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不眠症とは、実際の睡眠時間の長短にかかわらず睡眠不足感が強く、日常生活を送る上で支障が起きる状態のこと。
この不眠症には、入眠障害、中途覚醒(かくせい)、熟眠障害、早朝覚醒という4つのタイプがあります。
入眠障害は眠ろうとしてもなかなか眠れないため、苦痛を感じるタイプの不眠症
入眠障害とは、床に就いて眠ろうとしてもなかなか眠れないという、寝付きの悪さを特徴とするタイプの不眠症。不眠症と判断される目安となるのは、就床後30分から1時間以上眠れないという症状が週に2回以上、かつ1カ月以上続いており、本人が苦痛を感じている場合です。
例えば、明日重要な試験や会議があるために緊張して眠れないというような状態は、単なる一過性の不眠です。試験や会議が終われば、きちんと眠れるようになるからです。ところが、不眠症の場合は夜中に何度も目が覚めたり、よく眠ったという気がしないなど頻繁に睡眠に関する問題が起きており、入眠障害では眠りに入る時に問題が起きています。
入眠障害の原因は、2つあるとされています。まず1つの原因は、精神生理性不眠(神経症性不眠)と呼ばれるもので、精神的ストレスが問題を引き起こします。明日のことが不安で眠れない、今日あったことを思い出してしまって眠れないなど、人によって眠れない理由はさまざまですが、その背後には精神的ストレスが隠れています。最初は一過性の不眠なのですが、眠れるだろうかと不安になってくると不眠症の症状となってきます。
精神的ストレスが原因となっている場合には、イライラや緊張を鎮めてリラックスできるように就寝30分〜1時間前から照明を落としたり、音楽を流したりと工夫をするのがお勧めです。眠りやすい環境を作ることを心掛け、騒音や温度調整をするのもよいでしょう。
入眠障害のもう一つの原因は、床に就くのが早すぎることにあります。高齢者になって時間にゆとりができると、早く床に就いてしまいがちになりますが、人間の体内時計による自然な眠りの準備が整っていない状態なので、なかなか眠れなくなってしまいます。人間の体内時計のタイマーは、朝起きて太陽の光を浴びたところから14~16時間後に眠くなるようにセットされているのです。
この原因の場合は、眠気を感じていないのに布団に入って、なかなか眠れないと焦ってしまうより、眠気を感じるまで布団に入らないという改善方法があります。ただし、眠気を感じるまでの間、テレビを見たり、パソコンやゲームに時間を費やしてしまうと、脳が興奮してしまうので避けましょう。
そのほか、入眠障害の原因には、夜間の睡眠時などに下肢を中心に不快な感覚が起こり、むずむずする不穏な運動を生じて、慢性的に寝付けない病状を示す、むずむず脚症候群などの疾患が隠れている場合もあるので、注意が必要です。
生活面での工夫をしても入眠障害が続くようであれば、不眠症専門の外来や、神経科、心療内科を受診することが勧められます。
医師による入眠障害などの不眠症治療では、精神的な療法を行ったり、薬による治療を行うことになります。一般的には睡眠薬による治療ですが、人それぞれ原因も違ってきますから、睡眠薬の服用については医師に相談しながら治療を進めていくことが大切です。
最近の睡眠薬は、安全性が高くなりました。以前はバルビツール酸系の薬が主に用いられていましたが、依存しやすいという問題などから最近は比較的安全なベンゾジアゼピン系が多く使われています。ただし、疾患を併せ持つ人が他の薬と併用する場合は副作用などの恐れもあるため、使用には医師の診断が必要で、症状に合った薬を処方によって服用します。
すべての薬にあるように、睡眠薬にも副作用はあります。最大の特徴は、薬が効いている間に布団から起きてしまうと、効果がすべて眠気、ふらつき、頭重感などの副作用に変わってしまうこと。従って、服用したらすぐ布団に入ること、増強作用のあるアルコールと一緒に服用しないこと、用量用法は医師の指示を守ること、突然、服用を中止すると症状が悪化する場合もあるので、医師と相談しながら漸減することなどが必要となります。
中途覚醒は夜中に寝ている途中で2回以上、目が覚めるタイプの不眠症
