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ビタミン様作用物質



ビタミンと類似した作用を持つ有機化合物の総称

ビタミン様作用物質とは、ビタミンに似た働きをし健康を維持、促進する上で必須となる微量栄養成分。13種類のビタミンとは、体内で合成されるという点で異なります。

このビタミン様作用物質は、健康の維持や体調不良の時に利用されているだけでなく、最近は、治療薬として医療現場で実際に、使われるケースも多くなっています。また、まだ研究段階の栄養素であり、今後の研究によっては、知られていない働きや作用が発見される可能性もあります。

以下に、ビタミン様作用物質を列挙します。

■ビタミンF■

ビタミンFとは、必須(ひっす)脂肪酸のこと。最近では、ビタミンFという呼び方はあまりしません。

ビタミンはもちろん健康な体を維持するのに重要な栄養素ですが、ビタミンFの効果はそれ以上に重要で、古典的な三大栄養素である蛋白(たんぱく)質、炭水化物、脂肪のうち、脂肪分子の構成要素でもあります。

1日の必要量についても、ほかのビタミンは微量でいいのですが、ビタミンFはたくさんの量が必要とされています。そのため、ビタミンFとして呼ばれるよりも、必須脂肪酸などの言葉で呼ばれるほうが多くなってきているのです。その必須脂肪酸とは、体内で他の脂肪酸から合成できないために、食事から摂取する必要がある脂肪酸のことです。

人間にとっては、多価不飽和脂肪酸がビタミンF、すなわち必須脂肪酸であり、その多価不飽和脂肪酸にはリノール酸、γ-リノレン酸、アラキドン酸、α-リノレン酸、エイコサペンタエン酸 (EPA)、ドコサヘキサエン酸 (DHA)などがあります。

ビタミンF、すなわち必須脂肪酸は、皮膚や髪に効果的で、血圧や血糖値を下げたり、動脈硬化を防ぐなどの効果がみられます。また、細胞の成長を助ける効果もあるため、健康維持にも役立ちます。

不足すると、皮膚や髪が不健康な状態になります。結果として、にきびや湿疹(しっしん)ができたり、フケや抜け毛が生じたりします。また、細胞の成長が妨げられるため、成長停止やむくみなど全身に影響が出てきます。

だからといって過剰摂取すると、体重増加につながったり、健康を害する危険があるため注意が必要です。

ビタミンF、すなわち必須脂肪酸を含む食品は、主に紅花(べにばな)、ひまわり、大豆(だいず)、菜種、亜麻(あま)、ごまなどの植物油です。また、ピーナッツ、ひまわりの種、ごま、小麦胚芽(はいが)、クルミ、アーモンド、海藻、緑色野菜、大豆、小豆などにも含まれています。

炭水化物を多量に取る人や、動脈へのコレステロールの沈着を気にしている人には、多くの摂取が必要で、ビタミンEと一緒に取るとビタミンF、すなわち必須脂肪酸の効果が促進されます。

■ビタミンQ(コエンザイムQ)■

ビタミンQとは、脂溶性のビタミン様作用物質で、食べ物からエネルギーを作り出す時に必要な栄養素。コエンザイムQ、ユビキノン、補酵素Qとも呼ばれます。

ビタミンQには10種類ほどありますが、人の健康に有効なのはビタミンQ10(コエンザイムQ10)だけです。

体内では、細胞の中にあるミトコンドリアに、一番多く存在しています。このミトコンドリアというのは、酸素を使って栄養分からエネルギーを作り出し、エネルギーの生産工場と呼ばれています。ちなみに、酸素呼吸する動物はすべて、体内にミトコンドリアがあります。

そのほか、ビタミンQには、抗酸化作用や免疫力を高める働きがあります。抗酸化作用は、体内にできた活性酸素を抑えて、細胞の酸化(老化)を防ぎ、アンチエイジングの効果があります。免疫力については、白血球や免疫細胞の活動を活発にして、病気への抵抗力、精子の活動も高めたりする働きがあります。

