必要がある」と話しています。

 ジカ熱は蚊が媒介する感染症で、妊婦が感染すると子供に小頭症などの症状が出ることがあります。昨年以降、中南米を中心に流行が拡大し、世界保健機関(WHO)は2月「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」を宣言。ワクチン開発が求められています。

 2016年6月29日(水)

 

■親族と自身が乳がん・卵巣がんの患者、2割で遺伝子変異発見

 親族が乳がんや卵巣がんにかかり、自身も発症した患者ら827人を調べたところ、遺伝性乳がん・卵巣がん(HBOC)を示す遺伝子変異が約20パーセントで見付かりました。診断・治療に携わる医師らでつくる日本HBOCコンソーシアムが調査しました。

 遺伝子変異の発見率は米国の十数パーセントよりも高く、検査を受けるか相談できる遺伝カウンセリングの態勢充実が求められます。

 BRCA1、BRCA2という遺伝子に変異があると、かかりやすい体質が遺伝し、40~90パーセントが乳がんに、10~60パーセントが卵巣がんにかかると見なされています。

 昭和大病院、聖路加国際病院、がん研有明病院(いずれも東京都)と星総合病院(福島県)の4施設で、2012~2014年の3年間に、親族に乳がんなどを発症した経験があり、自身も発症した患者らで遺伝子検査を受けた827人の結果を調べました。827人の間では、親族の関係はありません。

 その結果、88人でBRCA1だけに、76人でBRCA2だけに、1人で両方に遺伝子変異が確認され、全体の発見率は約20パーセントでした。これほどの規模の遺伝性乳がん・卵巣がんの遺伝子検査の集計は、日本では初めて。

 遺伝子変異が見付かれば、発症していないほうの乳房や卵巣を切除する選択肢もあります。827人に血縁者らも加えた986人では、250人(約25パーセント)で遺伝子変異が見付かり、60人以上が卵巣を、20人以上が乳房を予防的に切除していました。発見率が増えたのは、変異があった患者の血縁者が多く検査したためとみられます。

 日本HBOCコンソーシアムは今年度、30施設以上で本格調査を行う予定です。

 がん研有明病院の新井正美・遺伝子診療部長は、「遺伝性乳がん・卵巣がんへの関心は高まっており、再発や別の臓器での発症の有無、詳しい病態など日本人の精度の高いデータベースを作りたい」と話しています。

 2016年6月28日(火)

 

■子宮頸がんワクチンの因果関係判断せず 名古屋市が調査結果を撤回

 子宮頸がんワクチンの接種後に出た全身の痛みやしびれ、記憶力の低下はワクチンによるものかどうか、全国で初めて大規模調査を行った名古屋市が、ワクチンを接種したグループとしなかったグループとの間に症状の差はなかったとする分析結果を事実上撤回し、今後、データの分析はしない方針であることを表明しました。

 このアンケート調査は、昨年、名古屋市が市内のおおむね14~21歳の女性およそ7万人に、体の痛みや記憶力の低下など24の症状の有無を尋ねたもので、子宮頸がんワクチンを接種したグループとしなかったグループとで症状の出方に違いがあるかを比較する全国初の大規模調査として注目されました。

 名古屋市は、約3万人から得た回答を受けて昨年12月、2つのグループの間に有意な差はなかったとする見解を発表していましたが、今月出された最終報告書では、この見解を事実上撤回して調査の生データを示すにとどまり、今後、データの分析は行わない方針です。データの分析方法に、市民団体などから疑問の声が寄せられたためとしています。

 河村たかし市長は27日の会見で、「名古屋の中だけで判断、分析し、医学的見地から因果関係がどうだというのはなかなか難しい。逃げた言い方をすれば、国がやる仕事」と述べました。

 薬の副作用の問題に詳しい京都大学の川上浩司教授は、名古屋市が独自に調査したこと自体は評価されるべきだとした上で、「専門家の間でもデータの分析の仕方で意見が分かれることもあるが、調査は7万人の市民に協力を求めたもので、市民がいちばん知りたい疑問に答えるべきではないか」と話しています。

 子宮頸がんワクチンを巡っては、国が接種の積極的な呼び掛けを中止して3年以上が経過する異例の事態となっています。

 国は、呼び掛けを再開するかどうか判断するため、全国の医療機関を通じて同様の症状が出ている患者の状況を確認し、ワクチンの接種と症状の因果関係を調べる調査を昨年から始めています。しかし、現在は1万9000ある医療機関に対象となる患者がいるかを確認している段階で、患者の詳しい症状などを集めて最終的な分析結果をいつ出せるのか、見通しは立っていません。

 子宮頸がんワクチンを接種する人は、ピーク時の100分の1以下に減っている状況が続いています。

 アメリカなどでは、病院のカルテの情報などを元にこうした調査を迅速に行える仕組みがあり、日本も同じようなシステムを一刻も早く導入すべきではないかと指摘する声が専門家から上がっています。

 2016年6月28日(火)

 

■先天性風疹症候群の子供、死亡率2割 国立感染症研究所が追跡調査 

 2012年から2013年にかけての風疹の大流行で母親の胎内にいる時にウイルスに感染し、「先天性風疹症候群」と診断された子供45人のうち11人が、相次いで死亡していたことが国立感染症研究所などの調査でわかりました。

 国立感染症研究所などのグループは2012年から2013年にかけて起きた風疹の大流行で、母親の胎内にいる時にウイルスに感染し、耳や目、心臓などに障害が出る先天性風疹症候群と診断された子供たちの追跡調査を進めてきました。

 その結果、先天性風疹症候群になった子供は全国で45人に上り、このうち24パーセントに当たる11人が心臓の病気や肺炎などのため、生後1年余りまでに死亡していたことがわかったということです。

 死亡した11人以外についても詳しく調べたところ、先天性風疹症候群の主な症状として知られる心疾患や難聴、それに白内障以外にも、肝臓や脳などにさまざまな障害が出るなど深刻な症状に苦しむ子供も多かったということです。

 国立感染症研究所の砂川富正室長は、「死亡率が20パーセントを超えるというのは衝撃で、子供たちの症状も深刻なものが多い。妊娠を希望する女性だけでなく周囲の男性もワクチンを接種し、風疹の流行をなくしていくことが重要だ」と話しています。

 一昨年、生後4カ月の娘を亡くした女性は妊娠の初期に、職場の同僚が相次いで風疹を発症していたといいます。女性は妊娠中、風疹の症状は出ませんでしたが、娘は生まれた時、全身に出血斑があり、検査の結果、先天性風疹症候群と診断されました。

 女性は、子供のころ風疹のワクチンを1回接種していましたが、身近で風疹が流行したことで知らないうちに感染し、胎盤を介しておなかにいた娘も感染したとみられています。

 娘は、両耳が聞こえにくい重度の難聴であることがわかり、ミルクもなかなか飲めず、体重も増えていきませんでした。そして、生後2カ月の時に高熱を出して入院。肺炎が急激に悪化し、生後4カ月で亡くなりました。

 女性は、「風疹さえはやらなければ、娘と今も一緒に生活していたはずで、ほかの人には同じ思いをしてほしくない。風疹は注射1本で防げるものなので、男性も含めてワクチンを接種してほしい」と話しています。

 2016年6月27日(月)

 

■耐性菌で年間医療費1900億円増、死亡14000人増 厚労省が全国調査

 抗菌薬(抗生物質)が効きにくい耐性菌の「メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)」による影響で、年間の医療費が約1900億円、患者の死亡が1万4000人増えているとの推計結果を、厚生労働省研究班がまとめました。耐性菌による全国規模の影響がまとまるのは、初めて。

 MRSAは国内で見付かる耐性菌の95パーセントを占め、ほかにバンコマイシン耐性腸球菌(VRE)や多剤耐性緑膿(りょくのう)菌(MDRP)などがあります。

 研究班では、研究に協力した国内約1100の急性期病院の診療データから、2013年度に肺炎を起こして受診した18歳以上の約8万8000人を調べました。

 MRSAに感染していた634人(0・7パーセント)を一般の細菌感染による肺炎患者と比べると、死亡率が1・9倍高く、入院期間も1・4倍長くなりました。医療費も1・7倍となり、うち抗菌薬代だけで3・8倍多く必要になることが判明しました。

 髄膜炎や敗血症などを含めると、全国約1500の急性期病院では、MRSA感染の影響で入院医療費が約1900億円(3・5パーセント)増加し、患者の死亡が約1万4000人(3・1パーセント)増えているとの推計結果が出ました。

 代表研究者の今中雄一・京都大教授は、「国内でも耐性菌による社会的負担がすでに相当大きいことがわかった。手間はかかるが適正に抗菌薬(抗生物質)を使うなどし、耐性菌を増やさない努力が必要だ」と話しています。

 耐性菌の問題は5月の伊勢志摩サミットでも議題となり、既存の抗菌薬では治療効果のない感染症が世界的に増加する一方、新たな抗菌薬の開発は減少傾向にあり、このままでは感染症の治療法がなくなる危険性があるとして、対策が話し合われました。

 日本は今年4月、抗菌薬の使用量を2020年までに2013年比で3分の2に減らす計画を掲げました。黄色ブドウ球菌の耐性率は2014年で、50パーセント程度と先進国の中では高く、2020年に20パーセント以下にすることを目標にしています。

 2016年6月27日(月)

 

■ジカ熱懸念でリオ五輪辞退 男子ゴルフ、マキロイら

 男子ゴルフの世界ランキング4位で、全英オープン選手権などで優勝経験のある、イギリスのローリー・マキロイ選手が、ブラジルなどで感染が拡大しているジカ熱への懸念を理由に、リオデジャネイロオリンピックに出場しないことを明らかにしました。

 ゴルフはリオデジャネイロオリンピックで112年ぶりに復活し、代表は7月の世界ランキング上位から選ばれます。

 このうち世界ランキング4位で、全英オープン選手権などメジャー通算4勝のイギリスの27歳、マキロイ選手は、22日に声明を発表し、「自分と家族の健康を最優先させる」として、ブラジルなどで感染が拡大しているジカ熱への懸念を理由に、オリンピックに出場しないことを明らかにしました。

 国際オリンピック委員会(IOC)などは、ジカ熱について、南半球の冬に当たる大会期間中は、ウイルスを媒介する蚊が減少することから、感染のおそれは極めて低いとしていますが、婚約者と数年以内に結婚する意向を示しているマキロイ選手は、「リスクがあることに変わりはなく、そのリスクは冒したくない」として理解を求めました。

 マキロイ選手は、北アイルランド代表として五輪に出る可能性がありました。北アイルランド・オリンピック委員会は、「大変失望したが、彼の決断を尊重する」との声明を出しました。

 また、男子ゴルフで世界ランキング11位で、今月行われた全米オープンで5位に入るなど活躍している南アフリカの28歳、ブランデン・グレース選手も、ジカ熱への懸念を理由に、リオデジャネイロオリンピックの出場を辞退すると明らかにしました。

 グレース選手は今年11月に結婚する予定で、競技よりも家族の健康を優先する意向を示したということです。

 ジカ熱を巡っては、これまでにも同じ男子ゴルフや自転車のトップ選手が、感染への懸念を理由にオリンピックに出場しないことを表明しているほか、大会前に精子を凍結保存する選手も出ています。

 2016年6月26日(日)

 

■マダニ媒介の感染症の治療薬 愛媛大など、初の臨床研究へ

 2013年に国内で患者が初確認され、死に至る場合も多い重症熱性血小板減少症候群(SFTS)について、愛媛大などのグループが抗インフルエンザ薬の「アビガン」(一般名・ファビピラビル)を使った臨床研究を始めます。マウス実験で効果が確認されたため、臨床研究で人での効果と副作用を調べ、治療薬としての実用化を目指します。

 国立感染症研究所によると、SFTSはウイルスを持った野外のマダニにかまれて感染します。発症すると高熱が続き、嘔吐(おうと)や下痢、意識障害などの症状が出て、血小板や白血球が減ります。

 治療薬やワクチンはなく、致死率は10~30パーセント。国内では今年6月1日までに西日本を中心に185人で確認され、うち高齢者を中心に47人が死亡しました。

 アビガンは、富士フイルム傘下の富山化学工業(東京都)が開発し、2014年に国内で製造販売が承認されました。ウイルスが遺伝子を複製し増殖するのを妨げるタイプの薬で、海外ではエボラ出血熱の治療でも期待されました。

 国立感染症研究所などによるマウス実験では、投与開始が感染3日以内では全例が生存。4日目から死亡例が出て、5日目の生存率は50パーセントでした。投与が早いほど体重減少も少なく、「人でも有効性が期待できる」とウイルス第一部の西條政幸部長は話しています。

 臨床研究には、愛媛大や長崎大、国立感染症研究所、国立国際医療研究センターなど約30の医療機関が参加。患者の同意を得て、診断が確定したら参加医療機関で10~14日間アビガンを飲んでもらい、血液中のウイルス量の変化や消化器症状などの副作用を調べます。今年は25人を目標にして、今月中にスタートします。

 愛媛大の安川正貴教授(血液・感染症学)は、「SFTSの根本的な治療法になり得る」と期待を寄せています。

 国立感染症研究所の西條部長は、「どのくらいの時期までに薬を投与すれば効果があるのかなど、細かな検証も含めて薬の有効性を確認していきたい。できるだけ早く実用化できるように研究を進め、少しでも亡くなる患者の数を減らしたい」と話しています。

 2016年6月26日(日)

 

■精神疾患による労災認定が472人 脳・心臓疾患も高止まり

 厚生労働省が公表した2015年度の労災状況によると、長時間労働で過労死したり、病気になったりして、過労による労災と認定された人は、前の年度より51人少ない723人でした。

 中でも、仕事が原因で「精神疾患」にかかって労災と認定された人は、全体の3分の2近い472人に上り、前の年度より25人減ったものの4年連続で400人を超えました。うち、精神疾患を発症して自殺(未遂を含む)し、労災認定を受けたのは過去2番目に多い93人でした。

 年代別では、40歳代が147人と最も多く、次いで30歳代の137人、20歳代が87人で、比較的若い人の割合が高くなっています。

 職種別の労災認定者は、トラック運転手などの「道路貨物運送業」の36人が最多で、次いで介護士などの「社会保険・社会福祉・介護事業」が24人、看護師などの「医療業」が23人。職場環境や過重労働が深刻化していることをうかがわせます。

 精神疾患の原因は、「仕事の内容・量に変化があった」(75人)、「(ひどい)嫌がらせ、いじめ、または暴行を受けた」(60人)などが多くなりました。

 また、労災請求は、前年度から59人増えて1515人と、3年連続で過去最多となりました。

 一方、仕事が原因で「脳・心臓疾患」にかかって労災と認定された人は、前の年度より26人減った251人で、3年連続で減少しました。うち、死亡つまり過労死は、25人減った96人でした。

 職種別の労災認定者は、道路貨物運送業が3割。労災と認定された人の9割が、月80時間以上の残業をしており、長時間労働の影響が出ています。

 精神疾患、脳・心臓疾患の労災認定はともに減少したものの、依然として高い水準にあります。働く人の精神的不調を防ぐストレスチェックの徹底や、長時間労働の抑制といった対策が求められます。

 厚生労働省は、「職場での過重労働や、強いストレスなどで心理的な負担を感じ悩んでいる人が多い。企業に対して長時間労働の抑制や心の健康対策の徹底を求めていきたい」としています。

 2016年6月25日(土)

 

■高濃度虫よけ、厚労省が早期審査で後押し ジカ熱やデング熱などの対策で

 ジカ熱やデング熱などの感染症を媒介する蚊やダニの対策のため、厚生労働省が、有効成分の濃度を高めた虫よけ剤について、製造販売の申請があった場合に早期審査の対象にすると決めたことが21日わかりました。

 効果がより長持ちする虫よけ剤の流通を促すのが狙い。安全性を確認した上で9月末までに承認します。

 現状では、主な虫よけ有効成分である「ディート」の濃度は12パーセント以下、「イカリジン」の濃度は5パーセント以下の製品が販売されています。海外には濃度の高い製品があり、効果が1日持続するものもあるといいます。

 厚労省は、ディートは30パーセント、イカリジンは15パーセントまで濃度を高めた製品について、申請があれば通常は半年程度かかる審査期間を3カ月以下に短縮します。7月1~20日に申請されれば、9月中に承認するとしています。

 中南米を中心に流行するジカ熱や、2014年に国内感染の患者が続出したデング熱を媒介する蚊への対策強化につながるほか、マダニにかまれて感染する「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)」にも効果を見込んでいます。

 2016年6月24日(金)

 

■妻の8割超が「夫の口臭が気になる」 歯科医師会が調査

 長年連れ添った夫婦でさえ、妻の8割は「夫の口臭」を何歳になっても気にすることが、日本歯科医師会の「口臭に関する意識調査」で明らかになりました。

 一方、夫のほうは、妻の口臭がだんだん気にならなくなるという男女差がはっきり出ました。

 調査は、全国の10~70歳代の男女1万人を対象に、「歯科医療に関する意識調査」の1つとしてインターネットを通じて2月に行われ、特に「口臭に対する意識」を中心に6月2日に発表されました。

 それによると、回答者の8割超は、自分の口臭が気になったことがあり、男性(76パーセント)より女性(85パーセント)のほうが、より気にする人が多い傾向にありました。

 加齢に伴い口臭を気にする女性、10歳代の8割をピークに気にしなくなる男性という傾向があり、そのギャップ差が最大になるのが30歳代で、女性は89パーセントに対して男性は75パーセントでした。

 この年代前後は、恋愛、結婚が花盛りの時期に当たり、「キスした時に臭いが気になるといわれ、キスするのが怖くなった」(女性39歳)、「ずっと好きだった恋人に口臭が原因で振られた」(男性27歳)などとつらい経験を告白する人が、少なくありませんでした。

 一方、他人の口臭については、一番気になる相手は男女とも「配偶者」で、「配偶者の口臭が気になったことがある」と答えた人は、男性が59パーセントでしたが、女性は圧倒的に多く84パーセントに上りました。しかも、男性では気にする度合いは年齢が高くなるにつれて減っていくものの、女性はほとんど変わらず一生続きます。長年連れ添っても「嫌な臭いは嫌」なようです。

 これに対して「恋人」の口臭については、「気になったことがある」と回答したのは男性が40パーセント、女性も58パーセントにすぎず、やはり、「恋は盲目」ならぬ臭覚まで鈍らせてしまうようです。

 このように、自分や他人の口臭を気にする割には、正しい対処法を実践している人は少なく、「歯を磨く」(66パーセント)、「ガムやタブレットをかむ」(32パーセント)などの「一時しのぎの方法」をとっているにすぎないといいます。

 「口臭のほとんどが歯周病や虫歯などの口の中の病気に原因がある」と知っている人は、全体で66パーセントいたものの、「歯科医院を受診する」と答えたのは、9パーセントにとどまりました。

 日本歯科医師会は、「女性のほうが口臭に敏感なのに加え、男性は口臭の原因になる喫煙や飲酒をする人が多い。気になる人はまずは歯科医を受診し、口内環境を見詰め直す切っ掛けにしてほしい」としています。

 2016年6月24日(金)

 

■包茎手術で高額施術、出血などトラブル続発 国民生活センターが注意呼び掛け

 国民生活センターは23日、男性の包茎手術について、不安をあおられ高額な施術を強引に勧められたり、手術後に痛みが続いたりするなどの相談が相次いでいると注意を呼び掛けました。

 全国の消費生活センターなどが受けた包茎手術に関する相談は、2011年度から2015年度の5年間で1092件あり、10~30歳代からの相談が大半を占めます。

 相談内容として、広告で手術費用が5万~10万円と掲載されていたのに、病院で「安い手術だと汚い仕上がりになる」などと説明され、50万~100万円以上の高額な施術を勧められ、その日のうちに契約し、手術してしまったといった例が目立つといいます。

 手術によって痛みやはれのほか、大量に出血したり、傷口が割れたり、組織が壊死(えし)したりしたという手術後を巡る相談もありました。国民生活センターは過去に手術を受けた150人にもアンケートし、約4割が施術後に何らかの不安や不満、不具合を感じていると回答しました。

 国民生活センターは、「医学上緊急性がない場合には即日施術は避けるべき」と強調。さらに、国の指針に反して広告で安さを前面に出したり、手術前手術後の写真を掲載したりする医療機関を選ばないよう勧めています。

 また、「悩んでいる時は泌尿器科か形成外科の診察を受け、医者がきちんと説明してくれたか、内容や金額に納得できたか、検討した上で手術日を予約しましょう」との医師のコメントを紹介し、注意を促しています。詳しい内容は、国民生活センターの公表資料(http://www.kokusen.go.jp/pdf/n-20160623_2.pdf)に掲載しています。

 東京に本拠を置く医療問題弁護団の有志は、6月26日午前10時~午後3時、包茎手術被害の電話相談(03・6869・8452)を無料で受け付けています。

 2016年6月23日(木)

 

■認知症予防、40歳以上対象に登録システム開発 国立精神・神経センター

 認知症予防の研究に協力してくれる40歳以上の健康な人の募集を始めると、国立精神・神経医療研究センターと国立長寿医療研究センターが22日発表しました。

 本年度は8000人、5年間で数万人の登録を計画しており、患者ではない人を対象とした初の大規模研究。7月5日からホームページで登録を受け付けます。

 両センターは、登録システム「アイループ(IROOP)」を開発しました。生活習慣の改善による認知症の予防効果の研究や、治療薬を開発する研究などに活かすことを目的としています。

 アイループに登録した人には、生活習慣や病歴、睡眠、食生活、日常の認知機能などに関する計約160項目のアンケートに答えてもらった上で、半年に1度、同様のアンケートと、電話による認知機能検査「あたまの健康チェック(10単語記憶検査日本版)」にそれぞれ応じてもらいます。

 登録者は自らの健康チェックの結果を閲覧でき、グラフで経年変化も確認できます。また、両センターは登録者に対し、認知症の予防や健康に役立つ最新の情報を紹介します。

 登録者から集まったデータは、審査を通った研究に限り、登録者の同意を得て利用されます。研究への参加募集があれば、条件が合う登録者にその研究内容を伝えます。両センターは、登録者に参加を求めることはせず、情報を見た登録者に参加するかどうかを決めてもらいます。

 登録システムを使うことで、例えば、運動プログラムに参加する人としない人に分けて認知機能の変化を長期間追跡するといった大規模な比較研究が可能になるといいます。

 アルツハイマー病の治療薬を開発するための臨床試験(治験)への活用も想定しています。アルツハイマー病は今後急増することが予想されていますが、症状が進むと根本的に治療できる薬は今のところありません。欧米では、発症前や軽度認知障害(MCI)、発症早期の各段階で治験が進んでおり、日本でも取り組む必要があるといいます。

 国立精神・神経医療研究センターの水沢英洋理事長は、記者会見で「認知症の早期発見、治療は世界の流れ。それには発症前の人の変化を見ていく作業が必要だ」と述べました。

 希望者は、登録サイト(http://iroop.jp/)から申し込みます。

 2016年6月23日(木)

 

■統合失調症の治療薬で85人死亡 NPOが原因究明を厚労省に要望

 統合失調症治療薬「ゼプリオン」を使用していた85人が死亡していたと、NPO法人「地域精神保健福祉機構」(略称コンボ、千葉県市川市)が21日、発表しました。2013年11月の発売から今年2月までの国への副作用報告を分析したといいます。

 精神疾患の支援に取り組むコンボは、厚生労働省に原因究明を求める要望書を提出しました。

 記者会見したコンボの宇田川健・共同代表は、「ほかの抗精神病薬と比べゼプリオンの死亡報告数が突出して多い。死者数を減らすために、使用患者の全例調査をしてほしい」と訴えました。

 この治療薬は、ヤンセンファーマ(東京都)が製造販売する注射薬。85人の死因は不明が最も多く、心疾患、自殺、誤嚥(ごえん)・窒息が続き、情報不足で因果関係を評価できないものが多いといいます。

 販売開始後に死亡報告が相次いだことから、厚労省は2014年4月、販売元のヤンセンファーマに添付文書の使用上の注意を改訂するよう指示しました。ただコンボによると、その後も60人を超える死亡報告が出ています。

 ヤンセンファーマは、「指摘は真摯(しんし)に受け止めるが、日本人の患者で、臨床試験も行っており、安全かつ有効だと考えている。適正な使用が広がるよう情報提供を続けたい」としています。現在の使用者は、約1万2000人。

 厚労省は、「適正使用が続くよう啓発を続ける」としています。同薬は、投与が1カ月に1度でよく、利用しやすい薬と知られているといいます。

 2016年6月22日(水)

 

■老化抑える物質の臨床研究を開始 慶大とワシントン大が来月にも

 老化を抑制する効果が動物実験で判明しつつある物質を人に投与して、安全性や効果を確かめる臨床研究をアメリカのワシントン大学(ミズーリ州)と慶応大学の研究チームが計画し、早ければ来月にも始めることがわかりました。

 臨床研究に使われるのは「ニコチンアミド・モノヌクレオチド(NMN)」という物質で、老化を抑える働きを持つといわれる遺伝子サーチュインを活性化させる働きがあるとされています。これまでマウスを使った実験では、老化によって硬くなった血管が柔らかくなった、目の機能などの低下が改善したなどとする結果が発表されています。

 研究を続けているワシントン大学医学部の今井眞一郎教授(51歳)(老化学)によりますと、慶応大学の研究グループと共同で、このニコチンアミド・モノヌクレオチドを実際に人に投与し、安全性や効果を確かめる臨床研究を計画しているということです。

 計画では、まず10人程度の健康な人に投与する予定で、臨床研究の申請はすでに慶応大学の倫理委員会に出されており、承認が得られれば来月にも始める予定だということで、その後数年かけて、体の機能の改善効果の有無を調べます。

 今井教授は、「人での安全性や効果を慎重に確かめたい。老化と寿命の問題は日本の将来にも非常に重要なので、臨床研究が成功するよう努力したい」と話しています。

 2016年6月21日(火)

 

■5月の熱中症搬送者、全国で2788人 総務省消防庁が発表

 総務省消防庁は20日、5月に全国で2788人が熱中症で搬送されたとの集計結果を発表しました。前年同月に比べ116人減りました。

 消防庁は、「マラソン大会や運動会などの屋外イベントで児童、生徒らが搬送されるケースもあった」とし、今後、暑さが厳しくなるとみて、こまめな水分補給や適度な休憩といった予防策を呼び掛けています。

 各地で最高気温30度以上の真夏日が5月中旬以降に観測され、搬送が増えました。搬送直後に島根県の1人が死亡したほか、3週間以上の入院が必要な重症が41人、短期の入院が必要な中等症が750人に上りました。

 65歳以上の高齢者が、全体の46・7パーセントを占めました。

 都道府県別にみると、大阪府の155人が最も多く、東京都153人、埼玉県149人と続きました。人口10万人当たりの搬送者数は、沖縄県の9・69人が最多で、熊本県4・98人、佐賀県4・56人の順でした。 

 2016年6月20日(月)

 

■牛海綿状脳症の検査を廃止へ 発生の可能性極めて低い

 牛海綿状脳症(BSE)対策の見直しを議論してきた内閣府の食品安全委員会のプリオン専門調査会は17日までに、現在実施されている生後48カ月超の国産牛のBSE検査を廃止しても、「人への健康影響は無視できる」との評価結果をまとめました。

 厚生労働省は今後、食品安全委員会からの答申を受け、食肉処理場でのBSE検査を原則、廃止する方針です。

 国内では2001年9月に、BSE感染が初確認されました。BSE検査は翌10月から、すべての月齢の牛を対象に実施されてきましたが、段階的に緩和され、2013年7月から生後48カ月超が対象となっています。

 BSEは、感染牛の肉や骨が原料の「肉骨粉」を飼料として与えたことで感染が拡大したとされ、2001年10月に肉骨粉の使用が禁止されました。

 食品安全委員会専門調査会は、国内では、禁止後も残っていた肉骨粉を食べた可能性がある2002年1月生まれの1頭を最後に、その後14年間に生まれた牛ではBSEの発生は確認されていないと指摘。BSE感染牛は満11歳になるまでにほとんどが検出されると推定されるため、飼料規制などの対策が続けられる限り、発生のリスクは低いと判断しました。

 ただし、脚がふらつく運動障害などがある生後24カ月以上の病的な牛を対象とするBSE検査は、引き続き必要と指摘しています。

 BSEが発生したアメリカからは、2013年から検査なしで生後30カ月以下の牛の輸入が認められています。そのため日本側の検査廃止が輸入牛肉に与える影響は、なさそうです。

 2016年6月19日(日)

 

■卵子凍結、18の医療機関がすでに実施 4年前の2倍に増加

 健康な独身女性が将来の妊娠や出産に備えて行う卵子の凍結保存について、少なくとも全国の18の医療機関がすでに実施し、生殖補助医療を行っている施設のおよそ2割が今後、実施する可能性があると答えたとする調査結果を岡山大学のチームがまとめました。

 卵子の凍結保存は、女性の晩婚化が進む中、若い時の卵子を保存して将来の妊娠や出産に備えたいという独身女性の要望に応じて、不妊治療のクリニックなどで広まりつつあります。

 岡山大学のチームは昨年10月から12月までの間、日本産科婦人科学会に登録して生殖補助医療を行っている全国1100余りの医療機関を対象にアンケート調査を行い、182施設から回答を得ました。

 その結果、健康な独身女性の卵子凍結をすでに実施している医療機関は18施設あり、4年前の調査に比べ2倍に増えていました。

 また、卵子の凍結保存を希望する20歳代から30歳代の独身女性が受診したことがあると答えた施設は、全体の28パーセントに上り、健康な独身女性の卵子凍結を今後、行う可能性があると答えた施設も全体の20パーセントに当たる36施設に上りました。

 健康な独身女性の卵子凍結を巡っては、日本生殖医学会が年齢などの条件をつけた上で凍結を認めるというガイドラインを3年前に出しています。一方、日本産科婦人科学会は、「基本的に推奨しない」とする文書を昨年にまとめ、会員に周知しています。

 調査を行った岡山大学の中塚幹也教授は、「女性の希望に応じて進んでいる結果だと思うが、どのように進めるのか具体的なルールが整備されていない問題もあり、専門家を交えて議論をしていくことが必要だ」と話しています。

 日本生殖医学会の前理事長で、慶應義塾大学の吉村泰典名誉教授は、「今回の調査では、すでに実施しているのは18医療機関ということだが、実際にはもっと多くの施設で行われていると思う。凍結した卵子を使っても必ずしも出産できるわけではないことや、高齢になってからの妊娠や出産は体へのリスクが高まることを医療機関は女性にきちんと説明すべきだし、女性もそのことをよく理解する必要がある。まずは、出産適齢期に女性が子供を産める社会をつくっていくほうが大切だ」と話しています。

 2016年6月18日(土)

 

■浦安市、公費助成の卵子凍結を初実施 さらに11人が採卵準備中

 千葉県浦安市と順天堂大医学部付属浦安病院は16日、20歳代後半の女性の卵子を将来の出産に備え、5月に凍結保存したと発表しました。

 少子化対策の一環として、昨夏から浦安市の公費助成で共同研究を始めて以来、初の事例。この女性以外に、11人が採卵などの準備をしているといいます。

 浦安病院によると、凍結済みの女性を含む計12人のうち、既婚者は2人。希望理由の3分の2は、「健康不安」。子宮内膜症を患ったり、夫が病気で体外受精に取り組めなかったりしたのが、主な理由。残りの3分の1は、体外受精で苦労している40歳代女性から勧められるなど「社会性」が理由でした。

 浦安市は、昨年度から浦安病院に年3000万円、計3年助成します。浦安市に住む20~34歳の女性が対象で、卵子の使用は45歳まで。卵子凍結のため、必須にしたセミナーを昨年7月から、月1回ほどのペースで開催しており、今年5月までに43人が参加し、うち12人が採卵のため病院で受診しました。43人の平均年齢は、34・3歳でした。

 卵子の凍結保存は、がんの治療などの影響で妊娠、出産ができなくなる恐れがある女性にとって、一つの選択肢となっています。健康な女性が将来に備え、若いうちに実施する例もあります。

 自治体が補助金を出して、支援するのは全国でも珍しく、一定のリスクがある高齢出産につながりかねないなどとして、専門家の間でも慎重な見方があります。

 2016年6月18日(土)

 

■認知症で不明届、1万2000人超 最多更新が続く、警察庁発表

 警察庁は16日、2015年に認知症が原因で行方不明になったとして届け出があったのは前年比12・2パーセント増の1万2208人(男性7012人、女性5196人)だったことを明らかにしました。

 調査が始まった2012年以降、最多。都道府県別では大阪府(1791人)、兵庫県(1309人)、愛知県(1150人)の順に多く、東京都は325人でした。

 2015年に届け出があった人のうち、1万2058人は同年中に所在が確認されました。2014年以前に届け出があったものも含めて、2015年中に所在が確認されたのは1万2121人で前年比11・7パーセント増。

 警察官が無事を確認したのが59・7パーセント、自力での帰宅や施設職員、地域住民らによる確認が33・9パーセント。発見時に死亡していた例は4パーセントでした。

 届け出当日の発見は8310人、2~7日目が3562人で、届け出から1週間以内に97・9パーセントの所在が判明していました。2012~2014年の各年も大半が届け出から1週間以内でした。

 認知症などによる身元不明者の身元特定につなげようと、不明者の写真付き台帳を全国の警察で閲覧できる制度が2014年度から始まりましたが、今年5月10日現在、台帳に掲載されているのは72人分にとどまります。警察庁によると、このうち同日までに8人の身元が確認されましたが、個人情報保護を理由に台帳に写真などの情報を掲載しない自治体が少なくないといいます。

 一方、認知症も含めたすべての行方不明者は前年比1パーセント増の8万2035人(男性5万3319人、女性2万8716人)でした。年代別では10歳代が1万7071人で最も多く、20歳代(1万6005人)、30歳代(1万827人)と続きました。

 人口10万人当たりで比べると、10歳代は147・3人、20歳代は125・2人で、30歳代以上の31・3~80・9人よりも高くなりました。6万9186人は、同年中に所在が確認されました。

 2011年からの5年間では、10歳代が減少傾向の一方、20歳代は増加の一途で3077人増えました。昨年、この年代の行方不明の原因として届け出人が警察に申告したのは、「事業・職業関係」が3784人、「家庭関係」が2388人。「事業・職業関係」が前年より405人増えており、担当者は「職場の悩みが大きいのではないか」と指摘しています。

 2016年6月17日(金)

 

■舌がんの放射線治療を安全に 口内装置を開発、大阪大

 舌にできるがん、舌がんの患者が放射線治療を受ける際、周辺に不要な放射線が当たって歯茎がただれるなどの副作用を防ぐ装置を、大阪大学の研究チームが開発しました。

 開発したのは、大阪大学大学院歯学研究科の村上秀明准教授(歯科放射線学)などの研究チーム。成果は、アメリカのオンライン科学誌に発表しました。

 舌がんは、国内で毎年およそ1万人がかかるとされ、早期に見付かった場合は放射線で、がんを死滅させる放射線治療が有効です。しかし、必要のない部分に放射線が当たり、歯茎がただれたり、顎の骨が崩れたりする副作用が懸念されるため、舌を切除する手術が多く行われています。

 そこで、研究チームは周辺に不要な放射線が当たらないようにする特殊な口内装置を開発しました。マウスピース状の樹脂製で、患者に適した厚さの鉛を中に入れ、治療の際、舌と下の歯の歯茎の間などに装着して使います。

 研究チームは、舌がんの患者20人を対象に安全性と効果を確かめる臨床研究を行い、長い人で治療からおよそ3年が経ちましたが、全員、放射線による副作用は確認されていないということです。

 3年前に治療を受けた大阪府堺市の古川仁男さん(73)は、「2つの病院で舌を切らなければならないといわれ、つらかったが、切らずに済む治療法があると知って喜んで受けました。副作用もなく食事も味わえて、感謝しています」と話しています。

 村上准教授は、「副作用を心配せず、舌を残して治療できるので、多くの医療機関で活用してもらいたい」と話しています。

 2016年6月17日(金)

 

■糖尿病の人は記憶にかかわる脳の海馬が委縮 九州大が発表

 糖尿病になると記憶にかかわる脳の海馬という部分の委縮が進むことが、福岡県久山町の住民を対象とした九州大研究チームの調査で示されました。海馬の委縮は認知症患者の脳でもよく観察されており、研究チームは「糖尿病の人は、認知症を発症していなくても脳の異変が始まっている可能性がある」と指摘しています。

 福岡市に隣接する人口約8400人の久山町では九州大が長期的な疫学調査を実施しており、糖尿病の人はそうでない人に比べて、認知症のリスクが2倍ほど高まるとの結果が出ています。今回は実際に脳がダメージを受けていることを示す内容で、アメリカで14日まであった糖尿病学会で発表しました。

 久山町内に住む65歳以上の人を対象に、頭部のMRI(磁気共鳴画像撮影)検査で脳の容積を測定し、糖尿病の有無との関係を調査。1238人が参加し、うち286人が糖尿病でした。

 脳の大きさには個人差があるため、「頭蓋骨(ずがいこつ)の内側の容積に占める脳の容積の割合」を指標に、脳の縮み具合を評価し、年齢差などが影響しないよう統計的に処理すると、糖尿病歴が長いほど脳の容積が小さくなる傾向がありました。

 中でも記憶と関係が深く、脳の奥のほうにある海馬の容積をみると、糖尿病歴が10~16年だと糖尿病でない人に比べて約3パーセント、17年以上だと約6パーセント小さいという結果が出ました。

 糖尿病だと血管がもろくなり、神経障害や腎障害などが起きやすくなりますが、脳もダメージを受けているとみられます。糖尿病の中でも食後に血糖値が上がりやすいタイプが、脳の縮みやすさにかかわっているようです。

 研究チームの秦淳・九大医学研究院付属総合コホートセンター准教授(疫学)は、「糖尿病は脳卒中などのリスクも高める。まずは糖尿病にかからないよう注意してほしい」と話しています。

 一方、運動をすると、糖尿病と認知症のリスクはいずれも下がるとされ、有酸素運動をした高齢者で海馬の容積が増したというアメリカの研究チームの報告もあります。

 糖尿病を予防する最も簡単な方法として、九州大研究チームも運動を勧めています。久山町の調査でも、運動や和食と乳製品を中心とした食事が、糖尿病だけでなく認知症のリスクを減らすことがわかっています。

 2016年6月16日(木)

■コーヒー発がん性に証拠なし、熱い飲み物には可能性 国際がん研究機関が発表

 世界保健機関(WHO)の専門組織である国際がん研究機関(IARC、本部フランス・リヨン)は15日、最新調査の結果、コーヒーの発がん性を示す決定的な証拠はないことが明らかになったと発表しました。

 IARCはこれまで、コーヒーをクロロホルムや鉛と同様に、「人に対する発がん性が疑われる」とされる「グループ2B」に分類していました。

 IARCは、人と動物を対象にした1000以上の科学的な研究を調査。その結果、コーヒーを「通常提供される温度」で摂取すれば、これまで考えられていたような危険は見付からなかったといいます。コーヒー好きにとっては朗報といえそうです。

 ただ、どんな飲み物でも、温度が約65度を超えるものであれば、食道がんを引き起こすリスクがあることが科学的に示されたと指摘。IARCのクリストファー・ワイルド所長は、「65度以上の非常に熱い飲み物を飲むことは、人に対して『恐らく』発がん性があると分類された」と説明しました。

 IARCの発表を受けて、イギリスのケンブリッジ大学のデービッド・シュピーゲルホルター教授は声明で、IARCの発表が混乱を招く可能性があると指摘。「非常に熱い飲み物は恐らく有害だとしているが、リスクがどの程度あるのかについては明らかにできていない」と批判しました。さらに、「IARCは昨年、ベーコンに発がん性があると発表したが、適度の摂取であればリスクはそれほど高くないことが明らかになっている」とも述べました。

 IARCは昨年10月、食肉とがんに関する調査結果を発表し、ソーセージやハム、ベーコンなどの加工肉について「発がん性がある」としたほか、牛や豚などのほ乳類の赤身肉についても「恐らく発がん性がある」などと指摘しました。加工肉については、赤身肉を塩漬けや薫製にする加工工程で発がん性物質が生じるとして、1日に50グラムを食べ続けた場合、大腸がんのリスクが18パーセント高まるとしていました。

 2016年6月16日(木)

 

■尿の成分を調べ、がんを早期発見へ 日立と住商、新技術を開発

 日立製作所と住友商事などは14日、尿に含まれる糖や脂質など老廃物の分析から乳がんや大腸がんを見付ける新しい方法を開発したと発表しました。自宅で採取した尿を検査機関に送ってもらい、がんの早期発見につなげようとする試みで、数年以内の実用化を目指しています。

 健康な人、乳がん患者、大腸がん患者それぞれ15人の尿を分析し、検出された約1300種類の糖や脂質など老廃物のうち、健康な人とがん患者で含まれる量に違いのあるものを探しました。その結果、約10種類を比較すれば、健康な人と乳がん患者、大腸がん患者を見分けられることが判明しました。比較する種類を減らすと、がんの部位の違いはわからなかったものの、がん患者と健康な人は区別できたといいます。

 今後は医療機関と連携して、約200人の乳がん患者の尿を分析してさらにデータを集めます。がんの進行度や他のがんでも見分けがつくかなどについても、研究を進めるといいます。

 現在、がんの早期発見は血液検査など腫瘍マーカーを使った検査が主流となっていますが、医療機関を受診する必要があります。自宅で採取した尿を検査機関に送るだけで診断できることになれば、医療格差がある地方のがんの早期発見にも貢献できます。

 日立製作所基礎研究センタの坂入実チーフサイエンティストは、「現在のがん検査は医療機関で受ける必要があり、部位ごとに検査も異なる。尿からがんを見付けることができれば負担も少なく、検査機会も増やすことができる。さまざまな企業とも連携しながら実用化したい」と話しています。

 2016年6月15日(水)

 

■要介護認定者数、初の600万人超 2014年度、65歳以上の18パーセントに

 介護保険サービスを利用するのに必要な要介護認定を受けた人が、2014年度に初めて600万人を超えたことを、厚生労働省が13日に発表しました。

 前年度より約22万人多い606万人。介護保険制度が始まった2000年度の約2・4倍となりました。

 介護保険サービスでかかった費用は、9兆5783億円で前年度より4049億円(4・4パーセント)増加。

 65歳以上に占める要介護認定者の割合は、0・1ポイント増の17・9パーセントで、過去最高を更新しました。

 要介護認定者の割合を都道府県別に見ると、最も高いのは和歌山県の22・1パーセント、最も低いのは埼玉県の14・1パーセントでした。

 要介護認定は、必要度に応じて要支援1〜2、要介護1〜5の7段階に分かれていますが、比較的軽度な要支援1から要介護2までの人が、全体の65パーセントを占めました。最重度の要介護5の人は、9・9パーセントでした。

 2016年6月14日(火)

 

■熱中症、全国で880人救急搬送 前週からほぼ倍増

 総務省消防庁は14日、6日~12日の1週間に、熱中症で全国の880人が救急搬送されたとの速報値を発表しました。

 前週の469人から、ほぼ倍増となりました。搬送時に亡くなった人は、いませんでした。比較的気温が高かった10日と11日に搬送が集中しました。

 集計によると、3週間以上の入院が必要な重症者は16人、短期の入院が必要な中等症は253人でした。65歳以上の高齢者が、46パーセントを占めました。

 都道府県別では、大阪府が65人で最も多く、京都府の45人、神奈川県の44人と続きました。

 消防庁は、小まめな水分補給といった対策を取るよう呼び掛けています。

 2016年6月14日(火)

 

■がん細胞に直接放射線を放つ新薬を開発 マウスで効果、量子科学研

 体内のがん細胞に直接届いて、そこだけに放射線を照射する新たな薬を、日本の研究チームが世界で初めて開発し、マウスで実験した結果、がん細胞を大幅に縮小させることに成功しました。

 手術を必要とせず副作用もない次世代のがんの治療法につながる成果として、注目されています。

 対象のがんは、副腎に発生する褐色細胞腫。国内では年間約3000人が発症するがんで、患者の大半は外科手術で治りますが、1割は全身に転移して有効な治療法がなくなります。

 新たな薬を開発したのは、放射線の技術を医療などに応用するために、今年4月に発足した国の研究機関である量子科学技術研究開発機構(千葉市)の研究チームです。研究チームでは、加速器と呼ばれる大型の装置で、ビスマスという金属にヘリウムを衝突させ、放射線が及ぶ距離が0・1ミリと短い「アルファ線」を出す「アスタチン211」という物質を作りました。

 そして、アスタチン211に、褐色細胞腫に集まる性質がある物質を組み合わせることで、褐色細胞腫に直接届いて、半径0・1ミリの範囲だけに放射線を照射する新たな薬を世界で初めて開発しました。

 研究チームでは、新たな薬の効果を褐色細胞腫を移植したマウスで実験したところ、2週間後、薬を投与しなかったマウスではがん細胞が3倍に拡大したのに対して、薬を投与したマウスでは、がん細胞が半分にまで縮小したということです。

 がんの放射線治療では、「ベータ線」を出す「ヨウ素131」が投与されていますが、がん細胞の周辺にある正常な細胞まで痛めて副作用を起こすことが課題になっています。この薬では、それを解決できると期待され、研究チームでは、7年以内の人への応用を目指しています。

 量子科学技術研究開発機構の研究チームの東達也部長は、「手術を必要とせず、患者への負担が少ない次世代のがんの治療法の確立に向けて、大きな一歩だ」と話しています。

 2016年6月13日(月)

 

■長寿の質、沖縄県は全国最下位 健康寿命、男47位で女46位

 平均寿命(余命)のうち、介護を受けたり寝たきりになったりせず健康に日常生活を送ることができる期間を示す「健康寿命(余命)」が占める割合は、全国47都道府県で沖縄県は男性90・4パーセントで47位、女性は83・7パーセントで46位であることがわかりました。

 男性の1位は茨城県の93パーセント、女性の1位は静岡県の87・1パーセントでした。

 茨城県立健康プラザ研究員の栗盛須雅子聖徳大学(千葉県松戸市)看護学部教授が2010~2014年の5年間について調査。5年間にわたる調査の実施は初めて。

 栗盛教授は、「沖縄県は65歳の平均寿命は男性2位、女性1位だが、長生きしても障がいを持つ期間も長い。質を見ると、高齢者の健康は深刻な状態だ」と指摘しています。

 65歳の健康寿命については、沖縄県は男女とも6位で、女性は平均寿命よりも順位は低くなっています。障がいを持つ人の割合では、少ない順に沖縄県の男性は44位、女性は34位と下位に位置しており、割合は高くなっています。要介護認定者や要介護度の重い人が多く、高齢者の生活の質が悪いことを意味しているといいます。

 平均寿命のうち、健康に過ごせる期間を示す健康寿命の割合が高い都道府県を見ると、男性は1位の茨城県から山梨県、栃木県と続き、女性はトップの静岡県に茨城県、栃木県が続きました。

 栗盛教授は、「茨城県の男性は平均寿命は短いものの、生きている間は元気だ。一方、沖縄県の女性は平均寿命は長いが、生きている間、障がいを持つ期間も長い」と話し、「経年変化を見ると、沖縄県の健康寿命は男女とも年々短くなる傾向にある」と強調しました。

 障がいのある人の割合は、要介護度の障がいの重みを数値化し、介護保険の認定者数を掛けて計算しているため、より客観的で実態に近い数字といいます。

 栗盛教授などが開発した「健康寿命(DALE)と障がいを持つ人の割合(WDP)算出プログラム」は、茨城県立健康プラザのホームページで公開されており、無料でダウンロードできます。

 HPアドレスは、(http://www.hsc-i.jp/05_chousa/program_yomei.htm)。

 2016年6月12日(日)

 

■化血研、一部製品の製造再開 インフルエンザワクチンなど

 熊本市の一般財団法人・化学及(および)血清療法研究所(化血研)は、今年4月の熊本地震の影響でワクチンや血液製剤などの製造を停止していましたが、設備の一部が復旧したことから、インフルエンザワクチンの製造を再開しました。

 厚生労働省は、製造再開によってインフルエンザワクチンの今シーズンの必要量は確保できる見通しになったとしています。

 化血研は、熊本地震の影響で製造設備の配水管がずれるなどの被害が出て、ワクチンなどの製造を停止していましたが、今月に入って設備の一部が復旧し、インフルエンザワクチンと動物用製剤の1製品の製造を再開したということです。

 国内で供給されるインフルエンザワクチンは、化血研を含む4つのメーカーが製造しています。今シーズンの供給不足が懸念されていましたが、化血研の製造再開を受け、厚労省は「昨シーズンの必要量を上回る供給量を今シーズンに確保できる見込みになった」との見解を公表しました。

 化血研によりますと、日本脳炎ワクチンや4種混合ワクチン、血液製剤なども順次製造を再開していくということです。

 化血研は、国の承認とは異なる方法で血液製剤を製造し、組織的に隠蔽(いんぺい)を図っていたなどとして、先月まで業務停止の処分を受けていました。今後は、新しい理事を選任し他の製薬会社への事業譲渡を進めることにしています。

 2016年6月12日(日)

 

■酒に強い人は痛風に注意、発症リスクが2倍以上に上昇 防衛医大が発表

 激しい関節痛を引き起こす痛風は、酒に強い体質の人のほうがリスクが高まる可能性がある。防衛医大や国立遺伝学研究所などの研究チームが、飲酒時のアルコール分解で働く遺伝子が痛風の発症にかかわっていると発表しました。

 この遺伝子の変異の有無が、酒に強いか弱いかに関係し、発症リスクが異なってくるといいます。

 痛風は、血中の尿酸値が高い状態が続くと発症する疾患で、「風が吹いても痛い」といわれるほどの激しい関節炎発作を引き起こすことが知られています。激しい関節痛をもたらすのに加え、腎臓や心臓の疾患や脳卒中、高血圧のリスクにもなることが、明らかになってきています。中年以降の男性に多く、国内患者は約100万人、予備軍の高尿酸血症は約1000万人に上るとされます。

 防衛医大の松尾洋孝講師と崎山真幸医官らは、東京と京都の医療機関に通う痛風患者の男性1048人と、痛風ではない男性1334人の遺伝子を解析。発症に関連する5つの遺伝子領域のうち未解明の1つを調べ、アルコール分解にかかわる酵素をつくる遺伝子ALDH2が影響していることを突き止めました。

 この酵素はアルコールから分解されたアセトアルデヒドを酢酸に変える役割を持ちますが、ALDH2遺伝子に変異があるとうまく働かず、酒に弱くなります。変異がある人に比べ、変異がない人の痛風発症リスクは2・27倍になったといいます。

 松尾講師は、「痛風・高尿酸血症は遺伝子の影響も強く、遺伝子の個人差に応じた予防や医療の重要なモデルの一つとなる可能性がある。未成年の発症リスクも調べられる。今後もさらに研究を進めていきたい」と話しています。

 2016年6月11日(土)

 

■大阪府の30歳代男性、ジカ熱に感染 昨年の流行以降、西日本で初

 厚生労働省は10日、中南米地域から帰国した大阪府の30歳代男性が、ジカ熱(ジカウイルス感染症)と診断されたと発表しました。男性は現地で蚊に刺されたかどうかを覚えていないものの、発症の時期から現地で感染したとみられるといいます。

 中南米で流行が始まった昨年5月以降、日本で感染者が確認されたのは7人目で、西日本では初めてです。

 厚労省によると、男性は5月下旬から2週間程度、ブラジル以外の中南米の国に滞在し、6月6日に帰国。発疹が出て、9日に大阪府内の医療機関を受診し、10日に陽性が確定しました。

