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封入体結膜炎
封入体結膜炎とは、性行為によって、細菌よりも微細なクラミジア・トラコマーティスという微生物が目に感染し、引き起こされる結膜炎。クラミジア結膜炎とも呼ばれます。
封入体結膜炎という疾患名は、まぶたの裏側から眼球につながる結膜の上皮細胞内に寄生し、増殖するクラミジア・トラコマーティスの塊が「封入体」と呼ばれることに、由来しています。
同じクラミジア・トラコマーティスによって引き起こされる結膜炎にトラコーマがありますが、こちらはクラミジア・トラコマーティス血清型A、B、Ba、Cによって起こり、年齢的には10歳未満の小児や子供に多くみられます。
封入体結膜炎は、クラミジア・トラコマーティス血清型D、E、F、G、H、I、J、Kによって起こり、成人に多くみられます。同じクラミジア・トラコマーティス血清型D〜Kは、性行為により性器に感染して性器クラミジア感染症も引き起こします。
封入体結膜炎はほとんどの場合、性器にクラミジア・トラコマーティス血清型D〜Kの感染を持っている人との性行為の後、発症します。まれに、汚染されたプールの水から伝染し、発症することもあります。また、新生児が母親から産道感染して、発症することもあります。
2〜19日の潜伏期の後、上下のまぶたの裏側と、眼球の表面から黒目の周囲までを覆う結膜の急性の炎症として、まぶたがはれ、まぶたの裏側の眼瞼(がんけん)結膜が充血してむくみ、膿性(のうせい)の目やにが出ます。
かゆみやヒリヒリした痛みが生じ、涙が多く出ます。下のまぶたの眼瞼結膜には、多数の小さなぶつぶつ(ろ胞)が現れます。明るい光に対して過敏になり、まぶしく感じます。
眼球の黒目の前面を覆う透明な膜である角膜の上皮下に、点状混濁ができることもあります。小さなぶつぶつが大きくなり、血管が徐々に発達して結膜から角膜の上にまで侵入する新血管形成が現れることもあります。
目やにが出ると、特に朝、目が開けにくくなります。視界もぼやけますが、目やにを洗い流すと元のように見えます。角膜にまで感染が広がった場合、視界のぼやけは目を洗っても解消しません。
非常にまれですが、重度の感染により結膜に瘢痕(はんこん、ひきつれ)ができて荒れた粘膜となると、涙液の層に異常が生じることがあり、長期間に渡って視力が障害されます。
通常、初めは片目だけに症状が現れることが多いものの、放置しておくと両目ともに症状が現れることもあります。
目の症状のほか、多くの場合、感染した目と同じ側の耳の前のリンパ節がはれ、痛みを伴います。通常、このような症状が1~3週間続きます。
出生時に、母親の産道を通る際に感染した新生児では、生後1週間前後で発症し、まぶたのはれ、充血、膿性の目やになどが起こります。しばしば、偽膜という分泌物の塊が結膜にできます。
中耳炎や肺炎を合併することもあります。性器クラミジア感染症にかかり、十分な治療をしていない母親の場合、出産時に産道のクラミジア・トラコマーティスが新生児の結膜のほか、のど、肺などにも付着するためです。
なお、新生児の封入体結膜炎では、眼瞼結膜に多数の小さなぶつぶつが現れる、ろ胞性結膜炎とはなりません。
封入体結膜炎に気付いた、早めに眼科の専門医の診察を受けることが勧められます。
眼科の医師による診断では、症状の視診と目の検査を行います。目の検査では、目の表面を拡大して見るスリットランプという機器を用いて、詳細に調べます。スリットランプを使うと、結膜の炎症や、角膜、目の前方部分に当たる前房への感染の様子を観察できます。
また、点眼麻酔後、結膜表面から綿棒で擦過して得られた上皮細胞サンプルを顕微鏡で調べると、封入体と呼ばれる増殖するクラミジア・トラコマーティスの塊が見付かります。血液検査でクラミジア・トラコマーティス抗原のタイプを調べると、より綿密な治療方針を決めることができます。上皮細胞サンプルからクラミジア・トラコマーティスを培養する方法もありますが、時間がかかります。
性行為の相手に、性器クラミジア感染症があるかないかの情報も重要です。最近では特に、不特定多数との性行為と封入体結膜炎の関係が注目されているところです。新生児の発症では、母親の性器に性器クラミジア感染症があります。
眼科の医師による治療では、クラミジア・トラコマーティスに有効な、エリスロマイシンやアジスロマイシンなどのマクロライド系、ドキシサイクリンやミノサイクリンなどのテトラサイクリン系の抗生物質(抗生剤、抗菌剤)の点眼剤や、眼軟こうが用いられます。
点眼剤は涙で洗い流されてしまうので、2~3時間ごとに点眼します。軟こうは長くとどまるので、6時間ごとの使用ですみますが、ものがぼやけて見えるという難点があります。
重篤な場合や性器クラミジア感染症があれば、抗生物質の内服も一緒に行います。点眼剤と内服薬が同時に処方される理由は、新生児の場合、のどや肺にも感染が起きていることが多いからです。大人の場合は、性器から感染し、女性では子宮の入り口に当たる子宮頸管(けいかん)、尿道などでクラミジア・トラコマーティスが増殖しているからです。
治療の原則は、抗生物質の眼軟こうを8週、抗生物質の内服薬を3週ほど続けることです。新生児の場合、2カ月ほど毎日点眼することが原則で、かなり根気が必要です。病原体のクラミジア・トラコマーティスそのものを除去し、完治するには少し時間がかかり、数週間から数か月ぐらい薬が必要となります。
封入体結膜炎にかかったら、まぶたを水道水ときれいな布でやさしく洗って、目やにのない清潔な状態に保ちます。冷湿布をすると目のかゆみや痛みが和らぐことがあります。感染力が強いので、目を洗ったり薬を塗った後には、手をよく洗う必要があります。
さらに、感染している目に触れた後で、感染していない目に触れないように気を付けます。感染している目をふいたタオルや布は、ほかのタオル類と別にしておかなくてはいけません。
封入体結膜炎にかかった場合は、風邪を引いた時と同じように学校や仕事を数日間休むようにします。疾患を完全に治し、感染を防ぐために、性交渉のパートナーの検査、治療も必要です。
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