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乏精子症



男性の精液に含まれ、卵子と結合して個体を生成する精子の数が少ない状態

乏精子症とは、男性の精液の中に含まれる精子の数が正常よりも極端に少ない状態。ただし、国際保健機関(WHO)の基準により、精子の数だけでなく精子濃度、精子運動率、奇形率などを総合的にみて、乏精子症と見なすこともあります。

男性の精液の大部分は、陰茎の奥にある前立腺(ぜんりつせん)と、その前立腺の奥にある精嚢腺(せいのうせん)で作られ、前立腺成分が約20パーセント、 精嚢腺成分が約70パーセントを占めます。そのほかにも、精巣(睾丸〔こうがん〕)や精巣上体(副睾丸)、精管でも一部作られます。

運動能力を持ち、卵子と結合して個体を生成する男性の精子のほうは、精巣の中で精原細胞から分化して作られ、精子を運ぶ精管が精巣のすぐ近くで膨れている精巣上体において成熟し、精嚢腺と前立腺で分泌された精液と一緒になって、尿道に出ていくのが射精です。射精によって精液が尿道から出ていく際には、最初は主に前立腺からの成分、続いて精嚢腺からの成分が出ていきます。

乏精子症は男性不妊症の原因となり、夫婦生活による自然妊娠を難しくすると考えられます。その程度により、軽度乏精子症、中等度乏精子症、重症度乏精子症に分けられます。

精子の数の正常値は1ml当たり6000~8000万以上であり、約5000万の場合は軽度乏精子症、1000万以下の場合は中等度乏精子症、100万以下の場合は重症度乏精子症に相当します。自然妊娠には精子の数が4000万以上あることが望ましいとされるものの、数100万で自然妊娠することも、ごくまれにあります。

乏精子症の原因には、精巣の静脈に血液が逆流することで起きる精索静脈瘤(りゅう)、あるいは、精巣の働きの悪さから精子が作られにくい造精機能障害などがあります。詳細に検査をしても、原因が判明しない特発性造精機能障害によることも多くみられます。

造精機能障害を起こす原因疾患としては、X染色体が1つ以上多いクラインフェルター症候群などの染色体異常症、脳下垂体と視床下部の障害による性腺刺激ホルモンの低下、おたふく風邪による精巣炎、高プロラクチン血症による精子形成の低下、薬の副作用による性腺刺激ホルモンの低下などがあります。

精索静脈瘤は、精巣の上の精索部の静脈が拡張し、静脈瘤ができた状態。後天性の乏精子症、男性不妊症の主要な原因となっています。

静脈には、血液の逆流を防ぐ弁があります。精索内の静脈弁に障害があると、腎(じん)静脈から内精索静脈へ血液が逆流することにより、陰嚢(いんのう)上部にある精索の静脈(蔓〈つる〉状静脈叢〈そう〉)が蛇行して、こぶ状に拡張し、うっ血します。その程度が強い場合は、陰嚢内に腫瘤(しゅりゅう)を形成します。

この精索静脈瘤の大部分は、左側に生じます。左側の精索静脈は右に比べて長く、左の腎静脈へと合流していますが、還流障害が生じて静脈血が停滞、逆流する原因としては、静脈弁の先天性不全や、左腎静脈が上腸間膜動脈により圧迫されることが考えられています。

精索静脈のうっ血により、陰嚢内の温度が上昇して、体温より2度ほど低い温度でよく機能する精巣の発育不全、委縮、機能低下、精子の形成不全、男性ホルモンを作るライディッヒ細胞の機能の低下などを引き起こして生殖機能が損なわれることで、乏精子症、男性不妊症の原因になります。

精索静脈瘤は、一般の健康な青年男性の10〜15パーセントに認められるのに対し、男性不妊症の人では20~40パーセントと高率に認められます。思春期以降に多くみられますが、小児にもみられます。大抵は無症状です。時には、陰嚢や鼠径(そけい)部の痛みや突っ張り感などの不快な症状を生じる場合もあります。

乏精子症の検査と診断と治療

泌尿器科の医師による診断では、間隔を空けながら精液検査を数回行い、射出精液中に存在する精子の数が常に正常値を下回る場合に乏精子症と判断します。

精索静脈瘤に対しては、視診と触診を行い、精巣の上部に腫瘤を触れたり、陰嚢や鼠径部の痛みを認めることもあります。数分間立位して腹圧をかけると、静脈の拡張がはっきりします。立位で容易に静脈瘤が触知できたり、陰嚢皮膚ごしに静脈瘤が見えることもあります。片側の精巣サイズが小さいこともあります。アイソトープを使った診断法もありますが、通常は視診、触診と超音波検査で十分診断できます。

泌尿器科の医師による治療では、明確な原因の判明しない乏精子症のケースでは効果的な治療が難しいため、軽度乏精子症の場合には人工授精、中等度乏精子症の場合には体外受精、重症度乏精子症の場合や受精しにくい場合には顕微授精を用いて、妊娠を期待するのが一般的です。

精索静脈瘤の場合は、精液所見が悪い成人男性でいずれ子供が欲しいと考えているケースや、陰嚢や鼠径部の痛みや違和感があるケースで、外科手術を行います。 思春期の男性でも、片側の精巣サイズが小さくなっているケースには、将来の不妊を予防するため手術が考慮されます。片側の精巣サイズが小さくなっていない場合は、年1回の診察と精液検査を行います。

外科手術では、病変のある静脈を縛る結紮(けっさつ)を行います。手術により、精液所見は60~70パーセントで改善し、30~50パーセントでパートナーの妊娠が得られるといわれています。手術後の精液検査は、3カ月後に行われます。精子の作り始めから精子として射出されるまで、約3カ月かかるためです。

何らかの原因により性腺刺激ホルモンが低下し、造精機能が障害されている場合には、ホルモン補充療法を行い、精巣で精子が作られるようになることを期待します。

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