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夏風邪
夏風邪とは、夏にかかる感冒性疾患の総称。特定の病名ではありません。
普通、ウイルス感染症や寝冷えに対する反応なども含まれます。ウイルス感染症は夏もはやりやすい季節で、200種類以上ある風邪の原因になるウイルスのうち、夏の暑さと湿気を好むウイルスが流行します。
夏風邪の代表的なものは、ヘルパンギーナ、手足口(てあしくち)病、プール熱。このうちヘルパンギーナとプール熱は高い熱が出ますが、手足口病は高熱になることがほとんどなく、代わりに手足に発疹(はっしん)ができます。このほかにも、名前は付いていませんが、熱が出るだけの夏風邪も多くみられます。冬の風邪と違い、せき、鼻水がなく、寒気もあまりありません。
いずれの夏風邪も、脳や脊髄(せきずい)などの中枢神経の中に入り込みやすい性質があり、髄膜炎を引き起こすことがありますので注意が必要です。
ヘルパンギーナとは、俗にいう夏風邪の一種。6〜7月をピークに、主に4~10月ころに多く、6カ月から4歳ぐらいの乳幼児を中心に流行します。
原因となるウイルスとして、コクサッキーウイルスA群、コクサッキーウイルスB群、エコーウイルスなど多数が知られていますので、何回でもかかってしまう感染症です。
経口、経気道感染でウイルスが侵入し、2〜4日間の潜伏期間を経て、突然、38~40度の高熱とともに発症します。この時に熱性けいれんを起こすこともあります。口腔(こうくう)の上壁に当たる軟口蓋(なんこうがい)、俗にいうのどちんこに当たる口蓋垂(すい)の周囲の粘膜に、周囲が赤くなった小水疱(すいほう)や直径1〜5ミリぐらいの小さい潰瘍(かいよう)ができ、咽頭(いんとう)は赤くなります。
食欲不振や咽頭痛のために嚥下(えんげ)困難があったり、まれに大きい子供では腹痛や頭痛を覚えることもあります。発熱期間は1〜4日で、全経過は約1週間以内にとどまります。
陰部に潰瘍ができたり、おたふく風邪のような耳下腺(じかせん)炎や、無菌性髄膜炎を起こすことがあります。高熱が続いたり、機嫌が極めて悪くなったり、何かいつもとかなり違うような時には、無菌性髄膜炎を合併していることもあるので注意が必要です。鼻炎や中耳炎などの合併症を起こすことは、まれです。
症状に気付いたら、すぐに小児科の専門医を受診します。
小児科の医師による診断では、役に立つ特別の検査はなく、夏の流行期に口内所見が認められれば確定できます。
小児科の医師による治療では、原因となるウイルスに対する特効薬がないため、症状を抑える対症療法が中心になります。解熱剤や鎮静剤、抗けいれん剤などを投与します。
家庭では、安静、保温、消化のよい食べ物、特に飲み込みやすい食事を与えることが大切です。乳児では、脱水が起こらないように、十分な水分を補給するようにします。適しているのは、麦茶、イオン飲料、ヨーグルト、アイスクリームなど。熱があっても特に具合が悪そうでなければ、入浴して汗を流すことはかまいません。
この疾患の特別な予防法はありません。
手足口病は、腸管系ウイルスによって起こる感染症で、手のひらや足の裏に小さな水疱、口の中の粘膜に小さな発疹がたくさんできます。軽い病気ながら、感染力はかなり強く、夏を中心に5月から9月にかけて、乳幼児の間で流行します、
代表的な原因ウイルスはコクサッキーA16、あるいはエンテロ71という名前のウイルスですが、原因となるウイルスがそれ以外にも何種類もあるため、以前にかかったことがある乳幼児でも、またかかることがあります。
潜伏期は2~7日で、多くの乳幼児はほとんど前駆症状なしに発症します。発熱も約半数にみられますが、高熱になることはあまりなく、3日以内に解熱します。
手足の水疱は、痛くありません。ひざやおしりなどにも、多数の水疱が現れることもあります。おしりだけの場合もあり、おむつかぶれと間違えられることも。これらの水疱は、一週間ほどで消失します。
口の中はひどく痛くなることがあるので、酸っぱい物、辛い物など刺激性の食べ物は避け、乳児では脱水を起こさないように水分を与えましょう。口内痛が強くて、全く飲んだり食べたりできない時や、高熱が続いて、頭痛を訴えたり、嘔吐(おうと)を繰り返す時は、早めに小児科の医師の診察を受けましょう。無菌性髄膜炎を合併して起こすこともあります。
プール熱とは、アデノウイルスによって起こる急性ウイルス感染症で、結膜充血、咽頭発赤(いんとうほっせき)、発熱が三大症状です。幼児から学童に多く見られ、夏期に学校のプールを介して流行することが多いために、この病名が付けられています。別名は咽頭結膜炎。
原因となるのは、夏風邪のウイルスの一種であるアデノウイルス3型、4型、7型の感染です。結膜の充血はほとんどが下まぶたに起こり、角膜に症状が現れることはほとんどありません。目には痛みやかゆみがあり、目やにが出て、まぶしくなったり、涙が止まらなくなることもあります。
この目の症状は、一般的に片方から始まり、多くの場合、もう一方にも広がります。
39度前後の発熱が、数日、続きます。のどの痛みも、飲食物が飲み込めないほどひどくなることがあります。幼児では、吐き気や下痢を伴うこともあります。時には、結膜充血、咽頭発赤、発熱の主症状が、全部そろわないことも。
小児科の医師による治療では、結膜炎に対しては抗生剤の目薬を使い、熱が高い時は、解熱剤を使います。ウイルス性の病気なので、プール熱の特効薬はありません。
家庭での看護では、口の中が痛くなることが多いので、簡単に飲めるスープ、ジュースに、口当たりのよいゼリーやプリンなどを用意すればよいでしょう。飲食物を全く受け入れられない時には、子供の脱水に気を付けましょう。
1週間くらいでよくなりますが、数週間、便の中にウイルスが出ています。プール熱が治っても、学校側からすぐにプールの許可が下りないのは、このためです。
集団感染の予防のためには、プールでの水泳後の手洗い、洗眼、うがい、シャワー浴びを必ず実行し、目やにから接触感染することがあるため、タオルの貸し借りはやめるなどの注意が必要です。
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