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単純性甲状腺腫
単純性甲状腺腫(せんしゅ)とは、甲状腺が腫(は)れる疾患。しかし、甲状腺の機能に異常はなく、炎症や腫瘍(しゅよう)もなく、単に甲状腺全体が均一に腫れている状態です。
原因ははっきりしませんが、生体に必要な甲状腺ホルモン量の不足が生じ、不足を補うために甲状腺刺激ホルモン(TSH)が増加して、甲状腺が腫れると考えられます。
その単純性甲状腺腫に含まれるものとして、思春期の甲状腺ホルモン需要の増大によるもの、甲状腺ホルモンを作る材料であるヨードの地域的な摂取不足によるもの、ヨードの過剰摂取によるもの、甲状腺ホルモン合成酵素の軽度の障害によるもの、甲状腺肥大を来す薬物の内服によるものなどが挙げられます。
思春期の甲状腺ホルモン需要の増大によるものとしては、思春期の女性で甲状腺の腫れが時々みられ、思春期甲状腺腫という名で呼ばれています。この場合、思春期を過ぎると自然に元に戻ると見なされます。
ヨードの地域的な摂取不足によるものは、大陸の奥地や山岳地帯に住んでいる人たちにみられ、土壌と水分にヨード含有量が少なく、ヨードを含む食べ物も少ないために起こってくるのであり、地方性甲状腺腫という名で呼ばれています。
ヨードの過剰摂取によるものは、海藻類などからヨードを多量に摂取にしているために起こってくるのであり、北海道の一部など単純性甲状腺腫が多発している地方があります。ヨードの摂取量とは関係はなく、他の何らかの原因によって起こっているとする説もあります。
症状としては、甲状腺腫が非常に大きくなると、気管や食道が圧迫され、多少呼吸や飲み下しが困難になることもありますが、非常にまれです。首が少し太く見える程度の腫れの場合には、ほかに症状はないのが一般的です。ただ、首の前や咽喉(いんこう)頭の違和感を覚える場合はあります。
検査と診断と治療
医師による検査では、慢性甲状腺炎(橋本病)や、バセドウ病に代表される甲状腺機能亢進(こうしん)症などとの区別のために、血液検査が行われます。腺腫様結節との区別のために、超音波検査が行われることもあります。
血中甲状腺ホルモン値が正常で、抗甲状腺抗体も陰性であり、自覚症状も特になく、柔らかい小さな甲状腺腫が触れる場合は、単純性甲状腺腫と診断されます。
ほとんどの場合、治療は必要なく、時々経過を追うだけで十分です。日常生活においても、海藻類などのヨードの摂取不足や過剰摂取に気を付ける以外は、特にありません。
甲状腺の肥大を来す薬物の内服がある場合は、それを是正します。甲状腺腫が大きい場合は、甲状腺ホルモン剤を服用すると、3カ月くらいで腫れていた甲状腺が縮小していきます。
なお、甲状腺腫が大きい場合は、後に橋本病やバセドウ病が出現する可能性を考えて、年1回程度病院でチェックするとよいでしょう。思春期の腫れに関しても、後々橋本病やバセドウ病が出現する場合もあるので、時々経過観察するとよいでしょう。
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