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腟中隔
腟中隔とは、先天的に女性性管の腟の中央に、縦方向の隔壁が残った状態。腟縦中隔とも呼ばれます。
母親の子宮の中にいる胎児の時には、卵巣、子宮・腟・卵管、外陰部は別々に発生してきて、本来はこれらがうまくつながります。このうち、子宮と腟の上部は、ミュラー管と呼ばれる左右2対の原器が中央で癒合して形成されます。その癒合に障害を来すと、ミュラー管の末端部の細胞とそれに接する部分の尿生殖洞の細胞が増殖して形成する腟板の発生と、その空洞化に異常を来し、腟の中央に縦方向の隔壁が残ると考えられています。
腟の全長に及ぶ中隔では、腟を2つ持つ重複腟となります。腟中隔の大部分は無症状で、日常生活に障害を来すことは少なく、性交渉によっても腟中隔の存在には気付かれないことが多く見受けられます。
ただし、重複腟で片方の腟が閉鎖していると、腟内や子宮、卵管に月経血、分泌物などがたまり、下腹部痛を起こしたり、しこりを生じたり、腰痛を起こしたりします。
また、同じミュラー管の癒合障害によって、中隔子宮や双角子宮などの子宮奇形を伴うこともまれではありません。発生段階で関連があるために、腎臓(じんぞう)や尿管の異常を伴うこともあります。
別の疾患が原因で婦人科を受診した際や妊娠出産を契機に、初めて腟中隔を発見されることが多くなります。
子宮奇形は、子宮の形が本来と異なるものをすべて含みます。正常な子宮は長ナスのような形をしていますが、子宮が途中で2つに分かれてハート型になっていたり、1つのはずが2つあったりすることがあります。どのような形態をしているかで、弓状子宮、中隔子宮、単角子宮、双角子宮、重複子宮、副角子宮などに分類されます。
子宮に形態的な異常があることが、習慣流産や不妊、早産、難産の原因になることがあります。しかし、特別な問題を引き起こさないことのほうが多く、子宮の形に異常があるからすぐに何らかの処置が必要ということではありません。
子宮の形は正常で、中に隔壁がある中隔子宮が、流産を繰り返す不育症と最も関連しているといわれています。逆に、子宮腔(くう)が2つ存在している双角子宮は、不育症とはあまり関係ないといわれています。
婦人科、産婦人科の医師による腟中隔の診断は、内診のほか、超音波検査、MRI検査、基礎体温の測定、血液中ホルモン検査、腎臓(じんぞう)と尿管の検査、骨のレントゲンなどを行います。
婦人科、産婦人科の医師による腟中隔の治療は、性交渉や分娩(ぶんべん)の障害となっていれば、腟の中隔の切除を行います。重複腟で片方の腟が閉鎖している場合は、閉鎖部位を切開して、月経血や分泌物などの通り道を作ります。
婦人科、産婦人科の医師による子宮奇形の診断は、子宮卵管造影検査、超音波検査、MRI検査、子宮鏡、腹腔鏡などを用いて総合的に行います。一番簡単な検査は超音波検査ですが、弓状子宮や中隔子宮の場合は、超音波検査だけでは十分に診断できないことがあります。MRI検査や子宮卵管造影検査を組み合わせることによって、より詳しく子宮の形を見ることができます。
婦人科、産婦人科の医師による子宮奇形の治療は、症状がなければ行う必要はありません。習慣流産や不妊の原因になっている時は、手術で正常な形に整えます。手術の方法は、開腹して子宮の形を本来の形に整える形成術や、腹腔鏡補助下に形成術を行う方法のほか、最近では子宮鏡手術で中隔子宮の治療を行う方法も選択できるようになってきました。
子宮奇形があるからといって必ずしも手術が必要なわけではなく、あくまでも妊娠率を上げたり、流産率を下げたりする可能性が高いと考えられる場合に、手術を行います。形成術を行った場合、子宮の壁は通常の子宮よりも若干弱くなっている可能性があるので、分娩は通常の経腟分娩ではなく帝王切開になります。
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