 男性は現在、自宅療養中で、発疹は出ていますが、状態は安定しているといいます。

 厚労省は、流行地域から帰国した場合、少なくとも2週間程度は蚊に刺されないよう特に注意することや、帰国した男性は最低8週間、パートナーが妊娠中はその間、コンドームを使用するか性行為を控えるよう呼び掛けています。

 2016年6月11日(土)

 

■近視の子供、眼底検査で失明リスク診断可能に 東京医科歯科大が発表

 近視の子供の眼底検査をすることで、将来、近視の悪化で失明するリスクがあるかどうかを診断できることがわかった、と東京医科歯科大の研究グループが7日、発表しました。

 大野京子教授と横井多恵助教の研究グループは、眼鏡などで矯正しても視力が0・7未満の状態で、失明の原因の約2割を占める「病的近視」に着目。15歳以下で初めて近視と診断され、成人後に病的近視を発症して実際に失明した患者19人について、眼底検査の結果を過去に逆上って分析しました。

 その結果、17人は5~15歳で網膜が薄くなり、視神経の周囲が黄色く変色していました。矯正によって良好な視力を保てる通常の近視にはみられない特徴で、病的近視になって失明する可能性があるかどうかの判別に使えるといいます。

 大野教授は、「子供の近視は増加しており、失明するリスクの有無が早くわかれば不安を取り除ける場合もある。失明を防ぐ治療法の確立にもつなげたい」と話しています。

 病的近視は、国内の患者数が40歳以上の約5パーセントと推定され、このうち20~25パーセントが黄斑変性や緑内障などの合併症を引き起こして失明するといいます。

 近視とは、長時間、近距離のものに焦点を合わせた結果、水晶体が縮まったまま戻らなくなり、遠距離のものに焦点が合わせにくくなるという状態のこと。通常の近視は、眼鏡やコンタクトなどでピントを後ろに合わせてあげることで矯正が可能。

 強度近視は、通常の近視よりさらに角膜の頂点から中心窩(か)までの長さに相当する眼軸が長く、目から入った光の焦点を網膜に合わせることができず、矯正が効かずに常にぼやけて見えてしまうという状態。この強度近視の状態が長く続くと、目の網膜や脈絡膜へ負荷がかかり、眼底にさまざまな異常が発生します。これが、病的近視です。

 2016年6月10日(金)

 

■誕生日ブルーで自殺率1・5倍に 大阪大が調査で裏付け

 誕生日に自殺する人は、ほかの日と比べて5割多いという研究成果を大阪大などがまとめました。孤独を強く感じることが、切っ掛けになっている可能性があるといいます。

 誕生日に自殺が多い傾向は、欧米などでの研究で確認されていました。日本は2014年度の自殺率(人口10万人当たりの人数)が20人で、先進国の中で最悪の水準にありますが、海外と同じ傾向があるかは不明でした。

 松林哲也准教授(公衆衛生学)らは、1974~2014年の厚生労働省の人口動態調査から、自殺と交通事故死、溺死(できし)、窒息死、転落死を原因として死亡した人たち計207万人のデータを分析。うち約8000人が誕生日に亡くなっていました。このうち誕生日に自殺したのは4138人で、それ以外の日の平均2700人と比べて約1・5倍に達しました。

 こうした傾向は誕生日ブルー(バースデー・ブルー)説と呼ばれ、誕生日を周囲に祝ってもらえないことで孤独感などのストレスが高まることが原因とみられます。

 松林さんは、「自殺の恐れがある人が誕生日を迎える際は、家族や友人、医師らが注意を払うことで自殺予防につながるかもしれない」と話しています。

 研究では、事故死も誕生日に多い傾向があることがわかりました。車の運転などによる交通事故死や窒息死、転落死なども、誕生日には2~4割多くなりました。祝いで羽目を外したり、普段と異なる行動をとったりしてリスクが高まったと考えられるといいます。

 2016年6月9日(木)

 

■計1分の激しい運動、軽めの45分と同じ健康効果 カナダの大学が研究

 計1分間の激しい運動が、45分間の緩やかな運動と同じくらい糖尿病予防や心肺機能の改善に役立つ、という研究成果をカナダにあるマックマスター大学の研究チームが、アメリカの科学誌プロスワン電子版に発表しました。多忙な人に朗報となりそうです。

 研究チームは、糖尿病などの慢性疾患の治療で効率的な運動方法を調べるため、運動習慣のない男性25人(平均27歳)を、「激しい運動」を週3回計12週間するグループ、「持続的な運動」を週3回計12週間するグループ、「運動しない」グループの3つに、無作為に分けました。

 「激しい運動」は、自転車を全力で20秒こぐのを計3回するもので、合間に2分間は軽くこぎ、準備運動とクールダウンも含め計10分。「持続的な運動」は、最大心拍数の7割程度で45分間、自転車をこぎ続ける有酸素運動で、準備運動とクールダウンも含め全体で計50分かかります。激しい運動中の負荷は、持続的な運動の4~5倍です。

 12週間後の健康効果を調べた結果、運動した2グループはいずれも心肺機能の数値が2割程度上回り、糖尿病にかかわるインスリン感受性の指数も大きく改善しました。「運動しない」グループは、前後で改善していませんでした。

 研究チームは、「多くの人は運動しない理由に『時間がない』ことを挙げる。計1分間の激しい運動を続けるには高いモチベーションが必要で、だれにも適したわけではないが、持続的な運動よりも効率よく健康増進できる可能性がある」としています。

 2016年6月8日(水)

 

■たばこパッケージの警告表示強化へ 文字大きく、12種類に

 たばこのパッケージに記載している警告表示について、財務省の審議会は7日、病気にかかる危険性や未成年者の喫煙防止を強調するなど健康への悪影響を知らせる表示を強化する案をまとめました。

 財務省の審議会では、国際的にたばこの警告表示の強化が進んでいることを受けて、今年2月から販売業者や医療関係者から意見を聞くなどして検討を重ね、今回、警告表示の強化案をまとめました。

 現在の警告表示は、「喫煙は肺がんの原因の一つとなります」など8種類。このうち2つをローテーションで選び、パッケージの表と裏に表示するよう義務付けています。

 強化案では、警告表示の種類を現在の8から12に増やすとともに、喫煙によって危険性が高まる病気として肺がんや心筋梗塞などを例示しているのに加えて、食道がんなどの多くのがん、歯周病、そして妊婦が喫煙した場合の乳幼児突然死症候群も例示します。

 また、未成年者の喫煙防止の警告表示について、今後はすべてのパッケージに記載するとともに「法律で禁じられています。絶対にダメです」などと表現も強めます。さらに、現状の警告表示は文字数が多く、警告の効果が一目でわかるようになっていないとして、警告の表現をより簡潔に、文字もより大きくするとしています。

 しかし、欧州のように、たばこのパッケージに黒ずんだ肺などの写真を掲載して、健康被害を直接的に訴えることは当面見送りました。

 財務省の審議会では、今回の案について一般からも意見を募った上で、今年の秋以降、たばこの警告表示の強化に必要な省令などの改正を目指すことにしています。

 2016年6月8日(水)

 

■福島県の小児甲状腺がん、がん確定が計131人に増加 18歳以下検査2巡目

 福島県は6日、東京電力福島第一原発事故当時18歳以下(胎児を含む)の約38万人を対象にした甲状腺検査で、1月から3月の間に新たに15人ががんと診断され、計131人になったと発表しました。

 うち1人は、事故当時5歳でした。福島県の検討委員会は、「これまでのところ被曝(ひばく)の影響は考えにくい」としています。

 甲状腺検査は、2011年秋から2013年度までの1巡目検査(先行検査)と、2014~2015年度までの2巡目検査(本格検査)に分けて集計しています。2巡目検査は、約38万人の対象者のうち約27万人で完了しています。

 3月末現在で、がんが確定したか疑いがあるとされたのは計173人。うち116人は2011年秋から2013年度までの1巡目検査で、57人は2014~2015年度までの2巡目検査でわかりました。1巡目では102人が手術を受け、1人が良性、101人ががんと確定し、2巡目では30人が手術を受け、がんが確定しました。

 福島県の検討委員会はこれまで、チェルノブイリ原発事故に比べて福島県民の甲状腺被曝が少ないことや、チェルノブイリでがんが多発した5歳以下にがんが発生していないことなどから、「今、見付かっているがんは原発事故の影響とは考えにくい」としてきました。

 今回、事故当時5歳の男子ががんと診断されましたが、検討委員会は「チェルノブイリでは0~5歳の年齢層でがんが多発した。福島ではまだ1人。すぐに放射線の影響が出たとなるわけではない」と説明しています。

 2016年6月7日(火)

 

■iPS細胞を使った網膜移植再開へ 理研、京大の備蓄細胞で

 理化学研究所の多細胞システム形成研究センター(神戸市中央区)は、遺伝子変異が見付かったため中止していたiPS細胞(人工多能性幹細胞)を使った網膜移植を、近く再開します。

 患者自身ではなく、他人の細胞から作ったiPS細胞を初めて利用する方針。神戸市立医療センター中央市民病院、京都大、大阪大の3機関と連携し、研究を加速させます。

 理研多細胞研の高橋政代プロジェクトリーダーらは、2014年9月にiPS細胞から作った網膜色素上皮細胞の移植を世界で初めて実施。しかし、2例目は細胞の遺伝子変異が見付かったため、移植を見送っていました。

 移植の対象は、網膜が傷んで失明の恐れがある「滲出(しんしゅつ)型加齢黄斑変性」の患者。移植時に拒絶反応が少ないとされる特殊な型の他人の細胞から作り、備蓄されているiPS細胞を使い、病気の進行を抑えます。他人の細胞を使えば、安全性が確認されたものを移植できるほか、一から培養するのに比べ時間やコストが削減できるメリットがあります。

 4機関は5月30日付で連携協定を締結しており、京都大のiPS細胞研究所(山中伸弥所長)が備蓄しているiPS細胞を提供し、移植手術などは中央市民病院と大阪大が担当します。

 2016年6月6日(月)

 

■おたふく風邪、患者が増加中 前回流行に次ぐ高い水準で推移

 流行性耳下腺炎、いわゆる、おたふく風邪の患者が、増えています。国立感染症研究所が3日発表した集計によると、5月は前回流行した2010年に次いで高い水準で推移しており、注意報が出た県もあります。

 専門家は合併症を引き起こすこともあるとして、手洗いやうがいに加えワクチンの接種など対策の徹底を呼び掛けています。

 国立感染症研究所によると、5月9日から15日までの1医療機関当たりの患者報告数は0・95人。5月16日から22日までの患者報告数も同数の0・95人で、いずれも過去5年間の同時期平均に比べて多くなっています。

 5月16日から22日までの1週間の患者数を都道府県別でみると、宮崎県(3・42人)、山形県(3・07人)で、注意報を出す基準(3人)を超えていました。ほかには佐賀県(1・91人)、鹿児島県(1・82人)、石川県(1・72人)、奈良県(1・68人)、岡山県(1・59人)、埼玉県(1・37人)などで多くなっています。

 おたふく風邪は、4~5年周期で流行を繰り返し、ここ数週間は流行した2006年、2010年に次いで高い水準だといいます。

 子供を中心に流行するウイルス性の感染症であり、2~3週間の潜伏期間後、発熱や耳の下のはれなどを引き起こし、物をかむ時にあごが痛むことが多いのが特徴ですが、無菌性髄膜炎や脳炎などを伴ったりすることがあるほか、1000人に1人ほどの割合で難聴になるとする報告もあります。

 感染症に詳しい川崎市健康安全研究所の岡部信彦所長は、「合併症は難聴が特に多く、発症に気が付きにくいので注意が必要だ。任意だが、予防にはワクチン接種を勧めたい」と話しています。

 2016年6月5日(日)

 

■メタボ健診、腹囲基準を維持へ 隠れメタボ対応は見送り

 内臓脂肪がたまり病気になりやすいメタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)を調べる特定健診(メタボ健診)の在り方を議論している厚生労働省の専門家検討会は3日、保健指導の対象を腹囲が基準以上の人とする今の方法を維持することを決めました。

 やせていても高血圧などがある人への指導の必要性が指摘されていましたが、確かな指導法がないなどとして見送りました。

 メタボ健診は企業や市町村が実施主体となり、脳卒中や心臓病など生活習慣病を防ぐ目的で、2008年から始まりました。40~74歳を対象に、腹囲が男性で85センチ、女性で90センチの基準以上で、血圧、血糖値、脂質のいずれか1つでも異常がある人をメタボ予備軍、2つ以上の人をメタボとして、保健師や管理栄養士らによる保健指導の対象になります。

 ただ、この方法では、腹囲が基準未満でも血圧などに異常がある「隠れメタボ」の人は対象から外れます。隠れメタボの人は、腹囲が基準未満で血圧などにも異常がない人と比べ、循環器疾患の発症リスクが男性は1・91〜2・22倍、女性は2・12〜2・54倍高いとする厚労省研究班の調査結果があり、どう対応するかが課題になっていました。

 主に科学的な見地から議論する厚労省の別の専門家検討会は5月、腹囲を前提条件とするのを改め、血圧や血糖値、脂質に異常のある人を保健指導の対象にすることを提案していました。

 実務面を議論する専門家検討会は3日の会合で、腹囲以外に内臓脂肪の蓄積を測る簡単な手段がないことや、隠れメタボの人への指導法が確立していないことなどから、提案を採用しませんでした。

 現在、隠れメタボの人には、実施主体が自主的に生活改善を勧めるなどしています。厚労省は今後、望ましい指導法について議論するといいます。

 2016年6月4日(土)

 

■子宮移植、容認4割、認知2割弱 慶大が意識調査

 スウェーデンで出産例が報告されている子宮移植について、慶応大の研究チームがインターネットで意識調査したところ、子宮移植を容認する回答が4割を超えました。ただし、この子宮移植の技術を知らない人も多く、研究チームは「日本社会で許容されうるのか、さらに情報提供と議論が必要だ」としています。

 研究チームは2014年12月、調査会社を介して25~39歳の女性を対象にインターネットで調査。3098人の有効回答を分析したところ、子宮移植について「大いに賛成」「賛成」との回答は合わせて1369人と、44・2パーセントを占めました。「どちらともいえない」との回答は47・5パーセントに上りました。

 子宮移植を受ける人はどんな人が適切かという問いには、「生まれ付き子宮がない人」を選んだ人が54・4パーセントで最も多く、「悪性腫瘍(しゅよう)で子宮を失った人」が20・0パーセント、「子宮はあるが奇形や癒着で妊娠できない人」が18・4パーセントで続きました。

 子宮移植の手術はトルコやスウェーデンなどで実施され、調査直前の10月には、生まれ付き子宮がないものの卵巣は正常に機能している当時36歳のスウェーデン人女性が、7年前に閉経した当時61歳の知人女性から子宮の提供を受け、妊娠31週で帝王切開により世界で初めて出産に成功したことが報告されています。しかし、こうした事例を「聞いたことがある」と答えた人は17・6パーセントにとどまりました。

 子供を持つ方法としてはどんな方法が適切かという問いには(複数回答可)、「養子制度」が62・1パーセントで最も多く、「子宮移植」は34・7パーセント、「代理母」は18・1パーセント、「いずれも支持しない」は17・8パーセントでした。

 日本でも、慶応大などのチームが、5年以内に人での子宮移植の実施を目指しています。木須伊織特任助教は、「子宮移植自体が日本ではあまり知られていないことが示された。さらに情報提供をし、議論を重ねた上で子宮移植が許容されるか判断する必要がある」と話しています。

 調査結果は、5月20日付でアメリカの科学誌プロスワンに掲載されました。

 2016年6月4日(土)

 

■自治体、子ども医療費助成広がる 全市区町村が実施し、対象年齢も上昇

 厚生労働省は3日、子育て支援策として市区町村が独自に行っている子どもの医療費助成について、昨年4月1日時点の実施状況をまとめました。

 全1741市区町村が助成を実施し、「中学卒業まで」通院費を援助している市区町村が996自治体(約57パーセント)で、前年同期より66自治体増えました。「高校卒業まで」は68自治体増え、269自治体(約15パーセント)。

 「小学校卒業まで」や、それより下とする自治体は減っており、助成対象は拡大しています。入院費についても、同様の傾向でした。

 所得制限がないとした自治体が29増え、1402自治体(約81パーセント)。自己負担がないとした自治体も44増え、1030自治体(約59パーセント)でした。

 医療費助成の拡大は医療費増加の一因になるとして、国は独自助成を行う自治体への補助金を減らしてきました。しかし、自治体などが「少子化対策に逆行する」として強く廃止を求めたため、政府は2日に閣議決定した1億総活躍プランで「見直しを含めて検討し、年末までに結論を得る」としています。

 2016年6月3日(金)

 

■認知症薬の少量投与を容認、厚労省 6月1日付で周知

 高齢者医療に取り組む医師らが抗認知症薬の少量処方を認めるよう求めている問題で、厚生労働省は5月30日までに、添付文書で定めた規定量未満での少量投与を容認し、周知することを決めました。

 認知症の進行を遅らせる「アリセプト」(一般名ドネペジル)などの抗認知症薬には、吐き気などを防ぐため少量から始めて有効量まで増量する使用規定があります。使用規定通りに投与すると、患者によっては興奮や暴行、歩行障害、飲み込み障害などの副作用が出て介護が困難になると、医師らのグループが指摘していました。

 厚労省は6月1日付で、各都道府県の国民健康保険団体連合会(国保連)の中央会と、社会保険診療報酬支払基金宛てに、規定量未満の投与も症例に応じて薬剤費を支払うよう求める事務連絡を出しました。処方の審査で地域差があった抗認知症薬を巡り、国の一定の見解が示された形です。

 事務連絡では、添付文書が規定する用量未満でも一律に査定するのではなく、診療報酬明細書(レセプト)に記載された投与理由を参考に、医学的に判断することとしました。

 厚労省の担当者は、「増量しないケースや、最低用量未満での使用も含まれる」と説明しています。

 「抗認知症薬の適量処方を実現する会」の代表を務める長尾和宏医師は2日、東京都内で記者会見し、抗認知症薬の少量処方を容認した厚労省の事務連絡について、「今回の通達を高く評価する。医師の裁量権が再確認された」と述べました。

 長尾医師らは、規定通りの投与では怒りっぽくなるなどの副作用が出て介護が困難になる患者がいるものの、症状に合わせて少量投与した場合に、審査機関が薬剤費の支払いを認めなかった例があったとして、少量投与を認めるよう主張していました。

 2016年6月2日(木)

 

■479社2万2000品目の医薬品に記載ミス 厚労省、安全性に影響なし

 厚生労働省は1日、厚労相の承認を得て国内で販売されているすべての医薬品3万2466品目を調査した結果、全体の69パーセントに当たる2万2297品目で承認書に製造実態と異なる記載があったと発表しました。

 いずれも単純な誤記や、名称変更を反映していないなどのミスで、医薬品の品質や安全性、有効性に影響を与えるものではないといいます。厚労省は同日、法令順守を求める通知を出しました。

 熊本市の化学及血清療法研究所(化血研)が国の承認と異なる方法で血液製剤を製造していた問題を切っ掛けに、厚労省が1~2月、国内で医薬品を製造販売する646社に自主点検を指示して一斉調査を行い判明しました。うち479社で記載ミスが見付かりました。記載ミスが300品目を超える製薬企業も5社ありました。5月末までにすべて変更の手続きをしたといいます。

 業務停止処分を受けた化血研のような隠蔽(いんぺい)行為や、安全性などの観点から事前承認が必要な記載ミスはなかったといいます。現時点で、健康被害は確認されていません。

 厚労省は今後、記載ミスがあった製薬企業に口頭注意などの行政指導を行い、抜き打ちでの査察を実施するなど監視を強化します。

 2016年6月1日(水)

 

■受動喫煙で年間1万5000人死亡 厚労省研究班が推計

 自分の意思とは関係なく、たばこの煙を吸い込んでしまう受動喫煙が原因で死亡する人が、国内では年間約1万5000人に上るという推計結果を厚生労働省の研究班がまとめ、世界禁煙デーの31日に発表しました。

 受動喫煙と病気の因果関係がわかっている4つの病気で、非喫煙者と比べたリスクや、職場や家庭での受動喫煙割合の調査などから年間死亡数を推計しました。

 2010年の推計では年間約6800人で、その後に脳卒中との因果関係が明らかになったことから、脳卒中による死亡の8014人が上積みされ、2倍以上になりました。

 病気別では、脳卒中8014人のほか、心筋梗塞(こうそく)などの虚血性心疾患4459人、肺がん2484人、乳幼児突然死症候群73人。

 乳幼児を除く男女別では、男性が4523人、女性が1万434人。女性が2倍以上となる理由について、担当した国立がん研究センターの片野田耕太・がん登録統計室長は、「家庭内での受動喫煙率が女性が圧倒的に高いため」と説明しています。

 世界保健機関(WHO)によると、2014年時点でイギリス、カナダ、ブラジル、ロシアなど49カ国が法律で、公共の場所を屋内全面禁煙にしています。

 片野田さんは、「受動喫煙を減らすために国レベルで法規制するのが国際的な流れ。死亡数を下げるために、日本も最低限、職場や公共施設の屋内を禁煙にするべきだ」と話しています。

 2016年5月31日(火)

 

■ジカ熱、感染疑いが12万人に達する ブラジル、今年1月から4月で

 ブラジル保健省によると、今年1~4月下旬までにジカ熱(ジカウイルス感染症)に感染した疑いがある人が約12万人に達しました。人口10万人当たりでは、58・8人の計算。

 妊婦が感染すると「小頭症」の子が生まれる恐れがあることに加え、目の病気との関連を指摘する研究結果を、ブラジルなどの研究チームがアメリカの眼科専門誌電子版で発表しました。

 ブラジルやアメリカのスタンフォード大の眼科医らは、ブラジル北部で昨年11~12月に生まれた小頭症の男児3人を調べました。いずれも網膜に出血があったり、異常な血管ができたりしていることを確認したといいます。全員、母親が妊娠初期にジカ熱に感染したとみられています。

 研究チームは、目の異常をジカウイルス自体が引き起こすものか、小頭症に付随するものかは未解明としつつ、「ジカ熱の流行地で生まれた小頭症の赤ちゃんには、網膜の検査もするべきだ」と求めています。

 ブラジル国内で感染者が最も多いのは、北東部バイーア州で約3万4000人。8月に五輪があるリオデジャネイロ州は、2番目に多い約3万2000人となっています。

 ブラジル保健省によると、昨年10月以降に小頭症と確認されたのは1434人。加えて、3257人が小頭症の疑いがあるとして検査されています。

 一方、世界保健機関(WHO)は5月28日までに、今夏のリオデジャネイロ五輪の開催について「現時点での評価では、中止したり開催地を変更したりしても、ジカ熱の国際的な流行にはほとんど変化を与えない」との声明を発表。事実上、五輪開催を容認する姿勢を示しました。

 2016年5月31日(火)

 

■睡眠不足でも記憶力アップ 理研、マウス実験で成功

 睡眠不足は記憶の定着を妨げることが知られていますが、脳の特定の場所を刺激することで、睡眠不足のマウスの記憶力を高めることに成功したと理化学研究所などのグループが発表しました。

 この研究を行ったのは、理化学研究所の村山正宜チームリーダー(生命科学)などのグループです。

 睡眠が不足すると、起きている間に体験した記憶の定着が妨げられ、物事を覚えにくくなることが知られていますが、詳しいメカニズムはわかっていませんでした。

 研究グループでは、まず、マウスを滑りやすい床の上で10分間自由に行動させ、床の感触を学習させました。その後に別の場所に移し、睡眠不足の状態のまま、脳の大脳新皮質にある特定の場所を光を使って刺激したということです。

 すると、脳を刺激しなかったマウスは床の感触を記憶していませんでしたが、刺激したマウスは床の感触を記憶していることが、マウスの行動から確認できたということです。さらに、脳の特定の場所を刺激したマウスは、睡眠をしっかりと取ったマウスと比べても、記憶を長く維持できていることもわかったとしています。

 村山チームリーダーは、「睡眠不足の状態でも、適切なタイミングで脳を刺激すると、知覚の記憶を向上できることを示した。睡眠障害の患者や、高齢者の記憶力の低下を改善させる方法の開発につながる可能性がある」と話しています。

 研究論文は、27日付のアメリカの科学誌サイエンス電子版で発表されました。

 2016年5月30日(月)

 

■WHO、リオ五輪の開催を容認 ジカ熱で研究者が延期か移転要請にからみ

 南米でのジカ熱(ジカウイルス感染症)の流行に絡んで、世界保健機関(WHO)は28日までに、ブラジル・リオデジャネイロで今夏に開催予定の五輪について「現時点での評価によると、中止や開催地の変更は、ジカ熱の国際的流行にほとんど変化を与えない」とする声明を出しました。

 理由として、感染の広がる国々や地域への渡航が、さまざま理由で続いていることを挙げました。WHOが事実上、リオ五輪開催容認の姿勢を鮮明にしたことになります。

 ブラジル保健省も28日、ジカ熱のために今夏開催予定のリオ五輪の延期や開催地を変更する計画はないと発表しました。

 WHOはブラジルで冬に当たる8月にジカウイルスに感染するリスクは最小になるとしており、ブラジル保健省は今後もWHOの指導に従っていくと述べました。

 27日には、リオ五輪の延期か開催地変更を求めて世界各国の専門家150人が署名したWHO宛ての書簡が公開されていました。

 書簡では、医師や科学者、研究者など世界各国150人の専門家がWHOによる評価を否定し、ブラジルで2番目にジカ熱感染者数が多いリオデジャネイロでの五輪開催は「無責任で非倫理的」だと述べていました。アメリカ、イギリス、カナダ、ノルウェー、フィリピン、日本、ブラジル、南アフリカ、トルコ、レバノンなどの専門家が署名した書簡は、「ブラジルで流行しているジカウイルスは、科学史上前例のないほど人間の健康に害を及ぼすものだ」と警告。

 さらに、「私たちが懸念を強めているのは世界的な健康問題のためだ」として、「世界中から五輪に来た50万人の観光客がジカウイルスに感染した恐れがある状態で帰国し、各地でジカ熱をまん延させるかもしれないという無用なリスクをもたらし」、「このような事態が今のところジカ熱が発生していない貧困国で起きれば大きな苦しみが生じる恐れがある」と主張していました。

 ジカウイルスに感染すると、胎児の脳や頭部が異常に小さい状態で生まれる小頭症の原因となります。ブラジルでは昨年5月以降、ジカ熱の感染が流行し始めてから現在までに、治療不可能な小頭症の新生児約1300人が生まれています。

 WHOは28日の声明の中で、ブラジルへの渡航予定者に蚊に刺されないよう注意を呼び掛けているほか、妊婦がジカ熱の流行地への渡航を控えることや、流行地から戻った男性は最低4週間、女性との性行為を控えたり、コンドームを使用したりすることなどを改めて勧告しました。

 2016年5月29日(日)

 

■ブタの細胞、人への異種移植が可能に 1型糖尿病の患者が対象

 動物の臓器や細胞を使って病気を治療する「異種移植」を巡り、厚生労働省はブタの細胞を糖尿病の患者に移植することを一定の条件の下、国内でも容認する方針を決めました。

 これは27日、厚労省の審議会で決まったものです。異種移植は、動物の臓器や細胞を病気の治療のため、人の体に移植するもので、動物が持っているウイルスに感染するおそれが否定できないとして、国内では実施されていません。

 しかし、海外では糖尿病の患者に対し、血糖値を下げるインスリンを分泌するブタの臓器の細胞を移植して成果を上げているほか、ウイルスへの感染はこれまで報告されていないということです。

 このため厚労省は、移植患者を生涯、定期的に検査することや、移植の記録を30年間保存すること、ウイルスの組み込みが少ないブタを選ぶこと、新たな感染症が生じた場合に見逃さないようにすることなどを条件に、ブタの細胞を移植する異種移植を国内でも容認する方針を決めました。

 ブタの細胞の移植は、これまで国立国際医療研究センター研究所(東京都新宿区)などのグループが、1型糖尿病の患者にインスリンを分泌するブタの膵島(すいとう)細胞を移植する計画を進めており、早ければ3年後にも始まる見通しだということです。

 厚労省は、「人から人への臓器移植は提供者が少ないため、異種移植によって治療が前進するよう対応していきたい」としています。

 2016年5月28日(土)

 

■介護保険料滞納の65歳以上、差し押さえ1万人超す 厚労省調査

 介護保険料を滞納して市区町村から資産の差し押さえ処分を受けた65歳以上の高齢者が、2014年度に1万人を超えたことが、厚生労働省の調査でわかりました。

 65歳以上の介護保険料は、介護保険制度が始まった2000年度から1・7倍になっており、負担できない高齢者が増えていることが一因とみられます。

 厚労省が全国の1741市区町村を対象に調べたところ、滞納して処分を受けたのは517市区町村の計1万118人。2013年度の7900人から3割近く増え、調査を始めた2012年度以降で最も多く、初めて1万人を超えました。

 自治体別では、大阪市の404人、長崎市の347人、横浜市の293人、長野県飯田市の278人、広島市の272人の順。資産がない人も多く、実際に預貯金などが差し押さえられたのは、2014年度で計6305人でした。滞納した期間は、自治体によって数カ月から数年までまちまちでした。

 65歳以上の介護保険料は、年金が年額18万円以上なら天引きされ、満たなければ自治体に直接納めます。差し押さえ処分は、直接納付している人に集中しているとみられ、低年金者が高くなっている保険料に対応できなくなっているようです。

 65歳以上の介護保険料は3年ごとに改定され、高齢化に伴い上昇中。2000年度は全国平均で月2911円でしたが、2014年度は月4972円。2015年度からは月5514円となっており、団塊の世代がすべて75歳以上になる2025年度には月8000円程度になると見込まれています。

 厚労省の担当者は今後の対応について、「制度の公平さを保つため、介護保険料はできるだけ負担してもらうという姿勢が基本」と説明。その上で、「命や健康に直結するという介護特有の性質も踏まえ、各自治体にはそれぞれの実情に応じて分納・減免を認めるなど、丁寧な措置をとって欲しい」と呼び掛けています。

 2016年5月27日(金)

 

■認知症の行方不明、発見遅れで生存率低下 5日以降ゼロ

 認知症による徘徊(はいかい)で行方不明になった高齢者は、発見に時間がかかると生存率が著しく低下していく傾向にあることが、厚生労働省の研究班の調査で明らかになりました。

 当日中に見付かれば8割以上が生存しているため、地域ぐるみの早期発見の体制づくりが求められそうです。

 調査は、桜美林大学老年学総合研究所の鈴木隆雄所長らが厚労省から研究費を受けて実施。2013年度中に認知症が疑われる状況で警察に行方不明者届が出された1万322人のうち、死亡した388人を含む776人の家族に調査票を郵送し、全項目で回答のあった204人分を分析しました。

 発見されたのが行方不明になった当日なら82・5パーセントが生存していましたが、翌日ならその日に発見された人の63・8パーセント、3~4日目は計21・4パーセントと低下。5日目以降は、生存者がいませんでした。

 死因では、水死や低体温症を含む凍死が多い傾向が、浮かび上がりました。また、亡くなった人の4割以上は、程度の軽い認知症でした。徘徊中の高齢者の発見者は、家族や捜索関係者以外が半数を占めました。

 鈴木所長は、「軽度だからという先入観を持ってはならない。地域社会の協力が早期発見につながる」と話しています。

 2016年5月27日(金)

 

■がん標準治療、9つのうち3つで低い実施率に 患者31万人を対象に調査

 全国のがん患者31万人を対象に、科学的に効果があるとされる9つの標準治療がどのくらい実施されているか調べたところ、再発のおそれが高い特定の乳がん患者への放射線治療など3つの治療については、実施されたり実施が適切に検討されたりしたのは患者の6割から8割にとどまるとする報告を、国立がん研究センターがまとめました。

 国立がん研究センターは、2012年に全国232の病院でがん治療を受けた患者31万2000人を対象に、科学的に効果があるとして推奨されている9つの標準治療が実際にどの程度行われているのか、乳房、肝臓、胃など5つのがんで調べました。

 その結果、胃がんや大腸がんの手術後、再発防止のために行う抗がん剤治療や、肝臓がんの手術でどこまで肝臓を切ってよいかを調べる検査など、6つの治療法や検査については、9割以上の患者で実施されたり実施が適切に検討されたりしていました。

 一方で、再発の危険性の高い特定の乳がん患者に対して術後行う放射線治療や、抗がん剤が原因の吐き気を予防する薬の十分な使用、そして外来で医療用の麻薬を使う際の副作用対策の3つについては、治療が実施されたり適切に検討されたりする割合が6割から8割までの低い値にとどまっていました。

 9つの標準治療の実施率は、平均68・2パーセントでした。未実施の55パーセントは、「患者の希望」「高齢」「全身状態の低下」などの理由がありました。

 国立がん研究センターは、標準治療がなぜ行われなかったのか自治体などが検証を進め、実施の割合を高めていく必要があるとしています。

 国立がん研究センターがん臨床情報部の東尚弘部長は、「標準治療を普及していくことが、患者の生存率や生活の質を上げることにつながる。行わなかった理由が妥当なのかについて、今後細かく考えていく必要がある」と話しています。

 2016年5月26日(木)

 

■エイズ患者と感染者、昨年1434人 2年連続減少も高い水準続く

 昨年、国内で新たに報告されたエイズの患者とエイズウイルス(HIV)の感染者は合わせて1434人で、2年連続で減少しているものの依然として高い水準にあります。

 専門家は、「感染の拡大を防ぐためにも一度は検査を受けてほしい」と話しています。

 厚生労働省によりますと、昨年1年間に国内の医療機関や保健所などからエイズを発症したと報告された患者は428人、エイズウイルスへの感染が報告された人は1006人で、患者と感染者を合わせて1434人になりました。
過去最多は2013年の1590人で、2年連続で減少していますが、依然として高い水準が続いています。

 新たな感染者の感染経路では、同性間の性的接触が最も多く7割近くを占めたほか、異性間の性的接触も2割に上っています。年代別では、20歳代から30歳代が全体の半数以上を占めました。

 新たな感染者のうち女性は、2013年46人、2014年50人、2015年58人と増加傾向でした。

 厚労省のエイズ動向委員会の岩本愛吉委員長は、「患者や感染者は減ってはいるものの、まだ予断を許さない状況だ。検査で感染に気付けば治療につながるほか、感染の拡大を防げる。無料・匿名での相談や検査の機会を積極的に利用してほしい」と話しています。

 2016年5月26日(木)

 

■インフル治療薬投与で40歳代男性死亡 年間17万人に投与

 厚生労働省は24日、インフルエンザの治療に使われるラピアクタ(一般名ペラミビル)の点滴を受けた患者が、副作用とみられるアナフィラキシーショックで死亡した事例があったなどとして、医療機関に注意を呼び掛けました。

 この薬は、大阪市に本社がある塩野義製薬が販売する点滴で投与するタイプで、すでに薬の添付文書に新たな副作用として追記されているといいます。

 発表によると、2013年3月から今年2月までに、この薬を投与された患者8人が呼吸困難やじんましんなどのアナフィラキシーと呼ばれるアレルギー症状を起こし、このうち、40歳代の男性がアナフィラキシーショックで死亡したということです。

 厚労省は薬の投与と死亡の因果関係が否定できないとして、塩野義製薬に対し薬の添付文書を改訂して詳しい症状を記し、医療機関に注意を呼び掛けるよう指示していました。

 この薬は6年前に販売が始まり、年間17万人に投与されていると推計されています。

 塩野義製薬は、「薬が安全に使われるよう医療機関に適切な情報を提供していきたい」と話しています。

 2016年5月25日(水)

 

■結核が世界で猛威、エイズ抜き死者150万人 インド、中国で耐性菌拡大

 日本では「過去の病気」とみられがちな結核が、世界で猛威を振るっています。

 世界保健機関(WHO)によると、2014年に世界で新たに結核に罹患した患者は推定で約960万人、死者は約150万人。死者はエイズ(後天性免疫不全症候群)を上回り、すべての感染症の中で最多でした。

 2013年に比べると、新規患者は60万人増えましたが、死者は横ばいで、いくつかの国が今回新たに統計に含まれたためといいます。

 死者の内訳は、成人男性が89万人、成人女性が48万人、子供が14万人。うち約26パーセントに当たる40万人が、エイズウイルス(HIV)感染者で、結核とHIVの二重感染が深刻であることを示しました。

 年間の新規患者の37パーセントに当たる約360万人が治療を受けられずにいるとみられる一方、不適切な治療により主な薬が効かなくなる多剤耐性結核がインドや中国などで拡大し、深刻な問題となっています。

 WHOは5月12日、多剤耐性結核の発見と治療を短期間で安価に行える新たな手法を利用するよう奨励する声明を発表し、危機感をにじませました。

 「世界エイズ・結核・マラリア対策基金」(世界基金)の国井修戦略投資効果局長は、「結核は、これまで考えられてきた以上に深刻との認識が世界的に高まっている。アフリカなどで多剤耐性結核の発生を防ぎながら治療を普及させていく必要がある」と話しています。

 2016年5月25日(水)

 

■心筋梗塞の発症リスク、ネット上で公開 国立がん研究センターなどが予測式を開発

 国立がん研究センターや藤田保健衛生大学などの研究チームは23日、40歳代~60歳代男女に心筋梗塞(こうそく)と脳梗塞が起きる確率を、血圧やコレステロール値などから予測する手法を開発したと発表しました。

 同日から公開している専用のホームページに健康診断データを入力すると、今後10年間の個人のリスクを把握することが可能です。

 研究チームは、茨城県や新潟県、高知県、沖縄県など5県に住み、心臓や血管の病気にかかったことがない1万5672人の健康状態を1993年から約16年間にわたって追跡。心筋梗塞となった192人と脳梗塞になった552人のデータを解析することで、心筋梗塞や脳梗塞を発症する確率を予測する手法を開発しました。この予測式は、ほかの約1万1000人のデータで検証し、妥当性を確認しました。

 ホームページは、(http://www.fujita-hu.ac.jp/~deppub/risk.html)。

 対象は40歳~69歳で、血圧やコレステロール値、降圧薬の服用や喫煙習慣、糖尿病の治療など10項目を入力すると、今後10年間の発症確率が示されます。例えば、治療中の病気はないが、喫煙習慣があり、血圧や血糖値が高めの54歳男性の場合、心筋梗塞が12・6パーセント、脳梗塞が9・7パーセントと、リスクはかなり高く出ました。

 開発者の一人、藤田保健衛生大学の八谷寛(やつやひろし)教授は、「自分の将来のリスクを把握して、禁煙治療の開始や生活習慣を改める契機にしてもらえれば」と話しています。

 2016年5月24日(火)

 

■横浜市の20歳代女性、ジカ熱感染 国内6例目、中南米から帰国

 厚生労働省と横浜市は23日、中南米から帰国した横浜市在住の20歳代女性が、蚊が媒介する感染症「ジカ熱」に感染したことを確認したと発表しました。

 現地で蚊に刺され、感染したとみられます。中南米で流行が拡大した昨年5月以降、国内で感染が確認されたのは6例目。

 厚労省によると、女性はブラジル以外の中南米の流行地域に約半年滞在し、今月中旬に帰国しました。その後、37・3度の発熱や発疹の症状が出たため、20日に医療機関を受診。横浜市衛生研究所の検査で、陽性が確定しました。現在は熱が下がり容体は安定、自宅で療養中といいます。

 厚労省はプライバシーの観点から、女性が妊娠しているかどうか明らかにしていません。

 国内の蚊の活動時期である5月中旬以降で感染が確認されたのは、初めてです。

 これから蚊が多く発生する時期になります。厚労省は、「蚊の多い場所に行く時はできるだけ肌を露出せず、虫よけ剤を使用する」など、蚊に刺されないように対策を呼び掛けています。

 2016年5月23日(月)

 

■大気汚染、30年後にも健康被害 イギリスで37万人追跡調査

 大気汚染にさらされると、30年以上経った後でも死亡リスクが高まると、イギリスなどの研究チームが専門誌に発表しました。

 大気汚染の影響を長期にわたり調べた研究はあまりなく、汚染対策にいち早く取り組むことが長期的にも健康被害を減らすことを示した成果で、大気汚染に現在も悩まされている途上国などの参考になりそうです。

 研究チームは、イギリス国内の約37万人について、居住地域の大気汚染のデータをもとに、1971年から2001年まで10年ごとに汚染状況を推計した上で、2002~2009年での健康状態を追跡し大気汚染と死亡リスクとの関係を調べました。

 1971、1981、1991年は黒煙と二酸化硫黄、2001年は浮遊粒子状物質のPM10について、居住地域の汚染濃度が1立方メートル当たり10マイクログラム増えるごとの死亡リスクの傾向を分析。その結果、1971年時点で黒煙にさらされたことで、2002~2009年の死亡リスクが全体で2パーセント、呼吸器系疾患で5パーセント高まり、30年以上後でも影響があることが判明しました。PM10については2001年にさらされたことで、全体の死亡リスクが16パーセント上がるなど、短期の影響が大きくなりました。

 大気汚染の健康影響に詳しい島正之・兵庫医大教授(公衆衛生学)は、「日本の高度経済成長期の大気汚染濃度も、多くの工業都市で英国と同程度かそれ以上に高かった。日本でも同じような影響がある可能性がある」と指摘しています。

 2016年5月23日(月)

 

■地球全体の二酸化炭素濃度、初めて400ppm超え 衛星「いぶき」が観測

 地球全体の二酸化炭素(CO2)の濃度が上昇し、昨年12月に初めて月平均で400ppmを超えたことが、日本の人工衛星の観測でわかりました。

 このままでは集中豪雨や干ばつなどの異常気象のリスクが増すとして、環境省は温暖化対策を急ぐ必要があると警告しています。

 これは、環境省や国立環境研究所、宇宙航空研究開発機構などが打ち上げた温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」の観測でわかったもので、地表から高度70キロまでの地球全体の二酸化炭素の濃度が昨年12月に月平均で400・2ppmを観測しました。2009年に観測を始めて以来、400ppmを超えたのは初めてで、今年1月にも月平均で401・1ppmを観測したということです。

 各国の科学者などで作る国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、産業革命前からの気温上昇を2度未満に抑える国際目標の達成には450ppm程度にとどめる必要があるとしており、400ppm超えは危険な水準。上空より濃度が高くなる地上の観測に基づく世界の月平均濃度は、すでに400ppmを超えています。いぶきの観測で、濃度上昇が上空を含む大気全体で続いていることが確かめられました。

 観測では濃度は年約2ppmずつ上昇しており、この傾向が続けば年平均濃度も今年中に400ppmを超えるといいます。

 IPCCの報告書などによりますと、濃度400ppmに抑えても、早ければ今世紀前半には気温は世界平均で1度程度上昇し、集中豪雨や干ばつなどの異常気象のリスクが増すとされています。

 環境省は、「地球温暖化の進行を裏付けるデータで、省エネや再生可能エネルギーの導入など温室効果ガスの削減対策を急ぐ必要がある」と警告しています。

 環境省は、このデータを温暖化対策の新たな枠組み「パリ協定」の実施に向けた国連の作業部会などで報告し、各国に対策を促すことにしています。

 2016年5月22日(日)

 

■ジカ熱、アメリカで妊婦157人が感染 アフリカにも飛び火

 アメリカの疾病対策センター(CDC)は20日、アメリカおよびカリブ海にあるアメリカ自治領プエルトリコに住む妊婦計279人がジカ熱に感染している可能性があるとして、経過観察を行っていることを明らかにしました。

 CDCによれば、このうち157人はアメリカ50州と首都ワシントン在住、残る122人はプエルトリコに住んでおり、全員に「臨床検査の結果、ジカ熱に感染している可能性を示す値」が出たといいます。

 ジカ熱への感染が確認された妊婦は、今月11日にCDCが報告した110人から劇的に増加したようにみえますが、当局は報告制度の改定があったため同列では比較できないと述べています。

 CDCは4月、蚊が媒介するジカ熱への妊婦の感染が、新生児の頭部と脳が異常に小さい小頭症の原因になると発表しています。

 一方、世界保健機関(WHO)は20日、中南米で流行するジカ熱と同じ型のウイルスが、アフリカ地域としては初めて、西アフリカの島しょ国カボベルデで検出されたと発表しました。

 ウイルスは、ブラジルからカボベルデに持ち込まれた可能性が高いといいます。

 ジカ熱は、これまで中南米を中心に感染が拡大。新生児の小頭症や、感染者本人に手足のまひを伴うギラン・バレー症候群を引き起こす可能性が、指摘されています。

 WHOによると、カボベルデでは今月8日までにジカ熱への感染が疑われる患者が7557人に上り、小頭症も数件報告されています。

 2016年5月22日(日)

 

■失禁パンツ、吸水量不足で尿漏れ 国民生活センターが注意呼び掛け

 少量の失禁尿を吸収するとうたい、洗濯をして繰り返し使える布製の下着「失禁パンツ」について、国民生活センターが性能を調査し、結果を19日に報告しました。実験の結果、製品の表示吸収量より少量にもかかわらず、尿が染み出す製品が複数あったとのこと。

 国民生活センターは、「過信は禁物」として注意を呼び掛けています。

 2006年に日本公衆衛生雑誌が、40歳以上の男女965人を対象に行った調査によると、尿失禁の有訴率は男性で11・4パーセント、女性で34・5パーセント。失禁症状に悩む人は少なくなく、多くのメーカーが対策用の失禁パンツを販売しています。

 しかし、2011年から2016年3月までで、PIOーNET(全国消費生活情報ネットワークシステム)には、失禁パンツに関する相談が156件寄せられたとのこと。中には「吸収が悪い」「表示量より少ない尿の量で外に染み出す」といった吸水性に関する相談がみられたため、国民生活センターが調査に至りました。

 調査対象は、大手ショッピングサイトやグーグル検索で上位に表示されたものや、東京都内および神奈川県内のドラッグストアや量販店で販売されていた製品。「軽失禁用」や「軽い尿漏れに」など、少量の失禁尿の吸収をうたう10の会社の12銘柄(購入価格1枚当たり699~1933円)が選ばれています。

 失禁パンツには吸収量の表示に関する規定が定められておらず、各メーカーが自社基準によって表示しています。対象の12銘柄のうち、販売サイトかパッケージに具体的な数値が明記されていたのは9銘柄。吸収量は15から50ミリリットルと、製品ごとにまちまちです。

 実験は実際の着用時を想定して、立った状態(立位)と座った状態(座位)をシミュレート。人体腰部の模型に各銘柄の失禁パンツをはかせ、着色した人工尿を5ミリリットルずつ染み込ませて5分間観察。これを繰り返し、外側まで染み出さないかを銘柄ごとに5枚分調査しました。

 立位での実験結果は、吸収量の表示がある9銘柄のうち5銘柄が、許容量未満の時点で尿が漏れてしまっていました。中には、最低限の5ミリリットルで染み出しているものもありました。また、11回の洗濯後や、座位での実験結果からは、より少量で染み出す傾向がみられました。洗って何度も使える製品とはいえ、それにも限度があるようです。

 国民生活センターは実験結果を受けて、失禁パンツにはわずかな尿量でも染み出してしまう製品があることを指摘。「失禁パンツを購入する場合は、サイズ等を確認し、まずは少数枚で購入して自分の尿漏れのタイプや程度に適応できるかを確認しましょう」と、消費者にアドバイスしています。

 また、事業者へは表示の改善や、試しやすくするための単品販売を求め、消費者庁へは景品表示法上の問題を指摘し、事業者への指導を求めています。

 2016年5月20日(金)

 

■糖尿病の進行を抑制するタンパク質を発見 三重大学

 三重大学は17日、プロテインSというタンパク質に、糖尿病の進行を抑制する働きがあることがわかったと発表しました。

 合併症の進行を遅らせ、インスリンの効果を高めることから、従来の治療法を組み合わせた新しい糖尿病の治療法につながる可能性があるといいます。

 肝臓で作られるプロテインSは、血液の凝固を防ぐ物質であることから、従来から血栓症や脳梗塞(こうそく)などの病気で注目されていましたが、糖尿病との関係が証明されたのは初めて。膵臓(すいぞう)内で、血糖値を下げる働きをするほぼ唯一の体内ホルモンであるインスリンを産生する細胞が破壊されるのを防ぐため、糖尿病の進行を抑えることができます。

 三重大学大学院医学系研究科免疫学のガバザ・エステバン教授(57歳)と安間太郎助教(33歳)らは、マウスに人のプロテインSを過剰摂取させ、血糖値を測定。プロテインSを摂取したマウスは野生のマウスに比べ、血糖値が上昇しませんでした。副作用も認められなかったといいます。

 記者会見した三重大医学部の矢野裕准教授(56歳)は、「インスリンのコントロールがしやすくなり、糖尿病患者全般に有効な治療法になる」と期待を寄せています。

 製剤化したプロテインSを投薬する方法や、体内のプロテインSの産生量を増やす方法などを検討中で、臨床試験などを経て、実用化を目指します。

 三重大によると、糖尿病患者は世界に約4億人。網膜症や腎症などの合併症が発症しやすく、完治する治療法は見付かっていません。

 三重大は同日、糖尿病やがんなどの病気の治療法を研究する三重大学難病研究センターを設置すると発表しました。

 2016年5月19日(木)

 

バリ島でデング熱が大流行 総領事館が観光客に注意呼び掛け

 日本人観光客にも人気のインドネシア・バリ島で、今年に入りデング熱が大流行しています。水たまりなどで蚊が大量発生していることが、原因とみられます。

 例年に比べて、死者数や感染者数が激増しており、現地の日本総領事館が注意を呼び掛けています。

 バリ州保健当局によると、昨年のデング熱による死者数は年間で28人でしたが、今年は1~4月ですでに38人が死亡しました。

 毎年流行のピークは、雨期の終わりの3~4月。確認できた感染者数は昨年3月が1494人、同4月が1685人だったのに対し、今年3月は2407人、4月は2735人と大幅に増えました。

 海岸部だけでなく、棚田が広がる内陸部の人気の観光地ウブド周辺でも患者数が増加し、入院用の病室が足りなくなっている病院もあるといいます。

 蚊の大発生の理由ははっきりしないものの、例年雨の日が続く3~4月に今年は雨が降らない日もあり、天候不順が影響しているとの指摘や、衛生当局による蚊の駆除が効果的に実施されていないとの見方もあります。例年なら乾期となる5月に入っても降雨があり、流行の継続が懸念されています。

 在デンパサール日本総領事館の安江勝信首席領事は、「日本に帰国した後に発症するケースもあるので、観光客は十分気を付けてほしい」と話しています。

 一方、世界保健機関(WHO)欧州地域事務局は18日、ブラジルなど中南米を中心に感染が広がるジカ熱について、今後気温が上昇する夏にかけて欧州各国でも拡大する恐れがあるとの報告書を発表しました。ただ、欧州でのジカ熱流行の可能性はそれほど高くなく、「中程度または低い」としています。

 ヤカブ事務局長は、「ジカ熱が流行するリスクの高さは国によってまちまちだ」と指摘、特にリスクが高い国や地域に対策強化を急ぐよう促しました。

 ジカ熱ウイルスを媒介するとされるネッタイシマカが生息する地域で特にリスクが高いとして、ポルトガルのマデイラ島や黒海北東部の沿岸地域を例に挙げました。

 2016年5月18日(水)

 

■熱中症の搬送者、全国で459人 前週より57人増加、7人重症

 総務省消防庁は17日、5月9日から15日の1週間に、全国で459人が熱中症により救急搬送されたとの速報値を発表しました。

 前週の402人と比べ、57人増えました。搬送時に死亡した人は、いませんでした。

 集計によると、3週間以上の入院が必要な重症は7人、短期の入院が必要な中等症は114人でした。65歳以上の高齢者が、半数近くを占めました。

 都道府県別では、岡山県が32人で最も多く、東京都と愛知県の27人、沖縄県の23人と続きました。

 熱中症による救急搬送者数は、今回調査を開始したゴールデンウィーク中の4月25日から5月1日の201人に比べると、2倍以上に増えています。

 総務省消防庁は、適切な室温調整や、こまめな水分補給、日よけなど、熱中症対策をとるよう呼び掛けています。

 2016年5月17日(火)

