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内頸動脈狭窄症
内頸動脈狭窄(ないけいどうみゃくきょうさく)症とは、心臓から脳に向かう左右2本の頸動脈から分枝する内頸動脈が動脈硬化を起こし、血液が流れる道が細くなる疾患。頸部内頸動脈狭窄症とも呼ばれます。
左右に1本ずつある太い頸動脈は、あごの下の高さで、大脳に血液を送る内頸動脈と、顔面や頭皮に血液を送る外頸動脈に分かれます。この分岐する部分では、狭窄が好発します。
この狭窄の原因としては、動脈硬化が最も多く、狭窄によって血液が流れる道が細くなって血液の流れが妨げられると、遠位部の脳への血流が不足するために症状が生じることがあります。主な症状は、左右どちらかの半身の運動障害や知覚障害、言語障害、顔面下半分のまひで、立ちくらみ、揺れるようなめまいなどを覚えることもあります。
また、狭窄部で血液の流れが乱れることによって血の塊である血栓が形成されると、血栓がはがれて遠位部の脳に飛び、細い血管に詰まって閉塞(へいそく)させたりして、症状が生じることがあります。症状は障害の部位や程度によりさまざまで、一過性視力障害、一過性脳虚血発作など一時的な症状を起こして回復する場合と、脳梗塞(こうそく)を起こす場合があります。脳梗塞を来すと、その部位に応じた運動まひ、知覚障害、言語障害、視機能障害、高次機能障害などを示し、重症の場合には寝たきりや植物状態、さらには生命の危険を生ずることがあります。
近年、食事摂取の欧米化で、日本人の血清コレステロール値は米国人と同じレベルに増加しています。この結果、比較的大きい血管の動脈硬化による疾患が増加しつつあり、その中でも内頸動脈は最も影響を受けやすく、動脈硬化が進行した場合、狭窄や場合によっては閉塞を来すこともあります。
内頸動脈狭窄症の急性期には、症状の進行や脳梗塞の再発が多いため、症状に気付いた場合にはすぐに神経内科、ないし脳神経外科を受診することが重要です。最近では、脳ドックや他の疾患の検査などの際に、症状が出る前に内頸動脈狭窄症が発見されることも多くなっています。
神経内科、脳神経外科の医師による診断では、首に超音波を当てて診断する頸部血管ドップラー検査、CTやMRIによる血管の検査で容易に確定されます。近年では、狭くなった部位の診断やその程度のほか、動脈硬化の性質、血流の早さなどの質的診断も行え、よい治療方法が選択できるようになりました。
治療上必要な場合は、内頸動脈を直接レントゲンで撮影する血管撮影が行われます。また、血液が到達する脳の状態を調べるため、脳のMRIや核医学による脳血流検査なども行われます。さらに、心臓などほかの血管に、同じような疾患がないか調べることも重要です。
神経内科、脳神経外科の医師による治療では、禁煙、運動療法、食事療法などに加え、高血圧、高脂血症、糖尿病に対する薬による内科的治療が基本となります。これに加えて脳梗塞を予防するために、軽度から中等度の内頸動脈狭窄症では、血液の流れをよくする抗血小板療法の薬が追加されます。
内頸動脈の狭窄が強くなった場合には、その程度により手術、ないし血管内治療が追加されます。内頸動脈狭窄のみが発見されて、脳の症状がなく内頸動脈の狭さが60パーセント以上の場合は、脳神経外科医により手術で内頸動脈の病変を摘出することが脳梗塞を予防するためによいとされています。一方、脳の症状がある場合の手術の基準は70パーセントの狭さに上昇し、手術により脳梗塞が拡大することを防止します。この脳神経外科医による手術法は、長年に渡って世界中で行われ、多くの結果が蓄積された結果、現在の基準が確立されました。
血管内治療は新しい治療法で、太ももの付け根から血管の中にカテーテルと呼ばれる管を入れ、これを内頸動脈の狭窄した部位に誘導します。ここでカテーテルの先についたバルーンと呼ばれる風船を広げ、網目状に血管の中で拡張し、内頸動脈の内側を適切な太さに保つステントと呼ばれる形状記憶合金で作られた機器を留置してきます。この治療法は歴史が浅いため、病変を直接取り除く手術のリスクが高いと思われる場合や高齢者の場合などに行われています。
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