栄養素としてだけでなく、心不全や狭心症、筋ジストロフィー、糖尿病、脳出血などの治療薬としても使われています。

もしビタミンQが不足すると、体内がエネルギー不足になり、頭痛、疲労感、冷え性、肩凝り、月経不順などが起こります。

栄養素としてのビタミンQは、牛レバー、豚レバー、もつなどの肉類や、マグロ、カツオ、サンマ、イワシ、サバなどの魚類に多く含まれ、ブロッコリーにも含まれています。

加熱調理すると、かなり減少することと、もつ、レバーなどはカロリーやコレステロールが多いので、摂取量には注意しましょう。

ビタミンQは、体内でも合成されるため、40歳ぐらいまではそんなに不足することはありません。しかし、40歳を超えたころから、合成量が次第に減ってくるため、食べ物や、コエンザイムQ10と冠したサプリメントから積極的に取ることが勧められます。体重60kgの20歳代男性の体内には約700mg含まれていますが、40歳代では30パーセント、80歳代では50パーセント以上が失われるとされています。

食べ物やサプリメントから多くの量を摂取するだけでなく、体内でビタミンQを効率よく働かせることも大切。そのためには、適度な運動をしたり、同様に抗酸化作用のあるビタミンCを含む緑黄色野菜や果物を積極的に食べたりするとよいでしょう。

■α-リポ酸(チオクト酸)■

α-リポ酸とは、ビタミンに近い働きをするビタミン様作用物質。チオクト酸とも呼ばれています。

その作用は大きく2つあり、体内でのエネルギー生産にかかわっている補酵素として糖質の代謝作用を促進する働きと、強力な抗酸化作用を有しています。

食事から摂取した糖質は、体内で解糖の最終産物であるピルビン酸に変化してミトコンドリアに運ばれ、そこでα-リポ酸によってアセチルCoAに転化し、TCA回路(クエン酸回路)で代謝されます。α-リポ酸の体内量が少なくなると、糖がエネルギーとして代謝されず、肉体疲労や肥満の原因となります。

一方、抗酸化作用はビタミンCとビタミンEの400倍の強さを持つといわれていますが、その抗酸化物質としての特異性は、細胞膜の脂肪性領域と細胞内の水溶性領域の両方で働くことができることです。つまり、水溶性ビタミンや脂溶性ビタミンのようにその作用が限定されず、さらに分子量が小さいので体の隅々まで浸透します。

α-リポ酸が多く含まれる食品には、牛や豚の肝臓、心臓、腎(じん)臓、ほうれん草、トマト、ブロッコリー、ジャガイモ、ニンジンなどがあります。ただし、その量は多くなく、動物由来食品で1kg当たり1mg程度といわれています。

日本では従来、医薬品の成分としてのみ取り扱われ、肉体疲労、急性肝炎、慢性肝炎、肝硬変などに効果があるとされていましたが、2004年の食薬区分改正により一般の健康食品やサプリメントに配合してよい成分となり、一般販売されました。

α-リポ酸は治療目的で使用する場合の摂取量は1日当たり600mgとされていますが、サプリメントなどとして摂取する場合は、メーカー推奨量が1日100mg程度。

特定の遺伝的素因を持った人がα-リポ酸を摂取した場合、インスリン自己免疫症候群(IAS)を引き起こして低血糖状態になるといわれ、具体的な症状として冷や汗、手足の震えなどの症状が報告されています。ただし、この特定の遺伝的素因を持った人すべてにインスリン自己免疫症候群が発症するかどうかは、現在のところわかっていません。

α-リポ酸を摂取して症状が出た場合には、速やかに摂取を中止し、医師の診察を受ける必要があります。その際には、α-リポ酸を含有したサプリメントなどを摂取していたことを伝えて下さい。

■ビタミンB13(オロット酸)■

ビタミンB13とは、牛乳から発見された栄養素で、ビタミンに近い働きをする水溶性ビタミン様作用物質。別名、オロット酸、オロト酸、オロチン酸とも呼ばれています。

人間の体内で合成されるので、必須ビタミンではありません。体内ではピリミジンヌクレオチドの生合成において、カルバモイルリン酸とアスパラギン酸が合成することで、ビタミンB13が作られます。

ビタミンB12や葉酸の代謝を助ける働きがあり、肝臓病の予防や老化の予防(アンチエイジング)に効果があります。主に、脂肪肝など肝臓病の治療に用いられていますが、過剰投与によってはかえって肝機能障害を起こすともいわれています。そのほかの体内での働きや欠乏症については、まだよくわかっていません。