 

■不二家、新チョコ菓子55万個余を自主回収 ゴム破片が混入

 菓子メーカーの不二家は17日、10日から全国のスーパーやコンビニエンスストアなどで発売しているチョコレート菓子「焼きルック(塩バニラ)MP」(参考小売価格141円)の出荷分約55万3600個を自主回収すると発表しました。

 製造している秦野工場(神奈川県秦野市)の設備が破損し、一部にゴム破片が混入していることが判明したためとしています。

 会社によりますと、今月14日以降、購入した人から「ゴムの破片が入っていた」という申し出が5件相次ぎ、調査したところ、工場の製造過程で菓子の型をとるためのシリコーンゴム部品が壊れて、一部の菓子にゴムの破片が混入していたことがわかったということです。健康被害は、報告されていないといいます。

 商品または購入時のレシートがある場合、同社まで着払いで返送すれば、後日代金を返金するとしています。

 不二家は、「多大な迷惑をおかけしておわび申し上げます。品質管理を一層強化します」と話しています。

 問い合わせは、午前9時から午後6時までフリーダイヤル0120・047・228で受け付けています。18日からは、フリーダイヤル0120・308・261でも受け付けます。

 2016年5月17日(火)

 

■バナナが食卓から消えるおそれ 新パナマ病の感染拡大

 手ごろな価格で栄養価も高い果物として親しまれているバナナの木を枯れさせる病気の感染が、世界中に広がっています。日本の最大の輸入元のフィリピンでは、生産量が減少するなど影響も出始め、対策を急がなければ、将来、手軽に食べられなくなるおそれがあると懸念する声が上がっています。

 世界中で感染が広がっているのは、カビの一種である病原体によってバナナの木が枯れてしまう「新パナマ病」と呼ばれる病気で、一度かかると治らないため、バナナの「不治の病」ともいわれています。

 バナナの歴史は、実は病気との闘いでした。100年余り前に中米のパナマ周辺で確認され、その後、世界中に感染が広がったバナナの病気は「パナマ病」と名付けられ、当時、流通していたグロス・ミシェル種のバナナはほぼ絶滅しました。

 現在、流通しているバナナは「パナマ病」にかかりにくい品種として開発されたキャベンデイッシュ種ですが、さらに感染力の強い「新パナマ病」が新たに現れ、世界中に広がっています。

 国連食糧農業機関(FAO)によりますと、「新パナマ病」は1990年に台湾で初めて見付かり、その後、中国大陸や東南アジアに広がりました。現在は、中東やアフリカでも感染が確認されているということです。

 このうち、日本が輸入するバナナの9割近くを占めるフィリピンの最大の産地、南部ミンダナオ島では、ここ数年で「新パナマ病」の被害が急速に拡大しています。

 現地の生産者団体によりますと、ミンダナオ島にあるバナナの木の5分の1がすでに感染し、生産量もこの5年で2割以上も減り、今年はさらに落ち込む見通しだということです。

 こうした事態を受けて、フィリピン政府は、3年ほど前から「新パナマ病」に強い品種の開発を進めています。しかしながら、バナナの実が少なかったり、成長するまでに時間がかかったりするため、なかなか成果を上げることができず、実用化の見通しは立っていないようです。

 生産者団体の幹部は、「新たな品種の開発などの対策が進まなければ、5年か10年後には、世界中の食卓からバナナが消えてしまうおそれもある」と話しています。

 2016年5月17日(火)

 

■月80時間の過労死ライン超の残業、2割の企業で 厚労省調査

 1カ月間の残業が最も長かった正社員の残業時間が「過労死ライン」の80時間を超えた企業は22・7パーセントに上ることが、厚生労働省が16日に公表した報告書で明らかになりました。

 過労死等防止対策推進法に基づき昨年12月から今年1月にかけて1万154社に調査し、1743社が答えました。

 2014年度1年間の勤務実態について、1カ月間の残業が最も長かった正社員の残業時間を聞いたところ、「80時間超~100時間以下」が10・8パーセント、「100時間超」が11・9パーセントに上りました。合計22・7パーセントの企業で、過労死の労災認定基準で健康障害リスクが高まるとする「月80時間」を超えて残業をする社員がいる結果となりました。

 従業員の規模別では、1000人以上の企業で「80時間超」の回答が5割を超えました。残業時間が長くなるに従い、従業員に占める病気休職者の割合が高くなる傾向もみられました。

 厚労省の担当者は、「過労死が多く発生するとの指摘がある業種について今年度は掘り下げて調査したい」としています。

 2016年5月16日(月)

 

■iPS網膜の臨床研究で理研、大阪大など連携 他人の細胞から作り移植

 iPS細胞(人工多能性幹細胞)から作った網膜組織を患者の目に移植する臨床研究について、理化学研究所のグループが京都大、大阪大など3機関と共同で準備を進めていることが12日、わかりました。

 移植には、他人の細胞から作ったiPS細胞を初めて使う予定で、安全性の評価などで連携し、iPS研究を加速させる狙い。

 臨床研究は、理研多細胞システム形成研究センター(神戸市)の高橋政代プロジェクトリーダーらが計画。京都大iPS細胞研究所(CiRA、山中伸弥所長)がiPS細胞を提供し、大阪大と神戸市立医療センター中央市民病院が、手術や診察を担う方向で現在調整しています。

 世界初となった2014年の移植では、患者自身の皮膚の細胞を元にしたiPS細胞で作った網膜の組織を使いましたが、今回は、健康な他人の細胞から作り、品質をチェックした「医療用iPS細胞」を使うことが大きな特徴です。

 治療にかかる時間とコストを大幅に減らせることが、期待されています。CiRAは昨年から、医療用iPS細胞を製薬企業や研究機関に配り始めました。

 臨床研究では、患者自身のiPS細胞と医療用iPS細胞のそれぞれから網膜組織の色素上皮細胞を作り、加齢黄斑変性の患者の目に移植して、安全性などを比べるといいます。

 大阪大では医療用iPS細胞を使って、角膜や心筋を作って患者に移植する準備が進んでおり、今回の臨床研究で医療用iPS細胞の有用さが確かめられれば、こうした病気でも利用が広がる可能性があります。

 2016年5月15日(日)

 

■精神面のケアが必要な妊産婦、年間で推計4万人 厚労省が発表

 うつ病などで治療や精神面のケアが必要な妊産婦が年間4万人いるとの推計を11日、厚生労働省研究班(研究代表者=光田信明・大阪府立母子保健総合医療センター産科主任部長)が発表しました。

 全国の病院や診療所2453施設で昨年11月に出産した妊産婦について、精神疾患の治療やケアの必要性を尋ね、44パーセントの1073施設から回答がありました。

 出産した約3万9000人のうち、4パーセントに当たる1551人で治療やケアが必要と判断されました。全国では年間約100万人が出産しており、4万人に相当するといいます。

 1551人のうち、診断や治療を受けていたのは30パーセントに当たる459人で、18パーセントに当たる276人は薬をのんでいました。一方、少なくとも25パーセントに当たる381人は、過去に診断や治療を受けたことがないとみられるといいます。

 また、妊産婦の精神面のケアに当たったのは、専門外の産婦人科医などが約80パーセントを占め、精神科などの専門医によるケアは約20パーセントにとどまっているといいます。

 家庭や生活環境を分析すると、未婚や貧困などで問題を抱える人が目立ちました。診断や治療歴のない381人では、「実母と折り合いが悪い」「近所との付き合いがない」という傾向が強かったといいます。

 調査を担当した日本医科大産婦人科の中井章人教授(周産期医学)は、「メンタルヘルスケアが必要な妊産婦が、どのくらいいるのか明らかになったのはこれが初めてだ。妊娠や出産は女性に精神的なストレスがかかりやすくなる。妊産婦のケアを専門とする精神科医らを確保し連携することが重要」と話しています。

 2016年5月14日(土)

 

■職場のがん検診、部位によって受診率に差 厚労省調査

 厚生労働省は12日、企業の健康保険組合が実施するがん検診の実態調査の結果を公表しました。健康診断などの機会にがん検診を受診している従業員は、肺がんで7割を超える一方、婦人科系の乳がんや子宮頸(けい)がんなどでは3割台にとどまっていました。

 厚労省が職場のがん検診に関する実態調査をしたのは、今回が初めて。

 実態調査は昨年12月~今年1月、全国の1406の健康保険組合にアンケートを送付。88パーセントに当たる1238の組合から回答を得ました。

 従業員の受診率は、肺がんが最も高く約72パーセント。大腸がんは約61パーセント、胃がん約57パーセント、肝臓がんが約50パーセントで、国が目標とする5割を超えました。乳がんは約35パーセント、子宮頸がんは約32パーセントと、婦人科系の受診率が低い傾向にあることがわかりました。

 検診で異常が見付かった人のうち、精密検査を受けたのは肺がん、大腸がんで約45パーセント、胃がんは約44パーセントにとどまりました。

 被扶養者(家族)の受診率は、肺がんが約30パーセント、大腸がんが約31パーセントなどと低くなりましたが、精密検査の受診率は社員本人より高いという逆の傾向にありました。

 検診に対する意識には、組合によって差がありました。6割の組合が従業員の受診状況を把握しておらず、未受診者に対して再勧奨している組合は約16パーセントでした。

 がんは日本人の死因で最も多く、働く世代では毎年26万人がかかると推計されていますが、職場のがん検診については自主的な取り組みに任されているのが現状です。厚労省は、企業に勤務時間の配慮を求めるなど、がん検診を受けやすい環境を整備し受診率の向上を目指すとしています。

 2016年5月13日(金)

 

■WHO、リオ五輪の観光客に勧告 ジカ熱予防で貧困地区避けて

 世界保健機関(WHO)は12日、8月にリオデジャネイロ・夏季オリンピックが開かれるブラジルで今もジカ熱の流行が続いていることから、出場する選手や現地を訪れる観光客らに、ジカ熱の感染を防ぐため人口が密集した貧困地区に行くのを避けるよう勧告しました。

 衛生環境が悪い貧困地区ではジカウイルスを媒介する蚊が繁殖しやすく、蚊に刺されてジカ熱に感染するリスクが高くなるためだとしています。

 また、ジカウイルスは性交渉を通じて感染する恐れがあるため、訪問者は帰国後も少なくとも4週間はコンドームを使用するなど安全な性交渉を心掛けるよう求めました。

 さらに、現地ではできるだけ体を覆う衣服を着たり、防虫スプレーを使うなど、蚊に刺されないための対策の徹底を要求しています。

 WHOによりますと、リオデジャネイロ・オリンピックが開かれる8月の現地は蚊の活動が減る冬の時期に当たるため、感染のリスクはそれまでよりも少なくなるということですが、妊娠中の女性については、引き続きジカ熱の流行地域への渡航を控えるよう勧告しています。

 蚊が媒介するジカ熱への不安が拡大している中、WHOがリオデジャネイロ・オリンピックに明確に言及したガイドラインを発表したのは、初めて。ジカウイルスは新生児の先天異常である小頭症の原因になっていると、専門家らは指摘しています。

 2016年5月13日(金)

 

■ジカ熱、胎盤通じ胎児へ感染 マウス実験で初解明

 蚊が媒介する感染症のジカ熱を引き起こすジカウイルスが、血流に乗って移動し、胎盤内で増殖して胎児の脳に侵入し、発育不全や死亡の原因となる過程をマウス実験で確認したとする2件の研究報告が11日、発表されました。

 2件の研究は、アメリカの医学誌セルとイギリスの科学誌ネイチャーにそれぞれ掲載され、ジカ熱への科学者の理解を向上させ、予防ワクチンの開発につながると期待されています。

 「ジカウイルスの子宮内感染を動物実験で初めて実証した。経過や結果の一部は女性や幼児にみられるものと一致する」。セル誌に掲載された研究論文の共同上席著者で、アメリカのミズーリ州セントルイスのワシントン大のマイケル・ダイアモンド教授(医学・分子微生物学・病理学・免疫学)は、このように述べました。

 この研究では、ブラジルで流行中のジカウイルスと97パーセント類似したウイルス株に、マウスを感染させました。ブラジルでは昨年以降、頭部が異常に小さく脳が変形した状態で生まれる先天異常の小頭症の新生児が1000人以上確認されています。

 ジカウイルスを撃退する能力を持たないよう遺伝子組み換えを施した妊娠マウスを使用した実験では、胎児の大半が1週間以内に死に、生まれた子供にも重度の発育不全がみられました。一方、遺伝子的に正常なマウスを用いた別の実験では、胎児は死ななかったものの、発育不良と神経損傷が確認されました。ジカウイルスの遺伝物質は、脳の発達に重要な時期とされる妊娠16日目になっても、胎児の体と脳に残存していました。

 いずれの実験でもマウスは小頭症を発症しなかったものの、研究チームでは人間とマウスの生物学的な違いによる可能性を指摘。むしろ、胎児に栄養を供給する胎盤内で、ジカウイルスがどのように広がるかに注目しました。マウスの胎盤内のジカウイルス濃度は、妊娠マウスの血中ウイルス濃度の1000倍に達していました。

 「ジカウイルスは、まず胎児血管の内膜に、次いで血液中に確認された。その後間もなく脳まで到達できることも確認した」と、論文の共同上席著者でワシントン大医学部のインディラ・マイソアカー氏は説明しています。

 これとは別に行われ、ネイチャー誌に掲載された研究では、中南米で流行しているジカウイルス株と妊娠している野生種マウスを使った実験で、やはりジカウイルスが胎盤から胎児に侵入し、回復困難な神経損傷を引き起こす可能性が示されました。さらに、培養したヒト脳細胞にブラジルで1200件の感染例を引き起こしたとされるジカウイルス株を感染させたところ、ウイルスは神経細胞を攻撃して損傷させ、成長と正常な発達を阻害しました。

 論文の上席著者でブラジルのサンパウロ大学のジャンピエール・ペロン氏は、これらの実験結果について「治療法のアイデアを一部検証したり、ウイルスの改良・抑制が可能なワクチンや薬剤を試験したりする基盤」として活用できると指摘しています。

 2016年5月12日(木)

 

■抗生物質が効かない耐性菌で健康被害 新生児など死亡例も

 生まれたばかりの新生児や就学前の幼児など子供60人以上が過去3年間に、「ESBL産生大腸菌」と呼ばれる複数の抗生物質が効かない細菌に感染して命に危険が及ぶような重い症状になり、確認されただけで2人が死亡していたことが、専門の医師で作る学会の調査で明らかになりました。

 幼い子供の間でESBL産生大腸菌による全国的な健康被害の実態が明らかになったのは初めてで、専門家は「出産の際に母親から感染したとみられる赤ちゃんも多く、医療現場での感染対策を検討する必要がある」と指摘しています。

 ESBL産生大腸菌は、抗生物質を破壊する酵素を作り出す細菌です。健康な人が感染しても通常、病気になることはありませんが、早産で生まれた新生児や病気の子供が感染すると、血液中に細菌が入り込む敗血症などを引き起こして、最悪、死に至ることがあります。

 日本新生児成育医学会と日本小児感染症学会は、ここ数年、このESBL産生大腸菌を体内に持つ健康な大人が増えているという調査結果を受け、早産の新生児などに影響が出ていないか全国520の医療機関を対象に調査しました。

 その結果、昨年までの3年間だけで、生まれたばかりの新生児や就学前の幼児を中心に、少なくとも65人がこの細菌に感染し、入院が必要な状態になっていたことがわかりました。

 症状の中で全体の6割近くを占め、最も多かったのは、意識障害や血圧低下を起こし命に危険が及ぶ敗血症で、これまでに確認されただけで2人が死亡していたということです。

 また、生後間もない新生児など0歳児が、全体の4割近くを占めており、出産直後に高熱などの症状が出たり、母親からもこの細菌が検出されたりしていることから、出産の際に母親から感染した可能性が高いということです。

 調査を担当した東京都立小児総合医療センターの堀越裕歩医師は、「生まれたばかりの赤ちゃんが耐性菌が原因で重篤な症状に陥る時代に入ってきている。特に早産のおそれがある妊婦については、事前にESBL産生大腸菌を持っていないか把握するなど、対策を検討する必要が出てきているのではないか」と話しています。

 2016年5月12日(木)

 

■メタボ健診、腹囲より危険因子を重視へ 2018年度から実施

 内臓脂肪がたまり病気になりやすいメタボリック症候群を調べる特定健診(メタボ健診)について、厚生労働省の専門家検討会は10日、腹囲が基準値以上かどうかを最初に調べる現在の方法から、高血圧や脂質異常、高血糖といった危険因子を重視する方法に改めることを決めました。

 2018年度から実施する方針。

 現在の方法では、腹囲が基準値未満だが血糖値などが高い「隠れメタボ」が見落とされがちなのが理由。最近の研究で、隠れメタボも心筋梗塞や脳卒中などを発症する危険性が高いことがわかってきたため、見直しを進めていました。

 新たな方法では、検査で高血圧や脂質異常、高血糖が示されれば、新たに設ける「非肥満保健指導」の対象になります。その上で腹囲について考慮し、男性は85センチ、女性は90センチ以上なら減量に向けて指導します。

 現在は、腹囲が基準値以上の人のうち、危険因子が1つある人をメタボ予備軍、2つ以上の人をメタボとして保健指導をしています。

 しかし、厚労省研究班(代表・門脇孝東京大教授)の男女約3万人を対象とした調査では、腹囲が基準値未満でも危険因子を1つ以上持つ人は、1つも持たない人と比べて循環器疾患を発症する危険性が男性は1・91〜2・22倍、女性は2・12〜2・54倍高いことがわかっています。

 2016年5月11日(水)

 

■アルツハイマー病、原因物質の構造変化を確認 金沢大学

 アルツハイマー病を引き起こすとされるタンパク質「アミロイドベータ」が脳内で寄り集まる際、らせん状から直線状などに線維構造が途中で変化することを、金沢大などの研究チームが初めて確認し、9日付のアメリカの科学アカデミー紀要電子版に発表した。

 アルツハイマー病は、アミロイドベータが集まって線維になり、脳内に「老人斑」と呼ばれる蓄積物ができることが主な原因とされます。線維構造の違いは病状や進行の速さに影響するといい、脳内のアミロイドベータの線維構造を変化させることができれば、アルツハイマー病の治療や予防法の開発につながる成果という。

 金沢大の山田正仁教授(神経内科学)らの研究チームは、アミロイドベータを人工的に作製。分子の動きや構造を精密に撮影できる高速「原子間力顕微鏡」を使って、溶液を満たした試験管の中で線維化する過程をビデオ撮影して解析しました。

 線維には「らせん型」と「直線型」の形状があり、従来はタンパク質が集まり始めた時点で形状が定められ、その後は同じ構造が繰り返し作られると考えられていました。今回の研究では、らせん型と直線型を併せ持つ「混在型」が存在し、混在型はらせん型→直線型→らせん型のように繊維が変換されながら形成されることを発見しました。さらに、塩化カリウムの溶液では途中で形状が変化することが多く、塩化ナトリウムの溶液では変化が少なかったことから、アミロイドベータの線維構造は周囲の環境によって変化することも明らかにしました。

 山田教授は「何らかの方法で線維の構造を変化させることができれば、病気の発症や進行を遅らせることができる」と話しています。

 2016年5月10日(火)

 

■精神科病院、患者の拘束1万人に上る 2013年度、10年で2倍

 精神科病院で手足をベッドにくくり付けるなどの身体拘束を受けた患者が2013年度、全国で1万229人に上り、10年前の2倍に増えたことが9日、厚生労働省の調査でわかりました。

 内側から開けることができない「保護室」に隔離された患者も、約3割増の9883人でした。

 精神科病院での身体拘束などは、精神保健福祉法上、本人や他人を傷付ける恐れがあるなどと精神保健指定医が判断した場合に、限定的に認められています。

 厚労省は調査結果について、「明確な因果関係までは特定できない」とした上で、「アルツハイマー型認知症患者の割合が増えている背景はある」と説明しています。

 識者からは、安易な身体拘束を指摘する声もあり、人としての尊厳や権利の制限につながるとの懸念から「適切性を第三者機関が判断する仕組みが必要」との意見も出ています。

 精神科に関する全国調査は、厚労省が毎年度実施し、入院患者数や医療従事者数、病床数などを集計。データがまとまった2013年度の対象は、1616施設でした。

 その結果、身体拘束を受けた患者は1万229人に上ることが判明。最多は北海道の1076人で、東京都の992人、埼玉県の878人が続きました。また、保護室への隔離は9883人で、最多は大阪府の612人でした。

 身体拘束に関する調査項目は、2003年度に加えられ、同年度は対象1662施設で5109人。その後増加の一途をたどっています。2003年度に保護室に隔離された患者は、7741人でした。

 一方、精神科病院への入院患者数は減少傾向にあり、2003年度に約32万9000人でしたが、2013年度は約3万2000人減の約29万7000人となりました。

 2016年5月9日(月)

 

■黄熱病が中国に飛び火、アフリカから拡大 WHO警戒

 アフリカ南部のアンゴラで昨年12月以降、黄熱病が拡大し、今月4日までに疑い例を含め計2149人が感染、うち277人が死亡しました。過去30年なかった流行といいます。

 近隣国のコンゴ(旧ザイール)、ケニアなどのほか、アンゴラへの出稼ぎ労働者が多い中国にも感染が飛び火しており、世界保健機関(WHO)は一層の感染拡大の恐れがあるとして警戒を強めています。

 WHOによると、アンゴラでの感染者は約70パーセントが首都ルアンダとその周辺に集中。人口が密集する都市部での流行は予想以上の感染拡大を招きかねないとして、WHOは神経をとがらせています。

 アンゴラでは大規模なワクチン接種キャンペーンが実施され、すでに700万人以上が接種したものの、感染拡大は止まっていません。WHOは今後、さらに200万人以上に接種を行う方針。

 黄熱病は、フラビウイルス属の黄熱ウイルスによる感染症。サル、ヒトおよび蚊を宿主とし、蚊によって媒介されます。症状は発熱、筋肉痛、吐き気、嘔吐(おうと)や食欲不振など。軽症で治癒する場合は、発熱と頭痛が突然現れ、鼻カタル症状のない点を除けばインフルエンザに類似しています。重篤化すると、黄疸(おうだん)や肝臓、腎臓などの障害が現れ、致死率が高くなります。

 現在でもアフリカ、南アメリカなどで地域的流行が発生しており、旅行者が罹患することもあります。

 2016年5月8日(日)

 

■脳動脈瘤の治療器具、新ステントを開発 国立循環器病研究センター

 国立循環器病研究センター(大阪府吹田市)は6日、脳の血管にこぶができ、脳出血の原因となる「脳動脈瘤(りゅう)」の新しい治療器具の臨床試験(治験)を9日に始めると発表しました。

 治験で使うのは、微小な穴が規則的に開いたポリウレタン製の膜で覆われた長さ2~3センチ、直径3~5ミリの筒状のステントで、国立循環器病研究センターが開発。足の付け根の動脈から送り込み、こぶの付け根に置いて膨らませることで、ステントがこぶへの血流を完全に遮断し、こぶは縮んで破裂を防ぎます。こぶに直接触れないため、安全性が高いといいます。

 海外の企業が開発した同様の治療器具は、国内では昨年10月に保険適用されました。今回作った治療器具は、血の塊が生じにくく、患部に配置しやすいのが特徴で、イヌやウサギによる実験で効果を確認したといいます。

 現在、脳動脈瘤の治療法としては「クリッピング術」「(バイパス併用)母血管閉塞術」「コイル塞栓術」などがありますが、大きなサイズのこぶの場合、これらの治療法では脳動脈瘤への血流を完全に止めることができず根治させることが困難でした。

 治験は、国立循環器病研究センターなど3施設で実施。首の内頸(ないけい)動脈と椎骨(ついこつ)脳底動脈に7ミリ以上のこぶがあり、現在の治療で根治が難しい患者12人に使い、2年かけて安全性と効果を調べます。早ければ2022年に、医療保険の適用を目指すといいます。

 佐藤徹・脳神経外科医長は、「従来と比べて手順も簡単で、安全性も高められる可能性がある」と話しています。

 2016年5月7日(土)

 

■化血研、110日間の業務停止処分が終了 熊本地震被災で製造再開は6月以降に

 熊本市の一般財団法人・化学及(および)血清療法研究所(化血研)が、およそ40年にわたって国の承認と異なる方法で血液製剤を製造していた問題で、厚生労働省から受けた過去最長の110日間の業務停止処分が6日終了しました。

 停止していた8製品の製造・販売ができるようになりますが、先月14日からの一連の熊本地震で県内3カ所の製造・配送拠点が被災し、化血研だけが製造するA型肝炎ワクチンなどおよそ80あるすべての製品の製造ができない状態となっています。被害状況は今も調査中で、製造再開は早くても6月以降になるといいます。

 化血研は6日、ホームページ上で宮本誠二理事長を含む役員9人は6月下旬に全員退任し、新体制で組織改革を行うと表明。製造現場での監視の仕組みも、構築するとしました。

 化血研によると、6日夕に厚労省職員2人が建物に入り、1月18日の処分の際に貼った「封かんの証」や「立ち入り禁止」と書かれたシールを取り除く作業をしました。

 化血研は、薬害エイズ訴訟の被告企業の一つ。現在、製薬大手アステラス製薬と血液製剤やワクチンの製造事業を売却する交渉に入っています。

 厚労省の関係者は、「3度目の過ちを犯さないよう、うみを出し切った上で事業を引き継いでほしい」と話しました。

 化血研は、「今は安定供給に向けて一日でも早く製造を再開することを最優先にし、再開のめどが立った段階で事業譲渡に向けた交渉を進めていきたい」としています。

 2016年5月7日(土)

 

■人間の受精卵、ほぼ2週間の体外培養に成功 米英の2チーム

 人間の受精卵(胚(はい))を受精後12~13日間、シャーレ(皿)内で培養することに成功したと、アメリカとイギリスの大学の研究チームが4日付のイギリスの科学誌電子版にそれぞれ発表しました。

 これまでは、体外では10日間も生存できないと考えられていました。受精卵の成長過程の詳しい解明につながることで不妊治療の技術の改良や、再生医療への応用が期待できる前例のない快挙だといいます。

 アメリカのロックフェラー大などの研究チームはネイチャー誌に、イギリスのケンブリッジ大などの研究チームはネイチャー・セル・バイオロジー誌に論文を発表。マウスの受精卵の培養で開発した技術を応用し、人間の受精卵を培養液入りのシャーレ内で成長させる実験を行いました。

 人間の受精卵は分割を繰り返し、5日前後に「胚盤胞(はいばんほう)」という状態になり、胎児や胎盤などになる部分ができます。不妊治療では、この段階までに子宮に戻します。

 実験では、子宮に着床する7日目前後から受精卵を観察。胎児を包む膜や血液を供給する部分になる組織のもとができる過程や、遺伝子の働きを調べました。母胎からの信号がなくても、独自に成長する現象も確かめましたた。ロックフェラー大など研究チームの実験では、12日目で成長が部分的に止まったといいます。

 国立成育医療研究センター研究所生殖医療研究部の阿久津英憲部長は、「子宮の中で起きていることと一致しているかはわからないが、これまでブラックボックスだった着床する時期の受精卵の成長過程が細かくわかったことは重要だ」と話しています。

 臓器のもとになる細胞ができてくるのは、受精後14日ごろ。人間の受精卵を使った研究は倫理上の問題から、14日以内に限るという国際的なルールがあり、2つの研究チームはそれに従って実験を中止しました。

 ネイチャー誌は、研究で得られるかもしれない成果を念頭に、14日に限る妥当性を改めて考える必要があるとする生命倫理学者の論文を同時に掲載しました。

 14日ルールは、日本では文部科学省などの指針で定めています。生命倫理に詳しい滋賀大の位田隆一学長は、「技術的に可能になったからといってルールを変える必要があるのか。変えるのなら、倫理的に認められる条件は何か。研究の進歩は早いので、あらかじめ検討しておくほうがよい」と語っています。

 2016年5月6日(金)

 

■肺がん再発予防を 新ワクチンの治験、神奈川県立がんセンターが開始 

 がんで死亡する人のうち最も高い割合を占める肺がんの再発を防ごうと、神奈川県立がんセンター(横浜市旭区)などの研究チームは、開発中のワクチンの効果や安全性を確かめる治験(臨床試験)を始めました。

 厚生労働省によりますと、一昨年肺がんで死亡した人は国内でおよそ7万人に上り、がんで死亡した人のうち最も高い割合を占めています。

 こうした中、神奈川県立がんセンターや東京大学などでつくる研究チームは、肺がんの再発を防ぐため開発中のワクチンを患者に投与して、効果や安全性を確かめる治験を始めました。

 肺がんは、主に小細胞がんと非小細胞がんに分けられ、全体の約8割を占める非小細胞がんの患者が治験の対象。手術によってがんを切除し、化学療法(抗がん剤治療)を行っても、ごくわずかに残ったがん細胞が原因となって、再発するケースがあります。

 再発すると根治治療は困難になるため、治験では再発前にがんワクチンを投与し、小さながんを抑え込みます。手術によって肺がんが完全に切除され、補助的な化学療法を行った患者を対象に治験を行います。

 ワクチンは東大が開発し、治験は東大医科学研究所付属病院(東京都港区)と国立がん研究センター東病院(千葉県柏市)を含めた3施設で、医師主導によって行います。対象者は3施設で計60人。2年間にわたってワクチンを皮下投与します。このワクチンは、患者の免疫機能を高めてがん細胞を攻撃させるのが特徴です。

 研究チームは、最短で8年後の国の承認を経て、肺がんの新たな治療方法として確立させたいとしています。

 神奈川県立がんセンターの担当者は、「ワクチンによる治療はがん患者の負担を軽減することにもつながるので、可能な限り早期に効果や安全性を確かめたい」と話しています。

 問い合わせは、神奈川県立がんセンターのがんワクチンセンター電話045(520)2227(平日の午前9時~午後4時)。

 2016年5月5日(木)

 

■熱中症に注意を 5日、6日も全国的に気温が高い見込み

 発達した低気圧と前線の影響で、4日は全国的に風が強く、海上は波が高くなりました。また、関東で日中の最高気温が30度以上の真夏日になるなど、ほぼ全国的に気温が上がり、5日にかけても高い状態が続くことから、気象庁は熊本地震の被災地などを中心に熱中症に注意するよう呼び掛けています。

 気象庁によりますと、発達した低気圧と前線の影響で、4日は全国的に風が強まり、松江市で正午すぎに34・6メートルの最大瞬間風速を観測したほか、東京都江戸川区で午前7時半すぎに26メートル、熊本県の阿蘇山で午後4時半ごろに25・3メートルの最大瞬間風速を観測しました。

 一方、4日は東日本と西日本の広い範囲で晴れて気温が上がり、日中の最高気温は、群馬県館林市で31度6分、栃木県佐野市で31度3分、東京都青梅市で30度6分、甲府市で30度ちょうどなどと、30度以上の真夏日となったほか、静岡市で27度7分、高知市で27度4分、鳥取空港で27度3分、大分市で26度7分、熊本県八代市で25度ちょうどなどと、各地で25度以上の夏日になりました。

 西日本と東日本では5日も晴れてほぼ全国的に気温の高い状態が続き、このうち熊本地震の被災地では4日よりもさらに気温が上がる見込みです。5日の日中の最高気温は、大分市と山口市、それに高知市で28度、京都市で27度、熊本市と東京の都心で26度などと予想されており、季節先取りの暑さが続きます。

 6日はさらに気温がアップし、全国の約5割で最高気温が25度以上の夏日の予想です。この日は北陸地方がフェーン現象で気温が上がる予想で夏日地点が多く、真夏日地点も。

 その後、7日週末も全国の3割くらいで夏日ですが、8日からは季節先取りの暑さは収まってくる見込みです。

 気象庁は、各地で熱中症に注意し、特に熊本地震の被災地では、屋外の作業や避難所で過ごしたりする際には、こまめに水分をとることなどを呼び掛けています。

 2016年5月4日(水)

 

■胃ろうなどチューブで人工栄養6割超 高齢者が入院する療養病床で

 主に高齢者が長期入院する「療養病床」で、腹部に小さな穴を開ける「胃ろう」などチューブを通じて人工的に栄養を補給したことのある人が、昨年10月時点で入院患者の62・9パーセントに上ることが4月29日、日本慢性期医療協会(東京都新宿区)の調査でわかりました。

 口から食事ができなくなった時が寿命という考えが一般的な欧米に比べ、日本は胃ろうの実施が多いとされています。療養病床で胃ろうなどの処置が広く普及している実態が、浮き彫りになりました。

 調査は、療養病床がある医療機関のうち約3000カ所を対象とし936カ所(入院は計約6万人)から有効回答を得ました。胃ろうに加え、鼻からチューブを通す「経鼻栄養」や、食事に代わる輸液を静脈に入れる「中心静脈栄養」など人工栄養の実態を調べました。

 昨年10月末時点で、人工栄養を取っている人と、食事ができていても過去1年以内に人工栄養を取っていた人を合計し、全入院患者に占める割合を算出。介護保険が適用される「介護型」病床では62・2パーセント、医療保険適用の「医療型」では63・3パーセントで大きな差はありませんでした。全体では62・9パーセント。

 実施中の人工栄養の内訳をみると、介護型病床で胃ろう52・5パーセント、経鼻栄養44・9パーセントなど、医療型病床で胃ろう41・2パーセント、経鼻栄養34・3パーセント、中心静脈栄養23・5パーセントなどでした。

 厚生労働省は社会保障費抑制のため、全国の介護型療養病床約33万床のうち約14万床を廃止し、医師らが常駐して医療と住まいが一体となった2種類の別の施設に2018年度以降、転換させる方針。

 日本慢性期医療協会は、「胃ろうなど医療的ケアが必要な患者は介護型病床にも多い」と指摘し、「こうした患者の行き場がなくならないよう注意すべきだ」としています。

 2016年5月3日(火)

 

■西日本や東日本を中心に各地で25度以上の夏日 熱中症に注意を

 1日から各地で夏日となるなど気温が高い状態が続いていますが、2日も西日本や東日本を中心に広い範囲で晴れて気温が上がり、すでに25度以上の夏日となっているところがあります。熊本県や大分県の熊本地震被災地でも各地で夏日となっています。

 気象庁によりますと、2日は東北や関東の一部では雲が広がっていますが、西日本や東日本を中心に広く高気圧に覆われて晴れ、各地で気温が上がっています。

 午前11時までの最高気温は、和歌山県田辺市の栗栖川で29度ちょうど、鳥取市で27度9分、奈良市で26度1分、名古屋市で26度ちょうどなどと、各地で夏日となっています。

 また、熊本県や大分県の熊本地震被災地でも気温が上がり、熊本県南阿蘇村で25度6分、熊本市で25度ちょうど、熊本県益城町にある熊本空港で24度3分、大分県由布市で23度5分などとなっています。

 この後さらに気温が上がり、日中の最高気温は兵庫県豊岡市で31度、京都市で30度の真夏日が予想されているほか、大分県日田市で29度、名古屋市で28度、熊本市で27度、東京の都心で24度などと平年を3度から8度上回る暑さが予想されています。

 気象庁は熱中症に注意し、屋外で活動したり、避難所で過ごしたりする際には、こまめに水分をとるよう呼び掛けています。

 熊本県も地震の後片付けで屋外で作業したり、避難所や車の中で過ごしたりする際は、こまめに水分を補給し、冷たいタオルで体を冷やすなどして熱中症に注意するよう呼び掛けています。また、避難所などで提供された弁当などは、時間を空けずに食べるなど食中毒にも注意してほしいとしています。

 人間の体は通常、体温が上がっても汗や皮膚の温度上昇によって熱を外に逃がし、体温を調節するようにできています。ところが、高気温や激しい運動により体内の水分や塩分のバランスが崩れ、こうした体温調節の機能が働かなくなると熱中症を引き起こすことがあります。めまいや立ちくらみ、手足のしびれ、けいれん、体温の上昇などが、症状として現れます。

 2016年5月2日(月)

 

■ジカ熱、プエルトリコで70歳男性死亡 アメリカ領内で初めて

 カリブ海にあるアメリカ自治領プエルトリコで4月29日、ジカウイルス感染による関連死が初めて確認されました。アメリカの疾病対策センター(CDC)が、発表しました。

 死者は70歳の男性で、ジカ熱に合併した重度の血小板減少症によって内出血を起こし、死亡したといいます。

 CDCは先に、プエルトリコでジカ熱への感染が爆発的に増加し、感染者数が数十万人に及ぶ恐れがあると警告していました。

 蚊が媒介するジカウイルスは、感染すると発疹や関節痛、筋肉痛、頭痛、発熱などの症状が出ます。脳と頭部が異常に小さい状態で新生児が生まれる「小頭症」との関連が指摘されており、近年ブラジルで小頭症の新生児数が増加している原因といわれています。

 CDCはプエルトリコの人々に対し、蚊に刺されないための対策として、虫除け剤や長袖の衣服、住居の戸締りなどを徹底するよう呼び掛けています。また、ジカウイルスは性交渉でも感染することから、パートナーが妊娠している場合は男性用避妊具を使用するか、出産まで性交を避けるよう注意しています。

 プエルトリコでは、昨年11月に症状を訴えた患者が翌12月に、アメリカ領内初のジカウイルス感染者と確認されていました。

 CDCによると、今年4月14日までのプエルトリコにおける感染者数は6157人で、うち65人が妊婦、17人が入院し、5人が神経障害のギラン・バレー症候群を発症した疑いがあるといいます。

 2016年5月1日(日)

 

■ジカ熱やデング熱媒介のヒトスジシマカ、5月から活動 感染症研究所が推定

 中南米を中心に感染が広がっているジカ熱や、デング熱のウイルスを媒介するヒトスジシマカが、日本で活動を始める時期を、国立感染症研究所などのチームが推定しました。

 同研究所昆虫医科学部の駒形修・主任研究官と小林睦生・名誉所員らは、2008~2015年に国内各地でヒトスジシマカが採集された日と平均気温の関係を分析。今年3月の平均気温をもとに、今年の蚊の活動開始日を推定しました。

 それによると、熊本市で5月5日、大阪市で5月8日、東京都新宿区で5月10日など、九州から関東までの大半の地域が5月前半でした。盛岡市は6月9日で、九州と1カ月以上の差がありました。実際の活動開始と2日ほど前後する可能性があるといいます。

 駒形さんは、「これまでは研究者らの経験や勘をもとに予想していた。今回の推定結果を蚊の対策に役立ててほしい」と話しています。

 推定では、1年を通じて蚊が活動する沖縄県や、蚊がいない青森県以北は対象外としました。

 一方、ブラジルの保健当局は26日、今年1月からの3カ月間に、同国で報告されたジカ熱の発症件数が9万1000件を超えたことを明らかにしました。

 発表によると、1月3日から4月2日までの期間に、9万1387件のジカ熱発症が報告されており、より貧しい北東部では同3万286件でした。これまでに3人が死亡しているといいます。

 ジカ熱を巡っては、ウイルスの体内潜伏期間や性感染リスクのほか、関連する疾患および障害、ウイルスを伝播するネッタイシマカなどの蚊の種類の把握など、わかっていることは極めて少ない状況です。

 最近では、新生児の小頭症や、まひや死亡の原因となるギラン・バレー症候群などの成人の神経障害の原因と断定されています。

 2016年4月30日(土)

 

■髪の毛を作る毛包を大量作製  マウスで成功、横浜国大

 髪の毛を作り出す「毛包」と呼ばれる器官を大量に作り出し、新たに毛を生やすことに横浜国立大学の研究チームがマウスを使った実験で成功しました。将来、人の髪の毛を再生させる治療法につながると注目されます。

 この研究を行ったのは、横浜国立大学の福田淳二准教授らのチーム。マウスの胎児から、毛包を形作る上皮性細胞と間葉性細胞の2種類の細胞を取り出して混ぜ、酸素をよく通すようにした300個以上の小さな穴があるシャーレの中で培養しました。すると数日で穴の中で2種類の細胞が自然に分かれ、実際に体内で形作られるのと同じように、数百個単位の毛包が形成されたということです。

 これを生まれ付き毛の生えないマウスの背中に移植したところ、長さ1センチほどの黒い毛が生えてきて、毛が生え替わるサイクルが働き始めたことも確認できたということです。

 これまで髪の毛を作り出す毛包を1つずつ作る研究はありましたが、毛包を人工的に大量に作り出す仕組みができたのは初めてだということで、今後、人の脱毛症などの治療に使えるように研究を進めていくということです。

 福田准教授は、「今後3年間程度で人の細胞を使った臨床研究を進め、10年後をめどに実際の治療として成り立つようにしたい」と話しています。

 2016年4月30日(土)

 

■日本初の卵巣バンク、全国4施設で構築 がん患者の卵巣組織を凍結保存

 がんの治療で不妊になるのを避けるため、治療前に卵巣の1つを採取し、卵子をつくる卵巣組織を全国4カ所でまとめて凍結保存する「卵巣バンクネットワーク」を構築したと、不妊治療診療所を経営する「レディースクリニック京野」(仙台市)が27日、発表しました。

 卵巣の摘出や、治療後に卵巣組織を患者の残った卵巣に戻すのを担当する13医療機関と提携し、今後さらに増やしていきます。保存施設は、日本産科婦人科学会に認められれば、5月中にも開設したいといいます。

 卵巣凍結は、すぐにがんの治療を始めなければならない患者や、卵子を採取できない子供の患者のために試みられており、将来的に妊孕(にんよう)性を温存する選択肢を提供することが目的となっています。

 妊孕性を温存する方法としては、ほかに卵子凍結や受精卵凍結がありますが、卵巣凍結は未婚者・既婚者ともに可能で、0歳~37歳以下(再移植は45歳未満)と適用年齢が早く、治療期間は2、3日間ですみ、体外受精・顕微授精のほか自然妊娠も可能となります。なお、卵子凍結や受精卵凍結の場合、対象年齢は13歳以上(卵子凍結は未婚者で40歳まで、受精卵凍結は既婚者で45歳まで)、治療期間は2週間必要で、受精・妊娠は体外受精・顕微授精となります。

 その一方で、卵子凍結や受精卵凍結であれば融解後の生存率は90パーセント以上と高いものの、卵巣凍結の場合は50~80パーセントと低くなります。しかし、卵巣凍結であれば多数の卵胞を保存することが可能となるため、生存率の低さをカバーできるといいます。

 レディースクリニック京野によると、現在、卵巣凍結を導入しているのは大学病院など全国15施設。長期間の保存には経費がかかるため、保存を4施設が担うことで、ほかの医療機関も卵巣凍結に取り組むことができ、患者が受けやすくなるとしています。

 保存施設は、京野アートクリニック(宮城県)、京野アートクリニック高輪(東京都)、杉山産婦人科(東京都)、関西地方の1施設(名称は非公表)。卵巣の摘出などを担当するのは公表分では、東邦大学医療センター大森病院(東京都)、聖路加国際病院(東京都)、杉山産婦人科(東京都)、JCHO群馬中央病院(群馬県)、兵庫医科大病院(兵庫県)、空の森クリニック(沖縄県)、エフ.クリニック(青森県)。

 2016年4月29日(金)

 

■携帯電話の事故、5年で239件に上る 重いやけど、住宅火災のケースも

 スマートフォン(スマホ)などの携帯電話や周辺機器が原因で起きた事故が、2010年度からの5年間で計239件に上ることが、独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE)の調べでわかり、28日に発表されました。

 一度曲がったスマホの充電用コネクターを曲げ戻して使用し続けた場合に発煙したり、携帯電話に強い衝撃が加わったことで電池パックの破裂が起こるということで、重いやけどや住宅火災につながったケースもありました。

 機器別では、スマホ本体71件、ACアダプター63件、スマホ以外の携帯電話本体41件、モバイルバッテリー35件の順に多くなりました。

 事故によるけが人は70人、うち5人が重傷、60人が軽傷。2013年10月に北海道の飲食店で起きた事故では、スマホ用のモバイル充電池が破裂し、1人が大やけどを負いました。火災も53件起きました。

 誤った使用や不注意など所有者に問題があって起きた事故は64件で、原因が判明している事故の46パーセントを占めました。充電器と接続する本体コネクター部分に無理な力を加えたり、飲料などをこぼしたりして発熱、発火したケースが目立ちました。

 製品評価技術基盤機構の担当者は、「毎日使う身近な道具だけに故障は起きやすい。特にコネクター周辺に不具合があったらすぐに使用をやめ、販売店に相談してほしい」と呼び掛けています。

 また、電気通信事業者協会は、「カタログに安全に充電できるように説明文を掲載するなど活動を進めていきます」と話しています。

 内閣府の消費動向調査によると、2016年3月現在の携帯電話の世帯別普及率は95・3パーセントで、スマホのみでも67・4パーセントと高い普及率を示しています。また、タブレット型端末の普及率も32・0パーセントに達しています。このように、スマホなどは誰もが日常的に使う機器ですが、誤使用や不注意で思わぬ事故が発生しており、平素から取り扱いに注意して事故を未然に防止することが重要です。

 2016年4月28日(木)

 

■疲労を予測する脳部位を特定 大阪市立大や理研のチーム

 自分が今後、どの程度疲れることになるのかを予測する際、脳の3つの部位がかかわっていることがわかり、大阪市立大や理化学研究所の研究チームが26日、イギリスのサイエンティフィック・リポーツ電子版に発表しました。

 疲れた状態の人ほど、このうち1部位の活動が強まっていました。研究チームは、「疲れやすさとこの部位の活動に何らかの関係がある」とみています。

 疲労の慢性化を防ぐ方法の開発のほか、睡眠障害や強い倦怠感が続く「慢性疲労症候群(CFS)」の原因解明に役立つ可能性があります。

 大阪市立大の石井聡(あきら)・病院講師(脳科学)らは、平均21・9歳の健康な男性16人に、画面に現れる色と文字を瞬時に判断する作業を30分間課し、120回にわたって「1時間後にどの程度疲れるか」を考えてもらいました。

 その間、脳の神経活動の変化を磁場で調べたところ、予測する時には、右脳にある背外側前頭前野(はいがいそくぜんとうぜんや)という部分が活発に働いていたことがわかりました。すでに疲れを強く感じていた人ほど、活発に働いていました。

 国内に約30万人と推計されている慢性疲労症候群の患者は、今回特定された部分の体積が健康な人より少ないことがわかっています。この部分が酷使された結果、縮んでしまったとみられます。

 石井さんは、「脳には将来の疲れを判断する警報装置があった。薬や訓練によって、この部分を制御できれば、疲れの軽減につながるかもしれない」と話しています。

 石井さんは、疲労感には疲れすぎを防ぐために警告を発する役割があるとみて、脳と疲労の関係を研究しています。

 2016年4月27日(水)

 

■蚊の媒介によるジカ感染には14日必要 仏パスツール研究所が発表

 中南米を中心に感染が広がっているジカ熱について、フランスの研究機関が、ウイルスを媒介する蚊の1種で日本などに生息するヒトスジシマカの場合、感染者の血液を吸った後、別の人に感染させるまでには、14日かかると発表し、蚊の早期駆除によって流行を抑えることは可能だという見解を示しました。

 感染症の研究で知られるフランスのパスツール研究所は25日、パリで始まったジカ熱についての国際会議に合わせて最新の研究結果を発表しました。

 それによりますと、ジカ熱のウイルスを媒介する蚊の1種で、日本やヨーロッパ南部にも生息するヒトスジシマカの場合、感染者の血液を吸った後、別の人に感染させるまでには14日かかることを確認したということです。これは、ウイルスがヒトスジシマカの体内で増殖するのに時間がかかるためです。

 日本やヨーロッパでは、ヒトスジシマカがジカ熱のウイルスを媒介する主な蚊になるとみられており、研究の責任者であるファユー研究員は、「感染者が確認されても、さらなる感染拡大を防ぐために周辺の蚊を徹底して駆除する時間は十分にあると考えられる」と指摘しています。

 一方、カリブ海のアメリカ自治領プエルトリコでは、ジカ熱の感染が急増しています。人口約370万人の4分の1以上が1年以内に感染すると推定されており、人の往来が多いアメリカの医療行政当局は、ウイルスを媒介する蚊の発生が増える季節を前に危機感を募らせています。

 アメリカ疾病対策センター(CDC)のフリーデン所長は4月1日、アトランタに全アメリカの衛生当局者ら約300人を集めた「ジカ熱対策サミット」の記者会見で、「アメリカにとってジカ熱との闘いの最前線はプエルトリコだ」と強調しました。

 最悪の流行国ブラジルでは、感染者が昨年だけで推計150万人に上り、小頭症の乳児も増えています。コロンビアでも、1月末までに疑い例を含め2万人以上が感染し、政府は感染者が年内に60万人になる恐れがあるとしています。

 世界保健機関(WHO)は、ジカ熱拡大で今年2月に緊急事態を宣言。今月21日時点で、中南米を中心に42の国・地域で蚊による感染が確認され、アメリカやフランスなど8カ国で性交渉によるとみられる人から人への感染が報告されています。

 2016年4月26日(火)

 

■妊産婦の自殺、10年間で63人 東京23区、産後うつ病などで

 自殺で亡くなった妊産婦が東京23区で2005〜2014年の10年間に計63人に上ることが、東京都監察医務院などの調査でわかりました。妊産婦の自殺数についての本格的な調査結果が明らかになるのは、初めて。

 出産数に占める割合は10万人当たり8・5人となり、お産に伴う出血などによる妊産婦死亡率の約2倍に上ります。妊娠・出産期の死因として自殺が最も多いことになり、メンタルケアの充実などが急がれます。

 日本産科婦人科学会などの調査依頼に基づいて、東京都監察医務院と順天堂大の竹田省教授(産婦人科学)が調査し、23日、東京都内であった同学会で報告しました。

 東京23区の2005〜2014年の自殺者の記録を調べた結果、「妊娠中」の女性23人と「出産後1年未満」の女性40人の計63人が含まれていることが、判明しました。自殺の時期では、「妊娠2カ月」の12人、「出産後4カ月」の9人が多くなっています。

 「出産後1年未満」の6割に、うつ病や統合失調症などの精神疾患の通院歴がありました。うち半数が、産後半年ごろまでに発症するとされる「産後うつ」でした。また、「出産後1年未満」の4割、「妊娠中」の6割には精神疾患での通院歴はありませんでしたが、中には育児に悩むものの受診を拒否していた人もいたといいます。

 2005〜2014年の東京23区内の出産数は計74万951人。東京都が集計した出産数10万人当たりの妊産婦死亡率は4・1人(2005〜2013年平均)で、自殺者は約2倍になります。

 日本産科婦人科学会は来年改定する診療ガイドラインに、妊産婦の精神面をチェックし、産後うつになる危険性の高い女性を早期に見付ける問診などの具体策を盛り込む方針。

 竹田教授は、「自殺がこれほど多いとは驚きだ。全国的な数を把握し、妊娠中や周産期のメンタルヘルス対策を充実させることが重要になる」と話しています。

 国内の妊産婦死亡率は、医療技術の進歩などで年々減少し、ここ10年は出産数10万人当たり3〜4人前後と、50年前の84人から大幅に低く、より安全な出産が可能になりました。しかし、今回の東京都監察医務院などの調査で、これまで集計から漏れていた「自殺」を加えると、妊産婦の死亡率は拡大することになります。

