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ヌーナン症候群
ヌーナン症候群とは、さまざまな身体的異常を引き起こす先天異常症候群。通常、低身長、心臓の異常、発達遅滞などがみられます。
1963年に、アメリカの心臓学者のヌーナン(J・A・Noonan)が最初に報告しました。ヌーナン症候群は常染色体遺伝形式を示すこともあり、正常な遺伝子を持つ両親の子供に予想外に起こることもあります。12番染色体長腕にある原因遺伝子PTPN11が同定されており、約半数の症例で遺伝子変異が同定されています。ほかの原因遺伝子として、KRAS、SOS1、RAF1が同定されています。
過去には、ターナー症候群に典型的な特徴の多くが現れるところから、「男性のターナー症候群」と呼ばれていた時期もありましたが、ヌーナン症候群は男児にも女児にも現れます。
日本では、1万人に1人程度の罹患(りかん)率と見なされ、軽度の症状の場合は見過ごされている可能性があります。アメリカでは、1000〜1500人に1人の罹患率とされ、先天異常症候群の中では最も多いとされています。
症状としては、低身長、心臓の異常、発達遅滞のほか、外見の異常として特異的顔貌、幅の広くて翼状の首、胸郭変形として鳩胸、漏斗胸などがみられ、 停留精巣、血液凝固異常、リンパ管異形成や目の異常も認められます。
出生時の身長は通常正常ですが、最終身長は正常下限です。先天性の心臓疾患は発症者の50〜80パーセントに認められ、形成不全を伴う肺動脈弁狭窄(きょうさく)や肥大型心筋症が出生後、または乳幼児期に見付かります。発症者4人のうち1人には学習障害が認められ、特殊教育が必要となる場合もあります。発症者3人のうち1人には、軽度精神遅滞が認められ、 言語能は非言語能より劣ります。
特異的顔貌は、年齢とともに変化します。最も明らかになるのは新生児期と幼児中期で、逆に成人になると不明瞭になります。乳児では、大抵ほ乳障害を認めます。男児では、睾丸(こうがん)の発育不全や停留がみられ、女児では、卵巣の機能低下や機能停止がみられます。思春期が遅れ、生殖能力がないこともあります。目の異常は、斜視や屈折異常、弱視が認められます。
ヌーナン症候群は、主要な症状より診断されます。また、近年の検査技術の進歩により、染色体、遺伝子レベルで診断できるようになり、早い時期からの疾患特性に応じた生活指導も行われています。
合併症の診断と治療には、小児神経科、小児外科、新生児科、眼科、整形外科、耳鼻科など多くの臨床科の診療が必要とされ、個々の症状に対して対症的な治療が行われます。ヌーナン症候群における心血管系異常の治療は、通常行われる標準的治療と同様です。発達障害は、早期教育プログラムと個人に合わせた教育により取り組まれます。 血液凝固異常の治療では、特定の凝固因子欠乏か血小板凝集異常に起因するかを把握することが治療方針に役立ちます。
成長ホルモンを投与すると、発育が促進されます。十分に成長した後ならば、精巣が発育不全の男児には、テストステロンによる治療の効果が期待できます。テストステロンは、より男性らしい外見の発達を刺激します。
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