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ムンプス難聴
ムンプス難聴とは、流行性耳下腺(じかせん)炎の原因となるムンプスウイルスが内耳に感染し、急性に発症する難聴。流行性耳下腺炎の合併症の一種です。
流行性耳下腺炎のほうは、耳の前から下にかけてのはれを特徴とし、しっかりはれると、おたふくのお面のように下膨れするので、おたふく風邪、あるいはムンプスとも呼ばれます。
流行性耳下腺炎は、感染者の唾液(だえき)から飛沫(ひまつ)感染します。流行に周期性はなく、季節性も明確ではありませんが、春先から夏にかけて比較的多く発生します。かかりやすい年齢は1~9歳、とりわけ3~4歳。感染しても発症しない不顕性感染が、30~40パーセントの乳幼児、学童にみられます。子供の時に感染しなかった場合は、成人になってからでも発症します。
耳の下の唾液腺の一種である耳下腺がはれることで知られますが、ムンプスウイルスは、体中を回って、ほかのいくつかの臓器にも症状を起こします。
突然、37~38℃の発熱が1~2日続いた後に、耳の下に痛みを覚え、片側の耳下腺がはれてきます。子供は口を開けたり、触ったりすると痛がります。発熱せず、最初から耳下腺がはれてくるケースもあります。
一般的に、1~3日して、もう片方の耳下腺がはれてきますが、4人に1人は片方の耳下腺しかはれません。はれは3日目ぐらいが最もひどく、その後、徐々にひいて、5~7日で消えていきます。
この流行性耳下腺炎の合併症には、ムンプス難聴のほか、ムンプス髄膜炎、ムンプス睾丸(こうがん)炎が知られています。ムンプス難聴になるのは、流行性耳下腺炎の発症者1万5000人に1人程度といわれています。また、15歳以下、特に5~9歳が合併しやすいとされています。
耳下腺のはれる4日前から、耳下腺のはれが現れてから18日以内に、ムンプス難聴は発症します。発症すると、耳の奥にある内耳の蝸牛(かぎゅう)にあって、音を感じ取る有毛細胞という感覚細胞に障害が生じるために、片方の耳に重度の感音難聴が起こるのが一般的です。まれに、両方の耳に重度の感音難聴が起こることもあります。症状を適切に訴えられない幼児、小児では、聴力の低下が見逃されている場合もあり、ムンプス難聴は子供時代にいつの間にか聴力を失っている主要な原因の一つです。
難聴の発生は、耳下腺のはれの強さとは無関係で、耳下腺がはれない不顕性感染でも難聴が発生することがあります。
また、片方の耳に重度の感音難聴が起こった後、長い年月を経てから回転性めまい発作や聴力低下を来し、症状が繰り返すことがあります。これを遅発性内リンパ水腫(すいしゅ)と呼びます。
片方の耳の重度感音難聴に遅発性内リンパ水腫が合併して発症する頻度は、15~20パーセントといわれています。原因は、内耳に入っている内リンパ液が過剰に増えることによると考えられています。
遅発性内リンパ水腫は、重度感音難聴側の耳が原因で起こる同側型と、聞こえのよい側の耳が原因で起こる対側型とに分類されます。まれに、両側型もあります。同側型の場合はすでに難聴になっているため、回転性めまい発作の繰り返しが主な症状で、対側型の場合は回転性めまい発作の繰り返しと、聞こえのよい側の耳の聴力の変動が症状となります。
流行性耳下腺炎を発症した時に、ムンプス難聴になっていないかを調べる方法として、耳元で指こすりをするものがあります。指こすりは、適度に高い音域で小さな音です。もし、指こすりで聴力の低下が認められたら、耳鼻咽喉(いんこう)科を受診することが勧められます。
耳鼻咽喉科の医師による診断では、症状によって判断しますが、耳下腺がはれない不顕性感染でも難聴が発生することもあるため、確定診断には血液検査でムンプスウイルスに対する抗体価を測定します。
難聴の度合は、純音聴力検査を行って判断します。耳の障害部位をある程度特定するために、聴性脳幹反応、耳音響放射、画像診断など特殊な検査を行うこともあります。
耳鼻咽喉科の医師による治療では、ムンプスウイルスに効く薬はなく、引き起こされたムンプス難聴にも有効な治療法がありませんので、少ない可能性を信じてステロド剤(副腎〔ふくじん〕皮質ホルモン)の投与を行いますが、聴力の改善はほとんど期待できないのも事実です。
片方の耳が正常であれば、通常の社会生活には問題はなく、補聴器や人工内耳などは適応にはなりません。両側の耳がムンプス難聴になった場合、または全領域の音が聴こえなくなった場合は、人工内耳の適応となり、それを挿入する手術を行うこともあります。
ムンプス難聴は発症すると治療が困難なため、流行性耳下腺炎を予防するワクチン接種を受けることが勧められます。
遅発性内リンパ水腫の治療は、同様の病態を示すメニエール病に準じて行います。根本的な治療法は見付かっていないため、回転性めまい発作時にその症状を抑えるための薬物による対症療法が基本になります。
回転性めまい発作を起こしている時には、まず、めまいを止める薬を点滴します。落ち着いたら、内リンパ液を減らす薬を点滴。それで聴力が回復したなら、ステロド剤(副腎〔ふくじん〕皮質ホルモン)中心の薬による治療が行われます。
具体的には、循環改善剤、血管拡張剤、ビタミン剤、利尿剤などが使われ、末梢(まっしょう)血管の血行をよくしたり、体内の余分な水分を排出することで、内リンパ水腫の状態を緩和します。また、発作時には、鎮痛剤を使用することもあります。
背景に自律神経失調やストレスがある場合は、自律神経調節薬や抗不安剤などを用います。
薬で症状が改善せず、頻繁に再発を繰り返す場合は、内耳の過剰なリンパ液を取り除くなどの手術も行われます。
遅発性内リンパ水腫の確立された予防方法はありませんが、体調やストレスなどが発症の誘因となりやすいため、普段から規則正しい生活をして、ストレスをためないように心掛けることが重要です。
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