 調査では、出産後に自殺した人の3分の1が産後うつだったことが判明しました。産後うつは、ホルモンバランスの変化や育児の悩みなどから、国内で出産した女性の約10人に1人がなるとされます。また、自殺した妊産婦の約半数に、精神科の通院歴がありました。妊娠中や出産後は社会から孤立しがちな上、胎児や母乳に影響する心配から薬の服用を中断して症状の悪化を招くケースが多いといいます。精神科と産婦人科が連携し薬の処方を調整するなど、適切なフォローがあれば救えた命があった可能性もあります。

 最近では助産師や保健師が妊産婦の精神面の簡単な相談に応じられる体制が整いつつあり、専任職員付きの相談窓口を設置する自治体も増えています。妊産婦の自殺は、国内で年間3万人近くが自ら命を絶つ状況に比べれば少ないものの、残された家族への影響は大きく、お産をより安心・安全にするためメンタルケア充実が不可欠です。

 2016年4月26日(火)

 

■人の受精卵改変を容認、国の調査会 ゲノム編集、基礎研究のみ

 内閣府の有識者でつくる生命倫理専門調査会は22日、「ゲノム編集」という最新の技術を使って、人の受精卵の遺伝子を改変する基礎研究を容認するとの報告書をまとめました。

 遺伝子を改変した受精卵を子宮に戻す臨床利用は、安全性や倫理面で課題が多いとして認めませんでした。ゲノム編集を応用した人の受精卵研究について、国が方針を示したのは今回が初めて。

 生命倫理専門調査会は、生命科学や法律、倫理などの研究者ら計15人で構成。ゲノム編集を巡っては、2015年4月に中国のチームがこの技術を使い、人の受精卵に含まれる血液疾患の原因遺伝子を修復したと発表したため、日本でも昨年10月から検討を重ねてきました。

 報告書では、人の受精卵にゲノム編集を使う基礎研究について、「先天性の難病治療や不妊治療の研究に役立つ可能性がある」と容認する一方、「動物の受精卵を使った研究もあり、人の受精卵でなければできないのかを考える必要がある」と慎重な対応を求めました。

 「目の色の変更や筋肉の増強といった治療以外の目的の場合は倫理的課題が残る」とも指摘しました。また、受精卵の研究への使用期間は、背骨や中枢神経に成長する部分が現れる時期までに限定するとともに、終了後は受精卵を廃棄するよう求めました。

 ゲノム編集で遺伝子を改変した人の受精卵を子宮に戻す臨床利用については、遺伝子配列の狙った場所以外に目的の遺伝子が入り込んだり、改変した遺伝子がほかの遺伝子にどう影響するかわからなかったりするなど課題が多く、報告書では容認しませんでした。

 生命倫理専門調査会の会長の原山優子東北大学名誉教授は、「基礎研究は人受精卵の尊厳を理解した上で判断することが必要だ。今回の報告書は研究者を含め、広く国民の間で、この技術の意味を考えていく方向性をまとめたので、これに準じた形で研究を進めていただきたい」と話しています。

 ゲノム編集を使った人の受精卵の研究を巡っては、中国の研究チームのほか、今年2月にイギリスの研究所が申請した受精卵の発育の研究が、子宮に移植しないことなどを条件にイギリス政府に承認されました。生まれてくる子に人為的に影響を及ぼしたり、次世代にまで影響が続いたりするなど安全性への懸念が多く、米英中の専門家らで作る国際会議が昨年12月、「研究目的でゲノム編集を人の受精卵に使うことを容認するが、子宮に移植する臨床利用は認めない」とする声明を発表しました。

 ゲノム編集は、生物の姿や形、特性などを決めるゲノム(全遺伝情報)を人為的に改変する技術。ゲノムはDNA(デオキシリボ核酸)で構成され、生命活動に必要なタンパク質を作る情報はDNA内の遺伝子が持っています。特殊な物質を使ってDNAの一部を切り取ったり、その部分に新たなDNAを組み込んだりすることで、遺伝子の働きを改変させます。従来の技術より効率よく遺伝子を組み換えられ、低コストで時間も短縮できます。

 2016年4月23日(土)

 

■千葉県の10 歳代男性がジカ熱に感染 オセアニアから帰国、国内で5例目

 オセアニア太平洋諸島に滞在歴があり、発熱や発疹の症状を訴えていた千葉県白井市の10歳代の男性がジカ熱に感染していることが22日、確認されました。中南米を中心に流行が広がった昨年以降、国内で患者が確認されたのは5例目で、千葉県内では初めてです。

 ジカ熱への感染が確認されたのは、千葉県白井市に住む10歳代の男性です。

 千葉県によりますと、男性は昨年1月から1年3カ月ほどオセアニア太平洋諸島に滞在し、20日に成田空港から帰国したということです。発熱や発疹の症状を訴えて21日、白井市内の医療機関を受診し、22日に千葉県衛生研究所で血液を調べたところ、ジカ熱への感染が確認されたということです。

 すでに男性の容体は落ち着いていて、自宅で療養しているということです。

 男性は、渡航先のオセアニア太平洋諸島で感染したとみられます。オセアニア太平洋諸島では、フィジーやニューカレドニア、サモアなどが流行地域とされていますが、滞在した国名は明らかにされていません。

 ジカ熱は蚊が媒介する感染症で、発熱や頭痛、発疹などの症状が1週間ほど続きます。

 千葉県は、国内では現在、蚊の活動期ではないため、感染が拡大する可能性は低いとしています。一方、ジカ熱の流行地域に渡航する場合は蚊に刺されないよう注意するとともに、妊婦は渡航しないように呼び掛けています。

 2016年4月22日(金)

 

■子宮頸がんワクチン、積極的な接種を推奨 小児科学会など17団体

 接種後に原因不明の痛みなどを訴える患者が相次ぎ、積極的な接種の呼び掛けの中止が3年近く続く子宮頸(けい)がんワクチンについて、日本小児科学会など17の団体は患者への診療体制など十分な対策が講じられたとして、対象となる女性には積極的な接種を推奨するとする見解を21日までに、発表しました。

 子宮頸がんワクチンは3年前の2013年4月、小学6年生から高校1年生に相当する女子を対象に法律に基づく定期接種に加えられましたが、接種後に全身の痛みやしびれなどを訴える患者が相次ぎ、厚生労働省は開始から2カ月で接種の積極的な呼び掛けを中止しました。

 日本小児科学会や日本産科婦人科学会など17の団体がまとめた見解では、痛みなどの症状から回復していない人は接種10万回当たり2人の頻度にとどまる一方、オーストラリアやアメリカなど複数の国では子宮頸がんになる前段階の病変が見付かる女性が半分に減ったという報告もあり、ワクチンの有効性は明らかだとしています。

 また、専門の診療体制や相談窓口が全国的に整備され、健康被害を訴える人への救済も始まったことから十分な対策が講じられたとして、対象となる年齢の女性には積極的な接種を推奨するとする見解を発表しました。

 見解をまとめた慶応大学の岩田敏教授は、「このワクチンは現在ほとんど接種されておらず、将来子宮頸がんを減らせなくなるおそれが出てきている。国は一刻も早く判断してほしい」と話しています。

 一方、全国子宮頸がんワクチン被害者連絡会の池田利恵事務局長は、「国が指定した病院を受診しても十分な診療が受けられないという相談はいまだに多く、対策が十分だとは思えない。患者の実態調査も不十分で、現状で接種を勧めても不安に感じる人が多いのではないか」と話しています。

 2016年4月22日(金)

 

■化血研、ワクチンなど全80製品の製造停止 地震で大きな被害

 ワクチン製造の国内大手「化学及(および)血清療法研究所」(化血研、熊本市)の製造設備が熊本県を中心とする一連の地震の影響で損壊し、19日時点で全製品の製造が止まっています。A型肝炎ワクチンなどは、国内シェアを独占しているため、長期化すると影響が広がる可能性があります。

 化血研は、人や動物を対象にしたワクチンや血液製剤など約80製品をつくっています。国の承認と違う方法で血液製剤を製造し、不正を隠すために製造記録を偽造するなど組織的に隠蔽を図っていたとして、来月6日まで業務停止処分を受けていますが、他社の代替品のない計16製品は製造していました。

 厚生労働省によると、需要が高いA型肝炎ワクチンや狂犬病ワクチンなどは、国内の製造業者が化血研のみです。

 化血研は、少なくとも20日まで臨時休業を決めました。熊本市北区や菊池市それに阿蘇市の製造拠点で、配管破損や漏水など生産設備に被害が出ており、担当者は「復旧まで時間がかかる。見通しはまだ立っていない」とし、全国の医療現場への影響については「製品の在庫の量などについて調査を続けていて、対応を急ぎたい。販売を委託する会社や卸売会社に在庫があり、すぐに不足する事態にはならないと考えている」と話しています。

 化血研で医薬品の製造ができなくなっていることについて、厚労省は「現地では職員も被災し、すぐに製造が再開できない状況だと聞いているが、医薬品の在庫はおよそ半年間分あるので医療現場への影響はないと考えている」とし、状況次第では他社に生産を要請するなど対策をとるといいます。

 農林水産省によると、化血研は動物向けワクチンでも、国内で販売する業者約30社の中で2014年の売上高が2位。農水省も製造再開の見通しなどを調べた上で、必要ならば他社に増産や製造の協力を求めるといいます。

 2016年4月20日(水)

 

■脊髄損傷、iPS細胞とロボスーツの併用で治療 慶応大など臨床研究へ

 慶応大とベンチャー企業サイバーダイン(茨城県つくば市)は18日、iPS細胞(人工多能性幹細胞)を利用した再生医療と医療用ロボットスーツHAL(ハル)を併用して、脊髄(せきずい)損傷を治療するための共同研究を始めると発表しました。

 今春から脊髄損傷の患者をロボットスーツHALで治療する臨床研究を始め、それでも十分に機能が回復しない患者にはiPS細胞を使った治療を検討していくといいます。

 計画では、共同研究は2段階。まず、脊髄損傷になって半年以上たった患者など20~30人に対して、1~3カ月間、ロボットスーツHALを装着して歩行訓練を実施。歩行能力が改善したかなどを評価します。

 次に、それでも機能回復が不十分な患者に対して、iPS細胞を使った新しい治療法をロボットスーツHALでの訓練と組み合わせます。

 慶応大は、iPS細胞からつくった神経幹細胞を移植して脊髄損傷を治療する研究を進めており、今回の共同研究とは別に、来年にも臨床研究を申請する予定にしています。

 慶応大の岡野栄之教授は、「マウスやサルの実験では、神経幹細胞の移植とリハビリの併用で脊髄損傷の治療に効果があることを確認している。近い将来、人でもiPS細胞とHALの相乗効果をねらいたい」と話しています。

 HALは、全身の筋力が低下した難病患者が下半身に装着し、歩行機能の改善を図る医療用ロボットで、サイバーダインが開発。筋委縮性側索硬化症(ALS)や筋ジストロフィー、脊髄性筋委縮症など8つの難病を対象にした医療機器として昨年11月、承認されています。

 HALは、患者が装着して足を動かそうとする際に、脳から太ももやひざの皮膚の表面に流れるわずかな電気信号を感知し、モーターで両足に装着した器具を動かすことで、患者の歩行や立ったり座ったりする動作を補助します。

 交通事故などで脊髄損傷になる人は、毎年5000人以上で、10万人以上がまひなどの後遺症を負っています。

 2016年4月19日(火)

 

■デング熱、ジカ熱を防ぐ 東京都が公園などで蚊の採取を開始

 東京都は18日、デングウイルスやジカウイルスなどの有無を調べるため、利用者やイベント開催が多い代々木公園(渋谷区)や上野公園(台東区)など9つの公園、庭園で蚊の捕獲を始めました。

 両ウイルスはともに蚊の媒介で感染が広がり、ジカウイルスは中南米での流行を受け、初めて調べます。今後、調査場所を都内25の公園などに拡大し、月2回程度のペースで11月まで実施します。

 この日は、東京都が委託した業者の係員2人が代々木公園で、木が多く蚊が発生しやすい場所で網を使って蚊を採集するとともに、公園内の側溝に蚊の発生を抑える薬剤も投入しました。採集した蚊は、東京都健康安全研究センターに運び、およそ1週間かけてウイルスの有無を検査し、東京都のホームページで結果を公表することにしています。

 東京都の担当者は、「調査と並行し、公園利用者らに蚊に刺されないよう、虫よけ剤の使用や服装への注意を呼び掛ける」としています。

 東京都内では2014年の夏に、デング熱の国内感染が約70年ぶりに確認され、代々木公園を訪れた人を中心に、150人以上の感染が報告されました。そのため東京都は昨年から蚊の採取場所を増やし、調査の開始時期も早めて、25の公園などで捕獲した約4500匹の蚊を検査し、すべて陰性でした。

 中南米でジカ熱に感染し、日本に帰国した人は今年はすでに4人確認されているということで、東京都環境保健衛生課の木村秀嘉課長は、「今年は、デング熱だけでなくジカ熱の感染者も海外から国内を訪れるケースが増える可能性があり、去年以上に対策を徹底したい」と話しています。

 2016年4月18日(月)

 

■米より先に魚や肉を食べる順番が糖尿病を予防 関西電力医学研究所

 ご飯よりも先に魚や肉を食べる順番が胃の運動を緩やかにし、食後の血糖上昇を改善する仕組みを、関西電力医学研究所(神戸市)が15日までに解明しました。

 関西電力医学研究所の矢部大介副所長らは、この順序で食べるとGLP−1やGIPなどのインクレチンの分泌が促進されることも突き止めており、この食べる順番の科学的根拠を示したことで、糖尿病の予防や治療に役立つ可能性があるとしています。

 すでにヨーロッパの学会誌の電子版に論文が掲載され、専門医や管理栄養士などから反響があったといいます。

 糖尿病の進展や合併症の予防には、食後高血糖の是正が肝要とされます。この食後の血糖値を抑える手法として、近年注目を集めているのが、野菜類→蛋白質中心のおかず→ご飯などの糖質の順番で食べ進める「食べる順番を意識した食事療法」です。

 矢部副所長らは、特に炭水化物の前に蛋白質や脂質を摂取すると、インスリン分泌の促進や血糖を上昇させるグルカゴンの分泌抑制に働く、消化管ホルモンであるGLP−1やGIPなどのインクレチンの分泌が高進する点に着目。ご飯の前に魚料理や肉料理を食べる順番が、食後の血糖値やインクレチン分泌にどういった影響を及ぼすのかを調べました。

 対象は、30~75歳で、2型糖尿病患者12人と健康な人10人。対象者には、(1)魚料理(サバの水煮)の前にご飯を食べる、(2)ご飯の前に魚料理を食べる、(3)ご飯の前に肉料理(牛肉の網焼き)を食べる、と異なる順番で3日間、朝食を食べてもらい、食前および食後4時間の血糖、インスリン、Cーペプチド、グルカゴン、インクレチンの値を測定し、胃排泄能などを検討しました。

 この結果、2型糖尿病患者、健康な人ともに、ご飯の前に魚料理や肉料理を摂取すると、ご飯を先に食べた場合に比べて食後4時間の血糖値の上昇が魚料理では約3割、肉料理では約4割抑えられ、血糖変動が平坦化することがわかりました。

 また、魚料理や肉料理をご飯より先に摂取するとGLP−1の分泌が高進され、胃の働きが緩やかになり、胃で分解されたご飯が小腸に移動して吸収されるまでの胃排泄時間が2倍以上延長することも明らかにされました。

 ただし、肉料理をご飯より先に摂取すると、魚料理を先に摂取した場合に比べてGIPの分泌高進が著しく上昇することも確認されました。

 この点について、矢部副所長は、「EPAやDHAなど多価不飽和脂肪酸の含有量が多い魚とは異なり、肉は飽和脂肪酸や一価不飽和脂肪酸が多く含まれることに起因しており、肉料理の長期的な摂取による肥満リスクの上昇が懸念される」と説明しています。

 矢部副所長によると、この「食べる順番」の工夫は、会席料理で先付け(前菜)に続いて刺身、焼魚、煮魚などの魚料理、最後にご飯や果物を出す方法にみられる古来からのものであり、現代の食生活でもこの考えを取り入れ、最初に野菜、次に魚料理や肉料理、最後にご飯や果物を摂取することが、エネルギー摂取量や栄養バランスに加えて重要だとしています。

 今後、この食べる順番の効果をさらに詳細に検証し、長期的な効果を明らかにする予定だといいます。

 2016年4月17日(日)

 

■ジカウイルス、アフリカで発見以降アジア系統に大きく進化 米中が研究

 蚊が媒介するジカウイルスは、アフリカのウガンダの「ジカの森」にいたアカゲザルから初めて発見された1947年以降、大きな進化を遂げていたとする研究論文が15日、専門誌「セル・ホスト・アンド・マイクローブ」に掲載されました。ジカウイルスが出生異常を起こす能力を獲得した経緯の解明に道を開く可能性がある成果です。

 研究を行ったのは、アメリカのカリフォルニア大学ロサンゼルス校と中国医学科学院、北京協和医院の研究者ら。

 人から採取した30種、蚊から採取した10 種、サルから採取した1種のジカウイルスの株41種を比較したところ、アフリカ系統とアジア系統との間に「過去半世紀でアミノ酸とヌクレオチド配列に著しい違い」が生じていたことがわかったといいます。

 遺伝子的に見ると、人から採取されたジカウイルスは、1968年にナイジェリアで発見されたものよりも、1966年にマレーシアで発見されたものに似ていました。このことは、アジア系統のジカウイルスが進化して現在流行しているウイルスになったことを示唆していると、研究論文は指摘しています。また、2015~2016年に人間から見付かったジカウイルスはいずれも、2013年に仏領ポリネシアで流行したものと最も近い関係にあるとみられるといいます。

 研究チームは、人から採取されたアジア系統のジカウイルスと蚊から採取されたアフリカ系統のジカウイルスでは、ウイルスに含まれる「prM」というタンパク質が大きく異なることも発見しました。

 研究に参加したカリフォルニア大学ロサンゼルス校のジェンホン・チョン教授(微生物学・免疫学・分子遺伝学)は、「ジカウイルスの人間への感染が南北米大陸で拡大した理由の少なくとも一部は、このようなジカウイルスの変化で説明できるだろう」と述べました。

 蚊が媒介するウイルスで、先天異常の小頭症の原因となるものは、これまで知られていませんでした。ジカウイルスが胎児の先天異常を引き起こす理由を正確に明らかにするには、さらなる研究が必要だといいます。

 ジカウイルス感染の中心地となっているブラジルでは、昨年以降に生まれた小頭症の新生児は数千人に上るとみられています。専門家によると、昨年から今年にかけて感染が拡大しているジカウイルスの株は、まだ蚊から分離されるには至っていません。米国の保健衛生当局によると、性交渉でも感染するジカウイルスのワクチン開発は、数年先になると予測されています。

 2016年4月16日(土)

 

■農業は健康のもと、高齢者の医療費で裏付け 早大研究

 早稲田大学持続型食・農・バイオ研究所の堀口健治名誉教授らのグループは、埼玉県本庄市の75歳以上の個人データ5年分を分析し、農業をしている高齢者はそれ以外の人に比べ、2割ほど医療費の支出額が少ないことを突き止めました。

 農業者が高齢でも元気なことを、実際の医療費の比較で確かめました。健康づくりに役立つという農業の機能に、注目が集まりそうです。

 2014年度に本庄市内に住む、75歳以上で10アール以上の農地を耕作する農業者897人が支払った医療費は、平均で73万円。農業者を除いた75歳以上の市民8258人の平均額91万円を2割下回りました。過去5年間でいずれも、農業者の支払った医療費のほうが2〜3割少なく、「農業に従事する高齢者のほうが健康であることが確かめられた」と堀口名誉教授は説明しています。

 「高齢化が日本農業の問題だ」と指摘されることは多いものの、今回の成果は、高齢者が農業を続けることで、医療費削減に結び付く可能性があることを強く示しました。

 堀口名誉教授は、「体を動かすことで、比較的健康を保ちやすいことがうかがえる。農業の働き方と健康との関係を医学的に深くみていくことが大切」と話し、農業の持つ新たな役割を研究、評価するべきだと強調しました。

 農業者の多い府県ほど医療費が少ない傾向にあるなど、統計データから農業者の長寿を推計した研究は過去にもあります。農林水産政策研究所の川崎賢太郎主任研究官は、職業別人口統計から60歳以上の死因を分析し、農業者の割合が高いほど心筋梗塞(こうそく)などによる死亡率が下がることを、明らかにしています。

 しかし、いずれも統計分析にとどまり、状況証拠の域を出ません。個人が支払った医療費はプライバシー保護との関連で研究目的でも利用するのは難しいため、実際に医療費として支払われた金額を基に比較した研究は今回が初めてです。

 調査は、本庄市の農業委員の選挙人名簿から75歳以上の農業者の個人データを抽出。埼玉県後期高齢者医療広域連合が持つ、一人ひとりの医療費と突き合わせて比較することで、実際の医療費比較を行いました。埼玉県が間に入り、プライバシー保護に配慮しました。

 埼玉県の三田一夫保健医療部長は、「農家に元気な人が多いという実感はあったが、ここまで差があるとは思わなかった。農業の何が原因なのか判明すると、健康づくりに拍車を掛けることができる。県内に今回の研究結果を周知し、医療費抑制に役立てたい」と話しています。

 2016年4月16日(土)

 

■人工知能で自閉症を判定 医師の診断と8割一致、東大など

 発達障害の一種「自閉症スペクトラム」を脳活動のパターンから見分ける方法を、東京大学や昭和大学、国際電気通信基礎技術研究所(京都府)の研究チームが、人工知能(AI)を使って開発しました。

 診断の迅速化や、新しい治療薬の開発につながる成果として注目されています。イギリスの科学誌ネイチャーコミュニケーションズ(電子版)に14日、発表しました。

 自閉症やアスペルガー症候群などの自閉症スペクトラムは、ほかの人との円滑なコミュニケーションに難しさを抱えることなどが特徴で、全国におよそ100万人いるとされていますが、人によって症状が異なります。そのため、医師が問診や行動観察を行っても、正確な診断が難しいという課題があります。

 研究チームは、血圧や血糖値などのような客観的な指標を開発するため、自閉症スペクトラムの人74人とそうでない人107人の計181人の安静時の脳活動を10分間、機能的磁気共鳴断層撮影(fMRI)を使って調べました。脳を140カ所の領域に分け、fMRIで得られた各領域のデータについて、領域間ごとの相関関係を独自に開発した人工知能を使って解析。

 その結果、計9730通りの領域ペアのうち、自閉スペクトラムの人は16通りの領域ペアを結ぶ回路が同じタイミングで活動を強めるなど、症状のない人と比べて相関関係が強いことが判明し、16通りの領域ペアのパターンを見れば自閉症スペクトラムが判別できる可能性が示されました。

 実際に16通りの領域ペアの相関を数値化して181人を判定してみると、自閉スペクトラムと医師に診断された人の85パーセントを正確に判定できました。アメリカで公表されているfMRIのデータで検証すると、自閉スペクトラムと診断された人の75パーセントを正確に判定できました。

 国際電気通信基礎技術研究所の川人光男・脳情報通信総合研究所長は、「人工知能を使った指標の開発は精神疾患にも応用することが可能で、脳のどの部分に働きの違いがあるか、一人一人、具体的に特定できるようになるので、それぞれの人に合った非常に的確な診断や治療につなげられる可能性がある」と話しています。

 2016年4月15日(金)

 

■妊娠中のジカ熱感染、小頭症の原因と断定 アメリカの当局が結論

 アメリカの疾病対策センター(CDC)は13日、蚊が媒介するジカウイルスについて、脳の発達に異常が生じる小頭症などの先天異常の原因であると断定したと発表しました。

 この結論は、ジカ熱の流行に伴い新生児の先天異常が急増しているブラジルで行われた一連の研究結果などに基づいたものだといいます。小頭症とジカ熱との関連を巡っては、数カ月にわたって議論が続いてきましたが、結論は出ていませんでした。

 アメリカの医学誌「ニューイングランド医学ジャーナル」に掲載された報告書の中でCDCは、両者の因果関係を示す決定的証拠があるわけではないものの、「最近発表された多数の研究結果で示された証拠と、確立された科学的基準を用いた慎重な評価」に基づき、今回の「妊娠中の感染が小頭症や脳の障害などを持つ赤ちゃんが生まれる原因になっている」という結論に達したとしています。

 CDCのトム・フリーデン所長は、「これまでに蓄積された知見から判断して、ジカ熱と小頭症が関連していることは明らかだ。小頭症以外にも、赤ちゃんにどのような影響があるのか、詳細な調査が必要だ」と述べた上で、「妊娠中の女性は感染しないよう十分に注意してほしい」と呼び掛けています。

 ジカウイルスは1947年、アフリカのウガンダの「ジカの森」にいたアカゲザルから初めて見付かり、1952年に、ウガンダとタンザニアで初めて人の感染が確認されましたが、同ウイルスに関する研究は進んでいませんでした。

 感染すると3日から12日間ほどの潜伏期間の後、38度5分以下の発熱や発疹、結膜炎、筋肉痛、関節痛、倦怠(けんたい)感、頭痛などの症状を引き起こすものの、比較的症状は軽く、多くの場合、2日から1週間程度で症状は治まります。また、感染しても、実際に症状が出る人は4、5人に1人程度と見なされます。

 2016年4月14日(木)

 

■脊髄損傷でまひした手、再び動かす技術を開発 脳の信号を装置で解読

 脊髄(せきずい)を損傷し、手足の動かなくなった患者が頭で思い描いた動きを装置で読み取り、自身の手に電気信号を伝えて作業できるようにすることに世界で初めて成功したと、アメリカのオハイオ州立大などの研究チームが14日付のイギリスの科学誌「ネイチャー」に発表しました。

 これまで、脳の電気信号をもとにロボットアームを動かしたり、パソコンの画面を操作したりする技術は開発されていましたが、患者自身の体を動かす技術は今回が初めてだということで、体がまひして動かせない人を支援する新たな技術として注目を集めています。

 実験に参加した20歳代の男性患者のイアン・バークハートさんは、5本の指や手首を動かすなど6つの動作ができるようになり、15カ月にわたる訓練の末、瓶をつかんで中身を別の容器に移し替える、クレジットカードを財布から取り出す、音楽ゲームでギターを演奏するという複雑な作業をこなしました。電話による記者会見で、「人に頼らず日常生活の動作ができ、希望の光が見えた。実験以外の場でも使いたい」と話しました。

 ただし、装置はバークハートさん専用で、広く使えるようにすることが課題となります。

 通常、脳が手を動かそうと考えると電気信号となって神経細胞を伝わり、脊髄を経由して手の筋肉を動かします。事故などで脊髄を損傷するとそこで信号が途切れ、手足が動かない「四肢まひ」になることがあります。

 研究チームは、脊髄損傷の患者でも脳の電気信号が手に伝わる方法を編み出しました。脳の中で、手を動かそうとする時に活発に活動する部分を特定し、そこから出る電気信号を検出する縦横1・5ミリの小さなセンサーを開発。そして、バークハートさんの脳にそのセンサーを埋め込んだということです。

 センサーが検出した電気信号は、体外のコンピューターが解読し、バークハートさんの腕に取り付けた130個の電極に送られ、筋肉に刺激を与えることで手を動かしました。

 電気信号の解読には人工知能(AI)の「機械学習」という手法を用い、患者がある動作をイメージした場合に、脳からどのような信号が出るかのパターンを繰り返し学び、精度を高めました。

 2016年4月14日(木)

 

■世界初、卵アレルギーの原因遺伝子を持たない鶏が誕生 産総研などが発表

 これまでの遺伝子組み換え技術よりもはるかに正確に生物の遺伝子を操作できる「ゲノム編集」の技術を使って、卵アレルギーの原因となる特定の遺伝子を持たない鶏を誕生させることに、産業技術総合研究所(茨城県つくば市)などの研究チームが世界で初めて成功しました。

 アレルギー原因物質の少ない鶏卵の開発や、受精卵を使って製造するワクチンなどの医薬品の安全性向上などにつながりうる成果といいます。イギリスの科学誌「サイエンティフィック・リポーツ」に6日、掲載されました。

 この研究を行ったのは、産業技術総合研究所と農業・食品産業技術総合研究機構(茨城県つくば市)などの研究チームです。

 ゲノム編集技術は、従来の遺伝子組み換え技術よりも、正確に効率よく遺伝子を改変できます。特に農水畜産物の品種改良分野での期待が大きく、豚や養殖マグロなどで研究が進んでいます。しかし、鶏などは遺伝子改変に適したタイミングで受精卵を操作することが難しく、ゲノム編集技術がほとんど使われてきませんでした。

 研究チームでは、受精卵ではなく産卵2日後の鶏卵から精子の基になる細胞である「始原生殖細胞」を取り出し、ゲノム編集技術で卵アレルギーの原因物質の1つである「オボムコイド」を作り出す遺伝子を取り除きました。

 この細胞をほかの鶏卵に移植し、ふ化させたところ、成長した雄の精子の多くにオボムコイド遺伝子がないことを確認しました。この雄と改変していない雌を交配させ、父親由来のオボムコイド遺伝子のない雄、雌が誕生。それらをさらに交配させ、両親いずれからもこのオボムコイド遺伝子を受け継がない鶏を生み出すことに成功したといいます。

 誕生した鶏は今のところ異常なく成長しており、今後、卵を産めるかどうかや、卵白にオボムコイドが含まれていないかなどを調べるといいます。

 産業技術総合研究所の大石勲総括主幹は、「ほかにもアレルゲンはあり、これで卵アレルギーが一挙に解決するわけではないが、ゲノム編集技術を活用することで、食用卵の安全性だけでなく肉質の改善などさまざまな応用が将来的に期待できる」、「最近では鶏の卵の中で医薬品を作る技術が登場しているが、今回のような技術を使えばアレルギーを起こしにくいワクチンや医薬品を卵を使って作ることが可能になってくると思う」と話

 2016年4月13日(水)

 

■梅毒患者の報告数、昨年上回るペースで増加 東京都が最多

 性感染症の「梅毒」の患者が、現在の方法で統計を取り始めた1999年以降最悪となった昨年を上回るペースで、今年増え続けており、国立感染症研究所が注意を呼び掛けています。

 梅毒は性的な接触などによって起きる細菌性の感染症で、感染すると2〜3週間後からリンパ節炎や皮膚症状が現れます。早期に発見して治療すれば治りますが、治療しないと症状が段階的に進行し、体のまひなどを引き起こしたり、中枢神経が侵されて死に至ることもあります。妊娠している人が梅毒に感染した場合、流産や死産の原因となったり、出生児に重い障害が残るおそれがあります。

 国立感染症研究所によりますと、昨年の患者数は2698人で、現在の方法で統計を取り始めた1999年以降、最も多くなりましたが、今年は4月3日の時点で、すでに883人に上っており、昨年の同じ時期より500人近く多くなっています。

 都道府県別では、東京都が389人と最も多く、次いで大阪府が112人、神奈川県が53人などとなっており、男性では40~44歳の患者が、女性では20~24歳の患者が最も多くなっています。

 梅毒の患者は1948年には22万人近かったのが、治療薬の開発などで激減。1990年代以降は1000人を下回り、ほぼ横ばいが続いていました。しかし、2010年から増加傾向に転じ、特に女性が増えています。胎児が感染する「先天梅毒」の報告も相次いでいます。不特定多数の人との性的な接触が梅毒のリスクを高め、再発するケースもあります。

 国立感染症研究所の砂川富正室長は、「コンドームを適切に使用するなどして感染を防いでほしい。痛みがなくても下半身にしこりがあるなど、疑わしい症状が出たら医療機関を受診することが必要だ」と話しています。

 2016年4月13日(水)

 

■東京都、デング熱防止で蚊の調査を開始 都内の公園、ジカ熱検査も

 デング熱などの感染症の流行を防ぐため、東京都は12日、都内の公園で18日から蚊を捕獲し、ウイルスの保有調査を始めると発表しました。

 期間は11月までで、今年からジカ熱の検査も加えます。

 東京都によると、代々木公園や上野公園など利用者の多い9施設から始め、捕集装置や虫捕り網を使って、デング熱などのウイルスを媒介するヒトスジシマカを採取します。側溝には、幼虫が成長するのを防ぐ薬剤もまきます。

 東京都は例年、6月から公園など16施設で調査をしていましたが、2014年夏にデング熱が流行したため、昨年は調査場所を9カ所増やし時期も早めました。今年も昨年と同様の対策を取ります。

 2016年4月12日(火)

 

■認知症に抗精神病薬を投与、副作用説明し同意は3割 厚労省が調査

 幻覚や妄想などの症状が現れた認知症の高齢者に投与される「抗精神病薬」について、患者や家族に副作用を説明し同意を得ている医師はおよそ30パーセントにとどまっていることが、厚生労働省の研究班の調査でわかりました。

 認知症の症状が軽度から中等度に進行すると、記憶障害や見当識障害などの中核症状から二次的に、BPSD(周辺症状)と呼ばれる幻覚や妄想などの心理症状や徘徊(はいかい)、攻撃的になるなどの症状が出ることがあります。

 この場合、症状を安定させるため抗精神病薬が投与されるケースが少なくありません。しかし、死亡率が高まったり重い副作用が出たりする危険性が指摘されているため、厚生労働省の研究班は薬の使用に関するガイドラインを見直し、基本的にはBPSDの治療に抗精神病薬を使用しないことや、使用する際は患者や家族から同意を得るよう、医師に対し求めています。

 厚労省の研究班は昨年12月、抗精神病薬の使用の実態について調べるため、地域で認知症の診療に携わっている全国のかかりつけ医およそ500人を対象にアンケート調査を行いました。その結果、およそ半数の医師がBPSDを抑えるため抗精神病薬を使っていましたが、患者や家族に副作用を説明し同意を得ている医師はこのうちの28パーセントにとどまっていることがわかりました。

 調査を行った厚労省研究班の代表で順天堂大学の新井平伊教授は、「3割の医師しか患者や家族から同意を得ていないのは問題だ。リスクとベネフィットを判断し同意を得た上で治療に当たることが必要だ」と話しています。

 2016年4月12日(火)

 

■肝臓がん、遺伝子異常で6タイプに分類 異なる生存率

 日本人の肝臓がん患者300人のがん組織のゲノム(全遺伝情報)を解読したところ、ゲノムの異常から6つのタイプに分けられ、生存率が異なることがわかりました。理化学研究所や国立がん研究センター、東京大学などの研究チームが11日付のアメリカの専門誌ネイチャージェネティクスで発表しました。

 日本では、年間約4万人が肝臓がんと診断され、3万人以上が亡くなっています。特に、日本を含むアジアで発症頻度が高く、主な原因は肝炎ウイルスの持続感染で、B型やC肝炎ウイルスの感染に伴う慢性肝炎から、肝硬変を経て、高い確率で肝臓がんを発症します。治療法にはさまざまな方法がありますが、その効果は十分ではなく、ゲノムに基づく発がん分子メカニズムの解明は、がんの診断や予防、治療法開発につながる可能性があります。

 この研究は、2008年に発足した「国際がんゲノムコンソーシアム」と呼ばれる国際共同研究の一環。肝臓がん患者300人のがん組織と血液からDNAを抽出し、次世代シーケンサーと呼ばれる解析装置でゲノムを解析して比較しました。

 1つのがん組織で見付かったゲノムの異常は、平均約1万カ所。肝臓がんの発生にかかわることが知られている遺伝子異常のほか、これまで知られていなかった新しいがん関連遺伝子も10個以上見付かりました。

 がんの進行にかかわる遺伝子異常などを基に6つのタイプに分けることができ、患者の5年生存率をみると0パーセントから85パーセントまでタイプごとに違いがありました。今後、さらに研究を進めると、がんの原因となるウイルス感染やアルコール性肝障害の有無にかかわらず、がんの悪性度を予測できる可能性があるといいます。

 また、がん組織ではB型肝炎ウイルスの遺伝子がDNAに組み込まれているケースのほか、人に感染してもほとんど症状が出ない「アデノ随伴ウイルス」が組み込まれている例も見付かりました。ウイルスが組み込まれた周辺の遺伝子の働きが変わり、がん化にかかわることが示されました。

 国立がん研究センターの柴田龍弘分野長は、「がんになる仕組みが解明されると、新たな治療法や予防法の開発につながる可能性がある」と話しています。

 2016年4月12日(火)

 

■認知症に抗精神病薬を初投与、死亡率が2倍以上に 順天堂大が調査

 認知症に伴う幻覚や妄想などの症状が現れた時に投与される「抗精神病薬」について、初めて投与された高齢者は全く投与されていない人に比べ死亡率が2倍以上高くなったことが、順天堂大学の研究チームの調査でわかりました。研究チームは、「リスクを医療者や家族が把握し慎重に薬を使うことが必要だ」と指摘しています。

 抗精神病薬は、BPSD(周辺症状)と呼ばれる認知症に伴う幻覚などの症状が現れた時に投与されるもので、調査は2011年から2013年にかけて、順天堂大学の研究チームが全国357の医療機関でアルツハイマー型認知症の高齢者合わせて約1万人を対象に行いました。

 調査の開始時点で、すでに抗精神病薬の投与が続けられていたグループの4800人余りと、全く投与されていないグループの4800人余りについて、半年後の死亡率を比較したところ、ほとんど差はありませんでした。

 ところが、調査の期間中に初めて抗精神病薬を投与された85人について、全く投与されていないグループと比べると、半年後の死亡率が2・53倍高くなったことがわかりました。肺炎や心不全で死亡した人が多く、抗精神病薬を服用し始めてから2カ月から半年の間に、死亡率が高くなる傾向がみられたということです。

 研究チームの代表で順天堂大学の新井平伊教授は、調査によって抗精神病薬を使い始める時のコントロールの重要性が明らかになったとした上で、「リスクを医療者や家族が把握し慎重に薬を使うことが必要で、どうしても使わざるを得ない場合は少量で短期間が望ましい」と指摘しています。

 認知症の高齢者への抗精神病薬の投与を巡っては、マスコミが昨年、認知症の専門医を対象に行ったアンケート調査で、寝たきり状態になるなどの重い副作用が出ていたケースがあることがわかっています。アメリカでは、死亡率を高めるとして使用を控えるよう警告が出されており、日本でも厚生労働省の研究班が薬の使用に関するガイドラインを見直し、基本的にはBPSDの治療に抗精神病薬などは使用しないとした上、やむを得ず使用する場合は少量で始め、長期の使用は避けるなど医師に対し慎重な投与を求めています。

 認知症の症状が軽度から中等度に進行すると、記憶障害や見当識障害などの中核症状から二次的に、BPSD(周辺症状)と呼ばれる幻覚や妄想などの心理症状や徘徊(はいかい)、攻撃的になるなどの症状が出ることがあります。

 BPSDは、必要な介護サービスを利用したり、家族の対応の仕方を変えたりすることなどで改善する場合もあります。しかし、介護の現場では、家族などの負担も大きいことから症状を安定させるために抗精神病薬などの精神科の薬が使用されているのが実態です。

 2016年4月11日(月)

 

■ジカ熱感染、脳の成長部分が40パーセント縮小 ブラジルの研究チーム発表

 中南米を中心に感染が広がるジカ熱のウイルスを人のiPS細胞(人工多能性幹細胞)から作った脳の組織に感染させたところ、感染させなかった脳の組織に比べ、成長した部分の大きさが40パーセント小さくなっていたとする研究成果をブラジルの研究チームが発表しました。

 中南米を中心に感染が広がるジカ熱は、妊娠中の感染と頭部が先天的に小さい「小頭症」の新生児との関連が指摘されていますが、詳しいことはまだ明確にされていません。

 ブラジルのリオデジャネイロ連邦大学などの研究チームは、人のiPS細胞から小型の脳の組織を作り出し、ジカ熱のウイルスを感染させてどのような変化が起きるか詳しく調べました。

 その結果、脳の組織がウイルスに感染すると神経細胞がはがれ落ちるなどし、感染していない脳の組織に比べ、11日後の段階で成長した部分の大きさが40パーセント小さくなっていたということです。また、同じようにiPS細胞から脳の神経細胞の元になる細胞を作り出し、ウイルスを感染させたところ、数日で神経細胞の大半が死滅したということです。

 研究チームでは、ジカ熱のウイルスは人の脳が成長する段階で神経の組織が形づくられるのを妨げているとみており、ブラジルでのジカ熱の流行と小頭症の子供が増えていることとの関連性の証明を強化するものだとしています。

 2016年4月11日(月)

 

■抗菌薬の重複処方7・4パーセント 京大、124万人レセプト調査

 抗菌薬(抗生物質)を複数の医療機関から重複処方されている患者の割合は、抗菌薬を処方された患者全体の7・4パーセントであることが、京都大医学研究科の中山健夫教授と高橋由光講師らの調査でわかりました。

 高橋講師は、「医療機関同士の情報共有が不足しているのではないか。重複処方がすべて不適切とはいい切れないが、減らせる処方はあるはず」としています。

 不必要な薬剤使用の防止が課題となる中、薬剤全般の重複処方に関する大規模で包括的な研究は初めて。医療政策学の国際専門誌に発表しました。

 研究チームは、各企業でつくる健康保険組合の加入者ら124万人のレセプト(診療報酬明細書)から、2012年12月の1カ月間に加入者が外来で処方された全薬剤を分析しました。

 その結果、全身用抗菌薬やせき止め薬が、処方された薬の上位の二つを占め、重複処方されている割合もそれぞれ7・4パーセント、8・5パーセントと、上位二つであることを突き止めました。65歳以上では薬剤全体で、重複処方の割合が低いこともわかりました。

 転売目的の重複処方が問題となった向精神薬についても調査し、10医療機関以上から向精神薬を処方されている患者が2人いることが判明しました。ただし、多数の医療機関から処方を受けた理由はわからないといいます。

 高橋講師は、「抗菌薬やせき止め薬は医師が簡単に処方する傾向が推測できる」と指摘しています。

 近年、安易な抗菌薬投与が薬剤耐性菌を生じさせるとして問題となっており、厚生労働省も今月、2020年までに抗菌薬の使用を3分の2に減らす目標を盛り込んだ行動計画を明らかにしています。国が薬剤耐性菌に関する行動計画を作るのは初めてで、世界保健機関(WHO)が各国に計画策定を求めていました。

 2016年4月10日(日)

 

■ブタ細胞、人への異種移植を容認へ 1型糖尿病の患者が対象

 動物の臓器や細胞を人に移植する「異種移植」について、厚生労働省の研究班は、これまで事実上、移植を禁じていた指針を見直します。国内の研究グループは数年後にも、1型糖尿病の患者にブタ細胞の移植を計画。患者にとっては、インスリン注射の重い負担を減らせる可能性があります。

 異種移植は、人からの提供不足を解決する手段として世界で研究されています。臓器の大きさや管理のしやすさから、ブタが主な対象で、近年は細胞を使って強い拒絶反応を避ける技術が一部で実用化し、海外では人の治療に応用され始めています。

 国内では、厚労省の「異種移植の臨床研究の実施に関する安全性確保についての研究班」が2001年度に作った指針で、ブタが進化する過程で遺伝子に組み込まれたウイルスを「人への感染の危険性が排除されるべき病原体」としています。取り除くことが難しいため、これまで移植が実施されたことはありませんでした。

 しかし、海外ではこのウイルスが人やサルに感染した報告がないことなどから、危険性の評価を見直し、新しい指針では移植後30年間経過を観察することを条件に、認めることにしました。5月にも厚労省の部会に報告され、事実上の解禁となります。

 国内初の臨床研究として、国立国際医療研究センター研究所(東京都新宿区)などは、1型糖尿病の患者に、インスリンを分泌するブタの膵島(すいとう)細胞を移植する計画を進めています。

 拒絶反応を避けるため、人の免疫細胞や抗体を通さない特殊な膜でブタの細胞を包み、患者の皮下に移植。実験用のブタを生産している企業と協力して、ほぼ無菌のブタを供給する仕組み作りも進めます。研究チームは2~3年後にも、安全性や動物の細胞を人に使う倫理面について第三者委員会に諮った上で、患者に移植する方針です。

 国際医療研究センター研究所の霜田雅之・膵島移植プロジェクト研究長は、「異種移植の実現で、膵島の不足を解消したい」と話しています。

 異種移植を巡っては、ニュージーランドのベンチャー企業が、ブタの膵島細胞をカプセルに包んだ薬を開発。同国やアルゼンチンなどの1型糖尿病の患者計24人に移植され、効果を確認。脳細胞を使ったパーキンソン病治療の研究も進めています。

 異種移植を長年研究している大塚製薬工場の松本慎一特別顧問は、「国際学会でもここ数年でルール作りの議論が活発になり、環境が整ってきた」と話しています。

 1型糖尿病は、膵臓にある膵島(ランゲルハンス島)細胞が壊れて血糖を安定させるインスリンを分泌できなくなる病気。国内の年間発症率は、10万人当たり1~2人と推計されています。生涯にわたってインスリンを注射する必要があり、膵島を移植する方法もあるものの、人からの提供は極度に不足しています。

 2016年4月10日(日)

 

■発熱で体のまひ、全国で80人以上に増加 子供の9割に後遺症、エンテロウイルスか

 昨年の夏以降、熱やせきなどの症状の後に原因不明の体のまひを訴える子供が全国各地で相次ぎ、一部から「エンテロウイルスD68」が検出された問題で、子供の9割に今も手や足がまひする後遺症が残っていることが、厚生労働省の研究班の調査でわかりました。

 まひした腕に神経を移植するなどして症状を改善させようという取り組みも一部で始まっていますが、患者や家族には治療に関する情報が十分知らされておらず、専門家は、国や学会は情報提供の仕組みを作るなど対応してほしいと指摘しています。

 この問題は、昨年8月以降、東京都や神奈川県、大阪府、福岡県など全国20以上の都府県で、5歳以下の子供を中心に20歳代から50歳代の人も含めて80人以上が発熱やせきなどの症状の後に原因不明の体のまひを訴えたもので、一部からエンテロウイルスD68が検出され、その関連が疑われています。

 厚労省の研究班が、子供たちのその後の状況について調査したところ、調査が終わった46人のうち治っていたのは2人だけで、9割に当たる41人で手や足がまひする後遺症が残っていました。後遺症が残った41人はいずれも15歳未満で、両方の足がまひした子供が17人、左右どちらかの腕のまひが12人、両手両足のすべてがまひした子どもも4人以上いました。

 こうした子供のうち、腕がまひしたケースについて、体のほかの部位にある神経を移植する手術を行い、症状を改善させようという治療が一部で始まっています。過去に別のウイルスに感染し、腕がまひした子供が回復したケースがあって効果が期待されていますが、この治療法は発症から1年をすぎると効果が出にくくなるということです。

 厚労省の研究班のメンバーで、福岡市立こども病院の吉良龍太郎医師は、可能性のある治療法について十分知らされていない患者や家族が多いとした上で、「まひの子供にどういった治療法があるのか、リハビリなども含め広く情報提供できる仕組みを国や学会が作るべきだ。また、次にエンテロウイルスの流行が起きたらどう対応するのか、夏が来る前に健康被害を少しでも減らす対策を立てておく必要がある」と話しています。

 エンテロウイルスD68は通常、夏から秋にかけて流行し、主に発熱やせきなど呼吸器の症状が出るのが特徴で、重症化すると呼吸困難に陥ることもあります。

 アメリカでは、一昨年2014年に大きな流行が起きて多数の重症患者が報告されたほか、同じ時期に体のまひを訴える子供が相次いで報告されました。インフルエンザのウイルスと同じように、せきやくしゃみなどの飛沫にウイルスが含まれ、口や鼻などの粘膜から体内に侵入すると考えられています。

 特効薬やワクチンはありませんが、予防のためには手洗いやマスクの着用などのせきエチケットなどが有効だということです。

 2016年4月9日(土)

 

■予期せぬ患者死亡、188件 医療事故調査制度の開始半年で

 患者の予期せぬ死亡事故があった医療機関に院内調査と第三者機関への報告を義務付ける「医療事故調査制度」で、昨年10月の制度開始から今年3月末までの半年間の事故報告件数は188件だったと、第三者機関「医療事故調査・支援センター」を運営する「日本医療安全調査機構」(東京都)が8日発表しました。

 厚生労働省が制度開始前に試算していた「年間最大2000件」を大幅に下回っており、機構は調査に消極的な医療機関があることや、制度が浸透していないことが背景にあるとみています。

 医療事故調査制度は全国約18万カ所の病院や診療所、助産所を対象とし、医療行為で患者の予期せぬ死亡事故が起きた時の報告を求めています。制度の開始前から国の関係機関が収集している医療事故報告や厚労省研究班の病院調査などを基に、届け出が必要な死亡事故は年間1300〜2000件と想定していました。半年だと650〜1000件に相当し、今年3月末までの届け出は3分の1から5分の1にとどまります。

 月別の届け出数は、今年3月が48件で最多でした。診療科別で多いのは、内科と外科の各29件(15パーセント)、整形外科20件(11パーセント)、産婦人科15件(8パーセント)の順。地域別では、関東・信越で82件、近畿で28件、九州で27件の届け出がありましたが、東北は5件しかありませんでした。

 院内調査が終わって結果報告書がまとまったのは、50件。遺族側は院内報告に納得できなければ機構に再調査を依頼することができ、これまでに2件が再調査となりました。これも「死亡事故件数の4分の1に当たる年間300件」との想定を大きく下回っています。

 機構は医療機関側から事前相談を受け付けており、1148件のうち267件が「医療事故として報告すべきかどうか」という内容でした。院内調査の手法の相談も273件あり、判断や手順についての現場の戸惑いがうかがえます。

 同制度の導入時には、国が院内調査に外部委員の参画を求めたことなどに、医療界の一部から「当事者が本当のことをいえなくなる」など反発の声が出ました。

 機構の木村壮介常務理事は、「届け出の少なさは『医療過誤だと認めることになる』とためらっているケースがあるからではないか。医療機関にアドバイスする役割を担う各地の医師会などが届け出に消極的な地域は、件数が少ない可能性がある。過誤の有無を問う制度ではないので、普及に努めたい」と話しています。

 医療事故調査制度は、医療の安全確保と事故の再発防止を目的に導入されました。民事訴訟などの紛争や刑事司法の介入を抑制する効果も、期待されています。厚生労働省は2008年、第三者機関が調査主体となる制度案をまとめましたが、関係者の同意が得られず撤回。改めての議論で、事故があった医療機関の院内調査を中心とする制度としてスタートしました。医療機関には対象事故の届け出義務があるが、怠った場合の罰則はありません。

 2016年4月9日(土)

 

■化血研、アステラス製薬と事業譲渡交渉 ワクチン製造など

 血液製剤を不正製造していたとして、厚生労働省から業務停止処分を受けている一般財団法人化学及(および)血清療法研究所(化血研、熊本市)が8日、国内の大手製薬会社のアステラス製薬(東京都)と事業譲渡に向けた交渉を進めていることを明らかにしました。

 化血研はおよそ40年にわたって、国の承認とは異なる方法で血液製剤を製造し、不正を隠すために組織的に隠蔽を図っていたとして、医薬品医療機器法(旧薬事法)に基づき、厚労省から5月6日まで110日間の業務停止命令を受けています。

 関係者によると、化血研とアステラス製薬は、業務停止処分が終了する時期までに、譲渡する事業内容や買収額などについて合意できるよう詰めの折衝を重ねているものの、なお曲折も予想されます。

 化血研は、血液製剤と人体用、動物用ワクチン事業をすべて譲渡する方向で交渉を継続。ただ、アステラス製薬は、動物用ワクチンの事業継承に難色を示しているとみられます。

 従業員約1900人の雇用は確保する方向で検討が進んでいる模様で、化血研は事業譲渡後も、一般財団法人として組織を存続したい意向。アステラス製薬は現在、化血研が製造するワクチンと血液製剤の多くの販売を担当しています。

