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通年性アレルギー性鼻炎
通年性アレルギー性鼻炎とは、季節に関係なく、年間を通じて起こりやすい鼻炎。
アレルギー性鼻炎は、季節性アレルギー性鼻炎と通年性アレルギー性鼻炎の2種類に分かれています。季節性アレルギー性鼻炎のほうは、特定の季節にのみ起こる鼻炎で、そのほとんどが日本人の国民病とも呼ばれる花粉症です。花粉症は、風の媒介で受粉する風媒花の花粉を抗原(アレルゲン)としますので、花粉が飛ばない季節には発症しません。
通年性アレルギー性鼻炎のほうは、季節に関係なくいつでも発症し、1年中続くこともあります。症状は、季節性アレルギー性鼻炎と変わらず、くしゃみ、鼻水(鼻汁)、鼻詰まり(鼻閉)が主となります。
鼻から吸い込まれた抗原が鼻の粘膜でアレルギー反応を起こして、通年性アレルギー性鼻炎を発症することから、空気中を浮遊している抗原が原因となります。代表的な抗原は、ダニ、ハウスダスト(室内のほこり)、カビや細菌です。
日本の住宅の布団やカーペットなどに潜むダニの約九割を占めるヒョウヒダニ、中でもヤケヒョウヒダニとコナヒョウヒダニの2種類が、主な原因となります。人やペットの抜け毛、フケなどが含まれているハウスダストをエサとして繁殖するダニの死骸(しがい)も、原因となります。
人やペットの抜け毛、フケ、ゴキブリなどの虫の死骸やフン、織物の繊維が含まれているハウスダストも、原因となります。室内の空気中を浮遊しているカビの胞子や室内の細菌も、原因となります。現代の住宅は密閉度が高く、湿度も高いため、ダニ、カビ、細菌が繁殖しやすくなっています。
外部からダニ、ハウスダストなど異物である抗原が侵入した時に、その抗原に対応する特定の抗体(IgE抗体)が体内に存在すると、抗原と抗体が結合し、抗原抗体反応が起こります。抗原抗体反応が起こると、肥満細胞や好塩基球などの細胞からヒスタミン、ロイコトリエン、トロンボキサンなどの化学伝達物質が遊離され、その作用でアレルギー反応が起こります。
ヒスタミンが鼻の粘膜の三叉(さんさ)神経を刺激したり、自律神経のバランスを崩して副交感神経の働きを優位にするために、くしゃみや、透明なさらさらとした鼻水の過剰分泌、鼻のかゆみなどが起こります。ロイコトリエンやトロンボキサンなどは、鼻の粘膜の血管を刺激して拡張させるために、鼻詰まりも起こります。
鼻詰まりが強く、くしゃみや鼻水を感じない場合や、くしゃみと鼻水が強く、鼻詰まりを感じない場合などがあります。アレルギー性結膜炎を合併することも多く、目のかゆみや充血、流涙がみられることもあります。口の中とのどのかゆみ、のどの痛み、皮膚の炎症などが起こることもあります。
鼻の奥と中耳をつないでいる耳管がはれることもあり、特に小児では聴力が低下したり、慢性中耳炎になったりすることがあります。また、鼻の周囲にあって骨で囲まれた空洞である副鼻腔(ふくびくう)炎を繰り返すことで、鼻の粘膜組織が増殖して鼻ポリープができることもあります。
ダニやハウスダストを抗原とする通年性アレルギー性鼻炎では、しばしば気管支喘息(ぜんそく)やアトピー性皮膚炎を併せ持っています。
近年、冷暖房が普及して住宅の空気が密閉されるようになったことで、ダニやハウスダストが室内に蓄積されやすくなり、通年性アレルギー性鼻炎を発症する人が増えたとされています。さらに、花粉症などの季節性アレルギー性鼻炎と、通年性アレルギー性鼻炎の両方を発症する人も増加傾向にあります。
常に鼻炎に悩まされている人は、耳鼻咽喉(いんこう)科を受診して、症状を引き起こす原因が何かを調べることが勧められます。原因が特定できれば、日常生活の中でそれを避ける工夫ができ、症状の軽減につなげることが可能になるためです。
耳鼻咽喉科の医師による診断では、まず鼻炎の症状がアレルギー性かどうかを検査で調べます。検査には、問診、鼻鏡検査、鼻汁検査などがあります。