また、ビタミンB13は、乳酸菌の発育因子としても知られています。

ビタミンB13が多く含まれる食品には、ビール酵母、小麦胚芽(はいが)、にんじん、さつまいも、じゃがいも、ごぼうなどがあります。所要量は、定められていません。

■ビタミンB15(パンガミン酸)■

ビタミンB15とは、ビタミンに近い働きをする水溶性ビタミン様作用物質。別名でパンガミン酸とも、パンガム酸とも呼ばれています。

抗酸化物質として、ビタミンEによく似た働きをします。ビタミンE、ビタミンCと一緒に取ると、その効果が高くなります。

ほかにも、肝臓の機能を高めて体内の有毒物質を排出する、肝硬変の予防をする、酒への欲求を減らす、免疫機能を向上させて病気への抵抗力を高める、細胞の寿命を延ばす、肌の老化を抑える、疲労の回復を早める、血中コレステロールを減らす、蛋白(たんぱく)質の合成を助けるなどの働きが期待されています。

狭心症とぜんそくの症状を和らげる、環境汚染物質から体を守る働きも期待されているため、環境汚染の地域や都会に住んでいる人には重要な栄養素ともいえます。

現在のところ、ビタミンB15の研究は限られていますが、不足したり欠乏した場合には、分泌作用を営む腺(せん)および神経の障害、心臓病、酸素飽和した組織の減少などが考えられます。

食品の中では、ごま、かぼちゃの種、玄米、小麦、ビール酵母などに多く含まれています。最も一般的な1日当たりの摂取量は50~150mg。

サプリメントなどとして販売されているものは、業者によって成分がまちまちです。その成分の多くが、天然物ではなく工業的に合成された化合物です。

■ビタミンBt(カルニチン)■

ビタミンBtとは、ビタミンに近い働きをする水溶性ビタミン様作用物質。L-カルニチンとも呼ばれます。

アミノ酸の一種のアミノ酸様物質でもあり、体内では肝臓や腎(じん)臓で、必須アミノ酸のリジンとメチオニンから合成されて、微量が生成されます。そのため、基本的に不足することはありませんが、体内においてビタミンC、ビタミンB6が不足している状態だと、生成力が低下してしまうことから不足する場合があります。

ビタミンBtには脂肪酸の代謝を促し、脂肪を効率的に燃焼する作用があり、脂肪燃焼系アミノ酸としてダイエット食品などにも配合されています。また、疲労を抑制する効果も期待できます。

ビタミンBtを多く含むのは、羊肉や牛肉、豚肉、鶏肉、魚類、貝類などの動物性食品で、トマト、アボカド、納豆、小麦などの植物性食品にも微量が含まれます。

■コリン■

コリンとは、脂肪肝を防ぐ因子として発見された水溶性ビタミン様作用物質。ヒトの体内では、必須(ひっす)アミノ酸のメチオニンから合成されます。

糖質と脂質の代謝に必要な補酵素として働き、体内で合成されるレシチン(リン脂質)、アセチルコリンの材料になっています。

レシチンは、細胞膜を作り、血管の内壁や肝臓にコレステロールや脂肪がたまるのを防ぎます。アセチルコリンのほうは、血管を広げて血圧を下げる働きがある神経伝達物質です。つまり、コリンが不足すると、レシチンとアセチルコリンの両方が不足して、肝炎や脂肪肝、肝硬変、動脈硬化になるリスクが高くなるわけです。

また、コリンは神経細胞の成分でもあり、記憶力や脳のさまざまな機能を維持するためにも、必要な栄養素です。ある調査では、アルツハイマー型認知症の患者の多くは、コリンが不足しているというデータがあり、コリンを十分摂取すると、症状が改善したという報告もあります。アルツハイマー型認知症の原因は、まだはっきり解明されていませんが、今後、コリンを使った治療薬も期待されています。

食品では、卵黄、レバー、小麦胚芽(はいが)、米胚芽、大豆、酵母などに多く含まれ、緑黄色野菜、さつまいも、とうもろこし、牛乳などにも含まれています。

コリンはアミノ酸のメチオニンから合成されるので、蛋白(たんぱく)質が多い食べ物を取っていれば、不足することはあまりありません。ただし、肉類はカロリーやコレステロールが多いので、豆類や緑黄色野菜をバランスよく取りたいものです。

なお、コリンを余分に取っても、体外に排出されるので過剰症の心配はありません。

■イノシトール■

イノシトールとは、人間の筋肉や神経、脳を始めほとんどの細胞内に存在して重要な役割を担う水溶性ビタミン様作用物質。イノシット、ヘキサヒドロキシシクロヘキサンとも呼ばれます。

抗脂肪肝ビタミンとも呼ばれ、脂質の代謝をスムーズにして、肝臓に余分な脂肪がたまらないようにする働きがあり、脂肪肝の予防に効果があります。晩酌を毎日欠かさない人や、お酒を飲む量が多い人には、お勧めの栄養素となります。脂肪肝、肝硬変の治療薬にも使われています。

