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●論語こそ「気」の字が初登場した書物
漢代以前の主たる生産が農業であったことは、当然である。大自然に働き掛けて生産をする農耕社会にあっては、雲や風、雨などの自然現象は最も気掛かりなこと。
その季節にふさわしい、適切な風であれば、春耕の前後の大地に恵みの雨をもたらすであろう。雲が盛んに動く時、やがて天上から大粒の雨が降ってくる。
逆に、秋の収穫期の大地に、時ならぬ突風や暴風が吹き荒れれば、一年の苦労による農作物の成果が水の泡になってしまう危険性をもたらすであろう。
農耕の民の生活は、雲、すなわち「気」によって、大きく左右、決定されたといっても過言ではなかろう。古代人にとっての雲気は、自然の現象であるばかりでなく、生殺与奪の大権を持つ神格であったはず。
この天空の雲や風は、人間の呼吸にも似ているではないか。真に生ある人間にとって、命のある証(あかし)は、やはり呼吸であり、体温である。
そして、この人間の生存に必要なのは、米に代表される五殻である。先に見た「説文」では、「氣」とは「賓客あるいは祭壇に米穀を供する」こととしているが、贈られたり、供えられた米は結局、人間の腹に納まるもの。
米、すなわち食料がなければ、人間の生はない。生ある人にのみ呼吸があり、体温があるのである。
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