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副甲状腺機能低下症



副甲状腺ホルモンの分泌や作用が低下するために起こる疾患

副甲状腺(せん)機能低下症とは、副甲状腺ホルモンの分泌や作用が低下するために起こる疾患。

副甲状腺は大きさは4〜5ミリぐらいで、甲状腺の周囲にある臓器。多くの人は4つ持っていますが、3つあるいは5つ以上持っている人もまれではありません。ここで作られる副甲状腺ホルモンは血液中のカルシウム濃度を一定の範囲内に調節しています。健康な人では、血液中のカルシウムが減ると、血中カルシウム濃度を上昇させるように働く副甲状腺ホルモンが増加し、骨に蓄えられているカルシウムが血液中に溶かし出されてカルシウムが正常な濃度に戻ります。

この副甲状腺ホルモンの作用がうまく発現せず、そのために血液中のカルシウム濃度が低下する疾患が、副甲状腺機能低下症。その原因の全く不明な特発性のものと、原因の明らかな続発性のもの、および副甲状腺ホルモンの分泌は保たれているにもかかわらず、副甲状腺ホルモンの作用が損なわれている偽性のものとに分類されます。

大部分は続発性のもので、頸部(けいぶ)の手術や外傷による副甲状腺の障害や、先天性の副甲状腺形成異常などで起こります。近年、副甲状腺ホルモンの分泌の低下を起こす遺伝子異常が、数多く明らかにされてきています。

偽性の副甲状腺機能低下症は、副甲状腺ホルモンによる細胞内シグナルの伝達機構の障害が原因で、その異常部位によりさらに細かく分類されています。

特徴的な症状は、神経や筋肉が刺激されやすくなり、テタニー発作という痛みを伴う筋肉の硬直現象が起こることです。最初に手足や口の回りのしびれが起こり、次に手の先をつぼめて、手首を曲げた特有のけいれんがみられます。手足のこむら返りもみられ、時には、全身のけいれんがみられて、意識を失うこともあります。このため、てんかん発作と間違えられることもあります。

また、血管の筋肉にもけいれんが起こり、狭心症の発作や呼吸困難を起こすこともあります。

長期に渡って副甲状腺機能低下症があると、毛髪は薄くなり、皮膚は乾燥して魚のうろこのようになり、白内障もしばしば認められます。

副甲状腺機能低下症の検査と診断と治療

内科、内分泌代謝内科の医師による診断では、血液中の成分を測定して、カルシウムの減少と無機リンの増加が認められた上、腎機能低下がなければ、本症と考えます。テタニー発作は副甲状腺の機能が低下した時だけにみられる現象ではなく、激しい嘔吐(おうと)で胃酸を大量に失った時や、ヒステリーなどで呼吸回数が増えた時などにもみられるため、それらとの区別が必要になります。

また、偽性の副甲状腺機能低下症の場合には、副甲状腺ホルモンの細胞内シグナルの異常部位により病型を決めるために、副甲状腺ホルモンを注射して反応をみるエルスワース・ハワード試験という検査を行います。

医師による治療では、血中カルシウム濃度を上昇させるために、アルファカルシドール、またはカルシトリオールという活性型ビタミンD3製剤を内服します。活性型ビタミンD3製剤は、腸管からのカルシウム吸収を促進し、また腎(じん)臓から尿中へのカルシウム排出を低下させるように働くことなどで、血中カルシウム濃度を上昇させます。

活性型ビタミンD3製剤の投与量が少なすぎると、低カルシウム血症が十分改善しません。逆に多すぎると、血中や尿中のカルシウムが高くなりすぎ、腎結石や腎機能障害を来す危険があります。このため、定期的に血液や尿の検査を受ける必要があります。

ビタミンD製剤とカルシウム製剤を毎日内服する治療でもよいのですが、いずれにしても一生服用しなければなりません。

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