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チック症

不随意に急速な運動や発声が起きる疾患

チック症とは、チックという一種の癖のようなものが固定、慢性化した疾患。心身症ないし神経症レベルのチック症や、チック症の重症型といわれる慢性多発性のトゥレット症候群は、学童期、思春期の子供に比較的多くみられます。

チックというのは、ある限局した一定の筋肉群に、突発的、無目的に、しかも不随意に急速な運動や発声が起きるもの、とされています。従って、チック症の症状には、運動性チック、音声(発声)チックがあります。

運動性チックの症状としては、まばたき(瞬目)、首振り、顔しかめ、口すぼめ、肩上げなど上位の身体部位によく現れますが、飛び跳ね、足踏み、足けりなど全身に及ぶものもあります。音声(発声)チックの症状としては、咳(せき)払い、鼻鳴らし、舌鳴らしのほか、叫びや単語を連発するものがあります。

3〜4歳の幼児期から11歳ごろに発症することが多く、ピークは6〜8歳です。男児に多い傾向にあり、男女比は3対1。その意味付けに関して定説はありませんが、一応この時期の男女の成長、発達の特異性によるものと考えられています。

原因は、慢性的なものであれば、遺伝的なものを含め脳にあると考えられていますが、環境や心の問題も症状に影響します。一過性のものの中には、心因性のものもあると考えられていますが、その場合自然に軽快することが多いといわれています。脳については、線状体の障害説などがあります。

チック症は、 一過性チック症、 慢性チック症、トゥレット症候群(トゥレット障害)に分類されます。

一過性チック症は、1種類または多彩な運動性チックおよび音声チックが、頻回に起こりますが。1年以内に症状が消失するものです。心と体の成長、発達の過程で、子供の10~20パーセントに何らかのチック症が見られるとされていますが、多くは一過性と考えられています。

慢性チック症は、1種類または多彩な運動性あるいは音声チックのどちらかが、頻回に起こり1年以上持続するものです。

トゥレット症候群(トゥレット障害)は、多彩な運動性チックおよび1つまたはそれ以上の音声チックが、同時ではなくても頻回に起こり1年以上持続するものです。10歳過ぎになると、卑猥(ひわい)な単語などをいってしまう汚言症、他人のいった言葉などを繰り返す反響言語、音声や単語を繰り返す反復言語などの複雑な音声チックが出現することがあります。このトゥレット症候群、時に慢性チック症にも併発することがあるものとして、強迫性障害、注意欠陥/多動性障害(AD/HD)、学習障害、不登校、衝動性、攻撃性の高進、自傷・他害行為が挙げられます。

以上の3つの障害は、連続するものかどうかは明らかでありませんが、大きく見れば1つの集合と考えられています。そして問題なのは、どのようなタイプの一過性チック症が、慢性チック症あるいはトゥレット症候群に進展するかがわかっていないことです。

チック症の検査と診断と治療

チック症の診断は、一般には症状や治療経過の特徴などからなされています。精神科などでの治療は、「チック症という疾患を治すのではなく、チック症の子供を治療する」ことになります。治療の目標は、ストレスなどへの適応性を高め、人格の発達援助を目指すことです。

軽症の場合は、遊戯療法などの行動療法的なアプローチが有効とされています。その際は、親へのカウンセリングが重要になります。親の対応としては、症状を誘発する緊張や不安を軽減、除去することや、それへの耐性(精神的抵抗力)を高めるように援助することが肝要です。症状の出現をやめるように、いたずらに叱責(しっせき)して注意を促すことは、避けるべきです。チックは、緊張や不安、興奮、疲労などによって影響されます。ちょっとした変動で、一喜一憂しないことです。

学校ではチックが目立たないのに、家庭では多い場合もあります。これは家庭に問題があるのではなく、むしろリラックスできるからであることが多いと思われます。 本人が症状に捕われすぎないように配慮し、ゆったりと過ごせるようにします。全身運動による発散に関心を向けさせ、一方では、何か興味を抱いて熱中できる、趣味的なものを持たせることが有効です。

チック症の症状が長期、慢性化し、多発、激症化する場合には、子供専門の精神科などの医療機関への受診が必要になります。トゥレット症候群や慢性チック症の治療には、主としてハロペリドールなどの向精神薬による薬物療法が有効です。その他の治療法の併用も行われます。

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