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地図状舌
地図状舌(ちずじょうぜつ)とは、外から見える舌の表面部分である舌背部(ぜっぱいぶ)に、淡紅色の地図のような1ミリから3ミリの模様が生じる状態。良性移動性舌炎、良性遊走性舌炎、遊走輪、遊走疹(しん)とも呼ばれます。
一見、舌の粘膜が赤くただれたような外観を示すことから、何か重症な病気にかかったのではないかと心配する人も少なくありませんが、その実態は舌背部の粘膜にある多数の微小な小突起である糸状乳頭の角化異常なので、それほど心配する必要はありません。
健康な舌の表面部分は、舌乳頭の1つで味覚を感知する糸状乳頭の小突起でびっしり覆われており、しっとりした滑らかな白い苔(こけ)が生えているようにみえます。これが角化異常により部分的に委縮、消失し、平たんでつるつるした淡紅色のまるで地図のようなまだら模様になってしまう状態が、地図状舌です。
地図のようなまだら模様は融合、拡大、委縮、消失を繰り返し、あたかも移動するように見え、その模様の形態、位置は、日々変化するのが特徴です。
多くは自覚症状がなく、痛みは生じません。不快感、違和感が主な症状で、舌に強い刺激を加えることで痛みや、ピリピリする、染みるといった症状が生じる場合もあります。
地図状舌の原因は、まだ解明されていません。体質異常、精神身体的障害、内分泌障害、消化器系障害、遺伝などいろいろ疑われていますが、定かではありません。気管支炎、鼻炎、喘息(ぜんそく)などとの関連性もいわれています。
かかりやすいのは、幼児と若い女性で、特に若い女性は月経との関連が指摘されています。
良性の病変で数日から数週間で自然に治ることもありますが、全体的には極めて慢性の経過を示し短期間での自然治癒、あるいは治療は望めません。
地図状舌は見た目がインパクトのある形態を示し、形態が日々変化するため、不安に感じる人も少なくありません。そういった場合は、まず専門医を受診することが勧められます。舌の異常が地図状舌とわかれば、不安も解消されます。地図状舌ではなく、別の病気である可能性も考えられますので、専門家の判断に委ねるのが一番です。
歯科口腔外科、口腔内科、歯科などの医師による診断では、舌の表面に特徴的な形成異常が出現するため、基本的には視診と問診を実施します。カンジダ症との鑑別も行います。
歯科口腔外科、口腔内科、歯科などの医師による治療では、特に大きな問題がなければ経過観察します。
舌の痛みが強い場合は、鎮痛薬を投与したり、殺菌効果のあるうがい薬を用いたり、キシロカインビスカスなどの局所麻酔薬の塗布もありますが、極めて慢性の傾向を示すので一時的な対症的処置はあまり意味がありません。特に炎症所見の強い時には、塩化リゾチーム剤などの消炎剤を投与します。
舌の痛みや、ピリピリする、染みるといった症状がある場合は、熱い食べ物、香辛料、アルコール、たばこなどによる舌の局所的な刺激を避けてもらうこともあります。
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