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溶血性尿毒症症候群



細菌が産生するベロ毒素によって引き起こされ、腎臓や脳などが侵される疾患

溶血性尿毒症症候群とは、細菌が産生する、主にベロ毒素によって引き起こされ、腎臓(じんぞう)や脳などが侵される疾患。HUS(Hemolytic Uremic Syndrome)とも呼ばれます。

先天的な原因によるものもありますが、子供の場合ほとんどが腸管出血性大腸菌Oー157や赤痢菌によって汚染された食べ物を摂取することで、発症します。Oー157などは人の腸内でベロ毒素という毒素を放出し、これが血液中に入って、赤血球の破壊による溶血性貧血や、血小板という出血を防ぐ細胞の減少を引き起こしたり、急性腎不全を引き起こしたりします。

最初は、先行感染による発熱、吐き気、嘔吐(おうと)、下痢、腹痛などの胃腸炎や、上気道炎の症状で始まります。下痢は、水様便で始まり、数日以内に血便になります。

下痢が始まってから3~10日ころに、感染者の約5〜10パーセントで、溶血性尿毒症症候群に進行し、貧血のために疲労感を訴えたり、顔色が悪くなったりします。急性腎不全になると尿の量が減り、尿毒症を発症して、本来なら尿の中に排出される老廃物や毒素が血液中にたまることで、むくみ、意識障害、けいれん、血尿、皮下出血、黄疸(おうだん)など、さまざまな中毒症状が現れます。

また、毒素による脳の症状のため、刺激に過敏になり、重症の場合、けいれんを起こしたり、意識がなくなり死亡する場合もあります。

溶血性尿毒症症候群の90パーセントは子供が発症していますが、10パーセントは成人が発症しています。子供ではほとんどが感染症によるものであるのに対して、成人では90パーセントに何らかの基礎疾患があるとされています。基礎疾患としては、HIV感染、抗リン脂質抗体症候群、分娩(ぶんべん)後腎不全、悪性高血圧、全身性強皮症、抗がん剤治療(マイトマイシン、シクロスポリン、シスプラチン、ブレオマイシンなど)などが挙げられます。

子供では、発熱とともに腹痛、血便を伴う下痢、嘔吐がみられたら、小児科医を受診して便の細菌検査を受けます。成人では、内科か腎臓内科を受診します。

溶血性尿毒症症候群の検査と診断と治療

小児科の医師による診断は、胃腸炎の段階では便の細菌検査をし、腸管出血性大腸菌Oー157によるものかどうかを検査します。この菌の感染と判明した場合、溶血性尿毒症症候群に進行していないかどうか、血液検査や尿検査で貧血、血小板の数、腎機能などを症状が落ち着くまで検査します。

Oー157の感染から3~10日後に、5〜10パーセント程度の子供に溶血性尿毒症症候群が発症しており、この場合には症状と血液検査の結果から容易に確定でき、貧血、血小板減少、尿素窒素値とクレアチニン値の上昇がみられます。

小児科の医師による治療は、胃腸炎の段階では十分に水分を補給して、脱水状態にならないようにします。強い下痢止めは菌や毒素が体から排出されるのを遅くする可能性があるため、使用しません。

抗生剤の使用については、医師の意見が分かれています。強力に大腸菌を殺菌すると、大量のベロ毒素の放出が促進されて症状を悪化させる可能性があるということで、抗生剤を使用しない考え方もありますが、いまだに意見の一致はみていません。抗生剤を使用する場合は、症状の発現後できるだけ速やかに、3〜5日間投与するのが一般的です。

溶血性尿毒症症候群に進行した場合、2週間ほど入院して治療します。貧血の強い場合には、輸血が必要になります。急性腎不全になり、尿毒症を発症した場合には、一時的に血液透析が必要になります。人工透析か腹膜透析による血液透析で、血中尿素窒素(BUN)を除去し、血中電解質(主にナトリウム、クロール、カリウム、カルシウム)を正常に保ちながら、腎機能の回復を待ちます。

そのほかの治療として、新鮮凍結血漿(けっしょう)の輸注、大量ガンマグロブリン療法、血漿交換などが行われます。

以前は死亡率の高い疾患でしたが、現在は95パーセント以上の子供は救命可能です。ただし、溶血性尿毒症症候群が回復して退院した場合も、長期に渡って腎臓の障害が残ることがあるので、長期間の定期的診察を受ける必要があります。

予防のためには、Oー157は生焼けのひき肉や殺菌処理されていない牛乳やチーズ、あるいは汚染された井戸水などによって感染するので、十分な手洗いや食品の加熱を心掛けることです。Oー157は熱に弱く、75度で1分間以上加熱すれば死滅しますので、ひき肉などは中心部まで加熱し生焼けの部分を残さないようにします。

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