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表皮嚢腫
表皮嚢腫(のうしゅ)とは、表皮にできる袋状の腫瘍(しゅよう)。粉瘤(ふんりゅう)、アテロームとも呼ばれます。
有り触れた皮膚疾患の一つで、ほくろ、いぼを除いた皮膚良性腫瘍の8割程度が、表皮嚢腫に相当します。通常、痛みや発赤などの目立った症状がすぐに出てくることはなく、徐々に増大することが特徴で、時に感染や炎症を起こすと、化膿(かのう)して痛みや発赤、はれを生じます。この場合は、感染性表皮嚢腫、炎症性表皮嚢腫とも呼ばれます。
一般的には、毛穴が狭くなったり、ふさがったりすることが原因となり、毛穴の一部分の組織が皮膚の深い部位に蓄積し、周りの皮膚が表皮の下で袋状に形成されることで、表皮嚢腫ができます。この場合は、皮膚の表面に細い開口部を持つことが多くなります。
また、外傷で皮膚が傷付く際、皮膚の垢(あか)である表皮の角質物質や異物の混入によって、周りの皮膚が袋状に形成され、表皮嚢腫ができることもあります。この場合は、皮膚の表面に開口部を持つことは少なくなります。
皮膚が存在する全身のあらゆる部位に表皮嚢腫ができる可能性がありますが、できやすい部位は、頭部、眉(まゆ)、耳の周囲、頬(ほお)、背中、臀部(でんぶ)などです。耳たぶのピアスの跡にできたり、腋臭(わきが)手術後の腋の下にできることも多く、小さな外傷を原因として手のひらや足底にできることもあります。
多発する場合は生まれ付きの体質によるところが多く、耳たぶ、腋の下、臀部などにできやすく、少しずつ大きくなり、目立ってきます。生まれ付きの体質によるものがごくまれにある一方、あらゆる年齢で発症する可能性があり、老人になってから発症することもあります。
大きさは直径数ミリから2〜3センチほどのものが多く、皮膚表面では隆起した半球形に見えますが、実際は皮膚の厚みの中に球状に存在しています。皮膚の深い部位に形成される場合は、皮膚表面から隆起せずわからないことがありますが、触ると硬いしこりが確認できます。しこりをつまんで上下に移動させると、周辺の皮膚が同時に移動することから、表皮嚢腫であると確認できます。
基本的に初期の小さな表皮嚢腫は、白色から肌色。年単位で徐々に大きくなるにつれて、黄色、黒色、青色など、さまざまな色に変化することがあります。
皮膚の表面に細い開口部を持っている場合は、つぶそうとしたり、つまんだりすると、銀杏(ぎんなん)のような悪臭のする白いペースト状の物質が出てくることもあります。脂肪の塊や脂肪の腫瘍と思われがちですが、正確には脂肪ではなく皮膚でできた腫瘍です。
多くの表皮嚢腫は、ほぼ無症状のまま経過します。しかし、皮膚の表面の開口部から細菌が進入して感染すると、小さなしこりであった表皮嚢腫が炎症のために、2〜3倍の大きさになります。鶏卵やこぶしの大きさくらいまで大きくなったり、臀部など脂肪が多く軟らかい部位ではさらに大きくなったりします。
ひどい場合には、化膿して痛み、発熱を伴って赤くはれ上がり、膿(うみ)を出すケースもあります。ごくまれには、皮膚がんを合併することもあります。
もし、表皮嚢腫だと思っていたものが、急速に増大したり、出血が見られる場合は、皮膚がんの合併も疑わなくてはなりません。該当する症状がある場合は、早めに皮膚科、皮膚泌尿器科、ないし形成外科を受診することが勧められます。
皮膚科、皮膚泌尿器科、形成外科の医師による診断では、皮膚症状から判断します。角質物質でできている表皮嚢腫は硬いため、軟らかい脂肪腫とは簡単に区別することができます。
診断に疑いがある場合には、手術によって摘出して病理検査を行い、皮膚がんの合併を判断します。
皮膚科、皮膚泌尿器科、形成外科の医師による治療では、外科的な摘出手術を行います。自然治癒しないこと、徐々に大きくなること、感染すると炎症で痛みや発赤、はれを生じること、薬で治療は不可能であることが、手術を行う理由です。
炎症を起こした場合は、まず抗菌剤、鎮痛剤の投与を行います。化膿している場合は、表皮嚢腫の一部を切開し膿を排出する応急処置を行います。この切開排膿から1カ月ほど時間を空けて、皮膚の下にある球状の表皮嚢腫を手術で摘出します。
炎症が起きた状態で摘出手術を行うと、表皮嚢腫の取り残しのリスクが上がり、再発してしまう恐れがあるからです。
手術で直線状の瘢痕(はんこん)が残りますので、直線状に皮膚を縫合します。顔面などにできた表皮嚢腫は、横じわを利用して、瘢痕を目立たなくする工夫します。
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