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肋膜炎
肋膜(ろくまく)炎とは、胸膜炎の俗語で、肺臓などを包んでいる二重の膜である肋膜(胸膜)に炎症が起こり、胸水の量が増えて胸腔(きょうこう)にたまった状態です。
肋膜が包む胸壁が肋骨(ろっこつ)で形成されているために、肋骨表面の骨膜まで炎症が及んだものを、かつては肋膜炎と呼んでいましたが、現在では、より広い意味の胸膜炎と同義です。
胸水がみられない乾性肋膜炎が起こる場合もありますが、胸水がみられる湿性肋膜炎の発症がほとんどを占めます。
二重の肋膜は、左右の肺の表面を包む臓側(ぞうそく)肋膜と、胸壁、横隔膜、縦隔(じゅうかく)を包む壁側(へきそく)肋膜からなっています。内層の臓側肋膜と、外層の壁側肋膜に囲まれた部分が、胸腔(胸膜腔)であり、ふだんはほとんど透き間がありません。
健康な人でも、壁側肋膜から胸腔に向かって胸水が漏出しています。その量は1日に5~10リットルといわれ、主に臓側肋膜から再吸収されるため胸腔に胸水が貯留することはありませんが、わずかに数ミリリットル程度が存在するといわれます。
肋膜炎によって胸腔に胸水が貯留すると、ほとんどの人は胸痛、背部痛を感じ、量が多くなると呼吸困難を起こします。また、原因によって差がありますが、発熱することが多く、咳(せき)、痰(たん)、血痰(けったん)、体重減少なども起こります。
このような症状のある時、深呼吸や咳で増悪する胸痛を自覚する時には、速やかに呼吸器科、内科を受診してください。特に気を付けなければならないのは急性肋膜炎で、これは肺炎、肺がん、結核などが進行して、肋膜を侵すことによって発症します。喫煙者が症状を感じれば、肺がんなど悪性腫瘍(しゅよう)によるものの可能性が高まります。
肋膜炎の原因は多岐に渡りますが、感染症、悪性腫瘍が主なものであり、膠原(こうげん)病、肺梗塞(こうそく)、石綿肺(せきめんはい)、低蛋白(たんぱく)血症、うっ血性心不全、消化器疾患でも胸水がたまります。
感染症の中では結核や細菌感染によるものが多く、悪性腫瘍の中では肺がんによるものが多く、それぞれ、結核性肋膜炎、細菌性肋膜炎、がん性肋膜炎と呼ばれています。
結核性肋膜炎は、結核菌の感染によって起こるもので、一般には肺内に結核病巣があり、それが肋膜に波及して発症します。
細菌性肋膜炎は、肺に起こった細菌感染に伴って胸水が貯留する状態です。肋膜への細菌感染を伴う場合と伴わない場合があり、肋膜への細菌感染を伴う場合を膿胸(のうきよう)といい、貯留した胸水が化膿(かのう)菌を含み、膿性となった状態です。
がん性肋膜炎は、悪性腫瘍が直接、肋膜に浸潤したり、肋膜への転移が起こると胸水が貯留します。原因としては肺がんがもっとも多く、乳がん、胃がん、卵巣がんなど、いろいろな部位のがんでも起こります。まれには、肋膜から発生する悪性中皮腫(ちゅうひしゅ)が、原因となることもあります。
肋膜炎の治療においては、医師の聴打診のみでも診断が得られることがあります。胸水のたまった部位が打診で濁音を示し、呼吸音が弱くなり、臓側肋膜と壁側肋膜が擦れ合う特徴的な肋膜摩擦音が聞かれる場合です。
胸部X線検査で、胸水がたまっているのが明らかにされます。胸水が少量の場合には、胸部CT検査で初めて診断が得られる場合もあります。
肋膜炎の原因を調べるために、胸水検査が行われます。肋骨と肋骨の間から細い針を刺し、胸水を採取します。採取した胸水が血性であれば、結核や悪性腫瘍を疑います。次いで、胸水の比重や蛋白濃度を調べたり、白血球分類、培養などによる細菌学的検査を行います。
胸水の検査だけで診断が得られない場合には、胸腔鏡を用いて胸腔内を肉眼的に観察し、病変と思われる部位を生検して、確定診断をする場合もあります。
こうして突き止めた原因に応じた治療が行われますが、細菌や結核による肋膜炎の予後は一般的には良好なのに対して、悪性腫瘍によるものでは極めて不良です。
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