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乳房痛
乳房痛とは、女性の乳房に痛みが生じる状態を指す症状。
女性の乳房は、乳汁(母乳)の出口となる乳頭(乳首)、乳汁を作る働きを持つ乳腺(にゅうせん)と脂肪、血管、神経でできています。痛みの症状の原因は、卵巣から分泌されている女性ホルモンである卵胞ホルモン(エストロゲン)と黄体ホルモン(プロゲステロン)がほとんどで、思春期、月経期間、妊娠期間、閉経時と、女性であればどの時期でも起こる可能性があります。また、乳房の疾患が原因となって、乳房に痛みやしこり現れることもあります。
乳房痛は、軽いしびれから鋭い痛みまで、重症度が異なります。乳房痛を患う女性は、乳房の圧痛を感じたり、通常にない乳房の張りを感じたりする場合があります。
月経のある女性は、月経周期に関連し、排卵から次の月経までの黄体期に卵巣から分泌される黄体ホルモン(プロゲステロン)の作用で、乳腺内の血管の膨張や乳腺組織の増加のために、乳房に痛みや張りを感じます。両方の乳房に起こり、全体的に痛むことが多いようです。生理的なものであれば、日常生活に支障を来すことはありません。月経周期に関連する痛みは大抵の場合、生理中または生理後には軽減します。
強い痛みが続く場合は、医師による治療の対象になります。この治療が必要な乳房痛は、現れる時期や月経の有無から、周期性乳房痛と非周期性乳房痛に分けられます。
周期性乳房痛は、月経のある女性に起こります。黄体期から症状が現れて、次の月経まで7日間以上にわたって中等度より強めの痛みが続きます。痛みのために、眠りが浅くなったり、通勤や通学に不都合を生じたり、不快感や苦痛感、性生活への影響もみられます。
女性の月経周期には複数のホルモンがかかわっているので、どれか1つのホルモンに原因を特定することはできませんが、大脳の下部にある下垂体(脳下垂体)から分泌されるプロラクチンの過剰な増加などのホルモン変化が主な原因とされています。また、周期的な強い乳房痛は、乳がんの発症や増殖にかかわる危険因子の1つで、乳がんのリスクを高めることが知られています。
非周期性乳房痛は、月経周期とは関係なく痛みが現れます。周期性乳房痛よりも頻度は少ないものの、閉経後の女性に多くみられます。外傷、炎症などの器質的疾患以外ではっきりとした乳房痛の原因を特定することは困難ですが、非周期性乳房痛もホルモンの変化が原因と考えられています。ホルモンの変化による乳房痛の多くは、両方の乳房に感じます。
片側の乳房の一部で持続する乳房痛は、乳がんとの関連性も認められています。乳がんでの非周期性乳房痛の出現頻度は、2~7%前後と推定されています。
乳房に痛みを伴う疾患としては、乳汁を分泌する乳腺に炎症が起こる乳腺炎が代表的です。乳房にしこりができる主な疾患は、乳腺症、乳腺線維腺腫(せんいせんしゅ)、乳がんで、うち乳腺症にのみ押さえた時の圧痛があります。
乳腺炎には、急性のものと慢性のものがあります。急性乳腺炎のほとんどは、授乳期、ことに産褥(さんじょく)期にみられ、うっ滞性乳腺炎と化膿(かのう)性乳腺炎の2つに分けられます。慢性の乳腺炎には、授乳期以外に膿(うみ)の塊ができる乳輪下膿瘍(のうよう)があります。
急性うっ滞性乳腺炎は、若い初産の女性の出産後2~3日のころによくみられるもので、乳管からの乳汁の排出障害があるために、乳房のはれと軽い発赤と熱感が起こります。痛みはあっても、激しい全身症状は出ません。初産の場合、乳管が狭いので乳汁が乳腺内に詰まってしまうことが、その原因と考えられています。乳児への授乳が十分でない場合にも起きます。
急性化膿性乳腺炎は、出産後2~6週のころに乳腺内に乳汁がたまり、ここに主にブドウ球菌による細菌感染が起きて、乳房全体にはれが生じます。炎症が進むと、乳房が硬く赤くはれて、激しく痛み、熱感があります。その後、炎症が1カ所に固まってくると、膿瘍を作り、時には自然に破れて膿が外に出ることもあります。わきの下のリンパ節がはれたり、全身に寒けや震えが出て、時に40℃以上にも発熱することもあります。
乳輪下膿瘍は、乳頭の乳管開口部から化膿菌が侵入したことにより、乳輪の下に膿がたまり、乳輪周囲の皮膚にまで広がる慢性疾患です。授乳やホルモン分泌とは関係なく、若い女性によくみられ、乳輪の下に痛みのある硬いしこりができては破れて、膿が出ることを何回も繰り返します。陥没乳頭の人に多くみられますが、乳首が陥没していない人でもみられます。
