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白癬(はくせん)とは、皮膚糸状菌が皮膚に感染して起こる疾患。皮膚糸状菌の多くは、白癬菌と呼ばれる一群の真菌(カビ)です。
白癬菌は高温多湿を好み、ケラチンという皮膚の蛋白(たんぱく)を栄養源とするため、足の裏、足指の間などが最も住みやすい場所になります。白癬は発症部位によって、頭部白癬、顔面白癬、須毛(しゅもう)部白癬、体部白癬、股部(こぶ)白癬、陰嚢(いんのう)白癬、手白癬、足白癬、爪(そう)白癬などに分けます。
●頭部白癬(しらくも)、ケルスス禿瘡(とくそう)
頭部に生じる白癬。しらくもでは、頭皮がカサカサして毛が抜けてきます。頭の毛の中に深く菌が入るとケルスス(ケルズス)禿瘡という深在性白癬になり、うみ、しこりを伴うようになって、放置すると瘢痕(はんこん)、難治性の脱毛を生じます。ケルスス禿瘡は、子供が犬や猫と遊んで移ったイヌ小胞子菌により生じることがしばしばあります。
●体部白癬(ゼニたむし)
生毛部にでき、表皮に限局する浅在性白癬で、被髪頭部、手のひら、足の裏、陰嚢、陰股部を除く部位の白癬をいいます。ステロイド薬を外用している人に多く、原因菌は猩紅色(しょうこうしょく)菌であることが多いのですが、近年、犬猫に寄生しているイヌ小胞子菌による発症者が増えています。
生毛部に比較的強いかゆみを伴う輪状に配列する発疹(はっしん)で、小水疱(すいほう)、紅色小丘疹からなります。中心にはフケ状のものが付着し、疾患が治ったようにみえるので、これを中心治癒傾向があると表現します。
股部白癬ほど皮膚が硬くも厚くもならず、色素沈着も強くありません。イヌ小胞子菌の場合は感染力が強く、露出部に小型の輪状疹が多発します。
●股部白癬(いんきんたむし)
頑癬(がんせん)ともいい、太ももの内側(陰股部)にできる浅在性白癬です。夏季に、男性に多くみられ、時に集団発生することもあります。原因菌は、大部分が猩紅色菌ですが、まれに有毛表皮糸状菌によることもあります。
中心治癒傾向がある境界鮮明な輪状の湿疹様の形で、激しいかゆみがあります。中心部の皮膚は厚く硬くなり、色素沈着がみられ、辺縁は紅色丘疹が輪状に配列、融合して、堤防状の隆起を形成します。陰股部のほか、臀部(でんぶ)に生じやすく、まれに下腹部にまで及ぶこともあります。
●足白癬(水虫)
足にできる浅在性白癬で、最も頻度の高い真菌症です。主に、足の裏に小水疱ができる小水疱型汗疱型、足の指の間にできる趾間(しかん)型、足底全体に角化のみられる角質増殖型に分類されます。小水疱型は、足底や足縁に小水疱や紅色丘疹ができるか、または皮がむけ、強いかゆみがあります。趾間型は、足の指の間の皮がむけ、白くふやけたようになります。第4指と第5指の間によく発症します。角質増殖型は、足底全体の角質が厚くなり、皮がむけ、あかぎれも生じます。
●爪白癬(爪の水虫)
足白癬を放置していると、白癬菌が爪(つめ)を侵し、爪白癬になります。爪にできることはまれと従来いわれていましたが、最近の統計によると足白癬を持つ人の半分が爪白癬も持っていることがわかりました。高齢者に多くみられます。
爪の甲の肥厚と白濁を主な特徴とし、自覚症状はありません。まれに、爪の甲の点状ないし斑(まだら)状の白濁のみのこともあります。陥入爪(かんにゅうそう)の原因の一つにもなりますが、一般にカンジダ症と異なり、爪の爪囲炎の合併はまれです。
医師による白癬の検査では、ふけや水疱部の皮膚、爪、毛を水酸化カリウムで溶かし、溶けずに残る白癬菌を顕微鏡で観察する方法が一般的で、皮膚真菌検査と呼ばれます。 時には、培養を行って、原因菌の同定を行うこともあります。手足に水ぶくれがみられ、原因が明確になっていない汗疱との区別が、白癬の検査では必要とされます。
治療法としては、白癬菌を殺す働きのある抗真菌薬の外用が一般的です。手足では4週間、そのほかは2週間で症状が改善しますが、皮膚が入れ替わる数カ月間の外用が必要です。広範囲のもの、抗真菌薬でかぶれるもの、爪白癬、ケルスス禿瘡では、内服療法を行います。
爪白癬の場合、少なくても3〜6カ月間の内服が必要です。肝臓に負担がかかることもあるため、肝臓の弱い人は内服できません。内服中は1カ月に1回、肝機能検査を行います。ケルスス禿瘡の場合、頭のしらくもをかぶれと間違って副腎皮質ステロイド薬を塗っているうちに、症状が進展して生じる場合も多いといえます。ステロイド薬を早急に中止することが必要です。
生活上で白癬に対処する注意点を挙げると、真菌(カビ)は高温多湿を好むので、その逆の状態にすることが必要です。すなわち、蒸さない、乾かす、よく洗うといったことです。足白癬(水虫)の場合、ふだんから足の清潔を心掛けることは予防のためにも大事です。家族で他に水虫の人がいたら、一緒に治療することが必要です。白癬菌は共用の足ふきから移ることが最も多いため、足ふきは別々にします。
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