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糖尿病性網膜症



糖尿病のために網膜の血管が障害される疾患

糖尿病性網膜症とは、糖尿病によって目の網膜などに各種の変化を来し、視力低下を認める疾患。糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症(じんしょう)と並んで、糖尿病の3大合併症の一つに数えられます。

かつては日本人の中途失明の原因として最多でしたが、平成18年に緑内障に次ぐ第2位となりました。しかし、糖尿病性網膜症による失明人数は年間約3000人で、毎年増加していますし、緑内障の原因の一部には糖尿病性新生血管(血管新生)緑内障も含まれています。

糖尿病性網膜症は通常、糖尿病を発症して5年以後に出現する合併症ですが、2型糖尿病(インシュリン非依存型糖尿病)では発症がいつかはっきりしないこともあり、糖尿病と初めて診断された時点で、すでに30~40パーセントの人に網膜症の合併を認めるとする報告もあります。従って、2型糖尿病では、糖尿病の初診断時から網膜症のチェックが必要と考えられます。

糖尿病のコントロールが悪いと、糖尿病の罹患(りかん)期間が長くなるとともに網膜症も進行します。糖尿病の発症後20年では、1型糖尿病(インシュリン依存型糖尿病)の100パーセント、2型糖尿病の60パーセントの人に網膜症の合併を認めるとする報告もあります。

網膜とは、眼球の底に当たる眼底を覆っている膜です。視神経が集中し、また栄養を運ぶために多くの毛細血管が張り巡らされているため、高血糖状態が長く続くと血管障害を引き起こしやすくなります。

血管障害によって酸素欠乏状態になった網膜からは、血管を自分のほうへ伸ばすホルモンが放出されます。その結果、病的な血管である新生血管が新しくできます。この新生血管は非常にもろいため出血しやすく、それによって目の機能に障害が起きます。

通常、三つの病期に相当する単純網膜症、前増殖網膜症、増殖網膜症と徐々に進行することが多いのですが、突然進行し、悪化することもあります。

単純網膜症では、眼底の所々に出血が見られたり、血管が閉塞(へいそく)して、こぶができたりします。前増殖網膜症では、眼底の随所に出血が見られ、新生血管が出現します。増殖網膜症では、新生血管が網膜だけでなく硝子体(しょうしたい)にまで増殖し、硝子体出血や網膜剥離(はくり)が生じる場合があります。

初期の頃は、多くは無症状で経過します。徐々に、眼底出血や、網膜の中央に位置する黄斑(おうはん)に浮腫(ふしゅ)が生じて、視力低下や、物がゆがんで見える変視症を自覚するようになります。

硝子体出血や広範囲な眼底出血を伴うと、飛蚊(ひぶん)症や急激な視力低下を示します。二次的に増殖膜が形成され、それが網膜を引っ張って牽引(けんいん)性網膜剥離に陥ると、永続的な視力低下や失明に至ることがあります。新生血管緑内障に陥ると、眼痛、不可逆的失明、眼球委縮を示すことがあります。

また、白内障が標準より早く進行します。糖尿病性腎症の悪化に伴い、腎性網膜症を併発し、目の症状が悪化して著しい視力低下を認めることもあります。

糖尿病性網膜症の検査と診断と治療

糖尿病性網膜症の予防、及び進行防止を図るには、糖尿病をきちんと管理し、血糖値を正常範囲に保つようコントロールすることが、最も有効です。

糖尿病の人は、網膜症になっても早期に発見して治療を始められるように、定期的に目の検査を受けるべきです。視力障害の程度は、糖尿病を発症してからの期間や、血糖値のコントロールがどの程度きちんとできているかに左右されます。

医師が糖尿病性網膜症を診断するには、基本となる眼底検査とともに、蛍光眼底造影検査も必ず行います。単純網膜症、前増殖網膜症、増殖網膜症と進む病期を見極め、どの病期であれ現れる黄斑症を的確に把握するには、蛍光眼底造影検査が不可欠です。

眼底検査と蛍光眼底造影検査は、主に間接眼底鏡を用いて、肉眼的に眼底の状態を診察します。通常、眼底が外部からよく見えるようにするために、瞳(ひとみ)を開く点眼薬を用いて散瞳(さんどう)を行います。散瞳中はピント調節能力が低下するため、自動車の運転は困難となりますので、受診の際の交通手段には注意を要します。

治療法としては、レーザー光凝固術という方法があり、レーザー光線を網膜に照射して、主に網膜の酸素不足を解消し、新生血管の発生を予防したり、すでに出現してしまった新生血管を減らしたりすることを目的として行います。網膜症の進行具合によって、レーザーの照射数や照射範囲が異なります。

このレーザー光凝固術は、すべての網膜が共倒れにならないように正常な網膜の一部を犠牲にして、今以上の網膜症の悪化を防ぐための治療であって、決して元の状態に戻すための治療ではありません。まれに網膜全体のむくみが軽くなるといったような理由で、視力が上がることもありますが、多くの場合、治療後の視力は不変かむしろ低下します。

早い時期であれば、レーザー光凝固術はかなり有効で、将来の失明予防のために大切な治療です。通常は通院で行い、必要に応じて繰り返し行います。

レーザー治療で網膜症の進行を予防できなかった場合や、すでに網膜症が進行して網膜剥離が起こっている場合、傷付いた網膜血管からの大量の出血が続いている場合は、硝子体切除術という治療が必要になることもあります。

眼球に3つの穴を開けて細い手術器具を挿入し、目の中の出血や増殖組織を取り除いたり、剥離した網膜を元に戻したりするものです。顕微鏡下での細かい操作を要し、眼科領域では高度なレベルの手術となります。この手術により、硝子体出血では多くのケースで視力の回復がみられ、網膜剥離でも視力が回復することがあります。

なお、薬物治療もありますが、進行した網膜症にはあまり効果が期待できません。

糖尿病性網膜症がある人では、急激な血糖コントロール、妊娠、腎症の進行、人工血液透析の導入などの際に症状が進行することがあるので、注意して下さい。

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