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閉経後膣委縮症
閉経後膣委縮症とは、卵巣から分泌される女性ホルモンのエストロゲンが閉経後に低下し、膣壁が委縮して薄くなり、弾力性を失う状態。膣委縮症とも呼ばれます。
生理が止まった閉経後の女性は、エストロゲン(卵胞ホルモン)やプロゲステロン(黄体ホルモン)などの女性ホルモンの減少によって、さまざまな体の変化を経験します。その中でも、多くの女性が経験するのが、閉経後膣委縮症です。
女性生殖器系の器官である膣は、骨盤内にあって子宮と体外とをつなぐ管状の器官で、伸び縮みできる構造をしています。膣の前方には膀胱(ぼうこう)や尿道があり、後方には直腸があります。膣壁の内層は粘膜に覆われ、その粘膜面には横に走るひだがあります。このひだは正中部で集合し、前壁と後壁で中央に縦に走るひだになっています。このひだは出産の経験のない人に、多く認められます。
この膣の中は、温かく湿っていて有機物が豊富にある状態で、細菌の繁殖に適しています。しかし、膣には自浄作用という働きがあります。膣壁上皮は卵巣から分泌されるエストロゲンの作用により、表皮細胞への分化が促され、細胞質の内にグリコーゲンが蓄積されます。剥離(はくり)した細胞内のグリコーゲンは、ブドウ糖に分解されて、膣内の乳酸桿菌(かんきん)によって乳酸菌に換えられます。これにより膣内は酸性となり、酸性環境に弱い細菌の増殖が抑制されます。
閉経後の女性の場合、膣壁は女性ホルモンや少量の男性ホルモンの働きにより、閉経後十数年たっても若い時代の3分の2の厚さが保たれていますが、エストロゲンが不足してくると膣のひだが少なくなるとともに、膣壁そのものも委縮して薄くなり、膣分泌物の低下などが原因でコラーゲンが少なくなり、膣の乾燥感も起こります。
それとともに自浄作用も低下して、細菌やカビが繁殖するために、充血して炎症を生じる膣炎が半数に起こります。これは、委縮性膣炎、あるいは老人性膣炎と呼ばれます。
委縮性膣炎を発症すると、下り物が黄色っぽくなる、下り物に血が混じる、下り物に悪臭を伴うなどの症状が、現れることがあります。膣壁の痛みや灼熱(しゃくねつ)感などの不快感、膣入口や外陰部の乾燥感、掻痒(そうよう)感、違和感、痛みなどの症状が、現れることもあります。性行為に際して、痛みを伴ったり、出血、掻痒感などの症状が、現れることもあります。
エストロゲンの分泌が低下したり、膣壁が委縮して薄くなること自体は、閉経後の女性であれば当たり前のことですので、無症状であったり、症状が軽いこともあります。
閉経後膣委縮症、委縮性膣炎は必ずしも治療が必要なわけではありませんが、黄色い下り物は子宮体がんなどに伴う症状の可能性もありますので、注意が必要となります。
婦人科、産婦人科の医師による診断では、膣の内部や外陰部の肉眼的な観察を主に行います。さらに、細菌検査を行い、カビや細菌の有無を調べます。同時に、がん細胞の有無も確認します。
明らかにエストロゲンが低下している年齢でなければ、ホルモン検査を行うこともあります。
近年は、診断と治療的効果判定の数値化を目的に、膣健康指数を用いて診断する方法も行われるようになりました。
婦人科、産婦人科の医師による治療では、がん細胞がない場合は、女性ホルモンの膣錠、エストロゲンの経口剤や貼付(ちょうふ)剤、女性ホルモンの補充療法などで、症状の改善を図ります。
軽度の閉経後膣委縮症であれば、膣洗浄によって細菌を流し、症状を改善させることもあります。細菌感染がひどい場合は、抗生物質が入った膣錠を併用することもあります。性交痛などに対して、潤滑ゼリーを勧めることもあります。
閉経後膣委縮症、委縮性膣炎の多くは1~2週間の治療で治りますが、1カ月程度にわたって薬剤を使用しないと治らない人もいます。
外陰炎、外陰掻痒症を併発している時は、平行した治療で症状の改善を図ります。子宮体がんや乳がんなどの病歴がある人に対しては、別の治療法が選択されることもあります。
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