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肥大型心筋症
肥大型心筋症とは、心臓で血液を送り出している左心室心筋の異常肥大を特徴とし、原因または原因との関連が不明な疾患。原因として多くは、心筋収縮に関連する蛋白(たんぱく)質の遺伝子変異が認められます。
血管系統の中心器官である心臓には、4つの部屋があります。上側の右心房と左心房が、血液を受け入れる部屋です。下側の右心室と左心室が、血液を送り出す部屋です。4つの部屋がリズミカルに収縮することで、心臓は絶え間なく血液を全身に送り出すことができるのです。リズムを作っているのが心臓の上部にある洞結節(どうけっせつ)と呼ばれる部分で、1分間に60~80回の電気刺激を発生させて、心臓を規則正しく収縮させています。
心筋が肥大して厚くなると、心臓内部の空間が狭くなって、心臓は十分な量の血液を送り出せなくなります。右心室と左心室の間にある心室中隔の上部で、左心室心筋の肥大が著しい場合には、心臓が収縮する時に左心室の血液流出路の狭窄(きょうさく)を生じるものがあり、これを閉塞(へいそく)性肥大型心筋症と呼びます。
狭窄の生じないものは、非閉塞性肥大型心筋症と呼びます。この非閉塞性肥大型心筋症の中で、肥大する部位が心臓の底の心尖(しんせん)部に限局するものは、心尖部肥大型心筋症と呼びます。
また、肥大型心筋症では、心室中隔以外の部分である左心室自由壁に比べて、心室中隔の異常肥大が著しいことが一般的なため、非対称性中隔肥大と呼ぶこともあります。
症状としては、非閉塞性肥大型心筋症では、動悸(どうき)、呼吸困難、胸部圧迫感、胸痛などが自覚症状として現れます。
閉塞性肥大型心筋症では、さらにめまい、あるいは失神が加わります。失神の多くは運動時に起こりますが、運動をすると安静時よりも心臓が強く収縮するため、左心室の血液流出路の閉塞を強めるためと考えられます。重い場合には、運動中に急死することもあります。多くみられるのは、若年者で家族歴に急死例のある人。
非閉塞性肥大型心筋症では多くの場合、無症状か症状が軽度なので、検診の心電図異常で見付かるか、自覚症状がないまま突然死でたまたま見付かることもまれではありません。
循環器科、循環器内科、心臓血管外科、心臓血管内科、不整脈科、不整脈内科などの医師による診断では、症状、身体所見、心電図などの各種検査、特に心臓超音波検査(心エコー)の所見により、心筋肥大の分布、心臓全体の収縮力の状態を判断します。
閉塞性肥大型心筋症の場合には、左心室の血液流出路付近の狭窄部分の血流の速さを超音波ドップラー法を用いて測定し、重症度を調べます。
循環器科、循環器内科、心臓血管外科、心臓血管内科、不整脈科、不整脈内科などの医師による治療では、β(ベータ)遮断剤やカルシウム拮抗(きっこう)剤、ジソピラミド(リスモダン)などを処方します。これらの薬剤は、心筋の弾力性を保ったり、左心室の血液流出路の狭窄を軽減したりする目的で用います。しかし、これらの薬剤も急死を予防できるものではありません。
閉塞性肥大型心筋症の場合には、ペースメーカーの植え込みによる治療を行うこともあります。この治療は、右心室側へ外的な電気刺激を与えて心筋の収縮リズムをコントロールすることにより、左心室側の心筋の収縮に遅れが生じて血液流出路の狭窄が著しく軽減することを利用したもので、ぺースメーカーの植え込み後はほとんどの症例で、短期間のうちに失神発作などの症状がなくなります。
心筋の異常肥大が著しい場合には、肥大している心筋に栄養を送っている冠動脈にエタノールを注入して、その心筋を部分的に壊死させたり、肥大している心筋の一部を切り取って血液が流れやすくする手術を行うこともあります。
日常生活では、自覚症状のない軽症例でも運動中の急死が起こりますから、急激な運動は避けます。
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