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人間がホモ・サピエンスとして直立してから数百万年、社会的生活を始めてから数万年、それぞれの器官はその長い年月の間をそれぞれの個体に所属して作用を続け、それは能力差をともなった遺伝因子として、今日の人間の五官におよんでいる。
例えば、目は対象を識別し、観察し、比較し、判断するというきわめて知的な作用を行う。実際は、目はレンズ体として外界の情報を脳細胞に伝達するだけで、真の知的作業は脳によって行われることは当然にしろ、脳の作業先端として連動する目には、その能力やエネルギーの程度などが反映するのは必然。
従って、「目は口ほどに物をいう」といわれる通り、目を見れば、能力の質や強弱のシグナルが表れているのである。実際にも、人間は日常生活において、程度の差こそあれ、絶えず他の人間の目を読んでいるのだ。
私たちが人の目を見ただけで、「あ、賢い人だな」とか、「あまり善人じゃないな」と瞬時に悟るのも、あるいは、口元のちょっとしたびくつきといった、目鼻立ちの作るさまざまな表情で人の気持ちの動揺などを知るのも、このゆえである。
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