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新陰流の達人として名高かった柳生但馬守が説いたように、私たち人間の「気」というものは、全身より外に発し、大きく膨らんでいく。
気力が大きく膨らんでいる時には、その人間が大きく見える。相手が自分より大きく見える時は、相手の「気」が自分を圧倒しているのである。逆に、相撲取りのように体が大きいからといって、必ずしも圧迫感を受けるとは限らない。
こちらの「気」が勝っていれば、どんな大きな相手でも小さく見える。自分よりはるかに小さな相手でも、自分をしのぐ「気」の持ち主であれば、相手の存在感に圧倒されてしまう。
気力で勝つということは、戦わずして勝つということでもある。「気」の迫力で圧倒して、「こいつにはかなわない」と相手に思わせることである。すなわち、戦わずして相手の戦意を失わせるということだ。
技もさることながら、「気」が勝者と敗者の明暗を分けることを、名高い兵法家であり、武道家であった柳生宗矩は知っていたわけだ。
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