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母斑



皮膚の一部分に色調や形状の異常が現れる状態

母斑(ぼはん)とは、皮膚の一部分に色調や形状の異常が現れる状態。一般的には、あざと呼ばれます。

母斑はさまざまなタイプに分けられますが、その皮膚の一部分の色によって、赤あざ、青あざ、茶あざ、黒あざなどに分けられます。

赤い色の母斑が現れる赤あざは、局所的な毛細血管の拡張や増殖によって起こり、内部の血液によって皮膚表面が赤く見えるタイプで、血管腫(しゅ)とも呼ばれます。

青い色の母斑が現れる青あざは、皮膚のやや深い部分の真皮にメラニン色素を産生する色素細胞(メラノサイト)が増えるために起こり、発生する部位や症状により蒙古(もうこ)斑、太田母斑などに分けられます。

茶色い母斑が現れる茶あざは、皮膚の表面の表皮のメラニン色素が増加した状態で、扁平(へんぺい)母斑、思春期ごろに生じるベッカー母斑などに分けられます。

黒い色の母斑が現れる黒あざは、一般にほくろ(黒子)といわれるタイプで、メラニン色素を産生する色素細胞(メラノサイト)が変化した母斑細胞からなる良性腫瘍(しゅよう)です。医学的には、色素性母斑と呼ばれます。

皮膚の毛細血管の増殖、拡張でできる血管腫

血管腫は、真皮および皮下組織の中にある毛細血管の増殖、拡張を主としてできる母斑。内部の血液によって皮膚表面は赤く見えるので、赤あざとも呼ばれます。

異常を示す血管のある部位と、血管の構造の違いにより、いろいろの型があります。代表的なものは、ポートワイン母斑(単純性血管腫)、正中線母斑(サーモンパッチ)・ウンナ母斑、苺(いちご)状血管腫(ストロベリーマーク)です。

ポートワイン母斑(単純性血管腫)は、赤ブドウ酒色をした皮膚と同じ高さの平らで、境界が鮮明な斑点です。普通は出生時からあって、その後、拡大することも、自然に消えることもありません。加齢とともに少し膨らみ、いぼ様の隆起が出現することもあります。

この母斑は、真皮の上の部分の毛細血管の拡張、充血の結果できるものです。多くは、美容的な問題があるだけであり、放置してもかまいません。ただし、この型の大きな血管腫が顔の片側にある時は、スタージ・ウェーバー症候群といって、眼球や脳の中に血管腫が合併することがあります。

また、片側の腕や下肢に大きな血管腫がある時は、クリッペル・ウェーバー症候群といって、その部分の筋肉や骨の肥大などの合併症がある場合があるので、注意が必要です。

正中線母斑(サーモンパッチ)・ウンナ母斑は、乳幼児の顔、後頭部の正中線に沿ってみられる、淡紅色ないし暗赤色の毛細血管の拡張した赤い斑点です。額、眉間(みけん)、上まぶたにあるものを正中線母斑、またはサーモンパッチといい、1歳から3歳までの間に自然に消退するものの、完全ではありません。

また、うなじから後頭部にみられるものをウンナ母斑といい、消退するのに時間がややかかり、また一生消えない場合もあります。

苺状血管腫(ストロベリーマーク)は、出生時より、または生後間もなく出現する赤色、ないし暗赤色の軟らかい小腫瘤(しゅりゅう)で、表面が苺の実のように粒々しています。

出生後、半年から2年までは急速に増大して、大きいものでは鶏卵大以上の大きなしこりになることもあるものの、5~6歳ころまでには完全に消失します。このあざは、真皮内に未熟な血管がたくさん増殖するためにできるものです。

自然に治るので慌てて治療する必要はありませんが、未熟な血管の集団があるため、外傷を受けるとなかなか出血が止まらないことがあるので、注意が必要です。出血した時には、清潔なタオルかガーゼで十分に圧迫して、出血が止まるまで押さえておく必要があります。