問診では、くしゃみ、鼻水、鼻詰まりの3つの症状が始まった時期、症状が1年中起こるのか季節と関連して起こるのか、症状の種類と程度、過去の病歴、気管支喘息やアトピー性皮膚炎などほかのアレルギー性疾患の併発の有無、副鼻腔炎や鼻ポリープの併発の有無、家族の病歴などを明らかにします。
鼻鏡検査では、専用のスコープを使って直接鼻の粘膜の状態を観察します。通年性アレルギー性鼻炎の場合は、鼻の粘膜が全体的にはれ上がって白っぽく見え、透明の鼻水が認められます。また、副鼻腔炎、鼻ポリープなどほかの疾患があるかどうかも観察します。
鼻汁検査では、綿棒などで採取した鼻水の中に、白血球の一種の好酸球という細胞がどの程度含まれているかを調べます。抗原抗体反応が起こると、鼻水中の好酸球が増加するので、アレルギー性鼻炎の診断の助けになります。
アレルギー性であれば、原因となる抗原は何かを検査します。検査には、特異的IgE抗体検査、皮膚テスト、鼻粘膜誘発テストがあります。
特異的IgE抗体検査では、抗原抗体反応を起こす抗体(IgE抗体)が血液中にどの程度含まれているか、その抗体がどんな種類の抗原(アレルゲン)と結合するか、採血して調べます。
皮膚テストでは、可能性のある抗原のエキスを前腕の皮膚に注射するか、皮膚につけた引っかき傷に滴下して反応を調べます。15〜20分後に、皮膚が赤くはれる面積と程度で判定します。
鼻粘膜誘発テストでは、可能性のある抗原エキスの染み込んだ小さな紙を鼻の粘膜に張り付け、アレルギー反応を調べます。5分後にくしゃみ、鼻水、鼻詰まりがどの程度出現するかで判定します。
鼻汁検査、特異的IgE抗体検査または皮膚テスト、鼻粘膜誘発テストの3つのうち2つ以上が陽性の場合に、アレルギー性鼻炎と確定します。
耳鼻咽喉科の医師による治療では、まず抗原の除去、回避に努めます。ダニやハウスダストが抗原であれば、室内の清掃をこまめに行い、布団や枕(まくら)に防ダニカバーを付け、空気清浄器を使用するのも有効です。
次に、減感作療法(特異的免疫療法)という体質改善の治療や、抗アレルギー薬で症状を抑える治療を行います。
減感作療法は、抗原に体を慣れさせ、抗原に接しても症状を起こしにくくする治療です。現在のところ、長期にわたって症状の出現を抑えることが可能な唯一の方法であり、週に1回くらいの割合で抗原希釈液を注射し、徐々に濃度を濃くしていく治療を2~3年続けます。治療終了後にも、症状の改善が持続します。
最近、長期にわたる通院の負担を軽減するのを目的として、急速減感作療法がいくつかの医療機関で行われています。副作用の出現も危ぶまれるために入院して行う場合もありますが、従来の減感作療法と同じか、それ以上の効果があるといわれています。
薬物療法では、ヒスタミンなどの化学伝達物質の作用を抑える抗ヒスタミン薬や、化学伝達物質の遊離を抑えるいわゆる抗アレルギー薬、副腎(ふくじん)皮質ホルモン薬、自律神経薬などを、症状やそのほかの状況に応じて内服薬、点鼻薬として使用します。
症状を抑える薬を使用すると、その時は改善しても、再発することが多く、完全に治ることが難しいため、長期間の経過観察も行います。
薬物療法に効果を示さない場合は、手術療法を行うこともあります。鼻詰まりに対しては、鼻粘膜の一部を固める電気凝固術やレーザー手術、凍結手術、鼻粘膜の一部を切り取る鼻粘膜切除術などがあります。また、鼻水に対しては、自律神経の副交感神経を遮断する後鼻神経切断術が行われることもあります。
副鼻腔炎や鼻ポリープがある場合も、副鼻腔からの粘液の排出をよくしたり、感染物質を除去したり、鼻ポリープを切除したりするために、手術療法を行うこともあります。手術の前後に、温水や生理食塩水で副鼻腔を定期的に洗浄すると有効なこともあります。
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