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無頭蓋症


胎児の頭蓋骨半球、大脳半球が正常に発達しない奇形症

無頭蓋症(むとうがいしょう)とは、脳の先天的な発育不全により、頭蓋骨半球、大脳半球、小脳の欠如を伴う奇形症。無脳症とも呼ばれます。

人間の脳は、脊髄(せきずい)の先端が膨らんで発達してきたものです。脊髄の上には、延髄、中脳、間脳があり、その上には両側に大脳半球が存在しています。延髄の後方には小脳があり、後頭部に位置しています。

脊髄や脳は、胎児の神経管と呼ばれる管状の細胞から形成されます。無頭蓋症の症状が現れた胎児では、妊娠4週間程度までの超初期の段階で、神経管前部の閉鎖不全などが起こって神経管の発達が阻害されることで、後々の脊髄や脳の成長が妨げられます。妊娠4カ月ころまでは脳のある程度の発育がみられるものの、妊娠5カ月ころから一度は形成されたはずの大脳、小脳のほか、生命の維持に重要な役割を果たす延髄などの脳幹が突然退化したり、発育が止まったります。

原因については、詳しく解明されていません。人種によって発現の頻度に差があるため遺伝的な要因が関係すると考えられているほか、妊娠初期における母体の栄養摂取の不足との因果関係も指摘され、飲酒や喫煙、薬剤、放射能被曝(ひばく)、ダイオキシなどが関与しているとも考えられています。

発現の頻度は、国によって異なり、アメリカでは出産1000人当たり1人程度、日本では出産10000人当たり10人程度となっています。

無頭蓋症の胎児が母胎内で死亡して流産となるケースは少なく、脳以外の臓器には異常がない場合がほとんどなので、出産の時までは生命を維持します。しかし、脳幹も欠損して死産となる確率が約75パーセントで、残る新生児も出生直後に死亡し、ある程度脳が残存している場合は生後数日間生存します。部分的に大脳皮質が形成されて機能し脳波が測定される場合は、生後1週間~2週間程度生存するものの、まれです。海外では、奇跡的に1年以上生存しているケースもありますが、日本では、そのようなケースはありません。

無頭蓋症の新生児では、大脳半球は通常欠如して全くないか、小さな塊に縮小しているため、頭で帽子をかぶる部分に相当する頭蓋骨や頭頂部が欠如し、頭蓋の基底面が露出するとともに、基底面に付着するように変性し、表面が薄い皮膜で覆われた脳の一部が露出しています。

顔貌(がんぼう)は特徴的で、前から見ると蛙(かえる)状です。そのほか、眼球の突出や欠如、口唇口蓋裂(こうしんこうがいれつ)を合併していることもあります。口唇口蓋裂は三つ口と俗称され、唇に部分的な裂け目が現れたり、口腔(こうくう)と鼻腔が直接つながっていたりします。

嚥下(えんげ)、唾液、呼吸、循環、消化の中枢を担っている延髄の下半分が存在していれば、嚥下や啼泣(ていきゅう)がみられ、音刺激、痛覚に反応を示します。正常な幼児が特有の刺激に応えて示す原始反射は、存在しており、腱(けん)反射は高進しています。

無頭蓋症の胎児を身ごもった妊婦に関しては、妊娠中期までは母体に自覚症状があることはほとんどありませんが、妊娠後期に入ると羊水過多になる傾向があります。これは無頭蓋症により脳幹にまで障害があり、嚥下運動ができなくなるためといわれています。

羊水は胎児にとって絶対に必要なものですが、多すぎると母体への負担が多くなります。ひどい場合は、腹が異常に膨らみ、呼吸器が圧迫されて呼吸困難にるケースもあります。妊娠後期の羊水過多症は早産の原因にもなるため、母体への負担を考えて、多くの場合で人工的に出産を誘発する措置が行われます。

無頭蓋症の検査と診断と治療

産科、産婦人科の医師による診断は通常、分娩(ぶんべん)の前に超音波断層法を用いて行われます。胎児の超音波検査により、妊娠4カ月以降であれば、出生前診断が可能となります。また、羊水あるいは母体の血清から血清蛋白(たんぱく)α-フェトプロテインが検出されます。

胎児が無頭蓋症と確定した場合、多くはその時点で妊娠を継続するかどうかを選択することになります。その致死性の高さから、人工中絶を選択する妊婦が多く、出産まで進むケースはごくまれな状況となっています。

また、診断が確実に可能となる妊娠4カ月以前でも、胎児の頭が丸くない場合には無頭蓋症が疑われ、人工中絶は早い時期であるほうが母体への負担も少なく、妊娠3カ月までに選択されることも多いようです。

産科、産婦人科の医師による治療に関しては、残念ながら無頭蓋症を母体の中で治療する方法はなく、自然治癒したケースもありません。

予防に関しては、原因に多因性があることと、遺伝子研究がその段階に至っていないことから、確実なものは発見されていません。

日本では、ビタミンB群の一種である葉酸が遺伝子の合成や細胞分裂に不可欠で、その摂取が無頭蓋症や二分脊椎(せきつい)症などの神経管閉鎖障害という先天性異常になるリスクを低減するとして、厚生労働省が2000年に、妊娠を希望している女性に対して、1日当たり0・4ミリグラム以上摂取することを推奨しています。ホウレン草などの緑黄色野菜、果物、レバー、卵黄、胚芽(はいが)、牛乳などに多く含まれる葉酸は、水溶性ビタミンで熱に弱く、5割が調理でなくなってしまうので、サプリメントなどから摂取するのが効率的です。

ただ、葉酸の不足だけが原因ではないため、理想的に摂取していたとしても絶対に無頭蓋症にならないというわけではありません。妊娠前から妊娠初期に、ピル(経口避妊薬)やアスピリン(解熱鎮痛剤)、抗炎症薬、抗生物質、抗てんかん薬、睡眠薬、抗がん剤の服用があっても、葉酸が不足してしまうこともあります。

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