血管腫を早期に的確に診断することは、必ずしも簡単ではありません。皮膚科専門医を受診して、診断を確定するとともに、治療法についても相談することが勧められます。

新生児の尻や腰、背中の下部に青い染みが現れる蒙古斑

蒙古斑は、生後1週から1カ月ころまでに、新生児の尻(しり)や腰、背中の下部に現れる青い染み。

胎生期に皮膚の深い部分の真皮に生じたメラノサイト(メラニン細胞、メラニン形成細胞、色素細胞)の残存と考えられています。通常は表皮にあって、メラニンという皮膚の色を濃くする色素を作り出すメラノサイトが、表皮に出ていけずに真皮にとどまって増殖しているために、青い染みに見えてしまうのです。

日本人の新生児の9割にみられ、誰でも知っているあざの一種ですが、濃淡には個人差があります。多くは中心が濃くて、境界線付近は薄くはっきりしていません。境界線もはっきりして、ほくろのように濃い蒙古斑もあります。小さいとほくろのようですが、蒙古斑は隆起がないのが特徴です。

この蒙古斑は生後2歳ころまでには青色調が強くなり、その後は徐々に薄くなって、5、6歳までには、遅くとも10歳前後までには自然に消失し、さほど問題にはなりません。

まれに、尻などの通常の部位以外の手足や顔、腹部、背中の上部、胸などにも、青みを帯びた黒色調の蒙古斑が見られることがあります。これは異所性蒙古斑に相当し、通常の蒙古斑よりも消えにくい特徴があります。

といっても、異所性蒙古斑の大半は学童期までに消失することが多く、蒙古斑同様に治療の必要はありません。中には、青い染みが学童期になっても残る場合があります。しかし、その大半は成人期までに消えることが多く、放置しておいてもかまいません。

なかなか消えない異所性蒙古斑が衣服に隠れない露出部などに現れている場合は、子供が気にしてしまうケースもあり、外見的コンプレックスになることがあります。いくつかの側面から考えて、治療の対象にするべきか、皮膚科、皮膚泌尿器科、あるいは形成外科の医師と対処を考えることが勧められます。

なかなか消えない青いあざの中には、まれに異所性蒙古斑ではなく、青色母斑であることもあります。この青色母斑の中でも細胞増殖型と呼ばれるものは、幼少時に異所性蒙古斑と区別がつかないこともあり、悪性化することもあって治療法も異なるため、通常の部位以外にみられる青いあざは時々専門医の診察を受けることも必要でしょう。

褐青色の色素斑が、まぶたから額、頬にかけてできる太田母斑

太田母斑は、片側のまぶたから額、頬(ほお)にかけてできる、境界の不明瞭な褐青色の色素斑。眼上顎部(がんじょうがくぶ)褐青色母斑とも呼ばれます。

この太田母斑は、詩人や作家としてのペンネーム木下杢太郎(もくたろう)でも知られる皮膚科の医学者・太田正雄東大教授が、1939年(昭和14年)に初めて報告した疾患で、日本人など東洋人に比較的多くみられます。

通常は顔の片側に色素斑ができますが、両側にできる場合もあります。また、生後間もなく色素斑ができる早発型と、小児期や思春期に色素斑ができて徐々に拡大する遅発型の2種類があります。

さらに、色素斑は顔面の皮膚だけでなく、眼球結膜や口の粘膜、鼓膜にできることがあります。

色素斑は、三叉(さんさ)神経の第1・第2枝の支配領域にみられ、青みを帯びた色素斑の中に褐色調の小さな斑点が散在した状態で現れます。皮膚の表面は滑らかで、盛り上がったりしません。

原因は、メラノサイト(メラニン細胞、メラニン形成細胞、色素細胞)にあります。通常は表皮にあって、メラニンという皮膚の色を濃くする色素を作り出すメラノサイトが、深い部分の真皮の上層に存在し増殖しているために、皮膚が褐青色に見えてしまいます。

色素斑が拡大したり、色調が濃くなったりすることもあり、自然に消えることはありませんが、悪性化を心配することもありません。

なお、同様の色素斑が肩から上腕に見られることがあり、これは伊藤母斑と呼ばれます。

本人が特に気にしなければ、太田母斑の治療の必要はありません。見た目が気になるようなら、カバーマークによる化粧で色を隠すのも選択肢の一つですが、皮膚科、皮膚泌尿器科、ないし形成外科を受診し色素斑を除去することも勧められます。