中途覚醒とは、いったん寝付いても朝まで睡眠が持続できないで、何度も目が覚めるタイプの不眠症。不眠症の中で、最も多くの人がかかりやすいタイプです。
この中途覚醒は、睡眠の途中に2回以上目が覚めるものをいいます。途中で目が覚めても、すぐにまた眠れる人もいれば、なかなか次の眠りに入れない人もいます。高齢者の場合は、この中途覚醒が不眠症の大きな症状となります。
寝付きが悪いわけではないのに夜中に目が覚めてしまう、目が覚めた後もう一度眠るまでに時間がかかるといった状態になるのが、典型的な症状です。全体的に浅い眠りになっていることが多く、何度も繰り返し起きてしまったり、眠っても疲れが取れない、睡眠時間の割に日中眠くなったり集中力が低下するという症状も現れます。
実際、眠っている途中に一度起きてしまうと、入眠から浅い眠りのレム睡眠へ、さらに深い眠りのレム睡眠へと続く眠りのリズムを初めからやり直さなければならないために、脳も体もしっかり休息することができません。
睡眠と覚醒のリズムを生み出す脳の仕組みそのものの不調が原因で起きるほか、実にさまざまな原因で起きます。例えば、さまざまな精神的な病気の部分症状として起きるほか、さまざまな病気に起因する体のあちこちの痛み、ぜんそくなどによる呼吸困難やせき、消化器系の病気による腹痛、前立腺(ぜんりつせん)肥大症によって高頻度に起こる夜間の頻尿などが挙げられます。
また、睡眠薬代わりに寝酒をする人は少なくありませんが、少量のアルコールは寝付きをよくするものの、大量のアルコールを長期に渡って飲み続けていると、深い眠りであるレム睡眠を減らしてしまうために、浅い眠りであるレノンム睡眠ばかりになってしまい、しばしば中途覚醒を起こします。
中途覚醒の原因として近年、注目を浴びているものに睡眠時無呼吸症候群もあります。この病気は、睡眠中に10秒以上に渡って呼吸が止まり、1時間に5回以上みられる場合に診断されます。
すなわち、深い睡眠に入ろうとすると呼吸が止まり、息苦しくなって目が覚めてしまうために、一晩中深い睡眠に入れなくなります。全体として一晩に6~7時間眠ったとしても、常にウトウトしたような浅い睡眠でしかないために、昼間に眠気を催して居眠りばかりして、上司に叱責(しっせき)されるという事態に陥ってしまいます。
睡眠時無呼吸症候群では、本人が息苦しさを翌日に覚えていないために、自覚的には昼間の眠気だけしかないことが少なくありません。もっとたくさん寝ようと早くからベッドに入る努力をしても、睡眠の質が不良なためにいくら長時間寝ても昼間の眠気や、集中力の低下、活力の喪失は改善されません。
意外と知られていないが決して少なくない中途覚醒の原因として、周期性四肢運動障害という病気もあります。この病気は睡眠時無呼吸症候群と同様に、深い眠りに入ろうとすると、周期的に反復する瞬間的な手足、特に下肢の運動が現れます。
つまり、まどろみから深い睡眠に移行しようとすると、足がピクンと動いてしまうのです。通常、20~30秒周期で足の動きを繰り返し、悪化すると回数が増え、多い人では1時間に100回以上起こる場合もあります。足が動いても、多くの場合本人は気付きませんが、足がピクンと動くと、脳は目覚めてしまうので眠りが妨げられます。このために深い睡眠に入れずに、昼間に眠気を催します。
中途覚醒の裏側には他の病気が隠れていることが非常に多いので、常日ごろから体の状態をチェックしておくとよいでしょう。また、どんな病気が絡んでいるにせよ、精神的ストレスがたまっている状態だと、中途覚醒が起きやすいことがわかっています。
精神的ストレスがかかった状態で眠ると、眠っているつもりでも脳はリラックスして休むことができません。浅い睡眠状態で眠ることになるため、途中で何度も目が覚めたり、ささいな刺激で覚醒することになります。
精神的ストレスからくるイライラや緊張を鎮めるためにには、リラックスできる音楽や読書、入浴や食事など生活面での工夫をしてみることも必要です。眠りやすい環境を作ることも心掛け、騒音や温度調整、明るさの調整をするのもよいでしょう。
