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蛋白漏出性胃腸症
蛋白(たんぱく)漏出性胃腸症とは、血液中に含まれている蛋白質が胃壁や腸管壁から大量に漏れて、消化管の中に出てくる疾患。広い意味での吸収不良症候群の一つに含まれます。
血液中の蛋白質、特にアルブミンが消化管の中に異常に出てくることによって起こる低蛋白血症によって、むくみや貧血、腹水などの主症状が現れてきます。
蛋白が漏出する原因には、潰瘍(かいよう)形成に基づくもの、消化管の粘膜の病変に基づくもの、リンパ系の異常に基づくものがあり、これらが単独、あるいは複合して漏出を起こすと考えられています。
潰瘍形成に基づくものでは、消化管に潰瘍ができ、そこから血液中の蛋白質が漏れる多発性潰瘍、胃がん、クローン病、小腸潰瘍などが原因となる疾患として挙げられます。
消化管の粘膜の病変に基づくものでは、びらん性胃炎、メネトリエ病、アレルギー性腸炎、大腸ポリポージスなどが原因となる疾患として挙げられます。メネトリエ病では、胃粘膜のひだが著しく厚くなり、そのひだの間から蛋白質がつららのように流れ出します。
リンパ系の異常による基づくものでは、腸壁から静脈に至るリンパ管の形成不全や閉塞(へいそく)による腸リンパ管拡張症、悪性リンパ腫、腸結核、フィラリア病などが原因となる疾患として挙げられます。腸リンパ管拡張症では、小腸壁のリンパ管が病的に拡張し、そこから蛋白質が漏出します。フィラリア病は、亜熱帯地方にいる寄生虫のフィラリアの感染によって起こり、男性の精巣が大きくなったり、足が象の皮膚のようになります。
いろいろな疾患によって蛋白漏出性胃腸症が起こるため、その症状も雑多で、むくみや貧血、腹水のほか、下痢、悪心(おしん)、嘔吐(おうと)、腹部膨満感、腹痛、栄養不良、発育障害などを起こします。時には、脂肪の消化障害によって、白色で脂肪を含んで酸性臭のある脂肪便をみることもあります。
原因不明のむくみに気付いたら、総合病院の内科を受診します。
医師による診断では、詳しい検査が必要とされるため、多くは入院して検査を受けます。血液検査では、低蛋白血症、低コレステロール血症、低カルシウム血症、鉄欠乏性貧血がみられます。血液中の蛋白質の胃腸管への漏出を証明するためには、アイソトープを利用したα1—アンチトリプシンクリアランス試験やシンチグラフィが行われます。
さらに原因となる疾患の診断には、消化管造影X線検査、内視鏡検査、生検による組織検査、リンパ管造影、尿検査による尿蛋白測定や、糞便(ふんべん)の潜血反応、肝臓機能検査なども行われます。
蛋白漏出性胃腸症の治療法は、原因となる疾患によって多少異なります。低蛋白血症を改善するためには、十分なエネルギーと高蛋白食を摂取します。そのほか、アルブミンの点滴静注や、カルシウム、ビタミンの補給も行われます。
メネトリエ病では、H2受容体拮抗(きっこう)剤やプロトンポンプ阻害剤などの薬物療法が行われます。この保存的治療で効果があまりなく、病変が限局している場合には外科的治療の適応となり、胃切除術によって低蛋白血症の多くは改善されます。
腸リンパ管拡張症では、低脂肪食、高蛋白食の摂取と、中鎖脂肪酸を含む半消化態栄養剤の投与が行われます。薬物療法としては、通常は利尿薬やアルブミン製剤の投与が行われますが、副腎(ふくじん)皮質ホルモン(ステロイド剤)の投与が有効な場合もあります。
そのほかの症例では、原因となる疾患に対する治療が行われます。
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