体のさまざまな部位に茶色の平らなあざが生じる扁平母斑

扁平母斑は、先天的もしくは後天的に、顔面および四肢、体幹の体表面に生じる淡褐色から褐色の平らなあざ。いわゆる茶あざで、カフェオレ斑とも、カフェオレ・スポットとも呼ばれます。

ほくろのように、皮膚から盛り上がることはありません。そのために、盛り上がりのないあざという意味で、扁平母斑と呼ばれています。また、コーヒーのような黒さでなく、ミルクコーヒーに似た色のあざという意味で、カフェオレ班、カフェオレ・スポットと呼ばれます。

色素細胞(メラノサイト)の機能高進により、表皮基底層でメラニン色素が増加するために、扁平母斑が生じます。大きさや形はさまざまで、類円形から紡錘形、辺縁がギザギザした不正型の小さいあざが多数集まっていたり、面状に分布する比較的均一な大きいあざであったりします。淡褐色から褐色のあざの中に、直径1ミリ程度の小さな黒色から黒褐色の点状色素斑が多数混在することもあります。

ほとんど、生まれ付きに存在するか幼児期に発生しますが、思春期になって発生する場合もあり、遅発性扁平母斑とも呼ばれます。

思春期になって発生する場合には、毛が同時に生えてくることが多く見られ、ベッカー母斑と呼ばれています。特に男性の肩甲部や胸部の片側に、少し濃い発毛を伴うベッカー母斑も発生します。海水浴や強い日光にさらされた後などに、ベッカー母斑が現れることもあります。

先天性、遅発性の扁平母斑とも通常、悪性化することはありません。

しかし、生まれた時から丸い扁平母斑が6個以上ある場合には、神経線維腫症1型(レックリングハウゼン病)のこともあります。神経、目、骨など皮膚以外の場所にも症状が出てくる可能性がある症候群で、早めに総合病院の皮膚科を受診したほうがよいでしょう。

扁平母斑は、多少の色の変化はありますが、自然に消えるあざではありません。色が淡褐色で、肌と違和感が少ないため気にならなければ、強いて治療する必要はありません。顔や腕など、肌の露出部にあって気になる場合は、皮膚科、皮膚泌尿器科、形成外科を受診することが勧められます。

思春期前後になってから肩などに生じる褐色調のあざで、発毛を伴うこともあるベッカー母斑

ベッカー母斑は、思春期前後になってから、肩や胸などに生じる比較的大きな褐色調のあざ。

いわゆる茶あざの一種で、先天的もしくは後天的に、顔面および四肢、体幹の体表面に生じる淡褐色から褐色の平らなあざである扁平母斑に類似しており、色素細胞(メラノサイト)の機能高進により、表皮基底層でメラニン色素が増加するために、ベッカー母斑が生じます。

多くは、体の片側に10~20セント前後の大きさで出現します。周囲の正常な皮膚との境界がはっきりしており、表面はザラザラとしています。好発部位は、肩、胸、背中、上腕など体幹と四肢の境界部。

女性よりもやや男性に多く、過半数に少し濃い発毛を伴うという点が特徴といえます。あざの部分に、髪の毛くらいの太さの毛が密に生えることもあります。皮膚から盛り上がることはありません。

発毛を伴う場合は、毛包という毛を包んでいる組織に、メラニン色素を作る色素細胞も入っています。

海水浴や強い日光にさらされた後などに、ベッカー母斑が現れることもあります。通常、悪性化することはありません。

ベッカー母斑は、多少の色の変化はありますが、自然に消えるあざではありません。色が淡褐色で、肌と違和感が少ないため気にならなければ、強いて治療する必要はありません。気になる場合は、皮膚科、皮膚泌尿器科、形成外科を受診することが勧められます。

皮膚のすべての部位に黒色の色素斑ができる色素性母斑

色素性母斑は、皮膚のすべての部位にできる褐色から青黒色、あるいは黒色の色素斑。母斑細胞性母斑とも呼ばれます。

母斑というのは、皮膚の部分的な奇形のことです。その皮膚の奇形というのは、皮膚の成分の一部が遺伝的素因により、異常に発育、増殖した状態をいいます。この場合、生まれた時からあるものもあるし、生後数年、あるいは数十年後に初めて出てくることもあります。