 血液製剤やワクチンの不正製造を巡って、化血研は昨年12月、宮本誠二理事長を含む全理事9人が辞任・降格。理事長と副理事長、常務理事を外部から招く組織見直し案を公表しました。

 しかし、塩崎恭久厚生労働相が「業務停止処分の終了後、化血研という名称で製造を続けることはない」とし、組織形態の変更を含め体制を抜本的に見直すよう要求。これを受け、化血研がアステラス製薬との交渉を進めています。

 また、化血研は、アステラス製薬以外の大手製薬会社とも交渉を行っているということです。

 化血研は、「組織形態の変更に当たってはさまざまなことを検討しているが、現時点では明らかにできない」としています。

 化血研は熊本医科大(現熊本大医学部)を発祥とし、1945年に熊本市で設立。熊本県内有数の企業で2015年3月期の売上高は474億8000万円。このうち血液製剤事業が133億5000万円、ワクチン事業が280億5000万円、動物用医薬品(ワクチン、診断薬)事業が40億2000万円を占めます。

 2016年4月8日(金)

 

■世界の成人糖尿病患者、4億2000万人 1980年から4倍近くに増加

 世界保健機関(WHO)は6日、糖尿病を患う人が2014年に世界で4億2200万人に上ったとの報告書を発表しました。

 肥満者の増加に伴い1980年の1億800万人から34年間で4倍近くに増え、18歳以上の成人人口に占める比率も4・7パーセントから8・5パーセントへと上昇しました。近年は、所得水準の高い国よりも、低所得や中間所得の国での速いペースでの増加が顕著になっています。

 WHOによる糖尿病に関する初めての世界規模の報告書によると、2012年には糖尿病で150万人が死亡し、さらに220万人が高血糖による循環器疾患などで死去しました。合計370万人のうち、43パーセントは70歳未満で亡くなりました。安価なインスリンが行き渡りにくい事情もあり、低所得や中間所得の国のほうが若く死亡する傾向があるといいます。

 WHOは、糖尿病患者の急増の原因について過体重や肥満、運動不足にあるとし、糖尿病などによる疾患が患者やその家族に加えて、各国の医療保険制度や経済全体にとっても大きな負担になっていると指摘。

 糖尿病の予防と治療を強化するには、健康に有益な環境を営み、運動不足や不健康な食事などの糖尿病罹患要素を減らすとともに、国の能力を強化し、糖尿病患者がその体調に適する必要な治療と正しい対処を得られるよう助けるべきだと勧告しています。

 2016年4月7日(木)

 

■末期がん、在宅でも入院と生存期間ほぼ同じ 筑波大などが調査

 がんの最期を自宅で迎える場合と病院で迎える場合とでは、生存期間にほとんど違いがないか、むしろ自宅のほうがやや長い傾向があるとする調査結果を、筑波大と神戸大の研究チームが6日までにまとめ、論文をアメリカがん協会の学術誌に発表しました。

 末期のがん患者が在宅医療を選んでも、寿命が縮む可能性は低いことを示す結果となりました。

 調査は2012年9月~2014年4月、専門的な緩和ケアを行う国内の58医療機関で、在宅の緩和ケアを受けたり、緩和ケア病棟に入院した20歳以上の進行がんの患者計2069人を対象に分析。最期を迎えた場所が自宅か病院かによって生存期間に違いがあるかを調べました。

 対象の医療機関での初回診察時に余命が「2週間未満」と見込まれたグループでみると、診察から死亡するまでの平均生存期間が、自宅の人では13日だったのに対し、病院の人では9日。「2カ月未満」ではそれぞれ36日と29日で、どちらのグループも自宅のほうが長くなりました。一方、比較的状態がよい「2カ月以上」ではそれぞれ59日と62日で、有意差が認められなかったといいます。

 筑波大の浜野淳講師(総合診療)は、「断定はできないが、十分な在宅ケアがあれば、退院しても生存期間が短くなることはないといえそうだ」と話しています。

 2016年4月6日(水)

 

■乳製品、認知機能低下を抑制か 長寿医療研究センターが解析

 牛乳や乳製品の摂取は認知機能の低下を抑制しそうだとの研究結果を、国立長寿医療研究センターが明らかにしました。

 2012年までに高齢者330人を平均8年間追跡。食習慣や3日間の食事記録などを基に、牛乳や乳製品の摂取と、認知機能検査の結果との関連を解析しました。

 その結果、女性では摂取が増えると認知機能低下のリスクが20パーセント小さくなりました。牛乳や乳製品が含む短鎖脂肪酸(酪酸やヘキサン酸など)または中鎖脂肪酸の摂取量との関係でも、男女問わず摂取が増えるとリスクが14パーセントまたは16パーセント低下する傾向が示されたといいます。

 同調査は、1997年から進めている老化・老年病予防を目的とした長期縦断疫学研究の一環。研究費の一部に、一般社団法人Jミルクの研究委託費を充てました。

 2016年4月6日(水)

 

■ジカ熱、国内感染確率は約17パーセント ただし五輪の影響ない場合

 中南米を中心に流行が広がるジカ熱のウイルスが国境を越えて広まり、各国で蚊を媒介とした国内感染を起こす確率を北海道大学などの研究チームが計算し、日本で今年中に国内感染が起きる確率はおよそ17パーセントだとする結果を発表しました。論文が5日付で、イギリスの科学誌に掲載されました。

 この研究を行ったのは、北海道大学の西浦博教授(理論疫学)などの研究チームです。

 研究チームではまず、ジカ熱の患者数が最も多いブラジルを起点に航空機での移動距離が短い地域ほどウイルスが持ち込まれるリスクが高いことに着目し、世界190以上の国と地域についてウイルスが侵入する確率を計算しました。その上で、同じように蚊を媒介として広まるデング熱の流行が過去に起きたかなどのデータを基に、各国でジカ熱のウイルスが蚊を媒介として広がる国内感染が起きる確率を計算しました。

 その結果、ブラジルからの距離が比較的近くデング熱の流行も起きているアメリカでは、今年中に国内感染が起きる確率は78・2パーセント、フランスでは41・5パーセント、中国では40・7パーセント、台湾では36・7パーセント、オーストラリアでは20・0パーセントなどとなったということです。

 一昨年デング熱の感染が広がった日本は、16・6パーセントでした。8月に開かれるリオデジャネイロオリンピック、9月に開かれるパラリンピックに伴う人の移動は考慮しておらず、考慮すればリスクは高まる可能性があるといいます。

 西浦教授は、「今回の結果はオリンピックによる今後の人の移動の増加は考慮していないが、日本のリスクがほかの地域と比べて特段高いわけではない。必要以上に不安にならず、蚊の育つ水だまりを作らないなど適切な対策を実施してほしい」と話しています。

 2016年4月5日(火)

 

■子供の心臓病治療の細胞シート、保険適用へ治験 大阪大学

 重い心臓病を患った子供の足から採取した筋肉の元となる細胞を培養し、シート状にして心臓に張り付けて治療する再生医療について、大阪大学の医療チームは、健康保険の適用を目指し安全性などを確かめる治験を始めることになりました。

 治験を行うのは、大阪大学大学院医学系研究科の澤芳樹教授(心臓血管外科)などの医療チームです。

 医療チームでは、重い心臓病の患者の足から筋肉の元になる筋芽細胞を採取して培養し、直径約5センチのシート状にしたものを心臓の表面に張り付けて機能を回復させる再生医療の開発を進めており、すでに大人の患者では昨年、薬事承認を受け、来月から保険診療として行われることになっています。

 今回は拡張型心筋症という病気の子供を対象に、数年後の健康保険の適用を目指して医師主導の治験を始めることになりました。

 医療チームによりますと、子供の患者についても一昨年から臨床研究が行われており、学校に通えなくなった女児が歩いても息切れしないほどに、心臓の機能が改善したということです。

 治験では今年の夏以降、3年間で18歳以下の3人の患者に治療を行い、安全性と効果を確かめることにしています。

 澤教授は、「症状が重くなるのを防いだり、心臓移植を待つ期間を延ばしたりできると期待される。国内では子供が心臓移植を受けられる機会が少ないので、治療法として確立したい」と話しています。

 拡張型心筋症は、心臓が筋肉の機能低下によって拡大し、心不全を引き起こす疾患。重症化すると、心臓移植が必要となります。国内では年に約50人の子供の重症患者が新たに出ますが、国内では臓器提供の件数が少なく、海外で手術を受ける人も多いとされます。

 2016年4月5日(火)

 

■梅干しを毎日食べた8割、インフルや風邪を発症せず うめ振興協議会がモニター調査

 和歌山県田辺市とJA紀南でつくる「紀州田辺うめ振興協議会」は、今冬に毎日梅干しを1粒食べたモニターのうち、80パーセントがインフルエンザや風邪を発症しなかったと発表しました。梅干しを食べなかった前年同期の発症なしは、55パーセントでした。

 モニターは、梅干しを食べる習慣がなかった101人を公募しました。うち有効回答64人。1月上旬~3月上旬に60日間、梅干しを1日に1粒食べてもらい、風邪の症状の有無や体調の変化を調査しました。

 期間中にインフルエンザの症状があったのは3パーセント、38度以上の発熱が3パーセント、38度以下の発熱が14パーセント、全く症状がなかったのが80パーセントでした。前年同期は38度以下の発熱が31パーセントいましたが、半分以上減りました。

 調査開始30日後~60日後までで体調に変化がなかったのは、2パーセントのみ。疲労回復効果が20パーセント、胃腸の調子改善とダイエット効果がいずれも15パーセント、肌の調子改善が14パーセント、食欲改善が13パーセントありました。

 モニターの大半が和歌山県外在住で、年代別では30歳代が35パーセントで最多でした。モニターを切っ掛けに梅干しを食べる習慣ができたのは86パーセントで、「梅干しがこんなにおいしいと思わなかった」「梅干しの選び方も重要だと気付いた」などの声がありました。

 紀州田辺うめ振興協議会は、「風邪によい効果を与える成分がある可能性が高い。田辺の梅干しのよさをPRする機会にもなった」と話しています。

 梅干しに含まれるポリフェノールの一種「梅リグナン」は、抗酸化作用に優れており、体の酸化の原因となる活性酸素も抑え、インフルエンザや胃潰瘍、胃がんにも効果があるとされています。

 2016年4月4日(月)

 

■ミカン食べるほど糖尿病のリスクが減少 農研機構など確認

 ミカンをたくさん食べる人は生活習慣病の発症リスクが低くなることを確認したとする研究結果を、農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)と浜松医科大などの研究チームが23日、発表しました。

 10年間に及ぶ1000人規模の追跡調査で、ミカンに含まれる成分の血中濃度が高い人ほど、糖尿病や非アルコール性肝機能異常症、脂質代謝異常症などになりにくいことがわかったといいます。

 研究チームは、温州ミカンの産地である浜松市の三ケ日町地域で住民健診時に被験者を募り、30~70歳の男女1073人を対象に栄養疫学調査を実施。2003年から10年間の健康状態の変化と、ミカンに多く含まれる橙(だいだい)色の色素「βクリプトキサンチン」の血中濃度との関係を統計的に分析しました。

 その結果、毎日3、4個食べるレベルの血中濃度(3・5μM)の人は、毎日は食べないレベルの血中濃度(0・5μM)の人と比べて、糖尿病の発症リスクが57パーセント低くなりました。非アルコール性肝機能異常症の発症リスクは49パーセント、脂質代謝異常症の発症リスクも33パーセント低くなりました。

 また、βクリプトキサンチンをマウスに投与したところ、肝臓の炎症抑制や、脂肪細胞でのエネルギー消費促進などの働きがあることがわかったといいます。

 農研機構の杉浦実上席研究員は、「果物は糖分が多いため糖尿病によくないと思われがちだが、危険因子ではなく予防因子であることを明らかにできた」と話しています。

 2016年4月3日(日)

 

■iPS細胞から皮膚全体を再生、世界初 理研などの研究チーム

 マウスのiPS細胞(人工多能性幹細胞)から、毛を生み出す「毛包」や皮脂腺などを含む皮膚組織を丸ごと再生することに世界で初めて成功したと、理化学研究所(理研)や北里大、オーガンテクノロジーズ社などの研究チームが発表しました。

 論文が1日付で、アメリカの科学誌サイエンス・アドバンシーズに掲載されました。

 将来、人のiPS細胞から皮膚組織ができれば、重いやけどや負傷、脱毛症の再生医療に使えると期待されます。

 理研の辻孝チームリーダーらは、大半の臓器が胎児期に上皮細胞と間葉細胞の相互作用でできることに着目し、試験管のコラーゲンゲルの中で再現する「器官原基法」を2007年に発表。これまでにマウス胎児の細胞から歯や涙腺、唾液腺を再生し、成体マウスや人間の毛包幹細胞から毛髪の再生に成功しました。

 辻リーダーらは今回、マウスのiPS細胞を使用。1週間培養すると外側に上皮細胞、内側に間葉細胞がある球状の固まり「胚様体」ができました。コラーゲンゲルに胚様体を約30個入れ、生きたマウスの腎臓皮膜下に移植すると1カ月後、移植した物の内部に皮膚組織ができました。

 その部分を別の毛が生えない免疫不全マウスの背中に移植した結果、血管や神経が接続して定着しました。毛が自然に生え替わり、少なくとも3カ月はがんになりませんでした。

 辻リーダーは、「iPS細胞の可能性として複数の組織や器官を一体で丸ごと作れることがわかったのは大きな進歩だ。重いやけどで皮膚を失った患者の治療に使えるように、人のiPS細胞を使って試験管の中で皮膚全体を作り上げる研究を進めたい」と話しています。

 試験管の中で培養できる組織の大きさは現在、約5ミリが限界。血管を作るなどして組織内部に酸素と栄養を供給する技術の開発が課題となります。

 2016年4月2日(土)

 

■iPS細胞から移植可能な心臓の筋肉細胞を開発 慶大の研究グループ

 iPS細胞(人工多能性幹細胞)から人に移植が可能な純度の高い心臓の筋肉細胞を高純度で作り出すことに慶応大学医学部の研究グループが成功したと1日、米科学誌セル・メタボリズムに発表しました。

 研究グループは、患者への移植手術を安全に行えるめどがついたとして、臨床研究の実施に向けた大学内での手続きを来年にも始めることを明らかにしました。

 この研究を行ったのは、慶応大学医学部の福田恵一教授(循環器内科)らの研究グループ。

 研究グループでは、これまでiPS細胞から90パーセント以上の割合で心臓の筋肉になる心筋細胞を作り出すことに成功していましたが、これらの心筋細胞を大量にブタに移植すると、ごくわずかに残った未分化なiPS細胞が腫瘍を作ることがありました。

 このため研究グループは、特定のアミノ酸を除いた培養液を使ってiPS細胞から心筋細胞を作り出したところ、ごくわずかに残っていた未分化なiPS細胞は死滅し、安全性の高い心筋細胞を作り出すことに成功したということです。

 研究グループは、重い心臓病の患者を対象にした臨床研究を安全に行える水準に達したとしており、来年にも再生医療の安全性を調べる大学内の委員会に、臨床研究の申請をするといいます。

 心臓は心筋を作っている心筋細胞が収縮して拍動することで、全身に血液を送り出します。心筋細胞が病気で失われると、心筋の収縮する力が低くなってしまいます。

 福田教授は、「人への応用が可能なレベルの心筋細胞を効率よく作ることができる技術で、非常に大きなステップだ。心臓移植以外には治療法のない重い心不全の患者を救う治療を実現したい」と話しています。

 計画では、人のiPS細胞から心筋細胞を作って大量に培養。手術で、心臓の心筋内に心筋細胞が約1000個集まった直径150マイクロメートルの塊を多数注射して、移植します。

 2016年4月1日(金)

 

■医師不足、2033年までに解消へ 厚労省が推計、人口減も影響

 厚生労働省は31日、医療従事者の需給に関する検討会医師需給分科会に対し、2040年までの医師の需給推計を示しました。遅くとも2033年ごろまでには医師の供給が需要を上回り、都市部に医師が集中し、地方や、産科など一部の診療科では深刻な医師不足が続く状態が解消される見通し。

 需給が均衡した後は、「将来人口の減少により、医師の需要は減少すると考えられる」としています。

 厚労省の需給推計では、医師の需要が最も大きくなる「上位推計」、需要が最小となる「下位推計」、中間指標の「中位推計」の3つのパターンを提示。中位推計では2024年ごろに需要と供給が約30万人で均衡状態となり、上位推計では2033年ごろまでに約32万人で均衡状態になるとしました。

 厚労省は2040年の推計も提示し、需要は上位推計で31万4900人、供給は2016年度の医学部定員である9262人が継続した場合、33万3192人としました。2040年の時点で、1万8000人超の医師が余剰となるといった見通しを示しました。

 2040年の上位推計の内訳は、入院医療(一般病床・療養病床)が20万800人で最も多く、以下は外来医療(9万800人)、精神病床の入院医療(6000人)、医育機関などの研究分野(5600人)、介護老人保健施設(4200人)、産業医業務(2740人)、行政機関等(2170人)、製薬業界(1570人)などの順でした。

 こうした推計に対し、分科会の委員からは「これから25年先の推計を現時点でするのは相当無理がある」といった指摘のほかに、医師の労働環境を考えた上で需給の推計を行うことを求める意見も出ました。また、「医師が増えても、このままでは都市部への偏在は改善されない」、「特定の地域で働くことを条件に地元の学生を優先的に入学させる地域枠をさらに活用すべきだ」といった意見も出ました。

 分科会は今後、医師不足の解消に向けた対策を議論することにしています。

 2016年3月31日(木)

 

■子宮頸がんワクチン、副作用訴え初の提訴へ 「薬害問題」と主張

 子宮頸がんワクチンを接種した後に原因不明の体の痛みなどを訴える患者たちが東京都内で記者会見を開き、国と製薬会社に原因の究明と損害賠償を求める訴えを初めて起こす方針を明らかにしました。

 子宮頸がんワクチンを巡っては、女子中学生や高校生を中心に接種後、全身の痛みやしびれ、認知機能の低下などの副作用を訴える患者が相次ぎ、国が接種の積極的な呼び掛けを2年半以上中止する異例の状態が続いています。

 30日は女子高校生などの17~21歳の患者4人と弁護団が東京都港区で記者会見を開き、国とワクチンを製造する製薬会社2社に対して、原因の究明と損害賠償を求める訴えを初めて起こす方針を明らかにしました。

 「国が被害を拡大させた薬害問題だ」と主張する弁護団によると、4人を含め12人がすでに提訴を決めており、今後、全国でさらに参加を呼び掛け、今年7月にも東京、大阪、名古屋、福岡の4つの地方裁判所で一斉に提訴するということです。

 記者会見で、山梨県に住む高校2年生の望月瑠菜さんは、「頭痛や脱力感などの症状に悩まされ、やりたいことを諦めなければならないのが一番つらいです。国と製薬会社には責任を取ってほしいです」と訴えました。

 ワクチンは、国内で2009年12月に販売開始。厚生労働省によりますと、2014年11月までに国内で子宮頸がんワクチンを接種した人は推計でおよそ338万人に上り、このうち2584人が副作用を訴え、少なくとも186人は症状が回復していないということです。

 厚労省は、「現段階では内容がわからないのでコメントを控えたい」としています。

 ワクチンを製造販売するグラクソ・スミスクラインは、「訴訟の内容がわからない段階でコメントは控えたいと思います」と話しています。また、MSDは、「HPVワクチン(子宮頸がん予防ワクチン)は日本および世界各国で承認を受けています。提訴が行われた場合、法廷で証拠を提出する考えです」などとするコメントを発表しました。

 2016年3月31日(木)

 

■20年前のO157集団食中毒、後遺症で女性が死亡 大阪府堺市の25歳女性

 20年前の1996年、大阪府堺市で発生した学校給食を原因とする病原性大腸菌O157の集団食中毒で、感染した当時小学1年生だった女性が後遺症により、昨年、死亡していたことがわかりました。

 堺市では、1996年7月、市立小学校の給食を食べた児童などおよそ9500人がO157に集団感染し、当時1年生と5年生それに6年生だった女の子3人が、1996年7月から1997年2月にかけて死亡しました。

 これについて堺市は30日、記者会見を開き、O157の後遺症で治療を受けていた当時小学1年生だった同市北区の女性が、昨年10月11日、脳出血により25歳で死亡していたことを明らかにしました。堺市によりますと、女性はO157に感染した時に溶血性尿毒症症候群(HUS)を発症し、その後遺症の腎血管性高血圧が脳出血の原因だということです。

 また、20年前の堺市のO157の後遺症による死亡は初めてだということです。同じ後遺症の腎血管性高血圧を患っている人は、ほかに女性1人がいて、経過観察中だということです。

 堺市教育委員会によると、治療が必要と過去に診断されたなどとして堺市が追加検診を実施しているのは2014年度末の時点で、この女性を含め20人。残る19人のうち少なくとも4人は、慢性腎炎などで現在も治療や経過観察が必要な状態といいます。

 堺市は、今後、女性の遺族と誠意を持って慰謝料などの補償手続きを進めるとしています。堺市の竹山修身市長は、「命の尊さを改めて心に刻み、安全管理と危機管理の徹底に、一層努力したい」とコメントしています。

 病原性大腸菌O157の問題に詳しく、亡くなった女性の治療を担当していた大阪労災病院小児科の川村尚久部長は、「O157に感染し、症状が悪化すると腎臓の血管が細く固くなり、高血圧の症状が続くことがある。これが長年におよぶと脳出血を起こすこともある。この女性の場合、感染してから8年ほどでして高血圧になり、高い時には、血圧が200を超えることもあった」と話しています。

 国立感染症研究所によりますと、国内では年間3000人から4000人がO157など腸管出血性大腸菌に感染し、このうち80人から100人が急性腎不全などを引き起こす溶血性尿毒症症候群(HUS)になるなど重症化しているということです。

 2016年3月31日(木)

 

■WHO、エボラ出血熱の緊急事態を解除 約1年8カ月ぶり

 世界保健機関(WHO)は29日、西アフリカで過去最悪の規模で感染が拡大したエボラ出血熱の流行は国際的な緊急事態ではなくなったと発表し、現時点でみられる孤立したケースも封じ込めることができるとの見解を示しました。

 WHOのマーガレット・チャン事務局長は記者団に、「西アフリカのエボラ出血熱流行は、もはや国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態ではなくなった」と述べ、2014年8月8日に宣言された緊急事態の約1年8カ月ぶりの解除を正式に発表しました。

 2013年12月に初めて感染が確認された直近のエボラ出血熱の流行では、主にギニア、リベリア、シエラレオネで1万1300人以上が死亡。死者の数は、過去最多となりました。

 しかし、WHOによりますと、ギニアでは感染が次々と広がる事態は4カ月以上にわたって確認されていないほか、ほかの2つの国でも一定期間、新たな感染は確認されていません。

 チャン事務局長は、「国際的に拡散するリスクは低くなった。各国は当面、新たなウイルスの出現に対し迅速に対応できるようになっている」と述べ、「ギニア、リベリア、シエラレオネの3カ国に対して、各国が行っている渡航や貿易などの制限を速やかに解除すべきだ」と指摘しました。

 その一方で、西アフリカの「生態系」にはまだウイルスが残っていると警告し、新たな発症への迅速な対応を含め、警戒が決定的に重要であることを強調しました。

 チャン事務局長は今後について、エボラワクチンの早期開発と、遠隔・農村地帯で簡単に使用できる検査キットなど、診断検査の改善へさらなる努力を呼び掛けました。また、西アフリカ諸国を含む、エボラ出血熱流行に最も弱い国への財政支援が必要とも指摘しています。

 2016年3月30日(水)

 

■思春期・若年成人の白血病の原因となる新たながん遺伝子発見 東大、治療薬開発に期待

 思春期・若年成人といわれる15~39歳に最も多いがんの一つ「急性リンパ性白血病」の原因となる新しいがん遺伝子を、東京大学の間野博行教授(細胞情報学)らのチームが見付けました。

 この病気の大半を占める型では、19種類のがん遺伝子(全体の約65パーセント)を特定できたといい、新たな診断や治療薬の開発が期待されます。

 29日付でイギリスの科学誌ネイチャー・ジェネティクス(電子版)に掲載されました。

 間野教授らは、思春期・若年成人の代表的ながんで、9割以上が原因不明とされるB細胞性の急性リンパ性白血病に着目。名古屋大病院などの患者73人の細胞をゲノム(全遺伝情報)を速く解読できる「次世代シーケンサー」と呼ばれる装置で解析しました。

 その結果、健常者では発現せず、顔面肩甲上腕型筋ジストロフィーという遺伝性の特定の病気で細胞死を誘導する特定の遺伝子「DUX(ダックス)4」が、別の遺伝子「IGH」と融合すると、がん化することがわかりました。この特定の遺伝子DUX4とがんとのかかわりは知られていませんでしたが、マウスの実験でも確認されたといいます。

 この特定の遺伝子DUX4のほか、18種類の融合遺伝子ががん化することが確認できました。こうしたがん遺伝子の働きを阻害する薬を開発すれば、効果的な治療薬になると考えられており、間野教授は「診断では1年後の実用化、治療では数年後の臨床試験を目指したい」と話しています。

 思春期・若年成人は他の世代と比べ、がん全体の5年生存率の改善がほとんどなく、「忘れられたがんの世代」と呼ばれます。成人での年間発症率が10万人に1人とされる急性リンパ性白血病のほか、脳腫瘍、肉腫のがんが多いとされます。

 2016年3月29日(火)

 

■人工知能が医師の診療を支援 自治医科大、新年度にも運用試験

 人工知能(AI)が医師の診療を支援するシステムを開発したと、自治医科大(栃木県下野市)と医療機器メーカーなど5社が28日、発表しました。

 患者の症状などを入力すると、人工知能は考えられる病名とその確率を計算します。新年度にも自治医大病院などで運用試験を始める予定。

 自治医大によると、これまでも人工知能が一つの病気についての治療法を見付け出す試みはあるものの、患者の症状や検査結果などから、複数の病気を提示する仕組みは世界でも珍しいといいます。

 システムは主に、ロボットも活用して電子カルテに入っている多数の患者の診療データなどを集約したビッグデータの医療データバンクと、それを使って個々の患者の病気の候補を挙げる人工知能からなります。

 患者は診察時に自分のIDカードをかざした後、症状や発症時期などをたずねる「予診票」を紙ではなく、受付役のロボットの指示で画面に入力。過去の診察結果や服用中の薬などとともに電子カルテに表示される仕組みで、医師は問診で症状をさらに追加していきます。

 それらの情報を受けた「ホワイト・ジャック」と名付けた人工知能は、医療データバンクをもとに、考えられる病名とその確率、必要な検査などを提示。さらに詳しい症状を医師が足すと、再度、病名を提示し、確率も計算し直します。可能性がある病気に対し、専門医がこれまで処方してきた薬の割合も伝え、最終的にそれらの情報から医師が診断します。

 例えば、「2日前から頭痛と微熱がある」と訴えて来院した患者の場合、人工知能は最初、片頭痛の可能性が高いという結果を示すものの、体の症状をより詳しく入力していくと、髄膜炎の可能性があることを提示します。

 すでに、医療データバンクには協力が得られた群馬県と熊本県の病院で収集された過去6年間分の診療情報8000万件や医学論文が登録され、今後さらに、各地の医療機関などと協力し、診療情報のほか、介護や生活の状況も充実させていくといいます。

 システムは自治医大のほか、創薬支援などをしている会社「LSIメディエンス」や医療機器会社「東芝メディカルシステムズ」などと開発しました。これを使えば、医師は見落としてはならない病気や希少疾患に気付くのを助けてもらえます。若手の医師にとっては、経験不足を補うことができる可能性があります。

 自治医大の石川鎮清(しずきよ)教授(総合診療)は、「人工知能が病名を挙げることで、うっかり見逃してしまうことを防げるという支援の役割が大きい。また、人工知能の支援によって全国どこでも標準的な医療を受けられるようになる」と話しています。

 2016年3月29日(火)

 

■出産後しばらくして新生児が脳性まひに 5年間で188人

 出産直後には異常がなかったのに、しばらくして脳性まひになったという新生児が、2015年までの5年間に全国で188人に上ることが28日、日本医療機能評価機構(東京都)の専門家で作る委員会の調査で初めてわかりました。

 母親と一緒に病室にいる時に異常を起こしたケースもあり、委員会では安全を確保するためのガイドラインを関連する学会に作成するよう要望しました。

 この調査は、新生児が出産時に重い脳性まひになった場合に補償金を支払う「産科医療補償制度」で再発防止策を検討している委員会が行ったもの。

 2015年までの5年間に生まれ、その後、脳性まひとなった793人の新生児を詳しく調べたところ、出産直後には異常がみられなかったのに、出産から5分以上が経過して異常が現れ、重い脳性まひになったという新生児が、全国で188人に上ることがわかりました。また、このうち18人は、母親が抱っこして一緒に病室にいる「早期母子接触」中に異常が起きていました。

 早期母子接触は母子の心身安定につながるといった利点も指摘されていますが、生後25分の新生児に帽子をかぶせブランケットを掛けた状態で母親が抱っこしていたところ、30分後に心肺停止が確認され、低酸素性虚血性脳症を発症して脳性まひになった事例などがありました。委員会はこの事例の原因について、「特定できないが、誤嚥で気道がふさがれたり、呼吸中枢が未熟だったりしたことも考えられる」と説明しています。

 このため委員会では医療機関に対して、新生児の体温や皮膚の色などで異常に気付けるよう、事前に母親に説明しておくことなどを提言した上で、関係する学会に対して、新生児の呼吸状態をモニターで監視するなど、安全を確保するためのガイドラインを作成するよう要望しました。

 再発防止委員会の委員長の池ノ上克宮崎大学学長は、「異常が現れるのが出産後しばらくたってからというケースがこれだけあると初めてわかり、驚いている。原因をさらに詳しく分析し、学会などでガイドラインの作成に当たってほしい」と話しています。

 2016年3月29日(火)

 

■配偶者を失うと脳卒中リスク1・3倍に 生活変化への目配りが必要

 離婚や死別で配偶者を失うと脳卒中になる可能性が約1・3倍高まるとする疫学調査結果を、大阪大や国立がん研究センターなどの研究チームが28日までに、米専門誌電子版に発表しました。

 配偶者の喪失などにより生活環境が変わってしまった人に対する健康への目配りが必要としています。

 研究チームは、岩手や秋田など8県に住み、1990年か1993年に配偶者と同居していた当時40歳から69歳の男女約5万人を平均15年間追跡、離婚や死別などによる婚姻状況の変化と脳卒中発症との関連を調べました。

 追跡期間中に、2134人が脳卒中を発症。配偶者のいる人と比べると、離婚や死別した人は男女合わせて脳卒中のリスクが約1・3倍になりました。特に男性の場合は、脳卒中のリスクが約1・5倍になりました。

 研究チームは、「配偶者を失うと飲酒量が増えたり、生活を楽しめなくなったりする傾向にあり、脳卒中のリスクを上昇させているのではないか」と分析しています。

 2016年3月29日(火)

 

■脳性まひ再発防止のための調査データに誤り 日本医療機能評価機構

 出産時に子供が重い脳性まひになった母親を対象にした調査で、人工的に子宮を収縮させる「子宮収縮薬」の使用量が、学会の指針を超えていた割合を日本医療機能評価機構が間違って少なく発表していたことがわかりました。

 専門家は、「この薬の適切な使用は脳性まひの再発防止の最重要テーマの一つで、データに誤りがあったのは残念だ」と話しています。

 人工的に子宮を収縮させる子宮収縮薬は、少量でも陣痛が強くなりすぎ、新生児が低酸素状態になる場合があります。

 産科医療補償制度を運営する日本医療機能評価機構は、出産時に子供が重い脳性まひになった母親を対象にした調査で、この薬の使用量が学会の定める指針を超えていた回数について昨年、報告書をまとめ、全体のおよそ3割としていました。

 ところが、集計の際に入力ミスがあり、実際には全体の半数に当たる5割で薬の使用量が学会の指針を超えていたということです。

 産科医療補償制度の再発防止委員会の勝村久司委員は、「子宮収縮薬の適切な使用は、脳性まひの再発防止の最重要テーマの一つで、データに誤りがあったことは残念だ。また長年にわたる注意喚起にもかかわらず実際には5割もの逸脱があり、ショックを受けている。これまで以上の注意喚起や指導が必要だと思う」と話しています。

 日本医療機能評価機構は、「チェック体制を強化し、再発防止に努めてまいります」とコメントしています。

 2016年3月28日(月)

 

■チリ本土で初、性交渉によるジカウイルス感染者を確認

 チリ保健省は26日、同国本土で初めて性交渉によるジカウイルス感染者が発生したと発表しました。胎児の先天異常との関連が疑われるジカウイルスは蚊が媒介して感染することが多いものの、チリ本土にはこの種の蚊は生息していないとされています。

 保健省によると、性交渉によりジカウイルスに感染したのは46歳の女性。感染源の男性は、ハイチでジカウイルスに感染していたといいます。

 保健省は声明で、「これは、ジカウイルスを媒介するネッタイシマカの存在が認められていないチリ本土で初めて発生した性交渉による感染例だ」と述べ、「チリではこれまでに外国で感染したジカ熱患者を10人確認しており、うち8人は2016年に確認したもの」と付け加えました。

 同国では今月初旬、外国でジカウイルスに感染した妊婦の例が報告されていましたが、この妊婦は健康な男児を出産しました。

 ネッタイシマカはチリ本土には生息していないものの、同国領土である太平洋沖のイースター島で生息が確認されています。イースター島では、中南米を中心に流行が広がった2015年以前の2014年に、ジカウイルス感染者が確認されていました。

 中南米で感染が拡大しているジカウイルスに妊婦が感染すると、脳が発達せず頭部が異常に小さい状態で新生児が生まれる小頭症という深刻な先天異常を引き起こす恐れがあるとみられています。

 世界保健機関(WHO)は、ジカウイルスと小頭症発生の関連について緊急事態を宣言しています。

 2016年3月27日(日)

 

■ジカ熱感染の女性、2カ月は妊娠避けるべき アメリカ疾病対策センター

 アメリカ疾病対策センター(CDC)は25日、中南米で感染が広がるジカ熱について、発症したと診断された女性は、少なくとも2カ月は妊娠を避けるよう求める指針を新たに発表しました。

 同じく発症した男性に対しては、6カ月間はコンドームを付けない性行為をしないよう求めています。快復後もウイルスが血液や精液に残留することを考慮した措置といいます。

 CDCによると、流行地域への渡航や感染者との性交渉などで感染が疑われる男女に対しても、症状がなくても感染した疑いのある日から2カ月は妊娠を避けるよう求めています。ジカ熱の感染が拡大する中、健康的な妊娠や出産のため、CDCは暫定的な指針を見直しました。

 推奨される待機期間は、妊娠を望まない男女間の性交渉でも同じだといいます。

 また、流行地域に住む男女に対しては、妊娠中に感染した場合のリスクなどについて、医療関係者がよく説明するよう勧めています。

 流行地域のブラジルでは、ジカ熱に感染した妊婦から脳の発達が不十分な小頭症の子供が生まれる例が目立って増えています。詳しい原因は解明されていませんが、ウイルス感染との関連が強く疑われています。

 2016年3月27日(日)

 

■ジカウイルス、2013年にはブラジルに流入 拡大は国際イベントが影響か

 中南米を中心に広がっているジカ熱について、ブラジルの保健当局はウイルスがブラジルに持ち込まれたのは、これまでの想定よりも1年ほど早い2013年で、ジカ熱の流行地からブラジルへの渡航者が増加したことでリスクが高まったと発表し、今年8月5日のリオデジャネイロオリンピックの開催が近付く中、感染の拡大防止に全力を挙げています。

 ブラジル保健省の研究機関は24日、ジカウイルスがブラジルなど中南米に持ち込まれた経路を調べようと、イギリスの大学などと行った最新の研究成果をアメリカの科学雑誌「サイエンス」で発表しました。

 それによりますと、ジカ熱の発症者7人から採取したウイルスの遺伝子を解析したところ、ウイルスがブラジルに持ち込まれたのは、これまでの想定よりも1年ほど早い、2013年5月から12月の間とみられるということです。この年の6月に開かれたサッカーコンフェデレーションズカップなどスポーツの国際的なイベントの前後に、当時のジカ熱の流行地だったフランス領ポリネシアやタイなどからの渡航者が増えた時期と重なっていました。

 その上で、昨年5月にジカ熱が初めて報告されるまで時間がかかった理由として、デング熱などほかの似た感染症に紛れ、気付かなかったと分析しています。

 2013年は、年の始めと終わりを比べると当時のジカ熱の流行地からブラジルに入国した人の数が1・5倍に増えたこともわかり、人の移動量の増加が、ウイルスが持ち込まれるリスクを高めたとしています。

 これについて感染症の問題に詳しい川崎市健康安全研究所の岡部信彦所長は、「大規模な人の移動はウイルスが持ち込まれるリスクを高めると考えられる。リオデジャネイロオリンピックに向けて、日本からも多くの人が流行地へ行くと思うので、蚊に刺されない対策を徹底することが必要だ」と話しています。

 一方、ブラジル保健省は24日、リオデジャネイロオリンピックの大会期間中、ジカ熱感染予防のためのスマートフォン(多機能携帯電話)向けアプリを提供すると発表しました。

 アプリは、ジカ熱感染予防のための情報を提供するほか、利用者の健康状態について質問し、必要な場合には全地球測位システム(GPS)を用いて付近の薬局や病院を紹介。5月にリリースされる予定で、英語、フランス語、スペイン語、アラビア語、中国語、ロシア語、ポルトガル語で提供されます。

 アプリは診断のほか、オリンピックをテーマにしたビデオゲームの形式で、クイズ問題も提供するといいます。

 2016年3月26日(土)

 

■妊娠17週目ごろのジカ熱感染に小頭症のリスク 小頭症の新生児パナマでも確認

 中南米を中心に感染が広がるジカ熱について、妊娠17週目ごろの妊婦がこの病気にかかることと、小頭症の子供が生まれることとの間に強い関係性がみられるとする研究成果をブラジルなどの研究チームが発表しました。

 日本の専門家は、「これまでは妊娠初期の感染がリスクだといわれていたが、それ以降も注意が必要な可能性があることを示す重要な知見の1つだ」と指摘しています。

 ブラジルとアメリカなどの研究チームは今年1月までの3カ月間にブラジルで報告された小頭症が疑われる新生児1118人分のデータを元に、妊婦のジカ熱の発症と小頭症の新生児との間にどのような関係性があるのか数理モデルを使って分析しました。

 その結果、妊婦が妊娠17週目ごろにジカ熱にかかることと、小頭症の新生児が生まれることとの間に強い関係性のあることがわかったということです。

 数理モデルを使った感染症の分析に詳しい東京大学の西浦博准教授は、「これまでは妊娠初期に感染することが小頭症のリスクを高めるとされてきたが、それ以降でも感染には十分な注意が必要な可能性があることを示す重要な知見の1つだ。この結果からも妊婦のリスクは高いので流行地へは行くべきでないと考える」と指摘しています。

 一方、世界保健機関(WHO)は、中南米を中心に感染が拡大しているジカ熱について、ブラジル以外で初めてとなる中米のパナマで、ジカ熱との関連が疑われる先天的に頭部が小さい小頭症の新生児が確認されたことを明らかにしました。

 WHOは中南米を中心に感染が広がっているジカ熱について24日、最新のデータを発表し、中米のパナマで、ジカ熱との関連が疑われる小頭症の新生児が確認されたことを明らかにしました。中南米でジカ熱との関連が疑われる小頭症の新生児が確認されたのは、ブラジル以外ではパナマが初めてです。

 WHOなどによりますと、パナマで報告された新生児は生後まもなく亡くなり、調べたところ、ジカウイルスへの感染が確認されました。

 ジカウイルスへの感染と小頭症との関連は、まだ明確になっていませんが、WHOのチャン事務局長は22日の会見で「知れば知るほど、状況が悪くみえる。もっと早く理解を深めなければならない」と述べ、早期の解明と適切な治療法や予防の開発を急ぐ方針です。

 WHOによりますと、ジカ熱の広がりが確認されたのは、これまでに中南米のほか、太平洋の国々やアジアやアフリカなど、合わせて52の国や地域に上っています。

 2016年3月26日(土)

 

■愛知県の40歳代女性がジカ熱感染 国内4例目、ブラジル以外の中南米に滞在歴

 中南米に滞在歴があり発疹などの症状を訴えていた愛知県の女性が、ジカ熱に感染していることが確認されました。中南米を中心に流行が広がった昨年以降、国内で患者が確認されたのは4例目で、厚生労働省は現段階では国内で感染が拡大するリスクは極めて低いとして冷静に対応するよう呼び掛けています。

 ジカ熱への感染が確認されたのは愛知県に住む40歳代の女性で、発疹や37・9度の発熱、関節痛、結膜炎などの症状を訴えて、23日、県内の医療機関を受診しました。

 厚労省によりますと、女性は今月中旬まで2週間程度、ブラジル以外の中南米の流行地域に滞在しており、今月20日に帰国、国立感染症研究所で女性の尿などを調べたところ、24日に感染が確認されたということです。

 中南米を中心に流行が広がった昨年5月以降、国内でジカ熱の患者が確認されたのは、4例目です。国内でジカ熱の患者は2013年に初めて確認されており、それ以降では7例目です。

 ジカ熱は蚊が媒介する感染症で、発熱や頭痛、発疹などの症状が1週間ほど続きます。女性は現地で蚊に刺されたと話しており、現在は熱が下がり容体は安定、自宅で療養しているということです。

 厚労省は、「現在、国内は蚊の活動期ではないため感染が拡大するリスクは極めて低く、冷静に対応してほしい」とし、「妊婦は流行地域への渡航を控えるとともに、性交渉による感染リスクも指摘されているので流行地域から帰国した男性で妊娠中のパートナーがいる場合はコンドームを使用してほしい」と呼び掛けています。

 2016年3月25日(金)

 

■バランスのよい食事で、脳血管疾患ならリスク2割減 大規模調査で裏付け

 バランスのよい食事を取る人は、悪い人に比べて脳の病気で亡くなるリスクが2割下がるとの調査結果を国立がん研究センターと国立国際医療研究センターの研究チームがまとめ、イギリスの医学誌に23日発表しました。

 バランスを取りながら、魚や肉、大豆などの主菜を食べる人ほど、リスクを下げる傾向が高かったといいます。

 10都府県の40~69歳の男女約7万9600人を平均で約15年間追跡し、その間に死亡した人と食事のバランスとの関連を調べました。魚や肉を食べる量が多いほど脳の病気のリスクが下がることは国内外の論文で示されていましたが、その結果を大規模調査でも裏付ける形となりました。

 過去1年間の食事について、約150の質問に回答してもらい、食事のバランスがどれだけ取れているかを点数化。「主食(ご飯、パン、麺)」「副菜(野菜、キノコ、芋、海藻料理)」「主菜(肉、魚、卵、大豆料理)」「牛乳・乳製品」「果物」など7項目に分け、摂取量に応じて点数を付けました。最高は各10点で、70点が満点となります。

 平均点は47・4点で、点数ごとに4つのグループに分類。最も点数の低い食事バランスの悪いグループ(平均34・2点)を1とした場合、最も点数の高いグループ(同60・3点)は脳梗塞(こうそく)や脳出血など脳血管の病気で亡くなるリスクが0・78でした。循環器の病気で亡くなるリスクは0・74で、がんなども含めた病気全体で亡くなるリスクは0・85でした。

 7項目ごとに分析したところ、「主菜」の点数が高い人ほど脳血管の病気の死亡リスクが低く、野菜などの「副菜」や「果物」の点数が高い人ほど、循環器の病気の死亡リスクが低くなりました。

 解析をした国立国際医療研究センターの黒谷佳代・上級研究員(栄養疫学)は、「(2005年に厚生労働省などがつくった)国の食事バランスガイドを参考にして、不足しがちな野菜や果物を積極的に取り、肉などは適切な量を取るなどバランスのよい食生活を心掛けてほしい」と話しています。

 食事バランスガイドで示す料理の分量(1日分)は、主食(ご飯、パン、麺)…ご飯中盛り4杯程度、副菜(野菜、キノコ、芋、海藻料理)…野菜料理5皿程度、主菜(肉、魚、卵、大豆料理)…3皿程度、牛乳・乳製品…牛乳なら1本程度、果物…ミカンなら2個程度。

 2016年3月23日(水)

 

■神奈川の女性が国内3例目のジカ熱感染 韓国でも初のジカ熱感染を確認

 ブラジルに滞在歴があり、発疹などの症状を訴えていた神奈川県の女性が、ジカ熱に感染していることが確認されました。中南米を中心に流行が広がった昨年以降、国内で患者が確認されたのは3例目で、厚生労働省は、現段階では国内で感染が拡大するリスクは極めて低いとして、冷静に対応するよう呼び掛けています。

 蚊が媒介するジカ熱への感染が確認されたのは、神奈川県に住む女性で、発疹や関節の痛みなどの症状を訴えて、今月15日に県内の医療機関を受診しました。厚労省によりますと、女性は今月上旬まで3週間程度ブラジルに滞在していたということで、22日に国立感染症研究所で女性の尿などを調べたところ、感染が確認されたということです。女性の症状は快方に向かい、容体は安定しています。

 女性はブラジルで蚊に刺されたと話しているということで、厚労省は感染経路を調べるとともに、帰国後にどこに滞在したかについても聞き取りを行って、蚊が発生する可能性がある場所の調査や駆除を行うことにしています。

 厚労省は、「現在、国内は蚊の活動期ではないため、感染が拡大するリスクは極めて低く、冷静に対応してほしい」とした上で、「妊婦は流行地域への渡航を控えるとともに、性交渉による感染リスクも指摘されているので、流行地域から帰国した男性で妊娠中のパートナーがいる場合はコンドームを使用してほしい」と呼び掛けています。

 一方、韓国の保健福祉省は、中南米を中心に感染が広がっているジカ熱に、ブラジルに滞在歴のある43歳の韓国人の男性が感染していることを確認したと明らかにした。韓国でジカ熱の患者が確認されたのは、これが初めてです。

 韓国南部クァンヤン(光陽)市に住む男性は、仕事で2月17日から3月9日にかけてブラジルに滞在し、3月11日に韓国に帰国した後、16日以降に発熱や筋肉痛、発疹の症状を訴えたため病院で検査した結果、22日朝、感染が確認されました。

 男性はブラジルで蚊に刺されたと話しているということで、保健福祉省は、「隔離の必要はないが我が国で最初のケースなので病院に入院してもらい観察している。男性は回復に向かっている」としています。

 その上で、韓国では今、蚊の活動期でないことなどから国内で感染が広がるおそれはないとして、冷静に対応するよう呼び掛けたほか、全国の自治体に対して蚊の幼虫の駆除を指示したと述べました。

 韓国では昨年、中東呼吸器症候群(MERS)が流行して感染した38人が死亡し、外国からの観光客が減少するなど経済的にも打撃を受けただけに、韓国政府はジカ熱の感染が広がらないよう警戒を強めています。

 2016年3月23日(水)

 

■磁石を使ったひざの軟骨治療、効果を確認 広島大研究チーム

 スポーツなどで傷んだひざの軟骨を治すため、磁石を使って幹細胞を患部に集める臨床研究について、広島大の研究チームは18日、患者の一部で効果を確認したと、大阪市で開かれている日本再生医療学会で発表しました。

 効果を確認したのは、昨年2月に治療を受けた広島県内の女子高生で、テニスを続けるうちに右膝の軟骨が欠損していました。約1年たった時点で、痛みや動きにくいなどの症状はほぼ消失したといいます。画像診断で、軟骨と見られる組織が患部に定着していることも確認できました。

 ひざの軟骨の治療で、患者自身の幹細胞を患部に入れて軟骨の再生を促す方法は、患部の位置によって手術が難しい場合がありました。

 越智光夫教授(整形外科学)らの研究チームは、幹細胞に鉄の粒子を加え、体外から磁石を使って患部に導く臨床研究を昨年から開始。まず、さまざまな組織になる幹細胞を本人の骨髄から採取して培養し、磁気共鳴画像装置(MRI)用の造影剤として使われる鉄の粒子を混ぜて、幹細胞の内部に鉄の粒子を取り込ませました。この幹細胞を右膝の関節に注射し、体外から約10分間当てた強力な磁石の力で軟骨の欠損部に集めました。鉄の粒子は2週間ほどで、体外に排出されたといいます。

 この臨床研究は、スポーツなどによる若者の軟骨損傷を主な対象とし、これまで5人が治療を受けました。

 長期的な安全性を確かめられれば、有用な治療法になると期待されています。

 軟骨は骨に加わる衝撃を吸収する働きがあり、損傷すると痛みが出ます。軟骨の修復力は弱く、いったん損傷すると元の状態に戻りにくいとされています。

 越智教授は、「人工関節ではなく、自分の組織で歩きたいという人は多い。まずは安全性を確保し、治療の普及を目指したい」と話しています。

 2016年3月22日(火)

 

■有効なデング熱ワクチン、開発進む アメリカで研究

 現在試験段階にあるデング熱ワクチンが、初期臨床試験で100パーセントの有効性を示したとの研究結果が16日、アメリカで発表されました。この成果で、ジカ熱に対するワクチン開発のペースが加速する可能性もあるといいます。

 ジカウイルスと同じフラビウイルス属に分類されるデングウイルスは、蚊が媒介するものとしては世界で最も広範囲に影響を及ぼしており、世界120カ国以上で約3億9000万人が毎年感染し、年間200万人あまりがデング出血熱を発症しています。

 デング出血熱は、激しい頭痛、目の奥の痛み、発疹、関節や筋肉や骨の痛み、血液成分の血管からの漏出などの症状を伴う場合があります。軽い症状を伴うがケースが大半ながら、毎年2万5000人あまりが、デング出血熱で死亡しています。

 研究を主導したアメリカのジョンズ・ホプキンス大学ブルームバーグ公衆衛生学部のアナ・ダービン准教授(国際保健学)は、これまでに判明していることを踏まえると、「ワクチンが効果的であることを確信できる」と話しています。

 今回の研究では、「TV003」として知られるワクチン候補について、48人のグループを対象とする臨床試験を実施し、うち半数の24人にはTV003ワクチンを接種し、残りの24人にはプラセボ(偽薬)を与えました。

 アメリカの国立衛生研究所(NIH)の研究チームが開発したTV003は、デングウイルスの4種の血清型(1型、2型、3型、4型)をそれぞれターゲットとする、生きた弱毒化ウイルス4種の混合物でできています。

 ワクチン接種から6カ月後に、4種の中で最も予防が困難な2型ウイルス株を弱毒化して48人にさらしましたが、TV003ワクチンを接種した24人全員の体内からは、デングウイルスが検出されなかったということです。

 NIHはTV003ワクチンの製品化に向け、先月から1万7000人が参加する大規模な臨床試験を始めており、再来年には結果をまとめたいとしています。

 デング熱のワクチンを巡っては、フランスの企業が開発したワクチンが昨年、メキシコなど3カ国で認可されたものの、効果や安全性について課題が指摘され、今も世界中の研究機関や製薬会社が開発を急いでいます。

 2016年3月21日(月)

 

■インフルエンザ脳症、全国で161人が発症 過去5シーズンで最多

 今シーズンにインフルエンザにかかった後、意識障害などを起こす「インフルエンザ脳症」になった患者は、これまでに161人と過去5シーズンで最も多くなっていることがわかり、国立感染症研究所は「けいれんなどの症状が出たら、すぐに医療機関を受診してほしい」と呼び掛けています。

