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ハンチントン病
ハンチントン病とは、大脳基底核にある線条体尾状核という神経細胞が変性、脱落することによって、不随意運動、認識力低下、情動障害などの症状が現れる疾患。常染色体優性遺伝病であり、一般にハンチントン舞踏病として知られています。
ハンチントン病という病名は、1872年に初めて報告を行ったアメリカのジョー ジ・ハンチントン医師の名前にちなんでいます。当初はハンチントン舞踏病と呼ばれていましたが、この疾患の特徴の一部にすぎない全身の不随意運動のみが着目されてしまうため、1980年代から欧米ではハンチントン病と呼ばれるようになり、日本でも2001年から用いられています。
現在、日本では特定疾患(難病)として認定されており、日本人には100万人に5~6人未満というまれな疾患です。外国では特に白人に多く、10万人に4人から10人の割合で存在しているといわれています。
通常の発症年齢は中年以後で、舞踏運動とも呼ばれて、自分の意思とは無関係に体の一部が動いてしまう不随意運動が徐々に始まります。初期のころは肩をすくめたり、顔をしかめたりする程度ですが、次第に両手、両足、胴体にも不随意運動が広がり、文字どおり踊っているように見えます。睡眠中には止まりますが、目が覚めている時は連続的に起こり、手先が勝手に動く、はしを使ったり字を書くなどの細かい運動がしにくくなる、発音がはっきりせず会話がうまくできなくなる、飲み込みがしにくくなるといったの症状が出てきます。進行すると歩行が不安定になり、次第に起立、歩行も困難となります。
認識力低下、情動障害では、普通の認知症と異なり、物忘れや記憶力の障害は目立ちませんが、計画して実行する能力や全体を把握する能力などが障害される傾向にあります。むしろ,怒りっぽくなったり、異様に同じことを繰り返すなどの性格変化や行動変化が目立ちます。ふさぎ込みなどうつ症状が強いと、自殺企図が見られることもあります。症状は10~20年かけて次第に進んでいき、記憶力の障害、高度の知能低下に陥ります。
また、このハンチントン病は常染色体優性遺伝病なので、遺伝子によって次世代に伝わっていきます。優性遺伝病とは、両親のどちらかから由来した遺伝子に異常があれば、他方の親からの遺伝子が正常であっても発症するものをいいます。片方の親が発症した場合、子供に伝わる確率は50パーセントです。
世代を経るごとにその発症年齢が早くなること、父親から原因遺伝子を受け継いだ時にそれが顕著になる現象も知られています。1993年には、第4染色体に局在している遺伝子(IT15またはHuntintin〔ハンチンチン〕)に正常には見られない変化が生ずることで発症することがわかり、この遺伝子を調べることによってその人が発症するのかどうか、また発症しているのかどうかを確かめられるようになりまし た。
ハンチントン病の検査と診断と治療
初期のハンチントン病では、症状がわずかなために疾患を認識するのは困難です。この疾患の疑いは、症状と家族歴によります。発症がありそうなのに診断が付いていない時には、医師は親族の中に精神的問題や、パーキンソン病のような神経障害、統合失調症のような精神障害を起こした人がいたかどうか質問します。進行した場合は、CT検査やMRI検査などの画像診断で、この疾患に特徴的な大脳基底核の委縮を発見できます。
遺伝子検査によれば、ハンチントン病は簡単に診断できますが、家族歴があっても症状がない人に検査を行うべきかどうかは、医師の側に議論の余地があります。遺伝子検査には、血液サンプルが必要です。遺伝している場合、第4染色体の検査でDNA内の遺伝子コードの特定部分に、特徴的な反復が検出されます。家族歴のある人の側にも、疾患の遺伝子を引き継いでいるかどうかを知るべきかという悩みが生じます。この問題は、遺伝子検査を行う前に、遺伝カウンセリングの専門家に相談すべきでしょう。
ハンチントン病は遺伝病のため、根本的な治療法や進行を防止する治癒法は、現在のところ確立されていません。しかし、鎮静薬のクロルプロマジン、抗精神病薬のハロペリドール、降圧薬のレセルピンなどの薬は、症状を軽減し行動をコントロールするのに役立ちます。
発症者によって症状がかなり異なるので、経過は一概にいうことはできません。同じ家系内でも、症状はさまざまなことが多いようです。典型的には、最初の兆候が現れて数年間は自立生活を維持することができ、社会生活を独力で送ることが困難になるほどに症状が進行するのには10年以上かかるようです。
専門医に相談すれば、それぞれの症状を最小限に抑えるための適切な治療を施してくれます。また、自立生活をできるだけ長く維持し、発症者も家族も共にQOL(生活の質)をできるだけ高く維持するために、多くの職種の人たちが最大限の協力をしてくれます。ハンチントン病の人は、終末期にどんな治療を受けたいかを記した事前指示書を作成しておくとよいでしょう。
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