母斑の代表的なものが、この色素性母斑です。色素性母斑の大きさは大小いろいろで、皮膚と同じ高さのものから、半球状に隆起したものまであります。

色素性母斑の一番小さい型が、いわゆるほくろ(黒子)です。つまり、点状の小さく黒い色素斑や、小豆大の半球状に隆起した黒い小さな結節。顔や全身にあり、小さい時から次第に数は増加し、古くなると色が自然に消えることもありますが、大きさは次第に増大します。

比較的大きな色素性母斑は、いわゆる黒あざです。生れ付きあることが多く、その多くは皮膚と同じ高さで、表面に黒い毛が生えていることもあります。

時には、広い範囲に生じて、先天性巨大色素性母斑と呼ばれます。まれには、全身に大小の黒褐色色素斑が多発し、その上に剛毛が密生し、その外見から獣皮様母斑と呼ばれる場合もあります。この型の母斑は、脳を始め全身の神経組織の色素異常を伴うこともあり、神経皮膚黒色症と呼ばれ、悪性黒色腫ができやすい型です。

時には、まぶたの上、下に母斑が分かれている場合もあり、分離母斑と呼ばれます。胎生期のまぶたが分離する前から母斑があった場合に、分離母斑はみられます。

色素性母斑の本態は、メラノサイト(色素細胞)となるべき細胞が表皮や真皮の境界部で、異常に増加したものです。この増殖した細胞を母斑細胞と呼びます。一般的には、母斑細胞の活性は出生後はなくなっていますが、時には残っていることがあります。この活性が非常に高進してくると、ほくろのがんといわれる悪性黒色腫に移る危険性があります。

特に、成人以降に足の裏や手のひらに急に黒あざができて、色や大きさの変化が激しい場合、色の濃淡が強い場合、母斑の境界がはっきりしない場合などは、たとえ小さくても悪性黒色腫の可能性もあるので、早めに受診します。生まれ付きの大きい黒あざも、生後早めに医師と相談します。

母斑の検査と診断と治療

血管腫の検査と診断と治療

皮膚科、皮膚泌尿器科、あるいは形成外科の医師は通常、見た目と経過から診断します。スタージ・ウェーバー症候群やクリッペル・ウェーバー症候群が疑われる場合には、画像検査などが必要になります。

ポートワイン母斑(単純性血管腫)に対しては、パルス色素レーザー治療が第一選択です。薄いあざなので、手術をすると残った傷が目立つためです。レーザー治療の効果の程度は病変の深さによって違いますが、傷を残さずにほとんどの赤あざを消退させることができます。乳幼児期から開始する早期治療が、有効です。

カバーマークによる化粧で色を隠すのも、選択肢の一つです。

顔面の正中線母斑(サーモンパッチ)は、自然に消えていく場合が多いので、治療せずに経過をみます。完全に消えない場合には、露出部位のあざなので、パルス色素レーザー治療が勧められます。ウンナ母斑は、髪に隠れて目立たない部位に生じるので、ほとんど治療しません。

苺状血管腫(ストロベリーマーク)は自然に消えていくので、特に合併症の危険がない大部分のものは無治療で経過をみて差し支えありません。ただし、まぶたに生じ、目をふさいでしまうようになったものや気道をふさぐものなどは早急な治療が必要です。

即効的な治療として、副腎(ふくじん)皮質ステロイド剤の大量投与が行われます。効果が不十分な場合には、インターフェロンαの連日皮下注射が行われる場合もあります。これらの治療は効果的ですが、いずれも重い副作用を生じる可能性があります。

単に色調だけを自然経過よりも早期に淡くしたい場合には、パルス色素レーザー治療を行います。この治療は副作用が少ないのですが、こぶを小さくする効果は期待できません。こぶを縮小するためには、内部にヤグレーザーを照射します。

蒙古斑、異所性蒙古斑、青色母斑の検査と診断と治療

皮膚科、皮膚泌尿器科、あるいは形成外科の医師による診断では、特徴的な色素斑なので、ほとんどは見ただけで診断はつきます。細胞増殖型青色母斑の確定診断は、切除した小結節を顕微鏡を用いて病理組織検査することでつきます。

