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●生命保存の巧妙な摂理
ここで忘れてならぬのは、虫歯を防ぐ唾液の効果である。砂糖の取りすぎなどから、小学校の低学年で虫歯罹患(りかん)率が九十とも九十五パーセントともいわれる通りで、現代人は不幸なことに、肉体の門戸で行われる歯と唾液との絶妙な交響楽が耳に入らない。それをすっかり忘れてしまっている。
虫歯の原因となる砂糖は甘くても酸性食品であるから、体液を酸性にするといわれているが、もう一つ、大切な唾液の根を枯らしてしまうことに、気づいている人は少ない。
砂糖を取りすぎると、早く老化してしまうのも、そのためである。扁桃腺(へんとうせん)が乾くと唾液の分泌が鈍るし、砂糖の摂取量に比例して、唾液の量は低下するのだ。 食べ物をよく噛むということは、唾液の効果で虫歯を防ぐばかりか、肉体の五官作用を旺盛にし、生理のみならず、精神衛生に資するところきわめて大である。
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