 インフルエンザ脳症は、インフルエンザにかかった患者が突然、けいれん、意識障害を起こす病気で、1日から2日という短期間に急速に症状が悪化するのが特徴です。

 国立感染症研究所によりますと、今シーズンは今月6日までに、全国で161人がインフルエンザ脳症になったと報告され、昨シーズンの101人を大きく上回っているということです。

 過去5シーズンと比べても最も多いということで、このうち15歳未満が138例と、全体の85パーセント以上を占めています。

 国立感染症研究所の砂川富正室長は、「7年前に新型インフルエンザが流行した年にも脳症の報告が多くあり、今シーズンも同じタイプのウイルスが主流となっていることが原因の1つと考えられる。小さな子供の場合、特に注意が必要で、意識障害や、けいれんなどの異変を感じたら、すぐに医療機関を受診してほしい」と話しています。

 2016年3月20日(日)

 

■インフルエンザ報告数、43都府県で減少 推計患者数はなお約135万人

 インフルエンザの患者報告数の全国平均が警報レベルを下回ったことが18日、厚生労働省が公表した7日から13日までの週の患者報告でわかりました。

 全国平均は4週連続で減少し、この週の報告数は43都府県で前週より減っており、全国の推計患者数も前週比43万人減の135万人となりました。

 7日から13日までの1週間に、全国5000の定点医療機関を受診したインフルエンザの患者は、1医療機関当たり28・2人となり、警報基準値の30・0人を下回りました。患者が増えたのは、北海道と青森、岩手、秋田の4道県だけでした。しかし、この時期としては過去10年間で最も多い状態となっています。

 都道府県別では、愛媛県が最も多く44・31人。以下は愛知県が44・07人、宮崎県が41・90人、高知県が40・50人、長野県が40・45人、福岡県が38・66人、鹿児島県が35・20人、石川県が33・98人、山梨県が33・55人、福井県が33・22人、三重県が32・93人、沖縄県が32・81人、静岡県が32・70人、山口県が32・45人などの順でした。

 この1週間に医療機関を受診した推計患者数の年齢別では、5〜9歳が約32万人で最も多くなりました。また、学級・学年閉鎖、休校となった保育所や小学校などの教育施設数は、前週比18パーセント減の4628施設となったものの、昨年の同じ時期の10倍近くに上っているということです。

 基幹定点医療機関からの入院報告数は、前週比26パーセント減の920例。年齢別では、1〜9歳が304例で最も多くなりました。

 全国的には流行のピークがすぎたと思われるものの、3月に入っても流行が続いていることについて、国立感染症研究所の砂川富正室長は「流行開始が遅かったことに加え、A型とB型のウイルスの両方が流行していることが影響しているとみられる。1度かかっても再度、感染することがあり、引き続き注意が必要だ」と話しています。

 2016年3月19日(土)

 

■ジカ熱、妊娠初期感染で小頭症リスク50倍 仏パスツール研究所が発表

 妊娠初期の3カ月間にジカウイルスに感染すると、胎児100人に1人の割合で脳に重度の異常が生じる恐れがあることが、16日に発表された研究論文で明らかになりました。

 研究によると、ジカ熱によって先天的に頭部が小さい小頭症、あるいは頭が異常に小さくなるまれな状態となるリスクは、約50倍高まることがわかったといいます。

 フランスのパスツール研究所の研究チームは、2013年10月~2014年4月にフランス領ポリネシアで大流行し、全人口の6割以上にまで感染が広がったジカ熱を対象に調査を行いました。

 イギリスの医学誌「ランセット」の電子版に掲載された論文によると、研究では、脳の異常8件が確認され、うち7件はジカ熱流行の終盤近くの4カ月に現れたといいます。

 統計的手法で解析すると、小頭症の子供が生まれる頻度は通常は5000人に1人なのに対し、妊娠3カ月までに感染すると100人に1人程度に高まるとの結果が出ました。この統計解析は、胎児に現れる小頭症リスクを、これまでで最も正確に数値化したものとみられます。

 研究チームは、「流行地域では、非常に多くの人が感染する可能性が高く、妊娠中の女性にとってリスクは大きく、最初の3カ月が最も危ない時期」と指摘しています。

 しかし、今回の研究を巡っては、いくつかの疑問が残ります。一つは、ジカウイルスに感染し発症した妊婦のリスクが本当に高いのかがわからないということ。ジカ熱の症状そのものは大抵穏やかで、悪い風邪か軽症のインフルエンザと似ているため、ジカ熱の罹患に気付かないケースもあることが、その背景にあります。

 また、中南米を中心に世界各地でみられる現在進行形のジカ熱の流行に、今回の研究対象となった数年前のフランス領ポリネシアでのパターンを当てはめることができるのかも定かではありません。

 さらには、前回の流行後にウイルスが突然変異し、より悪性になっている恐れも考えられるといいます。

 2016年3月18日(金)

 

■脳機能障害、免疫関与か 子宮頸がんワクチン、患者8割が同じ遺伝子

 子宮頸(けい)がんワクチン接種後の健康被害を訴える少女らを診療している厚生労働省研究班代表の池田修一信州大教授(脳神経内科)は16日、脳機能障害が起きている患者の8割弱で免疫システムにかかわる遺伝子が同じ型だったとの分析結果をまとめました。

 事前に遺伝子型を調べることで、接種後の障害の出やすさの予測につなげられる可能性があるといいます。厚労省内で開かれた発表会で公表しました。

 研究班は信州大と鹿児島大で、ワクチン接種後に記憶障害や学習障害、過剰な睡眠などの脳機能障害が出た10歳代の少女らの血液を採り、遺伝子「HLA-DPB1」の型を調べました。

 その結果、「0501」の型の患者が信州大で14人中10人(71パーセント)、鹿児島大で19人中16人(84パーセント)を占めました。「0501」は一般の日本人の集団では4割程度とされ、患者の型に偏りが見られました。

 池田教授は、「ワクチンの成分と症状の因果関係はわからないが、接種前に血液検査でHLAを調べることで発症を予防できる可能性がある」と話しました。

 研究班は今後、対象を手足の痛みなど別の症状のある患者も含めて150人に広げ、発症の仕組みなどについて研究を続けます。

 子宮頸がんワクチンは2009年12月以降、小学6年から高校1年の少女を中心に約338万人が接種を受けましたが、副作用報告が相次いで2013年6月から接種の呼び掛けが中止されています。

 厚生労働省研究班の今回の分析は、子宮頸がんワクチンの接種を引き金に免疫機能が異常を来し、過剰な反応が起きている可能性を示しています。調査数が少なく「科学的に意味はない」との指摘もありますが、厚労省の専門家検討会が原因とみている接種時の痛みや不安に伴う「心身の反応説」とは異なる観点からの研究で、今後が注目されます。

 世界保健機関(WHO)は子宮頸がんワクチンの安全宣言を出し、接種を事実上中断している日本の対応を批判しています。名古屋市も昨年、7万人対象の調査で接種者と未接種者の間に発症差はなかったと発表しており、接種再開を求める声も強くなっています。

 ただ、患者らが訴える症状の原因は、解明の途上。研究班は、複数のワクチンをマウスに接種する実験で、子宮頸がんワクチンを打ったマウスの脳だけに神経細胞を攻撃する抗体が作られたとしています。また、人種差があるHLA型に着目した研究は、国ごとに違う副作用発生率を比較するのに役立つ可能性があり、新たな知見が得られるかもしれません。

 接種再開の議論をする際は、こうした原因解明の取り組みや治療法の開発の状況を考慮することが求められます。

 HLAは、細胞の表面にある蛋白質で、体に入る異物を攻撃する目印になります。HLAを構成する遺伝子は複数あり、それぞれのHLA型は糖尿病やベーチェット病などさまざまな病気のなりやすさと関係しているとされます。研究者らが作る国際データベースによると、「HLA-DPB1」の型が「0501」の人は、日本や中国、オーストラリアなどで多い一方、欧州や北米では低い傾向があります。

 2016年3月17日(木)

 

■ピロリ菌の胃がん発症を抑制 東大院教授ら、体内酵素を発見

 東京大大学院医学系研究科の畠山昌則教授(感染腫瘍学)らのチームが、日本人の胃がんの98パーセントの原因とされるヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)の感染によるがん発症を抑える体内の酵素を見付けました。

 この体内酵素を増強する物質を開発すれば、国内で年間13万人以上がかかる胃がんの予防薬につながる可能性があります。

 英科学誌「ネイチャー・マイクロバイオロジー」電子版で15日、発表しました。

 この酵素は、SHP1(エスエイチピーワン)。血液や消化管の細胞に存在しますが、役割はわかっていませんでした。

 試験管内で調べた結果、SHP1は、胃の粘膜にいるピロリ菌が胃の細胞に注入するCagA(キャグエー)と呼ばれる発がん蛋白質と、細胞増殖を促す酵素SHP2(エスエイチピーツー)とが結び付くことを阻止するために働いていました。

 ピロリ菌に感染した人の胃の細胞では、CagAとSHP2が結合する結果、胃がん発症を促すことがすでに解明されています。

 SHP1は、SHP2と形は似ているものの働きは全く逆で、胃がんの発症を抑えていることがわかりました。

 ただ、胃の細胞にはSHP1よりもSHP2が多く存在するため、SHP1はがんの発症を抑え切れません。SHP1の量を増やしたり、働きを強めたりすることが課題になるといいます。

 畠山教授は、「SHP1を増強する物質が見付かれば胃がんの予防につながる」と話しています。

 2016年3月15日(火)

 

■ジカ熱、妊婦の感染に備え医療機関のリスト公開 日本感染症学会

 ブラジルなど中南米を中心に感染が広がるジカ熱に妊婦がかかった場合に備え、日本感染症学会は専門的なアドバイスが行える医療機関のリストを作成し、ホームページで公開しました。

 中南米を中心に感染が広がるジカ熱に妊婦がかかると赤ちゃんが生まれ付き頭部の小さい「小頭症」になる可能性が指摘されており、ブラジルでは昨年10月以降、ジカ熱との関係が疑われる小頭症の赤ちゃんが多数報告されています。

 日本でも今年に入って流行地からの帰国後、感染が確認される人が2人出ていることから、日本感染症学会は妊婦が感染した場合に備え、専門的なアドバイスができる医療機関のリストを作成し、ホームページで公開しました。

 リストに掲載された全国88の医療機関には、ジカ熱のように蚊が媒介する感染症に詳しい医師がおり、感染の疑われる妊婦が一般の医療機関を受診した場合、連絡をすればどのような検査を行うべきかなど、アドバイスを受けられるということです。

 日本感染症学会の理事で、国立感染症研究所の大石和徳センター長は、「一般の医療機関の医師がジカ熱が疑われる妊婦への対応を円滑に行えるようにしたい。現場の医師は、ジカ熱の症状が疑われる妊婦がいた場合、流行地に渡航していないか聞き取るなど、対応を取ってほしい」と話しています。

 2016年3月15日(火)

 

■ジカ熱ワクチン、アメリカの研究機関が臨床試験へ

 ブラジルなど中南米を中心に感染が拡大しているジカ熱について、アメリカの疾病対策センター(CDC)は11日、渡航に関する新たな指針を発表し、妊娠している女性について、感染が広がる37の国や地域の中でも、特にジカ熱を媒介する蚊が生息する海抜2000メートル以下の地域への渡航は取りやめるべきだと呼び掛けています。

 CDCは一方で、海抜2000メートルより高い地域は、ジカ熱を媒介する蚊が生息できないとされているため、感染するリスクが非常に低いとしています。

 新たな指針では、国土のほぼ全域が海抜2000メートル以下のブラジルなどについて、妊娠している女性の場合、実質的にはどのような理由があっても渡航を取りやめるべきだと呼び掛けていることになります。

 これに対して、海抜2000メートルよりも高いところにあるメキシコの首都メキシコシティーや、コロンビアの首都ボゴタなどへの渡航については、これまでの指針よりも緩和されたことになります。

 CDCは、例えば海抜が2000メートルより高い地域でも、それよりも低い地域を経由して行った場合は感染のリスクがあるとしていて、引き続き注意を呼び掛けています。

 また、アメリカの国立衛生研究所(NIH)は10日、開発中のジカ熱のワクチンを人に投与する臨床試験を、今年の秋までに始める方針を明らかにしました。

 中南米を中心に感染が広がっているジカ熱を巡っては、妊娠中の感染と頭部が先天的に小さい小頭症の子供が生まれることとの関連性が指摘されていますが、今のところ、有効なワクチンや治療薬が開発されておらず、世界各地の製薬会社や研究機関が、研究を続けています。

 このうち、アメリカのNIHの研究機関の1つ、アレルギー感染症研究所のファウチ所長は10日に電話会見を開き、今年秋までに開発中の複数のワクチンについて、人に投与して安全性などを確かめる小規模な臨床試験を始める方針を明らかにしました。

 臨床試験に使うのは、ジカウイルスの遺伝子の一部を使って免疫力を引き出すタイプのワクチンで、毒性のある蛋白質を作らない特長があります。同研究所が開発を進めており、ジカ熱と近い種類の西ナイル熱のウイルスで実績があるとしています。

 小規模な臨床試験は4カ月ほどで終わり、問題がなければ、次の段階の大規模な臨床試験に移る見込みだということで、ファウチ所長は「来年中にはワクチンの効果や安全性を確かめられるはずだ」と話しています。

 ジカ熱のワクチンや治療薬の開発が急がれる中、アメリカでは政府が議会に対して、日本円で2000億円規模の緊急の対策費を要請しており、新しい診断技術や、ワクチンの研究開発を後押ししようとしています。

 2016年3月14日(月)

 

■笑わない高齢者、脳卒中リスク1・6倍増 千葉大や東京大が2万人を調査

 普段、笑うことがほとんどない人は、ほぼ毎日笑う人に比べて脳卒中のリスクが1・6倍増えるとの調査結果を、千葉大や東京大などの研究チームが発表しました。

 2013年に全国の65歳以上の高齢者に調査表を送り、回答のあった2万934人を分析。笑う頻度は「ほぼ毎日」「週に1~5回」「月に1~3回」「ほとんどない」の4段階で、自己申告してもらいました。

 「ほぼ毎日」を基準とした場合、ほとんど笑わない人は、脳卒中にかかったことがあると答えた割合が1・6倍高く、心疾患も1・2倍でした。研究チームは、「笑いが脳卒中や心疾患の発症を抑える可能性を示した」としています。

 解析をした東京大の近藤尚己准教授(社会疫学)は、「笑いは助け合いの元となる人のつながりを生み出したり、ストレスの軽減につながったりすることなどが考えられるが、さらなる研究が必要だ」と話しています。

 2016年3月13日(日)

 

■愛知県の30歳代女性、ジカ熱感染 中南米で流行以降、国内で2例目

 ブラジルに滞在歴があり、発熱や発疹の症状を訴えていた愛知県に在住する外国籍の30歳代女性がジカ熱に感染していることが確認されました。

 中南米を中心に流行が広がった昨年以降、国内で患者が確認されたのは2例目で、厚生労働省は感染経路の特定を進めるとともに、現段階では国内で感染が拡大するリスクは極めて低いとして冷静に対応するよう呼び掛けています。

 ジカ熱への感染が確認されたのは、愛知県に在住する30歳代の女性で、全身の発疹、38・2度の発熱、関節痛などの症状を訴えて10日に県内の医療機関を受診しました。

 厚労省によりますと、女性は先月20日まで2週間程度ブラジルに滞在し、22日に帰国していたということで、11日に国立感染症研究所で女性の血液などを調べたところ、感染が確認されたということです。

 現在は女性の熱が下がって容体は落ち着いており、自宅で療養しているということです。同居の家族には、症状は出ていません。女性の具体的な国籍や妊娠の有無は、明らかにされていません。

 ジカ熱は蚊が媒介する感染症で、発熱や頭痛、発疹などの症状が1週間ほど続きます。中南米で流行が広がった昨年5月以降で感染が確認されたのは、先月に続き2例目です。

 女性は「ブラジルで蚊に刺された」と話しているということで、厚労省は感染経路について詳しく調べるとともに、帰国後にどこに滞在したかについても聞き取りを行って、蚊が発生する可能性がある場所の調査や駆除を行うことにしています。

 厚労省結核感染症課の中谷祐貴子課長補佐は、「現在、国内は蚊の活動期ではないため、国内で感染が拡大するリスクは極めて低く冷静に対応してほしい」と話した上で、「妊婦は流行地域への渡航を控えるとともに、性交渉による感染リスクも指摘されているので、流行地域から帰国した男性で妊娠中のパートナーがいる場合は、コンドームを使用してほしい」と呼び掛けています。

 感染症の問題に詳しい川崎市健康安全研究所の岡部信彦所長は、「国内ではウイルスを媒介する蚊がまだ活発に活動していないため、感染が広がるリスクは非常に低い」とした上で、「今後も患者が出る可能性はあるし、5月になると本州でも蚊の活動が活発になる。ジカウイルスは感染しても5人に1人しか症状が出ないので、知らないうちにウイルスが広がっている可能性もゼロではない。各自治体は今のうちに蚊の幼虫の駆除など対策を進めておいてほしい。また、これから流行地に行く人は、虫よけスプレーを使用するなど蚊に刺されない対策を徹底してほしい」と話しています。

 2016年3月12日(土)

 

■iPS細胞から目の主要細胞 大阪大が世界で初めて作製

 人のiPS細胞(人工多能性幹細胞)から角膜や網膜など目のさまざまな組織のもとになる細胞をまとめて作り出すことに、大阪大学のグループが世界で初めて成功し、9日付でイギリスの英科学誌ネイチャー電子版に発表しました。

 研究グループは、病気やけがで目の角膜が傷付いた患者にiPS細胞から作った角膜の組織を移植する臨床研究の実施を、来年度中にも学内の審査委員会に申請したいとしています。

 大阪大学の西田幸二教授(眼科学)のグループは、人のiPS細胞に「ラミニン511」という蛋白質を加えて1カ月ほど培養すると、丸い形をした細胞の塊ができることを確認しました。

 細胞の塊には、同心円状に4つの層があり、中心に近いところから順に神経、網膜、水晶体、角膜など目の組織のもとになる細胞がそれぞれまとまってできていたということです。さらに、これらの細胞を使って目のレンズの役割をする角膜の組織を作り、シート状にしてウサギの目に移植したところ、機能したということです。iPS細胞による機能的な角膜細胞の作製は、世界で初めてといいます。

 研究グループは、この技術を使ってiPS細胞から角膜の組織を作り出し、けがや病気で角膜が傷付いたり、濁ったりした患者に移植する臨床研究の実施を、来年度中にも学内の審査委員会に申請し、再来年にも患者への移植手術を始めたいとしています。

 西田教授は、「亡くなった人から角膜の提供を受けて行われる角膜移植では、提供が少なかったり、拒絶反応が起きたりする問題がある。今後、安全性や効果を確かめて、新しい治療法として患者のもとに届けたい」と話しています。

 今回の研究について、再生医療に詳しい国立成育医療研究センターの阿久津英憲部長は、「今回は、細胞が自律的に育つ能力を引き出し、体の中で目ができてくる過程を再現したといえるもので、それによって新しい細胞を作れた意味は大きい。目以外の器官でも今後、複数の種類の細胞を一度に作り出せる可能性があることも示されたといえるのではないか」と話しています。

 2016年3月11日(金)

 

■ココナッツオイル使った商品、160万個を自主回収 日清オイリオグループ

 食品メーカーの日清オイリオグループ(東京都中央区)は、ココナッツオイルの商品の一部にカビが見付かったとして、ココナッツオイルを使った6種類の商品について、これまでに製造・販売したおよそ160万個すべてを自主的に回収すると発表しました。

 日清オイリオグループが自主的に回収するのは、スーパーやドラッグストアなどで販売されている「日清エキストラバージンココナッツオイル130g」や「エキストラバージンココナッツオイル360グラム通信販売専用」「Oildeサプリ中鎖脂肪酸+ココナッツサプリ」など、6種類の商品です。自主回収の対象は、これまでに製造・販売したすべての商品、合わせておよそ160万個です。

 会社によりますと、先月、商品を購入した消費者から「カビのようなものが生えている」という申し出があり、在庫の商品を検査したところ、十数個から「コウジカビ」が検出されたということです。

 会社では、コウジカビは人体への毒性はなく、これまでに健康被害の報告も入っていないとしています。

 原材料のココナッツオイルはフィリピンから輸入されたものですが、製造した時点では異常はなく、保管している間の温度の変化がカビが発生した原因である可能性があるとして調査を進めています。

 日清オイリオグループは「お客様に多大なご迷惑、ご心配をお掛けして、おわび申し上げます。品質管理の一層の強化を図り再発防止に努めたい」と話しています。

 会社では、回収専用フリーダイヤル 0120-390-169で問い合わせに応じるとしています。

 2016年3月10日(木)

 

■予期せぬ死亡25件、医療機関から届け出 医療事故調査制度の2月分

 患者の予期せぬ死亡を対象とした医療事故調査制度で、第三者機関の日本医療安全調査機構(東京都)は8日、2月に医療機関から「院内調査が必要」として届け出があった事案は、前月より8件少ない25件だったと発表しました。

 制度がスタートした昨年10月以降の累計は計140件で、このうち院内調査の結果報告書が日本医療安全調査機構に提出されたのは33件となりました。同機構は当初、年間の届け出件数を1300〜2000件と予想していましたが、現在のところ大幅に少ない届け出件数にとどまっています。

 2月に「院内調査が必要」として届け出があった25件の内訳は、病院(20床以上)が23件、診療所(20床未満)が2件。

 地域別では、関東信越が8件と最も多く、九州が7件、東海北陸が4件、近畿と中国四国が各2件、北海道と東北が各1件でした。

 また、第三者機関の日本医療安全調査機構が初めて、医療事故調査を行うことになりました。制度では医療に起因する予期せぬ死亡事故が起きた場合、医療機関は同機構に届け出るとともに院内調査を実施し、院内調査とは別に、医療機関と遺族の双方が同機構に調査を依頼することができます。

 遺族が今年1月、初めて調査を依頼し、日本医療安全調査機構では医療事故調査の方法などを検討しています。

 2016年3月9日(水)

 

■「かかりつけ医」認定制度開始へ 日本医師会

 日本医師会は、新年度・2016年度の診療報酬改定で、患者の健康を日常的に把握して治療などに当たる「かかりつけ医」が推進されることを踏まえ、独自の研修を設けてかかりつけ医の認定制度を始めることになりました。

 医療機関に支払われる診療報酬の新年度の改定では、患者の健康を日常的に把握して治療などに当たる「かかりつけ医」を推進するため、小児科などの分野で診療報酬を加算することなどが盛り込まれました。

 これを踏まえ、日本医師会は4月から全国の都道府県の医師会と連携して独自の研修を設け、かかりつけ医の認定制度を始めることになりました。

 具体的には、幅広い知識を持つ医師であることを示す日本医師会の「生涯教育認定証」を取得した上で、かかりつけ医に必要な倫理や具体的な症例などを学ぶ「応用研修」と、地域の学校や自治会などで医療に関する活動を行う「実地研修」で、一定の単位を取得した医師をかかりつけ医として認定するとしています。

 日本医師会は「この認定制度は、地域のかかりつけ医として活動し、研さんを続けていることを示すもので、地域住民からの一層の信頼につなげたい。かかりつけ医を持っていない人が、かかりつけ医を持つ切っ掛けにもなってほしい」としています。

 かかりつけ医とは、何でも相談できる上、最新の医療情報を熟知し、必要な時には専門医、専門医療機関を紹介でき、身近で頼りになる地域医療、保健、福祉を担う幅広い能力を有する医師を意味します。

 かかりつけ医は地域医療に加え、保健福祉まで取り込んだ広範囲のマネジメントができることが要件です。かつての開業医は地域住民の健康を守る中心的な役割を果たしていましたが、近年はビル診療などが増え、そうした機能が失われつつあります。それをもう1度復活させる必要があると考えられています。

 2016年3月8日(火)

 

■糖尿病薬にがんを予防する効果か 大腸ポリープの再発リスクを抑制

 糖尿病の治療薬である「メトホルミン」に、大腸ポリープの再発リスクを下げる効果があることを横浜市立大学の研究グループが突き止めました。大腸ポリープは進行してがんになる可能性があり、大腸がんの予防につながると期待されます。

 研究は、横浜市立大学肝胆膵(かんたんすい)消化器病学の中島淳教授、日暮(ひぐらし)琢磨助教らの研究グループによるもので、イギリスの医学誌「ランセットオンコロジー」電子版に発表されました。

 大腸がんを発症する人は増えており、がんの中でも患者数が第1位、死亡数が第2位になっています。便潜血による健診や、内視鏡検査によりポリープを切除すると、大腸がんの死亡率を下げられますが、切除後の再発やがん発症などが問題となっています。

 一方、糖尿病の治療薬の一つであるメトホルミンは、1950年代から使われており、長い歴史があり安全性が確かめられています。

 メトホルミンを服用している糖尿病患者は、服用していない患者に比べ、がんの発症が少ないという報告があり、特に大腸がんに関しては、予防効果を示す研究が多数発表されています。

 中島教授らの研究グループは過去の研究で、このメトホルミンに注目して、大腸発がんのマウスに投与すると大腸腫瘍が抑制されることや、人間の直腸にある前がん病変のマーカーが減ることを突き止めました。

 今回の研究では、大腸ポリープを切除した患者151人にメトホルミン250ミリグラムを服用してもらい、効果を調査。1年後の大腸ポリープ再発率は、偽薬を飲んだグループの52パーセントに対し、メトホルミンを服用したグループは32パーセントと約4割少なくなりました。試験期間中に、メトホルミンにより重い副作用が出た患者はいなかったといいます。

 大腸ポリープの再発率を下げる薬としては、アスピリンや非ステロイド性抗炎症薬が知られていますが、消化管出血などのリスクがあり予防法としては確立していません。

 中島教授はメトホルミンの特徴として、副作用が少ないこと、作用機序が明らかなこと、服用しやすいこと、安価なことを挙げて、「メトホルミンにがんの予防に本当に効果があるか、長期間の試験をし、さらに検討したい」と話しています。

 2016年3月6日(日)

 

■ジカ熱、感染妊婦3割で胎児異常 手足まひの難病になる可能性も

 中南米を中心に流行が広がるジカ熱について、ブラジルとアメリカの研究チームがウイルスに感染した妊娠中の女性のうち、およそ3割で胎児に先天的に頭部が小さい小頭症などの異常が見付かったと発表しました。

 これは、ブラジルとアメリカの研究チームが、4日付けのアメリカの医学誌「ニュー・イングランド・ジャーナル・オブ・メディシン」で発表したものです。

 それによりますと、研究チームは蚊が媒介するジカ熱について、ブラジルで昨年9月から今年2月にかけて発疹や関節痛、頭痛や軽い発熱などの症状を訴えて病院で受診した妊娠中の女性を調査。

 このうちジカウイルスへの感染が確認された42人の女性の胎児の状態を超音波検査で診察したところ、29パーセンに当たる12人の胎児で、小頭症や脳神経の障害などの異常が見付かったということです。内訳は、子宮内死亡2人、小頭症を含む発育不全5人、中枢神経の発達障害7人、羊水や血流の異常7件(重複を含む)。

 一方、ジカウイルスに感染していなかった16人の女性では、胎児に異常は見付からなかったということです。

 研究チームは、「妊娠中のウイルスへの感染と胎児への深刻な影響とは関連していると考えられる」とコメントして、警戒を呼び掛けています。

 また、ジカウイルスに感染すると、手足に力が入らなくなる難病、ギラン・バレー症候群になる可能性があるとする研究成果を、フランスのパスツール研究所やイギリスなどの研究グループが発表しました。

 研究グループが、2013~2014年にジカ熱が流行したフランス領ポリネシアで、同じ時期にギラン・バレー症候群を発症した42人の血液を調べたところ、全員がジカウイルスに感染したことを示す「抗体」を持っていたということです。

 全体の9割に当たる37人は、ギランバレー症候群を発症する数日前に、発熱や発疹などのジカ熱の症状が出ていたほか、うち12人については、人工呼吸器による治療が必要になったということです。

 発症の確率は、ジカ熱の感染者10万人当たり24人程度とまれですが、感染症の問題に詳しい川崎市健康安全研究所の岡部信彦所長は、「ギラン・バレー症候群にはさまざまな原因があるが、今回のデータはジカウイルスとの強い関連を示している。国内でもギラン・バレーの症状が出た人については、流行国への渡航歴を確認し、ジカウイルスとの関連も含めて調べる必要がある」と話しています。

 ギラン・バレー症候群は、体の中の免疫システムが自分の神経を攻撃してしまうことで、手足などのまひなどを引き起こす病気。ほとんどの場合は回復しますが、患者の20パーセントほどで、胸の筋肉がまひして呼吸が困難になるほか、合併症を伴って5パーセントほどの人が亡くなるという報告もあります。

 世界保健機関(WHO)によりますと、昨年のジカ熱の流行以降、コロンビアやベネズエラなど中南米で患者が増えており、ブラジルでは昨年11月までの患者数が1708人と、前の年より20パーセント近く増加しています。

 2016年3月6日(日)

 

■インフルエンザ患者、推計179万人と依然多い状態 24都道府県で減少、23県では増加

 先月28日までの1週間に全国の医療機関を受診したインフルエンザの患者は、推計で179万人と依然、多い状態が続いています。

 国立感染症研究所は、手洗いなど対策の徹底を呼び掛けています。

 国立感染症研究所によりますと、先月28日までの1週間に全国5000の医療機関を受診したインフルエンザの患者数は、1医療機関当たり36・12人(前週は37・16人)となりました。これを基に推計した全国の患者数は179万人となりました。前週は約186万人で、2週連続の減少となったものの、この時期としては過去10年間で最も多い状態となっています。

 これは今シーズンの流行期入りが年明けにずれたためで、推計の患者数は昨年の同じ時期より100万人以上多くなっています。

 流行状況を表す1医療機関当たりの患者数を都道府県別にみますと、最も多いのが愛知県で54・31人、次いで愛媛県が53・10人、鹿児島県が49・53人、石川県が48・94人、山口県が47・48人などとなっています。24都道府県で前週よりも減ったものの、西日本を中心に23の県で前週より増加しています。

 一方、今シーズン、これまでに検出されたウイルスは、7年前に新型インフルエンザとして流行したH1N1型ウイルスが全体の半数以上を占めて最も多い一方、B型も3割ほど報告されています。

 国立感染症研究所の砂川富正室長は、「例年なら患者数が減少を始める時期だが、まだピークをすぎたとはいい切れず注意が必要だ。引き続き手洗いやマスクの着用など、せきエチケットをして対策を徹底してほしい」と話しています。

 2016年3月5日(土)

 

■ジカ熱ウイルスの感染力、デング熱と同程度 東大の研究グループが推計

 東京大学の西浦博准教授らは、中南米で流行しているジカ熱の感染力は一昨年に国内感染が報告されたデング熱と同程度とする推計をまとめました。過去にジカ熱が広がった太平洋の島々の事例をもとに解析しました。

 もし夏に感染者が出ると、デング熱の時のように国内感染が広がる可能性があり、対策が必要になるといいます。

 ジカ熱は、ジカウイルスを持った蚊に刺されることで感染します。ジカウイルスは、デング熱や日本脳炎などのウイルスと同じ仲間。日本では、ブラジルから帰国した男子高校生の感染が見付かりました。

 ジカ熱は2007年にミクロネシア連邦のヤップ島で、2013年から2014年にかけてフランス領ポリネシアで流行しました。研究チームは患者が発症した時期をもとに、ヤップ島の患者108人、フランス領ポリネシアの8581人のデータを分析し、1人の患者から何人に広がったかを計算。人口の7割が感染したヤップ島では平均4・3~5・8人、ポリネシアでは平均1・8~2・0人との結果でした。

 感染報告がある輸血や性交渉の影響は、考慮しませんでした。

 世界各国のデータから、デング熱では患者1人から蚊を通じて1~4人が感染するといわれます。ジカ熱の感染力や流行の広がり方は、デング熱と同程度と判断しました。拡大防止策を検討する際の基本データになるといいます。

 西浦准教授は、「日本では、ウイルスを媒介する蚊の種類が異なるなど条件が違うが、2年前のデング熱と同じように一定程度広がるおそれがあると考えて対策を取っておく必要がある」と話しています。

 2016年3月3日(木)

 

■東京など1都18県で花粉シーズン本格化 週末は増加、ウェザーニューズ発表

 気象情報会社ウェザーニューズ(千葉市)は2日、東京都など1都18県が本格的な花粉シーズに入ったと発表しました。ウェザーニューズの花粉観測機「ポールンロボ」で基準値を超える花粉の飛散量が観測されたためで、東京都は昨年に比べて6日遅いといいます。

 ウェザーニューズによると、沖縄県を除く46都道府県のうち1都2府34県で2日までに、敏感な人がつらいと感じる花粉シーズンが始まり、このうち1都18県で本格的な花粉シーズンが始まりました。

 今後はさらに飛散量が増え、3月上旬〜中旬にスギ花粉の飛散量がピークを迎える見込みだといいます。

 また、今週末は平年よりも気温が高く、全国的に暖かくなるため、西日本と東日本の残りの地域でも続々と花粉の飛散が本格化する見込み。東北の広い範囲も今週末には花粉シーズンに突入し、花粉シーズン入り後は1週間から10日程度で本格的な花粉シーズンに突入する予想だといいます。

 スギ花粉のピークは、関東から九州では3月上旬~中旬、北陸や東北では3月中旬~下旬の予想。

 スギ花粉のピーク後、桜の花が咲くころにヒノキ花粉の飛散量が増え始めます。ヒノキ花粉は、九州では3月下旬から、そのほかの西日本と東日本では4月上旬~中旬にピークを迎える見通し。北海道のシラカバ花粉は、4月下旬にシーズンに入る予想。

 今年のスギ、ヒノキ花粉の飛散量は、全国的に2008年から2015年の平均よりも少なくなる予想ですが、昨シーズンの飛散量が少なかった九州北部や四国では昨年比で1・5〜2倍と予想されており、昨シーズンは症状が軽かったとしても油断はできないといいます。

 風が強い日や雨の降った日の翌日などには、一時的に花粉の飛散が増える恐れがあり、注意が必要だといいます。

 2016年3月2日(水)

 

■ライオンのトクホ飲料「トマト酢」に誇大広告 消費者庁、健康増進法違反で初勧告

 特定保健用食品(トクホ)として国の許可を得た飲料を巡り、大手日用品メーカーのライオンが「驚きの血圧低下作用」などと表示したのは、著しく効果を誤認させる違法な表示だとして、消費者庁は健康増進法(誇大表示の禁止)に基づき是正と再発防止を求める勧告を行いました。

 トクホの食品表示を巡り、国が勧告を行うのはこれが初めてです。

 消費者庁が違法な表示を指摘したのは、ライオン(東京都墨田区)がトクホとして国の許可を得て、販売しているお酢を使った飲料の「トマト酢生活トマト酢飲料」です。

 この商品はトクホとして、「血圧が高めの人に適している」という内容に限って、健康を保つのにどのような効果があるのか表示を行う許可を得ています。しかし、ライオンは昨年9月15日から11月27日に日刊紙14紙に掲載した広告で、「驚きの血圧低下作用」や「薬に頼らずに食生活で血圧の対策をしたい」などと表示したということです。

 これについて消費者庁は、あたかもこの商品そのものに血圧を下げる効果があり、薬による治療を行わなくても高血圧が改善するかのような、著しく効果を誤認させる違法な表示だとして1日、ライオンに対して再発防止策を求める勧告を行いました。

 勧告を受けたことについて、ライオンは、「一般の消費者に誤った認識を引き起こす広告表示で、ご迷惑をお掛けし心よりおわび申し上げます。勧告を真摯(しんし)に受け止め、広告を出す際の管理体制をより一層強化し、再発防止に努めます」とコメントしています。

 特定保健用食品(トクホ)は、体の健康を保つ特定の効果があることを消費者庁の許可に基づいて表示できる食品。許可を得られるのは、例えば「血圧を正常に保つことを助ける」など、食品の中に体の機能に影響を与えて健康を保つのに役立つ成分が含まれている場合で、メーカーが行った商品の実験データなどを基に、国が効果と安全性を審査します。

 特定保健用食品として認められた食品は、「血圧が高めの人に適している」「おなかの調子を整える」「コレステロールの吸収を抑える」などと、それぞれの食品ごとに消費者庁が許可した範囲内で、健康を保つのにどのように役立つのか表示することができます。ふだんの食生活にうまく取り入れることで、健康の維持につなげてもらうのが目的で、病気の治療に用いられる医薬品とは全く異なります。

 このため、例えば「血圧が下がる」など、病気や症状を改善する医薬品のような効果をうたうと違法になります。特定保健用食品の制度は、25年前の1991年に始まり、これまでに1200余りの商品が表示の許可を受けています。

 トクホの市場調査を行っている業界団体の「日本健康・栄養食品協会」によりますと、昨年度のトクホの市場規模は、6100億円余りになっているということです。また、「トマト酢生活トマト酢飲料」は、昨年6月から今年1月末までに、計約4億7000万円の売り上げがあったといいます。

 2016年3月2日(水)

 

■エイズ感染、昨年約1400人 2年連続で減少

 厚生労働省のエイズ動向委員会は1月29日、2015年に新たにエイズウイルス(HIV)感染が判明した人の数は1413人で、過去9番目だったとの速報値を発表しました。

 前年は1546人で、2年連続の減少となりました。

 委員長の岩本愛吉・日本医療研究開発機構科学技術顧問は、「感染予防策の普及啓発と治療薬の進歩で、少しずつ新規感染者は減っているのではないか。ただ今後、日本を訪れる外国人が増えるとみられ、動向を注視する必要がある」と話しました。

 検査を受けずに発症して初めて感染が判明したのは423人で、前年から32人減りました。新規感染者の約3割を占める状況が続いています。

 新規感染者全体に占める新規エイズ患者の割合は29・9パーセントで、前年の29・4パーセントとほぼ横ばいでした。

 厚労省によると、2015年に保健所などで実施したエイズウイルス(HIV)検査件数は前年より約1万6800件減り、約12万8000件でした。

 2016年3月1日(火)

 

■ジカ熱、フランスでも性交渉での感染を確認 

 フランス領ギアナを訪問しているフランスのマリソル・トゥーレーヌ保健相は27日、フランスで初めてジカウイルスの性感染の症例が確認されたと述べました。ブラジルからパートナーの男性が帰国した後、相手の女性が感染したといいます。

 同保健相の関係者は、カップルはパリ地域に居住しており、「女性は典型的なジカ熱の兆候を示した」「入院はしておらず、体調は良好だ」と語りました。女性の感染は数日前に判明したもので、女性は妊娠していないといいます。

 フランスではタヒチを中心とするフランス領ポリネシアで、2013年から2014年にかけてジカ熱の感染が広がり、人口のおよそ70パーセントが感染したとみられていますが、性交渉によるとみられる感染が報告されたのは今回が初めてだということです。

 ブラジルは、蚊が媒体するジカウイルスへの感染者が最も多く、現在150万人が記録されています。2番目に多いコロンビアでも、27日現在4万2706人が記録されています。

 世界保健機関(WHO)によると、これまでに世界46カ国でジカウイルス感染者が報告されています。ジカウイルスを媒介するネッタイシマカは130カ国で生息しており、将来的には爆発的にウイルス感染が拡大する可能性があります。

 ジカウイルス感染の大抵の症例では、症状はインフルエンザに似た比較的軽いものですが、妊婦が感染した場合に胎児の脳と頭部が異常に小さい状態で生まれる小頭症の発症につながるという見方が強くなっており、国際的な警鐘が鳴らされています。

 一方、ブラジルなど中南米で昨年から流行しているジカ熱は、太平洋の島々で流行した数年前にはデング熱と同程度の感染力だったとする分析を、東京大の西浦博准教授(理論疫学)らの研究チームがまとめ、29日付の感染症専門誌電子版に発表しました。

 現在の感染力は不明ながら、拡大防止策を検討する際の基本データになるといいます。

 ジカ熱は2007年にミクロネシア連邦のヤップ島で、2013年から2014年にかけてフランス領ポリネシアで流行しました。研究チームは患者が発症した時期をもとに、1人の患者から何人に広がったかを計算。人口の7割が感染したヤップ島では平均4・3~5・8人、ポリネシアでは平均1・8~2・0人との結果でした。

 2016年2月29日(月)

 

■アメリカで初、ジカ熱小頭症の子供出産 疾病対策センター「妊婦の五輪観戦控えて」

 アメリカの疾病対策センター(CDC)は26日、アメリカ国内で初めて、妊娠中にジカ熱に感染した女性から、知的障害を伴うことがある小頭症の新生児が生まれたケースを確認したと発表しました。

 こうした状況を受けて、CDCは妊娠中の女性が8月のリオデジャネイロ五輪や9月のパラリンピック観戦で、ブラジルに旅行するのを控えるよう呼び掛けました。性交渉を通じた感染報告も増えており、妊娠中は流行地域に旅行した男性パートナーとの性交渉を控えるか、コンドームを使うよう求めました。

 CDCは、妊娠中にジカ熱が報告された地域に滞在し、アメリカに帰国後、感染が確認された女性9人を調査。このうち3人が出産し、2人の子供には異常は見られませんでしたが、ブラジルに妊娠12週目まで滞在していた1人の女性は小頭症の子供を出産したということです。

 また、2人は流産し、別の2人は胎児の脳に異常が見られたことなどから中絶を行ったとしています。

 CDCは「感染と小頭症とを直接的に結び付けることはまだできない」としていますが、「ブラジルの流行は活発な状況が続く」と指摘。どうしても感染が報告されている国や地域への旅行が避けられない妊婦は、事前に医師に相談し、蚊に刺されるのを防ぐ対策を徹底することが必要だとしました。

 2016年2月28日(日)

 

■ジカ熱、自治体向けの手引きを見直し 蚊の駆除など対策の徹底を呼び掛け

 中南米を中心に流行している感染症「ジカ熱」の患者が国内で確認されたことを受け、厚生労働省は26日、蚊が媒介する感染症の予防指針を来月中に見直し、ジカ熱を追加する方針を決めました。

 4月以降、日本国内でもジカウイルスを媒介する蚊が活動を始めることから、予防指針を基にした自治体向けの手引きで、患者が出た場合の聞き取り調査や、蚊の駆除や幼虫の発生源対策などが徹底できるよう都道府県などに求めます。26日に開かれた感染症部会で承認しました。

 昨年5月以降、中南米を中心に流行が続いているジカ熱について厚労省は25日、ブラジルから帰国した川崎市の10歳代の男子高校生の感染が確認されたと発表しました。

 国内では現在、ジカウイルスを媒介する蚊が活動していないため、感染が広がる恐れはないとみられていますが、本州でも早ければ4月末ごろから蚊が活動することから、厚労省はは国内で患者が出た場合、感染の広がりを抑える対策が必要になるとして自治体向けの対策の手引きを見直し、対策を徹底できるよう呼び掛けています。

 手引きでは、発熱や関節痛などジカ熱の詳しい症状や、ウイルスを媒介する「ヒトスジシマカ」の特徴を示した上で、患者が確認された場合に発症前後の行動を聞き取るなどの調査方法を示しています。

 また、蚊の幼虫は4月初旬から中旬ごろには確認されることもあるため、早めの対策が必要だということで、蚊の生息場所の把握や幼虫の駆除の方法なども盛り込まれています。

 一方、性交渉によるジカ熱の感染が報告されていることについて、感染症部会で感染症の専門家から「性交渉での感染はまだ確定していない」との意見が出され、自治体向けの手引きには盛り込まないこととしました。代わりに医療関係者向けの診療ガイドラインを作り、性交渉での感染の恐れを記載して注意を呼び掛けることを決めました。

 国立感染症研究所の沢辺京子部長は、「ジカ熱は症状が軽く、感染の広がりがわかりにくいことが考えられるので、対策の重要性を再認識して、手引きを基にこの冬の間から蚊の幼虫の発生源となるようなゴミを清掃するなどして対策を徹底してほしい」と話しています。

 2016年2月27日(土)

 

■インフルエンザ患者、初めて減少 14歳以下の患者が全体の半数を占める

 2月21日までの1週間に、全国の医療機関を受診したインフルエンザの患者は推計で186万人と、今年初めに流行期に入って以降初めて減少しました。

 専門家は「流行のピークはすぎたとみられるが、依然患者は多く、受験シーズンとも重なってきているので、手洗いなどの対策を徹底してほしい」と話しています。

 国立感染症研究所によりますと、2月15日から21日までの1週間に、全国およそ5000の医療機関を受診したインフルエンザの患者は1医療機関当たり37・16人、推計で186万人となり、前の週の1医療機関当たり39・97人、推計で205万人から減りました。患者数が減るのは、今年初めに全国的な流行期に入って以降初めてのことです。

 流行状況を表す1医療機関当たりの患者数を都道府県別にみますと、愛知県が最も多く55・52人、次いで広島県が46・93人、石川県が45・27人、山口県が44・94人などとなっており、26の都道府県で前の週に比べて減少しています。

 関東地方でも1都6県すべてで前の週に比べて減少し、1医療機関当たりの患者数は埼玉県が40・59人、千葉県が39・37人、群馬県が38・92人、神奈川県が34・59人、栃木県が32・28人、茨城県が30・82人、東京都が29・89人となっています。

 ただ、依然として全国的に患者数が多い状態は続いており、年齢別では14歳以下の患者が推計で89万人と、全体の半数近くを占めています。

 国立感染症研究所の砂川富正室長は、「全国的な流行はピークをすぎたとみられる。ただ今シーズンは流行期入りが例年よりも1カ月ほどずれ込み、患者数の多い時期と受験シーズンが重なってきた。受験を控える学生は手洗いやマスクの着用などをするほか、家族に患者がいれば個室で休んでもらうなどの対策も有効だ」と話しています。

 2016年2月27日(土)

 

■ブラジルから帰国した川崎市の10歳代男性、ジカ熱に感染 中南米で流行以降、国内初

 厚生労働省によりますと、ブラジルから帰国し、発熱や発疹などの症状を訴えていた川崎市の10歳代の男性が、ジカ熱に感染していることが確認されました。中南米を中心に流行が始まった昨年以降、国内で患者が確認されたのは初めてで、厚労省は感染経路の特定を進めています。

 ジカ熱は蚊が媒介する感染症で、発症すると発熱や頭痛、発疹などの症状が1週間程度続きます。

 厚労省によりますと、25日、川崎市に住む10歳代の男性が発熱や発疹などの症状を訴えて、神奈川県内の医療機関を受診しました。容体は落ち着いており、自宅で療養しているということです。

 男性は今月20日までブラジルに滞在していたということで、国立感染症研究所で男性の血液から検体を採取してウイルスの遺伝子を調べたところ、感染が確認されたということです。

 日本国内では3年前に、当時ジカ熱が流行していたフランス領ポリネシアから帰国した27歳の男性が発症するなど、これまで渡航歴のある3人の男女の感染が確認されていますが、ブラジルなどの中南米で流行が始まった昨年以降、確認されたのは初めてです。

 厚労省は、感染経路について調べるとともに、帰国後にどこに滞在したかについても聞き取りを行って、蚊が発生する可能性がある場所の調査や駆除を行うことにしています。

 感染症の問題に詳しい川崎市健康安全研究所の岡部信彦所長は、「国内で患者が見付かったとしても、今はウイルスを媒介する蚊が活動していないため、感染が広がるリスクは非常に低い。冷静に対応することが必要だと思う」と話しています。

 ジカ熱は、ジカウイルスを持つ蚊に刺されることで発症する、ウイルス性の感染症です。感染すると、3日から12日間ほどの潜伏期間の後、発熱や頭痛、それに関節痛などの症状を引き起こします。

 ワクチンや特効薬はなく、対症療法が中心となりますが、同じように蚊がウイルスを媒介するデング熱と比べると、比較的症状は軽く、多くの場合、1週間ほどで回復します。また、感染しても、実際に症状が出る人は4人に1人程度という報告もあります。

 ウイルスを媒介するのは、主に熱帯や亜熱帯に生息するネッタイシマカや、日本にも生息するヒトスジシマカ。

 昨年5月以降にブラジルで感染が確認されて以降、中南米を中心に24の国や地域に広がり、アメリカやヨーロッパでも流行地を訪れた人たちが帰国後にジカ熱を発症するケースが報告されています。また、ブラジルでは胎児や新生児の頭が小さくなり知的障害を伴うこともある小頭症が急増しており、妊娠中の感染とジカ熱との関連が疑われています。

 一方で、ジカ熱は、患者の血液からウイルスを検出できる期間がわずか数日なことや、ほかの蚊を媒介とする感染症と症状が似通っていて、区別が難しいため、正確な患者数を把握するのは難しいのが実態です。

 ジカ熱の感染が広がっていることを受けて、厚労省は今月、ジカ熱をデング熱や日本脳炎と同様に四類感染症に位置付け、全国の医療機関に対して、患者を診察した場合、保健所を通じて国に届け出るよう義務付けました。

 同時に、空港の検疫所で中南米から帰国した人などを対象に、サーモグラフィと呼ばれる特殊な機器を使って体温を調べ、水際での対策を強化したほか、検査キットを全国の都道府県の衛生研究所に配布しています。

 2016年2月25日(木)

 

■性交渉で14人がジカ熱に感染疑い アメリカ国内、患者は女性のみ

 中南米を中心に感染が拡大しているジカ熱について、アメリカの疾病対策センター(CDC)は、性交渉を通じて感染した可能性がある患者が14人報告されたと発表し、性交渉による感染のリスクに注意し、対策を取るよう呼び掛けています。

 ジカ熱は、蚊が媒介する感染症で、中南米を中心にこれまでに36の国と地域で感染の拡大が確認され、妊娠中の感染と先天的に頭部が小さい小頭症の子供が生まれることとの関連が指摘されています。

 CDCは23日、アメリカ国内で性交渉によってジカウイルスに感染した可能性がある患者が14人報告されたと発表しました。

 患者はすべて女性で、ジカ熱の症状を訴えており、これまでに2人の体内からはウイルスが検出されたということです。また、14人のうち数人は妊娠中。

 14人は、いずれも本人ではなく、パートナーの男性が感染が報告された地域への渡航歴があり、ジカ熱の症状が現れたということです。

 性交渉を通じてジカウイルスに二次感染したとみられる報告は、これまでアメリカを含め世界で3例あり、CDCは「蚊が主な感染経路であることに変わりはないが、今回の報告は、性交渉も感染経路となり得ることをより強く示唆している」と指摘しています。

 そして、妊娠している女性や妊娠を希望する女性が、感染の報告された地域に渡航した男性と性交渉する際は、避妊具を使うなど対策を取り、十分に注意するよう呼び掛けています。

 2016年2月24日(水)

 

■がんと仕事の両立を支援 厚労省が企業向けガイドラインを初策定

 厚生労働省は、がんになった人が仕事を続けられるよう、企業に対して、がんの治療と仕事が両立できるような計画を作成させることなどを盛り込んだ新たなガイドライン(指針)を策定し、公表しました。

 がんを発症して仕事をしている人は、およそ32万5000人に上ると推計されています。厚労省は23日、こうした人たちが適切な治療を受けながら仕事を続けられるように、企業向けのガイドラインを策定しました。

 がん対策基本法に基づく就労支援策の一環で、こうしたガイドラインは初めて。がんだけでなく、脳卒中など継続して治療が必要な病気も対象となります。

 ガイドラインでは、従業員と企業や医療機関が情報を共有する仕組みとして、がんなどになった従業員が勤務内容を医師に伝えたり、医師が勤務上配慮すべきことを書き込んだりできるような診断書などのひな型を示し、企業に対して活用するよう求めています。

 また、病状に合わせて治療と仕事が両立できるような勤務計画を作成することや、社内に対応窓口を設置したり、従業員の研修を実施したりすることも求めています。

 がんになった人の3人に1人が退職を余儀なくされているという調査結果もあることから、厚労省はガイドラインの内容を企業や医療機関に周知して、職場環境の改善を図っていきたいとしています。