細胞増殖型青色母斑が疑われる場合は、リンパ節転移を起こすことがあるため、CT(コンピュータ断層撮影)検査やシンチグラム検査(RI検査、アイソトープ検査)といった全身の検査も行う必要があります。

皮膚科、皮膚泌尿器科、形成外科の医師による治療では、通常の蒙古斑の場合、ほとんどが自然に消えるのでそのまま経過をみます。異所性蒙古斑の場合は、悪性化の心配はほとんどないため、見た目の問題で気になるならQスイッチレーザーにより、あざを除去します。

Qスイッチレーザーには、ルビーレーザー、アレキサンドライトレーザー、ヤグレーザーなどがあり、レーザーの種類により多少の効果や経過の違いがみられます。特定のレーザー光線を患部に照射すると、皮膚の中にあるメラニン色素に対してのみ反応するため、周辺の正常な皮膚組織へのダメージを極力抑えながら、あざの元になっているメラニン色素だけを破壊することができます。

いずれのレーザー治療も痛みを伴うため、麻酔シール、注射などを使用して痛みの緩和を行います。治療対象となる異所性蒙古斑の色が濃く、範囲が広い場合、1~2回程度のレーザー照射では終わらない場合もあります。

異所性蒙古斑の治療の難しさは、治療をすべきかどうか、その見極めにあるともいわれています。乳幼児に現れた大半は、成長とともに消えてしまう、あるいは薄くなるケースが多いことから、早い時期に治療を選択してしまうことで、かえって傷跡を残してしまう恐れがあるためです。また、手の甲に境界線のはっきりしない異所性蒙古斑ができた場合、レーザーを照射することで逆に色を目立たせてしまう結果に至ることもあります。

一方で、異所性蒙古斑は、まだ皮膚の薄い幼児期に治療したほうが、レーザーが皮膚内に届きやすく、治療効果が高いといった意見もありますので、担当医とよく相談し、治療の有無を決めるようにします。

細胞増埴型青色母斑が疑われる場合は、原則として、局所麻酔による手術で深く広範囲に切除します。リンパ節転移が見付かった場合には、リンパ節を切除します。

太田母斑の検査と診断と治療

皮膚科、皮膚泌尿器科、ないし形成外科の医師による診断では、部位や色素斑の様子から視診で判断します。皮膚をほんの少し切り取って病理組織検査を行うと、真皮上層に色素含有メラノサイトが認められます。

また、異所性蒙古斑、青色母斑などの皮膚疾患と鑑別します。

皮膚科、皮膚泌尿器科、ないし形成外科の医師による治療では、悪性化の心配はないため、見た目の問題で気になるならQスイッチレーザー治療により、色素斑を除去します。

治療対象となる太田母斑の色が濃く、範囲が広い場合は、1〜2回のレーザー照射だけは不十分で、およそ3カ月の間隔で、少なくとも5~6回の照射を行います。

治療時期は何歳からでも可能ですが、小児の場合は全身麻酔が必要なため3歳ごろから開始するのが普通で、早期から開始するほうが効果が高いといわれています。成人の場合でも、かなり色調が改善し、完全に色素斑を除去できることもあります。

眼球の色素斑はレーザー照射ができないので、現在は治療法がありません。

扁平母斑の検査と診断と治療

皮膚科、皮膚泌尿器科、形成外科の医師による診断では、特徴的な母斑なので、ほとんどは見ただけでつきます。神経線維腫症1型(レックリングハウゼン病)が疑われる場合は、神経線維腫や聴神経腫瘍、骨格異常の有無など検査します。

皮膚科、皮膚泌尿器科、形成外科の医師による治療では、病変が浅いので、Qスイッチルビーレーザー、Qスイッチアレキサンドライトレーザーなどを照射すると、メラニン色素に選択的に吸収され、扁平母斑が消失したり軽快します。

レーザー治療の長所は治療を行った部位に傷跡ができにくいことですが、すべての扁平母斑に有効ではありません。思春期になって発生する遅発性扁平母斑では、多くのケースで効果を認めます。