昼間の眠気や、集中力の低下、活力の喪失など日中の生活に支障が出るような場合には、午前中など早い時間に10~20分の仮眠を取ることも効果的です。仮眠を取る場合には、夜眠れなくなるほど長時間寝てしまうと意味がありません。夕方など遅めの時間に仮眠を取るのも、夜の睡眠に支障が出ることがあるので、遅くても昼の休憩くらいまでの間に仮眠するようにしましょう。
生活面での工夫をしても中途覚醒が続くようであれば、医師に相談することが必要です。
医師による不眠症治療では、精神的な療法を行ったり、薬による治療を行うことになります。一般的には睡眠薬による治療ですが、人それぞれ原因やタイプも違ってきますから、睡眠薬の服用については医師に相談しながら治療を進めていくことが大切です。
睡眠薬は、作用時間により超短時間型、短時間型、中間型、長時間型に分類されます。頻繁に目を覚ます中途覚醒では、長時間型の睡眠薬が処方されることが多く、作用時間が長いため昼間の不安抑制効果も期待できます。
主な睡眠薬としては、ソメリン(成分名・ハロキサゾラム、ベンゾジアゼピン系)、インスミンやダルメートなど(成分名・フルラゼパム、ベンゾジアゼピン系)、ドラール(成分名・ベンゾジアゼピン系)があります。
熟眠障害は熟睡したという満足感がなく、目覚めた時に睡眠不足を感じるタイプの不眠症
熟眠障害とは、眠りが浅くて、目覚めた時に熟睡したという満足感がなく、睡眠不足を感じるタイプの不眠症。不眠症と判断される目安となるのは、この症状が週に2回以上、かつ1カ月以上続いており、本人が苦痛を感じている場合です。
この熟眠障害は、寝付いたにもかかわらず途中で何度も目が覚めてしまう中途覚醒が原因となっている場合があります。しかし、尿意や夢、ちょっとした物音、部屋の寒さや暑さなどを始めとする何らかの原因で眠りが中断されても、その時間が短いと夜中に目覚めたという記憶がないこともあります。それを夜中に何度も繰り返していると、熟眠障害になってしまうのです。
熟眠障害では睡眠の持続性が得られないため、本人にとっては症状はかなりきついといえます。中には、夜、十分な時間寝ているはずなのに朝起きた時に全く寝た感じがしない、疲れが取れていず、昼に眠くて眠くてどうしようもないという人もいます。
そのため、中途覚醒の自覚のあるなしにかかわらず、熟睡した、ぐっすり眠ったという感覚が得られない場合は、熟眠障害を疑ってみる必要があります。熟眠障害だけがあり、中途覚醒がないということはまれです。
実際、眠っている途中に一度起きてしまうと、入眠から浅い眠りのレム睡眠へ、さらに深い眠りのレム睡眠へと続く眠りのリズムを初めからやり直さなければならないために、脳も体もしっかり休息することができません。
熟眠障害は、睡眠環境が原因で起こることもあります。引っ越したばかりで環境に慣れていない、新しい寝具に変えたなどという環境の変化によるものかもしれません。また、特に環境の変化や寝具の変化がないけれど睡眠不足を感じている人は、寝具を見直してみてください。寝具は毎日使うものですから、一生同じ状態を保持するのは難しいもので、弾力性やフィット感が変わって熟眠障害を起こしている可能性もあります。
寝具の見直しをしても改善されない場合は、睡眠時間を見直してみましょう。年齢を重ねるにつれて、体は衰え、疲労感も増していきます。頭では今までの生活に慣れていても、体に疲労がたまっているのかもしれません。
それらで改善につながらない場合は、睡眠中に症状の現れる疾患が関係していることもあります。本人が自覚していない熟眠障害や中途覚醒の原因として、睡眠時無呼吸症候群、周期性四肢運動障害があります。
熟眠障害の裏側には他の疾患が隠れていることが多いので、常日ごろから体の状態をチェックしておくとよいでしょう。また、どんな疾患が絡んでいるにせよ、精神的ストレスがたまっている状態だと、熟眠障害が起きやすくなります。精神的ストレスがかかった状態で眠ると、眠っているつもりでも脳はリラックスして休むことができず、浅い睡眠状態で眠ることになります。
精神的ストレスからくるイライラや緊張を鎮めるためにには、リラックスできる音楽や読書、入浴や食事など生活面での工夫をしてみることも必要です。眠りやすい環境を作ることも心掛け、騒音や温度調整、明るさの調整をするのもよいでしょう。
