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第五病(伝染性紅斑)



ほおがリンゴのように真っ赤になるウイルス感染症

第五病とは、ほおがリンゴのように真っ赤になるウイルス感染症。伝染性紅斑(こうはん)、リンゴ病とも呼ばれます。

第一病が麻疹(ましん、はしか)、第二病が猩紅(しょうこう)熱、第三病が風疹(ふうしん、三日ばしか)、これらに似た赤い発疹が現れるものの実体がはっきりしない疾患が第四病というような分類が以前からあり、比較的最近認識された伝染性紅斑は五番目の赤い発疹が現れる疾患というわけで、第五病とされています。なお、第六病は、突発性発疹です。

また、日本においては、第五病(伝染性紅斑)は、感染症法での五類の小児科定点把握疾患であり、全国約3000の小児科定点医療機関で患者発生が把握されています。

第五病は、ヒトパルボウイルスB19(パルボウイルスB19)という大きさが20ナノ・メーターと小さなウイルスの感染によって、幼児から学童に多く発症します。年齢を重ねるとともに発生は減少する一方、20歳以上の大人の発生も少ないながらあります。

季節的には、春から初夏にかけて流行することが多いようで、限られた地域や集団の中での流行となるケースが多くみられます。感染力はそれほど強くなく、のどの分泌物の飛沫(ひまつ)によって、気道から主に感染し、ヒトパルボウイルスB19は骨髄の赤芽球前駆細胞で増殖します。その後、抗体が作られるとウイルス血症は消退し、発疹が出ます。

10~14日の潜伏期間を経て、両側のほおの赤い発疹から始まるのが普通です。1~2日後には肩から腕、太ももに赤い発疹が出現し、数日後にはまだらなレース編み模様になります。この発疹は、腕の露出した部分に最も強く現れて、手のひらや足の裏にはほとんど現れません。発疹がかゆいこともあります。

微熱や気分の不快、あるいは風邪の症状が、発疹が現れる2、3日前に出ることもあります。子供は通常、それほど具合は悪くなく、発疹は7〜10日で消えます。

ただし、数週間たってから、日光や運動、熱や発熱、精神的なストレスなどを切っ掛けに、いったん消失した発疹が再燃する場合もあります。

病原体であるヒトパルボウイルスB19に対して免疫を持っていない成人が第五病にかかった場合には、全く症状が出ないこともありますが、第五病の典型的な発疹が出たり、手や腕、膝(ひざ)、腰の関節のはれ、痛みが出ることもあります。関節のはれ、痛みは、通常1、2週間で治まりますが、数カ月続く場合もあります。

通常は軽度な疾患ですが、妊婦がヒトパルボウイルスB19に感染すると、重大な合併症が起きる可能性があります。風疹と同様に、第五病ではヒトパルボウイルスB19は胎盤を通過して胎児に感染を起こし、流産や死産、胎児の皮膚のむくみと貧血などを生じる胎児水腫(すいしゅ)を起こすことがあります。特に妊娠初期と中期の感染が危険で、妊娠前期の感染による胎児死は10パーセント未満に上ります。

子供の第五病では、ほおが赤くなった時はすでに感染する時期をすぎているので、学校や保育所に行ってもかまいません。ヒトパルボウイルスB19に感染した子供は、発疹が現れる前の初期の段階で、感染源となり得るからです。

あまりにも真っ赤なほおの時、かゆみが強くなった時、高い熱が出た時、元気がなくなってきた時なら、2~3日休ませ、内科、小児科の医師の診察を受けたほうが無難でしょう。

第五病(伝染性紅斑)の検査と診断と治療

内科、小児科の医師による診断は通常、第五病(伝染性紅斑)の流行状況、学童の感染が多いこと、両側のほおの赤い発疹が認められれば困難ではなく、検査を行うことはありません。多形滲出(しんしゅつ)性紅斑、じんま疹、薬疹など、斑状丘疹性疾患との区別を要することがあります。

確定診断のために、血清中の抗B19抗体(IgMおよびIgG抗体)の測定、または血清中のB19抗原もしくはウイルスDNAの検出を行うこともあります。ウイルス血症時に血液検査を行った場合、網状赤血球、好中球、血小板、ヘモグロビンなどの減少がみられますが、これらの値は発疹が出た時期には回復していることが多くなっています。

内科、小児科の医師による治療では、ヒトパルボウイルスB19の特効薬はないため、必要に応じて対症療法を行います。かゆみが強い時は、抗ヒスタミン剤を処方します。年長児~成人で膝や腰に発生することがある関節痛に対しては、鎮痛剤が使われることがあります。

子供では、特別な治療を受けなくても、時期がくれば自然に治り、予後は良好です。

予防法としては、手によってウイルスを運んでしまうケースもあるので、よく手を洗うことが有効です。第五病に対するワクチン(予防接種)は、ありません。

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