多臓器不全
多臓器不全とは、生命の維持に欠かすことのできない重要な臓器が同時、あるいは連続的に機能不全に陥った重篤な状態。多器官障害、多器官不全、複合器官障害、複合器官不全、多臓器機能不全症候群とも呼ばれます。
肝臓や腎(じん)臓のほか、心臓(循環器系)、肺(呼吸器系)、消化器系、血液系、中枢神経(神経系)、免疫系など全身の複数の臓器が機能不全を起こし、多くは集中治療を要します。臓器の多くが重篤な機能不全を起こした場合には、救命医療のおよばないことも多々あります。
主な原因は、敗血症や菌血症など重度の感染症、重度の外傷や火傷(やけど)、重度のショックによる低血圧、重い膵炎(すいえん)、心不全からの低血圧、人為的な操作で傷をつくる大きな手術など。これらが組み合わさって起きることもあります。
重度の感染症や重度の外傷などを負った場合は、大量出血や血液中の毒素が増えたりすることに加え、体が生命の維持のために防護機能を過剰に働かせるために、臓器の機能が狂ってしまうことがあります。また、重度のショックによって低血圧になった場合は、血液量の不足、血液中の酸素不足などにより臓器の細胞が壊れ、機能不全を起こします。
症状は、臓器系の疾患が悪化した状態が現れます。肺の機能不全では人工呼吸器が必要になる状態、腎臓の機能不全では人工透析が必要になる状態、肝臓の機能不全では肝不全や肝性昏睡(こんすい)、中枢神経(脳)の機能不全では錯乱状態や失神などで、ほかにも全身けいれんや不整脈、黄疸(おうだん)、腸閉塞(へいそく)、消化管出血などさまざま。
こういった重度の臓器機能不全が2つ以上同時に起こっていると多臓器不全と診断されますが、3つ以上では発症から症状の進行が急激に進むため、生存率が著しく低くなります。
すでに入院している場合は、多臓器不全の前段階である全身性炎症反応症候群の時点で、診断と緊急治療を行うことも可能です。敗血症も、全身に炎症を起こす全身性炎症反応症候群の一種とみなされています。
一方で、自宅療養をしていて多機能不全を起こした場合は、医療機関に搬送する救急車が到着する前に、不整脈などで亡くなってしまう例もあります。多臓器不全になる可能性がある場合は、家族が応急処置の講習を受けておくことが勧められます。
医療機関による治療は、一般病棟では管理が難しいため、集中治療室(ICU)といった高度医療を提供する場所で行います。
多臓器不全と診断したら即刻、機能不全を起こしている臓器ごとに対する治療を始めます。呼吸困難の場合は人工呼吸、大量出血の場合は輸血、血液中の有害物質が多い場合は人工透析、感染症の原因菌が特定できた場合は抗菌薬、代謝機能不全の場合は中心動脈への栄養補助、また血液の循環補助を行うなど治療法はさまざまです。
ただし、1つの臓器を治療するための薬剤や装置が、ほかの臓器には悪影響をおよぼすという場合もあります。臓器ごとに対する治療の関連性を判断しながら進める必要があるため、思い切った治療が困難になることもあります。
多臓器不全を発症したら生存率が低くなるので、発症前のできるだけ早い段階で臓器ごとの原因を取り除くための治療を開始することが重要です。全身性炎症反応症候群の時点で治療を開始していれば、回復の可能性が高くなります。特に敗血症では、血液中に菌が見付かるのを待ってから原因菌に対する薬物治療をしたのでは遅いことが多いので、早期診断と適切な早期治療が重要です。
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