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転換性障害



体の疾患が認められないのに、運動機能や知覚、感覚などの障害として神経症状が起こる疾患

転換性障害とは、一般的な体の疾患が認められないにもかかわらず、運動機能や知覚、感覚などの障害として神経症状が起こる疾患。解離性障害の症状の一つにも相当します。

医師が詳しく検査しても神経症状を起こしている体の疾患が見当たらない場合に、転換性障害と判断します。背景にある心理的なストレスが神経症状に転換しているので、転換性障害といいます。

神経症状としては、知覚、感覚などの異常や、運動機能の障害が出現します。知覚、感覚の異常は、手足のしびれ、まひが中心となり、目が見えなくなる、耳が聞こえなくなるといった視覚や聴覚で症状が起こったりもします。

運動機能の障害では、脱力して座り込む失立、歩けない失歩、筋力低下が起こったりします。めまい、耳鳴り、過呼吸発作、下痢などの胃腸症状、動悸(どうき)、発汗、頻尿といった自律神経症状が起こることもあります。

転換性障害は通常、思春期から成人期初期にかけて発症し、その確率は1パーセント未満で、男性よりも女性に多くみられます。治療の必要がないような程度のものも含めれば、有病率はより高いといわれています。

発症の背景には、無意識の過程が働いていると考えられており、幼少期からの強い抑圧が精神エネルギーを知覚、感覚などの異常や、運動機能の障害に転換させてしまうと仮定されています。発症者の日々の生活の中では、家族や知人への怒りやねたみ、恨み、あるいは性的な不満などが多いとされます。

ほかにも、発症から得られる疾病利得が背景にあり、発症することで周りの人から優しい言葉をかけられたり、助けられたり、現在の不快な生活状況やストレスを軽減できたり、回避できるような肯定的な結果が得られていることも、症状の持続につながっている可能性も指摘されています。

この転換性障害に、解離性障害が合併することがあります。転換性障害では、心理的なストレスが神経症状となって現れるのに対して、解離性障害では、心理的なストレスが意識障害、記憶障害、感情まひなどの精神症状となって現れます。転換性障害と解離性障害を合わせたものが、従来、医学的にヒステリーと呼ばれていた疾患に相当します。

また、解離性障害の発症により、精神的なダメージを受けて、うつ状態となってしまう恐れもあります。

転換性障害の検査と診断と治療

精神科、神経科、心療内科の医師による診断では、症状を注意深く観察し、体を診察して、一般的な体の疾患を除外するための検査を行います。

精神科、神経科、心療内科の医師による治療では、症状が出現する背景となった心理的なストレスに焦点を当てた心理療法やカウンセリングを行います。

心理療法では、失われた記憶を明らかにする記憶想起法や、催眠療法、認知行動療法などを行い、発症者がストレス対処法を自ら身に着けていくことを目指します。

また、発症者の精神的な健康を回復させるために、抗うつ剤や精神安定剤が有効なこともあります。時には、家族などの協力も得ながら、生活上の問題の解決を支援し、現実生活への適応を促します。

一般的に転換性障害の症状は自然に治癒するといわれていますが、この症状を維持することで何らかの利益を長期にわたって得ている場合には、回復が遅れることもあります。

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