その脂肪肝とは、肝臓の肝細胞に中性脂肪がたまり、肝臓全体が白っぽくなる病気。脂肪が多くなることで肝臓の血管が圧迫され、血液の循環が悪くなるため、肝臓の機能が低下して、疲労感やだるさが起こってきます。

また、イノシトールには、体内のコレステロールの流れをよくして、血管にコレステロールがたまって起こる動脈硬化を予防する働きがあります。神経の伝達や脳の活動を正常に保つ働き、胃腸の正常な運動を維持する働きもあります。

さらに、イノシトールには6カ所のリン酸基結合部位があってリン化合物に変化しますが、このうち、フィチン酸と呼ばれるイノシトール六リン酸には、がん細胞の発生と増殖をコントロールする働きがあるとされています。

イノシトールが不足すると、肝機能の低下を招いて脂肪肝や動脈硬化のほか、抜け毛になりやすくなります。

食品では、米ぬかや小麦胚芽(はいが)などの穀類、グリンピースなどの豆類、オレンジ、グレープフルーツ、メロン、あんず、もも、スイカなどの果実類、牛乳に多く含まれています。

体内で合成されるため、普通の食生活では欠乏症の心配はありません。水に溶ける水溶性のビタミン様作用物質なので、過剰症を心配することもありません。

なお、イノシトールは、栄養ドリンク剤や乳児の粉ミルクなどにも配合されています。

■ビタミンBx(PABP)■

ビタミンBxとは、ビタミンに近い働きをする水溶性ビタミン様作用物質で、人間の生存に欠かすことができない栄養成分。パラアミノ安息香酸(PABA:Para-aminobenzoic Acid)とも呼ばれています。

ビタミンB群の一種である葉酸の合成に不可欠な物質でもあり、体内で不足すると貧血症状が現れます。また、紫外線から皮膚を守り、日焼けやシワ、肌の老化予防にも欠かせません。最近は、白髪の予防でも注目されています。

腸内で合成されて、有益な善玉菌を増やす作用もあります。さらには、ビタミンB群の一種であるパントテン酸の吸収を促進する働きにも関与し、ストレスに対抗する副腎(ふくじん)皮質ホルモンの生成を促します。不妊症の改善、ヘルペスの改善といった作用もあるとされます。

ただし、現時点でビタミンBxの作用や効果について、厳密な検査は行われていません。

ビタミンBxが欠乏すると、貧血のほか、湿疹(しっしん)、便秘、頭痛、神経過敏、副腎障害、疲労、イライラ、ストレスの増加といった症状が現れます。

食品では、レバーや肉類、牛乳、ヨーグルト、卵、玄米、小麦胚芽(はいが)、ほうれん草、マッシュルームなどに含まれています。ほうれん草、枝豆、モロヘイヤ、レバーに多く含まれる葉酸や、レバー、納豆、牛乳に多く含まれるパントテン酸と一緒に摂取すれば、より効果的です。ビタミンBxの1日の目安量は30~100mg。

皮膚・髪・肌の健康を改善できるサプリメント、飲むUV対策ビタミンなどと称して、PABA、パラアミノ安息香酸を冠したサプリメントが市販されていますが、大量に摂取すると吐き気や不快感などを催すケースがあります。1日8g以上を摂取し続けると、下痢、肝機能障害などの症状が出るケースもあります。

■ビタミンB17(アミグダリン)■

ビタミンB17とは、杏(あんず)などの未熟果実の種子に含まれる水溶性のビタミン様作用物質で、抗がん作用があるとされる青酸配糖体。レートリル、アミグダリンとも呼ばれています。

杏以外にも、梅や桃(もも)などの未熟果実の種子に含まれ、未熟果実の果肉や葉、樹皮にも微量含まれています。

抗がん作用については、β-グルコシダーゼという分解酵素がビタミンB17に含まれるシアン化合物(青酸化合物)を分解させることで、毒性となり、がん細胞のみを死滅させると見なされています。正常細胞は、ロ一ダネーゼというミトコンドリアの酵素により保護され、何ら影響を受けません。むしろ抵抗力や活性度は上がり、ビタミンB17によってがんに伴う痛みも沈静化されます。

このように、ビタミンB17に含まれているシアン化合物にがんを抑制する効果があるとされていて、アメリカでは多くの州で、がんの治療薬として認められていますが、その効果については評価が定まっていません。