乳腺症は、女性ホルモンのバランスが崩れることで、乳腺に起こるさまざまな病変の総称です。30~40歳代でよくみられる良性疾患で、乳腺炎や乳がんのようにはっきりとした病気ではありません。生理前に乳腺が張る、乳房が痛むということは女性なら誰でも経験があることですが、乳腺症も女性ホルモンの影響を強く受けて起こりますので、月経周期に応じて症状が変化します。すなわち、卵巣からのホルモン分泌が増える生理前になると症状が強くなり、生理が終わると自然に和らぎます。
症状は乳房のしこりや痛み、乳頭分泌など多様ですが、多くは正常な体の変化で、通常は治療の必要はありません。
乳腺線維腺腫は、乳汁を分泌する乳腺が増殖することで形成される良性のしこりです。乳腺の分泌腺が増殖するタイプ、乳腺周囲の線維組織が増殖するタイプ、両者が混在しているタイプとがあります。はっきりとした原因はわかっていないのですが、思春期以降に発症することが多いので、卵巣から分泌される女性ホルモンの卵胞ホルモン(エストロゲン)が何らかの発症原因になっていると考えられます。思春期に小さな線維腺腫が形成され、次第に増大して20歳前後にはっきりと触れる、痛みを伴わないしこりとして自覚されることが多いようです。
線維腺腫の発育速度には個人差が大きいために、症状を自覚する年齢も10歳代後半から40歳前後までと幅広くなっています。また、片側に多発することも、両側に発症することもあります。
乳がんは、乳腺にできるがんです。40歳代以上に多く、高齢出産をした女性や、授乳の経験が少ない女性、肥満の女性、親族ががんにかかったことがある女性などがかかりやすいことが知られています。初発症状としては乳房に痛みのない硬いしこりができて、押しても動かないのが特徴で、同じしこりを触れる疾患でも乳腺症とは痛みの有無で、ある程度は判別がつきます。しかし、必ずしも痛みを伴わないわけではなく、特に進行すると片側の乳房の一部が痛みを伴うことが多くなります。
同時に、皮膚にへこみが生じたり、乳頭から血の混じった分泌物が出るといった症状が起こることがあります。乳がんはほかのがんに比べて進行が遅く、しこりが1センチ四方の大きさになるまで10年ほどかかるので、しこりが小さいうちに見付かれば90%以上の人が治ります。
乳房痛を乳がんと結び付ける女性が多いのですが、乳房の痛みが必ずしも乳がんによるとは限らず、良性変化である乳腺症が原因のことが多いので、痛みが長く続くようなら乳腺科、乳腺外科、外科を受診することが勧められます。
乳腺科、乳腺外科、外科の医師による診断では、乳がんの可能性も考慮し、問診、視診、触診、マンモグラフィー(乳腺X線検査)、超音波(エコー)検査などを行います。
乳腺症が疑われた場合、明らかな乳腺腫瘍(しゅよう)が認められず、がんでないことを確かめた上で、2~3カ月間様子を見て、症状が生理周期と同調した場合に、乳腺症と確定します。
乳腺科、乳腺外科、外科の医師による治療では、乳腺症の場合で痛みなどの症状があまりないケースでは、経過観察だけで、特に治療は行いません。
強い痛みが5~6カ月ほど続くようなケースでは、薬物療法を行います。男性ホルモンの働きをする薬や、女性ホルモンの一種である卵胞ホルモン(エストロゲン)の働きを抑える抗エストロゲン薬、鎮痛薬などの飲み薬を処方し、2~3カ月使うと効果が現れます。
薬物療法は根本的な治療法ではありませんが、半数以上の人で症状は軽減します。まれに、副作用として太ったり、肝臓に障害を起こしたり、血栓ができやすくなったりする人もいます。
乳腺症と乳がんの確実な区別が難しい場合には、針を刺して細胞を吸引し、顕微鏡で観察する検査(細胞診)や、局所麻酔をしてから乳腺の一部を切り取り、顕微鏡で調べる検査(乳房生検)などを行います。
顕微鏡で見ると、増殖性病変として腺症、乳頭腫症などが認められ、委縮性病変としては線維症、嚢胞(のうほう)症、アポクリン化生などが認められます。前者の増殖性病変が認められた場合は、乳がん発症のリスクが高くなりますので、精密検査を行うことになります。
乳がんを起こしている場合は、乳房の病変部を切除する手術行うことで、乳がんを治すことができるだけでなく乳房の痛みを治すことができます。
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