 厚労省の新たなガイドラインについて、がん患者を支援する団体の代表で、自らもがんになって会社を辞めた経験がある坂本裕明さん(49歳)は、「医師から勤務上、配慮すべき情報が企業に伝えられるようになったのは一歩前進だ。今後、企業と従業員が話し合える機会を増やして、産業医がいない中小企業や、経営者にも浸透させられるかが課題だ」と話しています。

 坂本さんは医療機器メーカーの契約社員をしていた5年前、のどの奥にできる上咽頭がんを発症し、入院中に見舞いに訪れた上司から突然退職を求められたということです。当時は抗がん剤治療の影響で体調が悪く、退職に応じざるを得なかったということです。

 その後、再就職先も見付からなかったため、地元の栃木県宇都宮市で整体院を開業。同時にがん患者の支援団体を設立し、かつての自分と同じような状況にある人たちの相談に乗っています。

 坂本さんは、「がんは治療すれば治る病気で、職場の配慮があれば働き続けられるのに、理解が進んでいないのが実情だ。がんになっても安心して働ける社会になってほしい」と話していました。

 2016年2月24日(水)

 

■妊娠中にジカ熱、小頭症の子供3割に目の異常 日本ではジカ熱の原因ウイルス作製に成功

 中南米を中心に流行が広がる「ジカ熱」について、ウイルス感染との関連が疑われる小頭症の子供の3割に目の網膜などの異常が見付かったと、ブラジルなどの研究グループが発表しました。

 日本の専門家は、「小頭症だけでなく、目に後遺症が残るリスクについても調べる必要がある」と指摘しています。

 ブラジルのサンパウロ連邦大学などの研究グループは、妊娠中の母親がジカ熱を発症した後、小頭症と診断された赤ちゃん29人について、目の検査を行いました。その結果、34・5パーセントに当たる10人の赤ちゃんで両目、または片目の組織に異常が見付かったということです。

 具体的には、外からの光を受け取る「黄斑」と呼ばれる網膜の組織に異常が見付かったり、脳に信号を送る「視神経」に異常が見付かったりしたということです。

 ウイルスの問題に詳しい国立感染症研究所の高崎智彦室長は、「ジカウイルスに関連した目の後遺症の危険性を認識する必要がある。たとえ小頭症ではなかったとしても、ほかの組織に異常が出るおそれも考えられるので、検査する態勢が必要だ」と指摘しています。

 一方、国立感染症研究所の田島茂主任研究官らのチームは23日までに、中南米を中心に流行が広がるジカ熱の原因となるジカウイルスの作製に成功しました。今回はアフリカ・ウガンダで分離されたウイルスを基にしましたが、ブラジルで流行しているウイルスの作製にも着手しており、ワクチン開発に弾みがつきそうです。

 感染研によると、ジカウイルスの作製は世界初とみられるといいます。作製したウイルスを利用すれば、ジカウイルスと近い日本脳炎や黄熱のウイルスに対するワクチンと同じ作り方で、ジカ熱のワクチンを作ることが可能といいます。

 チームは、ウイルスから取り出したRNA(リボ核酸)でできた遺伝子を、実験で扱いやすいように形を変えて大腸菌に注入。大腸菌で数を増やしたものを、さらに哺乳類の培養細胞に入れる手法でウイルスを作製しました。

 田島研究官は、「ウイルスの詳しい性質がわかれば、流行拡大の原因を探ることもできる」としています。

 2016年2月24日(水)

 

■インフル治療薬アビガン、マダニ感染症に有効 厚労省研究班がマウス実験

 マダニが媒介するウイルス感染症「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)」に、抗インフルエンザ薬のアビガン(一般名ファビピラビル)が有効であることをマウスの実験で確かめたと、厚生労働省研究班のチームが22日までに米微生物学会の専門誌に発表しました。

 SFTSは西日本で患者が多く、6~30パーセントが死亡する深刻な病気ながら、有効な治療法がありません。研究班の西條政幸・国立感染症研究所ウイルス第1部長は、「アビガンはインフルエンザの薬として安全性や副作用がすでに明らかになっている。SFTSへの適応も、近い将来に実現されることを期待したい」としています。

 研究班は、実験用のマウスにSFTSのウイルスを感染させ、直後から5日間にわたりアビガンを投与。何も治療しないマウスや抗ウイルス薬のリバビリンを投与したマウスと、効果を比べました。

 その結果、何も治療をしないマウスは、ほとんどが死にました。リバビリンも効果はあったものの、約4割のマウスが死にました。一方で、アビガンを与えたマウスは、すべて生存しました。

 SFTSウイルスへの感染から日にちを遅らせてアビガンを与えたところ、感染から3日までに投与を始めたマウスは、すべて生き残りました。症状が進んだ5日目の投与でも、約半数が生存しました。

 アビガンは、富士フイルム傘下の富山化学工業(東京都)が開発。既存の薬とは作用の仕組みが違い、インフルエンザへの効果が期待されるほか、エボラ出血熱の治療薬としても注目を集めています。一方で、胎児に奇形を起こす可能性があることなどから、日本では新型インフルエンザでほかの薬が効かないなどの場合に国が使用を判断します。

 2016年2月23日(火)

 

■心停止の患者、水素で脳ダメージ軽減 慶応大学病院などが臨床研究開始へ

 心筋梗塞などで心停止状態になった患者に水素ガスを吸わせることで、寝たきりになるなどの後遺症を減らそうという臨床研究を慶応大学病院など全国12の医療機関が始めることになりました。

 効果が確認できれば、早ければ3年後には医療現場で広く行えるようにしたいとしています。

 臨床研究を始めるのは、慶応大学病院のほか香川大学病院、熊本大学病院など全国12の医療機関。

 国内では毎年13万人が心停止状態になり病院に運ばれていますが、回復しても脳細胞がダメージを受け、寝たきりになったり、言葉が十分に話せなくなるなどの後遺症が残るケースが少なくありません。

 水素には細胞が死ぬのを抑える効果があり、慶応大学のグループはこれまで、ねずみを使った実験で心停止後の生存率を38パーセントから71パーセントに高め、脳細胞へのダメージも減らせることを確認しています。

 臨床研究では今後2年間にわたって、心停止状態となった患者180人に18時間、水素ガスを吸わせ安全性と効果を確認することにしています。効果が確認できれば、早ければ3年後には医療現場で実際に広く使えるようにしたいとしています。

 慶応大学病院の堀進悟救急科診療部長は、「単に命を救うだけではなく社会復帰させるのが医療の目的であり、水素ガスの利用でそうした人を増やせる可能性があると考えている」と話しています。

 2016年2月22日(月)

 

■インフルエンザ患者、過去10年で2番目に多い205万人に

 今月14日までの1週間に全国の医療機関を受診したインフルエンザの患者は、1医療機関当たり39・97人で、過去10年間で2番目に高い値となったことが、国立感染症研究所の調査でわかりました。

 専門家は「流行はピークを迎えた可能性があるが、今後も患者の多い状態が続くので対策を徹底してほしい」と呼び掛けています。

 国立感染症研究所によりますと、2月8日から14日までの1週間に全国およそ5000の医療機関を受診したインフルエンザの患者は、1医療機関当たり39・97人となり、これを基に推計した全国の患者数は205万人で、今シーズン初めて200万人を超えました。

 流行状況を表す1医療機関当たりの患者数を都道府県別にみますと、愛知県が最も多く58・5人、次いで沖縄県が50・81人、埼玉県が49・13人、福岡県が48・08人、岐阜県が46・86人などとなっています。また、鳥取県を除くすべての都道府県で、大きな流行が起きているおそれを示す「警報レベル」を超える患者数の地域が出ています。

 一方、年齢別では14歳以下の患者が推計99万人と、全体の半数近くを占めています。厚生労働省によりますと、休校や学級閉鎖などの措置をとった保育所や幼稚園、それに小学校、中学校、高校などの数は6385と、昨年の同じ時期の3倍以上に上っているということです。

 国立感染症研究所の砂川富正室長は、「流行はピークを迎えた可能性があるが、今後しばらくは患者の多い状態が続く。受験を控えた子供さんも多いと思うので、手洗いやうがいなどの対策を徹底するとともに、もしインフルエンザにかかったら、症状が治まっても決められた期間は学校を休んで家で静養してほしい」と話しています。

 インフルエンザの患者が全国的に増える中、今シーズンは、7年前に「新型インフルエンザ」として流行したH1N1型ウイルスなど4種類の型が流行していることがわかりました。H1N1型で全体の半数以上に上ったほか、A香港型と2種類のB型の合わせて4種類のウイルスが全体の9割以上を占めているということです。

 これに対し、今シーズンのインフルエンザワクチンは、4種類のウイルスの型におおむね適合しているということです。

 厚生労働省の担当者は、「今シーズンはインフルエンザの流行入りが例年に比べて遅く今後、さらに患者が増えるおそれがある。東京などで患者が減ったが、西日本では増加が続く可能性がある。うがいや手洗いなどの予防に努めてほしい」と話しています。

 2016年2月21日(日)

 

■アクリルアミド、発がん性懸念なしとせず 食品安全委

 内閣府・食品安全委員会の作業部会は16日、高温で揚げたり炒めたりした野菜などに含まれる発がん性物質「アクリルアミド」の摂取と日本人の健康への影響について「リスクは極めて低いが、動物実験の結果から、懸念がないとはいえない」との最終評価の結果案をまとめました。食品安全委員会は、摂取量を減らすよう促しています。

 作業部会(青木康展座長)は2011年から、アクリルアミドのリスクを検討してきました。

 アクリルアミドは、食品に含まれるアミノ酸(アスパラギン)と糖が120度以上の加熱によって反応して生じます。微量でも遺伝子を傷つける作用を持ちます。

 国立環境研究所や農林水産省の最新データで、日本人の平均推定摂取量は、体重1キロあたり1日0・24マイクログラム(マイクロは100万分の1の単位)でした。欧州連合(EU)加盟国(0・4〜1・9マイクログラム)より低く、香港(0・21マイクログラム)とほぼ同じでした。

 どこから取っているかをみると、約6割を占めたのは炒めたモヤシやキャベツ、フライドポテトなど高温調理した野菜。2番目はコーヒーや緑茶などの飲料。ポテトスナックなど菓子類は、16パーセントと少なめ。

 今回の調査でも、人への健康影響は明確ではないとの結論になりましたが、動物実験でがんが認められた最少量と日本人の平均推定摂取量が比較的近いことから、「懸念がないとはいえず、できる限り低減に努める必要がある」との評価になりました。

 佐野洋委員長は、「野菜を避ければいいということではない。野菜には栄養があり、食べることで健康によい影響がある。過度の加熱を避けて適切に調理することと、特定の食品に偏らない食生活が大切だ」と述べました。

 2016年2月20日(土)

 

■子供向け雑誌の付録から発がん性物質 集英社と講談社、回収進める

 集英社と講談社が発行する漫画雑誌などの付録の子供向けマニキュアから、発がん性物質のホルムアルデヒドが検出され、2つの出版社はこのマニキュアを使用しないよう呼び掛けるとともに、回収を進めています。

 使用が禁止されている発がん性物質のホルムアルデヒドが検出されたのは、子供向けのマニキュアで、集英社が発行する少女漫画雑誌「りぼん」2015年8月号と、講談社が発行する幼児向け雑誌「おともだちピンク」2014年11月号、少女漫画雑誌「なかよし」2015年1月号に、それぞれ付録として付けられたということです。

 集英社によりますと、昨年8月、読者から「マニキュアをつけた子供の爪が変色した」などの連絡があり、調べたところ、マニキュア「シャイニーネイルカラー」から1グラム当たり60マイクログラムのホルムアルデヒドが検出されたということです。

 これを受けて講談社でも、付録のマニキュア「ピンクマニキュア」と「グリッターネイル」を検査した結果、1グラム当たり40マイクログラムのホルムアルデヒドが検出されました。いずれのマニキュアも中国製で、事前の検査で有害物質は検出されていなかったということです。

 これらの雑誌は合わせて26万部余りが販売されたということで、2つの出版社ではインターネットを通じ、「敏感な体質の人の場合、爪が変色するなどの恐れがある」「健康被害の恐れはないが、アレルギー反応を起こす可能性がある」として、マニキュアを使用しないよう呼び掛けるとともに、回収を始めました。

 2016年2月19日(金)

 

■急性B型肝炎で3人死亡、神戸の病院 院内感染否定できず

 昨年、神戸市内の病院に入院していた3人の患者が相次いでB型肝炎を発症し、死亡したことがわかりました。病院は、院内感染の可能性が否定できないとして、ほかに感染した患者がいないか調べています。

 神戸市北区にある地域医療機能推進機構「神戸中央病院」が、記者会見して明らかにしたところによりますと、昨年7月から8月にかけて同じ病棟に入院していた60歳代の男性、70歳代の男性、90歳代の女性の3人が相次いで急性B型肝炎を発症し、その後、症状が急激に悪化する劇症肝炎を引き起こして、昨年11月から12月にかけて死亡したということです。

 60歳代の男性は、昨年7月に退院した後、10月後半にB型肝炎を発症し、11月初めに亡くなりました。70歳代の男性患者は、昨年8月に退院した後、11月初めにB型肝炎を発症し、11月中旬に死亡しました。さらに、90歳代の女性患者は、昨年7月に手術を受け、翌8月に別の病院に転院した後、11月中旬になってから肝機能の障害を起こし、12月中旬に亡くなりました。

 こうした事態を受けて、神戸中央病院は昨年11月16日に調査を始め、18日に神戸市保健所に報告するとともに、外部の専門家による調査委員会を設けて原因などを調べました。その結果、死亡した3人の患者から検出されたB型肝炎ウイルスの遺伝子がほぼ一致し、さらに同じ時期に入院していた別の患者からも遺伝子がよく似たウイルスが検出されたということです。

 このため病院は、院内感染の可能性が否定できないとして、当時、同じ病棟に入院していたおよそ100人の患者についても、感染の有無を調べる検査を受けるよう呼び掛けています。

 今のところ、ほかの入院患者には、B型肝炎を発症した人はいないということです。

 大友敏行病院長は会見し、「数週間に3人がB型肝炎になった。重大に受け止めている。ご冥福をお祈り申し上げます」と謝罪しました。

 B型肝炎は、血液や体液を通じてB型肝炎ウイルスに感染することで引き起こされます。飛まつや食べ物を通じては感染しないとされています。

 東京大学附属病院の四柳宏准教授によりますと、大人の場合、1カ月から6カ月の潜伏期間ののち、発症すると全身の倦怠(けんたい)感や吐き気、黄疸(おうだん)など急性の症状が出ます。このうち、症状が急激に悪化する劇症肝炎になる人は1パーセントから3パーセントほどといわれ、肝臓の細胞が短期間に大量に壊れるため適切な治療を行わないと高い確率で死に至ります。

 2016年2月18日(木)

 

■インフルエンザ流行が本格化 1週間で推計患者164万人

 厚生労働省は15日、全国約5000の定点医療機関から2月1~7日に報告されたインフルエンザの患者は、1医療機関当たり34・66人となり、全国の推計患者数が1週間で約164万人に上ったと発表しました。

 休校や学年閉鎖、学級閉鎖をした保育所や小中学校などは5995校となり、流行が本格化しました。

 今季のインフルエンザは流行入りが9年ぶりの遅さとなったものの、厚労省は「例年の流行ピークのレベルに達しつつある。引き続き注意が必要だ」としています。

 集計によると、都道府県別で1医療機関当たりの報告数が多かったのは、神奈川県(48・95人)、埼玉県(47・52人)、愛知県(45・24人)、千葉県(44・91人)、福岡県(44・40人)の順。このほか、北海道(43・75人)、沖縄県(42・03人)、新潟県(41・39人)、東京都(39・43人)、長崎県(39・41人)、山口県(38・42人)、茨城県(37・61人)、大分県(37・59人)、山梨県(36・33人)、広島県(35・10人)などで多くなりました。

 すべての都道府県で、前週よりも報告数が増加。計24の都道府県で、警報レベルの30人を超えました。

 推計患者数は、前週の約107万人から約57万人増加しました。年齢別では5~9歳が約40万人と最も多く、次いで0~4歳と10~14歳が各約22万人、40歳代が約19万人となりました。一方で、70歳以上は約6万人でした。

 直近5週間で検出されたウイルスの種類は、2009年に新型インフルエンザとして流行したA型が多く、その次がB型でした。

 2016年2月15日(月)

 

■東京都内でスギ花粉の飛散始まる 過去10年の平均より3日早く

 東京都は15日、都内でスギの花粉が飛び始めたと発表しました。過去10年の平均より3日早く、東京都は「気温の高い日が続きスギの花の開花が早まったため」とみています。

 東京都は都内の12カ所で花粉を観測しており、このうち千代田区と杉並区、八王子市など9カ所で、13日から2日続けて基準を超える数の花粉が観測されたとして、15日「都内でスギ花粉が飛び始めた」と発表しました。

 これは昨年に比べて2日遅いものの、過去10年の平均と比べると3日早いということです。

 また、この春に都内で飛ぶ花粉の量は、花粉が少なかった昨年と比べて1・6倍、例年と比べると1・1倍となる見通しです。さらに、飛ぶ花粉の量が「多い」と分類される日は、23区で36日程度、多摩地域で40日程度と、例年より10日前後多いと見込まれています。

 東京都はホームページで、都内各地の花粉の観測結果や今後1週間でどのくらい花粉が飛散するかをまとめた情報を掲載しており、花粉の多い日に外出する際はマスクやメガネを着用し、洗濯物を室内に干すなど、花粉との接触をなるべく少なくするよう呼び掛けています。

 2016年2月15日(月)

 

■ジカ熱感染が拡大、新たにタイも 35の国と地域で感染を確認

 世界保健機関(WHO)は、中南米を中心に感染が拡大しているジカ熱について、新たにタイを加えるなどした34の国と地域で感染が広がっていることを明らかにしました。

 WHOが12日現在でまとめた最新のデータによりますと、これまでにブラジルやコロンビアなど中南米やカリブ海周辺の26の国と地域、それにサモアやトンガなど太平洋の5つの国と地域、アジアではタイとモルディブと中国の3カ国、アフリカのカボベルデの合わせて35の国と地域で、地元に生息する蚊を媒介するなどしてジカ熱への感染が広がっているということです。

 このうちブラジルでは、患者の数が最大で150万人に上るとみられるほか、疑いの事例も含めると、コロンビアでは2万5000人以上、カボベルデでは7000人以上と推定されています。

 ジカ熱を巡っては、妊娠中の感染と先天的に頭部が小さい小頭症の新生児との関連が指摘されているほか、感染した人が手足に力が入らなくなる難病のギラン・バレー症候群を発症するケースも報告されています。

 WHOは、感染とこれらの症状との関連性を早期に解明し、適切な治療法の開発を急ぐ方針です。

 一方、中国で初めてジカ熱に感染、江西省内の病院に隔離され治療を受けていた34歳男性が14日、全快し退院しました。

 男性は旅行先のベネズエラで1月28日に、発熱や頭痛、めまいなどの症状が出て、現地の病院で治療を受けました。2月2日にベネズエラを出て、香港などを経由して実家のある江西省に戻り、2月6日から現地の病院で治療を受けていました。

 中国の保健当局は、国内でジカ熱の感染がさらに拡大する可能性は低いとの見方を示したといいます。

 2016年2月14日(日)

 

■ジカ熱報告、15日から義務付け 検疫所での検査も可能に

 中南米で流行が拡大し小頭症との関連が指摘されているジカ熱を診断した医師に、感染症法に基づき保健所への報告を義務付ける政令が、15日に施行されます。同日付で検疫法の政省令も施行され、帰国・入国者に対して検疫所による診察や検査も可能になります。

 原因となるジカウイルスの検査結果や、発熱、発疹、結膜炎などの症状をもとにジカ熱と診断した医師は、直ちに報告しなければならず、患者の家族などで症状が出ていない感染者も対象に含まれます。

 また、小頭症の子供が生まれた場合、感染後に免疫の働きでつくられる抗体の検査などで母親が過去に感染していたことが判明すれば、報告します。

 一方、世界保健機関(WHO)は、ジカ熱の症例が報告されている、新生児の頭部が先天的に小さい小頭症などの症状との関連性を、今後数週間以内に解明し、適切な治療法の開発を進めたい考えを示しました。

 中南米を中心にこれまでに33の国と地域で感染の拡大が確認されているジカ熱を巡っては、妊娠中の感染と小頭症の新生児との関連が指摘されているほか、感染した人が手足に力が入らなくなる難病のギラン・バレー症候群を患うケースがブラジルなどで報告されています。

 WHOのキーニー事務局長補は12日、スイスのジュネーブで記者会見し、「今後数週間以内にウイルスと症状の関係を明らかにできる」と述べ、これまでのジカ熱への感染例から、感染とこれらの症状との関連性を解明し、適切な治療法の開発を進めたい考えを示しました。

 また、予防のためのワクチンの開発について、キーニー事務局長補は、世界の約15の企業や学術グループが研究に取り組んでおり、このうちアメリカの国立衛生研究所(NIH)とインドの製薬会社が最も期待できるとしています。

 その一方で、「効果を実証する臨床試験の実施には少なくとも1年半はかかる」との見通しを示し、妊娠している女性に対して感染が流行する地域への渡航の延期を推奨するなど、感染の予防を徹底するよう呼び掛けています。

 2016年2月14日(日)

 

■先駆け審査制度で、脊髄損傷の幹細胞治療を指定 審査期間を半分に

 脊髄(せきずい)を損傷した患者自身の骨髄から採取した幹細胞を使って神経の機能を再生させる治療法について、厚生労働省は10日、画期的な効果が期待できるとして、承認審査の期間を短縮する「先駆け審査指定制度」の対象とすることを決めました。

 脊髄損傷の患者は国内に約20万人いるとされ、リハビリ以外に有効な治療法がほとんどなく、新しい治療法が求められています。

 制度の対象になると、事前調整を進めることで通常1年程度の審査期間を半年程度に短縮するなど、優遇措置を受けられます。

 この幹細胞治療は、札幌医科大が開発。脊髄損傷を対象とした初めての再生医療の臨床試験(治験)が、進められています。患者から骨髄液を数十ミリリットル採取し、神経や骨、筋肉などになる能力を持つ「間葉系幹細胞」を取り出します。1万倍に培養した上、点滴で患者に戻すと、傷付いた神経に集まって、神経の働きを取り戻すといいます。

 治験の成績は明らかにされていませんが、厚労省は「高い有効性を示唆する結果が出ている」といいます。札幌医科大は、2018年までの承認取得を目指しています。

 厚労省によると、脊髄損傷の患者は、交通事故などで年に5000人程度増えています。脳からの支持を伝える神経が傷付くため、手足に重いまひなどの障害が残る場合もあります。

 優れた新薬や医療機器を世界に先駆けて実用化するための先駆け審査指定制度は、2015年に始まりました。今回は札幌医科大以外に、再生医療製品として悪性脳腫瘍のがん細胞だけを殺す東京大の「遺伝子組み換えヘルペスウイルス(G47Δ=デルタ)」、岡山大が開発した心機能を改善する「心臓内幹細胞」、医療機器では京都大、熊本大などが開発した発声障害の治療で使う「チタン製プレート」、腹部の手術をした際、人工甘味料のトレハロースの水溶液を用いて臓器の癒着を防ぐ大塚製薬工場の「癒着防止吸収性バリア」が対象に指定されました。再生医療製品と医療機器の指定は初めて。

 医薬品では昨年10月、インフルエンザ治療薬などが同じ制度の指定を受けています。

 2016年2月13日(土)

 

■不妊治療の医療保険、今春にも解禁へ 高額費用を補完、金融庁

 金融庁は子供が欲しい家庭を支援するため、高額な不妊治療の費用を賄う保険商品を今春にも解禁する方針を固めました。

 政府の1億総活躍国民会議は昨年11月、「希望出生率1・8」の実現に向けた緊急対策として、不妊治療支援の拡充を提言。公的助成の拡大と歩調を合わせ、民間の保険商品の販売を容認することになります。

 金融庁は近く、関連規則の改正案を公表し、1カ月間の意見募集を経て適用します。これを受け、生命保険各社は解禁後に商品設計の具体的な検討に入る見通しです。病気やけがの治療に備える医療保険の特約として付加し、加入後に不妊症と判明すれば保険金を支払う形が想定されます。

 不妊治療は、国や自治体による助成制度があるものの、多くは健康保険の適用外のため、治療を受ける人に数十万円の高額な経済的負担がかかることがあります。このため、公的助成を補完する民間保険会社への期待は大きくなっています。

 首相の諮問機関である金融審議会の作業部会は2013年、不妊治療保険について「高額な費用を経済的に補うニーズもあり、社会的意義も十分認められる」とする報告書をまとめました。ただ、信頼性の高い統計データが少ないため保険料の算出が難しいことや、過去の治療歴を隠す加入者への対策などの課題があり、保険の仕組みについて検討を重ねてきました。

 その結果、不妊治療の費用を賄う医療保険の販売を認可する体制が整ったとして、法令の改正案をまとめました。

 2016年2月11日(木)

 

■4月の診療報酬改定、在宅医療を促す 中医協が答申

 厚生労働相の諮問機関である中央社会保険医療協議会(中医協)は10日、医療機関に支払われる診療報酬の新年度からの改定案を答申しました。患者の健康を日常的に把握する掛かり付けの機能を推進するため、こうした機能を果たす医療機関には診療報酬を加算する一方、掛かり付け機能を十分に果たしていない薬局への診療報酬は減額するなどとしています。

 医療機関に支払われる診療報酬は、新年度の2016年度から、医師の人件費や技術料などの本体部分を0・49パーセント引き上げる一方、薬の価格などの薬価部分は1・33パーセント引き下げ、全体では0・84パーセント引き下げることが決まっています。

 答申によりますと、できるだけ住み慣れた地域や自宅で医療や介護を受けられる「地域包括ケアシステム」を推進するため、患者の健康を日常的に把握する「掛かり付け医」や「掛かり付け薬局」への新たな診療報酬を設け、手厚く加算するとしています。

 小児科の外来で「掛かり付け医」として継続的に患者の診療を行う場合、最大で7120円の「小児掛かり付け診療料」を加算するほか、患者の服薬状況を一元的・継続的に把握し指導を行った際には700円の「掛かり付け薬剤師指導料」を加算するなどとしています。

 一方、特定の病院などの近くにあって処方箋が集中していて、掛かり付け機能を十分に果たしていない、いわゆる大型の門前薬局については、調剤するたびに支払われる410円の「調剤基本料」を、最大で半額以下に減額するとしています。

 また、医療機関の役割分担を進める観点から、看護師の態勢を手厚くして重症患者に対応する病院が増えすぎて医療費を押し上げる一因になっているとして、こうした病院に支払う高い診療報酬の要件を厳しくするとしています。加えて、大きな病院が高度な治療に専念できるようにするため、地域の掛かり付けの診療所などの紹介状のない患者が大病院を受診する場合、初診の際は5000円以上、再診では2500円以上の窓口負担の徴収を義務化するとしています。

 さらに、医療費の抑制に向けて、価格の安い後発医薬品、いわゆるジェネリックの使用を促進するため、現在、原則として新薬の60パーセントとされているジェネリックの価格を50パーセントに引き下げるとしています。

 また、保険が適用される医療機関で必要以上に湿布の処方を求める患者がいることで医療費がかさんでいるとして、1回の処方につき原則70枚までに制限するとしています。一方、薬の飲み残しによる医療費の無駄を減らすため、患者に処方する飲み薬の種類を2種類以上減らした場合、2500円を新たに加算するとしています。

 このほか、医療の充実が求められる分野では診療報酬を加算するとしています。救急医療を充実させるため、診療時間外の夜間や休日に救急搬送の患者を受け入れた際の診療報酬を6000円に増額するほか、地域のがん医療の充実のため、専従の医師が治療に当たる「がん診療連携拠点病院」がない地域でがん治療を行う病院が患者を受け入れた際は3000円を新たに支払うなどとしています。

 この新しい診療報酬は原則、4月から実施し、在宅を中心に住み慣れた地域で医療や介護を受けられる体制をつくり、少子高齢化の中で医療費抑制を目指します。

 2016年2月11日(木)

 

■空の急患、搭乗医師が対応 日航と日医が事前登録制度を導入

 日本航空と日本医師会は、医師が飛行機に搭乗する際、日航側が座席情報などを把握できる「医師の事前登録制度」を導入すると発表しました。飛行中の機内で急病人が出た際、迅速な手当てができるといいます。

 国内の航空会社では初の取り組みで、日医は他社への拡大も検討します。

 登録は任意ですが、日航のマイレージ会員で、日医が発行するICカード型資格証を持つ医師が対象。医師が搭乗手続きをすると自動的に座席情報などを把握し、急病人が出た際は、乗務員が医師に直接救護を依頼します。実際の運用は、2月15日から始めます。

 現在は機内アナウンスで医師や看護師の申し出を呼び掛けていますが、仮に医師らが搭乗している場合でも手当てが始まるまで時間がかかるケースがありました。

 登録した医師への特典として、上級マイレージ会員向けの空港ラウンジを開放します。

 一日約1000便を運航する日航では、医師の対応が必要な急病人が国内線、国際線を合わせて毎年200人以上発生しています。

 日航の加藤淳執行役員は、「機内に緊張感が走らず、乗客も安心できる」といいます。

 海外では、ドイツのルフトハンザドイツ航空が同様の登録制度を導入しています。

 2016年2月10日(水)

 

■「朝食抜き」は要注意、脳出血のリス3割増 がんセンターなどのチーム発表

 朝食を抜くことが多い人は、毎日食べる人に比べて脳出血のリスクが3割以上高まるとの調査結果を、国立がん研究センターや大阪大の研究チームが発表しました。

 岩手県から沖縄県までの8県に住む男女約8万人(45~74歳)を平均で約13年間追跡し、健康状態を調べました。その間、脳卒中(脳梗塞(こうそく)、脳出血、くも膜下出血)を発症した3772人と、虚血性心疾患(心筋梗塞、急性心臓死)を発症した870人について、朝食との関連を調べました。

 朝食を「毎日食べる」から「週に0~2回」まで4段階に分類。「毎日」を基準とした場合、「週に0~2回」は脳出血を起こすリスクが1・36倍、脳卒中全体では1・18倍高くなりました。心疾患では有意差はみられなかったといいます。

 研究チームによると、朝食を抜くと空腹によるストレスなどで血圧が上がることが知られています。高血圧は脳出血の大きな要因で、中でも早朝の血圧上昇がリスクを高めるといいます。早朝は血糖値が低く、臓器や脳の働きが悪い上、自律神経が不安定になり、血管が収縮して高血圧につながります。

 解析をした磯博康・大阪大教授(公衆衛生学)は、「中年以降になっても、朝食を抜くことが脳出血のリスクを高めるなど健康に悪い影響を及ぼす可能性がある。できるだけ朝何か口に入れるよう心掛けてほしい」と指摘しています。

 管理栄養士の岡田あやさんは、「高血圧のリスクを軽減するにはバナナやホウレンソウ、トマトなどを一般的な朝食にプラスするとよいでしょう。これらの食材には、高血圧の原因である体内の塩分を減らす効果があります」とアドバイスしています。

 2016年2月9日(火)

 

■B型肝炎ワクチン、乳児は原則無料の定期接種に 今年10月から、厚労省

 B型肝炎を予防するワクチンについて、厚生労働省は1歳までの乳児を対象に、今年10月から公費で定期接種が受けられるよう制度を見直すことを決めました。5日に開かれた厚労省の専門家の会議で決まったものです。

 B型肝炎は、感染したウイルスを体内に持ち続けるキャリアと呼ばれる状態になると、肝硬変や肝臓がんに進行するおそれがあり、特に乳幼児のころの感染はキャリアになりやすいと指摘されています。

 B型肝炎ウイルスに感染している15歳未満の子供は、厚労省の研究班の調査で4000人に1人程度と推計されていますが、感染予防のためのワクチン接種への補助事業は現在、すべての自治体で行われているわけではなく、対象の年齢や補助の割合などにもばらつきがみられています。

 ワクチン接種について、専門家会議では新たに公費で行うべきだとする意見で一致し、厚労省は政令を改正した上で、今年10月から公費で接種が受けられるよう制度を見直すことを決めました。

 費用は国と自治体が負担することになっており、1歳までの乳児を対象に、原則として生後2、3、7〜8カ月の合わせて3回、ワクチン接種が行われることになります。妊婦がB型肝炎ウイルスに感染していた場合は、子供への感染防止のため生後12時間以内に1回目の接種をしており、定期接種の対象からは除外します。

 B型肝炎ウイルスは、血液や体液を介して感染し、母子感染のほか、性行為や針刺し事故、血液の傷口への接触などで感染するおそれがあります。

 2016年2月7日(日)

 

■加齢による薄毛、コラーゲン減が要因 東京医科歯科大が発表

 年齢とともに髪の毛が薄くなるのは、毛穴の奥にある蛋白質の一種のコラーゲンが減り、毛を生やす器官が縮小するため――。

 東京医科歯科大学の西村栄美教授らの研究チームは、加齢に伴う毛の減少の仕組みをマウス実験で解明しました。人間でも同じような現象が、確認できました。コラーゲンの分解を防ぐ物質を探し出せば、毛髪が薄くなることを防ぐことも期待できます。

 研究成果は、米科学誌サイエンスに5日掲載されました。

 毛を生やすのは「毛包」という器官で、毛包がうまく働かないと、脱毛しやすくなったり、薄毛になったりすることがわかっています。

 研究チームは、毛包の基となる幹細胞が、年を取ると毛包に育ちにくくなる現象に着目。マウス実験では、老化で幹細胞のDNAに傷が残り、「17型コラーゲン」を分解する酵素が多く出るようになっていました。17型コラーゲンが分解されて減少すると、毛包が小さくなることを突き止めました。遺伝子操作でコラーゲンが過剰に出るようにしたマウスでは、同じ年齢の薄毛マウスより毛包の縮小などが抑えられました。

 人の頭皮でも50~70歳代の毛包は20~30歳代より小さく、17型コラーゲンの量も減っていました。研究チームは、マウスと同様の仕組みが働いていると考えられるとしています。

 研究成果は、がんの放射線治療で髪の毛が抜けてしまう患者の治療にも役立つとみられます。

 西村栄美教授は、「加齢で髪の毛が薄くなる仕組みがかなりわかってきた。コラーゲンの減少を抑える治療薬の候補となる物質を探し、数年以内に動物実験を行った上で、人の脱毛を防ぐような治療薬を5~10年で開発したい」と話しています。

 2016年2月7日(日)

 

■ジカ熱、ブラジルで輸血による感染を確認 日本では法律上の感染症に位置付けへ

 蚊が媒介する感染症、ジカ熱の患者が中南米を中心に増える中、ブラジルの保健当局は、輸血によってジカウイルスに感染した症例を確認し、感染の懸念がある国に渡航した人からの献血を制限する動きが広がりそうです。

 胎児への影響も懸念されているジカ熱は、中南米を中心にこれまでに32の国と地域で感染が確認されています。

 ジカ熱は蚊が媒介して感染が広がりますが、ブラジルのサンパウロ州の都市、カンピーナスの保健当局は4日、輸血によってジカウイルスに感染した症例を確認したことを明らかにしました。

 この症例は昨年4月に銃で撃たれた男性が輸血を受け感染したもので、ジカウイルスの感染者が献血した血液が含まれていたことが1月28日、検査によって確認されたということです。輸血を通じてジカウイルスに感染したことが確認されたのは極めてまれだということです。

 世界保健機関(WHO)は、ジカ熱への対策として、デング熱などと同様、感染が懸念される地域を訪れた人からの献血を制限すべきだとする見解を示しており、世界各国でそうした制限の動きが広がりそうです。

 輸血を通じたジカウイルスの感染について、国立感染症研究所の高崎智彦室長は、日本では2004年以降、海外からの帰国後4週間は献血を見合わせる対応が取られているとした上で、「ジカ熱と同じ仲間のウエストナイル熱やデング熱などのウイルスは、熱が下がって1週間ほどたてば血液中からは検出できなくなる。ジカウイルスについては科学的な証明はないが、同じ仲間のウイルスなので4週間もの間隔を空ければ安全だと考えられる」と話しています。

 一方、厚生労働省は3日、中南米などで流行しているジカ熱について、医師に保健所への報告を義務付ける感染症法の「4類感染症」に今月中旬にも指定すると明らかにしました。

 当初、春ごろまでの指定を目指していましたが、WHOが緊急事態を宣言したため、政令改正の手続きを簡略化し指定を急ぎます。検疫法に基づいて検疫所でウイルス検査をできるようにするための政省令改正も、同時に行います。

 4類感染症指定の政令改正では通常、厚労省の専門家会議に諮った上で意見公募を行います。ジカ熱では、専門家の意見は聞くものの、専門家会議の開催と意見公募を省略します。

 2016年2月6日(土)

 

■インフルエンザ患者、1週間で107万人に 1月末、前週比で倍増

 先月25日~31日までの1週間で、全国の医療機関を受診したインフルエンザ患者数は推計で107万人に達したと、国立感染症研究所が5日発表しました。首都圏を始め、新潟県や沖縄県など28の都道府県で警報レベルに達し、鳥取県と愛媛県を除く全国で注意報レベルを超えています。

 国立感染症研究所の最新の調査結果によると、1月31日までの1週間に、定点観測している全国5000カ所の医療機関を受診したインフルエンザの患者の数は、1医療機関当たり22・57人と、前の週に比べて2倍に増えました。

 1医療機関の受診者数をもとに推計した全国の患者数は107万人に達し、前週の52万人から倍増しています。

 1医療機関当たりの患者数を都道府県別にみると、新潟県が最も多く39・44人、次いで沖縄県で34・29人、福岡県31・88人、神奈川県31・64人、埼玉県30・30人、千葉県29・16人、愛知県28・49人などとなっていて、47都道府県のすべてで前週の報告数よりも増加しています。

 このうち、大きな流行が起きているおそれを示す警報レベルに達したのは、28都道府県に上っています。

 年齢別では、5~9歳が約27万人で最多。直近の5週間で検出されたウイルスを分析すると、2009年に大流行した「新型インフルエンザH1N1型」が全体の半数を占めていて、次いでB型が3割、A香港型が2割となっています。

 全国3396の学校や幼稚園などから、休校や学年・学級閉鎖の報告がありました。

 国立感染症研究所では、「今シーズンの患者の推計値が初めて100万人を超えたが、まだピークは達しておらず、今後さらに増えるおそれがある」として手洗いやマスクなどの着用、予防接種などの対策の重要性を訴えています。

 2016年2月6日(土)

 

■34歳以下の若者の禁煙治療容易に 4月から保険適用条件を緩和へ

 厚生労働省は3日、2016年度の診療報酬改定で、喫煙者の「ニコチン依存症」を対象とした「禁煙治療」について、34歳以下の若者に対する公的医療保険の適用条件を緩和することを決めました。

 自己負担が少ない保険適用による禁煙治療で若い世代の喫煙を減らして、肺がんや循環器疾患などを予防し、将来の医療費を抑制するのが狙い。同日の厚労相の諮問機関である中央社会保険医療協議会(中医協)で了承され、4月から適用されます。

 禁煙治療は2006年度から保険適用されており、約3カ月間に5回にわたり禁煙指導を受けるのが標準で、ニコチンを含んだ貼り薬などを処方されます。保険適用の条件の一つに「1日の喫煙本数に喫煙年数をかけた指数が200以上」という基準がありますが、たばこを1日1箱(20本)吸っても喫煙年数が10年を経過しなければ対象にならない計算で、若年層は喫煙年数が足らず保険適用の対象外になるケースが少なくありません。

 このため、2016年度からは保険適用に当たって指数が必要なのは35歳以上に限ると見直し、34歳以下は指数に関係なく保険が使えるようにします。

 医療機関に対しても禁煙治療への取り組みを促すため、患者の平均治療回数が少ない場合は、受け取る「ニコチン依存症管理料」の報酬額にペナルティーを設け、治療が中止になることが多い場合は、診療報酬を減額する方針。

 2016年2月5日(金)

 

■インフルエンザ患者数、52万人に倍増 大流行のおそれも

 インフルエンザの流行が全国的に広がっています。1月24日までの1週間に医療機関を受診した患者の数は、推計で52万人と前の週の2倍以上に増えており、国立感染症研究所は手洗いなどの対策を徹底するよう呼び掛けています。

 国立感染症研究所によりますと、1月24日までの1週間に全国およそ5000の医療機関から報告されたインフルエンザの患者数は、前の週より3万1857人多い5万2226人となりました。これを元に推計した全国の患者の数は、前の週の2倍以上となるおよそ52万人に上るということで、前の週のおよそ23万人から大きく増えました。

 1医療機関当たりの患者の数は平均で10・56人(前週4・11人)となり、今シーズンで初めて注意報レベルの10人を超えました。流行期入りが9年ぶりに年明けとなりましたが、注意報は例年並みの時期に迎えました。

 都道府県別にみますと、新潟県が29・28人、沖縄県が18・22人、青森県が16・45人、千葉県が14・13人、福岡県が13・68人などとなっており、すべての都道府県で前の週より増えています。

 北海道や大阪府など7つの道府県では、大きな流行が起きているおそれを示す「警報レベル」の地域があるほか、41の都道府県で今後4週間以内に大流行の可能性があるとされる「注意報レベル」の地域が出ています。

 国立感染症研究所では、今後も流行がさらに広がるおそれがあるとして、手洗いや症状がある人のマスクの着用など対策を徹底するよう呼び掛けています。

 2016年2月4日(木)

 

■ジカ熱、WHOが緊急事態宣言 外務省は渡航注意を呼び掛け

 胎児への影響も指摘され、中南米を中心に感染が急速に拡大しているジカ熱について、世界保健機関(WHO)は感染がほかの地域にも広がるおそれがあるとして、「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」を宣言しました。

 蚊が媒介する感染症、ジカ熱の患者が中南米を中心に急速に広がっていることを受けて、WHOは日本時間の1日夜から、各国の専門家を電話でつないで緊急の委員会を開き、対応を協議しました。

 その結果について、WHOのチャン事務局長が日本時間の2日未明、スイスのジュネーブにある本部で記者会見し、国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態を宣言しました。感染症への警戒を呼び掛ける緊急事態は、これまでに、2009年の豚インフルエンザのほか、一昨年、ポリオやエボラ出血熱の感染が拡大した際に出されています。

 WHOによりますと、ジカ熱は昨年5月にブラジルで感染が確認されてから、これまでに中南米を中心に25の国と地域に広がり、感染者は今後400万人に上るおそれがあるとしています。

 ジカ熱は、新生児の脳が先天的に小さく、脳の発達に遅れがみられる「小頭症」とのかかわりも指摘されていますが、予防のワクチンなどはありません。小頭症とのかかわりについてWHOのチャン事務局長も会見で、「科学的にはまだ証明されていないが強く疑われる」と述べました。

 また、チャン事務局長は、「妊娠している女性は感染が拡大している地域への渡航を延期することが望ましい」と述べた上で、「やむを得ず渡航する場合は、長袖や長ズボンを着用し、外出を控えるなど対策を講じてほしい」と呼び掛けるとともに、各国に流行の拡大を防ぐための措置を徹底するよう勧告しました。

 WHOが緊急事態を宣言したことについて、感染症の問題に詳しい国立国際医療研究センターの大曲貴夫国際感染症センター長は、「日本国内には、ジカ熱の患者はいないし、感染が拡大するおそれがあるわけでもない。ただ、今回のWHOの宣言を受け、ブラジルなどの流行地に渡航するかどうかをより慎重に考えるタイミングに来ている。特に妊婦については本当に必要な渡航なのかをしっかりと考えた上で、控えるという選択肢も検討することが望ましい。また流行地に向かう方は肌の露出を控え、虫よけスプレーを使うなどして蚊に刺されない対策を徹底してほしい」と話しています。

 ジカ熱を巡り、WHOが緊急事態宣言を出したことを受けて、外務省は2日午後、「感染症危険情報」を出し、ブラジルやメキシコなど、感染が確認されている国や地域へ渡航したり滞在したりする場合には、十分注意するよう呼び掛けています。特に、妊娠している女性や、妊娠を予定している女性は、渡航や滞在を可能な限り控えるよう求めています。

 2016年2月3日(水)

 

■健康女性、自分の凍結卵子で出産 国内初、大阪の44歳

 大阪府内の健康な女性があらかじめ凍結保存して置いた自分の卵子を使って昨年、出産していたことが2日、わかりました。卵子の凍結はがん治療などの際に行われることがありますが、健康な女性で行われ、出産に至るのは国内初とみられます。

 大阪市西成区の診療所「オーク住吉産婦人科」によりますと、出産したのは大阪府内に住む44歳の健康な女性看護師で、独身だった4年ほど前からこの診療所で卵子を複数回にわたり採取して、凍結保存していたということです。

 その後、結婚してから41歳当時に凍結した卵子を解凍、夫の精子を使って体外受精を行い、昨年5月に女の赤ちゃんを出産しました。女性は仕事が多忙で、結婚の予定もなかったものの、将来の出産を希望していたということです。

 健康な女性の卵子の凍結保存は、女性の晩婚化が進む中で広がっているとみられますが、日本産科婦人科学会は昨年、卵巣出血などを起こすおそれがあり、胎児への影響が不明などとして、健康な女性には基本的に推奨しないとする見解をまとめています。また、日本生殖医学会は、健康な女性にも認めるガイドラインをまとめていますが、40歳以上は推奨できないなどの条件を付けています。

 オーク住吉産婦人科の船曳美也子医師は、「仕事などの理由で高齢になってから出産せざるを得ない女性にとって、少しでも選択肢が広がることには意味があるのではないか」と話しています。

 日本生殖医学会の元理事長で慶應義塾大学の吉村泰典名誉教授は、「仕事の都合や結婚相手がいないといった理由で卵子を凍結したいという女性からのニーズがあるのは理解できる。ただ、凍結卵子を使っても必ずしも出産できるわけではなく、また、高齢になってからは、体へのリスクも高まるため推奨すべきとは考えていない。まずは出産適齢期に女性が子供を産める社会をつくることが大切だ」と話しています。

 2016年2月2日(火)

 

■高温調理で発生するアクリルアミド、摂取減らす必要 食品安全委員会が報告案

 イモなどの炭水化物を高温で調理すると発生する化学物質「アクリルアミド」について、国の食品安全委員会の作業部会は「できるだけ摂取量を減らす必要がある」とする報告書の案をまとめました。

 「アクリルアミド」は、イモなどの炭水化物を含む食品を高温で調理した際に自然に発生する化学物質で、2002年以降、海外で動物実験の結果から発がん性が指摘されています。

 国の食品安全委員会の作業部会では、日本人の食生活におけるアクリルアミドのリスクを5年にわたって検討してきましたが、1日、報告書の案をまとめました。

 それによりますと、日本人の1日当たりの平均の摂取量は、体重1キログラム当たりおよそ0・2マイクログラムで、これは動物実験で発がん性が確認されている量と比べておよそ1000分の1だったということです。

 ただ、人の健康への影響はまだわかっていないことも多く、リスクがないと判断できるデータはないなどとして、報告書案では「できるだけ摂取量を減らす必要がある」としました。

 食品安全委員会によりますと、日本人では油で揚げたジャガイモや炒めたもやしなど野菜からの摂取が多かったということで、長時間、高温で揚げるなどしないことや、野菜を調理前に水にさらすなどすることで、量を減らすことができるとしています。アクリルアミドは、食品を高温で加熱することによってできるため、加熱していない生の食品には含まれていません。

 食品安全委員会では今後、パブリックコメントなどを行った上で正式に報告することにしています。

 食品安全委員会の姫田尚事務局長は、「アクリルアミドは家庭でも減らす工夫ができる。何よりも健康のためにはバランスのよい食事を心掛けてもらいたい」と話しています。

 2016年2月2日(火)

 

■喫煙シーンある映画、年齢制限を WHOが各国に勧告

 世界保健機関(WHO)は1日、喫煙シーンのある映画が未成年者の喫煙を助長しているとの報告書を発表し、年齢制限を設けるなどの措置を取るよう各国に勧告しました。

 WHOによると、たばこの広告の規制が世界各国で強まる一方で、映画やテレビドラマの喫煙シーンへの規制は世界的にほとんど存在せず、たばこの健康被害への認識がない若者らが映画を見て、喫煙始めることが多いといいます。

 アメリカで喫煙を始めた青年の37パーセントが、映画が切っ掛けだったとの調査結果もあります。2014年のハリウッド映画のうち、44パーセントに喫煙シーンがありました。

 WHOは、喫煙シーンがある映画やテレビドラマなどを放映する前に、禁煙広告を流すことなども勧告しました。

 喫煙シーンを巡っては、NPO法人「日本禁煙学会」が2013年、宮崎駿監督のアニメ映画「風立ちぬ」に喫煙場面が多いとして、スタジオジブリに配慮を求める文書を送付。インターネット上で議論が巻き起こりました。

 2016年2月1日(月)

 

■E型肝炎の患者、昨年212人 2003年以降で最多 

 おう吐やけん怠感などの症状が出て、最悪、死に至ることもある「E型肝炎」の患者が昨年1年間に200人を超え、2003年に統計を取り始めて以降最も多くなったことがわかりました。

 E型肝炎は、動物の生肉を食べることなどで起きるウイルス性の感染症。おう吐やけん怠感などの症状が出で通常1カ月ほどで治りますが、妊婦や免疫力が低下した人の場合は症状が急激に悪化し、最悪、死に至ることもあります。

 国立感染症研究所によりますと、昨年1年間に全国の医療機関から報告された患者の数は212人で、2003年に統計を取り始めて以降、最も多くなりました。

 都道府県別では、北海道が41人と最も多く、次いで東京都が39人、千葉県が17人、神奈川県が12人、群馬県が11人などとなっています。

 原因の1つと考えられている豚肉の生肉については、厚生労働省が昨年6月から飲食店での提供を禁止するなどの対策を取っています。

 国立感染症研究所の石井孝司室長は、「妊婦や免疫力の低下している高齢者は特に注意が必要だ。豚肉などを調理する際は十分加熱してから食べるようにしてほしい。また生肉を触ったはしや皿で食事をすることは避けてほしい」と話しています。

 2016年1月31日(日)

 

■心の病気による休職者、半数近い企業で増加 減少した企業は1割余り

 大手生命保険会社のアンケート調査で、うつ病など心の病気で仕事を休んだ従業員の数がこの5年間で増えたと答えた企業は、半数近くに上ることが明らかになりました。

 この調査は、日本生命が昨年の夏にかけて、従業員が1000人以上の企業を対象にアンケート形式で行い、566社から回答を得ました。

 それによりますと、心の病気で長期間、仕事を休んだ従業員の数がこの5年間で「増えている」と答えた企業は、48・2パーセントで半数近くに上りました。

 仕事を休んだ従業員の数が「増えている」と回答した企業の割合を有給休暇の消化率ごとにみると、有給休暇の平均消化率「20パーセント未満」の企業では65・5パーセント、「40~60パーセント未満」の企業で48・4パーセント、「80パーセント以上」では39・0パーセントとなっており、有給休暇を取得できない企業ほど従業員の精神的な健康状態が悪化しやすいという結果が現れています。

 また、企業が取り組んでいるメンタルヘルス対策について聞いたところ、管理職への研修や相談窓口の設置を挙げた企業がそれぞれ70パーセント以上に上ったほか、従業員のストレスの度合いを確認する「ストレスチェック」に先月の義務化前から取り組んでいた企業が半数近くを占めていました。