日本でも、杏や桃の種子は漢方薬の材料である杏仁(きょうにん)、桃仁(とうにん)でもあり、ビタミンB17を薬効成分として経口で去痰(きょたん)、鎮咳(ちんがい)などの用途に利用されています。また、皮膚に塗布すると、かゆみを止めるなどの作用があります。

ビタミンB17を多く含む食品としては、杏、梅、桃のほか、さくらんぼ、りんご、プラム、びわなどの種子や、ぴわの葉が挙げられます。1回に食べる量の目安は1gぐらいまでとされています。

なぜなら、ビタミンB17そのものには毒性はありませんが、腸内細菌のβ-グルコシダーゼという酵素によって加水分解されると猛毒のシアン化合物(青酸化合物)を発生しますので、多量の摂取は危険であるともいわれているからです。

日常摂取している梅加工品の種子にも微量ながら含まれていますが、食品として常識的な量を摂取する場合には、健康被害の危険性はそれほどないと考えられます。しかし、特別な効果を期待して過剰に摂取することは、期待した効果が得られないばかりか思わぬ健康障害を招く危険性をはらんでいます。

過剰摂取による健康障害としては、悪心(おしん)、嘔吐(おうと)、頭痛、めまい、血中酸素の低下による皮膚の青白、肝障害、異常な低血圧、眼瞼(がんけん)下垂、神経障害による歩行困難、発熱、意識混濁、昏睡(こんすい)、死亡などが知られています。

■ビタミンP(バイオフラボノイド)■

ビタミンPとは、ビタミンに近い働きをする水溶性ビタミン様作用物質で、ヘスペリジン、ルチン、ケルセチンなどの総称。フラボノイドという物質がいくつか結合したものであり、別名でフラボノイド化合物、バイオフラボノイドなどと呼ばれることもあります。

コラーゲンを作る働きがあるビタミンCを助けて、毛細血管を健康で丈夫にする働きが、ビタミンPにはあります。毛細血管には、血液で運ばれてきた酸素や栄養分を体の各組織に届ける役割があるため、毛細血管の壁には、酸素や栄養分をスムーズに通過させる透過性が適度に保たれている必要があります。この透過性がよくなりすぎるのを抑えたり、血管がもろくなるのを防ぐ働きが、ビタミンPにはあります。

ビタミンPが不足すると、血管からすぐに出血しやすくなるため、例えば体を何かにぶつけるとすぐに内出血したり、歯茎から出血しやすくなります。また、ウイルスや細菌が簡単に、体の組織に侵入しやすくなります。

ビタミンPには血圧を下げる働きもあり、高血圧の改善や脳内出血の予防にも、効果があることが知られています。ほかにも、体内にできた活性酸素を抑える働きがあり、血管の酸化(老化)を防ぎ、動脈硬化の予防薬としても期待されています。

多い食品としては、レモン、みかん、グレープフルーツ、オレンジなどの柑橘(かんきつ)系の果物、さくらんぼ、あんず、ブラックベリーなどの一般の果物、そば、トマト、アスパラガスが挙げられます。柑橘系の果物にはヘスペリジン、そば、トマト、アスパラガスにはルチンが多く含まれています。

とりわけ、みかんの薄皮やブラックベリーなどの皮にはビタミンPが多いので、皮ごと食べるとビタミンPとビタミンCの両方を上手に取ることができます。なお、ビタミンPは、大量に摂取しても体外に排出されるので、過剰症の心配はありません。

■ビタミンU■

ビタミンUとは、体内でビタミンと同じような働きをする脂溶性ビタミン様作用物質の一つ。正式名はメチルメチオニン・スルホニウム・クロライド(塩化メチルメチオニンスルホニウム)。

戦後のアメリカで、抗胃潰瘍(いかいよう)因子としてキャベツの絞り汁から発見されたためキャベジンとも呼ばれ、医薬品として治療に用いられたり、市販されている各種の胃腸薬に配合されています。

名称にビタミンが付いていますが、生体にとって必須な栄養成分ではないことから正式なビタミンとは考えられていません。

胃酸の分泌を抑えるとともに、蛋白(たんぱく)質の生成を活発にして胃腸の粘膜の保護、修復を促し、胃・十二指腸潰瘍を予防、改善します。

キャベツ、レタス、セロリ、パセリ、アスパラガス、青のり、牛乳、卵などに含まれますが、熱に弱いため、加熱のしすぎには注意が必要。

キャベツなどでビタミンUを効率よく摂取するためには生食がよく、冷えると胃腸の調子が悪くなる人には煮汁ごと食べられるスープにするのがお勧め。

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