昼間の眠気や、集中力の低下、活力の喪失など日中の生活に支障が出るような場合には、午前中など早い時間に10~20分の仮眠を取ることも効果的です。仮眠を取る場合には、夜眠れなくなるほど長時間寝てしまうと意味がありません。夕方など遅めの時間に仮眠を取るのも、夜の睡眠に支障が出ることがあるので、遅くても昼の休憩くらいまでの間に仮眠するようにしましょう。
生活面での工夫をしても熟眠障害が続くようであれば、不眠症専門の外来や、神経科、心療内科を受診することが勧められます。
医師による熟眠障害などの不眠症治療では、精神的な療法を行ったり、薬による治療を行うことになります。
早朝覚醒は朝早くに目が覚め、そのまま眠れなくなるタイプの不眠症
早朝覚醒とは、朝早くに目が覚めてしまって、そのまま眠れなくなるタイプの不眠症。不眠症と判断される目安となるのは、この症状が週に2回以上、かつ1カ月以上続いており、本人が苦痛を感じている場合です。
朝早く、4時くらいに目が覚めた後、もう一度眠ろうとしてもなかなか眠れませんし、眠れたとしても、うつらうつらするだけで熟睡できないため、かえって疲れてしまうこともあります。早くに目が覚めてしまうので、そのぶん、早く寝なければと早寝の習慣が付いてしまい、さらに早朝に目が覚めるという症状が進んでしまう場合もあります。
重要な試験や会議の前など特に緊張している場合、朝早く目が覚めてしまったり、なかなか眠れないということはありますが、長期間続くようだと昼間の生活にも支障が出てしまいます。早朝覚醒になると、活動中に集中力が落ちたり、何事も面倒に感じたり、気分が落ち込みがちになったり、昼間に我慢できない眠気に襲われることもあります。
この早朝覚醒には2つのパターンがあり、1つは老人性早朝覚醒です。人間は年を取ると、生活リズムが変化して朝方の生活になる傾向があります。朝が苦手だった人でも、年を取ると早起きになったという話もよく聞きます。眠り方というのは、年齢とともに変化するのが自然なのです。
若い人の場合、1回の睡眠中に深い眠りのレム睡眠が2~3回繰り返されます。しかし、年を取るとともにレム睡眠に達する回数は少なくなり、浅い睡眠状態になります。また、眠るための物質であるメラトニンの分泌量が少なくなり、眠る能力が低下してきます。そのため、朝早くに目が覚める早朝覚醒や、夜中に目が覚める中途覚醒が起こりやすいのです。
不眠症の中で最も罹患(りかん)率の低いタイプが早朝覚醒ですが、高齢者の不眠症では最も多いタイプに相当します。ほかの不眠症と違い、ある程度の年齢で熟睡感があり、生活に支障がなければ問題はありません。早く目が覚めてしまえば、無理に再び眠ろうとせず、そのまま一日を始めてもいいのです。
疲労がたまったり、昼間の活動中に眠気を感じる場合には、改善を行うのがお勧めです。朝日が差し込まないように遮光カーテンを引いたり、雨戸を閉めて、早い時間に覚醒しないようにするのも一案。
早朝覚醒のもう1つのパターンには注意が必要です。それは、うつ病、双極性障害(躁うつ病)、躁病などの精神疾患の症状として現れます。
ストレスや不規則な生活が続くと、知らず知らずのうちに軽度のうつ病になっていることがあります。うつ病と不眠症は関係が深く、うつ病の症状の一つに不眠が挙げられます。うつ病として軽い段階だと、本人も病気だという自覚症状がないままで、どんどん睡眠状況が変化するため、睡眠不足と気分の上下動で混乱してしまいます。
うつ病の場合は、起きる時間が早くなっていく以外にも、中途覚醒、入眠障害など睡眠そのものが不規則になるため、日常のパターンが崩れやすくなり、生活に支障を来すことが多いものです。
精神疾患の症状としての早朝覚醒は、日中に体を動かしたり、日の光をきちんと浴びたり、精神的なストレスを軽減したり、睡眠の環境を整えたりといった方法で、改善する場合もあります。しかし、断続的に不規則な眠りに悩まされる場合、気分の変調、落ち込みなどの問題がある場合は、できるだけ早く心療内科や精神科を受診して、専門医に相談することがお勧めです。
精神疾患の治療の一環で、睡眠薬を出してくれる医療機関も数多くあります。医師と相談の上、睡眠薬などの服用が必要である場合もあります。
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