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ブドウ球菌食中毒
ブドウ球菌食中毒とは、黄色ブドウ球菌が食べ物を汚染し、それが増殖して作り出すエンテロトキシンという毒素によって起こる食中毒。
人間の皮膚やのどに広く潜在している黄色ブドウ球菌は、ほとんどの場合、調理する人の手や指を介して食品を汚染します。特に、調理する人の手指に傷や湿疹(しっしん)があったり、傷口が化膿(かのう)しているような場合は、食品を汚染する確率が高くなります。
原因食としては、黄色ブドウ球菌に汚染された牛乳、クリーム、バター、チーズ、かまぼこ、おにぎり、折詰弁当、すし、サンドイッチ、ケーキなどが知られています。エンテロトキシンは熱や乾燥に強いので、すでにこの毒素が作られてしまった食品は、加熱処理をして黄色ブドウ球菌が死滅しても毒素は残存し、食中毒を発症することもあります。
潜伏期間は短く、原因食を食べて3〜5時間くらいで発症します。主な症状は、吐き気、嘔吐(おうと)、下痢、腹痛で、発熱がみられないのが特徴の一つです。軽症の場合は、吐き気、嘔吐のみで下痢は起こさないで終わります。
経過は比較的良好で、一般には1〜2日で軽快します。毒素の量にもよりますが、乳幼児、高齢者、慢性の疾患で衰弱している人などでは、時に嘔吐や水様性の下痢を繰り返し、脱水症状、ショック症状を起こして緊急入院を必要とする場合があります。
食中毒によって乳幼児、高齢者などの脱水症状が強くなった場合には、内科、消化器科、胃腸科、小児科の専門医を受診します。
医師による診断では、普通、症状だけで診断がつきます。食後3〜5時間くらいの急性の中毒症状がみられたり、同じ食品を食べた他の人にも同様の症状がみられたり、中毒症状の原因が1つの汚染源に絞れるような場合に、ブドウ球菌食中毒が強く疑われます。
診断を確定するには、中毒の原因と疑われる食品を分析して黄色ブドウ球菌を確認することが必要ですが、この分析は普通は行われません。また、嘔吐物を顕微鏡で観察すると黄色ブドウ球菌が確認されることがあります。
毒素型食中毒であるブドウ球菌食中毒は、黄色ブドウ球菌自体が体内に入る感染症ではないため、抗菌剤の投与は不要であり、輸液によりブドウ糖液、リンゲル液などの電解質液、あるいは水を補充して症状の改善を待ちます。
エンテロトキシンは熱や乾燥に強いので、加熱処理をしても予防になりません。そのため、ふだんより手洗いを徹底し、手や指に傷がある人は直接触って調理しないよう注意し、まな板、包丁、ふきんなどはよく洗い、熱湯や漂白剤で殺菌します。調理後は早めに消費するように心掛け、食品を室温で長時間放置しないようにします。
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