 しかし、こうしたメンタルヘルス対策を実施している企業のうち、心の病気で仕事を休む人が減ったと答えた企業は11・2パーセントにすぎませんでした。

 一方、職場への復帰に先立って、まず社外の施設で訓練を行う取り組みを行っている場合、仕事を休む人が減った企業は20パーセント以上となっています。

 調査した日本生命は、「高い効果が出ているので、こうした取り組みを企業は取り入れていくべきではないか」としています。

 2016年1月31日(日)

 

■がん新薬で重い糖尿病を発症 厚労省が注意呼び掛ける

 皮膚がんなどの治療薬を投与された患者が重い糖尿病を発症していたことがわかり、厚生労働省は薬の投与との因果関係が否定できないとして、医療機関などに対し注意を呼び掛けています。

 注意を呼び掛けている薬は、大阪市に本社がある小野薬品工業が製造・販売する「オプジーボ」(一般名ニボルマブ)で、皮膚がんや肺がんの治療薬として使われています。

 厚労省によりますと、今年1月までの1年半の間にこの薬を投与された患者7人が重い1型糖尿病を発症し、このうち50歳代から70歳代の患者4人については薬の投与との因果関係が否定できないということです。

 厚労省は医療機関や日本医師会、日本糖尿病学会、自治体などに対して、患者に発熱や体重の減少などの症状が現れ、重い糖尿病を発症する副作用が疑われる場合は、薬の投与を中止するなど注意を呼び掛けています。

 オプジーボは、新しい仕組みで免疫細胞ががんを攻撃する力を強める治療薬で、添付文書は2015年11月にすでに改訂済みなものの、同12月に肺がんにも適用が拡大され使用患者の増加が見込まれることから、医療機関などに適切な対応を求めました。

 小野薬品工業は、「薬が安全に投与されるよう医療機関に情報を提供していきたい」と話しています。

 2016年1月31日(日)

 

■スギ花粉、関東南部や九州などで2月上旬から飛散 環境省が予測を発表

 環境省は今シーズンのスギ花粉の飛散時期の予測を発表し、関東南部や九州など早いところでは2月上旬にも飛散を始め、2月下旬以降にピークを迎えるとして、対策を呼び掛けています。

 環境省は、2月は全国的に気温の上昇が見込まれているとして、早いところでは2月上旬にもスギの花粉が飛び始めると予測しています。

 具体的には、2月上旬に九州と四国の大部分、中国・近畿・東海・関東の南部、2月中旬には中国・近畿・東海・関東の大部分と四国・北陸・甲信の一部など、2月下旬には北陸の大部分と甲信の一部、東北の南部などで飛散の開始が見込まれています。

 また、3月上旬には北陸の一部と東北の中部、3月中旬以降に東北北部から北海道にかけて飛散が始まる見通しです。

 飛散のピークは、九州と中国の一部、東京・神奈川などで2月下旬、中国の大部分と近畿・北陸の全域、東海・関東の一部、それに東北南部で3月上旬、四国・東海・甲信・東北の一部で3月中旬、四国の大部分と東海の一部、東北北部で3月下旬となる見込みです。

 ヒノキを含めた花粉の量でみますと、九州・四国・中国の大部分で、夏の日照時間が長く、気温も高かったことなどから、昨年に比べてかなり多くなる見込みで、広島県でおよそ7倍、福岡県や高知県でおよそ4倍になると予測されています。関東や近畿などは、昨年並みとなる見込みだということです。

 環境省は、「内側にガーゼを当てたマスクや眼鏡を着用したり、洗濯物を屋内に干したりして対策してほしい」と呼び掛けています。

 2016年1月30日(土)

 

■ジカ熱感染者、中南米を中心に400万人に上る見込み WHOが報告

 世界保健機関(WHO)は28日、ブラジルなど中南米を中心に、新生児の小頭症との関連が疑われる感染症「ジカ熱」について、感染者の規模は最大で400万人に上る恐れがあることを明らかにしました。

 WHOは近く緊急の委員会を開いて、「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」に当たるかどうか検討することにしています。

 蚊が媒介する感染症のジカ熱は、昨年5月にブラジルで感染が確認され、中南米を中心に流行が拡大しています。

 WHOは28日、スイスのジュネーブにある本部で会合を開き、ジカ熱の状況について協議。この中で、WHOの担当者などから、これまでに23の国や地域で感染が確認されているほか、ジカ熱には今のところ予防のためのワクチンがなく、開発には時間もかかるため、感染の規模は300万人から400万人に上る恐れがあることが報告されました。

 ブラジルでは、先天的に頭部が小さく、脳の発達に遅れが見られる小頭症の新生児が急増し、およそ4000件が報告されており、妊娠中のジカ熱への感染との関連が指摘されています。

 これについて、WHOのチャン事務局長は、「関連があるかどうか科学的な検証を待たずに、すぐに行動に移す必要がある」と述べ、対策を急ぐ考えを示しました。

 WHOがジカ熱の感染の規模が400万人に上る恐れがあるとしたうち、150万人に上る恐れがあるブラジルでは不安が広がっています。

 ブラジルではジカ熱が昨年5月に北東部の州で感染が確認された後、全土に広がり、保健省によりますと、これまでに首都ブラジリアと、27ある州のうち19の州で感染が確認されているということです。

 このうち、サンパウロ近郊の都市、サンカイターノドスールにある病院では、ジカ熱の流行に対応するため、急きょ2週間前から週に2回、蚊に接触しないための方法を教える講習会を始めました。

 28日も出産を控えている妊婦やその夫などおよそ20人が集まり、長袖の服を着用することや防虫剤を使用することなどの説明を受けていました。

 妊娠5カ月目だという女性は、「以前、デング熱にもかかったことがあるので、今回もとても心配です。妊娠した当初から防虫剤を塗っています」と話していました。また、この病院の医師は、「ジカ熱に関する問い合わせが相次いでいる。完璧な対策はなく、予防策しかない」と困惑した様子で話していました。

 ブラジル政府は感染者が出たスラム街に加え、リオのカーニバルやオリンピックの会場となっている地域で消毒を進めています。さらに、今後、およそ22万人の軍の部隊を各地に派遣し、蚊の駆除に乗り出すことを決めました。

 2016年1月30日(土)

 

■特定機能病院に、全死亡事例の報告義務化へ 4月から、厚労省

 厚生労働省は28日、大学病院など高度医療を提供する「特定機能病院」の安全対策強化を目的とした新たな承認要件を取りまとめました。

 事故かどうかにかかわらず、患者の全死亡事例を院内の医療安全管理部門に報告するよう義務付けることが柱。必要に応じて検証を実施した上で、病院長への報告も求めています。安全性が確立されていない難しい手術を行う際は、複数の医師が審査することなどを特定機能病院を承認する際の要件として、新たに義務付けることを決めました。病院と利害関係のない第三者が過半数を占める監査委員会の設置も、規定しました。

 特定機能病院は、高度な医療を行っていることを厚労省が承認する制度で、診療報酬に一定の額が加算される優遇措置を受けることができます。

 しかし、承認を受けていた群馬大学医学部附属病院や東京女子医科大学病院で、2014年に相次いで発覚した患者が死亡する医療事故を受け、厚労省は昨年、専門家による特別チームを設け、特定機能病院の在り方を検討していました。

 4月にも省令を改正し、現在、特定機能病院として承認を受けている全国84カ所の特定機能病院に対して、経過措置期間内の要件順守を求めます。

 2016年1月29日(金)

 

■歩行を助けるロボットを使った治療、保険適用を承認 ALSや筋ジス患者ら対象

 中央社会保険医療協議会(中医協)は、全身の筋力が低下した難病患者が装着し、歩行機能の改善を図る医療用ロボットを使った治療について、改善効果が認められたなどとして、保険を適用することを承認しました。

 保険が適用されることになったのは、全身の筋肉が徐々に動かなくなる筋委縮性側索硬化症(ALS)や筋ジストロフィー、脊髄性筋委縮症などの難病で筋力の低下した患者が下半身に装着して歩行機能の改善を図る医療用ロボットを使った治療で、27日の中医協の総会で、改善効果が認められたなどとして承認されました。

 この医療用ロボットは、患者が装着して足を動かそうとする際に、脳から太ももやひざの皮膚の表面に流れるわずかな電気信号を感知し、モーターで両足に装着した器具を動かすことで、患者の歩行や立ったり座ったりする動作を補助するものです。

 体に装着して使用する医療用ロボットによる治療への保険適用はこれが初めてで、今年4月から保険が適用されることになります。

 2016年1月28日(木)

 

■厚労省、妊婦の渡航に注意喚起 中南米でジカ熱が流行

 厚生労働省は、夏にリオデジャネイロ五輪が開かれるブラジルなど中南米を中心に、新生児の小頭症との関連が疑われる感染症「ジカ熱」が流行しているとして、各都道府県などに症状が疑われる患者が出た場合の情報提供を求める通知を出し、妊婦の渡航に関して注意喚起しました。

 厚労省などによると、ジカ熱はウイルスを持つ蚊によって感染する病気。3~12日の潜伏期間を経て、軽い発熱や、頭痛、関節痛などの症状が出ます。症状は2~7日程度続きます。

 昨年5月以降、中南米でジカ熱の感染が広がり、特にブラジルでは昨年1年間に少なくとも49万人が感染したと推計されており、最終的な感染者は50万~150万人に達するとみられています。

 先天的に頭部が小さく、脳の発達に遅れがみられる小頭症の新生児も、ブラジルで急増。昨年10月から今年1月までに、3500人以上の症例が報告され、妊娠中の女性がジカウイルスに感染したことが原因との見方が強まっています。

 感染者が2番目に多い隣国コロンビアでは、流行が落ち着くまで女性は妊娠を控えるよう政府が勧告を出しました。これまで小頭症の報告はないものの、今後は450人~600人に上る可能性があるといいます。

 汎米(はんべい)保健機構(PAHO)によると、中南米・カリブ諸国でジカ熱の感染者が報告されているのは21カ国・地域。危機感を持つ中南米の各国は、妊娠中の女性に注意を呼び掛けるとともに、予防対策に本腰を入れ始めました。

 また、イギリスでは、南米のコロンビア、スリナム、ガイアナから帰国した旅行者3人が、ジカ熱に感染したことが確認されています。

 このため、厚労省は妊娠中の女性はジカ熱の流行地域への渡航を慎重に検討するとともに、渡航の際は長袖のシャツや長ズボンを着用し、虫よけスプレーを使用するなど、蚊に刺されないよう注意を呼び掛けています。

 厚労省は、「流行地域から帰国した後に症状が出た場合は、最寄りの保健所に相談してほしい」としています。

 2016年1月27日(水)

 

■はしか患者、2008年以降最低の35人 すべて海外からの持ち込み

 国立感染症研究所は25日、国内のはしか(麻疹)の患者数が昨年は35人で、現在の形での集計が始まった2008年以降、最低だったと厚生労働省の専門家会議に報告しました。

 はしかは、世界保健機関(WHO)が日本国内に土着するウイルスによる感染が確認されず、患者数が人口100万人当たり1人を下回っている「排除状態」と認定しており、昨年の35人も海外から持ち込まれたウイルスによるとみられます。

 専門家会議では、排除状態の維持のため、予防接種の普及啓発を続ける方針を確認しました。

 一方、風疹も2020年度までの排除を目指しますが、2012~2013年には予防接種を受けていない成人男性を中心に大規模な流行が発生し、45人の先天性風疹症候群が報告されました。

 2016年1月26日(火)

 

■タイで2例目のMERS感染確認 中東オマーンから入国の男性

 タイ政府は、中東のオマーンから入国した70歳代の男性が重い肺炎などを引き起こす中東呼吸器症候群(MERS)コロナウイルスに感染したと発表し、男性との接触が疑われる人に感染の兆候がないか調べています。

 タイの保健省によりますと、感染が確認されたのは中東オマーンの71歳の男性で、熱やせきの症状が治まらないため、今月22日に家族と共に診察を目的にタイに入国したということです。

 男性は、治療に訪れた首都バンコクの病院で行われた検査で、MERSコロナウイルスの感染が確認されました。男性は23日現在、バンコク近郊に隣接するノンタブリ県の別の病院で隔離治療を受けていますが、容体は安定しているということです。

 タイでMERSコロナウイルスの感染者が確認されたのは昨年6月以来2例目で、別のオマーンの75歳の男性が治療を受けて回復。保健省は翌7月に制圧を宣言していました。

 タイの保健省は、男性と一緒に行動していた息子も隔離しているほか、タイに向かう旅客機の中で男性の近くに座っていた人、それに病院の関係者など、合わせて37人に男性との接触が疑われるとして、連絡を取るとともに感染の兆候がないか調べています。

 韓国では昨年、MERSコロナウイルス感染が拡大して36人が死亡し、国中がパニックに陥りました。

 2016年1月25日(月)

 

■冬の入浴、ヒートショックで命の危険も 急激な温度差に注意

 高齢者を中心に冬場に目立つ入浴中の事故で、安全な入浴法である「湯温41度以下、10分未満」を守っている人は4割だったことが、消費者庁の調査でわかりました。

 入浴中の溺死(できし)者は増える傾向にあり、消費者庁は注意を呼び掛けています。

 消費者庁は昨年12月、自宅に浴槽がある55歳以上の3900人を対象にして、入浴方法についてインターネットを通じてアンケートをしました。

 安全とされる湯温41度以下の入浴と回答したのは59パーセント、入浴時間を10分未満としたのは67パーセントで、両方を満たしていたのは42パーセントでした。

 入浴中に気を付けていることとして、全体の37パーセントが「熱い湯につからない」と回答しましたが、26パーセントは湯温42度以上で入浴をしていました。

 浴槽での溺死は、入浴時などの急激な温度差が原因となって、血圧が急激に変動するヒートショックが切っ掛けになる心筋梗塞(こうそく)や脳梗塞が主な原因といいます。

 ヒートショックが起きるメカニズムは、①まず、脱衣所が寒いと血圧が上昇する、②また、浴室が寒いとさらに血圧は上昇、③そして浴槽に入ると、熱さのために交感神経が緊張して、さらに血圧は上昇する、④その後、浴槽内で体が温まると血管が広がって、血圧が急激に下がる。この変動が大きな問題を起こします。

 厚生労働省の人口動態統計によると、家庭の浴槽での溺死事故は2014年に4866人で、10年前から約1・7倍に増加。うち91パーセントが65歳以上でした。

 消費者庁は、「高齢者の増加が溺死の増加につながっており、正しい入浴方法を知ってもらいたい」としています。

 消費者庁のまとめによる安全な入浴方法は、①入浴前に脱衣場を暖める、②浴槽にお湯を張る時はシャワーからお湯を張って浴室全体を温める、③湯温は41度以下、湯につかる時間は10分未満に、④浴槽から急に立ち上がらない、⑤飲酒、食事直後の入浴は控える、⑥入浴する前に同居者に一声かける。

 2016年1月24日(日)

 

■糖尿病、歩いて予防を 1日30分未満でリスク1・23倍

 1日に30分も歩かない人は、2時間以上歩く人に比べ、糖尿病になっている可能性が1・23倍高いとの疫学調査の結果を、国立がん研究センターの研究チームが21日発表しました。

 適度な運動が糖尿病予防になることは知られていますが、運動の中でも実践しやすい歩行に注目して、日本人の糖尿病リスクとの関係を明らかにしたのは初めて。

 研究チームは、「活動量が少ない生活は糖尿病のリスクが高い」としています。長時間歩けばリスクが下がるかどうかは、わかっていません。

 研究チームは1998〜2000年度、男女2万6488人を対象に糖尿病の有無を血液検査で調べ、自覚がないまま糖尿病を発症していた1058人について分析。

 その結果、1日2時間以上歩く人に比べ、30分未満しか歩かない人は1・23倍も多く糖尿病にかかっていました。30分以上2時間未満歩く人と比べると、明確なリスクの差はありませんでした。

 厚生労働省は生活習慣病予防のために、男性は1日平均で9200歩程度、女性は8300歩程度を目安に歩くよう呼び掛けています。1000歩を歩くには、約10分間要します。

 研究に当たった東海大医学部付属八王子病院の壁谷悠介講師は、「歩行時間が長いほうが、健康的な生活を送れる可能性が高いことが示された。自分の生活様式に合わせて無理のない運動を取り入れてほしい」と話しています。

 2016年1月22日(金)

 

■おたふく風邪、全国的な流行の兆し 4年半ぶり

 流行性耳下腺炎、いわゆる、おたふく風邪の患者が増えており、国立感染症研究所は「全国的な流行の兆しがある」として、手洗いやワクチンの接種など対策の徹底を呼び掛けています。

 おたふく風邪は子供を中心に流行するウイルス性の感染症で、2~3週間の潜伏期間後、発熱や耳の下のはれなどを引き起こし、物をかむ時にあごが痛むことが多いのが特徴ですが、無菌性髄膜炎や脳炎などを伴ったりすることがあるほか、1000人に1人ほどの割合で難聴になるとする報告もあります。

 国立感染症研究所の19日の発表によりますと、1月4日から10日までの1週間に全国およそ3000の小児科の定点医療機関から報告された患者数は3771人で、一医療機関当たりの患者数は1・2人となっています。おたふく風邪は、およそ4年に1回の周期で流行を起こすと考えられており、定点医療機関当たりの患者数が1人を超えたのは、2011年7月以来で4年半ぶりだということです。

 都道府県別にみますと、佐賀県で5人、宮崎県で4・23人、石川県で3・31人、沖縄県で3・21人、山形県で2・5人、福岡県で2・46人、熊本県で2・18人、北海道で2・15人、千葉県で1・77人、茨城県で1・73人などとなっています。

 国立感染症研究所の砂川富正室長は、「去年から患者が増加していて全国的に流行する兆しがみられる。春から夏にかけ患者数が増える傾向があるので今後、注意が必要だ。手洗いやうがいなどの基本的な対策のほか、ワクチンの接種などもしてほしい」と話しています。

 小学校や保育所などの教育施設での集団発生も報告されており、患者が増加傾向の佐賀県や石川県などの自治体では注意報を発令し、手洗いやうがいの徹底に加えワクチン接種を検討するよう促しています。

 発熱には鎮痛解熱剤の投与を行うなど、治療は基本的に対症療法で、ワクチンの接種が有効な予防方法とされています。

 2016年1月22日(金)

 

■がん患者、10 年後の相対生存率58パーセント 3万5000人を調査

 国立がん研究センターの研究班は、全国3万5000人の患者のデータを基に、がん患者全体の10年生存率は58・2パーセントだったとする調査結果を公表しました。

 国立がん研究センターの研究班は、2002までの4年間にがんと診断された全国の患者3万5000人(5〜94歳)のデータを基に、28種類のがんについて、診断から10年後の相対生存率をまとめました。

 その結果、がん患者全体の10年後の相対生存率は、58・2パーセントでした。5年後の相対生存率と比べ、5ポイント近く低下していました。

 また、部位別にみますと、胃がんでは69パーセント、大腸がんでは69・8パーセントで、それぞれ5年後の相対生存率と比べ、胃がんは1・9ポイント低下、大腸がんは2・3ポイント低下していました。

 一方、肝臓がんの10年後の相対生存率は15・3パーセント、乳がんは80・4パーセント、肺がんは33・2パーセントで、それぞれ5年後の相対生存率と比べ、肝臓がんは16・9ポイント低下、乳がんは8・3ポイント低下、肺がんは6・3ポイント低下していました。

 がんの相対生存率は、これまで診断から5年後のものが発表されていますが、国内で大規模な患者のデータを基に10年後の相対生存率が公表されたのは初めてだということです。

 集計を行った群馬県衛生環境研究所の猿木信裕所長は、「がんの種類によっては、治療後のフォローが5年でよいものと、ずっとみていかなければいけないものがあることが、データとしてみえるようになったのは大きいと思う」と話しています。

 データを見ることができる、全国がん(成人病)センター協議会のアドレスは、http://www.zengankyo.ncc.go.jp/

 2016年1月21日(木)

 

■発熱で体のまひ、全国で66人に増加 子供中心、エンテロウイルスか

 昨年の夏以降、原因不明の体のまひを訴える子供が相次ぎ、一部から「エンテロウイルスD68」が検出された問題で、体のまひを訴える患者は26の都府県で5歳以下の子供を中心に66人に上ることがわかりました。

 国立感染症研究所は、体のまひの程度や治療によって改善したかなど、詳しい実態調査を始めることになりました。

 この問題は、昨年8月以降、発熱やせきなどの症状の後、原因不明の体のまひを訴える子供が相次いで見付かったもので、風邪に似た症状を引き起こすことがある「エンテロウイルスD68」が患者の一部から検出され、その関連が疑われています。

 国立感染症研究所が全国の病院を対象に調べたところ、体のまひを訴える患者は5歳以下の子供を中心に、昨年10月時点の47人から12月3日までに66人に増え、20歳代から50歳代の人も含まれることがわかりました。

 このため国立感染症研究所などの研究グループは、体のまひの程度や治療によって改善したのかなど、詳しい実態調査を行うことになりました。研究グループでは、治療によって症状が改善した患者もいることから、今月いっぱい情報を収集し、今年春までに治療方法についての検討をまとめたいとしています。

 研究グループの福岡市立こども病院の吉良龍太郎医師は、「今もまひが残る患者が多いと考えられる一方、程度の差はあるが、多少症状が改善した子供さんもいるので、いつ、どんな方法で治療を行えば最も効果的なのかを探っていきたい」と話しています。

 2016年1月20日(水)

 

■化血研、110日間の業務停止処分始まる 過去最長、5月6日まで

 血液製剤やワクチンの国内有力メーカー「化学及(および)血清療法研究所」(化血研)が、国の承認と異なる方法で血液製剤を不正製造していた問題で、医薬品医療機器法(旧薬事法)に基づく110日間の業務停止処分が18日、始まりました。

 停止期間は過去最長で、5月6日まで。製造する35製品のうち、やけどの治療用など8製品について、化血研は製造販売ができなくなります。

 この日は午前9時前、熊本市北区の化血研に、厚生労働省の担当者5人が訪れ、業務停止対象製品に関係する製造ラインや保管庫、事務スペースなど数カ所に「封かんの証」や「立入禁止」と書かれたシールを貼って回りました。

 インフルエンザワクチンや血友病患者向けの血液製剤など医療上の必要性が高く、代替品のない27製品は、対象外になっています。対象外のものを含めた35製品の営業行為は停止されるため、医薬営業部門のフロアは、立ち入りが一切できなくなりました。

 化血研によると、業務停止期間中、業務停止製品にかかわる職員やパート従業員たちは自宅待機ではなく、他製品への製造応援やコンプライアンス研修などに参加します。

 化血研は、「処分内容を厳粛に受け止めており、関係する方々に深くおわび申し上げる。今後、再発防止に向け真摯(しんし)に取り組み、社会からの信頼回復に誠心誠意努めていく」とコメントを出しました。

 化血研に対し、厚労省は事業譲渡を含めた組織体制の抜本的な見直しを求めています。ただ、血液製剤は国内自給が原則とされます。塩崎厚労相は18日の国会で、「外資系企業が化血研の製造に取って代わることを全く考えていない」と述べ、事業譲渡などを行う場合でも相手先は国内メーカーが望ましいとの見方を示しました。

 2016年1月18日(月)

 

■不妊治療への助成拡大へ、初回上限は30万円に倍増 厚労省

 厚生労働省は、不妊治療にかかる費用の助成を拡大することを決めました。初回の治療に限って助成額の上限を現行の15万円から30万円に引き上げ、無精子症などの男性が手術で精子を採取した場合には新たに1回につき15万円を上限に助成します。

 安倍晋三首相が掲げる「1億総活躍社会」の実現に向けた施策の一つで、今年度補正予算の成立後、早ければ1月末にも実施します。

 不妊治療は公的医療保険の対象外で、厚労省によると、体外受精や手術での精子採取はそれぞれ1回30万円程度かかるといいいます。現在、体外受精でないと妊娠が難しい夫婦を対象に、夫婦の所得が計730万円未満ならば、体外受精1回につき15万円を上限に計6回、2013年度以前から受けている場合などは計10回まで助成しています。

 今回の拡大では、所得制限や妻の年齢制限などは変わりません。初回の上限額を30万円に手厚くするのは、1回目の費用をほぼカバーでき、不妊治療を始めやすくする狙いがあります。精子採取への新たな上限15万円の助成は、体外受精のために手術を受けるたびに従来の助成に上乗せされます。

 今年度補正予算案に7億円、来年度予算案に158億円を計上しました。

 助成件数は、スタートした2004年度の1万7657件から2013年度の14万8659件へと、年々増えています。

 2016年1月17日(日)

 

■エボラ出血熱、3カ国の終息宣言翌日に再発 シエラレオネで感染の女性死亡

 世界保健機関(WHO)は15日、昨年11月にエボラ出血熱感染の終息宣言が出ていた西アフリカのシエラレオネで、新たな感染者が確認されたと明らかにしました。

 WHOの報道官によると、感染者はギニアとの国境に近い北部バモイルマの22歳の女性で、今月12日に死亡した後に感染がわかったといいます。

 WHOは14日、西アフリカのギニア、リベリア、シエラレオネ3カ国の感染終息を宣言したばかりでした。

 隣国リベリアでは昨年5月以降、2度にわたって終息が宣言されましたが、いずれも1、2カ月後に回復した生存者から感染したとみられるケースが発生していました。

 WHOは14日、生存者の体内にウイルスが長期間残る可能性があると指摘し、今後も再発が予測されるとして警戒を続けるよう呼び掛けていました。

 2016年1月16日(土)

 

■インフルエンザ、全国的な流行期に入る 例年より遅く

 インフルエンザの患者が全国的に増えており、国立感染症研究所はインフルエンザが例年より遅れて全国的な流行期に入ったと発表しました。流行期入りの発表が年明けにずれ込んだのは、9年前の2006年から2007年にかけてのシーズン以来で、専門家は、ワクチンの接種など対策の徹底を呼び掛けています。

 国立感染症研究所によりますと、1月4日から10日までの直近の1週間に全国およそ5000の定点医療機関から報告されたインフルエンザの患者数は、前の週の2倍以上に増えて9964人となりました。この結果、1医療機関当たりの患者数は2・02人と流行開始の目安とされる「1」を超えたため、国立感染症研究所は、インフルエンザが全国的な流行期に入ったと15日、発表しました。

 都道府県別の患者数をみますと、沖縄県が8・19人、秋田県が7・85人、新潟県が5・73人、北海道が4・84人、千葉県が2・49人などとなっており、すべての都道府県で前の週より増加しました。直近の1週間に全国の医療機関を受診した患者は、約13万人に上ると推計されるといいます。

 一方、直近5週間に検出されたインフルエンザウイルスは、A香港型と7年前に「新型インフルエンザ」として流行したH1N1型ウイルス、それにB型がほぼ同じ割合だということです。

 国立感染症研究所の砂川富正室長は、「例年よりは数週間遅い流行入りで、ピークは2月下旬までずれ込む可能性はあるが、流行の規模が小さくなるわけではないと考えている。また主流となるウイルスもまだはっきりとしない。今からでもワクチンを接種するとともに、手洗いやうがい、それにせきエチケットなどの対策を徹底してほしい」と話しています。

 2016年1月15日(金)

 

■昨年の自殺者、18年ぶり2万5000人下回る 6年連続減少

 昨年1年間の全国の自殺者は前年比1456人(5・7パーセント)減の2万3971人で、18年ぶりに2万5000人を下回ったことが15日、警察庁の集計(速報値)で判明しました。

 6年連続の減少。男性は745人減の1万6641人、女性は711人減の7330人で、男性が7割を占めました。

 警察庁は、1978年に統計を取り始めました。最多は2003年の3万4427人、最少は1981年の2万434人。

 1998年から14年連続で3万人を上回り、2010年から減少を続け、2012年から3万人を下回っています。

 都道府県別では、秋田、群馬、石川、三重、和歌山、島根、岡山、山口、熊本、沖縄の 10県が前年より多くなりました。人口10万人当たりの自殺者は多い順で、秋田26・8人 、島根25・1人、新潟24・9人でした。

 東日本大震災に関連した自殺者は、前年同期に比べ1人多い22人。県別では、福島19人、岩手2人、宮城1人でした。

 統計を分析している内閣府によると、昨年1~11月の自殺者2万2171人の動機 (1人につき三つまで選択)は、「健康問題」が1万953人で最多でした。「経済・生活 問題」、「家庭問題」が続きました。世代別では、19歳以下が15人増えた以外、60歳代の401人減を筆頭に各世代で減少。

 内閣府は、「全体として減少傾向にあるが、依然として多い。対策を続けていく」としています。

 2016年1月15日(金)

 

■WHO、西アフリカのエボラ出血熱の終息を宣言 2年間で死者1万1300人を超す

 西アフリカで過去最悪の規模で感染が拡大したエボラ出血熱について、世界保健機関(WHO)は14日、最も大きな被害を受けたリベリアでも、ウイルスの最長潜伏期間の2倍に当たる42日間、新たな感染が確認されず、2年間余りにわたって続いた今回の感染はすべて終息したと発表しました。

 エボラ出血熱は、2013年の12月から西アフリカのギニア、リベリア、シエラレオネの3カ国を中心に過去最悪の規模で流行し、WHOによりますと、世界全体で1万1300人以上が死亡しました。このうち、死者が4800人余りと最も大きな被害が出たリベリアでは、昨年5月、西アフリカの3カ国で初めて終息宣言が出されたものの、その後、再び感染が確認され、現地の保健当局などが対応に当たってきました。

 スイスのジュネーブに本部を置くWHOのブレナン部長は14日、記者会見し、「本日、WHOはリベリアにおける最新のエボラ出血熱の感染が終息したことを宣言し、西アフリカでの把握しているすべての感染の連鎖が止まったと表明する」と述べました。

 その一方で、ブレナン部長は、「今後も突発的な再発の懸念も依然としてあり、予防や監視態勢の確立が必要だ」として、今後も警戒を緩めないよう求めています。

 西アフリカの3カ国では医療態勢の立て直しを始め、偏見にさらされたり仕事を失ったりした元患者への支援が急務となっており、引き続き国際社会からの支援が必要となっています。

 エボラ出血熱の終息宣言が出されたことを受けて、国連児童基金(ユニセフ)も声明を発表。この中で、エボラ出血熱によって親や保護者を失った子供は、西アフリカの3カ国で2万3000人近くに上るとしています。

 また、エボラ出血熱から回復した子供たちは1200人以上いるものの、周りから偏見や差別にさらされることも少なくないと指摘しています。その上でユニセフは、緊急事態が収まった後も、こうした子供たちに継続的な支援が必要だと訴えています。

 2016年1月14日(木)

 

■薬の「治験」協力者をサイトで募集 ヤフーが12日から開始

 大手IT企業のヤフー(東京都港区)は、薬の種類の多様化に伴って、製造・開発を行う際に薬の有効性や安全性を調べる臨床試験、いわゆる「治験」の需要が高まっていることから、自社で運営する検索サイト上で協力者を募る、新たな取り組みを始めました。

 製薬会社が薬の製造・開発を行う際には、国の承認を得るため、健康な人や患者の協力によって有効性や安全性を調べる臨床試験、いわゆる「治験」が行われますが、薬の種類の多様化に伴って、より多くの協力者が必要になっています。

 このため、ヤフーは医療関連企業のクリニカル・トライアル(東京都豊島区)と提携して、自社が運営する検索サイト上で治験の協力者を募る新たな取り組みを、12日から始めました。

 具体的には、このヤフーが運営する病気や病院の情報を検索するサイト「Yahoo!ヘルスケア」において、クリニカル・トライアルが運営する「生活向上WEB」の中から治験募集情報を確認できるようにし、希望すれば製薬会社が行う治験に参加する手続きを進めることができます。

 この病気や病院の情報を検索するサイト「Yahoo!ヘルスケア」では、医療情報に関する検索が1日当たり100万件以上に上るということで、ヤフーとクリニカル・トライアルは、治験に関する情報を提供することで、参加者を増やし、新薬の開発につなげたいとしています。

 2016年1月13日(水)

 

■インフルエンザ、流行入り間近に 31の道府県で患者数が増加

 全国のインフルエンザの患者数が1医療機関当たり0・89人となり、流行入りの目安となる「1」に迫っています。国立感染症研究所は、「間もなく流行入りが発表される可能性があり、ワクチンの接種など対策を取って欲しい」と呼び掛けています。

 国立感染症研究所によりますと、1月3日までの1週間に全国およそ5000の医療機関から報告されたインフルエンザの患者数は、前の週から500人余り増えて4290人となりました。

 この結果、1医療機関当たりの患者数は0・89人と、全国の流行入りの目安とされる「1」に迫る値となりました。

 都道府県別にみますと、秋田県が7・55人、沖縄県が6・09人、北海道が2・71人、福島県が1・87人、新潟県が1・76人などとなっており、31の道府県で前の週より増加しています。

 インフルエンザの流行入りは、例年12月に発表されますが、今シーズンは年が明けても発表されておらず、年明けにずれ込むのは、9年前の2006年から2007年にかけてのシーズン以来です。

 国立感染症研究所の砂川富正室長は、「間もなく全国的な流行入りが発表される可能性がある。今からでもワクチンを接種するとともに、手洗いやせきエチケットなどの対策を徹底してほしい」と呼び掛けています。

 2016年1月13日(水)

 

■iPS細胞使う白血病治療、京大などが今春から研究

 白血病患者の細胞から作製したiPS細胞(人工多能性幹細胞)を利用し、がんを攻撃する免疫細胞を大量に作って治療に役立てようとする研究を、京都大や大阪大、香川大などのチームが今春から始めることが11日、わかりました。

 チームの河本宏京大教授(免疫学)によると、2019年度にも治験と呼ばれる臨床試験を始め、数年後に実用化につなげるのが目標。実現すれば、iPS細胞を使ってがんを治療する初のケースとなります。

 研究では、血液のがんである白血病の患者から血液を採り、がん細胞への攻撃力が高い免疫細胞「キラーT細胞」を採取。キラーT細胞からiPS細胞を作製し、再びキラーT細胞に変化させて増やし、がん細胞に効くか、試験管内や動物を使った実験で確かめます。効果が確認できれば、患者の体内にキラーT細胞を入れ、安全性や有効性を検証する臨床試験を始めます。

 キラーT細胞を増やすのは難しいものの、iPS細胞にすると大量に増やせる利点があります。また、採取したキラーT細胞は、がん化した血液細胞だけを狙って攻撃する性質を持っており、iPS細胞を利用すればこの特質を引き継いだキラーT細胞を作製できるため、正常な細胞を誤って攻撃するリスクも減らせます。

 チームはこれまで、同様の手法で、健康な人から採血して作ったキラーT細胞を用いて研究してきましたが、昨年10月、京大の倫理委員会から白血病患者のキラーT細胞を使用する承認を得ました。

 河本教授は、「これまでの治療法では効果がなかった白血病患者を救えるかもしれない。ほかのがんにも応用できる可能性がある」と話しています。

 2016年1月12日(火)

 

■厚労省、危険性ある病原体の管理方法の点検を要請

 熊本市にある製薬企業の化学及血清療法研究所(化血研)が生物テロにも使われる恐れのある「ボツリヌス毒素」を運ぶ際に必要な届け出を怠っていた問題を受け、厚生労働省は研究機関や製薬会社に対し、危険性のある病原体の管理方法を点検するよう求めました。

 この問題は、化血研が食中毒の治療薬など医薬品の原料に使われる「ボツリヌス毒素」を運ぶ際、法律で定められた届け出をしていなかったもので、厚労省は8日、化血研に対し再発防止の徹底を求める行政指導を行いました。

 ボツリヌス毒素など犯罪に使われる恐れのある病原体を運ぶ際には、都道府県の公安委員会に届け出て「運搬証明書」の交付を受けるよう感染症法に定められています。しかし化血研は、2007年10〜12月と、2015年10月の計4回、届け出が必要な0・1ミリグラムを超えるボツリヌス毒素を運ぶ際、熊本県の公安委に届け出ていませんでした。

 化血研は2015年12月18日にこの問題を公表し、「(0・1ミリグラムを超えるとの)量の確認が不十分で届け出の対象との認識がなかった」などと説明。運搬中に事故などのトラブルはなかったとしていました。

 化血研の問題を受け、厚労省はこうした病原体などを所持している全国の研究機関や製薬会社などを対象に、管理方法を点検し、今年3月までに報告するよう求めました。

 厚労省は、管理が適切に行われていなかったケースが明らかになった場合、立ち入り検査を行うなど指導を強化することにしています。

 2016年1月11日(月)

 

■厚労省、製薬会社への検査方法見直しへ 化血研に過去最長110日間の業務停止命令

 血液製剤の製造を巡って不正を続けていたとして、熊本市にある製薬企業の化学及血清療法研究所(化血研)が8日、業務停止処分を受けました。化血研には国が定期的に立ち入り検査を行っていたにもかかわらず不正を見抜けなかったことから、厚生労働省は、製薬会社への検査方法を見直すことにしています。

 化血研はおよそ40年にわたって国の承認とは異なる方法で血液製剤を製造し、不正を隠すために製造記録を偽造するなど組織的に隠蔽を図っていたとして、医薬品医療機器法(旧薬事法)に基づき、処分の期間としてはこれまでで最も長い110日間の業務停止処分を受けました。

 不正がおよそ40年にもわたって見過ごされてきた背景には、薬害エイズ事件を教訓に国が国内の製薬企業に対し生産体制の増強を求めてきた事情もあると指摘されています。

 化血研で、国の承認とは異なる方法で血液製剤を製造する不正が頻繁に行われるようになったのは1980年代から1990年代前半にかけてです。当時は、輸入した非加熱製剤を使用した血友病患者などがエイズウイルスに感染した薬害エイズ事件を教訓に、国は加熱製剤に切り替え国内での完全需給を目指し各社に生産体制の増強を求めていました。

 化血研は薬害エイズ事件の被告企業の一つであり、国の方針に従い製品の出荷を優先させる一方で、血液製剤そのものの安全性を確認しないまま不正を隠蔽してきました。

 化血研には国が定期的に立ち入り検査を行っていたにもかかわらず、不正を見抜けなかったことから、検査が不十分だったという指摘も出ています。薬の専門家として国の検査に同行していた埼玉医科大学の岡田義昭准教授は、「検査は事前に連絡した上で書類を準備してもらっていた。不正を隠されると見抜くことは難しく検査制度を改善すべきだ」と話しています。

 厚生労働省は製薬会社に対する検査方法を見直し、今後は抜き打ちの検査を導入するほか、不正を見抜けるよう職員の研修を行ったり、会社によって検査項目を変えたりすることを検討することにしています。

 2016年1月10日(日)

 

■3歳児の7パーセントが睡眠不足 発育への悪影響懸念、環境省調査

 全国のおよそ10万人の親子を対象に、胎児から13歳になるまで継続して行っている環境省の健康調査で、3歳児のうち午後10時以降に就寝する子供がおよそ30パーセントに上り、7パーセントが睡眠不足の状態にあることがわかりました。

 発育への悪影響などが懸念されるとして、環境省は今後、健康への影響を継続的に調べることにしています。

 環境省は生活習慣や化学物質が子供の健康に与える影響を解明するため、全国のおよそ10万人を対象に胎児から13歳になるまで継続して調査を行っています。開始から5年になるのに合わせて6日、中間的な結果が報告されました。

 それによりますと、就寝時刻が午後10時以降の子供の割合は1歳児で13パーセント、1歳6カ月で16パーセント、3歳児で29パーセントに上っていることがわかりました。

 また、昼寝を含む1日の睡眠時間が10時間に満たない睡眠不足の子供の割合は1歳児で3%、1歳6カ月で5パーセント、3歳児で7パーセントとなっていました。

 環境省などによりますと、2歳から5歳までの子供は早い時間に就寝して、10時間から13時間程度の睡眠が適切だとされています。睡眠不足は発育への悪影響や肥満などが懸念されるため、環境省は今後、子供の健康に与える影響を継続的に調べることにしています。

 国立環境研究所の新田裕史調査センター長代行は、「睡眠時間が子供の健康とどう関係するかの解明は今後の課題だ。しっかりした成果を示し、健康や環境の改善に役立てたい」と話しています。

 2016年1月9日(土)

 

■妊婦の喫煙、子供は低体重に 9000人調査で国内初確認

 妊娠中の女性の喫煙期間が長いほど、より低体重の子供が生まれることが、環境省などの大規模調査で明らかになりました。妊娠前に喫煙をやめても、子供の低体重につながる可能性が示されました。

 喫煙期間が生まれた子供の低体重に影響することがわかったのは、初めて。低体重の子供は将来、肥満などの生活習慣病になる危険性が高まるといいます。

 「子どもの健康と環境に関する全国調査」(エコチル調査)に協力する全国の妊婦9369人と生まれた子供を分析した結果、喫煙経験のない妊婦が出産した男児の平均体重は3096・2グラムでしたが、出産時まで喫煙していた妊婦の男児は2959・8グラムと136・4グラムも少なくなりました。

 一方、妊娠初期に禁煙した場合は、喫煙経験なしよりも27・8グラム少ないとの結果でした。妊娠前から禁煙した場合も、同7グラム少なくなりました。

 妊娠中の喫煙は、さい帯血が減って胎児への酸素や栄養の供給を減らし、低体重になるとされています。分析を担当した山梨大の山縣然太朗教授は、「喫煙期間が長いほど影響が大きいことがはっきりした。妊娠前から禁煙しても、喫煙による健康状態や生活習慣などから低体重の子供が生まれる危険性があるようだ」と話しました。

 また、エコチル調査に基づく子供のアレルギー疾患の罹患(りかん)状況が、発表されました。そのうち花粉症を持つ3歳児は、全体(回答数2万5963人)の4パーセントに上りました。地域によって割合が異なり、山梨・長野両県が最多の10パーセントで、京都府6パーセント、神奈川県5パーセントと続きました。沖縄県が最も少なく、1パーセント未満でした。

 環境省は16日、これらの結果について、日本科学未来館(東京都江東区)で開くシンポジウムで公表します。

 エコチル調査は、化学物質や環境が子供の健康に与える影響を調べるため、妊娠初期から子供が13歳になるまで追跡します。2011年1月に募集を始め、現在の登録している母子は10万3106組。母子の血液や毛髪、半年ごとのアンケートなどを継続的に調べ、子の成長に影響する環境要因を2032年までに解析します。

 2016年1月8日(金)

 

■iPS細胞使う心臓病治療、大阪大が治験申請へ

 iPS細胞(人工多能性幹細胞)から作った心臓の筋肉の細胞をシート状に加工し、患者に移植して病気で低下した心臓の機能を回復させる再生医療を実用化しようと、大阪大学の研究チームが2016年度にも治験と呼ばれる臨床試験の実施を国に申請する方向で検討していることが6日、わかりました。

 大阪大学心臓血管外科の澤芳樹教授らのチームは、iPS細胞から心臓の筋肉の細胞を作って心筋シートと呼ばれる直径数センチ、厚さ0・1ミリほどの薄いシート状に加工し、重い心臓病の患者に移植して治す再生医療の研究を進めています。

 この心筋シートをiPS細胞を使った世界初の再生医療製品として実用化するため、研究チームが治験と呼ばれる臨床試験の実施を早ければ2016年度にも国に申請し、翌2017年度から移植手術を行う方向で検討していることがわかりました。

 iPS細胞は、京都大学などが保管している拒絶反応が起きにくい特殊なタイプのものを提供してもらう予定だということです。

 国から実施が認められれば数人の患者に移植手術を行い、4年後をめどに心筋シートの再生医療製品としての実用化を目指すということです。

 これまで行った動物実験では、心臓の機能が改善するのが確認されたということであり、研究チームは引き続き安全性や効果についてのデータを集めるなどして準備を進めることにしています。

 研究チームの福嶌五月講師は、「2017年度をめどに始めたい。心筋シートはiPS細胞を使った世界初の再生医療製品になる可能性がある」と話しました。

 2016年1月6日(水)

 

■米より先に魚や肉料理、食べる順番で血糖値の上昇抑制 関西電力医学研究所が発表

 米飯より先に魚や肉料理を食べることで胃の運動が緩やかになり、食後の血糖値上昇を抑えることができると、関西電力医学研究所(神戸市)のグループが発表しました。

 同じメニューでも、食べる順番を意識することで糖尿病の予防などにつながる可能性があります。欧州糖尿病学会誌(電子版)に掲載されました。

 血糖値の急上昇は、動脈硬化などの発症リスクを高めるとされます。野菜を米飯より先に食べると、食物繊維の働きにより、小腸で糖の吸収が穏やかになって、血糖値の急上昇が抑えられることが知られています。

 研究グループは、2型糖尿病患者12人と健康な人10人を対象に3日間実験。米飯を先に食べた時と、米飯を食べる15分前にサバの水煮や牛肉の網焼きを食べた時で、4時間後の血糖がどう変化するかを調べました。

 その結果、サバや牛肉を先に食べた場合、「インクレチン」と呼ばれる消化管ホルモンの分泌が活発になって胃の動きが緩やかになり、胃で分解された米が小腸に移動して吸収されるまでの時間が2倍以上になることがわかりました。

 サバを先に食べた時は血糖値の上昇を約3割、牛肉を先に食べた時は約4割抑えることができたといいます。

 矢部大介副所長(糖尿病学)は、「食べる順番を意識した食事療法を行うことで、糖尿病の予防や治療につながる可能性がある」と話しています。

 2016年1月6日(水)

 

■化血研に週内にも業務停止命令 過去最長の110日間の見込み

 熊本市にある製薬企業の化学及血清療法研究所(化血研)が国の承認と異なる方法で血液製剤やワクチンを製造した問題で、厚生労働省は4日、早ければ週内にも医薬品医療機器法(旧薬事法)に基づき、業務停止命令を出す方針を固めました。

 期間は110日間になる見通しで、同法に基づく業務停止処分としては過去最長となります。

 製薬企業への業務停止命令でこれまでで最も長かったのは、抗がん剤との併用で死者が相次いだ抗ウイルス剤「ソリブジン」の問題で、1994年に当時の日本商事が受けた105日間です。

 すでに化血研にも処分方針を伝えており、弁明を聞いた上で最終的に決定します。

 厚労省は、未承認製造の一部は約40年前から行われ、偽造記録作成などによる隠蔽工作も約20年続けられてきた点を重視。歴代理事長ら幹部も認識するなどの悪質性を考慮し、異例の重い処分に踏み切ります。

 業務停止の期間、化血研は医薬品の製造や出荷などができなくなります。ただ、ほかの会社で代替できない血液製剤やワクチンについては、対象から除外することにしています。

 2016年1月4日(月)

 

■サプリに医薬品成分、健康被害の恐れ 海外サイトなどの精力・痩身剤

 「精力増強」や「ダイエット」の効果をうたい、インターネットで売られているサプリメントや健康食品計49製品から医薬品成分が検出されたとの調査結果を、厚生労働省が発表しました。

 健康被害が出る可能性があるとして、厚労省は購入しないように呼び掛けています。

 一昨年1~3月、「個人輸入代行」などと日本語表記がある海外業者のサイトから計81製品を購入し、国立医薬品食品衛生研究所で分析。「精力増強」などとうたう50製品のうち33製品から、勃起不全治療薬の成分シルデナフィルなどが検出されました。頭痛や心拍増加などの副作用の可能性があるといいます。

 また、ダイエット用のサプリメント31製品のうち16製品から、下剤成分ビサコジルや気管支炎治療薬の成分ジプロフィリンなどが見付かりました。

 49製品のうち9製品には、発がんなどの恐れが指摘されているフェノールフタレインも含まれていました。

 本来は医師の処方が必要な成分が多いものの、いずれも医薬品の表記はなく、国内業者であれば医薬品医療機器法(旧薬事法)違反に相当します。多くは海外業者のサイトで、厚労省は削除要請などをしています。

 違法性が疑われるサイトを見付けた場合には、厚労省が委託した一般社団法人・偽造医薬品等情報センターが運営する「あやしいヤクブツ連絡ネット」(http://www.yakubutsu.com、03・5542・1865)への通報を呼び掛けています。

 2016年1月4日(月)

 

■全国がん登録、今月から始まる 患者数や生存率を国が一元管理

 がん医療の向上や予防を進めるため、すべての患者の情報を国のデータベースで管理する「全国がん登録」が、今月から始まりました。

 全国がん登録は、昨年1年間に新たに98万人が診断されたと推計され、日本人の死因で最も多いがんについて、診断される人の数や生存率、それに治療効果などを分析し対策に反映させようと、がん登録推進法に基づいて行うものです。

 がんの診断や治療を行っているすべての病院と都道府県の指定を受けた診療所は、患者の名前やがんの種類、治療の内容など26の項目について、都道府県を通じて国に届け出ることが義務付けられます。

 がんと診断されると自分の意思に関係なくデータが必ず登録されるため、個人情報の管理が課題ですが、集められた患者の情報は、国立がん研究センターのデータベースで国が一元管理し、分析した上で、がん医療の向上や予防や検診などの対策を進めることにしています。

 これまで、がん患者に関する情報は都道府県ごとに集めていましたが、参加する医療機関が限られ、住んでいる都道府県以外の医療機関を受診したり、転居したりした患者の情報が把握できないなど、課題が指摘されていました。

 国立がん研究センターの松田智大全国がん登録室長は、「がん登録は、新しい治療方法や検診方法の開発にもつながります。すべての国民に理解と協力をお願いしたいです」と話しています。

 2016年1月3日(日)

 

■上海で男性が鳥インフルエンザに感染 人への感染リスク高まる

 中国上海市の衛生当局は1日、同市の男性(59歳)が鳥インフルエンザウイルス(H7N9型)に感染したことが確認されたと発表しました。現在、治療を受けているといいます。

 中国では昨年秋以降、浙江省で4人、広東省で1人の感染者が確認されていますが、上海では初めて。冬に入り、人への感染リスクが高まっています。

 昨年12月23日には、感染した広東省東莞市の男性(61歳)が死亡しました。広東省衛生当局の資料によると、この男性は慢性疾患を持っており、12月22日に現地の医療機関に入院し、23日に死亡したとのこと。なお、この男性は市場に出入りし、家禽類と接触していたこともわかっているといいます。

 広東省は香港およびマカオと陸で接しており、多くの人が往来しています。東莞市は香港と広州の間に位置し、両都市を結ぶインターシティ列車の停車駅もあります。

 香港衛生当局では、香港への流入阻止に向けた警戒を強めているとし、世界保健機関(WHO)および各国・地域の衛生当局と協力しながら最新状況の把握を行っているほか、香港への玄関口となる各イミグレーション施設における体温検査を含むヘルスモニタリングなどの対策を実施しているとのこと。

 直近6カ月間、香港およびマカオの鳥インフルエンザウイルス(H7N9型)への感染例はゼロとなっています。

 2013年から現在までに、香港政府衛生署が中国衛生当局から通報を受けた鳥インフルエンザウイルス(H7N9型)の感染例は666件に上ります。

 2016年1月2日(土)

 

■インフルエンザ流行期入り、今季は遅め 国立感染症研究所が発表

 今季は、インフルエンザの全国的な流行が例年より遅くなっています。国立感染症研究所(感染研)の12月28日の発表では、全国約5000カ所の定点医療機関から報告された最新の1週間(12月14~20日)のインフルエンザの患者数は1カ所当たり0・46人で、流行開始の目安の1人を大きく下回っていました。

 感染研によると、インフルエンザは例年、11月下旬~12月に流行期に入ることが多くなっています。今季の流行期入りが1月になったとすると、2006年以来となります。

 今季の最新1週間の患者数を都道府県別でみると、1人以上は秋田県(3・41人)、北海道(1・54人)、新潟県(1・26人)、福島県(1・14人)、沖縄県(1・00人)の計5道県でした。

 感染研は、「流行期入りが遅れている理由はわからない」としています。

 2016年1月1日(金)

 

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