先天性の扁平母斑では、思春期以降に色調が強くなって認識したケースでレーザーが効くのはまれで、レーザーを照射してしばらくは消えていたものが、次第に再発する場合もしばしばあります。再発の程度は、テスト治療で推測できます。

しかし、先天性の扁平母斑でも乳幼児期からレーザー治療を行うと、再発が少なく効果を認めることが多くなります。そのため、有効率を高めるために、皮膚が薄い0歳児からレーザー治療を行う医療機関が増えてきました。

レーザー治療が無効で扁平母斑がすぐに再発する場合には、ドライアイスや液体窒素を使用した治療や、グラインダーで皮膚を削る皮膚剥削(はくさく)術という手術が行われます。傷跡を残すことがあるので、第一選択ではありません。

ベッカー母斑の検査と診断と治療

皮膚科、皮膚泌尿器科、形成外科の医師による診断は、特徴的な母斑なので、ほとんどは見ただけでつきます。

皮膚科、皮膚泌尿器科、形成外科の医師による治療は、医療レーザーによる治療が第一選択とされます。レーザー治療の長所は、治療を行った部位に傷跡ができにくいことです。

Qスイッチルビーレーザー、Qスイッチヤグレーザー、炭酸ガスレーザーなどを照射すると、メラニン色素に選択的に吸収され、多くのケースでベッカー母斑が消失したり軽快します。

有毛性のベッカー母斑では、レーザー治療の前に脱毛するなどの処理できれいにすることが、重要になります。

有毛性のベッカー母斑に対して、脱毛処理を行わずにレーザー治療を行うと、最初は周囲の正常な皮膚と同じ肌色になりますが、時間が経つにつれて、ポツンポツンと毛穴に一致して色素沈着が出てきます。毛包の中のメラニン色素を作る色素細胞が、過剰に反応してしまうためです。

医療機関によっては、剛毛が生えていたり、多毛である際には、Qスイッチヤグレーザーなどと医療脱毛用のレーザーを併用することもあります。

レーザー治療が無効でベッカー母斑が再発する場合には、ドライアイスや液体窒素を使用した治療や、グラインダーで皮膚を削る皮膚剥削(はくさく)術という手術、植皮術などが行われます。傷跡を残すことがあるので、第一選択ではありません。

色素性母斑の検査と診断と治療

皮膚科、皮膚泌尿器科、形成外科の医師による診断は、特徴的な色素斑なので、ほとんどは見ただけで診断はつきます。ただし、色素性母斑自体は良性ですが、皮膚の悪性腫瘍の中でも悪性度が高い悪性黒色腫と見分けがつきにくいものも時々あります。悪性黒色腫の確定診断は、切除したほくろを病理組織検査することでつきます。

皮膚科、皮膚泌尿器科、形成外科の医師による治療では、放置しておいてもかまわない色素性母斑であっても、顔などに大きなものがあり、本人が非常に気にしたり、他人に悪印象を与える時などは、手術で除去することになります。非常に小さなほくろであっても、本人が悪性化や、その他の面で気にする時にも、手術を行うこともあります。

手術では、病変部の皮膚をメスで全部切り取った後、皮膚の欠損部を縫い合わせるか、植皮術を行います。最近では、顔の小さいほくろの場合に、メスの代わりに炭酸ガスレーザーで切除した後、縫い合わせないで自然に治るのを待つ、くり抜き療法も行われています。

いずれにして、多少の傷跡は残ります。特に、植皮術で植皮した皮膚は、周囲の皮膚とは細かい性状が異なり、完全にはなじみません。従って、手術の跡と、ほくろやあざとどちらが目立つかを考えてから、手術をする必要があります。手術をしなくても、カバー・マークを利用して、色を隠せばよいからです。

なお、炭酸ガスレーザーを用いる、くり抜き療法は顔面ではあまり傷跡が目立たないことが多いようですが、他の部位ではくり抜いたところの傷跡が目立つ場合もあります。また、レーザー治療では多くの場合、病変部を焼き飛ばすため、病理組織検査を行えません。悪性黒色腫と見分けがつきにくい場合もあるので、レーザー治療を選択する場合には、担当する医師の十分な診断力が必要とされます。

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