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道教の開祖・老子が書いた「老子」は前三世紀頃の書物とされるが、その中で「気」は宇宙万物を構成する陰陽として一回、人間の生命力として二回使われている。

 「老子」に見られる「気」の宇宙論では、天地万物に通じる一大生命力は、その始まりは恍惚(こうこつ)とし、茫漠(ぼうばく)としたものであるが、道の生成作用により混沌(こんとん)とした一気を生じ、この一気から陰陽という二気が生じ、二気は三気を生じ、三気は万物を生ず。

 万事万物、人間の生死も、四季の運行も、陰気を負い、陽気を抱いた自然の変化である。以上のようにしているのだ。

 人間の生命力としての「気」については、「気を専らにして柔を致して、能(よ)く嬰児(えいじ)たらんか」とある。「気」を専らにするとは、体内の精気を外に漏らさないことであり、道教でいう養気である。そうすれば心身はこの上なく柔軟になり、ちょうど赤子のように初々しくなるという。

 「沖気(ちゅうき)、以(も)って和するをなす」ともある。沖気とは、内に陰気と陽気を持った沖和した「気」のことであり、それによって調和を保つことである。

 「心、気を使うを強という」ともある。心、すなわち知と欲によって、生命を形成している精気を使役する結果、陰陽の調和は無理を来し、乱れてしまうのだという。

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