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人間においても、エネルギーの元になる食べ物を気化するほどに咀嚼することは、物の味の真髄を極めることにもなる。
山の幸、海の幸には、それぞれ固有の味覚があるのに、ろくに噛みしめずに胃袋に送っては、いかにももったいない。また、その結果表れる健康か病身かという差異はもとより、賢愚、幸不幸に至るまで、驚くほどの開きが出てしまう。
咀嚼さえ十分に行われれば、天然の味が人工の味つけなど比較にならないほど美味になる。自然意識によって捕らえることができるなら、調味料を加えない大根おろしでも、絶妙な天恵の味覚として受け取ることができるようにもなる。落ち着いてよく噛んで食べれば、「大根どきの医者いらず」といわれる野菜の主役の栄養が身に着くし、味がわかる。味は精神である。自然意識である。
反対に、食べ方が早すぎる、よく噛まないというのは、食べ物の味を味わわないということで、過食の原因ともなる。
まず食べ物を粗食にし、よく噛むこと。今までの三倍噛むようにすれば、真の味もわかるし、量も少なくてすむ。物の価値と恩恵もわかり、肉体の持つ巧妙性、万能力を知ることもできるようになる。
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